○小池晃君 日本共産党の小池晃です。
私は、
会派を代表して、
所得税法等の一部を
改正する
法律案について、
安倍総理に
質問します。
一昨年の
消費税増税は、家計と
消費を直撃しました。先週の
予算委員会でも
指摘しましたが、家計
消費支出は、増税直後にとどまらず、二年近くがたった今も低迷しています。私の
質問に対して
総理は、
消費税増税後の家計
消費が予想以上に落ち込み、予想以上に長引いていると述べました。
二年前の
国会で私
たちは、八%への増税は家計
消費に重大な打撃を与え、
経済の悪
循環の引き金を引くことになると警告しました。当時
総理は、一時的な
影響にすぎないと繰り返しましたが、その
見通しが誤っていたことを認めたことになります。
総理はその責任をどう認識しているのでしょうか。
今回、食料品などへの
税率を八%とすることをもって
軽減税率と称しています。しかし、
税率が引き下がるわけではありませんから、せいぜい据置
税率と呼ぶべきものであります。そして、一部の
税率を八%に据え置いたとしても、
消費税率全体を一〇%に引き上げれば
逆進性が強まるのではないかという
予算委員会での私の
質問に、麻生
財務大臣は当然のことだと
答弁しました。
さらに、
公明党の斉藤鉄夫税調会長は、
経済誌のインタビューで、将来
消費税率は一三から一五%、ひょっとすると欧州のように二〇%になっているかもしれない、そのときでも食べ物は八%に据え置かれる、将来この幅は大きくなる、そのときに初めて
軽減税率の意味が出てくると述べています。
財務省の大臣官房審議官も、福井県で、
消費税率一二%の議論になっても身近な
飲食料品は八%のまま、
国民理解はある
程度得られ、引き上げやすくなる、
税率を上げる決断をする政権はやりやすくなるだろうと述べたと地元紙で
報道されています。
与党や財務省幹部の言うように、今回の
軽減税率は
消費税率を一五%や二〇%に引き上げたときに初めて意味が出てくるというのであれば、現時点では意味のないものということになります。
総理も同じ認識でしょうか。今回の
軽減税率の
導入は、一〇%を超える更なる
消費税増税のための準備なのですか。はっきりお答えいただきたい。
消費税にとって価格転嫁の問題は
制度に内在する致命的欠陥です。弱い立場の中小零細事業者は
消費税の価格転嫁ができず、
制度導入以来苦しめられてきました。二年前の
消費税増税の
影響について日本商工
会議所が昨年六月に行ったアンケート
調査でも、売上高一千万円以下の事業者のうち、半数は価格に転嫁できず、四分の一は全く転嫁できなかったと答えています。
このような欠陥の上に、更に中小事業者に追い打ちを掛けるのが
軽減税率の
導入に伴うインボイスの
導入です。膨大な事務
負担が中小事業者に襲いかかります。新たな事務
負担に耐えられず、廃業や倒産に至る事業者が増えることは間違いないという事業者の声に、
総理はどう答えるのでしょうか。
消費税増税は、貧困と格差に追い打ちを掛けるものです。来年四月に再増税を強行するなら、三年間で五%から一〇%へ、総額十三兆円、
国民一人当たり八万一千円、一世帯当たり十八万四千円ものすさまじい
負担増を押し付けることになります。冷え込んだ
消費に取り返しの付かない打撃となることは明らかではありませんか。
総理は、
リーマン・
ショックや
大震災のような
事態でなければ予定どおり増税すると言いますが、既に家計
消費の落ち込みは極めて深刻であり、直ちに増税中止の決断をすべきではありませんか。
総理の明確な
答弁を求めます。
安倍政権は、法人実効
税率を二〇%台に引き下げようとしています。昨年末の与党大綱では、法人課税をより広く
負担を分かち合う構造へと
改革し、稼ぐ力のある
企業等の税
負担を軽減することで
企業に投資や賃上げを促すとされました。しかし、黒字
企業に
