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2016-12-06 第192回国会 参議院 環太平洋パートナーシップ協定等に関する特別委員会 第13号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成二十八年十二月六日(火曜日)    午後一時開会     ─────────────    委員異動  十二月五日     辞任         補欠選任      川田 龍平君     相原久美子君      櫻井  充君     神本美恵子君      舟山 康江君     藤末 健三君      大門実紀史君     岩渕  友君      石井 苗子君     藤巻 健史君      山本 太郎君     福島みずほ君  十二月六日     辞任         補欠選任      小野田紀美君     松川 るい君      神本美恵子君     江崎  孝君      熊野 正士君     新妻 秀規君     佐々木さやか君     三浦 信祐君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         林  芳正君     理 事                 石井 準一君                 二之湯武史君                 福岡 資麿君                 三宅 伸吾君                 山田 修路君                 小川 勝也君                 大野 元裕君                 浜田 昌良君                 紙  智子君     委 員                 古賀友一郎君                 佐藤  啓君                 佐藤 正久君                 進藤金日子君                 高野光二郎君                 高橋 克法君                 滝波 宏文君                 中西  哲君                 平野 達男君                 藤木 眞也君                 堀井  巌君                 舞立 昇治君                 松川 るい君                 山田 俊男君                 吉川ゆうみ君                 渡邉 美樹君                 相原久美子君                 石上 俊雄君                 江崎  孝君                 神本美恵子君                 田名部匡代君                 徳永 エリ君                 浜口  誠君                 藤末 健三君                 河野 義博君                 新妻 秀規君                 平木 大作君                 三浦 信祐君                 岩渕  友君                 辰巳孝太郎君                 儀間 光男君                 藤巻 健史君                 福島みずほ君                 行田 邦子君                 中野 正志君    事務局側        常任委員会専門        員        藤田 昌三君        常任委員会専門        員        宇佐美正行君        常任委員会専門        員        大川 昭隆君    参考人        公立大学法人奈        良県立医科大学        公衆衛生学講座        教授       今村 知明君        鈴鹿医療科学大        学薬学部客員教        授        中村 幹雄君        特定営利活動        法人日本消費者        連盟共同代表   天笠 啓祐君     ─────────────   本日の会議に付した案件環太平洋パートナーシップ協定締結について  承認を求めるの件(第百九十回国会内閣提出、  第百九十二回国会衆議院送付) ○環太平洋パートナーシップ協定締結に伴う関  係法律整備に関する法律案(第百九十回国会  内閣提出、第百九十二回国会衆議院送付)     ─────────────
  2. 林芳正

    委員長林芳正君) ただいまから環太平洋パートナーシップ協定等に関する特別委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  昨日、大門実紀史君、石井苗子君、山本太郎君、川田龍平君、櫻井充君及び舟山康江君が委員辞任され、その補欠として岩渕友君、藤巻健史君、福島みずほ君、相原久美子君、神本美恵子君及び藤末健三君が選任されました。  また、本日、佐々木さやか君、熊野正士君及び小野田紀美君が委員辞任され、その補欠として三浦信祐君、新妻秀規君及び松川るい君が選任されました。     ─────────────
  3. 林芳正

    委員長林芳正君) 環太平洋パートナーシップ協定締結について承認を求めるの件及び環太平洋パートナーシップ協定締結に伴う関係法律整備に関する法律案の両案件を一括して議題といたします。  本日は、両案件審査のため、三名の参考人から御意見を伺います。  御出席いただいております参考人は、公立大学法人奈良県立医科大学公衆衛生学講座教授今村知明君、鈴鹿医療科学大学薬学部客員教授中村幹雄君及び特定営利活動法人日本消費者連盟共同代表天笠啓祐君でございます。  この際、参考人方々に一言御挨拶を申し上げます。  本日は、御多忙のところ本委員会に御出席いただき、誠にありがとうございました。  皆様から忌憚のない御意見をお述べいただき、今後の審査参考にいたしたいと存じますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。  議事の進め方でございますが、今村参考人中村参考人天笠参考人の順序でお一人十五分以内で御意見をお述べいただき、その後、各委員の質疑にお答え願いたいと存じます。  御発言の際は挙手をしていただき、その都度委員長の許可を得ることとなっておりますので、御承知おきをください。  なお、御発言は着席のままで結構でございます。  それでは、まず今村参考人にお願いいたします。今村参考人
  4. 今村知明

    参考人今村知明君) ありがとうございます。  奈良医大公衆衛生を研究しております今村と申します。  本日は、このような場をいただきましたことを心から感謝を申し上げたいと思います。  私は、日頃から公衆衛生、特に食品保健健康政策医療政策分野を研究しておりまして、本日が食の安全に関する問題が討議されるということで私にお声をお掛けいただいたというふうに理解しております。  今日私のお話しする内容としましては、今日資料一つ準備しておりますけれども、国際食品保健という分野についてちょっと私が考えていることを、そして、その食品安全性を確保する上での考え方関係機関について意見を述べたいというふうに考えております。  まず、最初スライドを見ていただきたいと思いますけれども、まず、全ての議論の大前提として、食品リスクとは何かということについて私の考えを述べたいと思います。  まず、食品には、全ての食品リスクがあります。食品にはゼロリスクということは考えられないというふうに思います。例えば発がん性一つを取ってみても、発がん性の多い物質と少ない物質という二種類はあったとしても、発がん性がないということを証明できるような物質というのはありません。そういう意味では、全ての食品にはリスクが存在するわけですね。  では、食べ物そのものを考えてみたときにそのリスクというのはどういうものかということをちょっと事例を挙げて考えたいと思うんですけれども、ここに挙げておりますトウモロコシはなぜ食べて安全と言えるのかということを考えていただければと思うんですけれども、これは、実は安全だという証拠はどこにもなくて、千年ほど食べてきて死んだ人が少なかったからというふうな理由でしかないわけですね。その下にありますタマネギなどは、犬が食べたら死ぬかもしれないという代物でして、これ、人間ですと生で食べたら五個ぐらい食べた辺りから死ぬ人が出てくるだろうというようなものですね。それに、ジャガイモの青芽、これ毒性があることは皆さん御存じとは思いますけれども、例えば五個ぐらい青芽が出たジャガイモを食べれば、これもまた死ぬ人が出てくるだろうというぐらいの量があります。すると、タマネギ五個、ジャガイモ五個ぐらいはどの家の家庭にも冷蔵庫の中に眠っておりますから、それだけのリスクをそれぞれの家庭の中で抱えて生きているというのが食品リスクの本質だと思います。  全ての食品には多かれ少なかれ危険性があって、この危険性をどうコントロールしていくのかということが今日のお話であります。  次のスライドを御覧いただいて、じゃ、リスクというのはどういうものなんでしょうかということを少しお話しできればと思います。  まず、リスクは実際に事件が起こったときのその危害発生確率を掛けたものがリスクであります。つまり、リスクというのは危険性の大きさそのものです。例えばたばこで考えたときには、危害は大きい、それも発生確率も高い、そうしたらリスクは高いということですね。例えばそれに対して、BSEなどで考えたら、危害は大きい、でも実際に起こる確率は低い、すると、たばこに比べるとずっと低い、リスクとしては低いと。そういうふうな考え方になると思います。  じゃ、食品を食べていく中でゼロリスクというのはあり得るのかと考えると、唯一の方法は食べないことでありまして、でも、食べないと人間は死んでしまうわけですから、そのリスクを取るわけにはいかない、すると、食品リスクを取るしかないというのが今の我々の選択肢だと思います。そんな中でどうやって食品安全性を確認していくのかということのルールリスク分析というものの考え方、若しくはそれを国際的に実践する機関としてのコーデックスという、そういう位置付けになるというふうに思います。  次のスライドに、じゃ、このリスク分析というのはどういうものでしょうかということを書いておりまして、漠然とした危険性に対して被害を最小限に抑えるための科学的手法という整理でございます。このリスク分析には三つ概念から成り立っていまして、一つリスク評価一つリスク管理一つリスクコミュニケーションであります。  それぞれ、リスク評価は、まず科学的に評価できる部分を徹底的に評価していく、何が危険かを見極めていくということですね。そして、科学的に見極めた危険性をどこまで回避できるかという対策を練るのがこのリスク管理という部分です。それでもどうしてもリスクは残ります。そのリスクについて、関係する人たち危険性を説明して理解をしてもらうというステップがありまして、それがリスクコミュニケーションです。この三つ概念を基に食品安全性基準を決めていこうというのがこのリスク分析考え方であります。  次のスライドを見ていただいて、スライド四ですね。  じゃ、リスク分析の意義とはどういうものでしょうかというと、今までの食品安全基準の多くは科学的でない基準が存在しておりました。何となく嫌だというものも安全基準には入っていたわけです。しかし、世界的なルールを作っていこうという中で、科学的に基づいた食品安全基準を作ろうというときにこのリスク分析考え方導入して、今世界でこのリスク分析考え方に基づいて基準を作っていくことを科学的根拠に基づいた安全基準というふうに整理をしております。  次のスライドを見ていただいて、このリスク分析三つ概念が独立してはいますけれども実に微妙に関係しているということを表現しています。  まず、リスク評価のところで科学的な評価を実施するわけですけれども、ここで何が危険かということをリストアップしたら、その次の段階としてリスク管理の方に移って、じゃ、実際それを防ぐための基準を作ったり監視をしたりというふうなことをリスク管理がやっていくと。その際に、関係する消費者事業者方々と話し合いながら十分に理解を深めていって、この辺で基準を作りましょうということを決めていく。この枠組みリスク分析枠組みであります。これは、世界日本も今この枠組みで動いているという状況であります。  次のスライド六番を見ていただいて、これは日本でのリスク分析枠組みです。  今、日本には食品安全基本法という法律ができておりまして、これ、思い起こせば十数年前、牛乳の食中毒事件があったりBSE事件があったりして、日本食品についての不安が物すごく高まった時期がありました。そのときに、食品の不安を払拭するために一つ法律を作ろうと、その中でこのリスク分析枠組み日本にも導入していこうじゃないかということが決まってこの法律ができております。  その象徴的なのが食品安全委員会でありまして、このときに、科学的に評価する機関厚労省農水省から独立させて、まず何が危険かを独立して評価しましょうというのが安全委員会としてできたと。そこで評価された内容リスク管理部門である厚労省農水省消費者庁といった省庁が実際に基準を作ったり監視をしたりというふうな仕組みになっております。この際にもリスクコミュニケーションが図られるという形態日本でも入っております。  EUでも全く同じような形態導入されておりまして、リスク評価を実施する機関としてのEFSA、そして各国リスク管理をしておりますので、この枠組みにのっとって各国動き始めているという状況です。  次のスライドの七番を見ていただきますと、こちらは国際的なリスク分析枠組みです。  国際的に規格基準を決めている委員会、このリスク管理のところにコーデックスとありますけれども、これが国際規格基準委員会というものでして、ここで国際的な規格基準を決めていると。この前段階としてリスク評価を行っているのがFAOWHO組織であるJECFAというものやJMPRといったような評価機関科学的評価機関がこの評価をして、そしてコーデックスの方で基準を決める。その際にもリスクコミュニケーションを十分に取ってもらって基準を決めていくという国際的な枠組みが決められているという状況であります。  次のスライドを見ていただきまして、スライドの八番です。  こちらが、現在、国際食品保健について枠組みを御説明していますけれども、やっぱりその中心となっているのはこのコーデックスという機関であります。このコーデックス委員会、今から五十年ほど前にFAOWHO共同に、食品規格計画としてつくられておりまして、現在物すごく大きくなって、政府間組織として百七十国が参加する大きな委員会となっております。このコーデックス委員会は、消費者健康保護食品の公正な取引の保証というのが主目的としてつくられていまして、今世界中の食品に関する国際規格や規範の作成をこのコーデックス委員会がやっているという状況であります。  このコーデックス委員会も先ほど御説明申し上げましたリスク分析が適用されていまして、コーデックス委員会で作成される規格基準のほぼ全てについてこのリスク分析考え方を適用するようにというルールが決められていまして、コーデックス委員会自身リスク分析考え方に基づいて動いているという状況であります。  次のスライドスライド九番の方にTPPWTOとの関係について述べております。  TPPの中で、WTOの中のSPS協定を遵守するものであれば、各国基準の差というものは認めていいということが決められております。これをもう少し踏み込んでみますと、WTOが今から二十年ほど前につくられた際にSPS協定という協定ができました。これは、簡単に言うと、各国基準はそれぞれが別々に作っていいですよという基準であります。  じゃ、それはなぜ認められているのかというと、例えばシベリアと赤道直下を比べたときに、外に物を置いていたときに腐るスピードは全然違うわけですね。ですから、寒い国と暖かい国が同じ基準であるはずがない。だから、理論的に科学的に証明できる差であれば、その国別の差というのはあっていいということを言っております。  SPS協定の中に書いていますけれども、十分な科学的根拠に立脚すれば、各国独自基準を認めると。その次に、国際的規格が存在する場合はそれに基づいていなければならないということが書いていまして、その国際的基準というのが何かというと、先ほど申し上げましたこのコーデックス規格ということになるわけです。  じゃ、次のスライドを見ていただいて、コーデックス規格日本規格を比較してみますと、コーデックス規格国際基準そのものに当たるわけでして、我が国規格基準リスク分析枠組みというのはこれにまさに準拠しているという状況であります。我が国状況のサマリーとしましては、リスク分析が入っている、科学的な基準がある、独立した評価機関などがあるので、まさにSPSが求めている規格基準枠組みを持っているということになります。したがいまして、TPPが入ったとしてもこのSPSの範囲のことは認めると言っているので、基本的には変わらないというふうに思います。  また、TPP及びWTOでは、このコーデックスを超える規格基準を決めることもできると理解しています。WTOの条文から見てみますと、加盟国は、科学的に正当性を証明できれば国際規格よりも高いレベルの保護をする、この基準を作ることができるということが担保されております。  また、TPP協定の中でも暫定的なリスク管理措置、要は、危ないと思ったら科学的な証拠が十分でなくても最初は止めていいですよということを決めていると。WTOSPS協定に基づく権利義務というのは認められているという状況です。  ただ、WTOの中でも、暫定的な措置としては認められるんですけれども、正当性を長きにわたって証明できなかったら、これは逆に非関税障壁として扱われてしまってWTO裁定の場に持ち込まれるということもあります。実際に、EUなどでも裁定の場に持ち込まれて負けているというようなこともあります。科学的な整合性が取れる基準であれば、今我々が日本国で取っているような施策というのは全て担保できるというふうに思います。  もう一度おさらいさせていただきますと、我が国ではこのリスク分析導入や科学的な基準、独立した評価機関などの基準を満たしておるので、SPSが求める基準を全てクリアしておりまして、TPPの中で担保されているものは全てSPSを満たしている限りは担保できる。したがいまして、食品安全基準食品監視に関して、特段今回のTPPが入ってきても大きな変更はないんではないかというふうに私自身は考えております。  ちょっと長くなりましたけれども、御説明、これで終わらせていただきます。  ありがとうございました。
  5. 林芳正

