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2016-10-28 第192回国会 衆議院 法務委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成二十八年十月二十八日(金曜日)     午前九時三十分開議  出席委員    委員長 鈴木 淳司君    理事 今野 智博君 理事 土屋 正忠君    理事 平口  洋君 理事 古川 禎久君    理事 宮崎 政久君 理事 井出 庸生君    理事 逢坂 誠二君 理事 國重  徹君       赤澤 亮正君    安藤  裕君       井野 俊郎君    岩田 和親君       奥野 信亮君    門  博文君       神谷  昇君    菅家 一郎君       城内  実君    熊田 裕通君       鈴木 貴子君    瀬戸 隆一君       辻  清人君    野中  厚君       藤原  崇君    古田 圭一君       宮路 拓馬君    吉野 正芳君       枝野 幸男君    階   猛君       山尾志桜里君    大口 善徳君       吉田 宣弘君    畑野 君枝君       藤野 保史君    木下 智彦君       上西小百合君     …………………………………    議員           門  博文君    議員           宮崎 政久君    議員           逢坂 誠二君    法務大臣政務官      井野 俊郎君    政府参考人    (総務省大臣官房審議官) 佐伯 修司君    政府参考人    (文部科学省大臣官房審議官)           瀧本  寛君    法務委員会専門員     矢部 明宏君     ————————————— 委員の異動 十月二十八日  辞任         補欠選任   田畑  毅君     熊田 裕通君   野中  厚君     神谷  昇君   宮川 典子君     岩田 和親君   山田 賢司君     瀬戸 隆一君 同日  辞任         補欠選任   岩田 和親君     宮川 典子君   神谷  昇君     野中  厚君   熊田 裕通君     田畑  毅君   瀬戸 隆一君     山田 賢司君     ————————————— 本日の会議に付した案件  政府参考人出頭要求に関する件  部落差別解消推進に関する法律案(二階俊博君外七名提出、第百九十回国会衆法第四八号)      ————◇—————
  2. 鈴木淳司

    鈴木委員長 これより会議を開きます。  第百九十回国会、二階俊博君外七名提出部落差別解消推進に関する法律案議題といたします。  この際、お諮りいたします。  本案につきましては、第百九十回国会におきまして既に趣旨説明を聴取いたしておりますので、これを省略いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 鈴木淳司

    鈴木委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     —————————————  部落差別解消推進に関する法律案     〔本号末尾掲載〕     —————————————
  4. 鈴木淳司

    鈴木委員長 この際、お諮りいたします。  本案審査のため、本日、政府参考人として総務省大臣官房審議官佐伯修司君及び文部科学省大臣官房審議官瀧本寛君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 鈴木淳司

    鈴木委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     —————————————
  6. 鈴木淳司

    鈴木委員長 これより質疑に入ります。  質疑申し出がありますので、順次これを許します。神谷昇君。
  7. 神谷昇

    神谷委員 自由民主党の神谷昇でございます。  私は、部落差別解消推進に関する法律案につきまして、質問を申し上げたいと存じます。  かつて、我が国では、二十一世紀人権世紀と言われ、精神文化が花開き、高度福祉社会が形成されて、老若男女、そしてまた障害者健常者地域に相集い、協力し合って、楽しく、そしてまた有意義に暮らす、その中には人権をとうとぶことが主になって形成されるというふうに思っておりました。  私も、実は四年前まで八万弱の泉大津市長をしておりまして、人権をとうとぶ町づくりを主にして、人に優しい町づくり、すなわち、高齢者に、そして女性に、そして子供に、そしてまた障害者に、環境などに優しい町づくりを進めた記憶があるわけであります。  しかしながら、二十一世紀も四半世紀が過ぎてまいりますと、いろいろな諸問題が起こってまいりました。  テレビを見ておりますと、昨年度の学校におけるいじめが二十二万件を超えた。そして、そのいじめ内容がますます低学年化していく。そしてまた一方では、児童虐待がウナギ登りにふえております。高齢者福祉施設では虐待殺人が起こり、そしてまた、きわめつけは障害者施設に押し入って大量殺人が起こるなど、まさに人権を無視した事件が多発していることはまことに憂慮すべきであります。  また、部落差別を初めとするいろいろな差別につきましても、ITの進化に伴いましてますます複雑化しておるところであります。  また、海外においては、シリアを初めとする国で紛争が起こりまして、これらから大量の難民が発生をしております。今、世界での難民数は六千万人を超えているのではないかというふうに憂慮されています。ドイツも、当初は難民受け入れに積極的でございましたけれども、今や、その難民受け入れにちゅうちょしているところでありまして、また、イギリスも、EUを離脱した一因の一つにこの難民問題があるのではないかと言われておるところであります。  我が国では、安倍総理が早速この難民問題に支援を表明しているところでございますけれども、国の内外で極めて憂慮すべき人権問題が発生している今日こそ、もう一度足元を見詰め直して、人権問題、差別問題について国と地方自治体がしっかりと連携し、将来を見据えた強力な取り組みをして、人権をとうとぶ国づくり、そして町づくりを進めていかなければなりません。そしてまた、部落差別を初めとするあらゆる差別についても、これらがなくなるように積極的に行動すべきと考えておるところであります。  国も平成十二年に人権教育啓発法を制定していますが、いまだその達成感はございません。このような状況下で、本法律案議員提案により提出されたことは、心より敬意を表し、そしてまた、皆さん方に心から御労苦をねぎらいたいと思っております。  それでは、順次、質問に入らせていただきます。  まず最初に、本法案趣旨あるいは概要についてお尋ねをさせていただきたいと思います。
  8. 宮崎政久

    宮崎(政)議員 神谷議員お答えをいたします。  泉大津市長としての御経験も踏まえて、この法案の入り口を御指摘いただきまして、ありがとうございます。  この法案提出に至りましたのは、まず大前提として、部落差別が今もなおまだ存在しているという認識のもとにございます。そしてまた、神谷委員からも御指摘がございましたが、インターネット等さまざまな情報環境社会的に進展していく中で、新たな事象が見出されたり、社会的な状況変化している、こういったことも踏まえて、私どもは、部落差別解消が今必要である、こういう前提に立ってこの法案提出させていただいているものでございます。  すなわち、この法律案、第一条に「目的」を定めまして、全部で第六条までの構成とさせていただいているところであります。  この第一条は、「目的」といたしまして、現在もなお部落差別存在するとともに、情報化進展に伴って部落差別に関する状況変化が生じていることを踏まえて、全ての国民基本的人権享有を保障する日本国憲法理念にのっとって、部落差別は許されないものである、こういう認識のもとにこれを解消することが重要な課題であるということに鑑みて、部落差別解消に関して基本理念を定めて、並びに国及び地方公共団体責務を明らかにするとともに相談体制充実などについて定めることによって部落差別解消推進し、もって部落差別のない社会を実現するということを定めております。  第二条の「基本理念」、そして第三条では「国及び地方公共団体責務」、そして、それを具体的に四条以下で、「相談体制充実」、「教育及び啓発」、「部落差別実態に係る調査」について定めるものでございまして、このような諸施策推進によりまして部落差別のない社会を実現することを目指すものでございます。  以上です。
  9. 神谷昇

    神谷委員 ただいまの御説明、本当によくわかりました。  これまでに、いわゆる同和三法、昭和四十四年に同和対策事業特別措置法、そして、名前が変わりまして、昭和五十七年から地域改善対策特別措置法、そして、昭和六十二年から地域改善対策特定事業として名前が変わりまして、平成十四年三月まで続いておりまして、これらは全て、国の財政上の特別措置に関する法律としてこれまで行われてきたところであります。  その同和三法と今回の法案関連性がどのようにあるか、その辺をお伺いしたいというふうに思います。
  10. 宮崎政久

