○市田忠義君 私は、
日本共産党を代表して、
安倍総理に質問をいたします。
まず、
熊本地震の
被災者の皆さん、
一連の
台風、大雨、洪水
被害に遭われた各地の皆さんに心からお見舞い申し上げるとともに、
被害からの
復旧と
生活、なりわいの
再建のために
政治が
全力を尽くすことを強く
政府に求めます。とりわけ、全ての
復旧復興の基礎である住宅の
再建については、
被災者生活再建支援法を抜本的に改正し、対象を広げ、
支援額を五百万円に引き上げることを求めます。
今
国会は、
参議院選挙後最初の論戦の場となります。
今回の
参議院選挙では、戦後初めて野党と市民が全国的
規模で選挙
協力を行うという歴史的な選挙となりました。この議場には、全国三十二の一人区のうち、三分の一を超える十一の選挙区で勝利された市民と野党の共同の議員がおられます。
この歴史的
状況をつくり出したのは、安保法制、戦争法に反対する闘いを通じて多くの人々が主権者としての強い自覚を持って立ち上がり、自分
たちの
政治だから自分
たちで担う、野党は共闘と主張した昨年来、全国で沸き起こった、
日本の歴史でも初めての市民革命的な動きでした。そして、
総理、そのうねりを生み出す原因をつくったのが、
安倍政権が進める立憲主義と憲法破壊の強権
政治だったのです。
安保関連法に反対するママの会の方は、安保関連法を廃止にから始まったママの運動でしたが、
与党、野党の議員と懇談を重ねる中で、安保法制が沖縄の基地問題やTPPなど本当にいろんな問題とつながっていることに気付きました、選挙で勝って
政治を変えることが全ての
解決に向かう一歩だと気が付いたのですと語っておられます。
安倍政権の暴走が続く限り、このうねりは更に大きくならざるを得ないであろうことを指摘しておきます。
四野党は、党首合意の上に、第一、安保法制の廃止、立憲主義の回復、第二、
アベノミクスによる
国民生活の破壊、
格差と
貧困の
拡大の是正、第三、TPPや沖縄問題など
国民の声に耳を傾けない強権
政治を許さない、第四、
安倍政権の下での憲法改悪反対という共通
政策の柱を確認しました。
総理は、この道を前へが
国民の声だと述べられました。しかし、野党と市民が
国民的大義のある共通
政策を掲げたのに対して、選挙戦を通じて、この道が何か具体的には何も語られませんでした。語られたのは、
アベノミクスのエンジンを吹かすということと野党に対する野合批判ばかりでした。
あなたが語らなかった、そして所信表明でも触れられなかったのが戦争法の具体化であります。
今、自衛隊が派遣されている南スーダンPKOは、首都ジュバでの
大統領派と副
大統領派による大
規模な戦闘の発生など情勢の悪化の中で、その性格を更に大きく変えてきています。国連
安保理は八月、
地域防護部隊四千人の増員を決め、この部隊の権限について、事実上の先制攻撃を認めました。いよいよ
日本の自衛隊が参加する条件はなくなったと言うべきではありませんか。南スーダンが内戦状態でないなどと言っているのは、
世界の中で
安倍政権ぐらいであります。
ところが
政府は、南スーダンPKOへ派遣する自衛隊に駆け付け警護や宿営地共同防衛の新たな任務を加え、その任務遂行のための武器使用も認めようとしています。そんなことになれば、自衛隊員が殺し殺される危険が
現実のものになりかねません。既に、十一月に派遣予定の青森市に駐屯する
東北方面隊傘下の第九師団第五普通科連隊では派遣準備訓練が開始されています。家族や関係者からは、息子がいつ戦地に行くかと思うだけでも気が狂いそうになる、人様のわらしさ犠牲にする安倍首相は絶対に許せねえなどの悲痛な声が上がっています。
総理はこの声にどう応えるのですか。こんなおどろおどろしいことを
実行しようとしているのが
安倍政権ではありませんか。
南スーダン派遣部隊への新任務の付与と武器使用の
拡大は、海外での武力行使を禁じた憲法九条に明らかに違反します。自衛隊を南スーダンから撤退させ、非軍事の
人道支援、民生
支援を抜本的に
強化すること、これこそ憲法九条を持つ
日本が
世界に誇れる国際貢献ではありませんか。
答弁を求めます。
総理は、所信表明で、
世界経済は今、大きな
リスクに直面していますと述べられました。しかし、
総理、今、危機と
リスクに直面しているのは
日本経済と
国民の暮らしではありませんか。そのことは、
政府が総額二十八・一兆円もの大
