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山田参考人 本日は、本
審査会におきまして
意見陳述の
機会をいただきましたことに感謝申し上げます。
私は、既に
公刊物におきまして、
言論法、
情報法の
研究者の
立場から、
特定秘密保護法の
制定時におきまして、その
法的たてつけに問題があるとの
指摘をしてきた
立場であります。しかし一方で、
政府には
国家安全保障上等で
国家秘密があり、そのための
保護制度が必要なのは必然であります。その中で、こうした
秘密をどのように民主的にコントロールしていくのかが問われているわけでありまして、本
審査会がまさにこの命題に取り組んでおられるものとして、強い
関心を持って
活動を拝見させていただいている次第であります。
そうした中、
額賀会長を始めといたしまして、
委員各位が真剣に討議され、
活動をされておりますことに
敬意を表したいと思います。
さて、昨今の、
公文書をめぐる改ざん、隠蔽、
廃棄等のさまざまな問題は、党派を超えて大きな問題であるとの認識かと存じます。これらの
対象記録が
行政文書か否か、いわんや
特定秘密か否かを超えて、いわゆる
行政府が
作成、
活用、保存する
記録そのものへの
信頼感を喪失させ、それが
行政あるいは政治への不信につながっているとすれば、その歯どめの
一つは、まさにこの本
審査会が実行する
監視活動が正統に行われ、その結果が
国民に向けてメッセージとして
実効性があることと言えます。
さて、こうした
観点で見た場合、本
報告書に示される当
審査会の
活動について幾つか
意見を申し述べたいと思います。また、あわせて、そこから見える今後の
活動課題についてもお話ができればと存じます。
もともと、
秘密の
保護とその
運用チェックの
システムはセットである必要があると言われています。言いかえれば、
秘密保護制度には
チェックシステムがビルトインされているということが必要であります。
しかし、残念ながら、二〇一三年
段階では必ずしも十分ではなかったと言えます。その中で、いわゆる
立法権としての
行政権の
チェックなのか、あるいは、
国家における
重要秘密の全体を
主権者に成り
かわり監視をするのか、あるいはまた、
政府の
防衛、
外交、警察といったいわゆる
特定秘密の
対象行為の
監視をするのか、どのような
活動をこの
審査会でしていくのかが問われていたということが言えると思います。その中で、いかに限られた
権能をうまく
活用していくのか、あるいは、あえて言うならば、見切り発車的な
状況の中でスタートしたこの
審査会の
活動が、どう十全なものとして成立をしていくのかというところに
当該監視活動の大きなポイントがあろうかと思います。
実際、この
立法機関設置の、ある
種日本型の
監視システムというものがどういう
可能性があるのかについて考えてみたいと思ったわけであります。
具体的に少し三年間の
状況を見ていきたいと思います。
あえて言うならば、この三年間は、
すり合わせ、二年目の
串刺し、そして三年目の見直しという
活動が行われてきたと思います。
すなわち、一年目の
すり合わせというのは、
運用上の
確認と
制度の
整備というふうに見受けられます。例えば、
政府統一方針の策定と
公表の要請、あるいは全体のボリュームの
確認、そして
廃棄ルールの
確認といったものであります。
そして、二年目におきましては、いわゆる
一つの
対象領域を、
特定秘密からいわば軽微な
秘密のレベルと言える
取扱注意まで
串刺しにして、その中で構造上の不備がどこにあるのかということについての摘出が行われたというふうに見受けられます。その結果、例えば
文書不
存在の六
類型が示されました。あるいは、
長期特定秘密文書の
存在が明らかになりました。そしてまた、
定期点検の
必要性についても御
指摘がありました。こういう形で、まさに
串刺しの
活動の意味合いというのがはっきりと示されたというふうに思います。
そして、この三年目については、当初より、この
秘密保護法の
制度上、
解除と
廃棄に問題があるということが言われてきた中で、この
一つ、
廃棄に焦点を当てて、
秘密制度自体が有する
課題の摘示というものを行ったというふうに
理解ができます。まさに、この
文書廃棄、既に
参考人からも
発言がありましたように、一年
未満文書等々についての問題、三
類型が示され、これによって相当程度
特定秘密の
制度上の問題についての不備が明らかになってきたということが言えると思います。
これが、まさに私が最初に言った日本型の
監視システム、一体、本
審査会が、世界の中のいろいろあるタイプの中の
審査会活動として何をしていくのかというのが見えてきたのではないかと思うわけでありまして、この
すり合わせ、
串刺し、見直しをうまく調整して、バランスをとりながらこの
審査会の
活動が行われることに期待をしたいと思います。
