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2017-04-04 第193回国会 参議院 外交防衛委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成二十九年四月四日(火曜日)    午前十時開会     ─────────────    委員異動  四月三日     辞任         補欠選任      佐藤 正久君     元榮太一郎君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         宇都 隆史君     理 事                 阿達 雅志君                 堀井  巌君                 山田  宏君                 大野 元裕君                 浜田 昌良君     委 員                 佐藤  啓君                 滝沢  求君                 武見 敬三君                 中曽根弘文君                 中西  哲君                 元榮太一郎君                 山本 一太君                 小西 洋之君                 福山 哲郎君                 藤田 幸久君                 山口那津男君                 井上 哲士君                 浅田  均君               アントニオ猪木君                 伊波 洋一君    国務大臣        外務大臣     岸田 文雄君        防衛大臣     稲田 朋美君    副大臣        内閣府副大臣   越智 隆雄君        外務大臣    岸  信夫君    大臣政務官        外務大臣政務官  小田原 潔君        外務大臣政務官  武井 俊輔君        外務大臣政務官  滝沢  求君    事務局側        常任委員会専門        員        宇佐美正行君    政府参考人        内閣官房内閣審        議官       槌道 明宏君        外務大臣官房地        球規模課題審議        官        相星 孝一君        外務大臣官房審        議官       宮川  学君        外務大臣官房審        議官       飯田 圭哉君        外務大臣官房審        議官       三上 正裕君        外務大臣官房参        事官       飯島 俊郎君        外務省アジア大        洋州局長     金杉 憲治君        外務省北米局長  森  健良君        外務省中南米局        長        高瀬  寧君        財務大臣官房審        議官       田中 琢二君        防衛大臣官房衛        生監       塚原 太郎君        防衛省防衛政策        局長       前田  哲君        防衛省統合幕僚        監部総括官    辰己 昌良君        防衛装備庁装備        政策部長     中村 吉利君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○政府参考人出席要求に関する件 ○日本国自衛隊アメリカ合衆国軍隊との間に  おける後方支援物品又は役務相互提供に  関する日本国政府アメリカ合衆国政府との間  の協定締結について承認を求めるの件(第百  九十二回国会内閣提出、第百九十三回国会衆議  院送付) ○日本国自衛隊オーストラリア国防軍との間  における物品又は役務相互提供に関する日  本国政府オーストラリア政府との間の協定の  締結について承認を求めるの件(内閣提出、衆  議院送付) ○日本国自衛隊グレートブリテン及び北アイ  ルランド連合王国軍隊との間における物品又  は役務相互提供に関する日本国政府とグレ  ートブリテン及び北アイルランド連合王国政府  との間の協定締結について承認を求めるの件  (内閣提出衆議院送付)     ─────────────
  2. 宇都隆史

    委員長宇都隆史君) ただいまから外交防衛委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  昨日、佐藤正久君が委員を辞任され、その補欠として元榮太一郎君が選任されました。     ─────────────
  3. 宇都隆史

    委員長宇都隆史君) 政府参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  日本国自衛隊アメリカ合衆国軍隊との間における後方支援物品又は役務相互提供に関する日本国政府アメリカ合衆国政府との間の協定締結について承認を求めるの件外二件の審査のため、本日の委員会に、理事会協議のとおり、政府参考人として内閣官房内閣審議官槌道明宏君外十三名の出席を求め、その説明を聴取することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 宇都隆史

    委員長宇都隆史君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  5. 宇都隆史

    委員長宇都隆史君) 日本国自衛隊アメリカ合衆国軍隊との間における後方支援物品又は役務相互提供に関する日本国政府アメリカ合衆国政府との間の協定締結について承認を求めるの件、日本国自衛隊オーストラリア国防軍との間における物品又は役務相互提供に関する日本国政府オーストラリア政府との間の協定締結について承認を求めるの件及び日本国自衛隊グレートブリテン及び北アイルランド連合王国軍隊との間における物品又は役務相互提供に関する日本国政府グレートブリテン及び北アイルランド連合王国政府との間の協定締結について承認を求めるの件、以上三件を一括して議題といたします。  政府から順次趣旨説明を聴取いたします。岸田外務大臣
  6. 岸田文雄

    国務大臣岸田文雄君) ただいま議題となりました日本国自衛隊アメリカ合衆国軍隊との間における後方支援物品又は役務相互提供に関する日本国政府アメリカ合衆国政府との間の協定締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。  我が国及び国際社会の平和及び安全の確保に資するための自衛隊法等の一部を改正する法律等成立を受けて、平成八年に締結され、平成十一年及び平成十六年に改正された日米物品役務相互提供協定に代わる新たな協定締結することにつき、アメリカ合衆国政府協議した結果、平成二十八年九月二十六日に署名を行った次第であります。  日米物品役務相互提供協定は、日本国自衛隊アメリカ合衆国軍隊との間における、それぞれの国の法令により認められる物品又は役務提供に係る決済手続等を定めるものです。この協定により、平和安全法制に基づく物品又は役務提供についても現行日米物品役務相互提供協定に定める決済手続等枠組みを適用することができるようになります。  この協定締結は、日本国自衛隊アメリカ合衆国軍隊との間の緊密な協力を促進し、日米安全保障条約の円滑かつ効果的な運用に寄与し、また、平成二十七年四月に公表された日米防衛協力のための指針において言及されている二国間協力実効性に寄与することとなります。さらに、日本国自衛隊アメリカ合衆国軍隊が行う活動においてそれぞれの役割を一層効率的に果たすことを促進し、国際の平和及び安全に積極的に寄与するものと考えられます。  よって、ここに、この協定締結について御承認を求める次第であります。  次に、日本国自衛隊オーストラリア国防軍との間における物品又は役務相互提供に関する日本国政府オーストラリア政府との間の協定締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。  我が国及び国際社会の平和及び安全の確保に資するための自衛隊法等の一部を改正する法律等成立を踏まえ、平成二十五年に締結された日豪物品役務相互提供協定に代わる新たな協定締結することにつき、オーストラリア政府協議した結果、平成二十九年一月十四日に署名が行われた次第であります。  日豪物品役務相互提供協定は、日本国自衛隊オーストラリア国防軍との間における、それぞれの国の法令により認められる物品又は役務提供に係る決済手続等を定めるものです。この協定により、平和安全法制等に基づく物品又は役務提供についても現行日豪物品役務相互提供協定に定める決済手続等枠組みを適用することができるようになります。  この協定締結により、日本国自衛隊オーストラリア国防軍がそれぞれの役割を一層効率的に果たすことを促進し、国際の平和及び安全に積極的に寄与することが期待されます。  よって、ここに、この協定締結について御承認を求める次第であります。  次に、日本国自衛隊グレートブリテン及び北アイルランド連合王国軍隊との間における物品又は役務相互提供に関する日本国政府グレートブリテン及び北アイルランド連合王国政府との間の協定締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。  平成二十六年五月以来、英国政府との間でこの協定交渉を行った結果、平成二十九年一月二十六日に署名が行われた次第であります。  この協定は、日本国自衛隊連合王国軍隊との間における、平和安全法制を含むそれぞれの国の法令により認められる物品又は役務提供に係る決済手続等を定めるものです。  この協定締結により、日本国自衛隊連合王国軍隊がそれぞれの役割を一層効率的に果たすことを促進し、国際の平和及び安全に積極的に寄与することが期待されます。  よって、ここに、この協定締結について御承認を求める次第であります。  以上三件につき、何とぞ御審議の上、本件につき速やかに御承認いただきますようお願いいたします。
  7. 宇都隆史

    委員長宇都隆史君) 以上で趣旨説明の聴取は終わりました。  これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  8. 阿達雅志

    阿達雅志君 自由民主党の阿達雅志です。  ただいま岸田外務大臣から趣旨説明をいただきました、日米日豪日英、三本のACSAについて質問させていただきたいと思います。  冒頭、昨日、岸田外務大臣は、一月九日から一時帰国をされていました長嶺韓国大使帰任について発表をされ、そしてまた、今日、大使帰任されたということでございます。その件について、どういう背景で今回の帰任ということを決断をされたのか、是非、実はこれは事前通告しておりませんけれども、御説明をいただければと思います。
  9. 岸田文雄

    国務大臣岸田文雄君) 御指摘のように、本年一月から一時帰国させておりました長嶺駐韓大使、そして森本在釜山総領事を本日帰任させることといたしました。  こうした決定を行いましたのは、まず一つは、朴槿恵前大統領の罷免や逮捕といった状況が生じ、五月九日に韓国におきまして大統領選挙が行われる予定であり、韓国政権移行期にある中で情報収集等に一層力を入れ、次期政権の誕生に十分備える必要があるということ。  さらには、一月以降、北朝鮮による挑発的な言動が続いております。こうした北朝鮮問題に対処する上で、日韓間の高いレベルでの緊密な情報交換を行い、そして、韓国政府との緊密な連携を図る必要があるということ。  さらには、この慰安婦像の問題ですが、慰安婦像の問題については、これまで現政権外交当局を通じて抗議をし、そして日韓合意の遵守を強く働きかけてきたところですが、結果は出ておりません。こうしたこの慰安婦像の問題を長嶺大使から直接、黄教安大統領権限代行合意の履行を強く働きかけ次期政権に継承してもらう必要があるということ。  こうした諸般の事情を総合的に判断した結果、こうした決定を行った次第であります。  さらには、邦人保護に万全を期す観点、こういったものも踏まえた、こういった次第であります。  いずれにしましても、慰安婦像の問題については政府として韓国側に対し粘り強く合意の着実な実施を求めていく、この方針については何ら変更はないと考えています。帰任させる長嶺大使を通じて、直接韓国側に強く働きかけを行いたいと考えております。  以上です。
  10. 阿達雅志

    阿達雅志君 どうもありがとうございます。  ただいまの外務大臣お話で、韓国政権移行期にある、そしてまた北朝鮮の挑発への対応、また今懸案となっている慰安婦像問題の解決への交渉、それに加えて邦人保護という四点の御指摘がございました。  こういう背景としては、やはり現在の日本を取り巻く安全環境についての大きな見方というのが背景にあるのではないかと思うんですけれども、二年前に平和安全法制成立して以降の日本を取り巻く安全保障環境に関して、外務大臣の御所見、どういう基本認識を持っておられるかを御説明いただければと思います。
  11. 岸田文雄

