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2015-03-26 第189回国会 参議院 法務委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成二十七年三月二十六日(木曜日)    午前十時開会     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         魚住裕一郎君     理 事                 熊谷  大君                 三宅 伸吾君                 有田 芳生君                 真山 勇一君     委 員                 猪口 邦子君                 鶴保 庸介君                 牧野たかお君                 溝手 顕正君                 柳本 卓治君                 足立 信也君                 江田 五月君                 小川 敏夫君                 矢倉 克夫君                 仁比 聡平君                 田中  茂君                 谷  亮子君    国務大臣        法務大臣     上川 陽子君    副大臣        法務大臣    葉梨 康弘君        外務大臣    城内  実君    大臣政務官        法務大臣政務官  大塚  拓君    事務局側        常任委員会専門        員        櫟原 利明君    政府参考人        内閣大臣官房        審議官      久保田 治君        警察庁長官官房        審議官      露木 康浩君        警察庁警備局長  高橋 清孝君        総務大臣官房審        議官       時澤  忠君        総務省自治行政        局選挙部長    稲山 博司君        法務大臣官房長  黒川 弘務君        法務大臣官房訟        務総括審議官   都築 政則君        法務大臣官房司        法法制部長    萩本  修君        法務省民事局長  深山 卓也君        法務省刑事局長  林  眞琴君        法務省矯正局長  小川 新二君        法務省保護局長  片岡  弘君        法務省人権擁護        局長       岡村 和美君        法務省入国管理        局長       井上  宏君        公安調査庁次長  杉山 治樹君        外務大臣官房審        議官       鈴木  哲君        文部科学大臣官        房審議官     伯井 美徳君        厚生労働大臣官        房審議官     福島 靖正君        厚生労働大臣官        房審議官     中山 峰孝君        厚生労働大臣官        房審議官     苧谷 秀信君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○政府参考人出席要求に関する件 ○法務及び司法行政等に関する調査  (法務行政基本方針に関する件)     ─────────────
  2. 魚住裕一郎

    委員長魚住裕一郎君) ただいまから法務委員会を開会いたします。  政府参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  法務及び司法行政等に関する調査のため、本日の委員会に、理事会協議のとおり、内閣大臣官房審議官久保田治君外十九名を政府参考人として出席を求め、その説明を聴取することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 魚住裕一郎

    委員長魚住裕一郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  4. 魚住裕一郎

    委員長魚住裕一郎君) 法務及び司法行政等に関する調査を議題とし、法務行政基本方針に関する件につきまして質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  5. 三宅伸吾

    三宅伸吾君 おはようございます。  自由民主党三宅伸吾でございます。  本日は、訟務裁判に関する訟務機能につきましてお話を伺いたいと思います。  来年度予算案訟務局を新設すると書いてございます。また、先日の大臣所信表明におきまして、訟務機能充実強化に取り組むという御発言がございました。  そこで、お伺いをいたします。今年度及び来年度予算案におきます訟務に関する予算、そして人員につきましてお聞かせください。
  6. 都築政則

    政府参考人都築政則君) 来年度の訟務関係予算政府案でございますけれども、十八億四千四百五十七万円でありまして、対前年度比一〇〇・〇三%となっております。  また、法務省訟務局の定員としましては、訟務担当の官房審議官等を含めて五十九名でありまして、これは現体制と同数であります。
  7. 三宅伸吾

    三宅伸吾君 ここ数年、国内では規制緩和を通じた事後監視型社会への転換、そしてグローバルに目を向けますと、日本の名誉と信頼を守るためにきっちりと我が国主張を伝えていくというような二つの視点で訟務機能強化が求められていると思います。そういった意味で、大臣所信表明はおっしゃるとおりだと思うんでございますけれども、今お話を伺いますと、人員、そして予算とも前年並みということでございまして、少し寂しいような気がいたしております。法の支配を国内外とも進めるために、訟務機能充実、そしてそれに必要な予算、そして人員の確保に向けて、本日御参会の委員各位の御協力を切にお願いしたいと私思っております。  その関連で、先日の所信表明におきまして、大臣は国の利害関係する訴訟に適切かつ迅速に対応するというふうにおっしゃったわけでございます。ここで述べられております適切というのはどのような定義でお使いになったんでございましょうか。国の裁判でございますので、勝てばいいと、そういう理解でよろしいんでしょうか。
  8. 上川陽子

    国務大臣上川陽子君) ただいま委員から私の所信に関しまして、国の利害関係する訴訟に適切かつ迅速に対応するという中での、この適切ということについての御質問がございました。  訴訟に適切に対応するということでございますけれども、裁判所に適正な御判断をいただくというためには、当事者としての国の主張あるいは論点を法と証拠に基づきましてしっかりと提供していくということでございます。勝訴するということが意味するものではないということでございます。この法と証拠に基づきます訴訟活動につきまして、これを尽くすということが大変大事だというふうに考えておりまして、尽くした上で判決を仰ぐということでございます。そうしたきちんとした主張、立証を尽くさないままに敗訴判決を受けるということにつきましては、適切ではない、不適切なものというふうに理解をしているところでございます。
  9. 三宅伸吾

    三宅伸吾君 ありがとうございます。  最近、国の利害に関する大型の訴訟が私、大変増えているように思う次第であります。例えば、連日新聞記事が報じられております一票の格差をめぐる憲法訴訟があろうかと思います。また、最近ですと、アスベストの被害防止について国の不作為責任が問われた国家賠償法裁判がございました。また、いわゆる沖縄返還時の密約に関する文書の開示損害賠償を求める請求訴訟もございました。  今日は、少し前の最高裁判決でございますけれども、四年前の事件を題材に、適切というところで、負けっぷりも大事だというちょっとお話をしてみたいと思います。  これは、大手の消費者金融会社経営者である父が息子国外資産贈与したという事件でございまして、評価額で約千六百五十三億円を平成十一年に贈与をいたしました。これに対しまして、国は約千三百億円の追徴をいたしました。内訳は、約千百五十七億円の贈与税、そして百七十三億円余りの加算税の賦課でございます。合わせまして約千三百億でございます。もらった息子の方は、自分は贈与を受けたときには海外に住んでおったので贈与税納付義務はないということで争ったわけでございます。  結局、平成二十三年になりまして、最高裁判決が出ました。国敗訴でございまして、何が起きたかと申しますと、利子が発生しますので、還付加算金が約四百億円発生したわけでございます。来年度の法務省訟務関係予算の二十倍強という還付加算金を、国は消費者金融経営者息子さんに還付するというような報道があるわけでございます。結果論かもしれませんけれども、もっと早く負けていれば還付加算金は四百億に達していなかったというわけであります。  租税の裁判におきましては、どうしてもグレーなところがございますので、負ける可能性もあるかもしれないと思って追徴に動くということがひょっとしたらあるのかもしれません。負けることによって、法の欠缺と申しますか、これは、現行法では形式上納税義務はないけれども、公平な観点からやっぱり穴を塞ぐべきだという議論が高まることも私は想定されると思います。  ですから、絶対負けると思って追徴すると多分違法な行為だと思いますけれども、グレーな場合に、どうも勝てそうにないなと途中で分かったときには負けっぷりが大事だということでございます。還付加算金が膨らまないように早期の時点で判決を確定をして次の制度改正につなげるというような戦略的発想も私は適切な訟務機能の一部ではないかというふうに思うわけでございます。  次に、単に勝っても駄目だというような話をしたいと思います。勝ちっぷりが大事だというわけでございます。  本年一月二十九日、衆議院予算委員会におきまして、戦後補償をめぐる訴訟に関し、稲田朋美委員質問に対しまして、上川大臣はこのように答弁をされております。日韓請求権協定日華平和条約等によって解決済みで、原告らの請求理由がないことが法的に明らかであるということが大変多いということもございまして、これまで御指摘のような訴訟方針を取ってきたものと答弁されておられます。  この文脈で大臣が御指摘訴訟方針と述べられておりますけれども、何を念頭に置いての御発言でしょうか。
  10. 上川陽子

    国務大臣上川陽子君) ただいま衆議院予算委員会での答弁に関して、御指摘のような訴訟方針ということで私が述べたところでございますが、国内でのいわゆる戦後補償関係訴訟におきましては、日韓請求権協定日華平和条約等によりまして解決済みであると、原告らの請求理由がないことが法的に明らかであるということが多いということでございますが、こうしたことから、これまでは事実関係認否反対尋問を行う必要がないものという訴訟方針を取ってきたことを指してそのように述べたものでございます。
  11. 三宅伸吾

    三宅伸吾君 条約等によって裁判は勝ったわけでございますけれども、反対尋問等をせずに事実関係を争わなかったその結果、相手側の事実関係に関する事実だけが判決文に記載をされて、それが引用されて、我が国の名誉と信頼が毀損されるような事態が現に様々なところで起きているわけでございます。  今大臣おっしゃったこれまでの訴訟方針は維持されるんでしょうか。
  12. 上川陽子

    国務大臣上川陽子君) 今回の訟務局が新設されるということの部分でございますけれども、自らの体制を整備し、その能力につきましては一層向上させるということでございます。関係行政庁に強力に指導をする、あるいは統率をする、そういう形で訴訟対応をするということを目的としてこの訟務局充実したものにしていくということでお願いをしているところでございます。  今のような訴訟方針ということでございますが、今後につきまして、従軍慰安婦訴訟などの我が国の名誉と信頼に関わる戦後補償訴訟が提訴された場合におきましては、戦前の事実でありますし、また種々の困難が伴うものとは思いますけれども、事実の調査をいたしまして、その結果を踏まえて認否、そして反対尋問することも含めまして、より主体的、積極的な姿勢訴訟に臨むことができるように努めてまいりたいというふうに思っております。
  13. 三宅伸吾

    三宅伸吾君 是非しっかりとその方向でお取組をいただきたいと思います。  この慰安婦をめぐる訴訟では、また今後も米国などで損害賠償を求める動きが出ているようでございます。また、慰安婦の碑とか像には必ずしも立証されていない事実、不正確な記述日本のイメージが下がるような文言が刻まれていると聞いております。きっちりと今後反論を政府の方にはいただきたいと思います。  この点に関しまして、昨年夏、旧日本軍が済州島でいわゆる慰安婦狩りですか、強制連行したという記事を書いたある新聞社が三十数年ぶりにその記事を取り消したということで話題になったことがございます。ただ、その新聞記事の取消しで問題が解決したわけでは全くありません。私が気にしておりますのは、一九九三年、平成五年の当時の河野官房長官談話と、それからその後の、同日の記者会見における河野官房長官答弁でございます。  昨年六月に公表されました河野談話作成過程等に関する検討チーム報告書によりますと、河野談話作成に当たって、政府は事前の調査をしましたと、そして政府は、いわゆる強制連行確認できないという認識の下で、韓国政府談話表現ぶりについて入念なすり合わせを行っていたということが判明しているわけでございます。現に、その河野談話記述そのものには、募集について、総じて本人たちの意思に反して行われたとの表現はありますけれども、強制連行との記述はないわけです。  しかしながら、河野談話発表後の同日に行われた記者会見におきまして、記者から、強制連行の事実があったという認識なのかと、こう問われた河野長官は、そういう事実があったと、結構ですと述べたと検証報告書は記載し、この報告書外務省のホームページを通じて世界に現在も発信しているわけでございます。  事実調査に基づき、我が国の名誉と信頼を回復するために積極的な姿勢訴訟に臨むという今ございました上川大臣の御発言、私も本当に二〇〇%賛成するところではございますけれども、強制連行の有無に関する主張をめぐっては、河野長官記者会見での発言などが足かせとなることを私は強く懸念しておりますことを申し上げて、本日の質問を終わりたいと思います。  ありがとうございました。
  14. 有田芳生

    有田芳生君 おはようございます。民主党・新緑風会の有田芳生です。  御承知のように、三月二十日で地下鉄サリン事件から二十年が経過をいたしました。既にこれまた御承知のように、一九九五年三月二十日、朝八時以降にオウム真理教地下鉄五路線でサリンをまいたことによって十三人の方がお亡くなりになり、六千人以上の方が傷つくと。今なお被害に苦しんでいる方が多くいらっしゃいます。  オウムの事件がいまだ二十周年ということで新聞、テレビ等々で話題になったということは、一つには、地下鉄サリンをまいたということだけではなくて、オウム真理教という教団が当時、坂本弁護士一家殺害事件、あるいは松本サリン事件、あるいは教団内部での殺人事件などなど、一連凶悪事件を行ったことにやはり理由があるんだろうというふうに考えております。  同時に、後で詳しくお聞きをしたいと思いますけれども、地下鉄サリン事件というものは、特殊な人たちが特殊な教団に入って殺人事件を起こしたんだという見方をしてしまうと、一連裁判が終わって、それぞれの被告人にそれぞれの判断が下されるということで終わってしまうというふうに恐らく一九九五年当時も今も多くの方が思っていらっしゃるんだろうと思います。しかし、そうではなくて、この問題というのは、どこにでもいる普通の人たちが人生のふとしたはざまに凶悪集団、まああえて言えばカルト教団に入ってしまう、そういう問題として、普遍的な課題として捉えるならば、私たちはそこから何を学ばなければいけないのかという課題はいまだこれからも続いていくだろうというふうに思っております。  さらに、今日お聞きしたいのは、もう十一回目になるんでしょうか、私はこの法務委員会ヘイトスピーチ差別扇動表現について様々な課題をお聞きしてきました。法務省が、後で詳しくお聞きをしますけれども、啓発活動、非常に熱心に今、力を注いでくださっております。しかし、にもかかわらず、ヘイトスピーチ差別扇動の集会やデモなどは一向に衰える気配を見せず、いまだ続いているということを考えますと、二〇二〇年に東京オリンピック・パラリンピックを迎える日本として、このままではやはりいけないんではないかという問題意識はいまだ強くあります。  その二点を中心にお聞きをしていきたいと思いますけれども、その前に、まず政治資金規正法の問題を冒頭、上川大臣にお聞きをしたいというふうに思います。  御承知のように、マスコミ、それから衆議院、参議院などでも国から補助金をもらった企業から寄附をもらうということが様々な議論になってまいりましたが、まず総務省にお伺いしたいんですけれども、政治資金規正法寄附質的制限という規定がありますけれども、一体どういうことなんでしょうか、教えてください。
  15. 稲山博司

    政府参考人稲山博司君) お答えいたします。  政治資金規正法寄附質的制限のうち、お尋ねの国から補助金等交付決定を受けた規制関係でございます。  政治資金規正法におきましては、国から一定の補助金等交付決定を受けた会社その他の法人は、当該補助金等交付決定通知を受けた日から一年を経過する日までの間は政治活動に関する寄附制限されているところでございます。また、何人も、当該寄附制限規定に違反してされた寄附であることを知りながら、これを受けてはならないものとされているものでございます。
  16. 有田芳生

    有田芳生君 上川大臣についても、例えば今年の二月二十七日、これは朝日新聞の夕刊ですけれども、法相側にも寄附六十万円、補助金交付企業からと大きな記事が出ております。あるいは翌二十八日にも、二〇一一年から一二年にかけて法相側にも九十万円という記事が出ましたが、この一連経過について、上川大臣、どういうことだったんでしょうか、教えていただけますでしょうか。
  17. 上川陽子

    国務大臣上川陽子君) ただいま委員指摘の点でございます。  私が代表を務めます政党支部に対する寄附につきまして、当該企業補助金交付を受けていたことにより、政治資金規正法に違反するのではないかという御指摘がございまして、この御指摘につきましては、既に記者会見等におきましても説明をさせていただいてきたところでございます。お尋ねということでございますので、御説明を申し上げたいというふうに存じます。  私自身、当該企業補助金を受けていた事実を知らず、違法な寄附との認識は全く持っておりませんでしたけれども、御指摘を真摯に受け止めまして、丁寧に調査を行い、また違法な寄附との疑いを指摘された当該企業におきましても大変重大な問題であるということでございますので、当該企業におきましての検討結果も踏まえた上で正確にお答えしたいなというふうに考えたところでございます。  調査の結果でございますが、国土交通省所管をいたします広域物資拠点施設整備費補助金、そして環境省所管いたします低炭素価値向上に向けた社会システム構築支援基金事業に係る補助金、そして環境省所管をいたします家庭事業者向けエコリース促進事業費補助金当該企業が受け取っていたこと、そしてそれぞれの交付決定から一年以内に当該企業から私が代表を務めます政党支部寄附をいただいていたことが確認されたところでございます。このうち、環境省所管する各補助金につきましては、いずれも国が直接交付決定をしたものではないということで、政治資金規正法寄附制限されることにはならないということが確認ができました。  次いで、国土交通省所管する補助金につきましてでございますが、国が直接交付決定をしたことが確認をされたわけでございますが、政治資金規正法上、この補助金試験研究調査又は災害復旧に係るものその他性質上利益を伴わないものである場合につきましては寄附制限されることにはならないとされておりまして、この点につきまして、当該企業におきましても、弁護士等専門家による検討を行った結果、この補助金によって寄附制限を受けることがなく、当該企業が行いました寄附につきましては適法なものであるということが改めて確認できたということでございました。そして、この結論につきまして疑問となる点は見当たらず、また当該企業からの寄附には何ら問題がなかったというのが私の判断でございます。  私といたしましては、こうして、国民の皆様からの信頼を得られるように、今のようなことも踏まえまして、しっかりと襟を正して、また十分に説明責任を果たしてまいりながら職責を果たしていきたいと、こういう思いでございます。
  18. 有田芳生

    有田芳生君 当時の新聞報道では、先ほどもお示ししましたように、六十万円、九十万円というような具体的な金額指摘をされていたんですが、その疑惑と言われた補助金をもらった企業から、大臣金額として幾ら寄附を受けていらっしゃったんでしょうか。
  19. 上川陽子

    国務大臣上川陽子君) ちょっと今新聞文言と、文言というかデータとの間で、何月から何日という、多分そういうことがあろうかと思いますけれども、それがちょっと手持ちですぐに計算できませんので、もしあれでしたら改めて御報告させていただきたいというふうに思います。
  20. 有田芳生

    有田芳生君 衆議院の方ではそういう資料提供をお約束はされておられませんでしたでしょうか。
  21. 上川陽子

    国務大臣上川陽子君) 衆議院の方のやり取りということでございますけれども、今私が申し上げました三つの補助金ということで、これが交付決定日から一年間の献金額ということでよろしゅうございますでしょうか。  これにつきまして、まず広域物資拠点施設整備費補助金につきましては、交付決定日、これが平成二十五年の三月十五日ということでございまして、私は、平成二十五年の三月三十日から一年間ということで、平成二十六年の二月二十八日ということでありますが、七十二万円ということでございます。それからもう一つ、低炭素価値向上に向けました社会システム構築支援基金事業、これは環境省のものでございますが、補助金決定日でございますが、平成二十五年の八月の十日ということでございますので、同年の八月三十日から一年以内ということで、七十二万円ということでございます。それからもう一点の、家庭事業者向けエコリース促進事業費補助金ということでございますが、平成二十三年の九月二十八日、十二月十三日にそれぞれ交付決定を受けたということでございまして、こちらにつきましては二十三年の九月三十日から二十四年の十一月三十日ということでございますが、九十万円ということでございます。  以上でございます。
  22. 有田芳生

    有田芳生君 先ほど総務省からの御説明もありましたけれども、今大臣説明してくださったことでもあるんですけれども、やはり政治家が知らなかったということでいいのかということが大きな議論にこれからなっていくだろうというふうに思います。これは、与野党を問わず、やはり政治資金規正法をこれからどう変えていくのか、変えなければいけないのかという課題になってくるんだと思いますけれども。  私たち民主党も、政治資金規正法改正が必要ではないかということで議論をしてまいりまして、例えば補助金を受けた企業団体に周知徹底する、一年以内には政治献金が禁止されるんだという通知などをきっちりと行うと。あるいは、国による補助金受給企業政治家側への情報開示義務というのも必要ではないか。そうしたことによって、政治家が知らなかった、善意で知らなかったということであっても、それが事実上通用しないような仕組みをつくっていく。あるいは、補助金交付決定者明確化、国以外の団体を経由した補助金も禁止できるとか、あるいは罰則の強化、これも今では懲役三年以下、罰金五十万円以下なんですけれども、それをもう少し厳しいものにするとか、そういったこれからの課題があるだろうというふうに思います。違反した企業には補助金の全額返還を命じるとか、あるいは、これは法改正ではありませんけれども、政務三役の方々にはもっと厳格なルールを定めるとか、そういうことを与野党を問わずこれから国会でも議論していかなければいけないというふうに私たちは考えております。  その上で、次のテーマに移りたいというふうに思います。オウム真理教の問題です。  まず、大臣にお聞きをしたいんですけれども、地下鉄サリン事件の歴史的な意味をどのように捉えていらっしゃるでしょうか。
  23. 上川陽子

