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逢坂誠二君
立憲民主党の
逢坂誠二でございます。
私は、
立憲民主党・
市民クラブを代表し、
法務委員長葉梨康弘君
解任決議案の趣旨の提案をさせていただきます。(拍手)
まず冒頭に、実は、本日のこの
趣旨弁明でありますけれども、
ペーパーレスあるいは利便性の観点から、私は、日ごろから
タブレットを利用しておりますけれども、その
タブレットを利用して説明をしたいということで、
議会運営委員会に議運筆頭を通して提案をさせていただきました。ところが、今回は、
タブレットの利用については議運の了解を得ることができませんでした。
みずから実現可能な国会改革の小さな一歩かもしれませんけれども、そうした思いからの提案でしたが、
タブレットを使うことすらできないとは、極めて残念なことと言わざるを得ません。
この
タブレットの利用については今後もまた提案をしてまいりたい、そう思っておりますけれども、ここで一言だけ、別の観点から、
ペーパーレス、このことについて指摘をさせていただきたいと思います。
ペーパーレスについても、いろいろなところで、どうだという声があるようです。
私自身は、この
ペーパーレス、実は、ほとんどの書類を電子化し、即クラウドにアップロードし、
タブレットの中で利用させてもらっています。
ところが、この
クラウド化、電子化、非常に便利な側面もある一方で、実は、複数の書類を一度に見ることができない、書類を見ながら電子的にメモをするためにはもう一台のPCや
タブレットが必要になるということで、必ずしも便利でない側面もあります。
そういった意味から、
国会議員全員が全て
タブレットを持てば
ペーパーレス化するというのは、少し難しい状況なのかなというふうに思っています。その点からすると、使えるところから
タブレットを使っていく、そういうことによって少しずつこの利便性を享受していくということが大事ではないか、そう思っております。
以上、冒頭申し上げさせていただきます。
それでは、決議案の案文を朗読いたします。
本院は、
法務委員長葉梨康弘君を解任する。
以上であります。
この
臨時国会で唯一の
重要広範議案とされているのが、
入管法改正案です。この本会議で総理に対する質疑も行われました。
外国人労働者受入れに関する制度の根幹を変える、移民法とも言われている法案であり、国民全体を巻き込んだ徹底的な議論が必要であることは改めて申し上げるまでもございません。
入管法改正案は、がっちりと審議しましょう。数日間だけで審議を終わらせるのではなく。そんなことをしてしまったら、将来に禍根を残します。
きょうは、その理由などを述べさせていただきます。
また、一部マスコミでは、今回の
委員長解任決議は審議をおくらせる野党の戦術との見方があるようです。その指摘は全く当たりません。真逆であります。なるべく多くの審議をしたい、それが私たちの思いであります。
逆に、十分な条件整理も審議の見通しもないままに、拙速かつ強行的に審議を開始しようとしたのが
葉梨委員長ではありませんか。もちろん、これが
葉梨委員長の本心かどうかはわかりません。官邸の指示なのか国対の方針なのかわかりませんが、審議を回避しようとしているのは政府や与党の皆さんなのではありませんか。
そもそも、来年四月から新しい
在留資格を導入しようとする姿勢が大問題です。来年四月から導入するのであれば、今国会で成立させねばなりません。つまり、短い
審議期間を設定したのは、
法案提出者の政府の皆さんです。
審議拒否、
審議回避を画策したのは
安倍総理そのものと言えるでしょう。
国民の皆さん、だまされてはいけません。この間、
審議拒否をしているのは政府・与党の皆さんです。
昨年も、憲法五十三条の規定に基づき、野党が
臨時国会の開催を要求しました。しかし、六月下旬から九月二十七日まで、そのことを拒み続けたのは政府です。そして、九月二十八日、やっと
臨時国会が召集されたと思ったら、一切の審議もせずに解散です。これが究極の
審議拒否ではありませんか。
ことしの通常国会もそうです。五月下旬以降、繰り返し
予算委員会の
集中審議を求めてきました。しかし、与党は、それには全く応じようとはしませんでした。
森友学園問題、加計学園問題、自衛隊の日報問題、公文書の改ざん、隠蔽、廃棄、捏造問題、
裁量労働データの捏造問題、TPPなど貿易問題、日ロ、日中、日朝などを始めとする外交問題、
福島原発事故の原因究明とエネルギー問題、
人口減少対策、異次元の金融緩和を始めとする金融政策、財政再建問題など、あまたの課題があります。
こうしたさまざまな問題がある、だから
集中審議をしようとお願いをしても、一切それが実現することなく、七月二十二日の
国会最終日を迎えました。これこそが与党の
究極審議拒否ではありませんか。
国民の皆さんには、政府や与党が行っている国会の
審議拒否の現実をしっかりと確認いただきたく思います。
一方、今国会では、
予算委員会の
田中和徳予算筆頭理事は、
野田聖子予算委員長と全ての理事、オブザーバーが出席する
予算委員会理事会の場で、今国会の予算の
集中審議の実施を確約いただきました。
そうなのです、この姿勢こそが大事なのです。審議から逃げ回ることなく、審議に真正面から立ち向かう横綱相撲をすること、それが国会で膨大な議席を占有している今の与党がとるべき態度でしょう。
田中筆頭、
臨時国会の会期も半分に達する時期です。
予算委員会の
集中審議の日程を決めましょう。予算の審議時間は朝の九時から夕方の五時まで、
テレビ入りで、そして一日と言わず複数日にわたり、さらに、横綱与党らしく、野党の質疑時間を十分に確保して、がっちりと審議しようではありませんか。
田中筆頭、よろしくお願いいたします。
さて、
入管法改正法案ですが、私たちは、この問題は国家百年の計にかかわる大きな課題と捉えています。だから、数日の審議で済まされるようなことではないと考えます。十分な審議をしましょう。国民の皆様にこの課題の重要性を理解してもらう努力、プロセスも必要です。とにかく十分に審議をすることを強く主張したいと思います。よもや、政府や与党の皆さんが審議を回避する、審議を拒否する、そのことがないように強くお願いをいたします。
