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政府参考人(
鈴木俊彦君) 今先生の御
指摘いただきました点でございますけれ
ども、これ、具体的には新規裁定
年金、新たに
年金をおもらい始める方々の所得代替率、これは五〇%を維持しようというのが今の
年金制度の方針、政府の方針でございます。
今御
指摘ございましたのは、そこでそういった形で新規裁定の
年金をもらい始めてずっとお年を取られていく、そうすると、いわゆる専門用語では既裁定
年金ということになりますけれ
ども、いわゆるそういった受給開始後の
年金についてどういうような改定方式を取るか。これは実は、購買力に着目いたしまして、物価の変動に応じて改定する、いわゆる物価スライド方式で既裁定
年金は改定をいたしております。この方式を取りましたのは、平成十二年の改正におきまして、具体的に申しますと、マクロスライドを導入いたしました十六年改正の
一つ前の改正でございますけれ
ども、十二年の改正において、将来世代の保険料負担を過重なものにしない、そして
制度を持続可能にする、そういった観点から導入をされた仕組みでございます。
今先生御
指摘のように、賃金が物価を上回って上昇する、そういった最近の財政
検証で前提にしております経済前提、この経済見通しの前提に立ちますと、今申し上げました
年金受給開始後の
年金額の改定に物価スライド方式を採用いたしておりますので、既に
年金を受給している方の
年金の水準というものは、毎年新たに
年金を受給する方、新規裁定
年金の方の水準と比較した場合に、その比率が今の物価スライドによって徐々に開いていく、これは御
指摘のとおりでございます。
この開いていく比率でございますけれ
ども、平成二十六年の財政
検証で試算した結果によりますと、ケースにもよりますけれ
ども、
年金受給開始後に数十年掛けて大体新規裁定の八割になる。今先生のお示しいただいた図をちょっと拝借いたしますと、例えばでございますけれ
ども、一九七九年度生まれの方が
年金をおもらいになるときに、右のケースEでございますけれ
ども、右の二〇四四年、これは五〇・六%ということで、所得代替率五〇%維持されてございます。そのときに既に既裁定
年金になる方というのは、これを表の上の方にずっと御覧いただきますと、一九五四年度生まれの方四〇・四%ということで、五〇に対して四〇ということで、今私の申し上げました既裁定
年金の新規裁定
年金に対する比率が約八割、こういった形を数十年掛けて徐々に実現していくというような形になっているわけでございます。
そこで、こういった開きが新規裁定と既裁定であっていいのかということでございますけれ
ども、一方で、高齢者の消費、生活を支えるための
年金でございますので、高齢者の消費支出額というものを見てまいりますと、これは家計
調査の結果でございますけれ
ども、年齢が上がるにつれて消費支出額というのは少なくなる傾向にございます。具体的には、八十五歳のときの消費支出額というのは六十五歳のときの消費支出額の大体八割ぐらいでございます。そうすると、この物価スライド方式で
年金を既裁定の方はだんだんと改定をしていきましても、その時々の
年金額というのは結局今申し上げたような消費支出の水準、高齢者の衣食住といいました基礎的な支出をカバーする水準になっているだろうということが言えるのではないかというふうに思っております。
いずれにしましても、こういった物価スライド方式なりマクロ経済スライドを通じまして、きちんと高齢者の生活を保障し、かつ将来の方々の
年金水準がしっかり確保できるような、そういった形で
年金制度を運営していくということで現在の仕組みができているというふうに理解をいたしております。