○
風間直樹君 ということですので、検査院といろいろやり取りしてみますと、国の行政機関に対して検査院が毎年、
日銀含め様々な機関に検査を行っていると。そこからいろんな検査結果が上がってくるんだけれども、その結果を見た上で、この検査結果は国民に対して検査院としてやはりきちんと開示をして情報を伝える必要があると
判断したものについては今回の
日銀の
ケースのように報告をするということでありました。したがいまして、検査院としても
日銀の現在の
金融政策と財務
状況に対して一定の懸念を持っているんだろうというふうに私は理解をしたところであります。
さて、先週の
委員会で、藤末
委員の
質疑の中で配付
資料が配られました。今日、お手元に再度配付させていただきましたが、この配付
資料の一ページ目の
財政危機時における法制度の
枠組みという
資料、一ページ目と二ページ目がそうです。私、これ
かなり網羅的に危機時の法制度をつまびらかにしているなと思ったものですから、
委員会が終わりましてからいろいろと、この中で現時点でどれが有効なのか、また
状況の
変化によって有効でなくなったものはどれかということを調べてみました。その結果が配付
資料の三枚目であります。ちょっとこれを簡単に
説明させていただきたいと思います。
私がこの藤末
委員の
資料を見たときの率直な感想としては、この中に、法制度の
枠組みとして、万一の場合、
日銀が保有している
国債を担保として例えば
金融機関の資金繰りに対してそれを活用するといったスキームが幾つかあるんです。ただ、これだけ大量の
国債を
日銀が保有している
状況になってくると、将来、万一
国債のマーケットに
変化が起きた場合、
日銀保有の
国債自体の価格が
下落する
可能性もあると。その場合、
国債が担保として使えるんだろうかという問題意識が私の頭にありました。
そこで、この法制度の
枠組み一つ一つの項目について検討した結果が三枚目であります。
一番上の分類は、
日銀による資産買入れ、そして資金供給のスキームですけれども、左から二番目に項番が付してありまして、この項番は藤末
委員配付の
資料の項番に相当するものです。その右に
枠組みの名称、その
枠組みのメリットとデメリットがそれぞれ記載してあります。
例えば、最上段の
日銀による
長期国債の買入れの増額、これが項番でⅠ―1―(2)という藤末
委員の配付
資料に相当するわけですけれども、これなどは、例えばデメリットとしては、
長期金利が現在上昇傾向にある中での買入れ増額は
日銀のBSにおける評価損を拡大させると、こういうデメリットが考えられます。
また、その下の
日銀による
国債を担保とした貸付け等による民間
金融機関の資金繰り確保というスキームに関しては、デメリットとして、
長期金利の上昇局面では
日銀保有の
国債自体の担保価値が
下落をして、
日銀のBSを毀損しかねないというデメリットがあります。
さらに、その下三段目、信用秩序維持のための
日銀貸出しのスキームに関しては、
日銀特融が万一不良債権化すれば
日銀のBSを毀損する要因となる、また、
日銀特融の残高増加は
日銀資産の固定化という弊害にもつながり得ると、こういうデメリットが想定されます。
つまり、
日銀特融というのは過去にも例があります。一九六五年だったでしょうか、山一証券危機のときに、たしか当時、大蔵
大臣が田中角栄さんだったと思いますが、
日銀特融を発動されまして、山一証券が救われました。
ここに書かれているデメリットというのは、
日銀特融というのは返ってくる、この融資が返却されることを前提に当然特融がなされるわけですが、融資したものが返ってこない、不良債権化してしまえば
日銀のBSを毀損する要因にもなると、こういうことであります。
さらに、四段目、
日銀によるETF、J―REITの買入れというスキームについてはメリット、デメリット双方がありまして、メリットは、
財政危機と同時にインフレ率が高まる一方、一般にインフレ防衛的な資産とみなされることが多い株式や不動産の買入れは、
日銀資産のリスク分散につながる
可能性があるというメリットがあります。一方、デメリットにつきましては、過度なインフレがもし生じた場合、その下では株価が上昇から
下落に転じる
可能性が高いので
日銀のBSを毀損する要因となる
可能性があると。
その下段、
日銀による民間
金融機関の貸出支援については、デメリットとして、民間
金融機関の
成長企業向け貸出しが焦げ付くことで
日銀の民間