    委員長林芳正君) ありがとうございました。  次に、中村参考人にお願いいたします。中村参考人
  6. 中村幹雄

    参考人中村幹雄君) モーターレースF1で有名な鈴鹿サーキットの近くにあります鈴鹿医療科学大学客員教授中村です。  前職は、食品添加物メーカーで、ムラサキイモなどの天然着色料とか機能性食品開発とか、海外の添加物導入とか、そういったことをしてきました。各種加工食品に使用されています甘味料、スクラロースってあるんですが、この指定はその成果の一つだと思っています。また、東北大震災の復興では、セシウムを吸収しにくいムラサキイモ試験栽培を提案させていただきました。  本日は、TPPのISDSが日本食品企業リスクを高める、リスク回避のためには、消費者サイドの反対や心配があっても基準手続に関する規制を緩和せざるを得ない、更なる規制緩和消費者の反発を招き、日本食品関係事業者に良い結果が得られるとは思えないということを、遺伝子組換え食品添加物を例に取って御説明します。  なお、遺伝子組換え技術につきましては、ゲノム編集など新技術も登場している今日、遺伝子組換え技術を使用したかどうかではなく、個々の事案に応じた安全性の判断が科学的になされるべきと、そういう立場であります。  第一に、食品衛生法違反事例の件です。  資料一の一の、お手元にあります一の一の囲みにありますように、本年九月十六日、厚生労働省は、食品衛生法第十一条第一項に基づく組換えDNA技術応用食品及び食品添加物安全性審査手続第三条に定める安全性審査を経ていなかった遺伝子組換え微生物を利用した添加物製造工程に使用した植物性原料油脂が確認されたことから、当該油脂輸入者に対し、輸入販売取りやめ等を指示するとともに、当該添加物製造者には、安全性審査のために必要なデータの提出等を指示したとのニュースリリースを行っています。  その厚生労働省の裏のページに、油脂製造者はカーギルリミテッド、油脂輸入者株式会社カーギルジャパン三菱商事株式会社当該添加物である酵素販売者ノボザイムズASDSMフードスペシャリティーズUSAとされています。日本輸入した米国産の油脂製造にヨーロッパで開発された遺伝子組換え酵素が使用されたわけです。グローバルに物と知財が動く典型的な例です。  お手元資料一の二は、厚生労働省から、資料一、二と言っているのはパワーポイントの後ろに付けています資料です、厚生労働省から斉藤和子衆議院議員事務所への回答です。十月二十六日に頂戴しました。1)の十行目に、三件の違反事例が確認されたとあります。  それは、まず、資料一の三に記載されている事案です。五年前の平成二十三年、韓国CJ社インドネシア工場で生産された調味料、5’イノシン酸グアニル酸は、遺伝子組換え技術を使用しているが手続を経ていなかったということで、本件九月の事案と全く同様です。その資料の裏のページに十社の名称が記載されています。いずれも食品業界では名の通った企業です。今回の事案株式会社カーギルジャパンも入っています。  資料一の四は、BASFジャパン株式会社輸入したリボフラビン、ビタミンB2ですが、それとキシラナーゼです。資料一の五は、協和発酵バイオ製造したLフェニルアラニンです。これらを合わせて、資料一の二の1)の三に該当します。  次のパワーポイントのように、五年前の事案は新聞にも報道され、制度の問題にも焦点が当たりました。昨今、余り注目されていないように思います。  この未承認遺伝子組換え食品添加物の問題については、二つポイントがあります。一つは、資料一の二の2)で、厚生労働省は、食品衛生法周知徹底監視強化をうたっていますが、3)で、どのような対応が可能か検討中であるとしているように、具体的な方策はないようです。二つ目の問題は後ほど御説明します。  次のパワーポイントは、国立医薬品食品衛生研究所からいただいたメールです。検査法開発は、厚生労働省からの依頼で国立医薬品食品衛生研究所が作成されているようです。強化するというのであれば、同研究所添加物部食品部強化、人、物、お金ですが、根本的な施策が必要です。米国食品医薬品局FDAに比べれば桁違いに脆弱です。  三十三年前、厚生労働省食品化学課長が編集された「食品化学」という本に、当課は全員で十一人、同じ仕事をFDAは三百五十人で、カナダは百五十人で構成されている、日本の役所はもう言いようがないくらい省エネルギー、それでも行政改革とかで、もっと役人を減らせが世論の合い言葉、中にいる人間は、日本はどうかしているんじゃないかと思う次第と書かれています。現在も全く変わらないのではないかと思います。  輸入食品安全性確保が国会で論議され、全国の検疫所の職員が約四百名で、検査できないので少しは増員すると伺いました。モニタリング検査で食品衛生法違反とされた食品を国民は食べているというお話も出ていました。厚生労働省の所管である全国の検疫所は、輸入食品の表示については全くチェックされていないとのことです。食の安全のために、人や予算の確保は、もう行政マターではなく、国会が主導権を取ってやっていただかなければ解決しないところまで来ているのではないでしょうか。  第二に、遺伝子組換え食品添加物についてお話しします。  二種類あります。資料二の一です。安全性審査手続を経た旨の公表がなされた遺伝子組換え食品添加物、現在二十四品目です。資料二の二の安全性審査手続を経た遺伝子組換え食品添加物、現在七十三品目です。前者は官報に告示されますが、後者は告示されず、厚生労働省のホームページに掲載されます。資料二の三は、審査継続中の遺伝子組換え食品添加物です。この中に、九月の食品衛生法違反の二つ添加物が入っています。まさに泥縄です。  資料二の二の一番目の品目、ジェランガム、PDG1株を事例として御説明します。  ジェランガムは、熱に強いゲルを作りますが、寒天のように透明ではありません。そこで、パワーポイントのように、濁りの原因である3ヒドロキシ酪酸重合体の生成に関与する酵素たんぱく質をコードする遺伝子を欠失された菌株を作成します。  次のパワーポイントに模式図を書きました。二回の相同組換えを行います。不要な遺伝子を欠失させた後、選抜するために組み込んだカナマイシン耐性マーカーやスークロース耐性マーカーを欠失させることで安全性を確保します。  次のパワーポイントは、厚生労働省基準の一部です。こうした資料を取りそろえることが必須です。  次のパワーポイントは、厚生労働省に提出した資料の一部です。最初の行のサザンプロット分析データやPCRによる確認データは、本品を開発したCPケルコ社が所有する資料です。追加の安全性試験は日本側で行いました。  資料二の二の八番目のキサンタンガム、NAW1株も私たちの仕事ですが、十九番目のジェランガム、GBAD1株で御説明します。これは、乳含有食品の異臭であるパラクレゾールの生成に関与する酵素であるアリルスルファターゼ及びベータグルクロニダーゼをコードする遺伝子を不活化させたものです。これも相同組換えを二回行っています。  厚生労働省への提出データは、お手元資料三の遺伝子組換え食品評価書ジェランガムK3B646を御覧ください。食品安全委員会評価書です。この評価書の最終ページに引用文献が示されています。数か所にCPケルコ社と明記されています。食品安全委員会の健康影響評価には、CPケルコ社のデータが不可欠でした。  PDG1株でも、GBAD1株でも、CPケルコ社のサンディエゴの本社、親会社であるモンサント社のシカゴの本社に交渉に行ったことを思い出します。互恵に基づく対等平等な交渉です。こんなところにもしISDSがあったら、頭の中でISDSがちらちらしたら、大変交渉しづらかったことでしょう。  多くの日本企業遺伝子組換え技術の商業化に出遅れました。必然的に輸入することになります。輸入者は、消費者に安心していただけるように、自社でデータをそろえたり、開発者のデータを入手したり、それ相当の役割を果たすことが必要です。そこには相当のコストも掛かります。右から左という単なる輸入者であってはなりません。しかし、食品衛生法違反事件が繰り返された事実は、そうした役割を果たしていない企業が存在するという証左ではないでしょうか。  第三に、TPPの影響です。  日本輸入者と相手国の開発者は、食品衛生法に基づく手続が円滑にできることによって事業が発展するウイン・ウインの関係にあります。しかし、TPP・ISDSによってそのバランスが大きく崩れます。  次のパワーポイントに、私たちの事例を使った問題を整理してみました。  海外からの認可の要求や圧力が強くなる一方で、資料やデータの提供などの協力が得られにくくなるでしょう。その結果、遺伝子組換え技術を使っている事実を把握せずに輸入することになりかねません。それは食品の大規模な回収につながることになります。こうしたリスクを回避するために、TPPに参加するのであればISDSを撤廃されることが必須条件です。  我が国は、問題があれば規制を緩和する、従来違反であったことが今では違反にならないという規制緩和を繰り返してきました。別のテーマですが、五、六年前、ベトナムから輸入されたエビの食品衛生法違反が続出しました。除草剤トリフルラリンの残留です。東北大震災の直前の三月六日、ベトナム政府は残留基準の緩和を日本に要請しました。その後の基準緩和によって違反はなくなりました。なぜなら、五百倍も緩和したわけですから。  二年前の平成二十六年六月二十七日、厚生労働省は、最終的に宿主に導入されたDNAが当該宿主と分類学上同一の種に属する微生物のみである場合、いわゆるセルフクローニングです、それに、組換え体が自然界に存在する微生物と同等の遺伝子構成である場合、いわゆるナチュラルオカレンスです、この二つの場合については、食品安全委員会評価を受けるかどうかは企業が判断できるように緩和しました。  資料二の二の六十番までは、セルフクローニングやナチュラルオカレンスがたくさん書かれています。しかし、六十一番目以降は、六十八番目のカルボキシペプチダーゼがセルフクローニングとされるのみです。企業の判断に委ねられたからでしょう。この規制緩和で、セルフクローニングやナチュラルオカレンスについては全く表に出ない可能性が高まりました。この表は国民に情報を提供する役割を果たせなくなりました。国民に情報を提供しない、これが厚生労働省の姿ではありませんか。  さきに述べた九月の食品衛生法違反は、酵素関係します。食品安全委員会添加物専門調査会で、九月、十月、十一月と三回にわたって慎重に審議されています。新たな酵素基準が、食の安全の確保に逆行するものでは困ります。データが得られないからしようがない、役所が海の向こうから訴えられたら困るとか、TPPの地ならしにならないことを願っています。日本の制度変更は必要とはならないと説明されていますので、しっかりとそこを貫いていただきたいと思います。  次に、ビタミンについて少しお話しします。  ビタミンは、AもB2もCもDもEも日本では一切生産されていません。主な輸入先は、私の推定ですけれども、パワーポイントに示しました。ペットボトルに入った緑茶飲料にはビタミンCは必須で、七千から一万トン輸入されています。世界で生産されているビタミンCの九割は中国で生産されています。中国のビタミンCの主な製法は、パワーポイントに書きました二段階発酵法で、中国の教科書に載っています。生産性を高めるために遺伝子組換え操作がなされたとうわさされたことがありますが、確認するすべはありません。遺伝子組換えかどうかはさておき、国民の健康にとって必須のビタミン類については、必要最小量、国内で生産されるべきものと思っています。  さらに、消費者が求める情報に応えるために、事業者が必要な情報を持つことが不可欠です。資料、最後の四です。裏のページの下です。斉藤和子衆議院議員事務所からいただきました。十月二十八日付けの消費者庁への質問とその回答です。  14)遺伝子組換え技術を使った販売の用に供する食品添加物の取扱いについて、遺伝子組換え技術を使った食品添加物販売に当たっては、その旨を加工食品製造者にラベルあるいは伝票を用いて伝達するように制度を改める考えはないかに対し、遺伝子組換え食品の表示については、加工後に組み換えられたDNA又はこれによって生じたたんぱく質を検出できる品目を表示品目としているが、遺伝子組換え微生物を利用して製造された添加物である酵素は、主に加工助剤として使用され、表示が免除されることから、これらの情報を伝達する必要はないと考えていると、こう言っています。  この回答には事実誤認がありますが、それはさておき、BツーCの情報伝達が不要であればBツーBの情報伝達も不要との考えは一理あるかのように思いますが、BツーCの情報伝達が不要であっても、食品事業者の選択、原料確認のためには必要な情報だと思います。食品事業者の役割を全く無視していると思えてなりません。  ISDSという鎖につながれてTPPというバスに乗ってはいけないと思います。次期政権で極めて厳しい交渉となるであろう今後の日米二国間協議についても、一国民として注視していきたいと、こう申し上げて、締めくくらせていただきます。  御清聴ありがとうございました。
  7. 林芳正

    委員長林芳正君) ありがとうございました。  次に、天笠参考人にお願いいたします。天笠参考人
  8. 天笠啓祐

    参考人天笠啓祐君) こういう席にお招きいただきまして意見を述べる機会を与えてくださいましてありがとうございます。  私は、今、日本消費者連盟という消費者団体の共同代表をやっておりますけれども、同時に、コーデックス国内委員会委員をやっておりまして、また、国際獣疫事務局、OIEの国内連絡会の委員もやっております。そういう様々な委員として食の安全について関わってまいりました。  今日、主に四点についてお話ししたいと思っております。非常に急な話でしたものですから、資料を用意できませんで大変申し訳ありませんけれども、よろしくお願いいたします。  まず、第一点ですけれども、最近になりまして、やはり食の安全を脅かすような事故、事件というのが非常に多くなった。これは実は今世紀に入ってから大変増えたんですね。その証拠とも言えるのが、例えば食品安全委員会るい食品安全基本法が今世紀に入って作られましたし、それから、食品表示法自体も、つい最近、昨年できたばかりでありますけれども、こういうふうに食品に関する法律るい委員会の設立というのが非常に遅れてきた、でも、やはりそういう事件や事故が多発したからこういうものができてきたということが言えると思います。  それは、やはりグローバル化、いわゆる様々な輸入食品の増加が、これが非常に大きな原因になっております。例えば、二〇〇八年一月に中国産毒ギョーザ事件というのが発生しました。このときに、その直前なんですけれども、北海道でミートホープ事件というのが起きておりまして、この二つ事件というのが非常に連関して起きているんですね。それはなぜかといいますと、この中国産毒ギョーザ事件というのは、天洋食品といういわゆる中国の企業が作ったものなんですけれども、実はこのギョーザ、四十個で三百八十円という非常に廉価なものなんです。一個十円しないんですね。ミートホープ社というのはやはり同じ取引先であります。親会社、同じ取引先なんですね。  そうしますと、こういう四十個三百八十円という低価格に対して国内の企業というのは、いわゆる価格低下圧力というのですか、これが非常に掛けられてくることになります。そうしますと、例えば、皆さん、今どこの企業もそうなんですけれども、苦労されていますけれども、例えば時間外労働に対して賃金を払わないとか正規雇用を非正規に切り替えるとか、そういう形でいわゆる日本企業は乗り切っているわけですけれども、でも、やっぱりそれでも太刀打ちできないわけです。  そのために、例えばミートホープ社の場合は、返品してきたものを例えば再出荷したりラベルを貼り替えたりとかそういう犯罪行為を犯したわけですから、これはとても許せないわけですけれども、でも、そういう状況にあるということが今やはりこの中国産毒ギョーザ事件で分かったわけですけれども。  例えば、二〇一三年にアクリフーズ事件というのがまた起きます。これも群馬県であります。これがやはり中国産毒ギョーザ事件と全く同じ構造で起きているんですね。これは国内のメーカーなんですけれども、やはり海外との競争の中で、低価格化圧力の中で現場にすごい不満がたまっていた。その不満が食品に農薬を混入するような、そういう事件になってしまった。こういうことが実は起きてきた。これは本当に今世紀になって目立ってきた事件です。  先日の、今年になりまして、CoCo壱番屋のカツが廃棄されたという事件も起きました。この事件、実は、報道の中でやっぱりびっくりしたのは、産業廃棄物として捨てられたカツなんですけど、二〇一四年から二〇一五年の間に五十九万枚廃棄されているわけです。  これ、何でこんなにたくさん廃棄されるか。これは異物混入という問題なわけですね、食の安全を脅かす事件なんですけれども。これは、やはり今全国でチェーン展開しております、いろいろな企業が。非常に全国展開する中で、それで大量生産する、それによってコストダウンを図る。これもやはりコスト圧力なんですね、コストダウン圧力でありまして。その中で、いわゆるロットが大きくなってきた。大量生産する、ロットが大きくなりますと、当然のことながら、そこに異物混入が起きますと大量の廃棄が起きるわけですね。  ですから、この背後にあるのはやはりコスト圧力であります。この中で、やっぱり食の安全というのが、ですから、異物混入事件が非常に頻発して目立ってきたというのも、実はその背景にそういうことがあるわけです。ですから、こういうのがまず一つ食の安全を脅かす問題として一点あります。  今回のTPPの合意の中でやっぱり非常に懸念されております問題について二番目にお話ししたいと思うんですけれども、一つは、市場アクセスの分野でモダンバイオテクノロジーによる生産品の貿易というところの中で、いわゆる遺伝子組換え食品に関して作業部会を設置するということが入っております。この作業部会なんですけれども、情報共有化という言葉がよく出てくるわけです。この情報共有化って一体何だろうかということなんですね。  これまでも食品添加物などでも起きているわけですけれども、例えば国内の安全審査を非常に簡略化する、省略化する、そのために例えば外国で行われた安全審査をそれで代替させるということが食品添加物でも行われてきましたけれども、遺伝子組換え食品でもそういう事態が起きる可能性がある。情報共有化というのは、まさにいわゆる十二か国でその情報を共有しよう、ということは安全審査における情報も共有しよう、これは将来的にはやはり新規承認に係る安全審査のいわゆる簡略化に非常につながっていきかねない、そういう問題がやっぱりここにあると思います。  それから、第五章の税関当局及び貿易円滑化の分野でありますけれども、この中でやはり一番心配されておりますのが輸入手続の迅速化という項目であります。これ、物品引取りでの四十八時間以内のルールというのが設定されておりますけれども、今まで日本の検査どのぐらい平均で掛かっていたかといいますと、九十二・五時間平均で掛かっていたわけです。これが四十八時間以内にしなさいということになりますと、ほとんど検査不能になってしまいます。  これは、実は、先ほどの中国産毒ギョーザ事件なんですけれども、このときにやはり私たち日本消費者が大変衝撃を受けたのは、中国で作られたギョーザが、冷凍食品は安全だといういわゆる思い込みがあって、検査が全くされない状態でいきなり私たちの食卓に入ってきたということなんです。すなわち、やっぱり検査が全然されないということは、いわゆる中国で、中国以外の国でもそうですけど、外国で作られたものがいきなり私たちの食卓に入ってきてしまうという、そういう事態をつくり出してしまうわけですね。ですから、そう考えますと、やはりこの四十八時間ルールというのは大変に食の安全を脅かすルールになりかねません。  それから、四番目ですけれども、第七章のSPSるいは第八章のTBTに関わるところで、利害関係者に意見を述べさせるというところがあるわけですね。SPSでは利害関係者に意見を述べる機会を与えるとなっております。それから、TBTにおいてはもっと踏み込んでおります。いわゆる技術的障害でありますけど、利害者の意見を考慮し、政府機関による強制規格、任意規格及び適合性評価手続、その作成に参加することを認めるということで、利害関係者がかなり介入できる仕組みをつくってしまうわけであります。  そうなりますと、このいわゆるTBT、貿易の技術的障害の中には食品表示という問題が入ってくるわけです。そうしますと、この食品表示において非常に形骸化していく、いわゆる食品表示が緩和されていく。あるいは、今まで私たちが、消費者が願ってきたのは食品表示の厳密化なのでありますけれども、それがむしろできなくなる、あるいは逆に緩和に向かっていく、そういう流れがやはりできてしまう可能性が非常に強まるわけですね。  特に、やはり利害関係者といったときに一番問題になってくるのは多国籍企業であります。大きい企業が介入したときに、それに対してやはり抵抗できるのだろうかというのが非常に心配になってまいります。  遺伝子組換え食品の問題が、非常に消費者の関心というのは大変高いわけでありますけれども、例えば、これに対してやはり私たちは、安全審査の厳格化、それから食品表示の厳格化、それをずっと求め続けてまいりました。去年から今年にかけまして大変多くの遺伝子組換え食品の厳格化を求める署名運動というのを行ってまいりましたけれども、それで、全国から物すごくたくさんの人が署名に協力してくださいました。そういう非常に強い思いがあるわけですね。これに対して、このTPPが成立しますと、やはり私たち、大変それと逆行するような動きが出てしまうんじゃないか、これが非常に心配になっております。  最後に、最初の話に戻りますけれども、今年に入ってから食品に対する事故、事件が非常に増えてきたというのは、やはりグローバル化の影響であります。TPPは更にそのグローバル化を徹底して推し進めるという、そういう内容を持っております。それが非常に心配だということであります。  例えば、二〇〇〇年に入ってどのような事件、事故が起きたかということの追加としてもう一つお話しすると、今、鳥インフルエンザの問題が非常に出てきておりますけれども、この鳥インフルエンザ含めて動物の感染症が頻発し始めたのも今世紀に入ってからなんです、実は。昔からあるように感じるかもしれませんけれども、これもやっぱり今世紀に入ってからです。非常に農家を苦しめております、この動物の感染症、特に鳥インフルエンザのようなものはたくさんの鳥を廃棄しなければならなくなりますので。  例えば、どういうふうに今世紀になって感染症が増えてきたかといいますと、二〇〇〇年に口蹄疫が宮崎県で九十二年ぶりに発生しているわけです、二〇〇〇年です。二〇〇〇年から始まります。それから、二〇〇一年にBSE感染牛が初めて日本で確認されました。それから、二〇〇四年に山口県で鳥インフルエンザが七十九年ぶりに確認された。二〇〇四年なんです、鳥インフルエンザが本当に頻繁に入るようになり始めたのは。それから、二〇〇九年に新型インフルエンザ騒動というのが起きました、これは豚インフルエンザ騒動とも言いますけれども。それから、二〇一〇年にまた宮崎県で口蹄疫が発生しまして、大変な被害をもたらしました。それと並びまして、鳥インフルエンザ、毎年のように発生するようになってしまいました。  こういうような、これなぜそういうふうになってしまったか、この感染症が増え続けたかといいますと、やはりこれはグローバル化の中で、鳥やそれからいわゆる家畜の移動、あるい人間の移動等々が激しくなってきた、これが直接的な原因だと思います。  そういうようなグローバル化を更に徹底的に推し進めるようなTPPというのは、やはり私たち消費者を含め日本の国民に対して大変な食の安全に不安を増幅させるものだということを最後にお話しして、話を終わりたいと思います。  どうもありがとうございました。
  9. 林芳正

    委員長林芳正君) ありがとうございました。  以上で参考人からの意見の聴取は終わりました。  これより参考人に対する質疑を行います。  なお、質疑の時間が限られておりますので、御答弁は簡潔に行っていただくよう御協力をお願いいたします。  質疑のある方は順次御発言願います。
  10. 古賀友一郎

    古賀友一郎君 自由民主党の古賀友一郎と申します。  参考人の皆さんにおかれましては、大変お忙しい中、先ほど天笠参考人からは大変急遽という話がございましたけれども、お集まりいただきまして、本当にありがとうございます。  今日は食の安全がテーマということでございますので、まず、皆様がお触れになりました我が国遺伝子組換え食品の安全規制と表示制度についてお伺いしたいと思います。  これにつきましては、以前から、TPPに入るとISDSによって外国企業に訴えられて、我が国のこの制度が撤廃に追い込まれるんじゃないかという懸念が一部にはございましたので、私も本当にそうなのかというふうに思いまして、検証したいと、こう思って、実は昨年の七月の農林水産委員会で政府にこの旨を質問させていただきました。  そのときの政府の答弁は、概要以下のようでございました。我が国遺伝子組換え食品に対する安全審査WTOSPS協定に則している、また、表示制度はWTO・TBT協定に整合的である、そして、それぞれは必要、合理的な規制、あるいは正当な目的のための規制であって、いずれも差別的ではない態様で行っているから、たとえISDSで訴えられても負けることは想定されないというものでございました。  そこで、まずお伺いしたいのは、参考人におかれましてもそういうふうに理解されておられるのかどうか、これは天笠参考人中村参考人今村参考人の順でお答えいただければと思います。
  11. 天笠啓祐

