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2017-04-19 第193回国会 参議院 国際経済・外交に関する調査会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成二十九年四月十九日(水曜日)    午後一時五十八分開会     ─────────────    委員異動  四月十二日     辞任         補欠選任     渡辺美知太郎君     今井絵理子君      熊野 正士君     高瀬 弘美君  四月十三日     辞任         補欠選任      足立 敏之君     大野 泰正君      川合 孝典君     大塚 耕平君     ─────────────   出席者は左のとおり。     会 長         鴻池 祥肇君     理 事                 酒井 庸行君                 柘植 芳文君                 宮本 周司君                 藤田 幸久君                佐々木さやか君                 武田 良介君                 東   徹君     委 員                 今井絵理子君                 小野田紀美君                 尾辻 秀久君                 大野 泰正君                 中山 恭子君                 丸山 和也君                 三木  亨君                 宮島 喜文君                 吉川ゆうみ君                 大塚 耕平君                 古賀 之士君                 杉尾 秀哉君                 真山 勇一君                 高瀬 弘美君                 横山 信一君                 木戸口英司君                 伊波 洋一君    事務局側        第一特別調査室        長        松井 一彦君    参考人        明治大学政治経        済学部教授    伊藤  剛君        米国先端政策研        究所上級研究員  グレン・S・                 フクシマ君        東京大学大学院        法学政治学研究        科教授      高原 明生君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○国際経済外交に関する調査  (「アジア太平洋における平和の実現地域協  力及び日本外交在り方」のうち、信頼醸成と  永続的平和の実現に向けた取組課題(日中、  日米関係)について)     ─────────────
  2. 鴻池祥肇

    会長鴻池祥肇君) ただいまから国際経済外交に関する調査会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  去る十三日までに、熊野正士君、渡辺美知太郎君、川合孝典君及び足立敏之君が委員辞任され、その補欠として高瀬弘美君、今井絵理子君、大塚耕平君及び大野泰正君が選任されました。     ─────────────
  3. 鴻池祥肇

    会長鴻池祥肇君) 国際経済外交に関する調査を議題といたします。  本日は、「アジア太平洋における平和の実現地域協力及び日本外交在り方」のうち、「信頼醸成と永続的平和の実現に向けた取組課題」に関し、「日中、日米関係」について参考人からの御意見をお伺いした後、質疑を行います。  本日は、明治大学政治経済学部教授伊藤剛参考人米国先端政策研究所上級研究員グレン・S・フクシマ参考人及び東京大学大学院法学政治学研究科教授高原明生参考人に御出席をいただいております。  この際、一言御挨拶を申し上げます。  お三方の先生方におきましては、御多用の中、本調査会に御出席をいただきまして、誠にありがとうございます。  どうか忌憚のない御意見を頂戴して、今後の調査参考にさせていただきたいと思いますので、どうぞよろしくお願い申します。  本日の議事の進め方でございますが、まず、伊藤参考人フクシマ参考人高原参考人の順でお一人二十分程度御意見をお述べいただいた後、午後五時頃までを目途に質疑を行いますので、御協力をよろしくお願いいたします。  なお、御発言は着席のままで結構でございます。  それでは、伊藤参考人から御意見をお述べいただきます。伊藤参考人
  4. 伊藤剛

    参考人伊藤剛君) ただいま御紹介にあずかりました明治大学政治経済学部伊藤と申します。  私にとりまして参議院と申しますのは、実は、今を遡ることちょうど六十年前の話なんですが、私の父がかつてこの参議院事務局に一年だけ勤めていたことがございまして、そういう意味でも、私の家族を代表してといいますか、参議院でこのような形で意見を述べさせていただくことを大変光栄に思う次第でございます。  永続的平和と関連して、かつ日米関係に関して話をするというのが私に与えられた課題でございますので、基本的には安全保障の観点から、その中にやや経済的な要素を組み込みながらお話を申し上げたいというふうに思います。  私のお話をする論点といいますのは、簡単に、お配りいたしました資料に載っているとおりでございますが、そもそも日米関係というものを考える以前の段階として、そもそも国際関係において安全を確保するとはどういうことであるかということを、まず非常に基本的な話から考えますと、私はよく大学でも話をするんですが、夜、警察がいない道を一人で帰るときにどうやって自分の身を守るかということから考えなさいという話からスタートをいたします。やり方は大体三つぐらいしかございませんでして、自分で守るか、人に頼むか、そもそも安全な社会をつくるか、この三つぐらいしかありません。  安全な社会をつくるというのは、言うのは簡単ですが、自分一人ではすぐにはできないことですから、すぐに自分でできる方法というのは最初の二つぐらいしか存在しないということになります。自分で守るというのは、安全保障にとってみればやはり防衛力をいかに整えるかということであり、人に頼むかということは、どうやって同盟をうまく利用するかということになってくるわけでございます。  日米を語る前に、その構造的なものをまず組み入れて話をする必要があるのではないか。具体的に、現在のトランプ政権に関する陣容であるとか政策の変容に関しては次のフクシマ参考人からお話をしていただくということになっているようですので、私はその構造的な側面を主にお話をしたいというふうに思うわけであります。  日本の場合は、この三つある手段のうちの二番目、人に頼むといいますか、同盟をうまく利用して日本国の安全というものを確保するということを選択肢として長い間やってきたわけであります。  当然、自分で守るということと人に頼むということにはそれぞれに長所と短所があるわけでありまして、人に頼むとどうなるかといいますと、もちろん自分の安全のために人に頼るわけですから、自分は確実に安全でないといけないと。ところが、アメリカのように非常に大きな軍事力を持つ国の場合は、アメリカの行う戦争あるいは安全保障政策日本が巻き込まれるという可能性というのが当然出てくるわけであります。これがよく言われる巻き込まれの恐怖というものでありまして、巻き込まれの恐怖を和らげようと思えば、当然その同盟関係を離さないといけないと。関係が希薄になればなるほど、君なんか要らないよということで、今度は同盟関係がなくなるという捨てられの恐怖というものが存在するわけで、この巻き込まれと捨てられの両方をうまい具合に操らないと同盟関係というのはうまくいかないということであります。  いずれにしましても、自分で守るという政策を取るにしても、人に頼むということを考えるにしても、やっぱり一〇〇%確実だということは当然ないわけであります。ですから、その確率のいかに高い状況を目指すかということを考えながら政策を考えていくしかないというのが現状であります。  紙の上の理論上では、この捨てられと巻き込まれというのは両者相反するものであるわけですが、実際には、その置かれている状況によってこの恐怖を感じる度合いというのは異なるわけであります。  実は、アメリカ同盟国といいますのは、韓国日本、それから、なくなりましたけど、台湾アメリカによって守られております、それからフィリピンというものがございますが。目の前に敵が存在する韓国やあるいは台湾というのは、アメリカによる安全保障供与がなくなるとひょっとしたら国家そのものもなくなるかもしれないという前提で戦後の体制というのがスタートしておりますから、明らかにアメリカから捨てられると困るという捨てられの恐怖の方が大きいと。日本フィリピンのように、一応仮想敵国はいるけれども目の前にその脅威というものがそれほど差し迫ったものではないという国の場合は、どちらかというと巻き込まれの恐怖というものが大きくなると。  同じアメリカ同盟国の中でも、アジアはそれぞれ持っている恐怖が異なるわけでありまして、そういう意味で、日本の中では、どちらかというと、どの論調を見ましても、アメリカから巻き込まれたらどうしようという論調の方が圧倒的に強くなるというのが構造的にもう組み込まれているというふうに言えるわけであります。  逆に、同じ国内でも政権党野党によってこの恐怖度合いというのは異なるわけでありまして、具体的にその政策を担当するわけではない野党にとってみれば、巻き込まれたらどうするんだという批判というのが多々出てくることになると。ところが、政権党で実際に安保政策を担っている側にとってみれば、いや、そんなことを言っても、関係を離し過ぎてアメリカに君なんか要らないよというふうになると逆に同盟そのものの根幹が揺らぐということになっておりますので、この恐怖感じ方というのは、同じアメリカ同盟国でも異なるし、同じ国内でも政権を持っているか持っていないかでも異なるということが言えるわけであります。  じゃ、この安全保障を人に頼る、つまり同盟を使う、ここに生じる同盟ジレンマを和らげるためにはどうすればいいかというと、結局は自分の力を蓄えるしかないということになってくることがしばしばあるわけで、これを、自分自分を強くするということで自強と書いているわけでありますが、しかし、自分自分を強くすることももちろん欠点があるわけであります。  自分自分を強くすればするほど、自分にとってはそれは防衛力防衛であるかもしれないけれども、安全を高めることになるかもしれないけれども、それは相手にとってみれば単なる恐怖の拡大であるということで、お互い恐怖が拡大して軍拡競争が続くというのが一般的に言われる軍拡スパイラルというものでありますが、この防衛政策短所を和らげるために同盟政策というものが本来存在するんですが、その同盟にももちろん欠点があるということでありまして、結果的には一〇〇%の安全というのは確保されないというのが構造的に言えるわけであります。  では、よりアメリカからの安全を確実にするにはどうすればいいかということがいつも問題になるわけですが、そこでいつも二つ課題話題になります。  一つは、代償物というラテン語でありますが、クイド・プロ・クオということで、アメリカ安全保障を供与してくれる代わり日本は一体何ができるのかと。より一般的には、A国安保供与に対してB国は何ができるのかということもしばしば出てくるわけであるし、アメリカからの安全保障供与を確実にしようと思えば思うほど、日本アメリカにひっつくという形になっていくと。しかし、本当に危機のときにアメリカ安全保障を提供してくれるのだろうかという信頼性の問題というのは、これも昔からあるわけでありまして、日米安全保障条約五条、六条を取ってみましても、本当に危機になったときにアメリカ安保を提供してくれるのであろうかという疑問は昔からあるわけであります。  歴史の流れで見ますと、日本アメリカというのは、かつては人と物との協力というふうに外務省の高官が発言したことがありまして、アメリカ安全保障を担う人を提供する代わり日本は基地という物を提供するんだという比喩で答弁された方も何人かいらっしゃいましたが、もう冷戦が終わった現代ではそういうわけにはいかないわけでありまして、お互いに人と人との安全保障協力というものをどうやって成し遂げていくかということがもう今後の日米関係に求められるというふうに言われてから、もう何十年もたってしまったという状態であります。  冷戦が終わって人と人との協力が言われるようになったわけですが、もう冷戦が終わって約三十年がたつわけであります。我々学者の世界では冷戦コンセンサスということが言われていまして、イデオロギー的対立のためにどうやって自由主義陣営を整えればいいかということが言われた時代がかつてありました。この冷戦という激しいイデオロギー対立があったからこそ、平和主義という平和的な言葉が人々を魅了したわけでありまして、全世界的なイデオロギー対立がなくなると、逆にこの平和主義というのは余り心には響かなくなっていくという状況になっていくと。  この二、三十年のうちに明らかに生じている現象は、新興国台頭という形で、大国だけが国際政治全体を動かすわけではなくて、かつて発展途上国と言われていた国が中等国になりだんだんと経済発展をしていくと、経済発展をしていくに従ってだんだん大国クラブの中に入れてくれという事態が起きてくるわけであります。  アメリカは、自らリベラルな秩序をつくって、国の関税をできるだけ低くして日本からの商品を受け入れるということを冷戦時代はやっていたわけですが、大国はいつも自分の都合に応じて政策を何度でも変えるというところがありまして、自ら持ち切れない国際的責任は必ず国際協調という言葉で代替をするわけであります。冷戦の変わり目、七〇年代、九〇年代、いつも円とドルの為替相場が大きく変動していますが、冷戦時代に持ち切れなかったアメリカ責任為替を操作することによって同盟国にどんどん押し付けていくということを結果的にやっているというふうに言えるわけであります。  と同時に、国際的な協調が気に入らないと、その協調の外に新しい機関をつくると。七〇年代にできたサミット、八〇年代に国連科学文化機構から脱退をしたこと等々も含めて、大国というのは基本的に、国際協調が気に入らないと自分の気に入るように機関を外につくっていくということが出てくるわけであります。TPPが気に入らないと新しいものをつくっていく、二国間交渉になるという事態が出てきているわけであります。  そうやって大国クラブの中に入れてくれという国がどんどん増えていくと、G5からG20という事態に変わっていっていると思いますが、実際には、中等国くらいだと、大国クラブに入れてくれという要求はあるんですが、いざ、じゃその大国責任を果たせということになると、いや、我が国はまだ発展途上国ですからという言葉で逃げるということが現実として起こっているのが、環境問題であるとか人権問題であるとか、こういったグローバルな課題を見れば明らかであるというふうに言えるわけであります。  次のページに参ります。  では、トランプ大統領自身の基本的な政策は、言うまでもなくアメリカファーストというものであります。アメリカファースト、○○ファーストというのは今、どこの国でもと言うとちょっと極端ですが、多くの政治指導者が言っていることでありまして、自国をとにかく、経済及び安全保障政策も含めた形で自国のプレゼンスを高くするということを政策の第一として掲げているわけであります。  この背景にあるのは、いわゆる反オバマオバマがやっていたことと反対のことをやるという個人的な対抗心でありまして、そこ自体に余り明確でかつ一貫した戦略というものは存在しないというふうに言っていいかと思います。だから、どの識者に聞いても、結局トランプ外交は何ですかね、ううん、よく分かりませんという答えが大体であると。個人的対抗心で、そこには戦略はない。戦略がないこと自体が一体何を考えているか分からないということで戦略的曖昧性になるという可能性はあるんですが、現状では一貫した政策がないということから、一体何が起こるだろうということを毎日ニュースで確認しなければいけないということになっているわけであります。  具体的には、シリア空爆をしたわけでありますが、トマホークを撃ったとしても、映像を見ていると、次の日にはあのシリアの飛行場から普通に戦闘機が飛び立っているということですから、そう考えると、一体その攻撃の有効性というのはどこにあるのかということをいつも感じると。つまり、具体的な戦略有効性が余り感じられない状態での空爆を行いながら、自分は声高にオバマと違うことをやっているということを主張するというのが現在展開されている状態ではないかというふうに思うわけであります。  このトランプ政権というのは、どんなふうに解釈するかは、今現在戦略はないと簡単に切り捨てることはできるんですが、長い目で見たらどうなるだろうということは実はよく分からないことがたくさんありまして、よく言われることは、今から遡ること百数十年前でありますが、南北戦争の頃というのは、北側の共和党が自由貿易主義奴隷制反対、南の民主党は保護貿易主義的で奴隷制に賛成ということで、今の民主党政策と随分違うなということであります。そうやって考えると、非常に長い目で見れば、現在のトランプはそういうアメリカ歴史の大きな変革点にいるのかもしれないと勝手な想像はできますが、今のトランプの言説を見る限り、なかなかそんな、歴史的な分水嶺に我々は立っているなという気持ちというのはなかなかしません。これはやっぱり後世の歴史家が決めるしかないというのが現状であります。  こういういろんな転換点というのが、民主党一つを取っても、南北戦争の頃、それからFDR、フランクリン・ルーズベルトでありますが、そのフランクリン・ルーズベルト以降の民主党で大きく違うわけであります。ですから、実はひょっとしたらそういう大きな歴史転換点にいるのかもしれないということは感じるわけであります。  ただ、戦後七十数年間、次第に日本アメリカ、どの国も先進国は全てそうですが、民主的ないろんな制度が整い、そして成熟した民主化というものがどんどんと成し遂げられていると。そうすると、政治の側が応えなければならない課題というのが物すごく多くなってきたというような状況になると。そうすると、国内で応えなきゃいけない民主主義的な要求に様々応えなければならないという状況になってきたと。近年、我々研究者業界でよく話題になる本にグローバリゼーション・パラドックスというものがあるわけですが、これは、民主主義グローバリゼーション国民主権というものは、なかなか三つとも同時並行的に成立をさせるというのは困難であるという状況になりつつあると。  新興国台頭してきて次第に国際的な要求がどんどん激しくなっていく、国内では、民主化及び高齢化あるいは社会保障の充実に伴って、国内でもいろいろ必要な資源というものが多々出てくるといろんな予算を割かねばならないというふうな状況になってくると。そうすると、当然、経済力の好ましいところにどんどん移民も集まってくるということで、今申し上げたグローバリゼーション民主主義国民主権というのが、人の移動の自由化に伴ってだんだんと三つが並列的に成立をするということが難しくなっていくという状況になるわけであります。  アメリカファースト、フランス・ファースト、○○ファーストという状況になっているわけですが、同時に、中国台頭というのは、安全保障でもそうですけれども、例えば、中国が行っている人民元の過剰な発行で経済成長率よりも何倍もの大きさで人民元を発行している状態が、ここ二年ぐらいまでは落ち着いていますけど、過去において物すごい量で人民元を発行していたものですから、そうすると人民元世界中にあふれる、過剰流動性のこの通貨というのが世界中をうごめいていて、ハワイの土地を買ってみたりバンクーバーの土地を買ってみたりという状況になると。そうすると、一般の中産階級であったアメリカ人先進国人たちが、どんどん値段が上がっていく不動産状況、それから大学授業料なんかもそうだと思うんですけれども、どんどんインフレ傾向の中で、日常的な生活を真面目にやっているにもかかわらず、家が買えない、不動産が買えない、子供を大学に通わすこともできない、我々は一生懸命やっているのに、こんな暮らしにくい嫌な社会に誰がしたんだというような不満というのがだんだん出てきているのが現状ではないかと。  そのような意味で、中産階級の相対的な衰退というのが現在では起きていて、この状況トランプ大統領の今でなくてもこの傾向は変わらない。つまり、ポピュリズム的な展開というのは別に二〇一六年だけに特異な現象ではなくて、これから国際社会全体が構造変動していくとともに、中産階級というのがだんだんと相対的に没落していくという構造になっているので、早くそれに手を打つ必要があるのだということを私は常に考えているわけであります。  大きな転換点でいえば、第二次世界大戦以降の基本的な国際的な側面での自由貿易、そして国内的な側面福祉主義というのがだんだんと維持できなくなってきたと。自由貿易主義が維持できなくなってきたのは現在のアメリカ政権を見れば立ち所に分かるわけでありまして、できるだけとにかく大きな地域的な枠組みをつくるよりは、二国間で交渉して短期的な利益を得た方が好ましいというような現象が現在起きているのではないかというふうに思うわけであります。  こういった状況で、日米連携、そして永続的平和のために、経済的な面でもそして安保の面でも連携をより深めていくにはどうしたらいいだろうかと。このトランプの四年間で、基本的にはアメリカの相対的な地位というのはやっぱり落ちると言わざるを得ないでしょうと。現在、アジア太平洋地域というのは、やはり国際環境は極めて不確実性を増しているわけでありまして、そういう意味で、外部の脅威というのが存在すればするほど日米というのはより緊密になっていかなければならないと言えます。しかしそれは、同盟に関してよく対称同盟非対称同盟と言われるわけですが、対称さというのが求められていって、更なる巻き込まれの危険性というのがどんどん恐怖として大きくなっていくということが言えると。  再び自分で守るという選択肢と人に頼むというこの二つ選択肢があって、人に頼むというのも大事で、どうやればアメリカからの安全保障供与を確実にできるかということを考えていくと同時に、自分たちが何ができるかということを前提として考えていく必要があるんではないかと。  最後に申し上げることは、私の人生観でもあるんですけど、保険は一個あるより複数あった方がよいということでありまして、アメリカプラスアルファ安全保障を確実にするための方策を考えていかなければならないということですが、この報告は日米関係ということでしたので、また機を改めて論じることができればと思います。  ありがとうございました。
  5. 鴻池祥肇

