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2015-05-29 第189回国会 参議院 本会議 第22号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成二十七年五月二十九日(金曜日)    午前十時一分開議     ━━━━━━━━━━━━━議事日程 第二十二号   平成二十七年五月二十九日    午前十時開議  第一 株式会社海外通信・放送・郵便事業支援   機構法案内閣提出衆議院送付)     ━━━━━━━━━━━━━ ○本日の会議に付した案件  一、電気事業法等の一部を改正する等の法律案   (趣旨説明)  以下 議事日程のとおり      ─────・─────
  2. 山崎正昭

    議長山崎正昭君) これより会議を開きます。  この際、日程に追加して、  電気事業法等の一部を改正する等の法律案について、提出者趣旨説明を求めたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 山崎正昭

    議長山崎正昭君) 御異議ないと認めます。経済産業大臣宮沢洋一君。    〔国務大臣宮沢洋一登壇拍手
  4. 宮沢洋一

    国務大臣宮沢洋一君) ただいま議題となりました電気事業法等の一部を改正する等の法律案につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。  東日本大震災契機として、戦後六十年以上続いてきたエネルギー供給体制を抜本的に見直し、国家戦略として責任あるエネルギー政策を構築することが求められております。低廉で安定的なエネルギー供給確保し、国の成長を支えるのはもちろんのこと、成長戦略観点からエネルギー産業を国の成長をリードする産業へと発展させることが重要であります。  このため、まずは電力システム改革をその重要な柱と位置付け、改革段階的に進めるための法案を順次提出してまいりました。改革の第一段階である広域系統運用拡大を実現するとともに、電力システム改革の全体像を明らかにする改革プログラムを定めた電気事業法改正法が一昨年の十一月に成立し、続いて、改革の第二段階である小売及び発電全面自由化実施するための電気事業法等改正法が昨年六月に成立したところであります。  この歩みを止めることなく、三段階から成る電力システム改革の総仕上げである法的分離の方式による送配電部門中立性の一層の確保実施するのに併せて、ガス熱供給についても、小売全面自由化などの制度改革一体的に進めることで、これまで縦割りであった市場垣根を取り払い、ダイナミックなイノベーションが生まれる総合的なエネルギー市場をつくり上げるため、本法律案を提出した次第であります。  次に、本法律案の要旨を御説明申し上げます。  まず、電気事業法改正に関するものであります。  第一に、一般送配電事業者及び送電事業者について、小売電気事業及び発電事業との兼業を原則として禁止することによる法的分離平成三十二年四月一日から実施します。あわせて、適正な競争関係を損なうことのないよう、グループ内での人事、会計などについて適切な行為規制措置します。  第二に、現在の一般電気事業者に対して経過措置として課される小売料金規制について、競争進展状況を確認した上で、供給区域ごと経過措置を解除することができる制度とします。  第三に、適正な競争関係確保するため、現在の一般電気事業者に認められている一般担保付社債の発行の特例を廃止します。ただし、足下資金調達環境を考慮し、法的分離実施から五年間に限り、送配電事業発電事業を営む会社などが一般担保付社債を発行できる措置を講じます。あわせて、株式会社日本政策投資銀行などによる電気事業者への貸付金に係る一般担保制度も廃止します。  次に、ガス事業法改正です。  第一に、平成二十九年を目途に、ガス小売業への参入全面自由化します。登録を受けた事業者であれば、家庭を含む全ての需要家に対してガス供給を行うことができることとし、これに伴い、ガス事業類型を見直します。あわせて、LNG基地第三者利用を促す措置を講じます。  第二に、ガス導管網整備を促進するため、一般ガス導管事業については地域独占料金規制を維持し、導管の建設や保守の着実な実施確保します。また、全てのガス導管事業者導管相互接続に係る努力義務を課すとともに、国が事業者間の接続に係る協議を命令し、裁定することができる制度を創設します。  第三に、需要家保護を徹底するため、ガス小売事業者契約条件説明義務などを課すとともに、競争が不十分な地域では、現在の一般ガス事業者に対し、経過措置として小売料金規制を継続いたします。また、保安確保に万全を期すため、ガス導管事業者導管網保安需要家保有内管の点検を義務付け、ガス小売事業者には消費機器の調査などを義務付けます。  第四に、導管部門の一層の中立化を図るため、一定規模以上のガス導管事業者について、ガス小売事業及びガス製造事業との兼業を禁止することによる法的分離平成三十四年四月一日から実施します。あわせて、適正な競争関係を損なうことのないよう、電気事業法と同様、適切な行為規制措置します。  次に、熱供給事業法については、現在許可制とされている参入規制登録制とし、料金規制供給義務を撤廃した上で、需要家保護を徹底すべく、熱供給事業者契約条件説明義務を課すなどの措置を講じます。  最後に、これらの改革により自由化される市場が適切に機能するよう、独立性と高度の専門性を有する電力ガス取引監視等委員会経済産業省に設置し、電力ガス及び熱供給取引監視や、送配電事業及びガス導管事業行為規制などを適切に実施してまいります。  このほか、ガス事業に係る事業類型の見直しなどに伴い、関係法律について所要改正を行うとともに、一連改革について各段階検証を行い、課題を克服しながら進めていく旨を附則に規定します。  以上が本法律案趣旨でございます。(拍手)     ─────────────
  5. 山崎正昭

    議長山崎正昭君) ただいまの趣旨説明に対し、質疑の通告がございます。順次発言を許します。磯崎仁彦君。    〔磯崎仁彦君登壇拍手
  6. 磯崎仁彦

    磯崎仁彦君 自由民主党磯崎仁彦です。  私は、自由民主党を代表して、ただいま議題となりました電気事業法等の一部を改正する等の法律案について質問いたします。  総理は、今年二月の施政方針演説で、エネルギー市場改革について、競争的でダイナミックなエネルギー市場をつくり上げると宣言されました。本法案は、一連改革最終段階に当たるものであり、戦後長らく続いてきた地域独占によるエネルギー供給体制を大きく変える抜本改革です。  これまで地域独占が行われてきた最大の目的エネルギー安定供給です。エネルギー日本経済の血液ですから、今後も安定供給重要性に変わりはありません。その最低ラインは守った上で、電力ガスといった垣根を越えた競争を導入し、サービス向上コスト削減を実現するとともに、エネルギー産業を国の成長戦略に貢献できるよう発展させることが今回の改革目的です。  間違いなく我が国経済史に残るものとなる今回のエネルギー市場改革ですが、大きな改革だけに、実現までには困難も予想されます。まずは、改革を断行するに当たっての安倍総理決意をお伺いをいたします。  本法案の大きな特徴は、電力システム改革に加えて、ガス熱供給分野一体的に改革を行うことです。これによって、電力会社ガス会社がお互いの事業参入することや、電気ガス、電話、インターネットなど、家庭インフラ一体的に提供するビジネスを行うことも可能になります。多様なサービスの展開が期待され、消費者選択の自由も飛躍的に高まります。  こうした点も含め、政府としては、なぜ今回、電力ガス熱供給をトータルで自由化することが必要と考えたのでしょうか。一体改革必要性目的について、宮沢経済産業大臣見解を伺います。  今回の改革について、消費者の側から見れば、期待と不安が両方ある状況ではないかと思います。  期待の面では、競争によって料金が下がることや、多様なサービスが受けられることに対する期待があるでしょう。一方で、不安については、自由化でむしろ料金が高くなることはないのかという懸念が挙げられます。電力自由化を行った一部の国では、そうした事例も実際にありました。また、新規参入者の質が十分なのかという不安もあるでしょう。さらに、場合によっては、多くの事業者料金プランが乱立して、選択に困ることもあるかもしれません。  今回の改革では、電力ガス取引監視等委員会が設置されることになっていますが、消費者保護という観点からの監督はどのように行われるのでしょうか。宮沢大臣に伺います。  最後に、改革検証についてお尋ねします。  エネルギー市場改革は、我が国経済にも大きな影響を与える改革ですが、要所要所でその成果を検証し、問題があれば修正しながら次のステップに進んでいく必要があります。そのために、本法案には丁寧な検証規定が盛り込まれております。  具体的には、電力ガスのそれぞれについて、各段階施行状況や、エネルギー基本計画実施状況需給状況等について検証を行い、必要な措置を講じることになっています。これまでどういう検証が行われ、これからどう検証が行われていくのでしょうか。また、検証結果によっては、今後予定されているスケジュール影響を及ぼすことがあるのでしょうか。宮沢大臣に伺います。  今回のエネルギー市場改革は、先ほども申し上げましたように、日本経済史に残る大改革ですから、何としても成功させなければなりません。そのために、政府におかれては、あらゆる事態を想定をしながら、慎重に、かつ大胆に改革を進めていただきたいと思います。そのことをお願いをいたしまして、私の質問を終わります。  ありがとうございました。(拍手)    〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇拍手
  7. 安倍晋三

