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2015-05-26 第189回国会 参議院 法務委員会 第13号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成二十七年五月二十六日(火曜日)    午前十時開会     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         魚住裕一郎君     理 事                 熊谷  大君                 三宅 伸吾君                 有田 芳生君                 真山 勇一君     委 員                 猪口 邦子君                 鶴保 庸介君                 牧野たかお君                 溝手 顕正君                 柳本 卓治君                 江田 五月君                 小川 敏夫君                 羽田雄一郎君                 矢倉 克夫君                 仁比 聡平君                 田中  茂君                 谷  亮子君    国務大臣        法務大臣     上川 陽子君    副大臣        法務大臣    葉梨 康弘君    大臣政務官        法務大臣政務官  大塚  拓君    最高裁判所長官代理者        最高裁判所事務        総局刑事局長   平木 正洋君    事務局側        常任委員会専門        員        櫟原 利明君    政府参考人        法務省刑事局長  林  眞琴君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○政府参考人出席要求に関する件 ○裁判員の参加する刑事裁判に関する法律の一部  を改正する法律案内閣提出衆議院送付)     ─────────────
  2. 魚住裕一郎

    委員長魚住裕一郎君) ただいまから法務委員会を開会いたします。  政府参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  裁判員の参加する刑事裁判に関する法律の一部を改正する法律案の審査のため、本日の委員会に、理事会協議のとおり、法務省刑事局長林眞琴君を政府参考人として出席を求め、その説明を聴取することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 魚住裕一郎

    委員長魚住裕一郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  4. 魚住裕一郎

    委員長魚住裕一郎君) 裁判員の参加する刑事裁判に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。  本案の趣旨説明は既に聴取しておりますので、これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  5. 小川敏夫

    小川敏夫君 民主党・新緑風会の小川でございます。  まず、この法案の質疑の最初ということで、この裁判員制度がどのような状況で施行されているか、当初の理念どおりに運ばれているのかどうか、そうした状況について最高裁の方にお尋ねしたいと思っております。  まず、裁判員ですけれども、これは、裁判員はそもそも、国民の間の幅広い階層、幅広い年齢男女の差なく広く国民の中から裁判に参加してもらうという趣旨制度だと思っておりますが、それで、実際のこれまでの裁判員裁判の施行の中で、そのように幅広く特別な偏りがない状態で裁判員が選任されているのかどうか確認したいと思うんですが、確認するには、一つは、我が国の国民人口動態といいますか、人口構成年齢構成とか職業構成とか、そうしたものと裁判員になる方のそうした分布が同じような傾向を示しているのかどうか、こういうことから確認してみたいと思うんですが。  まず、最高裁の方はそういったことについて調査をしているのか、またそうしたことの調査をしているのであれば、その結果について説明してください。
  6. 平木正洋

    最高裁判所長官代理者平木正洋君) お答え申し上げます。  委員お尋ねの点につきましては、平成二十四年十二月に出されました裁判員裁判実施状況検証報告書において報告がなされておりますので、それに沿ってお答えいたします。  この報告書によりますと、平成二十四年五月末時点で、裁判員構成国勢調査人口構成とを比較した場合、男女比国勢調査よりも若干男性比率が高まっていたものの、おおむねバランスの取れた構成になっているという報告がなされております。  また、裁判員職業構成につきましては、国勢調査職業分布とほぼ対応した構成が保たれているとされております。  裁判員年齢構成につきましても、定型的辞退事由が設けられております七十歳以上の方が少ないものの、二十代から六十代についてはバランスの取れた分布となっているという報告がなされております。  なお、平成二十五年度、二十六年度におきます裁判員男女比職業構成年齢構成も、今御紹介した報告書内容とほぼ同様となっております。
  7. 小川敏夫

    小川敏夫君 制度理念に沿って実施されているということで、それは何よりでございます。  では、項目を改めましてお尋ねしますが、今、裁判員制度立て付けでは、裁判員に指名された国民は基本的にはこれに応じなければならない、参加しなければならないというような枠組みになっております。しかし現実には、正当な辞退事由があって辞退するという方だけでなくて、呼出しには応じないという形で裁判員になることを事実上忌避していますというか、特別な理由がないのに裁判員に参加しないという例もあるかと思います。  では、裁判員になることについて、国民辞退事由がないのに参加しないということについてどのような現状にあるのか、説明最高裁にお願いいたします。
  8. 平木正洋

    最高裁判所長官代理者平木正洋君) お答え申し上げます。  これから説明いたします出席率とは、事前に辞退が認められた裁判員候補者を除き、選任手続期日出席を求められた裁判員候補者のうち実際に選任手続出席した方の割合をいいますが、裁判員制度導入以降、平成二十七年三月末までの裁判員選任手続期日出席率につきましては次のように推移しております。平成二十一年が八三・九%、二十二年が八〇・六%、二十三年が七八・三%、二十四年が七六・〇%、二十五年が七四%、二十六年が七一・五%、二十七年が六七・一%となっております。なお、二十七年の数字は三月までのものでございまして、例年、一月から三月にかけましては出席率が低く出る傾向がございます。この点、御留意いただけたらと思っております。  出席率低下原因は必ずしも明らかではございませんが、国民裁判員制度に対する理解と支持が十分得られていないことも一因であると考えられます。また、裁判員経験者アンケート等によれば、経験者の九五%以上がよい経験であった又は非常によい経験であったと回答するなど、実際に経験した方々はおおむね肯定的な評価をしていることからしますと、そうした経験国民全体として共有されていない面があることも考えられます。  いずれにしましても、裁判所におきましては、裁判官が企業や団体に赴いてする出前講義などの広報活動を通じまして、裁判員裁判運用状況や、不安なく審理及び評議に参加してもらうために取り組んでいる内容裁判員経験者等の声などを積極的に紹介するなどして、出席率低下の歯止めにつながればと考えておるところでございます。
  9. 小川敏夫

    小川敏夫君 今のこの裁判員法立て付けでは、国民は参加する義務が基本的にはあると。そうしますと、正当な理由があって出席しないということは別としまして、正当な理由がないのに選任手続出席しない、欠席するという数がだんだん増えているというのは、これはやはり裁判員制度の将来的には大きな問題になるのではないかと思うんですが。  呼出しを出したのに出席をしないと、言わば無断欠席ということなんでしょうけれども、そうした欠席をした人たちに対して、再度の呼出しであるとか、あるいはなぜ出席しないのですかというお尋ねなどはしているのでしょうか。
  10. 平木正洋

    最高裁判所長官代理者平木正洋君) お答え申し上げます。  一般論で恐縮でございますけれども、質問票で御回答いただきまして、選任手続期日出席するという意向を示しておられる裁判員候補者方々の数が十分な水準に達しておる場合には、必ずしも再度の呼出し等を行うとは限らないと思いますが、逆に、少し足りないかなと思われるような場合には、各裁判体におきましてもう一度質問票をお出しいただくようお願いするなどの措置を講じていることもあろうかと考えております。
  11. 小川敏夫

    小川敏夫君 この法の立て付けでは、正当な理由なく欠席しますと過料制裁ということになっていると思いますが、これまでそうした過料制裁というものを科したという例はあるのでしょうか。
  12. 平木正洋

    最高裁判所長官代理者平木正洋君) お答え申し上げます。  平成二十七年三月末時点の統計によりますと、そうした例は報告されておりません。
  13. 小川敏夫

    小川敏夫君 私は、別に、休んだ人にどんどん過料を科せという趣旨で聞いているんじゃないんですけれども、言わば国民が参加する義務があるということでこの制度が成り立っておるわけですけれども、現実には正当な理由がないのに欠席する方がいると。  それが、私がこれは考えなくてはいけないなと思うのは、年々欠席者が増えている、先ほどお伺いした御説明ですと二、三%ずつ何か欠席者の率が増えているということですから、じゃ、同じ状況でいったら、あと二十年するとみんな欠席しちゃうのかと。  こんな数字的には当然いかないでしょうけれども、やはりこれは難しい問題で、国民義務があるからといって過料を科したり無理やり引っ張ってくるなんということは問題でしょうけれども、しかし一方で、国民がみんな参加する義務があるという中で、欠席した人がただ欠席しっ放しで、何のお尋ねもないし、再度の呼出しもないまま欠席したままとなると、結局、国民の間に、制度立て付けとしては国民がみんなで参加して支える制度だと言いながら、しかし実際には行かなくてもほっぽっておけばいいんだよというような理解が、理解といいますか、そういう考えが広まることによって、国民がみんなで参加するという裁判員制度が行き詰まってしまうんではないか、成り立たなくなってしまうんではないかと、このような危惧を抱いておりますので質問させていただいておるわけであります。  そうした危惧の点につきまして、今、最高裁の方からしっかりと取り組んでいきたいというお話を、私の質問の前にも、私の質問を言わば先読みしていただいて御答弁していただいたわけでありますけれども。どうでしょう、法務大臣お尋ねしますけれども、こうして理由もなく裁判員に参加しないという人が増えていくと、私は、裁判員制度がやはり行き詰まってしまう、立ち行かなくなってしまうというおそれも出てきますので、これはやはりしっかりとした取組をしなくてはいけないと。  ただ、これはさっきも言いましたように、じゃ過料を科せとか引っ張ってこいということではなくて、やはり国民に対して裁判員制度というものを理解していただいて、積極的に参加していただくということをしっかりと啓蒙するということが非常に重要なことだと思うんですが、これは独り最高裁だけに任せるのではなくて、法務省の方でもしっかり取り組んでいただかなくてはいけないことだと思うんですが、法務大臣としてはいかがでございましょうか。
  14. 上川陽子

    国務大臣上川陽子君) ただいま委員から御指摘がございました、裁判員制度そのもの国民の皆さんの主体的な参加によって成り立っているということからすると、出席率動向等のトレンドからしてみると、なかなか厳しい場面が出てくるかもしれないということを予想しながら、そうならないためにどうしたらいいかということで、広報活動が何よりも大事だということにつきましては、私もそのように考えているところでございます。  啓蒙、啓発という言葉に、具体的な理解をしていただくための最大限の努力ということについては、これまでもしてきたところでありますが、さらに様々な辞退理由等原因をしっかりと踏まえた上で、ふさわしい形での対応策ということについてもしっかりと取り組んでいかなければいけないというふうに考えております。
  15. 小川敏夫

    小川敏夫君 この裁判員制度在り方等につきましては、最高裁法務省もしっかりと検討していただいていると思うわけでありますが、そうした裁判員制度を更により良い形にしていくというために様々な取組もされていると思うんですが、私は、そうした中で、やはり裁判員経験した方の意見というもの、あるいは裁判員経験しなくても、国民みんなが裁判員になり得る可能性があるわけですから、そうした意味で、言わば一般国民の声というものもしっかりと聞いた上でこの裁判員制度検討するという取組が必要なのではないかと思うんでありますが、法務省及び最高裁の方では、こうした声、特に、とりわけ裁判員経験者の声を聞く、その声を聞いた上で裁判員制度検討に取り組むということについての、この裁判員経験者の声を聞くということについてどのような対応をしているのか、御説明をお願いいたします。
  16. 林眞琴

    政府参考人林眞琴君) 今回の法律案提出するに当たりまして、裁判員制度に関する検討会というものを行いました。そこにおきましては、鑑定医でありますとか通訳人のほか、裁判員裁判経験した被害者遺族あるいは被害者団体関係者からヒアリングを行ったわけでございます。他方で、裁判員経験者意見を直接聞く機会はその検討会においては設けられておりませんでした。  もっとも、この裁判員経験者意見を聞く、あるいは十分に踏まえて検討するということの問題意識はこの検討会でもございまして、この検討会、十八回行われましたが、各会合におきまして事務当局から裁判員経験者アンケート結果というものが累次提供されて、それを踏まえて検討がなされたものでございます。また、地方裁判所での意見交換会が行われておりますが、裁判員経験者感想等事務当局で把握したものなどをこの検討会で紹介するなどして、委員方々においてこの裁判員経験者意見等を把握できるようにして、その上で検討がなされたものと承知しております。
  17. 平木正洋

    最高裁判所長官代理者平木正洋君) ただいま法務省林刑事局長から御紹介いただきましたように、裁判所では、裁判員経験者アンケートをお書きいただいてそれを参考にしているということと、各地の裁判所におきまして裁判員経験者方々にお集まりいただきまして、テーマごと意見交換するという場を設けております。  裁判所といたしましては、そのような裁判員経験者アンケート及び裁判員経験者意見交換会などの場面を通じまして裁判員経験者意見、御感想を聴取しまして、運用改善につなげているところでございます。
  18. 小川敏夫

    小川敏夫君 では、視点を変えてお尋ねいたしますが、裁判員については関与した事件について守秘義務というものが課せられております。これは、当然、裁判員に、関与した事件あるいは評議等について公にされては困るわけですから、守秘義務があること自体は否定しないんでありますが、しかし一方で、裁判員制度をどういうふうに改善していくかということについて、やはり実際に裁判員になった人の意見を聞くという場合において、必要以上に守秘義務というものが意識されて、本来裁判員制度在り方検討する上において有用な意見であっても、守秘義務という壁、あるいは守秘義務というものが過大に解釈されて、そうした裁判員の方の声が出てこないんではないかというような心配も私持っておるんですが。  どうでしょう、例えばその検討会議等で、アンケートという形ではなくて、裁判員経験者の声を聞くというようなときに、裁判員守秘義務がそうした必要の範囲で解除されるとか緩和されるとか、こんなような仕組み、こうしたようなものはあるんでしょうかないんでしょうか。
  19. 林眞琴

    政府参考人林眞琴君) 委員指摘のとおり、この守秘義務というものが過大に解釈されたり、あるいはそれによって範囲が明確でなくて萎縮してしまうような形がありますと、そういった形で適正な裁判員経験者からの御意見というものを伺えなくなるという点があることは承知しております。  これにつきまして、やはり今回この守秘義務につきまして、そういった観点から守秘義務を緩和すべきではないかという意見裁判員制度に関する検討会においても取り上げられたところでございますが、その中での議論の結果といたしましては、やはり現行の守秘義務というものについては明確であるとともに、また実際の裁判員において守秘義務に対して負担に感じている、あるいはこれを必要としないという意見というものが実際の場面では裁判員からは出ていないといった御意見もございまして、基本的にはこの裁判員守秘義務を緩和するということについては、そういう結論には至らなかったものでございます。  今後、裁判員意見を踏まえて、また種々この制度について検討していくに当たりましては、やはり守秘義務範囲としてはそれを維持しつつも、その中で十分に御意見が聴取できる、意見を開陳してもらえるようなやり方については適切に検討していく必要があろうかなと思います。
  20. 小川敏夫

    小川敏夫君 裁判員守秘義務範囲ですけれども、例えば評議裁判官裁判員評議するわけですけれども、その評議の中で誰々がああ言ったこう言ったなんてことはこれはしゃべられちゃ困るわけですけれども、例えばそうした評議進め方について裁判長が強引だったというような意見を持つ例もあるかもしれませんが、例えば、いや、評議中身じゃなくて評議進め方について、裁判長進め方は強引だったというようなことを言うのは、これは守秘義務の中に入るんでしょうか。それとも守秘義務の中には入らないで、そうした一つ意見として許されるものなのでしょうか。個別のケースによるでしょうけれども、そこら辺のところのこの守秘義務範囲の限界を教えていただければと思いますが。
  21. 林眞琴

    政府参考人林眞琴君) まさしく守秘義務に違反しているかどうかというのは個別の事案に基づいて判断されることでございますけれども、いずれにいたしましても、評議秘密評議秘密の中には、評議の経過もございますれば、裁判官とか裁判員が表明した意見内容であるとか、その多少の数といった点がございますけれども、そういった具体的なものを明らかにすることなく、それに対する全般的な感想意見というものを述べることについては、これは守秘義務によって制約されるものではないと考えております。
  22. 小川敏夫