    国務大臣上川陽子君) オウム真理教が起こした地下鉄サリン事件、歴史的な意味ということでございます。  地下鉄サリン事件につきましては、オウム真理教が、不特定多数の者を狙い、また毒性の物質でありますサリンという大変危険な物質を用いて敢行したということでございまして、我が国の歴史上例を見ない悪質でかつ重大な無差別大量殺人事案であるというふうに考えております。  先ほど、委員からもお言葉がございましたけれども、今なお被害に苦しむ方々が大勢いらっしゃるということでございまして、その意味では、事件は過去のものではないというふうに認識しているところでございます。また、このような凶悪事件でございますが、二度とこうしたことがあってはならないと、繰り返させてはいけないというふうにも考えているところでございます。
  24. 有田芳生

    有田芳生君 今お話ありましたように、オウム事件については様々な見方ができるというふうに思います。私は、地下鉄サリン事件というのは、人類史上初めて都市部において化学兵器であるサリンが使われたものであるというふうに理解をしております。あのヒトラー・ドイツでさえサリンを使わなかった、あるいはフセイン大統領がイラクからクウェート侵攻のときにサリンを使ったというふうな事実がありますけれども、人類史上初めて都市部においてサリン、化学兵器が使われたという意味において非常に重要な意味合いを歴史に刻んだんだろうというふうに思います。  今、大臣お話の中でオウム真理教というふうに語られました。大臣法務大臣所信表明を拝見いたしますと、六ページですけれども、治安の確保、国民生活の脅威への対策のところでこう書かれております。「オウム真理教については、先般、団体規制法に基づく観察処分の期間更新が決定されたところであり、引き続き観察処分を適正かつ厳格に実施してまいります。」、主語はオウム真理教になっておりますが、大臣、今オウム真理教というものは存在するのでしょうか。
  25. 杉山治樹

    政府参考人(杉山治樹君) オウム真理教という宗教法人については、今は存在しておらないというふうに認識をしております。
  26. 有田芳生

    有田芳生君 宗教法人法上は、一九九六年に法人格を取られておりますから、宗教法人ではオウム真理教はなくなりましたけれども、オウム真理教というのは今存在するんですか、公安調査庁。
  27. 杉山治樹

    政府参考人(杉山治樹君) 大臣所信表明演説にありますオウム真理教というものは、現在、団体規制法に基づく観察処分に付されている団体、すなわち、麻原彰晃こと松本智津夫を教祖、創始者とするオウム真理教の教義を広め、これを実現することを目的とし、同人が主宰し、同人及び同教義に従う者によって構成される団体と、これを指すものというふうに承知をしております。
  28. 有田芳生

    有田芳生君 いや、端的に答えていただけますか。オウム真理教は今存在するんですか。大臣所信には、オウム真理教についてはと書かれておりますけれども。
  29. 杉山治樹

    政府参考人(杉山治樹君) オウム真理教というのは、ただいま申し上げた団体規制法に基づく対象となっているものを指しておりまして、具体的にいいますと、現在では、アレフ、それからひかりの輪を中心的な内部組織として活動する団体を指してオウム真理教というふうに言っているというふうに理解をしております。
  30. 有田芳生

    有田芳生君 警察庁の「警備情勢を顧みて」という、平成二十六年版「回顧と展望」の中にもオウム真理教という項目がありまして、教団の現状として、主流派と、上祐派、ひかりの輪というふうに書かれているんですが、こういう記述だったら分かるんですよ。  しかし、宗教法人法上、一九九六年に法人格が取り上げられ、さらには二〇〇〇年に破産管財人によってオウム真理教という名称は使うなということでアレフは生まれたんですよね、御承知のように。そうすると、オウム真理教というのはないじゃないですか。違いますか。
  31. 杉山治樹

    政府参考人(杉山治樹君) その団体規制法の対象となっている団体をいわゆるオウム真理教ということで、広く使われている名称ということで使っておるという理解でよろしいかと思います。
  32. 有田芳生

    有田芳生君 つまり、揚げ足取りするつもりは全くありません、そうではなくて、やはり大臣所信ですから、今公安調査庁の次長がおっしゃったように、いわゆるオウム真理教という言い方をするとか、あるいは警察庁が「回顧と展望」でも触れられているように、大臣所信にあるオウム真理教についてはという不正確なものではなくて、もう少し正確に、いわゆるオウム真理教とするのか、あるいはオウム真理教、括弧して後継組織のアレフ、ひかりの輪というような形に、そこを正確にやっていっていただいた方がいいだろうというふうに考えるという趣旨なんです。大臣、いかがですか。
  33. 上川陽子

    国務大臣上川陽子君) ただいま委員から御丁寧に御質問をいただきまして、今のような認識をしているところでございます。表現につきましても、今のような形でこれからはしっかりと明示していきたいというふうに思います。
  34. 有田芳生

    有田芳生君 それでは、大事なところに入っていきたいというふうに思います。  公安調査庁にお聞きをしたいんですけど、オウム残党とあえて言いますけれども、その全体像について今お話しいただけますでしょうか。今どうなっているのか。
  35. 杉山治樹

    政府参考人(杉山治樹君) 教団の現状ということでお答え申し上げます。  観察処分の被処分団体は、現在、アレフ、それからひかりの輪の名称を用いて活動する内部組織を中心に構成されているところでございます。  アレフの名称を用いて活動する内部組織は、麻原彰晃こと松本智津夫を前面に出し、同人に対する絶対的帰依を明示的に強調する、いわゆる麻原絶対の活動をより一層推進しているところでございます。  他方、ひかりの輪の名称を用いて活動する内部組織は、観察処分を免れるべく、表面上は麻原の影響力を払拭したかのように装う麻原隠しの路線を推進しているものと認識をしております。しかし、内部では現在も幹部構成員から末端の構成員に至るまで麻原への帰依心、これを吐露しているほか、麻原が確立した教義や宗教体系を維持するなど、依然として麻原の影響下にあるというふうに考えております。
  36. 有田芳生

    有田芳生君 もう少し具体的に伺いたいんですけど、アレフが麻原絶対化というのは様々な調査をしてみればすぐ出てくるわけですけれども、具体的に、三月二日で還暦を迎えた麻原彰晃、松本智津夫死刑囚ですけれども、その彼に対しての絶対化というのはアレフの中ではどのように引き続き存在をして、そこに危険性があるのかどうかという点についてはどう理解されていますでしょうか。
  37. 杉山治樹

    政府参考人(杉山治樹君) アレフの具体的な活動としては、麻原の肖像写真を道場の祭壇へ常に掲示をして、そしてその麻原に対する絶対的帰依を求める詞章を繰り返し唱えるような修行、あるいは麻原の説法を丸暗記させるような修行などを相変わらず続けておるということでございます。それから、麻原の生誕を祝う生誕祭を開催したり、あるいは死刑が確定した麻原の延命を祈願するための修行を続けるというようなことをしております。そもそも、麻原の目的のためには殺人さえ辞さないという教義の危険性はこういうところからいまだに存続しているというふうに考えているところでございます。
  38. 有田芳生

    有田芳生君 上祐派と表現されましたけれども、それはかつてのオウム真理教、麻原彰晃の教えというものを隠していると、そういう評価をされましたけれども、その根拠というのは具体的にどういうものがあるんでしょうか。
  39. 杉山治樹

    政府参考人(杉山治樹君) まず、ひかりの輪の設立表明自体が、かねて別団体の設立を求めていた麻原の意思に沿い、麻原の説く教義を広め、これを実現するためのものであると。それから、活動の現状を見ても麻原の影響力を裏付ける実態が認められるところであります。  麻原は、自身をオウム真理教の主神であるシバ神の化身と考えており、さらに、そのシバ神の化身として大黒天を位置付けておりますけれども、上祐派ではその大黒天の崇拝を通じて麻原を崇拝しているというふうに認められます。また、麻原が確立した修行体系、これを継続しておりまして、麻原の修行を特徴付けておりましたイニシエーションと同種の儀式を取り入れている、あるいは、麻原の創設した位階制度、その根本部分を維持しているといったような事情が認められます。それと、先ほど申しましたように、信者等は今でも麻原に対する敬信というものを現実に吐露しているというようなところもございます。  こんなことから、祭壇に掲示してきた仏画とか大黒天を撤去したり消去したりというパフォーマンスもしているわけですけれども、これらは観察処分を免れるための麻原隠しの活動だろうというふうに見ておるところでございます。
  40. 有田芳生

    有田芳生君 麻原彰晃が求めた別組織というのは、ひかりの輪をつくれというものじゃないんですよ。ほかの組織をつくれということでできたのがアレフじゃないんですか。
  41. 杉山治樹

    政府参考人(杉山治樹君) 麻原彰晃の意図といいますか、要するに、オウムでない別の団体をつくって、そしてその団体の名前で活動を継続しろと。そういった意味では、アレフと名前を変えたことも、ひかりの輪として、麻原隠しといいますか、そういった活動をするというのも同じ路線上にあるのかなというふうに考えております。
  42. 有田芳生

    有田芳生君 上祐史浩元幹部はアレフを追い出されたんですよ。違いますか。
  43. 杉山治樹

    政府参考人(杉山治樹君) 分裂したものというふうに考えております。
  44. 有田芳生

    有田芳生君 上祐史浩元幹部が自分が行ったこと全てを語っているとは私は思いません。サリン製造計画、最初の責任者は彼ですし、麻原彰晃との会議の中でも、これは裁判でも明らかになっておりますけれども、尊師、サリン七トンから作るんですねということに対して、麻原彰晃が、いや、七十トンからいくんだというような会話がなされた、そのときの責任者が上祐史浩元幹部だということ。あるいは、一連事件に、重大事件には関わっていなかったかも分からないけれども、今でも責任は免れないという意味においては、観察処分が引き続きひかりの輪についても行われるのは当然だというふうに思います。  しかし、一方で、ヨガのサークルから仏教あるいは密教の修行をするようになって、そういう団体が様々なイニシエーションであるとか、あるいは大黒天であるとか、そういうものを掲示していたとしても、それは本当に隠すためだったのかというところは評価が違うと思いますので、それはこれ以上お聞きすることはいたしませんが。  大事なのは、オウム真理教というものは宗教法人格からいってももうなくなったにもかかわらず、地下鉄サリン事件から二十年たったにもかかわらず、そこの分派組織というものがいまだ存在して、信者が両方合わせて千六百五十人、今、日本にいる。それに間違いありませんね。
  45. 杉山治樹

    政府参考人(杉山治樹君) 現在把握しているところ、約千六百五十人というふうに把握をしております。
  46. 有田芳生

    有田芳生君 その千六百五十人の内訳は、二百人がひかりの輪、残りがアレフ、そういう理解でよろしいですか。
  47. 杉山治樹

    政府参考人(杉山治樹君) そのように認識しております。
  48. 有田芳生

    有田芳生君 そこからが大事なことなんですが、今千六百五十人のオウム分派構成員がいる、そこに年間今でも百五十人ぐらい増えていっている、そういう現実があります。しかも、北海道、近畿を中心として新しい信者が入ってくる、しかも大事なことには三十五歳以下の人たちが多い。そういう現実だと思いますが、それに間違いありませんね。
  49. 杉山治樹

    政府参考人(杉山治樹君) おおむねおっしゃるとおりだと思います。
  50. 有田芳生

    有田芳生君 そうしたら、地下鉄サリン事件から二十年たって、私のところにも各新聞社あるいはテレビ局なども取材に来ましたけれども、話をしていて、あのとき小学校二年生でしたとか小学校五年生でしたとか、もう本当に仕方がないことなんだけれども、風化をしていってしまっている現状の下で、じゃ一体、地下鉄サリン事件など一連凶悪事件を起こした教団の後続組織、残党になぜ若い人たちが取り込まれていくのか。その勧誘の形態とかその背景は一体どうなっているんでしょうか。
  51. 杉山治樹

    政府参考人(杉山治樹君) アレフにおきましては、繁華街の路上や書店などで声を掛けたり、あるいはインターネットを介して宗教あるいはヨガに興味を持つ者と接触を図るなどして、教団名を秘匿して運営するヨガ教室に誘い出すなど、組織を挙げて活発な勧誘活動を展開しているところでございます。また、ひかりの輪は、聖地巡りと称して旅行を企画して、ウエブサイトで一般の参加者を募るといったような勧誘活動をしているものと認識をしております。
  52. 有田芳生

    有田芳生君 そこのところで、もしお分かりになればでいいんですけれども、そこに引かれていってしまう若い特に世代の心理的背景などはどのように判断されておりますか。
  53. 杉山治樹

    政府参考人(杉山治樹君) 個々の信徒の入信の動機とか背景というものは様々だと思いまして、一概にこういったカテゴリーとか傾向とかということは言えないようにも思いますが、一般論として申し上げると、様々な背景を持った人物が社会への不安とか不信あるいは疎外感、そういうものを抱いて引かれていく、そんな人が多いのではないかというような感じは持っております。
  54. 有田芳生

    有田芳生君 事件当時、上祐史浩元幹部、当時は幹部ですけれども、話を聞いたときに、あれだけああ言えば上祐と言われて饒舌だった彼に、麻原彰晃という人物はあなたにとって何ですかと質問したことがあります。そうしたら、あれだけよくしゃべる彼が黙ってしまった。どういう返事が返ってくるだろうかと待っておりましたら、尊師は自分にとって目標であると同時に父のような存在だと、そういうふうに言いました。じゃ、父のような存在というのはどういうことなのと聞きましたら、尊師は、目標というのは仏教者としての、彼らなりの仏教者としての目標なんですけれども、父のような存在というのは、彼にとっては、てきぱきとこういうことをしなければいけないということを指示してくれる、そういう存在だと言いました。  上祐元幹部の個人的経歴についてはここでは話しませんけれども、やはり若い頃から父親との関係を彼は悩んでいた。あるいは、坂本弁護士一家殺害事件の実行犯の一人である岡崎一明死刑囚、彼は小さい頃、物心も付かないうちに両親の元から離されて養子になった。そのとき、そのときというのは裁判のときに、坂本弁護士一家殺害事件の実行犯の一人である岡崎一明が言ったのは、尊師麻原彰晃は父や母のような存在だったと言った。これは私、オウム真理教だけではなくて統一教会の元信者たち何百人にもこれまで取材をしておりますけれども、やはり一般的に言って、カルト、熱狂集団に入る人たちは家族問題を抱えている人が多いという傾向があるんですよね。  だから、そういうこともやはりこの日本社会でオウム事件から検証をしていかなければならない課題だったんですが、残念ながら、事件としてのみやはり捉えられている傾向があって、なぜ若い人たちがオウムに入っていったのかというところが十分教訓化されていない。もうこれ以上言いませんけれども、例えば反抗期のない青年たちが多かった、あるいは社会性に乏しい人たちが多かったなどなど、今に通じる重大な問題があるというふうに思うんですよ。  地下鉄サリン事件が起きて一番、世界でいち早く深刻に反応したのはアメリカの議会だったんですよね。だから、日本でも当事者としてこの国会でも議論はありました。関係省庁連絡会議もつくられて、当時私たちも学者たちもカウンセリングの専門家たちも、もしオウムの信者たちを脱会させるにはどういうことが必要だろうか、これから若い人たちがそういうものに入っていかないためには何が必要なのか、それを私たち当時の民間としても支えていこうという話だったんだけれども、残念ながらそれが具体化されないまま二十年たってしまい、先ほどお話ししましたように、今でも毎年若い世代がオウム後継組織に入っていってしまっている。  かつて警察庁にもお聞きしましたけれども、じゃ日本に今カルト組織、海外からどのぐらい入ってきているんですかとお尋ねしたときに、いや、分かりませんという話なんですよね。つまり、何か事件が起きないと分からない。だけれども、日々いろんな形で人生のふとしたはざまにカルト集団、熱狂集団に巻き込まれていってしまう若者たちが今でもいるかもしれないということを考えれば、やはりこれからでも遅くないから、どうしてそういうオウムを始めとしたカルト、熱狂集団に若者たちが引かれていくのかということをいろんな分野で検証していかなければならないというふうに考えております。  文科省にお聞きしたいんですけれども、日本の教育において今、カルト教育、行われているんでしょうか。
  55. 伯井美徳

    政府参考人伯井美徳君) お答え申し上げます。  いわゆる、現状におきましては、カルト教育に特化した教育というのは行っていないものでございますけれども、例えば宗教との関わりでいいますと、社会科におきまして、子供の発達段階に応じて生活と宗教との関わりとか宗教の基本的な考え方など宗教の意義について理解させたり、あるいは家庭科におきましては、消費者トラブルを解決する方法とか、現代的なそういう課題に巻き込まれないような教育というのも行っているところでございます。
  56. 有田芳生

    有田芳生君 宗教教育ということではもちろんなくて、カルト対策、熱狂集団に入らないため、まあカルトというのは宗教だけではなくて健康カルトというものもあれば経済カルトというものもあって、そこに巻き込まれていくことによって事件が起きるということは日本だけではなく世界中で存在しているんですけれども、特に欧米諸国などでは小さい頃からカルト教育というものが学校教育などでも行われていて、フランスなどでもカルトというのは危険なんだよというような、そういう教育が行われている。そういうことが、もう二十年前に地下鉄サリン事件起きているわけですから、今からでも遅くないので、そうした対策というものも、やはり学校教育も含めて、社会教育含めて、これからやれるところで取り組んでいかなければいけないだろうというふうに思っております。  もう一つ、世間が非常に数年前から関心を持っている麻原彰晃、松本智津夫死刑囚の刑の執行の問題について法務省お尋ねをしたいと思います。  死刑がいいのかどうかという議論はずっと続いておりますけれども、ここはその議論はさておいて、死刑が確定した松本智津夫死刑囚について、法務当局は刑の執行について強い意思を持っていると聞いておりますが、本当でしょうか。
  57. 林眞琴

    政府参考人(林眞琴君) 御質問の個々の死刑執行の判断に係る事項につきましては、お答えを差し控えさせていただきたいと思います。
  58. 有田芳生

    有田芳生君 じゃ、一般論としてお聞きをしますけれども、今、最後の逃走犯である高橋克也被告についての裁判裁判が続いております。四月には一審が終わりますけれども、予測される控訴も含めて、二審あるいは最高裁ということを含めますと、これまでのほかの逮捕された信者たちサリン運搬役、送迎役ですから、ほかの信者たちは無期懲役という判決が下っております。もし仮に高橋被告についてもそういう判断がなされるとしたら、来年いっぱいぐらいで最終的な結論が出るんだというふうに思います。  一般論としてお聞きをします。共犯関係にある被告人裁判が続いているときに、ほかの死刑囚の刑の執行がなされることというのはあるんでしょうか。あるいは、これまでそういうケースはありましたでしょうか。
  59. 林眞琴

    政府参考人(林眞琴君) 一般論として申し上げれば、死刑執行に関しましては、個々の事案につきまして、関係記録を十分に精査した上で、刑の執行停止事由の有無、あるいは再審事由の有無等について慎重に検討しまして、これらの事由等がないと認められた場合に初めて法務大臣において死刑執行命令を発するものと承知しております。  これまでにそういった共犯関係の者が係属中に死刑を執行したことがあるかということにつきましては、これは平成十九年十二月から、死刑を執行した日に、死刑を執行した者の氏名、生年月日、また犯罪事実及び執行場所というものを公表することとしておりますけれども、それ以降も、死刑執行時において当該死刑執行された者の共犯者の処分状況等につきましては公表を差し控えているところでございますので、この場でのお答えも差し控えさせていただきたいと思います。
  60. 有田芳生

    有田芳生君 それ、差し支える理由は何なんでしょうか。
  61. 林眞琴

    政府参考人(林眞琴君) 死刑執行に当たりましてどのようなことを公表するかということにつきまして、一般的に、死刑を執行された者の氏名、生年月日、犯罪事実、執行場所というものを公表しているわけでございますが、これ以外の事項につきましては、刑の執行を受けた者やその関係者に不利益や精神的苦痛を与えかねないこと、あるいは他の死刑確定者の心情の安定を損なう結果を招きかねないことなどの問題が大きいと考えられることから、公表を差し控えるべきであると考えております。
  62. 有田芳生

