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2016-02-17 第190回国会 参議院 憲法審査会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成二十八年二月十七日(水曜日)    午後一時五分開会     ─────────────    委員氏名     会 長         柳本 卓治君     幹 事         愛知 治郎君     幹 事         高野光二郎君     幹 事         豊田 俊郎君     幹 事         丸山 和也君     幹 事         金子 洋一君     幹 事         小西 洋之君     幹 事         西田 実仁君     幹 事         仁比 聡平君                 阿達 雅志君                 赤池 誠章君                 石井 正弘君                 石田 昌宏君                 宇都 隆史君                 大沼みずほ君                 木村 義雄君                 北村 経夫君                 小坂 憲次君                 上月 良祐君                 佐藤 正久君                 滝波 宏文君                 堂故  茂君                 中曽根弘文君                 中西 祐介君                 山下 雄平君                 有田 芳生君                 石橋 通宏君                 徳永 エリ君                 那谷屋正義君                 野田 国義君                 福山 哲郎君                 藤末 健三君                 前川 清成君                 牧山ひろえ君                 魚住裕一郎君                佐々木さやか君                 矢倉 克夫君                 吉良よし子君                 江口 克彦君                 清水 貴之君                 田中  茂君                 和田 政宗君                渡辺美知太郎君                 福島みずほ君                 主濱  了君     ─────────────    委員異動  一月四日     辞任         補欠選任      佐藤 正久君    三原じゅん子君      石橋 通宏君     大野 元裕君      金子 洋一君     風間 直樹君      徳永 エリ君     大島九州男君      那谷屋正義君     長浜 博行君      野田 国義君     藤田 幸久君      福山 哲郎君     森本 真治君      清水 貴之君     佐藤 信秋君      福島みずほ君     小野 次郎君  一月六日     辞任         補欠選任      田中  茂君     松田 公太君  二月十六日     辞任         補欠選任      前川 清成君     吉川 沙織君  二月十七日     辞任         補欠選任      大野 元裕君     神本美恵子君      牧山ひろえ君     大塚 耕平君     ─────────────   出席者は左のとおり。     会 長         柳本 卓治君     幹 事                 愛知 治郎君                 高野光二郎君                 豊田 俊郎君                 丸山 和也君                 山下 雄平君                 風間 直樹君                 藤末 健三君                 森本 真治君                 西田 実仁君                 仁比 聡平君     委 員                 阿達 雅志君                 赤池 誠章君                 石井 正弘君                 石田 昌宏君                 宇都 隆史君                 大沼みずほ君                 木村 義雄君                 北村 経夫君                 小坂 憲次君                 上月 良祐君                 佐藤 信秋君                 滝波 宏文君                 堂故  茂君                 中曽根弘文君                 中西 祐介君                三原じゅん子君                 有田 芳生君                 大島九州男君                 大塚 耕平君                 神本美恵子君                 小西 洋之君                 長浜 博行君                 藤田 幸久君                 牧山ひろえ君                 吉川 沙織君                 魚住裕一郎君                佐々木さやか君                 矢倉 克夫君                 吉良よし子君                 小野 次郎君                 松田 公太君                 江口 克彦君                 和田 政宗君                渡辺美知太郎君                 主濱  了君    事務局側        憲法審査会事務        局長       森本 昭夫君    参考人        大東文化大学大        学院法務研究科        教授       浅野 善治君        千葉経済大学特        任教授      荒井 達夫君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○幹事辞任及び補欠選任の件 ○参考人出席要求に関する件 ○日本国憲法及び日本国憲法に密接に関連する基  本法制に関する調査  (「二院制」のうち、参議院衆議院関係(  参議院として重視すべき役割)について)     ─────────────
  2. 柳本卓治

    会長柳本卓治君) ただいまから憲法審査会を開会いたします。  まず、幹事辞任についてお諮りいたします。  小西洋之君から、文書をもって、都合により幹事辞任したい旨の申出がございました。これを許可することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 柳本卓治

    会長柳本卓治君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  この際、幹事補欠選任についてお諮りいたします。  幹事辞任及び委員異動に伴い現在幹事が四名欠員となっておりますので、その補欠選任を行いたいと存じます。  幹事選任につきましては、先例により、会長指名に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 柳本卓治

    会長柳本卓治君) 御異議ないと認めます。  それでは、幹事山下雄平君、風間直樹君、藤末健三君及び森本真治君を指名いたします。  本審査会幹事会申合せにより、会長会長代理指名することとなっております。  金子洋一君の幹事辞任に伴い会長代理欠員となっておりますので、会長といたしましては、会長代理風間直樹君を指名いたします。     ─────────────
  5. 柳本卓治

    会長柳本卓治君) 参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  日本国憲法及び日本国憲法に密接に関連する基本法制に関する調査のうち、「二院制」について必要に応じ参考人出席を求め、その意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 柳本卓治

    会長柳本卓治君) 御異議ないと認めます。  なお、その日時及び人選等につきましては、これを会長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  7. 柳本卓治

    会長柳本卓治君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  8. 柳本卓治

    会長柳本卓治君) 日本国憲法及び日本国憲法に密接に関連する基本法制に関する調査を議題といたします。  本日は、「二院制」のうち、参議院衆議院関係参議院として重視すべき役割)について参考人から意見を聴取いたします。  御出席いただいております参考人は、大東文化大学大学院法務研究科教授浅野善治君及び千葉経済大学特任教授荒井達夫君の二名でございます。  この際、参考人皆様一言御挨拶を申し上げます。  本日は、御多忙のところ本審査会に御出席をいただきまして、誠にありがとうございます。  参考人皆様から忌憚のない御意見を賜り、今後の調査参考にいたしたいと存じますので、よろしくお願いを申し上げます。  議事の進め方でございますが、浅野参考人荒井参考人の順にお一人二十分程度で順次御意見をお述べいただいた後、各委員からの質疑にお答えいただきたいと存じます。  なお、御発言は、質疑、答弁とも着席のままで結構でございます。  それでは、まず浅野参考人にお願いいたします。浅野参考人
  9. 浅野善治

    参考人浅野善治君) 大東文化大学浅野でございます。  本日は、お招きいただきまして誠にありがとうございます。  本日のテーマ「二院制」の参議院衆議院との関係、あるいは参議院として重視すべき役割ということになっておりますが、二院制の検討ということになりますと、通常、諸外国議会との比較を行うというのが一般的でございます。ただ、諸外国と申しましても、連邦制の国もあるわけでして、また、人民が革命により権力を奪い取って人民議会を形成した、そういうような国もあるわけでございます。そういったことからしますと、それぞれの国の歴史的、文化的な背景の中で最も適切な議会が選ばれているということでございまして、まず、我が国比較をするといたしましても、単純に比較をすることはできないんだということについては、これは注意が必要かなというふうに思います。  そういうことですから、二院制を検討するに当たりましても、我が国におけるある意味国づくり意思決定というものがどのような歴史的、文化的な背景、土壌の中で行われてきたかということ、それから、日本人の国民性というものがそれにどういうような影響を与えているのかということ、こういったことをしっかり認識をした上で二院制を検討していく、そういったことが重要ではないかというふうに思っております。  そういうことを前提といたしまして、日本国憲法における統治の機構というものを少し見ていきたいというふうに思います。  我が国議会制が入ってまいりますのは明治になってからということになりますが、明治時代議会というのは、民選議院公選による衆議院というものと、それから、まだ貴族制度がございましたので、勅任制による貴族院というもの、こういう二つの院が対等な権限を持って意思決定をする、こういうような構造に実はなっていたわけでございます。特にその貴族院というものに対して大きな意味合いを持たせている、そういうような議会だったのではないかというふうに思います。  そういう中で、日本が第二次世界大戦で敗戦をいたしまして、それまでの国家体制というものを大きな変革を求められるということになるわけですけれども、その中で、連合国といいますか、アメリカといいますか、から徹底した民主的な国家運営というものが求められてくる、こういう形になるわけでございます。その中で、国民責任を負う公選議員による議会というもの、これを国権の最高機関として位置付ける、そしてまた、議院内閣制を採用する、議会に対して責任を負う政府というものが議会意思決定に従い国家運営をする、こういう姿というものが描かれたわけでございます。  その中で、連合国側からは、そういった議会というものは民選による一院、これで十分であるというように考えたわけですけれども、日本国側としては、そういう明治時代からの流れもありますし、二院制というものを維持しようとしたわけですね。そこの中で勅任制というものができないとすれば、職能代表あるいは地域代表というようなことを入れて、民選議院とは別の第二院というものを設けていこうというようなことを考えていたわけです。  それで、権限についても民選議院よりある程度劣ってもいいから二院制をというような主張をするわけですけれども、結局はそれが認められないという形になるわけです。議会は、それまでのような勅任制によるという議院というものは一切認められない、それから、日本側の主張する職能代表地域代表というものも、これを認めない。二院制ということだとすれば、共に民選議院であるならばという形で現在の形に落ち着いていくということになるわけです。  そういったことからしますと、日本国憲法の中での議会というものについては、共に公選議員により構成される、組織されるところの二院というものがそこで生まれてくるわけです。共に国民選挙によって選出した議員によって組織されるということになりますから、ある意味その民主的な正当性というものは同等だというように考えられるわけです。  そうすると、衆議院参議院権限ということに問題が移りますが、衆議院参議院権限というものをどのように整理をするかということになるかと思います。そうすると、同じように共に公選議員によってある意味民主的な正当性が同等である議院というものをどのように特色付けるかというところになるわけですけれども、そういったことの中で、衆議院優越というようなことが言われたりするわけですが、衆議院参議院、それぞれの特色というものを持たせていくということになるわけです。  ただ、この二つ議院ですけれども、立法については、原則として両議院で可決したときに法律になるというようになっております。ある一定の再議決というものが認められていますが、原則としては参議院議決というものを経ないと法律ができないという形になっておりますし、内閣議会に対して責任を負うということになっておりますが、これも内閣国会に対して連帯して責任を負うということになっておりまして、衆議院参議院共にその責任を負っているということになるわけですから、そういったことからしますと、日本国憲法上の衆議院参議院権限原則として同等と考えているというようにまず考えていいのではないかというふうに思います。これが、共に公選議員で組織をしているということの民主的正当性ということからしましても、衆議院優越ということがよく言われるわけですが、日本国憲法上の衆議院参議院権限原則として同等なんだというようにまず意識をする必要があるんではないかというように思います。  ただ、衆議院優越ということでよく知られているように、一定のものについて衆議院意思が優先するというようなことが認められているわけですが、これは、じゃ、一体どういうことなのかということになりますが、国会というのが二院で構成されているわけですから、当然、ある院ともう一つの院が意思が異なるということが生じてくるわけです。そうした場合に、では、どういう意思国会全体の意思にするのかということは当然ある意味での調整が必要になろうかというように思います。その調整の中で、一定の場合に衆議院意思国会意思とするんだというところで衆議院特色を表しているというのが今の衆議院優越と言われていることではないかというように思います。  それでは、どういう特色衆議院に持たせているかということになるわけですけれども、一言で言うならば、これは内閣との協働ということではないかというように思います。  議院内閣制を取る国会権限として、内閣を組織する内閣総理大臣指名権というものを持っています。ただ、これは衆議院権限ではなく国会指名ということになっております。ですから、もちろん参議院内閣総理大臣指名を行うわけです。  衆議院参議院指名意思が異なった場合、この場合においても、すぐに衆議院意思国会意思とするということではなく、両院協議会を開いて調整をするということを求めているわけです。ですから、そういったことからすると、参議院意思というものも十分含まれて実は国会意思が決まっているんだということになるわけですけれども、調整が付かない場合には衆議院意思国会意思とするというように決めているわけです。憲法規定でも、衆参意思が異なった場合に、衆議院意思によるというような規定をしているわけではなくて、衆議院意思国会意思とするというように決めているわけでして、それはやはり国会指名をしているんだという位置付けを取っているわけです。  ただ、こういうふうに衆参の両議院意思が異なった場合に衆議院意思に従うということにしておりますから、そういう意味では、政権の創設といいましょうか、政権をつくり出すことというものは衆議院意思に必ず従った内閣ができるということになるわけです。ですから、そういったことからすると、内閣意思衆議院と離れた場合ということについては、衆議院内閣不信任議決権というものを認めているということがその裏返しとして出てくるのではないかというように思います。  衆議院不信任議決をした場合について、内閣衆議院解散したとしても、解散後の国会が開かれるときに内閣は総辞職をするということになっておりますから、内閣不信任議決を受けたときというのは内閣は存続することができないということになるわけです。ただ、次の内閣をどういう形で指名をするかといったときに、不信任議決をした衆議院がまた議決をするのか、あるいは衆議院というものに国民意思を問い直して新たな衆議院を構成して内閣総理大臣指名を行わせるかという、そういう選択をするというのが衆議院解散ということの意味付けということになろうかと思います。ですから、そういった意味で、衆議院意思に絶対的に従う政権が創設される、つくり出されるということの中で、衆議院内閣不信任議決権あるいは衆議院解散という制度がそこに認められてくるというように思うわけです。  こういった衆議院特色というものは、衆議院政権をつくり出すというだけではなくて、政権運営していく面にも表れてくると思っております。  それはどういうことかというと、内閣編成権を持つ予算ですね、この予算審議ということについても、両議院意思が異なった場合については衆議院意思が優先をするという形の中で、政権運営についても衆議院協働するという特色を持たせているというように考えるわけです。  内閣が外交上の権限を持っている条約の締結の承認ということについても、予算と同様に、政権運営していくということの協働という形の中で衆議院優越というものが認められていると。これが衆議院特色として表れているところではないかと思います。  さらに、議院内閣制を取っておりますから、法律案というものも、重要法案というのは、現在の状況もそうですが、内閣提出のものというのが中心になるということになるかと思います。そういったことの中で、法律案議決についても、両議院意思が異なった場合については、三分の二という高いハードルを設けておりますけれども、政権協働する衆議院というものを優先させるという意味で再議決というものが認められている、そのように整理ができるのではないかというように思います。  そうしてみますと、衆議院特色というのは、政権との距離感が極めて近いというところ、これが日本の両議院の中の特に衆議院特色といって強く考えられるところではないかと思います。  それでは、じゃ、一方、参議院ですけれども、どのような特色を持っているかということになりますけれども、これも先ほど触れましたように、立法についても参議院議決を必ず必要とするというのが原則ですし、それから、内閣責任ということについても連帯して参議院に対しても責任を負っているということですので、衆議院と同等の権限を持っているということなのですけれども、では、参議院特色は何かということになるわけですが、参議院政権との関係ということからしますと、参議院意思と異なる内閣総理大臣が誕生するということもあり得るということになりますし、内閣の編成する予算ということについても参議院意思と異なる予算が執行されるということもあるわけです。そういったことからしますと、参議院には政権と必ずしも協働するということが期待されていないというのが一つ特色ではないかというように思います。  そうすると、じゃ、参議院特色は何かということになるわけですけれども、やはり継続性安定性というところが参議院の最大の特色ではないかというように思います。  まず、任期ですけれども、六年という非常に長い任期を定めております。それから、改選についても、半数改選ということで、全体を一気に改選するのではなく半数ごと改選するということになりますので、参議院意思というのは、急激に変化をしない、あるいは急激に変化をさせないという、そういう特色があるというように思います。任期六年、半数改選ということになりますから、常に参議院一定意思というものが継続してそこに存在しているということになりますから、衆議院解散した場合についての緊急集会というのも参議院特色と併せて認めているということになるかと思います。  このように考えてみますと、衆議院参議院特色ということから見ますと、政権との距離感というものが大きく異なってくるというのが一番大きな特色ではないかと思います。  それでは、そういう衆議院参議院に対して国会のどういう機能を求めていくか、権能を求めているかということですけれども、衆議院については、やはり政権をつくり出し、政権協働するということを期待をするということになるのかと思います。そういったことの一連の流れの中で国民内閣制というような言葉も出てくるわけですけれども、政権をつくり出し、政権協働する、それにふさわしい多数勢力を形成する議員を選ぶんだ、こういうものが国民期待する衆議院の姿という形になるかと思います。それはまさに与党選択ということになるわけですから、ある意味では与党野党政党中心というような、そういう構図ができ上がってくるという形かと思います。  衆議院選挙制度ということについても、政権交代を可能とする選挙制度、二大政党制というようなことが言われるわけですが、その辺の特色をよく表していることかというように思います。  それでは、参議院に対してどういうものを期待をするかということになるわけですが、先ほどお話しいたしましたように、政権との距離感というものが一定程度あるということになりますと、国民期待というのは、政局に左右されない政策審議がしっかりできる、そういうものに期待をするということになるのではないかというように思います。  そうすると、野党与党というそういう枠組みではなく、衆議院とは異なった、ある意味では国会議員一人一人を中心にした議論というもの、こういうものが国民期待をする、そういうことが出てくるのではないかと思います。  もちろん、政党というものに所属をするということは、ある意味では政治活動、選挙運動ということの一定役割を当然果たしていくわけですけれども、そういう人物を選択するときの政党の所属というのが一つの材料になっているという程度の政党という、そういうものとして人を選んでいくということがまた期待されるのではないかなというように思います。参議院の比例代表選挙における投票の仕方においても、名前を投票することができる、名前を記名することができるということについてもそういった特色が表れているのではないかなというように思います。  そういったことは衆議院参議院議会運営ということの中にもよく表れてくるのではないかと思います。  先ほどお話しいたしましたように、衆議院というのは与党野党という構図になりますので、当然、衆議院運営ということも与党野党という形の中で行われてくる。特に対政府質疑というものが中心にならざるを得ないというふうな形になるかと思います。そこの中で、政府・与党野党が論議を闘わせて、ある意味では次の選挙政権交代を目指すんだと、そういうような議会運営というものが生まれてくるという形になるかと思います。内閣責任追及ということになりましても、内閣の不信任というもの、これが最大の焦点になるというふうな形の議会運営になるということかと思います。  では、一方、参議院運営はということになりますけれども、政権の存続には直接影響しないということがあるわけですから、政権の争いに左右されない運営というものが出てくるのかなというように思います。与党野党という構図ではなくて、政策の適否というものを多角的な意見の中でそれを議論をする、そういう運営というものが望まれる運営ではないのかというふうに思います。そういったことにより長期的、安定的、継続的な政策審議参議院では実現をする、そういうことになるのではないかと思います。内閣責任追及ということも参議院ができるわけですけれども、それはその政権の適否といいますか、その政権に対する批判というよりは個別政策についての内閣責任追及ということが中心になってくるのではないかなというふうに思います。ですから、そういったことからしますと、参議院では対政府質疑というのは必ずしも必要ではないということになりますし、むしろ議員間での自由な討議というものが非常に特色付けることになるのではないかなというように思います。  そういったことを含めまして、参議院期待することということを整理するとしますと、参議院については、政権距離感が異なるということがありますので、衆議院と異なる役割を持つべきだ、これは決して参議院権限を弱めるものということではなく、参議院特色というものをいかに表すかということになるかと思います。特に、対政府質疑ではなく議員間の自由討議による政策討議というものに適しているということが言えるかと思います。  ですから、内閣提出法案の賛否ということではなく、そこに含まれる政策を論議するということがイメージとして出てくるかと思います。内閣提出法案というのは、法案の提出と同時に参議院にも予備審査として法案が送付されます。ですから、そういったことからしますと、衆議院で法案審議をしているものと並行して、その法案に含まれる政策についての議員間の自由討議を行うというような姿というものが参議院期待されるのではないかなというように思います。  予算の審議にしましても、予算全体の議決を行うということになりますと、これはまた衆議院での予算の全体の適否という議論になりますけれども、そういったことではなく、予算の中の個別項目についての適否というものを議論するというのが参議院のふさわしい姿ではないかなというように思います。  そういったことを行うためには、例えば予算審議につきましても、衆議院予算審議をしているときに、前年度の決算について会計検査院から報告を聴取して個別的に検討するということを参議院が行っていくというのが一つの姿としてあるのではないかなというように思います。そういった審議を受けて衆議院から予算が送付されたときに議決をしていくということが非常に意味があることではないかなというように思います。そういった予算の個別項目の審議というものについては、予算が仮に参議院意思と異なった形で執行されたとしても、その執行の事後監督という形の中で十分に生きてくることではないかなというように思います。そういったことの中で、参議院が事後の政策評価を行い、行政統制を行うということの大きな武器になっていくということもそこにあるのではないかなということかと思います。  選挙制度についても、衆議院については政権選択を可能にするような与党野党の枠組みができるような選挙ということになりますが、参議院の方はそういう与党野党ということではなく政策審議ができるようにということになりますから、政党中心というのはある程度やむを得ないとしても、政党内で行われているような様々な多様な意見というものが議会に出てくるような、そういったことが引き出せる選挙制度ということが求められるかなというふうに思います。  そういったことからしますと、やはり同一の選挙区から同一の政党で複数の候補者が出てくるような選挙制度というものが多様な意見を引き出すことの大きなポイントになってくるのかなと思います。ですから、むしろ参議院選挙制度というものは大選挙区制のような制度というものが期待されるのではないかなというふうに思います。  これを安全保障法制を例として少しお話をしたいというふうに思っておりましたが、時間が来ましたので、簡単に申し上げるとすれば、安全保障法制についても、単に安倍政権の批判あるいは政府法案に対する賛否という議論ではなく、安全保障政策ですね、日本はどうやって安全を確保するのかという実質的な議論というものが参議院では展開されるということが期待されるのではないかなというふうに思っております。  時間が来ましたので、いろいろ申し上げましたが、これで私の意見陳述とさせていただきます。  どうもありがとうございました。
  10. 柳本卓治