    参考人天笠啓祐君) まず、安全規制の話からしたいと思うんですけれども、今、遺伝子組換え食品においては、食品安全委員会の方で安全審査が行われます。それに基づいて安全と確認されたものが輸入されるという、そういう仕組みになっております。その安全審査の仕組みの基本になっておりますのがコーデックス委員会におけるいわゆる国際的な基準になっております。  しかしながら、私たちはコーデックス委員会のこの国際基準作りのときに非常に問題にしたのは何かといいますと、この国際基準の裁量権、国際基準の中にはいわゆる各国の裁量権が非常に大きいんですね。そのため、各国ごとにやはり裁量権が大きいものですから、いわゆるいろんなことが、範囲ができてしまうと。  その中で、日本の安全審査の仕組みというのは一体どういうものなのかというふうに考えた際に、今のこの安全審査の仕組みで基本となりますのが、DNAのいわゆる塩基配列、あるいはアミノ酸の配列と言ってもいいと思うんですけど、それと、あと人工的な胃液、腸液に投入した際の分解スピードとか、こういうふうに非常に簡単な安全性評価で済んでしまう。しかも、それが開発企業のデータに基づくということになっておりますので、いわゆる第三者機関評価ではないという、そういうところにも非常に問題があると思います。  それから、表示の問題でいいますと、やはり今アメリカでも表示制度が動き始めてきておりますけれども、国際的には、台湾ではかなり厳密な表示制度に切り替わりました。元々EUはかなり厳しい表示制度を持っていますし、ロシアや中国も厳しい表示制度を持っております。そういうことを考えますと、やはり日本も厳しい表示制度にすべきですけど、今は豆腐と納豆とみそ程度しか表示されないような非常に表示制度としてはお粗末な表示制度になっているというふうに思います。  以上であります。
  12. 中村幹雄

    参考人中村幹雄君) お手元にお配りしましたジェランガムK3B646という資料三ですけれども、これを見ていただくと非常に分かると思うんですね。これの一番最後のページに、これは食品安全委員会の健康影響評価書ですけれども、最後のページにCPケルコ社の資料というのが至るところに出てくるんですね。だから、例えば⑦とか⑧というのは、まさに遺伝子そのものをどこをどういじったかということが分かる塩基配列のデータを出しなさいということなんですね。  もしもISDSがこのときに、これは僕がやった仕事の一つですけれども、このときに通っていたら、じゃ、CPケルコ社に、と交渉したわけですけれども、条件が違いますね。当時であれば、お互いの相互互恵というのがウイン・ウインだから、こうだから厚生労働省がこういう基準で出せと言っているんだから出してくれよと、おたくが出すことによってあなた方も利益になるんだろうという説得をしてきたわけですね。でも、ISDSになったら、じゃ、どうかということになると、僕がもしその交渉の当事者に、CPケルコと交渉する当事者にいたとしたら、少し状況は変わったと思いますね。非常に難しい、通ってしまえば。ISDSがちょろちょろしていたら、それは思い切ったことを言えない。モンサントまで私乗り込んでやりましたけれども、じゃ、やれたかなということを今から思えば思いますね。それを申し上げて、答えだと僕は思います。  だから、安全評価書ができなかっただろう、できなければこのジェランガムは日本で認められないから販売されない、それはお互いにとっていいことにならない。もしそうであれば、規制を全く緩和して、安全委員会評価を物すごく簡単にしてしまう、必要なデータなしでも認めてしまう、どっちかになるんじゃないかと、こう思っています。それがお答えです。
  13. 今村知明

    参考人今村知明君) 御質問の趣旨が、ISDSになったら負けるかという御趣旨であるので、私はそれは負けないというふうに思います。それは、元々、ISDSはSPSの範囲内であればそもそも係争にならないし、係争になっても負けないということが決まっているわけですね。  じゃ、そのSPS、何が決めているんですかといったら、先ほどのコーデックス基準で決めておりまして、このコーデックス基準が非常に曖昧だということが逆に幸いしていまして、非常に裁量権があると。非常に厳しい国から非常に緩い国まであって、その中で、幅がある中で、じゃ、日本が今の基準を変えなきゃいけないような場面が想定できるかといったら、裁量権の中に全て収まっているので、そういう意味ではTPPが入ってきてこれに負けるというようなことはないんじゃないかというふうに思います。  また、ISDSそのものは、デメリットも強調されていますけれども、メリットも私はあると思っていまして、実際、私自身もいろんな紛争処理に関わったことがあるんですけれども、相手国から情報が入ってこないことによって実際に取り締まることができないというようなケースも多々ありました。例えば、先ほどプライマーの、プライマーというのは、検査するために、確定するための情報というのはなかなか相手国からはもらえないというふうなことがあって、それがちゃんともらえるというのはメリットじゃないかなというふうに思っております。  以上です。
  14. 古賀友一郎

    古賀友一郎君 ありがとうございました。  そのコーデックス基準がかなり幅が広いというのはお二方から出まして、天笠参考人からは我が国の制度がかえって緩いのが問題じゃないかというようなお話もありました。  私がお伺いしたかったのは、ISDSで撤廃に追い込まれるかどうかというところだったもので、そういう程度の広い範囲の中での緩い規制である我が国、仮にそうだとすれば、そういったものが、そういったものすら撤廃に追い込まれる、そういう可能性は低いというふうに考えていいんでしょうか。もう一回、ちょっと天笠参考人に伺いたいと思います。
  15. 天笠啓祐

    参考人天笠啓祐君) うっかり質問の内容を言うのを忘れまして、申し訳ありません。  ISDS条項によって安全審査が撤廃に追い込まれるか、あるいはその表示の問題がどうかといったときに、やはり安全審査の一層の緩和は可能性としてはあると思います。それから、まさにこのコーデックスの範囲内においてやはり更に緩和されるという可能性はあると思います。それから、表示に関してもやっぱり、これはいわゆる貿易障壁に当たるといったときに、緩和という可能性ももちろん、いわゆる可能性もあると思います。  これはどうしてかといいますと、やはり一番大きな問題は、利害関係者がこの中に、いわゆる政府機関による強制規格、任意規格及び適合性評価手続などの作成に参加することを認めるということになっておりますので、例えばそういうモンサントのような企業が介入した場合には、こういうところに入った場合には、当然表示に関して、元々、日本の表示制度というのは貿易障壁に当たるということを主張してきた企業ですので、ですから、そういうことは十分にあり得ると思います。
  16. 古賀友一郎

    古賀友一郎君 ありがとうございました。  撤廃かどうかということはちょっと言及は避けられましたけれども、緩和についてはちょっと懸念を持たれているということのようでございました。  ちょっと時間の都合がございますので、次に進みたいと思います。次は、いわゆる予防原則に関してお伺いしたいと思います。  この予防原則というのは、どうもいまだ定義そのものが確立しているわけではないようでありますけれども、趣旨としては、新技術などが環境や人の健康に取り返しの付かない影響を及ぼすおそれがある場合に、科学的根拠が不十分であっても予防的に規制することができるという考え方のことをいうようでございまして、当委員会でも肥育ホルモンを投入した牛肉の輸入規制をめぐって議論が交わされました。  こうした考えは、このTPPのベースとなっているSPS協定五条七においても取り入れられているということでございまして、科学的根拠が不十分な場合でも、入手可能な適切な情報に基づきまして暫定的に衛生植物検疫措置を採用することができるというふうになっております。  一定の情報に基づいてということでございますので、単に主観的な判断では駄目ですよということぐらいはこれは分かるわけですが、じゃ、どの程度の客観的な情報に基づけば許容されるんだろうかと。この条文によりますと、関連国際機関から得られる情報及び他の加盟国が適用している衛生植物検疫措置から得られる情報を含む入手可能な適切な情報というふうに規定はされておりますけれども、国際機関や他の加盟国が援用している情報はよいように読めるわけですが、含むとなっておりますので、それ以外の情報でも許容される余地はあるように読めるわけであります。  そこでお伺いしたいのは、一体最低どの程度の情報に基づけばこの暫定措置をとることが許容されるんだろうかなと。非常にもやもや感がある部分なんですけれども、参考人の皆様にちょっと、知見をお持ちであれば御教示いただければと思います。これは、それでは次は中村先生、今村先生、天笠先生の順でお答えいただければと思います。
  17. 中村幹雄

    参考人中村幹雄君) 予防原則については幾つか例を挙げて御説明したいと思うんですが、例えば、これはTPP参加国ではないですけれども、英国は今、アゾ系タール色素が子供の多動に影響するかもしれないということで、アゾ系タール色素を食品に使うのをやめなさいということで、やめた企業の名前とブランド名を全部ホームページに書いているわけですね。そういうことを英国はやっている。日本はそうじゃない。これ、予防原則のやり方の一つの例だと思うんですね。  それから、先般このTPP特別委員会で、アルミニウム含有添加物四品目どうするのかということをたしか共産党の吉良参議院議員が御質問された議論があったと思うんですけれども、この中で、先ほどのコーデックスでよく出てきますが、コーデックスのGSFAではその中の四品目は既にもうないわけですね。というのは、国際汎用添加物というのは、その四十六品目はコーデックス、すなわちJECFAで認められていて、EU及び英国で認められているという、そういう三つの条件をクリアしたものを国際汎用添加物として我が国事業者の申請がなくても厚生労働省は責任持って認可していくということを諸外国に約束してきたわけですね。これは二〇〇二年の事件が起こってからそうなったわけですよ。しかし、もう既に矛盾が出ているわけです。アメリカが今この四品目を早く認めなさいと言っているけど、しかし、もうコーデックス見たら、GSFAの中でもう二つ消えちゃっているわけですよ。じゃ、そういう中で厚生労働省どうされるのかなと、僕は傍聴させてもらったときにそう思いましたね。  だから、予防原則でもって、アルミニウムについては子供さんに対しての影響がある、日本の場合でも、国立衛生試験所の先生が若年者で安全量を超えている可能性があるということを指摘されていると、そういうお話もこの間あったと思うんですね。だから、そういう立場から、じゃ、日本はどうしていくのかということじゃないかなと、こう思います。事例を挙げて恐縮です。
  18. 今村知明

    参考人今村知明君) 御質問、どこまで暫定措置が入れられるかということで、非常に難しい質問だというふうに思います。  私も、大前提として予防原則の考え方各国に差があることをまず説明したいと思うんですけれども、現実、TPPWTOSPS各国で考えている予防原則の考え方に違いがあります。言葉としての定義は非常に似通っていますけれども、現実に打っている施策では差が出てきます。例えば、先ほどあった肥育ホルモンのような話でいえば、ヨーロッパはWTOでパネルで負けてもまだ続けているということですので、まさに参照すべき情報というのを国際的に認められないというものでも止めているという状況もあります。逆に、それで国際的に認められているということであれば従うという国もあるでしょうから、国単位によってこの予防原則の考え方が違います。  それもまたヨーロッパから見たら、日本も止めている食品もたくさんありますので、立場が変わればその基準というのは変わっていくというふうな状況があって、定義そのものが非常に曖昧で、非常に便利に貿易障壁として使われているという面が否めないというふうに思います。  基本的には、他国で止めているというふうな情報があればそれは参照するべきことだと思いますし、自国の毒性基準を見たときに、例えば有症状を示すLOAELという基準がありますけれども、それに対して超えていくようなものが入っているということであれば当然それは止めるべきですし、安全係数一〇〇掛けたところまでが、普通は百倍希釈しても基準として用いられたりしますので、ある程度危険性がないというところまで下げて止めていくということもできるんじゃないかというふうに思います。  以上です。
  19. 天笠啓祐

    参考人天笠啓祐君) 予防原則は確かに難しい、範囲を決めるというのは大変難しいと思います。それはもう基本だと思うんですけれども。ですから、疑わしい段階で予防するという考え方ですので、疑わしい根拠のないものに関しては、疑わしいと言われるものがない限りはやっぱりそれはあり得ないと思うんですけれども。ですから、どこまでどの程度を疑わしいとするかというのは非常に難しいとは思います。  しかしながら、例えばこの予防原則が最初に登場してきたというのは、ドイツのシュバルツバルトのいわゆる酸性雨による枯死の問題だったわけで、環境問題がやはりこの予防原則では大変大きな問題になっておりまして、環境破壊も食の安全も同じなんですけれども、結果が起きてからではやっぱり遅過ぎる、そのために事前にどうやって防ぐかというのを確立しなくちゃいけないよというところから始まっておりますし、日本でも四大公害裁判でこの予防原則というのがやはり大事だということがうたわれておりまして、日本はある意味では予防原則の先進国と言われておりまして、そういう意味ではやはり予防原則というものを日本でどういう範囲でどういうふうにして確立したらいいかというのをちゃんと世界に先導していく、そういう役割はやっぱり必要だと思うんです、日本でこそ。  ですから、そういう意味では、範囲としては曖昧かもしれないんですけれども、でも消費者はどうしても疑わしいときにはやっぱり避けますので、ですから、そう考えますと、そういうのも含めて、ある意味ではそれは感情的と思われるかもしれませんけれども、そういうものも含めて予防原則についてきっちりやはり日本で確立していただけると有り難いなと実は思っております。
  20. 古賀友一郎

    古賀友一郎君 ありがとうございました。  やっぱりなかなか本当に難しい問題だなというのが改めてよく分かりました。  この暫定措置を取り入れる幅ですね、これをどの程度認めるかによってこの予防原則がどれぐらい実質化されるかというところはかなり変わってくるんだなということは私も思っておりまして、国際社会はまだ手探りのようでありまして、逆に言えば、そのことがこの不安の一因になっているのかなと、こういうふうに思いましたが、ただ、いずれにしても、この問題はTPPによって追加的に生じる問題ではなくて、もう既に現にある問題だということだろうと思うわけであります。  ちょっと時間が少なくなってまいりましたので、次に用意していた質問は割愛いたしますけれども、今回のいろんなお話を伺っておりまして、TPPにまつわる問題とTPP以前の問題、現状の問題、これはちょっとごっちゃになっている面があるのかなというのは印象として持ちましたので、そこはきっちり分けて議論をする必要があるんだと思いました。客観的な安全基準も科学の進歩によって変わりますし、主観的な安心感もこれは安全基準とはまた別ですので、ここのところの問題も難しいんだなと思いました。  いろいろ本当に参考になる御意見ありがとうございました。これで私の質問を終わりたいと思います。  ありがとうございました。     ─────────────
  21. 林芳正

    委員長林芳正君) この際、委員異動について御報告いたします。  本日、神本美恵子君が委員辞任され、その補欠として江崎孝君が選任されました。     ─────────────
  22. 田名部匡代

    田名部匡代君 民進党の田名部匡代でございます。  参考人の皆様、今日はどうぞよろしくお願いを申し上げたいと思います。  TPP、この議論が始まって、特にこの食の安全、安心ということに関しては私もいろんな方とお話をしますけれども、どちらかというとやはり女性であるとか、またお子さんを持ったお母さん方、こういう方々とお話をしたときに、本当に私たちが安全を確認できるような表示が義務付けられるだろうか、そして大量に海外から輸入されて、それらが自分たちの健康に問題ないのだろうか、こういった心配の声を聞くことがあります。  一つは、やはり今議論を通じて、その議論を御覧になっている多くの国民の皆様がそれを確信を持てずにいるということだと思うんですね。食の安全、安心だけではないんですけれども、こうしたこれまでの衆議院、参議院を通じてその議論を見ていても、何か賛成の側は、大丈夫なんだ、安心なんです、問題ないんですよと言う。でも、なかなかそれは単純には納得できるものではない。逆に、一方、私自身もそうですけれども、反対をする側は、こういう問題がありますよと言う。それというのは必ずしももう起こっていることではないので、これから未来で起こる可能性を含めて議論がなされているわけです。  ただ、やはり、私たち国会に身を置く者として、国民の健康であるとか、また命であるとか、安全というものにしっかりと責任を持っていかなければならない、そこに少しでも可能性、危険であるとか不安要素であるとか、そういったものが含まれるのであれば、しっかりとそれに応えていく責務があるんだろうと、そんなふうに思っているわけであります。  一つ、先ほども中村参考人の方から少し御発言ありましたけれども、今の現状でもまだまだ日本国内では不十分なものがあるんだろうと思うんです。  それの一つは検査体制であります。これ、大臣の答弁でも、例えば、体制は強化しているんだとおっしゃっておりまして、食品衛生監視員、これ増員を図っているという御答弁が過去にあったんですね。でも、調べてみると、二〇一五年には七名の増員、二〇一六年には僅か二名の増員、そして来年は十九名の増員を目指している、トータルで四百八名。年々輸入の届出というものが増えていて、現段階でたしか二百二十五万件程度だと思います。これが更に増えていく可能性が考えられるわけでありまして、TPPにかかわらず、今の段階で国内の食の安全、安心を守る体制ができていないのではないかなと私自身感じています。  今の現状と、そしてこれから起こり得る可能性について、やはり日本は今後どういう体制をつくっていくべきなのか、何が不十分でこれからどうあるべきなのか、それぞれの皆様にお答えをいただきたいと思います。今村参考人からお願いいたします。
  23. 今村知明

    参考人今村知明君) 御質問ありがとうございます。  検査体制の問題について人数が足りているかという御質問で、もう全く足りていないというふうに思います。海外の検査機関に比べても、日本の検査機関、十分とは言えない状況ですし、今大量の検査をすることを求められているんですけれども、それを実施する人数が全く足りないという状況であります。  ですので、今の人数でたくさんやれということ自身無理があるので、たくさん検査するべきだというのは私もそう思うんですけれども、それに見合うだけの人と資源を投入するべきだと思いますし、もっともっと充実した検査体制をつくるべきだというふうに考えております。
  24. 中村幹雄

    参考人中村幹雄君) 二点あると思います。  一点は、今の体制で、人、物、金の話で、人でいえば、さっき申し上げたように、三十三年前、厚生省の課長が、自分のところ十一人だ、FDAは三百五十人いる、カナダでも百五十人だとおっしゃったんですね。数年前、二、三年前ですけれども、国立衛生試験所の先生が雑誌に書いておられたのは、FDAで今九千六百人という話されたんですね。たしかワシントンDCの近くの元軍港のところにFDAは移管されて、二十七のたしかビルを建てて、その九千六百人という方で働いておられるんですよ。  じゃ、厚生労働省はどうですかという話なんですね。これは多分、僕よく分かりませんけれども、総定員法というのがあって、そこを大幅に増やせないという多分問題があるのでしょうね。となれば、さっき申し上げたように、これ行政マターというよりは、むしろ国会でどうこうされるという話じゃないかと。そこのところで人の手当てをしない限り、厚労省に迫ったとしても無理じゃないかと、こう思うんですね。それが証拠に、消費者庁をつくって食品表示をやったときに、じゃ、厚生労働省から何人の方が行ったのかですね。たしかたった二人しかあのときに厚労省から移管できなかった。人が、定員がいないんですよ。  もっと言えば、検査やっていた、そこを指導していたのは国立衛試の大阪支所なんですね。大阪支所も潰しましたよね、厚労省は。それだけの人員をどこかへ持っていかなきゃいかぬから。大阪支所で神戸の検疫所を指導したりとか、あるい食品添加物の調査、マーケットバスケット方式の調査のまとめとか、非常に先進的なことを大阪でやっておられたんですよ。そこを潰してしまった、片肺にしてしまった。ここが第一の点の問題です。  もう一個は制度の点ですね。非常に誤解があるのは、何か日本とアメリカと比べたときに、アメリカの制度が非常に厳しいんだということを御理解なさっていない。すなわち、二〇一一年のFSMA、フード・セーフティー・モダニゼーション・アクト、HR2751という法律をオバマ大統領が一月にサインをした。それのまず第一は、全部アメリカで売りたいんだったら世界中全部、国内問わず登録せいと。多分四十万件ぐらい登録するだろうとおっしゃっておられた。今二十万件ぐらいに多分なりつつあるわけですが、日本は出遅れて、最初百社ぐらいだったんです。今もう一万社超えて世界で第二位になりましたけど、要はまず登録させるんですね。  その二つ目は、検査に入るわけ、査察に。アメリカのFDAが査察に入る。日本もかなりの会社に今査察に入っていますよ。だから、要は入ってくる食品を検査するということも大事ですけれども、制度としてFSMAのような制度をつくって、まず日本に来るものだったら全部、会社は中国も含めて全部登録、全世界登録させて、そこに査察に行くと。そうしたら、先ほどおっしゃった四十八時間とかそんなのなくても、安心して、あるいは安全なものが入ってくるような工場からだったら検査しなくてもいいんじゃないですか。それがHACCPという制度だと僕は思うし、そういうように二つのこと、人、物、金の特に人のことの手当てをやっていただくこと。それから、制度的にはアメリカのFSMAを倣って、ああいった食品安全法を、根本的な法律日本も作るべきじゃないかと。  このように、口幅ったくて失礼ですが、申し訳ないんですけれども、そういう法律を是非とも作っていただきたいと。  アメリカは自分たちの国民を守るためなんですよ。よく消費者方々が誤解するんですね。FSMAはアメリカ国民を守るためにあって、日本国民を守るためのものじゃないんですよ。そこ、よく誤解されていますね。だから、我が国にも、対等、平等でやっていくんだったら、国民を守るんだったら、食品安全法なりを作ってきっちりとやっていっていただく、そういう制度的な手当てが必要だと思います。  以上です。
  25. 天笠啓祐

