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2016-12-01 第192回国会 参議院 法務委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成二十八年十二月一日(木曜日)    午前十時開会     ─────────────    委員の異動  十二月一日     辞任         補欠選任      元榮太一郎君     小野田紀美君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         秋野 公造君     理 事                 西田 昌司君                 山下 雄平君                 真山 勇一君                佐々木さやか君     委 員                 猪口 邦子君                 小野田紀美君                 中泉 松司君                 古川 俊治君                 牧野たかお君                 丸山 和也君                 元榮太一郎君                 柳本 卓治君                 有田 芳生君                 小川 敏夫君                 仁比 聡平君                 高木かおり君                 糸数 慶子君                 山口 和之君    衆議院議員        法務委員長    鈴木 淳司君        法務委員長代理  山下 貴司君        法務委員長代理  井出 庸生君        発議者      門  博文君        発議者      宮崎 政久君        発議者      若狭  勝君        発議者      江田 康幸君        発議者      逢坂 誠二君        発議者      井出 庸生君    国務大臣        法務大臣     金田 勝年君    副大臣        法務大臣    盛山 正仁君    事務局側        常任委員会専門        員        青木勢津子君    政府参考人        総務大臣官房審        議官       佐伯 修司君        総務省総合通信        基盤局電気通信        事業部長     巻口 英司君        法務大臣官房審        議官       高嶋 智光君        法務省刑事局長  林  眞琴君        法務省矯正局長  富山  聡君        法務省保護局長  畝本 直美君        法務省人権擁護        局長       萩本  修君        外務大臣官房参        事官       飯島 俊郎君        文部科学大臣官        房審議官     神山  修君        厚生労働大臣官        房審議官     中井川 誠君        厚生労働省職業        安定局次長    大西 康之君        農林水産大臣官        房参事官     橋本 次郎君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○政府参考人出席要求に関する件 ○再犯防止等推進に関する法律案衆議院提  出) ○部落差別の解消の推進に関する法律案衆議院  提出) ○参考人出席要求に関する件     ─────────────
  2. 秋野公造

    委員長秋野公造君) ただいまから法務委員会を開会いたします。  政府参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  再犯防止等推進に関する法律案の審査のため、本日の委員会に、理事会協議のとおり、法務大臣官房審議官高嶋智光君外四名を政府参考人として出席を求め、その説明を聴取することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 秋野公造

    委員長秋野公造君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  4. 秋野公造

    委員長秋野公造君) 再犯防止等推進に関する法律案議題といたします。  まず、提出者衆議院法務委員長鈴木淳司君から趣旨説明を聴取いたします。鈴木淳司君。
  5. 鈴木淳司

    衆議院議員鈴木淳司君) ただいま議題となりました再犯防止等推進に関する法律案につきまして、提案趣旨及び内容を御説明申し上げます。  本法律案は、国民理解協力を得つつ、犯罪をした者等の円滑な社会復帰を促進すること等による再犯防止等犯罪対策において重要であることに鑑み、安全で安心して暮らせる社会実現に寄与するため、再犯防止等に関する施策を国を挙げて推進しようとするもので、その主な内容は次のとおりであります。  第一に、この法律は、再犯防止等に関する施策を総合的かつ計画的に推進することにより、国民犯罪による被害を受けることを防止して、安全で安心して暮らせる社会実現に寄与することを目的とすることとし、犯罪をした者等及び再犯防止等について定義を設け、基本理念国等の責務などについて定めることとしております。  第二に、再犯防止等に関する施策推進仕組みとして、政府再犯防止推進計画を定め、省庁横断的に施策を行うこととするとともに、地方公共団体においても地方再犯防止推進計画を定めるべき努力義務規定を設けることとしております。  第三に、国民の間に広く再犯防止等についての関心と理解を深めるため、七月を再犯防止啓発月間とし、その趣旨にふさわしい事業を実施することとしております。  第四に、再犯防止推進計画で定めることとされている項目に対応して、再犯防止等に向けた教育及び職業訓練の充実、犯罪をした者等社会における職業及び住居の確保等再犯防止等に関する施策推進のための人的及び物的基盤の整備並びに再犯防止等に関する施策推進に関するその他の重要事項の四つの分野について、国が各種施策を行うべきことを定めるとともに、地方公共団体にも地方の実情に合わせて施策を行うべき努力義務規定を設けることとしております。  なお、この法律は、公布の日から施行することとしております。  以上が本法律案提案趣旨及び内容であります。  何とぞ、御審議の上、速やかに御賛同いただきますようお願い申し上げます。  以上です。
  6. 秋野公造

    委員長秋野公造君) 以上で趣旨説明の聴取は終わりました。  これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  7. 小川敏夫

    小川敏夫君 民進党・新緑風会の小川敏夫でございます。  まず、こうした犯罪を犯した者が社会に復帰するということの施策に取り組んでこられました提案者皆様方に深く敬意を表します。  そうした理念は私も全く賛成なのでございますが、今回出された法律規定の仕方とか、そうしたことについてお尋ねしたいことがありますので、質問させていただきます。  まず、この第二条で、言わばこの対象者ですが、「犯罪をした者等」という者が対象者となっておるんですけれども、私としては、この書きぶりですと微罪も入る、それから司法で有罪認定されていない者も入る、あるいは四十年、五十年前の、昔の、はるか過去に犯罪を犯した者も入るというふうに読めますものですから、非常にこの対象範囲が広過ぎるのではないかと、このように思っておるんですが、いかがでございましょうか。
  8. 山下貴司

    衆議院議員山下貴司君) 小川先生、ありがとうございます。小川先生法曹の大先輩でして、かねてから尊敬申し上げておりますし、また、この原案を作りました超党派の再犯防止議連でも本当にメンバーとしていろいろ御示唆いただいておりまして、また大変感謝しております。  御指摘のところ、まさに先生の御懸念、共有するところではございますけれども、そもそもこの基本理念本法におきましては三条の二におきまして、特性に応じた必要な指導支援を受けられるように行うであるとか、そういった必要に応じて、犯罪をした者に対していろんな施策を行うことを念頭に置いております。  そうだといたしますと、この犯罪をした者というものは入口支援というニーズもございます。幅広く捉えて、ただ、ニーズに応じた支援をするということでございますから、不必要な支援ということはしないということは前提に置いておりますので、このように間口を広く捉えさせていただいたということでございます。
  9. 小川敏夫

    小川敏夫君 では、ひとまずこの議論は、また後で戻るかもしれませんけれども、言わば、非常に幅広い、私から思うとほとんど無限定、あるいは、見方によってはもう国民全員対象者になるような仕方だと思います。  具体的には、先ほどもお話しした、また繰り返しになりますけれども、例えば軽犯罪法も入る、あるいは未成年者の喫煙や飲酒の違反も入る、道路交通法違反も入ると。しかも、そういうことで処罰された者以外にも、処罰されなくたってそういうことをやっている者も入るということですから、まあ恐らく国民の中で全くそうした法令違反しない人はいないんじゃないかというようにも思うんですけれども、まあ非常に範囲が広いということを取りあえず指摘しておきますが。  それで、こうした、この犯罪した者を対象に、二十一条の方でお尋ねします。一言で言いますと、国が必要と認めた場合には指導支援を行うことができるとあります。  順番に聞きますが、こうした指導支援を行う国の機関ですが、ここは警察は入るんでしょうか。
  10. 山下貴司

    衆議院議員山下貴司君) まず大前提といたしまして、本法につきましては、その本法に基づいて直接指導支援の具体的な権限が認められるわけではございません。そういった意味で、指導支援といいますのは、ほかの法律に根拠がある場合は別といたしまして、基本、これはもう法令用語の辞典にも載っておりますが、任意の措置ということになっております。こういった指導の例としては、例えば薬物の依存ある者や高齢者に対しての薬物依存離脱プログラム指導であるとか、福祉施設への入所や生活保護の申請に結び付けるような指導支援というものも含んでおります。  そういった情報提供主体として様々な主体が考えられると思うんですが、そういった情報提供指導又は支援ということでやるものとして、情報提供ということではあくまで任意ということでございますけれども、様々な主体警察ももちろん、こういったところに行ってはどうだとかいうことはアドバイスということであろうかというふうにも考えております。
  11. 小川敏夫

    小川敏夫君 ですから、指導支援を行う機関として警察も入るということでございますね。
  12. 山下貴司

    衆議院議員山下貴司君) もちろん一般的に権限を与えるものではないというふうな前提でございますけれども、そういったニーズに応じてそういったアドバイス等支援を与えるということは、例えば家族に対する連絡であるとか、そういったものについて支援を与えることはあり得ようかと考えます。
  13. 小川敏夫

    小川敏夫君 警察庁法で、犯罪予防に関する事務警察庁法所掌事務なんですよ。これも再犯者防止犯罪を犯した者を対象に新たな犯罪予防するための法律ですから、当然、私はこの警察所掌事務の中に犯罪予防ということで含まれると思うんですよね。答弁者も、結論からいえば、この指導支援を行う国の機関として警察が入るということはお認めになっていらっしゃるわけですよね。  それで、次にお尋ねするのは、この二十一条で、適切な指導及び支援を受けることがと、再犯防止等に有効であると認められる者について指導支援を行うとあるわけですが、この有効であると、指導支援が有効であると認める主体はどなたですか。
  14. 山下貴司

    衆議院議員山下貴司君) これは、まず、この法律の立て付けというのは、特定の者に指導及び指導権限を与えるものではなくて、まず第一に国が再犯防止推進計画というものを策定して、その中で、例えば地方も、義務ではございませんが、計画というものを策定することになるんであろうと。そういった中で一定のカテゴリーについて行うということでございますが、これはあくまで、この理念基本理念三条二項にございますように、その特性に応じた必要な指導支援を受けられるようにということで考えております。ですから、必要でない指導支援については当然念頭に置いていないところであります。  そうした中で、どういう場合にこういった指導又は支援というのがこれは再犯防止あるいは円滑な社会復帰実現に適当であるかということについては、例えばその計画の中で一定のものが規定されることもありましょうし、これに基づいて具体的な指導支援が行われるものというふうに期待しております。
  15. 小川敏夫

    小川敏夫君 私の質問に答えていらっしゃらないですよね。要するに、この指導支援を行う主体として警察が入るということで、その次の質問として、この指導が必要だと認める主体は誰ですかと聞いているわけです。具体的に言えば、指導支援を行う機関がそうした判定をするんじゃないですかと聞いているわけです。
  16. 山下貴司

    衆議院議員山下貴司君) 全体の枠組みとしては先ほど言った計画というところでありますけれども、もちろんこういうものが有効ではないかということについて、この指導又は支援というのは、あくまでこれは別の法律のあれがない限りは任意ということでございますから、そういったことでするということはあろうかと思います、先生指摘のように。
  17. 小川敏夫

    小川敏夫君 いやいや、私は、こういう指導支援をするという主体警察が入る、指導支援が必要だと認めるのはその指導支援を行う警察だと、こういうふうに私は読める、私はこの条文を読むんですがね。  ですから、私が聞いているのは、指導支援を行う主体として警察が入ると、指導支援を必要と認めるかどうか、それは警察が判断するんでしょうと、こういうふうにお尋ねしているわけです。だから、答弁は、入るか入らないかということをお答えいただければいいんですけれども。
  18. 山下貴司

    衆議院議員山下貴司君) 一般論として、指導支援を行う主体というのが様々あり得るわけでございます。これは官民問わずというところでございます。そういった中において、その指導支援ということは、行う主体が、有効か、これがこういう支援をした方がいいかどうかということは判断することになろうかと思います。
  19. 小川敏夫

    小川敏夫君 答弁の中で、この法律基本法であるから、具体的な権限を直接付与したものではないという御趣旨お話がありました。  ただ、これは基本法でこういうふうにありますと、これを具体化する法律はこの基本法に従って制定しなくてはいけないわけですよね。ですから、今、具体的な権限を付与して、この法律自体が具体的な権限を付与していないと言うけれども、この法律を具体的に実施するための法律はこの基本法に沿ったものじゃなくちゃいけないわけです。だから、基本法だからいいんだというお話では困るんで、基本法が仮に間違ったことを含んでいれば、やはり基本法の段階からこれはきちんとしなければならないと、こういう観点で質問をしておるわけです。  ここで行う、では、指導を行う主体として警察が入り得ると。指導が必要かどうか、これは警察が、つまり指導を行う主体警察であれ何であれ、指導を行う主体が判断するんだと。そして、具体的に行うその指導支援というのは具体的にどういうことを指しているんでしょうか。
  20. 山下貴司

    衆議院議員山下貴司君) 例えば、この指導の中には、これは、一般的な法令用語としての指導ということであれば、例えば栄養指導進路指導生活指導というものも含まれると思います。また、ほかの法律に特段のある場合、例えば職業安定法による二十二条の公共職業安定所による職業指導であるとか、あるいは精神保健精神障害者福祉に関する法律の六条二項の精神保健福祉センターによる指導、そういったものも考えられるところでございます。いずれにせよ、それらの法律趣旨定義、要件に基づいて行われるというものでございまして、本法案はそれを排除するものではございません。  ただ、この基本理念として本法を作らせていただいたのは、例えば先ほどの二項でいえば、特性に応じて必要な指導又は支援を行うということを考えておりますので、不必要なものというものは、これはやるというのは本法基本理念に反するというふうに考えております。
  21. 小川敏夫

    小川敏夫君 理念としては分かりますよ。必要な支援を行うので不必要な支援を行わないと、これは理念としては当たり前のことでして。だけど、必要かどうかは、その指導を行う機関が、例えば警察指導を行うなら警察が判断するわけですよね。そういうことになるわけですよね。そうすると、そこで、例えばその必要かどうかの判断を間違えた場合、あるいはもっと進めば、この法律を濫用するという場合を必ず防止するという仕組みがこの法律枠組みの中には私はないように思うんですがね。  要するに、話は少し変わりますが、例えば、警察官職務執行法職務質問というものがあります。あれは任意です。任意捜査ですから、意に反しては行ってはならないことになっている。だけど、実際にはどうかと。歩いているところを呼び止められれば、自分はもうこんなの協力しないからやめてくれ、もう行くよと言っても、前を立ち塞がられると。その横を擦り抜けようと思っても、横の方に警察官が動いてきて、実際上行動を制約されるわけです。  手は出しません。捕まえません。だけど、任意といいながらかなり意思を、自由意思で全く完全な任意という形ではなくて、かなり強硬に行われていると。そこでどいてくれといって手を出せば公務執行妨害で逮捕されると。ですから、職務質問を仮に受けたことがある人がいれば、そんな職務質問が、任意だといいながら、実際の運用はかなり任意性が制約されているというふうに思うんですがね。  そこで話がまた移りますが、犯罪予防警察庁職務に入るわけです。ですから、犯罪予防だということで警察がこの人を指導しようと、指導が必要だと警察が判断すればその人を指導することができると。その指導は当然断ることができるといっても、じゃ、なぜ指導に応じないんだと、指導に応じないことの説得することは許されるわけですよね。指導を拒否する者に対して強制的に指導はできないかもしれないけれども、指導を応じない者に対して指導に応じるよう説得するということは私はできると思うんですよ。そうすると、職務質問の例じゃありませんけれども、この指導に名を借りてかなり強硬なことが行われるということが許される余地がこの法律の中にあるのではないかと、私はそういう懸念から聞いておるわけでございます。  そして、この二十一条で、そうした指導が、警察が行う、そして必要かどうかは警察が判断すると、そして指導内容も行う警察が判断する、そして指導が嫌だと言ってもそれを指導を受けるように説得することはこれは認められると。こういう中で、また話が戻るわけでありますけれども、この対象者は非常に広い。  例えば、今団塊世代以上の人が昔、学生運動などで公務執行妨害で逮捕された、有罪になった事例があると、あるいは、有罪にはなっていない、検挙されただけで釈放されたということもあるけれども検挙歴があると、そうした人に対しても、この法律警察指導を行うことができるわけです。あるいは、軽犯罪法も入ると。じゃ、政治家があちこちにポスターを貼る、一軒一軒承諾を受けて貼れば何の問題もありませんけれども、所有者管理者承諾を得ないで貼ってしまえば、これは軽犯罪法に抵触する可能性があるわけであります。こうしたものまで対象に入るという、まさに、非常に緩い、もう国民のほとんど誰しもがこの指導を受ける対象に入るというこの規定の中で、この二十一条では、警察指導主体となって、その指導が必要かどうかを警察が判断すると、指導内容警察が判断すると、そして、指導任意だといっても、指導に応じない者に対して指導を受けるよう説得を続けることはできるということであれば、これは、警察なり、あるいはそうした一つの権力側がこの法律の本来の理念を外れてこの法律を利用するということができ得るのではないか、そういう余地をこの法文では残しているのではないかと、私はそういう懸念を抱いて質問させていただいておるわけでありますけれども、この私の懸念を解消するような手だてはないんでしょうか、あるいは、どう考えていらっしゃるんでしょうか。
  22. 山下貴司

    衆議院議員山下貴司君) 本当に、先生法曹先輩として、まさに、私も弁護士でございますので、そういった思い、共有する部分はございます。  ただ、そういったこともありまして、この法律につきましては、まさに、例えば警察やあるいはそういったところに直接権限を与えるものではございません。これは警察官職務執行法とは若干違うところであろうかと思います。そして、まず、これについては理念のところで、繰り返しになりますが、特性に応じ必要な指導又は支援を行うというところで幅広く規定しておるわけでございます。そしてまた、主体については官民を問わないと。例えば、協力雇用主であるとか保護司の先生方、こういったものも幅広く含まれておるわけでございます。二十一条の場面においては特にそうでございます。  そうした中で、再犯防止推進計画、そういったものは法務大臣主体となってしっかりと決めていただくということで、指導及び権限というのを本法に基づいて、ある意味白地委任をいただいたような形でやるということは考えておらないわけでございます。そういった計画の中で本当に必要なニーズに応じたものが提供されるのではないかということを期待しておりますし、そういう思いを持って再犯防止推進計画、国そして地方というものを規定させていただいている、そして基本理念規定させていただいているところでございます。
  23. 小川敏夫

    小川敏夫君 余り長い答弁を長々といただくと議論が煮詰まらないんですけれどもね。  同じことを言うけど、基本法であっても、これを具体化するときにはこの基本法に従って具体化するわけですから。それから、そもそも犯罪予防、防犯は、これ警察庁所掌事務でありますから。そして、この法律が具体的に指導する権限を与えていないと言うけれども、元々指導することは警察任意にできるんですよ、今でも。この法律がなくたって今でもできるんです、任意なんだから。任意なら捜査もできるし指導もできるんです。ただ、その任意に関して、さらにそれがかなり強硬になるということのお墨付きを与えてしまうのではないか。  私は、犯罪という、予防の名の下に、そうした、過去にそうした犯罪歴がある人に対して必要以上なそうした干渉が行われるのではないか。これは、本来の犯罪を犯した者の社会復帰支援するという目的とは離れてこの法律が使われる余地がある。余地があるから私はその問題を指摘しているわけで、この法律が必ずそういう警察のそうした不当な干渉を呼ぶものだと断定するわけじゃありません。この法律はいい法律理念はいい法律だと思いますよ。これを、その理念はしっかりと実現しなくちゃいけないけれども、でも、法律である以上、やはりそうした濫用があってはならない、あるいは、そうした不当な国民の権利を侵害するようなことの、悪用されるような余地があってはならないので、私はそうしたこの法文の書きぶりについてそうした配慮を必要ではないかというふうに思っております。  以上で質問を終わります。
  24. 仁比聡平

    仁比聡平君 日本共産党仁比聡平でございます。  先ほど小川委員の方から、理念は大事だというお話があった。受刑者を始めとして、犯罪を犯した者というふうに法案規定をしていこうとしている方々の社会復帰、それを通じた再犯防止ということを実らせていく上で、特に福祉的な支援との連携ということの重要性という角度でちょっと私は聞いていきたいと思うんですけれども、提案者に伺う前に、今の特に高齢者をめぐるこの再犯の状況について大臣に御認識をお伺いをしたいと思うんです。  最近出されました犯罪白書について、各新聞が、高齢者再犯、四割は半年未満という大きな見出しで書きました。つまり、刑務所を出て五年以内に再び罪を犯した高齢者を調べると、その四割が再犯に至るまで半年未満だったという衝撃のような数字なんですね。ですから、立ち直り困難、支援急務と、そうした見出しが立てられているわけですが、大臣、この実態や要因を法務省としてどのように認識をし、そして急務とされている支援をどのように進めていかれますか。
  25. 秋野公造

    委員長秋野公造君) まずは、大臣官房高嶋議官
  26. 高嶋智光

    政府参考人高嶋智光君) まず、数字的なところにつきましては……(発言する者あり)ええ、簡潔にお答えします。私の方からお答えいたします。  委員指摘のとおり、母数は出所後五年以内に再び刑務所に入所した者でございますが、そのうち六十五歳以上の者については四〇・二%が半年未満で再び刑務所に入っている、これは御指摘のとおりでございます。刑務所に収容されている受刑者の数というのは最近では減少傾向にあるんですが、高齢者受刑者につきましては増加を続けておりまして、平成二十六年には受刑者高齢者率、六十五歳以上率が初めて一〇%を超えるなど、受刑者の高齢化が急速に進んでいるところでございます。  高齢受刑者の中には、歩行、食事等の日常的な動作が全般にわたって支障があり、福祉的支援なくして社会復帰が困難な者や、親族等との関係が疎遠であるため帰るべき場所のない者が少なくなく、こうしたことが再入率を高めている原因というふうに考えておるところでございます。  政府としましては、今年七月の犯罪対策閣僚会議におきまして、薬物依存者・高齢犯罪者等再犯防止緊急対策を決定しました。その中で、具体的には、刑務所内におきましても介護、病気、健康状態が良くない者等に対する処遇をしっかり展開していくこと、それから、各刑事手続の段階におきまして福祉・医療機関へしっかりとつないでいくこと、それから、特に薬物依存の高齢者につきましては立ち直りに向けた息の長い支援実現するということを考えておるところでございます。
  27. 金田勝年

    ○国務大臣(金田勝年君) ただいま私どもの審議官から御説明申し上げたとおりでありますが、本年の七月に決定しておりますこの緊急対策における施策を着実に実施することによりまして、より一層効果的な再犯防止対策、ただいま申し上げた、具体的には二点申し上げておりますが、これを推進していきたいと、このように思っている次第であります。
  28. 仁比聡平

    仁比聡平君 ありがとうございました。  そこで、提案者の皆さんにお尋ねをしたいと思うんですけれども、この法案は、目的として、再犯防止等に関する施策をしっかりすることによって私は申し上げているような社会復帰を図っていくということを全体として目的にしていることは間違いないことだと思うんですけれども、いかがでしょうか。
  29. 井出庸生

    衆議院議員井出庸生君) お答えを申し上げます。  この法律目的というところでございますが、この法律は、一条のところにその目的を具体に規定をしております。先生指摘のように、この法案の一条では、冒頭に、再犯防止等が重要であることに鑑みと書いてございます。そしてまた、末尾には、もって国民犯罪による被害を受けることを防止し、安全、安心して暮らせる社会実現をすると。ただ、こうしたことは今までいろんな施策の中で言われてきたことでありまして、今回の法律というのは、まさに今先生指摘のように、国や地方公共団体施策基本事項を定めて、政策を総合的、計画的に推進をしていくと。ですから、国や地方団体が、一度犯罪に手を染めてしまってもう二度と犯罪と関わりたくないと、犯罪と関係を断ち切りたいと、そういう方にその環境整備をしていくと、そういう意味で今回の法律を出させていただいていると御理解いただければと思います。
  30. 仁比聡平

    仁比聡平君 今の点、社会復帰がまずは目的の大事な柱ですよということ、それが法文上から明確に読み取れるということも大事かなと私思うんですよね。  もう一つ、先ほど小川先生の方から御議論があっていましたけれども、典型的には未決拘禁者、あるいは刑期を満了した者、そうしたいわゆる保護観察上の指導対象にはならないというふうになっている方々について、これがその対象になるように読まれかねないような部分というのは、できたら形が整えられればなという思いを私持っておりまして、先ほどの御答弁で、その指導という概念が私が想定していたよりももっと幅の広いものを提案者としては考えておられることが先ほどちょっと初めて私分かりまして、ということであると、いろんな書きぶりもまたあるかなと思います。指導及び支援というふうに一くくりにすると、ちょっといろいろやっぱり誤解を生む面もあるのではないかなと思いますので、それはちょっと、できるだけいい形でこの法案を世に送り出すことができるように御協議を願えればと、これは御要望を申し上げておきたいと思います。  そこで、ちょっと具体的な、まず出口支援について伺いたいと思うんですけれども、法務省と厚労省が連携をしまして、いわゆる特別調整ということが行われております。今度の犯罪白書を見ますと、その結果、福祉施設などにつながった人員は実質七一・二%に上っておりまして、これはやっぱり見るべき成果だと言うべきだと思うんですよね。一方で課題もあるかと思うんですが、局長、どんなふうに御覧になっているでしょうか。
  31. 畝本直美

