○松平浩一君 立憲民主党の松平浩一です。
ただいま
議題となりました
生産性向上特別措置法案及び
産業競争力強化法等の一部を
改正する
法律案について
質問いたします。(
拍手)
二〇〇七年六月二十九日、アメリカで初代アイフォンが発売されました。それから十年が過ぎ、今や全
世界でのスマートフォンの利用台数は約四十億台に達すると言われています。
スマートフォンにより、誰もが、いつでもどこでも、インターネットを通じて人や物とつながりました。天気、交通、地図、買物、決済、レストランやお店の予約、宅配、医療、教育、更に多くのことが、スマートフォンのアプリによって、オンデマンドで解決してくれるようになりました。
人工知能の
分野では、昨年の五月に、ディープマインド社が開発した
AI、アルファ碁が、
世界最強と言われた囲碁棋士の柯潔氏との勝負を制したとのニュースは、皆さんの記憶にも新しいものと思います。こういった第四次
産業革命の波は、今後あらゆる面に及び、我々の生活、
経済に大きく影響を与えてくることは間違いありません。
ただ、いいことばかりではありません。既存
産業の構造にも大きく影響してきますので、痛みを伴う業界も出てきます。
野村総合研究所がオックスフォード大学のマイケル・オズボーン准教授らと共同して分析した結果に、二〇二五年から二〇三五年までに
AIとロボットによって
日本の労働
人口の約四九%が代替されるとした推計があります。また、マッキンゼー・グローバル・インスティテュートによると、二〇三〇年までに
我が国で転職を強いられる人数は、業務の自動化が急速であった場合、二千七百万人と予想されています。
我が国の二〇三〇年の労働
人口は約五千九百万人と予測されているため、その半分近くが転職を強いられるという計算になります。
この現状は、十八世紀半ばのイギリスの
産業革命を思い起こします。当時、イギリスでは手工業による毛織物
産業が盛んでしたが、
産業革命によって機械が普及して、職がなくなると恐れた人々は、機械打ち壊し運動、ラッダイト運動を起こしました。しかし、幾ら機械を打ち壊しても、また別のところで機械はつくられ、
産業革命の波はとめることができなかったのです。そして、職を失った手工業者は都市部に流れ、資本家の工場で働く労働者として
雇用が吸収されていきました。
一方、今我々が直面している第四次
産業革命では、
AIとロボットによる仕事の消滅は、必ずしも新たな労働力を必要とはしないものです。あくまで一例でしかないですが、自動運転の
進展は、トラック運送業、タクシー業、損害保険業で働く人々に影響が出ることは容易に予想できます。長距離トラックドライバーとタクシードライバーは、合計で約百二十三万人の労働
人口と言われています。
第四次
産業革命によって劇的に変わる就業構造、これが
雇用に与えるインパクトははかり知れません。遠い未来の話ではないにもかかわらず、この大変革にどのように
雇用の面で対応していくのか、
政府のグランドデザインやビジョンが全く見えてきませんが、この点について大臣にお伺いいたします。
世界に目を向けると、米国はデジタルプラットホームで大きな地位を占め、また次世代の研究開発でも優位性を保っています。
中国は、モバイル決済など
社会実装力が強く、
政府の資金投入で非常に多くのスタートアップが勃興しています。EUは、その市場規模を生かし、域内
企業に有利な
規制、
制度を設け、競争優位性をかち取ろうとしています。
それに対して、
我が国は、残念ながら、イノベーティブな
技術の開発と
社会実装力、この両方でおくれをとっていると言わざるを得ません。新しいサービスや
イノベーションを生み出していくためには、
事業者がまずやってみること、試行錯誤し挑戦してみること、これを許容する
社会、
環境であることが重要です。
本
法案では、
規制の
サンドボックスが提案されていますが、仮にそれが
事業者に対して試行錯誤し挑戦の場を与えるものであるのならば評価いたします。しかし、法文をよく読むと、この
規制の
サンドボックスに乗るためには、やろうとする新しいサービスが命令や告示などの
規制に違反しないことということが
条件となっています。
サンドボックスは、あくまで
参加者や
期間を限定した実験の場であるはずです。これでは、挑戦の場どころか、厳格に
規制に縛られる、今までと何も変わらないのではないでしょうか。
大胆かつ迅速な
規制緩和ができないと、新しい
技術やサービスは海外に逃げていってしまいます。
世界銀行が出している
データでは、
我が国の
事業活動の
規制の厳しさは、OECD三十五カ国のうち二十四位と、相変わらずの
規制大国です。
規制を打ち破るとした
政府の本気度が疑われます。この点、大臣の御所見をお伺いいたします。
本
法案では、
ビッグデータの
活用に向けた
施策として、
データ利活用を行う
事業者を
支援する
制度が
創設されています。
しかし、
ビッグデータに関しては、それ以前に、
我が国がもっと国を挙げて対処する必要のある大きな問題が
存在します。
デジタル
データは、二十世紀の石油のように、二十一世紀で最も重要な資源と言われています。しかし、この圧倒的大部分は、プラットフォーマーと呼ばれる海外の一部の大