    参考人天笠啓祐君) 以前、スターリンク事件というのが起きたことがあるんですけれども、アメリカの遺伝子組換えトウモロコシで、日本で未承認のものが、アメリカでも未承認でした。アレルギーを引き起こす可能性があるということで、アメリカでも未承認のものが出回っていたことがあるんですけれども、これの検査を最初にしたのが私たち民間の団体だったんですね。  こういうものが検出されたというので私たちもびっくりしたわけですけれども、要するにそういうものがやはり日本に素通りで入ってきていた。アメリカでも未承認なのが何で日本でも入ってくるんだろうかというのは、やっぱりその辺はすごくびっくりいたしましたけれども、そういう意味で、こういう問題というのは新しい分野で次々と問題が起きてくる。それに対してどう対応していったらいいかといったときに、今の数では絶対的にやっぱり不足、これはもう明らかなんですね。  私たち、自前で検査もしていますけれども、アメリカでもそういう自前で検査をしている団体がありまして、マムズ・アクロス・アメリカという、アメリカ中のお母さんというふうに訳しているんですけれども、こういうお母さんの組織がありまして、子供たちがアレルギーですとか多動症ですとか、いろいろな健康被害が広がっている、それと農薬との関係というのをやっぱり調べてみようということで、自前で検査をしている団体があるんですね。  そこがやはり、今回私たちもびっくりしたんですけれども、除草剤のグリホサートが、これがワクチンから見付かったんです、この検査で。これはやっぱり私たちもびっくりですけれども、なぜワクチンで見付かったかというと、ワクチンには安定剤でゼラチンが使われているんですね。そのゼラチンの原料が豚の靱帯、いわゆる豚が使われておりまして、その豚の飼料に遺伝子組換えのトウモロコシが使われているわけです。そのために除草剤がそのワクチンの中に入ってきた。そういうことを検査して、もう私たちもびっくりしたわけですけれども、これは本当にちゃんとした検査機関でやっておりますので。そういうことが起きました。  ですから、もうこういうふうに新しい分野で次々と起きておりますので、そういう意味では情報をきっちりキャッチする、そういう力が検査の体制の中では大事ですし、そういう新しい分野で是非とも取り組めるような、そういう体制づくりというものもやっぱり大事だと思います。
  26. 田名部匡代

    田名部匡代君 本当にこうして議論させていただいて、また専門家の参考人の皆様からお話を伺って、今ここでお話を伺って初めて、えっと驚くようなことも私たちでもあるわけでありまして、しっかりと情報を共有するというだけではなくて、お話をいただいたように、法律を作る、体制を強化する、まさにやるべきことの順番が逆なのかなと思うわけですけれども、安全だ安全だ、ただ口で言われても誰もそれは信用できないというか、それでは安心、納得ができないわけで、やはり徹底的に、グローバル企業の利益を優先するのではなくて、私たちはしっかりと国内の健康というものを最優先に守っていくんだというその体制を、今でも不十分なわけですから、しっかりとつくっていくことが大事なのかなというふうに思っています。  そして、先ほど今村参考人資料に科学的な正当性、このことも国会でも随分と議論がありました。  それで、これ私、単純にちょっと不勉強のままお伺いをしたいんですけれども、コーデックス基準というものを基に日本でも食品安全委員会などがその安全の基準というものを、また評価というものを行っていくわけですけれども、ある私が読ませていただいた資料に、本当に世界一律の基準で大丈夫なのだろうかというような話があるんです。  というのは、まさにそれぞれの国によって主に食べるものも違う。例えば、日本であればお米を主食として食べています。そのお米を作るときに使われる農薬の基準というのも当然日本、アメリカでは違って、日本が相当厳しいわけでありまして、やはりそれが同じ基準になったときに、より多く食べる側により大きな健康被害が起こる可能性がある。やはりこうしたことも含めた独自の安全基準評価というものも本当は必要なのではないだろうかということを単純に思うわけなんですね。  是非、こういったことに関して参考人の皆様がどんなふうにお考えになっているのか、お聞かせをいただければと思います。
  27. 今村知明

    参考人今村知明君) 今コーデックス基準についての御質問で、コーデックス基準というのは非常に曖昧に書かれていまして、幅が広く読めるようになっています。  例えば、たくさん食べている国だと厳しくできるようにちゃんと書いてあって、それはコーデックス基準を決める際に各国が自分の国ならここまでは読めるようにしてもらわないといけないよということを申し合わせて、その許容できる範囲まで広げた非常に幅の広い表現で合意しますので、一律の基準と申しましても、緩い言葉で作られた、たがのようなものなんですね。  ですから、たくさん食べるという理由でどんどん厳しくすることも可能なようにできていますし、それを作る段階で、例えば日本基準コーデックスで禁止させないためには、日本から出ていって、日本基準が必ずそのコーデックス基準に通るようにこちらから仕掛けていくということがまず必要で、そのために人員も必要だしパワーも必要だと思います。それをベースにコーデックス基準を作っていく限りは、日本基準コーデックス基準に左右されるということはないように持っていけると思いますし、逆に、今議員御懸念のようなところをコーデックス基準の中でちゃんと読み込んで、国際水準に持ち上げるということをやっていく必要があるんじゃないかというふうに思います。  以上です。
  28. 中村幹雄

    参考人中村幹雄君) 一つ事例を挙げてまた御説明したいんですけれども、コーデックス、私たち、食品添加物を指定してもらう仕事をしてきたわけですが、例えば甘味料、スクラロースがあるんですけれども、あれの使用基準を作るのは、コーデックスのGSFAを参照しながら、我が国食品に合わせて、食生活に合わせた形で使用基準を作るということで、一つの重要な参照基準じゃないかというふうに思っています。だから、それは非常に活用できるわけですね。  じゃ、一方、我が国食品添加物はどうなっているかというと、特にいわゆる天然添加物コーデックスに登録されていないものが山ほどあるわけですね。私たちも結構努力をして、業界で安全性のデータをやるためにお金集めたりしてやってきましたけれども、非常にそういう点では、アメリカもそうですし、コーデックス自身に登録されていない天然添加物がたくさんあると。  じゃ、今回、安倍政権が輸出をしていこうということをおっしゃっておられて、日本の農業を支えていくために加工食品を輸出していくんだと。じゃ、アメリカに輸出するためには、食品添加物、今のところ着色料で四種類事例に挙がっているんですね。ベニコウジ、ベニバナ、クチナシの黄、クチナシの青。これは日本で使えるけれども、アメリカのFDAでは全く使えないわけですよ。それで、コーデックスの方にもこれは登録されていない。一部は中国と共通しているから、中国が座長になって、ベニコウジ辺りは中国がコーデックスで一生懸命やろうかと、こう言ってくれている。  やっぱりこういうところに農林水産省がお金を掛けて、安全性をちゃんと担保できた、国際的にも通用する添加物日本発の添加物を高めてもらうことによって初めて農林水産物がたくさんアメリカやその他に輸出できるんですよ。ここにお金を使ってもらっていかないといけない。そして、コーデックス基準日本がやっぱり支えていかないといけないんじゃないかと思いますね。  誠に失礼ながらというのか、小生の事例でいえば、アナトーという着色料を、世界から金を集めて、たしか二億円ほど皆で集めて、出し合って、安全性を一緒にやった経験があるんですね。そのときは日本が二〇%負担をしてそういう安全性の確認をして、コーデックス基準をしっかりしたものにしたという経験があるんですね。  やっぱり国際的にも事業者が連帯しながらやっていく、そういう中で政府の方々事業者が情報交換もしながら、そういったコーデックスにも協力するというのか、コーデックスを支えていくし、コーデックスもまた活用させてもらうという関係じゃないかなと、こう思っています。  誠に口幅ったくて済みません。
  29. 天笠啓祐

    参考人天笠啓祐君) 同じく食品添加物についての事例ですけれども、元々、食品添加物というのは各国ごとに承認する仕組みになっていたわけですね。これは、やはり各国で食文化が異なるということ、それから各国での摂取量が異なるということで、各国ごとでの承認という仕組みになってまいりました。  しかしながら、国際汎用食品添加物という形で各国ごとというのが崩れまして、アメリカですとかヨーロッパで承認されている添加物はやはり日本承認すべきだという、そういう流れができてしまったわけですね。これはやはり貿易の自由化、いわゆる貿易障壁というものを意識したものであります。そういう意味では、各国ごとという仕組みがやっぱり崩れてきているというのは事実だと思います。  なおかつ、やはり問題になって、その後、食品添加物指定手続の簡素化・迅速化措置というのが政府によってとられました。この簡素化・迅速化措置というのは、指定手続を簡素化、迅速化するということは承認をどんどんどんどんしなさいという仕組みになってしまったわけですね。ですから、国際汎用食品添加物という概念、それから簡素化・迅速化措置という形で、各国ごとで承認すべき、あるい各国の国民を守るべき、そういう審査がやはりそういう形で崩れてきている、これが今の状況でありますし、TPPになりますと、こういう流れが更に加速するという可能性は高いと思います。
  30. 田名部匡代

    田名部匡代君 まさにEUなんかは非常に厳しい基準を持っていて、それに比べると、先ほど中村参考人の方から、アメリカなんかも今は食の安全に対して厳しい法律なんかを作っているというお話でありました。  そういう意味では、やはり日本もしっかりと自国の食品安全基準を貫き通す、まさにそれが輸出に対する強みにも変わってくるし、そして海外から入ってくる食品の危険を防ぐということにもなってくると思うんですね。  遺伝子組換えトウモロコシであるとか大豆であるとか、こういったものも、入ってきたときに、アメリカでは、輸入先では餌だけれど日本ではこれらを多く食する、こういうこともあるわけですから、是非とも、これからまたしっかりと私たちは最優先に国民の健康、命を守るという前提で取組を進めてまいりたいと思います。  どうもありがとうございました。
  31. 三浦信祐

    三浦信祐君 公明党の三浦信祐でございます。  今村先生、中村先生、天笠先生、今日は、貴重な御意見を頂戴しまして、誠にありがとうございます。  生きていく上で絶対に欠かすことができない食で、また、食の安全があってこそ、健全な社会、生活の礎となっていくものだと思います。政治はしっかりその生活を守っていくことが大切な仕事だと思います。その点から何点か教えていただきたいと思います。  私は今子育ての真っ最中で、子供の食の安全については大変気になるところであります。そこで、大学の教育現場におられる今村先生、中村先生に、食の安全について敏感な子育て世代の代表として伺わせていただきたいと思います。  子供が将来にわたって健康に生活していくために、また、食文化の継承や社会性の涵養の観点からも、学校における食に関する指導の充実が求められています。  現在、学校給食は、教育活動の一環として位置付けられております。学校給食法では、第二条に学校給食の目標として七項目規定をされています。中でも、一号では適切な栄養摂取による健康の保持増進を図ること、七号では食料の生産、流通及び消費について正しい理解に導くこととなっております。  さらに、学校給食の現場では、学校給食法の目的とは別に、食中毒の問題や近年では食物アレルギーへの対応など、教職員や栄養士は様々な食の安全に向き合わなければなりません。まさに、先ほど今村先生がおっしゃられました、生活の中でのリスク分析枠組みの中にあると思います。  今回のTPPの審議の中では、食の安全として、輸入食品に係る農薬や添加物規制の在り方、肥育ホルモンや遺伝子組換え食品などへの懸念などが議論をされております。  学校給食だけではなくて、家庭での食事や外食における食の安全は社会でも関心のあるところですけれども、今後、教職員や栄養士も、このTPPを契機として食の安全を意識して子供たちと接することが重要と考えます。給食の場合には、そこに表示もなければ、安全なものであるという信念に基づいて皆さんは食べられるわけだからです。これには、このところに関わられる養成課程の段階から食の安全についての知識を身に付けていくことが大切だと思いますけれども、この点について今村先生、中村先生に御所見を伺えればと思います。
  32. 今村知明

    参考人今村知明君) 御質問ありがとうございます。  学校での食の教育についての御質問ということで、今、学校教育の中では昔に比べれば食についての教育が随分充実してきてはおりますけれども、まだまだ不十分の状況であります。  例えば、典型的な事例としまして、先ほどジャガイモ事例を示しましたけれども、各学校でジャガイモの栽培の実習をやっているケースが多々あります。その結果として、そのジャガイモを食べた結果、食中毒を起こす学校が毎年あります。それはなぜかというと、青芽が出ている状態のジャガイモを食べるからですね。なぜ青芽が出るかというと、収穫してすぐ食べるわけではなくて、少し置いておくと芽が出てしまって、食べてしまうから起きるんですね。これは、食育の教育をし始めているいいことに対して、食の安全性についての認識そのものがまだまだ学校に浸透していないというふうな事例だというふうに思います。  そういった意味で、食の安全、食の提供に関しての教育が重要だということは分かりつつもまだ浸透していないという状況で、これをいかに実りあるものにしていくかというのが今後の課題だと思いますし、現実に一生食べ続けるものについての知識をもっと正確にやっぱり知っていただく必要があると思いますので、何が毒性があって何が毒性がないのかということも含めて、例えばキノコなんかでも、山に入ってキノコを食べて亡くなる方というのは毎年のようにおられます。じゃ、そんなものを食べていいんですかということをやっぱりちゃんと子供の頃から教えていくということがとても重要だというふうに思います。  以上です。
  33. 中村幹雄

    参考人中村幹雄君) 私たちは薬剤師を教えているんですね。僕も食品安全学とそれから数学をやっているんですが、学校薬剤師というのが学校教育の中にありまして、薬剤師たちに何を教えているかというと、あなた方はほかの方々からは食品について知っていると思われているけれども、本当は知らないんだよということを教えているんですよ。  すなわち、どういうことかというと、加工食品は表示見たって分かりません、表示されていないものが山ほどあるんですね。やっぱり、学校の中で不幸にして亡くなった、アレルギーの亡くなった事例もありますけれども、実際、加工食品を見たときに、表示されていないけれどもアレルギーになるような例えば添加物、増粘多糖類なんかあるわけですね。だから、今の表示制度であれば、分からぬものが、隠れているものがいっぱいあるから、アレルギーになったということでプリックテストをやってほしいと医者へ持っていったとしても、その加工食品を見たって薬剤師ですら分からないんだよと、まずそこを教えているんですよ。  だから、そういう実情だということを学生が覚えて更に勉強していく、そして学校薬剤師としてお役に立てるという、そこを目指していると、こう申し上げたいと思います。
  34. 三浦信祐

    三浦信祐君 ありがとうございます。  そういう点からおきますと、実は私の問題意識としては、消費者への食品添加物、また食料品購入に際しての選定について理解するための方法の現状と課題認識、この辺が大事なんじゃないかなというふうに思います。消費者が、もう売っているものは安全なものだと信じて購入しますし、それを調理して食べることになると思います。  一昔前、合成保存料、合成着色料は一切添加されておりませんという表記があったことは記憶に新しいと思います。それを見て、ならば安心だとして商品選択をした記憶も私自身ございます。しかし、何がどう健康に影響するかなどについて決して理解があったわけではありません。消費者が、食の安全について漠然と入ってくる情報だけではなくて、正確に判断できる情報を得る、学べる機会が重要だと思います。  今回のTPP協定締結において、現在表示されている食品表示について私は理解が進むチャンスだと捉えております。そうでなければ、例えば海外から入ってきたものは不安、国産品が安全と、このような認識のままでは消費者の食料選択において正確性を欠いていくものではないかと思います。  一方で、食品表示が複雑となってしまえば、生産者、製造者及び流通・小売業者にも大きな負荷を与えてしまいかねません。加えて、合理性に問題が生じて、WTOであったりISDS条項に抵触するなどの議論にまで発展しかねません。  今後どのようにすれば消費者食品表示を含め食品安全についての理解を深めていけるか、天笠先生、中村先生、そして今村先生の順番にお伺いできればと思います。
  35. 天笠啓祐

    参考人天笠啓祐君) どうも御質問ありがとうございます。  大変重要な問題だと私も思っておりまして、消費者の立場からしましても、やっぱりこれは本当に一番今関心の高い課題だというふうに考えております。そういう意味では、やはり食品表示というのが消費者にとってみますと、食品表示というのは、最終的にといいますか、最初であり最後である、こういう非常に決定的なものであります。そういう意味では、本当に厳格な表示というものをするという、そういうことがやっぱり大事だと思うんですね。それによって、それがない限りやはり選択する権利ができませんので、ですから食品表示をきちっとしていただきたいなというのがあります。  特にやはり消費者の要望の強い食品表示というのが、先ほどから繰り返し出ております遺伝子組換え食品の表示制度ですね。これはやはり非常に関心が高いわけですね。現在のところ、本当に僅かな食品しか表示されていないという現実があります。それから、加工食品の原料原産地表示ですね。これについては今、国会の方で審議されておられますけれども、そういう加工食品の原料原産地表示。それから食品添加物の表示ですね。この三つはやはり非常に関心の高い領域であります。これは直接食の安全につながる表示ですので、これをやはりきちんと表示していただくという仕組みづくり、それが前提、それがない限りやっぱり消費者は選べませんので、幾ら消費者教育をやったとしても駄目だと思うんです。  それから、やはりもう一つ食品表示で問題になってくるのは、外食、レストランですとかあるいは対面販売で表示されていないことなんですね。これもやはりレストランに行ってどこも表示が出ていないわけです。実は昨日スイスの方が来られまして、スイスではいわゆるレストランのメニューに原産地表示があるんです。そういうような取組、こういうのも是非とも、やっぱりこれは国会でなければできないものですので、是非皆様方のお力で実現していただけると有り難いなと思います。
  36. 中村幹雄