    国務大臣岸田文雄君) まず、平和安全法制成立後も日本を取り巻く安全保障環境、一層厳しさを増していると認識をしております。北朝鮮はこの平和安全法制成立後も核実験弾道ミサイルを繰り返しております。こうした北朝鮮のこの脅威、これは新たな段階脅威になっていると考えます。また、中国による透明性を欠いた軍事費拡大東シナ海南シナ海等海空域における力を背景とした一方的な現状変更の試み、こうしたものは国際社会共通の懸念となっていると考えます。  このような安全保障環境の下、日本の安全及び地域国際社会の平和と安全を実現するためには、国際協調主義に基づく積極的平和主義立場から力強い外交を推進していく必要があると認識をしております。是非我が国にとって好ましい国際環境を実現するために外交立場からしっかり努力を続けていかなければならない、強いこの思いを感ずるところでございます。  以上です。
  12. 阿達雅志

    阿達雅志君 ありがとうございます。  ただいまの外務大臣お話を聞きましても、やはり日本を取り巻く安全保障環境というのはどんどん厳しくなってきているのではないか、そういうふうに感じたところでございます。  特に北朝鮮、そして中国がこれからどういう動きをするかということは非常にこれ気を付けていかないといけないところでございますし、その意味で、今週予定されております米中の首脳会談、ここで、北朝鮮問題を含め、あるいはアメリカ中国との間での東シナ海南シナ海の問題、その他貿易問題を含め、どういう話がされていくかというのは、これ非常に日本にとっても気を付けて見ていかなければいけないところではないかというふうに思います。是非外務大臣におかれても引き続きしっかりこの中国動きアメリカ動き、にらんだ上で外交を進めていただきたいと思います。  それで、次の質問に移らせていただきます。  現在、二年前に制定されました平和安全法制、そしてまた日米ガイドラインがあると、こういうことによって日米同盟は具体的にどのような点で深化したと言えるのでしょうか。特に、二月の十日には日米首脳会談において、安倍総理とそしてトランプ大統領の間で非常に長時間にわたりいろんな話がなされたと思います。そういう中で、日米関係日米同盟というのはしっかり確認をされたわけですけれども、やはりそこにおいて、この平和安全法制があったこと、あるいは日米ガイドラインがあったことというのがどういうような点で影響をしたのか、それについて外務大臣所見をお聞かせいただきたいと思います。
  13. 岸田文雄

    国務大臣岸田文雄君) 平和安全法制、そして日米の新ガイドラインによって、まず日米信頼関係は大きく向上し、同盟関係は一層強固なものになったと認識をしております。実際、一連の北朝鮮による核実験あるいは弾道ミサイル発射への対処などにおける日米連携は、従来よりも一層緊密かつ円滑に行われていると考えております。この点につきましては、米側においても、この地域米軍を統括するハリス太平洋軍司令官は、平和安全法制と新ガイドライン日米の能力を向上させ日米間の連携が向上した、こうした発言を行っています。  これは、新ガイドラインの下、平時から利用可能な同盟調整メカニズムが設置された結果、不審な兆候を把握した段階で速やかに必要な協議協力を開始することが可能になりましたが、その効果が顕著に現れたものであると考えています。このような同盟調整メカニズムを裏打ちするのが平和安全法制であり、あらゆる事態切れ目なく対処し得る平和安全法制整備された結果、日米連携切れ目なくスムーズに行うことが可能になったと思っております。  さらに、国と国との間の条約に基づく同盟関係であっても、それを実際に支えるのは人と人との信頼関係です。その意味で、先日、御指摘になられました二月十日の日米首脳会談等日米間の頻繁なハイレベルな対話の存在、これも大変大きな意味があるのではないか、こんなことも感じております。
  14. 阿達雅志

    阿達雅志君 ありがとうございます。  やはり、人と人との信頼関係、これを更に育てていく上で、こういう平和安全法制、そして日米ガイドラインがしっかり機能したということではないかと思います。  この平和安全法制制定に関しては、相当いろんな議論が国会でもなされました。ですが、私は個人的には、やはり特定秘密保護法国家安全保障会議の設置、そしてこの平和安全法制、こういったものがあったからこそ、そういう日米信頼関係がしっかり保たれ、そして、またそれによって現在の厳しい安全保障環境、この中で日米がしっかり協力していけているんじゃないかというふうに思っているところでございます。  それでは、この平和安全法制ができたことによって、今、人と人との信頼関係が熟成されてきたということを外務大臣からお聞きしましたが、同じ質問を、自衛隊米軍との共同活動という点で、共同活動がやりやすくなったと感じる点はどういうところにあるんだろうか、この点を防衛大臣所見をお聞きしたいと思います。
  15. 稲田朋美

    国務大臣稲田朋美君) 今委員も御指摘になり、外務大臣からも御答弁がありましたように、国民の命と平和な暮らしを守り抜く、しかも我が国を取り巻く安全保障環境が厳しさを増す中において、国際社会の平和と安定にこれまで以上に積極的に貢献をするためにはあらゆる事態に対する切れ目のない対応を可能とする法制度が必要であって、そういった問題意識の下で平和安全法制整備をされました。そして、平和安全法制、さらには新ガイドラインによって日米が互いに助け合うという信頼関係は一層強固になり、同盟関係のきずなも強くなったというふうに思います。実際にも、昨年以降繰り返される北朝鮮核実験及び弾道ミサイル発射への対処に当たっても、日米は従来よりも一層緊密かつ円滑に連携することができております。  二月四日に開催されましたマティス国防長官との防衛大臣会談でも、米国拡大抑止の揺るぎないコミットメントを含む日米同盟重要性確認することができましたし、また、一昨年策定された新たな日米防衛協力のための指針、新ガイドラインを踏まえつつ、日米同盟抑止力対処力を一層強化する必要があるという認識で一致をいたしております。これは、我が国平和安全法制が土台となって、我が国の平素から有事に至るまでのあらゆる事態において、今後必要があれば、日米での共同活動をより活発化することができるということを踏まえたものでございます。  平和安全法制整備を受けた自衛隊活動日米連携具体化等について、今後とも精力的に取り組んでまいりたいと考えております。
  16. 阿達雅志

    阿達雅志君 どうもありがとうございます。  ACSA協定、今回提出されているその背景について、今両大臣から御説明をいただいたところでございます。ですので、これからちょっとACSAそのものについての質問に入らせていただきたいと思います。  既に三月三十一日の本会議で、当委員会堀井筆頭、そして井上委員浅田委員からもACSA協定についてもういろいろ質問が出ておりますので、多少重なる部分もありますが、そのACSA協定確認ということも含めて質問させていただきたいと思います。  まず、ACSA締結することの意義目的について教えていただけますでしょうか。
  17. 岸田文雄

    国務大臣岸田文雄君) まず、ACSAは、自衛隊相手国軍隊との間の物品役務相互提供に適用される決済手続等枠組みを定めるものです。これらを締結することによって、自衛隊相手国軍隊との間の物品役務相互提供を円滑かつ迅速に行うことが可能になるというものであります。  我が国を取り巻く安全保障環境、先ほども御指摘がありましたように、一層厳しさを増している中ですが、我が国は、米国との間で二〇一五年四月に新たな日米防衛協力のための指針を策定するとともに、切れ目のない対応を可能とするための平和安全法制整備し、同法制は昨年三月に施行されました。今回の日米ACSA締結は、同法制によって幅の広がった日米間の安全保障協力の円滑な実施に貢献し、そして協力実効性を一層高める点で大変大きな意義があると考えております。  また、近年、自衛隊豪州国防軍あるいは英国軍協力する機会が増加する中、この平和安全法制の内容も踏まえた今回の日豪ACSA日英ACSA締結は、自衛隊豪州国防軍英国軍との間の緊密な協力を促し、そして、我が国安全保障に資するもののみならず、我が国国際社会の平和と安全に、より積極的に寄与するということにおいても大変意味があるものであると考えております。
  18. 阿達雅志

    阿達雅志君 どうもありがとうございます。  今、ACSA締結する意義目的、御説明をいただきましたけれども、では逆に、ACSA承認されない場合又は仮に今何か緊急事態が発生した場合にACSA締結されていない、これ日英ではまだ締結されていないわけですけれども、こういう状況で何が起きるのか。協力そのもの支障が起きるのか、それとも決済手続等支障が起きるだけなのか、その辺りについて教えていただければと思います。
  19. 森健良

    政府参考人森健良君) お答え申し上げます。  ACSAは、自衛隊相手国軍隊との間の物品役務相互提供に適用される決済手続等枠組みを定めるものということで、その際に自衛隊相手国軍隊との間で物品役務提供や受領を実施するための法的根拠、これは自衛隊法を始めとする我が国国内法にございます。このため、国内法上は自衛隊実施できるとされる物品役務提供であっても現行ACSA適用対象となっていない場合には、現実の問題として、それらの物品役務提供についてACSAに基づいて決済を完了することができないなどの支障が生じ、協力が円滑に実施されないおそれがございます。  この意味で、ただいま御審議いただいております新日米ACSA、新日豪ACSA及び日英ACSAは、自衛隊各国軍隊の間での物品役務相互提供を円滑かつ迅速に実施するために不可欠なものと考えております。
  20. 阿達雅志

    阿達雅志君 ありがとうございます。ACSAは、やはり協力を円滑に進める上で重要だということを今お話をいただきました。  この三つACSA日米日英日豪、この三つ協定を見ると枠組みはほぼ同じのように思われるのですが、これは枠組みはほぼ同じと考えてよいのでしょうか。また、その日米、そして日豪日英対象となる活動というのは同じなんでしょうか。それについてお願いいたします。
  21. 森健良

    政府参考人森健良君) お答えいたします。  新日米ACSA、新日豪ACSA日英ACSAのいずれも、自衛隊米軍豪軍、英軍との間の物品役務相互提供に適用される決済手続等を定めるものであり、その枠組みは同じでございます。また、物品役務提供対象となる活動及び提供される物品役務の範囲につきましては、新日米ACSAのみが適用対象としている米軍施設・区域の警護といった一部の活動のためのものを除き、基本的に同じであります。
  22. 阿達雅志

    阿達雅志君 ありがとうございます。  基本的な枠組みは同じで、基地があるかないかという点で日米日英日豪が違うと、こういう御説明だったと思うんですけれども、ただ、これ実際の三つ協定、条文を読み比べると、この日豪日英ACSAにおいては少し対象となる活動についての書かれ方が違うように思います。  それは、具体的にはこの日豪日英ACSAの第一条1eのところで、「それぞれの国の法令により物品又は役務提供が認められるその他の活動」と、こういう表現がございます。ここで、これに対応する部分が日米ACSAについてはもっと具体的に平和安全法制との絡みで書かれているわけですけれども、なぜこのように書きぶりが違うのか、その理由についてお答えいただきたいと思います。
  23. 金杉憲治