    政府参考人畝本直美君) この特別調整の取組、平成二十一年度から地域生活定着支援センターと連携を始めて行っているものでございます。そして、その数値、今先生が御指摘のとおりでございまして、この連携は一定の成果を上げているものと認識しております。また、一人でも多くの人がその必要な福祉的な支援に確実につながっていくように、今後ともしっかりと情報交換を行うなどして緊密な連携に取り組んでいく、そのように考えております。  以上でございます。
  32. 仁比聡平

    仁比聡平君 お手元に新聞の記事を二枚配らせていただいているんですけれども、左側の方のですね、北九州で地域生活定着支援センターの助力で安定した暮らしが始まったと、記事には、「初めて福祉にたどりついた安心感をのぞかせた。」という記事がありますけれども、下関駅を放火で焼いてしまったという事件なんですが、私、当時、生活保護の窓口で本当にニーズに応えられていたならばこうしたことにはならなかったのではないかという問題意識で国会での質問をしたことがある方なんですね。  厚生労働省にお尋ねしたいと思うんですが、やっぱり施設から出てきたときにつながっているということがとても大事と。なかなかいろいろな問題があれこれある中でこうして福祉につながっているということについて、この厚労省の事業の大事な意義があると思うんですけれども、その辺りはいかがでしょうか。
  33. 中井川誠

    政府参考人(中井川誠君) お答え申し上げます。  先生指摘のとおり、地域生活定着支援センターにつきましては、まさにそのつながるという観点で、福祉サービスへのつなぎということで、コーディネート業務で平成二十七年度には七百五十名の方が受入先に帰住するなど、非常に実績を上げているというふうに認識しております。  この事業を通じまして着実に出所後の居住先の確保ですとか福祉サービス等の支援につながるようになれば、矯正施設から出所した人が再び犯罪をしにくくなっているのではないかと考えられ、非常に社会的意義が高いものと考えております。
  34. 仁比聡平

    仁比聡平君 ありがとうございます。  そこで、大臣に、法務省と厚労省の連携でこの特別調整や地域定着支援センターの取組が大きく成果を上げ始めていると思うんですけれども、全体のニーズということを考えると、もっと安定してもっと発展的にこうした取組が前進していくならば、今特別調整の対象になっている例えば七百三十人というような方々よりももっとたくさんの方々をそうした福祉的な支援につなげていけるのではないかと、そういうニーズというのは矯正の現場にはたくさん実はあるんじゃないかと思うんですよ。  そうした観点からすると、これまで法務省がこの支援センターについては言わば所管みたいなことをしているわけじゃないんですけれども、先ほどの七月の閣僚会議の決定もあることですし、政府を挙げてこの定着支援センターの事業を安定的に発展をさせていけるように是非頑張っていただきたいと思うんですが、まず、この事業再犯防止という観点から見たときの意義について、大臣、お願いできませんか。
  35. 秋野公造

    委員長秋野公造君) では先に、大臣官房高嶋議官
  36. 高嶋智光

    政府参考人高嶋智光君) まず、概略的なところを事務サイドの方から説明させていただきたいと思います。  議員御指摘のとおり、刑務所から出所した者については福祉につなげることが非常に大事なプロセスになっております。ただ、それだけではなくて、不起訴になった者やそれから執行猶予判決を受けた者の中にも、やはり同様に社会福祉につなげていくことが重要な場合が多くございます。特に高齢者については多くございます。  そういう観点から見ますと、先ほどから委員指摘の地域生活定着支援センターというのは非常に大きな意義があるというふうに考えておりまして、障害者施設、介護保険施設等の受入先の確保に対しては非常に役立っているところでございます。  このように、センターは刑務所出所者等の自立更生、さらに再犯防止のため重要な役割を果たしておりまして、今後とも同センターとの連携を密にしていく必要があるというふうに認識しているところでございます。
  37. 金田勝年

    ○国務大臣(金田勝年君) ただいま委員の御指摘がございましたように私も受け止めておりまして、地域生活定着支援センターというのは、私どもの今審議官からも申し上げました、刑務所出所者等の自立、再犯防止、改善更生のために大変重要な役割を果たしていると認識しておりまして、今後ともこのセンターと連携した取組を推進していきたいと、こういうふうに考えておるわけであります。
  38. 仁比聡平

    仁比聡平君 大臣から大事な意義があると御答弁があったこと自体がまずとても大事なことだと思うんですね。  加えて、お配りしている資料の右側の方なんですが、その地域生活定着支援センターがなかなか大変だという記事なんですよね。毎日新聞のアンケートで、二十六か所が職員不足などで体制に苦慮していると。でもって、下から二段目のところにありますが、厚労省の補助の仕組みなんですけれども、これがこの間、実質、私なりに言えば引き下げられたような格好になっていて、具体的には年間五百万円を持ち出す、そうしたセンターなんかも出ているというなどの、やっぱりこれなかなか財政、つまり予算ですよね、それを通じて職員さんも含めて安定的な体制をつくっていく、発展させていくということには、やっぱり政府が挙げてここをよく考えなきゃいけないと思う。  今度の法案で、そうした民間団体の活動に対する財政的な措置の拡充ということを提起されているのもそういう趣旨だと思うんですが、大臣政府を挙げて、そうした予算や人的な体制の支援なんかも含めて考えていく上で、こうしたセンターの実態をまずつかんで、そして頑張って検討していくということをお願いを是非したいと思うんですが、いかがでしょう。
  39. 高嶋智光

    政府参考人高嶋智光君) 度々申し訳ありません。  委員指摘のとおり、検察庁、刑事施設、保護観察所、地域定着支援センター及び地域の関係機関が相互に実務の実情というのを把握することは、そして情報を共有するということは、入口支援を含む、犯罪に及んだ者の円滑な社会復帰を効率的かつ積極的に行う上でも非常に重要であるというふうに考えております。  法務省としましては、こうした取組を進めるとともに、再犯防止対策をより一層推進するために必要な予算を確保できるよう取り組んでまいりたいと考えているところでございます。
  40. 金田勝年

    ○国務大臣(金田勝年君) これも私は委員の御指摘よく理解できるところであります。  したがって、ただいま申し上げましたように、厚生労働省あるいは地域生活定着支援センターとの連携を密にするということとともに、再犯防止対策を一層推進するためにも、その必要な措置を講ずるように、連携をしながら、所管の厚労省の方にも頑張っていただくというか、定員、予算も含めて必要な措置を講ずるように私どもも一緒になって取り組んでいきたいなと、こういうふうに思っているところであります。
  41. 仁比聡平

    仁比聡平君 厚労省、審議官大臣が一緒になって取り組んでいきたいとおっしゃったのは僕大事だと思うんですよね。これまでの事業枠組みからして、実態については厚労省がまずは御存じなんだと思うんですけれども、法務省を含めて一緒に実情をよくつかんでいただくと、ここから始めてもらいたいと思うんですが、一言いかがですか。
  42. 中井川誠

    政府参考人(中井川誠君) ただいま大臣から非常に有り難い御指摘いただきましたので、私どもといたしましても、今後、法務省との連携を強化しながらセンターの運営実態の把握に努めて、必要な予算の確保に当たってまいりたいと考えております。
  43. 仁比聡平

    仁比聡平君 是非よろしくお願いしたいと思います。  法務省がとても丁寧な答弁をしてくださったものですから時間がなくなってしまいまして、ちょっと要の問題として、申し訳ない、提案者じゃなくて大臣になっちゃうんですけど、こうした法案趣旨を本当にかなえていこうと思ったら、コーディネート役の要になる保護観察官のこの体制というのは拡充がもう急務だと思うんですよね。全国で、皆さん、どれぐらいいらっしゃるか御存じですか。千人前後という、そういう数字で、どんどん仕事は大変になるのに増員が、私ずっと抜本的に増員をといってこれを求めるんですが、なかなかそれがかなわないできているんですね。最近、刑の一部執行猶予というとても難しい制度も運用が開始をされたと。提案者の皆さんうなずいていただいていますので、全く同感という思いだと思うんですよ。体制の整備をというのはそういうことを含んでいるという御趣旨だと思うんですが。  そこで、大臣、この複雑、デリケートな更生保護の要になる保護観察官の抜本増員ということは、これもう絶対やってもらいたいと思うんですが、決意を伺いたいと思います。
  44. 金田勝年

    ○国務大臣(金田勝年君) 要になる保護観察官のお仕事、非常に増えているというお話指摘ございました。  保護観察官が更生保護の体制の要になっていることは事実であります。再犯防止策を推進する上で非常に重要な職務であると、こういうように考えております。例えば、十年前に比べれば大幅に増えております。しかし、ここのところの状況の中で、これを含めてどういうふうにこの重要性を受け止めていくか、また、今後とも必要な保護観察処遇体制の整備というものも重要でありますので、そういう点については私どももしっかりとこれからも対応していきたいと、このように思っております。
  45. 仁比聡平

    仁比聡平君 是非頑張ってください。  終わります。
  46. 糸数慶子

    ○糸数慶子君 沖縄の風の糸数慶子です。  法案提出者にこの法案目的についてお伺いをいたします。  法案は第一条で、この法律は、再犯防止等に関する施策を総合的かつ計画的に推進することにより、国民犯罪による被害を受けることを防止して安全で安心して暮らせる社会実現に寄与することを目的とするとされています。円滑な社会復帰はそのための手段として位置付けられているようですが、これは再犯防止することが目的なのでしょうか、国民の被害の防止と安心、安全が目的なのでしょうか、お伺いいたします。
  47. 井出庸生

    衆議院議員井出庸生君) お答えを申し上げます。  今、先生から、再犯防止目的なのか、国民の被害の防止と安全、安心が目的なのかという御質問をいただきました。  国民の被害の防止と安全、安心ということは、その再犯も含めてもっと広い意味犯罪を未然に防いでいくとか、そういったこれまでの法律でも目的とされてきた部分もあろうかとございます。この法律は、その中でも特に最近再犯防止がなかなか厳しい水準で推移をしていると、そういう中で、国や地方公共団体がそうした社会復帰支援ですね、犯罪ともう二度と関わらないというお気持ちの方、例えば先ほど仁比先生御紹介ありました知的障害を持つ八十五歳の方も、まあこの方は牧師さんが熱心に文書などをやり取りしたということを伺っておりますが、そうした助言というか、社会として受け入れていくようなことを一つでもこの法案でやっていこうと。  そういう意味では、この法律の名前のとおり、再犯防止を進めることは目的であると申し上げても差し支えないかと思います。
  48. 糸数慶子

    ○糸数慶子君 まず、刑罰制度は、犯罪への応報であることにとどまらず、罪を犯した人を人間として尊重することを基本として、その人間性の回復と自由な社会への社会復帰目的とするものでなければならないというふうに思います。  これは近代的な国々が認めている原則でありますし、この法案目的が、犯罪を犯した者の人間性の回復と社会復帰目的とすることを明らかにするためには、犯罪をした者の人間性の回復と円滑な社会復帰を促進することを、その手段ではなく法の目的として明確にするべきだというふうに思いますが、再度お伺いいたします。手段ではなくその法の目的として明確にしていただきたいと思います。いかがですか。
  49. 山下貴司

    衆議院議員山下貴司君) ありがとうございます。  先生指摘、私も、先ほど申し上げたように弁護士でもございますので、本当に共感する部分は多々ございます。  この目的条項でございますが、先ほど井出代理からも御説明ありましたが、この一条全体がこれ目的条項でございまして、この目的条項の一部だけが目的ということではございません。  まず取り組むというところで、例えば、この目的条項の一丁目一番地に「国民理解協力を得つつ、犯罪をした者等の円滑な社会復帰を促進すること」ということを掲げており、これをまずやる、それを通じて再犯防止をやっていくんだ、そして、本法ではその防止に関する施策基本となる事項を定めて、その施策を総合的かつ計画的に推進していくんだと、これも当然目的でございます。そしてそのことによって、もって国民、被害を受けることを防止し、安全で安心して暮らせる社会実現に寄与するということになろうかと思います。全体でございます。そういった中で、この円滑な社会復帰を促進ということは目的条項の中に含まれております。また、付随して申しますれば、基本理念の中にも含まれておるところでございます。  一点、人間性の回復、これは、先生指摘のところ、理解する、共有する部分もあるんですけれども、私どもは、この再犯防止法においては、世の中の偏見、思いとしてはですね、偏見というものを極力この法文上排除していきたいなというふうな思いがございました。もちろん、その人間性の回復が必要な者もおるかもしれません。しかし一方で、この目的条項において、あるいは法文上、犯罪者一般が人間性の回復が必要な者であるんだというふうなことを法文規定することが逆に不要な偏見を呼んでしまうのではないかという懸念もございまして、目的におきましては円滑な社会復帰の促進という形で捉えさせていただいたわけでございます。
  50. 糸数慶子

    ○糸数慶子君 次に、犯罪をした者等のその定義が余りにも不明確であり、またその指導支援の区別が曖昧ではないかというふうに思います。その点についてお伺いをいたします。  本法案第三条第二項は、犯罪をした者等に対して、拘置所や少年鑑別所等未決拘禁段階の施設に収容されている間のみならず、社会に復帰した後も途切れることなく必要な指導支援を受けられるようにすることを定めています。この指導趣旨は、仮釈放された者等に対して保護観察を通じて指導することと解されますが、未決の者や刑を終えた者を対象として指導を行うことができるようにも読めるわけです。  また、本法案第二十一条の指導についても、矯正施設における処遇を経ないで社会内において指導を受ける対象者は、保護観察付執行猶予者を、一定期間の矯正施設における処遇に引き続き社会内で指導を受ける対象者は仮釈放された者を意味するものと考えられますが、家裁送致前の少年や起訴猶予処分を受けた者や満期出所者にも一定の法的な指導がなされるように解釈できます。  立案者におかれてはそのようなことは考えていないものと信じますが、なぜなら、この未決の者に対する指導は明らかに無罪推定を受ける地位と矛盾するからであります。  このことは、刑事被収容者処遇法第三十一条は、未決拘禁者の処遇に当たっては、未決の者としての地位を考慮し、その逃走及び罪証の隠滅の防止並びにその防御権の尊重に特に留意しなければならないというふうに定めており、未決の者としての地位が無罪推定を受ける地位であることは、当時の法務省立案担当者の書かれた注釈書にも明記されているところです。  また、刑を終えた者等に対する指導は、満期出所者まで社会内で監視を行う制度につながりかねません。戦前においては、刑を終えた者についても予防拘禁を継続できる制度が存在し、深刻な人権侵害を引き起こして、また、無用な誤解を引き起こしております。  無用な誤解を生まないよう、この未決の者と家裁送致前の少年、刑を終えた者等に対しては指導は行わず、これは支援にとどめるべきだというふうに思います。これを法案に明記し、このような疑義をなくすべきであると思いますが、修正をしていただけないでしょうか。
  51. 山下貴司

    衆議院議員山下貴司君) ありがとうございます。  糸数委員の御懸念は本当に理解できるわけでございますけれども、他方で、本法は、先ほど来御説明させていただいているように、特定の指導権限支援権限を根拠付けるものではないということでございます。  一般に指導というのは、相手方の同意に基づく任意のものということで、強制力は持たないという一般法令用語の中で考えているということで御理解を賜りたいと思っております。そういうふうな指導として、再犯防止推進計画の中で、例えば民間団体における薬物依存離脱プログラム指導、その中もございます。また様々な指導もございますし、またそういったことを念頭に置いているところでございます。  また、これ、例えば指導支援を切り分けると、何が指導で何が支援なのかというところのことも、切り分けも法文上必要になってくるのではないかということと、あるいは、例えば先ほど例で申し上げました、ほかの法令で認められている、例えば職業安定法職業指導、あるいは精神保健福祉センターにおける指導、そういったものを何か排除してしまうような反対解釈を呼びかねないのではないかというふうにも懸念されるところでございます。  そうしたところで、理念において必要なものを行うということで、ニーズに応じたものを行うということで理解をしておりますので、このような書きぶりで是非御理解を賜りたいというふうに考えております。
  52. 糸数慶子

    ○糸数慶子君 先ほども申し上げましたけれども、やはり無用な誤解を生まないためにということを、改めて修正をしていただくように私は希望したいというふうに思います。  次に、政府に対してお伺いいたしますが、この法案に基づく政策の実行のための予算措置についてであります。  法案は、再犯防止等に関する施策推進仕組みとして、政府再犯防止推進計画を定め、省庁横断的に施策を行うこととするとともに、地方公共団体においても地方再犯防止推進計画を定めるべき努力義務規定を設けています。  これ、日曜日の毎日新聞の報道によりますと、各地において受刑者社会復帰支援に関わる地域定着支援センター、先ほどもありましたが、多くはその人員不足に悩んでいるということでありますが、私は政府に対してもこれまでにも増して罪を犯した者の社会復帰そのものを重要な政策目的として明確に位置付け、また、地方公共団体にも、このような計画の策定を進めるべきであれば、それらの施策のために大胆な財政措置が講じられるべきであるというふうに思いますが、御見解を伺います。
  53. 高嶋智光

    政府参考人高嶋智光君) お答えいたします。  委員指摘のとおり、この地域生活定着支援センターというのは、再犯防止あるいは出所した者の社会復帰という観点から非常に大事な施設でございます。この地域定着支援センターとの連携を密にしていくということは非常に大事であります。  御指摘のとおり、犯罪者の社会復帰あるいは再犯防止という観点からしますと、この地域生活定着支援センターの運営を始めとしまして、国と地方公共団体が連携してその施策推進していくことが非常に大事なのでありますが、様々な面で財政的支出が必要となってまいります。  法務省といたしましては、本法案の成立、施行の際には、本法案の趣旨を十分踏まえまして、更に再犯防止対策を一層推進すべく、必要な予算の確保ができるよう取り組んでまいりたいと考えております。
  54. 糸数慶子

    ○糸数慶子君 引き続きよろしくお願いいたします。  次に、法務省にお伺いをいたします。  女性の受刑者の割合が少しずつ増えていますが、中でも六十五歳以上の高齢者女性の罪名は七〇%以上が窃盗であり、著しく高いものとなっています。二〇一四年の犯罪白書においても、女性の高齢者は他の年齢層や男性高齢者と比べて窃盗の再犯率が高く、特に近親者の病気や死去を犯行の背景事情に持つ者、窃盗のその再犯率が高いことが明らかにされています。これは、女性の貧困と犯罪が密接に結び付く、犯罪発生とそして社会的要因の連関を指摘できる一つの事例ではないかというふうに思います。  こうした女性の受刑者に特徴的な問題についてどのようにお考えでしょうか、そしてその対策をお伺いいたします。
  55. 富山聡

    政府参考人(富山聡君) お答えいたします。  委員指摘のとおり、刑事施設に入所する女性受刑者の中では窃盗事犯が非常に高い割合を占めておりますし、特に高齢受刑者につきましては窃盗事犯が大半であるというような現状がございます。また、犯罪白書によりますと、配偶者を始めとする家族とのトラブルなど、窃盗の背景事情として対人関係の問題なども指摘されているところでございます。  こういった現状を踏まえまして、女子の刑事施設におきましては、一般改善指導枠組みの中で女子受刑者特有の課題を踏まえた処遇プログラムを実施しております。  具体的に申し上げますと、窃盗防止指導として、窃盗に至った自己の問題について、身近な人との関係性の観点から振り返り自己理解を深めさせること、自己肯定感を高め適切な自己表現力を身に付けさせること、窃盗をしない生活を送るための具体的な方法を考えさせることなどを目標といたしまして、グループワーク形式で指導を実施しております。  また、窃盗には限られませんが、高齢者や摂食障害を有する者、あるいは妊産婦等、女子受刑者特有の問題がございますが、こういった問題につきまして、女子刑務所が所在いたします地域の医療や福祉の専門家の方、看護師、保健師、助産師、社会福祉士、そういった専門家の方々に施設においでいただきまして協力支援をしていただく枠組み、これを女子刑事施設の地域支援モデル事業と私ども呼んでおりますが、そういった試みも展開しておりまして、現在では女子受刑者を収容いたします九つの刑事施設においてそういった支援を受けられる状態になっております。  今後とも、各施設の実情を踏まえつつ、女子受刑者再犯防止社会復帰に資するため、より取組が充実するように努めてまいりたいと考えているところでございます。  以上です。
  56. 糸数慶子

    ○糸数慶子君 ありがとうございました。現場でも今お話を伺いますと、いろいろ考えていらっしゃることがよく分かりました。  こうした対策は非常に大切であるというふうに考えております。しっかり予算を付けて適切に実施がなされることを強く希望いたしまして、私の質問を終わりたいと思います。  ありがとうございました。
  57. 秋野公造

    委員長秋野公造君) 本案に対する本日の審査はこの程度にとどめます。     ─────────────
  58. 秋野公造

    委員長秋野公造君) 政府参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  部落差別の解消の推進に関する法律案の審査のため、本日の委員会に、理事会協議のとおり、法務省人権擁護局長萩本修君外七名を政府参考人として出席を求め、その説明を聴取することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  59. 秋野公造

    委員長秋野公造君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  速記止めてください。    〔速記中止〕
  60. 秋野公造

    委員長秋野公造君) 速記を起こしてください。     ─────────────
  61. 秋野公造

    委員長秋野公造君) 部落差別の解消の推進に関する法律案議題といたします。  まず、発議者衆議院議員門博文君から趣旨説明を聴取いたします。門博文君。
  62. 門博文

    衆議院議員(門博文君) 今御紹介いただきました発議者の一人であります門博文でございます。どうかよろしくお願いいたします。  それでは、趣旨説明を行わさせていただきます。  ただいま議題となりました部落差別の解消の推進に関する法律案につきまして、提案者を代表して、提案趣旨及び内容を御説明申し上げます。  まず、本法律案趣旨について御説明申し上げます。  現在もなお部落差別が存在するとともに、情報化の進展に伴って部落差別に関する状況の変化が生じております。全ての国民基本的人権の享有を保障する日本国憲法の理念にのっとり、部落差別は許されないものであるとの認識の下に、これを解消することが重要な課題であることに鑑み、部落差別の解消を推進し、もって部落差別のない社会実現すべきと考え、ここに本法律案提案した次第であります。  次に、本法律案内容につきまして御説明申し上げます。  第一に、基本理念として、部落差別の解消に関する施策は、全ての国民が等しく基本的人権を享有するかけがえのない個人として尊重されるものであるとの理念にのっとり、部落差別を解消する必要性に対する国民一人一人の理解を深めるよう努めることにより、部落差別のない社会実現することを旨として行われなければならないこととしております。  第二に、国は、部落差別の解消に関する施策を講ずるとともに、地方公共団体が講ずる部落差別の解消に関する施策推進するために必要な情報の提供、指導及び助言を行う責務を有すること、地方公共団体は、部落差別の解消に関し、国との適切な役割分担を踏まえて、国及び他の地方公共団体との連携を図りつつ、その地域の実情に応じた施策を講ずるよう努めるものとすることとしております。  第三に、国は、部落差別に関する相談に的確に応ずるための体制の充実を図るものとすること、地方公共団体は、そのような体制の充実を図るよう努めるものとすることとしております。  第四に、国は、部落差別を解消するために必要な教育及び啓発を行うものとすること、地方公共団体は、そのような教育及び啓発を行うよう努めるものとすることとしております。  第五に、国は、部落差別の解消に関する施策の実施に資するため、地方公共団体協力を得て、部落差別の実態に係る調査を行うものとすることとしております。  なお、この法律は、公布の日から施行することとしております。  以上が、本法律案趣旨及び内容であります。  何とぞ、御審議の上、速やかに御賛同くださいますようお願い申し上げます。
  63. 秋野公造

    委員長秋野公造君) 以上で趣旨説明の聴取は終了いたしました。  これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  64. 西田昌司