    内閣総理大臣安倍晋三君) 磯崎仁彦議員お答えをいたします。  改革に取り組む決意についてお尋ねがありました。  電力システム改革最後までやり遂げるとともに、ガス事業でも小売全面自由化し、エネルギー分野岩盤規制改革を断行します。  このように、エネルギー市場垣根を越えた改革一体的に進め、エネルギー産業にダイナミックなイノベーションをもたらすとともに、エネルギー選択自由度拡大料金最大限抑制を実現し、我が国成長につなげていく決意であります。  残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)    〔国務大臣宮沢洋一登壇拍手
  8. 宮沢洋一

    国務大臣宮沢洋一君) 磯崎議員お答えいたします。  一体的な改革必要性目的についてお尋ねがありました。  今回の法案は、電力ガス熱供給一体的に改革することで、これまで縦割りだったエネルギー市場垣根を越えた総合エネルギー市場の創設を目指すものであります。これにより、エネルギー間の相互参入や異業種からの新規参入、また電力会社ガス会社連携といった企業間の連携などが進むことが期待されます。  競争的でダイナミックなエネルギー市場をつくり上げることで、消費者価格サービス面でのメリットを享受できるようにするとともに、我が国産業競争力強化に資するエネルギー産業の発展へとつなげてまいります。  電力ガス取引監視等委員会による市場監督についてお尋ねがありました。  消費者も含め、電気供給を受ける全ての需要家保護を図るため、自由化後の電力ガスなどの市場について、今回の法案で設立される電力ガス取引監視等委員会が厳しく監視をしてまいります。  具体的には、経過措置期間中の小売料金といった規制料金について、委員会が厳格な審査を行った上で経済産業大臣料金の認可を行う仕組みとしております。また、小売事業者に対し、消費者への契約条件説明義務消費者からの苦情や問合せへの対応義務を課し、こうした事業者に対し、委員会報告徴収や立入検査、業務改善の勧告を行うことができるといった様々な措置を講じております。今般設立する委員会がその役割を適切に果たすことで、自由化後の消費者利益保護に万全を期してまいります。  改革検証についてお尋ねがありました。  今回の法案提出に当たっては、経済産業省審議会において制度設計検討を行う中で、安定供給確保需要家利益保護といった各種課題について検討検証を行い、これを受けて必要な措置を講じることとしています。  今回の法案検証規定に基づき、今後検証を進めるに当たっては、審議会などの場で専門家消費者代表などによって検証を行うことなどが考えられますが、検証の具体的な方法については今後検討してまいります。  検証を行った結果、課題懸念があれば、それを解消するための環境整備に全力を尽くし困難を乗り越えていくべきであり、課題があるから改革スケジュールを遅らせるということではありません。  以上です。(拍手)     ─────────────
  9. 山崎正昭

    議長山崎正昭君) 小林正夫君。    〔小林正夫登壇拍手
  10. 小林正夫

    小林正夫君 民主党・新緑風会の小林正夫です。  ただいま議題となりました電気事業法等の一部を改正する等の法律案について、会派を代表して質問します。  今年も夏を迎えました。全国的には電力需要の最も高まる時期です。政府見通しでは、節電の数値目標は定めずに済むとのことですが、予断を許さない状況が続いていることは言うまでもありません。電力間融通を行わない場合の九州電力需給見通しはマイナス三・三%です。各電力会社が第一線に復帰させた老朽火力発電設備にいつまでも頼るわけにはいきません。現在の電源構成老朽火力発電設備稼働状況、今夏の電力需給について、安倍総理見解を求めます。  二〇一三年に成立した第一弾改正法附則では、原子力政策を始めとするエネルギーをめぐる諸情勢の著しい変化に伴い、小売業卸売業競争条件が著しく悪化又は悪化することが明らかな場合に、競争条件を改善するための措置等検討し、必要な措置を講ずる旨が定められております。  電力システム改革は、東日本大震災とこれに伴う原子力事故契機に、電気料金値上げや、需給逼迫下での需給調整、多様な電源活用必要性等課題が明らかになったことを受け、検討を開始しました。そして、震災前に発電量の約三割を占めていた原子力発電について様々な意見が交わされてきました。  二〇一二年十二月の衆議院総選挙の際、自由民主党が打ち出したJ—ファイル二〇一二総合政策集では、原発の再稼働の可否については、順次判断し、全ての原発について三年以内の結論を目指しますとしていました。新規制基準が決定された二〇一三年六月には、田中原子力規制委員長から、希望的観測も含めてとのことでしたが、審査期間について、六か月程度との見通しが示されました。  実際はどうだったでしょうか。皆さん御存じのとおりです。もちろん安全審査は慎重に行われるべきであり、そのために相応の時間が必要であることは当然です。しかし、現在の状況を予想して一連電力システム改革は設計されたのでしょうか。遅々として進まなかったことが情勢の著しい変化であったとも言えます。  原子力政策について、二〇一二年及び二〇一三年当時の見通しと現在の状況について、総理見解を求めます。  電力会社は苦しい経営環境が続いています。二〇一五年三月期は、三事業者経常赤字であり、この三事業者は四年連続の経常赤字です。昨秋からの資源価格の下落で一過性の回復は見られましたが、資源価格も再び上昇を始めつつあり、高騰する燃料費は、何とか値上げを回避しようとする電力会社の体力をじわじわと奪っています。このような状況では、本法律案で定める送配電部門分社化は非常に困難と言わざるを得ません。こうした電力会社経営リスクを指摘した上で、本法案について質問します。  まず、作業安全の確保策についてお聞きします。  電力供給停止等作業では、高所や狭い場所で電線や制御の機器などを直接手で触って作業を行います。電力組合の集計では、二〇一四年度十七名が労働災害で尊い命を落とし、今年度も既に一名の死亡災害が起きています。  送配電部門を分離し、別会社にした場合でも、電力事業に携わる人たちが、電気が通電されているかあるいは遮断されているかを確実に把握した上で安全に作業が行われなければなりません。そのために、発電送配電小売事業者間の万全な連携体制を築く必要があることは論をまちません。第四回制度設計ワーキンググループでも、多様な事業者系統を利用するようになると、現行と比較して同等以上の協調体制を構築する必要があると、体制整備重要性を指摘しています。  安全は全てに優先します。また、ガス事業電力と同様、厳しい環境の中で二十四時間対応しています。電力労働者及びガス労働者労働災害を防ぐために、事業者間の協調連携体制をどう築くのか、経済産業大臣答弁を求めます。  自然災害が発生したときも同じ懸念があります。電気発電所から需要家まで電線がつながっていないと送れません。また、保存ができず、目にも見えないという特別な代物です。自然災害発生時は、全てが混乱する中で、一つ一つ言わば手作業復旧を進めます。東日本大震災では、八日で約九四%の停電を解消しました。こうした迅速な復旧送配電部門を分離した後も可能となるのでしょうか。経済産業大臣答弁を求めます。  次に、人事に関する行為規制について経済産業大臣に伺います。  本法律案では、現在の送配電部門小売部門発電部門から切り離す形で別会社化することとしています。さらに、取締役や執行役について、グループ内の役員や従業者を兼ねてはならないとしています。ここでは明確に兼職を禁止しています。加えて、グループ内の従業者同士についても人事上の制限が設けられていますが、経済産業省令で定める要件に該当する従業者経済産業省令で定める中立性確保が特に必要な業務に従事させてはならないなど、規制の対象となる人材業務具体的内容経済産業省令に委任されています。これでは、どのような意図で何を制限しようとしているのか、法律案からは読み取ることができません。また、ガス事業においても電気事業法とほぼ同一の書きぶりになっています。  どのような人材制限を受けるのか、また、それは従業者のどれだけを占めるのか、電力事業ガス事業に分けて、経済産業大臣、御説明ください。  人材は組織の根幹であります。電力自由化の流れにあって、電力安定供給という重責を担うには専門知識と幅広い経験が必要です。電力システムの安定のために規制が必要であるならば、法律において明確に分かる形とすべきです。  また、電力システム改革専門委員会報告書には、「電力システム改革を実行する際には、世界で最も高い信頼性を有する我が国技術人材の蓄積、安定供給マインドを尊重するという視点を欠かすことはできない。今日まで形成してきた技術インフラ人材を破壊することは決してあってはならない。」と記述されています。  今回の行為規制が、今日まで築き上げてきた技術を破壊するものではないこと、人材育成有効活用を阻害するものではないことをこの場で、総理、明言してください。  次に、スト規制法について伺います。  発電送配電に携わる労働者は、六十年以上もの間、民間事業者であるにもかかわらず争議行為法律制限されてきました。皆さん御承知のとおり、電気事業発電送配電のみで成り立つわけではありません。不断の保守管理を始め、営業、環境対応、検針、各種のカスタマーサービスなど、それぞれの部門が知恵と経験を分かち合い、一体となって国民に信頼される体制を築いてきたのです。  経済産業大臣に伺います。スト規制がなされていない部門争議行為について、近年決行された例を把握しているでしょうか。実績をお答えください。  生活に不可欠な電気が、我が国の津々浦々まで行き渡り、暗くなれば明かりをともし、暑くなれば扇風機やクーラーをつける、国民皆さんが当たり前の日常を当たり前に過ごしていく、これは電力マン使命感によって支えられています。自らの誇りである安定供給電力マンがないがしろにすることは決してありません。  総理は、地球儀の俯瞰外交として、これまでに五十か国以上を訪問されています。各国電力事情はいかがだったでしょうか。各国でもそれぞれの事業者が最善を尽くしていることでしょう。その中でも、我が国発送配電一貫体制の下で安定供給を成し遂げていることが高く評価されていることは御存じのはずです。  改めて伺います。これまで電力安定供給を担ってきた発送配電一貫体制の評価と、衆議院で付された、憲法で規定されている労働基本権の保障に係る附帯決議、すなわち、スト規制法の再検討についてどう受け止めされているのか、総理答弁を求めます。  次に、火力発電の在り方について伺います。  政府長期エネルギー需給見通し骨子案では、ベースロード電源として現状三〇%を占めている石炭火力発電を、二〇三〇年に二六%程度とすることとしています。一方、足下では、石炭火力の新増設計画が活発に検討されています。また、二二%から二四%程度を目指す再生可能エネルギー発電のうち、九%程度太陽光発電及び風力発電であり、その発電供給力として認めるためには相応バックアップ電源が必要となります。  こうした中で、震災前から我が国主力電源であった火力発電、とりわけ再生可能エネルギーバックアップなど、調整電源としての火力発電構成運用エネルギーミックスの中でどのように位置付けられているのでしょうか。経済産業大臣にお聞きします。  また、高品質な電力安定供給根幹である瞬時瞬時の周波数の調整に必要な調整力や、安定供給のためには必要であっても稼働率が低く採算の合わない供給予備力について、競争の中で各事業者確保することは極めて難しいのではないかと考えますが、経済産業大臣見解を求めます。  最後に伺います。  これまでるる質問してきましたように、本法律案電力システム改革は、戦後、我が国が脈々と受け継いできました安定供給誇り人材育成技術の継承を途絶えさせるリスクをはらんだものであります。このリスクをあえて受け入れるとして、国民は何を得るのでしょうか。新規事業者参入による選択の機会の拡大はその一つでしょう。しかし、大多数の国民希望は、不安のない日常生活、すなわち、安定供給と低廉な料金にあるはずです。  政府は、料金最大限抑制をうたっていますが、円安によって資源価格等コスト上昇傾向となる中で、安定供給確保し、電気料金を下げていくには何が必要なのか、また、政府はどのようにして国民期待に応えるのか、お聞きします。この点は、電力システム改革が成功したのか失敗に終わったのか、後世で評価される重要なポイントです。安倍総理、自らの御見解をお示しください。  質の高い電力安定供給が国力の源です。改革国民のためになる改革でなくてはなりません。今法律案電力システム改革プログラムで示された最後法案です。真に国民利益にかなう改革にするために十分な審議を尽くす必要があることを申し上げ、質問を終わります。(拍手)    〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇拍手
  11. 安倍晋三