    小川敏夫君 やっぱり評議においては裁判官専門ですから、一方、裁判員は言わば普通の素人の方ですから、裁判官、特にとりわけ裁判長の指揮の在り方評議についてはやはり大きな影響を与えると思うわけであります。  そうした中で、どうも裁判員から、評議中身じゃなくて、そうした評議進め方について、裁判長が強引だったとか、あるいは反対に何かしんがなくて全然定まらなかったとか、いろんな意見があってしかるべきだと思うんだけど、どうも余り裁判員の方からそうした声が聞こえてこないと。聞こえてこないのは、そういう問題が全然ないのかということであればいいんですけれども、そうじゃなくて、裁判員経験者の方がそういうことも含めて一切口にしちゃいけないんだ、それが守秘義務なんだというふうに勘違いをされておって、ただいま刑事局長が答弁されたように、本来守秘義務には入らないことも裁判員守秘義務に入ってしまうというふうに思って、全く、裁判長なり、その評議進め方とか、そうしたことに対する批判的な意見が外に出ないまま閉じ込められてしまっているんじゃないかと、私はそんなちょっと感想なり疑問を持ったんですが、この点はどうでしょう。なかなか答えにくいかもしれませんけれども、どちらからでもいいですけど、お答えいただければと思いますが。
  23. 平木正洋

    最高裁判所長官代理者平木正洋君) 委員お尋ねの点は、裁判官守秘義務について裁判員方々にどのように説明しているのかということとも関係があるかと思いますので、裁判所の方からはその点を御説明させていただきます。  守秘義務につきましては、その範囲をできる限り分かりやすく説明するように努めておるところでございまして、具体的には、評議等の場で裁判官から裁判員に対し、評議の場で誰がどのような意見を言ったのかということなど、守秘義務対象となる事項について具体例も交えながら説明する一方、話してもよいこと、すなわち証人尋問内容など公開の法廷で見聞きしたこと、裁判員として職務を行った経験感想など、守秘義務対象にならない事項についても具体的に説明しているものと承知しております。  引き続き、話してはならないことと話してよいことにつきまして、具体的で分かりやすい説明を心掛けてまいりたいと思っております。
  24. 小川敏夫

    小川敏夫君 あと、実際の例として、裁判員守秘義務を守らないために本来漏れてはいけない情報が外へ出てしまったというような例がこれまで起きておるんでしょうか、それとも、そうした件は今までのところ起きていないといいますか、把握できていない、発見できていないということでしょうか。ちょっとそこの状況を教えてください。
  25. 平木正洋

    最高裁判所長官代理者平木正洋君) お答え申し上げます。  平成二十七年三月末の時点守秘義務違反で起訴された事案はなく、その意味におきまして、守秘義務違反によって問題となった事例はないものと認識しております。
  26. 小川敏夫

    小川敏夫君 別に守秘義務違反が起こることを待っているわけじゃないんですけれども、なかなか難しいですけれども、守秘義務に入らない範囲でやはり裁判員在り方について意見を述べることまで萎縮してはならないというふうにも思いますので、今後も適切、適正な運用をしていただきたいと、このように思います。  さて、先ほどの最高裁説明ですと、裁判員経験された方の九五%がいい経験だったというふうに意見を述べていらっしゃるそうで、これは何よりでございますが、実際の刑事裁判ということになりますと、やはり、人を裁く、中には極刑という、人の生命を奪う極刑を科さなくてはいけないというような、かなり心理的な重圧を感じるような事件もあるわけでございます。また、刑事事件ですと、証拠の中には目を背けたくなるようなむごいといいますか、異常なような証拠物、これも見なくてはならないとか、人によっては見てうれしい人もいるかもしれませんが、一般的な感覚では、なかなか、見ることでショックを受けるような証拠物等もあるようにも思います。  なかなか、裁判員に参加していただくということの意義は大きいんでありますが、一方で、裁判員に参加する方々のそうした負担も大きいものがあるんではないかと。したがって、そうしたことについて、裁判員になった方のそうした心理的な負担をこれはやはりなるべく与えないような運用をしなくてはいけないと思うんですが、そうした面での配慮等につきましては、最高裁としてはどのように運用されているのか、あるいは法務省としてはどのような方向で検討して対応していくのか、御説明いただきたいと思います。
  27. 平木正洋

    最高裁判所長官代理者平木正洋君) お答え申し上げます。  遺体写真等の取扱いに関しましては、それぞれの裁判所におきまして裁判員精神的負担軽減に努めているものと承知しております。  具体的に申しますと、遺体写真等の刺激の強い証拠につきましては、証拠とすることの必要性を争点に照らして検討し、真に必要不可欠な場合のみ証拠として採用し、採用する場合でも白黒写真とするなど、負担軽減工夫をしております。  また、選任手続段階におきましても、遺体写真等証拠調べがなされる予定であるということを裁判員候補者に告げ、不安のある方には申し出ていただいて個別に事情をお聞きしております。  そして、審理評議中も、裁判員に対して、精神的負担を感じていないかどうか、裁判官裁判所職員が適時適切に声掛けをするなどの工夫も行っておるところでございます。  さらに、裁判員経験者精神的負担を負っている可能性がうかがわれた事件におきましては、判決宣告後しばらくたってから裁判官がその事件裁判員経験者に対して電話を掛け、体調等について問題がないかどうかの確認を行うなどの配慮をした事例も把握しておるところでございます。  また、精神面でのアフターケアが必要となる場合に備えまして、制度施行当初から裁判員メンタルヘルスサポート窓口を開設しております。裁判員の皆様が選任された当日に、メンタルヘルスサポートの連絡先等が記載されたパンフレットをお配りして利用方法等を御説明している上、その後も裁判所から重ねて説明をするなどして、裁判員、補充裁判員の皆様方が十分理解されるよう努めております。  加えて、最高裁では、平成二十五年十一月以降、全国の各高裁所在地で臨床心理士を招いた研究会を開催しておりまして、裁判員精神的負担を感じる要因、精神的負担を感じた裁判員に見られる反応、そうした裁判員への対処方法などについて意見交換を行っております。こうした意見交換の内容も踏まえまして、今後とも、各裁判所におきまして事案内容に応じた適切な配慮の在り方検討し、実践していくものと考えておるところでございます。
  28. 林眞琴

    政府参考人林眞琴君) ただいま最高裁からは包括的な御説明がございましたけれども、検察の側から見たこの点についての取組について御説明をいたします。  裁判員裁判において、検察におきましても、裁判員の心理的負担が過重なものとならないよう様々な配慮をしているものと承知しております。  まずは、最高検察庁が作成しました裁判員裁判における検察の基本方針、これは平成二十一年二月に公表されているものでございますが、この段階で既に、遺体写真の取扱いに関しまして、写真については、凄惨な場面が写されている場合もあるが、適正妥当な事実認定及び量刑のためには証拠調べ請求をして裁判員にも示さなければならない場合がある、他方で、いきなりそのような写真を示すと気分が悪くなるなどして職務遂行が困難になる裁判員がいる可能性があるので、そのような心理的負担も考慮し、あらかじめ凄惨な写真が含まれていることを告げた上で示すべきであるなどと記載されたところでございます。  検察当局におきましては、こういった方針の下で、遺体写真を証拠として請求するかどうかをまず適切に判断するとともに、証拠調べに際して、裁判員の心理的負担にも配慮して、必要に応じ、凄惨な写真を取り調べる必要がある場合には、あらかじめそのような写真が含まれていることを裁判員に告げた上で展示する、あるいは凄惨なカラー写真の代わりに白黒の写真でありますとかイラストを用いる、こういった配慮をしているものと承知しております。
  29. 小川敏夫

    小川敏夫君 また別の観点から質問させていただきますけれども、今、一つの声の中で、裁判員への手続等の説明在り方、これはそれぞれの裁判体が行うから全て一律というわけにはいかないんでしょうけれども、しかし、この説明が少し裁判体によってばらばらであるというようなことを言う声もあります。ばらばらだと私は断定しているわけではないんですけれども、そういう声があるということについて、これはどういうふうに受け止めておられるでしょうか。
  30. 平木正洋

    最高裁判所長官代理者平木正洋君) 委員指摘のとおり、裁判所説明が余りにもばらばらだということであると望ましくない面もあろうかと思います。手続説明内容や方法につきましては、各裁判体が十分議論をしまして、当該事案内容や公判審理予定等に応じまして具体的な説明方法や説明内容を決定していると承知しております。また、一回説明した後も、裁判員方々の反応を見ながら、適宜必要な補足説明を行うのが一般的な運用であると認識しております。  さらに、個別の事件を離れまして、各庁では、裁判官同士で、一般的議論として、手続説明の方法や内容に関しましてそれぞれの経験を持ち寄って検討が重ねられていると聞いております。  裁判所としましては、裁判員の皆様方に手続の内容を正しく御理解いただけるよう、今後も適切な説明に努めてまいりたいと思っております。
  31. 小川敏夫

    小川敏夫君 別の質問ですけれども、また一つ国民の声ということで、裁判員裁判を言わばウオッチングしていますというか取り上げているグループがあるようでございますが、そうした人たちは、裁判員裁判があるということを集中的に何かインターネットなりそのほかの方法で公示してくれれば裁判員裁判をしっかりと網羅的に観察して検討できると。  ですから、裁判員裁判については特に抜き出しして、そういう裁判をあるということ、その期日がどうだというようなことを公表していただきたいと、こういう声があるわけでありますが、こういう声についてはいかがでございましょうか。
  32. 平木正洋

    最高裁判所長官代理者平木正洋君) 裁判員裁判も含めた公判期日の予定につきましては、公判期日の当日になって開廷予定表として各裁判所の庁舎内に掲示されるのが一般的な運用であると認識しておりますが、裁判員裁判の予定期日に限って、ほかの事件と特に区別して数日分をまとめて掲示するなどの例は事務局において把握しておりません。また、裁判員裁判の予定期日をウエブ上などで広く公開するなどの取組についても把握しておりません。
  33. 小川敏夫

    小川敏夫君 いや、把握していないというか、そういうことを積極的に導入をするという考えがあるのかないのか、あるいは今後検討するのか。その実情じゃなくて、そういう国民の声があるということを踏まえてどう対応をするか、ちょっとそこら辺の今後のことについても御説明いただければと思いますが。
  34. 平木正洋

    最高裁判所長官代理者平木正洋君) 開廷予定表につきましては、裁判所に来て傍聴しようとされている方の便宜を図るために、司法サービスの一環として、その日に行われる公判期日の分のみを掲示するのが通常でございますが、裁判員裁判につき、その予定期日を数日分まとめて掲示する取扱いは、他の裁判員裁判対象事件における取扱いと平仄が取れないことから、相当ではないと考えられます。また、裁判員裁判の予定期日をウエブ等で広く公開した場合も、同様に裁判員裁判対象事件における取扱いと平仄が取れないことから、これを差し控えるのが相当ではないかと考えておるところでございます。
  35. 小川敏夫

    小川敏夫君 非裁判員裁判と平仄が取れないということなら、じゃ、非裁判員裁判も全部含めて公表しちゃったらどうですか。
  36. 平木正洋

    最高裁判所長官代理者平木正洋君) 先ほど申し上げましたとおり、傍聴に来られた方に対する情報提供としましては、裁判員裁判も含め、当日の公判期日に係る開廷予定表を掲示することで足りるというふうに考えております。
  37. 小川敏夫

    小川敏夫君 そう固いことを言わずに、当日じゃなくても数日前でもいいのではないかとか、インターネットで公表しても、元々裁判は公開が原則ですから、してもいいのではないかというふうにも思いますので、そういう声があるということも受けて、今後検討していただけたらというふうに思います。  さて、今回の裁判員法のこの法改正では、極めて長期に及ぶと思われる事件については裁判員裁判ではなくて裁判官による裁判にするということの制度が設けられました。  それで、まず最高裁の方にお尋ねいたしますけれども、これまでの実際の裁判員裁判の例として、非常に長期にわたって裁判員の確保が、あるいは選任といいますか確保といいますか、これが困難を来したというような例はこれまでに生じているんでしょうか。どうでしょう。
  38. 平木正洋

    最高裁判所長官代理者平木正洋君) お答え申し上げます。  これまで実施されました裁判員裁判におきましては、十分な裁判員候補者選任手続期日に集まらなかったということが理由で公判期日の予定を変更せざるを得なかったというような事態にはなっていないというふうに認識しております。  これまでに判決を終えた裁判員裁判のうち、実審理期間、これは第一回公判期日から判決宣告期日までの期間でございますが、実審理期間が長期の上位三件の裁判員候補者辞退率及び辞退者数を申し上げますと、一番長期の事件が、実審理期間が百二十日、辞退率が七八・八%、選定数四百人に対し辞退者数が三百十五人。二番目に長かったものが、実審理期間が百五日、辞退率が七〇・八%、選定数六百五十人に対し辞退者数が四百六十人。三番目に長かった事件でございますが、実審理期間が九十五日、辞退率が七七・三%、選定数三百三十人に対しまして辞退者数が二百五十五人となっております。
  39. 小川敏夫

    小川敏夫君 では、最後に法務大臣お尋ねしますが、制度趣旨として極めて長期に及ぶ事件裁判員裁判から外すということは理解できるところではありますけれども、一方で、こうした制度を設けることで、これが裁判員裁判を殊更回避するという意図で利用されるということはあってはならないというふうに思うわけでありますが、そうした意味で、こうした規定について濫用がない、してはならないというものであることについて法務大臣の方から御答弁をいただいて、私の質問は終わります。
  40. 上川陽子

    国務大臣上川陽子君) 裁判員裁判そのものは、国民の皆さんに主体的にこれに参加をしていただいてこそ初めて成立するという、そうしたものでございます。  その意味では、今回、長期に及ぶものについては例外的な措置としてこれを除外することもできる旨の項目を入れさせていただき、御審議をいただいているところでございます。  ゆめゆめ、これが濫用するというようなことがあってはならないことでありまして、そのような御意見も踏まえて、そうしたことについてはしっかりと運用のところでも適切に対応できるように努めてまいりたいというふうに思っております。
  41. 真山勇一

    ○真山勇一君 維新の党、真山勇一です。  この裁判員制度ができて、ちょうど法が施行されて実際に運用が開始されて丸六年ということなんですけれども、この裁判員制度というそのものは、国民の普通の感覚、これを判決に取り入れていきたいということで始まったわけですけれども、ただ、やはりこれ始めるときに、私も当時はメディアの世界に働いていて、そして本当にこの裁判員制度というのはうまく運用できていくんだろうかという意見が随分出たのを覚えております。例えば、やはり法律専門家でない素人がそういう裁判に参加して、本当に裁判が改善していくというようなことが、機能するのかどうかというような声もありました。  しかし、こうやって六年たって、今回大きな流れを見ていますと、少しずつではあるけれども定着の方向へ向かって動いているんではないかなというような、そういうような印象もあり、やはりこの制度自体をこれから更にしっかりしたものにしていかなければならないというような、そういう感じも持っております。  当然、所期の目標でありました一般人たちの司法への理解ですとか、裁判を分かりやすくするですとか、それからスピード化ですね、こうしたものには随分貢献をしてきているというふうに思っております。ただ、その一方で、やっぱりいろいろな問題点とか課題も出てきたのではないかなというふうに思っております。特に、裁判員制度に関する検討会というところで本当に多岐にわたっていろいろな問題、これ検討されています。十八回も開いて様々な問題を検討しているんですが、そうしたところでやはり問題点、課題も指摘されてきていると思うんです。  この六年間を振り返って、今後の方向もちょっと踏まえまして、まず法務大臣に評価というものをお伺いしたいというふうに思います。
  42. 上川陽子

