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2018-06-19 第196回国会 参議院 内閣委員会 第20号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成三十年六月十九日(火曜日)    午後二時開会     ─────────────    委員異動  六月十四日     辞任         補欠選任      礒崎 陽輔君     豊田 俊郎君  六月十五日     辞任         補欠選任      大門実紀史君     田村 智子君  六月十九日     辞任         補欠選任      野上浩太郎君     こやり隆史君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         柘植 芳文君     理 事                 藤川 政人君                 和田 政宗君                 西田 実仁君                 矢田わか子君     委 員                 有村 治子君                 石井 準一君                 江島  潔君                 岡田  広君                 こやり隆史君                 山東 昭子君                 豊田 俊郎君                 野上浩太郎君                 山下 雄平君                 熊野 正士君                 榛葉賀津也君                 相原久美子君                 白  眞勲君                 田村 智子君                 清水 貴之君                 山本 太郎君    事務局側        常任委員会専門        員        藤田 昌三君    参考人        慶應義塾大学総        合政策学部教授  渡邊 頼純君        九州大学大学院        農学研究院教授  磯田  宏君        農民運動北海道        連合会委員長   山川 秀正君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○環太平洋パートナーシップ協定締結に伴う関  係法律整備に関する法律の一部を改正する法  律案内閣提出衆議院送付)     ─────────────
  2. 柘植芳文

    委員長柘植芳文君) ただいまから内閣委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  昨日までに、礒崎陽輔君及び大門実紀史君が委員辞任され、その補欠として豊田俊郎君及び田村智子さんが選任されました。     ─────────────
  3. 柘植芳文

    委員長柘植芳文君) 環太平洋パートナーシップ協定締結に伴う関係法律整備に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。  本日は、本案審査のため、三名の参考人から御意見を伺います。  御出席いただいております参考人は、慶應義塾大学総合政策学部教授渡邊頼純君、九州大学大学院農学研究院教授磯田宏君及び農民運動北海道連合会委員長山川秀正君でございます。  この際、参考人皆様に一言御挨拶を申し上げます。  本日は、御多忙のところ本委員会に御出席いただきまして、誠にありがとうございます。  参考人皆様には忌憚のない御意見をお述べいただきまして、本案審査参考にさせていただきたいと存じますので、よろしくお願い申し上げます。  議事の進め方でございますが、まず、渡邊参考人磯田参考人山川参考人の順にお一人十五分程度御意見をお述べいただき、その後、委員質疑にお答えいただきたいと存じます。  また、御発言の際は、挙手していただき、その都度委員長の許可を得ることになっておりますので、御承知おきください。  なお、参考人質疑者共に御発言は着席のままで結構でございます。  それでは、まず渡邊参考人にお願いいたします。渡邊参考人
  4. 渡邊頼純

    参考人渡邊頼純君) 御紹介いただきました慶應義塾大学総合政策学部教授をしております渡邊頼純と申します。今日は、この非常に重要な会議の席に参考人としてお呼びくださり、心から感謝申し上げます。大変光栄に存じている次第でございます。  私の話の前に、少し私自身について先生方に御紹介申し上げたいと思いますが、私、今は慶應義塾大学教授をしておりますが、実は長い間、国際貿易の問題にずっと関わってまいりました。古くは一九八五年から九〇年まで、ジュネーブにございます日本政府代表部で、ウルグアイ・ラウンド立ち上げからちょうど中間地点ぐらいまでを見ることができました。また、その後、外務省専門調査員としまして、EU代表部、これブラッセルにございますが、そちらの方に参りまして、日・EU経済関係も見てまいりました。そして、二〇〇二年から二〇〇四年は外務省経済局参事官ということで、日本メキシコとのEPA交渉首席交渉官として関わることができました。  そういう私にとりましては、ウルグアイ・ラウンド以来の国際貿易の流れ、まさにTPPあるいはTPP11ですね、これは私にとりましても、日本国際貿易世界に本当に積極的に関わっている非常に大きな象徴的存在だというふうに考えておりまして、そういう意味では、ある意味TPPの議論を締めくくる今回のこの参議院の会議に出席できたことは、本当にこの分野を専門にやってきた人間としては非常に幸せに、また光栄に存ずる次第でございます。  そのようなことを申しまして、早速お話を始めたいと思います。  この最初の、私が用意させていただきました環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定、いわゆるTPP11の意義と展望という資料を御紹介申し上げながらお話を進めていきたいと思います。  最初にこの一つの大きなポンチ絵みたいなものが出ておりますが、これは何を示しているかといいますと、現在の世界貿易三つの大きな成長の極、これから成り立っているというふうに考えているということをまず示しております。  一つは、EU欧州連合中心としたヨーロッパですね。  それから、大西洋を渡りまして、北米自由貿易協定、NAFTAアメリカカナダメキシコからできております。さらには、セントラルアメリカFTAということでセントラルアメリカFTA、そして、南の方へ更に下りますとメルコスール、さらには、近年、メキシコ、ペルー、チリ、コロンビアという四か国がつくっております太平洋同盟といったような地域経済統合体がございます。  そして、太平洋を渡りますと、私どもの東アジアがございます。この東アジアでは、ASEAN十か国、それに日中韓三か国、さらにはインド、オーストラリア、ニュージーランドを加えた東アジア枠組みであります包括的な経済連携枠組み、いわゆるRCEPというのがあるわけでございます。  この三つは、世界経済あるいは経済成長というものを引っ張る三つの大きな成長の極というふうに申し上げていいかと思います。そして、その成長の極では、それぞれ域内の統合というのが進行しているということでございます。  非常にこの二十一世紀に入って興味深いのは、地域地域の間で地域間協力枠組みが育ってきていることでございます。一九八九年にスタートいたしましたAPECアジア太平洋経済協力会議APEC一つその大きな代表でございます。また、一九九六年にスタートいたしましたアジア欧州会議、あるいはアジア欧州会合ASEMというのもございます。そして、この大西洋を挟んで、EU北米との間では環大西洋パートナーシップというのもございます。  そういうわけでして、今、成長の極を結ぶ地域間の協力枠組みがそういうわけで三つAPECASEM、そしてこのトランスアトランティックの枠組み三つあるわけですが、二〇一〇年以降、それが更に進化してきております。それが、アジア太平洋におきましては、APECから出てきましたTPPでございます。このAPECの二十一の国と地域の中から、まず四か国ですね、チリニュージーランド、シンガポール、ブルネイという四か国が最初TPPの原型をつくりました。そこからTPPが出てきております。現在では残念なことにアメリカが撤退をいたしまして十一か国でございますが、そのTPP十一か国でも、世界貿易相当部分、あるいはGDPで申しますと一五%弱を占めているという状況でございます。そして、この欧州連合日本との間には、日・EUEPAというのも合意ができております。  そういうわけでして、日本を軸に見ますと、太平洋におきましてはTPPあるいはTPP11、そして、欧州との関係でいいますと日・EU経済連携協定ができているということでございます。これに更に欧州連合北米地域との間の何らかの経済連携、何らかのFTAというものが加われば、非常に強い世界貿易体制を支える軸ができてくる、あるいは面ができてくるというふうに考えることができます。  そういう形で、日本が関与している二つの大きなメガFTATPP、そして日・EU、さらにそこにRCEPというのもございます。そういうものをベースに、日本としてWTOを軸とした国際貿易体制というものを強化していく、これが非常に、今の日本のこれからの二十一世紀通商政策基本構図ではないかというふうに考えるわけでございます。  一枚この資料をめくっていただきますと、三枚目でございますが、アジア太平洋における地域統合ということで、今申し上げましたRCEP、いわゆる東アジア地域包括的経済連携、あるいはそのTPP加盟国がそれぞれ出ておりますので、御参照をいただきたいと思います。  更に一枚めくっていただきますと、四枚目のスライドでございます。これは私が作成したオリジナルな図でございますけれども、左の方から右の方へフローチャートとして考えております。日本の二国間のEPAは、既に日・EUを含めますと十六件、この十五件のEPAについては既に発効を見ております。その日本の二国間のEPAベースに、今後、日本はこの東アジア、そして環太平洋、その両方向に大きな経済連携の歩みを進めていくものと確信しております。  東アジアにつきましては、先ほどから言及しておりますRCEP、さらには日中韓FTA、そして環太平洋ではTPPというのがあると思います。これらを行く行くはこのアジア太平洋貿易圏である、つまりAPEC枠組みであるFTAAPの方へ流し込んでいくというのがこれからの大きな意味でのアジア太平洋地域における日本EPA戦略というふうに言うことができると思います。  幸いなことに、日本RCEP日中韓メンバーであると同時にTPPメンバー、それも中心的なメンバーでございます。そういうわけで、このTPPにおきましてはより野心的、より高度なルール作りを行い、そしてRCEP日中韓では、特にASEANの中でも発展レベルが少し低いカンボジアラオスミャンマーといったような国々を含めた諸国に対する包摂的な統合といいましょうか、インクルーシブなインテグレーションというものを日本中心になって進めていく。カンボジアラオスミャンマーに対してはいわゆるキャパシティービルディングであるとかあるいは貿易円滑化を通して彼らの成長というものを引っ張っていくということがとても重要だと考えているわけでございます。  このRCEP日中韓と、そしてTPPというのは大いに補完的に機能し得るものでございまして、そして、それをもってこのFTAAP、つまりAPECワイド自由貿易圏というものにつなげていく、これが非常に大きなグランドデザインではないかというふうに考えます。  そのAPECあるいはFTAAPについて一言申し上げます。  次のページ御覧ください。五枚目でございます。これを御覧になっていただきますと、関税撤廃、あるいは関税撤廃に加えて非関税障壁削減というものを入れると、徐々に経済成長への寄与、あるいはGDP成長率を高めていくことが可能であるということがお分かりになっていただけると思います。  もちろん、FTAAPはそんなに簡単にできるとは思っておりませんが、その言わば出発点としてTPPがあり、そしてそこにRCEP日中韓を加えていって、そして行く行くはこのFTAAPというAPECワイド自由貿易地域をつくっていくと、これがAPECで現在議論されているところのものでございます。  こういうふうに考えてまいりますと、TPPRCEPというのは決して相対する関係ではなく、むしろ相互に補完的な役割を果たすということが考えられるわけでございます。  次、もう一枚ページを送ってください。六ページ目でございます。  六ページ目は、このFTAAPで鍵を握るメンバーエコノミーということで、GRIPSの川崎研教授がはじき出した数値でございますが、御覧のように、このAPECワイドFTAであるFTAAPをつくった暁には、実は中国が非常に大きく裨益をします。そして、アメリカが二番手に付けていて、日本は五番目というところに位置付けているわけでございます。これから御覧になっていただきましても、このFTAAPへ向けての動きというのは、中国ももちろん裨益いたします、日本もそうなんですが、アメリカも二番手に付けているというところがポイントでございます。  現在、アメリカTPPから離脱をしておりますが、実はそれはアメリカにとって非常にマイナスのことでございまして、次、一枚めくっていただきますと、このTPP12の評価ということで、元々のTPP評価が出ております。  高いレベル自由化、そして新たな通商ルールを規定していく、その中には、国有企業に対するルール作り、労働、環境についての一定の規律を提供する、政府調達市場を開放していく、さらには、電子商取引などのように、現在WTOにおきましてはまだルールができていないところにルールを作っていくということがあったわけでございます。  さらに、TPPは、このビジネスに優しいルールということで、完全累積制度というものを原産地規則の中に織り込むなど、非常にビジネスがしやすい、日本企業が東南アジアに多く進出しておりますが、彼らにとって非常に良好な関係をつくっていく、そういうルールを提供しております。また、中小企業への配慮、そしてその投資の促進、投資における最恵国待遇や内国民待遇の保障といったようなことも入っております。そして、非常に具体的なこととしては、この税関手続簡素化あるいは迅速化で、急ぎの場合には六時間で貨物を引き取ることができるといったようなルールも作られたわけでございます。  そういうTPPだったわけでございますが、このTPP地政学的意義は何だったのかというのが八枚目の紙でございます。  ここでは、グローバルな覇権交代が起こりつつあるということで、ブレトンウッズ体制変容プロセスの中でアメリカがどのようにその変容プロセスを受け止めているかということで、TPPというのは、まさにそういう覇権国が移転していく中で、移り変わっていく中で、どのようなルールを作るかというところが問題だったということでございます。  さらに、中国にとってということで考えますと、中国にとりましても、実はこのTPPの問題というのは中国発展のモデルをどうつくっていくかということと密接につながっております。中所得国のわなにはまったままの中国でいるのか、あるいはそこから更に伸びるのかというところが中国にとっても重要で、そのためには、RCEPTPP、この両方を中国はにらんでいるというふうに考えます。もちろん、今すぐ今の中国TPPに入るということは、これは不可能でございます。しかし、RCEP投資について、あるいは競争政策について、あるいは国営企業についていろいろ交渉をしていく中でTPPに行く行く入ってくる、そういう発展的なパターン、あるいは段階的なパターンというのを中国の識者も考えているようでございます。  日本にとりましても、この三つ目ポイントですが、これは、日本グローバルパワーにとどまるのか、あるいは太平洋地域アジア地域ミドルパワーになってしまうのかということで、この選択を迫られている日本にとりまして、日本のプレゼンスを維持していく上で非常に重要というふうに考えるわけでございます。  もう一枚めくっていただきまして、九枚目でございます。日本の対応といたしましては、TPPから離脱をして損をするのはアメリカ自身であるということを先ほど申しましたが、そういう中で、日本としては、アメリカTPP復帰を周到に準備してあげるということが重要だと思います。そのときの言い方としては、まさに今アメリカ日米FTAというのを日本に対して言ってきているわけでございますけれども、しかし、考えてみれば、TPP12というのはまさに事実上の日米FTAであるということでございます。この点をアメリカにしっかり分かっていただいて、早急にTPP12に戻ってくるということをアメリカに説得をしていく。  そのためにも、二つ目ポイントですが、TPP11というものを早急に発効させるということで、本委員会役割も非常に大きいわけでございます。  そしてさらには、日本企業……
  5. 柘植芳文

