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2018-03-02 第196回国会 衆議院 議院運営委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成三十年三月二日(金曜日)     午後一時開議  出席委員    委員長 古屋 圭司君    理事 石田 真敏君 理事 岸  信夫君    理事 御法川信英君 理事 大塚 高司君    理事 松本 洋平君 理事 熊田 裕通君    理事 手塚 仁雄君 理事 牧  義夫君    理事 伊藤  渉君       井上 貴博君    岩田 和親君       大隈 和英君    古賀  篤君       田野瀬太道君    根本 幸典君       百武 公親君    藤丸  敏君       本田 太郎君    牧島かれん君       海江田万里君    中谷 一馬君       山内 康一君    伊藤 俊輔君       津村 啓介君    福田 昭夫君       塩川 鉄也君    遠藤  敬君     …………………………………    議長           大島 理森君    副議長          赤松 広隆君    事務総長         向大野新治君    参考人    (日本銀行総裁候補者日本銀行総裁))      黒田 東彦君     ————————————— 委員の異動 三月二日  辞任         補欠選任   藤丸  敏君     岩田 和親君   牧島かれん君     井上 貴博君   山内 康一君     海江田万里君   もとむら賢太郎君   津村 啓介君 同日  辞任         補欠選任   井上 貴博君     牧島かれん君   岩田 和親君     藤丸  敏君   海江田万里君     山内 康一君   津村 啓介君     もとむら賢太郎君     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  日本銀行総裁任命につき同意を求めるの件  次回の本会議等に関する件      ————◇—————
  2. 古屋圭司

    古屋委員長 これより会議を開きます。  まず、日本銀行総裁任命につき同意を求めるの件についてでありますが、去る二月十六日の理事会において、西村内閣官房副長官から、内閣として、日本銀行総裁黒田東彦君を再任いたしたい旨の内示がありました。  つきましては、理事会申合せに基づき、日本銀行総裁候補者から、所信聴取することといたしたいと存じます。  この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  本日、参考人として日本銀行総裁候補者黒田東彦君出席を求め、所信聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 古屋圭司

    古屋委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決定いたしました。     —————————————
  4. 古屋圭司

    古屋委員長 まず、議事の順序について申し上げます。  最初に、黒田参考人所信をお述べいただき、その後、参考人所信に対する質疑を行いますので、委員質疑に対してお答えいただきたいと存じます。  それでは、黒田参考人、お願いいたします。
  5. 黒田東彦

    黒田参考人 黒田でございます。  本日は、日本銀行政策業務運営につきまして私の所信を述べる機会を賜り、深く感謝申し上げます。  初めに、金融政策運営について申し述べます。  私は、五年前の二〇一三年、日本銀行総裁を拝命いたしました。当時の日本経済は、長年のデフレにより経済の劣化が進んでおり、デフレからの早期脱却が最大の課題でした。そうした認識から、私は、政府との共同声明において、日本銀行は二%の物価安定の目標をできるだけ早期実現するとしていたことを踏まえ、総裁就任直後、大胆な金融緩和策である量的・質的金融緩和を導入しました。その後も、経済物価情勢の変化に対し、必要な政策対応を行ってまいりました。現在は、長短金利操作つき量的・質的金融緩和という世界でも初めての措置により、極めて緩和的な金融環境を整えています。  日本経済はこの五年間で大きく好転し、戦後二番目の長さとなる景気回復が続いています。企業収益既往ピークを更新し、労働市場がほぼ完全雇用となる中、賃金も緩やかながら着実に上昇しています。物価面でも、生鮮食品エネルギーを除いた消費者物価の前年比は、二〇一三年秋にプラスに転じた後、ほぼ一貫して前年比プラスで推移しています。日本経済は、物価が持続的に下落するという意味でのデフレではなくなっています。  このように、経済物価情勢は大幅に改善しましたが、二%の物価安定の目標実現できていません。原油価格の大幅な下落ども影響しましたが、より大きな要因は、長年にわたるデフレ経験から、家計企業経営者の間に根づいたデフレマインドです。価格上昇しないことを期待した経済行動が定着しており、こうした期待を変えていくには、ある程度時間を要することが明らかになってきました。  もっとも、粘り強い金融緩和のもと、持続的な景気回復労働需給タイト化賃金引上げに向けた政府サポートどもあり、情勢は着実に変化しています。賃金物価は緩やかに上昇し、人々インフレ予想も上向いており、日本経済デフレ脱却に向けた道筋を着実に歩んでいます。現在の強力な金融緩和を粘り強く続けていくことにより、物価安定の目標実現できると考えています。  総裁として再任されましたならば、引き続き、政府と連携しながら、日本経済デフレ脱却への歩みをしっかりとサポートし、二%の物価安定の目標実現への総仕上げを果たすべく、全力で取り組んでまいる覚悟です。  この間、強力な金融緩和が続くもとで、金融システム年金運用などに与える影響金融緩和からの出口戦略日本銀行財務をめぐるさまざまな議論があることは承知しております。これらの論点についても十分な検討を行いながら、二%の物価安定の目標実現を最優先政策運営を行ってまいりたいと思います。  また、金融システム金融市場の安定を図っていくことも、日本銀行の重要な役割です。特に、金融規制については、各国政府当局中央銀行の間での連携協力が一段と重要性を増しており、いわゆるバーゼル3の最終化では、政府と連携して強力な国際交渉を行いました。さらに、日本銀行は、銀行券の流通や日銀ネット運用など決済システムの中核を担っております。熊本地震等の災害時も含め、こうした業務が円滑に行われるよう取り組んでいます。また、新しい情報通信技術金融面に応用するフィンテック金融サービスの向上や持続的成長に資するよう、さまざまな研究や金融機関等へのサポートも行っています。  こうした多様な機能、役割を持つ日本銀行を、私は、この五年間、陣頭指揮してまいりました。この間の経験も生かし、日本銀行の持つ総合力を一層引き出すことにより、金融面から日本経済のさらなる発展に貢献したいと考えております。  最後に、金融市場や海外とのコミュニケーション重要性について述べさせていただきます。  本年初来、国内外の金融市場で大きな変動が見られました。経済金融がグローバル化した現在、各国中央銀行政策当局者と緊密に連携するとともに、内外の金融市場に対し適切に情報発信することも、中央銀行総裁の大事な役割です。財務省財務官アジア開発銀行総裁、そして日本銀行総裁として培った知見、人脈を最大限活用し、そうした役割を十分に果たしてまいりたいと存じます。  日本経済が極めて重要な局面にある現在、引き続き日本経済のために貢献できる機会を与えていただくことになれば、これまでの経験を生かしながら、全身全霊を込めて職務に邁進していく所存であります。
  6. 古屋圭司

    古屋委員長 ありがとうございました。  これにて参考人からの所信聴取は終了いたしました。  理事会申合せに基づき、報道関係方々は御退席をお願いいたします。     —————————————
  7. 古屋圭司

    古屋委員長 これより黒田参考人所信に対する質疑を行います。  質疑は、まず、各会派を代表する委員が順次十分以内で質疑を行い、その後、各委員が自由に質疑を行うことといたします。  御法川信英君。
  8. 御法川信英

    御法川委員 自由民主党の御法川でございます。  きょうは、お時間をいただきましてありがとうございました。  国会同意人事の中で、今回、最も注目されていると言っても過言ではない黒田総裁の再任ということに関しましての所信聴取、そして我々の質疑ということでございます。  黒田総裁の御活躍あるいはお考えについては、衆議院の予算委員会あるいは財務金融委員会等々でしばしばそれを開陳していただいて、我々もよくわかっているところでございますが、本日、こういう機会でございますので、改めて、さまざまなお考えをお聞きしたいというふうに思っております。  最初所信の中でも触れられておりましたけれども、二〇一三年に総裁に就任されて後の五年間、政府との共同声明を皮切りとしてさまざまな政策、これは、まずはデフレ脱却に向けてできることは全てやるという形で、さまざまな政策を実行してきたというふうに理解をしております。  この五年間を振り返って、まずは、アベノミクス経済政策全体をどう評価なされるか、この点についてお聞きをしたいと思います。
  9. 黒田東彦

    黒田参考人 アベノミクスは、いわゆる三本の矢、すなわち、大胆な金融政策、機動的な財政政策、そして民間投資を喚起する成長戦略、こういう三つ組み政策体系でありますけれども日本経済デフレから脱却して、物価安定のもとで持続的な成長実現していく上では必要かつ適切な政策の組合せだと考えております。  日本銀行は、二〇一三年四月に量的・質的金融緩和を導入して以来、一貫して強力な金融緩和を推進してまいりました。これにより実現している緩和的な金融環境というものは、企業家計のさまざまな経済活動を強力にサポートしているというふうに思っております。  また、第二の矢である機動的な財政政策というものは、累次にわたる経済対策の実行を通じて効果的に需要を創出してきたというふうに思います。また、こうした政策は、日本銀行金融緩和政策によって生み出された緩和的な金融環境との間で、いわば相乗的な効果を発揮しているというふうにも見ております。  また、第三の矢である成長戦略についても、ここ数年、着実な取組が見られておりまして、特に、女性の労働参加の高まり、あるいは外国人観光客の大幅な増加など、その成果もしっかりとあらわれてきているというふうに思います。  こうした中で、我が国経済物価情勢は大きく改善したということであろうと思っております。  企業収益は過去最高水準で推移しておりますし、労働市場はほぼ完全雇用となっております。きょう発表された失業率が二・四%というのはやや驚くべき数字で、二・四が続くかどうかわかりませんが、少なくとも、完全雇用と言えるような状態になっておるということであります。  賃金物価についてはまだ、やや弱目状況でありますけれども、少なくとも、物価が持続的に下落するという意味でのデフレではなくなっているというふうに思います。  先行き日本経済が持続的な成長を達成していくためには、今後とも、こうした取組をしっかりと続けていく必要があるというふうに思っております。
  10. 御法川信英

    御法川委員 ちょっと意地悪な質問をするつもりはございませんけれども物価の持続的な下落という意味でのデフレではもうないという表現を所信でもなされております。今の御答弁でもそれがありました。であれば、別の意味でのデフレというのはあるのかという話になると思いますが、この点についてどうでしょうか。
  11. 黒田東彦

    黒田参考人 これは、特に政府においてはっきりとそういうふうに言われているわけですけれども、もはやデフレではない状況であるということはもうはっきりしているわけです。  他方で、デフレから脱却したというふうに宣言できるかどうかということについては、政府は、デフレでない状況実現した上で、今後またデフレに逆戻りするようなことがないという確信が持てるような状況かどうかということを幾つかの経済指標で見て総合的に判断するというふうに言われておるということであろうと思います。  なお、日本銀行としては、他の主要中央銀行と同様に、二%の物価安定の目標を達成するということが物価の安定であるというふうに考えております。
  12. 御法川信英

    御法川委員 ありがとうございました。  その物価安定目標でございますけれども、私も、過去の五年間の日本経済情勢というのは、まあ、マクロ的に見ればかなり好転をしてきているというふうに思いますが、やはりこの二%の物価安定、まだ実現できていないというのも現実だというふうに思っております。  この二%が過去五年間で実現できなかった理由あるいはその背景等について、総裁はどのようにお考えでしょうか。
  13. 黒田東彦

    黒田参考人 この点につきましては、二〇一六年の九月に公表いたしました総括的な検証でかなり詳しく示しております。すなわち、二〇一四年以降の原油価格の大幅な下落、それから消費税率引上げ後の需要の弱さ、さらには、新興国経済の減速とそのもとでの国際金融市場の不安定な動きといった要因によって、実際の物価上昇率下落して、もともと実際の物価上昇率に引きずられがちな、人々予想物価上昇率自体も下押しされてしまったということが主な原因あるいは理由であるというふうに考えております。  こうした点に加えまして、先ほども申し上げたように、やはり人々の間に根づいてしまったデフレマインドの転換には時間がかかる、企業賃金価格設定スタンスがなお慎重なものにとどまっているということも、労働需給がこれだけ引き締まって、そして、史上最高企業収益があるにもかかわらず、物価上昇ペースが鈍い大きな理由ではないかというふうに見ております。
  14. 御法川信英

    御法川委員 ありがとうございます。  引き続き、この点については、もし再任なされれば取り組んでいくということだと思いますけれども、そこなんですが、原油下落等々、なかなか予想しがたいさまざまな要因が今後発生することも考えられることだということは十分承知の上でお聞きをしますが、今後、この二%を達成するためにどういうことをしなくちゃいけないか。金融政策運営方針について、御所見を伺いたいと思います。
  15. 黒田東彦

    黒田参考人 先ほど来申し上げておりますとおり、我が国物価というのはまだ、現状、弱目動きが続いているわけですけれども他方で、二%へ向けたモメンタムはしっかりと維持されているのではないか。  これは、毎回の金融政策決定会合議論いたしまして、本当にモメンタムが維持されているかどうか、そして、その先行き物価の見通しはどうかということは議論しているわけでございますが、その中でも、特にマクロ的な需給ギャップが改善を続けておる、それから、その中で、やはり企業価格設定あるいは賃金設定スタンスも次第に積極化していき、中期的な予想物価上昇率も着実に上昇していくというふうに見ておりまして、消費者物価の前年比が二%に向けて上昇を高めていくというふうに考えております。  具体的な二%に達する時期については、展望レポート等でも示しておりますとおり、二〇一九年度ころになる、その可能性が高いというふうに見ております。  なお、これも毎回の金融政策決定会合議論しているわけですけれども、二%へ向けてのモメンタムが維持されているかどうかということを十分に分析して、必要があれば、金融政策調整も行うということであります。  今のところは、二%へ向けて着実に進んでいっている、そういうモメンタムが維持されているということなので、現在の量的・質的金融緩和枠組みのもとでの金融政策、特に金融市場調整方針というものを維持していく。  ただ、それは、かたくなに、今の短期政策金利マイナス〇・一%、十年物国債誘導目標ゼロ%程度というものを一切変更しないということではなくて、むしろ、必要あらば、さらなる緩和も検討する必要があろうというふうに思っております。
  16. 御法川信英

    御法川委員 ありがとうございます。  ちょっと日本の外を見ると、アメリカあるいは欧州は、金融政策正常化プラス金利政策の方に向かっている中で、これは、もしかすると総裁、もちろん余り聞きたくない言葉かもしれませんが、出口論という話がやはり出てこざるを得ない。そういうこともあるのではないかなと思いますが、この出口論について、総裁の御見解を開陳いただければというふうに思います。
  17. 黒田東彦