    宮崎(政)議員 お答え申し上げます。  この旧三法と言われているものでございます。同和対策事業特別措置法、そして地域改善対策特別措置法、それとあともう一つ地域改善対策特定事業に係る国の財政上の特別措置に関する法律、これを旧同和三法というふうに称しているわけでありますけれども、この旧三法というものは、歴史的また社会的な理由によって、その当時、生活環境等が非常に劣悪な状況に置かれていた、そういう地域について、生活環境安定向上が阻害されている地域について、その生活環境改善等のために行う事業を定めていったものでございます。いわゆる生活環境改善社会的基盤向上ということを目的としたものでございます。  そういうことの成果も踏まえまして、例えば、平成二十七年版の人権教育啓発白書などでは、「一般地区との格差は大きく改善された。」という報告もされているところでございます。  この今回御提出を申し上げている法案は、生活環境改善などのために行う事業等について定めていたいわゆる旧三法というものとは異なりまして、部落差別解消推進して、もって部落差別のない社会を実現することを目的としております。これは、冒頭御説明を申し上げましたように、第一条の目的が、部落差別解消そのもの目的とするという形で、第二条に理念、そして第三条以下で具体的な施策を定めているというところからも御理解いただけるものと考えております。  以上です。
  11. 神谷昇

    神谷委員 ただいまの御答弁のように、生活環境改善され、そして生活基盤もよくなってきた、そういうことをお伺いしたわけであります。旧同和三法によって、それがよくなってきたということでございます。  そうしますと、この法案財政出動を想定していないというふうな理解でよろしいでしょうか。もう一度確認をさせていただければ。
  12. 宮崎政久

    宮崎(政)議員 結論から端的に申し上げますと、財政出動措置をとることは目的としておりませんし、そのようなことがないような規定ぶりになっております。  これは、提出に至る過程の中でもさまざま議論があったところでございまして、法案をつくっていく過程でも、財政措置をイメージさせるような文言を訂正していくなどのさまざまな議論を経て、例えば第三条では、第二条で基本理念が定められているんですけれども、第二条の基本理念にのっとって部落差別解消に関する施策を講ずるとともに、国のやるべきことですけれども地方公共団体が講ずる部落差別解消に関する施策推進するために必要な情報の提供、指導及び助言を行う責務を有するという形にさせていただきまして、この中に、財政措置を伴うこと、また財政措置をイメージさせるようなことは、国の責務として加えてございません。  また、この第三条の二項でも同様に、財政措置があるということは全く規定しないという形でこの法律案を御提出させていただいているところでございます。
  13. 神谷昇

    神谷委員 よくわかりました。  それでは、第一条において、「現在もなお部落差別存在する」ということであります。先ほど説明もありました。  私も、やはり時代が変わってきて、そして、その差別内容もかなり複雑化しているということを承知しておりますが、それらの具体的な根拠がありましたらお示しを賜りたいと思います。
  14. 門博文

    門議員 神谷委員の御質問お答えをさせていただきます。  例えば、数字根拠といたしましては、法務省人権擁護局によりまして、同和問題に関する人権侵犯事件につきまして、人権侵犯事件調査処理規程に基づく救済手続による処理を行った件数、これを年別に御報告いただいておりますけれども平成二十五年で八十件、平成二十六年で百七件、平成二十七年で百十三件と、直近三年間の数字でありますけれども、このような報告状況がありまして、依然、同和問題に関する人権侵犯実態があるというふうに認識をしております。  また、平成二十七年度版の人権教育啓発白書によりましたら、結婚、そしてまた差別発言差別落書き等、事案は依然、存在しているということが報告をされております。  このような数字の側面を受けまして、私たちも、この法律をつくっていく過程の中でさまざまな方々から御意見も賜りました。私自身も和歌山県の出身ですけれども、正直申しまして、子供のときには、小学校に通う校区の中にいわゆる同和地区というものが現存する地域幼少期を過ごしましたけれども、そこの地域皆さんにも、今回この法律をつくっていく過程の中でいろいろお話を伺いました。  先ほどから議題になっております旧三法によって随分と生活環境改善された、これはいろいろな方々が多く認められているところでありますけれども、私たちは、意見交換の場を設けましていろいろ伺いましたら、いまだにやはり、結婚差別の問題、就職差別の問題、地域による教育格差、そして貧困の問題等、切実な訴えを聞かせていただきまして、改めて、現在もなお部落差別存在するという実態を肌身で感じたところであります。  以上です。
  15. 神谷昇

    神谷委員 私も、市長時代に、市民課の職員からよく相談がありました。それを聞いておりますと、明らかに差別につながるというようなことで、やはり市においてもその窓口が非常に慎重に対応しなければ大変なことになる、そういう経験が幾つもありまして、今のお話を聞いておりますと、やはりそういう人権侵害についてはふえてきているということがよくわかったわけであります。  また第一条に行きまして、「情報化進展に伴って部落差別に関する状況変化が生じている」としております。先ほどから出ております、インターネット発展等によりまして、あっという間に拡散するということが最近多くなっているわけでございまして、その中で、具体的にどのような状況が現実に起きているのか、あればお示しを願いたいと思います。
  16. 宮崎政久

    宮崎(政)議員 例えば、インターネット検索をしますと、インターネット上で、特定地域地名をもってして、それが差別をされている部落であるということが表示をされている。そして、例えば地名総鑑という昔のものについてもインターネットを通じて販売復刻の動きがあったりとか、現在の地名に置きかえるとこういうところが該当する、同和地区であるというような形の掲載をされているようなものが現にネット上にあるわけであります。  特定地域の住民に対して不当な差別的な取り扱いを助長、誘発するような目的であることがその全体のページスレッドなどの構成から認識できるようなものが現に存在するということは事実でありますし、ネット検索などをすれば出てくるわけであります。  ちなみに、法務省人権擁護局確認をしたところ、同和問題に関する人権侵害事件について、人権侵犯事件調査処理規程に基づいて救済手続による処理を行ったもののうちインターネット上の情報につき法務局が削除を要請した件数は、平成二十五年五件、平成二十六年十件、そして平成二十七年は三十件ということで、インターネット普及などによって、だんだんとこういう形で現在ふえているというのも認められるところであります。  また、インターネットというものの特質というのでしょうか、一旦情報が拡散してしまうと半永久的に情報閲覧が可能である、こういう特殊性もあるわけでありまして、こういった事情を勘案しますと、以前に比べて部落差別に関する情報に触れる機会がインターネット等においては相対的に多くなっているというふうに考えられると思っております。  以上です。
  17. 神谷昇

    神谷委員 ありがとうございます。  ネットによりまして本当にいろいろなことが知れるわけでございますけれども、そこがやはり差別にもつながってくるということがよくわかったわけであります。  先ほどから御説明をいただいていますように、かつての劣悪な生活環境改善され、そしてまた生活基盤向上してまいりました。そうしますと、部落、昔でしたらそういうところは特定されていったんですが、その特定されるということは最近はなくなってまいりました。  そうしますと、部落差別という概念が以前に比べれば薄くなってきている、そして、これを自然にしておけば部落差別皆さんが忘れて、それでもう差別がなくなるのではないか、こういう法律をつくることによって寝ている子を起こすのではないかというような見方も一方ではあるようであります。  そのような御意見に対してどのような御見解を持っておられるのか、お示しをいただきたいと思います。
  18. 宮崎政久

    宮崎(政)議員 ありがとうございます。  さまざまな見解があるということについては、もちろん提出者の側としても承知をしているところでございます。民主主義社会でありますので、いろいろな意見を闘わせることを否定するものでは全くありません。  ただ、提出者としましては、やはり、この部落差別というものが今も現存していて、それは解決に至っていない。しかも、今、御質問をその前にいただきましたけれどもインターネット等通信手段進展普及などによって社会的事象変化も見てとれているというところからしますと、寝た子を起こすということではなくて、これは解決をすべきものだというふうに考えているところでございます。  今もまだ解決を見ていない、そして、この部落差別というもののない社会を目指していくために我々ができることをしっかりとやっていくために、今回この解消のための基本的な法律が必要であるという認識に立っているというところです。  つまり、部落差別存在を知らないということだけであるとすると、将来、その情報、つまり部落差別に関する情報に触れたときに、これに起因して再び差別が起きていくということは考えられるところでありまして、ましてや、インターネット先ほど説明したような形で普及した現代においては、これが半ば永久的に情報閲覧が可能になるという事象もございます。  ですから、部落差別の根本的な解決のために、国民一人一人が部落差別解消する必要性に対する理解を深めることができるように、部落差別解消に関する施策をしっかりととっていくことこそが私は必要であると、提案者としてはそのような考えに立って今回御提案を申し上げているということでございます。
  19. 神谷昇