    内閣総理大臣安倍晋三君) 小林正夫議員お答えをいたします。  今夏の電力需給などについてお尋ねがありました。  現在の電源構成は、火力発電が約九割と、火力依存度が極めて高くなっています。また、火力発電設備のうち約四分の一が運転開始から四十年を超えている老朽火力となっています。今夏の電力需給については、全国で安定供給に最低限必要な供給力確保される見通しであるものの、老朽火力最大限活用等を前提としており、引き続き予断を許さない状態が続いていると考えています。このため、発電設備保守、保全の強化を要請するなど、需給両面の対策を講じ、電力安定供給に万全を期してまいります。  原子力に関する電力システム改革の設計時の見通しと現在の状況についてお尋ねがありました。  電力システム改革については、改革の全体像とスケジュールを示した政府改革方針を二〇一三年四月に閣議決定したところです。これは、将来の原発の再稼働状況に関し、予断を持って設計したものではありません。  一方、二〇一二年や二〇一三年当時を振り返ると、二〇一二年九月に原子力規制委員会が設置され、その後、二〇一三年七月、新たな規制基準が策定されました。このため、その時点で再稼働見通しについて現実感を持って議論するような段階ではなかったものと認識しております。  現在は、原子力規制委員会によって、新規制基準に基づき、十五原発二十四基の原子炉が審査中であります。独立した原子力規制委員会による審査であり、その見通しについて言及することは差し控えますが、引き続き、厳格にかつ効率的に審査を進めることが望ましいと考えております。  今回の法案による行為規制人材育成有効活用についてのお尋ねがありました。  電力ガス安定供給は、それぞれの事業に携わる方々の現場力や技術力、人材に支えられてこそ実現するものです。今回の法案によって、今日まで築き上げてきた技術を破壊することのないようにすることはもちろんのこと、中立性をしっかりと確保しつつ、人材育成有効活用にも十分配慮した制度運用としてまいります。  発送配電一貫体制の評価とスト規制法に係る衆議院附帯決議についてお尋ねがありました。  戦後、我が国においては、垂直一貫体制による地域独占と総括原価方式により投資回収を保証する電気事業制度の下、電力安定供給を実現し、国民生活の発展や経済成長を支えてまいりました。今後、ダイナミックなエネルギー市場への転換を図るため、小売全面自由化や発送電分離を進めてまいりますが、安定供給確保には万全を期してまいります。また、御指摘のありましたスト規制法に関する附帯決議につきましては、その趣旨を尊重してまいります。  安定供給確保及び電気料金抑制についてのお尋ねがありました。  電力システム改革を行った結果として、我が国電力安定供給が損なわれることがあってはなりません。このため、各地域電力会社送配電部門が引き続き安定供給の中心的役割を担うなど、安定供給に万全を期す仕組みとしていきます。また、電力システム改革を進めることで、電気事業者間の競争の促進や新たな発電事業者の参入等を図り、電気料金最大限抑制していきます。  六十年ぶりの抜本的な改革を通じ、御家庭の皆様に料金抑制効果を実感いただけるよう、しっかり電力システム改革に取り組んでまいります。  残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)    〔国務大臣宮沢洋一登壇拍手
  12. 宮沢洋一