    黒田参考人 確かに、米国はもうはっきりと正常化のプロセスを進んでおりまして、拡大したバランスシートの縮小も昨年秋から始めました。短期金利は、もう数年前から少しずつ上げてきております。  他方で、欧州中央銀行は、金利はまだ当分据え置くと言っておりますけれども国債の買入れのペースは緩めるということをことしから始めております。  そうした中で、日本銀行はまだ依然として、長短金利操作つき量的・質的金融緩和のもとで強力な金融緩和を粘り強く続けていくということの違いは、基本的にはやはり物価動向でありまして、米欧では既に物価上昇率は一%台の半ばになっているわけですが、我が国の場合は、生鮮食品を除いたベースで〇・九%。実は、米国などと比較する場合には特に基準として引かれる生鮮食品エネルギー品目を除きますと〇・四%ということで、いずれにいたしましても、まだ二%の目標との距離がかなりあるということでございますので、今直ちに出口のことを議論して云々するというのは適切でないと思いますけれども、もちろん、適宜の時期に当然出口についても議論をし、かつ、マーケットとも必要なタイミングでコミュニケーションを図っていくということは十分可能であるし、必要であるというふうに思っております。
  18. 御法川信英

    御法川委員 ありがとうございます。  今コミュニケーションという言葉が出ましたので、その点について一点お伺いをさせていただきたいと思いますが、これは、市場とのコミュニケーション、あるいはグローバルな意味でのコミュニケーション日銀という組織の発信力というか、さまざまな意味がこのコミュニケーションという言葉には含まれるんだろうなというふうに想像いたしますけれども総裁のお考えとして、このコミュニケーションの能力というか、が日銀として十分今発揮されているというふうにお考えかどうか、御所見をお伺いしたいと思います。
  19. 黒田東彦

    黒田参考人 この点は実は米欧でもいろいろ議論が行われておりまして、私自身、昨年ですけれども中央銀行コミュニケーションに関するコンファレンスというのに参加をいたしまして、当時のジャネット・イエレンFRB議長、あるいはドラギECB総裁マーク・カーニー・イングランド銀行総裁とともに、中央銀行コミュニケーションのあり方というものを議論いたしました。  基本的には皆さん同じなんですが、それはまさに、どういう金融経済情勢のときにどのような金融政策をとっていくかという枠組みというか基本的な方向、考え方というものを常に市場と対話してコミュニケートしていく必要があるということでありますが、他方で、御承知のように、フォワードルッキングという形で、市場に対して将来の金融政策を示すというか、コミットすることによって市場金融情勢をコントロールしようという議論もあるわけです。  この点についてはいろいろな議論がありまして、私自身は、何か特別なそういうことというよりも、きちっとした物価安定目標をできるだけ早期実現するというコミットメントは必要だと思うんですが、余り、市場を誘導するようなことをやるのは必ずしも適切かどうかと。  だから、一般的なフォワードルッキングフォワードガイダンスというのはいいと思うんですけれども、何かコミュニケーションを通じて市場を誘導していこうというのは、基本的な対応として、物価安定目標とかそういうことは正しいと思うんですけれども金利とかその他いろいろなことについて、コミュニケーションによって誘導していくというのが適切かどうかというのは、いろいろ意見が分かれるところじゃないかと思っております。  そういう意味で、日本銀行としてのコミュニケーションポリシーというか、それはまさに、実際考えていることを正直に適切に市場にお伝えするということが一番正しいコミュニケーションポリシーではないかなというふうに考えております。
  20. 御法川信英

    御法川委員 ありがとうございます。  過去五年間やってきた大胆な金融緩和政策、これを継続していくことの副作用といいますか、例えば日銀財務への影響を懸念する、こういうような声もあるというふうに思いますけれども、この点について、総裁、どういう御見解でしょうか。
  21. 黒田東彦

    黒田参考人 この点も、各国中央銀行とも量的・質的金融緩和というものを続けてきましたので、そうした観点から、当然のことながら議論になるわけであります。特に、こういったことをやりますと、これを実施している間はバランスシートが拡大していきますので、収益が押し上げられる。一方で、出口になりますと、当座預金付利金利を上げたりバランスシートを縮小したりということになると、収益が減少しやすいという特徴があるわけでございます。  ただ、将来、経済物価動向が、情勢が更に好転して、例えば日本銀行付利金利を引き上げるという場合には、長期金利も当然相応に上昇するわけでありまして、当座預金に対する支払い利息がふえる一方で、日本銀行保有国債については、徐々に、より高い利回りの国債に入れかわっていくということで、受取利息もふえる可能性がありまして、なかなか、実際の出口戦略というか、出口でどういう手順でどのような方策をとっていくかによって、また金融市場動向によっていろいろなケースが出てまいりますので、具体的に財務への影響を何かシミュレーションしたような形で示すということは適切でないと思います。  私どもとしても、先ほど申し上げたように、量的・質的金融緩和を進める中で、収益が拡大し、その後収益が縮小するということに対応するために、既に債券取引損失引当金を拡充しておりまして、そうしたことで収益の振幅を平準化して、財務健全性を確保しようということも一方でやっております。  いずれにいたしましても、出口でどういう手順でどのようなことをするか。それが、金融市場がどのように動いているかということによっていろいろな状況があり得るので、私どもとして、当然、自分の財務ですから、私どもが一番、多分、深刻にというか真面目にというか、よく考えておりますけれども、二%の物価安定目標の達成のために、日銀財務についても十分配慮しながら、しかし、最優先目標、使命というのはやはり物価の安定でございますので、それに向けてしっかりとした政策をとってまいりたいというふうに思っております。
  22. 御法川信英

    御法川委員 ありがとうございます。  私、いただいている時間はまだたくさんありますが、最後に一問だけお伺いさせていただきたいと思います。  先ほどの失業率の話、直近の話で失業率二・四、ちょっと先進国では考えられないような数字マクロ的には出てきている。一方で、足元、マクロとして見ないで現実経済を見れば、人手不足とか、こういう話で、特に地方は、業種にもよるわけですけれども、かなり人手不足なんということが言われています。  これは、あるものをどの角度から見るかということになるというふうには思いますけれども、この失業率一つとっても、失業率が低いからいいんだとだけ簡単に言えない部分というのがやはりあるのではないか。これは、マクロだけでない経済を見る見方というのはあるわけですので、その辺を総合的に考えてやはり経済というのは運営していかなくちゃならないし、政策というのは立案、そして実行していくべきだというふうに思いますけれども、この点について、総裁の御所見をいただければなというふうに思います。
  23. 黒田東彦

    黒田参考人 私どもも、各地域にいろいろ参りまして、地域経済人方々といろいろな対話をしておりますし、また、日本銀行の各支店からさまざまな報告が参ります。  そうした中で、御指摘のように、特に、労働集約的な業種を中心にして人手不足が深刻化しているという声が増加していることは事実でございます。  他方で、中小企業も含めて多くの企業では、これに対応して、女性とか高齢者など多様な労働力の活用、あるいは勤務形態の見直しを行うほか、さらには、いわゆる省力化投資など、さまざまな工夫を積極的に行っておりますので、経済全体として、現時点で人手不足が景気拡大の制約に大きくなっているというふうには見ておりませんが、やはり中長期的に見れば、労働力の供給というものは、潜在成長率に対する制約要因になり得るわけでございます。  したがいまして、やはり労働生産性の向上に向けたさまざまな努力というのが今後とも必要になるだろうというふうに思っております。金融緩和自体が何か潜在成長率を押し上げるということにはなりにくいわけですけれども、ただ、こういった人手不足状況になる、あるいは金融緩和のもとで設備投資が容易になるということを通じて、労働生産性の向上にもつながっていき得るのではないかというふうに期待をしております。
  24. 御法川信英

    御法川委員 ありがとうございました。  再任なされたならば、引き続き日本経済の牽引役の大きな一人として御活躍なされますことを心から御期待申し上げまして、私の質問を終わりたいと思います。  ありがとうございました。
  25. 古屋圭司

    古屋委員長 次に、海江田万里君。
  26. 海江田万里

    ○海江田委員 立憲民主党の海江田万里でございます。  黒田総裁、五年間、お疲れさまでございました。  私は、実は、黒田総裁、続投はされないんじゃないかなと思っておりました。  これまでの日銀総裁の歴史、戦後の歴史ですが、続投されたのは、一万田総裁、あの方は法王と言われましたね。それから、その後が山際総裁。山際総裁のころは、私は新聞なんかを読むのが好きでしたから、名前を覚えているんです。二期目、途中で、残念ながら、御病気を得られましたけれども。そういうこれまでの歴史的な事実もあって、過去五十何年、だから五十二年ぶりぐらいですかね、これは。半世紀ですね。これだけ世の中のスピードが速い中で、五十何年ぶり。  それから、先ほど総裁所信表明もございましたけれども、やはり二%を達成できなかったと。先ほどの総裁の表現では、共同声明をやって、二%をできるだけ早期に実施というお話がありましたけれども、正直に言えば、二年で実施ということをおっしゃいましたね、これは。それが六たび延期をして、今、展望レポートでは一九年度中、これは先ほど総裁もお話ありましたけれども。  私は、そうしたこの事実関係、こういうものを見ていったとき、そろそろ次の人にかわってもらう、そして、新たな、心機一転、日銀全体の気分を変えて、これから新たな金融政策日本経済のかじ取りをやるというのが一つの考え方ではないだろうかと思っておりました。  もちろん、内閣からの強い要請があったということは、自分から手を挙げたんじゃないということは私もよく承知をしておりますが、そういう内閣からの強い要請があっても、御本人の意思で、いや、ここはもうそろそろ潮どきじゃないかとおっしゃるのではないかと私は思っておりましたが、なぜそういうことに相ならなかったのか、その理由を御説明ください。
  27. 黒田東彦

    黒田参考人 これはなかなか難しい御質問でありまして、個人的な感想というか個人的なことは、もちろんいろいろ申し上げられるわけでございます。  他方で、日銀総裁、副総裁などは全て国会の同意を経て内閣が任命するということで、たしか二月十六日に内閣の方から、こういうことでということで同意を求める要請があったというふうに聞いておりますが、実は、私自身、その前の晩に要請がございまして、そのときに、これは翌日国会に同意人事を提示するのでそれまで一切誰にも言わないようにというふうに言われたんですが、前日にそういうふうに言われたわけでございます。  そのときに私が考えましたことは、過去五年間、先ほど申し上げたように、さまざまな努力によってデフレではない状況にはなったものの、政府もまだデフレ脱却宣言はしておられない、日本銀行としては最も重要な二%の物価安定目標をまだ達成、実現できていないということについて、私を含めて、総裁、二人の副総裁内閣として任命して、引き続き二%の物価安定の目標を達成、実現するようにという依頼というか推薦というか、そういうことがございましたときに、やはり私としては、これはお受けして、先ほど申し上げたように、物価安定目標の達成そして総仕上げということをぜひやって、日本経済の持続的な成長経路に乗ることの一助にできたらという思いで、海江田委員のお話も一方でよくわかるんですけれども、お受けした次第でございます。
  28. 海江田万里

    ○海江田委員 後段はよくわかりますけれども、前半の方が、一日前に、内示の十六日の一日前というのは、これは事実じゃないですよ。私どもだって、記者さんたちが、きょう国会に対して内示があるんじゃないですかなんというような話は、十五日か十四日の夜ぐらいからもうそういう話がありましたから。それに、一日前に言って、それで、もしノーと言われたらどうなるんですかということもありますから、それはまあ。私も結構総裁の発言はつぶさに読んでおりますが、去年の秋の遅くなってぐらいから、そろそろやらざるを得ないかな、こんな感じになったのではないかと勝手に考えております。  今、二%を何としても達成したいんだというその決意のほどを承ったわけでありますが、そして、二%へ向かってモメンタムがずっと続いておる。確かに、去年の後半、去年一年を通じますと、若干、年間で、二年ぶりですか、消費者物価は上がりましたし、特に暮れぐらいから上がりましたね。暮れが〇・七ぐらいですか、上がりました。  ただ、この中身というのは、実は原油価格の高騰ですよ、これは。  そうしますと、このモメンタムというのは、モメンタムが維持できていると言いますけれども、これは原油高によるコストアップなんですよ。コストアップのインフレなんですよ、これは。インフレという前の、コストアップの物価上昇なんですよ。  私は、黒田総裁のお話を最初から聞いておりまして、黒田総裁が目指しているのは、コストアップのインフレではなしに、物価上昇ではなしに、ディマンドプルの、需要が引っ張っていく、それによって物価が上がっていく、これを目指すんだということが、私は最初にお話を聞いて、ああ、そうだな、これは正しい方向だなと思ったわけですが、今とにかく、何が何でもいいんだ、どういう原因でもいいんだと。だから、二%を達成できなかったときの一番初めの理由に、原油が安かったからとおっしゃいましたね。  だから、今度は、では、原油が高くなって、コストアップでもいいから、とにかく何でもいいから二%を達成すればいい、こういうお考えですか。
  29. 黒田東彦

    黒田参考人 確かに、現在、生鮮食品を除くベースで見ると〇・九ですけれどもエネルギー品目を除きますと〇・四ということですので、二%の物価安定目標にはまだほど遠いということは事実であります。  それから、原油価格下落したために物価が下がったというのも、これも事実でありまして、御承知のように、日本のみならず欧米でも、一時は、ほとんどゼロないし一部マイナスという状況になったわけです。その後、御案内のとおり、原油価格は半値戻しというか、半分ぐらい戻っているわけですね、六十ドル。かつて百二十ドルぐらいだったのが、三十ドル割るぐらいまでいって、六十ドルぐらいに戻っている。  そうしたもとで、欧米の方は、先ほど申し上げたように、物価上昇率は実は一%台半ばになっている。ところが、日本はまだ一%にもいっていない。エネルギーを除くと〇・四%ということは、そこに、やはり予想物価上昇率の形成過程がかなり違っていて、日本の場合は、いわゆるアダプティブなというか、現実物価上昇率に引きずられて予想物価上昇率が下がってしまう。  下がってしまうので、実際の物価上昇率というのは需給ギャップ予想物価上昇率の両方の組合せから生ずるわけですけれども、欧米の場合は、大体二%程度のところに予想物価上昇率がアンカーされていますので、すんなりとそういう一%台半ばにいっているのに対して、日本の場合は、まだまだ遠いということであります。  ただ、原油価格が大きく下がったこと、あるいはそれがまた半分ぐらい戻していることが物価影響していることは事実なんですけれども、私どもとしては、原油が上がって物価が上がればいいというふうなことを思っているわけでは全くありませんで、あくまでも、委員御指摘のように、国内の需要が増加して、現在、実際問題として、需給ギャップはマイナスがなくなって若干プラスにもなっているということで、需要が相当伸びて、そのもとで賃金物価も少しずつ上がってきてはいるんです。  ただ、まだ弱目動きが続いていることは事実でございますので、委員の御指摘の点から申し上げますと、何もコストプッシュで物価が上がればいいと思っているわけではなくて、あくまでも、需要が増加して、自然な形で賃金物価が上がっていくということが一番望ましい、それを目指しているということは間違いございません。
  30. 海江田万里