    国務大臣上川陽子君) 平成二十一年の五月からこの裁判員制度が施行されたわけでございますが、本年の三月末までに、何と七千七百以上の事件裁判員の皆さんの御参加によりまして、その合議体によりまして判決するに至っているということでございます。この間、五万八千人以上の方に裁判員そして補充裁判員としてお務めをいただいたということでございまして、大変熱心に審理に御参加いただいているということでございます。その意味で、我が国の司法制度そのものに対して大変大きな成果を果たしてきたのではないかというふうに思っているところでございます。  先ほど委員からも御指摘ございましたが、やはり分かりやすい審理、さらには迅速な審理という形、そしてさらには的確で、そして立証、そういうことにつきましてもそれぞれが努力をして、そして裁判員の皆さんにその審理にしっかりと対応していただくことができるような、こうした運用の面での努力も大変大事なことではないかというふうに思っております。  最終的な評価としても、裁判に参加してよかったという御意見が九五・九%を占めていらっしゃるということでありまして、裁判に参加する前にはいろいろ不安や懸念もあった、しかし実際に参加してみると非常によかったというような評価を見ても、その意味で定着をしてきている、いい方向に定着をしてきているのではないかというふうに思っております。
  43. 真山勇一

    ○真山勇一君 ただ、私はちょっと気になるのは、検討会でもいろいろ課題が出ていたように、問題点もいろいろあると思うんですね。例えば、裁判員のやはり不安とか負担、それから被害者保護の問題ですとか、それから守秘義務の問題ですとか、様々なこれ以外にも課題が出てきていると思うんです。  今回の改正というのは、いろんな問題が出ていますが、大きく分けて四点の改正ということなんですが、この四点を見てみますと、当然と言えば当然だなというような改定であって、むしろ、今までもこのぐらいのことは運用でやってきたんじゃないかというような気がするような改正なんですね。  それ以外に、裁判員制度に関する検討会で出されてきたような問題については、今回、改正の対象にはなっていないんですけれども、その辺りは、私は、せっかく検討会がこれだけいろいろ話し合ったんだけれども、その成果が今回の改正に出ているのだろうかなという、そんな疑問も感じるんですが、その辺についてはいかがですか。
  44. 上川陽子

    国務大臣上川陽子君) 今回の法律について御審議いただいているわけでありますが、裁判員法の附則第九条に基づいて、委員指摘裁判員制度に関する検討会におきまして十八回に及ぶ御検討をいただいた上で、その上で今回の改正案という形でお示しをさせていただいたところでございます。  それ以外の様々な課題につきましても、衆議院の法務委員会におきましても論点も出されておりますし、また今日の場面の中でも委員の先生方からもそうした御指摘もございまして、様々なまだ課題があるというのも事実だというふうに思います。  制度と、そして運用という段階でも努力をすべきところも、この間の様々な運用の実態ということを踏まえて考えるとあるということでございますので、絶えずより良いものにしていくということを目標にしながら、運用の改善でありますとか、あるいは今回お願いを申し上げたところの法律案にしっかりと盛り込むという形の中で更に検討を進めていくということが何よりも大事ではないかというふうに思っております。
  45. 真山勇一

    ○真山勇一君 そうだと思うんです。せっかく専門家の方あるいは有識者の方が十一人も集まって十八回も会合を開いてそれぞれ問題点検討されて、しかも裁判員経験者からも声を聞くというようなことの中で出ていますので、やはりそういうものを生かして改正をするのが、本当にこれが生きた改正になるんじゃないかというふうに思っているんですね。  ですから、今回は初めてなのでこういうふうな運用面の改正でいいかもしれませんが、やはりこれからの課題というのは、この裁判員制度、すごく大きな問題をはらんでいると思いますので、これからどういうところを改正していかなくちゃいけないか、改善していかなくちゃいけないかということを、せっかく議論したら、そうしたものを生かしていくということをやはり徹底していっていただきたいなというふうに今この改正の時点に当たって感じております。  先ほどから出てきている数字、裁判員、よい経験だったという回答が九五・二%あるというふうに伺っているんです。確かに、これ、経験した人にとっては貴重な経験だったと思うんですね。ただ、その一方で、実はこれは新聞の方の調査なんですけれども、アンケートで、まだ裁判員に決まっていない普通の一般の人に、自分は裁判員裁判に参加したいですかという、そういうアンケートを取った、去年ですけれども、そういう記事が出ておりました。これで見ますと、七九%が逆に裁判員として裁判に参加したくないということを答えているんですね。これは、まだ裁判員に選ばれたでも何でもない一般の人を対象裁判員裁判に自分が選ばれたら参加したいですかということを聞いたら、参加したくないというのが七九%もあったということなんですね。  これは、やはりその理由としては不安ですとか、それから量刑を的確に判断する自信がないとか、そういう理由で七九%もの人がやはり参加したくないという、これ実に、結構対照的な数字ではないかなというふうに思っているんです。ですから、この辺り、終わったときは満足感、使命感を果たしたということで経験して良かったということなんでしょうけれども、やはり裁判員の仕事をやる前というのはかなり不安感というものがあるんじゃないかと思うんですが。  それで、ちょっと具体的にお伺いしたいんです。先ほどの小川委員の回答の中で対策、様々な全般的なことをお伺いしたんですが、ちょっと具体的にお伺いしたいと思うんですが、裁判員として選ばれたということになった場合、その公判の前それから公判中に裁判員へ、及びその補充員というものも含めまして、説明とか対応というのは具体的にどういうふうにされているのか、教えていただきたいと思います。
  46. 平木正洋

    最高裁判所長官代理者平木正洋君) お答え申し上げます。  公判が始まる前に裁判員、補充裁判員、又はその候補者の方々にどのような説明及び対応をしているかにつきまして、順を追ってその概要を御説明申し上げます。  まず、裁判員候補者の方が前の年の秋頃に裁判員候補者名簿に登載されますとその通知がなされ、その際、制度の概要や裁判員の職務などを分かりやすく記載したパンフレットを送付するとともに、調査票を送付して、年間を通じた辞退事由の有無などについてお尋ねしております。あわせて、名簿登載者用のコールセンターを開設し、名簿登載者の候補者の方からの一般的なお問合せに対応しております。  次に、裁判員裁判選任手続期日の六週間前までに、くじで選ばれた具体的事件裁判員候補者方々に対し選任手続期日のお知らせ、これは法律呼出し状と呼ばれているものでございますけれども、この呼出し状を送付しますが、その際に、裁判員制度についてより詳しく解説したパンフレット等を同封するとともに、質問票を送付して辞退事由の有無を尋ねております。そして、これらの送付物に関するお問合せなどがある場合には、各地の裁判所におきまして丁寧に電話対応等しているところでございます。  選任手続期日の当日には、適切に辞退事由についての御説明をするなどした上で選任手続を行っております。選任された裁判員及び補充裁判員方々に対してどのような説明対応を行うかにつきましては、各裁判所におきましてその負担軽減という観点も踏まえて工夫して行っております。  一般的に申し上げますと、選任された裁判員及び補充裁判員方々に対し、選任直後に裁判官裁判所職員からメンタルヘルスサポート窓口について御説明申し上げるとともに、公判が始まる前に不安や疑問がないかお尋ねしたり、審理中に不調を感じたらすぐに休廷することができるので遠慮なくお知らせしていただくようお伝えしたりしております。公判開始後も何かあったら遠慮なく相談してくださいとお伝えしたり、随時体調等をお尋ねしたりするなどしているものと承知しておるところでございます。
  47. 真山勇一

    ○真山勇一君 選ばれるところから、それから公判中、様々な形でかなりきめ細かくいろいろ対応されているということは分かります。そんなことがうかがえます。パンフレットも二回にわたって渡していたり、それから電話での対応もするなどということなんですけれども。  実は、配らせていただいた資料をまず一枚目見ていただきたいんですが、男性のちょっとアニメが描いてあるやつですけれども、これは、下に書いてありますけれども、裁判員経験者ネットワークという民間の団体のところが裁判員経験者の方たちから、いろいろ集まって話をする、そういう場を今つくろうということで動いているところなんですけれども、そこが裁判員経験した方たちへのアンケートをこれ今年の初めに取ったということで、それを内容をちょっと御紹介させていただきたいんですが。  裁判員になったとき、こんな不安の声というのがありまして、項目が挙がっています。裁判の途中で職場に連絡できる、服装はスーツじゃなきゃ駄目、昼食は、喫煙は、休憩時間はということで、多分、普通で考えるとこういうことは説明されているのかなというふうには私は感じているんですけれども、もしかすると裁判員の方も、この裁判員という非常に、今まで経験したことのないようなことに選ばれて、裁判所側が割と説明を、ちゃんとパンフレットなどでも、それから当日いらしたときに説明している中にあるのかもしれませんが、やはり経験した人の中ではこういう説明がなくて不安を感じたというような回答ということになっているんですけど、この辺りというのはどうなんでしょう。
  48. 平木正洋

    最高裁判所長官代理者平木正洋君) お答え申し上げます。  委員が配付してくださいました、裁判員になったとき、こんな不安の声というペーパーについてでございますけれども、一般論で申し上げますと、裁判の途中で職場に連絡できるかどうかという質問は非常に多うございます。そこで、多くの裁判体では、裁判が始まる前あるいは休憩時間などでは職場に自由に連絡取って構いませんというように説明している例が多うございます。  それから、服装につきましては、大体皆様穏当な服装でお見えになりますので、多くの裁判体は、今日のような格好で結構です、スーツやネクタイ着用でなくても結構ですというような説明をする例が多いかと承知しております。  昼食につきましては、これは庁舎の中に食堂がある場合ない場合といろいろございますので、一律な対応ではないと思いますが、庁舎内に食堂がないような場合には、近隣の食事をできるような場所なども紹介しているというような例を把握しておるところでございます。  また、喫煙につきましては、法廷では控えていただいておるのですけれども、休み時間等では、庁舎内の喫煙所と申しましょうか、そういった場所を御紹介しまして、そこで喫煙していただいている例が多いかと思っております。  休憩時間でございますけれども、これも事案によりましていろいろだとは思いますが、一般的には一時間たちますとかなりお疲れになられますので、一時間に一回ぐらいはといったペースで十分、二十分といった休憩を取っている例が多いものと承知しておるところでございます。
  49. 真山勇一

    ○真山勇一君 どれも予想付きそうな疑問なので、多分説明されていると思うんですね。ただ、裁判員の方も、やはりきっと裁判所というふだん来ない場所、非日常の世界という言い方していますけど、そんなところへ来ていて緊張しているのかもしれないし、説明を受けても恐らく頭の中から抜けてしまうということもあることが考えられるのと、それから、先ほどのお話ですと、裁判所ごとによって説明の仕方が違うということをおっしゃっていましたので、あるところでは説明しているかもしれないけど、ある裁判所ではこういう説明はちょっと抜けてしまったということもあるかもしれないので、その辺り、やはり必要最小限何項目というのは、ある程度システマチックなそういう指導も必要なのかなというような気がしております。そして、やはり疑問点が抜けないように説明するということが大切じゃないかなというふうに、この表だけで見るとやはりそんな感じもしないではないので、改善の余地はあるのではないかなという気がしております。  それから、いわゆる裁判が終わった後の話をしたいんですけれども、これについてももう先ほど幾つか出ておりますので、かなり、裁判員経験した方の意見交換会ですとか、それから交流会というのを裁判所単位ということでやっておられる、それからメンタルヘルスサポート窓口という、心のケアが必要ならばそうした対応もしているということなんですけれども。  続いて、資料の二枚目、棒グラフが二つありますけど、二枚目、三枚目を見ていただきたいのですが、裁判員の方がどんなことで心の負担を感じるのかという調査なんです。  これ、裁判員経験者ネットワークの同じアンケートの中の項目なんですけれども、ちょっと人数が四十二人と余り多くないんですが、ただ、むしろアンケートに答えてくれた方というのはそれぞれ何か悩みとか持っておられる、不安を持っておられるからこそ応じたんだと思うので、それを見てみますと、まず棒グラフの多い分、やや感じたと強く感じたという二つを合わせて見てみますと、一番の人の運命を決めてしまうこと、それから、十一番の守秘義務範囲がはっきり理解できないこと、それから、あとは大きなものとしては二番の残酷な証拠写真や証言を見聞きしたときなどが項目としては不安の高い、心の負担を感じる材料になっているということなんですが、その中で、四番、心の重さに伴う身体の不調というのは、これは少ないですけれども、四十二分の十人ということでやはりそういうのを感じていらっしゃる方がいるということで、やはりこのケアをどうするかということが大事になってくるのかなというふうな気がするんですね。  交流会とか意見交換会ももちろんありますが、私は、特にやはり心の負担、心のケアということになると、メンタルヘルスサポート窓口というこの仕組みがちょっと気になるので、これをちょっと説明していただきたいと思います。
  50. 平木正洋

    最高裁判所長官代理者平木正洋君) お答え申し上げます。  最高裁判所では、民間の業務に委託して裁判員メンタルヘルスサポート窓口を設置しております。この窓口は、裁判員、補充裁判員に選任された直後から利用することができますが、公判終了後も時期の制限なく裁判員経験者、補充裁判員経験者方々が利用することができます。  この窓口の内容は、電話によるメンタルヘルス相談と健康相談、インターネットによるメンタルヘルス相談と健康相談、東京にある業者の直営相談所及び全国四十七都道府県にある提携機関における対面カウンセリングによるメンタルヘルス相談から成っております。メンタルヘルス相談は臨床心理士等の専門カウンセラーが相談に応じまして、健康相談は看護師等の専門スタッフが相談に応じておりまして、いずれも必要に応じまして医療機関の紹介も行っているものでございます。  各裁判所におきましては、公判終了後の裁判員経験者、補充裁判員経験者負担を軽減するという観点から説明対応をしているところでございまして、裁判官からメンタルヘルスサポート窓口の内容や利用方法につきましても改めて御説明しているところでございます。
  51. 真山勇一

    ○真山勇一君 今のお話ですと、メンタルヘルスサポート窓口というのは民間というふうにおっしゃったということは、これは裁判所ではなくて民間の業者に委託をしてこういうシステムを運用しているということで考えてよろしいんでしょうか。
  52. 平木正洋

    最高裁判所長官代理者平木正洋君) 委員指摘のとおり、民間の業者に委託して行っておるものでございます。
  53. 真山勇一

    ○真山勇一君 そうすると、そこで例えば心のケアが必要な裁判員経験された方がいらっしゃるとすると、その辺り、このメンタルヘルスサポート窓口でのどういうような相談が多いのか、どういうような処置をしているのかということと、それを裁判所としてどういうふうな対応をしているかということはありますか。
  54. 平木正洋

    最高裁判所長官代理者平木正洋君) 最高裁判所が設置するメンタルヘルスサポート窓口への相談につきましては、相談された裁判員、補充裁判員のプライバシー保護の観点から、裁判所において相談内容を具体的に把握することはできないものとなっております。  これは、その窓口への相談が外部に漏れないことを確保することで、裁判員、補充裁判員及びその経験者方々に安心して御相談いただける場を設けることが重要であるとの考えからこのような仕組みを採用しているものでありまして、裁判官裁判所職員は、裁判員、補充裁判員に対しましてメンタルヘルスサポート窓口について説明する際に、窓口への相談は裁判所関係者も含めて絶対に外部に漏れることがないから安心して利用してほしい旨、説明しているところでございます。  もっとも、裁判所といたしましては、不安を感じておられる裁判員経験者対応して、メンタルヘルスサポート窓口への相談のみで対応しようと考えているわけではございません。各地の裁判所におきましては、裁判員経験者の方には、メンタルヘルスサポート窓口について説明するだけでなく、不安や心配があれば裁判所に対して遠慮なく連絡してほしいといった説明をし、そのフォローに努めているものと承知しております。  したがいまして、裁判所としましては、そのような御連絡をいただいた機会を通じて裁判所のサポートを必要とする裁判員経験者のフォローをすることができるものと考えておるところでございます。
  55. 真山勇一