    会長柳本卓治君) ありがとうございました。  次に、荒井参考人にお願いをいたします。荒井参考人
  11. 荒井達夫

    参考人荒井達夫君) 皆さん、こんにちは。千葉経済大学の荒井でございます。  本日は参考人としてお招きいただき、ありがとうございます。実は私、一年ちょっと前まで本審査会の首席調査員をしておりまして、会長の斜め後ろに座っておりました。今日はよろしくお願いします。  昭和五十八年に人事院に入って給与局と職員局に勤務し、その後、参議院に出向して法制局、労働、総務、行政監視の各委員会の調査室に勤務し、そして憲法審査会事務局を最後に一昨年の十二月末退職しました。この間、一貫して行政の組織、人事の問題に取り組み、官僚機構と行政監視に関わる仕事を数多く担当してまいりました。特に、行政監視委員会では、山下栄一委員長時代に一年間に三十二か所もの行政の現場視察が行われ、常に委員長に同行したことや、末松信介委員長時代に原発事故に関する参考人質疑と検察不祥事に関する最高検察庁視察を、そういう重大事案を担当したことが今でも鮮明な記憶として残っております。  行政監視とは、簡単に言えば公務員の働きぶりを見張ることであり、我が国の官僚機構がどういう状態にあるか、その特徴を知らなければなりません。お手元に配付した資料で、「公務員とは」と「問題の本質は「行政の組織・人事」にある」と図示したものがありますが、それらが私の基本の認識であります。  議院内閣制の下で、いわゆるキャリアシステムを原因とする縦割り行政と天下りが国家行政を大きくゆがめ、官僚機構の自己改善能力を著しく低下させている。各省ごとに一人の事務次官をつくり出すために職員が生涯を懸けて競争するキャリアシステムは、出世意欲という私益追求が不可避的に国家レベルでの反公益となってしまう宿命を持つ人事の仕組みである。もちろん、出世意欲が悪いのではなく、システムに根本的欠陥があるのです。  官僚機構による情報操作のすさまじさは特筆に値します。弱い内閣では官僚による政府の支配となり、強い内閣では官僚は政治家に迎合し、政府との共生を図る。国民に対し直接責任を持たない巨大な権力機構である官僚機構が公共の利益に反する無責任な行政をつくり出してしまう。日本の行政監視のポイントはここにあると私は考えています。  東日本大震災復興予算の流用問題では、十九兆円にも及ぶ復興予算の相当部分が霞が関の主導により被災地とは関係のない事業に使われていることが明らかとなり、国民の激しい怒りを買うこととなりました。ジャーナリストの福場ひとみさんは、その著書「国家のシロアリ 復興予算流用の真相」の中で、組織における働きアリが国家にとってはシロアリと化してしまうのがこの国の現実である、実務者である官僚が政策決定の要を独占していくこの国において、政治家も国民も往々にして事業の存続や拡大のための道具と化してしまうと述べておられます。我が国の行政は歴史的に官僚依存、官僚主導であり、復興予算の流用問題は、それが官僚支配と言えるほどの状況に至っていることを示していると言えます。  お金の問題だけではありません。足利事件や村木厚子さん事件などの冤罪事件では、まさに公務員の働きぶりが問題の核心であり、人権を保障するための行政の組織、人事の在り方を見直す必要から国会の行政統制の在り方が問われています。これこそ参議院の行政監視機能が期待される問題ではないかと私は思います。  そこで、本日のテーマですが、「二院制」のうち、参議院衆議院関係参議院として重視すべき役割)についてということですので、私は、参議院の行政監視機能を中心に、国会の行政統制について自分の意見と経験をお伝えしたいと思います。  実は、この分野、特に参議院の行政監視機能に関しては見るべき学問研究がありません。そもそも行政監視とは何かという基本の議論さえもまともに行われておらず、私は参議院在職中、関係議員の皆さんと勉強しながら、私たちが議論の最先端にいるのだから自分たちで行政監視システムをつくるしかないと力説しておりました。  昨年九月に東京法令出版から「論点 日本の政治」という日本政治の新しいタイプの教科書が発売されまして、その中に、「国政をどうチェックするか—行政の監視」という項目があるのですが、私の論文、「行政監視とは何か」が参考文献として挙げられています。執筆者は駿河台大学の成田憲彦先生ですが、成田先生によりますと、行政監視については国会に関する専門文献でも余りページを割いているものはなく、荒井の論文が行政監視の本質にまで踏み込んで書いていたので参考文献とされたとのお話でした。  行政監視とは何か。私はこう考えています。行政権の行使について国会に対し責任を負っている内閣法律を誠実に執行するという憲法上の義務に違反していないかどうかを国会が常時注意して見ることであると。行政とは法律の執行のことであり、したがって、行政の監視とは法律の執行を監視することであります。また、監視とは、有斐閣の法律用語辞典によれば、特定の人、機関等の行為が義務に違反しないか等について常時注意して見ることと説明されています。さらに、憲法上、内閣は行政権の行使について国会に対し連帯して責任を負っており、その仕事の第一が法律を誠実に執行することと規定されているからであります。  では、行政監視はどういう観点で行うべきか。私は、公共の利益、すなわち全国民に共通する社会一般の利益の実現という観点で行うべきと考えています。憲法は、主権在民の原理に基づき公務員を全体の奉仕者とし、公務員法は、公務員は公共の利益のために勤務しなければならないと規定しているからであります。主権は国民全体にあり、公務員である政府と官僚機構が国民全体の共通利益の実現を目指して働いているかどうか、これが行政監視の基本の観点であると私は考えます。配付資料の「公務員とは」で図示した内容を実現するための国会の活動であると説明してもよいと思います。  なお、このような行政監視の観点に関する私の発想の原点は、哲学者で早稲田大学教授の竹田青嗣氏の思想にあります。その著書、「哲学ってなんだ」で書かれているルソーの社会契約説の解説で、御本人は異端と言われていると言っておられるのですが、私は三十数年に及ぶ公務員としての経験から竹田説が完全に正しいと考えています。  行政監視についてはこのような研究の現状でありますので、特に参議院の行政監視機能については、学者に頼ることなく、参議院議員の皆さんがまさに先生となって、職員とともに理論と制度をつくり上げていってほしいと心から願っております。  それでは、レジュメの説明に入らせていただきます。  「行政統制の視点と論点」というレジュメを御覧ください。  まず、行政統制の視点ですが、国民主権に基づく議院内閣制の下、国会は国権の最高機関として政府と官僚機構が法を誠実に執行するよう見張る立場にあり、良識の府である参議院は、公共の利益、イコール全国民に共通する社会一般の利益の実現を超党派で目指すよう努力すべきである。特に、行政の組織、人事に対する統制問題意識が重要であり、政府と官僚機構をつくる衆議院、それを監視する参議院という新たな視点から国会の行政統制を見直すべきであるということであります。  次に、行政統制の論点ですが、七点挙げております。一、いわゆる政治的美称説の再検討、二、参議院役割、行政監視機能と憲法保障機能の検討、三、参議院憲法保障機能と議会拒否権制度の研究、四、行政監視と予算、決算の審議の在り方の見直し、五、国民主権に基づく新たな行政監視システムの構築、六、国会長期経済推計機関の設置、七、国会同意人事の仕組みの見直し、以上ですが、これらのうちで私が関係議員と詰めた議論をしてきました事項について補足の説明をいたします。  「行政監視と予算・決算の審議の在り方について」というレジュメを御覧ください。  ポイントは、衆参共に予算委員会と決算委員会を統合して新たに財政委員会を創設し、各院に附置する機関として、行政監視調査局を参議院に、会計検査院を衆議院に置くというところにあります。時間の関係で以下、読み上げる形になりますが、お許しください。  一、行政監視は参議院中心という考えを徹底すべきである。理由、行政監視は本質的に政府と官僚機構の活動に対する監視であり、強い第三者的立場が求められるが、政府をつくり出す主体である衆議院には本来ふさわしくない機能と言える。行政監視の中心である行政の組織、人事についての調査には長期間を要するため、議員任期が長く、解散もない参議院が適している。議院内閣制の下で官僚支配が著しい我が国では、とりわけ官僚機構に対する国会の常時監視が必要であり、正常な内閣主導の行政を実現するためにも参議院の行政監視機能の充実強化が望まれる。  二、衆議院予算参議院は決算という考えを徹底すべきでない。理由、予算審議と決算審議は本来一連一体のものとして行われるべきである。衆議院予算参議院は決算を徹底すれば、どちらも中途半端で無責任なものになり、適切な国会の統制は期待できない。衆議院が不十分な決算審議のまま予算審議を行ってよいはずはなく、参議院の決算審議も衆参それぞれの特徴に応じた審議をする前提で内容を考えるべきである。  三、予算委員会と決算委員会を統合して財政委員会を創設すべきである。理由、決算審議の目的は予算審議へのフィードバックであり、予算審議、決算審議のどちらも税金の使い方の議論である。税金がどう使われたのか、今後どう使うのかの議論は連続しており、一連一体のものとして審議しなければ国会によるチェックは有効に機能しない。予算審議は決算の目を持っていないと、省庁割拠主義による予算の争奪戦の黙認になってしまい、公共の利益の実現につながらないことは、復興予算の流用の問題で明らかである。  なお、憲法学者の西修先生はこの指摘を著書「憲法改正の論点」の中で採用されました。国会の実務で生まれた考えが学説として取り入れられたという極めて珍しい例であり、西先生の柔軟な思考に感謝しております。  四、衆参両院の特徴に応じ、衆議院財政委員会では次年度予算に直結する短期的事項に重点を置き、参議院財政委員会では数年度にわたり長期的検討を要する事項、例えば年金制度、特別会計制度等に重点を置いた審議を行うべきである。理由、衆議院議員任期が短く、解散もあり、参議院はその逆である。予算衆議院先議、予算議決に関する衆議院優越制度もある。衆議院において決算の目を持って次年度予算に直結する短期的事項について審議を行うことの重要性は、復興予算の流用の問題で明らかである。年金制度、特別会計制度等は、行政の組織、人事の問題が絡み、数年度にわたる長期的検討を要することから、議員任期が長く解散もない参議院に適している。  五、参議院に行政監視調査局、衆議院に会計検査院を置くべきである。理由、国会の行政統制が弱い最大の原因は、長期継続的に行政の実態調査を行うマンパワーがないことである。  第百七十七回国会、末松信介参議院行政監視委員長は、国民主権に基づく新たな行政監視システムを構築するため、総務省行政評価局の行政評価・監視機能と会計検査院の会計検査機能とを国会に移管し、参議院に行政監視調査局を、衆議院に会計検査院を設置することを提案、中島忠能元人事院総裁がその趣旨に賛同する意見を述べている。これらの機関の中心的機能が行政を統制することであるため、立法府の機関として設置することが適切である。二院制に基づき衆参両院の特徴を反映する仕組みとすることで、各院がその特徴を自覚し、責任を持って国会運営を行うことになるとの考えである。  「行政監視と予算・決算の審議の在り方について」は以上であります。  今日、参議院の「行政監視機能の強化は二院制支持者の共通認識となっていますが、それに対する一つの答えになるのではないかと思います。この案は憲法改正を要しませんので、比較的に速やかな実現が期待できます。また、山下栄一行政監視委員長が力を注がれた行政の現場視察は、その効果の高さから、参議院を挙げて直ちに実施すべきと思います。国会が行政の現場を常に関心を持って見守ることは、現場の職員に良い意味での緊張感をもたらし、法律の誠実な執行の確保に大きく貢献するという効果があります。  ところで、議院内閣制の下、二院制を支持して両院の役割機能の違いを明確化するという考え方の対極に、議院内閣制のまま一院制を採用するという考え方もあると思います。しかし、議院内閣制で一院制の場合、政府と官僚機構をつくる院しかありませんから、強い第三者的立場が求められる行政監視は不可能です。せいぜい上下の位置関係となる行政監督しかあり得ず、これでは官僚支配行政からの脱却は不可能と私は考えています。  一院制を採用するというのであれば、議院内閣制はやめて大統領制にする以外にないと考えます。大統領制であれば選挙国民が行政首長を直接選ぶことになりますので、官僚支配の問題は起きません。この点は、米国在住のロビイストで「ライジング・ジャパン」の著者であるポール室山氏に指摘されて気が付きました。十分な選挙期間を経て行政首長を選ぶ大統領制であれば、候補者と選挙民の双方に民主主義教育の重要な機会を提供することができる、そして、大統領は国民の強い支持の下で行政首長として強いリーダーシップを発揮することが可能であり、官僚人事を完全に掌握するため官僚支配行政は起きる余地がないとのことであり、なるほどと深く納得いたしました。官僚支配行政からの脱却のために大統領制が優れていることは明らかと私は考えています。  参議院在職中、私は、行政監視に関心のある議員の皆さんと長い時間を掛けて議論をしてきました。間違いなく公共の利益の実現を目指す党派を超えた真摯な議論だったと思います。そして、誰が行政監視委員長になるかが決定的に重要でした。特に、山下栄一議員と末松信介議員が行政監視委員長を務められた時代、参議院の行政監視機能に関する調査研究が大きく進展しました。お二人には心から敬意を表します。あの時代がなければ行政監視に関する今日の議論は存在せず、私は今ここにおりませんでした。  公共の利益の実現のために、主権者である国民に代わって国権の最高機関である国会が政府と官僚機構の活動を法の誠実な執行の確保の観点から常時注意して見ること、これが日本国憲法の下での行政監視である、参議院の職員と行政監視委員長との議論の中で作り出された考え方です。このことを確認して、私の意見陳述を終わることにしたいと思います。  御清聴ありがとうございました。
  12. 柳本卓治

