○
真山勇一君
民進党・新緑風会の
真山勇一です。
今日起きている一連の議院運営のやり方に厳しく抗議と怒りを込めた上で、ただいま
議題に上がりました
法務大臣金田勝年君の
問責決議案について、
提出の
趣旨を述べさせていただきます。
まず、
問責決議案を朗読いたします。
本院は、
法務大臣金田勝年君を問責する。
右決議する。
金田法務
大臣の問責を求める
理由を申し上げます。金田
大臣が
共謀罪法案をめぐる
国会の
質疑に今なお明確な説明をしていただけないから、これに尽きます。
私
たち民進党は、
共謀罪法案の徹底した
審議を求め続けてきました。
法案に対する
国民の理解が広がっていないというより、むしろ、いや、この
法案は怪しいという正しい理解が深まっていると言えるのではないでしょうか。更なる熟議を求める声が今なお大半を占めているのが現状です。だからこそ、私たちは、昨日の
法務委員会の開催に当たっては、
採決をしないと確約するよう求めました。しかし、政府・与党は、
採決をするともしないとも約束しませんでした。そして、法務
大臣は相変わらずつじつまの合わない迷走
答弁でのらりくらりと
審議時間を浪費するばかりで、
審議の中身はちっとも深まりませんでした。
そうした中で、同じ時刻に開かれていた
内閣委員会で
採決の
動議が出される動きがあったのです。徹底
審議を求める
国民の声に応えることなく、理事会での合意なしで
採決を強行しようとした政府・自民党のこうしたやり方を受けて、私たちは、苦渋の決断として法務
大臣に対して
問責決議案を
提出しました。これ以上、金田
大臣の下で
法案の
審議をすることは不可能です。そして、金田
大臣の下で
共謀罪法案の
採決をするなど、到底容認できません。
もはや、問責の
理由は明らかと思います。
衆議院から始まり、与党席からも失笑ややじが飛ぶような迷走
答弁を続ける
大臣などほとんど前代未聞、いや、その見事さにかえって感心さえしてしまいます。
答弁については基本的に林刑事局長に丸投げ。たまに
大臣が手を挙げて
答弁するかと思うと、聞かれたことには答えず、関係ない
内容を繰り返す。またあるときは、後ろに座る
官僚の方を振り返り、耳打ちされた言葉をそのままオウム返しで繰り返すだけ、それも全部マイクが拾っているのです。こうした不思議な
質疑の様子がテレビで繰り返し放映され、
国民の怒りと失笑を買っています。情けない
質疑を許している
国会の権威は大いに失墜したと言わざるを得ません。良識の府である参議院は、断固、金田
大臣を問責すべきなのは当然ではないでしょうか。
与党の
皆さん、冷静に考えてみてください。もう
国会も最終盤なのに、金田
大臣は
共謀罪について何度聞かれてもごく基本的なことすら明確に答えていません。TOC条約はテロとは無関係という国際合意があるのに、なぜテロ等準備罪という名の
法律が条約締結のために必要なのでしょうか。この
法案ではテロは防げないと与党
議員の方ですら認めているばかりでなく、近年世界各国で起きているローンウルフ型のテロにはこの
法案は無力であることを林刑事局長も認めているではありませんか。それでもなぜ強引に
法案を成立させようとするのでしょうか。
そもそも、テロ対策のためと言いながら、この
法案にはテロに直接的に関連する条文がほとんどなく、テロの定義すらないのはなぜなのか。
我が国は、暴力団対策法などに参加罪が設けられており、また、重大な
犯罪の多くに予備罪があり、共謀共同正犯の考え方も
確立されているのに、それでもTOC条約に入れないと政府が言う
理由は何なのか。現行の法体系を国連側に示した上で、それでも条約を締結できないことをいつどうやって確認したのか。そして、実行行為がないと
処罰されないというこれまで守られてきた刑事法の大原則が、こうした不明確な
