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参考人(
平岩俊司君) よろしくお願いいたします。
私は、「
北朝鮮の対外姿勢と国際関係」、お手元にレジュメを御準備いたしましたが、
北朝鮮の対外姿勢と国際関係についてお話をしろという御依頼ですので、そのようにお話をさせていただきたいと
思います。
北朝鮮を取り巻く国際関係、これ様々ありますが、まず最初にお話をさせていただいた方がいいのは、
金正恩政権、今の現政権の対外姿勢の特徴というのは、残念ながら今の段階ではまだそれほど大きく目立っていない、むしろ金正日、今の最高指導者の先代の父親の時代の外交の延長線上にあるというふうに基本的には考えていいんだろうと
思います。恐らく、次、
平井参考人の方から
国内の話が出ますが、
国内は様々な動きがあるんですけれども、対外関係に関してはまだ依然として金正日時代からの延長線上にあるということをまずお話をさせていただきたいと
思います。
それを前提にして、朝鮮半島をめぐる、とりわけ
北朝鮮をめぐる動きとしましては、もう近々ロシアを訪問するのではないのか、
金正恩第一書記がロシアを訪問するのではないのかとか、あるいは中国と
北朝鮮の関係が非常に冷え込んでいて、これはどうなっているのかとか、あるいは
アメリカが、サイバーテロを契機として米朝関係が
やり取りがあり、恐らく
北朝鮮が外交の中心に据えている対米関係、これはどうなっているのか、それから南北関係、これは韓国もその分断国家の一方ですから、イニシアチブをめぐる応酬があるということで、さらには
日本の立場からすれば
ストックホルム合意以降の動き、既に
参考人の方からいろんな御
意見が出ておりますけれども、これをどういうふうに理解したらいいのかという非常に複雑多岐にわたる
状況がございます。それを少し整理をしてお話をさせていただこうと
思います。
まず、
金正恩政権の対外姿勢というところから入りたいと
思いますが、まず現在の
北朝鮮の基本的な姿勢というのは、最初のところに書きましたように、経済建設と核武力建設の並進路線、つまり、
国内の経済を良くしながら一方で核の能力というものを高めていくと、これは昨年の三月、全員
会議で決定されたことであります。
それを前提にいたしまして、今年は彼らにとっての一つの大きな目標というのが十月十日の朝鮮労働党創建七十年、これは一九四五年に起源がありますので、七十年ですから、ここのセレモニーをどういうふうに迎えるのかというのが恐らく今年の
北朝鮮にとっての最も大きな課題ということになるんだろうと
思います。
それを前提にいたしまして、恐らく対外関係も活発な動きを見せるであろうというのが今年予想されることでありまして、冒頭申しましたように、
金正恩政権の対外政策というのはよくまだ特徴が出ていないというふうにお話をいたしましたが、今年から徐々にそうした動きが出てくる可能性というのがあるというのが現在の
状況かと
思います。
それを占う上で重要になってまいりますのが、今年の新年の辞という、ある
意味で今年の
北朝鮮の方向性を示す、
金正恩自身が発するメッセージでありますが、その中では基本的には
対話路線というものが前提になっているというふうに言って差し支えないと
思います。韓国に対しても最高位級会談もできない
理由はないということを言いますし、それから、
アメリカに対しても
アメリカが
対話を必要とすればいつでも対応する準備があるということを言うわけであります。
しかしながら、その前提になっておりますのが次にお話をいたしますところの米韓軍事合同演習、これを中止するということが大前提になるわけであります。
米韓軍事合同演習は、当然、
北朝鮮側が要求して中止をするような性格のものではありませんので、二枚目のレジュメにありますように、三月から始まって四月の二十四日までありましたので、韓国を始めとして関係国としては、この米韓軍事合同演習の最中は大きな動きがないだろうから、米韓軍事合同演習が終わった後に
北朝鮮側がどういう対応に出てくるのかというところに注目をしているというのが現状かと
思います。
もう一度、少し戻りますけれども、そのように米韓軍事合同演習が一つの軸になって動いている対外関係でありますが、それを考える上で一つ我々が注意しなければいけないことは、