    委員長柘植芳文君) 時間が超過しておりますので、おまとめください。
  6. 渡邊頼純

    参考人渡邊頼純君) はい。  これで終わりますが、日本企業東アジアで構築してきた生産ネットワーク維持強化のためにRCEPを推進していく、また、日・EU経済連携早期発効させることで、言わば保護主義に対する防波堤としてのTPP11の役割、これを明確に主張していくということが極めて重要であると考えるわけでございます。  どうも御清聴ありがとうございました。
  7. 柘植芳文

    委員長柘植芳文君) ありがとうございました。  次に、磯田参考人にお願いいたします。磯田参考人
  8. 磯田宏

    参考人磯田宏君) 皆様の机の上に配っていただいたもう一つのホチキスで留めたものでございますけれども、これを全部紹介させていただくととても時間が足りませんので、ここの要点を少しはしょって意見の陳述にさせていただきます。  私は、農林水産業等への深刻な影響が予測され、発効後のリスクあるいは不透明な部分が著しく大きい、そのような性格を依然として持っているいわゆるTPP11、CPTPP発効に向かうべきではないという観点から、その私としての根拠を五点ほどにわたってかいつまんで説明させていただきます。  一点目に、農産物等市場開放に関する条文譲許表TPP12から変更がなされておらず、したがって、発効後に更に市場開放を迫られるメカニズムも組み込まれたままであるということであります。そういう意味で、変更がなされていないTPPには、現在、我々の目に触れている協定条文譲許表以上の市場開放協議するメカニズムが幾重にも組み込まれております。  具体的には、そこに四つ挙げておりますけれども、そういったような、とりわけ三番目の、発効後七年たちますと、アメリカは当面おりませんけれども、その他の四輸出大国の要請で市場アクセス増大目的協議が義務付けられるといったようなことを中心に、これらを通じて、現在の約束による農産物市場開放では済まされない危険が極めて大きい、そういうメカニズムを内包しているということでございます。  二番目に、このTPP11が発効され、それに伴って市場開放するということになると、少なくとも、トランプ政権におけるアメリカとの関係では、それにプラスして日米二国間の市場開放という二重の市場開放になる危険が大いにはらまれているということであります。TPP11の国内承認手続早期完了発効させることがむしろ米国の対日二国間交渉圧力を抑止するのに有効だという言説が出されておりますけれども、私の考えでは、むしろ逆に作用する危険が高いというふうに見ております。  TPP11は、御案内のように米国離脱したにもかかわらず、そこに書きましたような大麦輸入TPP枠であるとか、脱脂粉乳、バターのTPP枠牛肉及び豚肉のセーフガード発動基準数量、こういうものについて日本政府削減要求すらしておりません。  したがって、豪州、カナダニュージーランドといった輸出大国でもってそれらのTPP枠セーフガード発動基準数量に近づいてしまう可能性が高く、そのことがかえって米国との二国間協議において、本来の米国分け前というふうに米国が考えるところのもの、あるいはそれ以上のものの要求を誘発することになるだろうと。このTPP11の協定では確かに、米国復帰見込みがない場合に市場開放下方修正をすべく見直し条項を挿入されておりますけれども、今挙げたような輸出大国がそれに応じるということはおよそ想定し難いのであります。  逆に、仮に米国復帰があるとすれば、ダボス会議等の際にもトランプ大統領明言されておりましたように、TPP米国にとってはるかに良い協定になればという話でございますので、逆に今の条項でもって現行以上の市場開放への見直しを迫られるのが必至なのではないかというふうに考えてきますと、米国復帰見込みがあるなしのいずれの場合でも、結局はTPP11プラス日米二国間の市場開放に帰結する可能性が高いと。トランプ政権は、十一月に迫ってまいりました中間選挙向けの短期のタームでは手っ取り早い二国間市場開放取引の成果を求め、それを乗り切って、中期的には日米自由貿易協定をという戦術というふうに考えられます。  三点目の根拠でございますけれども、農産物食品安全性確保等についても、現にある協定以外にも、将来にわたって追加的協議メカニズムによって発効後の規制措置等確保は非常に不透明化すると、そういうリスクを内包しているということでございます。  一番目のTPP衛生植物検疫措置SPS条文については、非常に科学的証拠主義が、WTOSPS協定よりも更に強められているということがありますけれども、加えて、そのTPPの中に置かれるSPS委員会目的が非常に抽象的に規定されているため、広範囲な輸出国側関心事項等協議されるのではないかというふうな危惧を非常に持っておる次第であります。  また、貿易技術的障害、TBTに関しても、それ自体としても幾つかの問題をはらんでおって、例えば、包装食品食品添加物について企業が占有する製法情報に対する政府提出要求を制限したりとか、FAO、WHO等の下に置かれている食品規格委員会基準ですら効果的でない、適当でないというふうに判断された場合は食品へのラベル記載要求できないなど、現行でも問題ばらみなんですが。加えて、ここでも小委員会の検討、活動等が著しく広範囲に規定されているため、日本規制基準緩和や他国のものの承認調和、それへの調和などが一層進められる危惧を抱かざるを得ないと。  また、米国に関してですけれども、ここでも、TPPから離脱した米国ではありますけれども、今後の日米国間協議でこれらのTPP現行条文以上を求めるだろうことは、通商代表部の本年の外国貿易障壁報告書が、昨年施行された改正原料原産地表示制度に対する懸念を表明したり、米国輸入牛肉月齢制限の廃止を要求したりとか、食品添加物禁止撤廃であるとか、ポストハーベスト防カビ剤の取扱いの撤廃であるとか等々を改めて要求していることからしても、今後、これらのことが日米国間協議で強い要求となって現れてくるであろうことはほぼ明らかであろうかというふうに思っております。  それから四点目に、政府調達に関する問題でございまして、ここでは地域農林産物に一応引き付けて申し上げますけれども、国産や地域産の農林水産物政府調達に利用することが妨げられる、そういった危険も高まるということでありまして、TPPはそもそも、十五章の政府調達において、市場開放対象政府調達については、国産、地域農林水産物等の利用を課することを禁じているわけです。  さらに、現行条文等に書かれている、あるいは附属書に書かれている市場開放対象政府調達の機関、範囲、基準額についても、その小委員会というものがここでも登場しまして、追加的な交渉によって範囲の拡大や基準額の引下げのための交渉をするということが定められております。  このことが現実化していきますと、政府調達の対象機関、現在では指定都市以外の一般市町村は対象外ですけれども、そういうものが対象に含まれてくる。あるいは、政府調達の種類の範囲としても、例えば、現在、地方自治体の学校給食サービスは政府調達の対象から外されておりますけれども、市場開放の対象から外されておりますけれども、こういうものが除外されるという今の取扱いが解消されるとか、そういったようなことを含めた追加的交渉が義務付けられていることになるということになりますと、国産材、地域産材を利用した公共建築や地産地消型学校給食の促進などは、その存立基盤を縮小、喪失する危険にさらされるという懸念を強く持つものであります。  五番目に、ISDS、投資家国家間紛争解決システムでございます。  一部には、今回のTPP11では凍結されているのではないかという理解もあるやに聞きますけれども、実は御案内のように、実際に凍結されるのは、投資に関する合意及び投資の許可、この二項目だけでございまして、及び、それから十一章、金融サービスのうちの、金融サービスに関わる市場開放等に関する待遇に関する最低基準という、そういう義務だけがISDSの対象外に今回凍結されたのであります。したがいまして、むしろ、投資の本体である投資財産のあらゆる権益保護及び、先ほどの金融サービスに関するその他の市場開放や待遇保証義務への違反は、全て引き続きISDSの対象になっているままでございます。  このISDSについての問題点というのはもうるる指摘されているところでありますので、時間の都合もありますので省略させていただきますけれども、一番私が特に今日強調したいのは、仲裁廷における裁定基準が、条文、附属書等における概念規定が不明確なものですから、結局は仲裁廷の裁量に丸投げにされてしまう、実際にそういう判例が数多く見られてきているというところでございます。  最後、以上のまとめ的な意味も込めて六点目でございますけれども、先ほど参考人渡邊先生はメガFTAEPAこそ進むべき道というふうにおっしゃられましたが、私は、むしろここで一旦冷静に立ち止まって、慎重に、それが本当に国民、地域住民、あるいは私の専門に引き付けて言えば農業分野等にとって本当のメリットになる道なのかどうかを再検討する、そういう時期に来ているんではないかということを結論的には申し上げたいということであります。  まず、政府によるTPP11等の生産額への影響が過小評価になっているのではないかという問題意識は幅広く共有されているところであります。例えば、輸出国側政府の試算と日本政府の生産減少額との差が大き過ぎるというような問題があり、その若干の例を今日机にお配りした方ではカナダ政府、それからニュージーランド政府の特定の産品についての試算との余りに大きなギャップについて紹介しておりますが、ここではその具体的な内容については省かせていただきますけれども。  日本政府試算のもう一つの非常に非現実的なロジックとして指摘できることは、そこでは輸出の増加が考慮されていないという前提になっております。その前提の上で、国内対策、今日のこの法案もそうですけれども、国内対策の結果、国内生産量も自給率も不変だ、変わらない、落ちないと、こういう結論でございます。ということは、これは簡単な算数でございまして、輸入量が全く増えないということを意味するわけであります。逆に、日本の人口減少とそれに伴う消費の減少がこのまま歯止めが掛からないとすれば、むしろ輸入が減りさえすることを意味するという、こういう結論に論理的になるわけでありまして、余りに非現実的であると言わざるを得ません。  日本政府は、メガ自由貿易協定経済連携協定が切り開く大きなボーダーレス市場へ向けて輸出で成長産業化する農業を目指すとしておりますが、確かに、世界最高水準の品質や和食の健康的、文化的価値において競争力を有する、グローバルな富裕層向けの輸出農業分野に一定の成長の余地があることは私も否定いたしませんが、そのような分野は好むと好まざるとにかかわらず限られております。したがって、そうでない多くの農業分野はそのようなメガ路線の市場開放で大きく縮小せざるを得ず、例えば食料・農業・農村基本法がうたう国民への食料安定供給確保や多面的機能の発揮は失われていくし、国内農業と国民あるいは国内消費者も切り離されてしまうであろうことが深く懸念されているわけです。  そのような観点からも、メガFTAEPA路線からの再検討、そこからの転換ということの検討が必要とされているというふうに考える次第でございます。  御清聴ありがとうございました。
  9. 柘植芳文