    国務大臣宮沢洋一君) 小林議員にお答えいたします。  労働災害を防ぐための事業者間の協調連携体制についてお尋ねがありました。  今回の法案により、法的分離実施するに当たっては、ネットワーク事業者発電事業者やLNG基地事業者などの関係事業者が適切に連携できるようにする仕組みを整備することが重要と考えております。  このため、電気については、本年四月に発足した広域的運営推進機関において、送配電事業者と発電事業者及び小売事業者が協力して対処する仕組みを整備することとし、また、ガスについては、今回の法案において、特に現場を含めた安全確保が重要となる保安に関し、一般ガス導管事業者のみならず、LNG基地事業者及び小売事業者を含む全てのガス事業者が連携協力する努力義務を課すこととしております。  自然災害の発生時等における迅速な停電復旧についてお尋ねがありました。  広域的運営推進機関では、既に、電気事業者との間の定期的な訓練や、資機材などの保有に関する情報共有などに関するルールが定められています。これらのルールは、電力システム改革の進展に応じ必要な見直しを行っていくこととしており、今後、法的分離実施に向け、災害時などにおける一般送配電事業者発電事業者や小売電気事業者との間の協調に関する事項を追加するなど、必要なルール改定を行うこととしています。  これらの仕組みにより、これまでと同様の迅速な停電復旧対応ができるよう万全を期す所存であります。  人事に関する行為規制についてお尋ねがありました。  今回の法案においては、ネットワーク部門中立性確保観点から、役職員の兼職制限の規定を設けておりますが、その対象については十分に限定しているところです。  従業員について具体的に申し上げますと、一般送配電事業者については、託送供給送配電投資計画など、中立性確保が特に必要な業務に従事している者のみを対象としております。また、発電事業者や小売電気事業者については、発電所の投資計画や電力小売の販売戦略の策定業務において管理的な立場にあるなど、親会社グループ競争部門業務の運営において重要な役割を担う従業員のみを対象とすることを想定しています。  一般ガス導管事業者については、託送供給導管投資計画など、中立性確保が特に必要な業務に従事している者のみを対象としております。また、ガス製造事業者やガス小売事業者については、LNG基地の投資計画やガス小売の販売戦略の策定業務において管理的な立場にあるなど、親会社グループ競争部門業務の運営において重要な役割を担う従業員のみを対象とすることを想定しております。  このような考え方の下で、具体的には経済産業省令で定めることとしており、対象となる従業員の具体的な比率については、今後、省令の内容を具体化する中で明らかになっていくものと考えております。  スト規制法の対象ではない部門でのストライキの実績についてお尋ねがありました。  スト規制の対象でない部門としては、例えば一般電気事業者小売部門が挙げられますが、厚生労働省の下に設置された労働政策審議会において、関係労使からは、昭和五十七年を最後にストライキの実績はないとの報告があったと聞いております。  エネルギーミックスにおける調整電源としての火力発電の位置付けについてお尋ねがあります。  太陽光や風力といった自然変動電源の導入に当たっては、出力の変動に対応するために火力発電による調整を行う必要があります。今回のエネルギーミックス検討においても、こうした調整電源としての位置付けや運用調整に係る諸経費を勘案した上で、二〇三〇年の総発電電力量における割合として、石炭については二六%程度、LNGは二七%程度、石油は三%程度を見込んでおります。  調整力供給予備力確保についてお尋ねがありました。  安定供給確保のためには、瞬時瞬時需給バランスや周波数の調整が確実に行われることが不可欠です。このため、第二弾の改正電気事業法において、一般送配電事業者に対し電圧、周波数を維持する義務を課し、一般送配電事業者が必要な予備電源確保することなどを通じて安定供給確保する仕組みといたしました。  また、御指摘のような瞬時瞬時の周波数の調整に必要な調整力など、一般送配電事業者安定供給に必要とする調整力確保に要する費用については、託送料金による回収を認める仕組みを整備することとしております。これにより、一般送配電事業者再生可能エネルギーの導入が拡大する中でも安定供給のために必要な調整力確保することができるよう、しっかり準備してまいります。  以上であります。(拍手)     ─────────────
  13. 山崎正昭

    議長山崎正昭君) 河野義博君。    〔河野義博君登壇拍手
  14. 河野義博

    ○河野義博君 公明党の河野義博です。  ただいま議題となりました電気事業法等の一部を改正する等の法律案につきまして、公明党を代表して、安倍総理大臣並びに宮沢経済産業大臣質問します。  本改正は、戦後六十年以上続いてきたエネルギー供給体制の抜本的な改革です。低廉なエネルギー供給確保し、エネルギー産業成長戦略の牽引役とすることを目的としています。市場垣根を取り払い、総合エネルギー市場をつくり出すことで競争を促し、電力ガスの需要と供給市場メカニズムに委ねることにより料金抑制する一方で、安定供給確保しつつエネルギーミックスやCO2削減目標を達成しなければならないという複雑かつ重要なかじ取りが求められます。  そこで、一連エネルギー市場改革に向けての総理決意を伺います。  再生可能エネルギーの普及について伺います。  多様な発電事業者の参入を促すことは、本改正案の大きな目的一つです。二〇一二年の固定価格買取り制度開始以来、再生可能エネルギーの導入は急速に進み、二〇一五年一月末までの二年半でおよそ一千七百万キロワットが導入されました。  新たに導入された再生可能エネルギーの内訳を見てみると、太陽光発電が九七%を占めており、太陽光発電への偏重が見て取れます。一方、買取り価格や設備利用率で太陽光に比べて優位な風力発電は僅か二%と、導入が遅れています。  風力発電の導入が進まない原因の一つは、長い時間を要する環境アセスメントにあると言われています。従来、風力発電環境アセスメントには三年から四年の期間が必要とされていましたが、政府の様々な施策の導入により、その期間をおおむね半減させる取組が進んでいることは高く評価します。  一方で、そもそも環境アセスの制度上、アセスが義務付けられている対象の発電所の規模は、火力発電所で出力十五万キロワット以上であるのに対して、風力発電所では出力一万キロワット以上となっており、風力発電の導入に向けては実質的に大規模火力発電所と同等のレベルの環境アセスメントが求められています。風車の大型化が進み、一本当たりの出力が二千キロワット以上が標準的となった昨今、この対象基準自体の見直しが必要と考えますが、総理の認識を伺います。  電力系統運用に関して伺います。  一昨年に法改正された第一弾改革として広域的運営推進機関がつくられ、今年四月よりその運用が開始されました。従来、十電力会社が独自に行ってきた需給調整を全国規模で機能させるため、広域的運営推進機関には非常に大きな権能を持たせておりますが、従来の地域枠を越えた安定供給や、地域外から安い電源を利用する、そして再生可能エネルギー最大限の導入に向けては、その権能が確実に行使されるよう運用させることが大切です。  そこで、監督省庁としていかに広域的運営推進機関の実効力を高めていくのか、経産大臣の所見を伺います。  サイバーセキュリティー対策について伺います。  多くの発電所はコンピューター制御が可能で、遠隔地からでもネットワークを通じて出力調整を行うことができ、専用回線を用いた制御系ネットワークにおいてはサイバーセキュリティー対策が講じられています。仮に、悪意のある犯罪組織がサイバー攻撃を仕掛け、ネットワークの脆弱性に付け込まれたならば、その被害は甚大なものとなります。電力市場自由化の過程では、制御系ネットワークに接続される新規参入者に対しても万全なセキュリティー対策が求められます。政府としては新規参入者に対してどのような対策を講じるのか、経済産業大臣見解を伺います。  LNG基地第三者利用の促進について伺います。  本改正により、既存のLNG基地保有者は、第三者による基地利用を可能にするため、基地の余力を推定するのに十分な情報を公開するなどの手続が定められます。  LNGの輸入に関しては、官民一体となった取組の成果として、来年にも米国からの比較的安価なシェールガスの輸入が始まります。また、従来のLNG輸入契約では、国内に到着する港が限定されており、国内のLNG取引活性化の妨げとなっていましたが、これから輸入が始まる米国からの輸入契約では、到着する港が限定されていない契約となっています。  国内におけるLNG取引の活性化が期待される状況下、既存のLNG基地が確実に第三者に開放され、その利用条件が明確になるよう実効性の確保が求められますが、経済産業大臣の所見をお聞かせください。  最後に、本改正は、従来の地域独占、総括原価といった長年培った制度を抜本的に改革するプログラム最終段階に位置付けられるものです。経済産業の大動脈ともいうべきエネルギーシステムの抜本改革に当たり、改革のための改革になってはならず、真に国民生活に資する改革とすべく、今後とも不断の検証作業を行っていくことを強く要望して、私の質問を終わります。(拍手)    〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇拍手
  15. 安倍晋三

    内閣総理大臣安倍晋三君) 河野義博議員の御質問お答えいたします。  一連エネルギー市場改革に向けた決意についてお尋ねがありました。  エネルギー政策は国力の根幹を左右する国家の重要政策であり、単に全てを市場に任せるのではなく、安定供給エネルギーミックス、地球温暖化対策など、様々な政策と整合的に進めていく必要があります。  こうした様々な政策とともに、エネルギー市場改革を着実に進めることで、エネルギーコスト最大限抑制を実現するとともに、エネルギー産業にダイナミックなイノベーションをもたらし、我が国成長へとつなげていく決意です。  環境アセスについてお尋ねがありました。  風力発電の導入拡大のため、政府としては、環境アセスメントの迅速化等の取組を進めているところです。さらに、御指摘のような環境アセスメントに関する課題も踏まえ、環境や地元に配慮しつつ風力発電の立地が円滑に進められるよう、必要な対策を検討していきます。  残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)    〔国務大臣宮沢洋一登壇拍手
  16. 宮沢洋一