北朝鮮が
アメリカに対する脅威というものが従来に比べて随分低下しているという事実であります。これは、
北朝鮮自身が核ミサイル能力というものを高めたというふうに、
実態はともかくとして、彼らは口ではそういうことを言っているわけであります。そこに駐英大使の
言葉を引用しておきましたが、我々は戦争は望まないが戦争は恐れていないんだというようなことを言う。これには、根拠としては、
アメリカが核兵器による攻撃を行える唯一の国ではない、核兵器をいつでも発射できるんだということが基本にありますし、更に言えば、
アメリカ自身が中東の問題を始めとして様々な問題に手を取られているということで、従来に比べればその危機感というのが少なくなっているというのが一つ指摘できることであろうと
思います。
それを前提にいたしまして、今年の一月、米朝関係が少し動く可能性がございました。一月十八日、シンガポールだったと
思いますが、
北朝鮮の外務次官と
アメリカの元政策特別代表が接触をいたしました。これは、昨年の暮れに起きましたソニー・ピクチャーズの問題について、ソニー・ピクチャーズが作った映画の内容で
北朝鮮の最高指導者が北の立場からすれば冒涜されているということでクレームを付けておったわけですが、これに対して
北朝鮮がソニー・ピクチャーズに対してサイバーテロを行ったのではないかという問題。これに対して
アメリカは一月三日に追加
制裁ということで対応いたしましたが、これについても話をしたというふうに言われております。
当初、これの動きの流れで、現在の
アメリカの
北朝鮮政策の担当者が
北朝鮮を訪問するのではないのかというような話も少し聞こえてまいりました。しかしながら、結果は全く違う結果になりまして、オバマ大統領が、一月二十二日に、
北朝鮮のことを残忍で抑圧的、他国にはまねができない独裁体制である、このような体制はやがて崩壊するであろうということをユーチューブを通じたインタビューで
発言をされると、これに対して
北朝鮮側は当然ですけれども大きく反発をするという
状況が続いて、それで先ほどお話をいたしました米韓軍事合同演習に突入をしたわけであります。
この米韓軍事合同演習に対して、
北朝鮮側は当然ですけれども反発をいたしまして、短距離弾道ミサイルを発射をするということですし、それから、人民軍の総参謀部は三月二日、合同軍事演習が開始されたタイミングで、我々の自主権と尊厳を侵害する許し難い挑発であると、領土、領空、領海への侵害に即応攻撃するということを言い、なおかつ、
北朝鮮側が、先ほどお話ししました
アメリカ側への提案に際して、米韓軍事合同演習を中止するのであれば核実験を中止する可能性があるというようなことをにおわせましたので、核実験の可能性も含めて各国で警戒が進んでいたということであります。それが先ほどお話ししましたように二十四日に終わりましたので、今後、従来の
対話路線に戻るのか、あるいは更に強硬な姿勢に出てくるのかというところが注目されるところだろうというふうに
思います。
次に、中国それからロシアとの関係をお話をさせていただきたいと
思います。
北朝鮮に対して、もちろん
北朝鮮が対外姿勢の軸に据えているのは
アメリカでありますが、
アメリカとの
交渉でありますけれども、一方で、
北朝鮮に対して最も影響力があるであろうと
国際社会が考えているのが中国であります。この中国と
北朝鮮の関係というのは昨年非常に冷え込んだというふうに言われております。
様々な分析、評価というのがございます。一昨年の暮れに、中朝関係の非常に重要な役割を担っていた張成沢という
金正恩第一書記の義理の叔父に当たる人が粛清をされた、これによって中朝関係冷え込んだんだというような説明もありますし、それから、二〇一三年の三度目の核実験以降も中朝関係というのは悪くなって冷え込んだんだというふうに、こういう説明もございます。
しかしながら、少なくとも貿易額だけを見るところ、必ずしも大きく落ち込んだという
状況ではなさそうであります。もちろん統計に出てこないところで様々な形で中国側からの貿易が制限されているというような話はありますが、少なくとも数字に関して言えば前年比二・九%減、張成沢がまだ中心的な