    政府参考人(金杉憲治君) お答え申し上げます。  委員指摘の「その他の活動」の部分ですけれども、これに含まれるものとして、自衛隊につきましては、重要影響事態、存立危機事態国際平和共同対処事態、武力攻撃事態等、海賊対処行動、機雷等の除去、情報収集活動における後方支援活動協力支援活動などを想定しております。  新日豪ACSA及び日英ACSAのいずれにつきましても、その条文の構成や規定ぶりにつきましては、相手国との交渉の結果、現行日豪ACSAの構成を踏襲したものとなっております。そのため、現行日豪ACSAにおいて既に個別に列挙されていた活動及びこれらに類する活動のみを第一条の1aからdという形で個別に列挙し、その他の活動は第一条1eで読み込むこととしております。  したがって、新日豪及び日英ACSAと新日米ACSAにつきましては表記が異なりますけれども、このような違いは、相手国との交渉の結果、新日米ACSAについては現行日米ACSAの構成を、また新日豪ACSA及び日英ACSAにつきましては現行日豪ACSAの構成をそれぞれ踏襲するものとなったため、その結果として生じたものでございます。  以上でございます。
  24. 阿達雅志

    阿達雅志君 この書きぶりの違い、勘ぐって言うと、将来いろんな対象になる活動が変わってきたときに法令だけをいじればこちらの条約をいじらないで済むと、こういうことをひょっとして意図しているのではないかというふうにも勘ぐれたわけですが、今の説明では、そういうことではなくて、あくまで過去の経緯との絡みで、日豪が元々そういう書きぶりをしていた、それによって日英についても同じ書き方をしたということであって、特に深い意図があるということではないという御説明だというふうに解しました。  それでは、この新日豪ACSAそして日英ACSA共に、これは有事ACSA対象となっているというふうに私は理解しておりますけれども、これについて国内の担保法はどういうことになっているのでしょうか。現行自衛隊法でこの日豪ACSA日英ACSAについても、豪州国防軍英国軍との間で想定される活動というのは全てカバーされていると考えていいのかどうか、この点について教えていただけますでしょうか。
  25. 前田哲

    政府参考人(前田哲君) お答えいたします。  まず、新日豪ACSA及び日英ACSAでございますが、平和安全法制によって新たに可能となりました武力攻撃事態等、存立危機事態、重要影響事態そして国際平和共同対処事態、これらにおける物品又は役務提供に対しても、これは適用をされます。これら各種事態における物品又は役務提供につきましては、米軍等行動関連措置法、重要影響事態法、それから国際平和支援法等に国内法上の根拠規定があるわけでございます。  それから、委員の後段のお尋ねでありますけれども、まず豪州のお話をいたしますと、豪州国防軍に対する共同訓練や災害派遣、こういった平素の活動に際しましての物品又は役務提供につきましては、これ既に現行自衛隊法等国内法上の根拠規定がございます。他方で、海賊対処行動、機雷等の除去、在外邦人等の保護措置及び情報収集活動につきましては、豪州国防軍に対し物品又は役務提供を行う国内法上の根拠規定、これは現時点ではございません。そのために、今次国会に提出させていただいている防衛省設置法等の一部を改正する法律案におきまして自衛隊法を改正することにより手当てをすることといたしているわけでございます。  それから、イギリスについてでありますが、日英ACSAの適用の対象となるいわゆる平素の活動につきましては、新日豪ACSAと同じ内容ということになるわけでありますが、英国軍に対し物品又は役務提供を行う国内法上の根拠規定、これは現時点では存在をいたしませんので、これにつきましても、防衛省設置法等の一部を改正する法律案において自衛隊法を改正することにより新設をすることといたしております。  いずれにいたしましても、これらの措置をとることによって想定される活動全てカバーをできると、このように考えてございます。
  26. 阿達雅志

    阿達雅志君 ということは、豪州そして英国との関係においては、現在審議中の自衛隊法改正、これによってカバーをされると、それによって国内法の担保がなされるという、こういう理解でよろしいでしょうか。
  27. 前田哲

    政府参考人(前田哲君) そのとおりでございます。
  28. 阿達雅志

    阿達雅志君 どうもありがとうございます。  それでは、今度は実際に提供される物品役務について質問させていただきたいと思います。  今回の日米日英日豪、この三ACSAにおいては、平和安全法制成立時の議論になった弾薬について、今回のACSAでは弾薬の提供というのがはっきり入ってまいりました。  そういう意味で、平和安全法制を議論したときには、弾薬の提供に関して、これは参議院の特別委員会の附則決議もございました。いわゆる五党合意というものです。この五党合意との関係で、今回のACSAで書いている弾薬というのはどういう扱いになるのか、御説明をいただきたいと思います。
  29. 前田哲

    政府参考人(前田哲君) お答えいたします。  一昨年の平和安全法制に係る審議において、今委員指摘のとおり、弾薬の提供については、緊急の必要性が極めて高い状況下にのみ想定されるものであり、拳銃、小銃、機関銃などの他国部隊の要員等の生命、身体を保護するために使用される弾薬の提供に限るといったことなどを内容とするいわゆる五党合意がなされまして、参議院の特別委員会において同じ趣旨の附帯決議がなされているわけでございます。  政府といたしましては、平和安全法制成立時に行った閣議決定のとおり、五党合意の趣旨を尊重し、適切に対処していく考えであり、これまでも、アメリカ、豪州、英国各国に対しまして、我が国国内法令及び五党合意の内容について説明をしてきたところでございます。  今後、実際に提供を行うに際しましては、支援対象国からの具体的な要請に基づきまして、五党合意に係る閣議決定を始めとする我が国の政策あるいは法律等との整合性を検討した上で、自衛隊における弾薬の保有状況あるいは提供の必要性、緊急性なども踏まえて、我が国として主体的に判断をするということになります。  その際、閣議決定を適切に実施するため、防衛省においては内部規則を整備する考えでありまして、その内容について自衛隊の現場レベルまで事前に徹底をするとともに、米国、オーストラリアそれから英国各国に対しても十分に説明をしていく、このような考えでございます。
  30. 阿達雅志

    阿達雅志君 それでは、五党合意については引き続きしっかりとその趣旨を尊重して運用に当たられると、こういう理解をさせていただきたいと思います。  続きまして、この弾薬の提供ということでいった場合に、日豪ACSA、そして日英ACSAでは存立危機事態における弾薬の提供というものを排除していない、こういうふうに読めるわけですけれども、これは豪州や英国を我が国と密接な関係にある他国と認めることに論理的になってしまうのではないかと思うんですが、その点についてはいかがでしょうか。
  31. 滝沢求

    大臣政務官滝沢求君) お答え申し上げます。  ACSAはあくまで自衛隊相手国軍隊との間で物品役務相互提供する際の決済手続等枠組みを定めるものであり、ACSAに基づく物品役務提供はそれぞれの国の法令により認められる範囲でのみ行われるものでございます。  我が国国内法令上、具体的にどのような国が我が国と密接な関係にある他国に該当するかについては、ACSA締結やその内容にかかわらず、あらかじめ特定されているものではなく、他国に対する武力攻撃が発生した段階において個別具体的な状況に即して判断することとなっております。そのため、新日豪ACSA日英ACSAを含め、ACSA締結することが締結相手国我が国と密接な関係にある他国と認めることになるとの御指摘は当たらないものと考えております。
  32. 阿達雅志

    阿達雅志君 どうも、滝沢政務官、ありがとうございます。  ACSAは、あくまで決済手続等に関わるものであって、基本におけるその国との関係、これ自体を規定するものではないと、こういうお話でございました。  その一方で、実は今、米、英、豪州に加え、これ衆議院の方の質問であったかと思うんですが、今フランス、カナダともACSA交渉していると、こういうような議論があったかと思います。  そうなってくると、今おっしゃられたACSAというのが決済手続等に限ったものだという中で、ACSA対象国を拡大すること、このことの意味というのはどういう点にあるのでしょうか。そしてまた、こういう議論というのは、当然前提としてはこれらの国との防衛協力というものがあると思うんですけれども、この防衛協力拡大ということはどういうふうに今なっているのか、それについて教えていただければと思います。
  33. 滝沢求

    大臣政務官滝沢求君) 阿達委員指摘のとおり、現在御審議いただいておる米国、豪州及び英国のほか、カナダ及びフランスとの間でもACSA締結交渉を行っているところでございます。  ACSAは、自衛隊相手国軍隊との間の物品役務相互提供を円滑、迅速に行うことを可能とするものであり、各国とのACSA締結は、相手国との安全保障、防衛協力を進展させる上で有意義なものであると考えております。  政府としては、相手国との二国間関係や協力の実績、具体的なニーズ等を踏まえながら必要なACSA締結を推進してきております。今後とも、こうした考えに基づきACSA交渉を進め、各国との安全保障、防衛協力を進展させていきたいと考えております。  以上でございます。
  34. 阿達雅志

    阿達雅志君 どうもありがとうございました。  やはりこのACSA、そして防衛協力、今日本を取り巻いている非常に厳しい防衛環境の中でこういう実際の実務をどうやって進めていくか、そういう意味でも非常に大事なものであろうというふうに思います。  それでは、次の質問に移らせていただきます。  こういうACSA、これは日米については相当、もう九六年からずっと行われてきているわけでございますけれども、このACSAが実際に実施されたケース、これが、実際にどういう物品提供されたかということについてはもう既にいろんな審議のところで議論されていますが、どのような状況において実施されてきたのか、過去どういう状況のところで行われてきたかについて御教授いただければと思います。
  35. 中村吉利

    政府参考人(中村吉利君) お答え申し上げます。  ACSAにつきましては、自衛隊相手国軍隊との円滑かつ緊密な協力実施する上で不可欠なものとなってきております。したがいまして、様々な場面において物品役務提供というものがアメリカ軍、オーストラリア軍との間で行われているというところでございます。  具体的に申し上げますと、自衛隊アメリカ軍ないしはオーストラリア国防軍との間では、様々な共同訓練におきまして燃料ですとか食料、宿泊など各種の提供が行われてきているところでございます。また、東日本大震災、熊本地震あるいはフィリピン台風被害といったような国内外の大規模災害での緊急時における燃料などの提供も行われてきているところでございます。  さらに、若干特殊な例になりますけれども、洞爺湖サミットですとか伊勢志摩サミットにおける自衛隊施設への一時的な滞在といったような場面、こういったところでもACSAは活用されてきているところでございます。
  36. 阿達雅志

    阿達雅志君 ありがとうございました。  ただいまのお話だと、共同訓練、そして災害あるいはサミットの警備と、こういった中でございましたけれども、PKO、平和協力活動に絡んでこのACSA実施されたケースというのはあるんでしょうか。
  37. 中村吉利

    政府参考人(中村吉利君) PKOに関しましても、燃料などで協力が行われてきているところでございます。
  38. 阿達雅志

    阿達雅志君 どうもありがとうございます。  私の持ち時間、本来よりちょっと早いですが、以上でACSAに関する質問を終わらせていただきます。  あとは武見委員の方から安全保障環境について御質問があるかと思いますので、よろしくお願いいたします。
  39. 武見敬三