減税し、赤字
企業に増税するのは、
税制の
原則である応能
負担を正面から否定するものであります。
安倍政権がこれまで行った
法人税減税の
効果はどうか。この三年間で実効
税率は三七%から三二・一一%に下がりましたが、法人
企業統計によれば、大
企業の給与も
実質では年間九万円減っています。
内部留保は三年間で四十兆円も増えましたが、有形固定
資産は増えるどころか逆に減っています。
二〇一五
年度の上場
企業の配当総額は十兆円を超え、自社株買いは五兆円に上ります。一月からの株価下落を受け、株主還元のための自社株買いはこれから急拡大すると見込まれています。余剰マネーが膨れ上がる一方、実体
経済にも家計にも回っていません。こうした中で、法人
減税に
一体どのような
効果があるのか、お答えをいただきたい。
政府は、法人実効
税率の引下げで
税収が減る分は、課税ベースの拡大、すなわち
租税特別措置などの
見直しで
財源を
確保するとしました。
しかし、今
年度の
税制改正でも聖域とされたのが研究開発
減税です。先日公表された
政府資料によれば、二〇一四
年度の
減税額は六千七百四十六億円、全体の〇・一%にも満たない
資本金百億円超の
企業分が五千四百二十三億円と、全体の八割を占めています。中でも、トヨタ自動車一社に一千八十三億円も
減税されており、たった一社で全体の六分の一を占めています。これらを公正で妥当なものだと
総理は
考えるのでしょうか。
日本経団連の
税制改正の責任者は、昨年三月の専門誌のインタビューで、実効
税率引下げによる
減税と
租特見直しによる増税の
影響を経団連の主要
企業ごとに試算し、差引きで
減税になるよう、少なくとも増税にならないようにしたと述べています。
中堅
企業や
中小企業が外形標準課税の課税強化、
消費税の増税で苦しむ中で、経団連言いなりに
制度設計を進め、
アベノミクスの下で史上最高の利益を上げ続けている大
企業に
減税をばらまく、こうしたやり方のどこに道理があるというのでしょうか。
法人実効
税率引下げは、経団連が従来から求めていたアジア近隣諸国並みの二五%への引下げの要望を
安倍政権が丸のみしたものです。しかし、
法人税引下げ競争に対しては、OECDからも、際限のない
税収の減少と福祉切捨て、庶民増税につながる懸念が
指摘されてきました。これから急速な少子高齢化を迎えるアジア近隣諸国に対し、
減税競争の引き金を引けば、近隣窮乏化策となるのは明らかではありませんか。
アジアに競争と分断をもたらす
法人税引下げ競争を防止する国際協調のためのイニシアチブこそ、日本の果たすべき役割ではありませんか。そのためにも、
法人税減税は中止すべきであります。明確な
答弁を求めます。
格差拡大、貧困の広がりの一方、富裕層には富が一極集中しています。
アベノミクス三年間のこれまでの株価上昇で、含み
資産が百億円以上増えた人が二百人に達しています。
先日、二〇一四年分の申告
所得の
政府統計が公表されました。それによれば、
所得階層別の
所得税負担率は、申告
所得五千万から一億円までの個人で税
負担率が二八・七%となり、それを過ぎると下がり始め、百億円超では一七%となっています。超富裕層ほど税
負担率が低下するという逆転現象は依然として放置されています。これは、株式譲渡益の
所得税率一五%、住民税を含めても二〇%という優遇があるからです。欧米並みの三〇%に引き上げ、格差是正を進めるのは急務の
課題ではないでしょうか。
我が党は、大
企業と富裕層優遇の不公平
税制を改め、
消費税に頼らない税財政の再建策も提案をしております。
アベノミクスによるバブルとトリクルダウンの
政策を中止をし、家計と
中小企業への
支援で内需を拡大し、格差と貧困を是正する
経済政策への抜本的な転換を求めて、
質問を終わります。(
拍手)
〔
内閣総理大臣安倍晋三君
登壇、
拍手〕