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2015-08-04 第189回国会 参議院 農林水産委員会 第14号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成二十七年八月四日(火曜日)    午前十時開会     ─────────────    委員異動  七月三十一日     辞任         補欠選任      井原  巧君     馬場 成志君      石井 正弘君     堀井  巌君  八月三日     辞任         補欠選任      馬場 成志君     長峯  誠君      堀井  巌君     吉川ゆうみ君      小川 勝也君     野田 国義君  八月四日     辞任         補欠選任      野田 国義君     石上 俊雄君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         山田 俊男君     理 事                 野村 哲郎君                 山田 修路君                 徳永 エリ君                 紙  智子君     委 員                 金子原二郎君                 小泉 昭男君                 古賀友一郎君                 中泉 松司君                 長峯  誠君                 舞立 昇治君                 吉川ゆうみ君                 石上 俊雄君                 郡司  彰君                 野田 国義君                 柳澤 光美君                 柳田  稔君                 平木 大作君                 山口那津男君                 儀間 光男君                 山田 太郎君    国務大臣        農林水産大臣   林  芳正君    副大臣        内閣府副大臣   西村 康稔君        内閣府副大臣   左藤  章君        農林水産大臣  小泉 昭男君    大臣政務官        農林水産大臣政        務官       中川 郁子君    事務局側        常任委員会専門        員        稲熊 利和君    政府参考人        内閣官房内閣審        議官       澁谷 和久君        内閣官房内閣審        議官       高田  潔君        外務大臣官房参        事官       宇山 智哉君        厚生労働大臣官        房審議官     中山 峰孝君        農林水産大臣官        房総括審議官   荒川  隆君        農林水産省食料        産業局長     櫻庭 英悦君        農林水産省生産        局長       松島 浩道君        農林水産省経営        局長       奥原 正明君        農林水産省農村        振興局長     三浦  進君        林野庁長官    今井  敏君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○政府参考人出席要求に関する件 ○農業協同組合法等の一部を改正する等の法律案  (内閣提出衆議院送付)     ─────────────
  2. 山田俊男

    委員長山田俊男君) ただいまから農林水産委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  昨日までに、井原巧君、石井正弘君及び小川勝也君が委員辞任され、その補欠として長峯誠君、吉川ゆうみ君及び野田国義君が選任されました。     ─────────────
  3. 山田俊男

    委員長山田俊男君) 政府参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  農業協同組合法等の一部を改正する等の法律案の審査のため、本日の委員会に、理事会協議のとおり、内閣官房内閣審議官澁谷和久君外九名を政府参考人として出席を求め、その説明を聴取することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 山田俊男

    委員長山田俊男君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  5. 山田俊男

    委員長山田俊男君) 農業協同組合法等の一部を改正する等の法律案を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  6. 野村哲郎

    野村哲郎君 自由民主党の野村哲郎でございます。この委員会始まって初めての質問でございまして、大変緊張いたしております。  大臣、今朝、私どもは、甘利大臣にも御出席をいただいて、ハワイでの交渉の結果報告をいただいたところでございますけれど、大体新聞に報道されているような内容でありました。ただ、今からまた、徳永先生はわざわざハワイまで行かれまして、現地でいろいろな国との、また団体との交渉交渉といいますか折衝もされてきておりますので、また具体的な御質問もあるんだろうと思いますが、やっぱり気になりますのは、閣僚会議が始まりましてから、まさしく我々は今まで保秘義務があるということで中身が全く分からなかったんですが、今回、新聞が各社もう一斉に同じような数字を並べて報道しておりましたので、多分、土曜、日曜、我々地元に帰っておりますと、あの数字、いわゆる市場アクセスの問題は、乳製品なり米の数量は決まっていなくても、ほかのものはほぼもうあのとおりなんだなという受け止め方でございました。地元に帰って農家皆さんいろいろ話をしておりますと、おいおい、おまえたちは本当に国会決議を遵守しているのかと、こういう質問がたくさんございました。  したがって、まだ決着を見ていないわけであります、ただ、今朝も甘利大臣が、やはりこの国会決議後ろ盾になって非常に交渉を粘り強くすることができたと、こういうこともお話をいただいておりますので、まだ最終決着を見ておりませんので、農水大臣としても、この国会決議、特に市場アクセスの問題につきましては、是非ともまた甘利大臣にも国会決議を遵守するようにということで御進言いただければ有り難いと。これはもうお願いでありますので、御答弁は要りません。  そこで、この農協法改正についての中身であります。  ただいまから御質問させていただきたいと思いますが、私、今回のこの大改正、六十年ぶりの大改正ということで言われておりますが、確かにこのページ数から見ても大改正であります。これはもうボリューム的にも内容的にもそうだと思いますが、ただ、よくよく見ていきますと、いろんな改正はあるわけでありますが、大きく三つに私は分かれるんだろうというふうに思っております。  これは私なりの整理でありますけれども、一つは、中央会組織改正でございます。規制改革会議中央会廃止という意見書が出されたわけでありますけれども、全中廃止になりまして一般社団法人化ということで整理がされております。  各県の都道府県中央会は、特別認可法人じゃありませんけれども、農協法に位置付けられている連合会組織、これは、昭和二十四年に農協法ができたときには、今のこの中央会というのは指導連という名前でありました、連合会組織でありました。ですから、私の母親も農協に長いことおりましたけれども、中央会というのがなかなかなじまないで、指導連指導連と言っていて、私も小さい頃から名前指導連なんだと思っておりましたが、入りますと中央会だったということでありますけれども、要は連合会組織だったわけであります。それが二十九年にこれは中央会組織に改組されたということになっておりますので、まあ言わば発足当時に戻ったと、こう思えば余り大きなテーマではないのかなと、こんなふうに思います。  思いますが、ただ、今日、奥原局長に聞きたいのは、地元皆さんと話をしますと、特に中央会人たちが、何で本則ではなくて附則でこの中央会連合会組織に改組する、なぜ本則ではないのかと、こういったような懸念がありまして、そしてもう一つは、不安であります。  それは何かといいますと、これは衆議院参考人質疑で龍谷大学の石田教授は、附則にしたのは経過措置なんだ、やがては廃止されるんだと。元々、規制改革会議中央会廃止でありますから、附則規定したのは、いずれこの附則部分は削除されてしまって、結局中央会廃止なんだと、こういうふうに受け止めている中央会の職員がたくさんおります。ですから、大変そういう現場での不安というのがありますので、なぜ本則でなくて附則に入れたのか、その理由をお聞かせいただきたいと思います。
  7. 奥原正明

    政府参考人奥原正明君) 都道府県中央会の問題でございます。  今回の農協改革におきまして、都道府県中央会につきましては、地域農協の自立とそれから自由な経済活動を適切にサポートするという観点から、従来の行政代行的に指導を行う特別認可法人から自律的な組織であります農協連合会に移行するということにしているところでございます。  今御指摘ございましたように、この法律案附則のところでは、現在の都道府県中央会から農協連合会への移行措置、これを規定しているわけでございますけれども、これは、農協中央会が円滑に組織変更して農協連合会になるための一連の手続あるいはルールといったものを規定しているというものでございます。したがいまして、この附則規定する手続等によりまして都道府県中央会農協連合会組織変更した後は、農協法本則の中にこの連合会規定がございますので、この農協法本則に基づく連合会という位置付けになるわけでございます。  したがって、法人会員資格ですとか役員ですとか総会等の管理に関しましても、当然のことながら、この切り替えた都道府県中央会連合会になるわけですけれども、農協法本則の規律に従うと、こういうことに当然なるわけでございます。  なお、組織変更した後の農協連合会は、この附則を根拠として存続するわけじゃなくて、今申し上げましたように、本則に基づいて存続するわけでございますので、何年かたったらなくなるとか、そういったものではございません。
  8. 野村哲郎

    野村哲郎君 今の局長答弁で私もほっとしておるというか、結局、経過措置を入れなきゃならなかったので附則整理をしたと。ただし、この経過措置が終われば本則に戻るんだということで、立て付けは、この中央会連合会組織に変わったにしても本則でこれはやるんだと、これで理解でよろしいですね。分かりました。まず一点目の懸念は消えたわけであります。  私は、もう一つ大きな、代表質問でも申し上げましたけれども、何で全中一般社団法人で、各県の中央会連合会組織。法的にも、それから組織上も、なかなかこれはそごを来していくのではないか、整合性が取れないのではないかというのを申し上げましたが、もうそのことについては前回の代表質問で御答弁いただいておりますので、今日はそのことには触れませんが、二つ目改正点の大きなところは、やはりこの全農を始めとする各連合会株式会社化でございます。  当然これは、規制改革会議からは全農株式会社化等々が意見が出されておったわけでありますが、しかし、これはできる規定で今回の法改正はなっておりまして、あとはそれぞれの組織で決めていくことだと、こういうふうに思っておりますので、ただ、一つだけやっぱり懸念がありますのは、役所が、政府が、こういう法律改正した以上は必ず何年か後に株式会社化になれと、こういうふうに非常に強制的に来るのではないかという懸念があります。  ですから、そのことと今回の法改正は別だと、法改正ではあくまでもそういう選択ができるその可能性のところを整理してあるので、役所が今後これに基づいて強権的に、おまえのところは株式会社化に変えろ、あるいは一般医療法人にしろと、こういう話には私はならないということを申し上げているんですけれども、そこのところを、あえて答弁は求めませんが、要は、非常にそういう現場での懸念があるということだけは申し上げたいと思います。  三つ目の大きな改正点の柱は、私は何といっても監査だと思います。ですから、今日は、持ち時間の全てをこの監査内容について、なかなかこの委員会でも質問が余り出ておりませんので、監査を取り上げて、六項目、七項目ほど質問をさせていただきたいと思います。  まず、そもそも、当初の規制改革会議で二十六年の五月の十四日で監査については何ら触れていなかったんです。規制改革会議意見書には監査のことには一切触れてありませんでした。しかしながら、全国中央会が十一月の六日にJAグループ自己改革を公表いたしました。その中で、会計監査業務監査一体化ということで整理がされておりました。それを見たといいますか、それに気付いた規制改革会議が十一月の十二日に再度この意見書を出しました。その中の大半はこの監査に関する事項でありました。  ですから、最初は規制改革会議皆さん方余り監査には関心がなかったのではないかなと、こういう推測をするわけでありますが、当初書いてなかったこの規制改革会議中身が、この十一月の十二日に再度規制改革会議から意見書が出てきた。その中に掲げてありますものは、中央会監査は真の意味外部監査とは言い難いと、三つほど整理されておりました。それからもう一つは、農協信用事業信用力を維持するためにも、中央会監査の義務付けを廃止することが必要であると、いわゆる中央会監査義務化はやめろと、中央会監査じゃなくて外部に頼めと、こういう意味だと思いますが。それからもう一点は、会計監査業務監査の一体的な実施は、単協のニーズに合致する場合でも単協の任意の求めに応じて行われるべきと、こういうような規制改革会議からの意見書が出されておりました。  そして、先般の山田修路委員質問でも、奥原局長答弁された中身には、まさしくこの規制改革会議意見として出しておりました、一つ外部監査とはやっぱり言い難いという指摘について、これは意見書が出される前から、長年公認会計士からこれは指摘を受けてきた話でありまして、いろいろ中央会監査については内部監査外観性が非常に乏しいじゃないかと、こういった御指摘はいろいろ受けていたことは事実であります。  それで、全中改革改革を重ねまして、平成十四年に全国監査機構、今の監査の仕組みをつくったわけであります。今ではこの監査機構公認会計士が三十名ほど入っておりまして、外観的にも独立性を高めているというのは事実であります。しかし、真の意味外部監査かと言われますと、それではなかなか否定し得ない部分というのも、側面もあります。  しかし、二つ目指摘にありますように、信用事業を今後とも安定的に継続できるようにするという観点については、多くの私は疑問が実はあります。信用事業を継続的に展開するために、平成十三年のJAバンク法を作りまして信用事業破綻等未然防止策を講じたことは、これは農水省の私は大きな功績だったというふうに思っております。  そのときの金融調整課長が、委員皆さん方は御存じないと思うんですが、今日お座りの奥原局長金融調整課長のときに、このJAバンク法を作られた方であります。その後、多くのJA破綻未然に防止できたというふうに思っておりまして、しかしながら、これは法律だけでやっていけるわけじゃありませんで、その背景には信連なりあるいはまた中央会の大きな努力を重ねてきたということは、これは奥原局長も十分御認識のはずであります。  このバンク法ができてから、農協破綻未然防止が私は本当にできたというふうに思っております。すばらしい法律だと思っておりますが、にもかかわらず、局長中央会監査では今後とも信用事業を安定的に継続できないのではないのかと。この前も山田修路先生質問に対してそうした答弁があったわけでありますけれども、改めて、このJAバンク法だけでは駄目なのか、あるいは、やっぱりこの中央会監査では駄目なのかと、このことについてのお答えをいただきたいと思います。
  9. 奥原正明

    政府参考人奥原正明君) この監査の問題でございますけれども、この話につきましては、平成八年に、ほかの信用金庫、信用組合の方に外部監査として公認会計士監査というのが義務付けられました。そのときに、農協についてはどうするかということが、これは当時まだ金融庁はできておりませんでしたので、農林水産省と、それから当時は大蔵省銀行局ということになりますが、ここでも相当意見交換が行われました。  そのときから言われておりますのは、やはり中央会がやっている監査ということでは純粋な外の目で見る外部監査とは言えないんではないかという御指摘も随分ございまして、ただ、そのときはいろんな議論の結果として、当面この中央会監査でもって外部監査ということにする、公認会計士監査に代えるということで制度をつくってやってきているわけでございます。  ただ、その過程で、外部監査として不十分ではないかという指摘に応えるためにいろんな改善の努力をしてきているのも事実でございまして、全中の中に全国監査機構をつくってこのレベルを上げると、こういった取組をやって、できるだけ遜色のない形で監査を進めようということでやってきているわけでございます。  ただ、そういうことをやりましても、外部の方からこの中央会監査では不十分だという意見はなかなか消えておりません。今回の規制改革会議だけではなくて、その前から、規制改革についてのいろんな分科会ですとかございますが、言われてきておりますし、平成二十年には、日本公認会計士協会の方からも純粋な外部監査とは言えないといった意見書も出されている、これも事実でございます。  特に、公認会計士監査全中監査と比べてみますと、実態のところはいろいろあるかと思いますが、制度面だけでいいますと、この監査人資格につきまして、公認会計士の方は国、金融庁実施をする試験合格をした人ということになっておりますけれども、農協監査士の方は全中実施をする試験合格者ということでございます。それから、監査人監督につきましても、公認会計士の場合には公認会計士協会監督もございますし、それから金融庁監督もございますが、一方で、農協監査士の場合には全中農林省監督を受けると、こういった体系でございます。またそれから、監査独立性につきましても、公認会計士の方は法律によりまして規制されておりますが、全中監査の場合には全中内部ルールでの規制といったことにとどまっていると、こういった相違点もあるわけでございます。  こういったことに加えまして、准組合員の数が農業者である正組合員の数を上回る状況に今なっております。農家でない方々が相当農協信用事業を利用する状態になっているのもこれも間違いない事実でございますし、農協の数も現在七百農協になっておりまして、一つ農協貯金量の規模も相当大きくなっております。平均で一千億円を超えておりますし、中には一兆円を超えるところもあるということで、こういった状況の中で、やっぱり外部の方から、農協信用事業がイコールフッティングでない、ほかの金融機関と同じようにきちんとした外部監査を行っていないということが言われますと、これから信用事業を継続するのが難しくなるということもやっぱり考えられますので、こういったことなく、批判を受けることなく、今後も安定して農協信用事業が行えるようにするという観点から、ほかの金融機関と同様に会計監査体制を整備をするということが必要というふうに今回判断をしたわけでございます。  それから、ただいま先生から御指摘ございましたように、平成十三年にはJAバンク法という法律を作っております。これ、ペイオフの解禁前後に、従来の信用事業体系ではなかなかこのペイオフを乗り切れないんではないかということを踏まえまして、農協信用事業を健全に行っていくという観点から、農協はそれぞれ法人格を持っておりますので、それぞれが独立をして行っている信用事業ではありますが、農林中金、それから信連、この末端の地域農協、全体として一つ金融機関として機能するようなきちんとした体系をつくろうと。特に、信用事業が健全かどうかという状態については、農林中金が一定の自主ルールという基準を作って、それに照らしてそれぞれ農協信用事業状況チェックをする、これによって問題がある場合には、レベルワンとかツーとかスリーとかランク付けをしてそこの資金運用について制限を掛ける、そういったルールを作ってやっているわけでございます。  この制度をつくって、実態的にも、農林省、それから全中、それから農林中金、いろんなところが協力をしながら破綻処理等も進めてまいりましたので、現状ではこの農協信用事業につきましてほとんど問題がない状態になっていると思いますけれども、このJAバンク法が機能するための一つの前提は、会計監査のところがきちんとできているということでございます。ここのところの数字がきちんとしていなければ、それをベースにする農林中金自主ルールもきちんと動かないということになってしまいますので、そういう意味におきましても、この根っこにある監査のところはほかの金融機関と比べて遜色のない体制をきちんとつくるということは非常に重要なテーマであるというふうに考えているところでございます。
  10. 野村哲郎

    野村哲郎君 今局長の話を聞いておりまして、おやっと思うところがあるんですね。JAバンク法ができて、確かに系統の金融というのは自主ルールでもってお互いに、まあお互いというか、監視をし、そしてまたチェックを掛けながら破綻が出ないようにということでやっております。ただそれは、自主的なルールを作りながらの非常に厳しいこれはルールでありました。私も実際、中央会にいるときには、何でこんな厳しいルール内部で作らなきゃいかぬのだと思うぐらいに大変厳しいルールでありました。ですから、それを徹底的にやっぱり守らせてきたと、これはJAバンク法が、後ろ盾があったからだと私は思っているんです。  ただ、今局長の話の中で、それと併せて、監査の言わば信憑性といいますか、きちっとしていないと、これ併せてこの自主ルールが機能していかないんだ、こういうような言い方だったと思うんですけれども、この前の山田太郎先生の話の中でも、農協は着服が多いぞと、こんな御指摘もいただいたんですけれども、今は自主ルールによって監査がほとんど必要でないぐらいの私はルールができ上がってチェックができているというふうに思うんですね。  今はもう毎月毎月、これはもうデータで農林中金の方に線で結ばれておりまして、財務の状況の移動というのは全部チェックができるようになっていますから、今おっしゃった監査できちっとした適正な会計監査が行われていないと、どうもこのJAバンク法が思った期待どおりの効果が出てこないというふうに私は聞こえたんですけれども、これはそういう意味でおっしゃったんですかね。どういう意味だったのか、ちょっともう一回教えてください。
  11. 奥原正明

    政府参考人奥原正明君) このJAバンク法に基づく自主ルールは、基本的には農協自己資本比率、これでもってチェックをするという体系になっております。  農協につきましては、海外との業務をやっておりません。国内行ですので、行政基準としては自己資本比率は四%ということになりますけれども、現在の自主ルールにおきましては、これは変更は当然可能なんですけれども、現在の自主ルールにおきましては、自己資本比率が八%、これが一つベースになっておりまして、八%を割ったらレベルワンということになります、資金運用が一定程度制限されて。六%を割るとレベルツーということになって、更に資金運用が制限されます。四%を割るとレベルスリーということになって、この場合には組織統合を求めるというところまで行くわけでございますが、ベースになっている基準自己資本比率ということになります。  この自己資本比率というのは、監査の結果に基づいて、その帳簿でもってきちんと整理をするということになります。特に融資につきまして不良債権の査定がきちんとできているかどうかと、そのランク付けができて、きちんとした引当金が積んであるかどうかと、そういったことがやっぱりチェックをされて、それで自己資本比率が、数字ができてくると、こういうことになりますので、自主ルールをきちんと適用していくためにもこの監査のところはきちんとできていなければいけないと、こういう仕組みでございます。
  12. 野村哲郎

    野村哲郎君 私は、農協の今の中央会監査公認会計士監査よりも優れているというところまでは申し上げませんが、ただ、やっぱり認識として持っていただきたいのは、やはり監査士皆さん方が、今おっしゃった自己資本ルール八%の比率のところだけではなくて、その中の資産から負債、全ての資本までチェックを、財務諸表監査をして、そしてこれが適正であるということをやっている、これは一番精通をしているというふうに私は思っているんです。  ただ、もう一点申し上げたいのは、JAの場合は信用事業だけをやっているわけじゃありません。ですから、信用事業をこれからも安定的に継続が、今の中央会監査だけでは継続してやっていくことはなかなか難しいですよと言われても、じゃ、信用事業だけをやっている農協ならばいいですけれども、むしろ多いのは経済事業であります。ですから、そういう意味では、他の金融機関とのイコールフッティングの話も先ほど出ましたけれども、それだけでは農協の事業はくくれないのであって、特に経済事業の問題というのが私は一番大きな問題になってくるんだろうと。  先ほど山田太郎先生の話をしましたが、着服の問題も、中央会監査で見付けたり、あるいはまた内部監査で見付けたり、あるいは監事監査で見付かったりということを、念のために申し上げておきますが、これはきちっと県に報告する義務があります。ですから、県に報告しますと、県は情報開示を求められて、そしてこれを開示してしまいます。それが新聞記事になるので、私は、農協だけが着服が多いということじゃなくて、一般の金融機関は表に出てこないから、農協だけがこうして着服が多いんだ、多いんだという話が新聞紙上載るものですから、これは、我々JA出身者としては是非とも皆さん方にも是非知っておいていただきたいと。これはもう県が発表してしまいますので、全て新聞に載ってしまうということであります。その証拠に、余り金融機関の不正事件あるいは横領事件というのはほとんど載らないんです。それは絶対に外に出しませんから。ですから、農協だけが何か悪いことばかりしているというふうに見えがちなんですけれども、そういうこともありますので、やはり全体像というか、真偽のほども是非分かっていただきたいなと思います。  それともう一点、ちょっと横道にそれましたけれども、先ほど来申し上げたように、信用事業だけじゃなくて、農協は経済事業をやっぱり中心にやれと、これからもやれということの御指摘も受けているわけですが、この経済事業の監査というのはなかなかこれは難しいというか、自分でもやってみておるんですが、多分、私は、全国の今監査機構皆さん方が各県の監査をやるときも、地元中央会の職員が多分経済事業を見ていると思うんですね。それはなぜかといいますと、信用事業、共済事業システム化されて、これはもうほぼ日本全国統一的なシステムでありますが、経済事業は県によって違うわけです。宮崎は宮崎のシステム、鹿児島は鹿児島のシステムですから、監査マニュアルが幾らあっても、これは県別に違うと公認会計士皆さん方は大変戸惑うんじゃないのかなと、こんなふうに思っております。  ですから、私は、この経済事業をどう見ていただくのかというのはこれからやっていかなきゃならないんですが、一番やっぱり公認会計士皆さん方が難儀をされていくというのはこの経済事業だろうなと、こんなふうには思っております。それはまた今後のことですからいいんですが、ただ、何を申し上げたいかといいますと、私はやっぱり、公認会計士監査よりも中央会が優れているとは言いませんけれども、公認会計士監査も万能ではないと、万全ではない、こういうことを申し上げたいわけであります。  その証拠に、委員先生方も御承知のように、最近新聞をにぎわしておりますのが東芝の粉飾決算疑惑であります。こういったことを公認会計士がきちっと財務諸表を見て監査をしているわけでありますけれども、これすら見抜けなかった。その以前はオリンパスだとかあるいはまた大王製紙だとか、いろんな大手の一流の上場会社の粉飾決算がありましたが、これも全て公認会計士が見ているわけでありますが、これが多額の粉飾になってくるわけであります。  ですから、経済事業の場合は、大変、一回こういった不正をやられますと非常に金額が大きくなってくるんです。ですから、先ほど信用事業の場合は、破綻未然防止のこのJAバンク法がありますので、このルールにのっとってチェックを掛けていますから、信用事業で今大きく資本を毀損するような状況は余り出てこなくなったと。一部は少々あるかもしれませんが、ただ一番怖いのは、やっぱりこの経済事業だと、こんなふうに思います。  したがいまして、中央会監査外部監査じゃない、外観性に乏しいよというだけの理由で中央会監査義務化廃止をする、こういうことになっているわけでありますが、もう一遍、奥原局長、ここの積極的な理由をお聞かせいただきたいと思うんです。でなければ、やっぱり中央会監査で本当に駄目なのかということを、どうしてもまだ納得がいかない点が多々ありますので、この義務化を外した積極的な理由というものを教えていただきたいと思います。
  13. 奥原正明

    政府参考人奥原正明君) この監査の問題につきましては、やはり外部から見てきちんとできているかどうかという、そういう信頼性の問題も非常に重要な問題だというふうに思っております。  今御指摘ございましたように、東芝ですとかオリンパスですとか、普通の監査法人がやっている方につきましても問題が全くないわけではないというふうに思っておりますが、一方で、こういう監査に関するいろんな問題が生じたときに、監査法人につきましては言わば公認会計士協会の自主的なルールというものも働いてまいります、自浄作用というものが働いてまいりますし、監査法人についても複数存在をしておりますので、問題があれば別の監査法人に切り替えるといったことも可能なわけでございますが、これまでの農協についての監査全中が必ずやるということになっておりますので、そこのところの問題点というのもやはりあるのではないかなというふうに思っております。  中央会監査につきましても、先ほど申し上げましたように、監査の質につきましては相当高める努力をしてきたことは間違いございませんので、実態的に見て、今の中央会監査が、公認会計士監査よりここがこういうふうに具体的に劣っているという話では必ずしもないと思っておりますけれども、やはり外観から見てもきちんと信頼できる形にするということも大事ですし、今回は全中の中にあります全国監査機構を外に出して、一つ新しい、これは公認会計士法に基づく監査法人をつくっていただくということも今回の制度設計の中に入っているわけでございますので、従来の全中がやってきた監査のいろんなノウハウもきちんと生かしながらできるような体系をつくっていきたいと、こういうことでございます。
  14. 野村哲郎

