○吉田博美君 自由民主党の吉田博美です。
私は、自由民主党・こころを代表して、安倍
内閣総理大臣の
施政方針演説について
総理に
質問いたします。
冒頭、一昨日、群馬県の
草津白根山で
噴火があり、お亡くなりになられた方に哀悼の意を表するとともに、
被害に遭われた
方々に心よりお
見舞いを申し上げます。
政府には、今後の
火山活動を注視しながら、万全の
対応をお願いいたします。
安倍内閣が政権に復帰して五年が経過をしました。先進各国の中で見ても長期政権と呼べるでしょう。
G7諸国の中でも、安倍
総理より前からリーダーを務めているのはドイツのメルケル首相のみです。各国首脳との会談は六百回近くに上り、
外交の継続性、
一貫性が大きく高まりました。政権の安定は国家安定の基礎であり、大いに誇りにすべきであります。
経済も着実に回復しています。四年連続での今世紀最高水準の賃上げ。高卒、大卒の皆さんの就職率は過去最高水準です。
この雇用回復の
意味は本当に大きいと
考えます。働く中でこそ、若者は経験を積み、夢の実現に近づいていくことができます。
企業がこぞって人を求め合う、奪い合うような状況だからこそ、我が社の職場を更に魅力的にしなければならないと
考えます。
大胆な
労働法制の
改革も、この雇用回復があってこそ進めることができるのであります。アベノミクス三本の矢を五年間着実に進めてきたことによる成果の上に更なる
改革を進めていけるのです。
しかし、その成果に慢心してしまってはなりません。
参議院自民党の幹事長である私は、
総理に耳障りなことをあえて申し上げることも役目の
一つだと
考えています。一強だ何だと言われることもありますが、
総理にしっかりと話ができる人間がきちんといる、それが自民党の強みであります。
慢心は、自分では気付きにくいところがあります。長く続ければ、慣れのようなものも生じてしまうかもしれません。だからこそ、我々は、
国民の皆様の声に常に謙虚に耳を傾けなければなりません。
今、政治にとって最も重要なのは信頼だと思います。
昨年の流行語大賞に「忖度」という言葉が登場しました。私たち政治家にとって、そんたくとは、
国民の皆様の気持ちを推し量り、大事にして、それに応えていくことであり、これこそが大切なのであります。そんたくではなく、損得で動く政治や政治家からは、信頼は生まれてくるはずもありません。まさに、信なくば立たずであります。
また、英国の歴史学者ジョン・アクトン氏の、権力は腐敗するという言葉もありますが、政治にはバランスと緊張感も必要です。緊張感を欠いた政治は、時としておごりや緩みにつながる危険があります。
昨年の
衆議院選直後の十月二十五日、よみうり時事川柳に、「受け皿が割れて大皿だけとなり」という句がありました。思えば、現行の選挙
制度も、政権交代可能な二大政党制の確立を目指したものでした。
与野党が互いに切磋琢磨して、緊張感のある
議論を繰り広げられる
国会運営を
与野党を超えてできる体制を目指さなければなりません。野党の皆様の御理解と御協力を望みます。
国民の皆様が
国会や
政府に寄せる期待は、
政策にあります。
安倍内閣についても、
政策を次々に実現してきた内閣だからこそ、
国民の皆様が期待し、支持してくださる。昨年の選挙の勝利は、そのように理解しなければならないと思います。
国民の皆様の期待に応え、選挙でお約束した
政策を着実に実行し、成果を出し続ける。そうしなければ、
国民の皆様の支持を失ってしまう。それは当然のことであります。
我々に課せられた
国民の皆様からの負託は、五年を経て更に重い、そう
考えなければなりません。
そして、
国民の皆様がしっかりとやれと政治に期待する
課題、それは、デフレ脱却、北朝鮮問題の解決などの
外交上の諸
課題、
憲法改正、この三点ではないでしょうか。
今日は、この三点を中心に
総理に
質問をさせていただきます。
まず、デフレ脱却、
経済政策について伺います。
政権交代以来、
安倍内閣が最優先で取り組んできたのが
経済再生であります。金融
政策、財政
政策、
成長戦略という三本の矢によって、デフレからの脱却と持続的な
経済成長を支える基盤をつくり上げてきました。あわせて、
子育て支援や
社会保障の
強化による一億総活躍
社会の実現、これらを横断的に支える働き方
改革、
我が国の構造的な
課題である人口減少や少子高齢化への
対応も積極的に進めてきました。
その結果、名目GDPは、五年間で五十六兆円増加し、昨年七月から九月期で過去最高の五百四十九兆円を記録しております。
企業収益は七十五兆円と過去最高水準であります。就業者数は約百八十五万人増加し、有効求人倍率は史上初めて全ての都道府県で一倍を超えました。