    ○西田昌司君 自民党の西田昌司でございます。  提案者の皆さん、御苦労さんです。  まず、この部落差別解消法なんですけれども、出てきた経緯が、せんだっての国会で我々参議院の方でいわゆるヘイト法を作りましたが、それと密接に関係していると思うんですね。かつてはいわゆる人権擁護法案というのがいろいろ審議されてきたんですけれども、そのときには、いろいろ行政側が、差別を受けたらそれを呼び出して、それに対していろんなことをしていくというようなことがありましたので、それ自体が逆に人々の言論とか自由なそういう表現も含めた、内心の自由も含めたものに制限を加えることになるんじゃないかということで、我々は強く反対をしてきたわけです。  同じように、ヘイト法についても、罰則とかそういうのがないから駄目じゃないかという意見もあったんですけれども、それをしてしまうと、今言ったような、かつての人権擁護法案が検討されたときのように、いわゆる内心の自由にまで踏み込んでしまうことになるので、理念法という形でヘイト法を作ったわけでありますが、それと似たような形で、今回この部落差別解消法案というのが出てきたというふうに理解しております。それで、うんうんとうなずいておられるので、そうだということだということで進めていくんですけれども。  そこで、ただ、一つは立法事実の問題で、ヘイト法の場合には明らかに、今も残念ながらそういうことをする人がいるんですけれども、白昼堂々とそういうことをやっている人間がいるんですけれども、片っ方のこの同和差別については、立法事実としてどういうことを考えておられるのかということなんですね。同和差別が今なおあるということなんですけれども、その辺のところ、簡潔にお答えいただきたいと思います。
  65. 門博文

    衆議院議員(門博文君) 今、西田委員から、この同和差別の現状について我々の認識ということでお尋ねをいただいたと思います。  私たち提案者は、まず、現在もこの同和差別、部落差別が存在するということを認識をしております。  例えばでありますけれども、その背景としまして、人権侵犯事件調査処理規程に基づく救済手続による処理を行った件数、これは法務省の方でおまとめいただいておりますけれども、やはりここにも依然としてこの同和問題に関する人権侵犯、いわゆる部落差別の実態があると、こういうことが御報告をされておりますし、また、昨年の、平成二十七年版の人権教育・啓発白書によっても、いわゆる結婚における差別、それから差別発言、差別落書き等、この部落差別についての現状というのは依然存在しているということが報告をされておりまして、また、先ほどの趣旨の中でもお話を申し上げましたけれども、昨今はこの情報化の進展に伴って、いわゆるインターネット等も含めて部落差別に関する状況にいろいろな変化が起こっておるということは、我々報告を受けております。  法務省の人権擁護局によりますと、今申し上げたように、この人権侵犯事件の処理件数のうち、特にインターネット上の情報については、法務省が削除要請した件数、これは平成二十五年で五件でありました。平成二十六年で十件、平成二十七年で三十件となって、こういうものが増加傾向にあるということも、私たちがこの法律を現在必要だというふうに考えた根拠、そしてまた、私たちが認識をしております部落差別の現状というところであります。
  66. 西田昌司

    ○西田昌司君 そういうことがあるのも事実だと思います。  しかし、その一方で、結婚の差別というのがよく言われるんですけれども、同和の中で一番大きな差別の一つだと思いますね。確かにこれも認められるものではないんですけれども、しかし、人間の社会といいますのはいろんなところで差別なり偏見というのが結構あるものでありますね。我々政治家が特にそうでして、例えば今日ここに若い議員の先生もおられますけれども、私の知っている人は、政治家になった途端、結婚を解消されたとか、婚約を解消されたとか、そういう政治家差別と言えばおかしいんですけれども、そういうこともあったりする。  ただ、同和の場合は、本人に責任があることじゃなくて、全く本人に責任がないところからきている問題ですから本質的には違うんですけれども、私は、その差別をしないようにしようというのはもちろん賛成なんですけれども、その規定を余り厳しく、この差別を全くなくすという話でそれぞれ行政なり社会が動いていくと、逆に非常に窮屈なことになってしまうんじゃないのかということを一番懸念しているわけなんです。  例えば、その一番典型例が、今日この審議をするのに当たりまして、もう一度改めて島崎藤村の「破戒」という、この本を私読み直したわけなんです。これは皆さん方も御存じの小説であります。信州の片田舎の中で、同和出身者の青年の苦悩、自分がその部落民だということを隠して生きてきたけれども、それを絶対隠しておけよというふうに戒めを父に言われていたと、その戒めを破ったわけですね。それを白状することによって、逆に魂が解放されると、そういういい小説ではあるんですけれども。この小説が発表された当時、非常に評判を呼んだんですね。大ベストセラーになったんですが、しかしもう片方で、この小説は同和差別を書いている差別小説だということで、実は発禁になってしまうんですね。これが発禁、停止というか、事実上そういう形になってしまう。それから、もう一度出てきたときには、文章が訂正されたり、そういうことが繰り返し行われてきたという事実が片っ方でありますね。今はもう、今の時代は全く元どおりのものが出ているわけですけれども。  こうした同和差別の問題については、そういう表現の自由とか、行き過ぎた差別解消意識というのが、過ぎてしまうとそういう事案になってしまうことも事実なんですよね。ですから、私は、この法律を作ることによってモラルに訴えていくと、理念法だということなんですけれども、そういうことにつながりはしないかということを一つ懸念するわけなんです。  そこで、提案者の方に、その辺のところをどういうようにお考えかということをお聞きしたいと思います。
  67. 宮崎政久

    衆議院議員(宮崎政久君) 御質問ありがとうございます。西田委員にお答えをいたします。  まず、今、藤村の「破戒」を出されて御説明をいただきました。その歴史的な経緯、私どもも承知をしているところであります。そしてまた、表現の自由の民主社会における大切さは共に理解をしているところでございまして、今御指摘のように、表現の自由が不当に制約されるようなことがあってはならないというのは発議者も同じ認識に立っているものでございます。  その上で、この法案は、御指摘もいただきましたように理念法という形で提案をさせていただいているものでございますが、この法案を通していただいた後に表現の自由が不当な制約を受けることがないようにしなければいけない、それゆえ、この法案では第二条で基本理念というものを定めさせていただいております。  この第二条では、部落差別の解消に関するこの法律における施策というものは、全ての国民が等しく基本的人権を享有するかけがえのない個人として尊重されるものであるとの理念にのっとって、部落差別を解消する必要性に対する国民一人一人の理解を深めるように努めることにより、部落差別のない社会実現することを旨として行われなければならないといたしまして、まず、この法案における施策の立て付けなどについても、表現の自由を制約するということであれば、まさにそれは、そのことをもって部落差別のない社会実現するということと正反対の方向の取組でありますので、委員指摘のような御懸念を払拭するような形で基本理念を立てさせていただいているところでございます。  以上です。
  68. 西田昌司

    ○西田昌司君 ですから、この法律ではそういう、内心の自由もそうでありますけれども、表現の自由なりそういうところに制限を加えるものではないと、こういうふうに明言をしていただきました。  ところが、その一方で、この理念にのっとって、例えば、地方公共団体などが、助言、指導、そういうのを行ったり、教育を行うということも書いてあるわけなんですね。  そこで、ちょっとこれで御質問するんですけれども、かつて、私は京都出身なんですけれども、京都のある公立高校、ある公立高校といいますか私の母校でこういうことがあったわけですね。同和教育ということで全校生徒を集めて、同和という、部落というのがあるんだということを教えられました。そこで実は私初めて知ったわけなんですね、そういうものがあるということを。そして、家に帰ってそういう話を聞いて、あんた知らぬのかいなという話になるんですが、我々の世代になると、もうほとんどそういうことを私の世代でも知らなかったわけなんです。ところが、そのことによって初めてそういうことを知ると。  そして、そこから先に問題がありまして、私の同級生が、かつての旧同和地区、そこに引っ越しをして住んでいたわけなんですね。ところが、その教育によって、自分の住んでいる地域が同和地域だということを知ってしまったと。物すごくショックを受けまして、彼は非常にショックを受けたわけですよ。自分たちはそうなのかと。その彼がどうであったかどうかというのも私も最後まで確認はすることはできませんでしたけれども、私もその話を聞いて非常にショックを受けたことを覚えています。  つまり、同和教育という、人権教育ということは、これPTAなんかでもそうなんですね。PTAなんかでも、京都の場合、よくそういう人権教育、同和教育というのが行われたりするわけです。ところが、そのことによって逆に人々が、同和というものがあって、そしてそれには触れぬ触らずという形で萎縮してしまうわけなんですね、片っ方。そういうことも実際、現実としてあったわけなんですよ。  だから、そういうことを考えると、今回のこの法律が作られて、教育、啓発というのは正しい、それ自体はポリティカルコレクトですよ、正しい。しかし、そのことを、やり方によっては逆に、本当は知らなくてもいい情報を知ってしまい、そして、知らなくてもいいことを知ってしまったがために、様々な逆に萎縮を与えたり、本来、同和差別解消というのとは別の方向に行ってしまう可能性もあるんじゃないかと。そこは非常にこれ大事なことだと思いますし、このことについて、まず提案者、そして政府側から答弁をいただきたいと思います。
  69. 宮崎政久

    衆議院議員(宮崎政久君) 西田委員指摘の点は非常に重要な点だと思っております。  議員立法として提出をさせていただく過程の中でも、様々な意見交換をして議論をした中で、今御指摘のような懸念を表明される方もおられました。いろんなことをお聞きをした上でこの法案提出に至っているということをまず御報告をしたいと思っております。  その上でですけれども、私どもは、時間の経過によって忘れ去ってしまうということで本当にこの部落差別というものが完全に解消ができるのかというところに疑念があります。  つまり、この法案では、第一条、第二条、第一条は目的、第二条は先ほど申し上げたような基本理念であるわけですけれども、やはり私たちは、現在も部落差別がある、そして様々な状況の変化もある、その上で、全ての国民基本的人権の享有を保障する日本国憲法の理念にのっとって、部落差別は許されぬものであるという認識の下にこれを解消することが重要な課題である、だから、その部落差別の解消に関して基本理念施策を定めることによって部落差別の解消を推進して、もって部落差別のない社会実現したい、そういう目的でこの法案を作っているわけであります。  ただ時が経ることによって知らないということだけでは、今委員も御指摘になったような形で、将来、部落差別に関する情報に接したりそういう状況に遭遇をしたときに、これが、それは新たな差別を発生させてしまう、さらに次の差別行動や差別的な意識の醸成をもたらしてしまう、そういうことがないようにするためには、やはりただ時がたつのを待つということではなくて、国民一人一人が差別を解消する必要性に対して十分に理解を深めていくことが必要であると、そのためにやはりこのような理念法が必要であるというふうに考えているところでございます。  以上です。
  70. 神山修

    政府参考人(神山修君) お答え申し上げます。  文部科学省におきましては、現在、日本国憲法及び教育基本法の精神にのっとりまして、基本的人権の尊重の精神が正しく身に付くよう、地域の実情を踏まえながら、学校教育及び社会教育を通じて、同和問題に関する差別意識の解消を含みます人権尊重の精神の涵養に係る取組を推進しているところでございます。  具体的に申し上げますと、学校教育におきましては、児童生徒の発達段階に応じて、人間の尊重についての考え方を基本的人権を中心に深めさせることなどについて指導することを通じまして、同和問題を含む人権課題に対する取組を推進しているところでございます。また、社会教育におきましては、地方公共団体において社会教育の指導者として中心的な役割を担います社会教育主事の養成講習や現職研修におきまして同和問題に関するプログラムを実施しておりまして、公民館などにおきまして人権教育の推進を図っているところでございます。  文部科学省といたしましては、同和問題に関する差別や偏見の解消に向けた施策の実施に当たりまして、新たな差別を生むなどの弊害が生じることのないよう留意するのは当然のことと考えております。このような認識に立ちまして、適切に人権教育の推進に取り組んでまいりたいと考えております。
  71. 西田昌司

    ○西田昌司君 そういうことなんですが、しかし、それちょっと表面上に流れていると思うんですね、私。  要するに、時の経過だけでは駄目だと、それも確かにあるんですね。あるんですが、現実問題、例えば京都を始め西日本の方は今なおそういう地域が現存していると言われている地域がありますよね。ところが、東日本に行っちゃうとほとんどないと。東京周辺でも、かつてはあったかもしれないけれども、戦争で焼けてしまったということも含め、なくなってしまって、まさに同和しているわけですよ、同じく和しているわけですね。それが一つ解決であるし、実際問題、同和地区なんかでも、京都におきましても、かなり混住が進んでいたりするところがたくさんあるわけですね。それで、なくなっていると。元々いわれのないものですから、忘れてなくなっていけばいいと。  ところが、忘れるだけでは駄目だと。もちろんそうですよ、ある意味でいいますと、そうかと、それが後で出自がばれたら、これがどうだという話になってくると、「破戒」のその丑松じゃないですけれども、そういうことになってしまうんで、もちろんそういう教育も必要だと思うんですけれども、そこはもうちょっとバランスの問題があると思うんですね。  つまり、同和問題の片っ方の問題は、そういうふうに同和差別されている方々が被害者であったのは事実です。ところが、もう片っ方で、この解放運動の中で余りにも行き過ぎた糾弾とかされたのもまた事実であるわけなんですね。だから、そこで非常に同和というのが、かつては弱者であったものが反対に怖いと、力があると、そういう形になってきて、それが実はこの差別意識の基になったところもこれは否定できない現実だと思うんですよ。  私は、その中で、私の知り合いの方でも、いわゆる自ら自分は同和出身者だと語られる方おられますし、私の選挙の後援会の役員もやっていただいて立派な方でおられます。この方は、要するに、かつてそういう運動団体で名前を連ねていたと。ところが、そうすると、そこでいろんな行政に要求できるわけですね。ところが、そういうことをやると要するに自分の魂が汚れるというか、そういうことやりたくないというのでやめられて、自分はそういう何か変な圧力団体だということを拒否されて普通の生活をされているわけですよ。非常に立派な方であるわけなんですが。  そういうことも含めて考えていくと、今日はその団体の方おられませんから、後日、我々、その団体の方も呼んでそういう現実を議論していきたいと思うんですけれども、要するに、提案者側も行政側もやっぱりそこのところをもう少し現実問題見ていただかないと、片っ方のきれい事だけでいっちゃうと、これ誤解与えちゃうわけですね。だから、むしろ提案者側に私は言いたいのは、かつてそういう運動団体の行き過ぎがあったことは事実ですから、だからそこはしっかり提案者としても、そういうことは認めるものじゃないということをはっきりそこで明言をしていただきたいんです。いかがですか。
  72. 宮崎政久

    衆議院議員(宮崎政久君) まさに、かつて民間運動団体が行き過ぎた行動があったこと、これは、法案を議員立法として出させていただく作成の過程においても学びました。また、様々団体の方からも、お呼びして意見を聞き、また意見交換もしたりしていったところでございまして、西田委員指摘のとおり、この法案が成立することによって、あたかも何がしかの不適切な言動であったり差別的な行動である、こういったものに対して根拠を与えるようなことがあってはいささかもいけないわけであります。  そのことは再三申し上げておりますとおり、本法案第一条の目的、すなわち部落差別のない社会実現することを目的としているということ、そして二条の基本理念部落差別のない社会実現することを旨として施策が行われなければならないと言っていることから、行き過ぎた言動や、例えば先ほどちょっとお話にありましたけれども、行政に対して様々な持ちかけなどがあったとしても、それが部落差別の解消に資するようなものでないものに対していささかも根拠は与えてはならない、提案者としてはこのように考えております。
  73. 西田昌司

    ○西田昌司君 そこが非常に大事なポイントだと思いますね。ですから、その辺も含めて、次回、運動団体の方々にも御意見を聴取させていただきたいと思っておりますが。  最後にといいましょうか、ここで、それで、最後じゃないんですが、調査をするというのもあるんですね、これ。必要な調査をするというのかな。この調査というのも、要するに、先ほど言いましたように、調査をすることによってその地域がいわゆる旧同和地域であったとかそういうことを逆に知らしめてしまう。  本当は、知らされても、それは、差別なんていうものは人間すべきじゃないんだと、堂々とそうできたらいいわけですよ、本当は。本当は一番いいのはそうであるわけですけれども、現実問題はそういうことにならないわけなんですよね。そこで皆さん苦しんでおられるわけですよ。いろいろな、この丑松じゃないですけれども、そこでいろいろ苦しみが出てくるわけですよ、これは。本来、元々は知られていなかったから差別も受けず、皆さんに受け入れられて生活をしていた、ところが、知られた瞬間これが排除されていくという、この悲しい物語があるわけですよね。  だから、同じようなところが現代でもあって、知ってしまったら差別するようなことでは駄目だからちゃんとした人権教育やれと、これもそうなんですが、しかし、これなかなか現実問題、しっかりそれをやっていくと、なかなか難しいのも現実なんですよ。だから私は、そこを、人間というものの本質をよく見極めながら法律というのは使っていかないと、理念は正しいんだけれども、逆に新たな対立を生んでしまうことになっては困ると。だから、その調査においてもその辺のところをしっかり分かっていただかなければならないと思うんですね。今ちょうど仁比さん来られたので、また後で私の質問は見ておいてください。  それで、要するに、今言いましたように、この法律を作ることによって逆の面にならないように、今言ったように。この調査なんかもそうなんです。その辺のところをもう一度皆さん方にお聞きしたいのと、それと、結局そういうことになると、同和差別の解消というのは一体どうした状態が、どうした状態になっているのがいいと思っておられるのかという、ここに掛かってくる話なんですよ、これは。  つまり、常に何か一つの事案が出てきて、例えば便所に落書きがありました、そしてこれがあるから差別がまだあるんだとかいうような話にしちゃうと、いつまでたっても差別があるあるあると続いてしまうんですね。そうじゃなくて、もう少しみんなが、まさに同じて和せる状態ですよね、そういう社会をつくっていく、もう少しおおらかさも含めたものがやっぱりお互い必要だと私は思うんですよね。だからそこの、その要するにあんばいというのが非常に大事であると思っています。  その辺のところをちょっと提案者に、ちょっと長くなりましたけれども、質問が、お聞きしたい。
  74. 宮崎政久

    衆議院議員(宮崎政久君) ありがとうございます。  調査によって逆に部落差別が例えば掘り起こされるとか、そういう意識がばらまかれるようなことがあってはならないということは、この発議者としても認識は西田委員と全く共通のものでありまして、そのことは、第一条、第二条の規定の仕方から御説明をさせていただいているところであります。  この第六条に規定する調査は、あくまでも部落差別の解消に関する施策の実施に資するための部落差別の実態に係る調査でありまして、相談体制の充実や教育、啓発の実施に資するための調査を行うというものであります。例えば部落差別を受けた人や、例えば当該の地域などを個別に掘り出して公表するというようなことを想定しているものではございません。  また、新たな差別を生み出すような調査というのは本法案の、先ほど来述べているとおり、第一条、第二条の目的基本理念に沿わないものでありますので、そのような調査が本法案に基づく調査であるというふうには考えておりません。  その上で、部落差別の解消ということは、それはそれぞれ様々な内心の問題なんです、最終的には。委員も冒頭、御質問の中で触れていただきましたが、結婚の問題であったりとか様々ある差別、こういったものが一人一人の国民意識の中からそれは許されないものであるということが定着をして、そのような部落差別がない、行われないような社会を目指していかないといけないと思っておりますし、私どもは、そういったものが部落差別を解消していく姿であると思っております。  以上です。
  75. 西田昌司

    ○西田昌司君 非常に、本当にこの差別問題といいますのは、ヘイトもそうなんですけれども、本当にいろいろ難しい問題であります。ヘイトの場合は、特に在日韓国人の方に対するものが典型的なものであれなんですけれども、この同和の問題は、全く同じ日本人で、全くいわれのないところから封建制の中でつくられてきてしまって、それがずっとそこの地域に残っていますから、そのためになってきた、非常にその方々にとっては本当に耐え難い、許し難い、そういう歴史であったと思います。  しかし、そういう歴史をしっかり教えていくということはもちろん大事なんですよ、非常に大事。そして、そういうことがかつてあって、我々はそれを乗り越えて、そういう社会はもう二度とつくらないと、そういうことも大事なんだけれども、片っ方、何度も言いますけれども、運動団体側がそのことをきっかけに新たな様々な要求が出てきたり、そして、かつてそういうことが余りにも横行していたために同和差別というのが逆に助長されてしまったという一面がこれ拭い切れない事実としてあるわけですから、そこを私たちは一番懸念をしているわけで、そういうことがないようにこれ運用しなければならないと思いますが、政府側、いかがですか。
  76. 萩本修

    政府参考人(萩本修君) 法務省におきましては、これまで同和問題に関する偏見や差別意識をなくすための啓発活動に取り組むとともに、人権侵犯事件の調査・救済活動に取り組んできたところでございます。  こうした取組をするに当たりまして、委員から繰り返し御指摘が出ていますとおり、新たな差別を生むなどの弊害が生ずることがないように留意することは当然のことというように考えておりまして、引き続きそのような認識の下、適切な啓発活動を実施してまいりたいと考えております。
  77. 西田昌司

    ○西田昌司君 終わります。
  78. 有田芳生

    ○有田芳生君 民進党・新緑風会の有田芳生です。  西田委員は京都を選挙区にされておりまして、京都の高校出身だと先ほどのお話にありましたが、私も京都生まれで、まあ全国転々としましたけれども、高校は京都で過ごしました。お話を伺っていて思い出したんですけれども、私の仲のいいグループがありましたけれども、一九六八、九年だったでしょうか、そのうちの一人の女性が突然に、私、部落やねんということを発言をして驚いたことがありました。当時、一九六〇年代後半から七〇年代前半というのは、京都も当然なんですけれども、各高校あるいは大学で部落問題研究会あるいは部落解放研究会というものがもう至る所でつくられていく、そういう流れにあったんですよね。  恐らく仁比委員質問されるのかも分かりませんけれども、前回仁比委員質問をされた、一九七四年、昭和四十九年ですか、兵庫県の八鹿高校事件というものがありました。私はリアルタイムでそのときに問題に関わっておりまして、許すことができない暴挙だということでそれをやめさせるような行動もしてきたという意味で、私にとってもこの部落問題というのは遠い問題ではないという側面から質問をしたいというふうに思っております。  煎じ詰めれば、今なぜ部落解消法なのかというところに尽きるんですよ、実は。御承知のように、一八七一年、明治四年に賤民廃止令が出るんだけれども、当時は賤民廃止令が出たといってそれに対して反対して一揆なんかが起きて、例えば兵庫県では被差別部落の人たちが十八人殺されるというような大事件があった。だから、賤民廃止令が出てもそれに抗議するような人たちが特に西日本地域であって、それから何と百五十年ですよ。百五十年掛かって、なぜ今理念法の部落解消法なのかという根本的な疑問がある。確かに、西田委員おっしゃったように、ヘイトスピーチ解消法は今年できました。大きな力を発揮しつつあります、問題点は多いんだけれども。だけど、ヘイトスピーチが一番吹き荒れたのは二〇一三年、今から三年前ですよ。だけど、この部落問題というのは近代日本百五十年の問題としてずっと続いている。この問題をどう解決するかという、本当に歴史的な課題だというふうに思うんです。  まず、提案者にお聞きをしたいんですが、部落問題の解消というのは一体どういうことなんでしょうか。
  79. 逢坂誠二

    衆議院議員(逢坂誠二君) 御質問ありがとうございます。  私は実は北海道生まれ、北海道育ちでありまして、子供の頃から、実は部落という言葉は地域の農村集落を指し示す言葉でありまして、当たり前のように使っておりました。だから、部落問題というものの存在というのは子供の頃は全く念頭にもなかったという、そういう生い立ちであります。しかしながら、その後、年を重ねて、中学生、高校生となるに従って、実はそういう問題が日本にあるんだということを認識するに至りまして、さらに、私は自治体の現場で長い間仕事をしておりましたので、そういう仕事をする中で、全国にはこの問題で相当大きな課題を抱えているということを私なりに認識をさせていただいているところであります。  そうした中で、現在もやっぱりこの部落差別というものが存在をしているということ、それから情報化の進展に伴って随分その在り方が変化してきているのではないかということ、そして一方で、憲法では全ての国民基本的人権の享受を保障していると、そういう憲法の基本理念があるわけであります。そういうことから考えてみますと、まず一つ、部落差別は許されないんだというものである、そういう認識をしっかり持つこと、加えて、それを解消していくことが重要な課題であるということ、部落差別の解消を推進して部落差別のない社会実現する、これが今回の本法の大きな目的であります。  そのための具体的な施策として、部落差別に関する相談に的確に応ずるための体制の充実、あるいは部落差別を解消するために必要な教育及び啓発を行うこと、部落差別の解消に関する施策の実施に資するための部落差別の実態に係る調査、こうしたことが規定されているということであります。
  80. 有田芳生

