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2015-04-27 第189回国会 参議院 北朝鮮による拉致問題等に関する特別委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成二十七年四月二十七日(月曜日)    午後一時開会     ─────────────    委員異動  四月二十二日     辞任         補欠選任      三宅 伸吾君     衛藤 晟一君      松沢 成文君     中山 恭子君  四月二十四日     辞任         補欠選任      中山 恭子君     和田 政宗君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         中曽根弘文君     理 事                 塚田 一郎君                三原じゅん子君                 白  眞勲君                 矢倉 克夫君     委 員                 赤池 誠章君                 石井 浩郎君                 猪口 邦子君                 衛藤 晟一君                 北村 経夫君                 二之湯武史君                 有田 芳生君                 長浜 博行君                 柳澤 光美君                 柳田  稔君                 平木 大作君                 藤巻 健史君                 井上 哲士君                 井上 義行君                 和田 政宗君    事務局側        常任委員会専門        員        宇佐美正行君    参考人        北朝鮮による拉        致被害者家族連        絡会代表     飯塚 繁雄君        北朝鮮拉致さ        れた日本人を救        出するための全        国協議会会長        東京基督教大学        教授       西岡  力君        特定失踪者問題        調査会代表        拓殖大学海外事        情研究所教授   荒木 和博君        関西学院大学国        際学部教授    平岩 俊司君        立命館大学客員        教授        共同通信客員論        説委員      平井 久志君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○参考人出席要求に関する件 ○北朝鮮による拉致問題等に関しての対策樹立に  関する調査  (北朝鮮による拉致問題等に関しての対策樹立  に関する件)     ─────────────
  2. 中曽根弘文

    委員長中曽根弘文君) ただいまから北朝鮮による拉致問題等に関する特別委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  去る二十四日までに、三宅伸吾君及び松沢成文君が委員辞任され、その補欠として衛藤晟一君及び和田政宗君が選任されました。     ─────────────
  3. 中曽根弘文

    委員長中曽根弘文君) 参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  北朝鮮による拉致問題等に関しての対策樹立に関する調査のため、本日の委員会参考人として北朝鮮による拉致被害者家族連絡会代表飯塚繁雄君、北朝鮮拉致された日本人を救出するための全国協議会会長東京基督教大学教授西岡力君、特定失踪者問題調査会代表拓殖大学海外事情研究所教授荒木和博君、関西学院大学国際学部教授平岩俊司君及び立命館大学客員教授共同通信客員論説委員平井久志君の出席を求め、その意見を聴取することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 中曽根弘文

    委員長中曽根弘文君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  5. 中曽根弘文

    委員長中曽根弘文君) 北朝鮮による拉致問題等に関しての対策樹立に関する調査議題といたします。  本日は、五名の参考人方々から御意見を伺います。  この際、参考人方々に一言御挨拶申し上げます。  本日は、御多忙のところ本委員会に御出席賜り、誠にありがとうございます。  参考人皆様から忌憚のない御意見を拝聴し、今後の調査参考にいたしたいと存じますので、よろしくお願いいたします。  それでは、議事の進め方について申し上げます。  まず、飯塚参考人西岡参考人荒木参考人平岩参考人平井参考人の順序でお一人十五分程度で御意見をお述べいただき、その後、各委員の質疑にお答え願いたいと存じます。  また、御発言の際は、その都度委員長の指名を受けることになっておりますので、よろしくお願いいたします。  なお、参考人委員とも御発言は着席のままで結構でございます。  それでは、まず飯塚参考人からお願いいたします。飯塚参考人
  6. 飯塚繁雄

    参考人飯塚繁雄君) まず、本日はこういった委員会に、私ども、参考人として出席でき、皆様意見陳述のできることについて大変うれしく思っております。  私個人ですが、一九七八年六月十二日、妹の田口八重子東京から拉致をされて、そのままの状態であります。これは、非常に私たちとしてはもう悲劇、人権じゅうりんの何物でもないという状況苦しみの中、本人北朝鮮にいる妹八重子はもう三十八年もかの地で苦しみ続けている状況でございます。  これは、私の家族だけではなくて大勢の被害者が、一九七七年以降、北朝鮮当局による拉致が始まり、物すごい量の日本人北朝鮮拉致されたままになっているという状況でございます。  当然、この辺の状況は、委員皆様方、よく御存じかと思います。もう三十数年前からこういった北朝鮮による国家犯罪によって日本国民が強引に拉致されているこの状態、これについては当時から、警察もあるいは政府も、外務省も当然分かっていたと思うんですね。しかしながら、そういう状況にありながら、三十数年間、日本が我が国民を取り返せないこの事実、これが余りにも長く続いている。これは本当に、日本国民暮らしと安全を守るという最低限度仕事をしていなかった、この結果かと思われます。  拉致された状況あるいは個人的な状況も全てそれぞれ違いますけれども、拉致をされた日本人という、いわゆる被害者としては共通でございます。そういったことを目の当たりにしながら、なぜ今、この時間、この日まで日本人帰国が実現できないのか、そういう思いが相当今高まって募っております。  もちろん私たち家族だけではなくて、一番大変なのは北朝鮮にいる被害者たちです。いつ取り返しに来てくれるのか、帰国できるのか、日本の日の丸を付けた飛行機が迎えに来てくれるのか、そういう思いがもう三十数年続いているということは、被害者日本にいれば普通の生活ができて、それなりの楽しみ、喜びが家族とともに過ごせたはずなのに、強引に拘束され人生の一番大事な時期を北朝鮮に奪われてしまったと。これは共通した家族実態思いであると思います。  私たちは一九九七年に被害者家族会を立ち上げ、それから救出運動にかなり邁進してまいりました。当初はいろいろ国民世論も得られず苦しみ抜いてきましたけれども、いとしい家族を助けたいがための我々の信念、意欲、これが今も続いているわけですけれども、ようやく国民世論も、我々の活動によって、あるいは取り巻くNGOの方々によって盛り上がってはきております。当然ながら、日本国民である以上、仲間である被害者日本国民を取り返さなければいけないというような盛り上がり、火が相当強くなっております。  そういう意味では、署名を始めましたけれども、当初は非常に皆さん白い目で見て通り過ぎてしまう、あるいは署名の画板をたたき落として踏ん付けていってしまう、そういう状況もあったにもかかわらず、私たちは頑張ってまいりました。今現在、署名の数も一千百万を超えました。そういったことでは、日本のいわゆる一割、有権者の一割以上の方がこの問題を早く解決するべきだと、政府は何をやっているんだというような怒りの声が高まってきております。非常に苦しい立場がありますが、これは私たち被害者家族だけが動ける話ではないですね。当然ながら、政府仕事としてこの拉致被害者を何とか取り返す、そういった対応がすぐ現れるべき。  今、拉致被害者の認定ということでは、当時十七名おりましたけれども、私の家族田口八重子ですけれども、政府から認定されたということの瞬間、あっ、これで帰ってこられるな、政府責任を持って取り返してくれるなと、一応そう思ったわけですけれども、それは全くありませんでした。他の家族と同様、北朝鮮にいる、あるいは現地でどういう暮らしをしているのか、病気でいるのか、あるいは場合によっては亡くなっているのか、いろんな調査をその後続けてまいりましたけれども、あらゆる情報を整理して、まあ完璧ではないとしても、北朝鮮拉致されている、取りあえずその認定された家族は生きているという情報が支配的であります。ということは、生きて北朝鮮に待っている、帰国を待っているのを目の当たりにしながら何で助けられないのか、これは単純な私たちの疑問でございます。そういった状況が今後も長く続くことがあれば、これは日本国として日本人国民を助けられない、外交的にも、あるいは国力的にも非常に弱い、批判判断をせざるを得ないなと思います。  私たち家族は、一人一人にすれば、自分家族が帰ってくればそれでいいんです。ほかのことはどういう状況にあろうとも家族がまず帰ってくれば、これだけなんです、求めているのは。そういったことは、それぞれの家族思いは全く同じであります。  昨日も国民大集会行われまして、安倍総理がじかに御挨拶していただいたんですけれども、政府としては、特に安倍総理としては、自分責任を持ってこの問題を解決するぞという意気込みは確かに感じておりますが、非常に、経過を見ますと、安倍さんが頑張っているけれども今全く結果が出ていないと。当然ながら、前回五名の方が帰ってきたことは、それは事実としてありますが、そのほかに物すごい量の被害者がいるという実態、これは特定失踪者を含めて相当いるということについては更に国として力を入れていかなきゃいけないんではないかというふうに強く思います。  私たちは、救う会、あるいは調査会、あるいは全国ボランティア組織方々と協働して、何とか北朝鮮拉致された被害者を早期に奪還するべき活動を続けてまいりました。毎年、救う会、家族会総会を開く、その中で特に今年は最終決戦のときだと、もう後がないというような考え方、方針で、不退転な気持ちを持って取り組んでいこうということを決めました。毎年毎年、年が去るたびに、また新しい年を迎えて今年こそはという言葉を何回も使いました。しかし、それが全く無になってしまっているような状況でございます。  特に、北朝鮮との交渉が、今、始まったというふうに言われてはおりますけれども、私たちは、北朝鮮がつくった特別調査委員会、それによる調査結果、経過、この辺が目的ではないんですね、その報告を受けるのが目的ではない。あくまでも、被害者家族をいかに早く元気な状態で取り返すことができるか、取り返すということが最終目的でございます。いろいろ話によれば、北朝鮮報告はもう要らない、もう被害者の名簿その他は全部管理されてできている、あとは帰すか帰さないかという国対国の強力な姿勢の下に交渉を続けていかなきゃいけないんではないかと。報告についてはいろんな項目があるようですけれども、やはりその中では拉致問題の解決というのが最優先でなければいけないというのを強く思っております。それ以外の状況報告があったとしても、拉致被害者帰国が最優先されない限りその他の問題は前へ進まないというふうに私も素人ながら思っております。  そういうことでは、あの北朝鮮、したたかな国、したたかな頭首、具体的には金正恩、彼が日本のこの拉致問題を本当に考えて、これを解決することによって自らの国が潤うというような判断をしない限り難しいと。あるいは周囲の圧力、あるいは日本制裁を含めた圧力が相当きつく困った、この状態からもう仕方なく被害者を帰すしかないという状況まで追い込まなければ多分先には進まないだろうというふうに考えております。  当然ながら、現政府にしては、そういった状況を全て考え、分析し、方針を練り、進めていくということになるとは思うんですけれども、私たちは早くしてくださいと、もう何かをやってもそのフォローがなかなか遅いということが感じられます。  私も、実はこういった参議院衆議院特別委員会において何回か陳述を行いました。当然、この目的対策樹立に関する調査ということになっております。ですから、こういった状況を一刻も早く対策樹立に結び付けるような御努力是非委員先生方にもお願いしたいなと思います。  取りあえず、私の陳述は以上でございます。ありがとうございました。
  7. 中曽根弘文

    委員長中曽根弘文君) ありがとうございました。  次に、西岡参考人にお願いいたします。西岡参考人
  8. 西岡力

    参考人西岡力君) ありがとうございます。西岡でございます。  レジュメを準備してまいりましたので、それに沿ってお話をさせていただきたいと思います。  今、飯塚家族会代表もお話しされましたけれども、私ども、家族会と一緒に三月の初めに合同会議を開きまして今年の運動方針を決めました。「最終決戦のとき!不退転決意全員救出を!」でございます。実は昨年、「今年こそ結果を」という運動方針だったんですね。その前は「勝負の年の延長戦」、その前は「勝負の年」だったんですが、本当に一年たつごとに被害者苦しみ、そして家族苦しみが積み重なっていると。こんなに長く運動をし続けていなきゃならない、私も救う会という会を名のっていながら救うことができていないということについて大変じくじたる思いを持っております。悔しいです。  昨日、日比谷公会堂で大きな集会をしたんですが、そこで横田早紀江さんが蓮池薫さんに久しぶりに会って聞いた話を紹介していました。北朝鮮にいる被害者は物質的には一定程度恵まれている、日本よりは下であるけれども食べるものや着るものは大丈夫だ、それよりも精神状態だと、いつまで精神状態がもつのか、自分を保っていけるのかどうか、自分たちが帰ってきてから十年以上たって、残っている人たち精神状態が心配だと薫さんが言っていたと早紀江さんは伝えていました。  ストックホルム合意については、北朝鮮テレビなども拉致問題を含む調査というふうに拉致という言葉を使って報道をしていますので、当然、被害者本人たち自分たち調査が今行われているということを知っていると思うんですね。これで帰ってこれなかったらあの人たち精神状態がもつだろうかということも考えて、最終決戦のとき、不退転決意だという運動方針を決めさせていただきました。  ストックホルム合意についてでありますけれども、そもそも再調査は必要はないというのが私たちの考えです。菅官房長官も今年の三月五日、衆議院予算委員会で、「北朝鮮はみずから拉致を実行したということを認めているわけですから、そういう意味で、被害者北朝鮮管理下に置かれている」というふうにおっしゃっています。管理下に置かれているということは、分かっているということなんです。蓮池さんや曽我さんの話を聞きましても、担当の指導員がいます。その指導員が定期的に報告書を上げているわけですね。それを持ってこいと言えば分かるんです。それなのに、保衛部はわざわざ調査をする必要全くない。ただ、金正恩氏が全員帰すという決断をするかどうかの問題であります。  そういう点で、ストックホルム合意は、その決断を確認しないで合意を結んでしまった。当初、紙に書いていない裏合意があるのではないか、まさか全員帰すという決断をしないで制裁の一部を解除するということを安倍さんがやるんだろうかと思いました。まあ分かりません、本当の裏合意があるのかもしれません。私たちは表のことしか説明を受けていませんし、知りませんが、しかし、どうも、ここまで来ると、そして北朝鮮内部から取れている情報からしても、日本と接近をする、拉致議題にするというところまでは金正恩決断したが、全員帰すという決断はしていないのではないかというふうに私は今判断しています。  そしてまた、拉致以外の問題と並列で書いてしまったと。主権侵害であり、制裁を掛けている理由拉致だけであります。人道問題として遺骨の問題や日本人妻の問題も当然政府として取り扱うべきことだと思いますが、そもそもそのことで制裁日本は掛けておりませんでしたので、あるいは人道支援を停止しておりませんので、そのことはそのことで人道問題として粛々と交渉するが、拉致問題と並行でするのは私は間違っていたのではないかと思っています。  しかし、北朝鮮は九月に何らかの一回目の報告を準備していたことは間違いないようです。ところが、突然それが延期されたと。国連総会人権問題が取り上げられて、責任者国際刑事裁判所に訴追されるという動きが出てきて、九月に金正恩から全ての手段を使ってそれを阻止せよという指令が出たと。ばたばたと外交活動を始めました。  そこで、国連人権理事会に提出された調査委員会報告書では、北朝鮮人権問題は二種類あると。国内人権問題と海外人権問題。海外人権問題が拉致を代表的に取り上げられていたわけです。国内人権問題としては、政治犯収容所の問題や飢餓の問題、宗教弾圧の問題などが取り上げられていましたが、彼らは二つの方向でそれは違うと言ってきたと。拉致問題については今、日朝協議をしている、誠実に自分たち調査をしている、だから国際社会に非難されるべきことはないと。これもおかしいんですが、人権報告書では拉致日本だけではなくて世界十か国以上の被害があると言っているのに、日本とだけ話をしていても人権問題じゃないとは言えないはずなんですが、彼らはそう言っていると。そしてもう一つ、国内人権問題については、脱北者人権活動家がうそをついているんだということをキャンペーンをいたしました。  最終的には、日本外交当局努力もあって、賛成多数で国連総会北朝鮮人権を非難する決議が通り、安保理事会に対して刑事訴追をするようにと求められ、安保理事会議題にするというところまで来ました。二十年間、北朝鮮人権問題に関心を持っていた者からすると隔世の感がいたします。  そういう中で、今年に入り、日朝がまた動き始めた。水面下で少なくとも二回あるいは三回接触をしています。私のところに入っている情報、まあ一部日本でも報道されておりますが、北朝鮮は早く公式協議をしようと言っている、調査結果を出すと言っている、しかし、その調査結果は拉致は入っていない、墓地の問題と日本人妻の問題だと。  今年の三月に国家保衛部が、北朝鮮国内にいる日本人妻について去年から始まった二度目の調査をしました。去年、日本人妻たちは、日本に帰りたいかと言われたとき、みんな殺されるのが怖くて帰りたくないと言った人が多かったんですが、もう一回、本当に帰ってもいいんだぞ、今回は、という調査をしたということを直接調査を受けた人から間接的にですけれども聞いております。帰りたいという人のリストまで作っていると。そちらを先に出そうとしている。それに対して、安倍政権拉致が入っていないならば受け取らないと言っている、北朝鮮は話が違うじゃないかと言っているというふうに私は聞いております。  そういう中で、三月二十六日に朝鮮総連の議長、副議長などの自宅家宅捜索されました。昨年の五月に議長の次男の自宅と会社が家宅捜索された延長線上での家宅捜索でありますが、マツタケ不正輸入の問題でありました。北朝鮮はそれに対して激しく反発して、四月二日に、家宅捜索拉致国連などに持ち出したこと、その二つのことを理由政府間対話はできなくなっていると通知しました。しかし、これは受け身形で、なおかつ現状を言っているだけですね。できなくなったとも言っていないんです、やらないとも言っていなくて。ちょうど四月二日というのは、実は四月三日に家族会総理に面会する前の日です、その日にこういう脅しを掛けてきたと。  その後、総理大臣が三日に我々に会ってくださったときに、拉致を解決しないと北朝鮮未来を描くことは困難だと認識させると、これはテレビカメラの前でおっしゃいました。ここにいらっしゃる井上先生が既に参議院の審議の中で総理から取られた答弁と同じ表現を総理は我々の前で、カメラの前で、オンでおっしゃいました。前日に対話ができなくなっていると言われたときに、次の日カメラの前で、未来を描くことは困難だと認識させると言っています。激しい水面下でのやり取りをしている最中だなと思っています。本来、主体思想の国ですから、安倍ごときがなぜ我が国の未来を云々するんだと言わなくちゃいけないんですが、何も非難をしていません。昨日も安倍総理は同じ発言をしましたが、北朝鮮から名指しの批判はありません。  そこで、問題でありますが、是非議論をしていただきたいんですが、今日、拉致問題等に関して対策樹立に関する調査をなさるということで呼んでいただきました。総理が、解決しないと未来を描くことは困難だと認識させると言いましたが、この総理言葉実効性を持たないならば、今回のやり取りは失敗するかもしれない。ただ口だけだと彼らが思うならば、動かないでしょう。  当然、政府として、総理がおっしゃったことですから対策を立てていると思いますが、与党・自民党の中では既にこの問題についてプロジェクトチームが稼働すると聞いておりますけれども、総理がこういうことを言った、拉致が最優先だと言っているという中で何が本当にできるのか、できないのかということを是非この特別委員会の場でも、あるいは各党におかれても、各党にも拉致対策本部が設置されていると承知しておりますので、何ができるのかという、あるいはこういうやり方でいいのかということも含めてで結構でございますけれども、議論していただきたいと思っています。  まず、何ができるか、制裁を強化するということを今するということでなくて、まずこういうことを議論するということです、ポケットに持っているということです。人の往来を全て止めると。一九七〇年代初めまで在日朝鮮人の、特に朝鮮籍の人の再入国許可許可制でした。原則的に出していませんでした。人道問題で一部例外的に出していました。それが、南北対話が始まったので再入国許可を出すようになったんです。日本人パスポートも、金丸さんが訪朝するまではエクセプト・ノース・コリアと書いてありました。北朝鮮に渡航するときは別途パスポートをもらっていました。そこまで戻すことは今の憲法上できることだということであります。  また、厳格な法執行マツタケの問題でも私のところには、二〇一二年に、当時、二〇一二年の全消費量が千四百五十トンですが、そのうち二百トン不正輸入されているという確実な関係者からの情報を入手しております。ばかにされているんです。そこをもっと締められるんです。  あるいは、国際制裁も強化できると。今日、ワシントン発共同電を持ってきましたが、アメリカ人権問題を理由にした制裁を発動することを検討しているとワシントン発共同電は書いています。そして、日本側からの制裁の要請や情報提供があれば、拉致制裁対象として検討し得るとアメリカは言っています。アメリカ拉致対象にして制裁をすると言っていると。  そういうことをもっともっと日本も主導して、世界中が拉致対象にして制裁を掛けるようにするということも含めて、未来を描くことが困難になりますよということをポケットに入れて交渉してもらえなければ、この交渉が失敗してしまうんじゃないかと。最終決戦、負けられないと思っていますので、真摯な議論をお願いしたいと思います。  以上です。
  9. 中曽根弘文