賃金についても、今世紀に入って最も高い水準の賃上げが四年連続で実現し、多くの
企業で四年連続のベースアップを実施しています。
安倍内閣は、これまでの五年間でデフレ脱却に向けた道筋をつくり上げてきました。成長の果実は確実に雇用や
所得へと回るようになり、人々は
生活が良くなったことを実感できるようになりました。
今年のお正月は福袋の売行きが殊更良かったそうです。長く
日本経済を覆ってきたデフレから完全に脱却するまであと一歩というところであります。そこで、デフレ脱却及び
経済成長へ向けた一層の取組について、
総理の決意をお伺いします。
次に、
社会保障について伺います。
今般の総選挙において、自民党は、全世代型
社会保障への
転換を打ち出しました。
総理が国難と呼ぶ少子高齢化の問題を解決し、出生率を希望出生率一・八に近づけていくためには、生半可な
政策では足りません。だからこそ、我々は、
人づくり革命断行のため、
幼児教育無償化を一気に加速することなどを
内容とする二兆円規模の新たな
政策パッケージを取りまとめることを今般選挙の公約に掲げたのであります。
その結果、
国民の皆様に御支持をいただきました。次はこの約束を前に進めることで、そこで、
総理に、
国民の皆様にお約束したこれらの
政策を進めるに当たっての
総理の決意をお伺いいたします。
また、
経済成長が雇用の
拡大、
賃金の上昇につながる中で、安心して消費や
投資をしようと思うためには、将来への不安があっては思い切った行動に踏み切れません。足下の個人消費は総じて見れば持ち直していますが、更に勢いを付けていくためには、
社会保障の持続
可能性に対する将来不安に応える必要があります。この点についての
総理の
見解をお伺いします。
次に、財政再建について伺います。
安倍内閣の五年間の取組による
経済成長によって、税収は、国、地方合わせて二十四兆円増え、毎年の国の借金も十一兆円減り、二〇一五年度のプライマリーバランス赤字半減
目標も達成するなど、
財政健全化は着実に進んできました。
平成三十年度
予算案は過去
最大の規模ですが、税収が
平成三年度以来の五十九兆円台となったことなどから、公債の発行額は六年連続で減少しています。しかしながら、債務残高
GDP比は今なお先進国でもかなり高い水準にあり、更に
財政健全化を進めていく必要があります。
総理は、
人づくり革命のために消費税の使い道を見直す際、同時に、財政再建の旗を下ろすことはない、プライマリーバランスの黒字化を目指すという
目標自体はしっかりと堅持すると言われております。今年は、その具体的
方針を
政府・与党で大いに
議論し、決めていくことになります。そこで、
財政健全化に向けた
総理の御決意をお伺いします。
次に、働き方
改革について伺います。
総理は、内閣の重要
課題として働き方
改革に取り組んでいく
姿勢を示し、昨年三月には働き方
改革実行計画を決定しました。
働き方
改革の主要なテーマの
一つである長時間
労働の是正は、
我が国にとって高度成長期以来の宿題と言ってもよい長年の
課題であります。これまで
我が国では、多くの
企業が社員の長時間
労働に依存してきたことは否定できない事実であります。そして、
企業の中で長時間
労働をする人の方が評価されるという風土が存在してきたことも、また事実であります。こうした状況を
改善するためには、個々の
企業の努力のみならず、
社会全体として長時間
労働に頼らない働き方に変えていく必要があります。
女性活躍については、
安倍政権の下で、女性の就業者数は百五十二万人も増え、女性の就業率は、今や二十五歳以上の全ての世代で米国を上回っています。更に手を緩めることなく
支援を
拡大していかなければなりません。
総理は、昨年三月に働き方
改革実行計画を決定した際、この実行計画は最初の一歩にすぎない、
法案を作成し
国会に提出して、そしてさらに成立させなければ、単なる作文であり、絵に描いた餅に終わってしまうと述べられました。
働き方
改革は、
社会の
在り方を変えると同時に、
経済問題として
日本経済の潜在成長力の底上げにもつながる、第三の矢、構造
改革の柱でもあります。雇用情勢が好調な今こそ、働き方
改革を一気に進める大きなチャンスであります。その上で、懸命に納期を守り、
日本の物づくりや
国際競争力を支え、商店街など地域
経済を守っている中小
企業・小規模
企業事業者の
方々の配慮も欠かせません。
今
国会で働き方
改革関連法案の成立を目指すに当たり、
総理の決意をお聞かせください。
次に、