    野村哲郎君 今お答えいただきましたように、当初議論をする過程では公認会計士監査というのが議論があったわけでありますが、しかし、今局長から御答弁いただきましたように、今の監査機構を外出しして、そしてこれを公認会計士の法に基づく監査をできる組織に変えたらどうかと、こういうことでありましたので、なるほどということで私どもも納得をしたわけであります。  ただ、そうしますと、やっぱり引っかかってくるのが、公認会計士法に基づく監査というのは、原則的には会計監査しかできないというのがやっぱり劣っている点だと思うんですね。今の中央会全国監査機構監査というのは、会計監査業務監査のセットでやっております。その話をしますと、いや、そういう業務監査というのはもう必要はない、もう農協がこれだけ規模も大きくなり、合併もしたし、役員の皆さんの経営判断できちっとやれる話ではないのかと、こういうことを言う方々も多いと思います。しかしながら、私どもがやってきた経験論でいいますと、なかなか、農協の場合は、自分たちで経営判断として一般の企業みたいにどんどんどんどん取締役会で決めてやれるような組織にはなっていないと。  例えば、よく私は例として申し上げるんですが、農協の支店とか出張所等の統廃合を進めるときに、なかなか農協の理事会の自主性に任せたって話が進んでまいりません。それは、やはり農協の理事さん方は地域の代表ですから、地域の皆さん方からその支店は閉めないでくれとかそういったような話が出てきますと、理事会で本当に経営判断でもってあの支店は閉めようとかそういう判断はなかなかできません。ですから、そこを後押しする、背中を押すのが私は中央会業務監査だったんだというふうに思っているんです。  それは、ただ廃止とかということじゃなくて、A支店とB支店を、どうしてもやっぱり赤字を垂れ流しをしているので、どうにかしてこれはやっぱり合理化しなけりゃいかぬ、一日置きずつA支店とB支店をやったらいいのではないかとか、こういった提案をするのが中央会業務監査の一環でありました。  ですから、そういうような業務監査会計監査が相まって私はすばらしい監査ができ上がってきたと思うんですけれども、今回、どうしてもその辺の業務監査ができない、これは今の、外出しをしてもできないということになってきますと大変これは大きな問題が出てくるのではないのかなと、こんなふうにも思っております。  したがって、この業務監査を、任意に今回の法改正ではなっているわけです、何も業務監査は強制的にやれという話にはもうなっておりません。それは、農協業務監査をしてほしければきちっと業務監査を依頼すればいいんだと、こういうことになっております。ですから、この任意になった業務監査を何とかできないものかなと。これは、公認会計士法ではできませんけれども、今は監査機構もありますし、あるいは各県の中央会には監査士がいるわけですから、そういうものを担わせるということはできないのか、お答えをいただきたいと思います。
  15. 奥原正明

    政府参考人奥原正明君) 業務監査の関係でございます。  今回の農協改革におきましては、この業務監査につきましては、ほかの民間の組織を見ましても業務監査の義務付けをされているところはございませんので、それと同様にするという観点で、農協につきましてもこの義務付けを廃止をしております。それぞれの農協が必要と判断したときに、必要なところに業務監査なりあるいはコンサルを頼んでいただくという体系になるわけでございます。  ただ一方で、都道府県中央会、これ先ほども御議論ありましたけれども、今回農協連合会に移行することになりますが、この農協連合会は、会員の要請に応じて経営相談ですとかあるいは監査を行うことができるというふうに整理をしてございます。この監査としては当然業務監査も含まれているわけでございますし、それから全中から外出しをした監査法人、ここにつきましては会計監査を行うのが中心ではございますけれども、そこは、大企業につきましては、上場している企業につきましては会計監査業務監査を同じところに対して行うことは法的に規制もされておりますが、必ずしも農協については法的にそこが規制されているわけでもございません。これは公認会計士協会独立性に関する一定の基準を満たす必要がありますけれども、その基準を満たせば、外出しした監査法人農協に対しまして業務監査を行うということも可能ではございます。それから、一般の監査法人も、当然この業務監査だけ、あるいはコンサルだけを農協に対してやるということもあり得るわけでございますので、そういったことを含めて、必要な場合には農協の方で必要なところに業務監査あるいはコンサルを頼んでいただくと、こういうことになるということでございます。  それから、今先生から御指摘ございました、特にこの経済事業等につきまして、不採算の支店を統廃合するかどうかと、こういったことも業務監査指摘をしてきたというお話がございましたけれども、この指摘は、どちらかといいますと、業務監査というよりは、従来中央会は経営指導もできたわけでございますので、経営指導の方の範疇だというふうに考えております。店舗ごとに採算性がどうなっているかということは会計監査でも明らかになりますし、法令違反していないかどうかの業務監査ということは当然ありますが、そのことを踏まえて経営指導として不採算の店舗をどうするということが中央会の方から言われてきたということではないかなというふうに思っております。  この点含めまして、農協の方から見て、うちの農協のどの点が経営的に問題があるのか、それをどういうふうにしたら改善できるかということを議論する場合には、必要があれば外部のところに業務監査なりコンサルを頼んでいただいて、そのことをベースにした上で、経営者であります農協の役員の方が組合員ともよく協議した上で適切に判断をしていただくと、こういうことになるものというふうに考えております。
  16. 野村哲郎

    野村哲郎君 業務監査については、完全にできないということじゃなくて任意にしたということなんでありますが、ただやっぱり長年やってきた者からすると、セットの方が、農協の受け止め方としては、会計監査のみということになってきますと、何らかやっぱり農協の本当に経営判断に資する指摘というのは必要になってくると思います。  しかし、これは、いずれにしても、今度の監査機構の中でどういうような業務監査、コンサルティングができていくのかというのはまた今後検討していただきたいと思いますが、ただ、もう一つ大きなテーマは、現在、各県におります、あるいは全中におります監査士の処遇の問題であります。  このことについては、なかなか、これは先生方も余り御存じないと思うんですが、先ほど公認会計士監査士資格の問題を奥原局長答弁されましたけど、監査士というのは、単に資格を持っている、どういう資格を持っているのかといいますと、私も経験がありますけれども、郡司先生も多分御存じですけれど、五科目の法的な問題から会計学から、公認会計士とほぼ変わらないような筆記試験があります。その筆記試験に通りますと、一年間は監査部署に在籍しなければいけないと。それから、その後二年間は言わばインターンということで監査に従事しなければならない、これは日数が決まっております。そして、その後、最後は、これもまた実務補習として論文査定というのがございます。ようやく、三年ぐらいたちませんと監査士という資格をいただけないんです。  ですから、みんな、仕事をしながら勉強をして、そして監査士を取ったと、大変なこれは誇りを持って中央会の職員というのは仕事をしておりましたし、現在も監査士というのが、名刺に監査士というのを書くんです。書くというか、名刺にも何々部長、そしてまた監査士何のたろべえというのを書くぐらいに、非常にやっぱり皆さん、そういう意味でのモチベーションが高まる資格試験だと私は思っております。  ですから、この人たちが今後どうなっていくのか。いわゆる監査機構に移りますと、公認会計士が中心になりますから、その公認会計士の補助者的な扱いになって、今までは監査士でございますということでやっていたんですけど、単なる補助者ということになってきますと、監査は、それはきちっと専門性が発揮できて実力的にもやれるわけでありますが、その人たちが本当にモチベーションを保てるかなというのが一点あります。  それから、先ほど言いましたように、これから続かなければならない資格試験を挑戦していく若い職員が、本当にこれだけの努力をしながら、結果的には公認会計士の補助者じゃないかというようなものに対して、ものというのは失礼ですが、地位に対しまして、本当に努力をして挑戦するような職員が出てくるのかどうか、大変危惧をいたしております。  ですから、中央会の職員の、私はこの監査士試験というのが一つ中央会職員たる基準だと、こんなふうにも我々は言ってきたんですけれども、ほかの連合会とは違う、やはり中央会の職員というのはこの資格を持たないと駄目なんだと言ってきましたけれども、今後挑戦するような人たちが出てくるのかどうか。今後省令で定めると、こういうふうになっておりますので、まだ具体的には言えないのかもしれませんが、どのようなことを省令で定められるのか、その辺のお考えがありましたら、もしまとまっておりましたら教えていただきたいと思います。
  17. 奥原正明

    政府参考人奥原正明君) 農協監査士の問題でございます。  今も先生から御指摘ございましたが、全中が外出しした監査法人をつくる場合には、これはあくまでも公認会計士法に基づく監査法人ということになりますので、ここの業務公認会計士を中心としたものになるわけでございます。ただ、農協監査士の方は、監査に必要な適性、能力を有する専門職員として、公認会計士の補助者ということにはなりますけれども、公認会計士の方と一緒に監査業務に従事をすると、こういうことになるというふうに思っております。  一方で、都道府県中央会から組織変更した農協連合会の方でございますけれども、ここは会員の求めに応じて今後も監査事業ができるということになっております。この監査事業としては、業務監査は当然広くできますし、それから会計監査につきましても、貯金量が二百億円に満たないところはここがやることも当然できるということでございますので、従来の農協監査士の方々が都道府県中央会から組織変更した農協連合会の職員としてこの監査に当たっていただくと、こういうことも十分に考えられるというふうに思っております。  それから、農協監査士の方は、これも今先生からお話ございましたように、かなりな能力と経験を積んだ方でございますので、この方々が農協の方に入って農協の役員あるいは職員としてそこの経営の管理や何かをきちんと見ていただく、こういうことももちろんあり得るんでないかなというふうに思っているところでございます。  それから、都道府県中央会から組織変更した農協連合会監査の事業をやる場合に、その業務に従事する職員の資格として、農林水産省令で資格を定めるということになっておりますが、その具体的な中身、これは今後検討することにしておりますけれども、基本的には、現行の農協監査士と同等の資格とするということを基本にしながら検討を進めてまいりたいというふうに考えております。
  18. 野村哲郎

    野村哲郎君 先ほど来申し上げましたように、現在いる監査士、それから新たな監査士というのが省令でいろいろ定めていくということになっておりますので、是非とも希望を失わないような省令を作っていただいて、現在いる者、そしてこれから挑戦しようという、やっぱり私どもが考えているのは、本当にこれはもう中央会の職員教育の一環というよりも大宗を占めているような気がいたしておりますので、これを軽く扱うようなことだけは是非ともやめていただきたいと、こんなふうに思っております。  時間がありませんので先を急ぎますが、もう一点、非常に問題を意識しておりますのは、監査費用の問題であります。  ですから、この監査費用、今まで平均的に今の監査機構に各農協が出しておりますのは、全国平均ですけれども、これは間接、直接一緒ですが、大体年間一農協八百万ぐらいであります。しかしながら、これが外出しの公認会計士監査になってきたときにどのぐらいの金が要るのかというのが、非常に農協皆さん方は大変心配をしております。  それはなぜかといいますと、具体的な例を申し上げますと、あずさ、まああずさという余り名前を出しちゃいけませんが、東京の大手の公認会計士協会におられた方が地元に帰っておられます。信金の監査をやっているということで、金額的なものを聞きましたら、大体一日十万だと。そして、監査の日数が百日掛かるということでありますから、百人日ということになりますと、金額にして一千万ということになってきます。これは信用事業だけでありますから、農協の場合は経済事業もあるいはほかの事業も多岐にわたってやっていますので、どれだけの日数が掛かるんだろうかと。こういう問題を実は農協皆さん方、いつも心配をいたしております。  この金額の場合はまだ分からないわけでありますが、そこで、今回の改正案では、附則の第五十条第一項に実質的な負担が増加しないよう配慮するという配慮規定がありますけれど、この実質的な負担が増えないようにというところに大変な農協皆さんの期待があります。これは、場合によっては国がオーバー分を負担してくれるのではないのかと。そんなことはありませんよと、こう言うんですけれど、非常にこの配慮規定に対する期待感が強いということでありますが、この配慮規定中身を少し教えていただきたいというふうに思います。
  19. 奥原正明

    政府参考人奥原正明君) 先生指摘ございましたように、今回の改正法の附則の第五十条のところで、公認会計士監査への移行に関しての配慮事項の一つとして、政府は、農協が実質的な負担が増加することがないことというのを規定しているところでございます。  この配慮規定の具体的な内容につきましてはこの法律の施行後に検討していくということになりますけれども、まずは、これまでの農協の負担がどのくらいであったのかというところの確認から始めることになります。その上で、会計監査人になった場合の負担がどの程度になるのか、これを検証するところから始めていきたいというふうに考えておりますが、その上で、実質的な負担が増える可能性が高いという場合には、農協の負担が実質的に増加しないように、これは公認会計士協会等とも協議をしながら様々な方策を検討していくということになるものと思っております。  今も先生から御指摘ございましたように、要するに、何日監査に入るかということが一つの重要な問題でございます。それにつきましては、そこの農協の例えば経済事業はどういうふうに行われているかとか、こういった予備知識があるかないかで必要な日数も当然変わってくるわけでございますので、そういったところを公認会計士の方にあらかじめ農林省の方できちんと説明をするとか、そういったことがあればそこの負担を軽減することも当然あり得るわけでございますので、そういうことを含めて幅広くいろんな対策を検討していきたいというふうに考えております。
  20. 野村哲郎

    野村哲郎君 今からその配慮規定については検討していくということでありますが、負担が本当に増えないようにということをお願いをしたいし、そしてまた、そういうような仕組みができ上がっていかないとこれはなかなかワークしていかないというふうに思いますので、是非そのところは今後詰めていただきたいと思います。  もう一つ質問をしようと思って参考資料も出してきましたが、実は監査情報の共有化というのが一番問題になってくるというふうに思います。  もうこれは答弁は要りません。先生方も委員皆さんも見ていただければいいんですが、現在は、JA監査をしますと、全国監査機構からJAバンク、これは農林中金等でありますが、それから全中、県中に対しまして情報が開示、開示といいますか、保秘義務を解除されて両方に出せます。これは、監査をした者はこれは守秘義務がありますから、これを解除しないと契約でなっておるんですが、こういうふうになっております。  ただ、公認会計士がここに入っていますと、公認会計士法に基づく監査法人だとこれが実質的にJAバンクなりあるいは県中なりに情報が入らないというのがありまして、どういう形で情報を共有しながら、先ほど来ずっと意見交換やりました破綻未然防止を、どうして防げるか、あるいは農協のいろんな不正を早く見抜くかというところはこの監査情報によってやるわけでありますけれども、公認会計士法に基づく監査になりますと情報が共有化できないという大きな問題があるということだけは是非分かっておいていただきたいと思います。  少々時間がオーバーしましたが、最後にまとめさせていただきたいと思います。  これは、林大臣に、今日はまだ一言も発しておられませんので是非大臣の声を聞きたいと思うんですが、改正農協法に基づきます今回のいろんな監査のやり方、仕組みについて、改正法案を作った役所も、そしてまたこの議論をしている我々国会議員も、それからJAグループ皆さん方も全く未知の世界であります。今までの中央会監査じゃなくて公認会計士法に基づく監査をやっていくわけであります。ですから、あと三年半後にこれを移行したときに現場できちっとこのことが、今、先ほど来いろんな問題点も指摘いたしましたが、これがワークしていくのかどうかというのが非常にこれは現場皆さんが心配していることであります。  そこで、林大臣と党内で議論をするときに是非これはお願いしたいということで申し上げたのが、この移行までの間にどこか、どこかというより農協をピックアップして、実証実験じゃありませんが実証してほしいと。先ほど奥原局長答弁にもありましたが、どのぐらいの監査で日数が掛かっていくのか、どのぐらいの金額が掛かるのか、そして、これが七百からの農協を一斉にやっていくわけでありますから、全部やりこなせるのかどうか。いろんな問題を内包していると思いますので、その辺の移行までの間に試験的に実証を是非していただきたいと。このことは大臣とも党内での議論の中でやり取りをしましたので御記憶にあると思いますから、大臣になられた以上、これはやると言っていただきたいと思います。よろしくお願いします。
  21. 林芳正

    ○国務大臣(林芳正君) 発言の機会をいただきまして、ありがとうございました。  移行期間中、大変大事なことだと思っておりまして、まず、自ら選択して定款で農協が決めますと公認会計士監査に移行はできますが、これ、定款を変更して選択を公認会計士監査にしますと、もう一度全中監査に戻すというのはなかなかできなくなりますので、実質的な負担がどうなるかを見極めて、その負担が増加しないように工夫しながら新体制に円滑に移行していくためどうするかと。これは今お話があったとおりでございまして、この法案が成立させていただきますれば、JAグループ皆さんともよく相談をしながら進めていきたいと、こういうふうに思っておりまして、試験的な取組、これも、どのJAでどういうふうに実施していくか、これも検討してまいりたいと思っております。
  22. 野村哲郎

    野村哲郎君 時間をオーバーしまして、長峯さんの質問時間に食い入ってしまいました。済みませんでした。  以上で終わります。ありがとうございました。
  23. 長峯誠

    長峯誠君 本日は、委員外でございますが、質問の機会をいただきましたことに心から御礼を申し上げたいと存じます。  先週末は、TPPが大筋合意に至るのではないかということで、大変緊張感を持って週末を迎えました。結局は大筋合意には至らなかったということで、ほっとしたという表現が適切か分かりませんけれども、ただ、八月末には残りの部分を解消して大筋合意に至りたいというような御発言がございました。まだまだ交渉があと一か月ほどは続くということでございます。  そこで、私は、農林水産省政府皆さん三つお願いをしたいと思っています。  まず第一は、言うまでもなく、国会決議をしっかり守っていただきたい。それから第二は、これは五品目以外にも影響を受ける品目もございますし、また五品目の内容も、その結果次第では国内農業に影響が出る可能性があります。それに対して国内対策をしっかり取っていただきたい。これを二番目にお願いしたいと思います。  この一と二については、日豪EPAの折にはかなりの部分しっかりと果たすことができたのではないかなということで大変評価をしているところでございまして、是非このTPPについても、国内の農業への影響を最小限にとどめ、そして再生産可能になるように、しっかりと対策を取っていただきたいと思います。  そして、三点目でございますけれども、これは本当に心からのお願いなんですが、こういう保秘義務を掛けた交渉はもう二度としないでいただきたいと思っております。今回、保秘義務というのは、こういう国際交渉の中で初めて日本が体験したというふうに外務省から伺っております。このことが、本当に私たちも苦しい思いをいたしましたし、また民主的統制の観点から見ても非常に問題があるということを感じました。是非とも、今後の交渉にはこういう保秘義務というものは二度としないようにお願いをしたいと存じます。  それでは、農協法改正案についての御質問をさせていただきたいと思います。  まず、理事の過半数を認定農業者にするという話でございます。  この理由を政府の説明に従ってお聞きいたしますと、理事の過半数が認定農業者になると、農業者のメリットを代表するような意思決定がなされる、そして創意工夫をして自由な経済活動を行うことにより農家の所得が向上するという話で伺っているんです。つまり、現状では認定農業者JAがうまくいっていないということを前提にした話になっているんですね。  しかし、私はこれはちょっと違和感がありまして、現状として、JAとうまくいっていないのは、力のある法人経営者の一部、こことは確かにうまくいっていない事例があるというふうに思います。例えば、負担を伴う事業には、自分のところは規模が大きいから、そんなのに参加したらすごく負担金が増えるので参加しないよ、だけど融資とか補助制度みたいなおいしいものはうちももらうよというような関係をつくっていくと、やはり一般の農家の方からは非常に反発が出ます。そこで、こういう力のある法人農業者JAの関係が非常にぎくしゃくし始めて、そういう法人関係者が、いや、農協が農業の発展を阻害しているんだというふうな発言をされる。こういうことは間々あることというか、散見されることだと思います。  しかし、認定農業者ということになりますと、法人経営者とは、もちろん重なりはかなりあるんですが、必ずしも一致はいたしておりません。認定農業者のイメージというのは、地域の後継者として地域から非常に信頼をされ、そして地域のために非常に大きな自己犠牲も払いながら頑張っている農業者というイメージなんです。  と考えますと、現在の農協理事というのは、認定農業者ではないにしても、認定農業者OBといいますか、そういう感覚の人が非常に多いんですね、実態としては。例えば、親子で営農していまして、息子さんは認定農業者としてばりばり頑張っている。しかし、おやじさんはもう第一線から引いている。おやじさんは時間があるから、じゃ、農協理事でもやってくれよと、地域から推し出されてやっているというふうなケースというのが間々見られます。ですから、認定農業者農協が対立しているというようなイメージというのは現場では余りないんじゃないかなという気がいたしております。  そこで、なぜ理事の半分を認定農業者にすれば農家の所得向上につながるとお考えになるのか、そこを御説明をいただきたいと思います。
  24. 中川郁子

    大臣政務官(中川郁子君) 今回の農協改革では、地域農協が担い手農業者の意向も踏まえて農業所得の増大に配慮した経済活動を積極的に行われるようにするため、農協の理事の過半数を原則として認定農業者や農産物の販売や経営に関し実践的な能力を有する者とすることを求める規定を置くこととしています。このうち、認定農業者につきましては、担い手の意向を農協業務執行に反映していくことを目的として、また実践的な能力を有する者につきましては、大口の実需者などと渡り合って農産物の有利販売などを実現することを目的としています。  今回の改革を契機として、農業者農協の役職員が、農産物を有利に販売するにはどうしたらよいか、またこれを実行する役員体制はどうするかなどにつきまして徹底した話合いを行い実践していくことにより、農業所得の増大につながっていくと考えております。
  25. 長峯誠

    長峯誠君 ありがとうございます。  続きまして、全中監査についてでございます。  これは度々国会でも質問がされているんですけれども、全中監査単協の自由度を奪っているという出発点がございます。この具体的な事例を出してくれということをさんざん言っているんですが、いまだはっきりとしたものは出てきておりません。  私もいろいろと調べましたところ、唯一あったのが一月二十九日の朝日新聞でございます。これが「全中監査農協縛る?」というタイトルで出ているんですが、この中に二つ具体例が出ています。一つは、一県一JAになった農協がございまして、そこが中央会を残すかどうかということを判断する、そこで全中がいろいろ相談に乗ったというわけですね。ところが、この中央会の方は、結果としては残すことになったんですが、話合いはあくまで自分たちでやって方針を決定したと強調していると。「ただ、ある関係者は「思い通りにはできない」ともいう。」と。この「ある関係者は「思い通りにはできない」ともいう。」という、誠にいかがわしい書き方でやっているんですね。それからもう一つの事例は、これは北海道ですけれども、二億円超で研修用牧場を造るというときに、監査する中央会が、単年度収支を考えまして、これは大変だよ、だからやめた方がいいんじゃないかという助言をしたんです。結果的には、この農協は自分たちでこの牧場を造ることを決めました。この事例を見ますと、監査としては至ってまともなことを言っている、当然のことを言っている。恐らく、公認会計士監査になっても同じ指摘をされるんじゃないかなと思うんですが。  ということで、全中の自由度を奪っているという事例が本当にないんですよ。限りなく白に近いグレーではなくて、限りなく白に近い白ということで、これは全くの冤罪ではないかなというふうに私は思っているんです。  ですから、いま一度、本当にもう一回お尋ねしますが、全中単協の自由度を奪っている具体例、そしてそれが農家の所得向上に対しても決定的な阻害要因になっているんだということを説明をいただきたいと思います。
  26. 林芳正

    ○国務大臣(林芳正君) 今回の農協改革ですが、地域農協が自由な経済活動を行って農業所得の向上に全力投球できるようにする、そしてそれを連合会中央会がサポートをするというようなことにしていこうと、こういうことが基本的考え方でございまして、今まで中央会指導監査農協の活動を制約していたからこれを自由化すると、こういう理由で法案を提案をしたということではないということでございます。  昭和二十九年に中央会制度というのが導入をされたわけでございますが、当時は農協経営が危機的状態に陥っていたことを背景とする特別な制度ということで、行政に代わって農協の経営を指導するということで農協組織を再建していこうと、これが中央会制度の目的であったわけでございます。  しかしながら、これ何度も議論になっておるところでございますが、中央会発足時は、したがって昭和二十九年ですが、一万を超えていた単位農協、これが七百程度に減少しまして、そして一県に一JAというところも増えてきていると。それから、先ほど野村先生からも御議論いただいたようにJAバンク法というのができまして、信用事業については農林中金の方に指導権限が与えられていると、こういうふうになってまいりまして、この中央会がスタートしました昭和二十九年とかなり状況が変化をしてきていると、こういうことでございます。  したがって、今回の改革は、こうした制度が始まった昭和二十九年との状況変化を踏まえて、農業者の自主的協同組織である農協システムを現在の経済環境等に適応したものとしていく、こういう観点で見直しをしていこうというものでございます。結果として、地域の農協の自立、自由な経済活動、こういうものが一層促されることによって農業の所得の向上につなげていくことができると、こういうふうに考えておるところでございます。  JAグループからも、中央会制度は統制的権限を撤廃して、JAの自由な経営展開を支援する制度に生まれ変わると、こういう意見も表明もされておるところでございますので、しっかりと同じ方向に向いて改革を推進してまいりたいと思っております。
  27. 長峯誠

    長峯誠君 今の大臣のお話を聞いて少し留飲が下がる思いでございましたが、党内論議でも、またマスコミの論調でも、とにかく今日の農業の低迷がJAの責任であるかのような論調が非常に多いんですね。私は、地域で共に農政をやってきた者として本当にこれだけは耐え難い思いでいるところでございます。何とかそういう誤解のないような改革の方向性を進めていただきたいなというふうに思っております。  続いて、准組合員規制の必要性についてでございます。  これについて、政府答弁は、信用、共済事業に軸足があって、営農指導などに力が入っていないということを挙げております。しかし、これは逆ではないかなというふうに思います。信用、共済の収益があるからこそ営農指導ができているというのが実態でございまして、准組合員の利用が制限されれば、これは当然収益は悪化しまして、今まで以上に営農指導がままならなくなるのではないか。これは、これから五年間調査をしていただけるということでございますけれども、その調査を待たずとも誰でも知っている自明の理ではないかというふうに思いますが、どのように思われるでしょうか。
  28. 奥原正明

