○矢田わか子君
国民民主党・新緑風会の矢田わか子です。
会派を代表し、
特定複合観光施設区域整備法案に関して
質問をします。
まず
最初に、台風七号と前線による豪雨で
全国各地で河川が氾濫するなど大きな被害が出ておりますが、被害に遭われている
皆様に心よりお見舞いを申し上げたいと思います。
まず、
質問に入る前に、昨日、
ギャンブル依存症対策に関する二つの
議員提出
法案が
内閣委員会において
審議されているそのさなかに、本
法案の本
会議での
審議入りが議院
運営委員会で強行的に決められました。
この
IR整備法案の
審議入りは、
ギャンブル依存症対策に関する
法案の成立を前提とすることは与野党共通の認識であったはずです。なぜそれほどまでに急がなければならないのか。
内閣委員会を軽視した今回の対応について遺憾の意を表したいと思います。
さて、
法案への
質問に入りますが、本
法案による
カジノ解禁につきましては、数々の世論調査でも明らかになっているように、依然として
国民の十分な理解が得られていないということをまず指摘しておきたいと思います。
その理由の
一つは、
カジノに対する不安です。
カジノと聞くと、多くの
国民は、過去、芸能人や有名人、政治家や
経営者が
海外で億単位の負けをしたという報道を連想するのではないでしょうか。
パチンコや競馬などと比べ、
カジノは比較的短時間に勝負の結果が出る賭博です。一回に何十万円、何百万円も賭けることができます。アメリカの
カジノリゾートでは、一日で約一億数千万円を超える
売上げを上げ、毎分一千万円を超える金銭のやり取りが行われていると言われます。スロットマシン、ルーレット、カードゲームのバカラ、ポーカー、ブラックジャックなど、
カジノでの主なゲームはいずれも射幸心をあおるものです。
法案では様々な
規制が列挙されていますが、大負けによって悲惨な
状況に陥る人が出てくることは否めません。
IR推進法が成立して一年半がたちましたが、結局は、
国民の不安を解消するには至っていない
状況です。
この
状況の下で
政府は本
法案を国会に提出されたわけですが、
国民に対して本当に説明責任を果たしてこられたのかどうか、
総理大臣の御見解を伺います。
次に、
カジノ解禁に係る刑法の賭博罪の違法性阻却について伺います。
この
課題は、一昨年、
IR推進法の
審議過程でも
審議されました。ここでは、違法性阻却に関し、一、
目的の公益性、二、
運営主体の性格、三、
収益の扱い、四、射幸性の程度、五、
運営主体の
廉潔性、六、
運営主体の公的管理監督、七、
運営主体の財政的健全性、八、副次的
弊害の
防止の八点にわたる考慮要素の
検討が衆参それぞれの
内閣委員会の
附帯決議で確認されました。
しかし、この
検討が刑法学者などを含め専門家の間で十分に行われ、納得のいく結論が出されたのかどうか、大変疑問が残るところです。そのためでしょうか、
法案第三十九条において、
認定設置運営事業者が
カジノ管理委員会の
免許を受けたときは、
カジノ行為区画で行う当該
カジノ行為については刑法第百八十五条及び第百八十六条の
規定は適用しない、つまり賭博罪は適用しないんだとわざわざ違法性阻却を法文上明示されています。
違法性阻却に関する八項目について納得性を持った
検討がなされたのであれば、この第三十九条は必要ないんです。この点について、
石井担当大臣より明快な説明をしていただきたいと思います。
次に、
カジノは一体誰を対象としているのかという点について
質問します。
前回の
IR推進法案の
審議では、
カジノは
海外からの
観光客を対象にした
施設、つまり国際
観光産業として位置付けられたものでした。
議員立法を主導した超党派
議員連盟も、その名称は国際
観光産業
推進議員連盟でした。しかし、いつの間にか、
カジノは
日本人を主な対象とする遊興
施設という性格が強まってきたように見えます。
既に、
日本ではパチンコや公営
ギャンブルにはまって抜け出せない
依存症の人が大勢います。昨日、
議員立法による
ギャンブル等依存症対策基本法が
内閣委員会で可決され、ようやく
ギャンブル依存症対策が本格化しようとしているときに、非常に射幸性が高く、勝ち負けの
規模が違う、全く違う
カジノが解禁されれば、