社会資本の整備について伺います。
昨年十二月、参議院自民党の議連である故郷を
支援する参議院の会の会長として、成長率を高めるためには
社会資本の整備が重要であると
総理に直接申入れをさせていただきました。
急速に少子高齢化が進行する
我が国が、産業を活性化させ、地方を創生し、
国際競争力を高めて、
経済成長を続けていくためには、生産や物流の効率化の基盤となる
社会資本の整備が必要であります。例えば、
日本よりも人口の少ないドイツにおいては、鉄道や道路などの
社会資本の整備を精力的に行っています。人口減少に直面している
我が国は、ドイツを始めとする他の先進国以上に、成長の基盤を確保するために高速交通ネットワークなどの
社会資本の整備を着実に進めていくことが重要です。
また、昨年七月に発生した九州北部豪雨では、河川の氾濫や土砂災害など甚大な
被害をもたらし、三十九人もの尊い命が犠牲となり、二人の方が行方不明となっております。近年、
我が国では自然災害が頻発化かつ激甚化しており、地球温暖化が進むと強い台風が発生する確率が高くなるとの分析もあります。南海トラフ地震、首都直下型地震のような巨大地震が発生するリスクも高まっています。
このような災害列島とも言える
我が国においては、いかなる災害が発生しようとも、
国民の命を守る、
国民の財産に係る
被害を最小化する、万が一の
被害にも迅速な復旧復興が実現できる、すなわち
国土強靱化を力強く進めていくことが必要であります。
このような状況において、
社会資本の整備を進めていくに当たっては、無駄を排除し、中長期的な視点に立って計画的に進めていくべきであることは論をまちませんが、私の地元である長野県を始め、山岳地帯の多い
我が国において、
社会資本の整備にお金が掛かるのは宿命とも言えます。
社会資本そのものを無駄と決め付けてその整備を遅らせることは、
我が国の
経済成長のためにも、
国民の生命や財産を守るためにも、絶対に避けなければならないと
考えております。
我が国の
経済成長や
国土強靱化の
推進の
観点から、
社会資本の整備をどのように進めていくお
考えか、
総理の
見解をお伺いします。
次に、
外交について伺います。
日本を取り巻く
安全保障環境は、戦後最も厳しいと言っても過言ではありません。北朝鮮による核実験や弾道ミサイル発射等の挑発行動はとどまることを知らず、
日本国民の安全を脅かしています。また、東シナ海を始め、
日本の周辺では、力による一方的な現状変更の試みが行われています。
これらにしっかりと
対応し、
日本国民の安全と平和な暮らしを守るためには、日米同盟を基軸にした
安全保障政策、
外交政策が不可欠であります。今ほど日米同盟の
強化が求められているときはありません。
この点、安倍
総理は、トランプ大統領の当選直後、
世界に先駆けていち早くトランプ大統領にアプローチし、その後も、相互訪問や幾度にわたる首脳会談、夕食会、昼食会、さらには頻繁な電話会談などを通じて、個人的な信頼関係を深めてきていると承知しています。シンゾウ・ドナルド関係は、かつてのロン・ヤス関係を超える信頼で支えられているのではないかと思うほどであります。このように、積極的な首脳
外交により、日米同盟の下での連携協力をかつてなく強固なものにされてきていることを高く評価します。
他方、米国は、中間選挙を控えて、これまで以上に内政重視の
傾向が強まるとも
考えられます。
日本を始めとする同盟国、友好国への要求も今後増えていくかもしれません。
このような中、
総理は、今後、日米同盟をどのように
強化していくお
考えでしょうか、お聞かせください。
北朝鮮問題は、
我が国の
外交にとっての懸案です。北朝鮮は、本年に入っても、金正恩委員長の新年の辞で、核やミサイルの大量生産、そして実戦配備を加速する
方針を示しており、非核化を進める
考えがないことは明らかであります。
南北間では二年ぶりに対話が行われ、南北高官級協議において、再来週に開幕する平昌オリンピックへの北朝鮮の参加に向けた調整が進んでいます。韓国や
中国は、朝鮮半島情勢の緊張が緩和することを期待していますが、北朝鮮が約束をほごにしてきたこれまでの経緯を踏まえれば、今後の情勢も予断を許しません。米韓両国を始めとする関係国と緊密に連携しながら、緊張感を持って
対応していく必要があると
考えます。
そこで、北朝鮮の核、ミサイル、そして最重要
課題である拉致問題をどのように解決するのか、安倍
総理の御
見解を改めてお伺いします。
戦後七十年余りを経てなお、沖縄の皆様には、米軍基地の存在による大きな負担を背負っていただいています。このような現状を是認することは到底できません。最低でも県外という無責任な言葉による混乱を引きずる中、