さて、三十年前のことになります。私は、ドイツを訪問する機会がありました。ベルリンの壁崩壊直後のことです。ベルリンの壁崩壊という世界史に残る一大事を自分の目で確かめたいと思って、一人で
ドイツ各地を歩きました。
その際、フランクフルトで、中東からの労働者と
ドイツ人との殴り合いの場面に遭遇しました。二十人、三十人ほどの大人が殴り合っているのであります。私には衝撃の光景であり、背筋が凍るような恐怖を覚えたものです。
私は、それ以来、
外国人労働者問題の難しさ、問題の深さ、大きさを痛感するようになりました。だからこそ、慎重かつ丁寧な審議が必要なのです。与党の皆さん、慎重で中身のある議論をしようじゃありませんか。
私のふるさとは、北海道、ニセコという町です。ニセコの町長も三期務めさせていただきました。
ニセコ町は、人口五千人余りの小さな町です。小さな町のメリットを生かし、SDGsなども念頭に、環境に配慮した
まちづくりを私の後の町長さんも続けてくださっていると認識をしております。本多平直さん、そうですよね。本多さんの選挙区で、私の後輩の町長も一生懸命頑張っている、そう認識をしております。
現在、このニセコ町の人口の約一割が外国人です。現在、
ニセコ地域は多くの外国人でにぎわっております。外国人の働き手もたくさんおります。来年はG20の閣僚会議もこの
ニセコ地域で開催されます。
インターナショナルスクールもあり、私の卒業した小学校の各クラスには数名の外国人もいるというふうに聞いております。先日、この
ニセコ地域のあるホテルに電話したところ、第一声がもしもしではなくハローでした。理由を伺うと、日本人よりも外国の方からの電話が多いからとのことです。
このように、多くの外国人でにぎわっているのが、今の私の
ふるさとニセコ地域の現状です。
もちろん、課題もたくさんあります。地価が高騰したり、医療機関でのトラブルがあったり、契約上の紛争もあるようです。しかし、今のところ、外国人との関係が割合にうまく進んでいる地域だと思います。
今後のことはなかなか予測がつきませんが、なぜ
ニセコ地域は外国人との共生が比較的うまく進んでいるのでしょうか。
発端は二十年ほど前です。
そのころから、
外国人観光客に的を絞った誘致活動をしておりました。町役場の職員も随分と海外に派遣をしました。海外の観光系のメディア、記者の皆さんにも、
ニセコ地域に来ていただいて、地域のよさを知ってもらう取組もさせていただきました。
そして、このころ、
ニセコ地域で起業した二人の
オーストラリア人がおりました。今でこそ多くの人が知るものとはなりましたけれども、当時としては珍しい、ラフティングやバンジージャンプなどの
アウトドア体験ができる仕事を始めたのです。
彼らは、地域とも丁寧な話合いをしながら、
ニセコ地域の新しい観光の魅力を発掘する取組を開始しました。私は何度も話をさせていただきました。これが、外国人でにぎわう
ニセコ地域の今の出発点です。
二〇〇一年九月十一日、ニューヨークでテロが発生しました。これがまた、
ニセコ地域の一つの転機になりました。あのテロの直後、世界の旅行の動向が変化したのです。
北米やヨーロッパに行っていた
オーストラリアの方々は、テロへの恐怖から、行き場を失った格好になりました。そこに、この
ニセコ地域に住む二人の
オーストラリア人が目をつけたのです。日本は、テロのおそれが少なく治安もよい、時差も小さい、季節が逆転しており非日常が楽しめる、こんなよい条件がそろっているのだから日本に来ない手はないというのが彼ら二人のもくろみでした。
ところが、当時の
オーストラリアでの日本に対する
イメージは、東京が中心であります。気温が高い、湿度が高い、そんな印象だったと聞いております。その
イメージの転換を、
ニセコ地域に在住の二人の
オーストラリア人が活躍をして
イメージの転換をすることになったわけです。日本には雪の降るニセコという地域がある、その雪質は、北米や欧州に劣らないどころか、もっとよいかもしれない、
アウトドアのフィールドとしての価値も高い。こんなことがきっかけとなって、
ニセコ地域は、
アジア各国だけではなく、
オーストラリアを皮切りにして多くの外国人が来訪するようになったのです。
もちろん、
ニセコ地域には課題も山積しています。しかし、とりあえず、今のところ外国人との共生は比較的うまく進んでいるようです。でも、それはなぜでしょうか。幾つか理由を挙げてみたいと思います。
まず、最初は少ない数の外国人とのかかわりだったこと。さらに、実際に外国人の来訪がふえる前から、町役場でも将来を見据えて、臨時職員として
オーストラリア人など継続採用をしたり、逆に町の職員を
オーストラリアに二年程度派遣をするなどの取組を行っておりました。それと、ニセコを訪れる外国人にも地元に住んでいる皆さんにも、観光を軸にして地域を元気にしたいという共通の目標がありました。更に加えて、二人の
オーストラリア人も地域のコミュニティーになじもうと努力をし、実際になじんでいた、こういうことも理由の一つでしょう。さらに、役場や観光協会なども彼らとのコミュニケーションを大事にしていたこと。こんなことがあって、私は、今の
ニセコ地域、比較的外国人との共生が今の段階ではうまく進んでいるのだと思っています。
一方、日本の各地、
外国人居住比率の高いところでさまざまなトラブルが発生しているのは御承知のとおりです。
ニセコ地域は、この二十年余りをかけて、階段を一段一段上るようにしつつ、現在の状態になっております。このようなケースは全国的にはまれかもしれません。
一方、今回の
入管法改正であります。今回は、永住権の問題は棚上げされているものの、ある一定の規模で、日本の働き手として、ニセコのように自然発生的かつ段階的ではなく、一時的に数多くの外国人を受け入れることを想定しております。だからこそ、極めて丁寧に、丁寧に議論をしなければなりません。そのことを改めて主張させていただきます。