    参考人中村幹雄君) 食品添加物事例にして申し上げたいと思います。二点です。  一点は、いわゆる全面表示ということになったけれども、日本コーデックスルールに比べたら完全におかしいというのか、国際的なルールを逸脱している表示制度なんですね。すなわち、コーデックスでは物質名表示と用途名を併記する、香料とか加工でん粉を除いてはそれが大原則です。日本消費者の要求が、用途が知りたいと、着色料使っている、保存料使っている、それが知りたいから用途だ用途だと消費者はおっしゃったんですね。だから、表示制度は、用途が前面に出ていて物質が後ろに行っちゃっているという表示制度なんですよ。だから、国際的に逸脱したというおかしな制度になっちゃっていますから、それは最初の予定というのか、全面表示をしっかりやってほしいと。  それと併せて、先ほどの天然添加物ですけれども、平成七年の国会の附帯決議がありまして、既存添加物安全性については速やかに確認することとなっているんですね。平成七年で、既存添加物名簿ができたのは平成八年です。二十年たちました、速やかにやるということになっていますが。これ行政に言ったら、国会のそういった附帯決議は指針にすぎないんだと、こうおっしゃっておられまして、そういえば、ともかくとして、速やかにやっぱり安全性確認をして国際的にも通用するような添加物にすると。要は、添加物、今何本か分かれていますからね。指定添加物、既存添加物、一般飲食物添加物、香料と分かれていますから、そうじゃなくて、添加物は一本にするということで国際的な基準に早く合わせると。元々それが平成七年の国会食品衛生法大改正の目的だったはずなので、早く実現していただきたい。  最後にですけれども、事業者が一々負担が多いといいますが、私、事業者だったんですね。私どもの会社は二万アイテムのものを販売していました。全部コンピューターでやっていますから、全然負担ないですよ。何が変わったって、原料が変わったって、ぱっぱっと全部できちゃいますよ。だから、負担負担とおっしゃるけど、おかしいと僕は思っています。  こういうように僕みたいにやれるという人が委員に全然、食品表示部会でも呼んでもらえないから。実際やれるんですよ。事業者でやれるんだから、やれるという人を事業者の中から選んでもらうと。利害関係者を公平に選んでほしいというのが意見ですね。  食品表示法をやったときに、添加物業界が誰もあそこに入っていなかったんですよ。だから、今の基準めちゃくちゃですよ、僕が言うのも変ですけれども。めちゃくちゃな基準作っちゃっています、添加物のところは。誰も知っている人いなくて議論やっているんですもの。もう一度あれもちゃんとやり直していただきたいと思っています。  誠に口幅ったくて失礼しました。
  37. 今村知明

    参考人今村知明君) 食品表示、どう持っていくかという御質問ですけれども、私、昔、食品表示の行政に携わっていた関係がありまして、皆さんとも御縁があったと思います。もう外れて十五年以上たっているので、昔の話等も含めて考えていきたいと思います。  昔に比べて食品表示は今はるかに複雑になっていまして、ちょっと勉強したぐらいではあれは理解できないという状況であります。実際、学校教育であれを教え切るのは極めて困難という状況であります。先日、表示のある本を書いたんですけれども、そのためにも物すごい勉強量が必要で、複雑怪奇な制度になっていると思います。  これは、できるだけたくさんのことを厳格に書くべきだという全く原則のとおりのことなんですけれども、いや、それをやればやるほど書く量が増えていくと。一番難しい表示は幕の内弁当だと思うんですけれども、普通に全部ルールどおりに書いたら中身が見えないぐらいの表示になってしまうという状況で、それをぐっと書ける範囲に抑えるということが今表示が抱えている最大の課題なんですね。  じゃ、何で絞っていくんですかというと、私は、基本的には追いかけられるものでないと、空文化してしまうと意味がないと思います。代表的なものとしては、ちゃんと検知ができて、ちゃんと処罰ができるようなルールがあるもの、そしてもう一つは、ちゃんと追いかけられるようなものを、そういうものにちゃんと絞っていくべきだと思うんですね。むやみやたらに何でも書いたらいいというふうにはならなくて、それはより表示制度を駄目なものにしていくと思うので、厳格な制度として運用できるもので、そして余り表示が大きくなって本体が見えなくなるようなことがないような表示に抑えることということがとても重要なことだと思います。  それが制度上の問題で、それはさておき、実際に複雑な表示になっていますので、学校ではもっと食品表示について教えるべきだというふうに思います。それは、教えられる人も今ほとんどいないという状況なので、より食品表示について解説したことを国民に対して国も発信していってほしいというふうに思います。
  38. 三浦信祐

    三浦信祐君 TPPを議論するに当たって、やっぱり様々な問題があるということも分かりました。しかし、これをしっかり進めていくことによって人口減少社会に対応していく、そのTPPを推進するという立場で、一つ今村参考人に伺いたいと思います。  TPPによって自由貿易が加速をしていきますと、日本食品を、また攻めの農業で農産品を世界へどんどん輸出していこうということが期待をされております。国際競争にさらされていく中で、国際的な食品安全規格に対応することも当然求められてくることになります。しかし、食品安全基準が必ずしも世界の中で日本が最も厳しい分野と言えるとは言えないというのも事実だと思います。  食品安全基準への生産過程での対応が遅れていることも様々報道されていると思いますけれども、これによって輸出が困難になってしまうという事例が出てくる可能性があります。具体的には、グローバルHACCPに対応しているかどうか、またグローバルGAP、これもちゃんと対応できているかどうかという課題が生まれてくると思います。  この食の安全を担保する上でも、また積極的な輸出戦略を描く上でも、日本の農水産業、また六次産業化も進んでいる中で、食品産業がこれらに対応していく手だてが重要だと思います。当然、予算措置も必要だというふうにも考えますけれども、今先生の中で現状の把握と今後の展望、その辺について御意見を伺えればと思います。
  39. 今村知明

    参考人今村知明君) 御質問ありがとうございます。  今後の食品衛生や農政の安全性の確保についてということなんですけれども、私は、日本世界に比べれば食品安全の基準が非常に厳しい国だというふうに思います。アメリカも厳しい面はあるんですけれども、あのFSMAという法律ができるまでは国を統一した安全法というのはなかったんですね。そういう意味じゃ、日本よりもアメリカは全体としては遅れていた。進んでいる州は進んでいるんですけれども、遅れている州は果てしなく遅れていたという状況で、平均で見たら日本の方が進んでいるというふうに思います。  じゃ、その日本の平均的な姿とアメリカの進んだ州とを比較したときには、例えばHACCP一つを取ってみても、日本は全ての事業所がHACCP的に動いているわけではありません。HACCPを入れるかどうかという大前提として、心構えの問題が大変重要で、HACCPというのはあくまで手順書であって、食中毒や事故を起こさないための心構えをいかに手順に落とすかというのがHACCPの考え方なんだと思います。その考え方日本全体に浸透していくということがとても重要だと思いますし、それは、農業でのGAPを行う際にも、手順、あれも手順書なんで、その中でどれだけHACCP的な考え方をGAPの中に取り入れていくことができるかということが日本全体の大きな課題だというふうに思います。  現実にGAPとHACCPは独立して動いているので、でも農産物はGAPからHACCPに本来つながっているものですから、これはちゃんとつながった制度になっていくということがとても重要なんじゃないかというふうに思います。
  40. 三浦信祐

    三浦信祐君 ありがとうございます。  今のGAPからHACCPにつながっていく、こうでないと、例えば六次産業、いい食べ物ができたとしても、HACCPのところで影響を及ぼして輸出ができないであったり、また、HACCPは対応しているけれども、その製造プロセス、生産プロセスが分からないということによって生産者に利益が行かないようなことがないようにするために今後もしっかり検討しなきゃいけないということを教えていただいたと思います。  今後、食の安全については、TPPがこの一つのきっかけとなって社会全体で食の安全を追求できるようなところにしっかり汗を流していきたいと思います。  今日は大変貴重な時間をいただきました。ありがとうございました。
  41. 岩渕友

    岩渕友君 日本共産党の岩渕友です。本日はよろしくお願いをいたします。  まず初めに、お三方にお聞きをしたいと思います。  私は福島県の出身です。東日本大震災と福島原発事故から間もなく五年九か月がたとうとしています。大震災によって、東北地方の基幹産業である農林漁業は大きな被害を受けました。特に、福島県の農林漁業は、地震、津波による被害に加えて、原発事故によって漁業は、福島県沿岸での操業は一部の魚種を対象とした試験操業を除いて自粛をしております。  福島県の総農家数は二〇一〇年で全国第三位、農業就業人口も第三位で、等級の高いお米を中心として、桃などの果樹やキュウリやサヤインゲンなど、地域の気候や地形を生かして様々な形態の農業が展開をされておりました。  しかし、いまだに営農を再開することができない農家の皆さんが多くおり、風評被害で福島県産と表示をすることができずに売られている農産物もあります。農家の皆さんは、安全、安心な農産物を消費者に提供したいと、米は全袋検査を行い、土壌の改良や放射性物質の検査など様々な努力を行って、その成果も出てきています。しかし、いつになったら原発事故前の状況まで回復をするのか、いまだ見通しが立たない状況でもあります。  政府は、昨年、総合的なTPP関連政策大綱を出して、農産物輸出を中心にした農政新時代といった構想を打ち出しました。輸出と同時に輸入品がこれまで以上に日本に入ってくれば、今でさえ困難な被災地の農業はどうなるでしょうか。県内でも有数の大規模農家の方から伺った話でも、TPPでは立ち行かないとお聞きをいたしました。これまで積み上げてきた復興に向けた努力が、価格競争では太刀打ちをできずに踏みにじられることになるのではないでしょうか。  安全で安心な農産物を消費者に提供したいと努力をしている被災地の農業の再生にとってTPPがどういう影響があるのか、皆さんのお考えをお聞かせください。
  42. 今村知明

    参考人今村知明君) TPP全体のお話ですので、私の専門分野からは外れるのであくまで意見ということで。  TPP全体によるメリットとやっぱりデメリットがあると思います。今御質問をいただいた部分というのは、やっぱりこのTPPのデメリットの部分だと思います。日本全体としては経済が発展するというメリットがあるんでしょうけれども、実際、海外との価格競争やその余波を受ける分野というのは、厳しい局面というのは考えられるというふうに思います。  私の職責とか自分の専門性からいえば、少なくとも安全性が確保されることが最低限必要だというふうに考えていて、安全性を確保するという意味では守られると思うんですが、今、日本国民はやはり国内産のものを食べたい人がたくさんありますので、その国内産のものを食べる機会という意味ではより失われていく可能性があると思うんですね。すると、国内産のブランド力を上げていくといったようなことが解決策の一つとしてはあるのかなと思うんです。  今、日本国民の多くの人は、安い海外のものよりも少しぐらい高くても国内のものを買うという状況があります。TPPが入ってくるとこれらの格差が広がるので負けるということを恐れておられるんだと思うんですけれども、今私が食品のことに関与している中で、日本国民の国内産への依存度というか、その願いというのは非常に強いものがあって、多少の値段差があってもかなり競争ができるんじゃないかなというふうに思います。その中で、是非国内産がいかに品質が高いかということをPRしていただくということが解決策の一つかなというふうに思います。  以上です。
  43. 中村幹雄

    参考人中村幹雄君) 最初に挨拶で申し上げたように、ムラサキイモを福島で栽培しようと。元々、前職のときに、農林水産省の御指導というのか御協力いただいてムラサキイモ開発をやって、鹿児島で二、三千トンのムラサキイモを作ってもらっていたんですね。それを飲料その他に利用させていただいていたという経験があったので、多分あれはカリウムリッチにすればセシウムは吸わないだろうから、例えば百ベクレル程度あったとしても芋は大丈夫だろうと考えてムラサキイモの栽培をしてもらったんですね。三年ほど試験栽培してもらったら非常にいい結果が出てきていて、例えば焼酎に使ってみようとか、もう既に今年販売されていると思いますが。  あるいはあるヨーロッパの有名なネクタイに使ってみようとか、新しい分野というか、適切な農産物を探し出して、いろんな人の協力を得て新しい分野に打っていくということをしていけば、TPPの中でも農業が生き残っていく方向性というのは僕は見出せるんじゃないかと。そこにやっぱりみんなが協力するということが私は必要だと思っています。  以上です。
  44. 天笠啓祐

    参考人天笠啓祐君) まず、今回のTPPの問題でやはり一番私たちが気にしておりますのは、聖域と言われた領域、品目、これでの撤廃率の高さ、関税撤廃率の高さというのは気になります。聖域以外に至ってはもうほとんど撤廃ということになりますので、日本の農業がもう守られないんじゃないかというのはすごくやっぱり心配しております。  福島は、私も農家の方々一緒にいろいろと取組しておりまして、やはり放射能で汚染された大地からいかに放射能で汚染されていない野菜や果物を作り出していくかということで物すごい苦労をされているんですね。そういう取組がまず一方であって、同時に、私たちの日本消費者連盟の会員でもありますけれども、福島に生活協同組合がありまして、そこではやはりもう本当に丹念に検査しておりまして、その検査結果を消費者人たちに提供すると同時に、内部被曝の検査もやっているんですね。いわゆるホール・ボディー・カウンターを導入しまして、その家族がどのぐらい内部被曝しているだろうかということまでちゃんとやはりみんな情報提供しております。  福島の生産者、消費者って、そういう努力をやっぱりやりながら日々活動されて、是非とも福島を復興させたいという思いでやっておられるわけですね。そういうものを、やはりTPPというのはその努力を無に帰す可能性がすごくあるものですから、非常に私は困ったものだなというふうに実は思っております。  例えば、国産品、日本国内のものに対する評価が非常に高いというのは確かだと思うんですけれども、加工食品になりますと、原料原産地表示が書いてありませんものですから、国産の加工食品といっても中身がほとんど全て輸入食材であったりするわけですから、そういう形でどんどんどんどん外国の食材って入り込んできてしまう。ですから、野菜とかそういう果物等は国産で、いわゆる国産表示があったものは皆さん買うかもしれないんですけれども、加工食品るいは外食になりますと、もうほとんど輸入食材であるにもかかわらず、やっぱり分からないわけですよね、それが。  そういう形で、どんどんどんどんこういうTPPなんかの安い食材が入ってまいりますと、そういうところがどんどんどんどん押し寄せられてきてしまいますから、そういうところでやはり私たちは、結局日本の農業が崩壊していってしまう、そういうようなことだと思うものですから、福島の努力を無にしない、そういうやはり政治というものが物すごく大事だなと実は思っております。
  45. 岩渕友

    岩渕友君 復興に尽力をいただいているということがよく分かりましたし、TPPのデメリットという話もありましたけれども、復興を妨げるということになるのかなというふうにも思いました。  政府は、TPP日本食品の安全が脅かされることはないというふうに言っておりますけれども、遺伝子組換え食品食品添加物など、国民の皆さんの不安は大変大きいものがあります。一九九六年に日本遺伝子組換え食品輸入が始まって以来、二十年がたちました。日本輸入を許可している遺伝子組換え作物のうち、食品として主に流通をしているのはトウモロコシを始めとした四種類です。トウモロコシは米の消費量の二倍近くもの量を輸入していて、その八割以上が遺伝子組換えであると推測をされています。日本世界最大の遺伝子組換え食品輸入国になっています。  政府は、TPP参加をにらんで様々な規制緩和を進めてきました。遺伝子組換え食品添加物では、二〇一四年の六月に、大半の遺伝子組換え食品添加物について、安全性審査も申請も必要ない、名称も公表しなくてよいという通達を出しています。さらに、二〇一五年六月には、食品工場などで用いる遺伝子組換え微生物に関して、本来安全性を確認して申請しなければいけなかったものを手続なしで使えるようにしてしまいました。  今後も、遺伝子組換え食品の表示や残留農薬問題などでも規制緩和が進められるのではないかと懸念をされていますけれども、具体的にどういったことが懸念をされるのか、天笠参考人にお聞きします。
  46. 天笠啓祐

    参考人天笠啓祐君) 遺伝子組換え作物、食品規制緩和の動きなんですけれども、やっぱり一つは安全審査の問題というのがあると思います。これは先ほどもちょっとお話ししたことでありますけれども、現在もやはり安全審査というのは非常に簡略なんですけれども、更に一層簡略化される可能性はある。それから、表示の問題ですね。表示の問題に関しても、今でも本当に僅かなんですけれども、この僅かな表示でも、やはりこれはいつもアメリカ政府の側から、あるいはモンサントのような多国籍企業からこの表示はすべきでないというプレッシャーというのはいつも掛かっておりますので、こういうものがやはり撤廃されていく可能性というのもあります。  ですから、今回のTPPの中でやっぱり一番大きい問題というのは、いわゆる利害関係者の介入ですね。この利害関係者の介入をやっぱり容認している項目があるというところですね。これがやはり特に食の安全において、こういう規制に関わる問題に対して利害関係者の介入を招きかねないような、そういう項目が入っているというところがやっぱり一番懸念されるところでありまして、その中で、食品の安全審査基準ですとか、それからもう一つは環境影響評価ですね。この環境影響評価に関してもやはり緩和の圧力というのは掛かってくるんじゃないかという、非常に懸念されております。  今、日本では、遺伝子組換え作物というのは栽培されておりません。しかしながら、トウモロコシ、大豆、菜種、綿といった、今、四作物が輸入されているわけですけれども、この四作物というのは全て輸入される形態が種なんですね。種で、それで油分が多いものですから食用油が一番作られているんですけれども、種なものですから、こぼれ落ちると自生するんですね。自生して環境中に今広がっておりまして、これは私たちは農水省や環境省と一緒に調査しているんですけれども、私たちNGOといわゆる政府との共同調査でやっておりまして、この結果を非常に見てみますと、やっぱり広がりというのがどうしても、私たちは調査と同時に引き抜きをやりまして何とか汚染を食い止めようとしているんですけれども、やっぱり食い止められない状況に、今そこまで汚染が広がってきております。  こういうのも、やはり実際問題として、環境影響評価もきっちり行われているはずなのにこういう汚染が拡大してしまっているという現状もありますので、ですから、こういう規制に対して、やっぱり規制はむしろ強化するような、そういう仕組みにしてほしいのに、やっぱりTPPの場合はその逆の方向に進む可能性があるということで、非常に懸念しております。
  47. 岩渕友

    岩渕友君 ありがとうございます。規制緩和が進むということは、やっぱり消費者の皆さんの不安に応えられないということかなというふうに思います。  次に、ISDS条項によって、例えば遺伝子組換え作物で世界の食料支配を狙う多国籍企業が、遺伝子組換え食品の表示義務化によって不利益を被っていると日本政府が提訴をされて表示義務がなくなる、食品添加物の指定に当たっても、安全性審査に時間が掛かり過ぎるということで提訴をされるといったことが考えられます。  ISDS条項で日本の食の安全が脅かされるということは、消費者にとって食の安全が脅かされるということです。ISDS条項と食の安全の問題についてどのように考えられるか、中村参考人にお聞きいたします。
  48. 中村幹雄

    参考人中村幹雄君) 僕は、さっき申し上げたように、その事例としてこのジェランガムK3B646というのを事例に挙げたわけですね。これは私たちやってきた、向こうの協力を得てやったねと。しかし、もしそのときにISDSがちらちらしたらこんな交渉できたのかなと思うというのがこれが正直なところなんですよ。だから、一生懸命向こうからの情報をきっちり入れていくと。  先ほどの例であれば、トウモロコシを輸入しているという話ですが、今は空洞化が進んでいるから、トウモロコシから更に例えば液糖、ブドウ糖果糖液糖のようなものにもう変えちゃって、日本の工場で生産していない、場合によっては更に加工食品輸入する、ビスケットやパンの輸入とかいうようなことで加工度を上げていっているわけですね、輸入品の。  そうすると、やっぱりトレーサビリティーというのがどうしても必要なわけで、利害関係者がいろんなところに参加することに反対されている方のことを耳にしますが、僕はむしろ利害関係者にも参加させて、私もきっちりとした利害関係者だったわけですから、利害関係者もきっちり参加させて、情報をきっちりと共有化して科学的な審査をすると。そのことによって時間とお金を減らして、国民の税金を無駄にせずに安全審査がきっちりとできるんじゃないかと。だから、利害関係者が参加するから駄目なんだという議論は僕はもう一つここ納得できないところです。
  49. 岩渕友

    岩渕友君 ありがとうございます。  次に、予防原則について、先ほども議論になっていましたけれども、お聞きをします。  私は、先ほどもお話をしたように、福島の原発事故を経験して予防原則が大切だということを実感をしています。食の安全を守るためにも予防原則が重要になってきます。  予防原則そのものは、欧米を中心に取り入れられてきている概念で、化学物質や遺伝子組換えなどの新技術などに対して、人の健康や環境に重大かつ不可逆的な影響を及ぼすおそれがある場合、科学的に因果関係が十分証明されない状況でも規制措置を可能にする制度や考え方ということで、アメリカでは、予防原則に反対をして、科学的にはっきりと白黒が決着するまでは容認するという科学主義を提唱してきました。  先ほど天笠参考人からは、日本は予防原則の先進国だと、日本でこそ確立してほしいという話もありましたけれども、この予防原則がTPPでどうなるのかということを中村参考人天笠参考人にお聞きいたします。
  50. 中村幹雄

