○
内閣総理大臣(
安倍晋三君) まず冒頭、シリアにおける
邦人殺害テロ事件について一言申し上げます。
事件発生以来、政府はあらゆる手段を尽くしてまいりましたが、
日本人が
テロの犠牲となったことは痛恨の極みであります。衷心より哀悼の誠をささげるとともに、御家族に心からお悔やみを申し上げます。
非道かつ卑劣極まりない
テロ行為を断固非難します。
日本が
テロに屈することは決してありません。
水際対策の強化など、国内外の
日本人の
安全確保に万全を期してまいります。そして、食糧、
医療などの
人道支援、
テロと闘う
国際社会において、
日本としての責任を毅然として果たしてまいります。
日本を取り戻す、そのためには、この道しかない、こう訴え続け、私
たちは二年間全力で走り続けてまいりました。
先般の総選挙の結果、
衆参両院の指名を得て、引き続き
内閣総理大臣の重責を担うこととなりました。
安定した政治の下で、この道を更に力強く前進せよ、これが総選挙で示された
国民の意思であります。全身全霊を傾け、その負託に応えていくことを、この議場にいる自由民主党及び公明党の
連立与党の諸君とともに、
国民の皆様にお約束いたします。
経済再生、復興、
社会保障改革、
教育再生、
地方創生、
女性活躍、そして外交・
安全保障の立て直し、いずれも困難な道のり、戦後以来の
大改革であります。しかし、私
たちは、
日本の将来をしっかりと見定めながら、ひるむことなく
改革を進めなければならない。逃れることはできません。
明治国家の礎を築いた
岩倉具視は、
近代化が進んだ
欧米列強の姿を目の当たりにした後、このように述べています。
日本は小さい国かもしれないが、
国民みんなが心を一つにして、国力を盛んにするならば、
世界で活躍する国になることも決して困難ではない。
明治の
日本人にできて、今の
日本人にできないわけはありません。今こそ、
国民とともに、この道を前に向かって再び歩み出すときです。
皆さん、戦後以来の
大改革に力強く踏み出そうではありませんか。
戦後一千六百万人を超えていた
農業人口は、現在二百万人。この七十年で八分の一まで減り、
平均年齢は六十六歳を超えました。もはや農政の
大改革は待ったなしであります。何のための
改革なのか。強い
農業をつくるための
改革、農家の所得を増やすための
改革を進めるのであります。
六十年ぶりの
農協改革を断行します。
農協法に基づく現行の
中央会制度を廃止し、
全国中央会は
一般社団法人に移行します。農協にも会計士による監査を義務付けます。意欲ある
担い手と
地域農協とが力を合わせ、
ブランド化や
海外展開など
農業の未来を切り開く。そう、これからは、農家の
皆さん、そして
地域農協の
皆さんが主役です。
農業委員会制度の
抜本改革にも初めて踏み込みます。
地域で頑張る
担い手がリードする制度へと改め、
耕作放棄地の解消、農地の集積を一層加速いたします。
農業生産法人の
要件緩和を進め、多様な
担い手による
農業への参入を促します。いわゆる減反の廃止に向けた歩みを更に進め、需要ある作物を振興し、農地の
フル活用を図ります。市場を意識した競争力ある
農業へと
構造改革を進めてまいります。
変化こそ唯一の永遠である。
明治時代、
日本画の伝統に新風を持ち込み、
改革に挑んだ
岡倉天心の言葉です。
伝統の名の下に、変化を恐れてはなりません。
農業は、
日本の美しい
ふるさとを守ってきた国の基であります。だからこそ、今、変化を起こさねばならない。必ずや
改革を成し遂げ、
若者が自らの情熱で新たな地平を切り開くことができる新しい
日本農業の姿を描いてまいります。
目指すは
世界のマーケット。林業、
水産業にも大きな
可能性があります。昨年、