さて、法律には立法事実が必要です。今回の法案では、
人手不足、それが立法事実となるのでしょうか。
私の会社は
人手不足だ、だから
外国人材が必要だ、確かにそうでしょう。とにかく急場をしのぐために
外国人材に来てもらわなければ会社が倒産する、確かにそのような状況もあるでしょう。少子化の中で、
外国人材を導入しなければ経済の維持発展がかなわない、確かにその側面もあるでしょう。
しかし、社会の必要があるからといって、その必要に応えるだけの対応をしている、それだけでは、立法府に属する政治家の役割を果たすことはできません。政治家の政治家たるゆえんは、こうした社会の必要に対して直接応えるだけではなく、その必要を実現したら中長期的にどんな問題が発生するのか、それらの問題を引き起こさないためにはどんな対応が必要なのか、今、足元の国民の声だけではなく、中長期的な日本のあり方も念頭に置きながら対応しなければなりません。
足元の経済の活性化、これは、経済界の皆さんだけではなく、国民の大きな願いだと思います。大企業も中小企業ももうかる、それは極めて大事なことであります。しかし、そのことによって不都合が生ずるとすれば、それへの対応策を考えねばなりません。その対応策は、経済界の皆さんの目指す方向と対立をする場合もあるかもしれません。しかし、こうした作業は政治にしかできないことなのだと思います。
政治には、国民や社会の必要を超えた配慮、想像力が必要です。まさに、今回の
外国人労働の問題には、そうした配慮、想像力が最高に求められる場面ではないでしょうか。それにもかかわらず、今回の法案を短期間で拙速に世に送り出すのは、狂気の沙汰と思わざるを得ません。
葉梨委員長は、警察行政を経験し、法務省でも副大臣を務め、
法務委員長も二度目の就任となります。法務大臣に最もふさわしい、
法務行政に精通した方と私は認識をしております。今回、その
葉梨委員長が拙速に審議を進めようとしているとするならば、大きな警鐘を鳴らさねばなりません。
一方、今回の法案担当の
山下大臣にも言及せねばなりません。
衆議院当選三回で、今回、大臣に抜てきされました。もちろん、法務省の勤務経験もあり、
法務行政に精通された方なのだと思います。しかしながら、この間の国会答弁を聞いておりますと、その資質は大丈夫なのかと不安に思う場面も多々あります。
今回の
外国人材の受入れに関し、
受入れ数の上限規制を設けるべきとの質問に対し、
山下大臣は、この一日の
衆議院予算委員会で、数値として上限を設けることを考えてはいない、断言をいたしました。ところが、この十三日、衆議院本会議で安倍総理は、業種別に明らかにする
受入れ見込み数について、それを上限として運用すると語っております。これは閣内の不一致ではありませんか。
また、来年四月に
改正法案の施行を急ぐ理由を問われた
山下大臣は、施行が半年おくれれば、万単位の方々が帰ってしまい、我が国の経済に深刻な影響を与えると十五日の
参議院法務委員会で発言されました。これは驚きの発言ではないでしょうか。これは、
技能実習制度が、本国に帰国をして貢献する、そういう
技能実習制度を否定する発言ではありませんか。あるいは、
技能実習生を単なる労働力としか見ていない本音を吐露したものなのでしょうか。
入管法担当の
山下大臣の答弁が極めて不安定であり、こうした大臣のもとでの議論は、丁寧に議事録を確認しながら行わなければなりません。その意味でも、本法案の拙速な審議を避けなければなりません。
この法案に対する与党内の審議も難航したのではないでしょうか。それは、この問題が一筋縄では進まない複雑な要素をはらんでいることのあらわれだと思います。
報道からその一端を紹介したいと思います。
法務部会は午後四時半過ぎから始まった。日本には正社員として働きたくても働けない人もいる、順番が違う、外国人の安い労働力を人権の担保なく受け入れるのか。出席議員から慎重論が相次いだ。とりわけ批判が集中したのは、新たな
在留資格、特定二号だ。
入管法改正案は、特に高度な能力があれば、滞在期間を延長し、家族も帯同できる新
在留資格と位置づけている。永住を広く認めることになると見た議員から、本当に移民ではないと言えるのかといった発言が続いた。
午後七時四十分、
山下貴司法相と
森山裕国対委員長が
法務部会に登場した。
国対委員長が部会の
法案審査に出席するのは極めて異例だ。山下法相は、決議案をしっかり省令に盛り込む、よい法律にすると理解を求め、午後八時過ぎ、決議をして了承をとった。
この後、記事は更に続きます。
二十二日から審議が始まった
党法務部会では慎重意見が相次ぎ、徐々に出席者もふえていった。リハーサルのない社会実験になるのではないか、国民が分断されかねない、自民党が
移民受入れを認めたと有権者に思われたら、党の支持者が離れ、参院選に影響するといった意見が続出した。政府の側が二〇一九年四月からの
受入れ拡大を明言していることにも、特段の理由があるのかとの批判もあった。
これが、今回の与党内の審議の困難さ、これを象徴する報道だというふうに思います。今のは日本経済新聞から引用させていただきましたが、ほかの新聞でも同様の報道があったのは、皆さん御承知のとおりであります。
そして、更に言うならば、閣議決定が迫っているにもかかわらず、
山下大臣がこの法律について、よい法律にする、そう発言したのには、私は本当に驚きました。これはどういう意味でしょうか。現時点で内容が何も決まっていない、中がからからのすっからかんである、そのことを大臣みずからが認めた、そうとられかねない発言ではないでしょうか。
今回の法案は、国のあり方を根本から変えかねない大変重要な法案であります。与党内にもいろいろな御意見があったのだろうと推察をします。大変結構なことだと思います。ただし、この議論を終えられた後も、この法案にあくまでも反対だと明言をしている議員までおられました。与党の皆さんの中にも、まだまだ徹底的に議論すべきだという方が実は多いのではないでしょうか。皆さんは、この入管法、このまま官邸、政府の言うとおり通してよいと本気で思っているのでしょうか。
過日、この問題をテーマにした