    有田芳生君 もう一度お聞きします。  共犯関係にある者が、裁判が続いている間には刑の執行をしないという一般的了解はありますか。
  63. 林眞琴

    政府参考人(林眞琴君) 共犯関係の者が係属中に刑の執行ができないというような法制、法的な制限はございませんけれども、いずれにしましても、こうした死刑を執行するか否かにつきましては、先ほど申し上げたような形で、関係記録を精査した上で再審事由の有無でありますとか執行停止の有無等を慎重に判断した上で執行の命令がなされていると考えております。
  64. 有田芳生

    有田芳生君 死刑囚が心神喪失の場合、刑の執行はできますか。
  65. 林眞琴

    政府参考人(林眞琴君) 刑事訴訟法四百七十九条におきまして、死刑を言渡しを受けた者が心神喪失の状態にあるときは、法務大臣の命令によって執行を停止するということとなっております。
  66. 有田芳生

    有田芳生君 麻原彰晃、松本智津夫被告、死刑囚については精神鑑定を行いましたか。行いましたね。
  67. 林眞琴

    政府参考人(林眞琴君) お尋ねにつきましては、個別事件の捜査、公判活動に係る事柄でございますので、お答えを差し控えさせていただきたいと思います。
  68. 有田芳生

    有田芳生君 松本智津夫死刑囚は、裁判において、もう訳の分からない状態になっているというのは、傍聴した人は誰でも、弁護士、検察官も含めて理解をしているというふうに思います。面会ができる状況のときに松本死刑囚に会った家族なんかの話を聞いても、尋常な状況ではない。あるいは東京拘置所の中で松本死刑囚の状況を見た人なども、とんでもない状況にある、ふん尿をまき散らしているような姿である。これは精神、普通なんでしょうか。
  69. 林眞琴

    政府参考人(林眞琴君) 個別の死刑執行の判断に係る事項につきましては、お答えを差し控えさせていただきたいと思います。
  70. 有田芳生

    有田芳生君 全く、ここではあえて具体的な状況については言わないわけですけれども、とてもじゃない、普通ではない奇異な行為を行っている死刑囚がいたとして、その刑の執行が行われたとした場合、本当にその人が心神喪失でなかったかどうかということを国民は知ることができるんですか。
  71. 林眞琴

    政府参考人(林眞琴君) 死刑確定者の精神状態につきましては、法務省関係部局におきまして常に注意を払って、必要に応じては医師の専門的見地からの診療等を受けさせるなど慎重な配慮がなされております。  法務大臣において、執行に当たっては、このような専門的見地からの判断も踏まえて、心神喪失の状態にあること等の執行停止事由の有無というものを適切に判断しているものと承知しております。
  72. 有田芳生

    有田芳生君 そうすると、少なくとも、とても尋常ではない状況がずっと続いていた死刑囚がいたとして、その刑の執行が具体的に検討される場合には、その前には精神鑑定が行われると理解していいんですね。
  73. 林眞琴

    政府参考人(林眞琴君) 先ほども申し上げましたが、死刑執行に当たりましては、こういった執行停止事由の有無というふうなものも慎重に判断しているところでございます。  個別の死刑執行の判断に係る事項について鑑定が行われるかどうかといったことにつきましては、お答えを差し控えさせていただきたいと思います。
  74. 有田芳生

    有田芳生君 いや、個別なんですけれども、異常な精神を来しているとしか思えないような人物が死刑執行の検討がされた場合には、その前に鑑定は行われるんですかというふうにお尋ねしているんですけれども。
  75. 林眞琴

    政府参考人(林眞琴君) 先ほども申し上げましたが、死刑確定者の精神状態につきましては、法務省の中の関係部局におきまして常に注意を払って、必要に応じて医師の専門的見地からの診療を受けさせるようなことがございます。そのような形での慎重な配慮がなされた上で、最終的にその心神喪失の状態にあること等の執行停止の事由の有無を適切に判断しているものと承知しております。
  76. 有田芳生

    有田芳生君 あの地下鉄サリン事件から二十年がたって、新聞、テレビなどで大きな報道がなされました。しかし、次に大きな報道がなされるならば、やはり麻原彰晃、松本智津夫死刑囚の刑の執行があったときに大きな報道がなされるでしょう。  しかし、今日、お話を十分にはできませんでしたけれども、やはり大事なのは、一連のオウム裁判が終わって被告人に対して刑が確定して、それが執行されていってそれで終わるということではないということを一番強調したかったんです。つまり、オウム真理教のような集団、カルトに入る若者たちの精神的背景、社会的背景というのは、十分に、事件から二十年たってもまだまだ検討しなければいけない教訓があるんだと、そういう思いで今日は質問させていただきました。  それと、もう一点、死刑執行について詳しくお聞きをしたというのは、やはりそういう事態が起きたときに、いまだ千六百五十人いるオウム残党組織のメンバーがどういう行動に出る可能性があるのかと。危険な行為を行うのか、あるいはアメリカの人民寺院事件のように集団自決というものがあるのかと。そういうような社会の治安の上からもやはり注目していかなければならない、そういう課題だと思ったものですから、あえて社会的に関心がある麻原彰晃、松本死刑囚の執行問題というものについてもお聞きをしました。  時間の問題もありますので、次に、ヘイトスピーチ差別扇動表現の問題について移りたいというふうに思います。  まず、先ほども、一番初めにお話ししましたけれども、法務省啓発活動に力を注いでくださっているということは、もう日本中で目に見えるような形になってきております。  皆さんにお示ししましたように、写真を二枚資料として提出いたしました。一枚目、これ、駅のホームです。「ヘイトスピーチ、許さない。」と、法務省が作ってくださったポスターが大きく掲げられております。  この数年間、東京の新大久保、大阪の鶴橋など全国でヘイトスピーチ差別扇動の集会、デモが行われてきましたけれども、新大久保でも、あるいは大阪の鶴橋でも、この「ヘイトスピーチ、許さない。」という法務省のポスターが掲示をされております。東京駅にもありますし、多くの場所で掲示をされているので、御覧になった方もいらっしゃると思います。  あるいは、最初は、この「ヘイトスピーチ、許さない。」というポスターが出てきたときに、いろんな人に意見聞いたら、何か手抜きのポスターですねみたいな厳しい意見もあったんだけれども、だけど、下を見てください。これは三月十四日、川崎で行われた差別のデモに対して、それに反対する人たちが、法務省のこの「ヘイトスピーチ、許さない。」というものをプラカードにして差別をしている人たちに掲げている写真です。現場で見ると物すごく迫力あるんです。初めは厳しい意見を言う人もいたんだけれども、やはりいろんなところで活用されているという意味においては、法務省のこの啓発活動というのは一歩前進なんだというふうに思います。  そこで、まずお聞きをしたいのは、こうした啓発活動をやるに至った法務省の中での議論というものはどういうものだったんでしょうか。前、仁比議員もポスターの問題、法務委員会質問されましたけれども、ヘイトスピーチに特化したポスターは要らないんじゃないかという意見もあったようなことも聞いておりますけれども、具体的にはどういう議論があって、やはりこれはやらなければいけないという判断に至ったんでしょうか。
  77. 岡村和美

    政府参考人(岡村和美君) 近年、特定の民族や国籍の人々を排斥する差別的言動について、ヘイトスピーチであるとしてマスメディアやインターネットなどで大きく報道されるなど、社会的関心が高まっていたところでありました。また、昨年夏ですが、平成二十六年七月には国連自由権規約委員会から、翌八月には国連人種差別撤廃委員会から、日本政府報告書審査における最終見解において、それぞれ我が国に対してヘイトスピーチへの対処が勧告されました。このような情勢の中、与党を始めとする各党においてもヘイトスピーチに関する議論が活発となり、国会の審議においても内閣総理大臣法務大臣から、ヘイトスピーチに関する啓発の充実について言及がありました。  以上を踏まえまして、法務省の人権擁護機関では、これまでの外国人の人権をテーマにした啓発に加えて、委員指摘のようなヘイトスピーチに焦点を当てた啓発活動を昨年十一月から実施することといたしました。
  78. 有田芳生

    有田芳生君 こうしたポスターなどに対する予算はどのぐらい充てられたんでしょうか。
  79. 岡村和美

    政府参考人(岡村和美君) 啓発ポスターなど、これまで実施したいわゆるヘイトスピーチに焦点を当てた啓発活動に要した経費は、約一千五百万円でございます。なお、政府広報として実施いたしました新聞の広告の経費についてはこれに含まれておりません。
  80. 有田芳生

    有田芳生君 ポスター、それからリーフレット、まあチラシですけれども、これ何枚作られましたでしょうか。
  81. 岡村和美

    政府参考人(岡村和美君) ポスターは約一万六千枚、リーフレットは一万五千部でございます。
  82. 有田芳生

    有田芳生君 そこで、大臣含めてこれから検討していただきたいんですけれども、少ないんですよ。差別に反対しよう、そのことをやはり社会に広げていかなければいけないという人が、例えば横浜の最寄りの区役所など、神奈川県庁に行っても、枚数が物すごく少ないんですよ。それは今、分かりました、お話聞いて。ポスター一万五千、ポスターは掲示されるわけですから物すごく目立つわけですけれども、このリーフレット、チラシは一万五千。最寄りのところに行ってもないんですよ、あったとしても二、三枚くれるぐらいで。だから、それではやはりまだまだ差別ヘイトスピーチをなくすのに不十分なんですよね。  この間、三月二十一日、国連の人種差別撤廃デーというものがありました。それに賛同する人たち、私も参加しましたけれども、渋谷の駅前あるいは新宿の駅前で差別はいけないんだという宣伝活動を行いました。そのときに法務省が作ってくださったリーフレットの方を配布したんですよ。物すごく受け取ってくれましたよ、渋谷でも新宿でも。だから、物すごく効果はあると思う。  だけど、具体的に言えば、差別反対東京アクションという、若い世代がやっているんですけれども、その彼らが街頭で配ろうと思って、もらおうとしてもないんですよね。そこでどうしたかというと、法務省のホームページから印刷を自ら行って、二万枚印刷したんですよ。法務省全体で一万五千、差別反対東京アクション、小さな集まりですよ、それが二万枚刷ったんですよ。渋谷、新宿で、五百枚ぐらいだったでしょうかね、それぞれ一時間ぐらいでしたから、本当に取ってくれる人は多い。  だから、そういうことを考えても、この貴重なリーフレット、ポスターなど、特にリーフレットなどはもっと印刷していただいて、活用できるような体制というのを取っていただきたいなというふうにお願いをしておきます。  それで、法務省の方で、「ヘイトスピーチ、許さない。」というヘイトスピーチに焦点を当てた啓発活動の中に、活動内容としては新聞広告による啓発があります、先ほどお話しなされました。ポスター、リーフレットによる啓発も書かれております。交通広告による啓発というものも、東京駅なんかではデジタル画面でヘイトスピーチいけないんだよというようなことが掲示をされました。インターネット広告による啓発については、これはユーチューブでしょうか、なされているというのは分かっております。さっき、東京駅のはスポット映像による啓発。  そのほかに人権教室等の各種研修における啓発機会の充実とありますが、これは具体的にどういうことをなさっているんでしょうか。
  83. 岡村和美

    政府参考人(岡村和美君) 私ども法務省の人権擁護機関では、全国の約一万四千人のボランティアの人権擁護委員の先生方、そして全国の法務局、地方法務局の職員が学校に行きまして、子供たちに対して人権教室という一緒に学ぶ機会を開催しております。そこで外国人の人権という形で取り上げておりますし、必ずしも全ての人権教室でヘイトスピーチ話題になっているわけではありませんが、機会を捉えて、柔軟な感性の子供たち差別と偏見はなくしていきたいということを学んでもらいたいという思いで日々活動しております。
  84. 有田芳生

    有田芳生君 今いみじくも外国人の人権問題というふうに表現されましたけれども、せっかく「ヘイトスピーチ、許さない。」という、そこに焦点を当てた啓発活動を進めていらっしゃるわけですから、そういう教育においても、時にはヘイトスピーチに焦点を当てた内容でやっていただけたらなということもお願いをしておきたいというふうに思います。  さらに、相談窓口の周知広報の充実、人権相談窓口とありますけれども、これは具体的にはどういうことなんでしょうか。
  85. 岡村和美

    政府参考人(岡村和美君) 私どもは、みんなの人権一一〇番という電話相談の電話番号を周知広報しておりまして、これは全国から気軽に電話で被害を申告していただけるよう努めております。
  86. 有田芳生

    有田芳生君 このポスター、リーフレットにもその電話番号が記載されておりますけれども、実はこの間電話してみました。土曜日、電話したら、お休みでした。土曜、日曜、祝日お休み、平日朝八時半から五時十五分ですか、なさっておられますけれども、ここももう少し改善の体制を取っていただいた方がいいんじゃないかというふうに思いました。  と同時に、月曜日になって電話してみました。そうしたら、東京法務局に電話が掛かりました。どういう形で相談を受けられるのかということをお聞きしましたところ、あれ専門的にやっていらっしゃるんではないんでしょうかね、何か話をしていても物すごく法律的に難しいような言葉が返ってくるもんですから。そうすると、一般の方々が相談しようとしてもなかなか十分な意思の疎通ができるんだろうかといういささか危惧を持ちましたけれども、電話をすると、その当該法務局に掛かるようになっているんですか。
  87. 岡村和美

    政府参考人(岡村和美君) はい、そのとおりでございます。これは、みんなの人権一一〇番は、ナビダイヤルと呼ばれる全国共通の番号に電話を掛ければ、その発信者の最寄りの法務局、地方法務局につながるというもので、お電話を受けました法務局職員又は人権擁護委員が相談に応じております。
  88. 有田芳生

    有田芳生君 ヘイトスピーチ差別の問題の相談をどう取り上げていくかというのは、なかなか専門的な内容もあるんだと思いますけれども、これからも充実していっていただきたいというふうに思います。  しかし、残念ながら、こうやって法務省が力を注いで啓発活動を進めていただいているんですけれども、それでも差別扇動というのはなくなっていない。具体的に言えば、最近でいっても、三月一日、銀座を出発した差別のデモ行進が新橋まで行きました。三月十四日には、川崎でも写真でお示ししたような差別扇動のデモが行われました。非常にひどい状況がいまだ続いております。  例えば、三月一日、銀座から新橋に向かったデモ行進などにおいては、シュプレヒコールは、朝鮮人をたたき出せ、あるいは朝鮮人はテポドンにくくり付けて送り返せ。もっとひどいことが語られている現状は変わっていないんですよね。  じゃ、そうしたものを二〇二〇年東京オリンピック・パラリンピックを迎える日本でどのようになくしていくのか。無論、オリンピックだけではなくて、ヘイトスピーチだけではなくて、差別そのものをなくしていくという大きな課題として考えたときに何ができるのかというところで、大臣にお聞きをしたいんですけれども、大臣記者会見の中で、ヘイトスピーチについては現行法で対処していくという旨の発言されていると思いますけれども、それは間違いないでしょうか。
  89. 上川陽子

    国務大臣上川陽子君) ただいま委員からヘイトスピーチに関わる様々な御質問、そして御指摘をいただきまして、またパンフレットも含めまして更に拡大するようにというアドバイスもいただいたところでございます。  現行法での対応という御質問でございますけれども、いわゆるヘイトスピーチ、この概念につきましては、権利侵害あるいは法益の侵害という観点におきましては必ずしも確立されたものではないというふうに思われるわけでございますが、民事につきましては、ある言動によりまして特定の個人あるいは団体に対しまして具体的な損害が生じる、またそうした言動が違法であるということで評価できる場合につきましては、この当該言動をした者に対しまして、不法行為によりましての損害賠償責任が発生をするということでございます。  その場合につきましては、民法におきましての明文の規定はございませんけれども、人格権としての名誉権というものに基づきまして、加害者に対して現に行われている侵害行為、これを排除する、あるいは将来生ずべき侵害を予防するということで、そうした侵害行為の差止めを求めることができるというふうな枠組みでございます。  刑事上の対応ということでございますが、特定の個人、団体につきまして、公然と事実を摘示しましてその名誉を毀損した場合におきましては名誉毀損罪が成立し得るということでございます。事実を摘示しなくても、公然と侮辱した場合につきましては侮辱罪ということで成立し得るものというふうに考えております。  また、特定の個人、団体につきまして、威力を用いてその業務を妨害した場合には業務妨害罪が成立し得るということでございます。  さらに、個人の生命、身体等に対しまして、害を加える旨を告知して脅迫をしたり、あるいは義務のないことを行わせるなどをした場合につきましては脅迫罪あるいは強要罪ということで、こうした罪が成立し得るということでございます。  刑事事件として取り上げるべきものがあればこうした刑罰法令を適用して適切に対処をしていくという、そうした現行法の枠組みの中で対処をしてまいるということが非常に大事ではないかというふうに思っております。
  90. 有田芳生

    有田芳生君 対処をしていないんですよ。これは具体的な現場に行けばもう幾らでも見ることができます。例えば大阪の鶴橋などにしても、在日の女性が反対行動をやっていると、その女性の名前を挙げて暴力行為を扇動する、あるいは名誉を傷つける、侮辱をする、もう当たり前のように行われております、現場では。警察官、いっぱいいらっしゃいます。動きません。  もう少し具体的に言いましょう。例えば二〇〇九年から一〇年にかけての京都朝鮮学校襲撃事件、三回、在特会などによって行われました。これは、ヘイトスピーチ差別扇動表現をやっているだけではなくて、脅迫、侮辱、そして暴力行為までやっている。ところが、そこにいた警察官は見ているだけなんですよね。だから、現行法では対処できるんだけれどもしていないというのが現実なんですよ。  だから、そこのところ、もう水掛け論になってしまうのは分かっていますからこれ以上言いませんけれども、現行法では対処できない。できないからこそ、京都朝鮮学校襲撃事件の民事の訴訟の京都地裁、大阪高裁、そして最高裁でも確定をしましたけれども、その判決の中でもこう書かれている。例えば、一定の集団に属する者の全体に対する人種差別発言が行われた場合に、いわゆるヘイトスピーチですよね、個人に具体的な損害が生じていないにもかかわらず、人種差別行為がなされたというだけで、裁判所が、不法行為に該当するものと解釈し、行為者に対し、一定の集団に属する者への賠償金の支払を命じるようなことは、不法行為に関する民法の解釈を逸脱していると言わざるを得ず、次なんですけれども、新たな立法なしに行うことはできないものと解されると。つまり、ヘイトスピーチからマイノリティーの集団を救済するには現在の民法の枠組みでは限界があって、より効果的な救済を図るためには新たな立法による制度整備が必要なんだと、そういうことを京都地裁の判決は述べているんですよね。  だから、こういうところから、与党、自民党、公明党でもヘイトスピーチ対策のプロジェクトチームをおつくりになって、私たちも超党派で取り組んでおりますけれども、やっぱり新たな立法というものがなければ救済されないという現実があるということは主張しておきたいというふうに思います。  そこで、外務省にお聞きをしたいんですけれども、これまで国連の人種差別撤廃委員会から勧告が何度もなされていて、昨年の八月にもスイスのジュネーブで行われました。一番最初は二〇〇一年八月に、人種差別撤廃委員会の、二〇〇一年、日本政府報告審査に関する最終見解に対する日本政府の意見が提出をされました。そこにおいては、人種差別撤廃条約の第四条の(a)項、(b)項を日本政府はいまだ留保をされております。  そこで何が書かれているかというと、「人種差別思想の流布等に対し、正当な言論までも不当に萎縮させる危険を冒してまで処罰立法措置をとることを検討しなければならないほど、現在の日本が人種差別思想の流布や人種差別扇動が行われている状況にあるとは考えていない。」と。これ、二〇〇一年、今から十四年前ですけれども、日本政府の意見として表明されております。  外務省副大臣にお聞きをしたいんですけれども、そこにある「人種差別思想の流布や人種差別扇動が行われている状況にあるとは考えていない。」、この認定は外務省が行ったものなんでしょうか。
  91. 城内実

    ○副大臣(城内実君) 今御指摘のあった点につきましては、関係省庁間で議論の上、政府全体として様々な要素を総合的に勘案した上で判断したものであり、特定の省庁の判断決定したものではございません。
  92. 有田芳生

    有田芳生君 そうした場合、認識の主体というのは各省庁ということなんでしょうか。責任の所在というのはどこに行くんでしょうか。
  93. 城内実

    ○副大臣(城内実君) 責任の所在という御指摘がございましたけれども、いずれにしましても、政府全体、関係省庁、具体的には内閣官房、人事院、内閣府、警察庁、総務省法務省、文科省、厚労省、国交省といった関係省庁の間で議論をし、政府全体として様々な要素を総合的に勘案して判断したものであります。
  94. 有田芳生