    ○武見敬三君 私、この外交防衛委員会質問に立たせていただくのは十五年以上ぶりでございまして、本当に久しぶりにこうした機会を頂戴したことを心から感謝申し上げる次第であります。  さて、外務大臣外交安全保障政策というのを考えるときに、私は意図と能力という二つの視点に分けて考える必要があるだろうと常々考え、思っております。  この意図と能力に分けた上で現下の国際情勢というのを見たときに、我が国の隣国には、年々軍事力を増強して、そして、かつまた力で現状変更をしようとしている強大な国家が出現している。明らかに安全保障上の相対的な関係は、政治的な時間でいえば先方により有利に働く可能性が極めて高い。またさらに、脆弱な体制でありながらも極めて強権的で、そして反日的な敵対的な姿勢を持ち、そして非常に未熟な若い指導者がその実権を握っている。その国が核弾頭付きのミサイルを開発して、そして配備することはもはや数年のうちに実現することが見込まれている。こうした厳しい地政学的な国際情勢下に我が国は置かれている。  他方において、今度は人、物、金、情報というものが国境を越えて行き交ういわゆるグローバライゼーションというのは、たとえ米国のような強大な国家にトランプ政権のような国内志向の政権ができたとしても、この傾向は変わりません、止めることはできません。その結果として、この二十一世紀は、引き続き国境を越えた共通の課題というものが確実に増えていく、こうした時代状況の中に我が国は今置かれているように思います。  そういったときに、我が国の中には、外交安全保障政策を考えるときに二つの大きな系譜があります。一つは平和主義の系譜であって、この平和主義の系譜というのは、まさに戦争で三百二十万もの多くの国民の命を失って、そうした経験をも踏まえた上で反戦平和論という形で我が国の中に存在してきている。他方で、今度は、我が国の中のもう一つの系譜が現実主義であって、この現実主義というのは、やはり冷戦のさなかにおいて、我が国が主権国家としての立場を守り、国民の生命と財産をしっかりとその現実的な脅威から守るために、当然のこととして現実主義の政策が組み立てられてきた。過去においては常にこの平和主義と現実主義というのは相対峙するものとして認められてきて、二分論的な形でこの両者の間で論理的対立的な関係が生まれて議論が重ねられてきた。これは多分に不毛な議論であったと私は思います。  その上で、この系譜を踏まえつつ、我が国の置かれた現下の国際情勢を踏まえて、意図と能力という観点から我が国のあるべき外交安全保障政策というものを考えたときに、私は、意図という観点については我が国の平和主義というものをしっかりと確立し発展させていくことが必要であると。  この観点から、ちょうど一九九〇年代の中頃ぐらいから、いわゆる戦争体験を持った世代の方々がだんだん少なくなってきて、戦争体験に基づく反戦平和論というものがその勢いを失い始めた頃から、自民党の中では、小渕内閣で、この反戦平和論を継承する新しい未来志向の強靱な平和主義として人間の安全保障という考え方を組み立てて、それをもってまず我が国の平和主義を実践する政策概念として位置付けました。以来、安倍内閣に至るまで、我が国の平和主義の一つの骨格を成す政策概念として継承をされ、特にODA政策、ODA大綱の中では平和主義の一つの基本概念として、この人間の安全保障というものが常に位置付けられてきました。  他方で、現実主義の方を見たときに、我々は、今度は意図と能力の能力という観点から見たときに、私たちは常にあらゆる軍事的脅威に対してしっかりと対峙できる、あらゆる意味での軍事的な抑止の体系を確立していかなければなりません。我が国は、自国の防衛力の強化を図りつつも、日米同盟というものをしっかりと強固に定着をさせて、特にその核の傘の信憑性を常に維持、強固なものとすることによって、このあらゆる軍事的脅威に対峙し得る軍事的抑止の体系というものをつくり上げてきました。これは、まさに我が国の能力という観点から考えたときに極めて適切な現実主義的な方法であると思います。  したがって、意図と能力に分けて、意図に関しては平和主義を、そして人間の安全保障の概念をより積極的な平和主義の一つの概念として発展させていくこと。他方に、現実主義という観点からは、このACSAの三協定もそうであります、こうしたまさに具体的な政策を通じて、日米同盟を基軸として我が国安全保障の体制をより強固にしていくことが必要であります。  したがって、我が国外交安全保障の概念を考えたときに、意図においては平和主義を、能力においては現実主義を取ることによって、この二つを対立する概念として捉えるということではなくて、いかにこの二つの考え方を共存させて我が国外交安全保障政策というものを展開していくかということが我が国の取るべき道だと私は思います。  その上で、この人間の安全保障という考え方は、アジアで初めてノーベル経済学賞を獲得されたアマティア・セン教授がその概念を形成する上で重要な役割を担いましたけれども、個々人にその安全保障対象を求め、そしてその目的として個々人がより有意義な人生を歩むことのできる選択肢を増やすということをその目標として設定しています。  その際に、実は、今日の本題でもあります健康の問題というのは、健康だけでは有意義な人生の選択肢を増やすことはできませんけれども、健康を損なってしまいますと、あらゆるその他の選択肢が大きく損なわれるという性格を持っております。したがって、この人間の安全保障の考え方の中では、健康という分野はまさにその中核的な分野として優先的に捉えられてきております。  したがって、我が国は、二〇〇〇年の沖縄サミットのときにはこの人間の安全保障の考え方に基づいて沖縄感染症イニシアチブというのを提唱し、なおかつそのときに、三十億ドルと記憶しておりますけれども、資金の提供を約束をし、このことによって二〇〇二年にエイズ、結核、マラリアの世界基金が発足をしている。  それから、二〇〇八年のG8洞爺湖サミットのときには、こうした垂直的な感染症ごとの対応というアプローチでは不十分であるという認識に基づいて、水平的な視点から今度は保健システム強化ということを強く提唱をして、そしてこの保健システム強化アプローチを国際社会の中で定着させる上で大変大きな役割を担いました。  しかも、この保健システム強化の目的として、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ、WHOの定義によりますと、全ての人々が負担可能なコストで予防を含む適切な医療にアクセスすることができるというこの概念が、一昨年の国連総会で二〇三〇年までに達成すべきとされた持続可能な開発目標の中の一つとして設定をされました。こうした流れをつくったのも実は我が国日本であります。  こうしたことを踏まえて、今度は昨年のG7伊勢志摩サミットにおいて、我が国は、この垂直的なアプローチと水平的なアプローチを組み合わせて、垂直的なアプローチとしては危険な感染症に対する危機管理体制の確立というものを一つの大きな柱として打ち立て、かつまた、このユニバーサル・ヘルス・カバレッジの達成をもう一つの大きな柱として組み立てて、そして危機管理体制というものの準備を整えるための政策とそれを予防するための政策をこの二つの柱を結び付ける橋として、ブリッジとしてその位置付けをして、総合的なグローバルヘルスに関する戦略を提示をいたしました。  この戦略に基づいて、実は総理は、G7伊勢志摩サミットのちょうど一週間前だったと記憶しておりますけれども、十一億ドル相当の資金をこうした国際保健、グローバルヘルスの分野に投入することをお約束されました。やはり、紙の上での文書だけではなくて、一定規模の資金的な協力することを約束することによって実際にその政策が実現するという大きな流れを我が国はつくっているわけであります。  その上で、この我が国枠組みに基づいて実際に、世界銀行というのは、これは銀行であると同時に援助機関でありますから、ただしここは多分に経済のインフラ整備などに多くその資金を投入してきたところであります。しかし、財務省は、世界銀行に働きかけて、その世界銀行の中のIDAの資金をこうしたグローバルヘルス、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ及び危機管理体制の強化にも活用できるようにその枠組みを広げました。  他方で、厚生労働省は、WHOに働きかけて、WHOが新たにジュネーブの本部の中に危機管理局を設けて、そして各地域事務局及び各国代表事務所というものをより直接的につなぐ危機管理体制を整えようとしております。ここにも我が国は資金協力を約五十億ほど約束をして、そしてそれが一つの大きな資金源になって実際にこうした新たなWHOの危機管理能力の強化が進められています。  そこで、外務省は、こうした保健外交を戦略的に進める上において、その総合調整としての重要な役割を担っていただくことが私は求められているように思います。いかに財務省と連携をしつつ世界銀行を動かし、いかに厚生労働省と連携をしてWHOを動かし、そして、特にこれをグローバルなレベルで、WHOのみならず国連の危機管理体制を受け持つ人道支援局、OCHAなどのようなところも連携をさせて、そしてグローバルなレベルでの危機管理の体制を整えて、エボラ出血熱のときの対応のような出遅れがないようにさせる。  なおかつ、コミュニティーとカントリーのレベルにおいて、それぞれ脆弱な保健システムしかないような国家において、この世界銀行の資金の活用をして、そして今度はWHOの危機管理の技術的な指導というものを上手にこれと組み合わせて、なおかつJICAが二国間関係での支援で受入れ国政府の中央政府及び地方政府の能力強化に支援を行い、これによってマルチの枠組みの世界銀行とWHOを組み合わせて、さらにバイの我が国の支援体制をそこに更に組み合わせることによって、こうした国際社会の中で定められておりますインターナショナル・ヘルス・レギュレーションという大きな枠組みの中で、メンバーステーツとしてそれぞれの国々がその責任ある役割を担えるように、その能力強化を日本が大きくこのバイとマルチの枠組みを活用して支援していく。これがまさに伊勢志摩サミットで総理が提言した内容であって、それがいよいよ実現する体制を整えなければならないという状況になったと私は理解しております。  こういったときに、国際協力局の中には国際保健政策室というのがあって、そこがこうした総合調整を行う上での重要な役割を担うことになってきておりますけれども、果たしてその今の体制で本当に十分なのか。その国際協力局の中の国際保健政策室というその位置付けだけではなくて、そこで求められる、かなり保健医療分野に専門的な知見を持った人材がそこにおりませんと、世界銀行、WHOを股に掛けて大きくこうしたマルチの外交を展開し、総合調整するということはなかなか難しいと思います。  今後、保健医療分野だけではなくて、あらゆる国境を越えた共通課題が人類社会の中にこれから更に沸き起こってくるときに、我が国は国内に比較優位を持ったそうした分野に特に優先的な順位を置きながら、こうした国内の総合調整の外交体制を整えていかなければ、こうした我が国の積極的な平和主義、そして人間の安全保障に基づく国際的な貢献というものは実行できないだろうと思います。  この点についての外務大臣の御所見をまず伺っておきたいと思います。
  40. 岸田文雄

