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2015-03-26 第189回国会 参議院 予算委員会公聴会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成二十七年三月二十六日(木曜日)    午前九時二分開会     ─────────────    委員の異動  三月二十四日     辞任         補欠選任      森本 真治君     小西 洋之君  三月二十五日     辞任         補欠選任      長沢 広明君     新妻 秀規君      東   徹君     清水 貴之君      吉良よし子君     井上 哲士君     薬師寺みちよ君     中西 健治君  三月二十六日     辞任         補欠選任      新妻 秀規君     長沢 広明君      清水 貴之君     柴田  巧君      井上 哲士君     田村 智子君      松沢 成文君     江口 克彦君      中西 健治君    薬師寺みちよ君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         岸  宏一君     理 事                 石井 準一君                 岡田  広君                 古賀友一郎君                 馬場 成志君                 堀井  巌君                 小川 敏夫君                 那谷屋正義君                 若松 謙維君                 小野 次郎君     委 員                 石田 昌宏君                 猪口 邦子君                 大野 泰正君                 太田 房江君                 北村 経夫君                 佐藤 正久君                 島村  大君                 高野光二郎君                 高橋 克法君                 堂故  茂君                 二之湯武史君                 三木  亨君                三原じゅん子君                 三宅 伸吾君                 山下 雄平君                 大久保 勉君                 大塚 耕平君                 小西 洋之君                 田城  郁君                 田中 直紀君                 藤田 幸久君                 水岡 俊一君                 蓮   舫君                 長沢 広明君                 新妻 秀規君                 矢倉 克夫君                 横山 信一君                 清水 貴之君                 柴田  巧君                 井上 哲士君                 田村 智子君                 大門実紀史君                 井上 義行君                 山田 太郎君                 江口 克彦君                 松沢 成文君                 中西 健治君                薬師寺みちよ君                 福島みずほ君                 平野 達男君    事務局側        常任委員会専門        員        小野 亮治君    公述人        一橋大学大学院        法学研究科教授  秋山 信将君        国際地政学研究        所理事長        元内閣官房副長        官補       柳澤 協二君        日本大学経済学        部准教授     川出 真清君        東京大学社会科        学研究所教授   大沢 真理君        茨城県常陸大宮        市長       三次真一郎君        公益財団法人地        方自治総合研究        所所長      辻山 幸宣君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○平成二十七年度一般会計予算内閣提出衆議  院送付) ○平成二十七年度特別会計予算内閣提出衆議  院送付) ○平成二十七年度政府関係機関予算内閣提出、  衆議院送付)     ─────────────
  2. 岸宏一

    委員長岸宏一君) ただいまから予算委員会公聴会を開会いたします。  本日は、平成二十七年度一般会計予算平成二十七年度特別会計予算及び平成二十七年度政府関係機関予算につきまして、六名の公述人の方々から順次項目別に御意見をお伺いしたいと存じます。  この際、公述人先生方に一言御挨拶申し上げます。  本日は、御多忙中のところ本委員会に御出席いただきまして、誠にありがとうございました。委員会を代表して厚く御礼を申し上げます。  本日は、平成二十七年度総予算三案につきまして皆様から忌憚のない御意見を拝聴し、今後の審査の参考にしたいと存じますので、どうぞよろしくお願いを申し上げます。  次に、会議の進め方について申し上げます。  まず、お一人十五分程度で着席のまま御意見をお述べいただき、その後、委員の質疑にお答えいただきたいと存じます。  それでは、外交安全保障について、公述人一橋大学大学院法学研究科教授秋山信将君及び国際地政学研究所理事長・元内閣官房長官補柳澤協二君から順次御意見を伺います。  まず、秋山公述人にお願いいたします。秋山公述人
  3. 秋山信将

    公述人秋山信将君) 本日はこのような機会をいただきまして、誠にありがとうございます。  私からは、日本を取り巻く国際環境変化する中で、これからの日本外交安全保障をどのように考えればよいのか、そしてそのためにはどのように限られた政策資源投資するべきなのか、将来日本がより住みやすい国際環境づくりに自ら関与すべしとの立場から、お話をさせていただきたいと思います。  最初に、これまでの日本外交がどのような性格を持ったものであったのかを簡単にお話をしたいと思います。  今年は、第二次世界大戦が終わって七十周年に当たります。様々な形で戦争を総括する動き国内外であるかと思います。また、そうした動きの中には、多分に政治的意図を含む動きがあるのも確かです。例えば、五月九日にロシアで開催される欧州における第二次世界大戦終結を祝う行事であるとか、九月三日に中国が主催する抗日戦勝記念行事です。  例えば、中国での式典が本当に歴史を過去に追いやり、また新しい歴史のチャプターを開くための真の和解を演出するのであればよいのですが、残念ながら、現在、日本中国はどちらが歴史の日の当たる側を歩いているかをめぐって争っている状況であります。  第二次世界大戦あるいは日中戦争をどう評価するかという争点をめぐり、グローバルに展開されているパブリックディプロマシーのゲームにおいては、真っ向勝負をしようとすれば、恐らく残念ながら敗戦国である日本勝ち目は薄いのではないでしょうか。  しかし、現代という視点から歴史を眺めた場合、日本の戦後七十年の歴史、すなわち国際社会日本との関係世界に誇るべき歴史であると思います。第二次世界大戦中の孤立、独善主義的な姿勢から、戦後は一転して国際協調をより重視する姿勢へと転換し、民主主義自由貿易を原理とする自由で開かれた国際秩序に対して、以下の二つの面で大きな貢献をしてまいりました。  すなわち、第一は、戦後の自由で開かれた国際秩序における最大成功者としての日本です。戦後の自由主義的秩序の優等生として、最大受益者として、他の途上国にとっても学ぶべきところの多い経済成長モデルを提供してきました。  第二に、一九八〇年代以降、政府開発援助その他の経済協力市場の開放等々を通じて、公共財としての自由主義的な国際秩序維持に対し、多大な貢献をしてきました。エネルギー資源の八割以上を海外に依存し、カロリーベースでの食料自給率も四割にすぎない、また海外市場にその経済成長を大きく依存している日本国際協調主義を基調とした対外政策を発展させてきたのは、ある意味では環境への適合としては当然のことであると思います。  とりわけ、第二の点はもっと重視されてもよいかと思います。国家間の関係が安定し、平和的な形でそれぞれの国益を追求することを可能にしてきたのが自由主義的な国際秩序ですが、その中で、この秩序というのは自然にそこに存在するというものではなく、だれかの努力投資によってこの秩序維持されてきたということは注目すべきであります。  そして、その役割は、主として従来アメリカが担ってきたわけでございますけれども、日本がこの面において国際社会に対して果たしてきた役割は、もっと歴史をめぐる政治ゲームにおいて重視される、あるいは強調されてもよいものではないかというふうに考えております。  中国を含む現在の国際社会経済的繁栄に対しては、中国が言うように、ただ単に第二次世界大戦世界がファシズムに勝利したから出現したというものではなく、戦後七十年間、敗戦国である日本やドイツを含めた国際協調の積み重ねの結果、この自由で開かれた国際秩序というものができていたというビジョンを提示するべきであると、これがまさに日本の誇るべき歴史であるというふうに考えております。  このような成功を収めてきた日本ではございますけれども、現在、日本は、大きく変わりつつある国内外環境の中で、従来の外交ビジネスモデルの変更を迫られていると考えます。  環境変化は、以下のような点で顕著であります。  第一に、中国など新興国台頭によるパワートランジション、権力移行が起きているというふうに言われております。アメリカの力が相対化し、中国などが台頭してきております。ここで留意すべきなのは、この権力移行が起きているのは戦後七十年間で培われてきた自由主義的な国際秩序の枠組みの中で起きている話なのか、それともこのような秩序自体変革を迫るものなのかという問題であります。  国際政治権力闘争がその常態であるというふうに言われております。しかし、そのような権力闘争は全く何もない空間、つまり真空の中で生じているのではなく、権力闘争ゲームを戦うためのフィールドルールが存在します。  新興国台頭は、単にゲームにおける力関係を変えてしまうのか、それともフィールドの形やルールまで変えてしまう、すなわちパワートランジションならぬオーダートランジション、秩序のトランジションになってしまうのかという点について、我々は留意すべきかと思います。これは、中国のAIIBをめぐる懸念というのはまさにそのような点であるというふうに考えております。  つまり、これまでの国際金融システムにおいて途上国への融資で重視されてきた環境への配慮やグッドガバナンス、財政規律金融におけるモラルハザードの問題において、もし異なった基準が適用されるということになってしまえば、これまでの従来の国際金融秩序の一端を担ってきた世銀であるとかIMFあるいはアジア開発銀行の力、パワーが減退することになり、その場合、そこには今とは異なる国際金融秩序が出現するかもしれないというリスクであります。  第二に、サイバー空間など、いわゆるグローバルコモンズという新たな領域において伝統的なパワーという概念が通用しなくなってきているという点であります。  サイバー空間や宇宙などは、ビジネスのみならず、伝統的な軍事力の展開において次第に不可欠な存在になりつつあります。その一方で、これらの領域においては、国力や戦力の規模に比例したパワープロジェクションが所与のものではなくなってきております。逆に、国家規模関係なく、より強大なパワーに対して、小さなパワーでも、あるいは非国家主体でも十分に対抗し得る、若しくは抵抗を試みることが可能なのがこのグローバルコモンズであります。このような非対称的な関係というのは、伝統的な国際秩序の在り方に大きな影響を与えることになります。  また、グローバル化した経済、すなわち金融グローバリゼーションであるとか企業研究開発グローバルネットワーク化、あるいはサプライチェーングローバル化、若しくは感染症環境問題などの、いわゆるグローバルイシューズと呼ばれる一国での対応が不可能な問題の国際政治における需要の高まりという点も指摘されるべきだと思います。  こうしたグローバルイシューズの問題の高まりは、国家という主体の地位を相対的に脅かしています。もちろん、国家が引き続き国際政治における中心的なアクターであることに間違いありませんけれども、このようなイシューにおいて、一国単独で考える、物事を考える、政策を考えるというアプローチというのは、もはやこれが有効に機能し得なくなってきているという面も我々は考えるべきであります。  また、このグローバリゼーションでございますけれども、テロネットワークであるとか武器のブラックマーケットグローバル化に象徴されますように、単に経済活動の促進という光の面だけではなく、影の面にもひとしく起きているということを我々は留意すべきであります。そして、そうした影のグローバリゼーションが光の面に与えるインパクトもそれに比例して大きくなっております。  最近、日本人観光客がチュニジアでのテロ犠牲になりました。また、数年前にアルジェリアのガス田が襲撃された事件でも日本企業従業員犠牲になりました。これらは、日本政府政策とはほぼ無関係に、人の往来や企業活動グローバル化した結果として発生しております。そこでは、日本国家として正しいことをしていればテロに襲われないという一国平和主義、若しくは一種独善的な論理は全く通用しないのではないかと考えております。テロリストは、誰であろうと、主張が何であろうと、グローバル化が進めば必然的に誰もが直面せざるを得ない脅威であるというふうに考えております。  このようなグローバル化の中にいやが応でも置かれることになった日本でありますけれども、国内の社会経済要因、とりわけ少子高齢化に象徴されるような問題というのが日本外交資源を縮小させているという事実も見逃すことができません。  恐らく、現在の経済規模維持していくためには、様々な制度の改革だけでなく経済構造変革を迫られることになります。さらに、それに加え、中国やインドだけでなく他のアジア諸国やアフリカなどが経済成長を成し遂げ、マーケットとして、あるいは国際政治プレーヤーとして台頭してくることになります。となると、今後、外交に我々が投入できる資源というのは、財政面においてより厳しさを増し、また相対的に減少するという現象に直面することになります。  その中で、先ほども申し上げましたとおり、現在日本がそれなりに利益を享受している既存国際秩序維持されていくのか、それとも変革を遂げていくのか、現在大きな転換点に差しかかっていると見るべきではないでしょうか。ある意味では、吉田ドクトリンに象徴される戦後の日本環境適応型の対外政策国際環境への最適化に最も適したビジネスモデルであったと言ってもよいかと思います。  しかし、これらの変化を考えると、日本は、これまで、従来の環境適応型外交からの脱却が必要ではないかというふうに思われます。  よく、経営学組織論において、適応適応能力を締め出すということが言われます。つまり、環境への適合に最も成功した組織は、新たな環境変化が起こった際に、新しい環境への適合において困難に直面するという理論です。今の日本は、もしかしたらその成功のジレンマに立たされているかもしれません。  そこで、今後変化する国際環境の中で日本外交をどのように考えていったらよいのかということについて少しお話をさせていただきます。  まず、外交には、短期的に見れば現下の状況に対応するという課題と、中長期的に良好な国際環境を醸成するという目的があります。外交投資に例えてみますと、次のようなことが言えるのではないでしょうか。すなわち、短期的な外交目的というのは一種デートレードのようなものであり、またあるいは現在のポートフォリオを守るための危機管理であると。他方で、今後、日本国際社会から信頼を得て平和国家として戦後七十周年を積み重ねてきたこの状況を今後更に享受していくためには何をしたらよいのか、中長期的な戦略も求められています。現在の状況というのは、戦後七十年間の投資配当を得ている、つまり、戦後七十年間投資をしてきた配当というのが我々の享受している国際環境であるというふうに考えてみるべきでありましょう。  アジア諸国日本に対して好意的なのは、ODAや成長モデルとしての日本成功に負うところが大きいわけですけれども、今後こうした配当を得るためには、現在、今再投資をしなければ得ることができないということを我々は理解すべきであると思います。  こうした今後のために再投資をする、問題は、限られた資源をどのように、どこに再投資をすべきかという方向性であります。  今後我々が直面する課題としては、日本の相対的なパワーの低下ということであることを考えた場合には、恐らくファンダメンタルズとしての国際安全保障環境の改善という部分への投資というのはより重点的に行っていく必要があるということであります。とりわけ、日本投資がより効果的なリターンに結び付くように、すなわちレバレッジを利かすことができるような市場環境、すなわち国際安全保障環境を改善していくという行動が必要であると思います。その点においては、日本弱みを補う戦略が必要であると考えます。日本弱みというのは、今申し上げましたけれども、今後、ある意味ではただのパワーポリティクスではなかなか他の国を凌駕することが困難になってきているという状況であります。  そこで、理念とパワーポリティクスパワーの最適な組合せを可能にする市場環境を追求する必要が出てきます。  例えば、既存秩序挑戦するアクター、例えば中国に対し、この既存秩序に対する挑戦コストを高め、挑戦を抑止する戦略です。一般的には、既存秩序変革し、変革した秩序維持するコストは、既存秩序で振る舞うよりも高く付くはずですが、こうした挑戦への誘惑に駆られないようにすることが重要であると思います。  しかし、日本単独で目標を達成することは困難で、そこには一国平和主義の限界があります。しかし、国際協調主義は、日本強みを持つ分野への資源重点配分を可能にするものであると思います。同時に、国際協調主義は、八方美人外交ではありません。また、おいしいところだけをつまみ食いするなどという要領の良いことは恐らく困難であろうということも我々は自覚すべきであると思います。  外交に投入できる資源が限られる一方、新しいプレーヤー台頭する国際環境の中、将来への繁栄維持するためには、将来の日本に対してより多くの外交資産を残す必要があります。  そこで、最後幾つかの論点を挙げてみたいと思います。  まず、前提として、日米関係は今後も日本対外政策の基軸であるべきだというふうに考えております。その理由は二点です。一つは、日米国際秩序に対する考え方、価値観の共有という点であります。第二点目は、現在、少なくとも現在、世界で最もパワーのある国家であるアメリカと敵対しない、あるいは友好関係にあるということによる資源節約効果が大きいと思います。  この二点を重視しながら、日米関係維持前提とした上で、日本強みを発揮できる分野日本外交資源ポートフォリオを振り向けるべきであると思います。それは、国連などの多国間外交グローバルイシューズなどに対するイニシアチブ、そして唯一の被爆国としての強いアイデンティティーを持つ核軍縮・不拡散外交における取組であると思います。  多国間外交における問題の設定、アジェンダセッティングというのは、従来、我々は所与のものとして扱ってきましたけれども、我々がイニシアチブを取りながら新しくアジェンダをセットし、ルールメーキングにおいてよりイニシアチブを取る、つまり、我々により有利なフィールドでありルールを作っていくための努力、これが恐らく、今後、少ない投資でより大きなレバレッジを得るということのポイントであると思います。  最後に一点だけ、核軍縮・不拡散外交について申し上げさせていただきたいと思います。  これは、まさに短期的投資長期的投資という視点から非常に有効なポイントであります。すなわち、広島、長崎に象徴されるように、日本では核廃絶が国是となっております。他方アメリカ拡大核抑止の下にあると。  この矛盾というのをどのようにすべきかということがしばしば指摘されるわけでありますけれども、これはまさに短期的なリスクとしての、現在我々が直面している中国北朝鮮の核の脅威に対処する拡大核抑止と、同時に、こうした核のリスクを削減していくための中長期的な投資としての核廃絶に向けた取組、これは単に祈るだけ、あるいは訴えるだけの外交ということではなくて、安全保障政策の一環として、いかにこの北朝鮮あるいは中国の核のリスクを廃絶していくのか、あるいは核のリスク中国に対して差しかけられている核のリスクというものをなくしていくことが中国核廃絶の、中国核軍縮前提であるとするならば、地域安全保障への関与というものが必要であると思います。  また、この中で……
  4. 岸宏一

    委員長岸宏一君) 公述人に申し上げます。時間が過ぎておりますので、おまとめいただきたいと思います。
  5. 秋山信将

    公述人秋山信将君) はい、失礼いたしました。あと一分でまとめさせていただきたいと思います。  この中で、日本外交予算を見てみた場合に、国連軍縮会議日本が主催しているものですけれども、過去五年で約三分の一に削減され、また、軍縮・不拡散調査研究等においても過去五年間で四百五十万削減され、八百万円弱となっております。こうした予算の削減というのは、日本が勧進元としてこうした軍縮外交を進めていく上での大きな足かせになっているというふうに考えております。  これは一つの例にすぎませんけれども、日本が今後どのように限られた資産を効率的に配分し、また、限られた資源をよりレバレッジ利かせて将来にリターンを得るためにはどのような国際環境を整えるべきなのか、戦略的に考えることを先生方にはお願いしたいと思います。  ありがとうございました。
  6. 岸宏一

    委員長岸宏一君) ありがとうございました。  次に、柳澤公述人にお願いいたします。柳澤公述人
  7. 柳澤協二

    公述人柳澤協二君) おはようございます。柳澤でございます。  私は、先般与党協議会で合意されました安全保障法整備の具体的な方向性というものを題材に、今後具体的な法案の作成、審議に入っていくわけでありますので、そこで当然議論されなければならないであろう幾つかの問題提起に絞って今日はお話をさせていただきたいと思います。  お手元に安全保障法制についてと書かれた資料を用意してございます。これは、与党協議会表現とは多少、私流に簡略化した表現の違いがございますが、おおむねその内容に沿った形で整理をさせていただいております。  まず、原則的な、全般というところに相当する原則事項として三つのことがうたわれていると思います。一つ国際法上の正当性国会関与等民主的統制が必要だということ、そして自衛隊員安全確保という三つの原則的な考え方が示されたわけでありますが、実はこれ、それぞれ実際にこれ実現していくということはなかなか難しい問題を含んでいるというふうに私は認識しております。  まず、国際法上の正当性というときに、今国際法上正当である、これは他国軍隊を支援する際の他国軍隊の行動についてでありますが、その武力行使が国際法上正当であるために必要な要件は、国連安保理決議のマンデートがあること又は自衛権行使であるということだと思いますね。安保理決議がない場合でもこれを何とかやっていこうというお考えのようでありますから、そうすると、特定の国の自衛権行使が正当であるということを日本国として認定するためにどういう条件が必要なのかといったところ、あるいは自衛権行使ではない、例えば人道介入と書かせていただきましたけれども、もう目の前にある人道的な危機に対して果たしてどこまで強制力の行使が許されるんだろうかというところは、まだ国際的にも決着が付いていない論点であります。この辺をどういう基準で日本が判断していくのかというところが問われてくるのかなと思います。  それから、国会の関与等の民主的統制。これはもういずれにしても是非とも必要なところなんでありますけれども、現実問題として考えますと、国会の事前承認を基本とするという考え方を取った場合に、国会に事前の承認を求めるためには国会に事前に状況に関する説明をしなければ当然いけないということになると思いますが、これは、相手、他国軍隊の、もうありていに言えば作戦についてどこまで国会で説明することができるんだろうか。  私の実感としては、特定秘密保護法があろうがなかろうが、他国の軍隊の作戦あるいは位置といったようなことは、実は最高度の守るべき情報ということになると思います。それがオープンになったら、作戦目的が達成されないし、攻撃の対象になるという危険性があるわけでありますから、この辺の必要性をどうバランスを取って国会の審議に堪えられる説明ができるのかという大きな課題があるんだろうと思います。  それから、自衛隊員安全確保でありますが、私も官僚の頃は、イラクのサマーワでの自衛隊の派遣を、官邸にいていろいろ毎日情勢の会議をやらせていただいて、見させていただく仕事をしておりました。ありていに言いまして、結果として一人の犠牲者も出さなかったわけでありますが、それはいろいろ現地の部隊がもう大変な努力をしたわけですね。  少なくとも地元の住民に銃を向けることもないわけだし、結果、こちらが銃、武器を使わなかったということが、もちろんそれだけでは済まない、それでもロケット弾は飛んでくるし、当たりどころが悪ければ犠牲者は出たのかもしれません。しかし、やはり犠牲者がなかった背景には、自衛隊が果たすべき任務が直接武器の使用を前提とした任務ではなかったという点が大きい。武器を使わない、道路を直したり、学校を直したり、医療の指導をしたりということ、そのこと自体は武器使用を必然的に伴うものではない、ただ、万々が一の身の安全のために自己保存型のいわゆる武器使用権限を与えていたという、そういう条件で犠牲者が出なかったという側面があるというふうに私は今感じております。  そうすると、新しい法制の中でいろいろ武器の使用が拡大する、それはなぜかといえば、そういう任務を与えるからなんですね。治安維持でありますとか、駆け付け警護でありますとか、そういう任務を与えるということは、やはりそれでどうやって安全を確保するんだろうかということ、これは実は非常に大きな二律背反になってくるんだろうというふうに思います。そういったところを是非しっかり法案審議の中でお考えいただきたいと思っております。  以下、個別のテーマごとに少し敷衍して申し上げたいと思いますが、二枚目は、この表現、武力攻撃に至らない事態ということですが、グレーゾーン事態と書かせていただいていますけれども、ここで法律の手当てが必要だとされているのは、米軍等の武器等防護ということであったと思います。  これは今の自衛隊法九十五条の考え方を踏まえて、他国軍の武器等も防護の対象にするというお考えでありますけれども、この規定の一番のポイントは、武器等防護の任務を与えられた、海上自衛隊でいえば艦長の判断で武器等の防護をするということなんですね。したがって、これは、もちろん総理大臣の承認といったような手続は入ってくるだろうと思いますけれども、現場の判断でありますから、そこに事態拡大のおそれというものを絶えず認識しながら運用していかなければいけないという問題があると思います。そこをどう防ぎながら武器等防護をしていくのかというところが非常に大きなテーマになるんだろうと思います。  こういうことが必要なのは、やはり情勢緊迫時なんですね。平時の全く平穏にやっている共同訓練をいきなり襲ってくるようなことはあり得ませんので、つまり、防衛大綱に書かれているような情勢緊迫時に抑止を目的とした演習を日米で行うようなケースで、それが一種の相手から見て挑発になるようなケースで相手が襲いかかってくるかもしれないという心配はあるんだろうと思うんですね。だとすれば、そういうこと自体がどうなのかという、それを国会承認の対象にするかとか、そういうことも含めて是非幅広い議論をしていただきたいと思います。  それから、次の紙でありますが、他国軍隊への後方支援の枠組みについてであります。  これは、周辺事態という、周辺事態が地理的概念ではないという考え方ではあるんですが、さはさりながら、やはり日本が米軍を支援するというのは、日本の能力が及ぶ範囲という意味では日本の周辺にならざるを得ないと私は思っておりましたが、周辺事態法でどう定義されているかというと、周辺事態というのは、そのまま放置すれば我が国に対する武力攻撃に至るなど我が国の平和と安全に重要な影響を与える事態ということなんであります。それを今度は重要影響事態、言葉がどうなるか分かりませんが、我が国の平和と安全に重要な影響を与える事態ということに変更されるようであります。  そうすると、これは武力攻撃予測事態との関係を一体どう整理するんだろうかと。武力攻撃予測事態であれば、むしろ日本防衛にもっと資源を集中しなければいけないんだろうかというような状況設定の問題はありますが、地理的にこれは拡大していくという前提になると思います。  その場合に、その重要影響事態って一体どういうことなんだろう。中東とかインド洋のシーレーンが危ういときとか、いろんなケースはあり得ると思うんですが、それは具体的にイメージできるような議論を是非していただく必要があるんだろうと。そして、そういうケース、仮に相手が相当な軍事力を持った国であるとすれば、その他国の軍隊を支援するということは、日本戦争当事国とみなされて、日本に対する反撃ということも当然考えておかなければいけない。そういうリスクをどう最小化していくかという枠組みを同時に考えていく必要があるということだろうと思っております。  それから、次でありますが、いわゆる恒久法の問題であります。  これは、日本の平和と安全に影響という観点というか、日本防衛とのつながりの観点ではなくて、より広い国際協力の観点からの他国軍の支援ということだと思うんですが、この中でも、従来この種の法律では、私どもは、非戦闘地域ということで活動の地域を整理しておりましたが、今回は戦闘現場以外ではやれるというふうになると聞いております。  これをありていに言いますと、法律ですから、そういうことは、やるかやらないかということは別にして、この法律を適用したときに一番ぎりぎりの外縁に当たる一番ハードな任務を考える、それが法律の授権でありますから、それが一体何をもたらすかという議論をしっかりしておかなければいけないんだと思うんですね。  そうすると、この場合は、言わば前線部隊に弾薬輸送ができるということになってくるんだろうと思います。今まで自衛隊がやっていましたのは、イラクの場合でもC130がバグダッド空港に物資を運ぶ、これは拠点輸送なんですね。そこから先の前線部隊への輸送は、それぞれの前線部隊あるいは前線部隊に組み込まれた輸送部隊がやるということであったわけで、それ以上のニーズは、私は実はそんなにないんじゃないかと思っているんですけれども。  ただ、そういう輸送までやっていくようにした場合に、相手は弾切れで困っている前線部隊ということになりますと、戦闘が始まったからといって中断しますというわけにはいかない。これはもう信義にもとることになってしまうので、なかなかその中断の枠組みを本当にこういうシビアなケースでどう確保できるんだろうかという問題。  あるいは、そういう前線部隊がいる地域というのは、そこに指揮系統のはっきりしない他国の部隊がのこのこ入っていくというのはそれ自体非常に危険なことでありますから、その際の指揮系統なりをどのように考えていったらいいのか。非常に現場に即した問題意識でそこは議論をしなければいけないんだろうと。  それからもう一つ国連決議、ずばりの武力行使容認決議がなくとも、なくて活動している他国軍隊への支援もできるということであります。  それは、例えばイラク戦争とかISIL有志連合への支援はしないと政府は答弁しておられますけれども、それは政府の政策の、今の政策の問題であって、法律から出てくる論理ではないはずなんで、じゃ、それは法律の中に仕組めないのか。少なくとも、それは今の内閣だけではなくて後の政権も拘束するような形で、何らかのいわゆる歯止めがなくてもいいんだろうか。こういったことを是非お考えいただきたいというふうに思います。  それから、さっきも申し上げました、安全確保ができないと部隊長が判断した場合に、それはまずいからやりませんと、その多国籍軍の司令部でそういう主張が果たしてできるんだろうか、これは誰がお断りするんだろうかということも、非常に技術的な問題ではありますが、こういう手当てをきちんとしないと、現場の自衛隊は安心して行かれないということにもなりますので、是非具体的に、やはり部隊も非常に悩ましい任務になると思いますので、是非、政治の場でもここのところはもうお悩みいただく必要があるだろうと私は思っております。  それから次に、五枚目は、いわゆるPKO等であります。  PKO等という中に、国連統括外の活動も入ってくるというのが今度のお考えのようでありますので、その際も、五原則に相当するような厳格な参加原則を打ち立てるということを言っておられますが、一番の問題は、中立維持ができるかということだと思うんですね。  今のPKO、非常に、何というんでしょうか、停戦に従わない連中をどう押さえ込むかということが非常に大きな課題になってきているんですね。そういうところにそういうミッションも含めて入っていくということになると、大変これも難しい話になっていかざるを得ないんだろうと思います。  特に、従来の国又は国準でないという認定をしていけば、武器の使用が憲法に触れることはないという、それは今までの考えの延長線上でそう言えると思うんですが、憲法に適合するかどうかということと、では、そういう組織と本当に、そういう組織に強制力を働かせていくということが本当に日本にとって得意な分野なのかどうか、あるいはそこで隊員の安全が守られるのか、そういったようなことを考えていただく必要があるんだろうと。  特に、治安任務なんかは非常にリスクの高い任務でありますから、今までPKO任務で、PKOの治安任務で各国で犠牲者も出ていると思います。その辺の状況も是非検証していただいて、政治家の皆さんが、うん、これなら大丈夫だという確信を持っていただきたいと思うのであります。  それから、六ページ目でありますが、いわゆる集団的自衛権の限定行使のときについては新三要件がそのまま、七月一日、昨年の、閣議決定にうたわれた新三要件がそのままにされておりますけれども、やはりこれはより具体化した基準を書いていただかなければ政府の自由裁量ということになってしまう。それを極力、どうその基準を設けていくかということが非常に大きなテーマになるだろうと。そして、新事態というようなことも言われていますが、是非、我々は今まで考えていたのは、武力攻撃事態か予測事態かなんですね。そうすると、武力攻撃事態ではないが予測事態よりも厳しいという、そういう新事態というのがどういうふうに考えられるのか。これをすっきりさせていただく必要があるだろうと思います。  それから、国会の事前承認についても、冒頭申し上げたのと同じような問題があると。  最後に、船舶検査等については、邦人救出のことだけ問題提起させていただきますが、領域国の同意あるいは総理大臣の承認があれば自衛隊が武器使用を前提にした邦人救出ができるようにするというお考えのようでありますけれども、これは事前に公表されるようなことになりますと、邦人が非常に危険な状態になることはもう常識で分かることだと思うんですが、あるいは、イナメナスのような内陸千キロに入ったところに部隊を展開するためには一体どれぐらいのものを持っていかなきゃいけないのかというような、ここはもう非常に現実的にイメージできることでありますから、そういうイメージに基づいてしっかり議論をしていただき、国民あるいは自衛隊に不安を残すことがないような法律を是非目指していっていただきたいと思います。  私の発言は以上で終わらせていただきます。ありがとうございました。
  8. 岸宏一

    委員長岸宏一君) ありがとうございました。  以上で公述人の御意見の陳述は終わりました。  それでは、これより公述人に対する質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  9. 山下雄平

    ○山下雄平君 自由民主党の山下雄平です。  今日は、お二人の先生に貴重なお話をいただき、本当にありがとうございます。  ただ、時間の関係もありまして、早速質問に入らせていただきたいと思いますし、まとめてお二人に質問をさせていただければと思います。  まず、秋山教授ですけれども、秋山教授が言われた、日本がこれまで国際秩序維持貢献してきたという点をもっと強調していけばいいという話は、なるほどなというふうにも思いました。  そして、今後の状況変化にどう対応していくかという点についてですけれども、秋山教授の御専門の核軍縮に絡めてちょっとお聞かせいただければと思うんですけれども、ロシアが、クリミア紛争での核兵器の使用が選択肢にあったというようなことをプーチン大統領が言及されています。これに対して、秋山教授は新聞のインタビューで、政治的な威嚇を目的としたもので本気で核兵器を使うつもりはなかったと思うと、ただ、核保有国は自国の安全保障のために最終的に核を使うかもしれないとの疑念を抱かせたというふうにおっしゃっていらっしゃいます。  ロシアは、クリミアだけにとどまらず、デンマークについても、アメリカのミサイルディフェンスの計画に入るのであれば、ロシアの核攻撃の対象になるというような言い方もしております。ちまたでは、ロシアに限らず、限定的な核戦争の危険性というのは現在高まっているんじゃないかというような報道もたくさんあります。  日本の周りにロシアに限らず核保有国というのがある中で、そういった国を隣国に抱えながら現実の日本国家の存立を保ちながらどうやって核軍縮を進めていけばいいのかということを、日本としてどう対応していけばいいかという点について具体的にお話をお聞かせいただければと思います。  そして、柳澤理事長に関してですけれども、現職時代の貴重なお話をいただき、本当にありがとうございます。また、柳澤さんを始め多くの皆さんが努力していただいたおかげで自衛隊の方が誰も亡くなることがなかったということだと思います。本当にすばらしいことだと思うんですけれども、現状の自己保存型の武器使用であったとしても、自衛隊を海外に出す場合というのは、その自衛隊の方がどのような危険があるのか、またその自衛隊員の命が懸かっているという自覚を政治の側、政府の側は持たなければならないというふうに痛感しております。  それを踏まえた上で、今回、安全保障の法制の見直しの中で、治安維持だったり駆け付け警護だったり任務を拡大させようというふうに政府としても与党としても考えているわけですけれども、柳澤さんがおっしゃっていらっしゃった趣旨というのは、そういったことで任務が拡大することによって少しでも自衛隊の方の危険が高まるのであればその見直しはすべきではないということなのか、若しくは、そうした自衛隊の皆さんの今後想定され得るリスクについて、政治、政府は率直に語って、そのことについて国民に問うていくべきだというふうに考えていらっしゃるのか、どちらの方なのかということをお聞かせいただければと思います。
  10. 岸宏一

    委員長岸宏一君) まず、じゃ、秋山公述人からお願いします。
  11. 秋山信将

    公述人秋山信将君) 山下先生、御質問ありがとうございます。簡単にお答えしたいと思います。  一つは、ロシアの核の使用の威嚇の発言でございますけれども、これは恐らく、実際に実戦で核兵器を使用した場合にどこで使用するのかということを考えていくと蓋然性は低いであろうということでありますが、他方で、核の力を背景として自らの政治的な主張あるいは意思を押し通そうとするということが今後常態化するリスクというものを高めるということであります。  これは、恐らくアジアにおいても適応するロジックであるというふうに考えております。特に、東南アジアの友人が懸念を示しているのが南シナ海での問題であります。東シナ海においては日本アメリカとの同盟の下にありますけれども、南シナ海においては東南アジア諸国は正式な同盟を結んでおりません。したがって、こうした核の力を背景にして大国が自らの意思を押し通そうとする場合にどのように対抗し得るのかということが非常に大きな懸念として持ち上がってきております。  したがいまして、こうした問題に対処するためにも、核兵器を使われないような国際的な安全保障のアーキテクチャー、あるいはこうした威嚇というものが信憑性を帯びて伝わらないような環境づくり、つまりアーキテクチャー、安全保障の仕組みというものをつくっていくということが、一つその核兵器のリスクを、あるいは核の脅威を低めていく方法であると思います。
  12. 岸宏一

    委員長岸宏一君) ありがとうございます。  じゃ、柳澤公述人
  13. 柳澤協二

    公述人柳澤協二君) ありがとうございます。  御指摘のとおり、従来の任務でもやはりリスクは当然あったわけでありますね。そして、私も現職の頃、何とかNGOとか避難民とかそういった方々を守れる範囲はもうちょっと広げてもいいんじゃないかという問題意識はずっと持っておったんですけれども、今、私、それは、イラクまでとそれから今日と非常に状況は変わってきているという認識です。それは、例えばISILのような暴力と殺りくそのものを目的にするような集団が出てきている、その中で、もうこれは残念ながら、私は、今自衛隊がどんな任務にせよそういう集団がばっこしているような地域に入っていくことはやはりやめた方がいいと、今私は考えております。  それは、そういう、当分その状況は改善されないと思いますが、やはり、そこで日本が出ていけるようなチャンスが来たら、それはそれでまた独自性を持った活動をしていけばいいんだろうと思うんですけれども。ただ、お考え、御判断はいろいろあろうと思います。それでもやっていくというのであれば、私は、同時に、それはどういうリスクがあるんだということをしっかり国民の前にお示しした上で議論していただく必要があるというふうに考えております。
  14. 山下雄平

