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2017-02-15 第193回国会 参議院 国際経済・外交に関する調査会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成二十九年二月十五日(水曜日)    午後一時開会     ─────────────    委員異動  二月九日     辞任         補欠選任      浜口  誠君     杉尾 秀哉君  二月十四日     辞任         補欠選任      東   徹君     室井 邦彦君     ─────────────   出席者は左のとおり。     会 長         鴻池 祥肇君     理 事                 酒井 庸行君                 柘植 芳文君                 宮本 周司君                 藤田 幸久君                佐々木さやか君                 武田 良介君     委 員                 今井絵理子君                 小野田紀美君                 尾辻 秀久君                 大野 泰正君                 中山 恭子君                 三木  亨君                 宮島 喜文君                 吉川ゆうみ君                 大塚 耕平君                 古賀 之士君                 杉尾 秀哉君                 真山 勇一君                 高瀬 弘美君                 横山 信一君                 室井 邦彦君                 木戸口英司君                 伊波 洋一君    事務局側        第一特別調査室        長        松井 一彦君    参考人        上智大学特別招        聘教授      藤崎 一郎君        元在ウズベキス        タン・タジキス        タン大使     河東 哲夫君        福岡女学院大学        国際キャリア学        部教授      川端 清隆君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○国際経済外交に関する調査  (「アジア太平洋における平和の実現地域協  力及び日本外交在り方」のうち、外交能力及  び戦略向上させるための取組課題政府の  外交実施体制発信力強化取組)について)     ─────────────
  2. 鴻池祥肇

    会長鴻池祥肇君) ただいまから国際経済外交に関する調査会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  昨日までに、浜口誠君及び東徹君が委員辞任され、その補欠として杉尾秀哉君及び室井邦彦君が選任されました。     ─────────────
  3. 鴻池祥肇

    会長鴻池祥肇君) 国際経済外交に関する調査を議題といたします。  本日は、「アジア太平洋における平和の実現地域協力及び日本外交在り方」のうち、「外交能力及び戦略向上させるための取組課題」に関し、「政府外交実施体制発信力強化取組」について参考人から御意見をお伺いした後、質疑を行います。  本日は、上智大学特別招聘教授藤崎一郎参考人、元在ウズベキスタンタジキスタン大使河東哲夫参考人及び福岡女学院大学国際キャリア学部教授川端清隆参考人に御出席いただいております。  この際、一言御挨拶を申し上げます。  参考人先生方におかれましては、御多用の中、御出席をいただきまして、誠にありがとうございます。  今後の調査参考にさせていただくべく、先生方の忌憚のない御意見を頂戴できればと考えております。どうぞよろしくお願いを申し上げます。  本日の議事の進め方でございますが、まず、藤崎参考人河東参考人川端参考人の順でお一人二十分程度意見をお述べいただいた後、午後四時頃までを目途に質疑を行いますので、御協力をよろしくお願いいたします。  なお、御発言は着席のままで結構でございます。  それでは、藤崎参考人から御意見をお述べいただきます。藤崎参考人
  4. 藤崎一郎

    参考人藤崎一郎君) 今御紹介いただきました藤崎でございます。どうぞよろしくお願い申し上げます。  今日は発言機会をいただきまして、ありがとうございます。お手元に一枚の紙をお届けしてございますので、これに従いまして五点についてお話し申し上げたいと思います。  まず、外務省員基礎知識向上ということでございますが、私が外務省に入りました一九六九年、横におります河東大使一緒でございますが、いわゆる外交官試験というものがございまして、この試験科目は、憲法、経済原論、民法、財政学その他のほかに外国語とか一般教養もございました。この試験国家公務員試験とは別にございまして、かえって特権意識を生むという批判もございまして十五年ほど前に廃止されて、今は国家公務員試験一本になっております。かえって外務省員の質は向上したという議論もございますので、今更この試験が良かったということを申すつもりはございません。  ただ、現在やや心配なのは、試験科目でございました国際法外交史というものが、全然かじらなくて外交官になれてしまうようになったことでございます。国際法につきましては、例えば入省後、国際法局に勤務いたしますとある程度実地で勉強できますが、それはほんの一部の省員でございます。また、歴史につきましては、やはり今の国際情勢を把握する意味では、過去百年、第一次大戦以後の百年の歴史をある程度承知しておくことが大事かと思います。にもかかわらず、今の、御承知のとおり、受験では、いにしえの時代に非常に重点が置かれますために、この百年を必ずしも把握しないまま大人になり、司馬遼太郎等で勉強するということが必要になってしまうのが実態でございます。  国際法歴史を知りませんと、もし、例えば尖閣、竹島、北方領土等について、立場の異なる方と議論をした際に論破されかねないという危険がございます。そこで、少なくとも、やはりこういう問題は徹底的に入省してから研修した方がいいと。財務省は、法学部出身者が多いために経済理論研修というのをやっておりますが、こういう形での研修をもう少し強化した方がいいのではないだろうかと。  外務省員は、そのほか、入省後二年程度外国研修をすることになっております。これは、やはり外国語の習得に重点を置くべきで、資格ではなくて、外国語が二年後には自由に使えるようになっていることが重点と引き続きされるべきではないかと考えております。  私が若いときに、ある先輩に言われましたことは、国際会議の場あるいは集まりの場で自分の国が侮辱されたと感じたときには、外交官ができることは二つしかないと。一つは反論するか、もう一つは立ち上がってその場を去るか、どちらかであると。黙って聞いていてはいけない、それを認めたことになるということでございました。しかし、必ずしも通訳があるわけではありませんから、聞いていて分からなければ反論も立ち去ることもできません。みんなと一緒に拍手したら大変なことになります。したがって、言葉というものをまず外交官というのは完全に習得しなければいけないということでございます。  また、研修という意味でいきますと、かつては中間研修と申しまして、課長クラスで一年でございますけれども外国大学やシンクタンクに参りまして学者の方と意見交換したりする機会が一年に数人はございました。こういうことは、日常業務から離れまして、ある意味で、広い見地から世の中をもう一回見直すという意味でいい機会だったと思いますが、最近余り行われていないようなので、こういう機会外交戦略の再構築という観点からはあった方がいいのではないかというふうに思っております。  以上が、外務省員基礎知識向上という観点で述べたい点でございます。  第二点、オールジャパン体制構築ということでございますが、世界と渡り合っていくためには、外務省だけではなくて、政府全体及び国民発信能力向上が必要だろうと思っております。そのために、まず語学がやはり必要であろうと思っております。語学英語でございます。  私は幾つかの大使館と代表部に勤務させていただきましたが、いろいろ各省から来た方と御一緒仕事をいたしました。そのときに、各省から来た方の中で、若いときに留学された方とそうでない方との間に明確に語学力の差がございました。若いときにやはりどの役所から行っても研修することが大事だということを痛感したわけでございます。  今、人事院総合職で採っておられる方が六百数十人のうち、四分の一以下が外国語研修人事院研修でされておられます。一般職の場合はもっとはるかにほとんどないんではないかなと思いますが、私は、オールジャパン発信力強化ということでいけば、外務省だけではなくて、全総合職は二年程度英語研修をする、できればアメリカないしカナダで研修するといったようなことが言葉観点からは望ましいんじゃないかなと思っております。  また、発信力向上ということから申しますと、ちょっと政府発信力という点からずれて恐縮かもしれませんが、国民英語力向上をやはりすることが極めて大事であると。  そのためには、今、小学校低学年から英語を始めるとか、あるいは英語英語で教えると言っておりますが、実際にはそれをできる教員がそんなにいないんではないかと。それをやるためには、実は簡単な方法がございます。それは、公立学校英語教員全員公費で留学してもらうということでございます。  毎年、四十七都道府県で公立中学で千人の方が英語教員になられます。この方に全員一年間留学していただく費用は約百億円と承知しております。国家百年の大計を考えますと、こういうことは是非必要な投資ではないかと。今よく大学生をたくさん送り出すのがございますが、一人の先生が一生の間に教える生徒というのは数千人でございます、数百人から。その方がはるかに効果的な投資ではないだろうかと。是非、この公立中学の、あるいは高校の英語先生教育ということを考えていただきたい。  そして、今たくさんJETプログラムといって英語補助教員外国から来ておりますが、こういう方はむしろ小学校に回して、発音とか聞き取りの教育補助にしていった方がいいんではないか。受験との関係もございますので、その方が効果的ではないかというふうに私は考えております。  また、英語ということだけでなく、全体、日本交渉ということを考えますと、経済交渉の場合、特に国内調整が大事になります。そのためには、この前、TPP交渉のときに非常に効果的でございましたように、場合によっては外務省だけでなく官邸機能を使いながらオールジャパン体制をつくっていくということが大事ではないかというふうに思います。  第三点、在外公館機能強化についてお話し申し上げたいと思います。  在外公館の数が最近増えているということは大変必要なことであり、これは国会の御理解を得ていることだというふうに考えます。  他方、一つ私が心配いたしますのは、人数が小さい公館が増えているということでございます。特にアフリカ等途上国におきましてそうではないだろうかと。私は、実際はどこまで幾つ公館がどうかということは承知する立場にございませんので、御説明はできません。しかし、アフリカ等の小さい公館におきましては、そこに配置された方は自分の存在を確保するためにエネルギーのかなりの部分を使わざるを得ない。具体的には、安全の確保であり、食料であり、水であり、電気でございます。住宅の整備もございます。  私は実は在外公館のそういう整備担当課長をしたことがございますので一端の責はございますが、当時、先進国公館調査をいたしまして、先進国の相当の国では、そういう言わば生活、足回りのことは専門の方がいて、現地スタッフを使いながら、後顧の憂いなく自分たちが政治とか経済とか広報仕事に専心できるような体制をつくっていると。ところが、日本の場合には、かなり自分自力調達。言ってみますと、こんな例がいいかどうか分かりませんが、帝国陸軍でとにかく行ってこい、あとは自分で何とかしてこいというのと余り違わない発想が私はあるのではないかと思うので、やはり公館をつくる以上は、館長がいて、次席がいて、政務経済広報がいて、その下にサポーティングスタッフとして会計、通信、営繕等担当官がしっかりいてという形の、少なくとも十人近い体制公館をつくっていかないと、小さい公館では極めて非効果的であるというふうに私は思っております。  もう一つは、現地職員について二点申し上げます。  現地職員につきましては、まず一つは、日本人職員というのを余り増やさないという、法律との関係でそういう方針があると。これは法律解釈の問題だろうと思いますが、できるだけ現地人にしていくという方針がございますけれども、私は、日本語がよくできて、かつ日本国家に対して愛国心のある方が日本国公館で働くということは非常に効果的ではないだろうかと。ですから、もう少し弾力的な運用をしていくことが必要ではないかというのが一点でございます。  もう一つは、現地職員待遇でございます。これは現地人の方でございますが、正直に言って昇進制度というものは完全に整備はされておりません。ですから、給与、肩書その他の待遇におきまして生涯設計をするのが余り希望の持てる形になっておりませんが、これはもちろん外務省責任もございますし、政府全体の責任もございますけれども、できれば全体としてこういう形で五年後、十年後にはいい人はこういうふうになっていくという形をつくることが、現地の優秀な大学を出ている優秀な方々を得るために、日本国のために働いてもらうために是非必要ではないだろうかというふうに思っております。  また、在外公館整備という観点では、在外公館と本省との連絡、あるいは在外公館間でございますが、今でも基本的には電報、公電と言われるものと、あるいはメールを若干使っておりますかもしれませんが、そういうことでやっております。今の時代民間会社も皆、テレビ電話を使っていろいろ会議をしたりしております。こういうことはほとんど行われていないと私は承知しております。何とかもう少しケーブルテレビ網をつくりまして、実際に離れていてもしょっちゅう会議ができるようなことをしていくことが日本全体としての国益、秘匿装置が付いた形でございますけど、もちろん、ではないかと思います。  もう一つは、在外公館で一番指摘されるのは、日本の事情に疎くなるということでございます。これにつきまして特に私が気になりますのは、こういう国会での議論というのは、例えば国会議論されているものは、私どもNHKがもし放送していなくても、有線ケーブルで霞が関の各省では見ることができるシステムがございます。  国会議論されているということは、まさに国民代表である国会議員方々政府とどういう関心事項であるかということを議論するわけですから、こういうものを在外公館においてやはり常に把握できる体制をつくっておくということが必要ではないか。  そのためには、もちろん有線ケーブル網がいいんですけれども、それができない場合にはDVDでもいいから、そういうものは常に見られる形にして、公館長政務担当官は、どういうことが今国会議論され、どういう関心があるのかということを把握しながら情報収集をするというふうなことをもう少しきちんとやっていかないといけないんではないかというふうに思っております。  次に、発信力強化でございますが、これは三つございまして、日本政府職員が発信することが第一点、もう一つは、現地有識者を使って、この方々にインプットして間接的に広報することが第二点、第三点は文化外交日本への、親日派を増やすという、この三つのエレメントがございます。  第一点につきましては、いろいろ今やってはいると思いますが、私が必要ではないかと思いますのは、例えば官房長官あるいは各閣僚、外務報道官等が連日、日に何回も会見をされると。この会見を直ちに翻訳するシステムをつくるべきではないだろうかと。  これは、二十四時間の翻訳サービスセンター日本だけでなくてロンドンかニューヨークにつくっておけば、ある意味で時差がございますから簡単にできる話でございます。そういうものを持ちながら、常にトランスクリプトが流れていくと。アメリカやなんかでは直ちにトランスクリプトを流すようにしておりますが、これは英語でございますから簡単でございます、そのとおり撮って流せばいい。日本語の場合には翻訳が必要でございますので、その翻訳をしていくということが、官房長官会見等をやっていけばすぐ流れて、それがすぐ引用されるという形になるので、こういうことが必要であろうという感じを持っております。そして、ユーチューブやケーブルテレビをもっと活用していくということではないか。  次に、現地有識者でございますが、これについては最も効果的でございます。  私どもが説明するよりも、現地人のお名前、お顔でテレビで話していただき、新聞に投稿していただくのが一番有益でございます。その観点からは、材料を彼らに与えていくと。限定的な方に、新聞に流れている以上にもう少し突っ込んだこと、もちろん秘であってはいけないわけでございますが、その解説等を流していくということによって彼らがもっと投稿してくれるようにすることをシステマティックにやっていく。あるいは、招待外交についても、一回こっきりではなくて、議員スタッフにしても新聞記者にしても繰り返しやっていくようにして、壁の上塗りをしていくということが必要ではないだろうか。  三番目の文化外交でございますが、これについては、一番効果的なのは、やはり日本のアニメですとか和食とかそういうものは非常にすっと受け入れられる。それは、政府が前に出るのではなくて、民間のそういうものを後から支援する、後ろから支援する形、何とかジャパンであるといって打ち出す形でない方が私は効果的ではないかなと思っております。  その意味では、例えばNHKの朝ドラでやりました「おしん」、もう三十年前でございますが、もっと前かもしれません、今でも非常に評価が高い。その後も何十もすばらしいドラマが、朝ドラやっております。こういうものをどんどん翻訳することを支援しながら外国テレビ網に乗っけていくことの支援をすると。自分の映画を作ったりするんではなくて、そういう形がいいんではないかというのが私は文化外交についての意見でございます。  最後に、国際機関について述べます。  国際機関については、ここに今日は川端参考人がいらっしゃるのでちょっと僣越でございますが、私の考えを申したいと思います。  私は、国際機関代表部大使を三年ほど務めさせていただきました。そのときに代表部員によく申しておりましたのは、国際機関というのは我々に指示を与えるところではない、私たちがどう使うかを考えるところだと。予算日本政府が出す、そして執行をいろいろ理事会等で監督していく。言ってみれば、国会関係に近い形でございます。国会政府予算を付け、そしてその執行を監督していく、そういうものだと考え、決して国際機関が上にあるわけではないんだということをよく代表部員に言って、どうやって使っていくかを考えようじゃないかということを言っておりました。  国際機関職員につきましては、より多くの日本人職員が入ることは望ましいというふうに思っております。ただ、人数の問題ではなくて、意思決定できるレベルにできるだけ多くの人を入れるかということでございます。そのためには、一定のキャリアを持った方々の方がある意味ではそこに到達しやすいということを頭に入れておく必要があるということが一つございます。  それからもう一つは、私どもが出している拠出金との関係でございます。  時々、私どもがおりましたときに、国会議員方々等から、日本はこんな金を出しているのに国際機関職員が少ないじゃないかというお話を聞いたことがございます。私は意見が違う。私はどうして違うかと申しますと、金を出しているから雇えという議論をいたしますと、例えば、東京都が一番日本政府に対しては貢献が大きいと、だから中央政府東京出身者をたくさん雇うべきだという議論に通ずるわけでございます。そうではなくて、日本政府はこんないい人がたくさんいるんだと、だから、国際機関が効率的に働くためには、こんなにいい人がいるから、こんないい人を使ってくださいというふうにすべきではないだろうかと。  国際機関だって、できた以上はそこが一番効率的に働く義務がございます。そのためにはやはり、日本におきまして、国際機関でどのような需要がこれから出てきそうか、数年間常に予測し情報を得ておく。そして、政府天下り等ではなくて、官民のいい人の適材のデータを集めておく。そして、常にマッチングができるようにして送り込むようにするということ。このリストを常に整備しておくこと、これは今でもやっているという議論があるかもしれませんが、ハイレベルではやっていないと思います。その場当たりになっていると思いますので、そういうことが必要ではないかと。  以上、ちょうど時間でございますが、五点、外務省員基礎知識向上オールジャパン体制整備在外公館機能強化発信力強化のためにということと国際機関との付き合い方という、この五点についてお話しさせていただきました。貴重な機会をありがとうございました。  最後に、実はここに、参考ということで、この五点の下にアメリカについて二点書いたものがございます。アメリカ世界自分一人しかいないかのように利己的に振る舞うとか、あるいは、アメリカ歴史を見ると、外国に対して相当不正と思われるような行為を犯した例はありますと、しかし、自ら直していくというのがその歴史ですと。  これは、実は最近書かれたものではございません。ちょっと知識をあれするようでございますが、前者は一八四〇年、トクヴィルという人が一年足らずアメリカに行ったときの「アメリカのデモクラシー」という百七十年以上前の本でございます。後者は、幣原喜重郎という総理大臣になった方でございますが、この方が外務省におりましてワシントンの参事官をしていたときに、ブライスというイギリス大使から聞いた話でございます。これは一九一二年頃でございますから、これも百年以上前の話でございます。  今、私は、アメリカが非常に利己的だとか、アメリカが非常に間違いを犯しそうだということを言おうとしているわけではございませんけれども歴史は繰り返すということがいろいろございますので、さっき最初に申しました、いろいろ歴史というものを学ぶ機会というのはやはり大事ではないかということを改めて申し上げる意味で、ちょっとここに書かせていただいた次第でございます。  どうもありがとうございました。
  5. 鴻池祥肇

