○難波奨二君
民進党・
新緑風会の難波奨二です。
私は、会派を代表し、ただいま
議題となりました
平成二十八
年度NHK予算案に対し、
反対の
立場から
討論を行います。
冒頭、
放送法に対する
政府の姿勢について、一言申し述べておきます。
高市総務
大臣は過日の
衆議院予算
委員会で、放送
事業者が極端なことをして行政指導をしても全く
改善しない場合、何の対応もしないとは約束できない、違反した場合の罰則
規定も用意されていることで実効性を担保すると考えていると述べ、テレビ局の放送を止める停波の可能性に言及しました。
政府が政治的公平を判断基準として放送
事業に介入できるとしている姿勢や、これまでよりも
大臣の権限を前面に押し出していることは、
放送法第一条における放送を公共の福祉に適合するように規律し、その健全な発達を図るという目的を逸脱するものと考えます。
日本においては、放送局の免許の許認可権限は総務省が持ち、
放送法や電波法の所管もまた総務省にあります。そうであるからこそ、
放送法の運用は抑制的に行うべきであり、放送番組の編集は放送
事業者が自律的に行うべきものでなければなりません。
そもそも、
放送法は、戦時中に放送が国策宣伝機関化した反省を踏まえ、放送局は
政府とは独立した情報を国民・視聴者に提供しなければならないという思想の下に制定されたものです。それゆえ、
放送法第一条において、放送の不偏不党、真実及び自律を保障することによって、放送による表現の自由を
確保することを
規定しているのです。
放送法により設立されたNHKは、国が直接管理経営を行う国営放送ではなく、公共の福祉のために放送を行う公共放送であるとの
認識を強く求めます。
さて、
平成二十六年一月二十五日にNHK会長として籾井現会長が就任されてから二年が
経過いたしました。就任当初からその資質に疑問符が付く言動を繰り返してきた籾井会長の下で、NHKの混迷が続いています。
昨年は、会長のハイヤーの私的利用の問題、報道番組「クローズアップ現代」において事実に基づかない報道が行われたことなどが発覚いたしました。このような
状況もあり、籾井会長の就任以来、
平成二十六
年度及び
平成二十七
年度のNHK予算は
全会一致とはなりませんでした。
にもかかわらず、昨年から本年にかけて、またも信頼を揺るがすような事案が続発をしております。昨年十二月に、NHKの子会社である株式会社NHKアイテックの職員による架空
業務発注及び約二億円に上る多額の着服が発覚いたしました。子会社における不祥事は今に始まったことではなく、
平成二十六年三月には、株式会社NHKビジネスクリエイトにおける架空売上げ計上事件、株式会社NHK出版における架空外注費計上事件が相次いで報じられました。
こうしたことから、
平成二十六年三月には会長直属の機関であるNHK関連団体ガバナンス調査
委員会が設置され、五千六百万円にも及ぶ多額の費用を掛けて調査が行われました。しかし、結果として調査
委員会ではNHKアイテックにおける不正を見付けることができませんでした。
また、驚くべきことに、このガバナンス調査
委員会のほかに、別の監査法人にもほぼ同時期に関連団体の不正について四千九百五十万円で調査依頼が行われていたことが今
国会で新たに明らかになりました。
合計約一億円の費用は、会長のポケットマネーから支出されたわけではありません。NHKの経営は国民・視聴者の
負担する受信料で成り立っており、調査費用も受信料から支出されていることから、結果として一億円の受信料が無駄になったと言えるのです。
NHKは、アイテック不正事案を受けて、NHKグループ経営改革の
方針や構造的な原因究明と再発
防止策を次々と発表していますが、その
内容たるや、なれ合いを排除したグループ各社の規律ある経営の確立、コンプライアンス、不正
防止策の徹底など、至極当たり前のことが並んでいるばかりです。
NHKグループにおいては、これまでの不祥事の反省を踏まえ、数次の改革や制度
改正を行いつつ、コンプライアンスの徹底に努めてきたはずであります。また、子会社に関しては、
平成十三年の特殊法人等整理合理化計画以降、その
在り方の見直しは十分
認識されてきたはずであります。にもかかわらず、会長は、一年後になって明るみに出た四千九百五十万円の内部監査について、役に立っていないことはないなどと答弁しているのです。
さらに、
平成二十七年十二月に、株式会社NHKビジネスクリエイトが東京渋谷のNHK放送センター近隣に所在する土地の取得に対し、経営
委員会に諮らずに優先交渉権を得た後、土地取得を撤回するという事案が発生しました。土地取得に際し優先交渉権を得るためにNHK側が提示した金額は三百五十億円とされ、相場に比べて非常に高い金額となっています。購入資金は元をただせば国民・視聴者の
負担する受信料であり、ここまで高額の資産取得にもかかわらず、価格の精査を含めた検討が不十分であったことは明白であります。
この土地取得計画は、理事会や経営
委員会における
議論の後、撤回されましたが、そのプロセスも非常に不透明です。土地取得に関する
審査が行われた十二月八日の理事会
会議録には非常に短いやり取りしか
掲載されておりません。
続いて開催された経営
委員会は、不動産取引に関わる交渉中の事案であること等を理由に
議論の
内容は非公開とされています。何より、最終的に土地取得計画の撤回が決定されたのは非公式な役員連絡会の場であり、その
議論の
状況は公表されていません。検討
状況が不透明なままの
状態では、国民・視聴者の信頼を得ることができるわけがありません。
ここまで申し述べましたことを鑑みるに、現在のNHK執行部には、国民から受信料を受け取り、公共放送を運営しているという自覚や
責任感が欠如していると言わざるを得ません。実際の
国会での
質疑においても既に公表された事実をなぞるのみで、国民に対する
説明責任を放棄したとしか思えないような対応であります。本日の総務
委員会に至っても、籾井会長から国民と
国会を愚弄するかのような不規則発言が飛び出したことは遺憾の極みです。
本来こういった事態を立て直すべき執行部自らが不祥事を引き起こし、十分な
説明を行わず、それを監督、是正する
立場にあるはずの経営
委員会、監査
委員会による歯止めも掛かっていません。
特に、
平成二十年四月にはNHKのガバナンス強化を盛り込んだ
改正放送法が施行され、経営
委員会の権限がより一層明確化されたにもかかわらず、
国会での
全会一致の
承認が三年連続で崩れてしまったことは、経営
委員会の
在り方にも問題があることを指摘しておきます。
このような
状況にあっても、NHKの優れた放送番組は世界でも第一級の
水準にあります。いまだ誰も見ることのできなかったダイオウイカの雄姿を世界で初めて捉えたのはNHKのクルーでした。この奇跡とも言える成果は十年にも及ぶ取材のたまものであり、世界中から絶賛を受けました。質の高い番組作りは現場の職員の真面目でひたむきな努力のたまものであり、その高い職業意識を支えているのは
放送法の理念にほかならないでしょう。現場の職員には、
政府や執行部の姿勢に左右されることなく、誇りを持って職務に励んでほしいと思います。
全視聴者から受信料を徴収するNHKは不偏不党でなければなりません。NHK執行部が行うことは国民や視聴者への
説明責任を果たすことであり、自己改革はもはや待ったなしなのであります。
我々政治家もまた、生物界最大と言われるダイオウイカのごとき大きな目を持って政治に臨まなければならないことは言うまでもありません。来年こそ国民の理解と納得が得られるNHK予算となりますことを願って、私の
反対討論を終わります。(
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