    ○海江田委員 まあ、そうしか答えられないわけでございますから。  それから、ただ、もう一つありますのは、二%の目標なんですね。五年前は、確かに世界も大体そんな話ですから。ところが、実際五年やってみて、先ほどのデフレマインドもそう、それから、やはり一番根本的なのは、少子化、高齢化、人口減少社会ということもこれあり、潜在成長率が欧米と比べて低いわけですよね。  そうしますと、一回掲げた二%の目標というのはなかなか下げられないかもしれないけれども、例えば一%ぐらいのところで安定的に推移して、まだそこは本当に道半ばというか、まだまだ、むしろ、その一%で安定的に推移するかどうかのモメンタムだろうと私は思うんですけれども、そのあたりで、先ほど来お話をしております、例えば長期金利のゼロ%程度ということを言っていますよ。これは限りなくゼロですよ。まさにゼロですよね。ただ、それを例えば、段階的に、漸次ということで、エコノミストはかなりそういうことを言っている人がいますけれども、〇・三とか〇・四とか、そこぐらいへ持っていくこの操作というのは、必要があればおやりになった方がいいんじゃないですか。どうですか。
  31. 黒田東彦

    黒田参考人 まず、二%の物価安定目標というのは、御承知のように、いわばグローバルスタンダードになっているわけですが、その場合も、各国中央銀行ともに、すぐに二%にしなければならない、そういうような金融政策をやるという考えはないわけでして、あくまでも景気循環を通じて二%程度で推移するようにしようという、そういう意味では、ごく短期のというよりも、もうちょっと長目の目標であることは事実なんです。  そういう意味で、日本銀行の二%の物価安定目標というのも、すぐ実現しなければならないということではないんですが、先ほど来申し上げていますように、我が国の場合は、やはりデフレマインドがかなりしみついていますので、そこを打破していくためには、やはり相当強力なコミットメントをして強力に金融緩和を進めていく必要があるということから、共同声明でも、できるだけ早期にという言葉が入っていたわけですね。  そのもとで具体的な政策を決めた場合に、二年程度を念頭に置いて、できるだけ早期にやろうということで、二〇一三年の四月に量的・質的金融緩和を始めたわけでございます。  余り長く経緯の話をしても申しわけありませんので、今委員の御指摘の点については、私も実はよくわかるわけでございます。ただ、一%になったらもう相当いいから、いわゆるイールドカーブコントロールの金利目標を上げたらいいんじゃないかというのは、そこはなかなかそう簡単に割り切れないのではないかと思っております。  といいますのは、先ほど来申し上げているように、我が国の場合の大きな問題は、しみついてしまったデフレマインドを転換するのに時間がかかっているわけですので、途中で金利を上げていったときに、そういうデフレマインドの転換がむしろおくれてしまうというおそれもあるわけですね。  ですから、金融市場状況については、あるいは欧米も正常化が進んでいる、日本物価上昇率が一%台に乗ってくるといったら、市場の方は長期金利について上昇圧力をかけてくるかもしれません。しかし、それを直ちに受け入れて、ゼロ%程度という十年物国債の操作目標を引き上げていいかどうかと言われると、私は、現時点では、慎重に考え、消極的に考えております。
  32. 海江田万里

    ○海江田委員 最初から二年でできるはずもないものを、二年と、かなり乗り乗りでおっしゃっていましたよ、記者会見のところで、パネルを使ったりして。やはりその不明は恥じなきゃいけませんよ。そこから、やはりみんなが期待しますから、本当にできるのかという思いになってしまって、自分で穴を掘っていて、その穴の中に落ちやしないだろうか、日本経済がそこに落ちたら大変だと言っているような話であって、これはやはり不明を恥じるところはしっかり恥じないと、本当の意味での日本銀行中央銀行としての信用性、信頼性というものが損なわれることになるんじゃないだろうか。  最後に、ちょっと時間がないので、もう一つだけ。  時期が一九年度中と、恐らく、一九年度中ですから、一九年の半ばぐらいだろうと言われていますわね、今。そうすると、一九年の半ばというのは、これは消費税がアップされるときなんですよ。今度は二%ね。二%で、もちろん物価に反映する分は、少し減りますから、一・四とか一・五とかそれくらいだろうと思いますけれども、そこに二%の物価上昇したら三・何%ですよ、これは。今、国民生活は、これは物価の外ですけれども、社会保障の、社会保険料なんか上がっているわけですよ、毎年毎年。これはずっと上がっていくわけですよ、来年も再来年も。それから、あと、いろいろな意味で可処分所得が少なくなっていく。税制改正もあります、中堅サラリーマンさんを狙い撃ちにした。  そういう中で、やはり、まさに一九年の半ばごろに物価が二%上がった、それはよかったですね、これまで努力したことが実を結びましたじゃないかということをおっしゃっても、それは多くの国民から、生活実感と全然違う、日銀は何をやっているんだ、物価の番人じゃなかったのか、インフレファイターで国民のために頑張ってくれたんじゃないのか、こういうそしりを受けるおそれがあるんですよ。二〇一九年の半ばごろに物価上昇というのは非常にまずいと思いますが、いかがでしょうか。
  33. 黒田東彦

    黒田参考人 展望レポートあるいは毎回の金融政策決定会合後の公表文書の附属資料でも示しておりますけれども、現時点での政策委員会のメンバーの物価見通しの中央値が二〇一九年度がたしか一・八だったと思いますが、ということを踏まえて二〇一九年度ころと言っておりまして、初めのころなのか、真ん中ごろなのか、終わりのころかということも全く申し上げておりません。  ですから、委員御指摘のような、そのこととの関連で云々ということはお答えしにくいわけですけれども他方で、消費税の話は、これは中央銀行の外でありますので、当然のことながら、政府、国会でお決めになられたことであり、内閣府が出す消費者物価指数も消費税を除いたベースで前回も公表されましたし、今回も公表されるということになると思います。そういう意味では、消費税の部分で物価が上がった部分は、これは税負担ですねということはかなりはっきり出てくると思います。  ただ、その点について、税負担をふやすことについて云々というのは、これは私どもではなくて、政府、国会でお決めになるということだと思います。
  34. 海江田万里

    ○海江田委員 まだ本当は持ち時間があるんですが、ちょっと財金の委員会も控えておりますのでこのぐらいにいたしますが、ただいまの発言の一つ一つをよく審査しまして、私どもの態度を決めさせていただきたいと思います。  ありがとうございました。
  35. 古屋圭司

    古屋委員長 次に、津村啓介君。
  36. 津村啓介

    ○津村委員 津村啓介でございます。  本日は、間もなく満二十年を迎えます新日銀法、この二十年間を振り返りながら、足元の異次元緩和、そしてこれからの道行きについて御質問させていただこうと思います。  まず冒頭、二十年前の新日銀法施行というのは、直前にさまざまな不幸な出来事もありましたけれども、もう少し幅広に見ると、日本金融が自由化が進んで、まさに当時は大蔵省で、そちらのサイドにいらっしゃったと思いますが、成熟した日本経済がこれから世界と更にグローバルにつながっていく上で、日本金融ビッグバンと呼ばれるような大きな改革の文脈で日本銀行のあり方が再定義された、そんなふうに理解をしておりますけれども総裁は、その後二十年のこのデフレ状況も含めて、当時の日本金融ビッグバンというのが不十分という見方と時期を間違えたという見方といろいろありますけれども、どういう御評価でしょうか。
  37. 黒田東彦

    黒田参考人 私は当時、大蔵省の国際金融局長をやっておりまして、日本版ビッグバンの中では、例の為替管理法を全面改正して、外国為替及び外国貿易法というふうにして管理を取ったわけですね。ありとあらゆる為替管理の条項を全面的に削除いたしまして、そういう意味では、現在の外為法というのは、為替管理の法律ではなくて、為替に関する統計を集めるための法律になっているわけで、もっとも、有事規制の条項はありますけれども、これが使われるということはまず考えられないわけでございます。  これがビッグバンの一つのエレメントだったと思いますけれども、この部分については、私は、適切だったと思っております。  というのは、それまでも、事実上、どんどんどんどん為替管理はなくなって自由化されてきたんですけれども、法律だけそういうものが残っていて、一部に事前許可とかあるいは外為銀行制度、両替商制度というのがあったわけですが、そういうものを全部廃止してしまったわけでございます。これは私の前任の榊原国際金融局長が最も強く推進したものでありまして、これは非常によかったと思うんですね。  それから、当時の銀行局や証券局もさまざまなことを推進されました。これも、ある意味で、もっと早くやっておけばというような御意見もあるかもしれませんが、決して悪いことではなかったというふうに思っております。  日本銀行法の改正につきましては、若干、御示唆されたように、いろいろな不幸なこともあって、それだけでなくて、やはり日本銀行法、旧日本銀行法は、戦前の日本銀行法を戦後改正してきただけで、全体の枠組みは変わっていなかったわけですけれども、これを、欧米の先進国と全く同様な、日本銀行政府から独立させて、政策については政策委員会で決定してという新しい形にしたわけです。  これは決して悪いことじゃないというか、ある意味で妥当なことだったと思いますし、そのもとでこの二十年間の金融政策がどうだったかということについては、これはまたいろいろな議論があるところでありまして、私自身は、デフレが実際問題として一九九八年から二〇一三年まで十五年間続いてしまったということの一つの責任はやはり日本銀行にあったのではないかというふうに思っております。  ただ、それは、新日銀法が、九八年に全面改正した日本銀行法が悪いということでは私はないというふうに思っております。
  38. 津村啓介

    ○津村委員 一つの責任は日本銀行にあるとはどういう意味ですか。
  39. 黒田東彦

    黒田参考人 これは、私は前からいつも申し上げているんですけれども物価金融政策だけで決まるものではないわけです。ありとあらゆることが影響するわけです。  ただ、その中で、日本銀行法で、物価安定というのが日本銀行の使命に、第一の使命になっているわけですね。もう一つが金融の安定ですけれども。そういう点からいうと、十五年デフレが続いてしまったというのは、やはり日本銀行として使命を十分果たしていなかったと言われざるを得ないだろうと思います。  ただ、これは、さっき申し上げたように、日本銀行政策デフレをつくったということではないと思っております。
  40. 津村啓介

    ○津村委員 では、どうすればよかったんですか。
  41. 黒田東彦

    黒田参考人 これは、経済学者や金融理論の学者がいろいろ言っておられることに尽きると思いますけれども、いろいろな景気循環的な要素がある中で、もう少し大胆に、かつ早く金融緩和を進めるべきだったのではないか。ただ、これは学者の間でもいろいろな議論がありまして、個々の政策の局面について完全なコンセンサスが得られているわけではありません。  ただ、十五年間デフレが続いてしまったということについて、日本銀行に何の責任もありませんというわけにはなかなかいかないんじゃないかということでございます。
  42. 津村啓介

    ○津村委員 学者の議論を聞いているのではなくて、当事者として反省の弁を、かなり思い切った反省の弁を述べられたので、当事者として、これから振り返って、どの時点で判断の誤りがあったかということを伺ったんです。  もっと大胆にというのであれば、いつからもっと大胆な金融緩和をすべきだったんですか。
  43. 黒田東彦

    黒田参考人 これは先ほど来申し上げているように、それぞれの局面でどうすべきだったかということについては、学者の間の意見もまだコンセンサスになっておりません。  私としては、例えば、ゼロ金利政策という大変画期的な政策を導入されたにもかかわらず、それをかなり早く撤廃してしまった。これは、御承知のように、政府はそのとき、適切でないという主張をしたわけですけれども政策委員会としては、それは適切であるということで撤回された。それから、その後、景気が後退し、デフレがまだ続いたものですから量的緩和を導入されたわけですけれども、量的緩和を導入された後も、もう少し大胆な緩和をされる必要があったのではないかというふうに私は思っております。  他方で、福井総裁になられたころ、私は財務省をやめて内閣官房参与になっておりましたので、具体的な動き承知しておりませんけれども、福井総裁のもとでかなり大胆な量的緩和を進められたということは、一定の効果を持ったのではないかというふうに思っております。
  44. 津村啓介

    ○津村委員 日銀法の話に戻りますけれども、二十年前に制定された新しい日銀法、独立性というのが非常に注目を浴びていますし、その基礎として、独立性があるからには、透明性、当時はアカウンタビリティーという言葉が盛んに言われましたけれども、説明責任というものが非常に大きいのではないか。  この二十年、その独立性のあり方については、今総裁が述べられた速水総裁の時期も含めて、さまざま政府とのやりとりもありましたし、ここ数年は、いわゆるリフレ派と言われる方々が、インフレファイターとしての中央銀行には独立性、自主性というのは歴史的な一つのものとして必要なものかもしれないけれどもデフレ対応していくにはむしろ有害ではないかということで、独立性をむしろこの時期には制限する方向で改正してはどうか、そんな議論もひところあったかと思います。  総裁は、実行されている政策という意味では、このリフレ派の方々とも非常に親和性ある政策をとられていると思うんですけれども、現在の日本銀行法のあり方について、どう評価をされ、また、もうちょっとこういうふうに改正した方が使い勝手がいいのになというようなもし御所見等があれば、伺いたいと思います。
  45. 黒田東彦

    黒田参考人 これは、日本銀行法は政府と国会がお決めになることでありますので、それについて何か申し上げることは僣越だと思いますけれども、私自身は、現在の日本銀行法で、日本銀行政府からの独立性が与えられ、金融政策政策委員会で決定するという形になっているこのシステムというのは、もちろん、一部の学者の人が言われているように、インフレファイターとしての中央銀行政府あるいは政治から引き離すためにそうしたんだというふうに言われていることは承知していますけれども、私は、これ自体として、何か、インフレファイターのためにはいいけれどもデフレファイターのためには不適切だというようなことは全く考えません。
  46. 津村啓介

    ○津村委員 つまり、今の日本銀行法の改正は必要ないとお考えですか。
  47. 黒田東彦

    黒田参考人 この日本銀行法の改正について、いろいろな方がいろいろなことを言われているというのは承知しております。例えば、米国のように、物価安定だけでなくて、雇用の安定というか、雇用の極大化も考慮したらどうかとか、いろいろなことを言われている方がおられます。  私は、現在の日本銀行法も、物価の安定というのを日本銀行の第一の使命にしていますけれども、その条文をよく読みますと、「物価の安定を図ることを通じて国民経済の健全な発展に資する」、こういうふうに言っておりまして、物価の安定ということが日本銀行の使命であることは事実なんですけれども、それが第一の目標であることは事実なんですが、物価が上がれば何でもいいということではなくて、雇用や賃金上昇する中で緩やかに物価上昇していくという形が、まさに国民経済の健全な発展に資するということだと思います。  日本銀行の使命は物価の安定ですけれども、雇用のことを何か無視して、物価さえ安定したらいいというふうな仕組みにはなっておりませんので、そういう意味からも、現在の日銀法は、適切な使命、目的を日本銀行に課していると思います。  ただ、日銀法の改正とか修正云々というのは、これは日本銀行が云々することではなくて、むしろ政府、国会が議論されることであろうと思います。
  48. 津村啓介

