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2015-08-24 第189回国会 参議院 予算委員会 第20号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成二十七年八月二十四日(月曜日)    午前八時五十五分開会     ─────────────    委員の異動  八月十日     辞任         補欠選任      石上 俊雄君     藤田 幸久君      谷合 正明君     長沢 広明君      川田 龍平君     片山虎之助君      紙  智子君     小池  晃君      荒井 広幸君     平野 達男君  八月十一日     辞任         補欠選任      大沼みずほ君     二之湯武史君  八月二十一日     辞任         補欠選任      猪口 邦子君     岡田 直樹君      山下 雄平君     武見 敬三君      田城  郁君     西村まさみ君      田中 直紀君     石上 俊雄君      片山虎之助君     儀間 光男君      小池  晃君     山下 芳生君      山田 太郎君     松田 公太君      松沢 成文君     中野 正志君     薬師寺みちよ君    渡辺美知太郎君  八月二十四日     辞任         補欠選任      岡田 直樹君     猪口 邦子君      武見 敬三君     山下 雄平君      水岡 俊一君     森本 真治君      井上 義行君   アントニオ猪木君      平野 達男君     荒井 広幸君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         岸  宏一君     理 事                 石井 準一君                 岡田  広君                 古賀友一郎君                 馬場 成志君                 堀井  巌君                 小川 敏夫君                 那谷屋正義君                 若松 謙維君                 東   徹君     委 員                 石田 昌宏君                 猪口 邦子君                 大野 泰正君                 太田 房江君                 岡田 直樹君                 北村 経夫君                 佐藤 正久君                 島村  大君                 高野光二郎君                 高橋 克法君                 武見 敬三君                 堂故  茂君                 二之湯武史君                 三木  亨君                三原じゅん子君                 三宅 伸吾君                 山下 雄平君                 石上 俊雄君                 大久保 勉君                 大塚 耕平君                 小西 洋之君                 西村まさみ君                 藤田 幸久君                 水岡 俊一君                 森本 真治君                 蓮   舫君                 長沢 広明君                 矢倉 克夫君                 横山 信一君                 儀間 光男君                 大門実紀史君                 山下 芳生君               アントニオ猪木君                 井上 義行君                 松田 公太君                 中野 正志君                渡辺美知太郎君                 福島みずほ君                 荒井 広幸君    国務大臣        内閣総理大臣   安倍 晋三君        財務大臣        国務大臣        (内閣特命担        当大臣(金融)        )        麻生 太郎君        総務大臣     高市 早苗君        外務大臣     岸田 文雄君        文部科学大臣        国務大臣     下村 博文君        厚生労働大臣   塩崎 恭久君        農林水産大臣   林  芳正君        国土交通大臣        国務大臣     太田 昭宏君        環境大臣        国務大臣        (内閣特命担        当大臣原子力        防災))     望月 義夫君        防衛大臣        国務大臣     中谷  元君        国務大臣        (内閣官房長官) 菅  義偉君        国務大臣        (復興大臣)   竹下  亘君        国務大臣        (国家公安委員        会委員長)        (内閣特命担        当大臣防災)        )        山谷えり子君        国務大臣        (内閣特命担        当大臣沖縄及        び北方対策、消        費者及び食品安        全、科学技術政        策、宇宙政策)        )        山口 俊一君        国務大臣        (内閣特命担        当大臣経済財        政政策))    甘利  明君        国務大臣        (内閣特命担        当大臣規制改        革、少子化対策        、男女共同参画        ))       有村 治子君        国務大臣        (内閣特命担        当大臣国家戦        略特別区域))  石破  茂君        国務大臣     遠藤 利明君    副大臣        復興大臣    浜田 昌良君        財務大臣    宮下 一郎君    政府特別補佐人        内閣法制局長官  横畠 裕介君        原子力規制委員        会委員長     田中 俊一君    事務局側        常任委員会専門        員        小野 亮治君    政府参考人        内閣官房内閣審        議官       前田  哲君        内閣官房内閣参        事官       小澤  仁君        内閣官房内閣参        事官       佐々木裕介君        警察庁刑事局長  三浦 正充君        法務省民事局長  深山 卓也君        外務大臣官房地        球規模課題審議        官        尾池 厚之君        外務大臣官房審        議官       下川眞樹太君        外務大臣官房審        議官       梨田 和也君        外務大臣官房参        事官       鈴木 秀生君        外務省総合外交        政策局長     平松 賢司君        文部科学省初等        中等教育局長   小松親次郎君        厚生労働省健康        局長       新村 和哉君        厚生労働省社会        ・援護局長    鈴木 俊彦君        厚生労働省老健        局長       三浦 公嗣君        防衛大臣官房長  豊田  硬君        防衛大臣官房審        議官       辰己 昌良君        防衛省人事教育        局長       真部  朗君        防衛省経理装備        局長       三村  亨君    参考人        日本銀行総裁   黒田 東彦君        年金積立金管理        運用独立行政法        人理事長     三谷 隆博君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○参考人出席要求に関する件 ○予算執行状況に関する調査  (内政外交の諸問題に関する件)     ─────────────
  2. 岸宏一

    委員長岸宏一君) ただいまから予算委員会を開会いたします。  参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  予算執行状況に関する調査のため、本日の委員会年金積立金管理運用独立行政法人理事長三谷隆博君を参考人として出席を求めたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 岸宏一

    委員長岸宏一君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  4. 岸宏一

    委員長岸宏一君) 予算執行状況に関する調査についての理事会決定事項について御報告いたします。  本日は、内政外交の諸問題に関する集中審議を行うこととし、質疑往復方式で行い、質疑割当て時間は四百十四分とし、各会派への割当て時間は、自由民主党八十分、民主党・新緑風会百九分、公明党三十七分、維新の党三十六分、日本共産党三十六分、日本を元気にする会・無所属会三十六分、次世代の党二十分、無所属クラブ二十分、社会民主党・護憲連合二十分、新党改革無所属の会二十分とすること、質疑順位につきましてはお手元の質疑通告表のとおりでございます。  速記を止めてください。    〔速記中止
  5. 岸宏一

    委員長岸宏一君) 速記を起こしてください。     ─────────────
  6. 岸宏一

    委員長岸宏一君) 予算執行状況に関する調査を議題とし、内政外交の諸問題に関する集中審議を行います。  これより質疑を行います。武見敬三君。
  7. 武見敬三

    武見敬三君 総理、二十一世紀アジア太平洋の地政学的な大きな変化というのは、これは本当に我が国外交安全保障政策を考えるときには見過ごせない深刻な状況をこれからつくり出すかなと、こういうふうに思います。  加えて、先週末、朝鮮半島で極めて緊張した事態が起きてしまいました。地雷の爆発というのがあって、またさらに銃撃戦があるというようなことで準戦時体制だなどと言い始めて、極めて緊張した事態が起きたことは誠にもって懸念すべきことでした。総理、極めて迅速に国家安全保障会議を主宰されて、そして河口湖行きもおやめになって、あえて東京で直ちに対応できる体制を整えられた。私も、非常にこの緊張した状態というものを実際に強く感じました。  また同時に、二十世紀パワーポリティクスというのを構成していたのは、軍事力とかあるいは経済力や、それから人口の大きさとか、それから領土の広さと、こういうようなものであったわけでありますけれども、こういった二十世紀パワーポリティクス構造というものに基づいて二十一世紀の今度はアジア太平洋におけるパワーポリティクスの動向というのを見てみると、そこに、今述べたような地政学的な変化が起きているということが感じられます。それは、特に軍事経済分野における中国の台頭でありまして、また同盟国である米国の相対的な影響力の低下です。南シナ海における中国による軍事基地建設というものを止めることができないというようなことにでもなりますと、この軍事的な勢力均衡中国に有利に変化し始めているということを印象付けることになると思います。  アジア太平洋における地政学的な変化総理はまずどのように捉えられているのか、その御所見を伺いたいと思います。
  8. 安倍晋三

    内閣総理大臣安倍晋三君) アジア太平洋地域地政学的変化でありますが、二十世紀冷戦時代には米ソを頂点とする二極体制が存在をし、米国は西側のリーダーとして圧倒的な軍事力、そして経済力を有していました。しかし、冷戦が終結をし、二十一世紀の現在においては、アジア太平洋地域でも地政学的な変化が起きています。  北朝鮮は、日本の大半を射程に入れる数百発もの弾道ミサイルを配備し、発射されればおよそ千キロメートルを僅か十分で到達するわけであります。二〇〇六年以降、三回の核実験を繰り返し、ミサイルに搭載できる核兵器の開発を進めている状況にあります。  そしてまた、中国は、公表国防費が一九八九年以降ほぼ毎年二桁の伸び率を記録し、過去二十七年間で四十一倍であります。今年度においては、中国国防費日本防衛費防衛予算の約三・三倍に達しているわけであります。東シナ海においては、尖閣諸島周辺海域において中国公船による領海侵入が繰り返され、また、境界未画定海域における一方的な資源開発が行われています。南シナ海においては、中国が活動を活発化し、大規模かつ急速な埋立てを一方的に強行しているという状況でありまして、このように我が国を取り巻く安全保障環境は一層厳しさを増している中において、まずもっては外交を通じて平和を守っていく、これが重要なのは言うまでもないわけでありまして、今後も積極的な平和外交を進展をしていきます。  そして、万が一への備えとして、現在我々が御審議をいただいている平和安全法制を整えていくことによって、日本が危険にさらされたときには日米同盟が完全に機能する、このことを発信していくことによって紛争未然に防いでいくことにつながっていくと、このように確信をしているところでございます。
  9. 武見敬三

    武見敬三君 この二十一世紀というのは、アジア太平洋海洋において米国中国が各々の勢力圏確保をめぐり深刻に対立する構図というのが予見されます。二十世紀だと、冷戦というのは、ヨーロッパ大陸という地上でその対立構図というのが構成されてきたわけでありますけれども、どうも二十一世紀の超大国間の対立構図というのは、海をめぐってこれから起きてくるということが予見されるようになりました。ただ、他方において、経済的には米中両国間というのも相互的に依存関係というのは深まって、そしてまた協調する構図というのも予見されるようになる。  冷戦とは異なる複雑な対立協調というのがもう入り交じった国際情勢の下で、民主主義と自由という共通価値を持つ米国との同盟関係強化して、そして抑止力を高めて、危険な軍事的膨張主義にはしっかりと歯止めを掛けるために、この平和安保法制というものを整備するのは私はもう喫緊の課題だと思っております。  そしてまた、自由貿易原則としたTPPを実現をして、米国アジア太平洋における経済的プレゼンスというのを確保して、そして中国経済自由貿易原則の下にしっかりと共存せしむるということで、このアジア太平洋軍事経済などの主要分野において安定した勢力均衡を達成することを外交安全保障政策の目標とすべきだというふうに考えています。  こうした時代状況というのは、必要なときにはその抑止力強化してきちんと対峙するという姿勢を示さなければならないし、また平素は経済的な協調をきちんとつくり上げていく、そういう平和主義基調とした政策をきちんと組み立てていかなければならない。そういう意味で、もう極めて冷戦時代のような戦争か平和かといったような単純な二分法論的な見方ではとても対応できなくなるというのがこの二十一世紀の最大の特徴だと思います。そのことをまず国民にきちんと御理解いただくことが大変に重要だというふうに考えるわけでありますけれども、総理のお考え、いかがでございましょうか。
  10. 安倍晋三

    内閣総理大臣安倍晋三君) まさに武見委員指摘のように、米ソ冷戦構造時代には、ソビエト連邦日本ソビエト連邦とアメリカの貿易関係というのは非常に希薄であったわけでありますが、しかし、今は、まさに冷戦構造が崩壊した後は、経済関係は非常に複雑に、かつ深く広く結び付いているわけであります。  今例として挙げられましたが、平和安全法制備えをきっちりと行っていく、同盟を強く、日米同盟を強くしていくと同時に、中国を含むアジア太平洋地域において、TPPを通じて、我が国同盟国である米国や、自由、民主主義基本的人権、法の支配といった普遍的価値を共有する国々とともに、二十一世紀にふさわしい新たな自由、公正で開かれた国際経済システムをつくり上げていくことが重要と、こう考えております。これは単に経済だけではなくて、安全保障においても非常に戦略的価値があるんだろうと、こう思います。  我が国は、まさに七十年前、二度と戦争の惨禍を繰り返してはならないという不戦の誓いを立て、戦後一貫して平和国家としての道を歩んできたわけであります。この平和国家としての日本の歩みはこれからも決して変わることはありません。まずもって外交を通じて平和を守ることが重要なのは言うまでもないわけでありまして、積極的な平和外交を展開してまいります。  しかし、平和は唱えるだけで実現するわけではないのであります。このため、我が国は、国際協調主義に基づく積極的平和主義考え方の下、地域や世界の平和と安定の確保により一層積極的に貢献していく考えであります。このような考え方を今後とも国民の皆様に丁寧に説明することにより、積極的平和主義について一層の御理解を得てまいりたいと考えております。
  11. 武見敬三

    武見敬三君 今まさに総理が御指摘されたように、この平和主義に対するやはり明確なる、そして確固たる信念、これが非常に今、平和安保法制について国民理解をいただく上においても非常に重要な鍵となっているというふうに思います。  抑止力とよく言いますけれども、抑止力を構成する力というのはその国の意図と能力というもの双方に基づいて形成されると言われています。自国民の生命と財産、そして主権というものを守る国家意思が非常に重要な要素となります。そして、その国家意思が広く深く国民理解され、共有されなければなりません。  この平和安保法制及びTPPを通じて、アジア太平洋における安定した勢力均衡を達成する外交安全保障政策について国民理解を得る鍵というのは、今まさに総理指摘されたように、平和主義に関する確固たる信念と、それともう一つ重要なのは未来志向の積極的な平和主義だと。そして、未来志向の積極的な平和主義に基づく具体的な国際貢献策というものをきめ細かく説明をしてそれを地道に実践するということが、私はこの平和主義というものの意味国民にきちんと理解していただく上で大変な重要な要素になってくるというふうに考えております。  今まさにその所見をいただいたわけでありますけれども、総理、八月十四日に発表された歴史談話、この中で、我が国はあくまでも平和主義というものを基調として、責任ある国家としてその役割を果たす意思を明確に述べられました。  ここで、未来志向平和主義具体的内容について私は少し御質問させていただきたいというふうに思います。  未来志向の積極的な平和主義というのは、二十一世紀型の新しいパワーポリティクスというものと私は密接に関係するだろうと思います。先ほど二十世紀型のパワーポリティクスと言いましたけれども、二十一世紀というのは別次元の新しいパワーポリティクスが始まったように思います。  それは、もう人、物、金、情報が国境を越えてざあっと行き交うことによって国際社会経済社会のダイナミズムというのは膨れ上がりましたけれども、その結果として今度は国際社会国境を越えて共通する課題が山積してきた。しかし、国民国家、一国単独だけでは解決できないという課題が二十一世紀にこれから噴出してきている。そういう共通課題というものを、一国が一つ自国の中で比較優位性があると思われる分野を選びながらその国際社会共通課題解決をする。そして、その問題を解決するイニシアチブをしっかりと発揮をすることを通じて、その当該問題についてはその国の影響力が確実に高まってくる。  これについて、例えば保健医療の問題だとかエネルギー、環境、この共通課題というのは今どんどん出てきています。恐らく、今余り共通課題だと思っていないようなものも、これから恐らく国際社会国境を越えた共通課題と認識されるようになってくるんだと思います。それらの課題をできるだけたくさん得意分野として抱え込んで、国際社会解決するイニシアチブをつくり上げていきますと、その分、それぞれの分野に関わる影響力が蓄積されて、二十一世紀に改めて別次元で新しい自国影響力をしっかりと確保するということができるというのが二十一世紀型のパワーポリティクスだと私は考えます。  こうした考え方に基づいて実際にこの共通課題解決するというときにも、もう一つ重要な課題があるのは、それは、イニシアチブを持って解決する国にとってひたすら有利になるような解決の仕方だけだったら、ほかの国は納得しません。やっぱり、これは人権であるとかあるいは平等であるとか、その普遍的な価値というものをきちんと裏付けた形で、より多くの人たちが納得できるような形で解決するということによって、実はこの解決を進めることによって国際社会の平和の基盤が構築されると、こういうことになっていくだろうというふうに考えます。  私のこの考え方について、総理の御所見を伺いたいと思います。
  12. 安倍晋三

    内閣総理大臣安倍晋三君) 二十一世紀においては、常々私が申し上げておりますように、もはや一国のみで自国を守ることができない時代になっている。安全保障においてもそうでございますが、同時に、国際的な課題は、まさにこれは多くの国々協力をしなければその課題解決することができない。典型的な例は、地球温暖化の問題はそうだろうと思います。こうした課題において、武見先生がおっしゃったような基本的価値を共有する中において、その価値の上に立ってそうした課題に取り組んでいくことが最も求められているのではないかと思います。  二十一世紀国際社会は様々な課題に直面をしており、我が国人道支援などを通じた人間安全保障の促進、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジの推進開発援助協力の展開、軍縮・不拡散の推進海洋安全保障や法の支配強化、女性の権利を含む人権の擁護など、我が国ならでは貢献を行える分野で積極的に取り組んでまいりたいと思います。このような分野での貢献は、紛争の芽を未然に防いでいく上で極めて重要であります。こうした国際貢献を通じて国際社会の平和と繁栄基盤強化されていくものと考えております。
  13. 武見敬三

    武見敬三君 ありがとうございました。  この未来志向の積極的な平和主義というものが国際社会平和基盤というものをしっかりと構築成るような施策を、それをまた実践する政策概念というものもきちんと組み立てながら実践していくというのがこれからの主要先進国国際社会の中で確実に展開するその政策手法になってくると思います。  我が国では、歴代の内閣人間安全保障という考え方が述べられてきました。総理米国議会であの見事な演説をされたときに、積極的平和主義との関わりで人間安全保障という考え方にも言及をされたわけでありますけれども、この人間安全保障に関わる総理の御所見を少し詳しくいただければと思います。
  14. 安倍晋三

    内閣総理大臣安倍晋三君) 人間安全保障は、一人一人、人間一人一人に焦点を当て、その保護と能力強化を通じて国の発展や社会繁栄を実現していくという考え方であり、委員指摘のとおり、国際社会平和基盤の構築に資するものであります。  私自身は、先ほど御紹介いただきましたように、米国議会の演説で、国家安全保障に加えて人間安全保障を確かにしなくてはならないというのが日本の不動の信念であると述べました。先般閣議決定した開発協力大綱においても、人間安全保障我が国開発協力の根本にある指導理念としており、引き続き、これを外交の重要な柱として積極的に推進していく考えであります。
  15. 武見敬三

    武見敬三君 この人間安全保障考え方というのは、我が国は、実はコフィー・アナン事務総長の下で、当時、アジアで初めてノーベル経済学賞をもらわれたアマティア・センさんと、それから緒方貞子さんが共同議長になって人間安全保障委員会というのを設立をして、そこで改めてこの政策概念というのを整理をいたしました。  これは、まさに今総理が御指摘になられましたように、それぞれのコミュニティーの中に住んでいる人々、個々に焦点を当てて、こうした人たちがより有意義な人生を営むことができるように、様々な選択肢をより多く確保できるように進めることが人間安全保障の目的だと、この自分の人生をより有意義にすることができる選択肢がより多く増えるということは人間にとっての自由を拡大することだと、これがアマティア・センさんの考え方でした。  そして、緒方貞子さんは、それを実践していくときに、それじゃ改めて、じゃコミュニティーというものに焦点を当てて、コミュニティーを一つの政策決定の基本単位にして、そしてそこにおいて、例えば治安、秩序、警察、消防ということであればトップダウンに国が責任を持ってそうした治安、秩序を守り、防災には対処をする、しかし他方で、そこに住む人々の力が基本的にエンパワーされていくために、今度はボトムアップで教育だとか職業訓練というようなことを通じて自分の能力を高めていくようにしていく、これらを組み合わせて、その選択肢をより多く広げて有意義な人生を送ることができるようにさせようと、こういうふうな考え方人間安全保障という考え方をつくりました。この考え方は、国連の総会においてもこの考え方がきちんと定義をされて、採択をされているという状況にございます。  そこで、総理、このイギリスの医学雑誌のランセットというのに、総理、論文を、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジに関わる論文を書いてくださいました。(資料提示)この論文、国際社会の中で特に保健医療関係者にとっては非常に衝撃的な論文でありました。  このランセットという英国の医学雑誌、すごくこれまた権威のある雑誌でありまして、例えば日本の国立大学など、医学部などで教授の選考をするというときに、このランセットに単著論文をきちんと載せておりますと、その他の通常日本の国内で発表した論文の三十本分ぐらいの評価がされるというぐらいだそうです。日本からも多くの方がこのランセットに論文を掲載しようとしても、おおよそ受け入れられるのは四%ぐらいだということでありますから、こうした雑誌の中で総理が特に健康ということに焦点を当ててこの論文をお書きになったということは大変大きく、そして高く評価をされました。  その際、人間安全保障ということの中で健康という問題を総理がどう捉えるのか。これは、健康であるだけでは、先ほど申し上げたように、人生にとって有意義な選択肢を広げることはできませんけれども、健康を害してしまいますと、教育受けるのもままならない、職業訓練受けるのもままならない、そして、せっかくビジネスチャンスがあったとしても、それを生かすことも健康でないとなかなかできない。そういう意味で、健康というのはこの人間安全保障という考え方の中でその中核的な価値を構成していると、このように考えるわけでありますけれども、総理の御所見を伺わせてください。
  16. 安倍晋三

    内閣総理大臣安倍晋三君) 健康とは、一人一人が生涯にわたり心身共に健やかな状態で、社会参加をしながら生きがいを持って生活できることと考えています。このためには、健康な状態で生活できる期間である健康寿命を延ばしていくとともに、介護等が必要な状態になっても尊厳を持って最後までその人らしく生活できるようにすることが重要であります。  御指摘のように、人々の健康は、健康な社会基盤となるものであり、健全な社会基盤となるものであり、国内外を問わず、どのような社会においてもその実現が重要であると考えております。
  17. 武見敬三

    武見敬三君 総理、そのまさに健康というのが平和主義の一つの基本的な政策概念にもなる人間安全保障の中で一つの中核的な価値を構成しているという点については、およそ御理解がいただけた御答弁だったと思います。  その上で、この健康の分野を見てみますと、今総理が御指摘になられましたように、健康寿命というのは日本は男女共に世界で一位ですよ。それから、平均寿命は女性は長年ずっと世界で一位ですし、男性も世界のトップランクにある。そういったまさに世界でも比較優位性の高い大きな成果を日本はこの分野の中で持っております。それを実践することができたのも、やっぱり医療制度が良かったからだと私は思います。  これは総理のおじい様の岸信介さんのときに、これは一九五八年だったと思いますけれども、健康保険法の改正とか国民健康保険法の改正、それから年金法の改正というのをおやりになって、そして一九六一年に国民皆保険とか国民皆年金というのが同時に実現をしました。そしてまた、それまでの経済の十か年計画みたいなものはいずれも経済成長だけが目的だったんですけれども、改めて経済十か年計画の目標の中に国民の所得というのも組み込まれて、そしてこの考え方が次の内閣で所得倍増計画となりましたけれども、その基本をつくったのは実は岸内閣でした。  こうしたことを通じて実は政府の中にしっかりとした所得の分配機能というものをつくり上げて、そして見事に高度経済成長時代の前にそうした仕組みをつくり上げておいたことで、我が国経済が成長しても国民の所得格差はむしろ縮小したということを実現しました。今、中国だとかブラジル、ロシア、いろんな国見ていますと、全部、経済は成長しても国民の所得の格差が広がって、それが深刻な問題になって、政治的にも非常に不安定な状況をつくり出すことさえもあったけれども、日本は見事にこうした経済成長と所得格差の抑制というのを成功させて、そして安定した、そして健康で教育レベルの高い中産階級社会づくりをつくり上げることに成功したわけです。  こういうようなことを通じて、改めて見たときに、国民皆保険制度、これはユニバーサル・ヘルス・カバレッジの基本になりますけれども、この国民皆保険制度というのが、当時、実際には年金制度ができたとしても余り高齢者いませんでしたし、それから所得税の累進課税率を七五%に引き上げても余りお金持ちいなかったし、余りそういうので所得分配機能もありませんでしたから、実はこの医療保険制度というのが政府の所得分配機能の七〇%以上を占めていた。したがって、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジの基本を構成するこの医療保険制度というのは、ただ単に所得の低い人も安心して医療にアクセスすることができるということだけじゃなくて、同時に、その国の所得の分配を促進させることによって所得格差というものを抑制する効果を持って、それによって社会を安定させる装置にもなるんだということが日本の経験は明らかにしていると思います。  したがって、国民健康保険を基本とするようなこのユニバーサル・ヘルス・カバレッジという、これはもう誰でもが自分で負担可能なコストで、予防を含む、そして適切な医療を受けることができるというのがユニバーサル・ヘルス・カバレッジのまさに定義で、日本はそれを一九六一年ぐらいに達成をして、もう五十年以上たっている。  この経験というのをまさにこれから国際社会の中できちんと政策として発信をして、世界の特に途上国の人たちの健康改善にも、また途上国における政治、社会の安定にも大きく貢献していくというのは、私は日本積極的平和主義の具体的展開になるだろうと思うんですけれども、この点に関する総理の御所見を伺わせてください。
  18. 安倍晋三

    内閣総理大臣安倍晋三君) 日本が戦後の復興から経済成長へと歩みを進める中において、ただいま武見委員が御指摘になったように、そのときにまさに皆保険制度、健康保険、そして年金制度を導入し、また最低賃金も導入をしたわけでありますが、このように再配分機能とセーフティーネットをしっかりと張った上においてしっかりと経済成長をしていった、高度経済成長に進んでいったことが日本の成功につながったんだろうと、こう思います。  我が国は、全ての国民が必要とする保健医療サービスを負担可能な費用で受けられる国民皆保険制度を確立し、世界一の健康長寿社会を達成することにより、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジの一つの在り方を実現しました。我が国としては、こうした知見や教訓を生かし、人間安全保障の観点から、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジの推進日本ブランドとして掲げてまいりました。  来月国連で採択される新しい国際的な開発目標においても、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジが目標の中に明確に位置付けられる予定であります。日本の保健分野の新しい国際協力の計画においても、我が国はユニバーサル・ヘルス・カバレッジの達成を推進していく考えであります。  具体的な貢献策としては、医師、看護師等だけではなくて、中央及び地方の保健を支える行政官も含め、保健人材の育成を行ってまいります。また、先般、ケニアをユニバーサル・ヘルス・カバレッジの達成モデル国家として選び、その達成を支援することを目的とした円借の、円借款を供与を表明したところであります。
  19. 武見敬三

    武見敬三君 ケニアのケースなどは日本の新たな大きなチャレンジでもあります。ユニバーサル・ヘルス・カバレッジという一つの大きな制度をつくろうとするときに、技術協力であるとか必要な財政支援というものを多角的に行う戦略的な取組をこのケニアで我が国は円借款を使ってやるようになりました。以前は、この円借款というのは、インフラ整備といったようなところには使いましたけれども、保健医療分野というのにはこうした円借款というのは使っていなかったわけであります。  それを改めて活用して、技術協力や無償資金協力と組み合わせて多角的にこうした支援の体制を整えて、それぞれの国がユニバーサル・ヘルス・カバレッジを実現するための支援を行うということが今、日本の大きな得意技にもなってきている。是非これをお進めいただければというふうに思います。  ただ、この保健医療分野で今一番関心になっている課題というのは実は何かというと、エボラ出血熱とか、それから韓国に入り込んできたMERSとか、ああいう危険な感染症を国際社会が一体どうやって協力をしながら発生した地域でより早くそれを抑え込むことができるかというテーマになってきました。  それも、エボラ出血熱、昨年発見されてから、WHOがこれが危険なPHEICと呼ばれる、ある種蔓延してきた状態だというふうに認定したのにえらく時間が掛かっちゃった。そのために、多くの関係者から、WHOは一体何やっておるんだ、もっとしっかりとこうした監視体制強化をして、そしてすぐに対応できるような仕組みをつくらなきゃ駄目じゃないかと。  それから、実際にWHOだけでは火消しはできませんでした。例えば、実際に現地でいろいろとそういう患者さんというのを隔離をして治療をしたりする、そういう能力は現地の政府にはありませんでしたから、それはWHOや、あるいはアメリカや、そしてフランスやイギリスや中国などが自分たちの軍隊を派遣して、そしてこれらの火消し活動に一緒になって協力をしてその問題の解決に大きく貢献をいたしました。  これは、西アフリカというとんでもない遠いところで起きたこういった危険な感染症であったとしても、航空路線がもう世界中に蔓延しておりますから、いつ何どきそれがニューヨーク、ロンドンに飛び火するか分からない。そして、東京にもいつ何どき入ってくるかどうか分からない。それで、我々も、七、八人ですか、陰性で良かったけれども、ちょっと疑わしき患者も日本に来られて、それを水際作戦で何とか捉えようということで実際にその仕組みを強化したりいたしましたけれども。  実際に、どうやったらこれからこうしたWHOの役割、機能というものもきちんと確実に強化をして、そして、特にWHOというのはインターナショナル・ヘルス・レギュレーションという、これは、そういう危険な感染症などが発生したときには、すぐに、一体何人どこで発生したかというのをWHO本部に報告をする仕組みがあるんです。それは、それぞれ加盟国に全部義務付けられている。だけど、六六%の国しか実行していないんですよ。  途上国で余り所得の高くないような国は、そんな報告をむやみやたらにしちゃうと、あの国はどうも行くと感染しちゃうらしい、経済活動などもしに行くのは遠慮しよう、あるいは社会的な活動も、スポーツなど含めて大会があったとしても、ちょっとあそこでやるんだったら出るのやめようと、こんなふうに思いかねないものですから、そういうことを警戒してなかなか正直に報告義務に応じないというようなことも特に所得の低い国にはあります。  こういった事態を、じゃどうやって自分たちも率先してそういう病気が起きたらちゃんと報告をするようにするかとか、それから、もし仮に残念ながら蔓延し始めちゃったときには、それぞれのそういう途上国の実態というのはお医者さんも看護師さんも薬剤師さんもそんないるわけじゃありませんから、しっかりとその点に関しては国際社会が支援してあげなきゃいけない。  しかも、WHOが中心としてその役割をより強固に果たすためにも、今度はロジスティックスではWFPという、世界食糧計画というところが実際ヘリコプターとか飛行機たくさん持っていて、そういうところが実際に必要な専門人材を送り込むときのロジのお手伝いしたり、子供の健康や母親の健康というようなことになってきますと、ユニセフとかUNFPAといったような国連機関が今度は協力をしたりということになります。  したがって、いろんな国連機関が協力するための国連の中の調整機能をつくらなきゃなりません。その調整機能というものをつくるときに、今回はUNMEERという、潘基文事務総長の下に一時期だけそうした調整機能をつかさどるそういった機能をつくって、そしてそのUNMEERでこの参加国に対するオペレーションを戦略的に運営したという経緯がありました。しかし、このUNMEERだってうまくいったと実はみんな思っていないんですよ。  しかも、そういうときにファイナンス、お金をきちっとそれぞれの国にも上手に流さなきゃならない。しかし、上手に資金を流すというのは極めて難しい話で、WHOもそういうことをうまくやったことは過去に一度もない。そしてまた同時に、世界銀行のようなところがもう見ていられなくて、じゃ、うちが、そういう危険な状況が発生したときには経済活動に支障がないようにする支援とか、あるいはそういう治療や予防のための支援にお金を流すような、そういう新しい基金を実際につくりましょうというようなことも言い始めた。  さきのG7のサミットで、ドイツにおいてメルケル首相もこの点非常に強く主張をされたと伺っております。したがって、その中で、改めてこのWHOの中核的な役割というものをきちんと確認をし強化しようということもコミュニケの中でうたわれましたし、また同時に、こうした世界銀行がファイナンスをする機能というものもきちんと育てていこうということも確認されました。しかし、まだそこまでなんですよ。  実は、来年のG7のサミットのホスト国は日本です。この日本がそのホスト国としての立場から、ドイツが取りあえずそこまで共通確認してくれたものを踏まえて、今度はより具体的にこうしたWHOの機能強化、WHOの改革であるとか、あるいは国連機関の相互の調整機関の確立であるとか、あるいはそうした緊急時にファイナンスする仕組みづくりというものについて、具体的にどのように組み立てていけば上手に効果的に緊急時においても国際社会が対応できるようにするという仕組みづくり、今これのことをグローバルガバナンスと呼んでおります。このヘルス、保健医療に関わるグローバルガバナンスということが今まさに大きな課題として浮かび上がってきました。  こういった点について、来年、G7のホスト国でもある日本の立場から、しっかりと日本が取り組むことが未来志向の平和的な積極主義というものの一つの見事な具体的に展開することになると思いますけれども、総理の御所見を伺わせてください。
  20. 安倍晋三

    内閣総理大臣安倍晋三君) エボラ出血熱の感染拡大にも見られるとおり、グローバル化の進展に伴って国境を越える感染症の脅威が増大をしております。  このため、将来の感染症発生の予防や発生後の対応について、国際機関や援助供与国、NGO等の間の効果的な連携の在り方を促進する国際的な調整メカニズム、いわゆるグローバル・ヘルス・ガバナンスの問題について平時から検討を進めておく必要があると考えます。グローバル・ヘルス・ガバナンスの問題に取り組むことは、感染症対策の強化を通じて国際社会の安定に資するものであり、ひいては積極的平和主義推進及び人間安全保障の促進にもつながると考えます。  我が国は、これまでのG7サミット等の場を活用し、国際保健に関する議論を主導してまいりました。二〇〇〇年の九州・沖縄サミットにおいては、初めて議題として感染症対策を取り上げ、二年後の世界エイズ・結核・マラリア対策基金の設立につなげました。また、二〇〇八年の北海道洞爺湖サミットにおいては、途上国の保健システム強化の方針を打ち出したのは御承知のとおりでありまして、来年のG7伊勢志摩サミットの主催国として、我が国はグローバル・ヘルス・ガバナンスの議論において積極的な貢献を行っていく考えでございます。
  21. 武見敬三

    武見敬三君 ありがとうございました。  まさにこうした人間安全保障という概念をきちっと堅固に持っている、そして、それによって未来志向平和主義国際社会共通課題をしっかりと解決していく、そして平和基盤の構築に幅広く日本貢献するという姿勢を示し、そのことが日本という国が平和主義基調とする国であるということを幅広く理解させる基本になるだろうと思います。そして、それによって、逆に地政学的には不利になる日本アジア太平洋の中で、多くの他の国々日本の立場をしっかり応援してくれるということになりますので、是非、平和主義に基づく総合的な平和安保法制推進をしていただくことをお願いして、私の質問を終わります。
  22. 岸宏一

    委員長岸宏一君) 以上で武見敬三君の質疑は終了いたしました。(拍手)     ─────────────
  23. 岸宏一

    委員長岸宏一君) 次に、岡田直樹君の質疑を行います。岡田直樹君。
  24. 岡田直樹

    岡田直樹君 自由民主党の岡田直樹でございます。  この週末、先ほど武見議員から御指摘があったとおり、日本を取り巻く外交安全保障状況を緊迫させる出来事が続きました。そこで、通告内容に加えて、冒頭幾つか御質問をさせていただきたいと思います。  まず、朝鮮半島情勢の緊迫であります。  南北軍事境界線、いわゆる三十八度線の南側の非武装地帯に北朝鮮が地雷を埋めたとされております。北朝鮮側はこれを否定しておりますけれども、その地雷が爆発をして韓国軍兵士が負傷をした。そして、これに対して韓国側が、北朝鮮の独裁体制、特に金正恩を非難する宣伝放送を十一年ぶりに再開をしたということで、これに対してまた北朝鮮側が韓国に砲弾を撃ち込み、韓国もこれに反撃をするということで、北朝鮮、先ほど武見議員から話のあった準戦時状態というものを宣言したわけであります。二十二年ぶりのことと聞いております。  準戦時状態というと、文字どおり受け止めるならば、戦争一歩手前ということだと思います。北朝鮮側はミサイル発射の準備もしたという報道もなされておりますし、その後、北朝鮮側から申し入れて南北の高官同士が話し合っているけれども、地雷を埋めたかどうかについて激しい対立が続いていて、その間にも北朝鮮の潜水艦が多数出動するとか、あるいは砲兵が最前線に展開をするといった情報も伝わっていて、北朝鮮が更なる軍事的な揺さぶりを掛けてくるおそれもあると思っております。  外務大臣から現在把握しておられる新しい情勢について御説明をいただきたいと同時に、北朝鮮側の意図がどこにあるのか、また今回の緊張状態の持つ危険性というものをどのように捉えておられるのか、お伺いをしたいと思います。
  25. 岸田文雄

