○糸数慶子君 私は、沖縄の風を代表して、
民法及び
家事事件手続法の一部を
改正する
法律案につき、反対討論をさせていただきます。
今回の
相続法改正は、配偶者の
相続上の地位強化という当初の意図はあったものの、実際には、
遺留分制度であるとか、従来の判例を取り入れたもの、あ
るいは否定したもの、さらには
技術的な内容など多様な内容が含まれており、全体として賛成、反対と
判断することは難しいと考えておりました。しかし、度々本
委員会で選択的夫婦別姓の
民法改正を強く主張してきた立場から、あえて反対を表明することといたしました。
反対の
理由は、個人の尊厳や両性の本質的平等という観点から、近年、差別的な法
制度を
見直してきたにもかかわらず、今回新設される特別寄与
制度の対象から事実婚や同性パートナーを排除するなど、新たな差別
規定を設けることが容認できないからです。そのような観点から、生存配偶者の居住権新設、配偶者の特別受益持ち戻しの推定、特別寄与については反対の立場を明確にいたします。
今回の
相続法の
改正は、最高裁が二〇一三年九月四日、婚外子
相続分
規定を違憲
判断したことが契機となっていますが、実は、差別撤廃に抵抗する排外主義の動きは二〇〇八年の国籍法
改正のときまで遡ります。婚姻
関係にない
外国人女性と日
本人男性の子供の国籍確認を求めた訴訟で、最高裁が同年六月四日、父母の婚姻を国籍取得の要件としている国籍法三条の違憲判決後、驚くような排外主義の反対意見が散見されました。この排外主義の運動が、翌年の女性差別撤廃条約選択議定書の批准に向けた議論において、さらに、二〇一三年の婚外子
相続分
規定の差別撤廃の議論の際にも、国籍法の二の舞になるなという掛け声で反対運動を展開し、婚外子
相続分差別撤廃の
民法改正に条件を付け、出生届書に残る婚外子差別の撤廃の戸籍法
改正を阻止し、
相続法制
検討ワーキングチームを立ち上げ、主導してきたのです。その中心的な役割を担った人物こそが選択的夫婦別姓反対の急先鋒として知られ、ワーキングチーム、さらに法制審議会のメンバーとなり、事実婚や同性パートナーを
制度から排除するよう主張してきたのです。
上川法務大臣は、今回の
改正が事実婚、同性婚など多様な生き方を排除するものではないと述べていますが、二宮参考人は、
法律婚カップルに求められない自助努力をなぜ事実婚の人たちに求めるのかと厳しく
指摘しています。そもそも、排除かそうじゃないかは当事者がどう受け取るかであって、いじめやセクハラと同様に、排除する側が
判断するものではありません。
夫婦同姓しか認めない
現行制度は、別姓カップルに
法律婚を諦めさせ、事実婚に向かわせるため、
法律婚の推奨という婚姻
制度の
目的に逆行しています。法制審が二十二年も前に答申した選択的夫婦別姓の
民法改正をたなざらしにする一方で、今回の
相続法改正において事実婚を排除したことは、家族形態は規格的、画一的である方がよいと考える現政権の姿勢を改めて示したものであると強く抗議いたします。
二宮参考人は、二十一世紀の
日本社会の在り方は、多様性と包摂、ダイバーシティー・アンド・インクルージョンであり、
法律婚以外の家庭生活への法的保障を排除する今回の
改正はこれに反すると述べています。
選択的夫婦別姓の実現は、ジェンダー平等や少数者の人権が尊重される社会かどうかの試金石であり、多様性と包摂の社会への大きな一歩であるということを申し上げ、反対の討論といたします。