○玉木
委員 明確な
答弁をいただきました。そのとおりであります。
今引かれたのは、私の資料一の下側の八項に書いていることを最後読み上げられたんですが、明確に決まっていないのではなくて、TPP協定が義務として導入を求める
内容は極めて明確であります。ここは赤線を引いていますけれども、前段ですね、侵害によって引き起こされた損害について権利者を補償するために十分な額、ある種この前段については、
我が国の民法の七百九条の規定とも非常に整合的だと思います。
問題は後半。及び将来の侵害を抑止することを目的として定めるという規定であります。これは英語で言うとディターという言葉、よく軍事の言葉で抑止力ということで使われるんですけれども、ディターリングインフリンジメントということになっておりまして、将来の侵害を抑止することを目的とした新たな損害賠償規定を
日本にも入れなさいというふうになっているわけであります。
そこで、このことについてきのう
議論がなされたときに、まだ文化庁と一緒に法案の中身は詰めているところなので今の段階ではお答えできないし、出てきたら答えますということだったんですが、私はきょうは法律のことは聞きません。
私がきょう聞きたいのは明確です。TPP協定の中身とこれから
説明する最高
裁判決との整合性です。
資料二を見てください。
私、きのう、高井先生の
質問を聞いていて、その後勉強しようと思って調べたら出てきたんですが、
平成九年七月十一日の最高裁の
判決であります。これはもともとカリフォルニアの州
裁判所が
判決を出して、ある一定の損害賠償義務を課すという
判決が出ました。これは
アメリカですから、現に生じた被害が四十二万五千二百五十一ドル、それに加えて懲罰的損害賠償ということで、一般予防を目的とする賠償金として、それを上回る百十二万五千ドルを課すという
判決が出たんです。
このことに対して、先ほど
緒方委員からもありましたけれども、
執行判決ということが
国内の
判決で行われて、るる
議論が行われて、最高裁まで行ってどういう
結論が出たかというと、二の資料に書いています。
ここは、よくごらんいただきたいんですが、
我が国の不法
行為に基づく損害賠償制度は、被害者がこうむった不利益を補填して、不法
行為がなかったときの状態に回復させることを目的とするものであり、加害者に対する制裁や、将来における同様の
行為の抑止、すなわち一般予防を目的とするものではないと判示しています。
そして、
我が国においては、加害者に対して制裁を科し、将来の同様の
行為を抑止することは刑事上または
行政上の制裁に委ねられていると。
そして、実際に生じた損害の賠償に加えて、制裁及び一般予防を目的とする賠償金の支払いを受け得るとすることは、右に見た
我が国における不法
行為に基づく損害賠償制度の基本原則ないし基本理念とは相入れないとしています。そのことをもって、こうした金員の支払いを命じた部分については
我が国の公の秩序に反するからその
効力を有しないと判示しました。
そして、先ほど言った四十二万五千二百五十一ドルについてはその支払いを命じたのに対して、百十二万五千ドルのいわゆる将来における同様の
行為の抑止のために払わせようとした賠償について
アメリカで判示された
内容については、これを上告の利益がないということで却下しています。
そこで、
大臣に伺います。
資料の三をごらんください。
今回のTPP協定の条文、中身がよくわからないと言いますが、明確であります。
法定の損害賠償というのが六項で求められ、その
内容は八項で規定されていて、繰り返し申し上げますけれども、将来の侵害を抑止することを目的とした損害賠償を導入しろ、これが署名した各国に対して求められているTPP
条約の義務であります。それに対して、今紹介した最高
裁判決、
我が国の法体系の中では、将来の侵害を抑止する目的の損害賠償については、
我が国の基本原則、理念に反して無効であると判示されています。
双方が矛盾するように思いますけれども、今回のTPP協定の条文については、
我が国の最高
裁判決に対応させてみて本当に導入可能かどうか。民法を所管する法務
大臣に伺います。