    会長鴻池祥肇君) ありがとうございました。  次に、フクシマ参考人から御意見をお述べいただきます。フクシマ参考人
  6. グレン・S・フクシマ

    参考人グレン・S・フクシマ君) ただいま御紹介いただきましたグレン・S・フクシマと申します。本日は、この参議院調査会にお招きいただきまして、ありがとうございます。大変光栄です。  本日は、トランプ政権日米関係の行方というテーマで二十分ほど話させていただきますが、前もって二点ほどお許し願いたい点があります。  第一点は言葉なんですが、私はアメリカ国籍の日系三世ですので、母国語は英語です。ですから、本来でしたら母国語の英語の方が適切に、簡潔に考えを申し上げられるわけなんですが、本日は郷に入っては郷に従えという精神で、拙い日本語で話させていただきます。ただ、英語の方がかなりいい話ができるということを御了承いただきたいと思います。  第二点は、私、立場といいますか視点なんですが、一九八五年から九〇年の間の五年間は米国通商代表部で働いていたわけなんですけど、当時はレーガン政権四年間とブッシュ政権一年間、共和党政権だったんですが、当時は普通の役人として勤めていましたので、いわゆる政治的任命を受けた人間ではなく、普通の官僚として勤めていました。ただ、この過去二年間は、二〇一五年、二〇一六年はヒラリー・クリントンのアジア政策作業部会という会のメンバーで、ヒラリー・クリントンを応援していましたので、そういう意味で、今日はトランプ政権を擁護するとか弁護するつもりではありませんが、できるだけ客観的にトランプ政権日米関係についてお話ししたいというふうに考えています。  最初にほんの簡単にオバマ政権下の日米関係について述べて、その後トランプ政権について話をしたいと思います。  皆さん御存じのように、オバマ政権の八年間というのは、日本政権では、麻生政権、鳩山政権、菅政権、野田政権で、最初の四年間は四つの政権だったんですが、二期目になってからは安倍政権ということで、特にオバマ政権一期目は、日米関係といいますと、やはり震災、二〇一一年三月十一日の震災が非常に大きい出来事だったということが言えると思いますが、オバマ政権側から見ると、やはり一期目は特にアジア回帰、アジアピボットということで、オバマ大統領も、二〇〇九年、シンガポールのAPECの会合に行く途中、日本に寄って日本でスピーチをしたときも、自分アメリカの初めての太平洋志向、太平洋を向いている大統領だということを言って、その二年後の二〇一一年には、ヒラリー・クリントンが国務長官として「フォーリン・ポリシー」という雑誌に六つのアジア回帰の優先課題というのを述べたわけなんですね。  一つは、アジアにおける同盟国との関係強化、特にこれは日本韓国中心ですね。二つ目は、台頭しているアジアの国との関係強化、これは主に中国、インド、インドネシアですね。三つ目は、アジアにおける多国間の組織との関係を強化する、これはAPECとかASEAN含めてですね。四つ目は、アジア太平洋地域における経済との関係を強化する、これは主にTPP。五番目は、同盟関係のほかの国との安全保障関係を強化し、アメリカの軍事的プレゼンスを高める、これはフィリピンとかオーストラリアとかインドも含めて考えていたわけなんですね。最後には、アメリカの優先順位としては価値観の共有、民主主義あるいは人権を促進する、特にこれはビルマとかベトナム、北朝鮮を中心に考えていたわけなんですが、この六つの優先課題というのがオバマ政権アジアピボットの中心だったというふうに言えると思います。  日米関係のことを考えますと、オバマ政権から見ると、多分三つの柱といいますか、一つ経済二つ目は安全保障三つ目は歴史感覚、歴史問題、歴史認識ですね。  一番目の経済に関しては、日本国内においてのアベノミクスに対して、オバマ政権は全体的には支持していたということが言えると思います。二国間あるいは地域間のことを考えると、TPPというのが中心的な注目された課題だと思います。  安全保障に関しては、安倍政権がいろいろ日本安全保障分野の強化、NSCの設立とか特定秘密保護法とか、あるいは安保法案、集団的自衛権、そういう問題に関するアメリカから見ると改善があったということで、それも歓迎したと。あとは、オバマ大統領が二〇一四年の四月に来日したときも、尖閣列島が日米安保条約の第五条を適用するということで、非常に安全保障面ではオバマ政権と安倍政権というのは深化したのではないかと思います。  最後の歴史問題なんですが、安倍政権が発足したときは、アメリカオバマ政権としても、この歴史問題、特に日本中国、あるいは日本韓国関係めぐって問題ではないかという懸念があったわけなんですが、実際にそれで二〇一三年の十二月二十六日の靖国参拝もあったということで、一時、非常にオバマ政権としてはこの歴史問題というのに注目をして、できるだけオバマ政権としては特に日本韓国関係を改善をしてほしいという、そういう努力もしたつもりだったと思いますが、オバマ政権二期目、安倍政権の四年間のこの三つの分野、経済安全保障歴史、それぞれの進展があって、歴史に関して申しますと、七十周年総理談話あるいは慰安婦に関する韓国との合意、あるいはオバマ大統領の広島訪問、安倍総理の真珠湾訪問、こういう形でオバマ政権の末期は日米関係が非常にいい方向に行っていて、これはもしヒラリー・クリントン政権になったら、私は、大体七割から八割ぐらいはオバマ政権政策を継続したのではないかというふうに思います。  私、ヒラリー・クリントン政権の方がかなり外交面では積極的に、北朝鮮も含めていろいろ行動を取ったのではないかと思いますけれど、七割、八割は継続性が期待できたと思うんです。しかし、予測に反してドナルド・トランプが選挙に勝ったということで、今、トランプ政権発足してまだ九十日、ちょうど来週、四月二十九日が百日目になるわけなんですが、この九十日間の間でも非常にいろいろ出来事があって、先ほど伊藤先生も言われたように、非常に予測がしにくい政権になっているわけなんですね。  特に日米関係に絞って言いますと、去年、中央公論にトランプ政権日米関係について記事を書いてくれと言われまして、参考資料にも入っていますけれど、このために、トランプ氏が書いた本とか、あるいは彼のスピーチを三十ぐらい聞いて一応記事を書いたんですが、明らかに、一九八〇年代からドナルド・トランプというのは、日本に対して五つの分野において非常に苦情あるいは不満があると。一つは、彼の言うのには、日本アメリカから職を奪う、二つ目は輸出だけをして物を輸入はしない、アメリカから、あと通貨、為替の操作をする、最後には安全保障上はただ乗りをしていると。この五つの批判というのは、二〇一五年、二〇一六年の大統領選挙のキャンペーンめぐっても、繰り返し彼は日本に対して批判をしていました。しかし、トランプ政権が発足してからは、日本に関する発言あるいは行動というのが相当おとなしくなって、それにはいろいろ理由はあると思うんですけれども、後ほどもう少し説明したいと思います。  皆さん御存じのように、トランプ政権経済あるいは貿易政策に関して言いますと、今までの共和党あるいは民主党政権とはかなり違うはっきりしたアメリカ第一主義的な考えということで、例えば、TPPも大統領になった直後の一月二十三日に脱退をし、NAFTA、北米自由貿易協定というのもカナダとメキシコと再交渉するということを言って、WTO、世界貿易機関に対しても非常に猜疑心を持ち、余り役に立たない組織だということを常に言っています。  むしろ、トランプ政権としては、多国間の枠組みあるいは交渉ではなく二国間交渉の方が好むということで、これはトランプ大統領自身は、アメリカは力がある国だから二国間で交渉すればアメリカに有利な形に交渉できるはずだけど、多国間でするとほかの国がアメリカからいろいろベネフィットを取ってしまうという、非常にある意味ではちょっと被害妄想的に、ずっと、ほかの国はアメリカから利益を取っているという、そういう感覚、そういう考えでこういう多国間の交渉あるいは枠組みを見てきているわけなんです。  直接通商政策ではない税金、税制を使って国境調整税とか、あるいは投資に関しても個別企業を、何といいますか、誘導し、それで例えばメキシコに投資しないでアメリカにとどめるという、そういう行動を取ったり、今までの政権とはかなり違う通商政策、貿易政策がこれから展開されるのではないかというふうに見られています。  アメリカの場合は日本と比べて人事こそが政策だと言われていまして、要するに、誰が閣僚あるいは副長官、次官級のポストに就くかによって政策そのものも影響されると言われているわけなんですが、今のトランプ政権の閣僚を見ますと、多分、閣僚あるいは幹部の人たちを見ますと、大きく分けて三つ勢力があるんじゃないかと思いますね。  一つはビジネス出身の財務長官とか国務長官、あるいは国家経済会議のトップ、あるいは商務長官。二つ目は元軍人、これは国防長官、あるいは国家安全保障会議の議長、あるいは国家安全保障省ですかのトップのケリー。三つ目のグループというのが、アメリカ第一主義的なスティーブン・バノンとか、あるいはスティーブン・ミラー、あと、今度、通商代表として多分近いうちに承認受けると思いますけれども、通商代表のライトハイザーですね。私も、実は通商代表部で働いている一九八五年から九〇年の間、彼も次席通商代表でレーガン政権で仕事をしたわけなんですが、彼と、あとピーター・ナバロという中国の専門家で今国家通商会議というところのトップなんですけれども、こういう人たちというのは割合に保護主義的な考えを持ち、これからも彼らたちは多分、市場開放だけじゃなく、むしろ輸出規制を貿易相手国に対して要求してくるんではないかというふうに思います。  二ページに移りますが、今まで申し上げましたように、安倍総理がトランプ大統領と、当時は次期大統領ですね、去年の十一月十七日と今年の二月十日、首脳会談をして、そういう二つのミーティングからいいますと、過去ドナルド・トランプが言ってきた日本批判というのはほとんど出てこなかったわけなんですが、これにはいろいろ理由があると思いますし、例えばドナルド・トランプ大統領がメキシコとの関係、あるいはEUとの関係、あるいはオーストラリアとの関係とか、いろんな国との関係を相当悪くしているという、そういう批判もありまして、その背景の中での安倍総理との二月十日の会談があったということもありまして、あと北朝鮮の問題も中国の問題もあるということで、ドナルド・トランプとしては、どちらかというと二月十日のミーティングは、会合は、日米同盟関係日米の共通点を強調する、そういう首脳会談になったんではないかと思います。  ただ、ドナルド・トランプの共同記者会見のときの発言をよく聞くと、やはり彼は、自由、公正、互恵的と言ったらいいんですか、レシプロカルという言葉を使っているわけなんですけど、経済関係ではお互いに便益がある、お互いに利益がある関係ということを強調し、ですから、安全保障面では前の政権オバマ政権と同じように礎という、コーナーストーンという言葉を使っているわけなんですが、トランプ政権も、経済面ではこれから多分今までとは違う形の要求が、アメリカから二国間の要求が出てくるんではないかというふうに思います。  時間も余りありませんので、急いで最後の部分に移りますが、トランプ政権、百日まであと十日間になるんですが、非常に予測しにくい要素がたくさんありまして、多分、少なくとも戦後のアメリカでこれほど予測しにくい政権はないんじゃないかというぐらい、将来どう動くかというのを見るのは非常に難しいと思います。  それには幾つか要素がありまして、一つは、幹部ポストが、普通だったらもう三月か四月頃新しい政権ではトップの人事が決まるわけなんですが、今の時点では、四千人ほど新しい人が政権に入るということで、そのうちの千百人ぐらいは議会の承認が必要とされているんですけれども、そのトップのポストというのがほとんどまだ埋まっていないんですね。ですから、国務省でも国務長官と国連大使だけで、ほかに誰もまだ議会の承認を得ている人は一人もいないわけなんですね。そういうことで、これ、こういうポストが埋まるまで多分まだ六か月ぐらい掛かるんじゃないかと思います。ですから、なぜこれ埋まらないかということはいろいろ、後からでも御説明しますけど、理由があるんですが、これが非常に時間掛かっているというのが一つ。  二つ目は、トランプ氏自身の経営スタイルが、ビジネスマンのときでもそうなんですが、いろんな意見が違う人を集めて、それでお互いに闘ってもらって、それで、その結果、自分が決断をするという、そういうスタイルですので、当事者自身も実際にどういう結論になるかということを予測しにくいという、そういう経営方針といいますかね。彼もよくビジネスマンだと言われているんですけど、実は彼は非常に、何といいますか、限られた不動産業の仕事で、取締役会もない、株主総会も株主もないという、非常にそういう意味ではオーナー社長的な経営方式を取ってきたわけなんですね。ですから、政府の大きい組織のトップとして、どこまでこれに慣れて変わっていくかということはみんな注目しているところです。  あと、彼が、もうこの九十日間の間でも、ころころ前言ったことと全く正反対のことを言うようになっているわけですね。NATOに関してもそうですし、中国為替操作についてもそうですし、シリアに関してもそうですし、輸出入銀行に関してもそうですし、FRBの議長のジャネット・イエレンに関しても、それぞれ前言ったことと今言っていることとは変わっているわけなんですね。ですから、結果的にどういう行動を取るかというのはまだ分からないということですね。  あと、彼がよく言っていることは、全てのオプションはテーブルの上にあると。要するに、彼はアメリカは予測可能だということが不利だと、アメリカにとっては。相手が自分がどういう行動を起こすか分からないという、そういう立場にならなければ利用されてしまうという、不動産の交渉をしているような、そういう考えで外交も遂行しているようです。  ですから、時間がありませんので最後に申し上げたいことは、安倍総理とドナルド・トランプ御自身は割合にケミストリーがいいということなんでしょうけど、ただ、制度的に、日本の政府の制度、あるいはアメリカの政府の制度、今のアメリカの政府の制度を比べると、私は外から常に日本のことを見ているんですが、日本というのは、特に政府が非常に安定性を重視する、あるいは一貫性、予測可能性、継続性、前例主義とか、そういうことを重視することに対して、今のトランプ政権というのは、アメリカ政権としても、アメリカの水準から見ても非常に不安定、予測しにくい、不連続性がある、一貫性がない、全て物事を取引関係に考えているという、そういうことで、アメリカのワシントンにいても、シンクタンクの人間、学者、あるいはジャーナリストも含めて、非常にトランプ政権の行動と、あとこれからどういうアクションを取るかということを予測するのは難しいという、そういう情勢です。  ちょうど時間が来ましたので、私の話はこのくらいにしておきます。  どうもありがとうございます。
  7. 鴻池祥肇