農林水産物の輸出は六千億円を超え、過去最高を更新いたしました。しかし、まだまだ少ない。
世界には三百四十兆円規模の
食市場が広がっています。
内外一体の
改革を進め、安全でおいしい
日本の
農水産物を
世界に展開してまいります。
オープンな
世界へと果敢に踏み出す。
日本の国益を確保し、成長を確かなものとしてまいります。
最終局面の
TPP交渉は、いよいよ出口が見えてまいりました。米国とともに交渉をリードし、早期の
交渉妥結を目指します。欧州とのEPAについても、本年中の
大筋合意を目指し、交渉を更に加速してまいります。
経済の
グローバル化は一層進み、
国際競争に打ち勝つことができなければ
企業は生き残ることはできない。政府もまたしかり。オープンな
世界を見据えた
改革から逃れることはできません。
全ての
上場企業が、
世界標準にのっとった新たなコーポレートガバナンスコードに従うか、従わない場合はその理由を説明する、その義務を負うことになります。
法人実効税率を二・五%引き下げます。三五%近い
現行税率を数年で二〇%台まで引き下げ、国際的に遜色のない水準へと
法人税改革を進めてまいります。
患者本位の新たな
療養制度を創設します。
世界最先端の
医療を
日本で受けられるようにする。困難な病気と闘う患者の
皆さんの思いに応え、その申出に基づいて、
最先端医療と
保険診療との併用を可能とします。さらに、
安全性、
有効性が確立すれば、
国民皆
保険の下で
保険適用としてまいります。
医療法人制度の
改革も実施します。
外部監査を導入するなど、経営の
透明化を進めます。さらに、異なる機能を持つ複数の
医療法人の連携を促す新たな
仕組みを創設し、
地域医療の充実に努めます。
電力システム改革もいよいよ
最終段階に入ります。
電力市場の
基盤インフラである
送配電ネットワークを、発電、小売から分離し、誰もが公平にアクセスできるようにします。
ガス事業でも、小売を全面自由化し、あらゆる
参入障壁を取り除いてまいります。競争的でダイナミックな
エネルギー市場をつくり上げてまいります。
低廉で安定した
電力供給は
日本経済の
生命線であります。責任ある
エネルギー政策を進めます。
燃料輸入の著しい増大による
電気料金の上昇は、
国民生活や
中小・
小規模事業の
皆さんに大きな負担となっています。
原子力規制委員会が新
規制基準に適合すると認めた原発は、その科学的、技術的な判断を尊重し、再稼働を進めます。国が支援して、しっかりとした
避難計画の整備を進めます。
立地自治体を始め
関係者の理解を得るよう、丁寧な説明を行ってまいります。
長期的に
原発依存度を低減させていくとの方針は変わりません。あらゆる施策を総動員して、徹底した省
エネルギーと、
再生可能エネルギーの最大限の導入を進めてまいります。
安倍内閣の
規制改革によって、昨年、夢の
水素社会への幕が開きました。
全国に
水素ステーションを整備し、
燃料電池自動車の普及を加速させます。大規模な
建築物に
省エネ基準への
適合義務を課すなど、
省エネ対策を抜本的に強化してまいります。
安全性、
安定供給、
効率性、そして
環境への適合、これらを十分に検証し、
エネルギーの
ベストミックスをつくり上げます。そして、
世界の
温暖化対策をリードする。COP21に向け、
温室効果ガスの排出について、新しい
削減目標と具体的な
行動計画をできるだけ早期に策定いたします。
各般の
改革を進めるため、
行政改革を併せ断行いたします。
歴代内閣で
肥大化の一途をたどってきた
内閣官房、
内閣府の事務の一部を各省に移管し、
重要政策における
内閣の
総合調整機能が機動的に発揮できるような体制を整えます。
十七の
独立行政法人を七
法人へと統合します。私
たちが進める
改革は、単なる
