○初鹿明博君
維新の党の初鹿明博です。
民主・
維新・
無所属クラブを代表して、ただいま
議題となりました
児童扶養手当法の一部を
改正する
法律案について質問いたします。(
拍手)
子供の貧困が深刻な課題となっていることは御承知のとおりです。子供の相対的貧困率は約一六%にも上り、六人に一人の子供が貧困状態にあります。
海外との比較では、
我が国の子供の相対的貧困率はOECD加盟諸国三十四カ国中十番目に高くなっています。とりわけ一人親の窮状は深刻で、何とOECD諸国で最悪の五〇・八%となっています。
我が国は、
米国、中国に続いて世界三番目のGDPを誇る経済大国であるのに、相対的貧困率が先進国の中で最低水準にあることを考えると、格差の是正、特に一人親世帯の格差を是正し、格差の世代間連鎖を断ち切ることが急務であることは、議場の皆さん、共有していただけることと思います。
議場にいる皆さんの三分の一は世襲議員であり、その他の議員の多くも、過去の華々しい経歴を拝見すると、貧困家庭とは縁遠い裕福な家庭に育った方が多いことと思います。貧困家庭で育つということがどういうことなのか、なかなか理解できないかもしれません。
みんなが持っているゲームを一人持っていない。遠足のとき、お弁当がなくて、木の下でぽつんと一人、友達が楽しくお弁当を食べているのを眺めなくてはならない。友達がサッカーや野球のチームで生き生きと活動していることを横目に、弟や妹の世話に追われる。そして、行きたい高校や大学への進学を家庭の経済的な理由で諦めなければならない。このような経験を積み重ね、悔しく、せつなく、つらい思いを続けてきた子供たちが日本には数多くいることを想像しながら質問を聞いていただきたいと思います。
塩崎大臣、月末近くに預金通帳を開いてため息をついた経験はございますか。
家賃が今月引き落とせるかな、その前に引き落とされるものはなかっただろうか、子供たちは給食があるから自分のお昼は抜くようにしよう、夕食のおかず一品減らさなきゃ。貧困家庭では、毎月の支払いに追われて日々の暮らしを送っています。公共料金も家賃も子供の塾や習い事の月謝もサラ金の返済も、みんな月払いです。大臣は当然御存じですよね。
ところが、
児童扶養手当は、四月、八月、十二月の年三回の四カ月のまとめ払い。一方、一人親に限らず十五歳まで支給される
児童手当も、二月、六月、十月の、同じく年三回。つまり、偶数月には手当がまとまって入ってくるけれども、奇数月は手当なし。一旦、奇数月に支払いが滞って、手当の入った偶数月に滞納している公共料金や家賃をまとめて払うサイクルに陥ってしまうと、そこから抜け出すことはできず、奇数月ごとに苦しい生活を強いられてしまいます。毎月決まった支払いがあるのに、収入が毎月なければ、家計管理が難しいことは容易に想像できるのではないでしょうか。
この質問をするに当たって、しんぐるまざあず・ふぉーらむの赤石千衣子代表初め、当事者や貧困問題などに取り組んできた方々に御意見を伺ったところ、真っ先に上がったのは、手当の支給を月払いにしてほしいというものでした。
これが一人親世帯の実感なのですが、安倍総理は、予算
委員会での西村智奈美議員の質問に対して、
市町村、自治体の事務
負担から考えて厳しい、当時の山井政務官も全く同じ答弁をしていると答えています。ほかの問題では民主党政権の行ってきたことを全否定するような発言を繰り返しているのに、なぜこの件については民主党の答弁を引き継ぐんですか。ほかのことと同じように、民主党政権ではできなかったことをやるんだと意気込んだらどうですか。
そもそも、できないと言った山井議員も、野党五党で
提出した
改正案の
提出者になっています。自治体の都合を優先するのではなく、貧困状態に苦しんでいる一人親世帯の生活実態に寄り添おうと、山井議員も心を入れかえているんですよ。
また、公明党は、民主党政権当時、毎月とまではいきませんでしたが、二カ月ごとに支給する
改正案を
提出しました。年三回では家計管理が難しいという思いは一緒なんじゃないですか。
塩崎大臣に伺います。
児童扶養手当の支給を年三回から毎月支給にするべきだと考えますが、いかがでしょうか。
次に、支給額について質問します。
今回の
改正案では、第二子を五千円から一万円に、第三子以降を三千円から六千円に引き上げることとなっています。第二子については三十六年ぶり、第三子以上でも二十二年ぶりですから、引き上げ自体は是としますが、格差を是正するにはほど遠く、不十分であると言わざるを得ません。