    会長鴻池祥肇君) ありがとうございました。  次に、高原参考人から御意見をお述べいただきます。高原参考人
  8. 高原明生

    参考人高原明生君) 私の母国語は日本語ですので、もし話が分かりにくくても言い訳の言いようがありません。その場合は、どうぞ後でたくさん御質問をなさってください。  今の前のお二人の先生方お話の中心はアメリカあるいは日米関係ということでしたけれども、私自身は中国のことを研究していますので、中国、日中関係ということがお話の中心になります。  今、東アジアの平和を脅かす要因というのが大きくなっている、多くの人が不安を感じ始めている、そういう状況ですね。北朝鮮の核開発、ミサイル発射、これも、当然でありますが、中国を研究する私のような者からすれば、非常に残念なことに、ここ数年の中国の海洋進出、また海洋における行動、それから国際法の無視。御案内のとおり、昨年の七月、ハーグの国際仲裁裁判所の判決が出まして、中国フィリピンの案件だったんですけれども、中国の主張がほぼ全面的に退けられましたが、中国はそれを無視し続けているという現状がございます。  それから、もう一点挙げるとするならば、東アジア地域、アジア太平洋の中でも特に東アジア地域の国民の間で排他的なナショナリズムが高まる傾向が見られます。特に日本中国の間、あるいは日本韓国の間もそうかもしれません。中国韓国の間もそうかもしれないんですが、国民の認識のずれというのが非常に大きくなっているということを私は大変ゆゆしき問題だと感じています。  例えばなんですが、昨年発表されました言論NPOなどが毎年行っている世論調査の結果ですけれども、毎年こういうことを聞いています。将来、日中間で領土をめぐって軍事紛争が勃発すると思いますかと。この問いに対しまして、昨年は何と中国で、可能性があると、将来領土をめぐる軍事紛争が起こり得ると答えた人の数、パーセンテージが二一ポイントも飛び上がって六二・六%に達するということがございました。これは非常に不思議なことです。昨年は特に、そういう判決はありましたけれども、具体的な目立った衝突事件があったわけでもないにもかかわらず、なぜこういうことになるのか。  私も研究者として一つの推測をしますと、やはり南シナ海問題に中国当局が大変敏感になっていて、日本側が行うどんな動きもかなり針小棒大に誇張された形で中国で報道されているという事実があります。そうした中国のマスメディアの報道ぶりの影響ではないかというふうに感じております。これについてどうするかというのは、また後で申したいと思います。  次のページへ参りますけれども、いろんな認識ギャップがあるというのは一般国民もそうだし当局もそうであるということなんですが、南シナ海をめぐる日中の論争状況というのは、次のようになっているのは御案内のとおりでしょうから簡単に申しますけれども、日本側は中国をどのように批判するかというと、東シナ海の二〇一二年以来の状況を踏まえて、力による一方的な現状変更は認められない、法の支配が大事でしょう、紛争は平和的手段で解決しなければならない、こういうことを一貫して言い続けてまいりました。それから、国際仲裁裁判所の判断につきましては、仲裁判断は最終的なものである、紛争当事国を法的に拘束するものだ、当事国はこの判断に従わなければならない、そういう言い方を続けてきたわけですね。  下の方のスライドですけれども、それに対して中国は何と言っているかというと、去年の三月の全国人民代表大会における記者会見での発言ですが、私たちみんな知っている王毅外相、元駐日大使ですね、日本政府とその指導者が日中関係の改善を声高に唱える一方で、他方では至る所で絶えず中国にトラブルをもたらしている、中国のことを批判している。これはまさに典型的な裏表のあるやり方ではないか。中国語でリャンミェンレン、両面人と言うんですけれども、ヤヌスのように表と裏と二枚顔を持っている、そういうやり口を取っているではないかと。また、日中関係の病根は日本の指導者の対中認識だ、発展した中国日本の友なのか敵なのか、パートナーかライバルなのか、まあ敵、ライバルとして捉えているんじゃないかという、そういう言い方で批判したのが去年です。今年はもうちょっと言葉遣いが悪くなって、更に悪くなって、日本は心の病を治せと、中国の絶えざる発展、振興という事実を理性的に取り扱い受け入れなければならない、そういう言い方をしています。  私は、これに対して中国の人によく言うんですけれども、いや、決して裏表じゃない、これはどっちも表なんだと、そういう説明をしています。つまり、日本にとって中国との関係が大事なのは疑いありません。御案内のとおり、九割の日本人が中国に対していいイメージを持っていないのは事実です。しかし、七割の日本人は日中関係が大事だというふうに感じているわけですね。ですから、情緒的には中国のやっていることは受け入れ難い、しかし、理性的には関係を良くしなければならないということは大方の日本人は分かっている、これが現状だと思います。  でありまして、中国のやり方は、これは受け入れられない、力をもって自分の意思を他者に押し付ける、これは絶対やってはならないことだというのが、前世紀、我々がひどい戦争をやって負けて得た教訓なわけですね。それは、日本人が得た教訓ということだけではなくて、人類全体が得た教訓として国連憲章にもちゃんと書いてあるわけですから、これも絶対守ってもらわなきゃならない。そういう二つの表の顔だというふうに中国側に説明すると、言った相手は何となく分かってくれるということがございます。  次のページへ参りまして、じゃ、どうして中国は行動を取っているのか。あたかも行動第一、既成事実をまずつくる、外交第二、後で外交的に処理をする、そういった私は行動第一主義と呼んでいるようなやり方をしているのかと。  これも詳しく言うと時間がないんですけれども、基本的な要因は、もちろん実力が上がったということです。以前はできなかったことが今できるようになっている、これが基本ですね。それに加えて、中国共産党はやはり力を信奉する。力と金だと、そういう意識が強いリーダーシップだというふうに思います。  また、リーダーシップだけではなくて、一般国民の側でも遵法意識がやはり比較的低い。法律というのは自分たちの行動を縛るものである、そういう意識が強いと思いますね。もちろん法律は、それだけじゃなくて権力の濫用から私たちを守ってくれる、そういう自分を守るものでもあるわけなんですけれども、法治が徹底していない社会においては、あくまでも法律というのは自分を束縛するものだと、そういう意識が強いものですから、遵法意識が国内的にも国際的にも低い。だから、政府の法を無視するようなやり方を許容するという、そういう面があろうかというふうに思います。  また、リーダーシップにとってみると、指導部にとってみると、市場化の進展によってかなり社会が多様化している、利益が多元化している、また意識が多様化している下で何とか国をまとめなければならない。また、共産党の中も、実は相当深刻な意見の分岐、分立、対立があります。党も何とかしてまとめなければならない。そういうときに、多少外国と摩擦があっても、あるいは多少摩擦があった方がまとめやすい、そういう意識はあると思いますね。怖いのは外国から来る批判じゃない、怖いのは国内から来る批判だ、そういう事情が第三点として挙げられます。そのことはもちろん、社会全般にナショナリズムが高まっている、これは共産党の愛国主義教育が非常に大きくあずかっているわけですが、そういった事情も当然あります。  それから、もう一つ加えるとすると、習近平さんというリーダー自身の傾向、性向というのがあると思いますね。前の指導者と比べて行動を取るのがお好きであるということですね。  例えば、ハーグの仲裁裁判所の判断が出て一週間後のことですけれども、地方に視察に行った際に習さんは次のように言いました。中華民族のエネルギーは余りに長く抑圧されてきた、ここらでひとつ爆発させて偉大な中国の夢を実現させねばならないんだと。しかし、これは別に海軍に向かって言ったわけじゃないんですね。どういうコンテクストで言ったかというと、ある工場を訪ねたときに、その工場の従業員の士気を上げようと思ってこういうことを言ったと思われます。ただ、こういう彼の発言というのは、下々の部門がそれぞれの利益に即して自分たちにいいように解釈しているわけなので、こういう発言を聞いた海軍や海上法執行機関はどう受け止めるかというのは当然問題としてあるわけですね。  中国がこれだけ隆々と発展して、そして影響力を高めているという状況ですから、今後の東アジアの平和の要となるのが中国の力の自制ということ、そして、もう一つ大国である日本との関係を安定させるということ、これが全地域的に大きな課題、あるいはもしかしたら全世界的な大きな課題と言ってもいいかもしれません。  そこで、私たちとしましては、大きな戦略的な目標として、日本戦略的な目標として、どうすれば中国との共生を実現できるのか、お互いを敵視せず、どっちの国が発展しようと、どれだけ発展しようと不安を感じないで安心して暮らせることができるようにどうすればなるのか、そういう状況を目標として努力すべきではないかと思います。大平首相が前おっしゃったように、日中は引っ越せない隣人ですから、お互いに、要するに日本だけが努力するわけじゃない、中国にも努力してもらわなきゃなりませんが、相手を敵にしたら大変だ、味方にしたら大きな利益がある、そのことを国民の間に、日本の国民だけではなくて中国の国民の間にも認識として広めていくということが大切だと思います。  そのための総方針というふうにちょっと格好付けて書きましたけれども、私は、日本中国の二国間関係で見た場合には、つい脆弱な面にばかり目が行くわけですね。マスコミも脆弱な面を取り上げがちです。それだけでは、しかしないわけですよね。強靱な面も日中関係にはあるわけでありますから、強靱な面をどうやったら一層強化できるのか、脆弱な面をどうやったらうまく抑制できるのか、管理できるのか、そういった発想で日本中国も日中関係の改善、発展に取り組むべきではないかというふうに思います。  強靱性の内容は、もう言わずと知れた経済的な結び付き。貿易の額でいえば、もうここ数年ずっと日米貿易の一・五倍、毎年あるわけなんですね。非常に大きな貿易パートナー、最大の貿易パートナーです。文化的な結び付きも非常に強いです。これは、伝統的な我々の中国文化に対する、古典文化に対する憧れもありますし、中国の若者の日本の現代文化に対する憧れもある、両面ある大変いい関係が実はあります。それから、海賊対策にせよ環境問題にせよ、あるいは麻薬対策、感染症対策等々、非伝統的な安全保障の面では実は相当に内容のある協力が今現在進行中であるという事実があります。  しかし、歴史問題、あるいは尖閣の問題、安全保障の問題、北朝鮮問題では幸いずっと協力をしてきた実績がありますけれども、こうした脆弱性を抱えているのも言うまでもございません。  そこで、残りの五分で、中国への三つのアプローチということを次のページからお話し申し上げたいと思うんですが、国際関係論からすると、平和を保つためにはどうすればいいか。三つの主な考え方があるんですね。一つはバランス・オブ・パワーです。やっぱり力のバランスが大事だと、一番目がリアリズム。二番目がリベラリズムですね。利益の相互依存、そういう関係が平和をもたらすと、これが二番目の考え方。三番目の考え方は、コンストラクティビズムと言いますけれども、価値を、規範を共有すること。それによって平和は保たれるという考え方ですね。私自身は、日中の間をどうやって、あるいは世界中国の間をどうやって平和を保っていくかというと、この三つの考え方を総動員しないと間に合わない、そうかもしれない、非常に危機感を持っているのが現状です。  一番目ですけれども、リアリズム的な考え方からすれば、やはり力のバランスが変わっているのは今事実なんですけれども、余り急に変わるとこれは危ないんですね。やっぱりぬきんでた力を持ってしまうと、どうしてもその力を振るう誘惑に駆られます。これは個人でもそうかもしれないし、国でもそうだと思いますね。それを防止するために、やはり防衛力の強化、海上保安庁の能力の強化、同盟ネットワークの強化等々、こうした措置は私は必要だと思います。  しかし、それだけやりますと、さっき伊藤先生の話にもありましたように、軍拡競争になりますから、それと同時に、どうやって対話を進めていったらいいのか、協力を進めていったらいいのか。今、海空連絡メカニズムの交渉をずっとやっていますけれども、それに限らず、自衛隊と人民解放軍の間あるいは防衛当局間の交流、是非進めなければならないというふうに思います。  簡単に、今、尖閣で中国が圧力を日本に掛け続けている状況の下で妥協することは絶対に良くないと思いますね。それは実は中国にとっても良くない。中国の中にも、強硬派だけではなくて穏健派がいるわけです。国粋主義者だけではなくて国際主義者もいるわけですね。もし日本が圧力に負けて折れてしまうと、中国で勝利の凱歌を上げるのは国粋派であり強硬派です。我々が応援しなければならない国際派、穏健派はいよいよ周縁化されてしまうことになりますので、それはすべきでないと思います。  二番目のアプローチは、経済や非伝統的安全保障問題での協力の推進ですね。  今、とかく中国というとすぐ腕まくりをして、ああ、これは綱引きだ、けんかだというふうにむきになる日本人も昨今は増えているんですけれども、それは良くないと私は思います。そうではなくて、我々の支援もあって、多大なる支援もあって中国は隆々と発展したわけですから、その大きくなった中国の国力をどう私たちの利益のために活用するのか、そういう発想が非常に重要だというふうに思っております。さっき申しましたように、既存の協力も多々あるわけですから、それを一般の国民に知らす広報、これをもっとやらないと、つい国民は脆弱性の方にばかり目を向けてしまうということがあろうと思います。  アジアインフラ投資銀行、AIIBに私自身は最初から参加した方がいいと思っておりますけれども、実績が次第にできてきて、国際基準でちゃんとやっているというその認識がもう少し広まれば、アメリカとの協調の上で私はAIIBに入ってもいいんじゃないかというふうに感じている次第であります。  時間がないので次へ参りますけれども、次のページですが、最後の、規範を共有する、価値を共有する、これも絶対に必要なことですね。  今、中国は近代化の真っただ中にいるので、我々、明治、大正、昭和の初めも経験がありますけれども、言わば富国強兵パラダイムにとらわれているという、そういう状況なんですね。近代と伝統との相克、あつれきも強いので、どうしても西洋に対する反発が前に出るという、そういう精神状態中国は今いるわけです。  日本中国の間の相互不信も全然解消されない。国交を正常化して四十五年たちますけれども、どうしてこんなに相互理解が進まないのかと、もう本当に何か、私も責任があると思うんですけれども、我々中国研究者も大変に残念な思いです。それは、そういう認識ギャップだとか相互の不理解というのは何を要因としているか。非常に重要なのはもちろん情報ギャップですよね。後ろに付録で、漁船衝突事件のときの中国側の報道、あるいは日本人が知っている当時の状況についてのギャップの大きさというのをよく示しているこれを付けておきました。時間があれば、あるいは御質問があれば後で解説しますけれども。  これを埋めるには、中国のマスメディアには頼れません、あるいは日本のマスメディアにも実は頼れません。やっぱり商業主義が先に立ってしまうので、どうしてもみんなに受ける、みんなに見てもらえる、目を引く、そういうセンセーショナルな報道をするのは、中国日本も実はメディアは同じなんですね。  じゃ、そういう状況下で何ができるのかということを考えたときに、ここに公論外交という翻訳をした言葉を書きました。これはいわゆるパブリックディプロマシーの日本語訳なんですけれども、相手の国民に私たちの知っている事実をどうやって伝達するか、私たちの本当の気持ちをどうやって伝えるのか。今、官邸を中心に大きな予算を付けて対外発信、一生懸命やっていますよ。それは大変結構なことだと思うんですが、もっと中国正面にやってほしいというのが私の印象です。  知識交流、青少年交流、これも大事ですね。是非、国会議員の方々、今、何千人もの青少年が中国から来ますので、毎年、ホームステイをしてあげてください。ホームステイは非常にインパクトがあるんです。  中国で、私、実は新日中友好二十一世紀委員会をやっているときに、日本では国会議員、県会議員の人に泊めてもらいたい、でも、中国ではあなた方中央委員会の中央委員に泊めてもらいたいと、日本の青少年が行ったときですね。そうしたら、その場に中央委員が二名いまして、手を挙げて泊めますというふうに言っていました。しかし、その後で中国の友達にその話をしましたら、いや、連中、泊めないよと言うんですね。どうしてと聞いたら、彼らは自分たちがどんなにいい暮らしをしているか知られたくないからさという、それはちょっと冗談のような話ですけれども。是非、青少年交流を日本と同じような予算を付けて中国でも推進してほしいというふうにも思っています。  そういう公論外交だ何だということをやる際に、歴史を忘れないことは大事ですね。もし日本人が歴史を忘れたら、日本外交世界で立つ瀬を失います。これは絶対忘れてはならないことだと思いますね。日本では近代史の教育をもっと今以上にやるべきだし、中国では戦後の現代史の教育をちゃんとやらないと、私たち両国の若者たちが共に未来を築くことは絶対にできないと思います。  最後にですけれども、もう時間が過ぎましたが、申し訳ありません、構想実現のためにやっぱり日本自身が能力を構築しないと、どんなにアピールしても外国の人たちには聞いてもらえない、中国人も聞いてくれません。ですので、教育が大事ですね。基礎は語学力と社交力だと思います。どれだけ魅力ある日本人をつくることができるのかということが、インテリジェンスの強化、外交力の強化とともに大変重要だと思っている次第です。  以上であります。ありがとうございました。
  9. 鴻池祥肇

