○古賀之士君
民進党・新緑風会の古賀之士です。
会派を代表いたしまして、ただいま
議題となりました
所得税法等の一部を改正する
法律案に対し、今の
政府には税を語る資格はないとして、
反対の
立場から
討論を行います。
正直者には尊敬の的、悪徳者には畏怖の的、これは、昭和二十四年六月十日、国税庁の開庁式において語られた言葉ですが、七十年近くたった今、このときこの瞬間においても、
日本全国津々浦々の五万六千人の全ての国税職員は、その言葉どおり、税務行政の適正な
執行のため、そして税への信頼の確保のため、一人一人が
責任を果たしております。
しかし、残念ながら、税への信頼は
政治によって大きく揺らいでいます。私は、一年前の三月二十七日、
平成二十九
年度の
所得税法等改正案への
反対討論でこの場に立ちました。そして、
財務省が事件隠しの動きを見せている、税に対する
国民の信頼を根底から失墜させかねない極めて重大な問題をはらんでいると強く警告いたしました。
決裁文書の
改ざんが行われたのは二月下旬から四月とのことです。私が事件隠しについて警鐘を鳴らしていたその裏で、
財務省は事実の書かれていた文書の
改ざんに及んでいたわけです。
財務省については、全てとは申しませんが、あきれるほどの厚顔無恥と言わざるを得ません。また、
財務大臣や
総理大臣も同様です。なぜなら、
国会答弁で適性が疑問視されている人物を、よりにもよって国税庁長官に任命したからです。しかも、我々
野党が繰り返し批判したこの人事を適材適所などと自画自賛し、論功行賞とも言えるこの人事によって、税務行政への信頼性は大きな傷が付いてしまいました。しかも、文書
改ざんも含め、問題の
調査に取り組む姿勢は極めて後ろ向きです。
もりそばとかけそばの出前を頼んだのですが、まだですか。はい、今やっています。今はそんな笑うに笑えない話があります。今回の
財務省の
対応、
調査結果の
報告はまだですかとの問いに、今やっていますとかわすだけで、一向に真面目な答えが返ってきません。
なぜこの
ような態度を取るのでしょうか。いや、誰がこの
ような態度を取らせているのでしょうか。少なくとも、最終
責任者は
理財局長と
説明責任を放棄している
財務大臣と、それを放置している
総理大臣の、少なくとも監督
責任、任命
責任は明らかです。これでは、
調査の結果はいつまでたっても出てまいりません。
森友学園の問題と加計学園の問題を合わせ、もりかけ問題と呼ばれることがありますが、だからといって、出前の
ように、はい、今やっていますがずっと許されるわけではありません。
調査はいつまで続くのかまだ分かりません。そして、その事実が一体どこまで
調査が進んでいるのかも、まだ途中経過も含め公開されていません。
国民の真実が知りたいという声に果たして応えているのでしょうか。この
決裁文書の
改ざん問題についてはもちろん、
森友学園への
国有地売却問題
そのものについて、
国民に対して一刻も早く、私の地元、博多弁ではばり早で、真摯に、フェース・ツー・フェースの精神で
説明していただくことが重要だと考えます。
過去が消され、その消去が忘れ去られ、うそが真実となる、記録は一つも残らず廃棄されたか捏造される、歴史は止まってしまったのだ、ジョージ・オーウェルの書いた「一九八四年」に出てくる言葉です。まさか、同じ状況がこの
日本で現れるとは夢にも思いませんでした。今回の
所得税法等の改正案の一番大きな問題は、今の
政府に税を語る資格がない、そのことに尽きます。うそを真実としてしまう国、歴史が止まってしまう国に、一体誰が税金を素直に納め
ようとするでしょうか。
もっとも、現政権においては、特定秘密保護法や共謀罪を強行に推し進めるなど、全体主義的傾向が見られます。もしかすると「一九八四年」の
社会を理想としているのかもしれません。
しかし、それは、自民党が綱領に掲げる、反共産・
社会主義、反独裁・統制的統治という理念に真っ向から反するものです。少なくとも、うそを真実としたり、歴史を止めたりする今の政権に、いわゆる保守を名のる資格はないことは、誰が見ても明らかではないでしょうか。
さて、本
法案に
反対する具体的な
理由の一つは、
働き方改革を掲げる一方で、実際にはサラリーマンに負担を求めるなど、理念なき不公平
増税であることです。また、
政府は、給与
所得控除等、基礎控除の適正化を図るとしています。しかし、先般の
衆議院選挙の公約において、こうした
増税は触れられておりません。納得できない
国民の方々も多いんじゃないでしょうか。
我々
民進党が主張する
ように、
所得控除から給付付き
税額控除へと税体系を大きく変えていくことで、
国民にとって公平で納得できる、すっきりとした税制にしていくべきと考えます。
二番目の
反対理由は、
政策効果の乏しい
所得拡大
促進税制を改組するという、その場しのぎを続けていることです。
現政権で積極的に行われた法人税減税は、大
企業の内部留保の積み上げにつながる一方で、賃上げ効果が限定的であったことは明らかです。さらに、
中小企業に対しては、要件を緩和するなど、一見配慮している
ようにも見えますが、対前
年度比の増減収額が実質ゼロでは、
中小企業の厳しい
経営環境を踏まえた
対応とは到底言えません。
反対する第三の
理由は、税収確保のために安易なたばこ税
増税が行われることです。
今回、たばこ税の税率を一本当たり三円引き上げ、加熱式たばこを大幅に
増税するとしておりますが、唐突感は否めず、
消費税軽減税率の財源を穴埋めする意図もあることから、断固
反対です。
暗闇の中では
民主主義は死んでしまう、
アメリカの新聞、ワシントン・ポストの題字に書かれている言葉です。まさに今、
民主主義が命の危機に瀕しています。
公文書は、
民主主義の基盤であり、土台であります。暗闇を照らす光です。過去にどの
ような
政策をつくり、現在にどの
ような問題があり、未来にどの
ような方針を立てるか、
公文書は国の道筋を示す大きな手掛かりになるためです。その
公文書が
改ざんされ、光のない暗闇が広がってしまったことで、
民主主義国家の
政治家として心から大きな憤りを感じています。
総理は度々、この国を取り巻く安全保障環境の厳しさを訴えています。もちろん、外からの脅威に備えることは重要であり、努力を重ねることが必要なのは言うまでもありません。しかし、国が内側から腐ってしまえば、その備えや努力は無になってしまいます。
今、国が内側から腐ろうとしているのです。暗闇を照らす
公文書という光がなくなれば、
民主主義は死んでしまいます。それによってこの国は内側から腐ってしまうのです。その結果、
国民は国を信頼し
ようとはせず、国際的にも信用されなくなってしまいます。
残念ながら、
民主主義が死に瀕している危機感は現政権には見られません。
民主主義を守るために、この国を守るために、
総理におかれましては、一刻も早く、潔く身を引いていただけないでしょうか。
先日の自民党大会では、谷村新司さんが「昴」を歌い、最後には全員で「いい日旅立ち」を合唱したそうです。その歌詞の
ように、「せめて鮮やかにその身を終われよ」、「せめて今日から一人きり旅に出る」というのが
総理に対する
国民の願いではと申し上げ、私の
反対討論を終わります。
御清聴ありがとうございました。(
拍手)