    神谷委員 御答弁ありがとうございます。  私も、今の御答弁、全く同感でございまして、ひとつまた、その辺、強力に推進をしていただきたいと思っております。  次に、いわゆる同和ウィキのような、インターネット上において特定地域名前同和地区であるという掲載をしている行為、これまでも、部落総鑑とか、いろいろな形の中でこういうことがあらわれてきたわけでございます。  このようなインターネット上において掲載する行為について、本案はどのように対応しているのでしょうか、お聞きしたいと思います。
  20. 宮崎政久

    宮崎(政)議員 インターネット上において、どのような内容形態特定地域同和地区であるというふうに記載をされているかによって判断をするべきものだと考えておりますので、それぞれ一つ一つ事象に応じて考えていかなければいけませんから、それが部落差別ということに該当するかどうかということを、要するに概括的に申し上げることはなかなか困難だ、個々の事象で見なければそれは判断できないと思っております。  ただし、インターネット上において特定地域地名同和地区であるということを明示した上で、それが、例えば、そのページの立て方、スレッドの立て方、その他、その地域の固有の名称以外の全体の記載のあり方などから、要するに、部落差別解消に関して施策の対象になるようなものであるかどうかということは判断できると考えております。  こういったものがあった場合には、この法案で申し上げますと、インターネット上にみだりに特定地域地名同和地区であるとして掲載する行為が、例えば、特にネットの特性は、書き込みを行った者から見えない形で他者の人権侵害という形になっていくようなものが多々あるわけでありまして、こういうことについて啓発を行っていくとか、そういうことに関して部落差別であるというお申し出をいただくことに対して、相談に的確に対応していかなければいけない、こういったことを想定しておりまして、それが今回の第六条までの各般の条文の中に規定をさせていただいているところと考えております。  以上です。
  21. 神谷昇

    神谷委員 よくわかりました。  本案は、旧同和三法が財政出動したのに対しまして理念法であるというふうに先ほどからの答弁理解をしております。  表現の自由、内心の自由等を侵さないようにしようとする配慮も踏まえまして、理念法とすることに合理性があるとも考えておりますけれども、一方、禁止規定罰則規定等を定めなければ本当の部落差別解消実効性がないという意見もあるわけでありますが、本法案の意義についてどのようにお考えなのか、お尋ねしたいと思います。
  22. 宮崎政久

    宮崎(政)議員 この法案提出させていただくに当たりまして、さまざまな皆様とも意見交換をさせていただきました。そして、今回、議員立法という形で提出をさせていただくに当たりまして、理念法にとどめるという形態をとらせていただいたところでございます。そして、神谷委員先ほど質問をいただきましたけれども財政的な措置は伴わないという形での定め方もさせていただいているところでございます。  私どもは、部落差別が現に存在をしているという認識に立っております。そして、部落差別解消しなければいけないことでありますし、また、インターネット等情報化進展に伴って社会的な状況変化が伴っているということも踏まえて、この法案が必要だと考えているところでありまして、いわゆる法律事項に当たるようなことを今回定めずに、部落差別解消に向けて、さまざまな措置をとることによって解決に至っていきたい。それは、今神谷委員から御指摘がありましたように、例えば表現の自由であるとか、当然でありますけれども憲法が絶対的に保障している内心の自由、こういったものを侵さないということへの配慮も必要であると考えたからでございます。  私どもは、この法案理念法でありますけれども、例えば第一条では、先ほども申し上げましたけれども、「全ての国民基本的人権享有を保障する日本国憲法理念にのっとり、部落差別は許されないものであるとの認識の下にこれを解消することが重要な課題であること」というふうに目的を定めさせていただいております。  こういった形で、それぞれ各般施策を第三条以下でお示しをしているところでありますけれども、この法文によって、先ほど申し上げたようなさまざま配慮が必要な事情との調整もしながら、理念法として、本法案成立をいただくことによりまして部落差別解消推進されることになると考えているところでございます。  以上です。
  23. 神谷昇

    神谷委員 ありがとうございます。  るる質問を申し上げ、そして的確にお答えをいただきまして、まことにありがとうございます。  この第三条第一項におきまして、国が地方公共団体に対して必要な情報の提供、指導及び助言を行うとなっております。常に国と地方公共団体が連携をして、そしてお互いに助言をし合う、これが大事であるというふうに思っております。また、六条に定める部落差別実態に係る調査、やはりこれも継続していただく、そして、これにつきましてもいろいろと市町村と連携することが必要じゃないかと思っております。  ただいま、いろいろと人権問題について取り上げてまいりましたけれども、私は、人権問題を取り上げるだけではなく、常に思っていることは、三つ子の魂百まで、やはり幼少のときにどのように教育を施していくか。特に日本はおもてなし、あれで東京オリンピックが決まったようなものでございますけれども、そのおもてなしの心、すなわち、幼少のころから、お茶、まんじゅうを出して、おまんに座って食べる、そして花を生ける、そういう日本の伝統文化を施していって、小さいころから情緒豊かな、心豊かな人材を育んでいく。それが人権教育、そしてまた人を差別しない、そういう問題につながってくると思っております。  やはりこれは、教育問題も今大きく問題になってきておりますけれども、私も実践をしてまいりました。市長のときに、保育所に、そして幼稚園に、そういう出前をして、礼儀作法を、そして日本の伝統文化を教えて、情緒豊かな人間として育んでいく。こういうことも国としてはしっかり取り組んでいただきたいと思っております。  以上をもちまして、本日の質問を終わらせていただきます。御答弁、まことにありがとうございました。
  24. 鈴木淳司

    鈴木委員長 次に、藤野保史君。
  25. 藤野保史

    ○藤野委員 日本共産党の藤野保史です。  本法案は、第一条の「目的」で、「部落差別解消推進し、もって部落差別のない社会を実現する」としております。しかし、本案は、この目的とは全く反対に、部落差別の復活と恒久化につながる、こういうものであり、関係団体から廃案を求める強い運動が起こっております。  この点について、以下質問したいと思います。  私は福岡の出身でありまして、福岡県は、かつて旧同和地区数が全国一、地区数も同和関係者も全国の一割を超えておりました。今もお話ありましたが、同和対策特別措置法が一九六九年に施行されて二〇〇二年に終わるまで、三十三年の間に、全国では約十六兆円の資金が投入されたわけですが、福岡県では約一兆円の事業が行われました。  そうした特別対策から一般対策へと移行したわけですが、この移行に伴って、福岡県の市町村では同和対策事業はなくなってきております。先日、現地に行ってお話も聞いたわけですけれども、例えば粕屋町などは、そうした行政から公正で民主的な行政へと先駆的に転換をしてまいりました。  他方、県下の一部地域では、まだ形を変えた特別扱いというものは残っております。そのうち、筑紫野市や太宰府市などの実態も伺ってまいりました。筑紫野市では、三百九十三世帯を対象に、一九八九年から九九年までの間だけですけれども、二百七十七億円の同和対策事業が実施をされた。それ以降も現在に至るまで、事実上の特別扱いが、医療費への補助や保育所への補助という形で続いているというふうに伺ってまいりました。  先ほど答弁がありましたけれども、本法案は、三条で、国に対して、部落差別解消に関する施策を行う責務を定めておりますが、門提案者にお聞きしたいんですが、ここで言う「部落差別解消に関する施策」というのは何を指すんでしょうか。
  26. 門博文

    門議員 藤野委員の御質問お答えをさせていただきたいと思います。  まず、今委員の方から、御出身の、御地元の福岡の状況もお伺いをさせていただきました。  先ほど神谷委員との質疑の中にもありましたけれども、私たちは、今、旧同和三法において行われてきたいわゆる財政支援、財政を伴う事業については、もう、一段の結果を得て、そういう格差というのは解消されつつあるのではないかなというふうに思っております。  ただ、しかしながら、先ほどもそれも御答弁させていただきましたとおり、今、部落差別実態というものを数値的に確認をさせていただいたり、そしてまたいろいろな御意見を各方面から伺ったところ、こういうことがまだ現存しているという観点に立ちまして、私たちは、この解消について、具体的には法律の特に四条から六条に書かせていただいておりますけれども、現在のところ、相談体制充実するとか、それから教育及び啓発、そしてまた部落差別実態に対する調査を行う、このようなことを今回この法律の中で「部落差別解消に関する施策」ということで位置づけをさせていただいております。
  27. 藤野保史