第一子支給分の四万二千円には子供がいることでかかる共通
経費が含まれていることは理解しますが、第二子と第三子以降で金額が変わる理由は不明です。第二子と第三子で、同じ年齢のときにかかる費用が変わるのでしょうか。例えば、小学校入学時に、第二子よりも第三子はお金がかからないのでしょうか。もしかして、第三子以降は洋服もランドセルもお下がりを前提としているんですか。そうだとしたら、随分とせつない話ですよね。
我々野党五党は、第二子と第三子以降で差をつけず、第二子以降一万円に引き上げる
改正案を
提出していますが、御賛同いただけませんか。
次に、支給年齢について伺います。
現在、
児童扶養手当は、十八歳になった年の年度末まで支給されることになっています。我々の
改正案では、二十まで延長することとしています。
公的な
支援は乳幼児期に手厚くなっていますが、
子育てで本当にお金がかかるのは、高校を卒業した後、進学するときの教育費です。現在、高校卒業後、専修学校を含めて大学等への進学率は約七〇%ですが、一人親世帯では四一%と、三〇%もの開きがあります。この原因は、経済的な事情以外に何があるでしょうか。
将来に夢を抱いて、貧困から抜け出そうと一生懸命勉強し、成績も上位だったのに、経済的な理由で大学進学を諦めるなんてせつないじゃないですか。また、諦めさせなくてはならない親も苦しいし、子供もやりきれない思いになって、将来への希望を失ってしまうことになりませんか。せめて二十まで支給を延長しませんか。
当然、
児童扶養手当を延長しただけで経済的な問題が解決するとは思っておりません。学費の
負担の重さを考えると、奨学金、それも給付型の奨学金を創設することが必要だと思います。現在の貸与型の奨学金では、多額の借金を抱えて社会に出ることになってしまい、卒業後、正規の仕事につくことができれば返済もできるでしょうが、非正規の仕事にしかつけなかった場合、格差の連鎖が続くことになりかねません。
給付型の奨学金を創設する考えがないか、馳文部科学大臣に見解を伺います。
第二子以降一万円にすること、二十までの支給延長、そして毎月支給、この三点が野党案の柱で、
所要額は二百二十億円です。オスプレイ一機購入するのに百億円以上使うのなら、子供の貧困や一人親世帯のために予算をふやそうじゃないですか。
さて、今回の
改正にあわせて検討されている中で私が最も危惧していることは、
児童扶養手当の申請書に、養育費の取り決めをしているかどうかのチェック欄を設けるという点です。
DVで逃げてきた方など、別れた夫の顔を二度と見たくないという方にとって、養育費をもらえるように交渉しろと促されるのではないかと申請をためらうケースが出てしまうのではないでしょうか。場合によっては、自治体が支給抑制をするために、申請の際に、養育費の相談をしてから来いと追い返すことに使われるかもしれません。
養育費の取り決めのチェック欄を申請書の記載事項に加えることをやめるべきだと思いますが、いかがですか。
次に、一人
親家庭の母もしくは父が、看護師や介護福祉士等の資格取得のため学校等に行く場合に、その間の生活費として支給される高等職業
訓練促進給付金について質問します。
今回、対象となる資格を拡大することとしており、一定の前進だと考えておりますが、本当に必要な人に届いていくのかはいささか疑問です。
まず、
支給要件として、現に
児童を扶養している者となっており、乳児院や
児童養護
施設等に子供が入所中の親は受け取ることができません。例えば、十代で出産し、養育力がないということで子供が乳児院に入っているような場合、この給付金を利用して資格を取得し安定した職につくことで家族が再統合できる可能性がありますが、それが許されていないのです。
子供との生活を取り戻そうと考えて資格取得を目指すなら、子供が
施設に入所中でもこの給付金を支給すべきだと思いますが、いかがでしょうか。
また、この給付金は生活保護世帯も対象外となっています。例えば、離婚の際に得た慰謝料を学費に充てて資格取得を目指し、この給付金を受けたとしても、月に十万円、それに
児童扶養手当と合わせても、家賃のかからない持ち家や実家住まいならともかく、賃貸に住んでいて家賃を支払わなくてはならない場合は、この金額ではとても生活はできません。ところが、生活保護受給ができれば不足分を賄うことができ、自立に向けて安心して資格取得に励むことができます。