    ○有田芳生君 次に、人権擁護局長にお聞きをしますけれども、同じく部落問題の解消とは何かという質問なんですけれども、もう少し説明しますと、大正十一年、一九二二年に全国水平社ができましたけれども、もうそれ以来の部落解放運動というのは部落の土地と部落民というものを、その存在を明らかにした上で差別をなくす運動だったと理解をしておりますが、その理解でいいのかどうかということを含めて、部落差別をなくすということはどういうことなんでしょうか。
  81. 萩本修

    政府参考人(萩本修君) 今委員から歴史的な経緯も含めたお話がございましたけれども、法務省では部落問題という言い方をしておりませんで、日本社会の歴史的過程で形作られた身分差別により、日本国民の一部の人々が長い間、経済的、社会的、文化的に低い状態に置かれることを強いられ、日常生活の上で差別を受けるなどしている我が国固有の人権問題を同和問題と呼んでおりまして、人権課題の一つと位置付けてこれまで様々な施策に取り組んできたところでございます。  法務省としましては、この同和問題につきまして人権啓発活動を実施することにより国民の偏見や差別意識の解消を図ること、また、同和問題に関する個別の事案につきまして人権侵犯事件としての調査、処理や人権相談の対応などにより事案に応じた適切な解決を図ると同時に、そうした解決を通じて関係者に対する啓発を行い、同和問題の解決につなげることを目的として様々な施策に取り組んでいるところでございます。
  82. 有田芳生

    ○有田芳生君 もう少し具体的に教えていただきたいんですけれども、例えば結婚差別、就職差別など様々な問題がずっと続いてきましたけれども、そういう事項的事実としてどういう差別をなくすんですか。
  83. 萩本修

    政府参考人(萩本修君) 法務省では、全国の同和問題の実態を網羅的に把握しているわけではなく、あくまで法務局での人権相談等を通じて同和問題に関する差別事案を把握しているにとどまるわけですけれども、その限度で申し上げますと、今御紹介のありました、あるいは先ほど西田委員からもお話がありました結婚に関する差別のほか、差別発言あるいは差別落書き、あるいは就職といいますか雇用に関する差別など、差別意識に関する事案が依然として存在しているものと認識しております。
  84. 有田芳生

    ○有田芳生君 部落差別の今ということで次に行きたいんですが、先ほど西田委員の方から、今回の部落差別の解消の推進に関する法律案について立法事実はあるのかということについて、提案者の方からはお答えをいただきましたので、同じお答えになると思いますので、法務省の方にお聞きをしたいと思います。  六条の方で実態に係る調査を行うんだということもありますけれども、その実態がやはり大事だと思うんですが、人権擁護局長にお聞きをします。この十年間の部落問題に関わっての人権侵犯事件の件数、特徴というものをお答えいただけますか。
  85. 萩本修

    政府参考人(萩本修君) 先ほど御答弁いたしました同和問題に関する人権侵犯事件の新規の救済手続開始件数につきまして、過去十年間を申し上げますと、平成十八年が百七十一件、平成十九年も百七十一件、平成二十年百七十五件、平成二十一年百五十七件、平成二十二年百五十件、平成二十三年百三十七件、平成二十四年百十件、平成二十五年八十五件、平成二十六年百十七件、平成二十七年九十三件という推移でございます。  そのうち、同じような件数を毎年処理をしているわけですけれども、そうした処理件数のうち、インターネット上の情報につきまして法務局がプロバイダー等に削除の要請をした件数につきましては、先ほど発議者からも御紹介をいただきましたけれども、直近の三年間の数字を集計しておりまして、その三年間で申し上げますと、平成二十五年が五件、平成二十六年が十件、平成二十七年が三十件という推移でございます。  その内訳、先ほど具体的な例を申し上げましたけれども、圧倒的に多いのが差別表現に関する事案でして、次に多いものが結婚や交際に関するものとなっております。
  86. 有田芳生

    ○有田芳生君 それだけ毎年人権侵犯事件が続いているわけですけど、これは氷山の一角なんですよね。後でもお話をしますけど、結婚差別なんかは表面化しないケースが非常に多いんですよ。  そこで、皆様にお配りをした資料を御覧いただきたいんですけれども、各自治体が人権意識調査をやっております。直近のものだけ、二〇一二年、一三年、一四年という資料をお配りをいたしました。  例えば、鳥取県が昨年度行った調査、子供が同和地区出身者と結婚することに反対、一三・一%。同じ色のやつは同じテーマの問題です。愛知県がやはり人権県民意識調査を二〇一二年にやったところを見ていただければ分かりますけれども、子供が同和地区出身者と結婚することに反対、家族や親戚の反対があれば認めないも含む、四八・五%。あるいは、新潟県の二〇一三年の調査、結婚相手の身元調査は当然、仕方がない、六五・四%。二〇一四年の香川県丸亀市、同じく身元調査の実施、三二・四%と。  こういう現実が、百五十年前、百年前ではなく今なお続いているんですよね。この現実からやはり出発しなければいけないというふうに考えております。人権擁護局長からの回答がありましたけれども、結婚差別について言えば今なお続いているんですよ。  関西地方と言っておきましょう、今続いている。例えば、結婚をしたい若い二人がいる。だけど、その片方の女性は御両親からずっと部落、朝鮮人とは付き合うなというふうに教育されてきたんですよ。それで、結婚という話が出たときに当然猛反対を今でもしている。で、彼女は逃げた。逃げて逃げてどうしたかというと、全然違うところに今もいらっしゃるんですけれども、親の方も執念深い。どうしても娘を捕まえて結婚をやめさせなければいけないということで、まあいろんなことを考えるものだと思いましたけれども、マイナンバーカードを封書に入れて送った。送ると同時に、そこの中にGPSを入れていた。それである場所が、ここにいるんじゃないかということが特定をされて、実際にずっと張り込みを親がやって彼女は見付かってしまった。GPSを封書を開けたら発見しますから、これは危ないというのですぐにある遠いところまで持っていって捨てたんだけれども、時既に遅しなんですよ。これが現実なんですよ。  あるいは、資料にお示ししました、見てください、念書、黒塗りにしてありますけれども、娘と相手の名前が書いてあり、結婚により実家及び親戚一同様からの縁切りの申出を約束し、一切の関係を絶つことを約束させていただきます。去年ですよ、去年の十二月十一日付けの念書。これは、御両親は結婚賛成したんですよ、若い二人が好きになったんだから。だけど、親戚が許さなかったということでこういう念書を。現在進行中のこういう件がいっぱいある。  だから、よく最近統計を取って混合結婚が進んでいるという言われ方がするんですけれども、確かにもう若い人たちの感覚ですから、そんな地域の、被差別部落出身だって好きになれば結婚するという人が増えていることは物すごく大きな変化で好ましいことなんだけれども、だけど実際のところは、先ほどの人権意識調査見ていただきましたように、古い世代の中には、あるいは新しい世代かもしれませんけれども、そういうことは許せないということで、そして結婚差別というのは表面化しないんですよ。なぜ結婚差別が表面化しないかというと、結婚させてあげたいからなんです。本人たちも結婚したいし、周りも何とか丸く収めたいということでなかなか表面化してこないという現実がある。だけど、現実には、そういうつらい思いをして結婚された方々に、今でも結婚式には親戚が参加しないとか、そういうことがあるんですよ。  この現実をどうなくすかということがやはり我々、もうこの問題、百五十年日本が抱えているにもかかわらず解決されていない問題、これに何が必要かということを、人権擁護局長、啓発とかそういうことを、一般論になるのかも分かりませんけれども、どうすればいいんですか、このことに対して。
  87. 萩本修

    政府参考人(萩本修君) 先ほどの答弁の繰り返しになってしまいますけれども、私どもとしてやはりできることというのは、人権啓発活動を実施することにより、同和問題に関する国民の偏見や差別意識の解消に努めることということにこれもまた尽きてしまうかと思います。どのような形で啓発活動をするのが最も効果的かということを考えつつ、粘り強く地道な啓発活動に引き続き努めていく必要があると考えております。
  88. 有田芳生

    ○有田芳生君 質問通告をストレートにしたわけではないんですけれども、部落差別の今について立法事実はあるのかということについては提案者にもお聞きをしたいということはお伝えをしてあったので、もし可能ならば、今私が示したような事実、それをどう解決していけばいいのか、この法律を作ってですね、どのようにお考えかというのを、率直なお気持ちをお聞かせいただきたいんですが。
  89. 逢坂誠二

    衆議院議員(逢坂誠二君) 今、有田委員が御用意いただいた資料を見て、私は本当に大きな衝撃を受けているわけであります。先ほども申し上げましたとおり、北海道においては多分また違った結果が出る、片や一方でこういう意識調査の結果が出てくる。あるいは、この念書を見ても、こういう念書を今の時代においても書かざるを得ないという現実があるということを本当に重く受け止めているところであります。そういう中において、なかなか具体的にそれではどう進むのかということについては簡単ではないというふうに思います。  ただ、私が大事だなと思っているのは、やっぱりこういう差別は絶対にあってはならないんだという認識を広く国民の皆さんが持つということがまず出発点だろうというふうに思います。それなくしてこの部落差別の解消というのはあり得ないというふうに思います。  特に私自身が北海道の生まれでありますから感ずるのかもしれませんけれども、非常にこうした問題についてはある種冷静に見ているところがございます、冷静という言い方はちょっと変かもしれませんが。だから、多くの人たちが私どものような気持ちにどこかの段階でなっていくということがある種の目指す姿なのかなと、私の体験を踏まえて今感じているところであります。
  90. 有田芳生

    ○有田芳生君 私自身も、じゃ、こうすればいいんだという確たるものはないからこそ、じゃ、先ほどお伝えしたような事実がいまだ現在進行形も含めて続いている状況の下で、なぜ今部落解消の理念法なのかという、どうしてもそこがすとんと落ちないところがあるんですよね。ですから、この法律ができることによってそういう現実が解消されていくことは本当に望ましいし、実現しなければいけないんだけれども、この法律でいいのかどうかということを心に秘めながら次の質問に行きたいんですけれども。  総務省にお聞きをします。同和対策事業というのはこれまでどんなことがどのような歴史の下で行われてきたんでしょうか、簡潔にお答えください。
  91. 佐伯修司

    政府参考人(佐伯修司君) お答えいたします。  過去三つの特別措置法が作られておりまして、その法律におきましては、対象地域について、生活環境の改善、産業の振興、職業の安定、教育の充実、人権擁護活動の強化、社会福祉の増進などに関する事業の円滑な実施を図るために必要な特別の措置が定められております。具体的には、住宅事情の改善、社会福祉施設の整備、農林漁業の生産基盤の整備、中小企業の設備の近代化、職業指導及び職業訓練の充実、進学の奨励、人権擁護機関の充実などの取組が行われたと承知しております。
  92. 有田芳生

    ○有田芳生君 同和対策事業をやるときにはその地域を指定するわけですよね。だから、この地域は同和地域であるということを明らかにして、そこに立派な建物なんかができていく。だけど、それが例えば、先ほども西田委員お話にもあったでしょうか、ああ、逢坂議員からのお答えでしたけれども、例えば同和問題を抱えていないところでは、何でここにこんな立派なものができるんだというのは不思議に思いますよね、しかも優遇措置があるみたいなことになると。具体的に言えば、東北地方でそういうことが行われると。昔からこういう問題があったにもかかわらず、啓発が余りにもなさ過ぎたんじゃないですか。だから、ある特定の地域には立派な建物が建っていく、奨学金が出る、学校でも特別な体制がなされるというようなことがあったことに対して、周りからのあえて言えば差別を助長するような現実がずっと続いてきた、同和対策事業をやっている中でも。  だから、決定的に啓発が行われなかった状況の下で、今この理念法ができて啓発進むんでしょうか。総務省の方はどうでしょうか。
  93. 佐伯修司

    政府参考人(佐伯修司君) 総務省では、現在、関係事務所掌しておりませんので、ちょっとお答えをする立場にないという理解をしております。
  94. 逢坂誠二

    衆議院議員(逢坂誠二君) 有田委員からいろいろ御指摘をいただいていること、御懸念は、私も様々な過去にも課題があったんだろうというふうに思っております。  そういう中で、今回、この理念法として提出をしたというのは、やはり、いろんな懸念がある中で、しかしながら、この部落差別の解消というものは国民が認識をしなければならないと、そしてこれを解消していかなければならないと、そして様々な懸念を頭に置いた上でのぎりぎりのところが私は今回の理念法ではないかというふうに認識をしております。  先ほど西田委員からもお話がありましたとおり、ちょっと言葉は適切ではないかもしれませんけれども、余り深入りをし過ぎると、逆ばねといいましょうか、逆に差別を助長するようなことにもなりかねないということでありますので、ぎりぎりのところを考えたのが今回のこの法案ではないかという認識を私は持っております。
  95. 有田芳生

    ○有田芳生君 そこでまた、根源的な問題で提案者に御質問させていただきますけれども、部落差別をなくすというのは部落を、被差別部落をなくすことなんでしょうか。
  96. 逢坂誠二

    衆議院議員(逢坂誠二君) 実はこの問題は、例えば部落差別というような概念といいましょうか、そういうものが社会から全部消えてなくなってしまった、だからそれでよいのかというと、必ずしもそうではないのではないかという気も私自身はしております。  特に、時間の経過とともにそういうものが忘れ去られていく。だがしかし、今の時代ですから、インターネットだとか書き物だとかいろんなものでこれらのことが残るわけであります。そして、全くこの問題を知らない方が、そうしたインターネットだとか書き物だとかで、ああ、こういう差別があるんだということを知って、逆にまたその差別が助長されるといったようなこともあるというふうに私は懸念をしております。  そういう観点からいたしますと、単に部落がなくなればいいということではなくて、やはり国民全体が、部落差別というものは駄目なんだ、そういう認識をしっかりと持てる、まあ部落差別だけではないんですけれども、そういった差別、人権の侵害に当たるような差別というものは駄目なんだという気持ちを強く持つということが私は大事なことだろうと思います。
  97. 有田芳生

    ○有田芳生君 障害者差別をなくす運動というのは、障害者の方々が健常者になろうという運動じゃないんですよね。障害者の方が、障害をお持ちだけれども、それでもこの日本で、世界で豊かに暮らしていくような、そういう差別をなくす。だから、それと同じように、やはりこの部落問題も、じゃ、本当に被差別部落というところをなくしていけばいいのかという問題なのかという課題残していると思うんですよね。  だから、本当に誇りを持っている方々だっていらっしゃるわけで、例えば大阪の箕面に北芝という地域があります。地図には載っておりませんけれども、非常に長い歴史を持っているけれども、やはり今では、例えば去年の十二月には歳末まんぷく市というのをやりますと、本当に特産物なんかを出すことによってどんどんどんどん周りから人が集まるようになってきて、外国人なんかも今集まってくるような、だからこういうところは俺たちは残していくんだという誇りを持っている人たち、いるわけですよ。  だから、この法律の第五条で、その地域の実情に応じた施策というものは、これは提案者も含めてですけれども、人権擁護局長なども、やはりそういうところと、本当に豊かな文化をこの日本に残していくということも大事だということを知っておいていただきたいといいますか、お伝えをしておきたいというふうに思います。だから、その地域がなくなれば差別がなくなるのではないんだと思うんです。ですから、本当に豊かな日本社会をつくっていく、その道筋として地域の実情に応じた施策というものを取っていただきたい。  もう時間が来ましたから、最後にネット上の差別についてお聞きをします。  何度も法務委員会では質問をしました。鳥取ループという、名のって、全国部落調査というものを復刻出版しようとして、それに対して駄目だということで、三月二十八日には横浜地裁が出版差止めの仮処分を行いました。だけど、ネット上には全国五千三百か所以上での部落名、住所、戸数、職業、生活程度などがさらされて拡散された。だけど、これは四月十八日に、やはり横浜地裁の相模原支部が削除するように仮処分の決定を行いましたけれども、ミラーサイトでいまだこの資料というのはネット上に出ている。  この鳥取ループに対して、法務省人権擁護局はこの該当人物についてどういう対応をされましたか、これまで。
  98. 萩本修

    政府参考人(萩本修君) まず一般論ですが、インターネット上におきまして不当な差別的な取扱いを助長、誘発する目的で特定の地域を同和地区であると指摘する、そういった内容の情報を認知した場合には、人権侵犯事件として立件の上、調査を行い、その情報の発信者に対して同種行為をやめるように説示をしましたり、プロバイダー等に対して当該情報の削除を要請するなどの対応に努めているところでございます。  御指摘の事案につきましては、相手方に対し、その削除をするような要請、要請というか説示をしたところでございます。  通常、こういう個別の事件のことは申し上げないんですけれども、この件につきましてはその当該発信者が法務局から説示を受けたということを自ら公表しておりますので、その旨この場で答弁をいたしました。
  99. 有田芳生

    ○有田芳生君 この人物は、部落問題をおちょくるというようなことで意識的に差別をまき散らそうという意図的な人物、それに対して、法務省、説示一枚でいいんですか。
  100. 萩本修

    政府参考人(萩本修君) そこから先は個別の事案のことになりますので詳細の御答弁は差し控えますが、事案に応じてとり得る適切な措置をその都度検討しているところでございます。
  101. 有田芳生

    ○有田芳生君 説示一枚で確信犯は改めないわけですよ。本当に挑発的なことを今でも裁判の中で発言をしている。  しかも、お認めになっているように、いまだインターネット上にはそういう部落地名総鑑の中身が残っているんですよね。それは僕は、ヘイトスピーチの問題でも質問しましたけれども、やはり強力に削除しなければ本当に差別というものは拡散されていくんじゃないでしょうか。もっともっと強力にできないんでしょうか、人権擁護局長
  102. 萩本修

    政府参考人(萩本修君) 法務省の人権擁護機関が行っております説示あるいは勧告といった措置は強制力を有するものではありませんで、あくまで任意で行うものにすぎないというまず限界がございます。もっとも、できる限り相手方に反省を促し、人権侵害を繰り返さないよう是正を求めるなど、適切な対応に努めているところでございまして、引き続き同様に対応してまいりたいと考えております。
  103. 有田芳生

    ○有田芳生君 法務省の努力でヘイトスピーチについての動画あるいは書き込みというものは一定部分ですけど削除できたという成果がありますので、この問題でも強力に進めていただきたいということをお願いしまして、質問を終わります。
  104. 秋野公造

    委員長秋野公造君) 午後一時に再開することとし、休憩いたします。    午後零時七分休憩      ─────・─────    午後一時開会
  105. 秋野公造

    委員長秋野公造君) ただいまから法務委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、部落差別の解消の推進に関する法律案議題といたします。  質疑のある方は順次御発言願います。
  106. 小川敏夫

    小川敏夫君 民進党・新緑風会の小川敏夫でございます。  この部落問題に関して、国連の委員会からやはり解消について勧告なり意見が出されていると思うんですが、まず外務省の方、まず人種差別撤廃委員会の方でどのようなこの部落差別に関して意見、勧告が出されているのか、御紹介していただけますか。
  107. 飯島俊郎

    政府参考人(飯島俊郎君) お答え申し上げます。  二〇一四年七月の自由権規約委員会による最終見解の男女平等という項目におきまして、部落の女性を含むマイノリティー女性の政治参加を評価及び支援するための具体的措置をとるべき等の指摘がなされておりますほか、ヘイトスピーチ及び人種差別の項目におきまして、部落民を含むマイノリティー集団のメンバーに対する憎悪や差別をあおり立てる人種差別的言動の広がり等についての懸念が示されております。  また、二〇一四年九月の人種差別撤廃委員会による最終見解におきましては、部落差別は、人種差別撤廃条約上の人種差別であり、部落民の生活状況等に関する情報等を提供するよう勧告しております。これに対しまして我が国は、同和地区の住民は異人種でも異民族でもなく、疑いもなく日本民族、日本国民であるとの政府の立場を説明しております。
  108. 小川敏夫

    小川敏夫君 今、国連の委員会、人種差別撤廃委員会の最終見解を紹介していただいたんですけれども、ちょっと今最後に、それに対する回答として、部落差別は人種差別ではないからと回答しているというふうに今答弁いただきました。  確かに部落の差別は人種差別ではないというような気もするんですけれども、今外務省がそういうふうに人種差別ではないと回答しているということは、すなわち、だからこの勧告について、意見について日本は受け入れないと、こういう意思の表明だということなんですか、外務省。
  109. 飯島俊郎

    政府参考人(飯島俊郎君) お答え申し上げます。  我が国としては、繰り返しになって恐縮でございますけれども、同和地区の住民が疑いもなく日本民族、日本国民であるということを国連に対して申し上げているところでございます。
  110. 小川敏夫

    小川敏夫君 だから、申し上げているという事実は分かったんだけど、その申し上げた意味なんだけど、だから、人種差別ではないからその国連のこの人種差別委員会の見解は受け入れないと、筋違いだからそれは受け入れないと、こういう趣旨で回答したということなんですか。
  111. 飯島俊郎

    政府参考人(飯島俊郎君) この国連におけます、お答え申し上げます、人種差別ということとは異なり、我々としては、同和地区の住民が日本民族、日本国民であるということを国連に対して説明をしているところでございます。
  112. 小川敏夫

    小川敏夫君 どうも私の質問趣旨がよく、ですから、人種差別撤廃委員会からそういう見解が出されたと。それに対して、そうすると、じゃ聞き方変えますけど、だから人種差別撤廃委員会から見解が出されたと、人種差別撤廃委員会は人種差別のことだけ言っていればいいんで、人種差別ではない、部落差別は人種差別ではないから、それはそもそもお門違いだと、だからその見解に対しては受け入れないと、そういう意思表示なんですか、すなわち。  人種差別撤廃委員会からそういう見解が出されたことについて、人種差別じゃないということを説明したということは、説明したという事実はお伺いしましたから、その説明したという意味は、その見解を受け入れない、人種差別じゃないからその見解は受け入れないと、こういうことを意味しているのかということをお尋ねしているわけです。
  113. 飯島俊郎

    政府参考人(飯島俊郎君) お答え申し上げます。  この国連の最終見解につきましては法的拘束力があるものではございませんので、我が方といたしましては、この問題につきましては、同和地区の住民について日本民族、日本国民であるという立場を説明してきているというところでございます。
  114. 小川敏夫

    小川敏夫君 何か同じ質問繰り返しても堂々巡り、堂々巡りというか押し問答で、何というんだろう、こういうのは。時間が重ねるだけですけれども。  じゃ、もう一つ別の国連の人権規約委員会、ここでも部落差別に関して言及されているものがあると思うんですが、こちらはどうなんでしょうか。
  115. 飯島俊郎

    政府参考人(飯島俊郎君) お答え申し上げます。  二〇一四年七月の自由権規約委員会による最終見解の男女平等の項目におきまして、部落の女性及びマイノリティー女性の政治参加を評価及び支援するための具体的措置をとるべき等の指摘がなされておりますほか、ヘイトスピーチ及び人種差別の項目におきまして、部落民を含むマイノリティー集団のメンバーに対する憎悪や差別をあおり立てる人種差別的言動の広がり等についての懸念が示されております。
  116. 小川敏夫

    小川敏夫君 じゃ、この自由権規約委員会の見解に対してはどのように回答したんですか。
  117. 飯島俊郎

    政府参考人(飯島俊郎君) お答え申し上げます。  次の対日審査において説明をするということとしております。  この国連の自由権規約委員会における対日審査についてのこれは最終見解でございましたので、本件につきましては、次回の対日審査において本件について日本政府の立場を説明するということとしております。
  118. 小川敏夫

    小川敏夫君 自由権規約委員会の勧告でヘイトスピーチ及び人種差別という中で取り上げられている。そうすると、これはあれですか、やはり同じように部落差別というのは人種差別ではないからと、こういう対応をするということなんですか。
  119. 飯島俊郎

    政府参考人(飯島俊郎君) お答え申し上げます。  次回の対日審査における我が方の説明ぶりにつきましては、政府部内でよく検討して回答することとしております。
  120. 小川敏夫

    小川敏夫君 外務省ではなくて、今度は法務省の方にお尋ねしますけれども、外務省の方としてはそういう回答しているということはあるとして、しかし実際に、国連の方からこの部落差別に対する取組が一言でまとめれば不十分であると、こういう見解が出されておるわけでありますが、法務省としては、これを受けて何か具体的な施策に反映するというようなことは、これはしているんでしょうか。
  121. 萩本修