    政府参考人奥原正明君) 現在の農協経営の平均的な姿を見てみますと、経済事業のところ、これは営農指導を含んでいるわけでございますが、これが赤字で、これを金融事業の黒字で補填すると、こういうのが平均的な構造になっております。  ただ一方で、平均値ではなくて個々の農協ごとに見てみますと、全国で二割、あるいは北海道では七割の農協がこの経済事業で黒字になっていると、これも事実でございます。  金融事業の収益で経済事業あるいは営農指導事業の赤字を補填する、これが法律に触れるとかいうことではございませんけれども、やはり信用事業、共済事業が黒字であるということに安住をして経済事業の改善に向けた努力を怠るということがあってはいけないというふうに思っているわけでございます。  そういう意味では、経済事業につきましても、農業関連事業、それから生活その他の事業、それぞれの部門ごとに収支改善を図っていくことが必要だと思っておりますが、営農指導事業について、営農指導事業だけでこの収支の改善を図るということを求めているわけではございません。特に、営農指導につきましては基本的には農産物の販売と結び付いているというふうに思っておりますので、販売先のニーズに応じて有利に農産物を販売するという観点で、作付けをする作物ですとか品種を変更する、あるいは栽培の技術を向上させたり、あるいは生産資材の使い方を変えることによって品質を向上させると、こういった取組が基本的に望ましいというふうに思っているわけでございます。  この意味では、営農指導は農産物の販売とセットで考えることができると思いますけれども、営農指導をどのように行うか、それから営農指導のコストをどのように賄うかということについては、それぞれ地域の御事情もございますので、それぞれの組合ごとに決定していただくべきテーマというふうに考えております。
  29. 長峯誠

    長峯誠君 続きまして、農業委員会法の改正についてでございます。  今回、利用最適化推進委員というのを設置をいたします。この推進委員は非常勤を想定されているということなんですが、どの程度の処遇を考えておられるのかなというのを聞かせていただきたいと思います。また、どのような人材がこの推進委員になることを想定していらっしゃるのか。  といいますのも、恐らく、非常勤ですから現役の方は無理です。最近、雇用情勢が大分改善されまして、役所農協のOBもそれなりの処遇をしないとなかなか集まらないという状況になっているんですね。しかも、誰でもいいというわけじゃありません。ある程度の農業の知識とか地域の人脈を持っている人でなければいけませんので、どういう方をお願いするつもりなのか、お伺いしたいと思います。
  30. 奥原正明

    政府参考人奥原正明君) 農地利用最適化推進委員の関係でございます。  今度新設をいたしますこの推進委員の方は、農業委員との適切な役割分担と協力の下に、農地中間管理機構とも連携をしながら、担当区域におきまして担い手への農地利用の集積、集約化、それから耕作放棄地の発生防止、解消といった農地利用の最適化の推進に関する現場での活動を行っていただくということになるわけでございます。  この推進委員の方の身分につきましては、今先生から御指摘ございましたように、これは農業委員と同じでございますけれども、特別職の地方公務員ということになりますので、非常勤という位置付けでございます。  この推進委員の報酬でございますけれども、農業委員会改革に関します昨年六月の政府・与党の取りまとめ、これにおきましては、市町村ごとに一定のルールの枠内で支給することを検討すると。具体的には、平成二十八年度以降の予算において手当てする方向で検討するということになっているわけでございます。  これらを踏まえまして、この推進委員の報酬につきましては、農業委員の報酬との関係も含めまして、これは法律が通ったらということになりますけれども、今後の予算編成プロセスの中で検討するということにしておりまして、改正後の農業委員会がこの農地利用の最適化の推進にきちんと取り組めるような必要な財源の確保に努めてまいる考えでございます。  それから、具体的にどういう方がこの推進委員になるかということでございますけれども、現場におきまして農地利用の最適化に向けた推進活動を行っていただくということになりますので、地域の農地の所有者あるいは農業者の信頼を得て農地利用の調整を公正かつ円滑に実施をしていく能力が必要でございます。このために、そのような能力を有する方、例えば農協職員のOBの方もそうですし、あるいは普及員のOBの方、あるいは経営を次世代に譲った農業者の方、こういったような方々がいろいろ想定をされますが、こういう能力を持った方々が推進委員となることが望ましいと考えているところでございます。  この推進委員につきましても、地域からの候補者の推薦ですとか募集を行うということになっておりますので、こういったプロセスを通じまして、能力のある方が推進委員になるように十分工夫してまいりたいというふうに考えております。
  31. 長峯誠

    長峯誠君 ありがとうございます。  農業委員が公選制であったわけでございますけれども、その理由というのは、恐らく農業委員会は、農地法三条、四条、五条、権利移転や転用の許可権限を持っております。これらは憲法二十九条に保障された財産権を制約する極めて強大な権限でございます。ですから、そういったものを与えるには民主的統制が必要だということで、公選制ということだったんだろうと思います。  事実、私の経験上も、非常に厳しい利害対立の中で農業委員の方々が判断をしなければいけない場面というのは往々にしてございます。そして、その申請者から、おまえ次の選挙で落としてやるというようなことのプレッシャーを受けることも間々あるわけですね。しかし、結果的には、公選制ですから、地域の人たちがみんな見ている中で、ああ、あの農業委員はいつも公正公平なちゃんとした判断をしているよねという信頼を得ることで次も公選で選ばれるというような実態になって、正しい判断が支持されているんだろうというふうに思っております。  規制改革会議が農業委員会の公選制を廃止すべしと言った理由は三つあります。  一つは、名誉職となっているということ、これはよく分からないんですね。もし申請が上がっても、それを審査していない、役職だけで何の仕事もしていないというのであれば、これは別な問題で、職務懈怠の問題でございますから、これはよく分かりません。  二番目、適切な人物が透明なプロセスを経て確実に委員に就任するようにということなんですけれども、これはまさに公選制こそ一番透明なプロセスではないかなというふうに思います。  それから三番目、無投票が多いからということです。これは確かに事実として言えると思いますけれども、無投票だから機能していないという言い方は少し乱暴ではないかなというふうな思いがございます。実際、現場の感覚としては、無投票というのは信任されている証拠、信任されないような方が出てくると大概投票になるというような感覚が現場の感覚としては強いかなという気がいたしております。  今回の公選制を廃止することでメリットがあるとすれば、それは選挙人名簿を作らなくていいということで、選挙事務は大幅に軽減されますので、事務局負担は確かに軽減をされます。  しかし、これはやっぱり、非常に私が懸念しているのは、首長にとって農業委員会というのは今まで実はバッファーだったんですね。利害得失に直結する案件が非常に多いですから、有権者から相当なプレッシャーを受けます。しかし、今までは、いや、これは首長が決めるんじゃなくて農業委員会が決めるんですよとある意味で言い訳ができていたことで、直接それを受けなくて済んだというのがあるんです。確かに、今回も地域の推薦を受けて、その推薦を尊重する義務が首長にはありますから、その意見を尊重して議会の議決で決めるということで、中立性を担保しているとおっしゃるのですが、私は非常に弱いんじゃないかなというふうに思います。  例えば、選任の方法に、市内を幾つかの地区に分けて、その地区から選ぶときは予備委員も含めて、三人の定数であれば四人推薦を出してくれということで出させます。そして、最終的にはその中から三人を任命していくという格好を取れば、例えばある案件に強力に反対している農業委員を次のときに推薦しないということも可能なんですね、例えばですけどね。ですから、非常にやっぱりこれは本当に難しい部分が出てくるんではないかなというふうに思っています。  そこで、選任方法について省令で定めるとなっております。ですから、私は、ある程度細かく、詳しく書き込んだ方がそういう不正防止とか中立性の担保にはなっていくんではないかなというふうに思うんですが、この選任方法についてどこまで詳細に書き込んでいかれるお考えなのか、お伺いをしたいと思います。
  32. 奥原正明

    政府参考人奥原正明君) 農業委員の選任制の関係でございます。  今回の法案では、この農業委員につきまして公選制から市町村長の選任制に改めるということにしておりますけれども、法律の中では、この委員の過半につきまして原則として認定農業者でなければならないといった規定も置いておりますし、今も御紹介ございましたけれども、市町村長は、この選出に際しまして市町村議会の同意を得ることになっておりますし、あらかじめ地域からの推薦を求めあるいは募集を行う、それから推薦を受けた方あるいは募集に応募した方についての情報を整理して公表する、こういった推薦と募集の結果を尊重しなければいけないということまで法律の中に書き込んでいるところでございます。  法律の中はここまで書いてございまして、これ以降の具体的な手続につきましては今後省令で定めることになりますのでこれから検討するということになりますが、この推薦なり公募に応募する際にどうするかということで、あらかじめ、この推薦する方、あるいは団体のことがあるかもしれませんが、この推薦者がどのような方であるか、どのような人たちの集まりであるかということ、あるいは推薦を受ける方の方がどのような人で、その方の農業経営がどういう状況にあるかということ、あるいは推薦を受けた方あるいは応募する人が認定農業者であるかどうかということ、こういったことを明らかにした書類を市町村長に提出をしていただくといったようなイメージを持っているところでございます。  その上で、市町村長はこの推薦や公募の結果を取りまとめてインターネット等により公表すると、こういった手続を定めるということをイメージしておりますが、今後、各方面の意見も伺いながら適切に省令を決めていきたいというふうに考えております。
  33. 長峯誠

    長峯誠君 具体的にはこれからなんでしょうけれども、これが公選制から任命制になったということで、実は自分を農業委員にしてほしいという話が土地を持っている方から出てきているというのも聞いております。ですから、例えば委員になった方は自分の土地の転用は委員の任期中はできないとか、そういう縛りもやっぱり掛けていかなければいけないんじゃないかなというふうに思いますので、是非御検討をお願いしたいと思います。  この農業委員会法に関連しまして、先日成立しました第五次地方分権一括法案で農地転用の許可権限が地方分権で移譲されました。二から四ヘクタールは国との協議が不要になりましたし、四ヘクタール以上については国から都道府県へ移譲されました。これは国の協議はまだ残っております。また、この都道府県のところを指定市町村については市町村もできるということでなっております。  確かに、今まで長年にわたって地方自治体から強い要望が上がっていた案件でございます。しかし、今回、農業委員会の任命制と同時になされたということで、首長に大きな権限が持たれることになるということになります。  私は、三つ懸念を持っております。一つは、転用が大きく加速してしまうんじゃないかと。やはり首長というのは自分の町だけは人口が増えると信じている、信じなければいけない立場なんですね。ですから、よく言われますが、総合計画の人口推計を全部足したら日本の人口をオーバーしてしまうと言われますけれども、本当にそのために、多分、企業団地の造成とかあるいは定住促進住宅を造るとか、そういう政策的な転用が相当進むんじゃないかなということを懸念をしております。  二つ目は、先ほどから話がありますとおり、やはり有権者からのプレッシャーにさらされるということでございます。先日、日本農業新聞が調べたところによりますと、固定価格買取り制度が始まってから農地が太陽光発電のために転用されたのが四千ヘクタールということでございます。これ、実は公表していない自治体もあるということなので、是非政府の方としてもしっかり調査をしていただきたいと思います。  それから三つ目ですが、農家の転用期待が高まる。これは、もう誤解も偏見も全部含めてですけど、転用期待が高まっているんじゃないかなというふうに懸念しております。実は、大変大きな賞を取った優秀な農業法人のトップの方までもが、ああ、自分のやっている土地のこことここは転用したらすぐ買手が付くわと、これでやっぱりある程度の収入にしたいななんて、大分農地法は緩くなったんだろうみたいな話をされているんですね。非常に私は残念な思いで聞いていたんですけれども、こういった転用期待が必要以上に高まってきているんじゃないかと。このことについての御認識をちょっとお伺いしたいと思います。
  34. 小泉昭男

    ○副大臣小泉昭男君) 先生懸念部分でございますけれども、地方分権一括法によりまして改正される農地法における農林水産大臣が指定する市町村への農地転用許可権限の移譲につきましてでございますが、市町村の申出を受けまして、一つには農地転用許可制度等を基準に従って適正に運用すると認められることでございまして、二つ目には優良農地の確保に係る適切な目標を定めること等でございまして、この基準を満たすこと、それから、農地の確保に責任を持って取り組む市町村を指定することを基本に考えているということでございます。  また、権限移譲に当たりましては、優良農地の確保を図る観点から、先生懸念の許可基準の緩和は行わない、こういうこととしておりまして、全国知事会、全国市長会及び全国町村会においても、農地転用許可の権限移譲に当たって、法令の基準に従った適正な運用を徹底する旨の申合せを行っているところでございます。  さらに、今回の農業委員会法の改正でございますけれども、農業委員の選出方法につきましては、公選制から市町村長の任命制に変更することとなっておりますが、その選任に当たっては、委員の過半は認定農業者の中から選任され、農業経営に真剣に取り組む委員によって農地転用許可制度が運用されることから、慎重な審査が期待できるものと考えております。  地方分権一括法による農地法の改正及び今回の農業委員会法の改正でございますが、農地転用を促進するものではないと考えております。制度改正の趣旨、内容についても、地方公共団体への周知徹底を図ってまいりたい、このように考えております。
  35. 長峯誠

    長峯誠君 そのような対策をしっかり取っていただきたいと思いますが、一方で、こうやって農地転用の期待が高まると、これは農地バンクの運営に非常に支障が出てくるんじゃないかと思っております。農地バンクについては、新規集積面積は目標の五%だったということで、非常に反省点が多いんじゃないかなと思いますが、これがあたかも現場に問題があってこうなっているというような認識は、これは私は間違っているんじゃないかなというふうに思っております。目標設定が最初からやはり無理があったんではないかというふうに思います。  従来もこの農地バンクに似たような制度はずっと続けてきたんですね。農地保有合理化法人とかいろんな制度をつくっていろんな補助金を流しながら続けてきて、確かに日本の農地は、一戸当たりの耕地面積は少しずつですけれども着実に増えてきていたんです。今回の農地バンクで、今までやっていたのと全く異次元な増え方をすると考える方が無理があるんじゃないかなというふうに思っております。現金や動産と違って、農地というのはやっぱり流動性は低いものだという前提で考えなきゃいけないんじゃないかなと思います。  よくディベロッパーの例を出されますけれども、ディベロッパーが土地を買いに来るときは、一生遊んで暮らせるぐらいのお金を示してくれるんですよ。でも、農地は非常に安いです。安いし、自分がずっと耕してきたという愛着がありますから、その値段じゃ簡単に手放すという気にはならない。農地とはそういうものだという前提で、私はこの農地バンク、悪いとは言いませんけれども、これからも地道にじっくり適切な目標を掲げてやっていくべきなんじゃないかなというふうに思っています。  ここで、先ほどから言っている農業委員会改革と農地転用の権限移譲、これがまた農地バンクにマイナスに働かないかと。農地バンクに貸せば十年動かせませんから。それよりは、転用の期待があるならば貸すのはやめようという判断に農家がつながるんじゃないかということをお伺いをいたしたいと思います。  それからもう一点は、この転用の判断ですけれども、これから特定市町村については市町村ができるようになります。しかし、これはしっかりガイドラインでかっちり固めておかないとやっぱり緩くなってしまう。今まで国が判定すればボールと言っていたのが、市町村が判定するとストライクと、こうなってしまうという可能性が非常に高いんじゃないかなと思うので、かなり細かいガイドラインを策定していくべきと考えますが、その御答弁をいただきたいと思います。
  36. 小泉昭男

    ○副大臣小泉昭男君) 農地中間管理機構でございますが、この取組等によりまして、担い手への農地利用、この集積を進めるためには、先生指摘のとおり、その基盤となる効率的な農業生産が可能な集団的農地等の優良農地の確保を図ることが大変重要だと考えておりまして、今回の地方分権一括法による市町村への農地転用許可権限の移譲につきましても、農地転用許可制度等を基準に従って適切に運用すると認められること等の基準を満たす農地の確保に責任を持って取り組む市町村に限って、農林水産大臣が指定して行うものであると申し上げたところでございますが、また、この権限移譲に当たりまして、優良農地の確保を図る観点から、先ほども申し上げましたけれども、許可基準の緩和は行わないと、こういうことでございまして、このように今回の制度改正は優良農地の確保を図りながら地方分権を進めるものであり、今後とも農地中間管理機構による優良農地の担い手への農地利用の集積が図られるよう、農地転用許可制度の適切な運用の確保に努めてまいりたいと、こういうふうに考えております。  それともう一点でございますが、農地転用許可制度の適切な運用の確保を図るためには、事務を実施する地方自治体の担当者等の法令に対する理解を深めることが極めて重要でございますので、このため、地方分権改革による農地転用許可権限の移譲に際しましては、農林水産省といたしましては、一つには、農地転用許可基準の明確化を行うとともに担当者向けの研修の充実や事例集の作成を行うこと、そして二つ目には、許可権限の移譲に係る運用状況を重点的に把握し必要に応じ是正措置をとるよう求めていくことなどによりまして、地方自治体において農地転用許可制度の適切な運用が行われるように取り組んでまいりたい、このように考えております。
  37. 長峯誠

    長峯誠君 ありがとうございます。  ちょっと残りの時間は地元の課題についてお伺いさせていただきたいと思います。  今、実は、私の地元宮崎県では木材価格が非常に持ち直しをしてきているんですね。三つ理由がありまして、一つは、バイオマスの木材の需要が非常に高まっている。それからもう一つは、大きな木材企業が来ていただいて、そこが輸出を中心にどんどん材をひいていただいている。それからもう一つは、為替の関係で中国や韓国に木材が輸出できるようになったんです。これはもう本当に毎年すごいスピードで量が増えておりまして、そういった非常に需要がタイトになってきたおかげで価格が持ち直してきました。  しかし、問題点もありまして、これもまた三つございます。  一つは、苗木が不足しています。切ったはいいが植える苗がないということで、これは協議会をつくって対応をいたしていただいております。  それからもう一つは、畜産用のおがくずがなくなっちゃったんですね。畜産にとっては敷材のおがくずというのは非常に重要なんですけど、これが価格が上がって非常に畜産農家が困っているという情勢がありますが、これも農水省に今調査を掛けていただいておりまして、いろいろと対策を取っていただけるということでございます。  それから、非常に重要なのは、切った後植えない山が非常に増えてきているというのが大変な問題なんです。これはやっぱり、もう地主さんがよそにいるケースが非常に多いですし、また今後もその山を守っていこうという気持ちが非常に薄れていますから、もう切り捨て、切りっ放しでやってしまうという事例が非常に多くて、実際宮崎県の県央部、県南地域では、切った後に植えるのは四〇%しかないというふうにも言われております。非常に危機的な状況なんですね。  にもかかわらず、森林環境保全直接支援事業、これは造林等を支援する事業ですが、これ、昨年より予算が減っていると地元の方が言っているんですね。今こそ植えなきゃいけないのに何で予算が減っているんだという声が非常に出ております。これはどういう事情によるものなのか、ちょっとお伺いをしたいと思います。
  38. 今井敏

    政府参考人(今井敏君) お答えいたします。  先生から御指摘のありました森林環境保全直接支援事業、これは、森林所有者等が行います森林の保育、間伐、そして伐採後の植栽を支援するいわゆる公共事業でございます。その二十七年度の当初予算につきましては、前年度と同水準の金額が措置されたんですけれども、二十六年度補正が前年度よりも大幅に少ない額でございましたので、平成二十七年度の執行可能額というのが全国の都道府県からの要望額、宮崎県を含めまして下回る水準になったところでございます。公共事業がそのような事情にございましたので、二十六年度補正予算で同時に措置されました非公共の森林整備加速化・林業再生交付金、この中におきまして、若齢林における間伐ですとか森林作業道の整備に活用できるメニューというのをその非公共の事業の中に追加いたしまして、それを各都道府県に対しまして、公共事業と非公共の事業を組み合わせることにより県に配分いたしまして、それにより、実質的に各都道府県の要望に見合った予算が今年ぎりぎり確保、配分できたのではないかなというふうに考えております。  予算は非常に厳しい事情にはございますけれども、ただいま申し上げましたような非公共事業の工夫だとか、あとは、各県の森林の造成状況がどのような状況になっているのか、そういうことも見極めながら臨機応変に県とも連携しながら進めてまいりたいと考えております。
  39. 長峯誠

    長峯誠君 予算の問題と、もう一つ、実はこれ、どうしてそうなっているか原因がありまして、伐採届を出すんですよね。その伐採届をするときに、次これだけ植えますというふうに普通は書くんですが、その欄に天然更新と書いたら伐採届は通るんです。  天然更新というのは何かというと、自然のままほったらかしておいて自然林に戻しますという話なんですよ。ところが、そのままほったらかしたらあっという間につる性植物がそこを覆ってしまって、もう次、植えに行く、足を踏み入れようとしても、もう入れなくなっちゃうんですね。そのままつる性植物で光が遮られますから、なかなか大木の芽というのは生えてこない。いつまでたってもはげ山のままという状態になることが多いんです。そうしますと、一雨降るとその水は全部下流に流れていきますので、災害を引き起こすということですから、これ、後を植えないというのは、切ってすぐ植えないとなかなか難しいというのがございます。  ですから、私は、この天然更新自体を何らか規制をした方がいいんじゃないかなというふうな思いがあるんですが、御見解をお伺いしたいと思います。
  40. 今井敏

    政府参考人(今井敏君) 今、日本の森林全体が主伐期を迎えてきている中で、先生の御指摘にありましたように、森林資源の循環利用ですとか、森林の有する多面的機能の継続的な発揮、これを確保していくためには、森林を伐採した後に適切に森林の更新が行われるようにしていくということが非常に重要な課題であると認識しております。  これに対しましては制度面、予算面で対応しておりまして、まず、制度面におきましては、森林法に基づく市町村森林整備計画、この中におきまして、人工造林、天然更新、それぞれに関する基準を定めておりますし、その自然条件等の下で天然更新が期待できない森林に対しましては、法律の中で、植栽によらなければ適切な、適確な更新が困難な森林というのを設定するというような、そういう枠組みになっておりまして、これにより、伐採後の適切な更新が図られるように法制面では措置しております。  また、予算面におきましては、先ほど予算が足りないという御指摘もございましたけれども、森林所有者等が再造林を行う場合には、森林整備事業によりまして、国と都道府県を合わせて約七割の補助を実施するという予算を措置するとともに、造林に要する費用の低減を図るために、コンテナ苗を用いた低コスト造林技術の実証、普及ですとか、コンテナ苗の増産のための施設の整備への支援、こうしたものも予算上の措置として講じているところでございます。  ただ、先生の御指摘もございましたけれども、戦後造成された我が国の森林資源が本格的な利用期を迎えている中で、今後、全国各地で主伐が本格化すると見込まれます。そうした中で、主伐後の更新というのが適切に行われるようにしていくということが非常に重要な課題だと認識しております。  林野庁といたしましては、来年の夏に、五年ごとの森林・林業基本計画の見直しという作業にこれから入りますので、それの作業の中で、地域の実態も踏まえながら、様々な観点から検証、検討を進めてまいりたいと考えております。
  41. 長峯誠

    長峯誠君 同じく予算の話なんですが、有害鳥獣対策です。  これは、十年間で鹿とイノシシを半減にするという大変意欲的な目標を掲げられて、これはすばらしいなと期待していました。ですから予算も大幅に増額するんだろうなと思っていましたが、実際にはそうでもないと。しかも、十年後に頭数を半減にしようと思ったら、今の捕獲頭数の二・二倍のペースで捕獲をしていかないと十年後に半分にはならないというふうに研究が出ております。ですから、これ本当に増額していかないと、今のまま横ばいですと、むしろ頭数は増えていくんじゃないか。現場皆さんの感覚を見ても、去年より今年は鹿は増えているとおっしゃるんですね。  ですから、これをしっかり予算を確保して、どのように十年後までに半減させるという目標を達成させていくのか、お伺いしたいと存じます。
  42. 松島浩道

    政府参考人(松島浩道君) 有害鳥獣の被害防止につきましては、鳥獣被害防止総合対策交付金というのがございまして、これによりまして、侵入防止柵や食肉加工施設の整備に対する支援ですとか、それから捕獲への直接支援、一頭八千円とか、そういったものについて支援を行ってございます。  予算額につきましては、平成二十七年度当初予算で九十五億円ということで、前年同額でございます。この二十七年度予算の配分に当たりましては、全国的に予算額を大幅に上回る要望がございまして、それぞれ配分基準に従って配分を行いました結果、結果的に要望どおりの金額となっていない場合があるというふうに考えてございます。  この鳥獣被害防止対策につきましては喫緊の課題であるというふうに我々考えておりまして、二十八年度におきましても、地域の実情を踏まえて必要な予算の確保に努めてまいりたいと考えてございます。  しかしながら、この今申し上げました交付金以外にも、都道府県が負担しました捕獲経費につきましては、鳥獣特措法に基づく被害防止計画を作成していただきますと、その八割が特別交付税の対象になると。また、都道府県が行いますイノシシや鹿の捕獲事業を支援するための環境省の予算が二十六年度補正予算で十三億円、二十七年度当初予算で五億円措置してございます。こういった他の事業もうまく組み合わせていただきながら、しっかり効率的、効果的な鳥獣対策が講じられるよう考えてまいりたいと思います。  済みません、先ほど言い間違えましたが、捕獲経費につきまして、市町村が負担した捕獲経費については特別交付税の対象になるということでございます。  こういった様々な予算がございますので、繰り返しになりますけれども、現場でこれをうまく活用していただくことが、先ほど先生から御指摘ございました捕獲目標を達成するために必要なことではないかと考えているところでございます。
  43. 長峯誠

    長峯誠君 やっぱり全国から要望が強いということですので、しっかり応えられるように頑張っていただきたいと思います。  最後に、技能実習制度、これ、改正案が今、国会に提出されているんですが、三年を五年にする、それから実習生の保護を強化していくというような趣旨で提案をされております。  この中で、水産業の実習生についてでございます。これ、従来は労働基準法の適用除外ということで対応されていたんですが、今度、新しい法律が通って、その省令の中では、基本的には労基法でやっていくというようなことが書かれているんですね。  ところが、水産の場合は、沖に出て網を揚げている途中に、はい、労働時間が終わりましたのでやめたというわけにはこれはいかないわけです。非常に特殊な労働形態を取っておりますので、この水産業の特例的な取扱いは是非とも継続していただかなければならない。そうでないと、もう現場の水産は回っていかないぐらいの状況になっているので、そこは是非ともそういう取組をしていただきたいと思いますが、答弁をいただきたいと思います。
  44. 中山峰孝