    ○津村委員 独立性の話、御所見を賜ったんですけれども、そのコインの裏表といいますか、特に我々、我々といいますか一般国民からすると、透明性というところが非常に大事なんだと思います。  二十年前の日本銀行は、初代の副総裁に藤原作彌さん、マスコミ出身の方を任命されたり、あるいは国会渉外課、国会担当の審議役という新設のポストを置いて、非常にアカウンタビリティーを果たすというところに力点を置いたと思うんですけれども、その後も御努力を続けられているわけですが、ここに来て、いわゆる異次元緩和の弊害、これをどうやって出口を組み立てていくかという議論については、総裁は貝のように口を閉ざされて、やはりこれだけ、リバーサルレート論なんかも触れられていますけれども、異次元緩和の弊害について、あるいはこれから五年間をどう考えていくか、これから五年間の任期の議論をきょうしているわけですから、ここはしっかり、総裁、先ほどから学者の話を引かれますけれども総裁は当事者でいらっしゃるので、総裁にしか語れない言葉があると思うんですね。  そういう意味で、この出口戦略というもの、今ここで詳細にお述べくださいということでは必ずしもありませんけれども、どういう形でこれから示されていくのか、そういう透明性がないと、裏返しに、アコードも含めて独立性そのものが今ないから、失われているから物が言えなくなっている、つまり透明性も失われている、それがまさにコインの裏表ではないかというふうにも見えてしまいます。  そうではなくて、日本銀行が自主性を持って、独立性を持って政府との共同声明を発しているわけですから、日本銀行言葉で、その先の道行きについても出口戦略を語るべきだと思います。総裁、いかがですか。
  49. 黒田東彦

    黒田参考人 いわゆる出口戦略ということについては、従来から申し上げていますが、具体的なタイミングとか手法とかそういったものは、やはり出口に差しかかったときの経済金融情勢を踏まえて適切に判断し、そしてそれを市場に適切にコミュニケートしていくということに尽きると思うんです。  現時点では、まだ二%の物価安定目標への道のりは遠いものがありますので、具体的な形で出口戦略を語るということは、また実際そのときになったら、語っていたことと違うことをやることになってしまうおそれもありますので、適切でないと思っています。  ただ、出口議論の本質というのは、私どもも既に申し上げておりますとおり、二つの要素がある。一つは、拡大した中央銀行バランスシートをどうしていくかということ、もう一つは、短期金利政策金利をどのように正常化、引き上げていくかというこの二つ。この二つをどういう手順でどのようにやっていくかということに尽きると思います。  御承知のとおり、米国では、初めはバランスシート調整をして、その後に政策金利短期金利を上げていくと言っていたんですが、実際には、先に短期金利を上げて、テーパリングをやって、実際に今度バランスシートを縮小し始めたのは昨年の秋からですので、前に言っていたのと逆の方向でやっているわけですね。それから、ECBの方は、政策金利は当面上げないと言って、そっちの方はずっと残したまま、既にテーパリングを始めているわけですね。  ですから、それぞれの経済金融動向に合わせて、具体的な手法、タイミングというのはそれぞれの中央銀行が適切に判断してやっていくと思いますけれども、その二つの要素が正常化出口論の主要な要素であるということは前から申し上げておりますし、それらについて常に考えをめぐらせているということは事実でございます。
  50. 津村啓介

    ○津村委員 続きまして、物価目標二%の達成時期について伺いたいと思います。  先ほど総裁は、海江田さんとの議論の中で、展望レポートでしたか、審議委員の皆さんの予測の中央値なのかな、一・八%、二〇一九年度ということをおっしゃって、まあ、一九年度だから、その間に変化していくことも考えれば、どこかの時点で二%ということも想定はされるというお話をされたわけですけれども総裁は、五年前のこの衆議院の議院運営委員会で、就任直前ですけれども、こうおっしゃっているんですね。いつ達成できるのかわからないのでは物価安定目標にはならない、グローバルスタンダードでは二年程度であり、二年は一つの適切なめどだ。  まあ、この二年というのは一旦おきます、もうできていませんから。しかし、総裁は、先ほどは、見通しの話ですよと。見通しと目標は違って、目標というのは、意図を持って、いつまでにこうするぞという、まあ、できるできないは別として、しっかりとしたコミットメントをするということですので、前回、五年前には、いつ達成できるのかわからないのでは物価安定目標にならない、つまり、コミットメントしなかったら意味がないということをおっしゃっているわけで、私は、五年後のこの場で一定のコミットメントをしていただきたいわけです。  それは、ここでいきなり、では一年とか、では二年という話にはならないと思いますが、少なくとも、一つのやはり区切りというのは、総裁の任期というのは五年、なぜ五年になっているかといえば、それが一つの金融政策のタイムスパンなんだろうということで、任期五年、その間は解任されないということになっているわけですから、総裁に、この五年間で、少なくとも、二%目標は達成するということを言明していただきたいと思います。
  51. 黒田東彦

    黒田参考人 これは、日本銀行が二〇一三年の一月に、二%の物価安定の目標早期実現するために金融緩和をするということを決めたわけで、それを政府との共同声明に盛り込んだわけでございます。  その後、私が総裁に就任いたしまして最初金融政策決定会合において量的・質的金融緩和を決定して、このときは九名の政策委員全員の一致で決まったわけですが、そのときの考え方として、多くの中央銀行は景気循環を通じて二%程度の安定を図るということで、景気循環の片道が五年とか十年ということはあり得ませんので、まあ、二年程度というものが皆さんの頭の中にあって金融政策を運営しておられる。それを踏まえて、特に我が国の場合、早期に二%の物価安定の目標を達成するということを日本銀行として一月に既にコミットしているわけですので、それを達成するための、ある程度のタイムスパンを考えて、そのために必要なだけの金融緩和をやろうということで、量的・質的金融緩和を決定したわけであります。  ですから、そのときは、見通しとして、二年以内に二%になるということを見通して、そのために必要なだけの金融緩和をしたというつもりだったわけですが、従来から申し上げているようなことで、一・五%まではいったんですけれども、その後、原油価格下落等々によって、二%はむしろ遠くなってしまったということであります。  したがいまして、一貫して日本銀行がコミットし、かつ政府との共同声明でもうたっていますのは、二%の物価安定の目標をできるだけ早期実現するということであります。現在もそれに変わりはございませんが、今の時点で私が二年とか三年とか申し上げるのは適切でないと思いますので、申し上げませんが、あくまでも、やはり早期実現するというこのコミットメントは二〇一三年一月以来維持しているということは申し上げられると思います。
  52. 津村啓介

    ○津村委員 総裁、それは私は無責任だと思いますよ。  といいますのは、総裁は、前回、五年前に、期限を定めない物価安定目標というのは、それは物価安定目標じゃないとおっしゃっているわけですよ。そして、アコードは五年前に結ばれているもので、これからさらに五年間やったら十年になるんですよ。早期も何もあったもんじゃないですよね。短期でもなければ中期でもなくて、十年といえば金融の世界では長期ですよ。全然やる気ないじゃないですか。  あと五年間、これから任期を持たれて、先ほどは、五年、十年というのは片道の期間じゃないとまでおっしゃっているわけですから、だとすれば、私、五年というのは長過ぎて、本当はもっと、二〇一九年度なら一九年度とおっしゃるべきだと思うんですけれども、ここは五年間の総裁の任期について議論する場ですから、ですから、その土俵に乗って五年間というお話をしているんです。  この五年間、総裁総裁でいらっしゃるうちに二%の目標を達成できない場合もあるということを今おっしゃっているんですか。
  53. 黒田東彦

    黒田参考人 経済のことですから、石油価格が例えば百二十ドルから三十ドル以下まで落ちるということは誰も予想していなかったし、その結果、日本だけでなくて世界各国も、主要国で物価上昇率がゼロないし一部マイナスというところに落ちたわけでございます。  そういうようなことがあり得るわけですので、ノーマルな意味では、先ほど来申し上げているように、二〇一九年度ころに二%に達する可能性が高い、それは、現時点でそういうふうになるだろうというふうに思っていることは確かでございます。  そういう意味では、二〇一九年度ころに二%に達する可能性が高いというのが政策委員会の多数の意見でございます。一名の方は賛成しておられませんけれども、八名の委員は、二〇一九年度ころに二%に達する可能性が高いということは確信しております。
  54. 津村啓介

    ○津村委員 私は総裁の意思を問うているのであって、ほかの方々がどういう意見を持っているかを総裁から伝え聞いているわけじゃないんですよ、今。  総裁、何度も申し上げますけれども目標を切らなければそれは物価安定目標ではないということをおっしゃっていた総裁が、今、その時期が、それはもういろいろなことがあるよ、原油価格があんなに落ちるなんて思ってもなかったというのでは、これは、インフレターゲティングじゃなくて、フレキシブルなインフレターゲティングになってしまいますよね。性質が変わります。  そういう意味では、総裁は今、総裁のいわば勝手な御解釈によって、五年前のアコードを有名無実化されているんじゃないですか。あのアコードはそういう中身じゃなかったはずで、その直後に、安倍さんも、これはもう本当に、できれば短期で実現するものなんだとおっしゃっているんですよ。それを総裁は十年たってもできないかもしれないと、それはちょっと無責任じゃないですか。
  55. 黒田東彦

    黒田参考人 従来からも申し上げていますとおり、二〇一三年の一月の政府日本銀行共同声明では、二%の物価安定の目標をできるだけ早期実現するというふうにいわばコミットされているわけであります。その点は、二〇一三年一月以来、変わっておりません。  その上で、二〇一三年の四月に量的・質的金融緩和を決定する際に、どのくらいの規模の緩和をして、どのくらいの期間をめどにしてやるべきかということを議論した際に、二年程度の期間を念頭に置いて、それに必要にして十分なだけの金融緩和をするということでやったわけでございます。  ですから、その意味では、私自身も含めて、今の政策委員会のメンバーのほかの方だけじゃなくて私自身も、二〇一九年度ころには二%に達する可能性が高いというふうに確信をしております。
  56. 津村啓介

    ○津村委員 一言だけおっしゃってください、添えていただきたいと思いますけれども、予想として、私自身も二〇一九年度ごろには二%になる可能性が高いとおっしゃいましたけれども、そうしていきたいということですよね。リジッドに私は責任をとれなんて言いませんから、それを目指して頑張っていく、そういう意思を持っていらっしゃるということですよね。
  57. 黒田東彦

    黒田参考人 そのとおりです。
  58. 津村啓介

    ○津村委員 最後に、マイナス金利政策の弊害について一つ伺いたいと思います。これを最後の質問にいたします。  総裁は、昨年末、十一月の末でしたか、チューリヒでリバーサルレートの話を紹介されました。なぜあの時期だったのかということについては、さらなる追加緩和をおっしゃる審議委員の方もいるので、いわばそれに対する牽制だという見方や、また、総裁が、一期目の任期が間もなく終わられるという中で、大胆に進められてきた異次元緩和の弊害の部分にも言及することで、ある種のバランスといいますか、そこも含めての責任を果たされているという見方や、いろいろありましたけれども、そこの真意も伺いたいんです。  もう一つは、今回、中曽副総裁が退任をされます。中曽さんといいますのは、信用機構局長ですとか金融市場局長とか歴任をされて、いわゆる狭義の金融政策だけではなくて、金融システムの安定化というところで非常に功績もある方ですし、経験もある方でいらっしゃって、総裁がリバーサルレートの話をされたときも、更にそれをかみ砕いて講演で触れられたり、あるいは預金者の方々に、口座維持のための手数料が将来付加される可能性があるということもかなり踏み込んでおっしゃったり、ある意味では、この異次元緩和のマイナスの側面について光を当てる役割を果たされてきた。正副総裁役割分担をされてきたんだろうというふうに受けとめてまいりました。  世界的にも、この金融システムの安定化というのは、ここに来て改めて大変重要な課題になっていて、FRBでは副議長のお一人が金融安定化担当みたいな役割も特に担っていらっしゃると伺っています。  今回、中曽さんが退任をされて雨宮さんが就任をされますけれども、雨宮さん、大変立派な方で、また来週御質問するんですが……
  59. 古屋圭司

    古屋委員長 津村君、質問時間が過ぎておりますので、簡潔にお願いします。
  60. 津村啓介

    ○津村委員 はい、わかりました。最後の質問にします。  どちらかといえばマイナス金利政策をまさに立案されてきた方ですので、私は、金融システム安定化に対する目配りは、正副総裁一体となってしていくためには、例えばですけれども、新しいそうした部署をつくるとか、新しいポストをつくるなどして、そうした金融システム安定化への目配りもしっかりやっているよということを新たに措置すべきだと思うんですけれども、いかがですか。
  61. 黒田東彦

    黒田参考人 御指摘のとおり、金融システムの安定というのは日本銀行のもう一つの使命でありますので、金融システムについては、金融機構局その他、十分なスタッフを備えて、こういう点については十分分析もしております。  その上で、委員の御指摘も十分踏まえて、金融システムの安定についてはこれまで以上に配意してまいりたいと思います。
  62. 津村啓介

    ○津村委員 終わります。
  63. 古屋圭司

    古屋委員長 次に、伊藤渉君。
  64. 伊藤渉

    伊藤(渉)委員 公明党の伊藤渉です。  きょうは、黒田総裁、次期総裁候補として御質問させていただきたいと思います。  私は、まず、ちょっと素朴なところから、まさに政府中央銀行たる日本銀行政策の連携を強化して、まさに五年前から、この国の経済をもう一度立て直そうと努力をしてまいりました。これまでの我が国経済の再生における黒田総裁金融政策は非常に大きく寄与をしてきたと思いますし、誰も経験をしたことのない局面からの打開ですから、不測の事態も発生するでしょうし、私は、まず、この五年間の取組に心から敬意を表したい、こう思っております。  そして、我々も財政政策等でさまざまな努力をしている中で、なかなか壁が破れないなと思っているのが賃金上昇です。  ここが、壁が突破できて、賃金上昇を伴う経済の好循環が発生をしてくれば、いよいよ世の中の雰囲気も変わってきますし、多くの方、難しい金融政策とか財政政策とか、そういう難しいことはわからない一般の庶民の方にも、ああ、景気がよくなってきたなと、ここがやはり一番大事だ、私はそう思って日ごろ仕事をしております。  そうしたときに、まさに一般的な庶民の感覚を少し私が代弁いたしますと、まだ、本当に景気がよくなってきたなと多くの人が感じ始めてはいるものの、それが大多数というところまでいっていない局面にあって、物価を上げることが目標だというこのフレーズは、よくわかっている人は、それを、つまり賃金を上げることだということと同義ですから、そういうふうに理解すれば、それはすばらしいとなるんですが、普通に暮らしている人が、まだ自分の給料も目の前で上がっていないのに、政府としては物価を上げるんだ、持続的に二%、それが、うれしいことだな、みんなそれを望んでいる、こうなりにくいということをすごく思ってきたんです。  ですから、日銀の使命は物価安定と金融システムの安定ですから、物価安定目標という言い方をされるのはいたし方がないと思いつつ、まさに予想物価上昇率を上げていくということは、みんながそれを望まなきゃいけないわけですから、ぜひとも、総裁日銀がやっていることは最終的には賃金を上げるためにみんなで努力しているんだということを、より強く、さまざまな機会で発信をしていただきたい、こう思いますけれども、まず、いかがでしょうか。     〔委員長退席、石田(真)委員長代理着席〕
  65. 黒田東彦

