○川田龍平君 立憲民主党・民友会の川田龍平です。
会派を代表して、ただいま議題となりました
森林経営管理法案について
質問いたします。
まず、冒頭
お尋ねします。
この
法案について、衆議院で四月十九日に可決された後、本院での審議に入る前である四月二十四日に、農水省は
法案説明資料を書き換え、衆議院と参議院で審議する
法案の
説明資料が変わってしまいました。どういうつもりでしょうか。
財務省は公文書を改ざん、防衛省は日報を隠蔽、厚労省は働かせ方改革関連
法案の裁量労働制に関するデータを捏造したことが発覚し、
法案から取り下げました。しかも、厚労省は、昨年も精神保健福祉法改正案の立法事実の
説明資料を書き換えていました。
立法のための重要資料を官僚が操作したり、捏造したりと、これまでの
議論の前提であった行政機構と立法府の信頼
関係が今根底から崩れていることに国民の不信感は限界に達しています。今回の書換えはそれを更に拡大させてしまいました。農水大臣、これについてどう
説明するのでしょうか。
衆議院での審議の中で、農水省は、
経営意欲がありながら、当面は
経営規模を維持と考えている
経営者について、
経営意欲が低く、適切な管理責務が果たせない、だから市町村に管理を委ねる
法案が必要なのだと
説明しています。本当にそうでしょうか。
立憲民主党のヒアリングで分かったのは、向こう五年間主伐しないのは、
経営意欲がないどころか、むしろもっとずっと先を見据えて、
経営を維持していくための決断だということでした。彼らは、木材価格が下がったら生産量を抑えて対応し、切り過ぎは
経営危機を招くので、逆に品質を高めることで将来の安定
経営を目指しているのです。
今回、農水省は、恣意的なデータ解釈をしただけでなく、明らかにこうした現場の実態を無視しており、さらに、所有者が行政に管理を移行することを拒否しても、一定の手続を踏めば同意したとみなす
制度まで盛り込んでいる。所有者の意思を無視しても伐採を進める条項を盛り込んだのはなぜでしょうか。
この国にとって森林の価値とは何でしょうか。今回の問題の背景には、農水省が林業
経営の実際を理解していないからではないかと考えますが、以上三点、農水大臣、お答えください。
この
法案が、現場の声を反映していないだけでなく、国民の声も聞かずに
作成されたことも批判しなければなりません。
林政審議会で新たな森林管理システムについて
議論されたのはたったの一時間半、パブリックコメントすら
実施されていません。森林環境税という新たな税の
創設に関わる重要な
法案にもかかわらず、納税者である国民の理解を得る努力を怠っているのではないでしょうか。
法律は一度できると社会の仕組みや国民の暮らしが変わってしまいます。今回のように、自分たちに都合の良い解釈や数字を基に密室で勝手に作ってよいものではありません。林家や林業に携わる現場の人々の間には、このような農水省の姿勢に強い不信感を持っている方々が多くいるのは事実です。
実態を考慮した弾力的な
運用をしなければ、むしろ林家の
経営意欲をくじく結果になることを懸念しますが、
政府は、この
法案の
運用に当たり、今回の資料書換えの反省を踏まえ、これまで以上に林家や林業に携わる様々な人々の声に丁寧に耳を傾けるべきではないでしょうか。そのためにも、まずは参議院では徹底審議を求めます。以上二点、農水大臣に伺います。
そもそも、
我が国の林業の根本的な問題は、木材貿易の
自由化から始まりました。
自由化によって二〇〇二年には一八・二%まで下がった木材自給率は、国際的な森林資源や環境保護の動きから丸太輸入の
減少、また、戦後植林した国内人工林の半数が加工適齢期を迎え、
政府の森林
振興策が進み、各業界の粘り強い努力によって少しずつ上昇し、二〇一四年には三一%まで回復しています。
地域資源を生かした
雇用創出という安倍政権が掲げる
地方創生も、森林が国土の三分の二を占める
我が国で、林業の復活なしには実現できません。
しかしながら、昨年十二月に
政府が出した日欧EPA及びTPP11の試算では、構造用集成材の生産額が最大三百七十一億円、合板は二百十二億円