    政府参考人(中山峰孝君) 技能実習制度につきましては、残念ながら、不正行為、違反行為が多数発生いたしまして、国内外からいろいろ批判を受けているところでございます。その批判を踏まえまして、国際貢献という制度趣旨を徹底し、管理監督体制を強化を図るための法律、外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律案を提出したところでございます。この法案におきまして実習生が適正に技能を習得できる環境の確保を徹底するための規定を盛り込んでおりまして、具体的には、この法案が成立した場合に省令で規定するとしているところでございます。  先生の御指摘にありました漁業分野におきましても、適正な技能習得の環境が確保されるよう、法務省、水産庁等の関係省庁と連携し、適切に対応していく所存でございます。
  45. 長峯誠

    長峯誠君 以上で終わります。
  46. 山田俊男

    委員長山田俊男君) 午後一時に再開することとし、休憩いたします。    午前十一時四十分休憩      ─────・─────    午後一時開会
  47. 山田俊男

    委員長山田俊男君) ただいまから農林水産委員会を再開いたします。  委員異動について御報告申し上げます。  本日、野田国義君が委員辞任され、その補欠として石上俊雄君が選任されました。     ─────────────
  48. 山田俊男

    委員長山田俊男君) 休憩前に引き続き、農業協同組合法等の一部を改正する等の法律案を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  49. 徳永エリ

    徳永エリ君 皆さん、お疲れさまでございます。民主党・新緑風会の徳永エリでございます。  郡司先輩が今日は八十分間農協法の御質問をするということでございますが、その前に、時間がありませんが、TPPについて質問を二十分間させていただきたいと思います。  私は、先週この委員会が終わった後に、TPPハワイ交渉会合が行われておりますマウイ島に飛びました。二泊四日という日焼けをする時間もないようなスケジュールでございましたけれども、現地では、これまでも交流があったNGOの方々や市民団体の方々と意見交換ができましたし、また、衆議院の自民党の農林水産委員会の理事の先生方ともゆっくりと意見交換をすることができまして、大変有意義でありました。そして、やっぱり何よりも大切なのは、現場に行って、交渉の雰囲気、空気を感じるということだと思っております。  そして、もっと良かったことは、このTPPハワイ交渉会合が大筋合意しなかったということであります。いろいろ理由は言われておりますけれども、オーストラリアのロブ貿易相が、TPP交渉はもう九八%大体交渉は終わっているというような発言をなさっております。また、二十一分野三十一章のうち、二十二章がもう終わって、あと九章残っているというような話もあります。  まずは、澁谷議官、大変お疲れだと思います。まとめるつもりで行かれたわけでありますから、ちょっと気抜けをしたというか、私も三十一日の朝、交渉会合が行われておりますウェスティンマウイの入口のロビーのところで、澁谷議官が閣僚会合を終わった後に疲れ切った様子でマスコミに囲まれているところの輪の中に入って話を聞いておりましたので、本当にお疲れさまでございます。  まずは、このTPPの今回の進捗状況と、そして、どうして大筋合意に至らなかったのか、その点についてお伺いしたいと思います。
  50. 澁谷和久

    政府参考人澁谷和久君) お答え申し上げます。  今、先生御紹介いただきましたように、七月の現地時間の二十八日から三十一日まで、四日間でございますが、ハワイのマウイ島で閣僚会合が行われました。大きく進んだところ、動かなかったところございます。大きく進んだところでございますが、ルールの分野でございます。  今回、閣僚会合が行われておりましたが、並行して、各分野のワーキンググループ、各分野の交渉官、未解決の課題を残している各分野の交渉官が夜通し並行してホテル内で協議を重ねておりまして、鶴岡首席交渉官の下には夜中の二時、三時に、この分野は今実質終了しましたといったような連絡が続々と入るという、そういう状況でございました。物品貿易のテキスト、投資のテキスト、金融サービスのテキストなどこれまで未決着の課題が残されていたものについて、実質的に、いわゆるテキストの交渉が収束するということでございます。  先ほど三十一のチャプターという御紹介がございましたが、今、TPPの協定案は、章の数、チャプターの数でいいますと三十一で構成されております。そのうち前文と最終規定はまだできておりません。この二つを除いた二十九のチャプターの中で、現時点でまだ交渉が一部続いているものは四つぐらいでございます。ただ、その四つのうちの三つぐらいは多分そんな遠からず、数週間とかそういうレベル決着する見通しが付いているものでございます。残りが知的財産であります。  この知的財産につきましても、医薬品の問題を除いては、多くの課題がかなり整理されたということでございます。知的財産は、細かいものまで数えますと相当な課題が残っていたわけでございますが、一番大きな医薬品の問題以外は、かなりその論点が整理されたということでございます。ここが大きく進んだ点ではないかと思います。それから、物品の市場アクセスにつきましても、我が国、これはアメリカ以外の国が主でございますが、鉱工業品についての交渉でかなり進展を見たところでございます。  しかしながら、進まなかったところがございまして、先ほど申しました知的財産の分野の一部、これがなかなか難航をしている課題でございます。それから、物品市場アクセスの中の、一部の国が特定の産品についてどの国とも厳しい交渉をしているということで余りうまくいかないと、こういうようなことが見受けられたところでございます。結果として、我が国の農産品についての交渉も、ハワイでは余り大きな動きがなかったという形になっているところでございます。  残された課題は相当絞り込まれておりますので、今申し上げたところが大きなネックになって今回合意に至らなかったということだと思いますが、残された課題が絞り込まれているということで、これを引き続き、まず各国が国内でよくもう一回論点を再調整した上で事務折衝を再開をして次の閣僚会議につなげていくと、そういうことになろうかと思います。
  51. 徳永エリ

    徳永エリ君 ある国、一部の国、某国、いろいろと言われておりますけれども、ニュージーランドのことだと思うんですね。ニュージーランドが乳製品で過大な要求をして、結果、妥協点が見出せなかったということで、報道ぶりでもニュージーランドを悪者にしているような報道がありますけれども、ニュージーランドは全輸出額の約三〇%を酪農製品が占めていて、酪農が国を支えているから、TPPで米国や日本、それからカナダに対してもっと市場を拡大していきたいと、ハイレベル、強い姿勢で臨んでいて、決して妥協しないということであります。  また、医薬品の話がありましたけれども、オーストラリアやマレーシアなどの新興国、こういったところは、やはり国民の命や健康を守るために医薬品の新薬のデータの保護期間、この延長は絶対してはならないということで頑張っているということであります。  そして、閣僚会合、三十一日朝ありましたけれども、ここではメキシコの話を聞いておりまして、メキシコが自動車部品の原産地規制、ROOの話をし出して、甘利さんともう口も利かないような状態になったというような話も聞いておりますけれども、こういう話を聞きますと、各国、国益とは何なのか、自国は何を攻めて何を守るのかという姿勢が大変に明確なんですね。その割には、日本は相変わらず守るべき国益というのは一体何なのか、何を攻めて何を守っているかということが全く分かりません。  そこで、改めてお伺いいたしますが、日本にとっての国益、そして何が攻めるもので何が守るものなのか、お答えいただきたいと思います。
  52. 澁谷和久

    政府参考人澁谷和久君) 昨年十一月の北京の会合の後の記者会見で甘利大臣は、我が国としてどうしても守りたいものを守り、どうしても取りたいものを取ると、そういう交渉をしているというふうに申し上げたところでございます。  今朝のある会合で甘利大臣は、衆参の農水委員会の決議があったからこそ、その決議が後ろ盾になってここまで交渉を頑張ってきたという発言をされておりました。  日本が守るべきものは、各国、参加国全てが知っているところでございます。その上で、我が国として、鉱工業品については全ての国に完全な撤廃を求めているということでございます。また、ルールの分野について、我が国の中堅、中小企業を含めて新しい海外展開をして、それが地域にも活性化をもたらすような、そういう新しいルール作り、各国の規制緩和を含めてこれを強く求めているところでございます。
  53. 徳永エリ

    徳永エリ君 相変わらず抽象的なので、他国と比べて明確ではないという印象を受けます。  TPPに日本が参加するときに、アメリカに前払をしたあのときから、印象としてはずっと日本は譲り続けているという印象があります。  衆参の農林水産委員会の決議のお話がありましたけれども、先ほど野村委員からもお話もありましたけれども、新聞に出ている農業関連の数字等々、これ、ほとんど、今交渉がもしほとんどまとまっているとすれば、数字に大きな違いはないと思うんですね。  牛肉、三八・五%の関税を十五年目に九%に、セーフガードは三十五万トン、発動しても一八%まで。豚肉は、一キロ四百八十二円の従量税を十年目に五十円に、従価税は十年目に撤廃、セーフガードは十五万トン、十二年目に撤廃。それから米は、米国産七万トン、オーストラリア産八千四百トンを上限に輸入義務のないSBSでやると。そして、ニュージーランドが強く求めている乳製品カレントアクセス枠の拡大、そして最近になって麦のマークアップの削減とか、それから国有企業の分野で、ALICですね、農畜産業振興機構の価格安定資金事業もけしからぬというような話が交渉の場で出ているということも聞こえてきました。さらには、砂糖も、加糖調製品の輸入量が増えれば国内糖への大きな影響というのは否めないと思います。  これで、この報道ぶりがもし間違いでなければ、どうして八項目の衆参農林水産委員会国会決議を守った、農産物の重要五品目を守ったと評価させようというのか、全く理解ができません。  そこで、林大臣、仮に報道されているこうした数字が事実であるとしたら、どのようにして国会決議を守ったと説明なさるんでしょうか、お伺いいたします。
  54. 林芳正

    ○国務大臣(林芳正君) 今お話がありましたように、様々な報道がなされているということは私も承知をしておりますが、交渉の具体的な中身についてはコメントができないことを御理解をいただきたいと思います。TPP交渉は全体をパッケージで交渉しておりますので、今回大筋合意に至らなかったということでありますから、どの品目についても確定しているものはないと、こういうことでございます。  厳しい交渉が続くと、こういうふうに思いますけれども、今触れていただいた衆参両院の農林水産委員会決議、これを守られたと評価をいただけるように、政府一体となって交渉に全力を尽くしていきたいと、そういうふうに考えております。
  55. 徳永エリ

    徳永エリ君 澁谷議官は、今まで報道にこういった数字が出ますと、何度も私は誤報ですという話を聞いてきました。今私がお話ししたこの数字に関しても、誤報だとはっきり明言できますか。
  56. 澁谷和久

    政府参考人澁谷和久君) 先週、物すごい量の報道がなされたということ、大変申し訳ないんですけど、私はずっと交渉現場におりまして、ほとんどその日本の記事を見る暇がなくて、逆に現地にいる記者の方からこういう報道があるけれどもというのを聞いた次第であります。  百四十名の日本人記者団が現地に行っておりまして、もう私どもの交渉団をはるかに凌駕するものでございます。毎日、二回、三回と記事を現場から送らなければいけないというオブリゲーションを負っているという中で、どこかの社が書いたものをそのまま皆それを引用するような形でどんどん書いて、結果としてどの社も同じような内容の記事をほぼ全社が書くというような事態になっているということの繰り返しだったような気がしております。記事の内容も、一見数字が出ているようですけれども、という方向で調整するのではないかといったような、語尾が私から誤報と言われないような上手な言い方になっているようでございます。  逐一私が何が誤報でということはなかなか申し上げにくい状況でございますが、いずれにしても、先ほど林大臣がお話しされたとおり、交渉というのは最後の段階で全てが決着するものでございます。現時点で、これはもう完全に合意しましたという形で、じゃ次に行きましょうという、そういう交渉が行われているということではないことは改めて申し上げたいと思います。
  57. 徳永エリ

    徳永エリ君 三十一日に、甘利大臣の単独記者会見の後に、業界団体向けの報告会の場で、自民党のTPP対策委員会の森山委員長、それから戦略調査会の西川会長はTPPに大筋合意した場合の国内対策の検討と予算編成について言及されました。交渉内容が具体的に分からない中で、どうしてその国内対策を万全に期することができるのかということが大変疑問であります。  そろそろ情報を出してどんな影響があるかということをきちんと検討していかないと、とてもじゃないけど国内対策はできないと思いますが、情報の出し方について今後検討するおつもりはございますでしょうか、お伺いいたします。
  58. 澁谷和久

    政府参考人澁谷和久君) 現地でステークホルダーへの説明会をやらせていただきましたが、もう一回やってほしいというリクエストがありましたが、大筋合意が仮になされた場合は丁寧な説明をいたしますというふうにお答え申し上げましたが、合意がなされなかったものですので、今後、現在の状況を踏まえて何ができるか、また考えていきたいと思います。
  59. 徳永エリ

    徳永エリ君 ということは、大筋合意していれば、ある程度数字的なものも出せたということですよね。いかがですか。
  60. 澁谷和久

    政府参考人澁谷和久君) 大筋合意をすれば、その合意内容については丁寧に御説明をするというように考えておりました。
  61. 徳永エリ

    徳永エリ君 そして、甘利大臣は三十一日の単独記者会見の中で、次の会合が持たれれば決着できる自信があるとおっしゃっています。しかし、私は、対立している国との間の溝はそう簡単には埋まらないと思っています。  十二か国の閣僚の記者会見を拝見いたしまして、フロマン氏と甘利さんの関係がすごく近いというか、蜜月ぶりというイメージがあって、二人対ほかの国というような印象を受けました。そして、甘利大臣は、フロマン氏の言いづらいことを代わりに言っているのではないかとさえ感じる部分があったんですね。元々P4を主導していたニュージーランドを悪者にしたりとか、また以前はカナダを外すというような話をしたり、それから対立する国に対して、腹をくくらせる、頭を冷やせ、何が適切か自覚しろなど挑発的な言葉を繰り返しておられました。こういうことをおっしゃっておられては、敵をつくるばかりだと思うんですね。  さらに、次の日程は確定しておりませんけれども、今月末のマレーシアでのASEAN経済相会議の場でTPP閣僚会合を開くことを目指さなければ、十月にはカナダの総選挙、来年は米国大統領選挙、オーストラリアでも連邦総選挙が行われますから、大筋合意は、それぞれの国の選挙への影響も考えるとますます難しくなっていくと思いますが、ASEANまであと二、三週間というスケジュールの中で、果たして対立している国との溝が埋まるとお考えでしょうか、お伺いいたします。
  62. 澁谷和久

    政府参考人澁谷和久君) 残された論点は、そのハワイの会合の前に比べればかなり絞り込まれておるのは事実でございます。各国がそれぞれ持ち帰りまして、何とか八月末までにそれをよく整理できるようにというところが、各国が共通で持ち帰った宿題でございます。  実際に本当に八月末に閣僚会議が開かれるかどうかというのは、各国の調整状況次第だというふうに思っております。
  63. 徳永エリ

    徳永エリ君 時間がなくなってまいりましたので、これを今日はどうしても確認をしたかったんですけれども、TPPが大筋合意できなかった場合、仮に漂流した場合ですね、今まで二国間のバイ、二国間の日米の並行協議を続けてまいりました。日米の並行協議は、日本がTPPに参加したときから始まって、妥結したら終わるというふうに認識しています。  合意事項はTPPが発効した時点で効力を持つという理解でありますが、TPPが漂流をするということに仮になれば、二国間も履行されることはないという理解でよろしいでしょうか。
  64. 澁谷和久

    政府参考人澁谷和久君) 漂流の定義がよく分からないわけでありますけれども、TPPが合意をして発効するということを前提に、外務省の方で今は二国間の並行協議を進めているというふうに理解をしているところでございます。
  65. 徳永エリ

    徳永エリ君 もう一度確認しますが、漂流というか空白期間というか、妥結しないということになると思いますけれども、その場合に、もう日米の二国間はまとまっているから、じゃこれは実行しますよ、TPPとは別ですよということにはなりませんね。
  66. 澁谷和久

    政府参考人澁谷和久君) 外務省の所管でございますので、私の方から確たる形で申し上げにくいところがございますが、私の理解では、TPPの合意がないときに、並行協議だけ先に効力を有するということは想定をしていないということでございます。
  67. 徳永エリ

    徳永エリ君 重ねてお伺いいたしますけれども、農産物の関税に関しても、バイの合意事項だけ効力を持つということはないということでよろしいですか。
  68. 澁谷和久

    政府参考人澁谷和久君) TPPは多国間の協議でございます。TPP全体の合意が前提だということでございます。
  69. 徳永エリ

    徳永エリ君 これをすごくみんな心配しているんですね。万が一にもTPPが大筋合意できなかったとしても、もう日米の間で随分いろんなことを決めてしまって、もう日米はまとまっているんだから、TPPが大筋合意しなくても、日米の間で決まったことはこれはもうやってしまおうということになるのではないかと。農業関係の業界団体の方も皆さん心配しておられますし、今日は北海道から酪農家、畜産家の方々が大勢いらっしゃっておりますけれども、皆さんも同じように、半ば諦めぎみに、TPPが駄目でも日米やっちゃうだろうなというようなことをおっしゃっているんですね。  今、澁谷議官のお話では、TPPが妥結しない限りは二国間の並行協議だけ実行するということはないということだったと思いますが、もう一回伺います、それでよろしいですね。
  70. 澁谷和久

    政府参考人澁谷和久君) 繰り返しですが、外務省の所管でございますので、私の方から確たる政府としての答弁を申し上げることはできませんが、私自身は先ほど私が答弁したように理解しているということでございます。
  71. 徳永エリ

    徳永エリ君 時間になりましたけれども、本来、貿易の自由化というのは、WTOを通して多国間で無差別平等の原則に基づいて進められるべきものなんですが、TPP、どう見ても、ある国の一部の企業の利益の拡大のために対立を続けているという印象を受けます。決して無差別平等という原則に沿っているとは思えないと思います。  経済のためにも雇用のためにも、日本がTPPに参加することは非常に重要であるというふうにおっしゃっておりますけれども、企業は大きな利益を得るかもしれませんけれども、国民の暮らしを考えたときには余りにも失うものが大き過ぎると思います。  国会決議にも、もし今報道されているような数字でまとまっているのだとすれば、これは完全に反している、国会決議違反だと思いますので、万が一TPPが大筋合意することがあっても、国会では絶対にこれを批准してはならないと、そのことを申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。  ありがとうございます。
  72. 郡司彰

    ○郡司彰君 民主党の郡司でございます。  今日は、農協法の審議ということで質問をさせていただきたいなというふうに思います。大臣の方から法律案の提案理由説明を受けました。そのときの紙をカッターで切り取りましてお持ちをしておりますので、この内容に沿ってお聞きをしたいなというふうに思っております。  まず、一枚目のところにございます、農業協同組合が事業を行うに当たって農業所得の増大に最大限の配慮をしなければならないというようなことについてお話を伺いたいというふうに思っております。  衆議院で私どもは、この法案に対して結果としては反対の立場を取らせていただきました。対案も出させていただきましたが、残念ながら、そちらの方は成立ということにはなりませんでした。  その前後をして、直接は関係ないというような立場になるんだというふうに思いますが、日本再興戦略の改訂版二〇一五が六月の三十日に閣議決定をされております。この中におきまして、表現は若干違いますけれども、農林水産業、医療・介護、観光産業の基幹産業化を行っていくということで、稼ぐ力を強化をする、経営マインドを持つ、そして攻めの経営を実践をしていくと、このような表現がございます。  また、農業に関していいますと、KPIのところで幾つかの点が挙げられていて、これは同じでありますけれども、担い手の米の生産コスト、現状の全国平均比を四割削減をするとか、あるいは十年間で法人を五万法人に、四倍にすると。あるいはまた、二〇二〇年に六次産業化の規模を十兆円にする等々が書いてありまして、施策の主な進捗状況では、農業協同組合法等の一部を改正する等の法律案を四月に国会に提出をしたと、これが大きな進捗だというような書き方がしてあります。  したがって、不可分かもしれませんが密接な内容であるなというような理解からお尋ねをいたしますが、ここに書いてあります稼ぐ力というのは、これは主体としてはどういうところが主体ということになるのでありましょうか。例えば生産者であるとか法人であるとか、あるいは地域全体、農村ということなのか、あるいはまた企業ということもあるやもしれません。この稼ぐ力というものはどのような理解をすればよろしいか、お答えいただきたいと思います。
  73. 荒川隆

    政府参考人(荒川隆君) お答え申し上げます。  今先生指摘ございました日本再興戦略において、稼ぐ力の強化という表現がございます。今先生からもお話ございましたように、これは農業だけではなくて分野横断的に大きなテーマ一つということになっております。中堅、中小企業、医療・介護、観光業と同じく、農林水産業につきましてもこの稼ぐ力を強化していくということが記述されておるわけでございます。  特に、農政につきましては、農林水産業を成長産業化をしていく、その中で農業者の所得の向上を図っていくというようなことで、活力創造プランなどで決められた一連の農政改革を着実に実施をしていくと、そういうことで新たな需要フロンティアを取り込みながら施策の深化を図るといったような記述になっておるところでございます。したがいまして、この分野横断的に使われております稼ぐ力という部分につきましては、私ども農政につきましては、農林水産業の成長産業化を進めていくということで理解をしておるところでございます。  したがいまして、この農林水産業の成長産業化につきましては、従来の農政改革でずっと一貫して申し上げておりますけれども、需要フロンティアの拡大ということと、それから付加価値を向上するためのバリューチェーンの構築と、それから生産現場を強くするということで、コスト削減といったようなことを併せて進めることによりまして、経営感覚を持った自らの判断で消費者や実需者のニーズの変化に対応できるチャレンジする農業経営者が活躍できる環境整備に取り組んでいるということでございます。  誰がという部分につきましては、当然、農業所得のところにつきましては、農業者の方々がいろいろな創意工夫をしてやっていただくということになりますし、また、六次産業化を進めて、従来、川中、川下の方々の所得になっておる部分につきましても、農業者がそういった方々のところに進出をいたしまして川中、川下の売上げ、所得というものにチャレンジをしていくという意味で、いろいろな形のものがあるのではないかと認識をしておるところでございます。
  74. 郡司彰

    ○郡司彰君 以前にも、農家の所得を倍増するんだと、実際にはどういうことなんだと聞くと、生産額が上がる、それから六次産業で地域の方にもこれだけのものが増える、結果としては倍増するんだと。農家の方からすると、実際に私たちの手取りが増えるということに即ならないんだなというような思いを持った方があるわけでありまして、この稼ぐというのも、今おっしゃった答弁、大体予測をされているような答弁をいただいたなというふうに思っております。  もうちょっと分かりやすく例示的にということでお話をしておきましたが、例えば五百円で売っている弁当だとすると、原材料が幾らぐらい、それから加工をしたり、流通とか小売とかというようなところで今どのぐらいの配分で例えば八十何兆円の最後の市場になっている。今回、稼ぐ力というときには、例えば農業でいうと、その生産者のところ、法人でも何でも結構ですけれども、五百円のうち幾らがどれだけになるんだというようなことでいうと、どういうことになるんでありましょうか。
  75. 荒川隆

    政府参考人(荒川隆君) お答え申し上げます。  実際に、農業所得の増大なり六次産業化を通じた農村地域の所得を上げていくということについて、その具体的なイメージがなかなか湧きにくいという御指摘でございます。  私ども、今回の基本計画の中で農業経営の展望というものを策定しておりまして、具体的なイメージが湧くような形で、ミクロでの道筋ということで、農業経営モデルにつきましては地域営農類型別に三十五類型、それから、六次産業化の関連所得につきましては二十の取組事例といったものをイメージをさせていただいておるところでございます。  今先生おっしゃいましたように、八兆円、三兆円が八十兆円に対してどうなるのかということについて今具体の数字を、申し上げる数字は持っておりませんけれども、その所得の向上のイメージで申し上げますれば、農業所得の部分二・九兆円が十年後の三十七年度にはマクロで三・五兆円に積み上げていくと。それから、農村関連所得につきましては、二十五年ベースで一・二兆円のものが三十七年で四・五兆円を目指していくというような絵を描いておるところでございます。
  76. 郡司彰

    ○郡司彰君 基幹産業の一つとして農業を目指すために今回の農協法改正も寄与するんですよというような組み方になっているわけですね。そうすると、これからまたちょっと質問をいたしますけれども、今までの農業とか生産者というものは、例えば労働時間とか労働単価とか、それからいろんなことが個人の、何というんでしょう、生活と密接不可分でそれこそあったわけですよ。  しかし、就農してください、ここに職として農という場所があるんですよということを目指すとするならば、その辺は一定数量化をしたり客観的なものが出てこないと、それはなかなか、人が集まってくれました、結果としては余りそこに雇用が生まれていませんということになるんだろうというふうに思うんですね。  そういう意味でお話を申し上げましたが、最初のところで言っていたように、例えば作る、加工をする、流通、販売まで六次産業化で一生懸命全部やってしまえば、五百円全部それは地域も含めて生産者の手取りになるんですよということもあるんだと思いますよね。米の値段を、コストを四割削減すれば、今二百円で五百円のうちの弁当を賄っているけれども、その二百円というところがコストダウンによってこれだけ下がるというような、そういうものを一定程度本気で農水省もやらなければいけない時代が、年齢をいつもおっしゃっていますけれども、来ているんだろうと思います。  その次に、これ、農業構造の展望というのを山田議員もよく使っておりますけれども、私もよく見ておりますが、ここでいうと、土地利用型は全体で三十万ぐらいになりますよ、土地利用型以外のこれは野菜、果樹、畜産というものを含めて六十万ぐらいですよと、こういうようなことになってきているわけであります。  もちろん、この九十万だけではなくて、そこに属さない自給的な農家というものがこれは意外と数はまだ多く残るということもあり得るわけでありますから、こういうような構造展望の中で、そんなこと今予測はしていないというようなこともあろうかと思いますが、例えば現在の雇用の労働者というのは、農水省がいつも出している基本データでいうと大体十四万人ぐらい、これは常雇用ですね。それから、臨時の雇いというのが二百八万人、外国人が一・八万人というような今現在の数字というのが、年度は少し古くなりますけれども出ております。  これ、十年後の予測というのは、それぞれ常雇用、臨時雇い、外国人というのはどのぐらいの数を予想されているんでしょうか。
  77. 奥原正明