    黒田参考人 委員御指摘のとおりでありまして、物価が安定的に二%の上昇をするというもとでは、当然、賃金は三%あるいはそれ以上上昇していないとつじつまが合わないわけであります。  その意味では、過去の例を見ましても、やはり、賃金が持続的に上がっていかないと物価も上がらないし、物価が上がらないと賃金も上がらないという意味で、両者はいわば表裏一体をなしているわけです。  ただ、その差は、当然、労働生産性も上がっていますので、実質賃金が労働生産性に応じて上がっていかなければなりませんから、物価上昇率よりも賃金上昇率の方が高いわけですね。  ですから、物価がまだ一%も上がっておりませんけれども、二%程度上がっていくというもとでは、賃金は当然、三%以上上がっていないといけないということであります。  そういう意味で、私どもは、物価が上がれば何でもいい、物価さえ上がればいいということではなくて、あくまでも、雇用や賃金上昇し、拡大していくという中で物価が緩やかに上昇していく、そういう形が、経済全体にとっても、また雇用者にとっても望ましい形であるということはそのとおりでありますので、引き続き、そういう点は十分強調してまいりたいと思います。
  66. 伊藤渉

    伊藤(渉)委員 ありがとうございます。  我々も、政策立案の中で、例えば所得拡大税制とか、さまざま手を打ち続けています。  よく税制の議論の中では、所得拡大税制で、いわゆる減税をしておりますから、その減税分がきちんと、文字どおり、所得拡大税制ですから賃金に回っていただくことを期待して減税をしているのですが、残念ながら、もちろん企業経営者にとっては先行きに対する見通しの不安材料もゼロではないわけで、それらを全て賃金に回しているというわけにはいかないんでしょうけれども、あらゆるところで、これはもう、政府だけとか日銀だけとかそういうことじゃなくて、まさにオール・ジャパンで取り組むべき課題だということを企業経営者の方にも、また労働者の代表の方にもよくよく御理解をいただいて、この五年間でぜひともここを打開していかなきゃいけない、これは我々も同じ思いで取り組んでいくということをまずお約束したいと思います。  そういう中で、今のいわゆる金融政策の中で、やはり、マイナス金利がその中に含まれておりますから、金融機関あるいは保険会社、年金の運用もそうでしょう、弊害という部分があるのも事実だと思います。  金融機関の方とお話をしても、いわゆる地域金融を支えている地銀とか信金、信組、こういうところになってきますと、これももう言わずもがなで、ほんの二十年前はバブル経済で、それがはじけて、約二十年間、金融機関は、どちらかというと、締めることをずっと指導されてやってきた。ここに来て、ぜひとも、事業性評価等々でちゃんとその会社の取組を見て、出せるところに出していくんだと急に言われても、急に変われないと思うんです。これは金融機関も御苦労されているなと。  なぜこの話をするかというと、確かに雇用の状態はよくなっておりますので、有効求人倍率は四十七都道府県で一を超えている。これはすばらしい状況だと思いますが、やはり地方に行けば行くほど、賃金の上がり方もなかなか難しい局面が続いておりまして、地方の賃金の多くは、金融機関だったりエネルギー産業だったり公務員だったりする。この一角を占める金融機関の賃金が上げにくい環境が、マイナス金利で少し影響を受けているとすると、これはなかなか難しいことですけれども、除外をしていかなきゃいけない、できるだけその要素を減らしていかなきゃいけない、こう思いますけれども総裁の御意見をお伺いしたいと思います。     〔石田(真)委員長代理退席、委員長着席〕
  67. 黒田東彦

    黒田参考人 確かに、特に地域金融機関の収益状況を見ますと、地域金融機関の場合は、圧倒的に多くの部分が、預金で貸出しをして預貸利ざやで稼ぐということが中心になっております。メガバンクとか何かは、もうそういう部分はむしろ半分もなくて、そのほかの金融サービスとか海外での活動によって収益を上げているわけですけれども地域金融機関の場合は、そういうものは極めて少なくて、圧倒的に、いわば地場の企業に貸し付ける、預金は地元で集めて地場の企業に貸し付けることで収益の大半を得ているということであります。  そうしたもとで、預貸利ざやが縮小していることは事実であります。と申しますのは、預金金利はもう十数年前から極めて低い状況にありますので、これ以上預金金利を下げるという余地はもうほとんどない。他方で、金融緩和のもとで貸出金利がどんどん下がってきていますので、預貸利ざやが縮小する。その結果、地域金融機関の収益力に対する影響が出てきているということは事実であります。  ただ、足元はさほど悪くなくて、かなり高い収益を上げているのは二つ理由がありまして、一つは、金融緩和のもとで、地域金融機関の貸出しは実はメガバンク等の貸出しよりずっと伸びていまして、中小企業を中心に、最近ではたしか五%ぐらいの伸びになっているんですね。ですから、利ざやは減っているんですけれども、貸出しが大きく伸びているので、それほど縮小していない。それからもう一つ、資産運用で、前に持っていた国債とか株を売ると、売買益、キャピタルゲインが出るんですね。  だから、キャピタルゲインがかなり出るというのと、貸出しが量的にふえているので、それほど、預貸利ざやが減っているほどには貸出しによる利益は減っていないので、見たところ、地域金融機関は結構な利益は上がっているんですね。  ただ、将来を考えると、さっき言った益出しの部分というのはだんだんなくなってきますし、そして、こっちの利ざやの縮小、預貸利ざやというのは相変わらず縮小していますので、いずれ収益影響が出てくるという可能性はかなりあるわけです。  一方で、これはもう十五年、二十年続いていることですけれども地域の人口が減り、企業の数も減っていますので、それに対する支店のネットワークとか職員の数が、貸出しのビジネスの全体としての低下傾向、縮小傾向と合わなくなっているんですね。  そういう問題もあって、非常に複雑に絡んだ問題があって、今の時点ではいいんですけれども、これからを見るとかなり厳しい面もあるということは事実であります。そういうこともあってか、地域金融機関が賃上げに慎重なところもあるかもしれません。  ただ、御案内のとおり、各地域ではやはり地域金融機関の賃金というのはそこそこのレベルにあるということで、むしろこれからは、地域金融機関がある程度支店とかスタッフを整理するとか、あるいは支店に張りつけていた人を違う仕事に振り向けるとか、そういうことが起こり得るので、今の時点で、地域金融機関の収益状況が物すごく悪くなって、賃金も上げられなくなって、それが地域の賃上げのスピードを落としているということまではいっていないと思うんですけれども、長期的に見た地域金融機関の収益力というのは、やはりいろいろな努力で上げていかないと、五年、十年たつとかなりな影響が出てくるというふうに懸念をしております。
  68. 伊藤渉

    伊藤(渉)委員 ありがとうございます。  そうですね、ですから、本当に、地域金融機関の方と話すと、これまではとにかく、先ほどと同じことになりますけれども、締める方の人が重宝されましたけれども、今からは、どんどん上手に貸せる人が重宝される、その人がなかなかこれまで各金融機関で余り評価されていなかった時代が長いものですから、人材育成も含めて、これも我々の仕事とセットでやっていかなきゃいけない、こう思います。  賃金という意味でいくと、仕方がないといえば仕方がないんですが、こういうことを国会等で議論をしていてやはり改めて思うのは、企業も、どうしても日本は慎重な民族だということもあるのかもしれませんが、過去の物価上昇やそういう実績に基づいて賃金を決めるんですが、やはり先行きを見通して、これぐらい上がるのであろうからそこに合わせて賃金を上げるということを民間にお願いをしていくのであれば、公的セクターも、ぜひ我々は議論をする。そういう賃金考え方、賃金上昇に向けての考え方をやはり議論する余地は私はあるのではないかな、これはひとり言ですけれども、思ったりします。  時間が多分切れるけれども最後に一つ。  もう一つは、今、おかげさまで経済はそうはいっても立て直りの渦中で、株価も上昇、安定をしている中で、総裁日銀でETFを買っています。国債とETF、さまざまほかにも買っているんですけれども、このETFの購入について、ずっと継続して買っているものですから、当然マーケットは織り込んできて、先ほども少し出口のお話が出ました、まだ出口議論をするタイミングにはないということは十分承知の上で、国債よりもETFの出口の方が私は少し気になっておりまして、この段階でお話しいただけることがあれば、特にETF、株価に影響があるように思うものですから、その辺の総裁のお考え方を御披露いただいて、私はこれで質問を終わりたいと思います。
  69. 黒田東彦

    黒田参考人 確かに、ETF、かなりの量を購入しておりますが、御案内のとおり、ETF自体は、需要がふえればマーケットの方はどんどん株をETFに入れて供給してきますので、日本銀行がETFを買っていること自体が大きく株価に影響するということではないと思うんですが、株式市場全体でいいますと、今三%ぐらい持っているわけですね、日本銀行は。  それがリスクプレミアムの縮小に一定の効果を持っていることは事実ですけれども、私どもとしては、別に株価をターゲットにしているわけではありませんので、リスクプレミアムの縮小という現在の金融緩和全体の中での位置づけで行われているということでありますので、これだけ取り出して、先に別途に、やめるかやめないか、出口議論しようということにはならないと思いますが、御指摘の点なども含めて、十分慎重に考えていく必要があるというふうに思っております。
  70. 伊藤渉

    伊藤(渉)委員 ありがとうございました。
  71. 古屋圭司

    古屋委員長 次に、福田昭夫君。
  72. 福田昭夫

    ○福田(昭)委員 民進党所属、無所属の会の福田昭夫でございます。  私は、先日、黒田総裁には予算委員会の中で、おやめになられることを、勇退をお勧めしたんですけれども、翌日、マスコミ報道などで、官邸が黒田総裁の続投を決めたなどという報道がありまして、びっくりしているところであります。そんなことから、きょうの質問、ちょっときつ目の質問になりますけれども、簡潔にお答えいただければと思います。  まず最初に確認したいんですけれども、最近のさまざまなエコノミストなどのものを読んだりなんだりしていますと、黒田総裁の二期目の役目は、まず出口戦略だ、これをしっかりやることだ、こういうふうに言われているわけでありますが、先ほどからの話を聞いておりますと、どうも、いろいろ思いはめぐらせているけれどもまだそんな時期ではないんだ、こういう話でありますが、この辺、どんな考えでいらっしゃるんですか。
  73. 黒田東彦

    黒田参考人 現時点では、私も含めて、金融政策決定会合に臨みます政策委員方々は、二〇一九年度ころには二%程度に達するというふうに物価動向を見ておりますので、当然のことながら、出口というものをそのころ検討し、議論しているということは間違いないと思います。  ただ、現時点で、足元、生鮮食品及びエネルギーを除いた消費者物価はまだごく小幅のプラスにとどまっておりますので、今の時点で出口戦略を云々すると、かえって、実際に出口になるときと違ったことになってしまったりすると市場を混乱させるおそれもありますので、あくまでも、出口に差しかかったところで出口戦略についての議論を進め、必要な市場とのコミュニケーションを図っていくということになろうと思います。
  74. 福田昭夫

    ○福田(昭)委員 そうすると、今までの話を総合すると、物価上昇率二%を達成した時点がもしかすると出口戦略に入る、そういうふうにも読み取れますけれども、いかがですか。
  75. 黒田東彦

    黒田参考人 ここは、長短金利操作つき量的・質的金融緩和というものを二〇一六年の九月に導入したわけですけれども、これは二つの要素がありまして、一つは、いわゆるイールドカーブコントロール、長短金利操作ということで、現時点では、短期政策金利をマイナス〇・一%、そして十年物の国債金利の操作目標をゼロ%程度という金融市場調節方針のもとで、毎回の金融政策決定会合で、二%の物価安定目標へ向けたモメンタムが維持されているかどうかをよく点検していくということになっております。  もう一つが、実際の物価上昇率が二%を安定的に維持するようになるまでマネタリーベースの拡大を続けるというふうに言っております。ですから、マネタリーベースの拡大が続くという意味では、実は、二%になって、しかもそれがある程度安定的に続かない限り、マネタリーベースの拡大が続いていくということになります。  ただ、先ほど来申し上げていますように、長短金利つき云々の中のイールドカーブコントロール、長短金利操作の方は、毎回の金融政策決定会合で、二%の物価安定目標へのモメンタムが維持されているかどうかを見て検討していくということになりますので、より弾力的なものになっている。  ただ、そういう意味では、全てのことが、例えば、さっき申し上げたマイナス〇・一%の政策金利とかゼロ%程度の十年物国債の操作目標がずっと一切変わらないで、二%が実現されるまで一切変わりませんということを言っているわけではないんです。ただ、そういうこともあり得るかもしれません。そこは、あくまでも毎回の金融政策決定会合議論していくということになっております。
  76. 福田昭夫

    ○福田(昭)委員 日銀の元金融研究所の所長が、二%の目標を最優先課題としていると、金融政策の硬直化、あるいは経済の不安定化を招くという指摘もしておりますので、ぜひここは柔軟な対応が必要かなと思っております。これは答えは要りません。  次に、三点目でありますが、マイナス金利の弊害を総裁はどんなふうに考えていらっしゃいますか。先ほども、質問の中にもありました。  特に、地銀などは、最近では本当に利ざやが出なくなって、預金そのものがもう重荷になってきた、お荷物だというような指摘もありますけれども、これはどんなふうにお考えですか。
  77. 黒田東彦

    黒田参考人 マイナス〇・一%のマイナス金利というのは、実は今、たしか全体で、金融機関の日銀における当座預金の総額というのは三百七十兆円くらいだと思いますが、マイナス金利が実際に適用されているのは二十兆円足らずです。しかも、地域銀行などがマイナス金利が現時点で適用されている例というのは、ほとんどありません。  三百七十兆円ぐらいある当座預金の大半に、実はプラス〇・一%金利をつけているわけです。ゼロ%の部分が少しあって、二十兆円足らずのところにマイナス〇・一%の金利がついていますので、マイナス金利自体が地域銀行の収益を大きく圧迫しているということは全くありません。  ただ、マイナス金利を含めたイールドカーブコントロールで金利の水準を低い位置に抑えていますので、そのことを通じて、先ほど申し上げたように、預貸金利格差が、預金金利はもうこれ以上下がらない状況になっていますので、貸出金利が下がっていくにつれて預貸利ざやが下がっている、それが地域金融機関の収益影響を与えているということは事実なんです。
  78. 福田昭夫