    ○山下雄平君 またお二人に別々の質問をさせていただければと思うんですけれども、秋山教授がお話しになった一国平和主義から国際協調へという話についてですけれども、現在の安全保障法制の見直しの方向性というのはそれに寄与するものというふうに考えていらっしゃるかどうかという点をお聞かせいただければと思いますし……(発言する者あり)あっ、一つ、じゃ、それで。
  15. 岸宏一

    委員長岸宏一君) では、秋山公述人、どうぞ。
  16. 秋山信将

    公述人秋山信将君) 私は、この国際協調主義の中ではつまみ食いは許されないという立場でございますので、今後の安保法制の見直しにおいて、より大きな役割日本安全保障においても果たすようになれば、これは国際協調に寄与するものであるというふうに考えております。
  17. 山下雄平

    ○山下雄平君 最後柳澤先生にお聞かせいただければと思うんですけれども、国会の民主的な関与についてですけれども、他国の作戦についてどれだけ情報が開示されるのかという話がありましたけれども、これは、日本に限らず、ほかの多くの国でも国会の関与というのは必要だと思うんですけれども、それに当たって、他国ではどういった形で、集団的自衛権も含め、国際協力をするときに情報が開示されているんでしょうか。他国の事例をお聞かせいただければと思います。
  18. 柳澤協二

    公述人柳澤協二君) 恐らくどこの国でも、なかなか軍隊の行動の作戦の中身そのものを大っぴらに議会で議論するようなことはできていないと思います。  ただ、特に我が国の場合、こういう法制をつくって今拡大していくという、そういう局面にあるわけですから、そこのところで法律上明確な具体的な基準を細かく書けるならば、それはまた別なんだろうと思うんですね。  しかし、やはり具体的な事例にこれから一つ一つ我々が、日本国が経験していかなきゃいかぬことですから、そこはしっかり議論をし、それから、事前がなかなか難しいとしても、事後の検証をしっかりやるということも必要なんだろうというふうに思います。
  19. 山下雄平

    ○山下雄平君 以上、終わります。ありがとうございました。
  20. 岸宏一

    委員長岸宏一君) ちょっと皆さんにお諮りいたしますが、ただいま両筆頭からは了解をいただいたんですが、質問される方々はお立ちでやるわけですが、公述人の方々はもう大変な人数の方々にお答えするということになりますので、着席のままお答えするということでお許しいただくような形でよろしいですか。  それでは、公述人先生方、着席のままで結構でございますから、よろしくお願いします。
  21. 藤田幸久

    ○藤田幸久君 ありがとうございます。民主党の藤田幸久でございます。  お二人、どうもありがとうございます。  時間の関係で、申し訳ございませんが、主に柳澤公述人に質問させていただきます。  与党の協議会の文書で私が一番気になっておりますのは、日米安保条約の効果的な運用に寄与しと書いてあります。ということは、先ほど柳澤さんがおっしゃっていただいた中で、全てにこれが出てきてしまう。だから、一番危険なところにどこまで行くのか。あるいは、法律論でどこまでという場合に、これが全部オーバールールになってしまう。  この日米安保条約の効果的な運用に寄与しということがどういう影響を持っているのかということについてお聞きしたいと思います。
  22. 柳澤協二

    公述人柳澤協二君) そこは、例えば、私どもも現役の頃、あれは昭和五十三年ですから一九七八年の日米ガイドラインを作り、そして九七年にその改定をやっておりますけど、最初のガイドラインはいわゆる日本有事をテーマにしたものでありました。これは、安保条約第五条のアメリカ軍の来援をどうプランしていくかということにつながっていったと思うんですね。  そして、九七年のガイドラインでは、まあありていに言えば、韓半島、朝鮮半島有事を前提にして、来援に来る米軍をどのように日本が支援できるかという、一種それは地理的概念ではないと言い条、安保六条に根っこがある、そういう作業だったというふうに私は認識しているんですけれども、そうすると、今度、グローバルな局面で日米協力を展開していくというのは、実は安保条約に直接の明文があるわけではないので、そこのところはぎりぎり言っていけば、安保条約そのものをちゃんと書き直すのが本来の筋でしょうということになるんだろうとは思うんですけれどもね。  そこで、昨年十月のガイドラインの中間報告を見ますと、日米同盟のグローバルな性格に着目しというようなことが書かれていますが、これはしかし、グローバルな性格というのは非常に定義のはっきりしない言葉ですね。では、グローバルな範囲でやはり安保条約に根っこがあるところ、ないところで、そこはおのずと差が出てくるんじゃないかという議論もあり得るところだと思います。  その辺がどうも、地理的に無限定になっていくのではないか、内容的にも無限定になっていくのではないかという心配が拭い切れない一つの原因はそこにあるのかなという感じはしております。
  23. 藤田幸久

    ○藤田幸久君 その部分を、法律論的に今の表現の部分をある程度規定していくことが可能なのかどうかということと、それから、いわゆる段階的に、地理的に、結果的に広がっていったことと同時に、先ほど心配しておられました一番ぎりぎりの局面、あるいは国連決議、いろいろございますけれども、決議の内容が曖昧な場合とか判断が危うい、あるいはいろんな解釈がある場合に、この日米安保条約の効果的な運用に寄与しということがオーバーライドしてくる可能性、その二つについてお聞きしたいと思います。
  24. 柳澤協二

    公述人柳澤協二君) これは、ずっと非常に私どもにとっても悩ましい話だったと思うんですね。そして、私も今記憶に残っておりますのは、九九年のあの周辺事態法の審議の中で、ちょうどNATOのユーゴ空爆の真っ最中の審議であったということでいろんな議論がありました。  それで、例えば、アメリカ国際法上違法な戦闘をする場合に、それをガイドラインでサポートすることはどうなんだという議論もあったと思います。そのときの、今でも私は覚えているんですが、政府の答弁の趣旨は、日米安保条約には国際法を遵守すると書いてある、したがって、アメリカ国際法に反することをすることはないんだという答弁だったと思います。  しかし、これはトートロジーなので、そこのところを、それはもう、今後はある意味グローバルに軍事的な後方支援をしていくということなんですから、そのアメリカ軍の武力行使、まさに評価をもっときっちりやっていかなければいけない。以前は人ごとだったかもしれないけど、今度は我が事としてアメリカ軍の武力行使をしっかり判断していかなければいけないという立場に理論的にはなるはずでありますから、その辺を本来であれば法律にしっかり書き込むというのが筋ではないかなと思います。
  25. 藤田幸久

    ○藤田幸久君 アメリカは、現場における様々な作戦等において、確かに法律的にも不備な面があるので、こういう点を整えてもらえば有り難いというアメリカの軍部の現場からの要請は一方であると思うんですが、政策論的に、例えば日本が尖閣等があるので、いろいろ中国あるいはいろんな国に対して軍事的な活動を政策的に踏み越えていくということについては、むしろ抑制的といいますか、消極的に見ているんではないかと。つまり、現場はいろいろ体制を整備してほしい、ただ、日本がいろいろな意味政策的に拡大していくことについてはむしろ慎重論があるんではないかと思うんですけれども、その点についての見通しと、時間がないので、ということは、一番心配しておられた点については、むしろネガティブリストを作った方が現場としては、あるいは法律的に安定するためにはいいんではないかと、その二つ、関係しているんじゃないかと思いますが、その点についてお聞きしたいと思います。
  26. 柳澤協二

    公述人柳澤協二君) アメリカの評価は、それは、現場の軍とそれから政治の間で当然見ているところが違いますから、一般論として、日本がもっとたくさんやってくれるということは、それはいいことだということになると思います。  ただ、それが、アメリカのスタンスは、さっきの秋山先生の言葉で言えば、今の中国等のチャレンジがオーダーに対する挑戦にならないようにするための一種のヘッジなんですね。ですから、それが最初から前面に出るということが、政策的なスタンスとしてはアメリカと必ずしも一致しない部分が出てくる。むしろ、緊張を高めることをアメリカの政治は必ずしも賛成しないんだろうと思います。  あとは、済みません。
  27. 藤田幸久

    ○藤田幸久君 ネガティブリスト。
  28. 柳澤協二

    公述人柳澤協二君) そういう意味で、ネガティブリストというのは、ネガティブリスト以外は何でもできるという形になっていって、どうも今の方向性がそれに近い、与党が御協議になったのはそれに方向性としては近いようですが、ただ、依然として、日本防衛の文脈でいうとポジリストなんですね、九十五条の話にしろ。だから、そこら辺が、まあどちらがいいかということはありませんが、ネガリストにしていけばいくほど、現場の判断で事態拡大のリスクは高まるということを政治は認識しておく必要があるということだと思います。
  29. 藤田幸久

    ○藤田幸久君 秋山先生に一つ、戦後のことをおっしゃいましたが、例えばサンフランシスコ講和条約というのは、中国、台湾、北朝鮮、韓国、ロシアが参加していない。したがって、それまで日本は戦後の秩序についての実は活動を余りしていない。やっぱり朝鮮戦争があったことによって、吉田総理の判断もあったけれども、経済優先で来たということの方がかなり大きいんではないかと。先生の説明の部分は、むしろその一九五一年以降、あるいは日韓、日中の国交回復以降の部分が強いんではないかという印象を持ったんですが、それについてコメントをいただけたらと思います。
  30. 秋山信将

    公述人秋山信将君) ありがとうございます。  おっしゃるとおり、まさにその戦後の秩序というものが五〇年代半ばを境にして、あるいは中国国連加盟というか、中国と台湾の代表権が入れ替わった七〇年代、幾つかの転換点はあると思いますが、基調としてはやはりサンフランシスコ平和条約に基づいたものであって、日米関係という、すなわちアメリカが提供してきた公共財というものに我々の繁栄というのは立脚しているという意味でいうと、我々が既存秩序受益者であるという話であります。  恐らく、今後北朝鮮がもし何らかの形で国際社会に復帰するようなことがあれば、彼らもこの国際秩序受益者になっていくという意味でいうと、今の既存の体系というものが、どの価値観であったりとか、秩序の、ルールの体系に基づいているかということを考えたときに、この七十年間を通して考えるということが重要であるというふうに考えております。
  31. 藤田幸久

    ○藤田幸久君 ありがとうございました。
  32. 矢倉克夫

    ○矢倉克夫君 公明党の矢倉克夫です。  秋山先生、柳澤先生、今日は貴重なお時間いただきまして、本当にありがとうございます。大変に示唆に富まれたお話をいただき、有り難いなと改めて思っております。  主に秋山先生にお伺いをしたいと思うんですが、先生のお話をお伺いして一つ感銘を受けたのが、特に安全保障環境変化ということをよく言われているわけですが、その場合、国内では防衛の関係が非常に議論をすることが多いわけですけど、先生の場合、それを、同じ状況を捉えた上で、日本外交政策をその環境の中でどうするのかというふうに捉えられていたのは非常に感銘を受けました。  特に、日本がとりわけその中でどのようにしていくのかという話、一つの実用的な話としては投資という部分というふうに捉えた枠組みで分かりやすく教えてくださいまして、戦後秩序の中では日本敗戦国という立場、その部分ではマイナスはあるわけですが、それを乗り越えていく価値というのは何なのかということを教えてくださったという点は非常に感銘を受けたところであります。先生のおっしゃった、日本が何をもって外交力を高めていくかという部分で、核軍縮という話をされたという理解でおります。  それで、まず前提でお伺いしたいんですが、日本核軍縮の枠組みで外交力を維持していく、それは当然ですけれども、核保有国を入れ込んでいく形でやらなければいけない、核保有国には入るインセンティブも与えなきゃいけないわけですけど、それは、現状の認識としての確認なんですが、まず、今までの核の力というのが国と国との間の抑止力であったものが、今は核の流出の問題もあって、それぞれ、同じような核保有国であっても、国と国との抑止力という部分以外に、流出をした核がテロ組織とかに使われるというような共通の新たな敵が出てきていると。それに対してどうするかという枠組み、そこに入れ込むという意味合いで、核保有国も一緒に共有の理念を持てるというような御理解が前提にあったかと思うんですが、そこは正しいかどうか、まず教えていただきたいと思います。
  33. 秋山信将

    公述人秋山信将君) 御質問ありがとうございます。  今のお尋ねのいわゆる流出ニューク、核の流出、あるいはテロリスト、非国家主体が核兵器を持つかもしれないというリスクですけれども、これは明らかに国際社会において共有されている認識であります。特に、最近のテロリストの活動が活発化しているということと、それから核の利用、原子力の利用が広がっているということで、核爆発以外にも放射性物質をまき散らすような核テロというリスクというものはより身近に感じているようになっているというのは、中東あるいはヨーロッパにおいて顕著であるというふうに考えております。  この問題を国際社会で協調して対応していくということと同時に、やはり核兵器のもたらす脅威というのは、先ほど申し上げましたとおり、単に核があるから抑止をされているという関係ということだけではなくて、核をめぐる非対称的な関係というものが恐らくより国際秩序において不安定化をもたらす、誤解やいろいろな計算違いによって紛争がエスカレートするリスクというのをもたらされるということでありますので、やはり、いかに核兵器国の間での安全保障関係を安定的にしていくのか、とりわけ米中が今後大きな焦点になっていくかと思いますけれども、これについて我々は一生懸命考えていく必要がありますし、日本はこの関係においては安全保障上当事者でございますので、日本としてもアイデアを提示していく、そのための構想を考えていく必要があると考えております。
  34. 矢倉克夫

    ○矢倉克夫君 その核という部分での日本の発信力を高めていって、それを日本地域安全保障にまた高めていくという、この枠組みつくっていく上では、今既存にある枠組みの中でそのような議論ができるのか、それとも日本独自で新たに枠組みを設定していく必要があるのか。前者であれば、どういう枠組みを利用してそういうような議論をこれからしていくべきなのか。アイデアをちょっといただきたいと思いますが。
  35. 秋山信将

    公述人秋山信将君) 今度、四月の末から一か月間、核兵器不拡散条約の運用検討会議がニューヨークで開かれますけれども、こうした多国間の場においては、恐らく実質的には政策的な議論の深まりということは期待できないかというふうに正直言って思います。他方で、そういう場において、核兵器の在り方について理念的な議論を深めていくということはあるかと思います。  ただ、我々が直面している安全保障上の核の脅威というものに関していえば、これは例えばそうした多国間の枠組みだけではなくて、中国との安全保障対話であるとか、アメリカ日本の間でのこうした核のリスク、核の脅威に対して共通理解を深め、さらにこれが地域の安全保障においてどのような役割を果たしていくのか、あるいはその役割を減じていくためには中国に対してどのような働きかけをしていくのか、すなわちヘッジとそれからそうした中長期的なコミットメント、アシュアランスですね、関与というものを、両方進めていく必要があるというふうに考えております。
  36. 矢倉克夫

    ○矢倉克夫君 まず一つ確認ですけど、核保有国に対して、核のリスクを高め、しっかり認識させるという、その部分での日本強みというのは、やはり日本が唯一の被爆国である、核の非人道性を知っているというところ、そこをまず強調すべきだという点かと思いますが、それで正しいのかという点と、中国との関係でそういうような枠組みをつくっていく、その中で日本の今現状の外交力でここを克服しなければいけない、その枠組みをしっかりつくっていく上ではまだまだ日本外交力高めなきゃいけないところもあると思うんですが、その辺りの課題等を教えていただければと思います。
  37. 秋山信将

    公述人秋山信将君) 核の非人道性をめぐる問題、これは国際社会において最近特に関心が高まっている問題であります。日本は唯一の被爆国としてそうした問題に対してどのような姿勢を取るのかというのは注目されておるわけですが、他方で、核抑止力、拡大抑止に依存しているということで矛盾が指摘されているところではございます。  ただ、核の非人道性の問題、これは恐らく核だけにとどまらず、現在の戦闘においてコラテラルダメージを最小化していくという流れの中において考えた場合に、より核兵器が使いにくくなってきているという状況は恐らく流れとしてはあるのではないかと。  当然、他方で、さっきのロシアの例にありますけれども、引き続き核兵器の役割維持していく、あるいは今後より大きくしていくという流れがありますので、これに対しては、やはり一つは、核兵器の使用をめぐる規範というものに対して、単に人道問題からのアプローチというよりは、戦略論でありますとか、あるいは国際法における核兵器の位置付けでありますとか、そうした精緻な議論を積み重ねていく必要があるというふうに思います。  二つ目の点ですけれども、日本が克服すべきという点ですが、やはりこれは、一つは構想力というか、多角的なチャネルで中国アメリカとより安全保障に関して議論を深めていくための資源というのをどういうふうに我々振り向けていくのか。例えば、シンクタンクの層の薄さでありますとか、あるいはいろいろな、国会議員の先生方も恐らく先方のカウンターパートと交流を重ねておられるかと思いますけれども、そうしたところにおける対話の厚さでありますとか、そうしたものを今後、より厚くしていくということが必要ではないかというふうに考えております。
  38. 矢倉克夫

    ○矢倉克夫君 ありがとうございます。  柳澤先生、先ほどお話をお伺いしました、今、切れ目ない安全保障体制をつくる、私も、これをつくりつつ、いかに歯止めを掛けるのか、この二つのバランスというのが非常に難しいなと思っております。先生が先ほど御指摘くださった論点というのは、どれもこれも本当に大事な部分であるなと、一つ一つそれをしっかり詰めていって、条文の形にもした上で国民の皆様にしっかり説明すると、そのような過程が非常に大事であるなと改めて勉強させていただいた思いであります。  最後、手前勝手な部分もありますが、公明党に対しましての御期待、その部分での一言をいただければと思います。
  39. 柳澤協二

    公述人柳澤協二君) 今いわゆる与党の中で公明党が、言葉は適当かどうか分かりませんが、しっかりエンジンブレーキの役割を果たしていただくことを国民は期待しているんだと思います。そういう姿がしっかり見えるということが大変重要だろうというふうに思っております。
  40. 矢倉克夫

    ○矢倉克夫君 ありがとうございます。終わります。
  41. 小野次郎

    小野次郎君 維新の党の小野次郎です。  まず、柳澤公述人にお伺いしますが、去年の新三要件ですね、閣議決定、新三要件、これ公明党さんなんかかなり努力されて、かなり厳格に歯止めを掛けたという感じは私は持っているんですけど、今度出てくるであろう法案の中の他国軍隊の後方支援、後方支援というふうに捉えられていますが、これが後方支援にとどまるというのは、その七月の新三要件との関係でいうと、憲法上の制約、憲法上の歯止めになっているんだろうかと。何か時代が変われば後方支援じゃなくて前面にだって出るぞみたいな話になりかねないんじゃないかと思うんですが、その点についてはどんな認識をお持ちですか。
  42. 柳澤協二

    公述人柳澤協二君) 実は、その後方支援、例えば恒久法のところの議論は、従来の集団的自衛権の問題ではなくて、他国の軍隊との一体化の基準に関わる部分であるんだと思うんですね。そして、しかしそれが更に展開していくとなると、例の、国の存立が脅かされ、国民の生命、自由、幸福追求の権利が云々という、ああいう要件に当たるとすれば、それは同時に自衛権行使、武力行使の要件にもなってくる。その重なっている部分が実はほとんど議論、説明されていないということですね。ですから、そこは、しかし性質上、両面の可能性は論理的にはあるんだということを踏まえてちゃんと整理していただかなければいかぬのかなというふうに思います。
  43. 小野次郎

    小野次郎君 二つ目は、これは私も官邸にいたことがあるんで、リアルな事実関係の話ですけど、先ほど、たしか国会の関与民主的統制柳澤さんも、これ極めて基本的な要請ではあるんだけれども、しかし現実に実際のときうまくいくだろうかというような趣旨のことを言われました。  私自身も、例えば九・一一が起きて結果的にはその後アフガンの戦争になったわけですけど、あの最初の時期にもうアメリカは、早速アルカイダが犯人だ、ビンラーディンが犯人だって言ったときに、実は日本の官邸だって、どうしてそれが犯人なのかという特定はできていなかったわけですね。  だけど、外交的にも軍事的にもそれを前提にしてどんどんどんどん話は進んでいったわけで、そういう事前公表ができない、非開示なんだっていう、ある意味で特定秘密保護法みたいな感じの明らかにできませんということもあるだろうけど、もっと基本的に、国家間において、そんなことが幾ら友好国であっても分からない、分からないけど決断しなきゃいけないという事態が起きるような気がするんですね。  あの件は別に、今回問題になっている安全保障法制の適用をするかどうかの事態ではないかもしれませんが、そういった類いのことというのはその後のイラクのときも同じなんで、大量破壊兵器がある、物すごいリアルな協力者の、情報協力者のテープとか何かも流されて、あると思ってやっていたらなかったというんですけど、それがどこから、アメリカの中でないかもしれないと思い出したのかというのは、国民に対して日本政府が隠していたというよりも、アメリカ日本の間だって教えてもらえなかったわけですよね。  そういうことというのは、さっきおっしゃった情報が開示できないという問題もあるけど、そもそも国家間において全部手のうちは教えてもらえないで判断しなきゃいけないということがあるんじゃないかと思うんですが、その点について経験を踏まえてお話しいただければと思います。
  44. 柳澤協二

    公述人柳澤協二君) 私も、イラク特措法を延長するときに国会の委員会で決議をいただいているんですね。それは、大量破壊兵器が存在しなかったことを踏まえて、当初の政府の判断について検証をしろという趣旨がうたわれておりました。  私も、イラク特措法に基づく活動終了報告を国会に出しますときに、この部分をどうするのかなということはちょっと悩んだんですけれど、実際検証作業はほとんど行われておりませんでしたし、また、委員会、国会の方も、それを出さないからけしからぬという雰囲気も全くなくて、結局そこのところは触れずじまいで、今でもちょっと気持ちにずっとしこりになって私自身残っているんですね。  やはり、それはもう、あのとき、ブッシュ大統領の回想録の中でも、うそをついたんじゃない、みんなが間違えただけなんだと、こういう言い方をされている。そういうことで戦争が始まってしまったということを、やはりもっと深刻に捉えなければいけないんだと思います。  日本政策プロセスの中で検証作業というのが非常に弱いですね。是非こういう機会に、アフガン戦争、イラク戦争、そんなに昔の話じゃありませんので、是非、併せて望むらくはそういうところの検証をしっかりやっていただくということが、今後判断を間違えないためにも是非必要ではないかなと思います。
  45. 小野次郎

    小野次郎君 重ねて伺いますけど、例えば、政府が国会に対してその部分については非開示だと言われれば、それは事前承認の審議は進まないと思うんですね、ある意味でブレーキが掛かると思うんですが。  逆に、一つは、まさかそのときの政府がフィクションをストーリーとして国会に説明するということはないと思いますけど、国家間においてそもそも知らされていない、あるいは、この情報にはそういうふうに弱点があるんだということも知らされていない状況で、もう総理が自信を持ってこうなんですと、こう言って国会に承認を求めて、国会で本当に、事前承認が原則だ、極めて例外的に事後承認があり得るかみたいなことを我々国会としては議論するしかないんですけど、そもそも前提として、軍事が絡んだ問題について事前に国会で承認を得るということが、日本のことであれば、さっきもおっしゃったとおり、不明な部分があったり非開示があれば審議が進まないからなかなか承認出ないと思うんですけど、外国が絡んだ場合には、政府の方もそうだと思って説明しているとそれで通っちゃうということがあると思うんで、そこについては非常に心配があるんですが、何かうまい手だてはないですかね、それを防止するための。
  46. 柳澤協二

    公述人柳澤協二君) もちろんそこは決め手になることはないんですが、ただ、この種の判断で一番難しいのは、間違えないための一〇〇%の情報があるわけではないんですね、絶えず。しかし、何か考えなきゃいけない程度の情報はあるんですね。そして、それが時に間違った方向を示しているかもしれないという。  やはり必要なことは、いつもその間違っているかもしれない可能性というものを認識しながら、それにはやはりいろんな経験の蓄積が必要だと思うんですが、経験というのはこれからつくらなければいけないわけで、それはやはり、ないとすれば、過去の状況を検証するという中で疑似的な経験を得ていく。そして、政治家の方々も、なかなか戦争とか軍事の話というのは難しいかもしれませんけれども、政策判断のポイントというのは、勘どころはつかんでいただけると思いますので、そういう研さんをしながら、間違えているかもしれない可能性というのを絶えず頭に置いていくということしか手だてはないんだろうかなというふうに思います。
  47. 小野次郎

    小野次郎君 秋山公述人にお伺いしますが、私は、個別的自衛権の行使についてもやっぱり自制的、抑制的であるべきだと思うんですが、それは自国のことだから、外交努力をしたりして、そういう武力による衝突にならないようにするという手だてが取れると思うんですね。  集団的自衛権行使、緊迫した状況の下だと思うんですけれども、その場合に我が国がそんな集団的自衛権の行使をしないで済ませるための紛争当事者に対する外交上の努力というのは、どんな行動が求められるでしょうか。
  48. 秋山信将

    公述人秋山信将君) いろいろ可能性はあると思うんですが、多くの場合、紛争が起きる場合に、日本が直接何らかの形で働きかけるということによって紛争が防止できるかどうかというのは、これはそれぞれの状況によるので一概には言えないと思います。ただ他方で、かなり日本が働きかけによって紛争を防止できるという可能性は正直言って低いと思います。ですので、恐らく政策においては一般的に、事前に紛争を予防するための投資というのは、これはかなり承認が得にくいと。常に紛争が起きるのはそうした事前の予防策が不十分であるという場合が多いわけですが、そうしたところをもう少し日本は研究を深めていくということがあるかと思います。  ただ他方で、実際に紛争が起きてしまう、あるいは起きそうになっていた場合に、日本ができることというのは、恐らく民生的な支援というのは長期的な効果しかございませんので、短期的にこの紛争をやめさせる、あるいは終わった紛争を再発しないようにしていくためには、何らかの形で国連のPKOなり多国間での枠組みを通じた平和を維持していくという活動を日本はもっと考えていくということが必要かと思います。
  49. 小野次郎

    小野次郎君 どうもありがとうございました。終わります。
  50. 井上哲士

    井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。  今日は、お二人の公述人、本当にありがとうございます。  まず、秋山公述人にお聞きいたします。  核兵器の問題ですけれども、これまでに、これなくそうという運動が世界的に盛り上がった、いろんなことがありました。例えば、いわゆる核の冬ということが非常に注目をされたことがあるわけですが、この間でいいますと核兵器の非人道性という問題に非常に焦点が当たっております。その中で、従来、国家安全保障という角度からの議論から人道上の問題という議論が非常に広がっているわけですが、こういうことに至っている背景と、そういう中で唯一の戦争被爆国である日本が果たすべき役割は何かということをまずお願いしたいと思います。
  51. 秋山信将

    公述人秋山信将君) 御質問ありがとうございます。  おっしゃるとおり、現在、核の非人道性というテーマでかなり国際世論が盛り上がってきているということは確かでございます。  この問題が盛り上がってきた背景というか、恐らくこの問題というのは広島、長崎から綿々と受け継がれてきた問題で、現在表面化したというふうに見た方がいいと思うんですが、それは、第一点目としては、核兵器を大国がこれまで使用してこなかった、恐らく核兵器を使用する蓋然性は真っ当な国家においては低いであろうということ、それから、先ほど申し上げましたとおり、コラテラルダメージに関する国際的な規範というのが高まっていて、そのコラテラルダメージを最も誘発しやすい核兵器を使用することに対する、特に欧州においてこの問題というのが大きく認識されるようになってきたというのが第一点目。  第二点目としては、逆説的ではありますけれども、そうした国際的な規範に従わないようなアクターでも核兵器を持てるようになってきていると。ということは、その国際的なルールであるとかに従わないで核兵器を持つということがより大きなリスクになってきている、したがって、核の管理をしっかりしていかなければいけないではないかという、この二つの流れが合わさったものというふうに考えております。  特に、核の人道面からのアプローチというのはより核兵器を使いにくくするわけですので、ある意味では安全保障政策上の核兵器の有用性あるいは核兵器を使用するという選択に対する信憑性を下げていくということなので、核兵器国にとっては余り好ましくない状況であるということは間違いありません。ただ、この流れというのは、恐らく今後逆行することはないとは思います。  ただ、その一方で、先ほど申し上げましたとおり、ロシアが核兵器の使用をほのめかすといったような中で、これは核兵器を持っている国だけではなくて、核兵器を持っていない国の方が核兵器の使用あるいは核兵器による威嚇に対してより大きな懸念を持っていくことが、今後核兵器を取得するインセンティブを高めてしまう可能性があるということでありますから、日本としては、やはり核兵器を持たせないようなインセンティブを提供していくということをしっかりとやっていくことが大きな役割であります。  これは、広島、長崎を背景とした日本の道義的な優越性ということと併せて、しっかりと政策としてやっていくということが必要だと。従前申し上げていますけれども、訴えるだけでは恐らく核兵器というのはなくならない。どうしたら本当に核兵器を持っている者が核兵器を必要としなくなるのか、あるいは、日本にとって核兵器がない状況というのがより安定した国際環境なのかと、そのために具体的な政策として何らかの形で実施をしていくということが必要だと思います。
  52. 井上哲士

    井上哲士君 ありがとうございました。  次に、柳澤公述人にお聞きいたします。  先ほど、戦闘中の他国軍支援について、その他国が行っている武力行使の正当性の判断というお話がありました。私、これは日本が集団的自衛権行使をする場合にも問われると思うんですね。  現状でいいますと、いわゆる三要件に当てはまるかどうかということだけが言われるわけですが、日本に集団的自衛権行使を要請してきている国が自衛権行使として行っている武力行使そのものの正当性ということは当然問われるべきだと思うんですけれども、その点いかがお考えでしょうか。
  53. 柳澤協二

    公述人柳澤協二君) そこは当然そういうことだと思います。  ただ、非常に、七月一日の閣議決定の論理では、我が国の存立が脅かされということで、日本の防衛ともう相当概念的に重なるような言い方をしていますので、なかなかそこのところが問題にされにくいんだろうと思うんですけれど、内容的には当然そのことは絶えず問題にされなければいけないんだろうと思います。
  54. 井上哲士

    井上哲士君 日本が現に武力行使を受けている場合はもう明らかなわけでありますが、他国が受けて自衛権を行使しているということは、当然そこに対する判断というものをしなくちゃいけないと思うんですが、今の枠組みではそれがどうもないというふうに思うんですね。その上で、我が国が集団的自衛権行使をするという場合に、実際には武力行使を受けている、で、それを排除する作戦をやっている国のところに日本が参加をしていくということになります。  政府の議論でいいますと、我が国はあくまでも我が国の存立を脅かす事態になっている武力行使の排除のみをやるんだということなんですが、現場では、その要請国に対しての武力行使、日本に直接関係ないけれども要請国に対する武力行使と、その中で日本の存立の事態にも関わるような武力行使があって、それぞれ排除する作戦ということになると思うんですが、そんな切り分けが果たして作戦上できるんだろうかということを思うんですが、その点はいかがでしょうか。
  55. 柳澤協二

    公述人柳澤協二君) そこは、あくまでも概念上の整理というのはあり得るとは思うんですね。しかし、現実にやることは一つということになりますと、これははたから見てどう見えるかということとも関わってくるのだと思いますし、それから、日本の存立と余りに結び付けて、まあそういう要件になっていますけれども、結び付けてしまうとなると、ほとんどの場合、私、日本に対する武力攻撃の着手と評価できるようなケースしか余り考えられないんですね。  そうだとすると、そこを集団的自衛権ということで正当化しちゃうというのは、かえって、日本が攻められていないのに先制自衛をするような、そんな評価も受けかねないところもあって、そこら辺はまさに今まで経験していないことであるがゆえにしっかり詰めるということが是非必要なんだろうと思います。
  56. 井上哲士

    井上哲士君 それに関連して、つまり、日本の存立を脅かすような武力行使の排除ができれば、現に要請国に対する武力行使を行われていても日本は撤退するんだと、こういうことも言うわけですが、そういうような判断が果たしてできるのかということも思うんですが、それはいかがでしょうか。
  57. 柳澤協二

    公述人柳澤協二君) そこは例の、他に適切な手段がなく、かつ必要最小限度の武力行使にとどまるという国際スタンダードがありますから、それに照らしてやるんだと言わざるを得ない。その意味では、理論的には今政府のお話でお触れになったようなことにならざるを得ないんだろうと思います。  ただ、現実にそれが切り分けられるのかというのはまた別の問題で、それは、一度そこで助けに行っちゃったら、あとここでやめたというのはなかなか現実には難しいんだろうなと、同じ戦域においてですね、という感じはいたします。
  58. 井上哲士

    井上哲士君 一点短く。  従来、非戦闘地域でもできないとされていた戦争準備中の航空機への給油なども今度はできるというふうにするわけでありますが、この点どうお考えでしょうか。
  59. 柳澤協二

    公述人柳澤協二君) 私はそれは、九七年のガイドラインのときは、そういう作業は、発進準備中の航空機のケアというのは、給油も含めて当該国から整備小隊が一緒に来るんですね。そういうことを考えると、現実的にはないだろうということで、もちろん憲法上の評価との関係もありましたけれども、そういうことで除外していたと私は考えております。だから、今度、本当にそういうニーズがどこでどうあるのかということの方が私は本当に考えなきゃいかぬかなというふうに思います。
  60. 井上哲士

    井上哲士君 ありがとうございました。
  61. 井上義行

    井上義行君 日本を元気にする会・無所属会の井上義行でございます。今日はお忙しい中、両先生には本当に貴重な時間をいただき、ありがとうございます。  私の方からは外交安全保障について両先生にお伺いしたいんですが、まず、外交というと、日本ではとかく国際交流的なイメージを持っていると思うんですが、私は北朝鮮でも交渉しましたし、大使とか政府高官とも交渉し、あるいは首脳会談にも同席して、いわゆる日本人が持っている外交というイメージはもう全然違うと。外交というのはむしろどろどろしている部門だというふうに私はすごく経験をしました。  特に、外交というのはギブ・アンド・テーク的なこともありますし、よく外交の言葉に、五三対四七で勝ちということがあって、ゼロ対一〇〇ということはあり得ないわけですね。そういう中ではやっぱり信頼が必要ですし、そのためには情報と戦術が必要だということで、第一次安倍内閣からNSCの設置を訴え続けて、今日NSCができたんですが、このNSCでやはり必要なのは、先ほども柳澤先生が言っていましたけれども、やっぱり検証も必要ですし、やはり経験というのがすごく必要だというふうに思います。  私も、内閣官房あるいは官邸でやはり十五年ぐらいいると、様々ないろんな、先ほど言ったイラクの問題であるとかアフガンであるとか、いろんな事案に遭遇しました。各省では経験できない生々しい情報や、あるいはそのときの緊迫感とかいろんなものを経験すると、それが次に生かせるわけですね。  そこで、NSC設置されてから一年たちますけれども、私はこれまで、五年ぐらいはやはり経験させた方がいいんじゃないかということを訴え続けておりますが、やはり人事だと、二、三年、あるいは五年いると各省に戻ったときになかなか処遇できないということもよく聞かれますけれども、率直に今、柳澤先生から見て、この一年、まだ始まったばっかりですから評価というのはなかなか難しいかもしれませんけれども、今日のNSCあるいはその人事の関係について率直な感想をちょっとお聞きしたいんですが、よろしくお願いします。
  62. 柳澤協二

    公述人柳澤協二君) 私、余りその内実、報道でしか、時々拝見する程度でしかないので申し上げられませんが、基本的には、そういう権限を与えたそういうポストをつくればそれなりに人が育っていく面はあるんだろうと思います。そして、私の実感からいうと、私自身はちょっと要領が悪かったのかもしれませんが、私自身がこれで何となく、多少のことがあってもおたおたせずにいろんなものを見られるようになったのはやはり三年たってからぐらいかなという、そんな印象を持っております。
  63. 井上義行