    国務大臣(岸田文雄君) まず、八月四日ですが、韓国の南北非武装地帯におきまして韓国兵二名が地雷爆発により負傷した事件が発生しました。そして、その後、十日になりますが、韓国政府は本件について、北朝鮮が軍事境界線を不法侵犯し、地雷を意図的に埋設した明白な挑発である旨発表するとともに、北朝鮮に対し謝罪及び責任者の処罰を求めました。そしてさらに、韓国軍は同日から南北非武装地帯における拡声機による政治宣伝放送を十一年ぶりに再開し、これに対し、北朝鮮側はこうした放送を中止すべきと警告を行いました。  こうした中、二十日になりますが、北朝鮮は南北非武装地帯において二度にわたり砲撃を行い、これに対し、韓国側は対応射撃を実施したということでありました。韓国政府は緊急NSC会議を招集し、そして北朝鮮側は、これは委員から御指摘がありましたが、二十二年ぶりに準戦時状態を宣布するという対応を行いました。  そして、その後、二十二日夕刻から板門店におきまして南北の高官が断続的に接触している、こうした動きがあります。そして、この接触につきましては今現在も続いているというのが現状であります。  北朝鮮側の意図について申し上げる立場にはありませんが、我が国としましては、今回の北朝鮮の砲撃等による地域の緊張の高まり、強く懸念しておりますし、北朝鮮は挑発行動を自制すべきであると考えます。今般の南北の接触が緊張の緩和につながることを期待しております。我が国としましては、引き続き情報の収集、分析に当たりながら、米国、韓国等と緊密に連携しつつ対応に万全を期していきたいと考えております。
  26. 岡田直樹

    岡田直樹君 北朝鮮の行動というものが、軍事的な緊張感をぐっと高めておいて、そしてぎりぎりのところで寸止めにする、いわゆる瀬戸際戦術であるという見方もございますし、これが大規模軍事演習にすぎないのではないかという、そういう見方もあるけれども、私は、先ほど大臣が言われたように、やはりこれは極めて懸念すべき事柄であって、緊張状態、決して油断はできないと思うのであります。今回のような軍事的な緊張は今後繰り返し発生し得るし、またエスカレートするおそれもあると思っておりますので、外務あるいは防衛当局におかれては慎重に注視を続けていただきたいと思っております。  私、新聞記者を以前しておりまして、平成九年、十年と北朝鮮に渡って取材をいたしました。これが本当に驚くべき軍事独裁国家であるということを肌で感じた経験を持っております。  当時も代替わりの時代でありまして、前の金正日は、父親の金日成が亡くなったその喪に服すと称して三年間全く姿を現さない謎の指導者として世界に不安を与えていた、そういうことを思い出すわけでありますが、しかし、当時と比べても、今の三代目の金正恩という若い指導者は更に危うさを感じるところが私はございます。次々と自国の要人を処刑をするというような、まさに恐怖政治と言うしかない、力でもって国を抑え付けようとしている、独裁体制を維持しようとしている、こういう北朝鮮の内部を締め付けるために韓国やあるいは日本に対して矛先を向けてくるおそれも否定できないと、そのように考えているものであります。  また、核実験、先ほどもお話がありましたけれども、核実験弾道ミサイルの発射を行うことによって軍事力を誇示し、また北朝鮮の彼らなりの国威を発揚しようとする、そういう可能性もあると思っております。  今回感じたことは、朝鮮戦争は決して終わっていない、休戦をしているにすぎないということでありまして、朝鮮半島有事というものは、これは関係各国がその立場を超えて未然外交的に予防をすべきもの、先ほど外務大臣、自制を求めるというふうにおっしゃいましたけれども、その一方では、万一の場合の暴発に備え安全保障上の対策も、これは日本の国として万全を期しておかねばならないと私は確信をいたしております。  今まさに平和安全法制がこの参議院において審議をされている、そのさなかに生じた今回の朝鮮半島の緊張状態。私は、決して過剰に危機感をあおるものではございません。しかしながら、同時に、決してこれを見過ごすことはできない、このように考えております。  中国のこともしかりでありまして、東シナ海、南シナ海における拡張主義、これが資源獲得の目的以外にも、やはり今の中国経済あるいは国民生活への不安とか不満を外に向けて、対外進出、ナショナリズムに置き換えようと、転嫁しようという意図もあるんじゃないかと思っております。  特に、今回の朝鮮半島問題に対する安倍総理の御所感をお伺いし、また、日本国民及び東アジアの平和を、安全をしっかり守っていくのだという決意を改めてお伺いをしたいと存じます。
  27. 安倍晋三

    内閣総理大臣安倍晋三君) 今回の朝鮮半島の事案につきましては、そもそもは今、岡田委員が御紹介されたように、地雷の爆発、それに対応して韓国側の北朝鮮への放送に対する対応であったわけでありますが、それがまさに、話合いをするとともに、同時に、朝鮮戦争以来の数十隻の潜水艦の港からの離脱ということになっているわけでありまして、どこでどのように変化をしていくかなかなか予測し得ないのがアジア太平洋地域安全保障環境であろうと、こう思うわけであります。  今御議論いただいております平和安全法制は、特定の国を想定している、念頭に置いたものではございませんが、現在の朝鮮半島をめぐる動向、ロシアの動向等々を考えますと、また最近の中国の動向を考えると、安全保障環境がますます厳しさを増しているのは間違いないわけでありまして、そうした戦争を、そして紛争未然に防ぐための平和安全法制であろうと思います。日頃からしっかりと備えをしていくことが私たちには求められている、それが国民の命や幸せな暮らしを守る政治家あるいは政府の責任であろうと、こう思うわけであります。  切れ目のない対応を可能とするこの法制を整備をし、同時に、外交を通じて紛争を事前に防いでいく、当然のことであろうと、このように思います。まさにこの両面においてしっかりと対応を取っていくことが責任ある姿勢ではないかと、このように考えます。
  28. 岡田直樹

    岡田直樹君 ただいま総理のおっしゃったとおり、まず外交的な努力を尽くして未然にそうした緊張状態の芽を摘んでいく、しかしながら、同時に万々が一に備えてしっかりと今の平和安全法制、これを審議し成立をさせていくことが東アジアの安定、ひいては日本国民の安全にとって不可欠のことと私は考える次第でございます。  続いて、ロシアの件でございます。  ロシアのメドベージェフ首相が我が国固有の領土である北方領土の択捉島に立ち入り、その軍事拠点化まで示唆をしてロシアの実効支配を印象付けた、この件は極めて遺憾であります。外務大臣は、早速にロシアの駐日大使を呼んで強く抗議をされ、ロシア訪問の予定もこれは延期をされる方向かと伺っておりますが、これは当然の判断ではなかろうかと思います。  その一方で、北方領土問題、この解決は、関係者の方々が本当に御高齢に達していると、そういうことも考えても、やはり進展を得べく、いかなることが生じても日ロの首脳の間のチャンネルというものは開いておかねばならないのではないか、私はこのように考えております。大変悩ましい問題ではありますが、プーチン大統領とのトップ会談を含めて今後の対ロシア外交の方針というもの、方向性について総理のお考えを伺いたいと存じます。
  29. 安倍晋三

    内閣総理大臣安倍晋三君) この週末にメドベージェフ首相が択捉島を訪問したことは、北方四島に関する日本の立場と相入れず、また日本国民の感情を傷つけるものであり、極めて遺憾であります。そのため、我が国として、直ちに岸田外務大臣よりアファナシエフ大使に対し強く抗議を申し入れました。  同時に、我が国の国益にとって重要なことは、北方領土の帰属問題を解決をし、平和条約を締結することであります。両首脳で一致したとおり、問題の解決に向けて両国間で精力的に交渉を進めていく必要があることに変わりはありません。  今後とも、プーチン大統領との対話を継続しつつ、我が国の国益に資するよう日ロ関係を進める中で、粘り強くロシアとの交渉を続けていく考えであります。
  30. 岡田直樹

    岡田直樹君 日ロの首脳の関係というもの、これは現下のロシアの国際的な行動に鑑みると極めて微妙な問題もはらんでいると、そのように思いますが、これは今総理がおっしゃったように、持続的に粘り強く対話の機会も持つということを探っていただきたいというふうに思うものでございます。  それでは、これまた武見議員も御指摘になったところでありますけれども、安倍総理の戦後七十年談話で積極的平和主義を掲げられた、この点について少し総理の理念や意欲というものをお伺いをしたいと思います。  ちょうど十年ほど前になりますが、私は総理日本国憲法の前文についていろいろ議論をさせていただく機会がありました。総理は、その当時、自民党の幹事長代理というお立場でありました。今の日本国憲法前文の中には、例の「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。」、こういう若干あなた任せのような記述もあると、こういうことも私も申し上げておったわけでありますけれども、その一方で、ここにパネルに抜き出しましたように、(資料提示)「われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めてゐる国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ。」、こういった一国平和主義ではない積極的平和主義を示唆するくだりもあるわけであります。  これは、大戦中のテヘラン宣言でありましたか、その引用であるという説もありますし、英語で書かれた憲法草案を日本語に直した翻訳調の文章であるということも思うわけでありますけれども、これに続く、「われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する。」、こういう部分などは、先ほど総理武見議員の間で議論をされた人間安全保障にも通じるところがあると思います。  この憲法前文の文章の良しあしや成立の経緯は別として、先般の七十年談話に示された、「我が国は、自由、民主主義人権といった基本的価値を揺るぎないものとして堅持し、その価値を共有する国々と手を携えて、「積極的平和主義」の旗を高く掲げ、世界の平和と繁栄にこれまで以上に貢献してまいります。」、この宣言と一脈この憲法前文は通じるところもあるのではないかというふうに私は思っております。将来においてこの憲法の前文が書き改められるようなときがあるとすれば、もっと分かりやすい日本語で積極的平和主義の精神を盛り込みたいと、そんなふうにさえ思っているくだりであります。  総理積極的平和主義への思い、また精力的に続けてこられた地球儀俯瞰外交について、改めてその意欲をお伺いしたいと思います。
  31. 安倍晋三

    内閣総理大臣安倍晋三君) さきの発表いたしました七十年談話におきましては、私たちは何を反省し、その反省の中から何を教訓として今後生かしていくかということを明確にすることに力を入れたところでございます。  二度と戦争の惨禍を繰り返してはならない。戦後、我が国は、この不戦の誓いの下に、自由で民主的な国をつくり上げ、法の支配を重んじ、ひたすら不戦の誓いを堅持してまいりました。そして、アジアや世界の平和と繁栄のために力を尽くしてまいりました。  平和は唱えるだけでは実現しないわけでありまして、憲法の平和主義の理念など守り抜くべき伝統は維持しつつ、積極的平和主義考え方の下、地域や世界の平和と安定の確保により一層積極的に貢献していくことが必要であります。  さきに発表した談話の中でも、自由、民主主義人権といった基本的価値を揺るぎないものとして堅持し、その価値を共有する国々と手を携えて、積極的平和主義の旗を高く掲げ、世界の平和と繁栄にこれまで以上に貢献していくことを表明しているわけであります。これが日本が今後目指すべき日本の姿であります。  総理就任以来、私は五十四か国を訪問し、三百回近い首脳会談を行いました。首脳同士が直接対話することで相互理解は深まり、協力の幅が広がっていくわけであります。まず、外交を通じ平和を守っていく、今後も地球儀を俯瞰するような視点に立って平和外交を積極的に進めていく考えであります。
  32. 岡田直樹

    岡田直樹君 総理のその積極的平和主義に対する思い、そして何よりも外交努力、これが全てに優先をする、そうした上でしっかりとした平和を守る、国民の安全を守るその備えを行っていく、そして日本は決して一国だけでは平和の中にあることはできない、平和を享受することはできない、世界の国々と携えてこの国際社会の安定を守っていかねばならない、この総理の決意を改めてしっかりと受け止めたいと存じます。  冒頭から週末の動きもありましたので外交の話が多くなりましたが、内政、とりわけ経済問題についてもお伺いをしたいと存じます。  アベノミクスを掲げて第二次政権に就いて以来、安倍総理経済面の成果を大きく上げてこられたと思っておりますし、また、この道を更に前進していくことが日本の再生と国民生活の向上につながると確信いたしておりますが、総理御自身、その経済政策を振り返って、御所見をいただきたいと存じます。
  33. 安倍晋三

    内閣総理大臣安倍晋三君) 日本は、十五年以上続いたデフレの中で、賃金も上がらず、税収は減少し、社会保障制度などの基盤への不安が国民を覆っていました。  そこで、二年半前、安倍政権が発足した際、デフレから脱却をし、力強く経済を成長させ、その恩恵を多くの国民が受け取れるようにすると、こうお約束をしたところであります。そして、三本の矢の政策を進めることによって経済の好循環は着実に回り始め、現在ではデフレではないという状況をつくり出すことができたわけでありまして、賃金は十七年ぶりの高水準で、名目GDPは政権交代前から二十八兆円増加をしているわけであります。我が国経済はおよそ四半世紀ぶりの良好な経済状況を達成しつつあり、我が国を覆っていた暗く重い空気を一変させることができたと考えています。  また、これまでできるはずがないと言われてきた多くの改革を次々と断行してまいりました。政権交代以降、六十年間地域独占で守られてきた電力やガスの小売市場の完全自由化、患者の申出を起点として先進的な医療を迅速に患者の皆さんが受けられるようにする新たな制度の導入を実現するための法案を成立させてきました。さらに、六十年ぶりの農協の抜本改革や、多様で柔軟な働き方を進めるための規制改革を実現するための法案を今国会に提出をしています。こうした私たちの改革が実効性を高めていることは、市場にも評価をしていただいていると思います。  さらに、アベノミクスの第二ステージにおいては、生産性の向上のため、企業の大胆な経営判断を後押しをし、イノベーションやそれを支えるIT、人材等への投資を促進していきます。  今後とも、三本の矢の政策を前に進めていくことによって、国民の皆様が本当に景気が良くなったなと、給料が上がったなと、こう実感できるような、そういう経済状況をつくるために全力を傾けてまいります。
  34. 岡田直樹

    岡田直樹君 最近の経済情勢でありますが、第二・四半期のGDPの落ち込み、これは次の四半期には回復をする見込みということで余り心配はいたしておりませんが、甘利大臣から、足下の景気認識とともに、その考えられる対策というものをお伺いをしたいと思います。  それと同時に、一方で、中国経済が不安を抱えていて、そのことが中国の株安からアメリカの株安につながり、そして日本にもそれが飛び火をしてきて東京の株式も下げているという状況でございます。これをどのように認識をしておられるか、そのことを併せて甘利大臣にお伺いをしたいと存じます。
  35. 甘利明

    国務大臣(甘利明君) 二〇一五年の四—六期の実質GDP成長率、これは前期比年率でいいますとマイナスの一・六%であります。結論、七—九はどうなるかといいますと、プラスに回復すること、見通しが大であるというふうに思っております。二四半期連続してプラスを付けて、ここへ来てマイナスが付いたということで市場が注目をしております。  この原因は二つあります。一つは輸出が落ち込んでいるということ、もう一点は消費が堅調ではないということであります。  まず、輸出でありますけれども、中国を中心としたアジアのスマホの需要が一段落しておりまして、これに関係する部品を中心に輸出が落ちているということであります。それから、アメリカは、アメリカ経済自身は好調なのでありますけれども、資源価格が落ちておりまして、それに関連する資本財の輸出が落ち込んでおります。これが大きな原因であります。  それから、消費についてなのでありますけれども、消費について、賃金は、賃上げが十七年ぶりとかボーナスが七年ぶりとか、いい情報があるにもかかわらず消費が湿っているということにつきましては、生鮮食品などの生活必需品の価格が上昇して消費者マインドの持ち直しが緩やかになってしまっていると。  そういう中で、天候不順、雨が非常に多かったということと、この時期は気温が低かったということで、家電周りでいいますとエアコン等が伸びておりません。これはただ、七月から八月にかけての猛暑が取り返すということになろうかというふうに思っておりますけれども。それから、四月から軽自動車税が上がりまして、軽自動車の販売が落ちました。これらがマイナスになった要因として挙げられています。  ただ、企業収益は過去最高水準を続けていますから、これを雇用・所得環境の改善に引き続き循環をさせていくということが非常に重要だというふうに思っております。  最賃も二年連続、十五円、十六円、そして今期は、秋以降であると思いますが、十八円という数字が出ているわけでありまして、底上げも堅調に進んでいくんであろうかというふうに思っております。  それから、中国経済であります。  中国発の世界同時株安ということが言われています。アメリカも大幅に下げ、日本も相当下げ、今日は一時的に一万九千円を割り込んだりしています。これは世界中が注視しているところであります。  中国経済は、投資過多から消費に移行していくという、このハンドリングをうまくやっていってもらわなきゃならないというふうに思っています。  よく言われることでありますけれども、消費が湿っているということと、綱紀粛正、腐敗防止、ぜいたく禁止令というのがなかなか使いづらいということになってしまっているのではないかという指摘もあるわけでありまして、ここは、中国にうまいハンドリングをしてもらいたいというふうに思っておりまして、中国当局も財政、金融におきまして景気に配慮した微調整策を実施するということを発表しております。各種政策効果で中国経済も落ち着いてくるのではないかというふうに思っております。中国経済が弱いとASEAN経済が弱いと。それから、韓国や台湾も中国依存度が高いわけでありますから、これが影響してくるということでありまして、中国経済がしっかりと当局の各種施策によって回復してくることを期待をしております。  日本としては、外的要因に左右されるところが少なくなるように、つまり内需でしっかり支えていく、強い経済をつくっていくということが必要であって、そのためにしっかりした取組をしていきたいと思っております。
  36. 岡田直樹

    岡田直樹君 株の上がり下がり、これは常にあるものでございますので一喜一憂せずに、しかし内需中心の経済をしっかりと進めていただきたいと思います。  今、甘利大臣のお話の中にも、最賃も上がってきた、それから企業経営者の中には景気拡大を予測する向きも多いというお話でございました。しかし、その中で、やはり景気が地方に本格的に波及しているか、あるいは低所得者層の生活、これに対する手当てというもの、これもしっかりしていかなくちゃいけない、そのことについて総理御自身から、やはり地方やそういった所得の低い層に対するそれを重視した経済政策というものをお示しいただければと思います。
  37. 安倍晋三

    内閣総理大臣安倍晋三君) 我々が目指している経済政策は、経済の好循環を回していく、そしてその好循環の地方への波及であります。我が国経済が四半世紀ぶりの良好な経済状況を達成しつつある中、全国各地においても前向きな動きが見られています。  各都道府県において有効求人倍率が大幅に増加をし、二十七年度の地方財政計画における地方税収は、前年度に比べて約二・五兆円、七%増を見込んでおります。特に、法人二税については、最も伸びが大きい島根県、三二・四%増でありますが、を始め、全国で三十三道府県が当初予算において二桁増の収入を見込んでおります。委員の地元の石川県においても、地方税は一一・八%伸びることが見込まれるわけであります。  また、訪日外国人旅行者は二〇一二年から昨年までの二年間で五百万人増え、外国人宿泊者数も一・七倍、消費税免税店数も四倍となるなど、その経済効果は全国に波及しているわけでありまして、そしてまた、誰にでもチャンスがある、そして頑張れば報われるという社会の実現に向けて、世界に冠たる社会保障制度を次世代に引き渡していく責任を果たして、子供たちの誰もが家庭の経済事情に左右されることなく希望する教育を受けられるように取り組んでいます。  雇用環境についても、最低賃金を二年連続で大幅に引き上げ、パートタイム労働者と正社員との均衡待遇を推進してきており、非正規雇用労働者のキャリアアップや処遇改善に向けた取組を今後も進めていくこととしているところでございます。  地方創生元年となる本年は、地方版総合戦略の策定、実施を通じて地方創生の取組をスピードアップさせ、地域で頑張る方々を応援してまいります。あわせて、地方の持続的な発展の観点から、我が国経済、そして雇用の七割を占めるサービス産業の生産性向上に官民を挙げて取り組み、中小・小規模事業者の皆様も後押しをしてまいります。そして、賃上げの流れを来年、再来年と継続させるとともに、力強く経済を成長させ、その恩恵を全国津々浦々にお届けをしていきたいと考えております。
  38. 岡田直樹

    岡田直樹君 結びに、国交大臣にお伺いをいたします。  成長戦略、第三の矢というものはなかなか時間の掛かるものであると思います。そして、その成長戦略に資するような公共投資というものはやはり私は常に持続的に、特に地方を重視した形で必要ではないかと思っております。国交大臣のこの公共投資に関する意欲というものをお伺いを、これは、ちょっと時間が迫ってまいりましたので、簡潔にお願いをいたします。
  39. 太田昭宏

    国務大臣太田昭宏君) 三月に北陸新幹線が開通しまして、例えば石川、金沢におきましても観光客が三倍に増大する、富山におきましても観光のほかに東京の大手企業の本社機能の一部が移転すると。観光という点でも企業進出の促進という点でも、地域経済に大きな影響をもたらしています。  これは、全国いろんなところで道路等が開通するというその前に、既に企業が進出したり工場が出る、こうしたことが今続いているところでありまして、地域においてそこを活性化する、発展させるというときに、中長期にわたり経済を成長させる、いわゆる公共事業とか公共投資というんですが、むしろ社会資本、資本としての社会資本整備というベースをつくり上げるということが極めて大事で、ストック効果だと思います。  そのストック効果というのは、見落とされてきた日本経済のエンジンだと私は思っておりまして、アベノミクスの第二の矢という以上に第三の矢の中に位置付けられるという社会資本整備というものが恒常的に、持続的に行われるということが大事だというふうに思います。  もちろん、防災・減災、老朽化対策、こうしたことについても、これは負のことをゼロに、またプラスに戻すという点でも大きな効果があるというふうに思っておりまして、ストック効果を持つ事業に計画的、重点的に取り組んでまいりたいと、このように思っております。
  40. 岡田直樹

    岡田直樹君 どうもありがとうございました。  時間でありますので、これで終わらせていただきます。
  41. 岸宏一

    委員長岸宏一君) 以上で岡田直樹君の質疑は終了いたしました。(拍手)     ─────────────
  42. 岸宏一

    委員長岸宏一君) 次に、小川敏夫君の質疑を行います。小川敏夫君。
  43. 小川敏夫

    ○小川敏夫君 民主党・新緑風会の小川敏夫です。  これまで度々、安倍総理にはアベノミクスについて破綻するのではないかという観点から質問させていただきましたが、いよいよその兆候がはっきりと現れてまいりました。(資料提示)  直近の勤労者の賃金統計、一番新しい統計調査では、今年の六月、実質で三%下がりました。昨年の六月は三・六%下がっております。これは、三%下がっている水準がそのまま維持されているというのではなくて、昨年三・六%下がった、その下がった水準から今年はまた更に三%下がったと、こういうことになるわけであります。おととしは〇・一%下がりました。  安倍政権が発足してから、今年の六月を見てみますと、実に勤労者の賃金九二・五%になっている、すなわち七・五%程度も実質賃金が下がっておるわけです。国民の過半を占める勤労者の生活が苦しくなっている。この状況について総理はどうお考えですか。
  44. 安倍晋三

    内閣総理大臣安倍晋三君) 政権交代後、三本の矢の政策によってデフレではないという状況を私たちはつくり出すことができました。  GDPでは実質二・二%、名目では五・八%、二十七・六兆円増加をしました。株価は約二倍に上昇し、国民の皆様の年金資産にも四十兆円近い運用益が見込まれておりますし、企業の業況は中小企業を含め改善をし、営業利益は過去最高水準となり、倒産件数は政権交代前に比べて二割減少し、二十四年ぶりに一万件を下回っているわけであります。  雇用においても所得環境についても同様でありまして、有効求人倍率は二十三年ぶりの高水準でありますし、雇用者数は百万人以上増加をし、昨年に続き今年も賃上げ率が二%を超え、十七年ぶりの高水準であります。着実に改善をしている、雇用も所得環境も着実に改善をしていると言ってもいいと思います。  雇用者の所得の合計、総雇用者所得、これは国民みんなの稼ぎでありますが、名目ではこの二年間増加傾向でありまして、実質でも、消費税率引上げの影響を除けば、昨年十二月以降本年五月まで六か月連続でプラスであります。このように、デフレ脱却、経済再生に向けた取組は全体として着実に前進をしていると考えております。  六月についてでありますが、六月はマイナスとなりましたが、これは相対的にボーナスの支給額が大きい三十人以上の事業所において、六月に支給した事業所の割合が前年に比べて低くなったことにより一人当たり平均賃金がマイナスになったことによるものでありまして、仮にこの割合が昨年と同水準だったとすると、名目、実質ともプラス一・七%になると推定されるわけでございまして、今後ともしっかりとこの三本の矢の政策を前に進めていくことによって、国民の皆様に更に実感をしていただけるように努力をしていきたいというふうに思います。
  45. 小川敏夫

    ○小川敏夫君 限られた質問時間ですので、答弁は簡潔にお願いいたします。  七月が昨年と同水準ならというようなことで、七月には回復するというふうに言いましたけれども、昨年と同水準だったらという前提そのものが何の裏付けもない話でして、現実に下がっておるわけですから。かつて総理が使った言葉を言わせてもらえば、出ている結果が全てじゃないかということですよ。都合のいい数字だけをつまみ食いして、そしてあたかもうまくいっているかのように説明する、そういう雰囲気をつくるということ、それについては大変総理はお上手でありますけれども、しかし、現実には勤労者の実質賃金が、平成二十五年五月から今年の六月まで二十六か月間、ただの一度も上がっていないんです。ゼロという月が一か月だけあっただけで。  つまり、勤労者の平均、これは比較的恵まれた方は上がっているかもしれない、しかしそういう上がっている方も含めて平均したら下がっているんだから、恵まれない環境の方は平均以上に下がっているわけで、総理のアベノミクス、私は結局、アベノミクスを始めたときも、ただお金を流すだけ、何の具体性もないただのマジックじゃないかと、アベノマジックじゃないかと、こういうふうに言わせていただきましたけれども、ますますアベノミクスの仮面が剥がれてきたように思います。  貿易収支、GDP、これも毎四半期ごと、総理は、円安になって輸出がどんどん増えるから、どんどん日本は豊かになるよということでしたけれども、総理の政権になってから、第二次政権になってから、四半期ごとにただの一度も貿易黒字はありません。単月では一度だけありました。すなわち、日本は、総理の説明のとおり、貿易、輸出がどんどん増えて黒字になって日本が豊かになるよとは反対の現象になっておるわけであります。  GDPもマイナスになりました。例えば、総理、民主党政権時代は平成二十二年プラス三・五%でした。二十三年は大震災という未曽有の災害がありましたが、それでもプラス〇・四%でありました。アベノミクスではどうでしょう、平成二十六年度、昨年です、マイナス〇・九%です。今年の四—六月、これも〇・四%でマイナスでした。  安倍総理は消費税の影響、消費税の影響ということを言っておられますけれども、その消費税の影響がなくなった数字においてもマイナスになっているんです。これはもうアベノミクスが結局は中身がない経済政策、ただ単にお金を流すだけで日本のこの構造を何も変えていないということだったと思います。  ところで、アベノミクスの象徴的な効果とされております株価であります。  株価について、今日はGPIFの理事長にお越しいただきました。  昨年に国内株式の運用比率を一二%程度から二五%程度に上げるということでありました。その結果、これまでにどの程度株式を購入して、現在のこの国内株式の投資比率はどうなっているんでしょうか。
  46. 三谷隆博

    参考人三谷隆博君) お答えいたします。  私ども、昨年度、平成二十六年度におきましては、国内株式について約三兆九千億円購入しております。比率につきましては、国内株式の比率は今年の三月末現在で二二%でございます。
  47. 小川敏夫

    ○小川敏夫君 三月以降も購入しておるわけですね。この点はどうですか。三月以降も、二五%の比率に高めるために購入しているんじゃないですか。
  48. 三谷隆博

    参考人三谷隆博君) 私どもは年金受給者のために積立金を運用しているわけでありまして、余り短期的な売買の中身をディスクローズいたしますと、これはこれでまた市場にいろんな影響を与えますし、また我々の株式の購入等に対して市場に先回りをされるということもございます。  したがって、今年の四月に入ってからの数字につきましては、ちょっとこの場でのお答えは差し控えさせていただきたいと思っております。
  49. 小川敏夫

    ○小川敏夫君 じゃ、いつ公表するんですか。
  50. 三谷隆博

    参考人三谷隆博君) 株式の比率につきましては、毎四半期ごとに公表させていただいております。  また、年度間の株式の購入額、いわゆるリバランス額でありますが、これにつきましては、年度を終わりましたところで業務概況書という中で公表させていただいております。
  51. 小川敏夫

    ○小川敏夫君 四半期ごとに公表するということでした。  今年の三月時点で二二%になっている。では、六月時点ではどうですか。
  52. 三谷隆博

    参考人三谷隆博君) 四—六月の結果につきましては今準備中でございまして、これができ次第、恐らく間違いなく八月末までには公表できると思っておりますが、現時点ではちょっとお答えは差し控えさせていただきたいと思います。
  53. 小川敏夫

    ○小川敏夫君 日銀においても、ETFという形で国内の株式を購入しています。  現日銀総裁が就任してから、どれだけのETFを購入していますか。
  54. 黒田東彦

    参考人(黒田東彦君) 二〇一三年の四月にいわゆる量的・質的金融緩和を導入いたしまして、その際、ETFの保有残高が年間約一兆円に相当するペースで増加するよう買入れを行ってまいりました。また、昨年、二〇一四年十月の追加緩和以降は年間約三兆円に相当するペースで増加するよう買入れを行っております。  なお、量的・質的金融緩和導入以前にもETFを約一・五兆円保有していたために、ETFの保有残高は二〇一五年七月末現在で約五・六兆円となっております。
  55. 小川敏夫

    ○小川敏夫君 政府の方はいろんな説明されるでしょうけれども、結局、日銀の、株価が上がった、上がった、あるいは維持されていると言っても、こうした公的資金が事実上買い支えている、実際のあるべき姿の株価形成ではない形でこの株価が高い方向に維持されてきたのではないか、このように私は考えております。しかし、総理の答弁は要りません、違うことを言うでしょうから。  ところで、このアベノミクスを始めるとき、だから、平成二十五年の二月にアベノミクスについて質疑をさせていただきました。実は、このアベノミクスの中身、日銀によるこの国債買入れによる金融緩和、これは安倍政権が初めて始めたかのような喧伝をされておりますけれども、実質的には民主党政権が平成二十二年十月から始め、平成二十四年二月からは物価目標一%という数字を掲げて開始したことでございます。それを、安倍政権になって同じことを、ただ単に物価目標二%ということにして、二%を達成しなければ成功しないんだというお話でした。  どうでしょう、しかし二%は達成されておりません。この平成二十五年二月で、安倍総理は二%の目標についてこのように厳しく言っておりますよ。今回は明確に日本銀行に責任として、責任が生じるんですよ、できるだけ早い時期に達成できなければ日本銀行の責任なんです。つまり、物価目標二%を達成できなければ日本銀行の責任なんだということですが、全く達成できていません。総理は、二%目標を達成できない日本銀行の責任についてどうお考えですか。
  56. 安倍晋三

    内閣総理大臣安倍晋三君) 私が申し上げている責任というのは、このときも説明をさせていただいておりますが、日本銀行に説明責任が生じるわけであります。  政府と日本銀行の間において、政府と日本銀行の間において取り交わした約束は、まさに日本銀行が二%という物価安定目標に向けて金融政策を実行していく、そして、政府においては財政再建の努力を進めていく、それを約束を交わしたわけでございます。  その中におきまして、原油価格が暴落をした中においては、暴落した中においては、やっぱり当初の目標を達成できないということについては、これは我々はやむを得ないと、こう考えているわけであります。つまり、原油価格の暴落というのは、これはCPIに大きく影響をするわけでございますが、同時に、経済にはプラスの影響を及ぼすわけでございます。その中においての目標達成が事実上難しくなっているということについては我々は日本銀行側の説明を理解をしていると、こういうことでございます。
  57. 小川敏夫

    ○小川敏夫君 総理は、民主党政権が行っていた一%物価目標の金融緩和は失敗なんだと、二%でなければ駄目なんだと言って始めたわけです。  一%と二%の違いについて、ではもう一度、総理、説明してください。
  58. 安倍晋三

    内閣総理大臣安倍晋三君) まあ一%という、申し訳ないんですけれども、そういうやや弱々しい目標では、市場の、市場の空気を我々は変える……(発言する者あり)
  59. 岸宏一

    委員長岸宏一君) 静粛に。静粛にお願いします。
  60. 安倍晋三

    内閣総理大臣安倍晋三君) そういう、その目標の設置自体では市場の空気を変えることができないというのが我々の考え方でありました。その中で二%という目標を掲げ、そして、その二%に向けて黒田総裁がしっかりとした金融的な手段を表明したことによって市場の空気が大きく変わったのは事実なんですよ。  民主党政権時代の一%の目標というのは何の変化も起こすことができなかったのは事実であります。これは、先ほど小川委員が言われたように、結果が示しているということではないかと思います。(発言する者あり)
  61. 小川敏夫

    ○小川敏夫君 一%の物価目標の金融緩和では駄目だと……
  62. 岸宏一

    委員長岸宏一君) 静粛に願います。
  63. 小川敏夫

    ○小川敏夫君 でも、民主党時代に六十七兆円金融緩和しておるわけです。その後、二%でなければ駄目だと。  まあ、弱々しいというようなお話でしたけれども、どうなんでしょうかね。二%というのが、結局はただ、合理的な理由がない、要するに掛け声だけの、ムードづくりの、まさにマジックだったんじゃないですか。私はアベノマジックとして訴えさせていただきましたけど、結局二%を実現できていなくて、一%も実現できていないと。じゃ、民主党の目標でよかったんじゃないかと、こうなるわけで、結局は安倍総理の御発言は中身がなかったんじゃないかと。  同じときに、総理はプライマリーバランスについて、二十七年に二十二年比半減、三十二年に黒字化すると、この財政問題にも、国の厳しい財政についても気を配っているかのような約束をしました。  二十七年に二十二年比プライマリーバランスを半減すると、このように約束されたことは実現できていませんね。
  64. 甘利明

    国務大臣(甘利明君) 二〇一五年に半減というのは達成できる見込みです。そして、二〇二〇年にPBを黒字化するという目標は今しっかり掲げて、それに向けての道筋をつくっているところです。
  65. 小川敏夫

    ○小川敏夫君 だから、できていないということですね。  このように言っているんですよ。財政の健全化についてプライマリーバランスの黒字化を目指していく、二〇一五年に一〇年比の半減を目指していくと。ですから、それを達成できていないですねと言っておるわけです。
  66. 甘利明

    国務大臣(甘利明君) できる見通しということを申し上げています、まだ終わっていませんから。
  67. 小川敏夫

    ○小川敏夫君 例えば、私、この春に勤労者の賃金のことについて聞きました。四月になれば消費税の影響が消えるから上がるだろうという楽観的な説明を受けて、まだ四月になっていないものですから、じゃ、しようがないねということで質疑を終わったわけですけれども、しかし、蓋を開けてみれば、四月、五月上がるわけじゃなくて、六月になったらどっと下がっていると。ですから、まだ終わっていない話を見通しですと言われても、じゃ、今は終わっていない話だからしようがないことになるから、まあここまでにしておきましょう。  結局、株が、GPIFが百七兆円買ってきた。日銀もなぜか株を買い増ししていると。アベノミクスを成功しているかのように、株価を維持するために公的資金が出動しているんではないかと、このように私は考えて想像しておりますけれども、こうした声について、総理、一言いただけませんか。
  68. 安倍晋三

    内閣総理大臣安倍晋三君) 金融緩和の政策的な手段においては日本銀行が行うわけでありまして、それについて政府がどうこう申し上げる立場にはないわけでありまして、私は、黒田総裁の言わば手腕を全面的に信頼をしているところでございます。
  69. 小川敏夫

    ○小川敏夫君 アベノミクス、経済の話はこれで終わりますけれども、政治の責任は国民の生活を安定させることです、経済的にも。しかし、国民の過半を占める勤労者の実質賃金が、六月を基準にすれば、アベノミクスが始まってから七・五%も下がっているという、この客観的事実。ですから、街角で聞いても、生活は良くなっていないという方が圧倒的に多い。これは政治の失敗以外の何物でもないんだということ、そして、その責任はしっかりと安倍総理にも取っていただきたい、このことを述べて、まずアベノミクスについての質問を終わります。  次に、政府が平和安全法制と呼んでいるこの法案のことです。  いろいろ法案も多いし、問題もたくさんあるので、お尋ねしたいことはたくさんあっておるんですけれども、今日は一つ、やはり一番大きなこの集団的安全保障、存立危機事態……(発言する者あり)失礼しました、集団的自衛権の問題についてお尋ねします。  いわゆる存立危機事態我が国と密接な関係を有する国に武力攻撃が生じて我が国の存立が覆される、こうしたときには存立危機事態として総理は自衛隊に出動命令を発することができる。その出動命令としては、何を目的として、すなわち出動命令を受けた自衛隊はどのような行動を取るのでしょうか。御説明ください。
  70. 中谷元

    国務大臣(中谷元君) 存立危機事態の認定におきましては、新たに新三要件ということで、三要件を満たすものでございまして、その際には、我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃があって、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福の追求の権利が根底から覆される明白な危険があるもの、そして他に手段がなく、そして必要最小限度の場合という場合において、政府として必要かどうかという認定を行うということでございます。
  71. 小川敏夫

    ○小川敏夫君 どういうことをするのかというふうにお尋ねしたので、存立危機事態の要件を聞いたわけではありません。  質問すると一般論の解説から始まるので全然質疑がかみ合わないんですけれども、ですから、法律を指摘しましょう。  武力攻撃事態対処法、この条文を見ました。第三条四項です。存立危機事態においては、武力攻撃を排除しつつ、ですから、密接な国が攻撃を受けた、その受けている攻撃を排除する、これが自衛隊の任務ですね。
  72. 中谷元

    国務大臣(中谷元君) そのとおりでございまして、存立危機武力攻撃事態ということで、存立危機をもたらしている武力攻撃、これを排除するということでございます。
  73. 小川敏夫