    ○福田(昭)委員 マイナス金利そのものが、それはそんなにないからあれですけれども、先日、上場地銀八十二行・グループの、二〇一七年の四月から十二月期の連結の純利益の合計が、何と前年同期比一八%減の八千百七十九億円、本業のもうけを示す実質業務純益が七割も減益していた、二行が赤字だった、そういうことを、実は出てきて、調査をして、金融庁がびっくりしていると。いいと思っていたら、こんなに実は悪くなっていたのかというようなことも報告されているようであります。  そうしたことで、マイナス金利を導入したことが、特に地方の、地銀や信金や信組にも大きな影響を与え出してきているんだと思いますけれども、一方、マイナス金利で大変な増収になっているのが実は政府なんですね。これはびっくりしちゃいます。  当然のことながら、総裁は御存じだと思いますけれども、国は、国債発行で二〇一六年度、何と二・七兆円増収しちゃった。そして、二〇一七年度も一・五兆円ふえるんじゃないかと言われている。二〇一八年度の予算でも同額の一・五兆円、実は歳入として見込んでいます。国債の発行管理計画でですよ。  ですから、マイナス金利で民間の地銀や信金、信組に、あるいは都銀もそうかもしれないけれども金融機関に損害を与えておいて、政府が利益を得ているって、これは大きな矛盾じゃないですか。  こんな政策が、いいんですかね、総裁
  79. 黒田東彦

    黒田参考人 ちなみに、私ども承知している限りでは、二〇一七年度の中間決算で、地域銀行は業務純益が六千三百二十二億円で、マイナス四・一%というふうに承知しております。  先ほど来申し上げていますとおり、現在の金融政策というのは、あくまでも、二%の物価安定の目標を達成するために、一方で名目金利を引き下げ、他方予想物価上昇率を引き上げて、それによって実質金利を引き下げ、そしてそれが企業家計の投資や消費活動を刺激するということを通じて、経済の好循環が実現し、賃金物価が緩やかに上昇していくということを狙いにしてやっているわけであります。  そうしたもとで、金利が低下している状況では、当然、政府は債務者ですから、債権者の方は金利が低下したらその分だけ所得が減るわけですし、逆に、借入れする債務者の方としては債務負担が減るということは事実なんですね。  ただ、これはあくまでも、先ほど来申し上げているように、経済全体を引き上げて、賃金物価が緩やかに上昇していくということを実現するために行っているものでありまして、別に政府金利負担を引き下げるために行っているものではございません。
  80. 福田昭夫

    ○福田(昭)委員 それはおかしいじゃないですか。だって、マイナス金利にしたら、政府国債を発行してもうかっちゃうんですよ。これはおかしな話でしょう、基本的に。元大蔵省の財務官だったんだから話はわかっているんだと思いますが、これは全くおかしな話であります。  それで、そういった意味では、日銀が二重の意味で財政ファイナンスをしていることになるんですよ。まずは、国債を直接引受けできないけれども、一旦民間の市中金融機関が買ったものをすぐ即座に日銀が引き受けてくれる。簡単に国の借金の、財政ファイナンス、国債を買う役目をちゃんとしている。そして、マイナス金利で更に政府のお金をふやしてやるということになると、二重の意味で財政ファイナンスを日銀がしていることになるんですよ。  そうなると、まさに日銀が通貨の番人から国の金庫番になった、そういう感じですよ。そういう批判があるんですけれども、いかがですか。
  81. 黒田東彦

    黒田参考人 私は、そういうふうに全く考えておりません。  先ほど来申し上げているとおり、日本銀行金融政策というのは、あくまでも、名目金利を引き下げ、予想物価上昇率を引き上げて、実質金利を引き下げるということを狙いとしているわけでございます。それによって経済の好循環をつくり出し、賃金物価が緩やかに上昇していくということを目指しております。  ちなみに、経済主体としては、全て名目金利ではなくて実質金利考えているわけですね。ですから、名目金利プラスでも、物価上昇率が高ければ、あるいは予想物価上昇率が高ければ、当然、実質金利はマイナスになるわけです。それは別に、マイナス金利を導入するどころか、伝統的な公定歩合政策をやっているときでも、実質金利はマイナスになったことが何度もあります、どこの国でも。  ですから、実質金利をなぜマイナスにするほどに名目金利を引き下げて、予想物価上昇率を引き上げようとしているかといえば、それはあくまでも、実質金利を下げて、いわゆる自然利子率以下にして経済を刺激するという、いかなるときでも金融政策というのはそういうものなわけです。自然利子率以下に実質金利を引き下げる。それで今、自然利子率が低いわけですので、日本だけでなくて、欧米もみんな実質金利をマイナスにしているわけですね。  だから、経済主体の行動に影響を与えるのはあくまでも実質金利であって、それを引き下げるために、名目金利を引き下げ、予想物価上昇率を引き上げている。  そして、日本銀行は、政府の発行する国債を引き受けるということはしておりません。あくまでも、市場から日本銀行が自主的に、金融政策に必要な手段として、国債であれ、あるいは現在でも、社債やCPも購入しておりますけれども、ETFも購入しているということでございます。
  82. 福田昭夫

    ○福田(昭)委員 総裁、確かに、株価も円安も企業収益失業率も大変よくなったんですよね。でも、大きな副作用を伴う金融緩和という土台の上に成り立っているんですよね、実は。これはいわば砂上の楼閣です。ですから、今は本当によくなっているように見えています。よくなったんでしょう。しかし、砂上の楼閣ですから、いずれこれは崩れるんですよ。そういう認識はありますか。
  83. 黒田東彦

    黒田参考人 私どもは、一方で、金融の安定ということも日本銀行の二つ目の使命として持っておりますので、当然、金融システムが行き過ぎていないか、あるいは、逆に金融システムが融資その他金融仲介機能を阻害していないか、両面から金融システムを常に見ております。  その意味では、毎回、金融政策決定会合でも議論されておりますし、半年に一回公表しております金融システムレポートでも、金融に行き過ぎがないかどうかというのを丹念にチェックしております。現時点で見たところでは、そういった行き過ぎは見られないということであります。  なお、金融緩和、あるいは金融引締めはちょうど逆ですけれども、いずれも実体経済に合わせて、実体経済が不十分な成長をしているとき、あるいは十分な賃金物価上昇が起こっていないときに金融緩和をする、逆にそれが行き過ぎているときには金融引締めをするということでありますので、もちろん金融緩和にしろ金融引締めにしろ、無限に続くということではないわけです。  当然、経済が好ましい状況に至れば、あるいは物価の安定が達成できれば、金融の引締めにしても緩和にしても、ノーマライゼーションというか正常化が起こるということは当然なんですけれども、私ども、相当丹念にチェックしておりますけれども、今の時点で金融システムに、あるいはさまざまな金融資本市場に行き過ぎが見られるということはないというふうに思っております。
  84. 福田昭夫

    ○福田(昭)委員 さすがにいろいろなエコノミストなどが書いていますけれども出口について最後まで言っているエコノミストというのは意外と少ないんですよ。しかし、出口は難しいとまでは言っている。出口は本当に狭くて難しいと言っている。  そうした中で、弁護士の明石順平という人がなかなかすばらしい本を書いておりまして、「アベノミクスによろしく」という本を書いております。ここで彼は何と言っているかというと、行き着く先は、この異次元の金融緩和の行き着く先は、国債、円、株価のトリプル大暴落だ、そういうことを数字をもって述べております。  ですから、総裁は、今回の予算委員会の分科会とかいろいろな中で、アベノミクス、異次元の金融緩和を検証するのかと聞かれたら、今はその考えがない、こう言われているようでありますが、先ほどからの話を聞いていると、出口もそろそろ考えなくちゃという話ですから、やはり、そうしたらこの五年間のアベノミクスも異次元の金融緩和も検証して総括しなくちゃならないんじゃないですかね。どうですか。
  85. 黒田東彦

    黒田参考人 御案内のとおり、二〇一六年の九月に金融政策についての総括的な検証というものを実際に行いました。それは、当時、海外経済国際金融市場をめぐる不透明感などを背景にしまして、物価見通しに関する不確実性が高まっているということでございましたので、金融政策の波及メカニズム、あるいは二%の実現を阻害している要因を検証することが必要だという問題意識に基づいて実施をされました。また、その半年前に導入したマイナス金利政策効果、金融市場金融機関に与えた影響などについても検証することが必要だということで、この総括的検証の中で検証いたしました。  そうした総括的検証を踏まえて、長短金利操作つき量的・質的金融緩和というものを導入したわけでございます。それまでの量的・質的金融緩和枠組みをかなり大胆に変更いたしまして、長短金利操作つき量的・質的金融緩和にしたわけでございます。  そして、この総括的検証、それから新しい枠組みができてから一年半が経過しましたが、そのもとで、我が国長期金利も安定しておりますし、金融環境は極めて緩和的な状況実現しております。  そうした中で、景気が着実に改善して、物価面でも、なお弱目動きが続いているとはいえ、徐々に物価上昇率も緩やかに上昇してきているということでありまして、予想物価上昇率も弱含みの局面を脱して一部に上昇の兆しも見られるということになっております。総括的な検証以降、我が国経済物価は順調に進んでおりますので、二%へ向けてモメンタムも維持されているということを踏まえますと、現時点で新たな総括的検証を行う必要はないと考えておりますが、今後五年間の間に一切やらないかということであれば、それは今後五年間の中であるかもしれませんが、今の時点では、必要、あるとは考えておりません。
  86. 福田昭夫

    ○福田(昭)委員 私は、直ちにやるべきだと思っておりますけれどもね。  国内の金融状況がきのうの夕刊に載っておりました。マネタリーベースは四百七十五兆二千七百億円です。そのうち、日銀当座預金の残高が三百六十六兆八千億。七七・一八%は、せっかく金融緩和しても当座預金に眠っています。そして、日銀が持っている国債残高は四百五十一兆七千八百六十四億円、きのうの、三月一日現在でありますが。  さらに、私が一番心配しておりますのは、日銀が昨年の九月に発表いたしました資金循環統計によると、日本人の個人金融資産、何と千八百四十五兆円もある。物すごい莫大なお金ですね。そのうち、現金、預金が約九百五十兆円、そして保険料や年金が約五百五十兆円。この莫大なお金が、私は、異次元の金融緩和で、太平洋戦争に負けたときと同じように紙くずになることを心配しています。  御案内のとおり、我が国は、今、少子高齢化、人口減少時代まっしぐらです。私、唯一の救いは、この個人金融資産千八百四十五兆円、千八百兆円だと思っています。これが、黒田総裁たちのやっている政策で太平洋戦争に負けたときと同じような状態になったら、これは夢も希望もなくなってしまう、そういう心配をしているんですが、そういう心配は全くありませんか。
  87. 黒田東彦

    黒田参考人 全くないと思います。  戦争で我が国は、インフラ、企業設備、それからまさに海外の植民地その他を、いわば供給力、生産能力の大半を失ったわけです。その結果、大インフレになったわけであります。  現在は、むしろ供給力は十分あって、需要が十分ないんじゃないかということで、金融緩和によって内需を増加させ、ようやく需給ギャップもマイナスがなくなって少しプラスになってきたところでありまして、こういう状況で戦後のようなハイパーインフレーションが起こるという可能性は全くありませんし、日本銀行自体、二%の物価安定目標というものは、二%程度の物価上昇率を安定的に維持するということを意図してそういった金融政策を行っているわけでありまして、日本の戦後のような、あるいは第一次大戦後のドイツのようなハイパーインフレーションになる可能性というのは全くないと思います。
  88. 福田昭夫

    ○福田(昭)委員 太平洋戦争に負けたときは、当時の国民総所得の多分二七〇%ぐらいが国債でした。今、既に、国民総所得の、同じぐらいの多分国債になっています、既に達しています。  ですから、そういう意味からいうと、ただ、日本の国の場合は、まだ諸外国との経常収支が黒字です。そしてさらに、発行している国債が、まだ全て円建てで発行していますから、そう簡単に財政は破綻しないはずなんですけれども、しかし、もしかすると危ないのは、私はこの異次元の金融緩和だと思っているんですよ。  そうならないように頑張ってほしいと思っていますが、そうしたことにおいてはもう一つ、ぜひ日銀がもう一つの、やはり信頼を国民から得なくちゃならない。政府と同じであって、信なくば立たず、そういう状況日銀が来ておりますから、金融関係者の信頼を日銀が得るということもやらないと、多分うまくいかないんじゃないかなということを指摘して、私からの質問を終わります。  ありがとうございました。
  89. 古屋圭司

    古屋委員長 次に、塩川鉄也君。
  90. 塩川鉄也

    ○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。  日銀は、異次元の金融緩和によって大量の資金を供給すれば、インフレ期待によって物価上昇し、経済の好循環が生み出され、デフレ打開につながるとしてまいりました。株高や円安方向の動きが生じて、企業収益を押し上げ、雇用や賃金の改善をもたらすとされているわけです。  しかし、円安、株高の動きによって大企業や富裕層には巨額の利益をもたらしたものの、賃上げはわずかで、実質賃金はマイナスとなり、消費は落ち込んでおります。こういう事態についてはどのように受けとめておられますか。
  91. 黒田東彦

    黒田参考人 現在の日本経済状況を見ますと、御指摘のように、金融緩和のもとで、いわば経済の好循環が始まっておりまして、単に企業収益が非常に拡大、大きくなって史上最高水準になるというだけではなくて、雇用も非常に大きく拡大いたしまして、その中で賃金も緩やかに上昇し始めたというところであります。物価はまだ十分上昇しておりませんので、二%の物価安定の目標に向けた強力な金融緩和というものは粘り強く続けていく必要があるというふうに考えております。  経済の好循環が始まったとはいえ、確かに、個々の企業とかあるいは各地、全域、全県で有効求人倍率が一を上回ったという、記録をとって初めての状況であるとはいえ、各地域の中には完全にその好循環が回ってきていないところもあるかもしれません。そのあたりは、今後とも、各地域あるいは各産業、そういったところの状況は十分把握して、いわば好循環が全国津々浦々に広がるように努力していくということは必要だと思っております。  もっとも、金融政策はどうしてもマクロ的な政策でございますので、それ以外の財政とかその他の政策というものも、そういった意味では必要になると思いますけれども、私どもとしても、経済の拡大が、全国、まさに津々浦々に波及するように努力してまいりたいと思っております。
  92. 塩川鉄也

