○吉田宣弘君 公明党の吉田宣弘です。
私は、ただいま
議題となりました
組織的
犯罪処罰法改正案、いわゆる
テロ等準備罪処罰法案並びに
自由民主党、公明党及び
日本維新の会の共同提出による
修正案について、
賛成の
立場から
討論いたします。(
拍手)
冒頭、二十三日に
英国マンチェスターで発生した爆発
事件に関し、仮にこれが
テロであった場合、このような卑劣な
テロ行為は断じて許すことができず、断固として非難します。また、お亡くなりになられた
方々及びその御遺族の
方々に心からの哀悼の意を表し、負傷者の
方々の一日も早い回復を祈念いたします。
国際社会においても我が国においても断じて
テロを起こさせてはならないとの決意を表明し、
英国の国民の皆様に思いをいたしながら、以下、本
法案に
賛成する主な
理由を申し述べます。
まず、
テロ等準備罪の
国内法整備は
TOC条約締結に不可欠であるからです。
テロリストは国境を越えて活動します。
テロなどの国際的に重大な
組織犯罪の発生を未然に防ぐためには、緊密な
国際協力が不可欠です。この
国際協力を飛躍的に
強化させることができる条約が
国際組織犯罪防止条約、いわゆる
TOC条約です。本
法律案が
成立し、
TOC条約を
締結できれば、
捜査当局同士の直接のやりとりによる
捜査共助の迅速化、日常的な情報交換の促進、さらには本条約に基づく逃亡
犯罪人引き渡しの請求をすることが可能になります。
この点、
TOC条約締結には、特段の
国内法整備は不要であるとの
意見があります。しかし、この条約を所管する
国連薬物犯罪事務所、UNODCの
立法ガイドは、明確かつ具体的に
国内法の
整備の
あり方を記載しておりますし、
法務委員会の
審議において明らかにされたUNODCの
口上書からも、重大な
犯罪の
合意罪、すなわち
テロ等準備罪の創設が不可欠であることが確認できたところです。
そもそも、
TOC条約は、留保を付さずに
締結するものとして
国会に提示をされ、その
承認について社民党を除く各党が
賛成をしています。
国内法整備が不要であるとの
意見は全く理解に苦しむところでございます。
また、FATF勧告を充足する
環境整備を行うことも重要です。
FATFは、マネーロンダリング、
テロ資金の国際基準づくりを行うための多国間の枠組みです。FATFでは、
日本に対し
TOC条約の
締結の履行が勧告されています。不履行の場合には、我が国の国際社会における
信用低下のみならず、海外
金融機関との取引拒絶や契約解除など
国内の金融活動に支障が生じるおそれがあります。
TOC条約を
締結し、FATF勧告の履行
状況を改善させることで、国際金融取引における
信用維持に向けた
日本の取り組みを国際社会に示すことができ、今述べたようなおそれを回避することができます。
次に、
テロ等準備
法案は、国民の不安や
懸念を払拭するのに十分な
処罰範囲の
限定と
明確化が図られていることを申し述べます。
一点目は、構成要件が厳格に
規定されている点です。
まず、
犯罪主体を、重大な
犯罪の
実行を結合の目的とする
組織的犯罪集団に法文で明確に
限定しています。そして、行為は、具体的、現実的な
計画と、それに基づく
準備行為を必要としています。この三重の
限定により、
組織的犯罪集団とのかかわりのない
一般の
方々が
処罰されることはなく、従前
政府が提出した
共謀罪に対し示された、内心の自由を害するのではないかとの
懸念も払拭されております。
二点目は、本
法案は、我が党の
意見も踏まえ、
対象犯罪を、六百七十六から、
組織的犯罪集団が関与することが現実的に想定される二百七十七の罪に
限定されている点です。
TOC条約は、
処罰範囲を
組織的犯罪集団が関与するものに
限定することを許していますが、このオプションを最大限活用し、
対象犯罪の
限定が達成されています。