    会長鴻池祥肇君) ありがとうございました。  次に、河東参考人から御意見をお述べいただきます。河東参考人
  6. 河東哲夫

    参考人河東哲夫君) どうもありがとうございます。河東でございます。  藤崎大使がもうほとんど私の申し上げたいことをおっしゃったんであれなんですけれども、もうちょっと原則的な立場から幾つか申し上げたいと思うんですけれども、お手元にお配りした五ページぐらいのメモに従ってお話し申し上げたいと思います。  今日は二つの話題がありまして、一つ外交体制についてなんですけれども、まず、その外交体制について感じていることを申し上げると、やっぱり外務省だけいじればいい問題ではないと思います。サッカーとは違うんで、ワールドカップのチームに全部任せておけばいいということではないんで、外交日本全国に関わることなんで、やはり外務省だけができる問題ではないということがございます。  その中で幾つか問題があるんですけれども一つは、そこに書いてありますように、体制の問題です。体制というのは、憲法が定めている外交についての日本の政策決定の過程の問題であります。具体的に言えば、政官の関係それから外務省の権限が問題になると思います。  政官につきましては、最近、政高官低という議論が随分強まって、本来、憲法からいけば三権分立なんですけれども、そこの政高官低と三権分立の間のバランスがまだルールとして確立されていないんではないか、それが制度的に担保されていないんではないかという問題があると思います。まあ、申し上げても仕方のないことなんですけれども。それから、外務省の権限が外交全般をコントロールするには足りないという問題がございます。それについては、また後ほど詳しく申し上げたいと思います。  次に、日本の社会、それから教育の問題があります。  先ほど、藤崎大使から外交官試験の問題が提起されましたけれども、教養の問題にかかわらず、それから外交官の気質の問題があるんだと思います。もちろん本当に、何というのかな、オリジナルな考え方ができる外交官たくさんいるんですけれども、そうでない、言葉は悪いけれども体制順応型の外交官もたくさんいると思います。今の世界は、自ら新しい枠組みを構想して提案して調整する気概のある外交官が必要とされているんですけれども、その数がまだ少ないと思います。  それから、何というんですか、在外で大使館に出ても、それから日本の国内にいても、自分の組織の外に出ていろんな分野の人と付き合って、その付き合いを広げていろいろ仕事を広げるというような意識が足りない人もまだたくさんいると。それはやはり日本の社会、教育が背景にあるんではないかと思います。  次に、その体制の問題として、日本の世論が外交についても非常に不必要なほどイデオロギーの線に従って割れているということがあります。これは、反米であるとか親米であるとか、反中であるとか親中であるとか、これが現実の日本のニーズからかなり離れたところで対立していて、それが外交政策の決定を難しくしている面があると思います。  もう一つは、マスコミの性質がありまして、これはどこの国でも同じなんですけれども、マスコミは紛争、対立をあおる側面がございまして、例えば、ワシントンではほとんど話題になっていないような日本に関する発言であっても、それを日本新聞が大きく取り上げることによって、あたかもそれがアメリカで物すごい大きな問題になっているかのような理解に我々がされてしまって、対応を迫られ、それによって日米の対立が不必要に拡張されるということがございます。まあ、これは言っても仕方のないことなんですけれども、そういう問題があるということであります。  それから次に、以上は社会全体の問題だと思うんですが、外務省自体にも問題がございます。  一つは、一番大きなことなんですけれども外交日本全体に関わりますけれども外務省国内調整の権限が欠如しております。これは外務省にこの権限を与えてほしいということではないんで、限界があるということでございます。国内のいろいろな調整の権限はほかの省庁が持っておりますから、当然、外務省の権限は制限されるわけです。  それから、世界に出ましても、日本は、国際金融、それから海外で働いている日本の企業との関係ではその調整権限がございませんから、限られていますから、そこで手が縛られているという問題があります。  次のページに行きますと、これは外務省の中の体制の問題なんですけれども人数の問題、あとは行政改革の問題に関わりますけれども、局と課、これの数が縛りを受けているということが外交をかなり縛っております。  例えば、私のいたウズベキスタン担当している中央アジア、これは課ではなく中央アジア・コーカサス室という室が担当していて、先方の諸国に対しても非常に失礼な状態になっております。それから、一つの局長が数十か国もの国を担当しているために、ほぼ毎日東京で開かれている在京の外国大使館のレセプションの類い、これにも局長が全部出ることはできない、そういうような限界が出ております。  次に、c)なんですけれども、省内の縦割りの問題がございます。これは、欧州局であるとか中東局であるとか、そういうふうに地域別に分かれているために、例えばアフガニスタンのような、中東にも関わるし、中央アジア、これは欧州局なんですけれども、それから南西アジア、インド、パキスタン、そういった複数の地域にまたがる国については、その省内の調整が不足しがちな問題がございます。  次に、藤崎大使もおっしゃったんですけれども、出張費が不足していて肝腎の外交官が余り外国に出られないと。特に、本省にいる外交官、それから外国で勤務している若手の外交官も周辺の外国になかなか出かける機会がないということなので、これは外務省員世界知らずという変な現象を生んでおります。  次に、e)なんですけれども、やっぱり外務省員研修が不足していると思います。藤崎大使がおっしゃった一般教養の不足の問題にも関わるんですけれども、それから研修で全てが解決されるわけではないんですけれども、特に経済問題、金融問題、軍事問題、これについての知識が欠如している例が多いと思います。それから広報なんですが、その発信力なんですけれども、この場合にはメディアにどういうふうに対応するかということについては幾つかの具体的なテクニックがございますから、そういったテクニックを具体的に学ぶようなコースが必要なんですけれども、これをもっと拡充する必要があると思います。  あとは、要人を招待する枠が不足しているとかですね。要人を招待するためには予算が必要ですから、いつも省内でどこの国の首脳を呼ぶかというのが取り合いになっているわけです。  最後に、外務省の問題なんですけれども、ODAに対する意識をこれまでの黒から白に変えていただきたいと思います。ODAというのは日本外交に残された数少ない道具というのか重要な手段なんですけれども、これを絞りぎみにしますと、やはり日本外交に差し支えるんだと思います。  次に、2の、もう一つの大きなテーマの対外発信力なんですけれども、対外発信は二つのカテゴリーに分けることができると思います。一つは政策広報のカテゴリー、これは別の言葉で言えば世論工作、相手の国の世論を工作するということであります。それから、もう一つのカテゴリーは一般広報、これは一般的な日本についてのイメージ戦略でありまして、ここには文化交流が含まれております。  最初に政策広報について申し上げますと、これは本来、秘密会でないと十分な議論はできないと思うんですけれども。なぜならば、政策広報というのはかなり工作と似ている面がございまして、例えばロシアで領土問題についての広報をしますと、私のいた九〇年代は自由でありましたけれども、現在、ロシアで北方領土問題の広報をしようと思いますと、ロシアの公安から縛りが掛かってきます、違法なんですね。ですから、ロシアでは領土問題の広報というのはスパイ活動に類するようなものになります。それから、アメリカでは、特定の法案について広報をしようとしますと、それはロビー活動ということになって、やはり法律の縛りが掛かります。  ですから、政策広報、例えば尖閣の問題であるとか北方領土問題であるとか、そういった特定の問題について広報をやろうとしたらば、それは新聞に全面広告を打つのはむしろ逆効果になる場合がございます。なぜ逆効果になるかというと、新聞というのは多くの国で読む人が少ないという問題、それから、読んでも政府広報だと思いますと誰も信じないんですね。それで、しかも外国政府広報だと思いますと反発する人が多いということで、むしろ逆効果になります。  それよりも、むしろ藤崎大使のおっしゃったように、先方の政策決定者を個々に説得することが政策広報の基本であるだろうと思います。そのためには、数名の物すごい能力の高い外交官を準備する必要がございます。在米の大使館では、そのために議会班であるとか広報班であるとか、そういった外交官が何人も張り付いていて、最高度の語学力と、それから現地の理解力と、それから社交力を駆使しているんだと思います。  次のページに行きますと、そういうわけで、政策広報に伴う問題というのは、政策広報に対しては予算が必要なんですけれども、それに対して、外務省はこれこれこういう政策広報をやっていますという日本国内での広報が非常にやりにくいという面がございます。  なぜかといいますと、ロシアでは日本大使館はこういうことをやっておりますとか、ワシントンではこういうことをやっておりますというようなことを詳しく広報しますと、ロシアの場合、ロシアの公安がそれはけしからぬと言ってきますし、アメリカの場合には、尖閣の場合だったら中国の大使館が、そういうことをやっているのか、では、ついては我々も似たようなことを対抗してやろうとまねされるわけですよね。日本側の手のうちを知られるわけです。ですから、政策広報広報というのはまた非常に難しいという問題がございます。  それから、政策広報については心得るべき点というのが幾つかございまして、一つは、相手国の大衆には、日本の政策のほとんどが関心がないということでございます。例えば、今回トランプ大統領を選んだアメリカの大衆、彼らに日本の政策の細かいことを言っても全然関心がないと思うわけですね。そういう場合には、大衆相手には、尖閣は古来日本のものですというツイッターの一行だけで十分なので、少々不正確なんですけれどもそれで十分なんだと思います。  それからもう一つ、政策広報の限界なんですが、理屈を幾ら説いても意見を変えない者が必ずいるということでございます。  一つは、例えば実例を挙げますと、中国の反日は中国共産党の政策でございますし、これはいつまでも日本の頭を抑えておこうという政策でございますし、それから、米国の反ロシア・プーチンはちょっと除きますけれども、韓国の慰安婦問題というのは、これは韓国の与野党対立の中で野党が乗ったりとか、それから韓国の国内のNPOにとっては慰安婦の問題というのはNPOの存立自体に関わる問題であるというようなことがございます。この場合にはからめ手から攻めて、日本の政策を批判させないくらいがせいぜいのことであると。  例えば、韓国なんかに行きますと、場合によってはほとんど殴り合いもいとわないぐらいの気迫も外交官には必要になるというふうに聞いております。  もう一つ最後に、政策広報のあれなんですが、トランプ大統領がツイッターを随分多用しておりますけれども、やはり現在の状況に鑑みると、日本総理大臣の一言ツイッターというようなものを使う重要性が高まっていると思います。ただ、こういうのは日本の官僚制、まああらゆる国の官僚制にはなじまないので、まずその案を起案して、それで数名の了承を取って、サインをもらって、それから三日ぐらいたってからツイッターを書くと、そういうようなことでは全然役に立たないので、これをどうするかという問題がございます。  次のページ、もう一つ広報のカテゴリーの一般広報なんですけれども、なぜイメージが重要かということになりますと、それは、どこの国でも大衆は外国のことなど考えている時間はないので、ですからからめ手から攻めて、いつも日本についてのいいイメージを刷り込むということが必要になるわけでございます。  その場合、いいイメージを刷り込むためには、日本の国としての基本的なコンセプトというものを、上からきっちり決める必要は全然ないし望ましくないんですけれども日本人のできるだけ多数のコンセンサスとして持っていることが重要だろうと思います。私は、日本人はちゃんとしているとか、それから日本人の政治家は大衆の利益を考えて行動しているとか、それから日本はいつも外国とは互恵の関係を考えているんだとか、そういった基本的なコンセプトをイメージとして打ち出していけば十分であろうと思います。  そのときに心掛けるべきことがございますけれども、品位を大切にする必要がございます。例えば、中国の悪口をやたら言う人もいるんですけれども、それは日本の品位を自らおとしめますので、中国については褒め殺しといいますのか、褒めて自ら転ばせるというような、まあ悪の外交なんですけれども、そういうのが必要になると思います。  それから、文化交流も、お高く止まった歌舞伎とか能を見せてすごいだろうというよりも、それも必要なんですけれども外国人が自ら参加、体験できるもの、それから刹那的にいいなと思うもの、これを売り込むことがいいと思います。そこに書いてございます「ドラえもん」はアジア全域で大変な人気がありますし、それから右側の写真はモスクワで行われているコスプレ大会でございます。  それから、もうそろそろ終わりますけれども、次のページ、最後のページになりますが、一般広報、それから文化交流について心すべきことは、やはりそのコストパフォーマンスを良くすることだと思います。コストパフォーマンスを良くするためには、コンテンツ流通の扇の要を押さえることが効率的でございます。それはアウトソーシングとも言いますけれども、例えばアメリカに行きますと、全米の演劇とかコンサート、これを差配している事務所みたいなのがあるようなんですけれども、例えばそこに歌舞伎公演などを国際交流基金の助成金付きで売り込むとか、そうしますと米全土で歌舞伎が、簡単とは言いませんけれどもやりやすくなります。  それから、東京で毎年、国際映画祭が開かれておりますけれども、そういったコンテンツが集まる、それから関係者が集まるオケージョンを国として支援するというようなことも効率的であると思います。それから、藤崎大使がおっしゃったように、コンテンツの輸出を支援することでございますね。  最後から二番目、日本語教育についてなんですけれども日本語教育もただ数を増やせばいいということではないので、その問題の根幹をつくことが必要だろうと思います。  例えば、アメリカでは日本人教師が、特に高校レベル、まあ大学レベルでもそうなんですけれども日本人日本語教師が不足しております。ここではやっぱり現地教員免状がないとなかなか就職できないんだそうで、そのためには、現地永住の日本人を含め、彼らがアメリカ教員免状を大学で勉強して取得する間、奨学金を支給するようなことを日本がやるべきだと思います。  それから、むやみに日本語教育を広めても、日本語を大変な時間を使って勉強した学生が就職ができないと困るわけですね。それから、面白くないと駄目なので、それはやっぱり漫画、日本語を勉強すれば漫画が読めるというようなコースを開発するべきだと思います。  最後に、人的交流なんですけれども、人的交流は随分予算が増えてきたと思うんですけれども、これを更に活用する体制をつくっていく必要があると思います。  日本に招いた場合、例えば新聞記者であるとか各界の有力人士を招いた場合、日本に行ってどういう人と話してどういう印象を持って帰ってもらうかというのを在外公館と本省が合わさって協議して、それに従って日本で会わせる人物、それから視察するべき施設等をプロデュースする機能がこれまでやはり足りなかったと思います。  あとは、ここには書いてございませんけれども、効率よくやるのであれば、プレスの関係者、それからテレビ局のプロデューサー、テレビ局の撮影チーム、こういったものの招待を増やすことは、先方の諸国のマスコミ、それからテレビ局を通じて日本のコンテンツが流れる非常に大きなよすがになると思います。  どうも時間を取りまして失礼しました。  どうもありがとうございました。
  7. 鴻池祥肇