    委員長中曽根弘文君) ありがとうございました。  次に、荒木参考人にお願いいたします。荒木参考人
  10. 荒木和博

    参考人荒木和博君) 荒木でございます。  私の方もレジュメを用意してございます。あと、配付資料としてポスターをお手元にお配りをいただいております。ちょっとこのことの御説明からさせていただきたいと思います。  このポスターに載っかっているのは、一番下の段以外は、いわゆる特定失踪者と言われます拉致の可能性のある失踪者のうちの、私どものリストの公開をされている分、二百七十人余りの方々でございます。  その中に、上の方から、拉致濃厚となっているのは、リストの中で我々が調査会判断拉致の可能性が高いと考えている人たち。その写真の中で左下に青い三角が付いている方がいますが、この方は、日本弁護士連合会に人権救済申立てをいたしまして、日弁連の方の決定として拉致を疑うに足る相当の理由があるというようなことで、我々としては日弁連の事実上の認定という扱いをしているものであります。  それから、その下が拉致の可能性があるということで、ほかの失踪者の方なんですが、私どもやっておりまして、一応二つに分けてはあるんですが、決してそれ以外の方、この下の方々拉致の可能性が低いというふうに思っているわけではございません。拉致を濃厚とするに足る条件まで至っていないというだけであって、もし曽我ひとみさんがいまだに北朝鮮が名前を出していなければ、私どもは拉致濃厚の方にはまだ入れていないんではないだろうかというふうに思っている次第でございます。  一番下は、政府認定の、田口八重子さんを含めまして拉致被害者。それから、御存じのとおり、支援法では日本国籍を持っている人間以外は拉致認定というのはされませんので、警察は拉致と断定しながら政府拉致認定になっていない警察断定のお二人。そして、調査会ができました平成十五年一月以前に、救う会の段階でもう拉致間違いないというふうにされていた通称救う会認定とされるもののリストでございます。  一つ、真ん中の辺りの左の方に黒く潰してある部分がございます。この方は、拉致でないということが最近分かった方でございました。国内でおられることが確認をされて、そういう方は消して、そしてまた次のポスターを作るときにはその方を抜き、また新しく発表した方を入れるということで、現在十八回目の、十八種類目のポスターということになっております。  これ以外に、大体これとかぶるんですけれども、警察のリスト、警察の方で把握されている拉致の可能性の排除できない失踪者というのは約八百八十人おられると。  しかし、まだそれだけでもないと思います。この中で、正直申しまして、私どものこのリストの中で、これから先、拉致ではなかったということで見付かる人が出ると思います。その一方で、これは届出があった方々です。基本的には警察のリストも届出があった方ですので、御家族が届出をされていない、あるいは御家族がおられない、こういう方はもう我々のリストも警察のリストにも入ってこない、そういう方で拉致をされている方は相当数いるだろうというふうに思っております。  さらに、在日の場合は、これはちょっと若干種類が変わるんですが、この中にも在日の失踪者は入っています。それだけではなくて、例えば、つい最近分かったんですが、私の中学の一年後輩が、昭和四十六年だったと思いますけれども、夏休みに北朝鮮に行って戻ってこなかったという事件があったということが最近分かりました。これは在日なんですけれども、行ったらば向こうにいるおじさんが帰さなかったということになっていて、しかし、現実問題として、本人の意思で帰らなくなったということは考えられませんので、これは一種の拉致に近いものではないかと。在日で当時家族を訪問して、向こうでパスポートを取り上げられて帰ってこれなくなった人というのは相当数いるというふうに聞いております。これは、ですから、この問題というのは非常に裾野が広いといいますか、奥の深い問題であろうというふうに思っている次第でございます。  さて、お配りしてある資料の方なんですが、まず、昨年五月のストックホルム合意以来、この再調査に関わる交渉は私どもはもう明らかに失敗であるというふうに思っております。今後、これをそのまま継続しても、成果が得られる可能性はほとんどないというふうに思っている次第でございます。もし、どういう形であれ交渉する場合に必要なものは、明らかに力の裏付けがなければいけない。北朝鮮という国に対して単なる話合いだけで拉致された人を帰してくるということはないわけで、小泉訪朝のときの五人帰ってきたときも、ある意味でいえば、日本がやったわけではありませんが、力、あの当時はブッシュ政権ということになりますけれども、やはり力が加わっていたということが相手側が交渉に応じる結果になったということでございます。  そこで、具体的には、先ほどの西岡参考人の話ともちょっと重なる部分もありますが、幾つかの点がございます。一つは自衛隊による救出の具体化ということでございまして、これは国会の中でも議論をされており、憲法上の問題があるというような答弁も参議院総理はされておりますけれども、実際に、では、いざ北朝鮮で体制崩壊とか起きたときにほかの国が助けてくれるのか、アメリカやあるいは韓国がそれをしてくれるのかという可能性は私は限りなくゼロに近い、日本がやるしかないというふうに思っております。  そのためには、そのときになってから法律を変えることもできませんし、また、準備をすることもできません。いきなり行けと言われたって自衛隊だって行けるわけはないわけでございまして、事前の準備、そして、そのために合意をしておくことが必要でございます。国会の中でこれについてできるだけ早くに、安保法制の問題はございますけれども、この問題はもう本当に急を要する問題でございますので、一刻も早く議論をしていただきたいというふうに思っている次第でございます。  それから、制裁については、先ほど申しましたように、この再調査に関わる交渉が失敗だったという前提に立つ限りは、もう一度制裁をすぐに再発動するべきであるということ。  それから、日本国内に相当数いる、現在でもいる北朝鮮の工作員及び協力者、これはこの間、朝鮮総連の議長、副議長家宅捜索等々をやりましたけれども、あれを、実際に捕まえられる人間が、工作活動をやった人間で相当数いるはずでございます。これをやはり摘発するということが北朝鮮に対する非常に強い圧力になるのであろう。  そしてまた、朝鮮総連のビルの問題がございます。これは明らかに、法的なことをどうこうといろんな理屈は付くんだと思いますが、これまで日本人拉致にも関わったことが、可能性が高いと思われ、そしてまた、何よりも直接の自分たちの構成員である在日朝鮮人帰国運動等々、甚だしい人権侵害に対してその主役を果たしてきた朝鮮総連の本部がいまだに東京のど真ん中にあるということ自体が、これは明らかに誤りであるというふうに思います。これは方法は様々あるんでしょうけれども、ともかく、結果としてあのビルから朝鮮総連を退去するようにさせていただきたいと。これはもうまさに北朝鮮の方に対する非常に強い圧力になるだろうと思います。  一に申しましたことに関して、私がもう一つ、私、予備自衛官として予備役ブルーリボンの会という会の代表をしておりますが、そこで実際に拉致被害者の救出についてのシミュレーションを元々プロだった人たちと一緒につくっております。これは、現在の法律の範囲でできること、あるいは法改正すればできることということでやっておりますので、それを機会があれば、そのような実際に特殊部隊にいた人たちに説明をまた求めていただくというような機会があれば非常に有り難いというふうに思います。いずれにしても、ともかくこのことについて国会でしっかりと議論をしていただきたいというふうに思っている次第でございます。  次に、私どもは北朝鮮向けの短波放送「しおかぜ」というのを十年前から行っております。現在、一日二時間の放送を夜中に、午後の十時半からと午前一時から一時間ずつ行っておりまして、KDDIの八俣送信所をお借りして、そこから日本語、英語、朝鮮語、中国語で放送をしております。御家族のメッセージとかニュース、時事解説などを行っておりまして、これは今まで百キロワットで送信をしていたんですが、総務省の御協力で、この四月から片側一時間の放送だけ三百キロワットで放送をすることができるようになりました。  ともかく、北朝鮮にいる方に御家族の声あるいは日本状況について少しでも知っていただく、それから、いざ向こう側で何か体制に起きたときに緊急放送に使えるということを目的としてやっている放送でございます。我々としては、何とかこれを二時間とも三百キロにして、なおかつ混信を避けるような周波数を取っていただいて、より円滑に北朝鮮情報を送れるようにしたいと思っている次第でございまして、これについても自後御協力をいただきたいというふうに思います。  私どもは、それ以外に、北朝鮮に大型の風船でビラを送るバルーンプロジェクト、これは韓国のNGOの方々の協力でやっていること、それから直接北朝鮮の中にファクスを送るプロジェクト等を行っております。ともかく、今こちらから攻めの立場でやっていく、情報を入れていくということが必要であろうというふうに思っている次第でございます。  それから、四番目は山本美保さんに関わるDNAデータの偽造事件についてと。これは、御存じの方も多いと思いますし、御説明している時間がございませんが、昨年、日本弁護士連合会から警察庁に対しましてDNA鑑定書の開示が勧告されております。しかし、これは、警察は一向に応じる気配がございません。開示できる例外規定が刑事訴訟法にあるにもかかわらず動かないというのは、やはり何かしらその意味があるんだと思いますが、この問題につきましても国会の方で更にお取り上げをいただきたいというふうに思います。  この拉致問題については、国連報告書、先ほど西岡参考人の方からのお話もございましたけれども、等が出て、そして、国連決議等々進んでいるわけでございますが、日本としてはこの際、拉致問題だけ外国へ行って訴えても、これはもう日本自分の国のことしか考えていないというふうに取られることが非常に多いんだと思います。そうではなくて、日本が先頭に立って、人権問題としてこの拉致問題を含めた北朝鮮人権問題全体を解決をしていくという姿勢をしっかりと打ち出すということが必要ではないだろうかと。国際的なこの国連の決議や何かはやはり外堀を埋める作業であり、そして拉致被害者を直接取り返すのは、これはもう日本の独自の取組ということになるわけでございます。両方が並行して行われるときに問題の解決に行くであろうと。  そして、最初に申しましたように、私どものリストにも警察のリストにもない拉致被害者が相当数おられます。特に、いわゆる背乗り、つまり、原敕晁さんの例のように、誰かを拉致をしていてそれに北朝鮮の工作員が成り代わっている場合、これは、原さんみたいに分かればいいですけれども、分からないケースは、今でも恐らく日本人の誰かに成り代わっている人間が日本中にいることは間違いないわけであります。北朝鮮拉致被害者の方を出してくれば、そこに日本人としているその人物は工作員であったことがすぐ分かるわけでありまして、こういう人を北朝鮮が出してくるというのはもう体制が変わるときまで恐らくあり得ないだろうというふうに思います。  ですから、最終的に全ての日本人を助け出すということは、誰がどういうふうにやるかは別として、ともかく北朝鮮の体制が変わらなければできないことだと思います。そこまで持っていくということを多角的な方法、様々な立場でやっていかなければいけないのではないだろうかと思っております。  以上、陳述を終わります。
  11. 中曽根弘文

    委員長中曽根弘文君) ありがとうございました。  次に、平岩参考人にお願いいたします。平岩参考人
  12. 平岩俊司

    参考人平岩俊司君) よろしくお願いいたします。  私は、「北朝鮮の対外姿勢と国際関係」、お手元にレジュメを御準備いたしましたが、北朝鮮の対外姿勢と国際関係についてお話をしろという御依頼ですので、そのようにお話をさせていただきたいと思います。  北朝鮮を取り巻く国際関係、これ様々ありますが、まず最初にお話をさせていただいた方がいいのは、金正恩政権、今の現政権の対外姿勢の特徴というのは、残念ながら今の段階ではまだそれほど大きく目立っていない、むしろ金正日、今の最高指導者の先代の父親の時代の外交の延長線上にあるというふうに基本的には考えていいんだろうと思います。恐らく、次、平井参考人の方から国内の話が出ますが、国内は様々な動きがあるんですけれども、対外関係に関してはまだ依然として金正日時代からの延長線上にあるということをまずお話をさせていただきたいと思います。  それを前提にして、朝鮮半島をめぐる、とりわけ北朝鮮をめぐる動きとしましては、もう近々ロシアを訪問するのではないのか、金正恩第一書記がロシアを訪問するのではないのかとか、あるいは中国と北朝鮮の関係が非常に冷え込んでいて、これはどうなっているのかとか、あるいはアメリカが、サイバーテロを契機として米朝関係がやり取りがあり、恐らく北朝鮮が外交の中心に据えている対米関係、これはどうなっているのか、それから南北関係、これは韓国もその分断国家の一方ですから、イニシアチブをめぐる応酬があるということで、さらには日本の立場からすればストックホルム合意以降の動き、既に参考人の方からいろんな御意見が出ておりますけれども、これをどういうふうに理解したらいいのかという非常に複雑多岐にわたる状況がございます。それを少し整理をしてお話をさせていただこうと思います。  まず、金正恩政権の対外姿勢というところから入りたいと思いますが、まず現在の北朝鮮の基本的な姿勢というのは、最初のところに書きましたように、経済建設と核武力建設の並進路線、つまり、国内の経済を良くしながら一方で核の能力というものを高めていくと、これは昨年の三月、全員会議で決定されたことであります。  それを前提にいたしまして、今年は彼らにとっての一つの大きな目標というのが十月十日の朝鮮労働党創建七十年、これは一九四五年に起源がありますので、七十年ですから、ここのセレモニーをどういうふうに迎えるのかというのが恐らく今年の北朝鮮にとっての最も大きな課題ということになるんだろうと思います。  それを前提にいたしまして、恐らく対外関係も活発な動きを見せるであろうというのが今年予想されることでありまして、冒頭申しましたように、金正恩政権の対外政策というのはよくまだ特徴が出ていないというふうにお話をいたしましたが、今年から徐々にそうした動きが出てくる可能性というのがあるというのが現在の状況かと思います。  それを占う上で重要になってまいりますのが、今年の新年の辞という、ある意味で今年の北朝鮮の方向性を示す、金正恩自身が発するメッセージでありますが、その中では基本的には対話路線というものが前提になっているというふうに言って差し支えないと思います。韓国に対しても最高位級会談もできない理由はないということを言いますし、それから、アメリカに対してもアメリカ対話を必要とすればいつでも対応する準備があるということを言うわけであります。  しかしながら、その前提になっておりますのが次にお話をいたしますところの米韓軍事合同演習、これを中止するということが大前提になるわけであります。  米韓軍事合同演習は、当然、北朝鮮側が要求して中止をするような性格のものではありませんので、二枚目のレジュメにありますように、三月から始まって四月の二十四日までありましたので、韓国を始めとして関係国としては、この米韓軍事合同演習の最中は大きな動きがないだろうから、米韓軍事合同演習が終わった後に北朝鮮側がどういう対応に出てくるのかというところに注目をしているというのが現状かと思います。  もう一度、少し戻りますけれども、そのように米韓軍事合同演習が一つの軸になって動いている対外関係でありますが、それを考える上で一つ我々が注意しなければいけないことは、北朝鮮アメリカに対する脅威というものが従来に比べて随分低下しているという事実であります。これは、北朝鮮自身が核ミサイル能力というものを高めたというふうに、実態はともかくとして、彼らは口ではそういうことを言っているわけであります。そこに駐英大使の言葉を引用しておきましたが、我々は戦争は望まないが戦争は恐れていないんだというようなことを言う。これには、根拠としては、アメリカが核兵器による攻撃を行える唯一の国ではない、核兵器をいつでも発射できるんだということが基本にありますし、更に言えば、アメリカ自身が中東の問題を始めとして様々な問題に手を取られているということで、従来に比べればその危機感というのが少なくなっているというのが一つ指摘できることであろうと思います。  それを前提にいたしまして、今年の一月、米朝関係が少し動く可能性がございました。一月十八日、シンガポールだったと思いますが、北朝鮮の外務次官とアメリカの元政策特別代表が接触をいたしました。これは、昨年の暮れに起きましたソニー・ピクチャーズの問題について、ソニー・ピクチャーズが作った映画の内容で北朝鮮の最高指導者が北の立場からすれば冒涜されているということでクレームを付けておったわけですが、これに対して北朝鮮がソニー・ピクチャーズに対してサイバーテロを行ったのではないかという問題。これに対してアメリカは一月三日に追加制裁ということで対応いたしましたが、これについても話をしたというふうに言われております。  当初、これの動きの流れで、現在のアメリカ北朝鮮政策の担当者が北朝鮮を訪問するのではないのかというような話も少し聞こえてまいりました。しかしながら、結果は全く違う結果になりまして、オバマ大統領が、一月二十二日に、北朝鮮のことを残忍で抑圧的、他国にはまねができない独裁体制である、このような体制はやがて崩壊するであろうということをユーチューブを通じたインタビューで発言をされると、これに対して北朝鮮側は当然ですけれども大きく反発をするという状況が続いて、それで先ほどお話をいたしました米韓軍事合同演習に突入をしたわけであります。  この米韓軍事合同演習に対して、北朝鮮側は当然ですけれども反発をいたしまして、短距離弾道ミサイルを発射をするということですし、それから、人民軍の総参謀部は三月二日、合同軍事演習が開始されたタイミングで、我々の自主権と尊厳を侵害する許し難い挑発であると、領土、領空、領海への侵害に即応攻撃するということを言い、なおかつ、北朝鮮側が、先ほどお話ししましたアメリカ側への提案に際して、米韓軍事合同演習を中止するのであれば核実験を中止する可能性があるというようなことをにおわせましたので、核実験の可能性も含めて各国で警戒が進んでいたということであります。それが先ほどお話ししましたように二十四日に終わりましたので、今後、従来の対話路線に戻るのか、あるいは更に強硬な姿勢に出てくるのかというところが注目されるところだろうというふうに思います。  次に、中国それからロシアとの関係をお話をさせていただきたいと思います。  北朝鮮に対して、もちろん北朝鮮が対外姿勢の軸に据えているのはアメリカでありますが、アメリカとの交渉でありますけれども、一方で、北朝鮮に対して最も影響力があるであろうと国際社会が考えているのが中国であります。この中国と北朝鮮の関係というのは昨年非常に冷え込んだというふうに言われております。  様々な分析、評価というのがございます。一昨年の暮れに、中朝関係の非常に重要な役割を担っていた張成沢という金正恩第一書記の義理の叔父に当たる人が粛清をされた、これによって中朝関係冷え込んだんだというような説明もありますし、それから、二〇一三年の三度目の核実験以降も中朝関係というのは悪くなって冷え込んだんだというふうに、こういう説明もございます。  しかしながら、少なくとも貿易額だけを見るところ、必ずしも大きく落ち込んだという状況ではなさそうであります。もちろん統計に出てこないところで様々な形で中国側からの貿易が制限されているというような話はありますが、少なくとも数字に関して言えば前年比二・九%減、張成沢がまだ中心的な活動をしていたときと比べても二・九%しか減っていない。しかも、去年一年間は、中国側から原油が北朝鮮に対して、通常でありますと年間五十万トンぐらい行っているということだったんですが、それがゼロということになっております。  これが本当に止まっているのか、単に統計上の問題なのかというところは少しよく分かりませんが、少なくとも北朝鮮が去年一年間、急激にエネルギー事情が悪化したというような話も聞きませんし、また、原油は減っているわけですけれども、ガソリンなどの石油製品に関しては大幅に増えているというのが現状かと思います。  ただ、中国に行きまして中国人の専門家などと意見交換をいたしますと、経済に関して言えば、これは中国と北朝鮮との二者間で考えたら駄目なんだと。中国の東北地方と北朝鮮との間で考えれば、これは中国東北地方にとって北朝鮮というのも重要なパートナーなんだということを考えなければいけないというふうに言われます。  その一方で、政治に関しては、やはり従来に比べると随分低調ということが言えるだろうと思います。例えば次にお話をいたしますロシア、金正恩第一書記のロシア訪問への報道などについても、例えば金正日総書記が父親が死んで三年間喪に服すわけでありますが、その喪に服した後に中国側は積極的に金正日総書記を呼ぼうとするんですけれども、そのときの熱意に比べると、現在の状況でいうと、ロシアに行くのであれば先に行けばいいと、それが国際関係にプラスになるのであればそれで構わないというような、かなり冷淡な印象を受けます。ですから、従来の中朝関係に比べると随分低調な印象だなというのが現状であります。  じゃ、一方のロシアでありますが、これはまだ北朝鮮自身がロシアに金正恩第一書記を派遣するということを発表しておりませんので、最後の最後まで分からないというのがその現状でありますが、ロシア側から出てくる話では第一書記が訪問をするということになるんだろうと思います。  ロシアにとってみれば、北朝鮮問題というのは対米関係あるいはアジアへの足掛かりということにもなるでしょうし、北朝鮮にとってみれば、御案内のとおり、中国の影響力が非常に強くなっているわけでありますから、それをバランスを取るためにも、ロシアというのが古くて新しいパートナーということになるんだろうと思います。  もうお時間もありませんので、最後に、日朝交渉それから六か国協議について一言ずつお話をいたします。  もう日朝に関しては、先ほど来、参考人お三方の方からも既にお話がありましたので詳しくは申しませんが、私自身は、現状においては、確かに必ずしも順調に進んでいるとは言い難い状況が続いているかと思います。そういう意味で、水面下で、まさに正念場の交渉が行われているんだろうというふうに思います。これは、やはり、七月ぐらいが調査委員会が立ち上がって一年ということですから、当初からその一年というところがめどというふうに言われておりましたので、そこまで待つ必要があるのではないかというふうに思います。  さらに、もう一方、日本にとって拉致、核、ミサイルというのが非常に重要だというふうに繰り返し指摘されるわけでありますが、核、ミサイルの問題というのも日本は一定の役割を果たさなければいけない。  それは、やはり当面は六か国協議の再開問題ということになるんだろうと思いますが、これも今年の三月二十一日、日中韓の外相会議で、北朝鮮側は六か国協議については無条件ということを言っているわけですが、これは自分たちがかつて六か国協議の中で約束した核放棄というものをほごにしようという思いが恐らくあるんでしょうから、国際社会の方は、北朝鮮が核放棄を約束した共同声明、これを維持したまま六か国協議を再開し核放棄の方向に道筋を付けるという、そういうことが必要なわけで、それが一応日中韓の外相会議で確認をされたということであります。  日本としては、日朝二国間の交渉拉致問題を中心とする懸案事項に対して北朝鮮側に働きかけていくと同時に、多国間の枠組みの中で核、ミサイルの問題についても一定の役割をするという必要があるというのが現状かと思います。  私の方からお話しさせていただくのは以上とさせていただきます。ありがとうございます。
  13. 中曽根弘文

