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高岡参考人 ただいま御紹介いただきました、
北海道根室市の
水産加工業者で組織する
根室水産協会の
会長を務めさせていただいております
高岡でございます。
本日は、
衆議院沖縄及び
北方問題に関する
特別委員会の御
高配を賜り、
意見陳述の
機会をいただきましたことに対しまして、心より
御礼を申し上げます。
また、日ごろより
北方領土返還要求運動原点の地である
根室市を初めとした
北方領土隣接地域に絶大なる御
理解と御
支援を賜っておりますことに対し、改めて
感謝と
お礼を申し上げる次第であります。
それでは、時間の
関係もありますので、早々に、
北方領土問題に対する
現地根室水産界の
実情等につきまして、
意見を述べさせていただきます。
根室市を初めとする
北方領土隣接地域は、戦前から、
漁業、
水産業を
中心に、
北方領土と一体となった
社会経済圏、
生活圏を形成し、緊密な
つながりを持って
発展を続けてきた
地域であり、特に
根室市は、
北方領土の物流及び
人的交流の
拠点、
玄関口として、その
役割を担っておりました。
しかし、
昭和二十年八月の終戦直後、
北方領土が旧
ソ連によって一方的に占領され、以来、
隣接地域と
北方領土との間には
中間ラインと呼ばれる境界が設定され、この
つながりは強制的に断絶されたことに伴い、元
島民の
ふるさとである
領土はもちろん、私
たちの
生活の基盤と言える
海域までも奪われたのであります。
この
北方領土問題について、私の個人的な見解を述べさせていただきます。
北方領土は、
日本固有の
領土であり、終戦後に不当に占拠された史実に相違なく、
返還を求めるのは至極当然であると考えます。
しかしながら、まことに残念ではありますが、
返還においては
余りにも長い時節を費やしてしまい、現在四島に
生活されている
ロシア人にしてみれば、それはもう
ふるさとであり、
生活の場であることも
理解しなければなりません。
また、元
島民においても、もう待ったなしの時間であると思います。私の祖父母も父も元
島民であり、祖父母も多くの親戚も、島での当時の
生活を語っておりましたが、既に他界しております。
私にしてみれば、
島民二世と言われてもぴんとこないのが本音でありますが、
現状を鑑みると、一日でも早い
北方領土問題の
解決を望んでやみません。
それぞれの主義主張があるので、最善の策はこれだとは言えませんが、せめてフィリピンにおける戦没者の慰霊が現地でできるのと同じように、両国が歩み寄る
交渉を
早期にしていただきたいと思います。
次に、水産
協会会長として申し述べさせていただきます。
まずは、戦後、
日本の
漁業は、
北方海域の豊かな水産資源に依存し、
北方漁業の開拓とともに
発展してまいりました。
この
漁業とともに
根室経済の一翼を担ってきた水産加工業にとりまして、排他的経済水域における国連海洋法の制定時に
海域を追われ、相次ぐ国際
漁業規制の強化による沖合
漁業の縮小、そして
ロシア水域におけるサケ・マス流し網
漁業禁止により、大変な危機的環境下にあるのが
現状であります。
根室市民にとりましては、三たび島を追われたというのであります。
日本固有の
領土であるとともに、この
海域の豊かな海洋資源は、
日本国民にとりましても多大な損失であると思います。
戦後七十三年を迎えようとしている現在でもなお、この目に見えない厚い壁によって
漁業水域は大幅に狭められており、狭隘な漁場における水産資源の枯渇によって、基幹産業である
漁業、
水産業は衰退の一途をたどり、それに起因する関連産業の縮減、これが人口減少、さらには担い手不足につながるといった急激な悪循環が近年ますます加速しております。
このように、
根室市は、さまざまな
日ロ関係により直接的に影響を受ける
地域であり、全国的にも類を見ない、地元の力だけでは太刀打ちできない複雑な問題を抱えている
地域であります。
これらの課題を克服し、
隣接地域が将来にわたって持続的な
発展を遂げていくためには、
北方領土問題の
解決しかないと考えるわけであります。
このような
状況の中、昨年十二月、
日ロ首脳会談におきましては、両
首脳が、
平和条約を
解決する真摯な決意を表明し、さらに、
平和条約の
締結に向けた重要な一歩として
北方四島における
共同経済活動の
実施について
合意されたことは、
北方領土問題の
解決に向けた重要な第一歩として、大きな期待を寄せるところであります。
この
合意に対し、本年三月、
隣接地域として取りまとめました
北方四島における
共同経済活動実現に向けた