    会長鴻池祥肇君) ありがとうございました。  次に、川端参考人から御意見をお述べいただきます。川端参考人
  8. 川端清隆

    参考人川端清隆君) ありがとうございます。  皆さん、こんにちは。福岡からやってまいりました川端と申します。  福岡には、三年前に教職を得たので福岡にやってきたんですけれども、その前の二十五年間はニューヨークの国連本部政治局で政務官という仕事をやってまいりました。  簡単に、短い間ですけれども、何をやってきたかという話なんですけれども、二十五年の間の大体六割ぐらい、国連の本部の中の、最初のこの写真ですね、安全保障理事会、ここの安全保障理事会の世話をする部局におりました。あとの四割、大体九年ぐらい、九年から十年になるんですけれども、そのうち七年間、アフガニスタンの和平、アフガン和平ですね、残りをイラク戦争とその後始末ということで、国連特使と一緒に中東を飛び回っておりました。その経験を基に、今日いろんなことをお話ししようと思います。  次のページにありますこの写真、二人で写っております写真ですけれども、これはルワンダPKO、一九九四年、八十万人大虐殺があったときの、この虐殺の後にPKOの応援に行ったとき、PKO本部で国連代表と撮ったときの写真です。  その下の飛行機と一緒に写っているところの写真ですけれども、これはアフガニスタンの中央部、中央の高原、バーミヤンというところに和平交渉に行って、真ん中に立っているドイツ人なんですけれども、彼が当時の国連代表ですね、それの補佐官として、後ろにあります国連のチャーター機で回っておりました。  次のページ、仏像の前で撮っております。これは同じバーミヤンで、皆さん御存じの方もおられるかと思いますけれども、二〇〇一年の春にタリバンがこの仏像を、石仏を破壊します。その前にバーミヤンに行ったとき、当時の国連代表、ブラヒミといいますけれども、彼と撮った写真であります。  その年の終わりにアフガン戦争が起こりまして、結果としてタリバンが放逐されて和平の扉が開いたと。そのために、ドイツのボンというところで和平会議、十二月に行いまして、十日間ホテルで缶詰の後、ようやく今日の新アフガン政府につながる平和の土台を築くことができたということであります。  今日のお話ですけれども、なるべくざっくばらんにお話しできればと思います。公式会議ということだそうですけれども、もし私、足を踏み外して言わぬでいいことを言ってしまったら、是非後で記録から削除していただければと思います。  日本と国連の関係なんですけど、今日私がお話しするのは、日本のそもそも国連外交、国連政策というのは弱かったんではないか、ひょっとしたらなかったんではないかと、あえてちょっと極論の前提に立ってお話をいたします。アグリー・ツー・ディスアグリー、論点をはっきりするためにこういう切り口でお話しできればと思っているんですが、そのためにいきなり、日本が失ったものの次、日本人の国連観というところをちょっと見ていただければと思うんですが。  私がニューヨークに行きまして二十五年間ずっと日本を見てきたんですけれども、一言で日本と国連の関係を言いますと、日本人ほど国連が大好きで、日本人ほど国連を知らない国民はいないんではなかろうかと。大体、小学校、中学校の社会科から、国連、平和の殿堂、そんな感じで教えられます。国連を知らない日本人というのはまずいないでしょう。在職中もあちこちの日本大学で話しましたけれども、国連を題材に話すと必ず学生が集まります。特に女性が多いですね。自分たちもうまくいけば国際的な場で働きたいと。だから決して、日本人、国連を嫌いなわけではない。ただ、この国連、実際にニューヨークで何をやっているのと、国連和平活動って何ですかと、今、南スーダンで国連PKOが苦しんでいることって一体何でしょうかという話になると、各論になると急に分からない。  今日のこの調査会の冒頭、藤崎参考人のところからお話があって、国際機関というのは指示を与えるところではないと思えと。まさにそのとおりなんですね。じゃ、どういうところかといったら、枠組みであろうかと思います。政府間機関という言い方を専門用語でしていますけれども、決して普通の日本人が思うような世界政府ではない。国家の上に立って日本を含めた各国政府に命令を下すと、そういうところではありません。  しかし、その一方で、一旦この国連の場で国際社会、つまり加盟国の意思が集結されますと大変な力を発揮することができます。究極的には武力の行使も可能になる、そういうところなんですけれども、そういう国際機関である国連との間合いを我々はよく分からない、そんな気がしてしようがありません。  答えは、もうそう難しい話ではないですよね。日本外交の三本柱、いわゆる国連中心主義、アジア各国との協調、対米外交ということで戦後外交をずっと日本はやってきたわけですけれども、真剣にやったのは多分一つだけでありましょうと、あとの二つはひょっとしたらお飾り、付け足し、そんなところもあったのかもしれません。  理由はこれも言わずもがななんですけれども日本は戦後七十年の間、日米同盟、アメリカに安全保障を頼ってきた。そんな中で、例えば安全保障の対象としての国連というのを捉え切れていなかった。そんなことがあるかもしれないですね。だから、世界政府のような漠然とした抽象的な対象として思っていれば心地はよかった。急に真剣な討論を国連の場でし始める、あるいはひょっとしたら日本人の血が流れるかもしれないPKOというと、えっということになってしまいます。  それで、話を分かりやすくするために、今まで我々、国連外交がない、あるいは弱い結果何を失ってきたのかと、自分の頭に浮かぶ範囲で書いてみました。  領土問題とありますけれども、別に国連外交をやったから北方領土が、あるいは尖閣問題が解決するというわけではないのですが、二国間外交の補完的なものとしてもうちょっと国連を使うことができなかったんだろうか、そんな気がニューヨークから見ていたしておりました。  安保理改組、これは言うまでもないですね。この二十五年間、延々と日本では安保理改組、機が熟していると、ニューヨークでは機が熟していると、いつ日本は新常任理事国になってもおかしくないと、そういう報道が新聞各社なされてきました。それをニューヨークで見るたびに、えっ、その言うところの機運ってどこにあるのと、そういう違和感を抱いてきましたが、これも、この安保理改組の要件とは何かと、どういう条件がそろえば日本は常任理事国になれるのか、その部分の議論国会も含めてほとんどない。ただ単に第二位の拠出金を出す国であればいいんだと、その程度の話なんですよね。そういう懸念を持っております。もうちょっと国を挙げて取り組んでいれば違ったシナリオもあったかもしれない。  人権問題、慰安婦というのを書きましたけれども、これも二十年前、国連人権報告者のクマラスワミですけれども、彼女の報告書が出たときに、なぜもうちょっと正面から対応できなかったのか。あのとき対応ができていれば、これほどこじれることもなかったかもしれませんね。  そのほか、国連職員、一般的な意味での発信力発言力なんですけれども、国連職員が少ないというのはもう既に出ました。PKO、今、この南スーダン、三百数十人ですか、行っております。でも、このPKO全体の総兵員数、御存じでしょうか。今現在、十六のPKOを世界各国に展開しておりますけれども、十万を超えているんですね。その中の三百五十人です。  アジアの中でも、例えば日本と同じ時期にPKO参加に目覚めた中国、八〇年代の後半まで、中国という国はPKOに出した兵員はゼロでした。日本も九一年、二年になってカンボジアPKOでようやく出せるようになったわけですけれども日本と中国、同じようなスタートラインに立っていたわけですけれども、中国は二〇〇〇年を超えてから急激にPKOに派遣する兵員を増やします。今現在二千人に近い、あるいは超えておるかもしれませんね。韓国は数百人。この違いは何なのか、あるいは何が目的で、どういうメリットが例えば中国政府はあると思ってわざわざ国連PKOに兵員を出しているのか。御存じのように、去年の夏、南スーダンで中国兵二人殺されました。それでも頑張っているわけです。この意味は一体どういうことなのか。  最後に、平和観の話になります。  これも、この後の方をちょっと見ていただければいいんですけれども、ローマンニュメラルでⅢと書いて、日本の平和観というところをちょっと出していただくと有り難いのですが、日本では平和主義という言葉が確立された言葉としてメディアも含めて出回っているわけですけれども、この平和主義を英語に訳したら一体どうなるんだろうかということですけれども、いまだに、私、実は見付けられないんですよね。  日本人が言うところの平和主義というのは、一体何なんだろうか。あるいは、この国連、当然平和のための組織であります。二度と世界大戦を起こさない、そういう決意の下で七十年前にサンフランシスコでできた組織であるわけですけれども、国連の言う平和主義と日本の平和主義と、同一のものなのであろうかと。ここら辺も、国連との距離感、間合いを取れない日本の象徴的な意味の取り違えですよね。あるいは同床異夢といいますか、似て非なるものといいますか、そういうものがあるのかもしれないと思います。  日本で言う平和主義というのは、恐らく非戦主義のことであろうと。憲法九条をそのまま考えますと、どうしても非戦主義、つまり平和を達成するためには平和的な手段しか許されないと。その一方で、国連の平和主義というのは、場合によっては武力を使っても平和を達成する。この一線上に今日のPKOがあるわけですね。そこら辺、やっぱり日本と国連との間のボタンの掛け違いなんかもあるのかなという気がいたします。  なぜ国連を利用するのかですよね。二国間外交、今、日本の得意な分野です。対中、対ロ、対米、ずっと日本外交というのはこれでもってきたと私は思うのですけれども、じゃ、なぜわざわざ国連に真剣な目を向けないといけないのかということですけれども、多国間外交のいいところというのは、二国間関係に縛られず、国際社会の面前で正論や原則論を堂々と主張できるということであろうかと思います。  この典型的な例が、次の下のパワーポイントのところですね、野田さん、民主党時代の野田総理の国連総会での演説ですけれども、この中で、恐らく日本の総理として初めて、法の支配をあちこちに入れられたわけです。明らかに中国の海洋進出に絡めた言い方なんですね。ただ、中国は名指しはしていない。言わんとしたことは、国際的な国境線、領土を勝手に変えちゃいかぬのだよと、法にのっとって行動してもらいたい。この部分に関して、まさに正論でありますね、誰も反対できない。  こういうことを、対中国関係を台なしにせずに、あるいは対ロシア関係を台なしにせずに堂々と言えるというのは国連の場しかないわけです。それをやりながら、二国関係がそれで駄目になるということ、二国間外交が駄目になるということではなくて、むしろ、したたかにこれで二国間関係を補完すると、そういう発想があってもいいのかなと思います。  時間が来ておりますので、最後課題、具体的に何をやってもらいたいのかということなんですけれども。  安保理改組、特に日本の常任理事国入りですね、簡単な話ではないです。なぜ簡単でないかというと、そもそも常任理事国の制度というのは大変な抵抗があります。一、二の三で総会で三分の二の賛成票を取れば成功する、そういう話ではないです。では、どういう条件がそろえば日本はなれるのか、そこら辺からもう一回考え直す必要があるんではないでしょうか。  その結果、日本というのは大変な外交的な利益を得ることができます、情報を。安保理は、御存じのように、国連の中では真剣勝負の場です、安全保障、戦争と平和の問題を話す。例えば、今まさに今週、北朝鮮のミサイル発射問題、安保理の中でやっています。こういう場に今はたまたま日本も非常任理事国でおりますけれども、年末には出ていかないといけない。恐らく四年か五年浪人生活を経験して、また再度なりましょうねと。そのときに北朝鮮、半島はどうなっているんでしょうか。  あるいは、対中外交、対ロ外交にしても、日本が常任理事国であるというのは、ロシアにとって、中国にとってどういう意味があるのか。今両国とも必死に抵抗していますけれども、場合によっては、中国のやりたいこと、常任理事国、拒否権がありますから全部拒絶できるんですよね。あるいは、日本のやりたいことを前に出せる。その上で中国と話し合ったら、例えば人権問題、例えば法の支配、そういうことを安保理の中でがちがちやりながら、ところで尖閣はどうなりましたでしょうかと言ったら、迫力が違うんではないでしょうか。  PKO、これはまた御質問があったらお答えします。国連安全保障に関して、国連がこの七十年の間発展させた唯一の安全保障のための手段です。これに日本がどう関わるのか関わらないのか、大変重要な問題になってくるかと思います。  国連和平会議東京でやっていただければどうかと。これもほとんど議題に上がらないんですけれども、カンボジア和平のとき、アフガン和平のとき、何を日本はやられたかといいますと、カンボジア和平のときはパリで和平会談があったんですね。そこでこの三当事者プラスワンがようやく二十年来の念願の平和条約に調印したと。その結果、このカンボジア復興のための復興会議というのを日本でやっています。アフガニスタンもそうですね。ドイツのボンでアフガン和平の調印式をやって、その一か月半後に東京で復興支援会議をやっています。  ここで問題なのは、カンボジア和平の話をしたときに、恐らくこれから外交史、近現代史を学ぶ学生たちは、パリ和平会議、ボン和平会議のことを必ず学ぶでしょうけれども東京で行われたこの復興支援会議、何人勉強することになるのか、ちょっと懸念が絶えません。やろうと思ったらできるんです。実際にやりかけた、私がこの担当官であったときそんな事例もありましたけれども最後に消えたんですね。  最後に、国会議員の方もニューヨークに来てもらいたいんですけれども、それはそれとして、最後に、日本人の国連職員、少ないということです。これは、この三十年ぐらいずっと言われ続けてきたことかと思います。私も個人的に、国会議員方々、何でこうなっているの、どうすればいいのと度々聞かれることがありますが、これ、今のこの場では、今ここではあれですけれども、考えていただきたいのは、そもそも何で日本人の国連職員、邦人の国連職員国際機関職員が増えたらいいのか、それは日本の国益にとってどういう意味があるのか、それが大事なことではなかろうかと思います。  どうもありがとうございました。
  9. 鴻池祥肇