    有田芳生君 そうすると、日本政府が二〇〇一年のこの日本政府の意見を人種差別撤廃委員会に出したときに、先ほど紹介しましたけれども、今の日本には「人種差別思想の流布や人種差別扇動が行われている状況にあるとは考えていない。」、これ二〇〇一年八月の表現なんですが、時間が迫ってきますのでもう結論だけにしますけれども、実は二〇〇八年八月の日本政府定期報告、だから二〇〇一年から七年後の報告、あるいは二〇一三年一月の三回目の日本政府の報告、みんなコピペなんですよ。コピペ、全く一緒。  だけど、先ほどから言っておりますように、二〇〇一年以降、特にこの三年、全国各地でヘイトスピーチ差別扇動行為が行われている。それでも人種差別思想の流布や人種差別扇動が行われている状況にないんでしょうか。そういう判断をされているんでしょうか。
  95. 城内実

    ○副大臣(城内実君) 御指摘の点についてお答えしますが、例えば外務省といたしましては、諸外国における人種等に基づく差別的な言動や差別を助長、扇動する言動に対する法規制について各国の状況等を調査を行っているところでございまして、また、先ほど述べた具体的な関係省庁におきましても、報道や現場状況の確認、人権相談や自治体等からの情報提供によって人権の状況の把握に努めているというふうに承知しております。こうしたことを踏まえて、繰り返しになりますけれども、政府全体として様々な要素を総合的に勘案した上で判断し、そういう表現になったものと理解しております。
  96. 有田芳生

    有田芳生君 とにかく、差別扇動差別思想の流布がないというのはフィクションなんですよ、それは現実を見れば分かるように。  特にこの三年、いろんな方がこの委員会でも、あるいは予算委員会などでも指摘をしてきたように、ヘイトスピーチ差別扇動というのはずっと続いている状況にある。だから、それに対して政府の対応がコピペばかりで、そんなものはないんだというのはやっぱり改めていっていただきたいというふうに強く思うんですよ。  例えば、安倍総理も、二年前でしたか、五月七日、参議院の予算委員会ヘイトスピーチというのは憂慮するものだと。この場でも谷垣法務大臣は何度もこんなことはいけないんだと答弁してくださいました。官房長官も発言をし、国家公安委員長もそういう認識を示されました。  上川大臣も憂慮する旨の発言をしてくださいました。そのことと、去年八月のジュネーブで行われた人種差別撤廃委員会における日本政府発言、そんな差別扇動も思想の流布もないんだということと矛盾していないですか。
  97. 城内実

    ○副大臣(城内実君) 今御指摘のございました昨年八月ジュネーブで行われました人種差別撤廃条約の政府報告審査におきまして、我が国政府代表団は人種差別撤廃委員会からのヘイトスピーチに関する質問に対しまして、これまでの安倍総理等の発言も踏まえた上で回答いたしました。  具体的には、安倍総理の御発言の、一部の国、民族を排除するような言動は極めて残念であり、あってはならないことだというこの発言を引用しながら我が国の立場を説明したところであります。
  98. 有田芳生

    有田芳生君 人種差別撤廃委員会に対する日本政府の報告、二〇〇〇年一月に出した第一回・第二回政府報告書のパラグラフ五十一にこうある、粘り強く国民一般の人権意識を啓発することにより、差別行為を自主的に排除させ、又は、将来の再発を防止することに、次ですけれども、相応の効果を上げているところである。どういう相応の効果があったんですか。
  99. 城内実

    ○副大臣(城内実君) 今の御指摘の点につきましても、繰り返しになりますけれども、昨年の八月のジュネーブにおける会合におきましても、総理の発言を引用するなどして我が国の状況についてしっかりと説明してきたところであります。
  100. 有田芳生

    有田芳生君 もう繰り返しません。とにかく現実から出発して、日本政府の立場、国際的に発信していくためにも、やはりフィクションというものは取り除いていかなければいけないというふうに思います。  前も法務委員会で御紹介したんですけれども、イギリス政府のホームページを御覧になっていただければ分かりますけれども、日本に旅行する人たちへの注意が喚起されているんですよね。何て書いてあるかというと、日本では排外的な集会とかデモというのが行われている場合があるから、そういうのを見たらすぐにその場を立ち去りなさいと、イギリス政府がそういうことを書いているんですよ、渡航者情報のところに。だから、そういうふうに見られてしまっている、それをやはり改善しなければいけないというのが、今私たち法務省啓発活動を含めて取り組んでいく課題だというふうに思うんです。  もう一点、二点だけお聞きをしたいというふうに思います。  法務省のサイトにはこう書かれております。近年、特定の民族や国籍の人々を排斥する差別的言動がいわゆるヘイトスピーチであるとして社会的関心を集めていますと書かれております。  先ほども御紹介しました、二〇〇九年から一〇年にかけて三回にわたって、在特会、在日特権を許さない市民の会によって行われた京都朝鮮学校襲撃事件、そこではこういうことが言われました。キムチ臭い、犯罪朝鮮人、朝鮮人を保健所へたたき込め、これはヘイトスピーチに当たるんでしょうか。法務省にお聞きしたいと思います。
  101. 岡村和美

    政府参考人(岡村和美君) 裁判所において事実認定を踏まえて検討された事項について、私ども行政から判断を示すことなどは差し控えたいと思います。
  102. 有田芳生

    有田芳生君 まあそうお答えになるだろうとは思っておりましたが。  大阪高裁の判決では、今御紹介したような言葉を憎悪表現と認定をして、人種差別撤廃条約の第一条に違反する人種差別だと、そういう認定をしました。それについても見解は語ることはできないということですか。
  103. 岡村和美

    政府参考人(岡村和美君) その当時の状況などによって個別の事案についての判断は変わり得ると思いますので言葉は差し控えますが、当然ながら、委員指摘の言動が差別扇動に当たるものであれば、あってはならないものだと理解しております。
  104. 有田芳生

    有田芳生君 私もひどいデモが行われているということを二〇一三年の初めに知って、これは何とかしなければいけないという思いで、二〇一三年の三月十四日に超党派の方々に集まっていただいて国会内で集会を開きました。そのときも被害者の方々がいらしたんですけれども、やはり現場に行くということが大事であるということと同時に、被害者の声を聞くということが物すごく大事だと思ったのは、いまだ私などにはなかなか認識が近づいていかない。当然、当事者じゃないからなんですけれども。  その方々にお話を聞くと、こういう差別扇動のデモに反対しに行くときにも、もう震えている状況で立ち向かっている在日の女性たちがいらっしゃいます。涙を流しながらプラカードを掲げている若い女性がいます。たまたまそこを通りかかった在日朝鮮・韓国人の人たちは、もう夜も眠れない、思い出すだけで怖くなる。京都朝鮮学校が襲撃されたときに小さい子供さんだった人たちは今大きくなっていますけれども、それでもいまだ、廃品回収なんかの車が来たときにマイクで何かを語っていると怖くなってくるという当事者の状況があるんですよ。もうお示しすれば幾らでもそういうことがある。自殺まで考えようとされた方もいらっしゃる。だから、ヘイトスピーチ差別扇動というのはそういう問題なんですよね。  したがって、東京オリンピック・パラリンピック対策にも必要なんだけれども、やはりヘイトスピーチを通じて、差別、それを日本社会からどうなくしていくかというのは、やはり普遍的な課題としてこれからも取り組んでいかなければいけないというふうに思います。  法務省の取組が地方において非常に不十分であるという問題も、私は実際に調査をしておりますので、次回、また機会がありましたらお聞きしたいというふうに思います。  時間が来ましたので、終わります。
  105. 真山勇一

    ○真山勇一君 維新の党、真山勇一です。よろしくお願いします。  大臣所信に対してということで質問をさせていただきたいというふうに思っております。  今、私たちの時代というのは、多様化、スピード化、それから国際化という大きな波の中で大変変化激しくなってきています。大臣は、所信表明の中で法務省の使命について、時代の変転を超えて永々と国家、国民生活の基本、基盤を守り、世の中を支えてきたと、こういうふうに振り返っておられる一方で、時代の変化に対応して、大胆に新たな役割や課題に挑戦していくというふうに決意を述べております。まさに、本当に大臣の決意というのはそのとおりだというふうに思っておりますし、法務行政の役割、まさに大臣所信表明の決意を聞いていると、改革志向でやっていこうという思いが感じられるわけなんです。  今法務行政の様々な課題がある中で、特にやっぱり大きいのは、私は、民法改正、民法をどうするかという問題があるのではないかというふうに思っています。やはり見直しが焦点になってきているわけですけれども、この民法というのは、釈迦に説法ですけれども、一八九六年公布されて、私たちの生活の基本ルール、もうこれまで百二十年にわたって規定してきたということなわけですね。  その中で、二〇〇四年、二〇〇五年にかけまして、民法、やはり非常に文語体で難しくて、私なども法学部ではないんですが、民法というのを見たときにほとんどこう、読みづらい、もう読めない、二、三行読んじゃうともう諦めちゃうようなそんなことだったんですが、文体、これを文語体から口語体に変えるという、そういう変更はあったんですけれども、肝腎の法律の中身の方が余り抜本的に変えるということはなかったというふうに私は認識しております。  百二十年もたてば、これは当然時代との感覚とかずれというものは広がってくるわけで、大幅に改正の必要性というのが今語られ始めているということは、まさに私は当然だというふうに思っています。中でも、私たちの生活を見てみると、やはり基本になるのは家族ですとか、夫婦ですとか、親子関係ですとか、こうしたものも大変大きく変わってきているわけです。これについて、大臣、まず家族というものについてどんなふうに考えておられるか、伺いたいと思います。
  106. 上川陽子

    国務大臣上川陽子君) ただいま委員の方から私の所信表明に対しまして、私の使命に対しての決意ということで触れていただきまして、ありがとうございました。  また、民事法制につきましては、法務省の扱う大変大きな法体系の一つということでございますし、またその淵源もたどりながら、またこれから将来に向かって、大きく時代を切り開くことができるような方向に向かってということの視野も含めて、しっかりと慎重に、しかし謙虚に取り組んでいかなければいけないというふうに考えております。  そして、この民事法制、今家族ということでございましたけれども、民法の中には所有権や契約、あるいは親族そして相続の在り方ということで、先ほど御指摘いただきましたとおり、私たちの生活に非常に密接に関わるという大変な基本的なルールであるというふうに考えております。  その意味で、こうした民事法制におきましても、時代の変化ということもしっかりと、国民的なというと一般論的に聞こえますけれども、本当にそれぞれの中でしっかりと御議論をしながら、そして前進していくことができるような、また生活がしっかりと安心して安全で暮らし続けることができるような、そういう方向に向かってたゆまぬ努力を重ねていくということが何よりも必要ではないかというふうに思っております。  家族ということでございますけれども、家族を取り巻く環境につきましては、近年の女性の社会進出が増加したり、また晩婚化、また少子高齢化が進展するというような時代の背景もございまして、家族を取り巻く環境そのものも大きく変化しているところでございます。同時に、家族というのは社会の基本的な単位であるということでございまして、この家族の制度の在り方そのものにつきましては、社会の在り方あるいは国民の生活に大変大きな影響を及ぼすものであるというふうに考えているところでございます。  その意味でも、絶えず時代の変化に耳を澄ませながら、また、こうした家族制度の在り方に関わる親族法ということが民法典の中に加われておりますので、そうしたことについての目線をしっかりと持ってまいりたいというふうに思っております。
  107. 真山勇一

    ○真山勇一君 法務大臣が女性ということなので、私も特に伺いたいことをこれから少し進めていきたいと思うんですが、今御答弁の中で、やはり家族というのもすごく多様化しているということと、それから女性の社会進出に伴っていろんな課題も出てきているということをおっしゃっていただいたというふうに思うんですが、その中でまず取り上げたいのは夫婦別姓です。法律的には別氏というそうですけれども、ここでは別姓でいきたいと思うんですが。  特に、やはり今言われている選択的夫婦別姓、これについての大臣のお考えを伺いたいと思います。
  108. 上川陽子

    国務大臣上川陽子君) ただいま委員から御指摘がございました選択的な夫婦別氏制度ということでございますけれども、平成八年の段階で、法務大臣の諮問機関であります法制審議会におきまして答申が出されているというふうに存じ上げております。  この選択的夫婦別氏制度の導入ということにつきまして、平成八年の答申ということでありますが、国民の皆さんの間に様々な御意見があるということでございまして、そういう意味では、こうした大変大事な家族に関わることでありますので、いろんな御意見をいただきながら慎重に検討する必要があるというふうに考えております。  また、現在、関連する訴訟におきまして最高裁の方に係属しているということでございますので、最高裁判所におきましてどのような判断をするのかということにつきましてはしっかりと注視をしてまいりたいというふうに考えております。
  109. 真山勇一

    ○真山勇一君 もう少し何か上川大臣らしい前向きな内容があるんではないかなと私はちょっと期待して伺ったんですけれども、大臣、確かにいろんな状況を見ながらということは分かりますけれども、大臣御自身、これはもう本当にいろんなところでさんざん聞かれているのでまたかというふうにお思いになるかもしれませんけれども、二〇〇七年、その前年ですね、男女共同参画担当大臣に就任されたときに、当時、雑誌のインタビューに答えられて、このとき本当に明確に賛成と、こうおっしゃっているわけですよね。それが私は大変印象に残っておりますし、それからまた、平成十四年には、夫婦別姓推進をめぐる国会請願、これの紹介者になっている。どういうふうに見ても、やはり上川大臣は別姓推進派なのかなと、推進派の味方なのかなというふうな感じを受けるんですけれども、今のお答えだとかなり慎重で後退した感じがあるので、御自身のこのときのお考えと今変わっているか変わっていないか、お聞かせください。
  110. 上川陽子

    国務大臣上川陽子君) 個人の見解ということでの御質問があると、それに対して個人の見解ということでのお答えをするという、一対一の御質問がいただければそうなるわけでございますが、私は、今この委員会におきまして法務大臣としての立場で答弁をする責任があるということでございます。そういう意味で、個人の見解につきましては差し控えるべきではないかというふうに考えております。
  111. 真山勇一

    ○真山勇一君 じゃ、法務大臣という肩書が取れたときに、上川大臣はどういうふうなこの問題について発言をしているかなということをまた注目していきたいというふうに思いますけれども。  私、男なので本当に、そんなこと言われても実感ないだろうと言われちゃうかもしれませんけど、やっぱりそれでも女性が結婚されたときに名前を変えるというのは、これはもうとても大変なことなのかなというふうに、私は男の立場でいうと、何となく、私が愛している女性が、妻になる女性が私の名前をそのまま一緒になってくれるということに、それを喜びを感じますし、それで自然なのかなというふうには思いますが、でも、やっぱりそれじゃ済まない。やはり夫婦の関係というのは、夫婦の関係であると同時に、個人個人が社会的なその関わりを持っているわけなので、そういうところでいろいろな問題点が出てくると思うんですよ。  上川大臣も当然ばりばりのキャリアウーマンですよね。ですから、この委員会見ても、そうですね、ばりばりのキャリアウーマンといえば猪口委員もいらっしゃいますし、それから今席外しましたけど谷委員とか、やはり結婚されて名前を変えているという。働く女性として、変えることでやっぱり不安、不便を感じたり、それから不利益被ったりという実体験を、それぞれ自分の経験としてお持ちだというふうに思うんですね。  最近、そういうことで、姓を変えない、やはり新しい家族の形ということで、夫婦の形ということで、事実婚というのが増えてきているというふうに言われています。これは、やっぱり背景には結婚という、婚姻届を出す、形はそういうことになりますが、それにとらわれないという、自由でいいということだというふうに思うんですね。  私は、やっぱり夫婦別姓と絡んで、この事実婚の問題について何かデータがないかなというふうなことで、省庁、特に厚生労働省が担当かなというようなことでいろいろ伺ったんですが、事実婚というくくりではちょっとデータがないということで、お手元のお配りした資料を見ていただきたいんですが、こういうものが出てきております。  これは厚生労働白書なんですけれども、調査自体は内閣府の男女共同参画社会に関する世論調査というものを、それを厚生労働白書が使っているんですが、事実婚というのは、結婚してもしなくてもいいじゃないか、実際に二人が一緒に住んでいればということなので、その辺りからちょっと広く解釈してみて、こういうデータをいただいたんですね。二〇〇九年が最新なので本当はもう少し新しいデータも欲しかったんですが。  取りあえずこれを見ても、この上の方の棒グラフ、見ていただいてもお分かりのように、やはりピンク色の、結婚は個人の自由であるから、してもしなくてもいいという、そういう考え方の賛成の人がピンク、それからブルーがどちらかといえば賛成という、それを見ますと、やっぱり少しずつではあるんですが増えてきているということがよく分かります。  それから、二〇〇九年、一番新しい数字の部分の年齢別で見ると、やっぱりこれはもう当然のことですが、若い人たち、この人たちが自由な結婚というものに対して抵抗がないという、そういう一つのデータになっているんではないかなというふうに思っております。  ただ、やはりこの事実婚、結婚、自由であるから、してもしなくてもいいということが直ちにイコールで事実婚につながるかどうかというのは、私もちょっとその辺が不明な感じもするんですけれども、大きな流れとしては、やっぱりそうした事実婚も認めるという雰囲気は増えてきているのではないかというふうに思うんですが、この事実婚がこうやって一般的に認知されつつあるということの状況については、上川大臣はどんなふうにお感じになります。
  112. 上川陽子

    国務大臣上川陽子君) ただいま委員が引用されました厚生労働白書二十五年度版ということで、結婚は個人の自由であるから、結婚してもしなくてもどちらでもよいと、これに対しての考え方ということについて、先ほど委員からも、これが事実婚であるかどうかということについて一義的には言えないというような言及もございましたけれども、これだけの質問点を見る限りにおきましては、結婚そのものが個人の自由であって、結婚をしてもしなくても構わないという、そうした考え方の推移というふうに読めるのではないかと。事実婚ということまで結び付けるには、このデータとしてはちょっと無理があるかなという、大変率直に申し上げますとそんな感じでございます。  いろいろな御意見が、時代の中で、また年齢別にも差があるということも、こうした動きそのものがやはり、社会がいろいろな形で、こうしていろんな考え方に対して変化があるなと、あるいは、そうした結婚とか、あるいは出産とか育児とか、いろんな御自分一人一人の人生の選択ということについても多様な動きになっているなということは、印象としては感じるところでございます。
  113. 真山勇一

    ○真山勇一君 まさにそうなんですよね。私もデータを探してこのデータしか出てこなかったときに、ちょっとこれでは不足かな、不満だなという印象を持ったんですね。  ただ、今私たちの生活を見ていると、どんどんどんどんやっぱりそういうことが起きてきて、一つは結婚ということがあって、もう一つは結婚という形にとらわれない事実婚というのが増えていることはもう事実なわけですし、この辺りのデータが、逆に言うと、ないというと、これからの例えば民法の中の家族とか家庭とか、親子とか夫婦とかということを考えるに当たってのやっぱりデータ不足にもなってくるというような気もしないではないんですね。こうした時代に即したものを調査、これ法務省調査することではないとは思うんですが、やはりそういうことが私はこれから必要になってくるんじゃないかなというふうなことは感じております。  先ほども大臣がおっしゃったように、今の制度でいうと夫婦同姓ということが原則となっておりまして、そういう意味でいえば、民法七百五十条の改正というのはまだまだ、賛成、変えてほしいという考え方も強いでしょうけれども、それに抵抗する、やはり一つのこれまでの家庭というものの姿を守るということで反対ということもあると思いますが、ただ、やはり民法というのは、先ほども申しましたように生活の基本ルールだし、やはり現状ですとか時代の変化でそれに合わせていく、みんなが納得、そのとおりだというふうに感じるということは必要な気がします。戦後七十年ですから、戦前のルールのままではやっぱりこれはなかなか難しいのかなと。  それで、先ほど御答弁の中でおっしゃいましたけれども、最高裁の判断というのも一つの大きなきっかけになると思いますが、やはりそれだけに、大きく動いている夫婦別姓というのは、多分半分が女性の方なので、いろんな思いというのはあると思います。でも、私たちの今暮らしの多様化という中で一つの、選択的と付くわけですから、夫婦同姓を今の法律では強制されているわけですけれども、選択的にできるという、その幅を広げるということはやはりこれから前向きに考えていくということが必要であると思いますし、そういうことの機は熟しつつあると思うんですが、これについてどう思われるか。一言でも結構です。
  114. 上川陽子