しかし、現状では、生活保護を受けるには、まずは貯金を使い果たしてからでないと受け取ることができない上に、このような安定した職を得ることにつながるような資格を取得するために学校に通うことは許されておりません。これでは、自立を阻害し、生活保護の脱却を阻んでいるとしか思えません。いっときお金がかかっても、資格取得により自立できれば納税者になるのですから、けちけちすることはないと思います。
高等職業
訓練促進給付金を生活保護世帯でも受給できるようにすべきだと考えますが、いかがでしょうか。
次に、生活保護制度が子供たちに冷たい制度であることを指摘してまいります。
高校生等の生活保護世帯の子供がアルバイトなどで収入を得ると保護費が減額されますが、自立更生
計画を福祉事務所が事前に
承認していれば、大学等へ就学するために必要な入学料等の
経費については収入認定から除外して、保護費を減額しない取り扱いにはなっています。
しかしながら、現状では、制度に対する無知からでも、子供のアルバイト収入があることが発覚すると、不正受給だとして返還を求めている自治体が数多くあります。
子供の収入は、できる限り子供自身のために使えるようにすることを地方自治体に徹底すべきだと考えますが、いかがでしょうか。
生活保護世帯の子供が、高校卒業後もしくは中学卒業後に就職し、そのまま親と一緒に暮らし続けると保護費が減額される、もしくは生活保護を打ち切られることになります。十代の若者が、就職した途端に、自分の親や弟、妹などの家族の支え手になってしまうのです。
貧しい暮らしから脱却したい、少しでも親に苦労をかけたくない、そんな思いで高校を卒業してすぐに就職したら、途端に一家の大黒柱になってしまう。こんな状態でこの先の将来に希望が持てるでしょうか。
だからといって、ひとり暮らしができるかといえば、高卒の初任給は平均十六万円程度ですから、手取りでは十三万円台、これで家賃を払って暮らすのはかなり厳しく、貧困の連鎖を招くだけではないでしょうか。
そこで、
提案します。
子供が就職した後、そのまま同居していても、世帯分離をし、親の世帯はそのまま生活保護を受給できるようにし、子供は子供の人生を歩めるようにすべきだと考えますが、いかがでしょうか。
最後に、安倍総理の肝いりで始まった子供の未来応援基金について質問します。
参院の予算
委員会で民主党の蓮舫議員から、二億円の
経費をかけて、集まった寄附は二千万円と批判されました。経団連の役員も呼びかけ人に名前を連ねていますが、経団連の寄附はその後も芳しくないようです。
この基金への寄附は集まらなくても、経団連から自民党への政治献金は二十億円を超えています。私が自民党総裁なら、自民党への献金を一部辞退して、子供の未来応援基金へ寄附していただくよう各企業にお願いしますが、安倍総理にはそんな考えはないですよね。
そして、この基金の事務局を担うのは、安倍総理がしばしば食事やゴルフをともにするお友達の笹川陽平氏が会長を務める日本財団です。日本財団は、高齢者
施設、障害者
施設等への福祉車両の
補助などの実績があることは認めますが、また安倍総理お得意のお友達人事かという印象は否めません。
まさか、集まった寄附の分配先もお友達優先などということはないですよね。国民の善意で集まった寄附を恣意的に分配することがないよう、公平公正に分配先を決めるべきだと思いますが、加藤大臣の見解を伺います。
アメリカでは、大統領選挙に向けて予備選挙が行われています。この中で、格差是正を訴える民主党サンダース候補が善戦していることに注目が集まっています。サンダース候補は、オハイオ州での演説で、選挙資金ばかり心配するな、自分たちの子や孫に残していくこの星のことを心配しろと言いました。
議場の皆さん、我々日本の国
会議員も、選挙資金の心配をして、献金してくれる企業や団体の方ばかりを向いた政治をするのではなく、子供たちや孫たちに残すこの国を心配し、一人親世帯など政治の助けを必要としている人たちへの政治を行おうじゃないですか。
人は誰しも、親を選んで生まれてくることはできません。国籍も地域も家庭
環境も選ぶことはできないのです。しかし、全ての子供たちはひとしく幸せになる権利を持って生まれてきています。どこの地域に生まれても、どんな
環境に生まれても、どんな親であろうとも、全ての子供たちが自分の人生を自分の望むように切り開いていくことのできる日本にしようではありませんか。