    ○小川敏夫君 それで、一つ的を絞って、今度はテーマを絞りますけれども、存立危機事態の際に他国の領域に入るんですか入らないんですか、こういうことについて質問させていただきました。総理は、いや、個別的自衛権のときと全く同じ解釈で、他国の領域には入らないんだよというお話でした。ただ、どうもその説明では説明付かないと思うんですよね。  つまり、図を見てください、個別的自衛権の場合には、この図の右側ですね、ある国が日本を武力攻撃してきた、それを排除するんだから日本はそれを排除すればいいと、必要以上に敵国まで行くことないよということだから、他国に行く必要はないですよという説明はすごくスムーズに分かる。  しかし、今度は集団的自衛権、存立危機事態の場合には、密接関係国に武力の攻撃がなされた、そして日本は密接関係国になされている武力攻撃を排除する、これが任務です。密接関係国になされている武力攻撃を排除するのに、密接関係国の領域に入れなくて排除行動ができるんですか。
  74. 安倍晋三

    内閣総理大臣安倍晋三君) 存立危機事態においては、先ほど中谷大臣が答弁したように、存立危機事態における攻撃を排除するわけでございまして、言わば、例えば隣国が米国を攻撃をする、隣国国内において、例えばAという国と米国が戦闘状態になると。しかし、その後、A国からのミサイルの攻撃を警戒をしている米国の艦船に対するミサイル攻撃があった場合は、我が国ミサイル防衛の一翼を担い得る米国の艦船への攻撃であれば三要件に該当する可能性がございますので、この艦船への攻撃、これは大体恐らく公海上で行われると想定されるわけでありますが、その艦船への攻撃は阻止をするわけであります。  一方、今回はフルに集団的自衛権の行使を認めているわけではございませんので、例えばA国に我が国の自衛隊が行って、米国とともに戦ってA国を攻撃をするということはできないということでございます。
  75. 小川敏夫

    ○小川敏夫君 だって、法律は、密接関係国という他国が武力攻撃を受けている、その受けている武力攻撃を排除するのが自衛隊の任務なんです。日本の国内で武力攻撃が生じているわけじゃないんです。密接関係国に武力の攻撃が生じている、それを排除するんだったら、密接関係国に行かなきゃ排除できないんじゃないですかと私は聞いているわけです。ですから、密接関係国という他国の領域に入って、他国の領域において自衛隊が武力の行使をするんではないですかと聞いているわけです。
  76. 安倍晋三

    内閣総理大臣安倍晋三君) それは、他国の領域に入っていって大規模な空爆を行ったり砲撃を行う、そうした武力行使を目的として自衛隊を派遣する、これは海外派兵に当たることであって、三要件にある必要最小限度の実力行使にとどまるべきこと、これから出ると、これに反するということに明確になるわけであります。
  77. 小川敏夫

    ○小川敏夫君 総理の説明の論点ごまかしのポイントは今の説明でも二つありました。  まず、私は存立危機事態についてお尋ねしているわけです。しかし、まず、総理は一般にという言葉を付けて、存立危機事態とは関わらず自衛隊の海外派兵というものは一般に禁止されているんだと、まさに存立危機事態とかあるいは武力攻撃事態ということを抜きにして、一般に自衛隊が武力をもって海外に戦争しに行くということに話をすり替えて、そういうことは禁止されているから行かないと言って、話のすり替えがある。  それからもう一つ、存立危機事態に当たった場合の武力行使を聞いているのに、存立危機事態に当たる場合がないかのような、何か論理がおかしい論理を言っていらっしゃる。すなわち、存立危機事態に当たって必要最小限度の範囲内で武力の行使をできると書いてあるから、そのできる攻撃について密接関係国の領域に行くんじゃないですかとお尋ねしているわけですけれども、既に必要最小限度という枠はもう当然の前提で議論をしているのに、総理はそこで、いや、必要最小限度の範囲を超えるからとか、やれ空爆がどうのとか、要件をずらして答弁をされている。結局、私の質問には何にも答えていない、あるいは間違った答えをしている。  だって、どう考えたって、武力攻撃が密接関係国に加えられているんですよ。それを排除するのが自衛隊の任務ですよ。排除するためには、密接関係国の中に行かなきゃ排除できないじゃないですか。もちろん、限られた例において、例えば密接関係国にミサイルが飛んでいる、そのミサイルを公海上で撃ち落とす、それもこの集団的自衛権の行使だというんだったら、そういう例はあるかもしれない。でも、そういう例が全てじゃないんで。法律というのは、密接関係国に加えられている武力攻撃を排除するために自衛隊は密接関係国の領域に入るということがむしろ当然のことだと思うんですが、それを総理は違うと言う。法律と全く合わない説明をされているわけですよね。  総理総理は今、アメリカという特定の国を出して説明されました。米国の艦船と言って、船の話をされました。あたかも存立危機事態がそういう事態のことだけを想定しているかのように誤った方向で説明をしようとしている。  では、アメリカではなくて韓国だったらどうするんですか。韓国に隣国が、地上軍がどっと侵入してきた、武力攻撃に入ってきた。もし仮に韓国が密接関係国だったら、入っている、現に起きているこの武力攻撃は地上軍がどっと侵入しているわけですよ、隣国から、それを排除するためには、自衛隊は韓国に行かなきゃしようがないじゃないですか。法律上はそうなりますよね。どうですか、総理
  78. 安倍晋三

    内閣総理大臣安倍晋三君) 法律上はそうなりません。(発言する者あり)  それはですね、それはこれから説明いたしますが、新三要件であります。新三要件をよく見ていただければこれは自明の理でございまして、我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険があること、これを排除し、我が国の存立を全うし、国民を守るために他に適当な手段がないこと、そして必要最小限度の実力行使にとどまるべきことと、こうあるわけでございます。    〔委員長退席、理事岡田広君着席〕  先ほど、私は一般にと言った、一般にということと武力攻撃事態や存立危機事態がまさに別であるかのようにおっしゃったんですが、一般にの中に存立危機事態も武力攻撃事態ももちろん入ります。これも含めた上において、言わば三要件の中に必要最小限度の実力行使にとどまるべきことと、こうあるんですから、これは存立危機事態であろうと武力攻撃事態であろうと同じことでありまして、これは憲法の要請によるわけでありまして、海外に自衛隊を武力行使を目的として派遣する海外派兵はこれを超えていくもの、一般に超えていくものであるから禁止されているということは変わりがないわけであります。  そこで、そこでですね、今回の我々の容認したものは、まさに先ほど中谷大臣が答弁したように、存立危機武力攻撃を、これを排除するわけであります。存立危機武力攻撃を排除するということは、例えば、今、K国という名前を挙げられました。そうすると、AとKの関係において、それはA国の領土の中で行われている、あるいはK国の領土の中で行われているところに自衛隊を派遣するということは、これは今申し上げましたように、一般に禁じられている海外派兵に当たるわけでありますからできない。  さらにはですね、さらには、それはすなわち存立危機武力攻撃ではないと考え得るわけでありまして、それはまさに我が国の存立に関わるかどうかというそのもの、そして国民の生命や自由、幸福追求の権利が根底から覆されるということに関わってくるかどうかということの認定の中においては、今小川さんが挙げられたように、領土に自衛隊を送って、送って、その相手国をせん滅するために攻撃を加える、これは第三要件にももちろん、第三要件を超えていくわけでありますが、第一要件にも当てはまらないと、このように考えるところでございます。(発言する者あり)
  79. 小川敏夫

    ○小川敏夫君 何か、総理の説明で与党の方からよく分かったという声が飛び交いましたけど、全く分かっていないということですよね。  法制局長官、お越しですね。基本的なことをお尋ねしますけれども、個別的自衛権の場合、攻撃を加えている国に、必要最小限度の範囲を超えるから攻撃はしないというのが一般の解釈ですけれども、しかし、これまでの政府の解釈において、攻撃を加えている国がミサイル我が国にどんどん撃ち込んでくるというような場合に、座して死を待つというのが憲法の精神ではないから、そういう場合にはその敵国のミサイル発射基地、これを攻撃することも憲法上許されるんだと、このような解釈でありましたね。
  80. 横畠裕介

    政府特別補佐人横畠裕介君) 御指摘のとおりでございまして、我が国に対する武力攻撃が発生している場合でございますけれども、その場合ですら、我が国の安全を本当に確保しよう、十全に確保しようとするならば、まさにその攻撃国を攻撃する、あるいは他国を通ってくるならばその他国において攻撃するというようなことも、それは、我が国の安全を十全に確保しようとするならば軍事的には合理的あるいは適当という、国際法上は可能ということだったかもしれませんけれども、憲法上の制約というのがございまして、それはまさに、爆撃機が飛んでくるならば飛んできたものを撃ち落とせばいい、しかしながら、弾道弾、ミサイルですけれども、ミサイルが次々に我が国に到達するというようなときには、その発射基地をたたく以外に国民を守る方法が全くないと、そういう極めて例外的な場合に限っては、他国における武力の行使、自衛権の発動ということも排除はされない。  そういう意味で、極めて例外的な場合として、他国における武力の発動ということも否定はされないということをお答えしてきているわけでございます。
  81. 小川敏夫

    ○小川敏夫君 ですから、それは事態に応じ合理的にやると。ですから、非常に我が国に対する危険度が迫っている、そして他に方法がない、もうミサイルが飛んでくるその基地を攻撃しなければならないというような事態であれば、そういう事態に応じて行使できると。まさに事態に応じた対応ができるわけです。憲法上許されているんです。    〔理事岡田広君退席、委員長着席〕  ところで、先ほどの質問に戻りますが、K国ということでありました。総理の説明を聞いていますと、そもそもK国が外国から攻撃を受けて外国軍が侵入しても、日本の存立危機事態に当たることはないという趣旨のお話でした。  もう一度確認します。  総理のお話は、とにかく、私が、韓国に隣国から地上軍が来た場合にどうするんですかと、自衛隊がという話をしたときに、総理の答弁の一番最初は、この存立危機事態は、我が国の存立を覆す、そうした事態があること云々かんぬんということを非常に説明されました。ですから、確認します。韓国でどのような事態が生じても、それは日本の存立の危機事態に当たることはない、すなわち、密接な関係を有する国の中で韓国は除外されている、こういうふうに総理は言いたいんですか。
  82. 安倍晋三

    内閣総理大臣安倍晋三君) 三要件に当たるか当たらないかであります。先ほどの小川委員の想定において、我が国が、我が国に危機が及んでいない中において我々がいきなり自衛隊をその国の領土に派遣するということについては、第一要件に当てはまらないし、またそもそも第三要件の必要最小限度を超えるものであると、このように考えているわけであります。  いずれにいたしましても、三要件の一つに当たらなければこれはできない、どれか一つに当てはまらなければこれはできないわけでございます。そのことで申し上げれば、先ほど来申し上げましたように、法制局長官から答弁をしておりますのも、極めて例外的に、座して死を待つべきではないということで申し上げているわけでありまして、一般には海外派兵は憲法で禁じられているということでございます。
  83. 小川敏夫

    ○小川敏夫君 全く私の質問に答えていないです。  密接関係国、存立危機事態の要件の一つの密接関係国について、アメリカという国が当然入るということでこれまで総理は答弁されています。法律はアメリカ合衆国だけとは書いていません。密接な関係を有する国と書いてあります。  ですから、私は、まず質問の前提として、議論の前提として、韓国は密接関係国から除外されるんですか、法律上排除されるんですか、それとも排除されていないんですかということを聞いているわけです。
  84. 安倍晋三

    内閣総理大臣安倍晋三君) それは排除されておりません。
  85. 小川敏夫

    ○小川敏夫君 排除されていないわけです。  次に聞きます。  では、韓国に何らかの事態が生じた、韓国が他国から武力の攻撃を受けた、地上軍が侵入してきた、攻撃を受けたという場合に、起きた事態は限定しなくてもいいです、韓国が何らかの武力攻撃を受けた事態が生じた場合に、日本の存立危機事態に当たるということはあり得ない話なんですか、あり得ることなんですか、この法律上はどうですか。
  86. 安倍晋三

    内閣総理大臣安倍晋三君) それは、様々な事態において三要件に当てはまるかどうか、それは総合的に常に判断する。これは、韓国であろうとどこであろうと、それを常にそのように判断するというのは、これはもう最初から繰り返し御説明をしてきているとおりでございます。
  87. 小川敏夫

    ○小川敏夫君 ですから、法律は、隣国の韓国において生じた事態が、いかなる事態が生じようとも存立危機事態にはならないということはなっていないので排除していないと。ですから、起こる事態によっては、韓国が密接な関係国であって、そして、起こる事態によっては日本の存立危機事態になるというふうに当たり得る事態があるわけですね。そこまでは、総理、認めていらっしゃる。  では、そうした事態が起きたときに、日本は密接関係国である韓国に自衛隊を派遣することが法律上できるのかできないのかを聞いているわけです。
  88. 安倍晋三

    内閣総理大臣安倍晋三君) これも先ほど来申し上げているように、韓国の領土、領海、領空に自衛隊を派遣をして、武力攻撃を目的として派遣することは、これは必要最小限度を超えるものとして、一般に海外派兵は禁じられているということで御理解をいただきたいと思います。
  89. 小川敏夫

    ○小川敏夫君 何か総理の一般的な気持ちを述べているのか、何か私の質問とは関係ない理屈を述べているのか、全く分かりません。私の質問に答えていません。  この法律においては、いいですか、韓国が密接関係国となり得る、そして韓国において生じた事態が存立危機事態にもなり得る、だから聞いているんです。その場合には、武力攻撃を排除しつつ、韓国において生じている武力攻撃を排除するということが自衛隊の行動なんですよ。そして、その武力の行使は、事態に応じた程度で合理的に必要とされる範囲で行動できる、行使できると言っている。  ですから、この法律においては、韓国において生じた存立危機事態、武力攻撃において生じた存立危機事態において、日本の自衛隊が韓国の領土の、領海内、領空内に入って武力攻撃を排除するということがこの法律上禁止されていますか、それとも法律においては明文で禁止はされていない、法律の解釈としてどちらですか。
  90. 安倍晋三

    内閣総理大臣安倍晋三君) 我々が排除をする武力攻撃は存立危機事態武力攻撃であって、武力攻撃全般を申し上げているわけではないわけでありまして、それはつまり、昨年の閣議決定において集団的自衛権全般を認めたのであれば武力攻撃全般を排除することになるわけでありますが、我々が認めているのは三要件に対応できる、三要件が当てはまる武力攻撃であるということでございます。  それはつまり、また先ほど申し上げましたように、今の御質問にお答えをすれば、繰り返し申し上げておりますように、武力攻撃を目的に自衛隊を海外に派遣する海外派兵は一般に憲法で禁じられている、これは法制局長官も答弁しているとおりであって、憲法に禁じられている行為は当然この法律においてもできないということでございます。(発言する者あり)
  91. 岸宏一

    委員長岸宏一君) 速記を止めて。    〔速記中止
  92. 岸宏一

    委員長岸宏一君) 速記を起こして。  今、総理から答えられるようですから。安倍内閣総理大臣
  93. 安倍晋三

    内閣総理大臣安倍晋三君) 先ほどお答えしたとおりなんですが、この新三要件については、自衛隊法第八十八条二項において、「事態に応じ合理的に必要と判断される限度をこえてはならないものとする。」という規定がございます。  それはそのまま維持をされているわけでございまして、これは個別的自衛権においても言わば旧三要件の必要最小限度を意味しているものでありまして、これは今回の新三要件を意味しているものでありますから、先ほど私が答弁したとおりでございます。
  94. 小川敏夫

    ○小川敏夫君 総理の答弁は、私の質問の趣旨をかわして関係ないことを言っているだけなんですよ。  私は、存立危機事態になる、存立危機事態を招いた武力攻撃を排除する、それができるかどうかを聞いているのに、総理は、存立危機事態を排除することを超えた武力の行使はできないと言っている。存立危機事態を排除する程度を超えたことなんか私は聞いていませんよ。存立危機事態を招いている武力攻撃を排除すると法律に書いてあるから、私は、存立危機事態を招いた武力攻撃を排除するということを聞いているわけです。それなのに、総理は、存立危機事態を招いた武力攻撃とは何か別のことを、存立危機を招いている攻撃以外のこと、例えば敵国を攻撃するとか、そういうことについて答えているので、私の質問には何も答えていません。  それから、国際法の例とかなんとか言いましたけど、法制局長官も言ったじゃないですか、憲法上、その事態に応じて必要であれば、座して死を待つことないから敵国に対して攻撃できると言ったじゃないですか、事態に応じて。  つまり、総理は、先ほど二つのことを、私の質問に対して、存立危機事態を招いた武力攻撃、これが韓国で生じている場合に、その武力攻撃を排除するために我が国の自衛隊は防衛出動として密接な関係国であるその韓国で武力の行使をすることがこの法律上できますよ、できることになっているんだから、私はできますねと聞いておるわけです。  もう一度答えてください。この法律上できるのかできないのか。
  95. 安倍晋三

    内閣総理大臣安倍晋三君) できないということを申し上げます。  第三要件については、自衛隊法第八十八条二項において、「事態に応じ合理的に必要と判断される限度をこえてはならないものとする。」との規定をそのまま維持をしているわけでありまして、先ほど答弁したとおりでございます。  また、事態対処法第三条第三項には、「武力攻撃が発生した場合においてこれを排除するに当たっては、武力の行使は、事態に応じ合理的に必要と判断される限度においてなされなければならない。」と規定されるほか、今般、同条第四項において、「存立危機武力攻撃を排除するに当たっては、武力の行使は、事態に応じ合理的に必要と判断される限度においてなされなければならない。」と、こう書いてあるわけでありまして、武力攻撃一般を言っているのではなくて、「存立危機武力攻撃を排除するに当たっては、」と、これは法律の中で述べているとおりでありまして、ですから、先ほど私が申し上げたとおりでありまして、集団的自衛権全てを認めるのであれば、全てを認めるのであれば、言わば武力攻撃全てを排除するということになるわけでありますが、今回は……(発言する者あり)
  96. 岸宏一

    委員長岸宏一君) 静粛に願います。
  97. 安倍晋三

    内閣総理大臣安倍晋三君) 済みません、少し静粛にしていただけますか、静粛に。静粛にしていただけないと答えられないのですが。よろしいでしょうか。  これはつまり、武力攻撃全般を言っているのではなくて、まさに存立危機武力攻撃というこの法律は立て付けになっているわけでありまして、それを排除することがまさに我々が今回限定した集団的自衛権の行使に当たるわけでございます。そして、先ほども申し上げましたように、個別的自衛権だったとしても、法制局長官が答弁したように、一般には海外派兵は禁じられているわけでありまして、それはこの集団的自衛権に当たりましても同じことであるということでございます。(発言する者あり)
  98. 岸宏一

    委員長岸宏一君) 速記を止めて。    〔速記中止
  99. 岸宏一

    委員長岸宏一君) 速記を起こしてください。
  100. 小川敏夫

    ○小川敏夫君 今度の法律では、密接関係国で韓国は排除されない。そして、存立危機事態、ペルシャ湾で機雷封鎖されて石油が来なければ存立危機事態になるということがあり得るというんだから、朝鮮半島有事の場合には我が国の存立危機事態に当たるということもあり得るでしょう。であれば、武力攻撃を排除すると。で、排除するために合理的に必要とされる範囲で自衛隊は密接関係国に行って武力の行使をできる。まさにそれが今回のこの法律の改正じゃないですか。そして、総理は違うと言って訳の分からない理屈を言うけど、しかし法律にはできないと書いていないんで、要件に当たるんだからできるということですよね。  総理は、集団的自衛権について、まさに法律の内容を具体的、的確に説明しないで、あたかも危険がないような、そして世界のためになるような行動であるかのように言っている。総理がフジテレビで発言されました、アメリカで火事が起きたらその火を消すんだ、公道から火を消すのが例えば集団的自衛権だと。でも、消火活動は武力の行使じゃありません。武力の行使をすれば、相手から武力の行使を受けるんです。消火活動は相手からの攻撃は受けません。集団的自衛権の行使の例ではないものを取り上げて、国民の皆さんに対し、これが集団的自衛権ですと言っている。  しかも、総理は、公道から放水して水をアメリカの中に、アメリカの国に入れているじゃないですか。武器弾薬をアメリカの国の中に撃ち込んでいるということですよ、例えれば。すなわち、総理の説明だって、足がアメリカの範囲には入らないけど、武力の行使はアメリカの国にやるんだということになるじゃないですか、水がアメリカの中に入るんだから。まさに、国民がこの法律を分からないと言っている、分からないと言っているのは、総理が法律の中身を正しく説明しないで、これだけの危険な法律をあたかも安全であるかのような、有益な法律であるかのように間違った説明をしているから国民がよく分からない。  最後に一点。この法案に対して国民が多くの声を上げ、国会周辺でも集会をしている。過剰な警備がされているという声が強い。その点について、公安委員長でもしっかりと対応していただくように述べて、私の質問を終わります。
  101. 岸宏一

    委員長岸宏一君) 以上で小川敏夫君の質疑は終了いたしました。(拍手)     ─────────────
  102. 岸宏一

    委員長岸宏一君) 次に、那谷屋正義君の質疑を行います。那谷屋正義君。
  103. 那谷屋正義

    那谷屋正義君 民主党の那谷屋正義でございます。  小川委員に引き続き質問をしたいと思いますが、時間が限られておりますので、かみ合うように、そして簡潔に答弁の方をお願いをしたいというふうに思います。  ところで、ちょっとこれは通告しておらないんですが、先日、大阪に行きましたら、ある知人が、小学校四年生の娘さんがこの夏絶対に欠かさない番組があると、こういうふうに言っていました。総理、何だと思います。
  104. 安倍晋三

    内閣総理大臣安倍晋三君) 小学四年生時代はもう遠い過去になりましたので、なかなかちょっと思い浮かびません。
  105. 那谷屋正義

    那谷屋正義君 まあ通告なしであれなんですけど、これは実はこのNHKの国会中継なんです。この国会中継になると、もうチャンネルを絶対に動かさないでずっと見ているそうです。そして、残念なことがありまして、質問している人の意味はよく分かる、だけど何だか総理の答弁がよく分からないと、こういうふうに感想を述べているわけであります。  また一方で、ある人が言っていましたけれども、最近、小学生も非常に政治に対して不信、まあ小学生が今までどういうふうな信頼を持っているというか期待を寄せていたかというのはいろいろあると思いますけれども、そうした信頼がもう本当に薄れているというようなことを言われていました。これは大変ゆゆしき問題だというふうに思います。これは、質問する側の方にもあると思いますし、政府側の答弁にもやはり工夫が必要だというふうに思います。  また、衆議院で、あの七月の十五日、委員会であのような形で採決が行われた。その直前の質疑の中で総理は、国民の多くがまだこのことに、この法案についてよく理解できていない、もっともっと丁寧に説明をする必要があると、そういうふうに言われたわけですね、答弁の中で。そのときに強行採決をやるという、この言っていることとやっていることの矛盾、それは、強行採決をしたのは国会側の責任だというふうにおっしゃるのかもしれませんけれども。そうなると、やはり人間である以上、良心の呵責というものを感じなきゃいけないわけでありまして、これが今度参議院に回ってくるときに、やはりもっと説明をしっかりと国民に分かりやすくしようという決意がおありだったというふうに思いますけれども、それについて、総理、どのような工夫を考えられておられますか。
  106. 安倍晋三

    内閣総理大臣安倍晋三君) いただいた質問に対してできる限り正確に端的に答弁に努めるということは当然の前提としつつ、特に国民の皆様に十分御理解をいただいていない点や誤解をされているような点について、工夫を凝らして分かりやすく丁寧な説明を行うよう心掛けていきたいと思っております。  参議院においては、法案の合憲性や安全保障環境の具体的な変化、またあるいは法案の具体的な中身について、良識の府として深い御議論が増えてきていると考えておりますが、こうした質問にしっかりとお答えをしながら、理解が広がるように努力を重ねていきたいと思っております。
  107. 那谷屋正義

    那谷屋正義君 是非そういう質疑のやり取りをさせていただきたいなというふうに思うわけでありますけれども、一つに、私が気になるところ、まずこの間の言葉の使い方、つまり、主語ですとか述語が何か一致しないというような疑問を抱かざるを得ないような部分が幾つかございます。  それで、資料一を御覧いただきたいと思いますが、これは総理米国の議会で「希望の同盟へ」ということで発言をされた中身でありますが、ここに、中略ということで、中段ですけれども、「戦後、初めての大改革です。この夏までに、成就させます。」、それから一番下のところ、「そのために必要な法案の成立を、この夏までに、必ず実現します。」と、このように言われております。  この主語は、英語でいくとウイになっていましたけれども、このウイの主語、この意味はどういうことなんでしょうか。
  108. 安倍晋三

    内閣総理大臣安倍晋三君) このまさに私たちはと、日本としてこの法律を成立をさせていくという意思の表示をしたわけでありますが、政府としてその方向で全力を挙げているという意思の表明をしたところでございます。
  109. 那谷屋正義

    那谷屋正義君 この間の安保特の議論の中で、防衛大臣外務大臣も、法案の審議をお願いすると、こういう立場でずっとそちらの方で頑張っていらっしゃいます。総理は、ここは成就させますと言うと、これは間違いなく主語は私になるわけですよね。つまり、政府がというふうな感じになってしまう。  私たちという言葉を使ってちょっとお茶を濁すような雰囲気がありますけれども、やっぱりこれは国会が、法律を決めるのは国会でありますから、国会での議論を踏まえて国会でそのようにお願いをしていくぐらいの言葉だったらいいんですが、成就させますと言うと、いかにも総理がこれを成立させるんだというように取られる、そういうふうに思うわけですけれども、いかがですか。
  110. 安倍晋三

    内閣総理大臣安倍晋三君) この平和安全法制の整備については、平成二十四年の総選挙以来三回の選挙で公約として掲げ、一貫して訴えてきた課題であります。  さきの総選挙では、昨年の七月一日の閣議決定に基づいて、平和安全法制を速やかに整備することを明確に公約として掲げました。このため、昨年十二月二十四日、総選挙の結果を受けて発足した第三次安倍内閣の組閣に当たっての記者会見において、平和安全法制は通常国会において成立を図る旨申し上げ、国民の皆様に私の決意をお示ししたところでございまして、本年二月の衆議院本会議においても、二度にわたって今国会における成立を図る旨答弁をしているわけでございまして、こうした決意を米国におきましても、改めてこの決意の上に意思を示したところでございます。
  111. 那谷屋正義

    那谷屋正義君 今いみじくも言われたように、国会に諮るということでありまして、成就させるということではないということで、その点を指摘をさせていただきたいというふうに思います。  そうした言葉の問題もありますけれども、この安保法制はいろんな観点から議論がされておりますが、昨今、特に先週辺りから、手続論というか、いわゆる民主主義総理のおかげで崩壊するんじゃないかという、そういう議論があちこちでされるようになっております。例えば、先週でいえば、防衛省内部の資料が、その中身を見ると、この国会の審議をはるかに超えたようなところまで先取りをした形のものが出てきていて、一体この今やっている審議は何なんだというような疑問がありました。  私が今日申し上げたいのは、日米防衛協力のための指針、いわゆる新ガイドラインについてちょっとお尋ねをしたいというふうに思います。  実はこの新ガイドライン、四月の二十七日に両大臣米国でやられたわけでありますけれども、その前に、二〇一三年の十月三日、東京で開催された委員会がございました。その中身ではどのようなことが確認されたのか、言っていただければと思います。
  112. 岸田文雄

    国務大臣(岸田文雄君) 二〇一三年十月の日米2プラス2、日米安全保障協議委員会におきましては、厳しさを増す安全保障環境に効果的に対応できるよう、日米両国がより力強い同盟関係を実現し、地域及び国際社会に対してより大きな責任を果たしていくことで一致をしております。具体的には、まず一つはガイドラインの見直し作業の開始、二つ目として十五分野での安保・防衛協力の拡大、そして三つ目として在日米軍再編のための協力の加速、こういった点で一致をいたしました。  この会合は、本年四月の新たなガイドラインの公表を始めとする日米安全保障、防衛協力強化、そして沖縄の負担軽減を含む在日米軍再編の進展など、日米同盟強化に向けた流れをつくる重要な会議であったと考えております。
  113. 那谷屋正義

    那谷屋正義君 もう少し分かりやすく言っていただけたらと思っていたんですが、ここでは、具体的に言うと、例えば国家安全保障会議の設置が既にここで言われていますね。それから国家安全保障戦略策定の準備、それから集団的自衛権の行使に関する事項を含む安全保障の法的基盤の再検討、防衛予算の増額を含めた防衛大綱の見直しと防衛力強化など、こういったことが既に二〇一三年の十月、二〇一三年の十月ということはNSCもまだ法案化されていない、そういう中で、しかも集団的自衛権の行使に関する事項も既にここで言っているということで、ここ一、二年の国会での議論の経過というのがまさにこれに沿って行われてしまっているなというのは否定できないというふうに思います。  そして、この四月二十七日に行われました2プラス2での新ガイドライン、これはこれまでとどのようなところが違うのかお答えください。
  114. 岸田文雄

    国務大臣(岸田文雄君) 本年四月の新ガイドラインですが、従来の一九九七年に発表された日米ガイドラインの違いといたしましては、まず第一に、このガイドラインの中核的役割であります我が国の平和と安全の確保のために、自衛隊の能力向上や日米間の運用面での協力の進展等を踏まえ、平時から緊急事態まで切れ目のない形で協力をしていく、こういったこととされています。この切れ目のない対応につきまして、より充実したものになっていると考えます。  また、第二としまして、新たな戦略的領域である宇宙やサイバー空間での協力の在り方も新たに記述をしている、こういった違いがあります。  そして、第三点目としまして、日米協力の実効性をより一層高めるために、同盟の調整メカニズムの強化あるいは共同計画の策定、更新に取り組むこと、あるいは装備、技術や、保全を含む情報面でも協力を進める、こういったことが明記をされている、こういった点を違いとして挙げることができるかと考えます。  こうした取組を含めて、日米同盟抑止力、対処力が一層強化されるものになると考えております。
  115. 那谷屋正義

    那谷屋正義君 大きな違いの一つに、この間も様々なところで指摘をされておりますけれども、要するに自衛隊の行動範囲の地理的制約をなくすというところは大きな違いの一つなんだろうというふうに思います。  これって、安保特の中で我が会派の広田委員指摘をしていましたけれども、まさに専守防衛の理念を完全に逸脱すると言わざるを得ないんだろうというふうに思うんでありますが、総理はその答弁で必ず、いささかも変わらないと、このように言われています。いささかもというこの言葉は、私、これまたさっきの言葉遣いじゃありませんけれども、これが本当に適当なのかどうか、ずっと疑問に思っているんですけれども、総理、いかがでしょうか。
  116. 安倍晋三

    内閣総理大臣安倍晋三君) 専守防衛の理念、考え方については、広田議員とのやり取りの中でも申し上げたとおり、いささかも変更がないわけでございます。
  117. 那谷屋正義

    那谷屋正義君 ですから、なぜそう言えるのかということが私の疑問なんですよ。これだけ地理的に制約をなくして、日本の自衛隊、自衛官がどこまででも出かけていけるというふうになったときに、時には先制攻撃なるものも出てくる可能性がある。そのときに、専守防衛の理念を逸脱していること、そういう理念といささかもというふうに言えるのかどうなのかということをお聞きしたいんですけれども。
  118. 中谷元

    国務大臣(中谷元君) 専守防衛というのは、相手から武力攻撃を受けたときに初めて防衛力を行使をすること、また、その態様も自衛のための必要最小限度にとどめる、そして、保持する防衛力も自衛のための必要最小限度のものにするということで、憲法の精神にのっとった受動的な防衛戦略であります。  今回、新三要件で許容されるといたしましたことにつきましては、自衛の措置としての武力の行使に限られておりまして、我が国又は我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生をしたということが前提でありまして、また、他国を防衛するということ自体を目的としたものではないわけでございますので、今般の法案におきましても、これをもって憲法の精神にのっとった受動的な防衛戦略の姿勢である専守防衛、この定義も、そして我が国の防衛の基本であるということには変更がありません。  なお、付言いたしますが、この新ガイドラインにおきましては、日本の行動及び活動は専守防衛等の日本の基本的な方針に従って行われる旨、これが記述、明記をされているということでございます。
  119. 那谷屋正義

    那谷屋正義君 国民の皆さんが今の答弁を聞かれて、そして私の質問を聞かれてどのように判断されるかというふうなことだというふうに、こうなってくると思うわけでありまして、私はやはり、文言なり定義なりあるいは理念がやっぱり若干、精神は、気持ちは分からなくはないんですが、あの文言からいささかもというふうな、いささかも変わらないということに対してはやはりちょっと工夫を加えなければいけないのではないかなというふうに思います。  それから、地理的制約をなくすということによって、これまで日米安保で定められていたいわゆる極東条項というのがございますが、この極東条項は、歴代政権は、フィリピン以北、日本及びその周辺というのが統一見解になっておりましたけれども、これを、このガイドラインが範囲を超えているというふうに思うわけであります。それについていかがでしょうか。
  120. 岸田文雄

    国務大臣(岸田文雄君) 新ガイドラインと日米安全保障条約との関係についてですが、このガイドラインにおいては、これは従来から全く変わっていないのですが、その内容としまして、日米安全保障条約及びその関連取決めの具体的規定に直接根拠を置くものがある一方、それ以外に、グローバルな平和と安全のための協力のように、それらの規定に直接根拠を置かない協力、こういったものを従来から含んできました。一九九七年の、以前の日米ガイドラインにおいてもこれは同じでありました。同じであるからこそ、従来からこのグローバルな協力の例として、日米両国は、二〇一〇年のハイチ地震ですとかソマリア沖あるいはアデン湾での海賊対策における協力等、こういった実績を積み重ねてきたわけです。  そして、このガイドライン自体、一九九七年のガイドライン、そして今年の新ガイドライン、全く今申し上げたように同じ構造の中にありますし、この日米安全保障条約の、そしてその関連取決め等に基づく権利義務関係は変更されない、これにつきましても新ガイドラインの中に明記をされている、こうしたことであります。  この新ガイドラインでの取組、これはあくまでも我が国の主体的判断によりまして、我が国の憲法、そして適用のある法令に従って行われる、こうしたことであり、この点についても明記をされているということでございます。
  121. 那谷屋正義

    那谷屋正義君 だから、分かりにくいんだなというふうに思いますね。  やはり、ガイドラインというのは日米安全保障条約の下にあって、これはある意味行政文書ですから国会の中で直接関われる云々という話ではないんですが、この中身が、日米安保、これまでの安保を、大きくその枠を超えるものであれば、まず安保そのものを改正しなければいけないんじゃないかというふうに思います。  さらに、日本国憲法と照らし合わせても、これは、この法案そのものがもう違憲であるということが多くの皆さんに指摘をされている中にあって、このガイドラインの中身というのはやはり憲法違反だという指摘もあるわけでありますけれども、それにはどのようにお答えをされますか。
  122. 岸田文雄

    国務大臣(岸田文雄君) まず、ガイドラインの中には、先ほど申し上げましたように、日米安全保障条約、そしてそれに関連する法規に基づくものがある、それを根拠に置くものがある一方で、そもそもグローバルな協力等直接こうした規定に根拠を置かないものが含まれている、これは一九九七年のガイドラインにおいても、そして今年の新ガイドラインにおいても全く変わっていないということであります。  そして、憲法との関係で申し上げるならば、今まさにこの憲法との関係も含めて、国会におきまして我が国平和安全法制について御議論をいただいております。国民の命や暮らしを守るためにどうあるべきなのか、こうした御議論をいただき、法律を審議していただいています。  そして、この新ガイドラインの中においても、このガイドラインというものは、我が国の憲法、そして我が国の適用される法令に従って行われる、これもガイドラインの中に明記をしています。国会において御議論をいただいた結果に基づいて新ガイドラインも運用されるものであると認識をしております。
  123. 那谷屋正義

    那谷屋正義君 今審議されている法案が憲法違反であるという多くの指摘がある中でのそのような答弁というのは、やっぱりなかなか国民理解を得られるというか納得できないんじゃないかなと。要するに、今までの憲法解釈を変えられたわけですから、そういう意味では、これまでの憲法の解釈からすれば、ある種やはり憲法違反というふうな指摘はもう非常に分かりやすい論理だというふうに思います。これはそうじゃないんだというその理由がなかなか明確にならないから、国民の皆さんがこの法案を理解できないし、し得ない大きな理由の一つになっているんだろうというふうに思います。  行政文書が憲法に定める条約の内容を私は空洞化するものではないかと。そもそも日本の法体系は、憲法があり、日米安保条約があって、その下にガイドラインがあるにもかかわらず、まるでガイドラインと安保法制が憲法や安保条約の上位にあるかのような、そんな気がいたします。  今回のガイドラインの内容は、先ほど申し上げましたように、日米安保条約を改正しなければならない性格のものでありながら、ガイドラインであれば、それは日米間の行政取決め的な文書なので国会での批准議論を要しないという、ある種こそくな手段を行使しているなというふうに言わざるを得ない、また、国民の声を無視した手法であるというふうに私は指摘をさせていただきたいと思います。  かつて自民党内閣においても、例えば橋本首相は、我が国の防衛については、日本国憲法の下、専守防衛に徹し、他国に脅威を与えるような軍事大国にならないとの基本理念に従い、文民統制を確保し、非核三原則を守るとともにというふうなことを言われているわけでありますが、安倍内閣にも本当にこうした認識があるのか、私、私だけでなくて多くの国民が疑問を持っているということを指摘したいというふうに思います。  それから、このガイドラインの在り方を見ていますと、中身を見ていますと、九条に抵触しないというそういう考え方であるならば私の質問が何だというふうになるのかもしれませんが、例えば憲法九十九条、これは憲法遵守のことが書かれていますね。そして、憲法九十八条には、憲法は国の最高法規であり、その条規に反する法律、命令、詔勅及び国務に関するその他の行為の全部又は一部はその効力を有しないというふうになっているわけでありますけれども、このことに照らし合わせると、やはりこの2プラス2で行われたお二人の言動、行為、あるいは合意内容というのは明らかに法律に触れるのではないかというふうなことを思うわけでありますけれども、いかがでしょうか。
  124. 岸田文雄

