○今野
委員 ありがとうございます。
予備行為というのが、理論上はともかくとして、
我が国の判例上はかなり厳格にこれも要件に縛りがかけられている、東京高裁の昭和四十二年の判決がその典型でありますけれども。
そもそも予備行為自体が、先ほど局長に御
答弁いただきましたように、下見ですとか、なかなか、例えば殺人既遂罪なんかと比べても、構成要件の外延というものが、外部周辺が明確になってこないものとして一般的には言われているものでございまして、だからこそ、判例はそうした厳しい縛りを
我が国の実務上課している。
ですから、今回、実行準備行為と予備行為とどこが違うのと言われた場合には、先ほどのような局長からの御
答弁になるんだろうと思います。
それで、この実行準備行為を付加したことに関して、当
委員会の議論の中でも頻繁に出てきておりますけれども、内心を
処罰することになるのではないかと。
これは、私、
質問者のすぐ後ろが私の
委員会の席でございまして、ずっとその議論を聞いておりまして、内心というのは、皆さんに
誤解されないように言っておきますけれども、あくまでも心のうちなんですね。例えば、ある人が大量殺人を企てて、それで自分の部屋でそれを四六時中考えている、外部には一切行為として出てこない、それはどんなに考えても
処罰されない、これが内心の自由なんですよ。それは憲法上の規定でもあります。ですが、もちろん、内心が行為として外部にあらわれてきた、その
段階で、当然のことながら、それは刑法の
処罰範囲の中に入ってくる。
それはだから、内心を
処罰することではありません。刑法の行為主義というものはあくまでも行為を
処罰するものであって、それは内心の
処罰とは全く違う、概念的にそもそも異なるんだということを
指摘しておきたいと思います。
それで、先ほど
赤澤委員の
質疑の中にも出ました。今回、
TOC条約を
締結するために、五条の解釈については、
立法ガイドのパラグラフ五十一あるいは五十五、それに関しての国連薬物
犯罪事務所、
UNODCからの
口上書、これは、我々のこの
法務委員会においても
資料として既に配付されておりますけれども、それを読む限り、
合意罪あるいは
参加罪を、あるいはその双方を
条約締結のために
創設しなければいけないんだということがはっきり明記をされております。この
口上書が偽造だというのであれば別ですけれども、そうでない限りは、必ずそれを
創設しなければいけないわけです。
では、予備罪があるからそれを
締結できるんじゃないのというような議論も散見されるわけですけれども、これについても、もう既に何度も繰り返し
指摘されているように、予備罪では
合意罪、
参加罪の規定を
創設したことにならない、そもそも、
TOC条約上の
義務履行を満たさないということでございます。
さらに進んで、では、予備罪の共謀共同正犯はどうなんだというような話もあります。ただ、予備罪の共謀共同正犯、この共謀共同正犯は、判例上は既に確立されたものとして認められておりますけれども、そもそも、例えば練馬事件、昭和三十三年の大法廷判決などにおけば、共謀共同正犯の
成立要件は、かいつまんで言えば、まず共謀の事実、そして
二つ目に共謀に基づく実行行為がなければ
成立しないというふうに解されております。ですから、予備罪の共謀共同正犯と言ったところで、結局のところ、予備罪の実行行為がなければ
成立しないわけでありますから、要は、予備罪だけで
TOC条約の
義務を果たさないのと一緒であって、幾ら共謀共同正犯と言ってみたところで、それが
TOC条約の加盟
義務を果たさないことには変わりはないということであります。
そのことを
指摘した上で、時間がかなり迫ってきておりますけれども、残された時間で、私は、ちょっと罪数についてお聞きをしたいと思います。
罪数論、これはなかなか実務的な問題でして、お聞きになっている方々が正確に理解していただけるかちょっと不安ですけれども、具体例を挙げながら言っていきたいと思います。
例えば、組織的な殺人、これは
テロ等準備罪の対象
犯罪ですけれども、組織的な殺人の
テロ等準備罪を犯した人が、その後、本体
犯罪といいますか、組織的な殺人罪の実行に着手したというような
事例で考えていただければいいと思いますけれども、その場合に、
テロ等準備罪と本体
犯罪、
計画をした対象
犯罪との間の罪数
関係、これについて教えていただけますでしょうか。