金融機関向け貸出しもまた不良債権化すれば、結果的に
日銀のBSが毀損される、さらに、
日銀資産の固定化の
可能性が否定できないと、こういったデメリットがあります。
そのもう一つ下の
日銀の資産買入れ等の基金による
日本国債の買い支えというスキームに関しては、この基金がそもそも二〇一三年の四月で廃止をされていると。
以下、詳細述べませんが、このように、現行の法制度の下で使えるものと使えないものがあります。同時に、使えるものにもここに記載しましたようなデメリットが多々あるわけです。ですので、私ども、今後この
委員会の場も通して、この配付
資料の法制度の
枠組みについては、やはり近い将来、万一危機が起きた場合に備えて、リバイスとアップデートをする必要があるんだろうと思っています。私自身も、今後の
質疑の場でまた改めてこの自分なりの確認の結果を問題提起として紹介させていただければと思っています。
さて、ちょっとここで、先週の
質疑で出ました過去の諸
外国におけるインフレ、特にハイパーインフレ、
財政危機、どんなものがあったのかという
質疑がありましたけれども、答弁の中で
黒田総裁がドイツの例にも多少触れられました。私、関心を持ちまして、じゃ、当時ドイツでどんな事態が起きたのかということを少し調べてみました。これは一九二〇年代なんですね、ドイツのハイパーインフレは。案外短い期間でありまして、一九二二年の八月から翌二三年の十一月にかけてであります、天文学的なインフレが発生したのが。この一年強の間の
物価上昇率が実に約百億倍ということです。
実際、ドイツの実生活ではどういうことが起きたのかを調べてみましたら、以下のようなことが起きていました。例えば、約百億倍のインフレですので、当時のマルク紙幣が全く価値がなくなります。私、たまたま当時のマルク紙幣を見付けまして、今日ちょっと持ってきました。(
資料提示)こちらがそうなんですが、これ丸善で売っているんです、今、本屋の丸善で。何で売っているかというと、ここに書いてありますように、近現代史の歴史の授業の
資料として売っているんですね。ドイツ、スーパーインフレ紙幣と書かれています。これ見てみますと、二枚ありまして、一枚が、上の方ですが、額面が十億マルクです、十億マルク。まあ
日本円でどれくらいになるのか分かりませんけれども。下の方のもう一枚が一千万マルクです。ですので、一九二二年頃、こういった紙幣がドイツ
国内で流通せざるを得ないハイパーインフレが起きたということだと思います。
調べてみますと、起きていた事象はこういうことでして、例えば、大
企業の
経営者、経営破綻から財産を守るため、この紙幣、マルクを外貨に換えられるだけ換えた、それができないときには現物と交換した、現物というのは土地あるいは機械などとされています。これに対して中産階級は、保有する資産の価値がこのマルクの
下落によって急速になくなったので息の根を止められたとあります。
これは藤末
委員の配付
資料の中にもありましたが、
我が国の現行のスキームにおいては、藤末
委員指摘のように、この配付
資料の二枚目の下ですが、個人の保護というところが極めて脆弱であります。ここに三つあります。生活保護法、そして食糧法、失業保険とありますが、いずれも万一の危機の場合には
機能がなかなか難しいのではないかというのが藤末
委員の
指摘でしたが、私もそんなふうに感じています。
ドイツでは、当時、続けますが、町では多くの店が売り切れを宣言し、店を閉めた。一九二一年十一月末に食料不足を
背景とした暴動がベルリンで発生、その後全土に拡大、同年末には隣国オーストリアのウィーンにまで波及。為替
市場の投機家やユダヤ人に対する憎しみ、妬みが高騰し続ける
物価へのいら立ちと相まって噴出した。二二年になると、インフレの進行に伴い、
企業による
賃金引上げの計画が
物価の上昇に追い付かなくなった。食料不足が深刻化し、子供を思う母親たちが高級住宅街で私邸内へと勝手に入り込み、残飯目当てにごみ箱をあさった。継続的な
賃金の
引上げにもかかわらず、超インフレで深刻な打撃を被った労働者は過激派に扇動されやすくなった。さらに、軽犯罪や苦し紛れの犯罪がドイツのほぼ全域で横行し、屋根の鉛板が一夜で盗まれたり、ガソリンが自動車のタンクから吸い取られるといった具合だったと。
何でこんな屋根の板とか盗んでいくんだろうと思って専門家に聞きましたら、こういった紙幣の価値がなくなるので、逆に現物が物すごく価値を持つようになって、屋根の板でも相当の価値で取引されるようになったということのようです。