    国務大臣宮沢洋一君) 河野議員にお答えいたします。  広域的運営推進機関の実効力の向上についてお尋ねがありました。  広域的運営推進機関は、電源の広域的な活用に必要な送電インフラ整備を進めるとともに、全国大で需給状況監視を行う大変重要な機関であります。また、需給状況を改善する必要があると認めるときには、電源のたき増しや地域を越えた融通の指示を行う権限を有しています。さらに、多様な電源活用し、再生可能エネルギーを可能な限り最大限導入しながら、低廉で安定的な電力需給を実現することも、この機関が取り組むべき大事な課題一つであると位置付けております。  経済産業省として、広域的運営推進機関の業務について、必要に応じて適切な指導や監督上必要な命令を実施することにより、この機関の実効力の更なる向上を図ってまいります。  電力のサイバーセキュリティー対策についてお尋ねがありました。  電力安定供給確保する上で、サイバーセキュリティー対策は極めて重要な課題と認識しております。  そのような問題意識の下、経済産業省では、一般電気事業者によるこれまでのサイバーセキュリティー対策について、専門家による確認、評価を行うとともに、電力システム改革も見据え、電力システム全体をカバーするサイバーセキュリティーガイドラインを策定すべく、事業者連携し、検討を進めてきたところであります。今後、新規参入事業者の方にも参加いただき、具体化を図っていく予定としております。  このような取組を通じ、いわゆるサイバーリスクに対し強靱な電力システムの構築に向けて対策を進めてまいります。  LNG基地第三者利用についてお尋ねがありました。  天然ガスのほぼ全てを海外からのLNG輸入に依存する我が国において、ガス導管網の起点となるLNG基地は、都市ガス小売事業や卸売事業参入する上で欠くことのできない施設であります。  今回の法案では、LNG基地の利用条件を明確にし、第三者が基地を利用しやすい環境整備するため、一定規模以上のLNG基地を保有する事業者に対し、他の事業者が利用できる容量の公表や料金の算定方法などの基地利用約款の策定を義務付ける制度を創設いたします。また、第三者利用を理由なく拒否することを禁ずることとしております。  これらにより、低廉かつ安定的にLNGを調達できる事業者が新たに都市ガス小売事業や地方のガス事業者に対する卸売事業参入すれば、競争を通じてガス料金抑制に資することとなり、消費者がメリットを受けることが期待されます。  以上です。(拍手)     ─────────────
  17. 山崎正昭

    議長山崎正昭君) 東徹君。    〔東徹君登壇拍手
  18. 東徹

    ○東徹君 維新の党の東徹です。  会派を代表して、本日の議題である電気事業法等の一部を改正する等の法律案について質問させていただきます。  初めに、エネルギー政策と安全保障の関係についてお伺いします。  本年五月十八日の参議院本会議において、我が党の小野次郎議員の存立危機事態の要件についての質問に対し、安倍総理は、我が国において電力不足によるライフラインの途絶が起こり、国民生活に死活的な影響が生じるような場合には、集団的自衛権行使の可能性があると答弁されました。  まず、この点について、安倍総理は具体的にどのような状況を想定されているのか、お伺いいたします。  また、本法律案との関係では、これが成立すると、安全性の確保を前提に、安定供給確保国民負担の抑制環境適合性の向上など、政府エネルギー政策の枠組みの下、総合的なエネルギー市場の確立を進めていくことになります。  我が国電源構成において、石油火力発電の割合は、震災前十年間の平均で一二%であり、二〇一三年度では一五%ですが、本年四月二十八日に経済産業省から示された二〇三〇年の電源構成案、いわゆるエネルギーミックスでは三%程度と、二〇一三年度の五分の一の水準と見込まれています。  エネルギーミックスが実現した場合でも、電力不足によって存立危機事態が生じ得るとお考えなのか、総理の御見解をお伺いします。  イノベーションの創出と電気料金の引下げについてお伺いします。  本法律案趣旨は、革新的な技術の導入や異なるサービスの融合など、ダイナミックなイノベーションを創出して、料金最大限抑制するという消費者利益の向上を目指すものでありますが、エネルギーミックスを前提にすると、原発が再稼働し、新たな石炭火力再生可能エネルギー活用が促進され、また、省エネルギー対策が講じられていく中で、供給される電力が余る状況も想定されます。このような場合、どのようにしてダイナミックなイノベーションが創出され、電気料金はどの程度下げることができるとお考えなのか、総理の御見解をお伺いします。  また、このように余剰電力が生じてくる場合、卸電力市場活用することが非常に重要となりますが、まだまだ市場自体への参加者が少なく、取引規模も小さい状況にあります。来年四月に電力小売自由化を控える中で、この状況をどのように改善していくのか、経済産業大臣の御見解をお伺いします。  首都圏における火力発電所の新設、増設に関してお伺いします。  現在、首都圏の需要向けに計画中の火力発電所の合計出力が約千三百万キロワットと、原発十三基分になると報道されています。少子高齢化の進展により、特に家庭部門において将来の電力需要が頭打ちになる可能性も考えられるところ、人口流入が続く首都圏での電力小売市場でのシェア確保を目指して、価格競争力の高い石炭火力発電所の新設などが計画されています。  一方で、エネルギーミックスでは、石炭火力の比率が二六%程度と、震災前の割合と同程度とされています。石炭火力発電は、比較的発電コストが低く安定した供給が見込まれるため、どんどん導入が進んでいき、想定している割合を超えてしまった場合、政府石炭火力発電に対して何らかの規制を掛けることがあるのか、経済産業大臣の御見解をお伺いいたします。  電力自由化を進めることで、政府がコントロールする力が落ちていく中、エネルギーミックスを実現するため、かえって規制強化され、自由な競争をゆがめる結果にならないようにしなければなりません。どのようにしてエネルギーミックスで示された電源構成を実現していくのか、経済産業大臣の御見解をお伺いいたします。  さらに、電気ガスの部分自由化がなされている現在でも、都市部ほど競争が活発でない地方において、今回の法律案に基づいて総合的なエネルギー市場が創設された場合、どのような影響が生じるのか、また、地方において競争が十分に確保されるのか、経済産業大臣の御見解をお伺いします。  省エネ促進についてお伺いします。  エネルギーミックスでは、年率一・七%の経済成長を前提にしながら、二〇三〇年の電力需要を対策を取らない場合と比べて一七%減らし、需要全体を二〇一三年度実績と同水準に抑えることとしています。しかしながら、経済成長確保しながら、一方で電力需要を抑えることは簡単ではありません。  省エネ対策の強化は重要ではありますが、その費用負担の増大は抑える必要がありますが、政府としてどのような省エネ対策を講じていくのか、経済産業大臣見解をお伺いいたします。  揚水発電活用について伺います。  我が国の揚水発電の設備容量は原発二十五基分にも相当しますが、その利用率は、二〇一〇年で三・八一%、二〇一三年では二・九七%と、十分に活用されておりません。そこで、再生可能エネルギー拡大のため、太陽光の昼間の余剰電力を使い揚水をくみ上げ、余剰電力を吸収するという活用の仕方などを電力会社に求めることは重要と考えますが、経済産業大臣の御見解をお伺いいたします。  高レベル放射性廃棄物の最終処分について伺います。  エネルギーミックスでは、原子力の比率が二二%程度とされています。原発運転開始から四十年で全て廃炉にした場合、二〇三〇年時点で賄える電力は一五%程度と見込まれ、目標とする二二%程度との間で差が生じますが、原発の運転期間の延長又は新増設を行うということでしょうか。経済産業大臣の御見解をお伺いいたします。  その一方で、五月二十二日に、原子力発電所の使用済核燃料から出る高レベル放射性廃棄物の処分について、国がまず処分地として科学的に適した場所を示し、その候補地の自治体に調査の受入れを要請するなど、新たな方針が閣議決定されました。  この処分地選定の問題は、海外に目を向けても、本年中に処分場の建設が始まる見込みのフィンランドのほか、スウェーデンとフランスの三か国を除けば、イギリスやドイツを始め、候補地の地元住民との調整が難航し、処分地の選定が進んでいない状況にあります。  原発の再稼働を行うのであれば避けては通れないこの問題について、総理は、今後、具体的にいつどのように対処されるのか、お考えをお伺いいたします。  再生可能エネルギーの導入促進と賦課金についてお伺いします。  温室効果ガスの削減やエネルギー自給率の向上の観点から、再生可能エネルギーの導入促進は重要です。  しかしながら、固定価格買取り制度の賦課金は、平成二十六年度が六千五百億円、二十七年度では一兆三千二百億円であり、また、電力多消費産業への賦課金減免措置では、平成二十六年度では二百九十億円、二十七年度では四百五十六億円と、再生可能エネルギーの導入に伴う国民負担は増加の一途をたどっています。国民生活はもとより、我が国経済への影響も非常に大きいことから、何らかの対策が必要ではないでしょうか。経済産業大臣見解をお伺いします。  送配電部門法的分離の時期についてお伺いします。  本法律案において、電力システム改革の第三段階である送配電部門法的分離は、小売全面自由化開始から四年後の平成三十二年四月一日の施行を予定されています。電気料金の高騰により、我が国産業競争力が弱まり、家庭の負担も増えていることを踏まえると、早期に法的分離を行うべきではないでしょうか。総理の御見解をお伺いします。  周波数の統一についてお伺いします。  再生可能エネルギーの更なる導入は、我が国エネルギー自給率を向上させる上で必要ですが、そのためには送電網の整備が不可欠です。現状では、周波数五十ヘルツ帯と六十ヘルツ帯に分かれておりますが、これを統一すれば、再生可能エネルギーのより一層の導入を図ることができると考えますが、この点に関する経済産業大臣の御見解をお伺いします。  我が国エネルギー市場の大改革を内容とする本法律案は、将来の我が国にとって大変重要であると考えます。委員会では中身のある審議をしていただくことをお願い申し上げ、質問を終わらせていただきます。  ありがとうございました。(拍手)    〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇拍手
  19. 安倍晋三

