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三原じゅん子君 ありがとうございます。
この問題は引き続きまた
委員会等でも取り組んでまいりたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
次に、これも私のライフワークの
一つであります自動車問題についてお伺いをしたいと思います。
日経ビジネスオンラインの「なぜ
日本人ばかりが米国で投獄されるのか?」という、何ともショッキングな見出しの記事に目が止まりました。米国におきまして、過去五年間にカルテルや談合で投獄された
日本人は三十人を超えるなど現地
政府から厳しい制裁を受けており、その厳しい制裁を受けるのは群を抜いて
日本企業が多いというものです。
実は、この問題、昨年の三月のこの参議院
予算委員会のこの場で私の方から、自動車部品メーカーがアメリカの司法省により反トラスト法上の価格カルテルの罪を問われて摘発され、三十社五十一名にも上る方々が起訴又は収監されており、何とその対象の九割が
日本企業ということで、これは異常事態ではないかと指摘をさせていただいたものであります。
私の地元である神奈川では、本社が県内にある自動車部品工業会の会員企業だけでも二十社、自動車部品を製造する
事業者では県内で百を超えており、
全国有数の自動車部品産業の集積地ということが言えると思います。そういう
意味でも、私はこれに大変な関心を持っております。
この記事では、米国の反トラスト法専門の弁護士の方がコメントをしておりますけれども、アメリカの弁護士でさえ、本当に理解し難い、信じられないほどの数、反トラスト法は正しく執行されるべき、この状態は法の過剰執行につながりかねず、ちょっと行き過ぎ、対象となっている部品の種類、関与した企業の数、実際にカルテルをしていたとされる期間の長さを
考えても、それだけの規模と期間で価格を操作し続けるのはとても難しいとおっしゃっているほどであります。
昨年には、一時は自動車の世界販売台数で一旦首位に立ったドイツのフォルクスワーゲン社が、無論、燃費不正、これ自体は許されることではありませんが、こちらも米国司法省に指されたことがきっかけで経営が暗転し、あえなく首位陥落となりました。自動車分野での覇権奪還を狙う米国によって、この国際
経済戦争ともいうべき事象、これは決して他人事ではないと思っております。
我が国を
代表する自動車メーカーであるトヨタが、二〇〇九年から一〇年にかけて、結果的に無実の罪により、豊田社長がアメリカの議会の公聴会にまで引きずり出されて追及を受けていた、そして大いに苦しめられたということ、これは私たちの記憶にも新しいところであります。
そして、今また
我が国の自動車部品メーカー、世界に冠たるエアバッグメーカーがアメリカの当局から責任を問われ、現在進行形で土俵際いっぱいまで追い詰められております。不良品でユーザーの命を脅かしたのだから当然だろうと、そう突き放す方もおられると思います。
ただ、本年九月十五日付けの日経新聞の朝刊でも、JAXA、火薬学会の自動車用安全部品専門部会の部会長をお務めの堀先生がこう指摘をされておられます。火薬は経年劣化すれば一般に燃焼速度が遅くなるものだが、逆に燃焼速度が異常に上がって破裂に至った、開発時には火薬の専門家も予見しなかったことだとおっしゃっております。では、誰の責任なのか。堀先生は、最も肝に銘ずべきこととして、完成車メーカー、部品メーカー、当局が密に連携し、もっと早く対応できなかったのかということを挙げておられます。
しかし、今回の米国のケースでは、早い段階でアメリカの当局は部品メーカーのみを名指しで批判し、責任を追及するという対応を取りました。そして、現在に至るわけであります。
この問題の異質さ、これを測る上で重要な尺度となるのは、製造物責任の三つの原則であります。平たく言えば、誰が物を組み立て、誰のブランドで物を
消費者に売り、そして誰がそれで最終的にもうけているのかというのが、誰が責任を負うのかの判断のポイントだと思っております。
この原則からすれば、今回のエアバッグ不具合問題でアメリカの当局は、製品ではなくてその製品に使う部品を供給した言わば下請である部品メーカーを直に名指しで悪人呼ばわりした上に、リコールを迫り、巨額の罰金まで科しています。こうしたアメリカの
政府のやり方は少々行き過ぎなのではないでしょうか。
一四年十二月二十日付けの日経新聞の朝刊記事では、この問題の裏には共和党の影があると指摘をしています。この記事によれば、今回のケースにおいて、当初アメリカの当局は当該エアバッグメーカーに一定の理解を示しておりましたが、しかし、アメリカ自動車ビッグスリーの一角のロビーによる共和党の動きを受けて、当局は急転直下、当該社を厳しく対応するようになったといいます。
部品メーカーである同社を窮地に追い込むことで、ひいては
日本車を追い込もうという動きがあると分析をしており、まさに他国自動車産業を牽制しようと仕掛けてきたものと理解ができるのではないかと思います。
先ほど私は国際
経済戦争と申しましたけれども、極端な例としては、九五年日米自動車協議の折に、国家安全保障局が
日本の通産省、当時の通産省の交渉担当者と自動車企業幹部との間の通信を盗聴していたという、ニューヨーク・タイムズが報じたことも過去にありました。
グローバル化が進んだ世界
経済で活動する企業というのは、大なり小なり、陰に日になり、それぞれ自国
政府を味方に付けて、言わば生き馬の目を抜く世界で日々戦っております。今回のエアバッグ問題についても、表面的には一部品メーカーの問題のように見えますけれども、その実、
我が国の自動車産業全体をターゲットにしたものと理解することもできるのではないでしょうか。そうであれば、
政府には、国として戦い、
我が国の産業、そして国益を守っていく責務があると思います。
苦境にある当該部品メーカーは現在スポンサーを募集していますが、アメリカそして中国系の企業も触手を伸ばしており、まさに外資の食い物にされようとしています。もちろん、安全のための装置であるエアバッグで死傷事故を起こしたこと、これは批判されるべきでありますけれども、所管官庁の経産省として、過去にも高い技術を持ったこの
我が国企業が外資に買収された事案は幾つかありましたけれども、今回、エアバッグで世界シェア二〇%を占めた
我が国優良企業が今回のようなやり方で外資の手に落ち、みすみすその技術やノウハウが流出していくのを許してしまって本当にいいんでしょうか。
私がなぜこの問題を危惧しているかと申しますと、今回の問題というのは、個社の問題を超えて
我が国の基幹産業である自動車産業全体に悪影響を与えるのではないかと心配をしているからなのであります。というのも、今回のように部品メーカーに直接責任を求めるような運用を行政がした場合、立場の弱い自動車部品メーカーは経営リスクというものを恐れて萎縮してしまいます。これにより、自動車メーカーと部品メーカーの強固な信頼関係にひびが入ってしまう、ひいては
我が国の自動車産業全体の国際競争力というのが失われてしまうおそれさえあるのではないかと非常に心配をしておりますので、どうか
経済産業大臣に、このところを見解をお聞きしたいと思います。