    委員長柘植芳文君) ありがとうございました。  次に、山川参考人にお願いいたします。山川参考人
  10. 山川秀正

    参考人山川秀正君) それでは、最後に私の方から意見を述べさせていただきたいと思います。  お二人は大学で専門的にTPPを研究している、そういう立場からの発言でしたけれども、私自身は現場で実際に農業を行っている農民の立場から、TPPについて反対の立場で意見陳述をしたいと考えております。  私自身は、北海道十勝管内、帯広市の隣ですけれども、音更町で畑作農業経営を営んでおりまして、経営内容は、十三ヘクタールの小麦、大豆五ヘクタール、てん菜六ヘクタールなど、四十ヘクタール耕作をしております。  今、北海道の販売農家戸数は約三万八千戸となっておりまして、私自身が農業を継いだときには十三万五千戸もありました。この十年間で一万五千戸、四十年間で十万戸も減少したことになります。今頑張っている北海道の農業者は幾多の試練を乗り越えてきた言わばつわものと言える農業者ですが、TPP11で更に大きな網のふるいに掛けられるのではないか、多くの農家が懸念を抱いております。  政府の試算でも、TPP11によって農産品だけで六百二十億円の関税収入が減少し、その対策も示しておりません。関税収入の減少の内訳は、牛肉が二百七十億円、国家貿易によるマークアップは、麦で二百二十七億円、乳製品は二十五億円、砂糖調整金十六億円となっており、北海道農業に及ぼす減収は百五十億円以上になると予測されております。  これらの関税やマークアップの財源によって、牛のマルキンや麦やてん菜の数量支払、生乳生産者補給金の財源に充てられてきました。私自身も、経営に大きなウエートを占める小麦のマークアップが四五%削減されることになれば、小麦の販売価格がその分引き下げられるのではないか、強く危惧を抱いております。北海道では約十二万ヘクタールに小麦を作付けしていますが、TPP11が発効して、現在の作付面積や生産量が確保できる法整備を明確にすべきであります。  また、牛肉の関税収入の減少が最終的には二百七十億円と試算していますが、これでも牛マルキンが維持されるのか。九割補填にすることはTPP11発効前にも措置すべきと考えますが、果たして財源が確保されるのか。牛・豚マルキンの維持と経営安定対策の交付金の維持を担保するのであれば、法制化を図ることを提案したいと思っております。さらに、TPP12で示された牛肉などのセーフガードや乳製品の低関税輸入枠も凍結されないまま承認されており、その影響は避けることができません。  北海道では十万ヘクタールの水田があります。アメリカが抜けたことから約七万トンの米の輸入が回避され、オーストラリアのみとなりました。しかし、米の生産国で国際的にも最も価格の安いタイが参加を表明しております。タイ産米の輸入拡大を拒否できるのか、明確にできないのであれば、関連法案は判明するまで採決すべきではないと考えます。  さらに、食の安全についても、検疫時間の短縮や遺伝子組換え表示の変更など、心配は尽きません。  また、TPP受入れを前提に体質強化策が講じられてきていますが、支援の対象が規模拡大一辺倒であり、現状維持で経営を続けようとしている私たち農業者は、大きな支援、これを受けることは全くありません。現状維持で経営を続けようとしている農家も支援の対象にすべきではないでしょうか。  また、牛肉の関税収入の減少が最終的に二百七十億円と試算していますが、これでも牛のマルキン制度が維持されるのか。九割補填にすることはTPP11発効前にも処置すべきですが、果たして財源が保障されるのか、大変不安であります。  さらに、私たちが生産した小麦の国内価格、六十キロ三千円であります。これは国家貿易品目であることから、国が一元的に輸入し、その輸入差益としてキロ当たり十七円を徴収しています。この輸入差益分が四五%削減されますと、六十キロに換算して四百六十円となります。この分が道産小麦の価格に連動することになれば、生産者にとっては大きな打撃です。輸入差益の上限はキロ四十五円となっていますから、上限の四五%にすべきではないかとも考えます。  現在の小麦の販売価格は政府の輸入小麦販売価格と同じような水準ですから、約三千円の販売価格では生産費を維持することはできません。生産した小麦は農協で調製をし、その経費が約千円、販売経費や価格変動猶予金を含めると千円になります。農家の手取りは出来秋には千円程度しかなく、これでは経営が成り立つはずがありません。それを補填するために、経営安定対策の数量支払で六十キロ六千八百九十円の交付金を受けています。  この交付金の主要な財源は、輸入差益、マークアップであります。政府の試算であれば、TPP11が発効すれば初年度で二十五億円減少し、最終年度には二百二十七億円の減少としています。財源が減少しても現在の経営安定対策が維持される、交付金が維持されるのか、そのことが極めて心配するところであります。政府は措置すると言いますが、小麦生産の減少を見込んでいるのではないかと思わざるを得ません。  北海道農業は今、農業を輸出産業に、その典型としてもてはやされております。しかし、食料自給率三八%の国が目指すべき方向でしょうか。EUとのEPAも暫定発効が心配でありますが、EUでは昨年十一月、共通農業政策、食料と農業の未来の中で、家族農業経営、食料安全保障、農業の多面的機能の維持、そして農業には完全な自由貿易化に耐えられない部分があることを強調しております。日本の農政理念の根本的転換にかじを切る議論も求めておきたいと思います。  最後になりますが、TPP事後対策の一環として出されたと、このように私は受け取りますが、今年四月、米や麦、大豆の種子法、これが廃止されました。そういう現状の中で、今、北海道では、パン向けの秋まき小麦、キタノカオリの採種が困難となり、生産が危機に立たされております。種を農家が手に入れるまでには原原種、原種、採種と三年費やしてようやく四年目で私たちが播種することができるわけでございますけれども、その根本が、法律が廃止され、キタノカオリにこだわった製造店からも不安の声が上がっており、種子法の復活、このことも最後に求めて、私の意見とさせていただきます。  大変御清聴ありがとうございました。
  11. 柘植芳文

    委員長柘植芳文君) ありがとうございました。  以上で参考人の方々からの意見の聴取は終了いたしました。  これより参考人に対する質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  12. 和田政宗

    ○和田政宗君 自由民主党・こころの和田政宗でございます。  参考人のお三方の貴重な御意見を誠にありがとうございました。  私は、渡邊頼純参考人中心にお聞きをしていきたいというふうに思っております。  渡邊教授は、通信社等のインタビューで、TPPに復帰しないで困るのは日本ではなく米国であるというようなことを述べていらっしゃいますけれども、これはどういった意味なのか、詳しく教えていただけますでしょうか。
  13. 渡邊頼純

    参考人渡邊頼純君) 和田先生、どうも御質問ありがとうございました。  確かに、私は、TPPに戻ってこないで困るのはアメリカであるということを申し上げております。  幾つかございますけれども、まず一つは、TPPの持っているその戦略的意義というのがあると思います。やはりこのTPPというのは、ある意味TPPの議論の中で隠されたアジェンダの一つは、中国をどう取り扱うかということ、あるいは中国との関係をどうするかということであったかと思います。  先ほど少し申し上げましたが、中国自身も、当初はTPP中国を除外するものだというような懸念を持っておりまして、このTPPに対して相当反発する部分がございました。そして、自らはTPPではなくてRCEPでいくんだと、こういうようなことも言った時期もございました。  ただ、アメリカが徐々に、その後、二〇一四年、一五年というふうに交渉が進んでいきます中で、当時のアメリカの国務次官であった、ブリンケンスという国務省のアメリカの幹部の一人が、決してTPPというのは中国を囲い込むものではない、新たな中国囲い込み政策ではないんだと、中国もそのメンバーとして迎え入れる用意はある、それは全て中国次第であるといったような言い方をするようになりました。  このことは非常に中国にもいいメッセージとして伝わりまして、私どもが日頃から交流のある中国FTA政策の識者、貿易政策の識者たちも徐々に、RCEPTPPというのは決して対立するものではない、そして、今すぐは無理だけれども、中国もいつかTPPに入ることによって中国を更に発展させることができるということを考え始めました。  また、アメリカの方でも、やはり中国のような国がTPPの厳しいルールに従うことによって、そして中国のマーケットを開くことによって、あるいはハイスタンダードなルールに従うことによって、アメリカにとっても利益があるというふうなことを考えるようになったわけでございます。  ですから、そういう意味で、戦略的なTPPの価値ということになりますと、アメリカが抜けたことによって、実は、中国の中でより高度なルールとかより高度なマーケットアクセスに移行していかなければならないと考えていた進歩的な中国の人たちを、むしろ中国国内で抑え込む結果になってしまっている。そして、現在の中国は一帯一路でありますとかそういうところに邁進していっているわけなんですね。そのことは、アメリカのやはりグローバルな存在感というものを非常に低くしてしまうことになります。ですから、やはりTPPから離脱したというのは、そういう戦略的な意義において一つアメリカにとってマイナスだったということであります。  それからもう一つは、実利的な意味で非常に損だと思います。  既に先生方も御案内のように、今、日本のワインの市場で数量ベースで一番売れているのはチリワインになりました。これは、日本チリとのEPAが二〇〇七年に発効して十年間の間にワイン関税がゼロになっているわけですね。そういう中で、従来強かったフランスワインを抜いてチリワインが先頭に躍り出ました。これはやっぱりEPAの効果だと思います。同じようなことが、もしEUとのEPA発効すれば起こりますし、オーストラリアとのEPAは既に二〇一五年一月からスタートしていますので、徐々にオーストラリア産のワインに対するワイン関税も落ちていっています。それがオーストラリアワインにとっては追い風になっている。  そういうふうに考えましたときに、アメリカTPP復帰が遅れれば遅れるほど、それはアメリカの農業にとって、例えばワインであるとか、例えば今申し上げました牛肉もそうだと思いますし、その他の産品においてアメリカが後塵を拝するというような状況になります。これは非常に実利的な意味アメリカにとって損でありまして、そのことが、アメリカ国内でも農業団体をしてトランプ政権に対してTPPへの復帰を促す、そういう契機にもなっているわけでございます。  以上でございます。ありがとうございました。
  14. 和田政宗

    ○和田政宗君 それに関連してお聞きをいたしますけれども、そうすると渡邊教授は、TPPというものは、例えば日米中心にする太平洋において自由貿易圏を形成をして、また中国がその一帯一路を始めとする対抗的な要素というよりも、中国TPPに引き入れていくというようなことであるというようなことだというふうに思うんですけれども、これは、もう少し補足いただきたいんですけれども、中国を自由で公正な貿易、こういった大きな圏内にしっかりと呼び込んでいく、こういった考えであるということなんでしょうか。
  15. 渡邊頼純

    参考人渡邊頼純君) ありがとうございます。  まさにそういうことでございます。以前、中国をしてレスポンシブルステークホルダーという言い方が一時期はやったことがあるかと思います。つまり、責任ある大国にしていく。まさに、中国の躍進、中国経済成長、これは抑えようがない勢いで今進行中でございます。これと別に感情的に対抗軸になろうということを目指すのは必ずしも適切ではない、むしろその中国の勢いをアメリカ日本も取り入れて、そしてアジア太平洋全体で繁栄と安定というものをつくり出していくということが重要だと思います。  そういうときに、こういう十一か国とか十二か国で交渉交渉を重ねて作ったルール、この中に中国統合していくということ、これが極めて重要で、行く行くは中国も含めてルールメーキングを一緒にやっていく、そして、一緒に作ったルールだからそのルールを一緒に守りましょうということを中国にもその中で諭していくということが可能だと思います。  私は、中国WTO加盟のときも、相当中国に行って、中国WTO意味とかルールとかをいろいろレクチャーしてまいりました。そのときに私が見たのは、中国は、一旦WTOに入ると決めたら、上が決めたら下まで一気通貫でまさにWTOに入る準備をしたわけでございます。それはロシアのWTO加盟のときとは大分違います。ですから、私は、中国は、国際的なルール、多国間のルールというものにコミットするという方針が上部でできた場合には、それが確実に実行される国だと思います。  ですから、そういう意味で、まずはRCEP中国交渉をし、あるいは日中韓FTA交渉し、そしてその次のステップでこのTPP中国を引き込んでいくという、そういうレスポンシブルステークホルダーとしての中国中国と一緒に形成していくというのがクリエーティブな通商戦略というふうに考えるわけでございます。  以上です。ありがとうございました。
  16. 和田政宗

    ○和田政宗君 そうしますと、それについてお聞きをいたしますけれども、日本役割です。  TPP12については、日本が入ったことによって、これは渡邊教授も述べておられますけれども、日本がゲームチェンジャーになって、例外なき関税撤廃において例外が認められたというようなことで、これTPP12についても、日本はこの中で主導的な役割を果たしたわけでございます。  そこで、このTPP11においての日本役割についてどういうふうに評価をしているか、また、今後、アメリカ、また中国を引き入れていく中で、日本役割がどうあるべきか、この点の御意見を聞かせていただければと思います。
  17. 渡邊頼純

    参考人渡邊頼純君) ありがとうございます。  TPP12にも言及をくださいまして、ありがとうございました。まさにゲームチェンジャーということで、日本は例外なき関税化と言っていたところに例外をつくり得たわけですね。その代わり、日本も痛みを引き取った。例えば、自動車については、十五年間据置きで、十六年目にやっと例えばアメリカの関税が二・五がゼロになるといったような痛みも背負ったわけでございますが、確かにゲームチェンジャーとしてその役割を果たしたと思います。  そのTPP11につきましては、日本はまさにこのTPP11の立て役者であったと。TPP11というものが、TPP12でつくられた自由化と、それから開かれた貿易、透明性のある貿易というものをつくっていこうとする、そういうアジア太平洋地域に一旦広がったモメンタム、勢いというものを消さないようにする、そういう役割日本は見事に、特に二〇一七年のこの一年間の中でその役割を大きく果たしたと思います。  そしてそのことは、特に、トランプ政権の中でアメリカ自身通商政策がどんどん内向きになり、アメリカ・ファーストになり、そして保護主義的になっていく中で、日本がこのTPP11を非常に献身的な努力をしてつくり上げたということは、これは単にアジア太平洋にとどまらず、それ以外の地域にとっても、この自由貿易の灯を途絶えさせないという、消さないという非常にはっきりとした意思表明になったんだろうと思います。  そういう意味では、辛うじてまだこのともっている自由貿易の灯というのを守り続けたという、そういう意味TPPにはあったと、特にその中における日本役割として私は高く評価されるべきではないかと考えております。  以上です。ありがとうございます。
  18. 和田政宗

    ○和田政宗君 そうしましたら、これ最後の質問にしたいというふうに思いますけれども、保護主義という言葉が今、渡邊教授のフレーズでございました。まさに、さきの大戦に向かう流れということを考えた場合に、欧米の宗主国を中心とする植民地ブロック経済、こういう囲い込みによって争いが起き、大きなあの悲惨な戦いに向かう大きなきっかけになってしまったわけでございます。  この保護主義に対抗する中でより広い自由貿易圏を形成をしていくというのは、これは、世界平和への寄与、経済のみならず、そういった地域の安定、また世界全体の安定という意味でも大きな寄与があるというふうに考えますが、その点は渡邊教授はいかがでしょうか。
  19. 渡邊頼純

    参考人渡邊頼純君) ありがとうございます。  まさに和田先生がおっしゃったとおりでございます。FTAとか経済連携協定というのは二国間、三国間のものですので、どうしてもアウトサイダーをつくってしまうわけですね。アウトサイダーというのは、中の域内国は優遇するけどアウトサイダーの域外国は冷遇されるわけで、ここに差別が生じます。そういうバイのFTAEPA日本はこれまで十五、十六と数を重ねてまいりましたが、TPPというのはそれを更に包括的にしていくわけです。それで、ある意味でそういう差別性とか排他性をできるだけ薄めて、いろんな生産ネットワークとかバリューチェーンというものを域内で広げていくという、そういう役割を担っているんだと思います。  ですから、日本が今考えているTPP11とかRCEPとか、そして日・EUEPAとか、こういうものを積み重ねていくことによりまして、自由貿易FTAに潜在的にある排他性とかあるいは閉鎖性というものを打破して、より広い国と地域に自由で開かれた貿易を広げていく、こういう今方向性に日本通商政策は位置付けられていると思います。  ですから、まさにそういう意味で、日本の今の通商政策というのは、この保護主義と対峙する、そういうツールとして世界的にもこれを自信を持って提示していっていいのではないかと考えている次第でございます。
  20. 和田政宗