    国務大臣岸田文雄君) ただいまは、長年にわたりまして国際保健、グローバルヘルスに取り組んでこられました武見委員の方から大変大局的な、そしてよく整理されたお話を聞かせていただきました。大変参考になるお話だったと耳を傾けておりました。  御指摘になられました人間の安全保障という考え方、これは、一昨年、国連総会において採択されましたSDGsの中においても、是非しっかりとした考え方として盛り込まれなければならないということで、我が国としても努力してきた考え方であり、こうした人間の安全保障を実践するために第二次安倍内閣発足後も国際保健戦略というものを我が国政府としても打ち出し、UHCを始めとする様々な取組を重視しながらこの健康の問題を考えてきた、これが我が国のありようでありました。  そして、その中にあって外務省としてどのように取り組んできたのか、そして今の現状についてどう考えるかという御質問でありましたが、グローバル化の進展に伴いまして、御指摘の国境を越える感染症の脅威など、国際的な危機管理体制の必要性、ますます高まっていると考えます。その中においての外務省の役割としては、例えば御指摘になりましたG7伊勢志摩サミットにおいても、公衆衛生危機への対応能力の強化について議論をし、国際保健のためのG7伊勢志摩ビジョンを策定しましたが、その際のビジョンの立案、各国との調整において外務省としてもこの役割を果たしたところでありますし、また、大規模な感染症危機に際しては保健と人道支援分野の横断的な協力が必要ということで、WHOと国連人道問題調整事務所の間での連携を強化するべく危機対応のための標準手順書が策定されたわけですが、その際にも橋渡し役など、我が国外務省としても汗をかいたということもございました。  しかしながら、こうした問題の更なる重要性を考えますときに、御指摘のように、我が国として総合調整の体制、人材においても組織においても十分なのかという御指摘については重く受け止めなければならないと思います。  引き続き、委員を始め関係者の皆様方の御意見も聞きながら、外務省としても適切に人材育成あるいは組織のありようについても考えていきたい、このように考えます。
  41. 武見敬三

    ○武見敬三君 是非、こうした人事と組織の在り方についてもこうした総合調整の機能を、国際社会共通課題の解決を図り、そしてそのルールメーカーとして日本がその責任ある役割確保していく上においても極めて重要だと思いますので、是非そういう意味でも外務省の中のそうした能力強化を大臣のイニシアチブで実施していただきたいと思います。  そこで、財務省は世界銀行に働きかけて、実際にIDAの資金を、IDA18のそれぞれの国々にも説得をして、インフラ整備だけではなくてこうした保健医療、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジや危機管理能力の強化にも使えるようにしてくださったわけであります。その上で、先ほど私も申し上げたように、WHOとも世界銀行が連携をして、こうしたインターナショナル・ヘルス・レギュレーションのメンバー国の中でなかなかこうした責任ある役割が十分達し得ないようなそういう国を対象として、まさにJICAも組み込み、バイとマルチの枠組みでそうした仕組みづくりをする上で実は重要な役割を担っていただいているはずであります。  今年の十二月には、世界銀行そしてWHOとも協力をして、このユニバーサル・ヘルス・カバレッジのフォローアップ会合を日本でもやることになっていると理解をしています。それまでに、我が国として幾つかの優先的な国々を設定をして、そこで我が国のバイとマルチの枠組みでそうした能力強化を支援する体制を整えて、そして十二月にはそれを発表するということになっていると承知をしております。  そこで、その進捗状況が大変気になりますので、世界銀行との間では、たしか一月にこうした新たな取組をバイ、マルチで連携してやろうということで合意文書がたしかできていると思いますけれども、その文書に基づいてどこまで具体的にこうした進捗状況が今あるのかの御説明をしていただけますでしょうか。
  42. 田中琢二

    政府参考人(田中琢二君) お答え申し上げます。  今御指摘のございました世銀との取組と。日本は、本年一月に世銀と共同でユニバーサル・ヘルス・カバレッジを促進する日本・世銀UHC共同イニシアティブに合意したところでございます。  さらに、このイニシアティブにおきましては、パイロット国というものを選定して、まずは日本の資金を用いて世銀がWHO、JICAと連携し、UHC推進や危機への備えの強化に向けて、相手国のオーナーシップを尊重しながら国家レベルでパンデミック・プリペアドネス・プラン等の戦略を策定するほか、コミュニティーレベルでもIDA、国際開発協会の資金等も活用しながら保健人材の育成等に取り組む方針でございます。  パイロット国につきましては、昨年のTICADで表明しました日本のアフリカにおけるUHC推進モデル国、エボラ罹患国、脆弱国、紛争国、JICAが支援を実施中のアジア諸国等から地域バランスも考慮しつつ選定しているところでございます。  お尋ねの今後の調整につきましては、パイロット国に所在する世銀、WHO、JICAのカントリーオフィスが中心となりまして、相手国政府連携してこれらの一連の支援に取り組む予定でございまして、財務省としましても、この四月の世銀の春の会合等機会を利用してこうした取組をリードしていくこととしております。  こうした活動の成果とUHCの進捗状況は、本年十二月に東京で世銀、WHO等と共催する予定でございますUHCモニタリング会合で報告することとしておりまして、財務省といたしましても、世銀に設置している日本信託基金を活用しつつ、関係機関とも連携してこれらの一連の活動を支援していく所存でございます。
  43. 武見敬三

    ○武見敬三君 御説明ありがとうございました。  外務大臣、この国連の国際機関同士を調整する、連携させるということほど難しいことはないんですよ。ほとんどの国々がそれをやろうとして失敗しているんです。  しかし、我が国は、こうした危険な感染症に関して共通の問題意識を持ち得るこのWHOと世界銀行を、今まで極めて効果的に連携させるカタリストとしての役割を果たしてきたんです。その中で、やはり国内において世銀を担当する財務省とWHOを担当する厚労省と、この両方を常にきちんとうまく組み合わせて、そして日本国として主体的にこれらの国際機関との間の調整を果たしていくという、そういう意思決定がこれからますます求められることになります。それを行うのがまさに外務省ということになります。  したがって、この新たなパイロットプログラムと言うとそこから除かれた国々がひがむからまだそれは言っちゃいけないような話がありますけれども、いずれにせよ、どこかの国を優先的にまずはこういう課題に取り組ませていくことが必要になってくるわけでありますし、どのような優先的な基準に基づいて、こうした手始めに取り組む国々をこれから選定していくのかということは、まさに外務省がよく考えて設計していただくことだろうと思います。  この点に関して、外務省はどのようにお考えになるのかの御説明をいただければと思います。
  44. 相星孝一

    政府参考人(相星孝一君) お答えいたします。  既に外務省、昨年のTICADで、UHC・イン・アフリカというイニシアチブを打ち出しまして、その際には、日本としてのモデル国を三か国、ケニア、セネガル等を選定した次第でございます。  ここに加えまして、先ほど財務省の方からも説明ありましたとおり、感染症対策の観点から、そういった観点も勘案しまして、UHCの強化、ではアフリカでどうやって進めていくか。おっしゃるとおり、これは、被支援国、そして世銀、WHO、さらにはJICAのオフィス、そして大使館という、これらの関係機関の間の調整そして連携を強化しながら、国を特定し、先行的に保健システムの強化を取り進めていきたいと考えております。  十二月のモニタリング会合に向けて、速やかにかかる作業を進めていきたいと考えております。
  45. 武見敬三

    ○武見敬三君 日本は、この分野ではもう確実に中心的役割を担うルールメーカーに今なっております。日本がこういう中心的なルールメーカーの役割を担ってくると、ヨーロッパ諸国の中には、従来、それは俺たちの役割だと思っている国々も出てきます。実は、G7の今度のイタリア・サミットは前回の伊勢志摩サミットのこの保健分野におけるアプローチを継承するような形にはなっておりませんけれども、逆に、G20のホスト国であるドイツが、むしろ昨年の伊勢志摩サミットのときのこの枠組みをそのまま継承して、G20でそれを活用しようという動きになってきました。  こうした際に、トンビに油揚げをさらわれるようなことがないように、是非、主体的に我が国がこのルールメーカーとしての立場外交的に維持できるように御努力を願いたいと思います。  その上で、もう少し具体的な質問をさせていただきたいと思います。  これは、エボラ出血熱が発生したときに、実は富山化学というところで開発をしていたインフルエンザの薬剤、アビガン錠というのが実はそのエボラ出血熱にも効きそうだということで、我が国ではまだ未承認薬ではありますけれども、現地でそれを臨床治験として活用をして、そして、なおかつそれを現地のエボラ出血熱に罹患した患者にも処方するというようなことが現実に一部行われてきました。ただ、今後、こういうケースは多分増えます。我が国で未承認薬であったとしても、そうした危険な感染症に効果があると見込まれる薬については海外でもこれから積極的に臨床治験を行って、こうした薬をより即効的に活用できるような体制を整えることがこれから求められます。  問題は副作用です。こうした未承認薬なんかを使って臨床治験なんかをやったときに、多分に副作用が発生することがあります。そういうときには、受入れ国政府との間で、まずは、そうした副作用が起きたときのその責任の所在というのは受入れ国側にあるという覚書を事前に取り交わすということを通常やります。しかし、それをやったとしても、道義的責任はやはり提供国側に残るんですね。  そうすると、その道義的な責任といったようなものの所在は果たして国内ではどこの役所が受け持つのかという話になってきますと、厚生労働省は、国内ではその責任を持つ役所でありながらも、海外では自分たちの責任の対象外だといって責任を逃れようとするし、海外で実施するという意味においては、これはまさに外務省の役割だろう、JICAの役割だろうと言いつつも、外務省、JICAは、自分たちはそうした専門的な知見のある組織ではないからその責任は受け持てませんと、こう言う。そうすると、いつまでたってもこの未承認薬を海外で活用する仕組みが国内にでき上がらない。  この責任の所在をいかにして明確にして、我が国もこうした未承認薬に関わる国際的な活用のための体制づくりをするのかということが喫緊の課題になってきています。アビガン錠はそのいい例でした。  この点に関して、外務大臣外務省として、こうした副作用が発生した場合、政府間ではその責任の所在は受入れ国政府側にあるということになりますけれども、国内でこうした問題が起きたときに、それに対処するための役割をまず外務省が私は責任を持って対応することが必要であろうと、その際には厚生労働省とも緊密に連携を取りながらこうした対応政府として誠実に行うことが我が国のあるべき姿だというふうに私は思うんですけれども、外務大臣はどういうふうにお考えになるでしょうか。
  46. 岸田文雄