    参考人中村幹雄君) 予防原則の話でまた一つ事例を挙げたいと思うんですが、例えば、食品添加物でカラギナンという添加物があるんですね。その中の不純物のポリギナンというのがあって、そのポリギナンは発がんのプロモーションになるだろうと、こういう論文があるんですね。そうなると、国際的にどうしたかというと、そういった低分子のものは、分子量五万以下のものを五%以下にしましょうということを国際的に決めたんですね。これは当然アメリカの企業も加わって一緒に決めた話なんです。  したがって、それについて、じゃ、日本はどうしたかといったら、日本もそうすべきじゃないかということを食品添加物公定書の会議で私は申し上げたことはありますが、実際、日本食品添加物公定書はそうなっていないですね。だから、そのポリギナンというものがあることによって発がんのプロモーションが起こり得るから、こいつをコントロールしてやりましょうという話があっても、日本の場合は、どうしても何か、誰か死なないとなかなか問題は解決していかないんじゃないかというふうに思います。  誰が死んだかという話でいえば、例えばこんにゃくゼリーでたくさんの方が亡くなったんですね。あのときに、韓国の場合だったら、形状と圧力によって規制を掛けました。日本も形状と圧力で規制を掛けるべきだということを当時の消費者委員長の方に私は申し上げました。しかし、何ら消費者委員会は動かなかったし、日本規制に入らなかったと思います。  だから、予防原則とかそういう、僕はよく抽象論は分からないんですけれども、具体的な事例で一個一個解決していくことがまさにその予防原則に立った行政につながるんじゃないかと思います。
  51. 林芳正

    委員長林芳正君) 恐縮ですが、時間が参っておりますので、ここまでにいたしたいと思います。
  52. 岩渕友

    岩渕友君 申し訳ありませんでした。  今日の話聞いて、TPPは廃案にするということで改めて強く感じたということを申し上げて、質問終わりとします。  ありがとうございました。
  53. 藤巻健史

    藤巻健史君 日本維新の会の藤巻です。よろしくお願いいたします。  まず、今村参考人にお聞きしたいんですけれども、天笠参考人から中国産ギョーザの問題とか中国産農産物の問題がお話があったんですけれども、今村参考人の観点からして、中国というのはリスク分析枠組みがきちんとできているのか。要するに、中国人民を守るための、自国民を守るための食のコントロールシステムがきちんとできているのかどうかちょっとお聞きしたいんですが。    〔委員長退席、理事福岡資麿君着席〕
  54. 今村知明

    参考人今村知明君) 中国の今の安全性の状態の御質問と思います。  まず、日本に中国から輸出されてきている食品についてはかなりレベルの高いものが入ってきています。これは、中国全体で見たら上位一%から〇・五%の非常にいい企業から入ってきているものなので、中国から入ってくる平均的なものを見たら、日本の平均よりも高いぐらいだというふうに思います。それに対して、中国国内の食品の平均で見たときには、近年だんだん上がってきていますけれども、まだまだレベル的には低いという状況があると思います。  日本で中国から輸入されて問題になるようなケースというのは、その本来上位〇・五%から入ってくるべきものが、なぜか平均的なものが入ってきて違反になるというケースがあって、日本に入ってくるべきものに関しての安全性というのはレベルが高いんですけれども、現実に入ってきている問題というのは、向こうの平均そのものの問題があります。  ただ、中国で年々食品安全の基準は厳しくなってきていまして、向こうの刑罰は日本よりもはるかに厳しい刑罰ですので、昔よりは随分上がってきてはおりますけれども、まだまだ向こうの平均的なものが入ってきて日本でも安全という状況にはないんじゃないかなというふうに思います。
  55. 藤巻健史

    藤巻健史君 それでは、中国ではなくて、TPPに参加する十二か国のその各々の国内で食品の安全というのはどういう状況になっているのか。中国ほど、中国国内販売用ですけれども、危ないのか、それとも中国よりははるかにいいのかどうかをちょっとお聞きしたいんですが。
  56. 今村知明

    参考人今村知明君) ほかの十二か国で見たときには、その国内の平均というのは食品によって随分ばらつきがありまして、日本と中国の関係でも日本に輸出してきているようなものの平均という目で私見ておりますので、その国全体の平均を物語る基準というのはないです。  ただ、そのコーデックス基準などによってある程度の幅の中に全ての国が収まるようにはなってきていますので許容範囲であるというふうに思いますけれども、全ての国が日本を超えているかといったらそうではなく、どちらかというと日本安全性、衛生性の高い国だと思いますので、ほかの国の方が低いケースというのが多いんじゃないかというふうに思います。
  57. 藤巻健史

    藤巻健史君 いや、私がなぜこういう質問をしてきたかと申しますと、先ほど天笠参考人の方から中国産ギョーザとか農産物の事故の話が出たわけですけれども、TPPがもし成立しなかった場合、きっと中国が貿易ルールを作ろうと思って出てきちゃうと思うんですよ。例えば、ADB、アジア・ディベロップメント・バンクの代わりにアジア投資銀行が出てきたように、TPPが不成立だということで中国が出てきた、そういうときにその食の安全ってTPPよりも悪くなっちゃうんじゃないかなという気がしてそういう御質問をしたんですけれども、どう思われますでしょうか。今村参考人にお聞きしたいと思います。
  58. 今村知明

    参考人今村知明君) 中国と日本食品衛生はイタチごっこのようなところがあって、今は随分改善したと思いますけれども、私が実際にそういう監視をやっていた時代には、中国でどんどん違反する食品が出てきて、それを日本規制でどんどん追いかけて入ってこないようにするというふうなことをやっていました。近年は大分上がってきまして、特にその上位の企業からしか入ってこないということがはっきり見えてきた時点で良くなってきています。これを完全に自由化してくると、中国の平均的な食品が入ってきたときに全ての食品安全性が確保できるかというと、なかなか難しい問題があると思います。  ただ、貿易問題というのは食の安全性と実に密接に関係があって、アメリカとも日本は激しくやり合って今の水準線を決めておりますし、ヨーロッパとも激しくやり合って水準線を決めておりますので、もし中国と個別に共同で同じ基準を作ろうという話になったら、またそこは激しくぶつかることになるんじゃないかなと思いますし、今までよりも厳しい抗争になるんじゃないかというふうに思います。
  59. 藤巻健史

    藤巻健史君 それでは、天笠参考人中村参考人にもお聞きしたいんですけれども、同じ質問なんですけれども、もしTPPが成立しないとなるとやっぱり中国が出てくるかなと思うんですが、そのときには中国との貿易協定は入るべきではなくて、日本だけで何とか生きていくべきだというふうにお考えなのか、中国と貿易協定をしても農産物の安全はより良くなるというふうにお考えなのか、ちょっとお二人にお聞きしたいと思います。
  60. 天笠啓祐

    参考人天笠啓祐君) なかなか仮定の話なものですからお答えしづらい問題なんですけれども、私の考えは、私自身の考えとしては、私は愛国主義者ですから、日本国産を、やっぱり国産というのを第一にすべきだと、そういうふうに考えている人間ですので、もちろんアメリカもそうですし中国もそうですし、なるべくやっぱり日本のものを日本で食べるという、そういう仕組みづくりを強めていくというのが基本じゃないかと、そういうふうに思っております。  ですから、輸入に頼るというよりも、日本でどうやってそういう日本の生産者が作ったものを日本消費者が食べるか、そういう仕組みづくりをちゃんとつくっていくというのがやっぱり大事じゃないかなと実は思っております。
  61. 中村幹雄

    参考人中村幹雄君) 国の安全をどう考えるかですね。健康という観点だけじゃなくて、先ほどビタミンCの例を申し上げましたけれども、昔、森鴎外が日露戦争の反省として、ビタミンのたしかB1だったと思いますが、あれがなくてかなりの方が亡くなったと、だから鉄砲の弾でやられたよりも健康じゃなくて亡くなった人が多かったという話をしているわけですね。やっぱりビタミンCとかビタミン類は、国として最低限、我が国の国民を守るために必要最小量はやっぱり作っていくということが私は方針としてあるべきじゃないかと、こう思っています。  そして、じゃ、農業を守っていくための、先ほども検査の話が出ましたが、私、中国の水稲研究所に見学に行って向こうとディスカッションしたことがあるんですが、例えば十品目向こうで遺伝子組換えの米ができたとしたら、多分日本で今検査できるのは六品目か七品目なんですね。例えば、米粉を使った加工食品、中国から来たら、日本で検査できないものが三割、場合によっては四割あるわけですよ。そうしたら、向こうから安い米粉食品、先ほどのギョーザの皮とかそういうものがあるでしょうけれども、そういう事態なんですね。  やっぱり公平な貿易を支えていくためには検査体制もしっかりしていくというのが最低限必要ではないかと。だから、それはTPPをやろうがやらまいが必要なことなので、やっていっていただく必要があるんじゃないかなと、こう思っています。
  62. 藤巻健史

    藤巻健史君 じゃ、天笠参考人にお聞きしたいんですけれども、やっぱり国民は国内産の農産物がいいというふうにおっしゃっていましたけど、そうすると、ちょっと私思ったんですけど、シンガポールって一〇〇%農産物輸入していると思うんですけど、あの国は危ないんですかね。
  63. 天笠啓祐

    参考人天笠啓祐君) 安全か危険かという問題ではなくて、やっぱりその国の、例えば私たちの体というのは、身土不二という言葉がありますけれども、私たちの体は私たちの土から成り立っているという、そういう言葉なんですけれども、一番やっぱり自分たちの近くで取れたもの、いわゆる自分たちの土地で取れたものを食べる、これによって私たちの体って成り立ってきたわけですね。ですから、基本的にはそういうものがやっぱり体にいいということはもう基本だと思います。  ですから、安全か危険かというよりも、そういうものが私たち日本人はやっぱり一番ふさわしいんじゃないかなということなんです。
  64. 藤巻健史

    藤巻健史君 また天笠参考人にお聞きしたいんですが、肩書を見ますと、日本消費者連盟共同代表と書いてあったので、私、てっきりTPP賛成のお話だと思ったんですよ。そうすると、聞いてみると、どうも食の安全にちょっと懸念があるから反対という感じというふうに今日のプレゼンを聞いていたんですが。  TPPって、一般的に言えば、食の安全を横に置いておけば、これは生産者にはつらいかもしれないですけど、消費者にとっては値段が下がるという意味では極めていいですよね。そっちの方よりも、やっぱり天笠参考人は、そういう値段が消費者にとっては下がるというメリットよりも、食の安全が失われるかもしれないということがより重要だと思っていらっしゃる、私は両方とも重要だとは思いますけど、その辺を先にちょっとお聞きできますか、食の値段が下がるということは消費者にとって良くないのかどうか。
  65. 天笠啓祐

    参考人天笠啓祐君) まず、価格が下がるかどうかという問題なんですけれども、これに対してもやっぱりある意味では疑問を持っております。  といいますのは、例えばアグリビジネスという分野がありますけれども、農薬とか種子のいわゆる農業を扱う分野でありますけれども、今、御存じのように、アグリビジネスの分野でいわゆる多国籍企業同士の合併が相次いでおりまして、例えばバイエル、ドイツのバイエル社がアメリカのモンサント社買収に掛かりました。それから、デュポン、いわゆるアメリカのデュポンとダウ・ケミカルが合併に合意いたしました。そのほかにも中国の化工集団公司というところ、いわゆる中国の国営化学企業がスイスのシンジェンタの買収に走りました。こういうふうに、今はアグリビジネスがいわゆる多国籍企業同士の合併によって三大企業グループにつくられつつあるわけですね。    〔理事福岡資麿君退席、委員長着席〕  そうなりますと、いわゆる価格協定が非常に容易になるんです。これはやはり自由貿易の中でより強くなろうとするものですから、そういう多国籍企業同士の合併になってしまうわけですけど、そうしたときに、非常に価格協定が容易になってしまいまして、例えば農薬ですとか種の値上げという攻勢が出てくる可能性が非常に強まってきたんですね。そうしますと一番ひどい目に遭うのはやっぱり農家です、種代が高くなったり農薬代が高くなりますから。そうしますと、結果的に消費者食品価格が上がって跳ね返ってきます、上がってまいります。  ですから、自由貿易、いわゆるTPPのような自由貿易の中で、やはり価格が下がるというよりもむしろ逆に上げられていく可能性もあるわけです。ですから、そういう意味で、私は消費者の立場からいっても、価格が下がるということに関して疑問を持っております。  それからもう一つは、やっぱり食の安全を脅かすという点で、このTPPのような自由貿易の、いわゆる徹底した自由貿易ですよね、TPPの場合は。そうした場合には、やっぱり食の安全を脅かすということはもうずっとお話ししてきたとおりで、先ほどの中国産ギョーザ事件から始まりまして。ですから、そういう意味では、やはり消費者の立場からいっても、このTPPに対しては私たちは賛成できない、そういう立場です。
  66. 藤巻健史

    藤巻健史君 ただ、条件、与件が一定であればTPPで関税がなくなる分だけは安くなりますのでね。  先ほどの御回答のときに関税撤廃率が高いのが問題だとおっしゃっていましたけど、これ、消費者の立場からいえば本当に関税撤廃率が、もうみんな撤廃するのが消費者にとってメリットなわけで、コストの面でいうと、これ、いつも私は為替の人間なので為替でいいますけど、農業の値段の問題ってやっぱり為替なんですよ。円安になれば、これは外国産高くなりますから日本の農業復活するんですよね。ですから、そのTPPの問題じゃ私はないのかなという気がしていますけどね。  それはいいんですが、もう一つ、ちょっと、時間が余りないので、一つ、お一人だけに聞こうかなと思うんですが。じゃ、中村参考人にお聞きしたいんですけど、どうも今日の話を聞いていると、何か皆さん、多くの方が、大企業がその利益のためにISDS等を利用して何か日本人の健康を害しているようなイメージが何となく醸し出されちゃっているんですけど、私、大体、食品に関して見ると、レストランとかの食品なんかでもそうなんですけど、基本的に大企業の方が安心しているんですよ、これ個人的感想かもしれませんけどね。というのは、やっぱり大企業は変なことをしちゃうと一発で倒産しちゃいますので、食なんか。だから、大企業の方が健康とかそういう問題に対して強い意識が高くて、大企業が利益のために変なものを売るという感覚はちょっと私の直感としては考えられないんですが、それはいかがでしょうか。
  67. 中村幹雄

    参考人中村幹雄君) 今日御説明した今回の遺伝子組換え食品添加物事例から見れば、これはまさに超大手のカーギルであったりとか三菱商事であったりするわけで、超大手がこういう違反をやっておると。ああいった超大手だから、当然日本のことを、真面目に制度を調べればこういう手続があるということは分かるはずなんだけど、それが分からないような企業であるとしたら、企業内のコンプライアンスに問題があるかもしれないし。  だから、大企業だからいい、大企業だから悪いという問題ではなくて、先ほど私は、遺伝子組換え問題でも個別に考えるべきだと、こう申し上げたんですけれども、いろんな物事は十把一からげの議論じゃなくて、一個一個、個別案件でこれは大丈夫か大丈夫じゃないかという議論をしていただきたいし、ISDSの中で何が起こるかについても個別に検討していただきたいなというふうに思っています。
  68. 藤巻健史

    藤巻健史君 中村参考人TPPに反対だというふうにさっきのプレゼンでおっしゃっていましたけど、これは食品の問題が大きいからTPP全体に反対なのか、それとも食品の問題多いけれども全体的にTPPは是とするというふうに考えているのか、ちょっとお聞きしたいんですけどね。  というのは、やっぱりTPPみたいな契約の問題というのはどこか個別な問題があるから反対という問題じゃなくて、全体としてメリットが日本にあるかデメリットがあるかで判断して、メリットがあるのならやって、デメリット部分を何かのことでカバーしていこうというのがあるべき姿だと思うんですよね。今何かお話聞いていると、例えば検査の人数が少ないとかおっしゃっていましたけど、これは別にTPPとは関係なくて、先ほど、最初に古賀委員が質問にありましたけど、TPP以前の問題じゃないかと。要するに、TPPであろうとなかろうと検査の人数が少ないのは少ないんですから。  ですから、そういう食品の安全の問題が出てきたならば、TPPをやった後にオペレーションとして検査員を増やすとか、そういうことをやって食の安全性を保っていられればいいわけであって、そういうことで解決ってできないんでしょうか。私は、全体的に見てTPPというのは日本にいいと思うからTPPはやる、でも食の安全問題、確かにお聞きしていると問題あるけれども、でもそれは国内のオペレーションの問題、先ほどの今村先生のおっしゃったリスク分析の仕組みをきちんとすることによってそういう問題というのはカバーできるというか乗り越えることができるんじゃないかなという私は印象を持ったんですが、それについてはいかがでしょうか。
  69. 中村幹雄

    参考人中村幹雄君) 先ほども申し上げましたように、厚生労働省の人員からいったら、三十三年前に食品化学課長が、極めて日本は少ない、脆弱だとおっしゃったことがいまだに変わっていないわけですね。じゃ、TPP締結したからそういった問題が解決するなんということはとても思えないですね。  だから、順番は逆で、ちゃんと条件があって、ISDSがない、ないバスだったら乗れるかもしれない、ああいう条項がないんだったらですね。だから、議論が一つ逆だということと、それから、議論のプロセスの中に利害関係者が十分に入っていない。少なくとも私たちがやっている添加物の話なんというのはどこにも、多分、アメリカが言っている四品目どうのこうのという話はここでも議論されたけれども、それもやっと最近になっての話であって、もう少しプロセスの中で、議論の中で具体的に細かいところまでいろいろきっちりと議論してどうかこうかということで手当ても含めて議論をしていただきたいなと、こう思います。
  70. 藤巻健史

    藤巻健史君 TPPに入ってからでも検査人員が増えないとかいう問題じゃないような気がするんですが、今の質問について、今村参考人からもちょっと意見をお聞きしたいんですけれども。
  71. 今村知明

    参考人今村知明君) 元々、TPPが入る以前から、WTOSPSができた時点で起こった問題というのがたくさんあります。これは今回議論をされていることの多くは、遺伝子組換え食品も肥育ホルモンの問題もWTOの時点で起こっている問題だと思うんですね。TPPが入ったから懸念が増える可能性はあっても、そこは同じレベルでやりますというふうに書いてあるので基本的には変わらないというふうに思っているので、TPPに入ったことの問題では私はないと思います。  ただ、その前からある問題というのはやっぱり非常に大きな問題があって、それが解決できていないということは是非皆さんにも知ってもらいたいというふうに思っています。
  72. 藤巻健史

    藤巻健史君 終わります。ありがとうございました。
  73. 福島みずほ

    福島みずほ君 社民党の福島みずほです。  今日はお三方、本当にありがとうございます。  天笠参考人にお聞きをいたします。  ずっとこの委員会でも議論になっておりますが、ホルモン剤、ポストハーベスト、遺伝子組換え、ゲノム操作、ネオニコチノイド農薬、この五つについての問題点というものを指摘してください。そして二点目に、TPP日本が入ることによってISDSなどで訴えられる可能性があるんじゃないか。ヨーロッパは、例えば遺伝子組換え食品についてかなり厳しい態度です。日本で売るお酢に関しても、ヨーロッパに輸出するときは、遺伝子組換え食品を使っています、日本では表示は必要でありません。日本がもし厳しい基準にしようとなったときに訴えられる可能性があるのではないか。その二点について教えてください。
  74. 天笠啓祐