数合わせではありません。攻めの
農業を始め、諸
改革を強力に進めていくための統合であります。
金融庁検査の導入など、
法人ごとの業務の特性に応じた
ガバナンス体制を整備し、
独立行政法人の
政策実施機能を強化してまいります。
四月から
日本医療研究開発機構が始動します。革新的な
がん治療薬の開発や
iPS細胞の
臨床応用などに取り組み、
日本から
医療の
世界に
イノベーションを起こします。
日本を
世界で最も
イノベーションに適した国にする。
世界中から超一流の
研究者を集めるため、
世界最高の
環境を整えた新たな
研究開発法人制度をつくります。ITやロボット、海洋や宇宙、バイオなど、
経済社会を一変させる挑戦的な研究を大胆に支援してまいります。
知と行は二つにして一つ。何よりも実践を重んじ、明治維新の原動力となる
志士たちを育てた
吉田松陰先生の言葉であります。
成長戦略の実行。大胆な
規制改革によって、
生産性を押し上げ、
国際競争力を高めていく。オープンな
世界に踏み出し、
世界の
成長力を取り込んでいく。なすべきことは明らかです。要は、やるか、やらないか。
この国会に求められていることは、単なる批判の応酬ではありません。行動です。
改革の断行であります。
日本の将来を見据えながら、大胆な
改革を、
皆さん、実行しようではありませんか。
この二年間、全力で射込んできた三本の矢の
経済政策は、確実に成果を上げています。
中小・
小規模事業者の
倒産件数は、昨年、二十四年ぶりの低い水準となりました。
就職内定を得て新年を迎えた
新卒予定者は、八割を超えました。大卒で六年ぶり、高卒で二十一年ぶりに高い
内定率です。
有効求人倍率は、一年以上にわたって一倍を超え、仕事を探す人よりも人を求める仕事の数が多くなっています。
正社員においても、十年前の
調査開始以来、最高の水準となりました。
この機を生かし、
正規雇用を望む
派遣労働者の
皆さんにその
チャンスを広げます。
派遣先企業への直接雇用の依頼など、
正社員化への取組を
派遣元に義務付けます。
派遣先の
労働者との
均衡待遇の確保にも取り組み、一人一人の選択が実現できる
環境を整えてまいります。
昨年、過去十五年間で最高の
賃上げが実現しました。そして、この春も、
企業収益の拡大を賃金の上昇につなげる。さらには、
中小・
小規模事業の
皆さんが
原材料コストを価格に転嫁しやすくし、
経済の好循環を継続させていく。その認識で
政労使が一致いたしました。
デフレ脱却を確かなものとするため、
消費税率一〇%への
引上げを十八か月延期し、平成二十九年四月から実施します。そして、
賃上げの流れを来年の春、再来年の春と続け、
景気回復の温かい風を
全国津々浦々にまで届けていく、そのことによって、
経済再生と
財政再建、
社会保障改革の三つを同時に達成してまいります。
来年度予算は、新規の
国債発行額が六年ぶりに四十兆円を下回り、
基礎的財政収支の
赤字半減目標を達成する予算としました。二〇二〇年度の
財政健全化目標についても堅持し、夏までにその達成に向けた具体的な計画を策定いたします。
消費増税が延期された中にあっても、アベノミクスの果実も生かし、
社会保障を充実してまいります。
難病の
皆さんへの
医療費助成を大幅に広げます。先月から、
小児慢性特定疾病について、新たに百七疾病を
助成対象としました。難病についても、この七月を目指し、三百疾病へと広げてまいります。先月から
高額療養費制度を見直しました。所得の低い方々の
医療費負担を軽減いたします。
認知症対策を推進します。早期の診断と対応に加え、
認知症の
皆さんができる限り住み慣れた
地域で
暮らしていけるよう、
環境を整えてまいります。
国民健康保険への
財政支援を拡充することと併せ、その