    政府参考人(萩本修君) 法務省としましても、自由権規約委員会及び人種差別撤廃委員会から今外務省から紹介がありましたような懸念が表明されていることは承知しております。  今、小川委員指摘のとおり、この勧告を直接踏まえた施策ということではないのですけれども、法務省としましては、今なお同和問題に関する偏見や差別意識がなお存在しているという認識の下、同和問題に関するそうした偏見や差別をなくすための啓発活動に取り組むとともに、人権相談を通じ人権侵害の疑いのある事案を認知した場合には人権侵犯事件として調査を行い、事案に応じた適切な措置を講ずる調査・救済活動に取り組んできたところでございます。
  122. 小川敏夫

    小川敏夫君 もちろん、この勧告以前からそうした問題に取り組んでいらっしゃるでしょうからそういうことなんでしょうけれども、例えば人種差別撤廃委員会、人種差別でないからということだけで対応するのではなくて、やはりその人種差別撤廃委員会において、人種差別かどうかは別として、やはり差別があるというからそうした見解が示されるわけであります。ですから、国連のこの人種差別撤廃委員会、自由権規約委員会等で、結局部落差別がある、そしてそれが政府の対応が不十分であるという趣旨がこうした国連機関から示されているということは、これは事実だと思うんです。  ですから、人種差別でないというそうした定義の問題だけで処理できる問題ではなくて、やはりこの部落差別が国際機関からもやはり差別として問題視されているという観点から、私はしっかりと日本政府としても取り組む必要があるというふうに思うんですが、どうでしょう、大臣、この部落差別のこの問題について、ひとつ大臣の御見解として御認識と、これから政府がこの差別の解消についてどのように取り組んでいくというお考えなのか、そこのところをちょっと大臣として総括的な御答弁をいただけませんでしょうか。
  123. 金田勝年

    ○国務大臣(金田勝年君) ただいまの御指摘の中で、国連の自由権規約委員会及び人種差別撤廃委員会から委員指摘のような懸念が表明されていることは承知をいたしております。  法務省としては、同和問題に関する偏見や差別が依然として存在していることを踏まえて、これをなくすための人権啓発活動に取り組みますとともに、人権侵犯事件の調査・救済活動にも取り組んできたところでありますが、今後も引き続きしっかりと取り組んでまいる所存であります。
  124. 小川敏夫

    小川敏夫君 しっかり取り組んでいただきたいというふうに思います。大臣がそうおっしゃるのですから、それにしっかりと期待したいと思いますけれども。  今回のこの法案は議員立法で出てまいりました。思うには、この議員立法に出る前にそもそも政府の方でそうした法的対応をしておいてしかるべきだったんじゃないかと思うんですが、これまでそうした立法対応というような検討は、これ、したことはなかったんでしょうか、法務省の方では。
  125. 萩本修

    政府参考人(萩本修君) 小川委員もうよく御案内のとおりかとは思いますけれども、政府内においては、長らくこの同和問題に限らず人権問題についての施策についての検討を進めてまいりました。  代表的なところを御紹介しますと、平成八年に人権擁護施策推進法が成立いたしまして、これに基づいて翌年、人権擁護推進審議会が設置されました。この審議会における審議の結果、平成十三年五月に「人権救済制度の在り方について」という答申がなされまして、これを踏まえまして、翌平成十四年三月、政府は人権擁護法案を国会に提出したところでございます。西田委員から午前中御紹介があったとおりです。ただ、この法案は、平成十五年十月、衆議院の解散に伴って廃案になりました。その後、平成二十四年になりまして、民主党政権時代ですが、政府が人権委員会設置法案及び人権擁護委員法の一部を改正する法律案、これを国会に提出いたしましたが、これにつきましても衆議院の解散に伴って廃案となっております。  人権救済制度の在り方につきましては、こうした経緯あるいはこれまでされてきました議論の状況をも踏まえまして、現在も適切に検討しているところでございます。
  126. 小川敏夫

    小川敏夫君 今、部落差別だけでなくて、それを含んだ人権問題全般についての御説明いただきましたけれども、この人権委員会の設置につきましても、この自由権規約委員会から最終見解ということで指摘を受けておりますですよね。  この自由権規約委員会からこの人権委員会、あるいは国内人権機構というふうに訳されておりますけれども、これについてはどのような勧告を受けているんでしょうか。
  127. 飯島俊郎

    政府参考人(飯島俊郎君) お答え申し上げます。  二〇一四年七月の自由権規約委員会による最終見解及び同年九月の人種差別撤廃委員会の最終見解におきまして、パリ原則に従い、国内人権機構の設置を再検討するよう勧告がなされております。
  128. 小川敏夫

    小川敏夫君 そのパリ原則ですけれども、要するに、独立した国内人権機構、つまり政府から独立した、あるいは行政機構から独立したといいますか独立性を持った国内人権機構の設置、これを検討するようにと、言わば設置を勧告されているというふうに思うんですが、そういう独立性について少し説明していただけませんでしょうか。  パリ原則で独立した人権機構と言われておりますその独立ということが、ちょっと今説明からなかったようなので、そこのところをポイントを絞って御説明お願いいたします。
  129. 飯島俊郎

    政府参考人(飯島俊郎君) お答え申し上げます。  関連する国連総会決議の附属文書におきますと、そのポイントは以下のとおりとなっております。  一、新たな立法の勧告、人権状況についての勧告等の準備、人権教育の支援、人権に関する広報等の権限を有する。二、構成においても、政府の代表は諮問的地位にとどまるべきである。三、円滑な業務の遂行のための施設を持ち、十分な資金を有する、政府より独立するため、独自の人員、建物を有する。四、個人の状況に関する苦情、陳情を聴取、検討し、調停等を通じた和解を求める等の準司法的機能を持つ。  以上でございます。
  130. 小川敏夫

    小川敏夫君 だから、今のお話の中で、私が聞いた政府から独立したという部分、だから、政府から独立したそうした国内人権機構の設置というものが勧告されておるわけでありますよね。現状はどうかといいますと、今は法務省の中に人権擁護局があるわけでありまして、政府から独立しているのではなくて、政府の行政の機構の中にこうした人権を扱う部署があるわけであります。  これにつきまして、政府から独立した人権機構というものを設置、本来的にも、やはり政府から独立して、政府が行うそうした人権抑圧というものも、しっかり政府の意向に影響されないで独立して判断できるという意味で独立性が求められておると思うんですが、これが全く履行されていないわけでございます。  どうでしょう、これについては、法務大臣、例えば先ほどの説明の中で、平成十四年、これは自民党政権の時代でございました。あるいは平成二十四年、民主党政権のときでございます。こうした独立性を備えた人権機構を設置しようという、そうしたこれまでの検討の状況もあるようなんでありますが、現時点では、今、政府の方は、こうした人権機構の独立性についてこれを実施する、あるいは実施に向けての検討をするというお考えはどうなんでありましょうか。
  131. 金田勝年

    ○国務大臣(金田勝年君) ただいま御指摘もございました新たな人権救済機関を設置するための人権委員会設置法案というものを平成二十四年十一月に提出をされた、しかしあの二十四年十一月の衆議院解散によって廃案となったという経緯を承知しているわけでございますが、人権救済制度の在り方については、これまでなされてきた議論の状況も踏まえて、やはり適切に検討をしているところであります。
  132. 小川敏夫

    小川敏夫君 適切に検討していただくということですので適切という言葉で理解したいと思うんですが、大臣が言う適切というのは、具体的にどういうことをしたら適切ということを意味するんでしょうか。
  133. 萩本修

    政府参考人(萩本修君) 先ほど私の方から御答弁いたしました二回にわたる政府からの内閣提出法案としてのこの人権救済機関についての法案ですけれども、これらはいずれもパリ原則に沿った内容を盛り込んだものというように理解をしております。そして、それぞれその法案提出するに当たりまして様々な議論がされてきたところでございますので、人権救済制度の在り方につきましては、そうしたこれまでなされてきました議論の状況も踏まえ、引き続き適切に検討しているところでございます。
  134. 小川敏夫

    小川敏夫君 まあ適切の中身を議論してもしようがありませんけれども。  今回、部落差別を解消するという法律でございますが、やはりこの部落差別の解消も含めて、やはり人権侵害、そうしたことについては非常に重要なことでございますので、それがまた適切にそうした行政なり救済が行われるように、パリ原則に従った、そして中身を伴った人権救済に関する組織、そうした施策が講じられるということが行われるよう、大臣におきましては適切に対応していただきますよう申し上げまして、私の質問を終わります。
  135. 佐々木さやか

    佐々木さやか君 公明党の佐々木さやかです。  今日の議題となっております部落差別の解消の推進に関する法律案について質問をいたします。  我が国の憲法は、基本的人権の尊重また法の下の平等を定めておりまして、生まれやまた住んでいる地域などによっては差別されない、平等であるということを明確に規定をしているわけでございますけれども、今日の議論でも既に明らかになっている部分がございますが、やはり残念ながら部落差別というものの実態が今もなお存在をしていると、そうした認識の下で、その解消の推進のためにこの法案提出をされたわけでございます。まずは冒頭、この困難な問題について取り組まれて法律案を議員提案として提出されたことに、心からその御努力と御苦労に敬意を表したいというふうに思っております。  この部落差別の問題については、今日も議論の中でございましたけれども、やはり地域によって様々な状況があるのであろうと思います。私自身は、この問題は学校の教育の中で初めて認識をしたように記憶をしておりますけれども、直接その差別を見聞きをしたりしたことはございません。そうした意味で、厳然としてあるけれども、国民の皆様としても非常に詳しく知っているという方は限られているかもしれません。多くの方が問題としては認識しているかもしれませんけれども、この法案の必要性というところについて、私の方からはまず順を追って質問をさせていただきたいというふうに思っております。  そこで、まず、前提といたしまして、改めてではございますけれども、この法律案趣旨と、また概要について改めて確認をさせていただきたいと思います。
  136. 江田康幸

    衆議院議員(江田康幸君) 佐々木委員からの質問に答えさせていただきます。  まず、我々、法案の大前提といたしまして、やはり部落差別が今もなお存在しているという認識の下にございます。そしてまた、インターネット等様々な情報の進展がございますが、それに従って新たな差別が発生する、そういう社会的な状況が変化してきている、このような認識を踏まえまして、私どもはこの部落差別の解消が必要である、その前提に立ってこの法案提出をしております。  そして、法案趣旨、概要についてでございますけれども、法案は、現在もなお部落差別が存在するとともに、情報化の進展に伴って部落差別に関する状況の変化が生じていることを踏まえて、全ての国民基本的人権の享有を保障する日本国憲法の理念にのっとりまして、部落差別は許されないものであるとの認識の下にこれを解消することが重要な課題である、そのことに鑑みて、部落差別の解消を推進して、もって部落差別のない社会実現するために、部落差別の解消に関して基本理念を定め、並びに国、地方公共団体の責務を明らかにしていくとともに、相談体制の充実等、また教育、啓発、さらには部落差別の実態に係る調査について定めるものでございます。
  137. 佐々木さやか

    佐々木さやか君 法案の第一条には、日本国憲法の理念にのっとり、部落差別は許されないものであると、このことがはっきりと記載をされております。非常に重要なことであると思っております。  今の趣旨、概要の説明にもありましたとおり、この法案基本理念を定めると。そして、国民一人一人に、この差別というものは許されないのであると、こういった意識を浸透させていく、そうしたことを非常に重要なものとして考えている法案であると思っております。  こうした法案が必要であるということを国民の皆様にも理解をしていただくに当たってやはり重要なのは、そもそも立法事実というものが法律については重要でございますので、ここを確認をしたいんですが、この部落差別の問題については、いわゆる旧同和三法という法律による特別対策というものも進められてまいりました。しかしながら、その対策も平成十四年には終了をしております。  中には、この部落差別の問題というものはもう認識としても薄くなってきていて差別というのは余り存在しないのではないかと、また、この法案についても必要性に乏しいのではないかと、こういう疑問の声もないわけではないわけでございまして、ここについて、しっかりとこの立法事実というものを示して説明をするということが重要であるかと思います。  そこで、この立法事実である部落差別の存在についての認識と、また、そのように認識する根拠を具体的にございましたらお示しをいただきたいと思います。
  138. 江田康幸

    衆議院議員(江田康幸君) 先生より、立法事実である部落差別の存在についてということで、また、その根拠についてどうかという御質問でございます。  提出者、我々といたしましては、先ほども申しましたように、この部落差別は現在も厳然として存在しているという認識に立っております。  例えば、法務省の人権擁護局によれば、同和問題に関する人権侵犯事案につきまして、人権侵犯事件調査処理規程に基づく救済手続による処理を行った件数、平成二十五年で八十件、平成二十六年で百七件、平成二十七年で百十三件となっております。依然として、この同和問題に関する人権侵犯の実態があると認識しております。  また、平成二十七年版の人権教育・啓発白書によりますれば、結婚における差別、また差別発言や差別落書き等の事案は依然として存在していることが報告をされております。  さらに、我が公明党が実施しましたさきのヒアリング等におきましても、やはりインターネットでの差別事案や、また差別文書の大量配布などが現在も行われておりまして、これらの立法事実の証左となることを確認しているところでもございました。  私、地元は九州、出身は福岡で、今熊本ではございますけれども、この地元での御意見、また私の経験からでもございますけれども、やはりいまだに、先ほどからありますように、結婚に至る際におきましてはその差別があり、また、就職に関してもその差別を受けておられる方々が多くやはりいらっしゃるわけであります。地域によっては教育の格差があったり、この切実な声を聞いております。  改めて、やはり部落差別という問題は現在もなお存在しているということが、痛切に私は実感しているところでございます。
  139. 佐々木さやか

    佐々木さやか君 具体的に御説明をいただきました。  例えば、大変悪質な内容の文書をばらまくというような行為も行われる、また、結婚においての問題というものも今もなお存在をしていると。どちらかというと若い世代の方々というのは、この部落差別、同和問題というのは認識が薄いかもしれませんけれども、結婚というようなときに至って大きな悩みを抱える、こういうことも現在もなおあるということで、大変心の痛い問題でありますし、また真剣にやはり取り組んでいかなければならないと思うところでございます。  先ほども申し上げたとおり、この問題については、旧同和三法によりまして昭和四十四年以降、同和対策事業、地域改善対策事業などが実施をされてまいりました。そうした中で、生活環境の改善、産業の振興等が図られて、その効果として改善が見られた、また取り巻く状況も変化したということで、こうした対策は終了している状況でございます。  このように、同和対策事業特別措置法を始めとするこれまでの法律というものも存在をして、またそれが一定の役割を果たしてきたわけでありますけれども、こうしたこれまでの法律との今回の法案の違いと、また本法律案のこうしたところが意義があるのだと、こういった点がございましたら御説明を願いたいと思います。
  140. 江田康幸

    衆議院議員(江田康幸君) 御質問にお答えいたします。  もう御存じのように、旧同和三法、この法律は、歴史的な、また社会的な理由によって生活環境の安定向上が阻害されている、そういう地域について生活環境の改善等のために行う事業、これについて定めたものであり、三十三年間にわたってその事業が施行されてきました。その結果として、一般地区との生活環境の改善は図られて、その格差は大きく改善されたものとされております。  しかし、やはり部落差別は現在もなお存在している、先ほど申したとおりでございますが、これに対して本法案は、生活環境の改善のために行う事業等について定めた旧三法とは異なりまして、やはり部落差別の解消を直接に目的といたしておりまして、この部落差別を解消する必要性に対する国民一人一人の理解を深めるように努めることによりまして部落差別のない社会実現する、このことを目的とするものでございます。ここがこの旧三法とは、目的においても、また対象においても違うところでございます。
  141. 佐々木さやか

    佐々木さやか君 分かりやすい御説明がございました。これまでの旧同和三法というのは生活環境、その地域の環境というものを改善するものであったと。それはそれで非常に大きな意味があったわけでございますけれども、今回の法律案というのは、環境の改善というよりは差別自体をなくすということを大きく掲げて、それを目的としていると、こういう御説明でございました。  この地域の、事業対象の地域の環境というものは改善をされてきて、それによって、地域が特定されるというようなことも徐々に少なくなってきている。また、国民の認識としても、昔に比べれば徐々に薄くなってきているのではないかと。そうした状態にあるにもかかわらず、どうして今改めて部落差別の問題を正面から取り上げるこういった法案提出をするのかと、こういう疑問の声もあるかもしれません。  しかし、そういった考え方というのは、言わば時を経ることで、そのままにしておけば部落差別というのは解消するのではないか、解決するのではないかと、こういう考え方なのではないかと思いますけれども、こうした考え方については、発議者としてはどのように捉えていらっしゃるのか、認識を伺いたいと思います。
  142. 江田康幸

    衆議院議員(江田康幸君) 提出者といたしましては、今先生が御指摘なされた一部の御意見として、時を経ることで部落差別が解決するのではと、寝た子を起こすのかと、こういうような御意見もあろうかとは思っておりますけれども、私どもとしましては、時を経ることでこの部落差別は解決されないものと考えております。  そもそも、現在でも、先ほど申しましたように、結婚における差別、また就職における差別、厳然と行われておりまして、また差別発言や差別ビラ配布等の事案は、我々がヒアリングをした中においても相当のものがございました。さらには、インターネット上においても、特定地域の地名を同和地区であると掲載する行為、こういうことが散見されるわけでありまして、部落差別は忘れられた過去の問題ではなく、現在に存在する問題であります。また、部落差別のその存在を知らないということだけでは、これは、将来部落差別に関する情報に皆さんが触れたときに再び新たな差別を生じさせるおそれがあるために、部落差別の問題が解決されたとは言えないと思っております。  部落差別のやはり根本的な解決、これを我々政治家は望んで目指してこの法案提出するわけですが、やはりただ時がたつのを待つのではなくて、やはり国民一人一人が部落差別を解消する必要性に対する理解を深めることができるように、本法規定するような部落差別の解消に関する施策を行っていくことが何よりも重要であると考えております。
  143. 佐々木さやか

    佐々木さやか君 ありがとうございます。  この法律の第一条には、「情報化の進展に伴って部落差別に関する状況の変化が生じていることを踏まえ、」と、このようにございます。  このインターネットという問題は近年急速に発展をしたものでありまして、皆様御存じのとおり、匿名による発信が可能ということもあって、様々な名誉毀損でありますとかプライバシー侵害、様々な差別的な書き込みというものも残念ながらあるという状況であります。  インターネットに関する人権侵犯事件とこの救済手続というものも件数を見ますと、これはこの部落差別の問題に限ったものではありませんけれども、件数も非常に増えておりまして、平成二十三年には六百三十六件だったのが平成二十七年には千七百三十六件に倍以上に増えていると、こういったことがございます。  インターネット上の差別的表現ですとか様々な被害の特徴としては、やはりインターネットというのは瞬時にあらゆるところに広がってしまう、また完全な削除というものはなかなか難しいと、こういう特徴がございます。  こういった中で、この部落差別の問題についてはどのような状況の変化が生じているというふうに御認識なのか、先ほども御答弁の中で少し触れてはいただきましたけれども、例えば具体的な例ですとか、そういったことがあればお示しをいただきたいと思います。
  144. 江田康幸

    衆議院議員(江田康幸君) まず、法務省の人権擁護局によるデータでございますけれども、同和問題に関する人権侵犯事案について、先ほど申しました人権侵犯事件調査処理規程に基づく救済手続による処理を行った、その中でインターネット上の情報について法務局が削除を要請した件数は、平成二十五年で五件、平成二十六年で十件、平成二十七年で三十件となっております。  このように、インターネットの普及によって部落差別に関する状況の変化が生じていると考えておりますが、これらの事案の中には、例えばインターネット上に特定地域の地名が同和地区であるとして掲載されているものについて、この特定地域の住民に対する不当な差別的取扱いを助長、誘発する目的でそのような行為を行っていると認められるものも含まれております。  事実、先ほども有田先生からの御質問にもありましたけれども、鳥取ループというところが発刊しようとした部落地名総鑑の原点といわれる全国部落調査という、その復刻版をインターネット上にその販売を載せていった事例がございます。それは訴訟によって出版禁止の仮処分が認められたわけでありますけれども、それはしかし、そのままインターネット上に掲載をされておりまして、アクセスすればそういうものに、入手することができ得るような状況にもあるわけです。  また、先ほどからある、同和地区ウィキというようなものがございますけれども、これについても、さらには、先ほどの全国部落調査というものに対するアカウントをツイッター上に、十分ごとに同書の内容を発信し始めているものもございます。  したがって、そういうような行為、まさに不当な差別的取扱いを助長する目的で行っている行為、これらがインターネットでは非常に多く見られるわけでございます。  こういうインターネットが普及している今においては、一旦情報が拡散した場合には半永久的にこの情報の閲覧は可能になっているわけでありまして、掲示板の書き込みにおいても多くの方々が受動的に、望む望まないにかかわらず受動的にこの部落差別に関する悪意のある情報に触れる機会は多くなっている。そういうことから、以前に比べてやはり部落差別に関する情報、触れる機会は多くなっている、また、その状況の変化は非常に大きくなっているということでございます。したがって、これらの情報、触れたときに、何も知らないままでは新たな差別を生んでしまう、そういうことで、やはり抜本的な、根本的な解決を見るために我々はこの法案提出しているところでございます。
  145. 佐々木さやか

    佐々木さやか君 このインターネット上の人権侵害という問題は、近年急速に深刻になってきたというふうに認識をしております。この部落差別の問題についても、今御説明があったとおり人権侵犯事件についても増えてきていると。ですから、むしろ、かえってこれからこうした部落差別についての悪意のある表現、また情報が増えていってしまうのではないかと、こういう懸念もお持ちだということであると理解をいたしました。  こうしたインターネット上に部落差別の問題について差別的な書き込みがなされた、悪意のある表現があると、こういった場合には現行の法律上の枠組みではどのように対応をしているのか、この点について法務省にお聞きしたいと思います。
  146. 萩本修

    政府参考人(萩本修君) 法務省の人権擁護機関におきましては、インターネット上において不当な差別的取扱いを助長、誘発する目的で特定の地域を同和地区であると指摘する、そういった内容の情報を認知した場合には、人権侵犯事件として立件の上、調査を行い、違法性が認められると判断した場合には、その情報の発信者に対して情報の発信をやめ、繰り返さないように説示をする、あるいは、その情報が掲載されているインターネットの管理者やプロバイダー等、情報の送信を防止する措置を講ずることが可能な者に対しまして削除を要請するなどの対応に努めているところでございます。
  147. 佐々木さやか

    佐々木さやか君 そうした表現を行わないように、繰り返さないように説示をする、また、送信の防止をプロバイダーなどに求めるということで、これらはいずれも強制的に行わせるというよりは任意に対応することを促すということであると思います。  そうなりますと、先ほどから議論になっておりますけれども、ネット上で特定の地域が同和地区だなどというふうに悪意を持って殊更に記載をする、発信をしていくと、こういった確信犯的に行っているような場合にはなかなか任意の削除というものも期待できないのではないかと思うんですけれども、こういった場合には法務省としてはどのように対応しているんでしょうか。
  148. 萩本修

    政府参考人(萩本修君) 今委員からお示しいただきましたとおり、法務省の人権擁護機関が人権侵犯事件について講ずる措置は強制力を有するものではなく、あくまで任意の対応を促すものにすぎません。  ただ、粘り強くやはり対応することが大事と考えておりまして、情報の発信者に対しましては、できる限り反省を促し、そうした情報の発信をやめ、同様の行為を繰り返さないよう粘り強くやはり是正を求めるということをしております。  また、プロバイダー等に対する削除の要請をしても、プロバイダー等がすぐに削除に応じていただけない場合も多々ございますが、一回きりの要請ですぐに断念するということではなく、事案によっては、その情報の違法性や被害の重大性につきまして繰り返し説明するなど粘り強く削除を要請しておりまして、現にそのような繰り返しの要請に応じていただいたケースもあるところでございます。
  149. 佐々木さやか