    ○真山勇一君 今の説明はプライバシーということで分かるんですけれども、ただ、守秘義務などと同じように、ある程度、何というんですかね、プライバシーを守りつつ、でも全体的な傾向、例えばケースとして知ることは可能だと思いますし、やはり実際にそうすると例えば相談に来た中で、これまで問題になった、いわゆる心のケアが本当に必要な重症な人がいるのかいないのかとか、そういうことというのは分からないわけですね、今のシステムの運用の仕方ですと。
  56. 平木正洋

    最高裁判所長官代理者平木正洋君) お答え申し上げます。  先ほど申し上げましたプライバシー保護の観点から、電話相談等の内容につきましては概要のみを委託している業者から報告を受けているところでございまして、例えば健康相談におきましては、健康不安が何件あった、病気の懸念が何件あったというような限度で把握しております。それから、メンタルヘルス相談につきましては、不安についてアドバイスをしたとか、話を聞いてほしいという訴えがあったといった件数などの限度で把握しているところでございます。  裁判所といたしましては、こういった概略しか分からないところではございますけれども、こういったものを手掛かりにいたしまして、裁判員経験者裁判員の方がどんな精神的負担を負っておられるのかということを考えて、今後の負担軽減運用に努めてまいりたいと思っておるところでございます。
  57. 真山勇一

    ○真山勇一君 やっぱり、これまで伺っていますと、いろんなことをやられているというのはよく分かるんですが、何かばらばらの感がありますね。それから、せっかくいろんなところでいろんな問題出ていても、それを集約して、それじゃどうするというところが何かまだ少し欠けているのかなという気がしてならないんですね。  これから、例えば意見交換会とか交流会とか、それぞれのところでいろんなことをやっていらっしゃる。そこで出た問題をやはり集約しながら対応していくということも必要ですし、それから裁判員制度に関する検討会でも出ましたけれども、デブリーフィングということもありますね。アメリカの陪審員裁判では用いられている、あるいは日本の自衛隊でも、イラクのときも、それから東日本、つまり精神的に大きなショックを受けたときにみんなで仲間で話し合って共有するというデブリーフィングというような、そういう方法も恐らくやられると思うんですが、こういうことをするのにはもう少しうまくそこから出たものを吸い上げて集約していくということが必要じゃないかと思うんですが、その辺の考えというのはいかがでしょうか。
  58. 平木正洋

    最高裁判所長官代理者平木正洋君) 裁判員の心の負担の緩和やケアにつきましては、各裁判体が行った配慮の実例を最高裁から全国の裁判所に広く周知をしております。また、裁判員精神的負担とその対応につきまして、臨床心理士を講師に招いた裁判官の研究会を開催するなどもしておりまして、各地の裁判所はこれらの情報をも踏まえまして、適切な配慮を行うべく取り組んでいるところでございます。  委員指摘のデブリーフィングを行うという点につきましては、先ほど申し上げました臨床心理士を講師に招いた研究会におきましても、家に帰る前に裁判員裁判官が話をして気持ちを落ち着かせることが有益であるという助言をいただいておりまして、その日の公判手続の終了後や全ての裁判手続が終了した後に、実際にそのような機会を設けて裁判官裁判員裁判員同士がお話しするという例があるものと承知しております。  また、裁判員経験者から、経験者同士の交流のため、同じ事件を担当した裁判員経験者の連絡先を知りたい旨の要望があった場合には、相手方の了解を前提に連絡先を教えるなどの工夫をしている例ですとか、裁判が終わった後に裁判官裁判員が一堂に会して話をする機会を設けた例もあると承知しております。  裁判所としましては、そのような様々な取組を全国に周知するとともに、事案裁判員方々の個性に応じて、いろいろな手法を組み合わせて適切に取り組んでまいりたいと考えておるところでございます。
  59. 真山勇一

    ○真山勇一君 時間になりましたので、また質問の機会もあると思いますので、今日はこれで終わらせていただきます。  どうもありがとうございました。
  60. 仁比聡平

    仁比聡平君 日本共産党の仁比聡平でございます。  今日はこの法案の最初の質疑ですので、私も基本的な大臣の認識をお尋ねしたいと思うんですけれども、これまでお話がありましたように、裁判員裁判、これは重大刑事事件についての裁判員裁判ということに現行の制度ではなるわけですけれども、この六月で施行から六年を迎えると。この間の運用をどう評価するのかという点に関わって、例えば大臣から、おおむね順調とか、あるいは先ほどは、いい方向に定着していっているといった御答弁が繰り返されておりますけれども、そういう評価に至った根拠というのは具体的にはどんな調査なりあるいは分析に基づいているのか、そこがよく分からないんですね。その根拠についてまずお尋ねしたいと思います。
  61. 上川陽子

    国務大臣上川陽子君) 裁判員裁判の評価につきまして、おおむね順調に実施されておると同時に国民の間に定着をしてきているというふうな認識に対して、その根拠ということでございますが、施行以来六年間の中で、今年三月末までの事件件数そして参加件数ということで、実際に参加した方々におきましても大変熱心に審理に取り組んでいただいてきたというふうに理解をしているところでございます。  そして、裁判員等の選任期日に出席を求められた裁判員の候補者のうち、実際に裁判員等の選任期日に出席していただいた方の割合につきましては約七六%に上っているということでございます。さらに、法曹三者におきましても、それぞれ分かりやすい裁判の実現に向けて様々な工夫をしながら取り組んできたということでございます。  裁判所の実施いたしましたアンケート調査というのが非常に注目をするところではございますけれども、これにおきましては、平成二十六年、審理内容についてわかりやすかったというような御回答をした方も裁判員経験者におかれましては約六五%に達していると、こうしたアンケート調査もございます。  また、項目によりましては、九六%の方が裁判員として裁判に参加したことにつきましてよい経験をしたと感じた旨の回答をしていらっしゃるということでございまして、裁判員の皆さんが真摯にこれに向き合って、使命感を持って取り組まれ、また充実感を持った形で審理に臨まれ、取り組んでいただいてきたのではないかということがうかがわれるようなアンケート調査の結果でございます。  こうしたことも含めまして、様々な御意見も含めての総体的な評価として申し上げたところが、おおむね順調に推移をしているということ、そして国民の皆さんの間にもいい方向の中で定着をしてきているのではないかと、こうした認識を示したところでございます。
  62. 仁比聡平

    仁比聡平君 この法案に先立って行われた裁判員制度に関する検討会の取りまとめ報告書を拝見しても、なぜおおむね順調という評価をするのかという分析的な議論はさほどされていないのではないかというふうに私は思うんですね。  大臣理由一つとして挙げられました最高裁の行ったアンケート調査の結果ですけれども、これは、問いは裁判員として裁判に参加した感想を尋ねていて、その中で選択肢として、非常によい経験と感じた、よい経験と感じた、あまりよい経験とは感じなかった、よい経験とは感じなかった、特に感じることはなかった、不明という選択肢の中から選んだものを、非常にあるいはよいと感じた人が先ほど大臣が紹介された九六%ぐらいという数字なのであって、具体的な裁判員としての例えば心理的なストレスあるいは社会的なストレス、経済的にどうだったかなどについて踏み込んだ問いではないんですね。  まず、最高裁にここで確認しておきましょう。最高裁が行っているアンケート調査というのは私が申し上げているようなものであって、この結果の中でおおむね順調といった評価をこの調査としてやっているわけではないと思うんですが、いかがでしょうか。
  63. 平木正洋

    最高裁判所長官代理者平木正洋君) お答え申し上げます。  委員指摘の最高裁判所が実施しておりますアンケート調査は、裁判員制度が順調に運営されているかどうかといったダイレクトな形では質問をしておりません。委員指摘の該当部分は、裁判員裁判に参加する前の感想と、参加した後の感想という形でお尋ねしているものでございます。
  64. 仁比聡平

    仁比聡平君 そのようなものなんです。  もちろん、参加された裁判員の方がこうした感想を述べられておることは大切なことだと私も思いますし、大臣理由の冒頭おっしゃった事件数それから参加者数、参加裁判員数ですね、つまり、その数を考えたときに、これだけの国民が熱心に、真面目に裁判に参加していただいていると、これはもちろん大切なことだと思うんです。  ですが、おおむね順調あるいはいい方向に定着していっていると本当に見ていいのかということについて、例えば、二〇一〇年だと思いますけれども、NHKが二〇一〇年の五月二十一日に裁判員経験者と補充裁判員三百三十人の方に実施したアンケートで、回答者が二百十五人のうち、三分の二に当たる六七%の人が裁判員に参加して心理的負担やストレスを感じたと回答されている。そのうち一五%の方は、今でも、つまりアンケートに回答する時点でも心理的負担を感じていると回答されているんですね。こういう問い方をされると、こうした答えももちろん出てくるわけです。これを本当にいい方向に定着していっていると言えるのか。  その問題意識で、この間の推移について小川委員から先ほど確認がありましたけれども、私からもお尋ねをしたいと思うんです。  最高裁出席率という形で統計を紹介をしておられますが、二つの数字があります。参考に、東京新聞の四月九日の記事をお手元にお配りをいたしました。  この記事は、裁判員裁判、市民参加旗印のはずが、選任要請四分の三応じずというふうになっております。先ほど大臣は七六%の方が参加をしてくれているんだという部分だけを紹介をされたんですけれども、その数字で本当に実態が反映されているのかなんですね。  裁判員の選定は、候補者として選定された方に通知がまず行きます。その通知の行った裁判員候補者のうち、実際に選任手続期日出席した候補者の数、これは事前に辞退をされた方、それからドタキャンをされた方、含まれるわけですけれども、この数字の推移を最高裁、御紹介いただけますか。
  65. 平木正洋

    最高裁判所長官代理者平木正洋君) 委員指摘出席率は、選定された裁判員候補者数を分母とし、選任手続期日出席した裁判員候補者数の出席率のことであると考えますけれども、その割合を見てまいりますと、平成二十一年が四〇・三%、二十二年が三八・三%、二十三年が三三・五%、二十四年が三〇・六%、二十五年が二八・五%、二十六年が二六・七%となっております。
  66. 仁比聡平

    仁比聡平君 つまり、二六・七%、四分の三の国民が応じていない、あるいは応じられていないんですね。  この数字が、しかも平成二十一年の四割、出席率が四割程度からどんどん、あるいは漸減して三割を切っているということになってきているわけです。  先に最高裁に確認をしておきたいと思うんですけれども、これは、先ほど小川委員からも質問のありました、法で言う百十二条の過料、正当な理由のない不出頭を制裁する、こうした規定の適用例はなくて、つまり辞退事由は大変柔軟に取り扱われているという個々の裁判体の判断が積み重なった結果だと私は思うんですけれども、この出席率の推移といいますか、数字についてどのようにお考えでしょうか。
  67. 平木正洋

    最高裁判所長官代理者平木正洋君) 委員指摘のとおり、過料を科すか否かにつきましては個々の裁判体において判断されるものでございまして、その結果としてこれまで過料を科した例がないということでございます。また、辞退の判断につきましても、裁判体がその候補者の方々の申出の内容を踏まえまして個別具体的に判断しているものでございます。  したがいまして、その判断の当否につきましては、個別の判断あるいはその集積ということになりますので、最高裁事務当局としてお答えすることは差し控えさせていただきたいと思っております。
  68. 仁比聡平

    仁比聡平君 私は、個々の裁判体の適正な運用がされてきた結果だと思うんです。  この裁判員制度の創設時、立法時ですね、それから施行を前にした時期に、国民の大きな不安として、安心して裁判員になるための条件整備が整っていないではないか、一定期間連続して裁判員として裁判に参加しなければならないけれども、原則として制度裁判員辞退できないとされている。けれど、会社員の場合、公休扱いされるかどうかは個々の企業の判断に委ねられてしまっているし、中小零細とか自営業の場合は辞退できるかどうかの明確な基準もないし、それぞれの裁判所の判断に一任されてしまっているということが一つの問題になっていました。  私は、この六年間の運用の実際を見たら、そうした不安も反映してなんでしょうが、辞退は柔軟に認められている、過料制裁は問題となっていない、一例もないと、これは極めて合理的なものだと思うんですよ。この運用は合理的なものだと私は思うんですが、その結果、選定の対象となった国民のうち三割を切る方しか選任期日に出席をされない。つまり、多くの方々辞退をし、そしてドタキャンをする方もいる。  その数字が増えているというこの現状について大臣はどう思うのか、そこをお尋ねしたいと思うんです。
  69. 上川陽子

    国務大臣上川陽子君) ただいま出席率についての二つの数値ということで、この二十一年以降のトレンドということでございまして、選定された候補者のうちの出席した候補者の比率ということについては、平成二十一年の四〇%から二十六年には二六%ということでございます。これには事前の辞退が認められた者というものも含まれているということでございますので、数値のみをもってそれでということには私はならないというふうに思います。  出席を求められた候補者のうちの出席した候補者ということの数値は、二十一年の八三%から平成二十六年には七一%ということでございます。その意味で、施行後間もない時期と比較いたしますと低下はしているということでございますが、依然として七割の水準にあるということにつきましては、私は、国民の皆さんの参加意識は依然として高い水準にあるというふうに考えております。  しかし、この裁判員制度そのものが、国民の皆さんの主体的なまた積極的な参加が何よりも重要であるということでございますので、その意味で、この出席率の推移につきましては大変大事な指標の一つということで注視をしてまいりたいというふうに思っておりまして、そしてその意味で、これからの取組につきましても、こうした数字についての分析、そしてそれに対してどのように対応するかというふうなことも関係機関の皆さんとも連携をしながら、さらに意識啓蒙も含めまして、最大限環境整備を図りながら一層の努力を積み重ねていく必要があるというふうに考えております。
  70. 仁比聡平

    仁比聡平君 裁判員制度の政府がおっしゃってきた趣旨からすれば、国民裁判に対する理解と信頼が深まっていくということならば逆に出席率は上がっていく、つまり、運用によって裁判員参加をしていくための社会的ないろんな条件、環境が整備をされていくし、一人一人の国民の中での意欲も高まっていくと。もちろん大変な仕事ではあるけれども、選任をされれば応えようじゃないかというその高まりがある、つまり好循環が生まれるというのが想定なんじゃないかと思うんですけれども、逆でしょう。  悪循環とまでなっているのかよく分からないけれども、少なくとも今日の御答弁の中でも、最高裁からも今大臣からも、出席率の低下の歯止めという言葉が問題になるような状況なんですよね。これ、制度の当初の想定と見合っているんですか、大臣
  71. 上川陽子

    国務大臣上川陽子君) 当初予定されていたときの、出席率とか辞退率について想定をして御議論いただいて、その上でスタートしたということではないものと私自身承知しているところでございまして、六年間のこれまでの裁判員裁判の実施された実績とその運用の実態ということについて今回検討をしていただきながら、今回の法案も提出させていただいているところでございます。  先ほども申し上げたところでありますが、やはり国民の皆さんの主体的な、かつ積極的な御参加によってこの裁判員制度が支えられているということでございますので、その意味でも、積極的な参加をしていただくことができるようにしていくということについては、これはもう対応をしっかりとしていくことについては、これまでもそうですし、これからも更に力を入れていかなければならないというふうに思っているところでございます。
  72. 仁比聡平