テレビ番組に、ある与党の議員と一緒に出演をしました。あえて名前は伏せますけれども、
外国人労働問題に精通した議員であります。その方が、この法案は修正が必要だ、それを明言するのであります。これには私も驚きました。その方は正直な方なのだと思います、この法案には問題が多いことを認めているのですから。
こんな状態ですから、本法案の審議は拙速であってはなりません。慎重に、慎重に行わなければならない、そのことを繰り返しお話しさせていただきます。
それでは、法案の問題点について言及したいと思います。
まず、立法事実の確認であります。
今回の法案は、
人手不足を大きな理由として提出されています。
確かに、現在、各地で、あるいは多くの分野で
人手不足の声を聞きます。しかし、そうした声があるからといって、漫然と海外の方にお越しいただくわけにはいきません。
人手不足と判断する明確な根拠がなければなりません。明確な根拠がない中で
外国人材を受け入れてしまいますと、過剰な受入れとなり、日本の労働現場に混乱をもたらすおそれがあります。また、
人手不足を判断する明確な根拠がなければ、人手が充足したとの判断も的確にはできません。
これまでの質疑や政府とのやりとりの中では、この点については明確な答弁はありません。すなわち、立法事実が具体的かつ論理的ではないのであります。これでは
法案審査が難航することは目に見えております。
先日、政府に何度もお願いをして、やっと
受入れ見込み数が提出されました。それにおくれて、その人数算定の根拠も提出されました。この
受入れ見込み数は、立法事実として重要であるばかりではなく、今後の
外国人材受入れの上限ともなる重要な数値であります。したがって、それをどのように算出したのか、その根拠があやふやなものであれば、将来に大きな禍根を残します。
後に時間があれば
個別業種ごとの問題点に言及したいと思いますが、全体に共通する問題として、二点指摘させていただきます。
生産性の向上率の問題であります。今回の人材確保の中に生産性の向上率ということが指摘されておりますが、今回の算定の根拠は、生産性の向上率が業種を問わず年一%で、ほぼ
横並び状態です。本来、生産性のあり方は業種ごとに違っているはずでありますが、この点、もっと精査が必要なのではないでしょうか。
国内人材の確保においても、高齢者や女性、若者など、それぞれが何人かが読み取れない内容です。曖昧な根拠では過大な受入れにつながり、国内雇用に影響を及ぼすおそれがあるのは指摘したとおりでございます。法案議論の出発点となる
人手不足、
受入れ見込みの人数など立法事実が曖昧であり、これらの点を明らかにする意味でも、慎重な審議が必要になっています。
次に、二つの新聞記事を紹介いたします。
政府は単純労働を含む
外国人労働者の受入れを拡大する出入国管理法改正案を閣議決定した、これは日本経済新聞の十一月二日のネット記事であります。単純労働を含む
外国人労働者の受入れを拡大すると記事には書いております。
もう一つの記事です。
政府は、二日午前、出入国管理法改正案を閣議決定した、日本経済の成長の阻害要因になっている
人手不足に対応する狙い、単純労働分野での就労を認め、大学教授や弁護士など高度な専門人材に限っていた従来の受入れ政策から大きく転換する、これは産経新聞十一月二日の、同じくこれもネット記事であります。
いずれの記事も単純労働に言及しています。ところが、先日発表された
受入れ見込み数に関して政府の参考人は何と発言をしたか。
受入れ見込み数には単純労働者は入っていない、こう説明をしています。一体この違い、そごはどこから来るのでしょうか。
政府は、これまで単純労働について、例えばと留保をつけた上で、特段の技術、技能、知識又は経験を必要としない労働というだけで、具体的にどんな仕事を示すのかを明らかにしておりません。
法務省からのヒアリングの中で、私が、特段の技術、技能、知識又は経験を必要としない労働とは具体的に何を指すのかと尋ねたところ、こんな答えが返ってきました。土を右から左に移すようなものとの答弁でありました。今、ええっという驚きの声が上がりましたけれども、私も、この発言を聞いて、跳び上がるほど驚きました。そこで、私から、土を右から左に移すだけの仕事、そういう仕事というのは世の中に存在するのか具体的に明示してほしい、お願いをいたしましたところ、法務省の職員は答弁に窮してしまったわけであります。
すなわち、単純労働という言葉は使っていますけれども、その具体的な内容も定義をせずに使っている、これが実態ではないでしょうか。安倍総理も、十二日の衆議院本会議で単純労働者の受入れは十分慎重に対応することが不可欠と述べるだけで、単純労働者とは具体的にどんな仕事なのかについて明言を避けています。単純労働の定義も具体例も明確にできていないのに、
受入れ見込み数には単純労働者は入っていないと明言するのは、詭弁に近い発言ではないですか。
単純労働とは何かを明らかにすることがないままだと、幾ら法案の議論をしても無意味なものになってしまいます。この点が曖昧なままでは
法案審査が進みません。その意味からも、極めて慎重な審議が必要になっています。
安倍総理は、いわゆる移民政策はとらないと繰り返し述べています。その一方で、移民の定義に関しては、一概には答えられないとも答弁しています。これではまるで、独裁者とは何かはわからないけれども私は独裁者ではない、こう言っているようなものであります。法案を提出した内閣の長である総理がこんな矛盾に満ちた発言をしていることは、大問題ではないでしょうか。
また、安倍総理は、移民政策に関し、国民の人口に比して、一定程度の規模の外国人やその家族を、期限を設けることなく受け入れ、国家を維持していこうとする政策、その政策は考えていないと答弁しております。これが安倍総理の移民の定義なのかははっきりしませんが、いずれにしても、総理はこんなことを言っているわけです。
だけれども、皆さん、冷静に考えてみてください。今回、五年間で三十四万人の外国人を受け入れると政府は言っておりますが、これは、国民の人口に比して一定程度の規模の外国人には該当しないのでしょうか。あるいは、特定技能二号であります。これは家族の帯同を認めます。しかも、期限の定めのない