    佐々木さやか君 粘り強い対応、重要であると思いますので、引き続き努力を続けていただきたいと思います。  このインターネット上の情報の削除の問題というのは、大手のプロバイダーの場合には利用規約に差別的な表現などというものは送信をさせないようにすると、こういった利用規約があると。また、プロバイダー責任制限法もございますので、他人の権利を侵害している表現についてはプロバイダーが削除要求に応じることも多いというふうに理解をしております。しかしながら、そうした大手のプロバイダーではない、自らサーバーを管理して差別的情報を発信している、そのようなものに対してはプロバイダーが削除するということはできませんので、なかなか現行法では難しいと。また、そうなると、人格権などに基づいて訴訟手続を通じて是正を要求していくということになりますけれども、この点についても、裁判手続自体大変なものでありますし、いろいろな困難なこともございます。  そうした現行法、現行制度の限界というものも認識をしつつ、じゃ、この法律案が、今回の法律案がどのようにこの問題の解決に資するのかということを考えてみますに、冒頭確認したように理念法でございますので、この法律案自体にこうしたインターネット上の削除を強制するようなことが条文として書かれているわけではございませんけれども、やはりこの法律案の目指すところというのは、差別の解消を目的とする、そして国民一人一人のやっぱり心の中にそうした差別は許さないということをしっかりと仕立てていく、ここを目指すものでありまして、こうした情報に仮に、できるだけそういった情報は削除していくわけですけれども、仮に残っていた、また触れたとしても、それによって差別的なことを連鎖させないといいますか、新たな差別を引き起こさないと。  こういったことを実現をしていくという意味で、私は、こうした情報化の進展に伴って新しい状況の変化が生じているということにも対応していく上で非常に重要な法律案なのではないかと、こう考えているんですけれども、御認識を伺いたいと思います。
  150. 江田康幸

    衆議院議員(江田康幸君) 今まさに佐々木委員がおっしゃったとおりでございます。  今法務省からもお答えがございましたけれども、やはりインターネット上の差別的情報、差別的表現について現行法で、その枠組みで対処できる部分もある一方で、やはり海外サーバーを利用していたり発信が特定できない場合など、対処に限界があるものもあるのが事実でございます。  このような問題に対しては、先ほどもございましたけれども、粘り強く取り組んでいくという、現行法令枠組みの中でこれをやっていくとともに、やはり根本的には、部落差別の解消に関する国民一人一人の理解を深めるように努めることによって部落差別が発生しないような社会的な意識を確立していく、そのことが問題の根本的な解決につながるものと我々提案者は考えております。  このような考え方の下で、禁止規定、罰則規定はない理念法ではありますけれども、この部落差別の解消のための施策推進していくこと、もって部落差別のない社会実現する、そのために本法案を提出をしたところでございます。
  151. 佐々木さやか

    佐々木さやか君 質問はもう少し予定をしておりましたけれども、残された時間も僅かになってまいりましたので、この法律案につきましては、今まで申し上げたように、やはり国民に対する、また教育、啓発の促進ということが非常に重要ではないかというふうに思っております。  そこで、予定の質問を一問飛ばしまして、この法律案の中にもございますとおり、教育、啓発を促進をしていくと、これは具体的にどのように行うことを予定しているのかについて最後にお聞きをしたいと思います。
  152. 江田康幸

    衆議院議員(江田康幸君) 御指摘のとおり、教育、啓発ということが大変に重要となってくるわけでございますけれども、これについては様々なものがあり得ると考えております。  今後、行政庁におきまして、現在、法務省、文部科学省が同和問題に関して行っている施策前提としながら、情報化の進展に伴ってこの部落差別に関する状況の変化が生じていることも踏まえまして、基本理念にのっとって教育、啓発の中身が検討されることになるものと承知しております。  なお、インターネットで不当な差別的取扱いを助長、誘発する目的で特定の地域を同和地区であると指摘するような行為、これは人権擁護の観点から許されるものではないということについて啓発を行っていく、このようなことが考えられると思っております。
  153. 佐々木さやか

    佐々木さやか君 ありがとうございました。  この教育、啓発については、かえって差別を助長するようなことにならないようにと、こういった懸念の声もございます。そうしたことも勘案の上、法務省も含め、どういった方法が効果的なのか検討していっていただきたいと思います。  以上で質問を終わります。ありがとうございました。     ─────────────
  154. 秋野公造

    委員長秋野公造君) この際、委員の異動について御報告いたします。  本日、元榮太一郎君が委員を辞任され、その補欠として小野田紀美君が選任されました。     ─────────────
  155. 仁比聡平

    仁比聡平君 日本共産党仁比聡平でございます。  今日、ここまでの質疑を伺っておりまして、改めて、我が国の歴史と民主主義の重要問題である部落問題に関わる法案をこうして審議をすることになったと、極めて重い責任を負っているこの法務委員会が、部落問題とは何か、その歴史と到達点、そして部落問題の真の解決のありようとそこへの道筋について、まさに真剣に十分に学び、徹底した審議を尽くさなければならない、間違っても採決ありきの強行などあり得ないということを改めて確認をしたいと思うんです。その上で、日本共産党本法案の断固廃案を求めるものです。  法案六条は、部落差別の解消に関する施策の実施に資するためとして国に部落差別の実態に係る調査を行うことを義務付け、地方公共団体協力を得てとして地方公共団体の関与を規定しようとしているわけです。今日はこの点について、提案者及び大臣政府にお尋ねをしたいと思います。  こうして規定をしながら、提案者は、衆議院委員会で何度聞かれても、何をどのように調査をするのかについて、実際には我々がふだんの政治活動においても実態をよく肌で分かっているように実はもっともっと多いんじゃないのか、もっと詳しく現実を受け止める、そういう調査が必要という趣旨などと曖昧に漠然と言うだけで、調査の対象、調査や評価の体制、調査項目、対象地域や規模などについて全く答弁をしようとしておられません。  提案者法案理念法だとおっしゃいますが、国や自治体が行う実態調査それ自体が重大なプライバシー侵害や新たな差別を生む要因になりかねないことは、前回、十一月二十二日の質疑において金田法務大臣もお認めになられたことだと思うんですね。  そこで、現に、平成二十三年、二〇一一年度に全国隣保館協議会、全隣協によって行われた実態調査についてお尋ねしたいと思うんです。  この隣保館の調査に対して、全国地域人権運動総連合、人権連が厳しく反対をするとともに、全国の多くの自治体から苦慮や困惑の声が寄せられました。  提案者に伺いますが、今回の法案を作る上で、こうした、つまりこの二〇一一年の実態調査や、過去幾つも実態調査ありますが、そうした過去の実態調査に対する抗議や批判の声、それらによって重大な問題点を認識した政府がそうした実態調査をやめてきた経緯、歴史を検討、吟味されましたか。
  156. 若狭勝

    衆議院議員(若狭勝君) 先生委員指摘の調査、隣保館の調査というのは、平成二十三年秋、全国の隣保館に対して調査票を郵送するということで行われたものであり、旧同和対策事業対象地区の住民についての福祉関連課題や生活実態の調査というふうに承知しておりますが、そういうこともいろいろ含めて今回提案をさせていただいたという次第です。  委員指摘のように、断固廃案にすべきだというお話でございましたが、本日の午前からの審議、いろいろと多角的にしていただきまして非常に有り難いというふうに思っているところでございますが、今回、我々提案者として考えたことというのは、やはり法律というのは、ある意味、今の情報化の進展に伴ってインターネットが非常に大きな力を占めてきていると、そしてそのインターネットの上においてもいわゆる部落差別を助長するような傾向が今生まれてきているというふうに我々としては認識しまして、今ここできちんとした、理念法であってもそうした火種というのをきちんと抑えておかないと、それこそ手に負えないような状態が今後インターネット上で繰り広げられるというような危惧感が非常にあります。  その意味においては、法律というのは、そうした事態をあらかじめ想定しながらそれに対処するというような下で法律が作られる、制定されるということがあろうかというふうに私は承知していまして、その意味合いにおいて今回こうした提案をさせていただいた次第でございます。
  157. 仁比聡平

    仁比聡平君 今の御答弁で、二つですけれども、まず、私が示した二〇一一年の全国隣保館協議会による調査のような、これは調査を行うという御答弁だったんだと今ちょっと受け止めましたけれども、それでよろしいですか。
  158. 若狭勝

    衆議院議員(若狭勝君) 行うというよりも、そのようないろんな調査がこれまで行われてきたということについては承知しておりますという答弁でございました。
  159. 仁比聡平

    仁比聡平君 どのような調査が行われているのかについてちょっと先に伺いますけれども、先ほど、何か郵送で隣保館に尋ねただけであるかのような、そんな御答弁ぶりでしたけれども、とんでもありませんよね。  全国の隣保館が、市町村を始めとした行政が持っているセンシティブなデータ、デリケートなデータを収集し、それを調査をして、これを整理を一定した上で全国隣保館協議会に送るわけです。そういう調査であって、その中身、例えば調査項目は、生活保護受給世帯の状況や障害者手帳の所持数、その種別や等級、あるいは中学校卒業者と、進学等の状況ということで、つまり高卒、進学率などのデリケートなデータを行政から取って調査するというわけですよね。  そして、その対象は、隣保館が事業対象とする地域住民及び周辺地域住民の生活実態把握であるということで、当該市町村民も含めた三区分のデータ収集を求めている。ここに、地域住民というのは同和対策事業対象地区の指定を受けていた地域の住民のことであり、周辺地域住民というのは地域住民が主に通う小学校区住民なわけですね。  お調べになったかもしれませんが、全隣協はこの調査に当たって、回収は一〇〇%を目指しますので、全隣保館の協力を要請しますと、隣保館長とともに関係市町村長に対して通知を行っています。つまり、日本中の隣保館関係全住民、旧同和地区関係全住民のプライバシーに係る事柄を調査するというわけです。ですから、人権連から、地区指定は失効している、地区住民をどのように把握するのか、調査には属人に関わる項目がある、属人の特定は部落民暴きであり、個人のプライバシーを侵害する、進学率調査は文科省でさえ部落の児童生徒を特定することは困難としてやめた経緯がある、こうした経緯を無視するのか、そして来年度のアンケート調査も行う予定か、どのように実施するのかなどの厳しい反対、抗議の声と質問が全隣協にも向けられたわけですね。  こうした声に対して、全隣協の二〇一二年の一月十一日付けのQアンドAというのがあります。関係市町村長と隣保館長に宛てられたものですが、ここの問い二の(三)、特別措置法が失効しているのに地域住民のデータを出すことについての考え方を聞きたい。問い三の(一)、地域住民というのを同和対策事業対象地区の指定を受けていた地域の住民として行政データを収集することは困難であるため、周辺地域住民(小学校区)と市町村全体の回答だけでもいいのかといった問合せ項目があるわけですね。  厚労省に伺いますが、これは、つまり全国の自治体からこうした困惑や疑問、そして批判があったことの表れだと思うんですが、いかがですか。
  160. 中井川誠

    政府参考人(中井川誠君) お答え申し上げます。  厚労省といたしましては、本事業はある意味では補助事業という形で、実施主体は一社会福祉法人でございます。そういうこともございますので、当時自治体から具体的な批判があったかについては厚労省としては確認ができておりません。  以上でございます。
  161. 仁比聡平

    仁比聡平君 そのQアンドAの冒頭には、数々の質問が寄せられておりますがというふうに書いてあって、今私がお尋ねしていることは明らかなんですよ。そもそも、厚労省、何だかお客さんのような言い方するけれども、費用は全額国庫で出しているんですよ。一社会福祉法人がとおっしゃるけれども、一社会福祉法人が全国の全旧同和地区関係住民のプライバシーの実態調査を全て一手に手にすることができる。大きな異論があり自治体は困惑しているのに、一体それどういうことですか。  その御答弁なので、先に伺いますけれども、二〇一三年の一月に、この実態調査について全国人権連と厚労省地域福祉課の交渉が行われています。ここで、調査票は問題があり過ぎる、旧同和地区住民と市民を分け隔てし、生活保護者や障害者のプライバシーを侵害するという厳しい抗議が上がりましたが、そのときに課は、直接省として関わっていない、オブザーバーとしての関与だと曖昧な答弁に終始したと聞きますが、これは事実ですか。
  162. 中井川誠

    政府参考人(中井川誠君) お答え申し上げます。  御指摘の交渉におきまして、当省の担当者が、本実態調査は国の補助事業であり、国が直接行っているものではなく、また強制的に行わせているものでもない旨述べたということは承知しております。この本実態調査は、ただ、先生指摘のとおり、第三者から成る委員会が設置されまして、そこで実態調査の基本実施設計を決めたわけでございますが、そこに当省担当者がオブザーバーとして参加している事実はございます。  ただ、このいわゆる調査研究事業でございますが、この事業の効果的実施の観点から、実施主体の求めがあれば厚労省がオブザーバーとして参加をすることは、本事業に限らず、これはあることでございまして、その際は、あくまでも求められれば御助言申し上げるという立場でございます。
  163. 仁比聡平

    仁比聡平君 いや、つまり、国が後ろ盾になって行っているから全国の市区町村がそうやって実態調査のデータを出すわけでしょう。そういう仕組みでつい五年前にそういう調査が行われているということですよ。そこに対して多くの関係自治体が、旧同和地区住民を対象者として抽出する調査はできないと、無理だということを声を上げた。ところが、全隣協はあくまで三区分、つまり旧同和地区の住民を抽出してデータを収集してくださいと答えている。これに対して提案者は、先ほど、そうした調査も含めてというようなお話になるのかどうかよく分からない、どう考えるんですか。
  164. 若狭勝

    衆議院議員(若狭勝君) 仁比委員が御指摘のこととしては、隣保館に対してそうしたいろんな旧同和地区の対象者の調査等が行われたということで、今回の法案においても六条において実態調査というのがあるので、場合によってはそういうような、同じようなことが行われるのではないかという懸念の下で御質問をいただいているというふうに承知しておりますが、本法案は、あくまで、そうした対象となる個人とか地域、いわゆる旧同和地区を特定した上で、その中の個人とか地区等々について実態調査をするということは全く考えておりませんので、そういう懸念の下で私どもはこの法案提案したわけではございません。
  165. 仁比聡平

    仁比聡平君 法案でも同様のことはとおっしゃったので、ちょっと、それだったらば確認をしたいんですけれども、私が申し上げているのは、つまり、旧同和特別対策の対象地域として指定をされていた、そうした地域の住民を抽出して行うという、これはこの法案ではやらないんだということですね。
  166. 若狭勝

    衆議院議員(若狭勝君) 結論から申し上げますと、この法案の下で実態調査を行うというのは、そうした旧同和地区を特定した上で、そこの中の個人の人などを特定した上での調査というのは、全く行う予定ではございません。
  167. 仁比聡平

    仁比聡平君 予定ではございませんというのがよく分からないんですが、今おっしゃることは法文からは全く読み取れませんが。  逆に、提案者は、部落差別とは何かという定義を置いておられないんだが、その部落差別定義について、繰り返し、法律上の定義を置かずとも、部落の出身であることを理由にした差別という意味で明解である、行政においても一義的に明確に理解できるものとして、あえて定義という格好で限定することは適切でないとまでおっしゃっているんですね。この部落の出身であることを理由にした差別という言葉は、部落解放同盟綱領が掲げる部落民の定義と私は同じ意味だと思います。解同の綱領には、「部落民とは、歴史的・社会的に形成された被差別部落に現在居住しているかあるいは過去に居住していたという事実などによって、部落差別をうける可能性をもつ人の総称である。」というふうにありますが、これは、部落の出身であることを理由にした差別という言葉と論理的には等しいと私思うんですね。そうすると、何らかの不利益が部落の出身であることを理由にした差別かどうかということが問題になるときに、おのずから、部落出身者を抽出して、あなたは出身者ですが、差別を受けたことがありませんか、そうした論理の調査ということを必要とするんじゃないかと思うんですが、そうではないんですか。
  168. 若狭勝

    衆議院議員(若狭勝君) 本法案の六条の実態調査というのは、あくまで、部落差別の解消に関する施策を実施する、それに資するためにどういう相談体制の充実などをすれば一番効果的かとか、そういった面で、一番その施策を、実施に一番効果的なのはどういうようなものかというのを知るための調査というような前提法案を作っておりますので、委員指摘の心配、懸念のような、本法案において、御指摘の、部落、一部の部落の地区のところにおいてその中にいる対象者を一部切り出してそこの調査を行うということを考えているものでもなく、その必要性もないという前提法案を作っております。
  169. 仁比聡平

    仁比聡平君 意味がよく分からないんですが、旧対象地域に住んでいる人を一部切り出すというのがまたよく分からないんですけれども。  解同の綱領が言っている部落民の定義も、それから繰り返し発議者がおっしゃっている部落の出身であることによる差別というものも、その対象地域とかつて指定されていたとか、あるいはそこの出身であると。  出身というのは、繰り返しのようになりますけど、そこで生まれ育ったとか、現在住んでいるとか、過去住んでいたとか、一度も住んだことはないんだけれども親がその地域に過去住んでいたとか、おじいちゃんやおばあちゃんがその地域に住んでいたことがあるとか、あるいは何代まで遡って血筋とか本籍だとかをたどるのかとか、出身という言葉にはそれだけ、まあ曖昧なというよりも、どこまでも広がっていくという概念だと思うんですよ。  それ以外に、皆さんがこの部落差別定義、つまり、差別行為のその核心部分ということをおっしゃった言葉がないから、だから部落差別というのは何ですかと。その実態調査と書いてあるでしょう、それをなくすための施策と書いてあるでしょう。  先ほどの御議論の中には、例えば教育格差があるというお話がありました。その教育格差というものがその部落差別であるのかどうか。何しろ貧困格差は大きく広がっているわけですから、だからその下で、一般施策としてその進学の保障あるいは奨学金の充実、それが国政の重要課題ですよ。それを部落差別として捉えるのか、先ほど来御答弁の中にありますからね、そういう言葉が。  だったら、それを解決するための施策、その実情があるかどうかの実態調査ということになれば、部落の出身であることによる差別があるのかないかを何か尋ねていかないと困るんじゃないんですか。そういうふうにはならないんですか。
  170. 若狭勝

    衆議院議員(若狭勝君) 結論から申し上げますと、そうした個人とか地域を特定した上で調査を行うという必要もないというふうに考えた上での法案と考えております。
  171. 仁比聡平

    仁比聡平君 必要がないというのがまた分からないんですけど。  だって、この法案のこの構成の中には、午前中、西田議員がちょっと触れられましたけど、例えばヘイトスピーチ解消法を徹底して議論しましたが、そこで中心課題になったのは定義規定ですね。例えば、過去の人権関連の法案について大議論になってきたのは、その定義や、あるいは判定を一体どうするのかということですよね。ところが、この法案には、一切定義規定もなければ何らの判定の手続もないんですよ。国が責務を負う、実態調査に関しては地方公共団体協力をする、そして地域の実情に応じて地方公共団体施策義務を負うわけでしょう。なのに、何の定義もない。法案の骨格はそういうことですよ。  だったらば、今私が申し上げた、旧対象地域の住民を抽出して行わないということが法案のどこに書いてあるのかを教えてください。
  172. 若狭勝

    衆議院議員(若狭勝君) あくまで六条は、部落差別の解消に関する施策の実施に資するためにその実態調査をするという前提で作られているものと承知していますので、考えておりますので、その視点から申せば、個人とか地域を特定した上で、先生委員懸念のような調査が行われるという必要性もなければ、その可能性、実態もないという前提法案を作っております。
  173. 仁比聡平

    仁比聡平君 いや、分からないですね。だって、自分たちが肌で感じるような差別があるはずだ、だけれども、みんなが声を上げれてないはずだ、何があるかを調査しましょうというのが皆さんの御答弁じゃないですか、スタンスとして。だから、これをどうやって調査していくのかと聞いているのに、今のようなお話になるし、六条やあるいは法案で、今、若狭提案者がおっしゃるような形に絞れているとは絶対読めませんよ。だったら何が起こるかなんですよ。  先に法務省に聞きますが、今申し上げてきたように、発議者は、部落差別とは何かという定義に関して、部落の出身による差別である、それは分かっていることだと述べた上で、誰にとっても明らかだと述べた上で、行政においても一義的に明確に理解できると言っているんですが、これ、行政として一義的に明確に理解できるのか。できるのであれば、部落というのは何を指して、出身者というのはどこまでを言うのか、明確に御答弁いただきたいと思います。
  174. 萩本修

    政府参考人(萩本修君) 本法律案は、議員立法として国会に提出され、現在審議中のものですので、法務省としてのお答えは差し控えたいと思います。  他の答弁で繰り返し申し上げていますとおり、法務省の人権擁護機関におきましては、人権啓発活動、調査・救済活動を行うに当たりまして同和問題という用語を用いております。この提案されております本法律案における部落差別という用語は、同和問題に関する差別を念頭に置いているものと私どもとしては理解をしております。
  175. 仁比聡平

    仁比聡平君 つまり、答えられないということなんですよ、法務省は。  あなた方は、提案者は、一義的に明確に行政も理解すると言うけれども、法案で、あれでしょう、どこかの議論に、実態調査は法務省が頑張るでしょうみたいな御答弁もありましたけど、その法務省が今のように述べているわけですよ。こうして定義規定を置かずに解同綱領の部落民定義と同様の部落差別の核心部分についての発言をされながら出されている法案は、結局、部落民以外は全て差別者だとして、被差別者が差別者の行った事実及びその差別性の有無を確定し、差別の本質を明らかにするという特異な解同の運動論によって行政の主体性が奪われる危険が私はあると思うんです。  だって、何が差別かが法律上確定されていないわけですから、皆さんも述べられないわけですから。この参議院に来て、この審議になって、何にも明らかにできないわけでしょう。だったらば、これが差別じゃないかと、確認・糾弾路線まで行き着いた、あるいは八鹿高校事件にまで行き着いた確認・糾弾をてこにした圧力で迫られたら、国や地方公共団体だって不公正、乱脈な同和行政に至った歴史の痛苦の教訓、これが再びよみがえるということだってあり得るじゃないですか。  現に厚労省も、隣保館の事業、あの調査の事業、これ、私たちオブザーバーですといって何がやられたってよく分かりませんという、そういうスタンスですよね。そんな実態調査を強く要望してきたのは部落解放同盟です。  この事業が採択をされる半年以上も前に、機関紙解放新聞の二〇一一年四月十八日号ですけれども、解同中央生活労働運動部の名前で、厚労省同和問題実態調査の意義と成功のポイントという大きな論文といいますか、方針が高々と掲げられているわけです。ここに何と書いてあるかと。二〇一一年ですから人権侵害救済法が問題になっていた頃ですが、人権侵害救済法制定実現のための立法事実の収集にも大いに役立つことが期待できる、新しい運動や要求を組織できるし、同盟員の拡大にも役立てることができると述べられているわけです。だから、解同は当時、政府地方公共団体にその実施を迫ってきました。これに対して高知県は、二〇一〇年の十二月、法の失効後は地域や人を特定せずに行政課題ごとに施策を実施していく、したがって、施策ニーズを把握するために調査が必要な場合には行政課題ごとに行うといって、この解同の要求を拒否しているんですね。私、立派な態度だと思いますよ。これが、二〇〇二年に国の特別対策を終了したときに、当時の総務大臣の談話があります。劣悪な生活環境が差別を再生産するような状況は今や大きく改善されたとの認識に立って、これからは一般施策としてみんな行っていきましょうという努力をしているわけですね。  我々は何もやってこなかったんじゃないですよ。先ほど来から、時間がたてば解決するなんていう、そんな論があたかも強くあるような言いぶりをされるけれども、そうではないでしょう。部落差別をなくし、その根絶をしていくために、なくしていくためにみんなが努力をしてきた、行政だっていろんな努力をしてきたわけですよ。ところが、この法案提案に当たって、そうした自治体の全国の意見を提案者は全く聞いておりません。ですから、岡山県は、最近の全国人権連との話合いにおいて、現在県内に同和地区とか同和関係者というのはいない、分からないとしか言いようがない、そう答えています。  だったら、こういう定義さえ置かずに、実態調査の中身もよく分からない、法律でどこに持っていかれるか分からない、法律を足掛かりにしてどこに持っていかれるか分からないと、こういうような中身の法案で自治体に責務を課そうというのは私はとんでもないと思うんですけれども、時間が来ましたから、この一問だけ今日は聞きたいと思います。
  176. 宮崎政久