    会長柳本卓治君) ありがとうございました。  以上で参考人からの意見の聴取は終わりました。  これより参考人に対する質疑を行います。  本日の質疑は、あらかじめ質疑者を定めずに行います。質疑を希望される方は、お手元に配付した資料のとおり、机上の氏名標を立てていただき、会長指名を受けた後、御発言願います。  一回の質疑時間は答弁及び追加質問を含め八分以内といたします。時間が限られておりますので、質疑、答弁とも簡潔に願います。質疑者におかれましては、参考人の方々の答弁時間を十分に考慮をいただき、時間配分に御留意ください。なお、質疑を終わった方は、氏名標を横にお戻しください。  参考人の方々におかれましては、答弁の際、挙手の上、会長指名を受けた後、御発言を願います。  それでは、質疑のある方は氏名標を立ててください。  赤池誠章君。
  13. 赤池誠章

    赤池誠章君 自由民主党の赤池誠章でございます。  今日は、浅野先生、それから荒井先生、貴重な御意見、御提案ありがとうございました。  まず、浅野先生にお伺いをしたいと思います。  冒頭、現行憲法の制定過程に絡んだ一院制、二院制の議論の御紹介をいただきました。改めて当時、GHQの意向、それに対する日本政府の意向、結果的には日本政府の二院制が採用されていく過程の中でのGHQの狙いとは一体何だったのかを、もう一度確認の意味を込めて御教示いただきたいと思います。
  14. 浅野善治

    参考人浅野善治君) 質問いただきましてありがとうございます。  GHQの狙いということでございますけれども、もうこれはある意味では戦争に負けた国ということになりますので、日本の軍事体制といいますか、これを徹底的に破壊することというのがGHQの狙いだったというふうに思います。そういったことの中で、日本の国政運営の在り方の中で、民主的な流れというものが広がっていないじゃないか、これが主流になっていないじゃないかということの中で、民選議員だけで議会をつくり、その議会中心になって国政運営を行うんだということを狙ったということだと思います。そういった意味からしますと、議会民選のもの一つあれば十分だと、こういう考え方だったと思います。それに対して、日本側というのは、議会について制度改正をする必要は実はないというぐらいに考えているわけでして、そこのところで全く考え方が違ってきたというふうに思います。
  15. 赤池誠章

    赤池誠章君 ありがとうございます。  やはり、先ほど浅野先生御紹介いただきましたけれども、アジアで初めて帝国憲法下で議会を開設をし、苦悶苦闘しながら大正デモクラシーを経て議会制度をどう定着させていくか、そういった先人の努力、日本は民主主義をGHQの占領政策で与えられたわけじゃない、戦前からいろんな課題はあったとしても自らの民主主義を育んできたという、そういった視点の見方、戦争の原因の見方というのが違うのかなというふうに思っておりましたので聞かせていただいた次第ですが、当時の金森徳次郎国務大臣の国会答弁を聞いていても、人間性に根差したときに、人間は完璧ではない、やっぱりどこかで必ず間違いを起こすという中で、慎重にも慎重を期すという、こういった二院制の人間性からくる基本的な概念を述べられていたというふうに感じているんですが、GHQにはそのことがやっぱり理解できなかったという、こういった認識でよろしいでしょうか。
  16. 浅野善治

    参考人浅野善治君) そういった認識もありますけれども、一つは、民選議員というものに対してどれだけ信頼ができるかというところがあったんではないかなというふうに思います。  日本人の国民性ということからしますと、自分たちが意思決定して何かを決めるという国民性よりは、やはりお上といいましょうか、何かそれが決めたもの、それを信頼するかどうかという国民性があるわけでして、民選議員が決めたというだけではやはりそれは十分ではないんじゃないかという中で勅任制議会というものがあったという感じ、それをどう考えたかということだろうかと思いますが。
  17. 赤池誠章

    赤池誠章君 やはり時代を経て、先ほど国民性という御発言もありました、この問題というのは現在でも、現在は大丈夫で過去が駄目じゃなくて、現在においても我々、選挙というものを通じて選ぶときに、有権者、選挙民との関わりの中で、そういう面では民主主義の、民主政治の永遠の課題かなということも改めて感じさせていただいたところでございます。  続きましての質問の中で、衆議院参議院権限の違いという御説明をいただいた中で、端的に衆議院特色参議院特色という違いを御説明をいただきました。その中で、参議院特色というのは、継続性安定性という話なんですが、この中で緊急集会を入れていただいているということでありまして、これは安定性とも絡む話で、現行憲法には、緊急事態になったとき、一旦緩急あるときにどうしたらいいのかということの中でこういった緊急集会規定が置かれているという、そういう面では我々参議院というのは、危機管理の、何かあったときに担う役割もあるのかなということを感じている次第でありますが。  その中で、これはもしもの話なんですが、当然、衆議院解散しているときには我々が緊急集会、でも仮に、参議院の場合は任期制がありますから、例えば通常選挙が行われていても参議院議員参議院議員として戦うと、衆議院の場合は解散をして、もう議員の失職をして前議員としての立場なんですが、仮に、今度の夏の選挙のときに何かあって、そのときダブル選挙だったとしたら、緊急集会を開くときには開けると。でも、任期が目の前に来たときに半数議員が失職した場合、一体このときどうするんだということに対して、こんなことはないから考えなくてもいいという反面、そこを考えたときに、何の規定もないときに、どう我々は対応したらいいのかということに対して、浅野参考人の御意見を頂戴したいと思います。
  18. 浅野善治

    参考人浅野善治君) 参議院というのは改選半数しかやらないということがあるわけでして、絶対的に半数議員というのは残るわけですね。ですから、失職したとしても、その失職した後に半数議員が残っているということの中で、国民の代表の意思というのは必ず出せるということなんですけれども、今の御質問の中で考えなきゃいけないことというのは、それが果たして国民意思として十分なのかどうなのかということはあるのかと思います。  今、日本国憲法で考えている緊急事態といいますか、そういうものというのはその程度のものだということになるわけですけれども、これでいいかどうかということは更にいろいろ議論をしていいんだろうかなというふうに思いますが、参議院というのは、そういう形で最後の最後まで国民意思を代表することができるんだという意味でのその継続性というものが特色になっているんだと、そういうことかと思います。
  19. 赤池誠章

    赤池誠章君 こういった、まあ、たらればの話なんですが、ないにこしたことはないとはいえ、そうなったときにそれをどうすべきだということは、何か今まで国会の中とか、以前の制定過程の中で議論がされたことがあるかどうか。もし、あるなら御紹介をいただきたいと思います。浅野参考人、また荒井参考人にも、もし御承知だったら教えていただきたいと思います。
  20. 浅野善治

    参考人浅野善治君) 緊急なとき一般ということでよろしいとすれば、ちょっと誰かと議論をしたとか何かを見たとかというわけではなくて、一つ考えておかなきゃいけないことは、憲法がどう定めていようが、緊急なときがあって国が倒れる、あるいは国民がその危機にさらされるということがあったときには、政府は何らかの行動を取らなきゃならなくなるということはあるんだと思います。それに対してどう考えておく必要があるのかというのが一つ大きな論点じゃないかなというように思います。  結局、憲法に何にも規定がなくても政府は行動せざるを得ないわけですから、それで、それもやむなしとするか、あるいはそういったことも含めて何らかの形できちんと整理をしておく必要があるのかというところじゃないかと思いますが、やはりそれはそういったことも含めて事前に整理をしておいた方がはるかに望ましいんじゃないかなと私は思っております。
  21. 荒井達夫

    参考人荒井達夫君) 私は、現職中に非常事態と憲法という資料を作っております。なぜ作ったか。先生方からの質問が多かったからなんですね。個人的に作りました。余りにも多かったから。なぜ多かったかというと、やはり東日本大震災の関係でした。  一般的には、特に弁護士さんなんかは検討する必要がないというようなお話もされている人たちも多い。でも私は、政府からの資料とか官僚の皆さんたちの心配とかというのも耳に入ってきていて、今の災害対策基本法なんかの規定で本当にいいのかというようなこともちゃんと考えなきゃいけないなということは感じました。というのは、一度もその緊急政令というのは使われていないとかですね。
  22. 赤池誠章

    赤池誠章君 時間になりましたので最後の質問なんですが、私は、改正する、また改正しなくても、やはり国民的な議論をどう起こしていくか、そのときに憲法や政治に対する教育をどうしていくかということが大変重要な視点だと思って、いつもこの場で発言をさせていただいております。  衆参それぞれ、小中学生が見学会に来たり、これから十八歳選挙権を踏まえて高校の教育をどうするかという議論が起きている中で、長年の衆参それぞれの御経験を踏まえて、いわゆる子供たちに対しての憲法及び政治教育をどうお考えか、浅野参考人、それぞれ、荒井参考人、御高見を聞かせていただきたいと思います。
  23. 浅野善治

    参考人浅野善治君) 国会職員としての経験というよりは、大学に移りましてからいろいろ経験したことを踏まえてということになりますけれども、一番危惧しなきゃいけないことというのは、日本国憲法がどのようにして作られたかということについての実感がないということが一つ大きなポイントがあります。  これは、日本国憲法というのは誰かが作って与えられたものなんだ、それが最良のものとして与えられているんだという意識しかないということなんですね。それが、自分たちが作るんだとかという意識が全くないという、これはやっぱりしっかり教育をして、憲法というのは自分たちが作るものだということをしっかり教育しておく必要があるんじゃないかなと思います。その上で、日本国憲法というのは自分たちがしっかり作った憲法だったのかどうなのか、その内容はともかく、それを一度知っておく必要があるのかな、そういうように思うわけですけれども。
  24. 荒井達夫

    参考人荒井達夫君) 教育の話でいえば、主権在民の徹底ということをきっちりやっていくべきだと私は考えます。それがない限り憲法というのはあり得ない。それを徹底していくのが民主主義の過程であると思いますので、教育の中でというのであれば、第一にそれだと思います。
  25. 赤池誠章

    赤池誠章君 ありがとうございました。
  26. 柳本卓治

    会長柳本卓治君) 風間直樹君。
  27. 風間直樹

    風間直樹君 お二方、今日はありがとうございます。  私からは、荒井参考人にまず二点お尋ねをしたいと思います。  最初は、荒井参考人のレジュメの中で、参議院に行政監視調査局を置く、衆議院に会計検査院を置くべきであると。この理由をもう少し詳細に伺えれば有り難いと思います。  二点目は、キャリアシステムについてであります。キャリアシステムの弊害、例えば天下り、その天下りから生ずる特別会計制度、そしてその特別会計制度を特に参議院においては決算委員会等の審議を通してチェックをすると。こういう弊害が多々喧伝されてきたわけですが、この弊害、特に天下りをなくすにはキャリアシステムのどこをどう改善すべきなのか、この二点について御所見を伺います。
  28. 荒井達夫