    井上義行君 まさに私も、やはり内閣官房、官邸にいるとみんなそうなんですね。三年ぐらいたってようやくだんだん分かってきて、そこから今度は新しいことをやろう、こういう試みをしよう、あるいは、過去の経験を踏まえてこういうことをやろうといっても、結局そのときになると異動してしまうと。せっかくの経験がやはり生かせていないので、私も、これから再度、五年ぐらいはいていただきたいなというふうに思っております。  そこで、私はこれまで拉致問題に取り組んできたんですが、柳澤先生から見て、金正日体制から金正恩体制になって率直に今どういうふうに変わってきたか、あるいは、先軍政治、変わりありませんけれども、外から見て、あるいは経験としてどのような形で変わってきているのかをちょっとお聞きしたいと思います。
  64. 柳澤協二

    公述人柳澤協二君) もう時間もあれですから簡潔に印象で申し上げますと、金正日の時代はまだ北朝鮮の考えているゲームの姿というのが分かるように感じられました。金正恩に替わってからはどうもなかなか、どこを着地点にした、何を目指したゲームなのかというところがなかなか見えにくい、それだけ体制の維持が非常により難しくなっているという状況があるのかなというのがまず最初の印象であります。
  65. 井上義行

    井上義行君 そうですね。北朝鮮を考えるときは、やはりアメリカ、あるいはロシア、中国、韓国、それぞれ北朝鮮をどういうような国にするかという思惑があるわけですね。やはりその辺をしっかり情報を収集し、そして協議を重ねていくことが必要だというふうに思っておりまして。  そして、秋山先生にお伺いしたいんですが、やはりこうグローバル化をして、いろんな情報やあるいはインターネットを通じて様々な情報が入ってくる、あるいはエネルギーの確保やあるいはテロが起きる、こういう中で、様々な外交ではいろんな枠組みがあるわけですね。国連とか、あるいはASEANとか、ASEANプラス3とか、APECとか、あるいはG7、G8、あるいはG20、いろんな枠組みをいろんな形でやっているんですが、どうも全体的なイメージとして、集まってはみたものの方向性がきちっと示すことができない今状態になっているんではないかというふうに思っていまして、先ほど秋山先生の方からありました、中国台頭によってこのバランスが非常に崩れてしまって、今までASEANでうまくいってきたのをASEANプラス3で中国の影響力がすごく強くなって、各国も中国を意識しながらやるものですから、なかなか思い切った方向性が示せない状態になっていると思いますので、これからの日本方向性、あるべき姿、例えば安倍総理は日米豪印とか新たな枠組みを模索していると思いますが、やはり日本もこうした枠組み、先生として、どのような方向性に向かっていくのか、あるいはどうあるべきなのか、秋山先生の意見をお伺いしたいと思います。
  66. 秋山信将

    公述人秋山信将君) ありがとうございます。  今の東南アジアの政治的な枠組みのお話ですけれども、恐らくこれはほかの地域でも同じようなことが起きているというふうに思っております。まさにトークショップであって、最終的には合意を目指すためには内容の薄いものを合意として打ち出さなければいけないというジレンマは、特にいろいろな多国間の枠組みの中ではあることではあると思います。  ただし、そこで問題を提起していく、アジェンダをセッティングしていくという機能というのは私は重視していて、それぞれの問題の解決というのは、今、井上先生がおっしゃったようにいろいろな様々な外交のチャンネルで、特に二国間などを通じながら対処していくということであるかと思いますけれども、いわゆるイアン・ブレマーの言うところのGゼロ、つまり誰もがイニシアチブを取れないような国際秩序の中においては、やはり誰が問題提起をして問題の方向付けをしていくかということでイニシアチブを取っていく。そこにほかの人たちのリソースをつぎ込ませるようなやり方というのが重要なのかなと。  中国のAIIBはまさにそうで、中国からの恐らく資金の拠出というのは半額であります。その中で議決権を五〇%超持つことによって、その五〇%、半分しか出していない、残りの額も加えた形で意思決定の権限を中国が持ちたいというのが恐らくAIIBの意図であると思いますけれども、そのような、胴元あるいは勧進元になっていくということを日本はやっていくと。  どのような具体的な枠組みかというのはまたこれはイシュー別にあると思うんですけれども、日本が恐らく今後、相対的に力が低下していく中でやっていかなきゃいけないのはそうした仕切りではないかなと。例えばイギリスであるとかそのほかのヨーロッパの国々が、あれだけ資源が少ないにもかかわらず何らかの形で影響を維持しているというのはまさにそうしたアプローチを取っているからというふうに考えております。
  67. 井上義行

    井上義行君 終わります。
  68. 松沢成文

    松沢成文君 次世代の党の松沢成文と申します。先生方、今日はよろしくお願いいたします。  まず、安保法制の関連で柳澤先生にお聞きしたいんですが、今回の安保法制の議論が今与党協議でやられております。ただ、国民から見ると、新聞を見てもテレビを見ても、もう細かい用語がたくさん出てきて何が何だか分からないと、恐らくほとんど理解できないんじゃないかと思います。実は、我々国会議員の中でも、私を始め、新聞を読んでいても、もう細か過ぎてこれは何言っているのか分からない部分がたくさんあるんですね。  やはり、我が国の安全保障の大きな政策変更ですから、これはやっぱり国民の皆さんにも、もう全部細かくは無理でも、ああ、なるほど、こう日本安全保障の体制というのが変わるんだということは、やはりもう少し理解してもらえなきゃ、なかなかこれは国民国家として言えないと思うんですね。  さあ、そこで、なぜこんなに細かい議論になってしまったかというと、恐らく、シームレス、切れ目のない安全保障体制をつくるんだという美名の下に、全部個別法の細かい改定から議論をしちゃったんですね。ですから、安全保障の体制はこうなんだというこの基本法がないんです。私たちはずっと、この安保法制の大転換をやるのであれば、きちっと安全保障基本法を作って、そして個別的自衛権、集団的自衛権、どういう基本的原則でやっていくのか。多分、新三要件なんかもこれに書き込んでおけば、今度内閣の方でまた勝手に憲法解釈の変更をやって、うちで変えますよということができなくなるわけですよ、しっかりと国会で法律を変えないとできなくなる。  そういう意味では、きちっと安全保障基本法を作る。その中で、例えば自衛隊の部隊行動基準とか武器使用基準も、こういう基本原則でやっていくんですと、その基本法があって、その基本法の下に、じゃ、PKOではこういうことをやっていきましょう、あるいは周辺事態ではこういうことをやっていきましょう、国際の平和への協力はこういうことをやりましょうといって初めて全体が理解できるんですね。  安全保障基本法を、私は、今からでも遅くない、やっぱり作っていかないと、個別法のパッチワークでやっていると全く国民が安全保障政策と乖離してしまって、私はこれは好ましい状況じゃないと思うんですが、先生は安全保障基本法の必要性についてどうお考えでしょうか。
  69. 柳澤協二

    公述人柳澤協二君) 私は、官僚の時代には一貫して、それはお作りになるのもいいけれども、なかなか抽象的なものにとどまるんだろうと。  そこは、むしろ今回のように閣議決定で憲法解釈の幅を変更するようなことよりは、それは法律の方が望ましいとは思うんですけれど、ただ、議論がどうしても技術的なところに終始しているというのは、一つには、実際に立法事実としてのイメージを持たなければいけないという意味でそういう細かい具体例も必要だと思うんですけど、もう一つ、そこに終始しているのは、やはり安全保障というのは、日本がどういう国であるがゆえにどういうふうに守りたいかというその国家像の、国家の自己規定に関わってくるんですね。そこが非常に混乱したまま、語られないまま議論が進んでいるというところにも大きな原因があるのかなと、そしてそれが全体の分かりにくさのもとになっているんじゃないかという印象を持ちます。
  70. 松沢成文

    松沢成文君 内閣府の世論調査で、国民の皆さんに、自衛隊に今何を一番期待しますかというのがある。一番は災害の救援なんですね、復興なんです。大震災でも大活躍しました。二番目は島嶼防衛なんです。やはり、尖閣で様々な領海への侵入があってトラブルがある。あるいは、昨年末には小笠原に二百そうを超える漁船が来て、もう海底のサンゴを全部取っていっちゃって、海上保安庁じゃ全然対応できなかったわけですね。ですから、こういう国民の心配にもしっかり応えていかなきゃいけないと思うんですが、今回の安全保障法制の中でシームレスな対応、切れ目のない安全保障法制というんですが、まさしく大きな切れ目があって、島嶼防衛、日本は大丈夫なのかと国民も心配しているし、私はこの島嶼防衛がきちっとできる体制ができていないと思うんです。私たち次世代の党は、領域警備法というのを作れとずっと言ってきたんですね。  領域警備は、今、海上保安庁の警察力だけじゃもう守れないと思うんです。ここが元祖グレーゾーンと言われたところなんですね。ですから、私は、やはり海上自衛隊の自衛力もきちっと使って、もう平素から領域警備、海上警備行動を自衛隊にやってもらう、そしてそのときの部隊行動基準や武器使用基準は内閣総理大臣や防衛大臣の下にきちっと作ってもらう、それで年に一回は国会に報告をするとか、そういうシビリアンコントロールも含めて、私は、領域警備法、つまり海上保安庁の警察力プラス海上自衛隊の自衛力、これをきちっと平素から利用して、安易な領海侵入とかあるいはもう日本資源の略奪みたいなことは絶対にやらせない体制をつくっておく、これこそシームレスな対応だと思うんですが、先生は領域警備法の姿勢についてどう思いますか。
  71. 柳澤協二

    公述人柳澤協二君) 大変申し訳ないですけど、私、ちょっと考え方が違うところがございまして、そういうケースを、もう日頃、官邸にいるときも考えながら仕事をさせていただいていました。そして、海上保安庁の手に負えない部分は海上警備行動やら治安出動という枠組みで自衛隊が出られるようになっているわけですね。そこで私は法律の隙間があるとは思っていなかったんです。  ただ、いずれにしても、事態を認定することの判断の階段はあるわけですから、そこをいかに適切にかつ迅速にやれるかということが私の関心事であったわけなんですが、そして、自衛隊が出ても、本籍が警察権の行動を取る限り、海上保安庁と同じことしかできないわけであります。ですから、そこのところで、むしろ自衛隊よりは、そういうところはまさに法執行の話として専門の海上保安庁で、数が足りないのは、もうこれは小笠原のサンゴの話なんかは数の問題でありますから、そういうところはもっと海上保安庁の力を付ける。そして、自衛隊が出ることによって事態が拡大するということも当然考えて対応しなければいけない。非常に難しい要素をはらんでいます。  いずれにしても、法律をお作りになるにしても、一番のポイントは、しっかり政治が、そこで政治の判断がシームとして入らなければいけないということが一番のポイントだと私は思っております。
  72. 松沢成文

    松沢成文君 もう時間がないので、秋山先生に一問だけ。  先生は、外交において日米関係重視、それと多国間の新しい仕組みつくるべきだとおっしゃっていました。今経済の方では、例えばAPECとかTPPとかASEANプラス幾つ、いろいろアジア太平洋地域の経済の連携ができてきます。ただ、安全保障アメリカチームと中国チームがどんどん対峙しちゃっているという状況ですよね。  私は、ヨーロッパのNATO型のもういよいよ集団的安全保障体制をアジア太平洋でもやっぱり模索していくべきではないかというふうに思っているんです。これは、アメリカにも中国にも、下手したらロシアにも入ってもらわなきゃいけない。オーストラリア、インドも含めてですね。ASEAN、日本、韓国、フィリピン、みんなです。それを提案して、中国がそんなものに入りたくないというのであれば、じゃ賛同する国でつくりますよと。もしそこで違反の行動が起きたら全員で制裁するという体制、この抑止力も含めてですね、集団的安全保障体制をアジア太平洋地域でももうつくるべきという考えについては、いかがお考えでしょうか。
  73. 秋山信将

    公述人秋山信将君) ありがとうございます。  恐らく、今の国際政治環境を見た場合には、近い将来それは実現しないであろうというふうに考えております。今恐らく、NATO型というふうに先生おっしゃられましたけれども、想定し得るのは、アメリカを中心としてオーストラリア、インド、それから日本、韓国といった、考え方を同じくするようなグループがより安全保障環境を強化していくということですが、この間でもなかなかやはり難しいということもあります。  ですから、恐らく、東アジアあるいはアジア太平洋における安全保障のアーキテクチャーというのはもう少し緩やかなもので、信頼醸成を中心とした、例えば、もしあり得るとするならば欧州の安全保障協力機構のようなものを当初目指していくべきであろうということですが、それをつくるにしても、恐らく、まず当初やらなければいけないのは、政治の間の信頼醸成ということで、そうした組織が機能するためには政治のより深いコミットメントが必要ということでありますので、鶏が先か卵が先かということですが、私は政治の環境改善が先かというふうに考えております。
  74. 松沢成文

    松沢成文君 どうもありがとうございました。
  75. 中西健治

    中西健治君 無所属クラブの中西健治です。  今日は、お二人の先生、本当にありがとうございました。大変参考になりました。  まず、柳澤公述人にお伺いしたいというふうに思います。  他国軍支援の国際法上の正当性、特に国連決議のない場合に他国の自衛権行使の正当性をどう判断するのか、大変難しい問題なんじゃないかなというふうに思いました。特に、お話を伺っていて、この他国の自衛権行使、どういう場合があるのかなと考えてみますと、個別的自衛権でする場合もあるでしょう、さらには集団的自衛権で自衛権行使だと言っている場合もあるということだと思いますが、そこに我が国が他国軍支援をするという場合には、我が国は集団的自衛権の行使というふうにはしていないというケースだということだと思いますが、そうすると、他国が集団的自衛権行使をしていて我が国が集団的自衛権の行使をしない、その中で他国の集団的自衛権行使の正当性を何で測るのかと、そういう場合が実際問題あるのかということなんですが、そこら辺についてはいかがでしょうか。
  76. 柳澤協二

    公述人柳澤協二君) なかなか、日本の場合には後方支援というふうにする場合でも、これは国際法上の評価としては実は武力の行使となる場合があるわけでございますね。ですから、そこは、一つ日本としての判断であるということなんだと思います。それからもう一つは、国際的な、何というんでしょうか、大まかの相場感としての評価という、イラク戦争の場合はそこがまさに大きくずれたわけでございますね。日本は、日本としてそれは安保理決議に基づくものだという評価をしたわけでありますけれども、その両方を見ていかなきゃいけないという、やっぱり、そこでは日本国際社会の中で何をアピールし、どういう立ち位置に立つかというそこの価値判断を避けては通れないんだろうなという感じがいたしております。
  77. 中西健治

    中西健治君 厳格にこの他国の自衛権行使の正当性を判断する基準を何らか考えるとすれば、今回、新三要件というものを国内法では整備をするということですから、その国内法で我が国だったらどうするのかということを考えて、それが基準になるのではないかなというふうにも思うんですが、そこら辺いかがでしょうか。
  78. 柳澤協二

    公述人柳澤協二君) そこは私も一つの発想だと思います。  日本であればこういうケースになってどう行動したのであろうかということを基準に考えると、しかし大抵の場合は、アメリカ軍がやっていることは日本ができないことをやっているということになってしまうのかなというふうにも思います。  そこの評価の仕方で、今までの実績でいうと、なかなかそこの問題を国会で御議論になるときも、政府の答弁は、今までは、それについては日本は当事者でもないし具体的な状況がよく分からないから法的な評価をすべき立場にはないというのが通常の答弁でございましたですね。今度はしかしそれでは済まなくなるということにはなると思います。
  79. 中西健治

    中西健治君 ありがとうございます。  秋山公述人にお伺いしたいと思います。  これまで我が国はリベラルな国際秩序の優等生であったと、そしてその利益も享受していたし、そのモデルともなっていたということだと思います、おっしゃられたと思いますが。  今後というか今現在ということなんですが、ISの明示的な標的にも日本はなっているというようなこともあり、あと、少し日本国際社会における見られ方が今までのリベラルな社会での、国際社会での優等生というものから変わっていると思われるか、変質していると思われるかどうかという点について、いかがでしょうか。
  80. 秋山信将

    公述人秋山信将君) ありがとうございます。  私は、その見方は変わっていないと思います。  申し上げましたとおり、日本モデルというのは、ある意味では、その吉田ドクトリンの場合には、安全保障においてはアメリカへの依存をしながら、そのアメリカの提供する公共財である市場において、それをうまく活用しながら経済復興を成し遂げてきたと。これは、ある意味では、どういうふうに限られた資源をどうやってより効果的に国家の発展に投じるかという教訓、レッスンを他国に多く与えていて、恐らくアジア諸国からの共感、特に、戦争で被害を受けたにもかかわらず現在そうした友好関係維持できているというのは、これはそうしたモデルの提供と併せODAをずっとやってきたからだと、あるいは経済関係をより強化してきたからだということがあって、これは今まさにピークになっていると。しかも、今中国台頭する中で、中国による影響力の拡大を牽制するという意味でもう少し日本に頑張ってもらいたいというのが恐らくアジアにおける本音ではないかと。  他方、中東においてですけれども、やはり中東においても日本モデルというものは非常に信頼されていると。私も中東何度か参りましたけれども、そのたびにそうした日本に対する期待というのは聞いてまいりました。  他方アメリカとの関係においては、なぜ核を投下されたのにこれだけいい関係を持っているんだと、日本にはプライドがないのかというような話もありますが、そこはやはりこの七十年の蓄積というものを述べてきたわけです。  その意味でいうと、今のモデルは、日本のこれまでの在り方については大変良いモデルであったと。今後、もし先ほど申しましたような変化国際秩序に起こっているとするならば、そこはこれまでのモデルが最適なモデルとは必ずしも限らないということで、より新たな構想力が求められていくというふうに考えております。
  81. 中西健治

    中西健治君 ありがとうございます。  続きまして、柳澤公述人にお聞きしたいと思いますけれども、安倍総理は国連改革、国連の安保理入りというものを目指しておられますけれども、柳澤公述人は、安倍総理のこの国連改革、国連安保理入りについてどのような御見解を持っていらっしゃるでしょうか。
  82. 柳澤協二

    公述人柳澤協二君) かつて小泉総理の時代にも、G4として国連改革で日本の常任理事国入りを模索した時期があったと思います。あのときに、大きな理由として、今やイラクでも復興支援の任に当たっているという点をアピールの材料に使われていたと思うんですけれども、それがしかし、あれだけ国際的な評価の分かれたイラクの話について言っていたところがどうだったんだろうかなと。そして、その後私の見たところでは、それはアメリカの横やりが入って、日本だけはいいけれどもほかの国は駄目だというような、そこで頓挫した経緯があったと思います。  今回は、ですから、こういう安全保障上の積極的な対応をまた売りにしていくのだろうかということですね。そこのところが、問題は、国際社会にどういう新たな価値観、価値を日本が提供することができるかという、それをどこで訴えていくのかということなんだと思います。結局それは、軍事的な貢献でいくのか、あるいは今までやってきたような経済的なもの、技術的なもの、ソフトパワーを中心にして売っていくのかという、そこをしっかりしないと、ただ、いずれにしても、大体どの国でも隣の国が反対するわけですから、そういうところをカバーできるような普遍的な価値をどうつくっていけるかということが非常にポイントだろうと思います。
  83. 中西健治

    中西健治君 時間がそろそろ参りましたので、終わりにさせていただきます。  どうもありがとうございました。
  84. 福島みずほ

    福島みずほ君 社民党の福島みずほです。  今日は、お二人の公述人、本当にありがとうございます。  柳澤公述人にお聞きをいたします。  自民党政権も六十年以上、集団的自衛権の行使は違憲としてきました。新三要件を入れるとしても、集団的自衛権の行使をこのような形で認めることをどうお思いになられますでしょうか。
  85. 柳澤協二

    公述人柳澤協二君) 私は閣議決定そのものについて非常に疑問視していますし、やりたいことがあの十五事例に示されたようなことであるのならば、私はもう従来から、本当に必要なら個別的自衛権の範囲でやれますよということも言ってきています。今までの、従来の自民党政権というのは、そこにチャレンジしないということが非常に大きな約束事としてあったわけですね。今度そこにチャレンジされている。それをどっちに、いいと評価するか、どうかなと疑問に思うかということは御判断があるとは思いますけれども、私はなかなか、そういうパズルのピースをはめるんではなくてパズルの絵柄を替えるような話というのは、少なくとももっと慎重であるべきだろうというふうに思います。
  86. 福島みずほ

    福島みずほ君 総理は、国民の命と暮らしを守るとおっしゃいます。しかし、それは個別的自衛権であって、日本の領土、領空、領海、それを守るのは個別的自衛権。個別的自衛権は、外国から攻められているかどうか、かなり一義的に分かる。しかし、新三要件は政府の評価が入るので非常に分かりにくい。しかも、集団的自衛権といいながら日本の存立事態と、あたかも個別的自衛権かのようなものを要件として入れ込むという。だから、実は集団的自衛権の行使なんだけれども、日本の存立という概念を入れたためにむしろ非常に分かりにくくなる。  これは、合憲の集団的自衛権の行使と違憲の集団的自衛権の行使をどこかで区分けするという、とてもそこに、政府がそれで解釈するという、非常に、私から見ると、集団的自衛権とぱきっと言えばいいのに、そこを、概念を国民の理解を得るために紛れ込ませているためにむしろ極めて分からなくなっていると思いますが、いかがでしょうか。
  87. 柳澤協二

    公述人柳澤協二君) 実は、私もこういう形の我が国の存立と絡めた集団的自衛権というのは、本来の正しい集団的自衛権の使い方ではないんだろうというふうに思います。  もう集団的自衛権で例えばアジアの地域で防衛協力をしていくということであれば、むしろ我が国の存立とは関わりなくやっていくという方向性をしっかり示した上で国民的な議論をしていくということ、その方がはるかに分かりやすいんだろうというふうに思います。
  88. 福島みずほ

    福島みずほ君 新三要件の日本の存立事態ですが、総理はこれを重要な経済的理由ということを言っておられます、入ると。  ホルムズ海峡の機雷除去は、戦争中、紛争時であれば、これは集団的自衛権の行使に当たるわけです。重要な経済的理由を日本の存立事態というと、世界中で日本ビジネスを展開しているわけで、日本の存立事態の評価もまた極めて曖昧になる。あるいは、世界中でビジネスをしている日本においては重要な経済的理由に当たるので、日本の存立事態に当たると、こうなって、概念があってなきがごとしというふうになるような気がしますが、いかがでしょうか。
  89. 柳澤協二

    公述人柳澤協二君) 私も、基本的には経済的な、従来の政府の考え方でも、例えば武力行使としてのというか、強制力としての経済封鎖のようなものは一つの武力行使の一形態のようなものになるわけですから、それは自衛権行使の対象になるという考え方ではあったと思うんですね。  しかし、一般的に経済的な困難がそれになるというのは、私の意見ですが、基本的には金で買えるもののために武力行使をするというのは、そこは武力行使の正当性には当たらないんだろうというふうに考えます。
  90. 福島みずほ

    福島みずほ君 総理は、新三要件を満たせば海外で武力行使できるというふうにおっしゃっています。  柳澤公述人は、自衛隊員の命を守るということに、恐らく人を殺し殺されない、死者を出さないということに多分心を砕いて仕事をされてこられたと思いますが、これについてどう思われますか。
  91. 柳澤協二

    公述人柳澤協二君) ですから、私、自衛隊あるいは一般に軍隊の役割というのは、個々の国民の生命とか経済を守るということではないんですね。やはり国の独立を守るというのが本来一番大事なポイントなので、そこを、ですからいろんな形でそれを拡張していって、これもこれもおまえの仕事だというふうに広がっていくというのは、本当にどこまで行って何をやらされるかが分からないという意味で、私はもう自衛隊を見てきた立場として非常に大きな心配を覚えるところであります。
  92. 福島みずほ

    福島みずほ君 柳澤公述人にお聞きします。  後方支援についての今日の御説明はよく分かりました。これは大森法制局長官の大森四原則があり、それで今まで、私たちはそれに反対でしたが、一応縛ってきました。しかし、今回の合意の中では後方支援について地理的概念やいろんなものは何もありません。ということは、後方支援、つまり武力行使でないということで、戦場の隣で武器弾薬を提供することもそれは法律上は可能となる、このことについて、大森四原則を維持しなければならないというふうにも思いますが、これについていかがでしょうか。
  93. 柳澤協二

    公述人柳澤協二君) いわゆる大森四原則と言われるものにせよ、従来の政府の解釈の仕方というのは、非戦闘地域概念というのは、それ自体、イラクではなかなか、いいかげんじゃないかという御批判もありましたけれども、やはり今起きている戦闘に巻き込まれるかどうかということではなくて、さらにそこから、もちろん憲法の解釈との隙間はまだそれでもバッファーとしてあったと思うんですが、そのバッファーを殊更二重三重に取ることによって、結果として隊員の安全も確保される要因になってきたというところは間違いないんだろうと思うんですね。  そこを更に突っ込んでいくというのは、本当に現実の軍事的な危険を伴うということはもう間違いないので、そこのところを十分認識しなければいけない。少なくとも、従来の考え方というのはそういう発想がベースになっていたということ、それを変えていくときのリスクはもっとしっかり認識していただく必要があるということを申し上げたいと思います。
  94. 福島みずほ

    福島みずほ君 柳澤公述人にお聞きします。  文民統制についてお聞きをいたします。  私は、文民統制は、やはり戦前、軍部が独走したことから、しっかりそれは文民統制をやるんだということでスタートしたと思うんですが、今度、対等に扱うという今度の提案についていかがお考えでしょうか。
  95. 柳澤協二

    公述人柳澤協二君) いわゆる文官統制と言われる制度ができたのが警察予備隊以来なんですね。当時、急遽つくろうとすれば旧軍出身者を使わざるを得ない、そうすると、そこに文官統制のようなおもしを付けなきゃいけないという、そのシステム設計がそのまま防衛省・自衛隊まで受け継がれてきたということ。でも、旧軍出身者はもうおりません。防大出身者がいてという状況から考えると、制服の、軍部の独走を、暴走を抑えるというような意味の機能はもう時代変化で要らなくなっているんではないかという意味では、文官統制がなくなったことが大きなターニングポイントではないんだろうと思うんですが、むしろ、これからいろんな政治からの御注文が付いてくる、そのときに大臣を直接補佐するようになった幕僚長たちがしっかり政治に対して、それはできませんと、それをやるとすればこれだけの危険がありますということをはっきり言っていただけるか、そういう形で政治をしっかりサポートできるかということが問われる、そういう時代になったんだろうと私は受け止めております。
  96. 福島みずほ

    福島みずほ君 時間です。どうもありがとうございました。
  97. 平野達男

    ○平野達男君 平野達男でございます。  今日はどうもありがとうございます。  前半に柳澤公述人に、後半に核の廃絶に関して秋山公述人に何点かお尋ねをしたいと思います。  まず柳澤公述人にお尋ねしますけれども、いわゆる非戦闘地域というものを定める、あるいは後方支援地域を定めるという、地域を定めて、そこから燃料補給をやる、あるいは食料補給をやるという、そういう、昔の言葉で言えば兵たんと言うんですけれども、その兵たんというのは武力の行使ではないという定義になっているわけです。  私は、別に戦争を経験したわけじゃないですから、戦争も見ていませんが、日本軍が非常に苦労したというはその兵たんだったということでありまして、先ほど、柳澤公述人の中で、国際的に見れば、非戦闘地域定めたとしてもいわゆる燃料補給等々は武力の行使と見られる場合もあるのではないかというような趣旨の発言をちょっとされたと思うんですけれども、今まで日本がやってきたアフガン特措法、イラク特措法をやってきた、その非戦闘地域での活動というのは、これは国際的に見たら武力の行使と一体ではないというふうに見られているということでよろしいんでしょうか。
  98. 柳澤協二

    公述人柳澤協二君) 武力行使の一体化を避けるというのは、日本の憲法解釈からくる要請ということですね。ですから、それは、国際法的に見れば、それは武力の行使であるというふうに通常はみなされるんだろうというふうに思います。ただ、それと憲法上の評価は別なんだということで、そういう状況の中でどこまで突っ込んでいくのかというのが問われるわけですね。  やはりそこで非戦闘地域という、確かに憲法上の解釈の間にはもうちょっと隙間はあるかもしれないけれども、それが今まで実際にいろんな形で隊員の安全確保にも功を奏してきたのではないかと、そこを取っ払うということは、さなきだに補給部隊が一番狙われるわけですから、さなきだに危険なところをより一層確実にリスクを高めてしまうということを私は申し上げております。
  99. 平野達男

    ○平野達男君 その自衛隊の海外派兵ということでいいますと、先に周辺事態法を作りましたですね。これは日本の周辺の有事を想定する。その後、九・一一テロ事件が起きまして、インド洋まで行くわけです。そのときは洋上でした。今度はイラク特措法ができまして、オン・ザ・ブーツとか言ったか言わないか忘れましたけれども、これは陸まで上がっていくわけですね。  自衛隊は、過去の例から言いますと、やっぱり拡大の方向で来て、更に今回安全保障でかなり一歩も二歩も出るような改正をするということになるわけですから、これからの法制はこれから議論しますけれども、柳澤公述人から見られて、この自衛隊の今までの海外派兵の経過ということをどのように見られているか、御感想をちょっとお聞かせいただきたいというふうに思います。
  100. 柳澤協二

    公述人柳澤協二君) いわゆる冷戦が終わって、湾岸戦争のときにお金しか出さないと言われたいわゆる湾岸のトラウマというものが、まあ私もそれは個人的には感じておったんですが、そういうことをスタートにして自衛隊を海外に使っていくということがいろいろ出てまいりました。そのときに、PKOは国際協力であったわけですけれども、どっちかというと同盟協力の文脈の中でいろいろやってきているんだろうと思います。  それで、それは一歩ずつはしごを上ったではないかといえばそのとおりなんですけれども、ただ、イラクはあくまでも人道復興支援なんですね、一部航空自衛隊は輸送任務もやっておりましたけれども。どうもそのときとは、実は、さっきもちょっと申し上げましたけれども、相手の武装勢力のもう状況が全く変わってきている。要は、対立の構図がイラク以前とは今全く違ってきている、そういう状況の中で、さらにここまでやったからもう一歩、二歩、三歩、進めていいよねという、そう単純には私は判断してはいけないんじゃないかというふうに思っております。
  101. 平野達男

    ○平野達男君 ありがとうございました。  じゃ、秋山公述人にお伺いします。  核の廃絶、これは本当大事だと思うんですが、御案内のとおり、実は日本はもう既にプルトニウム四十トン以上、厳密に言えば保有ではないんですけれども、その大半はまだイギリスとフランスにありますから、持っています。それから、使用済核燃料が一万七千トンぐらいありまして、本格的な再処理工場が間もなく完成する予定であります。この一万七千トンを仮に全量処理しますと、大体一%ぐらいはプルトニウムですから、そこから百トン以上のプルトニウムが出てくると。問題は、そのプルトニウムの使い道が私に言わせれば全く決まっていないんですね。  そういう状況の中で、今、使用済核燃料の再処理というのは、核の拡散の危険性があるからということで、特にカーター大統領の辺りからアメリカが非常に慎重になって、ウランの濃縮と併せて再処理についての拡散を防ごうということで様々な活動をしてきている。  日本は、日米原子力協定の中でその再処理の権利だけは確保しているんですが、その再処理した後の使い道が決まっていないという国で、繰り返しになりますけれども、四十トン以上の現にもうプルトニウムを持っているという中で、核廃絶核廃絶と言うのはいいんですけれども、外国から見たときにこの日本というのが、もちろん、広島、長崎の被爆をした、経験している国ですから、同時に、日本というのはプルトニウムたくさん持っていますねというふうに見られている可能性もありますね。  ここの辺り、例えば中国とかそういった国から見たときに、どういうふうに日本という国が見られているのか。特にこのプルトニウムの保有という観点から見たときに、どのような視点で見ておられるかということについての公述人の御認識をちょっとお伺いさせていただきたいと思います。
  102. 秋山信将

    公述人秋山信将君) ありがとうございます。  今のプルトニウムのストックパイルの問題というのは、非常に国際社会では注目をされておることは間違いございません。  以前、日本が自主的に行っている申告の中で、プルトニウムが多少未使用の燃料として炉の中に残っていた部分が申告されていないということについて中国が非常に食い付いてきて、そして、日本は申告をしてないじゃないかということを言っているわけですが、この一つのロジックというのは、申告をして保障措置をしっかり受けて、そしてその使い道についてより透明性を高めていく、より具体的な使い道を外に示していくということがある意味ではそうした疑念をなくしていく重要なポイントであって、これがやはり、私が従前申し上げておりましたけれども、多国間の枠組み、すなわち国際原子力機関との関係をより良くしていく、その活動に協力していくということの一つメリットであると思います。  ですから、これをしっかりやっていくということを日本としてはやっていくことが信認を得る一つの手段だというふうに思っております。
  103. 平野達男

    ○平野達男君 二〇一八年に日米原子力協定の見直しというか、場合によっては改定を迎えるかもしれません。そういう中で、今まで日本アメリカの中では、余分なプルトニウムは持たないという前提で再処理をやってきたということなんですが、今のこの状況を見て、秋山公述人、二〇一八年の日米原子力協定の再協議というのはどういう影響が出てくるというふうに感想を持っておられるでしょうか。
  104. 秋山信将

    公述人秋山信将君) 今の点ですけれども、恐らくここで、私もフォーチュンテラーというか占い師ではないので将来どうなるか分かりませんけれども、私の感覚でいうと、今の協定というのは非常に良くできたものである、お互いにとって良くできたものであるので、これをいじるということはないのではないかと思います。  ただ、その過程においてアメリカ側から、今先生の御指摘のとおりですけれども、余剰というふうにされているプルトニウムをどうするのか、どのようなそれを、使い道があるのかということを示すという要望というのは強く出てくることは予想されておりますので、これは原子力発電所の再稼働等々、エネルギー政策全般に関わってくる問題であるとは思いますけれども、日本政府としては、よりこの部分については透明性を高めていく必要がより強くあるというふうに考えております。
  105. 平野達男

    ○平野達男君 ありがとうございました。
  106. 岸宏一

    委員長岸宏一君) 以上で公述人に対する質疑は終了いたしました。  この際、公述人の方々に一言御礼申し上げます。  本日は、貴重な意見をお述べいただき、誠にありがとうございました。委員会を代表して厚く御礼申し上げます。(拍手)  速記を止めてください。    〔速記中止〕
  107. 岸宏一

    委員長岸宏一君) 速記を起こしてください。     ─────────────
  108. 岸宏一

    委員長岸宏一君) それでは引き続き、公述人の方々から御意見を伺います。  この際、公述人の方々に一言御挨拶申し上げます。  本日は、御多用中のところ本委員会に御出席いただきまして、本当にありがとうございます。委員会を代表して厚く御礼を申し上げます。  本日は、平成二十七年度総予算三案につきましてお二人から忌憚のない御意見を拝聴し、今後の審査の参考にしたいと存じますので、よろしくお願いをいたします。  次に、会議の進め方について申し上げます。  まず、お一人十五分程度で着席のまま御意見をお述べいただき、その後、委員の質疑にお答えいただきたいと存じます。  それでは、経済・財政・社会保障について、公述人日本大学経済学部准教授川出真清君及び東京大学社会科学研究所教授大沢真理さんから順次御意見を伺います。  まず、川出公述人にお願いいたします。川出公述人
  109. 川出真清