在留資格であります。この特定技能二号は、総理の言うところの、外国人やその家族を期限を設けることなく受け入れることではないのでしょうか。あるいは、
人手不足分野へ技能を有する外国人を受け入れることは、
外国人労働力で国家を維持することではないのでしょうか。
冷静に考えてみますと、総理が導入しないと公言している政策は、今まさに閣法で実施しようとしている政策なのではないですか。
我が国には、一九八二年に廃止されるまで、移民保護法という法律がありました。この法律における移民の定義は、労働に従事するの目的をもって海外に渡航する者、これが移民の定義でありました。労働に従事するの目的をもって海外に渡航する者、これが移民の定義であります。労働目的で海外に渡航する日本人は移民であり、労働目的で日本に来る外国人は移民ではない、こんな論が成り立つんでしょうか。
この移民の問題に関しては、さまざま、疑問がたくさんあります。この点も確実に審議をしなければならない、そう思っております。
さらに、医療保険、年金、労働保険などの社会保険の適用はどうなるのでしょうか。今回はこれらに関連する法案が提出されておりません。そうなりますと、現在の
技能実習生と同様に、特定技能一号、二号の皆さんも、日本人と同様の条件のもとで社会保険が適用されることになります。政府は、これでよいと考えているのでしょうか。その点も極めて曖昧であります。これでは審議にはなりません。
さらに、全国各地の外国人にまつわる課題、例えば、日本語教育、子供たちの教育、ごみの排出方法、地域の町会などコミュニティーの問題、近隣同士でのトラブルなど、こうしたことは全て自治体の現場での対応となっています。その経費の多くは自治体の負担であります。
しかし、今後、本格的に
外国人労働者の皆さんが入国されるようになっても、こうした問題を自治体任せでよいのでしょうか。私は、国と自治体との責任や経費の分担も必要になってくると考えていますが、現在はこれらのことについて何も決まっていません。このままでは自治体の混乱は増すばかりであります。
新設される特定技能一号、二号と永住権の関係も不明確です。
現行の技能実習を五年で修了し、特定技能一号に移行し、最大働けば、十年となります。永住権に関する政府のガイドラインによれば、原則として引き続き十年以上日本に在留していること、ただし、この期間のうち就労資格又は居住資格をもって引き続き五年以上在留との条件を満たせば、永住権取得の要件を満たすことになります。そこで問題になるのは、特定技能が就労資格なのかどうかでありますけれども、この点について、法務省は、現在検討中、これを繰り返すのみであります。
永住権を取得できるのかどうかは、移民問題とも関連して、極めて大きな関心事であります。
今、委員会でやれ、委員会でやれという声が飛んでいるようでありますけれども、こうした基本的な事項は、法案が閣議決定される段階には、政府の考え方としてしっかり定まっていなければならない。与党の中でも大きな議論になった、移民であるかどうかを判断する基本的な要素、どうだったら永住権が与えられるのか、そのことすら決めないで法案を出していることの方が大問題なのです。
私は、今回のこの葉梨
委員長解任決議趣旨弁明の中で、いたずらにこの
趣旨弁明の時間を延ばそうなどとは思っておりません。この法案のどこに問題点があって、なぜ慎重審議が必要なのか、そのことを説明しているのみであります。特に、今回の法案で問題になるのは、法案の根幹になる基礎的事項が何も定まっていない、だから大問題なんですよ。そんな法案を国会に出して、数日の審議でお茶を濁そうなんというのは、日本の将来に大きな禍根を残す。
さて、落ちついて、この法案の問題を更に指摘をしていきたいと思います。
技能実習の移行対象職種、現在、七十七職種百三十九作業ありますけれども、これがどのような形で特定技能に移行できるのかも明らかではありません。技能実習のどの作業が特定技能にどのような形で継続できるのか、これがわからなければ、真の意味での
人手不足や受入れ予定人数がわからないはずであります。これは、先日、法務委員会で我が党の山尾委員も指摘したとおりであります。
この点からも、政府の受入れ予定数の把握は根拠に乏しいと言えます。こうした点からも、法案に対する結論は拙速に出すことはできないのであります。
次に、今回の法案の改正目的、それによって目的規定が次のように変わります。外国人の在留の公正な管理を図るというふうに目的規定が改正されます。ここには、共生や支援の概念は含まれておりません。
私は、外国人の国内への広い意味での移り住みは、入国管理政策だけで対応できるものだとは思っておりません。古い言葉で言えば統合政策、最近では多文化共生政策と呼ばれるようでありますけれども、入国管理政策と多文化共生政策が車の両輪のようにセットになって、初めて外国人の国内への移り住みに対する適切な政策の実現が可能になると思います。
ところが、今回の法案では、その片方である入国管理政策しか明記がありません。これでは、外国人の管理だけが目的の法案になってしまいます。こんな状態で、本当に外国の皆さんから日本で働きたいと思っていただけるのでしょうか。
このように、政府の外国人受入れに関する基本姿勢が、法案上、入国管理だけに力点を置いた中途半端なものになっています。多文化共生といった側面からも、十分な対応が必要であります。その意味からも、相当な議論、審議が必要であります。
先ほど来、与党席から、委員会でやれ、委員会でやれとのやじが飛んでおります。私も、委員会でがっちり審議をすべきだと思っております。
しかし、なぜ今ここで
委員長解任決議を出さざるを得ないのか。それは、
葉梨委員長が拙速に審議を進めようとしている、そして、与党のさまざまなところから、この法案は早期に仕上げる、そういう話が聞こえてくるから、私は、この法案の問題点、議論しなければならない論点を提出して、こういうところに十分な議論が要るんだ、その説明を単にしているだけであります。