    衆議院議員(宮崎政久君) ありがとうございます。  今日は定義についての御質疑をいただいたわけでありますが、繰り返しになりますけれども、私どもはこの部落差別、これ長い歴史の中で育まれてきて、様々、各委員指摘のような闘いのある中で今この社会が築かれている、そういった歴史的な経緯を踏まえたら、部落差別というのはあえて定義を置かずとも私は一義的に明確であるというふうに理解をしているものでありまして、それをあえて言えば、部落の出身であることを理由とした不合理な取扱い、差別であるというふうに考えているところでございます。  これは、特定の団体の定義を持ったということではなくて、一義的に見られるようなものをこういった形で定めていく。そして、先ほどヘイトスピーチのお話もありましたけれども、ヘイトスピーチのように新しく出てきたものと、私どもは、部落差別というのは、この経てきた経緯が違うというふうに考えておりまして、この部分については理解をしていただけるものと考えております。  また、調査を始めとする施策でありますけれども、これは基本理念の中で、そもそもがこの法案において行うべき施策というものは部落差別のない社会実現をすることを旨として行うものでありまして、例えば特定の地域であるとか特定の一定の人たちを取り出した上で何らかの調査をするということを予定しているものではなくて、あくまでもこの本法案に関する施策の実施のために必要な限りにおいてやるものでありまして、特定の者や特定の地域を切り出すということを予定しているものではないということを説明しているものでございます。
  177. 仁比聡平

    仁比聡平君 全然分かりませんが、今日は終わります。
  178. 高木かおり

    高木かおり君 日本維新の会の高木かおりでございます。  本日は、部落差別の解消の推進に関する法律案につきまして御質問をさせていただきたいと思います。これまでの質疑の中で、本法案につき様々な御意見がございました。重なる部分もあるかと思いますけれども、関心のある部分ですので、どうか御理解いただきまして、御答弁をお願いいたします。  この法案審議されるに当たりまして、今回、人権問題について改めて調べてみますと、様々な形の人権問題が存在いたします。法務省のホームページ等にも書かれておりますけれども、例えば、女性に対する人権課題では、以前は社会参加や就職の機会における差別が大きく取り上げられてまいりましたけど、最近では、例えばパートナーからの暴力、性的な嫌がらせ、またストーカーなどから守ることも課題となっております。また、子供たちの人権の問題も大きな課題であります。いじめや虐待、体罰など、子供といえどもやはり一人の人間ということで守っていかなければなりません。最近は、そのほかにも、高齢化が進むことによりまして高齢者に対する虐待、こういったことも問題になってきておりますし、また、障害をお持ちの方々に対することに関しても同様かと思います。そのほか、まだまだございますけれども、今回、その中の一つの同和問題、これが掲げられております。我が国固有の人権問題ですので、しっかりと考えていかなければならないと私も思っております。  それでは、通告に従いまして、部落差別解消法案の必要性について順を追ってお伺いしたいと思います。  第一条に規定されておりますが、「全ての国民基本的人権の享有を保障する日本国憲法の理念にのっとり、部落差別は許されないものである」。法案提出者の認識は、それは理解できるところであります。  他方、同和問題は、日本社会の歴史的過程で形作られた身分差別により、日本国民の一部の人々が長い間経済的、社会的、そして文化的に低い状態に置かれ、日常生活で差別を受けるものとされ、我が国固有の人権問題であることは明白でございます。  この問題の解決を図るために、御承知のとおり、国は地方公共団体とともに昭和四十四年から三十三年間にわたり特別措置法に基づき対策事業を行ってまいりました。そして、同和地区の環境改善は一定の成果が見られたものと私も思っております。昭和四十四年に制定されました同和対策事業特別措置法などにより講じられてきた事業に対する政府の評価とその後の同和問題への取組について、各省庁に順にお伺いをしていきたいと思います。  まず、法務省でございますが、取組についてお伺いをしていきたいと思いますけど、インターネット上の対応につきましては後ほどお聞きをしてまいりますので、それ以外の取組について教えていただけますでしょうか、よろしくお願いいたします。
  179. 萩本修

    政府参考人(萩本修君) 同和問題につきまして、法務省では、人権教育・啓発に関する基本計画、これは平成十四年三月に閣議決定されたものですが、この計画に基づきまして、人権啓発の強調事項、すなわち特に強調して啓発すべき人権課題の一つに掲げまして、講演会の開催、啓発冊子の配布等、広く国民一般に向けた各種の啓発活動を実施するとともに、同和問題をめぐる人権侵害事案につきましては、人権相談及び人権侵犯事件の調査、処理を通じましてその被害の救済や予防を図ってきたところでございます。  また、同和問題の解決を阻む大きな要因として、いわゆるえせ同和行為の問題がございます。すなわち、同和問題を口実としまして企業や行政機関などへ不当な圧力を掛けて高額の書籍や機関紙を売り付ける、活動への寄附金、賛助金を要求する、そうした不当な利益を要求するえせ同和行為の横行の問題がございますことから、国におきましては、全省庁が参加するえせ同和行為対策中央連絡協議会を組織しております。また、地方におきましても、全国の法務局、地方法務局を事務局とするえせ同和行為対策関係機関連絡会を組織しております。  こうした協議会、連絡会が中心となりまして、えせ同和行為を排除するための取組を行っているほか、講演会の開催、啓発ビデオの作成等の啓発活動も行っているところでございます。
  180. 高木かおり

    高木かおり君 ありがとうございました。人権擁護機関等で講演会の開催ですとか啓発冊子等の配布等様々、今、最後、えせ同和行為の排除等、いろいろと行っていただいているとおっしゃっていただきました。  同和問題につきましては教育の現場での取組も大変重要で大きいものと思われます。文部科学省での取組を次にお聞かせください。
  181. 神山修

    政府参考人(神山修君) お答えいたします。  文部科学省におきましては、日本国憲法及び教育基本法の精神にのっとりまして、基本的人権の尊重の精神が正しく身に付くよう、地域の実情を踏まえつつ、学校教育及び社会教育を通じて、同和問題に関する差別意識の解消を含む人権尊重の精神の涵養に係る取組を推進しているところでございます。  具体的に申し上げますと、初等中等教育におきましては、児童生徒の発達段階に応じまして、人間の尊重についての考え方を基本的人権を中心に深めさせることなどについて指導することを通じまして、同和問題を含む人権課題に対する取組を推進しているところでございます。  また、大学におきましては、具体的な教育に関する事項は各大学が自主的に決定し、各大学の責任において実施するものでございますけれども、各大学の担当者向けの会議などを通じまして、人権教育について一層の理解と適切な対応を求めてきているところでございます。  また、社会教育におきましては、地方自治において社会教育の指導者として中心的な役割を担います社会教育主事の養成講習や現職の研修におきまして同和問題に関するプログラムを実施しており、公民館等において人権教育の着実な推進を図っているところでございます。
  182. 高木かおり

    高木かおり君 ありがとうございます。教育の面に関しましては様々いろいろと取組をしていただいているということでございました。  私は大阪の堺市の出身ですけれども、本当に私が小学生の頃も、堺市の方では「にんげん」という道徳の教科書を使ってこういった教育を受けてまいったのをちょっと今思い出したところでございます。  そうしましたら、同和問題が一番顕在化するといいますのは、やはり就職のときかと思います。厚生労働省での取組の方はいかがでしょうか、お聞かせください。
  183. 大西康之

    政府参考人(大西康之君) 人権教育・啓発に関する基本計画におきまして、雇用主に対して就職の機会均等を確保するための公正な採用選考システムの確立が図られるよう指導、啓発を行うこととされております。このため、厚生労働省におきましては、雇用主に対し、応募者に広く門戸を開き、適性、能力に基づく公正な採用選考を行うようパンフレットを配布する等により啓発指導を実施しているところであります。  また、地方自治体におきまして、同和問題を含む生活上の各種相談や人権啓発のための住民交流の拠点となるコミュニティーセンターとして隣保館が設置、運営されているところでございますが、厚生労働省といたしましては、自治体への補助を通じて隣保館が行う活動の推進に対する支援を行っているところでございます。
  184. 高木かおり

    高木かおり君 ありがとうございました。今厚生労働省での取組、就職に関しての取組等もいろいろと、人権に配慮したものですとか、そういったことも今お聞かせいただきました。  続きまして、その次、農林水産省ですね、農林水産省でも取組をされているというふうに伺っているんですけれども、詳しく教えていただけますでしょうか。
  185. 橋本次郎

    政府参考人(橋本次郎君) お答えいたします。  人権教育及び人権啓発の推進に関する法律に基づく人権教育・啓発に関する基本計画におきまして、全国農林漁業団体等が同和問題を始めとした人権問題に関する研修会等の教育啓発活動を行うこととされております。  このため、農林水産省では、人権問題啓発事業によりまして、全国農林漁業団体が当該団体の役職員を対象に実施する啓発活動の支援、そして府県への委託による地域の農林漁業団体役職員を対象とする啓発活動の実施に取り組んでいるところでございます。
  186. 高木かおり

    高木かおり君 今農林水産省の方でもお取り組みしていただいている、パンフレット等を発行する手助け、また窓口の研修費等、そういったこともやっていただいているということでございました。  今各省庁、どういった取組をしていただいているのかというのをざっとお聞かせいただきました。それで、様々このように既に取り組んでいただいておりまして、ある程度一定の効果も上がっているように私は思われます。それにもかかわらず、この法案提出提案されました。  そこで、提案者先生方にお尋ねをしたいと思います。本法律案提案される理由につきまして、いわゆる同和三法とその後の政府の取組についての提案者先生方の評価とともに御説明をいただければと存じます。よろしくお願いいたします。
  187. 門博文

    衆議院議員(門博文君) 高木先生質問にお答えをさせていただきたいと思います。  今回、この法律につきましては、私たち自民党、それから民進党、公明党、各会派から共同提案ということでさせていただいておりますけれども、まず、自民党の方の提案理由というか、その背景を簡単にお話をさせていただきたいと思います。  今御指摘いただきましたように、旧同和三法、これに基づいて地域の改善事業が行われて十分な結果が出てきているのは一つの成果だというふうに思っておりますけれども、その上で一般地区との格差は非常に改善をされております。  ただ、やはり私たち、党内で今回の法案をいろいろ作っていく中で、各方面の皆様方からもいろいろなことを聞かせていただいたり、そしてまた私たちも同和地区そのものにお邪魔をさせていただいて、地域の実態ということもヒアリングもさせていただきました。  そう考えますと、物的ないろいろな格差というのは解消できたということですけれども、やはり今なお部落差別というのは厳然と残っているという立場であります。午前に有田先生からも貴重な資料をお示しいただきましたけれども、やはり当事者の皆さん方の思いというのは我々がふだん感じていた以上に切実なものがあるということを認識をさせていただきました。  また、これは例えばの話ですけれども、過去に数字的にいろいろな事象が百あったものが十に減少したということを例えば捉まえて、百から十になったからいいじゃないかという御意見もあろうかと思います。ただ、逆に、十も残っているというような御意見もあろうかと思います。その上で、私たちは、やはりこの部落差別というのを根絶するために今回の理念法を提出をさせていただいております。  また、今までの質疑の中にも何度も取り上げられておりますけれども、インターネット等、新しい部落差別の実態があるということも我々承知をさせていただきました。この中で、よく寝た子を起こすなというような議論がありまして、この同和問題、部落差別を今更取り上げることによって寝た子を起こしちゃいかぬというような御意見もあるのは事実だと思いますけれども、有識者の方から聞かせていただいた一つの御懸念ということでいいますと、例えばインターネット、全くこの部落差別に知識のない若い人たちが見たと。何かこれ、人を嘲たり蔑んだりする材料にこのことが使われるんじゃないかということで、私たちが寝た子を起こすんじゃなくて、インターネットによってそういう差別意識を目覚めさせられる事象がこれから懸念されるのではないかというようなこともありまして、この法律を今提案をさせていただいた次第であります。
  188. 高木かおり

    高木かおり君 ありがとうございました。  詳しく、門先生の実体験等も入れながら、同和地区に訪れて声を聞いて、また、実際にまだまだ差別は残っているんだという認識を持たれたと、これを根絶するためにこの理念法を提案されたというふうに理解しております。  また、今インターネットのお話も出ました。寝た子を起こすなというような議論もあったかと思いますけれども、先生のおっしゃるインターネットを見て何も知らない若い世代の方々が間違った認識を持つということに対しての懸念ということも一定理解をさせていただきました。  今インターネットのお話も出ましたので、次の質問に入らせていただきたいと思いますけれども、本法案の成立による効果について概要をお聞きをしていきたいと思っておりますが、本法案の第一条におきまして、何度も出ておりますけれども、「情報化の進展に伴って部落差別に関する状況の変化が生じている」と書かれております。  本法案の提出の理由の一つには、このインターネットによる同和問題の再燃というのがあるのではないかと思います。  先ほどからもお話ありますが、インターネットを検索してみますと、やはりインターネット上で特定地域の名前が出てきて、それが差別されている部落であることが表示されていたり、現にネット上にはそういったことがあるのを私も認識いたしております。インターネットというネット社会の特徴から、一度情報が流れてしまいますとなかなかこれらの情報を消すことができない、このようなことから私たちもネット上で目に触れることが多くなってきているのではないかというふうに思っております。  そこで、次にインターネット上での同和問題への対応についてお伺いをしてまいりたいと思います。  まず、総務省にお聞きをしてまいります。  インターネット上で他人の権利を侵害する情報の流通につきまして、プロバイダー制限責任法(特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律)により、プロバイダーに対して削除請求などができるのではないかと思います。  例えば、ある人物が部落出身であるということをインターネット上で公表する行為は、その人物への権利侵害となり、プロバイダー制限責任法によってプロバイダーに削除を請求することができるんでしょうか、お答えください。
  189. 巻口英司

    政府参考人(巻口英司君) お答えいたします。  特定の方を名前を特定する形で人権侵害等なされている場合には、プロバイダー責任法に基づいて削除を請求していただくことができます。
  190. 高木かおり

    高木かおり君 それでは、続いて、インターネット上において特定地域を同和地区と掲載する行為に対しては、同様に削除を請求することができるんでしょうか、お聞かせください。
  191. 巻口英司

    政府参考人(巻口英司君) その場合は、特定の個人が名指しされているわけではございませんので、削除の要求はできないという形になっております。
  192. 高木かおり

    高木かおり君 では、続いて、同様の事案について法務省にお尋ねしたいと思います。  ある人物が部落出身者であるということをインターネット上で公表する行為、インターネット上において特定地域を同和地区と掲載する行為について、当該行為者に対する民事上、刑事上の対応を法務省にお伺いしたいと思います。
  193. 萩本修

    政府参考人(萩本修君) 法務省におきましては、インターネット上におきまして、不当な差別的取扱いを助長、誘発する目的で特定の地域を同和地区であると指摘する、そういった内容の情報を認知した場合には、人権侵犯事件として立件の上、調査を行い、違法性が認められると判断した場合には、当該情報の発信者に対し、その情報の発信をやめるとともに、また同種の行為を繰り返さないよう説示をする、あるいはプロバイダーなどに対し当該情報の削除を要請する、そうした対応に努めてきたところでございます。  また、インターネット上、そうした同和問題に関する差別への対処方針につきましては、現在、電気通信事業を所管する総務省等とも連携しつつ検討を進めているところでございます。  今後も引き続きそうした対応に努め、必要な検討を進めるとともに、同和問題に関する偏見や差別意識をなくすための啓発活動にも取り組んでまいりたいと考えております。
  194. 高木かおり

    高木かおり君 現在、特定の地域を同和地区であるとする情報がインターネット上に掲載された場合、当該情報の削除等を、プロバイダー等に削除の要請ができるということでございますけれども、同じような質問が先ほどもあったかと思いますが、例えば相手が削除要請を拒否することも考えられると思います。そういった場合の対応について、再度法務省の方に伺いたいと思います。
  195. 萩本修

    政府参考人(萩本修君) これも繰り返しの答弁になってしまいますが、法務省の人権擁護機関が行っております人権侵犯事件について講ずる措置は、強制力を有するものではなく、あくまで任意の対応を促すものでございます。  したがいまして、拒否された場合にはそれ以上の強制力はないわけですけれども、一度その要請をして削除に応じてもらえなかったからといってそれでもう要請をやめるということではなく、事案によっては、その行為、その書き込みの違法性ですとか被害の重大性などについて繰り返し説明をし、粘り強く削除を要請するというようなことをしておりまして、その結果削除が実現したものも現にございます。
  196. 高木かおり

    高木かおり君 ありがとうございました。  何度も粘り強く要請をしていくということでございました。現段階におきまして情報化社会に対する対応というのもやっていただいているというふうに認識をいたしました。  では、この今の枠組みではあと何が足りないんでしょうか。そういったことをちょっと提案者先生方にお聞かせいただきたいと思います。
  197. 若狭勝

    衆議院議員(若狭勝君) まず、高木委員のインターネットにおけるいろんな問題、あるいは今後起こり得る問題点についての指摘についてはまさにおっしゃるとおりというふうに考えておりまして、インターネットによる今後のそうしたいろんな差別的行為がかなり手に負えないぐらいになっていくのではないかという懸念の下で今回の法律提案させていただいたという、私どもの提案者の考え方と全く同じところでございます。  そして、まさしく今関係省庁からお答えいただいたんですが、今現在ある法律の下でそうしたインターネットの削除要請等々いろんなことをするということはもとよりですが、しかしながら、それも限界があるのは否めないと思うんです。そうした場合にやはり一番大事なことは、こうした差別が発生しないような社会的意識というのを一層高めるというのがこの問題の一番大事な解決策というふうに我々は考えております。  したがって、今回の法案においても、まさしく部落差別を解消する必要性に対して国民一人一人の深い理解が得られるようなそうした施策推進するということ、それによってこうした部落差別がない社会実現しようというのが我々の意図しているところでございます。
  198. 高木かおり

    高木かおり君 ありがとうございました。若狭先生おっしゃった社会的な意識、そういったものを改善していくということは本当に大事なことだなというふうに思っております。  今日は、各省庁にもどういった取組を行っているのか、また私が大変懸念しているこのインターネット上でのこういった新たな差別が起こるのではないか等、様々な質問を今日はさせていただきました。  最後に、盛山副大臣の方にお伺いをしたいと思います。先ほどの提案者先生の発言等も含めながら、この法案が成立した際には、これまで、どのような点で違う取組をされるのか、また今後の対応全般について見解の方をお聞かせいただきたいと思います。
  199. 盛山正仁

    ○副大臣(盛山正仁君) 先ほど来いろんなやり取りがございましたけれども、一般的に、インターネット上において不当な差別的取扱いを助長、誘発する目的で特定の地区を同和地区であると指摘するなどの事象については人権擁護上問題であると私ども考えております。  法務省の人権擁護機関では、そのような事象を認知した場合には、当該情報の削除をプロバイダー等に要請するなどの対応に努めてきたところでございます。今後も引き続きこのような対応に努めてまいりたいと思います。  さらに、この今御審議中の法案が成立した後と、こういうことになるわけでございましょうけれども、こうした問題につきましてはそもそも社会全体の人権意識を高める必要があると思います。差別的な情報を発信することは許されない、こういう意識を醸成することも大変重要であると考えております。  同和問題に関する偏見あるいは差別をなくすための啓発活動、こういったものに引き続き取り組むとともに、一層の実効性のある施策、どういうものがあるのか検討してまいりたいと考えております。
  200. 高木かおり

    高木かおり君 盛山副大臣、ありがとうございました。  日本社会の中で一部の方々に対して本当に長く続いてきたこれらの部落差別の問題ですけれども、一日も早く解決できるように、取組をすることによって逆に先ほどから出ておりました差別の掘り起こし、こういったことにつながらないように、是非とも前に進めていただくことをお願いいたしまして、私の質問を終わります。ありがとうございました。
  201. 糸数慶子

    ○糸数慶子君 沖縄の風の糸数慶子です。  部落差別の解消の推進に関する法律案についてお伺いいたします。  まず、部落差別の実態調査についてですが、法案の第六条で、国が、部落差別の解消に関する施策の実施に資するため、地方公共団体協力を得て、部落差別の実態について調査することが盛り込まれました。当事者団体からは、どのように調査が行われるのか懸念する声が上がっております。衆議院法務委員会でも、またこの委員会でもこの実態調査については度々質問がされておりますが、改めて伺います。  この調査は、差別される側の意見を十分に反映して行われるべきだと考えますが、どのように行う予定なのか、伺います。
  202. 宮崎政久

    衆議院議員(宮崎政久君) お答え申し上げます。  まず、委員指摘の差別される側の意見を反映する、すなわち、当然、調査によって新たな差別を生み出すことがあってはならないというような御趣旨理解しておりますけれども、そのようなことがあってはならないということは、繰り返し申し上げておりますとおり、この発議者も同じ認識でいるものでございます。  そして、この法案全体の構成というんでしょうか、この調査の項目も含めまして少し敷衍をして御説明をさせていただきますと、例えば旧同和三法というものがありましたが、これは差別を受けてきた方々やその地域を対象として生活環境の改善などのために財政支出を伴う事業等を行うというようなことでございました。本法案は、国民全体を対象として、部落差別の解消の必要性に対する国民一人一人の理解を深めるように努めることによって、部落差別が発生しないように社会的な意識を確立するということを目的としているものであります。  施策対象であったりその内容もこのような形で違うわけでありますが、こういう趣旨からいたしまして、差別を受けてきた方々であるとかその地域を対象としたものというものは旧同和三法が主眼としてきたものでありますが、今私たちが必要だと考えているのは、国民全体を対象として部落差別が発生しないような社会的意識の確立を目指すこと、それであるがゆえに、この法案の第二条には基本理念を定めまして、この基本理念の中では、この法案における施策としては、全ての国民が等しく基本的人権を享有するかけがえのない個人として尊重されるものであるとの理念にのっとって、部落差別を解消する必要性に対する国民一人一人の理解を深めるように努めることにより、部落差別のない社会実現することを旨として行わなければならないということを、この第六条の施策にも当然掛かるもの、基本理念として定めているところでございます。  でありますので、この文言にもございますとおり、部落差別の解消に関する施策の実施に資するための調査を行うものでありまして、部落差別を受けた人や地域を個別に掘り出して公表するような形式のものであってはならず、また新たな差別を生むような方法による調査はこの法案理念に反するものであるということを申し添えたいと思っております。  以上です。
  203. 糸数慶子

    ○糸数慶子君 次に、戸籍の不正取得についてでありますが、戸籍情報を不正に入手して差別事件になった事案を全て調査し、責任者を処罰するよう国連から勧告をされております。不正取得防止目的で二〇〇八年に戸籍法が改正され、本人確認を始め使用目的を厳しくチェックすることになりました。しかし、その後もプライム総合法務事務所事件が発覚し、膨大な戸籍情報が不正入手されたことが明らかになりました。さらに、闇の情報屋と呼ばれる調査会社の存在も明らかになりましたが、差別事件を調査すれば、あらゆる手段を用いて出自を明らかにする戸籍情報を入手しようとする実態が分かります。  戸籍情報が電子情報化され、瞬時に情報入手が可能となりました。電子化された戸籍情報もまた個人情報保護法の下で管理することが求められています。しかし、戸籍情報は個人情報保護法の適用除外とされているために不正取得が後を絶ちません。本人の同意なくして第三者に提供しないとの原則を戸籍情報にも適用すべきだと考えます。  そこで伺いますが、この法案が成立すれば不正取得はなくなるのでしょうか、お伺いいたします。
  204. 宮崎政久

    衆議院議員(宮崎政久君) 委員指摘のプライム事件、社会的にも非常に批判を浴びた戸籍の不当な手段による取得、しかも大規模な事件であったわけであります。  戸籍を不当な手段で取得する行為が、当然ですが、これ許されるものでないということにつきましては、発議者委員と認識を共有しているものだというところでございます。そして、本法案は理念法でございまして、特定の行為に対する禁止行為であるとか罰則規定などをこの法案において定めているというわけではございませんので、不正取得をなくせるかという御質問であるとしましたら、それは戸籍法等の法令違反に該当する場合に処罰の対象になるという形で対処をしていくものと理解しているということになります。  ただ、この法案は戸籍の不正取得というものを直接規制しているわけではないわけでありますけれども、部落差別の解消に関する施策推進を図りまして部落差別の解消を図って、こういう事件があったような、そもそも部落の出身者であることを調査する目的で戸籍を取得するような行為が行われることがないような社会を目指しているというものでありまして、この法案理念法によって、最終的には、第一条の目的に記載をしているわけでありますけれども、第一条の末尾にありますが、部落差別の解消を推進して、もって部落差別のない社会実現することを目的としているものでありまして、このような不正取得、要は部落出身者であることを調査することを目的とするような調査をしようというようなことが起きない社会を目指しているというふうに御理解いただければと思っております。
  205. 糸数慶子