    国務大臣上川陽子君) ただいま委員の方から選択の幅を広げるというようなことをおっしゃったわけでございますけれども、私は、世論のいろいろな動向の中で、旧姓の通称使用ですね、いわゆる通称使用につきましては、社会生活上の不便を強いられている場面も多いということでございまして、ここのところについては、いろんな角度から取り組んでいくということは非常に大事ではないかなというふうに思っているところでございます。  既に旧姓の通称使用については、いわゆるさむらい士業の方ですね、士業におきまして職務上これが広く認められるようになっているということもございまして、こうした方向が、女性が今の現代の中で選択できることということでございます。  そうした観点で、旧姓使用が認められないために被っているような社会生活上の不便の是正に向けた取組ということでございまして、実は商業登記の規則の改正を今回したところでございますけれども、ただいまのような問題意識によって、商業登記簿の役員の欄に戸籍名に加えて婚姻前の氏をも記録することを可能とする、そうした商業登記の規則等の改正を行いまして、今年二月二十七日から施行されているということでございます。
  115. 真山勇一

    ○真山勇一君 ありがとうございました。  民法改正、先へ進めたいと思うんですけれども、その改正課題の中に夫婦関係と同時に親子関係をめぐる問題というのがあるので、これをちょっと取り上げたいと思うんですが、婚外子は、去年の民法の改正で相続の部分が差別撤廃されましたね。子供は婚内子であろうと婚外子であろうと平等であると、相続に関してはそういう法改正がなされたということで、これやはり民法の中では大変私は画期的な改正であったというふうに思います。こうしたところから少しずつやはり時代に即した法改正というのが行われていく、その一つの大きなきっかけにもなっていくものでないかなというふうに思っています。  ただ、その一方で子供の親権をめぐる改正というのにも課題指摘されている部分があるんですね。これは、要するに親権の問題で、日本は離婚しますと単独親権になってしまうんですけれども、共同親権という考え方もどうなのだろうかなという声が出てきております。  離婚というのは、最近は三組に一組が離婚するんだというふうにも言われているくらいで、だから大変離婚が多いんですけれども、私は、その中で特に、例えば単独親権、片親ということになると、今非常に問題になっていることで子供の貧困率というのがありますね。  この子供の貧困率というのはどういうことからこういうことが起きるのだろうかなと。いろいろな原因はあるというふうに思うんですが、OECDの調査によると六人に一人と言われている。これがさらに、調査によると、一人親世帯の貧困率ということになるともうぐんと上がって五四・六%、つまり二人に一人が貧困であるというふうな統計が出ているわけなんです。  この貧困のぎりぎりの境界というのは、年間所得が百二十二万円というふうにも言われていますけれども、本当にこれ一人だって百二十二万大変なのに、つまり一人親世帯ということだから二人いるわけですから、その二人、お父さん、お母さん、あるいはおじいちゃん、おばあちゃん、あるいはその保護者等ということもあるでしょうけれども、これはなかなか大変だというふうに思うんですよね。  この共同親権というのは、親が例えば離婚しても両方で面倒見ようということを、これなかなか話合い難しいんですが、そういうやはり単独よりも共同ということならば話し合えるということが強いと思うんですけれども、この共同親権については大臣はどういうふうにお考えでいらっしゃいますか。
  116. 上川陽子

    国務大臣上川陽子君) 生まれたお子さんの利益ということについては、これは大変大事な点であるというふうに私自身が強く考えているところでございます。  現行の民法の下におきまして、先ほど委員の方から御指摘ございましたけれども、父母の婚姻中につきましては子供は父母の共同親権に服するということでございます。そして、父母が離婚をする際にその一方を親権者と定めなければならないと、これが現行民法の規定ということでございます。子供の利益という観点から見ますと、父母の離婚後も両親が適切な形で子の養育に関わるということにつきましては、先ほど申し上げたとおり、非常に重要なことだというふうに認識しているところでございます。  ただ、委員から共同親権についての制度導入というようなお話もございましたけれども、このことにつきましては国民の皆さんの間にも様々な御意見があるという状況でございまして、実際に離婚になるというような御夫婦間の中でもなかなか親同士が意思疎通が図れないというようなことがございまして、子の養育についての考え方がまとまらないということで合意がなされないというふうなケースが非常にあるということもございまして、やはりそれぞれの御夫婦の中でのいろんな状況を踏まえて子の養育監護につきましても必要な合意を適時適切に図れないというふうなことになりますと、かえって子供さんの利益の観点から望ましくないというような事態も生ずることになる、こういうことも実は指摘されているところでございます。こうしたことも踏まえまして慎重に検討をする必要があるのではないかというふうに考えております。
  117. 真山勇一

    ○真山勇一君 私は、やっぱり単独親権、共同親権といったときに、何というんですか、子供の立場が、何か全く別に置いておいて夫婦のことだけのことを考えるというふうな感じにどうしても受けるんですね。これだけ今どんどんどんどん社会的な情勢で離婚が増えているんだったらば、離婚が増えてもやっぱり子供にとって親は親、父親は父親だし、母親は母親なんですから、やはり親ということも大事にして、子供に大事にしてあげなくてはいけない。  やはり子供の気持ちというのは、この共同親権、単独親権という言葉からいうと非常に冷たくて、何か子供のことをそっちのけにして親が子供を見る権利をどうするんだということしか感じられないというところがどうも気になります。これから新しい時代で、子供が会いたくても会えないというようなそういう状況とか子供が離婚の犠牲になるということじゃない方法というのも、これからやはり法的に考えていかなくちゃいけないのではないかというふうに思っております。  ちょっとほかにも質問させていただきたいということで用意したんですが、済みません、時間になりましたので、またの機会に質問させていただきたいと思います。  ありがとうございました。
  118. 魚住裕一郎

    委員長魚住裕一郎君) 午後一時に再開することとし、休憩いたします。    午後零時二分休憩      ─────・─────    午後一時開会
  119. 魚住裕一郎

    委員長魚住裕一郎君) ただいまから法務委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、法務及び司法行政等に関する調査を議題とし、法務行政基本方針に関する件について質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  120. 矢倉克夫

    ○矢倉克夫君 公明党、矢倉克夫です。よろしくお願いします。  予算委員会関係質疑の順序を変えさせていただきました。理事各位始め、皆様の御協力に感謝申し上げます。  また、今日は、外務省と厚労省の方もお越しいただきました。ありがとうございます、お忙しいところ。  まず冒頭、質問に入る前に一言。私、政治評論家の森田実さんとも親しく、また御指導いただいているんですが、先日、森田実さんから、今回、刑務所の老朽化等対策、予算が非常に倍増されたということを、大臣、各位皆様の法務省予算獲得に向けての御尽力に敬意を表するとともに是非感謝を申し上げてくださいというふうに言われましたので、冒頭まず改めて、大臣、各位皆様の御尽力に感謝申し上げたいと思います。  早速質問に入らせていただきます。  まず大臣から、今法曹教育、様々な議論があるわけですが、この法曹教育を受けた方々の能力その他が社会においていかに有用的なのかというところを御所見をいただければと思います。
  121. 上川陽子

    国務大臣上川陽子君) 委員から冒頭、矯正施設に関する予算につきまして言及をいただきまして、また森田先生からの御意見ということで触れていただきまして、ありがとうございます。一生懸命頑張ってまいりたいと思います。  ただいまの御質問の件でございます、法曹養成課程を経て培われるべき能力、リーガルマインドとは何かということでございます。多様な国民の様々な御要請、また広範に及びます様々な国民の皆さんの御要請に対しまして、それに応えることができるような高度の専門的な法律知識があること、そして同時に幅広い教養を備えているということ、さらに国際的な素養もあるということ、そして豊かな人間性や、また職業倫理を備えているというものであるというふうに承知をしているところでございます。  このような能力でございますが、法曹が法の支配の直接の担い手として、また国民の社会生活上の医師として、個人やまた企業等の諸活動に関連する個々の問題について適切な法的サービスを提供することで紛争の発生を未然に防止するとともに、紛争が発生した場合におきましては、適正、迅速かつ実効的な解決を図ったり、あるいは国際社会におきまして内外のルール形成、そして運用、こうしたものに携わる、そうした役割を果たすために必要なものであって、社会において一般的にも大変有用なものであるというふうに考えております。
  122. 矢倉克夫

    ○矢倉克夫君 大臣、今紛争というカテゴリーを中心にお話しされました。もう全くそのとおりであると思います。  私も法曹の端くれでもありますが、法律を勉強する前は、私個人にとっても法律というのは全く専門外、全然関係ない世界の話だと思っていたんですが、法律を勉強して改めてびっくりしたのは、国の統治やまた社会保障という大きな分野から、本当に日常ささいにある、物をあげたり買ったり売ったりするような、そういうようなささいな行動の中にも全部法の網というのがあってルールというのがあるんだなということを実感もいたしました。  とりわけ、それを裏返しますと、やっぱり法曹の、また法曹教育を受けた人というのは社会のあらゆる分野に共通する法の素養というものを持っている、この能力の有用性というのは社会にあらゆる分野に汎用性があるものであるなというふうに思っております。という意味でも、法曹三者という枠にとらわれないで、実業界、ビジネスであったり、また役所の世界であったり、様々な分野にこれを生かしていくべきでもあるし、そういうような分野に入っていこうというような人をどんどんと育てていくというのは国策にも合致することであると思います。  大臣所信で、法曹教育の関係で、この分野の重要性は国の形をつくるものであるというふうにおっしゃっておりました。その点もまさにそのとおりであるかと思います。  ただ他方、今問題といいますか、今日は問題提起まずさせていただきたいのは、その法曹教育を受けるということを志願している人がやはり減っているという状態であると思います。最近の司法試験の出願者数でありますが、平成二十四年は一万一千二百六十五人出願でしたが、平成二十五年には一万三百十五人、平成二十六年には九千二百五十五人というふうに毎年千人ごとどんどん減少をしている。まず、この背景にあるものをどのように捉えられているのか、お答えをいただきたいと思います。
  123. 萩本修

    政府参考人(萩本修君) 法曹志願者の減少につきましては、平成二十五年六月の法曹養成制度検討会議の取りまとめにおいて分析がされておりまして、それによりますと、一点目として、司法試験合格状況における法科大学院間のばらつきが大きいこと、二点目として、全体としての司法試験合格率が高くなっていないこと、三点目として、司法修習終了後の就職状況が厳しいこと、四点目として、その一方で法科大学院において一定の時間的、経済的な負担を要すること、これらのことから法曹を志望して法科大学院に入学することにリスクがあると捉えられていることが原因であると分析されているところでございます。
  124. 矢倉克夫

    ○矢倉克夫君 今、萩本さんからお話がありました。様々な要因があるわけですが、やはり経済的要因というのが非常に強いかなと思っております。  日弁連がアンケートを取ったものが今手元にあるんですが、例えば修習生の方、まず修習期間中は今貸与という形になっております。その期間の貸与額、これがまず平均三百五万円、これが重い借金として乗っていると。その上で、法科大学院のときに奨学金を受けられている方、ほぼ半数がやはり受けられている。それら合計を踏まえますと、多い方では本当に一千万近く負担もされている。半数以上、六〇%以上の人が二百万から六百万の経済的負担を持っているという。この状態でありますと、その後、将来就職も含めて不安を抱える状態で修習しなければいけない、それであればやめるというような選択も当然出てくる。実際、司法修習、合格をされたのに、その後の経済的不安から修習そのものも辞退するという人が五十人ぐらいもう、昨年辺りでしたが、いらっしゃったというようなことも聞いております。  私自身も、修習生であったときには非常に経済的に不安定な状態で、家の事情もあったりとかして不安定だった状態でありまして、私個人の思いとしても、修習生、この経済的不安というのを払拭しない限り、私自身もその後の修習生活を送れなかったというところもあり、何とかそういうような不安にならないような思いを持った修習生の安定性というのは確保してあげたいなという思いでおります。  今、貸与制という形にはなっております。給与制を廃止して貸与制とした当時の背景としましては、想定されていた当初の合格者というのが三千名ぐらいであった。それぞれ三千名に、昔の給与、恐らく月額二十万にプラス手当というものの状態で三千名支給をしたら、額として百億以上はやはり掛かると。これは余りに財政的には厳しいんじゃないかというような話があったかと思います。  その後、まず立法事実の変化としては、合格者三千名というものが半数近くに今なっている部分もある。また、それぞれの修習生、デフレの状況もあるかもしれませんが、修習生が生活で大体どれぐらいお金を掛けているのかというところに関しましては、住居費等を抜きましたら大体十万ちょっとぐらいだというようなアンケートの結果もあります。  そういうような結果から考えると、当初百億以上掛かっていたものが、今の推計でいえば三十億から大体四十億ぐらい、そういうふうに額も相当下がっている。こういうような状態を踏まえますと、立法事実も変わっているわけでありますし、この貸与制というものをまた給付制にして、若しくは手当という形にするということも考えるべきじゃないかと思いますが、この辺り御所見いただければと思います。
  125. 萩本修

    政府参考人(萩本修君) 司法修習生に対する給費制から貸与制への移行に当たりましては、今委員指摘のとおり、司法修習生の大幅な増加ということが一つの根拠とされていたわけですけれども、そのほか、法科大学院制度の創設や日本司法支援センターの創設など、司法制度改革によって生ずる新たな財政負担があることから、そうしたことについて国民の理解を得るためにも、司法制度全体に関して合理的な財政負担を図る必要性があることなどが根拠とされ、それらを総合的に考慮した結果とされているところでございます。したがいまして、現在におきましても、そうした根拠はなお失われていないと考えております。  加えまして、司法修習生に対する経済的支援につきましては、貸与制を前提としつつも、平成二十四年に裁判所法の改正によりまして修習資金の返済猶予事由が拡大され、また翌年、平成二十五年には最高裁判所において移転料の支給等の措置が実施されたところでして、司法修習生に対する経済的支援は相当程度図られているところではないかと考えております。  したがいまして、法務省としましては、こうした経済的支援の実施状況を見守ってまいりたいと考えているところでございます。
  126. 矢倉克夫

    ○矢倉克夫君 様々御検討されているというところでありますが、貸与という部分、維持される限りは、なかなか不安というのはやはり覆らない部分はあるのかなと思います。  大臣にもお伺いしたいと思うんですが、私、先日、議員集会があって、そこで一人、司法修習辞退者の声というものがありました。これを今紹介するお時間ないので全文は読まないんですが、一文、その方のお母さんの、法曹はお金がある人しか入れないんだねというような言葉、これは非常に印象に残った部分はお伝えしたいと思います。  あと注目すべきは、この司法修習というのは、義務という言葉が正しいかどうか分からないですけど、この期間を経なければ法曹になれないという期間、逆に言うと、その期間は一年間拘束をされるという時間帯でもあると、一人一人の修習生にとっては。そういうような形で制度を設けている限りは、それに見合ったような経済的支援をするというのは、やはり私は合理性もあると思います。  その上で、もう一点申し上げたいのは、先ほど冒頭、大臣からもおっしゃった、法曹教育を受けた人というのは社会的にも非常に素養のある方、やはりその人に対しての投資というものも、これはしっかりと観点を持っていかなければいけない。国全体でも、何に投資をするかという観点から考えれば、これほど、言葉が正しいかは取りあえずおかせていただいて、確実な投資先というのはやはり私はないのではないかなというふうに思います。そういう意味合いでも、司法修習生の経済的支援ということを大臣の方でもしっかり進めていただくという部分、また一言いただきたいと思います。
  127. 上川陽子

    国務大臣上川陽子君) ただいま委員の方から、大変大事な法曹養成、そして同時に、経済的な支援を含めていろんな声が上がっているということについて御紹介をいただきました。  先ほど、御説明をいたしたところでございますけれども、貸与制を前提にしながら、様々な経済的な支援措置ということにつきましても最高裁におきまして実施するということで期待をされるということでございますので、そうしたことも踏まえまして、貸与金の返還も始まっていないという状況でもございます。まずは、最高裁と連携をしながら、これらの措置の実施状況をしっかりと見ていくということが重要ではないかなというふうに思っております。
  128. 矢倉克夫

    ○矢倉克夫君 今日、実は財務省の人にも来てもらおうかと思っていたんですが、財務省に言ったら、財務省としても、法務省がしっかり意見を表明してくれない限りは我々も何も言うことがありませんと言われて呼べなかったと。  問題は、法務省として、しっかりこの問題についてもより積極的に財政当局等にも訴えていくという姿勢をもっと強くしていかなければいけない部分はあるかと思います。その辺り、法務省として、さらに、そういう財政的な部分の考慮もあるんですが、しっかりしていくということをまたちょっと、もう一点、大臣、一言いただきたいと思います。
  129. 上川陽子

    国務大臣上川陽子君) この法曹養成というのは大変大事な基盤であるというふうに考えております。そういう意味では、この制度そのものがしっかりと趣旨にのっとって運用することができるようにしていくということの中の一つ課題として、今のような御指摘があったものというふうに思っております。  繰り返しになるものでございますけれども、貸与金の返還が始まっていないという状況でございまして、移転料の支給等の経済的支援の措置を講じた現段階におきましては、そうした措置の実施状況ということをまずしっかりと見ながら進めてまいりたいというふうに考えております。
  130. 矢倉克夫

    ○矢倉克夫君 また経緯を見ながらということでありました。私もしっかりまた注視をさせていただきたいと思います。  続きまして、大臣所信の中でまた改めて司法ソーシャルワークの話もされておりました。司法ソーシャルワークの質問ではなく、そこの背景にある部分はやはり司法と福祉の連携というところ、この根底が大事だという思いからこのような所信もされたものであると私も思っておりますし、その点はまさにそのとおりであると思います。  その関係で、成年後見制度に少しお尋ねをしたいことがあります。  まず、この成年後見制度の概要について御説明をいただきたいと思います。
  131. 深山卓也

    政府参考人(深山卓也君) 成年後見制度は、御案内のとおり、認知症等の精神上の障害により判断能力が不十分であるため契約等の法律行為における意思決定が困難な者につきまして、その判断能力を補い、その財産の管理をする制度でございます。  成年後見の開始の審判というのは、本人、配偶者、四親等内の親族等のほか市区町村長もすることができることとされておりますし、さらに、家庭裁判所において選任する成年後見人は、個別具体的な事案に応じまして、被後見人の親族、弁護士や司法書士等の専門職、あるいは市民後見人、すなわち一般市民で社会貢献として自ら後見人となることを希望した方などが選任されているというふうに承知しております。
  132. 矢倉克夫

    ○矢倉克夫君 申立てに当たっては、この親族申立てと市区町村の長が申し立てる、その二つがあり、また後見人になる方という分類から考えれば、親族の方が後見人になる市民後見人、また専門家の後見人という分類が大枠あるというようなことであったかと思います。  それで、今、お手元の資料を御覧いただきたいと思います。  冒頭、今あった申立ての分類のうちの一つ、市区町村長の申立ての件数が非常に伸びているという状態、割合、総数もどんどん伸びているということであります。これは、裏を返せば、親族の申立てというものが割合的には減って、市区町村長の割合が増えているというようなことであると思います。  まず、この背景について、厚労省の方から御説明いただきたいと思います。
  133. 苧谷秀信

    政府参考人苧谷秀信君) 市町村長申立ての件数につきましては、今お話がございましたように、制度創設当初の平成十二年は二十三件でございましたが、平成二十五年は五千四十六件となっており、増加傾向にございます。  このように成年後見制度における市町村長申立てが増加している背景でございますが、一つに、市町村長申立ての広報啓発が行われ、申立て制度の普及定着が進んでいること、それから二つ目に、認知症高齢者や独り暮らし高齢者の増加に伴い、介護保険サービスやその他の高齢者福祉サービスの利用ニーズが高まっていることなどが主な理由だと考えております。
  134. 矢倉克夫