ギャンブル依存症患者はますます増え、さらに、家庭崩壊など様々な社会問題が噴出してくることになります。現在、
ギャンブル依存症の
家族を抱えている方々、そして支援団体の方々、大変心配だという
懸念の声が多く上がっております。当初の
外国からの富裕層
観光客を対象とした
カジノ構想が変質し、どうも
海外の
カジノ資本が
日本人を対象に事業を展開し、一もうけしたいという思惑が読み取れるのではないでしょうか。
なぜ
日本人をターゲットとした
カジノに性格が変わってきたのか、そして
入場制限という
対策だけで本当に
日本人の
ギャンブル依存症が
防止できるのか、石井大臣より説明をお願いします。
次に、
IRが
観光資源として、また
我が国の国際化
対策に資するものとなるのかどうか、
質問します。
今日、
我が国においては、大型のレジャー
施設やテーマパーク、そして
国際展示場が
運営されており、東京ディズニーランドも大阪のユニバーサル・スタジオも東京のビッグサイトも大きな
収益を上げています。そこで、なぜMICEと言われる
ビジネスイベントを受け入れる
施設やレジャー
施設が
カジノを併設し、その
収益でもって
運営されなければならないのか、納得できません。
今国会では、民間資金等の活用による公共
施設等の
整備等の促進に関する
法律、いわゆるPFI法の一部改正法が成立しましたが、元々この
法律は、水道事業とともに空港やMICE
施設におけるコンセッションを促進しようとするものです。MICE
施設が赤字になるのでコンセッションを
導入するという組立てではなかったと思います。
政府は、本
法案に、総合的な
リゾート施設を
整備することによって、
観光や
地域振興、
雇用創出といった
経済効果のみならず、こういう新しい
国際会議や展示
ビジネスを展開して新しい
ビジネスの
起爆剤になることを狙うこと、また
日本の
伝統、
文化、
芸術を生かしたコンテンツを更にブラッシュアップして発信することと、まるでバラ色の
世界を想定されていますが、
カジノを併設する
IRがそれを
実現する手段と果たしてなるのでしょうか。
海外からの
観光客は、
日本のどのような
魅力を求めて来訪されるのでしょう。
日本の
伝統や
地域に残された歴史的
文化や自然、あるいは豊かな食
文化にその
魅力を感じて来訪されるのではないでしょうか。
カジノを
目的に
日本に来る
外国人、一体どれほどいるというのでしょう。
訪日
観光客のアンケートでも、
日本にも
カジノがあるから行ってみたいという
観光客はごく少数です。国際
観光政策として
IRや
カジノを位置付ける構想には大いなる勘違いがあると思いますが、
総理大臣はこのことについてどのように考えられていますか、見解を
お答えください。
次に、
IRの
経済効果について
質問します。
確かに、
IRは、初期
投資と
施設の
運営において一定の
経済効果や
雇用効果を生み出すのかもしれません。しかし、
施設全体が継続的にイベントを開催し、
集客力を維持していけるかどうかは、安易には予測はできません。一過性の
経済効果だけで終わる可能性も十分にあります。
かつて、
我が国においては、リゾート法による大
規模開発の失敗事例やテーマパークの失敗事例、数多くありました。経済動向や
利用者の嗜好の変化が需要に大きく
影響を与えます。とりわけ、
カジノについては、
アジアにおいても国際的な
競争が激化しており、また
外国の富裕層の動向などは予測できない面もあります。
入場者数を含めた
IRの需要の見通しに読み違いが出てくる可能性は十分にあると思います。
確かに、
シンガポールでは、二つの
IR施設の開発で約一兆円の民間
投資が
実現、
IR開業後四年で国全体の
観光客や
観光収入が共に
増加したとの
報告がされておりますが、この
シンガポールでの成功事例がそのまま
日本において
実現する判断は甘過ぎます。
もし
経営が困難になれば、
地域経済にも大きなマイナスの
影響を与えます。
IRの
施設建設に膨大な
投資が行われるわけですが、これを回収できるのかどうか、
区域整備計画の
認定段階で的確に判断できるとは思われません。
あわせて、仮に利益が上がったとしても、多くは参入してくることが予測される外資系の
IR事業者へ渡り、国内資金が国外へ流出する