    参考人荒井達夫君) 衆参の附置機関として置くという話、これは過去にもいろいろあるんですね。例えば行政監視院構想というのもありますし、それから、総務省の評価局をこっちに持ってくる、参議院に持ってくるというのもありましたし、国会に持ってくるというのも過去にはいろいろあるんですね。  ただ、ここで衆参というふうに、こういうふうに分けたというのは、当時の末松委員長と話をしていたときに、両方とも参議院なんていうようなことは衆議院なんか絶対納得しないよ、あり得ないよと、少なくとも対等しかないという、そういう話がありました。私もなるほどなと思った。それから、お金のことってやっぱり衆議院じゃないの、それから参議院というのは第三者的なんじゃないのというような話をしていく中で、こういう形はどうだろうかというのが生まれてまいりました。これがベストだとかということでもなくて、今の過程ではこういう理屈付けがかなりいいんじゃないかなという、そういう話です。  それから、キャリアシステムの話です。これをなくしていくのにはどうしたらいいか。これは三段階のところでやらなきゃいけないと私は思う。入口です、採用試験の段階。特に総合職と一般職、これは同じ大卒なのに初めから差を付けちゃっている、ここのところに問題があります。それから、出口のところ、ここのところを何とかしなきゃいけない。それから、途中の幹部候補の育成の過程ですね、それをしなきゃいけない。でも、大事なのは、私は出口のところなんだと思うんですね。これ、キャリアシステムというのは一人の事務次官をつくるというところが一番大事なんだと思うんです。そのために必死になってみんな競争する。競争していく過程で、実は国益だ、一般の利益だと言いながら私益になっちゃっている。実は私益なんです。私益の結果、省益、そういうふうになってくる。  だとすると、一人の事務次官じゃなくしてしまえばいい。というのはどういうことかといったら、事務次官はなれない、同じところから事務次官に向かって競争するということをしないことにするということです。要するに、事務次官にしないというのは、一般職じゃなくする、特別職にするということです。そして、特別職にして、公募です。公募にしても、大体その経験のない人なんていうのはできるわけがない。そうするとどうなるかといったら、他省庁で優秀な人が別の省の事務次官になる可能性が出てくる、あるいは民間の人だってそれもあるかもしれない。そうなってくると、役所のキャリアの人たちというのは、ほかの省の事務次官にもなれるかもしれないと、国家的な目が広がってきます。これはかなり効果がある。実際に、終戦直後には事務次官は特別職でした。政治任用でした。それを忘れられています。  以上です。
  29. 風間直樹

    風間直樹君 ありがとうございます。  先ほど行政監視委員会での御経験に触れられましたけれども、村木事件、それから菅家事件、ああいった冤罪が当時は多発しました。そして、同時に原発事故が起きました。あの年の行政監視委員会ではこういった問題を集中的に取り上げたわけですけれども、当時事務方にいらっしゃったお立場から御覧になっていて、何が、ああいった事件を通し、そしてあの委員会の審議を通しての我々にとって最大の教訓だったのか、その点を御教示いただければと思います。
  30. 荒井達夫

    参考人荒井達夫君) 私は、物すごく印象的なことがありました。それは、村木さんの事件で神戸の地検に行ったときの話なんです。夜、先生方から呼び出されまして、ちょっと事務方も来てくれと。嫌だな、何かお酒飲むのに付き合わされるのかななんて言っていたんですけど、行ってみたらとんでもない話。もう超党派で、こんなことはあっちゃいけないんだ、絶対許されないんだと。これは将来の日本が関わっている話だということを真剣に議論された。もう真面目に感動しました、私は。私、公共の利益のためにということをくどくど言っているんですけれども、まさにそれだったんですね。党派なんて何の関係もなかったです。村木さんの事件のときに、ある女性の議員の先生は拘置所に行って、村木さんが入れられていたところで涙流していた。すごかったです。  それからもう一つ、原発のときは、当時は反原発の参考人になってしまいました、全員が。でも、それは議員が超党派で、今まで誰も呼んでいないじゃないか、話聞いていないじゃないか、だから聞かなきゃまずいということで呼ばれました。それは、原発の設置地域の議員の方も本当に心配して、地震が次に起きたらどうするんだろうと、選挙民にもう自分は説明ができない、だから今回はちゃんと聞かなきゃいけないんだと、物すごく真剣だったんですね。このときも完全に党派を超えておりました。私は、行政監視というのはこういうことなんだと思いました。  そのときに、行政を監視するのは何を監視するのか。政治家じゃないんです。政府じゃなくて官僚機構だったんです。官僚機構がきちっと法律を誠実に執行していなかったじゃないかというのがすごく多かった。それを痛感しました。だから、組織と人事ということを中心に今まで考えてまいりました。  以上です。
  31. 風間直樹

    風間直樹君 ありがとうございます。  最後の話は、この参議院に行政監視調査局を置くという御主張につながっているかと思います。  我々も様々な参議院委員会を通して審議を行っていますが、やはりこの行政機構に対する継続的な中長期の監視をどう行うか、この点で最も感じるのは、マンパワーが我々議会に全く足りないということです。この点、今後も議論を深めていきたいと思います。ありがとうございました。
  32. 柳本卓治

    会長柳本卓治君) 西田仁君
  33. 西田実仁

    西田仁君 公明党の西田実仁でございます。  両参考人、大変にお忙しいところありがとうございました。  まず、浅野参考人にお聞きしたいと思いますが、先ほどのお話の中で、参議院期待することという中ですが、政党内の議論が表に出ることが必要で、同一政党から複数の候補者が出得る、もう大選挙区制が望ましいという御趣旨の発言だったかと思います。ただいま現在の中選挙区制を超えて、恐らくブロック内の大選挙区制ということを示唆されているんだと思いますけれども、なぜそれがメリットが大きいのか。いろんな、もちろん課題もあろうかとは思いますけれども、そこをもう少しお話をいただきたいと思います。
  34. 浅野善治

    参考人浅野善治君) いろんな政策を議論するときに、一つの政策に落ち着いていくまでにかなり多様な議論が恐らくあるはずなんですね。恐らく、各政党の中で議論されるときも、いろんな意見が闘わされながら一つ意見に集約されていくということがあるわけでして、そこのところでいろんな意見をお持ちの議員の先生方が、その議論がまた議会の中でも直接出てくるように、言うことが出やすいようにということが一つポイントになるんじゃないかなと思います。  やはり、本来は人物本位ということで人を選んでいけばいいわけですが、あるいは参議院の当初の緑風会のような、そういったことというのは、政党がある程度機能する以上、もうこれは限界がありますので、ある意味政党中心にならざるを得ないとすれば、政党の中で多様な意見が出てくる、政党の中からも多様な意見が出てくる、そういったことの中で、政党が一人の候補者を一選挙区で選んでいくという制度というのは、やはりなかなかそれが出にくいというふうに思うわけでして、そういうことからすると、同一政党の中で同じ選挙区で戦わなきゃいけないという問題が出てくるかもしれませんが、多様な意見が出てくる可能性がかなり高まるんじゃないか、そういうことから、できるだけ候補者の枠が大きいという中で各政党が候補者を出すということだとすれば、多様な意見が出てくるんではないかと、そう考えた次第です。
  35. 西田実仁

    西田仁君 荒井参考人にお聞きしたいと思います。  参議院の行政監視機能を強化すべきという御主張は、もう完全に同意でございまして、我が党はこれまでも行政監視を最も重視してきた政策の一つでございます。  この古い議事録でありますが、昭和四十五年の四月二十八日の参議院内閣委員会で、我が党の先輩でありますが、峯山昭範議員が質問しましたことはその典型でございました。  これは、当時、行政監視の出先であります、現場の監察官と当時は言っておりますけれども、その努力を高く評価するとともに、国の予算の使われ方に関する彼らの大事な報告が地方から中央に上がる中で、この峯山議員の言葉を借りれば、大骨小骨がみんな抜かれて行政監察月報になると、こういう指摘をされておられます。実際、四十年以上も前に、今の総務省でいえば行政評価機能ということになると思いますけれども、これが機能不全に陥り、国会が統制しなければならないという指摘をしているわけでございます。  今日、この参議院の行政監視機能を強化するということを具体化するために、まずその方法をどうするのか。四十年以上前の我が党の議員の質問でありますけれども、それを通して荒井参考人の御意見をお聞きしたいと思います。
  36. 荒井達夫

    参考人荒井達夫君) 今の御指摘は私は物すごく大事な話だと思うんです。  というのは、今の総務省の機能、これ、行政監察というのが昔ありました。それが、今、西田議員がおっしゃった話なんですが、その後に中央省庁改革のときに、政策評価というのがあります、それとくっついた。そうしたら両方とも手薄になっちゃった、はっきり言って。そういう経緯があります。  そして、これは民主党の時代の話ですが、事業仕分けの対象になったんですね。意見としては、もうやめた方がいいんじゃないかというのもあった。もうやめてしまった方がいい、こんなものは無駄だということで。それで、私はそれを聞いて、無駄とまではなあとは思っていたんですけど、そのおっしゃった会議録も見ました。  そうしたら、さすがに考えてしまいました。何十年も前に実は機能していなかったんだと、監察が。末端の人たちが、一生懸命、監察官が調べてきて、それを地方局に上げて、中央に上げて、国会に報告するときは何と下らないものになっている、だから全部出せと。これは国会議員が行政監視をしているんです。大変なことをされたなと思いました。  だから、今ここにいる先生方が同じように考えて行政監視をしていただきたい、視察を行っていただきたいと思いました。そういう意味で非常に重要な話ではないかと考えています。
  37. 西田実仁

    西田仁君 終わります。
  38. 柳本卓治

    会長柳本卓治君) 仁比聡平君。
  39. 仁比聡平

    仁比聡平君 日本共産党の仁比聡平でございます。お二人の参考人、ありがとうございます。  まず、浅野参考人に、参議院の独自性というふうに言われる議論の仕方について、まず御意見を伺いたいと思うんですけれども。  冒頭の意見陳述の中で、特色というふうにあえて言葉を選ばれたのかなというふうに思うんですが、御指摘のあったとおり、衆議院参議院国民代表機関として同等なのであって、参議院の独自性を余りに強調し過ぎて、衆議院との役割分担、機能分担ということになっていくならば、大原則である衆参それぞれの院が最高機関として本来の責務を果たす、今、特に話題になっています国会の民主的統制の問題でも、あるいは予算、決算なんかの問題でも、そうした本来の民主的統制、本来の民主的政治的過程という、そうした在り方が損なわれてしまうのではないか。私は、もう少し言うと参議院国会として堂々と審議を尽くす、国民代表機関として政府を監視する、こうした在り方がとても大事なのではないかと思うんですが、いかがでしょうか。
  40. 浅野善治

    参考人浅野善治君) 独自性ということではなく特色という言い方をしたわけですけれども、衆議院参議院がそれぞれ独立だと言われるわけですけれども、全く独立の国家機関として存在しているわけでは実はないんですね。やっぱり国会という一つの機関の中の両議院ということになるわけですから、衆議院が独自の行動を取るとしても、参議院の行動というものを常に意識をしながら衆議院意思決定がされるということは当然のことでありまして、参議院もまた同様に、参議院意思決定をしていくに当たって衆議院の動きというものを常に意識して決定をしていくというのも、これまた当然のことになるわけですね。  その中で、じゃ、衆議院参議院どう違うかといったときに、先ほどお話しいたしましたように、政権に対してその賛否をということ、これはもう衆議院の方が圧倒的にその特色を持っているということだろうかと思います。ですから、そういった意味で、政権に対する賛否の議論というのは衆議院が尽くせばいいわけですね。これは、そういったことをどんどん尽くしていただくというのもやっぱり衆議院特色なんだろうというように思います。  それとは違って、参議院は、じゃ、どういう形で、その政権の賛否ということ以外に国政の決定ということでどういう役割を果たしていくべきかといったときに、やはりそれはその政権の賛否というよりは、そこにある政策自体の議論をするということに意味があるんじゃないかと。それを堂々として、国権の最高機関としての国会あるいは立法機関としての国会役割としてそれを生かしていく、あるいは行政監視、行政監督、行政統制権の中でそれを生かしていく、それこそが参議院特色じゃないか、そういうふうに思って特色という言葉を使わせていただいたわけです。
  41. 仁比聡平

    仁比聡平君 よく考えたいと思います。  荒井参考人が、先ほど御説明は割愛をされたんですけれども、いわゆる政治的美称説の再検討が必要というふうにテーマを掲げておられて、私が申し上げた問題意識とかみ合うかどうかはちょっと分からないんですが、憲法最高機関性をどう考えるべきなのかという点についてお尋ねしたいと思います。
  42. 荒井達夫

    参考人荒井達夫君) 政治的美称説という言葉自体が私はとても嫌いです、美称だなんという。これはどの学者の方が言われたのかはっきりはしていないみたいなんですが、こんなことを言ったがために国権の最高機関というものがどんどん意識されなくなってしまったんじゃないか。法的な意味合いはないという意味ではそうかもしれませんが、その政治的な意味合いって物すごく重要だということをすごく強烈に主張すべきだっただろう。  そして、今大事なのは、法を誠実に執行するという意味で国権の最高機関というのが大事になっているんじゃないか。それは、法というのは、法律を誠実に執行する、これは憲法に書いていますが、それ以前に憲法を誠実に執行するということです。そのために参議院はできることがあるのではないかというふうに私は思います。そういう意味で、政治的美称説というのを見直すべきではないかと。行政監視を通じて得た経験であります。
  43. 仁比聡平

    仁比聡平君 法とは、王様や独裁者が国民を支配するための道具ではない、個人の尊厳を始めとして憲法原則を貫いていくこと、それが法とそして立法機関、最高機関としての国会役割だと私は思うんですね。  続けて、荒井参考人に、これも私の問題意識とかみ合うかどうかは冒険なのですが、三番目に挙げられた参議院憲法保障機能と議会拒否権制度の研究という点で、委任政令の統制の在り方が問題であると。特に災害対策基本法、特定秘密保護法というふうに挙げておられますが、どんな問題意識でしょうか。
  44. 荒井達夫

    参考人荒井達夫君) これは先ほどちょっとお話ししました。私は非常事態と憲法という資料を作ったんですけど、そのときに感じたのは、現行法が執行されてない、全然執行されてないというのは変だな、東日本大震災でも執行されていなかったのは何でなんだろうと。やっぱり使い勝手が悪いというところがあったんじゃないかと思っていたら、そういうことを言っている政府部内の人たちが確かにおりました。  ただ、それを一生懸命やっていくと、どんどん強い内閣ばかりになっていっちゃう。強い内閣、強い内閣になっていく。だけど、強い内閣には強い国会が対応しなければなりません、権力分立という意味では。それじゃないと民主国家は成り立ちません。そこのことをきっちり考えなきゃいけないというのが、議会拒否権制度を研究しなきゃいけないということです。その場合に、内容としては委任政令の統制というのが非常に重要になってくるだろうと。災害対策基本法もそうですし、ほかの非常事態の規定ももちろんそうなってくると思います。  それから、非常事態に対応するためには、通常時から強い国会であらねばならぬと私は思います。そこのところの研究が必要だと思います。そうでなければ人権保障というのが物すごくおろそかになる。  特に、経済的な自由というのは積極的に制限する必要というのはあるかもしれません、災害のときには。道路を閉鎖したり、自動車を排除したり、場合によっては家を壊してもらって協力してもらうとかということもあるかもしれません。でも、精神的自由、報道の自由とかというものは、これは絶対にやってはいけないんじゃないかというのが私の思いです。それをやってしまったら民主主義国家というのは終わってしまうんじゃないかというような危機感すら感じます。そのためにこの議会拒否権というのは検討されるべきではないかと思います。
  45. 仁比聡平

    仁比聡平君 もう少しお尋ねしたいところですが、時間が参ったようですので。  私、今のようなお話を踏まえても、やはり非常事態法制について憲法を明文改憲する必要は全くないというふうに考えます。  以上です。
  46. 柳本卓治

