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参考人(
早川光俊君) おはようございます。CASAという団体の
早川と申します。
お手元にお配りさせていただいているレジュメに沿ってお話をさせていただきます。
私は、どちらかというと、
パリ協定以後、
世界がどういうふうに動いているのか、かなり急速な動きをしていますので、そのことについて
発言し、議員の
皆様の
参考にしていただけたらと思っています。
最初に、グラフ、二酸化炭素濃度四〇〇ppmを超えたという図を示しましたけれども、皆さん御承知のとおりですけれども、四〇〇ppmが何か
意味があるという
意味ではありません。ただ、一直線にもう増加しているということは私たちがまず押さえておかなきゃいかぬことだと思います。大体二ppmぐらいずつ毎年上がっていたのが、最近は三ppm、加速しているということですね。
それで、二枚目の
スライドは、それに伴って
平均気温は
上昇している。二〇一四年、一五年、一六年と三年連続で
世界の
平均気温は過去最高を更新しました。二〇一七年は過去三番目ですから一四年と一五年の間に入ってくるわけですけれども、こういったことが現在起こっているということはまず我々は確認しておかなきゃいかぬ。
そして、その中でいろんなことが起こります。温暖化というのは、恐らく、
地球規模の環境問題の中でも人類の生存に関わる最も大きな環境問題だと思います。
本当に人類の生存に関わってくる、健全な生存ができなくなるかどうかという問題だと思っています。
もう
一つ一つ説明しませんけれども、もちろん、雨の降り方が変わる、気温が上がる、洪水が増える、ただそれ以上に、作物への
影響、食料への
影響とか、それから
人間の健康への
影響というようなことが起こってきます。今すぐ起こるわけじゃありませんけれども、極端現象と言われる現象、例えばグリーンランドの氷が全部解ければ海水面は六、七メーター上がると言われます。南極の氷が全部解ければ六十メートルから七十メートル海水面が上がる。
世界の都市は全て水没してしまうわけですね。そういうことが今始まっているということを我々はまず
認識しなきゃいかぬ。それで、そこにやはり当然、安全保障の問題が関わってくると。
IPCCの第五次
報告書というのがあります。
パリ協定の説明が
山岸さんからありましたけれども、この
パリ協定というのはIPCCの第五次
報告書を踏まえて作られたものだと思います。二度という
目標も、このIPCCの第五次
報告書に書かれているということですね。第一作業部会、第二作業部会、第三作業部会と書いてありますけれども、第二作業部会の、赤字にしてあるところですけれども、「温暖化の進行がより早く、大きくなると、
適応の限界を超える
可能性がある。」、こういう、控えめな形ですけれども、温暖化が進んでしまうともう
適応できないという
状況になってしまうということですね。そして、それが、
一つのめどが二度だということですね。
その下に、二度を超えるとリスクが最高にと書いてありますけれども、これ、右側の棒グラフですけれども、黄色が中程度のリスク、赤が高いリスク、紫はもう非常に高いリスクです。それで、この一番右の棒グラフが、独特で脅威にさらされているシステムと書いてありまして、北極の海氷やサンゴ礁などに対する
影響です。二番目が極端な気象現象。熱波や、それから極端な降水、洪水とかですね。それで、三番目が
影響の分布という棒グラフでして、
影響がより脆弱なところに現れる、途上国であるとか貧しい人たち。それで、四番目が
世界総合的な
影響。生物の多様性とか
世界経済ですね。それで、一番右が大規模な特異現象。全て二度、横に赤い
ラインを引きましたけれども、この下の
ラインが二度ですね。
これ、産業革命以前からの二度ですから、もう既に一度近く上がっていますから、あと一度しか残っていないわけですけれども、この
ラインに来ると、ほとんどもう中程度のリスクか高いレベルのリスクに掛かってくる。そして、それよりも上がってしまえばもう後戻りができない
状況というのが来つつあるということですね。