    政府参考人奥原正明君) 農業構造展望の関係でございます。今年の三月に閣議決定をいたしました食料・農業・農村基本計画の農業構造の展望におきましては、十年後に現在と同程度の農業生産を維持するのに必要な農業就業者、この農業就業者といいますのは、基幹的農業従事者に常雇い、これを加えたものでございます。これの数を少なくとも九十万人程度は必要ではないかという試算を出しております。  一方で、これまでの趨勢を基に、十年後の農業就業者数、これを試算をいたしますと、六十代以下で約八十七万人というふうに見通されるところでございまして、この六十代以下の方で先ほどの九十万人以上、これを確保するためには、今後若い農業者の方、新規就農者が定着ベースで毎年一万人ではなくて二万人程度に増えていくということが必要であるというふうに考えております。  このように、農業構造の展望におきましては、基幹的農業従事者とそれから常雇い、これを合わせました農業就業者全体の数を農業労働力として見通しているということでございます。ここで臨時雇いにつきましては、必ずしも主として農業に従事をしているとは言えないことから、ここの農業就業者には含めておりません。それから一方で、外国人の技能実習生、これにつきましては、雇用契約がきちんと結ばれますので、この常雇いの中にカウントしているということでございますが、この常雇いと外国人のそれぞれを区分した試算というのは行っておりません。
  78. 郡司彰

    ○郡司彰君 いろいろ関連をしてまいります。例えば農協というようなことからすると、農家の方々がどのぐらいいるのか、今農協の職員の方がどのぐらいいるのかというようなことの基本的な概念の数字にもなってくるわけでありますけれども、その議論はちょっとまた後ほどにいたしまして、今言いましたその常雇い、あるいは外国人の方々に限ってでも結構でございますけれども、一般的な意味で農業に従事をする方、これは雇用をされる方というようなことで結構でございますけれども、どのぐらいの一時間当たりの支払額、あるいはまた平均の一日の労働時間、平均月収、年収、社会保険の有無などについての基礎的なデータはございますでしょうか。
  79. 奥原正明

    政府参考人奥原正明君) この雇用就農というものを考えますと、そのときにやっぱりこの雇用の条件、これが明確になっていることが極めて重要だというふうに考えております。特に、これから青年新規就農者の三割がこの法人等に雇用される形での就農になっておりまして、非常に重要な就農ルートでございますから、こちらの方の就農者を増やしていくという観点からはこういうことが非常に大事だと思っておりまして、農業法人と就農希望者とのマッチングを行う就農相談会、新・農業人フェアと言っておりますが、こういうものを開催しておりますけれども、その際には農業法人の雇用条件を分かりやすく示すように、就農希望者へのパンフレット等に、法人ごとですけれども、農業法人ごとの労働時間あるいは賃金、それから労災保険等の雇用条件、これを具体的に示すことにしているところでございます。  それから、このほか農業法人の就業環境の整備を図るという観点におきまして、厚生労働省とも連携をいたしまして、労働条件に関する制度ですとか基準、あるいは労働保険の制度等を整理をした啓発パンフレットを作成、配付するとか、それから農の雇用事業におきましても、雇用保険あるいは労災保険等に加入している法人等を支援すると、こういったことにしているわけでございます。  今後とも、こういう形で法人における雇用就農の促進に努めてまいりたいと考えております。
  80. 郡司彰

    ○郡司彰君 ちょっと細かいことを一つ一つお聞きをしますが、最賃が今度十八円平均で引き上げられ、東京なんかだと労働単価が九百円ぐらいになるというようなことでございますけれども、これまで農水省で、農に関わる雇用で地域最賃がこういうものがありますよ、こういうことをきちんと守ってくださいねというような通達等は出されたことはあるんでしょうか。
  81. 奥原正明

    政府参考人奥原正明君) ちょっと正確に記憶しておりませんが、この最低賃金の制度につきましては農業法人協会等におきましても相当関心を持っておりますので、その場でのいろんな形での周知徹底が図られているというふうに考えております。
  82. 郡司彰

    ○郡司彰君 先ほどありました新・農業人フェア、いろいろな冊子というか中身がありまして、よく来てくれましたね、アンケートにお答えください、こういうような就農した人の実例がありますよ、もしこういうところに勤めるならばというような、大変にきめ細かいことをやっております。  私はこれは大変いいことだというふうに思っているんですが、ただ、若干、基本計画の中にモデルの類型をきちんと出すようになりました。うろ覚えですけれども、例えば花を作る人たちは収入高いんですよ。しかし、労働時間も圧倒的に長いんですね。お米の人は所得が少ないようになっているけれども、労働時間もほとんどほかの産業に比べれば、簡単に言うと兼業でもできるような平均的な労働時間になるかもしれない。  だとすると、農業という場合の産業として成り立つような形の場合、そのいろんな意味でのプラットホームをつくっていくような必要があると思うんですけれども、これはもう林大臣なんかが本来は一番詳しいところかもしれませんけれども、どういうふうにすれば、農業というだけではなくて、農業の中のこの分野、この分野、この分野だと、こんな仕事の内容で、こんな金額で、休みが取れるか取れないかとかというものが、それがないんですよね。これで、来た人がたまたま座ったところにいる人が酪農をされていた、たまたま座ったところの人が花を作っていた。聞くところによって全然違うなと。でも、親切だったな。この最後の親切だったのが本当は一番の違いでありまして、どこに住んで、所得だけではなくて、人間として生活をする上での別な意味の豊かさというものは、農業とかというものは、田舎に暮らすこと自体も含めて多くあるんですよと。だけど、それはなかなか金銭的な評価というものは難しいけれども、金銭とか数字に置き換えるものはこういうものがきちんとありますよ、だからそれをきちんと調べて自分に合ったような産業としての農業をというような形の、私は正直言って取組が非常に希薄だと思うんですよ。希薄なんだけれども、農協法改正して、稼ぐ力、基幹産業にするんだと。私は正直言って、ここのところのギャップがある間は誰も信用しない。  先ほどから言うように、立法事実として所得が本当に上がるんですか、あるいは農協が何か監査をしていて悪いことがあったんですか、具体的なものはどうなんですかと言うと途端に何か形而上学的なような話しぶりになってしまって、具体的なものがないというのが、私は今回の法案も、正直言って余り信用できない。本当に新しい人を農業のところに勤めていただくというようなことであれば、相応したものをやはりきちんと、何というんでしょうね、農水省全体として行うべきだというふうに思いますけれども、それに対してお考えがあればお聞かせください。
  83. 奥原正明

    政府参考人奥原正明君) 採用するときに、できるだけ作物の種類ごとに、こういうパターンであればこのぐらいの労働時間、このぐらいの収入、こういうのが明確になっていると、そこに就職しようとする方からするとすごく便利だなという気はいたしますが、ただ、農業法人等の実態を見ましても、それぞれの経営は本当にまちまちでございます。単一の作物だけでやっている場合もありますし、複合的にやっている場合もあります。それから、例えば米だけをやっている場合につきましても、生産で終わっているだけのところと、販売、加工まで取り組んでいるところとありますので、それはやはり経営ごとに労働の条件、そういうものについてはかなり違ってくるんだろうと思います。  先ほどお示しいただきました新・農業人フェアのところで労働条件、それぞれの経営者の方から示されておりますけれども、一般の企業の就職におきましても大体この程度の労働条件の提示ではないかなというふうに思われますので、更に精緻になればなった方がいいとは思っておりますけれども、このぐらいが現実的なところではないかなというふうに正直思っております。
  84. 郡司彰

    ○郡司彰君 奥原局長、多分、当たり前ですけれども、安倍政権になって、民間の給与とかそういう労働の賃金の実態というものをいろいろな数字を使うようになっていますけれども、昔から国税庁の民間給与実態統計調査というのが、これ昔から一番信用できるんではないかというふうに言われていますね。  そういう中を見ると、業種別の平均給与とかというものは、やっぱり業態ごとによって相当違うんですよ。残念ながら、農林水産業に志す人がちょっとこれを先に見ておこうかなと思うと、この段階でちょっとやめようかと。それは、先ほどはまあ普通の実態なんですよというような言い方ですけれども、これを改善しようというやっぱり思いがなくちゃいけない。  それから、これはその業種ごとの給与階級別分布でいうと、残念ながら農林水産業は、所得でいうとかなり低い部分にシフトが多いわけですよ。ですから、今現在はそうですし、家族的なものとかそういう今までの農業の形態が悪いことだとは思わないんです。ただし、新しく雇用をしてそこに勤めてもらうという形態を取る場合には、本当にそれができるかどうかをきちんとやってからにしてもらいたいんですよ。  といいますのは、どこの町にもコンビニエンスストアがあります。コンビニエンスストアは、三年ぐらいで潰れるところと、それ以上もつところと大体二つぐらいです。三年ぐらいもつところは家族だけで二十四時間やっていて、我慢しながら我慢しながらやっていると、三年間は黒字なんだけれども、体がもたなくてやめちゃうような人がいる。しかし、人を一人雇ったりして、二十四時間、家族以外の雇用を使った場合には、なかなか黒字ということにはならないけれども、いろいろな頑張りでもって幾らかのもうけが出るような形ができ上がれば、それは長続きするような形になるわけですよ。  だから、私どものこれまで考えてきた農業という在り方とこれからは違うんですよということを打ち出している中で、今までやってきたことでこれはこれでいいんですということになったらば、私はこんな法律は要らないというふうに思うわけですけど、もし大臣何かありましたら。
  85. 林芳正

    ○国務大臣(林芳正君) 大変本質的なお問いかけだと、こういうふうに思っておりますが、私も大学を卒業して商社に勤務をいたしたことがございますけれども、今お示しいただいたこれぐらいの情報だけだったかなと。初任給十三万六千五百円だったと覚えておりますが、中に入って、これぐらい残業するとか、課と課でこれだけ差があるとかというのは入ってみないと分からないところは随分ありますし、全く思っていたイメージと違う。私なんかは音楽をやっておりましたので、できれば楽器を扱うところがいいなということで、同じ部でやっておったんですが、同じ部の中のタバコ課というところに配属をされましたので、まあそういうものだろうなと、こういうふうに思っております。  したがって、やはり最終的に就職をするという場合に、今まさに先生からお話があったように、できる限りの情報はしますが、経営者もある意味では民間の企業でいらっしゃいますので、今こうやってやっているけれども、ずっともう十年も二十年も三十年もそういう状況をある意味では担保するかといえば、そういうことはなかなか難しいのであろうと、こういうふうに思っております。  例えばれんこん三兄弟という株式会社の話がありますが、ここはもうレンコンを作っているというのは分かるわけでございますが、サラダボウルということであればいろんな野菜を作るんだろうなと、こういうことでありますし、それから、今、業態別の数字もお示しになられましたけれども、まさに私どもが思っておりますのは、どこに実際に勤務して住んでいるかによって、余り、名目値で違うから農業は所得が低いんだ、したがって幸せでないと、こういうふうに短絡的に、まさに委員がおっしゃっていただいた、持っていくべきではなくて、プライスレスな喜びというのもございますが、基本的にやはり地方に勤務をされる、こういうことになりますと、生活費、特にライフサイクルの最初の方は住居費というところが大変大きいのではないかと、こういうふうに思いますが。  例えば、私の地元の話で恐縮ですけれども、東京で一台分の車庫が賄えるような金額で大体1LDKとかそれぐらいの部屋は借りられると。こういうことでございますので、そういうことも併せてトータルで見ていただく必要がありますし、我々としてもそういうところをしっかりと意を用いながら、こういう方がしっかりと、それぞれが大きく育っていただけますし、また、たくさんの新しい法人が横展開をしていく、数も増えていくと。そういうことをトータルとして目指していく、これが大事ではないかと、そういうふうに考えております。
  86. 郡司彰

    ○郡司彰君 私の思いは、一方で産業を目指すのならそういうこともきちんとやりますよ、だけど全国多数の農家の方々は、今大臣がおっしゃったように、ちょっと別な見方、考え方、生活のスタイルも含めてやっていて、実はこの人たちが今の農業を、家族農業とかという言い方かもしれません、いろんな言い方があるかもしれませんけれども、ほとんどを支えているわけですよ。  だから、この農協法だけ読んでいくと、何かそのうちみんな法人になって、企業になって、雇う人と雇われる人が農業の分野でできて、それがうまくいけばこの国の農業は何か展望が開けるんだというようなイメージの言い方、資料だけではなくて、今それぞれの地域で一人一人の、家族農業というような言い方でもいいですけれども、支えている今の人たちをもっと大事にするようなことが一方でないと、この農協法に沿ったような形でどんどんどんどん農村も何も変えていくんですよということだけではうまくいかないというような思いでございます。  それで、最後にちょっとこの関係で一つだけお聞きをしますが、TPPは先ほど合意に至らないということがありましたが、二国間あるいは地域間のFTA、EPAというものはこれからどういう可能性が広がっていくかというのが分からないわけであります。場合によっては、産業、農業という中でも、分野によって非常に地域とか業種とかということによって労働を奪われるような、つまり離農をするような可能性というものも私は出てくるだろうというふうに思っています。そういうふうなときに、TPPのときの話のようにその都度の対策はもうやめてもらいたいんですよ。もう農業でも何でもそうでありますけれども、経済連携その他によって地域や産業や業種間で職を失う、そして、それがまた新たな職に就かざるを得ないというような、教育訓練も含めて、移行プログラムを含めて、私はトータルの国としてのそういう支援プログラムをつくれと何度も毎回のように言っているんですけれども、そういうお考えはないんでありましょうか。
  87. 小泉昭男

    ○副大臣小泉昭男君) 先生指摘のところでございますけれども、現在、我が国の農業構造を見ますと、この十年間で担い手が利用している農地面積の割合でございますが、農地面積全体の三割から五割に増加している状況がございます。農業の生産性を高め、成長産業としていくためには、TPP交渉の行方にかかわらず、担い手の農地集積、集約化を更に加速しまして、今後十年間でこれを八割に引き上げていく必要があると、こういう認識を持っております。  農業者のうち、六十五歳以上の方が約六割を占める高齢化が進んでおりまして、御指摘のとおり、リタイアする人の農地を、これをしっかりと生かしていかなくちゃいけない、こういう関係で、農地を担い手に円滑に集積していかなければ耕作放棄地が増大してしまうことになると考えているところでございます。  このため、担い手への農地集積、集約化、耕作放棄地の発生防止、解消などの課題解決のための切り札として、都道府県段階に農地中間管理機構を整備したところでございます。機構に対する貸付けによって離農又は経営転換する者に対しましては、経営転換協力金として一戸当たり三十万から七十万を設けまして、円滑なリタイアが進むように手当てをしているところでもございます。  このような支援を受けて、農業をリタイアされた方々も地域の一員であり、圃場の見回りや水管理など適切な役割を担っていただけると有り難い、このように考えております。
  88. 郡司彰

    ○郡司彰君 それでは次に、農業所得の増大に最大限の配慮をしなければいけないというのがJAにとってみるとどういうようなことが起こってくるんだろうか。  例えば、先ほど午前中、野村議員の質問監査の問題が相当取り上げられました。これまで自治監査そのものは歴史があるわけでありまして、このことには余り触れませんけれども、これから農業所得の増大に最大限の配慮をしたかしないかというのは、どこかが何かの権限を持って判断をするのでありましょうか。
  89. 林芳正

    ○国務大臣(林芳正君) 今回の改正で、第七条二項に新たに規定をいたします組合員に最大の奉仕をすることを維持した上で、農協農業者の協同組織として農業所得の増大に最大限配慮すると、この規定でございますが、当然、釈迦に説法でございますけれども、販売先との関係において有利に販売し、また生産資材の購入先との関係において有利調達をする、また効率的な事業運営により運営コストを削減していくこと、こういうことを目指そうということでございますが、これが農協において十分実践できているか、これは農協がそれぞれその成果を組合員に説明をするということになろうかと、こういうふうに思います。  したがって、組合員によって評価をされて、必要な場合には事業方針の見直し等によってこれが改善されていく、こういうことだというふうに考えておりますので、お答えとしては組合員が評価をすると、こういうことでございます。
  90. 郡司彰

    ○郡司彰君 一応その言葉で受け止めておきたいなというふうに思っております。  ちょっと時間の関係で次に入らせていただきますけれども、二ページ目のところに、条文で言うと十条の二のところの関係でありますけれども、組合員及び会員に利用を強制してはならないこととしておりますと、こういうようなことが書いてあります。  これ、この前、古賀先生でしたかね、質問も公取との関係でもされておりましたけれども、条文読むと何ら違和感がないわけでありますが、例えば独禁法との関係でいえば、二十三年六月二十三日の指針というものが出されております。その指針の中の三番目には適用除外というようなことも書かれていて、ここだけ読むと、この独禁法の適用除外というものがどこかに行ってしまったのかなと、見方、判断によってはそのような見方ができるようになってしまうのではないかと思いますけれども、ここの書きぶりというのはそれ以上の意味はないということでよろしいんでしょうか。
  91. 奥原正明

    政府参考人奥原正明君) 今回の農協改革は、地域農協がそれぞれの地域の特性を生かして創意工夫をしながら自由に経済活動をやっていただく、農産物の有利販売など農業者の所得向上に全力投球できるようにする、そういう環境整備をしていくということでございまして、そういう事業のメリットを出すことによって、農業者、特に担い手農業者の方から選ばれる農協になっていくというのを趣旨にしているわけでございます。  現状におきましても、先生から今御指摘のございましたとおり、仮に、農協組合員に対しまして、農産物の販売ですとか肥料、農薬の購入を強制するですとか、あるいは資金を融資するに当たりまして資材の購入を条件とする、こういった不公正な取引方法を用いる行為につきましては独禁法第二十二条ただし書により明確に禁止をされておりまして、農協におきましても、過去にこうした行為により処分の対象となった農協相当数あるわけでございます。  そういう意味からいきますと、今回追加をした条文はこの趣旨をもう一回明確に書いているということでございますけれども、今回の改正案においてはこうした改革の趣旨に反するような組合員に対する事業利用の強制については明確に禁止をすると、組合員農協の事業を利用するかどうかは組合員の選択に委ねられるべきであるということを徹底するという観点で、農協組合員に事業利用を強制してはならない旨の規定を置くことにしたところでございます。
  92. 郡司彰

    ○郡司彰君 それは分かりましたというか、分かっております。その上であえて、改めて申し上げれば、三のところに書いてある適用除外についても、それはそのまま理解をしてよろしいということなんだろうというふうに思いますね。  今回の法律を準備するに当たって、公取とこの指針についての改めて何か協議というものはなさったんでしょうか。
  93. 奥原正明

    政府参考人奥原正明君) 今回の改正法におきましては独占禁止法の規定は特に改正をしておりませんので、そういう意味で、この指針に関しましても公正取引委員会との見直しの協議はしておりません。  ただ、今回の改正も当然、法律でございますので、今回農協法の中にこの事業利用の強制を禁止する規定を置いておりますが、この法律全体につきまして当然閣議で決定をするわけでございますので、政府内での法案決定プロセスにおきましてそういう意味での公正取引委員会との協議は行っているところでございます。
  94. 郡司彰

    ○郡司彰君 御存じのことだというふうに思いますが、その三のところには注というのが幾つかあります。一、二、三とありますが、その三番目の注の三というのをちょっと読ませていただきますと、「生産調整については、これに参加しない事業者に対して、協同組合内で不当に差別的な取扱いが行われ、その事業者の事業活動を困難にさせる場合には、不公正な取引方法に該当し違法となるおそれがある。」というようなものがございます。  ここで、この独禁法の言わんとしている思いのことについてちょっとお尋ねをしたいと思いますが、以前の生産調整、減反のときに、例えば減反に参加をしない地域には残念ながら土地改良の予算は削らせていただきますよとか、あるいは減反に参加をしない方については認定農業者にはさせませんよとかというようなことがございました。私は、それはやっぱり農政の在り方としては余り好ましくないなというような思いがしておりまして、私どもが政権を担わせていただいたときは、例えばその生産調整の関係についても、いわゆる国が行うペナルティーというものは排除をしていこうと。逆な意味で、戸別所得補償の振り込み先は農協に限るとかというこれまでのやり方もやめて、農協努力をしてお客をきちんと確保するということはやってください、結果としてそれが一〇〇%になればそれでいいんですよというようなことをやらせていただきましたが、改めて、今回のことについても、中間管理機構の一年目、十五万ぐらいやろうと思ったけれども、余りそこまでは行かなかった。そして、これからは、それの達成の度合いによって予算をちょっと手加減しようかなというようなことが出てきているわけです。  私は、これは独禁法と関係ありませんよ、関係ありませんが、独禁法の言わんとしている趣旨は、先ほど局長がお答えになったとおり、これは国の行う施策についても、私は、国がペナルティーを科すようなやり方で政策を進めるというのは私は好ましくないというような思いをずっと持っておりますが、そのことに対してお考えがあればお聞かせください。
  95. 林芳正

    ○国務大臣(林芳正君) 今お話のありました農業協同組合の活動に関する独占禁止法上の指針は独禁法違反になる農協等の行為を示しておりまして、今、この三の下にある注三についても御指摘があったとおりでございまして、生産調整に関しては、生産調整に参加しない生産者が組合内で不当に差別的な取扱いが行われる場合には、独占禁止法上違反となるおそれがあると、こういうふうに示されております。  一方で、米の生産調整については、平成二十一年度までは生産数量目標の範囲内で主食用米の生産を行った地域に対する補助事業の優先採択等の措置が講じられてきた、先生おっしゃったとおりでありますが、この措置は、生産調整における公平性を確保する観点から、国が行政施策の一環として実施してきたものであると、こういうことでございますので、この独占禁止法に違反するものではないというふうに理解をしております。  その公平性を確保する観点からやってきたということも、平成二十二年度にこの公平性確保措置は廃止をいたしたということでございますので、今後もそういうものをまた戻すということは我々としても考えておらないということでございます。
  96. 郡司彰

    ○郡司彰君 大臣が言われましたように、私も、独禁法の枠内での問題ではなくて、農水省としてそのような政策手法というのはやめた方がよろしいということで、これからもまた、先ほど言いましたように、中間管理機構の関係や何かでそれに類するのではないかなというような施策が見受けられますので、御検討をいただければなというふうに思っております。  それから、いろんなところで組合員准組合員ということの関係が出てまいります。そのことでお聞きをしたいというふうに思いますが、これも先ほどの基本データで見ますと、農協の正組合員は四百五十六万人、准組合員は五百五十八万人、二十五年度末という数字になっております。  素朴な疑問で恐縮でございますけれども、この数字は、先ほどの構造の展望その他から照らし合わせると、十年後というのは正組合員というのはどのぐらいの数になるというような予測で政策をつくっていらしたんでしょうか。
  97. 奥原正明

    政府参考人奥原正明君) まず、この人数の点でございますけれども、農業就業人口、センサスで取っております農業就業者の数が大体二百三十万人ぐらいということでございますので、それと、今先生が言われました農協の正組合員四百五十六万人、かなり違いがあるわけでございます。  こういった違いがどこから来ているかということでございますけれども、農林業センサスの農業就業人口、これにつきましては、定義は、自営農業に従事した世帯員のうち、農業のみに従事した者又は農業の従事日数が多い者と、こういう定義でございます。  一方で、農協法におきましては、原則として、自ら農業を営むかあるいは農業に従事する方が農業者として農協の正組合員資格を有するということになっておりますが、経営面積ですとか従事日数などの具体的な正組合員資格はそれぞれの農協の定款で決めると、こういうことになっております。  したがいまして、農協の定款の定めによっては、農業従事日数がほかの仕事への従事日数よりも少ない方でも正組合員に含まれ得るということになるのに対しまして、こういった人は農林業センサスの農業就業人口には含まれないと、こういうことになります。こういった定義の違いが、この正組合員の数、これが四百五十六万人で、一方で農業就業人口、センサスの数字が二百二十七万人という、こういう数字の関係になってきているわけでございます。  農協農業者の自主的な協同組合でございますので、農業の実態も地域によって区々でありますから、どのような者に正組合員資格を与えるか、これは農協法規定された枠内で、農協の自治に委ねられております。それぞれの農協組合員の選択によって、それぞれの農協の定款で、その実情に応じて決定をすると、これが適切であるというふうに考えておりますので、農林省の見通しとして、この正組合員数字がどう変わっていくかというのを特に推計はしておりませんけれども、若い方を含めて就業者の方が減っていけば当然この正組合員の数も減っていくというふうに認識をしているところでございます。
  98. 郡司彰

    ○郡司彰君 定款で定めておりまして、それぞれいろいろな、何というんでしょうね、カウントの仕方もできるのやもしれません。  ただ、准組合員のことをこれから数年掛かってお調べになるというようなときに、何に対する准組合員の比率なんだというと、正組合員ということに多分なるんだろうというふうに思いますね、今までの議論を踏むと。  そうすると、一定そこに正確性というようなものも含めて出てくるものがある。定款ということだけではなくて、例えば、これからどうなるか分かりませんけれども、今日の朝刊にも、耕作されていない農地に対しては税金を多く掛けましょうというような発想がどうも財務省その他にはあるようでありますけれども、そういうようなことも絡んで、例えば既に離農をされた方とか、あるいは土地は持っているけれども農業そのものは誰かにお任せをしているとか、いろんなケースが先ほどの農協法の趣旨からするとこれから出てくるわけであります。  ですから、各JAにお任せをしますよということでずっといくのか、それとも、対するところの准組合員というところの関係について、どちらか、何というんでしょう、のりというものを決めてその中ということになるのかどうかというのは、これからの調査にとっても大変大事なところだというふうに思いますが、その辺のところはこのままの考え方でいくということでよろしいんでしょうか。
  99. 林芳正

    ○国務大臣(林芳正君) 我々が党内で、当時私は党に戻っておりましたので、議論したときもいろんな話が出まして、その中で、今委員がおっしゃったことと必ずしも一致するかどうか分かりませんが、例えば集積をしていって、先ほど少し申し上げたように、例えば水路の泥上げですとか草刈りですとか、こういうことを引き続き地域としてやってもらいたい、そういう方には多面的機能支払というものを今後支払っていくと。そうすると、つい最近まで実際にやっておられて、農地を若い担い手に集積をした後もその地域にとどまっていただいて、多面的機能支払の中でこういうことをやっていただける方というのは、果たして正組合員なんだろうか准組合員なんだろうかと、こういう議論もございました。  一方で、これは都会の方の話だと思いますけれども、例えば葬儀屋さんとかガソリンスタンドにしても民間と競合している、いろんな協同組合ということで優遇も受けている、これは民業圧迫ではないかと、こういう議論も行われたわけでございます。  したがって、我々も准組合員の議論をしたときに、一体どういう事象を指して、規制が要るのか要らないのか、インフラとしての必要性をどうしていくのか、どこを指して言っているのかというのが必ずしも、いろいろ長い時間を掛けて議論しましたけれども、どうも皆さんが同じことに対して議論をしているんじゃない部分があるのではないかと、こういうことが分かってまいりまして、したがって、よく調べてみますと、今までは規制も掛けていなかったものですから、今まさに申し上げたような実態がはっきりとないということでございます。  したがって、まずは実態を調査した上で、それからいろんな今回御提案している、また今までも御提案してまいりましたいろんな制度が実現をしていく、こういうことでございますので、そういう農協改革等々の実現具合も見ながら、そして何よりも、正組合員、また准組合員の利用実態というものをもう少し正確に把握して、その上で規制の在り方、すなわち規制をするんだけどどうするかということではなくて、規制をどうするかと、やるかやらないのかも含めて議論をしようと、こういう結論に至ったわけでございます。
  100. 郡司彰