    会長柳本卓治君) 松田公太君。
  47. 松田公太

    松田公太君 維新・元気会の松田公太です。  浅野先生、荒井先生、本日は大変参考になるお話をありがとうございました。  憲法審査会では、御案内のとおり、今国会二院制がテーマになっているんですね。日本を元気にする会では、参議院の独自性、これを大変重視しておりまして、例えば結成以来、党議拘束を掛けないなどの方針を今まで取ってきたわけです。私が以前所属しておりましたあの政党、残念ながら今はなくなってしまったんですけれども、この左端から実は五人がそこの政党に所属していたわけなんですが、地域主権型道州制、これを是非導入したいということであったり、また効率的な政府を実現するために首相公選制、また一院制、こういったことをずっと提言してきたわけです。  私は、今もその可能性を追求するべきだと考えておりますし、その議論は積極的に行っていきたいと思っているわけですが、ただ、例えば一院制、これを実現しようと考えるのであれば憲法の改正が必要となるわけですし、そう簡単には実現できないだろうということも踏まえて考えると、それまで二院制を継続するということであれば、やはり参議院としての独自性、これをしっかりと見出して実現して、衆議院の今ある意味カーボンコピーというふうに言われてしまっているわけですけれども、そのような状態から脱しないといけないというふうに考えている次第でございます。  私は真剣に、政局の府、数の府である衆議院に対して、参議院は再考の府、良識の府として機能しなくてはいけないというふうに考えております。衆議院では数の力によって可決された法案、こういったものを再度しっかりと審議しまして、食い止めたり、時によっては修正を実現することによって、より良いものにしていくというのが参議院役割だというふうに考えております。  しかし、今は残念ながらその役割が果たされていないような状況でして、衆議院で通ったものがそのまま同じ形で参議院でも通ってしまうという状況が続いているわけですね。  その状況を打破するためには、やはり私は、参議院におきましては、この党議拘束、これを撤廃すべきだというふうに考えております。良識を持って、国民目線に立って、そして少数派の意見もしっかりと熟考した上で、議員一人一人が自分の意思、裁量、責任で判断するということが、党議拘束の下ではできないというふうに考えているんですね。  党議拘束に従って例えば賛成、反対のボタンを押すというのであれば、失礼な言い方かもしれませんが、ロボットでも私はできてしまうと思いますし、また、このような状況下では、一つ一つの法案を本当に議員一人一人が真剣に考えて理解して採決ボタンを押しているのか、それも果たしてそうなのかと疑念を抱いてしまうような状況だというふうに思ってしまいます。  そこで、参考人のお二人にお聞きしたいんですけれども、参議院の独自性、これを追求するために党議拘束を撤廃する、これについてはどのようにお考えでしょうか。
  48. 浅野善治

    参考人浅野善治君) 党議拘束を撤廃するということは、参議院の独自性を出すということには非常に有効だと実は思います。ただ、それができるかどうかだと思うんですね。  やはり、政党の役割というのは、こういう選挙制度を取っている、あるいは民主主義の中での議員選択ということの中で、政党が中心になって一定役割を果たすというのは、これはもうある意味やむを得ないことだと思います。そういうことからする中で、政党がいろいろな政策を決定し、この政策に従った候補者を出していくんだという中で、行動していく中で議員というものが生まれてくる。さらに、国会審議の中でもその政党の意思に従えというようなことを求めていくというのは、ある程度やむを得ないこととして出てくるんじゃないか。もしこれができれば、今、党議拘束というものを外すということができれば、これは画期的にいろんなことが変わってくるわけでしょうけれども、なかなか現実には難しいんじゃないかなと実は思うわけです。  ですから、先ほどお話ししたように、せめて党内の議論が表に出るようにというような形で、同じ政党から複数の候補者が出れば、少なくとももう少し違った議論になるんじゃないか、そういうようなことでお話をさせていただいたわけですけれども、気持ちとしては、党議拘束をなくすということについては非常に有効だと思いますが、果たして、できないのではないかなという、現実的にですね、そういう気持ちを持っているということでございます。
  49. 荒井達夫

    参考人荒井達夫君) 党議拘束をなくすのは、極端なところにいくと党は要らないという話になりかねない、その二律背反なんだと思うんですが、要するに何のためにということなんだと思うんです。それは、何のためにこの参議院があるのかという役割、機能をきちっとして、そしてその理念をはっきりさせれば、じゃ、こういう法案については党議拘束はなくそうやとかいうのが出てくるのかもしれません。  それと、今ずっとお話ししました行政監視という意味では、自然と党議拘束がないような発想になってくるのではないかというのが私の経験でした。選挙制度も同じようなものだと思います。役割、理念、そこから考えないと結局どういう選挙制度がいいのかというのが出てこない、そういうのと同じかなと思います。
  50. 松田公太

    松田公太君 ありがとうございます。  もうちょっと党議拘束についてお聞きしたいと思うんですが、たしか浅野先生ですか、先ほど安保法制について言及があって、去年の。その際に、もうちょっと一人一人が参議院の方で考えることができたら、食い止める役割ができたらというお話だったと思うんですね。まさしく私もそうだというふうに思った。その上での党議拘束を撤廃するべきだというお話だったわけです。ですから、それについてはもう御賛同いただいたということですが、これが多分難しいんじゃないかというお話をされましたが、それはなぜ難しいというふうにお考えなのか、教えていただきたいと思います。
  51. 浅野善治

    参考人浅野善治君) やはり選挙制度というものがあったときに、国民意思をどうやってまとめていくかということがあるわけですね。そうしたときに、政党というものが政党単位でやっぱり政策を打ち出し、あるいは選挙運動、政治活動を行い、そこに国民の支持というものを集めているという状況があるわけですね。ですから、政党というものと国会議員というもの、あるいは議院というものが切り離せない状況になっているということがありますので、やはりその政党の意思に従った活動をということが強く結び付いてくるんじゃないかなというように思います。  特に、選挙によって全ての政策が国民に訴えられるわけではありませんし、それ以後、新しい社会問題がどんどん出てくるわけですから、どういう行動になっていくかというのは分からないわけですけれども、そのときに、政党が決めて、こういう形でいこうよといった場合に、やはり次の選挙でもその政党を中心に政治活動を行う、あるいは選挙運動を行うということになってくるとすれば、やっぱり議員はそれに従っていくという、そういう流れになっていくという形の中で、なかなか現実的には難しいんじゃないかと、そういうふうに考えているということです。
  52. 松田公太

    松田公太君 もっと議論したかったんですが、もう時間ということですので、本日は以上とさせていただきます。  どうもありがとうございました。
  53. 柳本卓治

    会長柳本卓治君) 江口克彦君。
  54. 江口克彦

    江口克彦君 おおさか維新の会の江口でございます。  今日は、お二人、先生方、非常にいい、内容のあるというか、貴重な御意見をいただきまして、お話をいただきまして、心からお礼を申し上げます。本当にありがとうございました。  順々にちょっとお尋ねしたいんですけれども、まず浅野参考人に、連合国民選議員による一院制を主張したというか、それに対して日本の方が二院制ということで、これは衆議院貴族院という、その関係でそういうことになった、そういうことを言ったのかもしれませんけれども、連合国側が一院制を言ったのは、日本の民度が低いというふうに考えたからじゃないかというふうにさっきおっしゃったんじゃないかというふうに思うんですけど、その点、そういうふうにおっしゃったのかどうかもう一度確認したいということと、もし、民度が低いということよりも、私は、日本を弱体化させるために一院制というものを言い出したんじゃないかというふうな、そういう印象を持っておるんですけれども、いかがでしょうか。
  55. 浅野善治

    参考人浅野善治君) 決して、民度が低いということよりは、やはり日本人の国民性ということがあったんじゃないかなというふうに思います。  というのは、自分たちが意思を出し合ってある政策を決定してそれを実行していく、そういうような実は歴史的な、あるいは文化的な風土があるわけじゃなくて、やはり日本人というのはお上が決定することがいいか悪いか、どういう決定がいいのか悪いのか、そういったことを信頼するかしないかということ、それを信頼するかしないかを選んでいく、そういう意識の中で社会が運営されているというところがあったんだろうと思います。  ですから、そういう意味からすると、明治憲法下の民主的な議会と、それから勅任制貴族院というのでバランスを取って国政を行っていくというのも、ある意味では日本人の知恵だったのかなというふうに思うわけですけれども、そういったことに対して、やはり、もっと国民決定して、全て国民決定に従って動くべきだという、そういう民主主義感というものがそこに出てきて、それが連合国側の強い意識だったんじゃないかなというふうに思います。  特に、アメリカというのは二院制を取っているといいましても、連邦制の国ですから、民意を集約するというのは下院の行動だけだ、これで十分だという考え方があるわけですね。ですから、日本連邦制の国でもないんだから、そんな民意を集約する議会なんというのは一つでいいんだと、こういう考え方だったんじゃないかなというように思います。  ですから、そういう意味からすれば、日本の風土を変えていくということがあったんだろうと思いますから、それを弱体化というのであれば弱体化ということになるのかなというふうにも思います。
  56. 江口克彦

    江口克彦君 ありがとうございました。  先ほどから党議拘束を外すという話が行われていますけれども、先ほどの先生のいろいろな御説明の中で、例えば参議院というのは政権に左右されない運営が望まれるとか、あるいはまた、与野党ではなく国会議員として期待されるというふうなことを言われました。さらに、個別政策の議論をすべきであるというようなことをいろいろと言われましたけれども、これはまさに党議拘束を外すということでないとなかなか実現難しいんじゃないかというふうに思うと同時に、私は、さらに、参議院から政務官とか副大臣とか大臣、総理大臣を出すべきではないと、純粋に政策検討機関として位置付けて、見識のある、まさに良識の府として参議院というものを捉えるべきだというふうに思うんですけれども、浅野先生、いかがでございましょうか。
  57. 浅野善治

    参考人浅野善治君) 基本的にはその考え方に全く同感というふうに思うわけですけれども、ただ、やはり政治活動とか選挙運動というのが政党中心に行われているということがあるとすると、やはり党議拘束を外すといっても限界があるんじゃないかなと実は思うわけですね。ですから、党議拘束を外すのは理念的にいいとしても、どこまでできるかという議論があるのかなと思います。  そういう意味では、現実的にある程度の党議拘束が出てくるとしてもそれはやむを得ないのかなと思ったりもするわけですけれども、例えば安全保障法制についても恐らく政党の中ではいろんな意見があったんだろうと思いますね。ですから、それが一つ意見で、政府法案に対して賛成だという意見だけということはまずあり得ないわけですよね。  それで、じゃ、衆議院がそういうことができるかといったら、やはりそれは政権を支えているということがありますから、政府法案に対する反対意見というものを出して議論するというのは、なかなか与党がそういうことをやるというのはできにくいわけですよね。そういったことを参議院ができればいいなということになるわけですけれども。  ですから、そういうことからすれば、参議院の中の会派というものが政党とどのぐらい結び付きが強くなるのかならないのか、あるいは衆議院与党と結び付きがどれだけ強くなるのかというところにも問題があるのかなと、そんな感じがいたします。
  58. 江口克彦

    江口克彦君 先生の最初お話しいただいた、御説明いただいたことを実現するためには、じゃ、どうしたらいいのか、どういう方法があるのかということについてはまた改めて場所を変えてお尋ねしたいというふうに思っています。  荒井先生に御質問させていただきたいんですけれども、荒井先生のおっしゃることは、私、実感として痛感しました。私も三年ほど前、たしか、行政監視委員会の委員長をやりましたから、もう本当に行政監視委員会そのものが開けないんですよ。それは、私は旧みんなの党にいたわけですけれども、巨大政党が、二大政党がもう開かせてくれないんですね。いろいろと開かせてくれない。私の前の委員会は一年の間に一回も開いていないんですよ、私のときには強引に三回開いてもらいましたけれどもね。  そういうようなことで、これはいろんな問題点を含んでいると思いますけれども、私は、参議院の政党自体に見識のない問題点があるんじゃないかというふうに思うんです。まさに参議院は行政監視をするということに特化すべきであるとすら思っていたんですけれども、そういうことに対して御苦労はあったんでしょうか。
  59. 荒井達夫

    参考人荒井達夫君) 今、江口議員が言われた、全く同じです、私は。結局、この参議院で行政監視をきっちりやらないということは、官僚機構が野方図になるだけです。それで、それは、今与党だけれども、与党議員の皆さんにも不幸な結果になるということです。なぜならば、情報が上がらないんです、ちゃんとした。要するに、耳触りのよい話しか上げない。だけど、国政というのは、本当に最前線では困っている人たちがいて、そういうちっちゃいものは物すごい大事な話もあるかもしれない。そういうものも都合悪いから上げるのをやめようよということになっていって、結局のところ、それによって情報コントロールがされるということなんですね。強い内閣だったら強い内閣に応じた対応をするだけです。そういうところをよくよく理解しないと駄目だと思うんですね。  それで、これは末松信介委員長が、その当時、私と話しているとき、もう本当に記憶に鮮明にあるんですけれども、彼らは形状記憶合金なんだよなと言われたんです。その形状記憶合金説というのを私はずっと言い続けています。結局のところ、都合の悪いというときには、はいはいと言って聞くけれども、後で全然忘れてしまう。それはもう構造として官僚機構というのはそういうふうに動かざるを得ない。一人一人は物すごく真面目な、しっかりした、勉強してきた人たちなんだけれども、それが全体になるととんでもない動きをしてしまうというのが今の日本の官僚機構で、それがなぜそういうふうになっちゃうのかということをよくよく考えて議会が対応していかなきゃいけないということだと思います。そのためには公共の利益というのをよく考えて、超党派で対応するということだと思います。
  60. 江口克彦

    江口克彦君 各政党の自覚が必要だというふうに私は理解しましたが、よろしいですね。
  61. 荒井達夫

    参考人荒井達夫君) はい。
  62. 江口克彦

    江口克彦君 どうもありがとうございました。
  63. 柳本卓治

    会長柳本卓治君) 和田政宗君。
  64. 和田政宗

    和田政宗君 日本和田政宗です。  まず、一院制、二院制、現行憲法下のことについてお聞きをしたいというふうに思いますけれども。  GHQ原案では、先ほど浅野先生がおっしゃったとおり一院制であった。これに対して政府が二院制ということで、現行憲法下では二院制になったわけですけれども、そもそもGHQ原案が英文であったこともありまして、現在でも七条四項に天皇陛下の国事行為で「国会議員の総選挙の施行を公示すること。」ということで、まあこれは様々な議論がありますけれども、誤植として残っているんじゃないかというような意見もあるわけでございます。  これに関連して、やはり二院制だということで現行憲法はなっているわけでありますけれども、過去の歴史にもしっかり学ばなくてはならないというふうに私は思っております。  そこで、参考人お二方にお聞きをしたいんですけれども、戦前の勅任制における貴族院ですけれども、これが効果を発揮した部分、さらには不十分な部分というのはどういったところであったとお考えでしょうか。よろしくお願いいたします。
  65. 浅野善治

    参考人浅野善治君) 戦前の体制についてどう考えるかということがあるわけですけれども、戦争に向かっていく、ある意味軍部が暴走しているという状況というのは、やっぱりこれはかなり異質な状況だと思いますが、そういうことではなくて、やはり明治憲法下の議会制がきちんと機能しているような状況での貴族院というものがどういう役割を果たしているかということでしょうけれども、やはり民選議員というもので意見を言うといったときに、果たして国民の中にある議論が適切にそこに反映されてきちんとした議論ができているかどうかという意味での信頼ということで、日本国民というのがどれほどそれを信頼を持って見たかというのが一つあるんだろうというふうに思います。  そういう形の中で、例えば民主的な決定といいましても、かなり大きなぶれがあったりとか、そういったときに、しっかりしたある意味での信頼できる人たちがきちんとそれをチェックしてくれた方がいいんじゃないかというような意識というのが多分あったんだろうというふうに思います。そういう形の中で、その信頼できる人間に足りる人間が貴族院としてそこにチェックを掛けていたという、そういう状況が多分あったんだろうと、そういう機能じゃないかなというふうに思います。それを全体としてバランスが取れていたというのがある意味での明治議会制の見方ということになるのかなという感じがいたします。  そういったことの中で、連合国が一院制という形の中で、日本の政府側としては二院制を残したいということですから、そういう意味でのその辺の機能というものをある程度持続をさせたかったのかなという意識があったのかなと、そんな感じがいたします。
  66. 荒井達夫