規模な
経済対策を打ち出さざるを得なかったことによっても自ら証明しています。しかも、その
中心を占めるのは、リニア新幹線建設への公的資金投入など大型
開発事業へのばらまきであります。こういうやり方は、
経済効果が乏しく、財政を借金漬けにするとして、歴史的にその失敗が証明済みのものではありませんか。
日本経済の実態はどうなっているか。
民間消費支出が名目で〇・一%低下、家計
消費支出はほぼ一年にわたって前年比マイナスが続いています。
日本経済新聞の
日本の主要大
企業へのアンケート調査によると、
日本経済は横ばいが七八・九%、その理由として個人
消費の伸び悩みを挙げた人は実に八二・八%に上りました。
問題ははっきりしているんです。大
企業や大資産家が利益やもうけを増やしさえすれば、いずれ
国民経済に回ってくるという
アベノミクスの破綻を認め、
国民の暮らしを土台から温める
経済政策にチェンジすることこそ唯一最大の
経済政策ではありませんか。
日本共産党は、そのために、第一、所得や資産など
負担能力に応じた
負担の原則に立って大資産家や大
企業にその
能力に応じた
負担を求める
改革を進める、第二、集まった税金は大型
開発へのばらまきをやめ、
社会保障、
若者、
子育てに優先して使う、第三、
人間らしく働けるルールへとチェンジするという三つのチェンジを提案しています。
ところが、
安倍政権は、見当違いの
経済対策を打ち出すだけではなくて、
社会保障の全面的な削減に踏み出そうとしています。これは、
国民への
負担増と
生活不安、将来不安を一層募らせ、
民間消費、個人
消費を
活性化させるという、求められる
経済政策とは完全に逆行する最悪の
政策と言わなければなりません。
中でも、
介護保険の改悪は許し難いものであります。
総理が
議長を務める
経済財政諮問
会議は、
介護保険の
生活援助サービスについて、軽度者に対する給付の
見直しや
地域支援事業への移行を含め検討を行うことを打ち出しました。既に要
支援一、二は
介護保険の対象から外されています。加えて、要
介護一、二まで保険給付の対象外としたり、給付を薄くすれば、要
介護、要
支援と認定された人の実に六五%がまともな給付を受けられなくなります。まさに保険あって給付なし、国家的詐欺と言われても仕方がないではありませんか。
切り捨てようとしている
生活援助サービス、掃除、洗濯、調理などはもちろん大切なサービスです。あわせて、このサービスは
生活援助を通じて
高齢者の状態把握を行うという極めて重要な役割も果たしているのです。
生活援助と状態把握、適切な
介護の提供は
一体不可分のものであり、
介護保険
制度の枠内でのサービスであってこその
生活援助であります。
日本ホームヘルパー協会などが、専門性の高いサービスこそ
生活の
再生、状態の維持、
改善と悪化の
防止につながると指摘しているのは極めて当然であります。
生活援助サービスなどの給付外し、保険給付の切下げは決してやるべきではないと考えますが、いかがですか。
総理は、
働き方改革といって、長時間労働をなくす、同一労働同一賃金を
実現すると言われました。本気でそう思われるのなら、異常な長時間労働の規制こそ急務であります。中でも、事実上青天井になっている残業時間の上限の法的規制は待ったなしと言わなければなりません。
昨年、衆議院予算委員会で我が党の志位委員長が明らかにしましたが、当時、
日本経団連、
経済同友会の役員
企業三十五社のうち三十三社が月四十五時間の大臣告示を超える残業協定を結んでいました。さらに、二十八社、八〇%は
政府が過労死ラインとしている八十時間を超える協定を、十三社は驚くべきことに月百時間以上の残業協定を結んでいました。
こうした
状況を放置することは断じて許されません。残業は月四十五時間、年間三百六十時間という大臣告示を法定化するなど、厳格な法的規制を行うべきだと考えますが、
総理にその意思はありますか。
日本経団連は、時間でなく
成果で評価する労働時間
制度の
導入、裁量労働制の対象
拡大などを求めています。これは、残業代ゼロ法案を成立させよというものであります。
政府がこんな要求に応じれば、より一層の長時間労働を強いることは明らかではありませんか。
総理、長時間労働をなくすというのなら、財界の理不尽な要求をはねのけ、残業代ゼロ法案を撤回すべきであります。