    参考人天笠啓祐君) 済みません、五つ、肥育ホルモン、ポストハーベスト農薬、ゲノム操作、ネオニコチノイド、遺伝子組換え。  肥育ホルモン、今、一つ食品安全委員会の方にかかっておりますけれども、肥育ホルモンについては、一つは、アメリカでこの肥育ホルモンが登場したときに大きな問題になったのが、成長促進目的なものですから細胞分裂を活発にするということで、それで肥育を促進するということなんですけど、これが残留したりした場合に、私たちの体に入ったときに一番刺激してしまうのががん細胞であるということで、がんの促進作用があるんじゃないかということでアメリカで大きな議論が巻き起こりました。それもあってヨーロッパでは予防原則に基づいて輸入停止、アメリカからの輸入停止ということになっておりまして、これがいまだに続いているということであります。そのほかにもいろいろありますけど、一応大きなポイントはそこになります。  ポストハーベスト農薬の問題で一番大きな問題というのは、やっぱり果物の回りにいわゆる塗られているあの防カビ剤だと思うんですけれども、これが、日本ではやはり果物の回りに防カビ剤を塗ってはいけないわけですけれども、これ、アメリカから輸入する際には、どうしても長距離輸送でやってまいりますので、腐ったり虫が湧いたりかびたりするものですからこれが塗られているわけですね。  それで、これ農薬であります。ですから、農薬でありますから、非常にいわゆる劇物だったり毒物だったりするわけですけれども、日本ではそれが認められないものですから、それでわざわざ食品添加物として承認しているわけですね。これがやはり大きな問題になっていまして、アメリカからずっと、食品添加物であるということと農薬であるということで二重の安全審査が求められたことに対して、これを一本化しろという圧力がずっと掛かってきた問題であります。これが今回のTPPの中で入ってきておりまして、一本化するという話になってきているわけですね。  これは、やっぱり直接果物の回りに塗られるものですから、農薬が、非常に私たちの健康にとって直接影響が及びかねないものですから、これは非常に大きな問題だと思います。  それから、ネオニコチノイド農薬の場合は、これは今、新たな毒性としまして、有機リン系農薬やネオニコチノイド系農薬に対して、いわゆる受容体毒性という考え方が出てまいりまして、今まで考えられなかったような毒性があるんじゃないかということがまず一つ指摘され始めております。これは欧米辺りでもやはりこの研究がかなり進んできておりますけれども、神経毒性が非常に強いものでありますから、それで非常に問題になってきておりますけれども。  特に、このネオニコチノイドの大きな問題点というのは、いわゆる浸透性農薬と言われるものでして、これは根から吸わせる農薬ですね。根から吸わせて、それで植物全体に行き渡らせるという、そういう農薬なものですから、例えば、消費者の場合はやっぱり農薬を減らそうと思って一生懸命洗うわけですよね。洗うけれども、中に入った浸透性農薬ですから、中に入っていますから、これ洗っても、幾ら洗っても落ちないわけです。そういう問題がやっぱりこのネオニコチノイドの場合あります。  それから、ゲノム操作、いわゆるゲノム編集技術とか遺伝子ドライブ技術というのが今非常に大きな注目を集めておりまして、今ちょうど開かれている生物多様性条約の締約国会議でもこの遺伝子ドライブ技術というのが大きなクローズアップされてきているんですけど。  ゲノム操作というのは、遺伝子を、いわゆるDNAを切断する技術です。目的とした場所でDNAを切断して遺伝子の働きを止めてしまう、そういう技術なんですね。これは、従来の遺伝子組換えに比べまして非常に正確度が上がったということが一つポイントになっているわけですけど、しかしながら、遺伝子を操作するということに関しては同じなんですね。そういう意味では、遺伝子組換え食品で指摘された問題点というのはそのまま同じだと思うんですね。  ただ、これが例えばアメリカではもう既にゲノム編集技術で作られた菜種が栽培が始まっておりまして、もう食品として出回ろうとしております。ただ、アメリカではこれが、いわゆる安全審査の仕組みがないものですから、全くフリーパスで栽培が始まって、それで市場に出ようとしているという、そういう状況になっております。もし、私もTPPの問題でやっぱり一つの懸念の材料としてこのゲノム編集技術の問題を挙げているんですけれども、こういう新しい技術が出てきたときに、それに対応する仕組みが日本にもない。アメリカにもない、日本にもない、それをやはりきっちりさせなきゃいけないはずなのに、それに対する姿勢が各国とも弱い、そういう問題がやっぱり一つあります。  遺伝子組換えの問題というのは、今三つの問題点というのがずっとあると思っていたんですけれども、一つはやっぱり安全性に非常に疑問がある。これは、例えば二〇〇九年に、アメリカ環境医学会というアメリカの環境と医学を取り扱っている学会があるんですけれども、そこが、それまで行われてきた遺伝子組換え食品の動物実験を分析したわけですね。その結果、三つの問題点が起きているということを指摘しております。  一つは、免疫システムに影響が出ている。免疫力の低下、これは、免疫力が低下しますと病気になりやすくなったりとかアレルギーになりやすくなったりします。それから二つ目ポイントとしましては、子や孫の代、ひ孫の代で非常にいわゆるひ弱になって数の減少が起きているということ。それから三つ目としましては、肝臓と腎臓といった解毒臓器に障害が起きていると。  こういう三つの点を指摘しまして、アメリカ環境医学会は提言を出しまして、アメリカでも遺伝子組換え食品の流通をやっぱりやめるべきじゃないかという提言を出したんですね。ただ、もし流通をそのまま続けるならば、せめて表示をして消費者に選択権を与えるべきであると。そういうことをやはり出しております。恐らくそれは世界で多くの人が共通の認識としてある問題だと思います。  以上であります。
  75. 福島みずほ

    福島みずほ君 食べ物の安全、国民の健康をどう守るかということで、TPPで安いものが入ってくるからいいじゃないかという議論があるんですが、私は、政治は、お金持ちの人もお金持ちでない人も安全なものを買えるという仕組みをつくらなければならない。なぜならば、お金のある人は、じゃ国産牛を食べましょう、じゃ、お金のない人は、じゃ輸入牛なんですかという、非常に健康格差にお金の格差が直結していくという問題があります。  それから、外食産業。一々これはスーパーに行くと、私たちはどこの産地かと一応見ますけれど、外食に行けば、それは何かが余りよく分からないまま食べるわけです。そうだとすると、安いものが、さっき天笠参考人は安くはならないんじゃないかとおっしゃった。それも一つあるんですが、仮に安いものが入ってくるにしても、日本の国民のというか自国民の健康を守るために政治はしっかりやっぱり規制をすべきだ。  私は、さっきおっしゃった五つの点では、せめてEU並みにと、こう思っているわけですが、この点についていかがでしょうか。天笠参考人、教えてください。
  76. 天笠啓祐

    参考人天笠啓祐君) 先ほどから非常に焦点になっております予防原則の問題だと思うんですね。  例えば肥育ホルモンに関しては、EUはアメリカ産牛肉の輸入をストップさせている。これはもうずっと八〇年代から続いているわけですね。それから、ポストハーベスト農薬についても、いわゆるアメリカ産の果物の回りに農薬を塗るなんということに関してもそれはやっぱり否定しておりますし、それからネオニコチノイド、これは日本では規制緩和しておりますけど、EUでは逆に規制強化しております。そういう流れがあります。それから、遺伝子組換え食品に関してはやっぱり表示をちゃんとしている。  ですから、私もよくヨーロッパに視察に行きますけれども、ヨーロッパではスーパーで遺伝子組換え食品販売されておりません。これはやっぱり日本日本人が一番食べていると私もいつも思っているんですけれども、日本では表示がされていないものですから、繰り返しますけど、豆腐や納豆やみそ程度しか表示されていないものですから、そういうことで、日本人は遺伝子組換え食品って知らないで食べているわけですけど、ヨーロッパはきちんと表示しているものですから、やっぱり流通していないわけですね。こういう大きな違いがあると思います。  それから、ゲノム編集に関しても、今EUの方で、欧州委員会の方で議論が進められておりまして、どういう規制になるかはまだ分かりませんけれども、一応規制の網を掛けるという方向で今議論が進んでおります。  そういう意味でも、やはり私たち消費者を守る立場で食品の安全を守るという、そういう立場でヨーロッパが進んでおりますので、是非とも日本の政府もそういうヨーロッパの姿勢をやっぱり学んでほしいなと思っております。
  77. 福島みずほ

    福島みずほ君 それで、今日も議論になっておりますが、TPP協定の中では、科学的根拠に基づいてというのが条文の中に入っております。科学的根拠というのは、例えば遺伝子組換え食品を今食べてすぐ死ぬわけではありませんから、なかなか科学的根拠が示せない。ヨーロッパは予防原則で、問題があり得るのではないかというので厳重にストップしているという問題。TPP協定科学的根拠というふうに書いていることで、むしろ日本がより強い規制をしようとすることがより困難になるんじゃないか、あるい日本の政府が、国会がより良い基準を作ろう、厳しい基準作ろうとなったときに、ISDS条項で訴えられる。この二点について、天笠参考人、いかがでしょうか。
  78. 天笠啓祐

    参考人天笠啓祐君) ISDS条項、例えば第九章の投資の分野で出てきておりますけれども、この中で、規制導入や変更によって損害を被る場合や投資家の期待した利益が損なわれるような場合、ISDS条項による仲裁申立ての対象になるということが示されているわけですね。ということは、やっぱり規制導入、変更、いわゆる厳しい規制の網をかぶせれば、それによってやはりISDS条項によって訴えられる可能性というのは出てくると思います。  ですから、食品の場合、やっぱり一番心配されているのは安全審査と表示で、これが私たち消費者が望むような、やっぱり厳格な表示あるいはその規制強化というものを求めていて、これが実現しようとした際には逆にそういう訴えられる可能性がある、そういう現実はあると思います。
  79. 福島みずほ

    福島みずほ君 科学的根拠と予防原則について改めてちょっとお聞きをいたします。  日本も、食品安全委員会を含め日本の政府は、科学的根拠に基づいて規制をしていますといいながら、規制を正直言って緩和をしてきました。ですから、科学的根拠ということがTPP協定に書いてあることで、むしろ日本科学的根拠というのでアメリカから攻められてどんどん規制緩和をしてきたことがより加速してしまうのではないか。むしろ、これが予防原則やEU並みの協定ならいいけれども、そうではありませんので、その科学的根拠と書いてあることで食べ物の安全の規制が非常に薄まっていくということについては、天笠参考人、いかがでしょうか。
  80. 天笠啓祐

    参考人天笠啓祐君) 今、科学的根拠というものの概念がどんどん厳格化されているような気がするんですね。例えば、以前ですと、科学的根拠といった場合にかなり幅があったような気がします。ところが、今、本当に例えば食の安全で問題があるというような、そういう事例が出た際に、例えば動物実験の細かいところまでチェックして、それで、これは科学的根拠にならない、いわゆる問題があるということに関して科学的に示された知見に対してもこの根拠を問うような、そういうケースが物すごく今増えてきておりまして、そういう意味では科学的根拠がどんどん厳密化されてきているような気がします。そうなりますと、本当にいわゆる予防原則からどんどんどんどん逸脱していく、そういう流れが今あるような気がいたします。  一つだけちょっと事例なんですけれども、アスパルテームという人工甘味料があるわけですけれども、これに対して例えば安全だという論文がたくさん出ております。だけど、危険だという論文もたくさん出ているわけですね。この数がやはり非常に拮抗しておりまして、ほぼ同数なんです、安全だという論文と危険だという論文。これをアメリカの、ちょっと大学名忘れたんですけれども、ある研究者が、この動物実験どこからお金が出ているかというので分析したわけです。そうしたところ、物の見事に分かれまして、アスパルテームに関わる企業からお金が出ている場合には全部安全だったんです。それに対して、独立した研究はほとんどが危険だと出た。こういう場合に、これがやっぱり大事だと思うんですね、こういう評価。私たちは、やっぱり独立した研究で安全性というのは評価すべきじゃないかなと実は思っております。
  81. 福島みずほ

    福島みずほ君 おっしゃるとおりで、ネオニコチノイド農薬の問題点を国会で質問し続けているんですが、遺伝子組換え食品も含めて、なかなかその科学的根拠というところが本当に壁になっていて、科学的に証明されていない、安全ですというのをよく、政府の答弁ではそれが続いております。それがより加速されるのではないかというふうに思っています。  それから、ISDS条項では訴える側が基本的に立証責任を負う。ただ、しかし、科学的根拠がどんどんどんどん厳格で、科学的根拠に基づいてこれを規制したい、あるいは問題だということを例えば日本政府が訴えるとなった、日本政府が立証する、しなくちゃやっぱりならないという状況になって、ほとんど今のように拮抗しているテーマや、安全や危険、安全、危険がいつも複数出てきているような場合には、実際的には科学的根拠に基づいて問題ありという立証がとても難しくなってしまうんじゃないか。  日本政府は、そういうリスクを冒したくないと思ったら、負けたくないと思ったら、結局規制強化などもうやらないんじゃないかと思いますが、天笠参考人、いかがでしょうか。
  82. 天笠啓祐

    参考人天笠啓祐君) いや、全く同意です。本当にそう思います。  是非、私たちとしては、先ほどから繰り返しますけど、予防原則はやはりまだ非常に曖昧でありますけれども、大事な原則なものですから、やっぱり日本で是非確立してほしいなと実は思っております。  本当に四大公害裁判の中で、是非これ判決文を読んでいただきたいんですけれども、予防原則というのがいかに大事か、これ、もし予防的原則があれば水俣病のあの被害者は生まれなかったじゃないかということが書かれているわけです。  ですから、そういう意味ではやはり予防原則というのはすごく大事なんですね。だけど、今科学的根拠に対抗するものとして何か予防原則が言われているんですけど、実はそうじゃなくて、科学的根拠というものと予防原則というのは僕はそんなに矛盾していないと思っているんです、実は。  ですから、そういう意味では是非とも、例えば動物実験なんかやった際に、同じ結果ってなかなか出ないんです。やっぱり生物はもうそれぞれ条件とかいろいろ違いますので、同じ結果って出ないんですね。ですから、疑わしい段階でって本当にいうのが非常に曖昧かもしれませんけれども、是非とも生物というもののそういう非常に複雑な仕組みというものを考えながら、この科学的な知見を積み重ねると同時に、それを予防的原則でやっぱり防いでいくという、そういうことがすごく大事だろうと思います。
  83. 福島みずほ

    福島みずほ君 ありがとうございました。終わります。
  84. 行田邦子

    ○行田邦子君 無所属クラブ、行田邦子です。よろしくお願いいたします。  今日は、三人の参考人の皆様方から貴重な御意見賜りまして、ありがとうございます。  まず初めに、今日いろいろと議論、議論というか、続いていますけれども、予防原則について私も伺いたいと思います。  専門的な知識を余り持ち得ていないんですけれども、資料を読ませていただいた中でなんですけれども、何かあってからでは遅いのでそういった疑いがあるうちに予防的な措置をとるという考え方、主にヨーロッパがこういった考えを貫いていると理解をしています。一方で、アメリカは、どちらかといいますと、科学的な根拠がしっかりと示されるまでは容認しようという科学主義ではないかというふうに資料を読ませていただきました。この二つ考え方が対立するところで起きているのがEUとアメリカの間で争われている肥育ホルモンを使った牛肉の貿易に関する訴訟だと、このように思っております。  そこで、三人の参考人の皆様方にそれぞれお伺いしたいと思うんですけれども、この科学的な証拠がなかなかしっかりと示されない不十分な段階において、ただ何か措置をとらなければいけないんではないかという、その疑いがあるようなものについてどのような対応をすべきなのか、予防原則、それから科学主義についてのお考えも併せて伺えたらと思います。
  85. 今村知明

    参考人今村知明君) 予防原則という米国考え方についてという御質問ですが、今EU米国も科学主義や予防原則を中心という観点もありますけれども、恐らくその背景にはそれぞれの貿易上の利点というのが絡んでいまして、純粋に、じゃ、EUが全て予防原則で動いているかといったらそうではありません。米国も全て科学主義で動いているかといったらそうではなく、自国に有利な場合には予防原則をやはり持ってきて予防原則で止めていますし、EUの場合も全く逆に科学主義でやってくる場合もあると。かなり政治的な面が入ってきているというふうに思います。  ただ、じゃ、実際に危険性のあるものについて予防原則の名の下に止めるときには、やっぱりある程度の根拠は必要だと思います。少なくとも一定の実験をやって、明らかに毒性があるようなケースではやっぱり止めに掛かるべきだと思いますし、それが、今までの実験方法が間違っていたなどの理由によって新しく危険性が認知されれば、それは止めていくべきだと思います。  ただ、それを暫定的にまずは止めておいて、その上でそれが本当に危険性があるかどうかというのは追実験をやっていくべきで、それが再現されれば、やっぱりそれは本当に危険性なので本物の危険と認知して続けるべきですし、再実験でそれが出てこないようだったら、やっぱりそれは危険性としては科学的に弱いということになって暫定的に措置を解除するというふうなことだと思います。その点は、今SPS制度の中でも確保されておりますし、EUも基本的にはそのルールにのっとってやっております。  ごく一部、先ほどのような肥育ホルモンの問題はそこから外れてしまっているんですけれども、それ以外は基本的にはその原則の中でやっているというふうに理解しています。  以上です。
  86. 中村幹雄

    参考人中村幹雄君) 予防原則につきましては、先ほど今村先生もおっしゃったような、EUやアメリカの立場について、まさに僕はそのとおりだと思っているんですね。  ここで一つ申し上げたいのは、科学的な根拠ということの中で、EUはたしか倫理規定を、論文の倫理規定を、ちょっと何年か忘れましたけど、そこで、その倫理規定を作ったことによってその論文の結論が変わっているんですね。どんな例があるかというと、コレステロールが人の寿命とかいろんな疾患に影響しているかどうかという、こういう議論なんですね。これは、倫理規定が、EUで決めた段階から、論文が、たしかコレステロールを下げれば、コレステロール値について、コレステロール下げることによっていろんな疾患が下がるというようなことになって、コレステロールを下げるための、例えばスタチン系のお薬を使えば疾患が下がるというのが二千何年から、の前の論文なんですね。しかし、その後の倫理規定が上がった後のスタチン系の薬物とコレステロールと、それから疾患との関係からいうと、確かにコレステロールは下がるんですよ。しかし、疾患は下がっていないんですね。  そのように、倫理規定の論文がどうあるかという、その倫理規定によって随分結論が変わってきているので、私たちも、メタアナリシスもやりますし、システマティックレビューということでいろんな論文をたくさん集めて精査してきますけれども、そこに入っているいろんなバイアスがありますから、バイアスも見ながら当然考えていくということなので、単純にどっちが正しいんだ、どっちが正しくないんだというような関係ではなくて、あくまでも私先ほど申し上げていますように、個別の案件ごとにどうかこうかという議論をしっかりとされるべきだというふうに思っています。
  87. 天笠啓祐

    参考人天笠啓祐君) 繰り返しにもなっちゃうかもしれないんですけれども、やっぱり予防原則というのは環境保護の視点からまず導入されたというのが大事なことだと思うんですけれども、今の生物多様性条約の中にもちゃんと予防原則というのが入っておりまして、いわゆる環境保護というのは、あらかじめ予防しないと手遅れになる可能性がある、そういう意味ではやはり予防的原則というのは大事であるということがうたわれているわけですね。それを受けまして、カルタヘナ議定書の中にもその予防原則が実はうたわれております。それに基づいて、遺伝子組換え生物などの、いわゆるそういう生物に関する環境影響評価というのはきっちりすべきだと、そういうことがやはりうたわれているわけですね。そこにおいてこの予防的原則がどういうものであるかというのは定義されておりませんけれども、一応、これは環境保護においては、そういう過去に予防的原則がなかったためにいろんな事件が起きたという事例はたくさん載っております。  ですから、是非とも、こういう予防原則に基づかないといいますか、結果から、ひどい目に、起きてしまったという、やっぱりそういう環境問題の事例を是非とも皆さんもいろんな形で知ってほしいし、それを受けた上で是非とも取り組んでほしいと、そういうふうに思います。
  88. 行田邦子