    国務大臣(岸田文雄君) まず、今、国会において御議論いただいている平和安全法制につきましては、政府としまして、憲法の基本的な論理の範囲内で我が国国民の命や暮らしを守るために今現状において何が憲法においてどこまで許されるのか、こうした観点から法案を提出させていただき御議論をいただいております。政府としましては、今議論をお願いしているこの平和安全法制、これはあくまでも憲法の範囲内であり合憲であるという認識の下に御議論をお願いしております。  そして、この新ガイドライン自体も、憲法の範囲内において、そして我が国においてその時点で適用される法律の範囲内でこれ運用する、これが明記をされています。  よって、我が国平和安全法制も、政府としましては、憲法の範囲内であり、新ガイドラインの運用も憲法の範囲内であるということから、これは問題がないものであると認識をいたします。
  125. 那谷屋正義

    那谷屋正義君 先ほどの小川委員の質問も、最後の方の質問もそうなんですが、政府の皆さんはこれは憲法の範囲内だというふうに言われるんだけれども、本当にそうなのかということがこの国会の審議の大きなポイントになっているわけでありまして、だとすると、その条文に本当にそのことがしっかりと記載されているのか、そういったことをやはり検討していかなきゃいけないんですが、条文のことはさておいて、こうなんだという皆さんの理解だけを述べられるというのは、やはりこれもまた国民理解が得られない大きな原因だろうというふうに思います。条文に記載されている、このことがやはり大事なわけでありまして、そうでなければ時の政権を持つ者が、後、判断をそれに任せるということになりますから、これはこの間からずっとこれも問題になっている法的安定性というものを考えれば、それではやはり、これだけ大きな法案ですから、国民は安心できないというふうに思うわけであります。  やはり、法的安定性というものを求めるのであれば、どんな内閣になろうと、どんな政府になろうと、その条文の下、それを正確に読んで、その下で施策を打ち出していくことが必要だろうというふうに思いますが、この間の様々なやり取りの中で、条文にはないけれども、例えば一番分かりやすいのは米軍への兵器、弾薬の輸送でありますけれども、これは核兵器もあり得るというか、あり得ると言っちゃうと言い方がこちらも違うのかもしれません、要するに核兵器も運ぶことを否定してはいないという、こういう言い方が正しいというふうに思うんですけれども、除外していないということだというふうに思うんですね、法律上。  だから、やっぱりそういうふうな誤解を招いてはいけないし、あるいは、時の政府によっては、その辺の解釈がまた変わって、いや、これはもう大変厳しい状況だからこれもやらざるを得なかったというふうな判断がなったならば、それはそれで正しいことになるわけでありまして、やはりこの法律にしっかりと明記をするということが私は求められるのであって、そういう意味では、今回の法案はまだまだそういう大事なところが明記をされていない中でどんどんどんどん進められる、そんな気がしてなりません。やはり法律をここで審議しているわけでありますから、その法律の文言の中でどういうふうなことが考えられるのかということをやっぱりこれからもしっかりとやっていっていただきたいというふうに思います。  さて、一方で、新ガイドラインとそれから米国の国防予算についてでありますけれども、米上院本会議は六月の十八日に、二〇一六年会計年度の国防予算に関する政策の大枠を決める国防権限法案を賛成多数で可決をするというふうなことの中で、その中身の中で、非常に日本のそうした防衛予算の膨らみを期待したような中身、あるいはそれに関する記事が様々出ております。これについて、防衛大臣、どのようにお考えでしょうか。
  126. 中谷元

    国務大臣(中谷元君) 新ガイドラインにおきましては、日米間の協議におきましても、いずれの政府にも予算上の措置をとることを義務付けるものではないということ、そして、新ガイドラインの下での米国の国防予算につきましても、これは米国自身が決定するものでありまして、我が国としてはお答えする立場にもございません。  やはり自衛隊と米軍の関係におきましては、この新ガイドラインで示された役割、任務等についての一般的な大枠及び政策的な方向性を踏まえて、各々の判断で必要な協力を行っていくということでございまして、これまでもそうでありましたが、これまでの日米間の権利義務の内容には全く変更がなく、また新ガイドラインにおきましても、引き続き、日本に対する武力攻撃への共同対処行動が日米の安全保障、防衛協力の中核的要素であり、また我が国に対する武力攻撃には、我が国が主体的に対応して米国がこれを支援するという基本的な役割の分担の考え方、これは維持されたわけでございます。
  127. 那谷屋正義

    那谷屋正義君 多くの国民の皆さんが大変心配していることが、この予算の問題であります。  アメリカもこのように日本に期待をしているなる記事が出てきておりまして、その分を日本が肩代わりするんじゃないかというふうなこと、ところが一方で、先ほど来話が出ておりますように、プライマリーバランスの問題をどうするんだというふうなことから考えると、じゃ、仮にアメリカから要請を受ける、これからいろいろと共同に計画を作ったりなんかしていくわけでありますけれども、そのときに、要請を受けた段階で日本が、できません、それは予算が付かないというふうに断ることができるのかどうか、午前中の最後の質問としてお聞きしたいと思います。
  128. 中谷元

    国務大臣(中谷元君) これは基本的に我が国の防衛のための予算でございまして、これまでもそうでしたが、我が国としては主体的に我が国の防衛を行っていくと。これまでも日米の関係におきましては、有事におきましては日米共同対処という前提で考えてきたわけでありまして、この考え方、また役割等、基本的にこれまでのものと変更がないということでございますので、従来どおり、我が国の防衛に関しましては我が国が主体的に判断をして予算を計上するということでございます。
  129. 那谷屋正義

    那谷屋正義君 じゃ、午前中の質問はこれで終わりたいと思います。
  130. 岸宏一

    委員長岸宏一君) 残余の質疑は午後に譲ることといたします。  午後一時に再開することとし、休憩いたします。    午前十一時五十五分休憩      ─────・─────    午後一時開会
  131. 岸宏一

    委員長岸宏一君) ただいまから予算委員会を再開いたします。  予算執行状況に関する調査を議題とし、内政外交の諸問題に関する集中審議を行います。  休憩前に引き続き質疑を行います。那谷屋正義君。
  132. 那谷屋正義

    那谷屋正義君 午前中に引き続いて質問をさせていただきます。よろしくお願いいたします。  午前中の終わりに防衛予算について若干触れさせていただきましたけれども、二〇一三年の十二月、この間、この法案、この今の安保法案が成立すると相当大きな防衛予算が必要なんじゃないかという、そういう質疑のやり取りの中で、一三年の中期防衛力整備計画、いわゆる中期防において毎年〇・八%増の範囲になっているというふうなことで大きなものにはならないという、そういうお答えでありましたけれども、二〇一三年の十二月の中期防衛計画では五年間でどのぐらいの予算を見積もっていらっしゃるのか、お聞かせいただきたいと思います。
  133. 中谷元

    国務大臣(中谷元君) 中期防におきましては、五年間の防衛費の総額を明示をしまして閣議決定をしておりますが、五年間実質平均〇・八%防衛費を伸ばす計画となっております。
  134. 那谷屋正義

    那谷屋正義君 その総額は大体いかほどになるんでしょうか。
  135. 中谷元

    国務大臣(中谷元君) 本計画で実施される各年度の予算編成に伴う防衛費は、総額おおむね二十三兆九千七百億円程度の枠内とするという計画でございます。
  136. 那谷屋正義

    那谷屋正義君 その額の中には、今議論されている安保特の中身も含まれているのでしょうか、いないのでしょうか。
  137. 中谷元

    国務大臣(中谷元君) これは、厳しさを増す安全保障環境を踏まえて、積極的平和主義の理念の下に日米同盟強化するとともに我が国の防衛体制強化するという観点から策定をされておりまして、この時点におきましてはこの新法制の内容に基づくものは含まれていないということでございます。
  138. 那谷屋正義

    那谷屋正義君 手続的に言えばそれは正論だろうというふうに思いますが、しかし、この間、この法案によって当然防衛費が膨らむのではないかという質問に対して、そのことを想定していないこの五年計画であったわけでありまして、このことが仮に成立したとしたときにはまたアメリカからのニーズ等々によって膨らんでいくという可能性があるのかどうか、これもお答えいただけたらと思います。
  139. 中谷元

    国務大臣(中谷元君) 今般の法整備におきましても、国民の命や平和な暮らしを守る、そして国際社会の平和と安全に貢献するという自衛隊の任務には全く変わらないわけでございまして、この法整備によって全く新しい装備が必要になったり、装備の大増強、これが必要になるということはなくて、中期防を見直す必要があると考えておりません。中期防の計画に従って着実な防衛力を整備をしていく考えでございます。
  140. 那谷屋正義

    那谷屋正義君 私は文教科学委員会に所属をしておりますけれども、そこでよく大臣に質問させていただくんですが、やはり今学校の教職員が非常に過酷な状況にあると、このままではやはり教育においても、相当子供たちにとっても悪い影響を及ぼすということの中でいろいろ議論をさせていただいています。  実は、今の自衛隊、自衛官の人たちの置かれている状況というものについて、どんなふうになっているのか。  例えば、隊員個人に支給される被服類についてでありますけれども、大変寒い北海道で訓練をするときに、まずセーターの支給がない、それからコートなんかも自費で購入をするということで、それぞれの自衛官がミリタリーショップでそれぞれ買うわけですけれども、その結果どういうことが起こったかというと、ある人はドイツのコートを着ている、ある人はイギリスのコートを着ているということで、どこの国の自衛隊かよく分からないような、そんなような状況も起こっているということ。  そして、パソコンが、これ十分に、完全に支給されておらずに、いわゆる個人のパソコンを使っていると。そうすると、いわゆる個人情報じゃなくて、個人情報もそうですけれども、様々な大変重要機密になるものもこれ漏れてしまうおそれがあるのではないか。  さらには、無線機が足りずに個人の携帯を使っているというような状況もありますけれども、これは本当でしょうか。
  141. 中谷元

    国務大臣(中谷元君) 自衛官の処遇にしても、また隊務運営等にしても、それぞれ、日々、予算等におきましては検討はいたしておりますけれども、あくまでも、限られた予算でもありますし、任務遂行に必要な予算というのは毎年査定をいたしまして計上いたしておりますので、業務の遂行に支障にならぬ範囲でそれぞれの部隊また隊員は対応いたしているというふうに認識しております。
  142. 那谷屋正義

    那谷屋正義君 もう一度お聞きをいたします。  そういった、私が申し上げたことというのは、三つ例を挙げました。セーターの支給がされていない、コートも自前で買う、それからパソコンの問題、これ結構大事な問題だと思います。それから、無線機が足りない中で携帯を使っている。これ、非常時に携帯なんか使えるかどうか分かりませんよ。  そういうふうな状況になっているということが本当かどうか、お聞きしたいと思います。
  143. 中谷元

    国務大臣(中谷元君) まず第一に、私的なパソコン、私有物、これは持込みを禁止をいたしております。それから、コート類、これは統一をしておりまして、それぞれ私用に、私的に着用する方はそれぞれ私物として持っておられますが、一応統一をいたしまして支給をいたしております。  無線につきましては、携帯等につきましては、これもう秘匿の問題がありますので、訓練をする面においては使用を禁止をいたしておりまして、訓練等に携帯が必要かと聞かれれば、私は必要がないというふうに認識しております。
  144. 那谷屋正義

    那谷屋正義君 認識というよりも、そういう事実になっているかどうかということで、例えばパソコンは、個人のパソコンを持ち込むことは禁止されているということになっていますが、実際にはそうなっていないという指摘もございます。  それから、携帯でありますけれども、要するに無線機が足りない中で、やはり携帯電話で様々なやり取りが行われているという、そういう状況があるというそういう御指摘があるので、それはやはり事実関係を調べなければいけないので、そうなっているのかどうかということをお聞きしたわけでありますけれども、いかがでしょうか。
  145. 中谷元

    国務大臣(中谷元君) 現状につきましては改めて確認をさせていただきますが、基本的に、民間の携帯電話等を使用しますと情報の秘匿等の問題もありまして、これは自衛隊にとりまして好ましいものではございませんので、こういった公務で、携帯で業務をするということは、私は現状行われていないというふうに認識しております。
  146. 那谷屋正義

    那谷屋正義君 大臣の御認識と今の指摘がちょっと、若干違うことがございますので、これ是非調べていただいて、委員長、後刻これを理事会によく調べた上でその事実関係をお知らせいただきたいということを申し述べておきたいと思います。
  147. 岸宏一

    委員長岸宏一君) 後刻理事会において協議いたします。
  148. 那谷屋正義

    那谷屋正義君 その上でですが、今、要するに、日本の国を守る、国民を守るというその大前提は、やはり私は人間だというふうに思っています。その人間に対する様々ないわゆる装備が今のような状況であって本当にいいのかと。つまり、様々な防衛予算の中でも、やはり自衛官の処遇に対する割合が大きいわけでありますけれども、そして、それらの人が本当に存分に活動できるような予算になっているのかということについては、今のような指摘がある中で大変不満というか不安だというふうに思います。  ですから、その上で更にこの法案がかぶさってくるということになると、それで本当に足りているのかなという、そういう心配をするわけでありますけれども、それはいかがでしょうか。
  149. 中谷元

    国務大臣(中谷元君) 処遇とか待遇等につきましては、安心して任務に就くとか、また士気の高揚のために、従来からの要望等もありますので、そういった検討はいたしておりますが、全体の予算の中でできる限りそういったことが実現するように努めてまいりたいというふうに思っております。  今度の任務につきましては、確かに新しい法律に伴うことでございますが、しかし、これは、あくまでも自衛隊の任務としては我が国を守っていくということで全く変わりがありませんので、装備の大増強とか、また全く新しい装備が必要になったりということは今のところ考えておらないわけでございますので、中期防、これを見直す必要があるというふうには考えておりません。
  150. 那谷屋正義

    那谷屋正義君 ちょっと意味がよく分かりませんでしたけれども、ただ、中期防計画の中にこの法案の中身が含まれていないとすると、ただでさえ、そうした予算の充てどころといいますか、不足している部分がある上に、行動範囲が広がり、様々な装備がまた必要になってくるということになると、これ増やさざるを得ない。もし増やさないのであれば、これも御指摘ありましたけれども、日本近海で本来守らなければいけないその防衛力が手薄になるという指摘もあると。このことについて、是非頭の中に入れておいていただかなければいけないのではないかなというふうに思います。  さて、そんな中で、経済財政運営と改革の基本指針、いわゆる二〇一五の骨太方針がこの間発表されました。ここによりますと、これは非常に国民の、高齢者の方は特に、この防衛費が多くなったときに我々の社会保障費、削られないだろうなというような心配をされている方が非常に多くいらっしゃるわけでありますけれども、その社会保障費、この骨太の方針によるとやはり抑えることが記されてございます。  これについて、厚労大臣はどのような見識をお持ちでしょうか。(資料提示)
  151. 塩崎恭久

    国務大臣(塩崎恭久君) 今回の骨太の方針の中で、社会保障につきましては、今先生、御高齢の方々が減らされるんじゃないかという御心配をされているというお話でありますけれども、まず第一に、明確なことは、急速な高齢化が進んでいる中で社会保障関係費は今後ともやはり増加はしていくということであります。  ただ、今回の骨太の方針の中ではこういう表現で、これまで三年間の経済再生や改革の成果と合わせ、社会保障関係費の実質的な増加が高齢化による増加分に相当する伸び、これは先生が書いていただいています一兆五千億ということでありますが、となっていること、そして、経済・物価動向等を踏まえて、その基調を二〇一八年度まで継続していくことを目安として効率化、予防などや制度改革に取り組むということで、複数年度の取組について骨太の中でお示しをしたということでございます。  ただ、伸びを抑制をするということでありますけれども、かつてのような機械的なやり方ではなくて、今回も骨太の中では別なところで、各年度の歳出については一律ではなく柔軟に対応するというふうに書かれておりまして、毎年度の削減額を、抑制額を機械的に定めるようなやり方をかつて一時期やりましたけれども、そういうことはやらないということで、したがって、これからは効率化、予防などで、それから制度改革などで伸びを抑制をするけれども、必要な社会保障予算はしっかりと確保していくというのが基本的な私たちの考え方でございます。
  152. 那谷屋正義

    那谷屋正義君 これもよく分かりません。要するに、毎年一兆円ずつ伸ばさなければならないという話の中で、それを一兆五千億に抑える。つまり、三年間で三兆円の増が必要なわけですけれども、その半分になるということは、単純に割ると、一兆五千億割る三だと単年度で五千億円削減をするんではないかという、そういうふうに取られるんではないかなというふうに思います。かつて、小泉政権のときに年間社会保障費を二千二百億円ずつ減らした中にあって、国民の皆さんがどういう状況になっていたのかということについて思い出していただかなければいけないというふうに思います。  厚労大臣への質問は、ちょっと申し訳ありませんけどここまでにして、さらに教育関係でありますけれども、具体的な数値は今回記されておりませんが、しかし、その前段で、いわゆる財政審の中で、平成三十六年度までに三万七千七百人の自然減プラス四千二百十四人の、いわゆるこれは当然減なんという言葉が出てきましたけれども、これは計画をする、こういうことができるというふうなことが言われていますけれども、文科大臣、これでいいんでしょうか。
  153. 下村博文

    国務大臣(下村博文君) 御指摘のように、子供の数が減るから、それに比例して教員の数を減らせばいいというほど学校現場は単純な状況ではございません。今学校現場を取り巻く課題が非常に複雑化、困難化していると、時代変化に対応した新しい教育に取り組まなければならない状況を十分に踏まえて、教育環境の充実を図ることが重要であると思います。  文科省としては、いじめ対応、それから特別支援教育など、学校が対応しなければならない教育課題は逆に大幅に増加しておりまして、これまで以上にきめ細やかな対応が必要になってきているというふうに思います。また、グローバル化や、あるいは情報化社会に対応する主体的、協働的な学びであるアクティブラーニングを実施するためには、より教員体制も充実をした指導体制が必要だと思います。  こういうことを踏まえまして、教職員定数の戦略的充実が逆に必要だと考えておりまして、このような考えの下で現在、要求内容の最終的な調整を行っているところでございます。
  154. 那谷屋正義

    那谷屋正義君 今文科大臣が言われたことはもっともだというふうに思いますので、これは是非徹底的に最後の最後まで闘っていただきたいというふうに思います。財務省でしょうか、相手は。  そうした厚労そして文科関係のこういう話を受けて、今回の骨太方針と、そのままでいっていいのかというふうな疑問が湧くわけですけれども、財務大臣、どのようにお考えでしょうか。
  155. 麻生太郎

    国務大臣(麻生太郎君) 防衛予算を含めて三つの話が今重なって一つで聞いておられるので、少なくとも我々として見まして、御関心のおありの少子高齢化というのに伴いまして、これはもう高額医療等を含めましていわゆる社会福祉支出が増加する、また少子高齢化に伴いまして子供の絶対量は不足してまいりますので、そういう点でいきますと、行き着く先は、今のような話でこのままずっとたらたら継続していくと、その借金のツケはその少子高齢化の少子の方に全部かぶさってくるということになるということはこれは避けなきゃいかぬと、そう思っておりますので、私どもとしては、骨太の方針二〇一五でお示しをさせていただきましたとおりに、我々としては、この少子高齢化の進展を踏まえまして、計画に合わせて私どもとしては予算の効率化とか政策の効果またその検証等々はきっちりやらせていただいて予算の質の向上を図らせていただく以外にない、そう思っております。
  156. 那谷屋正義

    那谷屋正義君 これについては、また今後もいろいろ委員会の中でもやり取りをさせていただきたいというふうに思います。  いずれにしても、今回の法案の下に防衛予算が大幅に膨らみ、プライマリーバランスを考えた結果、その部分、社会保障費や教育費が減らされるんじゃないかというそういう質問に対して、これからやっぱり政府としてしっかりとお答えをしていただかなければならないというふうに思うわけでありまして、それを指摘したいというふうに思います。  もう時間がいよいよなくなってまいりました。七十年談話について一言だけ言わせていただきます。  パネルにさせていただきましたけれども、この七十年談話、いろいろな評価がございます。私も読ませていただきましたけれども、この部分は大事だなという部分についてちょっと今日お示しをしております。「事変、侵略、戦争。いかなる武力の威嚇や行使も、国際紛争解決する手段としては、もう二度と用いてはならない。植民地支配から永遠に訣別し、すべての民族の自決の権利が尊重される世界にしなければならない。」と、こういうふうになっています。  今、日米同盟強化するというふうなことの中で、米国はまさにこの全ての民族の自決の権利が尊重される世界を描いているのかどうか、総理としてどのような認識をお持ちでしょうか。
  157. 安倍晋三

    内閣総理大臣安倍晋三君) 米国のまさに立国の理念として、自由、民主主義、そして法の支配、信仰の自由ということなんだろうと、こう思うわけでありますが、全ての民族の自決の権利、これは、我々はさきの大戦の反省からこの権利をしっかりと確立をしなければならないと、こう深く決意をしたところでございますが、当然、米国も同じ考え方であろうと思っております。
  158. 那谷屋正義

    那谷屋正義君 二〇〇二年のあのイラクの戦争についてはまだ十分な総括がされていない。しかも、あの攻撃を決断したときに、時の小泉政権は直ちにそれを支援するという、そういうふうな状況になっていましたが、大量化学兵器は見付からなかったという、そういう状況にあります。その総括はやっぱりしっかりしていかなきゃいけないというふうに思います。  いずれにしても、この談話の中身をそのまま受け取るとするならば、今議論をされている安保法案がまさにそれとは真逆の方向にある、そして、これまで総理の言われたこと、思われている、ここで答弁されていることが現実とはどんどん違っている方向にある、このことを強く指摘をさせていただいて、私の質問を終わりたいと思います。
  159. 岸宏一

    委員長岸宏一君) 以上で那谷屋正義君の質疑は終了いたしました。(拍手)     ─────────────
  160. 岸宏一

    委員長岸宏一君) 次に、横山信一君の質疑を行います。横山信一君。
  161. 横山信一

    ○横山信一君 公明党の横山信一でございます。  それでは、早速、七十年談話から質問をさせていただきたいと思います。  総理は、十四日に戦後七十年談話を閣議決定をいたしました。この七十年という大きな節目に当たり、その歩みを振り返り、侵略、植民地支配、心からのおわびというキーワードを使って歴代内閣の談話や歴史認識を引き継ぎ、今後もそれが揺るがないとの立場を示したことは大きな意味があると考えております。侵略、事変、戦争を区別せず、深い反省の上からいかなる武力の行使や威嚇も繰り返してはならないという不戦の誓いを明確にし、今後の平和国家としての歩みを改めて確認したことを評価したいと思います。  この談話についての国際社会での反応は様々に報じられてきたところでありますけれども、総理は各国からどのような評価を得たと感じているのか、また、この談話を発表したことをてこにして、中国や韓国との首脳会談の実現に向けて今後どのように取り組んでいかれるのか、お聞きをいたします。
  162. 安倍晋三

    内閣総理大臣安倍晋三君) 談話につきましては多数の国々から歓迎又は評価するコメントが出されておりまして、米国は、国家安全保障会議報道官のステートメントで、談話を歓迎し、今後も国際的な平和と繁栄に対する貢献を拡大していく日本意思を評価するとともに、七十年にわたる平和、民主主義及び法の支配への日本貢献はあらゆる国々の模範であると称賛をしました。  豪州のアボット首相は、談話を歓迎し、日本国際社会の模範的市民であり、世界の平和と安定への貢献者であり続けてきたと称賛し、今般の談話が他国と日本との友好関係強化に資すると評価をしました。  フィリピンは、大統領府声明で、談話に賛意を示した上で、フィリピンと日本関係の七十年の歴史は、両国民の不断の努力を通じて過去の問題を乗り越え、強い友好関係を築くという目覚ましい成果を上げることができることを世界に示しているとしました。  インドネシア政府は、コメントを発出をしまして、今般の談話に敬意を払い評価するとした上で、地域の全ての国に対し、平和、特にアジアにおける平和の維持に対して貢献するよう呼びかけました。  英国は、ハモンド外相のコメントを発表し、談話を歓迎するとした上で、日本と北東アジアにおける隣人との間の和解への肯定的な貢献と受け止められることを希望すると表明したところでございます。  中国と韓国との今後の関係改善でございますが、中国とは、習近平国家主席との二度にわたる首脳会談を通じ、戦略的互恵関係考え方に基づいて関係を改善していくことで一致をしています。日本中国地域の平和と繁栄に大きな責任を共有しており、今後も様々なレベルで対話を積み重ねながら安定的な友好関係を発展させ、国際社会の期待に応えていきたいと考えています。  九月三日に予定されていた中国主催の式典には私は出席をしないことといたしました。これは国会の状況等を踏まえて判断したものでございます。中国との間では、引き続き、国際会議等の機会を利用し、首脳同士が率直に話し合う機会を設け、関係の更なる発展に向け、共に取り組んでいきたいと考えます。  韓国は戦略的利益を共有する重要な隣国であり、大局的観点から未来志向の日韓関係を構築すべくお互いに努力をしていきたいと思います。  三月には日中韓外相会合が開催され、六月には日韓国交正常化五十周年の節目に東京で日韓外相会談が行われました。この流れを日中韓サミットの開催につなげて、さらには日韓首脳会談につなげていきたいと、このように思います。  中国、韓国とも隣国ゆえに難しい問題がありますが、だからこそ、前提条件を付けずに首脳レベルでも率直に話し合うべきだと、このように考えております。
  163. 横山信一

    ○横山信一君 ありがとうございます。  中国、韓国共に、共に関係改善に向けて歩みを進めていくという点では一致をされているということで、その歩みを一層加速をしていただきたいと。九月三日、様々な状況の中で式典には参加をされないということを今表明をされましたが、それとはまた全く別なこととして、この関係改善に総理の方からも努めていただきたい、一層努めていただきたいというふうに思います。  ところで、ロシアでございますけれども、大変に遺憾なことに、メドベージェフ首相が二十二日に択捉島を訪問いたしました。メドベージェフ首相は、大統領時代を含め、これまでに国後島を二回訪問しております。今回の択捉訪問は三たびの北方領土の訪問ということになります。  言うまでもなく、択捉島は我が国固有の領土であります。日本政府が訪問中止を要請していたにもかかわらず強行されたことは、旧島民の皆様を始め国民感情を傷つけ、大変に遺憾なことと言わざるを得ません。  この件に関して、これまで政府の取ってきた対応と、岸田外務大臣は訪ロを予定しているわけでありますが、今後の日ロ外交をどう進めていくのか、お伺いいたします。
  164. 岸田文雄

    国務大臣(岸田文雄君) 御指摘のように、二十二日、メドベージェフ首相が択捉島を訪問しました。この訪問は、我が国の北方四島に対する立場と相入れず、また我が国国民の感情を傷つけるものであり、極めて遺憾なものであり、まず直ちに我が国として強く抗議を行いました。そして、私自身も、アファナシエフ駐日ロシア大使を招致した上で直接強く抗議をし、日本の立場を伝え、そしてさらに外務大臣談話という形で日本の立場を発出いたしました。  今回の訪問、これは誠に遺憾なことでありますが、重要なことは、この北方四島の帰属の問題を解決して平和条約を結ぶ、このことであります。そういった観点からいいますと、今回のこの訪問は誠に遺憾なことではありますが、ロシアとの政治対話は続けていかなければならない、この問題を解決するための交渉は続けていかなければならない、このように考えております。  是非、こうした観点から引き続き粘り強く問題解決に向けて努力をし、そして根本の問題解決のために努力をしていきたいと考えます。
  165. 横山信一

    ○横山信一君 ロシアとの政治対話を続けなければいけないという外務大臣の発言がございましたけれども、この隣国ロシアとの関係は重要であります。戦後七十年を経ても平和条約を結べないでいるというのは、決して好ましいことではございません。  総理は、プーチン大統領とは六度、首脳会談を重ねておりますけれども、もちろん、国際社会から批判されるようなロシアのウクライナへの介入という、そういうことに対しては総理はG7との協調を重視して毅然とした対応で臨んでおられる、そしてまた人道支援経済支援等、問題解決のために行動しておられるということに関してはポロシェンコ大統領からも謝意を表明されているところであります。  その上で、ウクライナ問題、そしてまた今回の北方領土の首相の訪問といったこともありますが、これはこれとして、これまで積み上げてきた総理とプーチン大統領との対話の継続、これに期待したいわけでありますが、この点について総理の御所見を伺います。
  166. 安倍晋三

    内閣総理大臣安倍晋三君) この週末にメドベージェフ首相が択捉島を訪問したことは、北方四島に関する日本の立場と相入れず、また日本国民の感情を傷つけるものであり、極めて遺憾であります。そのため、我が国として、直ちに岸田外相よりアファナシエフ大使に対し、強く抗議を申し入れました。  同時に、我が国の国益にとって重要なことは、北方領土の帰属問題を解決をし、平和条約を締結をすることであります。両首脳で一致したとおり、問題の解決に向けて両国間で精力的に交渉を進めていく必要があることには変わりはありません。  ウクライナ問題につきましては、我が国は、ウクライナの主権と領土の一体性に対する侵害は看過できないとの原則的立場に立ち、ウクライナ情勢の平和的解決に向けた全ての当事者による停戦合意の履行を促すとともに、ロシアに建設的役割を果たすよう、引き続き働きかけていく考えであります。  今後とも、プーチン大統領との対話を継続しつつ、我が国の国益に資するよう、日ロ関係を進める中で、粘り強くロシアとの交渉を続けていく考えであります。
  167. 横山信一

    ○横山信一君 ロシアということになりますと、どうしても触れておきたいことがございます。それは、ロシア二百海里水域内でのサケ・マス流し網漁業が来年から禁止されることになったということであります。  この措置によりまして、日ロ政府間協議に基づいて出漁してきた我が国の漁船が、来年から流し網の操業ができなくなります。同海域では、日本漁船は海鳥などの混獲の実態については丁寧な報告を続けておりまして、本来、流し網漁業を禁止するような状況にはないというふうに認識をしております。  これまで、総理には、昨年十一月の北京APECでのプーチン大統領への直接的な働きかけを始め、書簡あるいは電話等を通じまして三回にわたって要請をしていただいております。さらには、農林水産大臣外務大臣からもあらゆるチャンネルを通じて働きかけをしてもらいました。しかし、残念なことに、ロシア国内における流し網漁業の禁止の法律が六月に成立をしたという状況でございます。  今後は、漁業対策を始め、流通加工業、あるいは関連産業対策、雇用対策などを進めなければならないわけでございます。このサケ・マス流し網漁業に従事する漁業者の皆さんというのは、二百海里に伴う北洋漁業の縮小など何度も実は危機を乗り越えてきた方たちでございまして、今回も非常に厳しい状況には直面しているわけでありますけれども、乗り越えようとして頑張っているところであります。  国も可能な限り前広な検討を進めるというふうになっておりますので、是非総理からも現地の関係者に励ましのお言葉をいただきたいというふうに思います。
  168. 安倍晋三

    内閣総理大臣安倍晋三君) ロシア水域での流し網漁業を禁止するロシアの法律については、私からもプーチン大統領に対し、我が国のサケ・マス流し網漁業が継続できるよう数次にわたり働きかけを行ったところでありますが、最終的に成立をし、大変残念であります。これにより、来年一月一日からロシア水域におけるサケ・マス流し網漁が禁止されるため、これを重要な漁業の一つとしている北海道の道東地域を中心に地元産業への大きな影響が懸念をされます。  このため、政府としては、七月に佐藤英道農林水産大臣政務官を現地に派遣するなどにより、影響の把握と関係者との意見交換を行ったところであります。また、北海道においては、八月中にも政府への要望を取りまとめる意向であると聞いております。  政府としては、引き続き、現地の状況を十分把握するとともに、関係者の皆様の御意見、御要望にも耳を傾けながら万全の対策を講じていく考えであります。
  169. 横山信一

    ○横山信一君 ありがとうございます。  ロシアで成立した今回の法律には日ロサケ・マス協定の失効が必要という附帯事項が付いているわけでありますが、これが実行されてしまいますと、ロシア二百海里だけでなく、日本二百海里の方も様々な影響を受けてしまいます。これはロシア連邦ではどのような扱いになったのか、外務大臣にお聞きをしたいと思います。  また、あわせて、突然の対応を迫られている現地では、今総理からもおっしゃっていただきましたが、新たな対策を今検討を進めているところでございまして、国に対しての要望をまとめているところでありますけれども、ホタテ漁業の新たな取組、あるいはサケ・マスはえ縄などの代替漁業の模索、そしてまた加工原魚の確保など、様々な検討がなされております。これらに対し国はどのような支援策を講じていくのか、これは農林水産大臣に伺いたいと思います。
  170. 岸田文雄

    国務大臣(岸田文雄君) まず、御指摘の点のロシア国内における取扱いですが、昨年十二月に流し網漁禁止法案が提出された時点においては日ロ間のサケ・マス協定の失効という附帯事項が存在していましたが、成立した法律には付いておりません。また、本年四月二十一日に公表されたロシア政府の公式見解では、同法案の採択はいわゆる日ロサケ・マス協定の破棄にはつながらない、このようにされております。加えて、本法案の共同提出者の一人でありますマトビエンコ連邦院議長も、連邦院での本法案採択の際に、日ロサケ・マス協定は引き続き有効であり破棄されない、こうした発言を行っております。  これまでに日ロ政府間でも同協定は引き続き有効であることを確認しております。よって、同法案の採択に伴って二〇一六年一月一日からロシア水域における流し網漁は禁止されますが、同協定に基づく我が国水域内におけるロシア系サケ・マスの操業については継続されるものであると理解しております。
  171. 林芳正

    国務大臣(林芳正君) 北海道の道東地域を中心に大変な大きな影響が懸念をされるわけでございまして、先ほど総理からも御答弁いただきましたように、佐藤政務官を現地に派遣する、また現地の皆様と私も本省において懇談をさせていただきましたが、今先生からお話がありましたように、北海道で、道の方で対策の要望を取りまとめていらっしゃるということでございますので、これを踏まえて、関係府省と連携して万全の対策を講じてまいりたいと思っております。  今までの意見交換の中では、今おっしゃっていただきましたように、流し網以外のはえ縄等の漁法によるこのサケ・マス漁業の継続、それからほかの漁業へ転換すると、こういう要望が既に出てきておるところでございます。したがって、北海道が取りまとめる要望というものをしっかりと踏まえて万全の対策を講じてまいりたいと思っております。
  172. 横山信一

    ○横山信一君 万全の対策を講じていただけるということで御答弁をいただきましたので、影響を最小限にとどめられるように是非ともお願いをしたいというふうに思います。  さて、安倍政権発足から二年半余りが経過をいたしました。アベノミクス三本の矢によりまして、我が国の企業と国民の間に広がっていた停滞ムードというのが払拭をされ、デフレからの脱却が見えてきたというふうにも感じております。消費税引上げによる一時的な消費の減退はありましたけれども、二〇一〇年を一〇〇とした景気動向指数は六月現在で一一二、それから有効求人倍率は一・一九倍、夏季賞与は過去二十三年間で最高水準になったというふうに報告を聞いております。  この三本の矢の効果、着実に現れてきているというふうに思うわけでありますが、こうした景気を地方へ波及をさせるためにも、機動的な財政政策であります第二の矢を再び放ち、着実に成長戦略への橋渡しをすべきではないかと考えますが、総理所見を伺います。
  173. 安倍晋三

    内閣総理大臣安倍晋三君) 安倍政権では、デフレ脱却を目指し、三本の矢の取組によって経済最優先で政権運営に当たってまいりました。  金融政策については、日本銀行が大胆な金融緩和を推進してきたことにより、固定化したデフレ予想の払拭につながったものと考えます。  一本目の矢のスピードを補い、デフレ脱却の道筋を確かなものとするために、機動的な財政政策を取ってまいりました。  具体的には、例えば、デフレ不況からの脱却を図る中で経済の底割れを回避し成長戦略への橋渡しをするための二十四年度補正予算、そして消費税率の引上げに伴う反動減を緩和し成長軌道へ早期に復帰させるための二十五年度補正予算を編成し、需要の下支えを行ってきたところであります。昨年末には、昨年四月の消費税率引上げの影響もある中、景気の回復に向けた前向きな動きを確かなものとするため、緊急経済対策を策定し、個人消費のてこ入れと地方経済の底上げを図ることとしました。平成二十七年度当初予算と併せ、この緊急経済対策を実行するための二十六年度補正予算を着実に実行します。  三本目の矢である成長戦略についても、これまでできるはずがないと言われてきた多くの改革を次々と断行してきております。  御指摘の第二の矢も含め、今後とも三本の矢の政策を一体として進め、経済の再生を図ってまいりたいと思います。
  174. 横山信一