    ○郡司彰君 お聞きをして、例えば与党の中でいろんな議論をされたというような経過もお聞きをするわけでありますけれども、私ども、この中での議論ということが初めてになりますので、ちょっと重複をする部分が出てくるのかもしれません。  そして、私自身は、農協というのは地域のインフラでありますから、その中で准組合員の利用を制限をするということというのは余り現実的ではないなと。協同病院しかないところに、あなたは駄目ですよとか、ガソリンスタンドが、いつも言われているように、ないようなところで、あなたは入れられませんとか、今日は二割まで利用ができますから、あなたは二一%目の人ですからお帰りくださいなんということも、これは現実的にはあり得ないわけでありますから。  そういう意味では、准組合員というものというよりも、当たり前のことですけれども、信用とか共済のような仕事をしているところというのは、これはもう林大臣にそれこそ釈迦に説法ですけれども、自由経済の下でそういう仕事をしようとしたらば、アメーバのようにどこでも広がっていかなければ、それはもうあり得ないんですよね。こういうことからすると、私は、准組合員というのは、やっぱりきちんと地域の中で利用できるような存在でいいんだろうというふうに思っています。  ただ、今回の趣旨でいうと、所得を最大限にしますよというようなところと、准組合員の利用の制限というものを検討をするということの議論があって、取りあえず実態調査ということでありますけれども、利用の制限ということになると、所得の最大化ということと、午前中の議論もありましたけれども、それを全体でどう使うかということも含めてやはり相矛盾するようなことに結果としてなってしまうのではないかという懸念が多いんだと思いますが、これに対してのお考えをお聞かせください。
  101. 林芳正

    ○国務大臣(林芳正君) 大変大事なところでございますが、基本的にはやはり経済事業部門が赤字で、金融事業の黒字で補填すると、これが平均的な姿でございます、違う地域もあるわけでございますが。  この補填自体は違法ではないわけでございますが、我々が問題だなと思いますのは、例えば、経済事業はもう改善しようがないと諦めてしまって、金融業務に注力して、特に准組合員の方に、今アメーバとおっしゃいましたけど、どんどん出ていって、そちらの方があたかも中心になっている。私もいつも半分冗談で言っているんですが、最近はなくなったようですが、JAのCMを見ておりますとまちのバンクという言葉が出てくるので若干違和感を感じながら見ておりますが、最近は農林水産物そのもののCMも出てきたようでございますが。やはり担い手を中心とする農業者の方からは、経済事業、やはり農産物を積極的に販売してもらって、その上で農業所得の向上に注力してほしいと、こういう声を聞くわけでございます。  したがって、信用、共済事業中心ということではなくて、まさに地域の特性を生かして農産物を有利に販売をしてもらう、それができるような環境整備を我々はやっていこうと、こういうことが基本的な考え方になっているわけでございます。
  102. 郡司彰

    ○郡司彰君 次の質問にさせていただきたいと思いますが、三つ目は、三ページ目、安定的に信用事業を継続できるようにするため、公認会計士又は監査法人による会計監査を受けなければならないというようなところ、また第三十七条の関係になるわけでありますけれども、先ほど午前中に野村委員の方で細かくなされましたので余り時間を取らずに質問をしたいと思いますが、過去二年間の農協に対する行政処分というのを調べていただきました。二十五年度が二件、二十六年度が二件、いずれも農協法九十四条の二第二項に基づく業務改善命令。簡単に言うと、横領というようなことが一部ですかね、そういうようなことであります。一方、ほかの会社というのを全部調べるのがよく分かりません。調べて何とか分かったのは、証券取引等監視委員会の開示検査等により有価証券報告書等の虚偽記載が明らかになった事例というものを調べましたところ、二十五年、二十六年、二年間でこれが計二十件というようなことでございます。  この比較対照はちょっと難しいというか、余り意味がないんだろうというふうに思いますけれども、先ほど、ちょっと午前中、どこかの電気製品を作っている会社の話がございましたけれども、あそこの会社ではなくて、そこに監査に入っていたところは新日本監査法人公認会計士が三千五百人、この監査法人だけでいらっしゃるんだそうであります。  農協中央会監査士というのは何名ぐらいいらっしゃるんでしょうか。大ざっぱでいいです。
  103. 奥原正明

    政府参考人奥原正明君) 大体三百人ぐらいでございます。
  104. 郡司彰

    ○郡司彰君 その割にはよく頑張っているなと、正直言って私は思うのでありますけれども、これは、自治監査の歴史を言うと結構長くなりますよね。先ほどもちょっと言葉としてありましたけれども、やっぱり相互監視、相互牽制、詰まるところは、農協という事業そのものが信用事業から始まっているわけですよ。ですから、無限連帯責任などもあって相当厳しいような形をやってきたつもりだけれども、よく見ると、何か職員の横領とかなんかあるなということはありました。  そこで、ちょっとお尋ねをしたいというふうに思いますが、今回の農協法のところでも、先ほどの午前中か何かの説明でもありましたけれども、現在の農協は一万幾らあったのが七百ぐらいに減ってきているんだという話がありました。その前に千農協構想というので、自治体の数が三千幾つのときに千農協構想というのをやったわけですね。これ、千農協構想というのは、なぜその頃出されて、どういう理由で具体化されたというふうにお考えでしょうか。
  105. 奥原正明

    政府参考人奥原正明君) 農協系統におきましては、広域化する組合員の経済圏、生活圏に対応する広域な地区を対象とした合併を推進するという観点で、昭和六十三年、これは第十八回の全国農協大会でございますが、二十一世紀までに千農協を目指す千農協構想、これは当時、農協の数が三千八百九十八組合でございましたが、この状況の下で千農協構想を掲げたところでございます。  また、平成三年の第十九回全国農協大会では、農業の国際化、諸規制の緩和など、急激な情勢変化の下で、将来とも組合員の負託に応える確固たる系統農協組織を築き上げるためということで、この千農協構想を早期に実現することを決議するということで更なる合併の促進を図ってきたところでございます。  こうした中央会を中心とする農協系統の合併の促進に向けた取組の結果として、農協の数は、この昭和六十三年度末の三千八百九十八組合から平成二十六年度末には七百八組合に減少しておりまして、農協の経営基盤の強化に成果を上げてきたものというふうに考えております。
  106. 郡司彰

    ○郡司彰君 十八回の大会でそのように決められましたが、内実は、正直言うと、先ほど言いました自己資本比率金融の問題で、当時の信用金庫の平均の預金高というのが大体二百億だったんですよ。その二百億ぐらいまでには何とかしましょうと、農協でいうと貯金の額を少なくても二百億を上回るような規模で、千の単位にまとめていったんですよ。だから、それ以降はやっぱり監査というものも相当厳しくなったというのは午前中の指摘があったとおりであります。  そして、もう一つ問題は、農協の場合は、自己資本比率という問題もありましたけれども、その当時、いろんな銀行が抱えていた負債というものと、それは負債の中身が違うんですよ。農協の抱えていた負債というのは、ほとんどが酪農、畜産の負債なんですよ。  ですから、結果として見れば、国の政策も相まって、結果として相まってどういうことが起こったかというと、ほとんどの県で酪農家は減少したんですよ。それは、堆肥盤を造る法律ができたときもがくんと減ったり、いろんな経済連携ができたときにも減ったり、いろんな形で淘汰をされていく中で負債そのものも少なくなってきて、今は酪農、畜産の負債というものが農協の負債のほとんどだということにはならなくなってきたんだけれども、元々ほかの市中の銀行と負債の質が違ってきたというようなことも私は理解をしていただきたいなというふうに思いますし、まさにそういう中で、何か農協監査士というのは農協の勝手な資格だというふうなことに取られがちですけれども、これは立派な国家資格でございますから。そういう認識もやはり持っていただきたいと思いますし、三千五百人一法人で持っていて、なおかつあのような不祥事もある。  農協が多い少ないということよりも、それ以外のところも、その処分等を受けている中身については、それぞれの該当する企業、会社のことだけではなくて、監査をした法人に対して、あなたの監査そのものがおかしいというような指摘も数件見られます。したがって、一概に公認会計士だからよしとするような論調というものも、やはり農水省としてはきちんとどこかで言っていただくということが当たり前ではないかなというふうに思っております。  なぜこのような話をするかというと、やはり、何で中央会が今度なくなるんだ、農協が少なくなったからというような話がありましたけれども、そもそもは戦後の協同組合という成り立ちよりは、中央会をつくって各単位農協をきちんと指導をするということで、言わば農水省が主導でつくったはずなんですよ。だから私は、この前の本会議のときの質問も、まず今度のような農協法改正をやるのならば、国が、農水省が、これまで系統農協に対して御協力をいただいて食管法その他の時代を乗り切ることができて、今度はもうそういうことではなくなったから、きちんと別々にやりましょうねと、一回ぐらいはこれまで御苦労さまでしたというのを言うべきではないかということを申し上げてきたわけでありますけれども、その気持ちは余り今日は出しませんが。  それで、時間の関係で先へ行きますが、法人、五万法人つくろうということになっています。時間の関係でこちらから申し上げますが、金融機関というのと法人はどのような関係になっていると。公庫からの借入れのある法人が七〇%。しかし、売上げ十億円以上の法人においては民間金融機関からの借入れが四二%と圧倒的に多いということで、公庫のみあるいは民間金融機関のみ、農協のみというのもありますけれども、それぞれ複合的に御利用なさっているというのがあります。その中で、例えば法人というのが平均してどのぐらいの方を雇っているんだというと、正社員、常勤、パート、合計平均十六・五人なんだそうであります。十名以上が五割なんだそうであります。  私最初に冒頭申し上げたのは、このようなところがどんどん増えてきますよ、しかも、意外と米の生産調整に参加をしている法人というのは稲作で九六%。一生懸命やっぱり国の補助をきちんと受けられるような状態でやろうと、それがやっぱり成功の秘訣だというようなことも、またそれ以外のアンケートいっぱいありますけれども。この法人が、監査はどこがやるんだということですよ。  これは、農水省は関わり合わない、これからは中央会単協指導したようなことはやりませんよ、どこかでやってくださいねということでよろしいんでしょうか。
  107. 奥原正明

    政府参考人奥原正明君) この農業法人監査の問題でございますけれども、農業法人も基本的に民間の組織でございますので、一般的にこの法人に対する会計監査、どういう制度になっているかといいますと、一つは会社法に基づいて、資本金が一定以上、あるいは負債総額が一定以上の大会社に対しては会計監査の義務付けが行われております。それから、金融商品取引法、これに基づいて、株式を上場している会社にも義務付けがございます。それから、農協法、信用金庫法等に基づいて金融業もやっている法人についても義務付けがあるわけでございますが、農業法人のほとんどは、一部上場しているところもございますけれども、ほとんどは今の要件には該当しませんので、会計監査の義務付けというのは特に行われていないというふうに考えております。一方で、会計監査以外の業務監査ですとかコンサルの方につきましては、これは一般に民間法人には義務付けられておりません。  したがいまして、農業法人の多くは監査の義務付けそのものはないわけですけれども、これも日本農業法人協会が作っております農業法人白書、これ二〇一三を取っておりますが、これによりますと、農業法人の多く、七七%ぐらいの法人の方々は、自分の経営課題の相談先として税理士ですとか会計士の方を活用しているというふうに承知をしているところでございます。  それから、農業法人に対しましては、財務諸表の作成あるいは簿記の記帳、それから税務申告の手続等の習得を目的とする都道府県等による研修会の開催等に対しましても支援を行っているところでございまして、こういう取組を通じまして農業法人の経営内容の改善を促してまいりたいと考えております。
  108. 郡司彰

    ○郡司彰君 今のようなことなんだろうというふうに思います。例えば、農協中央会がやっているような業務監査も例えば中小企業診断士でもできるだろうし、いろんなやり方というものはあるんだろうというふうに思うんですね。  ただ、これ五万法人になってきます。いろんなところで、例えば農水省もいろいろな政策について御協力を願うようなことにも多分なってくるんだろうというふうに思いますけれども、それは監査はいいですよというようなことで本当にいいんだろうか。逆に言うと、私なんかは逆に、今、中央会監査の仕事として、農業法人なんかについても使っていいんじゃないか、あっせんをしてもいいんじゃないかと。そういうような使い方で監査士人たちの仕事の場を広げたり、これからのやる気というものを持たせるようなことにもなるんではないか。その辺のところは一考いただければ有り難いなというようなことでございます。  ちょっと時間の関係で先に進めますが、在日米国商工会議所の意見書、今年の九月まで有効というようなことでございますが、この内容については、既によく御存じというか、皆さんお読みになっているということで理解をしてよろしゅうございましょうか。
  109. 奥原正明

    政府参考人奥原正明君) 我々、在日の米国商工会議所の意見書を直接いただいて、これを丁寧に読んでいるという、そういう関係ではございませんので、農協ですとか全国農業会議所ですとか、そういったところの意見書は我々手渡しでいただいて、かなり説明も伺って意見交換をしておりますが、そういう関係には全くございません。
  110. 郡司彰

    ○郡司彰君 それはそうですよね。ここから言われて何かやっていたら、それこそ議論するのも嫌になってきますから。  ただ、よく読んでみると、まるっきり関係なくやっているんですけれども、よく符合するものだなと。日本政府規制改革実施計画においてJAグループにおける准組合員の事業利用について正組合員の事業利用との関係で一定のルールを導入する方向で検討すると約束したことを歓迎するとか、共済のことでいうと、簡単に言うと農水省が農協の共済を管理しているのはおかしいと。厚生労働省が全労済をやっているのはおかしい、経産省が中小企業団体共済をやっているのはおかしい、お金を扱ったり保険を扱うのはみんな金融庁のところでやらなくちゃ、レベルが低いし信用できないし競争が公平じゃないと。こういうようなことを言っているわけであります。  それで、時間の関係でもう簡単にいたしますけれども、これを読んでいると、全然関係ないところの話なんだけれども、何か先ほど言ったように符合するところもあるなと。先ほど来からの、信用の監査中央会から外します、これもよくやってくれたねと言われるような中身になりかねない。  端的にお聞きをしますけれども、農水省は、この先、信用、共済等の事業については分離をすることは今回できるわけです、できるわけですね。生協になることもできますよというけど、生協は信用や金融関係は扱っておりません。だから、生協になるときには経済事業というか、そういうものとなってやりなさい、まあ簡単に言うと、それぞれやって、信用、共済そのものは財務省の方に行っちゃった方がいいのかなというような流れになっておりますけど、農水省は、金融庁の方に移管させるという長期的な展望はおありでしょうか。
  111. 奥原正明

    政府参考人奥原正明君) 信用事業、共済事業とございますけれども、まず、信用事業の方は現在でも農林水産省金融庁との共管としてやっているわけでございます。これはもう監督もそうですし、検査につきましても、両方共管でやっている、こういう関係に今既になっているわけでございます。  一方で、共済事業の方でございますけれども、これにつきましては、協同組合による共済、必ずしも農協だけではございませんが、協同組合でやっている共済制度については、やっぱり協同組合としての相互扶助活動の一環として、構成員の福利厚生を目的として行っているものでして、不特定多数の者を対象とする保険とは若干異なる特徴もございます。  それから、信用事業の方は、これは金融庁と既に共管になっておりますけれども、金融機関相互の決済システム等、ネットワークを構築しておりまして、一つ金融機関破綻が信用秩序全体に影響を及ぼすといったこともございまして、金融庁が全て共管になっているわけですけれども、共済事業はこういう関係にはないといったこともございます。  そういう意味で、農協の共済事業につきましては、経営の健全性の確保あるいは契約者の保護に関する規制につきましては既に農協の中で保険業法と同様の規制が設けられておりますけれども、監督につきましては農林水産省が単独でやっておりまして、基本的にこの体制を維持する考えでございます。
  112. 郡司彰

    ○郡司彰君 伺っておきます。先ほど言った、繰り返しませんけれども、いろいろな省が管轄をしているところの保険というか共済というか、全体が三一%ぐらいに該当するんだそうでありまして、それが多いか少ないかというような見方だけではなくて、別な見方があってもいいのかなという感じがしております。  それで、提案理由に載っていないところの問題、今局長からお話をいただいたところも大分含まれておりますけれども、国として、今言われましたような協同組合、COOP、その他のいわゆる国、あるいは営利を目的とする民間の企業、それからCOOPというようなものが私は国内に鼎立をする状態というものが経済の安定のためにもよろしいかなという考えを持っておりまして、国としてでありますから、農水省ということではないのでありますけれども、第三セクターを育成をしていこうというような国としての総合的な考え方というのはあるのでありましょうか。
  113. 小泉昭男

    ○副大臣小泉昭男君) 先生の御質問内容でございますが、農業の担い手も含んだ内容だと思うんですが、農業の担い手としては、家族農業経営、法人経営が中心であるというふうに考えているわけでございますけれども、第三セクター、非営利組織でございますが、こういうものと、それからまた、様々ございまして、担い手が十分にいない地域、こういう地域では、農協の子会社や農協自身が農業経営を営むこともあり得ると考えております。  ちなみに、先日、山梨県の梨北農協、伺ったことがございましたけれども、この梨北農協では、担い手がいない、また耕作放棄地になりかねないという農地を農協が自ら耕して支えているという、こういう現実もございますので、こういう方向も必要だと考えております。
  114. 郡司彰

    ○郡司彰君 時間の関係でちょっと先に行きますけれども、日本の農協の特色として、一般的に言われているものが三つございます。総合性、ゾーニング、それから指導機関というようなことでございますけれども、このそれぞれが、総合性については今議論をしているようなことになっておりますし、ゾーニングについては、新しく農協を設立をするということが既にもう法律でできておりますからこれはもう進んでいる、指導機関についても今回議論をしているということでございますけれども、この日本のJAの特色について、どういう評価、あるいは伸ばしていった方がいい、あるいは見直した方がいいというようなことについてのお考えがあればお聞かせください。
  115. 林芳正

    ○国務大臣(林芳正君) 今回の改革は、地域農協が意欲ある担い手と力を合わせて創意工夫を発揮していただいて、農産物の有利販売等に全力投球をしていただいて所得の向上につなげていこうと、こういうことでございます。  今三つほど委員からお話がありましたけれども、委員自らおっしゃったように、ゾーニング規制については平成十三年の農協法改正廃止をされております。その際に、義務付けておりました行政庁の認可に際しての中央会の協議、これも平成二十五年の改正廃止をされております。今回の改正でも、地区重複する場合の特別の許可基準、それから同種の事業を行う連合会の地区が重複する場合の定款変更について会員農協における投票といった特別な手続を課していたものですが、それぞれ認可基準また手続廃止するというふうにしておりますが、やはり近隣の農協同士が連携をしていただいて、それぞれの得意分野を積極的に伸ばして農業所得の増大につなげられるようにする観点でこういうふうにしたところでございます。  また、中央会についても、御議論あったとおり、委員からおっしゃっていただいたように、そもそもは行政代行的措置として昭和二十九年にスタートして、私は何遍か答弁で申し上げておるつもりでございますが、大変大きな役割を果たしていただいたということで感謝の意を申し上げながら、そろそろそういう役割はもういいのだろうと、こういう状態になったということを感謝とともに申し上げて改めておきたいと思っておりますが、適切に地域農協の活動をサポートしていくと、こういうことになってもらおうということでございます。  したがって、この残る総合性ということでございますが、これも事業の対象者、農家皆さんの階層分化ということをよく言われますけれども、対象者が非常に複雑になってきておりますので、事業の内容、対象に応じて適切な組織形態を選択をしていただけるようにするということでございますので、あくまでこれは地域の農協の選択によるわけですが、選択肢として組織分割や株式会社等への組織変更は措置してございますけれども、これはまさに判断によって各種サービスを地域農協が総合的に提供すると、こういうふうにする枠組みについて変更したものではございませんので、引き続きそういう総合的にサービスを提供していただく、こういう総合性があると、こういうふうに考えておるところでございます。
  116. 郡司彰

    ○郡司彰君 協同組合の少し議論をしてみたかったんでありますけれども、時間の関係でできませんでした。  一つだけ申し上げれば、やはりICAの七原則について、奥原局長は常々、直接農水省とは関わりのないことなので余りコメントしないというようなコメントをされておりますけれども、ただ、その中の新しい原則に、やっぱり協同組合というのは組合員に対して教育、広報というもの、情宣というものをきちんと常にやっておかなければいけない。私は、その役割というのは、監査だけではなくて中央会がしっかりこれからも担うべきだなというふうに思っております。  残りの時間、ちょっと僅かありますので、TPPについてお尋ねをしたいと思いますが、合意に至らずのままの状態が続いたとして、当たり前の話でありますけれども、日米なら日米のFTAということに関しての進捗というものはこれからあり得るということでよろしいんでしょうか。
  117. 林芳正

    ○国務大臣(林芳正君) 先ほど内閣官房からも答弁があったわけでございますが、今まさに交渉まだ続いておるということでございます。したがって、交渉の過程でやり取りした内容について、将来TPPとは別に当該国と例えばEPA交渉を仮に行うことになった場合に、それに拘束されるということはないと、こういうふうに思っております。
  118. 郡司彰

    ○郡司彰君 終わります。
  119. 平木大作

    ○平木大作君 公明党の平木大作でございます。  いよいよ、本日、三回目の質問に立たせていただきまして、これまでは主に総論的なところをお伺いしてきたわけですが、今日からはよりぐっと本論、各論の部分に入ってお伺いをしていきたいというふうに思っております。  様々今までも議論ありましたけれども、今回の農協改革、私は、やっぱり農協はこれまで以上にしっかりと創意工夫していただいて、農業者のための組織として力をますます発揮していただくための改革であると同時に、やっぱり地域に欠かせない生活インフラを支えていく存在なんだ、そこもしっかりとある意味取り組んでいかなければいけないということを確認してきているんじゃないかなというふうに思っております。    〔委員長退席、理事野村哲郎君着席〕  この二つの目標を考えたときに、これもう再三申し上げておりますけれども、今のこの総合農協の在り方、経営の在り方というのはやっぱり非常に合理的で、これをしっかりと更に強くしていくということが今後の農協の発展の一つの在り方なんじゃないかというふうに私は思っております。  その意味で、この総合農協の中でやはり欠かすことのできない信用事業、これの在り方と、そして今回の監査の在り方の変更があるわけでありますけれども、ここは非常に密接にリンクしているテーマだというふうに思っておりますので、ちょっと今日はこの信用事業とそして監査の関連からまず質問をさせていただきたいというふうに思っております。  まず、一般論からで結構なんですが、いわゆるJAバンクグループ、もう先ほども何度も何度も出てきておりますけれども、農林中金そして信連があって、個々の農協があってという、一つ一つ確かに組織体は違うわけですけれども、事実上一体の金融機関として見れば、もう本当にメガバンクに負けないだけの規模を持った金融機関でございます。  そのグループのある意味一員である個々の農協信用事業、これを見たときに、事業規制上で他の金融機関とそもそも異なる点は一体何なのか、これについてお伺いしたいと思います。
  120. 奥原正明

    政府参考人奥原正明君) 農協系統の金融機関につきましても、経営の健全性ですとか適切な業務実施を確保する観点から、自己資本比率規制あるいは大口の信用供与等の規制など、基本的には銀行等の他の金融機関と同様の規制が課されているところでございます。  一方で、他の金融機関と比較いたしまして、組合員と直接接する地域農協につきましては、組合員が必要とするサービスを総合的に提供できるように他事業の兼営が認められております。これは、農林中金信連については他業が禁止をされております。  それからもう一点、監査につきまして、これまではほかの金融機関公認会計士監査でありましたのに対して、地域農協については全中監査であったという点が違っているということだと思います。
  121. 平木大作

    ○平木大作君 今御答弁、簡潔にいただきましたように、一つは兼業規制、そしてもう一つはやっぱり監査の在り方が違うということでございます。  私もかつて銀行にいましたので、いわゆる金融機関に対するこの兼業規制というのは大変厳しいものがあるのも認識しているわけでありますけれども、この点について、一般の金融機関がそもそもなぜ厳しく兼業規制されているのか、これをちょっと改めて御説明いただくのと同時に、その上で、じゃ、農協は何でこの総合農協という形である意味兼業が認められているのか、これについて再度御説明いただけますでしょうか。    〔理事野村哲郎君退席、委員長着席〕
  122. 奥原正明

    政府参考人奥原正明君) 銀行等の一般の金融機関に対しましては、法令上、他業禁止規制が課されております。この趣旨は、金融業務への専念ということと、それから他業を営むことに伴うリスクがこの銀行等の健全性に影響を及ぼすことの排除という点にあるものというふうに承知をしております。  農協系統の金融機関につきましては、農林中金それから信連においてはこの他業禁止が課されておりますけれども、一方で農協の方につきましては、組合員と直接接する中で営農、生活に必要なサービスを総合的に提供できるようにするという観点から、これは歴史的にも農業融資等を行う信用事業と経済事業などの様々な事業を併せ行うことが認められてきていると、こういうことでございます。  ただ、その場合でありましても、他事業のリスクが信用事業に悪影響を与えないようにするということは必要でございますので、信用事業の部門からほかの事業部門への資金運用を一定額以内に制限するといった規制が掛かっておりますし、それから信用事業や経済事業など事業部門ごとの損益状況の総会報告、これを義務付けておりまして、組合員によるチェックの目が各事業ごとに行き届くように措置をするということで、他事業のリスクが信用事業に及ぼす影響を適切にコントロールして、農協経営の健全性を確保することにしているところでございます。  さらに、これに加えまして、午前中から話題になっておりますが、農協の健全性を確保するためにJAバンク法ができておりまして、この法律に基づいて、農林中金行政基準よりも厳しい実施ルールを決めて、経営の健全性の指標である自己資本比率基準を下回る農協等に対しまして、破綻未然に防止するための必要な指導等を行っているというところでございます。
  123. 平木大作