理由でいとも簡単に大転換されてしまうのはなぜか。さらには、従来の刑事法の基本原則が強引に改変されることで実際の捜査、逮捕、裁判、弁護などの実務が大混乱するという指摘があるのに、本当に組織
犯罪を防ぐことができるのか。疑問点は後から後からと山のように出てきています。
国会審議での金田
大臣の役割は、こうしたことに
一つ一つ丁寧に
国民の
皆さんに理解してもらえるようきちんと説明することだったはずです。
法案について大事なことを一切説明しない
大臣を私たちはどうやって信任することができるのでしょうか。与党の
皆さんが野党だったときも、時の政権に対して
問責決議案を連発されていたようですが、過去、これほど
国会を軽視し、最初から説明責任を放棄した
大臣がいたでしょうか。
今、
日本各地で
国会音読という運動が広がっているのを御存じでしょうか。一般の人たちが
衆議院、参議院
法務委員会の
議事録を取り寄せて、それぞれ役割を分担して
発言内容を音読する、言わば
国会劇場の上演会が行われているんです。参加した人たちは、金田
大臣の
答弁の意味不明さ加減に笑い、あきれ、怒る一方で、その意味するところの恐ろしさを感じ、戦慄していると聞いています。与党の
皆さん、是非、
法務委員会の
議事録を音読してみていただきたいと思います。
参議院での
審議時間はまだ十七時間五十分、まだたった十七時間五十分ですが、私としては
共謀罪法案について重要なことが
一つ明らかになったと考えています。それは、この
法案によって全ての
国民が監視され、捜査の
対象になり得るということです。この事実は限りなく重いことです。
つまるところ、一般の人かどうかは捜査当局がその都度決めるのであり、一般の人について法文上は定まった定義などはありません。政府は、嫌疑を受けない人が一般の人に当たると
答弁してきました。それは、全
国民が監視あるいは捜査の
対象になるということとほとんど同じ意味になりませんか。
また、組織的
犯罪集団の定義は今なお曖昧なままですが、林刑事局長は、特定の団体に所属していなくても、周辺の人とみなされれば捜査の
対象になると明言しました。そして、その周辺の人かどうかを
判断するのは捜査当局なんです。任意捜査は誰に対してでもできます。令状を請求するから歯止めはあるといったところで、現状では却下される令状請求は僅か一%ほどしかなく、裁判所はチェック機能の役割を果たせていません。
私とて、警察や検察は公正中立で不偏不党であると信じたいところです。しかし、現時点でたくさんの冤罪事件が存在しており、冤罪を根絶するための検察改革はまだまだ道半ばというのに、更に捜査当局に都合の良い
法律を作るのは一体どういう
理由でしょうか。今や、訴訟手続の中に匿名証人制度があり、司法取引もあります。また、特定秘密
保護法で
情報を隠匿、廃棄することも可能です。これに加えて
共謀罪法案が成立してしまったら、権力の側にある者は全
国民を好きなだけ徹底的に監視することが可能な社会になります。そして、自らにとって都合の悪い人間を好きなように罪に陥れ、社会的生命を葬り去ることもできます。
私は、この
法案の
代表質問で、安倍
内閣の
皆さんは育ちも心根も良いから、この
法律を悪いようには使わないと信じているということを申し上げましたが、今これを訂正したいと思います。
文部科学省の前事務次官
前川喜平氏が義憤に駆られて政権を糾弾するや、
官邸は
前川氏の真偽不明の個人的な醜聞をリークして、その社会的生命を葬り去ろうとしたと言われています。ほら、見てください。安倍政権は、自分に都合の悪い人間は常時監視し、社会的生命を絶とうとするのです。一方、政権にべったりとされるある記者については、安倍政権が彼の
犯罪行為をもみ消そうとしたという報道もあります。私はこの報道の真偽が分かりませんし、個別
具体の事件ですから、ここではこれ以上言及は差し控えます。
しかし、政府は是非、分かりやすく
国民に説明をし、
国民の不安を取り除くべきです。安倍政権は、