    ○横山信一君 機動的な財政政策であります第二の矢、この新たな経済対策に期待を持って今後に臨んでまいりたいというふうに思っております。  さて、水道問題について伺います。  二月のときにも、この予算委員会総理に水道の話を伺いまして、総理からも、地方公共団体に対して計画的な整備が行われるよう必要な財政支援をしていくという御答弁をいただきました。その結果、十六年ぶりに当初予算が五十億増えまして、それはそれでよかったんでありますが、ただ、予算総額としては対前年度費〇・八倍ということで、結果的に地方公共団体の要望額の実質七割にとどまってしまいました。  水道は高度経済成長期に整備された管路が老朽化しているということで、この経年劣化がもう全国的な問題になっておりまして、法定耐用年数であります四十年を超過した管路もどんどん増えております。その結果、漏水事故は年間二万七千件にもなっているという実態がございます。  水道管を計画的に更新をした場合の効果というのが試算をされておりまして、老朽管一千百三十八キロを二十年掛けて更新すると事業費は八十五億円掛かると。しかし、これに対して、更新しなかった場合に発生する地震被害あるいは漏水による損失水量などの総額は百六十一億円になるということで、BバイCは一・九というふうに計算をされております。日本は地震国ですから、この数字を見れば耐震化のための管路更新工事はした方がいいに決まっているという、そういう結果になるわけでございます。  ところが、この管路の老朽化が進行する中で、管路総延長に対する更新管路の延長の割合、これが平成二十五年で〇・七九%ということで、この進捗率でいきますと、全部の管路が更新されるのに百三十年掛かるということになるわけでございます。  そこで、この水道管の耐震性の向上ということについて、総理の御所見を伺います。
  175. 安倍晋三

    内閣総理大臣安倍晋三君) 水道は国民生活や産業活動に欠かせないライフラインであり、平常時はもちろん、地震等の災害時においても、生命の維持、消火活動など、まさに命の水として安定的供給を確保する必要があります。  水道施設については、本格的な整備が行われた高度成長期から四十年以上が経過し、老朽化が進んできています。今後、突発的な漏水や地震による破損を未然に防止し、断水などの問題を最小限に抑えるため、計画的に管路の更新を進め、老朽化対策や耐震化を図っていくことが必要であります。  政府としては、水道事業を運営する地方公共団体において地域の実情に応じた柔軟な執行が可能となる耐震化等のための新たな交付金を平成二十六年度補正予算で創設をしたところであります。また、本年六月には、地方公共団体に対する技術的支援として、耐震化計画策定のための指針を厚生労働省において改定し、盛り込むべき視点を明確にしました。あわせて、耐震化や更新の年次計画をより容易に策定できるようソフトウエアを提供しました。  引き続き、必要な財政的支援や技術的助言に努めていく考えであります。
  176. 横山信一

    ○横山信一君 この財政的な支援が非常に肝腎なところでございまして、是非とも、住民生活に危険が及ぶ、水がないと生きていくことはできないわけでございますし、また漏水事故など無駄を省くという点におきましても、計画的な管路更新ができるような財源確保をお願いをしたいと思います。  安全な水の供給の観点からいうと、私も今回初めて分かったんですが、実は鉛管というのがいまだに残っておりまして、これは平成二十年に改定をされました水道ビジョンでは早期にゼロにするというふうに書かれているわけでありますが、現在まだ〇・八五キロ残っているんですね。僅か一キロに満たない管路なんですけれども、これが残っているということ自体が、いかに現状の水道施設整備の事業継続が難しいかということがよく表れているのではないかと私は思っております。  また、管路のことで申し上げますと、昭和四十五年頃までに全国で使用されていた鋳鉄管、これが全国に約四千キロございます。この鋳鉄管は、東日本大震災のときに最も被害率が高かった管路でございます。そういう点で申し上げますと、今後予想されております南海トラフあるいは首都直下地震等を考えますと、早急な管路更新というのが必要だというふうに思うわけでありますが、今後の管路更新の見通しを厚労大臣に伺います。
  177. 塩崎恭久

    国務大臣(塩崎恭久君) 今お触れをいただいたように、東日本大震災の教訓などを踏まえて、将来発生することが予想される大規模災害への対策というのがとても大事だということであり、今お取上げをいただきました鋳鉄管、そして鉛管、こういった耐震性が低い管路の更新は極めて重要だという御指摘は、そのとおりだというふうに思います。  特に、基幹的な管路の耐震化を優先的に実施をする必要がございまして、昨年六月に閣議決定をされました国土強靱化基本計画、これに基づくアクションプランにおいて、基幹的な管路における耐震性が高い管路の割合を、平成二十四年度末の三四%から平成三十五年度末までに五〇%に引き上げるという目標を今掲げているところでございます。  厚労省としては、水道事業者、つまり市町村によります管路の耐震化が計画的に進むように、先ほど総理から御答弁申し上げましたように、本年六月に水道の耐震化計画等策定指針を水道事業者が活用しやすいものに改定をいたしました。さらには、生活基盤施設耐震化等交付金というのが新たに導入をされましたけれども、これを活用した水道施設の耐震化等に対する財政支援などを行うことによって管路の更新及び耐震化を進めてまいりたいというふうに考えているところでございます。
  178. 横山信一

    ○横山信一君 地方は人口減少が進んでおりますので水道の利用料金も減っているわけでございますから、そういう意味では、国からの財政支援がないと、今申し上げたような管路の耐震化等も非常に難しい状況があるわけでございますので、是非とも計画的な更新ができますように財政的な支援をお願いしたいと思います。  さて、来年三月でございますが、北海道新幹線がいよいよ開業します。今、青森県の奥津軽いまべつ駅、そしてまた北海道の木古内駅、新函館北斗駅の駅舎が完成をしまして、現在、H5系と言われる新車両の試運転が進んでおります。  函館開業によります経済効果は北海道全体で百二十億円とも、そういう試算もございます。北海道とのつながりがそれほど密接ではなかった北関東、これは、羽田に遠いとか、あるいは鉄路で行くにしても北海道からはちょっと遠い地域になるわけでありますが、北関東の皆さん、そしてまた南東北の皆さんとの連携がスムーズになるということで、観光やビジネスでの利用客が増加することが予想されております。また、年々増加しているインバウンドも期待をされておりまして、広大な北海道でドライブを楽しむ台湾などの外国人観光客も増えているという状況にございます。こうしたことから、新幹線効果を更に引き出すためには北海道の高規格幹線道路の整備が重要でございます。  今回開業する新函館北斗駅ですが、ここにつながる北海道縦貫自動車道あるいは函館新外環状道路という、こうした高規格幹線道路の整備の充実について国交大臣に伺います。
  179. 太田昭宏

    国務大臣太田昭宏君) 今年三月に北陸新幹線が開通になって大変なインパクトがありましたが、来年三月、いよいよ北海道に新幹線が通じるということになります。  観光の面で、恐らく大宮から新函館北斗ということになりますと三時間四十分で行くということになり、これ大変なインパクトがあるというふうに思います。観光も、非常にきれいなところでありますから、多くの方が行かれるのではないか、また物流もそれに伴って大事なこと、また人の流れも大事なことになるというふうに思います。  まさに函館周辺では、新幹線の駅となる新函館北斗駅周辺で、北海道の競争力の確保や観光交流の促進などの観点から、北海道縦貫自動車道、そして函館新外環状道路、函館・江差自動車道の整備を今進めておりまして、私も視察に行ったところでございます。また、新函館北斗駅におきまして、新幹線から自動車やバスへの乗換えを便利にする駅前広場等も整備をしておりますし、インターチェンジへのアクセス道路の整備なども行っているところでございます。  今後とも、広域の物流、人流を支える高速道路ネットワークの早期実現に向けて、新幹線開業とも併せて大いに進めていきたいと、このように思っております。
  180. 横山信一

    ○横山信一君 この北海道新幹線、実は一つ問題がございます。それは、青函トンネルの共用走行問題でございまして、これどういうことかと申しますと、高速の新幹線車両と速度の遅い貨物列車がトンネル内で擦れ違う、それは危険であるということで、そのシステムをどうこれから構築をしていくかという問題でございます。  実は、この青函トンネルというのは、通過する列車の約六割が貨物列車でございまして、一日上下四十本走っております。これを、平成三十年までに時間帯区分案というのを作り上げようということで、一日一往復の新幹線の高速走行の実現を目指すことにしております。あわせて、擦れ違い時減速システム、あるいは新幹線貨物専用列車導入案と、トレイン・オン・トレインと言われておりますが、こうしたことの見通しを得ることになっております。  しかし、時間帯区分案が実現したとしても、貨物列車の本数は減ることになります。この影響は、道北地域、北海道の北部の地域、それからオホーツク地域への影響が大きいという分析もございまして、この鉄道貨物、これを海運に移行させてはどうかという、そうした提言まで出てきているところでございます。  そこで、大臣は、鉄道貨物輸送の重要性をどのように認識しているのか、そしてまた北海道の物流の大動脈であります鉄道貨物を今後も確保する見込みなのかどうか、お伺いしたいと思います。
  181. 太田昭宏

    国務大臣太田昭宏君) 貨物鉄道は、CO2の削減等のために重要であるとともに、特に北海道の物流という、農産物などを安定的に輸送するために、定期列車だけでも毎日四十本が運行されているという大動脈だと認識をしています。  新幹線は速く走らせたい、しかし物流の貨物というのは極めて大事なことであると、この二つをどう組み合わせながらいくかという大変難しい課題だと思いますが、まず安全でなくてはならない、しかし貨物ということもますますこれから大事になる。こういうことで、どのようにしていくかということで、今お話のありました、平成二十五年三月に、交通政策審議会の整備新幹線小委員会、ここで時間帯区分案を含む三つの案が提示をされて、まとめられたところです。  なかなか前例がなくて、極めて高い技術力が用いられるということもあって、更に技術の検証と実現可能性について慎重に今検討を進めているところでありますが、二つの機能を十分に配慮しながら、どのようにこれが成り立っていくのかということの検討を更に進めていきたいと、このように思っているところです。
  182. 横山信一

    ○横山信一君 国交省がここについて、しっかりやはり見通しを持ってやっていただくということが大事だというふうに思っておりまして、そうしていただくことが今後も物流を確保していくことの重要な意味合いになっていくんだと思いますので、よろしくお願いしたいと思います。  総理にお聞きをしたいと思うんですが、農業のことでございます。  実は、この農業、今輸出を含めてどんどん伸びているところでございますが、農業の成長産業化ということが叫ばれてきたわけでございますけれども、一方で、農業の基盤でございます農業農村基盤整備事業は抑制をされてきました。  この農業の競争力を図るためには、農地の大区画化、汎用化、あるいは水路や農業水利施設の整備というのは欠かせないわけでございまして、この農業農村基盤整備がなくして農業の成長産業化はないと言ってもいいと思うのでありますが、こうした基盤整備事業の重要性をどのように認識しているのか、伺います。
  183. 安倍晋三

    内閣総理大臣安倍晋三君) 我が国の農業の成長産業化を進めるためには、担い手への農地集積、集約化などの農業の構造改革を進めるとともに、付加価値の高い農産物を生産して輸出するなどの取組によって農業所得の向上を図ることが重要であります。特に、基盤整備が進んだ地域においては、農地の大区画化を契機とした農業生産法人の設立と経営規模の拡大、排水改良を契機とした高収益作物への転換と海外への輸出等の取組が見られるところであります。  このように、農業の成長産業化を進める上で、農地の大区画化、汎用化や農業水利施設の整備等が重要であり、引き続き必要な農業の基盤整備を進めてまいりたいと思います。
  184. 横山信一

    ○横山信一君 力強い御答弁いただきました。  以上で終わらせていただきます。
  185. 岸宏一

    委員長岸宏一君) 以上で横山信一君の質疑は終了いたしました。(拍手)     ─────────────
  186. 岸宏一

    委員長岸宏一君) 次に、儀間光男君の質疑を行います。儀間光男君。
  187. 儀間光男

    儀間光男君 維新の党の儀間光男でございます。  本日は、本予算委員会安倍総理を始め関係大臣に対して質問をする機会をいただきました。委員長を始め各委員の皆様方に感謝を申し上げます。  さて、質問をさせていただきますが、その前に、去る八月十五日の終戦記念日の前日の十四日、戦後七十年に当たり、総理大臣談話が発表されました。これについて、少しく触れさせてください。  三千文字を超えるという実に熱い思いのこもった談話であったと思います。我が国は民主国家であることから、国民の自由な発想、意見等々、様々な評価が出るのは、これは当然なことであります。人生観や歴史観、はたまたいろんな違いがあって批評が出るのは至極当然といたします。そんな中でも、私も国民の一人として、また政治の衝にある者の一人として、その談話を読み、聞かせていただきましたけれども、その中から一つお話し申し上げたいと思います。  思えば、安倍政権は発足当時において、戦後レジームからの脱却をうたっておりました。そのことを想起すると筋が一本通っていたなと、正直そういう思いがいたします。それは次のくだりでありました。私たちの子や孫、そしてその先の世代の子供たちに、謝罪を続ける宿命を背負わせてはならないというくだりでありました。まず、これを一つ取ってみて全体を批評するということはできませんけれども、少なくとも、総理の戦後レジームからの脱却の一つとして伝わってくるものを感じました。  戦後、東西ドイツが存在したときに、西ドイツの大統領で、統一ドイツの初代大統領でありましたワイツゼッカー氏が、戦後四十年を期して、荒野の四十年という演説ありました。その中で、極めて象徴的なくだりが聞く人々を感動させました。もちろん私もそのうちの一人でございました。その中にこうありました。過去に目を閉ざす者は、結局のところ、現在にも盲目となる。また、別の項ではこう言っていました。政治の要諦は自民族の利益を代表することである、ただし、それは道徳と倫理の上に立ってのことであるというふうに規定をされました。その言葉を思い出し、さきに総理の談話の中に申し上げましたような、私たちの子供、孫、そして次世代云々は、政治的に、あるいは個人的なプロパガンダに陥らず、バランスの取れた談話であったと評価をさせていただきたいと思います。  思うに、今生の日本国内外で、さきの戦争の責任を問われる国民は一人として存在しないという理解です。我が国国民は既に戦後生まれが八〇%余を占めていて、今申し上げましたように、戦後生まれにその責任を問うことはできません。ただ、責任は問われることはないと思うものの、次世代に、戦争があったこと、これはむごかったこと、こういうことを伝えていかなきゃならない、今に生きる私たちの義務と責任があると思います。そういう点で総理と共鳴するところでありました。  以上、談話について感想を述べさせていただきました。  さて、質問に入りますが、今回四項目にわたっての質問を通告をさせていただきました。四項目ともできるかどうかは怪しくなっておりますが、どうぞ、できない部分がありましたら、次の平安特など、あるいは次の機会に回したいと思いますから、御了解をいただきたいと思います。  ちょうど八月で、今は来年度概算要求のさなかでありますから、それについて、沖縄振興予算の概算要求についてお話を申し上げたいと思います。(資料提示)  パネルを御覧ください。また、委員の皆様には手元に資料を届けさせていただいております。  平成二十八年度の概算要求でございますが、沖縄北方担当大臣の山口大臣に先に確認をさせていただきます。  この概算要求のシーリングを見ますというと、こういうふうに方程式が作られていました。概算要求の裁量的経費は対前年度一〇%減とし九〇%に抑えて、更に要望基礎額として三〇%を乗せて最高限度額とするというふうな方程式に見えますが、そのとおりの理解でいいんでしょうか。
  188. 山口俊一

    国務大臣(山口俊一君) 今先生御指摘いただいたとおりでございます。  ただ、それぞれ、例えば沖縄振興資金に関してそれが適用されるというのではなくして、内閣府全体としてそういうふうな格好で概算要求をさせていただくというふうなことになろうかと思います。
  189. 儀間光男

    儀間光男君 つまり、ここで少し額で示してみたいと思うんですが、沖縄県の対前年度は、見ますというと、総額で三千三百四十億、裁量的経費で三千二百四十億強でありました。これは一〇%引くと二千九百億強になります。それに三〇%を上乗せいたしますというと三千八百億円程度に数字が示されますけれど、それはそのとおりいくと対前年度で一七%増の概算要求になります。額は端数があったりして確実ではございませんが、おおむねそういう認識でよいのでしょうか。
  190. 山口俊一

    国務大臣(山口俊一君) 先ほども申し上げましたが、内閣府として実は今概算要求の最終的な調整を行っておりまして、その中の一つが沖縄振興資金ということで、実はつい先般、八月の七日だったと思いますが、沖縄県の方からも御要望を賜りました。そこら辺の御要望を受けて、しっかりと御要望に応えるだけの額は取りたいというふうなことで今調整中でございます。
  191. 儀間光男

    儀間光男君 説明はよく分かりましたが、確認をします。  限度額いっぱいいっぱい、つまり三千八百億を要求するというふうに理解していいんですね。
  192. 山口俊一

    国務大臣(山口俊一君) これは、もう先生いろいろお分かりの上でお聞きなんだろうと思うのですが、各府省、各省庁、必ずしも限度額いっぱいの要求というふうなことにはなっておらないというふうなこともあります。  同時に、内閣府としては、できるだけそういう格好で出そうということで今調整をしておりますが、その中の一つが沖縄振興関係予算というふうなことになるわけで、トータルとしてどういうふうになっていくか。ただ、県の方からの強い要望もいただいておりますし、先生の御指摘もございます。できるだけしっかりした概算要求ができるように努力をしてまいりたいと思っております。
  193. 儀間光男

    儀間光男君 ありがとうございます。  しっかり要求するというふうに聞こえましたから、そのとおり期待をしたいと思います。  さて、次に移らせていただきますが、沖縄関係予算が他県より突出しているのかどうか、これについて少しお尋ねをさせていただきますが、手元に資料が行っていると思います。パネルを御覧ください。二〇一三年度決算ベースでの国庫支出金、地方交付税、都道府県あるいは市町村合計額の比較をここで出してみました。  一番上の赤い四角の中でございますが、国庫支出金プラス地方交付税、これ沖縄県で七千三百三十億円、全国で十四位でございます。人口一人当たりへ直してみますというと一人当たり五十一万八千円、これは全国六位に当たっています。  次の青い四角を御覧ください。国庫支出金三千七百三十七億円、これは全国で十一位に当たります。一人当たりで見ますと二十六万四千円、これは全国一位であります。後で説明をしたいと思います。  グリーンの四角を見てください。地方交付税三千五百九十三億円、これは全国十五位であります。一人当たりを見ますというと二十五万四千円、これは全国第十七位であります。  この青い四角の中の一人当たり二十六万四千円、全国一位は、御承知のとおりでありますが、戦後二十七年間、沖縄に対する公共投資は一円もございませんでした。昭和四十七年の復帰を境にして、四十数年の間に沖縄に相当集中的に予算が投下されました。人口も少ないということもあるんですが、その膨らみがここに一位としてランクされているふうに分析をいたしております。これはあとしばらく続くんであろうと、こういうふうに思います。生活インフラ等の整備がまだまだですし、あるいは返還軍用地跡の公共投資もこれからであることから思うと、しばらくこの状態が続くと思いますが、決して突出しているとは私どもは思っておりませんが、大臣、いかがでしょうか。
  194. 山口俊一

    国務大臣(山口俊一君) ただいまの先生御指摘をいただきましたように、沖縄県に対する一人頭の国庫支出金、そして地方交付税の合計額、これは二十五年度決算ベースでありますが全国第六位、これもお話ありましたが、国庫支出金は全国一位、そして交付税は十七位というふうなことでございます。  ただ、政府としても、やはり特措法等々に基づいて、あるいは骨太にも書かせていただいておりますが、やはりこれまでの様々な経緯といいますか、沖縄の抱える諸問題、とりわけ歴史的な問題やらあるいは社会的な問題やら、あるいはまた地理的な問題等々、しっかり支援をするというふうなことでございます。  政府としても、しっかりとした支援をさせていただいておるというふうなことでありますが、今も先生お話がありましたが、しばしばお話に出るのが地方交付税なんですね。これはもう御案内と思うんですが、これは団体間の財源の不均衡の調整とか、あるいは一定の行政水準を保つためにしっかり財源を保障するというふうなことでありますから、例えば県税収入の動向によっても変わります。あるいは、面積、これによっても変わります。さらには、人口、とりわけ若年人口とか高齢化比率ということも交付税の算定基準に入っております。  そういったことで、地方の方からは自主的な財源というふうな御評価もいただいておる中で、余り国庫支出金、地方交付税も合わせてというのは、これを比較するというのは必ずしも適切ではないんではないかというふうに思っておりますが、特に沖縄につきましては、とりわけ県が自主的な選択に基づいて事業が実施をできる、これはもう他県にも例のない沖縄独自の一括交付金制度ですね、これもやらせていただいておりますし、あるいはこの一括交付金事業とかその他の公共事業の補助事業、これは他に例を見ない高補助率で実は実施をされておるわけでございまして、もう御案内だと思いますけれども、例えば河川改修であれば十分の九であるとか、そういった中で、しっかり我々としては国として責任を持って沖縄の振興を図っていくというふうなことを努めておるつもりでございまして、今後とも総合的、積極的に推進をしてまいりたいと考えております。
  195. 儀間光男

    儀間光男君 ありがとうございます。  今おっしゃったとおりでありまして、そのひずみは全て戦後の二十七年間のひずみなんですね。だから、特措法を作ったり一括交付金で優遇をしたりして何とか他の地域に追い付かそうという配慮だと思いますし、そういう意味では感謝の念でいっぱいであります。  これはなぜ持ち出したかというと、平成二十六年八月、ちょうど今頃ですが、概算要求の、去年の要求の頃に、内閣府の現役の副大臣、名はそう言いたくはございませんが、後藤田正純先生が、沖縄県は予算が取りやすくて羨ましいという発言があったんです。果たしてそうなんだろうか。政府を構成する副大臣のポストでそういう発言をされると、沖縄県全体が誤解されてしまう、国民の知見から外れていってしまうということがあって、わざわざそれをつまびらかにしようということで取り上げてきましたが、御理解をいただいて、これまでどおりお願いをいたして、次に移りたいと思います。  総理、お疲れのようですから、最初に菅官房長官に先にお尋ねをしたいんですが、後で総理にまた、振り返っていきたいと思います。  辺野古の移設工事、一時中断して今集中審議が行われているんですが、この件に関しては、私ども、我が党は、昨年の県知事選挙、これにおいて民意が示されたというふうに思っています。現知事が五一%余り取って、他の候補が四八%ちょっとだということからすると、民意が示されたということで支持をしておりますけれども。  この状況の中で、政府と沖縄県がなかなか胸襟を開いての話合いができていなかったように思うんですね。その中で、去った四月に我が党の沖縄県総支部党大会の折に、時の代表でありました江田憲司代表がおいでになって知事と会っていろんな話をする中で、ぶら下がりの記者会見でこういう発言をしました。政府と県は、今の状態から、工事を一時中止するなりして、静かな環境の中で向き合って、胸襟を開いて議論をすべきであるということを述べた経緯があります。  その経緯を私ども大事にするのでありますが、今回の政府の判断でもって、一時的にせよ、八月十日から九月九日まで一か月間を中止をしたということは、一つ前進はしたのかな、声は聞こえたのかなというふうには思うんでありますが、官房長官、長官いみじくもおっしゃっておりました、県と政府が、地方と国が角を突き合わせていつまでも打開の道が開けないことは余りよろしくない、したがって、一か月間を置いて集中的に五ないし六回を審議していきたいと。  こういうふうなことがありましたが、なぜ一か月間だったのか、その背景をお答えください。
  196. 菅義偉

    国務大臣(菅義偉君) 今、儀間委員から御指摘がありましたけれども、まさに普天間飛行場を辺野古に移設するという、このことについて、政府と沖縄県とは、翁長知事が誕生してから、言われましたように、角を突き合わすような状況でありました。  そういう中にあって、この四月に翁長知事と会談をし、対話を進めていくという、そういう道筋が開かれたわけでありますけれども、そうした中で沖縄県では、七月の中旬に、第三者委員会の報告書を受けて埋立承認を取り消す、その検討をしているという報道がありました。また、辺野古の立入禁止区域、この臨時制限の地域の中で潜水調査を米軍に要請している、こういう動きもありました。  そういう中にあって、政府としては沖縄県に対して、辺野古沖での工事を一か月間中断をして、また立入調査、これを行うことができるように米軍との間に調整をして、その間に約一か月間集中的に協議を行いたい、このように実は申し入れたわけであります。  冷却期間を置いて、落ち着いた雰囲気の中で普天間飛行場の危険除去と辺野古移設に関する政府の考え方、また、沖縄の負担軽減を目に見える形で実現するようにという総理の命の下に私どもが取り組んでいる姿勢、こうしたものを改めて丁寧に説明をさせていただきたい。そしてまた、この問題の原点というのは、世界で一番危険と言われたあの普天間飛行場であります。その危険除去について県知事としてどのような考え方をお持ちなのか、こうしたことも含めて議論をさせていただきたい。そういう思いの中で、一か月間、現在の工事を中断をさせていただくということを提言をしたということであります。
  197. 儀間光男

    儀間光男君 今、背景あるいは配慮よく分かりましたけれど、果たしてこんな難しい話が一か月の間で、五、六回の集中審議で、協議で出口が見付かるとは全然思えないんですが。  言わせていただくならば、回数にこだわらず、回数にこだわらずですよ、是非とも忌憚のない意見をぶつけ合いながら、この集中期間の間に、あるいはそれを多少延長してでも解決の糸口を見付けてほしいと、こう願うのが私たち沖縄県民であり、また国民だと思っております。  そこで、今申し上げましたが、どう見たって一か月の間では出口の見えるような議論ができるようには思えないんですね。見付からない場合、更に集中協議を続けていくのか、今後の予定などをお聞かせいただければ有り難いと思います。
  198. 菅義偉

    国務大臣(菅義偉君) 私も、就任以来、知事と会談をする中で、沖縄県側の辺野古移設反対という立場、そして政府とすれば、前の仲井眞知事によって行政判断というものは既に下されている、行政の継続性という考え方の中にあって、丁寧に、自然環境あるいは住環境、そうしたものを説明をしながら進めさせていただく、そこの間にはかなりの距離があるということも事実であります。  そして、知事は、その原点というのは、戦後強制接収されたんだ、そこが出発点だということでありました。私ども政府側は、十九年前に、橋本当時の総理とモンデール米国大使の間で、あの普天間の危険除去とその閉鎖、その話合いによって合意をされて、その三年後の十六年前に、これは当時の沖縄県知事と市長からの同意をいただいた中で閣議決定をしている。そこの出発点は非常に違っているわけでありますけれども、そうした中で、やはり話合いをしていくということは極めて大事だというふうに思っています。ただ、協議は続いておりますけれども、その結果を現時点で示すことは適切ではないというふうに考えております。  いずれにしろ、現在、沖縄県とのこの協議については、あくまでも一か月という中で集中的に協議を行っていきたいというふうに考えています。
  199. 儀間光男

    儀間光男君 なかなか難しい作業になると思いますが、菅官房長官の誠意を期待したいと思います。  次に、普天間飛行場の運用を五年以内に停止をするということで、昨年でしたか、当時の仲井眞知事との間で合意がなされておりました。その五年という起点はどこかというと、昨年の二月だという起点の取決めがありました。辺野古の完成は順調にいって当時九年半掛かるであろうというふうになっておりました。五年内で運用を停止するということ、九年半の工事期間の二つの認識が示されたわけです。五年以内に止める、あるいは辺野古の完成には九年半掛かる、その二つの認識が示されて一年余が経過をいたしております。  そんな中、五年以内の運用を停止する、実現する見通しをお持ちなのかどうか、簡単にお答えいただければと思います。
  200. 菅義偉

    国務大臣(菅義偉君) 政府としては、普天間飛行場の五年以内運用停止に向けてできることは全て行うと、そういうことで全力で取り組んでいるところであります。  普天間飛行場にある三つの機能のうち、昨年は空中給油機運用機能を十五機全て総理の地元であります山口県の岩国市に移設することができました。そしてまた、緊急時に発着する航空機の受入れ機能でありますけれども、これについても、福岡県の築城基地あるいは宮崎県の新田原基地、ここに移すことを、ここは決定をいたしております。地元とも調整が付いております。そしてまた、辺野古への移設までの間、普天間飛行場におけるオスプレイの運用機能でありますけれども、沖縄県外における訓練等を着実にこれ進めていきたいというふうに思います。そしてまた、陸上自衛隊の木更津駐屯地においてオスプレイの定期機体整備を実施できるように、これ今努力をしておりまして、現在、地元からは既に了解はいただいております。  いずれにしても、政府としては、運用停止については、米国という相手のあることでありますし、また、その実現に向けては、沖縄県の御協力を得られる、このことが前提であるというふうに思います。全力で取り組んでまいりたいと思います。
  201. 儀間光男

    儀間光男君 時間も押しておりまして、先を急ぎたいんでありますが、官房長官に。  もし辺野古の完成なしに普天間の運用停止はないとすると、つまり、辺野古が完成して普天間を移すまで返還はないよ、今五年内でいろんなことをやってくださると言ったからそれに期待しますが、もし仮にないとするならば、これは、時系列的にこの二つの時間の設定はまさに整合性が取れない、論理に無理があるんですよ。だって、九年半掛かることと分かっていながら五年という時間切りをしたわけですから。私ども聞く側にとっては、見る側にとっては、政府はその五年のうちにあらゆることをやって、五年内で運用停止するというふうに理解をするわけです。  そこで、今説明ありましたが、それには沖縄県の協力が必要であるとおっしゃいましたが、一体どのような協力のことを指しておっしゃっているか、お聞きしたいと思います。
  202. 菅義偉

    国務大臣(菅義偉君) 仲井眞知事当時にこのことは決定をしました。それは、知事から埋立申請の認可をいただきました。ですから、この辺野古埋立てについては県として協力をしていただけると、そういう前提であることは度々申し上げているとおりであります。
  203. 儀間光男

    儀間光男君 官房長官、その前提が崩れたんですよね、沖縄側からすると。仲井眞さんと知事が替わって、その前提が崩れてしまったというのが現状だと思うんですね、そこで非常に難航する場所があると思いますが。  ここは総理にひとつ尋ねたいんですが、元防衛大臣の、前政権下の森本防衛大臣は、在任中の大臣定例記者会見でこういうことを申しておるんですよ。米軍基地は沖縄でなければならないという、地政学上に言うと、私は沖縄でなければならないという軍事的な目的は必ずしも当てはまらないと。例えば日本の西半分のどこかに、沖縄でなくてもよいということだ。政治的に許容できるところが沖縄でしかないので、簡単に言えば、軍事的には沖縄でなくてもよいが、政治的に考えると沖縄がつまり最適の地域である、そういう結論になると思いますと、こう語ったんですね。  つまり、平たく言うと、軍事的には、沖縄の地政学上はもう必要ない。沖縄のみでの抑止力の必要はないと。これはただただ政治的配慮であって、軍事的配慮じゃないということを元防衛大臣が、平成二十四年十二月二十五日、お辞めになる直前かも分かりませんが、そういう発言があります。それについて所感を伺いたいと思います。
  204. 安倍晋三

    内閣総理大臣安倍晋三君) 沖縄は、米国本土、ハワイ等と比較して東アジアの各地域に近い位置にあると同時に、我が国の周辺諸国との間に一定の距離を置いているという利点を有しています。また、南西諸島のほぼ中央にあることや、我が国のシーレーンに近いなど、安全保障上極めて重要な位置にあります。  こうした地理上の特徴を有する沖縄に、司令部、陸上部隊、航空部隊及び後方支援部隊を統合した組織構造を有し、優れた機動性及び即応性によって幅広い任務に対応可能な米海兵隊が駐留することにより、種々の事態への柔軟かつ迅速な対応が可能となります。  こうした在沖海兵隊の存在は、平成二十四年の2プラス2にもあるとおり、ハワイやグアムといった他の地域にも配置されるMAGTFと相まって抑止力強化するものと考えています。MAGTFは海兵空地任務部隊のことでありますが、森本大臣軍事的には沖縄でなくてもよいと言われた趣旨は、仮に沖縄以外の場所にMAGTFを置いた場合においてもMAGTFとしては機能し得ると述べられただけであり、軍事的な観点からの沖縄の地理的な優位性を否定されるものではないと認識をしております。  なお、森本大臣の私人としての発言の一々についてコメントすることは差し控えますが、森本大臣は、防衛大臣就任中より、軍事的な観点からの沖縄の地理的な優位性を認めており、最近のテレビ出演においても、おおむね沖縄にあればベスト、沖縄が最も効率が良いと発言しているものと承知をしております。
  205. 儀間光男

    儀間光男君 ここは議論のしどころでありますが、時間が足りません。ただでさえ、各大臣においでいただきましたけれども、質問の時間がなくて次回に回しますが、ここだけは聞きたいと思う点が一つあります。  菅官房長官、最初に沖縄県知事と面談あるいは協議したときに、沖縄県知事はこういうことを言っています、県民の気持ちには魂の飢餓がありますと。魂の飢餓、それに対する理解がなければ個別の問題解決は難しいでしょうという発言がありますが、これについてどう理解をされ、どうお応えをしようとしていらっしゃるのか、お聞きをしたいと思います。
  206. 菅義偉

    国務大臣(菅義偉君) 今回の集中協議の中で最初に私、知事とお会いをしたときに今の発言がありました。  知事の思いというのは、まさに沖縄がさきの大戦において、日本においてまさにただ一か所悲惨な地上戦が行われたということ、また、サンフランシスコ平和条約、これの発効以降も一定期間我が国の施政権の外に置かれたという、そうした沖縄の苦難の歴史について、私は知事からそのような発言があったというふうに思っています。そして、戦後七十年、今日に至るまで、沖縄に大きな基地負担を抱えている状況であるということであります。  そうしたものを、私ども、この政権は、誕生以来、とにかくできるものは全てやる、そして目に見える形で実現すると、そういうことで二年と八か月の間取り組んでまいりました。先ほど申し上げましたけど、空中給油機十五機を岩国へ、そしてまた西普天間住宅、ここを全面的に返還をいたしました。これは、七十年の中でこれだけ大きな土地が一括をして返還されたのは初めてだというふうに思っています。  そしてまた、日本全国、全体として基地負担を受け入れていく、このことも極めて大事だというふうに思っています。ただ、現実問題として、まさにこの住宅地のど真ん中にある、世界で最も危険と言われる普天間飛行場、この危険除去、固定化は絶対あってはならない、そのことは、ここは沖縄と国とも共通の認識であるというふうに思っております。そういう観点に立って、これからも意見交換をしながら進めさせていただきたいと思います。
  207. 儀間光男

    儀間光男君 ありがとうございました。  あと、駆け付け警護と存立危機、グレーゾーン、残してしまいましたけど、各大臣、ごめんなさい、次の平安特辺りで取り扱わせていただきたいと思います。  どうもありがとうございました。
  208. 岸宏一

    委員長岸宏一君) 以上で儀間光男君の質疑は終了いたしました。(拍手)     ─────────────
  209. 岸宏一

    委員長岸宏一君) 次に、山下芳生君の質疑を行います。山下芳生君。
  210. 山下芳生

    山下芳生君 日本共産党山下芳生です。  今年は、戦後七十年の節目の年に当たります。日本共産党は、日本が行った侵略戦争と植民地支配によって犠牲となった内外の人々に深い哀悼の意を表するとともに、過ちを二度と繰り返さない決意を新たにするものであります。  総理は、八月十四日、安倍談話を発表されました。そこには、侵略、植民地支配、反省、おわびなどの言葉はちりばめられていますが、侵略と植民地支配を行ったのは誰なのか、主語がありません。戦後五十年の村山談話に示された、日本が国策を誤り植民地支配と侵略を行ったという歴史認識は、全く語られておりません。反省とおわびも、過去の歴代政権が表明したという事実に言及しただけで、安倍総理自らの言葉としては語られておりません。そこで、総理自身の歴史認識を今日は聞きたいと思います。  まず、植民地支配について聞きます。  私は、植民地支配というのだったら、どの国がどの国を支配したのかが肝腎要だと思います。総理は、日本が植民地支配を行ったという認識をされているのでしょうか。
  211. 安倍晋三

    内閣総理大臣安倍晋三君) 二十一世紀構想懇談会の報告書においては、日本がかつて台湾や韓国を植民地化したこと、そして戦争への道を進む中において、一九三〇年代後半以降、植民地支配が過酷化していったことが記載されています。懇談会において有識者の方々が共有した認識、その報告書の上に立って今回の談話を作成したわけであります。  戦後、全ての民族に自決の権利が認められるべきだという考え方国際社会の大きな目標となりました。そうした国際的な流れの中で、日本も自らの過去を振り返り、植民地支配から永遠に決別し、全ての民族の自決の権利が尊重される世界をつくっていくことを強く決意しました。今回の談話においては、そのことと併せて、過去の植民地支配も含め、さきの大戦における行いについて痛切な反省と心からのおわびの気持ちを表明した歴代内閣の気持ちについて、私の内閣においても揺るぎないものとして引き継いでいくことを明確にしたところでございます。
  212. 山下芳生

    山下芳生君 今、懇談会の報告書では明記されているという御答弁でしたが、私は安倍談話を幾ら読んでもその主語を見出すことはできませんでした。  そこで聞いているんですけれども、総理日本が植民地支配を行ったという認識をお持ちなんですか。
  213. 安倍晋三