企業に集中、コントロールされている
状況となってしまっています。
グーグル、アマゾン、フェイスブック、我々がこれらサービスを使えば使うほど、インターネット上の閲覧履歴、買物の履歴、位置
情報やアドレス帳、文字、写真、動画などがプラットホーム上に蓄積されていきます。これら
データの蓄積は、我々の消費行動の分析からマクロ予測まで、あらゆる
経済活動の基礎となるものです。そして、
データ保有者は、この
データを利用し、
AIの精度を進化させていき、生活、
社会、
経済への影響力をどんどん増大させていきます。
先日の
世界経済フォーラムのダボス
会議においても、ドイツのメルケル首相や
投資家のジョージ・ソロス氏など多くの著名人から、デジタル
データの一部
企業への独占化や寡占化に
懸念が表明され、大きなトピックになっていました。
デジタル
データの海外の一部
企業への集中という重要な問題に関し、どのように考え、どのように取り組んでいかれるのか、大臣の御所見を伺います。
本
法案においては、
産業革新機構の活動
期間の延長が提案されました。
世界の
投資環境に目を向けてみると、ノルウェー、アブダビ首長国、
中国、シンガポールなどの兆単位の
運用資金を有するソブリン・ウエルス・ファンドが、市場に対し大きな影響力を持っています。これらソブリン・ウエルス・ファンドは、最近は、自国の発展を考えた戦略
投資を行っており、プラットフォーマーやハイテク新興
企業への
投資を
拡大させています。
世界では、アルファベット、アップル、アリババ、テンセントのように、時価総額百兆円超え、又はそれに近い
企業が出現しています。また、ユニコーンと呼ばれる時価総額十億ドル以上のベンチャー
企業も、米国では百社以上、
中国にも五十社以上ありますが、
日本ではたったの二社だけです。
成長分野で国際的に戦える
日本企業を育てないと、将来、
日本の富が海外に流れるだけの
状況となってしまいます。
バイオ、創薬、宇宙、ロボットなどリアルテックの
分野は、
我が国が非常に得意とする
分野でもあります。これら
分野は、研究開発から
ビジネスができる状態になるまで、時間とお金がかかります。しかし、ここに集中的にリスクマネーを供給する、こういったことができる機関は、
我が国では官民ファンドだけと言っても過言ではありません。
産業革新機構については、今までの民業補完という役割だけではなく、国家戦略を考えて
投資を実行する、こういった大きな視点が必要だと思うんですが、大臣の御所見を伺います。
本
法案において、
政府は、
中小企業に対し、
IT投資など
生産性向上のための
投資を
支援することとしています。
第四次
産業革命はインダストリー四・〇の
日本語訳でして、インダストリー四・〇は、もともとドイツで、今から七年前の二〇一一年に採択されてスタートしたものです。そのコンセプトは、ドイツじゅうの工場を
IoTによってスマート工場化し、国を挙げて
生産性を上げ、
世界一の製造大国を目指すというものでした。そして、今やドイツはインダストリー四・〇の再重要
課題を
IoTの国際標準化というものに設定しています。ドイツのメルケル首相は、
IoTの
分野においてドイツが国際標準化を握るために、国を挙げて売り込みにかかってきています。
我が国は、過去、高い
技術を持ちながら国際標準化できず、他の国の国際標準に合わせなければならないという苦い経験を何度もしてきました。国際標準に適合していないため輸出が難しくなった二層式洗濯機、第二世代携帯電話など、その例を挙げれば枚挙にいとまがありません。
日本の宝である
物づくり業界、
中小企業の
国際競争力、こういったものを守っていくためには、
IoT分野において国際標準化の主導権を握ることというのが必須です。
日本は既に出おくれ感が大きいという
指摘も聞くところではありますが、
我が国として、今後どのような戦略を持って対応していくのか、大臣の御所見を伺います。
ところで、
成長企業への
支援という点に関しては、昨年十二月、ペジーコンピューティング代表の斉藤元章氏がNEDOから助成金約六億五千万円を詐取した疑いで逮捕、起訴された事件がありました。また、それ以外にも、NEDOからの助成金の不正受給として三十五件が把握されています。
助成に至る
審査が甘くなかったか。また、今までの再発防止策が余りにも対症療法的でなかったか。さらには、助成金という方法自体に問題があるのではないか。
政府の
成長戦略に沿うものであれば
審査がざるになるということはあってはならないことです。
助成金のばらまきともとられかねない甘い
審査は、
事業が助成金ありきとなったり、いかに助成金を獲得するかが目的となってしまい、結局、
成長戦略にそぐう
事業は生まれてきません。
不正受給に対する原因の追求と過去の反省、そして今後の対応、この三点について大臣にお伺いいたします。
第四次
産業革命の
進展により、
我が国は、いや応なしに、生活、
社会、
経済を始めとするあらゆる
分野で大きな変革を迫られる時期に来ています。この変革に対応し、
我が国の
経済の発展のためにこれからも積極的な提案を行っていくことをお約束申し上げ、私からの
質問を終わります。(
拍手)
〔
国務大臣世耕弘成君登壇〕