財政運営を市町村から都道府県に移行することにより、
国民皆
保険の基盤を強化してまいります。
所得の低い
高齢者世帯の
皆さんの
介護保険料を軽減いたします。
介護職員の
皆さんに月額一万二千円相当の
処遇改善を行い、
サービスの充実にも取り組みます。他方で、
利用者の負担を軽減し、
保険料の伸びを抑えるため、増え続ける
介護費用全体を抑制します。
社会福祉法人について、
経営組織の見直しや
内部留保の
明確化を進め、
地域に貢献する
福祉サービスの
担い手へと
改革してまいります。
子育て世帯の
皆さんを応援します。
子ども・
子育て支援新制度は、
予定どおり四月から実施いたします。引き続き、
待機児童ゼロの実現に全力投球してまいります。
幼児教育や保育に携わる
皆さんに三%相当の
処遇改善を行い、小学校の教室を利用した
放課後児童クラブの拡大や、休日・
夜間保育、
病児保育の充実など、多様な
保育ニーズにもしっかりと応えてまいります。
その
担い手として、これまで
子育てに専念してきた
女性の
皆さんの力にも大いに期待しています。
子育て支援員制度がスタートします。
子育ても一つの
キャリア。そのかけがえのない、すばらしい経験を生かしてほしいと思います。
私は、
女性の力を強く信じます。家庭で、
地域社会で、職場で、それぞれの場で活躍している全ての
女性が、その
生き方に自信と誇りを持ち、輝くことができる
社会をつくり上げてまいります。
女性活躍推進法案を再び提出し、早期の成立を目指します。国、
地方、
企業などが一体となって、
女性が活躍しやすい
環境を整える。
社会全体の
意識改革を進めてまいります。
本年採用の
国家公務員から、
女性の比率が三割を超えます。二〇二〇年にはあらゆる分野で
指導的地位の三割以上が
女性となる
社会を目指し、
女性役員などの情報の開示、
育児休業中の
職業訓練支援など、
女性登用に積極的な
企業を応援してまいります。
高齢者の
皆さんに多様な
就業機会を提供する。
シルバー人材センターには、更にその機能を発揮してもらいます。障害や難病、重い病気を抱える
皆さんにも、きめ細かな支援を行い、就労の
チャンスを拡大してまいります。
あらゆる人が生きがいを持って
社会で活躍できる。そうすれば、
少子高齢社会においても
日本は力強く成長できるはずです。
そのためには、
労働時間に画一的な枠をはめる従来の
労働制度、
社会の発想を大きく改めていかなければなりません。
子育て、介護など、働く方々の事情に応じた柔軟かつ多様な働き方が可能となるよう、選択肢の幅を広げてまいります。
昼が長い夏は、朝早くから働き、夕方は家族や友人との時間を楽しむ。夏の
生活スタイルを変革する新たな
国民運動を展開します。
夏休みの前に働いた分、子供に合わせて長い休みを取る、そんな働き方も
フレックスタイム制度を拡充して可能とします。
専門性の高い仕事では、時間ではなく成果で評価する新たな
労働制度を選択できるようにします。
時間
外労働への
割増し賃金の
引上げなどにより、長時間
労働を抑制します。さらに、
年次有給休暇を確実に取得できるようにする
仕組みをつくり、働き過ぎを防ぎ、ワーク・ライフ・バランスが確保できる
社会をつくってまいります。
日本の未来をつくるのは
若者です。
若者たちには、
社会でその能力を思う存分発揮し、大いに活躍してもらいたいと願います。
若者への
雇用対策を抜本的に強化します。三割を超える
若者が早期離職する現実を踏まえ、
新卒者を募集する
企業には、残業、研修、離職などの
情報提供を求めます。
若者の使い捨てが疑われる
企業からは、ハローワークで
新卒求人を受理しないようにいたします。非
正規雇用の
若者たちには、