そして、もう
一つIPCCの
報告書が言ったのが累積
排出量。過去のCO2の累積
排出量と
平均気温の
上昇というのは比例
関係にある、過去の累積
排出量が増えれば、それだけ
平均気温が上がるという
関係にあるということを言いました。
なぜこうなるかというと、私、大気汚染裁判にずっと関わってきましたけれども、大気汚染物質は大体大気中に二週間か三週間しか滞留しません。雨で落ちたり植物に吸収されたりします。だけど、二酸化炭素というのはそうはならないんですね。平均で百年ぐらいの単位で大気中に滞留しますから、こういう
影響を及ぼしてしまう。
そういうことを受けて、
パリ協定ができました。
パリ協定の意義は
山岸さんもおっしゃいましたから繰り返しませんけれども、「歴史的な
パリ協定」の次の「炭素循環」というところを見てもらいたいんですけれども、これ、気象庁のホームページから取ってきたものです。
大体、
人間の
活動で八十九ギガトン、八十九というのは、ギガトンですけれども、の炭素換算で、ぐらいのCO2が排出されます。そして、陸とか海とかに吸収されて、四十ぐらいが大気中に残ってしまう、これが温暖化の原因になっているわけですけれども、
パリ協定はこの四十を全部なくそうという協定です。だけではなくて、この八十九を全て、全て
人間が出したものだから
人間の
活動で相殺しようと。自然界の吸収というのは当てにしない、そうでないと二度未満になりません。四十なくすだけじゃないんですね、八十九全てをなくすというのが
パリ協定の
合意です。そういう
合意を受けて、今
世界は物すごい勢いで変化しつつあります。
四つほど挙げましたけれども、
一つは脱石炭火力、もう
一つがダイベストメント、要するに投資の撤退です。もう
一つはガソリン、ディーゼル車の販売禁止、そして再生可能エネルギーの爆発的な普及ですね。
脱石炭の動きというのは非常にすさまじいものがありまして、もう石炭火力は全部なくすんだという動きが
世界中に広がっています。
COP23が昨年ボンで開かれましたけれども、そのさなかに、脱石炭のグローバル連合というのがイギリスとカナダ
政府の主導で結成されました。私もその結成式に立ち会いましたけれども、かなりの国がもう脱石炭に向けて動き出している、グローバルに動き出している。イギリスとかオーストリア、カナダ、フィンランドなんかはもう脱石炭、石炭火力を全廃するという方向になっています。
ダイベストメント、これは、石炭火力、化石燃料に対する投資から撤退するという動きですけれども、既に七十六か国六百八十八機関、これ、ちょっとデータが古いですから、今はもっと増えていると思うんですけれども、というような動きが広がっています。
世界的な銀行、BNPパリバと書いてありますけれども、これは欧州で、EUで一番大きな銀行ですけれども、ここも石炭、化石燃料への投資を撤退する、
世界銀行も投資を撤退するというふうになっています。
ちなみに、そういった化石燃料に投資しているいろんな企業、銀行なんかをリスト化したNGOのリストがあるんですけれども、
日本は二十ぐらい入っています。まだ石炭火力、化石燃料から撤退が全くできていない。
それと、ガソリン車、ディーゼル車の販売禁止。インド、フランス、イギリス、中国を挙げていますけれども、インドは二〇三〇年にはもう自動車を全て電気自動車にする、中国も今年から既に段階的にこういった
対策を始めています。今年はまだ自主的なものですけれども、来年、二〇一九年度からは強制的に自動車の販売をこういった低炭素型に替えていくという方針を取っています。
世界は思った以上に速く動いているということを私たちは
認識しておく必要があります。残念ながら、
日本は全くこれに付いていっていません。
再生可能エネルギーの動きももう既に一〇〇%、先ほど
山岸さんの話にもありましたけれども、一〇〇%再生可能エネルギーにするということに動き出しています。
パリ協定を
実施しようとしたら、とにかくエネルギー源を替える、それか省エネする、これしかありません。そして、エネルギー源を再生可能エネルギーに全て替えるしかない、一〇〇%です。そうしないとこの
パリ協定の