    仁比聡平君 積極的に参加をしてもらうための対応をと言わば抽象的にはおっしゃるんですけど、私、今回の検討会やこの法案提出のプロセス見ても、まず裁判員負担という言葉をよく使われるんだけれども、その負担についての分析や、あるいはその実態の調査を本当にされているのか。されていないのではないかというふうに思うんですね。  これ、法案提出に当たって、裁判員負担というのは現にどのようなものかという整理をした政府の文書というのはありますか、大臣
  73. 上川陽子

    国務大臣上川陽子君) この裁判員制度に関しましての検討会におきましては、裁判員の皆さんの御負担ということについても議論をされているところでございます。  裁判員の皆さんがどのようなことに負担を感じていらっしゃるかということについては、裁判員の職務遂行から直接生じる負担として、人を裁くことに対する重圧でありますとか、公判や評議出席する負担、とりわけ凄惨な状況に係る証拠を取り調べる御負担というようなこともございますし、育児あるいは介護、仕事、こうしたことに伴う様々な御負担ということもございました。いろんなレベルで御負担を感じながらも、しかし前向きに御参加をいただきながら審理に真摯に向き合っていただいた上で、この六年間、この制度運用されたというふうに理解をしているところでございます。  文書の中でこのような形でというところの明文的なものはございませんが、しかし検討会の中でもそうした御議論はなされてきたというふうに考えております。
  74. 仁比聡平

    仁比聡平君 今大臣が最後におっしゃったように、分析して整理をし、その実態を調べていく、検証していくというアプローチはされておられないんですよね。今御紹介の長々あった議論というのは個々の委員の発言なのであって、その背景というのを整理をされてはおられません。  裁判員ネットワークのアンケートの紹介が先ほどありましたけれども、そのネットワークを担ってきた弁護士の皆さんの論文などを拝見しますと、この裁判員の心理的な負担、社会的、経済的あるいは家庭的な負担などと並んで心理的負担というのを踏み込んで随分分析をしておられます。  裁判員の心理的負担として、残酷な証拠を見ることによる負担と人の運命を決めることの重い負担の二種類があるというふうな整理もされておられるんですけれども、この間、問題になってきた福島地方裁判所の郡山支部が昨年の九月三十日に判決を出した裁判員の方のPTSDによる国家賠償請求事件というのがありまして、この地裁判決文をちょっと私読んで、この心理的負担というのは本当に大変だなと改めて思っているんですね。  この事件では、強盗殺人事件で被害者が殺害された直後に血の海となった現場の状況を撮影した写真や、十か所以上に刺し傷がある被害者夫婦の頭部や頸部の写真も裁判員用のモニター画面に証拠調べの中で映し出されたと。犯行に用いられたと思われる被害者の血が付いたままの軍手や発泡スチロールで作られた被害者の頭頸部の模型などの写真も全てカラー写真で証拠調べが行われたと。被害者である妻が、犯人に刺されながらも必死で消防署に救いを求める電話の音声が録音されたCD―Rの取調べも行われたなどの中で、裁判所が、こうした事実経過に照らせば、原告が本件裁判員裁判において審理評議、評決に参加したことと、原告がその後に急性ストレス障害を発症したこととの間には相当因果関係があると認めるのが相当であると認定しているんですね。  裁判員に参加することがPTSDあるいは急性ストレス障害を起こすことがあり得るという、これは、私は重いと思うんですが、大臣、どう考えられますか。
  75. 上川陽子

    国務大臣上川陽子君) ただいま委員の方から具体的な訴訟事件についての御言及がございましたけれども、このことについては直接的な形では答弁は差し控えさせていただきたいと思いますが、心理的な負担が大変大きな課題になっているということについては、これは認識をしっかりしていかなければいけないというふうに思っております。  こうしたことに対しまして、当初予定をしていたところでも、この心理的負担については御議論いただいて、そしてそれなりの対応をしてきたということでありますが、さらに六年ということが経過する中で、こうしたことについて、運用の面でありますとか、それぞれの裁判体の中でも徹底していくということが大変大事ではないかというふうにも思うところでございます。  検察においての取組ということでございますが、公判前整理手続におきまして必要かつ十分な証拠の取調べ請求、これを行うよう留意するということでございます。特に、証拠中に凄惨な写真等が含まれる場合につきましては、あらかじめそのことを裁判員の皆さんに告げるということで、あるいはカラー写真に代わりまして白黒の写真で、さらにはイラスト等で対応できる場合についてはこれを用いるというようなこと、そして事案におきまして、負担軽減の観点から様々な工夫をした形での立証活動に一層努める、こういうことの説明をしているところでございます。こうしたところの対応によりまして、御指摘のような負担が、しっかりと対応することができるように、運用上の努力も含めまして更に徹底をしていく必要があるのではないかというふうに思うところでございます。  先ほど、もう一つの視点の中で、人の将来に対して大変大きな影響を与えるというものである、そういう意味での心理的負担ということについても御指摘ございまして、そういう意味では、合議体による裁判ということでございますけれども、裁判官裁判員とで話合いをしっかりとしながら進めていくということで、一人でしょい込むものではないというようなことも含めまして丁寧に説明をしていく、そういう中での過度に負担を感じることがないように配慮をする、そして配慮も徹底をして行うということが何よりも大事だというふうに思います。
  76. 仁比聡平

    仁比聡平君 残虐な証拠の件ですが、大臣がおっしゃるような配慮をしたとしても、そうはいっても、刑事裁判なんですからそうした証拠を調べる必要というのはあるんですよ。  その心理的負担を負いながら真面目に裁判員に取り組むという中で、先ほど来御紹介の裁判員ネットワークの皆さんの交流会、ここのレポートを見ますと、戦友に出会ったようで心が癒やされたとの参加者が多いとか、あるいは生の声で、フラッシュバックや人の運命を決めた重さの負担について率直な意見交換ができて心が開かれるといった、つまり守秘義務を制限的にでも解除して、裁判員が終わった後にきちんと意見交換ができる場というものが保障をされるなら、裁判員負担軽減にも、それから裁判員制度の検証にも大きな意義があるではないかと。日弁連を中心にそうした第三者検証機関の提言があります。  私は、今後、検討、検証をしていく上で、こうしたものも当然可能性あると思うんですが、大臣感想だけを伺って、今日質問を終わります。
  77. 魚住裕一郎

    委員長魚住裕一郎君) 時間ですので、答弁は簡潔にお願いします。
  78. 上川陽子

    国務大臣上川陽子君) 心理的な負担を軽減をするというよりも緩和していくということで、何よりも国民の参加をしっかりとお願いをするということでありますので、不安をなくす、そして負担を軽減するということについては様々な取組をしっかりとしながら、また交流会等の成果もしっかりと生かしながら、あらゆる方法で対応していくことが大事だというふうに改めて決意をしているところでございます。
  79. 仁比聡平

    仁比聡平君 終わります。
  80. 田中茂

    ○田中茂君 日本を元気にする会・無所属会、無所属の田中茂です。  今日は、裁判員の参加する刑事裁判に関する法律の一部を改正する法律案について質問させていただきます。  先ほど来皆さんおっしゃっているように、これが平成二十一年に導入されてからほぼ六年になるわけですが、裁判員経験した方々から、先ほどの、何度も言われていますが、アンケート調査でも、経験して良かったという回答が得られているようであり、市民感覚を裁判に取り入れると、当初の目的も徐々に私は果たしているように感じております。  それを踏まえ、今後も多くの国民の参加を得て制度を充実させてほしいとの私の基本姿勢を踏まえて、それにのっとって幾つかの質問をさせていただきます。  まず、先ほど来、仁比先生もおっしゃっていましたが、やはりここで一番大事になるのはメンタルケアについてだと思っております。これはあらゆる面で非常に重要なポイントになっていくとは思っておるんですが、それはなぜかというと、法律専門家でない民間人を裁判員として国家が選任し公的義務を負わせるということで、最も配慮すべきことだと私は思っているからであります。  裁判員は、先ほど来皆さんおっしゃっているように、日常生活では見ることがないような凄惨な証拠写真を見なければならない。また、自らが関わった裁判に関しては、生涯、その評議に関する情報をほかに漏らしてはならない守秘義務が課せられているわけであります。これは大変な精神的な負担が掛かっていると、そのように思っております。だからこそ、国家が国民に課す以上、それに対する十分なケアを行うべきであると、そう考えております。  そこで、四月十四日の委員会で、随分前なんですけど、質問回答で、裁判員経験者へのカウンセリング、五回まで無料ということの回答がありました。裁判への関与が裁判員に与える影響という意味では、確かに個人差はあると思います。がしかし、裁判員として参加することが国民義務であり、基本的に正当な理由がない限り拒否できないというのであれば、国としてより以上のフォローはすべきかと思います。  ただ、この五回まで無料というのは、これは私の勝手に思った解釈なんですが、なぜ五回なのか、その理由が分からないわけであります。むしろ、深刻な症状になるほど回数もフォローも必要になるのではないかと思われますが、五回まで無料というのが無責任な印象すら受けかねません。この五回まで無料という根拠をまず説明していただけませんでしょうか。
  81. 平木正洋

    最高裁判所長官代理者平木正洋君) お答え申し上げます。  メンタルヘルスサポート窓口の設置に当たり、メンタルヘルス対策の専門知識を有する民間業者に意見を聞きましたところ、カウンセリングを五回実施しても症状が改善しない場合には、対面カウンセリングを継続するのではなく、医師に引き継ぐことが相当であると考えられるとのことでございましたので、これを踏まえて五回という回数を設定したものでございます。このような場合でありましても、電話によるカウンセリングを引き続き無料で受けていただくことは可能でございますし、必要に応じて医療機関の紹介も実施しておるところでございます。
  82. 田中茂

    ○田中茂君 そのように説明していただければいいわけであって、あえてこういうふうに五回まで無料というのを強調する必要は、僕はないのではないかと思っております。そうしないと、変な誤解を与える可能性があると思うので、その辺、よく注意しておいていただきたいと思います。  やはりこのメンタルというのが一番大事なので、今後も、当初から、もう最初の段階から積極的に丁寧にカウンセリングを行うと、そういう姿勢でやっていただきたいと思っております。先ほど来からずっとその説明をされているので、この件については、私は、質問は終わりにしておきます。  先ほど、若干、仁比先生がお話しされたように、証拠裁判に関して、極めて微妙な立場になると思うんですけど、前回、裁判員裁判裁判員として参加した女性が急性ストレス障害で仕事を長期間休まざるを得なくなったと。介護施設の運営会社からパートの契約を打ち切られて訴えていた裁判で、原告側は、裁判員制度が苦役からの自由を定めた憲法十八条などに違反していると主張し、国側は、最高裁が、二〇一一年ですが、同制度を合憲と判断している上、相当な理由がある場合は裁判員辞退を認めるなど柔軟にしていると反論し、請求を棄却した事案がありました。  これについては原告の請求が棄却されたわけですが、その一方で、この元裁判員の方のストレス障害と裁判員裁判との関連性については認めております。ストレス障害になった方には同情を禁じ得ませんが、このことにより、裁判員に選任されても辞退する人が増えるおそれがないとも言えないわけであります。また、証拠に関しても、凄惨なものは除くなどの対策は講じられていると思いますが、必要以上にそのような証拠の使用を避けることによって、適切な判断を下すという、その必要な証拠が採用されなくなるのではないかという、こういうデメリットも考えられます。実際に、被害者や遺族の方にもそういう意見があるとも聞いております。  そこで、裁判員精神的負担軽減と適切な証拠等の確保という矛盾をはらみかねないこの問題については、どのような施策を検討されているのか。先ほど、イラストを使うとか、いろんな説明をされているということでありますが、実際的にはどういうことをお考えになっているのか、お聞かせいただきたいと思います。
  83. 平木正洋

    最高裁判所長官代理者平木正洋君) お答え申し上げます。  証拠の採否や具体的な取調べ方法等に関しましては、それぞれの裁判体事案に応じて判断することでございますので、事務当局はお答えする立場にはありませんが、例えば遺体写真の取調べ等に関する東京地方裁判所の申合せにおきましては、裁判員負担のために必要な証拠を取り調べないということではなく、その証拠によって立証しようとする事実は何か、その事実の立証のためにその証拠が真に必要不可欠なものなのか、その証拠裁判員に過度の精神的負担を与えることはないか、他の証拠で代替できないかなどを慎重に吟味し、真に必要な証拠であれば、取調べの方法を工夫するなどの配慮をした上で取り調べることになりますし、そもそも、判断のために必要がないとか、ほかの証拠でも代替できるという場合には採用しないという議論がなされたものと承知しております。  このような議論を踏まえまして、各裁判体におきましては、委員指摘の要請をいずれも満たすよう、適切な判断を行っているものと思われます。
  84. 田中茂

    ○田中茂君 この問題は、本質性が、メンタルケアということで必要な証拠までも何らかの形でそれを見せないということになると、またこれも本末転倒な話になるわけですので、その辺は十分気を付けてやっていただきたいと、そう思っております。  そこで、先ほど来また皆さん質問をされていましたが、守秘義務契約について一点聞きたいと思います。  裁判員になることをちゅうちょするその理由一つとして、秘密を守り切れる自信がないという回答が調査結果でもあります。  裁判員経験者に対して、法曹のプロではないにもかかわらず、生涯にわたって厳しい守秘義務契約が課せられており、違反した場合には懲役刑まで設けられているという現状を考えると、当然二の足を踏む、そういう人たちが増えるのも理解できますが、ただ、その一方で、九五%の裁判員経験者が、経験したことは有意義であったと回答している。そういうことを見ると、裁判員としての経験は、その人にとっても価値のある経験であったとも考えております。  また、市民感覚を反映させた分かりやすい裁判という制度目標を考えると、もっと活発な議論をオープンにしなければ、裁判員裁判としての意味がないのではと、そのようにも考えているわけです。  先ほど来、どこまでが守秘義務でどこまでがいいのか、そういうことを言っていると、より活発な議論もこれ以上裁判員制度を推進させるためのネックになる可能性もあるので、その辺は十分、どこまでできるのか、どこまでできないのか。先ほど説明はいただきましたが、例えばそういうことを考えたときに、まず一点お聞きしたいのは、こういう守秘義務に関して、一般的に司法修習生に対してどのような守秘義務に関する教育とか研修を行っていらっしゃるのか、私、全く分かりませんので、その点、ちょっとお聞かせいただけませんでしょうか。
  85. 平木正洋

    最高裁判所長官代理者平木正洋君) お答え申し上げます。  司法修習生は、個人のプライバシーに深く関わる具体的な事件等を素材として法律実務を学ぶことから、裁判官、検察官又は弁護士が守秘義務を負うのと同様に、修習に当たって知った秘密を漏らしてはならない守秘義務を負うものとされております。  守秘義務につきまして、司法修習生には、修習開始前に送付する資料に明記して周知しているほか、修習開始後の講義、各分野別実務修習のオリエンテーション及び裁判等を傍聴する直前等の機会等の折に触れて、教官や配属先の裁判官等の指導担当者から具体的に場面に応じた指導や注意喚起を行うことなど、各人の責任の重さについて自覚を促し、守秘義務の厳守を心掛けさせているところでございます。
  86. 田中茂