キャリアアップ助成金を活用して
正規雇用化を応援します。魅力ある
中小企業がたくさんある、そのことを
若者たちに知ってもらうための
仕組みを強化します。
「娘は今、就職に向けて前向きに頑張っております。」、二十歳の娘さんを持つお母さんから手紙をいただきました。娘さんは、幼い頃から学習困難があり、友達と違う自分に悩んできたといいます。
「娘はだんだん
自己嫌悪がひどくなり「死んでしまいたい」と泣くこともありました。学校に行くたびに輝きが失せていく。しかし、娘は世の中に置いて行かれまいと、学校に通いました。」
中学一年生のとき、不登校になりました。しかし、
フリースクールとの出会いによって、自信を取り戻し、再び学ぶことができました。大きな勇気を得て、
社会の偏見に悩みながらも、今は
就職活動にもチャレンジしているそうです。
その手紙は、こう結ばれていました。「
子どもは大人の鏡です。大人の
価値観が変わらない限りいじめは起こり、無くなることはないでしょう。多様な人、多様な学び、多様な
生き方を受け入れ、認め合う
社会を目指す
日本であってほしいと切に願っております。ちっぽけな母親の願いです。」と。
いや、当然の願いであります。
子供たちの誰もが、自信を持って、学び、成長できる
環境をつくる、これは私
たち大人の責任です。
フリースクールなどでの多様な学びを国として支援してまいります。
義務教育における六三の画一的な学制を
改革します。
小中一貫校の設立も含め、九年間の中で学年の壁などにとらわれない多様な教育を可能とします。
できないことへの諦めではなく、できることへの喜びを与える。
地域の
人たちの協力を得ながら、
中学校で
放課後などを利用して無償の
学習支援を行う取組を
全国二千か所に拡大します。
子供たちの未来が家庭の
経済事情によって左右されるようなことがあってはなりません。子供の貧困は、頑張れば報われるという真っ当な
社会の根幹に関わる深刻な問題です。
所得の低い世帯の
幼児教育に係る負担を軽減し、
無償化の実現に向け一歩一歩進んでまいります。希望すれば、高校にも、
専修学校、大学にも進学できる
環境を整えます。高校生に対する
奨学給付金を拡充します。大学生への
奨学金も、有利子から無利子への流れを加速し、将来的に、必要とする全ての学生が無
利子奨学金を受けられるようにしてまいります。
誰にでも
チャンスがある、そしてみんなが夢に向かって進んでいける、そうした
社会を、
皆さん、共につくり上げようではありませんか。
地方で就職する学生には
奨学金の返済を免除する新たな
仕組みをつくります。東京に住む十代、二十代の
若者に尋ねると、その半分近くが
地方への移住を望んでいる。大変勇気付けられる数字です。
地方にこそ
チャンスがある。
若者たちの挑戦を力強く後押しします。一度失敗すると全てを失う
個人保証偏重の慣行を断ち切ります。
全国の
金融機関、
中小・
小規模事業の
皆さんへの徹底を図ります。
政府調達では、創業から十年未満の
企業を優先するための枠組みをつくり、新たなビジネスに挑む
中小・
小規模事業の
皆さんの
チャンスを広げてまいります。
地方に
チャンスを見出す
企業も応援します。本社などの拠点を
地方に移し、投資や雇用を拡大する
企業を税制により支援してまいります。
地域ならではの資源を生かした新たな
ふるさと名物の
商品化、
販路開拓も応援し、
地方の
仕事づくりを進めてまいります。
地方こそ成長の主役です。
外国人観光客は、この二年間で五百万人増加し、過去最高、一千三百万人を超えました。
ビザ緩和などに戦略的に取り組み、更なる高みを目指します。
日本を訪れる
皆さんに、北から南まで、豊かな自然、文化や歴史、食など、
地方の個性あふれる
観光資源を満喫していただきたい。