    委員長中曽根弘文君) ありがとうございました。  次に、平井参考人にお願いいたします。平井参考人
  14. 平井久志

    参考人平井久志君) 平井です。よろしくお願いします。  私には北朝鮮国内政治について話をしろというお話でしたので、レジュメに沿って、北朝鮮国内政治について私なりの考えを述べさせていただきます。  当初、金正日総書記が亡くなったときには、金正恩さんという人は経験も実績もないということで、彼はそんなに、お父さんやおじいさんのような独裁者にはならないんじゃないかという見方が専門家の間でも強かったと思います。多くは、側近たちが国家運営をするような姿であるとか、朝鮮労働党が大きな機能を果たすような、そういうシステムになるんではないかという予測が結構強かったんですけれども、この三年余を見ていますと、結果的にはこの予想は外れ、金正恩第一書記の独裁体制、北朝鮮で言うところの唯一的領導体系というものが強化されているのが実情です。  そういう意味で、我々は、ある意味では金正恩という人の評価を若干過小評価していたという感じがします。これは、何も評価をしているという意味ではなくて、金正恩第一書記の資質という場合に、権力掌握に対する執着というか、そういうものに対する能力というものは我々の想像を超えていたと。ただし、これは政策遂行能力、経済発展であるとか、あるいは外交手腕に対する能力を意味するものではなく、その分野においてはいまだ結果をまだほとんど出していない状況であると思います。  それで、過去三年間をちょっとざっと振り返ってみますと、金正日さんが生きていた時代の第三回党代表者会ということでこの政権の基礎ができました。これは、金正日総書記が党の体制を立て直して息子の後継体制を準備した党の会議だったと思います。ここでは、李英鎬軍総参謀長という者が非常に大きな側近として浮上しました。その死後、一二年の四月に第四回党代表者会がありましたけれども、この大会は金正恩さん自身と金慶喜、張成沢夫妻の共同主導のようなものであったと思いますし、李英鎬に代わり崔龍海氏が登場しました。しかし、その後間もなく、一二年七月に李英鎬軍総参謀長が粛清され、一三年末には張成沢党行政部長が粛清されます。  このプロセスというのは、ずっと見ていますと、単に偶発的に起こったというよりは、金正恩体制、この唯一的領導体系というものを確立するために、党の組織指導部あるいは国家安全保衛部の力をもって体系的にこの独裁体制をつくる努力が積み重ねられてきたものであると思います。  先ほど、権力掌握能力を若干我々は過小評価したのではないのかということは、お父さんの時代には先軍政治というものが主張され軍部が大きな力を持ったわけですけれども、金正恩政権になって、ここに一覧表を載せましたけれども、軍の要職にある人たちが非常に頻繁に交代し、なおかつ軍の幹部たちの階級が上がったり下がったりするような状況が起こり、この三年間を見てみますと、お父さんの時代の軍人たちがほぼ軍の幹部の第一線を退き、金正恩時代の新しい側近勢力というものが軍部に配置され、軍の世代交代というものをかなり実現しております。  二枚目にあります金正恩第一書記のこの四年間の公開活動と同行者の表を作りましたが、これは韓国の統一部の資料を基に作りましたが、面白いのは、二〇一二年にはこの同行者のベストテンというのは党の政治局のメンバーたちがベストテンまでを全て占めております。ところが、二〇一三年になるとここに変化が生まれ始め、次第に彼が自分の時代になって登用した幹部たちを数多く同行するようになり、軍あるいは党においても新しい金正恩時代の側近勢力というものが徐々に形成されているということが如実に感じ取られます。  そういう意味で、この三年間は、言ってみれば、李英鎬、張成沢という潜在的に自分に挑戦するおそれのある側近、そういう危険性を持った側近を除去して自らの権力構造を強化する、そういうプロセスであったんですけれども、張成沢党行政部長の粛清以降は、彼につながる党行政部のメンバーを粛清していくという色彩が強かったんですけれども、昨年末から今年に入って非常に興味深い現象が北朝鮮で起こっております。  それは、馬園春さんという、この方は馬園春国防委設計局長、この人は実は設計家で、北朝鮮のスキー場であるとか乗馬場であるとか、金正恩時代になって造られた大型建設物の設計をやり、その設計責任者であった人物ですけれども、この人が昨年の秋に、十月か十一月ぐらいにどうも失脚したと見られ、十月の平壌空港の第二庁舎の現地指導に同行して以来、姿を見せなくなっております。  また、軍の中では、金正恩時代になって登用された辺仁善作戦局長という軍幹部が、これもかなり金正恩さんの側近と思われてきましたけれども、今年に入り姿を見せなく、失脚し、新たな作戦局長が、後任者が任命されております。  こういう傾向は、ですから、金正恩権力の形成過程というものは、張成沢行政部長の粛清までというのは一つの目的性を持っていたといいますか、自らの権力構造を確立していくプロセスという意味で、我々の想像を超えるような、叔父さんを粛清、処刑するという衝撃的な事件があったわけですけれども、ある種の、何といいますか、目的性が感じられたわけですけれども、昨年末から今年に入って起こっている現象というものは、自らが起用した側近勢力の失脚ということが起こり始め、金正恩政権内部に少し、新しい時代の指導部に変化が起き始めているのではないのかという感じを受けております。  それで、注目すべきは、今年の二月に入って相次いで党の重要会議が開催されました。十日に党の政治局会議、今年の秋の七十周年のためのスローガンの発表等があり、二月十八日、これは非常に大事な会議だったと思われますけれども、朝鮮労働党の政治局拡大会議が開催されました。ここで恐らくかなりな人事が行われたと思われていますけれども、具体的な内容については発表されませんでした。  面白いのは、この時期の前までは、例えば金正恩第一書記は正月の新年の辞では例えば遺訓という言葉を全く使いませんでした。どちらかというと、金正日総書記、金日成主席の威光を借りて自らの権力を形成していくというところから抜け出して自らが独り立ちしていくんじゃないのかという、そういう傾向を強めてきたんですけど、なぜかこの二月十八日の党政治局拡大会議から遺訓ということが再び強調され、彼の、例えば現地指導をする場合でも、ここは例えばお父さんがこうこうこういう理由で視察したところであるとか、そういう遺訓への回帰というものが顕著に出ております。これが何を意味するのか。ですから、権力が強化されているように見えるけれども、自らの指導力自身ではまだ権力形成が弱いという判断があったのではないかというちょっと臆測が成り立ちます。当面の目標にしています人民生活の向上という政策課題についても、これを遺訓中の遺訓という言葉で修飾することによって強調しております。  その後に、二十三日にも党の中央軍事委員会の拡大会議が開かれ、ここでも軍の人事が行われましたけど、発表されませんでした。ここでは非常に金正恩発言の中で面白いところがあったんですが、昨年の人民軍の活動において現れた偏向という言葉が使われました。最高指導者の言葉の中にこういう否定的な用語が特に党の重要会議で出るというのは珍しいことであり、これが軍で失脚した辺仁善作戦局長の粛清と何らかの関係があるのかもしれないと思います。  そして間もなく、この間、彼の側近である黄炳瑞軍総政治局長と崔龍海党書記のシーソーゲームのような上がり下がりがずっと続いたわけですけれども、ここに来て黄炳瑞氏が党政治局の常務委員に就任していることが判明しました。これは、党の政治局拡大会議で行われた人事の結果であっただろうと思われます。ですから、現在の政治状況を見ると、どうも軍は黄炳瑞に任せ、党の方は崔龍海党書記に任せ、経済は朴奉珠首相を始めとする経済閣僚たちの運営に委任するという形で、その上に金正恩第一書記が乗っかっているという印象を持っております。  基本的には、李英鎬軍総参謀長等を切ったように、自分に挑戦するようなナンバーツーはつくらない、そういう危険なものはつくらないという意味で黄炳瑞と崔龍海のステータスをシーソーのように変えるということをやっているんだろうと思います。その中でどんどん妹の金与正氏の立場が強まっております。職責的には党の副部長ということになっておりますけれども、現実的には非常に大きな地位を占めていると思います。  この四月九日に最高人民会議というのがあったんですけれども、ここで非常に奇妙なことが起こっております。長年、金日成主席以来忠臣として支えた金己男党書記が、この方はイデオロギー担当の人物ですけれども、主席壇に出てきませんでした。ところが、一般席の三列目ほどに党の第一副部長なんかと同じに座っていました。ということは、高齢であるので引退のプロセスを踏んでいるのではないかという見方がありますけれども、北朝鮮指導部には八十代、ひどい方は九十歳になるような長老たちがたくさんいますから、これはちょっとそういう意味にも理解し難く、金己男氏が降格された可能性が少しあるのではないかという感じをしております。これも、ですから、先ほど申した二人の失脚なんかとどういうふうに連動していることなのか。  あるいは、ちょっと注目したいのは、このときの主席壇に登っているメンバーの中に、アメリカとのジュネーブ合意を演出した姜錫柱さんの姿がありませんでした。ただ、姜錫柱氏は、三月二日に実は北朝鮮で報じられた行事に出ておりまして、この党の政治局拡大会議の後に行われた行事で党政治局員兼党国際担当書記ということが確認されておりますから、まあ失脚じゃないんじゃないかとは思われるんですが、この間北朝鮮は外交問題において成果を出しておりませんので、特に彼は欧州を訪問して、人権問題の国連安保理への上程に対してEUが余り動かないようにという依頼をしたと思われるんですが、これに失敗しておりますので、そういう意味で若干引責性の問題が起こっているのかどうか、この辺は今後の推移を見ていかなければいけないと思います。  予算でもちょっと奇妙なことが起こっております。今年の七十周年というのは非常に大きなイベントですから、人民生活の向上が遺訓中の遺訓であるならば歳入歳出規模をむしろ増やすという方向に出るのが当然だと思われるんですが、ここに歳入歳出の規模を書きましたけど、この五年間で一番伸び率が低い緊縮財政になっております。これは恐らく、北朝鮮の主な輸出品目であります地下資源なんかの価格の低下であるとか、そういうものが響いているのではないかと思います。  そういう意味で、ひょっとしたら今年の十月の党創建七十周年に党大会や党代表者会のような、この金正恩時代を本格的にスタートさせる党の会議があるのではないかという見方がありましたけれども、この可能性が少しずつ低くなっているのではないのかなという印象を受けております。  以上、時間ですので、私の発言はこの程度にしたいと思います。
  15. 中曽根弘文

    委員長中曽根弘文君) ありがとうございました。  以上で参考人方々からの御意見陳述は終わりました。  これより参考人に対する質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  16. 北村経夫

    ○北村経夫君 自由民主党の北村経夫でございます。  お忙しい中、またお疲れの中、参考人皆様には御出席いただきまして、ありがとうございました。感謝申し上げます。  私も昨日の国民大集会に出席をいたしました。ここにおられる飯塚参考人を始め横田夫妻、そして拉致家族皆様、それぞれ発言しておられましたけれども、皆様、精神的、肉体的な苦痛が広まっていると、悲痛な叫びをもって拉致被害者の奪還を訴えられたわけであります。まさに私も最終決戦のときを迎えているというふうに感じているわけでありますが、時間も限られておりますので、質問に入らせていただきます。  家族会代表の飯塚参考人にまずお伺いいたしますけれども、昨日も飯塚参考人は、今年の中盤辺りには解決の兆しがはっきり見える状況にしてほしいというふうに言っておられました。今、率直に今の政府交渉についてどういうふうに受け止めておられるか、あるいは政府に対する要望ありましたら改めてお伺いいたします、お聞かせください。
  17. 飯塚繁雄

    参考人飯塚繁雄君) ただいまの御質問ですが、私自身としては、具体的なデータがあっての話ではない、つまり思いが先行しているんですね。今年中というと十二月までありますけれども、せいぜいその半分の時期には兆しが見えてこないと先へ進まないだろうと。そしてまた、もう一つは、いわゆる北朝鮮報告がどんな形で出てくるのか、これも、別な動きですけれども、ある期待がないわけではないですね。そしてまた、その辺を含めて更に言えば、先ほども申し上げましたように、我々の思いがほとんどもう極限事態に来ているということを考えたときに、やはり七月までには何とかこの問題の解決の兆しが見えてこなければ先へ進まないのではないかという逆の計算から実は私が発言したんだと思うんです。  取りあえずそういうことですね。
  18. 北村経夫

    ○北村経夫君 ありがとうございました。  政府は、拉致調査、再調査をしてから一年がたつ七月が一つのめどというふうに言われているんですけど、私どもが見ても、政府の動きということについてはなかなか進んでいないなと率直に感じているわけでありますけれども。  そうした中、四月二日、北朝鮮は一方的にこの交渉を中断するという通知をしてきたわけでありますけれども、ただ、この通知には組織名、担当部署というものが示されていなかったわけですね。これは、中断なのかあるいは中断示唆なのかよく分からない通知でありました。私なんかは、いつもの北朝鮮のやる脅し、ブラフなんだろうというふうに感じているわけでありますけれども、西岡参考人、その辺、なぜ日朝協議を中途半端な言及の仕方で中断させたと、どのように思っていらっしゃるか、お伺いいたします。
  19. 西岡力

    参考人西岡力君) 今、北村先生がおっしゃったように、私もブラフだと思っています。まだ最終的に中断するということを決定したとは思っておりません。  表現自体も、今、北村先生が主語がないということをお話しされましたけれども、通知文の全文も報道されていない、そして朝鮮通信が通知をしたという報道しかしていない、それも日本語版はない、平壌放送や労働新聞にもクオートされていないということで、かなり低いレベルで脅しをしてきていると。徐大河委員長の名前とか国防委員会の名前とかというものが付いていればかなり彼らとして上のレベルの決断を通知したということになるんでしょうが、というふうに思いますので、彼らは、ある面で朝鮮総連の幹部の家宅捜索に対する悲鳴ではないかと、これ以上はやめてくれと。今の状態ではできなくなっているというのは、これ以上やったら本当にできなくなりますよという悲鳴にも聞こえるものだと思いますが、次の日に総理が、未来を描くことは困難だと認識させなきゃいけないと言った、それに対する向こうの非難がない。水面下の厳しいやり取りが今あるのではないかと思っています。
  20. 北村経夫

    ○北村経夫君 ありがとうございます。  まさに今言われたとおりなんだろうというふうに私も思うわけでありますけれども、その総理の言われる、昨日も挨拶の中で言われました、北朝鮮拉致問題を解決しなければ未来を描くことは困難だということを認識させる、昨日は理解させることが大事だというふうに言われましたけれども、まさに正鵠を射た発言、タイムリーな発言だったんだろうと思うんですけれども。  先ほども荒木参考人西岡参考人それぞれ、この未来を描いていくのは困難だと認識させるためのその方法ですね、これからどうやって取り組んでいけばいいかということをるるお述べになられたわけでありますけれども、荒木参考人、今の政府交渉の在り方について御感想ありますか。
  21. 荒木和博