    参考人荒井達夫君) 私は戦前の制度については全く詳しくありませんので、これはただの印象ということで聞いていただきたいんですが、今は主権在民に立脚した議論をしないとまずいと思うんですね。ですから、二院制についても、主権在民に基づく議会、主権在民に基づく内閣、その下で今どういうことが起きているのかなというふうに発想していかないと将来につながる議論にならないのかなと思いました。
  67. 和田政宗

    和田政宗君 ありがとうございます。  それをまずお聞きしましたのは、次の質問にもかかってくるんですけれども、参議院はともすると衆議院のカーボンコピーだというような批判を受けるわけですけれども、私は、そうであってはならないというふうに思っております。  例えば考え方として、これは意見一つであるというふうに思うんですけれども、衆議院国民選挙によって選び、参議院は地方代表というような形での、例えば首長が参加をするというような考え方もあろうというふうに思うんですが、いわゆる衆議院参議院とも、外国ですと下院、上院になるわけですが、選挙による投票によって選ぶということを考えた場合に、日本は、今、参議院の定数是正の問題もありますけれども、これは地方の議員枠というものがどんどん減らされていってしまう、そういったところがあるというふうに思っております。  これは、現行憲法下で一票の平等ということになりますればそのような形になってしまうわけでありまして、私は、それを考えた場合に、アメリカ上院というものが、各州の代表で、人口が多い少ないにかかわらず二名ずつ選ぶというような制度であるというふうに思っております。私は、こういった制度日本において導入されてもいいのではないかというような論者でありますけれども、この辺りについて両参考人にお伺いできたらと思います。
  68. 浅野善治

    参考人浅野善治君) 今のお話ですけれども、例えばアメリカのように地方から一定の人数を出すということで、均等に割り振ってですね、それをもう一つの院の議員にするということがあるわけですけれども、そういう代表の出し方は、国民がそれを信頼できるかどうかということで決定すべきだというように思います。  ということはどういうことなのかというと、国民が自らの意思憲法を改正してそういう議院をつくりたいというふうに思って、国民はそういう院を信頼して任せるんだということを決めるんであれば、それはそれで全然構わないんだろうというように思います。国民がどういうものを信頼して任せることができるかということですから、それはまさに政治が決定するといいますか、国民自らが決定すればいいことで、それは法理的にどうでなければいけないんだというふうに決まるものではないというように思います。  それから、あともう一つは、今のような議院内閣制という形を取っている中で一院制ということをしますと、必ずその政権与党野党の対立ということから離れることはできないというように思います。ですから、そこのところを一院制ということで残した場合に、政権与党野党、ですから、政権に対する賛否という議論が中心になってしまうような議論だけでいいのかどうかというものというのはやっぱり考えてみる必要はあるんじゃないかなと、そんなことを思いますが。
  69. 荒井達夫

    参考人荒井達夫君) 選挙制度、それをどういうふうにするか、これは私は大統領制を取るのか議院内閣制を取るのか、それでその下で二院制にするのか一院制にするのかといういろんなバリエーションで全然変わってきちゃうと思うんですけど、何でそれをやらなきゃいけないのか、どうしてそういう議論をしなきゃいけないのか、今現状をどう見るのかということから始めないと駄目なんだと思うんですね。  それで、私、初めに陳述の中で言ったのは、一院制で議院内閣制を取っちゃったときにどうなるか、官僚支配というのは脱却できませんよと言ったんですけど、むしろもっと考えていまして、議会まで支配されるんじゃないかなと思っています、議院内閣制で一院制だったら、官僚にですね、日本の場合は。そのぐらい危険性があって、そうじゃないと、自分たちがよほどしっかりしないととんでもない方向に行ってしまうような気がいたします。
  70. 和田政宗

    和田政宗君 ありがとうございます。時間ですので終わります。
  71. 柳本卓治

  72. 渡辺美知太郎

    渡辺美知太郎君 無所属の渡辺美知太郎です。  浅野善治先生、荒井達夫先生、本日はお忙しい中、お時間いただきまして、本当にありがとうございました。浅野先生からは政策討議についてのお話、荒井先生からは行政監視としての参議院のお話をいただきました。  私は、参議院議員の一員として参議院の存続について強い危機感を持っております。  これからお話しする例え話は昨年も紹介をさせていただいたお話ではあります。ある経済誌で二〇二〇年までになくなる職業という特集がございまして、これは、テクノロジーの進歩などでレジ係やプログラマー、通訳といった職業がなくなる可能性があるといった特集でして、その中に参議院議員というのも含まれておりました。理由としては、財政再建のめども立たない中、衆議院のカーボンコピーと言われている参議院に対して国民からの理解が得られず、参議院はなくなる可能性があると書かれておりました。もちろんこれは半分は冗談だと思っておりますが、現在、残念ながら多くの国民の方から見ると、衆議院参議院の違いはほとんど御理解いただけていないのかなと思っております。  この問題につきましては、もちろん私ども参議院議員がしっかりと議論をする必要があると思っておりますが、一方で、法改正などで明確に定義をする可能性も出てくるのかなと。内面は我々参議院がしっかり議論をして、外形的にも衆議院参議院役割を位置付けてくる可能性も出てくるのかなと思っております。  また、先ほど和田先生もおっしゃっていました昨年の公選法の改正で、合区の問題がありました。憲法の問題もあるので一概には言えませんが、単純に人口割りで選挙区を決めていくと都市部の議員ばかり増えて、本当に政治の力が必要とされている地方の声を酌み取れなくなってしまうのではないかという心配があり、そこで参議院は、他国の上院のような人口割りではなくて、地域で最低何人かは必ず置くといった地域代表としての特色を出すべきではないかという議論もありました。私も地元が地方なので、この意見については完全に否定できるものではないと思っています。  そこで、両先生方に二つ質問があります。  一つ目は、参議院特色を出すために、法改正の議論となった際に、今言われている安全保障や緊急事態条項、環境権といった議論はおいておいて、あくまでも衆議院参議院役割の話の中で憲法改正、これは先ほど申し上げました地域代表にも通ずるものがあると思うんですが、衆議院参議院役割の範囲の中で議論をする際に、憲法改正に踏み込むことは好ましいことか好ましくないことか、御意見をいただければなと思っております。  二つ目は、先ほども和田先生からの御質問がありましたが、地域代表としての参議院の在り方について、先ほど先生方の御意見をいただきましたが、もし追加することがあれば、是非御意見を賜りたいなと思っております。よろしくお願いします。
  73. 浅野善治

    参考人浅野善治君) まず、憲法改正の議論に踏み込むことがいいのかどうなのかということがありますけれども、そこで一つ考えておかなきゃいけないことというのは、憲法改正というのは極めてハードルが高いということですね。ですから、憲法改正をやればいいんじゃないかといって法律改正をする、憲法というのは憲法制度内での改正と同じようなレベルでそれが考えられるかというと、そういったことはまずできないわけですよね。ですから、そういったことからすると、実現のしやすさからいえば、当然今の憲法の枠内でやれることをやってみるというのがまず選択されることだろうというように思います。  もちろん、それで駄目ならば憲法改正ということになるわけですけれども、それは駄目なんだという意識が国民のかなり広い範囲に広まっていけば、当然憲法を改正してでもそれをやるべきだという流れになっていくんだろうというふうに思いますから、まずは今の憲法の範囲の中でやれることをやってみるということが必要なんじゃないかなという感じがいたします。  それから、二点目は何でしたっけ、済みません。
  74. 渡辺美知太郎

    渡辺美知太郎君 地域代表としての在り方です。
  75. 浅野善治

    参考人浅野善治君) 地域代表ということですけれども、そもそも、一票格差の問題というのは出てくるわけですけれども、選挙権の重みとかということがあったとして、選挙権というのは、その選挙権を行使して国政をどうつくり上げていくかということですから、本来、国民がどういうものを望んでいるかというところに一番大きなポイントがあるはずなんですね。ですから、そういったことの中で、法理で一人一票の実質的重みが均等になるようにということが絶対的な価値としてあるのかといったら、そんなことは全然ないんだろうというふうに思います。  ですから、そういった意味の中では、その幅というのも政治の中である程度自由に決定できていいはずなんですね。ですけれども、それがうまく機能していないとすれば、裁判所とかああいう形で乗り出してこなきゃいけないという形になるんだと思いますので、それはやっぱり国民がどういうものを選択するかということの中で、地域の意見をもっとどんどん反映されるべきだということであるんだとすれば、それをどんどんやっていくというのも一つの方法なんじゃないかなと思います。  ただ、最高裁判所がああいう形で判断をするとすれば、それを破っていくとすれば、やっぱり憲法を改正して憲法の中に書いてしまうということがあるとすれば、最高裁判所も憲法に従った判断しかできないわけですから、正義に従って判断するというわけではありませんので、憲法に従ってそれを、適否を判断するということになりますから、憲法にそれが書いてあればそれがまず優先される、そういう形になると思います。
  76. 荒井達夫

    参考人荒井達夫君) 今日の陳述は、私は憲法改正なくてもできるという話をいたしました。ですから行政監視機能を中心にと。それで予算、決算をはっきり分けるとか、そういうのはできると思うんですね。ただ、そうやったときに、じゃ、地域代表とどういう関係あるのという話になっちゃって、これはちょっと難しいなと。関係ないですとしか言いようがないんですね、これは。それしか言いようがない。  ただ、じゃ、根本的に今指摘してきたこと、官僚支配行政からの脱却という、それはもう大統領制を取ればすっきりしてしまうという指摘があって、私はそれはそのとおりだなと思っているんです。それを取ったときに地域代表というのがしっかり考えられるようになるだろうと思います。  そういうふうに分けて整理していかないと、話がぐちゃぐちゃになっちゃうのかなと。憲法審査会事務局にも私おりましたけれども、みんなで話していると何だか分からなくなっちゃって、よくしていました。経験からすると、そんなところです。
  77. 渡辺美知太郎

    渡辺美知太郎君 時間になりましたので、私の質問は以上で終わりたいと思います。  今日は本当にありがとうございました。
  78. 柳本卓治

    会長柳本卓治君) 主濱了君。
  79. 主濱了

    ○主濱了君 生活の主濱了でございます。  参考人のお二人には、本当に貴重な御意見、ありがとうございました。私からも御礼を申し上げます。  まず、二院制について私の基本的な考え方申し上げたいと思うんですが、二院制は国政が慎重に行われていくことを期すると、こういったような制定当初の考え方ありますので、私どもはこれを尊重し、そして維持をしていきたいなというふうに考えております。その方向性といいますのは、衆議院は多数決の府、それから参議院は再考の府あるいは良識の府、そして決算、行政監視機能、あるいは中長期的課題、こういったような提言機能など、機能分担を図っていくべきだろうと、こういうふうな基本的な考え方であります。ただ、先ほど荒井先生の方から、衆議院予算参議院は決算と、こういう考えを徹底するべきではない、こういったようなお話も披瀝されたところでありますけれども、一応私はそのように考えているということであります。  他方、参議院議員選挙となりますと、どうしても衆議院と同じく政党化していくことになるわけであります。このような中で、再考の府、良識の府、この点についてお伺いしたいと思うんです。  二院制では、議院内閣制そして衆参共に政党政治と、こういう枠組みの中では、一般的には参議院衆議院と同じ結論を出してしまう、こういうことにならざるを得ないというふうに考えます。二院制の中で時にねじれを生ずることがあるわけであります。国民の意向が拮抗している場合、この場合なんかは特にそういうふうなことになると思うんですが、このようなときに、ねじれというのは国会決定を遅らせてしまうだけだと、こういう考え方もあれば、一方には、権力の暴走を抑止するためには必要だと、こういうふうな考え方があります。  こういう中において、参議院における再考の府あるいは良識の府といったような憲法上の規定はないんですよね。これはないということなんですが、ここで、一般的に言われている再考の府あるいは良識の府について、参議院がそういうふうな再考の府あるいは良識の府であるべきなのかどうかという問題、それから、もしそういうふうなことであれば、どのようにすればその実現といいますか、近づくためにはどうすればいいだろうかと、この辺のお考えをまずお伺いをいたしたいと思います。
  80. 浅野善治

    参考人浅野善治君) 再考の府、良識の府、よく言われるわけですけれども、一体何をもって再考なんだ、何をもって良識なんだというところが実はあるわけですね。ですから、そういうことからすると、じゃ、衆議院は再考じゃないのか、良識がないのかという話になるわけですけれども、決してそんなことでは実はないんだと思います。ただ、その考えているポイントが違うということなんだろうと思うんですね。  やはり、先ほどからお話をしておりますように、衆議院というのは政権に極めて近い立場にありますから、やはりこれは政局というものに左右されながら議論をしていくということになるわけですね。そういう議論の仕方というのが再考に程遠いじゃないかと、こういう話になると、じゃ、それと違った、政局から離れた、しっかりもっと地に足を付いた議論をしなさい、それが参議院の再考の府の意味合いだと、こういう話になったりするわけでしょうし、また、その政局というものだけを中心にして考えるのではなくて、より政策を自主的に分析して議論をするんだ、これが良識の府だよと、こういう話になったりするわけでしょうけれども、やっぱりそこのポイントというのは、ただ、政権をどういうものにしていくのか、どういうように伝えていくのかということ、これをきちっと考えていくというのも一つの良識ではあるわけですから、そういう衆議院の機能というものと参議院の機能が違うんだということだけではないのかなという感じがいたします。  ですから、そういった意味では、政党化という話があって、選挙は政党によってということになるわけですけれども、衆議院選挙というのは、まさに政権交代をとか、あるいは今の政権に対する批判はとか、という形の中で選挙を戦ういわゆる与党野党の戦い方という形になるのでしょうけれども、参議院選挙というのは、そういうことと同じ戦い方をするとすれば同じような衆議院ができてしまうわけで、そうすると、同じような意思決定をする、じゃ、同じだったら要らないじゃないかと、違うんだったら決められない政治になるだけだから、それ邪魔じゃないかと、こういう話になるわけですね。ですから、もっと違う衆議院特色というものを出すべきだということで、仮に選挙でも、政策中心の議論ということの中で選挙を戦っていくということは、より参議院選挙の方がふさわしいという感じがいたします。  そういう形で特色を付けるということの中で、その特色の付け方というのが政局から少し距離を置くという意味での良識とか再考とかという見え方になるんじゃないか、そんな感じがいたします。
  81. 荒井達夫

    参考人荒井達夫君) 再考の府、良識の府であるべきかというよりも、そういうふうに言われているのでそれを実現するのにはどうしたらいいのかなという、そういう発想をしてまいりました。職員でいる間もそういうふうに議員の先生方から問われました。そもそもそうあるべきなのかどうかと言われると、あれっと思っちゃって、逆にええっというふうに思うんですけど、今、浅野先生が言われたとおり、じゃ、衆議院はそれじゃなくていいのかといったら、そんなことはないわけですから、だから、やっぱりその特徴に応じたやり方というのがあるだろうということで、特にねじれというのは予算とか法律とか議決の話になってくると思いますけれども、そうじゃなくて、通常の日々の業務の中でどういうことができるんだろうかというふうに考えたときに、これは行政監視ということで視察によくみんなで行って、超党派でやっていくというようなことは物すごく効果があるんじゃないかなと私は考えましたし、そういうふうにお考えになっている行政監視の先生方もたくさんいたということです。
  82. 主濱了