懸念もあるのです。
IRの
経済効果と
経営の見通し、あわせて、
経営難に陥ったときの対応について、石井大臣より説明をお願いいたします。
次に、
法案に示された様々な
規制の在り方について
質問します。
衆議院での
審議において、多くの疑問点、不明点が明らかになりましたが、時間の関係で以下四点に絞って
質問しますので、石井大臣より見解をお願いします。
一点目は、
カジノ施設の
規模の
上限設定の問題です。
当初は、ゲーミング
区域の面積
規制を
シンガポールに倣って一万五千平方メートルか
IR施設全体の三%のいずれか小さい数値を
上限とする案でしたが、最終的には三%以内の比率
規制のみになりました。しかも、この三%の対象はゲームエリアのみであり、
政府の説明では、
カジノの
行為区域から、主要な通路や階段、エレベーター、トイレ、受付・案内所、飲食のスペース、演奏のスペースなどは除外するとしています。したがって、三%の
規制の対象は、テーブルや椅子、機器などが置かれている極めて限られた僅かなスペースだけだということになります。
この
規制では、通路や飲食スペース、受付などを大
規模に取れば、
IRの中で非常に大きな
カジノ面積を占めるということも可能になるわけです。このような三%
規制が本当に妥当なものなのかどうか、伺いたいと思います。
二点目は、
カジノ事業者が客に対して
貸付業務が行えるということの問題です。
富裕層向けとして、一定のデポジットがあれば無
制限に貸金ができることになるようですが、これでは大きな問題を引き起こすのではないでしょうか。
我が国においては、諸
外国のように、
カジノ施設内で顧客に貸付け、回収などの業務を行うジャンケットを認めないという方針ですが、実質的には
貸付業務が行われることになりますし、
IRの
施設の中、ホテルや
会議場内に銀行ATMも
設置されるのではないかという情報もあります。借金をしてまで賭ける
行為を助長するような
措置が本当に必要なのかどうか、説明をお願いします。
三点目は、
入場制限の問題です。
安倍
総理大臣、これまで、
世界一の
入場制限措置をとると強調されてきましたが、実際は、
入場料は
シンガポールより安くなっています。また、韓国では、韓国人が
入場できる江原ランドは、
地元住民は月一回という特別な
入場制限を設けていますが、今回はこういった
措置ありません。なぜ
日本では地元の人たちの
入場規制を設けなかったのでしょう。また、
暴力団員は
入場禁止となっていますが、この
入場制限措置はどのような方法をもって担保されるのか、説明をしてください。
四点目は、
マネーロンダリング対策です。
例えば、
犯罪で得た資金や脱税など不正資金の
マネーロンダリング、
カジノを利用して行われることが
懸念されています。アメリカでは、
カジノにおける
マネーロンダリング対策が一段と強化されていますが、
日本においてどのような方策を取られるのか。これは一昨年前の
IR推進法で
参議院だけが付けた
附帯決議でも指摘した
課題ですので、しっかりと説明をお願いしたいと思います。
最後に、オンライン
カジノの
規制について
質問します。
実は、
カジノ施設における
カジノの
運営規制も重要ですが、表に出ない深刻な
カジノ問題、オンライン
カジノの問題があります。
日本の多くの若者がこれにのめり込まないよう、膨大な被害を被らないよう、是非とも
規制を強化していただきたい。最近では、賭け金、当せん金が仮想通貨が使われ、ますます実態が見えなくなっているようです。
政府としても、
カジノへの
規制を強化するのであれば、併せてオンライン
カジノについても不正なものは摘発する努力をされるべきだと考えます。国家公安
委員長、見解をお願いいたします。
以上、
カジノが
一つもないと言われる現在でも
世界一の
ギャンブル国と言われている
我が国において、その
家族や子供たちまで巻き込んでしまう
ギャンブル依存症の患者がこれ以上増えないよう、
政府の抜本的な
対策強化を求めます。
国民の生活の不安を広げる可能性を残す
カジノ頼みの
経済成長は、真の
経済成長ではありません。そのことを申し上げ、代表
質問を終わります。
御清聴ありがとうございました。(
拍手)
〔
内閣総理大臣安倍晋三君
登壇、
拍手〕