活動をしていたときと比べても二・九%しか減っていない。しかも、去年一年間は、中国側から原油が
北朝鮮に対して、通常でありますと年間五十万トンぐらい行っているということだったんですが、それがゼロということになっております。
これが本当に止まっているのか、単に統計上の問題なのかというところは少しよく分かりませんが、少なくとも
北朝鮮が去年一年間、急激にエネルギー事情が悪化したというような話も聞きませんし、また、原油は減っているわけですけれども、ガソリンなどの石油製品に関しては大幅に増えているというのが現状かと
思います。
ただ、中国に行きまして中国人の専門家などと
意見交換をいたしますと、経済に関して言えば、これは中国と
北朝鮮との二者間で考えたら駄目なんだと。中国の東北地方と
北朝鮮との間で考えれば、これは中国東北地方にとって
北朝鮮というのも重要なパートナーなんだということを考えなければいけないというふうに言われます。
その一方で、政治に関しては、やはり従来に比べると随分低調ということが言えるだろうと
思います。例えば次にお話をいたしますロシア、
金正恩第一書記のロシア訪問への報道などについても、例えば金正日総書記が父親が死んで三年間喪に服すわけでありますが、その喪に服した後に中国側は積極的に金正日総書記を呼ぼうとするんですけれども、そのときの熱意に比べると、現在の
状況でいうと、ロシアに行くのであれば先に行けばいいと、それが国際関係にプラスになるのであればそれで構わないというような、かなり冷淡な印象を受けます。ですから、従来の中朝関係に比べると随分低調な印象だなというのが現状であります。
じゃ、一方のロシアでありますが、これはまだ
北朝鮮自身がロシアに
金正恩第一書記を派遣するということを発表しておりませんので、最後の最後まで分からないというのがその現状でありますが、ロシア側から出てくる話では第一書記が訪問をするということになるんだろうと
思います。
ロシアにとってみれば、
北朝鮮問題というのは対米関係あるいはアジアへの足掛かりということにもなるでしょうし、
北朝鮮にとってみれば、御案内のとおり、中国の影響力が非常に強くなっているわけでありますから、それをバランスを取るためにも、ロシアというのが古くて新しいパートナーということになるんだろうと
思います。
もうお時間もありませんので、最後に、
日朝交渉それから六か国
協議について一言ずつお話をいたします。
もう
日朝に関しては、先ほど来、
参考人お三方の方からも既にお話がありましたので詳しくは申しませんが、私自身は、現状においては、確かに必ずしも順調に進んでいるとは言い難い
状況が続いているかと
思います。そういう
意味で、
水面下で、まさに正念場の
交渉が行われているんだろうというふうに
思います。これは、やはり、七月ぐらいが
調査委員会が立ち上がって一年ということですから、当初からその一年というところがめどというふうに言われておりましたので、そこまで待つ必要があるのではないかというふうに
思います。
さらに、もう一方、
日本にとって
拉致、核、ミサイルというのが非常に重要だというふうに繰り返し指摘されるわけでありますが、核、ミサイルの問題というのも
日本は一定の役割を果たさなければいけない。
それは、やはり当面は六か国
協議の再開問題ということになるんだろうと
思いますが、これも今年の三月二十一日、日中韓の外相
会議で、
北朝鮮側は六か国
協議については無条件ということを言っているわけですが、これは
自分たちがかつて六か国
協議の中で約束した核放棄というものをほごにしようという
思いが恐らくあるんでしょうから、
国際社会の方は、
北朝鮮が核放棄を約束した共同声明、これを維持したまま六か国
協議を再開し核放棄の方向に道筋を付けるという、そういうことが必要なわけで、それが一応日中韓の外相
会議で確認をされたということであります。
日本としては、
日朝二国間の
交渉で
拉致問題を中心とする懸案事項に対して
北朝鮮側に働きかけていくと同時に、多国間の枠組みの中で核、ミサイルの問題についても一定の役割をするという必要があるというのが現状かと
思います。
私の方からお話しさせていただくのは以上とさせていただきます。ありがとうございます。