    参考人荒木和博君) 現在、外務省主導でこの交渉を行っているわけでございますけれども、やはりこの交渉自体に無理があるとしか思えないと思います。  この現状を、もう既に最初のストックホルムの合意の時点からこの合意がかなり怪しいものではないだろうかという懸念があったわけでございますけれども、やはり、総理が先頭に立って自ら制裁の部分解除等について発表されるというようなことから、何らかの確信はあってやっておられることだろうというふうには見ていたんですが、今日までこの状況が続いているということを考えたときに、やはり、余りにも外務省の方針に引きずられ過ぎてきたのではないか、別の形があってしかるべきではないかと思うんですけれども、現状では今限界に来ているというふうに認識をしております。
  22. 北村経夫

    ○北村経夫君 西岡参考人、先ほど朝総連の議長家宅捜索のことを触れられました。そのとき、議長の次男のことについてもちょっと触れられたんですけれども、この朝総連議長の次男というのは今何をして、総連の中でどういう立場にいるのか、お分かりでしたらちょっと説明していただきたい。
  23. 西岡力

    参考人西岡力君) 拉致などを理由にして朝鮮総連の幹部が北朝鮮への往来ができなくなった後、彼は、朝鮮総連では副議長以上の位に就いていませんので自由に往来できるということで、父親の代わりに北に行き、不正輸出など、資金を日本から送ることに関わっていたのではないかという幾つかの情報があります。  そして、今回のマツタケの不正輸出については、彼が経営していた会社が関係しているのではないかということで、去年の五月に彼の自宅と彼の会社が家宅捜索されています。
  24. 北村経夫

    ○北村経夫君 北朝鮮というのは圧力なくして動く国でない国でありまして、圧力があって初めて対話が生まれるのがこれまでの日朝だったわけで、様々な角度からのアプローチあるいは圧力というのは私も大変有効的であり絶対必要だというふうに思っているわけでありますけれども、西岡参考人、先ほどるる説明されましたけれども、これをもっと有効的に使っていく何かお考えはございますか。
  25. 西岡力

    参考人西岡力君) 先ほど、制裁の強化、厳格な法執行、そして国際的な制裁ということを申し上げましたが、もう一つ、北朝鮮の内部から情報を取ること、確実に生存して今何をしているかということの情報を取ることも圧力を掛ける手段になると思います。  ストックホルム合意の約一週間前、拉致対策本部が古屋大臣の談話という形でステートメントを出していますけれども、この談話は大変私評価しています。我が国は、安否不明の拉致被害者についての情報収集活動を一貫して強化してきました。一時的なポーズを取って時間を稼いでも、状況の改善や実利の獲得にはつながりません。拉致被害者の存在を隠蔽することで拉致問題の終息を図っても、日朝関係を取り返しの付かない状況に追い込むだけです。御家族に死亡を納得させたり関係者を離間させたりすることによる問題風化の試みも一切通用しませんと。情報を取ることを強化してきた、だから死亡など通じないということを大臣の名義で出しています。外務省のラインではなくてこのラインで交渉が進んでいればもう少し違ったのではないか。しかし、一週間後にストックホルム合意がされてしまって、死亡と言っても駄目ですよ、情報があるんですよという圧力抜きに、話合いが始まったからいいことだという評価をしてしまったのではないかとちょっと残念に思っています。
  26. 北村経夫

    ○北村経夫君 ありがとうございます。  次に、金正恩政権の権力構造について伺いたいと思うんですけれども、日朝交渉もいずれは最後の勝負のときを迎えるわけであります。日本が有効な手だてを打つためには、この独裁者、金正恩の権力基盤がどのようになっているか、そこのところを慎重に見極めていかなければならないというふうに思うわけでありますけれども、先ほどから説明ありました、金正日が亡くなってからこの三年、様々な粛清が行われてきた、とりわけ軍については人事が目まぐるしく動いたわけであります。  平井参考人、資料を読ませていただきましたけれども、党、軍、治安関係機関と金正恩が一体化しているというふうに指摘しておられます。そして、平井参考人、先ほどは軍と党と経済、それと金正恩が一緒になっていっている、そういうふうに述べられましたけれども、金正恩の本当の最側近というのは誰なのか。あるいは軍の掌握というのはどういうふうな状況になっているのか。そして、北朝鮮を先軍政治というふうに言われました。これは先軍なのか、あるいは先党、党の方が優位に立っているのか、その辺の権力構造というのは今どのようになっているのか、それぞれお聞かせください。
  27. 平井久志

    参考人平井久志君) お答えいたします、私の考える範囲で。  最側近というのは、恐らく現状でいうなら妹の金与正ではないかなという気がいたします。その中で、分割統治といいますか、軍の方は黄炳瑞に任せ、党の方は崔龍海に任せという構造ではないかなと思います。  私は、現在の政権も先軍政治のスローガンを継承しておりますけれども、この間の動きをずっと見ていますと、やはりお父さんの時代の軍の幹部が事実上軍の一線を退くことによって、この人たちがほとんど、朝鮮労働党の例えば政治局なんかでは高いポストには就いていないんですね、新しい軍の側近たちが。そういう意味で、金正恩時代というのは内実的に党の機能が強化されているという側面はあると思います。ですから、父親の時代の先軍政治というのが軍が力を持った先軍時代であったならば、現在の状況というものは党主導による先軍というふうにややスタイルを変えてきているのではないかという気がいたします。  参考までですが、実は、張成沢党行政部長を粛清する際に金正恩第一書記は三池淵というところに行きました。そこで最終的に張成沢部長粛清を最終決定するんですけれども、そのときに八人の側近を連れていきました。今回、つい最近、白頭山に彼が行っているんですけど、そのとき五人の側近を連れていきました。現在非常に彼に近い側近としては、この五人の側近が側近勢力の中では比較的有力な幹部ではないのかという見方があります。
  28. 北村経夫

    ○北村経夫君 平岩参考人にもお願いいたします。
  29. 平岩俊司

    参考人平岩俊司君) ありがとうございます。  同じ御質問にお答えすればいいということです。  最側近というと、確かに、平井参考人が御指摘の妹の金与正というのが恐らく最も近いということになるんだろうと思います。それを前提にいたしまして、平井参考人が御指摘になられたように役割分担を任せているということなんだろうと思います。  私のイメージは、実は父親の金正日が自分の息子に権力を譲るに当たって、自分と同じような先軍政治は恐らくできないだろうと。だから、党と軍の関係をつくり直して、そこに側近を置いて管理をするという、恐らくそういうイメージをつくったんだろうと思うんですが、実際に最初はそういう形でスタートしたんですけれども、その後の展開で、これは平井参考人が御指摘のように、金正恩自身のリーダーシップによるものなのか、あるいはまた別の理由なのかというのは少し分からないところはありますが、結果として、そういう党と軍という枠組みを超えて、金正恩を中心とした新たな側近がコアとなって、私のイメージでいうと、党と軍とそれから治安機関、こういったところが組織の枠を超えて権力の核心をつくっているのではないのかと、そんなイメージで考えております。  それは、一つは、張成沢という非常に権力の大きな人間を排除するためには、当然、党と軍の協力というのは必要でしょうし、それから、長時間にわたって秘密で事を進めていたわけですから治安機関の協力も必要でしょうから、そうした部署が一体化して、特に今表に出てきている人たちよりももう少し若手の人たちがひょっとしたらそういう金正恩第一書記の本当の意味での側近ということになるのかもしれませんが、新たな権力の核心ができつつあると、そういう状況ではないかというふうに見ています。
  30. 北村経夫

    ○北村経夫君 ありがとうございました。  最後の質問になりますけれども、平井参考人、この金正恩政権に弱みがあるとすればどこに弱点があるというふうに思われますか。
  31. 平井久志

    参考人平井久志君) ですから、先ほども少し申し上げましたけれども、張成沢粛清までというのは一つの方向性が非常にはっきりしていたわけですけれども、昨年暮れから今年に入って起きている、自らが登用した側近たちの失脚であるとか降格という現象がここのところ見えているんですね。こういうことが続きますと、恐らく、幹部たちは創造的な仕事をするというよりは非常に自己保身に走る傾向が強まる、普通ですとそういうふうな傾向が強まり、それは積極的な事業をするということについて大変妨げになるのじゃないのかなという気がしますね。  それと、現在、金正恩体制、張成沢さんを粛清する主導は、私は党の組織指導部と治安機関である国家安全保衛部が主導したと思っておりますけれども、現在のところはここの意見が、非常に金正恩第一書記との意見が一致しておりますけれども、例えば経済政策なんかで金正恩第一書記が若干改革的な方向性を出した場合に、こういう党組織指導部や保衛部意見がずっと最終的に一致するのかどうかという部分については疑問の余地がありますので、こういう経済の再建等が進めば逆に北朝鮮に市場経済主義的な要素が入ってきますので、その部分が国内の保守勢力との間の摩擦要素となってくる可能性というものが将来的には私はあるのではないかと見ております。
  32. 北村経夫

    ○北村経夫君 ありがとうございました。終わります。
  33. 白眞勲

    ○白眞勲君 民主党の白眞勲でございます。  本日は、御多忙のところ当委員会に御出席くださいまして誠にありがとうございます。野党筆頭といたしましても心より感謝申し上げます。  時間が限られておりますので早速質問させていただきたいと思いますが、まず、家族連絡会の飯塚代表にお聞きいたしたいというふうに思います。  今回のストックホルム合意について、調査委員会は立ち上がったものの、その後実りある成果が残念ながら出ていないという部分が現在一番のポイントだというふうに思っております。  この件については、先ほど西岡会長もおっしゃっていましたけれども、私は、二〇一二年に飯塚代表、西岡さん、荒木さんとみんなでジュネーブへ行きまして、国連の強制的失踪作業部会会合というもので、ともかく、私もそうなんですけど、そのときは野田政権時代で私は内閣府の副大臣で一緒に行かせていただいて、やはり国際社会の中の人権問題という中で拉致問題をあぶり出していくという手法を取るのが私はいいのではないのかなというふうに思いまして、それが私はキックオフだと思っていたんですね。それが今回、安倍政権になって北朝鮮側も、アリバイづくりという言い方がどうか分かりませんが、ともかく日本とはやっているんだということが今の調査委員会になってきたというふうに私は見ているわけなんですけれども。  ただ、ポイントは、安倍政権は再三再四にわたり拉致問題が最優先課題というふうにはしていますが、実際、ストックホルムの合意ではそのことが私は明記されていない部分が一番大きな問題ではないのかなというふうに思っているんですね。  今、西岡会長もストックホルム合意は間違っていたのではないか、あるいは荒木代表も失敗とか限界に来ているということを今御発言されましたけれども、ここには、文書の中にはこういうことが入っているわけです。調査は一部のみの調査優先するのではなく、全ての分野において同時並行的に行うと、どこにも拉致問題が最優先なんということは書いていないわけなんですね。また、合意の中には、今も触れられましたけど、遺骨まで含まれていて、正直、拉致とは関係のない問題が含まれていると。  私は、全ての日本人を取り戻すという観点からは、遺骨まで入れる、さらには、文書にはどこにも最優先という言葉が書いていないという部分においては、かえって問題がこのストックホルム合意によって複雑化してしまったのではないかという印象を持っているんですよ。  私はやり方おかしいと思うんですけれども、飯塚代表としては、ストックホルム合意のこのやり方についてはどのように思われていますでしょうか。
  34. 飯塚繁雄

    参考人飯塚繁雄君) 私たち、素人ながらも、今回の協議が本当にこれでいいかなというのはやっぱり自分自身思いました。  先ほど白先生からもおっしゃられたように、拉致問題がクローズアップされていない状況があちこちありまして、まさに何のための協議なのかという感じがしました。それと、まあいろいろ、世論ですけれども、このやり方では駄目だという方々がかなりおります。当委員会のメンバーの先生にもそういった意見があります。  ですから、当初のストックホルム合意の中にあえてそういったものを入れなさいという準備が全くされていなかったと。とにかく協議をやるということは、北朝鮮がどこか譲歩をして、関係がだんだんつながってきて拉致の解決にもつながるのではないかという安易な期待だけかなと思ったんですね。  ですから、先生がおっしゃるように、その合意の中にはっきりと拉致問題最優先というふうにしておけばよかったと。これはもう後の祭りですけれども、そういったところの手の付けようというか考え方の浅さが感じられてなりません。
  35. 白眞勲

    ○白眞勲君 ありがとうございます。  それでは、特定失踪者問題調査会荒木代表にお聞きいたしたいと思いますが、この「しおかぜ」という放送なんですが、費用の御負担について政府などに御要望があるかどうか、もしありましたらお話しいただきたいと思います。
  36. 荒木和博

    参考人荒木和博君) ありがとうございます。  私ども、先ほど申しましたように、百キロワットから三百キロワットへの出力の増力をやりました。ここはKDDIの送信所でございますが、NHKが国際放送用に丸ごと借りておりまして、私ども、費用をNHKに支払っております。その費用が今回、一部、一時間分の三百キロワット送信で月額二十六万八千円、年額にしまして三百二十一万六千円増額になっております。  現在、政府の広報を入れる形で政府からの予算もいただいているわけなんですけれども、相当額が増額になるということなんですが、電気代が増えるのはこれは仕方がないとして、非常に我々としては厳しい状況になっております。改めてまた、これに対する対応もお願いできればと思っております。
  37. 白眞勲

    ○白眞勲君 終わります。
  38. 有田芳生

    ○有田芳生君 民主党の有田芳生です。  北朝鮮の権力構造とその歴史的意味合い、その中での拉致問題の解決、それをどう進めていくかという、そういう視点から、まず西岡さんと平井さんにお聞きをしたいというふうに思います。  御承知のように、拉致被害者のお一人で日本帰国した蓮池薫さんがその著作、例えば「拉致決断」あるいは講演の中でしばしば述べられているわけですけれども、自分たちがどうして日本に帰ってくることができたんだろうかと、そういうことを振り返ってみたときに、一つは、一九九〇年代後半の北朝鮮国内におけるあの苦難の行軍、経済的な困窮状況自分たちの日々の暮らしのところにも、配給が減ってきたとかそういうところで経済問題があったんだと。もう一点は、アメリカによってテロ支援国家に指定をされたわけですけれども、二〇〇一年に九・一一があって、そして二〇〇二年の一月にジョージ・ブッシュ大統領の悪の枢軸発言が一般教書で述べられた。その状況の下で、北朝鮮国内において、ひょっとしたらアメリカ北朝鮮に攻めてくるんではないかということが自分たちの生活レベルにおいても北朝鮮の中で不安が広がっていったと。その二つの背景があって二〇〇二年、九・一七の小泉訪朝が実現して、自分たちが戻ってくることができたんだろうというふうに蓮池さんは振り返っていらっしゃるわけですよね。  そこでお聞きをしたいことは、当時、二〇〇二年の小泉訪朝前後、特に拉致被害者が帰ってこれるというような状況の下で、テレビ、新聞などに、西岡さんたちもよくお出になっておられましたけれども、私も関わっているテレビの当時の番組などによく北朝鮮の専門家の学者さんが出てこられて、拉致問題の抜本的、全面的な解決というのはやはり体制が変わらないと駄目だろうと、全面的には、体制崩壊が来るんだということを今から十三年前、九月、十月、語っていらっしゃった、来年には崩壊しますよ、そうすれば拉致問題は全部解決するんだという北朝鮮専門の学者がいらした。そういう主張を更に次の年にも語っていらっしゃった方がいるんですよね。  それなりに専門家ですから根拠をお持ちだったのかなとは思うんですが、そういう方とは違うということは重々承知の上でお聞きをするんですけれども、西岡さんが今回本を出された、「横田めぐみさんたちを取り戻すのは今しかない」と。その中で、拉致問題を解決するための三つの条件ということを西岡さんは触れられておりまして、三番目に、北朝鮮政権が崩壊し混乱状態が発生することに備え救出作戦を準備しておくことと。その説明の中で、金正恩体制は不安定度を増しており、いつ混乱事態が起きるか分からないと、荒木さんの表現では体制転換ということを述べられております。果たして今北朝鮮がそういう体制転換に伴うような崩壊の条件というものが高まっているのかどうなのかということをお二人に伺いたいというふうに思います。
  39. 西岡力

    参考人西岡力君) 拙著を御紹介いただいて恐縮でございます。  金正日時代と比べてやはり政権の安定度が下がっていると認識しています。ただ、いつということについては全く分かりません。しかし、米韓軍は既に、混乱事態が起きたときにどのような軍事作戦をするかという五〇二九作戦計画というのを持っています。そして軍事演習をしています。ですから、あり得ない事態ではないと米韓軍は判断しているということでありまして、それがいつ来るのか分からないにしても、危機管理というのは、いつでもそういうことが来てもいいように準備しておくということでありますので、まずは交渉によって、圧力を掛けて交渉によって取り戻すというのが第一条件と第二条件でありますが、交渉相手が突然いなくなることもあり得ると。そして、混乱が起きた場合は、韓国の専門家もアメリカ情報筋の人も私に語っているんですが、短期的に被害者の危険が高まると、証拠隠滅のために殺すということもあり得るということなので、その場合にどう救出するかということを考えておかなければならない。そのときになってからでは遅いので。  しかし、第一条件と第二条件が、安全に何人でも、とにかくたくさんの人を取り戻すためにはそっちが優先だろうと思いますが、ということで、不安定度を増していると書いたので、今すぐ倒れるというふうには思っておりませんが、倒れることがないというふうに言えるほど安定していないと、そういう意味でございます。
  40. 平井久志

    参考人平井久志君) お答えいたします。  二〇〇二年の小泉首相の訪朝に関しては、先ほど有田議員がおっしゃったこと以外に、私は当時、実は共同通信の北京の特派員をしていて、日朝間の秘密協議を何度か記事にしたことがあるんですけれども、北朝鮮側の非常に大きな要因として、金正日総書記が二〇〇二年七月に行った経済改革があっただろうと思います。この経済改革のためには外資が必要であり、恐らくパラレルな関係で日本からの外資というものをてこに経済改革を成功させたいという思惑があったんじゃないのかなということを私は考えております。  そういう意味では、現在の、今回交渉に応じてきた背景には、北朝鮮は若干市場経済主義的な要素が入り始めておりますけれども、今までの体制が非常に硬直化しておりますから、そういう市場経済的な要素が入ってくるだけで若干のプラス成長ということは可能ですけれども、やはり外部の刺激がないと飛躍的な経済再建ということはほとんど不可能ですから、そういう意味で、日本の植民地支配に対する経済支援ということに対するやはり魅力はあるんだろうと思います。  その意味で、しかし、現在の金正恩体制が崩壊する可能性があるかと言われると、先ほど申し上げたような、自己の権力基盤というものを自分への危険がある側近を粛清して強化はしましたけれども、その後、逆に、若干目的性を失っているというか、自分が取り立てた側近たちを交代させるような不安定要因というものはあると思います。  ただ、政権のそういう不安定要因は読み取れますが、これがそうしたら体制崩壊に直接的に連動するかどうかということでは、北朝鮮の非常に強固な公安のシステムであるとか体制維持のシステムを考えるとき、軽々にはそういうふうな結論に達するのは難しいんじゃないのかというのが私の個人的な考えです。
  41. 有田芳生

