○新妻
秀規君 おはようございます。
まず、
国立天文台が参画をする二つの国際プロジェクトについてお尋ねをしたいと思います。
今配付している資料の一を御覧ください。
国立天文台は宇宙の謎に迫る二つの国際プロジェクトに参画をしています。
一つが大型電波望遠鏡ALMA、そしてもう
一つが超大型、光と赤外線で見る望遠鏡TMTです。
まず、ALMA望遠鏡から見ていきましょう。先ほどの資料一なんですけれども、この資料というのは写真、何かちっちゃい円盤がたくさん、白いやつがありますね、これがアンテナです。このALMA望遠鏡は標高五千メートルの南アメリカのチリのアタカマ高地にあります。これまでの望遠鏡とはもう桁違いの性能を誇る電波を使って見る望遠鏡で、宇宙、銀河、惑星がどのように生まれたのかを探ります。
世界に二つとはない、そういう望遠鏡です。
資料二を御覧ください。この真ん中の写真がALMA望遠鏡で捉えた惑星の誕生の現場の様子なんです。左がハッブル宇宙望遠鏡の写真、右側がCARMAという従来型の電波望遠鏡の写真。違いは本当に一目瞭然だと思います。中心部が太陽系でいうと太陽なんです。その周りに円盤状に暗い溝ができていますね、これが星間ガスが惑星に取られて暗くなっていると。なので、これは惑星ができている証拠だという写真なわけなんです。この写真はALMAが
世界で初めて撮影に成功をしました。
また、次のページ、資料三をおめくりください。これは惑星が生まれている現場で、糖類の分子を発見したときの写真なんです。これも
世界で初めての発見です。ALMA望遠鏡は光を詳しく分析する能力があります。なので、こういう成果が上がりました。生命に密接に関連する分子が惑星がつくられている領域でできていることが分かったんです。なので、これは地球生命の起源は宇宙から来たのかという疑問に迫る重要な研究成果です。
じゃ、このプロジェクト、どういうふうに進められているかというと、資料の四を御覧ください。このプロジェクトは、
日本とアメリカ、ヨーロッパの三者と用地を提供するチリの四者の国際協力体制の下に推進をされています。
日本は、この緑の帯のところにあるように、二五%の予算分担をすることになっています。
一枚おめくりいただいて、この資料の五が、じゃ
日本はどんな仕事をするんですかというこの三者間、
日本、アメリカ、ヨーロッパの間の合意事項です。A、B、C、D、各項目あるんですけれども、A、まず観測所の運用経費、B、
日本製造担当装置の保守経費、C、各地域センターの運用経費、D、将来開発経費、この四分野について
日本は予算を分担することになっています。
でも、この下のグラフに示すように、
平成二十七年度では前の年と比べて大幅に予算が削られてしまいました。総額で言うと、二〇一四年、このグラフの左側では総額は三十億円、二〇一五年度が二十・九億円と九億円以上減額をされてしまいました。
この予算の減額によって、このBに示した
日本の製造担当分の保守作業の一部であるアンテナ等の保守、そしてDの将来開発の全ての作業をせずにしのぐというふうに聞いております。最悪の場合、
日本のアンテナだけが稼働しないという可能性があります。また、
充実した保守ができないために今後の
影響も懸念をされます。また、一年間飛んでしまうので、国内の実際に保守、開発を扱うメーカーのそうした保守・開発体制が解体をされてしまって
技術が途絶えてしまうということもあり得ると思います。こうした事態が発生をしてしまえば、科学分野での国際貢献における我が国の評価は確実に下がると思います。これは天文分野のみならず全ての科学の分野に及ぶ可能性があると思います。
それでは、もう
一つのプロジェクト、TMTについて見てみようと思います。一枚おめくりいただいて、資料の六を御覧ください。