    内閣総理大臣安倍晋三君) 東徹議員にお答えいたします。  電力不足による存立危機事態の該当性についてお尋ねがありました。  いかなる事態が存立危機事態に該当するかについては、実際に発生した事態の個別具体的な状況に即して判断する必要があるため、一概には申し上げられません。これは、エネルギーミックスが実現した場合であっても同様です。  国の存立の基盤である経済が脅かされるかどうかについても判断の対象となります。しかし、単に国際紛争の影響により国民生活や国家経済に打撃が与えられたことや、ある特定の生活物資が不足することのみをもって存立危機事態に該当するものではありません。  存立危機事態については、あくまでも我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃の発生を前提とするものです。その上で、例えば、石油やLNGなどのエネルギー源の供給が滞ることにより、単なる経済影響にとどまらず、生活物資の不足や電力不足によるライフラインの途絶が起こるなど、国民生活に死活的な影響が生じるか否かを総合的に評価し、その結果として、状況によっては存立危機事態に該当する場合もあり得ると考えています。  イノベーションの創出と電気料金抑制についてのお尋ねがありました。  エネルギー市場垣根を越えた改革一体的に進めることで、エネルギー産業に構造的な変革が起きるとともに、新たなサービスへの消費者ニーズが生まれると考えております。その結果、将来、エネルギーミックス電力需給が様々に変化する中にあっても、革新的な技術の導入や異なるサービスの融合が生じ、ダイナミックなイノベーションが生み出されていくものと期待しています。  また、電気料金の水準は、資源価格の変動等、改革以外の様々な要素にも左右されるものであり、将来の料金水準について申し上げることは困難ですが、エネルギー市場一体改革により、競争的でダイナミックなエネルギー市場をつくり上げることで料金最大限抑制してまいります。  高レベル放射性廃棄物の最終処分についてのお尋ねがありました。  既に我が国は相当量の使用済燃料を保管しており、原発の再稼働の有無にかかわらず、高レベル放射性廃棄物の最終処分場が必要であることから逃げられません。  最終処分場の選定は、国民地域の御理解をいただきながら一歩ずつ進めていくことが不可欠です。まずは、これまでのやり方を見直し、今般、最終処分法に基づく基本方針を七年ぶりに改定し、国から科学的有望地を提示するなど、国が前面に立って取組を進めることとしました。現在、この新たな方針について、国として全国各地を訪問し、理解活動を展開しているところであり、地域の方々や自治体の皆様の理解を得ながら取組を進めてまいります。  送配電部門法的分離の時期についてお尋ねがありました。  送配電部門法的分離は、全ての事業者送配電網を公平に利用できるようにすることで、電力市場におけるダイナミックな競争を促し、自由化の効果を高めるために必要な環境整備です。一方で、法的分離実施には、発電部門送配電部門が適切に連携できる仕組みが不可欠です。このため、全ての一般電気事業者安定供給のためのルールやシステムを整備するために必要な準備期間を考慮し、実施時期を平成三十二年四月一日としたものであります。  小売全面自由化から法的分離実施までの期間においても、差別的な取扱いの禁止や託送料金の査定を徹底するなどの措置を通じて、送配電部門中立性最大限確保してまいります。  残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)    〔国務大臣宮沢洋一登壇拍手
  20. 宮沢洋一

    国務大臣宮沢洋一君) 東議員にお答えいたします。  卸電力市場活用についてお尋ねがありました。  卸電力市場の活性化は、電力システム改革において極めて重要な課題と認識しております。現状では、取引量は十分とは言い難い水準にあります。  このため、既存の電力会社が余剰電力取引所に供出する自主的な取組を推進し、国としてこの状況をしっかりとモニタリングするなど、取引量を増やす取組や、取引所において、来年を目途に、スポット市場の土曜日、日曜日の開場を行うことや、新たに一時間前市場を創設するなど、更に柔軟な取引を可能とする仕組みを創設するなどの取組を進めております。  今後、需給状況の緩和に応じ、既存の事業者電源を卸売市場に供出することが市場の活性化につながることを踏まえ、卸売電力市場の活性化のための更なる措置についても検討してまいります。  今後の石炭火力発電についてお尋ねがありました。  火力発電の新増設については、CO2の排出増加などの懸念がある一方で、最新鋭の設備が導入されることによる高効率化や、競争によるコストの引下げ効果なども想定されます。  このため、経済産業省としては、エネルギー政策検討を踏まえた地球温暖化対策の計画目標の策定と整合的な形で、電力業界による自主的な枠組みの構築を促すこととしています。また、小規模な石炭火力発電所に対する一定の抑制検討を行います。加えて、石炭ガス技術などの技術開発も積極的に進めていくこととしております。  こうした規制と振興の両面の対策を通じ、環境負荷を可能な限り低減させつつ、高効率な火力発電活用を進め、将来のあるべき電源構成の実現に向けて取り組んでまいります。  電力自由化エネルギーミックスの実現についてお尋ねがありました。  これから電力自由化を進めてまいりますが、エネルギー政策は国力の根幹を左右する国家の重要政策であり、いたずらに全てを市場に任せるということではありません。エネルギーミックスは、エネルギー基本計画を踏まえつつ、専門家などによる真摯な検討を経て、実現可能性のある将来のエネルギー需給構造の見通しであり、あるべき姿を示すものです。国としては、電力自由化の下でバランスの取れたエネルギーミックスの実現に向けた取組を進めていく必要があります。  このため、エネルギーミックスの実現に向け、省エネ、再エネ、原子力など各エネルギー政策分野に応じ、法律制度、予算、税など必要な政策措置を総合的に講じてまいります。  総合的なエネルギー市場の創設に伴う地方への影響についてお尋ねがありました。  電力ガス熱供給一体的な改革により、市場垣根を取り払い、競争的でダイナミックなエネルギー市場をつくり上げることで価格サービス面での消費者へのメリットをもたらすとともに、我が国産業競争力強化へとつながることを期待しております。こうした改革の恩恵は、都市部のみでなく、地方の産業国民にも広く行き渡ることが重要であります。  このため、今回の法案では、送配電部門法的分離などにより、地域分散型電源を用いて発電する地方の発電事業者が送配電網をより利用しやすくするための措置を講じ、また、都市ガス小売全面自由化により、地方のLPガス事業者が都市ガスの販売に参入できることとしました。  こうした取組を通じ、地方においても競争が促進され、システム改革による恩恵を実感していただくことができるようになると考えております。  省エネ促進策についてお尋ねがありました。  今般のエネルギーミックス検討に当たり、省エネについては、現時点で見通せる最大限の省エネ対策が盛り込まれたものとなっております。具体的には、例えば、産業部門においては、ボイラーなどの高効率設備の普及促進や、工場などにおけるIoTを活用したエネルギー管理の実施、また、民生部門においては、トップランナー制度活用した照明やエアコンなどの機器の効率改善や、新築住宅・建築物における省エネ基準適合の推進などが盛り込まれております。  こうした省エネ対策は、効率改善による生産性の向上などを通じ、経済成長にも寄与するものです。ただし、初期コストが大きいなど、政策的措置なしでは省エネが必ずしも進まない面もあるため、必要な範囲で効果的な支援策を講じることが重要と考えております。  このような考えの下、費用対効果の高い省エネ対策を官民を挙げて推進してまいります。  再生可能エネルギー導入拡大のための揚水発電所活用についてお尋ねがありました。  揚水発電所は、出力調整の能力に優れており、通常は、需要の少ない夜間の電力で上池へ水をくみ上げ、需要が多い時間帯に放水して発電を行うものです。一方で、固定価格買取り制度においては、太陽光や風力発電の買取りを行う電力会社は、余剰電力が生じた際、太陽光や風力の出力抑制を行う前に、自社の火力発電抑制や揚水発電所の揚水運転を行うことが規定されております。こうした出力調整の動力源としての揚水発電活用を徹底し、再生可能エネルギーの導入拡大を図ってまいります。  原発比率についてお尋ねがありました。  今回、エネルギーミックスの中でお示しした原発比率は、二〇三〇年時点における電源構成見通しであり、あるべき姿を示したものです。すなわち、3EプラスSに関する政策目標を同時達成しながら、徹底した省エネ、再エネの最大限の導入、火力発電の効率化などを進めつつ、原子力依存度を低減させた結果として得られたものであります。  既存の原発について新規制基準への適合性審査が進められているところであり、現段階において新増設、リプレースは想定しておりません。このような状況においても、法令上認められる運転期間の延長や安全性向上の取組により期待され得る稼働率の向上などの様々な要因を考慮すれば、今回お示しした原発比率は達成可能なものと考えております。  再生可能エネルギーの導入に伴う国民負担の増加への対策についてお尋ねがありました。  再生可能エネルギーの導入拡大を進める上で、国民負担の抑制を図ることは重要な課題と認識しております。  太陽光発電については、発電コストの低下を踏まえた買取り価格の引下げや、低コスト化、高効率化のための技術開発を進めてまいります。また、大規模に開発することによってコスト低減が可能な風力や地熱の導入を更に拡大するため、環境アセスメントの手続の迅速化や域内送電網の整備実証などを進めてまいります。  固定価格買取り制度の在り方を含め、再生可能エネルギーの導入拡大国民負担の抑制を両立させる観点から、引き続き必要な検討を行ってまいります。  周波数の統一についてお尋ねがありました。  東西の周波数を統一するには、電気事業者の設備のみを交換するだけでも、ある試算によれば約十兆円を要するとされていることや、国民生活産業活動など、電力ユーザーへの大きな影響懸念されるなどの課題があります。したがって、周波数の統一については、電気事業者やユーザーに対して極めて大きな負担を強いるものであり、慎重に考えるべきものと考えております。  以上であります。(拍手)     ─────────────
  21. 山崎正昭