国内の税関や検疫、
出入国管理の体制を拡充いたします。
全国各地と結ぶ
玄関口、羽田空港の
機能強化を進めます。地元の理解を得て
飛行経路を見直し、国際線の
発着枠を二〇二〇年までに年四万回増やします。成田空港でも、
管制機能を高度化し、同様に年四万回、
発着枠を拡大します。アジアとのハブである沖縄では、那覇空港第二
滑走路の建設を進めます。二〇二一年度まで毎年三千億円台の予算を確保するとした沖縄との約束を重んじ、その実施に最大限努めてまいります。
熱意ある
地方の
創意工夫を全力で応援する、それこそが
安倍内閣の
地方創生であります。
地方の努力が報われる、
地方目線の
行財政改革を進めます。それぞれの
地方が特色を生かしながら、
全国にファンを増やし、財源を確保する、
ふるさと納税を拡大してまいります。手続も簡素化し、より多くの
皆さんに
地方の
応援団になってほしいと思います。
地方分権でも、霞が関が主導する従来の
スタイルを根本から改め、
地方の発意による、
地方のための
改革を進めてまいります。
地方からの積極的な提案を採用し、
農地転用などの権限を移譲します。さらに、
国家戦略特区制度を進化させ、
地方の情熱に応えて
規制改革を進める
地方創生特区を設けてまいります。
伝統ある美しい
日本を支えてきたのは中
山間地や離島にお住まいの
皆さんです。
医療や福祉、教育、買物といった生活に必要な
サービスを一定のエリアに集め、周辺の集落と
公共交通を使って結ぶことで、小さくても便利な
町づくりを進めてまいります。
安全で安心な
暮らしは何よりも重要です。ストーカー、
高齢者に対する詐欺など、弱い立場の
人たちを狙った犯罪への対策を強化してまいります。
児童虐待から
子供たちを守るため、SOSの声を「いちはやく」キャッチする、
児童相談所への
全国共通ダイヤル一八九をこの七月から運用開始いたします。
御嶽山の噴火を教訓に、地元と一体となって
観光客や
登山者の
警戒避難体制を充実するなど、
火山防災対策を強化してまいります。近年増加する
ゲリラ豪雨による水害や
土砂災害などに対して、
インフラの整備に加え、
避難計画の策定や訓練の実施など、
事前防災・
減災対策に取り組み、
国土強靱化を進めてまいります。
昨年は各地で
自然災害が相次ぎました。そのたびに、
自衛隊、警察、消防などの諸君が、昼夜を分かたず、また危険も顧みず懸命の
救助活動に当たってくれました。
「たくさん雪が降っていて、とっても、こわかったです。」、昨年十二月の大雪では、徳島県で幾つもの集落が孤立しました。災害派遣された
自衛隊員に地元の
中学校の
子供たちが手紙をくれました。「そんなとき、
自衛隊のみなさんが、来てくれて、助けてくれて、
かんしゃの気持ちでいっぱいです。わたし
たちも、みなさんに何かしなくては!と思い、手紙を書きました。」
私
たちもまた、彼らの高い
使命感と
責任感に対し、今この場から、改めて感謝の意を表したいと思います。
昨年十月、
海上自衛隊の
練習艦隊が五か月間の
遠洋航海から帰国しました。
国のために戦った方は、国籍を超えて、敬意を表さなければならない。
ソロモン諸島リロ首相の心温まる御協力をいただき、今回の航海では、さきの大戦の
激戦地ガダルカナル島で収容された百三十七柱の御遺骨に祖国へと御帰還いただく任務に当たりました。
今も異国の地に眠るたくさんの御遺骨に、一日も早く祖国へと御帰還いただきたい。それは今を生きる私
たちの責務であります。硫黄島でも、一万二千柱もの御遺骨の
早期帰還に向け、来年度中に
滑走路下百か所の掘削を完了し、取組を加速してまいります。
祖国の行く末を案じ、家族の幸せを願いながらお亡くなりになった、こうした尊い犠牲の上に私
たちの現在の平和があります。