    ○有田芳生君 同じく体制転換の可能性、条件について、荒木さんと平岩さんにもお聞きしたいというふうに思います。
  42. 荒木和博

    参考人荒木和博君) 私は、正直言いまして、二十年前から北朝鮮はいつ崩壊してもおかしくないというふうに言っておりまして、いつまでたっても崩壊しないじゃないかという批判を受けたりはするんですが、やはり常にそのような条件は持っているということがございます。  ただ、もう一つ言えるのは、北朝鮮というのは周辺が四大国に囲まれた、まあ北朝鮮というか朝鮮半島自体が、国でございまして、周辺国の意向として現状維持が一番ベターであると、その状況が変わることによって東アジア全体の国際関係が変化をいたしますので、どこかが手を入れて助けてしまうということが続いてまいりました。これはもうこの二十年間ずっとだったと思いますが。ですから、これから先もその地政学的な状況は変わらないと思います。  ただ、逆に言えば、もしこの東アジア全体に大きな動きができたときには、もう北朝鮮が止めようと思おうが思うまいが、体制が変わらざるを得ないというような枠組みではないだろうかというふうに私は理解しております。
  43. 平岩俊司

    参考人平岩俊司君) 北朝鮮の内部に関して言うと、中長期的には多くの課題があることは間違いないんですけれども、短期的には、もう皆さん御指摘のとおりで、一時的に権力が固まっているという状況だと思いますので、すぐさま体制がどうかなるというようなことは少し考えにくいというのが個人的な意見であります。  体制崩壊の条件というものがあるとすれば、やはりこれは、もう荒木参考人が御指摘のとおり、国際関係が非常に重要であって、その中でもとりわけ中国が北朝鮮との関係をどう位置付けていくのかということが、北朝鮮の体制の存続という意味で考えれば非常に大きな役割を持っているということが言えるんだろうと思います。  仮に中国にとって北朝鮮の体制が崩壊することが不利益だというふうに中国側が判断すれば、そうした動きが出たときにはそれをバックアップするような形で中国側が働きかけをすると、恐らくそういう構造というのがまだ現状ではあって、もちろんその時々で、中朝関係、非常に冷却化した印象を持つんですけれども、そういうようなタイミングになってくると、中国はやはり自分たちの国益、北朝鮮のためということではなくて自分たちの国益を考えてどうするという、そういう判断で動くんだろうと思います。
  44. 有田芳生

    ○有田芳生君 ストックホルム合意について、荒木さんと西岡さんにお聞きをしたいんですけれども、私の考えでは、やはりストックホルム合意の問題点というのは、日朝間で拉致問題の解決とは何かというところが詳細に詰められていないまま速く走り過ぎたという点もあるというふうに考えているんですけれども、荒木さんが失敗だという評価をされている中で、じゃ、今の日朝交渉合意を破棄するということをすべきなのか、そうではないのか。  御存じのように、横田滋さん八十二歳、早紀江さん七十九歳、有本明弘さん八十六歳、嘉代子さん八十九歳と。これまでの日朝交渉、小泉訪朝から数えてもう十三年、何も動いていない、結果として、という状況の下で今の合意が破棄された場合、拉致被害者家族の年齢から考えてもはや時間がないという状況の下で、この合意についてどのように今後進めていくべきなのか。  もう一度繰り返しますけれども、破棄すべきなのかそうでないのか、破棄するならば、じゃ、どういう交渉を対案としてお考えになっているのか、それを最後にお聞きしたいというふうに思います。
  45. 荒木和博

    参考人荒木和博君) 破棄、やめて何もしないという意味ではございません。  ともかく、今の状況でいくと、この状況を続けることが北朝鮮にとって極めて不利益になる、先に行けば行くほど日本が強硬になり、そしてもう北朝鮮はマイナスしかないというふうに思わせることが必要でございます。  だから、今の話合いを続けていれば、北朝鮮は何も思わない状態でずっと続いていきますから、結局、逆に年齢が高まっている御家族にとってももう時間の浪費にしかならないと。ここで一旦、もうこれ以上話が進まないのであれば止めると、そしてさらに、制裁の追加とか、あるいは戻すことをやっていくということを日本政府が示すことによって、その形がどうであれ向こう側は交渉に乗ってこざるを得なくなるだろうと。それが、だから今のやっているやり方と違っても交渉ができればいいわけですから、それに向こう側がともかく応じざるを得なくなるような状況をつくるためには、一旦このだらだらやっている交渉は打ち切るという形にした方がいいということが私の意見でございます。
  46. 西岡力

    参考人西岡力君) 北が交渉に出てきた背景の一つは、外貨が枯渇してきていると。特に、統治資金と言われる国家予算とは別にある外貨が枯渇してきていると。その財源は朝鮮総連からの送金だったわけですし、韓国からの支援だったわけですし、偽札や麻薬だったんですが、それがどんどん縮小していると。張成沢処刑の背景も、外貨稼ぎ機関をどちらが取るのかと軍と党の間で争いがあったということですから、外貨の枯渇ということで内部矛盾が高まっている、その出口を日本に見出してきているという構造はあると思います。そういう点で彼らは交渉をやめられない。  ですから、私は、あのストックホルム合意に欠陥があったと言っていますが、間違いだったとは申し上げていないわけです。やり方が間違っていたと。しかし、今は総理が主導して拉致優先だと言っているわけですね。書いていないと北は言っていますが、いや、拉致優先なんだと、これはテロなんだから、犯罪なんだから最優先なんだと言って、そして、動かなければ未来を描くことが困難だと今言ったと。この方向が正しいと思います、これでいくしかないと。  ですから、このままいけば本当に外貨が枯渇しますよと、総連は潰れますよ、国際社会からも外貨が行かなくなりますよ、犯罪行為はもっともっと厳しく取り締まられますよということを示すということを最高指導者が公開の席で言ったんですから、これでいくしかないと。今までのように紙に書いてあることを守りましょうという交渉ではなくて、本質は被害者を取り戻す、犯人との交渉なんだということでいくべきだと思います。
  47. 有田芳生

    ○有田芳生君 ありがとうございました。
  48. 矢倉克夫

    ○矢倉克夫君 公明党の矢倉克夫です。  参考人皆様方、お忙しいところ大変に貴重な御意見をありがとうございます。  お話をお伺いして、少し前になるんですけれども、私、地元埼玉県で、埼玉の川口市の市役所で特定失踪者皆様を含めた帰還について展示をされていた藤田進さんの弟さんの隆司さんにお会いをしたときのことを思い出しました。もう本当に時間がないんだということを切実にお訴えをいただいて、今、飯塚参考人を始め皆様のお話を聞いて、もう待ったなしなんだなということを改めて実感をした次第であります。  ちょっと質問に、時間もありますので入らせていただきたいと思うんですが、やはり具体的にどのように解決をしていくのか。一つのポイントは、金正恩第一書記がどのように考えていて、彼にどういう力があるのかというところをもう少しはっきり明確にしていかなければいけないところではあるかと思います。当初は、この拉致に関わりのなかった金正恩がしっかりと解決していくという意思を持てばというような期待もあったわけですが、なかなかそれが進展しないと。その理由北朝鮮の内部に、どういうところにあるのかというところもまた知らせていただきたいというところで、少し内情についてお聞きしたいと思っております。  平井参考人にお伺いしたいと思うんですが、一つの鍵は、やはり張成沢氏の処刑をされたというところがどう解釈されているのかというところであるかと思います。先生のお話をお伺いしていると、その意思にはやはり金正恩第一書記の意思が非常に介在をされていたというところはあるかと思います。他方で、この張成沢氏というのは、金正恩にとっては叔父さんでもあり、おじいさんにとっては娘婿で、彼にとってはお父さんが金正恩の体制を保護するために後見人として選んだ人間だというところ、そういう人間が結局反逆という部分で処刑をされたというのは、金一家にとっては威信も喪失するような部分でもあり、結局、二年間そのままの状態で、最終的に金正恩決断をして処刑をしたという状態になるまで二年間も放置をしたというところは威信の部分でもある程度影響を与えるというような可能性もあるかと思います。そのようなことを金正恩が積極的にやったのかどうか、若しくは金正恩が及ばないところでやられたというような解釈も出てくるかとは思っております。  あと、他方、先ほどまた先生がおっしゃっていた金正恩第一書記の側近の人も失脚をしているというふうな状況、これも、裏を返せば金正恩第一書記の力というのがまだ確立をされていないという証拠にもなっていて、先ほどの張成沢の処刑もそのような延長であったのじゃないかというような補強にもなり得ると思うんですが、この辺りをどのように考えればよろしいのか、ちょっと教えていただきたいなと思います。
  49. 平井久志

    参考人平井久志君) 難しい御質問ですが、私が張成沢党行政部長の失脚後に取材をしたりいろいろして感じる非常に奇妙な点は、北朝鮮内部から余りこの張成沢粛清に対する否定的な声がほとんど聞こえてこないという点です。  張成沢党行政部長というのは、処刑される前の年に国家体育指導委員会委員長にもなり、ある意味では、猪木議員が行かれたときにはお会いになったりして、スポーツ外交などを通じて対日問題にもコミットするような傾向を見せておりました。  ですから、北朝鮮の権力内部では党行政部と党組織指導部という機関同士の葛藤というものが結構続いたんであろうと思います。ですから、何かをしようとする人たちはこの二つの権力機構の顔色を両方見なければ仕事ができないというふうな状況が続いていたのですが、その中で行政部が結局敗北したことによりシステムがある意味では一元化されたという面があるので、その結果として、余り北朝鮮内部からこの粛清に対する否定的な声が聞こえていないという理由の一つが私はあるのではないかなという気がします。  それと、日朝の関係でいいますと、私は二〇〇二年の小泉首相の訪朝の際には北京で取材をしておりましたけれども、当時は、対日外交を主導するミスターX、恐らく国家安全保衛部の柳敬副部長が主導してやっておったと思われますけれども、現在の交渉というものにそういう、何というんですか、やはり全体の対日政策をコントロールするような人物が私はいないのではないのかなという感じを深めております。ですから、局長級会談では宋日昊大使と外務省が主導になり、非公式会談ではまた別のセクションが協議するということで、北朝鮮の内部のシステムそのものも何か一元化されていないのではないのかという印象を私は持っております。その辺がよりこの交渉を難しくしているのではないのかなという、そういう感じを受けております。
  50. 矢倉克夫

    ○矢倉克夫君 ありがとうございます。    〔委員長退席、理事塚田一郎君着席〕  平岩参考人、今の張成沢前行政部長、この処刑の背景というものをどういうふうに考えていらっしゃるのか、金正恩第一書記の意思というのがどのように介在しているのか、御意見があれば教えていただければと思います。
  51. 平岩俊司

    参考人平岩俊司君) もうそれは、今、平井参考人の方からお話があったことと基本的に私も変わらないんですが、いわゆる路線闘争とかそういうことではなくて、やっぱり利権をめぐる争いであったんだろうと、それが二つの組織が争った結果として張成沢氏が排除されるということなんだろうと思います。  ただし、それに金正恩第一書記がどう関わっていたかということですけれども、これはちょっとよく分からないというのが正直なところであります。  ただし、ああいう形で公開的に裁判を行って処刑にまであっという間に持っていくということであれば、少なくとも金正恩第一書記のゴーサインといいますか、金正恩第一書記は、少なくともそれについては反対をせずに是としたということは間違いないんだろうと思います。  そこに金正恩第一書記が陣頭指揮を執ってやったかどうかということについては、残念ながら、今の段階では少しそれを裏付けるだけの根拠がないというふうに言わざるを得ないと思います。
  52. 矢倉克夫

    ○矢倉克夫君 もう一方で、あと党と軍の関係というものがどのようになっているのか、また平井参考人平岩参考人に御意見をいただければと思います。
  53. 平井久志

    参考人平井久志君) 現在の政権も先軍ということを非常に重要視していますから、軍が必ずしも軽視されているということではありませんけれども、例えば、最近の北朝鮮のいろんな発表等を見ていると、国防委員会が発表する発表文というのはほとんど声明等を発表して、重要な政策決定というものが金正日時代に行われたように国防委員会で余り出ていないんですね。今回、二月に重要会議を相次いでやったときも、国防委員会会議を開かずに、党の中央軍事委員会を開いて軍の人事を決めているわけですね。ですから、軍の路線の決定や軍の人事も国防委員会ではなく党の中央軍事委員会で行われているという私は感じを持っています。  ですから、当然、現在の経済建設と核開発を同時に進行するという並進路線は、これも党の中央委員会総会で決定したものなんですね。そういう意味で、軍の路線も党の決定によって行われているという色彩を強めておりますので、先軍ということ、また核開発ということを重視する路線に変化はありませんけれども、それの決定、指揮系列というものが、軍の会議で決まるよりは党、党の中でも、だから中央軍事委員会の中での機能というものが強まっている。最近の会議でも、軍は党と首領に忠誠を尽くせというようなことがつい数日前にも出ておりましたけど。  それと、先ほどもちょっと言いましたけれども、例えば軍の総参謀長なんかが党の政治局の中ではまだ政治局員候補でしかないんですね。政治局員でもないんですね。今、党の常務委員会の中に、黄炳瑞は常務委員になりましたけれども、元々は党組織指導部で長年軍のコントロールをやってきた人物で党人ですね。ですから、党常務委員会の中にもきっすいの軍人はいない。  ですから、党の政治局の内部においてもいわゆる制服組の軍人たちは余りいないということを考えますと、金正恩政権になって大変重要な決定をする際には、おおむね政治局会議か政治局拡大会議あるいは党中央委員会総会を開いて決定しているんですけれども、そこではやはり党というものが前面に出てきている。ですから、先軍路線というものを標榜しながら、現実的には先党路線といいますか、党が先に立つ路線という色彩が私は強まっているのではないかと。  ただし、これは、だからといって例えば核開発等のウエートを落とすということではなくて、党主導によるそういう軍事優先路線が取られているのではないのかというふうに私は理解しております。
  54. 平岩俊司

    参考人平岩俊司君) 党と軍の関係でありますが、これはもう、今、平井参考人が御指摘になった黄炳瑞という軍の総政治局長、これを軍人と見るのかあるいは党人と見るのかによって評価が定まってくるんだろうと思います。これはもう平井参考人御指摘のとおり党人ですから、やはり党が軍をコントロールしているという大枠についてはやはり変わらないんだろうと思います。  これは、北朝鮮の説明によると、北朝鮮は建国以来ずっと党が軍をコントロールしてきたんだと、党が中心なんだということを言います。金正日総書記の時代のまさに先軍政治のときというのは、朝鮮労働党の党大会も開催されないし中央委員会総会も開かれない、政治局の会議も開かれないという、ずっとそういう状況が続いたわけですけれども、そのときですら、北の説明でいえば、党が軍をコントロールするんだという言い方をする。それは、北朝鮮側の説明によれば、どうやら金正日総書記イコール党なんだから、金正日総書記が軍に対してコントロールできていれば、それで党と軍の党軍関係というのは成立しているんだということのようなんですけれども、それを前提にいたしますと、金正恩第一書記が登場するときというのは、形骸化していた党を再建するというところから始まって、とりわけその中でも党の中央軍事委員会、ここが中心になるという、そういう印象を受けておりましたから、党が軍に対してコントロールをしているという大枠は変わらないと思います。  ただし、そうはいいながらも、やはり軍の意向というのは全く無視できる話ではありませんし、それから党の中央軍事委員会のメンバー等を考えても、やはり軍の影響力も一定程度あるというふうに考えるべきで、ですから、組織として党と軍が競争関係にあってというようなイメージよりももう少し、党の中心と軍の中心のコアの部分が一体化して金正恩第一書記と一緒にその運営をしているという、そんなイメージで見た方が今のところはいいのではないかというふうに私は個人的に思っております。
  55. 矢倉克夫

    ○矢倉克夫君 先ほど平井参考人からも名前も出ていました黄炳瑞氏と崔龍海氏が一年間ぐらいで二回も三回もくるくるくるくる順位が変わっているわけですけど、先ほどのお話ですと、やはり金正恩第一書記の意向で第二番をつくらないという部分での、まあ押さえというところでそういうふうにしているという部分はあるんですが、逆に、これもまたうがった見方かもしれないんですが、内部闘争の激しさがそういうふうに現れているというような見方があるかなと私も質問する前はちょっと思ったんですけど、その辺りは、軍と党との関係とかの関係も絡めてそういう要素は余り考えなくてもよいという理解でもよろしいのか、ちょっとこれもまた平井参考人に教えていただきたいと思います。
  56. 平井久志

    参考人平井久志君) これは私の私見ではありますけれども、黄炳瑞さんという人は、党の組織指導部の中の軍事部門の担当も長年やってきた方なんですね。ですから、党の組織指導部の中で、軍を統制する仕事を党の中で長年やってきた人ですから、ある意味で軍の総政治局長というポストはまさしく彼がずっとやってきた仕事とは非常にマッチするんですね。一方、崔龍海さんという人は、この方は青年団体のトップを長年やってきた党人でありますから、元々軍に対してそれほど知見がある人ではないわけですね。その人を当初は軍総政治局長に持ってきたんですけれども、普通に考えれば、党の側が軍をコントロールする経験というか知見ということでいえば、黄炳瑞氏の方が経験、能力共に高いであろうということは我々も考えられます。  それと、もう一つ言えば、黄炳瑞という人は、張成沢さんの言うことは聞かないで金慶喜さんの言うことは聞くというぐらい、余り張成沢さんとは反りが合わなかったという部分があります。それで、現在は非常に強いポジションというか、党の政治局常務委員であり次帥であり軍の総政治局長でありという、党の中央軍事委員会の副委員長でもありますから非常に強く見えるんですけれども、これは、金正恩第一書記の意向一つでは、自分に危険な存在だという彼が認識を持てば、いつでも恐らく交代が可能であると思っております。
  57. 矢倉克夫

    ○矢倉克夫君 ありがとうございます。  ちょっと済みません、時間がなくなってしまって。  飯塚参考人西岡参考人荒木参考人に、時間ですがちょっとお伺いしたいんですが、やはり私も、最後、先ほど西岡参考人からアメリカの関係でお話もありました。私も圧力という環境をつくっていくことが必要であると。その上で、日本の外交、その環境をつくった上でこの局面を打開するには今何が足りないのかをちょっとお伺いをしたいと思っております。  済みません、短い時間なので恐縮ですが、短めにお答えをいただければと思っております。
  58. 塚田一郎

    ○理事(塚田一郎君) 短い時間ですので、一言ずつでお願いします。
  59. 飯塚繁雄

    参考人飯塚繁雄君) まさに、二〇〇二年のブッシュ大統領の取った対応、あれを再現するというのが私の直感的な思いです。
  60. 西岡力

    参考人西岡力君) 九三年、四年の第一次核危機のとき、朝鮮総連の送金を止めるという厳しい動きを日本がしたときに事態が動きました。  今は厳格な法執行で同じことが再現されている。二〇〇二年のときはブッシュさんという外の要素でしたが、そうではなくて、今は中の要素で同じ圧力をつくりつつあるのではないかと思っております。それを延長すべきであると。
  61. 荒木和博