    ○主濱了君 ありがとうございます。  次、党議拘束についてもお伺いしたかったわけなんですが、松田委員、それから江口委員からも同様のお話がありましたので、私は以上で終わります。
  83. 柳本卓治

  84. 高野光二郎

    高野光二郎君 自由民主党の高知県の高野光二郎でございます。  少し質問が重複する部分もあろうかと思いますが、御理解をいただきたいというふうに思っております。  まず、お二人の先生には大変、二院制参議院衆議院関係、そして行政統制の視点と論点、非常に分かりやすく、必要であると思うところもたくさん多いですし、共感、共鳴をするところでございます。そのことで、じゃ、どういった選出のされ方がいいのか、若しくは政党と参議院の在り方、もっと言えば政党と参議院選挙の在り方等々がやはり私は重要になってくるのではないかというふうに思っております。  そこで、浅野先生のちょっとお話を聞いておりましたら、どうも、先ほどお話がありましたが、大選挙区制が参議院でも思わしいということでございますが、これはまず一つ、ブロック制なのか、全国比例が思わしいと思われているのか、これについてお伺いをしたいと思います。
  85. 浅野善治

    参考人浅野善治君) 基本的には、政党内の議論が表に出てくるような選挙単位というものが考えられればいいということだと思います。  ですから、そういう意味からすれば、必ずしもブロックでなくても、もう少し小さな単位でもいいのかもしれませんけれども、いかに多様な意見が出てくるような、政党の中でも多様な意見を闘わせて選挙ができるような、そういうような単位が出てくるといいんじゃないかなと思います。  一方、じゃ、全国一律でいいじゃないかということがあったとして、やはり参議院は全国区というのがかつてあったわけですね。それで、その弊害というのがかなりいろんなことで言われているわけですし、そういう弊害というのが乗り切れるかどうかというのはやはり大きなポイントになると思いますので、全国単位ということになったとすれば、そういう弊害をどう解決するかという、例えば知名度の高い議員が当選しやすくなってしまうとか、そういうようなものというのが出てくるわけでして、その辺のところをどう考えていくのかというのは大きな問題になろうかなと、そんな感じがいたします。
  86. 高野光二郎

    高野光二郎君 その議論のことなんですが、私は衆議院のいわゆる小選挙区制か中選挙区制、どっちがいいのかという議論とちょっと混同しているのではないかということを素直に思うんです。  御承知のように、参議院は百四十六のいわゆる各都道府県単位で今まで選挙区がございました。それは、一つの行政区域、役割、伝統文化、歴史、経済的な問題、インフラの整備率、実は四十七都道府県ばらばらでございます。その中で、非常に県単位、都道府県単位の声の反映をと望んでいる声が実は非常に多いんです。例えば、全国の知事会でその件について研究会をつくったりだとか、九県の知事が合区に対して反対を表明をしたりだとか、自由民主党も基本的には合区に反対で当初いたんですね。六増六減で何とかその方向性でやっていきたいといったようなこともございます。  若しくは、私、高知県でございますが、高知県は三十四市町村中二十八の市町村が合区に反対といったようなこともございます。また、昨年の暮れには通信社と合区になった四県の地元新聞が県民世論調査を取ったんですが、我が高知県においては合区に反対が七割といった状況もあるんです。つまり、県民、国民自身も都道府県の代表を残してほしいといったようなことがやはりあります。  そういった件についてどのようにお考えなのか、浅野参考人にお伺いをしたいと思います。
  87. 浅野善治

    参考人浅野善治君) 基本的に私も合区は反対です。というのは、もし今の選挙制度というものが県単位での意見の出し方というものを重視しているんだとすれば、合区をするというのは全くそれを破壊するものだというように思うわけですね。ですからそれが、例えば一票格差のことで、それが破壊していいのかという議論というのは実際きちんとしなきゃいけないんだろうと実は思っています。  ですから、そういう意味からすれば、県単位で意見を出してそれを集約していくんだということだとすれば、それはやっぱり今おっしゃられたような各県というものをその中心にして考えるべきだということがあるわけですけれども、じゃ、実際のところ、選挙制度選挙の仕方がどういうやり方になっているかというと、参議院選挙においても、与党野党政権にくみしている党とそうじゃないという、そういう戦い方に実はなっているわけですね。そうしますと、衆議院と何ら変わらないじゃないかということになってしまうということがあるわけですから、仮に衆議院と離れて各県のということを中心にということだとすれば、またその意味合いが違ってくるわけでしょうけれども、今のような与党野党という戦い方ということをやっているんだとすれば、今のままやっているとすれば、衆議院と全く同じものになってしまう、そういうことに何らかの工夫はできないのかということで、先ほどのようなお話をさせていただいたというところでございます。
  88. 高野光二郎

    高野光二郎君 ありがとうございます。  お二人にお伺いしたいんですが、選挙区の選出の国会議員なんですが、例えば、その中身もあると思うんですね。これは、衆議院とはまた別に、衆議院と機能を同質化をせず、参議院役割、お二人が示したような役割もきちっと示す上で、私は都道府県の代表が大事だと思っているんですが、なおもっと大事なのはその中身だというふうに思っているんです。  例えば、東京都の国会議員衆議院参議院が五十二人いるんですね。鳥取県はたったの四人しかいません。なおかつ言うと参議院の全国比例の、九十六人いらっしゃるんですが、その九十六人の所在地だとか住んでいるところとか事務所とかというのは、四十七都道府県のうち十八県からは選出をされていない。だから、都市にどんどんどんどん増えていっているんです。  これ、衆議院の場合、やはり二倍以下というのが基本であって、五年以内に見直すということがあろうと思うんですが、参議院とはまたそれと違ったやはり存在が私は必要だと思っているんですが、この都市と地方の議員参議院選挙区の格差、これについてお二人の先生の御所見をお伺いさせてください。
  89. 浅野善治

    参考人浅野善治君) 都市と地方の格差という問題ですけれども、これは実は大きな問題だろうと思います。こういったことというのは、実は最高裁の判例にもあるように、実質的な一人一票という形の中で、そこは全く同じように見られていくわけですけれども、例えば経済政策にしても農業政策にしても、東京で議論するのと地方で議論するのでは絶対的にその結論というのは変わってくると思っています。  ですから、そういう意味からすれば、どこから選出された議員がどういう考え方を持つ、仮に全国的なことを考えるとしても、かなりの違いが出てくるはずなんですね。ですから、それを全く均等に同じように見て実質的に一人一票だと、こういう話というのは、やっぱり話が違うんだろうと思うんですね。そのときにどこまでどういう重みを掛けるのかということについても、これは政治が決定すればいい話なんだろうと実は思っています。  ですから、そういったことからすれば、やっぱりそれは法理的に実質的かつ絶対的な一人一票というものが優先されるというのではなくて、そこのところが政治の中でどういうものに重みを掛けていくのかということがきちんと議論されてそれが出てくる、それはやっぱり裁判所もそれをしっかり認めていく、そういうことの方が大事だろうというふうに思っております。  ですから、そういう意味からすれば、参議院がどういう役割を果たしていくかということの中で、参議院の格差というのはもっとあっていいじゃないかとか、それは地方に重みが掛かって当然じゃないかという議論というのが出てくる可能性というのは十分あり得るんだろうというふうに思います。
  90. 荒井達夫

    参考人荒井達夫君) 私は選挙制度には詳しくはありません。あくまでも行政監視機能というところからお話をしてまいりました。参議院役割は行政監視が非常に重要だというのは共通な認識になってきていると、その前提でお話をしました。そうであれば、その役割を果たすのにふさわしい人を選ぶということが当然だと思います。それは党派を超えて発想できるような人ということになってくるんじゃないかなと、まず。それは抽象論ですが、そこのところは踏まえておかなきゃいけないということと、それから、票の格差というのは全く別な問題だろうと。私と浅野先生と全然価値が違うと言ったらやめてくれよというふうに言わざるを得ないですし、それは地方に住んでいようと東京に住んでいようと関係なくて、日本国民だったら同じじゃないのと、私はそう言いたいですね。  要は、参議院というのがどういう役割を果たすべきかということをきちっと議論していかないと、話が違う方向に行ってしまうんじゃないかなというふうに思えてなりません。
  91. 高野光二郎

    高野光二郎君 ありがとうございました。
  92. 柳本卓治

    会長柳本卓治君) 藤末健三君。
  93. 藤末健三

    ○藤末健三君 民主党の藤末でございます。  本日は、浅野先生、また荒井先生、貴重なお話をありがとうございます。  ちょっと与えられた時間が短いので、荒井先生に特に御質問申し上げたいと思うんですが、私も、先生が御主張されますように、国会における特に財政を監視する機能は非常に重要だと思っています。それは、一つございますのは、財政赤字がこれだけ大きくなり、どんどんどんどん膨張する中、何らかの新しいシステムを入れなきゃいけないということ、そしてもう一つは、やはり我が国に薄い財政民主主義という概念を徹底させるということだと思います。  先生が御主張されますように、まず一つありますのは、国会の下に会計検査院そして行政監視調査局みたいな機能を置くというのはまず大賛成でございますし、また、私が思いますのは、その会計検査院や行政監視局が是非とも、税金の使い方という話だけじゃなく、今の会計検査院はお金がきちんと使われていますかしか評価していませんけれど、私はやはり政策効果というのをきちんと分析すべきじゃないかと思っております。  実際にアメリカの会計検査院の人が日本に来ていろいろなインタビュー受けたんですけど、彼らは何をやるかというと、外交の効果というものを調査して分析するんだということをおっしゃっていましたのがすごく印象的でございました。ですから、本当に政策が効果的かどうかというところまで国会に、向こうですと議会に提案することが必要ではないかと。  そして、もう一つ思っていますのは、やはり財政のやり方、会計の、何というんですか、企業でいえばBS、PLみたいなものがございますが、我が国の場合は予算と決算が全く突合性がない。予算と決算、PDCA、ですから、もう予算書は分厚いのに決算書はこんな薄い。かつ項目が合っていないとか、またバランスシートとかもない、PLもないという、企業会計とは全く離れた世界でございますので、会計の基準を作り直さなければ何もできないのではないかというのがございます。  そういうふうに思っているわけでございますが、今日は憲法審査会ということでございますので、ちょっと憲法の観点について議論させていただきたいと思います。  先ほど申し上げました一番目の項目、国会の下に財政の監視機能を置くという話をいろいろ私も議論したことがあるんですけど、そのときにある政府の関係者から言われましたのは、憲法の九十条、「国の収入支出の決算は、すべて毎年会計検査院がこれを検査し、」、ここですね、「内閣は、次の年度に、その検査報告とともに、これを国会に提出しなければならない。」と。内閣が提出するということをもって会計検査院の権限は政府になきゃいけないんですよと、内閣になきゃいけないんだということを言っている人がおりまして、そのときはそれで納得したんですが、調べてもまだ明確な答えが出ていないと思います。  先生にお聞きしたいのは、この憲法の解釈はどうかということ。先生がおっしゃるように、国権の最高機関である、我々、その立法府である国会が全てを見なきゃいけないという議論もありますが、一方で、九十条、会計検査院は憲法規定された組織であるし、内閣が報告されているということが書かれている。この点について先生の御見解をいただければと思います。
  94. 荒井達夫

    参考人荒井達夫君) まず、会計検査院をどこに置くかということですけど、国民の権利義務に関しない問題だ、そして司法判断にも関わりません。国の統治機構に関する問題として議員自ら責任持って憲法判断しつつ決定すればいいんじゃないかなと、私は正直そう思います。そんなに大きな問題なのかなと。  それから、会計検査院をどこに置くかというのは憲法は何も規定していないんですね。「会計検査院の組織及び権限は、法律でこれを定める。」としているだけです。要するに、立法政策の問題だということです。それで、内閣が会計検査院を使って、それで国会に出してくるというような形になっていますけど、じゃ、その国会って何ですかといったら衆参の会議体ですよね、それに出せということになっているわけで、別に会計検査院が付いているところに出せとかって言っているわけじゃない。だから、会計検査院がどこに位置するかというのは別な話だと思います。だからこそ今まで全然議論がなかったわけで、今、これからどこに置くのが一番問題を解決するのにふさわしいかという発想で考えていけば、それだけのことかなと思います。駄目だ駄目だという、この憲法上駄目だというのは、本当に私はためにする議論でしかないなと思います。
  95. 藤末健三

    ○藤末健三君 先生、ありがとうございます。  私もいろいろ調べまして、アメリカはまさしく連邦議会の下にありますし、あと、イギリスの会計検査院は完全にトップが国会の人間であるというふうに決められていますので、是非私たちも、これからの財政再建の問題とかいろいろございますので、そういう議論を深めさせていただきたいと思います。  ちょっとまた官僚機構についても、私は元々通商産業省という役所にいましたので関心ありまして、私も同様に、やっぱり二十一歳、二十二歳のときに受けた試験で、ペーパーテストでその人はどうのこうのという話は全く意味がないと思いますし、また、同じ省庁、役所にずっと居続けるというのも国益に全く反していると思います。  ただ、一方で、私自身思うのは、官僚機構にも優秀な人間が必要じゃないかと思っておりまして、やはり今だんだんだんだんと人材の質というかが落ちていると思うんですよ、正直申し上げて。そういう中で、きちんとした人材を集めるという観点からも様々な取組が必要だと思うんですが、私、個人的なことを申し上げますと、まず、先ほどおっしゃっていたように公募にすべきであると。私も、アメリカみたいにリボルビングドアで入ったり出たりした方がベターだと思いますし、あと究極的には、やはり政治任用というよりも、私は、完全に外部に企業の第三者人事委員会みたいなのをつくった上で、きちんとした局長以上の人たちは任命するようにしたらどうかと思うんですが、その点、いかがでございましょうか。
  96. 荒井達夫

    参考人荒井達夫君) 今の試験制度というのは、余りにも試験に傾き過ぎて、試験ができればもういいみたいになって、だから、それが総合職、一般職というのは典型的に表れていて、それを公務員制度改革で直ったといって、これは全然直っていません、これはもう、うそですから。運用は全く変わっていないに近いですね、正直言って。むしろ逆行しているかもしれない。  これは、採用試験の本を読めばあるんですよ。私は今日、本を買ってきて、ちょっとこれは見せれませんけど、公務員になりたい人の本、現職人事が書いた本です。ここのところにきっちり今までと全然変わっていませんということを書いてあるんです、現職人事が。みんな、各省で課長までは全員行けます、保証しますと言っていますとか、あきれて声も出ないような、そういうことが書かれています。是非読んでいただきたいですね、こういう実態を。まず、それです。  じゃ、どうしたらいいか。そんなに試験に傾くんだったら、取りあえず、合格して点数のいい人たちに何年間はいい給料をあげればいいじゃないですか、それで。その代わり、その期間たったら消えますよ、その間にしっかり皆さん切磋琢磨して本当に企画立案能力証明しなさいよと、そういうことだと思います。それが一点です。  もう一つ、専門職というのがあります。これが物すごく重要になってきていると私は思います。労働基準監督官とか国税専門官とか外務省専門職員とか、そういう専門官は物すごく重要で、また優秀な人たちたくさん出ています。だから、そういう人たちから抜てきするようにすべきだなと思います。  特に、海上保安庁の長官が海上保安官からなりました。これは、もう有り難い、すごい話だと思います。それから、法務省の矯正局長が刑務官出身の方もなりました。こういう話というのはもっとやらなきゃいけないんですね。  今現場で起きているのは、専門性というのがない人はもう仕事ができるはずがないということなんだと思うんです。単純なキャリアだけじゃキャリアのプロは駄目なんだということをちゃんと分からないと駄目だと思いますね。
  97. 藤末健三