    公述人(川出真清君) 御紹介にあずかりました川出と申します。本日は、このような機会をお与えいただき、誠にありがとうございます。  本日、お手元の資料を用いながら、平成二十七年度予算と、今夏の政府からの提示が予定されている財政健全化計画でも重要だと考えられる定量評価について私の考えを述べさせていただきたいと思います。  二ページ目に公述概要をお示ししましたので、三ページ目より始めさせていただきます。  平成二十七年度予算は、一般会計で歳出歳入規模が過去最大の九十六・三兆円で、主要経費のうち白抜きでお示ししている社会保障関係費、公共事業費、国債費が過去五年で増加傾向にあります。また、地方交付税交付金は平成二十一年のリーマン・ショックを受けた危機対応で増加されたものが徐々に平時の水準に戻っております。  一方、四ページを見ていただきますと、歳入は、暫定ではありますが、平成二十四年十一月の景気の谷の後、景気拡大期にあると考えられ、所得税、法人税を中心に増加傾向にあり、平成二十六年度の消費税率引上げとその後の平年化を受けて税収は順調に伸び、公債金を除く歳入は五十九・四兆円となっており、増加傾向にございます。基礎的財政収支の赤字は十三・四兆円で、アベノミクス及び円安等の環境変化による景気回復を通じて着実に財政の改善が進んでいることが確認できます。  このような中で、七ページの中長期の経済財政に関する試算にありますように、平成二十七年度の対GDP比財政赤字半減目標の達成がなされ、その後も財政赤字の縮減が進められることが確認できます。しかしながら、二〇二〇年財政黒字化目標には、全てを望ましい想定と置いている最善シナリオとも言える経済再生ケースでは対GDP比一・六%、平均的な想定を置く標準シナリオとも言えるベースラインシナリオでは対GDP比三%財政赤字が生じるとされておりまして、さらには、標準シナリオではその後の財政収支の悪化も見込まれております。このように考えますと、中長期の財政再建の道筋は明瞭ではなく、構造的な取組が必要ではないかというふうに思っております。  さらに、昨年と比べて現時点での大きな変化は、消費税率の引上げが、八%から一〇%への引上げが平成二十九年度に延期された点があります。今年示された中長期試算には、その延期を踏まえても来年度の赤字半減目標が達成されるということでなっております。非常に不思議に思うんですけれども、それを中長期の試算の資料で確認しますと、経済成長率の想定と足下の税収見込みの改善によるところが大きいというふうに考えられます。実際、八ページを御覧いただきますと、こちらは昨年の中長期試算なんですが、こちらの青い線の方と緑のところを御覧いただきますと、財政赤字半減目標が標準シナリオの方では達成されないという形になっております。  その上で、どうして今年になってそれが達成されるようになったかと申しますと、まず、平成二十七年度の経済成長率は、今年の推計では政府見通しと同じ一・五%になっております。これは、昨年の達成されない標準ケースでは〇・九%になっておりまして、差引き〇・六%成長率が上がるという形になっております。  さらに、今年の経済成長率を去年どう予測していたかというと一・四%だったんですけれども、今年の二月に公表された予測ではマイナス〇・五%で、二%近く成長率が下方修正されています。そうなると、財政再建難しくなるのではないかなと思うんですけれども、実はそこで、一般会計税収で、昨年の試算では当初ベース、今年の試算では補正後のベースで税収が改定されております。その際、増収改定という形になっておりまして、足下の税収は、景気は悪くなっているけれども増えている、想定よりも増加しているということで目標が達成されたという形になっております。  こう見てまいりますと、運よく半減目標が達成できたというふうに見ることができます。ただ、そこでは、来年度もこういう不確実性が存在するのではないかというふうに考えることができます。  私は、統計学的な手法を用いて財政を研究しております。その際、予測値や推定値というものを絶対視するということはありません。どちらかというと見積りとして評価をします。皆様も引っ越しや大きな買物をする際に見積りを取られることがあると思います。見積りというのは、当然その見積りから上下前後するわけですね。それでも、その見積りを踏まえて、ある程度お金を余裕を持って準備して対応するということになります。  そこで、気になる記述があります。十ページ目見ていただきますと、これ、中長期試算に毎年書かれる表記なんですけれども、ここで、下線部に示している相当の幅というのがいつも気になっております。読み上げたいと思います。「試算の内容は、種々の不確実性を伴うため相当な幅を持って理解される必要がある。」と書いてあります。この幅がどんな幅かというのは、私、統計学を勉強してきたんですけれども、よく分かりません。なぜかといいますと、人それぞれの思いで違うんだという話になっておりまして、そこら辺がよく分からないんですね。  じゃ、これ統計学でできないのかといいますと、できるんですね。こちらは十二ページを御覧いただければ分かります。十二ページに示されておりますのは、イギリスの予算に関する国の独立推計機関、OBRという予算責任局の経済財政見通しです。こちらを見ていただくと、折れ線グラフのところで羽根が出ているような形になっております。これをファンチャート、扇形グラフと呼びます。  この羽根は何かといいますと、実線部分、黒い実線部分のところを中央予測値といって、これは内閣府で示しているものと全く同じです。この部分に羽根が出ているんですけれども、これがまさに幅でありまして、上下一〇%、それぞれ合わせて二〇%という形で表現をされていることになります。これの意味するところは何かといいますと、中央予測値を私は信頼できると思えば、この上下一〇%の幅で物事を見ていこうと、いや、もうちょっと慎重に見たいなと思う場合には更に幅を広げて上下二〇%で物を見ていこうと、こういう考え方で物事を捉える。リスク評価ということで後ほどお話ししますが、そういった形になります。  さらに、これの別の使い方があります。どういうふうかといいますと、縦軸を見ていただきますと、これGDP比になっておるんですけれども、上に行くほど政府債務が増えます。下に行くほど財政黒字になりまして、ゼロのところで財政収支が均衡するという形になるんですけれども、二〇一六年から一七年のところを見ていただきますと、一番羽根の薄いところが出ております。これは何かと申しますと、先ほどの話でいうと上下一〇%の、これ一〇%の幅になります。更に下の真っ白の部分なんですけれども、ここは一〇%に相当しております。合わせて都合二〇%という形で、何を言いたいかといいますと、これでこのOBRは二〇一六年から一七年には二〇%の確率で財政収支が黒字化するというふうに評価していると読むことができます。さらに、二〇一八年から一九年を御覧いただきますと、実線の部分がこの均衡のゼロ%のところをまたいでおりますので、五〇%になるわけですけれども、五〇%をちょっと超える形になっているんですけれども、二〇一八年から一九年には財政収支は五〇%をちょっと超える確率で黒字化されるというふうに見込んでいる、予測しているというふうに表現できます。  何かというと、この確率で物事を判断していく、まさに幅ということなんです。日本では技術的にはできるはずなんですね。というか、技術的には非常に日本の研究者の技術力は高いですからできるはずなんですけれども、これが示されていないということになります。ただ、その重要性は分かっていますよということが、その作られている方が思っているので、ああいう表記が毎年されるんだというふうに理解をしております。  さらに、昨今、財政再建を経済成長で実現するという意見も見られます。それ自身は正しいんですけれども、これを誤解すると大変大きな問題が起こります。欧米の財政収支の評価というのは、景気循環を除去した形での財政スタンスに注目をします。これを構造的財政収支というんですけれども、財政収支、GDP、それぞれから景気循環を取り除いて、平年ベースの対GDP比の財政収支を見るものです。  十三ページを御覧いただきますと、構造的財政収支というのは、欧州連合の新財政協定の財政均衡ルールを始め、単なる指標ではなくて拘束力のある指標として、各国で共通の枠組みとして導入されております。各国は、この道具を使うと何が大事かというと、景気悪化時の財政赤字を認めつつも、景気循環を除去したところでは財政規律維持しようという立場になっております。日本でも学術的取組が二〇〇〇年頃行われたんですけれども、結局はほとんど活用されないまま余り使われていないという状況になっております。  十四ページに進みますと、ドイツの係数が示されております。欧州連合の資料になるんですけれども、こちらを見ていただきますと、二〇〇七年の、真ん中の辺りに、見ていただきますと、二〇〇七年〇・三と書いてあります。これは、実績ベースの財政収支の黒字がGDP比で出ております。それに対して、すぐ下を見ていただきますと、〇・七%マイナスと出ております。これは何かといいますと、表面上は黒字になっているんだけれども、構造ベースで見るとまだ依然マイナスの赤字になっていますよというようなものを示しております。二〇〇九年を見ていただきますと、マイナス三%の赤字が出ております。これはリーマン・ショックを受けて財政が一気に赤字化しているわけですけれども、下を見ていただきますと、マイナス〇・五、これ構造となっております。何かというと、物すごく大きな財政赤字が出たように見えますけれども、構造ベースで見ればマイナス〇・五%ですから、それほど大きな赤字が出ているわけじゃないですよというふうになります。  一方、もし日本の財政再建論理が景気を改善すれば財政収支が良くなるという誤解に陥っていれば、この構造的財政収支で評価した場合には、ここの景気の良くなった部分は除去されてしまいますから、依然として財政赤字が続いているということになります。景気循環を除去した構造的観点からの財政再建の試みが必要であると考えております。  さらに、財政健全化計画でも出てくるであろう論点として、税収弾性値について軽く触れたいと思います。  税収弾性値が一・一か三か四かという議論がございます。これに関しまして、こちらの税収弾性値というのはこの構造的財政収支を作る際の基礎資料として用いられるもので、国際的には標準化された方法がございます。若干技術的な差異はあります。でも、それはほぼ大枠で共通しているわけです。そのようなものを使ったものでは、今よく言われている一・一というのは無難な数字というふうに考えることができます。  じゃ、三と四と呼ばれるような税収弾性値がどうして出てくるかというと、独自の定義をしているんですね。定義の仕方が違うんだと、これこそが私の税収弾性値なんだというふうにおっしゃられれば、それはそうだというふうに考えられるんですけれども、国際的な標準化された手法で評価した場合には必ずしもそういうような計算の仕方ではないということになります。国際的に説明をしなければいけないときにどちらを使うべきかといったときには、なるべく標準化された手法を取られるべきではないかなというふうに思います。  さらに、もしそういうものが本当にそうなるのかというふうに御疑問がありましたら、十六ページを御覧いただければ、細かな資料で大変恐縮なんですけれども、その計算方法、同じデータを使って二つの計算方法でそれぞれの数字が出ますというものをお示ししております。結果的に、それぞれの定義が違うということが大事だということになってまいります。  まとめに入りたいと思います。  平成二十七年度予算というのは、安定的な景気回復と財政再建努力の中で、経済再生と財政再建の両面を十分配慮した予算だと評価することができます。しかしながら、中長期の視点で困難が残っております。それを解決するために重要な視点としては、もう既に欧米では一般的に活用されている構造的な視点及び財政におけるリスク評価というものが大事だと思います。構造的な財政収支に代表される構造的視点を通じることによって、財政の景気循環を取り除いた構造的な課題を発見することが可能になります。その上で、構造的な財政再建というものに取り組むことができます。過去のそういったものを踏まえていくことが必要だろうと思うわけです。  さらに、今度、将来を見るときなんですけれども、将来を見るときにはファンチャートに代表されるリスク評価によって予測の前提、様々な成長率の前提というのがたくさんあるわけですけれども、その前提自体にリスクを組み込んで、その上でどのように財政運営をすべきかという議論をする基礎資料になります。当然、リスクをどう受け止めて財政運営にどう反映させるかというのは、まさに個々人の主観になります。統計学は、そうせよと、何かをせよと言っているわけじゃなくて、我々はメニューを提示するだけですから、個々人の主観にこういう情報が必要ですよということを提示しているにすぎません。最終的には個々人の主観、そして最後には社会的な合意が必要で、国会で議論すべき事項でありまして、分析者はそのメニューを提示するにすぎません。  したがいまして、平成二十七年度の予算審議及び今後示されるであろう財政健全化計画の議論の中でも、このような視点を取り入れていただいて議論を進められることを願ってやみません。  以上で私の公述とさせていただきたいと思います。  御清聴いただき、ありがとうございました。
  110. 岸宏一

    委員長岸宏一君) ありがとうございました。  次に、大沢公述人にお願いいたします。大沢公述人
  111. 大沢真理

    公述人(大沢真理君) 今日はこのような場を与えていただきまして、誠にありがとうございます。  川出先生と御相談したわけではないんですけれども、川出先生の陳述が大変専門的なものですが、私の場合には国際比較や時系列比較を交えたやや大ざっぱなものになっておりますことを御承知おきいただければと思います。  報告の構成については、二ページ目に書いてございます。  まず、二〇一三年以来の経済情勢、簡単に見てまいりたいと思います。  最初のグラフは、月別実質賃金指数の推移でございます。決まって支給する給与ではありますが、超過勤務手当、いわゆる残業代を含んでおりますので季節によっての繁閑があるということでございますが、二〇一三年になって以来、四%ポイント程度の低下が見られるということでございます。これらは言わば賃金率でございますけれども、雇用者の全体として稼いでいる雇用者報酬はどうなのかということを、実質と名目及び、雇用者報酬には雇主の社会保障負担が含まれますので、それを除いた名目現金給与の三本のグラフで見ていただきますと、名目雇用者報酬は昨今で上昇はしておりますが、実質においてはこれは下がっていると、目減りをしているということでございます。なおかつ社会保険料負担が増しておりますので、働く人の給料に入る名目現金給与は、雇用者報酬の上昇にもかかわらず停滞ぎみであるということでございます。  このような給与賃金率及び雇用者報酬の背景としましては、よく言われる雇用の非正規化という実態がございます。御覧いただきますと、正規の雇用者数と非正規の比率ですけれども、二〇一三年以来、正社員が減る中で非正規の比率が急上昇してまいりました。ということで、働く人の給料袋の中身というのが目減りをしてきております。  これが経済成長にどのような影響を与えるかということでございますが、GDP成長への項目別寄与度を見ていただきますと、ちょっと目がちかちかいたしますけれども、二〇〇〇年代になってから輸出が成長を牽引するという関係が見られました。しかしながら、この数年に関して言えば、輸出は成長を牽引できなくなり、民間最終消費が頼りになっておりますので、雇用者の給料の中身が目減りをしているという中ではなかなか経済成長の促進というのも難しいことになっております。そこで、GDPの実額及び成長率の推移を見てみますと、景気が回復しているというのはこのデータからはなかなか言いにくいのではないかというのが私の感触でございます。  次に、財政について国際比較で、かなり大ざっぱな比較ではございますが、見ていただきます。ここでは、歳入を税収と社会保障収入の合計としてまず見ております。九ページでございますが、九枚目のスライドですけれども、対GDP比です。この歳入は、財政による景気の自動安定化機能、あるいはカウンターサイクリカルな機能の代理指標として使われることがございます。そのような自動安定化機能の決め手は、まず歳入の規模が一定以上あるかどうかということ及びその累進度でございますが、日本規模も小さく、これから見ていくように、累進度も諸外国に比べてかなり低い状態になっているということを申し上げたいと思います。  次に、歳入を税収と社会保障負担に分けて見たものが十枚目のスライドでございます。租税負担率を見ると、日本は主要国で最も低い状況でございます。他方で、社会保障負担、右を見ますと、これは着々と伸びてきて、二〇一〇年においてスウェーデンと並ぶ状況でございます。  注意すべきは、税収には累進性がございますが、社会保障負担はむしろ逆進的であるということで、日本の財政はこの二十五年間くらいの間に着々とその累進性を低下させてきたということが示唆されております。  次の公的社会支出については参考まででございますので、御覧ください。  次の項目としては、所得格差と経済成長関係でございます。  これは、昨年の十二月にOECDからフォーカスというシリーズのパンフレットとして出たもので、日本語訳もございますので引用しております。ポイントは、大半のOECD諸国で所得格差が過去三十年間拡大をしてきたと、この所得格差の拡大が経済成長を大幅に抑制しているということであります。その際に重要なのが、所得の下位四〇%層が置き去りになっていないかどうか、これが重要であると指摘されております。  次のグラフを見ていただきますと、これもOECDのフォーカス・オン・イニクオリティー・アンド・グロースからの引用でございますが、オレンジの部分、これが所得格差の拡大によって成長率が下に抑制されたということを示しておりまして、日本は右から四番目ですけれども、所得格差の拡大がなければもう少しは経済成長をしていたはずだということが示されております。  そこで、日本の所得格差について見ていきますと、その下のグラフは、所得トップ一〇%が国民の総所得に占めるシェアでございます。ただし、キャピタルゲインを含んでおります。こう見ますと、キャピタルゲインを含むデータが提供されている国はOECD諸国の中でも限られます。日本は、幸いなことにその中に入っておりますけれども、日本の所得格差は決して小さくないし、拡大をしてきたということが見て取れるかと思います。  それから、所得格差を測るもう一つの指標として、相対的貧困率がございます。これを一人当たり実質GDPの成長率と掛け合わせた散布図がスライドの十五でございます。ちょっと散らばっておりまして線形の相関はございませんが、日本アメリカも貧困率は高くて成長は低かったということが分かります。  それからさらに、社会的信頼という、これ別名ではソーシャルキャピタル、社会関係資本とも言われます。それは、経済成長のみならず災害レジリエンスの基盤でもあるということで、政治学等で注目されてきておりますが、これと相対的貧困率を掛け合わせますと、かなりきれいなマイナスの相関が出てまいります。日本は、ここに出てくる国の中では最も社会的信頼度が低く、それから貧困率は上から三番目に高いというようなことで、こうした社会の中での所得格差の拡大、なかんずくそれが、下の方ですね、中位よりも更に五〇%未満という貧困層の堆積というところで経済成長の基盤が損なわれているということが言えるかと思います。  次に、その貧困をめぐって簡単な国際比較をさせていただきたいと思います。  スライド十七ですが、通常、貧困率と言われるものは、左下の可処分所得レベルで計測されています。日本の直近の貧困率は一六・一%でございまして、主要国の中ではアメリカに次いで高いという状況でございます。市場所得レベルと書きましたのは、政府が税制と社会保障制度を通じて所得再分配をする以前の状態です。この市場所得レベルと可処分所得のレベルの間の差というものが、要するに政府の所得再分配が貧困を削減した度合いを示します。それが右下のグラフでございます。ヨーロッパ諸国の高い貧困削減効果に比べると、日本アメリカというのは数段低いということがお分かりかと思います。以上は全人口のデータでございます。  労働年齢人口に絞って貧困削減率を見ますと、若干データが古いですけれども、しかも世帯の就業状態、つまり成人全員が就業しているのか、これは夫婦世帯ならば共稼ぎ、一人親が働いている、あるいは単身で働いているというグラフがブルーでございます。えんじ色の方が夫婦でカップルの一人が就業しているいわゆる専業主婦世帯でございます。  それで、政府の所得再分配がどれだけ貧困を削減したかというのをOECD諸国について並べてみますと、この図のとおりでございます。成人全員が就業している世帯にとっての削減率が低い順に並べておりますが、日本は、最も低いだけでなく、マイナス七・九%と、マイナスになっております。世帯の成人全員が就業していると貧困がかえって政府の所得再分配によって増えてしまうという事態になっているわけでございます。こうしたことというのは、単に社会保障の給付面だけからは説明できず、負担面を見なければいけないということになります。  スライド十九と二十は、かなり見にくいグラフではございますけれども、世帯の類型、それから所得のレベルに応じて純負担率を見てございます。純負担率というのは、所得課税と社会保障拠出から現金給付を差し引いたそれぞれの世帯あるいは働く人の純負担が粗賃金収入に占める比率ということで見ております。  上の段を見ていただきますと、単身者は参考のために平均賃金を得ているという前提で書いてございますが、そのほかの世帯は全て子供が二人いるという想定で純負担率を見ております。そして、グラフの縦軸の幅をそろえてございますので、それぞれのグラフの垂直の距離の開きがこの制度の累進性を示しております。  御案内のように、日本のグラフは狭いところに固まっておりまして、累進度がほとんどないということを示しております。また、オーストラリアなどでは、一人親にとっては、一人親の所得は平均賃金の六七%と想定されておりますけれども、マイナスになっております、純負担が。つまり、税や社会保険料を払わないだけではなくて、現金給付を受けているということを示しております。  いずれの国でもグラフの間の縦の開きはかなり大きくなっているのに対して、日本は狭いところに密集しております。にもかかわらず、二〇一〇年のところを見ていただきますと、グラフがかなりばらけていることが見て取れます。これは子ども手当の効果でございます。子ども手当は、ばらまきとも言われましたけれども、所得の低い層ほど純負担率を大きく引き下げたというようなことが分かるわけでございます。  スライドの二十は二〇一三年のスナップショットで、所得のレベルに合わせて純負担率のカーブを描いております。カーブの傾きが大きいか小さいか、これが制度の累進性を今度は表すということになります。  イギリスやオーストラリアはマイナスの方に出ているというのは先ほど申し上げたとおりです。それから、日本、ドイツでは片稼ぎ世帯よりも一人親世帯の純負担が一貫して高くなっております。これは、日本では配偶者控除、ドイツでは夫婦の所得の合算二分という税制による効果と思われます。  最後に、成長と格差の是正の両立策ですけれども、後でごゆっくり御覧いただけるとよろしいかと思います。平等と成長を両立できる政策というのは教育投資や雇用差別の撤廃であるということが示されておりまして、残念ながら、これは日本では弱い政策分野でございます。  最後に、子ども・子育て支援に関して、それがかなり高収益の社会的投資であるという論点を申し上げてみたいと思います。  アメリカにおける子供の貧困がもたらす社会的費用というのは、二〇〇〇年代半ばでGDPの四%分に相当すると試算されています。これは、低い教育達成、不健康、高い犯罪率などによる損失でありますが、現金給付で貧困を解消する政府支出はGDPの〇・四%ですから、十分の一で解消できるという試算になっております。  次が就学前教育への投資ですけれども、これはデータが次のページにございます。デンマークの保育サービスは母親の継続就業を可能にすることで保育への政府支出の一・五倍分の税収を生み出しています。また、アメリカの恵まれない子供向けの就学前教育は支出の十二倍の便益をもたらしているというのがスライド二十三の左下のグラフに示されております。ほとんどの便益は、犯罪面で犯罪が減ると期待されることでの便益でございます。  以上、雑駁なお話となりましたが、私からの陳述でございます。ありがとうございました。
  112. 岸宏一

    委員長岸宏一君) ありがとうございました。  以上で公述人の御意見の陳述は終わりました。  それでは、これより公述人に対する質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  113. 石田昌宏

    ○石田昌宏君 自由民主党の石田昌宏と申します。  川出先生、大沢先生におきましては、丁寧な参考になるお話をありがとうございました。  時間もありますので、私は財政再建につきまして、特に川出先生に二問御質問したいと思いますが、まずは、今年も二月に財務省が平成二十七年度の予算の後年度歳出・歳入への影響試算を出しました。これ毎年出しているんですけれども、この中でも、先ほど話にあった税収弾性値が一・一において計算されています。この一・一という数字は、どのくらい前からかは正式には分からないんですけれども、少なくとも今世紀入ってからはずっと変わっていない数字なんですけれども、一方で、やっぱり先ほどお話にありましたけれども、経済成長によって税収を上げていくべきだという考え方、若しくは、もう一つが財政の構造改革によって歳出を抑制するという考え方がある中で、特に経済成長派の方の中には、この税収弾性値が一・一が低過ぎるという御意見があります。  ただ、財務省としては、もうこの説明に対して、近年は分母である成長率がゼロ%前後であることなどから数字が大きく振れやすくなっているということで、比較的安定していた経済成長を実現していたバブル期以前の平均的な税収弾性値一・一を採用するのが妥当であるというふうに言っています。  先生の資料を見ると、十六ページですかね、確かにそうで、GDPに対しての成長率ですね、GDPの比較で見た税収弾性値は確かにぶれるんですね。平準化してもやっぱり一とか四とかぶれていて、高めの数字が出ているんですけれども、おっしゃったように、国際的な基準で見た場合には一・一というのは妥当かなという感じがして、先生も無難であるというふうにおっしゃっていましたが、その一方で、消費税が二〇二〇年までには少なくともまた八が一〇に上がることも決まっていますし、もうちょっと振り返って、今世紀入ってから一・一は変わっていないんですが、それを見ても五から八、一〇と上がってきているわけです。  消費税のような間接税の税収弾性値は低いというふうに、これも同じく十六ページに書かれていまして、例えば、どれでもいいんですけれども、この内閣府の二〇一三年を見ると所得税が一・一六で法人税が一・七五、消費税は一ですから、消費税の比率、間接税の比率が上がれば税収弾性値は下がるわけなんですが、財務省としてはこの間、少なくとも一・一をずっと維持していて、むしろもっと下げるべきじゃないかというふうに考えてもいいわけです。  これを考えてみると、税収弾性値をこの間ずっと一・一というふうに、ある意味定数みたいな感じで使ってきているんですけれども、本来これ変数として考えていって計算をしなければならないんじゃないかというふうに考えられるわけですが、この点について先生の御意見を是非お聞かせいただきたいと思います。
  114. 川出真清

    公述人(川出真清君) 御指摘ありがとうございます。  御指摘のとおりだと思います。  そちらの十六ページの一番上に書いてあるんですけれども、結局、コンポーネントというんですかね、配分の違いで税収弾性値って変わってまいります。たまたま一・一前後になっているというのが正しい理解の仕方で、当然、税収弾性値高いものにシフトしていけば全体的に高くなりますし、低くすることもできます。ここはまさに税制の考え方ですので、私たちはたまたまそうなったという事実をお示ししているだけであって、特にそれ以上のあれではありません。
  115. 石田昌宏

    ○石田昌宏君 そうすると、年度によってかなり、たまたま今は一・一であるけれども、かなりぶれる可能性があるというふうに考えていいとすると、やはり、もう十五年ぐらいは少なくとも同じような数値を使っているんですけれども、これがある意味、将来の見通しのぶれにつながっているというふうに考えてもよろしいでしょうか。
  116. 川出真清

    公述人(川出真清君) 一・一というのは一九八〇年代前半にたしか定められた数字で、ずっとこんな感じになっているんですけれども、これは、私も研究をした理由が、それは変化するんじゃないかと思ってやって、下の方の私の本論のところは〇・九三から一・〇四ということで、これは地方税の方でやっているのであれなんですけれども、でも技術的にはほとんど変わらないのでまあこれに近いんですけれども、要は変わることは事実です。ただ、上に振れるか下に振れるかはどうなるんだということまでは私も言えませんし、消費税が膨らんでくればどうしても弾性値下がってくるというのはありますし、あと、各年で出ますけれども、結局は平均で見るというのが平年ベースの基本的な考え方ですので、そう考えるとある程度妥当な数字になっているんじゃないかというふうに思っております。
  117. 石田昌宏

    ○石田昌宏君 ありがとうございます。  流れとしてはそういう感じで無難でいいかなと。私もこの一・一という数字が悪いとは思ってはいないんですけれども、余りにも固定化している感じがして、ちょっと考え直した方がいいんじゃないかなというふうには思います。  次に、リスク評価なんですけれども、話も流れになるんですけれども、先生はイギリス予算責任局、OBRですか、の財政見通しになるようなファンチャートですかね、さっき十二ページであった、こう羽根が広がったような、これについて御説明をしていただきましたけれども、ある意味シミュレーションをしっかりしているなと。相当な変数を使って結果を出しているんだと思うんですけれども。  今、プライマリーバランスの議論をやっていると、幾つか見通しはありますけれども、一つ経済成長率が一・五か三かというこの数字と、もう一つが歳出の伸び率をどのくらいで見るか、〇・五とか〇・七五とか、二までありましたかね。こんな形で、そのぐらいですかね、変数のようなものは。という感じなんですけれども、さっきの話でもそうなんですけれども、例えば税収弾性値であっても、かなり定数というより変数で見るべきであって、ほかにも幾つかあると思うんですね、何かちょっとなかなか思い付かないんですけれども。ひょっとしたら長期国債の金利をある程度変数で見るとか、ひょっとしたら人口構成の変化みたいなやつを変数化するだとか、幾つかあると思うんです。そういった多数の変数からシミュレーションしていく手法を取るべきじゃないかなと私も思うわけで、先生もそういうお話があったと思うんですけれども。  その場合に、ちょっと教えてほしいんですけれども、どのようなものが実際変数としてなり得るか、若しくは、例えばOBRでは変数として使っているかというのを御紹介いただいて、質問を終わりたいというふうに思います。
  118. 川出真清

    公述人(川出真清君) ありがとうございます。  リスクをどこに入れるかというのは本当に分析する者たちの立場の違いによります。例えば、こういったものというのは最終的には推計機関によってやり方が違ってしまうので、どうしても、こちらはこういうリスクを入れているけれども、こちらはそこにはリスクがないという考え方で、ばらばらになってしまいます。そういう意味では、どちらが正しいというのはありません。だから、例えばTFP成長率と呼ばれる全要素生産性というのは、ああいう基本的な成長率の基本の部分なんかは入れるのは標準なんですけれども、例えば伸び率ですね、歳出の伸び率をどれで取るか。例えば物価の成長率で取るのか、GDPデフレーターの成長率で取るのかというのでやり方が変わってきます。  結果的にそれで差が出てくるんですけれども、そこら辺の技術的論議を一個の機関でしかここは出していないというのが一つの問題で、複数の機関で出してぶつけ合うということで本来は磨いていかれるもので、ここのOBRと対になっているのはIFSという、財政研究所ですか、イギリスの公的な、公的ではないです、ここはNPOみたいな組織なんですけれども、でもマーリーズ・レビューとか財政、税制の一番重要なレポートを出して、世界的にも影響力のある、民間なんだけれども公的な性質を持つ研究所なんですけれども、そこも評価を出して、ぶつけているんですね。  そういったプロセスの中でやっているので、どう入れるかというのはそういった議論の中で決めていきます。しかも、国ごとに性質が違うので、ここはやはりそういう形でやるべきではないかなというふうに思っております。
  119. 石田昌宏

    ○石田昌宏君 参考になる御意見、どうもありがとうございました。  終わります。
  120. 那谷屋正義

    那谷屋正義君 民主党の那谷屋正義でございます。  今日は、お二人の公述人、大変ありがとうございました。  早速質問に入らせていただきたいと思いますが。  まず、川出公述人の方にお尋ねをしたいと思いますが、十七ページにまとめという欄がございましたけれども、そこで、最初のパラグラフで財政健全化目標の達成は半減目標を含め予断を許さないという御指摘をされているわけでありますけれども、消費税の引上げが一年半延長になり、また、地方創生という名の下で様々今、これは統一地方選挙を目的としているんじゃないかと思われるような、我々からするとばらまきというようなことが、そういう予算になっているというふうに思うんですけれども、こういうふうな状況の中で、本当に財政再建というものが可能になるのかどうなのかということについて、御見解いただければと思います。
  121. 川出真清

    公述人(川出真清君) 御指摘ありがとうございます。  個々のレベルでの努力は、私も、ちょっと二ページ目とか三ページ目のところで本当は、三ページ目ですか、書いて御説明できなかったんですが、されているのは分かっているんですけれども、やっぱり抜本的というか構造的な議論に至っていないというか、各所の細かな努力の積み重ねにとどまっていて、やっぱり根本的には大変だということに対する認識が十分いっていないのかなというふうに思っております。  構造的に変える場合には大きく変えなきゃいけない可能性があって、それこそ、国民と国会そして政府という三者が議論を常に重ねていく必要があるんじゃないかなというふうに感じております。
  122. 那谷屋正義

    那谷屋正義君 ありがとうございました。  次に、大沢公述人にお尋ねをしたいと思いますけれども、資料の一ページのところに月別実質賃金指数の推移ということでグラフを示していただきました。これを見ますと、二〇〇九年から二〇一〇年、一一年辺りと比べると、だんだんだんだん実質賃金がどんどんどんどん下がっている、低下している、大幅に低下しているということが言えるんだろうと思うんですけれども、これは大沢公述人の指摘をされた、いわゆる格差というもの、この部分が経済成長の基盤というものに対して非常に関係があるのではないかというふうな御指摘だったというふうに思いますけれども、もう少しその辺について明らかにしていただけたらと思いますけれども。
  123. 大沢真理

    公述人(大沢真理君) 御質問ありがとうございます。  いろいろと舌足らずになっておりますが、この月別実質賃金指数は、五人以上の調査産業計、企業規模計でございまして、常用労働者ではありますがパートタイム労働者のほとんどを含むという、ちょっと分かりにくい数値になっております。  それを後ろの方の非正規化のグラフと照らし合わせますと、恐らくこの平均賃金、賃金率の低下は急速な非正規化が背景になっていると考えて間違いはないのではないかと思います。これは働く人の間での賃金格差が拡大をしているということでもございますので、成長の基盤を強めることにはなっていないのではないかと考えます。
  124. 那谷屋正義

    那谷屋正義君 政府・与党というか、政府の責任において新しい年度の予算を考えていくときに、今の日本にとって何が一番大事なのかというようなことをやはり当然考えられるんだろうと思うんです。それぞれの立場で考えていくんだろうと思うんですけれども、私は今思うには、やはり一番のキーワードは少子化というものではないかなというふうに思います。  この少子化というものを中心に置いたときに様々な問題が今起こっている。例えば、先ほど貧困率の話が出ました。その貧困率が子供の貧困というふうなところにまで影響してきている。これというのは、将来、じゃ、世界に誇れる今の社会保障がどうなるのかと言ったらば、これがもう本当に不安定なものにならざるを得ないような状況になる。まさに少子化問題に全力で様々な角度から手だてを講じていかなければならない。  そういう状況にあるんですが、今回の政府のいろんな法案を見てみますと、相変わらず労働法制というか、そういったものに対して非常に逆行するのではないかというような政策が取られているわけでありますけれども、やはり景気というか経済というものを上向きにさせるための一番の、見方というのはいろいろあると思いますけれども、私はやはり国内の内需、いわゆる消費指数が、どんどんどんどん指数が上がっていくということが一番大事なんではないかなと。そのことによって、さっき言った少子化というものにも連携してくる、非常に関係が深いというふうに思うんですけれども、これについてお二人の公述人から見解があればお聞かせいただきたいと思います。
  125. 川出真清

    公述人(川出真清君) ありがとうございます。  私も先ほど大沢先生の御指摘にあるような議論で、何というんですか、限界税率というか、そこが弱いという話なんですけれども、私も別の研究会でやっていることで感じるのは、課税ベースが狭い、所得税の課税ベースが狭いんですね。  結果的に何が起きているかというと、高所得の方々が税を払わないで済んでいる状況が起きている。逆に課税ベースを広げると、確かに低所得の方も税金を払う形に見えるんですけれども、例えば給付という形で出すとか又は税額控除という形で出すと、マイナス分を逆に出しますよでもいいんですけど、又は別の給付でもいいんですけど、要はそうしてあげることによって所得の捕捉をしっかりするんだと、その上で再分配をするということをやらなきゃいけないんですけど、所得控除をがんがん入れてしまって、結果的に所得の把握がちっちゃくなるというのが格差を大きくしている、それが私自身大きな問題だというふうに感じております。
  126. 大沢真理

    公述人(大沢真理君) 御質問ありがとうございます。  今、川出公述人の方から税制関係でのお答えがございましたので、私は、少子化と、それから雇用形態ということについて申し上げたいと思います。  少子化の原因は、一つには晩婚化、晩産化ということでございます。もう一つには、有配偶の人たち、結婚している人たちが欲しい数の子供を産めていないということがございますが、両方に関わるのが雇用の非正規化でございます。  それで、正社員とそうではない人で何歳までに結婚しているかというのを見ますと、もう歴然たる差がございまして、正社員であれば男女とも結婚しやすいけれども、非正規だとなかなか縁遠くなってしまうということがございます。また、運よく結婚したとしても、一人目は何とか産めても、二人目となりますと、これは雇用が非正規で世帯の所得が不十分ではなかなか二人目を産むことができない。  ですから、よくイクメンということやワーク・ライフ・バランス言われますけれども、それ以前に、正規と非正規の格差を解消していくための差別の是正というんでしょうか、均等待遇、これが少子化にとっても鍵になる政策手段ではないかと思っております。
  127. 那谷屋正義

    那谷屋正義君 私どもも、今の大沢公述人が言われたようなところが一番のポイントではないかなというふうに思っておりまして、やはりこの雇用というものの安定、これがやはり少子化という大きな問題を解くポイントになるんではないかなというふうに思っています。  その点についてもう一度だけ、済みません、川出公述人の方から見解を聞かせていただけたらと思います。
  128. 川出真清

    公述人(川出真清君) 先ほど述べました課税ベースの話なんですけど、やっぱり課税ベースを広げることによって高所得の人にしっかりと税金を納めていただく、それを低所得にしっかり返していくというプロセスがこの国にはやっぱり欠けていると。低所得の人たちも誤解しているんだと思います。課税ベースを広げれば自分たちは取られると思っているんですけど、逆なんだということをちゃんと確認していただきたいというのが私の意見でございます。
  129. 那谷屋正義