    会長鴻池祥肇君) ありがとうございました。  以上で参考人からの意見聴取は終わりました。  これより質疑を行います。  本日の質疑はあらかじめ質疑者を定めずに行います。  質疑及び答弁の際は、挙手の上、原則、会長の指名を受けてから着席のまま御発言いただくようお願いいたします。  まず、大会派順に各会派一名ずつ指名させていただき、その後は、会派にかかわらず御発言いただきたいと存じます。  委員の一回の発言時間は答弁を含め十分以内となるよう、また、その都度答弁者を明示していただきますよう御協力をお願い申し上げます。  それでは、質疑のある方は挙手を願います。  小野田紀美君。
  10. 小野田紀美

    小野田紀美君 貴重なお話、先生方ありがとうございました。いろいろ本当に伺いたいことはあるんですけれども、対外発信力の強化について、特に藤崎先生河東先生、両名ともおっしゃってくださった文化外交についてお伺いしたいなと思います。  海外で日本のイメージを調査したときに、いいイメージを持っていますよという方が例えば五〇%いらっしゃったら、その方たちに、そのきっかけは、じゃ何なんですかという調査を今されているのかどうかというのが、ちょっと私、手元に資料がないんですが、それが例えばODAがきっかけだったり留学生との交流だったりあると思うんですが、その一つにやはり先生方おっしゃったサブカルチャー、アニメ、漫画、ゲームというところがあると思っておりまして、もしそれが多数であれば、多数の意見のことに集中して発信をすればやっぱりコスパがいい発信ができるのではないかなと考えたときに、済みません、私出身がゲーム業界なのでそういうところをちょっと掘り下げてお伺いしたいんですけれども、サブカルを利用したイメージ戦略というのは図らずとも今成功しているなというふうに思うところもありまして、日本語を学びに来た日本語学校の子とか留学生の子たちに、どうして日本が好きになって何で日本語を学ぼうと思ったのと言ったときに、結構若い人たちは漫画が、アニメがきっかけなんですよという方がかなり多いというふうに聞いております。  じゃ、ここをどう発信として広げていくのかというふうに考えたときに、すごく難しいなと思うのが、他国のことをちょっとおいておきますと、日本のこのサブカルチャーというのは、国策としてお金を投じて広げようと思って文化が広がっていったものではなくて、本当に、先生民間に任せた方がいいと先ほどおっしゃったように、民間がつくってきたものを世界が見付けてああ面白いなとか、例えば昔安く売られた「ドラえもん」が世界各国で流れていることがきっかけで広がっていったとか、そういった民間の力の中で進んでいったことであると。  なので、クールジャパンというふうに政府ががっと行くよりは民間の力を活用した方がいいんじゃないかという御意見もすごく分かるところなんですけれども、ただ、今サブカル業界というのが、結構財政的にも人材的にも火の車になっているところがありまして、外に出ていく輸出支援というのが必要とさっき先生おっしゃってくださいましたが、それと同時に、やはり業界を民間の力で頑張ってもらえるようなサポートも必要になってくるんじゃないかなと思っているんですけれども。  この文化交流を含めた文化外交について、例えば、今、日本が輸出のサポートをとすると、経産省がやっているJ―LOPで、日本のアニメを外に出すときにローカライズ、翻訳をすることのお手伝いの補助金が出ますよとか、そういったいろいろな試みがあるんですが、世界同時配信を今求めている中で、遅いものになかなか若者が、海外の人が飛び付いてくれないとなったから、そこもちょっと新しいやり方を考えなきゃいけないだろうとか、今いろいろ議論がある中で、どういうふうな進出の仕方が、実際海外を御覧になってきて、日本の文化をこういうふうにくすぐってくれたら民間の進出が成功するんじゃないかなとか、こういう出し方をしたらもっといいのになという先生方の御意見であるとか、また、その輸出のサポート、出していくサポートというものを国がやるとしたらば、J―LOPとかそういったもの以外にどういうサポートをしていくのが一番コスパ良く効果的なのかと、その辺りを藤崎先生河東先生、両名にお伺いできたら有り難いなと思います。
  11. 鴻池祥肇

    会長鴻池祥肇君) 藤崎参考人、どうぞ。
  12. 藤崎一郎

    参考人藤崎一郎君) ありがとうございます。  今の小野田委員の御質問でございますが、アメリカにおりまして、八割のアメリカ人が日本を好きだということを言っておりますが、日本のイメージというのは、さっき河東参考人も申しましたけれども、私は簡単に言うとアカセキレイと言っておりますが、安全、確実、清潔、規律、礼節、これを縮めましてアカセキレイと、私の造語でございますが、このイメージがやっぱりほかの国には全然ない。アジアのほかの国とは全く違うこのイメージを、うまくやっぱり、それは日本のインフラなんかの力も非常にあるんじゃないかなと思います。  先ほど河東参考人も申したのと私は同意見でございますが、実は日本人も見ない文化を一生懸命持っていって非常に古い古典のものを見たって、それはみんなが、これはお世辞ですばらしいと言ってくれるんですけど、本当にそう思っただろうかというと、短くちょんちょんちょんと例えば十分ずつ区切ればあれですけれども、二時間も本当に喜んで見るだろうかというと、私も見ないのに見るはずがないと思っておりますから。そこら辺のところを考えると、やはり若い方に受けるものを持っていく、映画でありゲームであり、あるいは、もしそういうものを、文化であれば、短くまとめたものを新しくこしらえて持っていくという、古いものでも結構でございますが、そういう工夫が必要ではないだろうかと。  したがって、国際交流基金とかそういうところに出していくときに考えておられるかどうか存じませんが、有名な方のを持っていくということではないんだろうなというのは私も同意見でございます。  日本語について一つ申しますと、私は向こうでちょっと見ておりまして、たくさん日本語先生がいらっしゃるんですけれども、非常に昔風な教育を受けて、日本語の文法を一生懸命教えようとすると。何とかにとか、何とかへとか、のとか、そんなもの要らないよと。日本語が好きになってもらう、日本がまず好きになってもらうこと。それから、日本語を学んでみようというときに、文法からではないでしょう、会話でしょうと。お話ができるようになる。敬語が重要ですとか文法が重要ですということを日本語先生が一生懸命言って、自分はいかに難しいことを教えているかということで満足感に浸りますと、みんな中国語に行っちゃうんですね。  ですから、そこら辺のところを考えを改めていただいて、私が一番いいのは、日本からお子さんを育て終わったお母様とかシルバーの方、男女問わずそういう方々が一定期間研修受けて外国に行って日本語を教えると。そのときに、そういう新しい楽しい教材をもって教えるというようなことに少し発想転換をしていくべきではないかと思っております。  ちょっと長くなりましたが、以上でございます。
  13. 小野田紀美

    小野田紀美君 ありがとうございます。
  14. 河東哲夫

    参考人河東哲夫君) おっしゃられたとおり、各国での日本文化に対する関心というのは対象が様々だと思うんですよね。  必ずしもサブカルには限られないところがあって、例えばロシアに行きますと、ロシアの、まあ割と五十歳以上ぐらいの人たちは、日本の伝統文化に大変な憧れとそれから高級イメージ持っているものですから、能か何かを見せますと、まあ分からないところがいいもんだと思い込んじゃって非常に感心しているわけですよね。ですから、ここら辺は必要だと思います。  それから、途上国に行きますと、日本のイメージというのはやっぱり日本のODAによってつくられるところがあるんで、特に草の根無償みたいなもので地方の学校みたいなものを修理しますと、物すごくイメージが上がるんですよね。そういうのがございます。  それからサブカルチャー、これは本当に青年を中心にして物すごい伝播力を持っているんだと思います。これはもう世界中どこでもそうだと思うわけです。ただ、韓国とかそれからフランスはそういった文化に政府が積極的に関与してお金を出しますけれども、それは日本でも必要だと思いますけれども、やっぱりその内容に干渉するようなことは絶対避けるべきだと思うんで、横から輸出を助けるような体制をつくるべきだと思います。  そのときに必要なものは、おっしゃられたように、日本側の会社であるとか法人が、やっぱり海外と折衝する時間とそれから語学力がないものですから、足りないものですから、そこで幾ら外国から引き合いを送っても日本からは何の応答もないというのは有名な話なんですよね。ですから、そういったことを集中的に引き受けるようなオフィスみたいなものがあることが必要だろうと思います。そういったものができれば、それはその引き合い、それから売り込みを処理しますし、それから、著作権の処理が非常に面倒くさい問題になります。それから、できれば字幕ですかね、そういったものが必要だろうと思います。ただ、問題は、それをどこの省が管轄するかというところで必ずつまずきの石があるんだろうと思いますね。  以上です。
  15. 小野田紀美

    小野田紀美君 ありがとうございます。  すごくいろいろな、どこの省がやるかという最後にすごい課題をいただいた気がしますけれども、でも本当にその一つ一つを実行して発信力を高めていけるように頑張らなくてはいけないなと改めて感じました。  ありがとうございます。質問を終わります。
  16. 鴻池祥肇

    会長鴻池祥肇君) 藤田幸久君。
  17. 藤田幸久

    ○藤田幸久君 三人の先生方、ありがとうございました。  まず、藤崎大使にお伺いしたいと思います。今日お話しになったこととまるで違う話です。  欧米は、国の予算で、アメリカでしたらナショナル・エンダウメント・フォー・デモクラシーというのがあって、これは議会が決めて、その予算で民主党、共和党ともシンクタンクがいろんな和平工作行ったり選挙支援活動とかします。ドイツ、フランスは政党別に財団があります、エーベルト財団とかシューマン財団とか。これやっぱり国の予算です。イギリスもウエストミンスター財団というのがありまして、やっぱりそれぞれ、保守党、労働党がいたします。  したがって、外交の今プレーヤーが国家主体じゃないところが増えてきているので、そういうところに関するいろんな分業をやっていると思います。国務省もそういう機関と連携をし、人事異動もしながらやっております。フランスも、フランスの外務省からそういう財団に人が出るようになっています。アメリカは、ベーカー大使の奥さんとかフォーリー大使の奥さんなんかがやって法律を作ったんです。  最近見ておりまして、やはりそういう仕組みが日本においても重要ではないか。これは、外交の一元化を否定するんじゃなくて、むしろ政府同士、政府とすれば相手ができないプレーヤーに対してそういう重層的なことをやってきた。そういうのが日本においてもますます必要になってきている。ほとんどの先進国ありますし、実は中国も中連部ってありますから、政党と外交部が役割分担をして実はやっているという状況もございます。  そういったことがますます必要ではないかということが、この外交の展開において重要じゃないかということを感じているんですが、それについてお答えいただきたいと思います。
  18. 藤崎一郎

    参考人藤崎一郎君) 私も、今、藤田委員の言われたいろいろなものについて全て承知しているわけではないので、一つ一つについて分かりませんけれども、もし効果的な広報を行うという意味でございますと、日本の場合、決定的に欠けますのは、一つは施設ではないかなと思っております。  例えば、イギリスでございましてもアメリカでございましても何か施設がございまして、相当郊外のところに、ディッチリーパークでございますとか、そういうところに数日間泊まり込んで会議をやりますというようなことを、これはもちろんおっしゃったように国の予算でございますが、しかし会議自体は一切もう財団に任せるというような形でやると。こういうことをやりまして、しょっちゅういろんなところがそういうところを使えるようにしていくようなことで、何とかホテルをいつ予約してどうのこうのということじゃなくて、そういう施設をもし風光の明媚なところでできますと、大変これは効果的ではないだろうかと。  今、例えばダボスというのを毎年、これは世界の注目を浴びるわけでございますが、アジア版ダボスというのは、博鰲会議というのを中国がやったりしております。日本も、日本の主体のそういう会議をほかの国に負けないようにつくる。いろいろな日本ほど施設が整っているところはございませんから、早くきちんとつくって、今おっしゃったような形で、各党がみんなやるのか、あるいは国会がおやりになるのか、協力して日本というものを発信できる地盤、基盤を固めていくことは極めて大事ではないかというふうに私も思います。
  19. 藤田幸久

    ○藤田幸久君 いろんな和平工作、選挙支援活動とか政治外交そのものをやっている組織があるという意味で申し上げたんですけれども、また後で質問させていただきたいと思います。  川端先生にお聞きしたいと思いますが、国連の活用の仕方として、例えばドイツは国会議員が国連を訪問して、具体的にドイツとして国連に何をしてほしいということを直接議員団が行ってアプローチをし、提案をし、やり取りをしてくるというふうに聞いておりますが、そういう議員が実際に国連に行くやり方について、どういう状況があるかということを簡単にちょっとお答えいただければと思います。
  20. 川端清隆

    参考人川端清隆君) まさに国連とは何かということなんですけれども、ドイツにしてもアメリカにしてもフランスにしてもロシアにしても中国にしても、自分たち外交政策を達成するための道具、器だと思っている節があるんですね。だから、お願いだけではなくて、たまには命令口調の話もございます。  翻って日本の場合、私なども日本の要人が事務総長に会いに来たとき、ノートテーカーといって、記録を取れというので事務総長室に呼ばれて行くことがあるんですけれども、非常にやっぱり事務総長、扱いやすいと、日本代表は。何も言わない、我が国はこの国連政策全面的に賛成でございます、これからも支援していくつもりですと。最後に必ず言うことがある、是非日本人の国連職員を増やしてもらいたいと、それで終わるんですね。こんな扱いやすい加盟国はないと。お金はいっぱい払ってくれると。  そこら辺も、ちょっと御質問、まさに国会も含めて、国連との付き合い方の問題だと思います。考えられたらいかがでしょうか。
  21. 藤田幸久

    ○藤田幸久君 もう一つ川端先生に。  NGOという言葉は国連が最初に作った用語で、国連憲章の中に入っていると思います。国連というのは、政府間機関で構成されているにもかかわらず、実はNGOの役割、これがなければ国連の政策ができないということで、様々なオブザーバーステータスを持った機関もありますし、ある意味では政府で成り立っている機関でありながら、むしろNGO等ステークホルダーを活用した政策執行をされていると思います。  そういう観点からすると、先ほど私が藤崎大使に質問した、いわゆるそういう機関を活用しながら国連が政策立案やっているんではないかと思いますけれども、その辺について、実態についてお答えいただければ有り難いと思います。
  22. 川端清隆

    参考人川端清隆君) 日本の一番弱い分野の一つですね。日本で国際NGOがなかなか育たない。場合によっては、学生ボランティア活動と誤解されている方がいる節もございます。欧米では、立派なまずキャリアですよね。今、藤田議員もおっしゃったように、国連ではパートナーとして認められている。例えば、国連の人道支援、NGOの協力なしには食料にしても医療品にしても配れません。  NGOというのは、国連職員になるためには職歴がないとなれませんので、NGOでの職歴というのは国際機関で認められます。だから、国際機関の登竜門でもあるわけです。そういう意味からも、ニューヨークに来て国連のパートナーとして動けるNGOを日本で育てるということは、私は大変大事なことではなかろうかと思います。
  23. 藤田幸久