要望書には、十分野にわたり、取り組むべき施策の例を記載してございますが、その中で、我々が直接的なかかわりを持つ水産加工業分野におきましては、
一つ目に、
隣接地域と四島との
企業間連携及び
発展支援、
二つ目に、
北方四島から原料となる漁獲物の受け入れ、三つ目に、水産物、水産加工品の輸出及び移出拡大、四つ目に、これらに必要となる
環境整備を求めております。
特に、サケ・マス流し網
漁業禁止元年となりました昨年、
根室市における総漁獲量は、七万トンを下回り、
昭和三十年以来、実に六十一年ぶりの低水準に落ち込んだところであります。こうした漁獲量の落ち込みは、我々、水産加工業を初めとしたあらゆる関連産業に甚大な影響を及ぼし、そのなりわいが崩れてきているというまさに危機的な
状況となっております。
こうしたことから、国策における原魚確保に向けた取り組みが求められており、
北方四島からの原料となる漁獲物の受け入れを何としても実現していただきたいと切にお願いするものであります。
一方で、水産加工技術に関しましては、
隣接地域の有する高度な加工技術を
北方四島側に伝授してしまうことに抵抗感や懸念を抱いている地元
事業者が多数いることも事実であり、慎重な対応が求められます。
いずれにしても、
北方四島における
共同経済活動が
日ロ両国にとってお互いに経済的な恩恵を享受できるよう、その仕組みの構築が何より重要と捉えております。
これからさまざまな形で
北方四島との経済
交流が行われると思いますが、これは、
地域エゴかもしれませんが、
根室の基幹産業、ひいては
隣接地域の経済安定のために、
ロシアの方々とともに有効な
活動を展開していけるようにきちんとしたルールづくりをしていただきたいと思います。
決して、地元の声を無視することなく、机上の空論で終わらないように、現地の声に耳を傾けていただきたいと思います。さまざまな見解があるので、何が正解ということはないと思います。しかしながら、
根室を、我々水産
協会会員の頭上を水産資源が飛んで通過してしまわないようお願いいたします。
また、
根室市を挙げて陳情している
ロシア二百海里内サケ・マス流し網
漁業禁止対策の
要望が
早期にかないますようお願い申し上げます。できますれば、
北方四島との経済
交流を先駆けとしての
日ロ関係、
北方四島、ひいては
根室市の将来を
政府がどのように描いておられるのか、お教えいただければ、私
どももその実現に向け、共働できるのではないかと思う次第であります。
根室で主に漁獲され、取り扱いされている魚は、春のサケ・マス、サンマ、アキサケ、マダラ、スケトウダラ、カニ、昆布などであります。その大半が
北方四島
海域に深くかかわっているものであります。四島
海域における漁獲枠の拡大に御助力いただきたいとお願い申し上げます。
とりわけ、水揚げ
日本一を誇るサンマにおきましては、温暖化の影響なのか、公海による外国船の操業の影響なのかは定かではありませんが、ここ数年、極端な水揚げの減少となっております。
サケ・マス流し網禁止による代替
漁業においては、
漁業者の、国産サンマの魚価に影響する、そういう懸念の声が多く、冷凍品で海外輸出が水揚げの条件となっており、これでは
工場稼働という観点からは文字どおりゼロであります。我々水産加工業はもとより、製缶、運輸などの業界においても何の一助にもなっていないのが
実情であります。
日本漁船の公海での冷凍サンマ
漁業で海外限定というのはいかなるものかと思うところであります。大衆魚と広く認識されている
日本国民財産でもあると言っていいほどのサンマの国内流通の実現に向けて、そのことにおいても
委員の
皆様の特段の御
理解と御
支援をお願い申し上げるところであります。
我々
根室市民は、
北方領土問題の
解決なくして戦後はなく、経済的にも社会的にも
北方領土問題が
解決して初めて正常になる、まさに
北方領土問題の今後によって町の将来が大きく左右されるという宿命を背負っております。
我々は、
北方領土問題の
早期解決を願いながら、
政府の
外交交渉を
後押しする
立場で、いかなる困難に遭おうとも、
北方領土返還要求運動原点の地の責務として、今後も全国の先頭に立って
返還要求運動に邁進してまいる所存でありますので、
委員の
皆様におかれましては、
北方領土問題の
解決、さらには、そのための第一歩としての取り組みである
北方四島における
共同経済活動の実現、さらには
隣接地域の振興、
発展につきまして、絶大なる御
支援を賜りますようお願い申し上げますとともに、
政府におかれましては、これまで以上に具体的かつ積極的な政治対話を推進していただきますよう強く
要望させていただいて、
参考人としての私の
意見陳述を終わらせていただきます。
ありがとうございました。(
拍手)