    ○和田政宗君 時間が参りましたので、これで終わります。  磯田参考人山川参考人に質問できませんでした。申し訳ございませんでした。渡邊参考人、ありがとうございました。
  21. 熊野正士

    ○熊野正士君 三人の参考人の皆さん、今日は本当に貴重な御意見を賜りまして、ありがとうございます。  私の方からは、まず山川参考人の方にお尋ねをしたいと思います。  本当に農業の現場から声を聞かせていただきました。具体的に小麦などの例を取っていただきまして、ダメージの大きさということで非常に分かりやすく御説明をいただきました。そういったものも踏まえまして、いわゆるTPP11ということで影響が出てくると。先ほども、交付金といいますか補助金といいますか、そういったものが減らされるんじゃないかという御懸念もございましたけれども、そういった、今後どういったことを支援としてより求めるのかということをお教えいただければと思います。
  22. 山川秀正

    参考人山川秀正君) それでは、私の方からただいまの質問に対して考えを述べさせていただきたいと思います。  どういった支援ということでございますけれども、まず第一点として、先ほどちょっと触れましたけれども、今、TPP発効を前提とした様々な対策が打たれております。しかし、その対策の中で、今現場でどういう声が起きているかといいますと、例えば産地パワーアップ事業等々もそうですけれども、その支援対象、これが一〇%の経営拡大、費用削減、そういうスタンスのみなんですよね。  当然、北海道、先ほど三万八千戸の農家があると言いましたけれども、その中には、規模拡大を志向する方もいらっしゃいますけれども、今の、現状のままで農業を続けたいんだと、後継者もそう言っていると、そういう人たちが、例えば施設を更新したい、機械を更新したい、こういう希望をたくさん持っているわけですけれども、これらに対して何ら支援策がないわけです。  規模拡大一辺倒では地域社会も地域経済も疲弊してしまうことは明らかでないか、このことをまず求めたいと思いますし、当然、経営所得安定対策等々手は打たれておりますけれども、私どもは、価格保障、所得補償、そういう領域の中で再生産が可能な様々な補助事業確かにあった方がいいかもしれませんけれども、それよりも、農家が生産した生産物を販売してそのお金で施設の更新も機械の更新もできると、そういう政治を望んでおります。  以上です。
  23. 熊野正士

    ○熊野正士君 ありがとうございました。  続いて、磯田参考人にお伺いしたいと思います。  先ほど五つにわたって、TPP11の問題点といいますか課題をお示しをしていただきました。その中で、二番目として、TPP11市場開放プラス日米国間市場開放となる危険が大きいというお話がございました。  元々これ、TPP12ということでおととしから国会でも審議をしてきました。今回、アメリカ離脱をしたような形でTPP11となったわけですけれども、このTPP12とそれからTPP11とで比べて、そのダメージといいますか、ここに書いてある、日米の二国間の圧力が強まるのでより大きなダメージが日本にあるんじゃないかというふうなことをおっしゃっておりますけれども、その辺をちょっともう少し、TPP11とTPP12と比較しながらお話をしていただいてよろしいでしょうか。
  24. 磯田宏

    参考人磯田宏君) 御質問ありがとうございます。  TPP11と12との比較ということを含めつつ、そこで米国の対日交渉圧力というものが強まるということのメカニズムといいますか、そういうことをもう少しという御質問であったかと理解いたします。  先ほど冒頭でも申し上げたことではございますけれども、一つは、確かにトランプ政権というものの、先ほど渡邊先生もおっしゃっていましたけれども、TPP12を、元々四か国の小さな自由貿易協定経済連携協定であったものにアメリカが乗り込んで、そこで主導権を握って12をオバマ政権の下でずっと発揮してきたものが、トランプ政権への交代によって12が11になったということが生じたわけであります。  そのことには、そういう意味で、トランプ政権の登場というのは、一面では、そういう多国間交渉よりも二国間交渉の方が、徐々に弱まっているとはいえ、アメリカの圧倒的な経済、政治、軍事力を背景として相手国から譲歩を引き出しやすいという、いわゆるディール論というものがあろうかと思いますが、もう一つ私としては見落とすべきでないと思うのは、むしろ行き過ぎた現代的な自由貿易主義、正確には、物の貿易というよりも、投資、資本、金融、そういったようなものの自由主義というものが中心になっているのが現代の言われるところの自由貿易あるいは新自由主義というものの核心だと思うんですけれども、そういうものを余りにも進め過ぎたと。グローバリゼーションを行くところまで進め続けた結果、アメリカ国内での雇用の喪失、貧困の増大、格差の拡大、そういったような問題、あるいはマクロ経済的にも貿易収支、経常収支の赤字が肥大化していく、国家の財政赤字も肥大化していく、そういうような矛盾にある意味では耐え切れなくなった、それがいろんな形での民意となってトランプ大統領を生み出してきたと、そういう側面も同時に見ておく必要があると思います。  という意味で事を考えますと、トランプ政権は、決してそういうものを、民意に沿って、あるいは格差を解消するとかいう立場で現在の通商政策を進めているとは必ずしも私も理解しているわけではございませんけれども、そういう民意が一方では背景があるがゆえにこそ余計に、そういう雇用の喪失あるいは賃金の低下、とりわけかつての基幹産業である製造業の主要部門での衰退、そういったものを目に見える形で取り返したいという形の圧力が、この日米二国間に限りませんけれども、NAFTAの再交渉でも米韓FTAの再交渉でも同様に現れておりますけれども、そういう形で現れてきているというふうに理解をしているところであります。  したがいまして、ちょっと重複になりますけれども、トランプ政権固有の、あるいはトランプ大統領のパーソナリティーからくる極めて攻撃的な対日圧力の増加という側面と、しかし同時に、より大きな意味で、大きなコンテクストとして、行き過ぎたグローバリゼーション、新自由主義化の矛盾にアメリカ自身が耐え難くなってきている、そのことの反映が余計に、そのことの反映がTPP12とTPP11との違いとなっている背景にありまして、そのこともまたアメリカの対日圧力が非常に先鋭化しているということの背後にあるというふうに理解をした方がよろしいのではないかと考えている次第です。
  25. 熊野正士

    ○熊野正士君 ありがとうございます。  今のお話で、トランプ大統領のパーソナリティーとかもあるかもしれませんけれども、アメリカ自体の国内事情もあって日本に対する圧力が強まるんじゃないかというふうなお話だったと思います。  ここで、渡邊参考人に伺いたいと思います。  先ほど和田委員からの質問にもございましたけれども、アメリカにとってこのTPPに参加しないと損なんだというふうなお話が、具体的なワイン等のお話もしていただきながらお話をいただきましたけれども、実際、今回、午前中の連合審査でも問題になりました、アメリカが帰ってこれるようにTPPの11の枠組みというのは変えていないんだというふうなお話もございました。  先生から見て、アメリカは損なんだと、ただ、片や、先ほど磯田先生おっしゃるように、かなり圧力も強くなっているというふうな状況の中で、アメリカがこのTPPに復帰する見込みといいますか、その辺をどのようにお考えになっていらっしゃるか、意見を是非伺いたいと思います。
  26. 渡邊頼純

    参考人渡邊頼純君) 熊野先生、どうもありがとうございました。  このアメリカTPPに復帰する見込み、これはなかなか難しいですね。余り私は賭けが上手じゃないので、そのオッズはとても申し上げられないんですけれども、ただ、一つ言えることがあるとしますと、やはり今アメリカ日本に対して二国間のFTAをやりたいと言ってきているということは、いろいろ新聞報道等でも出ているところでございます。また、私もアメリカの大使館の幹部たちと交流する機会もございますが、彼らが言っているのは、日本がなかなか二国間のFTAの話に乗ってきてくれない、非常にフラストレーションを感じている、一体なぜかと、こういったようなことを聞かれることもございます。ただ、私はそのときに申し上げるようにしておりますのは、まず、もうこの時代に二国間のFTAというのは古いんですということをアメリカの大使館の方たちにも申し上げています。  つまり、今、日本の産業の展開というのは多国間に及んでおります。アジア太平洋だけ見ても、ASEAN十か国から、そして中国、韓国、台湾、広いところで生産ネットワークを組み、そこからバリューを生むバリューチェーンをつくっています。ですから、今更日本アメリカFTAをつくって自由貿易といっても、それはこのアジア太平洋地域に今広がっているダイナミックな、躍動的なダイナミズムといいますか、これを捕捉するには、この二国間の枠組みでは捕捉し切れないんだと思います。ですから、そのことをアメリカに対してやっぱり率直に申し上げることが重要で、やはり日米共にベストなのは、これはよく安倍総理がそう言われますけれども、やっぱり日米共にベストなのは、アメリカも入った多国間の枠組みというのをアジア太平洋でつくっていくということだろうと思います。  ですから、そういう意味では、もうTPP12のあの交渉の中で日本政府アメリカFTA交渉をやったんですね。ですから、私がアメリカの大使館のハガティ大使にも申し上げましたが、日米FTAやりたいんだったら、それはもうTPP12の中に入っているということなんですね。日本は、あの中で農業関税の八一・二%まで行く行くは関税撤廃すると約束いたしました。これは日本EPAの歴史の中でも一番高い水準ですね、農業産品の八一・二%。その代わりに一九%ぐらいの例外をつくることもできたわけですね。その一九%の例外の代わりに、日本は自動車で涙をのんでいます。つまり、二・五%のアメリカの自動車関税ゼロにするのに十六年掛かる、トラックは三十年掛かると、ほとんど冗談みたいな時間が掛かるわけですね。  ですから、これは何を意味しているかというと、日本アメリカはもう既に日米FTA交渉TPP12の中でやって、そして、そこではぎりぎりのラインで交渉した結果、日本のセンシティビティーとしての農業を例外をつくる代わりに、向こうの、アメリカ側のセンシティビティーである自動車について例外をつくってあげたわけです。ですから、このセンシティビティーとセンシティビティーの交換、これが日米FTA交渉としてTPP12の中のマーケットアクセス交渉でできたわけですから、あれ以上のことをアメリカはできるんですかと私聞いたんです。できないと言いました。アメリカができないんだったら日本もできない、だったらTPP12こそ日米FTAではないかと、こういう議論をアメリカの大使館の連中としたわけなんですね。  私は、そういう意味で、是非アメリカに今申し上げたようなことを言ってTPP12にアメリカが戻ってくるようにさせるということが非常に重要だと思っています。
  27. 熊野正士

    ○熊野正士君 今日は、三人の参考人の方に貴重な御意見を賜りまして、大変にありがとうございました。これからの審議にしっかりと生かしてまいりたいと思います。  ありがとうございました。
  28. 矢田わか子

    矢田わか子君 今日はありがとうございます、お忙しいところお越しくださいまして。国民民主党・新緑風会、矢田わか子と申します。どうぞよろしくお願いいたします。  まず、改めて磯田先生からお話を伺いたいと思いますが、磯田先生のお話をお聞きして、このままTPP11に突入すると、やはり大きな懸念が幾つも残っているんだということを実感をいたしております。五つ大きな根拠を示されたんですが、まず一つ目として、先ほどのお話にありました四重の追加的協議メカニズムについてお伺いをしたいと思います。  このまま突入した場合に、この追加的に発効する協議メカニズム日本にとってどういった影響を及ぼすのかということでかなり懸念を示されていたと思いますけれども、であるのであれば、何らかの形でこれを防ぐような方策がないのかどうかということについて御示唆をいただけたらというふうに思います。
  29. 磯田宏

    参考人磯田宏君) 御質問ありがとうございます。  最初の問題、問題点一の中の追加的な協議メカニズムが少なくとも四重に組み込まれているということでございますが、読み上げの方ではというか、冒頭の発言の方ではかなりはしょって申し上げましたけれども、机の上に配付していただいた配付用の方では若干詳細を書かせていただいております。  一番目の、第二の十八条に定められている物品の貿易に関する小委員会というのは、これは農林水産物に限ったものではございません。工業製品等々物品全般ではございます。しかし、そこで取り扱われる問題のうち、関税撤廃時期の繰上げであったりといったような問題は、日本に引き付けた場合は、日本はもう工業製品は御案内のとおり関税ゼロでいっておりますので、どうしても農林水産物が実質的には対象になってくる。あるいは、関税撤廃を表明した、約束したものについても、かなり長期のもの、十年、十五年という長期のものを残しているということから、どうしても日本に引き付けていった場合、この委員会の対象は農林水産物が相当重点にならざるを得ないと。  それから、二番目の、二の二十五条はまさに農業貿易に関する小委員会でございますから、そのものがピンポイントになってくると。  それから、最大の懸念材料は、もうTPP12のときから種々議論されてきたことかと思いますけれども、日本国の関税率表、すなわち譲許表の注釈の中でわざわざ、オーストラリア、カナダチリニュージーランド、それからアメリカがいた際にはアメリカも含めた五か国のいずれかが要請すれば、発効後七年目以降にあくまでも市場アクセスの増大を目的とした関税や関税割当て及びセーフガードの適用、ですから、関税が、まだ残すと、あるいは削減はするけれども撤廃はしない、あるいは撤廃をするけれどもかなり先の話だと、これらについて市場アクセスを増大させる目的での協議を義務付けられていると。あるいは、セーフガード、先ほど豚肉、牛肉について、TPP12から11に、アメリカを抜かしたにもかかわらず、そういうものをちっとも減らしていないことの懸念についても申し上げましたが、そういうセーフガードの発動数量、あるいは発動期の戻す税率、こういうものについても市場アクセス増大目的での協議を義務付けられていると。  こういうことが、特により具体的に申し上げますと、将来に向けて、しかも七年目ということになりますと、もうスケジュールがかっちり切られているわけですので、確実にその時期がやってくるという意味で非常に重大な懸念を抱かざるを得ないという根拠をもう少し子細に申し上げますと、以上のようなことでございます。  これを食い止めるすべはあるのかということですが、この協議が始まること自体は、今申し上げたような意味では、それぞれの条項で定められておりますし、あるいは、四か国条項についてはもう期限まで切られておりますので、協議が始まることは、もうこれは発効してしまえば日本が食い止めることはできません、協議に応じることは義務になってきてしまいますので。  したがいまして、一番の予防措置は、発効しない、あるいは日本発効する段階ではその場にいないということが最大の予防線になるのではないかというふうに根本的には考えますけれども、仮に発効するということになるんだとすれば、まあ私も賭けは極めて不得手でございますけれども、その協議の場で日本の実情を丁寧に説明して理解を求めると。ただし、その理解に相手が応じてくれるかどうかの確率といいますか、これについては私は極めて、何というか、弱気にならざるを得ないというのが正直なところでございます。
  30. 矢田わか子