国民を常時監視したいのではないか。
法律を恣意的に運用して、政権にとって都合が悪い人物や団体を弾圧したいのではないか。今、私たちの周りで起きていることを見ると、そう思われてなりません。
国民の不安をあおっているのは、私たち野党の
議員が
国会で延々と議論をするからではなく、こうした安倍政権の実際の言動や振る舞いのためなのだと思います。
先日の参議院本
会議において、この場所です、金田法務
大臣は見過ごすことのできない
答弁をしました。隠れみのという
発言です。環境問題や人権問題など正当な
目的を標榜する団体であっても、それが隠れみのにすぎない場合があり、それらを暴くためにこの
法案が必要であるとこの場ではっきりと明言したのをここにいる
皆さん全員がお聞きになったはずです。
金田
大臣、ある団体が隠れみのかどうかは捜査をしなければ分かりませんよね。ということは、正当な
目的の一般の団体であっても、当局はいつでも監視をし、捜査できるということではありませんか。特定の団体の構成員であってもなくても、
共謀罪法案は
処罰が可能ということになりますね。政権にとって都合の悪いことを言う団体や人物をいつでも監視し、捜査し、逮捕することがこの
法案で可能になりますね。そして、これこそがこの
共謀罪法案の本当の
目的ではないかと疑われているのです。
このように考えてくると、
一つ納得できることがあります。金田
大臣御自身が実はその隠れみのではないかということです。
国民を監視し、都合の悪い団体や個人を弾圧し、葬り去りたいという安倍政権の本音を隠すために、
大臣が隠れみのとなって、意味不明な
答弁を延々と続けて時間を潰しているのではないかとさえ思えてくるのです。
私の感じていることをあえてここで言わせていただければ、私は、金田
大臣が無能であるとも、
法案について理解していないとも思いません。金田
大臣、あなたは大変に優秀な方ではないかと思います。東大の入試が中止になった年に一橋
大学に進学し、その後、大蔵省で主計官まで務められたのですから、
大臣の頭脳の優秀さは折り紙付きです。そんな切れ者だったからこそ、竹下元首相に見出され、政界に転身されたと伺っています。
大臣がこの
法案の本当の
目的を隠すために隠れみのの役割をあえて演じているなら、金田
大臣の罪は大きく、
国会をないがしろにし、
国民を欺き、民主主義を破壊する行為です。参議院として断固問責すべきでしょう。もし、私のこの推測が当たっておらず、誠心誠意の回答をしてもなお今のような
答弁を繰り返すのであれば、金田
大臣は資質に欠けると言うほかはありません。これもまた、当然ながら問責に値します。これが、私たちが今回、金田法務
大臣の
問責決議案を
提出した
理由なのです。
最後に、安倍政権の
皆さんに申し上げます。
参議院の
法務委員会に出席した新倉参考人は、この
法案を違憲無効の欠陥
法案と言い切りました。また、松宮参考人は、戦後最悪の治安立法とまで断言しました。
共謀罪法案は、法文上、罪のない人に疑いを掛け、内心の自由を制限できる
法律です。安倍政権はこの
法律が濫用されることはないと言っていますが、何を
根拠にその言葉を信じろというのでしょうか。
安倍政権がやってきた政治の本質は、お友達の優遇と
反対者への攻撃です。
安倍総理に近ければ近いほど、
法律や規則が都合よく恣意的に運用されて、たっぷりと甘い汁が吸えます。森友学園や
加計学園の問題で
国民の怒りが覚えたのはそこではないでしょうか。李下に冠を正さずと言いますが、権力者として最も戒めるべき国政の私物化をやったと疑われているのです。安倍政権にとって不都合なことを言う人はヒステリックに攻撃され、批判にさらされます。そして、ついには、国連人権理事会の理事国として自ら任命した
特別報告者であるにもかかわらず、その
報告者から投げかけられた疑問について、一切何も誠実な回答をしないまま、ただただ感情的な抗議だけをたたきつけました。