    ○糸数慶子君 この法案趣旨がしっかり国民理解されて、不正取得がなくなるということを期待をしていきたいと思います。  また、部落差別の撤廃については、これまで国連の人種差別撤廃委員会を始め各人権委員会から度々勧告をされております。私も出席いたしましたが、今年の二月にジュネーブで行われた女性差別撤廃条約第七回、第八回日本政府報告書審査では、部落を含めたマイノリティー女性への複合的、交差的差別が続いていることについて懸念が示されました。差別禁止の法制定や、偏見を根絶するための監視と評価を行うことが勧告され、フォローアップの対象にもなっているということは申し添えておきたいと思います。  先ほど、小川委員に対する外務省の答弁で、国連からの勧告には法的拘束力はないという答弁がありました。それは了解しておりますけれども、条約加盟国には条約実施義務があり、憲法九十八条二項でも、「日本国が締結した条約及び確立された国際法規は、これを誠実に遵守することを必要とする。」というふうに規定しています。つまり、締約国は、条約実施のためにその状況について数年ごとに報告書を提出することが義務付けられており、その報告書審査で勧告されればそれに従うことは当然で、締約国の責務であるというふうに思います。法的拘束力がないという答弁がありましたけれども、それは開き直りと誤解されることのないよう、条約実施のために勧告には従うという積極的な姿勢を示していただきたいというふうに思います。  それから、次の質問ですが、これは差別という点では沖縄県民に対する土人発言についても根っこは一緒だと思いますので、お伺いをしたいと思います。  十一月二十五日の衆議院法務委員会におきまして、警備中の警察官国民に対して土人というような発言を行った場合、一般論としてどう考えるかという委員質問に対し、法務省人権擁護局長は、不当な差別的言動はいかなる者に対してもあってはならず、人権擁護上問題があるというふうに答弁されました。この発言は差別的言動に当たり得ることは否定できないというふうに答弁されているわけです。金田法務大臣も同様の見解である旨が答弁されたわけです。けれども、他方、鶴保沖縄担当大臣は機動隊員による発言を差別と断定できないと発言し、政府もまた差別と断定できないという鶴保大臣の発言を容認する答弁をしています。  そこで、改めてこの問題について伺いますが、政府は、発言を人権問題と捉えるかどうかについては言われた側の感情を主軸に置いて判断すべきとの見解を既に示しておりますが、土人と言われた芥川賞作家の目取真俊さんは、この発言を、見下しており、沖縄に対する侮蔑だと見解を述べています。  土人とは未開の土着人を指します。この言葉だけでも人に対して使うことは差別的ではばかられる状況だと私は思いますけれども、大阪府警の機動隊員は土人発言の直前に、触るなくそ、どこつかんどんじゃ、ぼけという侮蔑的な発言を行っています。この一連の発言を差別と断定するのは容易なことだと思いますが、差別と断定できないのか、改めて政府参考人にお伺いいたします。
  206. 萩本修

    政府参考人(萩本修君) 御指摘のありました沖縄における警察官による発言につきましては、政府としまして、相手方を極めて不快にさせ、警察の信用を失墜させるような不適切なものであると、まず答弁しているものと承知をしております。その一方で、指摘がありましたとおり、その発言につきまして、差別と断定することはできないとも答弁しているというように承知をしております。  なぜ断定できないかという理由は説明されていないわけでして、私の理解するところということになってしまいますけれども、土人という言葉、今委員からも御指摘がありましたとおりの意味のほか、国語辞典などを引きますと複数の意味が紹介されているところでして、具体的な場面においてどのような意味合いで用いられているかについて一義的に述べることは困難という側面があろうかと思います。また、その具体的な発言そのものが差別に当たるかどうかにつきましては、その発言がされるに至った経緯、その際の具体的状況等によるという面もあろうかと思います。そうしたことから、御指摘の発言を差別と断定することはできないというように説明しているものと理解をしております。  いずれにしましても、御指摘警察官の発言が不適切であり、また大変残念で許すまじきものであることは、これまで国会審議の場等々で繰り返し政府の関係者から答弁されているとおりと受け止めております。
  207. 糸数慶子

    ○糸数慶子君 部落発言も、この部落に対する差別、それからこの沖縄県民への土人という発言も、これ沖縄県民への差別も、私、同根だというふうに思います。とんでもない発言であるにもかかわらず、これ、差別的言動といったものが差別に当たらないと主張しても、言われた側が差別であると受け止めればそれは差別に当たるわけです。  今のお答えの中に、複数、辞典の中にあるというふうにおっしゃっておりますけれども、やはりこの提案されております法案も、長年差別を受けた側が差別をやめてほしいというその願いから生まれたものだというふうに思うわけですが、この沖縄の歴史的な現実を考えていきますと、これまで七十年以上も本当に本土から切り離されて、しかも県民の思いというのが、ことごとくこれまでの沖縄の選挙でも示されてまいりましたように、民意というのは新たな基地を造ってほしくないという、その中での県民の運動の延長線でこういうことを発言されたわけです。それ私、本当に差別をした発言だと思うわけですけれども。  今日はこの場に発議者として宮崎議員もいらっしゃいます。沖縄の議員として、この今の発言に対して一言御感想を求めたいと思います。どのように受け止められていらっしゃいますでしょうか。
  208. 宮崎政久

    衆議院議員(宮崎政久君) この法案との関係で申しますれば、この法案、これまでの様々な質疑、この法案提出に至るまでの各党における様々な関係される皆様からのいろんな事情を聞かせていただいたこと、歴史を学び、そういったことを踏まえて今回この法案提出に至ったものであります。例えば、旧同和三法で築き上げられてきた例えば生活環境の改善などについての成果があることもしっかりと踏まえた上で国民意識を、部落差別は許されないものだという意味での国民意識をしっかりと確立をしていく必要があるという趣旨であります。沖縄に関することも、長い歴史の中で様々培われたことを一つ一つ実現をしていかないといけないという趣旨であれば全く同じことであります。  私自身の様々な感情はありますけれども、ここは法案質疑する場でありますし、また、政府の関係者の発言に対する評価等にわたることは私がこの場で答えるのは適切でないと思いますので、発言を控えさせていただきます。
  209. 糸数慶子

    ○糸数慶子君 残念でございます。今、私は、この土人発言に対する直接の宮崎議員の思いをお伺いしたいと思いまして質問したわけでございますが、先ほど提案がありましたように、国民一人一人の理解を得てこの法案を成立をさせていく、そして、そういう意味では差別ということを、部落の差別も沖縄県民への差別というのも同根ではないかということを私申し上げたわけです。で、それに対する思いはいかがですかと。沖縄担当大臣である鶴保大臣がああいうふうな発言をされておりますけれども、それに対して全く沖縄の立場からお話ができないというのは本当に残念であります。  この法案も、長年差別を受け続けた側が差別をやめてほしいという願いから生まれたものだというふうに思うわけで、沖縄での、先ほどから申し上げております基地に対する反対の、そういう立場から運動している人たちの人権というのは、国民の一人として当然受け入れられるべきだというふうに思っております。そういう意味での差別の発言であるということをはっきり宮崎議員の口からここでお伺いしたかったわけですけれども、個人の感情は別としてということでございましたので、あえてこれ以上追及いたしませんけれども。  やはり、こういう法案も、長年差別を受けた側が差別をやめてほしいという願いから生まれたものだというふうに思います。部落差別が一日も早く解消されることを願いまして、私の質問を終わりたいと思います。  終わります。
  210. 山口和之

    ○山口和之君 無所属の山口和之でございます。  本日は、部落差別解消推進法案質疑ということですが、先ほども逢坂発議者から出たように、北海道出身であるということですが、私も東北出身なので、正直言ってこれまで部落差別について身近に認識したことはございません。しかし、本法案の質疑を準備する中で、改めて部落差別の現実、そして差別された方々の痛みについて考えさせられるところが多かったと思います。  既に多くの論点が出ており、重複する部分もかなりあると思いますが、差別の解消を目指す、部落差別の解消を目指すという重要な法案なので、重複については容赦願いたいと思います。  まず初めに、今回初めて部落差別というワードを使った法律になるわけですが、その意味について所見を伺いたいと思います。
  211. 門博文

    衆議院議員(門博文君) 御質問ありがとうございます。  まず、その背景を言いますと、今御指摘いただきましたように、部落差別という言葉を用いたものは、かつて法律案としては提案された経緯があったと聞いておりますけれども、実際のところ、法律として成立したものは、御指摘のように、今のところありません。それで、かつては、旧三法の話も今出ておりましたけれども、同和対策事業とか同和問題という言葉が使われておったというふうに我々も認識をしております。  そこで、今回、先ほども申し上げましたように、私たちこの法律を作っていく中で様々な方々からお話を伺い、そして様々な実態を我々なりにいろいろ調査、取材をさせていただきました。その中で立法手続を我々党内で取ってきたわけですけれども、そのときに、今御指摘いただいているように、要するに、名は体を表すではないですけれども、法律の名前をどうするかというところに当然我々もぶち当たったわけなんです。  そのとき、いろいろな方々の御意見の中で、まず一番消極的な御意見としたら、部落差別はなくなってはいないけれども、もう非常に少数になってきているから、今更ながら寝た子を起こすなよというような議論もありました。ただ、お話しいただいている中で、同和事業とか同和問題という、そういう直接的な表現じゃないことでなくて、この際、部落差別という言葉を鮮明にしてこの法律を作ることが部落差別を解消していく意義になるのではないかという意見のところに到達をしまして、関係、いろんな団体の方又はその地区の方々にもいろいろお話をさせていただいたところ、非常に皆様方も覚悟していただいた上だと思いますけれども、この名前を、この四文字の部落差別ということを法律の名称に掲げてほしいということでありましたので、あえて掲げさせていただきました。  今も朝からの質疑の中で、確かに私も趣旨説明の中に部落差別という言葉を何度もこの場で発言させていただきましたし、質疑の中でもこの部落差別という言葉が何回も行ったり来たりをしているということであります。  私のこれは私見ですけれども、今までは、なかなか声高にこういうことを言わないでとか、余り言うこともはばかるような状況もあったと思いますけれども、逆にこのことを、この法律ができ上がっていき、そしてこの法律ができ上がることによって、そういう陰にこもっていろいろなことを語っていくのでなくて、もっと正面からこの問題を語れるような環境をつくっていきたいと、そういう思いもあって、今回この部落差別という言葉を法律に冠させていただいたところであります。
  212. 山口和之

    ○山口和之君 ありがとうございます。  次に、法案の第一条に、部落差別は許さないに込められた意図について伺いたいと思います。
  213. 江田康幸

    衆議院議員(江田康幸君) 今先生申されました部落差別は許されない、この意図についてお答えをいたします。  先ほど来述べておりますように、部落差別は厳然として存在しているという認識に立っておりますが、提出者としましては、全ての国民基本的人権の享有を保障する日本国憲法の理念にのっとっていくならば、部落差別は許されないものであると認識しております。このような認識の下で、これを解消することが最も重要な課題であるということを考えておるわけでございます。  憲法が保障するこの内心の自由、また表現の自由への配慮も踏まえた上で、本法案は禁止規定また罰則規定というものはない理念法ではありますけれども、本法案が成立することで、立法府として、部落差別は許されないというその姿勢を示すことは大きな意味があると考えております。
  214. 山口和之

    ○山口和之君 私は差別というのは心の問題というふうには思っておりますが、この法案で、部落差別という言葉を初めて法律で使って、部落差別は許さないとはっきり宣言することの意義は大きいのかというふうにも思います。  そこで、それぞれどのような思い法案作りに取り組んだのか、発議者のうち各会派からそれぞれ伺いたいと思います。思いについてお願いします。
  215. 門博文

    衆議院議員(門博文君) 引き続きお答えをさせていただきたいと思います。  先ほどの高木委員への御答弁と重複する部分があると思いますけれども、やはり旧同和三法が施行されて物的な環境というのは随分改善されてきたということは誰もが理解をしているところでありますし、評価もしているところであります。ただ、先ほど来御議論がありますように、部落差別というのが現在日本にあるかないか、部落差別がどうあるかという定義であったり、誰が認定するのかという議論もありましたけれども、原点の、部落差別が今、日本にあるのかどうかということから考えますと、我々は、厳然として残っているという認識に立った上で、ひとつこの法律を作っていく意義というのを確認をさせていただきました。  それから、先ほど来これも何度も御指摘を、触れていただいておりますけれども、新しい形のインターネットのような環境を使って今までなかったような部落差別の実態があるということも、今回この法律を作っていく我々の原動力になったのも事実であります。  そして、私たち、先ほど来もお話ししておりますように、この法律を党内で作っていくプロセスの中でより多くの方々から御意見を聞こうということで、偏って一つの民間団体から集中的にお話を聞いたということでなくて、その方々からもお伺いをしましたし、そしてまた、必ずしもその団体の、後ろ側というか配下というか、そういうところにいらっしゃるとは言えない一般の地区の方々のお考えも我々なりに十分取材をさせていただいてこの法律を作る背景になったということでありますので、御理解をいただきたいと思います。
  216. 井出庸生

    衆議院議員井出庸生君) 民進党の取組ということで御答弁をさせていただきます。  民進党は、民進党結党以前の旧民主党時代から人権政策推進議員連盟を置き、そうしたことに対する活動を日常的に続けてまいりました。また、私もそうなんですが、旧維新の党、高木先生のところの皆さんと御一緒にさせていただいていた時期もございますが、旧維新の党におきましても、特に大阪でヘイトスピーチに対する取組ですとか、その差別に対する意識というものは持ってやってきたつもりでございます。今回の立法に当たりましても、党内の政調の会議ですとか議連等におきまして関係者とのヒアリングを重ねてまいりました。  今日、インターネットのお話、特に出ておりますが、私の地域でも、部落という言葉を直接的に言わなくても、その地域や人のことを指して、そういう人があれだというような言い方というものもまだ残念ながら時折聞くこともありますし、その実態、現実の場であれだと、そういう表現がインターネットになればもっときつい表現になってしまうと。  そうした現状も考えますと、これまでのような地域個別に対する対応ではなくて、やはり差別というものがあってはならないと、先ほどちょっと沖縄の話も出ましたが、大臣であろうと若い警察官であろうと、全体として差別をなくしていくと、そういう方向のために御理解賜れればと思っております。
  217. 江田康幸

    衆議院議員(江田康幸君) 公明党でございます。  我が公明党は、平成十一年から党内に同和対策等人権問題委員会を設置して、関係団体の皆様とは継続的に意見交換を行いながら、この部落差別の問題に長年に取り組んできたところでございます。また、本年五月にはこの部落差別解消推進法プロジェクトを設置をさせていただいて、改めて関係団体の皆様方からこの意見交換を行わせていただいてまいりました。  そういう中で、団体の皆様からは、かつての同和対策事業特別措置法の施行でこの同和地域の物理的な生活環境の改善は進んではきているけれども、一方でやはり部落差別は今なお存在しているということをお聞きいたしました。いまだに結婚、また就職における差別、そして差別発言や具体的には差別ビラ配布、そういう部落差別が厳然と行われていることをお聞きし、またさらには、先ほど来述べております、過去に深刻な人権侵害を引き起こした情報がネット上に流れるなど、新たな差別問題が、この差別行為が問題になっているということもお聞きをして、まさに部落差別を解消するためのその対策の重要性を、その切実な声をお聞きしたところでございます。  今なお部落差別が存在するというこのような中で、我々立法府が、この現行の法制度ではやはり部落差別を禁止する法律がないがゆえに多くの皆様方が今もなお苦しんでおられるその現状に対して、我々立法府はこうした声に応えるべきだと、そういう思いでこの法整備の検討を進めさせていただいて、今般、この部落差別の解消を推進して部落差別のない社会実現を目指すことを目的とする本法案をこの国会に提出をさせていただいたところでございます。  これが我が党の提案理由でございます。
  218. 山口和之

    ○山口和之君 ありがとうございます。部落差別の解消を目指して、本法案の発議者思いがよく理解できました。ありがとうございます。  同和問題に関する国民の差別意識の現状について、人権教育・啓発に関する基本計画においてはどのように認識しているのか、法務省に伺いたいと思います。
  219. 萩本修

    政府参考人(萩本修君) 委員から御指摘のありました人権教育・啓発に関する基本計画、これは、平成十二年に成立、施行されました人権教育及び人権啓発の推進に関する法律の第七条に基づきまして、人権教育及び人権啓発に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るため策定されたものでして、平成十四年三月に閣議決定をしたものでございます。  この計画の中では、同和問題に関する国民の差別意識の現状につきまして、政府が実施してきた各種取組を紹介した上で、これらの施策等によって、同和問題に関する国民の差別意識は着実に解消に向けて進んでいるが、地域により程度の差はあるものの依然として根深く存在していることから、現在でも結婚問題を中心とする差別事象が見られるほか、教育、就職、産業等の面での問題等がある。また、同和問題に対する国民理解を妨げるえせ同和行為も依然として横行しているなど、深刻な状況にあるとの認識が示されております。
  220. 山口和之

    ○山口和之君 同基本計画においては、同和問題は我が国固有の重大な人権問題であり、その早期解消を図ることは国民的課題でもあると位置付けられています。さらに、同和問題だけでなく、別の箇所では、人権を取り巻く情勢について、新たにインターネット上の電子掲示板やホームページへの差別的情報の掲示等による人権問題も生じているとも述べられています。  要は、差別解消へ向けて着実に進んでいますが、地域によりまだまだ根深く差別意識があり、差別事象がある。さらに、新たにインターネットを使った差別事象が出現していると。基本計画は平成十四年の閣議決定ということでしたが、同和問題に関するこの認識は現在も維持されているのか、伺いたいと思います。
  221. 萩本修

    政府参考人(萩本修君) 今委員からも御紹介をいただきましたが、同和問題に関する国民の差別意識は、着実に解消に向けて進んでいるが、地域により程度の差はあるものの依然として存在しているとの認識に現在も変わりはございません。
  222. 山口和之

    ○山口和之君 では、次に、同和問題に関する人権侵犯事件の新規救済手続開始件数の最近の動向、また、その種別ごとの内訳について伺いたいと思います。  あわせて、法務省の同和問題解消へ向けた取組について、先ほど来ずっと出ておりますので、かいつまんで簡潔にお願いしたいと思います。
  223. 萩本修

    政府参考人(萩本修君) 委員から今お尋ねのありました同和問題に関する人権侵犯事件の新規の救済手続開始件数ですが、過去五年間を申し上げますと、平成二十三年が百三十七件、平成二十四年が百十件、平成二十五年が八十五件、平成二十六年が百十七件、平成二十七年が九十三件でございまして、年間百件前後で推移している状況にございます。もちろん、これはあくまで法務局におきまして人権相談などを通じて把握している件数でして、全国の同和問題の実態を網羅的に把握しているものではございません。  それから、その内訳になりますけれども、全てを申し上げるのではなく直近の平成二十七年の九十三件を見てみますと、内訳としましては、差別表現が六十一件、結婚、交際に関するものが十二件、雇用に関するものが一件、商品、サービス等の提供拒否に関するものが一件、その他十八件となっておりまして、他の年も大体同様の傾向が見られるところでございます。  それから、こうした状況を踏まえました法務省における同和問題の解消に向けた取組ですけれども、法務省におきましては、人権啓発、それから人権の調査、救済と、その二本立てで様々な施策に取り組んでいるところですけれども、まず、啓発の側面におきましては、人権啓発の強調事項、すなわち特に強調して啓発すべき人権課題の一つとして掲げまして、講演会の開催、啓発冊子の配布など、広く国民一般を対象とする各種の啓発活動を実施しているところでございます。また、他方の同和問題をめぐる人権侵害事案につきましては、人権相談及び人権侵犯事件の調査、処理を通じまして、その被害の救済及び予防を図ってきているところでございます。  今後も引き続き同和問題に関する偏見や差別意識をなくすための啓発活動等にしっかり取り組んでまいりたいと考えております。
  224. 山口和之

    ○山口和之君 人権侵犯事件の件数の推移については、まだまだ差別意識というのが残っている、根深いということが分かると思います。  次に、各省庁に伺うところですが、高木委員のところで質問されて回答されておりますので、質問を一つ飛ばさせていただいて、ここで発議者に伺いたいんですが、本法案が成立することにより、これまでの政府の取組をより後押しするものになるのかどうか、その点について伺いたいと思います。
  225. 若狭勝

    衆議院議員(若狭勝君) 山口委員にお答えいたします。  まさしく本法律案は、国民一人一人のやはり部落差別を解消しなければいけない必要性について理解を深めていただいて、よって部落差別がない社会実現しようということをその理念としております。そうした理念を有しているこの法律案が成立することになれば、各省庁においてのこれまでの政策あるいは今後の施策について、その後押しすることになるというふうには考えております。
  226. 山口和之

    ○山口和之君 今おっしゃった点で、これまでより前進するということだというふうに理解しました。更に加速的に各省庁が取り組みやすくなるというふうに理解させていただきます。  そこで、法案にある具体的な施策ですが、第四条にある国や地方公共団体が相談に応ずるための体制の充実を図ることの必要性について伺いたいと思います。なぜ充実することが必要なのか、次に、国や地方での相談体制の充実という場合の具体的なイメージをどのように考えているのか、伺いたいと思います。
  227. 若狭勝

    衆議院議員(若狭勝君) 提案者としては、やはり部落差別の解消というのが極めて重要な課題であるというふうに思っているところでございますので、まさしく部落差別に関する相談に的確に応ずる、そうした体制が充実する、常に充実していくということが極めて大事だというふうに思っております。したがいまして、その必要性は十分にあると思うところでございますが、具体的には、国、地方公共団体の連携体制を強化するとか、あるいは効果的な相談対応のための職員研修の実施等、様々なものをどんどんどんどんと進めていくというようなことが考えられると思います。
  228. 山口和之

    ○山口和之君 ありがとうございます。  最後に、教育、啓発について、国及び地方公共団体に必要な取組を進めるようにとの内容になっておりますが、現行の人権教育・啓発推進法との関連をどのように考えているのか、お教え願いたいと思います。
  229. 若狭勝

    衆議院議員(若狭勝君) 既に、御指摘のように、法務省においては、人権教育及び人権啓発推進に関する法律というのがございまして、その下で人権教育、人権啓発の施策推進、実施しているところでございますが、この部落差別解消が極めて重要な課題であるということを踏まえまして、特に、本法律案においてはそうしたきちんとした人権教育、人権啓発を推進する必要性についてうたったものでございます。  したがいまして、個別法において改めてそういう、本法案において規定したわけでございますので、それを踏まえて、手法としては今までの法務省において行われている人権教育、人権啓発の推進等においては変わらないとは思うんですが、ただ、個別法においてそうしたことを理念として強く打ち出したことによって、更に関係省庁においていろいろと施策推進していただけるものと思っておりますし、特に、今回、午前中からずっと審議していただいておりますが、何はともあれ、とにもかくにも、インターネットによる部落差別というのが今行われつつあると。これを放置すると、もう本当に手に負えないぐらいの状態になってしまうということを我々としては危惧しまして、それを何とか今の段階できちんと対応しておく必要を感じて本法律案を制定していただこうと思っている次第でございますので、その辺も、要するにインターネットの状況等を関係各省庁においても十分踏まえていただき、更に一層の部落差別の解消に向けての推進政策をしていただけるというふうに思っております。
  230. 山口和之

    ○山口和之君 私の質問は以上で終わりますけれども、私自身の思いとしてですが、昨今は差別表現がより極端に激しくなっております。外国人へのヘイトスピーチ、そしてナチスの思想すら思い起こさせるような相模原の障害者施設での殺人事件など、差別がより攻撃的な装いを見せているようにも思います。  そんな中で、この法務委員会からヘイトスピーチ解消法が五月に成立しました。今回は、部落差別解消法案を是非とも成立させ、部落差別の解消への取組を前進させる。このことは、この法務委員会が人権のとりでとして大きな役割を担っているという責任の重さについて、私自身も思いを新たにしているところを申し上げたいと思います。  これで質問は終わらせていただきます。
  231. 秋野公造

    委員長秋野公造君) 本案に対する本日の審査はこの程度にとどめます。     ─────────────
  232. 秋野公造

    委員長秋野公造君) 参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  部落差別の解消の推進に関する法律案の審査のため、参考人出席を求め、その意見を聴取することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  233. 秋野公造

    委員長秋野公造君) 御異議ないと認めます。  なお、その日時及び人選等につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  234. 秋野公造

    委員長秋野公造君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後三時四十一分散会