    内閣総理大臣安倍晋三君) この談話については、言わば談話全体が一つのメッセージになっているわけでございますから、一つ一つを切り取って、それを一部分だけを切り取って議論するのは、より幅広い国民とメッセージを共有するという観点からは適切ではないと、こう考えるわけでありますが、今回の談話作成に当たりましては、様々な有識者の方々にお集まりをいただきまして、二十一世紀構想懇談会の中で様々な議論をいただいたわけでございます。当然、それぞれ視座は異なったわけでございますが、その中において共通の一つの認識が示されたわけでございまして、それは今申し上げたとおりでございまして、二十一世紀構想懇談会の報告書においては、日本がかつて台湾や韓国を植民地化したこと、そして、戦争への道を進む中において、一九三〇年代後半以降、植民地支配が過酷化していったことが記載されているわけでございまして、この談話を発表する冒頭申し上げたとおり、私はこの報告書を歴史の声として受け止めたいと思いますと、こう述べたところでありまして、この報告書の上に立って今回の談話を発出したところでございます。
  214. 山下芳生

    山下芳生君 報告書の上に立ったのに、なぜ安倍談話では日本が植民地支配を行ったという認識が示されていないのか。歴代の政権は示しておりますよ。村山内閣は談話で、我が国が国策を誤り、植民地支配と侵略を行ったと、日本が植民地支配を行ったということをはっきり述べておりますよ。それが述べられていないんです、安倍談話には。  そういう認識、総理自身にないんですか。
  215. 安倍晋三

    内閣総理大臣安倍晋三君) 今回の談話作成に当たりましては、例えば今御紹介をいただいた村山談話における国策を誤りといった抽象的な用語で終わらせず、どのように針路を誤ったのか、歴史の教訓を具体的に酌み取らなければならないと考えました。ただし、政治は歴史に謙虚であるべきとの考え方の下、その具体的な作業については、二十一世紀構想懇談会を設け、有識者の皆さんに行っていただいたわけであります。  その報告書の上に立って、今回の談話においては、第一次世界大戦後、戦争自体を違法化する新たな国際社会の潮流が生まれる中で、当初は日本も足並みをそろえたが、世界恐慌が発生し、経済のブロック化が進むと、日本経済は大きな打撃を受け、その中で日本は孤立感を強め、外交的、経済的な行き詰まりを力の行使によって解決しようと試みた旨述べた上で、満州事変、そして国際連盟からの脱退、日本は次第に国際社会が壮絶な犠牲の上に築こうとした新しい国際秩序への挑戦者となっていった……
  216. 岸宏一

    委員長岸宏一君) 簡潔な答弁をお願いいたします。
  217. 安倍晋三

    内閣総理大臣安倍晋三君) 進むべき針路を誤り、戦争への道を進んでいきましたと記しているわけでございます。
  218. 山下芳生

    山下芳生君 幾ら聞いても、肝腎要のことは答えられません。なぜ安倍談話に日本が植民地支配を行ったという認識が示されていないのかと聞いても、お答えはありません。  私は、じゃ、角度を変えますが、日本がどの国に対して植民地支配を行ったのか、これは非常に大事ですが、その認識、総理はありますか。
  219. 安倍晋三

    内閣総理大臣安倍晋三君) これは先ほども申し上げましたように、二十一世紀構想懇談会の報告書において、日本がかつて台湾や韓国を植民地化したこと、そして戦争への道を進む中において、一九三〇年代後半以降、植民地支配が過酷化していったことが記載されているわけでありまして、この懇談会の報告書を歴史の声として受け止め、その上において今回談話を発出したところでございます。
  220. 山下芳生

    山下芳生君 受け止めたのになぜはっきり書かないのかということを聞いているんですよ。  歴代の政権は、そのことについてもはっきり語っております。村山談話の翌年、一九九六年二月十六日、自民党の橋本龍太郎総理は参議院の予算委員会で次のように述べております。  韓国併合につきましては、昨年十一月、村山前総理が金泳三韓国大統領に宛てた書簡におきまして、韓国併合条約における植民地支配の下において朝鮮半島地域の方々に耐え難い悲しみと苦しみを与えたことにつきまして、深い反省と心からのおわびの気持ちを抱いていることを表明されたと記憶いたしております、私としても同様でありますと。橋本総理は、韓国併合条約によって日本が朝鮮半島を植民地支配したという認識をはっきり自分の言葉で国会で述べております。  総理、あなたも同じ認識ですか、それとも違うんですか。あなた自身の言葉でお答えください。
  221. 安倍晋三

    内閣総理大臣安倍晋三君) 談話においては、「我が国は、先の大戦における行いについて、繰り返し、痛切な反省と心からのお詫びの気持ちを表明してきました。その思いを実際の行動で示すため、インドネシア、フィリピンはじめ東南アジアの国々、台湾、韓国、中国など、隣人であるアジアの人々が歩んできた苦難の歴史を胸に刻み、戦後一貫して、その平和と繁栄のために力を尽くしてきました。こうした歴代内閣の立場は、今後も、揺るぎないものであります。」と明確にしているところでございます。
  222. 山下芳生

    山下芳生君 全く答えていないですよ。総理、ちゃんと自分の言葉で答えてくださいよ。  橋本総理も、朝鮮半島を日本が植民地支配したとはっきり認識を述べました。私は、報告書で何を書いているかを聞いているんじゃありません。安倍談話にはそれがないんです。だから、安倍さん自身がそういう認識があるのかどうか、はっきりお答えください。
  223. 安倍晋三

    内閣総理大臣安倍晋三君) 今回、専門家の皆さんにお集まりをいただいて、そして二十一世紀構想懇談会の中で様々な御議論をいただき、一定の共通認識を得るに至ったわけでございます。その上において、それを一つの歴史の声として受け止め、それを前提に今回談話を作成し、それを閣議決定したわけであります。つまり、この談話が全てでございまして、その中からお酌み取りをいただきたい。  今申し上げましたように、「インドネシア、フィリピンはじめ東南アジアの国々、台湾、韓国、中国など、隣人であるアジアの人々が歩んできた苦難の歴史を胸に刻み、戦後一貫して、その平和と繁栄のために力を尽くしてきました。こうした歴代内閣の立場は、今後も、揺るぎないものであります。」、つまり、それは全く変わりがないわけでございます。(発言する者あり)
  224. 岸宏一

    委員長岸宏一君) 速記を止めてください。    〔速記中止
  225. 岸宏一

    委員長岸宏一君) 速記を起こしてください。  それでは、山下さん、もう一度質問してください。
  226. 山下芳生

    山下芳生君 これは、橋本総理だけじゃないんですね。一九九八年十月八日、自民党の小渕恵三総理は、訪日した金大中韓国大統領とともに日韓共同宣言を発表いたしました。そこには、「両国が過去を直視し相互理解と信頼に基づいた関係を発展させていくことが重要」ということを述べた上で、「小渕総理大臣は、今世紀の日韓両国関係を回顧し、我が国が過去の一時期韓国国民に対し植民地支配により多大の損害と苦痛を与えたという歴史的事実を謙虚に受けとめ、これに対し、痛切な反省と心からのお詫びを述べた。」とはっきり書かれてあります。小渕総理もまた、日本による植民地支配によって韓国国民に多大な損害と苦痛を与えたということをちゃんと語っているんですね。  総理は、先ほどから何遍聞いても総理自身の言葉でそのことを語らない。これまでの歴代政権の認識を引き継ぐと言われますが、全く違うじゃないですか。もう一度答えてください。
  227. 安倍晋三

    内閣総理大臣安倍晋三君) まさに談話で、安倍内閣の談話で示しているとおりでございます。  まさに、ここに書いてありますように、事変、侵略、戦争。いかなる武力の威嚇や行使も、国際紛争解決する手段としては、もう二度と用いてはならない。植民地支配から永遠に決別し、全ての民族の自決の権利が尊重される世界にしなければならない。さきの大戦への深い反省、さきの大戦への深い悔悟の念とともに、我が国は、そう誓いました。自由で民主的な国をつくり上げ、法の支配を重んじ、ひたすら不戦の誓いを堅持してまいりました。七十年間に及ぶ平和国家としての歩みに、私たちは、静かな誇りを抱きながら、この不動な方針を、これからも貫いてまいりますと述べているわけでありまして、そして、その上において、まさにこれは私が総理大臣として、安倍内閣として談話として発出したものでありますから、これはそのままお受け取りいただきたいと、こう思うわけでありまして、我が国は、さきの大戦における行いについて、繰り返し、痛切な反省と心からのおわびの気持ちを表明してきました。その思いを実際の行動で示すため、インドネシア、フィリピン始め東南アジアの国々、台湾、韓国、中国など、隣人であるアジアの人々が歩んできた苦難の歴史を胸に刻み、戦後一貫して、その平和と繁栄のために力を尽くしてきました。こうした歴代内閣の立場は、今後も、揺るぎないものであります。  まさに安倍内閣においても揺るぎないものでありますし、今後もそれは揺るぎないであろうということをここに述べたものであります。(発言する者あり)
  228. 岸宏一

    委員長岸宏一君) 速記を止めて。    〔速記中止
  229. 岸宏一

    委員長岸宏一君) 速記を起こして。
  230. 山下芳生

    山下芳生君 じゃ、もう一回だけ聞きますね。  有識者懇談会の報告書には、日本が植民地支配したとはっきり書いてあるんです。何でそれを安倍談話では削ったんですか。何でそれを書かないんですか。なぜ安倍総理自身の言葉で語らないんですか。それを言ってください。
  231. 安倍晋三

    内閣総理大臣安倍晋三君) 今回なぜ有識者懇談会をつくったかということでありますが、言わば政治は、政治は……(発言する者あり)まず、ここから話をしなければ御理解いただけないのではないかと思います、残念ながら。
  232. 岸宏一

    委員長岸宏一君) 静粛に。
  233. 安倍晋三

    内閣総理大臣安倍晋三君) まず、政治は歴史に謙虚でなければならないということであります。それは常に、一つは、政治は歴史から知恵を学ばなければならないということであります。同時に、歴史を見るときに、政治的、外交的な配慮をすることによって事実をねじ曲げてはならないということであります。だからこそ、政治は歴史に謙虚でなければならない。そういう観点から、今回、まさに様々な視点を持つ方々にお集まりをいただいて議論をしたわけでございます。  そして、そこで出された提言について、先ほど申し上げましたように、それを歴史の声として受け止めたということを申し上げたわけであります。その声を私は総理大臣として受け止めたわけであります。その声を受け止めて、まさにその受け止めた上において今回談話を発出したところでありまして、まさに先ほど述べたように、さきの大戦への深い悔悟の念とともに我が国はそう誓ったわけでありまして、そして、こうした歴代の立場は、安倍内閣もそうでありますが、今後も揺るぎないということを述べているわけでございます。
  234. 山下芳生

    山下芳生君 全く答えになっておりませんよ。  ただ、唯一、一つだけ答えがあったのは、政治は、言葉を発するときに政治的影響を考えなければならないということだけでした。  ということは、橋本総理、小渕総理は、日本が朝鮮半島を植民地支配したとはっきり言っていますよ。これ、政治的配慮が足らなかった、間違いだったということですか。
  235. 安倍晋三

    内閣総理大臣安倍晋三君) それは、それぞれの総理の見識においてなされた発言だろうと思います。
  236. 山下芳生

    山下芳生君 何遍聞いても、そのことを言いません。結局、肝腎なことははっきり答えないんですよ。引き継ぐと言いながら、日本が朝鮮半島を植民地支配したという核心部分については一切語らない、一番大事な点は引き継いでいないということがはっきりしたと思います。  安倍談話は、さらに、日露戦争と植民地支配関係について触れております。  では、日露戦争が朝鮮半島の人々に何をもたらしたのか。日露戦争と朝鮮半島の植民地支配関係について、総理の認識を伺いたいと思います。
  237. 安倍晋三

    内閣総理大臣安倍晋三君) この談話の中において、二つ目のパラグラフ以降、百年以上前の世界には、西洋諸国を中心とした国々の広大な植民地が、広がっていた。圧倒的な技術優位を背景に、植民地支配の波は、十九世紀、アジアにも押し寄せました。その危機感が、日本にとって、近代化の原動力となったことは、間違いありません。アジアで最初に立憲政治を打ち立て、独立を守り抜きました。日露戦争は、植民地支配の下にあった、多くのアジアやアフリカの人々を勇気づけたということで、言わば、当時の多くの西洋諸国の下の植民地の人々が、自分たちはなかなか独立できないのではないかという人々に対して勇気を与えたという事実を書いたわけでございます。  それと、この日露戦争の結果と朝鮮半島との関係につきましては、これはもう史実にあるとおりでございます。
  238. 山下芳生

    山下芳生君 その認識を聞いているんですよ。それ答えられないんですか。
  239. 安倍晋三

    内閣総理大臣安倍晋三君) ここで一つ一つの歴史的な事実について委員と議論することは差し控えたいと思いますが、この表現については、言わば朝鮮半島との関係で申し上げたわけではなくて、まさにパラグラフ全体を見ていただければお分かりのように、百年前は広大な植民地が広がっていた、西洋諸国が圧倒的な技術による優位を生かして多くの国々を植民地支配をしていた中にあって、日露戦争が植民地支配下にあった人々に対して勇気を与えたという事実を述べたのみでございます。
  240. 山下芳生

    山下芳生君 そのアジアの人々の中に朝鮮は入っているんですか、朝鮮の人々は。
  241. 安倍晋三

    内閣総理大臣安倍晋三君) これはまさに多くの人々ということで、一般的に表現したものでございます。
  242. 山下芳生

    山下芳生君 答えられないんですね。当たり前だと思いますが。  朝鮮半島の植民地化がどのように進められたのか。明治の初めから、日本は清国やロシアと競いながら武力で朝鮮宮廷を脅迫して、計画的に朝鮮を植民地としていきました。一八九五年、日本の朝鮮支配に反対する中心人物だった朝鮮の王妃閔妃を日本の公使の命令で殺害します。日露戦争が開始された一九〇四年、日本は首都漢城、現在のソウルを軍事占領し、日韓議定書を強要して日露戦争への協力を韓国に約束させます。そして、第一次日韓協約を強要し、韓国の財政と外交の事実上の実権を握ります。翌一九〇五年、日露戦争の勝利をてこに、第二次日韓協約、いわゆる韓国保護条約を押し付け、外交権を完全に取り上げるということもやりました。同時に、韓国に日本の総監府なるものを置いて、もはや独立国とは言えない属国化を進めたのであります。その直後の一九〇六年から一一年にかけて、韓国の植民地支配に反対する反日義兵闘争が起こりますが、これに対する日本の弾圧によって犠牲となった方々は四万人に上ると言われております。こうして、朝鮮、韓国人民の抵抗を抑圧しながら、一九一〇年、韓国併合条約によって韓国、朝鮮の植民地化を完成させたわけであります。  この歴史的事実を踏まえるならば、日露戦争は朝鮮半島の植民地支配を進める重要なポイントだった。総理にその認識はありますか。
  243. 安倍晋三

    内閣総理大臣安倍晋三君) 日露戦争についてのこの記述については、先ほど申し上げましたように、今回、言わば世界史の中で日本はどういう立場にあったのかということから記述を説き起こしたわけであります。  二十一世紀構想懇談会においても、日本の歴史だけを見る、あるいは日本や周辺国との関係だけで歴史を見るのではなくて、世界史的な視点から歴史を見ながら、日本はどう行動を取ってきたのか、どこで日本政策を誤ったのかということを明確にすることを言わば中心的な議論としたところでございます。  そういう中におきまして、まさに百年以上前は世界には広大な植民地が広がっていたという歴史的な事実を述べ、その中で日本はどのような行動を取ったか、そして日露戦争がどういうインパクトをもたらしたかということについて記述をしたわけでございます。
  244. 山下芳生

    山下芳生君 朝鮮半島の植民地化と日露戦争との関係については、何遍聞いてもお答えがありません。  歴史の事実ははっきりしております。日露戦争直後の一九〇五年、保護条約はどのようにして締結されたのか、伊藤博文が憲兵を引き連れて宮廷に押し入って強引に調印させたものです。宮廷の外では、日本軍が演習と称して大規模軍事的威嚇をやりました。退出しようとした大臣をつかまえて、伊藤博文が余り駄々をこねるようならやってしまえと脅し付けながら、文字どおりの強圧的なやり方で従属化を図りました。伊藤博文は韓国の皇帝に、この条約をのまなければ、これまで以上の困難な境遇になり、一層不利益な結果になることを覚悟せよと迫ったことを日本の天皇に対して報告しております。  日露戦争が暴力と強圧によって韓国の植民地化を進める重要なポイントとなったことは歴史の事実ですよ。そのことを総理は一切認めない、そんなことで、先ほど日露戦争がアジアの人々を勇気付けた、よくぞ言えたものだと、とんでもない認識だと言わなければなりません。  私は、歴代政権が述べている日本の植民地支配による多大な損害と苦痛とは何か、これにもしっかりと思いをはせる必要があると思います。朝鮮半島の人々は、自分たちの言葉を使うことを禁じられ、日本語の使用を強要されました。創氏改名で名前まで変えさせられました。さらに、徴兵検査によって日本兵として戦場に駆り出され、本人の意に反して日本軍慰安婦となることを強要されました。  総理日本の植民地支配によってこうした損害と苦痛を与えたという認識が総理にはありますか。日本の植民地支配によってもたらされたものだと認識ありますか。
  245. 安倍晋三

    内閣総理大臣安倍晋三君) それはこの談話にあるとおりでございまして、この談話にありますように、「我が国は、先の大戦における行いについて、」でございまして、行いとは、まさにさきの大戦への深い悔悟の念として日本が胸に刻んでいる、そう誓ったものでございまして、その中で国名を挙げているわけでありまして、「インドネシア、フィリピンはじめ東南アジアの国々、台湾、韓国、中国など、隣人であるアジアの人々が歩んできた苦難の歴史を胸に刻み、戦後一貫して、その平和と繁栄のために力を尽くしてきました。こうした歴代内閣の立場は、今後も、揺るぎないものであります。」と、このように述べているわけでございます。
  246. 山下芳生

    山下芳生君 ばらばらになっているんですよ、安倍談話は。村山談話は、日本が国策を誤って植民地支配と侵略をしたことによってアジアの人々に多大な損害と苦痛を与えたことを反省しているんです。ばらばらじゃないですか。総理に幾ら聞いても、日本が植民地支配をしたという認識を示されない。  私は、植民地支配によって国を奪い、言語を奪い、名前すら奪ったことを日本国民は忘れてはならないと思います。それを両国の共通の歴史認識とすることが未来にとって重要であると思います。だからこそ、村山談話はそのことを主語もはっきりして述べているんですね。歴代内閣の立場は揺るぎないとしながら日本が植民地支配を行ったという歴史認識を語らない、これは欺瞞だと言わなければなりません。  こうして植民地支配を、朝鮮半島における植民地支配を足場にして、日本は、中国アジア太平洋地域へと侵略戦争を拡大していきます。  総理にその点について聞きます。日本中国アジア太平洋地域に対して行った戦争、一九三一年、満州事変、一九三七年、日中全面戦争へと続き、一九四一年、アジア太平洋戦争に拡大した戦争は侵略だったのか、そうではなかったのか、総理の認識を端的に伺います。
  247. 安倍晋三

    内閣総理大臣安倍晋三君) 今回の談話は、二十一世紀構想懇談会において有識者の方々が共有した認識、その報告書の上に立って作成したものであります。  報告書にもあるとおり、中には侵略と評価される行為もあったと私も思います。だからこそ、談話においては、事変、侵略、戦争といった言葉を挙げた上で、いかなる武力の威嚇や行使も国際紛争解決する手段としてはもう二度と用いてはならないことを、さきの大戦への深い悔悟の念とともに誓ったわけであります。  さきの大戦における日本の行いが侵略という言葉の定義に当てはまれば駄目であるが、当てはまらなければ許されるというものではないわけでありまして、かつて日本は、世界の大勢を見失い、外交的、経済的な行き詰まりを力の行使によって打開し、あるいはその勢力を拡大しようとしたわけであります。その事実を率直に反省し、これからも法の支配を尊重し、不戦の誓いを堅持していくということこそが今回の談話の最も重要なメッセージであります。その上で、具体的にどのような行為が侵略に当たるか否かについては歴史家の議論に委ねるべきだと思うわけであります。  重要な点は、いかなる武力の威嚇や行使も国際紛争解決する手段としてはもう二度と用いてはならないということでありまして、これが私たちが過去から学び、教訓とし、反省すべきことであります。
  248. 山下芳生

    山下芳生君 ここでも明確な答弁がありませんでした。私は、中国アジア太平洋地域に対して日本が行った戦争が侵略なのかそうでないのかと総理の認識を問いましたが、はっきりした答弁はありませんでした。談話の中にもそのことは書かれておりません。  しかし、この点でも歴代の政権とは違うんです。歴代内閣中国に対する侵略をはっきりと認めてまいりました。小渕総理は、一九九八年十一月二十六日、訪日した江沢民中国主席とともに日中共同宣言を発表いたしました。そこには、双方は、過去を直視し歴史を正しく認識することが、日中関係を発展させる重要な基礎であると考える、日本側は、一九九五年八月十五日の内閣総理大臣談話を遵守し、過去の一時期の中国への侵略によって中国国民に多大な災難と損害を与えた責任を痛感し、これに深い反省を表明した、こうはっきり述べております。  総理、歴代の内閣の立場は今後も揺るぎないと言うんだったら、日本による中国への侵略が中国国民に多大な災難と損害を与えたということをなぜ安倍談話に書かないんですか、なぜ総理自身の言葉で語らないんですか。
  249. 安倍晋三

    内閣総理大臣安倍晋三君) 先ほど申し上げたとおり、報告書にもあるとおり、中には侵略と評価される行為もあったと私も思いますと先ほど述べたとおりでございます。その上において、ここに書いてありますように、事変、侵略、紛争。いかなる武力の威嚇や行為も、国際紛争解決する手段としては、もう二度と用いてはならない。植民地支配から永遠に決別し、全ての民族の自決の権利が尊重される世界にしなければならない。さきの大戦への深い悔悟の念とともに、我が国は、そう誓いましたと。こう述べているわけであります。  ここから、当然、我々のさきの大戦における反省、教訓が酌み取られると、このように思います。
  250. 山下芳生

    山下芳生君 はっきり答えないんですね、侵略と。これまで村山談話でも、それから今申し上げた小渕総理の日中共同宣言でも、日本中国に対し行った侵略とはっきり書いているんですよ。なぜこれまで述べたことを安倍談話では述べないのか、なぜ安倍総理自身の言葉で語らないのか。  私は、幾ら反省、二度と繰り返さないと言っても、日本が過去に行った戦争が侵略だったというはっきりした認識に立たなければ、これは同じ過ちを繰り返すことになるじゃありませんか。歴代内閣の立場は今後も揺るぎないとしながら、具体的な戦争についての認識を問うと歴史家の議論で逃げる、これも私は欺瞞だと言わなければなりません。  結局、総理は、日本が行った植民地支配も侵略もはっきり認めませんでした。自分自身の言葉で語りませんでした。そして、自分自身の言葉で深く反省し、謝罪することもされませんでした。結局、安倍談話というのは、村山談話以降の歴代内閣が表明してきた立場を事実上投げ捨てるものに等しいと言わなければなりません。語っていないんですから。  日本は、中国に対する侵略からアジア太平洋戦争へと侵略戦争を拡大します。その結果、アジアの人々二千万人、日本人三百十万人が犠牲となりました。そして、七十年前、ポツダム宣言を受け入れ、文字どおり多大な損害と苦痛を内外の人々に与えた戦争を終わらせました。  そのポツダム宣言には何とあるか。日本戦争を世界征服のための戦争、はっきりこう書いてあります。侵略戦争だったと明確に述べております。総理は、ポツダム宣言のこの規定を認めないんですか。あくまで日本の行った戦争は侵略だと認めないんですか。
  251. 安倍晋三

    内閣総理大臣安倍晋三君) 日本はポツダム宣言を受け入れ、敗戦をしたわけでございます。その後、まさに我が国は、戦争の惨禍を二度と繰り返さないとの不戦の誓いの下に、平和国家としての歩みを進めてきたわけでございます。
  252. 山下芳生

    山下芳生君 日本戦争をポツダム宣言は世界征服の挙に出た戦争、侵略戦争だったとはっきり認めているんです。この規定を総理は認めないんですかと、こう言っているんです。
  253. 安倍晋三

    内閣総理大臣安倍晋三君) まさに日本はポツダム宣言を受け入れ、敗戦をし、まさにポツダム宣言を受け入れたわけでございます。
  254. 山下芳生

    山下芳生君 だったら、日本戦争を侵略戦争と認めなければならないはずですよ。それを何遍聞いても認めない、個々の具体的な問題については歴史家の判断に委ねると言って逃げる。そんなことをやっていたんでは、日本はアジアでも世界でも孤児になると言わなければなりません。  ポツダム宣言には、日本の軍隊の武装解除、それから民主主義の復活強化なども述べられております。これを踏まえて、日本国憲法に第九条や基本的人権が明記されました。今、安倍政権がそれを覆し、日本を再び海外で戦争をする国につくり変えようとしていることに多くの国民が危惧を覚えております。  七十年前の教訓を踏みにじる。七十年前の痛苦の反省、歴代内閣が認めてきた侵略と植民地支配を、談話でも総理自身の言葉でもはっきり認めない。七十年前の教訓を踏みにじる戦争法案の撤回を強く求めて、質問を終わります。
  255. 岸宏一

    委員長岸宏一君) 以上で山下芳生君の質疑は終了いたしました。(拍手)     ─────────────
  256. 岸宏一

    委員長岸宏一君) 次に、松田公太君の質疑を行います。松田公太君。
  257. 松田公太

    松田公太君 日本を元気にする会・無所属会松田公太です。  なぜか今日は大変大きな安心感に包まれながら私はこの場に立たせていただいております、ふだんは独りぼっちなんですけれども。  これは質問通告していないんですけれども、昨日報道にありましたので少し触れさせていただきたいと思いますけれども、子供の臓器移植についてです。  総理、御案内のとおり、臓器移植法が五年前に改正されまして、十五歳未満の子供の臓器移植が可能になったわけですね。ところが、日本では臓器移植、なかなかこれ増えていないんです。例えば、アメリカでは年間八千人のドナーがおりまして、約二万八千人の方々が助かっている。それに対して日本は、昨年七十七件のドナーがいたということなんです。これは子供に対しても同じでして、何と五年間で十四件のドナーしかまだいないんですね。年間にしますと二・八件ということになるわけです。  ただ、それに対して、驚いたのは、昨日これが報道にあったわけですけれども、それ以外に十七件のドナーとしての申出があったということなんです。これは非常に残念なことですね。それが、その十七件、トータルすれば十四件と十七件で三十一件となったわけなんですけれども、その十七件に対して、施設側の方で体制が整っていないからという理由でそれを断ってしまったということなんですね。これは私、本当にむごいことじゃないかなというふうに思います。  何とか自分の命、これ臓器移植があれば助かるのかもしれないという思いで、ぎりぎりのところで命をつないでいらっしゃるお子さんたち、また御家族、御両親の方々、そしてまた、お子さんが脳死になられて悲しみのどん底にいるんですけれども、それでも、もしかしたら自分の子供の一部がほかの子供の命を助けることにつながるかもしれないという思いで臓器移植の提供を申し出た御両親たち、御家族の皆さん、そういったもの全て、体制が整っていないからという理由で無にしてしまっているんですね。これは私、あり得ないことだというふうに思っております。  そこで、これは総理にお願いなんですけれども、日本には今三百八十の臓器移植の体制があると言われて、施設があるんですけれども、それに対して、今言ったように、百五十の施設が子供の臓器移植の体制が整っていないというふうに言っているわけなんですけれども、これに対して何とか指導していただいて、何とか早くその百五十も全て促していただいて、その体制を整えるということをやっていただけませんでしょうか。総理、お願いいたします。
  258. 安倍晋三

    内閣総理大臣安倍晋三君) 突然の質問でございますので私はまだその現状をよく把握をしておりませんが、臓器移植においてドナーとなるという希望を示された方、これは御両親なんだろうと思いますが、御両親の御希望が、施設に十分にその体制が整っていないがためにそれがかなわなかったということは、それは大変残念なことであり、そうした状況がなるべくないように施設の整備を行っていかなければならないと、このように思っております。
  259. 松田公太

    松田公太君 是非明確な目標を設定していただいて、是非そのような施設が全て子供の臓器移植対応可能になるようにお願いできればというふうに思います。  また、これは初歩的な話でしかないんですね。私も心臓移植があれば助かったかもしれないという弟がいたわけですけれども、日本全体の臓器移植の件数、これは非常に少ないので、これを何とか増やすためにこれからも私いろいろ議論させて、また提言をさせていただきたいと思いますので、よろしくお願い申し上げます。  それでは、順番を変えて、安保法案について議論させていただきたいと思います。  猪木最高顧問、パネルの方、お願いできますでしょうか。(資料提示)  六月の決算委員会のときより総理とは何度かこの安保法案についていろいろと議論をさせていただきました。そして、先週の金曜日に初めて私どもの修正案に対して、具体的な案を示させていただいたわけですけれども、今日はパネルを作りましたので、このパネルを見ながら国民の皆さんにも分かりやすいように議論を進めていくことができればというふうに思っております。  この我々の修正案の最大の目的というのは、何よりも国会の関与を強化するということなんですね。つまり、国民のチェック機能を強化するということになるわけです。そうしないと、誰か危険な思想を持った方が例えば総理大臣や権力者になった場合に、その方の一存で安易に存立危機事態、これを認定されてしまって、日本が不要な戦争に巻き込まれてしまう可能性があるということなんです。  総理は、ナチスのヘルマン・ゲーリングを御存じでしょうか。
  260. 安倍晋三

    内閣総理大臣安倍晋三君) ゲーリングというのは空軍大臣だったゲーリングだと思いますが、言わばドイツが敗戦後、ヒトラーが自死した後、ドイツの責任者になった、一時的にですね、というふうに承知をしております。
  261. 松田公太

    松田公太君 そうですね。彼はヒトラーの後継者と言われた方ですが、戦後、捕虜になりまして、様々な尋問や裁判を通じていろんな話をされて、言葉を残しているんですね。その一つに次のようなものがあります。  もちろん、普通の人間戦争を望まない。しかし、国民戦争に参加させるのは常に簡単なことであり、単純だ。国民には攻撃されつつあると言い、平和主義者には愛国心に欠けていると非難し、国を危険にさらしていると主張する以外には何をする必要もない。この方法はどんな国でも有効だ。  これはまさしく戦前の日本のような状況でもありますし、また、ヘルマン・ゲーリングが言うとおり、今もなお好戦的な国はこういった手法を使われているんだろうなというふうに思うわけですけれども。  これは岸田大臣にお聞きしたいと思いますが、日本でそのような考えを持つ方が権力者、例えば総理大臣等になる可能性は一〇〇%ないと言い切れますか。これから二十年後も三十年後もそんなことは断じてあり得るはずがないというふうに言えるでしょうか。
  262. 岸田文雄

    国務大臣(岸田文雄君) 将来のことについて確たることをここで申し上げることはできませんが、そうした委員指摘されるような状況が発生しないために、我が国として民主主義をしっかり充実させ、そして国会の、そして国民の声が、そうした暴走を起こさないようにしっかりとした体制をつくっていく、こうした努力を日々続けていくことが大事であると思います。  そうした国民全体の努力によって我が国の進む方向を過つことがないように、しっかりとこの努力を続けていきたいと考えます。
  263. 松田公太

    松田公太君 私は、そのような思想を持つ方が総理大臣若しくは権力者になられる可能性というのは、もちろんこの国でもあるというふうに思っているわけですね。十分ある。だからこそ、勝手に時の総理が判断できないように国会による歯止めが必要だというふうに考えているわけです。  まずは、派遣するかどうかの入口の部分ですね、この国会承認。そして、中口と私呼んでおりますけれども、自衛隊を派遣した後に一定期間、例えば九十日ごとにチェックを入れる、そして再検討する、場合によっては早期の撤退を実現する。そして、出口、終わった後ですけれども、厳しい事後検証を行って、政府の評価も含めて行って、もし、そのときの派遣がもしかしたら間違っていたかもしれないということであれば、同じ過ちを繰り返さないためにしっかりと事後検証する、これが非常に大切なことだというふうに思っております。特に、この入口の部分で例外なく事前承認をするということが私は重要じゃないかなというふうに思っております。  一つ一つ聞いてみたいと思いますが、中谷大臣、よろしいでしょうか。存立危機事態の認定をして防衛出動する場合などでは、例外なく国会の事前承認としても私はよろしいんではないかと思いますが、いかがでしょうか。
  264. 中谷元

    国務大臣(中谷元君) 存立危機事態における活動の実施は、緊急時の事後承認を認めております。原則としては事前承認でありますが、あくまでも例外としての事後承認を認めております。それは、これを認めなければ我が国の平和及び安全の確保に支障を来す可能性があるというからでございます。
  265. 松田公太

    松田公太君 私は、原則では駄目だと思っておりますね。幾らでもこれは抜け穴ができてしまうんですね。例外なく事前承認にしないと駄目だというふうに思っております。  中谷大臣は、例えばホルムズ海峡の機雷掃海のときは、これは必ず国会の承認を得ますよという話を、たしかこれ衆院の特別委員会でされているというふうに思うんですけれども、それとは逆に、今おっしゃったような緊急事態、事後承認にならざるを得ないケースというのはどのような状況のことを想定されているのか。国民にも分かりやすい形で例示を挙げていただけませんでしょうか。
  266. 中谷元

    国務大臣(中谷元君) 具体的な事例といたしまして、その状況によって違うわけでありますが、まず第一に、我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃、これが事前に十分察知をされずに突発的に発生をするという事態、そして、これによって間を置かずして我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由、幸福追求の権利、これが根底から覆される明白な危険がある状況に至ってしまうということが否定できないということで、極めて短期間のうちにそのような事態に立ち至った場合におきましては、国会承認の前であっても並行して自衛隊に行動を命じて、まず何よりも国民の命と平和な暮らしを守ることが必要ではないかというような場合が考えられ得るということでございます。
  267. 松田公太

    松田公太君 私は、今の例というのは、例えば緊急な事態とかそういう話が何個か入っておりましたけれども、具体的な事例ではないというふうに思うんですね。もうちょっと、例えばA国、B国、C国という言葉をよく使われますが、そういった国名を入れて是非案内していただけませんですかね。これは、緊急事態と言われても、どういう事態なのかというのを想像すらなかなか付かないと思うんですよ、国民は。是非お願いできませんか。
  268. 中谷元

    国務大臣(中谷元君) これから突発的に何が起こるのか、それは予見できないケースがありますが、例えば九・一一のテロ、これは瞬時にしてニューヨークの貿易センタービルで三千名以上の一般市民が犠牲になるわけでございますし、非常にこういった事態におきまして、我が国の安全また存立にも関わりあるようなケース、こういうことが突発的に発生し得るというようなことも念頭に置かなければならないのではないかということでございます。
  269. 松田公太

    松田公太君 今のお話ですと、中谷大臣、九・一一が我が国の存立危機事態に陥る可能性があるという話なんですが、そう考えてもよろしいんですね。つまり、九・一一のときにこの法案が通っていれば、我々はこれ集団的自衛権だということでこの行使をしたと、一部をですね。そういう判断でよろしいでしょうか。
  270. 中谷元

    国務大臣(中谷元君) この事例は、我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が事前に十分に察知さり得ず突発的に発生をし、また、これにより間を置かずして我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利、これが根底から覆される明白な危険がある状況に至った場合であるということでございます。あくまでも我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が突発的に発生をしたということでございます。
  271. 松田公太

    松田公太君 私の質問は九・一一がそれに当たるかという質問なんですけれども、その九・一一が起こった際に、申し訳ないんですが、私はそれがすぐに日本のその存立危機事態に当てはまるとは思いませんけれども、今のお話ですと、今後、九・一一みたいな事例が起こったら、これは存立危機事態だということで日本は武力行使をするということ、集団的自衛権を一部行使するということでよろしいんですね。
  272. 中谷元

    国務大臣(中谷元君) のようなということで前提を置いておりますが、九・一一のあの同時多発テロとかベトナム戦争又はイラク戦争につきましては新三要件に当てはまらないということは、答弁をいたしたとおりでございます。  私が申し上げましたのは、我が国と密接なる他国に対する武力攻撃が事前に十分察知されずに突発的に発生をして、またこれによって間を置かずして我が国の存立が脅かされるような明白な危険がある状況に至るというような事態ということでございます。
  273. 松田公太

    松田公太君 まだ九・一一に対しては答えていただいていませんが、例えば九・一一が発生しましたと。その後、例えばアメリカから要請があったということで、我々がそれを存立危機事態と認定した後ですよ。これ先日も、その要請が認定に関係するかどうかという話でも中谷大臣はちょっと混乱されていたようですけれども、もし仮にその要請があった、その事態が発生したと、でもその間に、日本が防衛出動しなくちゃいけないまでに私は絶対に時間があると思うんですよね。であれば、国会の承認を得る時間というのは数日間あるんじゃないでしょうかね、九・一一のような事態であれば。いかがですか、大臣
  274. 中谷元

    国務大臣(中谷元君) もう一度答弁をいたしますが、九・一一は当たらないということで過去答弁をいたしております。  しかし、事態といたしましては、我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃、これが事前に十分察知をされずに突発的に発生をし、また、これにより間を置かずして我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利、これが根底から覆される明白な危険がある状況に至るという場合にこういった存立事態になるわけでございますが、その際は、先ほど申し上げましたように、原則としては事前承認でございますけれども、やはり緊急事態といたしまして事後承認を認めると。その場合におきましては、これを認めなければ我が国の平和及び安全の確保に支障を来す可能性があるというようなケースでございます。
  275. 松田公太