    参考人荒木和博君) 何よりも足りないものは覚悟だと思います。政府にその覚悟があれば道は開けるというふうに思っております。
  62. 矢倉克夫

    ○矢倉克夫君 ありがとうございました。
  63. 藤巻健史

    ○藤巻健史君 参考人皆様、どうもありがとうございました。  まず、平井参考人にお聞きしたいんですけれども、先ほど有田委員の質問で北朝鮮の体制崩壊は政治的にはないというのは大体分かりましたけれども、経済的に崩壊する可能性がないのかどうかをまずお聞きしたいと思います。  あと、先ほど、西岡参考人からも外資が枯渇しているというお話がありましたけれども、外資が入らなければあの国はきっと輸入もできないだろうし、経済的にかなり苦しい思いをするのではないかと思いますので、そういう面からの体制崩壊があるのかどうかということをまずお聞きしたいのと、それに絡めまして、あの国はたしかデノミをやろうとして失敗したと思うんですけれども、それをそのまま行っているのかどうか。もしデノミうまくいっていないとすると、今かなりのインフレになっているのではないかなと思うんですけれども、その面から体制崩壊の可能性はないかということをお聞きしたいなと思っております。
  64. 平井久志

    参考人平井久志君) お答えいたします。  恐らく、北朝鮮が私は変化している最大の要因は、二〇〇二年の七月の経済改革、これこそが北朝鮮を大きく変化させてきたと思います。先ほどおっしゃったデノミの改革は、この七・一経済改革措置以降の市場経済的な要素の導入に対するむしろ反動的な、旧来の社会主義路線に戻ろうとする路線の失敗だったわけですね。ただ、それは恐らく北朝鮮建国以来初めてだと思いますが、デノミを十一月三十日にたしかやったのに、翌年の一月に政権側が人民班の班長を集めて政策の失敗を謝罪し、その政策を撤回するということをやりました。ですから、それ以降の流れというのは、このデノミ政策と反対の、市場経済的な要素を部分的に、社会主義の基盤を維持しながらもそういう要素を、導入の拡大をしていくという措置がとられております。ただ、全面的な中国のような改革・開放路線というのは取られておりませんし、社会主義のシステムを守るということは堅持されております。  ただ、私は実は昨年十月に平壌へ行ったんですけれども、驚いたのは、北朝鮮のウォンの、北朝鮮通貨の価値というものが非常に低下しております。通常のタクシーに乗ったり売買というものの中で中国人民元があたかも国内通貨と同じような役割を果たし、それよりももっと住民たちが求めるのはドルやユーロであるというような状況が起こっています。    〔理事塚田一郎君退席、委員長着席〕  ただ、これは非常に難しいところなんですけど、金正恩政権が、むしろしかし政権が支えられていることの一つとして、この市場経済的な要素が入ったために、非常に低率ではありますけれども経済がプラス成長は続けているのは事実でありますし、私が昨年行って見た感じでは、地方も含めて生活水準がやや昔と比べると上がっているというのも事実であり、ですから、かつてのような、九〇年代の苦難の行軍時期のような餓死者が大量に発生するという状況ではむしろなく、経済的にはむしろ、ただ、お父さんの金正日氏が、金日成主席が亡くなったときにそういう非常に経済的な大混乱が生じたわけですけれども、現在の金正恩第一書記に幸運だったことは、自分が政権を取って以降は非常に低率ではあるけれどもプラス経済成長が続いているということで、むしろ経済崩壊というよりは彼の体制を支えている側面の方が強くなっている。  ただ、これが、今申しましたように、朝鮮ウォンの力等に、実際のそういう力でこの経済成長が続いているのではないという状況が続いておりますので、もし中国が経済的なサポートを完全に中断するような事態が起こった場合には、この経済をファクトとした体制不安というのは非常に大きくなるとは思いますけれども、中国が支援を続けている限りは、経済崩壊というよりは北朝鮮の経済体制のシステムの転換、より市場経済主義的な要素が今後ますます拡大していく可能性、これは大変に高いだろうと思います。それを、政治、軍事面での社会主義的な先軍政治のシステムとどういうふうに調和させていくのかというジレンマに現在の政権が襲われるだろうとは思います。
  65. 藤巻健史

    ○藤巻健史君 今お聞きしていますと、せざるを得なくてデノミをやったんだろうと思うんですけれども、それ失敗したと。それは、当然の帰着として通貨が低迷するということがあって、そのとおりに事態が進んでいるのかなと思うんですけれども、今お聞きすると、まさにそういう状況では中国に頼らざるを得ないということで、本当に中国が支援をやめたら経済崩壊するんではないかなというふうに思いますが、そういう理解でよろしいでしょうか、ひとえに中国の支援に懸かっていると。
  66. 平井久志

    参考人平井久志君) 中朝関係は非常に冷却化している側面はあると思いますけれども、ただ、全然経済的には冷えていないんですね。例えば、貿易総額は若干昨年マイナスになりましたけれども、これは恐らく地下資源の単価が、北朝鮮が中国に輸出しているものの主たるものは石炭と鉄鉱石ですから、これの単価の減少の影響と、原油の提供を計算に入れていないという側面がありますので、原油の価格をここに入れた場合には果たしてマイナスかどうかということも疑問でありますから、中国自身が北朝鮮というものの存在をサポート本当にしないと、全面対決するんだということになれば、私は間違いなく経済危機ということになると思いますけれども、当面、特に東北三省との、ある意味では東北四省的な経済圏の形成というものが進んでおりますから、中国が現在経済的に北朝鮮を支えているという状況が早急になくなるという事態もまた少し考えにくいんじゃないかという考えであります。
  67. 藤巻健史

    ○藤巻健史君 次に、ちょっと関連質問で平岩参考人にお聞きしたいんですけれども、今、平井参考人からもお聞きしましたけど、中国が助けているということで、中国にとって北朝鮮が政治的にか経済的にか崩壊した場合のダメージというのはかなり大きいんでしょうか、それとも大したことないということなんでしょうか。
  68. 平岩俊司

    参考人平岩俊司君) 御質問ありがとうございます。  中国にとっての北朝鮮意味というのは、恐らく二つぐらいに分けて考える必要があって、一つは、隣接地域ですから、ここが混乱するということは中国東北三省に否定的な影響があるから、これはできたら避けたいということがありますし、もう一つの意味は、朝鮮半島問題をめぐっての大国間関係なんだと思います。とりわけ、アメリカとの関係で北朝鮮をどう扱うのかというのが中国にとって重要ですので、米中関係が緊張すればするほど、中国にとって北朝鮮の存在意義といいますか、それが大きくなってくると、そういう構図なんだろうと思います。  実は、一昨年ぐらいから韓国が中国にかなり接近をして、中国としては、北朝鮮だけをアメリカとの間のバッファーとして考えるのではなくて、朝鮮半島全体をある種のバッファーにできないかというふうに考えたところがあるようなんですけれども、やはりそれは韓国も当然、必ずしもそういうふうに中国の言うことだけを聞けるわけではありませんので、やはりそういう意味では、最近、またリバランスというような形でアメリカのアジア政策が変更をしてくれば北朝鮮の重要度というものが上がってくるという、そういう構図があるんだろうと思います。  そういう意味で、平井参考人御指摘のように、中国にとっては、もちろん中朝関係決して良くないんですけれども、じゃ、本当に底が抜けてもう完全に見放すことができるのかというと、なかなかそういうのはちょっと今のところ想像しにくいというところだと思います。
  69. 藤巻健史

    ○藤巻健史君 ついでですけれども、北朝鮮が体制崩壊した場合、日本への影響というのはどういうふうにお考えになっていますか。
  70. 平岩俊司

    参考人平岩俊司君) 北朝鮮問題というと、通常二つぐらいの性格の違いがありまして、これはコインの表と裏なんですけれども、要するに、核だとかミサイルだとか、日本に対しては拉致問題のような外部に対して危害を加える攻撃的な部分と、それから、その反面、北朝鮮に対して強く出ると、ひょっとしたら体制が動揺して脱北者がたくさん出てくるとか、あるいは、その上、ひどい場合にはその体制が動揺するというような、余り強く出られないという、コインの表と裏のような状況があって、関係国はやはりそのどちらを優先するかによって対応が変わってきているわけですね。  ですから、アメリカ日本は、やはりその攻撃的な部分を何とかしなきゃいけない、つまり、北朝鮮の攻撃性というものに対処しなきゃいけないということで強く出なければいけないという意見が多いんですけれども、一方で中国なんかは、やはり脆弱性の部分、弱い部分の方がむしろ問題になるんだと、だから余り強く出られないという、そういうところで関係国に足並みの乱れが出てくるんだろうと思います。  そういう意味でいうと、日本は、やはりその体制が崩壊したとしても、中国あるいは韓国ほどの、直接的に難民が大量に出てきて、もちろんかなり難民に対する対応というのは必要とされるでしょうけれども、中国、韓国に比べれば限定的だろうと思います。むしろ、その後の国際貢献に対する役割といいますか、そちらの方の意味の方が大きいと思います。
  71. 藤巻健史

    ○藤巻健史君 次に、ちょっと西岡参考人にお聞きしたいんですけれども、国連総会北朝鮮人権問題が取り上げられ、金正恩国際刑事裁判所刑事訴追する動きが出たというふうにありますけれども、これ有罪になると、どの程度彼にとってはダメージなんですか。なぜ最優先で防止せよというふうに言っているんでしょうか。
  72. 西岡力

    参考人西岡力君) まず、訴追できる権限を持っているのは安保理事会ですので、総会決議は安保理事会に訴追の方向で検討せよと言っているんですね。しかし、総会ではロシアと中国が反対に回りましたので、安保理事会が当面訴追を決議する可能性は低い、拒否権を持っている二国が反対しましたので。  ということですと、形式的なことだと。なぜ金正恩がこれほどこだわるのか、私も当初そういう疑問を持ったんですが、複数の脱北者人たちに聞いたところ、やっぱり威信の問題だと。労働新聞などで、何々国から贈物が来たとか、何々国の共産党から何が来たとか手紙が来たとか毎日書いていて、北の一般の人たちは、うちの指導者は世界的に尊敬されていると、特にアジア、アフリカでは尊敬されていると思っているのに、多数決で、国連で、平場で負けたということというのは、かなり、それが伝わると、人民に、ショックであるというふうに金正恩氏は思っているだろうと。だから、そういう情報が入らないようにしていますが、今は口コミでかなりの情報が入りますので、その唯一指導体制に対するダメージとして最優先でやれと言ったと。  それまで何回も国連総会で決議があったんですが、訴追問題が出ていないときは無視していました。
  73. 藤巻健史

    ○藤巻健史君 西岡参考人にまたお聞きしたいんですが、金正恩が全員を帰すと言えばいいというふうにおっしゃっておりましたけれども、なぜ彼はそういう決断をしないのか。それに関連して、先ほど有田委員の方から、体制崩壊のときに証拠隠滅で被害者の方の生命がちょっと危ないんじゃないかというお話があったと思うんですけれども、別に体制崩壊じゃなくても、機密を知っていらっしゃる方を、さっきのロジックだと簡単に帰すのかなという懸念があるんですけど、それについてはどうお考えでいらっしゃいますか。
  74. 西岡力

    参考人西岡力君) まさに、二〇〇二年に誰を帰して誰を帰さないと決めたのかということの背景を考えなければいけないと思うんですが、生きている人を死んだと言ってまで隠したい秘密があった、端的に言うと、のではないかと思っています。  そのうち幾つか申し述べますと、第一に工作機関の内部の情報です。めぐみさんや八重子さんは工作員に一対一で教育をしていました。めぐみさんや八重子さんが教えた人間が日本に入ってきている可能性があります。だから、その人間を一度本国に引き揚げさせるということをしない限り、工作機関は絶対にその秘密を持っている人間を帰すことをイエスを言いません。内部でそういう検討がされているという情報もありましたが、まずその点があります。  それからもう一つ、金賢姫さんの本によると、田口八重子さんは金正日の秘密パーティーに出ていたと本人が金賢姫さんに言ったということであります。金正日一家のプライバシーを知っているということは、やはり北朝鮮にとってどうしても隠さなくちゃいけない秘密であります。あと、私ども救う会が入手した韓国情報機関が持っている情報によると、横田めぐみさんは金正恩氏か金正哲氏の日本語の家庭教師を一年ぐらいやっていたと、これは完全に裏が取れているわけではありませんが、そういう情報もあります。  反日の国で、最高指導者が日本が好きで日本語を勉強していたということ、まあ母親が在日だったということも含めて秘密にしています。そういう人たちを帰す決断をするには、普通の話合いではできないと思います。これをしないことのマイナスの方が、することからくるマイナスよりも大きいと判断したとき、初めて物事が動くのではないかと。  そういう点では、安倍総理も去年の三月二十八日に、今は小泉訪朝のときよりも困難だと、一度死亡だと言った人たちを、その説明を覆させるというのは大変困難なことだと、普通の話合いでは難しい、強い圧力が必要だと言っていました。今それを掛けようとしていると、それしかないのではないかと思っております。
  75. 藤巻健史

    ○藤巻健史君 もし、そういう先生のおっしゃったようなことであるならば、そういう障害を一つ一つ、方法、私は分かりませんけれども、潰していくのが一番有効な帰っていただける方法じゃないかなと思うんです。例えば、工作員が日本に入り込んでいるというんだったらそれをまず帰しちゃうとか、ちょっと分かりませんけど、全然分からないんですけれども、そういうことをまず最初にやっていくのがいい方法かなというふうにもちょっと思ったんですけど、いかがでしょうか。
  76. 西岡力

    参考人西岡力君) まさに、彼らが帰そうとするならばそういうことをすると思います。金正日が生きていた末期にそういう検討をしているという情報がありました。ただ、裏が取れていません。でも、それは向こうがすると思います、自分たちにとってそれの方がマイナスが小さいと判断したときに限ってですが。そして、日本から何か物が取れるということも含めてですけど。それは、ですから、逆に言うと、そういう動きをウオッチしていなくちゃならない。しかし、成り済ましている人というのは分からないわけですね。先ほど荒木さんも言っていましたけれども、分からない人が何人かいるだろうということ、これは全く公安の世界の話です。  それからもう一つ、プライバシーに関することについては、例えば、あるいは工作機関の内部のことに関してでもそうですけれども、料理人の人がプライバシーを書いているわけですね。写真まで公開しているんですけれども、彼らはそれをでっち上げだと言っているわけです。金賢姫も工作機関の内部をしゃべったけど、でっち上げだと言っているわけです。絶対に駄目だということではないわけです。  ということなどの関係の中で、まずは彼らがこれをしないことが不利益が大きいと判断しない限り事は動かない、二〇〇二年にも動かなかったことを動かすということですから、というふうに思っています。
  77. 藤巻健史

    ○藤巻健史君 政府として、それを何か一生懸命、裏でもいいですから、助けてあげる、何かうまく北朝鮮がそういう地盤整備ができるように助けてあげるということは考えられませんですかね。
  78. 西岡力

    参考人西岡力君) 金正恩氏に、帰すことのプラスマイナスを考えなさい、こういうことが起きますよと。日本は全員帰ってくるまでは世論は動きませんよ、人道支援もしませんし、朝鮮総連に対して締め付けが続きますよ、拉致以外のことで動きませんよということを正しく彼に伝える。そして、プラスマイナスを彼が正しく判断できるような状況をつくらなくちゃいけないのに、そういう点で、ストックホルム合意でいろんなことを書いてしまったことは、裏できちんと、我々には外務省は、拉致優先だと最初から言っていますと紙とは別に言っていましたが、本当に伝わっていたのだろうかと。やっと今、今年になってから、総理が固い姿勢を見せたので、話が違うじゃないかといって伝わり始めた。まさに今伝わっている。こういう形でしかコミュニケーションはできないと思います。だから、絶対ぶれてはいけないと。
  79. 中曽根弘文

    委員長中曽根弘文君) 時間になりました。
  80. 藤巻健史

    ○藤巻健史君 ありがとうございました。
  81. 井上哲士

    井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。  今日は、参考人の皆さん、貴重な御意見ありがとうございます。  まず、北朝鮮の体制に関わって平井参考人にお聞きいたします。  著書の中でも、今の状況が、先軍政治を標榜しつつも、先党政治という状況が強くなっているんじゃないかというお話が先ほどもありました。  三月に北朝鮮の生の情報にお詳しい外国の外交筋の方からお話を聞く機会があったんですが、その方は、軍が党の上に立つ動きがあるとおっしゃって、その例として、党の組織指導部の副部長が、これまで非軍人が務めていたけれども、交代して軍人に取って代わったということをおっしゃいました。このポストは、党の中で軍の人事に関わる決定をつかさどるわけで、そのポストが軍の出身者が就いたということから、軍が党の上に立ったんではないかと、こういうことを言われたんですが、この点についての評価はいかがお考えでしょうか。
  82. 平井久志

    参考人平井久志君) その方がおっしゃっている組織指導部の副部長が誰かということはよく分かりませんが、可能性として、実は空軍司令官をしていた人物が党の方に回されて副部長になっております。たしか、記憶では、その後もっと出世して第一副部長になっている方かなと思います。この人物は、先ほど私が申しました最近白頭山に行ったときの五人組の中にも入っていて、今の金正恩第一書記が非常に空軍重視の路線を取っておりますから、新しい側近であることは間違いありません。彼のことを言っているのであれば、そうじゃないかと私は推測するわけですけれども。  軍に対して党の人間が、かつては例えば軍をコントロールする軍総政治局長というのは軍人が多くそのポストを占めていたのに、この政権になって、崔龍海さんも党人ですし、黄炳瑞さんも党人で、党が軍をコントロールするという図式に変わっているんですね。その中で、軍人を党の側で使うという現象が一部出ています。それは、一つはこの空軍司令官を党の副部長にしたケースと、平壌市の党責任書記という言わば平壌市長のような役割を果たす人物を軍から、軍の人物が、張成沢粛清以降、彼の系列であったということで平壌市の党責任書記が解任されて、軍人がなっています。この二人のケースが軍人が党に活用されたケースなんですね。  ただ、ですから、そういうふうに、やや軍の不満を解消するということで軍の幹部を党の側で起用するというケースが、私が知る限りでは、幹部の中ではこの二つのポジションで現象が現れているんですけれども、それをしてみても、まだ党の第一副部長レベル、党の政治局とかそういう高いレベルには入っていないわけですね。  この空軍司令官のポストが党の組織指導部であるかどうかもまだちょっと確認できておりません。そうじゃないかという見方もありますし、むしろ韓国なんかでは、組織指導部ではなくて党の軍事部のポジションにいるんじゃないのかなという見方の方がむしろ強いですね。ですから、そうであるならば、党の軍事部で軍人を使うということは、ある意味では軍事についてよく知っている人間を党の方でも起用するという意味で一貫性があるということで、ですから、そういう現象が現れていることは事実ですけれども、それはなお全体から見れば部分的な現象であるだろうと思います。
  83. 井上哲士

