○
三木参考人 情報公開クリアリングハウスの
三木でございます。
昨年もここで
意見を述べさせていただきまして、ことしも
機会を与えていただき、
大変感謝を申し上げます。
まず初めに、
情報監視審査会の
報告書を拝見いたしまして、多くの御
尽力をいただいているということをよく
理解できる
報告書でございまして、
大変敬意を表しますとともに、私
どもとしては、このような
報告書が出ていること
自体は歓迎をしております。
私
たちは、完全なるアウトサイダーでございますので、実際に、
インテリジェンス、
コミュニティーの中や
安全保障セクターの中で何をしているかということは知り得る
立場にありませんが、一方で、それに対して
信頼なり
理解を向けなければいけない
国民という
立場でこの制度を見ております。
特定秘密保護法は、実質的な
中身についてこの
審査会で明らかにするということが一般に対してできないということはよく
理解をしておりますが、一方で、仕組みや
システムとしてどう
運用されて、その
システムとしての
アカウンタビリティーがどの
程度果たされているのかということは、この
審査会の御
検討、御
議論を通じて
報告書をまとめていただくことによって、私
たちは初めて
理解できることもたくさんございます。ですので、この
審査会がどのような
活動をするかということは、イコールで、
政府がどの
程度の
アカウンタビリティーを果たせるのか、あるいは私
どもの知る
権利なり
情報にアクセスする
権利がどの
程度保障されるのかということと一体のものだというふうに考えておりまして、引き続きぜひ御
尽力をいただければというふうに考えております。
今回の
報告書を拝見しまして、これまで
理解ができていなかった、あるいは全く気づいていなかった大事な論点が
幾つかあるということに気がつきましたので、きょうは、そのことを
中心に
意見を述べさせていただきたいと思います。
先ほど来
お話が出ておりますが、
特定秘密文書の不
存在類型というのがあるということが、確かに今回は非常にわかりやすい問題としてあらわれたということが言えると思うんですが、私は、この不
存在類型を拝見しまして、実はすごく根幹にかかわる問題が明らかになったというふうに考えました。
と申しますのは、
特定秘密は、そもそも
情報を
指定するもので、
文書を
指定するものではないということは、これは制度の枠組みとしてもう決まっていることでございます。なので、
情報と
文書のずれというのが思いのほか大きく、かつ、制度の
運用を考えるとわかりにくいということがよくわかったということであります。
なので、この両者の
関係をより
審査会で深めて整理をしていただいて、より、
運用レベルで、どういうことが
文書と
情報の
関係にあるのかということをぜひ明らかにしていっていただきたいというふうに思っております。
なぜ根幹にかかわる問題と思ったかといいますと、
特定秘密保護法の罰則規定との
関係を見まして、これはとても重要な問題だと思ったということであります。
二十三条の一項は、
情報漏えいに対して刑事罰を科す規定になっております。レジュメを用意させていただいていますけれ
ども、「
特定秘密の取扱いの業務に従事する者がその業務により知得した
特定秘密」というふうになっておりまして、知得という
言葉を使ってあります。知得は、逐条解説、
内閣官房がつくりましたものを見ますと、無形的な事項あるいは事実または
情報を知っている状態をいうということでありますので、知るということそのものが漏えいに当たるという規定になっています。
ですので、
文書を得たかどうかではなくて、
情報を得たかどうかが重要であって、その
情報を漏えいしたかどうかというのが刑事罰の
一つの判断基準になるということになっている。
それを前提に考えますと、不
存在類型の2と4というものがございます。
他機関が保有して、現に自分の機関は持っていないというものを類型2としてまとめてありますけれ
ども、他機関にはオリジナルがあって、現に自分
たちは
廃棄をしてもう持っていないけれ
ども、それを
特定秘密として
指定している、これは知得をした状態であるので
保護が必要だということを類型2は言っているということになります。
それから類型4も、
廃棄して、ないものが頭の中に知識として残っているという、知得した状態であるということをもとに、これも
保護が必要だということを各
行政機関が言っているということで、この
二つの類型は基本的には同質の問題であるというふうに整理すべきではないかというふうに考えています。
なので、この両者の共通点は、
行政文書ではないけれ
ども、
情報としては保有している状態にあるというふうに各
行政機関が認識しているということであります。
この課題から、私
どもの
立場で課題として言えると思うのは、
行政文書として
廃棄をされた
特定秘密は、
廃棄後も、知得状態で
保護が必要だというふうにみなされれば
特定秘密としての
指定を継続し続けるということになります。まだ
施行から日が浅いので
廃棄文書はそんなにたくさん出ておりませんけれ
ども、この先、
文書の
廃棄が仮にふえたとしますと、
情報としては
存在するけれ
ども文書がないという
情報カテゴリーがたくさん出てくる
可能性があるということが、今回の
報告書からわかったということだと思います。
そうしますと、これは
情報の
管理というよりも、その
情報を知っている人の
管理をするという仕組みになっていくということになります。これは
文書の
管理とは明らかに異なる問題であるというふうに私なんかは考えております。ですので、ここが一体この先どんな
保護と
管理になっていくのかということは、
報告書を拝見して大変懸念を覚えたというところがあります。
それからもう一点、長期的な
特定秘密の
指定というのは、例えば三十年を超えますと、
内閣の承認を得られなかったものは移管義務が発生するというふうに法律上は規定をされています。それから、統一基準の方で、三十年を超える
特定秘密は移管
対象だと言っておりますので、今の
運用を前提にしますと、三十年を超える
特定秘密は国立
公文書館に移管をするということになります。これは、
行政文書が残っていればという話になります。
文書が途中で
廃棄をされましたけれ
ども、三十年、四十年、
特定秘密の
指定が必要なものは、
文書がないまま