平和国家としての歩みは、これからも決して変わることはありません。
国際情勢が激変する中で、その歩みを更に力強いものとする。
国民の命と幸せな
暮らしは、断固として守り抜く。そのために、あらゆる事態に切れ目のない対応を可能とする
安全保障法制の整備を進めてまいります。
本年は、戦後七十年の節目の年に当たります。
我が国は、さきの大戦の深い反省とともに、ひたすらに自由で民主的な国をつくり上げ、
世界の平和と繁栄に貢献してまいりました。その誇りを胸に、私
たちは、これまで以上に
世界の平和と安定に貢献する国とならなければなりません。次なる八十年、九十年、そして百年に向けて、その強い意思を
世界に向けて発信してまいります。
幾多の災害から得た教訓や経験を
世界と共有する。三月、仙台で
国連防災世界会議を開きます。
島国ならではの課題に共に立ち向かう。五月、いわきで太平洋・
島サミットを開催いたします。二十一
世紀こそ
女性への人権侵害がない世紀とする。
女性が輝く
世界に向けて、昨年に引き続き、秋口には、
世界中から、活躍している
女性の
皆さんに
日本にお集まりいただきたいと考えています。
本年はまた、被爆七十年の節目でもあります。唯一の戦争被爆国として、
日本が
世界の核軍縮・不拡散をリードしてまいります。
国連創設から七十年に当たる本年、
日本は
安全保障理事会非常任理事国に立候補いたします。そして、国連を二十一世紀にふさわしい姿へと
改革する、その大きな役割を果たす決意であります。
本年こそ、積極的平和主義の旗を一層高く掲げ、
日本が
世界から信頼される国となる、戦後七十年にふさわしい一年としていきたい、そう考えております。
今後も、豪州、ASEAN諸国、インド、欧州諸国など、自由や民主主義、基本的人権や法の支配といった基本的価値を共有する国々と連携しながら、地球儀を俯瞰する視点で、積極的な外交を展開してまいります。
その基軸は日米同盟であります。この二年間で、日米同盟のきずなは復活し、揺るぎないものとなりました。日米ガイドラインの見直しを進め、抑止力を一層高めてまいります。
現行の日米合意に従って在日米軍再編を進めてまいります。三月末には西普天間住宅地区の返還が実現いたします。学校や住宅に囲まれ、市街地の真ん中にある普天間飛行場の返還を必ずや実現する。そのために、引き続き沖縄の方々の理解を得る努力を続けながら、名護市辺野古沖への移設を進めてまいります。今後も、日米両国の強固な信頼関係の下に、裏付けのない言葉ではなく、実際の行動で沖縄の基地負担の軽減に取り組んでまいります。
日本と中国は、
地域の平和と繁栄に大きな責任を持つ、切っても切れない関係です。昨年十一月、習近平国家主席と首脳会談を行って、戦略的互恵関係の原則を確認し、関係改善に向けて大きな一歩を踏み出しました。今後、様々なレベルで対話を深めながら、大局的な観点から、安定的な友好関係を発展させ、
国際社会の期待に応えてまいります。
韓国は、最も重要な隣国です。日韓国交正常化五十周年を迎え、関係改善に向けて話合いを積み重ねてまいります。対話のドアは常にオープンであります。
ロシアとは、戦後七十年たった現在も、いまだ平和条約が締結できていない現実があります。プーチン大統領とは、これまで十回にわたる首脳会談を行ってまいりました。大統領の訪日を本年の適切な時期に実現したいと考えております。これまでの首脳会談の積み重ねを基礎に、
経済、文化など幅広い分野で協力を深めながら、平和条約の締結に向けて粘り強く交渉を続けてまいります。
北朝鮮には、拉致、核、ミサイルの諸懸案の包括的な解決を求めます。最重要課題である拉致問題について、北朝鮮は、迅速な調査を行い、一刻も早く全ての結果を正直に通報すべきであります。今後とも、対話と圧力、行動対行動の原則を貫き、拉致問題の解決に全力を尽くしてまいります。
