○伊波洋一君 ハーグ陸戦規定違反という問題をなかなか認めていただけませんけれども、また、日米地位協定による提供というのは、これは日本
政府の提供でありまして、これらの土地が米軍に取られた事実、そしてまたその後も返されなかった事実はずっと続いているわけです。沖縄においては、沖縄戦
そのもの、太平洋
戦争そのものが続いているという思いが私たちの中にはあります。
そこで、話、続きますけれども、十二月二十二日にSACO合意に基づく米軍北部訓練場の一部返還が実行されます。一九九五年の米海兵隊員三人による少女暴行事件で爆発した県民の反基地の怒りを鎮めるために基地負担軽減を目的に行われたのが二十年前の九六年十二月二日のSACO合意であり、余りにも遅過ぎる返還であります。
一部返還の一方で、返還地区にあるヘリパッドの代替としてオスプレイパッドの建設が強行されています。
自衛隊ヘリによる建設機材の搬入輸送や、五百名を超える県外機動隊を動員しての抗議で座り込む県民の力ずくの排除、高圧的な規制も行われています。新たに建設されるオスプレイパッドは高江集落を取り囲むように配置され、オスプレイの騒音による住民の健康被害が懸念されています。既にオスプレイの利用が開始されているN4地区近隣では、児童がオスプレイ騒音による睡眠障害になり、学校にも行けなくなり、隣村に引っ越さざるを得ない
状況にまで追い込まれています。
九月十五日に、北部訓練場にモザイク状に隣接する地域がやんばる国立公園に指定されました。この一体は亜熱帯の湿潤な森林で、四千種の動植物が生息し、二〇一八年夏頃にも世界自然遺産登録を目指しています。県民は、やんばる国立公園と同等かそれ以上に豊かな自然を残す北部訓練場で、貴重な希少種が生息する自然を破壊してオスプレイパッドを建設することに怒っているのです。
北部訓練場一部返還について、
政府と沖縄県民には大きな認識の落差があります。日本
政府は、SACO合意でオスプレイパッドの建設を条件に返還合意した以上、当然と考えているように思われます。しかし、米国の基準でも国内法の体系でも、ヘリパッドを造ってよい場所と造ってはならない場所があります。残念ながら、米国
政府もまだこの北部訓練場が希少種の宝庫であることを明確には認識していません。
私たち沖縄の風は、去る十月五日に、在日米国大使館に北部訓練場の無条件返還を求めて申入れをしました。その際にスナイプ安全保障課長が、あなたたちはオスプレイパッド建設に反対しているが、では北部訓練場過半の返還についてどう思うのかと反論をしました。私はこう答えました。返還は当然です。二十年前に合意されており、遅過ぎるくらいです。しかし、過半返還と新たなヘリパッド建設は別問題です。建設していい場所といけない場所がある。豊かな生態系を有する予定地区の自然を破壊して新ヘリパッドを建設するのは、自然
環境を保全するという米国の基本政策及び米軍
環境基準、JEGSに照らしても許されないことだと発言をいたしました。スナイプ課長は、立場は違うがあなたの主張は
理解したと言ってくれました。
米軍は、一九九二年に域外
環境基本指針
文書を、九五年に日本
環境管理基準、JEGSを策定し、在日米軍基地施設内で自然
環境を守る義務を負いました。しかし、今の日本
政府は、米軍が守るべきJEGSがあるにもかかわらず、米軍の訓練上の要求を重視して、県民や世界自然保護連合など自然保護を求める国内外の
環境団体の声を無視し続けています。そういう
政府の姿勢こそ改めるべきであります。
十月二十日の
外交防衛委員会で
資料をお示しをいたしました。このように希少種が本当にいっぱいいる地区がまさに今ヘリパッドが建設されている地区です。そして、その理由としては、全てが米軍の要求によるものです。このようなことが今行われております。
二〇〇〇年九月十一日の日米の
環境原則に関する共同発表では、「日米の関連
法令のうちより厳しい基準を選択するとの基本的考えの下で作成される日本
環境管理基準(JEGS)に従って行われる。その結果、在日米軍の
環境基準は、一般的に、日本の関連
法令上の基準を満たし又は上回るものとなる。」と明記しています。
JEGS第十三章は、絶滅危惧種、天然記念物の保護が規定されています。
私は、国立
国会図書館
外交防衛調査室に依頼して、米国における軍事施設内の自然資源の保護について
調査をしていただきました。米国では、年間三億ドルの予算を計上して軍事施設内での自然資源保護プログラムを実施しており、魚類野生生物局が基地内訓練が有害な影響を与えていると指摘したカリフォルニア州の陸軍の基地で、キツツキ保護のために射撃場の閉鎖、移設が行われた事例もあります。
北部訓練場オスプレイパッド建設について、
防衛省は米軍の要求である七か所だったのを二〇〇七年アセスで六つに減らして
環境破壊を抑えたと言っています。しかし、今ヘリパッド建設が行われている場所は希少種の生息地であり、建設してはならない地域なのです。
種の保存法に指定された絶滅危惧種であり、文化財保護法によって保護されるべき国指定の特別天然記念物であるノグチゲラについて、
環境省や文化庁は、個体としての保護が法律上求められているだけで、個体を直接殺すわけではないので生息域の破壊は止められない、問題にできないと言っています。
皆さん、今日の
資料に、朝日新聞のこの五日の記事を添付してありますが、この中でも、貴重な動植物の宝庫なのになぜ生息地を守れないという指摘がありますが、文化庁等の担当者は、個体の殺傷がない限り文化財保護法には抵触できない、こういう形になっています。
環境省にしても、ノグチゲラはヘリパッド作業区域の外に逃げるから個体殺傷ではない、こういうことで、このようなことが今許されているわけです。
しかし、JEGSには、アメリカ軍の基準であるJEGSには保護種とその生息地の保護が規定されています。米軍の要求というだけで絶滅危惧種や天然記念物の生息域の豊かな自然を破壊する日本
政府の姿勢は、米国連邦
政府の
環境保全や希少種保護という基本政策とも矛盾するものです。本当に私は情けないと思っています。
このような貴重な自然があるということがアセスで明らかですけれども、今情報公開で求めたら、これは全部塗り潰されています。このような、
資料を出さないという、本当に私たちの
政府の、ただ隠せばいいという話では問題は解決しないんです。米軍自身が、ここは保護しなさいということが基準としてきちんと使われています。しかし、
我が国内ではまさに
政府がそれを実行していない、それだけにすぎません。
そこで
質問です。
米国魚類野生生物局や海洋大気庁が絶滅危惧種の保護に協力しているように、日本でも基地内の自然保護について
環境省や文化庁が直接
調査をしたり勧告する仕組みが必要です。
環境などに関する国内法やJEGSが在日米軍基地にきちんと適用されるよう米軍に求めるべきではないか、
答弁を求めたいと思います。