    ○藤末健三君 どうも先生、ありがとうございました。
  98. 柳本卓治

    会長柳本卓治君) 丸山和也君。
  99. 丸山和也

    丸山和也君 もう大分、最後の方になりましたので、お疲れだと思いますので、余り固くならないで、豊かな発想でお答えいただいたらいいと思うんですけれども。  非常に、二院制ということで参議院をいかに、存在価値をどこに求め、また高めるかで議論がなされているんですけれども、この議論というのは恐らく何十年、延々とやられてきている議論なんですよね。多少いろいろ変わりますけれども、基本的には同じことを言って、余り変化もないまま来ているんじゃないかと思います。  例えば、党議拘束の問題も言われましたけど、これやっぱり浅野先生もおっしゃっていましたように、なかなか難しいだろうと。それで、本当に党議拘束を緩めるというのであれば、参議院議員は政党所属を法的に禁止しなきゃいかぬと思うんですね。そこまでやらないと、政党にいて参議院だけは何となく党議拘束からは自由でいこうぜといったって、それはもうどだいできないことをユートピア的に言っているだけで、それはもう全く意味がないと私は思います。もしそうであれば憲法上の問題はクリアできるんじゃないかと思いますけど、参議院議員はもう立候補のときから基本的に、基本的にというより、法律で政党所属を禁止するということが必要だと私は思います。  それから、荒井先生は、とりわけ行政監視ということに参議院の機能を集中的に置くべきだということで力説されていたと思うんですけれども、巨大な官僚機構を、今おっしゃっていましたように、このままだと国会まで官僚機構に支配されてしまうんじゃないかという危惧さえ持っておられるとおっしゃっていまして、私も、行政監視委員会があるけれども、これを拡充してしっかりとしたものにするという、まあ理屈はそうなんですけど、何度も開けないことがあったとか、あるいは開いたとしてもほとんど大した何も実績も上げていないということになると、参議院というのは本当の意味ではなかなか、こうあるべきだと言っても基本的には機能を発揮できない状況にあると私は思っているんですね。せいぜい、政権の暴走とか多数与党を慎重にさせるとか、衆議院の拙速さに対して時間を掛けて慎重に議論する、この程度なんですよね。基本的に期待されているのはその程度だと思いますよ、私、参議院に対して。それ以上のものは参議院に対して現実的に見て誰も期待していないし、期待したってできないんですから、全く。  そこで、これは憲法上の問題でもありますけれども、ややユートピア的かも分かりませんけれども、例えば日本がアメリカの第五十一番目の州になるということについて、例えば憲法上どのような問題があるのかないのか。例えば、そうすると、例えば集団的自衛権、安全、安保条約と、これ全く問題にならないですね。それから、例えば今非常に、拉致問題ってありますけど、この拉致問題すら恐らく起こっていないでしょう。それから、いわゆる国の借金問題についてでも、こういう行政監視の利かないようなずたずたな状態には絶対なっていないと思うんですね。  それで、これは例えば日本がなくなることじゃなくて、例えばアメリカの制度によれば、人口比に応じて下院議員の数が決まるんですね、比例して。すると、恐らく日本州というのは最大の下院議員選出数を持つと思うんです、数でね。それで、上院も州一個とすれば二人ですけど、日本を幾つかの州に分けるとするとかなり十数人の上院議員もできるとなると、これは世界の中の日本と言うけれども、要するに日本州の出身がアメリカの大統領になる可能性が出てくることになるんですよ。ということは、世界の中心で行動できる日本という、まあ日本とはそのときには言わないんですけれども、こういうことがあり得るということになるんですね。ばかみたいな話だと思われるかもしれませんがですね。  例えば、今アメリカは黒人が大統領になっているんですよ、黒人の血を引く。━━━━━━━━━━それで、リンカーンが奴隷解放をやったと。でも、公民権もない何もないと。マーティン・ルーサー・キングが出て、公民権運動の中で公民権が与えられた。でも、まさかアメリカの建国あるいは当初の時代に、黒人━━━━━がアメリカの大統領になるようなことは考えもしない。これだけのダイナミックな変革をしていく国なんですよね。  そういう観点から、例えば日本がそういうことについて憲法上の問題があるのかないのか、どういうことかということについてお聞きしたい。それから、政党所属を禁止するということについての憲法上の問題があるのかどうか、これについて、まず、荒井先生からお聞きしたいと思います。(発言する者あり)  これは、十数年前から日米問題研究会ということがありまして、それで本まで発表されているんですね。だから、そういうことについて、日本憲法的な観点からどのように思われますか、お聞きしたいと思います。
  100. 荒井達夫

    参考人荒井達夫君) 今の丸山議員の話というのは、私は一度も考えたことがありません。話を聞いていて、自分の中に答えられるものがほとんど何もないなというのが正直なところです。  ただ、日本国憲法、今の日本国憲法を、それで今議院内閣制、そして二院制になっている、それを今の現状の中でどういうふうにうまく動かせば公共の利益のためになるんだろうか、国益のためになるんだろうかという発想がまず必要だということと、それでも駄目な場合には憲法改正というのはどういうふうにすべきなのかなという、そういう議論しかしてまいりませんでした。それで正直なところいいんじゃないかなと今でも思っております。ですから、ちょっと私にはお答えしかねる御質問だったなと思います。
  101. 丸山和也

    丸山和也君 分かりました。浅野先生は。
  102. 浅野善治

    参考人浅野善治君) 非常に面白い話だと思って聞いておりましたけれども、二つあったと思いますが、答えやすい方からまず先に答えさせていただきますが。  政党所属、参議院の候補者は政党所属をしてはいけないということはどうかという話ですが、これは、ある意味では政党に所属している人については国民代表から排除しますよと、こういう話を憲法規定をするということになるんだと思いますけれども、やっぱりこれは、政治活動の自由とか思想、良心の自由とか、そういったものについて、おまえはそういう考え方を持っているから参議院議員からは排除しますよと、こういう話になるわけで、そこを決めるだけの公共的な、公共の福祉というものがきちんと整理できるかどうかという話なんですが、なかなか難しい。思想、良心の自由ですとか政治活動の自由というのをそこまで切り分けるということのなかなか理屈が立ちにくいんじゃないかなという感じがします。憲法で決めてしまえばいいんじゃないかという話になるんでしょうけれども、もう一方の憲法価値との関係の中でそこはどううまく整理できるかというと、なかなか整理できないのではないかなという感じがするというのが、その政党所属を禁止するということの方ですね。  それからもう一つ日本はアメリカの五十一番目の州になればいいじゃないかと、こういう話なんですけれども、これの一番の基本というのは、憲法があって国があるのか、国があって憲法があるのかという話だと思います。ですから、憲法が変わったところで国がそういうふうに変わるのかという話があるわけですよね。やっぱり憲法というのは、ある社会的な集団があって、国家というまとまりがあって、それをどう運営していくのかという形の中の基本法という形になるんだと思いますね。  ですから、そこに所属している構成員がアメリカの五十一番目の州だというような社会的な意識というものが出てきて、じゃ、どうするんだというふうになればそういうことも一つ選択としてあり得るんでしょうけれども、そうではなくて、やっぱり日本日本一つのまとまりを持った社会的集団なんだという意識を持っている以上はやっぱりそういうことはなかなか採用できにくいんじゃないかと、そんな感じがいたします。  ですから、そういうその構成員の意識の問題というのがまずあるんじゃないかなというふうに思います。
  103. 丸山和也

    丸山和也君 ありがとうございました。  私もそれ以上のお答えは当然期待していませんし、でも、やっぱり日本の問題を日本の中だけで見ているとなかなか本当の問題とか所在が分からない。あるいは比較を超えて、やっぱり世界の中で日本がリーダーシップを取れる国になるためにはどうしたらいいのかということを真剣に考えた場合に、やっぱりそういう研究が真面目にかつて十数年前行われていた、本も出ているということもございますので、是非両先生ともそういう少し関心を持っていただいたらと思います。  ありがとうございました。
  104. 柳本卓治

    会長柳本卓治君) 小西洋之君。
  105. 小西洋之

    小西洋之君 民主党・新緑風会の小西洋之でございます。  ちょっと時間だと思うんですが、会長の差配をいただいて質問をさせていただきます。  まず、浅野参考人に伺わせていただきます。  先ほど、レジュメの一番最後のところで、安保法制についてですけれども、政府提出法案の賛否ではなく安全保障政策の審議の重要性ということをおっしゃられましたけど、この意味は、我が参議院がこの政策論、政策の必要性、安保法制の必要性、合理性、すなわち憲法論、法律論で言うところの立法事実論をしていないというような御認識なんでしょうか。あるいは、衆議院よりも劣る議論しかしていないというような御認識なんでしょうか。簡潔にお願いします。
  106. 浅野善治

    参考人浅野善治君) 決してそういう議論をしていないということではなくて、余りにも議論の中心が政府案の賛否ということにとらわれ過ぎているんじゃないかという意味です。  ですから、イメージとして、安全保障法制の法案が参議院に提出される、予備審査として衆議院に送付される、衆議院は対政府質疑をがんがんやっている、そこの中で参議院議員間同士でそこの政策の審議をやる、そういうことを一緒に国民に見せていくということをすると、参議院の独自性というのは極めて出るんじゃないかと、そういうようなイメージですね。余りにも参議院、政府法案の賛否ということにとらわれ過ぎた議論になっているんじゃないかというだけの意味です。
  107. 小西洋之

    小西洋之君 ありがとうございました。  ちょっと多分御認識が少し私の認識するところと違うと思うので、参議院のためにも補足させていただきたいんですが、我が憲法審査会で平成二十六年十月の二十二日、私、当時幹事でしたけれども、政府の解釈の変更、集団的自衛権、すなわち立法事実がないと、今日の朝日新聞にも大きく載っていましたけれども、国家安全保障局は立法事実を証明する文書も作っていないし、内閣法制局はその審査すらしていない。五月から衆議院で安保国会が始まりましたけれども、その以前から、かつ五月以降の安保国会と並行して我が参議院でもこの立法事実論などを始めとする違憲論点について、当然立法事実論ですから政策論も重なりますけれども、質問を重ねておりましたので、そうしたことについて、あえてこれを申し上げるのは、浅野参考人議会人、衆議院法制局で我々の立法補佐をしてくださっていた方でございますので、御案内のとおり、政府の七月一日の集団的自衛権の解釈変更というのは立法事実すらない、昭和四十七年政府見解の中に集団的自衛権が合憲と書いてあると、当時の内閣法制局長官はそういう憲法解釈であれを作ったんだというのだけが合憲の根拠なんです。  ところが、吉國法制局長官たちが作るきっかけになった三週間前の国会答弁で、集団的自衛権は絶対できないと一貫した答弁をしているのが事実でございますので、恐れ入りますが、やはり浅野参考人も、あと荒井参考人もそういう実務をされている法律の、今は学者様でいらっしゃいますから、我々国会ではそういう論理的な質疑をちゃんとやっておりますので、どうかそれを世に、これマスコミの方のお仕事でもあると思うんですけれども、お願いをしたいと思います。  済みません、ちょっと時間限られていますので次の質問に参らせていただきますけど、今の観点で、今日両参考人から、衆議院参議院関係二院制ということで、行政監視というような観点でそれぞれお話をいただきました。私は、今の政治の局面で一番求められている行政監視というのは、荒井参考人のお言葉にもありましたけれども、憲法保障、立法府が政府が行った解釈変更、またそれに基づいて法案を出した閣法ですので、その憲法保障、憲法監視をしっかりとすることが一番の大事な仕事ではないかというふうに思っております。  その観点でちょっと御質問させていただきたいんですけど、我が参議院憲法審査会には、荒井参考人はよく御存じだと思いますけれども、平成二十六年の六月十一日に、国民投票法の改正のときに附帯決議が付せられております。第六項、政府にあっては、憲法の解釈を変更しようとするときは、当該解釈の変更の案、つまり七・一閣議決定の最終案そのものです、解釈の変更案及び第四項における政府の憲法解釈の考え方に係る原則への適合性について、国会での審議を十分に踏まえることという附帯決議、荒井参考人もよく御存じだと思います。  政府の解釈変更というのは、この附帯決議、国権の最高機関の附帯決議に違反し、国会が持つ憲法監視機能を侵害しているものというふうに考えてよろしいでしょうか。荒井参考人に伺います。
  108. 荒井達夫

    参考人荒井達夫君) 今の小西議員の話はどっちとも言えないなという感じを私はします。ただ、この問題については私は意見があります。それをちょっとお話しさせていただきたい、こんな感じです。  行政監視、それから法を誠実に執行するということの観点から考えたときに、今起きていることはどういうことかということだと思います。主権は国民にあり、主権者が定めた憲法に基づき内閣国会権限を与えられているのであるから、内閣国会国民に対して憲法の誠実な執行を行う義務を負っているということです。これが憲法尊重義務であって、立憲主義に基づく内閣国会の義務と私は考えます。  そして、集団的自衛権の行使というのが憲法上一切許されないという話、これは政府が一貫した解釈でした。集団的自衛権の行使を認めるためには憲法の条文改正が必要であるということは国会を通じた国民の了解事項となっていたと私は思います。内閣憲法解釈の変更によって集団的自衛権の行使を認めるというのは、これを否定することになるのではないかと思います。  それから、もう一つです。憲法の解釈変更を前提として法改正でよいとするやり方、これを取ることは憲法事項を法律で済ませようとするものになってしまうんじゃないか。集団的自衛権の行使を認めるためには憲法の条文改正が必要であるという国民の了解に反するのではないか。これは、憲法尊重擁護義務に反して集団的自衛権を認める安保関連法を国会が可決したというのは、これは憲法違反になってしまうんじゃないかと私は思いました。そして、それをずっとお話ししてまいりました。
  109. 小西洋之

    小西洋之君 荒井参考人、ありがとうございました。  重ねて伺わせていただきます。  荒井参考人も、また浅野参考人も御存じのとおり、我が憲法審査会の任務というのは、国会法で、全く同じ条文です、衆参日本国憲法及び日本国憲法に密接に関連する基本法制について広範かつ総合的に調査を行う、日本国憲法について広範かつ総合的に調査を行うというのが我が憲法審査会の任務でございます。そうすると、荒井参考人がおっしゃったように、もし政府又は与党憲法違反の解釈変更、立法を行っているんであれば、まずはそれを徹底的に審議するのがこの審査会役割であり、それすらしない憲法審査会憲法改正原案の議論をする資格というものもあるのかなと、資格というか、できるのかなと、能力的に、そう思うんですけど、いかがでしょうか。  憲法審査会の規程上、我々は安保法制、解釈変更について議論する任務があるという理解でよろしいでしょうか。
  110. 荒井達夫

    参考人荒井達夫君) 憲法の基本原理に関わる話というのは、まず最初に議論しなければならないと私は思います。これは、憲法とは何かという話に関わります。憲法審査会というのは、常に憲法とは何かというところから議論しなきゃいけない、そして、その基本原理に関わるような話というのは、どういう立場に立とうと徹底して議論しない限り憲法改正の話というのは出てきようがないだろうというのが私の意見です。
  111. 小西洋之

    小西洋之君 ありがとうございました。
  112. 柳本卓治

    会長柳本卓治君) 他に質疑の希望はございませんか。──他に御発言もないようですから、参考人に対する質疑は終了いたします。  参考人皆様には貴重な御意見をお述べいただきまして、誠にありがとうございました。審査会を代表いたしまして厚く御礼申し上げます。  本日の調査はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。    午後三時三十七分散会