    ○田中茂君 今お聞きしまして、それはやっぱりプロに対するそれだけの研修を行うわけでありますよね。ただ、一般人たちに対して、研修も受けていない、そういう全くの素人の人たち守秘義務をやれと、すぐにそういうことを言ってもなかなか難しいと思うわけであります。  そこで、一生涯にわたってこういう守秘義務をやるとか、そうじゃなくて、先ほど小川先生もおっしゃったように、どの程度の範囲まではできるのか、どの程度までは大丈夫とか、あと、どのくらいの期間になればもうこれは守秘義務を課せませんよとか、そういうものはあってもいいんではないかと私は思っております。  そうしないと、これを、より更に裁判員制度というものを進展、発展させていくためには、評議会での話、どの程度までが大丈夫かということを踏まえた上で何らかの議論をしないことには、その後の発展が出てこないと思っております。  その辺について期限を区切るとか、その点についてはいかがでしょうか。範囲については先ほど随分説明していただいたので、その辺は割愛させていただきたいと思うんですが、年でどのくらい切るとか、十年ぐらいでもういいのではないかとか、そういうのは御検討なさっているのか、お聞かせいただきたいと思います。
  87. 林眞琴

    政府参考人林眞琴君) 御指摘守秘義務関係につきましては、裁判員制度に関する検討会においても取り上げられ議論がなされましたが、結論に至っては、現行守秘義務に係る規定を見直すことについては消極的な意見が多数を占めたものでございます。  そういったことから、今回、この検討会での議論も踏まえまして、守秘義務の見直しというものについては法改正に含めていないところでございます。その点については、守秘義務範囲にわたるもののみならず、その期間、守秘義務の継続期間に関することでも同様でございます。  いずれにしても、今後、こういった形で裁判員経験者からいずれいろんな形で意見を伺うというような場合におきましては、現行の守秘義務というものを前提としつつ、十分な御意見が伺えるような工夫が必要であろうかなと思っております。
  88. 田中茂

    ○田中茂君 今後の裁判員裁判をより発展させるためにもその辺は是非検討していただきたいと、そう思っております。  次に、民間企業における裁判員休暇等の整備状況について質問させていただきます。  先ほど言いましたように、この裁判員制度、発足してから六年ほどたつわけでありますが、それまでに、当初の意図のように、国民が実際に裁判に関与し、結果に、先ほども言いましたように、アンケートにも表れているように、経験したことがよかったと、そういう評価も得ているわけでありますが。そこで、裁判員専門職ではない民間から選任されるため、ほかにも職を持っている方々も当然裁判員としての要請があるわけであります。実際、調査では、職業として半数以上、約六割、この方たちが会社勤務となっております。  この方々裁判員裁判に参加するためにどういう対応を取られたか。企業及び裁判員に対する調査結果はあると思うんですが、そういう中で、私が聞きたいのは、裁判員として参加することによって、勤務先と協議した上で決定したのか。また、平均として何日間裁判員裁判のための休暇を取得したか。三番目が、休暇を取得した場合、有給休暇であったか無給休暇であったのか。四番目が、長期にわたる審理に有給休暇を取得して参加した裁判員のケースがあったかどうか。その場合、従業員に対する有給休暇の付与を使用者に対して義務付ける前提として、労働基準法では全労働日の八割以上出勤することが必要であるとされております。  これまでの最長では百日間にわたって裁判員を務めたケースがあったとのことですが、百日ともなるとかなり業務に支障を来すことが想定されます。そのようなケースではどのような状況であったのか。実際問題として、会社勤めで年間百日も有給休暇を取得することはなかなか難しいと思いますが、そもそもこういう調査があるのか、この件についてもお聞かせいただきたいと思います。
  89. 平木正洋

    最高裁判所長官代理者平木正洋君) お答え申し上げます。  まず、委員指摘の、勤務先を有する裁判員等は、参加することについて勤務先と協議、決定した上で参加したのかという事項については、裁判所としては把握しておりません。  次に、委員指摘の、勤務先を有する裁判員は、参加に当たって平均何日間の休暇を取得したのかという点についても把握しておりません。  次に、三点目の、勤務先を有する裁判員が参加に当たって休暇を取得した場合、その休暇は有給休暇か無給休暇かという点についても、裁判所としては把握しておりません。  四点目の、勤務先を有する裁判員が有給休暇を取得して参加した長期審理裁判員裁判のケースはあったか、ケースがある場合、その状況はどのようなものであったかという点についてお答えいたしますと、裁判員のプライバシー等の問題がございますので具体的な詳細までは申し上げられませんが、ある長期審理事件におきまして、有給休暇や勤務先で設けられている裁判員を務める場合の特別有給休暇を利用して裁判に参加した裁判員や補充裁判員の例があることを最高裁として把握しております。
  90. 田中茂

    ○田中茂君 法務省の方はいかがでしょうか。
  91. 林眞琴

    政府参考人林眞琴君) 法務省といたしましては、御指摘のような統計については把握しておりません。
  92. 田中茂

    ○田中茂君 この調査で六割が企業、会社勤務の方ということになっておるわけでありますが、企業の協力というのは極めて重要だと、そう思っております。これは企業に勤めている会社員のみならず、いずれはその奥様か、また子供たちも裁判員になる可能性もあるわけでありまして、いろんな角度から考えたときに、この企業の協力というのは、将来的な裁判員裁判を進展させるときにも企業協力というのは極めて重要だと、そう思っておりますので、先ほど来、何が一番大事かと。この裁判員裁判を啓蒙することだと、あらゆる分野で啓蒙していくこととおっしゃっていましたが、この会社の、企業の協力なくしてはその後の進展もないと思いますので、全く今までそういう調査をしていないということは考えられないわけでありまして、今後、その点十分注意をして、そういう調査もやっていただきたいと、そう思っております。  そこに関連して、会社経営者のみならず、自営業者の方の場合、あるいは育児中、介護の方の場合、どのような対応をされているのか、教えていただきたいと思います。当然ながら、自分に無理が来ると思えばそれは自分で断ればいいわけなんですが、法務省なり最高裁なりがどういう対応をしているのか、ちょっとお聞かせいただけたらと思います。
  93. 平木正洋

    最高裁判所長官代理者平木正洋君) 御質問事項につきましては、最高裁判所としましては統計を取っておりませんので、把握していないということでございます。
  94. 田中茂

    ○田中茂君 法務省の場合も同じでしょうか。
  95. 林眞琴

    政府参考人林眞琴君) 法務省におきましても、そのような統計については把握しておりません。
  96. 田中茂

    ○田中茂君 先ほどと同じような話になると思うんですが、是非ともこれも将来のためには調査をするようにしておいていただきたいと思います。  また、これに関連してお聞きしたいのは、裁判員に選任されれば、実際に評議に当たる日はもちろんなんですが、それ以外にも資料を読み込んだりするための時間を割くことになると思います。そのための時間を確保すべく裁判員休暇制度などを整備している企業も一部にはあると私は知っておりますが、目下義務付けられているわけではありません。仮に裁判員になった場合、業務上の負担や代替人員確保の難しさなどでは、大手よりも中小企業の方が困難ではないかと思っております。その場合には、企業にも裁判員となった社員にも大きな負担が掛かると想像されます。法務省としては有給休暇取得ができるように働きかけているとのことですが、これも強制力はありません。  裁判員制度が導入され定着する一方で、呼出しへの、先ほど来皆さんおっしゃっていますが、出席率や、関心の薄れも見られるわけであります。誰しもが裁判員となる可能性がある今、裁判員候補として呼び出された場合、あるいは実際に裁判員として関与することになった場合に備えて弾力的に休暇を取れるよう、制度として支えることも必要ではないかと考えております。  これについて、国による国民、企業への義務化と、それに対する国の責任との調和等を含め、今後の方針をお聞かせいただけないでしょうか。
  97. 林眞琴

    政府参考人林眞琴君) 御指摘の点につきましては、現行制度の上では、まず、労働者が裁判員としてその職務を行う場合には、労働基準法第七条の規定によりまして休暇を取得することが可能であります。また、裁判員法におきましては、労働者が裁判員の職務を行うために休暇を取得したことを理由といたしまして、解雇その他不利益な取扱いをすることは禁じられているわけでございます。これが現行法の範囲でございますけれども、この現行法の範囲を超えて、更に裁判員を、職務を行う場合の休暇の取得を促進する制度、例えば特別な有給休暇を義務付ける制度、こういったことを設けるかどうかにつきましては、やはり事業主側の負担等も考慮する必要がありまして、現時点においては慎重な検討が必要であろうと考えております。  いずれにしましても、こういった形での裁判員が参加しやすい環境を整えるということは非常に重要でございますので、法務省といたしましても、ホームページ等におきまして、事業者の方々に向けまして、裁判員等に選ばれた従業員の方に特別な有給休暇を認めていただくこと、これについてのできる限りの御配慮をお願いするということを求めてきたところでございます。  今後におきましても、最高裁判所関係府省庁等とも連携しまして、更に参加しやすい環境の確保に努めてまいりたいと考えております。
  98. 田中茂

    ○田中茂君 先ほど来話が出ているメンタルケアに関しても、企業の社員というのはそこで勤めているわけですから、そういう意味でも、企業と密接に話をしながら進めていくというのは多分もうたくさん出てくると思っております。そういう意味でも、企業とどういう点を協力し合っていけるのか、どこまでできるのか、どこまでできないのか、そういうものを含めて、もっと真剣にこの辺は検討していただきたいと、そう思っております。  次に質問したいのは、司法制度改革審議会、二番の②で、国民の期待に応える司法制度、その中に、刑事手続に一般国民の健全な社会常識を直截に反映させるとありますが、さきの法務委員会でも私の質問に対して、裁判員制度、この導入の趣旨ですが、これは、一般国民裁判の過程に参加して、裁判内容国民の健全な社会常識がより反映されることにより、国民の司法に対する理解、支持が深まり、司法はより強固な国民的基盤を得ることができるようになるとの観点から導入されたとお答えになっております。  私、ちょっとこの辺で分からないのは、この国民の健全な社会常識と刑事手続との関連がよく分からないので、一体何を意味するのか教えていただきたいと思います。国民感情であるとか市民感覚を裁判に反映させるというのであればすんなり入ってくるんですが、健全な社会常識というのは何を意味しているのか、市民感情イコール健全な社会常識という意味なのか。その辺、少し脱線するんですが、お聞かせいただけませんでしょうか。
  99. 林眞琴

    政府参考人林眞琴君) 司法制度改革審議会意見書によりますと、一つには、一般国民裁判の過程に参加して、裁判内容国民の健全な社会常識がより反映されるようになることによって国民の司法に対する理解が、支持が深まる、それによって司法がより強固な国民的基盤を得ることができるようになると、こういったことがうたわれております。  その一方で、裁判員が関与する意義は、裁判官裁判員が責任を分担しつつ、法律専門家である裁判官と非法律家である裁判員とが相互のコミュニケーションを通じてそれぞれの知識、経験を共有して、その成果を裁判内容に反映させるという点にあるとも述べられているところでございます。  これは、二つのことからは、国民の健全な常識といいますのは、結局、法律専門家ではない国民の知識、経験やそれらに基づく知見のことであろうかと思います。こういったものが、裁判員裁判官との共同の、相互のコミュニケーションを通じて裁判に反映されていくというふうに考えております。
  100. 田中茂

    ○田中茂君 健全があれば不健全もあるし、常識というのが大体どういう常識なのかというのもいろんな意見があるところなので、非常に分かりにくいこれ言葉だなと思ったものですから、ちょっとお聞きしただけですので。  次に、もう時間になりますので最後にしたいと思うんですが、裁判員裁判で死刑判決を下され、最高裁でそれが破棄された二人の被告の事案についてでありますが、一審ではその前科を基に死刑判決を下したわけであります。上位審では、一審は前科を重視し過ぎたという判断でありました。日本の刑法の趣旨である更生を主眼として服役させていたにもかかわらず、二人とも出所後すぐに再犯に至ったことは、前科に対する更生を目的とした量刑が必ずしも適切ではなかったのではと私自身は疑問に感じております。  ただ、私が憂慮しているのは、こういった事例が続くと国民裁判員制度への不信感を抱かせる可能性があり、裁判員裁判への関心が薄れ、裁判員候補に選任されても嫌がる人が増えるだけでなく、裁判員裁判が形骸化する結果にもつながりかねないという点であります。  そこで、一般論として、今後の裁判員裁判を通じてなすべきことについてお伺いしたいと思います。  死刑という究極の刑罰も含め、裁判員意見を重視することでも、何が何でも先例を踏襲した判断を下すことでもなく、市民感覚が反映された判断が積み重ねられることで、裁判員裁判を通じて適切な量刑を探り、国民理解を得ていくことではないかと、そう思っておりますが、この点について大臣の御意見をお伺いしたいと思っております。
  101. 上川陽子

    国務大臣上川陽子君) まさに裁判員裁判の意義に直接関わるということで御質問がございました。  国民裁判員として司法の分野に参加をするということの大変重い意味を考えてみますと、委員指摘のとおり、こうした国民の皆さんの感覚が示されていくという、こうした裁判の積み重ねによってそのことを大事にしていく必要があるのではないかというふうに思っております。判決の積み重ねを非常に大事にしていくということを通して、更により良いものに改善をしていくということが何よりも大事だというふうに考えております。
  102. 魚住裕一郎

    委員長魚住裕一郎君) 田中君、時間です。
  103. 田中茂

    ○田中茂君 国民の期待を裏切るようなことはなく、裁判員裁判制度の充実を図っていくようお願い申し上げて、私の質問とさせていただきます。
  104. 谷亮子

    ○谷亮子君 谷亮子です。よろしくお願いいたします。  本改正案は、裁判員の参加する刑事裁判に関する法律の施行の状況に鑑み、審判に著しい長期間を要する事件等を裁判員の参加する合議体で取り扱うべき事件から除外することを可能とする制度を導入するほか、裁判員選任手続において犯罪被害者の氏名等の情報を保護するための規定の整備を行うものでございます。  そこで、今回の改正案の柱の一つでございます長期間の審判を要する事件等の対象事件からの除外は、審判に要すると見込まれる期間が著しく長期にわたる事件等について例外的に裁判員の参加する合議体で取り扱う事件から除外し、裁判官のみの合議体で審判を行い得ることとするとなっております。この長期間の審判を要する事件裁判員裁判から除外することにつきましては、裁判員制度導入時に議論されました司法制度改革推進本部の裁判員制度・刑事検討会においても議論の対象となっておりました。    〔委員長退席、理事熊谷大君着席〕  その中では、一般方々裁判に主体的に参加し、国民の健全な常識が裁判に反映されることによって裁判一般国民との距離が近くなり、責任を負っていただけるようになることを通して国民的な基盤を確立していくということや、現在の職業裁判官による裁判が正常に機能しているということを前提に、非法律家である裁判員を加えることによって国民の司法に対する理解を深める、あるいは支持を深め、そのことで刑事司法により強固な国民的な基盤を得ることにつながるという見解が示された一方で、裁判員の役割である量刑については、裁判員が本当に多くの影響を及ぼすかというと、実際上あり得ない、また裁判員が独自の意見を述べて、これはすごい意見だということはあり得ない等の議論が展開されておりますけれども、これを受けて、報道におきましても、素人に期待は禁物、感情に流された素人判断ともこれは報道で出ておりました。  このように、当時の裁判員裁判を導入する時点においてのこのような背景と今回の法改正を照らし合わせてみますと、長期間の審判を要する事件等は裁判員裁判事件対象から除外というのは、裁判員方々負担軽減の側面からも一つ考えられているということもあるようでございますけれども、除外の明確な理由等については何であるのかということを私も感じております。  また、裁判員裁判制度が導入されてから六年が経過をいたしましたが、この六年で裁判員裁判では、有罪判決が言い渡されたものの上訴審において無罪が確定した人員は、平成二十三年は二人、平成二十六年は三人の合計で五人となっております。  また、死刑判決が言い渡された人員は、平成二十一年度はありませんでした、ゼロでした。二十二年は三人、平成二十三年度は九人、平成二十四年度は三人、平成二十五年度は五人、平成二十六年度は二人、平成二十七年度は三月末まででございましたけれども、一人となっておりまして、これまでで合計二十三人となっておりまして、ここ二年に限りましては減少傾向になっております。  そこで、今回、長期間の審判を要する事件等を裁判員裁判対象事件から除外ということで法改正が行われるわけでございますけれども、今回の除外の明確な基準、また理由等というのはどういったところにあるのでしょうか、伺います。
  105. 林眞琴