    ○藤野委員 財政措置の話もありましたけれども、法文上はそれは排除はされていないわけですね。「部落差別解消に関する施策」とあるだけであります。現に各地で、さきに述べたような特別扱いというのは財政上の支援というのが行われております。本法案が「施策」という形で新たに規定をされるということは、そうした現状をさらに助長する、あるいはさらなる口実を与えるということになりかねないわけですね。  これは国だけではありません。さらに心配なのは地方自治体であります。同条二項、これは地方公共団体責務として、「部落差別解消に関し、国との適切な役割分担を踏まえて、国及び他の地方公共団体との連携を図りつつ、その地域の実情に応じた施策を講ずるよう努めるものとする。」とあります。  またお聞きしたいんですが、「その地域の実情に応じた施策」というのは、これは何を指すんでしょうか。
  28. 門博文

    門議員 まず、旧三法の財政出動については、繰り返しになりますけれども、私たちは、この法律の中で再び財政出動を復活させるというようなことを、この法律をもとに、根拠として行うことは全く考えておりません。  また、この法律を我々がつくっていくプロセスの中で、先ほど申し上げましたけれども、さまざまな方々の御意見を聞いた中で、過去において、財政出動事業に伴っていろいろな投資の偏重があったりとか、それからそれに基づくいろいろな利権体質みたいなものもあったというふうにも聞きました。そういうことを排除していくために、今回は特に財政出動ということはまず考えていないということ。  そして、あと、過去の事例でいいますと、行き過ぎた糾弾、そういうものもあったということも承知をしておりますので、そのことも今回この法律をつくっていく過程の中では最大限我々は考慮してこの法律をつくらせていただいたところであります。  そしてまた、「その地域の実情に応じた施策」ということですけれども、この法案そのものは、今御指摘いただきました第三条第二項で、地方公共団体は、部落差別解消に関して国及び他の地方公共団体と連携を図りつつ施策を講ずるよう努めるものとすることを規定したものでありまして、地方公共団体施策を講ずるに当たり、その地域の実情に応じた施策とすることは地方公共団体の性質上当然のことであってということが書かれているんですけれども、この地域の実情という言葉が、ちょっといろいろな解釈があると思うんです。  今私たちが言っているのは、この地域の実情というのは、大きく日本列島、日本を、例えば北は北海道、そして南は九州、沖縄という地域を俯瞰したときに、それぞれの地域によってこの部落差別の過去からの実態がどうであったか、そして現在どうあるかということを、それぞれの地方公共団体理解をしながら施策を講ずるということでありますので、例えば先ほど指摘がありました福岡でこの地区のここの部分でという、ミクロの地域特定して実情に応じた施策を講じようという趣旨でこの言葉、定義がなされていることではないというふうな御理解をいただきたいと思います。
  29. 藤野保史

    ○藤野委員 いや、ちょっと、聞いているとトートロジーといいますか、私は具体例を含めて聞いているわけですが、実情に応じてということを実情に応じてと言われたにすぎない。これは解釈次第でどうにでもなるということだと思うんですね、法文上何の制限もありませんから。  一項の場合は、国は、「必要な情報の提供、指導及び助言」と、まず施策、「部落差別解消に関する施策を講ずるとともに、」ということで、「ともに、」という後でいろいろ書いているんですが、二項の場合は、地方公共団体は、「その地域の実情に応じた施策を講ずる」、これだけですから、非常に、何の制限もない、ある意味、国以上に多様な施策を可能とする、そういう条文で、それを今そういう言葉でおっしゃったのかなと思いました。  深刻なのは、だからこそですけれども、だからこそ、今各地で、せっかくなくした、せっかくなくなった同和事業の復活になるんじゃないか、こういう懸念の声が広がっているんですね。  配付資料の一を見ていただければと思うんですが、私は北陸信越ブロックから選んでいただいておりまして、その一つ、長野県御代田町の茂木祐司町長のインタビューであります。  これによりますと、私は直接お話も聞いたんですけれども、一応活字ということで資料としては紹介しておりますが、御代田町は、茂木町長が就任する前には、部落解放同盟の一部幹部によって町と職員に対して異常な圧力やおどしというのが日常的に行われておりました。退職する方が出るとか、長期療養が四人出るとか、しかも、その中で、人権同和対策課長が自殺に追い込まれるという大変痛ましい事件まで起きたわけであります。この町の職員は、人事異動の季節になると、同和対策部署になるんじゃないかと戦々恐々としていたというふうに伺いました。これは遠い過去の話ではなくて、二〇〇〇年代初頭、つい最近までそういう状況だったという話であります。  それが、二〇〇七年二月に茂木町長が就任し、その年の六月議会で同和事業の完全な廃止を宣言する。住民からは、同和事業がなくなってほっとしたと圧倒的に歓迎される。約四千万円あった同和予算は医療、福祉に回すことになり、そして、同和対策担当の職員も福祉の部署に回ることができた。  何より私がなるほどと思いましたのは、同和地域の方あるいはそういう関係者の方からも、町をおどしていた一部の解同幹部と同じように見られてきたことがつらかったんだという声が茂木町長に寄せられたということであります。  ところが、本案ができればどうなるのか、「その地域の実情に応じた施策」という名のもとに、せっかくなくした同和事業が復活するのではないか。これはもう当然の懸念であります。そして、民間団体などが自治体に新たな介入を行うきっかけ、足がかり、口実、これがその法案によってできてしまうのではないかと強い懸念が表明されております。  ここで、逢坂提案者にお聞きしたいんですが、同じく自治体の首長の経験をお持ちの逢坂委員として、どのようにお感じでしょうか。
  30. 逢坂誠二

    逢坂議員 どうも御質問ありがとうございます。  今法案の流れについては、まず出発点としては、現在もなお部落差別存在するとともに、情報化進展に伴って部落差別に関する状況変化が生じておりますというのが問題意識の出発点なわけですね。  私、今法案について、当初、与党の法案提出者の方から、こういう法案を検討しているんだ、それで、今私が述べたような問題意識、こういうものが存在しているという話を聞かせていただきまして、私自身も、ネットなどで、特にこれは情報化進展に伴って変化が生じているということを受けて、いろいろと見せていただきました。そうしたところ、やはり、なるほどそういうものは存在しているんだなということは私としても認識をいたしたところであります。  だから、そういう問題については何らか手だてを打つということについては、それは悪いことではないだろうというふうに思ったわけです。そういう意味で、私と、我が党からは井出委員もこの法案提出者として名前を連ねさせていただきました。  しかし、その後の議論の中で、今、藤野委員指摘したようなこと、あるいはまた前国会において清水委員もさまざま課題について指摘をされていたことを私も承知しております。いろいろな意見があるということは承知をしているわけであります。  そうしたことを踏まえてみますと、国権の最高機関である国会議員立法として提出をされ、これは今後の道行きはわかりませんけれども、もしこれが立法府の意思として成立するということになりますれば、今国会で、あるいは前国会でもいろいろ指摘をされている課題、問題、あるいは国会以外でもいろいろな声があることは私もこの間承知をしておりますので、そういったものに十分配慮をして、そういう弊害、問題、課題、それを乗り越えるようなことを最大限行うということを前提として、この法案の問題意識である課題のところ、それに適切に対処をしていくということが大事なことなんだろう、そういう認識を持っております。  以上です。
  31. 藤野保史