    井上哲士君 ありがとうございました。  北朝鮮による拉致問題での日本政府の対応についてそれぞれからお聞きしたいんですが、これまで政府は、国会審議を通じて、北朝鮮特別調査委員会委員長を務める徐大河氏が北朝鮮の国防委員会安全担当参事兼国家安全保衛部の副部長であることをもって、国防委員会という北朝鮮の最高指導部に徐大河委員長を通じて拉致問題に向けた日本の強い決意を伝えることができたと、こういうことを説明をしてきたわけですが、こういうふうに政府が評価をしてきたこの北朝鮮特別調査委員会の体制についてどのように評価をするか、平井参考人、それから西岡参考人にお聞きしたいと思います。
  84. 平井久志

    参考人平井久志君) それなりの意味合いはあろうかと思います。ありますが、この特別調査委員会というものが四つの問題を全体的に統括する部門ですし、これまで拉致は解決済みだったということを言っていた北朝鮮が再調査をするということを約束したという意味では、私は意味のあることだと思いますけれども、そこの委員長が国防委員会にもポストを持っている人物であるということは、意味のないことではないけれども、それほど過大評価することでもまたないのじゃないのかなと私は個人的に思っております。
  85. 西岡力

    参考人西岡力君) 私は、特別調査委員会の構成を見たときに、これでは全く駄目だと思いました。つまり、拉致をしたのは工作機関です。工作機関は国家機関ではなくて党にあります。国家安全保衛部は、党の工作機関に権限は持っていません。  そもそも、拉致被害者については、菅官房長官がおっしゃっているように、もうリストがあるので特別調査委員会調査する必要はないものでありますから、それなのに、あたかも特別調査委員会がいい委員会だという印象を一時的につくられたことは、その調査委員会が出してくるものを無条件で信じなさいという方向の世論誘導がされているんじゃないかと思って、私は緊張をしました。  つまり、本質的な問題は、金正恩氏が全員帰す決断をしているかどうかだけです。
  86. 井上哲士

    井上哲士君 ありがとうございました。  それに関連してなんですけど、政府北朝鮮側から、過去の調査結果を参考にはするが、それにこだわることなく調査を進めていくと、こういう説明を受けたことをもって、北朝鮮は従来の主張にこだわることなくゼロベースで調査を進めるものと考えていると、これ国会でも答弁をしてきました。  これについて、去年の十一月の当委員会で我が党議員が、本当にゼロベースで調査を進めるという意味なのか否か北朝鮮側にきちんと確認したのかと聞きますと、明確な答弁ではなかったわけですが、こういう政府北朝鮮がゼロベースで調査を進めるものと考えているという判断、評価についてどのようにお考えか、飯塚参考人西岡参考人、お願いします。
  87. 飯塚繁雄

    参考人飯塚繁雄君) その辺の言葉上の解釈はいろいろできると思うんですが、ゼロベースというのは、要するに、今まで言っていた亡くなったというあれはうそだと、全て白紙から調査しますというのがゼロベースというのか、あるいは北朝鮮が言っていることをベースに更にその先をやる、これがゼロベースなのか、ちょっと私たちには分かりませんが、特に日本が評価したのは、改めて調査をし直します、最初からし直しますというところにわながあったような気がして、日本はそれに対して前向きな姿勢を評価するということで若干一部制裁も解除してしまったんですけれども、あれは、よく判断、分析した結果が余り見えなくて、単に交渉が始まったと、良かったというイメージを持って制裁を解いたというふうに私たちは考えています。  したがって、当然ながら、向こうが死んでいると言うのは全く捏造でうそだというのはもう大方日本では全て通っているわけですが、それを向こうがはっきりと言っていない。今この現在でも、向こうは、前報告した亡くなっているというのはそのまま継続しているわけですよね。  だから、そういうことを考えると、特に私たちは、最初から調査をし直せというよりも、皆さん、先生方が言っているように、もう分かっているんだから即帰せと、そこの近道をきちっと行かないと、やたら遠回りして調査委員会だけの独り歩き、報告の独り歩きというか、それの論議に尽きてしまうのを恐れているわけです。  以上です。
  88. 西岡力

    参考人西岡力君) まず、交渉事ですから、全てを明らかにしていないのは当然のことだと思います。それを前提にしてお答えいたしますけれども、ゼロベースにして調査すると言ったということは、評価できません。つまり、金正恩氏が全員を帰すという決断をしているのかどうか、それ以外、評価の対象はありません。  ただ、父親が言ったことが間違えていたということを言うための手段、方法として調査委員会を使うということについて、過去うそをついたことを糾弾するということはしないと、これは民主党政権時代、松原大臣が最初に言い始めたことですが、それを今の政権も引き継いでいることは私は賛成です。
  89. 井上哲士

    井上哲士君 さらに、政府の説明によりますと、北朝鮮側からは、この特別調査委員会調査について、二〇〇二年や二〇〇四年の調査は特殊機関から出された情報を提出したという意味で一面性があった、その調査が非常に短い時間で行われた、こういうふうに北朝鮮側から説明があったと。しかし、今回は、北朝鮮側から、証人や物証を重視した客観的、科学的な調査を行い、過去の調査結果にこだわることなく新しい角度から調査を深めていくと、こういう説明があったとして政府は評価をしてきたわけですが、こういう北朝鮮側からの説明についてどのようにお考えか、平井参考人、それから荒木参考人、お願いできますか。
  90. 平井久志

    参考人平井久志君) その過去の調査が雑なものであったということを認めたことは意味のあることだと思いますけれども、私は、出てくる結果がどういうものかよく分かりませんが、何よりも家族の方たちが納得のできる、そういう結果が出されなければいけないんだろうと思うんですね。  そういう意味で、この北朝鮮側の言っていることが意味のあることなのか、ないことなのかということは、少し出されたものを見ないと私にはちょっと判断しかねる部分があると思います。
  91. 荒木和博

    参考人荒木和博君) 先ほど西岡参考人も言われましたけれども、この調査委員会というのは元々、ともかく全て分かった、分かっているという状態で、それで、しかし北朝鮮側にこれまでのことについての責任は問わない、ともかく今ちゃんと出せばその責任は問わないという口実を与えるだけのものであるというふうに思います。ですから、そういう意味では客観的とか物証とかということ自体が意味がないことで、この構成を含めまして、こういうことに余りこだわると逆に本質が見えなくなるのではないかというふうに思っております。
  92. 井上哲士

    井上哲士君 ありがとうございます。  ただ、いずれにせよ情報を持っているのは日本政府でありまして、当事者である政府が今後の交渉の進め方を判断するということだと思うんですね。その際、大事なのは、北朝鮮が強い権限を持つ特別調査委員会をつくると言って調査を約束した以上、それを断固として守らせるという外交努力政府に今強く求められていると思います。  国際的な協力で北朝鮮を包囲して圧力を掛けるという点でいいますと、六か国協議のメンバーである中国や韓国などともまともな外交関係ができていないという今の状況を変える必要が私はこの問題の解決のためにもあると考えるんですが、この日朝平壌宣言に基づいて諸問題を包括的に解決するためにも、日本が近隣諸国とのまともな関係をつくることが問われていると思いますが、この点、平岩参考人から平井参考人、お願いできますでしょうか。
  93. 平岩俊司

    参考人平岩俊司君) 御指摘のとおり、拉致問題を始め日本政府北朝鮮政策というのは、拉致、核、ミサイル、これを包括的に解決を目指すということで、全体的な北朝鮮問題の解決の中で恐らく拉致問題の進展というのもあり得るんだろうと思います。ですから、もちろんその一方で二国間による働きかけは当然必要ですし、それから国際的な働きかけというのも必要ですし、また一方で核問題、ミサイル問題についての一定の役割を日本がしなければいけないというところがあることも間違いないんだろうと思います。  そういう働きかけをする必要があるわけでありますが、現状ではなかなか、先ほどもお話ししましたように、中国、韓国、日本アメリカ、それぞれ目指すところが違いますので、どうしてもなかなか足並みがそろわないというところはあるんですけれども、これは今後、うまく足並みをそろえて効果的に対話圧力というものを利用しながら北朝鮮に姿勢変化を求めていく必要があるんだろうと思いますし、現在、恐らく日本政府は中国との関係あるいは韓国との関係も含めて再調整をしている過程でしょうから、そうした中で、この北朝鮮問題というのは、ある意味では協力でき得る範囲だろうと私は思っております。
  94. 平井久志

    参考人平井久志君) 私も、日韓関係や日中関係が非常に冷却化しておりますけれども、それが拉致問題に影響を与えてはいけないと思っておりますし、逆に、歴史認識等の問題で韓国や中国との関係が冷えていますけれども、こういう極めて人道的な、いかなる国においても否定されるべきような犯罪に対するサポートという意味では積極的にむしろ韓国や中国との協力関係というのは模索されるべきだと思っております。
  95. 井上哲士

    井上哲士君 同じ質問を飯塚参考人にもお願いしたいと思います。
  96. 飯塚繁雄

    参考人飯塚繁雄君) 拉致問題を早く解決するに当たっては、今この現状で、もはや韓国あるいは中国の御機嫌を取ることはないと私は思っています。直接北朝鮮に向かって強い対応、態度を示し、余り回りくどいといいますか、そういったことを今するのが本当にいいのかどうか。将来的には近隣各国、共存共栄で仲よくしていかなきゃいけないのは分かりますけれども、事拉致問題に関しては中国も韓国も余り協力的ではないというふうに私は見ています。  以上です。
  97. 井上哲士

    井上哲士君 ありがとうございました。終わります。
  98. 井上義行

    井上義行君 貴重な時間を割いていただきまして、参考人皆様、本当にありがとうございます。  今日は、私自身、ミスターXからミスターZに移った、私も北朝鮮に渡って今でいう秘密交渉をした人間ですから、その経験からちょっと物事をひもといてみたいなというふうに思っております。  北朝鮮というのは非常にしたたかですし、私はいつも例えるんですが、霞が関が国になったような国だというふうによく言っていまして、本当に石橋をたたいて渡るんですが、霞が関もよくやる、文章の中に必ず点とか及びで変えてしまうんですね、一瞬のうちに。そういう技術を持っていて、なおかつ、そのためには周りまで工作活動をするわけですね。つまり、例えば私の癖はどこにあるか、困ったときにはまばたきをするのかしないのか、鉛筆はどっちで持つのか、一日何回お酒を飲むのか、飲まないのかとか、全てを兼ね備えて交渉に臨んできますね。だけど、日本というのは非常にその辺弱い。相手がどういう性格かどうかというのを見抜くことをせずに臨んでしまう。  いろんなその落とし穴があるという中で、例えば私が訪朝したときには氷点下二十度でした。部屋に入るとすごい寒い。ヒーターは付いているんですよ。だけれども、スーパーマーケットに行って上がってくるまでたった五分、その間にオイルヒーターと布団が乗っていました。私は、ただ単に一言、部屋で寒いなと言っただけなんですね。だけど、交渉前に彼らは、もう寒くありませんねと言うわけですね、誰にも言っていないのに。こういうところから交渉を始めるので、相当彼らもしたたかな交渉だというふうに思っております。  そして、このストックホルムの中に、私、あれっと思ったことがあるんですね。私は拉致被害者の子供たち交渉をしました。そのときでさえ百時間以上を超えたんですね。平壌宣言の一言一句まで内容を詰める、そして核の話にも言及をする。なのに、このストックホルムの合意には核の話が触れていない、日朝平壌宣言というのは入っていますけれども。  そこで、平井先生、平岩先生にちょっとお伺いしたいんですが、なぜこの核、ミサイルというものが入っていなかったかを、今の見方でいいですけれども、個人の感想でも結構なのでちょっと教えてほしいと思いますが。平井先生から。
  99. 平井久志

    参考人平井久志君) 私はその点よく分かりませんけれども、北朝鮮側がこのストックホルムに合意した最大の要因は、平壌宣言にのっとり、過去の清算と国交正常化という文言が入ったからこの合意にサインしたと思うんですけれども、ある意味では、日朝国交正常化というのは恐らく拉致問題を解決するだけでは現在の状況の中では非常に難しいわけですね。当然、核・ミサイル問題の解決というものがなければ実現しにくいことであるということは北朝鮮も分かっているんじゃないかなと思うんですよね。  ですから、その部分に強くメンションをした場合に、その文言をどうするかということは、彼らが獲得したと思っている成果がどういうふうに実現するかということに対する支障になる可能性もあったという側面が一つにはあるんじゃないのかなという私の考えです。
  100. 平岩俊司

    参考人平岩俊司君) ストックホルム合意は、やはり日朝平壌宣言が大前提になっているわけですから、日朝平壌宣言というのは日朝二国間の問題と国際社会の問題を解決して国交正常化というゴールが設定されるわけで、その最終的なゴールまで行くためには当然核問題というのは解決しなければいけないということが大前提として含まれているという、恐らくそういう判断があったんだろうと思いますし、やはりこのストックホルム合意、なかなか結果が出ていないということで否定的な意見も多いんですけれども、やはりそれ以前の状況を考えますと、北朝鮮拉致問題についてはもう既に解決済みであるという立場をずっと維持してきたわけで、そうした態度を変えさせるために四つ横並びにせざるを得なかったというところもあるんだろうと思います。  ですから、ストックホルム合意そのものでその評価をするというのはもう少し待った方がいいのではないかというふうに私は思っておりまして、そのために、やはりそのストックホルム合意を前提にして、その後の交渉、そしてどういう結果が出てくるのかも含めてその評価をしないと、ストックホルム合意だけで良かった悪かったと言うことは少し早計かなというふうな印象を持っております。
  101. 井上義行

    井上義行君 私はなぜそういうことを言うかというと、例えば、この一番最初に出てくる、双方は日朝平壌宣言に沿って不幸な過去を清算しとありますよね。普通ここの間に、沿って拉致、ミサイル、核を解決し、不幸な、あるいは共にですね、並行かあるいは先にやるかということを必ず日本は伝えるというふうに思いますね。また、拉致被害者の子供たちを帰すときには、具体的に帰し方を議論したんですね。それも文書でやりました。例えば拉致被害者は、彼らは蓮池さん、地村さんを北朝鮮に連れてこいという話をしました。いや、それは難しい、じゃ、どこまでだという話の具体的なものを文書で議論をした記憶が私は残っています。  この中に、再調査だけで、具体的な帰し方が出ていないんですね。だから私は、そこに彼らの、北朝鮮側が今回はこのストックホルムの合意によって、私は帰す気がなかったんじゃないか、元々、というふうに見ているんですね。これはやはり、多分北朝鮮は、私は分かりませんが、安倍総理がこれで動くという話が北朝鮮側から上に上がったんだと思うんですね。安倍総理拉致優先ということを外務省側に言い続けた、ところが外務省側から北朝鮮にそれがきちんと伝わっていなかったんじゃないかというふうに私は疑いを持っていまして、そこに双方の思惑がずれているのではないかというふうに思っています。  だから、私は、先ほどの荒木先生に近いんですが、多分このストックホルムが仮に駄目になったとしても、私のときと同じように、ミスターXからミスターZに替わるだけの話で、担当者が替わるだけだと私は思っているんですよ。だから私は、別に外務省は日本方針をそのまま伝えればいいと思うんですね。変に、いや、私はそう思うけれどもみたいな言い方ではなくて、日本としては、この拉致とか特定失踪者の問題についてはこれは妥協できないよということをはっきり言うべきなんですね。じゃ、向こうは、私も何回もありました、会談が亀裂。だけど、必ず元に戻るんですよ。それはやっぱり、トップが決裂しろと言わない限りは元に戻るしかないんです、彼らは。だから、そこは勇気を持ってやっぱり外務省は伝えるべきだというふうに思っておりますが。  そこで、今回のこのストックホルムの見方ですね、先ほど言った、拉致、ミサイルもない。私は、日本では拉致優先だという話が外務省から伝わり、あるいは北朝鮮の外務省の人間は、上層部には、安倍政権はこれでどうやらいけそうですという話で擦れ違ったと私は見ていまして、やはりこうした見方というのは非常に今後に影響があるというふうに思っていますので、その辺の考え方というか見方、荒木先生と西岡先生にお伺いしたいと思います。
  102. 荒木和博

    参考人荒木和博君) 先ほど平井参考人が言われましたけれども、全体として見なければいけないというのは、これは裏返して言えば、ここに書かれている言葉がどうであろうと、話が実際に具体的に進んでいれば、例えば一言これから仲よくしましょうねという言葉だけであったとしても、事態は進むのではないか。逆に、どのようなことが書かれてあっても、実際の現場で話の詰めができていなければ、恐らくは簡単に北朝鮮側はひっくり返してくる、都合が悪くなれば、ではないだろうかと思います。  その点で、外務省の交渉自体が、我々が伊原局長からの説明を何回も聞いたときも、要は詰めていない、何も詰まっていない、それを外務省が勝手に途中で解釈をして、北朝鮮はこう思っていると認識していますという話で行ったわけで、恐らくこれは逆に北朝鮮側にもそのような程度のことしか伝えていないんだろうと。そこでちゃんと両方の意思がぶつかっていないことがこういう状況になったと。  しかも、なおかつ、それに対して外務省が、そこがうまくいっていないということを隠すために、またその先も同様の言葉遊びのようなことをやり続けているということで、責任ある形の交渉が行われていないということが基本的な問題ではないかというふうに思います。
  103. 西岡力

    参考人西岡力君) まず、井上先生がおっしゃった、ストックホルム合意の時点で北朝鮮は帰すつもりはなかったんじゃないかということについて、私も実は賛成です。分析だけじゃなくて情報でもそういうことがあって、大変緊張していました。先ほど言ったように、彼らが帰すというのは、彼らにとってのリスクがあるわけですね。オープンにしたくない秘密が暴露されてしまうかもしれない。それなのに、過去の経緯はあるけれども、再調査すると言った。特に、客観的、科学的という言い方をするということは、もう一度死亡の証拠を出そうとしているんじゃないかと。本人が出てくれば客観的も科学的も要らないんですね、めぐみさんだと分かれば終わりですから。新たに死亡の証拠を出そうとしているのではないかと。一番危険だったのは、生きている人を殺して遺骨にするかもしれないという情報さえあったということです。  しかし、それに対して古屋大臣が我々に説明したのは、ここに書いてあることではなくて、安倍政権の三月からの日朝協議に対する三大方針があると。第一は拉致優先、第二は被害者の安全確保、三つ目に拉致の一括解決と。これは、何人かの人が最初に帰ってきても駄目だと、全員一括で帰しなさいということを局長級協議が始まった後いつも伊原さんに言うようにさせているというふうに聞きました。そして、DNA鑑定の技術の問題などがあって、北朝鮮はどうも殺すということは今放棄しているようです。だから、そこは抑止力が効いた。  しかし、二つ目の問題ですが、コミュニケーションギャップがどうしてもあったとしか思えない。今年になってから、総理が、拉致優先、最初から拉致優先と言っていたんだから拉致が入っていないペーパーはもらわないと言っているのに、向こうは話が違うじゃないかと言っているということでにらみ合いになっていると、それでできなくなっていると言われたら、未来を描くのは困難だと言った。しかし、これは逆に、こういうことでこちらの意思を今伝え続けていると。本来ならこういうことが五月に起きていればよかったんですが、しかし、今明確に総理が繰り返し言っていることで伝わったと。特に総理は、昨日、被害者帰国なくして拉致問題の解決なしと言いました。死亡の証拠じゃ駄目だ、帰国だと。なぜなら生存している証拠を政府が持っているからだという意味に私は取りました。  今、激しい、やっと本来の交渉、コミュニケーションが始まったというふうに思っています。
  104. 井上義行

