○篠原(孝)委員 全くないとは言いません。だから、薗浦外務副
大臣も正直にお答えになりましたけれども、政治的な意味というのは、私は本当に減っているんじゃないかと
思います。それはもともとそうでして、TPPやAPECに余り政治を絡めるのはよくないと
思います。それを、議論の最中で答弁に困ると、いやいや、中国包囲網だといつもいろいろなところの人たちが答える。僕はこれは邪道だと思っています。
正直にお答えになりました。経済的な意義、これでいっていいんだろう。背景にあることはあるんですよ。それを前面に出して、だからこれが必要なんだ。だからどういうことかというと、北朝鮮問題もあって、アメリカの言うことを聞かなくちゃならないんだからTPPでも妥協しなくちゃならない、これは正論じゃないということを僕は申し上げているんです。このようにしていただきたいと
思います。
このそもそも論で言いますと、私は、今、
日本は、皆さんお気づきになっていないですけれども、危険な道を多少行っているような気がします。どういうことかというと、戦前、
日本も後から植民地
経営に出ていったわけです。軍事大国主義です。海外進出していった、満州にも。石油がないからというのでインドシナまで出ていった。非常にどでかいことを考えて出ていったわけです。
しかし、それに対して、そんなことはするなとずっと在野の
立場から言っておられた方がいました。石橋湛山さんです。戦後、総理になられました。小
日本主義というのを唱えました。大国主義はいけないと。僕は彼の本を数冊読みまして感動いたしました、大分前ですけれども。軍事大国主義に対して小
日本主義を唱えたんです。
ですけれども、今、
日本は経済大国主義に陥っているんだろうと
思います。グローバリゼーションということでどんどん出ていく、貿易も
投資も。
しかし、それを一番進めたアメリカとイギリスが、ブレグジットとトランプ政権のアメリカ・ファーストということで、戻っているわけです。
それにおくれてスタートした
日本がそれをまた追っかけている。後からスタートした
日本がまた割を食うんじゃないか。
日本だけが、新自由主義だか知りませんけれども、それの旗手みたいな感じになっておだてられていると
思います。アメリカなき後は
日本が中心になってTPPをまとめてもらわなくちゃいけないということでやっているというのは、これは余りよくないことだという気がいたします。
では、相当時間をかけてつくりました「TPP参加経緯」の表を見ていただきたいと
思います。A3にした方がよかったかもしれませんけれども、よく見ていただきたいと
思います。ここにTPPの問題が全て要約されているんじゃないかと
思います。
まず、一番左の表は「
日本とのEPA」、ないのは、アメリカはないんですが、ほかにニュージーランドとカナダだけです。ただ、カナダは、後で触れますけれども、やる予定になっていたのに、TPPに入ったので中断しているだけです。NAFTAは御存じの参加国。RCEPの交渉中はこういう国で、チリとペルーが中国を加盟させてとかコロンビアと言っているのは、RCEPみたいなもっとでかいのでやっていきましょうと。TPPの参加、P4の方は二重丸で、二〇一〇年の一回目から参加しているのは白丸にしてありまして、
あと、いろいろな事情で後から入っていった。
この「参加理由」のところと「TPP11への
立場」が私の解説です。
アメリカはバシェフスキーがこうやって入りました。カナダとメキシコは入らなかったんです。だから、両方ともちょっと違うように書いていますが、同じでして、NAFTAで十分だ、それから、アメリカに余りぎゃあぎゃあ言われるのは嫌だということで様子見で入らなかったんですが、
日本が参加するということ、ホノルルで野田総理がそれらしいことを言ったというので慌てて入って、第十五回目の閣僚会合から入っています。
日本はさっき言いました。二〇一三年の二月。そして、クアラルンプールの途中から、そして、ブルネイから。このブルネイ以降、私は、よく閣僚会合に行ってはNPOの皆さんと
意見交換してまいりました。
マレーシアは、ほかのアジアの国と同じようで、一九九七年、アジア通貨危機のときに相当痛い目に遭ったし、アメリカと二国間FTAをやろうと思ってやり始めたら、アメリカが余りにも強烈なことを言うので、嫌になってやめた。やめたけれども、多国間ならいいということで参加した。こういう事情があります。
それで、私、ベトナムに行きました。
世耕大臣も御存じないかな、御
紹介いたしますと、このネクタイはベトナムの前農林
大臣とエールの交換をしたときにいただいたものです。ずっとやり続けないんですから安心してください。
ベトナムは、よく新聞紙上では、マレーシアとともに国営
企業の
改革や何かを相当した。痛みを伴う
改革をして、そしてアメリカ市場に打って出られるからと思ったけれども、アメリカは抜きなのでだめだというふうなことを盛んに書かれていますけれども、意外でしたね、違ったです。どういうふうにお感じになったか。
私は、NPOじゃないですが、
政府の高官にも会いましたし、大学の教授にも会いました。どう言っていたかというと、ここがしたたかでした。余り外交の手のうちをばらしちゃ悪いかと
思いますけれども、
政府の高官の話じゃないからいいと
思いますけれども。ベトナムはこう言っていました。国営
企業改革はどっちにしろしなけりゃならないんだ。だから、あれはあれでいいんだ。だから文句はあるんです、TPP、自由化を進めるのは。だけれども、APECの議長国だ。これを何とかしてまとめなくちゃいけない。ダナンですか、十一月に聞かれる。そこでまとめなくちゃいけないから、それを抑えているというのがよくわかりました。
だから、国営
企業改革は別にそんなにハードじゃないんだ。やるべきことをやらなくちゃいけないんだ。では、
日本がよく