    矢田わか子君 ありがとうございます。  おっしゃっているとおり、この交渉の過程が今透明化しておりませんので、どういう交渉をしたのかということのやり取りを大臣ともさせてはいただいているんですが、どうしても信頼に基づいてちゃんとやっているからというふうな御答弁が多く、記録的なもの、議事録も含めて、何も残っていないというふうに今おっしゃられていますので、せめてそういったところで、紙できちっと残していただくとかということも含めて、私たちも求めていきたいなというふうに考えております。    〔委員長退席、理事藤川政人君着席〕  続いて、食料の安全性についても少しお聞きしていきたいんですが、三つ目の項目でおっしゃられた食料の安全性、これも生活者としては極めて不安が残る要素であります。  今後、遺伝子組換えの商品だとか、食品添加物でも日本で許されていないようなものが入ってくるという可能性がやはりあるということなのでしょうか。特に、発がん性がある物質等も、日本ではまだこれ可能性としてですけれども、指摘されているような物質等もアメリカやそれから諸外国で使われているケースもあるという報告もされておりますので、そんなものも含めて、もし何かお知りのことがあれば教えていただければと思います。
  31. 磯田宏

    参考人磯田宏君) 御質問ありがとうございます。  基本的には先生御指摘のとおりでございまして、一つは、もう既に我々長いことある意味食べているというか、知らず知らずのうちに食べてしまっているわけですけれども、例えばいわゆる成長ホルモンを利用した牛肉、これについては、御案内のとおり、日本国内では事実上これは使えない状況にあります。現場の山川さんなどがより生々しく御存じかと思いますけれども、医療用の措置を除いては肥育用等には成長ホルモンが使えないと。これも、先生御案内のように、発がん性の疑いの報告も重ねてなされているところでございますけれども、例えば、これについては日本については国内では使用を事実上禁止しているにもかかわらず、輸入はフリーであると。したがいまして、現在ではオーストラリア産がトップになっておりますけれども、オーストラリアであれ、アメリカであれ、あるいはカナダであれ、そういうものは成長ホルモンを使用した牛肉が輸入されてきていて、我々の食卓、あるいは外食、そういうもので消費者の口に入ってしまっているわけですね。  ところが、まあこれも御案内のように、EUでは、域内でも使用を禁止すると同時に輸入も禁止していると。これは、WTOの紛争処理でアメリカが取り上げて、紛争処理パネルでEUにかなり不利な裁定がなされた。そういうこともありつつも、それを、新たな科学的な根拠なりをもう少し深めるという調査も行いつつ、今日に至るまで貫徹しているわけでございます。  ちょっと、その事例にだけ限らせていただきますが、時間の都合上余り長くお答えするなということでございますので。それが、この三のところで一番目に取り上げている衛生植物検疫措置、いわゆるSPSに関わって、予防原則ということがWTOSPS協定には明確に位置付けられておりまして、TPPにおいてもそれが一応認められております。EUがまさに例えば今申し上げた成長ホルモンを使用した牛肉の輸入、流通を禁ずるという措置の正当性を主張するよすが、根拠になっているのもこのWTOSPS協定の予防原則でありますし、であるからこそ、また逆にこのSPS協定における予防原則ということをEUは大変大事にしているところであります。  ところが、TPPでは、一応その権利、それを含めた権利義務関係を確認するということがうたわれているのでありますけれども、国際的な基準に適合していない場合、より高い規制水準を、つまり今の例でいえば、日本も、EU以外ではなかなかそういうことをやっていない、そういうスタンダードでもって成長ホルモンに新たに、成長ホルモン使用の牛肉の輸入に規制を掛けるというようなことを発動しようとすると、客観的で科学的な証拠に基づいていることを確保すると。  WTOではむしろ考慮するというような表現であったものがTPPでは確保するというような表現になっておりまして、より強い意味で言われるところの科学的証拠主義というものが求められてきて、そういう意味では、そういうものがなかなか入手が難しいからこそ予防原則というのがあるわけでございますけれども、その入手の難しい、厳格な、必ず有害であるという因果関係を証明したというような、そういう意味での、科学的な証拠がないものについての規制を続けるとか、あるいは新たに設けるとかいうことの困難性が増すということは多分に想像できるところでございます。
  32. 矢田わか子

    矢田わか子君 ありがとうございました。  続いて、渡邊教授一つお伺いしたいんですが、TPP中国との関係においてもやっぱり戦略的な意義があるんだというふうなことのお話もある中で、確かに責任ある大国にしていくためにはこういう自由貿易の拡大図っていかなければいけないのだと思いますが、ただ一方で、先ほど来からお話あるとおり、農業の政策だとかに大きな影響を及ぼすわけです。  それは、経済成長を求めるのであれば農業についてはひとつ我慢してくれというふうな政策にも見えるんですが、その辺りについて教授はどうお捉えになっていらっしゃいますか。
  33. 渡邊頼純

    参考人渡邊頼純君) ありがとうございます。    〔理事藤川政人君退席、委員長着席〕  今先生から頂戴しました農業我慢してくれ論でございますが、これは私は全くそういう立場を取っておりません。むしろ、私が当初からTPPを推進してきたその背景には、TPPで農業を強くする、むしろTPP日本の農業を世界一の農業にできるんだという、そういう希望を持って議論してきております。ですから、決して、製造業の犠牲に、あるいはサービス産業の犠牲になってくれ、農業はそういう我慢する立場なんだということは全く考えていません。  むしろ、この今お話のあったSPS、TBT、こういったようなルールをちゃんとしていくことによって、日本の農産品を海外に輸出展開していく大きなチャンスがこのTPPによって開かれているというふうに感じております。日本の農産品というのは、日本の食文化あるいは日本食が世界で非常に人気を得ていっているのとまさに波長を合わせる形で、海外でも日本の農産品が求められております。もちろん、中国なんかでは富裕層という一部の限られた人々に受けがいいということでございますが、中国の富裕層というのは日本の人口の倍ぐらいいて、二億とも三億とも言われます。ですから、まさにそこに大きなマーケットがあるわけですね。  一方、日本の市場は、残念なことに現在一億二千七百万ぐらいから徐々に人口もシュリンクしていっておりますし、そういう意味では日本の農業市場そのものが小さくなっていっている。そういう中で、生産性を高めた日本の農業、競争力を付けた日本の農業というのは、これは、海外に展開していくというのが日本の農業にとって日本の農業を生かす最善の方法だというふうに思っております。決してそれは簡単なことだとは思っておりません。  例えば、HACCPであるとかあるいはGAPでありますとか、そういったようなある種の認証を、グローバルな認証を取るのはなかなか大変でございますけれども、HACCPとかグローバルGAPとかそういったようなものを取っていくことによって、確実に日本の農産品が世界標準として受け入れられる可能性があるわけですね。そして、何か問題があったときには、SPSとかTBTの条項に照らして、あるいはWTO条項に照らして、相手国のマーケットをオープンにしていくということもルールに従ってできるわけですね。ですから、そういう意味では、まさにTPPでもって日本の農業を更に強くする可能性があるというふうにも申し上げたいと思います。  私も、北海道から九州、熊本、鹿児島ぐらいまでTPPの応援の講演をして回りました。最初、北海道なんかに行ったときはなかなか厳しかったです。フロアからは、裏切り者とか売国奴とか、国賊なんて言われたこともありました。しかし、今、北海道でもどこでも行くと、逆に、TPPで北海道の農業をどう強くしたらいいですかという非常に前向きの質問が出てくるようになっているんですね。僕は、TPPによって日本の農業者のマインドセットが大きく変わりつつあると思います。
  34. 柘植芳文

    委員長柘植芳文君) 時間が来ておりますので、おまとめください。
  35. 渡邊頼純

    参考人渡邊頼純君) 以上です。
  36. 矢田わか子

    矢田わか子君 先生ありがとうございました。  今日、山川参考人お話聞けなかったんですが、手を拝見させていただいて、こういう手によって日本の農家って支えられているんだなと思いましたので、またお話聞ければと思います。今日はありがとうございました。     ─────────────
  37. 柘植芳文

    委員長柘植芳文君) この際、委員異動について御報告いたします。  本日、野上浩太郎君が委員辞任され、その補欠としてこやり隆史君が選任されました。     ─────────────
  38. 相原久美子

    相原久美子君 立憲民主党・民友会の相原久美子でございます。  今日、三人の参考人皆様、ありがとうございます。  私、先ほどの磯田先生のお話、ちょっと若干ほかの方が言っている部分と重なって受け入れられたのですが、実はこれ、アメリカが今回TPPから抜けたというのが、国境を越えたグローバル企業の経営陣だけがもうけているんだと、そしてなおかつ国家主権が侵害されて、そして失業は増えていると、こういうような指摘が多勢となって、結局、自由貿易の反省という点からTPPを抜けたと、そういうように指摘されているというように実は本で読んだんですが、天然資源の少ない日本では、私は、第一次産業というのは、これは農業、水産業、林業等々、非常に、今回のTPP12から始まって11と、影響があるかなというふうに思うわけです。  それで、私は出身が北海道なんですね。よく政府は大規模化、大規模化というようにおっしゃるわけですけれども、しかしながら、北海道的な大規模化ができる地域というのは本当に限られているなと。日本の場合、中山間地が多いという中にあって、今回のようにTPP11、仮に米国が復帰したとして、この協定がこういう農業に与える、いわゆる日本の全体に与える影響というのをどのように考えていらっしゃるのか、磯田参考人にお伺いしたいと思います。
  39. 磯田宏

    参考人磯田宏君) 農業を始め農林水産業への全般的な影響あるいは打撃というものをどの程度深刻に考えるべきかどうかという御質問であったかというふうに理解いたします。  それにつきましては、一つは、政府が、EUとのEPAの妥結、それからTPP11の妥結、そういうものを踏まえまして総合対策大綱を改訂したわけですね。それが農林水産業・地域の活力創造プランというものにも引き継がれていく、成長戦略にも含まれていくと、こういう流れで日本の農林水産政策の中核を成しているところでありまして、それが、今先生も御指摘になりました、あるいは先ほど山川さんからも現場実態とのそごの側面なども御指摘があった大規模化とコスト削減ということでございます。それからもう一つが、参考人渡邊先生がおっしゃった、高品質、安全、安心という他国にないアドバンテージをしっかり生かした輸出の強化、輸出を通じた成長産業化ということでございます。  しかしながら、先ほど私、申し上げたことでもあるんですが、そういう条件に恵まれた、先生がおっしゃったように、例えば、低コスト化が相当程度進み得る非常に大規模平たん部であったりとか、あるいは非常に高品質な米であったりとかあるいは和牛であったりとか、あるいは私の地元の福岡、私の在住している福岡でいいますれば、栃木辺りにもまたありますけれども、今アジア地域のマーケットで非常に好評だと言われているイチゴであったりとか、そういう高品質な、世界最高品質と呼ばれるような農産物を生産する条件があり、したがって、またそれを、コストは高いけれども海外に打って出るということが可能な地域はありますが、それはいかんせん、先生も御指摘になられたように、日本の農耕地の四割強は中山間地域にあるわけでございまして、そもそもそこではそういったような大規模化、コスト削減ということが不可能でありますし、それから、実は成長産業化ということで、例えば米も成長産業化するために、一方ではそういう高品質や安全性に一層磨きを掛けつつ、しかし、これは成長戦略でも首相を先頭に目標として掲げられているところでありますけれども、そのコストを、担い手層の米のコストを全体平均から比べて四割まで削減すると。これ、具体的には玄米六十キロ当たり約九千六百円という水準になるわけですけれども、これは北海道でよく見られるような平均数十ヘクタール以上の非常に大規模な経営にとっても容易に実現できないコスト削減でございます。  ところが、他方で、いかに日本のコシヒカリだったりあきたこまちであったり、最近は更に多様な品種が、高品質、良食味品種が登場しておりますが、そういうものが海外の一部の富裕層あるいは富裕国でのマーケットでそれなりに好評を得ているとはいえ、一方で、例えばアメリカのカリフォルニアでもカリフォルニア産のコシヒカリ、あきたこまち、こういうものがどんどんと海外市場に輸出されているわけでありまして、これと価格競争するためには、ずっとそれこそバリューチェーンを日本の産地までたどっていくと、日本の米の生産者の手取り価格、六十キロ玄米八千五百円じゃないと、例えばカリフォルニア米、カリフォルニアから出てくる最高品質のカリフォルニア産あきたこまち、コシヒカリとは勝負できないということになりますと、九千六百円というそれだけでも大変な野心的な目標なんでありますけれども、更にそれを八千五百円まで下げるということになりますと、より一層そういうことが可能な地域、経営、産地というものは極めて限定的になってくる。  ということから考えますと、一方で、こういうTPP11を始めとするメガFTA、メガEPAでもって最大限国境措置を低減して、関税も削減撤廃して、言わばどんどん着物を脱いでいって丸裸に近い状況になっていった上で、高品質なり、それと低コスト化を兼ね備えた輸出産業化で、そういう状況の下でも生き残っていくということにはかなり限定されてきて、その他の部分については相当深刻な打撃を受けざるを得ないんではないかということを申し上げたかったところでございます。
  40. 相原久美子