    松田公太君 九・一一は当てはまらないと。一番最初は九・一一のような事例があるということだったわけですけれども、それをすぐに否定されるということで、取り消されるということでよろしいですか、大臣
  276. 中谷元

    国務大臣(中谷元君) 九・一一の事例は、これは当てはまらないということはもう一度申し上げますが、しかし、こういった突発的に我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生をすると、事前に十分に察知されずに突発的に発生をし、そしてもう一つは、我が国の存立が脅かされ、そして国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある状況という状況でございまして、これにおいて判断をしていくということでございます。
  277. 松田公太

    松田公太君 その他の事例、いろいろ今後も是非お聞きしていきたいというふうに思うんですが、例えば事態が発生したその直後に要請がない場合も私は多いんじゃないかなというふうに思うんですね。であれば、その間にしっかりと国会で数日間掛けて、例えば緊急集会を開いて議論する時間があるんじゃないかなというふうに思うんですよ。  でも、そんな時間もないというような状況であれば、私は思うんですけれども、それは個別的自衛権で対応するべく、武力攻撃事態若しくは武力攻撃の予測事態のような状況なんじゃないかなというふうに思うんですね。ですから、そこは私は存立危機事態と分けて考えるべきだと思いますが、いかがでしょうか。最後にお願いします。
  278. 岸宏一

    委員長岸宏一君) 簡潔な答弁を。
  279. 中谷元

    国務大臣(中谷元君) 極めて短時間にそのような事態に立ち入った場合には、国会承認の前であっても並行して自衛隊に行動を命じて、まず何よりも国民の命と平和な暮らし、こういうものを守っていくということが政府としては必要だということでございます。
  280. 松田公太

    松田公太君 修正案の説明をもうちょっとしたかったんですが、時間がなくなってしまいました。これで私は終了とさせていただきます。  猪木最高顧問、よろしくお願いいたします。
  281. 岸宏一

    委員長岸宏一君) 以上で松田公太君の質疑は終了いたしました。(拍手)     ─────────────
  282. 岸宏一

    委員長岸宏一君) 次に、アントニオ猪木君の質疑を行います。アントニオ猪木君。
  283. アントニオ猪木

    アントニオ猪木君 今日は、元気ですかはないんです。日頃、元気を売り物にしているんですが、なかなか現金が付いてこないということで、世の中ままにならないということで、今回の安保法案もなかなかかみ合わないし、でも、いずれ結論は出されるんでしょうが、戦後最長という九十五日間の延長国会ということで、総理が言われる国民に十分な理解をということでやられておりましたが、この安保法制、戦争法案とやゆもされておりますが、今現在、新聞でも出てもおりますが、安倍総理の延長した効果と言っていいんでしょうかね、国民にどの程度浸透したか、お聞きしたいと思います。
  284. 安倍晋三

    内閣総理大臣安倍晋三君) 今回の法案については、いまだ国民の皆様には十分な御理解をいただいていない面があると考えておりますが、政府としては、今後の法案審議においても国民の皆様の幅広い御支持が得られるよう、できる限り分かりやすく丁寧な説明に努めてまいりたいと思います。  もちろん、戦争法案などでは断じてなく、あくまでも国民の命と平和な暮らしを守り抜くための必要な法案でございます。
  285. アントニオ猪木

    アントニオ猪木君 先日の委員会でも質問させてもらいました。外務大臣、法制局長官、砂川事件ですが、多分もう、私もテレビを通じていろいろこのことに関して聞いていると、私なりの考え方もありますが、もういいんじゃないかという気もするわけですけど、でも、やはりこれはきちっと、これをちゃんとした言葉でもらわないとということで、この前、この件は、質問をしたときに、外務大臣はその公文書自体は認識していない、法制局長官はそういう報道があることを知っているが答える立場にないと。いつも思うんですが、その立場にないという言葉は何とかなくせないですかね。その立場であるから聞きたいのになと思うんですが。  改めて総理にお聞きします。一九五九年、これもまた私も繰り返すの嫌なんですが、米軍の駐留違憲という東京地裁の判決に対して、当時のマッカーサー駐日大使が藤山愛一郎大臣に最高裁の跳躍上告をするというような圧力を掛けて、最高裁長官が判決内容、判決期日について密談していたとされる文書が機密解除になり、アメリカ公文書館から開示されました。  総理が集団的自衛権の合憲根拠としてよく例に挙げられる砂川事件最高裁の判決ですが、となると、いろいろ本当に国民に、先ほども皆さんが言われている分かりやすくといっても、本当に聞いていれば聞いているほど分かりにくくなってくるという。このようなアメリカの中でもまた今後開示されるような文書があると思いますが、そのときにどういう対応をされるのか。本当にアメリカとの関係もやっぱりこの席ではなかなか言えないのかもしれませんが、一番大事なことは、戦後七十年の中でアメリカとの関係時代時代によって、今の砂川事件も時代の背景を見れば日本との力の関係も分かる気がします。  そんな中で、今質問させていただきました公文書について、質問させていただきます。
  286. 安倍晋三

    内閣総理大臣安倍晋三君) 御指摘の点につきましては、既に外務大臣から答弁をさせていただいておりますが、そもそも砂川事件に関し、その審理過程で裁判の取り進め方や判決内容等について日米間で交渉したという事実はございません。その上で、政府として、米国において公開された米国政府作成文書の中身について一々コメントすることは適当ではないと考えております。  いずれにせよ、憲法の解釈を最終的に確定する権能を有する唯一の機関は最高裁判所であり、砂川判決は、裁判官十五名がですね、全員が一致をした、全員一致の上で出した判決であります。平和安全法制は、最高裁判所が砂川判決で示した考え方に沿った判決の範囲内のものであり、憲法に合致したものと考えております。
  287. アントニオ猪木

    アントニオ猪木君 本当に私なんかはここにおられる皆さんと全然頭が違うので、悪いものですから、最初に新三要件といったら苦しいことかなと思うほど本当にあれですけど、次に防衛費についてお伺いしたいと思います。  一九九〇年は、ちょうど私もイラクに単身で乗り込んでイラクの人質解放ということにつながりましたが、その後、事態は本当にイラクをめぐる情勢が悪化して湾岸戦争へと突入していきます。当時、日本では、まさに今の国会のような国連平和協力法案の審議で紛糾していました。結果廃案となりましたが、日本は百三十億ドルもの資金を提供し、その資金がどのように使われたのか分かりませんが、一兆円以上もの税金が投入され、また後のイラク戦争ではODAの名目で総額五十億ドルもの資金が提供されております。  今いろんな裏ネットでいろんな話がありますが、このお金については私なりにいろんな情報は持っているつもりですが、政府としてはこのような状況について、これから、高額な戦費の総額に対して、実際掛かる金額は大変な金額が今言ったような感じで、当時、ドイツのゲンシャー外相が追加支払を、実際に掛かる金額と同時にその使われたお金が合わないということで、ゲンシャー外相がアメリカのホワイトハウスに乗り込んでその経緯を追及したということがあるそうですが、日本も先ほども出ました事後検証ということを徹底して、もうちょっといろんな部分でやるべきだと私は思います。  仮に今回の安保法制が施行されると、自衛隊が海外で活躍できるように、つまり活躍範囲が広がる、それに当然伴う装備や隊員が必要となると思いますが、結果として、防衛費が負担が増え、防衛予算も大幅に増額されるんではないかと思います。  総理にお伺いします。法律の成立後、防衛費について、そのような今後の見通し、あるいは当然今申し上げたようなことが起こり得るだろうと思いますので、総理の見解をお聞かせください。
  288. 安倍晋三

    内閣総理大臣安倍晋三君) 今後とも、国民の命と平和な暮らしを守る、そして国際社会の平和と安全に貢献をするという自衛隊の任務に全く変わりはないわけでありまして、法整備の主眼は、このような任務を切れ目なく、より一層効果的に果たすことができるようにすることにあります。  このため、基本的に、新たな法制により全く新しい装備が必要になったり、装備や自衛官の定員あるいは防衛費の大増強が必要になるということはありません。今後とも、厳しい財政事情を勘案をし、一層効率化、合理化を徹底した防衛力の整備に努める考えであります。  自衛隊の装備や予算については、今回の法整備とは別途、一昨年末に防衛計画の大綱及び中期防を閣議決定をしており、厳しさを増す安全保障環境を踏まえて自衛隊の体制の充実強化を図っています。このうち、中期防においては五か年間の防衛費の総枠を明示し閣議決定をしていますが、五年間実質平均〇・八%防衛費を伸ばす計画となっているところであります。  政府としては、今回の法整備によってこれらの計画を見直す必要があるとは考えてはおりません。引き続き、現行計画に従って着実な防衛力の整備を行っていく考えであります。
  289. アントニオ猪木

    アントニオ猪木君 先日の委員会で、核兵器を輸送することは理論上できなくはないという答弁がありましたが、その後、論ずるまでもなく、あり得ないという見解を示されました。  歴史を振り返りますと、先ほども同僚議員が質問していましたが、そのときの権力者によっていろんなものが変わっていくという、今回、本当に戦争映画やいろいろ戦後の歴史、テレビで報道されていましたので見ていたときに、今言われるようなことで、もしも権力者が現れて都合よく解釈を変え、危険な方向に向かうことが考えられる、その場合、日本には非核三原則があるから大丈夫だと考える人が多いようですが、実のところ、非核三原則は国会決議ではあるが法律ではない、法的な拘束はありません。  ここまで深く余り考える人も国民の皆さんの中では少ないかと思いますが、世界では、ニュージーランドで一九八七年に非核法という法律が制定されています。唯一被爆国である日本でも是非この非核三原則を法制化して、世界に積極的平和主義を、安倍総理がいつも言われているこの積極的平和主義をアピールすべきだと思いますが、総理のお考えをお聞かせください。
  290. 岸田文雄

    国務大臣(岸田文雄君) 我が国は、戦後、平和国家として歩みを進め、そして、唯一の戦争被爆国として非核三原則を堅持してまいりました。この非核三原則につきましては、既に内外において十分周知をされていると思っています。  例えば、一昨年末、我が国が策定した初めての国家安全保障戦略の中にも非核三原則、この言葉は明記されています。また今年、日米の間で合意いたしました新ガイドラインの中においても非核三原則、この言葉は明記されています。このように、国の内外における公の文書に明記されている非核三原則につきまして、今から改めて法制化することは考えておりませんが、このように国の内外において我が国がしっかりと明らかにしている非核三原則、この方針はこれからも決して変わることがないと考えています。  唯一の戦争被爆国として核兵器のない世界を目指す、そして平和国家としてこれまで以上にしっかりと国際社会の平和と安定に貢献していく、こうした方針につきましてはこれまでも丁寧に国際社会に説明をしてまいりましたが、その中で各国から高く評価され、理解されているところであります。是非、今後とも、我が国のこうした方針は丁寧に説明していきたいと考えます。
  291. アントニオ猪木

    アントニオ猪木君 次に、先日も質問させてもらいましたが、オリンピックについてですね。  いろいろオリンピックの資料を見ていく中に、パラリンピックも、まずはこの一番暑い時期にオリンピックを選んだということ、誰が考えてもおかしいと思うんですが、大会のコンセプトの中に、この時期は天候は晴れる日が多く、かつ温暖であるため、アスリートが最高の状態でパフォーマンスを発揮できる理想的な気候である、ばかじゃないかと本当に大きなあれでどなりたいんですけどね。  今日は、昨日の新聞ですかね、たしかパラリンピックの人たちの、東京新聞だったですかね、昨日の東京新聞の朝刊ですが、東京パラリンピックは五年後の八月二十五日に開催されます。厳しい残暑も予想されますが、車椅子を使う選手の中には首の中の神経、頸椎の損傷など、体温調整機能を失い発汗のできない人が少なくない。選手らは、開催日程を遅らせられないか、屋外競技は命懸けになると切実。同様の障害のある観光客のケアも必要です。根本的な暑さ対策を望む声が強いです。  そういう中で、本当に、ちょうど最初から出直しということであればこのオリンピックの日程も是非変えられると。この前の大臣のあれでは、この暑さでどうだという質問をしたら、温度が上がらないように道路に舗装技術の活用やドライミストの設置をすると言われましたが、これも本当にどなりたい気がしましたけどね。本当に、大臣、このちょうど前の質問のときでしたから、ここの国会を一周走ってきてくださいよと言おうかなと思ったんですが、時間がなくなってしまいました。  そんなことを含めて、国民のいつも我々が言う声を酌み取るというか、その辺が、この大会がせっかくそういうことであれば、そのような事故がないことを望みますが、起きたとしたら本当に一番の平和を目的とするオリンピックが台なしになってしまうと思います。  そこで、これについて、どなたでもいいですが。
  292. 岸宏一

    委員長岸宏一君) 遠藤オリンピック担当大臣。時間がありませんので、簡潔にまとめてください。
  293. 遠藤利明

    国務大臣(遠藤利明君) お答えします。  私も昔、ラグビーをやっておりまして、この時期合宿をして、暑いなという印象は大変ございます。ですから、今度のオリンピック・パラリンピックの大会の中で、安心した、安全な運営の中で、こうした暑さ対策は最大の課題だと思っております。  ただ、委員御存じと思いますが、二〇二〇年、この東京大会、IOC理事会が他の国際競技大会のスケジュール等を総合的に勘案して七月から八月の間での開催を決めている、そして、その変更は極めて困難だと。今委員指摘の二〇一二年五月にIOCが策定した二〇二〇立候補都市マニュアルによりますと、開催期間については七月十五日から八月三十一日までの期間内から選択されるものとされ、例外としてIOC理事会がその他の日程に合意した場合を除くとされております。  ただ、これまでのオリンピック招致、例えばカタールが落選をしたときの理由が八月ではなくてそのほかの期間だったということも勘案してこの日程を決定し、それをIOCからも了解いただいておりますので……
  294. 岸宏一

    委員長岸宏一君) 時間が過ぎておりますので、簡潔な答弁をお願いします。
  295. 遠藤利明

    国務大臣(遠藤利明君) こうしたことは極めて困難であると承知しております。
  296. アントニオ猪木

    アントニオ猪木君 御丁寧な答弁ですけど、これも余り説得力がないなと思いますので。  どうもありがとうございます。
  297. 岸宏一

    委員長岸宏一君) 以上でアントニオ猪木君の質疑は終了いたしました。(拍手)     ─────────────
  298. 岸宏一

    委員長岸宏一君) 次に、中野志君質疑を行います。中野志君
  299. 中野正志

    中野志君 次世代の党の中野正志でございます。  安倍総理、私はこの十日間で二つのうれしい出来事に遭いました。一つは、私たち被災者を代表いたしまして、宮城県の仙台育英高等学校野球部、高校野球百年にして、残念ですが、優勝旗、白河越えならずではありましたけれども、大変に頑張って頑張って頑張って、あの甲子園で最後の九回、力尽き、本当に、準優勝という結果には終わりましたけれども、被災地あるいは被災地の皆さん、そして復興に携わる人、多くの県民の皆様に深い感動を与えたところでありますし、また大きな勇気を与えていただいた、たくさんの声が寄せられておりますし、またメディアを通じて多くの県民、東北六県の皆さんの声が聞かされております。本当にうれしい限りだと思います。  また、もう一つは、先ほど来御紹介があります、十四日に発表されました七十年談話であります。戦争に向かった道程、その分析について、若干意見の違いはありますけれども、安倍総理の、次の世代、次世代に謝罪を続ける宿命を背負わせてはならないと、この日本の未来へのメッセージに私は強く共感するとともに、すばらしい談話だと率直に評価を申し上げたいと思います。  そういう意味で、安倍総理には、戦後の日本の歩みにどういう思いを抱いてあの考え方を御開陳をされたのか、それをお伺いをいたしたい。同時に、改めて、これからの新しい日本の国づくり、国の在り方について決意をお伺いをいたしたいと思います。
  300. 安倍晋三

    内閣総理大臣安倍晋三君) 戦後七十年という大きな節目に当たって、さきの大戦への道のり、二十世紀という時代を大きく振り返り、その教訓を胸に刻んで、戦後八十年、九十年、百年に向けてどのような日本をつくり上げるのか、世界に向けて発信したいと考えました。  国民の皆様とともに日本が目指すべき国家像を描くという意味では、できるだけ多くの国民と共有できるような談話を作成したいと考えました。その意味では、談話全体としてのメッセージが大切であり、一部だけを切り取って議論するのは、より幅広い国民とのメッセージを共有するという観点からは適切ではないと、こう考えております。  また、国策を誤りといった抽象的な用語で終わらさせず、どのように針路を誤ったのか、歴史の教訓を具体的に酌み取らなければならないと考えました。ただし、政治は歴史に対して謙虚であるべきとの考え方の下、その具体的な作業については、二十一世紀構想懇談会を設け、有識者の皆さんに行っていただきました。  戦後七十年が経過し、今を生きる私たちの世代の責任として、戦争と何ら関わりのない私たちの子や孫、その先の世代の子供たちが謝罪を続けなければならないような状況をつくってはならないと考えています。しかし、それでもなお私たち日本人は、世代を超えて過去の歴史に真正面から向き合わなければなりません。何よりも、あの戦争の後、敵であった日本に善意や支援の手を差し伸べ、国際社会へと再び受け入れてくれた国々、その寛容の心に感謝すべきであります。同時に、過去を反省すべきであります。歴史の教訓を胸に刻み、より良い未来を切り開く責任があると考えています。  現在、世界に目を向ければ、いまだに紛争は絶えないわけであります。ウクライナあるいは東シナ海、南シナ海など、力による現状変更の試みは決して許されないわけでありますし、また、貧困やテロの問題は深刻さを増しているわけであります。  七十年前の歴史からの教訓は、日本一国のみならず、世界に対しても大きな現代的な意義を持つものであると、このように考えるわけでありまして、今後日本は、さきの大戦の教訓を酌み取りながら、国際社会とともに、共通課題に対して世界とともにその課題解決する上において積極的に貢献をしていきたいと、このように考えているところでございます。
  301. 中野正志

    中野志君 談話についての中国、韓国の反応は、いつもより抑えぎみではありましたけれども、政府側あるいはメディア側共に残念だったなと。  考えてみれば、日中共同声明あるいは日中平和友好条約、韓国は日韓基本条約、過去の歴史を清算してお互いに未来志向を目指してきたはずであります。また、日本は、反省は賠償、ODAという形で、中国には総額で三兆六千五百億円超、韓国には総額で六千七百億円超を支援をしてまいりました。その日本のODAは、北京の新空港、あるいは高速道路群、あるいは上海のリニアの建設に貢献したことは間違いありません。韓国では今の朴大統領のお父さんの時代、漢江の奇跡ということですごい経済成長を成し遂げたのではないかと思っております。  しかし、残念でありますけれども、この日本の両国への支援協力について、日本国民の皆様の認識、理解、そんなに多くはない、本当に一部であります。中国、韓国の国民、大変残念でありますけれども、政治に興味のある方々だけでありまして、ほとんど知らされていないのが現実であります。  日本人は自らの成果を誇って言わない国民性があって、それは日本国内では美徳だと言われておりますけれども、事外交においてはやっぱりそういう態度でいいのかなという疑問を実は感じておりますし、現状を鑑みますと、大変大きな疑問となって私個人の中でおります。この私の認識について、どういう感想をお持ちですか。
  302. 安倍晋三

    内閣総理大臣安倍晋三君) 中国に対しては、今、中野委員が御指摘のように、一九七〇年代の支援開始以来、北京首都空港を始め、総額三兆六千五百億円を超える支援を実施しました。中国の改革・開放政策を促進し、今日の目覚ましい経済発展の基礎づくりに寄与してまいりました。  韓国に対しては、一九六五年に締結された日韓請求権・経済協力協定に基づき、当時の韓国の国家予算のおよそ一・六倍に当たる無償資金協力三億ドル、有償資金協力二億ドルの支援を実施しました。それを契機として浦項総合製鉄所、京釜高速鉄道、ソウル地下鉄の建設等を支援し、漢江の奇跡の実現に寄与したほか、一九九〇年代後半に韓国が通貨危機に見舞われた際にも支援を行ってまいりました。  我が国は、どちらかというと中野委員指摘をされたような態度で、礼儀正しい国としてつつましく振る舞い、このような多大の支援を行ってきたことを内外に喧伝してこなかったのでございますが、今や時代は変わったのであり、引き続き礼儀正しさは保ちつつも我が国として主張すべきは堂々と主張していくべきと、このように考えております。  今後は、我が国国際貢献の実態について、我が国国民のみならず、中国や韓国の国民を始め広く国際社会全体に対し、これまで以上に積極的に発信していかなければならないと考えております。
  303. 中野正志

    中野志君 ありがとうございます。是非そうした外交姿勢で臨んでいただきたいと思います。  あえて紹介をしておきますけれども、先ほど来いろいろ険しいお話もありました。一九六四年の七月十日、中国を訪問した日本社会党の佐々木更三委員長が過去の戦争について謝罪したとき、毛沢東主席は何と言ったか。何も申し訳なく思うことはありません、日本軍は中国に大きな利益をもたらし、中国人民に権力を奪取させてくれました、皆さんの軍隊なしには我々が権力を奪取することは不可能だったのですと。これは、三一書房で出している毛沢東著作の「毛沢東思想万歳」下巻に紹介されております。  同時にまた、その後、中国の実質的な権力者でありましたトウ小平さん、この人は、日米安保条約を強化していただくのでなければならない、日本の自衛隊、増強していただくのでなければならない、こうあの当時申し上げられたではありませんか。  いろいろな意見の開陳がありました。これ以上のことは申し上げませんけれども、あえて紹介だけしておきたいと思います。  はてさて、戦後七十年、私たちの国の平和は自衛隊と在日米軍による抑止力によって維持されたことは間違いありません。後で図面を示しますけれども、中国軍事力増大、東シナ海、南シナ海での領土的野心、まさに制海権、制空権確保しようと、貪欲なもう野心であります。また、北朝鮮は、御存じのとおり、核兵器保有をいたしております。また、そんな中で、アメリカは世界の警察官をやめるというのであります。  こういう状況でありますから、私たちは我が国の平和を維持して、国民の生命を維持して、国民の生命、財産と国家の主権を守る、このことはやっぱり日米同盟をしっかり強固にして、我が国自身も確固とした相応の安全保障体制を組む、このことが肝要だと思います。ですから、今回の法案は、私たちは戦争抑止法案だと理解をいたしておりますけれども、残念ですが、戦争法案という言葉のインパクトだけでレッテルを貼られております。  しかし、皆さん、今マスメディア、報道機関が法学者や有識者は反対ばかりであるように報じておりますけれども、決してそんなことはない。(資料提示)集団的自衛権の行使を認める、そしてこの新安保法案にも賛成だと。例えば、テレビによく出てくる櫻井よしこさんという良識あるジャーナリスト、あるいは辛坊治郎さんもいるではありませんか。あるいはまた、民主党政権下で防衛大臣をやられました、あの、失礼でございます、森本敏さん、民主党政権の防衛大臣ですよ。この新安保について、テレビで、あるいは雑誌で一生懸命啓蒙されているではありませんか。是非そういうことを国民の皆さんにも理解をしていただきたい。  また、世界各国はどう評価したのか。このパネルであります。アメリカ、あるいはEU、ドイツ、フランス、四十四か国が高い評価と日本貢献への期待を示しているのであります。もう残念ながら、懸念を表明しておりますのは中国と韓国だけであります。私たちは集団的自衛権、これは本来国連憲章五十一条によって、全ての加盟国に認められた国際法上の固有の権利、このことを理解をしなければなりません。  是非、今回の安保法制について、法案の中身についての議論は当然でありますけれども、法制度そのものについて、そもそも入口論に終始するのは極めて残念と言う以外に言葉が見付からないのでありますけれども、大臣の御見解、お示しください。
  304. 中谷元

    国務大臣(中谷元君) 委員がおっしゃるように、我が国を取り巻く安全保障環境は極めて厳しさを増しておりまして、もはやどの国も一国のみで自国の安全を守れない。つまり、日米安保体制を更に強化をして地域内のパートナーの国の協力関係を深める、すなわち米国やパートナー国と共同すること、それによって抑止力を一層強化をしまして紛争未然に防止をしていくことが重要であると考えておりまして、委員指摘の共同防衛という考えは私も共感を覚える次第でございます。
  305. 中野正志

    中野志君 我が党は、集団的自衛権の行使及び自衛隊の海外派遣について、今までは原則として事前に、特別の事情があるときは事後に国会の承認を得るものとするという考えを示してまいりました。しかし、今回の国会での議論が進む中で、国民の更に広く多くの理解を得ることも必要だと考える中で、先ほど来議論もありました例外なき国会の事前承認、これを私たちは賛成をし、国会による民主的コントロールを十分に及ぼすことがふさわしいと考えるに至ったのであります。  ですから、私たちは、一つには例外なく事前承認を必要とする、二つ目、一定期間ごとに再承認する、三つ目、国会が常時監視、事後検証する仕組みを検討する。実は今日、新党改革荒井国対委員長日本を元気にする会、今日の論者は松田さんでありますけれども、井上国対委員長、私、次世代の三党国対委員長合意をいたしまして、修正、これから自民党を始め各党に申入れをさせていただきたいと思います。是非この修正協議に応じていただきたい。また、安倍総理、そうすることがより広い国民の皆様の御賛同をいただくことができる。  また、国民の皆様には、もうどうしても反対だ、廃案だという人たちもおりますけれども、私たちは、日本を守るため、国民を守るためのこの法案でありますから、是非そういう意味では国会に例外なく事前承認を求めるということで、国会の衆議院も参議院も両方の承認をいただいてから派遣、こういうことになれば国民の皆様にもより安心感をお持ちいただくのではないかと率直な御提案でもあります。よろしく御検討いただきたいと存じます。
  306. 安倍晋三

    内閣総理大臣安倍晋三君) 国会の関与が必要な活動については原則として事前承認としておりますが、あくまでも例外として事後承認を認めるものでありまして、やむを得ない場合、まさに、においてのみ事後承認となることもあり得ますが、原則はあくまでも事前承認であって、政府として可能な限り国会の事前承認を追求していく考えであります。  その上で申し上げますと、御党が検討されている修正案が国会に提出をされれば、国会での審議は更に深まるものと考えておりますし、そうした修正案を御党でまとめて、考え方をまとめられて修正案を提出をされるということについては敬意を表したいと、こう思うところでございますし、政府としては真摯に対応してまいりたいと考えており、早期に国会に提出されることを期待したいと思います。
  307. 中野正志

    中野志君 是非そのようにお願いを申し上げたいと思います。大変前進的な答弁だということで私たちは受け止めさせていただきたいと存じます。  時間がありませんから、あえて私たちは、今回、先ほど来紹介をいたしておりますように、戦争法案だとレッテル貼りをされる人がおります。また、徴兵制やるのだということで変に国民の皆様をあおっている人たちもおります。政治陣営がそういう国民にマイナスのあおりをするということは、私は決して良くない。徴兵制一つ取ったって、そんなことをやったら政権、もう永久に、永久に政権に就くことはできない。そんなことは自民党たりといえ、あるいは民主党たりといえ、やれる話でありませんし、国民の皆さんはその辺を冷静に見ておられるはずであります。  私たちは、しっかり……(発言する者あり)今、後ろからやじで憲法がどうのこうのという話もありますけれども、憲法云々を言うのなら、もう憲法、基本から、九条からやるべきでありまして、今更神学論争をやる私たちは考えはありませんけれども、とにもかくにも私たちはしっかりサポートをさせていただきたいと思います。  どうぞよろしく頑張ってください。
  308. 岸宏一

    委員長岸宏一君) 以上で中野志君質疑は終了いたしました。(拍手)     ─────────────
  309. 岸宏一

    委員長岸宏一君) 次に、渡辺美知太郎君の質疑を行います。渡辺美知太郎君。
  310. 渡辺美知太郎

    渡辺美知太郎君 無所属渡辺美知太郎です。  今日は、福島第一原発事故により生じた放射能の問題について質問をいたします。  通告では今日は、本当は子供の健康調査と子ども・被災者支援法について望月大臣に伺うところなのですが、今朝、ちょっと看過できないニュースがありましたので、まずこの事実関係から伺いたいと思います。  内容は、放射性指定廃棄物の最終処分場、言わば長期管理施設と言われていますが、この処分場の詳細調査候補地、宮城県三か所あります。栗原市、大和町、加美町、この三か所が、あした強制的に調査を行うと、これはNHKの東北版で報じられていまして、それは事実なのか伺いたいと思っています。そして、本当かどうかまず伺いたいのと、本当の場合は、これはボーリング調査に入るのか。  そして、宮城県以外の詳細調査候補地、今、栃木と千葉県でも詳細調査候補地ありますが、この二県に関しても近日中に強制的に調査を行うか、事実関係を望月環境大臣に伺いたいと思います。
  311. 望月義夫

    国務大臣(望月義夫君) ただいまの御質問、ニュースのことでございますが、明日、宮城県において詳細調査を実施することを決めたという事実はございません。  環境省といたしましては、現地での調査については三市町で実施可能となり次第開始したいと、これまで申し上げてきたとおりでございます。そして、現時点でもその方針には変わりはございません。そして、なるべく早期に開始できるように、引き続き、三か所の詳細候補地の状況など、これを確認をしつつ、そして判断をしたいと考えております。
  312. 渡辺美知太郎

    渡辺美知太郎君 望月環境大臣におかれましては、米国環境保護長官との意見交換の後にすぐに駆け付けていただきまして、それについては御礼申し上げたいと思います。  では、今大臣おっしゃいました、これ、NHKの強制調査というのは誤報ということでよろしいんですか。環境省はNHKについて、それに対して抗議などを行う予定ですか。
  313. 望月義夫

    国務大臣(望月義夫君) 我々としてはそういう事実がないということでございまして、それぞれニュースを流すということは、やっぱりそれぞれの会社の皆さんが流していることであって、我々としてはその報道についてとやかく申すつもりは今のところございませんが、少なくとも詳細調査をあした宮城県において実施するという、決めた事実はございませんので、この国会の場でそのことを御報告申し上げたいと、このように思います。
  314. 渡辺美知太郎

    渡辺美知太郎君 分かりました。じゃ、詳細調査については以上で終えたいと思います。  では、通告の順で質問させていただきたいと思います。  六月二十二日の決算委員会で、私は望月大臣に福島県外での子供の健康調査を行っていただけないかと質問したところ、大臣からは、環境省の専門家会議の中間取りまとめ、これは一律に子供の健康診断をやることは慎重になるべきだと、そういった内容なのですが、大臣はこれらを引き合いに、福島県外での子供の健康調査は行わないとおっしゃっておりました。もちろん、私も近隣県で一斉に子供の健康調査をやるべきだということは申し上げません。  ただ、今、民間団体やボランティアなどで福島県の近隣県でも子供の健康調査を行いますと、希望者が殺到する事態であります。また、福島県外で子供の健康調査を行わない理由というのが、福島県内より被曝線量が、特に放射性ヨウ素による被曝が福島県内より低いとしか根拠がなくて、私は科学的根拠がちょっと薄いのではないかなと思っております。  また、福島県民健康調査検討委員会では、福島県での甲状腺がんの発生、これについては原発事故によるものではないとは言い切れないと中間取りまとめ出しておりまして、つまり、簡潔に申し上げますと、福島県での、今、甲状腺がんの発生、これはまだ慎重に考えるべきだという立場であります。  そして、福島県外でも、線量が低いからやらなくていいよというのは、私はこれいささか乱暴な話ではないのかなと思っておりまして、これらを踏まえますと、せめて希望者だけでも子供の健康調査をやっていただけないか、再度、環境大臣に伺いたいと思います。
  315. 望月義夫

    国務大臣(望月義夫君) これは、今般の原発事故に係る住民の健康管理についてでございますけれども、何といってもこれはもう非常に専門的なことでございますので、医学等の専門家の御意見を聞きつつ進めることが、これが重要だと、このように我々は思っております。  それからまた、福島県外の近隣では、有識者会議による検討の結果、特別な健康調査等は必要ないとの見解が取りまとめられております。そういったことから、また、世界のそういった機関でございますけれども、WHOだとかそれからUNSCEARの報告書におきましても、こちらでも福島県外における健康調査の必要は指摘されておりません。  昨年十二月に公表いたしました環境省の専門家会議の中間取りまとめでは、放射性ヨウ素による被曝について、福島県内よりも福島県近隣の方が多かったということを積極的に示唆するデータ、これは認められていないということでございまして、我々も、そういうことが少ないということは安心でありますけれども。  その上で、福島県近隣での健康調査については、症状のない子供たち、小児でございますけれども、一律に検査を実施することによって、そして生じてしまうといいますか、そういう問題等、これ細かくはもう先生御存じだと思いますけれども、これを一律に実施することについては逆に慎重になるべきであると。様々、放射性でない偽陽性というような形の中で出てきた場合には、そういう子供たちを心配させたり親御さんを心配させたり、それから、何回も検査をしたり、また治療をしたり。ところが、そういったものが偽陽性で、そうでなかったというようなことが、幾つかの事例が出ておりますので、こういったことを考えると、やはり学者の皆さん、医学の専門家の皆さんの、そういったことを参考にしながら慎重になるべきとの意見が多かったと、こういうことでございまして、我々もそういったものを注視をしながら進めていきたいなと、こんなふうに思っております。
  316. 渡辺美知太郎

    渡辺美知太郎君 それは学者の立場であって、小さな子供を持つ親の気持ちをもうちょっと酌み取っていただきたいなと思っています。  では、放射能関連については最後の質問になるかと思うんですが、私は、福島県内外で放射能の支援施策について格差があるということを度々申し上げてまいりました。この格差があるということについては政府も認識をされていると思っています。といいますのも、井上環境大臣が、これは栃木県の話なんですが、放射性物質除染の関連で栃木県や宮城県の住民の方が持つ、隣接する福島県内の市町村との不公平感、不安感は理解できると過去に発言をしておられます。  そこで、浜田復興大臣に伺いたいんですが、この井上環境大臣の発言についての見解と、政府としては福島県と近隣県の放射能支援策について格差があるということは認識をされているのか、伺いたいと思います。
  317. 浜田昌良

    ○副大臣(浜田昌良君) 委員から御質問いただきましたのは、子ども・被災者支援法の支援対象地域、また準支援対象地域考え方であると思っております。  支援対象地域は施策を網羅的に行う地域でございまして、子ども・被災者支援法基本方針におきまして、原発事故発災後、避難指示区域等と連続しながら年間積算線量が二十ミリシーベルトを下回るが相当な線量が広がっていた地域としまして、福島県の中通り、浜通り、避難指示区域を除いておりますが、ということで決めさせていただきました。二年前でございます。また、支援対象地域に該当しない地域につきましても、基本方針において準支援対象地域として、施策ごとの趣旨、目的に応じて支援することとしております。  栃木県におきましては、支援対象地域ではございませんが施策ごとに必要な支援を行っておりまして、具体的には、学校給食の放射性物質検査や除染、特に今御指摘いただきました除染の震災復興特別交付税で高線量メニューまで支援をするという、この点につきまして井上大臣が御指摘されたことだと思っておりますが、これについても手当てをさせていただきました。  今後も、必要な施策をそれぞれ必要とされている方々に届けられるように取り組んでいきたいと思っております。
  318. 渡辺美知太郎

    渡辺美知太郎君 つまり、余り格差はないであろうという認識なのかなと今の答弁を受けて思いました。  では、次の質問をさせていただきます。次は温泉に関する質問です。  総理は、まち・ひと・しごと創生本部で、本年は地方創生元年であるとおっしゃいました。我が国の温泉、全国にたくさんあると思いますが、この温泉は国内外問わず貴重な観光資源であり、また温泉熱を利用した地熱発電にも活用できます。しかし、温泉地、特に歴史のある地域は、土地の権利関係や相続関係などが実はよく分かっていないという現実があります。  例えば、かつては二束三文で取引されていたような土地は、一個人が単独で所有するのではなくて、親戚などがマンションの共有地のように共有地でずっと相続をされ続けてきたという地域が恐らくいろんな箇所にあると思います。私の地元でも、栃木県も温泉地たくさんあるのですが、特に板室地区というところが、ほとんどの土地が特に手続もされないまま共有地の状態でありまして、土地のほとんどが共有地であるということになります。  共有地ですと、例えば旅館の建て替えを行うにも共有者全員の承諾が必要であったり、またこれ銀行の融資も受けられないということになりまして、せっかく地方創生を掲げられても絵に描いた餅になってしまいまして、これはやはり野党の私としてもゆゆしき問題だと思っています。  そこで、まず、法務省にお聞きしたいと思います。  この共有地の問題は、民法の二百五十一条で、共有地の変更をする場合には共有者全員の同意が必要であるということになっていますが、ただ、何世代も前に遡って、系譜を遡って、それから子孫を探していくというのは、これは大変な作業でほぼ不可能に近いと。そこで、地方創生を成功させるためにも民法の改正あるいは特別法などの施行を御検討いただけないかと思っています。これについては、手短に法務省から御答弁いただきたいと思います。
  319. 深山卓也

    政府参考人(深山卓也君) 御案内のとおり、所有権は他人の干渉を受けないで所有物を全面的に支配できるという絶対的な権利でございますが、今お話しになっている共有持分、これも所有権の一形態でございますので、共有地上の建物の建て替え、あるいは共有地の抵当権の設定といった共有持分の権利を制約するような行為は、民法上、共有者全員の同意がない限りできないというふうにされております。  この民法のルールは、あらゆる共有関係、土地以外のあらゆる共有関係に適用される一般的なルールでございますので、民法を改正して多数決で共有物の変更を可能とするというのは、この共有持分が所有権の一形態であるという性質に反するために極めて困難であると考えております。
  320. 渡辺美知太郎