    那谷屋正義君 終わります。
  130. 若松謙維

    ○若松謙維君 公明党の若松謙維です。  川出先生、また大沢先生、大変御苦労さまでございます。  まず、川出先生に御質問させていただきたいんですが、いわゆるここで構造的財政収支という言葉が出ております。私も、日本の財政、できたらいわゆるアベノミクスの中で、どこが構造的でどこがいわゆるいろんな景気対策とかというのを切り分けられればいいんですが、御存じのように、特にイギリスですか、先ほどOBRということですけど、やっぱりEUは、とにかく統合の過程で、いわゆる財政、政府の財政規律というんですか、非常に厳格に求めたという経緯があって、その結果、構造的財政収支という概念が非常に、何というんですか、うまく使われているというんですけど、日本ではこれできるのかどうかというのが、実は、内閣府が先ほど相当のと、確かにあれは何とかしなくちゃいけない課題だと思います。  そういうことも含めながら、この構造的財政収支をしっかり切り分けながら、かつ景気対策とか、ここの整理というのがどうやったらいいのかというのをちょっとアドバイスいただければと思います。
  131. 川出真清

    公述人(川出真清君) 御指摘ありがとうございます。  構造的財政収支について私が触れました理由の一つとしまして、昨年の経済財政白書には書かれておりませんが、実はその前の経済財政白書までは構造的財政収支が示されておりました。計算方法がかなり粗っぽいです、その以前のものもですね。本当は更に丁寧にしていくべきことだと思ったんですが、去年の経済財政白書でなくなったんですね。僕はこれを見て驚いたんです。やはり、これは国際的な枠組みでやっていく。IMFにしてもOECDにしても、これはどこの機関でも構造収支は見るという形になっているのに、我が国はそれをやめてしまったというのは、私にとっては衝撃だったんですね。これは紙面の理由とかもあると思うんですけれども、そういったことがあって、技術的には可能であるということになります。
  132. 若松謙維

    ○若松謙維君 それと、私、仕事は公認会計士、税理士で、いわゆる事業再生ということをまさにミクロベースでやっております。  そういう場合に、企業が本当に経営悪化したときに、やはり歳出カットですか、これをやって、本当に最低の、もう何ですか、ぎりぎりの予算作って、そこからプラスアルファを知恵と努力で出していくと。  実は、日本の財政運営にもそれを求めたいんですけど、御存じのようにやっぱりこの財政というのはマクロですから、歳出カットというのはそのまま景気にも悪影響を及ぼすということで、そこの組合せというのが非常に、これだけ巨額の財政赤字を抱えている日本がもう一つ踏み切れない、何というんですか、大きなハードルがあると思うんですね。  そういった観点から、何かこの日本予算制度なり財政運営に対してアドバイスなりあれば聞きたいと思います。
  133. 川出真清

    公述人(川出真清君) 御指摘ありがとうございました。  厳しい内容ではありますけれども、やはり構造的に財政再建を進めると税収を増やさねばならない、これが多分明らかなことだと思います。構造的に税収を増やせば、どこの世界でもそうなんですけど、税が増えれば負担が増えるわけですから景気が悪くなるんですね。裏返せば、今の状態というのは税負担を軽くして構造ベースで景気をちょっと水膨れさせている状態なんだと私は感じております。逆にそこの痛みを避けてきたのが今の状況なのではないかな。  当然、景気に対応する、ここで、構造的財政収支で重要なのは、景気局面は別にどけますという立場で、景気が悪くなって赤字を出すことは我々は何も問題がないと思います。ただ、そうじゃなくて、構造ベースで水膨れというか経済が大きく膨らんでしまっているところはやっぱり潰さなきゃいけないのかなと思っております。
  134. 若松謙維

    ○若松謙維君 もう一つ聞かせていただいていいですか。  いろんなデータがありますが、例えば、いわゆる財務省というんですか大蔵省というんですか、そういったいわゆる財政の規律主張というんですかね、が強いところは結果的に財政健全化というのが進んでいるという一つの私はデータを見たことがあるんですけれども、日本の場合には当然財務省がある、また内閣府とかいろいろ景気対策、経済政策やっているという中で、日本のこの財政規律とマクロ経済両方含めた上での今の財政運営というんですかね、経済政策というものの在り方というのは、先生どういうふうに評価されていますか。
  135. 川出真清

    公述人(川出真清君) 何というんですか、財務省はやっぱり財政規律を求めることが使命とされている省庁なので、そのように進めていかざるを得ないと思うんですね、逆に緩めてしまうと大きく悪化するということなので。内閣府というよりは政府だと私は思うんですけれども、政府がやっぱり構造的なレベルで財政再建を進めるんだと。その際には、大沢先生がおっしゃられたような、やっぱり低所得の人たちの、課税ベースを広げて高所得からたくさん税金を取って低所得の人に返すというところで安心を与えながら、一方で、そういったところで社会政策的に支出されているような、構造的に支出してしまっている経費を別の形に変えていくとか、そういった形で筋肉質の財政に変えていかなきゃいけないということなんですけど、そこが、ちょっと取りまとめている場所が存在しないのかなというふうに思います。評価する人たちがいないと。  IFSという機関もそうなんですけど、結局元々は税金を、民間機関なんですけど、時間があれですけど、民間機関が立てたんですけど、どうしてかというと、我々税金払っているんだと、ちゃんと政府はやっているのかと、でも財政のことというのはプロじゃないと分からないので、民間機関なんだけどプロの人をいっぱい呼んできてそういう組織をつくったという経緯があるんですね。そういう意味でのことが日本ではまだ十分されてない、議論ができてないんじゃないかと思います。
  136. 若松謙維

    ○若松謙維君 貴重な御指摘、ありがとうございます。ある意味でこの評価機能の一つの大きな機能は私たち予算委員会でございまして、私どももちょっと勉強しなくちゃならないと改めて実感しながら、大沢先生にちょっと御質問させていただきたいと思うんですが。  おっしゃるとおり、いわゆる格差社会というんですか、やっぱりこれはいろんな意味で社会の停滞というんですか、つながると思います。そのためにアベノミクスもいろいろな形で手は打っているつもりなんですが、御存じのようにとにかく財政が厳しいという、どうしてもこの大きな前提から物事をなかなか発想できないということで、御存じのように金融政策とか、いろいろとアベノミクスという三つの組合せというんですか、ということで一挙に乗り切ろうということなんですけれども、そうはいっても、そういう中で、御存じのように消費税はちょっと延ばしましたけど、上げるというところはある意味で確実になっているという中で、所得の再配分というんですかね、御存じのようにジニ係数というのはいわゆる安倍政権になっても確かに横ばいだと思うんですけれども、いろんな先生が出された数字的には広がっているというところ、これは現実なんですけれども、ここを本当にどうしていこうかというのを私たち与党も真剣に考えているわけなんですけれども。  大変甘えた質問で恐縮なんですけど、あえて、安倍政権のもし財政諮問会議委員になられた場合の、ちょっと御提言をいただければと思うんですけど。
  137. 大沢真理

    公述人(大沢真理君) ありがとうございます。  余りありそうのないことの仮想でお答えしにくいんですけれども、あえて絞って言うと、今の政権にしていただきたいことというのは二つございまして、その一つは、先ほどの陳述した中でも申しましたけれども、雇用における格差の是正ですね。正社員化というのは追求していらして、これは私も大いに評価しているんですけれども、正社員にならなくても、というのはこの頃、なんちゃって正社員とか名ばかり正社員というのも増えていますから、名前だけ正社員にしてもらっても待遇が悪かったら何にもならないので、雇用形態にかかわらず働きに応じた処遇がなされる、これをヨーロッパの概念では均等待遇というふうに申しますけれども、これを何とか進めていただきたいというのがあります。  その関連で残念なのは、中国電力の広島高裁判決で、先頃、最高裁で上告棄却されました。これはかなりあからさまな男女差別のケースだったと思いますけれども、棄却されてしまった。ここはもう立法府の出番ではないのかなというふうに思いますので、雇用形態差別、性差別含めて差別を禁止するような実効ある立法をまずすることが必要ではないかというのが第一点でございます。  第二点は、日本の公的社会支出、途中にスライドを入れておきましたけれども、今OECDの平均よりはやや低いと。かつては最も低いグループでございましたけれども、だんだんと特に年金給付が伸びてきて日本の公的社会支出も平均並みぐらいにはなってまいりました。ところが、その割には貧困率の抑制ができていない。ということは、お金が余り効率的に使われていないということでございます。  そこで、消費税率をアップするまでもなく、今効率的に使われていない公的社会支出の組替えによって相当格差を是正し、ボトムアップをすると、これが景気に対しても良い影響を与えるのではないかということを期待しております。
  138. 若松謙維

    ○若松謙維君 終わります。ありがとうございました。
  139. 清水貴之

    清水貴之君 維新の党の清水貴之と申します。  今日はお忙しい中、貴重なお話を聞かせていただきまして、本当にありがとうございます。  私からは、まずは大沢公述人お話を伺いたいと思います。  大沢先生のこれまでの論文であるとか御発言を見させていただきますと、まずその貧困の話なんですけれども、貧困というのは、八〇年代は高齢者の問題であったけれども、今はそうではないと。高齢者の貧困率は下がってきていて、むしろ子供から中年層にかけての問題に変わってきているという御発言を見させていただきまして、やはりこういった話というのは、限られた予算であるとか手当てをするに当たって、どこにどのようにしていくかというもうその根本の部分で非常に大事な視点かなと思っております。  ですので、まずこの点についてお話を聞かせていただければと思います。
  140. 大沢真理

    公述人(大沢真理君) 拙著をお読みいただいたようで、大変ありがとうございます。  八〇年代の日本の貧困というのは専ら御指摘のように高齢者の問題でございました。それからだんだん順次たどってまいりますと、高齢者での貧困率は低下しています。それに対して、中年から特に子供のところでの貧困率が上がっているというのがかなりゆゆしい問題でございます。  高齢者の貧困率が低下した理由は、ほぼ間違いなく年金制度が成熟をしたおかげというふうに推測できます。ただし、後期高齢者、七十五歳以上になりますと、余り貧困率が低下しておらず、この年齢コーホートの人たちはやはり年金が成熟するということの恩恵を余り受けにくい年齢層なのかなという感じもしておるところでございます。  他方で、日本の高齢者の間の所得格差ですね、現役の人との格差ではなく高齢者の間の所得格差を取りますと、現役の人よりも所得格差が大きくなっています。これは、人生のツケが回るというふうに思えば自然なことのようにも見えますが、OECD諸国見渡しますと、実は少数派です。年金というのは現役世代から高齢者世代への言ってみれば集合的な仕送りですから、集合的に仕送りを受けている層の方が格差が大きいというのはやはり少しおかしいのではないかという観点で見直す必要もあろうかと思います。  ただし、公的年金制度を高齢者に対してのみ制限をするというような政策手段は行政コストも掛かりますので、むしろ税制を、税金を総合課税的にきちんと掛けて、勤労収入もある豊かな高齢者には応分の負担をいただくということを考えてもよろしいのではないかと思っております。
  141. 清水貴之

    清水貴之君 という話をいただきまして、やはり様々な層で、また子供と高齢者もあって、高齢者間でもあるという貴重なお話をいただきまして、貧困の問題が子供から中年層に変わってきているという中で、今日いただいた資料にも、子ども・子育て支援は高収益の社会的投資であるという記述もありました。  様々な予算の割り振りの中で、特に子供に掛ける意義といいますか、犯罪の抑止であったりとか、貧困の解消によって、その後の子供たちの成長によって様々な社会的なものが生まれるといういろいろなメリットがあると思うんですが、ほかの部分に掛けるよりも教育に掛けた方が効率が逆にいいというふうに考えられるとしたら、その理由はどこにあるか、教えていただけますでしょうか。
  142. 大沢真理

    公述人(大沢真理君) 一国の働く人たちの量と質について、人的資源という言い方もしたりします。各種の研究が伝えているのは、やはり人的資源が劣化するということが所得格差問題のゆゆしい影響の一つであるということなので、教育に対する関心は先進諸国どこでも、もちろん途上国でも高くなっております。  いろいろなことを比較しますと、日本の公的社会支出の中で教育に投入されている公的資金というのはOECD諸国の中でも最低でございます。ずっと最低の順位を守っているというなかなか情けない状況でございまして、中でも公的な資金の投入が薄いのが高等教育、大学以上と、それから就学前教育でございます。ということは、義務教育には日本もそこそこの公的資金の投入を行っているということです。  ところで、どの教育段階にお金を投入したら一番見返りが大きいのかということに関して言うと、もうこれは圧倒的に就学前教育のところの見返りが大きいと。これはノーベル経済学賞も受けたヘックマンというアメリカ経済学者ですけれども、計算を行っていまして、十二倍とか、低いとしても六倍ぐらいの見返りになっているということもございますので、今日はそのことを御紹介させていただいた次第です。  以上です。
  143. 清水貴之

    清水貴之君 その子供への投資であるとか格差是正のために、今日、子ども手当の話も出まして、一定の効果はあっただろうというお話だったんですけれども、一方で、やはり現金給付というものは確実に教育などに回るとは限らないと。貯金に回ってしまうことも多いでしょうし、遊興費に回ってしまうことも可能性としてはもちろんあるわけで、そこで、クーポンであるとかバウチャーなり、もう目的を限定した、教育のみ、福祉のみといった、こういった支給の仕方はどうかという話も出ておりますが、これについての御意見はいかがでしょうか。
  144. 大沢真理

    公述人(大沢真理君) ありがとうございます。  現金給付以上に使われ方が分からないのが扶養控除であるとか配偶者控除なのかなという気もいたしますが、それはそれとして、貧困基準を下回るような経済状況にある家庭の生活の実態ですね、これ、数字だけでは分からないんですけれども、家族にとって必要な食料を買うのに窮することがある、あるいは、電気、水道、ガスのようなライフラインを滞納のために止められてしまうことがある、それから、一年間も二年間も新しい下着を買っていないとか、そういうところに表れてまいります。そういう生活の中での困難というのにフレキシブルに準用できるのは現金給付ではないだろうかと。バウチャーは食べることも着ることもできないので、そこは現金給付の役割は大きいのかなと考えております。
  145. 清水貴之

    清水貴之君 続いて、川出公述人に財政再建の部分をお聞きしたいと思うんですが、プライマリーバランス、半減目標は今年度で達成できそうだという話で、ただ、二〇二〇年の今度は黒字化の話なんですけれども、この予算委員会、補正の方で安倍総理にも私質問させていただいたんですが、それを達成するためにあらゆる努力をしていきますというような話だったんですね。  ただ、いろんな数字を見ていても、今日のお話でも相当厳しいんじゃないかなという中で、今日、やはりリスクとか幅とか不確実性という話も出てきました。もちろん、あらゆる手段を講じて達成できたら一番いいわけですから、達成のために努力をしていく、頑張っていくのは必要だと思うんですが、そうじゃない場合の、もちろんできなかったときの可能性も考えていろいろな施策というのは作っていかなければいけないとは思うんですが、その辺りについてはいかがでしょうか。
  146. 川出真清

    公述人(川出真清君) ありがとうございます。  私が常々感じているのは、こういうリスク評価をしないと、政府も不必要なリスクを背負い込むことになると思います。無謬性というふうに言いますけれども、間違いがないんだと、私たちはこれをやれるんだというふうに言ってしまうと、元々そこまでコントロールはできない、リーマン・ショックを日本政府が起こしたわけでもなければ、東日本大震災を日本政府が起こしたわけでもないので、勝手に起きてしまうことを、自分たちには限界があるんだと、ここはまず認めて、自分たちはその中で最善の選択を取っているという主張をしていくことが、国民にも、自分たちにしょい込めるリスクというものをシェアする、しょい込めるものとしょい込めないものを分けるという議論が必要なのではないかなと思っております。
  147. 清水貴之

    清水貴之君 あと、構造的視点で変えていかなければいけないという話だったんですが、構造的視点っていろいろあって難しいと思うんですが、具体的にもし何かアイデアございましたらお願いします。
  148. 川出真清

    公述人(川出真清君) 簡単に申し上げると、先ほどの大沢先生の御指摘のとおり、もうまさに税の負担を、というか課税ベースをしっかり広げてちゃんと再分配をする。ここさえやれれば、今のような水膨れの構造は何とかなるんじゃないかなと個人的には思っております。
  149. 清水貴之

    清水貴之君 以上で質問を終わります。  どうもありがとうございました。
  150. 田村智子

    田村智子君 日本共産党の田村智子です。今日はありがとうございます。  まず、大沢公述人にお聞きをいたします。  お配りいただきました資料でも、平等と成長を両立できる政策と、これが日本は非常に弱いということに大変私も共感をしているところです。OECDの指摘も載せていただきましたけれども、やはり日本の場合の経済成長や財政の再建というのを考えたときに、格差と貧困の解決こそがその道を開いていくことになるんだという観点がもっと政治の中に必要ではないかという問題意識を持っています。  ちょっと具体に、ここに表も出していただいているんですけれども、例えば待機児童の問題などを考えてみますと、これまで日本の財政上の考え方では、そこへの手当てをやるのは財政負担であるという考え方がやっぱり大きかったと思うんです、財政負担が。だから、今の財政状況はこれぐらいだからこれぐらいの手当てはできる。しかし、それで問題が解決せずに延々と待機児童問題というのも深刻になっていく。  やはりこうした待機児童問題というのを考えるときにも、これを解決しないがために出てくる社会的損失、女性が離職をするとか、あるいは税や社会保険料の負担の主体になれないとか、こういう社会的損失がやはりどれだけ生じてくるのかというような調査や研究、あるいはそれに基づく施策ということが求められてきているんじゃないかというふうに思いますが、その点で大沢公述人の御意見を少しお聞かせいただければと思います。
  151. 大沢真理

    公述人(大沢真理君) ありがとうございます。  残念ながら日本では、例えば待機児童を解消する、あるいは保育サービスの供給というのをもっと抜本的に増やすことによって女性が継続就業した場合にどういう社会的な見返りがあるか。それは政府にとっては税収と社会保険料ということになりまして、デンマークに関してはこのような試算があるわけですけれども、私の不勉強もありますでしょうが、日本に関してこういう試算がなされたというのは余り聞いておりません。  ただし、出産、育児等で女性が中途退職、就業を中断をしないで勤め続けた場合に、給料がかなり順調に上がっていくというような強い仮定を置いて生涯賃金を計算する。これに対して、出産、育児で辞めてしまって、その後数年たってパートタイム労働等で職場復帰をした場合の生涯賃金、これを比較した研究というのは内閣府でなさったこともありまして、億の単位の生涯賃金の差が出るというような試算もございます。  ただし、この億の単位の生涯賃金の格差というのが、例えば税収や社会保険料収入にどういうふうに跳ね返っていくだろうか。ここはございませんので、今後の課題でもあって、私も意識して研究しようかなと思っているところでございます。
  152. 田村智子

    田村智子君 今のことに関してもう一問お聞きをしたいんですけれども、とりわけ格差と貧困の対策としては、教育、子供の貧困対策ということが極めて重要になってきている、私もそう思います。  とりわけ、今日もお配りいただいた資料の中でも、高等教育への支援、先ほども御指摘ありましたけれども、ここが私も決定的に不足していると。  今、政府の側の子供の貧困対策は、意欲のある子供たちを進学できるようにしていこうというふうにあるんですけれども、そもそも貧困世帯においては、その意欲を持つことさえも困難な状況というのがあるというふうに思っています。  それだけに、学費の負担の軽減ということにとどまらず、意欲が持てるような生活環境をいかに保障するか、そして高等教育に進んだときのその生活保障をどうするのか。十八歳以上の子供に対する生活保障というのは、貧困世帯に対しても全くないと言っていいのが今の日本の現状だとも思いますので、子供の教育を高等教育まで保障していくためにこういう施策がもっと必要ではないか、あるいはこういう考え方が必要ではないかなどの御意見ございましたら、是非お願いしたいと思います。
  153. 大沢真理

    公述人(大沢真理君) ありがとうございます。  高等教育に関しては、奨学金制度の拡充ということが考えられると思います。そして、昨年夏に閣議決定されました子供の貧困対策大綱では、非常に期待されていたのに盛り込まれなかった項目として、大学における給付型の奨学金というものがあったかと存じます。これについては、引き続き追求をしていただければと思います。  私の周辺でも東京大学は金持ちの子弟が来ていると思われている向きもありますが、そうでもありません、学生生活実態調査で見ますと。大学院などになりますと、奨学金がなければ学業を続けられない。ところが、三年間あるいは五年間奨学金を受けた結果として、卒業するときには四、五百万の借金を負ってしまうということになりまして、これはちょっとおいそれとは借りられないというような状況がございます。  さはさりながら、私は就学前教育のことを強調したいと思います。恵まれない家庭に育った子供というのは、幼稚園、保育園までは何とか和気あいあいと行けるんですけれども、小学校に入った段階で学校のカルチャーになじめない、非常に疎外感を味わうということがヨーロッパでもアメリカでも指摘されています。その疎外感が、学業に身が入らない、学校なんか行かなくても、勉強なんかしなくてもいい、どうせ自分は労働者になるんだ的な循環になっていくということがございますので、そういう意味でも就学前教育の重要性というのを強調したいと思います。
  154. 田村智子

    田村智子君 ありがとうございました。  川出公述人にお聞きをします。  中期、長期のリスク評価というお話もありまして、ちょっと私、済みません、学術的なことが大変不勉強なものですから極めて卑近なお話になってしまうんですけれども、私、今、日本の財政を考えたときに、一つ大変危機感を持っていますのは支出の面なんです。国土交通省が国土のグランドデザイン二〇五〇というのも安倍内閣の下で発表していますけれども、これによりますと、道路やあるいは整備新幹線や将来のリニア新幹線を見越しての駅の周辺開発などなど、総額積み上げていくと五十兆円を超える規模になっていくわけです。  これが、高齢者人口がピークに達するのは二〇二五年と言われていて、社会保障予算はいやが応にもそこは膨らんでいくわけですよね。加えて、その先はもう明らかなる人口減少が残念ながら待っていると。こういう下で、先々の経済成長を見越しているからといって、これだけの規模の公共事業をまさに社会保障予算などが一番必要とされるときに併せて行っていく、このことが日本の財政に対しては大変危険な問題をもたらしかねないんじゃないだろうかというふうに思っているんです。  先々の成長戦略が未知数であるにもかかわらず、このような投資ということについてはどのようにお考えになるか、お聞かせください。
  155. 川出真清

    公述人(川出真清君) 御指摘ありがとうございます。  社会資本の整備に関しては九〇年代に結構はやったんですけれども、その後ちょっと沈滞しているんですけれども、最近また注目されていますけれども、やはり社会資本の配置という問題をちゃんと議論しないで取りあえず全部やってしまえという感じになっているような気がします。  精査する必要があって、先ほどの構造的議論でとても大事なのは、やはり本当に潜在成長に効く投資なのか、そうじゃないのかをちゃんと区分しなければいけない。社会政策としてやっているのであれば、それは税制などで再分配すると。話が別なのがごちゃごちゃになっているんじゃないかと感じております。
  156. 田村智子

    田村智子君 ありがとうございました。終わります。
  157. 山田太郎

    ○山田太郎君 日本を元気にする会・無所属会の山田太郎でございます。よろしくお願いします。  私は、今ちょっと予算委員会の方では年金についていろいろ質疑を中心にやらせていただいておりまして、年金は保険なのか又は税金なのかといった論点から、今日の財政検証その他、両先生方にお伺いできればなというふうに思っております。  そんな中で、まず川出さんにお伺いしたいんですが、実は、御案内かもしれませんが、日本の年金、今後どうなるかということ、特に積立金どうなるかということにおいては、はじき出す数字が様々出ておりまして、大体政府と我々野党が追及する場合にいつもその数字の前提で合わないんですね。  今政府の方は基本ケースとしては賃金上昇二・一%、それからGPIFの金利も四・一というかなり高い数字を出しております。ただ、現実的な直近のここ十五年間ぐらいの数字を見てみたら、どう考えても賃金上昇は一・四%いかないんじゃないか、GPIFも二〇〇一年から二〇一一年までの金利分を見ると一%いっているかどうかということになります。そうなってくると、実際の年金の積立ては二〇三八年に使い切ってしまうと、こういうようなこともあるわけでありまして、そういった実は経済前提がはっきりお互い、要は国会の中でも、政府と国会議員というか、あるいは国民としっかり議論ができていないと前にちっとも進まないと、こういうことなんですが、この辺り、どう考えればいいのか。  私は、実は元々経営者だったものですから、ワーストケースというのはやっぱり気にするんですね。国家も会社も潰すわけにはいきませんから。もちろんただワーストケースばかり言っていると社会不安にもなってしまいますので、先ほど公述人の中にもいろいろな示唆するお話があったと思うんですが、この辺り、特に年金という問題を考えた場合にどの辺りを、いわゆるコミュニケーションというか、国民と一緒に考えていく経済前提の数字として見ていけばいいのか、その辺り、教えていただけないでしょうか。川出公述人、お願いします。
  158. 川出真清

    公述人(川出真清君) 御指摘ありがとうございます。  年金と財政推計の前提も違うとか、もうそこら辺の議論が、自分たちの信念に基づいて議論されている部分があるかというのを私も印象として受けております。  海外の事情で、先ほどもIFSとOBRの話があったんですけれども、基本的には公的な機関と民間でもある程度著名な機関とが数字を細かくお互いにチェックしています。お互いに資料を出すときに、相手の数字はこんな数字が出ているけれども、うちはこっちだ、それでアネックスというか補論のところで、こういう係数をやっているのは私たちの計算ではこうなんだということで、それぞれの立場を明確にして主張を繰り広げるという形になっているんですけれども、残念ながら日本というのは一方向の情報しか流れないという形でクロスチェックがないんですね。海外では独立推計機関、欧州委員会とかでも独立でやれという形で動いてきているんですけれども、日本ではどうしてもまだその状況になっていないのが大きいのかなと。  ですので、年金のその係数についても、先ほどの中長期試算もちょっと不思議な数字が幾つかあります。そういったところは、やっぱり本当はクロスチェックということだと私は思っております。
  159. 山田太郎

    ○山田太郎君 実は、川出先生なんかも専門家なので虎の子でいろんな数字は持っていらっしゃるんじゃないかなと、あえて今日は余り出されていなかったと思うんですが。  そんな中で、虎の子数字で一つ是非教えていただければ聞きたいんですが、要は今後のマクロ経済を占う場合にGDPどうなるかってかなり大きな問題だと思っています。  先生の資料の中、九ページ、ありましたけれども、このような状況の中で、本当に今後二%達成又は維持できるんだろうかということは非常に私は厳しいんじゃないかなと。特に二〇一七年、一旦、消費税が現実的に行われれば、その後失速するんではないか、あるいはオリンピックがあるから持ち直るんではないか、いろいろありますが、多分、信頼性検証の問題で、先生の場合の検証結果で結構なんですが、一〇%、二〇%、それぞれの信頼性の中で、どれぐらいの幅の中でこの辺り、特に二〇二〇年に向けていくのかどうか、もし虎の子の数字があったら教えていただきたいんですが、いかがでしょうか。
  160. 川出真清

    公述人(川出真清君) 虎の子の数字はないんですけれども、私自身が思っているのは、九ページの数字で、成長率ですけれども、赤色で示しているベースライン、ここがまさに真ん中だと私は理解しております。  先ほどの公述でも少し述べさせていただいたんですけれども、上はベストシナリオなんですね。ちなみに、ワーストシナリオがないという問題はあるんですけれども。ベストシナリオが示されている、そして標準的な、ノーマルシナリオと言ってもいいんですけれども、示されているということで、本来、ここから幅がぼんと出て議論されていいのかなというふうに思っております。
  161. 山田太郎

    ○山田太郎君 その場合に、もう一つお伺いしたいんですが、中位の計算が、じゃ、このベースラインだという、この赤の標準だというふうにするとすると、ここからのぶれは主に何の変数が一番大きいと考えられるのか、分かる範囲で結構ですので。この辺りが特に分かってこないと、又は政府なりなんなりが出してこないと、実は統計の専門家としてもなかなか計算しにくい側面があると。  何でこんな質問をするかと。先ほどの独立推計の機関を仮につくるとしたら、やっぱりここは政府含めて出してもらわないとできないんじゃないか、あるいは、いや、そんなのはもう大学のレベルでも全ての数字が分かるからある程度できるんだよと、こういうことなのか、是非その辺りも教えていただけないでしょうか。
  162. 川出真清

    公述人(川出真清君) もうこちらの資料の方に前提は書かれておりまして、二つの点に集約されると思います。  TFP成長率が二・二ですか、去年は一・八だったと思うんですけど、何か大きく伸びていて、実は一九八六年から九三年の辺りのTFP成長率を用いているということで、比較的高めの係数が入っています。どんと伸びると思うんですね。あと、女性の社会進出によって労働参加率が上がってくるというところも結構高めに打っているような気がいたしますので、そこの労働量の投入の増加と技術進歩の増加が大きく寄与しているというふうに思います。
  163. 山田太郎

    ○山田太郎君 次に、大沢先生の方にお伺いしたいと思いますが、先ほど冒頭で述べたんですが、まさに年金は積立てとして保険と考えるべきなのか、税金として考えるべきなのか、その辺り、論点の整理ということで御意見をいただきたいと思っています。  当然、保険と考えれば、要は累進性の問題というんですかね、高いいわゆる所得でもってたくさん納めた人は高くもらえるけれども、そもそも納められなかった人はもらえないということになってしまう。そうなってくると、累進性どころか生活保護との関係というのも出てきてしまうのかなと。  一方で、もちろん、税金と考えると、若者から高齢者に対する所得移転ではないか、あるいは後世の人たちに対するいわゆる負担というか、なかなか難しい問題だとは思っていますが、国も国会もこの辺り議論が十分進んでいない中で事態はどんどん進んで、私は悪い方向に進んでいると思っているんですけれども、心配に思っている国民は少なくとも多いということではありますが、その辺り、是非、大沢さんの方から御意見いただけないでしょうか。
  164. 大沢真理

    公述人(大沢真理君) 御質問ありがとうございます。  あえて保険か税金かというふうに大別していただいたと思うんですけれども、日本の公的年金は社会保険制度であることは間違いありません。しかしながら、税金がミックスされております。それから、社会保険制度であるけれども、積立方式ではなくて賦課方式という形で行われておりまして、つまり、今現役で賃金を稼いでいる人たちが払っている保険料がそのまま年金を受け取る人の年金に回っていると。  普通、賦課方式ですと積立金というのは〇・五年分ぐらいしか持たないんですけれども、日本の場合には数年分に及ぶ巨大な積立金を持っていたと。これは、かつて積立方式だったものを賦課方式に徐々に変えてきたということから積立金が一定存在するということでございます。  したがいまして、さっきの保険か税金かということ、あるいは世代間の仕送りなのかということでいえば、現状の公的年金は明らかに世代間の仕送りになっております。特に、基礎年金の二分の一は完全に国庫負担で賄われておりますので、全く年金保険料を払わなかった人でもこの基礎年金の二分の一だけは受け取ることができるというシステムになっております。  しかしながら、基礎年金を満額もらいましても生活保護基準に満たないので、全く保険料を払わないで基礎年金の二分の一しかない人は、生活をしようと思えば生活保護に頼らざるを得ないという状況がございます。
  165. 山田太郎

    ○山田太郎君 時間になりましたので。  ありがとうございました。以上です。
  166. 松沢成文

    松沢成文君 次世代の党の松沢成文と申します。今日は、両先生、ありがとうございます。  両先生のプレゼンテーションを聞いていまして、私、ふとこんなことを思ったんです。何か先生たちの御主張は、今大変はやりましたトーマス・ピケティさんの理論にもちょっと関係するところがあるのかなというふうに感じたんですね。  私はその分厚い本は読んでいませんので、新聞報道ぐらいしか勉強していません。私の理解が間違っていたらまた訂正もいただきたいんですが、資産価値の上昇の方が所得や賃金の上昇よりも大きいので、格差がどんどんどんどん開いていっている、これはもう先進国共通の状況だと。これを解決するには、例えば資産課税を強めるとか、あるいは所得税の累進構造、特に所得の高い人からかなりの税率で税金を取るとか、こういうことをやっていかなきゃ駄目なんじゃないかと、大ざっぱに言うとそんなことをピケティさんはおっしゃっているんじゃないかと思います。  さあ、そこで、両先生はこのピケティ理論についてどう御評価されるのか。それと、ピケティは日本もそういう状況にあると主張しているんですね。日本の今のこの経済状況は、ピケティ理論に当てはめて、やはり当てはまるんだと、そういうふうになっていると、だから対策打たなきゃいけないというふうにお考えなのか、両先生にちょっと御感想をお聞きしたいと思います。
  167. 川出真清

    公述人(川出真清君) 御指摘ありがとうございます。  私は非常にそちらの部分で詳しくお話しはできないんですけれども、目の前で申し上げられるのはフローかストックかという話。最近でも財政健全化の話でもフローとストックの話が出てきているんですけど、結局フローがちゃんとやれていないとストックが悪くなっていくという実態があると思います。  今の日本のフローを見ていると、そういう意味では、所得の把握が、もう本当に所得控除をがんがん入れていって所得をほとんど把握できていないというか、しないようにしてあって、結果的にそこでのフローのベースの再分配やっていないので、ストックが積み上がっていくというのは致し方ないと。そこをちゃんとやるということがまず入口で、さらに資産課税、資産課税というのはやはり付加価値に対して税を掛けるというのがまず税の本道ですから、取る、取っちゃえばいいというのはちょっとやっぱり問題があるので、なるべくそこの部分を避ける意味で、フローをしっかりやった上でストックに行くという議論があってもいいのかなと思ったりしております。
  168. 大沢真理

    公述人(大沢真理君) 御質問ありがとうございます。  私のスライドの十四番、ちょっと数字が消えているんですけど、所得トップ一〇%の所得シェア、これはピケティさんも一緒に運営しているホームページのデータから取ったものです。  よく紹介されるデータは、所得トップ一%の所得シェア、なおかつキャピタルゲインを含まないというのが世の中で比較的しばしば紹介をされております。それで見ると、アメリカが二〇%ぐらいで日本は一〇%ぐらい、どこの国でもトップ一%の取り分は上がってきているんだけれども、それだけ見ると、アメリカに比べれば日本の所得格差はかわいいよねという話になるんですが、確かに日本にはスーパーリッチが余りいないと。しかし、一〇%というところで取ると、ドイツよりも日本の所得格差は大きい。なおかつ、キャピタルゲインを入れないと、日本のお金持ち、年収一億円以上ぐらいのお金持ちの収入のほとんどは資産性の所得、株式の売買差益です。ここに掛かる税率というのが非常に低くなっていまして、一億円を超える辺りから税率が下がってしまうという大変ゆゆしい状況日本の税制はなっているかと思います。  ですので、川出公述人もおっしゃいましたように、フローのところの課税ベースを広げて、きちんと累進的な税率構造にして、いただくものはいただくというふうにした上で、最後のところで相続税であるとか、それから株式の売買差益などへのしっかりした課税というのを考えていく必要があるのかなと思っております。
  169. 松沢成文

    松沢成文君 大沢先生にもう一点伺いたいんですが、実は、昨年辺りから配偶者控除の見直しという議論が政治の場に上ってきたんですが、これなかなか難しくて、まだ結論が出ていないんですね。  よく言われる百三万の壁とか百三十万でしたっけ、の壁とかありますけれども、女性の社会進出、あるいは、逆に言えば女性の労働力も必要になってきます。そういう意味で、百三万のこの壁があるので女性が労働を控えてしまうということにつながっているんじゃないかという意見と、いや、専業主婦やっているのは好きでやっているんじゃなくて、例えば子育てとかあるいは両親の介護とかでかなり忙しくて専業主婦にならざるを得ないと、そういう中で必死に働いている中での、所得に掛からないこういう制度があってもいいんじゃないかという意見、まあ様々あるんですけれども、先生は、これ、配偶者控除をじゃどう改革していくべきなのか、あるいは配偶者控除に代わって、例えばこれは共働きもあるいは専業主婦家庭も関係なく、例えば家庭控除みたいな形でつくっていくのがいいのか、その辺りの改革はどういう方向があるべきだと思いますか。
  170. 大沢真理