昨年末、
日本を飛び立った「はやぶさ2」、宇宙での挑戦を続けています。小惑星にクレーターを作ってサンプルを採取する、そのミッションを可能とした核心技術は福島で生まれました。東
日本大震災で一時は休業を強いられながらも、技術者の
皆さんの熱意が被災地から
世界初の技術を生み出しました。
福島を
世界最先端の研究、新産業が生まれる地へと再生する。原発事故によって被害を受けた浜通り
地域にロボット関連産業などの集積を進めてまいります。
中間貯蔵施設の建設を進め、除染を更に加速します。東京電力福島第一原発の廃炉・汚染水対策に、国も前面に立ち、全力で取り組みます。福島復興再生特別措置法を改正し、避難指示の解除に向けて、復興拠点が円滑に整備できるようにします。財政面での支援も拡充し、
ふるさとに帰還する
皆さんの生活再建を力強く後押ししてまいります。
三月には東北の被災地を貫く常磐自動車道がいよいよ全線開通いたします。多くの
観光客に東北を訪れていただきたい。被災地復興の起爆剤となることを期待しています。
高台移転は九割、災害公営住宅は八割の事業がスタートしています。住まいの再建を続けると同時に、孤立しがちな被災者への見守りなどの心の復興、農林
水産業や
中小企業などなりわいの復興にも全力を挙げてまいります。
「はやぶさ2」は、福島生まれの技術がもたらした小惑星のサンプルとともに、二〇二〇年、
日本に帰ってきます。そのときには東北の姿は一変しているに違いありません。いや、一変させなければなりません。新たな
可能性と創造の地としての東北を、
皆さん、共につくり上げようではありませんか。
同じ年に、私
たちはオリンピック・パラリンピックを開催いたします。
必ずや成功させる。その決意で、専任の担当大臣の下、
インフラ整備から
テロ対策まで、多岐にわたる準備を本格化してまいります。
スポーツ庁を新たに設置し、
日本から
世界へとスポーツの価値を広げます。子供もお年寄りも、そして障害や難病のある方も、誰もがスポーツをもっと楽しむことができる
環境を整えてまいります。
私
たち日本人に、二〇二〇年という共通の目標ができました。
昨年、
日本海では、
世界に先駆けて、表層型メタンハイドレート、いわゆる燃える氷の本格的なサンプル採取に成功しました。
日本は資源に乏しい国である、そんな常識は二〇二〇年にはもはや非常識になっているかもしれません。
日本は変えられる。全ては私
たちの意思と行動に懸かっています。
十五年近く続いたデフレ。その最大の問題は
日本人から自信を奪い去ったことではないでしょうか。しかし、悲観して立ち止まっていても何も変わらない。批判だけを繰り返していても何も生まれません。
日本国民よ、自信を持て。戦後復興の礎を築いた吉田茂元総理の言葉であります。
昭和の
日本人にできて、今の
日本人にできないわけはありません。私は、この議場にいる全ての国会議員の
皆さんに、再度、呼びかけたいと思います。
全ては
国民のため、党派の違いを超えて、選挙制度
改革、定数削減を実現させようではありませんか。憲法改正に向けた
国民的な議論を深めていこうではありませんか。そして、
日本の未来を切り開く、そのために、戦後以来の
大改革をこの国会で必ずや成し遂げようではありませんか。
今や
日本は、私
たちの努力で再び成長することができる、
世界の真ん中で輝くことができる、その自信を取り戻しつつあります。
さあ
皆さん、今ここから、新たなスタートを切って、芽生えた自信を確信へと変えていこうではありませんか。
御清聴ありがとうございました。(拍手)
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