改革に使った外圧と同じかと言ったら、いや、そういう言葉は使っていない。もともとやる予定だったのをやっていくんだ。だけれども、交渉のタクティクスとして、戦術として大きく譲ったということにしているという感じでした。
だけれども、それで何にも問題ないのかと言ったら、いや、大問題なんだと。農業就業人口が五〇%を超えているんです、まだベトナムは。人口一億人弱です。半分以上が農村にかかわっている。このところにオーストラリアやニュージーランドからばんばん農産物が入ってくる。特に、畜産なんというのは小さい。
日本の大昔と同じです。とてもじゃないが太刀打ちできない。これをそのままにするわけにいかない。そういう点では
日本と
立場が同じだと言っていました。
というのがあります。そこは大きく今新聞のというか、
政府の受けとめ方と違うことじゃないかと
思います。しかし、何か大人の振る舞いを相当していました。
それから「TPPの国内手続き」を見てください。アメリカは撤退して、
日本は去年の臨時国会ですったもんだしながらみんな通してしまって、そして、ニュージーランド、寄託国に寄託して、一番真っ先です。それを二番目にしたのがニュージーランド。ほかの国は賢いですね。ちゃんと様子を見ていて、国内手続を完了させていないんです。
私はこれが国際社会では常識だと
思います。
日本だけがなぜか先走ってこういうことをしている。だから、こういった意地から、急いでTPP、自由化をイレブンでやっているというのかもしれません。
そして、問題は「TPP11への
立場」です。これは私が見て書いているので、字だけじゃわからないので、「推進度合」、アメリカはもう撤退しているのでバツ。もっとバツは多くたっていいのかもしれませんけれども、五つバツにしてあります。この二重丸の三カ国が推進しています。
一番右が川崎研一さん、前の旧経企庁の官庁エコノミストです。彼がGTAPモデルで計算しています。今は政策
研究大学院に行っておられるそうですけれども、TPP十二カ国と十一カ国で計算したのが出ています。
ニュージーランドは数字がないので出ていませんけれども、オーストラリアがなぜしゃかりきになるか。明らかなんです。見てください。太字で書いてあります。一・〇八%のGDPの押し上げから一・一八%で、唯一、この数字がある国ではふえているわけです。
日本はマイナス〇・二六ポイントです。それほど大きなマイナスじゃないんです。もともと、もとがでかいですから。
その下のマレーシアとベトナムは、ベトナムもかわいそうなんです。マイナス七・三〇ポイントです。マレーシアはマイナス二・八三ポイントです。大きく減っている。だからこの二カ国は、アメリカ抜きのTPPなんて何だ、どれだけメリットがあるのかと言うのは当然なんです。
日本は、余り得しているわけじゃないのにしゃかりきになる。どうもちょっとおかしいんです。
カナダとメキシコは当然ですよ。NAFTAの再交渉を議会に通告しました。九十日後にもう交渉を開始していく。八月中旬からNAFTAの再交渉をする。ロス商務長官はそれに全力を挙げる。
日本にかかわっておれませんし、TPP11なんてかかわっておれないと思うんです。日米の二国間交渉も当分始まらないと
思います。当然です。そんな理由はないです。USTR、ライトハイザーは決まりましたけれども、その下は決まっていませんから、やっていけないんだろうと
思います。NAFTAの再交渉までには陣容を整えるだろうと
思いますけれども。
カナダとメキシコは、ですから、二カ国ともアメリカを余り刺激したくない。だから、アメリカに嫌われるようなことをしたくないからという意味で、丸でしてありますけれども、三角か四角か、ですけれども、一応アメリカ抜きで得することが多いというのは同じですから。工業製品やなんかでは損しますけれども、農産物については絶対得します。割を食うのはいつも
日本の農家です。
それから、ニュージーランドやオーストラリアはおわかりだと
思います。
マレーシアは、数字では一番なんです。世銀の計算でも一番なんです。三〇年までに相当GDPが上がると見ている。ムスタパ貿易担当
大臣は、もうアメリカ抜きでは魅力が減少して意義が薄れたと言っています。それは、国内向けにマレーシアが一番苦しい
立場にあると
思います。さんざんメリットがあるから入るんだと、反対があったのに入ったので、マレーシアが多分この十二カ国の中では一番苦しい
立場にあると
思います。
ベトナムも同じなんですが、先ほど申し上げましたように、いいんだと。ファム・ビン・ミン副首相はいつか言っていました。EUとかほかの国の二国間FTAに力を注いでいけばいい。アメリカ抜きでもいいんだと。アイン商工相とは会って、二国間会談もされて
意見交換されたと
思いますけれども、非常に前向きで、むしろAPECの方が大事で、APECまでには合意が成立している、したいという希望的願望を述べておられます。
こういった表があるんです。これをよく見ていただけたらわかると
思います。それぞれの国の
立場がここに全部出ているんです。これでよくわかるんです。よくこれを見ながら次の質問にお答えいただきたいと
思います。
質問に移らせていただきます。
一番左の、
日本からすればEPA未締結なのは、アメリカはこれからですけれども、カナダとニュージーランドだけです。ライトハイザーUSTR代表は、二国間が有力なんだと。それは
日本にも言えることなんです。有力というのは、いろいろな痛みを感じて、ギブ・アンド・テークが率直にできるということです。アメリカは手ごわいかもしれませんけれども、オーストラリアとはやりました。だから、ニュージーランド、カナダとやってもいいんじゃないか。逆手にとって、
日本も二国間をやっていった方がいいんじゃないかという気がします。
ですから、アメリカはさんざん二国間でやったのにチャラにしているわけですから、そこは少しは控えろと言って、
日本はもしやるんだとしたら、現実路線を歩むとしたら、カナダとニュージーランドの二国間協定を先にした方がいいという気がするんですが、外務副
大臣、いかがでしょうか。