    国務大臣岸田文雄君) まず、海外において感染症危機が発生した場合に、開発途上であってもそれに有効である可能性のある我が国企業の薬剤を被災国からの要請に基づいて提供するということ、これは人道的な観点からも、そして当該国との二国間関係からもこれは重要な課題であると考えます。外務省として、まずそういった認識を持たなければならないと思います。  一方で、委員の方から今御指摘がありましたような副作用の問題があり、リスクと有効性との関係について慎重に考えなければならない。そして、その上で国内においてどういった制度をつくるのか、どのように考えるのかという御質問でありましたが、国内の体制については、薬剤の提供に係る判断の主体も含めて、国際的に脅威となる感染症対策の総合調整を行う内閣官房の下に今検討が進められています。それに今外務省も参加するという形でこの議論に臨んでいるわけですが、是非、こうした問題の重要性に鑑みて、我が国国内においてもこうした制度の構築に向けて積極的に努力をしなければならないと考えます。内閣官房主導のこの議論に是非積極的に貢献をしていきたい、このように考えます。
  47. 武見敬三

    ○武見敬三君 もう各役所とも逃げよう逃げようと必死に担当者同士は思っておりますので、ここは政治的リーダーシップを大臣に発揮していただかないと解決できませんのでよろしくお願いをしたいと思います。  その上で防衛大臣是非お伺いしたいと思います。  実は、こうした危険な感染症とか、こうした特に我が国で一類に分類されているような危険な感染症の病原菌を使って生物テロなどを行うことなどが実は脅威として想定されるようになっています。したがって、危険な感染症が発生したときにも、たとえそれが西アフリカの三か国で起きたことではあれ、いつ何どきその罹患した患者が東京に来るかもしれない、大阪に来るかもしれない、それによって国内でも広がるかもしれないという、そういう脅威に今国際社会はなってきました。  アメリカを含め欧米の主要国というのは、いずれもこうした危険な感染症というのを生物テロと同等にナショナルセキュリティーの問題として認識をしています。したがって、こういう対応策として必要になるようなBSL4施設というような実験施設も実際に軍が所管している国が大変多い。また、こうした感染症に関わる予算を軍が支出している国も大変多い。  こういう中において、我が国は、果たしてこういう危険な感染症をナショナルセキュリティーとして認識しているかどうか。また、その体制を整えるためには、防衛大綱といったようなものの中にもきちんとこうした文章を書き込んで、その役割を明確にしながら今後対応していくことが必要であると思います。特に防衛大綱に今後書き込むことが必要であると考えますけれども、まずはこのナショナルセキュリティーの対象であるという認識をお持ちいただけているか、あるいは今後どう対応されようとしているのかを防衛大臣にお聞きしたいと思います。
  48. 稲田朋美

    国務大臣稲田朋美君) 今先生御指摘の危険な感染症については、バイオテロリズムを始めとして直接的に国民の安全の脅威となる場合がある、また、御指摘のように、海外で発生した場合であったとしても、人から人へ、あるいは物の移動を通じて国内へ流入する場合があることから、国民の生命と財産に大きな影響を及ぼし得る問題だと認識をしております。また、政府の国家安全保障戦略においては、感染症の問題が個人の生存と尊厳を脅かす課題の一つであるとされております。  こうした観点から、感染症の問題は、広い意味での安全保障上の問題、すなわち御指摘のナショナルセキュリティーの問題の一つとして捉えるべきものというふうに認識をしております。
  49. 武見敬三

    ○武見敬三君 ありがとうございました。  十五年ぶりに思いのたけを述べさせていただきまして、大変ありがとうございました。  以上で終わります。
  50. 浜田昌良

    ○浜田昌良君 公明党の浜田昌良でございます。  本日は、日米日豪日英ACSA審議でございますが、その前に、G7、いよいよ始まります。また、経済連携協定について質問させていただきたいと思います。  外務大臣は、四月十日、十一日、イタリア・ルッカでのG7外務大臣会合にこれから出発されます。ここでは東アジア情勢も審議されると思いますが、特に北朝鮮の情勢についてはやはり認識を共有していただくと、これは重要だと思っております。新たな脅威段階に入った、これが明確になったということをしっかりとこの国々の共有を取っていただく。一方で難しい課題もあります。いわゆるウクライナ情勢等についてヨーロッパの国は非常に関心が高いわけでございますが、一方で日本は日ロとの関係で四島の共同経済活動についてもしっかり進めなければならないと。こういうものについてもしっかりと認識をしていく、共有をしていくということは重要だと思いますが、やはり外交的な協力関係をする上では認識を共有すると、とても重要だと思いますので、来週、ルッカに臨まれる、まず外務大臣の決意をお聞きしたいと思います。
  51. 岸田文雄

    国務大臣岸田文雄君) まず、今年に入っても国際社会は多くの課題に直面しており、そして欧米諸国において政権交代が行われるなど、変化の年を迎えていると認識をしております。その中で、自由で開かれたルールに基づく国際秩序の牽引役として、基本的な価値観を共有するG7の枠組みというものはますます重要になってくると認識をしております。是非、今年のG7、ルッカでの外相会合ですが、昨年のG7広島外相会合に続きまして、こうした国際社会が直面する喫緊の課題について、また地域情勢についても率直な意見交換を行い、連携確認していきたいと思います。  そして、この地域情勢を議論する際に、我が国はアジアからの唯一の参加国でありますので、北朝鮮問題、東アジア、アジア太平洋情勢についてしっかりと各国にインプットしなければならない、こういった立場にあると考えます。また、恐らくウクライナやロシアの問題、これはG7において大変大きな議論になってくると予想しておりますが、このウクライナやロシア問題に関連して、我が国の対ロシア外交、北方四島の問題を解決して平和条約締結するという昨今のこの対ロシア外交についてもしっかり説明をし、理解を得る、こうした努力もしていきたいと考えております。  是非、このアジアから唯一出ているG7の参加国としての役割や存在感をしっかり示して帰ってきたいと考えます。
  52. 浜田昌良

    ○浜田昌良君 地域情勢についてもしっかり議論いただきたいと思いますが、やはり全般的なトーンは、冒頭、岸田大臣おっしゃいましたように、保護主義の台頭を抑えて自由主義ということをしっかり共有していくということが重要だと思います。  その具体的な方策として、日EUの経済連携協定があるわけでございますが、これにつきましては、安倍総理が三月二十一日、ヨーロッパに行かれた際には、トゥスク欧州理事会議長またユンカー欧州委員長との会談で、この連携協定について早期の大枠合意、これを提案し、双方の強い政治的意思を確認した旨が報道されております。  これらを受けまして、ルッカでも、日EU経済連携協定、EU、ドイツ、フランス、イタリアなどが参加するわけでございますし、これについて、早期大枠合意についてどのような話合いを行っていくのか。事務的にはちょうど今第十八回の政府交渉会議日本で開かれておりますけれども、これらを受けまして外務大臣の御決意をお聞きしたいと思います。
  53. 岸田文雄

    国務大臣岸田文雄君) 御指摘の日EU経済連携協定ですが、これは現在の日EUにおける最大、最重要な課題であると認識をしておりますし、保護主義が台頭する中にあって、日本とEUが共に自由貿易の旗を高く掲げて世界に範を示していくこと、これは大変重要であると認識をしています。  先般の総理の欧州訪問の際においても、EUあるいはドイツ、フランス、イタリア、こうした首脳会談において、日EU・EPAの可能な限りの早期の大枠合意に向けて日EU双方が精力的に取り組んでいくことへの強いコミットメント、これ再確認したところであります。  是非、G7ルッカ外相会合等、今後の外交機会をしっかり活用しながら、日EU・EPAの可能な限りの早期の大枠合意重要性につき、EUの加盟国とも認識を共有しながら最大限努力をしていきたいと考えております。
  54. 浜田昌良

    ○浜田昌良君 是非、自由主義の認識を具体的な形で進めるためにも、この連携協定の大枠合意の、早期合意について御努力をお願いしたいと思います。  一方で、懸念材料もあります。  イギリスが三月二十九日に正式にEU離脱を通知いたしました。これを受けまして、四月二十九日にEUでイギリス以外の二十七か国が首脳会合も開くという話もありますが、我が国への影響についてどう対応していくのかというのは大きな課題でございます。  イギリスには千社、約十四万人の雇用を日本がつくっているという話がありますが、ヨーロッパ全体の四十四万人の約三分の一がイギリスで活動しているという状況もございます。  これにつきましては、政府でタスクフォースもできておりまして、昨年の九月にはイギリス及びEUへの日本からのメッセージというものも作らせていただいて発信をしているわけでございます。多くの企業が、例えばイギリス、EU双方に対して、現行の関税率や通関手続等の維持、原産地規則の累積規定の導入や、英国籍や欧州大陸籍の労働者へのアクセスの維持等々を求めるとともに、やはり今後については十分な移行・周知期間、適切な激変緩和措置等々の具体的な要望をしているわけでございますが、まず、今後の我が国への影響をできる限り小さくしていくために、今回のG7の場でイギリスまたEU諸国とどのような話合いを行っていかれるのか、外務大臣の見解をお聞きしたいと思います。
  55. 岸田文雄

    国務大臣岸田文雄君) 英国のEU離脱が我が国にもたらす影響については、今後の英国とEU間の交渉の進展あるいはその結果次第でありますので、現時点で具体的にお答えすることは困難ではありますが、ただ、委員指摘のように、英国においては、我が国企業、一千社の企業が活動している、現地において十四万人の雇用を創出している、こうした存在を考えますときに、この英国のEU離脱は欧州に展開する日系企業のビジネスに直結する問題であり、重大な関心を持って注視をしていかなければならない、このように考えます。  是非、G7ルッカ外相会合等、今後の外交の機会を活用して、英国及びEU等に対して日系企業の円滑な経済活動が維持されるよう働きかけをしていかなければならない、このように考えます。その際に、やはり予見可能性の確保等を中心にしっかりと関係国に努力をしてもらうよう我が国政府としてもしっかり努力、働きかけを行っていかなければならない、このように認識をいたします。
  56. 浜田昌良

    ○浜田昌良君 今大臣がおっしゃいましたように、企業にとって一番重要なのはやはり予見可能性だと思います。そういう意味では、やはりいろんなステップを混乱なく、しかもいろんな激変緩和措置も含めてしっかりと主張をお願いしたいと思います。  今日は、内閣府副大臣、越智副大臣に御出席賜りました。もう一つの経済連携協定、TPPの関係でございますが、これにつきましては、三月十五日に太平洋同盟の会合がチリで開かれました。このときにTPPパートナー十一か国が集まりまして、TPPパートナーによる共同声明も発出されたと聞いております。  実際参加されまして、いろんな報道によりますと、十一か国でも発効してはどうかという主張をする国もあると、一方で、いや、それは無理だと、アメリカがいなきゃ無理だという国もあったりすると。実際参加されまして、どういう印象であったのかという率直なお話をお聞きしたいとともに、今、日EU経済共同連携の話もさせていただきました。こういう大きなメガEPAが発効することによるTPPへの影響につきまして、御見解をお聞きしたいと思います。
  57. 越智隆雄