    ○平木大作君 今御答弁いただいたとおりに、基本的に金融機関というのは、兼業規制することによってリスクを排除する、徹底的に排除しなければいけないと。なぜなら、金融機関というのは絶対に潰れちゃいけないわけですね。とにかく、そこに、金融の本業に何か影響のあるような形で兼業、他業を抱え込むということを基本的には禁じることによってその健全性をとにかく強くしていこうということで、こういった兼業規制が行われているわけであります。  ただ、農協信用事業については、一方で、歴史的な背景ですとか、今御紹介いただいたとおり、営農をしっかり支えていくという面からも、これは総合農協という形の中でやっぱりやっていくという特殊な形が今まで形作られてきたと。これは、地域の特に要望ですとか農業者の皆様のある意味信頼に応えるという意味でも必要な形だったんだなというふうに思うわけであります。  じゃ、この信用事業、一方で、特殊な形を持ってはいますけれども、他の金融機関と同じようにやっぱりこれを破綻させてはいけない、絶対に倒れてはいけないわけでありまして、ここに、じゃ、どういう形で健全性を担保していくのか。監査が関わってくるわけであります。  次の問いなわけですけれども、そもそもの問いになりますけれども、今回、監査法人公認会計士による監査と、それから全中による会計の財務の監査、これ、実態としてどのような点が一体異なってくるのか、また、今回の公認会計士監査義務化、この理由を改めて御説明いただきたいと思います。
  124. 小泉昭男

    ○副大臣小泉昭男君) 公認会計士監査でございますが、これまでの全中監査と比べてみますと、監査人資格につきましては、公認会計士が国が実施する試験合格者であるのに対しまして、農協監査士全中実施する試験合格者であると、こういうことでございます。また、監査人監督につきましても、公認会計士公認会計士協会及び金融庁監督を受けているのに対しまして、農協監査士全中農林水産省監督を受けているということでございます。さらには、監査独立性につきまして、公認会計士監査法律により規制されているのに対しまして、全中監査全中内部ルール規制をしているということでありまして、それらの相違点があると認識をしております。  また、全中監査でございますが、監査を受ける農協自らをメンバーとしているため、外部監査とは言えないのではないかという声があることも事実でございます。  これらのために、今回の農協改革では、全中監査の義務付けを廃止をいたしまして、公認会計士会計監査を義務付けることとしたところでございまして、准組合員数が農業者である正組合員数を上回る状況となったこと、さらには、農協の数も七百農協となりまして、一農協貯金量規模も、平均一千二百九十億円と大きくなりまして、中には一兆円を超えるところも見られるところでございます。  これらのことから、農協信用事業をイコールフッティングではないといった批判を受けることなく、今後とも安定的に継続できるようにしていくためには、他の金融機関と同様の会計監査体制を取ることが必要と判断したものであります。したがって、全中潰しといった指摘には当たらない、こういうことで考えております。
  125. 平木大作

    ○平木大作君 今大事な御答弁をいただいたと思うんですけれども、若干、たくさんいろいろ詰め込み過ぎで分かりにくくなってしまったところもあるのかなという気がしております。  要するに、お伺いしたかったのは、いわゆる監査内容としてそもそもどこに差があるのかというところをお伺いしたかったんですけれども、私は、残念ながら全中による監査士監査というものの実態、具体的にどういうことを調べられているのかということ自体については余り精通していないんですが、そもそも今問われているのは、いわゆる実態としてどこにどう差があるのかというところじゃないと思っています。  これは、先ほど来議論になっておりますけれども、もしかしたら公認会計士監査の方がレベルが高いというか、細かいところまで見ていたりするのかもしれませんが、公認会計士皆さん監査法人がやっていることと、今まで全中でやってきたこととある意味差があったとしても、じゃ、どうやったらいいのかというところをしっかりとこれ共有していけば、決してできない話じゃないというふうに思っております。ある意味ここは、先ほどもありました、不正を見付けられるかどうかとか、あるいは、そういったところ、能力面のところはじゃどう強化するのかということをしていけば担保できる話であるはずなんですね。  むしろ、今問われるべきはその先の話だというふうに思っておりまして、今、副大臣からも御答弁いただいておりますけれども、しっかりとその能力を満たしている上で、やっぱり外部性、独立性をいかに担保するかというところが肝なんだというふうに思っております。内部で幾ら監査能力どれだけ力を上げていったとしても、やっぱり独立性とは一線を確実に画します。  公認会計士皆さんというのは、最終的には経営者の皆さんにおかしいところを見付けたときに引導を渡すわけですね。渡さなかったら自分たち監査法人としてそもそも倒産してしまうと。退場を命じられる、そういう存在でありますので、そこの引導を渡せるのかどうかというところは、これは内部にはできない話でありまして、まさにそこの透明性、外部でしっかり独立した監査を行っているということが、行く行くはこの農協における信用事業の信用性を担保いたしますし、また健全性を証明していく。その中でのある意味個々の能力の違いというのがあるわけでありまして、それは先ほど来の御答弁でもありましたけれども、監査法人というのは複数あるわけでありますので、その中で淘汰が進む、あるいはきちんとした監査をするところが生き残っていくという形なわけであるというふうに思っております。  そういう意味で、今回、この信用事業を、ある意味総合農協という形をしっかりと維持しながら、でも健全性を担保していくという意味で、やはり今回の監査法人による監査の導入というのはやっぱり私は避けて通れなかった道なんじゃないかなというふうに確信をしているわけでございます。  じゃ、この信用事業、しっかり私はもっともっと実はこのJAバンクグループには頑張っていただきたいなというふうに思っているんですね。これだけ規模があって、また存在感もあるんですけれども、今もっともっと本当は存在感があっていいんじゃないかなというふうに思っております。これだけ六次産業化が言われているときに、本来であればこの農業の六次産業化関連のいわゆる資金ニーズですとか事業家のアイデア、様々あるはずでありまして、そこにどういう形で迅速に的確に信用を付けていけるかということがまさに今問われているわけであります。  こういう中において、もう委員各位御存じかと思うんですが、金融庁は今大きくスタンスを変えてきております。一昨年辺りから、いわゆる金融機関の財務の健全性に極めて重視をしていたわけでありますけれども、そこから徐々に徐々に事業の将来性というものをしっかり見て、ある意味担保ばっかりにこだわらないで、事業の将来性をしっかりと見極めて、目利きした上で、もっと与信を付けていこうという、いわゆる事業性融資というところに力を入れているわけでありますけれども、ここについて、まさにJAバンクにもこの分野はもっと頑張っていただいたら、私、いいんじゃないかと思うんですが、政府としてどのような方針を持っているのか、お伺いいたします。
  126. 林芳正

    ○国務大臣(林芳正君) 大変大事な御指摘だと思っておりますが、金融庁のことを答える立場にございませんが、大蔵省銀行局の時代の話が午前中ありましたけれども、実はその長い歴史の中で採算性、事業性を見てきちっとお金を貸していこう、いわゆるバンカーの役割を果たしてもらおうというのは、最近という御指摘がありましたが、昔からあったところでございますが、実は不良債権問題が出てきまして、その後、かなり軸足が健全化の方へ寄ったと。また、大蔵省が財務省になって、金融企画局が残って、金融監督庁として実は金融庁がスタートした、こういう歴史的な経緯もあったと、こういうふうに私も記憶をしておりますが。まさに金融庁の方も不良債権問題というものが、それほど日常、心配しなくていいような状況になったということもあって、本来やるべきところにまた回帰をしてきている、こういうことではないかと思っておりまして、農協も全く同じであって、農業者のための協同組織でございますから、意欲ある農業者の成長発展を支える役割、これを積極的に果たしていただく必要があると、こういうふうに考えておるところでございます。  したがって、農林水産省としても、農協系統金融機関に対して、他の金融機関の場合と同様に監督指針というものを定めておりますが、ここで、今お話のあった六次産業化、こういった新しい取組等を行う農業者等をバックアップするための成長資金の供給を行うために、農業者等の技術力、販売力、成長性など、事業そのものの採算性、将来性又は事業分野の将来見通しを重視した融資態勢の整備、これを平成二十三年に監督指針に追加しております。  また、不動産担保や個人保証に過度に依存することなく、経営の将来性を見極める融資手法の徹底、これは平成二十年に指針に追加をしておりまして、こういうことを求めてきたところでございます。  系統の金融機関が、農業の成長産業化、ひいては農村地域の所得向上を支援する本来の役割をしっかり今後も果たしていただきますように、我々としてもしっかりと適切な対応を農協系統金融機関に促してまいりたいと思っております。
  127. 平木大作

    ○平木大作君 この農協金融機関に対しても信用事業に対してもしっかりと、今、同様の取組、事業性融資のような方向性、取り組んでいかれるという御答弁をいただきました。  私、今本当に、この事業性融資というのはメガバンクは割と不得意なんですね。やろうとはしているわけでありますけれども、やはり各地域地域のいわゆる事業の特性といったものをしっかりつかんでいないとなかなかできないということがありますし、全国一律に何か同じ方式を展開するというやり方では当然ないわけでありますので、特に今これは地域金融機関、地銀さんですとか信金、信組、こういったところが、じゃ自分たちの立ち位置はどこなんだろうということを探しながら、まさに事業性融資に取り組もうとしているさなかなわけでありますけれども、そういう意味でいくと、このJAバンクというのは立ち位置が極めて明瞭。もう農業というところが分かっているわけでありますので、ある意味、方向性で迷う必要がないという意味では本当に力をこれから発揮していただけるんじゃないか。  当然、農林中金ですとかそういったところはシンクタンクを持っておりますし、いわゆる全国一律の目ですとか全体のマクロを見るというところはもう分かっているわけでありまして、あとはこの地域の実情にそれぞれ合ったものとやっぱり合わせて、貸し出す力というものをより発揮していただけるという意味でいくと、本当にこれからどれだけチャレンジできるかということがやっぱり問われているんじゃないかなというふうに思っております。  これは質問じゃないんですが、一点だけ要望として付け加えさせていただきますと、今、規制改革実施計画等の中で、このいわゆるJAバンクシステムについて、基本的にはJA信用事業というのを信連ですとか農林中金に譲渡して、どっちかというと現場JAの方は窓口に徹するみたいな形の方向性がちょっとあると思っているんですけれども、私は正直もったいないなというふうに思っております。窓口にこそ目利きできる人がなるべくいなければいけない。現場に近いところに目利きができる人がいないと、やっぱりなかなかこの辺、事業性融資みたいなところは進んでいかないんじゃないかなというふうに思っておりますので、ちょっとそこのところを、貸し出すというところの視点から、窓口の体制ですとか信用事業の譲渡についても考えていただきたいなということだけ御要望申し上げたいというふうに思っております。  続きまして、これも前回の議論、そして本日も何度も何度も出てきているところなんですけれども、全農株式会社化とそして独禁法の話、これもちょっと今日私、いろいろお伺いしていきたいというふうに思っております。  まず、ちょっと前提として基本的なところをこれもお伺いしておきたいんですけれども、今回もこの改正農協法案の十条の二のところで利用を強制してはならないということが入っております。政府として、そもそも、こう入ってくると、強制しているから、してはいけないということをあえて規定するのかということが当然疑問として出てくるわけですけれども、この強制の実態について、今政府としてどの程度の把握をしているのか、また、その実態把握に基づいてこの条文というのはできているのか、これについてお伺いしたいというふうに思っています。
  128. 中川郁子

    大臣政務官(中川郁子君) 今回の農協改革は、地域農協がそれぞれの地域の特性を生かして創意工夫しながら自由に経済活動を行い、農産物の有利販売など農業者の所得向上に全力投球できるようにするような環境を整備していくことにより、農業者、特に担い手農業者から選ばれる農協となることをその趣旨としています。  現状におきましても、農協組合員に対して農産物の販売や肥料、農薬の購入を強制したり、資金を融資するに当たり資材の購入を条件とするなど、不公正な取引方法を用いる場合には独占禁止法が適用されており、過去にこうした行為により処分の対象となった農協相当数あるところでございます。  このため、今回の改正案におきましては、こうした改革の趣旨に反する組合員に対する事業利用の強制については明確に禁止し、組合員農協の事業を利用するかどうかは組合員の選択に委ねられるべきであることを徹底する観点から、農協組合員に事業利用を強制してはならない旨の規定を置くこととしたところでございます。
  129. 平木大作

    ○平木大作君 今、明確に御答弁いただきました。要するに、この強制されているみたいな声というのは時々メディアに出てきちゃうわけでありますけれども、しっかり調べたところ、その実態があったわけでは別にないんだということ、そして、その実態に基づいて今回しているというよりも、その趣旨を徹底する意味で今回規定の中に入っているんだということを今御確認をいただきました。この点、ちょっと後でもう一回触れたいというふうに思うんですね。  次の問いなんですけれども、今独禁法の問題というのがすごく何度も取り上げられているわけでありますけれども、そもそも一般論で結構です、一般に独禁法が禁じているカルテル行為、これは一体どのようなものなのか御説明いただいた上で、協同組合としての農協による共同購入ですとか共同販売、こういったものが適用除外とされているのはどういった理由によるのか、御説明いただけますでしょうか。
  130. 奥原正明

    政府参考人奥原正明君) 独占禁止法の第三条で不当な取引制限、カルテルの禁止規定がございますけれども、ここで禁止されているのは、事業者とほかの事業者が連絡を取り合う、あるいは事業者団体の構成事業者が相互に連絡を取り合う、それによって対価を決定したり、数量ですとか取引先を制限するといったことをやりますとこのカルテルに該当しますので禁止されると、こういうことでございます。  その上で、単独では大企業に伍して競争することが困難な農業者が、相互扶助を目的とした協同組合を組織をして行う行為につきましては、形式的、外観的には競争を制限するおそれがあるような場合であっても、特に独禁法の目的に反することが少ないと考えられますので、独禁法の適用を除外するということにされておりまして、これは農協だけではなくて協同組合共通の取扱いということでございます。  農協は一般の会社とは異なっておりまして、組織形態上は事業者たる農業者の結合体、要するに事業者団体でもございますので、共同販売などの事業がカルテルの行為要件に形式的、外観的に該当する可能性はございますが、この適用除外の規定があることによりまして、この形式的、外観的な要件該当は気にすることなく、競争の実質的な制限による不当な対価の引上げにならない限りは自由に事業を展開できるというものと認識をしております。  いずれにしましても、独禁法の適用に関して、農協の具体的な行為が独禁法上どのように取り扱われるか、これにつきましては、農協株式会社化されるか否かを問わず、公正取引委員会において具体的な事案に即して判断をされると、そういうものと承知をしております。
  131. 平木大作

    ○平木大作君 今、二つ大事な御答弁をいただいているんですね。  結局、この農協の今組織の在り方というのは、協同組合という組織の性質から考えてみても、これはそもそも農協だけ特別にとかいうことではなくて、独禁法のいわゆる守ろうとしている法益に何か反するようなものではないんだということ、組織の性質としてそもそも大丈夫なんだということ。そして、一つ前の問いの中では、結局、その価格ですとか数量というものを直接いじらなかったとしても、強制力があった場合には結果として不公正な取引になってしまうわけですけれども、そういった実態もないんだと。組織の性質の面、それから実態の面においても、別に独禁法に何かそもそも触れているような、そういったものがあるわけではないんだということを今確認させていただいたわけです。  そういう確認をさせていただいた上で、今回、この全農の、この経済連の株式会社化という話が出てきているわけなんですけれども、今回、やっぱり特に皆さん心配なされているのが、結局その株式会社化した途端に独禁法の問題がやっぱり切実に迫ってきてしまう。なかなか、いわゆる株式会社には幾らメリットがありますよと言われても、ちょっと本当にそうなのと。実際に行ってしまったら、自分たち自身が独禁法で大分いろいろ厳しい縛りに遭ったり、あるいは解体みたいなことに最終的にはさらされてしまうんじゃないかという心配があるわけです。ここについてちょっと改めて政府から御説明いただきたいと思うんですね。  まず、先ほどの、いわゆる単体だけじゃなくて、独禁法の適用除外というのは、そもそもこのいわゆる上部組織である連合会までもしっかりと適用除外になっているということを御説明していただいた上で、あえて今回いわゆる選択肢としてこの株式会社化というのを提示している、この理由について御説明いただきたいと思います。
  132. 奥原正明

    政府参考人奥原正明君) 全農は、農協を構成員とする連合会組織でございます。中小事業者である農業者が自主的に設立をした相互扶助組織であるという点におきましては協同組合としての性格に変わりがございませんので、単位の農協と同じく、この連合会である全農につきましても独占禁止法の適用除外が認められているというふうに認識をしております。この点もほかの協同組合制度と共通でございます。  これまでの全農の農産物の販売等を見てみますと、例えば米の取引価格を取ってみましても、独禁法の適用除外はあるわけですけれども、必ずしも有利に販売できているわけではないといった状況もございます。したがって、これから全農がこの農産物の有利販売あるいは生産資材の有利調達、これに成果を上げていくためには種々の工夫をしていただく必要があると考えておりまして、全農には農業所得の向上のための大胆かつ積極的な事業戦略を立てていただくことが重要であるというふうに考えております。  まず、その戦略を立てていただいた上で、その戦略を進める上で、今の農協連合会組織の方がやりやすいのか、あるいは会社になった方がやりやすいのか、これはもう全農御自身によく検討していただく必要があるわけですけれども、株式会社となった場合には独禁法の適用除外は当然なくなります。また一方で、農協法に基づく事業範囲の制限、農協法の十条に書いてある以外の事業を含めて自由に事業展開ができるようになるということ、それから農協法上の員外利用の制限もなくなると、こういったメリットもあるわけでございますので、そういった点を含めて御検討いただきたいということでございます。  なお、この全農株式会社化を検討する場合には、まず全農の新たな戦略を明確にしていただくことが必要だと思っておりますけれども、これを明確にした上で、公正取引委員会は事前相談という制度を持っております。これからこういうことをやるんだけれども独禁法上どうなるのかということは事前相談ができますので、こういった事前相談制度などを活用して独禁法上の問題の有無を精査した上で検討を進めていただきたいというふうに考えているところでございます。
  133. 平木大作

    ○平木大作君 この株式会社化にもメリットがあるんだという上で、事前相談の形でしっかりとある意味その戦略を実行できるんだという今御答弁をいただきました。やっぱり、ちょっとここ分かりにくいと思うんですね。  前回の委員会においても公取からいろいろ御答弁いただいたわけですけれども、いわゆる株主となる個々の農協同士で連携取り合わなければ基本的には大丈夫なんですという、ある意味定義に沿った形での御答弁いただいているんですけれども、実態はそうなのかというと、経済活動をしている面、いわゆる企業ですとか株式会社から見たときに、公取のやっぱり目を付けるところって、例えばマーケットシェアがすごく大きいとかそういうところが合併しようとしたときには、そもそもまだ事業を始める前の段階でストップが掛かったり解体になってしまうという実態があるわけですね。  というときに、例えば全農がお米の取引で四割持っているとか肥料の取引で八割持っているとか、そういうそもそも大きなマーケットシェアを持っているという段階でやっぱり足がすくむはずでありまして、こういう選択肢としてもし示すのであれば、より何で株式会社化なのかというところのメリットをしっかり説明いただくのと同時に、やっぱり事前相談の部分ですね、本当に、相談して、そもそもこれなら大丈夫だと確信していただけるようなものなのかということも含めてこれは多少橋渡しなりしてあげないと、なかなか自分たちでどうなるか分からないけれども株式会社にしてみようという話にはならないんじゃないかなというふうに思っておりますので、こういった点、今回は別に強制で変えなければいけないという話ではありませんけれども、制度のちょっとメリット、趣旨が見えにくいというところは御指摘させていただきたいというふうに思っております。  最後、TPPについても、若干時間がありますのでお伺いをしておきたいと思います。  今回、大筋合意見送りとなりましたので、成っていればいろいろお伺いしようと思っていたこともあるんですけれども、今の段階で何かお伺いしてもなかなか難しいんだろうなということでありますので、これだったらお伺いできるかというところを幾つか今日用意しましたのでお伺いしたいと思います。  まず一点目は、私、以前この委員会におきましても、政府が二〇一三年三月に公表されました政府統一試算ですね、TPPによって日本の農林水産物の生産額というのが一体どれだけ影響を受けるのか、当時の発表で三兆円減るんだという話がありました。  ただ、これは答弁等もいただきましたけれども、それは、関税が即時撤廃されてしまってゼロになって、政府は何も対策を打たなかったときにそういう数字になるんだということをお話しいただいて、その上で、私としては、交渉においては、今後どういうルール作りをしていくのかということに応じて当然このモデル、試算のモデル自体をしっかりと精緻化していって、最後は幾らなんだということをやっぱり発表していただきたいということを申し上げたわけですが、これについて、現時点で、数字は言いにくいかもしれませんけれども、ちゃんとこのモデル、アップデートされているのかということと、その影響をどの程度と見ているのか、お伺いしたいと思います。
  134. 高田潔

    政府参考人(高田潔君) お答えいたします。  先生指摘のとおり、二年前に発表した数値はかなり極端な仮定を置いたものでございます。  今、交渉が続いております。交渉の途中段階で条件を変えて試算を行うことは考えておりませんが、今後、交渉の結果を踏まえて必要な検討を行ってまいりたいと考えております。
  135. 平木大作

    ○平木大作君 モデルを改定しているのかどうかも含めてお答えいただけないということですかね。ということでしょうか。そう、じゃ、受け止めます。
  136. 高田潔

    政府参考人(高田潔君) モデルの改定というのは、結果のそれぞれのいろんなデータですとか、内容に応じてどのような分析ができるかとかいうようなことがございますので、交渉の結果を踏まえまして検討してまいりたいと考えております。
  137. 平木大作

    ○平木大作君 次の問いに移りたいと思うんですけれども。  今回、特に先週一週間、非常にいろいろな報道、情報等が出てきて、それのどれが正しくてどれが間違っているのかというのは分からないわけでありますけれども、あえてちょっと基本的な原則に戻らせていただきたいと思うんですけれども、TPPというのは、基本的には加盟国同じルールを適用するという枠組みであるというふうに思っております。  かつて、ガットの時代ですとかWTO等では、いわゆる最恵国待遇みたいな、どこかの国、一か国と何か約束をしたら、それは基本的に全ての加盟国に適用しなければいけないというものがありました。  今回のこのTPPにおいても、いわゆる日米の間でお米の話だけしているみたいなことがよく出てくるわけでありますけれども、最終盤、結局、米の特別輸入枠みたいなものは、米国だけじゃなくてオーストラリアもなんだという話が出てきたり、あるいは、この加盟国の中を見ていくとベトナムみたいなまたお米を作っている国もあると。  この、一体、個別にやっている交渉というものこれ自体が、今後、例えばTPPはリビングアグリーメントだ、基本的には範囲を広げていくんだということもありますから、協定をたとえ結んだ後も、例えば韓国ですとか中国ですとか、お米作っている国が入ってくるかもしれない。一体、いわゆる個別に結んでいる、ある意味、例外的に結んでいる協定というもの自体は、どんな位置付けに今後なっていくのか、どういう取決めで今そもそも交渉が行われているのかということを御答弁いただきたいと思います。
  138. 高田潔

    政府参考人(高田潔君) お答えいたします。  TPP交渉における物品市場アクセス交渉につきましては、各国がオファーをし、それに対して改善リクエストを出す、そういう形で二国間で協議が進められているところでございます。具体的な市場アクセスの改善の内容につきましては全て交渉の中で決定されていくものでありまして、現在、各国それぞれに異なる関心品目、事項について丁寧に対応して交渉しているところでございます。  TPP交渉は現在交渉中であり、詳細についてお答えすることは差し控えたいと思いますが、いずれにいたしましても、物品市場アクセス交渉につきましては、全ての物品について他の十一の交渉参加国と合意しなければならないものでありまして、引き続き、衆参農林水産委員会の決議をしっかりと受け止めて、いずれ国会で御承認をいただけるよう全力で交渉に当たってまいりたいと考えております。
  139. 平木大作

    ○平木大作君 ほとんど答えていただけないのかという感じですね。  今交渉中ということでありますので、それ以上差し控えたいというふうに思いますが、最後にもう一問だけお伺いして、終わりたいと思います。  これはいいんじゃないかと思うんですけれども、この交渉の中で、報道でも出てきました、いわゆる食の安全に関する共通ルールは作らないんだということが合意されたんだということが報じられております。いわゆる残留農薬の基準ですとか食品添加物、遺伝子組換え作物をどう使っているのかと、こういう加工食品における表示義務等ですけれども、この点については今決まっていること、何か出せるものはありますでしょうか。
  140. 高田潔

    政府参考人(高田潔君) TPP交渉における食の安全、安心につきましては、いわゆるSPS、衛生植物検疫章及びTBT、貿易の技術的障害章が該当するところでございます。これら両章につきましては、我が国としてはほぼ議論が収れんしているものと認識しております。  TPPのSPS章及びTBT章につきましては、WTOにありますSPS協定及びTBT協定が既にあり、実質的な内容はこのWTOの両協定を踏まえたものとなっております。  TPPのSPS章においてWTOのSPS協定にない規定は、説明責任の明確化等各国のSPS措置の透明性の向上に関するものが主であります。また、TPPのTBT章においてWTOのTBT協定を超える内容となっているのは、新規規格の策定に際して通報義務を拡大している点等でございます。  これらの両章につきまして、食の安全に関する我が国の制度の変更を求められるような議論、また遺伝子組換え食品の表示を含む食品の表示要件に関する我が国の制度の変更を求められるような議論は行われていないところでございます。
  141. 平木大作