    ○藤田幸久君 最後に、藤崎さん、もう一つ。  例えば、カンボジアの選挙監視団をアメリカの民主党と共和党の議員が構成して、それをそのアメリカ二つの政党のシンクタンクが構成して行ったりとか、それからかなり、ウクライナもそうですけれども、そういうシンクタンク、政党系がやっています。これに国務省も関わっています。  特にヨーロッパはそういうことをやっているんですが、日本もそういう時期が来ているんではないか。それが例えば、いわゆる相手が政府じゃないプレーヤーに対するアプローチとして、これは決して外務省を否定するんじゃなくて、相互補完的に必要ではないかというふうに思っておりますが、その点、いかがでしょうか。
  24. 藤崎一郎

    参考人藤崎一郎君) 今、藤田議員の御指摘の外交を補完的な形で、例えば選挙監視をするといったようなことは私は効果的だろうと思います。外交はあくまで一元的にやる必要がございますので、別なものが発せられることがあっては私はおかしくなると思いますが、もし選挙監視とかそういうことであれば、それも、もし一つの党でなくて幾つかの党が入りましてやるような形、これは私は非常にいい効果を持つのではないかというふうに思います。  もう一つ、ちょっと国連との関係で申しますと、これは御質問と直接当たらないのでございますけれども、今度国連の事務総長になったグテレスという人と一緒に働いたことがございます。ジュネーブの大使をしておりましたときに、彼がUNHCRの高等弁務官でございました。当時、非常に立派な政策で、これまでのUNHCRでは難民に行くよりも事務局でお金を使っていると、こういうことはおかしいからもっとお金を難民に集中させたいという議論がございました。私は全く賛成だったのでこれを支持して、理事会の議長だったのでちょうどこれを支援しました。まさに国会として政府を支援するような形でございます。したがいまして、実はグテレスさんは、選挙の途中、大体三人ぐらいに絞られたときに電話をしてまいりまして、あのときに一緒にやってここまで来たよと、これで事務総長になる見通しができたから引き続き頑張っていきたいというようなことを言ってくれたことがございます。  何を申しているかというと、これは日本政府代表も、常に国連のおっしゃるとおりですと言うことだけではなくて、後ろからいろいろ支援したり補完したりしている場合もあるということをちょっと一言申し上げておきます。
  25. 藤田幸久

    ○藤田幸久君 ありがとうございました。
  26. 鴻池祥肇

    会長鴻池祥肇君) 高瀬弘美君。
  27. 高瀬弘美

    ○高瀬弘美君 参考人先生方、今日は大変に貴重なお話をありがとうございました。  私、前職が外務省でございまして、元々ワシントンでお仕えをした藤崎大使に今日は質問の機会も頂戴いたしまして、大変緊張をしております。どうぞよろしくお願いいたします。  まず、藤崎大使川端先生にお伺いしたいんですが、お二人から国際機関との付き合い方の話がございました。  今、アメリカがトランプ大統領にもなりまして、アメリカは国連への拠出金を下げるかもしれないという動きの中で、日本拠出金を大変多く出している国として国連をどうやって使っていくか、まさに利用の仕方ということをもう一度考えるべき時期に来ているのではないかなと思っております。そういう中で、藤崎大使の御経験と、また川端先生の御経験から、日本政府としてこのような形で国連をうまく利用していくことが国益に資するのではないかという具体的な利用の仕方を教えていただければと思います。  また、河東大使にも別途お伺いしたいんですが、お話の中で、ODAが大変重要な外交ツールであるというお話がございました。  私も、外務省時代に東ティモールで勤務をさせていただきまして、ODAというのがいかに大事なものかというのは自分として理解をしているつもりではございますが、これがなかなか一般の国民の皆様にその重要性を御理解いただけていない面も正直あると思っております。そういった意味で、本当の意味で効果的なODAというのはどういう形が望ましいかということを河東大使の御経験から教えていただければと思います。  よろしくお願いいたします。
  28. 鴻池祥肇

    会長鴻池祥肇君) それでは、藤崎参考人川端参考人河東参考人の順番でひとつお話をいただきたいと思います。
  29. 藤崎一郎

    参考人藤崎一郎君) 余り適当な表現ではないかもしれないんですが、私、アメリカにおりましてアメリカ人の国連軽視ということを非常に感じましたので、さっきの、参考人のおっしゃった国連好きであるというのとはちょっと違うかなという感じを持っております。  私は、選挙の際に、一般に政治家の方が三つのことに反対するとこれはいい政治家だというイメージを田舎では与えると。その三つというのは何かというと、リベラル、国連、ワシントンでございます。リベラルというのは放漫財政を意味します。別に民主主義という意味ではございません。国連、アメリカの上位に立つ者。そしてワシントン、自分たちと関わりなく意思決定をするところと。  これに対抗するのはいいやつだということで、トランプさんというのはまさにそれで当選したと思いますが、実は、今のトランプさんの外交を見ておりますと、一つの中国につきましてもパレスチナの入植につきましても日米安保についても戻ってきておりますし、必ずしも国連を本当に軽視してずっといくのか、それが得策であるかどうかという判断は出てこないかもしれないなと、大変有能な方を国連大使にも任命しておりますし、そういうふうにまず思っております。  それから、国連外交ということなんでございますが、国連外交というのは、一言で申しますと、別に別な外交があるわけじゃなくて、多数派工作でございます。したがって、二国間外交の積み重ね、できるだけたくさんの人を味方に付けて、日本が出す北朝鮮非難決議、できるだけ票数が減らないようにする、多くの国が日本をサポートしてくれるように持っていくという場でございます。さっき枠組みとおっしゃった、そのとおりでございますので、この枠組みをできるだけ有効に使うためには、二国間を使いながらこれを持っていくということではないかなと思います。  今日は、ちょっと私的でございますが、こういう場で元一緒に同僚として働かせていただきました高瀬先生に御質問を受けることができて、大変光栄でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
  30. 川端清隆

    参考人川端清隆君) 二点あります。  まず、国連をどう利用するかどうかということですけれども、これはもう日本の問題ですね。冒頭から何回か出ておりましたけれども日本は今まで国連を安全保障の場と思ってこなかった。本来の意味での国連外交をそろそろ始める時期かと思います。  トランプ政権の話が出ましたけれども、私のこの二番目の、日本人の国連観の書いてある次のページで、ついでにと思って、米国の国連観というのをちょっと書いてみました。米国人ほど国連が好きで、米国人ほど国連が嫌いな国民はいないと、これが私の実感であります。  何が言いたいかというと、好きな部分もあるんですね。国連にしても国際連盟にしても、その前身である連盟にしても、アメリカのそれぞれ大統領が旗振り役になってこういった国際機関をつくった。第一次大戦、第二次大戦、もう二度と世界大戦を起こさせないためにこういうものが必要なんであろうと。多民族国家であるアメリカの後押しがないと国連はできなかったと思います。その一方で、大嫌いな、アメリカ人、部分があります。頭越しに何かを言われると、何だということなんですよね。そのやっぱり愛憎渦巻くこの矛盾が一つの国の中にあるというのを、まず押さえておかれるべきだと思います。トランプあるいは彼を支持する中にも、私はないことはないと思います。  例えばなんですけれども、北朝鮮問題、この二十年間安保理でずっとやってきましたけれども、この北朝鮮に対する制裁、最初に始めたのが実はブッシュ政権、息子のブッシュ政権のときだったんです。しかも、そのときの大使が、国連は必要ないと言い切って国連に乗り込んできたボルトンという人なんですよね。今はトランプの外交政策、選挙期間中は外交政策のアドバイザーをやっている、ひょっとしたら副国務長官になるかもしれないと言われた男です。そこから何を見出すかというと、案外この国連の使い方を知っているんではなかろうかということです。  その二点、ちょっと押さえておこうかと思います。
  31. 河東哲夫

    参考人河東哲夫君) ありがとうございます。  今、ODAとしてどういうものが望ましいものかという御質問だと思いますけれども、ウズベキスタンで二年間働いた経験に基づいて申し上げますと、私がやったことというのは、前任者の、ここにおられる中山大使が既に築かれたものの上に乗っかって、ええ格好をしていたという感じなんですが、既にそのとき、日本はウズベキスタンにおいてドナーナンバーワンであったわけですね。全体の金額は少ないにしても、ドナーナンバーワンでありました。  それは別にして、どういうものが望ましいかということなんですけれども、やっぱりウズベキスタンがこれから自立した経済が営めるような基盤をつくってあげるというのが非常に効果的であるというのがありますよね。それはやっぱりインフラとか、それから工場の建設であろうと思います。  私のときは鉄道の建設に円借款が出ましたけれども、このためにはやはり円借款が必要であります。ただ、円借款というのは一件数百億円の規模になりますから、そんなしょっちゅうやっている必要もないので。しかも、経済協力というのはおかしなもので、百億円やろうが五百万円やろうが広報効果は余り変わらないという問題がございますから、広報観点からいくとそうなんです。ただ、現地経済からいくと、円借款は必ず必要でございますし、効果的ですし、それから相手国の政府に対して最も効くものだと思います。  それから、大衆に対するイメージの向上という、発信力というのかイメージ戦略の面からは、小規模の経済協力を、ODAをできるだけ多数、毎週二、三件、毎週二、三件といったら大げさなんだけれども、やっていくということが効果的なんですね。  後者につきましては、草の根無償というんですか、今は人間の安全保障という名前も付いておりますけれども、こういう予算項目があって、これは一件五百万円ぐらいの小規模のODAを、非常に一か月ぐらいの検討期間で機敏に供与していくというものであります。これは私の前任の時代から、いろんな地方の田舎の農村地帯の小学校、中学校に至るまで、いろいろな、トイレの修理をやるとか、そういった非常に地道でしかもその現地の人たちの生活に直接響くようなことをやっておられたわけなんで、それだけでは足りないので、それをテレビでいつも広報していることが重要であります。その供与式であるとか署名式であるとか、そういったものを全部テレビ局が取材に来てくれたものですから、それによって日本はウズベキスタンでODA断トツというイメージができまして、非常に良かったですね。そういうのがODAで必要だと思います。
  32. 高瀬弘美

    ○高瀬弘美君 ありがとうございました。
  33. 鴻池祥肇

    会長鴻池祥肇君) 武田良介君。
  34. 武田良介

    ○武田良介君 今日は、三人の参考人先生方、本当にありがとうございます。  今日は外交体制の問題だとか発信力の強化ということでお話をいただきまして、私、とりわけ発信力の問題でお聞きをしたいというふうに思っております。  発信力というときに、国際社会の中で日本が存在感を持ってイニシアチブを取って発言していけるかどうかということは非常に大事ではないかなというふうに思っていますが、私、今関心を持っているのは、先日、日米の首脳会談も行われましたが、今アメリカのトランプ政権が入国制限をするということで大きな話題になっておりますし、先日、国連の、先ほどお話にもあったグテレスさんという事務総長の方が、ホロコースト犠牲者をしのぶ国際記念日というところの演説で、トランプさんということは直接は言わなかったわけですが、私たちは今日、ポピュリズムにより引き起こされた反ユダヤ主義、人種主義、排外主義、反イスラム憎悪、その他の不寛容を目撃している、私は世界のマイノリティー、難民や移民が直面している差別に大きな懸念を抱いているというふうに述べたという報道も聞きまして、私も注目してみたんですが、今のアメリカのトランプ政権というのが、これまでのアメリカ政権にもなかったような特異性といいますか、異常な性質を持っているのではないかというふうに世界も見ているというふうに思っています。  私が関心を持ってお聞きしたいと思っているのは、この間の首脳会談なんかもそうですが、日本がそういったトランプ政権にはっきりと物を言うことができないだとか、あるいは付き従うという表現をすることもありますが、ということになったときに、国際社会からどう見られるのか。アメリカに対する見方だとか日米同盟に対する見方ということはいろいろな見方や立場があったにして、国際社会から批判されるような入国制限を行っているトランプ政権に追随していくような形になると国際社会から見られたら、それで発信力が高まっていくのかどうか。国際社会の中で独自の立場を発信できなくなる、存在感を失うということにならないかどうかということを、参考人の三人の先生、それぞれ大使や国連のお仕事をされてこられたということで、三人の先生にそれぞれお聞きできればというふうに思っております。
  35. 鴻池祥肇

    会長鴻池祥肇君) それでは、まず川端先生河東先生藤崎先生、この順でお願いをいたします。
  36. 川端清隆

    参考人川端清隆君) 国連というのは、やっぱり人権、難民問題も含めてその擁護者であると、紛争地の人たち最後の防波堤であると言われています。だから、その旗を下ろすことはできない。そういう面で、この点が信念があったからこそ、あのグテレスの批判ということであろうかと思います。ただ、その一方で、国際政治、日米関係の中で日本が何をどう言うかと、ワシントンで。ちょっと性格が違うところもあるのかなと。  それと、日本自身の問題ですよね。はたと足下を見てみれば、シリア難民二十七人しか入れていないと。そこが苦しいところですよね。しかも、グテレスの前任者は緒方貞子先生です。どうもうまくつながらない、そんな思いがいたします。
  37. 河東哲夫

    参考人河東哲夫君) トランプ大統領のいろんな政策が、特に西欧諸国であるとか、それからユダヤ人社会の間であるとかイスラム諸国の一部で懸念を呼んでいることはいろいろ報道で承知しております。ただ、この前のトランプ大統領の大統領令というものはアメリカの裁判所によって否定されたんで、これからまだどうなるか分からないところであると思います。  それから、安倍総理の訪米については、日本にとって必要なことをおやりになられたんで、あれはあれで非常に良かったし、必要なことであったと思います。それによっておっしゃられた問題について何か波紋が起きるんであれば、それはまた別途対応を必要とすることになると思いますけれども、まだ何をどういうふうにやっていいかは分からない段階だろうと思います。
  38. 鴻池祥肇

    会長鴻池祥肇君) 藤崎参考人、お願いします。
  39. 藤崎一郎

    参考人藤崎一郎君) まず第一点でございますが、今、武田委員の言われた、日本アメリカに七か国の入国についてはっきり言わない、総理がこれについては内政問題であると言われたことについての御指摘だと思いますが、基本的には今、川端参考人も申されたように、ドイツの場合には二〇一五年で百万人以上のシリア難民を受け入れておりますので、いろいろ自分の国と比較して言い得る立場にあるし、言わざるを得ないと。日本の場合には、基本的に難民をこれまで、日本国民の選択として、ベトナム難民なんかの場合には限定的に受け入れましたが、基本そんなに受け入れてこなかったという背景の下に実は考えざるを得ない点があるだろうと。内政問題もございますけれども、同時に置かれている立場が違うという点はございます。  第二点といたしまして、実は、私ども、やはり人種差別ということについては非常に難しい歴史がございます。先ほど、ウィルソン大統領、国際連盟をつくりましたけれども、結局アメリカは入らなかったんですが、彼が、ベルサイユ会議のときから、基本的には人種差別反対を唱えました日本代表に対して反対をしてきた。つまり、我々はずっとそういう問題を抱えながら第二次大戦に進んでいった歴史がございます。カリフォルニアの排日とか、そういうことを考えますと、日本をそういうときに支援してくれた人に対する感謝というものを忘れてはいけないだろうと。  したがって、例えば、これはアメリカ人内部の話ですけど、日系移民が収容所に入れられたときに反対した人、これはコロラドのラルフ・カーという知事なんかがございますけど、こういう人のことをもっと覚えていなきゃいけない。我々は、杉原千畝のことはユダヤ人にずっと感謝されて覚えておりますし映画もできておりますけど、日本人をいろいろ支援してくれた人のことをもう少し覚えていることによって、ほかの国の人が日本をまた助けようということになるんじゃないだろうかと。  ほかの国のことも大事でございますが、日本自身のイメージからいってもそういう点は、今、武田委員の言われたこととちょっと私の申し上げていることは違うようでございますけれども、通ずるところがあるんではないかなと思ってちょっと申し上げさせていただきます。  以上でございます。
  40. 武田良介