    ○藤野委員 この復活、これを懸念する声というのは大変大きいわけですね。  実際の事案としても、そういう事案が争われております。九月二十八日にさいたま地裁で判決があったんですが、配付資料の三をごらんいただければと思います。  本庄市、深谷市、上里の二市一町が二〇一二年度までにあった同和事業を終結したわけですね。それに対して、終結したことに対して、埼玉の部落解放同盟がその終結は無効だと争った事案であります。これは解同側が全面敗訴したわけですけれども、判決が同和事業の復活を認めなかった理由というのがございます。  紹介させていただきますと、平成十四年に特別対策が終了した背景として、同和地区と周辺地区との格差解消されてきていること、同和対策は、本来、全国民に受益が及ぶように講じられるべきものであり、特別対策はあくまでも例外的なものであって、特別対策の手法が差別解消という目的と調和しがたい側面があること、特別対策の継続が同和地区のマイナスイメージの固定化につながりかねないなど、同和問題の解決に有効とは言えないこと、大規模な人口移動により、地域や個人を限定した施策の継続が実務上困難になってきていること、こういう理由で同和事業の復活は認めなかったわけであります。  私、先ほど来の議論を聞いていまして、差別はあるんだというお話を繰り返されております。一部残っているのは私も認識しております。しかし、特別対策をやめた理由というのがやはりあるわけですね。特別対策をやめたのは、差別があるにしろ、それを解消していく上で特別対策というやり方は逆行するんだ、これが歴史の到達点だ、そういう認識で政府も特別対策から一般対策へ移行したわけですね。これをやはりこの判決は踏まえているんだと思います。  実際、この内容は、総務省が発表しました二〇〇一年の「今後の同和行政について」、それに基づいて政府が二〇〇二年に終了するわけですが、この認識ともぴったり重なっております。御紹介しますと、特別対策は本来時限的なものであり、これまでの事業の実施によって同和地区を取り巻く状況は大きく変化したこと、特別対策をなお続けていくことは差別解消に必ずしも有効ではない、人口移動が激しい状況の中で、同和地区同和関係者に対象を限定した施策を続けることは実務上困難であること。重なっているわけですね。  門提案者にお聞きしたいんですが、本法案のように国や自治体に特別の施策を求めるということは、これはまさに、こうした政府や裁判所の立場とも相入れないんじゃないかと思うんですけれども、いかがですか。
  32. 宮崎政久

    宮崎(政)議員 御質問ありがとうございます。  まず、きょう資料で先生の方から配付がございましたさいたま地裁の判決、これは裁判でありますので、ちょっと詳細に検討しなければ論評ができるところではありません。しかも、これは、先ほど説明させていただきました、旧三法を失効させたことで不適法ゆえの損害賠償請求というふうな形になっておられるんじゃないかと思います。そうすると、原告適格があるのかとか、さまざまな事情がここにございますし、一つの地裁の判決があったことで全てが語られるというふうに提出者としては考えてはおりません。  手短にやりますので、さらに申し上げますれば、旧三法が行ってきた地域改善対策の事業等一般地区との格差解消社会的基盤において格差解消をつくるという意味で一定の成果を上げているということは、提出者も認めているところであります。ただ、その上で、今回は部落差別解消というところにストレートに焦点を当てて、これが必要であるということで法案提出しているものでありまして、矛盾するものではないと考えております。
  33. 藤野保史

    ○藤野委員 では、改めて門提案者に聞きますが、私の質問は、そうした特別対策のような施策を本法案で新たにつくることは、政府や、この司法の判断、地裁とはいえぴったり重なっているわけです、差別解消に有効ではないんだ、こういう認識と違うんじゃないですかということが質問なんです。  お願いします。
  34. 門博文

    門議員 繰り返しになりますけれども先ほど申し上げましたように、部落差別解消に関するこの法律の中で、施策について、過去にありました旧三法に基づいた、今委員が御指摘されておるような特別措置、特別的な事業を行うということは、提出者の立場からいいますと、本法律根拠として行うことは全く我々は考えておりません。
  35. 藤野保史

    ○藤野委員 質問お答えにならないんですね。やはりこれまでの政府や、行政の到達点と全く違うじゃないか、非常に異質ではないか、そういう質問なんです。これには全くお答えになっていない。  そもそも、この法案に言う部落差別には法律上の定義がない。これは前国会質疑でも繰り返し明確に答弁がありました、定義がないわけですね、部落差別というものの。定義がないもとで、例えば三条で言っている「部落差別解消に関する施策」というのは、それが適切なのかどうかというのはどう判断するのかということなんですね。誰がどういう基準で、定義がないもとで、それが部落差別解消に資すると判断できるのか。これは定義がないわけですから、施策を担当する国や施策を担当する地方公共団体がどうやって判断できるのか。主体的、自主的に判断できないのではないか。だって、定義がないわけですから。  結局それは、相談業務などで言ってくることをやらざるを得なくなってくる。結果として、民間運動団体などが求める施策を実施することイコール、ニアリーイコールで部落差別解消に関する施策であるという傾向、これが助長されることになってしまう。  逆に、ちょっと反対の方から門提案者にお聞きしたいんですが、部落差別の定義がないわけです、ないもとで、行政がある団体からこれは部落差別だと言われて、その解消のためにこれをやってくれと求められたといたします。そうした場合に、行政の方で、いや、それは部落差別という概念に当たりませんよと言って拒否することはできるのか、できるとすればどういう根拠によるのか、お答えください。
  36. 門博文

    門議員 委員指摘のように、今この法律の中では、部落差別という定義、何であるかということについては、法律上、定義規定を置いておりません。私たちは、置かずとも国民に十分理解されると考えておりまして、その意味するところは社会通念上明確であると考えておりまして、あえてこの定義を置いていないということなんですけれども。  今御指摘があったとおり、いろいろなケースでそういうことが想定をされるかと思います。  ただ、前回の国会のときに清水委員とのやりとりの中にもあったと思うんですけれども、例えば、ヘイトスピーチの関係の法律が成立をしましたけれども、そもそもヘイトスピーチというのは今日的なテーマであって、そのことが定義をする必然性があったということであって、この部落差別ということについては、部落出身者であるということを根拠にいろいろな差別が行われてきたということは我々歴史的に認識をしているところでありますので、そのあたりでこの定義ということを置いておりませんので、よろしくお願いいたします。
  37. 藤野保史

    ○藤野委員 いや、法律というのは行政を縛るわけです。国民がわかるかどうかではなくて、行政というのは、この法律にのっとって責務が与えられて、それをやらなきゃいけない。そのときに、その責務内容に関する定義がないわけですね。それを私は問題にしているんです。国民がわかるとかじゃなくて、行政を縛る法律の根幹に当たる定義がないと、そのもとで行政は自主的判断ができないじゃないか、こういう問題を質問しているわけですから、全くお答えになっていないと思うんですね。  行政が自主的に判断できるかどうか、これはあらゆる行政で大事なことでありますし、必要なことなんですが、とりわけこの同和問題については行政の自主性というのは決定的であります。これは過去の歴史が本当に教えている痛苦の経験であります。  ここでちょっと総務省にお聞きしたいんですけれども、総務省、当時総務庁ですが、地域改善対策協議会、地対協と言われるところが繰り返しこの問題を議論して、さまざまな提言や報告を出してこられております。その中で行政の主体性というのを強調されていると思うんですが、例えば、一九八六年十二月十一日の地対協意見具申は、この点についてどのように指摘されていますでしょうか。
  38. 佐伯修司

    佐伯政府参考人 お答えいたします。  委員示し意見具申の「二 地域改善対策の今日的課題」において、「今日、同和地区における実態面の改善に比べて、心理的な差別解消は、不十分な状況にある。」ちょっと飛びまして、「新しい要因の第一は、行政の主体性の欠如である。現在、国及び地方公共団体は、民間運動団体の威圧的な態度に押し切られて、不適切な行政運営を行うという傾向が一部にみられる。」との記述がございます。
  39. 藤野保史

    ○藤野委員 今の指摘なんですね。この同和問題、部落差別問題というのは、とりわけ行政の自主性が必要になる。それは、過去、国及び地方公共団体が民間運動団体の威圧的な態度に押し切られて不適切な行政運営を行うという傾向が見られた、これを反省して、行政の主体性が不可欠だというんですね。  先ほど来、心理的な差別もおっしゃいます。これにとっても、私はこれは非常に関係すると思うんですね。といいますのは、心理的な差別というのは、物理的、実態面の差別と違いまして、やはり要因が変わってくる。  同じ地対協意見具申では、こうも指摘しております。  今日、差別意識の解消を阻害し、また、新たな差別意識を生む様々な新しい要因が存在していることが挙げられる。近代民主主義社会においては、因習的な差別意識は、本来、時の経過とともに薄れゆく性質のものである。実態面の改善や効果的啓発は、その過程を大幅に早めることに貢献する。しかし、新しい要因による新たな意識は、その新しい要因が克服されなければ解消されることは困難である。 と指摘して、新しい意識、その意識というのは差別意識ですが、それを生み出した新しい要因というのは、行政がそういう団体の威圧的な態度に押し切られて不公平な、不適切な行政運営を行ったことによって、国民が何だそれはという意識を持ったということなんですね。これがその指摘なんです。  これは本当に私は大事な指摘だと思うんですが、門提案者、この地対協の意見具申と同じ御認識だということでよろしいですか。
  40. 宮崎政久