その結果、しんちゅうや燃料などの物資が決済
手段となり、特定の商品、ジャガイモ、ライ麦等を裏付けとした独自の
通貨をドイツ
国内の自治体が発行したと、こういう現状が報告されています。そして最後に、最も深刻な
影響を受けたのが年金生活者や高齢者であったということです。
私ども、この
日銀の異次元
緩和開始後、あれが一三年の四月ですから、約三年半にわたってこの
委員会で
日本の
金融政策を議論してまいりました。
黒田総裁の任期があと一年半で到来すると。そのとき、
政府が
黒田総裁を再び任命し、
国会がそれに同意するのかどうかは分かりませんけれども、やはりそろそろこの出口というものを真剣に話し合うべき時期だろうと思います。同時に、その出口に際して現行の法制度で対応し切れないだろうと予想されるものがあれば、そのスキームを今から議論すべきだと思います。
今日の配付
資料の四枚目ですが、このときのドイツの銀行がどうなったのかということをまとめてみました。当時のドイツの銀行はライヒスバンクであります。このライヒスというのは帝国という
意味ですので、帝国銀行といった
意味だと思います。この帝国銀行が、事実上マルク紙幣がこんな
状況になっちゃうわけですから、
機能しなくなるわけですね、
国債を大量に保有して。今御紹介したような
状況がドイツ
国内で起きたため、このライヒスバンクに代わる銀行としてレンテン銀行、レンテンバンクがつくられます。このレンテンという
意味、どういう
意味かなと思って調べてみましたら、これが、
通貨の裏付けとした不動産、土地、工場等を
意味する名詞だそうであります。このレンテンバンクに対して、ライヒスバンクが持っていた
通貨発行権を取り上げて新たに発行権を付与した。旧マルクを廃止し、レンテンバンクが発行する新マルク、レンテンマルクと呼ばれたそうですが、これを発行した。このレンテンマルクをレンテン銀行がドイツ
政府に貸し出し、そしてドイツ
政府がライヒス銀行に対してこのレンテンマルクによって
国債を償還することで、一年数か月でこのハイパーインフレの時期を脱したということであります。
私が注目しているのは、このときレンテンバンクに対して供与された信用の中身であります。一つ目は不動産、
二つ目は実物。不動産というのは土地ですとか工場など、実物というのは多分ゴールドですとかあるいは農作物ですとか、そういったものだったんだろうと思います。
さて、こういう事態が
日本で起こらないことを願いますし、また、そういう事態を起こさないべく我々もこの院を通して議論を続けているわけですが、頭の体操として、もし
日本で同じようなことが起こった場合、この上段のドイツとの違いは何だろうかということを考えてみました。それが下の図であります。基本的な仕組み、構図は当時のドイツと同じです。ただ、一点違いがあります。それは何かといいますと、万が一そうなった場合に、新しい
日銀が創設されるかどうか分かりませんが、創設されたとしたら、そこに供与をされる信用の中身が違ってくるということです。私は当初、このレンテンバンクに供与されたように、不動産とか実物といったもので信用供与は足りるんだろうと思っていたんですが、御案内のように、今日、先進国におきまして、
通貨はいずれもこういった実物の裏付けがありません。ですので、
日本において同じような
状況が起きた場合に、実物を信用として供与するだけでは多分不十分だろうという専門家の
意見がありました。
そこで、重要になってくるのが新しい中央銀行の人事であります。つまり、非リフレ派の銀行家、学者、
日銀プロパーの方々など、異次元
金融緩和政策が万一うまくいかなかった場合、そして
財政的な危機が起きた場合には、それと決別するという
意味での信用を供与された新たな中央銀行が必要になるというのが専門家の
意見を聞いた上で私がまとめた見解であります。この点について
総裁始め
日銀の皆さんに御見解を伺うのはちょっと今日の時点では不適切かと思いますので、あくまでも御紹介にとどめたいと思います。
さて、時間も少なくなりました。最後になりますが、限られた時間の中で、
日銀の
株主についてお尋ねをしたいと思うんですが、
日銀の財務が今後も健全性を保ち、
日銀が
金融政策に当たることを希望しますが、万が一の場合、その
株主がどうなるかということも我々考えなければいけないと思っています。
現在の
株主が誰か、財務
大臣の保有分の割合が何%か、以上の二点についてお尋ねします。