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黒田参考人 確かに、特に
地域金融機関の
収益状況を見ますと、
地域金融機関の場合は、圧倒的に多くの部分が、預金で貸出しをして預貸利ざやで稼ぐということが中心になっております。メガバンクとか何かは、もうそういう部分はむしろ半分もなくて、そのほかの
金融サービスとか海外での活動によって
収益を上げているわけですけれ
ども、
地域金融機関の場合は、そういうものは極めて少なくて、圧倒的に、いわば地場の
企業に貸し付ける、預金は地元で集めて地場の
企業に貸し付けることで
収益の大半を得ているということであります。
そうしたもとで、預貸利ざやが縮小していることは事実であります。と申しますのは、預金
金利はもう十数年前から極めて低い
状況にありますので、これ以上預金
金利を下げるという余地はもうほとんどない。
他方で、
金融緩和のもとで貸出
金利がどんどん下がってきていますので、預貸利ざやが縮小する。その結果、
地域金融機関の
収益力に対する
影響が出てきているということは事実であります。
ただ、足元はさほど悪くなくて、かなり高い
収益を上げているのは二つ
理由がありまして、一つは、
金融緩和のもとで、
地域金融機関の貸出しは実はメガバンク等の貸出しよりずっと伸びていまして、中小
企業を中心に、最近ではたしか五%ぐらいの伸びになっているんですね。ですから、利ざやは減っているんですけれ
ども、貸出しが大きく伸びているので、それほど縮小していない。それからもう一つ、資産
運用で、前に持っていた
国債とか株を売ると、売買益、キャピタルゲインが出るんですね。
だから、キャピタルゲインがかなり出るというのと、貸出しが量的にふえているので、それほど、預貸利ざやが減っているほどには貸出しによる利益は減っていないので、見たところ、
地域金融機関は結構な利益は上がっているんですね。
ただ、将来を
考えると、さっき言った益出しの部分というのはだんだんなくなってきますし、そして、こっちの利ざやの縮小、預貸利ざやというのは相変わらず縮小していますので、いずれ
収益に
影響が出てくるという
可能性はかなりあるわけです。
一方で、これはもう十五年、二十年続いていることですけれ
ども、
地域の人口が減り、
企業の数も減っていますので、それに対する支店のネットワークとか職員の数が、貸出しのビジネスの全体としての低下傾向、縮小傾向と合わなくなっているんですね。
そういう問題もあって、非常に複雑に絡んだ問題があって、今の時点ではいいんですけれ
ども、これからを見るとかなり厳しい面もあるということは事実であります。そういうこともあってか、
地域金融機関が賃上げに慎重なところもあるかもしれません。
ただ、御案内のとおり、各
地域ではやはり
地域金融機関の
賃金というのはそこそこのレベルにあるということで、むしろこれからは、
地域金融機関がある程度支店とかスタッフを整理するとか、あるいは支店に張りつけていた人を違う仕事に振り向けるとか、そういうことが起こり得るので、今の時点で、
地域金融機関の
収益状況が物すごく悪くなって、
賃金も上げられなくなって、それが
地域の賃上げのスピードを落としているということまではいっていないと思うんですけれ
ども、長期的に見た
地域金融機関の
収益力というのは、やはりいろいろな努力で上げていかないと、五年、十年たつとかなりな
影響が出てくるというふうに懸念をしております。