    議長山崎正昭君) 倉林明子君。    〔倉林明子君登壇拍手
  22. 倉林明子

    ○倉林明子君 日本共産党の倉林明子です。  私は、日本共産党を代表して、電気事業法等の一部を改正する等の法律案について総理質問します。  本法案は、東日本大震災と福島第一原発事故を契機として、戦後六十年以上続いてきた発送電一貫、地域独占電力供給体制を抜本的に見直す必要があるとして進められてきた電力システム改革の総仕上げとなっています。  総仕上げに当たって、福島第一原発事故の実態を踏まえることは当然です。事故から四年以上たった今も、汚染水をめぐるトラブルは後を絶たず、事故収束の見通しは全く見えておりません。総理が前面に立ってやるべきは、原発の再稼働や輸出を進めることではなく、原発事故の収束と原因究明ではありませんか。  避難生活を続ける福島県民はいまだ十一万人。放射能の受け止め方の違いで深刻な亀裂が入った家族、賠償の違いで分断された集落など、原発事故はふるさとも家族の大事なきずなも引き裂き、なりわいの見通しも立っていません。原発事故さえなければ被ることのなかった深刻な被害はいまだに続いているのです。  ところが、自民党東日本大震災復興加速化本部によれば、帰還困難区域を除く区域は避難指示を解除し、一律二〇一七年度で賠償を打ち切り、営業損害賠償も原則二〇一六年度で終えるとした案をまとめ、総理に提言すると報道されています。  総理は、地元の意見をよく聞いて、被害者に寄り添った対応を行うことが重要と答弁されています。そうであるなら、一律の賠償打切りなど実施すべきではありません。東京電力と国は、事故を起こした加害者として被害の完全賠償の責任を果たすべきです。総理見解を求めます。  津波による深刻な事故が起こることを知りながら必要な対策も取らず、事故を起こした後もトラブル、隠蔽を繰り返す東電に原子力を扱う当事者能力がないことは明らかです。さらに、除染費用や賠償を出し渋る東電は福島再生の障害となっています。本法案附則第七十四条では、原子力政策の変更による電力会社競争条件の悪化に対し必要な改善措置等を講ずるとして、原子力事業環境整備を行うなどもってのほかです。東電を破綻処理し、大株主とメガバンクの責任を問うことを強く求めるものです。いかがですか。  原発は可能な限り低減させるとしながら、原発ベースロード電源と位置付けたエネルギー基本計画を受け、二〇三〇年の電源構成案は、原発比率を二〇から二二%としています。老朽原発稼働を前提として、原発の運転期間は四十年とした法の原則さえ無視するものであり、到底容認できません。原発事故後、一時稼働した大飯原発が停止した二〇一三年の九月以降、一年八か月間、稼働している原発はゼロなのです。福島原発事故などなかったかのように原発比率を二割に引き上げるなど、原発回帰の再稼働宣言ではありませんか。  政府は、新たな規制基準に適合した原発は再稼働を進めるとする一方、新たな規制基準を満たしても事故は起こり得ると規制委員長は繰り返し発言しています。  一旦事故を起こせば、国民の人格権、生存権を侵害するのが原発事故です。原子力発電に対する国民の不安と不信は大きく広がり、再稼働には反対だ、この声が多数だという現実から出発すべきであり、原発ゼロを電力システム改革の土台に据えるべきです。総理答弁を求めます。  原発と同じくベースロード電源に位置付けた石炭火力発電所は、出力五十万キロワットを超える大規模発電所計画がめじろ押しです。原発稼働率政府見通しを下回れば、大規模石炭火力発電所の稼働率が上がることは明らかです。EUやアメリカなどでは、石炭火力発電所の建設を認めない動きが広がっています。原発の代替に石炭火力を使うやり方は地球温暖化防止対策にも逆行するもので、きっぱり決別すべきです。いかがですか。  原発事故を経験した国民は、再生可能エネルギーの爆発的な普及を期待しました。再生可能エネルギー特別措置法、いわゆるFIT法でその可能性が大きく広がりました。一般電気事業者地域独占を廃止する電力システム改革は、広域で運用すればするほど、その変動を緩和できる再生可能エネルギーの普及促進を加速させる機能を果たすはずでした。  ところが、全国大で需給調整機能を果たす広域的運営推進機関の運用が始まる前に、政府は、一般電気事業者再生可能エネルギー接続を拒否できるFIT法の規則改正を行いました。接続義務の原則と例外を逆転させるもので、既に再生可能エネルギー普及のブレーキとなっています。  総理は、接続可能量は、原子力も含め、ベースロード電源の長期的な稼働計画を前提としていると答弁していますが、動いていない原発最大限稼働することを前提としていることが問題なのです。再生可能エネルギー最大限の導入という方針と矛盾するではありませんか。  エネルギーを自由に選べるとしていますが、公共料金である電気ガス料金の中身がきちんと消費者にも情報公開されることが必要です。ところが、規制料金の撤廃により、公聴会も廃止するとしています。原発事故後、消費者にようやく見え始めた料金に係る情報が全く隠れてブラックボックス化することになりかねません。  新たに市場監視を行うとして設置される電力ガス取引監視等委員会が、託送料金経過措置期間中の小売料金について厳格な審査を行うとしていますが、完全自由化後は市場監視のみとなるものです。情報公開や料金決定にこれまで以上に消費者意見が反映できる制度とし、自由化後も、電源構成も含む原価情報と併せて料金決定に至る情報公開を徹底すべきです。総理答弁を求めます。  なぜ、ガス全面自由化導管分離が必要なのでしょうか。  先日視察した東京ガスは、阪神・淡路大震災経験して地震時の対応システムを完成させ、東日本大震災でもガス管の閉鎖、復旧に即応できることを実証しました。ガス製造から小売まで一体確保されてきた保安体制は維持されるのか、ほとんど検証されていません。  一方、この導管を使ってガスの販売、小売にも参入できるのはLNG基地を持つ電力会社などに限られるもので、ガス市場参入拡大できる電力会社のメリットは明確ではないでしょうか。消費者国民の安全を最優先に据えるべきです。総理、いかがですか。  本法案が目指すシステム改革は、原発の再稼働を担保し、事故を起こした東電を始めとした電力会社、原子炉メーカー、石油、大手商社などがエネルギー市場で活躍できる成長戦略の具体化にほかなりません。  発送電の完全な所有権分離と送電網の公的管理を行い、地域エネルギー地域でつくる小規模分散・地域循環型システムへの民主的改革を求めて、質問を終わります。(拍手)    〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇拍手
  23. 安倍晋三