特定秘密として長期持つということになります。そうしますと、歴史的な検証を付すことで長期
特定秘密を許容しようという法枠組みでスタートしておりますけれ
ども、その移管すべき、残すべき
行政文書がないという
状況も、このままだとあり得るということになってくるのではないかということであります。
既に
報告書の中でも言及されておりますけれ
ども、
特定秘密の
解除あるいは
指定期間満了と
行政文書の
保存期間満了の考え方を改めて整理していただくということが、この際重要なのではないかというふうに考えております。
それで、
行政文書と
特定秘密について、
管理という
観点から、少し
行政文書の
管理についてフローを、
特定秘密もまぜ込んでまとめてみました。
行政文書というカテゴリーの中に全ての
特定秘密文書も含まれるという前提になりますので、基本的には
行政文書なんですけれ
ども、
特定秘密と表示をされると
特定秘密文書等という
名前が特別につくということでありまして、この
文書の、どこに配付をしたかとか、誰が閲覧をしたかということを
管理するために
文書管理簿というものがつくられるということですので、これは
公文書の
管理とは別の
管理のルールになります。
特定秘密文書を含む
行政文書は、ファイルにまとめられて基本的には整理をされて
管理をされるということになりますので、このファイル単位で基本的には保存がされる、
保存期間が設定されるということになります。
一年以上の
保存期間がついているものについては、ファイル
管理簿というものが
公文書管理法上定められておりますので、ここで
管理をされて、
保存期間満了に伴って、移管、
廃棄ということが判断をされます。この
部分については、移管・
廃棄簿というものが作成されることになっていますので、どの
文書、どのファイルが
廃棄をされて、移管をされたのかということは、
行政内部では明らかになる仕組みになっている。
一年未満というのが、最近のさまざまな問題で問題になっておりますけれ
ども、これはファイル
管理簿に登録をされておりませんので、移管・
廃棄簿の作成の
対象に現在なっておりません。ですので、仮に一年未満の
特定秘密文書がございますと、
廃棄したかどうかも確認ができないという仕組みになっているということなんですね。なので、
保存期間の問題というのは、
特定秘密の
管理とかそういうものをめぐっては非常に重要なものになってくるのではないかというふうに考えています。
それから、
行政文書ファイル
管理簿から、
特定秘密を含む
文書が入っているファイルについては
特定行政文書ファイル等という名称がつけられまして、これが
独立公文書管理監に全部送られることになっています。ですから、
文書単位だけではなくてファイル単位で、どのファイルに
特定秘密を含むのか、そのファイルが何年保存で、
保存期間満了後に移管していくのか、
廃棄するのかというのは、あらかじめ
独立公文書管理監は把握できる
状況にございます。ですので、
特定秘密については、
文書単位だけではなくてファイル単位で監視をしていく、あるいはチェックをしていくということも実はできなくはないということになってございます。
それから、一年未満と一年以上の
保存期間で、
行政文書で申しますと、一年以上に関しては、必ず
内閣総理大臣の同意が必要になりますので、事前協議がされますけれ
ども、一年未満は個別の同意の
対象になっていないんですね。最近私も発見をしたんですけれ
ども、
廃棄については、一年未満は、事前の包括同意をしていますという仕組みになっていまして、個別のファイルごとの審査をしないという仕組みになっていますので、まとめて全部
一括で一年未満は
廃棄ができますという仕組みに実はなっているというところで、ここに
特定秘密が入っていると、まずチェックが難しいという
状況になってきます。
今回の
報告書を拝見しますと、消防庁では一年未満保存
文書があったということで報告がされておりまして、これは、
廃棄したかどうかについては客観的な記録が残らないというものになっている。
それから、
特定秘密文書管理簿というのは、これは
保存期間を
管理するものではありませんので、
特定秘密に該当するかどうかだけしか
管理をしないんですね。ですので、現状を申し上げますと、
行政文書の
保存期間と
特定秘密の
指定期間を一覧的に確認できる簿冊とかファイルとか、そういうものが制度上は予定をされていないということになります。ですので、期間がずれた状態でそれぞれの
管理の
システムが走っている状態になってしまっているということになります。
さらに申し上げますと、国立
公文書館に移管をされる
文書については、歴史
公文書等という
名前が特別についていまして、これは移管義務の
対象になるんですけれ
ども、それ以外は、個別審査を
内閣府の
公文書管理課が行います。ここは、
特定行政文書ファイル等という、
特定秘密を含むファイルかどうかという
情報を送られていませんので、
特定秘密が含まれているかどうかがわからないファイルの一覧を見て審査をしているという
状況になりますので、実はここではチェックがきかないんですね。
そうしますと、
独立公文書管理監がそれを見ておりますので、そこが
廃棄のチェックをするかというと、必ずしもそういう仕組みになっていないというところがございますので、ここの両者の
関係を少し整理して、
廃棄をしてはいけないというよりも、
廃棄をするのであれば、それが妥当に審査をされているという制度的な担保をきちんと置かないと何を言っても
信頼されない、そういう仕組みになっていくのではないかというふうに考えています。
独立
公文書監は、この
審査会において、慎重に慎重を期して行う、監視をするというふうに言っておりましたが、何がどう慎重にやるのかという、そこの何がが非常に重要でありますし、それが制度的にどう担保されるのかということが非常に重要であるというふうに思いますので、ここをぜひ
審査会で
状況を整理していただいて、
説明をしっかり聞いていただいて、それを可能な範囲で
報告書に反映していただければというふうに考えております。
その
廃棄の問題というのは、先ほど申し上げましたけれ
ども、知得として
情報を
保護するというその仕組みとも非常に
関係してまいりますので、ぜひその点について特に今回
お願いできればというふうに考えております。
以上でございます。(
拍手)