    公述人(大沢真理君) 配偶者控除については長年様々な議論のあるところというふうに承知しております。  今日の資料の中では、スライドの二十番を見ていただきたいわけですけれども、日本でもドイツでも、専業主婦世帯を優遇する税制によって、同じ所得の一人親世帯よりも一貫して片働き・専業主婦世帯の純負担が低くなっているということがございまして、一人親というのは子育てを当然しているわけですし、もしかしたら年老いた親の介護もしているかもしれないけれども、そういう配慮を一切してもらっていない。  どちらが大変かといえば、これは税制の方で帰属所得という考え方がございます。専業主婦であれ誰であれ、一年間に行っている家事活動を貨幣換算をすると三百万円を超えるわけですね。それだけの支出をしないで済んでいる、それが帰属所得の意味なんですけれども、ここには課税がされておりませんから、それを考えれば、同じ収入であっても専業主婦世帯の方が担税力があるというふうに考えるのが妥当ではないかと思いますので、配偶者控除というか、所得控除という制度は高所得者を優遇いたしますから、なるべくそれは解消して税額控除の方に転換していくべきではないだろうかと。  そういう意味でも、消費税率の次の引上げをにらんで、給付付き税額控除の検討というのは一刻も早く進めていただきたいというふうに切望しています。
  171. 松沢成文

    松沢成文君 最後に川出先生に伺いたいんですが、ちょっと今日の議論とは離れますけれども、私、この予算委員会で、やはり予算一つの問題として、政府の歳入確保努力足りないと。例えば、政府が持っている特殊会社、JTとかJPとかですね、こういう会社の株を売れば、そこに収入が入って、そしてそれが復興財源に回って、復興特別所得税とか国民に負担課しちゃっているわけです、これを減税できるじゃないかと、そうすれば国民も被災地も喜ぶよということで、JTの民営化を訴えているんです。  JTはたばこ会社ですよね。例えば、JPやNTTはユニバーサルサービスをやっていますから、ここに政府が関与するという公的関与の必要性は分かるんですが、今世界中で規制されているたばこという商品、それも条約で政府とたばこ会社は関係を持ってはいけないという方向が出ているのに、ずうっとその株を抱え続けて完全民営化しないというのが続いているんです。  先生、一般論としてどんなふうな考えをお持ちですか。
  172. 川出真清

    公述人(川出真清君) 分野が全く違うので何とも申し上げにくいんですけど、売ってしまう、ストックベースで処理をするというのはとても大事だとは思うんですけれども、まずはフローをしっかり蓋をする、ここからやった上でストックの議論をしていく、これが大事なんではないかと思っております。
  173. 松沢成文

    松沢成文君 どうもありがとうございました。
  174. 薬師寺みちよ

    薬師寺みちよ君 無所属クラブの薬師寺みちよでございます。  今日は本当にお二人のお話聞かせていただきまして、大変勉強になりました。ありがとうございます。  私自身、医師でございまして、働く女性として、子供を抱えながら本当に毎日毎日自転車操業のようなことを送っております中で、実は、大沢公述人の講義録を拝見させていただきまして、こういう言葉が出てきております。女性が働くことに世帯の所得を増加させる貢献度がほとんどないのですというお言葉、女性が稼ぐ力が弱い国では貧困率が高いと言われております。まさにこれを実感をいたしております。  こんな中で、今回は女性が活躍する社会というものを安倍政権がうたい、政策も打たれておりますけれども、実はこういった予算について、いわゆるジェンダーバジェット、いわゆるジェンダーの視点に立った分析というものがなされてはおりません。できれば大沢先生から、まずジェンダーバジェットの考え方や、そういうジェンダーという立場に立ってこういうものを分析することの、もし何か御意見がございましたらいただきたいんですけど、お願いいたします。
  175. 大沢真理

    公述人(大沢真理君) 今日のお話予算に特化したというよりはやや幅広のお話になっていて、このお答えも的を射ているかどうか分からないんですけれども、財政支出も大事なんですけれども、収入の構造というのが非常に大事だというふうに私は思っておりまして、財政支出をいろんな分野に分けて、それによって利益を受ける裨益人が誰なのかというのをジェンダー分析することによってジェンダーバジェットの分析はできますけれども、国際的に見て弱いのは歳入の方のジェンダー分析なのではないかなということを常々感じております。  女性から税金取るのか、社会保険料どうなのかというようなこともそうなんですけれども、今日お示しした幾つかのデータの中で、例えば労働年齢人口であっても、共稼ぎ世帯や一人親世帯だと貧困をほとんど削減してもらえないんですね。この主な原因は社会保険料負担にあるということも日本国内での研究で分かっています。それから、今お示ししたような、あらゆる所得段階を通じて専業主婦世帯よりも一人親世帯の方が負担が高いといったようなこと、こういう意味で、国民から社会保険料や税としてお金を集めてくるその構造のジェンダー分析というのがもっと必要なのかなと感じておりまして、今日、その一端を紹介させていただいた次第です。
  176. 薬師寺みちよ

    薬師寺みちよ君 ありがとうございます。  じゃ、これと同じ問いを川出先生にもちょっとお尋ねしてみたいと思うんですけれども、お願いできますでしょうか。
  177. 川出真清

    公述人(川出真清君) 済みません、ちょっと質問を失念しました。申し訳ございません。どのような……(発言する者あり)ジェンダーバジェット。  確かに、経済的に苦しい方々の支出を担保するために高所得の人からしっかり取るということがこの国では欠けているというふうに思っております。それは、非常にいろんな角度からの要請があってなかなか動けないというのは分かるんですけれども、例えば配偶者控除を外すというのも、決して配偶者控除を外したから不幸になるということではなくて、それこそ外す代わりにしっかりとそういった困難のある方々が救えるような仕組みをつくっていくということをやらなければいけないんですけれども、それが何か全部ごちゃ混ぜになっているというか、議論がごちゃ混ぜになっているのを非常によく感じるので、そういった形でやられるべきじゃないかなと思います。
  178. 薬師寺みちよ

    薬師寺みちよ君 ありがとうございます。  じゃ、女性という視点でもう一問。日本の、来年度、二十七年度の予算というものが女性にとって十分なものであるのか、女性の支援策として十分確保がされているのかという視点で大沢公述人の方から御意見いただけますでしょうか。
  179. 大沢真理

    公述人(大沢真理君) ありがとうございます。  予算は膨大なものですので、御案内のように、そのあらゆる点を克明に分析をしているわけではございません。大ざっぱな印象にとどまることをお許しいただければ、やはり消費税率のアップを先送りして歳入がおぼつかないということもあって、いろいろな福祉関係あるいは子ども・子育て関係でも、お金が付いたところもあるけれども必ずしもそうなっていないところもあるという中で、そういう意味では、やや期待が外れたのかなという感じを持っております。  先ほども申しましたように、日本の公的社会支出というのはそんなに低くないんだけれども、例えば貧困を削減する効果が弱い、あるいは働いている人が子供を育てるということへの支援が弱いということはいろいろなデータから言えると思います。その辺りにもう少しめり張りを付けていただければよかったなという感じを持っております。
  180. 薬師寺みちよ

    薬師寺みちよ君 ありがとうございます。  川出公述人はいかがでいらっしゃいますでしょうか。
  181. 川出真清

    公述人(川出真清君) 大沢先生の御指摘のような感じで、やはりそういったしっかりとした支援をしていく必要があるのかなと思います。済みません、ちょっとイメージが浮かびませんです。
  182. 薬師寺みちよ

    薬師寺みちよ君 ありがとうございます。  先ほど配偶者控除のお話もいただいたかと思うんですけれども、私、百三万円の壁というのもありますが、百三十万円の壁というのもこれ一つ大きな高い壁だと思っておりますけれども、大沢公述人の方から、ちょっとこの百三十万円の壁についても何か御意見ございましたらいただきたいと思います。
  183. 大沢真理

    公述人(大沢真理君) 大変鋭い御指摘をありがとうございます。  百三十万円の壁は、税制ではなく社会保険制度からもたらされているものです。もし、第二号被保険者、フルタイムのサラリーマンの配偶者であって週に三十時間未満の就労、なおかつ年収が百三十万円を超えなければ、第三号被保険者、保険料を払うことなく基礎年金を満額受けることができる、こういうステータスをもらえるわけですね。同じことが健康保険制度にも、週三十時間未満の就労、なおかつ年収が百三十万円未満であれば、健康保険は配偶者の、大体夫ですから、夫の健康保険の被扶養家族になりまして追加的な社会保険料を払うことなく、妻もそうですけれども、子供も医療を受けることができるというふうになっております。  この壁を越えますと、自分で健康保険に入る。それから、第三号被保険者ではなくなり、ほぼ第一号になりますね。三十時間以上働かないと厚生年金掛けてもらえませんから、ほぼ第一号被保険者になります。そうなりますと、一か月で一万六千円を超える定額の国民年金保険料が容赦なく掛かってまいりますので、この激変というのは非常に大きいわけです。  他方で、健康保険については、これは所得比例でありますから、自分が健康保険の名義人になった場合も給料が低いなら低いなりで低い保険料になりますけれども、でも、それまでただであったものが払わなければならない。それから、年収が動いたり就業時間が動いたりするごとに、自分の健康保険なのか、それとも夫の健康保険の扶養家族なのかというふうにステータスが動きます。このことがかなり著しい不都合を及ぼしていて女性の労働市場での労働供給行動をゆがめているというのは、幾つもシミュレーションや分析ございまして確認されているところかと思います。  これを解消するためには、年金制度の本当の意味での一元化、それから健康保険制度の一元化ということが必要になると思います。一円でも稼いだら、その中から必要な保険料を払って、みんなが同じ社会保険制度に入れるようにすると。年金の例としては、スウェーデンの年金制度あるいはイタリアの年金制度などがございまして、これをやると所得の申告もかなり正しくなって保険料収入も増えるという経験がございますので、日本にとっても考慮に値する制度なのではないかと思っています。
  184. 薬師寺みちよ

    薬師寺みちよ君 ありがとうございます。  本当に勉強になりまして、これからも私ども、しっかりと女性、子育て支援ということも議論してまいりたいと思います。本当に今日はありがとうございました。  以上で終わらせていただきます。
  185. 福島みずほ

    福島みずほ君 社民党の福島みずほです。本日はどうも本当にありがとうございます。  まず、川出公述人にお聞きをいたします。  まとめのところで構造的視点リスクを加味した財政再建というふうにありますし、御説明をいただきました。先ほども大規模公共事業についてはチェックをすべきだというふうにおっしゃったわけですが、行け行けどんどん、これから成長していくからという楽観的なことでは危なくて、リスクを加味しろということについて、どういうことが必要なのか教えてください。
  186. 川出真清

    公述人(川出真清君) ありがとうございます。  リスクというのは、ここで言うところのリスクというのは様々な起こり得るリスクで、公共事業の政策に関しては、リスクというよりはどういうふうにグランドデザインを描くかなんですけれども、やはり無理のあるところに無理な資源を投入して生産性が上がるという見込みは、これはリスクというよりはもう完全に定性的な評価で厳しいというのは出ていると思うんですね。そこら辺のところの議論をしっかり詰めていかなければいけないところと、リスクがもうぐしゃぐしゃになっている、ここの議論がぐしゃぐしゃになっているような気がするので、そこら辺をちゃんと精査すべきだと思います。
  187. 福島みずほ

    福島みずほ君 公述人が考えるリスクというのはどのようなものでしょうか。
  188. 川出真清

    公述人(川出真清君) 基本的には想定だと思います。だから、例えば公共事業でも、例えば車がどれぐらい走るんだという想定に一定のぶれがあるということを考えて、決め打ちで一本でこれぐらいの車が走るんだとやるんではなくて、これぐらいの多様性があったときにこれぐらいの収益の幅があると、それだけのものが受け入れられるかということで、そういった処理リスクというふうに考えております。
  189. 福島みずほ

    福島みずほ君 ありがとうございます。  大沢公述人の、やはり日本で格差と貧困をなくさなければならない、女性の貧困をなくさなければならない、制度を変えなければならない、それはとても重要なことだというのは本当にそのとおりだと思います。  論文や、それから「生活保障のガバナンス」という御本を拝読をいたしました。この中に、日本の税・社会保障制度は貧困の緩和という政策目標に関して逆機能しているというのがありまして、これはそのとおりだというふうにも思うんですが、この点について御説明いただけるでしょうか。  さらに、そこで、本の中では、男性稼ぎ主世帯に対してその他の世帯が冷遇されるというジェンダーバイアスがあると書いてありますが、この逆機能だというところについてと、その点について御説明ください。
  190. 大沢真理

    公述人(大沢真理君) 御質問ありがとうございます。  本日も紹介いたしましたように、政府が所得再分配を行った結果として貧困率がアップしてしまうという国はそんなにないんですよね。先ほどのデータですと日本だけ。日本の中でも、専業主婦世帯は僅かであれ貧困を削減してもらえるけれども、共稼ぎ、一人親、単身者ではかえって貧困率が高まるという状況にあると。これは、本来、所得再分配が極端な格差の存在あるいは貧困の堆積に対して是正をする制度であると考えれば、目的に照らして逆機能をしていると言わざるを得ないと思います。  あるいは、子供の貧困を取り出しても、政府が所得再分配をすると子供の貧困率がかえって高まると。これ、八〇年代の半ばぐらいはポルトガルとかイタリアでも若干見られましたけれども、その後は日本だけの状況になっていて、二〇〇九年になってようやく僅かながらプラスになりました、貧困削減率が。でも、これは社会保障・人口問題研究所の阿部彩さんの研究によりますと、世帯の中に高齢者がいて年金もらっているケースに限られるということのようでありましたので、おじいちゃん、おばあちゃんの年金がどれだけ子供に回るのかということも含めて、やはり日本の所得再分配というのは貧困削減効果がゼロないしマイナスの状況で、非常にゆゆしいことだと私は思っております。
  191. 福島みずほ

    福島みずほ君 それをどう変えるかというので、今日は、ジェンダー的な視点や配偶者控除や、様々な点で御教示があったわけですが、日本の、皮肉なことに、社会保障制度が貧困の緩和という政策目標に関して逆機能している、これをどういうふうに変えたらよろしいでしょうか。
  192. 大沢真理

    公述人(大沢真理君) まず、税制の累進度が非常に低いわけですね。九〇年代の初めぐらいから累次の税制改正によって累進度が低められてきたということがあります。これは同時に、税収を低下させたというふうに言えるんですね。なかなか税収が上がらないということが政府の頭痛の種だとは思いますけれども、九〇年代あるいは八〇年代の後半ぐらいからずっと時系列で考えてみれば、取るべき税金を取ってこなかった結果が今日の累積財政赤字というふうにも言えるわけですので、これは違う国になれと言っているわけじゃなくて、せめて一九九〇年ぐらいの日本に戻れば六十兆円の税収とかそういうこともあり得るので、何とか考えていただきたいということでございます。  それから、資料の二十とか十九で示しております、マイナスになっている国があるわけですね、一人親世帯の負担というのが。なぜマイナスになっているかと。つまりプラスの、順機能をしている所得再分配は、給付付き税額控除がイギリスの場合です。それから、ほかの国も、日本以外の国は大抵給付付き税額控除制度を導入しています。オーストラリアだけがちょっと違っていて、これ、現金給付の、低所得者限定の現金給付です。その額が、平均賃金六七%の収入の一人親の税込み収入の二四%にも及ぶ、潤沢なというんですか、手厚い保障がなされているというようなことによっております。ただ、オーストラリアは社会保険制度がほとんどなくて全てが公的扶助でやっている国ですので、日本の参考になるのはやはり給付付き税額控除なのかなと。それを、社会保険料負担を視野に入れた給付付き税額控除を考えていただきたいと思っております。
  193. 福島みずほ

    福島みずほ君 この「生活保障のガバナンス」のところで貧困の問題が取り上げられているわけですが、とりわけ高齢者の女性の貧困問題というのを書いていらっしゃいますが、原因と対策についてお聞かせください。
  194. 大沢真理

    公述人(大沢真理君) これは、公的年金制度、それから企業年金も含むんですけれども、そのデザインの全体が、夫婦がそろっていて、なおかつ夫が働いていて勤労収入があるということを前提にして年金の給付設計がなされているがために、夫が死んでその勤労収入がなくなり、なおかつ年金給付が半減、ほぼ半減しますね、としたときに、それまでは恵まれた年金生活をしていた夫婦の奥さんであっても一気に貧困に陥るというようなことがございます。ほかの主要国と比べても日本の高齢単身女性の貧困率というのは非常に高いと、それは今申し上げたような年金の設計に由来している部分が大きいと思います。
  195. 福島みずほ

    福島みずほ君 街頭演説をしていても、女性の方に、年金で食べていけないとか、実際、夫が亡くなって年金が減るとか、もうそういう話はたくさん聞きますので、女性の貧困、とりわけ年金システムなどを変えることが必要だと思います。  この御本の「生活保障のガバナンス」の最後でも、生活保障システムを比較ジェンダーで分析することが今後必要だというふうに書いていらっしゃいますが、その点について一言教えてください。
  196. 大沢真理

    公述人(大沢真理君) 比較ジェンダーなどと偉そうなことを書いていますけれども、高齢者の中にも女性と男性では相当事情が違う、あるいは子供の中でも男の子と女の子ではかなり事情が違うということがございます。なので、労働年齢人口については男女別の分析というのも珍しくはないんですけれども、高齢者になると、なぜか男女一緒にした議論というのがまかり通っておりますし、厚生労働省の統計などでも、本当は男女別に取っているはずなのに込みにしたグラフなどを見かけることが珍しくありません。  そういう意味で、子供時代、それから現役、高齢期を通じて女性と男性では相当事情が違うということをきめ細かく配慮した調査研究、分析が必要であるという意味でございます。
  197. 福島みずほ

    福島みずほ君 公述人お二人、本当にありがとうございました。生かしていきます。ありがとうございます。
  198. 平野達男

    ○平野達男君 平野達男でございます。今日はどうもありがとうございます。  先に川出公述人に、財政再建に向けての考え方を中心に何点か質問をさせていただきたいと思います。  ちょうど今、財政金融委員会なんかでも、二〇二〇年のプライマリーバランスの黒字化に向けて、どういう前提でこれから財政再建計画を立てていくかということを私なんかも議論をしていました。  御案内のとおり、内閣府の中長期試算では二つのシナリオを用意していて、経済再生シナリオとベースラインシナリオというのを用意していると。経済再生シナリオだと、名目で二〇一六年から、これは内閣府の資料なんですけど、二三年度平均で名目、平均で三・六%、それから実質で二・一%の成長率ということになります。これが本当に実現しますと、八年間ですから名目のGDPは約三割増えることになります。実質二・一%だと約二割。今、大体GDPが五百兆ぐらいですから、八年間で五百兆が六百五十兆になる、名目でですね、という計算になります。過去の、少なくともここ二十年ぐらいの名目成長率と実質成長率を見ますと、こんな高い成長率で動いていませんね。バブルのときはそうでした、高度経済成長はまた別として、もっと次元は別なんですが、こういうのを経済再生ケースと言っているわけです。  今日の川出公述人は、本当にこれはいい御意見聞いたなというふうに思いましたけれども、今政府は経済再生シナリオベースで財政再建計画を作ろうとしています。これでも二〇二〇年では九・四兆、国全体で、国、地方合わせて、国だけで九・一兆のプライマリーバランスの赤字が出ますから、これをどうやって埋めていくかという、これだけでもすごいハードルなんですが、しかしこれが経済再生シナリオで出てくる数字で、それをどうやって埋めていくかさえ大変なのに、しかし根底の段階の見積りもかなり甘いではないかという、そんな議論を今やっているんですが。  今やろうとしている考え方というのは、川出公述人の考え方で、このペーパーで示せば一番上のラインというか、最も経済成長が成長したベースで財政再建計画を立てて、それで黒字化目標を達成させようとするというこの考え方は、やっぱりこれは受け入れられないということになるのではないかと思いますが、そのお答えを聞かせていただければ有り難いです。
  199. 川出真清

    公述人(川出真清君) 御指摘ありがとうございます。  受け入れられないというよりは、様々な考え方があるので、政策を実行する際には、これを実現するんだという強い思いでされるということは決して悪いことではないと思います。  ただし、私たちは統計学というか、一応科学という立場を取っておりますので、中立の立場ということで、何かと申しますと、こういうシナリオが世界的に見てもそれほど不思議ではないなという形で、自分たちの信念とか、実現する、実行するんだ、実際にそれは大事だと思うんですけれども、勝負でも、勢いで勝てるという戦いもありますし、平均ベースで勝てるという戦いもあります。様々な見方があると思うので、そこはいろいろあると思いますが、ただ、私たちの立場からすると標準ケースで見るべきだという立場であります。
  200. 平野達男

    ○平野達男君 GDP成長予測とかいろんな予測を立てるときは、やっぱりフラクチュ、ある程度の幅を見てやるというのはあると思うんです。大事なのは、政府は、二〇二〇年にプライマリーバランスを黒字化させると言っているわけです。そのときに最も確実なものというか、最も成功の高いものでやっぱりやるということなんだろうと思います。  そのときに、やっぱり経済成長というのは、この三・六とか二・一とか、こういう前提で進めてしまえば、最初からそういう前提が、本当に達成可能かどうかという議論から、議論というか疑問が出てきますから、黒字化というのは実際に黒字化をさせなくちゃならないということなので、そこの前提はちょっと違うのではないかという、何か国会、野党と与党との議論のような感じになりましたけれども、もう一度お考えをちょっと聞かせていただきたいと思いますが。
  201. 川出真清

    公述人(川出真清君) 御指摘ありがとうございます。  やはり、中立の立場で見ると標準シナリオでいくべきだということになると思います。そこは、やらないと厳しいと思います。
  202. 平野達男

    ○平野達男君 ありがとうございます。  大沢公述人にお伺いしたいと思います。今日は、ちょっと私も表を持ってきませんでしたけれども、かつて税の最高税率は、国税、地方税を合わせて八〇%とかという時代がありました。司馬遼太郎さんが何かのときに、昔、私の今日の講演の料金は八割九割もう税金として取られてしまいますと、だけど、これでも私、これいい国だと思っていますというのを何かの本で読んだ記憶がありますが、今はだんだんだんだん下がってきて、最高税率は四〇%で、この間の税制改正で四五%になったということであります。  最高税率がかなりフラット化してきて、税の所得再分配機能もかなり変わってきているということ、それから、あと御案内のとおり、今日の公述人のペーパーにもございますけれども、社会保険料は逆進性が強いということで、ある一定の所得からはフラットになります。ですから、比率からいくと所得が高くなればなるほど負担率が右肩下がりになるということですし、それは消費税も同じようなことが言えるかと思います。  今のこの税制と社会保障との状況を見て、大沢公述人から、今のこの状況を見て率直にどのような感想を持たれているか、ちょっとお聞かせ願いたいと思います。
  203. 大沢真理

    公述人(大沢真理君) 税収が要らないんじゃないかとしか思えないような税制改革を九〇年代の初め以来重ねてきたということがありまして、その結果としての現状があるわけですね。  よく表やあるいはグラフで出てくる限界税率、法定税率のグラフというのはかなり人を迷わせるというんでしょうか、惑わせると思います。今日、私がお示しした純負担率のグラフというのは平均負担率というもので、つまり八〇%の税率の掛かる所得というのはかなり高いところの所得だけで、低いところの所得には低い税率掛かりますから、やっぱり考えるのは平均税率で見なければいけないというふうに思います。なので、今日は平均負担率ということをお示しさせていただいて、その上で、やはり日本の制度の累進度というのは諸外国と比べて非常に低いグループに入るのではないかということを申し上げたわけでございます。  これを、しかし、ここまで行き着いてしまいましたので、一遍に是正するというのはなかなか難しいとは思います。もちろん、最高税率、限界税率だけではなくて、税率構造というのを、日本の納税者の所得税の負担が諸外国との比較で軽いのは、高所得者もそうなんですけれども、中間的な納税者のところの負担が比較的軽くなっており、これが貧困率が高く出てくる原因の一つにもなっています。そう言うと自分の首を絞めることにもなるんですが、中間的な納税者のところも含めた税率構造の検討といいますか再建というのが課題であろうし、同時に、消費税は税率をアップすべきと私は思っておりますので、これを補填するような給付付き税額控除は一刻も早く考えていただきたいということで、繰り返しになりますが、以上でございます。
  204. 平野達男

    ○平野達男君 平成元年ぐらいというか平成初期ぐらいまでは所得税率を下げる財源として法人税率を上げていたんですね。そうやって税収中立を図ろうという意図がまだ国にはありました。今はどんどんどんどん法人税率が下がって、かなり税収が落ちて、代わって消費税を入れる。私、消費税も賛成です。私、消費税は一〇%増税を延期するのも反対した口なんですけれども、だけど今、傾向としては、個人負担を下げる代わりに企業、だけど今、企業を税率を下げて、それを、大衆課税という方向もちょっと見えるなという感じで、こういったところについてもちょっと関心を持ちながらこれからの税制を見ていかなくちゃならないかなというふうに思っています。  御感想あれば、一言、大沢さん。
  205. 大沢真理

    公述人(大沢真理君) 時間が過ぎておりますので、一言だけ。  法人税率は黒字の企業にしか掛からないので、むしろ中小企業で苦しいのは社会保険料負担です。ですから、企業向けの社会保険料負担の軽減措置というのも考慮に値すると思います。
  206. 平野達男

    ○平野達男君 ありがとうございます。
  207. 岸宏一

    委員長岸宏一君) 以上で公述人に対する質疑は終了いたしました。  この際、お二人の公述人の方々に一言御礼を申し上げます。  本日は、大変有益な御意見をお述べいただきまして本当にありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。ありがとうございました。(拍手)  午後二時に再開することとし、休憩いたします。    午後一時二十二分休憩      ─────・─────    午後二時開会
  208. 岸宏一

    委員長岸宏一君) ただいまから予算委員会公聴会を再開いたします。  平成二十七年度総予算三案につきまして、休憩前に引き続き、公述人の方々から御意見を伺います。  この際、公述人の方々に一言御挨拶を申し上げます。  本日は、御多忙中のところ本委員会に御出席をいただき、誠にありがとうございます。委員会を代表いたしまして厚く御礼申し上げます。  本日は、平成二十七年度総予算三案につきましてお二人から忌憚のない御意見を拝聴し、今後の審査の参考にしたいと存じますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。  次に、会議の進め方について申し上げます。  まず、お一人十五分程度で着席のまま御意見をお述べいただき、その後、委員の質疑にお答えいただきたいと存じます。  それでは、地方創生について、公述人茨城県常陸大宮市長三次真一郎君及び公益財団法人地方自治総合研究所所長辻山幸宣君から順次御意見を伺います。  まず、三次公述人にお願いいたします。三次公述人
  209. 三次真一郎

    公述人(三次真一郎君) ただいま御紹介をいただきました茨城県常陸大宮市長の三次真一郎でございます。本日は、このように参議院の予算委員会におきまして意見を述べさせていただく機会を頂戴いたしまして、大変光栄に存じます。  まず初めに、常陸大宮市の現況を御紹介申し上げます。  平成十六年十月十六日、五町村が合併して常陸大宮市が誕生いたしました。いわゆる平成の大合併におきまして、茨城県内最初に合併を実施いたしました。  当市は茨城県の県北西部にあり、県庁所在地の水戸市から北へ約二十キロメートルに位置しております。面積は約三百四十八平方キロ、茨城県内で二番目の広さですが、面積のうち約六割が山林、二割弱が農地となっております。  高速道路はありませんが、JR水郡線が市内を縦貫しており、市の両側に那珂川と久慈川が流れ、特にアユが特産品として知られているなど、自然に恵まれたところであります。市の南部に商業地や工業団地があり、市街地の形成が進んでいる一方で、それ以外の地域では過疎化が進んでおります。    〔委員長退席、理事岡田広君着席〕  人口は、合併の翌年に行われました平成十七年の国勢調査で四万七千八百八人でしたが、平成二十六年十月一日現在では四万二千九百六十三人、平均しますと毎年約五百人、この十年間で五千人強が減少しております。  なお、合併前、旧五町村のうち四つが過疎地域に指定されておりましたが、合併後も規定により過疎地域自立促進特別措置法が適用されております。市の面積の七六%は過疎地域が占めております。イノシシ被害も出ております。竹も山林まで侵食している状況であります。  特にここ十数年は若年者数の減少が進行し、それに引っ張られる形で高齢化率が国や県を更に上回るスピードで進行しまして、少子化、高齢化、過疎化の三進化が顕著になってきております。この三進化がこのまま急速に進めば、経済成長率の低下や財政破綻、社会保障制度の行き詰まりなど、我が国の将来に多大な悪影響が及ぶと言われておりますが、我々にとりましては地方自治体そのものの存続が危ぶまれるわけでありまして、大変な危機感を持っておるところであります。  そのようなことから、以前から人口減少対策に取り組んできましたが、今回の地方創生プロジェクトはまさに追い風になるのではないかと大きな期待をしている次第であります。  昨年、平成二十六年十月十六日に、合併、そして市制を施行して十年を迎えました。この十年間につきましては、新市建設計画に基づき、合併特例債等の国からの様々な財政支援を受けながら、地域の均衡ある発展と住民福祉の向上を図る町づくりに取り組んできました。  その主な取組としましては、新市建設計画にも重点事業として位置付けていました地域中核病院の整備であります。当市が位置する茨城県の県北西部地域では、合併前より地域医療の核となる地域中核病院の整備が喫緊の課題となっていました。平成十八年七月、県北西部地域待望の第二次救急医療及びへき地医療に対応できる医療機関として、社会福祉法人恩賜財団済生会、常陸大宮済生会病院を開院することができました。  現在は、全国的な課題でもある医師不足の中で、特に県内でも医師が不足している当地域において医師の確保が喫緊の課題となっていることから、医師確保の取組として医学部学生への修学資金の貸与を継続して実施しており、地域医療体制の更なる整備に向けた取組を行っているところであります。  その他、主な取組としまして、行政文書等の保存、管理や、広く市民や行政の利活用に供する機能を併せ持った茨城県内初の公文書館であります常陸大宮文書館を設立いたしました。この文書館は、既に廃校となった市内の学校を約九千八百万円の費用で整備したものであり、廃校の有効利用という面でも成果が上がりました。  公文書館に関しましては、昭和六十二年に成立した公文書館法により、保存及び利用に関しまして適切な措置を講ずる責務を有するなど必要な事項がうたわれておりますが、この法律は、元茨城県知事で地元選出の参議院議員でありました故岩上二郎先生が中心となって発議された議員立法でありまして、岩上先生の多大なる御尽力があって成立した法律ですので、公文書館設立に当たりましては感慨もひとしおでありました。  公文書館法にもうたってありますが、公文書等を歴史資料として保存し、利用に供することの重要性を鑑みると、保存、閲覧、調査研究等に供する公文書館については更に全国的に設立する必要があるのではないかと、そのように考えております。是非、積極的な財政支援をお願いするところであります。  過疎地域を含む本市の人口減少は歯止めが掛からない状態であり、深刻な問題であります。近年は生まれてくる子供の数も年間で三百人を割るなど、社会減に自然減がプラスされ、市内での人の流れも変わり、大変厳しい状況下に置かれてきております。市内の過疎地域の中には高齢化率が四〇%を超える地区が多く見られるようになってきており、回覧板が回せないなどといったような集落機能の低下が見受けられるようになってまいりました。  そうした状況を踏まえた中で、平成二十一年度より、市内の高齢化率四〇%を超える地区を対象に、茨城県内では常陸大宮市だけの取組となりますが、集落支援員を配置してまいりました。平成二十六年度には二十一地区二十五名の集落支援員を配置し、地域の実情に応じた対策に取り組んでいるところであります。  さらに、来年度においては、地域おこし協力隊の二十八年度からの導入を目指し、集落支援員とともに交流人口の拡大や地域の活性化に取り組んでいくこととしております。  さらに、昨年八月、庁内の人口減少対策推進体制を整備し、国の地方創生への取組を先行する形で人口減少対策プロジェクト、元気ひたちおおみや会議を立ち上げ、元気な常陸大宮をつくるために、市の若い職員、子育て世代の職員で構成するワーキングチームを設置し、職員が知恵とアイデアを駆使し、人口減少に歯止めを掛けるにはどうしたらいいか、活力ある、魅力ある町づくりには何が必要か、限られた予算の中で効果的、効率的な施策を展開するため、全職員が一丸となって人口減少対策について取り組んでいるところであります。  こうした中、国においては、昨年十一月にまち・ひと・しごと創生法を制定し、十二月にはまち・ひと・しごと総合戦略を策定するなど地方創生へ向けての取組を本格化させ、併せて地域活性化・地域住民等緊急支援交付金を創設して、地方の取組を後押しする仕組みを構築したことは一定の評価ができるものと考えております。  本市におきましては、消費喚起型としてプレミアム付き商品券の発行、先行型として医療機関が新規医師を確保する際に掛かる費用を助成する医師確保支援補助事業等を実施いたします。なお、プレミアム付き商品券につきましては、消費喚起を促し地域経済の活性化につながるものと期待しております。  常陸大宮市では、商品券の使える店舗を地域の商店と大型店とに区分し、地域の商店で使える割合を高くすることにより、地域商店街の活気を取り戻し、人と人との触れ合いによりコミュニティーの機能を回復させ、町を元気にする仕組みをつくるなどの工夫を凝らしております。こうした工夫を加えることにより、この交付金は地方創生に向けて有効に活用できるものと考えております。  しかしながら、この交付金につきましては、かねてより地方の裁量で自由度の高い交付金であると言われておりますが、国において徐々に制約が付け加えられ、本市といたしましても当初予定していた事業の変更を余儀なくされました。  一つの例を申し上げますと、私は、故郷の誇れるものやかけがえのないものから学び、故郷を愛し、慈しむことのできる心を醸成する人づくりを基本とする郷育立市、郷土の郷です、郷育立市を掲げております。  地方創生の基本は人づくりであります。この人づくりには、教育環境の充実は不可分であり、学校教育の現場にタブレット端末を導入して、新たな教育環境の整備にこの交付金を活用したいと考えておりましたが、このような備品等の購入費については国の了承を得ることができませんでした。私は、こうした教育環境、子育て環境の充実を図ることこそ地方創生、郷育立市づくりの実現に向けた一つの手段であると考えておりますが、御理解いただけなかったことは残念であります。  また、常陸大宮市は、安全、安心な町づくりにも力を入れているところであります。栃木県日光市の小学一年生、吉田有希ちゃんが殺害され、本市の山林に遺棄された事件が未解決のときに、新たに市内で殺人事件が発生したことをきっかけに、茨城県内初となります犯罪被害者等支援条例を制定いたしました。また、防犯対策として、市内のJRの駅に順次防犯カメラの整備を進めるなど、市民が安心して暮らせるよう努めているところであります。今後、安全、安心のための施策に対し交付金を活用できるよう期待をするところであります。  これまで、合併の経緯や主な十年間の取組、またこれから新たに行う地方創生の実施などについて述べさせていただきました。現在、国道百十八号沿いに道の駅の建設を進めております。道の駅が本市の魅力を創造し、体感し、発信していける拠点となり、目的地として来ていただけるような場となるよう、強い思いで整備を進めているところであります。  さらに、本市の発展を目指して今後の町づくりに取り組んでいかなければならないと考えております。  加えて、本市は依然として人口減少傾向にあり、今まで以上に対策を講じていかなければならない状況であります。本市の人口減少に歯止めを掛け、人口を増加させ、あるいは維持し続けるのにはどうしたらいいか。国の長期ビジョン及び地方創生総合戦略にのっとり、本市も人口ビジョン及び地方創生総合戦略の策定を急がなければならないと考えております。  地方創生に関係する施策につきましては、有識者等の意見も聞いていくわけでありますが、さらに専門的な立場からの国の地方創生人材支援制度や地方創生コンシェルジュ制度を活用して、本市の地域性に沿った地方創生総合戦略の作成に努めてまいる所存であり、事業実施に向け必要となる予算措置につきましては、国からの支援をいただきたいと考えております。  以上、主に地方創生に関することにつきまして、常陸大宮市の状況及び意見などを述べさせていただきました。  御清聴ありがとうございました。
  210. 岡田広