    ○武田良介君 終わります。
  41. 鴻池祥肇

    会長鴻池祥肇君) 室井邦彦君。
  42. 室井邦彦

    室井邦彦君 どうもお忙しいところを三名の参考人先生方にはありがとうございます。  それでは、お一方ずつ違った質問をさせていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。  藤崎参考人にお願いをするわけでありますが、尖閣の問題でありますが、日本としての対応、譲らず、油断せず、挑発せずの対応で臨むべきであると思うというようなことを週刊ダイヤモンドの編集部で論じておられておりまして、その尖閣諸島周辺においては、もう御承知のとおり、もう毎日のようにグレーゾーンの事態が増加、長期化する傾向にある中、また更に中国による軍事力の増強、また軍事活動の活発化の傾向がより顕著に見られておるわけでありまして、更に状況は深刻化しておると、このように思っております。  ここで、日米首脳会談の共同声明を受け、二月十三日の中国の外務省の定例記者会見で、耿副報道局長は、誰が何と言おうと、釣魚島、中国ではそう言うようでありますけれども、尖閣諸島が中国に属するという事実は変えることがないと、相変わらずこのような発言をされておるわけでありますが、もうこの譲らず、油断せず、挑発せずで答えが出ているのかも分かりませんが、藤崎参考人として、我が国として改めてこの問題をどう対処していくことが良いことなのか、これ以外の言葉で何かおっしゃられることがあればお知恵を拝借したいのですが。
  43. 藤崎一郎

    参考人藤崎一郎君) お答えいたします。  今委員御指摘の対談、鼎談でございますか、この青い冊子に入っているので、ダイヤモンドで私が外務省の同僚だった人たちと話したものでございますが、そこでおっしゃったように申しました。  譲らずというのは、そこの対談でも出ておりましたが、共同管理、共同支配などを提案してはどうかというような議論もございますが、とんでもない、そんなことは日本から譲ることになるではないかと。油断せずということは、まさに空も、海だけではなくて、しっかりと守って近づかれないようにする。一番やはり警戒しなければいけないのは、空から来て空挺部隊等が上陸していてしまうというような、そういうことをつくらないようにすることが一番大事。さらに、挑発せずということは、彼らが何かの口実を持って我々のところに入ってくるというようなことがないように厳重に厳重管理をするということであると。  私は、これは非常に日本が今まで世界に対していいイメージを与えている。これは中国から見れば領土紛争でございますが、日本はそこに何もしていない、現状変更をしていない。それに対しまして、南シナ海では中国はどんどん飛行場を造ったりしている。それに比べて、日本というのは何てきちんとした外交をする国だろうというイメージを与えております。これを続けていくことが大事。そして、日本が実効支配しているわけでございますから、この現状を続けていけば、それは日本にとって一番いいことではないかというふうに考えるので、こういうふうに議論させていただきました。  よろしくお願い申し上げます。
  44. 室井邦彦

    室井邦彦君 ありがとうございます。  それでは、河東参考人にお尋ねいたしますが、この「現代の世論と外交」という中で、広報こそは最高の知識と人格を要求される仕事だというふうにおっしゃっておられて、他方で、大使館では広報・文化交流担当の地位は低いと。さらに、政策を決定する会議に呼ばれない、重要で緊急な案件ほど、そうしたペーパーは記者会見にやっと間に合うタイミングで来るから、とても意を尽くした説明はできないんだというふうにおっしゃっておられて、総理や外相が外遊すると、会談はおろかその準備の打合せにさえ入れてもらえないことがあると、このようにおっしゃっておられておりまして、それでは、その広報・文化交流担当の地位は低いとされる中で、政府外交実施体制をどう改め強化していくべきなのか、お考えがあると思いますが、お聞かせいただければ。
  45. 河東哲夫

    参考人河東哲夫君) なかなかお答えするのは難しい問題だと思うんですけれども、私の、そういうふうに書いたことは事実であって、ただ、それは今からもう十何年も前の体験に基づくものですから、現在どうなっているかは存じません。  それから、各大使館によってそれぞれ違うので、広報・文化担当がどのくらいの年齢の外交官なのか、どういう経歴を経た外交官なのかによって全く違ってきますから、例えば在米大使館などでは広報・文化担当は地位が高いというふうに理解しております。それから、いろんな政策の打合せの会議広報担当が呼ばれないというのが現在本省でどういうふうになっているかは存じ上げませんけれども、多分余り呼ばれていないのではないかと推察しますけれども、ここで私が申し上げてもどうしようもないだろうと思います。  一般的にそういった状況をどういうふうに改善していったらいいかということについては、既に冒頭御説明申し上げた中でいろいろ申し上げましたので、それ以上には今ございません。
  46. 室井邦彦

    室井邦彦君 ありがとうございます。  それでは、最後川端参考人にお聞きをいたします。  この中で非常にはっきりした御意見をおっしゃっておられて、日本には体を張って何とかするという発想をもっと強く持ってもらいたいと。汗をかかなければ、犠牲を支払わなければ見返りはない、関わるからには日本は本質的な部分を肩代わりするぐらいの覚悟を持つ必要があります、当然、平和活動への参加は危険を伴います、しかし、国連の平和活動の本質は日本を含めた加盟国によるリスクの分かち合いなのですと。日本だけが安全地帯にとどまり、他人事のように平和を語るわけにはいきませんという覚悟のほどをおっしゃっておられると、まあ我々にそうおっしゃっておられるのかも分かりませんが。  そこで、この紛争地の人々に寄り添うとは、我が国としてどのような活動で取り組むことを意味をしている、おっしゃっておるのか、今の文章の中にあると思うんですけれども、改めて参考人の御意見をお聞きしたいと思います。
  47. 川端清隆

    参考人川端清隆君) 今日の話は、日本発信力発言力の話ですよね。その中で、やっぱり一番私の専門である安全保障の面で効果があるというのは、人を出すことなんです。紛争地に人を出す。おのずとこの活動内容は限られてまいります。人道支援、難民支援から始まって、PKOあるいは和平活動、いろんなものがあるかと思います。でも、いずれにしても、危険と全く無縁ではない。  ただ、それを恐れていれば、恐れておれば、紛争地の人間にとって一番有り難いというのはやっぱり寄り添ってもらうことなんですよね。遠くの方から食料を買ってくれる、医療品を買ってくれる。それは決して軽いことではないんですけれども自分の家が火事になったとき、やっぱり寝巻きの裾を振り乱してバケツリレーをやってくれる人が有り難いわけで、消火が終わって次の日に家建て直すためにお金貸してあげようかという人よりも、やっぱりちょっと種類が違うんですよね。  それを短く言うと、危険の分かち合い。そもそも、国連の考え方というのはやっぱりそういうものです。無法な国が世界の平和を乱すときに、国際社会、つまり加盟国が肩を寄せ合って共同で対処しましょうと。一国、二国だけが、いや、うちは関係ありませんと、犠牲は払えませんというのでは、国連そのものの、つまり集団安全保障の世界です、集団的自衛権に対する集団安全保障の世界なんですけれども、成り立たない。そういう思いを込めてちょっと言ったんですけれども。  昔、UNHCRの緒方貞子さんと話したときも、やっぱり日本人、なかなかやっぱりUNHCR、人道援助も含めて現地に、特に紛争地に行きたがらないと。何かあれば一番最初に出ないといけないと。彼女が国際協力機構の、JICAのトップになられてからもそういう問題があると。危険を回避、日本人の犠牲を回避しないといけない、それは分かる。その一方で、日本人とは何かと、そういう問題もあるんですよね。彼女の言うところのミッション、使命感、世界の中でどう生きていくのか。  アフガニスタン、私が七年間担当しましたけれども、当時、九〇年代の終わりに日本に何度か国連の交渉者と来る機会がありました。そのときに、日本にも国連和平協力してもらいたいと、どう説明しようかと。いろいろ考えたわけですけれども、結局、中央アジアの紛争国であるアフガニスタンに、日本人が体を張ってアフガニスタンの平和を助けるというのは、日本にとってどういう意味があるんでしょうかと。アフガニスタンから日本を見れば、真ん中に中国と朝鮮半島があります。そんな中で、アフガニスタンの人間が近い将来、日本人は助けてくれたと、体を張ってアフガニスタンの平和に協力してくれたというのを中国の頭の上から言ってくれればどんな意味があるのでしょうかと、そんなことも話したことを覚えております。
  48. 室井邦彦

    室井邦彦君 ありがとうございました。終わります。
  49. 鴻池祥肇

  50. 木戸口英司

    木戸口英司君 参考人の皆さん、ありがとうございました。  川端参考人に、ちょうど今PKOのお話が出ましたので、私からも関連してお話をお聞かせいただきたいと思います。  PKO、国連による集団安全保障という考え方、やはりそこが集団的自衛権の話と整理されていないといいますか、議論が、基本原則、理念が非常にあやふやになっているところが非常に危険であり、またこの活動への理解が進まないところだということだろうと思います。  その辺で、改めて基本的考え方を参考人にお聞きしたいんですが、今日の朝日新聞朝刊で、南スーダンPKOの、今戦闘行為かどうかという話の中の記事で、そこには触れませんけれども、ここに、憲法九条の下で自衛隊の海外活動を広げることの難しさがあると書いております。これはこのとおりなんですね。憲法九条の下で海外活動をと、自衛隊の、これを国連の活動をと読めば川端参考人のお考えに近づいていくんではないかと思うんですが、そういう中で、国連憲章、日本国憲法、こういった理念、その前提となるところを川端参考人から、こういう考え方が原則、理念としてあるということ、またPKO三原則あるいは日本で五原則、この辺も変えていかなければいけないということ、見直しが必要だということを記事の中でおっしゃっていますけれども、その辺、川端参考人から御説明をいただければ有り難いと思っております。
  51. 川端清隆

    参考人川端清隆君) 二点強調させていただこうかと思います。  まず、今日の朝日の記事ですけど、PKO五原則はそもそも憲法との関係の中でつくられたと。特に憲法九条の第一項ですよね。そこで、日本の多分議論に欠けていると思うのは、この憲法の第九条の一項に、そもそも国連の和平活動というのは抵触するのかしないのかと。九条をよく読めば、国権の発動としての戦争、これをやらないということですよね。PKO、これ国権の発動、つまり日本が主人公となる国際紛争の話なのかと。国連事務総長の指揮下、安保理が決定をして事務総長が指揮をするPKOと質が違うのではなかろうかと。  ただ、その一方で、日本の国内で憲法論議で議論があることはよく存じております。もう一回考えてもいいのかなと。一昨年の平和安全法案、一緒くたに出されましたので、ほとんどの一般の学生も含めて混乱しております。何回この集団的自衛権を黒板に書いて教えても分からない、ましてや集団安全保障って何ということになるんですけれども、もう一回、そもそも安全保障というのはこんな難しい話ではないです、小学生、中学生でも分からないといけない話であろうかと思います。  二点目、国連のPKOとはそもそも何なのかというところなんですけれども日本ではどうしても憲法との関わりの中で、カンボジア、国連、この平和協力法案を通されて、それ以来、二十数年間ずっと議論されてきたわけですけれども、国連の中で、安保理の中でどういう流れになってきたかというと、日本ではこのPKOというのは法的なもの、静的な動かないものと見られがちなんですね。当時、二十年前、国連研究者も法学者が多かったです。ところが、ニューヨークから見ますと、国連PKOというのは政治的な存在なんです。しかも、常に国際政治の制約の中で進化する、時々失敗、大失敗もする、そういうものなんですね。  だから、PKO原則ありきではなくて、まずアフリカの紛争ありき、そこにどう国際政治の制約の中で国連ができることをやるのかと。その中で、振り返ってみればこんな原則があったかなと、PKO原則です。そんな中でいわゆる三原則があったり、最近ではもう三原則全部変わっておりますが、いわゆる新たなPKO、一時は積極的PKOと言われていましたけれども、今は任務執行型PKO、遂行型PKOと変わってくる。日本から見るとそれになかなか付いていけないんですね、法的なものだと皆さん感じておられるから。でも、ニューヨークの視点からするとかなり自然な。そこら辺でちょっとこの行き違いがあるのかなと、そんな印象があります。
  52. 木戸口英司

    木戸口英司君 ありがとうございました。  それでは、ちょっと話変わりまして、藤崎参考人にお伺いをいたします。  いただいた資料、藤崎参考人のインタビューの記事の中に、東日本大震災のエピソードがございました。当時アメリカ大使でおられてということのお話、興味深く読ませていただきました。私も岩手県でございまして、当時岩手県庁におりましたものですから、いろいろ思い出すこともございます。その中で、ちょっと時間もないものですから、当時の様々なエピソードもお聞きしようと思ったんですけれども、まずは国内、外務省において、様々、海外からの支援、アメリカからの支援も多くございました。当初やはり混乱しまして、受入れがぽんと自治体に投げられてきて、大変受け入れたいけれども、結果、岩手県は受け入れたんですけれども、その上で、大変助かったということはありますが、大変受入れに対してちゅうちょする部分もありました。あるいは、地方にいる外国人をどう救うか、また避難させるかということで、特に中国などはもうすぐ外務省が飛んできて個別に当たるということだったんですが、その対応も非常に行政には負担で、県から外務省の方に対応等もお願いした、そういうエピソードもあるんですが。  その後、これから東京オリンピックなども控えて、やはりこれ対外発信の一つ日本の安全、安心、そういうことが非常に大事になってくるんだろうと思うんですが、何かその後、外務省の中で検討されているような様子があるかどうか、そういう防災についてですね。あと、対外発信、感謝の気持ち大事だというお話もこの中にありましたが、ちょっとその辺り触れていただければと思います。
  53. 藤崎一郎

    参考人藤崎一郎君) ありがとうございます。  私、あの大震災はアメリカにおりましたが、アメリカだけでなく世界中に日本人の規律正しさ等をアピールするすばらしい機会、大変な大震災のことを機会と言うのはいけないんでございますが、しかし、そういうこともしていたという面がございます。それには恐らく県庁等も大変支援されたんだろうと思います。  二つ、実は今御質問についてございます。一つは、やはりこれは世界中から、中国も含めてでございますが、アメリカも台湾も、いろんなところから支援を受けました。五年たち十年たつと、いろんな節目のときに、やはり感謝をきちんと表明していく、ここまで復興してきましたということをきちんと言っていく。日本の場合にはどうしても、その目の前にありました海兵隊とかそういうことにはいたしますが、実はたくさんの支援が世界中から来ておりますので、それを示していくことが必要。  もう一つは、実はこれは被災者の方の中に複雑な感情があるのは承知しておりますが、私は、記念館のようなものをきちんと造って、そこには、どういう我々は失敗をしたのか、どういうことが必要だったのか、どういう支援を受けたのか、どこまで来たのかとか、いろんなことが全て分かるような、あるいは実地で体験できるのがいいのかどうか分かりませんけど、ものを残していって、ひとつこれは世界中の人のためになるような施設を造っていくことを本当は検討する時期ではないかというふうに私は思っております。  以上でございます。
  54. 木戸口英司