    政府参考人林眞琴君) まず、今回、こういった著しく長期にわたるような事案について裁判員裁判から除外するということの理由でございますけれども、これについては、こういったような非常に著しく裁判員となる一般国民に負い切れない過重な負担を課すような事案につきまして、あくまでも例外なく国民裁判員制度の参加を求めるとしますれば、本制度のそもそもの目的でございます司法に対する国民理解の増進とその信頼の向上を図るという、こういった裁判員制度趣旨に反してしまうということがその理由でございます。    〔理事熊谷大君退席、委員長着席〕  その上で、裁判員制度対象事件からの除外につきまして、この基準についてでございますけれども、今申し上げたように、裁判員制度趣旨自体を今回の法律案で変えるわけではございませんので、これまで裁判員の参加する合議体で審判することが可能であった事案と同程度の審判期間となる事案については、今後も、通常、裁判員の参加する合議体で取り扱われることとなると考えられます。  そのために、今回の法改正によって除外しようとする事件になりますと、裁判員制度の施行後、現在までには生じたことがないような審判期間あるいは公判期日等の回数を要する事案ということになります。そうしますと、事柄の性質上、具体的に審判期間とか公判期日の回数がどの程度になるのかといった具体的な基準を示すことは困難でございます。したがって、法文上は今回、具体的な基準、審理期間を何日とか公判期日の回数については何回とか、こういった具体的な基準を示していないところでございます。  結局、そういうことから、どの程度であればこれが例えば著しく長期に該当するのかということにつきましては、こういった法改正の趣旨を踏まえまして、個別具体的に裁判所が判断することとなります。  こういった、どのような場合に対象事件からの除外の決定がなされるかにつきましては、裁判所において判断されるわけではございますけれども、法律案の中では対象事件からの除外決定の要件というものは厳格に定めておりますし、また、その除外決定の判断となりますと、これは当該事件の公判審理を行う受訴裁判所とは別の裁判官の合議体が行うと。その判断に対しても即時抗告という形での不服申立てが可能となっている。こういったような、ある意味、恣意的に裁判員制度対象事件からの除外が行われることがないような制度上の仕組みも設けた上で、今回の除外の決定ができるという改正を行おうとするものでございます。
  106. 谷亮子

    ○谷亮子君 ありがとうございました。  やはり除外決定の要件は定められているということでございまして、一つ一つ裁判ごとに除外するかどうかということをしっかり判断されていくということであったというふうに思います。  裁判員裁判が導入されましてから六年が経過をいたしましたけれども、今後、この裁判員裁判は重要な役割を果たすとお考えでいらっしゃいますでしょうか、また期待される点はどのような点がありますでしょうか、お伺いいたします。
  107. 上川陽子

    国務大臣上川陽子君) 平成二十一年の五月の裁判員裁判の施行後六年ということでございまして、様々な運用をする中で広く国民の皆さんが裁判の過程に御参加をしていただく、そして、その感覚が裁判内容にも反映されることによって司法に対しての国民の皆さんの理解やまた支持が深まる、さらに司法がより強固な国民的な基盤を得ることになると。このことの本来の趣旨に照らして考えてみると、その期待された効果につきましても一定の評価がなされるものではないかというふうに考えております。その意味で、国民の間にも定着をしてきつつあるなというふうに前向きに評価をしているところでございます。  また、今後につきましては、更に多くの皆さんに裁判員経験していただくということでございまして、その意味で、国民の皆さんの司法に対しての御理解、また御支持が深まり、さらには司法への信頼が高まっていくということが大変大事であるというふうに考えておりまして、こうした期待を実現することができるように、法務省として制度の更なる運用改善ということにつきましても努力をしてまいりたいというふうに思っております。  また、今回の法律の改正におきましても、この審議をしていただく過程の中で御指摘いただいていることにつきましても真摯に受け止めて、その対応を含めての検討もしてまいりたいというふうに考えております。
  108. 谷亮子

    ○谷亮子君 上川大臣、ありがとうございました。  やはり今回の法改正の趣旨にのっとって、また今後も裁判員裁判がこれは制度としてしっかりと進められていくものであるというふうに思っております。  そこで、やはり裁判に参加していただく裁判員の方の環境の整備について、次からの質疑を行ってまいりたいというふうに思います。  子育て中の方が裁判員を務める場合の環境整備についてでございますが、四月三十日には、公判回数が三十九回と裁判員裁判で過去最多であった裁判が判決を迎えましたが、在任期間が実に百十三日にも及んだ裁判員を務められました子育て中の女性も、やはり子育てをしているので大変だった、行政が優先的に託児所を割り当ててほしいとの希望を述べられていらっしゃいます。  そこで、その環境整備のうち、特に子育て中の女性が裁判員を務める場合の一時保育サービスの利用の在り方について伺いたいと存じます。  これにつきまして、私は、平成二十五年十一月五日の法務委員会におきましての一般質疑で、一時保育サービスの利用に際しては、自治体によってこれは有料のところと無料のところがありますので、子育て中の女性で裁判員に選任された方が裁判に参加しようという希望に沿えるよう、国としてしっかりと環境整備に取り組むべきとの質疑をさせていただきました。  その際、法務省からは、平成二十一年に設けられ、平成二十五年六月に取りまとめ、報告書が出されました裁判員制度に関する検討会において、育児をしている方々あるいは小学生の子供を持っている方々がより参加しやすい制度とするにはどうしたらよいかについて議論がなされ、検討会における最終取りまとめの中で、その運用に関する様々な問題については、今後とも裁判員裁判の実施に関わる法曹三者等においてより良く運用され、ひいては司法に対する国民理解の増進とその信頼の向上に資することを期待するとされたところである、このような議論も参考にしながら実務の運用に更に努めていくものと承知しているとの御答弁をいただいたところでございました。  そこで、その後、裁判所として、各地方自治体に対しまして、子育て中の裁判員が一時保育サービスを利用する際における配慮に関する取組、また働きかけ等を現在どのように行っているのかについて改めて伺いたいと思います。
  109. 平木正洋

    最高裁判所長官代理者平木正洋君) お答え申し上げます。  保育サービスの実施体制の確保につきましては、最高裁判所としましては、裁判員制度の施行に向けて、各地方裁判所に対し、裁判員裁判実施庁の所在市との間で保育サービスの情報提供の在り方について協議するように依頼する旨の書簡を発出し、これを受けて、各地方裁判所と所在市との間で協議が行われたところでございます。  各地方裁判所では、制度施行後、この協議等に基づきまして、裁判員候補者方々に一時保育サービスを御利用いただけるよう、裁判員候補者に対し保育施設の御紹介等に関する案内文書を送付するなどして、必要な情報の提供に努めているものと承知しておるところでございます。
  110. 谷亮子

    ○谷亮子君 ありがとうございます。  ただいま御答弁いただきましたように、最高裁判所から全国の区市町村に対しまして一時保育サービスの利用について働きかけをされていらっしゃるという現状でございますけれども、現状、区市町村において、無料、有料を含めましてどのような状況になっているのかについて伺いたいと思います。
  111. 平木正洋

    最高裁判所長官代理者平木正洋君) お答え申し上げます。  最高裁判所といたしまして、全国の区市町村において裁判員候補者に提供している一時保育サービスが有料であるか無料であるかといった情報を網羅的に把握しているわけではございません。  もっとも、東京地方裁判所から聴取したところでは、平成二十六年度には、東京二十三区内におきまして、一時保育受入れ可能な保育施設として各区役所から裁判所に情報提供があった施設は七百を超えており、そのうち、半数近い三百を超える施設では裁判員等の一時保育サービスを無料としているとのことであります。  東京地方裁判所におきましては、このような保育所の利用料金のほか、利用時間、申込み方法等の情報につきまして一年ごとに東京二十三区から情報提供を受けておりまして、育児中の裁判員候補者から問合せがあった際に、保育施設に関する情報をお知らせするなどして役立てているものと承知しておるところでございます。
  112. 谷亮子

    ○谷亮子君 ありがとうございました。  昨日、この質疑の通告をさせていただいたときには、そうした有料である無料であるということが、その時点では把握していないということで、本日の答弁までに御用意していただくということをおっしゃっていただいて、東京都に限って東京地方裁判所の方で精査していただいたことに敬意を表したいというふうに思いますけれども。  やはり全国的にまだまだそうした有料のところがあったり無料のところがあったりという現状で、東京において、東京地方裁判所の方からの報告等、ただいまの答弁の中で伺ってみますと、やはり七百を超えている保育サービスをやっているところがあると。また、三百を超える施設が、これは無料で保育サービスを行っていて協力してくださっているというような現況があるということでございますので、やはりこうした子育て中の方が裁判員を務められるにふさわしいといいますか、そうした環境の整備というのは今後更に求められてくるものであるというふうに思いますので、そうした希望する方が一時保育を利用しやすくなるような環境の整備というものも行っていただきたいというふうに思います。  これまでは、宿泊費以外の雑費等については、保育サービス料も含めて、日当から支払われている分からそのものを全部御本人が支払っていくというような現状にあったというふうに思いますので、ただいまお話しいただきましたことも含めて、今回の法改正でそこが見直されるのかといったらそうではないかもしれませんけれども、今後そうしたことも、裁判員の方のための環境の整備というものも是非行っていっていただきたいなというふうに思っております。  このことにつきましては、五月十五日の衆議院の法務委員会での法案採決時に、附帯決議の項目の一つとして、「事業者による特別な有給休暇制度の導入などの職場環境改善の促進、保育所・学童保育等を日常的に利用していない者がこれらの施設を利用することの確保等、できる限り国民裁判員として裁判に参加できるような環境の構築に向けて、更に積極的に取り組むこと。」を付することが、これは全会一致で決定されたところでありますが、今後更に具体的な取組について、上川大臣に御所見を伺いたいというふうに思います。
  113. 上川陽子

    国務大臣上川陽子君) 衆議院におきまして御審議をいただきました結果といたしまして、五月の十五日の衆議院法務委員会において、この法律案の採決時において御指摘内容を項目の一つとしておりますところの附帯決議、これにつきまして全会一致で可決をされたということで、大変重く受け止めているところでございます。  裁判員制度そのもの国民の皆さんの一般の感覚を裁判に反映をさせるという、こうした趣旨に照らして考えると、保育所、学童保育の利用等、保育やまた育児をしている方々につきましてもしっかりと参加しやすい環境を整えていくということは、積極的な御参加をいただく上でも大変重要なものであるというふうに考えているところでございます。  これまでも、法務省におきましても様々な環境整備にも努力してきたところでございますが、なお課題も多いということでございまして、さらに、そうした附帯決議に盛り込まれたことにつきましては真摯に受け止めながら、また最高裁判所関係府省とも連携をしながら、参加しやすい環境整備におきましては更に努力をしてまいりたいというふうに考えております。
  114. 谷亮子

    ○谷亮子君 上川大臣、ありがとうございました。  今回、私が取り上げたのは、子育て中の裁判員を務めていただける方ということで取り上げさせていただきましたが、さらには仕事を持っている方であったり、さらには介護中の方であったり、様々な方々がいらっしゃいますので、そうした方たちへの環境整備等も含めて、今後更に良くしていっていただきたいなということをお願いさせていただきたいと思います。  次に、通訳を要する事件裁判員裁判を担う法廷通訳人に関する現況の課題について取り上げたいというふうに思います。  法務省の統計によりますと、我が国に入国する外国人の数は平成二十四年から急激に増加しておりまして、平成二十四年の九百十七万二千百四十六人から、平成二十五年は千百二十五万五千二百二十一人、平成二十六年には千四百十五万百四十八人と、前年に比べまして約二百九十万人、率にいたしまして二五・七%の増加と、過去最高になったとのことでございました。  そのような影響もございまして、警察庁の統計によりますと、来日外国人犯罪の総検挙件数、人員は、平成十六年は四万七千百二十八件で二万千八百四十二人、平成十七年は四万七千八百六十五件で二万千百七十八人というピーク時と比較いたしますと、近年低い水準で横ばいを続けていましたけれども、平成二十五年度は総検挙件数、人員共に僅かながら増加に転じ、平成二十六年度には総検挙件数は一万五千二百十五件と、前年比で二百四件減と僅かに減少したものの、総検挙人員は一万六百八十九人と、前年比で八百五人こちらは増加したということでありました。また、平成二十六年の統計と、来日外国人犯罪の検挙が顕著に増加し始める以前の平成二年と比較いたしますと、総検挙件数は平成二年の六千三百四十五件の約二・四倍、総検挙人員は平成二年の四千七百七十人の約二・二倍と、これは高い水準にあるという現状になっております。  このような来日外国人犯罪の現状を踏まえますと、日本語が分からない、また日本語を知らない外国人が日本の裁判関係する場合に、その外国人がきちんと裁判に関与できるように法廷等での発言を通訳する通訳人がこれは必要となるわけでございます。通訳人は、例えば被告人が外国人である刑事裁判においては、被告人の発言を日本語に通訳し、裁判官、検察官、弁護人、証人などの発言を外国語にこれは通訳をして、日本語が分からない、また知らない被告人と裁判官、検察官、弁護人などとの間の橋渡し役となるわけでございます。こうしたことを通じて、通訳人は、被告人の人権を保障し、また適正な裁判を実現する上で非常にこれは重要な役割を果たしていただいております。  そこで、どのようなこれは言語の事件であっても能力のある通訳人を付ける必要があると考えられますが、このような法廷通訳人を確保するために裁判所としてはどのような取組を行っていらっしゃいますでしょうか、伺います。
  115. 平木正洋

    最高裁判所長官代理者平木正洋君) お答え申し上げます。  裁判所では、具体的な事件において裁判官が速やかに適切な通訳人を選任できるよう、法廷通訳人候補者名簿を作成しているところでございます。また、裁判所といたしましては、より多くの通訳人候補者を確保できるよう、法廷通訳に関するリーフレットを大使館や領事館、各地の大学、語学学校、国際交流協会等に配付したり、裁判所のホームページにおいて通訳人候補者の募集を行うなど、通訳人候補者の確保に向けた広報活動も行っております。  今後も、こうした取組を通じまして通訳人候補者の確保に努めてまいりたいと考えております。
  116. 谷亮子

    ○谷亮子君 ありがとうございました。  非常に重要なことであるというふうに思っています。やはり、法廷での通訳ということから、通訳される方に裁判手続等々の御理解をしていただくための取組というのも、これ併せてお願いをさせていただきたいというふうに思います。  また、裁判員裁判は、他の裁判と異なりましてほぼ連日開廷であり、また、口頭主義を重視しているため、通訳人負担増がこれは懸念されているところもございます。  静岡県立大学法廷通訳研究会による二〇一二年、法廷通訳の仕事に関する調査報告書における法廷通訳人対象としたこれはアンケート調査の集計結果を拝見させていただきました。そこには、裁判員裁判経験した調査対象者の八割が負担が増えたと感じており、その理由といたしましては、集中審理により連日公判があり、翌日の準備時間が足りないこと、また拘束時間等が延びたことや、裁判員裁判で弁護側が冒頭陳述や最終弁論に力を入れることと関連をして、翻訳が必要となる書類が多く、準備の時間が足りないことなどが挙げられております。  また、最高裁判所事務総局調べによりますと、刑事事件における要通訳事件の通訳料の予算額を見てみますと、平成十八年度の六億八千六百七十三万五千円をピークに減少しておりまして、裁判員制度が導入された平成二十一年度からはこれは二億円台で推移してきているという現状でございました。  そこで、裁判員裁判では、法廷通訳人の業務量等が、負担が増えているという現況にあるようでございますけれども、裁判員裁判における通訳に関する報酬基準というのは設けられているんでしょうか。
  117. 魚住裕一郎