    ○矢倉克夫君 今、広報啓発と介護保険の利用という部分もあったと思います。  私、もう一つ言わざるを得ないところは、現場の声をいろいろ聞くと、なぜ市区町村長申立てというふうになるかというと、やはり財産のない高齢者の方、その方に対する後見というものを、大変残念な事態ではあるんですが、親族の方とかが拒否をされるという部分、そういう部分の本当に身寄りのない方とかも含めた方が市区町村長申立てというような形にならざるを得ないというような部分もやはりあるかと思います。  そのような中で、私もいろんな方と、とりわけ司法書士の先生であったり弁護士の先生、現場でやっていらっしゃる方に何人かにお伺いをしたんですが、そこで一つお伺いをした中で改めて感じたのは、市区町村長申立てをするときに、申立てという手続を開始してから実際後見人が選任されるまでの期間が非常に長くなっているというようなことがありました。  私が聞いた案件の中で、そのような後見が必要だということを認識した上で、じゃ実際、後見人が付いて手続が開始されるまで市区町村長申立てをした場合どうだったかというと、一番長い年限で二年間掛かったという事例がありまして、具体的には、平成二十四年にその方、民生委員が見付けて、民生委員から市役所に連絡をしたにもかかわらず、後見人が結局選任されたのはその二年後の平成二十六年の九月十七日、これが一番長い期間であったんですが、こういうような、先ほど冒頭申し上げたとおり、やはり一番サービスを必要とするような方が市区町村長申立てをしているのに、それへの対応がこのような事態になっている部分もあると。  理由は二つぐらいあるかなと思って、一つは、市区町村長申立て、それを受ける市役所側の体制というのがやはりまだまだ、マンパワーの部分かもしれない、またそれぞれノウハウが足りないという部分であると思います。  ここの体制がまだ改善の余地があるというところもあるかと思います。  これについて、現状どういうような対応をされているのか、この辺り、厚労省から。
  135. 苧谷秀信

    政府参考人苧谷秀信君) 今御指摘のございました市町村長申立てにつきましては、認知症の高齢者世帯、それも単身の世帯、それから親族間の紛争、高齢者虐待等の問題を抱え、対応が困難な事案が比較的多いというふうに聞いてございます。  このため、市町村におきましては、弁護士等専門家の技術的支援を受けるための体制整備を進める、あるいは成年後見支援センターによる専門相談を行うなどの取組が行われていると承知しておりますが、なお、こういう職員のマンパワー不足、ノウハウ不足に対応しましては、厚生労働省といたしましても、このような市町村による先進的な取組につきまして、平成二十三年度に創設しました市民後見推進事業を通じて支援をしてきております。  さらに、平成二十七年度予算案におきましては、この事業に代わり、都道府県に設置します地域医療介護総合確保基金を活用しまして、新たに権利擁護人材育成事業を設けまして、都道府県等と連携しながら、市民後見人の育成と普及により一層取り組むことといたしてございます。
  136. 矢倉克夫

    ○矢倉克夫君 今、市民後見人の普及という部分がありました。それとはまた別に、専門家の後見人の方がより良く入る体制というのもまたこれからつくっていく必要があろうかと思います。  それで、あともう一個の理由なんですけど、先ほど申し上げた例含めていろんな方がおっしゃっていたのが、なぜ遅れたか。遅れた理由というのは、まず申立てが遅くなった最大の理由は、申し立てる方御本人にお金がなくて、専門家に依頼しにくかったと。なぜなら、報酬がやはりどうしても下がってしまう。そのようなことを受ける専門家の後見人の方の報酬というのがやはり少ない部分で、結局、皆さんたらい回しになってしまって、それが受けられないんじゃないかと。役所の人がそういうふうにおもんぱかって、その後、申立ての手続になかなか踏み込めなかったというような実態があるかと思います。  この実態を改善するためにも、今、現状は、例えば司法書士の方、弁護士の方、専門家の方、後見人をされるわけですが、特に先ほど申し上げた市区町村長申立てのような、財政的にやはりお金のない方、けれど、一番保護が必要な方であればあるほど報酬が少ないというような状態がある。その結果、実入りのいいものだけをみんなで取り合って、本当に大事なところに皆さんなかなか手を差し伸べない。これは専門家倫理の部分もあるんですが、それはひとまずおかせていただいて、そういうような方でもしっかりとサポートするような体制になるような、報酬体系部分も含めてやはり整備していかなければいけないと思います。  まず、これに対してどのような支援があるのか、こちらも厚労省からいただきたいと思います。
  137. 苧谷秀信

    政府参考人苧谷秀信君) 今御指摘ございました、今後増加する認知症の方を始めとしました高齢者等の権利を擁護するため、成年後見制度を利用しやすいものとしていくことは非常に重要であるというふうに考えてございます。  このため、介護保険法に基づきます市町村による地域支援事業、この中に成年後見制度利用支援事業を位置付けまして、成年後見制度の利用が必要と判断される低所得の高齢者に関します成年後見制度の申立ての経費、それから成年後見人の報酬等を今現在助成しておるところでございます。このような取組を通じまして、後見に係る費用を負担するなど、成年後見制度の利用が進むよう支援してまいりたいと考えてございます。
  138. 矢倉克夫

    ○矢倉克夫君 これ、ここで項目取り上げましたのは、今もうずっと厚労省にばかり聞くような形になっているわけですが、やはり法務省としてもこの問題をより積極的に関わっていただきたいなと思っております。  とりわけ後見受任をする士業、例えばそのような方がしっかりこの分野に入り込むというような支援、これをしていく、入り込むことで本来起きなかった紛争の問題というのが起きない、未然に処理される可能性もあるかと思います。そのような体制をしっかり取れるように、いろんな専門家の方が入れるような体制支援というのをやっぱりしていかなければいけないなというふうに思います。  他方で、横領の問題とかそういうのもあったりとかする、そういう部分にはしっかり適切に配慮しなければいけないわけですが、その上で、法務省としてもこの後見人を受任する士業への支援を拡充するなど予算面も含めてより積極的に動いていただきたいと思いますが、その辺り、大臣からいただきたいと思います。
  139. 上川陽子

    国務大臣上川陽子君) 社会が非常に高齢化が進み、また障害の方々とともにも歩む社会づくりという意味では、先ほどおっしゃった司法とそして福祉の連携という司法ソーシャルワーク、そしてその中でも成年後見人の制度というものは、非常に大事な制度であるというふうに考えております。  先ほど来のお話がございましたとおり、市区町村長により申立てが適切に行われ、それが実効あるものとしていくために、また同時に、そうしたニーズの増大に伴いまして、士業の方にも積極的に担い手としての役割を果たしていただくためにということでございまして、先ほど来、厚生労働省の方からも御指摘がございましたけれども、後見人の報酬の一部助成でありますとか、あるいは成年後見人の担い手の確保のための施策ということでございまして、そうしたものを踏まえて、また成年後見制度そのものを法務省所管しているということでございますので、引き続きこの制度の周知徹底を図るとともに、厚生労働省等と必要な協力をしっかりと果たしてまいりたいというふうに思っております。
  140. 矢倉克夫

    ○矢倉克夫君 まさに制度を所管されている法務省として、他省との連携、もうこれはやっぱりしっかりしていかなければいけないなと。この分野、その部分で、所管所管という部分だけでいってしまうと、本当に大事な人への保護というのが抜け落ちてしまっているんじゃないかなという問題意識はありますので、省内含め、また他省との連携の会議の場等も設けるなど、様々な工夫をしてより一層の意見交換を是非今後もしていただきたいと思います。  最後、続きまして、技能実習制度について、今回、法案等も提出される分野ではありますが、若干御質問させていただきたいと思います。  まず、またまた冒頭、大臣からいただきたいんですが、やはり今この問題、この制度について議論になっている部分というのは、ほぼ多くは実習生として来られた人の労働環境、劣悪なもの、違法な部分をどう取り締まるかというような話がやはり多くなっている。  ただ、他方、この制度というのは実は国際貢献というふうに銘打たれているものでもあります。その国際貢献という理念、これをプラスにどうやって実現していくかというような話よりも、むしろそういうような分野だけに話が行ってしまっているというようなところは正直、残念であるなと思っているところではあります。そのような現状について、大臣から一言いただきたいと思います。
  141. 上川陽子

    国務大臣上川陽子君) 委員指摘をいただきましたこの技能実習制度、本来の趣旨でございますが、技能等の開発途上国への移転によりまして積極的に国際貢献を図っていくということが本来の目的ということでございます。  しかしながら、残念なことではございますが、この技能実習制度におきまして、受入れ機関が制度本来の趣旨を理解せず、安価な労働力としてこの技能実習生を受け入れ、また賃金不払等の不適正な事案を発生させているということでございまして、こうした御批判もなされているところでございます。  法務省におきましては、厚生労働省等関係省庁とも連携をいたしまして、技能移転による国際貢献という、この本来持っている技能実習制度の趣旨の徹底を図る見直しを行うことといたしておりまして、技能実習制度の見直しについての関係法案につきましては、今月の六日に国会に提出したところでございます。  法務省といたしましても、この見直しを通じまして、技能移転によりまして国際貢献という制度本来の趣旨にしっかりと沿った適正な受入れということについて実現を図ってまいりたいというふうに考えております。
  142. 矢倉克夫

    ○矢倉克夫君 この問題はやはり、民民の関係で今まで割と基本で来ていたわけですが、正直この国際貢献という理念の実現も、果たして民間だけでやるものなのか、もっと政府が関わるべきなのではないかというような問題意識が基本ございます。  私、理事始め委員各位の皆様とも視察に行かせていただいて、この技能実習制度の現場、見させていただいた。非常に良い運用のされている会社でありまして、労働環境等も含め感銘も受けたわけですが、一つ良かったと思ったのが、そういうようなそこの実習生で来られた方の一人が、そこで日本語を勉強されて通訳という形になって、帰国後はその国の会社等で働かれているという、キャリアを積まれたという実例も聞いて、良かったと思います。  要するに、技能、何を国際貢献で学んでいただくかというようなところでありますが、今の議論の並行だと、やはり、まさに働く技術、それを得てもらうこと、それが国際貢献の在り方の一つの、それで完結しているかのような部分の認識もひょっとしたらあるんじゃないんですか。  私は、国際貢献というふうに銘打つ以上は、それ以上の何かものを持っていただいて外国の方に帰っていただくというような高い目標も持たなければいけない、その一つの表れが先ほど言った日本語を学んで通訳という職を得て、そこから人生を切り開いたという外国人の方がいるというような姿勢、そういうようなものもやはり大事なのではないかと思います。  今のは日本語という言語の話でしたが、それ以外も、例えば、まさにこの日本という文化をこの技能実習制度を通じて触れる、また地域の人との関係というものを触れることで日本を通して世界を知って、国際人として更に目を開いた上で帰られる外国人の方、それがどんどんどんどん増えるということになって初めて国際貢献の制度と言えるわけですし、それは民間でやる話ではなくて、やはり国でしっかりやっていかなければいけない話なのではないかと思っております。  その上で、今少し申し上げましたが、例えばもうちょっと国としても研修生同士の横のつながりの構築や地域社会との連携、そのような部分を踏まえた在り方というものも支援するようなこともやはり必要ではないかと思っておりますし、また日本への理解も深めて国際人として成長していく手助けをする制度の在り方というものも、これも必要かと思いますが、その辺り、今現状どのようにされているか、またどうすべきかを厚労省と、また外務省からいただきたいと思います。
  143. 中山峰孝

    政府参考人(中山峰孝君) お答え申し上げます。  議員御指摘のとおり、技能実習生が地域社会に溶け込むこと、そして相互に交流、理解を深めることは大変意義があることだと厚生労働省としても考えておりますし、またそれがまさに制度趣旨である国際貢献に資するものだと考えております。  厚生労働省及び法務省といたしましては、この技能実習生の見直しに先立ちまして合同の有識者懇談会を開きました。その際に、その報告書におきましてこのように指摘されております。監理団体や実習実施機関による実習生と地域社会との共生に向けた取組を推進すべきであるということでございます。  厚生労働省及び法務省といたしましては、こうした指摘も踏まえまして、連携して技能実習生の地域社会との共生に向けて取り組んでいきたいと考えておるところでございます。
  144. 鈴木哲

    政府参考人(鈴木哲君) 外務省といたしましても、技能実習生を含む外国人の受入れに際しまして、日本社会や地域コミュニティーとの相互理解を促進するとの点について、外国人の受入れと社会統合に関する国際ワークショップを毎年開催するなど、啓発活動も行ってきております。  さらに、自治体等との連携も含めまして、引き続き取り組んでまいりたいと思っております。
  145. 矢倉克夫

    ○矢倉克夫君 他方で、今この問題、例えば米国などは人身取引だというふうに言ったりもしている部分もある。そういう部分は今日は質問はいたしませんが、また外交努力として、そうではないんだという部分も含めて発信もしっかりやはりしていただきたいというふうに思っております。  それで、最後にまた大臣にお伺いしたいんですが、今日は法務省というよりは他省にいろいろとお聞きするような質問の時間帯が多かったわけですが、これからも分かるように、法務省所管している案件というのも、やはり他省でいろいろ連携をしていかなければいけない案件がこれだけ多いという部分もあるかと思います。  その中において、今の技能実習制度も、法案の部分についてはまた今後更に審議をさせていただきますが、本来の趣旨に合う形にするということは、法務省もより積極的に関わっていって、他省と連携もした上でやっていくというような姿勢がやはり更に大事であるかと思っております。その辺り、法務省としてどう取り組むというところを、また大臣に最後一言いただきたいと思います。
  146. 上川陽子

    国務大臣上川陽子君) 先日の、私、所信表明の中でも申し上げさせていただいたところでございますけれども、グローバル化が進んでいるわけでございまして、人と情報がボーダーレスに行き交う、そういう時代を迎えているところでございます。そういう中にありまして、外国人材の受入れにつきまして、この技能実習制度も含めまして大変大事な取組であるというふうに思っております。  先ほど来のお話ありました、技術を学んでいくと同時に日本の中でその技術を習得するという、そういう時を過ごしていただくわけでありますので、ある意味では異文化との接触というふうになるわけでございます。そういう中で、また持ち帰っていただいて、日本との関係についても深まり、またその橋渡しの役割を果たすことができるような人材という、そうした姿も期待したいというふうに思っておりますので、各省庁としっかりと連携をして対応してまいりたいというふうに思っております。
  147. 矢倉克夫

    ○矢倉克夫君 終わります。
  148. 仁比聡平

    仁比聡平君 日本共産党の仁比聡平でございます。  大臣所信表明について、まず、法務省は、戦前の司法省を前身とし、戦後、一定の組織変化はありましたが、一貫して云々、長い歴史を持つ役所ですと述べられた真意についてお聞きしたいと思います。  戦後の歴代の法務大臣でこうした認識を述べられた大臣は初めてなんです。一貫してとここでおっしゃっているのは、読みようによっては戦前の司法省から一貫してとも読めるわけですけれども、この後の部分で、法務省は、時代の変転を超えて、永々と、あるいは、法務大臣として、法務省の長い歴史の中で培われてきた伝統を受け継ぐとも述べられたわけですが、大日本帝国憲法の下、治安維持法で国民の思想まで弾圧した司法省と現憲法の下での法務省が連続しているというふうにも聞こえかねないわけですけれども、大臣の御真意はいかがでしょう。
  149. 上川陽子

    国務大臣上川陽子君) ただいま仁比先生から私の所信ということで御質問がございました。  御指摘いただきました、私自身、所信におきまして、この法務省を司法省を前身とする長い歴史を持つ役所ということで申し上げましたし、また法務省の長い歴史の中で培われてきた伝統を受け継ぐとも申し上げたところでもございます。  所信でも申し上げたんですが、法務省は民法等の基本法制、登記・供託、矯正・保護等多くの所管業務を堅実に維持、継続してまいった役所でございます。戦後、日本国憲法が制定されまして、司法権の独立、そして基本的人権の尊重等の理念の下で、司法省から裁判所が分離されたことを始め、様々な機構変革とその内容の変化がございました。そして、法務省自身、人権保障の面でも日本国憲法の下でその充実に努めてまいった省というふうに認識しております。  私自身、こうした法務行政のこれまでの歩みあるいは変化ということを踏まえまして、国民生活の安全、安心を守るために、先ほど引用いただきましたけれども、法務省の長い歴史の中で培われてきた伝統を受け継ぐとともに、時代の変化に対する感覚を研ぎ澄ませ、大胆に時代を切り取る視点を持ち、新たな法務行政の役割や課題に挑戦することで、法務行政の長としての使命をしっかりと果たしてまいりたいというふうに申し上げたところでございます。  歴史に対しては、私自身、謙虚に向き合っていくという思いということでございまして、この思いを踏んで、また戦後のそうした様々な努力ということも踏まえまして、そして、これからそうしたものを踏まえた上で将来に向かってどう取り組むかということについてのある意味では私自身の考え方ということを述べさせていただいたところでございます。  もちろん、先ほど御指摘にはありましたけれども、ゆめゆめ戦前に立ち戻るというような趣旨で申し上げたわけでは全くございません。
  150. 仁比聡平

    仁比聡平君 ということであれば、端的にイエスかノーかでお答えいただけるのかと思うんですけれども、天皇が絶対的主権者の大日本帝国憲法下では、裁判官と検察官は共に司法省に属して、裁判は天皇の名において行われたわけです。国民の権利は法律の留保の下に置かれ、緊急勅令などで自由に制限することができました。戦争と暗黒裁判の時代の深い反省の上に立って、十三条や、あるいは刑事司法について適正手続の保障を定める三十一条など、また民事法制に関しても十四条や二十四条ほかの基本的人権の保障が定められ、裁判官、裁判所の独立、そして違憲審査権が現憲法で定められているわけですが、これを生かすのが法務行政だということでよろしいですか。
  151. 上川陽子

    国務大臣上川陽子君) そのとおりでございます。
  152. 仁比聡平

    仁比聡平君 今日は、通信傍受、つまり盗聴の拡大と司法取引法案と私は呼ぶべきかと思いますけれども、について大臣とこの後議論をさせていただきたいと思っております。  法制審新時代の刑事司法制度特別部会を経て、冤罪被害者を始め各地の弁護士会あるいは市民団体など多くの反対が広がる中で、法務省はこの関連法案を提出をされました。私、極めて遺憾だと思います。  そこで、法制審への諮問第九十二号について伺いたいんですが、まず。法制審への諮問は、近年の刑事手続をめぐる諸事情に鑑み、時代に即した新たな刑事司法制度を構築するため、取調べ及び供述調書に過度に依存した捜査、公判の在り方の見直しや、被疑者の取調べ状況を録音、録画の方法により記録する制度の導入など、刑事の実体法及び手続法の整備の在り方について御意見を賜りたいと述べてあります。ここに言う近年の刑事手続をめぐる諸事情に鑑みというのは冤罪事件の続発であって、つまり諮問の趣旨は冤罪根絶のための刑事司法制度改革ではなかったんですか、大臣
  153. 上川陽子

    国務大臣上川陽子君) ただいまの法制審議会に対する諮問第九十二号ということで、こちらにおきましての趣旨ということで御発言をいただいたわけでございますが、この冒頭の近年の刑事手続をめぐる諸事情に鑑みというところも含めまして、この諮問そのものにつきましては、その前に検察の在り方検討会、つまり、いわゆる足利事件等によりまして捜査等に関しましての問題が指摘をされる中で、さらに、厚生労働省の元局長の無罪事件及びこれに関する一連の事態ということが発生したことを受けて法務大臣の下に設けられました検察の在り方検討会、こちらの中で提言が行われたということを受けてこの諮問九十二号が発せられたというふうに思っております。  この同会議におきましての提言ということでございますが、一連の事態に至った原因について考えてみるとということで、その提言の内容でございますが、極端な取調べ、供述調書偏重の風潮があったことがうかがえ、この点に本質的、根源的な問題があると考えられる。また、国民の安心、安全を守りつつ、冤罪を生まない捜査、公判を行っていくためには、抜本的、構造的な改革として、追及的な取調べによらずに供述や客観的証拠を収集できる仕組みを早急に整備し、取調べや供述調書に過度に依存した捜査、公判から脱却するよう、その在り方を改めていかなければならないと。この提言、この御指摘を受けて、そして法務大臣から法制審議会に対しまして、新たな刑事司法制度を構築するための法整備についての諮問第九十二号が発せられたものというふうに考えております。
  154. 仁比聡平

    仁比聡平君 その提言に言う客観的証拠の云々というのは、この諮問そのものには出てこないですね。諮問に明らかな取調べの可視化あるいは証拠開示というのは、これは極めて不十分です。  一方で、今回持ち込まれたのが盗聴拡大と、そして自分の罪を軽く処分してもらおうと他人を引き込む虚偽供述の重大な危険がある司法取引なんですね。だから、冤罪被害者の皆さんが、冤罪をなくすどころか人権を著しく侵害し、新たな冤罪を生み出す温床になりかねないと強く反対の声を上げておられるわけです。  盗聴法拡大について、現行法成立に至る過程をちょっと振り返ってみますと、九六年に法務省事務局案が出され、九七年に法制審要綱骨子案が出されましたけれども、地方議会の反対意見書を始めとして国民的な反対運動が大きく広がりました。当時の自社さ政権で大もめにもめて、九八年に、百四十二国会ですけれども、組織的犯罪対策三法案の一つとして提出をされましたが、慎重審議だという法務委員会の理事会合意で継続審議になる。翌百四十三国会、百四十四国会では全く審議がされず、九九年の百四十五国会で審議再開に至った際にも、衆議院法務委員会理事会で慎重審議が合意をされて、ところが、その合意を自自公、与党が踏み破って、自民、公明、自由党の強行を図る中で三会派共同提案で修正案が出される。これ、会議録を読みますと、まさに怒号の中ですよね。委員長を始めとした国会役員への解任決議案が次々と提出をされる中で強行採決をされたというのがこの修正と現行法です。  そこで、この現行法、つまり修正によって対象犯罪がどうなったか。政府提出案から重大犯罪の四類型、組織的犯罪に限定をしました。そして、立会人について、常時立会いに加えて立会人の意見を述べることができるという修正を行っているんですが、ほかにも修正部分はあるんですけれども、この二点について、修正理由をその趣旨説明ではどう述べていますか。
  155. 林眞琴