    木戸口英司君 ありがとうございました。
  55. 鴻池祥肇

    会長鴻池祥肇君) 伊波洋一君。
  56. 伊波洋一

    ○伊波洋一君 沖縄の風の伊波洋一でございます。  今日は、御三名の参考人のお話、とても私たちが知らないことをいっぱいお話をしていただいてありがとうございます。  まず最初に川端参考人にお伺いしたいと思いますけれども、沖縄は今でも、ジュネーブの人権委員会など、国連に行く機会があるところなんです。私自身、一九八八年の第三回国連軍縮総会や、あるいは九九年の、これは国連ではないですけど、ハーグ平和市民会議などに沖縄からの代表団をつくって行ったことがあるんですけれども、そういう意味では、今御指摘のある国連中心主義というもの、日本においては本音は対米協調一辺倒という先ほどのお話の中でありますね。  日本の、我が国の国連における立場というものは余り独自性がないということをずっと感じているんですけれども、これから、実は先週のこの調査会では、大きく経済の状況も、アメリカや中国やあるいはインドが変わってアジア中心になっていくとかということも含めて、もちろんアフリカもどんどん大きくなっていくんでしょうけれども、新しい時代が十五年後あるいは三十年後には変わっていく。そういう中で、やはり御指摘のような対米協調一辺倒で日本がこれから歩むことが果たしていいかどうかということをとても気にはしております。  御指摘の中で、日本がやはり国連において歩むべき道筋というのはどういうものであるのか、もしお考えがありましたらお聞かせいただきたいと思います。
  57. 川端清隆

    参考人川端清隆君) バランスの取れた安全保障政策であろうかと思います。あるいは外交ですよね。別に国連外交、多国間外交をやったからといって二国間外交をおろそかにしろと、そういうことではないと思うんです。安全保障もそういうことですよね。ある日突然この日米同盟が消えてなくなると、そういうことでもないと思います。それぞれ相互補完関係にあるんではなかろうかと。  沖縄に関しては、私、一度琉球大学に行って話をしたこともあるんですけれども、あるいは地元のメディアの方たちとも話して、何ができるかと、米軍の基地のほかにですね、代わりに。例えば、国連のPKOの訓練施設、そういうものを造ることはできないだろうかと。あるいは、訓練施設、軍人さんが来ますからそれは嫌だということであれば、研究機関、国連平和活動の在り方を沖縄で研究すると。  そういう、つまり、基地が嫌だと、それはよく分かる。だけど、その一方で、平和、日本の現政権も積極的平和外交なるものを言っていますけれども、それを実践すればどういうことになるのかというのを沖縄発で考える、そんな道もあるのかなと、そんなことを思っております。
  58. 伊波洋一

    ○伊波洋一君 ありがとうございます。  九九年のハーグ平和会議のときにはコフィー国連事務総長も来られて、それからツツ大主教などのノーベル平和受賞者も来られている会議もあって、その中で、NATOが爆撃をするというその時期に、今、先ほどの国連が思っている平和をつくるという意味はそういうことも含めてやっていくというような流れがいろいろ議論がされておりましたが、東ティモールも独立をしたりですね。  そういう中で、沖縄がやはりこれから平和の役割を担えることができるのならば大変有り難い提言だと思いますし、いろいろまた沖縄にも伝えていきたいなと思います。ありがとうございました。  河東参考人にお伺いしたいんですけれども、先ほどODAの話をされておりました。ODAを、具体的にも小さいODAをどんどんやることによって日本がやはり評価されるということですね、私もそう思うんですが。  ちょっと私、外務省のやっていることが十分分からないので聞きたいんですけれども、今年に入って安倍首相が例えばフィリピンやベトナムにも行かれました。そのときに三百億円とかあるいは一兆円とかということが報道されます。あのお金はODAなんでしょうか。そのことについてちょっと。
  59. 河東哲夫

    参考人河東哲夫君) 随分技術的なこと、よろしいでしょうか。
  60. 鴻池祥肇

    会長鴻池祥肇君) どうぞ。
  61. 河東哲夫

    参考人河東哲夫君) 技術的なことになるのでここでお答えするのは適当かどうか知りませんけれども、私の理解では、そのときの発表ぶりを詳しく見ないと分からないんですけれども、いわゆる一兆円とおっしゃったとすると、その中には民間の融資も入っているかもしれないし、それからJBICですか、昔の輸出入銀行、JBICによる普通の輸出信用も入っているかもしれない。だけれども、それを除いて考えても、ODAだけでも、円借款でも一つの国に対して千億円の規模で出ることはございますから。ただ、それは一年で千億円以上出るというのはまれなケースなので、これから数年間にわたってその三千億円をめどとするとか、そういう意味であろうと思います。  これはODAに数えられているんですけれども、円借款の場合にはそのほとんどが日本にまた返済されるものであるということを考えなければいけないと思います。
  62. 伊波洋一

    ○伊波洋一君 ありがとうございました。  ODAの場合は無償のODAというのもあるんですよね、たしか。それはどのくらいの額になっているんでしょうか。
  63. 河東哲夫

    参考人河東哲夫君) それはもう外務省にお尋ねになった方がよろしいんですけれども、私の理解では、無償というのは年間今は五千億円ぐらいなんでしょうかね。一兆円には行かないと思います、総額で。円借款の方はそれよりも数倍の規模に行きます。
  64. 伊波洋一

    ○伊波洋一君 済みません、最後に、NGOの働き方。アフガニスタンで中村哲医師が運河を造って砂漠を緑の肥沃な土地にしているという、そういう事業がありますが、そういう取組に対して河東参考人はどのように評価されているんでしょうか。
  65. 河東哲夫

    参考人河東哲夫君) それは非常に見込みのあるプロジェクトだと思うので、しっかりやれば、日本には砂漠の土壌に何か下に敷いて水分を保持するような技術もできているようですから、そのフォローをしていく価値が十分あると思います。
  66. 伊波洋一

    ○伊波洋一君 やはりあれは、見ていると政府が普通にやっているものよりも何か随分大きな影響を与えているような感じもするんですが、政府としての関与はああいったものにはないんでしょうかね、やはり。
  67. 河東哲夫

    参考人河東哲夫君) そこまで私は存じ上げません。
  68. 伊波洋一

    ○伊波洋一君 ありがとうございました。
  69. 鴻池祥肇

    会長鴻池祥肇君) 以上で各会派一巡をいたしましたので、これより自由に質疑を行っていただきます。  質疑のある方は挙手を願います。  宮島喜文君。
  70. 宮島喜文

    ○宮島喜文君 自民党の宮島喜文でございます。  今日は、三人の参考人先生方に非常に勉強になるお話をお聞きいたしました。外交官として一線で仕事をなされたということの経験を踏まえてのお話は、非常に重く感じたところでございます。  私は、その中で、今日は外交能力及び戦略向上させるための取組課題というところでございますが、この外交能力の問題と、それと戦略的に向上させる、二つのあれが今日のお話の中で大きくあったように思うわけでございますが、後半のお話と前半のお話がそれになると思うんですが、私、ちょっとこれは内面的な前半のお話が多かったと思うんですね。  これは、外務省そのものの人材育成というか、そういう点が非常に藤崎参考人の方からお話があったと思うんですが、これ、私どもから考えますと、非常に、外務省と経産省とか、外務省と防衛省、こういう省庁の連携をどうするかという、そういう問題は一つ大きくあるとは思いますし、かなりうまくいっているのかなと最近思っているところでございますが、いわゆる内部の運営改革と申しますか、どのような、外務省が本当に外交官を育て、そして日本外交の一線に立てる人をこれからつくっていくという中で、非常に語学力が大切だとか、そういうお話は聞いたんですが、内部でやるべきことがあるんではないかと一つ思います。それから、私ども国会としてそれをどういうふうに支援していったらいいかという、こういう観点もございます。  その点について、まず藤崎参考人、お願いいたします。
  71. 藤崎一郎

    参考人藤崎一郎君) 私の印象でございますけれども、実はその各省間の連携ということにつきまして、数十年前に比べるとはるかに良くなっているのではないだろうかというふうに思います。  なぜかと申しますと、実はこの自由貿易協定、FTAとかEPAというのを作りますときには、外務、経産だけではなく、もう厚生労働あるいは国交省、あらゆる官庁から参りまして、環境省、いろいろ議論を相手といたします。その際には、一つでまとまってやらないと各個撃破になりますので、しゃべる人は一人にして、しかしみんなで相談をしながらやっていくというようなことがかなり、私は少なくとも自分が経験したときにはそういうふうにやっておりましたし、今のTPPなんかについても、これは甘利大臣等のおかげもあると思いますが、まとまってやるという形ができてきた点は相当何十年前かに比べると良くなっているのではないかというふうに思った次第でございます。  また、ちょっとほかに広報公館体制について申し上げたいことがございますが、先生の御質問の各省連携ということについてはそういう感じでございます。
  72. 宮島喜文

    ○宮島喜文君 ありがとうございました。  この内部の人材教育ということに関しては、これ、河東参考人さんの方からちょっとお聞きしたいんですが、外交官をどうやって本当に育てていったらいいかとか、そういう観点だろうと思いましたけれども、そのようなお話をもう少し深く聞かせていただきたいんですが。
  73. 河東哲夫

    参考人河東哲夫君) これは我々、やはり日本のあらゆる組織と同じなんですけれども、特に人材を研修して育てるというよりは、仕事を通じて育ってもらう、オン・ザ・ジョブ・トレーニングというやつなんですけれども、それをやっていますから、やっぱりそれは人によって差が出てくるのは仕方ないところだと思いますね。研修所がありますし、入ったときに数か月研修しますけれども、そこで何を聞こうがやっぱり忘れるものですから、余り響かないところもあるんですよね。  だから、そういう中で何をやったらいいかというのは、それはやっぱり偶然そのときに付いた上司によるしごきであるとか教えであるとか、あとは自ら学ぶ意欲ですね。心がどこまで周囲に対して開かれているかとか、かなり人的な要素があって非常に難しいと思うんですけれども。  その中で制度的に何かできるかということなんですけれども、申し上げましたように、例えば経済とか軍事についての知識をそれこそ研修でたたき込むとか、ただ、入ったばっかりだと全然真剣味がないものですから、中途、三十五歳から四十歳ぐらいの間でそういう機会を設けるとか、それから、在外に出て広報担当する場合には、メディアトレーニングといいますけれどもテレビではこういう色の背広がいいとか、それから目線はどこに定めろとか、いろんな決まりが、決まりというかやり方がありますから、そういうのを教えるいろんな会社がございます。そういうのを招いてコースをやるとか、そういうことができると思います。  それ以外はもう本当に人の問題なので、あとは、だからそれを試験して、そのテストによって振り分けていくかとか、そういうことも考えられますけれども、まあそのくらいしか考えられません。
  74. 藤崎一郎

    参考人藤崎一郎君) 先ほどの委員の御質問の、どういうふうに政府職員を育てるかと。  外務省だけでございませんで、私は、実は問題は霞が関におきまして一種の心理として、これは実は霞が関だけではなく丸の内もそうだと思いますが、自分はまるドメ、まるでドメスティックである、中にずっといるんだということを卑下しているようで実は自慢しているという風潮があるのではないかと。つまり、本社の経営企画室にいるんだ、国会対策で自分はいつもいるんだということがですね。  そういうふうになりますと、やはり外へ出ていくことに余りプラスを感じなくなる。昇進だけが問題ではございませんが、サラリーマン社会はどこでも、会社も政府も同じでございますから、やはり外に出た人を評価するシステム各省庁、外務省以上に各省庁が必要としているのではないかというふうに私は存じますので、ちょっと余計ではございますが、一言申し上げたいと思います。
  75. 宮島喜文

    ○宮島喜文君 ありがとうございました。  私は、いろんなことを考えるうちに、やっぱり基本的に優秀な方がもちろん外交官になっているわけでございますが、その中でやはり大切になっているのは、ちょっと先ほどお話があったかと思いますが、いわゆる歴史観をきちんと、日本歴史観をきちんと持つというところでやはりプライドが出てくると私は思うわけでございまして、その辺をやはり、外務省というのは先輩から後輩にということが非常にあるかと思いますけれども、きちんとした中の教育というか人づくりの中で持っていただくことが必要だろうというふうに思うところでございます。  それからもう一つ御質問させて、一言だけなんですが、在外公館機能強化というお話がございましたが、非常に難しいものがございますが、本当に公館が役割を果たしているかどうかという、そこが問題だろうと私は思います。確かに情報伝達なんかは非常に遅れているのかなというような節もしましたけれども、これを藤崎参考人に聞きたいんですが、これは、公館というのは、本当に日本公館はそれぞれいろんな事情があっていろんな場所にあるわけでございますが、十分その機能を果たしているとお思いでしょうか。不足の点があったら、この辺は一番不足なんだというところを教えていただきたいと思います。
  76. 鴻池祥肇

    会長鴻池祥肇君) どうぞお願いします。
  77. 藤崎一郎

    参考人藤崎一郎君) 実は、今の点について、私も百数十ある公館について全部しっかり機能しているということを申し上げる自信はございませんが、ほとんどの公館については一生懸命やっていると思いますが、先ほど申しましたように、自分がいることにかなりのエネルギーを注いでいるというところがあるのも事実でございますので、お願いでございますが、是非、ここにいらっしゃる国会議員の方は、大きな団でなく、十人とかそういうことじゃなくて、お一人か二人でそういう少数公館に行って見ていただきたいと。そういたしますと、というのは、十人で来られますと、来られるというとあれですけど、三人か四人のところで倒れてしまいますから、是非少人数で行って見ていただいて、どうだろうかというところを時々見ていただくように、私は実は、外務省代表して言うわけではないんですが、恐らくそういうことをお願いすべきではないのかなというふうに感じます。  以上でございます。
  78. 宮島喜文

    ○宮島喜文君 ありがとうございました。  その件については会長さんにいろいろ考えていただきたいと思いますが、よろしくお願いします。  私からの質問はこれぐらいにいたします。ありがとうございました。
  79. 鴻池祥肇

    会長鴻池祥肇君) 杉尾秀哉君。
  80. 杉尾秀哉

    杉尾秀哉君 民進党の杉尾秀哉でございます。  参考人の三人の先生方、本当にありがとうございました。貴重な話が伺えました。  藤崎参考人は、私が九八年から〇一年までアメリカのワシントンで前職TBS時代に特派員をやっておりまして、最後支局長だったんですけれども、そのときに、赴任したときに筆頭公使をしていらしたのが藤崎さんということで、お話が伺えて非常に光栄でございます。  私の方からは二点あります。今人材の話がありましたのでまずその話なんですけれども、私も特派員時代アメリカ在の大使館の皆さんとお付き合いをして痛感していたのが、メディアの仕事とそれから外交官仕事というのは非常に似ていると。つまりは、優秀な外交官はやっぱり情報収集能力が高いし、そしてその発信力が高いと。これは誰とは申し上げませんけれども、ということを痛感しておりました。  そういう意味で結構職業的に親和性は高いと思ったんですけれども、意外とそういう人材のリボルビングが日本の場合はない。今日、川端参考人がいらっしゃって、川端先生は時事通信から国連に行かれたということなのでそういう人材だと思うんですけれども、そういうメディアだけでなくてもいいんですけれども、さっきの話は内部の人材の育て方だったんですが、逆にそういう人材のリボルビングがもっとあってもいいんじゃないかというふうに思うんですけれども、まずそれについての三人の参考人の皆さんの御意見、お考えを聞かせてください。
  81. 藤崎一郎