    宮崎(政)議員 御質問ありがとうございます。  まず、部落差別ということの定義は、これは行政においても一義的に明確に理解できるものだと提案者としては考えております。部落の出身者であることによって差別差別というのは、不合理に他者と、取り扱いを受けることということでありますので、ですから……(藤野委員「今までと答弁が違いますけれども、いいですか」と呼ぶ)いや、一緒です。部落差別というのはそういう意味で理解ができるものだというふうに考えているということであります。  それと、御提出をさせていただいている法律案のたてつけといたしましては、御質問にあったように、何か、何でもかんでもできるということを考えているわけではありませんで、具体的にやるべき施策を明示させていただいております。第四条では「相談体制充実」、第五条では「教育及び啓発」、第六条では「部落差別実態に係る調査」という形で、理念法にとどめた上で、やるべきものはこれに限るという形で定めることによって対処しようと考えているものであります。  以上です。
  41. 藤野保史

    ○藤野委員 今のはちょっと驚くべき答弁なんですね。部落差別を行政側も理解できる、定義がないのに理解できるとおっしゃるわけですか。それは恣意的な理解ということですか。行政担当者によって理解が変わってくる、そういうことになりませんか。しかも、それを運用の基礎にしていくわけですね。これはちょっと見逃せない答弁なんですが、もう一回お願いします。
  42. 宮崎政久

    宮崎(政)議員 私が申し上げましたのは、部落差別というのは、法律上の定義規定を置かずとも、部落の出身者であることによって差別をされるということで理解ができるということを申し上げたわけであります。
  43. 藤野保史

    ○藤野委員 ですから、その理解というものは、極めて情緒的、主体的、恣意的なものを許してきたというのが歴史です。  定義を置かないことによる問題点というのは、では、ちょっと別の角度からお聞きしたいと思います。次は、門提案者にお聞きしたいと思います。  その前提として、総務省にお聞きしたいんです。  一九八六年八月五日の地対協基本問題検討部会報告書があると思いますが、これはまさに今の定義の問題について指摘をしております。議論になってきたわけであります。この点についてどのように指摘をされていますでしょうか。
  44. 佐伯修司

    佐伯政府参考人 お答えいたします。  委員示し報告書において、行政の主体性と、あと、定義の関係について言及した記述といたしましては、三の3の「行政の主体性の確立と行政運営の適正化」において、   行政機関が、確固たる主体性を堅持して、適正な行政運営を行うべきことは、行政一般に当然求められることであるが、特に地域改善行政においては、この姿勢が貫かれなければ、新たな差別感を行政機関自らが創り出すこととなり、同和問題の解決に逆行する結果となる。行政機関の厳然たる姿勢が基本とされねばならない。しかしながら、現在のところ、一部に、行政としての主体性の欠如から、不適切な行政運営の事例がみられることは、はなはだ遺憾である。 少し飛びまして、  さらに、「対象地域」、「同和関係者」等地域改善行政における基礎的な概念の定義が必ずしも具体的に明らかにされていないことも、行政機関の主体的な意思決定を困難にしている大きな要因である。 との記述がございます。
  45. 藤野保史

    ○藤野委員 今の指摘なんです。もう一回繰り返しますけれども、行政としての主体性が確立されず、不適切な行政運営の実態が見られる原因としては、対象地域同和関係者等、地域改善行政における基本的な概念の定義が必ずしも具体的にされていないことも、行政機関の主体的な意思決定を困難にしている大きな要因である、こういう指摘であります。定義がないということが行政の主体的な意思決定を困難にしている大きな要因という指摘なんです。  門提案者にお聞きしたいんですが、これは同じ認識でよろしいですか。
  46. 門博文

    門議員 今の御質問ですけれども、繰り返しになって恐縮なんですけれども、そもそも、我々、旧三法が論拠となっている事業をこれから、何か、この法律根拠に復活させていこうということは全く今想定をしているわけではありません。  そして、今委員指摘のように、定義の問題も含めてですけれども、私たちは、今、過去において同和対策事業であったり同和対策についてどうあったかということは謙虚に受けとめた上で、先ほどの繰り返しになりますけれども事業をもう一度復活させたいとか、それから先ほどから御指摘いただいておりますけれども、例えば特定の民間団体の主張を我々が聞き及んでこの法律をつくろうということではありませんで、本当に純粋に、現在の部落差別実態を我々政治家として受けとめた上で、とにかく何とか手だてが必要ではないかという思いで、理念法という形でつくらせていただきましたので、委員が今詳細に御質問いただいていることとは少し考え方というか、そもそもの出発点が違う部分があるかもわかりません。
  47. 藤野保史

    ○藤野委員 ここは質問の場ですから、質問に答えていただきたいんですね。考え方の違いは大前提であります。  その上で、過去の歴史から、政府の今までの検討の到達点から、同じ認識なのか、そことは異質なのではないかという質問なんです。もう一回お願いします。
  48. 門博文

    門議員 今御報告されましたペーパーというか、今の資料、私たちはちょっと手元に今持っていないんですけれども、たしか、今、一九八六年の御報告というふうにお伺いをしました。三十年前のその到達点であるということは認識をしております。  私は今五十一歳ですので、三十年前、二十一歳のときには、そのように私も記憶しておりますけれども地域がそれぞれ事業改善をされていって、その前の時代から考えれば、同和地区部落差別というのは非常に軽減されてきたということは事実だと思います。  ただし、繰り返しになりますけれども、三十年たった今このことを考えると、新しい形で部落差別というものが発生をしてきたので、同和事業とか被差別部落に対して何か事業をこの機に起こしていくということではなくて、新しく起こった差別についてどうなのかということを、三十年前も振り返りながら、今改めて提案をさせていただいている次第であります。
  49. 藤野保史

    ○藤野委員 同等な認識という答弁がありました。それだったらこういう法案は出せないと思うんですね。  私は、別に定義があればいいとかそういうことを言っているわけじゃありません。これが復活につながるさまざまな仕組みを抱えているということを指摘しているわけです。そういう構造を持っている法案だということなんです。ですから、それは今までの政府の到達点とも違うし、政府が痛苦の教訓から導き出したさまざまな知恵とも離れたものだという指摘なんですね。  行政が主体性を失うとどうなるか。これは先ほど答弁もいただきましたけれども、普通の行政でも当然求められますが、この問題、とりわけ主体性というのが根本的、決定的な意味を持つわけです。特定の民間団体による圧力に再び屈する、そうなれば、全国各地で大問題になったいわゆる窓口一本化行政、ここにまた道が開かれて、突破口になって、口実になっていく。これは本当に、この法律に内在する、構造的に含まれている大問題だというふうに思うんです。  先ほど紹介した長野県御代田町の茂木町長は、こう言っております。「法案のように、差別の「実態調査」や「施策」をするとなれば、対象を特定しなければなりません。旧身分を掘り起こすということは行政ではだれもできません。私も拒否します。 しかし、「解同」には、自治体に介入する絶好の口実ができます。」  町長ですから、行政の自主性あるいは主体性の重要性というのを誰よりも御存じの方であります。それが本法案の危険性をこう指摘しているというのは非常に重いと思うんですね。  しかも、これは時限法ではなくて恒久法であります、恒久法。単に復活というだけではなくて、固定化、永久化につながる、そういうたてつけにもなっているということですから、本当にもうとんでもない法案だというふうに思うんですね。  次に、第六条の実態調査についてもお聞きをしたいと思うんです。  これも門提案者にお聞きしたいんですが、部落差別の定義がないもとで、何を対象にして、どのような調査を行うんでしょうか。
  50. 門博文

    門議員 第六条の実態調査ということで御質問をいただきました。  これは、さっき、委員の手前の御質問でもあったかと思うんですけれども実態について、地域的に今どういう状態が起こっていてということを過去のところまで掘り返してする調査という意識は、我々、今ここの法律の中に定義したのにはまずありません。  というよりは、むしろ、さっきからテーマになっておりますけれども、三十年前の状態と今と比べて、先ほど我々も指摘させていただいておりますけれどもインターネット環境において非常に差別実態が変わってきたとか、それから、部落地名総鑑なるものをインターネット上で販売しようというような動きが察知されたというようなことを受けて、例えば、ネット環境上で部落差別というものがどのように今取り扱われているとか、そういうことを前提にして差別実態調査したいということで、ここで法案の中に入れさせていただきましたので、先ほどからの繰り返しになりますけれども同和対策事業を前提にしたようなことを全国的に、極めて今のタイミングで、この法律ができ上がったから調査してほしい、していこうというようなことではありません。
  51. 藤野保史