技能実習三年修了者は、今回、無試験で特定技能一号に移行できるとのことであります。つまり、技能実習三年修了者は、特定技能一号に必要な日本語能力を満たしているものとみなされるわけでございます。
しかし、現在の
技能実習制度では、雇用主に日本語教育に関する支援を義務づけておりません。そのために、
技能実習生の中には日本語能力が十分ではない者がいる可能性はあります。こうした者を放置する、そのままにして無試験とすることで本当によいのでしょうか。
海外から来られる皆さんへの日本語教育の機会の充実は、極めて大事なポイントであります。ドイツでは、過去の移民政策への反省から、現在、六百時間のドイツ語教育を実施しているとの情報もあります。こうした点もしっかり審議しなければなりません。一日や二日の審議では全く不十分なのです。
今回の
在留資格の拡大は、現行の
技能実習制度を前提として、新たな
在留資格である特定技能に無試験で継続させるもの、そういう制度であります。その意味では、現行の
技能実習制度の五年間の単純延長とも言える制度改正であります。そうなれば、当然、現行の
技能実習制度に問題、課題がないかを十分に検証した上でなければ、新たな制度を継ぎ足すことはできません。ここが、今回、法案審議の極めて大切な点の一つであります。
本年一月からの半年で、技能実習元から正規の手続を経ないで去った方が四千名を超えるとのことです。平成二十九年も、七千名の実習生が正規の手続をせずに実習元を去っています。政府はこれら実習生を失踪者と呼んでいるようですが、なぜ実習元を去ったのか、その実態が明らかではありません。
その手がかりとなるのが、政府が言う失踪者に対する聞き取り調査であります。
二十九年は約二千八百名から聞き取りをしたと承知をしています。この調査は、衆参両院の決議に基づく調査です。しかし、政府は、実習生の実態を明らかにする手がかりとなる調査、その個票を開示しようとはしませんでした。法務委員会理事会での強い、粘りのある交渉の結果、プライバシーに関する部分を伏せて、昨日、やっと公開されました。
しかし、その公開のあり方は余りにも理不尽であります。
閲覧をできるのは原則理事のみで、コピーはできません。そのため、私たちは、原票一枚一枚を手書きで書き写す作業を強いられております。
昨日、私もその作業に携わりましたが、一時間に二十枚を書き写すのがやっとの状態であります。これをもし仮に一人で行えば、百四十三時間半もかかってしまいます。百四十三時間半、飲まず、食わず、寝ずにやって六日以上もかかる、これが今政府が我々に強いている個票の公開状況であります。仮に野党が協力して四人で作業を行っても、個票全てを書き写すのに約三十六時間もかかります。
国会の決議で行った調査結果を把握するために、なぜこんなに理不尽な作業を私たちは強いられるのでしょうか。これも、政府・与党が私たちに審議をさせないとする
審議拒否なのではないでしょうか。
さらに、総理も
山下大臣も、この調査個票は、刑事訴追のおそれがあるとの理由で、公表を拒んでおりました。ところが、個票を見ると、刑事訴追とは無縁の内容なのです。総理や
山下大臣は、国会での虚偽答弁をしてしまったのでしょうか。この点もはっきりさせてもらわねばなりません。
さらに、この点に関して、政府に強く求めたいと思います。技能実習の実態解明の手がかりになる個票については、閲覧ではなく、コピーによって公開することを強く求めます。さらに、総理と
山下大臣の虚偽まがいの答弁、この答弁の撤回も強く求めます。
現在やじを飛ばしている方は、私がなぜ、この葉梨法務
委員長解任決議、これを言わなければならないのか、これで多分、私、四度目ぐらいの説明になると思いますけれども、まだおわかりになっていないようであります。
どういう重要な問題が含まれているのか、慎重な審議が必要なものである。それを、拙速にこの法案を通すことがあってはならない。だがしかし、政府・与党からは、短期間のうちにこの法案を通すという話が聞こえてくる。事実、先日も政府が公表したデータに誤りがあった、にもかかわらず、法務委員会を強行しようとしている。それは断じてならない。そのことを明らかにするために、私はここで発言をしているのであります。
先ほど、きょうの午前中でしょうか、
山下大臣が記者会見をしておられました。今回のこのデータ集計の誤りについて、極めて軽率な、けしからぬことだ、あってはならないことで、心からおわびしたいと謝罪をしました。この謝罪がもし本当であるならば、委員会の場でしっかりと、具体的な数字を出して、個票も公開して審議をする、これが当然のことだと思います。
それと、この記者会見で、
山下大臣はこうも言っておられます。今回の法案について、
技能実習制度とは全く異なるものだ、こう言っているわけです。全く異なるものだ、政府はそういう説明もしているようでありますけれども、一方、十八日のNHKの「日曜討論」、自民党の田村憲久政調会長代理は、技能実習をきちんとした雇用に置きかえていくのが特定技能だと述べているわけです。一体これはどっちが本当なんでしょうか。
このことについて、きょうの朝日新聞の社説はこう書いております。「はじめて聞く話だ。政府はこれまで、二つの制度は別のもので、技能実習は存続させると説明してきたはずだ。党の政策調整の要の地位にある人物と政府の言い分が食い違う。法案の目的さえ共有できていないことを示す事実ではないか。」。
さて、慎重に審議をしなければならない理由、これをもう少し申し上げさせていただきます。
それは、これまで政府が公開していた
技能実習生への調査結果が全くのでたらめだったということであります。コピー・アンド・ペーストの間違いなどと法務省はつまらない言いわけをしていますが、あの数々の数字の間違いはそんな軽い話なのでしょうか。
代表的な例を挙げれば、失踪した
技能実習生の失踪理由の項目であります。
調査票には、低賃金であること、低賃金でしかも最低賃金以下であること、低賃金でしかも契約賃金以下であることと、この三つに分けて回答できるようになっています。ところが、政府の発表の資料では、これらの三つの理由をまとめて、全て、より高い賃金を求めてと勝手に解釈をしているわけであります。これでは、なぜ