この点、本
法案の
対象犯罪につき、例えば、保安林窃盗罪が
規定されていることを捉えて、キノコ狩りで
処罰されるといった議論がありました。しかし、保安林窃盗罪に関して、
組織的に重機を駆使し、山砂を違法採取して四千万以上の違法収益を上げた事案が実際に摘発されています。このような現実的な事例があるにもかかわらず、わざわざキノコ狩りという不適切な事例を用い国民の不安をあおる、まさに印象操作のための議論であると言わざるを得ません。
次に、本
法案の運用面に関し申し述べます。
法案審議の中で、
一般の
方々が
捜査の
対象になるのではないかとの
懸念が示されました。しかし、
捜査は、任意
捜査、強制
捜査を問わず、
犯罪主体が、
組織的犯罪集団に
限定されている以上、これとかかわりのない
一般の
方々に
犯罪の嫌疑が発生する余地はなく、
捜査の
対象になることは考えられません。
また、本
法案の
成立により一億総監視社会になるとか、LINEもできない
共謀罪などといった批判、主張がありました。しかし、
テロ等準備罪は通信傍受法の
対象犯罪ではなく、LINEやメールが本罪の嫌疑を
理由に傍受されることはありません。また、本
法案は、手続法ではなく実体法の改正であって、
テロ等準備罪の
新設は現在の
捜査の
あり方に何ら
影響を与えるものでもありません。しかも、
捜査機関が一億人を常時監視するのにどれほどのコストとマンパワーが必要になるのか。余りに非現実的な主張であります。
法的根拠に基づかないレッテル張りによって国民の不安をあおり、その自由な言論活動を萎縮させる暴挙を行っているのは一体誰なのか。一部の
野党諸君には猛省を促すものであります。
一方、実体法たる本
法案に関して、手続面たる
捜査の適正についても多くの時間が費やされた
審議の経緯を踏まえ、
自由民主党、公明党、
日本維新の会による
修正案により、本
法案の本則に
捜査の適正
確保への配慮
規定が追加されたことは高く評価されるべきです。
なお、本
法案を治安維持法と同視するような荒唐無稽な主張もありました。しかし、治安維持法は、国体を変革することを目的とした結社を
処罰し、その執行において拷問や司法手続を経ない拘束までもが行われた悪法です。本
法案とその
内容が根本的に異なります。しかも、治安維持法の問題は、旧憲法下での
制度、戦時体制が前提となっています。成熟した民主主義と司法手続、マスコミ等により監視が行き届いている現在、治安維持法と同様の問題が生じる
可能性は皆無です。不見識きわまりない主張であると断じざるを得ません。
このように、一部の
野党から、本質から外れた、国民の不安をいたずらにあおる主張が繰り返し述べられたことはまことに残念ではありますが、本
法案は、既に三十時間以上の
審議に加え、十人もの
参考人から
意見の聴取を行い、本
法案の
必要性、構成要件の
明確化、
捜査の適正など充実した
審議が行われました。速やかに議決され、国民から
テロ等の重大
犯罪による脅威を取り除くべきです。
最後に、我が国は、二〇二〇年
東京オリンピック・
パラリンピック競技大会や、二〇一九年ラグビーワールドカップを目前に控えています。
日本が
テロの標的になる
可能性を否定できない国際情勢の中で、国際標準として百八十七の国・地域が
締結している
TOC条約を早期に
締結し、
テロを含む
組織犯罪から国民と来日する外国の
方々を守るための
法整備を行うことは、国家として当然の責務です。
国境を越えて行われる
テロ等に対し、
日本が法の抜け穴になってはなりません。また、本
法案は、高齢者などの財産を侵害してきたオレオレ詐欺など特殊詐欺
犯罪の未然
防止にも役立ちます。
公明党は、
与党の一員として、断じて国民を守り抜くとのかたい決意のもと、政策立案に全力を尽くすことをお誓い申し上げ、
賛成討論といたします。(
拍手)