    ○塩川委員 好循環が全国に及んでいるわけではないというお話がありましたけれども、やはり、働く人、実質賃金、そこのところがどうなのかというところが好循環を考える上でも基本だという点で、先ほどのやりとりの中でも賃金弱目というお話もされておりましたし、昨年十二月のきさらぎ会での講演を拝見しますと、労働需給の引き締まりに比べて賃金の改善が緩やかだ、特にパート雇用者に対して正規雇用者の賃金上昇が鈍いと述べておられます。  厚労省が二月二十八日に公表した賃金構造基本統計調査によると、二〇一七年の正社員の一カ月分の賃金は三十二万一千六百円で、前年より減少したとされておりますけれども、これはやはり大きな、重い事態ではないでしょうか。
  93. 黒田東彦

    黒田参考人 名目賃金につきましてはさまざまな統計がございますけれども、比較的広く使われている賃金の統計によりますと、名目賃金はほぼ横ばいか若干上昇しているような状況でもあるように見えます。他方で、消費者物価の方は、特に消費税を引き上げたことによる消費者物価上昇というのが二〇一四年にきいておりまして、実質賃金がそのときに下がった。その後、実質賃金は緩やかに回復しているようにも見えるんですけれども、確かに実質賃金上昇は極めて鈍いということは事実であります。一部の年には実質賃金はマイナスになっているということも事実であります。  ただ他方で、この五年間、四年から五年の間は、雇用者数がかなり大きく伸びておりますので、実質賃金に雇用者数を掛けた実質雇用者所得という面では着実に伸びているようでございます。  ただ、確かに、賃金上昇率が、雇用情勢タイト化あるいは企業収益の大幅な増加に比して鈍い、それから生産性の上昇率に実質賃金の伸びが追いついていないということは事実であります。
  94. 塩川鉄也

    ○塩川委員 実質賃金上昇が鈍い、マイナスというお話、今ありました。一方で雇用は非常にふえているという話がありますが、非常に非正規がふえているという現状をリアルに見る必要があるんだろうと思います。  もう一つ、低金利政策家計への影響についてお尋ねしたいんですが、黒田総裁は、預金金利はもともと低い、住宅ローンなど貸出金利の低下の方が下げ幅もずっと大きいと述べていますけれども、このマイナス金利政策家計には大きな影響を及ぼさないという認識なんでしょうか。
  95. 黒田東彦

    黒田参考人 最近の時期をとりますと、先ほど委員が御指摘になったような状況でありまして、預金金利はもうかなり前から、マイナス金利政策とかあるいは量的・質的金融緩和をとる前から、もうほとんどゼロに近いところでずっと来ておりました。  したがいまして、量的・質的金融緩和あるいはマイナス金利が預金金利を更に押し下げて、そこの部分が、家計に、その前と比べてマイナスが大きくなったということはなかったと思います。他方で、住宅ローン金利は確かに目立って低下しております。  その意味では、最近の数年をとった場合にはそうなんですが、もっと昔から、十年も十五年も前の、もっと前からとりますと、前はもっと預金金利が高かったわけですから、それがどんどん落ちてきたということはあったと思います。これは基本的には、やはり、デフレのもとで預金金利もどんどん下がってきたということがあったわけでして、量的・質的金融緩和とかマイナス金利の導入によって預金金利が更に大きく下がったということはなかったと思います。
  96. 塩川鉄也

    ○塩川委員 短期間の話と同時に、一定の、中長期のお話がありました。  確かに、低金利家計企業への影響について日銀も試算をしておりますが、あの低金利政策の始まった一九九一年を起点として、その金利水準が続いていた場合と比較して、受取利子と支払い利子を比較すると、家計部門から企業部門に巨額の所得が移転をしている。  ですから、これまでも、白川元総裁は、金融緩和家計の利子所得の減少要因となって、個人消費の減少要因であると国会で述べておられますし、その前の福井元総裁も、家計に重い負担をかけている、市場メカニズムを犠牲にした大変コストのかかる政策だと述べていたわけです。  そういう点では、黒田さんも、この十五年とか、スパンの話をされておられましたけれども、やはりこのような金融緩和影響というのは家計に重い負担をかけている、そういう認識はお持ちということでしょうか。
  97. 黒田東彦

    黒田参考人 それは、先ほど申し上げたように、十五年とか二十年前と比較しますと預金金利も下がっておりますので、その部分が十五年、二十年前と比べて負担になっているということは事実だと思います。  ただ、それは基本的には、成長率も下がり、特に一九九八年以降は、デフレが二〇一三年まで続いておりましたので、そのもとで預金金利がどんどん下がって、ほとんどゼロに近いところになっていた。この五年間、特に預金金利が大きく下がったということはなかったと思いますけれども、比較的長い目で見れば、そういったことになっていることは事実なんですが、長い目で見たときのその差というのは、やはり日本経済の構造も変わり、いわば、マクロ的に言うと貯蓄超過状況になり、そして九八年から二〇一三年までのデフレが続いたということが大きくきいているのではないか。  そのもとでの、今言われた、福井総裁の言われたことは、そういうもとでそのことについて言われたのか、もっと長い期間のことについて言われたのかちょっとわかりませんが、長い期間について見ればそうなんですけれども、それは、先ほど申し上げたように、経済構造が変わったもとでのことですので、経済構造が変わっていない状況での十五年、二十年前の預金金利と比較して、今は低いではないかと言っても、これはなかなか、前と比べれば家計は損をしている、それはそのとおりなんですけれども、それが何か意味のある議論なのかどうかというのは、ちょっと議論は難しいんじゃないかと思います。
  98. 塩川鉄也

    ○塩川委員 二月二十八日の日経に、「通貨の番人はどこへいく」というコラムが掲載されました。五年前に始まった黒田緩和とは一体何だったのか、突き詰めれば円高の修正を目指したものであり、今も円高の再来を抑える防波堤役を担っていることは公然の秘密と言っていい、このように書いて、黒田総裁の異次元の金融緩和に対し、目標は達成されるという見方は少なく、期待もされていなかった、とにかく円高をとめていただきたいというのが企業の本音だったと書かれているわけです。それはコラムでのそういうコメントなわけですけれども総裁は、こういった、五年前の当時、企業、財界の中にそのような期待感があるということは受けとめておられたんでしょうか。
  99. 黒田東彦

    黒田参考人 私、五年前の、二〇一三年の、たしか三月までマニラにおりまして、アジア開発銀行の総裁というものを八年間やっておりまして、アジアの、途上国の経済開発と貧困削減ということをやっておりましたので、日本のことを詳しく知る立場にはありませんでしたので、そういう議論があったということは私は存じておりません。  ただ、現在でもそうですし、これはG20のコミュニケなどにも常に書かれておりますけれども金融政策は、あくまでも国内目的、つまり物価安定のために行われるものであって、為替操作というか為替政策として行われるものではないということが確認されておりますので、私が云々というよりも、むしろ日本米国欧州中央銀行としては、常に、為替が動いたときのその影響はよく点検いたしますけれども、為替を動かそうとかそういう意図はありませんし、特に米国日本の場合は財務省が為替政策の責任者でございますので、そういう法的な枠組みからいいましても、日本銀行が何か為替を操作するとか影響を与えるとか、そういうことは基本的に考えていないということだと思います。
  100. 塩川鉄也

    ○塩川委員 二〇一二年末の総選挙で、自民党の経済政策の中心は、行き過ぎた円高を是正するというものでありました。現在の安倍総理は、当時繰り返し訴え、政権に返り咲いたわけです。  黒田総裁も、経済大国が金融緩和をした場合に為替が下落する傾向があるということは、理論的にも実証的にもそう言われていると述べておられました。  安倍政権の就任と前後して円安・ドル高が一気に進みましたが、まさに大胆な金融緩和政策、質的・量的金融緩和がもたらしたものではないか、為替の下落を狙っていないとしても、黒田日銀金融緩和政策の結果ではないか、その辺についての受けとめをお聞きします。
  101. 黒田東彦

    黒田参考人 その点はよく理解をいたします。  金融政策が為替に影響ないということではないんですけれども、あくまでも、日本であれ米国であれ欧州であれ、金融政策の目的、目標物価の安定である。そういう中で、他の事情にして等しければ、大きく金融緩和した国の為替が下落する傾向があるというのは、それは理論的にも実証的にもそうですけれども、ちなみに為替市場というのは非常に気まぐれな市場ですので、実際必ずそうなるというわけでもなくて、いろいろな違った事情で違った動きをするということもありますので、あくまでも為替の安定、為替政策というものは、金融政策と別の、日本の場合ですと財務省が所管して為替の安定を図っているということでございます。
  102. 塩川鉄也

    ○塩川委員 異次元の金融緩和による円安と株高は、自民党それから財界の要望に応えて、大企業と富裕層に巨額の利益をもたらしましたが、肝心の庶民生活を見れば、実質賃金は減少し、雇用増も非正規中心であり、消費は冷え込んだままであり、異次元の金融緩和経済の好循環をもたらしたとは言えないと考えます。  次に、副作用についてお尋ねいたします。  長期化した日銀金融緩和政策、とりわけマイナス金利政策による副作用がさまざまな形で顕在化しています。  その一つが、先ほども議論ありました、地域金融機関の収益悪化です。  昨年十月、金融庁発表の平成二十八事務年度金融レポートによれば、地域銀行の経営状況は、金融緩和政策の継続により、長短金利差が縮小し、収益性が低下していると分析しています。  報道によれば、昨年十一月、金融庁の森長官は、主要企業の経営者との意見交換の場で、地銀、第二地銀百六行のうち、直近で五割程度が既にコア業務純益で赤字になっている、地銀経営者の多くにPL悪化への危機感が足りないなど、多くの時間を割いて地域銀行の問題点を指摘したとされています。事実、一七年九月期決算では、上場地銀八十一社・グループのうち九社で総資金利ざやがマイナスに陥っているとされています。  全米経済研究所は、十一月中旬に、日本経済の現状について、マイナス金利による収益低下で銀行が与信拡大に慎重になっている、政策企図とは逆方向との趣旨のレポートを発表いたしました。  マイナス金利政策地域金融機関の収益を悪化させ、金融仲介機能にまで悪影響を与えているのではないのか、この点についてお考えをお聞かせください。
  103. 黒田東彦

    黒田参考人 理論的には、預貸金利格差、貸出し利ざやが金融緩和のもとで縮小して、それが余りに行き過ぎると、金融機関の方、つまり金融機関の利益が大幅に減って、資本を一部食い潰すというような状況になってきますと、貸出しに消極的になっていく、金融仲介機能が阻害されるのではないかという議論でございます。  ただ、現状、先ほども申し上げましたように、地域銀行は活発な貸出しを行っておりまして、実際問題として、金融仲介機能に障害が出ているという状況には全くありません。  その背景には、一つは、地域銀行が十分な資本を持っているということ、もう一つは、景気の拡大のもとで信用コストが大幅に減少していますので、いわば貸倒引当金に入れていたものを繰り戻すというようなこともありますので、それによって、かなりというか十分な利益も上げられるというもとで、地域金融機関の方がむしろ貸出しに積極的であります。  ですから、今の時点でそういった地域金融機関の収益を圧迫して仲介機能が低下するという状況には全くないわけですが、先ほど来申し上げていますとおり、非常に長い期間で見ますと、確かに、地域の人口が減り、企業も減り、いわばクライアントが減っているわけですね。そうしたもとで、従来どおりの支店網あるいはスタッフを抱えていますと、どうしてもコストの方がグロスの利益を上回ってくるおそれがあるわけでありまして、長い目で見ますと、預貸金利が拡大しても、こういう構造的な傾向が続く限り、地域金融機関の根源的な収益構造というものが変わっていかないと、難しい状況が起こり得るということは確かだと思います。  そういう意味で、既に各地域銀行ではいろいろな努力をしておりまして、一方で、地域企業の承継であるとかビジネスマッチングであるとか、そういったことを助けることによって金融サービス収入をふやすということもやっておりますし、他方で、ITを使って効率化を上げてコストを下げるという努力も、一部の地域金融機関ではかなり目覚ましい努力をしておられまして、コストを大幅に下げるということも実現している金融機関もあるようでございます。  ですから、今の時点で何か深刻な状況になって金融仲介機能に障害が出るという状況では全くないんですけれども、五年、十年という長い期間をとりますと、構造的な問題がありますので、それに対する対応というものを地域金融機関が行っていかなければならない。それに対して、もちろん所管の金融庁はいろいろな努力をされるのは当然だと思いますけれども、我が日本銀行としても、いろいろな機会にそういった問題に対するアドバイス等は十分行ってまいりたいと思います。
  104. 塩川鉄也

    ○塩川委員 もう一つ指摘をしたい副作用の問題が、日本銀行国債引受け、財政ファイナンスの問題です。  五年前の議運の聴聞会で黒田総裁候補は、国債の直接引受けにつきましては、戦前戦中の経験に鑑みて財政法で原則的に禁止されている、国債を直接引き受けるということは全く考えていないと述べておられます。  しかしながら、日銀が保有する長期国債等の保有比率は、二〇一二年十二月末の約一一%、九十一兆円から、昨年九月末には約四二%、四百十三兆円にまで拡大をしています。その間にふえた政府の借金、長期国債等の残高約二百兆円分に加えて、市場から百二十兆円ほど調達したことになります。国債の爆買いともいう状況です。  今後も現在の金融政策を続けるならば、量的な制約が全くなく国債の購入を継続することは理論的に可能だと考えているのか、仮に問題がないとした場合、このような量的な制約がいずれ国債購入方針に何らかの影響を与えるのか、その点についてお聞かせください。
  105. 黒田東彦

    黒田参考人 御指摘のとおり、現在、日本銀行が四〇%ほどの、四割ほどの国債を保有しているわけでございます。  機械的に言えばまだ六割ぐらい残っているでしょうということなんでしょうが、それより前に、実は一昨年の九月に導入いたしました長短金利操作つき量的・質的金融緩和のもとでは、確かに国債の買入れを行っておりますけれども、かつてのように国債買入れ額を金融調節方針のターゲットにしてやっておりません。  今やっておりますのは、長短金利操作つきということに示されておりますとおり、短期政策金利をマイナス〇・一%、十年物国債の操作目標をゼロ%程度とする適切なイールドカーブを形成されるように国債の買入れを行っておりますので、現実国債買入れ額はかつてよりも大分減っております。  しかし、そのもとで十分、従来どおりの適切なイールドカーブは維持されておりますので、あと六割残っているでしょうというようなことを申し上げるより前に、今のフレームワークでは、あくまでも、長短金利操作によって適切なイールドカーブをつくり、それによって経済の好循環を持続させて、賃金物価が緩やかに上昇して、二%に物価上昇率が達するということを目標にして運営しておりますので、市場からの国債買入れについて限界が出て、何か大きな問題になるというようなことは想定しておりません。想定されないと言っていいと思います。
  106. 塩川鉄也