    政府参考人(林眞琴君) 通信傍受法の政府原案に対する与党修正につきまして、まず対象犯罪が四罪種に限定された理由につきましては、この法案が憲法の保障する通信の秘密を制約するものであるほか、我が国で初めて行われる通信傍受の法案であることに鑑み、対象犯罪については、平穏な社会生活を守るために通信傍受が捜査手法として必要不可欠と考えられる最小限度の組織的な犯罪に限定することとしたなどと説明されていたものと承知しております。  また、立会人に係る修正につきましては、政府原案においては、やむを得ない事情がある場合には立会人の立会いを要しないとしていたところ、与党修正においては常時立会いが義務付けられるなどしたわけでございますが、こうした理由につきましては、通信傍受に対する国民の心配を払拭するため、常時立会人を置くことによって公平公正に通信傍受が行われていることを担保することとしたなどと説明されていたものと承知しております。
  156. 仁比聡平

    仁比聡平君 修正の結果、警察にとって使い勝手が悪いのは当然なんですよね。今回の法案では、そうやって削除をされた放火や殺人、逮捕、監禁、爆発物使用などを復活をさせるとともに、加えて、新たに前の法案にはなかった窃盗、強盗、詐欺、傷害なども対象にするわけです。  大臣、これ、取調べの可視化などの諮問の趣旨とどう関係するんですか。
  157. 上川陽子

    国務大臣上川陽子君) 法制審議会に対します諮問の趣旨ということで、現在の捜査、公判が取調べ及び供述調書に過度に依存した状況にあるということ、そして、このような状況につきましては、取調べにおける手続の適正確保が不十分となったり、また、事実誤認に陥る危険性があるということが考えられるということで、これを改めるということにあるというふうに思っております。法制審議会の答申でも御指摘をいただいたところでございますが、そのような状況を打破していくためには、証拠収集手段の適正化、多様化と充実した公判の実現を図る必要があると、こうした趣旨であったというふうに思います。  今回、通信傍受法の改正によりまして、先ほど委員から御指摘いただいた対象犯罪の拡大ということでございますが、暴力団によりまして、殺傷事犯あるいは特殊の詐欺などの組織的な犯罪について客観的な証拠をより効果的に収集することを可能とするものであるということでございます。  通信傍受法の改正におきましては、こうした証拠収集手段の適正化、多様化を図ることによりまして、誤判等が生じる要因と指摘されております取調べ及び供述調書に過度に依存した捜査、公判の在り方を改めようとするものでございます。
  158. 仁比聡平

    仁比聡平君 いや、組織的犯罪、暴力団のというのだったら、暴力団のという組織的犯罪処罰法という文脈での議論政府の中でもあってもいいんだろうと思うんだけれども、今回は極めて一般的といいますか日常的といいますか、窃盗、詐欺なども含めたこうした犯罪に大きく広げようというわけでしょう。  この取調べの可視化などの諮問の趣旨との関係でいいますと、可視化だとか証拠開示は極めて限定されて、全事件のおよそ二%から三%程度ではないかと指摘をされているわけですね。一方で、この可視化の対象にはならない一般的、日常的犯罪にまで盗聴を拡大するということですから、これは一部可視化とこの盗聴の拡大というのは、これはリンクはしないんですね、大臣
  159. 上川陽子

    国務大臣上川陽子君) ちょっと先ほどの御表現の中に、一般の方にも要するに通信傍受ということで拡大されるということについてのちょっと御指摘がございまして、そこのところの部分なんでございますが、今回新たに追加する対象犯罪につきましては、あくまで組織的に行われていると疑うに足りる場合に限って通信傍受を実施することができるということでございます。  したがって、新たに追加する対象犯罪については、繰り返しでございますが、通信傍受を実施することができる犯罪行為というのは、あらかじめ定められた役割の分担に従って行動する人の結合体により行われる、つまり組織的な犯罪、そういうものに限るということでございますので、組織的な犯罪とは言えない事案につきましては通信傍受を実施することができないということが明確になっているところでございます。
  160. 仁比聡平

    仁比聡平君 その点、後で議論したかったんですけど、まず私が確認したいのは、一部可視化と、盗聴やあるいは司法取引もそうですが、この拡大というのはリンクしないんでしょう。つまり、可視化されない事件について広く盗聴があり得るということになるでしょう、今おっしゃった要件を別とすれば。
  161. 上川陽子

    国務大臣上川陽子君) そういう状況でございます。
  162. 仁比聡平

    仁比聡平君 つまり、録音、録画によって制約されるからというのではなくて、取調べ以外で供述証拠をどんどん収集できるようにしようということになるわけです。  冤罪根絶のために人質司法など刑事司法の構造を正す、全面可視化や証拠開示、検察改革を具体化するかのように世間を欺いて、捜査機関年来の要求である使い勝手の良い盗聴をできるようにしようというものではないか。だから、メディアからも焼け太りと指摘をされているわけですね。  そこで、今お話のあった組織的犯罪という限定の問題ですけれども、これはもう全く無意味になるんじゃないでしょうか。先ほど大臣がおっしゃったあらかじめ定められた役割の分担に従って行動する人の結合体により行われるものに限るといった要件は、これ、意思を通じるとか共謀ということとさして変わらないですよ。結合体というけれども、組織的犯罪処罰法に言う団体の活動って、大臣、御存じでしょうか。団体の意思決定に基づく行為であって、その効果又はこれによる利益が当該団体に帰属するものとして、当該罪に当たる行為を実行するための組織によって行われたときというのが、これが団体性、組織性の要件と言われているもので、こうした組織的犯罪に絞られるんだとこれまで政府・与党は合理化してきたわけでしょう。この組織的犯罪処罰法の要件も、これが犯罪集団に限定されずに、労働組合や広く市民団体、あるいは政党も例外ではないではないかと問題になり続けてきたわけです。  これさえ踏み越えて、もっと広い、あるいは前段階のものと言ってもいいのかもしれませんが、その大臣がおっしゃった要件というのはそういうことなんじゃないんですか。
  163. 林眞琴

    政府参考人(林眞琴君) 今回新たに追加する対象犯罪について通信傍受をすることができるためには、単に共謀等があるということではなくて、それに更にあらかじめ定められた役割の分担に従って行動する人の結合体によって行われるものという場合に限って裁判所において令状が出て、それによって通信傍受が行われると、こういうことに限定をされているものでございます。  今御指摘のありました、例えば団体の活動としてという、そういう特に組織的犯罪処罰法三条第一項の要件というものをここに当てはめるか否かということについては、この組織的犯罪処罰法第三条一項の要件は刑を加重するためのものでありまして、片や通信傍受の実施の要件をこれと同じとする必然性はないと考えております。  組織的な犯罪の形態は多様でございまして、組織的犯罪処罰法第三条第一項の要件、すなわち団体の活動として行う、こういったものの要件を満たさないものも多いわけでございまして、仮にこのような同様の要件を付加した場合には、本来通信傍受によって事案の解明を図ってしかるべき組織的犯罪が通信傍受の対象から除外されるということになって、相当ではないと考えます。  また、令状を請求した場合に、こういった要件を疎明するという観点からいたしますと、団体の内部における構成員相互間のやり取りを明らかにする必要性が極めて高いけれども、そのような証拠を通信傍受を実施しようとする時点においてあらかじめ収集するということは実際上不可能に近いということからも、こういった実施要件を付することは相当でないと考えまして、今回新たな追加する対象犯罪について、その組織性で限定するための要件といたしましては、冒頭申し上げたとおり、あらかじめ定められた役割の分担に従って行動する人の結合体により行われるものという要件を課しまして、これを令状の際に疎明する必要があるということにしたものでございます。
  164. 仁比聡平

    仁比聡平君 そうとなれば、結局、組織的犯罪集団に限られずに、捜査機関が容疑があると判断して令状が出れば対象となるということになるんですよ。市民団体だってそれは例外ではないではないかと。やっぱり私は、それはそのとおりだと思います。  立会いの問題についてですけれども、与党修正でも、傍受の実施の適正を確保するために設けられたのが常時立会い。この常時立会いを伴わなくするという、この必要性というのはどこにあるんですか。
  165. 林眞琴

    政府参考人(林眞琴君) 今回、改正法により導入する新たな傍受の実施方法で、立会人を置くことに代えて暗号技術等を活用することによって手続の適正を確保する、こういった目的がございます。  すなわち、現行の通信傍受法は、その手続の公正さを担保するために捜査機関以外の第三者を立会人とすることとしているものでございますけれども、新たな傍受の実施方法におきましては、暗号技術等の進歩に伴いまして、これを活用した技術的な措置を講じることによりまして、立会人を立ち会わせた場合と同様の通信傍受の適正を確保することによって立会いを不要とするものでございます。  現行の通信傍受法におきまして、通信傍受を実施する間、常時、通信事業者などが立ち会うことが必要とされていることから、通信事業者にとって、傍受の実施場所の確保や立会人の供出が大きな負担となっておりまして、そのことが通信傍受を迅速に行う上での障害ともなっている事情がございます。こうした新たな傍受の実施方法を導入することによりまして、現行法制度の下では、傍受を実施する間、その場所を確保し、立会人を立ち会わせることとなっている通信事業者の負担を軽減するとともに、捜査状況に応じた機動的な傍受を行うことが可能となるというものでございます。
  166. 仁比聡平

    仁比聡平君 結局、後半の部分で述べられた、捜査の機動性にとって今の制度は使い勝手が悪いと言っているにすぎないわけですよ。  立会いはなくして、そこで確保しようとした適正というのはどうやって図られるのかと。これはもう今日議論する間がなくなりましたけれども、盗聴は密行なんですよね、大臣。傍受されているときに知らされないんです、当たり前なんですけど。その盗聴、つまり盗み聞きというこの手段が基本的人権をどれほど侵害するかという、その認識はございますか。  我が党の緒方靖夫当時国際部長宅を警察が盗聴したという事件の東京高裁判決は、盗聴は、その性質上、盗聴されている側においては盗聴されていることが認識できず、したがって、盗聴された通話の内容や盗聴されたことによる被害を具体的に把握し特定することが極めて困難であるから、それゆえに、誰との、何どき、いかなる内容の通話が盗聴されたかを知ることもできない被害者にとって、その精神的苦痛は甚大であると述べています。  この盗聴を実行したのは誰かと。裁判所は、本件盗聴は、緒方靖夫の電話による通話を傍受することによって日本共産党に関する情報を得ることを目的として計画的、継続的に実行されたもので、これには神奈川県警本部警備部公安第一課所属の警察官が関与していたものと推認することができると断罪をしているわけですが、こうした判決の後も、警察庁は、警察は過去も現在も電話盗聴はしていないという事実に反する答弁をこの国会で行っています。  警察庁、おいでいただいていますが、改めて伺いたいと思います。  緒方宅盗聴事件を行ったことを認めて謝罪すべきだと考えますが、いかがですか。
  167. 魚住裕一郎

    委員長魚住裕一郎君) 時間ですので簡潔に願います。
  168. 高橋清孝

    政府参考人(高橋清孝君) お答えいたします。  平成九年六月の国賠訴訟の控訴審判決におきまして、警察官である個人三名がいずれも県の職務として行ったものと推認することができると判示しておりますが、組織的犯行と断定した判決ではなかったというふうに承知しております。  いずれにしましても、警察としては盗聴と言われるようなことを過去にも行っておらず、今後も行うことはないというふうに申し上げます。
  169. 魚住裕一郎

    委員長魚住裕一郎君) 時間です。
  170. 仁比聡平

    仁比聡平君 反省し謝罪するどころか、事実さえ認めないと。こうした捜査機関にこんな卑劣な手段を与えていいのかというこの声を本当に受け止めて、私は、一括提案をして成立を求めるなど言語道断だと思います。  今からでも考え直すべきだと大臣に強く求めて、質問を終わります。
  171. 田中茂

    ○田中茂君 日本を元気にする会・無所属会の無所属の田中茂です。  まず、大臣所信表明の中の、国内外の日本人の安全確保について質問をさせていただきます。  今年の一月にISに拘束されていたお二人の日本人、残念ながら殺害されました。また、先月、外務省は、メディアを通じてシリアへの渡航計画を表明したフリーカメラマンの杉本祐一氏に対し、安全確保を理由に、旅券法に基づいてパスポートの返納を命じ、没収いたしました。今回、杉本氏は、事前にシリア行きをメディアで公表しており、言わば確信犯であったと思います。そのため、外務省が事前に渡航計画を知り、さんざんそれを思いとどまるよう説得したにもかかわらず翻意させられなかったため、パスポート没収という結果になったわけであります。このような公表もしなければ実は危険地域に渡航することも現実的には可能でありますが、ISに殺害された日本人お二人も事前に説得されたようでしたが、最終的には渡航し、あのような残念な結果となりました。  菅官房長官、日本人が無断でひそかにシリアへ渡航しようとした場合、対応は困難との認識を示されております。確かに、官房長官がおっしゃったケースでは困難とは思いますが、大臣は、所信表明の中で、テロ対策に絡み、法務省として、国内の安全確保はもとより、国外の日本人の安全確保にも万全を期してまいりますとおっしゃっておられます。法務省としてどのような対策をお考えになっていらっしゃるのか、お聞かせいただきたいと思います。
  172. 上川陽子

    国務大臣上川陽子君) 国外の日本人の安全確保への対策ということでございますが、まず、国際テロに関しましてあらゆる情報を収集し、そして分析をしていくということが大変大事だというふうに思います。  法務省の取組といたしまして、公安調査庁におきまして情報収集の強化に努めるということでございますし、これを関係機関にしっかりと提供をし、相互に連携協力をすることで政府全体としての国外における日本人の安全確保の一翼を担っているところでございます。  また、当方におきましては、国際テロリズム要覧というのを海外に進出している企業の皆さんにも提供をしておりまして、こうした要覧の要約版につきましてはホームページにおきまして広く一般に提供するという形での取組もしっかりと行っているところでございます。さらに、こうした取組について努力をしていきたいと思っております。  また、法務省におきましては入国管理という現場がございます。この入国管理の今度出国をする日本人に対しまして、外務省が今、退避勧告を発出している国・地域、こうしたところに渡航をしようとするという日本人に対しまして、渡航の中止等を促すために、外務省から御提供いただいた渡航情報のお知らせにつきまして、全国の約五十の空海港の出国審査場に掲示をするということで意識喚起を促しているところでございます。この出国審査場でございますけれども、海外に渡航する方が必ず通過する場所ということでございますので、ここで海外渡航に関する情報そのものを提供するということは、私は非常に有効なことではないかというふうに思っております。
  173. 田中茂

    ○田中茂君 二〇二〇年には東京オリンピック・パラリンピックが開催される予定でありますが、そのためテロの可能性が一気に高まってきつつあるのではないかと思っております。  確かに官房長官おっしゃったあのようなケースを防止するということはかなり不可能だとは思っておりますが、直接的効果がなくてもあらゆる手段を講じることによって何らかのテロ活動に対する牽制になると思いますので、法務関連としてできる限りのことはやっていただきたいと思っております。  次に、少年法に関しての質問をさせていただきます。  川崎市で、複数の未成年者が年下の十二歳の中学生を殺害した事件はまだ記憶に新しいところであります。これまで、未成年者による大きな事件が起きるたびに少年法の是非が問われ、若干ではありますが改正をされてきております。今、また厳罰化の方向にあると言われてもおります。確かに少年院送致が十四歳以上から十二歳以上となり、有期刑の上限も十五年から二十年へと引き上げられ、十四歳以上二十歳未満であれば刑事処分が相当と判断した少年を検察官に逆送することができると。つまり、逆送されて起訴された場合は成人と同様に地方裁判所で審判を受けることとなっております。  少年法の理念は更生と保護にあるわけですが、昨今起きている事件はその理念を揺るがしかねないような気がしております。  一九八八年に、当時未成年の少年たちが東京綾瀬で女子高生を監禁し殺害してコンクリートに詰めて遺棄したという、世間を震撼させ、極めて凶悪な事件がありました。その犯人である少年の一人は、二〇〇四年の仮出所後、再び監禁致傷事件を起こして逮捕されております。この少年については、この事件を脅し文句に使うなど、全く更生した様子は見られなかったと聞いております。  様々な事件で更生した多くの方たちもいるとは思います。現行の少年法の枠で処分対応、保護観察することが果たして効果的であるのか、今疑問を感じておるところでありますが、そのような中で選挙権の年齢引下げに合わせて少年法の適用を十八歳未満にとの声が出てきております。  今皆さんのお手元に配付しておりますが、G8諸国の各種法定年齢ということです。  これを見ますと、選挙権、ほとんどの国は十八歳で、それに合わせて刑事手続において少年として扱われなくなる年齢も大体十八歳となっております。これは当然といえば当然だと思っておるんですが、選挙権を与えるということは国の法律を作る国会議員を選ぶ権利も持ったと。国の形を変えることもできる権利でもあります。  選挙権付与十八歳引下げが成立した場合、十八歳以上に選挙という権利を与えられたなら、その代わりに生じるのは、当然、義務と責任を負うということであります。この場合の義務は投票であります。責任は、その投票によって選ばれた国会議員により決められた国家の基本である法律を守り、社会の一員として生活していくこととなるわけであります。ましてや、国民投票権においては国の根本原則の憲法に関わる権利をも得るということであります。  仮に選挙という権利を十八歳以上に与え、少年法での二十歳未満となれば、権利だけを与え、社会の一員としての責任を負わないという矛盾が生じてくるかもしれません。したがって、選挙権年齢を引き下げた場合は、民法の成人年齢の引下げにも関わりますが、少年法の改正が必要になるのではと思うんですが、この点について大臣のお考えをお聞かせいただけませんでしょうか。
  174. 上川陽子

    国務大臣上川陽子君) 委員から御指摘ございました少年法の適用対象年齢につきまして、刑事司法全般において、この少年法につきましては、成長過程にある若年層をいかに取り扱うべきかということに関わる問題であるということで、少年法固有の観点から検討を行う必要があるというふうに考えているところでございます。  先ほどの、御指摘いただきましたけれども、様々な改正がこの間行われてまいりましたし、また十八歳、十九歳の者に対しまして、保護処分というようなことについてのいろいろな御指摘もいただきました。  そして、今、少年法の適用対象年齢を満十八歳未満に引き下げることが相当か否かにつきましては、御指摘のように、公職選挙法あるいは民法等のより一般的な法律による年齢の在り方も考慮に入れる必要もあるというふうには考えておりますけれども、直ちにその保護処分の必要性が失われているというふうな評価をする段階ではないというふうに考えております。  必要な検討は更に行ってまいりたいというふうに思っております。
  175. 田中茂

    ○田中茂君 国民投票法実施まであと三年半ぐらいありますが、その間にはきっちりとその辺整合性を合わせていただきたいと思っております。特に選挙権というのは、先ほど言いましたように、権利を与えるんであれば義務が生じるのは当たり前で、その後に責任が来る、だからこそこの社会の秩序が成り立っていると思っておりますので、その点も考慮して検討していただきたいと、そう思っております。  次に、こういう凶悪な犯罪、川崎の事件のような凶悪な犯罪が起きたときに殊更感じることとして、犯罪関係者の保護が考えられます。  今回の川崎事件、犯人が未成年であれば、少年法六十一条により、いわゆるマスコミに関する規制である程度の加害者のプライバシーは守られるわけであります。ただ、今回はインターネットを通して、加害者、加害者の家族を含め、実名入りで誹謗中傷やデマの情報も垂れ流し状態でありましたが、被害者は、被害者及びその家族であるというだけで、プライバシーなどほとんどない状態になっていました。  確かに、犯罪被害者等基本法が成立した、犯罪被害給付制度により、被害者に対してある程度金銭的な補償をすることは可能になっております。ですが、加害者もそうですが、被害者及びその家族が、守らなければいけないものはほかに数多くあります。特にインターネットを通じてだだ漏れになっている状態で、少年法六十一条との整合性の問題も出てきます。  こういったものに対して早急な対応が必要だと考えておりますが、この点について御見解をお伺いします。
  176. 岡村和美