    内閣総理大臣安倍晋三君) 倉林明子議員にお答えいたします。  原発事故の収束と原因究明についてお尋ねがありました。  世界にも前例のない廃炉・汚染水対策については、技術的難易度が高い取組への財政措置を行うなど、東電任せにせず、国も前面に立って取り組んでいます。  福島原発事故の原因の解明は、国として継続的に取り組むことが重要です。これまでに国会、政府の事故調査委員会において事故の検証が行われ、報告書が取りまとめられています。さらに、独立した原子力規制委員会が昨年十月に中間報告書を取りまとめるなど、事故原因の技術的解明を進めており、今後も中長期にわたって継続的に取り組んでまいります。  原子力損害賠償についてのお尋ねがありました。  政府としては、与党の御意見も参考にさせていただきながら、東京電力に対し、被害者に寄り添った迅速、公平かつ適切な賠償を行うよう指導してまいります。  東電を破綻処理すべきとのお尋ねがありました。  東京電力は、福島第一原発の炉の設置者であり、現場に精通し、これまで様々な作業に取り組んできていることから、廃炉の実施主体としての責任を引き続きしっかり果たすべきと考えております。  その上で、東電を破綻処理し、一時国有化することについては、被害者の方々への賠償や、現場で困難な事故収束作業に必死に当たっている関係企業の取引債権が十分支払いできないおそれ、直ちに東電と同等の電力供給を行える体制確保できなくなるおそれ、海外からの燃料調達や権益確保に支障が生じるおそれがあり、福島の再生やエネルギー安定供給観点から適当ではないと考えています。  また、金融機関に対しては一般担保が付されている私募債方式の縮小、株主に対しては無配当の継続などの形で協力、責任を求めております。  なお、法案附則第七十四条の検証規定は、課題懸念があれば、それを解消するための環境整備に取り組むことで電力システム改革最後までやり遂げるという趣旨で設けたものであります。  原発比率についてお尋ねがありました。  痛ましい原発事故により、今でもなお多くの方が厳しい避難生活をされています。復旧・復興はいまだ道半ば。そうした中、原発への反対の声が強いのは当然のことと思います。  他方で、原発が全て止まり、これに伴う燃料輸入増による電力料金上昇は、国民生活や中小・小規模企業の方々に大きな負担となっています。この状況電力システム改革の有無に関わりません。このため、国民生活産業活動、中小・小規模事業者を守り、責任あるエネルギー政策を実現するためには原発ゼロというわけにはいきません。  その上で、徹底した省エネルギー再生可能エネルギー最大限の導入を進めつつ、原発依存度は可能な限り引き下げるという方針を踏まえ、二〇三〇年時点における電源構成上のあるべき姿として、震災前の約三割という原発比率を約二割まで引き下げる案をお示ししているところです。  石炭火力発電についてお尋ねがありました。  エネルギーの特性を考えると、安定供給コスト環境負荷、安全性といったあらゆる面で優れたエネルギー源はありません。このため、エネルギー資源に恵まれず、海に囲まれている我が国としては、各エネルギー源の強みが生き、全体として弱みが補完される、柔軟かつ多層的なエネルギー供給構造を構築する必要があります。  我が国において、石炭火力安定供給性や経済性に優れた重要なベースロード電源であり、高効率発電技術の有効利用等により、環境負荷を低減しつつ活用してまいります。  再生可能エネルギー接続可能量についてお尋ねがありました。  固定価格買取り制度では、二十年間など長期間にわたる電気の買取りを保証するため、先般の接続可能量の検証に当たっては、足下稼働状況ではなく、ベースロード電源の長期的な稼働傾向を前提としたものと承知しています。  再生可能エネルギー接続についての今回の対応措置は、停電を起こすことなく、これからも再生可能エネルギーをしっかり受け入れていけるために講じたものです。徹底した省エネルギー再生可能エネルギー最大限の導入を進めつつ、原発依存度を可能な限り低減させるという基本方針に変わりはありません。  電気ガス料金に関する情報開示の徹底についてのお尋ねがありました。  電気ガスの一般家庭向けなどの小売料金については、競争が十分であると確認されるまでの間、経過措置として料金規制が講じられることから、その認可に係る審査過程を通じて情報開示が実施されます。小売料金規制の撤廃後は、引き続き厳格な市場監視を行うとともに、消費者の立場からどのような情報公開を求めるか検討してまいります。  今回の法案によるガス全面自由化導管分離の必要性保安体制の維持についてのお尋ねがありました。  電力システム改革に加え、ガスシステム改革一体的に進めることで、競争的でダイナミックなエネルギー市場をつくり上げ、電気ガスのセット販売など、多様で魅力的なサービス消費者に提案されることが期待されます。このため、電力に加え、都市ガスも、小売全面自由化導管中立化により、事業者の規模やガス供給設備の有無を問わず、幅広い事業者参入できるようあらゆる参入障壁を取り除いてまいります。  なお、保安確保は、ガスシステム改革の大前提であり、今回の法案では、導管網保安は基本的にガス導管事業者が担った上で、全てのガス事業者に連携協力義務を課すことにより、保安確保に万全を期すこととしております。  所有権分離などにより、地域エネルギーをつくる仕組みを支える改革へと転換することについてのお尋ねがありました。  エネルギー市場一体的に改革し、送配電部門法的分離などにより、あらゆる参入障壁を取り除いていくことで、地域の分散型電源活用も含め、多様な主体がエネルギー供給に参加できるようになります。  御指摘の所有権分離や送電網の公的管理については、財産権や資金調達の面で課題があると考えております。(拍手
  24. 山崎正昭

    議長山崎正昭君) これにて質疑は終了いたしました。      ─────・─────
  25. 山崎正昭

    議長山崎正昭君) 日程第一 株式会社海外通信・放送・郵便事業支援機構法案内閣提出衆議院送付)を議題といたします。  まず、委員長の報告を求めます。総務委員長谷合正明君。     ─────────────    〔審査報告書及び議案は本号末尾に掲載〕     ─────────────    〔谷合正明君登壇拍手
  26. 谷合正明

    ○谷合正明君 ただいま議題となりました法律案につきまして、総務委員会における審査の経過と結果を御報告申し上げます。  本法律案は、我が国事業者に蓄積された知識、技術及び経験活用して海外において通信・放送・郵便事業を行う者等に対し資金供給その他の支援を行うことにより、我が国及び海外における通信・放送・郵便事業に共通する需要の拡大を通じ、当該需要に応ずる我が国事業者の収益性の向上等を図り、もって我が国経済の持続的な成長に寄与することを目的とする法人として、株式会社海外通信・放送・郵便事業支援機構を設立しようとするものであります。  委員会におきましては、機構設立の必要性及び関係機関との役割分担、ICT分野の海外展開に向けた戦略、郵便インフラシステムの海外展開と機構の活用、機構の役職員の人選の在り方、支援対象事業の選定の方針等について質疑が行われました。  質疑を終局し、討論に入りましたところ、日本共産党を代表して吉良よし子委員より反対、社会民主党・護憲連合を代表して又市征治委員より反対する旨の意見がそれぞれ述べられました。  討論を終局し、採決の結果、本法律案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  なお、本法律案に対し附帯決議が付されております。  以上、御報告申し上げます。(拍手)     ─────────────
  27. 山崎正昭

    議長山崎正昭君) これより採決をいたします。  本案の賛否について、投票ボタンをお押し願います。    〔投票開始〕
  28. 山崎正昭

    議長山崎正昭君) 間もなく投票を終了いたします。──これにて投票を終了いたします。    〔投票終了〕
  29. 山崎正昭

    議長山崎正昭君) 投票の結果を報告いたします。   投票総数         二百三十二     賛成            百九十九     反対             三十三    よって、本案は可決されました。(拍手)     ─────────────    〔投票者氏名は本号末尾に掲載〕     ─────────────
  30. 山崎正昭

    議長山崎正昭君) 本日はこれにて散会いたします。    午前十一時四十二分散会