    会長鴻池祥肇君) ありがとうございました。  以上で参考人からの意見聴取は終わりました。  これより質疑を行います。  本日の質疑はあらかじめ質疑者を定めずに行います。  質疑及び答弁の際は、挙手の上、会長の指名を受けてから着席のまま御発言くださいますようお願いをいたします。  まず、大会派順に各会派一名ずつ指名させていただき、その後は、会派にかかわらず御発言をいただきたいと存じます。  委員の一回の発言時間は答弁を含めて十分以内となるよう、また、その都度答弁者を明示していただきますよう御協力をお願いをいたします。  それでは、質疑のある方は挙手を願います。  小野田紀美君。
  10. 小野田紀美

    小野田紀美君 本日は、貴重なお話をありがとうございました。  十分という限られた時間なので、日米に関しても日中に関しても聞きたいことたくさんあるんですけれども、まず高原先生に日中のことについてお伺いしたいなと思います。  事前にいただいたこの水色の資料の中にも書かれておりまして、今日のお話にもあったんですけれども、国連海洋法条約に違反すると判断をされて、これをちゃんとしなさいよというふうに判決が出てもやはり言うことを聞いてくれないというところで、そういった場合にどう対応していけばいいのかという、その正解がまだ見えてこないなと個人的に思っておりまして、これから日本が取るべきアプローチ、中国への三つのアプローチというのも書かれてはいたんですけれども、何というんでしょう、日本が敵視しないというか、互いに敵視しないことが大事というのはもちろん本当にそのとおりだと思うんですけれども、割と日本人の感覚として、うちの国にこれをしたから許さないぞという敵視というよりは、何で世界のルールを守らないんだろう、そんな国は許しちゃ世界は混乱に陥るよねというような、何というんでしょう、個人的な恨みというよりは、やっぱりこれから平和な世界をつくっていく上で、世界のルールを守ることをする国はいいけど、それを守らない国はやっぱり許しちゃいけないんじゃないかという意味で、ううんと思っている国民もやっぱり結構いると思うんです。  それに伴って、どうやったらこの中国という国にこれから世界のルールの中で平和的に活動してもらえるように、国際的な裁判所が言ったことも聞いてくれない以上、どう行動していけばいいのかというのを、先生のちょっとアドバイスをいただけたら有り難いなと思います。
  11. 高原明生

    参考人高原明生君) 御質問をありがとうございます。  今、中国だけではなくて、例えばクリミア、ウクライナに出ていったロシア、それから、実はもう少し遡れば中東におけるアメリカの振る舞い、特に単独行動主義をブッシュ政権が唱えたときの、そういうことで、やはり冷戦構造が崩れた後、大国が国際法を無視して力を使うという、そういう非常に我々からすればよろしくない傾向が顕著になっているという状況があると思います。なおかつ、ブレグジットなりトランピズムも、一部の要因としては、何かこう理性ではなくて情緒ですね。理性ではなくて力、理性ではなくて情緒が幅を利かすという、そういう非常にまずい状況世界的に現れているのではないかという気がするんですね。  ですので、例えば国際仲裁裁判所の判断にしましても、アメリカの中でも、いや、そんな、中国大国になったんだから、国際法を大国は守らないよねというような論調さえ出ているというのが実情です。  ですので、私たち、国際法を是非とも守ってもらいたい、特に大国が守らなければ意味がないわけですから、大国の力の濫用を防ぐというのが国際法の非常に重要な目的の一つなわけであって、そういう志を同じくする国々と連携するということがまずは考えられますね。特にヨーロッパは国際法が発達したところでもありますし、ヨーロッパもそうですし、もちろんアメリカの中にだって中国の中にだって国際法をよく知っている人たちは重要性を分かっているわけなんですけれども、国際的な連携ということがですから第一点。  それから、第二点としましては、やはり知識交流ということだと思うんですね。  実は、日本の国際法学者たちと中国の国際法学者たちとの連携が今まさに始まろうとしています。そうした知識人交流なり学生の受入れ等々を通して、我々の規範あるいは我々が知っている国際的な規範をどうやって中国の中に広めていったらいいのか。相当ミクロ的な個別のやり方で歯がゆい感じもしますけれども、しかし、突然中国の学校教育体系を変えられるわけでもないので。私はいつも思うんですが、我々は中国を変えられないんですね。中国を変えられるのは中国人なんですね。しかし、我々は中国人を変えられる。だから、中国の若者にアプローチしていくということがもう一つの方法だと思います。
  12. 小野田紀美

    小野田紀美君 ありがとうございます。  本当に、さっきの、中国を変えるのは中国人、でも中国人を変えられるのは日本人でありほかの世界の人でもあるというのは本当に素晴らしいなと思いましたし、その活動をしていかなくちゃいけないなというふうにまた考えさせられました。  もう一つ、ちょっと時間がもうないんですが、日中の関係を考えたときに、その周辺国、例えば台湾であるとか、そういったところとの関係一つ中国というのを主張している中国に対して、例えば日本ですと今非常に台湾関係が良くて、我々も青年団として台湾の方々と交流をして、実際に、最近悲しい話題になった八田與一さんの像にも行って現地の人たちと話をしてというのをやってきたんですが、今回、その八田與一さんの像の頭部が切り取られてという事件があって、実際調べてみたら、中華統一促進党に以前所属していて、中国台湾一つだという方たちがそういうことをしていたというのもあった中で、日台の関係や逆に中台との関係とかいうのをうまく総合的に発展させていくためになかなか矛盾が生じてしまうところもあると思うんですが、これに関しては高原先生どうお考えか、教えていただけますか。
  13. 高原明生

    参考人高原明生君) なかなか政府レベルでやるのは難しいというか、敏感な問題なので微妙な部分があります。しかし、例えば地方自治体の交流であるとか、NGO、NPOの交流であるとか、あるいは学生、研究者たちの交流であるとか、そういったレベルであれば問題は小さいので、そこで例えば日中台、韓国、香港も入れてもいいですけれども、そうした枠組みの下に定期的な交流をするというのは大変有効なやり方ではないかと思うんです。  しかし、今、台湾では新政権ができて中国大陸の側は非常にぴりぴりしている状況ですので、余り政府レベルで目立った動きをするとかえって問題が大きくなる可能性もあるんですね。そこのレベルは慎重にやった方がいいと思います。
  14. 小野田紀美

    小野田紀美君 いずれもミクロの人同士のつながりをうまくやっていって、じわじわと、アメーバ状というのはいい意味では使われていませんでしたけど、じわっとこの友好関係を広げていきながら国と国との関係もうまくいくようにしていかなくてはいけないんだなというふうに改めて思いました。  ありがとうございます。終わります。
  15. 鴻池祥肇

    会長鴻池祥肇君) 次に、藤田幸久君。
  16. 藤田幸久

    ○藤田幸久君 三人の先生方、ありがとうございます。  高原先生に、まず。私は外国で二百軒ぐらいの家にホームステイしたことありまして、なんですが、中国ではございませんので、是非次回は中国でホームステイをアレンジしていただきたいということをお願いでございます。  その上で、基本的に、近年の安倍政権政策というのは、安全保障環境が悪くなってきた、したがって軍備を含めた能力を向上するというのが基本的な流れだろうと思うんですけれども、いわゆる、自衛隊を含めた、あるいは安保法制を含めたものを拡大しなくても済むように安全保障環境を改善するための日中関係の構築というものがこの平和外交の基本ではないかと思うんですけれども、そのためには何をしたらいいのかということについて簡潔にお答えいただきたいと思います。
  17. 高原明生

    参考人高原明生君) まず、ホームステイですが、確かに先生方中国に行ってホームステイするのも大事ですね。あと、中国の若者が来たら是非泊めてあげてください。
  18. 藤田幸久

    ○藤田幸久君 それはいろいろやっています。
  19. 高原明生

    参考人高原明生君) ありがとうございます。  そして、おっしゃるとおり、一方で、安全保障、いわゆる国防政策防衛政策としてやる部分と、それから外交でもって安全保障環境を改善する部分と、両方やらなきゃならないというのはまさに御指摘のとおりだというふうに思います。  外交でできることですけれども、先ほど申しましたように、一つはいわゆる公論外交、これをもっと力を入れてやってもらえないかというふうに思います。対話をするといっても、中国側のあしき性向として、何か気に入らないことがあると何か寝てしまうというのはあるんですよね。私たちの新日中友好二十一世紀委員会も、政治関係が悪くなったときこそ役割を発揮しなければならないのに、政治に付き合ってずっと休んじゃうという、そういうところがありますので、やりにくい部分があるのは間違いありません。  しかし、我々とすれば、だからといってほっておいていいということではないので、もうありとあらゆる手を伸ばして、交流しよう、対話しようということを呼びかけるということがまずは考えられる重要なことではないかと思います。そのことを周りの国を巻き込んでやるというのも手かもしれません。やはり中国は、ぬきんでて大きな国にアジアではなりましたけれども、しかし孤立することを非常に恐れますね。多国間の枠組みで迫るというのはもう一つのアプローチかと思います。
  20. 藤田幸久

    ○藤田幸久君 その関係で、例えば中国は、AIIBに加えて、需要を起こすためにいろんな国との連携をしています。私は、中国自分たちが金融を押さえるという以上に、戦略的に多国的に需要を増やしていくということは、むしろ軍拡に取って代わる平和経済外交戦略性もあるし、それからパリ協定、イギリスと連携して加入したこと等は、再生エネルギーの方の転換といった意味で、大変構想力、戦略性を持った、そういう意味での積極的な貢献があるんではないかと思っておりますけど、それについてどうお考えか、簡単に評価を。
  21. 高原明生

    参考人高原明生君) 私も、先ほど申しましたとおり、中国の国力をどうみんなで活用するのかというのが大事な発想だと思いますので、そういう点から考えましても、AIIBが私たちから見ても非常にいい方向に発展している。そこには世銀、IMF、ADB、アジア開発銀行の協力等もあるわけですし、日本協力もありますね、それは大変結構だと。それは、ある意味で非常に中国にとっていいラーニングプロセスといいますか、やはり国際基準に従って、国際的なルールにのっとってやるのが中国にとってもいいんだという、そういうことを認識させる効果も生んでいるので結構だと思います。  パリ協定も、もちろん中国のためにもなることなので、これもいい方向だと思うんですが、問題は安全保障ですね。
  22. 藤田幸久

    ○藤田幸久君 ありがとうございます。  グレンフクシマさんに二つお伺いしたいと思います。  私も、二月、トランプさんの演説聞いてまいりましたが、報道されていないいい面も結構ございました。例えば、宗教の自由を守るというようなことをはっきりおっしゃっている、それから汚職に対する対応なんかもやっていらっしゃる。  他方で、二つ気になることがありまして、一つは、貧困とかあるいは格差ということで白人の皆さんの支援で大統領になっているわけですが、やっぱり上がっている株は金融とかあるいは軍需産業で、むしろ、結果的にはそういう方々の格差をより拡大してしまう危険性があるのではないかというのが一つと、それから、やっぱり人事それから体制からして、そのやっていることとやろうとしていることの間で空中分解をしてしまうのではないかという二つ心配がありますが、その点についてどう思われるか、お聞かせいただきたいと思います。
  23. グレン・S・フクシマ

    参考人グレン・S・フクシマ君) おっしゃるとおり、トランプ大統領は、非常に成功したビジネスマンを周りに、閣僚あるいは重要ポストに登用していまして、選挙公約のときの、要するに、彼が言ったアメリカに雇用を戻す、石炭産業あるいは鉄鋼産業あるいは自動車、そういう雇用を戻して、そういう所得あるいは教育水準が低い人たちの、労働者のためにいろいろするという公約の下で、特にラストベルトでは、本来だったら労働組合のメンバーで民主党に投票する、過去した人たちが今回は、アメリカ民主党自分のことを見捨ててしまった、トランプ候補こそが自分たちのことを救済してくれるということで彼に票を入れた人が結構、後からの出口調査とかの結果で明らかなんですが、トランプ政権が今やろうとしていることで、例えば大幅減税、個人あるいは企業、法人の減税あるいは規制撤廃、こういうことによって貧富の格差がむしろ広がる危険性というのは大いにあるのではないかというふうに考えています。ですから、これは藤田先生言われるように、アメリカ国内においても非常に懸念されていることだと思います。  二つ目の、トランプ大統領が言っていることと行動の間のギャップというのが非常に、特に多分この一か月の間に非常にはっきり出てきて、これも大統領の信頼性とか、よく言われているように、今の大統領ほどうそを平気で言う大統領は歴史上今までいなかったというくらい、今のアメリカのジャーナリストの仕事の半分ぐらいは、トランプ大統領あるいは彼の周りの人たちが言っていることが事実に反しているか、事実に基づいているかということを毎回確かめなきゃ駄目だということと、あと、透明性が非常に、今、特にホワイトハウスの中で、今までだったら、例えばホワイトハウスに誰が訪問するかという、そういう名簿も公開していたのが、その名簿もこれから公開しないということ、それとか利益相反とか、たくさんこういう問題が出てきて、途中でこの政権というのがおかしくなってしまうんじゃないかというふうに見ている人が結構いることは事実なんですが。  ただ、御存じのように、今のアメリカの主流の共和党の人たちは、もしトランプ大統領自身が途中で何かの理由で辞めなきゃならないことになっても、副大統領のペンスという、むしろ共和党の主流から見ると好ましい人が副大統領ですから、ですから、そういう意味では共和党の皆さんもそれほど心配していないかもしれません。
  24. 藤田幸久

    ○藤田幸久君 伊藤先生に、時間余りなくて恐縮ですが、アメリカ政府は尖閣諸島の施政権はずっと認めてきていますが、領有権は少なくとも一九七二年以降明示的に認めていません。その理由と背景についてお答えいただきたいと思います。
  25. 伊藤剛

    参考人伊藤剛君) 基本的には、アメリカの方針というのは、御存じのことであると思いますが、その施政権及び領有権というのをこれは意図的に別個に離して、できるだけアメリカの交渉におけるバーゲニングパワーも高くしようとするという傾向にあると。  現在起きていることは、例えば日本の、海上法執行機関が、例えば船を一隻増やすと中国はいきなり五隻ぐらい増やしてくる、日本の側が三十六ミリでしたっけ、機関砲を準備すると今度それよりもっと強力な大砲を準備するということで、完全にもうエスカレーションの状態になっているわけでありまして。  尖閣に関していうと、明らかに二〇一〇年より前の状態にまず戻すということからスタートしないと、もうとにかく関係は悪くなっていく一方であるし、アメリカは、東シナ海の尖閣を見てもそうですけど、あとそれから南シナ海を見てもそうなんですが、航行の自由作戦で航行、通過はするけれども、本当にあそこが公海であるというのならば別に船舶を泊めていかりを下ろしても何の問題もないんですが、それはやらないわけですよ。なぜやらないかというと、答えは簡単でありまして、できるだけ問題を悪化させたくないと。ある程度のところまでは航行の自由作戦はやるけれども、そこから先には踏み込まないという体制を取っているわけでありまして、その意味で、アメリカ安全保障供与に頼り過ぎることというのはやっぱり危険なことであるというふうに私は考えています。  以上です。
  26. 藤田幸久

