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牧山ひろえ君 民進党・新緑風会の
牧山ひろえです。
私は、民進党・新緑風会を代表して、
公的年金制度の
持続可能性の
向上を図るための
国民年金法等の一部を
改正する
法律案に対し、反対の立場から討論を行います。
本案は、当初、会期終了日の前日に当たる十一月二十九日に送付されたものですが、
衆議院厚生労働委員会では、与党
委員長による職権セットが相次ぎ、強引な運営により、二十時間余りの審議時間で強行採決されました。
安倍総理は
衆議院で何時間やったって同じと言い放ちましたが、
参議院では
議論が深まっています。本日の
質疑の
内容を見ても数多くの論点が残されており、審議が不十分なのは明らかです。
反対する理由の第一は、本案の
年金額の
改定ルールの見直しが、
年金制度、
年金財政の
持続可能性を重視する一方で、
公的年金制度の最大の役割である
最低保障機能がないがしろにするものであるからです。この二つはパッケージで
議論しなければ、
国民の将来不安に対応することはできません。
公的年金の
給付水準が
低下すれば、生活保護を受給する高齢者世帯が増加することが懸念されます。生活保護
受給者のうち、高齢者の割合が今年ついに五〇%を超えました。
年金支給額切下げの結果、生活保護
受給者が増えれば、ますます国家財政への負担は増すこととなります。
本案は、
年金財政だけを見て、国家財政全体を見ない
法案でもあります。この
法案により暮らしを脅かされるのは高齢者だけではありません。
物価が上がっても
賃金が下がれば
年金が下がり、一度下がった
年金は一生
物価に追い付くことがなく、受給開始後の
年金の実質的価値が一方的に下がり続ける
仕組みとなっています。
この
物価・
賃金スライドの新
ルールは、現役
世代や将来
世代の老後にもひとしく適用され、
年金がカットされていきます。
大臣も、今回の
法案で将来
世代の
年金は増えないと
答弁で認めています。また、マクロ
経済スライドのキャリーオーバーについては、
物価が著しく
上昇した場合に対応する措置が何ら規定されておらず、高齢者の生計維持に支障が生じる懸念が拭い切れません。
現在の
経済停滞の原因は、
国民の将来に対する不安に起因しています。この
法案では、
国民の将来不安が払拭されるどころか、暗い未来しか描けません。
政府が本案の
提出に先立って行った
平成二十六年
財政検証は、今後百年間
物価が上がり続け、
賃金はそれ以上に上がり続けるというあり得ない
経済前提に基づいています。実際、
前回の十六年の財政再
計算以降に
物価変動率を
賃金変動率が下回った
ケースは七回もあるにもかかわらずです。
過去、
平成十六年財政再
計算、
平成二十一年
財政検証の
経済前提は実績では達成されておりません。
年金制度改革の
議論は、まず
平成十六年
改正時の見通しが誤っていたことを認め、現実的な
経済前提の下で誠実な
試算を示すところから始めるべきではないでしょうか。
反対する理由の第二は、本案のGPIF改革が専ら被
保険者の利益のためにという原則を貫く上で極めて不十分だからです。
本案のGPIF改革では、新設される経営
委員会に参画する労使の割合を十人中二人と規定しています。
年金積立金の原資は被
保険者と事業主が拠出する
年金保険料であり、その運営損益も将来の
年金財政に跳ね返ってくるものです。
GPIFについては、保険料拠出者である労使の意思が適切に反映されることが重要であり、労使の意思を反映しない方向への改革は諸外国の運用機関の例を見ても
理解できないものであります。また、監査
委員が経営
委員会委員を兼ねることとなっており、十分なチェック機能が働かないのではないか、経営
委員会を設置するのであれば、独立行政法人ではなく特殊法人とし、国会の民主的統制を強化すべきだったのではないかなど数多くの疑念が解消されないままです。
元々、
平成二十六年十月の基本ポートフォリオの変更は、
安倍政権の成長戦略のために
国民の
年金積立金を大きく株式につぎ込む結果となり、その後、巨額の損失も計上しました。ポートフォリオ変更前の平均収益率が二・八%であるのに対し、変更後の平均収益率は僅か〇・五%となっており、
財政検証の見通しが全く達成されていません。
GPIF改革は、現在の
年金積立金の運用が専ら被
保険者の利益のためになされていないという反省に立って行われなければならないと考えます。
国民の老後の不安を解消するためにも生計を維持できるまともな
年金額を受け取れるようにする必要があり、そのためには
年金制度の抜本的改革が避けられません。ですが、その場しのぎの本
法案で現行制度を温存することになる結果、抜本改革の先送りと将来
世代のツケの増大を招く危険が大きいことを御
指摘申し上げて、私の反対討論とさせていただきます。