○
三宅伸吾君
金商法の
分野では、
被害を受けた方の
民事裁判による
損害の回復の
手続、これは
民法七百九条に基づく
手続でございますけれども、それから、例えば
東京地検特捜部等による
刑事の
執行、そして、それに加えて
課徴金という
仕組みがあるというわけでございます。
じゃ、他の
分野も実は似たようなものがないかというとありまして、御
案内のように、
独占禁止法にも
課徴金という
制度があります。
独禁法も、
民事の
救済、それから
刑事の
制裁、
価格カルテル等をやった場合ですね、それから
独禁法の
違反にも
課徴金はあります。あと、
労働分野を、実はちょっと変わった
民事救済手続があります。例えば、未払、
賃金を払わない、それから
割増し賃金を払わないような場合に
従業員が
会社に対して訴えを起こすと、
裁判官の
判断によって、場合によっては
割増し賃金、未払の
賃金の倍額まで払わせるという
制度が
労働基準法には入っております。
私、こういう
仕組みを御紹介申し上げるのは、
違反をする人間に対して、十分な
民事救済を
最後は負わされるんだよ、場合によっては訴追もされる、訴追されなくても
行政処分によって金銭的な
制裁が掛けられるんだよというような、様々な
政策を総動員していわゆる
法目的を達成しようとしているわけでございますけれども、
知財立国を標榜している
我が国において、
特許権侵害についてはそのような
政策が総動員されているという気が私はいたしません。
その結果、
日本は
特許権の
資産デフレが起きて、そして
ベンチャー企業が
銀行から
お金を借りようとして、いや、我が社はこんなすばらしい
特許を取りましたと、是非この
特許権を
担保にするか、
担保まで言わなくても、
特許全体を
評価してきっちり
融資をしてくださいというお願いをしに行った場合、例がないわけではありませんけれども、
お金を貸す方から見たら、いや、
万が一、あなたの
特許権を信用して
お金貸したんだけれども、
ライバル会社があなたの
特許権を
侵害をした場合に
裁判所に訴え出たら、じゃ、一体
幾ら裁判所は
損害賠償を認めてくれるんですか、過去十年の
裁判所の例を見ると
最高十八億弱じゃないですかと、それじゃ
融資をしても貸倒れになるリスクがあるかもしれませんね、だから貸せませんよというような私は
状況になっているのをとても危惧をいたします。
それから、そういう懸念は、特に
ベンチャー企業にとって私は死活問題だと常々思っております。
特許を取ったからといって事業が成功するとは、それは限りません。マーケティングのアイデア、PRの仕方、様々な経営戦略の総合力の結果として、数多く生まれる
ベンチャーの本当にごく数%がブレークスルーをして世界を席巻するわけです。
例えば、言うまでもありませんけれども、このインターネット時代を迎えて、グーグル、フェイスブック、ツイッター、韓国系でございますがLINE、それからインスタグラム、たくさん多くのネット
ベンチャーが生まれてきておりますけれども、彼らの
ビジネスのコアに
知的財産権があるのは間違いないと思います。それだけで
ビジネスがうまくいったとは私絶対申しませんけれども、
最後の
最後、私の虎の子のこの技術、
特許権で排他的独占権を認められているこの権利を
侵害したら、
最後は
裁判所に訴えてあなたのサービスを止めますよ、場合によったら、悪質な場合は実損の二倍、三倍の金銭的賠償命令が
裁判所から出ますよという、こういう構えを取っているわけでございます。
大陸法の中国でも今、
特許法の改正をやっておりまして、いわゆる米国法の懲罰賠償を中国でも導入するのがほぼ
現実味を帯びております。国の数で見ると懲罰賠償を入れている国はまだまだ少のうございますけれども、
特許について言うと、アメリカと中国の出願数は全世界のもう既に六割近くを行っておりまして、数で見るとグローバルスタンダードは、もう米中がある
仕組みを導入した瞬間グローバルスタンダードに切り替わるというわけでございます。
我が国におきましては、その懲罰賠償
制度というのは
一般には認められておりません。先ほど
労働基準法の
お話をいたしましたけれども、例外的な法
制度としていわゆる
民法七百九条の
填補賠償とは異なる
仕組みもないことはありませんけれども、
一般的に言うと、
填補賠償の
原則は
我が国においては大陸法系というところでこれまでは堅持をされてきておりますけれども、法律は
目的ではなくて手段でございます。
我が国が本当に
研究開発そしてその成果の
知的財産権をうまく使って国を豊かにしよう、海外からどんどんロイヤリティー収入も得ましょう、それから、技術開発の成果を権利で保護し、それをてこにしてどんどんどんどん
ベンチャー企業がたくさん出てきて、産業の新陳代謝を通じて元気に国をしましょうということであるならば、
特許権の
侵害のし得だと言われるような悪評が
我が国にずっと付いて回るのは甚だ遺憾だというふうに思った次第でございまして、本日はそのような思いを是非
皆さんと共有したくてこのテーマを取り上げました。
我が国においても、
特許権侵害に対する
民事救済、
填補賠償がまだまだ不十分だから、まず
填補賠償をしっかりやれという議論も当然必要でございます。証拠収集
手続が足りないとか、いろいろ言われております。七百九条の中身をしっかりと充填させるということも必要であろうかと思いますけれども、実際に
検察が
特許権侵害で捕まえるのは実はとっても難しいんです。
例えば、iPSの
特許権を私取りました、
侵害されましたので、ちょっと
検察庁さん、あの
会社のiPS細胞由来のあのサンプル品を作っている
会社、立入検査をして調べてくれと、これ言っても、まず、iPSとは何ですかと、ここから勉強しなきゃいけないんです。極めて大変です。それはよく分かります。
ですから、なかなか、警察、
検察が
特許権侵害罪の法
執行について慎重になるのは私は分からないではありませんけれども、であるならば、国全体の法
執行のトータルとして、
侵害し得を許さないように、
民事分野においても、
一般予防効果のあるような場合に、積極的加害意思のある、いわゆる本当に悪質な
侵害であることが立証できれば、そういう
侵害者に対しては
民事上がつんといくということが必要ではなかろうかと私考えておりまして、本日の
質問をさせていただきました。
ありがとうございました。