    ○行田邦子君 ありがとうございます。  それでは、今村参考人に伺いたいと思います。  TPPと同時に行われた日米並行交渉の中におきまして、日米はポストハーベスト農薬について承認手続の合理化をするということで確認をしたということであります。ポストハーベスト農薬の収穫前と収穫後の承認手続を一本化あるいは合理化するということと理解しておりますけれども、このことにつきまして今村参考人の御所見を伺いたいと思います。
  89. 今村知明

    参考人今村知明君) 合理化していることそのものは、私は悪いことではないと思っています。それは、世界的に見たらどちらか一方に統一してやっているのが一般的だと思いますので、一般的な方法で、日本がなかったということに対して世界標準に合わせていくという面があると思います。  ただ、合理化の過程で日本独自の厳しい基準部分が、それが緩和されていくようだと問題だと思いますけれども、その基準の掛け方を変えるだけであれば、世界標準に合わせていくというのは私はいいことじゃないかというふうに思います。
  90. 行田邦子

    ○行田邦子君 手続の合理化はいいけれども基準が緩和されるのはしっかり見ておかなければいけない、問題であるということで理解をいたしました。  それでは、中村参考人に伺いたいと思います。  中村参考人は、今年二月十三日の日本農業新聞の記事を見させていただいたんですけれども、ここでこのようなことをおっしゃっています。  米国の自国の食品の安全に対する姿勢は決して緩くはない、一五年には食品安全強化法を本格施行し、そしてより厳しくなった、ただ、米国にとって日本人の食の安全は別問題だ、日本では必要としない添加物をどんどん認可させ、規制の弱い日本に多くの食品を輸出しようとしていると、このような指摘をされています。  そこでお伺いしたいんですけれども、アメリカ人が通常口にしないような食品添加物を含んだ食品日本輸入されている事例があればどのようなものがあるのか、お伺いしたいと思います。また、日本においても、日本で禁止されている食品添加物の入った食品を諸外国に輸出している事例、どのようなものがあるのか、お伺いしたいと思います。
  91. 中村幹雄

    参考人中村幹雄君) それは非常に難しいというか、問題は、リストに挙がっているからといって摂取しないということではないですね。それと、アメリカの食品添加物規制は非常に難しくて、GRASもあるしダイレクト添加物もあるし、着色料はアメリカは別枠になっていて、しかもその着色料が二種類あるということなんですね。GRASだったら三種類あるし、特にGRAS添加物の中でいえば、企業が、自分たちが安全性を確認すれば単なるFDAに対するノーティフィケーションだけでオーケーだという制度もあって、アメリカの添加物の数からいうと、物質で全部調べたら四千数百品目ぐらいにたしかなっていたと思うんです。したがって、その中のものが使われていて、我が国が許可していないものもたくさんあるわけでしょうが、それを、食べていないものがどれかということはまず申し上げることはできません。  ただ、ここで一つ言いたいことは、アメリカのFDAはその四千数百品目の中で、非常に立派なことなんですけれども、安全性の確認はこれだけしかできていないということを数字でもってきっちりと評価をしています。ここは非常に立派なことだと逆に思っています。お答えできなくて申し訳ありません。  もう一点何かございましたでしょうか。
  92. 行田邦子

    ○行田邦子君 日本において禁止されている食品添加物の入った食品を諸外国に輸出をしている、逆の例です、があるかどうかです。
  93. 中村幹雄

    参考人中村幹雄君) 日本で禁止している食品添加物を、元々、日本で許可されていない食品添加物日本でまず生産しないというのか、諸外国用向けにわざわざやるケースもあるんですけれども、それは非常に少ないんですね。  これは多分皆さん御存じないかもしれませんけれども、例えばアメリカにビスケットを売る、そのビスケットに着色料を使う、その着色料は日本で許可された例えば黄色四号であると。このビスケットを、じゃ、アメリカに販売できるか、アメリカに販売できないんですね。なぜかといったら、黄色四号というのはアメリカで黄色五号ですが、事前にその食品添加物のバッチの許可をFDAで取ったものしかアメリカへ、加工する食品の着色には使えないというルールがあるわけですね。  そういうように、各国はそれぞれのルールに基づいてやっていて、それに合わせて私たちが関与していた食品添加物のメーカーは各食品メーカーさんに提供していっているわけなので、その先生の御質問には直接うまく答えるのは、ちょっと今すぐ見付からないというのか、そういう状況です。
  94. 行田邦子

    ○行田邦子君 ありがとうございました。  ちょっと私も勉強不足のところがあるのかなと思いますけど、今のお話を伺ってなるほどというふうに思ったものであります。  それでは、次に天笠参考人に伺いたいと思います。  先ほどから、国際汎用添加物承認TPPによってどんどん緩くなっていったり、それから安全性審査などが簡略化することが問題になってくるという御指摘をされているかと思いますけれども、天笠参考人としては、国際汎用添加物、今、日本承認をしている国際汎用添加物の中で日本承認すべきではないと思われるような添加物があれば教えていただけたらと思います。
  95. 天笠啓祐

    参考人天笠啓祐君) 国際汎用食品添加物の中で、日本承認されたものとして一時非常に問題になったのがやっぱりフェロシアン化合物です。フェロシアン化合物はシアンが使われておりまして、これは猛毒物質ですよね、シアン。ですから、いわゆる化学変化を起こした際に猛毒物質になる可能性があるものですから、やっぱりこれは非常に問題だと思って、日本でも長らく承認されていなかったわけですね。それが国際汎用食品添加物ということで承認されてしまった。  それから、もう一つがナイシンとナタマイシンという抗生物質ですね。これは、食品衛生法でもやっぱり原則抗生物質食品添加物としては認めないというふうになっているわけですけど、それが抗生物質が認められてしまった。  このナイシンとナタマイシンというのがこれが認められてしまったということでありまして、これも、やはり抗生物質の場合、今世界的に抗生物質やめようという運動が広がっておりまして、これはやはり病院で抗生物質が効かなくなってしまうそういう患者さんが非常に増えてきているものですから、是非ともこれはやっぱりやめていこうという流れが今国際的にできておりまして、国際消費者機構という、CIといっているんですけど、国際消費者機構が今年は抗生物質をやめさせる運動というのを今世界各地に呼びかけておりまして、その成果でかなり、例えばマクドナルドですとかケンタッキーフライドチキンのようなああいうところも、今抗生物質をやめるという動きになっております。  そういう意味からでも、抗生物質添加物として認めたというのはやっぱりこれ逆行だと思います。そういう意味では、やはり国際汎用食品添加物だからといって認めるという、もうちょっとやっぱり考えてほしいということであります。
  96. 行田邦子

    ○行田邦子君 それでは、今村参考人に伺いたいと思います。  国際汎用添加物についてなんですけれども、国際的にいろんな国で使われているので日本でも承認しようという政治判断というか考え方だと思うんですけれども、TPPと同時に行われました日米並行交渉におきましての確認事項の一つとして、国際汎用添加物のうちまだ日本で未指定の品目四品目、これについてもおおむね一年以内に承認をするようにということで確認をしたということでありますけれども、今村参考人は国際汎用添加物というその考え方についてどのような御所見がありますでしょうか。
  97. 今村知明

    参考人今村知明君) この国際汎用添加物そのものについては、深い考えを私あるわけではないんですけれども、米国日本の中で添加物の使用に関して協定が結ばれて、その先のステップとしては、日本でも安全委員会などで安全性の確認をしていくと思いますし、実際にその手続にのっとらずにそれが全部認められるというふうなことはちょっと考えにくいかなと思います。  既にJECFAなどで安全性基準に関しての評価が行われて、コーデックスでもある程度の基準があるものが多いと思いますので、それがあればそれに準拠して安全委員会も考えていくと思いますし、また、安全委員会の中でまだ参照するデータがなければそれを米国に求めていくというふうなことが行われた上で、確認されたものが認められていくというふうに考えております。  以上です。
  98. 行田邦子

    ○行田邦子君 ありがとうございます。  それでは、天笠参考人に伺いたいと思います。  私もいろんな食品を買うのが好きで、また裏を見たりとかするんですけれども、ちょっと最近、私自身の問題でなかなかちっちゃい文字が見えにくくなっていまして、年齢のせいだとは思うんですけれども、自分にとって欲しいなと思う情報がなかなか見れないというのがありまして、日本における食品表示の何か課題、解決すべき課題、消費者視点で何かありましたらお聞かせいただきたいと思います。
  99. 天笠啓祐

    参考人天笠啓祐君) 文字の大きさというのは非常に問題にはなりますけれど、やはり食品表示というのは本当に消費者にとってみますともうそこがよりどころなものですから、なるべく多くの情報を知りたいというのが消費者の希望ではあります。ですから、文字の大きさとは反比例するかもしれませんけれども、情報量というのはやっぱり必要だと思っております。  例えば、食品添加物なども今一括表示のようなものが増えてきたりとか、いわゆる簡略表示というのは非常に多いんですけれども、例えば、そういう食品表示について、もうちょっと物質名表示といいますか、具体的にどういう物質が使われているんだというのはやっぱり私たちは知りたいわけですね。そのときに、以前、日弁連などが提案しているんですけれども、物質名を記号、例えば番号なら番号にして、インターネットで検索すればその物質名が何だと分かると、そういうような仕組みをつくったらどうかというのは日弁連の方で提案しておりますけれども、例えばそういうような形で、なるべく具体的に分かるようなそういう表示というものも考えられたらいかがかなと思うんですね。  ですから、そういう意味では、やっぱり私たちとしてはなるべく消費者が選択できるような、選べるような、そういう表示にしてほしいと、こういう思いであります。
  100. 行田邦子

    ○行田邦子君 ありがとうございました。終わります。
  101. 中野正志

    ○中野正志君 お忙しいところ、ありがとうございます。日本のこころの中野正志と申します。  まず、天笠参考人に、農業不安について触れられましたので、確認だけさせていただきたいと存じます。  消費者連盟の共同代表ということでございますからなおさらでございます。天笠参考人は、米、野菜、地産地消を強調いただきましたから、そこはしっかり共有できるなとは思うものの、米の将来不安をお話しされますと、そのことでまたTPP反対だと言われますと、違和感を実は感じます。  TPPで結論付けられたのは、アメリカ合衆国、十三年掛けて七万トン、そして豪州、十三年掛けて八千四百トンなんですね。私ども日本の米農家の一年の収穫量は七百五十万トン、僅か一%ちょいなんですね、増えても。これが果たして国内の生産者価格、米価格にマイナスの影響を与えるものだろうかと。この頃、農協人、農業人も大分理解をされてこられまして、FTAで五十万トンだ、百万トン、アメリカからぶつけられるよりも、十二か国で決めたこれぐらいなら引けどきなのかな、まあ案外常識的なラインなのかな、こういう理解をいただく向きがこの頃大分に多くなりました。  消費者という立場で安全で安い米ならその方がいい話でありますし、例えば、アメリカから安い安全な米がどっと来られるよりは、まあ七万トンぐらいはしようがないかということで、所詮、ほとんどの一般的な消費者の口に入るよりも、正直、社員食堂だとか大きなところに回るぐらいでありますから、私は程々でいいのではないかなと実は自分ながら思っておるのでありますけれども。地産地消を訴えられる天笠参考人、その辺、確認だけさせてください。
  102. 天笠啓祐

    参考人天笠啓祐君) 私は、お米も中心ですけれども、やっぱり農業というのは国民の命だと思っております。そういう意味では、農業を守っていくということはやはり私たち自身、私たちの家族を守ることでもありますし、本当に私たち国民を守ることだと思うんです。そのために日本の農業をどうするか、これがやっぱり一番要だと思っております。  やっぱりそういう政策がまずないとまずいと思うんですね。今はやはり、私なんか農業の現場を歩いておりまして非常に感じるのは、若い人たちが農業をやりたいという人たちが今増えてきている、それはやはりすごくいいことだと思うんですけれども、そういう人たちに希望が持てるような、そういう国の政策であってほしいなというのは一番やっぱり感じるところなんですね。  ですから、そういう人たち、若い人たちがやっぱり農業をやりたい、今、でも、本当に農業で食えない状態です。それで、そういうせっかく入ってきた若い人たちがやめざるを得ないような、そういう状況もやっぱり出てきておりまして、ですから、これはやっぱり私たち、消費者も買い支えていかないかぬなと、こういう思いでずっとやってきておるわけですね。  ですから、やっぱり私たち、日本の農業をどう守るか。これ、日本の農業を守るということはやっぱり環境を守ることにもなりますし、非常に大事なことなものですから、是非ともそういうこと、それをやっぱり第一に考えてほしいということであります。それと同時に、私たちもやっぱりそういう取組をやっていくということであります。ですから、是非とも日本の農業をどう守っていくかということを第一に考えてTPPの問題も考えていただくと有り難いなということであります。
  103. 中野正志

    ○中野正志君 天笠参考人、ありがとうございます。  まさにそこでありまして、国内対策、これは与野党問わず日本の農業をしっかり守り育てるという視点の中でやり上げなければならないことだとは思います。  お三方にお伺いをいたしますが、農業人でありながら株式会社の社長をやられておられます方が、遅れている日本の農産物、食品の国際認証取得という主張をされております。正直、世界的な流通大手企業食品加工メーカーで構成されている食品安全委員会、GFSIというところがありまして、ここが食の安全かくあるべきという哲学又は定義を提示して、それにマッチした国際認証規格承認している、その認証を提示すれば世界に打って出ることが可能となると。今、世界的には、先ほどコーデックス委員会のお話、それぞれの方からお話をいただきましたけれども、この方がいわくには、今はこのGFSIだと。農産物に関する点を見ると、日本はGFSIに承認された規格が存在しません、農林水産省では輸出用GAPを作ろうとしているようですが、GFSIが承認する保証はない、日本は大きく後れを取っていると。  このGFSIは、一つ目は、農林水産物・食品の生産において衛生管理をしっかり行うことだと、いわゆる異物混入だとか残留農薬だとか食中毒、そういった問題を起こさない。二つ目は、ちゃんとした品質が維持できる、言ってみればISO9001的なそういった規格だ、要素だと。それから三つ目が、フードディフェンス、これがしっかりしていることと。ところが、残念ながら日本消費者はそういう意味で客観的な安全管理をされた農産物・食品を食べていないのが実態だとこの方は考えておられるようであります。  そういうことで、こういった考え方、どう思われますか。それぞれの先生方に一言ずつ感想をお聞かせをいただきたいと存じます。  ちなみに、この国際認証として一番認証件数が多い規格、これがグローバルGAPだと言われておりますけれども、二〇一四年の段階世界で十四万経営体が取得をしている。ところが、日本で取得しているのはたったの〇・一五%だと。日本は農産物の安全管理においてはアジアの各国からも実は後れを取っているのだと、こういう考え方が示されております。是非お考えをお聞かせいただければと思います。
  104. 今村知明

    参考人今村知明君) 農業のことについてはちょっと私余り詳しくないので、食品安全の方でGFSIの関係で考えさせていただきますと、今、食品安全をめぐる世界基準というのは様々な基準があって、せめぎ合っているという状況だというふうに思います。  コーデックス基準も、世界標準、特に今回のSPSなどには密接に関係がありますけれども、そのほかで一番多く使われているのはやっぱりISOの22000シリーズという状況で、その中でも先進的な企業が集まって今新しい基準を作ろうとしているのが、今委員御指摘の基準だと思います。  今、この基準を作るときには、特にここ十年ほどで起こった大きな問題をできるだけ包含してやっていこうという意味で、新しくて、そして世界的にも求められている基準になっていると思いますので、今後世界標準になっていく可能性は高いと思いますし、大きな企業が中心にもう動いていますので、世界標準になっていく可能性はあると思いますが、まだせめぎ合っている状況だというふうに私は思います。  ただ、農業の方で、グローバルGAPの方でそれだけ認可されているということであれば、かなりのシェアをそちらでは取っておられるんだと思いますけれども、食品安全の部分ではまだ拮抗しているというふうに私は理解しております。
  105. 中村幹雄

    参考人中村幹雄君) 加工食品を例に取って申し上げますと、アメリカの例えばニューヨーク行ってスーパーマーケットへ行きますと、マルUと書いたのがスーパーマーケットの多分もう半分以上を占めていると思うんですね。これはいわゆるコーシャ認証で、コーシャというのはKOSHERですけれども、ユダヤの方々が食べられる食品なんですね。  これを、じゃ、日本でそのコーシャ食品をアメリカの企業が出そうとしたときに、日本添加物を、私は添加物事業者ですから、添加物を使おうとすると、その添加物もコーシャ認証が必要だということになったんですね。じゃ、そのときに何が一番困ったかといったら、エチルアルコールなんですよ、エタノール、NEDOがつくっている。この中に一滴であったとしてもブドウ由来のエタノールが入っていたら使えないと。これはユダヤの教えだから使えないわけですね。そうすると、経済産業省にお願いをして、きっちりとトレーサビリティーの取れた発酵アルコールを我が国でも供給してほしいということを事業者からお願いに行って、多分十年ぐらい掛かったと思いますね。それでもって天然着色料米国へのコーシャ用のものが輸出できるようになったわけですね。  そのように、国際的な認証に取り組んでいこうとすると幾つかの整備しなきゃならないことがいろいろあると思うので、部品である食品添加物についてまでもいろいろよく調べていただいて、国がやっぱり音頭を取って、そこに予算を付けてやっていっていただきたいというふうに思います。
  106. 天笠啓祐

    参考人天笠啓祐君) 認証制度というものについての考え方というのはいろいろあると思うんですけれども、認証制度で一番大きな問題ってやっぱりコストなんですね。  例えば有機認証制度、有機農業の認証制度ができた際に、有機農家は認証を取るか取らないかって物すごくやっぱり悩んだわけです。それは一番大きいのは、やっぱりコストが掛かり過ぎる、それによって経営が成り立たなくなってしまう可能性がある。  ですから、国際認証の場合、やはりどうしても恐らく価格が非常に大きな、いわゆる認証取得の値段が非常に掛かってしまうものですから、そこでちゅうちょするというのはやっぱりあると思います。  特に日本食品企業の場合、やっぱり一番大きな問題というのは価格低下圧力。輸入食品が増えまして価格低下圧力の中でやっぱりぎりぎりの経営を強いられているところが非常に多いものですから、なかなかそういうところに手が行かないんじゃないかなと、そういうふうに私は認識しております。
  107. 中野正志

    ○中野正志君 やっぱり日本食品はイメージ的には安全だと、こう思われるんですけれども、意外とこういう世界的な認証組織考え方からすると決してそうではないということを知らしめられると、大変残念だなという思いがあります。  ですから、やっぱりそういった国民の皆さんの不安を、輸出するものは国内でだって当然食べるわけでありますから、まして、輸出先で何か問題があってもうストップだなどということがあったら、それこそ内外共に私たちの立場大変になるなと、そう思っております。やっぱり不安を払拭するための実施体制、それから政府始めとしてしっかりした監視体制、これをやっぱり構築していかなければならないなと。  なおかつ、今日貴重な御意見いただきましたから、国民の皆様への懇切丁寧な説明というのは、我々も含めて、ますますやり上げていかなければならぬのだなということを実感をいたしております。  まだ時間はありますけれども、前者の委員の皆さんと質問がダブりますので、以上で終わります。
  108. 林芳正

    委員長林芳正君) 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。  参考人方々に一言御挨拶を申し上げます。  本日は、貴重な御意見をいただきまして、誠にありがとうございました。本委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。(拍手)  本日はこれにて散会いたします。    午後四時二十三分散会