技能実習生が失踪しなければならなかったのか、その理由がわからない。本当の理由を覆い隠すためにこんな丸め方をしたのではないか。悪意すら感じる蛮行と言わざるを得ません。
これは、調査結果の捏造、改ざんの類いの話であり、言語道断であります。法案審議の前提がもはや崩壊しかねない重大な事態であります。法務省が出す資料、データに信用が置けない事態であります。どこでどんな隠蔽や捏造、改ざんが行われているのか、わかったものではありません。
皆さん、同じようなことが前の通常国会でもございませんでしたか。あの裁量労働制のデータの改ざんであります。野党側が発見、厳しく指摘したデータの改ざんを、結局、総理も厚生労働大臣も認めざるを得なくなり、法案の修正にまで追い込まれたことは記憶に新しいところであります。
あのていたらくを政府はまた繰り返そうというのでしょうか。正直言って、残念でなりません。内容やバックデータがずさんなまま、ぬけぬけと法案を出してくる、今の安倍政権の姿勢には改めて強い警告を発しておきたいと思います。
入管法改正案、まだ国会での審議は始まったばかりですが、はっきり申し上げて、中身はすかすか、根拠となるデータも全くもってむちゃくちゃであります。現場の声を聞こうとしない官邸、政府の暴走の結果なのかは知りませんけれども、こんな論外の法案をただただ通すだけの国会であってはなりません。
議場の皆さんに申し上げます。
国権の最高機関である立法府は、官邸、政府の言うことを唯々諾々と聞くことではありません。出された法案を、言われた日程のとおりに、ただただベルトコンベヤーのように右から左へと通すことではありません。当たり前の話でありますけれども、私も皆さんも国民の信託を受けて当選した
国会議員であります。政府にできの悪い法案を押しつけられる筋合いはありません。日程を言われる筋合いもありません。政府の言いなりになる必要もありません。
私から言わせれば、この
入管法改正法案、国民に対する思いもなければ、
外国人労働者という重い課題への深い洞察のかけらも感じられません。
技能実習生の皆さんの苦しみも見えない、すかすかで、できの悪い粗悪品としか言いようのない代物であります。官邸と法務省にのしをつけてお返ししたい代物であります。顔を洗って出直してこい、そういう類いの法案だと思います。
さらなる検討が必要です。国民の皆さんに関心を持っていただき、十分な時間をとっての議論が必要です。さっさと国会を通すようなことが断じてあってはなりません。
それにもかかわらず、とにかく強引に
法案審査を進めるかのような
葉梨委員長の姿勢は、決して許されるものではありません。立法府に身を置く者としての矜持が少しでもあれば、政府に対して、もっときちんと説明しろ、ちゃんと正確な資料を出せ、それがなければ絶対に質疑に入らない、そう厳しく物申すのが
法務委員長たる者の責務ではありませんか。
通常国会終了後、七月末に、
大島理森衆議院議長が所感を発表されました。この議場内であの所感を熟読していない方はよもやおられないとは思います。私たちは、この所感をいま一度熟読し、この
入管法改正案なるできの悪い代物をどう取り扱うか、再考すべきであります。
所感にはこうあります。
憲法上、国会は、国権の最高機関であり、国の唯一の立法機関として、法律による行政の根拠である法律を制定するとともに、行政執行全般を監視する責務と権限を有しています。これらの権限を適切に行使し、国民の負託に応えるためには、行政から正しい情報が適時適切に提供されることが大前提となっていることは論をまちません。これは、議院内閣制のもとの立法、行政の基本的な信任関係ともいうべき事項であります。しかるに、財務省の森友問題をめぐる決裁文書の改ざん問題や、厚生労働省による裁量労働制に関する不適切なデータの提示、防衛省の陸上自衛隊の海外派遣部隊の日報に関するずさんな文書管理などの一連の事件は全て、法律の制定や行政監視における立法府の判断を誤らせるおそれがあるものであり、立法府、行政府相互の緊張関係の上に成り立っている議院内閣制の基本的な前提を揺るがすものであると考えねばなりません。
所感はこうつづっておるわけでありますけれども、皆さん、おわかりだと思いますが、官邸、政府はまたしても法律の制定や行政監視における立法府の判断を誤らせようとしており、今この事態は、まさに立法府、行政府相互の緊張関係の上に成り立っている議院内閣制の基本的な前提を揺るがしているものではありませんか。
私は、特に、これから述べる部分も重要だと思っております。
大島議長が政府に対して、個々の関係者に係る一過性の問題として済まされるのではなく、深刻に受けとめていただきたいと強く警告をされております。それにもかかわらず、官邸、政府は、馬耳東風、馬の耳に念仏、のれんに腕押し、またしても立法府を冒涜していると言わざるを得ないのです。
これは、与党、野党対立の問題ではありません。
葉梨委員長は、政府に対して厳しく物を言う先頭に立つべき立場なのです。法案審議の日程を勝手に決めるなど論外であり、
葉梨委員長がまず戦うべき相手は官邸、政府であります。それにもかかわらず、誰に対して何をそんたくしているのか、全く理解に苦しむ委員会運営であります。
また、私の尊敬する自民党森山
国対委員長のことにも言及せねばなりません。
森山
国対委員長は、今回の
解任決議案提出後の記者会見において、いわゆるぶら下がりと言われるものにおいて、次のように述べておられます。
葉梨委員長の議事運営は何一つ瑕疵はない、解任決議を出されたのは極めて遺憾なことだと考えている、こう述べているのですが、森山委員長は、きょうの私のこれまでの話を聞いて、この認識をぜひ改めるべきだと思います。
次に、森山委員長は、記者から審議の見通しを問われると、これまた驚愕の発言をしました。委員長の解任が否決されたらいわゆるスーパー委員長になられるから、あとは、委員長が祭日だろうと土曜日だろうと日曜日だろうと委員会を開く権限があるので、委員長の判断でお決めいただく、こんな発言をされたのであります。