    渡辺美知太郎君 法務省さんからの答弁は予想されたものだったと思っています。  そこで、石破地方創生大臣に伺いたいと思います。  以前、決算委員会でも石破大臣に同じような質問をさせていただいたときに前向きな御発言をいただきました。是非、改めて前向きな御発言をいただきたいのと、地方創生が絵に描いた餅にならないよう施策をちょっと考えていただきたいんですが、石破大臣の御見解を伺いたいと思います。
  321. 石破茂

    国務大臣(石破茂君) 先般も議員とこの議論をさせていただきました。  今、法務省から答弁がございましたように、結局、共有というのは個人の所有権の集合体ということですから、それぞれの持分しか権利は行使できないというのは、これはかなり民法の大原則的なところがございます。  そうすると、これはやはり処分に類するものであって、保管というふうにカテゴライズするのはかなり難しいねということになると、委員の御指摘のように、民法そのものを見直していくのか、あるいは日本国憲法にあります財産権と公共の福祉というものをどのように考えていくべきなのか。  そして、さらには、これは委員と以前こういうお話をしたような覚えもございますが、そういう面倒なことであるならば特区みたいな形でできないのかねというお話も理論的にはあり得ることだと思います。ただ、民法の大原則を特区で超えることができるのかというと、これはなかなか難しいかもしれない。  そうしますと、今、国交省で、太田大臣の方がよく御案内ですが、誰が持っているかよく分からないねということをきちんと追跡しましょうということは、四回会議をやっていただいて方向性が出ているのでありますが、これをどういう形で委員指摘のようなお困りな方々をそうじゃないような状況に置くかというのは、やはりまたこの場で議論させていただきたいと思います。  民法の大原則をどのように考えるか。これ収用ではございませんので余り公共の福祉という概念を軽々に用いるべきだとは思いませんが、どうしたらそういうようなお困りの方々がそうじゃないという状況をつくるかということについては、私自身、その分野の担当大臣として、また委員と議論をさせていただき、きちんとした方向性は見出したいと思っております。
  322. 渡辺美知太郎

    渡辺美知太郎君 石破大臣からの御答弁、前回よりちょっとやや慎重になられているのかなという気はいたしますが、ただやはり、もちろん民法の問題は私もよく分かっております。ただ、民法があるからできないよというのであれば、地方創生は結局これ絵に描いた餅で終わってしまうわけでありまして、できれば、せっかくいろんな施策お願いしています。あと、経済産業省の方でも温泉の地熱発電の事業などたくさん打ち出していただいて、ただ、結局そういった地熱発電も共有地であるからできないよというのでは、これはやっぱりもったいないなと思っております。  そこで、安倍総理に伺いたいと思っています。安倍総理は、地元下関にはにっぽんの温泉百選にも選ばれた一の俣温泉など多数の有名な温泉地があると思っております。そういった土地の権利関係、もしかしたら総理の御地元でも似たような土地の権利関係の問題があるかと思いますが、そういった土地の問題について、特に歴史がある観光地について、この権利関係、複雑にもう江戸時代ぐらいからごちゃごちゃになっているような権利関係解決について、総理からちょっと一言いただきたいと思います。
  323. 安倍晋三

    内閣総理大臣安倍晋三君) 突然の質問でございますが、この言わば共有財産になっているものをどうするかということについては、これは既に法務省からも答弁をさせていただきました。そしてまた、石破大臣からは、その中で何か知恵を出すことができるかどうかということで答弁があったところでございますが、基本的には民法の原則を超えていくというのは非常に困難であろうと思うわけでございますが、そこで石破大臣が答弁したように、何がこの地方創生という名前の下にでき得るかということについては検討していきたいと、このように思っております。
  324. 渡辺美知太郎

    渡辺美知太郎君 総理に通告を出したはずなんですが、それは後でちょっと委員部の方で確認をしてください。  最後の質問になるんですが、公共工事の平準化についてちょっと一言、太田大臣からいただきたいなと思っています。  以前に、私、公共工事の平準化、要は忙しい時期と忙しくないとき、公共工事、年度末にやたら道路工事などが行われる、これもっと閑散期にできないかという御指摘させていただきました。この公共工事の平準化というのは、もう三十年以上前から訴えられている問題ではあるんですが、いまだにこれ、閑散期と繁忙期の差が、三十年前は二・一倍だったと、ところが今一・九倍になりまして、これで進歩ありましたよという御答弁を以前いただいたんですが、やはりちょっとこれでは寂しいと。もうちょっと平準化を推し進めていただきたいのですが、最後に太田大臣の御見解を伺って、私の質問を終えたいと思います。
  325. 太田昭宏

    国務大臣太田昭宏君) 御指摘のとおり、公共事業の平準化というのは非常に大事で、昨今はまた人を確保するということ自体が大変ですから、そこでいろいろ工夫が必要かと思います。どうしても年度ごとの予算になりますものですから、予算成立後に入札契約を行う、そしてどうしても年度初めには工事量が少なくなると、こういう傾向にありますので、その辺を、平準化というのをどうするかということで現在取り組んでいるところです。  現在というのは、昨年度ぐらいから、私、特にこの点を大事だと考えておりまして取り組んできたことで、早期執行のためのゼロ国債の活用とか、あるいはこれまで単年度ということで三月で切ってしまいますから、これを二か年の国債を活用するということとか、あるいは適切な工期を確保するための繰越制度の適切な活用などを進めて、また地方公共団体の出す事業についても平準ということが大事なので、その辺について努めているところでございます。なお一層頑張りたいと思います。
  326. 渡辺美知太郎

    渡辺美知太郎君 ありがとうございます。終わります。
  327. 岸宏一

    委員長岸宏一君) 以上で渡辺美知太郎君の質疑は終了いたしました。(拍手)     ─────────────
  328. 岸宏一

    委員長岸宏一君) 次に、福島みずほさんの質疑を行います。福島みずほさん。
  329. 福島みずほ

    福島みずほ君 社民党の福島みずほです。  まず、桜島の噴火の件は大変心配をいたしました。被害に遭われた皆さんに心からお見舞いを申し上げます。  川内原発の火山噴火対策についてお聞きをいたします。  規制委員会は、たった一回の審査で、九電の運転期間中に周辺火山が巨大噴火を起こす可能性は十分に低いとする主張を妥当とし、巨大噴火の兆候を把握できるとの説明を認めました。しかし、日本火山学会が、巨大噴火の観測例が少なく兆候の把握は困難として、二〇一四年十一月に審査基準の見直しを求めてまとめた提言があります。なぜそれを聞かないんですか。
  330. 田中俊一

    政府特別補佐人田中俊一君) 川内に影響のある火山については周辺火山について全て調査しまして、そのことでこの運転期間中に影響が及ぶようなことはないという判断をしております。  桜島の火山について見ると、いわゆる桜島薩摩噴火というのが約一万三千年前に起こっております。これが最大です、歴史上。これで、このときに川内の原発付近に火山灰が積もったと。それが大体十二センチ程度で、それを十五センチ程度まで積もるということを仮定して、それでも安全機能が確保できるようにしたということがあります。  それから、予知の問題ですけれども、これはカルデラ噴火についての問題でありまして、カルデラ噴火というのは南九州、九州全域に影響が及ぼすような噴火になります。こういったものは過去、観測例がないということで、正確な予測技術が確立されているわけではないけれども、先日も私どもの委員会で設けました火山の専門家の話合いの中で、ある程度の変化は見られると、要するに数万年に一回の火山ですので、かなり前からその変化をきちっとモニタリングすることによって見られるということは皆さん御同意いただいております。  なおかつ、そういったことはありますけれども、そもそもこの川内原発三十年程度の稼働の間にこういったものが起こるということはないという判断をしております。ですから、そういったことで、それでもなおかつモニタリングをして、念には念を入れて、予兆が見えた場合にはあらかじめ空振り覚悟で原子炉を止めるという判断をさせていただこうということで御了解いただいているところでございます。
  331. 福島みずほ

    福島みずほ君 鹿児島地裁の一審判決も、予知はできないということについては判決を出しております。自分たちが運転中にはそんな巨大噴火が起きないというのは、手前勝手の都合がいい理屈ではないでしょうか。火山学者たちは、巨大噴火の予知はできないと言っています。そもそも、こういう危険な原発の再稼働をすることについて、強く抗議をし、再稼働を撤回すべきだということを強く申し上げたいと思います。  次に、七十年談話についてお聞きをいたします。  総理日本の満州事変以降の行為を侵略と認めますか。
  332. 安倍晋三

    内閣総理大臣安倍晋三君) 今回の談話は、二十一世紀構想懇談会において有識者の方々が共有した認識でありますその報告書の上に立って作成したものであります。  報告書にもあるとおり、中には侵略と評価される行為もあったと思います。だからこそ、談話においては、事変、侵略、戦争といった言葉を挙げた上で、いかなる武力の威嚇や行使も国際紛争解決する手段としてはもう二度と用いてはならないことをさきの大戦への深い悔悟の念とともに誓ったと表現したわけでございます。  さきの大戦における日本の行いが、侵略という言葉の定義に当てはまれば駄目であるが、当てはまらなければ許されるというものではないわけでありまして、かつて日本は世界の大勢を見失い、外交的、経済的な行き詰まりを力の行使によって打開し、あるいはその勢力を拡大しようとしたわけでありまして、その事実を率直に反省し、これからも法の支配を尊重し、不戦の誓いを堅持していくということこそが今回の談話の最も重要なメッセージであります。その上で、具体的にどのような行為が侵略に当たるか否かについては歴史家の議論に委ねるべきであると、このように思います。  重要な点は、いかなる武力の威嚇や行使も国際紛争解決する手段としてはもう二度と用いてはならないということでありまして、これが私たちが過去から学び、教訓とし、反省すべきことであります。
  333. 福島みずほ

    福島みずほ君 結局、植民地支配もそうですが、侵略については判断しない、総理は満州事変以降が侵略だと認めないということですね。イエスというふうに答えてください。今の答弁はそうですね。
  334. 安倍晋三

    内閣総理大臣安倍晋三君) 今の答弁はそういう単純な答弁ではないわけでありまして、今申し上げましたように、今申し上げましたように……(発言する者あり)端的に申し上げましょう、報告書にもあるとおり、中には侵略と評価される行為もあったと思うということでございます。だからこそ、談話においては、事変、侵略、戦争といった言葉を挙げた上で、いかなる武力の威嚇や行使も国際紛争解決する手段としてはもう二度と用いてはならないことをさきの大戦への深い悔悟の念とともに誓ったと表現したわけであります。その事実を率直に反省し、これからも法の支配を尊重し、不戦の誓いを堅持していくということこそが今回の談話の最も重要なメッセージであります。
  335. 福島みずほ

    福島みずほ君 問いに対してなぜ総理は答えをしないんですか。問いに対してなぜ答えをしないんですか。(資料提示)侵略戦争と認める、認めない、分からない。でも、これは事変、侵略、戦争としか書いてなくて、侵略戦争だと認めていないですよ。有識者会議ははっきり侵略だというふうに認めていて、侵略だとなぜ認めないんですか。総理の今の答弁も不誠実ですし、安倍総理談話も不誠実ですよ。  もう一つ、自分の言葉でおわびをしていません。「繰り返し、痛切な反省と心からのお詫びの気持ちを表明してきました。」、なぜ総理自身がおわびをしないんですか。ここでおわびをされたらどうですか。
  336. 安倍晋三

    内閣総理大臣安倍晋三君) さきの大戦における行いに対する痛切な反省と心からのおわびの気持ちは、戦後の歴代内閣が一貫して持ち続けてきたものであります。そうした気持ちが、戦後五十年に当たり村山談話で表明され、さらには、戦後六十年を機に小泉談話においてもその反省とおわびの気持ちは引き継がれたわけであります。こうした歴代内閣が表明した反省とおわびの気持ちを私の内閣においても揺るぎないものとして引き継いでいくことを明言をしているわけであります。そのことを今回の談話の中でも明確にしたわけであります。  他方、戦争とは何ら関わりのない私たちの子や孫、その先の世代の子供たちが謝罪を続けなければならないような状況をつくってはならない、これは今を生きる私たちの世代の責任であると、このように考えているところでございます。
  337. 福島みずほ

    福島みずほ君 そういう質問をしていないですよ。あなたはなぜ、あなた自身が主語で謝らないのかということを聞いているんです。ほかの人が謝り続けてきましたということではないですよ。  それから、今だって生きて被害を受けている人たちがいる。何百年たとうが謝らなければならないことはありますよ。  総理、なぜ自分の言葉で謝らないんですか。このままだと、謝らないでしょうが、どうして自分の言葉で謝らないか。この安倍談話はまさに不誠実極まりないものですよ。  もう一つ、この談話の中で、「戦時下、多くの女性たちの尊厳や名誉が深く傷つけられた過去を、この胸に刻み続けます。」、これは何を指しているんですか。それから、誰が傷つけたんですか。
  338. 安倍晋三

    内閣総理大臣安倍晋三君) 今、福島委員は、私がということをおっしゃったわけでありますが、私が私的に安倍晋三として談話を出したわけではないわけでありまして、日本総理大臣として閣議決定をして談話を出したわけでありまして、私がという私的な感想を述べるべきものではないと、こう思っているところでございます。  そして、今おっしゃったことでありますが、まさにそれは、忘れてはならないのは、まさに、戦争の陰には、深く名誉と尊厳を傷つけられた女性たちがいたことも、忘れてはなりませんと、このように申し上げているわけであります。  戦火を交えた国々でも、将来ある若者たちの命が、数知れず失われました。中国、東南アジア、太平洋の島々など、戦場となった地域では、戦闘のみならず、食糧難などにより、多くの無辜の民が苦しみ、犠牲となった。そして、戦場の陰には、深く名誉と尊厳を傷つけられた女性たちがいたことも、忘れてはならないということで、まさに私たちの問題としてここに痛切な反省を述べているわけでございます。  大切なことは、そこからどういう教訓を酌み取るかということでございまして、私たちは、二十世紀において、戦時下、多くの女性たちの尊厳や名誉が深く傷つけられた過去を、この胸に刻み続けます。だからこそ、我が国は、そうした女性たちの心に、常に寄り添う国でありたい。二十一世紀こそ、女性の人権が傷つけられることのない世紀とするため、世界をリードしてまいりますと、今後の日本の進むべき方向、そして歩みについて示しているところでございます。
  339. 福島みずほ

    福島みずほ君 全く答えていないですよ。  この件は、いわゆる慰安婦の問題も含んでいるんですか。
  340. 安倍晋三

    内閣総理大臣安倍晋三君) もう既に何回も、この委員会等も含めまして、いわゆる慰安婦の方々が辛酸をなめたということにつきまして心が痛む思いであるということは申し上げてきたとおりでございます。そうした方々も含め、多くの女性たちが戦争の陰で名誉と尊厳が傷つけられたということを申し上げているわけであります。
  341. 福島みずほ

    福島みずほ君 この談話は主語がないんですね。河野官房長官談話は、軍の関与の下にと、軍の主語があります。慰安婦のことを言っていると言いながら、傷つけられたと受け身で、誰がやっているかは言っていないんですよ。この談話は本当に極めて不誠実なものだというふうに思います。  そしてもう一つ、この談話の中で……(発言する者あり)
  342. 岸宏一

    委員長岸宏一君) お静かに願います。
  343. 福島みずほ

    福島みずほ君 「いかなる武力の威嚇や行使も、国際紛争解決する手段としては、もう二度と用いてはならない。」というふうにあります。  総理、要件ではなく効果についてお聞きをします。  安保法制、戦争法案において、海外で武力行使をすることはできますね、あり得ますね。
  344. 安倍晋三

    内閣総理大臣安倍晋三君) 他国の領土や領海や領空に武力行使を目的に自衛隊を派遣する、これはまさに一般に海外派兵と言われていることでありますから、これは憲法上できないということでございます。
  345. 福島みずほ

    福島みずほ君 しかし、この戦争法案、安保法制は、海外で武力行使をすることはできますね。
  346. 安倍晋三

    内閣総理大臣安倍晋三君) 戦争法案とはどの法案のことでしょうか。平和安全法制についてもし御指摘になっておられるのだとすれば、今申し上げたように、当然憲法の制約を受けるわけでありますから、他国の領土、領海、領空に自衛隊を、武力行使を目的として空爆とか大規模な砲撃等々を行うために自衛隊を送ることは一般に禁じられているこれは海外派兵につながっていくと、このように思うわけでございます。
  347. 福島みずほ

    福島みずほ君 だって、これの法案の中では、海外で、最小限度と、要件としか書いてありませんし、海外の武力行使が目的でなくても、集団的自衛権の行使を認める法案ですから、海外で武力行使ができるんですよね。海外で武力行使することを認めている法案である、それでよろしいですね。
  348. 安倍晋三

    内閣総理大臣安倍晋三君) これはまた同じ答えになるんですが、海外でということが、海外でということがまさに他国の領土、領空、領海を指しているのであれば、それは個別的自衛権のときとも同じでございますが、必要最小限度を超える、つまり武力行使を目的に自衛隊を派遣する、そして空爆を行ったりあるいは大規模な砲撃を行う、敵をせん滅する、そうした行為をすることは一般に禁じられている海外派兵とみなされるわけでございますから、それはできないということでございます。
  349. 福島みずほ

    福島みずほ君 法律には、そんなの何も担保もありません。全くそういうのはありません。防衛大臣は、海外で武力行使することができますかと言ったら、できますと答えていますよ。海外で武力行使ができるんですよ。それは、海外で武力行使ができるわけですから、この条文の国際紛争解決する手段として武力の行使をしないということと全く矛盾しますよ。  それから、もう一つ、この安倍談話の中で、「法の支配を尊重し、力の行使ではなく、平和的・外交的に解決すべきである。」とあります。  だったら、こんな法案要らないじゃないですか。この法案は、集団的自衛権の行使を可能にし、そして後方支援という名の下に弾薬もすぐそばで提供できる、これを可能にする法律です。やるかやらないかは別にしても、そのことを可能にする法律です。まず、法の支配を壊しています。そして、違憲そのもの。それから、力の行使ではなく、平和的・外交的に解決すべきであるとするのであれば、こんな法案要らないですよ。力の行使でまさにやろうとしている。  これ、法を作っていることと、それからこの安倍談話が真逆であると、美辞麗句のきれい事で国民だますなと言いたいですよ。実際、戦争ができる、戦争ができる、後方支援もできる、そんな法案を作っているのに、こんな文句はないですよ。いかがですか。
  350. 安倍晋三

    内閣総理大臣安倍晋三君) 全くその国際情勢の認識が違うと、このように思うわけであります。残念ながら、国際情勢の中において武力による威嚇や現状変更、力による現状変更は行われているわけでありまして、それがない世界にしていかなければならないということでございます。まさにそれこそが、我々はさきの大戦により教訓として学んだことであり、そういう世界をつくっていきたいということであります。  しかし、残念ながら、それを唱えるだけでは実現できないというのは、現実に様々な出来事を見ればお分かりのとおりだろうと思います。私たちは、日本人の命と、そして平和な暮らしに責任を持っているわけでありますから、もちろん、まずは外交において解決を図っていく、これは当然のことであります。国際社会協力をしながらそういう紛争未然に防いでいくという中において、万が一の備えとして、日米の同盟関係をより効果的に発揮させ得るということを示していくことによって、日本が侵略を受ける可能性はより低くなっていくわけでありますし、紛争未然に防いでいくことにつながっていくと、このように確信しております。
  351. 福島みずほ

    福島みずほ君 中国の軍拡と北朝鮮の脅威とおっしゃいますが、それは個別的自衛権の話ですよ。総理のデマゴギーあるいはミスリード、あるいは国民をだましている最大の理由は、集団的自衛権の行使を個別的自衛権のように説明する、でも、集団的自衛権そのものじゃないですか。  海外で武力行使をすることを、日本が攻撃を受けていない、日本が武力行使を受けていないのに海外で武力行使をすることを可能にする法案です。そして、戦場の隣で、後方支援という形で、そして弾薬も提供する。これは今、何を守る、子供を守る、妻を守る、国を守る、戦前、第二次世界大戦中に日本は、お国のために、妻子を守る、そんなことで侵略戦争をやって海外で若者が死んだんですよ、そのことと同じことをまさにやろうとしている。国際紛争解決する手段として武力の行使をやろうとする、それがまさにこの安保法制、戦争法案ではないですか。  口で説明していることと、個別的自衛権の話ではないです、今回の法案は、個別的自衛権の話ではありません。個別的自衛権で解決するのであれば、こんな法案、出す必要はありません。専守防衛は変えないと言いながら、海外での武力行使を認める。こんなのデマですよ。こんなの国民をだますものではないですか。こんな安倍談話は、まさに今、国会で議論になっている戦争法案と全く真逆であり、そして、侵略だということ、植民地支配ということすら談話の中で認めない、これだったら、過去の反省に立っていると全く言えないですよ。  そして、今まさに、武力行使をする、武力行使が可能となる、望めば武力行使ができる、望めば戦場の隣で後方支援ができるようにする、そんな法案は、全く憲法違反であり、許されないと。こんなきれい事の美辞麗句の安倍談話は真のことを言ってない、謝罪もしてなければ植民地支配も侵略も認めてない。これで、戦争法案、これは撤回をすべきであるということを申し上げ、質問を終わります。
  352. 岸宏一

    委員長岸宏一君) 以上で福島みずほさんの質疑は終了いたしました。(拍手)     ─────────────
  353. 岸宏一

    委員長岸宏一君) 次に、荒井広幸君の質疑を行います。荒井広幸君。
  354. 荒井広幸

    荒井広幸君 まず冒頭、総理に、元気の松田さん、次世代の中野さんからの安保法制法案での国会の関与強化につきまして、前向きな、法案に対して非常に議論することはいいことだと、そうした御発言をいただきました。明日からまたこれらの審議を続けさせていただきたいと思いますが、本日は予算委員会でございますので、国民全員がヘルパーさんになる社会づくりという観点でお話ししたいと思います。  自助、共助、公助の私は整理が今一番必要になっていると思います。自助、自分たちでやれること、共助、みんなで力を合わせること、そして公助、これは政治の力や行政の力と、こういうことだろうと思います。ここをもう一回整理し直すことが日本の国の流れであろうと思うんです。共助を、自助、共助、公助の共助を非常に大きな流れにしていく、お互いに助け合っていく、そのことによって人口減少社会のマイナス面や財政負担が上がってくることの問題を取っていく、こういうことだろうというふうに思います。  そこで、まず総務大臣にお尋ねしますが、市町村の助け合い、共助、市町村間でやるべきであろうと。平成の大合併で、三千二百三十二の市町村がありましたが、今、千七百十八かそのような数だと思うんですね。だんだん人口が減ってきておりますので、増やす努力もさることながら、減っている現状を見れば、減っている中でも幸せを享受できなければなりませんので、特に規模の小さい町村においては身の回りのことをお世話する、そして町村間で協力をして、身の回りよりちょっと遠いところは町村間の共助の仕組み、お互いに補完していくということで乗り切っていくべきだと思いますが、方向性のお考えを聞かせてください。
  355. 高市早苗

    国務大臣(高市早苗君) 荒井委員がおっしゃるとおりだと思います。  今は、やはり人口減少、高齢化といった非常に厳しい状況における地方圏におきましては、単独の市町村でフルセットのサービスを展開するということよりは、やはり複数の自治体で役割分担をする、連携を図っていくということが必要であります。このため、総務省では、地域の段階に応じて広域連携のための支援策を重層的に展開していくということにしております。  先ほど市町村合併の話がありました。合併して役場がとても遠いと、取り残されてしまった地域があるような場合に、過疎集落などにおきましては、やはり基幹集落を中心として集落ネットワーク圏というのを形成して、集落の持続的な活性化を図ります。雪下ろしですとか雪寄せですとか、買物機能の確保ですとか、デマンドバス・タクシーの運行などですね。  それから次に、人口五万人程度以上の都市を中心とする定住自立圏では、圏域全体で必要な生活機能を確保していきます。これは、やはり中心市によって夜間の診療所、これを続けていくですとか、それからまた圏域バスの運行などができるかと思います。さらに、人口二十万人以上の都市を中心とする連携中枢都市圏では、圏域全体の経済成長の牽引の役割を担うことを期待いたしております。
  356. 荒井広幸

    荒井広幸君 安保法制を審議する間も、我々の生活の身の回りについては手を抜けないということで安倍内閣が取り組んでいるんだろうと思います。  評価しつつ、私はもっとみんなで助け合うというところを福祉に入れていってはどうかと。今は市町村でした。それをベースに福祉に取り入れていったらどうかということでお尋ねをしていきたいと思いますが、まず厚労省の御担当に聞きますが、政府が推進しているのは、住み慣れた地域の中で、生活の場、住まいも医療も介護なども一体して提供できるようにしていこうというのが安倍内閣の方向なんですね。これはそのとおりだと思います。  では、この単位とは何なのか。地域包括ケアシステムの単位はどういう単位なんでしょう、千七、八百の町村そのものなのか。これは中学校の通学の単位ということで、厚労省、よろしいですか。
  357. 三浦公嗣

    政府参考人三浦公嗣君) お尋ねのございました地域包括ケアシステムは、重度な要介護状態となっても、できる限り住み慣れた地域で人生の最後まで尊厳を持って自分らしい生活を送ることができる社会の実現に向けまして、医療、介護、予防、住まい、生活支援が包括的に確保される体制でございまして、その構築に向けた取組を進めているところでございます。  この地域包括ケアシステムの体制を構築する範囲につきましては、中学校区単位などの日常生活圏を想定しているところでございます。
  358. 荒井広幸

    荒井広幸君 などということでございましたけれども、こういう単位で見ますと、総務大臣がおっしゃった基幹集落というものよりちょっと広いんですよね。  中学校区単位で大体、みんなで福祉に十分な対応をしてもらえるようにしてつくっていこうということになると、なるほど九千五百五十五の中学校があるんです。そして、私立・公立高等学校は五千近いんですよ。そして、この子供たちはたくさんいます、少子化といっても。この子供たちに、もっと社会に子供たちの協力をもらって、貢献してもらいながら、学びながらまた手助けしていくという仕組みができないかという共助の方法を提案したいと思います。それがお手元にお配りしたこの図面です。(資料提示)  中学、高校の授業で、試験があります三年生のときはちょっと難しいかもしれませんが、授業で資格を取りつつ、そして取った後も授業、カリキュラムの一環として、例えば老人ホームでお手伝いをするとか、在宅でユニットを組んで子供たちがお手伝いに行くなどという、こういう活動をしてもらったらどうかという結論は私の提案になるので、総理に最後に方向性についての賛意を聞きたいと思いますが。  では、どうして私が子供たち皆さんに手伝ってもらおうということを言ったか。資格を取れば、ある時期を過ぎれば全員が資格を持てるんです。自分の家族も、そして新しく生活している場でもお手伝いできるようになるんです。国民みんながヘルパーさんの共助社会になっていくんです。そして、ヘルパーさんは足りないわけですよね。  さて、パラリンピック・オリンピック行われる二〇二〇年、介護人材は何万人必要なんですか。そして何万人不足するんでしょうか。厚生労働省、お願いします。
  359. 鈴木俊彦

    政府参考人鈴木俊彦君) お答え申し上げます。  二〇二〇年において必要となります介護人材の数でございますけれども、これは昨年度、全国の都道府県におきまして推計を行っていただきました。具体的には、各市町村の第六期介護保険事業計画に位置付けられました二〇二〇年のサービス見込み量、これなどに基づきまして都道府県ごとに必要となる人材数を検討していただきまして、これを積み上げたわけでございます。その結果、二〇二〇年において必要と見込まれる介護人材は全国で二百二十六万人でございます。  一方で、現状のまま推移いたしました場合に、同じく二〇二〇年において供給が見込まれる介護人材の数でございますけれども、これも全国の都道府県で昨年度推計をしていただきました。具体的には、入職者、離職者の動向に生産年齢人口の減少などを掛け合わせまして、また、これから講じます新たな施策の効果は一切考慮しないということで推計していただいて、これを積み上げたところ、二〇二〇年において供給が見込まれる介護人材は全国で二百六万人という結果でございました。
  360. 荒井広幸

    荒井広幸君 よって、最後の答えとして二十万人が足りないということですね。ここですよね。現在のやり方をやって、安倍内閣では様々に今、手当を上げている、そういうことをやっていますが、そういうものも含めて、去年の段階ですから若干ずれはあるんですが、去年の段階で進めていった場合のことでいうと、オリンピックまでに二十万人足りないんですよ。  その二十万人の皆さんは、私は、小学、中学の子供さんたちに授業で資格を取っていただきつつ、そして、取ったから終わりというカリキュラムじゃなくて、二年生になっても高校に行っても地域にお手助けとして奉仕をしていくという共助のカリキュラムを組んでいったらどうかと申し上げているわけなんです。  そこで、厚労大臣にお尋ねしますが、私が今申し上げたようなことは厚労行政から見てどう評価をされますでしょうか。私の言った方向はいかがでしょう。
  361. 塩崎恭久

    国務大臣(塩崎恭久君) 本来、日本社会はあらゆる年代が助け合うという社会だったはずでございますので、今お話をいただいたような中学校、高校の生徒さんが介護にも当たる、資格も取る、大変私は前向きに評価をさせていただきたいというふうに思います。
  362. 荒井広幸

    荒井広幸君 では、文科大臣にお尋ねします。  そう言っても、カリキュラムになけりゃできないんですね。そこで調べてみますと、随分やっていますね。やっているというのは、いわゆる、幾つかあるんですが、福祉系高等学校、ここは介護福祉養成教育で資格が取れていくんですね。それから、資格までいきませんけれども、一般の高校で、神奈川県の黒岩知事等がやっていますが、高校生介護職場体験促進事業なんです。  こういったものをカリキュラムに組んで、今のを発展させて、普通科学級の子供たちにもヘルパー二級程度、昔の話ですが、そこが、資格が取れつつ、さらに授業の中で地域にお手伝いをしていくという、そういう形をつくるためには、中央教育審議会ですか、ここできちんとオーソライズして、文部省そして内閣で決めてもらわなければなりません。  文科大臣、今その審議会が行われています。どうでしょうか、全ての中学、高校生でのこうした共助。資格も取れるし、そして地域にもお手伝いする、こういうカリキュラムを組んでみてはどうでしょうか。
  363. 下村博文

    国務大臣(下村博文君) 非常に前向きな、すばらしい案だというふうに思います。  御指摘のように、少子高齢化が進む中で、子供たちが介護の意義や社会保障について理解を深めるとともに、高齢者との触れ合いや交流、介護体験を実際に経験する機会を持つということは大変重要なことであるというふうに思います。このため、現在、学校教育におきまして、学習指導要領に基づき、中学校社会科や高等学校公民科、家庭科などにおきまして、高齢者との関わり合いやあるいは介護について学習がなされております。  また、学習指導要領改訂について審議している、御指摘がありました中央教育審議会におきまして、例えば高等学校に新科目、公共、これは仮称でありますが、こういう科目を設けて、主体的な社会参画に必要な力を実践的に育むための社会保障などについて学ぶこととか、あるいは高校の家庭科において、少子高齢化社会を踏まえ、高齢者を支えるために必要な知識や技能、コミュニケーション能力を育むことといった議論がなされておりまして、インターンシップの充実とともに、社会的、職業的な自立に向けて必要な力を育むこととしております。  文科省としては、引き続き、あるいは今の御提言を踏まえながら、子供たちの介護についての理解が深まるよう努めてまいりたいと思います。
  364. 荒井広幸

    荒井広幸君 評価されて努めていかれるだけでは駄目なんです。  この中央教育審議会には介護の専門家がいないんです。これは、私は以前にもこの問題は取り上げているんですね。ですから、今、みんなで助け合いをしていくということは体感することでありますし、それは地域にこれを還元していくことでもあると思うんですね。これをきちんとカリキュラムに組むということを取り組んでいただけませんか。  そして、その取り組んでいただく中で、これは総理にお尋ねして聞くんですが、福島県の川口高校は、二十年ちょっと前です、我々が当選したときに介護保険を導入したわけですね。九三年、九四年です、介護保険。あの頃は、家族の世話をほかにさせるなんて、施設でさせるなんてとんでもないという話でした。だから、そういう問題がありましたけれども、今はやっぱりそういう形で進んでおりますね。  そうしますと、この川口高校では、学校の下に特別養護老人ホームがありまして、そして授業の中で、これもう単位制です、高校は、その単位を認めるようにして、お手伝いに行くようにしていった。ホームヘルパー二級、今でいう介護職員初任者研修、それをやれるようにしていったんです。それで資格を取っていく。それで、今度は、その資格を取っていく中で、さらに授業時間きちんとして、ユニットを組んで、そして地域に、施設に、それから御家庭にお手伝いに行くようにするということにすれば、人手不足というのは随分解消できていくんですね、総理。そういうことをしていかないと、日本社会は心までも失われていくんじゃないでしょうか、人口だけじゃなくて。  そういう意味で、生徒が介護職員初任者研修の資格を取ると同時に、地域に、子供たちの了解ももらって、みんなで助け合っていこうという、そういう授業というか社会活動までをカリキュラムとして組んでいく、国民皆さんがヘルパーさんになっていく共助社会を構築することについて、総理の御見解をお尋ねしたいと思います。
  365. 安倍晋三

    内閣総理大臣安倍晋三君) 御紹介のございました福島県の福島県立川口高等学校は、福祉の資格につながる選択科目や地元の特別養護老人ホームでの実習など、大変先進的な教育を行っており、地元の福祉関係の仕事に就く卒業生も多いというふうに聞いております。  介護に関する学習は、介護福祉士の資格が得られる福祉系高校のほか、川口高校のような普通科でも行われております。このような学習を通じ、より多くの高校生が、福祉、介護について知識や技能を身に付けることは、地域の介護人材の裾野を広げることにつながると考えております。  また、まさにこのように地域に密着した高校において、地域の施設に出てお年寄りの皆さんを介護をする、これはまさに共助につながっていくんだろうと、このように思うところでございますが、今後、優れた取組を全国に紹介することなどにより、各高校において地域のニーズや高校生の希望を踏まえながら、地域福祉の担い手を育てる教育が行われるよう努めてまいりたいと考えております。
  366. 荒井広幸

    荒井広幸君 是非前向きにお願いしたいということなんです。  徴兵制になるんじゃないかという今度の法案に対する誤解がすごくありますね、安全保障法制。徴兵制に行くんじゃないか、そんなことはありません。私は、それよりも子供たちの了解をもらって、みんなでヘルパーの職を身に付け、いつでもどこでも、自分も家族も地域の人にも協力できる体制をつくる、その積極的な安倍内閣であっていただきたいと思います。  最後になりますが、これは岡田そして小川両筆頭を始め、理事の皆さんの御了解をいただいて、後になりました、通告が、失礼しましたが、財務大臣に、もしお答えいただけるならお尋ねしたいところなんですが、私の見解を申し上げたいんですが。  財務大臣、八月二十三日、昨日は実は抑留された日なんです。ポツダム宣言は、日本の軍人は、武装解除後、家庭に戻り、平和に暮らせるようにするとあります。しかし、七十年前、我々が終戦を迎えた八月十五日の後七日目、八月二十三日、スターリンは、五十万人日本の軍人を、これを全部ソ連領内に連行せよ、そして強制的に労働させるということを言ったわけです。ですから、今日も午前中からお話がありましたが、北方領土の帰属問題と同時に、特にシベリア抑留と言われる形で抑留の問題というのはあるんです。五万五千人が亡くなりました。五十七万人と言われています、強制抑留者が。そして、ゴルバチョフ大統領が九一年に来られて、そして国家元首として初めて三万七千人の死亡者の名簿を引き渡し、今四万一千人になっています。  その方々が、相沢英之先生を始め、生き残られている方が、最後のお願いです、何としてでも……
  367. 岸宏一

    委員長岸宏一君) そろそろ質疑をまとめてください。
  368. 荒井広幸

    荒井広幸君 はい。最後になります。  何としてでも、その方々が、中央や地方、福島、日本国内の慰霊祭をやってくれる人たちがいなくなるから、何とかそのための予算財務省に付けてもらいたいと切実な願いをしています。  どうぞ、財務大臣にはこれに応じて、今概算要求というのをやっていますから、この概算要求に応じていただきますように、通告がなくなっておりますけれども、もし見解が可能であればお聞かせいただきたいと思います。
  369. 岸宏一

    委員長岸宏一君) 財務大臣、簡単にお願いします。
  370. 麻生太郎

    国務大臣(麻生太郎君) 我々の世代は、シベリアの酷寒の地の時代を知っている世代ですから、ですから、そういった意味では、相沢先生に限らず、私の周りにもそういった方はおられましたんで。もう大分多くの方が亡くなっておられます。  日本としては、平和特別基金というのをつくって、その後、もうこれがあと、最後あった金も全部割り当てて終わったと思っておりますが、これをもう一回今言ったような形で別に予算を付けるということになって、今ここで私一人が、やりますなんというようなことを言えなんて簡単なことを言っている手合いがいますけれども、私は、これはきちんとした話をされるべき話で、私一人で、一存で決められるような簡単な話じゃありません。  したがって、これは総務省がこれも所管していると思いますが、きちんとそういったところで検討されてしかるべき問題だと思います。
  371. 荒井広幸

    荒井広幸君 終わります。
  372. 岸宏一

    委員長岸宏一君) 以上で荒井広幸君の質疑は終了いたしました。(拍手)  これにて内政外交の諸問題に関する集中審議は終了いたしました。  本日はこれにて散会いたします。    午後五時十八分散会