    井上義行君 多分、交渉の最中に向こうは不利になると絶対に首を縦にも振らないし横にも振りません。何もしません。だから、私も二十分、三十分ずうっとにらみ合いというのがありました。だけど、そこのときに、もしかしたら外務省は、こういう理解でいいですねと言って、多分何も、首を縦に振らなかった、横にも振らなかったことを思って、解釈しちゃったんじゃないかと私は思うんですよ。  私は、首を縦に振らない限りはずうっとにらみ合いで、向こうが折れるまでずっとしゃべりませんでした。だから、やっぱりそういうきちんとしたところがなくて、曖昧というところがあるんじゃないかと。特に、私も行ったときには、平壌宣言の解釈をめぐって非常に激しい闘いをした記憶があります。だから、そこが詰め切っていなくて合意をしてしまったために、ずれている部分があるんではないかというふうに思っています。  そこで、もう一つは、金正恩第一書記が本当に権力を持っているのかどうか、これはすごく大事じゃないかなというふうに私は思っていまして、多分、政治の世界も外遊をすると政局になるというふうに言われておりまして、例えば、金正日委員長は中国に出かけたこともあります。これは、独裁者がやっぱりしっかりとした権力を持っていれば外国に行くことはできますよね。だけど、まだ金正恩第一書記は行っていない。  だから、もしかしたら、例えば訪ロに長く、例えば二週間とか三週間行って帰ってきたら絶大なる力を持っているんでしょうけれども、やはりそこは行き切れないという部分もあるんじゃないのかなと私は見ていまして、そのことで権力を持っているか持っていないかということが分かるんじゃないかというふうに思っております。  私も幾つかの見方をいろいろ聞いていると、やっぱり二つの権力闘争が依然として、金正恩第一書記を担ぎながらも、水面下で、握手をしながら足で蹴っ飛ばし合いをしているというような状況が続いているんではないかというふうに見ておりまして、この見方は違うのか、それとも、絶大なる、金正恩第一書記が持っているかどうかで随分交渉相手を探すのも違ってくるんじゃないかというふうに思っておりますので、この見方を簡単に、平井先生から平岩先生、荒木先生、西岡先生と、簡単にちょっとお答え願えますでしょうか。
  105. 平井久志

    参考人平井久志君) 私は、現状は金正恩第一書記が権力を掌握していると思いますが、彼の中での対日交渉のウエートというのがそんなに高いものになっているだろうかという点については疑問を抱いております。
  106. 平岩俊司

    参考人平岩俊司君) 金正恩第一書記が実質的にどれぐらい権力を持っているのかというのは非常に重要なんですけれども、そこの部分はまだ少しその評価するだけの情報がないというのが現状で、ただし、金正恩第一書記が存在しなければあの体制の枠組みというのが維持できないということは間違いないんだろうと思います。
  107. 荒木和博

    参考人荒木和博君) 基本的に、北朝鮮の権力というのは金日成のときから権力闘争のもうずうっと継続であります。ですから、必ず権力闘争は存在をするというふうに考えて、その権力闘争の結果として向こうから何かが出てきている、その上に金正恩が乗っかっている。乗っかって、しかし金正恩を否定することはできない。否定することはできないけれども、しかし、それが完全に崇拝しているとか一枚岩ということはあり得ないと思います。
  108. 西岡力

    参考人西岡力君) 金正日が死んだとき、ある脱北者の知識人がこう言っていました。金正日がつくった個人独裁体制は強固だ、簡単には崩れない、しかし全てのことを決裁するのが二十代の若者である、戦術的なミスをたくさんするだろうということを言っていました。それが私は今の状態、意外と正しいんじゃないかと思います。  そしてもう一つ、組織指導部が金正日時代には黒子として幹部人事権、それから政策検閲権、党生活指導権を持っていたんですが、黄炳瑞が表に出てきていると。これはちょっと異常なことで、今、組織指導部の中が一体どうなっているのか、表に出ている人間と出ていない人間がいる、組織指導部の中がぎくしゃくしているんじゃないかという情報もあって、まさに組織指導部をウオッチしなくてはいけないんではないかなというふうに思っています。
  109. 井上義行

    井上義行君 ミスターZは、ちなみに、金日成の若いときの肖像画を見るとそっくりでした。かなりふくよかで太ってはいましたけれども、顔を見ると、後ろに肖像画があったんですが、それを見たらそっくりだったということを覚えていますが。  いずれにしても、やはりしっかりと交渉していくためには、誰がその中枢で権力を持っているかということが必要だというふうに思っておりますので、我々もオールジャパンですから、必要な情報があれば政府に提供して、しっかりと拉致被害者を帰すために努力をしていきたいというふうに思いますので、最後に、飯塚参考人、期待を失わずに、是非、安倍政権のときに拉致被害者が帰るように我々も努力をしていきたいというふうにお誓いを申し上げて、質問を終わりたいと思います。  ありがとうございました。
  110. 和田政宗

    和田政宗君 次世代の党の和田政宗です。  本日は、参考人方々、本当にお忙しい中お集まりいただきまして、ありがとうございます。また、長丁場になりまして、本当にありがとうございます。  私は、昨日も仙台市の中心部におきまして、拉致被害者方々を救うための署名活動を救う会宮城の方々などと行ったわけですけれども、飯塚代表におかれましても仙台の七夕祭りの際の署名などに何度も何度もお越しいただいていて、そのたびに今年こそはというふうに思うんですけれども、なかなかそれが進んでいかない。これはもう政治家、さらにはもう政府がもっと断固たる姿勢でやっていかなくてはならないというふうに思っております。  昨日も、特定失踪者問題のポスターも掲げて署名活動をやりましたところ、二時間で三百人ほどの方々署名をいただいたという形で、もうこれは国民の悲願であるというふうに思うんですね。  私は、今日の参考人質疑で、もっとしっかり政府と政治家が断固たる行動を取っていかなくてはならないという観点からお聞きしたいというふうに思います。  まず、飯塚参考人にお聞きをしたいんですけれども、これ、外務省の交渉のやり方についてお聞きしたいというふうに思います。  今日の質疑の中でも出ていますけれども、これ国交正常化と並行してやるという、とんでもないことだというふうに私は思っています。拉致問題の解決というのはもちろん最優先ということでやらなくてはならないのに、ストックホルム合意も、これも帰還に向けた具体的な内容は盛り込まれていない。しかも、期限について明示がないというようなことも含めて、これはもう交渉がかなり怠慢だというふうに私は厳しい見方をしております。  この外務省の交渉のやり方について、改めて率直な感想をお願いいたします。
  111. 飯塚繁雄

    参考人飯塚繁雄君) 私的には、そもそもこの交渉を外務省主導に任せるというのはまず間違いだと思うんですね。単なる外交交渉ではない、国と国の重大課題について論議し、結論を出していかなきゃならない問題。外務省も、私もよく分かりませんけれども、結局、相手国と何とか仲よくしていこう、波風を立てないようにしていこうというようなどうしても捉え方をしてしまう。この重大な拉致問題を単に外務省に丸投げして何とかせよというのは、もうとても無理な話だと思うんですね。  交渉の仕方も、やはりそういった意思が伝わっていない。先ほどどなたか先生がおっしゃったように、日本としての拉致問題解決に対する意思が伝わっていない気がするんですね。ですから、簡単に、向こうは協議に参加する態度は意欲的だったという評価をしているわけです。  そういうことではなくて、正常化というのは、もちろんとんでもないわけですよ。ほかの国との関係も含めてそうですけれども、お互いの国が問題を抱えたとしても、それをお互いの切磋琢磨の努力で平和的に形としてなってきたというところで正常化が成り立つわけで、あの北朝鮮ととてもじゃないけれども相当先まで正常化なんというのはあり得ない。その以前の問題がかなり強く出されるはずで、やはり、先ほど言った国と国の強力な対応が結果を出すまでこういった正常化というのは、今まで誤解されてきた傾向がありますね、とにかく仲よくすればいいというだけで、国交というのは何が正常なのかという論議もありましたけれども、私たちは絶対に、被害者家族が帰ってこない限りこんな正常化なんかできるはずがないと、こういう考えです。
  112. 和田政宗

    和田政宗君 私も、なぜ外務省がこういった交渉をするのかというふうに様々な方と話して分析しますと、これ憲法に書かれているんですね、前文に「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、」ということで。当然、憲法遵守義務がありますので、じゃ、これ国交正常化を並行してやるべきだというようなことになってしまうのかもしれないですけれども、私はそうした面からもこれもう憲法を改正しなくてはならないという論者でありますけれども。  外務省の事務レベルに任せていましたら、これ何も進まないというふうに思うんですね。もうその繰り返しだったというふうに思います。相手の交渉担当者も上の人間が出てこないということですね。私は、これ政治家が交渉に当たるべきだというふうに思っておりまして、拉致問題担当大臣も、これは兼務ではなくて私は専任にすべきだというふうに思っております。  そこで、飯塚さん、西岡さん、さらには荒木さんにお聞きしたいというふうに思うんですけれども、これ、政府における交渉を、例えば副大臣ですとか政務官、さらには専門のポストを置いて政治家が前面に立って行動するですとか、あと、拉致担当大臣を専任にすることなどについては、御意見としてはどのように思っていらっしゃいますでしょうか。
  113. 飯塚繁雄

    参考人飯塚繁雄君) まず、この問題を解決するための組織として拉致問題対策本部がありますよね。それと、総理を筆頭として、各閣僚はこの問題についての具体的な討議をし、結果を出すように努力すべきというのがありますけれども、考えてみれば、みんな、今おっしゃったように、兼任なんですよね。先ほどの外務省も含めて、交渉する組織としてはもっともっと強力な専門組織をつくるべきだというのが私の意見なんです。あらゆる分野から精鋭の人を集めて、二十四時間、この問題を検討し、計画し、結論を出すための組織、これがもう絶対必要だと思うんです。でないと、片手間に、ついでにという言葉がどうしても付いてくるんですね。  ですから、そういう意味では、政治家含めて、一般のボランティア、あるいはいろいろな組織、任意団体、学者、たくさんいます。だから、そういう人たちを広く集めて、この問題に対するある権限を与えながら具体的に計画、実行できる団体が是非欲しいと、組織が欲しいと常々思っています。
  114. 西岡力

    参考人西岡力君) 我々、家族会、救う会が運動を始めたのが平成九年、九七年ですが、そのときから拉致問題の専門部署をつくってほしいと言いました。小泉訪朝があって拉致を認めたときもありませんでした。家族支援室しかなかったんです。今、兼任だとおっしゃいましたし、対策本部についてもいろいろな不備もあるかもしれませんが、しかし、これをつくるのも第一次安倍政権を待つしかなかったんですね。そして、民主党時代もそれが続いた。この体制でやってもらわなくちゃ困ると思っています、逆に。  今まで、金丸訪朝のとき、小泉訪朝のとき、二回チャンスがあったんですが、そのときは対策本部がなかった。だから、井上先生などが秘書官の立場でいろいろやっていらっしゃったんですけど、今は対策本部があるんです、担当大臣があるんです。それでも解決できないんだったら、今まで、二〇〇六年以降何をやってきたのかと、逆に私はそう思っています。
  115. 荒木和博

    参考人荒木和博君) 今の構造を変えていただきたいということは我々も再三再四申し上げているんですが、まず、現在の山谷大臣に限らず、拉致問題担当大臣の兼任が多過ぎるというのは、全くそのとおりだというふうに思います。ただ、現在、国家公安委員長と兼務ということですけれども、拉致問題担当大臣から例えば外務省へとかあるいは防衛省へとか、そういう指揮権限はないわけですね。  私は、一番適当だと思われるのは、拉致問題担当大臣は官房長官が兼務していただく、そしてその下に副大臣で完全に専任で対策本部に張り付いていられる人を置いていただくという形が一番適当なのではないだろうかと。常に官房長官と連絡を取っていただいて、いざというときは全省庁を指揮していただくという形が適当ではないだろうかというふうに思っております。今の体制は、この状態で同じことをやってきているわけですから、それでうまくいかないならば変えるのが当然でございます。  資料の四十七ページに拉致問題に対する組織体制というのが書いてございまして、これは安倍政権になりましてからできた対策本部の体制でございますけれども、私、この有識者会議というのに入っているんですが、実はつい最近この図を知りまして、自分はこんなに偉かったんだなということをそのときになって認識したんでございますけれども、実際には有識者会議といっても単なる飾りでしかないというのが現状でございます。  対策本部を含めて全体の見直しをして、取り返すための対策本部にしないと、今の状態だと、御家族対策とか、あるいは帰ってきた人の支援とか、あるいは広報とか、そういうことだけに、中心ということで、体制自体の見直しが必要だというふうに思っております。
  116. 和田政宗

    和田政宗君 次の質問は西岡さん、荒木さんにお聞きをしたいというふうに思うんですけれども、先ほど飯塚参考人の方から、我が国は国民暮らしと安全を守るということをしてこなかったという御発言がありまして、私は、日本人ですとか拉致被害者家族方々家族拉致されて奪還をできないというのは、これもう本当に私は国の体を成していないというふうに思うんですね。これは、憲法九条があることによって私は抑止力が効かなかったというふうに思っております。  私は、自衛隊の特殊部隊などにおいて奪還できるように速やかに憲法を改正すべきだというふうに思いますけれども、井上委員の質疑ですとか私の国会質疑でも、政府答弁では、現行憲法上は例えば北朝鮮が無政府状態になったり混乱状態になっても奪還はできないというような政府答弁が出てきているわけです。  私は、もう奪還というようなことを目指して、そういった観点からも救出をするようにすべきだというふうに思いますし、現行憲法上できないのであれば憲法を改正すべきだというふうに思いますが、御意見いかがでしょうか。
  117. 西岡力

    参考人西岡力君) 私は、今の憲法下でもできることはあると思っています。そして、二〇〇六年の第一次安倍政権から緊急事態についての様々な検討が静かにされているということを一部漏れ聞いています。私自身も訪米したときに、ペンタゴン、国防総省に、五〇二九作戦計画の中に、北朝鮮の混乱時の計画ですが、不当に抑留されている外国人拉致被害者を助ける計画があるのかと聞きました。  例えば、金正日政治軍事大学に被害者がいる可能性はあります。そこを制圧するためには、そこには精鋭のテロ訓練を受けた戦闘員という人たちがいます。最初にミサイルなどで武装解除していくのが安全です。しかし、そうするとミサイルなどのために被害者も殺されてしまうかもしれないというようなことについて、戦略的な対話を一番上からしてもらわなくちゃいけないと。  今、集団的自衛権のこと、そして日米関係が強化しつつあることというようなことを一歩一歩進める中で何ができるのかということを具体的にしていただかなくちゃいけないと思っています。憲法改正についての議論を、私は自分意見はありますが、そんなことを言っている状況では今はないと、今はもう最終決戦と言っていて、この二か月とか三か月と言っているんです。  でも、二〇〇六年からそのことについては本部で準備をしていると私は聞いていました。それが一体どういうことなのか。それも含めて、対策本部ができてここまで来ているんですから、もう準備ができていないなんてことは言えないと思います。  是非、今持ち場持ち場にいる人たち責任を果たしてほしいと。それは先生方も含めて、ここでも、特別委員会対策を議論するんですから、具体的な対策を議論して政府に提案していただければ有り難いと思います。
  118. 荒木和博

    参考人荒木和博君) 昨年の三月ですか、井上委員の質問のときの総理の答弁につきまして、私は正直言いまして失望いたしました。あれは、つまり、国際法上は可能であるけれども今の憲法があるからできないという答弁だったと記憶しているんですが、であれば、それは総理が直接被害者の御家族に対して、あるいは被害者に対して、助けることはできませんというふうに言うべきであって、そうでなければ詐欺のような行為だというふうに正直言って私は思いました。  これは、具体的にどうするかということは、結局最後は日本でやるしか方法がございません。アメリカは、当然、自国の国民、それから友好国、一番の、ヨーロッパとかそっちの方を優先していくわけで、韓国はもうもちろん、今の現状では、たとえ友好的になったとしても、もう能力として日本の邦人を保護することは不可能の状態です。ですから、やるしかないと。  それについて、一体どうするべきかということについてのシミュレーションを私たちはやってまいりました。これは予備役ブルーリボンの会でやったシミュレーションで、直近では二月二十六日に国会の中で発表しておりますが、現行法でできる邦人輸送、それから法改正すればできる邦人保護ということで、実際に元特殊部隊の人間がプランを組んでやりまして、可能ではあると。ただし、非常に困難を伴うのと、それからやるための膨大な準備が必要になるということ、それから最後は決断であるということが明らかになっています。  ですから、その意味では、そういう議論を是非この国会の中でやっていただいて、もう片付けなければならないことは山ほどございますので、それをともかく進めていただきたいと。  憲法の制約というのは、九条の制約という一方で、基本的人権を守らなければいけないということがあるわけで、それを拉致をされた方々は何十年もの間侵害をされているわけですから、その人たちを助けることに憲法が障害になるということはあり得ない、憲法以前に常識としてあり得ないことだというふうに思っております。その意味では、最後は政治の決断ということになるのではないかと思っています。
  119. 和田政宗

    和田政宗君 今回の対策樹立に関する調査という形でありまして、まさに政治家の行動というものが求められるというふうに思っております。  最後の質問、西岡さんにお聞きしたいというふうに思いますけれども、先ほど全往来の禁止ということも含めておっしゃられました。そして、荒木さんの方からは、朝鮮総連のビルからの退去というような断固たる行動ということをおっしゃられました。  もうこれは私に対する戒めでもあるんですけれども、参考人方々からお話聞いてそれで終わり、行動を政治家としてやるやると言って結局何もできないということが、結局、拉致被害者の御家族方々、そして北朝鮮にとどめ置かれている拉致被害者方々を苦しめているということだというふうに思うんですけれども、こういった一段上の制裁も含めてもうやっていくべきだというふうに思うんですね。その辺りの政府決断でありますとか政治家の決断、すべきだというふうに思いますが、西岡さん、どのようにお考えになるでしょうか。
  120. 西岡力

    参考人西岡力君) 各党に、北朝鮮未来を描くことを困難にするためにどんな政策が取れるのかということを検討するプロジェクトチームをつくっていただきたいというふうに要請しています。自民党は既につくってくださいました。是非、次世代の党でもつくっていただきたいと思います。
  121. 和田政宗

    和田政宗君 早速しっかりと我が党も一丸となってやっていきたいというふうに思いますし、他党の皆様思いが同じであるというふうに思いますので、しっかりと行動をして動かしていかなくてはならないというふうに思っております。  時間が参りましたので、終わります。
  122. 中曽根弘文

    委員長中曽根弘文君) 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。  参考人方々に一言御挨拶申し上げます。  本日は、長時間にわたり御出席を賜り、また貴重な御意見をいただきまして誠にありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼申し上げます。(拍手)  本日はこれにて散会いたします。    午後四時三十五分散会