これは、国権の最高機関の運営を与党として仕切る責任者の発言でしょうか。私は、この発言を聞き、あいた口が塞がりませんでした。
皆さん、いま一度考えていただきたいのであります。
外国人受入れの問題は、制度や仕組みが整えばよいというものではありません。外国人を受け入れる側の日本の国民の皆様の認識、心構えが大変重要であります。
例えば、仮に
外国人労働者のことを単なる賃金の安い働き手であるとの認識が国民の中に蔓延している状況の中では、どんなによい制度、仕組みをつくっても、外国人の方に来ていただいたところで、よい結果が出るものではありません。
国会で法案を審議し、与党と野党が切磋琢磨してよい法律とすると同時に、この法案審議を通して、国民の皆様に、今回の
在留資格の拡大がどういう意味を持つものであるのかを確実に認識していただき、外国の方々を迎え入れる心構えを醸成していただくことが必要であります。短期間に審議の日程を消化すればこの気持ちが醸成されるなどというものではありません。
ある一定の期間をかけて、丁寧に国民の皆様に説明をして御理解を得るプロセス、これが大変重要なことだと私は思います。そうしなければ、将来に大きな禍根を残します。
その意味でいうならば、来年四月に、この法案を可決、成立させて実行したいと思うのであるならば、もっと早い時期にこの法案を出していれば、審議の時間は十分あったのだと思います。
そして、今回の法案は、先ほど来るる述べましたとおり、決まっていないことが多過ぎます。それらは法案審議の中で示されるものというふうに思いますけれども、そうなりますと、これは一々議事録の確認が必要になります。当然、大臣が発言をする、政府参考人が発言をする、その内容がどのようなものであったのか、議事録を確認した上でまた次の審議に進むというプロセスが、これほど重要事項が決まっていない法案では審議の必須のこととなるというふうに思われます。すなわち、一つの議論をやったら間を置いて次の議論に入る、このプロセスが必須なのではないでしょうか。
大変僣越ながら、森山委員長には、委員長が祭日だろうが土曜日だろうが日曜だろうと委員会を開く権限があるので、委員長の判断でお決めいただくとの発言は撤回されるべきだと思います。また、スーパー委員長との発言も慎まれた方がよいのではないかと思います。尊敬する森山委員長には、大変僣越とは思いますけれども、付言をさせていただきます。
改めて、政府・与党の皆さんにお願いいたします。審議の条件を整えてください。
移民、単純労働、
人手不足、これらの用語の定義など、早急に明らかにしてください。そうしなければ、どんなに審議を行っても、根拠、論拠のない議論になってしまいます。
それから、二つ目。永住権と特定技能の関係、技能実習と特定技能一号対象職種の整理、特定技能への社会保険適用の考え方の整理など、重要事項に対する政府の考え方、これが決まっておりません。これでは法案是非の議論が極めて難しいものになります。これらに対する政府の考え方をぜひ明らかにしてください。
次は、与党の皆さんへのお願いであります。
今回の法案は、法務省だけではなく、外務省、厚生労働省、文部科学省、農林水産省、経済産業省、総務省など、たくさんの省庁に関係し、かつ日本の将来に大きな影響を及ぼすものです。この点からすれば、特別委員会を設置して審議をすべきものと思います。しかし、それがかなわないというならば、せめて連合審査を多用する、これが絶対の条件であろうと思います。
私が先ほど述べたように、非常に多岐にわたる省庁が関与しております。したがって、この連合審査も、一回でお茶を濁すなどということではなく、国会をまたいで繰り返しやるぐらいの覚悟を持っていただきたい、そのお願いをさせていただきます。
加えまして、学者、専門家、
技能実習生当事者、
技能実習生受入れ団体や監理団体などからも、参考人として十分に話を聞く必要があります。
さらに、技能実習の現場や現場の
外国人労働者の実態、その現状を視察する必要もあります。
これら多角的な面から議論を尽くしつつ、国民の理解が得られるようにすることが大切であります。与党の皆さんには、国会が国権の最高機関としての役割を確実に果たすことができるよう、こうした点への配慮をお願いしたいと思います。
きょう、ここで一時間二十分ほどにわたって葉梨法務
委員長解任決議提案理由の説明をさせていただきました。
私は、きょうここで、与党の皆さんからのやじを聞いていて、本当に悲しい思いがいたします。あなたはニセコの自慢をしているだけではないか、そういうやじが聞こえてまいりました。
そうではありません。たまたまニセコという地域が、この二十年余りかけて、外国人との共生がまあまあ今の時点ではうまくいっている、その事例を紹介させていただいたわけであります。一方で、そうではない地域というものがある。したがって、この法案の審議というものは拙速にやってはならないんだ、そういうことを繰り返し説明をさせていただく、その材料として話をさせていただいたわけであります。
そして、私たちは委員会でしっかり審議をしたい、その気持ちには全く変わりありません。ただ、我々が困るのは何か。委員会の審議を簡単に三回や四回で打ち切る、こういうことになってしまっては審議が尽くせない。審議入り口の段階でそのことに対してしっかりとした認識を持ってもらわねばならない、その思いで私は、この一時間二十分、話をさせていただいたわけであります。
以上、葉梨法務
委員長解任決議案を提出した理由について、さまざま申し上げさせていただきました。
繰り返します。この法案は、ある程度の期間をかけて、慎重かつ多角的な審議が必要なものであります。それにもかかわらず拙速に審議を進めようとする
葉梨委員長の責任は重大であります。法務委員会に立法府としての矜持を取り戻し、できの悪い
入管法改正案は政府に突き返し、
法務行政に関する充実した質疑を行うために、葉梨君には
法務委員長の座を退いていただくしかありません。
以上、議員各位の賛同をお願いし、
趣旨弁明といたします。
御清聴ありがとうございました。(拍手)
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