    ○副大臣(越智隆雄君) 三月十五日にアジア太平洋地域における統合イニシアティブに関するハイレベル対話という会合がチリで開かれまして、それと併せましてTPP閣僚会合がチリで開かれたわけでございますけれども、アメリカを除きますTPP署名国十一か国が出席しまして、日本からは石原大臣の代理としまして私が出席をいたしました。  その会合におきましてこちらから発言したこととしては、まず二点ですね。一つ目が、TPPが持つ戦略的、経済的意義は変わりがないということ、そして二つ目が、今後のTPPの進め方については各国が緊密に意思疎通していくことが重要だということを訴えてきたわけでございます。そんな中で、加えまして、あらゆる選択肢を排除せずに、各国と議論する中で何がベストか主導的に考えていきたいというふうに発言をしてまいりました。  チリの会合では、委員指摘のように、米国抜きのいわゆる十一か国でのTPPに言及する国もございました。ただ、結果として十一か国が今後も結束して対応することを確認する意味で共同声明を発出するということにいたしまして、アジア太平洋地域における経済統合を実現する議論を前に進めていく必要があることについて各国で認識が共有されたというふうに考えております。  具体的には、五月のAPEC貿易担当大臣会合、これはベトナムですけれども、これに合わせまして次回のTPP閣僚会合を持つことが共同声明の中に盛り込まれまして、そこで今後の方向性について議論するということになります。また、より具体的に、その閣僚会合の前に政府高官による事前の会合も持って、そこで協議するということも決まったということでございます。  日EUにつきましては、先ほど外務大臣から答弁があったとおりでございますけれども、早期の大枠合意に向けて双方が最大限努力していると承知しているものでございまして、TPPにつきましては、いずれにしましても、今後とも、我が国が持つ求心力を生かしながら、各国と緊密に連携し、あらゆる選択肢を排除せずに、何がベストか、主導的に議論を進めてまいりたいというふうに考えておるところでございます。
  58. 浜田昌良

    ○浜田昌良君 今御答弁いただきましたように、結束して対応していくということが重要だと思うんですね、十一か国が。引き続き、ベトナムで五月の貿易大臣会合の際に集まるという話もございましたが、いかにこのTPPの求心力を日本が保ち続けられるか、その役割を果たしていけるか、重要でございます。どういう形でこの求心力を更に強くしていかれるのか、今、閣僚会合の前に政府交渉官レベルの会合も今月末か来月に向けて開かれるという話もありましたが、その具体的方策について御答弁いただきたいと思います。
  59. 越智隆雄

    ○副大臣(越智隆雄君) 先ほど御答弁申し上げましたとおり、閣僚会合と準備会合が用意されているわけでございまして、それが共同声明の中に盛り込まれているわけでございます。  それで、そこに向けてどうするかという御質問でございますけれども、まず、我が国としましては、自由貿易の旗手として、自由でルールに基づく公正な市場をアジア太平洋地域を始め世界に広げていくことを目指していくという主張を続けているわけでございます。先般の日米首脳会談におきましても、日本がTPPを含む既存のイニシアティブを基礎として地域レベルの進展を引き続き推進するということについて合意がされているという環境でございます。  そういう中で、TPP閣僚会合におきましても、日本が主導的役割を果たすということを繰り返し主張し、今後とも、TPPへの求心力を維持しながら、TPPで合意したハイスタンダードなルールを実現するためにどのようなことができるかについて、我が国が主導的に議論を進めてまいりたいというふうに考えているところでございます。
  60. 浜田昌良

    ○浜田昌良君 引き続き、この日EU、またTPP、メガEPAにつきましては、日本が主導的にリーダーシップを発揮していただきたいと思います。そのことが、一時期、トランプ・ショックとも言われましたが、保護主義が台頭するんじゃないかという懸念がありましたけれども、具体的な一歩一歩の成果によって、そういう暗雲を取り除き、予見可能性を高めていくということを更にお願いしたいと思います。  越智副大臣にはこれで質問おしまいでございますので、御退席いただいて結構でございます。
  61. 宇都隆史

    委員長宇都隆史君) 越智内閣府副大臣は退席いただいて結構でございます。
  62. 浜田昌良

    ○浜田昌良君 続きまして、ACSA質問を移りたいと思います。  ACSAにつきましては既に同僚議員から幾つか質問もございましたので、なるべくダブらない形で質問させていただきたいと思います。  ACSA協定意義については御答弁がございました。じゃ、逆に、ACSA協定がなかったとした場合のこういう物品役務提供はどうなってしまうんだろうかと、いわゆる国有財産の通常の処分、物品管理法であった場合には日本相手国の手続がどのように煩雑となるかについて、防衛省の政府参考人から御答弁いただきたいと思います。
  63. 中村吉利

    政府参考人(中村吉利君) お答え申し上げます。  国の財産たる物品の貸付けにつきましては、物品管理法上、貸付けを目的とするもの又は貸し付けても国の事務若しくは事業に支障を及ぼさないもの、こういったもののみが認められているところでございます。また、財政法上、国の財産を支払手段として使用してはならず、適正な対価なくして貸し付けてはならないとされているところでございます。  したがいまして、仮にACSAがなければということでございますけれども、相手国に対し物品の無償貸付けを行うことができず、その場合には、物品を融通する個別の場面に応じまして物品提供に関する貸付料等の適正な対価について相手方とその都度交渉し、その上でこれを徴収をするという必要が生じることになってまいります。また、相手国から提供された物品決済手段としてこちらから提供した物品を用いるということができない、すなわち、相互に燃料を提供した場合にはこれを相殺をするといったような処理ができないということになってまいります。  このように、ACSAが仮にないとなりますと、共同訓練など様々な場面におきまして必要な物品提供を円滑に行うことが困難になるものであるというふうに考えているところでございます。
  64. 浜田昌良

    ○浜田昌良君 今御答弁ございましたように、ACSAがなければその場面場面で相手国交渉しにゃいけないということは、まあ訓練でも大変ですし、実際の有事の際はあり得ないわけでございますので、そういう意味ではACSAは必要不可欠だと思っています。  ただ一方で、ACSAがもう無前提にどんどん広がっていくんじゃないかという懸念もあるわけでございますが、それについては、実はあくまで対象の場面、活動の場面であったりとか、提供できる役務の種類であったりとか、そういうのは別途法律で規定されておりまして、いわゆるACSA自身は事務的な決済手段を決めるものであるということがこのACSA制定以来、改正が日米ACSAは九九年、〇四年もありましたが、そういう改正を通じても一貫した考え方だと思いますが、今回の改正におきましても、こういう、ACSAはあくまでも決済方式での事務的な手続を決めるものであって、その内容については別途法律で限定されていると、この考えは踏襲されているということを外務大臣確認したいと思います。
  65. 岸田文雄

    国務大臣岸田文雄君) 日米ACSAは、冷戦後の国際社会が依然として不安定要因を残している中、日米安全保障体制の信頼性の向上を図り、これを有効に機能させる、こういった観点から、自衛隊米軍との間で共同訓練あるいは国連平和維持活動等のために必要な物品役務相互提供を行うための枠組みとして平成八年に締結されたものですが、平成十一年には周辺事態安全確保法の制定、平成十六年には事態対処法を始めとした有事法制の制定に伴い、それぞれ改正を行いました。  そして、今回審議をお願いしている新たな日米ACSAは、平和安全法制の内容を反映したものです。本協定は、この平和安全法制により、自衛隊が新たに実施することが可能になった物品役務提供を含め、自衛隊及び米軍がそれぞれの国内法に基づき実施する物品役務相互提供について、現行日米ACSAの下での決済手続等と同じ枠組みを維持しており、その意味協定の本質は変わっていないということであります。
  66. 浜田昌良

    ○浜田昌良君 協定の本質は変わっていないという確認の答弁をいただきました。  今回、この法制自身が提供できる物品といたしまして弾薬を加えました。これについて幾つか懸念の声もあったのも事実でございます。これにつきましては、平和安全法制成立、参議院の成立段階で、いわゆる五党合意、自民党、公明党、日本を元気にする会、次世代の党、新党改革、この五党で五党合意がなされました。平成二十七年九月十六日でございます。  この中に第七項目としてあったのが、弾薬の提供は緊急の必要性が極めて高い状況下のみ想定されるものであり、拳銃、小銃、機関銃などの他国部隊の要員等の生命、身体を保護するために使用される弾薬の提供に限ること。また、第八項目では役務の関係がありまして、我が国が非核三原則を堅持し、NPT条約、生物兵器禁止条約、化学兵器禁止条約等を批准していることに鑑み、核兵器、生物兵器、化学兵器といった大量破壊兵器や、クラスター弾、劣化ウラン弾の輸送は行わないことと、こう輸送に関する役務についても限定があるわけでございます。  この五党合意を受けまして、三日後の九月十九日に閣議決定で、趣旨を尊重し、適切に対処する旨が決定されたわけでございます。  そして、昨年の臨時国会で、まず日米ACSAについての各党内で議論がございました。我が党では、十月四日に党の外交部会、また安全保障部会合同会議を開かせていただきまして御審議させていただいたところ、ACSA相手国に対しましてこの五党合意について説明がちゃんとなされているのかと、どういうレベルでなされているのか。その後、この国会では日豪日英ACSAもかかっておりますので、こういう国々にどういうレベルで確認がなされているのか、外務大臣から答弁いただきたいと思います。
  67. 岸田文雄

    国務大臣岸田文雄君) 御指摘平成二十七年九月十六日の五党合意ですが、御指摘のように、平成二十七年九月十九日に、五党合意の趣旨を尊重し、適切に対処する、こうした閣議決定も行われているところです。  そして、米国、豪州、そして英国に対しましては、随時我が国国内法令及び五党合意の内容について説明をしており、各国は我が国国内法令等の内容について理解しているものと受け止めています。具体的には、各国の在京大使館に対して、また米国に対しては在京大使館に加えて在日米軍に対して、実務レベルで必要な説明を行ってきているところであります。
  68. 浜田昌良

    ○浜田昌良君 今、外務大臣からこの五党合意の内容につきまして、既に外交レベル、またアメリカに対しては在日米軍に対して説明もされたと話がございました。  それでは、どういうふうにこれを現場レベルに徹底していくのか、防衛大臣にお聞きしたいと思いますが、今回、この五党合意を受けまして、防衛省・自衛隊の内部規則類においてこういう対応をするという話を聞きました。  まず、アメリカからの要請内容の適切性、適正性を判断するための基準を整備すると。つまり、必要としている物品役務の内容とか部隊が置かれている状況等を判断するための基準を作られると。で、実際の提供に当たって、上記基準を踏まえて現場部隊レベルでまず判断をすると。で、基準を超える、又はその疑いのある要望があった場合には本省レベルで確認をするということでありまして、これらの規則類を現場部隊レベルまで事前に徹底をすると。  さらに、これらの対応について、内局、各幕等様々なレベルから相手国の様々なレベルで文書の形で伝達し、理解を徹底するという話が防衛省からあったわけでございますが、こういう規定類、今の考え方、確認をいただくとともに、こういう規定類の整備はもう終わったんでしょうか。それとも、また、相手国に対しての文書での伝達が終わったんでしょうか。どういう状況か、防衛大臣から答弁いただきたいと思います。
  69. 稲田朋美