    ○理事(岡田広君) ありがとうございました。  次に、辻山公述人にお願いいたします。辻山公述人
  211. 辻山幸宣

    公述人(辻山幸宣君) ただいま御紹介いただきました辻山でございます。  着席させていただきます。  昨年暮れ近くに、衆議院の地方創生特別委員会にも招請されまして、その冒頭で法律名を間違えてしまいました。ひと・まち・しごと創生法と呼んでしまいまして、そのときにも若干言及したのですけれども、やはり「ひと」が最初に来るということが大事ではないか、そして私たちの口をついて出る言葉も「ひと」から始まる方が言いやすいことは間違いないのでございまして、もちろん法律は通りましたので、この法律名でいくんだろうということはいいのでありますけれども、是非とも、その運用については、人を生かしてこそ、あっ、これはどこかのポスターにあったな、人を中心に施策を組み立て、運用していただくことをお願いしておきたいというふうに思います。    〔理事岡田広君退席、委員長着席〕  最初に、この地方創生政策あるいは構想と言われるものの前提になっている認識について申し上げたいと思います。  まち・ひと・しごと創生法の第一条には、「人口の減少に歯止めをかけるとともに、東京圏への人口の過度の集中を是正し、」云々というふうにあります。これは、言うまでもなく、あの日本創成会議が示したレポートで言われている人口減少、消滅自治体、この議論を背景にして登場してきた法案であろうというふうに考えているのでございます。  また、昨年六月に閣議決定された骨太の方針においても、五十年後も人口一億人を保持するという目標を設定しているわけであります。これらの背景には、人口減少が日本社会に大きな問題を引き起こす、だから人口減少にストップを掛けないといけないのだという認識があるように思います。  さて、果たして、人口が一億人を切ったらどのような困難が襲ってくるということになるのでしょうか。この点についての議論もなく、また研究実績もございません。にもかかわらず、ただ人口減少ストップと言い募っている現状でございます。  もちろん、市町村も同様に、現在の市の人口が何人を切ったら、この町は、この市はどうなるのかというようなことについての検証を進めていく必要があるのではないかというふうに思っています。なぜか結論が先にあって、人口減少ストップ、このためだけに多くの人手と金と能力を消費してしまうような気がしてなりません。  そこで、検討しなければいけないのは、これまでも、実は各地の地方自治体や地域は、それぞれ地域の活性化とかそういったことにずっと取り組んできているのですね。一九七〇年に制定された過疎地域緊急対策法、これから始まって、数次の改正を経て今日まで来ておりますし、また一九八八年の竹下内閣で進めたふるさと創生事業、このような各種の取組を通じて、過疎対策、人口減少対策、地域活性化対策、ずっと取り組まれてきたのでございます。  にもかかわらず、それでもなお東京一極集中、地方衰退が進行してきたのであります。なぜそうなったのか。  これまで政府が打ち出してきた様々な政策に対する検証がなされていません。これがまず第一に不可欠でございます。過去の政策への検証、反省がない限り、今回の地方創生も失敗に終わる可能性が強いと言わざるを得ないのでございます。  さてそこで、まち・ひと・しごと創生法、この法律について若干意見を述べさせていただきます。  この法が制定された以降、まち・ひと・しごと創生総合戦略というものを策定して、国は総合戦略を策定して、都道府県、市町村は、それぞれそれを勘案しながら総合戦略を策定する。これは、恐らくこの十二月ぐらいまでが大変な山場を迎えるだろうということを考えております。  一般には、自治体の総合戦略は義務付けじゃないよと、努めるものとするというようなことで勧めているだけですというような言説があるのでございますけれども、例えば今回の新交付金と言われている四千二百億円の交付について見ても、自治体はこぞってこれに向かって計画を提出していくわけでございます。  やらないわけにはいかないのですね。住民に対して説明が付かない。これだけ、言ってみれば、明確なひも付きとも言えないような有利な交付金が出されているのに、おまえはなぜそれを取ってこないのだと。こうなりますと、義務付けていないということは単なる形式論にすぎないのであって、みんなこの計画の策定に向かって走るということが予想されます。まさに国主導の地域づくりという感じになりますが、果たしてそれでうまくいくのかという心配をしております。  現に、四千二百億円が予算化された二〇一四年度補正予算のこの地方創生関係新交付金、この交付をめぐっても、各地の自治体に大きな混乱を生みました。  先ほど三次公述人の話にもありましたように、自由で使い勝手のいいというようなことではなくて、実は、ここにも持ってまいりましたが、その交付に当たっての、何というんでしょうね、指導書というんでしょうかね、これを見ますと、この交付金を使ってできる事業の参照資料ということでありますけれども、何と載っているのは、プレミアム付き商品券、ふるさと名物商品・旅行券、UIJターン助成金、この三例だけが事細かに、どのように記入して、どうやって申請すればいいかというようなことが書かれているだけでありまして、現に、既に御承知だと思いますが、自治体の九七%に当たる千七百三十九の自治体がプレミアム付き商品券の発行ということで交付金を受け取っているのです。まさに一色なのでありまして、どこが地域の特性と言えるのかということを疑わざるを得ない。  その背景には、先ほどの三次公述人の話にもあったように、中央の指導、介入があったように言われておりますが、まさしくこのようなやり方で地域創生、地方創生ということができるというふうにお考えなのかどうか、そこのところを十分にこれから国も地方も考えていっていただきたいというふうに思います。  何せこの国主導の進め方の問題性というのは大きなものでございまして、自治体もこれに追い立てられて、成功の見通しや、あるいは緻密な計画性を持たない状態でプランを提出し、そしてそれが認められていくと、もしかすると、かえってその事業の失敗による負債を増やしてしまう、そして消滅を早めてしまうのではないかということさえも危惧しているところでございます。  第一、この総合戦略でも述べられている人口減少に歯止めを掛けて、そして人口を増やしていく、こういう事業は極めて長期にわたる課題でございます。にもかかわらず、どうも来るべき統一地方選挙に向けて地方向けのプレゼントというようなニュアンスがまかり通っている。まあ、これはもちろん報道の責任もあるのでございますけれども。  やはり、短期的に解決すべき課題と、それから長期に取り組んでいく課題というふうなことについてきちっと分けて議論していかなければ、これから作られる計画、何年ぐらいで人口はどれぐらいになるだろうというようなことを言って、誰がその検証の責任を取るのだというような問題まで私には気になってしようがありません。  ちなみに、政府がまち・ひと・しごと創生長期ビジョンというものを示しているのでありますが、その中にはOECDレポートの例を引いておりまして、こういうことを言っているんですね。日本は、育児費用軽減や育児休業の取得促進、保育サービス拡充等の対策が講じられれば、出生率は二・〇まで回復する可能性がある。これはOECDのレポートにある記述でございます。しかも、それを政府の長期ビジョンで引用しているのであります。  私に言わせれば、まずもってこうした政策を徹底して進めていくということからこの人口問題ということを考えていくべきではないか、そのことをどこかにおいておいて、やれ婚活を盛んにするとか、やれ都会に若い女性をやるなとか、そういうことにだけ走っているこの政策については、私はちょっと優先順位が違うのではないかというふうに感じております。  さて、以上申しましたようなことも含めて、このような政策で地方創生ということをやっていけば、全部の地方が人口を回復し、あるいは人口を維持することができるかというと、そうはならないのです。  どう見ても、私に言わせれば、今回のような交付金、ほぼ全ての自治体が同じ使い道で使いますというようなことが二度と起きてほしくないのでありますが、そうでない限り、これは自治体間の競争になります。何の競争か。人の奪い合いになる。Jターンにせよ、Iターンにせよ、Uターンにせよ、人口過多の都会から地方へ人を呼び込む、その人口の奪い合いになる。  そして、その競争には必ず敗者が生まれます。この敗者のことを考えてかどうかは知りませんけれども、昨年の地方自治法改正で、地方中枢拠点都市という概念と、そこへ周辺町村、標準的な公共サービスの提供を持続できなくなったそういう町村を抱え込んでいけということを法律で作ったのであります。  今回の地方創生の総合ビジョンを見ましても、このことに大変大きな紙幅を取って、自治体の連携が大事だと。しかも、この総合戦略では、自治法が言った地方中枢拠点都市という言葉を国交省の地方都市連合でしたかね、と一体化して、連携中枢都市という概念でまとめるということをやってのけました。そして、そのようにして、人口減少にあえぐ、困っている自治体を競争させ、そしてこれに敗北してますます窮地に陥った自治体は中心都市、中枢都市が抱えろというような図式になっているわけであります。  そのときに失われるその周辺町村の自治というもの、地域があって住民がいればいいというものではありません。そこで人々が、自分たちの手で自治を行っていくんだ、隣の市にお世話になって生きていくんじゃないんだということを大事にしていかなければならない。是非とも、この地方創生はそのようなことが起きないように、これからも運用、予算措置、その他で考えていただきたいと思います。  以上でございます。失礼いたしました。
  212. 岸宏一

    委員長岸宏一君) ありがとうございました。  以上で公述人の御意見の陳述は終わりました。  それでは、これより公述人に対する質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  213. 島村大

    ○島村大君 自由民主党の島村大でございます。  本日は、三次、辻山両公述人の本当に大変有意義なお話を本当にありがとうございました。  まず、地方創生についての、現場の市長であります三次公述人に質問させていただきます。  三次市長は茨城県の常陸大宮市だと、私どもの筆頭理事の岡田参議院議員の地元でございます。この常陸大宮市は、先ほどもお話にありましたように、豊かな自然と調和した安心・快適な活力の町ということで、風光明媚で食べ物も大変おいしい、お酒、そしてお米、そしておそばもおいしいと聞いております。住んでよし、観光でよしというふうに、すばらしいお話が先ほどもあり、再度理解させていただきました。また、昨年の十月に開館されました常陸大宮市の文書館ですか、これは、ふるさとの記憶を未来へつなぐという言葉をキャッチフレーズに市長がリーダーシップを持って進められたと聞いております。  さて、安倍首相は、景気回復の実感を全国津々浦々まで届けるために、地方こそ成長の主役として地方創生を全力で取り組んでいただいております。また、担当大臣の石破大臣は、まち・ひと・しごと創生法にあるように、人口減少、超高齢化社会の問題を解決するためには地方創生を成し遂げるべきだと言っており、また、地方が自ら考え、責任を持って取り組むこと、国も同じ目線で全力で支援することと言っております。地方創生は日本の創生であるという認識の下、国と地方、総力を挙げて地方創生を推進するべきだということで、言うまでもありません。  そこで、三次公述人に、現場の市長として、先ほどプレミアム商品券とかお話が具体的にありましたけど、もう一つ、人づくりですか、タブレット端末のこともお話にありましたけど、実際的にもう少しちょっとタブレット端末がどのような考えで、残念ながらどのように採択されなかったか、少し教えていただければ有り難いです。
  214. 三次真一郎

    公述人(三次真一郎君) ありがとうございます。  タブレット端末が結果として不採用になりました。先ほど申し上げましたけれども、私どもは、郷育立市、郷土の郷です、郷育を掲げておりまして、それを使用するに当たりまして、今までのような黒板等の学習だけではなく幅広く使えるものをということでお願いをしましたんですけれども、その結果、不採用になったんですけれども、その経緯は分かりません。ただ、不採用になったという通知がありました。これから、どうしてかという理由もお聞きし、さらに第二弾のチャンスがあれば、郷育立市を積極的に御説明申し上げて、常陸大宮の人づくりは郷育立市にあるんですので、是非御採用いただけませんかということもやっていきたいというふうに思っております。
  215. 島村大

    ○島村大君 ありがとうございます。  今回は、やはりこの地方創生に関しましては、短期、中期、長期の考え方があると思いまして、今回、やはり短期的に一つプレミアム商品券等が全国的に採用の条件になったと思いますが、今市長がおっしゃっていただいたように、やはりもう一つ、第二弾としては地域地域のもっと特徴を生かして地方創生に取り組んでいただきたいと思いますし、我々もしっかりとそこはお話を聞きまして、岡田筆頭理事がいますので、そこは私どもしっかりとやらせていただきたいと思います。  で、このプレミアム商品券についていろんなお話、ばらまきじゃないかとかいうお話もありますけど、市長からもいろいろとお話を言っていただきましたけど、やはりこれは我々も今までの検証によって今回もプレミアム商品券が有効ではないかというふうに思っていますけど、そこは再度、市長、どうでしょうか。
  216. 三次真一郎

    公述人(三次真一郎君) 常陸大宮市では、過去三回、プレミアム付き商品券を発行しております。二割と一割のときがありました。現金をお配りしますと、その現金の使い勝手がいいわけですので、大型店、市内には十二店舗ありますけれども、大型店にほぼ流れていってしまう、予想されます。プレミアム付き商品券でありますと、地域の小さい零細中小のお店まで行き渡るというようなこともあります。実際そのように流れております。これの発行に当たりましては市の商工会の協力を得ておりますので、市の商工会も大変その点では喜んでいただいております。  ただ、その枚数は、五、五ではなく六、四で地域のお店、あるいは七、三で地域のお店というような、その割合はこれから検討していきたいというふうに考えております。
  217. 島村大

    ○島村大君 ありがとうございます。  是非とも、やはり地元の商店街、地域の商店街が潤うように、是非ともそこは市長、よろしくお願いいたします。  それから、もう一点だけ、人口減少についてちょっとお聞きしたいと思います。  常陸大宮市でも、先ほどお話ありましたように、自然動態、いわゆる死亡と出産で死亡の方が多くなってしまっていると。それから、社会動態の、どうしても転入より転出の方が多くなっているというお話がありました。  そこで、人口減少対策のプロジェクトを始めたということで、若手の職員のワーキングチームを設置して自由な討論会をやっているということをお聞きしていますけど、その点に関しましてもう少し、若手の方々がどういうお話が出ているかということを少しお話ししていただければと思います。
  218. 三次真一郎

    公述人(三次真一郎君) それでは、若手の職員、特に子育て中の職員が出してきたいろいろな提案があります。これは、約百近く出ました。一つ一つは今時間がないので申し上げられませんけれども、その中で十二の事業を採択をいたしました。  その中で、特に、常陸大宮結婚応援事業、あるいは多子世帯保育料、これは二人目の子供は半額ですけれども、それを常陸大宮は全員、二人目は半額、三人以上は無料ですけれども、やっております。そしてさらに、乳児、乳幼児に対しましては、これ二万円なんですけれども、市が委託する販売店でチケット、購入券、これを配りまして、子育て世代の負担軽減を図ろうという等々、幾つかある中の今ほんの一、二例をお話しいたしましたけれども。  いずれにいたしましても、常陸大宮市は年間今三百人を割っています。したがいまして、どんどん人口は減っております。一方、イノシシは、今年度、二十六年は三百十頭捕まえているんですけれども、それでも減る傾向がない。つまり、イノシシの方が増えている、人は減っている。イノシシは二歳でもう成人して子供を産みます。しかも、一回に四頭、五頭、多産しますので、人間の六十倍以上の繁殖がありますので仕方がないのかもしれませんけれども、イノシシの方が増えている、子供が減っているというような、こういう過疎の常陸大宮でありますので、これからこの問題も、子育ても真剣にやっていかなければ大変なんだなという認識で今取り組んでいるところでございます。御支援をどうぞよろしくお願いいたします。
  219. 島村大

    ○島村大君 ありがとうございました。イノシシより人が増えるように我々も頑張りますので、是非とも頑張ります。  ありがとうございました。
  220. 小川敏夫

    ○小川敏夫君 民主党の小川敏夫でございます。  私は東京でして、今日は練馬の自宅から電車で通ってきたんですが、そのとき駅前で、選挙が近いせいか、区議会議員の先生がプレミア商品券のことをしきりと説明して演説していました。地域の商業の活性化という意味では意味が多少あるのかもしれませんけれども、練馬区は人口が増えているところでありますし、東京圏の人口の過度の集中を防止する、是正するという意味では、東京都内でプレミアと言ってもなという気は常々、常々というか、つくづく思いつつ電車に乗ってきたわけでありますけれども。私としては、そういう一過性のことよりも、より本質的な対策に取り組むのが本来あるべき姿じゃないかと思っておるんですが。  そこで、三次公述人にちょっとお尋ねしますが、何か常陸大宮市では、先ほどの中で、若い職員や子育て世代の職員でワーキングチームを構成、設置したと、人口減少対策について取り組んでいるところでありますとありました。どうでしょう、具体的にいい案が出ましたでしょうか。もし具体的ないい案が出ているようでしたら御披瀝いただければと思うんですが。
  221. 三次真一郎

    公述人(三次真一郎君) 先ほど、百近く出て、そのうちの十二を採択したということでありますけれども、それが、ざっとその十二だけを御紹介させていただきます。  アーティスト発掘推進事業、これは、市内在住の陶芸家等による作品展を開催して、もっと広めていこうということです。  二番目は、移住者支援情報ネットワーク構築事業、これは、移住希望者に市の魅力などの情報提供をして、ネットワークの構築を図っていこうということでございます。  三番目は、先ほどちょっと触れましたけれども、元気ひたちおおみや結婚応援事業です。これは、ふれあいパーティー等、あるいは講演会、実際に相談、紹介。したがいまして、四月一日から、二十七年度から一人、専門の職員、これは臨時ですけれども、置くことにしました。  四番目は、多子世帯、先ほども触れました。多子世帯、特に三人以上あるいは四人以上あるいは五人以上、特に五人以上にはもっともっと手厚くやっていこう、やはり一人、二人が多いですので、二人の人はもう一人、三人、三人の人はもう一人、四人、四人の人はもう一人、五人というようなことでやっていこうということで、現在五人以上の子育て中の世帯で五組ほど市内におりますので、そういう人たちを表彰しながら、五十万円とかお金をお祝いにあげながら、さらに、多子世帯の保育料軽減もしながらやっていきたいというふうに、職員の提言で採用させていただきました。  五番目は、先ほども触れましたけれども、乳児育児の用品の購入です。  六番目は、放課後児童健全育成事業ですね。これは、放課後児童クラブの定数が決められておりますので、希望が多くなってまいりました、田舎でも。したがいまして、その定数増を図っていきます。当然予算措置が伴います。でも、これも職員提案で定数増をやろうということで、新年度からやってまいりたいと思います。  七番目は、出産祝い金の拡充です。特に、先ほども言いましたけれども、第三子以降、第三子は五万円なんですけれども、第四子を十万、第五子以降を二十万というふうに出産祝い金をやっていきたいというふうに思います。これも予算化しております。  八番目は、名称は子育て支援ひたまるプロジェクト、ひたまるというのは常陸大宮のマスコットキャラクターですけれども、そのひたまるを絵にしたマグカップ等配布することによって、子育て支援ももっともっと積極的にやっていこうということでございます。ひたまるマグカップだけではありませんけれども、そのほかの子育ての支援ですね。  九番目が、地域ブランドと六次産業化の推進ということで、これは、ひたちおおみや認証ブランド確立に向けまして選定委員会を設置いたします。  十番目は、定住促進のための住宅取得奨励金、これは、市内に住宅を新たに取得する子育て世帯には、新築、建て売り購入のときには五十万円、中古の場合二十五万円、更にこれにプラスしまして、市有、市の木材ですね、市産材、県産材を使ったときには更に六十万円を限度にいたしますので、最高で百十万円まで家を造るときには手当てができるという、市にとっては大変きついんですけれども、これもやらないと、やはり先ほどのイノシシの話ではありませんけれども、人が減ってしまうというようなおそれがありますので、これも来年度から、新年度からやっていきたいというふうに思います。  十一番目が、フューチャースクール推進事業です。これは、先ほどのタブレット版パソコンを購入することが認められませんでしたので、今度は自主財源をということになりますが、何とかお願いをしたいというふうに思っております。  十二番目、最後ですけれども、地域スポーツ活動環境整備事業です。これは、廃校になりました小学校を利用いたしましてスポーツレクリエーションセンターを造っていこうということで、地域スポーツ活動の活性化を更に図っていきたいという思いで、以上、百の中の十二の事業を新年度から実施することになりました。  よろしくお願いをいたします。ありがとうございます。
  222. 小川敏夫

    ○小川敏夫君 辻山公述人にお尋ねします。  市町村合併とか広域連携がありますと、過疎地域の役所等が合併されたりして行政サービスが低下したりなどの問題が出てくるんではないかと思いますが、そうした広域連携等につきまして御意見を伺いたいと思いますが。
  223. 辻山幸宣

    公述人(辻山幸宣君) 三・一一の東日本大震災から、きずなとか助け合いとか連携とか、そういったことがとても取り沙汰されるようになりましたけれども、私は、自治体同士の関係でいえば、その連携が一方への依存、そして一方が抱え込むという関係はあってはならないと考えています。それは、住民主権論といいましょうか、住民自治論からいっても、やはり依存して成立する自治体はあってはならない。  したがって、私は、今回の地方自治法関係でいえば、そのように力を落として持続的なサービス供給ができなくなったら都道府県が補完すべきであるという考え方を取っていて、比較的そういう意味では、広域でやるのであればきちっとした広域行政機構というようなものでやった方がいいだろう、そういうふうに考えております。
  224. 小川敏夫

    ○小川敏夫君 ありがとうございました。
  225. 横山信一

    ○横山信一君 公明党の横山信一でございます。  本日は、三次市長、そしてまた辻山公述人には、大変に貴重な御意見をお聞かせをいただきまして、大変にありがとうございます。  先ほどから三次市長には、元気ひたちおおみや会議の話がやはり皆さん注目を集めているようでございまして、私もそこの話を伺いたいと思うんでありますが、若い人たちを集めてワーキングチームをつくられてということで、大変な成果が出ているようでありますけれども、経験的にいいまして、若い人たちの自由な発想は非常に大事でありますけれども、同時に、やはりベテランの職員の経験に基づいた発想も非常に優れたものも多くて、比較してみると、若い人たちは自由な発想もあるけれども、逆にいいものが出るのは案外少ないのかなというふうにも経験的にも思っていたわけなんですが、市長がこの若い人たちのワーキングチームにどんな関わり方をしたのかなというのもちょっとお聞きをしたい。そしてまた、幹部職員の皆さんとプロジェクトチームを立ち上げているということでもありますので、そうした部分の成果も併せてお聞かせをいただければと思います。
  226. 三次真一郎

    公述人(三次真一郎君) まず、私は、結婚も妊娠も出産も子育ても、決して、先ほどのイノシシではありませんけれども、本能ではないと思っておりますので、結婚しないという選択はできるわけでありまして、市の職員の中でも四十代過ぎても結婚する気はない人、たくさんおります、いろんな場でまず結婚を勧めているんですけれども。その一方で、職員の中で子育てを一生懸命、何といいますか、闘っている職員もたくさんいます。どちらがいい、どちらが悪い、こうしろああしろではないんですけれども、子育て中の職員の話を聞く機会はたくさんあります。  したがいまして、それを、それでは一人一人の子育ての体験あるいは経験、あるいはこれからのことを聞くのも大事でしょうけれども、それを経験にそれを発信する、つまり、結果的にはワーキングチームができたわけですけれども、それをまとめて、さらに、市の職員だけじゃなく市の市民の方々にもそれを広げていこうということで二年ほど掛けてやってまいった結果が、私もこんなに多くの提言が実は短期間のうちに出るとは思っていませんでしたので、幹部職員もこれは真剣にじゃやっていこうということで、じゃ幾つにしたらいいのか、余り多くても、何といいますか、的が、焦点がぼけますので、最初は十本くらいに絞ったらいいのかなというふうに指示したんですけれども、どうも絞り切れないということで二つほど増やして十二になったんですけれども、これも残りの約九十弱の中にも、時期がちょっと早いのもあるいはあるのかなという気がいたしますけれども、予算の措置の関係がありますので。  そういう中で今回は十二にしたんですけれども、この子育て中の職員、しかも、どういうわけか職場が常陸大宮は少ないので、職場結婚、つまり市役所の中での結婚が多いんですけれども、そういうので、何といいますか、職員同士かなり気心知れておりますので、お互いに意見が出しやすい環境にもあったのかなということでやってきました。  ですから、これからもっともっと、第一弾ですので、第二弾、平成二十八年度に向けてやっていきたいという思いでもあります。その際は、何度も申し上げますけれども、何とぞどうか国の方の、面倒も見ていただければ、常陸大宮も頑張っていけるんではないかなというふうに思いますので、今日は公述人として出席させてもらっておりますけれども、半分陳情に来たような気持ちでもおりますので、どうかよろしくお願いをいたします。ありがとうございます。
  227. 横山信一

    ○横山信一君 二年余りにわたっての関わり続けの中で今回のワーキングチームのこれほどの成果が出てきたというお話でございましたけれども、やはり付け焼き刃でこれだけの成果が出るというのはちょっとないなというふうに思っておりましたので、やはりそういう陰の御苦労があったんだなというふうにも思います。  また、若手の職員の人たちにとっては大変な励みになるというふうにも思いますので、いい成果だというふうに思うんですが、合併をいち早く進められたということで、その合併の成果として地域中核病院の整備と公文書館の設立というのを挙げられておりましたけれども、ほかに何かこの合併効果について、これ以外にも紹介できるものがありましたら、是非御紹介いただきたいと思います。
  228. 三次真一郎

    公述人(三次真一郎君) 合併効果、たくさんあります。  まず、特殊ですけれども、常陸大宮の場合は五町村です。旧那珂郡そして東茨城郡、郡をまたがえての合併もやりました。当初はいろいろありましたけれども、十年目、去年の十月の十六日迎えてから、この十年でやっと一体感が出てきたかなというふうに思っております。  経済的に見ますと、市内には工業団地が二つありますけれども、合併当初の財政力指数は、本当に今でも低いんですけれども、〇・四〇でした。十年目になりまして〇・四四に、若干上がりました。これも合併の効果の一つだというふうに捉えております。  そのほか、効果としては、私が考えるのでは、教育力の効果が大変上がったと。この教育力の効果といいますのは、学校は、小学校も中学校もどんどん人口減によって廃校、統廃合、進んでおります。四日前も中学校一つなくなりました。一年前の同じ三月の二十二日にも中学校を一つ廃止しております。来年度はもう一つ中学校を廃止しなければならない状況にあります。中学校も、七つあったものが今五つ、来年度は四つになります。  ですが、それは少なくなりましたけれども、三百四十八平方キロが一つになっておりますので、人の行き来にしましても、経済の活性化につきましても、かなり合併前から比べると上がっております。意識も上がっております。地域活動ボランティアの組織もたくさんできてきました。これは市になった成果の一つだというふうに思っております。ボランティア活動、大変、安心、安全の面でも活躍をしてくれております。協働の精神ですね、協働の精神が旧町村の頃から比べますと大変上がっておりまして、全て補助金を要求して活動するというようなことから、補助金なくても自分たちでできるものはやっていこうよという動きが田舎でありながらも出てきております。  そうですね、まだ合併効果はあると思いますけれども、今、頭に浮かんできたのはそれくらいであります。
  229. 横山信一

    ○横山信一君 ありがとうございました。  時間が参りましたので、終わります。
  230. 岸宏一

    委員長岸宏一君) 公述人に申し上げます。  三次公述人は大変皆さん関心が高いようですから、御答弁もう少し、たくさん質問をしたいという人が多いようですから、簡潔に、ひとつたくさん答えてやってください。
  231. 柴田巧

    柴田巧君 維新の党の柴田巧です。  今日は、お忙しい中、両公述人には御出席をいただき、また、それぞれのお立場で貴重な御意見等をお聞かせいただいたことに感謝を申し上げたいと思います。  私からも、人気のある、まず三次公述人にお聞きをしたいと思いますが、いろいろ問題点はあるにせよ、今回の地方創生プロジェクト、先ほどもお述べになられたように大きな期待をしておられるということなんですが、三次公述人は昭和五十年から町会議員などもされて、これまで地方の現場で三十年近く前からいろいろやってきた、地方施策を目の当たりにされてこられた、関わってこられたと思います。  先ほどもお話があったように、ふるさと創生事業もありました、地域振興券などもありましたが、結局のところ失敗に終わっているのがほとんどだと感じております。それはやはり中央主導でいろんな企画を地方にある意味押し付ける、そのことが逆に地方の特色や個性を生かせずに衰退を招いているというのは否めないところなんだと思っています。  今回も、異次元だ、あるいはこれまでにない地方施策だと総理や石破大臣などもおっしゃるんですが、中身を見ていると、どうもこれまでの延長線上のような気がしてならないんです。  今回のいろんな地方創生関連予算も言わば何でもありで、地方創生の美名の下にいろんなものが交じっているというのが正直な感想なんですが、三次公述人から御覧になっていて、この施策あるいは予算などを御覧になって、本当に異次元でこれまでにない地方施策になるという確証を持っていらっしゃるかどうか、まずその点、お聞きをしたいと思います。
  232. 三次真一郎

    公述人(三次真一郎君) 確信はなかなか持てません。ただ、ふるさと創生、私も議員時代に経験をしております。あのときはかなり使い勝手が良かったなというふうに思っております。  旧五町村、全国ではあの資金で全部宝くじを買ったというようなところもあるやに聞いておりますけれども、我々の方は五町村の中の三つで温泉施設を造りました。これはいまだに活用されております。あのとき造れなかったらば、みんな山の中に造っていますので、地域は更に疲弊していたんではないかなというふうに思っております。そのほか、人口減、これも減っておりましたので、人口が減少するならば、じゃ、交流施設を造ろうじゃないかということで、やはりふるさと創生のときには造りました。これもいまだに生きております。したがいまして、全部失敗ではなかったというふうに私は認識しておりますが。  さて、今度の地方創生でありますけれども、やはりプレミアム付き商品券が主流になっては、やはりちょっと地方創生という観点からは弱いところがあるんではないかなと思いますので、どうかもう少し地域の、それぞれの地域に合ったその使い方をもう少し融通が利くようにお認めいただければ、地方創生あるいは元気ひたちおおみやに直結するんではないかなというふうに思っております。  以上でございます。
  233. 柴田巧

    柴田巧君 どうもありがとうございました。  次に、辻山公述人にお聞きをしたいと思いますが、今ほどした質問とも関連をするんですが、とにもかくにもいろんな事業が正直交じっているという感を強くしています。  従来の事業の焼き直しであったり、そういったものが非常に目立ちますし、朝型働き方の推進とか女性研究者の活躍促進とか、どう地方活性化と関連があるのかよく分からないのも正直見受けられるんですが、いずれにしても、これらが本当に地方創生にどう寄与するのかというやっぱり検証方法がしっかり確立をされないと駄目なんだろうと思います。  先ほどおっしゃったように、今までの地方施策の検証が十二分になされていなかったから失敗に終わったという御指摘をされましたが、今回のこの地方創生の施策に当たって、そういう検証、今のこの考えられている、KPIで、PDCAで見直していくと言われていますが、これが、今言われているものが果たして検証の在り方として、改善の在り方として望ましい、しっかりこの機能を、目的を達成するとお思いになっていらっしゃるか。あるいは、その検証するに当たっては、役所だけではなくて、第三者の目も入れて検証を本来すべきものではないかというふうに私は考えるんですが、そこら辺、どういうふうにお考えでしょうか、お聞きをしたいと思います。
  234. 辻山幸宣

    公述人(辻山幸宣君) その点は大変私も危惧しています。基本的には、達成目標が示され、それがどれぐらい成果が上がったかという評価が付いてこなければいけない。今お話あったように、評価については自治体の当局と議会だけでやってしまっていいものではない、これは間違いなくそう思います。ただ、私が見る限り、ここで当初期待されたような、つまり当初事業を取ってきたときの思いを書きつづった目標が達成できる自治体はそんなに多くはないと考えているのです。  そうすると、それは国がその評価をして、おまえは駄目だったんじゃないかという、何というんでしょう、文化といいましょうかね、私は、この地方創生事業の結果、やはり人口減少を止められず消滅へ近づいていくような自治体、幾つも出ると思いますが、そのときに中央政府はこう言うんです。それはあんたたちの知恵と努力が足りなかったからだろう、出してみろと、条件は全部出したじゃないかという形で、私が最初に申し上げた、国としての検証が必要だよ、国の政策をと言ったんですけど、今度は、地方ごとに地方の創生プランが駄目だったということを、その責任はあなたたちにあるんだよ、だからこそ近隣の中枢都市とうまくやっていきなさいと、こういう仕掛けになっているんではないかというふうに見ているわけでございます。
  235. 柴田巧

    柴田巧君 どうもありがとうございました。  最後の質問になると思いますが、三次公述人からも、プレミアム商品券、非常に使い勝手が悪いというお話もございました。(発言する者あり)それに近いこともお触れになりました。  それはあれとして、表現は適切じゃなかったかもしれませんが、我々は、補助金からバウチャーという考え方を持っていまして、いわゆるバウチャーで、保育であれ教育であれ、そういったものを、使途を限定してやれる仕組みにしていく方が家計を直接温め、地域の経済の振興にもつながるという考え方を持っていまして、このバウチャーとして地方に交付するというやり方、これについて、こういう施策を大事だと先ほどもおっしゃいましたが、辻山公述人にお考えをお聞きをしたいと思います。
  236. 辻山幸宣

    公述人(辻山幸宣君) 今おっしゃったようなバウチャー制については、私は十分に活用の余地はあるというふうに考えています。補助金でやりますと使途が特定され、そして最終的には報告ということになりますが、バウチャーですと自分で判断をして必要なときにそれを使うということが可能ですので、今のやり方よりは大分可能性はあるんだろうなというふうには考えています。
  237. 柴田巧

    柴田巧君 どうもありがとうございました。
  238. 田村智子

    田村智子君 日本共産党の田村智子です。  まず、辻山公述人にお願いをします。  先ほどから、政府が進めた政策に対する検証不可欠という御指摘がありますが、もう少し中身に踏み込んで、やはり地方の衰退が結果としてもたらされてしまった、その施策の、こういうものがあるというのを幾つか御指摘いただければと思いますが。
  239. 辻山幸宣

    公述人(辻山幸宣君) それは、ちょっと一般論になるかもしれませんが、例えば過疎対策法、一体これ何年やってきたんでしょうかということなんですね。そして、その間に過疎地域がどれだけ減ったんでしょうか。減っていません。数でいえばますます増えています。合併によってちょっと束ねられてしまったりしたんですけれども、例えば、あの政令指定都市の浜松市にさえ過疎指定を受けている地域があるんですね、元町村ですけれども。  そのように、それはなぜそうだったのかということを自治体と一緒になって原因を探っていかないと、それ、自治体が何もする気がなかったからだよというわけではないんです。自治体も制度を使っていろんなことをやってみた。しかし、それがかえってあだ花になっている点もあるんです、物を造り過ぎてしまったとかね。  そういったことを含めて、やはり総合的に、過疎対策だけではなくて様々なプラン、先ほどのふるさと創生もございましたし何とか都市とかありましたよね。ああいったものも今どうなったんだろうかということを、本当はできれば戦後の新産業都市とか、ああいうところからもうやった方がいいんじゃないかと思うぐらいに、政府が手を打ったやつはどうなっているんだということをやれと、そういう意味でございます。
  240. 田村智子

    田村智子君 大変深い御指摘だということが分かりまして、これは本当、国会も総掛かりでやらなきゃいけないことだなというふうに思います。  そういった総括がない下で、続けて辻山公述人にお願いしたいんですけれども、幾つか出されてきている新たな政策で私も大変危惧をしていますのは、先ほども御指摘のあった、地方交付税の取組の成果に応じての傾斜配分とか、あるいは行革努力に応じた傾斜配分とか、こういうのが新たにまち・ひと・しごと創生事業費というものでつくられていくと。  率直に言えば、行革というのは、これも物差しは国の方が示すような物差しだろうというふうに思いますし、多くは公務員の削減であったり民間委託であったり、そういうことが行革の努力として言われてきたわけですけど、既に限界に来ているんじゃないのかなと。こういう傾斜配分がますます地方を疲弊させることにつながらないかというふうに危惧をしているんですけれども、いかがでしょうか。
  241. 辻山幸宣