    ○藤田幸久君 ありがとうございました。  質問を終わります。ありがとうございました。
  27. 鴻池祥肇

    会長鴻池祥肇君) 高瀬弘美君。
  28. 高瀬弘美

    高瀬弘美君 参考人先生方、大変興味深いお話をありがとうございました。  それぞれにお聞きをしたいと思いますが、まず高原先生にお聞きしたいこととしまして、先ほどのお話の中で、広報外交が大事だというお話がございました。  私も外務省におりましたときに広報を携わってまいりましたが、こちらが伝えたいメッセージとその国に住んでいらっしゃる国民の方が知りたい日本についての情報というのは必ずしも一致をしないという中で、どのようにその広報をやっていくことが効果的とお考えかを教えていただきたいと思います。  そして、フクシマ先生にお伺いしたいのは、先ほどのお話の中で、トランプ政権の高官ポストが埋まっていないというお話で、そのポストが埋まっていない理由、お時間あったらお話しいただけるということでしたので、お願いしたいと思います。  また、伊藤先生におかれましては、同じく最後の部分で、日米同盟を強固にするために保険は複数あった方がいいということで、アメリカ以外にも保険を持っていた方がいいというふうにおっしゃられたので、その部分についてもう少し詳しくお教えいただければと思います。
  29. 鴻池祥肇

    会長鴻池祥肇君) それでは、高原参考人からお願いします。
  30. 高原明生

    参考人高原明生君) 広報についてですが、私は二点申し上げたいと思います。  一つは、もちろん外務省は一生懸命やっていて大変頭が下がりますが、いかんせんくるくるポストも替わりますし、プロフェッショナルというわけではありませんよね、広報の。広報、教育もそうですけれども、やっぱり情熱とテクニックと両方要るんですよね。なので、私はプロに任せるといいますか、プロをもっと活用する。プロって誰かということになりますと、決して電通ではなくて、やっぱり学者ですね。その問題について詳しい学者、まあ学者にも実はうまい人、下手な人といるんですけれども、それが第一点です。  それからもう一点として、やっぱりNHKの国際テレビですね。もうちょっとどうにかならないかな。それは、政府が使う広報ということではなくて、日本人が世界をどう見ているのかという観点から申しているんですけれども、フランスでさえと言ったらフランスに失礼かもしれませんが、最近二十四時間で英語でニュースをやるチャンネルがあって物すごくいいんですよね。やはりニュース専門のチャンネルを日本も持った方が、日本の見方を世界に伝える、日本がどう世界を見ているかということを伝える上ではいいんじゃないかなと私は思います。
  31. 鴻池祥肇

    会長鴻池祥肇君) では、フクシマ参考人、お願いします。
  32. グレン・S・フクシマ

    参考人グレン・S・フクシマ君) なぜトランプ政権のポストが埋まっていないかということには、多分三つほど理由があると思うんですね。  第一点は、トランプ大統領自身あるいは彼の周りの人たちというのは、政府機能に関することを余り評価していないんですね。ですから、トランプ氏自身も、もうずっとニューヨーク、ワシントンともほとんど関係ない、政府ともほとんど関係ないということで、やはり政府に有能な人材を入れる必要性というのをそれほど考えていない。政府がなくても、もう民間企業で全て物事が間に合うという、そういう基本的な考え。あるいは、彼が任命している、例えばエネルギー長官になったテキサス州知事を務めたリック・ペリーなんかは、元々エネルギー省というのを廃止すべきだというふうに考えている人とか、あるいは環境保護庁に入ったスコット・プルイットという人も、ずっとEPAに対して訴訟をして闘っていた人がその長官になっているわけなんですね。ですから、そういう非常に政府に対する否定的な考えを持っているのが一つの大きい要因だと思うんです。  二つ目は、トランプ大統領も彼の周りの人たちも、余り政府の経験者のことを信頼していないんですね。要するに、彼の人事からいうと、先ほど申しましたように、大変成功したビジネスマンと元軍人、この二つの種類の人が彼が大好きなんですね。  それで、特にビジネスで成功した人たちが政府に入ろうと思うと、資産公開とかFBIの調査とかファイナンスの調査とかいろいろ、例えば株持っていたら、ある場合はブラインドトラストという信託に入れるか、あるいは場合によっては売却しなきゃ駄目なんですね、もしはっきりした利益相反がある場合は。  そういう、手続上、資産公開も含めて非常に時間も掛かるんですが、政府の経験をしたことのない人、あるいは政府からかなり距離がある人ほど時間が掛かるわけなんですね。ですから、これが二つ目の理由。実際に何人かはもう途中で、手続を始めたけど辞めてしまった人も三人ほどいるんですね、閣僚レベルで。  三つ目の理由は、これはトランプ政権特有の理由なんですが、去年の大統領選挙のとき、二百人近くの特に共和党の元外交幹部の仕事をしていた人たちが、トランプ候補というのは大統領としてふさわしくないという手紙にサインしたんですね。サインしたことによって、こういう人たちは一切、もうブラックリストに載っていてトランプ政権は採用しないということになっているんですね。  最近の有名な事件は、国務長官のティラソンが自分のナンバーツーとしてエリオット・エイブラムスというレーガン政権のときの国務次官補のポストを務めた人を雇いたかったんですね。ティラソン自身はエクソンモービルの社長で外交の経験もない、ワシントンの経験もない、政府の経験もないということで、もうベテラン、ワシントンのことを知っている、外交のことも知っているエイブラムスを雇いたくて、トランプ大統領もそれをオーケーしたんですが、スティーブン・バノンというホワイトハウスにいる人が、このエリオット・エイブラムスというのは去年書いた論文の中にトランプ氏を非常に批判的に扱っているわけなんですね、ですからこれを指摘したことによって駄目になったんです。  ということで、元々、本来だったら、特に外交における経験とか知識がある共和党の前の政権で働いていた人たちというのは二百人ほどブラックリストに載っているということで、それも一つの大きい理由でポストが埋まらないということです。
  33. 鴻池祥肇

    会長鴻池祥肇君) では、伊藤参考人、お願いします。
  34. 伊藤剛

    参考人伊藤剛君) 一般的には、アクターレベルでいえば、アメリカ以外の国とどうやって友好関係を深めればいいかという話になるわけです。そういう中で、ごく普通に出る話はオーストラリアであったりカナダであったり東南アジア諸国であるという話はよく出てくるわけですが、そういう連携中国以外と進めれば進めるほど中国は孤立感を味わうというのが現状でありまして、実際には、あるところと連携を進めれば進めるほど中国は余計にリアリズム的な、伝統的な力に基づく現状変更を結局やめないということが続いていくというわけであります。  じゃ、どうすればいいかということなんですが、ここ数年、安倍政権の基本的な方針は力による平和、力による現状変更に対してやっぱりこちらもきちんとその力を蓄えぬといかぬということであると思うんですが、それと同時に、やっぱり大事なことは、どうやったら中国を我々の領域に入れることができるか、オバマ政権流に言えばシェイプという言葉がついこの間まであったわけですが、そういう中で何ができるかということを考えていく必要があると。  実は、先ほどの小野田先生の話の中に、国際法も遵守しないような国とどうやって付き合えばいいのかというのは、確かに一般論としてはそのとおりなんですが、よく私、話すんですが、PCA、仲裁裁判所の判決は要するに何を言っているかというと、中国にこれやっちゃ駄目よ、あれやっちゃ駄目よ、これも駄目よと、こう言うと。  人を説得するときいつもそうだと思うんですけど、駄目駄目駄目と言っても絶対に人は言うことを聞かない。そうすると、駄目駄目ということと同時に、その代わりにこれならいいですよというものがやっぱりないと、特に孤立感、それがたとえ被害妄想であったとしても、孤立感を味わっている中国を、その行動様式を変えることはやっぱりなかなか難しいと思うわけですよね。  その中で、よりやっぱり重要なのは、日本外交って、伝統的にODAをどうやってうまく使っていくかということは昔からやってきて、国連の非常任理事国の議席を取るためにできるだけ広く、そしてODAをうまく活用するということをやってきたわけですが、それと同じように、アジア諸国及びインド洋、それからアフリカまで広げるところの地域で、中国の一帯一路に対抗するというとおかしいですけど、それと同時に日本が何ができるかというと、具体的にこういうことならできますよということをやっぱり考えていった方がいいと思います。  そういう意味で、中国の立場に立てば、これは私、昨年中国に会議に行って実際にあったことなんですけど、国際会議の場で、私がもしも中国人でしたら、アメリカがハワイとかグアムを持っていて、イギリスがフォークランドを持っていて、フランスがポリネシアを持っていて、オランダが南米の北のアンティルを持っている、ああいう状況ですから、私がもしも中国人だったら、南シナ海のどこが悪いんだと、私ならそう言いますよと言ったら、新華社がぱちぱちぱちとやってくれたということがありました。私はその後で、でも、もしも私がベトナム人であればどう思うかといいますと、いや、こんな近くまで中国の公船がやってきて我々の船を簡単に沈める、これこそ力による現状変更じゃないかということを答えると、ここはカットされまして、非常にけしからぬと思っているんですが、しかし、その立場によって主張することはもうがらがらに変わっていくという前提で、どうやって信頼醸成をやったらいいのかということを実際に考えていく必要があるのではないかと思います。  最後に一言だけ。よく、日本の立場は、南シナ海の公海が多いところを力による現状変更はあってはならない、つまり、その背景には公海というところはみんなが使えるところでないといけないという立場に立ってこれまで海洋安全に関する外交というのはやってきていますが、私いつも不思議に思うのは、捕鯨の話になったときに、わざわざオーストラリアの南辺りまで出かけていって調査捕鯨と称して捕ってくる、これは公海だから誰の国の迷惑にもなっていないじゃないかと。  これは公海の解釈の仕方です。要するに、公園のごみ箱はみんなのものだからきれいにしなきゃいけないという立場を取るのか、公園のごみ箱は誰にも迷惑にもなっていないからがんがんごみ捨てていいという話と何か似たところがあって、公海だからみんなで平和に保たなきゃいけないという論理と、公海だから誰にも迷惑掛けていないでしょうという、お互い矛盾する議論が何か併存しているような気がするんですよね。  こういうのは、やっぱり日本としてはきちんとその信頼醸成をやっていくにふさわしい外交形式に直していくという必要があるのではないかなということをふだんから考えている次第です。  以上です。
  35. 高瀬弘美

    高瀬弘美君 ありがとうございました。終わります。
  36. 鴻池祥肇

    会長鴻池祥肇君) 武田良介君。
  37. 武田良介

    ○武田良介君 日本共産党の武田良介です。  今日は、三人の参考人の先生、大変お忙しいところをありがとうございます。  最初に、フクシマ参考人にお伺いをしたいというふうに思っております。  今回の調査会のテーマが信頼醸成ということがありまして、最近のシリアの問題に関わって一つお聞きしたいと思うんですが、シリアへのミサイル攻撃そのものは私も許されないことだろうというふうに思っているわけですけれども、日本から見て、日本と他の国の信頼関係の醸成というときに、安倍首相はこの間、ミサイル攻撃に対して支持ということだったわけですが、これ、日本アメリカ関係ということでいえば信頼関係を築く上である意味有効なのかもしれませんが、そのほかの国との関係信頼醸成といったときにどういった影響があるというふうにお考えになられるか、まずお聞きをしたいというふうに思っております。
  38. グレン・S・フクシマ

    参考人グレン・S・フクシマ君) 先日のトランプ政権シリア攻撃に関しては、私が理解する限り、アメリカ同盟国の中には余り表立って反対している国はなかったんではないかというふうに思います。アメリカ国内ではいろいろトランプ政権に対する批判もありましたが、私も間違っているかもしれませんけど、安倍総理も、攻撃を賛成するというか、アメリカの決意に賛成するという言葉遣いだったと思うんですが。  今回のトランプ氏の行動に対してアメリカ国内でも海外でもいろいろ解釈があって、アメリカ国内のことを申しますと、一方では、彼の説明では、写真を見て、子供がああいう化学兵器で殺されたことを見て非常に同情した、それによってシリアに対する考えを変えたということを彼は言っているんですが、実際には、そういう非常に単純な感情的な、ある意味ではそういう反応だったのか。  むしろ、シリアに対するメッセージ、ロシアに対するメッセージ、ちょうど習近平さんとの夕食のときでしたので、中国に対するメッセージ、北朝鮮に対するメッセージ。あと、アメリカ国内においては、やはりオバマ大統領が赤い線を引いたといっても行動を取らなかった、それに対して、自分は前のオバマ政権とは全く違う、オバマ大統領とは違う決断力を持って行動を取るというメッセージ。あともう一つは、今アメリカ国内で一番多分トランプ政権に対して問題とされているのはロシアとの関係で、去年の大統領選挙のとき、トランプ陣営がどこまでロシアの政府と協力をしてヒラリー・クリントンを倒すことをやっていたかという調査が今ちょうど始まっているときなんですけれども、ロシアとの関係が余りにも近過ぎるという、そういうアメリカ国内の批判に対する一つのメッセージというふうにも見られていますので、相当いろんな形の解釈があると思うんですね。  特に私がアメリカにいて感じたことは、安倍政権アメリカシリア攻撃に対するその決意に対して賛成したということに対して、特に私の知っている限りそんなに批判的な声は出ているというふうには私の知る限りありません。  以上です。
  39. 武田良介

    ○武田良介君 ありがとうございます。  ちょっと関連するかと思うんですが、伊藤参考人にお伺いをしたいというふうに思っておりまして、先ほどの話の中にもG5からG20という話もありましたが、これまで必ずしも経済的に力が強かったわけではないそういう国も、今国際社会の中で発言力を持つように変わってきたというところがあると思います。  今日は日米同盟関係を中心にお話をいただきましたけれども、例えばアメリカから見てそういった国々に対して今どういうことを重視しているのか、トランプ政権になって予測が難しいという側面もあるかもしれませんが、そういった国との付き合い方という点で御意見いただければと思います。
  40. 伊藤剛

    参考人伊藤剛君) 基本的にアメリカファーストということですから、アメリカの利益になるのであれば付き合うし、そうでなければ基本的には全てフェイクニュースだ、つまりうそだという話。つまり、自分の都合のいい者は友人で、話をするに値すると、自分にとって都合のいい者は、うそを宣伝しているといううそを言うという状態になっているのが現状ではないかというふうに考えます。  基本的に、歴史的に見てアメリカ外交というのは、七〇年代と八〇年代末という冷戦の国際構造が大きく変動する頃に、負担に耐えかねてと言うとちょっと言い過ぎですが、やっぱり為替相場というのは大きく変わっているということは事実でありまして、結果的にこれは、アメリカの大きく持っている負担を同盟国にうまく経済的なメカニズムを使ってちりばめる、分散させるということを結果的にやってこれたんだというふうに思います。  そういう意味で、そもそもアメリカにとってみれば、いわゆる一般的な頭の数を数える多数決原理で、アメリカ以外の国が多数決でアメリカを負かしてしまうということに、やっぱり非常に、何といいますか、反対といいますか、嫌悪感といいますか、我々がこれだけのことをやっているのに一体これだけ反対が出るのは何事だという気持ちが非常に高いと。ですから、例えば五〇年代にできた軍縮会議もそうですし、七〇年代にできたサミットもそうですし、基本的に、国際機関の中で多数決原理でうまくいきそうにないとどこかその外にぱっと新しい機関をつくる、それがまた有効に機能するとアメリカは考えるわけですよね。  逆に今度、いわゆる新興国の立場に立ってみれば、我々はこれだけだんだん経済力大きくなってきているから先進国クラブの中に入れてほしいという気持ちが非常に強くなると。実際、国際社会全体の先進国と途上国の間の分散というのはだんだんと狭くなってきたのは確か、統計的にも確かでありますから、そういう意味ではオバマ大統領のときにG20という新しい枠組みができたことも確かであると。  ところが、権利は主張するわけです、先進国クラブの中に入れてくれ、こういうこともやってきたと言うと。ところが、国際的な責任、環境、人権、災害に関する救援、あるいは義援金の募集とかそういうことになりますと、急にグローバルなイシューで国際的な責任を持つ、環境とか典型的にそうですけど、そうなると、いや、我々まだ発展して間もないですからということで、要するに権利の主張と義務の履行というのでかなり差があるというのが現状でないかと思います。  昨今見てみますと、アメリカトランプ政権は、何といいますか、大統領の周りを家族で固めている辺りから始まり、自分に都合の悪いのはみんなフェイクニュース、うその報道だというところから始まって、非常にこれまでのアメリカにはなかったような政治スタイル、それを政治スタイルと呼ぶべきなのかどうかも疑問だと思うくらいの状況になっておりますので、これだけフクシマ先生の言うように多くのポリティカルアポインティー、政治的任命が全く固まっていないということも含めて、政治的任命が固まっていないということは自分の意思を隅々まで通すこともなかなか不可能だというような状況になっていますので、もうちょっとやっぱり時間を見て、一体どういう人がその任命職に就くのか。ひょっとしたら任命職は余り十分埋まらないままでこのままいくかもしれないという気もしていますし、ちょっとトランプ政権に関しては本当にもうなかなか分からないといいますか、分からないということは逆に言うと一貫性もないし、一貫性もないということはさしたる戦略も余りトランプ政権には現状では存在していないというのが実際のところではないかというふうに考える次第です。  以上です。
  41. 武田良介