安倍政権は、米国との関係を立て直し、
一つ一つ負担軽減の成果を
現実のものとしてきました。このことは率直に評価すべきものであります。特に、昨年末、北部訓練場四千ヘクタールを
土地所有者の
方々にお返しすることができたことは、沖縄の本土復帰後
最大の返還であり、大きな成果であると思います。
他方で、沖縄の普天間飛行場に隣接する小学校に米軍ヘリコプターの窓が落下するという危険極まりない事故が発生しました。普天間の一日も早い全面返還はもはや待ったなしの
課題であります。
総理に、沖縄の負担軽減、特に普天間飛行場の全面返還に向けた決意を伺います。
沖縄は、成長するアジアの玄関口に位置し、優位性と潜在力を有しています。
我が国の
経済再生を牽引するフロントランナーにもなり得る未来に満ちたこの沖縄の振興を総合的、積極的に
推進することは、沖縄にとっても
日本全体にとっても大変重要です。
安倍政権では、
平成二十五年十二月に、現行の沖縄振興計画の
期間中においては毎年三千億円台を確保するとの
方針を打ち出し、以来ずっと、それまでの水準よりも一段と高いこの三千億円台という水準の沖縄振興
予算を確保し続けています。一部には、来年度の沖縄振興
予算の概算要求額が今年度よりも少ないことをもって、
政府は沖縄の要望に耳を傾けず、沖縄の振興を軽んじているかのような批判がありますが、大きな間違いと言わざるを得ません。
予算案では、更なる
強化、
推進が必要と認められる事業については今年度よりも
予算を増額しているほか、沖縄健康医療拠点の整備や
人材育成事業といった沖縄の特性を踏まえた事業についての経費も新たに盛り込まれています。これらからも、
安倍政権が、いかに沖縄振興の重要性を
認識し、これにしっかりと取り組んでいることは明らかと
考えます。
そこで、
平成三十年度
予算を早期に成立させ、沖縄振興をどんどん前に進めていくことが重要と
考えますが、今後の沖縄振興についての
総理のお
考えをお聞かせください。
次に、
憲法改正について伺います。
言うまでもなく、
憲法改正は、自由民主党の立党以来の党是であります。自由民主党は、占領時代につくられた
憲法を始めとする様々な仕組みを時代に即したものに変えていくことを目的の
一つとして、
昭和三十年に自由党と
日本民主党が合同し、結成されました。以来、我々は、この国の形、理想の姿を示すものである
憲法の
在り方について
議論を続け、時代の変化に応じて、
憲法を
日本の未来の姿を示すものに改正することを目指してまいりました。
戦後七十年余が経過し、
我が国が北朝鮮問題や少子高齢化といった国難とも呼ぶべき
事態に直面している今だからこそ、我々は、
日本の目指すべき未来の姿を
憲法を通じて明らかにし、一致団結してこの危機を乗り越えていかなければなりません。
こうした中にあって、自由民主党は、昨秋の
衆議院選で初めて、
自衛隊、
教育、
緊急事態対応、参議院合区解消に関する四
項目について、
憲法の改正を目指すことを公約に掲げて戦いました。
国民の皆様から大きな信任をいただいた我々には、
憲法改正について、
議論をしっかりと前に進めていく責任があると
考えます。
そこで、
総理、
総理は、今年一月五日、自民党本部の仕事始めで、時代に
対応した国の姿、理想の形をしっかりと
考え、
議論していくのは、私たちの歴史的な使命であると言われました。
年頭記者会見においても、今年こそ、新しい時代への希望を生み出すような
憲法のあるべき姿を
国民の皆様にしっかりと提示し、
憲法改正に向けた
国民的な
議論を一層深めていくとおっしゃっています。
憲法改正は、最終的には
国民の皆様の意思で決められるものであり、十分な理解をいただくことが何よりも大切です。
そこで、これから
憲法改正の
議論をどのように進めていかれるのか、
総理のお
考えを改めてお聞かせください。
来春には、天皇陛下が御退位をされ、皇太子殿下が御即位をされることになります。憲政史上初めての事柄であり、我々
国民は、これを祝福するとともに、改めて、
我が国の歴史とともに長らく続いてきた天皇制をこれからも守っていくという自覚を持たなければならないと思います。
そのためには、
政府には、天皇陛下の御退位と皇太子殿下の御即位がつつがなく行われるよう、多岐にわたる諸準備に万全を期すことが求められていると
考えます。
天皇陛下の御退位と皇太子殿下の御即位に向けた取組について
総理にお伺いして、私の
代表質問といたします。(
拍手)
〔
内閣総理大臣安倍晋三君
登壇、
拍手〕