    ○藤野委員 かつて、総務庁も累次にわたって調査を行ってまいりました。ここに持ってきましたのは、平成五年の総務庁の同和地区実態調査、一九九三年であります。意識調査、地区概況調査、そして生活実態調査、かなり詳細に調査をされて、同和地区の世帯数や人口、そのうち同和関係者はどれぐらいか、地区ごとに詳細なデータが示されているわけで、こうした調査をやりますと、当然、今お話があったような、まあ、しないということですが、本当に一つ一つラベリングが必要になってきたりしますし、重大なプライバシー侵害を引き起こさざるを得なくなってくるわけであります。  本法案による実態調査がかつてのような調査にならない保証というのは、条文上どこにあるんでしょうか。
  52. 門博文

    門議員 条文上は、まことにシンプルな条文でありますので、お読みいただくとおりだと思います。  先ほど来繰り返しておりますけれども提案趣旨として申し上げましたように、この調査ということは、あくまでも部落差別解消に関する施策の実施に資するための部落差別実態に係る調査でありまして、今回の施策の中にあります相談体制充実教育及び啓発の実施のために必要な調査を行うものとしておるところであります。  先ほどからのまたこれも繰り返しになりますが、例えばインターネット上にどういうような差別状況があるかということを私たちは改めて、例えば法務省なり、先ほど来あります総務省からその調査をした結果ということを聞いておりませんので、この法律根拠に今後の行政の中で執行官庁がさまざまな検討をしていただけるのではないかなというふうに思っております。
  53. 藤野保史

    ○藤野委員 ですから、かつてのような調査にならない保証は条文上はないわけですね。  今、教育というお話もありました。これは九三年に最後やった調査で、これ以降総務省はやっていないわけですけれども、文科省はその後も実はやっておりまして、いわゆる同和地区の児童生徒だけを対象にして進学状況調査というのを継続しておりました。  総務省も、要するに全体がやめているのに何で文科省だけがやっているんだということが国会でも問題になったわけですが、ここは文科省にお聞きしたいんですけれども、一九九八年の十一月二十四日に、参院の文教・科学委員会でこの点、質疑、やりとりがあったと思うんですが、どのようなやりとりがあって、そして結局、文科省はどう対応したんでしょうか。
  54. 瀧本寛

    瀧本政府参考人 お答え申し上げます。  平成十年十一月二十四日、文教・科学委員会におきましては、委員指摘の高校生の進学状況等についての調査について、その年度、ことしは実施をしているのかといった御質問があり、その時点で調査は実施をしておりませんということを申し上げました。その後、大臣に対して、そのまま続けていってはよろしくないので調査をやめるべきではないかということで、大臣に決意を問う質問があり、当時の有馬文部大臣より、今後の調査の実施につきましては、「各地域における状況等も見きわめながら、この調査の扱いについて検討をさせていただきたい」という答弁があったと承知をしております。
  55. 藤野保史

    ○藤野委員 そういうやりとりがありまして、もうちょっとリアルに御紹介したいんですけれども、我が党の林紀子参議院議員がこういう質問をしているんですね。「学校は生徒に断りなしに一方的に、同和の子、そうではない子と色分けをしなければならない。父母からは、うちの子供に勝手に同和のレッテルを張らないでほしい、これでは旧身分の洗い出しではないかという大変強い怒りの声が沸き起こっております。」、こういう指摘の後、今御答弁いただいたようなやりとりがあって、大臣も「調査の扱いについて検討」という答弁をされました。  実態的には、この調査は、その前の年、九七年に、国民の強い運動、反対の声に、本当にこういうレッテル張りはやめてほしいという父母の運動に押されてもうやめているわけですね。  またこれをお聞きしたいんですけれども、総務省もこういうのをやめております。文科省もちょっとおくれましたけれどもやめました。こういう調査というのはやはりそうした性質のものなんですね。これをなぜまたやろうとするのか。ちょっと御答弁いただきたい。
  56. 門博文

    門議員 まさに調査の御指摘でありますけれども先ほど来申し上げていますように、今の調査の結果につきましては、去る一九九三年、一九九八年の時代のことを今御指摘いただいております。  先ほど来繰り返しておりますけれども、この時点では、一定の同和対策事業ないしはその関連法案の効果があったということでそういう調査も行われてきたんだと思いますけれども、以来、まさに御指摘のとおり、されていない時代がずっと続いておりまして、現在二〇一六年に至っているということであります。  私たちは、個別の地域実態というイメージというか、そういうことでなくて、まさに部落差別実態にかかわる調査部落差別というものがこの現在の日本でどのように行われているのか、もちろんあるなしも含めてかとは思いますけれども、さまざまな状況、その様式が変わっているではないかということを非常に危惧しておりまして、その実態について調査をしていただいて、国全体として部落差別の現在における状況をまず把握したい、共有したいという思いでこの調査をしていただこうということを言っております。
  57. 藤野保史

    ○藤野委員 ですから、現在の状況というものをつかもうとすれば本当にこういう問題が起きざるを得ないわけですよ、こういう性質上。それで、どんな調査になるか限定する保証はないということも先ほど答弁で明らかになりました。  調査というのであれば、私は、この九三年の総務庁調査が果たした役割はやはり大きいと思うんですね。先ほど答弁されているように、一定の効果と言いますが、大きな前進があったわけです、三十三年間にわたって十六兆円の費用が投入されて。そのことが特別対策が不要になるまでつくり出してきた、切り開いてきた、これからは特別対策じゃなくて一般対策でこの問題は対処していこうというその認識の土台になった調査がこれであります。  ですから、調査というのであれば、これを本当に最後の調査にすべきであって、この調査の上に立って私たちは次のステージに進んでいく、進んでいっているという状況であります。本法案は、そういう道筋とは全く逆行する、全く別に向かっていくというものでありますから、これは本当に許すわけにいかないというふうに言わざるを得ないわけです。  そして、さらにこの問題でいいますと、そうした、今まで見てきましたような今までの政府の積み上げ、運動団体の皆さんの血の出るような運動の成果、到達、これとの関係で、この国会での審議というのが果たしてこれでいいのか、このことをお聞きしたいんです。  よく与党の議員の方は、前国会で実質終局している、こうおっしゃいます。しかし、前国会は、我が党のみ、先ほど言いました清水忠史議員でありますが、四十分であります。これのどこが審議なのか。今回は、自民党の皆さん、維新の方もこの後される、それで我が党。そして、九十分ということでありますから、一歩前進だとは思います。しかし、参考人質疑もやられていない、現地調査も行っていない、公聴会もやっていない。  ヘイトスピーチの法案が全会一致で実現をいたしました。こういう本にもなっております。本当に超党派でいろいろな方が思いを述べられていて、読むたびに私も敬意を表するわけですが、このときは参議院でやはり三年にわたって審議が行われ、そして参考人質疑も行い、川崎への現地調査も行いました。翻って今回は、そうした議論が、本当に国民や運動団体の方々を巻き込んだ形で、これだけの重大な問題をどう考えるべきか、そういう質疑が全くやられていないと思うんですね。  今までやりとりさせていただいて、発議者、提案者方々からいろいろなお話をお聞きしました。しかし、この法案がなぜ必要なのか、今までの歴史を踏まえているのか、この点については、率直に言わせていただきますと、全く私には理解ができないし、今までの歴史を踏まえた法案とも思えないわけであります。  逆に言えば、きのう星陵会館で、この法案をつくってほしいという方の集会があったと聞いております。例えばそういう方から直接私もお話を聞いてみたい、きょうの質疑を通じて改めて思いました。そして同時に、やはり、反対、これはもうだめなんだ、今までの到達を崩すものなんだという方の意見もぜひ聞きたいし、聞いていただきたいんです。  配付資料の四を見ていただければと思うんです。  これは、いわゆる人権連に寄せられた生の声でありますが、全部読むとあれですので一枚目を紹介しますと、鳥取県の三十四歳の男性の方であります。「私は被差別部落出身者です。小学生のころから地区進出学習会にも休むことなく通いました。」「私は同和教育を受けていた高校生のころまで自分たち同和地区出身者以外は差別者だと思い込み、心を開ける友達をつくることをしませんでした。それは私の意識の中に、自分とそのほかの人とを分け、自らを孤立化させていくことだけに作用しました。」、心を開ける友達をつくることをしませんでした、こういう思いであります。  そして、次のページには、鳥取県、四十代の男性の声が紹介されております。「解放教育で「おまえらは絶対に結婚できない」「部落外の連中は顔はニコニコしていても心の底では差別している」と教え込まれました。こう教えられた子がどう育つかは想像に難くないと思います。それは、今でも心の傷として残っています。」「この法案は、未来永劫、私たちとその子孫に「部落」の烙印をおすことになります。これは、到底容認できることではありません。いつまで私たちを「部落」に縛り付けるのですか。もう、解放してください。お願いします。」こういう声であります。  これはお三方、全ての提案者にお聞きしたいんですが、この声をどう受けとめられますか。
  58. 門博文