    ○武田良介君 ありがとうございます。  高原参考人にもお聞きしたかったんですが、ちょっと時間があれですので、またこの後、時間があれば御質問させていただきたいと思います。  ありがとうございました。
  42. 鴻池祥肇

    会長鴻池祥肇君) 東徹君。
  43. 東徹

    ○東徹君 日本維新の会の東徹でございます。  今日は、三人の参考人の方、本当にお忙しいところ、ありがとうございます。  まず、伊藤参考人からお伺いしたいと思います。  シリアの攻撃のことをちょっと触れられておりました。ただ、今までのオバマ政権とは違うというふうなところで、今回特に、アメリカ中国での首脳会談が行われるときにミサイルを発射したと、これはなかなか非常にインパクトのあることだったのではないのかなと思っております。  やっぱり一番大きな今緊迫している問題は北朝鮮だというふうに思うんですけれども、何かあったときにアメリカが対応する、そのときに、じゃ日本はどのような対応をしていくのか、何か伊藤参考人の方で今思っていること、考えていることがありましたら、是非お聞かせいただければと思います。
  44. 伊藤剛

    参考人伊藤剛君) 厳しい質問で、私、頭の中、いろいろ考えているんですが、この北朝鮮のミサイルで私自身実はここ二、三日いろいろ不思議に思っていることがありまして、実は七〇年代、八〇年代のヨーロッパの状況とちょっと似ているかなと思うところがありまして、実はアメリカにとってみれば、長距離のミサイルであれば明らかにアメリカまで届くということですから、これは自衛権の行使の可能性というのは当然あるわけであります。ただ、テポドン級のようないわゆる中距離であれば、まあグアムまでは届くかもしれませんけれども、基本的には本土までは届かないと。もちろん、短距離ミサイルぐらいになると、当然アメリカはほとんど傷つけることがなく、その周辺国にとってみれば非常にその脅威を感じると。  実は、七〇年代、八〇年代のヨーロッパにあったことは、ヨーロッパの各国は非常にその恐怖感が強いけれども、東ヨーロッパに配置されたミサイルはワシントンDCまでは届かないものですから、そういう意味で、同じ恐怖の感覚というのがヨーロッパの諸国とアメリカの、同じNATOの中でも違っていたということもありまして、同じ、ちょっと似たような状況なのかなと最近考えることがあります。  といいますのは、北朝鮮も分かりながら意図的にその挑発をしているんだろうと思いますが、長距離の弾道ミサイルを飛ばしたり、飛ばすぞということをやると、当然アメリカの自衛権行使の対象になると。それより短いのだと、周辺国にとっては非常に脅威感高いんですが、当のアメリカは、解釈を一生懸命やっても、日本の中の米軍基地が危機にさらされるということ以外にはなかなか論拠が見付からないというふうな感じをしておりまして、その意味で、アメリカ自身も武力攻撃をするときに一体何をその論拠として使うのかなということをいつも疑問に思いながら最近の報道を見ているという次第です。  ここで一回止めておきます。ありがとうございました。
  45. 東徹

    ○東徹君 ありがとうございます。  じゃ、ちょっと話題を変えさせていただきたいと思います。  フクシマ参考人の方にお伺いをしたいと思います。  TPPですけれども、昨日ですか、副大統領来られて、これはもう過去のものだと、二国間でやっていくんだと、そのようなお話であります。  TPP、十一か国で、アメリカを抜いて十一か国でやってはどうかという意見もあって、それについてはどうなのかということと、もう一つは、そのとき、もし十一か国でやった場合のアメリカの反応というのはどのようにお考えになられるのか、お聞きしたいと思います。
  46. グレン・S・フクシマ

    参考人グレン・S・フクシマ君) おっしゃるとおり、トランプ大統領も副大統領もTPPというのは過去のことだと言っていることは事実なんですが、私は実は、オーストラリアとかカナダの政府の人たちと話をしていると、やはり彼らたちは、アメリカがもう関わりたくないのであれば十一か国でやりましょうということで、彼らたちは非常にこれから積極的に、日本も、何といいますか、説得をして進めたいという、そういう姿勢を取っているようですね。私の知っている限り、ベトナムとかブルネイとかマレーシアですとかは特に、アメリカが参加しないTPPは余り意味がないということで、彼らたちはそんなにアメリカがメンバーじゃないTPPには積極的じゃないというふうに聞いているんですが。  私個人としては、TPP的なああいう枠組みというのは非常に重要な、何といいますか、知的所有権を守るとか、いろんな意味での枠組みとしての有効性といいますか、意味があるというふうに考えていますので、私は、日本とあとほかの、全部で十一か国ですね、これを進めることに関しては私は割に応援できるというふうに個人的に思っています。  アメリカがこれに対してどう反応するかということなんですが、今の時点では、明らかにTPPが、アメリカ民主党でも多分共和党でも、両方だと思いますけれど、賛成、応援している人は余りいないということが言えると思いますね。  去年、二〇一六年の大統領選挙のとき、この参考資料にも私はTPPについて論文書いていますけれど、あれだけ貿易問題、特にTPPが批判されるということを予測した人は多分二〇一五年の時点ではいなかったぐらい、非常にこの問題は、特に民主党ではサンダース候補、共和党ではトランプ候補がTPPのことを徹底的に非難したことによって相当評判が悪くなったんですね。それで、賛成する人たちというのは限られた、例えば牛肉業者とか、TPPによってベネフィットを得るそういう業界の人たちはもちろんTPP賛成なんですけど、アメリカの一般の市民がTPPのことを知っているかというと、ほとんど、私の知っている限りアメリカの一流紙、新聞で一面記事になったことは一度もないとも言っていいと思うんですね、TPPというのは。それだけ余り意識のレベルがつられていないということが言えると思います。ですから、もし十一か国でこのまま進めたとすると、アメリカでは余りこれは注目されないと思いますね。  それで、カナダでもオーストラリアでも、多分日本でもそうだ思うんですけれど、もし十一か国がこのまま進めて、これによって相当お互いにベネフィットがあるということを、アメリカがそれを気が付いたらまたアメリカもそれに関わるんじゃないかという期待が一部にあるようなんですね。これは、もしトランプ大統領自身が今のポストを降りてペンス副大統領が大統領になるとか、そういうことになるとなると、ペンス副大統領は、実は彼は元々TPP賛成だったんですね。今の下院の議長、院内総務の、ポール・ライアンも、安倍総理が、たしか二〇一六年ですね、ワシントンを訪問したときも、ワシントン・ポストに大きい記事を書いて、いかにTPPが重要かという記事も書いていたんですけれど。  ということで、共和党の主流と民主党も一部はTPP賛成派も結構いるので、これはトランプ氏自身がこれだけTPPに反対ということだったので、TPPという名前、あるいはその今の枠組みの形でトランプ政権トランプ大統領の間、アメリカ側がそれをまた関わる、メンバーになりたいということはほとんど可能性はないと思いますね。ただ、今の状況が変わって、要するにトランプ大統領ではなくなったとき、その時点でアメリカがまたTPPに興味示す可能性というのはまだ大いにあると思います。
  47. 東徹

    ○東徹君 ありがとうございます。  最後に、高原参考人にお伺いをしたいと思います。  お話の中で、構想実現のための日本自身の能力構築ということで、基礎としての語学力と社交力が大事ですよと。外交センスなき民族は必ず滅ぶというハウス大佐のお話も出されたと思うんですけれども、語学力はいろんな機関でできるのかなと思いますけれども、社交力というのは、特に中国の社交力、これどう高めていく、先ほどのホームステイとか、それ以外に何かありましたらお聞かせいただければと思います。
  48. 高原明生

    参考人高原明生君) 学校に交流のための部屋がないんですよね、普通。日本の学校に行きますと、教室はあります。しかし、会議室というのは、子供が使う会議室ってないですよね。そこから問題があるんじゃないかと。ほかの知らない人と交流するということが日本の教育体系の中には組み込まれていない、それが大事なことだとは思われていないんですよね。なので、学校間交流とか、最初は同じ学校の中の学級間交流でもいいのかもしれないんですが、何かそういうイベントを学校行事の中に盛り込んでいって、知らない人とちゃんと付き合えるというところからやらないといけないんじゃないかと思います。
  49. 東徹

    ○東徹君 ありがとうございました。  時間ですので、終わらせていただきます。
  50. 鴻池祥肇

    会長鴻池祥肇君) 次に、木戸口英司君。
  51. 木戸口英司

    木戸口英司君 今日はありがとうございました。  それでは、伊藤参考人にお伺いをいたします。  参考人の今日のお話日米関係の構造というタイトルでいただきました。それで、このレジュメの六番のところに、中産階級の相対的衰退、トランプ大統領でなくてもこの傾向は変わらないということございます。こういう指摘は随分されていると思っておりまして、トランプ大統領がある意味スタートなんだと。ポピュリズム的展開ということ、それから反グローバル化というような言い方をされる方もいらっしゃいます。そういう中で、これ歴史的循環という指摘もあって、戦前を見れば、行き過ぎたグローバリゼーションから脱グローバル化ということで西欧が動いた中、そこに日本とドイツが取り残されたという見方もされております。そして今、ヨーロッパでもこういう脱グローバル化、ポピュリズム的な動きというのは大きくなっていて、こうして振り返ってみれば、グローバリゼーションの今、推進役というのは実は日本とドイツということも言われるんじゃないかと思います。  トランプ現象といいますか、世界を覆うこういう形ということ、私も脱グローバル、保護主義を進めろということを申し上げるつもりはありませんが、やはりそこのバランスを取っていくことというのは非常に、グローバルも保護主義も悪いところばかりではありません、いいところもあるし悪いところもあるということ、そういう中で、日本はこの時代をどう捉えてこの世界的構造と向き合っていかなければいけないかということを、非常に雑駁な質問で恐縮ですけれども、日本の方向性というところを御示唆をいただければと思います。お願いいたします。
  52. 伊藤剛

    参考人伊藤剛君) 一つはちょっと精神論的なもので、二つ目はやや学者としてのコメントという二つに分けたいと思うんですが、一つは、やっぱり基本的には、グローバル化やってマイナス要因とプラス要因を考えてみると、やっぱり圧倒的に、知らない人と知り合える、そこからチャンスが生まれるということも含めて、やっぱりプラス要因の方が大きいであろうし、またそういう国際社会にしていくべきというまず大前提の目標があると思うんですよね。  そういう中で、今、高原先生がおっしゃった交流の部屋がないということもそうなんですが、特に私、もう二十年、私立大学に勤めていますけど、やっぱり教室、交流部屋の前に、教室はあるというんですけど、教室ですら今足らない状況になっているというのが実際のところでありまして、特に少人数教育をやろうと思えば思うほど部屋はたくさん必要だと。教室レベルですら部屋が足りなくて、じゃ、伊藤さん、済みません、朝一限から授業やってください、ああ、分かりましたという、大学に二十年勤めて、朝一限から一、二、三、四、五、六、七とか、九時から九時まで働くという状況がごくごく普通に生じているというのが現状ですから、やっぱりそういう意味では、グローバル化を推進できるような社会にしていくべきだというまず前提で話をする方がいいと思うんですよね。これは精神論的な話。  二番目には、構造論的な話で思うことは、グローバル化と同時に、やっぱり大きな問題というのは、私の最初の報告の中でも申し上げました、やっぱり過剰流動性をどういうふうにうまくマネージしていくかということが非常に大事な話でありまして、それは何も中国だけに責任があるわけではないし、アメリカだって国内の輪転機がっちゃんがっちゃん回していろんな紙幣を刷る、日本だって異次元金融緩和やっているわけでありますから、日本だって全く関係ないというわけではないと。  そういった中で、経済の浮揚策として、特にリーマン以降がそうだと思うんですが、経済の浮揚策として流動性を非常に刺激するような政策というのが世界のいろんなところで繰り広げられてきている。当然のことながら、余ったお金が行き場所を求めてとにかく世界中をうごめくということになっていると。それで、世界の主要なところの不動産を買い上げる、それがその値段をつり上げて、そして中産階級は買えないような社会になっていくと。  アメリカは五万ドル以上の授業料世界中から学生が来ますけど、日本の私立大学は、さあこれから少子化にどう対応しようかと、全然アメリカ大学とは全く別の議論というのが今、中に出ていると。そんな中で、そのグローバル化というのが大学課題として出ているのが現状でありますが、そういった構造になっているのが現状だと思います。  その意味で、経済をうまくマネージしていくという政策を取っていくと、その中で、現状のままだと、一生懸命頑張って就職して、そこで頑張って働くことが幸せにつながるんだという考え方がだんだんだんだんうまく立ち行かなくなってきているというのが今の社会ではないかと思います。  ここ三年ぐらい、景気はいいので学生は就職は簡単には決まるけど、十年たって十五年たつと同じところで勤めているか、あるいはその幸福感を感じるかということはやっぱり別の問題になってきているのが現状でないかと思いますので、やはり大きくは流動性の問題をどうやってうまくマネジメントしていくか。パイを大きくするということとパイをうまく配分するということ、やっぱり両方が必要だと思うんですよね。パイを配分することだけに関心があると全体をどうやって大きくするかということはなかなか立ち行かなくなって、パイをどうやって大きくするかということにいつも関心が向くとそれをどうやってうまく公平に配分していくかということがなかなかうまくいかないという。  経済成長著しいときに貧富の格差が大きくなるということはよくある話ですが、今はその全体の成長がなかなかうまく見込めない中で、しかしながら分配もうまくいっていないという状況になっていますので、そういう点をやっぱり政策としてうまく考えていくことが大事ではないかというふうに思います。  以上です。
  53. 木戸口英司

    木戸口英司君 それでは、高原参考人にお伺いいたします。  今年十月ですか、共産党大会があるということで、習近平主席の権力固めということの大きな分岐点になるということを聞きます。なかなかそれも非常に難しい困難な作業だということ。  ちょっと端的に聞きますけれども、国内のそういう権力のありようということの動機の中で、その十月を挟んで、今、中国というものがどういう対外的なこと、日本に対してということもですが、そういう動機の中でどういう国策があるのかということ、済みません、この短い時間で恐縮ですけれども、お願いいたします。
  54. 高原明生

    参考人高原明生君) 十月かどうかはまだ発表されていないんですが、恐らくその頃に開かれるだろうということであります。おっしゃったとおり、習近平体制にとっては非常に重要なポイントで、もしかしたら中国政治歴史的な流れにとっても重要なものになるかもしれません。  私はポスト毛沢東時代の終えんかもしれないという言い方をしているんですが、要するに、毛沢東の個人崇拝、一人への権力の集中、それが文革の悲劇を生んだという反省の下に、トウ小平を中心として集団指導制をこれまで築いてきたわけなんですが、今の指導者はそれを逆の方向に、自分の一身に権力を集中させる、それが中国にとって必要なんだという認識が多分あるんだと思うんですけれども、そういう状況ですので、また主席制を復活するんじゃないかとか、今は八二年以来、総書記制に変えて集団指導体制をやってきたわけですが、そういううわさが、あるいは実際にそういうことを考えていることは間違いないと思うんですね。  でありまして、そのコンテクストの中で対外行動がどうかということなんですが、私自身は、そういう大きな政治的な変革を国内でやろうとしている際に求めているのは、やはり安定だということだろうと思います。ですので、国内の安定とそれから国際的な安定が連動しているという認識が最近中国で大きくなっていることからも、余り対外関係で問題が起きるとすぐナショナリズムが沸騰して国内も不安定化する、そういうおそれを強く今の指導部は持っていると思いますね。  ですので、私の予想としては、余り中国のことを予想すると外れるんですが、恐らくは、今年その党大会が終わるまでは少なくとも基本的には安全運転で、余り周りから乱暴だと思われるような行動は控えるのではないかというふうに思っています。
  55. 木戸口英司