    公述人(辻山幸宣君) 疲弊と生き残りとに分かれていくというふうに思います。  この政策は、いずれにせよ、よくやっているという成果を見せなければいけませんので、今話題になっている、一般的な公共サービスさえ持続的に供給できなくなっているようなそういう町村とか周辺の自治体では、やはりよくやっているという評価を受けられるようなネタを示すことってなかなか難しい。  そうしますと、ある研究者が論文に書いていましたが、中心都市に一点集中して投資せよという考え方。つまり、この評価システムでも、結局、評価して多くの交付金を受けられる、そういうところと、そこから外れてやがてそこにお世話になっていかざるを得なくなっていく、連携して救ってもらわなきゃならなくなるという自治体とに区分していってしまうんではないか。それを大変危惧しているのですね。
  242. 田村智子

    田村智子君 もう一点だけ辻山公述人に。  このいただいた意見陳述のペーパーで、今の連携協約のことが御指摘されていて、最後に、人口減少、消滅可能性をちらつかせて自治を奪うことにもなるという大変厳しい御指摘をされておられます。  この連携協約の問題点、もう少し御説明いただけないかなというふうに思います。
  243. 辻山幸宣

    公述人(辻山幸宣君) この連携協約の前提になっているのは、自治法では中枢拠点都市と言っていました。今度の地方創生では連携中枢都市というふうに言うわけですけれども、そのような中心になって力のある自治体と、そこにお世話にならなければ維持できなくなった自治体という二種類に分かれていくということになります。そして、その両者が連携を結ぶんです。弱い者同士が連携するのではないんですね。  そうしますと、そこの地域に住んで自分たちの町に責任を負い、発言し、そして自治していくという人々の思いは打ち消されてしまいます。どうしても力があるところの方針によってその圏域が運営されていくということになりますので、そういう意味で、そこの人々の自ら治めていくという自治というものがなくなりますよというふうに言ったわけでございます。
  244. 田村智子

    田村智子君 三次公述人にちょっと角度の違う質問をなんですけれども、いただきました陳述のペーパーの中にも、市の面積の六割は山林で二割が農地であると。  そうすると、やっぱり私、全国的にも地方の創生といったときに、こういう農林業、地域によっては漁業も含みますが、第一次産業とその関連産業の発展ということがないと、なかなか活性化、創生ということにつながっていかないんじゃないかと思いますが、その点での御努力や政府への要望などございましたらお願いします。
  245. 三次真一郎

    公述人(三次真一郎君) ありがとうございます。  六割が山林でありまして、今、常陸大宮市では、先ほど触れましたけれども、三つの温泉施設、温浴施設にバイオマスチップボイラーを入れます。今年一か所、来年は二か所入れます。そうしますと、今までの林業、林業というのは農業、工業と違いまして、なりわいとしての林業というのはほとんど今は難しい状況です。材価が安いですから山は荒れています。荒れている林地残材等を集めて、それをチップ化し、燃すことによって重油が約八割減らすことができました。これは地球温暖化にも非常に効果が上がっているという自負をしております。  したがいまして、新年度から二か所の温泉温浴施設にボイラーを入れますけれども、これだけでも大変な価値があろうと思っておりますし、一方、これは民間業者ですけれども、工業団地の中にバイオマス発電も今造っておるところでございます。  もっともっと林業あるいは山、木材を活性化しなければなりませんけれども、先ほど冒頭触れましたけれども、竹林、竹がどんどんどんどん山に入っていっております。高齢化しておりますので、林業従事者ですね、あと後継者不足がありますので、どうしても荒れています。これらはもう国の政策として是非これはやっていただきたい。お願いをいたします。
  246. 田村智子

    田村智子君 ありがとうございました。終わります。
  247. 山田太郎

    ○山田太郎君 日本を元気にする会・無所属会の山田太郎でございます。  本日は、三次公述人、辻山公述人、ありがとうございます。  地域、地方を地元から元気にしようということでいろいろと質疑を行っていきたいと思いますが、三次公述人の方にちょっと質問が今まで集中していたんで、辻山公述人中心に構造的な話を少し私の方はやっていきたいなと思っております。  実は、私、元々経営者だったものですから、どうやって地域を経営していくのかというような観点から、もちろん町づくりと企業経営は違うという側面も分かってはおるんですけれども、やっぱりその地域がある意味で輸出超過というんですかね、輸入超過、つまり外からしか物が来ない。例えば、商品券のように中央からお金を投入されても、結局それは地元の商店ではなくてスーパーとかチェーン店とかで使われてしまえば当然輸出されてしまうと。そんな中で考えた場合、やっぱり地産地消というのは非常に重要なキーワード。ただ、もちろん、各地域はこれまで町づくりのために地産地消、地産地消と言ってきたものの、なかなかうまくいっていなかったというのはもう事実だというふうにも思っております。  あと、もう一つ大切なことは、新陳代謝というのも大事なんではないかなと。守るということも大事なんですけれども、やっぱり地域の最大の問題の一つは、高齢化といった問題、つまり、労働生産性が極めて低くなっている可能性がある。そうなってくると、老齢構造が変わらないにしても、その町の生産性は高めなければ成り立たない。そうでないと、結局、作って外に輸出するものはなくて、輸入ばかりをその地域はしてしまうということで、お金を投入し続けなければその地域はもたないという構造から抜けられない、こういう構造的なことを感じております。  そうなってくると、新陳代謝のためには、産業と企業が、例えばベンチャーのように、ベンチャーといっても、昨今の独立系若者がやるようなベンチャーだけじゃありません、ソーシャルベンチャーであったりとかシルバーベンチャーなんというものもあります。中小企業が変わって、スピンアウトして新しいことをやっていくということもあるんですが、そういった地域ベンチャーの存在というのは極めて重要だというふうに思っています。  そんなことを津々浦々考えてはきたんですが、そんなこと、又はその他に、この地域がどうやったらば輸出超過、又は、言ってしまえば自立、自活ですよね、できる可能性があるのか。そのために打っていく政策としては、私は、国が確かにどんなにお金をその地域にぶっ込んでも、それは単に輸入超過をどんどん推進してしまうだけなんじゃないかと、こういう問題意識を持っている。厳しいことを言えば、ほっておくというのも手なんじゃないかと、こうも考えるわけですが、辻山公述人、まずちょっとその辺の構造的な話で何か御意見があったらいただけないでしょうか。
  248. 辻山幸宣

    公述人(辻山幸宣君) ある県の会派が県の地産地消条例を作りたいということで、その原案を作って検討していました。そのシンポジウムに参加したときに私が申し上げたのは、率直に言って、地産地消をそのような仕掛けで全国に広められたら東京は干上がってしまいますと。  つまり、東京には自分たちで調達できる食料品なんてないんですよね。全部地方で生産したものを持ってきて、そして地方で生産した人と変わらないほどに安い価格で、つまり輸送費などもどこをどうやっているんだというようなこともあって、恐らく、多くの利便性と、それから他の地域から比べれば比較的賃金の高い生活をしている東京圏はもっとそうした地方産出のものに負担をしていいはずだと。つまり、東京で暮らすというのはそういうふうに高く付くんだよということが前提になっているはずだ、それがなっていないのは地方に負担を強いているからですという形で、実はそのとき陳情しました。そんなに広められると私たち東京人は食っていけませんというようなことを言った。  この問題は実は大変大きな問題を抱えていて、これは余り大きな声では言えないんですが、例えば道州制論議なんかが出ていますよね。私も基本的には道州制で何かがどうなるとは思いませんが、今のお話のような、言わば地方の物資なりが移動するときに、道州の境を越えるたびに課税するというような権限を国が手放すというか認めるのであれば一つ意味はあるかな、地方経済を自立させていくという意味はあるかなというふうなことをどこかで申し上げたことがあります。  そのように今、私たちは一生懸命地域で知恵を出して頑張ろうとしているんですが、おっしゃるとおり、頑張れば頑張るほど輸出超過になる可能性があるんですね。それをどうやって調和させるのか。残念ながら、私にも知恵がありません。申し訳ありません。
  249. 山田太郎

    ○山田太郎君 次は三次公述人お話伺いたいんですが、もう一つ地域の問題としては、地域クラスターというんですか、要はその地域が最低限成り立つための有機的なつながり、こういうのが必要だというふうに思っています。そんな中で、今各地域がその地域クラスターが崩れて存立できない。例えばどんなものが必要かというと、病院、学校、それから商業施設、それからもしかしたら地域の基幹産業と。三次公述人のところは病院に手掛けられたということだと思いますが、市町村合併なんかも多分そういった地域クラスターを維持していこうというような観点から考えるべきだと思いますし、そういうことが整理できると道州制の有無だとかいろんなことが整理できていくと私は思っております。  そんな中で、市長が見た場合、今後、どんな機能が一番今やばい状態にあって、その地域クラスターということを考えた場合に必要なのかなと。そのことについては、これはもう中央も地方もない、先ほど辻山公述人の方もおっしゃっていましたけれども、やっぱり国のレベルで議論することでもあるとは思っていて、そういうことに対して、もしかしたらその地域に補助を付ける、国も支援していくのは意味があるとは私は思っておるんですが、そんな中で三次公述人の方に何かお話しいただけないでしょうか。
  250. 三次真一郎

    公述人(三次真一郎君) 常陸大宮の場合は、近い将来検討しなければならないのは、水戸を中心とした定住自立圏構想というふうになろうかと思います。ただ、これは相手があることですので、これからの問題になります。常陸大宮市独自ではやっていけないことはもう明白でございます。  ただ、これは避けようもない現実なんですけれども、常陸大宮市は茨城県の県北西部にありましてもやはり東京に近いという、首都圏に近いという条件があります。委員先生方にはお分かりにならないかもしれませんけれども、例えば酪農、生乳ですね、牛乳ですね、これはもう北海道とすぐ浮かぶと思うんですけれども、何と酪農日本一の会社が常陸大宮にあるんです。しかも、年間三万トンを超えたのは日本で初めてです。これは常陸大宮市の、名前を出していいと思うんですけれども、有限会社瑞穂農場さんです。これは、北海道の牛乳は幾ら生産しても東京まで運ぶのにコスト掛かります。常陸大宮から東京はコストは余り掛かりません。したがいまして、日本一の、しかも断トツなんですね。関連入れますと五万トンを超えております。  こういう事例がありますので、先ほども触れましたけれども、道の駅、間もなく来年の三月にオープンする予定ですけれども、ここにはそういうものを中心とした品ぞろえをしてやっていければ、不利な面はたくさんありますけれども、マイナスを克服してプラスに持っていきたいという思いでありますので、御支援をよろしくお願いいたします。
  251. 山田太郎

    ○山田太郎君 時間になりましたので、終わりたいと思います。  ありがとうございました。
  252. 江口克彦

    江口克彦君 ありがとうございます。  今いろいろお話を伺っていまして、三次市長にまず二点ほどですか。  中核病院、常陸文書館、それから元気ひたちおおみや会議をやると。それから、プレミア付き商品券の発行もやると。それから、医師確保支援補助事業もやりますよと。こういうことで常陸大宮市を活性化しますよ、元気にしますよと、こういうことをいろいろと御説明あったんですけど、正直、そういうお話があったのは、もう二十年も三十年も前から私も地方自治に取り組んでいますけど、こんなことを言われているわけですよ。これで本当に常陸大宮市はこの人口減に歯止め掛けられるというふうに思っておられるんでしょうか。  それと、それに関連してお尋ねしたいのは、正直ですよ、正直、常陸大宮市が将来人口増、あるいはまた活性化するというふうに本気になってお考えになっておられるのかどうか。その理由は何なのか、そしてその対策をどのように考えておられるのか。私はとても難しいと、私の三十年間考えてきたプロセスからすると難しい、それを超える知恵を持っておられるのか、それを出されようとしておられるのか。今まで言われた、今日御説明のあったものでは絶対に活性化しません。
  253. 三次真一郎

    公述人(三次真一郎君) 私も、江口先生の指摘されるとおりであります。  人口増は本当に難しいと考えております。しかし、消滅させては駄目だということでありますので、何も施策を展開、あるいはやらなければ、本当にどんどんどんどんマイナスになって、行く先は消滅だというふうに思っておりますので、これからは人口減は多分日本全体の問題だと思いますので、一常陸大宮だけの問題でもありませんので、一生懸命食い止めるべく歯を食いしばってやっているところでございます。
  254. 江口克彦

    江口克彦君 消滅させないようにしようと市長が一生懸命お考えになるのは、これは当然のことだと思います。市長がもう駄目だと、もう消滅しますと、うちの市は消滅しますなんということは口が裂けても言われない、これは当然だと思いますよ。だから、今のお答えは、私は、好ましくないとか、それは間違っているとかと言うつもりはありません。しかし、消滅させないでおこうというふうに思っても、大丈夫ですか。大丈夫ですか、本当に大丈夫ですか。
  255. 三次真一郎

    公述人(三次真一郎君) 思いも少し述べさせてもらいたいんですけれども、いろいろな政治的な施策を展開して、これは中国の言葉ですけれども、論語にありますけれども、近き者喜び遠き者来る、つまり常陸大宮でいい行政をやっていれば、その評判で駆け付けて、隣の人あるいは近隣の人から常陸大宮にやってくる、そういうような行政展開をやっていきたいという思いでおりますので、その気持ちを施策に反映していきたいというふうに思っています。(発言する者あり)ありがとうございます。
  256. 江口克彦

    江口克彦君 私も、今までの日本というのは東京の発展が日本の発展になったんですね。しかし、これからは三十八万平方キロ、この日本全体が活気付かなければならないと思うんです。そういう意味で私は応援したいんですよ、応援しているんですよ。だから、是非この私の質問に対して心の中で大いに怒っていただいて、それならばやってやるぞというふうに思っていただきたいんですけれども。  二〇一四年の十月二十三日の朝日新聞の、これはどこかで調査をやったというよりも、大会があったんですね、会合があったんですね。いやいや、常陸太田青年会議所、JCですか、これが調査をしているわけですけれども、市長が答えられているんですけど、結局、中学生への回答の中で、観光名物、特産物があるという回答が一番少なかったと、覚えておられると思いますけど、市長は、あると思うんだが真摯に受け止めなければならないと、こういうふうに言っておられるんですね。  中学生自身がこういうふうに常陸大宮市に対してこういうコメントを言っておられるということで、その点について、やっぱり若い人たちも含めてしっかりと、言ってみれば今までと違ったアイデアを出すという、そういうことをしないと地方は活性化しない、あるいはまた常陸大宮市は活性化しないというふうに思うんです。是非応援したいと思いますので、知恵を出していただきたいというふうに思う。要するに、今までの考え方じゃ駄目ですよということを申し上げたいということでお聞きいただければと思います。  それから、辻山先生にお尋ねしたいのは、このペーパーの中で、一極集中がなぜそうなったのか検証できていない、あるいはまた過疎になったのはなぜかということを十分に検討していないということを、その理由は何だというふうに辻山先生はお思いになっているのか、あるいはまた、もう一つ別の角度から、中央集権体制という統治機構というものをこれからも続けたらいいのかどうか、続けるべきかどうかということについてお尋ねしたいということであります。あと二分ありますので、二分でどうぞお話しください。
  257. 辻山幸宣

    公述人(辻山幸宣君) 東京一極集中の国土構造というのは、この国が高度成長政策を、重化学化、工業化ということを通じて高度経済成長をやっていくんだという意思決定をしたときから、ある意味では確定したというふうに考えています。  そのために農漁村、山村というものがだんだんと薄くなっていく。薄くなったところの疲弊をどうカバーしようかというので、様々な工業、言わば地域開発という形で配置していった。その中にもちろん原発とかそういったものも含まれているわけでありますが、それでもって大きな集中と過疎との破綻を何とか抑えたと、そういうところはあると思います。しかし、この高度成長政策が限界に来た後、はっきりとその問題が今のように消滅自治体というふうなことで議論されるようになった。  私、やはり、今回もそうですけれども、どこかで中央集権的な意思が、この国家を地方共々何とか支えていかなきゃいかぬという中央集権の思想はあると思います。でも、今回、地方が頑張れよという地方創生のメッセージを出したのですけれども、本当に頑張るまで待ってやろうという気になっているか。私はそのことを衆議院の特別委員会のときには、交付税対象国税の分配比率が、今回の予算でも法定率を変えたんですよね、法人税割何%を地方へ回すとか、変更しているんですけれども、実は、そのペーパーには四割に達していないと書きましたが、うちの若い者に計算させたら三割に達していない。つまり、国税収入の地方への配分比率を高めて、そして地方一般財源を拡充しなければ駄目だというふうに考えているところでございます。  時間になりました。済みません。
  258. 江口克彦

    江口克彦君 どうもありがとうございました。
  259. 薬師寺みちよ

    薬師寺みちよ君 無所属クラブの薬師寺みちよでございます。  お二人の公述人には、本当に勉強になるレクチャーいただきまして、ありがとうございます。  まず、辻山先生の方にお尋ねをさせていただきたいんですけど、実は私、構造改革の特区の評価・調査委員を何年もにわたってやってまいりまして、先生が先ほどおっしゃっていただきました地域特性を生かした町づくりというものに関わってまいりました。しかし、実際にいろいろな提案を見ておりましても、地域特性を生かしたって、これ大変難しいんですね。ということは、まさにその自治体の皆様方が、構造改革特区の場合には全く補助金もございませんでしたし、何か税制優遇あるわけでも何もございませんでしたけれども、知恵と工夫を生かしながら我が町を売り込むというような戦略だったと思いますけれども、その戦略を実現できなかった、だからこそ今回大きなチャンスを手に入れたわけですので、どういう能力を身に付ければ地域特性を生かした町づくりというものができていくのか、そしてそのためにはどのような人材がもっと地域に必要であるのか、そしてどういう権利というものを地域が手にしなければ実現できないのか、その辺りを教えていただけますでしょうか。
  260. 辻山幸宣

    公述人(辻山幸宣君) それらに全て見事に答えられていれば、私もどこかで市長か何かやっているだろうなというふうに思えるぐらいに、それ難しい問題でございます。  ただ、今回私が心配しているのは、そのようにして数少なく自立の道を歩み始めた、そして成果を上げて、俗に言う人口の田園回帰もしていますよというようなことも言われているような、そういう数少ない町、市、これが被害を受けるだろうなと思っています。  今回の地方創生の掛け声でやることは、そこがやっているようなことをすれば人口が戻ってくるんだなというふうに考えます。そして、人材の問題でいえば、そのようにして、まねるということからまず発想するという自治体がやはり多いだろうなという気がしているのですね。そうすると、先行してやってきたそのノウハウだとかいうものが全部言ってみれば活用されてしまって、そしてそこよりも条件の良いところが出てくれば、実は負けていくことになる可能性があるんです。厳しい競争にさらされる。そういう意味では、今回、やはり自分たちで知恵を出せ、自分の町をよく知ってと、こう言うんですけれども、やはり気になるのは、取り沙汰されている、活性化している町に目が行くという気がしてならないんですね。  ですから、私は、まず自治体の職員とかその町の人たちに言いたいのは、歴史を知ろうよ、どうやってこの町は人々が生きてきたのか、食ってきたのかということを、できれば江戸時代とかそんな、いわゆる近世まで遡って、近代の自治になる前から検討してみようよということを申し上げたいんですけれどもね。  以上です。
  261. 薬師寺みちよ

    薬師寺みちよ君 ありがとうございました。大変勉強になりました。  もう一点、辻山先生にお尋ねしたいんですけれども、先ほど、連携、これは中枢都市ですか。ちょっとどのようなイメージなのか、済みません、ちょっとイメージが湧かないものですから、具体的なところをお話しいただけますでしょうか。
  262. 辻山幸宣

    公述人(辻山幸宣君) 連携中枢都市は私が発案したものでもない。言われていることは、単純に言えばこうなんです。地方制度調査会の答申にもありましたが、これまで、一つ一つの自治体で支えられなくなったところをどうしようかと、二〇〇〇年当時にはこれを合併によって、自立していけなくなったところ、十分なサービスを持続していけなくなったところは合併によって力をためるということをしようと。それによってそこの地域も今度は一つの市域になりますから、同じようにサービスを供給していこうと、こういう手法だったんだ。  しかし、合併の手法はもう取りにくいということの反省から、合併せずに力の落ちた市町村を支えていく仕組みは何かというときに、この連携とか中枢都市、中枢都市を軸にしてそこを手助けするよという協約を結んでいく、こういう発想なんですね。そして、協約を結んだところが全体として一つの都市圏、もちろん都市圏って隅々まで都市にはならないんですけど、都市を中心とした圏域として維持できていけるんじゃないかと、こういう構想だと考えております。
  263. 薬師寺みちよ

    薬師寺みちよ君 ありがとうございます。  それができれば、いわゆる生き残り策ということも考えられるということでよろしゅうございますでしょうか。その辺りの先生の御意見いただけますでしょうか。
  264. 辻山幸宣

    公述人(辻山幸宣君) 一つ一つの小さな町や村が言わば否定されていって、薄まっていって、その地域としては生き延びると、こういう構想だと考えています。
  265. 薬師寺みちよ

    薬師寺みちよ君 ありがとうございます。  私も愛知でございますので、いろんなやっぱり地域がございまして、その地域が本当にいかに生き延びるかということで、人の本当に奪い合いになってきています。特に若い女性の奪い合いかと言ってもよろしいかと思うんですけれども。  そこで、ちょっと三次公述人の方にお伺いしたいんですけど、やっぱり女性を集める政策というのはこれはかなり難しいと思うんですね。若い女性がやっぱりそこに居着いて、結婚して出産をしてもらうための何か工夫をしていらっしゃるのかと、若しくは、女性のいわゆる就労環境というものがいろいろ地域によっても工夫なさっていらっしゃる地域もございますけれども、いかがでございましょう。
  266. 三次真一郎

    公述人(三次真一郎君) 意識的にやっておるものもあります。例えば、市役所の中での女性の幹部登用、パーセンテージを挙げてはおりませんけれども、しかし、残念ながら低いです。そのほか、常陸大宮市議会は定数二十ですけれども、女性は一人しかおりません。ただ一方、農業委員会、これは茨城県で一番多い女性がおります。五人だと思いますよね、あっ、四人かもしれません、済みません。  茨城の女性、大変働き者です。一例を挙げます。  数年前、ポーラさんだと思うんですけれども、発表しました。日本の都道府県の別で女性の肌が一番きれいなところ島根県、一番きれいじゃないところといいますかね、茨城県。これは決して卑下していません。日照時間が島根県と比べて多い、そして外で働くのが非常に多い。したがいまして、余りケアは注意していないのかもしれませんけれども、とにかく働き者が多いという自負があります。したがいまして、今各種団体で、特に女性団体連絡協議会、大変な勢いで合併後増やしております。これが一つの救いです。  したがいまして、行政としてもそういうところにはどんどん手を伸べております。いいお知恵がありましたらば教えていただければ有り難いと思っております。
  267. 薬師寺みちよ

    薬師寺みちよ君 ありがとうございます。  一刻も早く多くの女性議員を誕生させることが一番の近道かとも思いますので、また御協力いただきたいと思います。  私もそろそろ持ち時間になりましたので、これで終わらせていただきます。  本当に今日はありがとうございました。
  268. 福島みずほ

    福島みずほ君 社民党の福島みずほです。  今日は、元気の出る話、また深いお話、本当にどうもありがとうございます。  まず、辻山公述人にお聞きをいたします。  資料に、プレミアム付き商品券やそういうのは今までの例を検証すべきであり、OECDなどだと、育児費用軽減、保育サービス拡充をすべきだと書いていらっしゃいます。  私も、プレミアム付き商品券などは一過性のものなので、政治はやっぱり持続的なものを応援すると。マッチ売りの少女の一瞬のマッチでは駄目で、やっぱり持続的なもので必要で、プレミアム付き商品券など、政治がやることとしてどれだけやはり元気付けることになるのかと思いますが、評価をお聞かせください。
  269. 辻山幸宣

    公述人(辻山幸宣君) その効果はおっしゃるとおり一過性のものだと、一時期だけそこにお金が回るんだろうけれども、それが長期的に人口の減少を止めるとか、場合によっては増やすとかということと何の関係があるのだということを思っています。  それより、むしろ有害だと。一四年度の補正予算が、もう決めなきゃならないのに、それまでにあの交付金の使い道を選択して、書類を作り、そして提出して交付を受ける。もう実際は物すごく大騒ぎだったはずなんですね。したがって、あの九割何分が商品券に行ってしまったというのも無理からぬところはあるとは思っています。ただし、あの旅行券のように、それを出すことによって自治体がお互いに客を取り合っていくというような関係、本当にもうやめにしたらどうだいということを思うんですね。  そういうふうに、今のところ、あれをやらなかった方がよかったんじゃないのという気持ちではおります。
  270. 福島みずほ

    福島みずほ君 今の後の方の部分についてもう少し話をしていただけますか。
  271. 辻山幸宣

    公述人(辻山幸宣君) 今回の地方創生は、行き詰まるところ、各自治体が知恵を出し合って取り合うということになるんですね。人を取り合う、事業を取り合う、あるいは知恵を取り合う。その結果、半分が勝ち組で半分が負け組。そんなにうまくはいかないかもしれません。必ず深刻な負け組が出てきます。そのための仕掛けが先ほど言った連携拠点都市圏という考え方だよと、こう言っているんですけれども、それももう既に来年度予算で、あっ、再来年度です、一六年度予算で展開されていくであろう事業は各省がもうリストを公表していますから、この中から選びなさいみたいなことになっているわけであります。  それを選んだら、あそこに掲げられているような、何年までに人口をどれぐらい増やすとかいうことが達成されるんならいいんですけれども、それらはこれまで個別にばらばらと出してきたメニューを示しているにすぎないんです。それも各自治体が自分たちで評価して、この支援策を取れば人口は増えるぞ、出生率は高まるぞというようなことを自分たちで検証しなきゃいけないのかどうかということを思っておりまして、それはちょっと苦だ、負担だというふうに感じているところでございます。
  272. 福島みずほ

    福島みずほ君 今日、地域を元気にするにはどうしたらいいかというたくさんのヒントや実例をお二人に語っていただきました。そして、辻山公述人の方から、ペーパーにもありますが、国税に占める地方交付税の割合は三割にしか満たないと、さっき三割とおっしゃって、法定率を上げるべきだとか、地方の一般財源を高めるべきだという御提案がありました。  戦後というかある時期からはすごい中央集権的な社会に日本はなっている。私は、原発など、とにかく中央集権的巨大開発だと、逆に地方疲弊していると実は思っていて、その立場から自然エネルギーなどをもっと促進すべきだと思っているんですが、今日は三次公述人にはこんなことをやっているといういろんなヒントをいただいたんですが、辻山公述人、なかなか知恵は出ないかもしれないけど、こういうことを私たちはもっとやるべきだ、先ほどのこの法定率を上げる、地方の一般財源を高める以外にありましたら、何かヒントをいただきたいと思います。提言、いかがでしょうか。
  273. 辻山幸宣

    公述人(辻山幸宣君) それこそ、そんなに、これをやればというのがあれば私も国会議員ぐらいには立候補しようかなとか思えるんですが、なかなかその知恵がね。しかも、誰かが東京で考えて知恵出したって駄目なんです、これ。やっぱりそこの地面に立って景色を見ながら考えていく、そして、人々と一緒にやろうよという仲間がいないとまたこれ駄目なんです、知恵があってもね。  そういう意味では大変無力だと思いますし、国会の皆さんも、立法すれば成るというわけではないよということもあって、お互いに無力感を抱えていて、頑張ってほしいという声援を送る、要らざる口出ししないで声援を送る、そのための条件を整えるということになろうかなと思います。
  274. 福島みずほ

    福島みずほ君 今日は三次公述人からもいろいろありましたが、全国を回ると、岐阜県が森林文化アカデミーでウッドジョブの若者たちをつくるとか、豊中市などではハローワークとは別に市が無料での職業紹介をうまくやって、今ハローワークとうまく連携しながらやっているとか、瀬戸内海ではアートで地域おこしとか、何かすばらしい例はたくさんあって、それを見るたびに、視察をしたりするととても元気になるんですが、今日おっしゃることを生かしてやっていきたいと思っています。  それで、先ほども質問がありましたが、私は、行革をやったらこれだけ交付税を多くするとか、傾斜配分が極めて問題だと思っていて、これ一歩間違えるともういじめじゃないかというふうに思いますが、いかがでしょうか。
  275. 辻山幸宣

    公述人(辻山幸宣君) 全くそのとおりです。まるで親が子供に、おまえよくやった、今度百点だったな、小遣い増やしてやるからと、こういう発想に近い気がするんですね。それで受け取った方がますます元気になって頑張るというのならいいんですよ。そのとき、じゃ、周辺とのことを考えると、自分のところだけ出ていって特別なそういう御褒美もらって、果たして連携とかそんなのうまくいくんだろうかということを考える。と同時に、そういうことを目指して改革するという気風が嫌ですね、自治体の。目指しているわけじゃないんだと、まさに要らざるお褒めの交付金だというふうに思いますけど。
  276. 福島みずほ

    福島みずほ君 私は、政府と自治体とのことを最近とても考えるんです。例えば、沖縄の辺野古の基地建設ですが、沖縄は明確にノーと言って、この今岩礁のやっていることに関して停止の指示を出すと。民主主義にのっとって選ばれた知事がいかに、あるいは有権者が何と言っても、政府はそれを聞かないというこの構造は何なんだろうか。かつての国策として進めた原発推進とどこが違うのか。こんなことをやっていたら、高レベル廃棄物の使用済核燃料の処理も、地元が反対でも初めはお金で、それが効かないとなれば強権力でやるんじゃないか。  これはどうでしょうか。住民自治、それから団体自治からいえば、政府と自治体は対等のはずなのに、これは一体何だと思いますが、いかがでしょうか。
  277. 辻山幸宣

    公述人(辻山幸宣君) 恐らく分権型社会でどうというようなことを期待されていると思いますが、私はちょっと考え、違います。沖縄に基地を認めるかどうかは沖縄県民の自己決定だという考え方には反対しています。これは中央政府の決定でなければいけないのだ、そうしたら、沖縄県民が沖縄に基地が欲しいという意思表示をしたら、それはあんたたちが決めたのというふうになってしまうんですね。  したがって、この問題は、本土の国民、住民全体が考えていくものであって、今の出来事をやっぱり沖縄は元気だなと見ている国民が大多数の中ではとっても暗いなというふうに思っています。まさに中央政府を突き動かしていくのは本土の私たち市民の役割であると考えております。
  278. 福島みずほ

    福島みずほ君 どうもありがとうございました。
  279. 平野達男

    ○平野達男君 ラストバッターでございます。平野でございます。  今日は本当にどうもありがとうございます。  最初に三次公述人にお伺いいたします。  地方創生、いろいろ計画作って、審査をして、まあプレミアム商品券とか様々なことがありましたけれども、結局、公述人としても一番いいのは、特別交付税なり地方交付税なり、ぼんと渡してもらって自由に使えと言ってもらうのが一番よろしいんだよねというのが本音じゃないでしょうか。岡田与党筆頭がおられまして、茨城県の、政府のやっていることに対しておかしいというのはなかなか言いづらいかと思いますが、大丈夫です、岡田筆頭はそういうことをちゃんとしんしゃくされる方ですから。どうぞ御意見を。
  280. 三次真一郎

    公述人(三次真一郎君) おっしゃるとおりです。やはり特交問題でも正直お願いに上がっています。地方交付税、この趣旨から見ましても、私どもの自治体のように幾ら頑張っても〇・四四ぐらいでは、とてもではありませんけれども、全ての市民が満足いくような町づくりはできませんので、引き続き地方交付税、あるいはその都度、特交につきましてもお願いをしているところであります。
  281. 平野達男

    ○平野達男君 もう一つお尋ねします。  今回も計画の策定が義務付けられるんですが、それ以外に、例えば都市計画法とか農振法とか、都市の土地に関する法律だけでもたくさんあります。それから、あと、いろんな補助金がありまして、要綱を作ると大体これに計画作りが策定される。大体、国レベルでいきますと、一つの法律で大体一つの課があったり、あるいは一班があったりして、霞が関はでっかいですから各所に分かれるわけです。ところが、みんな一つ一つやって市町村レベルでいきますと、それが一課、若しくは産業課のところで農業もやる都市もやるみたいな、そんな構図になって、誰がどうやって一体計画を作るんだみたいなところがあるんですよね。これ正直言って煩わしくないですか。
  282. 三次真一郎

    公述人(三次真一郎君) 新年度から、特に農業関係の権限が県の方から移譲されてきましたので、新たに職員増をしなければなりません。都市計画法も常陸大宮は全部あるわけではありません。農振、今、農業振興地域整備促進やっておりますけれども、これも権限が移譲されてきますと当然のことながら職員が増えております。昔から言われておりますけれども、地方は財源、権限、人間、この三ゲンが不足している、いまだに変わっておりません。国の方からの手厚いバックアップがこれからも必要となります。消滅都市にさせないためにもよろしくお願いを申し上げる次第でございます。
  283. 平野達男

    ○平野達男君 辻山公述人にお伺いします。  私、今日、辻山公述人がおっしゃった意見陳述それから答弁、ずっと聞いておりましたけれども、ほとんど私はもう共感できる内容であったと思います。特に地方創生についての意見というのは私も同趣旨で、予算委員会等々では申し上げさせていただいています。  ただ、その中で、しかし、やっぱり人口減少というのは合計特殊出生率が二・〇九を割りますとどんどんどんどん減っていきます。一九七四年からその状況になっていって、人口減少が二〇〇五年か二〇〇六年ぐらいから日本全体として始まっているという中で、この二・〇九割る状況がずっと続いていますから、完全に人が減っていくという状況の中にビルトインされています。だから、どんなに努力しても、ここ二十年、三十年は人は減っていきます。  同時に、だから、その一方、そのままで放置したらどんどんどんどん減り続けますから、人口減少には歯止めを掛けなくちゃならないと同時に、今から出生率を増やしても人口減少は歯止めが掛からないという状況をしっかり捉まえて、人減っていくことが地方にとっては何かマイナスみたいなイメージがありますけど、もうマイナスとか何かじゃなくて、減っていくよと言って、もうからっと言って、だけど、やっぱりこの地域としてはこういう発想で地域の活力をやっぱり維持していくんだというような、そういう雰囲気づくりというのがやっぱり私は一番必要ではないかなというふうに思いますが、辻山公述人、どうでしょうか。
  284. 辻山幸宣

    公述人(辻山幸宣君) 実は私も、衆議院の特別委員会のときにも、減るのは何が何でも駄目だという、そういうことではないだろうと。明治維新が起きたとき、この国は二千三百万人ぐらいだったと。そして、それがこの今の一億数千万人が食べていける国になったのは、実は産業構造をそういうふうに合わせてきたからだと。それが今崩れたから、当然人口も減っていくということになっている。  私はそのときに、人口減少と上手に付き合う、そういう地方の在り方もあっていいのではないかと。そして、場合によっては、もちろん全体は減っていくけれども、特に地方がうんと減っていく。都市部のところで、今言われている人口のダムみたいな形で維持するという、これが基本的な構想なんでしょうが、私は、そのようにして今住んでいる住民たちと最後まで付き合っていくぞというような自治体のありよう、あっていいのではないか、いたずらに抵抗していろんな傷を負うよりはというような感じもしているのでございます。
  285. 平野達男

    ○平野達男君 私も、今本当に地方創生というものに求められているというのはそういう方向ではないかというふうに思います。  そのことを申し上げまして、ちょっと時間が残りましたけれども、私の質問を終わらせていただきます。  ありがとうございました。
  286. 岸宏一

    委員長岸宏一君) 以上で公述人に対する質疑は終了いたしました。  この際、公述人のお二人に一言御礼を申し上げます。  本日は、有益な御意見をお述べいただきまして、誠にありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。(拍手)  次回は明二十七日午前九時から委員会を開会することとし、これをもって公聴会を散会いたします。    午後四時二分散会