    政府参考人(岡村和美君) 一般的に、インターネット上における個人のプライバシー侵害、名誉毀損等は被害が重大となるおそれが高く、人権擁護上看過できない問題だと認識しております。  法務省の人権擁護機関では、インターネット上の人権侵害を含む人権問題について、全国の法務局の窓口、電話等で人権相談を行っております。この人権相談等でインターネット上の人権侵害について被害の申告を受けた場合、私どもでは被害者に当該情報の削除依頼の方法を助言するほか、調査をいたしまして、その結果、名誉毀損、プライバシー侵害等の人権侵害に該当すると認められるときには、法務局が当該情報の削除をプロバイダー等に求めるなど、適切な対応に努めているところでございます。
  177. 田中茂

    ○田中茂君 また、大臣所信表明で「犯罪に戻らない・戻さない」宣言がなされ、犯罪者となった人を責任ある社会の一員として再び受け入れることが自然にできる社会を目指し、こうした者の住居と就労の確保を中心に、国が地方、さらに地域コミュニティー、国民の皆さんと手を携えて共に歩む新たな時代の取組であるとしておられます。  趣旨はよく理解しておりますが、もちろん反対するものでもありません。さらに、大臣がおっしゃった、何よりも大事なことは国民の安全を確保することであります。更生に失敗したと思われるような犯罪者をその地域に野放しにするようなことはあってはならないことだと考えております。  そこで質問でありますが、むしろ再犯防止ということであれば、一部の国で導入されているような性犯罪者に対するGPS監視のような制度を設けるか、又は他国の例を参考にしつつ、抑止力を高め、再犯防止に効果のある方法を考えるのも必要ではないかと思っております。この点、過去には何度も同じ質問があったかもしれませんが、御意見をお聞かせください。
  178. 黒川弘務

    政府参考人(黒川弘務君) まず、法務総合研究所の調査によりますと、委員指摘のGPSを含む位置情報確認制度につきましては、イギリス、フランス、ドイツ、スウェーデン、アメリカ、カナダ、韓国で運用されております。  その他の再犯防止施策として、例えばイギリスでは複数の機関で性犯罪者及び暴力犯罪者に関する情報を共有し、これらの犯歴を有する者を監督する制度が運用されておりまして、またカナダなどでは犯罪者処遇プログラムとして薬物乱用処遇プログラム、性犯罪者処遇プログラムなどが運用されていると承知しております。  我が国におきましても、受刑者処遇プログラムとして、平成十八年から、刑事施設において薬物依存離脱指導、性犯罪再犯防止指導等を導入しているところでございます。
  179. 田中茂

    ○田中茂君 再犯防止ということを強調して私はこの質問をさせていただいたんですが、抑止力が高まる何らかのものがあれば、ある程度考慮して実行していただきたいと、そういうふうに思っております。  次に、質問ですが、先日、私、仙台の宮城刑務所の視察をいたしました。受刑者の高齢化が進んでいるのも事実であります。ある意味で、刑務所が高齢者の介護施設化しているケースが増えているというのも聞いております。微罪で再犯を繰り返す受刑者が増え、刑務所を住まいとするようでは、国民の税金で犯罪者を快適な状況で養うということにもなりかねません。実際、刑務所生活の方が楽で、人を刺すためにためらいはなかったとして、強盗致傷などの罪で何度も逮捕されている人もいると聞いております。  法務省の方針として、施設内での処遇と社会での処遇を連携させ、改善更生の見込みのある者は早めに社会復帰を促す、また大臣所信表明では、一たび犯罪や非行をした者を責任ある社会の一員として再び受け入れることが自然にできる社会を目指すと述べられておられます。  しかし、高齢者は再犯を繰り返し、刑務所に戻りたがると。これでは刑務所が抑止力になっていないと、そのように考えざるを得ません。今後の法務省の方針の運用に当たって大臣はどのように考えていらっしゃるのか、お考えをお聞かせください。
  180. 上川陽子

    国務大臣上川陽子君) ただいま再犯防止について御質問をいただきまして、さらに、高齢化が進んでいるという実態につきましても、御視察をいただいた上での大変現実に即したお話をいただきました。  刑務所出所者が犯罪を犯して再び刑務所に入所すると、この再入者の数自体は実は減少をしております。そして、入所者に占める割合ということでございますけれども、刑務所に入所する者の総数が減少する中で再入者の減少率が相対的に小さいということでございますので、その結果、再入者の割合というのが平成十六年以降上昇を続けている、そして平成二十五年には約六割を占めていると、これが実態でございます。再入率を低下させる、そういう意味で、再犯防止というのは非常に大事なことであるというふうに思っております。  先ほど御指摘いただきました居場所、そして仕事、こうしたことを確保するということが何よりも大事ということでございまして、そういう目標に向かってこの間、取組を進めてきましたし、またこれからもしっかりと取り組んでまいりたいというふうに思っているところでございます。  今、高齢の受刑者が増えているということでございまして、実は高齢の受刑者数は残念ながらこの二十年間ほぼ一貫して増加をしているところでございますので、そういう意味で、入所受刑者総数に占める高齢受刑者の比率も増加をしているというところでございます。また、全体として見ても、再入者の割合も高くなっているということでございます。高齢受刑者の再犯防止という取組につきましては、大変重要で喫緊の課題であるというふうに認識をしているところでございます。  対策ということでございますけれども、まず、適当な帰り先がないというような高齢受刑者等で自立した生活ができない者に対しましては、厚生労働省の事業として都道府県が設置をしております地域生活定着支援センター、そちらとしっかりと連携をして、そして出所後速やかに社会福祉施設への入所でありますとか生活保護の受給などの福祉サービスを受けることができるような、必要な調整ということで、これ特別調整ということでございますが、取り組んでいるところでございます。  また、就労し、自立した生活を送ることが可能な高齢の受刑者に対しましては、前科を承知で出所者等を積極的に雇用していただく、その更生を応援してくださる協力雇用主の方々にも大きな協力をいただきながら、矯正施設とハローワーク、これが密接に連携をし、そして働く場所、そして求人のマッチングというのも促進をしながら就労の確保に努め、そして自立した生活をしっかりと送っていただくことができ、そして二度と戻らない、そして戻さないと、こういう趣旨を生かしていくということが大事ではないかというふうに思っております。  こうしたことにつきまして、さらにこうした制度につきましても御協力、御理解をいただくことができるように、しっかりと取り組んでまいりたいというふうに考えております。
  181. 田中茂

    ○田中茂君 矯正施設内の医師不足で、今国会にも関連法案が出ておりますので、受刑者の処遇を改善することが不要であるとは私も考えておりません。ただ、犯罪とは無縁に平穏に暮らしている納税者、また、いまだに二十二万人もいるという東日本の被災者である仮設住宅への入居も余儀なくされている方もいらっしゃいます。このような方々への対応にも力を入れることが必要な中で、そういう矯正施設における医師不足への対応について大臣所信表明で述べられましたが、そういう高齢受刑者に対しての矯正施設における待遇改善よりも、社会の一員として受け入れられることがむしろ急務であると私もそう思っておりますので、是非ともその点は、高齢者に対する就労そして住まい、その点を確実にやっていただきたいと、そう思っております。  時間が来ましたので、私の質問はこれで終わりにします。
  182. 谷亮子

    ○谷亮子君 谷亮子です。  第三次安倍内閣におきまして法務大臣に再任されました上川大臣始め、葉梨副大臣、大塚政務官、そして法務省の皆様、引き続き、改めましてよろしくお願いいたします。  三月十九日に行われました大臣所信では、法務省所管平成二十七年度一般会計予算額は七千三百七十四億八千七百万円となっておりまして、前年度の当初予算額と比較いたしますと七十六億二千五百万円の増額となっております。  本日は大臣所信に対する質疑ということでございますので、私は、出入国審査管理等につきまして取り上げさせていただきたいと思います。  平成二十七年度の出入国管理関係経費といたしましては四百六十九億三千三百万円が計上されておりまして、昨年よりも十七億二千八百万円の増額となっておりますが、政府が掲げておりますオリンピック・パラリンピック東京大会が開催される二〇二〇年には、訪日外国人旅行者数二千万人の達成と観光立国の実現をするためには、治安の確保という観点からも、法務省所管の出入国審査管理行政は最も重要な取組でございます。  また、世界各国の人々が入国、出国する日本の玄関口として、その審査管理を法務省の重要な責務として担っていただいております。また、現在、世界中で国際テロが頻発しているという状況からも、法務省所管の入国審査、出国審査が、安倍総理が施政方針演説で宣言された、世界一安心な国、世界一安全な国日本をつくりますということ全てに直結していくことになります。  そこで、大臣所信にございましたグローバル化の中の新たな課題に対応するという関連の中で、現状を踏まえた上での今後における出入国審査管理につきましての御所見と方針をお伺いさせていただきます。
  183. 上川陽子

    国務大臣上川陽子君) 先ほど委員から御指摘をいただきました二〇二〇年でございます。オリンピック・パラリンピック東京大会が開催されるということでございまして、訪日外国人旅行者数も二千万人の高みを目指してということで、政府一丸となって最高のおもてなしができるようにと、そういう方針で臨んでいるところでございます。  一方、昨年の外国人の入国者数は一千四百十五万人ということでございまして、過去最高の記録ということでございますので、二〇二〇年までということ、あるいはそれ以降ということを考えると、様々な対策ということにつきまして、法務省におきましては入国管理というところについてはしっかりと取り組んでいかなければならないというふうに思っております。  入国管理のところの方針でございますが、問題のない外国人の訪日に対しましては、可能な限り円滑な入国審査を行い、観光立国の実現にしっかりと尽くしてまいりたいというふうに思います。しかし、一方で、テロリストを始めとする問題のある外国人に対しましては、厳格な入国審査の実施等によりまして治安の維持、安全、安心な日本ということでございますので、それを同時に達成していくということが求められているというふうに思っております。円滑かつ厳格な審査ということを心掛け、入国審査に臨むということでございます。  これまで個人識別情報、これを活用いたしまして入国審査をしておりますし、また事前の旅客情報に加えまして乗客の予約に関する記録、PNRということでそうした取得に万全を期し、また自動化ゲートなどの導入ということで実施してきたところでございます。現在、自動化ゲートにおける顔認証技術の活用も検討をしているというところでございます。  また、二〇二〇年までということになりますと、段階的にやはり体制づくりということは必要であるということでございまして、入国審査官、二〇二〇年までに八百人から一千百人増員をする必要があると、こうした試算もしているところでございます。計画的、段階的な整備ということを考えてみますと、平成二十七年度予算につきましては、入国審査官の二〇二名の増員を計上しているところでございます。  こうした施策を通じまして、テロを未然に防止するための水際対策ということにつきまして全力を尽くすということ、そして同時に、しっかりと観光立国の実現に努めてまいりたいというふうに考えております。
  184. 谷亮子

    ○谷亮子君 上川大臣、御丁寧に実効性ある施策等の御説明もいただきまして、ありがとうございます。今お話しいただきましたことがやはり今後、またこれから更に求められていくことだと私も認識いたしております。  私自身も、これまでスポーツを通じ社会参加してまいりました。そうした中で、やはりスポーツに関する、オリンピック・パラリンピック、またスポーツの国際大会等でも、大変残念ではございますが、テロ事件というのが発生しております。  一九七二年、ドイツ・ミュンヘンの大会の際には選手村内が襲撃をされまして、選手そしてコーチ、また審判員、レフェリー、そして警察官がお亡くなりになるというテロ事件も発生いたしましたし、また一九八八年、韓国のソウル大会の際には、これはオリンピックの前年でしたけれども、韓国の航空機内に爆弾が仕掛けられまして、上空で爆破し墜落しまして百十五名が亡くなってしまうというテロ事件が発生しました。このときの犯行の動機として、オリンピックを妨害するためであったとも報告されておりまして、やはりスポーツを巻き込んだこうしたテロ関連の事件というのが様々に発生しているという状況でもありますし、私自身も、アトランタ大会の際には、試合会場近くの施設のすぐ隣にある公園に爆弾が仕掛けられ爆破いたしまして、そのときの大変な状況を知っていますし、二人の方が命を奪われまして、百人以上が負傷するという本当に大変なテロ事件が発生いたしました。そのとき、私自身も選手として、これは日本でも予測される問題だと思いましたし、強烈に覚えております。ですから、入国審査時等の水際対策や未然防止策がいかに重要であり必要であるかということを感じてまいりました。  そこで、法務省におかれましては、現在、日本人の出帰国審査の合理化、外国人の出入国審査の更なる迅速化を図るため、顔認証技術を活用した自動化ゲート導入等につきましては国が推し進める大きな施策であろうかと思われますので、今後、国が主導してこれらの機器を設置していくというお考えはおありでしょうか。また、さらに、今後の予算について御所見をお聞かせいただきたいと思います。
  185. 井上宏

    政府参考人(井上宏君) 委員お尋ね日本人の自動化ゲートによる顔認証技術の活用につきましては、これができますと、事前の利用希望者登録の手続が要らなくなるということから、自動化ゲートの利用者を飛躍的に増加させることができまして、日本人の出帰国の審査の合理化が格段に進み、これの結果、外国人出入国審査の迅速化に寄与することができると考えておるところでございます。  そこで、法務省では、昨年の八月から九月にかけまして、日本人の出帰国審査に活用するための顔認証技術に係る実証実験を成田空港、羽田空港で国民の方々の御協力を得まして実施したところでございます。その実証実験の結果につきましては、外部有識者から成る出入国審査における顔認証技術評価委員会検討していただきまして、顔認証技術を日本人の出帰国審査に活用することについて十分可能性があるという、そういう評価をいただいたところでございますが、一方、顔認証技術の活用に向けた検討課題もいろいろあるという御提言もいただいたところでございます。  そこで、現在、当局におきましては、委員会から御提言いただいた検討課題を十分に踏まえつつ、諸外国の取組状況も参考にしながら、観光立国の推進及び二〇二〇年のオリンピック・パラリンピック東京大会の開催に向けまして、顔認証技術を活用した自動化ゲートの導入につきまして検討を進めているところでございます。  具体的に申し上げますと、実証実験で行いましたのは、採取したデータの照合の精度のところでございますが、実はその周辺のところでございまして、円滑かつ確実に顔画像をどうやって取得するか。取得できませんと照合精度が良くても使い物にならないという、そのようなこともございますし、また、具体的な空港の審査場を前提にいたしまして、どのくらいの規模の機械をどういうふうに配置するのが一番効率的かという大事な検討等もございまして、その他様々乗り越えなければいけない検討課題がありますが、鋭意その検討を進めている段階でございます。  したがいまして、現在ではどのくらいの予算というようなことを申し上げる段階にはまだまだ達してはございませんけれども、今後、顔認証技術を活用した自動化ゲートを導入する場合には所要の経費の確保に努めてまいることにいたします。
  186. 谷亮子

    ○谷亮子君 局長、丁寧に御説明いただきましてありがとうございました。  この顔認証技術の誤認率というのが、二〇一二年は一七・七%と非常に高かったんですけれども、昨年、二〇一四年度の実証実験の際には、関係企業、そして法務省の皆様の御努力によりまして誤認率が〇・二六%まで抑えることに成功しているとも伺っております。ですから、もちろん、この顔認証技術の取組につきまして、関係企業や実証実験参加事業者の皆様の高精度な技術も加わって取り組まれていくということは私も賛成でございます。  また、これから、法務省が担っておられる入国出国審査そして管理はさらに世界中の人々が対象になっていくということを考えますと、厳正で万全な審査管理体制を構築していくための法務省独自の財源を生み出し、そして生み出し続けられることをこれは考えていかなければならないと私は思っております。  こうしたことを踏まえた上で、入国審査料等の提案を含めさせていただきながら、引き続き質問させていただきたいと思います。  現在、日本では出国する際の出国時のみにおきまして旅客施設使用料と空港によっては旅客保安サービス料が徴収されておりますが、使途につきましては、空港管理会社が徴収されていて、空港施設における様々な維持、管理等に充てるために、これは利用者が負担する料金であります。  そこで、諸外国の現状を調べてみました。基本的には、出国する際の出国時に諸税や審査料等を徴収している国がほとんどでございました。年間約八千七百万人の旅行者が訪れている既に観光立国のフランスでは、まず、日本と同様に出国時に旅客サービス料が徴収され、これ以外にも国際連帯税、そして空港税、民間航空税など徴収しておりまして、テロ対策を強化し続けることができ、決して揺るぎない体制を構築しているという現状です。  日本は、今のところ、出国時は先ほどお話しさせていただいた以外のものは徴収されていない状況で、諸外国に比べれば立ち遅れの感が否めないところでございます。  そこで、次に、入国時についてお伺いさせていただきたいと思います。  現在、入国審査時に諸税や審査料等が発生し、徴収されているものはございますでしょうか、お尋ねいたします。
  187. 井上宏

    政府参考人(井上宏君) 現在のところ、我が国におきましては、入国の審査に関しまして税でありますとか手数料等は徴収してございません。
  188. 谷亮子

    ○谷亮子君 ただいま御答弁していただきました事柄が事実であるとするならば、日本は現在、出国、入国のどちらの審査時も諸税や審査料等が発生せず、徴収されていないということでございます。  入国時に入国税や入国審査料が発生し、徴収されている国は二か国ございまして、アメリカとペルーでございます。アメリカは入国審査料として八百四十円、ペルーは入国税として千七百九十円が徴収されています。また、出国時に審査料等を徴収している国もこれは多くございますけれども、日本における出入国制度は、一九五一年に公布された出入国管理令を出発点といたしまして今年で六十四年が経過いたしましたが、日本のテロの水際対策のとりでである出入国審査管理行政等をより厳正にしていくための有益であるという施策の実施は考えられず、現在に至っているところでございます。  ここで私が注目したいのは、アメリカの現状でございます。アメリカは、入国時につきましては、諸税、審査料等の合計が四千百九十円となっておりまして、九・一一以降、これは様々なテロ対策を打ち出し、関連の立法も行ってきております。また、その中でも、テロ直後の二〇〇一年十月二十六日に制定されました米国愛国者法がこれは中心となりまして、関連の最終報告書、こちらを見てみますと、九・一一の実行犯がアメリカの難民庇護制度や出入国管理制度の隙を突いて入国し、ハイジャック機に搭乗したこと等が報告されてありますし、入国審査等の失敗であったとも結論付けられておりました。  私は、やはりこうした入国時において税や審査料を徴収し、国際テロ等に対処するために使われているというアメリカや諸外国の動向を見た中で、安倍総理がおっしゃられている世界一安心、そして世界一安全な国日本ということを心から思い、そして実現されようと思われるのであれば、やはり、世界に先んじて審査料等を検討されてもよいのではないかというふうに思います。なぜなら、現在、日本の多省庁にわたる訪日者の審査、検査、管理等が国民の税金によって賄われているという現状を鑑みますと、このまま税負担を国民の皆様に強いるわけには全くもっていかないと思います。二千万人の訪日者が各五日間滞在するとなりますと、年間一億人の人がこれは日本で生活をすることになり、し尿処理の問題、ごみ処理等の問題で各自治体に相当な負担が生じざるを得ないということになります。  日本にお見えになる方々は、日本の文化に触れ、風習や歴史的建造物に触れることによる感動また感銘を享受されるに当たり、何ら支障を生じるものではないと思われます。まして、この提案させていただいております日本の出入国時の審査料等の使途につきましては、これは日本国内における国際テロに対する水際対策やテロ行為未然防止対応策に資するものでございますから、共に日本国内において決して揺らぐことのない安心、安全で万全なものとして推し進めることにほかなりません。このことによりまして、空港等における水際対策に要する設備整備が進み、これらが国際テロに対する抑止力となり、安心、安全、さらには信頼できる国としての日本を世界に向けて発信できることが可能になると思われます。  再度申し上げますけれども、日本にお見えになる方の安心、安全確保のために、入国料等の徴収について是非一考していただきたいということを提案させていただきたいと思います。本日は時間が限られておりまして提案型の質疑に終始いたしましたけれども、御理解の上、この趣旨を酌み取っていただきたいと思います。  このことを申し上げまして、私の大臣所信に対する質疑とさせていただきます。ありがとうございました。
  189. 魚住裕一郎

    委員長魚住裕一郎君) 本日の調査はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。    午後二時四十四分散会