    木戸口英司君 時間になりましたので、ありがとうございました。
  56. 鴻池祥肇

    会長鴻池祥肇君) 伊波君。
  57. 伊波洋一

    ○伊波洋一君 沖縄の風の伊波洋一でございます。  本日は、参考人の皆さんには貴重なお話とそれから資料等を提供いただきまして、ありがとうございます。  最初に、フクシマ参考人にお聞きしたいと思うんですが、米中関係についてですけれども、米中戦略対話など、本当に米中の間では頻繁な政治あるいは軍事的なところの交流も含めて進んでいますが、資料によりますと、米国人の中国に対する感覚というのは、好意というのは日本よりはるかにいいという感じがしています。さらに、中国人は今、十万人ほどの大学あるいは大学院の留学生を、米国にも行っておりますし、このようなことが、これからのことなんですけれども、トランプ政権が確かに予測不可能といえども、今後、長いスパン、ある程度長いスパンで米中関係というのはこのまま良好な関係で推移をしていくと考えておられるのか、あるいは何か決定的に悪化することがあり得ると考えておられるのか、お聞かせいただきたいと思います。
  58. グレン・S・フクシマ

    参考人グレン・S・フクシマ君) 米中関係は、高原先生も御存じだと思いますけれども、アメリカ国内において非常に意見が分かれていて、米中関係について非常に楽観的に見ている人と非常に悲観的に見ている人がいるということは事実だと思うんですね。私は実は中間で、これから決定的な対決は多分ないと思うけど、だけど必ずしも良好な関係だけが続くとは見ていないんですね。  おっしゃるとおり、例えば若者の交流なんかを見ますと、一九九七年には日本からの留学生がアメリカは四万七千人で、どの国よりも日本人が留学生としてアメリカに留学したのが多かった、九七年ですね。それが二〇一二年には、日本が一万九千人まで、六番目になって、中国が二十数万人になって、圧倒的に今、中国の方がアメリカでは、あるいはアメリカだけでなく多分ほかの国でもそうだと思うんですけど、中国の留学生が多いし、あとやはり、アメリカの例えば実業界のスティーブン・シュワルツマンという人もかなりの大きい基金をつくって、彼の考えでは二十一世紀こそが中国アメリカが最も重要な国になる、なので若者の交流を促進するために交換留学プログラムをつくったわけなんですね。ローズ奨学金みたいなものをつくったわけなんですね。  ですから、長期的に見ると、やはりそういう人文交流、文化交流も含めて、中国アメリカ関係がだんだん深化して、もっと深い関係を築くことは間違いないと思うんですね。これは、要するに、中国政治が今後どうなるかということだと思うんですね。  中国政治が、アメリカの一部が期待しているように、こういう交流をして、中国がほかの自由世界、民主的な社会を見ることにつれて、中国社会そのものをだんだん民主化するという、そういうふうに見るんであれば米中関係も多分非常にいい方向に行くと思いますが、よく言われているように、中国の場合は共産党が、共産党の権力、その政権を維持する安定性というのが最重要目的だというふうに考えると、いつまでたっても、幾ら文化交流、人文交流をしても、中国は、基本的にはアメリカとの価値観、あるいは安全保障上もアメリカとは、何といいますか、融和関係にはいかないだろうという、そういう両極端の可能性がありますので、私は、中国政治在り方、共産党の在り方によって相当これは米中関係の将来も決まるんじゃないかというふうに思います。
  59. 伊波洋一

    ○伊波洋一君 ありがとうございます。  次に、伊藤参考人にお聞きしたいと思いますが、安全保障の備えというものが、いざというときにはこれは必要だということは冒頭からのお話で分かるんですけど、日本は独立して以来、一九五二年のサンフランシスコ条約で独立して以来、日米安保の下にありまして、そのときから日本アメリカ経済に助けられて、高度成長を経て今日に至っていると思います。  そういう意味では、安全保障経済関係がより一体的な流れの中で進んできたんですが、今日、日中貿易の方が日米貿易の方より一・五倍ほどになっていると。こういう流れは今後とも更に進んでいく。さらに中国経済は更に成長していくと。この調査会の中でも、二〇五〇年にはもう日本よりもっと、インドネシアとかメキシコとかほかの国々が、あるいはインドもそうですけれども、成長していると、そういう世界がどんどん変わっていく時代に今入っていると。  そういう中で、やはり今、安倍政権日米同盟の強化を一生懸命やっておりますが、安倍政権では無理でしょうけれども、そういう日米同盟の強化だけで安全保障実現しようとすると経済関係は逆の関係になってしまうというふうになってくると、日本にとって本当にこれがいいことなのかどうかという、いざというときの備えのために日常の経済交流や経済的な関係が損なわれることになりはしないかという感じがとてもするんですが、もしそうならば、日米関係も良くして日中関係も良くする、相互にやはり友好関係をつくっていくというか、あるいはひょっとしたら軍事的にも交流ができるようになる、そういう方向性を、向かう時期に来ているのじゃないかと思うんですが、いかがでしょうか。
  60. 伊藤剛

    参考人伊藤剛君) 私がいろいろ話をする前に既に伊波先生から答え出してくださったような気がするんですが。  思うことは、やっぱり、先ほどの私の話とも連続するんですが、何とかしちゃ駄目駄目というだけだとやっぱりインセンティブがなくて、その代わりに何ができるかということを考える。そうすると、日米の基本的な安保関係というのは、基本的にアジア太平洋地域に関する限りではやはり安全保障の要として有効に機能してきたと。  実際にアジア諸国はアメリカの力を、日本だけではなくて、例えば昔の話ですけど、朝鮮戦争が起きたとき誰が一番喜んだかといったら蒋介石だったということに見られるように、アジアの中の対立を対岸の火事として、アメリカを取り入れながらどうやって自分たちの力を伸ばしていくかということにやっぱり非常に神経を傾けてきた傾向があると。そういう意味では、やっぱりアジアの全体的なフレームワークというのはもう言うまでもなく大事であることは言うまでもないと。  日米と日中の貿易の話が出たんですが、既に日本とASEANの貿易自体も、既にもう日米よりも、もうかなり前の段階で日米貿易の量を超えているという現状を見たときに、いかにアジアの中が経済的な関係が密であるかということは統計的に見てももう明らかであると思うんです。そうすると、やっぱり、単にバランス・オブ・パワーとか、そういう封じ込め的な発想だけではやっぱり限界があって、プラスアルファ、いろんな新しい関係の構築であるとか、これまで関係が薄かったところへ出ていくとか、そういうことがやっぱりどんどん重要になっていくことは言うまでもないと。  特に日本のように、やっぱり元々長い歴史の中で、資源がなくて外国との関係が重要な中で自分たちの立ち位置を探ってきたという、そういう歴史を持っている国民であれば、いかにグローバル化の中で自分たちが生きていくことというのが大事であるか、ほかの国との関係がないと生きていけないということは、もう学校教育の段階も含めてかなり真剣にやっぱり教えていかないといけないし、我々もその一翼を微力ながらやっぱり持っていくことが必要ではないかというふうに思う次第です。  以上です。
  61. 伊波洋一

    ○伊波洋一君 ありがとうございます。  あと少しだけありそうですので。  確かに今、中国の力による現状変更というものにおいて日本はかなり議論しているわけですけれども、戦後の世界を見ますと、やはり、これまでアメリカあるいはソ連、ロシア、イスラエル、この三者が一番武力を使って攻撃をしてきた主体ではないのかなという感じがするんですが。カーター大統領が共和党の大統領は戦争をよくしてきたということを、本書いてありますけど、しかし民主党の大統領も戦争してきたわけです。  そういう中で、この間のシリアのあれもあるんですけれども、私たちはやはり、このアジアにおいて、もう戦争をしないということを考えると、日本中国はやはりもっと交流を密にしていかなきゃいけないのではないかと思うんですが、高原参考人、先ほど来、将来的なことも含めてのお話ありますが、やはり日本中国が平和的に友好的であるための方策として、更にいろいろお話を少しお聞かせいただければと思います。
  62. 高原明生

    参考人高原明生君) おっしゃるとおり、方向としては、日本中国も戦争を避け、ルールを守り、そして共存共栄、共生していくというその理想を分かち合う、これがもちろん目標だと思います。日本では戦争は絶対悪の平和教育が行われている、そういう状況ですが、残念ながら中国では戦争は絶対悪ではありません。平和教育も行われておりません。行われているのは愛国主義教育で、自分たちが弱かったから戦争で攻め込まれてこんなに大きな被害を受けた。それはそれで事実としては正しいわけなんですけれども、しかし、それだけだとやはり我々との規範の共有というのは難しいと思うんですね。ですので、中国でも本当は平和教育をやってもらいたい。  そういう教育レベル、教育者、教育界の交流というんでしょうか、私たちがどういう教育をやっているのか、まあもちろん場所によっても違うし学校によっても違うから、なかなか難しい面もあるかもしれないけれども、しかし、大体こういうことですということを分かってもらった上で、また違う教育の在り方とか内容があるんだという、そういう認識ですね、それは中国の人は全然分かっていないわけですよ、日本でどういう教育が行われているかって。やっぱり報道されるのは、何か幼稚園でも教育勅語が云々という、そういうのが大きなニュースになるわけで、すごく誤解されている面も大きいと思うんですね。なので、教育界の交流は大事だと思いますね。
  63. 伊波洋一

    ○伊波洋一君 ありがとうございました。終わります。
  64. 鴻池祥肇

    会長鴻池祥肇君) 以上で各会派一巡をいたしました。これより自由に質疑を行っていただきます。  質疑のある方は挙手を願います。  丸山和也君。
  65. 丸山和也

    ○丸山和也君 ありがとうございます。自由民主党の丸山和也でございます。  二つお聞きしたいんですが、まず一つは大きな問題を各先生方にお聞きしたいと思うんですけれども、日本の地政学的な立ち位置、それから歴史的な関係も含めてですね。  やはり、ちょっと誤解があるかも分かりませんけど、やっぱり世界の主要な国との、まあ大国といいますか、大国との関係をきちっとやっていくということが基本的に大事だと思うんですね。その一つ日米関係、もう一つは日中関係、もう一つは日ロ関係、この三つ関係をそれぞれきちっと構築し深めていく。このバランスの中で、初めて真の独立した日本、あるいは日本国日本人としての国の在り方というのが保てるんじゃないかと思うんですね。  やっぱり、日米安保日米同盟だけに頼ってしまうと、やっぱりこれバランスも崩れると思いますし、そして、ふと思い出したのは、私も、今のままでは本当に無理なんですけど、いずれは中国とも、中国国内の体制の変革ということも条件になるかと思いますけれども、日中安全保障条約なんというのも必要になっていくんじゃないかと思いますね。それから、ロシアとも平和条約を結んだ上での日ロ安全保障条約とか、こういうのも複合的に、日米だけじゃなくて、日中、日ロ、こういう安全保障条約というのが長期的視野においては必要だと思うんですけれども、これについて各参考人の方々の、これ、数年前に中曽根元総理ともちょっと話したときに、やはり同じようなことをおっしゃっていたんですよね、特に中国ですけれども、体制の変革を前提として日中安全保障条約なんかもやっぱり必要になるだろうというようなこともおっしゃっていたので、それは別にして、各参考人の御意見をお聞きしたいと思います。
  66. 鴻池祥肇

    会長鴻池祥肇君) まず、高原参考人からお願いをいたします。
  67. 高原明生

    参考人高原明生君) まさにおっしゃるとおり、こういう乱暴な時代、荒々しい時代になってきて、大国との関係というのがとても前以上に重要になってきているというのは御指摘のとおりだと思うんですね。私たちの周りの大国、今御指摘になった三つの国との関係が大事だというのは、全くそのとおりだと思います。  短く言いますと、おっしゃったことに私は全面的に賛成です。ただ、先ほどフクシマ先生がおっしゃいましたけど、やっぱり体制の問題というのはあるんですね。今の実質的な一党独裁政権の下では、どうしたって支配の正統性というのがありませんので、ナショナリズムに頼ることになってしまいます。そこの問題をどうクリアできるのかというのが今後の中国にとってもチャレンジだし、しかし、それが実際に行われるとなると、もう余波は周り、世界全体に及ぶわけですから、私たちの問題でもそれはあると思うんですけれども、これからまだまだ大きな山が来ると思います。
  68. 鴻池祥肇

    会長鴻池祥肇君) 次に、フクシマ参考人にお願いいたします。
  69. グレン・S・フクシマ

    参考人グレン・S・フクシマ君) 私も、個人的には日本大国との関係を友好な、良好な関係を持つということは基本的には大変いいことだというふうに思いますが、私はやはりアメリカ人ですので、アメリカの視点から申しますと、やはり日米関係というのはアメリカから見ると大変重要な関係で、特にアジアにおいては日本が最も重要な同盟国でもありますので。  私も、実は高原先生のように、もし、中国政府、あるいはロシアの政府もそうなんですけど、民主化をして、要するに今の形の政治制度、仕組みではなく、選挙によって国民がリーダーを選ぶ、そういう方向に行くのであれば、日本がそういう国と安全保障条約とかいろんな形の協定を結んで関係を深くもっとすることは、大変それはいいということだと思うんですが、果たして今の時点で中国とかロシアとの価値観を日本がどこまで共有するかということに関しては、私は外の人間としてはちょっと疑問を持っているわけなんですが、これはあくまでも基本的には日本の国民が決めることですから、それに関しては、日本の国民が決めることを遂行することに関しては、幾ら同盟国アメリカとしてもそれは特に干渉することはないと思います。
  70. 鴻池祥肇

    会長鴻池祥肇君) 続いて、伊藤参考人、お願いします。
  71. 伊藤剛

    参考人伊藤剛君) 肯定的なお話はほとんどもう出尽くしたと思いますので、ちょっと違う観点から、ちょっと否定的な見解も含めて二、三申し上げたいと思います。  まず第一は、クリミア問題を起こして既存の国際秩序を変えようとする国、それから、まあ南シナ海もそうですが、勝手に埋立てをして軍事化を進めている国との間で果たして価値観や利害が共有化できるかという基本的なまず問題があることは言うまでもありません。  こちら側が抑止政策をしていかないと勝手に徐々に影響力を大きくしていく、何かアメーバのような、アメーバはたしかかつてアメリカの研究者がロシア外交を指してそういうことを言ったことがあると思うんですが、そういった国内の体制の問題と関わり合いがある国でどうやってうまく信頼を築けていくかということは言うまでもなく疑問に思います。  第二には、今度は関係性の問題でありまして、日本だって、アメリカ中国がうまく信頼関係を築いて握手していると、いや、我々は大丈夫かなという気持ちになる、ニクソン・ショック・シンドロームのようなものが出ていると。これをいかに日本としても克服をしていくか。日米が緊密であればあるほど、今度は逆に中国が我々は置いていかれるんじゃないかという気持ちになるのと同じようなことで、やっぱり構造的に、ある二国間関係が仲よくなると、やっぱりどうしても蚊帳の外に置かれたという心配を持つ国、それがその周りを固めてしまうと孤立感を勝手に持ってしまうという状況ですので、確かにおっしゃることはそのとおりだと思いますけど、実際にそういうふうにいくのかなということはいろいろと疑問に思う次第です。  一番いいのは、二国間ではなくて、ある程度ヨーロッパのような多国間の間の、複数の国で安全保障に関する同盟なりあるいは枠組みをつくるのがいいということになるかと思いますが、今度そうすると集合行動論の観点でフリーライドする国が、ただ乗りする国が生まれてくるということでありまして、これは冷戦後にヨーロッパのNATOが東側に拡大するときに、一体東ヨーロッパ諸国で大丈夫かという議論が起こったのと同じような話でありまして、フリーライドをいかに食い止めて全てのメンバーが貢献できるような多国間の枠組みをどうやってつくるかということはいつも問題になるということで、結局、私が結論として申し上げたいことは、一〇〇%うまくいくものはありませんということであります。
  72. 丸山和也