    ○塩川委員 日本銀行のQアンドAで「教えて!にちぎん」というのがありますけれども、そこで、中央銀行が一旦国債の引受けによって政府への資金供与を始めると、その国の財政節度を失わせ、ひいては中央銀行通貨の増発に歯どめがかからなくなり、悪性のインフレーションを引き起こすおそれがあるからです、これは長い歴史から得られた貴重な経験ですと書かれている。知られているところであります。  やはり、安倍内閣そのものが財政規律にルーズと言わざるを得ません。日銀金融緩和政策によりつくられた低金利環境を背景として、財政投融資の活用によるリニア新幹線などの大型公共事業の促進や、一般会計でいえば、後年度負担を含む軍事費の拡大などを予算に盛り込み、財政悪化のリスクを高めております。この状況では、日銀が財政をファイナンスしていると見られても仕方がありません。  昨年来、FRBの金融緩和政策の縮小で、米国債金利上昇しています。日本でも、日銀国債購入額を段階的に縮小し、保有額自体を減らしていくことになれば、当然国債金利上昇します。そのとき、国の予算の国債費は、金利上昇を受けて増加していかざるを得ない。  市場には、財政悪化が続く中で長期金利の低位安定を維持するには、日銀国債購入をむしろふやしていかざるを得ないとの指摘もありますが、総裁としてはどのようにお考えでしょうか。
  107. 黒田東彦

    黒田参考人 従来から申し上げておりますとおり、今、日本銀行国債の直接引受けというのを行っておりませんし、あくまでも金融政策の一環として、市場から国債その他の金融資産を購入して、それによって、金利を引き下げ、予想物価上昇率を引き上げて実質金利を引き下げることを通じて経済の好循環を持続していこうということでございます。  したがいまして、もちろん、現時点で金利が低いということが政府国債費負担を下げていることは事実ですけれども、将来、当然のことながら、二%の物価安定目標も達成され、出口ということになってくれば、そういった状況ではそもそもマーケットで金利上昇していくということになると思いますし、その中で従来どおりの国債発行をしていけば、国債費は急増するということになると思います。  ですから、それは当然、そういうことは政府として予想しておられることだと思いますけれども、私どもとしては、あくまでも、財政ファイナンスをする、通貨発行権限を背景に政府の財政赤字をファイナンスするというような財政ファイナンスは、現在もしておりませんし、将来もすることはないと申し上げられると思います。
  108. 塩川鉄也

    ○塩川委員 時間が参りましたので、終わります。  ありがとうございました。
  109. 古屋圭司

    古屋委員長 次に、遠藤敬君。
  110. 遠藤敬

    ○遠藤(敬)委員 黒田総裁候補、本当に長時間お疲れさまでございます。大島議長もお疲れさまでございました。  もう時間もかなり押しておりますので、早速質疑に入らせていただきたいと思います。  過去五年間、金融政策の御自身の評価をお聞かせいただきたい。簡単で結構でございます。
  111. 黒田東彦

    黒田参考人 二〇一三年四月の量的・質的金融緩和を導入して以降、日本経済は大きく改善したということは事実だと思います。企業収益とか雇用とか、そういうことはもうはっきりしておりますし、賃金も緩やかながら着実に上昇している。物価弱目動きが続いてはおりますけれども、それでも、エネルギー生鮮食品を除いた消費者物価の前年比というのは、二〇一三年秋以降ずっとプラスにはなっていますので、それ以前の、マイナス、つまりデフレが続いた状況とは異なっている。  つまり、デフレではなくなっているという意味で、この間の金融緩和というものが、経済物価を大きく改善させる効果があったとは考えております。ただ、二%の物価安定の目標はなお実現できておりません。  これは大変残念なことですけれども、その背景としていろいろな事情があることは従来から申し上げているとおりであります。  今後、現在の経済状況を持続させて、好循環をさらに改善していくことによって、現在の見通しでは二〇一九年度ころには二%の物価安定の目標実現できるのではないかというふうに予想しておりまして、そういう意味では、過去五年間の日本金融政策の効果というのは、一定の効果というのはあった、ただ二%はまだ実現できていないという状況だと思います。
  112. 遠藤敬

    ○遠藤(敬)委員 ありがとうございます。  続きまして、低金利環境の長期化は、金融機関の収益金融仲介機能に影響を及ぼしているとの主張も聞かれますが、この点に関して御見解をお伺いします。
  113. 黒田東彦

    黒田参考人 一方で、現在の金融政策のもとで、貸出金利とか社債の金利とか、これは非常に大きく低下しておりまして、金融緩和経済の拡大を支えているということは事実だと思いますが、他方で、確かに、金融機関の、特に預貸利ざや、預金金利と貸出金利の差ですが、これがどんどん縮んできているという意味では、特に、そういうものに依存度の高い地域金融機関の収益影響を及ぼしていることは事実であります。  足元では、一方で、地域金融機関の貸出しが大きく伸びているために、利ざやが減っても、貸出しの量がふえているということで、利ざやが減ったほどにはその収益は減ってはいないんですけれども、やはり低金利環境というものが地域金融機関の収益影響を及ぼしているということは事実であります。  他方で、地域の人口が減り、企業が減っていくという中で、構造的に一種のストレスが地域金融機関にかかっています。それに加えて低金利環境というものがあって影響を与えていることは事実でありますので、その状況は十分今後とも注意してまいりたいと思います。  足元ではそれほど収益は悪くなっていないということと、貸出しが非常に大きく伸びていますので金融仲介機能に影響は出ていないんですけれども、もう少し長い、長時間をとると、影響が出てくるおそれもありますので、そこら辺は十分注意してまいりたいと思っております。
  114. 遠藤敬

    ○遠藤(敬)委員 大規模な金融緩和が財政規律をゆがめているという主張もまたございますが、この点の見解についてお伺いしたいと思います。
  115. 黒田東彦

    黒田参考人 この点は、私ども金融緩和政策によって、金利、特に長期金利短期金利もみんな下がっているわけですが、これが政府国債費の負担を減少させているということは事実であります。また、それを通じて、政府の財政規律を弱めているのではないかという議論があることも承知をいたしております。  ただ、この点は、あくまでも日本銀行金融政策は、物価の安定を目標にして必要な金融緩和措置をとっているわけでございまして、その点はぜひ御理解いただきたい。  それから、やはり何といっても財政政策というものは、これは政府、国会がお決めになることであるということでありますので、日本銀行政策国債費負担を低下させているということは紛れもない事実なんですけれども、その話と財政政策、財政規律の話をダイレクトに結びつけることについては、中央銀行の立場から心配するということはあるんですけれども、やはりあくまでもこれは、政府、国会で議論してお決めになることではないかというふうに思っております。
  116. 遠藤敬

    ○遠藤(敬)委員 政府と、もし総裁に再任された場合、どのように連携していくのか。お答えいただきたいと思います。
  117. 黒田東彦

    黒田参考人 物価の安定を達成、維持していくためには、中央銀行の独立性、政府からの独立ということが重要であるということは世界的なコンセンサスになっているわけです。現在の日本銀行法にもそれがいわば明記されているわけです。  他方で、同じくこの日本銀行法には、金融政策といえども全体のマクロ経済政策の一環ですから、政府との意思の疎通を十分にしないといけないということも書いてあるわけです。  ですから、政府との連携ということは日本銀行法にも沿ったものでありまして、これ自体は全く問題はないわけですけれども他方で、日本銀行金融政策については、あくまでも日本銀行政府から独立して決定するというふうになっているということも重要だと思います。  そうしたもとで、二〇一三年一月の政府日本銀行共同声明というのは、非常にはっきりと、両者が連携してデフレから脱却して、持続的な成長経路に乗せようというところでは一致して連携していくわけですが、その上で、いわば役割分担をしておりまして、日本銀行は、大胆な金融緩和によって二%の物価安定の目標をできるだけ早期実現する。政府は、一方で機動的な財政運営によって経済を支え、もちろん中長期的には財政の持続可能性を高める。三番目に、いわゆる成長戦略、民間の投資とかイノベーションを促進させて成長を促進させるような構造改革を進めていく。  こういうふうに、日本銀行政府との役割分担を決めて、その上で十分な連携がとれるような形になっておりますので、こういった形での政府との連携というのは今後とも必要であり、重要であるというふうに考えております。
  118. 遠藤敬

    ○遠藤(敬)委員 ちょっと観点を変えまして、人手不足の深刻化に関する認識はいかがでしょうか。労働人口減少のもと、これ以上の景気刺激策は悪影響の方が大きいとの見方もありますが、こういった見解についてお伺いをしたいと思います。
  119. 黒田東彦

    黒田参考人 確かに、私も各地にいろいろお邪魔して、各地域経済界の人、金融機関の人とお話をするわけですが、特に、東京よりも、むしろ地方において人手不足の意見が強いわけでして、それは特に、地方にいろいろあります各種の非製造業ですね、運輸業とか小売業とか、あるいは高齢化を反映した介護、医療その他ですね、いわゆる非製造業で非常に、こういうところは労働集約的ですから、ますます人手不足の思いが強いわけですね。  そういう意味では、そういう状況になっているということはよく認識しておりますけれども他方で、地方の企業も、運輸会社も小売店も、あるいは老人ホームとかその他を経営している方も含めて、さまざまな努力をして、高齢者とか女性を多く採用するとか、働き方を柔軟にするとか、それから一種のビジネスモデルを見直して労働節約的にするとか、もっと言えば、ロボットとかITとか、各種の省力化技術を活用してそれを克服していくというようなことをやっておられまして、今の時点で労働力不足で成長ができなくなっているということではないと思うんです。  ただ、やはり中長期的に見れば、よく言われていますように、潜在成長率というのは三つの要素で成り立つわけでして、労働投入量、資本投入量、そして全要素生産性の上昇率で決まってくるわけですので、人手不足というのは、中長期的に見ますと成長を制約していくおそれがある、可能性があるということであります。そのもとでは、やはり資本装備率を上げる、設備投資その他をするということと、全要素生産性を上げていくようなイノベーション、RアンドD投資といったことを進めて、全体として労働生産性を上げていかなければ、長い目で見れば労働力不足が成長制約になっていくと思います。  ただ、今のところ、足元ではそういう状況になっていないということと、企業のレベルでもいろいろな努力をしておられるし、また、政府もいろいろな政策を導入、動員されようとしておられますので、そちらの方がうまくいけば、いわゆる生産性革命というか、労働生産性が上がっていけば、生産年齢人口がこのように毎年、最近は、百万人とは言いませんが、数十万人単位で減少していますので、これはかなり大きな制約要因に将来はなり得るということで、労働生産性の上昇というのがまさに絶対的に必要な状況になっていると思います。
  120. 遠藤敬

    ○遠藤(敬)委員 関連して、人口や企業数が減少するもとで、地域経済の活性化における地域金融機関の役割について、最後の質問ですが、お答えをいただきたいと思います。
  121. 黒田東彦

    黒田参考人 この点は、よく外国の人が言うんですけれども、困難というか、チャレンジというのはオポチュニティーでもあるとよく言うんですね。それはそのとおりだと思います。  確かに、地域で人口が減少し、企業は減少しているというもとで地域金融機関がどういう役割を果たすかということは非常に重要でして、そうした中で、地域企業のイノベーションを助けるとか、あるいはスムーズな事業承継を助ける、ビジネスマッチングを助けるといったことを通じて地方経済の活性化に、地域銀行が支援をして活性化に貢献すれば、あるいは、することによって、地域も活性化するし、地域金融機関も恩恵を受けるということになると思いますが、それは、そういうチャレンジというか、それをオポチュニティーに変えてプラスにしていかないといけないという意味では、確かにチャレンジだと思います。  ただ、そういうことができるのは、やはり地域の事情をよく知っている地域金融機関だと思いますので、困難だと思いますけれども、そういうことをやっていかなければならないし、それをやはり政府とか日本銀行としてもできる限りサポートしていく必要があるというふうに思っております。
  122. 遠藤敬

    ○遠藤(敬)委員 御丁寧な御答弁、ありがとうございました。  これで終わります。
  123. 古屋圭司

    古屋委員長 これにて各会派を代表する委員質疑は終了いたしました。  これより自由質疑を行います。  質疑される方は、挙手の上、委員長の許可を得て発言されるようお願いいたします。  また、発言の際は、所属会派及び氏名をお述べいただき、一人一問一分以内としていただきますようお願いいたします。  それでは、質疑のある方は挙手をお願いいたします。
  124. 津村啓介

    ○津村委員 先ほど、総裁は一九年度ごろに出口を検討ということを触れられたんですけれども、先ほどどなたかも触れられていましたように、きょう、失業率が二・四%、前月比マイナス〇・三%ポイントで、かなり大幅な改善ですし、驚かれたと先ほどおっしゃっていましたけれども、非常に労働市場がここからタイトになってくる可能性があって、なおかつ、今、春闘の時期ですけれども、三%の賃上げということも言われています。  そういうことでありますと、場合によっては、更に賃金上昇を通じて物価が早く上がってくる可能性もなきにしもあらずと思うんですが、その一九年度ごろというのは、前倒し、つまり一八年度ということもあり得るという理解でよろしいでしょうか。
  125. 黒田東彦

    黒田参考人 金融政策でございますので、特に長短金利操作、いわゆるイールドカーブコントロールの方は、毎回の金融政策決定会合で、その時点までの金融経済状況を踏まえて次回までの金融市場調節方針を決めるということでございますので、こちらの方はある意味で弾力的なものであると思いますが、現時点で、二〇一九年度ころでなくて、むしろ二〇一八年度ころに金融政策を、出口について具体的な議論をして、出口を探るということになるというふうにはまだ考えておりません。  ただ、先ほど申し上げたように、今の長短金利操作つき量的・質的金融緩和というのは、イールドカーブコントロールの方はある程度柔軟になっておりますし、他方で、オーバーシュート型コミットメントの方は、これは物価上昇率の実績値が二%に達して、それが安定的に推移するまでマネタリーベースの拡大を続けるということになっておりますので、こちらの方はもう少し長期の明確なコミットメントになっております。
  126. 古屋圭司

    古屋委員長 他にございませんか。  これにて黒田参考人所信に対する質疑は終了いたしました。  黒田参考人、ありがとうございました。どうぞ御退席ください。  以上をもちまして日本銀行総裁候補者からの所信聴取及び所信に対する質疑は終了いたしました。     —————————————
  127. 古屋圭司

    古屋委員長 次に、次回の本会議は、追って公報をもってお知らせいたします。  なお、来る五日月曜日午後二時理事会、午後二時十五分から委員会を開会いたします。  本日は、これにて散会いたします。     午後三時五十三分散会