電機産業で働く労働者らでつくる電機労働者懇談会によると、電機大
企業ではこの五年間に二十七万人以上の正社員、非
正規社員を含めると四十万人を超す大リストラが行われ、ある生産ラインでは、正社員二人を除いて全て派遣社員に切り替えられたそうであります。
総理は、非
正規という言葉をなくそうと言われました。しかし、なくすべきは言葉ではなく、
現実に進む職場全体の非
正規社員化の実態ではありませんか。それとも
総理は、派遣社員が派遣元に常用
雇用さえされていれば、それは全て正社員とでも言うんですか。それこそ、非
正規で働かせる実態は放置したままで、事実を覆い隠そうということにほかならないではありませんか。
政府は、今
国会でTPP協定案と関連法案をしゃにむに押し通そうとしています。しかし、
さきの通常
国会では両案とも成立を断念せざるを得ませんでした。なぜか。農林水産品の八二%、聖域とした農産物重要五項目でも約三割で関税撤廃を約束しておきながら、聖域を守るとした
国会決議は守られたという
政府の強弁が通用しなくなったからであります。
政府がTPP協定案について
国会に審議を求めるのなら、交渉経過及びその全貌を示す資料を
国会に提出することが不可欠の前提であります。ところが、
政府は表題以外は全て黒塗りという完全な隠蔽を行い、担当大臣であった甘利氏は睡眠
障害を理由に説明責任を放棄してしまいました。これでは審議の前提すら欠いていたと言うべきです。そのことを
総理は認めますか。
政府が今
国会で審議したいというのなら、交渉経過を
国民の前に明らかにすること、交渉担当者であった甘利氏から十分な説明がなされることが不可欠だと思いますが、そういう
措置をとられますか。
TPP協定は、重要五項目を聖域とした
国会決議に真っ向から反しています。それだけでなく、日米の多国籍
企業のために、食の安全をないがしろにし、医療、
雇用、保険・共済、国、
自治体の調達など、あらゆる分野の非関税障壁を撤廃するものであります。さらに、ISD条項によって多国籍
企業が
政府や
自治体の
施策に介入、干渉する権利を保障するなど、
我が国の
経済主権、食料主権を投げ捨てるものにほかなりません。だからこそ、
さきの
参議院選挙で、TPPの影響をとりわけ強く受ける
東北各県で自民党は敗北したのではありませんか。
TPPは、
日本だけでなく、
アメリカ、オーストラリア、ニュージーランドなど、協定を結んだ各国でも
国内産業と
雇用を奪うものだとして大きな反対の世論が巻き起こっています。国際的にも
国内的にも大きな矛盾が広がっている中で、なぜあなたはTPP協定の批准を急ぐのですか。食料主権と
国内産業を犠牲にして、あくまでも日米の多国籍
企業に奉仕する
安倍政権は、それこそ亡国の政権と断ぜざるを得ません。
総理は、
参議院選挙で一度も沖縄には行かれませんでした。そして、辺野古新基地建設を進める担当大臣は沖縄県民からノーの審判を受けて落選し、オール沖縄の伊波洋一氏が十万票以上の大差を付けて圧勝しました。県民の意思はこの上なく明確になりました。
それに
安倍政権はどう応えたか。
参議院選挙から一夜明けた七月十一日早朝、オスプレイが離発着する着陸帯建設を強行したのであります。反対する住民を力ずくで排除する
安倍政権の強権的な振る舞いは絶対に許されません。
総理は、〇・九六ヘクタールのヘリパッドを既存の訓練場内に移設することで北部訓練場、四千ヘクタールの返還が可能となると述べましたが、これほど
国民を愚弄する言葉を私は知りません。この〇・九六ヘクタールには、六つの着陸帯に囲まれ昼夜を分かたぬ騒音と恐怖にさらされている高江の住民が住んでいるんです。その苦しみを
総理はどのように受け止めているんですか。
アメリカ海兵隊の報告書、戦略展望二〇二五には、四千ヘクタールの返還区域は使用不可能と書かれています。元々、米軍にとっては無用の長物とでも言うべき
地域だったんです。在日米軍の様々な特権を認めている日米地位協定でさえ、「必要でなくなつたときは、いつでも、
日本国に返還しなければならない。」と定めているではありませんか。
総理が今やるべきことは、建設工事を直ちに中止し、
アメリカに対して北部訓練場の無条件返還を求めることであります。
安倍政権が暴走する原発再稼働の強行は、様々な分野で深刻な矛盾に突き当たっています。
一つは、
福島第一原発の
状況です。
政府は、再稼働のために