    委員長魚住裕一郎君) 答弁は簡潔に。
  118. 平木正洋

    最高裁判所長官代理者平木正洋君) お答えいたします。  法廷通訳人に対する報酬につきましては、刑事訴訟費用等に関する法律七条におきまして、裁判所が相当と認めるところによると定められており、各裁判体が個別の事件ごとに決定すべきものとされております。  したがいまして、例えば最高裁判所通訳人の報酬について基準を定めるようなことはこの法律との関係で問題があるため、一定の報酬基準というものは定めてございません。
  119. 谷亮子

    ○谷亮子君 ありがとうございました。  これはそれぞれにやられているということで、重要な課題というふうに考えます。  まだまだ通告はしていたんですけれども、今日は時間が限られているということで、また対政府質疑のときにお願いしたいと思います。  ありがとうございました。
  120. 矢倉克夫

    ○矢倉克夫君 公明党、矢倉克夫です。  私が最後でございますので、あともう少しお付き合いいただければと思います。  今日は、先ほど来よりいろいろ御質問がありました。大体いろんな方がもう御質問されておりますので、谷先生と田中先生のいつもの心境がよく分かっている感じではあるんですが、六年を迎えた裁判員制度でございます。趣旨は、御案内のとおり、司法の国民的参加、私個人の評価としては、着実に成果も上げて、ただ改善すべきところはしっかり改善しなければいけないと、その点はあると思います。  国民参加を得るというところは当然ですけど、市民感覚というのをしっかり反映させて、それをまた国民の司法に対する理解と支持につなげていくことで司法が国民的基盤を得ていくことであるという理解でおります。  その上で、今回の法律案、一定の重大な、長期にわたることが予想されている、審議が長期にわたるようなことが予想されている事案については、この裁判員裁判制度、これを除外するということを主な内容一つとしているわけですが、先ほどの司法への国民的参加という趣旨を踏まえた上で、今回このように除外をされたその理由について、当局からまず御説明いただきたいと思います。
  121. 林眞琴

    政府参考人林眞琴君) 今後、公判前整理手続において十分な証拠の整理を仮に行ったといたしましても、審判に要する期間が著しく長期化するような事案でありますとか、その期間自体は著しく長期とは言い難いものの、週に四日ないし五日といった頻度で著しく多数回にわたりまして公判期日が開かれるような事案、こういったものがあることが想定されます。そのような事案につきましても例外なく国民裁判員制度への参加を求めるとするならば、裁判員となる一般国民に負い切れない過重な負担を課すこととなりまして、国民の司法に対する理解や支持を損なうことにもつながりかねず、かえって司法に対する国民理解の増進とその信頼の向上を図るという裁判員制度趣旨に反してしまうという事態が考えられます。  また、そのような事案におきましては、裁判員の選任等に要する期間も長期に及ぶ場合が生じ得ますが、その結果、公判前整理手続が終了して争点と証拠の整理が終了しているにもかかわらず、被告人とは無関係の事情で公判が長期間にわたって開始できなかったり、あるいは公判は開始されたものの判決に至るまでの期間がいたずらに長期化したりするなどの事態が生じた場合には、迅速な裁判を受けるべき被告人の利益を不当に損なうことにもなりかねず問題がございます。  そこで、こういった事案につきましては、裁判員の参加する合議体ではなく、裁判官のみから構成される合議体による審判を可能とすることが必要かつ適切であると考えまして、今回の法改正を行うこととしたものでございます。
  122. 矢倉克夫

    ○矢倉克夫君 裁判員裁判制度の本来の趣旨を確保するために今回除外をするというような御説明であったかと思います。  先ほど林刑事局長、谷先生の質問に対して、これまで可能であった事案については引き続き裁判員制度を導入するというような御趣旨の発言もされたかと思います。  私、今日の問題点、端的に申し上げますと、何が今まで実施できた体制であったのかということを、これは過去の例だけで簡単に判断するわけではなくて、やはり不断に調査はしていかなければいけないと。これまでできたから今後もできるかというような話ではなくて、やはり国民への負担ということもしっかりこれからもチェックをしていって、不断にチェックをしていくこの過程がやはり大事であるんじゃないかなというところが私の今日の問題点の一つであります。  それでお伺いもしたいんですが、除外理由、先ほど来お話もありましたとおり、幅広く国民から裁判員となることを確保するために除外をするということであります。これに適合するような程度の、今回の法文であれば、著しく長期にわたる又は著しく多数に上るというのは一体どの程度のものであるのか、また裁判所始め、この除外決定について今後どのように判断をしていくのか、大臣から御発言をいただければと思います。
  123. 上川陽子

    国務大臣上川陽子君) 委員も御指摘をいただきました裁判員裁判、この趣旨に鑑みますと、広く裁判員裁判を実施していくということが大変大原則であります。例外の中で今回お願いをしているところでございます。したがいまして、これまで裁判員の参加する合議体で審判をすることが可能であった事案と同程度の審判期間となる事案につきましては、今後も通常の裁判員の参加する合議体で取り扱われるということであるというふうに考えます。  ただ、何日以上であれば著しく長期であるというような形で具体的になかなか明示しにくいということでございまして、その意味で、施行後の当分の間は、実際に裁判員等の選任手続を実施をして、辞退申立て状況あるいは選任状況をしっかりと考慮をした上で判断をすることになろうかというふうに想定をしているところでございます。さらに、この事例が一定程度蓄積をされた後につきましては、実際に裁判員選任手続を実施せずに、過去の同種事例における裁判員の選任等の状況を考慮して判断をされるということが想定をされるということでございます。  まさに、不断のチェックをしていくということが極めて重要であるというふうに考えております。
  124. 矢倉克夫

    ○矢倉克夫君 ありがとうございます。  大臣今おっしゃったとおり、一つの基準をはっきり決めていくという方向であると、それ以外のまた弊害等もやはり生じてくる部分はあるかと思っております。個々の判断に照らしてノウハウを共有していくこと、これも一つはやはり大事であるかとは思っております。  他方、今回の、要は、先ほど来も強調しますけれども、国民参加というその理念を実現するためには、国民負担というものがどういうものであるかということもやはりチェックをしなければいけないと。参加をいろいろ確保するためには参加を一部否定をしなければいけないというこの矛盾している状況、これも一つ、この制度維持するためには、国民の責任とまた負担というものがやはり全体として生じざるを得ないというところは一つの前提であるかと思っております。  これをどう調整するかというところですが、一つ明確に言えることは、国民の皆様に不可避的な負担はあるわけですけれども、やはりそれ以上にやってよかったと意義を感じていただくというような部分というのは、これは、いかなる事案があって辞任をされるか、そういう事実もあるかもしれないですけれども、やはり大事な部分であるかと思っております。  その部分では懸念が出ているのは、先ほど来からもお話のある、辞任する率というのが非常に増えてきているというところであるかと思います。率の部分での増加の部分はもう既に御説明もあったところではあるんですが、これにつきましてはどうすればよいかというところですけれども、他方で、最高裁アンケートなどによると、裁判員経験された方は、もう何度も出ていますが、よい経験だったということを九五%もおっしゃっている。この部分での経験のノウハウというのをやはりこれから裁判員として経験される方に対しても共有していく、候補となられた方、また、それ以外の一般の市民の方にもやはり共有をしていくということが、この裁判員として参加をすることの意義というものを広く伝えていって、それが裁判員として活動していこうという動機付けにもやはりなっていく。これが広くは、最終的には国民の参加という裁判員制度をしっかり維持していくことにもなっていくかと思っております。  その点でまたお伺いをしたいんですが、やはり実際に裁判員経験された方の知識等を、これは裁判員間同士でコミュニティーで話し合うことも大事なんですが、これから経験をされるという方に対してもしっかりと共有をしていくということも、これは大事であるかと思っております。これについてどのように取組をしていくおつもりであるのか、こちらは最高裁からお伺いをしたいと思います。辞退率の増加の原因等の分析は結構でございますので、今の点のみよろしくお願いします。
  125. 平木正洋

    最高裁判所長官代理者平木正洋君) お答え申し上げます。  委員指摘のように、裁判所といたしましても、より多くの国民の皆様方に裁判員制度を御理解いただき、高い参加意欲を持っていただくことが重要と考えまして、裁判官等が裁判所外の会社や団体などへ赴き、実際に裁判員裁判経験した方の多くが肯定的な評価をしていることなど裁判員経験者の声をお伝えするとともに、裁判員裁判運用の現状と改善への取組状況などを説明するなどして、不安なく審理及び評議に参加してもらえるよう、裁判員制度に関する正確な情報の発信に努めておるところでございます。  裁判所といたしましては、今後とも、裁判員制度に対する理解が広がるよう、適切な情報発信等に努めてまいりたいと考えております。
  126. 矢倉克夫

    ○矢倉克夫君 今のような裁判員として経験された方の経験をやはりいろんな分野で伝えていくときには、既にもう問題提起もされております守秘義務関係なども明確にしていく、話していいというような安心感を与えていくためにも、その部分では、今後の継続の検討事項として是非やっていただきたいというふうに思っております。  続きまして、もう一個議論をさせていただきたいのは、やはり裁判員の判断、とりわけ量刑との関係でございます。先ほど来も田中先生の御質問の中でも話もありました。これに関しましては、昨年七月の最高裁判決がありまして、それ以降で一審の裁判員裁判裁判例破棄がその判決以降続いたというような事態がありました。これを受けまして、一部には、市民感覚というものがこれ制限されているのではないかというようなお声もあるわけであります。  先ほど来から議論しています、市民の方が裁判員として判断をするというような意欲を持っていただくためには、裁判員制度に関心を持っていただかなければいけないと思います。この市民感覚が仮に量刑等に反映されていないということが共通認識になってしまったら、裁判員制度に対する関心そのものがやはり薄れてしまうというような部分は危惧しなければいけないところであるかと思います。  この点、まず、日本の裁判員制度、こちらは量刑判断もこれをすることのように規定もされております。アメリカなどでは、州によっては事実認定のみが陪審員はやるというようなこともあるわけですが、日本の裁判員制度が量刑も判断するようにしたこの趣旨、これをまた御説明をいただきたいと思います。
  127. 林眞琴

    政府参考人林眞琴君) 裁判員制度制度設計に当たりまして裁判員に量刑判断の権限も与えた趣旨でございますが、まず、裁判員裁判に関与する意義は、裁判官裁判員が責任を分担しつつ、法律専門家である裁判官と非法律家である裁判員とが相互のコミュニケーションを通じてそれぞれの知識、経験を共有し、その成果を裁判内容に反映させるという点にあるとされました。  このような意義は、犯罪事実の認定ないし有罪、無罪の判定の場面にとどまらず、それと同様に国民の関心が高い刑の量定の場面にも妥当するので、いずれにも裁判員が関与し、健全な社会常識を反映させることとすべきであると考えられたことによるものでございます。
  128. 矢倉克夫

    ○矢倉克夫君 今お話もありました、やはりもう刑罰というものも国民にとってはこれは重大な関心事であると。それを踏まえた上で裁判員の判断に委ねたという部分、これは意味もあるところであるかと思っております。  昨年の七月の最高裁判断が、これが提起したものは何かというところでありますが、昨年の七月の最高裁判断、求刑が十年であったものが裁判員の判断によって求刑を超える十五年刑が行われた、それが最終的には破棄をされたというような案件でございました。  私、判旨の方も見てみたんですが、一部の報道では、この裁判員制度による量刑というもの、これをいかにも否定したかのような判旨のようにも報道している部分もあるんですが、よくよく読んでみますと、そうではなくて、やはり判旨、この裁判員の判断自体は非常に尊重もした上で、ただ、先例の集積それ自体は直ちに法規範を帯びるものではないが、目安とされるという意義を持っていると。  その上で、大事なことは、量刑判断の客観的な合理性を確保するため、裁判官としては、評議において、当該事案の法定刑をベースにした上で、参考となる大まかな量刑の傾向を紹介し、裁判官全員の共通の認識とした上で評議を進めるべきであり、その上で、必要性があれば裁判員の判断が尊重される場合もあると。やはりベースとなることが量刑判断の客観的な今までの傾向であるというところを言っているかと思っております。  その上で重視すべきは、やはり裁判官裁判員の協議というのが大事だというところを言っているのが判旨のポイントであると思っております。刑の公平性を確保するために量刑の傾向というのは大事なんですが、それを踏まえた上で、裁判員の意思がしっかりと把握できるようにちゃんと協議をしていきなさいというところ。  問題は、当然ですけど、この協議の仕方をどうあるべきかなんですが、最終的に裁判官が先例を押し付けるような協議をしてしまっては、これは最高裁の判旨の趣旨も没却してしまうわけですので、この辺りはしっかり考えていかなければいけないと思います。  その上で、最高裁として、協議の在り方という点についてどのようにお考えであるのか、御意見をいただきたいというふうに思います。
  129. 平木正洋

    最高裁判所長官代理者平木正洋君) お答え申し上げます。  裁判員裁判においてどのような評議をするのか、あるいはどのような量刑を判断をするのかは、個々の事件で各裁判体が判断することでございますので、事務当局としてはお答えする立場にございません。  もっとも、例えば裁判員制度運用等に関する有識者懇談会で、現場の裁判官は次のような評議進め方の例を紹介しております。裁判官から裁判員に対し公平な裁判の要請があるので、同じようなことをやった人にはある程度同じような刑が科されるべきであり、量刑傾向を参照してもらうこと、ただし、事件一つ一つ個性があり、また裁判員裁判事件ごとに選ばれる裁判員方々の感覚を反映させる制度なので、量刑傾向はあくまでも大枠、傾向としてもらいたいことなどを説明している、このように紹介されております。  評議在り方につきましては、裁判官同士の協議会等で意見交換が行われているところでございまして、事務当局としましても、引き続きそのような議論の場を設けるなどして、より良い評議がなされるよう配慮していきたいと考えております。
  130. 矢倉克夫

    ○矢倉克夫君 先ほど引用した、補足意見でございました。補足意見の方で、やはり裁判員に対して、同種事案においてどのような要素を考慮し量刑判断が行われてきたのか、あるいは、そうした量刑の傾向がなぜ、どのような意味で出発点となるべきなのかといった事情を適切に説明する必要があると。その上での判断というのが、実質的な意見交換というのが大事だというような補足意見がありました。  裁判員制度において量刑をしっかり判断をするというような趣旨が没却することもないように、他方で、刑の公平性という今までのノウハウの蓄積もやはり実績も、着実にやっていくためには、この協議をしっかりやっていく必要は非常に重要であるかと思っております。その意味でも、このような協議をしっかり充実させた上で、そのようなノウハウを広く国民全般に広げていくというような方策もまたしっかり考えていくことが裁判員制度の更なる充実に私も発展していくと思っております。  いろいろ多方面で、全般的に今後の改善という部分は非常に多いかと思いますが、今回の法改正をまた一つの契機として更なる充実を図っていただきたいことをお願い申し上げまして、質問終わりたいと思います。  ありがとうございます。
  131. 魚住裕一郎

    委員長魚住裕一郎君) 本日の質疑はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。    午後零時五十八分散会