その上で、今年度の、
文書廃棄の問題について少し申し述べます。
この
文書廃棄の問題というのは、まさに、誰が、主体としての誰が、そして
理由としてなぜ、そして方法としてどのように
廃棄をするのかという問題と言えると思います。その中で、基本的には内容
観点で、
重要性がないとか、都合が悪いという判断があったりというようなことで
廃棄されたり、あるいは、
意識や研修の問題として、
公文書としての認識が欠如していたり、あるいは物理的にスペースが不足していたり、あるいはそもそも
制度としてルールがなかったりという形で
文書廃棄が行われてきているということが、この行間からも、
報告書の全体像からも見えてくるわけであります。
この
状況をどのようにきちんと
制度化するかということについては、まさにその取っかかり、いわゆる、何がいけなくて、どうすればいいのかというところまではこの
報告書で見えてきているわけですので、あとはそれを具体的な形にしていく、あるいはその
運用をルール化していくということになろうかと思っております。
その中で、当然ながら、
文書廃棄だけの問題ではなくて、全体として必要なものも見えてくるかと思います。現行
制度の枠組みの中での個別
課題であります。
既にこれは、この三年間、とりわけこの一年間の
報告書で本
審査会で
指摘されている
部分でありますが、例えば重要
会議の議論の扱いがあります。ここでは
国家安全保障会議についての議論が進んでおりますが、例えば、それ以外にも閣議や皇室
会議など、いわゆる簡単な議事要旨は
存在しても詳細な議事録が
存在しないもの、あるいは、そもそも
会議記録そのものが
存在しないものもあろうかと思います。このような
会議の議論をどのように今後残していくのかということについての議論はまさにこれからではないかというふうに思いますし、その議論をする
一つの場がこの
審査会ではないかというふうに思うわけであります。
また、ことしの
審査会活動の中心テーマでありました
文書廃棄につきましても、まだまだ、いわゆる
解除の
関係で、
秘密解除をどのようにルール化するのかについては議論がされていないというふうに思いますし、実際の
運用ルールについてもまだ十分に明確ではないかと思っております。このルールの厳格化と適正
運用が、また
一つ、
制度上の大きな
課題かと思います。ただし、実際、この
廃棄問題についても、ことし相当程度議論の土台はでき上がっているというふうに思っているわけであります。
そして、三つ目、これもまた、特にことし大きな議論になっていたというふうに読み取れますが、電子ファイルやデータの問題があります。保存、保管のルール、そして
チェックの方法をどのようにするのか。まさにこれまで、日本においては、
情報公開法においても、電子ファイル、データの問題については
検討がおくれている。あるいは、世界の
情報公開法の
制度の中でも、あるいは
公文書管理法の世界の中でも、日本の
制度が世界よりもおくれているというふうに言われている中で、どのようにこの電子ファイル、データを保存、保管するのかという問題は、
特定秘密保護法を考える上でまずはきちんとルール化していくべき問題だというふうに思っております。
それがあった上で、今後、現行枠組みを超えた
制度の改善も必要かなというふうに思っております。既に御
指摘があった
アーキビストの養成、あるいは、各
現場におけるレコードマネジメント教育の
必要性ももちろんであります。
ただし、その上で、議論がもう既に出ていますように、意思決定過程を含む
会議公開法をどのように
整備していくのか。実際に個別の法律ができるかどうか、あるいは現在の
情報公開法の中に組み込んでいくのかは別としまして、事実上の
会議公開法というものがどのように
整備されていくのか。
それからもう
一つは、現在
存在します
行政文書公開法から、いかに司法と立法を含めた
国家全体の
情報公開法に、より広げていくのか、
整備を拡大していくのかということも重要かと思います。
実際、
国会における
文書公開につきましては、例えば、原子力発電所の事故
調査委員会の
記録につきましても、現在まだ公開の手続が進んでおりません。いわゆる
制度がないがために見られないという
状況があります。まさにそれは、この
文書は
国家の
資料であります。その
資料を利用して、使って、その後の
国家全体の政策、そして
国民生活を検証、レビューしていくというための
制度としては、まずは
国会も含めた公開法をどう
整備していくのかということも、この
審査会の広い意味でのお仕事の
一つかというふうに期待をしているわけであります。
その中で、将来、
審査会がどのような形で
審査対象を定め、そして、機能、
権能を十全に生かして、
特定秘密保護法の
監視、それによって
国家全体のいわゆる
インテリジェンスを含めた
活動の
監視を十全に果たされていくことを強く期待をしております。
以上でございます。