この資料六の右上がTMTの完成予想のCGです。TMTの望遠鏡はALMAと違って光と赤外線を使って見る望遠鏡で、この鏡の口径が三十メートルあるのでTMT、サーティーメーターテレスコープの頭文字を取ってTMTと呼んでいまして、今ハワイ島に建設を予定をしております。
一枚めくっていただいて、この資料の七がどんなような絵が見えるのかなという予想図なんですけれども、この右下ですね。これまで
世界をリードしてきたハッブル望遠鏡が上の写真ですね、よりもはるかに鮮明に見える。また、
世界を引っ張ってきた
日本の望遠鏡すばるよりも解像度が四倍とか、感度も四倍から十四倍という、はるかにすばらしい望遠鏡になることが期待をされています。
じゃ、どのような国際分業体制かというと、資料の八のように、
日本はこの円グラフの右上の赤いところにあるように、総費用の四分の一を分担することになっています。
じゃ、細かくはどんなことをやるのかと申しますと、もう一枚めくって資料の九になります。これ、望遠鏡の本体構造なんですけれども、この絵のうち、副鏡とか観測装置とか第三鏡とか書いてある以外のところ全て、これ
日本がやるんですよね。望遠鏡の目そのものの鏡も作ります。
じゃ、その鏡はどういうふうになっているかというと、この鏡は、この資料九の水色の
部分なんですけれども、これは次のページ、資料の十。これが、三十メートル、この細かいガラスを組み合わせて作るんですけど、これ
日本じゃなくちゃ作れないんです。神奈川県の工場で作っているんですけれども、温度が高くなっても下がっても、もう膨らみもしないし縮みもしないという特殊な
技術を使って作っています。
こういうすごい望遠鏡を今作ろうとしているんですけれども、資料の十一、もう一枚おめくりいただきまして、じゃ予算はどうなんだと。左が今年度の要求に対して、実際付く予定の予算が右の方ですね。この望遠鏡の新規製造というところでがくんともう削られてしまっているわけなんです。総額でも五十六・一億円要求したのに対し二十九・九億円ということで、もう半分ちょいという予算の付き方になってしまいました。
これによってどうなるかというと、今年度、
平成二十七年度予定をしていた望遠鏡の本体構造の製造開始を来年度以降に延期せざるを得なくなってしまいました。また、全体工程の遅れとコスト増のおそれについては、今プロジェクトの他国と
協議中です。国際共同事業における
日本への
信頼が崩れつつあります。非常に残念なことだと思います。
ALMA望遠鏡とTMT望遠鏡はそれぞれ役割が異なりまして、補い合う
関係にあります。この二つのプロジェクトが進みますと、資料の十二に示しますように、第二の地球があるのか、また生命の手掛かりはどこにあるのか、こういう謎に迫ることができるんですね。
次のページ、資料の十三、これは宇宙がどのように進化してきたのかという、そういう
歴史。今、宇宙ができて百三十五億年になりますが、それをどんどん遡っています。すばるというすばらしい望遠鏡が十億年ちょっと前まで遡りました。でも、ALMAとTMTで五億年ちょっと前まで遡れるという、宇宙の誕生の起源に迫る、こうした成果が人類の
世界観とか宇宙観に大きな
影響を与えると思います。
四月七日の本
委員会で、
大臣は、オランダの
大学では今でもラテン語が教えられていると、こういうことを通しまして、西洋の
社会では目先の実用性にかかわらず知の基盤を大切にする
文化があるんだということを紹介してくださいました。
国立天文台が今取り組むこの二つの国際プロジェクト、これは確かに目先の実用性は余りないかもしれません。ただ、人類の宇宙観また生命観に関わる根源的な取組だと思います。こうした科学を大切にすることができるかどうか、ここに国の
文化の高さ、また矜持が問われていると思います。
是非、来年度、
平成二十八年度はこの両プロジェクトを推進していただけるよう前向きに検討していただきたいと思うんですけれども、
大臣の御所見を
お願いします。