福島原発事故を終わったものにしようと避難指示を相次いで解除し、賠償
支援を打ち切ろうとしています。しかし、
生活圏である
地域の立て直しのめども立たないまま、避難指示を解除したから戻れと言われても、住民が安心して暮らしを成り立たせることはできません。
地域で
生活が成り立つようになるまで賠償の延長と必要な
支援を行うべきだと思いますが、いかがですか。
福島事故は終わっていません。その原因さえいまだに究明されてはいません。
政府の中期ロードマップによれば、汚染源に地下水を近づけないこと、今年度中に建屋内への地下水の流入を一日当たり百立方メートル未満に抑制するというものでした。その切り札とされていたのが凍土壁でした。ところが、凍土壁は凍らず、
政府の検討会でも、遮水
能力が高いというのはほとんど破綻していると指摘されました。
総理はかつて、完全にコントロールされていると言いましたが、その言い分は完全に破綻しているではありませんか。今こそ汚染水
対策の根本的
見直しが必要と考えますが、
総理にその意思はありますか。
二つには、九州電力川内原発への不安が広がっていることであります。
前知事は再稼働に同意しました。しかし、
熊本地震が発生し、改めて原発事故への不安と避難
計画の不備が明らかになりました。それが争点となった七月の鹿児島県知事選挙で、県民は川内原発の一時休止を公約に掲げた三反園知事を選びました。三反園知事は、深刻な事故が起きた場合、現行の避難
計画では住民の安全は守れないとの判断をしています。
政府は、住民の避難
計画は地元の
自治体が作ると繰り返し言ってきましたが、前知事の作った避難
計画は不十分であると現知事が判断した以上、避難
計画を抜本的に見直すべきであります。県知事の同意もなく、避難
計画も存在しない川内原発は、稼働を中止させるべきではありませんか。
三つは、高速増殖炉「もんじゅ」の破綻です。
まともに運転されたことがない「もんじゅ」の廃止は当然です。同時に、核燃
サイクルの中核である「もんじゅ」の破綻は、核燃
サイクルと使用済核燃料処理方針の破綻をも示すものであります。である以上、六ケ所村の核燃料再処理工場もきっぱりと廃止すべきではありませんか。
処理しようのない使用済核燃料をこれ以上増やしてはなりません。どの世論調査でも原発再稼働反対は五割を超えています。今こそ、この
国民の声に応えて原発ゼロを決断し、原発再稼働を中止することを強く求めるものであります。
最後に、
総理の憲法観について
お尋ねします。
総理は、
参議院選挙で憲法改定については一切語りませんでした。ところが、投票日翌日の記者会見で、いかに我が党案をベースにしながら三分の二を構築していくか、これがまさに
政治の
技術と言っていいと述べられました。だまし討ちではありませんか。
政治の
技術、すなわち手練手管で国の在り方の根本を規定した憲法を変えるつもりなのか。立憲主義、民主主義否定の最たるものと言わなければなりません。
総理は、あたかも憲法は変えるのが当然で、どこをどう変えるのかがこれからの
課題だと言わんばかりです。しかし、九条という
世界でも最も進んだ恒久平和の条項を持ち、三十条にわたる極めて豊かな先駆的な人権規定が盛り込まれているなど、
日本国憲法は
世界でも先駆的な内容を持っています。変えるべきは憲法ではなく、憲法をないがしろにする
政治こそ変えるべきであります。
自民党改憲草案は、九条二項を変えて国防軍の設置を明記し、海外での無条件の武力行使を可能にしようというものであります。さらに、憲法九十七条、「この憲法が
日本国民に保障する基本的人権は、人類の多年にわたる自由獲得の努力の
成果であつて、これらの権利は、過去幾多の試練に堪え、現在及び将来の
国民に対し、侵すことのできない永久の権利」と明記した条項を丸ごと削除しています。ここにこそ、基本的人権を制約しようとする自民党と
総理の本音がくっきりと示されているではありませんか。これらをベースにした議論など論外と言わなければなりません。
日本共産党は、綱領で、「現行憲法の前文をふくむ全条項をまもり、とくに平和的民主的諸条項の完全実施をめざす。」と明記しています。施行後七十年余にわたって憲法を守り、その内容を豊かに発展させてきた
日本国民とともに、かけがえのない現憲法を守り抜くことを表明して、私の質問を終わります。(
拍手)
〔
内閣総理大臣安倍晋三君
登壇、
拍手〕