○前原
委員 財務状況が悪いのにもかかわらず
金利が下がっているということをおっしゃいましたけれども、今からちょっと日銀総裁とまた議論をさせていただきますが、
金利が下がっているんじゃなくて、
金利を下げているんですよ。これは
金融政策によって無理やり下げている。
きょうの議論のポイントの
一つは、先ほど、
内閣府の高鳥副
大臣がおっしゃったように、もちろんいろいろな要因があると思います。実質賃金が減っているだけが問題ではないというふうに思いますけれども、しかし、この
金融緩和の副作用というものもちゃんとわかった上で処方箋をしっかり書いていかなくてはいけないということで、少し、日銀総裁と改めて議論をさせていただきたいというふうに思います。
黒田総裁には常に私は申し上げておりますけれども、今の日銀の
金融緩和策は行き過ぎだと思っています。
金融緩和が要らないと言っているのではなくて、行き過ぎだと言っているわけです。私が
経済財政担当
大臣をやっていたときは白川さんが総裁でしたけれども、この方は慎重過ぎたんです。白川さんは慎重過ぎて、
黒田さんは私からするとやり過ぎている。ですから、白と黒の間の灰色がいいのではないかというのが私の意見であります。(発言する者あり)
つまりは、二年で二%の
物価目標というものを実現するためにこの異次元の
金融緩和を行うということをやっておられたわけでありますけれども、これも後で見ますけれども、かなり先送りされていますよね。
私は
金融緩和自体は否定していないということは繰り返し申し上げたとおりであって、白川総裁のときに私は日銀の政策決定会合に全て出て、もう少し大胆な
金融緩和をすべきであるということを申し上げ続けてきたわけでありますので、
金融緩和というものが重要な
役割を果たすという面はあると思うんです。
それで、
黒田総裁がこの
金融緩和をやろうとされていた背景というのは、二つ、私の理解では動線があると思っていまして、
一つは、大量に国債を買うと
金利が下がります。
金利が下がるとこれは貸し出しがふえるのではないか、
お金が借りやすくなりますから。そうなると、
会社は
設備投資がふえる。あるいは、
個人は車とか耐久
消費財を買う。あるいは、マイホーム、
住宅を買う人が出てくるかもしれないということで、実体
経済にプラスの効果が出てくるのではないか。
もう
一つは、これは
企業の動線ですけれども、
金利が安くなる、そうすると他国との
金利差が広がる。特に
アメリカは、テーパリングから、今度は
金利を上げるという政策になっていますので、言ってみれば
日本と真逆の
金融政策をやっているわけでありますので、
金利差が広がって、そして円安・ドル高になり、為替効果もあって輸出が伸びるのではないかという期待もあって、
企業の業績がよくなる。株価も上がる。そのことによって、先ほど
麻生大臣がおっしゃったように、
内部留保に回すのではなくて、
設備投資とか、あるいはそれが賃金というものに対していい波及効果を生む。こういうものを求められていたということが
一つの大きなポイントだと思うわけです。
時間が限られていますのでその検証を一々やりませんけれども、
住宅建設にしてもなかなか伸びていないし、また、先ほど、
企業は最高の収益だとおっしゃった。そのとおりです。二〇一二年の東
日本大震災の後の景気の谷を一〇〇とすると、大体今は
企業収益は一四三ぐらいまでいっていますから、かなり
企業利益は上がっていますね。
ただ、その中の内訳をいうと、四三のうち、
内部留保が三〇ぐらい、そして
設備投資が一四で、賃金はほとんど名目でも上がっていない。こういう形になっていると思います。つまりは、
企業利益というものが、かなりが
内部留保にとどまっていて、そして、
住宅建設もさほどふえていないしというような
状況になっているのではないかと思います。
それで、私が問題としたいのは、そういう効果を期待されたというその方向性については理解をしているわけです、しかし、二年で二%というものを実現するために、異次元の
金融緩和、初めは五十兆でしたっけ、というものをやられた、年の拡大が。それで、一昨年の十月の
金融緩和がまさに象徴だと私は思うんですけれども、追加の
金融緩和をされましたね。あのときに私が日銀から
説明を受けたのは、原油価格が下がり始めた。原油価格が下がり始めたことによって、こびりついたデフレマインドに戻ってしまう。戻ってしまうことは、これはよくない。したがって、追加の
金融緩和をし、そして円安にして、輸入
物価を上げることによってデフレを脱却するということをやるということなんです。
こういう
説明を私は受けたわけでありますけれども、これは、言ってみれば、いわゆる
需要と供給が逼迫してデフレからインフレになるというよりは、かなり無理やりコストプッシュ型でインフレを起こすということをやっておられるし、一昨年十月の追加緩和というのはまさにそういう面があったということは
報告をいただいているわけでありますけれども、そのことが結局
個人消費を押し下げることになっているんじゃないかということを私は従来から申し上げているわけです。
きょうお配りをしている一ページ目のグラフをごらんいただきたいわけですが、確かに、先ほど、
財務大臣あるいは高鳥副
大臣がおっしゃったように、いい数値も出ているんです。例えば
企業の
利益は上がっている。そのとおりです。そして総雇用者報酬も名目でもふえている。そのとおりです。
ただ、これを見ていただくと、これは、政府から出された、日銀から出されたものをベースにやっているわけでありますけれども、これは二〇一〇年の平均を一〇〇としています。二〇一〇年の平均を一〇〇としていて、
消費者
物価というものはどうなっているかというと、この上のものです。確かに今はまた円高に若干なってきましたので、また、原油価格が下がっているということも踏まえて、輸入
物価は下がっている。しかし
消費者
物価はある程度上がっている。
そうすると、二〇一〇年と比べて名目賃金がほとんど変わっていませんから、
物価上昇分を割り引いた実質賃金とか、あるいは実質可
処分所得というのは、言ってみれば、四年間マイナスに沈んでいるわけですよ。先ほど、前年比よりプラスになったとおっしゃいますけれども、前から比べると沈んだままなんです。
こういう実質賃金、実質可
処分所得が沈んでいることが、つまりは、
金融緩和の副作用というものがこの
個人消費を冷え込ませている要因になっているんじゃないかと私は思っているんですが、日銀総裁はどう思われますか。