    門議員 今委員がお示しをいただきました、反対の切実な声ということで、同じもの、また類するものを私たちの事務所にもたくさん届けていただいておりまして、私も全て目を通させていただいております。なるほど、そのとおりかと思う部分もたくさんあります。  ただ、さっき委員も御指摘がありましたように、私たちは逆に、今現在の部落差別について心を悩ませておられて、何か法律的なよりどころをつくっていただきたいということにも同時に多く触れさせていただいております。  その中で、自分の政治信条として、私は、後段、今申し上げた方の皆様方の気持ちに寄り添ってこの法律をつくらせていただきたいと思って提案をさせていただいたところであります。
  59. 宮崎政久

    宮崎(政)議員 今御指摘をいただいたさまざまな声、これは大切だと私も思っています。民主主義社会でありますので、さまざまな声を受けて、立法機関として法案提出をさせていただいた上で審議をするということが重要だと思っております。そして、今先生から御紹介があった、縛りつけるようなことがあってもいけないということもまさしくそのとおりだと思っています。  先ほど調査との関係で、過去の調査等も踏まえて、その調査が例えば掘り起こしであったりレッテル張りのようなことになることについての縛りがないではないかという先生からの御指摘をいただきました。  私どもは、そうではないと思っています。つまり、国がやるべき調査というのは、今回提出をさせていただいております法律案の第六条に定める施策なんです。第六条に定める施策というのは、第三条の一項で国がやるべき施策を、四条、五条、六条という形で具体化されているものの一つなわけでありますけれども、第三条一項では、第二条の基本理念にのっとってこの施策をやるべき責務を有するというふうに定めております。  では、第二条の基本理念というところでは何が定められているのかというと、部落差別解消に関する施策は、全ての国民が等しく基本的人権享有するかけがえのない個人として尊重されるものであるとの理念にのっとって、部落差別解消する必要性に対する国民一人一人の理解が深められるように努められることによって、部落差別のない社会を実現することを旨として、行われなければいけないということでありまして、決して、レッテル張りをするような方向でやる、全く真逆の方でやるということは考えていないということは御理解いただきたいと思っています。
  60. 逢坂誠二

    逢坂議員 ただいま藤野委員が御紹介いただいたような声は、私はやはり非常に重く受けとめなければいけないというふうに思っております。片や一方で、まだ部落差別存在しているんだという声、こうした声にもどう応えるのかということも私はあるんだというふうに思っています。  きょうの議論を通して感ずることは、法律の安定性、あるいは法律用語の確実性、そういうことを考えたときに、法令用語に定義があるということは、これは非常に重要な指摘だというふうに私は感じます。  ただ、市町村の現場にいた者の立場からしてみますと、法令用語に定義がある、ない、それは非常に大事な指摘ではありますけれども、現実にさまざまな苦情があったり、お困りになっている方々がいる、そういうところに手を差し伸べなければならないというのも、これは市町村実務の実態だというふうに私は思っています。法律規定があるからやる、規定がないからやらないということは、なかなか市町村の現場では言えないというふうにも思っています。  そういう観点からしますと、今法律については、今、藤野委員からも、あるいは先ほど与党の神谷委員からも一部指摘がございましたけれども、さまざまな課題をどう乗り越えるのかが実際の施行上の鍵になるんだというふうに思っております。そういうことを踏まえた上で、法務委員の先生方に最終的に賛否を御判断賜るというようなことなんだろうな、そう思っております。  以上です。
  61. 藤野保史

    ○藤野委員 時間が参りましたけれども、やはりこうした声は重いというふうに思うんです。今、定義の問題もありましたが、行政一般ではなくて、まさに同和行政における定義の重さというのは全く違うものがあると思うんですね。そのことは歴史が教えております。  ですから、そういう点で、私たちはそこから外れたこの法案というのは絶対に許すわけにはいかない。そうした経緯や関係者の血のにじむような努力を乱暴に無視するような今回の法案を廃案にすることを強く求めて、質問を終わります。
  62. 鈴木淳司

    鈴木委員長 次に、木下智彦君。
  63. 木下智彦

    ○木下委員 日本維新の会、木下智彦でございます。きょうは、質問の機会をいただきまして、ありがとうございます。  一つだけ教えていただきたいんです。  それは、きょう、質疑の中でもさまざまな御意見がありました。繰り返しになる部分があるかと思うんですけれども、この法案、世の中に不要な差別は絶対的になくすべきという思い、これは十二分にやはり理解できるところではあると私は思っているんです。  ただ一方で、部落差別については、現在に至るまで、きょうもお話がありました、差別の撤廃にかかわる過去のいろいろな努力、そういう努力によって、特に若い世代の方々であるとか、地域によってもそうだと思うんですけれども、その存在すら認識をしていない、それが一番いいことだと思うんですけれども、そういうふうなところがやはりもう既に出てきている。  そうはいいながら、逆に、先ほど言われていたかと思うんですけれども、一方では、こういった法案をぜひともつくってほしいという声もある。この声もあるということは、そういった差別がまだ残っている部分もあるんだということだと理解できるんですね。  そういう意味では、やはり、残っていない、もう認識していないというふうな人たち、そういった世代、それから地域に対して、どういったこの法律の適用をしていくのか、どういう形でやっていけば一番いいのかということが、ここが一番大きな問題だと思っているんですけれども、特に運用面、こういった部分でそういった課題に対して何が実際にできるのか、この一つだけ教えていただきたいんです。それについて一言いただけませんでしょうか。
  64. 門博文

    門議員 今、木下委員指摘のように、地域によっていろいろな実態、現実は違うと思います。先ほどから答弁させていただいておりますけれども、その実態をもう一度調査するということも必要だというふうに思っております。  それから、何度もテーマにさせていただいておりますが、例えばインターネットでの部落差別の問題を考えますと、全くもう部落差別も何も存在もしていなくて、そういうことの意識さえなくなっている地域が仮にあったとしたときに、そこに、インターネット上に部落地名総鑑であったりいろいろな情報が、全国というか全世界どこからでも見られます。  そうしたら、部落差別に知識がない、例えば世代間の問題もあると思いますけれども、若い世代の人たちがそれを何らかの形で発見する、そこに到達したときに、一体全体これって何だろうということで地名を見ていく。自分たちの住んでいる地域にはそういうものはない。ただし、例えば、どこかから引っ越してきた人たちがいて、前にどこどこに住んでいましたというような地名が、たまたま探っていったらそういう地域からの引っ越しであったということがわかったとしたら、やはり、先ほど来ありましたように、寝た子を起こしたという議論のところにもこのことは到達していくんではないかというふうに思います。  ですから、どの施策によって具体的に、わざわざ寝た子を起こしたということにならないようにするのかということはともかくとしまして、ただ、今回、法律ということで立法を提案させていただいたわけですので、地域格差というものを意識しつつ、その地域の中での特性、そしてまた全国的に、今言いましたような状況についても考え施策ないしは調査が行われていっていただけたらというふうに思っております。
  65. 木下智彦

    ○木下委員 ありがとうございます。  本当に、この法案、可決されたとしても、適正かつ丁寧な運用をされることを望みます。  そして最後に、やはり思うのは、この法律案が今どうかという問題はあるかもしれません。ただ、近い将来、こんな法律が逆にもう要らない社会、それが一番いい社会だというふうに思っておりますので、その実現に向けて、皆さんも、また私などもたゆまぬ努力をしていきたいと思います。  以上です。ありがとうございます。
  66. 鈴木淳司

    鈴木委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午前十一時三分散会