目標は達成できません。そういった動きが
世界中に広がっている。
グラフを、「
世界の風力、太陽光発電と原発の推移」というふうに掲げましたけれども、一番伸びているのが太陽光と風力とを合わせた年度変化ですね。その次に上がっているのが風力、そして下が太陽光です。そして、横にずっとはっているのが、これ原子力です。
世界は、もう原発ではなくて再生可能エネルギーに完全にシフトしています。最近発表された
資料ですと、再生可能エネルギーが生み出した雇用が三百万というふうに出ています。そういったことに
日本が付いていけているかどうかということですね。
実は、石炭火力、再生可能エネルギーの導入変化幅の相関図とあります。これ安田先生という京大の先生が作ったやつをもらったんですけれども、このグラフの縦軸は、上に行くほど再生可能エネルギーの導入が多い国です。右に行くほど石炭火力の導入が多い国です。ほとんど
世界の先進国は、ゼロから再生可能エネルギーを増やして、石炭火力を減らしています。
日本だけが、再生可能エネルギーをそれほど増やさずに、そして石炭火力を増やそうとしている。赤いところが
日本で、二〇三〇年ではまだ右の下に位置している。これが今の
日本の現状です。これでは、とてもじゃないけれども
世界の動きに付いていけません。
最後にちょっと申し上げたいのは、
適応法案については私はそれほど大きな問題点を感じていません。是非
審議して進めていただきたいと思っています。
ただ、
一つお願いしたいのは、
日本は温暖化問題加害国ですから、その視点を入れていただきたい。
日本は現在の
排出量で
世界五番目です。累積
排出量で
世界で六番目です。先ほど申し上げたように、累積
排出量が
平均気温の
上昇に相関
関係があるならば、過去の累積
排出量はやはりそれだけ温暖化に対する責任を
意味します。そうであれば、やはりその
被害を受ける途上国の子供たち、そして将来世代に思いをはせることが必ず必要だと思っています。
アフガニスタンのことで、中村哲さんというお医者さんですけれども、アフガニスタンで井戸を掘り、井戸ではもう間に合わないということで運河を造っておられる方ですけれども、「天、共に在り」という本から引きました。アフガニスタンで起こっていることは何なのかというと、物すごい
被害が起きている。たしかあの国は、旧ソ連が侵攻したり今もアメリカが軍隊が駐留して、いろんな戦争が起きている。だけれども、最大の脅威はそれではなくて温暖化だというふうに書いてあります。
アフガニスタンという国は、北の方に山があって、氷河があって、その氷河が徐々に解けて、一年中水を
供給してくれる。ところが、温暖化のために氷河が一気に解けてしまって洪水になって、水を
供給してくれないと作物ができません。そうすると、子供たちが死んでしまう。飢えや渇きは薬で治すことができないというふうに本に書いてあります。こういうことが今
世界中で起きているということに私たちは思いをはせなきゃいかぬ。
今、六百五十万人ぐらいの五歳以下の子供の命が奪われています。それが温暖化のせいだと申し上げるつもりはありませんけれども、少なくとも、きれいな水が飲めない、食料がない、干ばつによって食料が取れないということによって奪われた命が相当数あります。そういうものに、これから温暖化が進めばもっと大きな脅威にさらされるということを私たちはやはり考えなきゃいかぬと思います。
私は、ずっと条約交渉に参加してきて、途上国の人たちから随分いろんなことを教えられます。私自身はやはり
日本という先進国の市民ですから、どうしてもそういった
考え方に染まっている。しかし、途上国の人たちと交わることによっていろんなことを教えられます。そういう視点を是非持っていただきたいと思います。
適応は非常に重要ですし、ただ、そういった場合に一番やはり重視されなきゃいかぬのは、温暖化だけでいろんな
影響が起こるわけじゃありませんから、農業、漁業、林業なんかの、まずそこら辺を産業として強いものにしないと、温暖化の
影響を防げない。単に場当たり的にやっていても何もできないということを是非お考えいただきたいと思います。
どうもありがとうございました。