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国務大臣(
上川陽子君)
刑事訴訟法等の一部を改正する
法律案につきまして、その趣旨を御
説明いたします。
刑事手続については、近時、
捜査、公判が取調べ及び供述調書に過度に依存している状況にあるとの
指摘がなされています。このような状況を改めて、刑事手続を時代に即したより機能的なものとし、国民からの信頼を確保するため、証拠収集手続の適正をより一層担保するとともに、取調べ以外の証拠収集方法を整備するほか、
犯罪被害者を含む刑事手続に関与する国民の負担の軽減や被告人の防御活動への配慮等を通じ、公判審理をより充実したものとすることが喫緊の課題となっています。また、国民が安全で安心して暮らせる国であることを実感できる世界一安全な国、日本をつくるという
観点からも、その基盤となる刑事手続の機能の強化が求められています。
そこで、この
法律案は、刑事手続における証拠の収集方法の適正化及び多様化並びに公判審理の充実化を図るため、刑事訴訟法、
犯罪捜査のための通信傍受に関する法律、刑法その他の法律を改正し、所要の法整備を行おうとするものであります。
この
法律案の要点を申し上げます。
第一は、取調べの録音・録画制度の創設であります。すなわち、裁判員制度
対象事件及びいわゆる検察官独自
捜査事件について、逮捕、勾留中に行われた被疑者取調べ又はいわゆる弁解録取手続の際に作成された供述調書等の任意性が公判において争われたときは、検察官は、原則として、その被疑者取調べ等を録音、録画した記録媒体の証拠調べを請求しなければならないこととした上で、検察官、検察事務官又は司法警察職員が、逮捕又は勾留されている被疑者の取調べ等を行うときは、一定の例外事由に該当する場合を除き、その全過程を録音、録画しておかなければならないこととするものであります。
第二は、証拠収集等への協力及び訴追に関する合意制度の創設であります。すなわち、一定の財政経済
犯罪及び薬物・銃器
犯罪を
対象として、検察官と被疑者、被告人とが、弁護人の同意がある場合に、被疑者、被告人が他人の
刑事事件について証拠収集等への協力をし、かつ、検察官がそれを考慮して特定の求刑等をすることを
内容とする合意をすることができることとするものであります。
第三は、
犯罪捜査のための通信傍受の
対象事件の拡大及び暗号技術を用いる新たな傍受の
実施方法の導入であります。すなわち、現行法上薬物・銃器
犯罪等に限定されている
対象犯罪に、殺人、略取誘拐、詐欺、窃盗等の罪を追加するとともに、暗号技術を活用することにより、傍受の
実施の適正を確保しつつ、通信事業者等の立会い、封印を伴うことなく、
捜査機関の施設において傍受を
実施することができることとするなどの措置を講じるものであります。
第四は、被疑者国選弁護制度の
対象事件の拡大であります。すなわち、現行法上、同制度の
対象となるのは、死刑又は無期若しくは長期三年を超える懲役、禁錮に当たる罪について勾留状が発せられている被疑者であるところ、これを拡大して、勾留状が発せられている全ての被疑者とするものであります。
第五は、証拠開示制度の拡充であります。すなわち、公判前整理手続又は期日間整理手続において、検察官請求証拠の開示後、被告人又は弁護人から請求があったときは、検察官は、その保管する証拠の一覧表を被告人又は弁護人に交付しなければならないとする手続の導入等の措置を講じるものであります。
第六は、証人等の
氏名等の情報を
保護するための制度の創設であります。すなわち、証人等の
氏名等の開示について、証人等の身体又は財産に対する加害
行為等のおそれがあるときは、防御に実質的な不利益を生じるおそれがある場合を除き、検察官が、弁護人に当該
氏名等を開示した上で、これを被告人に知らせてはならない旨の条件を付することができ、特に必要があるときは、弁護人にも開示せず、代替的な呼称等を知らせることができるとする制度等を創設するものであります。
このほか、所要の規定の整備を行うこととしております。
以上が、この
法律案の趣旨であります。
政府といたしましては、以上を
内容とする
法律案を提出した次第でありますが、衆議院において一部修正が行われております。
何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願いいたします。