    国務大臣稲田朋美君) 政府といたしましては、平和安全法制成立時に行った閣議決定のとおり、五党合意の趣旨を尊重し、適切に対処していく考えであり、これまで防衛当局間のレベルでも、相手国に対して我が国国内法令及び五党合意の内容について説明をしてきたところでございます。  実際に物品役務提供するに当たっては、五党合意の趣旨を盛り込んだ内部規則を整備することといたしており、今、その内容について現在検討中でございます。内部規則の内容については、自衛隊の現場レベルまで周知徹底をする、そして相手国に十分説明することにより、実際の物品役務提供を行うに当たっては相手国との間で五党合意の趣旨を踏まえた適切な対応確保されるものというふうに理解をしているところでございます。
  70. 浜田昌良

    ○浜田昌良君 是非早急に整備を終えていただいて、その旨をまた相手国に文書で伝達をお願いしたいと思います。  ただ、今回、弾薬の提供をする場面として災害派遣や国際緊急援助活動なども入っているわけですね。こういうものについては殺傷性のある弾薬を提供することは想定されないと思うんですが、そういう場面においてはそのような殺傷性のある弾薬は提供しないなど、活動の性質に応じた弾薬の提供に係る基準となっているかどうかについて防衛大臣に再度答弁をお願いしたいと思います。
  71. 稲田朋美

    国務大臣稲田朋美君) 今先生が御指摘になりましたように、一般に災害派遣や国際緊急援助活動において自衛隊が武器を使用するということはなく、直接人を殺傷する手段として拳銃、小銃、機関銃等に使用される弾薬を提供することはありません。他方、マリンマーカーなどの弾薬については、海上で遭難した者を救助する目的で使用する場合もあり、このような弾薬を提供することはあり得ると考えております。  内部規則については、こういった点も含め現在検討しているところであり、適切なものとなるよう、引き続き検討していきたいと考えております。
  72. 浜田昌良

    ○浜田昌良君 マリンマーカー等いわゆる捜索であったりとか必要な照明弾等は、一応弾薬の部類かもしれませんが、そういうものは含まれるということでございます。そういうことが明確になるように規定類を整備をお願いしたいと思います。  続きまして、弾薬の提供というのは、使用する拳銃、小銃、機関銃などが同一のものでないと、実際は融通が困難だと思います。これらの武器は、現時点でも日米豪英でどの程度共通化しているんでしょうか。また、今後同一なものを優先的に調達すると、そういう考えにするんでしょうか。これについては防衛省の政府参考人から答弁いただきたいと思います。
  73. 中村吉利

    政府参考人(中村吉利君) お答え申し上げます。  現実に弾薬を提供する場合には、自衛隊提供する弾薬と相手方の武器とが適合しているということが委員指摘のとおり必要でございます。  自衛隊が使用しております拳銃、小銃、機関銃といった火器の多くは国産になっておりますけれども、その弾薬については、NATOの共通規格に当てはまる国産の五・五六ミリ弾ですとか十二・七ミリ弾を使用しているものもございます。  一方で、自衛隊の装備品につきましては、相互運用性を考慮しつつも、あくまでもその任務に応じた調達を行っているところでございまして、ACSAによりまして他国に弾薬を提供することを前提にこういった調達等を行っているというわけではございません。  したがいまして、実際に自衛隊が現に保有する弾薬の範囲内で相手国において使用可能なものを提供するということになってこようかと考えているところでございます。
  74. 浜田昌良

    ○浜田昌良君 今答弁いただきましたように、あくまで自衛隊のいわゆる武器につきましては、その任務に応じてというのが大前提でございまして、ACSA提供できるかということを優先するものではないんだと思います。そういう意味では、是非その原則を守っていただきたいと思います。  次に、先ほどもこれは答弁があったわけですが、今回、日米ACSAでは明示的にいわゆる存立危機事態が明文化されているわけです。また、日豪日英ACSAにはその言葉はありませんけれども、いわゆる各国の法令物品役務提供が認められているその他の活動という中に読み込まれて、存立危機事態が読み込まれているわけですね。  そうしますと、この存立危機事態我が国と密接な関係にある他国に対する武力事態が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある事態というわけでございますが、この密接な関係にある他国というものに自動的にアメリカやオーストラリアやイギリスがなるのかにつきまして、これは先ほど滝沢政務官の答弁がありましたが、法律を所管しているのは一応これ内閣官房でございますので、内閣官房が再度、そういうものではなく、やはり個別具体的な状況に応じてこの密接な関係にある他国が判断されるということを確認のために答弁いただきたいと思います。
  75. 槌道明宏

    政府参考人槌道明宏君) 存立危機事態に言います我が国と密接な関係にある他国に具体的にどのような国が当たるかにつきましては、あらかじめ特定されるものではございませんで、他国に対する武力攻撃が発生した段階におきまして個別具体的な状況に即して判断されるものでございます。このことは、決済手続を定めるACSA締結やその内容によって変わるものではございません。  すなわち、御指摘のとおり、こうしたACSA締結したからといって存立危機事態に言う我が国と密接な関係にある他国に自動的に当たるというものではなく、あくまでも個別具体的な状況に即して判断されるものであるというふうに考えます。
  76. 浜田昌良

    ○浜田昌良君 再度、確認の答弁をいただきました。  今回、平和安全法制の中で、PKO、国連平和維持活動以外にも、大規模な災害に係る活動、海外での活動が今次ACSA対象となるような法改正がなされたわけでございますけれども、その背景には、ハイチ地震の際の日米間の物品役務相互提供がうまくいかなかったという背景があると聞きましたが、その概要について外務省から答弁いただきたいと思います。
  77. 高瀬寧

    政府参考人(高瀬寧君) お答えいたします。  平成二十二年の一月十二日に、ハイチで地震が発生いたしました。このとき我が国は、地震の発生の翌日以降、国際緊急援助隊として医療チーム、そして自衛隊の部隊を派遣しております。このような状況の下、同様にハイチで活動しておりました米軍から人員及び物資の輸送業務についての役務提供に関わる要請がございました。しかしながら、当時、国内法上、国際緊急援助隊自衛隊部隊が米軍に対し相互役務物品提供する法整備がなされていなかったため、役務提供を行うことができなかったというふうに承知しております。
  78. 浜田昌良

    ○浜田昌良君 そういう意味では、そういう場合でもこのACSA協定締結されれば対応できるようになるということで、一歩前進だと思います。  一方、今回、平和安全法制の中で、いわゆる日米の共同訓練だけではなくて、いわゆる日米が参加する多国間訓練の場においても物品役務提供ができるということになったわけでございます。  これは日米だけじゃなく、日米ACSAの九条にその旨が書いてあるわけでございますが、日豪ACSAであれば三条二項、日英ACSAも同様でございますが、その多国間訓練のときに、今の条項によりまして第三国に日米なり日豪なり日英提供したものが移ってしまうんじゃないかと。この今言った条文は、相手国の文書での事前の同意があればそういうものを提供できる、役務を移転できるという条項が今言った条文なわけでございますけれども、そういうことになるんじゃないかという懸念もあったわけでございます。  そこで、確認のために外務大臣に答弁いただきたいと思いますが、過去、日米ACSAであれば九条、日豪ACSAであれば三条二項でありますけれども、この条項によって事前にアメリカなりオーストラリアに提供した物品が渡ったという例があるのかどうなのか。私はないと思いますけれども、かつ、今後、今言ったような多国間の訓練の際に、アメリカなりオーストラリア、今度はイギリスも入りますけれども、そこで提供された物品が転々流通するといいますか、そういうことはないと、そういうことをそもそも防ぐためのこの条項であるという理解を私はしているんですが、そういうことでよろしいのか、外務大臣確認の答弁をいただきたいと思います。
  79. 岸田文雄

    国務大臣岸田文雄君) まず、実績を申し上げるならば、日米ACSAあるいは日豪ACSAの下で自衛隊提供した物品役務又は提供を受けた物品役務について、事前の同意が与えられて第三者に移転されたということはございません。  そして、御指摘の多国間訓練の場合においても、この協定の下で提供された物品又は役務を書面による事前の同意なく第三者に移転しないことが協定上の義務であるということについては変わりはございません。そのため、万一そのような事前の同意なく第三者に移転されるようなことがあれば、協定上の義務違反となります。  そして、今後について、予断を持ってお答えすることは困難ですが、一般論として申し上げるならば、受領国政府が受領した物品を第三者に移転することを希望して事前の同意を要請する可能性、これは全く排除されるというものではないと考えます。しかしながら、仮に我が国提供した物品について受領国政府がそのような希望を有する場合であっても、かかる第三者移転の必要性など、そのときの状況を総合的に勘案して我が国として主体的に判断する、これは当然のことであると考えます。
  80. 浜田昌良

    ○浜田昌良君 是非、基本的にはそういうことは余りないんだと思いますし、あったとしても主体的に判断ということを是非お願いしたいと思います。  このACSAにつきましては、今回、日米から日豪日英へと広がってまいりまして、今までの答弁でフランスやカナダとの交渉も報じられておりますが、韓国との重要性も言われております。  そこでお聞きしたいと思うんですが、北朝鮮に対する日米間の連携、また韓国と、日米韓の三か国の連携重要性に鑑みまして、韓国とのACSAを今後検討することは重要だと思いますが、現在韓国ACSA締結している国はどことどこがあるんでしょうか、参考人から答弁お願いします。
  81. 金杉憲治

    政府参考人(金杉憲治君) お答え申し上げます。  韓国は、現在、米国及びドイツとの間で物品役務相互提供に係る政府間の協定締結しているというふうに承知しております。  以上でございます。
  82. 浜田昌良

    ○浜田昌良君 日本ACSA交渉状況にはドイツという名前はなかったんですが、そういう状況であればそういうことも選択肢になってくるのかなと思いますので、今後幅広く検討をお願いしたいと思います。  もう時間がありませんので質問はしませんが、是非、両大臣にはACSA協定をしっかり使っていただいて、抑止力、また対処能力の向上をお願いさせていただきまして、私の質問を終えさせていただきます。  ありがとうございました。
  83. 宇都隆史

    委員長宇都隆史君) 本日の質疑はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。    午後零時四分散会