    相原久美子君 ありがとうございます。  山川参考人にもお伺いしたいと思うのですが、私も道内歩いておりまして、大規模化といえども、かなりやはり借入金が大きいわけですね。これは、大規模にすればするほど、農家の皆さん、畜産業も特にそうだと思うんですけれども、機械とか何かの借入金が大きくなると。その上、今、現実問題でいいますと、なかなか農業の担い手がいなくなっているという現状もあろうかと思うんですね。  そうしますと、今回のような形で、ある意味確かに輸出というメリットもあるとは思いますけれども、それは今、磯田先生がおっしゃったように、一部分になりかねないということになりますと、この際と言ったら語弊がありますけれども、離農者が特に増えそうな、そういう予感がするんですね。実は、私も歩いていて、もう今の借入金、これをまだ大きくするとしても、家族経営ではもう成り立たないというようなお話も聞いたりするわけです。現実は、皆さんの周辺はいかがなものでしょうか。
  41. 山川秀正

    参考人山川秀正君) 今の御質問ですけれども、実際問題としては、経営規模拡大、これにはやはり限度があるというふうに私は率直に考えております。  昨年も、ある町村で百ヘクタールぐらい作っている方が結果的に二十ヘクタールの収穫を放棄した。北海道の場合は、当然十一月の下旬になると降雪がある、気象的な要件からして、確かに規模拡大をどんどん頑張ってやっていても、やはりそういう自然条件、これに左右されることは間違いない事実だというふうに考えています。  そういった点では、規模拡大路線一辺倒で本当にいいのか。先ほども触れましたけれども、規模拡大を目指す人、今の現状で農業経営を続けたいというふうに望んでいる人等々、やはり様々な形態の農業経営があってこそ、地域が、地域社会が成り立つ。  実際、私の住んでいる地域も小学校が廃校になりました。保育所は辛うじてまだ一桁の人数で生き残っているんですけれども、そういう状況の中で、例えば通院する、こういうことでさえ不可能になってくる。そういう今の地域社会の疲弊の状況、これが、TPPの中でグローバル企業もうけ一辺倒というそういう流れでは、北海道の地域にとってはまさしく大変極めて厳しい状況になるんではないかと思います。  負債の問題も、これ、実は私自身も農業経営始めて四十数年になるんですけれども、自分自身が農業を受け継いだときには実は十ヘクタールにも満たない農業経営でした。分家だということも含めて、そういう状況の中で、当然、規模拡大して一定の農業経営をやりたいという、そういう夢も含めて、その後、三十ヘクタールぐらい購入をした、それで、結果的には、ピーク時には一億円を超える負債を抱えて農業経営をやってきたと。  そういう状況の中で、自分自身もよくここまで生き残ってこれたなというふうに率直に思っています。それは、相当覚悟を決めて、高収入作物、経営規模が大きくても野菜を作る等々、高収入作物を作るという前提で頑張ってきて、何とか今、それこそ四桁、まあ一千万円を切るような状況まで経営を改善してきているというか、経営を維持してきたわけですけれども、今規模拡大をすると、結果的に土地を購入する資金を借りる、例えば、先ほど言いましたけれども、産地パワーアップ事業等々で牛舎を建てる、搾乳ロボットを二台入れる。そうすると、大体、私ども、走って歩いて、見て歩いて何を言うか、二億円借金したなと言うんですよ。二億円ですよ。  そういう状況の中で本当に経営が継続できるのかというのは、私も大きな疑問を抱えておりますし、よくこの頃言うんですけれども、一億円の売上げで九千万の経費を使うのも、三千万円の売上げで二千万の経費を使うのも、残る金は一千万、一緒じゃないのか、どちらが人間らしい生活ができるのか。そういう視点も是非、農政を進める上で、TPPのこういう議論を進める上で生かしていただきたいというふうに率直に思っています。  以上です。
  42. 相原久美子

    相原久美子君 ありがとうございます。  渡邊参考人にもお伺いしたかったのですが、ちょっと時間がないので、関税というのが、実は、財政収入を目的とする財政関税、それから国内産業保護を目的とする保護関税があるわけですけれども、私、本当にこの関税というものの成り立ち等々から、別に保護主義に走れとか鎖国主義に走れということではないのですが、やっぱり天然資源の少ない日本にあっては、これは、保護関税というのはやはり一定程度必要なのではないかという私は持論なのですが、先生、質疑、もう時間ありませんので、端的にお願いできれば。渡邊先生。
  43. 柘植芳文

    委員長柘植芳文君) じゃ、最後、簡潔にひとつお願いします。
  44. 渡邊頼純

    参考人渡邊頼純君) ありがとうございます。  関税は、国内産業を守るための手段として、その正当な手段として認められていると思います。日本の工業関税の平均は今実質ベースで一・九%、それに対して農業関税の方は大体一二%ということになっています。ですから、一・九の製造業と一二%の農産品の保護という意味では、関税は十分農産品を保護している。中には、米のように七七八%とか、麦の場合のように二五〇%とかというように、非常に高率の関税があるわけですから、そういう意味では、農業関税もしかるべく日本の農業に対して保護的な機能を果たしているというふうに考えております。
  45. 相原久美子

    相原久美子君 ありがとうございました。
  46. 田村智子

    田村智子君 日本共産党の田村智子です。  参考人の皆さん、ありがとうございます。  今日、午前中、私たち、農水委員会との連合審査会というのを行いました。その中で、農水大臣の答弁で、このTPP11による輸入増を試算していない、輸出も試算していないと、こういう答弁で、本当に耳を疑うような答弁の連続だったわけですけれども、にもかかわらず、農業の影響、これはゼロ%、ゼロ%というのが品目でずっと並ぶわけです。  これは山川参考人にお聞きをしたいんですけれども、政府が出している影響試算では、農林水産物全体では九百億から一千五百億円の生産額の減少はあると。小麦でいうと二十九から六十五億円、大きいところで、牛肉でいうと二百から三百九十九億円ですか。ところが、いずれも、小麦も牛肉も大麦も、ほぼ全ての項目が生産量は減少しない、ゼロ%であると、こういう試算を私たちに示すわけです。これ、理解ができないんですよ、まず、私たちには。  一体、北海道の農家の皆さんに政府はどんな説明をされていて、率直にこの試算、山川参考人はどのように受け止めておられるのか、お聞かせください。
  47. 山川秀正

    参考人山川秀正君) ただいまといいますか、今の話、午前中そういうやり取りがあったという話を今日東京に着いてからお聞きをいたしました。  率直に言って、私自身も、何といいますか、耳を疑うといいますか、全ての農産物がほとんど影響ゼロというそういう評価をしながら、輸入増も輸出増についても要するに何ら試算をしないで、何を根拠に実はそういう試算をしているのかというのが非常に不明確といいますか、今、北海道でどんな説明をされているかという話もありましたけれども、実際問題としては、TPP12のときもそうでしたし、11のとき、今もそうですけれども、その実態が、要するに現場まで、農民にまで明らかになっていない。これは、国会での議論でも何かのり弁当みたいな資料が出されてという話がよくされておりますけれども、まさしく、そういう交渉内容、それから影響がどうなるかということは何ら明らかにされていないという、そういう大きな不安を持っております。  実は、TPP12の発足当時は、私どもの住んでいる十勝管内は、農協や町村等々を含め、各種団体も含めて二十五団体がTPP反対ということで、それこそ三千人の大集会を成功させ、TPP反対の大きな運動のうねりをつくる、そのきっかけをつくりました。そういった点では、そのときに試算したのは、私どもの地域にある北海道の出先機関は、十勝管内だけでも五千四百億円の減収になるという試算をしました。そのTPP12、これが11になって何が変わったのか、これも明らかになっていない。  先ほども話しましたけれども、牛肉の輸入枠等々についてはそのまま、実はアメリカが抜けてもそのままだと、そこの数字を見てほくそ笑んでいるのはオーストラリアやニュージーランドではないかと言われていると、そういう現状の中で、本当に試算がゼロ、影響額ゼロというのは、私も信じられないというふうに率直に思っています。  先ほども言いましたとおり、小麦マークアップ、これで輸入差益によって今経営安定対策の支援されているんだけれども、これがなくなることは紛れもない事実だけれども、その支援はどうするのか。農業予算を増やすのか。どんどんと農業予算が減ってきて、ピーク時と比べると半分近くまで減っている状況の中で農業予算を増やすのか、そういうことに対して国民の大きな合意が得られるのか等々を含めて、是非そういう議論を深めていただきたいと。  現場では、先ほども言いましたとおり、なかなかこれ以上生産を増やすことは困難だよという、そういう率直な受け止めがあるということだけ申し上げておきたいと思います。
  48. 田村智子

    田村智子君 もう一問、山川参考人にお聞きしたいんですけど、恐らく、ですから、政府が出してきている、生産量は減少しないよと、だけど生産額として小麦でいうと二十九から六十五億円の縮減があるというのは、それぐらいコスト削減せよ、それで輸入で入ってくるものとの価格が横並びになるような努力をせいと、あるいは、そのための支援をするよというような意味なのかなというふうに理解をしているんですけれども。  先ほど、大規模化といっても、もう様々な限界もあるというお話もお聞きしましたけれども、そもそも、他の産業ですと、経営者に対して大規模化しなかったら生き残れないよと言わんばかりの政府の押し付けが行われるなんてあり得ない話で、それだけ考えてもいかに農業経営者を軽んじているか、大規模化しなければ、コスト削減しなければあなたのところは生き残れないよと、言わば脅し付けるような支援策だというふうに私には見えるんですね。そんなこと、ほかの産業ではあり得ないですよ。そうまでしてやる。  だけど、私はこの間、国際的にも、例えば農業の家族的経営というのが見直されて、家族的経営の国際年というのが、昨年でしたか、行われるということも含めて、日本の農業の強みはある意味ロボット任せではないところ、家族的経営であったりとか、適正規模による農業経営を行ってきたというのが、品質の高い、生産量の高い、そういう農業にもつながってきたのではないだろうかというようにも思うんです。  大規模化一辺倒では経営上困難というだけでなく、農業発展というふうに考えたときに、この大規模化一辺倒というやり方がどうなのか、これについてもちょっと山川参考人の御意見お聞かせいただければと思います。
  49. 山川秀正

    参考人山川秀正君) 私もこの頃、消費者の方から質問を受けたときに、少し極論めいたお話もさせていただいております。  一つは、規模拡大、法人化、農業への企業参入という話がよくされるんですけれども、極論をすれば、企業が参入するということは、当然農家と企業の資本の差は歴然としているわけですから、せっかく戦後、農地改革によって農地を農民に、家族経営をつくる、こういうスタンスで進めてきた農政をまた戦前の地主と小作の関係に戻すのかという、実は極端な話を一つさせていただいております。  それから、農業を輸出産業にという問題についても、確かに、先ほど両先生がおっしゃっているとおり、局所的にはそういう面もあるというふうに見ております。でも、それは本当の局所でしかない。  例えば、十勝の農業は、そういった点では輸出産業、輸出農業のモデルケースみたいなことも言われております。十勝管内にある帯広かわにし農協はナガイモを輸出しているんだという話をよくされます。そこで、実はナガイモを作っている川西の農家に直接お話を聞いたんですけれども、実はアメリカにナガイモの売り込みといいますか、行ってきたと、生産者として。だけど、ナガイモを食べているのはアジア系の人間だけなんだと、欧米系の人たちがナガイモを食う食文化はないんだというふうに明確におっしゃっていました。  まさしく、米を食べる食文化も、それから魚やそういったものを食べる食文化も局所的であって、これが世界全般のスタンダードになるということは私はないというふうに考えております。そういう状況の中で、北海道の農業をどう守り発展させていくかというのは、先ほども言いましたとおり、本当に様々な形態の農業経営が生き残ってこその北海道の地域社会、地域経済発展だというふうに思っています。そこをやっぱり握って離さないということを貫いていきたいというふうに思っています。
  50. 田村智子

    田村智子君 ありがとうございます。  磯田参考人にお聞きいたします。  今日お配りいただいたペーパーの三ページ目のところに、ISDSに対する懸念というのをお書きいただいています。TPP12から11になって、このISDSのところは凍結されたから大丈夫だというのがかなり、何というんですか、誘導的に振りまかれた論かなというふうにも思っているんですけれども、この中でいわゆる凍結というのは正確ではないというふうにお書きいただいていまして、少し、短い時間では難しいかもしれないんですけれども、この点お聞かせいただければなと、分かりやすく、お願いします。
  51. 磯田宏

    参考人磯田宏君) 御質問ありがとうございます。  そこに配っていただいた紙に書いてあるとおりでございますけれども、五の①のところでございまして、投資家国家間紛争解決システムの対象外にされるのは、投資について言いますと、金融サービスはちょっとおいておいて、投資に関する合意、これはそこに、文書に括弧書きしておりますけれども、中央政府当局と外国投資家の間で結ばれた、政府規制管理下に置いている天然資源に関する権利を例えば外国投資家に使わせる、そういう投資についての合意をしたとか、日本でも今るる議論がされていますけれども、水道その他の公共サービスを提供する、そういう事業について民営化すると、それを外国投資家に委ねるというそういう内容の投資に関する合意をしたとか、あるいは、インフラ整備の実施についても日本流に言えばPFIで民間に委ねると、こういう投資に関する合意をした、こういうものについては凍結するということなので、日本が受け身になるということもないではないと思いますが、これは特にやっぱり途上国が、こういう投資に関する合意とか投資の許可というものをアメリカが入らないんだからせめて凍結してくれよという話になったと、こういうふうに理解しております。  そういう意味からすると、確かに途上国にとってはこの凍結は一定の意味を持ち得るところがある、彼らの懸念にかなり応えている側面はあろうかと思います。しかし、日本に関して、投資を受ける側としての日本という観点から見た場合には、この投資の本体、投資財産という名称で言われている投資の本体については何ら凍結の対象にはなっていないというところは銘記しておく必要があると、こういうことが申し上げたかったところでございます。
  52. 田村智子