    ○丸山和也君 では、時間の関係上、別の質問に移らせてもらいますけれども、これはグレンフクシマ参考人にお聞きしたいんですけれども、ちょうど去年でしたか、大統領選挙の初めの頃でしたかね、自民党の勉強会の方にも来ていただきまして、あのときたしか、もしかするとクリントンが、ランドスライディングビクトリーとおっしゃったか、とにかく物すごい勝利をするかも分からないということをおっしゃって、見事に外れたんですけれども、しかし、トランプさんの行動も予測しにくいんですけれども、その上で僕は、トランプさんというのは恐らく一期目を全うできるのかな、どうかなという感じがしているんですよね。  それで、彼は基本的には不動産屋さんでして、非常に能力のあるやり手の不動産業者という評価をする人もいるし、本当に、悪徳不動産業者だと言う人もいますし、訴訟問題もいっぱい抱えていますし、恐らく彼の得意なのはディールだと思うんですね。交渉なんですよね。  それと、僕が見ていますと、彼の行動原理の基本は、まあそれだけじゃないでしょうけど、やっぱり勝つか負けるか、損か得かと、これが非常に明瞭な方だと思うんですよね。これはまた商売の原則ですよ。  それと、やっぱり初めて政治世界へ入って、初めてアメリカの、初めてというか、いきなりアメリカの大統領でしょう。だから、ある意味ではコントロール能力というのは全くないと思うんですよね。ないけれども、まあうまく人を動かせればいいんですけれども、非常に人事の面でも不安がありますから。  そこで、経験豊かなフクシマさんに、さて、トランプ政権はいつまで続くかという大胆予測をしていただきたいと思います。
  73. グレン・S・フクシマ

    参考人グレン・S・フクシマ君) おっしゃるとおり、クリントン候補が圧勝するかもしれないということを私が申し上げたことは事実です。  実は、私は、クリントン氏が負けたのにはいろいろ理由があるんですけど、一つは、七万七千票で負けているんですよ。要するに、ミシガン州の一万票とウィスコンシンの二万二千票とペンシルベニア州の四万五千票、七万七千票で負けたことによって四十六人の選挙人が全てトランプに行って、それで彼は勝ったんですね。クリントン候補は三百万人近く一般投票はトランプ候補よりは取ったわけなんですけど。  その理由としては、やはりいろいろ構造的な理由、ラストベルトとか白人貧困層とかいろいろあるんですが、だけど、やっぱりFBI長官の書簡二つと、あとロシアのハッキング、これが相当この結果を左右したというふうに私は見ています。それはまあ前置きとして。  トランプ政権、これがいつまで続くかということなんですが、これは誰も予測できないと思いますね。本当に、アメリカ国内においても、四年もたないと言う人もいますし、これは八年立派に全うすると言う人もいますし。  一つ非常に予測しにくいことは、トランプ大統領が過去においてどういう、まあいろいろ、もちろん四十年間ビジネスマンやっていましたからいろいろ過去があるということで、それがどこまで実際にその調査がされているかということ、特に今注目されているのはロシアとの関係ですね。ロシアとのビジネスと金銭的な関係、あと、やはり先ほど申しました去年の大統領選挙のとき、トランプ陣営がどこまでロシアの政府と一緒に結託をして、それでヒラリー・クリントンが負けるように操作したかという、その調査がこれから始まるわけなんですが。  もし、何か決定的にトランプ大統領に対して何かその事実が発覚すると、これは選挙に関してか、あるいは金銭的なことか、女性についてか、まあいろいろ可能性はありますけど、そういう決定的に彼にとって不利な情報あるいは事実が出たとすると、もし二〇一八年の中間選挙で民主党が下院の過半数を取ることがあれば、それも可能性がないわけではないんですけれど、そうなると、弾劾の手続というのは下院が開始しなきゃ駄目なんですね。ですから、もしそういう事実が出てくると彼が弾劾になることは可能だということと。  あともう一つは、先ほど申しましたように、共和党の主流の政治家たちは特にトランプ氏に対する忠誠心も何もなくて、たまたま彼、選挙を勝ったので、便乗していろいろ共和党がやりたがっている大幅減税とか規制改革とか規制の撤廃とかやろうとしているんですが、だけど、実際に、もし共和党から見て中間選挙あるいは二〇二〇年の選挙でトランプ大統領が大統領だということで不利だとなると、彼に辞めてもらって、それでペンス副大統領に大統領になってもらう方が主流の共和党から見るとむしろ好ましい結果になりますので。  そういう意味で、いろいろ不確定要因があるので完全には予測できないんですが、そういう事実が発覚する可能性、あと、実際に彼の選挙公約をどこまで彼が実現できるかということもありますけど、これも相当、彼が約束したこと、特に製造業をアメリカに戻すとか、そういうことは相当難しいんじゃないかというふうに思いますので、四年は全うするかもしれないけど、八年は難しいかなと私は見ています。
  74. 丸山和也

    ○丸山和也君 ありがとうございました。終わります。
  75. 鴻池祥肇

    会長鴻池祥肇君) 杉尾秀哉君。
  76. 杉尾秀哉

    ○杉尾秀哉君 民進党・新緑風会の杉尾秀哉でございます。  三人の参考人の皆さん、本当にお疲れさまでございました。  私からは、まずフクシマ参考人に引き続いて伺いたいんですけど、今話が出ておりましたけど、私も、大学の先生をアメリカでやっている友人が恐らくトランプ大統領四年もたないだろう、私の周囲はみんなスキャンダルでインピーチメントを受けると言っていると、こういう話で、ちょっとこれまでの話の流れと似ているなというふうに思いながら伺っていたんですが。  そこで、ちょっとレジュメで書かれておりまして触れられなかったトランプ政権のアンプレディクタビリティーのノースコリアの部分ですね、これクエスチョンマーク、さっき伊藤参考人に質問ありましたが、ちょっとこの点について、今、軍事オプションの可能性も含めて、ここが最も注目されているところだと思いますので、フクシマ参考人の御意見を伺いたいと思います。
  77. グレン・S・フクシマ

    参考人グレン・S・フクシマ君) 北朝鮮に関しては御存じのようにトランプ大統領自身が再検討しなきゃ駄目だということを前から言っていて、それで、私も先月、ワシントンにいるときも、朝鮮半島に関する勉強会とかあるいは会議とか、そういうのが相当、一つには韓国の選挙もあるということもありまして、それで、韓国の選挙と、あとミサイル開発とか核実験の話もありますので、韓国に関する、あるいは朝鮮半島に関する注目度というのは相当ワシントンで高まっているということはこの二、三か月の間の事実なんですね。  その中で、トランプ政権が北朝鮮政策を見直すということを言っているわけなんですが、ワシントンにいると、実際に誰が見直しているのかということで相当これは疑問に思うわけなんですね。先ほど申しましたように、国務省ではほとんどポストが埋まっていない、アジア担当の次官補も埋まっていない。NSCではマット・ポッティンジャーというアジアの担当の人はいますけれど、だけど、彼は今のマクマスターというNSCのトップの前任者のマイケル・フリンが雇った人なんですね。  ですから、どこまでそのポッティンジャーが影響力があるかということもちょっとまだ余りはっきりしていないことなんですが、実際に北朝鮮あるいは朝鮮半島のことの専門家でそういう政治的任命を受けている人がもうほとんどいないわけなんですね、今、トランプ政権の中で。ですから、いるのは情報機関の役人と、あとは国防総省の場合はある程度の継続性、安定性があるわけなんですね。ですから、今は多分、NSCのマクマスターと、あとマティスですね、国防長官と情報機関、その間での北朝鮮政策の再検討をしているんですが、政治的な分析と政治的な評価をして決断をする、そういう人たちというのがほとんどいないので、それで非常にワシントンにいる人間も不安に思っているわけなんです。  ただ、私は、よく言われているように、トランプ大統領自身の性格とかシリアのああいう反応から見ても、彼は非常に行動を取りたいタイプの人なので、それで軍事オプションも、彼もいつも言っているように、全てのオプションはテーブルの上にのせているということを言っていますので。  しかし、私が考えるのには、マクマスターというNSCのトップの人もマティスという人も非常に、何といいますか、歴史を勉強している人なんですね。マクマスターなんかも、彼は北カロライナ大学歴史学の博士号を取って、彼はベトナム戦争の意思決定過程、アメリカの政府についての博士論文を書いて、あと、マティスも相当軍の歴史を、相当本も読んでいる人ですので。私は、トランプ大統領自身は行動を取りたがると思うんですが、周りにいる特に軍関係人たちが相当これは慎重にしなきゃ駄目だと、特に韓国とか日本に対する影響、どういう影響が出るかということも含めて非常に慎重に考えなきゃ駄目だということを常にトランプ大統領には忠告、忠告というか助言をしているんじゃないかというふうに私思いますので、私は、今の時点ではトランプ政権は相当中国に頼って、中国にもっともっと北朝鮮に対してプレッシャーを掛けてもらいたいということで、そういう意味では今、中国アメリカの間での、特に習近平とトランプ大統領の間のいろいろバーゲニングをやっていると思いますね。  今回の為替の操作の話も、実はつい昨日かな、おととい、ファイナンシャル・タイムズ紙に、ムニューシン財務長官が、今のドルは強いドルの方がいいと言っているんですね。そういうことも、実は私は、多分アメリカ中国の、北朝鮮をめぐって、本来だったらトランプ氏はずっと中国為替の操作をしているということを、中国のことを名指しでずっと批判したのを、今はこれをころっと変わって中国を批判しないことになったんですけど、これも北朝鮮との関係がもとではないかというふうに考えています。
  78. 杉尾秀哉

    ○杉尾秀哉君 客観的な分析をどうもありがとうございます。  ちょっと時間が余りございませんので、もう一問だけ高原参考人に伺いたいと思います。  日中関係なんですけれども、私、前職でニュースの仕事をしていたときに、ちょうど尖閣のデモが荒れ狂っている、あのニュースを流していたときに、視聴者、特に若い層の人たちから非常にショッキングな反応が来まして、いつまで中国日本をいじめるんだ、このまま行ったら尖閣、本当に中国に取られちゃうということをわざわざテレビ局に電話をしてきている若い人たちがいて、確かに日本人の対中感情、あのときに比べればやや緩和したとはいえ、特に若い層の人たち、これからの日中関係を担うですね。向こう側にも問題あると思います。  ただ、こちら側にもそういうナショナリズムという問題があって、先生がこれまで今日おっしゃったことというのは非常によく分かるんですけれども、現実は私の肌感覚からすると非常に厳しいと。決して楽観的になれないというか、むしろ割と悲観的に考えざるを得ない部分があるんですけれども、率直な高原参考人のお考えを伺わさせていただけないでしょうか。
  79. 高原明生

    参考人高原明生君) 私も相当危機感を持っています。よく根拠もなくこういう言い方をするんですが、あと二十年戦争なく平和を保てることができれば恐らくは大丈夫だろうと。二十年たてば中国人も変わり、中国も変わっているんじゃないかと思うんですが、そこまでどうやってしのぐのか、そこについて本当に心配しています。  ですので、双方に問題があるわけですけれども、やっぱり中国を研究している立場からすると、中国は早く言わばポスト近代的な価値観が広がる、共有される社会になってくれないと、いつまでも富国強兵のパラダイムにとらわれていると乱暴な行動が続きますので、とにかく手を出さないということを両方で合意するということを頻繁に首脳が会って行うということを二十年間やれば大丈夫だと思うんですけど、決して楽観しているわけではありません。
  80. 杉尾秀哉

    ○杉尾秀哉君 その意味でもやっぱりリーダーの行動というのが非常に重要だと思うんですけれども、ただ、現状では突っ込んだ首脳会談のやり取りもできないような状況なので、その辺についていかがでしょう、短く。
  81. 高原明生

    参考人高原明生君) 二〇一四年十一月の安倍・習第一回首脳会談で、安倍首相が四点について話し合っていきたいというふうに言いました。その前提として、二十一世紀の日中関係をあなたと私で話し合っていきたいというふうにおっしゃったんですけれども、一点目が国民の相互理解を何とかしなきゃと、それから二点目は経済交流の深化ということで、三点目が東シナ海における協力、そして四点目が東アジア安全保障秩序をこれからどうしていくか、このラインを言い続けてほしいですね。中国側もそういうことを安倍さんが言ったんだということを知ってほしいので、そういう話も含めて広めていきたいと思っています。
  82. 杉尾秀哉

    ○杉尾秀哉君 ありがとうございました。  時間になりました。終わります。
  83. 鴻池祥肇

    会長鴻池祥肇君) 武田良介君。
  84. 武田良介

    ○武田良介君 先ほど高原参考人に質問できませんでしたのでちょっと改めてお伺いしたいと思うんですが、事前に高原先生の執筆されたものを若干読ませていただきましたけれども、その中に、中国に広くある見方として、日本に対してアメリカに付き従っているから見なくてよいとか重視しなくてよいという見方が広がっているということがありました。  高原参考人自身も必ずしもそれは正しくないということもおっしゃられておりましたし、そういう側面あるかなというふうに思うんですが、それが実際どうかは別にして、中国にそういう見方が広く広がっているとするならば、今回のテーマである日本中国関係、信頼の醸成というときに非常に困難になるといいますか、前提を欠くような状況になるんではないかというふうに思っておりまして、その点についてお伺いしたいと思っております。
  85. 高原明生

    参考人高原明生君) 特に安全保障の問題につきましては、日本アメリカが一緒になって東アジアの安定のために公共財として日米同盟を使うという、そういうことでここ二十年やってまいりました。その枠からなかなか日本が外れるのは現状では難しいわけですしね。今、経済等の面では日米でも摩擦があるわけだし、日中も日中だけでいろいろやっているわけですから、この安全保障問題について、日本が加わった日米中の三国間の戦略対話というのをやるのがいいんじゃないかと私自身は思っています。  それをやれば、中国側にももう少し日本外交政策在り方についての客観的な見方をしてもらえるようになるんじゃないかというふうにも考えています。
  86. 武田良介

    ○武田良介君 ありがとうございます。  それとも関わって、今日のお話にもありましたけど、中国日本のギャップという話がありました。将来衝突するというふうに考えるかどうかということで、確かに大きな差があって、どう埋めるか、埋めるかといいますか、中国の割合が下がる方が非常にいいことかなというふうに思いますが、そういう必要もあるのかなと。  今のお話にも三か国のという話がありましたが、前回のこの調査会に来られた参考人からも、日本中国韓国と三か国で、その歴史認識について共通の歴史の教科書を作成していくというような話もありまして、非常に重要なことかなと、今日の高原参考人の資料からしても大事なことというふうに私も思ったわけですが、そういった教育ですとか、先ほど途中にも話ありました研究者が政治に引っ張られてやり取りが不十分になるという側面もあるということもおっしゃられておりましたが、この歴史教科書だとかそういった点で何か御見識あればと思います。
  87. 高原明生

    参考人高原明生君) 理想的にはそういう方向、教科書ができればいいんですが、今御指摘になったとおり、なかなか、中国では政治社会の雰囲気、韓国では社会の雰囲気の中で、学者が必ずしも中立、客観的にそういうものから自由に教科書執筆できるかというと、なかなかできないのが実際だと思います。ですけれども、私自身も日中歴史共同研究のメンバーだったんですけれども、専門家同士でまずは敏感な問題、例えば尖閣の問題にしても靖国神社にしましても、歴史家同士でどういうこれはことなのかということを研究する、共同研究するというところから始める、でも、将来の目標としては教科書づくりへ行くと、そういう長いプロセスのその最初の部分というのは是非やったらいい、要するに専門家による共同研究ですね、それをやるべきだと私は思います。
  88. 武田良介

    ○武田良介君 それで、そういった共同の研究というのがまだ大きな流れになっているわけではないわけですよね。それが難しいというのはどういうところにあるんでしょうか。
  89. 高原明生

    参考人高原明生君) 歴史の昔の方なら中国でもかなり自由にできるようになってきているんですね。実際、近代史については相当日本の研究者と中国の研究者が交流をやっています。ただ、日中歴史共同研究の際もそうだったんですが、結局、戦後の部分は発表できなかったんですね。私が書いた原稿はみんな没になって、戦後のところは。やっぱり共産党にすると、自分たちが中心になって出てくるのは余り書いてほしくないんですね。それを国民に知られたくないというところがありますので、昔のところは今の流れのままに一層活発にやっていってもらうというので結構だと思うんですけれども、現代については、やっぱり最初はクローズドでやらなきゃしようがないかなと思います。
  90. 武田良介

    ○武田良介君 ありがとうございました。  本当に、事実に基づいてというところが非常に大事かなというふうに私も思っておりましたので、ありがとうございました。  終わります。
  91. 鴻池祥肇

    会長鴻池祥肇君) 他に御発言もないようでありますので、本日の質疑はこの程度といたします。  一言御挨拶申し上げます。  お三方の先生方には、参考人として長時間貴重な御意見をいただきまして、誠にありがとうございました。ますますの御活躍を祈念申し上げております。誠にありがとうございました。(拍手)  本日はこれにて散会いたします。    午後四時四十五分散会