減少と、国内の製材業が大きな打撃を受けるという数字が出ています。
政府は、国内
対策で競争力を上げればいいと言いますが、欧州の高品質な木材製品やアジアの安い木材製品が
流れ込んでくることは、国産原木価格の低下を招き、林業を圧迫するのではないでしょうか。セーフガードで防ぐといっても、その基準も曖昧な上、強制力もありませんし、木材の地産地消を進めるための
地域材利用
振興策はISD条項に引っかかるおそれにもなるのではないでしょうか。
木材自給率拡大という
政府の
目標と
日本の森林を守る観点から、価格競争にさらされる国内林業をどのように守るつもりでしょうか。TPP担当大臣並びに農水大臣に伺います。
森林は、二酸化炭素を吸収し、固定し、貯蔵する機能は地球温暖化
防止に大きく貢献しているなど、多面的な機能を持っています。そうした森林を次
世代に引き継いでいくためにも、経済的な
支援だけでなく、森林吸収源
対策の
推進が必要です。
我が国の国土の七割を占める森林を守り育むためには、森林環境税だけでは全く不十分であり、不安定な補正予算で毎回
措置するのではなく、本予算できちんと確保する必要があると考えますが、いかがでしょうか。農水大臣に伺います。
良質の木材需要と価格が落ち込む一方で、安直なバイオマス
目的の径の細い材の生産が増えて、原料調達のコストが上がっている実態をどのように解決するつもりか、農水大臣及び経産大臣に
見解を伺います。
木質バイオマスエネルギーで先行するヨーロッパでは、熱利用を
促進する
政策誘導が行われています。ドイツでは、再生可能エネルギー法が施行されて四年目には熱電併給への誘導を行っています。今後は、熱利用を
推進すべく、熱電併給を伴うよう良質な案件に絞って
認定を行うよう、バイオマスのFIT
制度を見直すべきと考えますが、経産大臣の
見解を求めます。
我が国の伝統的木材建築技術を生かすために、民主党政権では、公共建築物における木材利用の
促進に関する法律を作りました。中高層ビルの床材CLT普及や、リフォーム需要の拡大に伴う良質の板材や丸太材の安定供給などが必要であると考えますが、国産材の需要拡大に対し、農水省はどのような
取組をしていますか。
現在一割程度しかない製材工場のJAS
認定を増やすために、煩雑な事務手続や
認定の維持費用など、原因の分析と解決を直ちにすべきではないでしょうか。以上二点、農水大臣に伺います。
また、木造の中高層建築を担える設計、建築分野の専門
人材の
育成に努めるべきではないでしょうか。文科大臣に伺います。
森林の役割は、伐採し木材にするだけではありません。水を蓄え、洪水を緩和し、水質を浄化し、二酸化炭素を吸収し、土壌の表層を守るなど、長い年月を掛けて国民の暮らしや健康、環境や伝統を守っていく
我が国の大切な資産です。
こうした森林の持つ様々な機能を
日本学術
会議が数値化したところ、何と、年間七十兆円と試算されているのを御存じでしょうか。その価値を分かっていて、五十年でなく六十年、百年という長期で森林の未来を考えている所有者が現場にはたくさんいます。林業を営む私の
大学の先輩は、九十二歳ですが、あと二十年自分の木を育てる前提で森林
計画を立てています。林業とは、目先の利益だけでなく、それだけ長期スパンで守り育てていく
産業だという事実を私たちはもう一度思い出す必要があるのではないでしょうか。
私が常に主張する命を守る国へという思想において、命の安全保障は国土の安全保障があってこそです。農水省は、データの操作などに時間を掛けるのではなく、この国の大切な資産を長いスパンで守り育てるという役割を思い出していただきたい。
そしてまた、森林の大切さを子供たちがしっかりと理解するためにも、義務教育のうちに森に入る機会をつくり、百年掛けて水や空気や土を育てる林業の意義、質の高い
日本の木材が持つ多様性などを教えるプログラムを設けるべきだと考えます。これについて、最後、文科大臣に伺って、私の
質問を終わります。
御清聴ありがとうございました。(
拍手)
〔
国務大臣齋藤健君
登壇、
拍手〕