    田村智子君 ありがとうございます。  渡邊参考人にもお聞きをいたします。  参考人は、やっぱりTPP12のときにも国会にもお越しいただいて、TPPの12のときはこれはもう日米間なんだと、大きくは、日米のやっぱり事実上のFTAに向かうような自由貿易協定ができることに大きな意義があるという立場で様々な論説もお書きいただいたのを資料としても読みました。  そのアメリカが抜けた下で、なぜほぼそのままの中身なんだろうかということを私、非常に疑問に思っています。しかも、第六条では、じゃアメリカが完全に入らないよということが見込まれたときには締約国の申出によっての再協議アメリカ抜きでの協議であるにもかかわらず、第六条でアメリカが本当にもう入らないのならってわざわざこう置く。これ、このTPP11って一体何なんだろうかというふうに率直に思うんですけれども、その点についての御見解をお願いします。
  53. 渡邊頼純

    参考人渡邊頼純君) ありがとうございます。  それは先生、どうも、大変すばらしい質問だと思うんですね。TPP11と12はどう違うかということにも通じるかと思うんですが、基本的には、TPP11というのはアメリカトランプ政権が未来永劫続くものではないという認識の下にあるわけなんですね。つまり、今のトランプ政権TPP12に背を向けているけれども、しかし、次の政権、誰が出てくるかはまだ分かりませんが、これは分かりません。あるいは、もう既にダボス会議以降、時折トランプさんがTPPへの復帰ということをにおわせています。ですから、ひょっとしたらトランプ政権の後半には、第一期のトランプ政権の後半にもひょっとしたらあり得るかもしれないと。  ですから、TPP11というのは、TPP12でできたアジア太平洋地域におけるバリューチェーンを深化させていくという、そういうしかも自由で開かれたその貿易メカニズムというものを、これを何とか維持しようとするための受皿ということがあるんだろうと思います。ですから、未来永劫アメリカが帰ってこないということであれば、そもそもTPP11というのは必要なかったのかもしれない。しかし、TPP11を維持することによって少なくとも、確かに世界貿易に占める比率は四〇%から一五%ぐらいまで落ちました、でも、その中でアジア太平洋地域を巻き込んで、基本的には開かれて自由な貿易投資のプラットフォームというのを維持していくということがまさにTPP11の重要性であるというふうに考えております。
  54. 田村智子

    田村智子君 ありがとうございました。終わります。
  55. 清水貴之

    ○清水貴之君 日本維新の会の清水と申します。  今日は、本当にお忙しい中、貴重なお時間、そして貴重なお話、ありがとうございます。  まずは、私は、渡邊参考人にお聞きしたいと思います。  もう基本的なことになるのかもしれませんけれども、今日、ここまでの話でも、やっぱり様々な懸念事項、特に日本では農業に関しての懸案、懸念というのがあります。渡邊参考人お話ですと、やっぱり自動車でも日本は涙をのんでいるんだという話がありました。  これまで様々なそういう協定、条約等の交渉をされてきた渡邊参考人、各国、やっぱりここは守りたいし、ここは攻めたいしと、もういろんなせめぎ合いがある中でこういったものが作られていくんだと思うんですが、でも、そういうせめぎ合いをしながら、泣くところは泣きながら、でもこういう自由貿易社会を進めていく、その意義というのはどこにあるとお考えでしょうか。
  56. 渡邊頼純

    参考人渡邊頼純君) ありがとうございます。  これはもうひとえに、第二次世界大戦に至る道筋を少し思い出していただきたいと思うんですが、やはり世界が、一九二九年のあの暗黒の木曜日、十月二十二日だったと思いますが、ここでウォールストリートの株価が暴落して、世界大恐慌になると。その大恐慌の中で各国は、それぞれが自分さえ良ければいいという自国優先主義に陥るわけですね。その中で、各国は関税障壁を高めたりして、そして数量規制を設けたりして、他の国から入ってくるものをできるだけ阻止するという重商主義的あるいは保護主義的な政策を取りました。その結果が第二次世界大戦に入っていく、そういう流れをつくるわけですね。  ですから、なぜそこまでして痛み分けをしながら、センシティビティーをお互いに交換したり乗り越えたりしながら、なぜ交渉が重要なのかといえば、同じような第二次世界大戦に至ったようなあの悲劇を繰り返さないということがとても重要なんですね。  ですから、そのときに、製造業は自由貿易だけど農業は保護主義でいくと、これは多分ダブルスタンダードということで受け入れられない。農業についても、それから産業についても、サービス産業についても、この自由貿易主義というものを貫いていくということが重要。ですから、やっぱりTPPというのは、一つ、農業においても日本が自由貿易で十分やっていける、攻めの農業ということも言われて久しいわけですけど、いよいよそういうところに今たどり着いたという意味で、日本はある意味で、製造業だけではなく農業でも自由貿易を使って、これから日本の農産品を外にどんどん展開をしていくということを申し上げたいと思います。
  57. 清水貴之

    ○清水貴之君 もう一点、渡邊参考人にお聞きしたいんですが、様々交渉をされてきた経験からまたこれもお伺いしたいんですけれども、今回の交渉でも、その交渉の過程がどうもはっきりしない、不明確じゃないかとか、記録であったりそういったものがちゃんと残っていないんじゃないかとかいう話も出てきています。磯田参考人の方からも、今回の論点の一番目では、将来的な不確実性というのを挙げられております。市場開放協議するメカニズムが幾重にも組み込まれていって、不透明な要素が多いというような懸念を示されています。  実際、どうなんでしょうか。こういう交渉事というのはやっぱりもうそういうものだというような、不透明な部分がある、不確実性がやっぱりあるというものなのか、今回のTPPのこの中身を御覧になっていて、いや違いますよと、その辺ははっきりしているんですよというふうなお考えをお持ちなのか、これに関してはいかがでしょうか。
  58. 渡邊頼純

    参考人渡邊頼純君) ありがとうございます。  経済交渉も外交交渉であるということですね。ですから、外交交渉というのは、いろんな関心を持っている人、いわゆるステークホルダーが巻き込まれていますので、そのステークホルダーの一部にだけ例えば情報を出すということは多分バランスを欠いたりするんだろうと思いますし、ある意味で、相手国を説得するために国内を説得する必要もあるでしょうし、ステークホルダーというのは国境の向こう側にもいるわけですよね。ですから、そういう意味では、経済交渉といえども外交交渉であるという一面があって、その外交交渉というのは、交渉プロセスはやはり秘匿性といいましょうか、何といいましょうか、交渉プロセスにおいて全てを明らかにしていったのでは交渉は十分にできないというふうに私は考えております。  ですから、大事なことは、その交渉で出てきたものについて、これを十分に説明責任を果たすということ、それからステークホルダーに対して十分な説明を提供していくということ、そういうことはとても重要だろうと思うんですね。ですから、まさにそういう情報の開示というのを、交渉がまとまった後、特にこういうような場で、国会の場でそういう議論もされるでしょうし、そういうことがとても重要だと思います。  それから、全てのこういう経済協定というのは、FTAEPATPPもすべからく不完全なものですね。不完全なものです。お互いに痛み分けもしています。ですから、五年たったら、七年たったら、八年たったらその経済協定をもう一度見直しましょうという、いわゆるアメンドメントという条項がどの協定にも入っているわけですね。ですから、そういうプロセスでもう一度議論することもできるわけです。ですから、TPPもこれで終わりというわけではない。そして、また新しいメンバーが入ってくるときには二国間の交渉もするわけですね。ですから、そういう形で絶えず新たにしていくことができる、それがこういった経済協定の特徴だと思います。  もし今回のTPP11で問題があれば、それを次の交渉のときに改善するように日本として努力すればいいわけですね。ですから、何といいましょうか、静態的に、スタティックに捉えるのではなくて、ダイナミックなプロセスとして交渉プロセスを見る必要があると思います。  以上です。
  59. 清水貴之

    ○清水貴之君 ありがとうございます。  山川参考人に現場のお話聞かせていただきたいんですけれども、やはり、TPPで農業を強くとか攻めの農業という話が必ず出てきます。先ほどもそういった輸出という話も出ておりまして、山川参考人お話だと、ニーズの面が、海外に行った場合に、じゃ、それほど日本のお米、山芋等が広がるのかというようなお話をされていらっしゃいました。  ただ、理想的というか、今後、日本は人口が減っていきますので、国内消費が減る中で、もうそれこそ、日本農産物が十分に輸出されて、しかも高く売れて、農家の皆さんも収入が増えるという、これは非常に理想的な形ではないかなとは、僕も現場を知らない、理想論だとそう思うんですが、現場にいらっしゃって、そういったお話というのは、いや、それはさすがにちょっと絵に描いた餅じゃないかなと思われるのか、いや、それもできないこともないと、ただ、それをやろうと思ったら例えば輸出に関するノウハウがないんだとか、ここをこう補ってくれたらそういった方向にも転換できるんじゃないかみたいな、何か提言とかがあったら教えていただきたいんですけれども。
  60. 山川秀正

    参考人山川秀正君) 農業、攻めの農業、輸出産業にというのは、確かに一面、そういう側面があってもいいというふうには率直に思っています。ただ、冒頭の意見でも言わさせていただきましたけれども、日本の場合、食料自給率が三八%なんですよ。三八%の国が食料輸出を考える必要があるのか、まずそのことを私は問いたい。そこに是非視点を当てていただきたいというのを率直に思っています。  自給率が例えばフランスのように一〇〇を超えている、これはやっぱり輸出戦略考えなきゃいけない、これは当然だと思います。だけれども、三八%の国、将来とも三八%しか実は自給率は行かないと。基本計画に掲げている四五までこのTPP11入っても行かない、そういう数値をはじき出している状況の中で、そういう議論が、輸出産業にという議論をすること自体、まず真正面からどうなのかということを、実は是非国民、消費者の皆さんにも、そういう議論を是非国会の中で巻き起こして、消費者を巻き込んで合意をつくるというところに目指してほしいなというふうに率直に思っています。  今の、先ほどEUの話も若干させていただきましたけれども、農業というのは自由貿易になじまないんだ、そういう部分があることを十分理解する必要がある、そこを是非私は主張したいと。  それからもう一点、今、例えばアメリカが輸出している、これは輸出補助金という、そういうものがあって日本に安く農産物が入ってきていると。農民が生産した価格、それそのままストレートに入っているんでない。日本の場合は、コスト削減してストレートに出して、もうかる農業、国際競争力に勝てる農業、攻めの農業をすれ、これでは私は成り立たないというふうに率直に思っています。  そういった点では、是非そういう国民合意という点で、食料に国際競争、自由貿易がなじむかなじまないか、そういう視点での議論を深めていただきたいということを逆に私の方からも要望したいと思います。
  61. 清水貴之

    ○清水貴之君 ありがとうございます。  磯田参考人にも、その輸出についてお伺いをしたいと思います。このコメントでも、いただいているペーパーでも、一定の成長の余地はあるけれども、やっぱり分野が限られているというふうに書かれておられます。冒頭の十五分間の説明のところで輸出部分はそれほど深くはお話しいただけなかったなというふうに思いましたので、輸出に関してのお考えを聞かせていただけたらと思います。
  62. 磯田宏

    参考人磯田宏君) 御質問ありがとうございます。  まず、これは、そのまさにエキスパートでいらっしゃる参考人渡邊先生のいらっしゃるところで申し上げるのは僣越でありますけれども、国際間の貿易が生じる根底には、相対的に見て、それぞれの国の与えられた自然的、地理的条件あるいは歴史的な技術や資本の蓄積の条件等々に規定された、相対的にどの産業が優位性を持っているかということがまずあって、その相対的に優位な産業にそれぞれの国がより専門化する、特化していく、そのことが国際間の貿易を盛んにしていくという、まさに十九世紀の初頭に打ち立てられて、今日、いろんな方法論の違いはあっても、ほとんどの経済学者がその原理そのものは肯定している比較生産費説という議論がございますけれども、そこから言えることは、そもそも、現実的には、先ほどの中山間地域が多いであるとか、例えば、大規模化といっても、まあ北海道大規模ですけど、私がほぼ毎年のように足を運んでいるアメリカの中西部、穀倉地帯の大規模畑作経営と比べれば桁が全く違うと。私が向こうで見た最大級は八千ヘクタール、一経営で八千ヘクタール、トウモロコシ、大豆を八千ヘクタール作ると、こういうような経営があったりもしますので、そもそも、北海道といえども、アメリカ的水準から見れば、あるいは新大陸的水準から見れば小規模経営であると。こういうことがあり、それに加えて、中山間地域が四割以上を占めるという中では、そういう自然的、地勢的条件からして容易に分かることですが、農業が丸ごと、相対的に農業が丸ごと、日本の農業が丸ごと比較優位産業になるということはあり得ないわけですね。  逆に、そういうことがもしあるとすれば、そのときは日本のほかの産業、例えば、今、日本では自動車産業がほぼ独り頑張っている、輸出で頑張っている、黒字を稼いでいる産業になりつつありますけれども、そういう産業がむしろ比較劣位化するということと裏返しでしかそういうことは生じないわけですね。アメリカが農業で比較優位だというのも、実はアメリカの製造業が劣位になっていることとセットで起きている状況ですから。  そういう点からすると、やや理屈っぽくなって恐縮でありましたけれども、日本の農業が丸ごと輸出産業化できる、その根底としての国際的な比較優位産業になり得るということは理論的に考えてもあり得ないことであるし、また、日本の現実に即して見れば、より実感を持って明言できることではないかというふうに考えております。
  63. 清水貴之