    参考人藤崎一郎君) 今、杉尾委員の言われたのは、まさに私もそのとおりだと思います。大変情報をまず早く得なきゃいけないという点で、そしてそれをどう発信していくかという意味で、外交官仕事とメディアの仕事に共通性が大きいと思いました。  人材のリボルビングについてでございますが、私は基本的には賛成でございます。ただ、大事なことは、一定の訓練をしてリボルブしていくということではないだろうかと。というのは、外交仕事におきまして、一つ間違えると相手国の世論、日本国民との世論で大変なことになるケースもございます。  そこで、やはりOBの大使であるとかあるいはOBの次官であるとかいろいろな人が、外交についても経験をしてきた人が一緒に数か月間の間お話をして、こういう失敗をしてしまったとか、こういうときにはもっと相談しなきゃいけなかったという赤裸々な話、著書に書いて出版するような話じゃない話をきちんとお伝えしながら、しかし、できるだけ多くの人にやはり外交世界に入っていただくことが私は大事だろうと思います。  以上でございます。
  82. 河東哲夫

    参考人河東哲夫君) おっしゃるとおりだと思うんで、基本的にいいことだと思いますけれども、やっぱり外務省員の方からいけば、メディアの方が適しているようなポスト、例えば政務関係であるとかそれから広報関係なんですけれども、それは外務省員にとっても是非行きたいポストである場合が多いわけですよね。ですから、そこはやっぱり数に制限が出てくると思います。  それから、メディアの方にとっても、外務省に二年なり三年なり出ていることによってそのキャリア上被るマイナスがあるかもしれませんし、そこら辺は数が当然限界が出てくると思います。  それに並んで、ちょっと話は違うかもしれないんですけれども外務省内部でもやっぱり人事の動きの問題がありまして、それはやっぱりいわゆるキャリアと専門職の間の差別の問題、差別というか区別の問題だと思います。  これは各省全てある問題なんですけれども、特に外務省の場合、キャリアと専門職の間でその区別を付けるのが難しいんですよね。教育水準も同じになりましたし、この区別があることによっていろんな摩擦が起きているのも事実だし。ただ、一度に廃止すると、これまでその下で生きてきた人たちとの間の不公平という問題が生じますから。でも、これは本当に真剣な議論を必要とする問題だろうと思います。  以上です。
  83. 鴻池祥肇

    会長鴻池祥肇君) 先、藤崎参考人
  84. 藤崎一郎

    参考人藤崎一郎君) 一つ申し遅れたので。  先ほどの杉尾委員の御意見について、私賛成であると同時に、できれば、外交官仕事はほかの方もできるということだけでなく、外交官もほかの仕事ができるということで、外交官がTBSの特派員をしばらくさせていただくとか、時事通信の特派員をさせていただくというようなことも勉強になるのではないかと思いますので、一言申し添えます。
  85. 鴻池祥肇

    会長鴻池祥肇君) では、続いて川端参考人
  86. 川端清隆

    参考人川端清隆君) そのとおりだと思うんですけれども、本格的にリボルビングの話、つまり転職ですか、あるいはキャリアアップ、ミッドキャリアの育成、そういうこと、今の日本に足らないことばっかりですよね。どっぷりと我々この終身雇用制の世界につかってきて、むしろ転職をしたら信用できない人間だと一時期思われた時代もあったかと思います。ところが、翻って国際社会、ニューヨークの方に行ってみますと、リボルブしないと、つまり転職しないと上に行けないと、そんなこともあるんですよね。  ところが、国連職員の視点でいきますと、一旦辞めた通信社にもう戻ることはできない、外務省は受け入れてくれるのかと。つまり、リボルブする場所がない、ニューヨークから。その一方で、例えば、私がおりました国連政治局というのは、政務官の平均年齢というのは実は四十九歳なんですよね。つまり、もうあっちこっちでいろんなことをやってきた人間が集まってくると。そういう世界日本もやっぱり対応できるような人間にならないといけない。  もう一つ。能力の問題ですけれども、単にこういったコントロールされている空間の中で優秀な人間と、アフリカのジャングルの中に入っていってまさに紛争地の人に寄り添いながら活動できる人材と、いろんなもの、能力があるはずなんです。さっきNGOの話をさせていただきましたけれども、そういうことも含めて、日本世界に手を伸ばしていろんな人間を送り出せるような、これはもう教育改革から働き方改革、今、国会でやっておられると思いますけれども、かなり大きな話になっていくと思います。
  87. 杉尾秀哉

    杉尾秀哉君 実は、今の話の続きで言うと、私のワシントン時代に部下で働いていた現地採用のアメリカ人は、その後、国務省に変わりまして、イラク大使付けの広報担当になりました。そういうケースがやっぱり実際ある。  もう一点なんです。これは短くなんですが、先ほど藤崎参考人がおっしゃられた小さい大使館。  先般、私、院の派遣で、ODAの視察で南アフリカに行かせていただきまして、南アフリカ、マラウイ、モーリシャスという三か国に行きまして、そこでマラウイに行って感じたことなんですけれども、ちっちゃな大使館ですね、大使はJICAの出身の方で女性の方なんですけれども、ここに大使館の機能があって、ここも少人数でやっている。また、JICAはJICAで結構人がいて、また全然別のオフィスでやっている。ジェトロはジェトロで、常駐はいないけれども時々やってくる。やっぱりそれぞれセキュリティーのことも含めてオフィスが分かれているので、非常に効率的じゃないと。  これ、中国大使館が広大な敷地を何か確保して、そこに中国関連のそういう部署は全部入っているらしいんですけど、日本もこういう、小さいところはこうやってその機能を集約することによって、大使館だ、JICAだ、ジェトロだと、こう分かれずに、機能を集約することによって効率化を図っていって、そういうことを通じた機能強化みたいなことができるんじゃないかと思うんですけれども、それがなぜできないのか。短く、藤崎参考人でも河東参考人でもいいですけど、聞かせてください。
  88. 鴻池祥肇

    会長鴻池祥肇君) お二人からお聞きしますから。  藤崎参考人
  89. 藤崎一郎

    参考人藤崎一郎君) 私もよく存じません。恐らく国有財産管理の観点ではないかと思いますが、かつてインドネシアで大使館の中にいろいろ経済協力基金等入っていたことはございますが、その後分かれてしまいました。余りそういうケースはございませんが、今おっしゃる点は合理的であると思います。
  90. 鴻池祥肇

    会長鴻池祥肇君) 河東参考人、お願いします。
  91. 河東哲夫

    参考人河東哲夫君) 私も、そのマラウイの大使は、ウズベキスタン大使時代にJICAの所長として働いていた柳沢大使だと思いますけれども、オフィスは別のところにありましたですね。それで特に差し支えはなかったんですけれども、おっしゃるとおりではあると思います。  ただ、それは国有財産の問題がありますし、それからJICAの所長について言えば、やっぱりJICAの所長はJICAの大使みたいな感じで格が高いですから、やっぱりその上に大使がいるような感じは余り喜ばしくないと思うかもしれません。でも、おっしゃるとおりだと思います。
  92. 杉尾秀哉

    杉尾秀哉君 分かりました。ありがとうございました。
  93. 鴻池祥肇

    会長鴻池祥肇君) 次に、武田良介君。
  94. 武田良介

    ○武田良介君 一点だけ、藤崎参考人にお聞きしたいと思っています。  今日のお話の中にも、外務省員基礎知識向上というお話の中で、歴史教育といいますか近現代史の教育といいますか、不十分になっているところがあるというようなお話があったかというふうに思いますし、事前の資料を読ませていただいたときにも、そういった歴史を知らないと近隣の韓国、中国がなぜ日本に対してこういう感情を持つのか分からずに、結果的にヘイトスピーチなどにつながってしまうという話もあったかと思いまして、私もそのとおりだなというふうに思って読ませていただいたんですが。  いろんな問題を解決していく上でも、この歴史認識といいますか、を互いに深めていくことは非常に重要ではないかなというふうに思っておりまして、日本と韓国だとか、また中国などとの間で何かまとまって歴史研究をするだとか、そういったことが有識者のレベルなんかは幾らか、民間レベルといいますか、あるのかもしれないんですが、まとまった形でやられているとか、そういったことが可能にならないのかとかいうことをちょっと関心を持っておりまして、いかがでしょうか。
  95. 藤崎一郎

    参考人藤崎一郎君) その点については過去にも、三か国ではございませんが、二か国で学者の間で共同研究をやっていただこうというようなことが何回かございましたが、余り実はそもそもの立場の違いからまとまらなかったというふうに承知しております。  今、武田委員の御質問とずれる点がございますが、ちょっと発信についてこの機会に一言だけ申しますと、発信について二点誤解があるかなという点を申してよろしゅうございましょうか。
  96. 鴻池祥肇

    会長鴻池祥肇君) どうぞ。
  97. 藤崎一郎

    参考人藤崎一郎君) 一つは、これは先ほど川端参考人もおっしゃっていた緒方さんと話をしましたときに、日本は発信が下手だというけど自分はそう思わない、むしろ日本人は聞き下手だということをおっしゃいまして、私も実は同感な面がございます。  何かと申しますと、一定の固定観念がございまして、スリープ、スマイル、サイレントか何かというようなことで、国際会議日本発言力は非常に低いということが言われておりまして、これは何十年か前かのあれが残っておりますが、そういう面もないではないかもしれないけれども、もう随分違ってきている。むしろ、それを払拭するために自分立場をすごく言おうということになっておりますが、まずはどの人間関係でも相手に関心を持つことによって発信できると。歴史認識もそうなのでございますが、分かっている土俵をできるだけ大きくしていくということが必要だろうという点が一つでございます。  もう一つの点は、実は外交理念ということに関しましては、単純でございますが、国民の安全と繁栄をできるだけ大きくするということに尽きるわけでございまして、どの国もファーストでございます。アメリカ・ファーストだけでなくて、日本ジャパン・ファーストで国会政府もやっているのは当たり前でございますが、言わずもがなで、そこのところをそんなに打ち出さないでうまく結果が反映されるようにしている。そのときに、例えば中国でございますとか韓国とか、国名を挙げるとございますけれども自分外交をできるだけ広報的に見せていく。しかし誰も、チャイナ・デーリーを読みながら、それをそのとおり受け止めている人はいないということを考えますと、広報というのは、これはさっき河東さんが言われたとおりの点がございますが、見えない広報というのの効果もかなりある点が発信の点で重要であるということをちょっと補足させていただきたいと思いまして申し上げました。  以上でございます。
  98. 川端清隆

    参考人川端清隆君) 済みません、ちょっと歴史観の話が出てきましたので。  私が今教えている大学は福岡にありまして、福岡から韓国釜山まで三時間です、フェリーで。その中で国際問題を教えるということであれば、慰安婦問題とかやらざるを得ないんですよね。その体験からしまして、統一した歴史観だとか、それを達成するというのはやっぱり無理があると思います。各国、歴史というのはその国のアイデンティティーにつながるものでありますから。  我々、大学でできることというのは、違いが何なのかと、何でこんなことを向こうの人は言っているのと、そういう事実関係をもう一回、日本の若い人たち、勉強し直しましょうと。それが更に日本の全体に広がって、日本の近代というのは一体何だったのかと、特に明治維新以降、日本の近代における帝国主義と植民地主義の役割というのは一体何だったのかと、そこまで掘り下げてやった上で、そして今の韓国があり、日本があるというふうに持っていくしかないのではなかろうかと私は思います。
  99. 武田良介

    ○武田良介君 ありがとうございました。聞き下手な話だとか、今の川端参考人の話も非常に参考になりました。  ありがとうございました。終わります。
  100. 鴻池祥肇

    会長鴻池祥肇君) 伊波君。
  101. 伊波洋一

    ○伊波洋一君 せっかくの機会ですので、藤崎参考人にお伺いしたいと思うんですが、今年は日中国交回復四十五周年、そして来年は平和友好条約四十年なんです。やはり日本にとって一番大きな課題は、今、中国との外交関係の正常化をどうしてつくっていくかということだと思うんですが、今日も本会議でも安倍首相もそのことをお話をされておりました。  南シナ海でもフィリピンが現状凍結という形で、習近平主席との首脳会談でその一つの方向性を出したわけですけれども、私たちが今抱えております尖閣問題、この参考の資料もいただきましたが、共同開発などということではなくて、現在日本が施政権を持っておりますので、現状凍結という形で、基本的には二〇〇九年以前の状況にすることによって日中の関係をやはりしっかりしたものにしていく、そのことが今、日本外交の大きな目標にならなきゃいけないのではないかなと思っているんですけれども、こういう、フィリピンのドゥテルテ大統領が提起したあの問題での現状凍結を、例えば尖閣問題で、日中の中で、棚上げというのはもう使い古された言葉ですので、現状凍結という形にして、わざわざ公船を中国が出す必要がないような状況、そういう関係をつくることは可能だと考えますでしょうか、それともそれは難しいと思いますでしょうか。
  102. 藤崎一郎

    参考人藤崎一郎君) 今、伊波委員のおっしゃった現状凍結という言葉意味が私ははっきり把握できていないのかもしれませんが、二〇〇九年以前に戻すという意味が、もし、国が買上げをした以前に戻すことが現状凍結なのか、今のままを現状凍結なのかということでございますと、一旦買い上げたのを戻すということは、決して、恫喝が効いたということになりますので適当ではないだろうと。  ただ、今のまま何もしないということであれば、これはまさにそういう方針で今、特定の場合以外には日本人の上陸も認めないと、船泊まり場も造らないしという方針で来ているわけで、これにはいろいろ御意見のある党もあると思いますけれども、これをこのまま続けていくということは恐らく適当ではないだろうかと。  そして、日中関係につきますと、実は日本の問題というよりは、中国はいろんな国との間で問題を今起こしているところで、ベトナムもそうでございます、フィリピンもそうでございますし、インドネシアでもございましたし、この今の中国の外交が力をもって、あるいは恫喝をもってやっているということに関してはかなりこの地域で三年前と全く違った認識が広がっておりますから、今、日本はこれまでの外交を変えることなく、この状況で中国がもう少し理解を深めてくれるのを待つ時期ではないかというふうに私は思っております。
  103. 伊波洋一

    ○伊波洋一君 ありがとうございました。  二〇一四年の首脳会談の前に、日中はそれぞれの尖閣に関する認識を、主張していることを理解するという立場に変わりましたので、そういう意味では間合いは詰められてきていると思うんですね。ですから、私も今、現状凍結というのは国の所有を変えるという云々じゃなくて、現状を凍結した上で互いにそこを以前の管理の状況につくるという提起がやっぱり必要ではないかと思っておりまして、たまたま外交防衛委員会にも属しているものですから、そういう機会がいろいろあって、これから提起しようと思ってわざわざ意見をお伺いさせていただきました。  ありがとうございました。以上です。
  104. 鴻池祥肇

    会長鴻池祥肇君) それでは、他に御発言もないようですから、本日の質疑はこの程度といたします。  一言お礼の御挨拶を申し上げます。  お三方の参考人先生方には、御多用の中、御出席をいただきまして、貴重な御意見を賜りました。誠にありがとうございました。どうぞ、ますますの御活躍を祈念申し上げております。(拍手)  本日はこれにて散会いたします。    午後三時五十二分散会