    ○清水貴之君 どうもありがとうございました。終わります。
  64. 山本太郎

    ○山本太郎君 ありがとうございます。自由党共同代表、山本太郎です。  先生方、本当に分かりやすいお話、勉強になりました。ありがとうございます。  まず、渡邊先生にお聞きしたいんですけれども、アメリカによる追加関税措置のWTOルール、この適合性についてお聞きしたいと思います。  アメリカは、三月、鉄鋼に二五パー、アルミニウムに一〇パーの追加関税を課す輸入制限措置を発動させたと。韓国は、米韓FTAの再交渉で大幅な譲歩をのむことを引換えに鉄鋼の輸入制限の対象から除外されて、オーストラリア、アルゼンチン、ブラジルも、輸入増加への対策強化で大筋合意に達したとして適用除外された。他方、NAFTA加盟国であるカナダだったりとかメキシコとかEUに対しては、一定期間を区切って猶予されていたけれども、それぞれNAFTA交渉及びEUとの関税交渉が不調に終わったため、これらの国と地域にも追加関税措置が発動されたということだったんですけれども。  先生の御見解として、今回のアメリカの追加関税措置というのはWTOルールに適合したものであるとお考えになりますか。アメリカは安全保障を理由として措置をとっているという説明だったと思うんですけど、このような主張は国際的に認められるものなんでしょうか。
  65. 渡邊頼純

    参考人渡邊頼純君) 山本先生、どうも御質問ありがとうございます。  まず、非常に率直に申し上げて、このアメリカの鉄鋼、アルミに対する追加関税、これはWTOルールに照らしますと、全くの違法行為であります。ですから、これはもう全く弁明の余地がないWTO違反であると思います。  ただ、アメリカはこれを、一九六二年の貿易拡大法、ちょうどケネディ・ラウンドをやるために、アメリカの議会がケネディあるいはジョンソン政権に交渉マンデートを与えるために作ったのがこの一九六二年の通商拡大法ですが、その二百三十二条を使ってこの正当性を主張しております。二百三十二条というのは、御存じのように、国家の安全保障に対する脅威ということが理由でございます。それを使って二五%とそれから一〇%という追加関税を掛けたというのは、これはおよそこれまで通商の歴史で余り例のない異常な措置をとったというふうに理解していいんだろうと思います。  ただ、一つの問題は、この国家安全保障に対する脅威という概念、これの判断は、その脅威を感じている国、これが判断をするんだということがこれまでの数少ない事例の中で積み上げられてきた前例となっております。ですから、そういう意味ではアメリカは非常にうまく考えてその国家安全保障例外というのを使ったというふうに理解しております。
  66. 山本太郎

    ○山本太郎君 なるほど、WTOルール的には違反ではないかと、でも、ほかの安全保障という部分で自分たちをプロテクトしているということだったと思います。  これはもう明らかにアメリカの手法というのは、違反しようとも一方的な措置をもう発動させて、それを除外してほしかったら俺たちの言うことを聞けよというようなやり方だと。非常に私としてはちょっと許せないといいますか、これ、何とか求めていくという形よりも、他国がやっているようにWTOに提訴するだとか、例えば報復関税だったりとか、こっちにも牛肉だったりとか豚肉だったり強い味方がいますから、そういう意味で、対抗措置として、それが実際になされるかなされないかは別にして、そういったメッセージの投げ方、それちょっとやり過ぎだよというようなやり取りは、独立した国家としては普通にみんなそれを、意思表明というものをするものだと思うんですけれども、先生としては取り得る対策としてベストなものは何だと思われますか。
  67. 渡邊頼純

    参考人渡邊頼純君) 私は、良くもあしくもガット・WTO屋でございます。つまり、貿易紛争の問題というのは多国間のルールに従ってルールに基づいた解決、いわゆるルールベースソリューションというものを求めていくべきだと考えておりますので、基本はWTOへの提訴ということであって、制裁とか報復とかというようなことも、このWTOの紛争解決手続にのっとった制裁ないしは報復ということですね。つまりは、WTOでオーソライズされた、WTOでこれはやってよろしいということを認められた制裁をアメリカに対してする。そのためにも、WTOにきちっと提訴をするということが重要だろうと考えております。
  68. 山本太郎

    ○山本太郎君 ありがとうございます。  そうですよね。そういう協定といいますか枠組みがあるんだから、その中のルールにのっとって言うべきことは言っていくという姿勢というのは非常に真っ当だと思います。日本もそういう姿勢を示すべきだと私は思います。  この元々のTPPの中にもなんですけれども、ISDSというものを非常に懸念される方々が非常に多いということがあるんですけれども、一方では、世界ではISDSではない紛争解決の方法というものもでき上がってきています。なぜ日本がここまでISDSに対してこだわりを持っているのかということを、渡邊先生、御存じであれば教えていただけますか。
  69. 渡邊頼純

    参考人渡邊頼純君) 御質問ありがとうございます。  実は、このISDSというのは、私自身交渉を担当させていただきました日本メキシコとのEPAもそうなんですが、日本がこれまで行ってきた二国間のEPAのほぼ全てにISDSが入っております。  これは、産業界にいろいろヒアリングとかしますと、是非それを入れてほしいとむしろ産業界からリクエストがあって、それは要するに、最初投資をしていくときに、投資をしてほしい相手の、日本EPAの対象国は途上国が当初多かったものですから、そういう途上国は投資をしてほしいから、いろいろ投資のいい条件を言ってくるわけですね。ところが、実際に投資をした一年、二年後には当初の約束と違うことを言ってきたりすると。そういうことが結構あるので、投資家対国家の紛争処理というものを、実際に使うか使わないかは横に置いておいても、ある種の安全弁として、セーフティーネットとして入れておいてほしいということが産業界から強くありました。ですから、投資についてのISDS、つまり投資家対国家の紛争処理ですね、これを入れるということが基本線としてあったわけです。  入っていないのはどういう国との二国間のEPAかといいますと、一つはフィリピン、もう一つはオーストラリアでございます。フィリピンは、フィリピンの憲法の中に、外国人がフィリピン政府を訴えることはできないという何か条項が入っているという説明でございました。だから、フィリピンはできない。それから、オーストラリアは当時ギラード政権でして、ギラード政権はISDSに、フィリップ・モリスというたばこの関係の紛争があったものですから、これはギラード政権は当時はノーと言いました。  ですから、日本がやってきたEPA、十五のうち、今申し上げたフィリピンとオーストラリアはISDSが入っていないということなんですね。日・ASEANの包括的経済連携を除きますと、ほかの二国間のEPAには入っているという状態でございます。  ですから、TPPにおいても同じような形で、つまり安全弁、日本からの投資家、日本から行っている投資家の保護ということを考えて、このISDSというものを日本政府としては強く押し出したということでございます。
  70. 山本太郎

    ○山本太郎君 ありがとうございます。  確かに、今まで結んできた二国間の協定であったりとか貿易協定だったりとか投資協定という部分にはISDS入っているものがあったけれども、その多くが途上国が多くて、どちらかというと、日本側が投資をするから、逆に言うと日本側を守るというようなISDSの使われ方だったんですけれども、TPP、この先、現在の加盟国以上の国もよければ手を挙げてくださいというような中で、逆に日本側に投資をされるということになると、日本もその訴えられる当事国になり得る話だという意味で、これまでのISDSとは大きく形が変わっていく、解釈が変わっていかなきゃならないんだろうなというふうには思うんですけれども。  その紛争解決に当たる例えば別の方法、ヨーロッパでいえばICSですか、というようなものも出てきました。もう既に、ベトナムとの交渉であったりとかカナダとの交渉でこのICSというものを入れていこうよというような話になっているとは思うんですけれども、特に日欧の約束の中でも、ここがクリアできなかったから投資という部分投資の章という部分が結べなかったということもあったと思うんですよね。  ある意味、もう今の世界の流れとして、ちょっとISDS危険だよね、新しい枠組みでICSというものはどうなんだろうというような考え方になってきているとは思うんですが、短めに、ICSへの評価といいますか、これは渡邊先生と磯田先生それぞれにいただいてもよろしいでしょうか。
  71. 渡邊頼純

    参考人渡邊頼純君) 御質問ありがとうございます。  このEUが提唱してきているいわゆる国際投資法廷といいましょうか、これは、それはそれでメリットがいろいろあると思います。それで、日本としては、これから、一方でISDS、一方でICS、これを見ながらそのそれぞれの良さを検討していく、欠点も検討していくということで、政策的には選択の可能性があるんだろうと思います。  大事なことは、投資の紛争も、力に任せた紛争解決ではなくて、ルールに従って解決するということがポイントということだと思うんですね。ただ、そのICSみたいなものをいわゆる常設裁判所みたいにしてつくると、それに対するコストとか、あるいはそこでの判事をどうするかとかといったような具体的な問題が幾つか出てくるわけですね。そういう問題をEUとも今後は投資協定の中でそれを見ていく必要があると思いますので、そういう中でICSについての理解、あるいは制度構築というものが進んでいくのではないかと考えております。  以上です。
  72. 磯田宏

    参考人磯田宏君) 御質問ありがとうございます。  これはまさに参考人渡邊先生の御専門中の御専門の一環かと思いますが、私にも御質問ということなので、お答えさせていただきます。  結論的に言うと、一定の前進ないしは改善の方向性であるというふうに見ておりますし、そういう期待を持っておりますが、まだ評価するには早いと、結論だけ先に言うとそういうことです。  どういう点で前進なり改善の期待を持つかということについては、山本先生も御案内のように、裁判官といいますか、従来のISDSでいうところの仲裁人に当たる裁判官なり判事というものを、一種の、EUならEU、それから相手国、そして第三国から三の倍数でリストを出しておいて、言わばプールしておいて、案件が持ち上がるごとにそこからある種偏りがない形で、どういう方法なのか正確にまだ私はつまびらかにできておりませんけれども、抽出して、そしてその法廷を組むということ、そのことを通じて、かつ、それらの裁判官になる法律家たちは、いずれの国家との関係性もあってはならないとか、一旦指名されたら利害関係が及ぶような投資家や多国籍企業等との顧問関係的なものは一切絶たなければいけないとか、あるいは独自に定める行動規範に従うことを義務付けるとか、そういうことをうたっていて、そういう意味では、独立性だとか公平性だとか公共の利益に対する配慮だとかいったような先生御指摘のようなものを目指しているという、そのある種の目標値、目標として掲げている一種の方向性としては、今のISDSと比べれば改善の期待を持てるところがあると。  ただし、私の場合もそうですが、ISDSの評価をする場合の最も重要な根拠は、実際にどういう裁定を出してきたか、それが当事国やその国民や地域住民にどういうものをもたらすそういう裁定を出してきたかということに基づいて評価をするというのが一番重要なポイントになりますので、その点でまだ実績が基本的にないわけですので、評価はまだ留保せざるを得ないということでございます。
  73. 山本太郎

    ○山本太郎君 ありがとうございます。  そういう世界枠組みというか、協定だったりいろんな決め事というのはすべからく不完全だと渡邊先生もおっしゃいました。それは、足りない部分があったら足していったりとかということも必要なんだというお話だと思うんですね。  TPPは生きた協定ともよく言われていました。だからこそ、数々の小委員会による追加的な協議メカニズムというものがビルトインされているのかなというふうには思うんですが、ここ、恐らく話し合われることというのは、適用範囲の拡大、要は自由な貿易というものを進めていくんだから、それが中心になっていくのかなと思うんですけど、その自由度ということを考えた場合に、適用外とされていたものが、元々は適用外とされていたものが話合いの末に合意形成されていくならば、適用外が適用されていくというような見直しということも先々されていく可能性はあると思われますか、渡邊先生。
  74. 柘植芳文

    委員長柘植芳文君) 時間が来ておりますので、簡潔にお願いいたします。
  75. 渡邊頼純

    参考人渡邊頼純君) 分かりました。  簡潔に申し上げますが、適用範囲の外の問題を中に入れていくときには、これ当然、いわゆる修正交渉、修正のための交渉というのをやらなければならないんだろうと思います。ですから、そういう意味では、新しい要素というものを協定の中に入れ込んでいくということになれば、これは新しい交渉が必要になると思います。  他方では、例えば私が担当していたメキシコとの経済連携協定の場合など、例えばメキシコにおける治安の悪化なんという問題があったわけです。そういう問題は必ずしも協定の範囲ではないんですが、ビジネス環境整備という章がございまして、そのビジネス環境整備というチャプターの中で、日本から問題提起してメキシコ国内における治安の改善ということを言って、それを先生御指摘の小委員会の中で議論したことはあります。これは、ですから協定の中ではありませんけれども、ビジネス環境整備というチャプターの中で、国内の治安の改善という問題意識を日本の側からインプットして議論していただいたということは、そういうことはあります。  以上です。
  76. 山本太郎

    ○山本太郎君 終わります。
  77. 柘植芳文

    委員長柘植芳文君) 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。  参考人皆様には、長時間にわたり貴重な御意見をお述べいただきまして、誠にありがとうございました。委員会代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。ありがとうございました。(拍手)  本日はこれにて散会いたします。    午後四時三十四分散会