    ○平木大作君 以上で終わります。ありがとうございました。
  142. 儀間光男

    ○儀間光男君 維新の党の儀間でございます。  先週に引き続きまして、農協改革関連法案について質問をさせていただきますが、まず最初に、農協改革をしなければならないという端緒について少し聞きたいんですが、六十年ぶりの改革といいますから、それはもう大改革でしょう。血を流すところもいっぱいあって、リスクもいっぱい背負わなければならないと思います。  ところが、改革の後に新しい芽が生えて飛躍、発展していく、こういうことが前提にならなければ改革をする意味がないと思っておりまして、そういう意味では、きっとこの改革は受け入れられて、立派な将来実も花も取れるというような改革の結果になるんであろうと期待をいたしておりますが、冒頭申し上げましたように、改革をしなければならないという端緒というか、いつ頃から政府はこの発案があって、農協改革をしていかなければ皆さんの言う農協は助からない、もうからないというようなことになってきたのか、いつ頃から着手を始めてきたかをまずはお聞きしたいと思います。
  143. 奥原正明

    政府参考人奥原正明君) 今回の農協改革でございますが、平成二十五年だと思いますけれども、政府規制改革会議の方でも検討テーマに取り上げられましたし、それから与党の方でも、それに連動する形ではありましたけれども、農協について今後どうしていったら農業の発展につながるかという議論が始まったということでございます。  そういう意味では一昨年からでございますけれども、そこから政府の中でも与党の方でもいろいろ議論を重ねて、昨年六月には中間的な取りまとめが行われ、それを踏まえて今年の一月から二月にかけまして制度の骨格が決まって、それを踏まえて法制度を作って、四月の三日に閣議決定をして国会に提出をさせていただいたと、こういう経緯でございます。
  144. 儀間光男

    ○儀間光男君 六十年ぶりということでありますから、月日の流れからしますというと、どんな制度もそうでありますが、創設当時、つまりこの農協法ができた当時、往事はいい制度で、非常にその恩恵もあって今日あったと思うんですね。ところが、今お話があるように、今日、不具合なところが出て、規制改革会議などで話題となって法案提出に至ったと、こういうことでありますから、これはそのとおりで至極いい話だと、こう思っております。必然性は高かったということだと思います。  私は、少し遡って日米間の問題も含めて考えてみたいと思うんですが、日米間の中には各分野に多くの協議機関があります。その中で、平成の二年頃から始まった日米構造協議というのがあって、これから更に進化をしていって改革をし、日米包括経済協議、さらには年次改革要望書、そして日米経済調和対話などというものがあって、これが脈々と流れてきて、何を言おうとしているかというと、在日米国商工会議所から意見書なるものが出てきたんでありますが、その流れがちょっと気になるところでありますね。  恐らく、米国という国は、国益のためには、十年、二十年、三十年、いや四十年だって一つの事案を追っかけていって国益にして、それを積み上げていくという国民性を持っております。これは別に悪いことではなしに、私どもが端的に追っかけられない、休むところに、米国はずっと続いていたと、こういう事案がよく日米間で見受けられるのでありますが、そのことからしますと、今申し上げた平成二年から始まった日米構造協議、これに端を発して米国商工会議所の意見書の提出になったのではないかというふうに考えておるのであります。  ところが、聞きますというと、今、在日米国商工会議所からの意見書は昨年に出されたようでありますが、郡司委員質問に対して、これは政府には来ていないんだ、したがってよく分からないという話であったんですが、彼たち内容が、JAグループ組織改革に関する意見書として准組合員の利用規制を言うんですね。准組合員の利用規制、一番の問題点です。あるいは、JA共済に関する意見として、イコールフッティングをやろう、こういうことも言っているわけでありまして、これは郡司委員もおっしゃっていたのですが、全く偶然とはいえ、この日米二国間の協議がずっと流れてきて、過去には郵政民営化のところまで至って脈々として流れてきて今日のこれにあるのではないかと、こう思うんです。  在日米国商工会議所の意見書なるもの、皆さんの手元に届いていないようでありますが、全く承知をしていないのか、あるいは承知をしているとするならば、どのような感じでいらっしゃるのか、その見解を賜りたいと存じます。
  145. 奥原正明

    政府参考人奥原正明君) まず、平成二年の日米構造協議のときに農協改革の問題があったかどうかというところからお話をさせていただきますが、平成元年から二年にかけて行われました日米構造問題協議、これにおきましては、日米両国の貿易と国際収支の調整上で障壁となっている各種問題について議論をされたわけでございますが、今回の農協改革と関連するような内容はなかったものというふうに承知をしているところでございます。  それから一方で、在日米国商工会議所、これが昨年、特に六月に農協改革の関係を含めて意見書を出しております。農業新聞等に載りましたので、我々もインターネット等でこれにどんな意見書を出しているかということは情報として取って見てはおりますけれども、先ほど申し上げましたように、直接意見書を持ってこられて意見交換をしたということでもございませんので、我々としては、今般の農協改革は、この在日の米国商工会議所の提言を踏まえて検討したものでは全くございません。  この商工会議所の意見の中では、准組合員の利用規制の問題につきまして、正組合員の事業利用の二分の一を超えてはならないと、これは規制改革会議の農業ワーキンググループが最初に出した意見でございますが、この意見を歓迎するということが書いてございます。  ですが、政府の方で今回決定している法案は、この規制改革会議の最初の提言があったのは事実でございますけれども、その後、政府・与党の中で相当議論して、去年の六月の取りまとめもございますし、その後、今年の一月から二月にかけての制度の骨格のところで更に詰めまして、最終的に、准組合員の利用規制の在り方につきましては五年間調査をした上で検討して結論を出すということになっておりますので、正組合員の二分の一という規制をすぐに入れるという話には全くなっていないということでございます。
  146. 儀間光男

    ○儀間光男君 ありがとうございます。おっしゃるとおり、全く関係ないとは思うんですが、余りにもよくマッチした流れであって、そういうこともあるのかなと思ったりしたんですが、今の御答弁で了解というか疑いを晴らしていきたいと、こういうふうに思っております。  さて、皆さんのお手元に来ていないというからここで議論するのも変なんですが、この在日米国商工会議所が意見書を出したということ、これは、経済のグローバル化する中で、我が国の政策遂行に当たっていろいろ意見言ってくるのはちっとも構わないと思うんですね。それまで否定するものでもありません。構わないと思いますが、立ち入り過ぎるのではないかと思ったりしないわけでもないんですね。なぜなら、そんな中であっても、どうしても国益、農家益、こういうことを皆さんは守っていく必要があるわけですから、これは大局的見地から是非とも守っていただきたいというふうに思っておるところであります。  例えば国益を守るという意味では、今盛んに安保法制が審議されておりますが、向こうの防衛外交もみんな一緒ですね。あるいはそれは憲法の定めにも沿った考えだと思うんですね、国益を守っていくというのは。そういう意味で、是非とも国益を守っていただきたい。  ちょっと蛇足を言いますと、西ドイツの戦後の大統領でワイツゼッカーさんっておられましたね、統一ドイツの初代大統領ですが。この方が戦後四十年の記念演説で、荒れ野の四十年、荒野の四十年、演説集があって、その次に出たコメントがあるんですが、こう書いてあるんですよ。政治の要諦とは自民族の利益を代表すること、政治の要諦とは自民族の利益を代表すること。ただし、があるんですね、ただし、道徳と倫理の上に立ってのことである。つまり、良識を持って当たりなさい、国益を求めながら、独り占めしてはいけないですよ、倫理も道徳もちゃんとわきまえてやりなさいよと、こういうことを言っていると思うんですね。  そういう意味では、徳永委員から報告のあった昨日、おとといのTPP、どこかの国が感情的でわがままがあって崩れて、それはよかったなどとおっしゃっていましたけれども。冗談とは聞きましたけれども、そういうことの戒めだと思うんです。そういうことからしますというと、やはり道徳を持って、倫理を持って、他国のことも、相手のことも認めながら自国の利益を確保する、これが一番大事なことだと思います。  もう一つ、国際団体の関係について伺いますが、この農協改革に対して、世界でも最大な非政府組織のICA、これは国際協同組合同盟の略称だそうですが、ここが、政府の示している農協改革法案を調査するためICA連携で調査団を日本に派遣したと。その調査結果を昨年十月の九日、カナダで開催されたICA理事会において報告をされて、これが満場一致をしているという報告があります。その内容をちょっとそのまま読ませていただきたいと思います。  ICA、つまり国際協同組合同盟は日本の農協と家族農業を脅かす提案に懸念を表明しますという意見が出たんですね。同理事会は、日本の農協運動の結束を解体しようとする法改正の動きに対し大きな懸念を持っていると、こうも表明されておりました。こうした法改正には、日本の農協農業者や地域社会に提供しているサービスを縮小し、最終的には国民経済にとって逆効果となるであろう、特に、協同組合組織を脱協同組合化し株式会社にしようとしているが、それは非合理的なプロセスであると指摘をしております。  更に続けて読ませていただきますが、国連に認知された協同組合原則の、原則というのがあるんですね、原則の番人としてICAはあるんだそうです、番人としてICA理事会は、現段階で見通されている法改正の方向は、明らかに次の協同組合原則を侵害するものであると考えると。  その原則でありますけれど、三つ原則があって、数字の若い方から順に言いますと、第二の原則では、民主制の原則でありますが、組合員はその活動を発展させるため、最も良いやり方を自分たち自身で決めてやらなければならない。  さらに、第四の原則では、自治と独立の原則、これは、協同組合の自治と独立は、いかなる形の外部からの力によっても侵されるべきものではないと、こう規定されております。  最後に、地域社会への関与の原則、これは第七の原則でございますが、協同組合は公共、公益のための活動が求められており、日本以外の国においては、政府や議会がこの原則を非常に肯定的と捉えていると。驚きですね、日本以外とありますよ。日本は逆みたいですが、それをちょっと後で聞きますけれど。日本以外の国においては、この原則は政府や議会においても非常に肯定的である。裏返しで読んでみますというと、日本はこれを否定的であるというふうに読めないでもないんですが。  このICAの指摘政府はどのようにお答えするかを答えていただきたいと思います。
  147. 奥原正明

    政府参考人奥原正明君) 御指摘いただきましたICA、国際協同組合同盟の方が昨年十月に農協法改正の動きに対しまして意見を表明されたことは承知をしております。  このICAの協同組合原則でございますが、非政府組織、NGOでありますICAにおいて採択をされたものでありまして、条約ではございません。したがって、政府として解釈権を有するものではありませんし、内容に拘束されているものでもございませんが、農林水産省としては世界の数多くの協同組合が参加をするこのICAの協同組合原則についてもできる限り尊重したいというふうに考えております。  総論的に言いますと、今回の農協改革は、農協自己改革を促進するという観点から、地域農協が責任ある経営体制を確立するための理事構成や経営の目的などを規定して、自己改革の枠組みを明確にするということと、行政に代わって経営の再建指導を行う特別認可法人である中央会につきまして、地域農協自己改革を適切にサポートする、それができるような自律的な組織体制に移行することを規定するものでございます。したがって、この自治、独立、民主制などについてのICAが懸念するような内容のものにはなっていないと考えておりますが、今御指摘いただきました三つの原則、第二原則、第四原則、第七原則に照らしてどうかということをちょっと付言して御説明したいと思います。  先ほど御指摘ございました、まず一つは、このICAの第二原則でございますが、第二原則は組合員による民主的な管理ということになっておりますので、これは組合員は平等の議決権、一人一票を持って、協同組合が民主的な方法で管理されることを要求しているというものだと理解をしております。この点につきましては、今回の改革では、地域農協の理事の過半数を認定農業者などにするということを求めておりますけれども、これは農業者の協同組織として責任ある経営体制とするものでございますので、運営が一人一票制により民主的に行われることには変わりがございませんので、この第二原則に合致しているというふうに考えております。  それから、ICAの第四原則でございますが、自主自立ということでございますけれども、これは、協同組合は組合員が管理する自助自立の組織であって、組合員による民主的な管理を確保して、また、組合員の自主性を保つことを要求しているというものだというふうに理解をしております。この点につきましては、今回の改正において、農協については農業者の自主的な組織である性格は何ら変えておりません。また、中央会制度についても、法律により行政に代わって指導監査をする権限を与えられて、全国や都道府県一つに限り設立をされる特別認可法人という制度から自律的な新たな制度に移行するというのが今回の改正の趣旨でございますので、この第四原則にも合致をしているというふうに考えております。  それから、ICAの第七原則でございますけれども、地域社会の関わりということでございます。これは、協同組合が地域社会の持続可能な発展に努めることを要求しているということだと思いますけれども、この点につきましては、今回の改革は、地域農協が農産物の販売等を積極的に行って農業者の所得向上に全力投球できるようにすることで地域の発展に寄与するとともに、地域農協の実際上果たしている地域のインフラとしての機能を否定するものではございませんので、この第七原則にも合致しているものと考えているところでございます。
  148. 儀間光男

    ○儀間光男君 詳しく丁寧な御説明、改革法との関連についても御説明をいただきました。ありがとうございました。  今、関与はしていない、あるいはその影響を受けないと申されましたけれども、国際的な組織であるだけに関心事ではあると思うんですね。だからといって、影響を受けないけど関心は持っておられる。そうじゃないと、日本のこれに加盟する団体だって困るわけですから、やはり影響を受けないでも関心を持って配慮していくということぐらいのことはやってよいのではないかと思ったりもいたしております。  さらに、これ、結びがあるんですよ。ICAは、いかなる法改正においても、日本の農協組合員に役立つ必要な改革を自ら実施するための組織能力をきちんと考慮されるよう、つまり、日本の農協は能力があるんだからその組織能力を考慮しなさいと、日本のICA会員組織による政府や国際機関との対応を支援していくと、日本のICAに対しても政府や国際機関等の対応をお手伝いしていくんだという決意がありますね。これがプレスリリースをされていると思います。  また、この農協改革に対して、ICAのポーリン・グリーン会長というのがおられます。女性のようですが、組合員による所有と管理という、協同組合のまさに根本的な原則を明確に攻撃するもので、いわゆる農協改革はそれを攻撃するもので、日本の農業協同組合をモデルとした農業協同組合が世界中で発展している、その中で今度の改革案は協同組合の価値や原則を完全に無視していると決めているんですね。  そのように厳しい批判をしておりますが、ICAの指摘する点に関しては、見ようによってはうなずける、一理もあるのかなと思ったりするんですが、政府はどのような見解をお持ちか。また、ICAから我が国政府に対して、農協改革案についての意見などが正式に申し入れられた事実があるのか、あるいは、ないとすれば、もう関係ないと言っていましたから来ていないと思いますが、あるかないかということを申し添えますけれど、さっきないと言いましたから、あれ以上の答弁がなければ答えないで結構であります。  さらに、もう一つお聞きしたいんですが、去る五月二十七日に行われた衆議院農林水産委員会、ここにおける法案審査のために、参考人からの意見聴取において、北海道大学の名誉教授太田原高昭先生意見を興味深く読まさせていただきました。  その中で、私もこれは度々申し上げてきたんですが、昨年も本委員会で言いましたが、農政の責任に関して、今日、我が国の農業は農業従事者の高齢化や後継者不足、耕作放棄地の増加、あるいは生産性向上のための農地の集積化などなど多くの課題を抱えておる現状にあるが、その責任は政府の農業政策にも起因しているのではないのか。これは私も度々申し上げましたが、太田原参考人も同様に指摘しておりました。私ども軌を一にすると思っておりますが、その規制改革会議で農政の責任は全く触れられていないんですね、規制改革会議の中で。農政の責任については全く触れられなくて、農協や農業委員会改革の必要性だけを提起しているのであるが、これは責任の転嫁ではないかと同教授は痛烈に批判をしております。  農政の主務省庁である農林水産省は、農政の責任論に対してどのような認識をお持ちなのか、これも少しく聞かせていただきたいと思います。
  149. 山田俊男

    委員長山田俊男君) 儀間先生、どなたにお聞きになりますか。
  150. 儀間光男

    ○儀間光男君 大臣
  151. 林芳正

    ○国務大臣(林芳正君) この太田原先生衆議院でのお話の中には生産性のお話が入っていたわけですが、生産性の向上には単収の向上だけでなくて生産コストの削減、これもまたあるのではないかなと、こういうふうに思っております。  日本の農業の特徴は、大規模経営体といっても実は分散をした圃場を利用しているということもあって、そうしますと、一回機械を入れて、そこをやって、また次のところへ行くまでに機械を出して運んでと。こういうようなことをやって、コスト削減、生産性向上になっていかない、こういうことが実はあるわけでございます。これは主に米等の土地利用型の農業については大事なことでございますが、したがって、この収益性を高めるためには、単収の向上はもちろん大事でございますけれども、それに加えて、やはり経営規模を拡大して分散している農地の集約化を図る、その上で作業人員を極力少なくして機械コストを極力小さくすると、こういうことが必要であろうということでございまして、まさに今五割まで参りました担い手の利用面積を十年間で八割にしていく、そのためには農地中間管理機構を積極的に活用していくということでやってきておるわけでございます。  また、農政の責任論についても今触れられたということでございました。我々も、農水省は常に正しかったと胸を張っているわけではございませんで、やはりいろんな今までの農政の課題を見ますと、例えば米の消費量が昭和三十七年の一人頭百十八キロから足下の五十六キロに減ってくる段階の中で、生産の転換、今餌米等で一生懸命やっておりますが、もう少し早く取り組めなかったのかなと、いろんな反省もあるわけでございますので、しっかりとそういう反省をしながら新しい政策をつくって、いわゆる車の両輪ということで産業政策とそしてこの地域政策ということをやっていこう、産業政策の中に需要という柱も立てて供給、需要、バリューチェーンということをやっていこうと、こういうことを進めてきたわけでございますので、まさにそういうことをみんなで目的を共有をしてしっかりと進めていきたいと、そういうふうに思っておるところでございます。
  152. 儀間光男

    ○儀間光男君 御指摘ありましたように、大規模農業が生産性が上がって、小規模が生産性は上がらないという議論は僕は当たらないと思うんですね。生産性というのは単収に対しての収穫率あるいはコストであって、収穫量じゃないんですね。大規模になれば収穫量当然多くなりますけれども、じゃ小規模と比べて合理的で生産性が高かったかというと、あながちそうでもないと。小規模農業でも単収を上げてコストダウンして生産性が上がる農家だってあると思うんですね。だから、そういう議論は余りしたくないんでありまして、これについてはまた、そんなに追いかけませんが、機会を改めたいと思いますけれども、そんな時間がないんですね。  途中ちょっとはしょっていただいて、国連が日本に期待をする、日本の農業に期待をする発表があるんですよ。それちょっと見たいと思います。  国連の世界食料安全保障委員会の報告書を見ますと、日本は小規模農業部門の経験を世界に提供する存在であると言っています。我が国の小規模家族経営が小規模のままで近代化に成功し、生産性、生産力を高めた世界で唯一の国である、こういうふうに評価されております。国際機関の中でも最も高い評価を得ている事実があります。特に小規模家族農業が大多数であるアフリカやアジアのリーダーになってほしいと。アジア、アフリカの農業は小規模ですけれども、これのリーダーとして日本がその成功例を示してあの地域を引っ張るべきであるというような強い期待感が国連から発出されているのであります。  これも大臣にお聞きしましょう。こういう国連が日本に期待する小規模家族農業、アジア、アフリカへの指導、そういう期待が込められておるんですが、決意のほどというか、見解をお示しいただきたいと思います。
  153. 林芳正

    ○国務大臣(林芳正君) アジア、アフリカから我々のこのやり方が評価されている、大変喜ばしいことであろうと、こういうふうに思っております。  とかく我々は、アメリカやオーストラリアといった物すごく広いところで百メートルもあるような機械を使ってやる、こういうところに目が行きがちでございますが、実は私も何度か東南アジアに出張いたしまして、やっぱりそういうことができるところというのは限られております。いわゆる新大陸という、北米それからオーストラリア、こういうことになるわけでございますが、東南アジアの国等に行きますと、やはりそうではないようなところで、しっかりといろんな工夫をして農業をしっかりとやっていくということに対する、日本に対する期待、またそういう日本の農業の技術を是非移転してもらいたいという強い要望があるわけでございまして、ベトナムとは既に日・ベトナムのフレームワークをつくりましていろんなモデル地区を指定してやるということをやってきておるわけでございまして、このモデルをほかの国に今広げていこうと、こういう展開も始まっておるところでございます。  農業は集落共同で行う水路や農道等の地域資源の保全管理、こういう基礎がないとできないということでございますので、農村コミュニティーの維持、活性化を図るということが大変大事だと、こういうふうに思っておりまして、先ほど車の両輪と申し上げた、地域政策というのは何もすばらしい景観を守るだけではなくて、そういう農業をやっていく上での基本的に必要なところをしっかりと守っていく、多面的機能支払等もそうでございますが、そういうことをしっかりやっていこう、こういうことではないかと、こういうふうに思っておりますので、今後もこの車の両輪をしっかりと回していくことによって我々自身がしっかりとそこをやっていくということと、それからアジア、またアフリカ等にそういう御期待があればしっかりとそれにも応えていくようにやってまいりたいと思っております。
  154. 儀間光男

    ○儀間光男君 ありがとうございました。  ただ、そうでもないと私は思っておりますが、我が国の農業、農政を見て、特に稲作を見てみますと、農地中間管理の法案ができたりして、ややもすると、大規模、土地を集積して大きくしていこうとするところに軸足が少し傾いているのかなと思ったりするんですね。  里山稲作だって、今大臣指摘されたようにたくさんの効能を持っておりますから、里山を守り、景色を、環境を守るということで、多くの機能を持っておりますから、小規模農業も含めて農政を展開する必要があるだろうと、釈迦に説法でありますが、そういう思いをしております。  ただ、ここで言いたいのは、国連からこれぐらいの期待がされておりますから、積極的にアジア、アフリカ地域へ行って、小規模家族農業、これの営農指導をしたりして、ここの地域の発展に貢献されると。また、国連としては、ここの改革に資金を投資をしていくんだというようなこと等も言われておりますから、是非ともそういうことに向いていただきたいと、こう思います。  さて、我が国の農業協同組合が総合農協としての機能を十分果たしていますね。生産資材の供給や農産物あるいは物販など、貯蓄や保険の取扱い、生活物資の供給、地域によっては医療、福祉の提供又は農民に対してもちろん営農指導、あるいは文化活動のためのコミュニティーセンターの運営など、広範な経済的、社会的なサービスを行っているのが我が国の総合農協の実態だと思います。そういう現在の農協が総合農協としての機能を有していることから、様々な事業展開が可能になってきております。  申し上げたいのは、総合農協としての諸事業に賛否それぞれ意見があることは承知をしておりますけれど、農協が今日まで果たしてきた諸事業を正当に評価をしていただくことも極めて大事であると理解します。正当な評価の上に立って農協改革を進めると思いますし、また、政府は長年にわたって農協の諸事業に関して大きく貢献してまいったとも思っておりますが、これからもどうぞ、我が国の農業が、農業を含めて一次産業が外国と遜色のないような、あるいはTPPがどうなっていくか分かりませんが、これが最悪の状態であっても、競って負けない、こういうような農政を体制づくりをすることが大事だと思いますから、どうぞそのようにしていただきたいことを申し上げたいのでありますが。  今回の農協法改正に対してJAグループが、自己改革規制改革というペーパーが出ておりますね。そのペーパーの中で、中央会が目指すJAの意思に基づき設立された自律的な制度、あるいは加入、脱会等の自由等、あるいは実態と乖離した法律上の制約的制限の全廃、あるいはJAの自由な経営展開のための必要な機能の集約、これは経営相談だろうし監査機能だろうし、代表機能、統合調整機能、この三点を持つようにJAが農業振興あるいは地域振興に貢献する前提となっておりますが、このJA経営の健全性を維持するために中央会のこの三つの機能が必要と訴えておりますが、これについてどのようなお考えがあるのか、あるいはJAの提起した自己改革規制改革は今回の農協法等の改正にどのように反映されていくのか、見解を賜りたいと思います。
  155. 奥原正明

    政府参考人奥原正明君) 農協組織は当然民間組織でございますので、今回の農協改革法で自己改革の枠組みはある程度提示をされておりますけれども、この枠も踏まえまして自己改革として進んでいっていただきたいなというふうに思っているわけでございます。  その中で、今御指摘ございました中央会業務でございます。昨年十一月に中央会の方で示された今後の中央会の仕事として三つ指摘のとおり書いてございまして、一つは代表機能、それから一つは総合調整機能、それからもう一つは経営相談と監査ということになっております。  基本的に、中央会を自律的な組織に移行するという今回の法改正中身におきましても、この三つの仕事というのを尊重して法制度がつくられております。特に、県の中央会につきましては農協連合会という組織に移行することになりますけれども、そこの仕事としてこの代表機能、総合調整機能、それと経営相談、監査という、この三つができるように附則の中でも書いてございます。  それから、一方で、全国中央会の方につきましては、監査部分は外出しをして新しい公認会計士法に基づく監査法人をつくるということになっておりますので、残りの二つの仕事、代表機能と総合調整機能、この二つの仕事を中心に今回の改正法の附則の中で位置付けられているところでございますので、農協系統の自己改革の考え方も踏まえた上で今回の法律はできていると、こういうことでございます。
  156. 儀間光男

    ○儀間光男君 ありがとうございました。  最後になりますが、私見で恐縮なんですが、この農協改革法案、なぜかしら、私、小泉政権時代の郵政改革とダブって見えてしようがないんですね。郵貯事業、郵政改革は簡保が多かったんですが、膨大な資金がある郵政が民営化され、今度は九十兆と言われる農林中金が、狙われたと言ったら語弊があるんですが、その対象になっているということであって、こう勘ぐるのは私一人なのか、心配でありますが。  そこでお聞きしたいんですが、政府農協信用事業部門や共済事業部門、あるいは将来的にも農協から分離する考えはないという野村委員への御答弁でありましたが、それはいいとして、農林中金の預貯金が財政投融資に運用された経緯もありましたが、現在、農林中金の預貯金が政府の財政資金や我が国の国債購入などに活用されていないのか、もし活用されているとするならば具体的に数字をお示しいただきたいと思います。
  157. 奥原正明

    政府参考人奥原正明君) ちょっと数字は今手元に持っておりませんけれども、農林中金資金運用は、基本的に国内それから国外の株式あるいは債券で運用しておりますので、国内で国債も含めて運用されているということだと思っております。  ちょっと数字につきましては整理をしたものを後ほどお届けしたいと思います。
  158. 儀間光男

    ○儀間光男君 後で教えてくださいね。  終わります。ありがとうございました。
  159. 紙智子

    ○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。  まず初めに、TPPについてお聞きします。  TPPの閣僚会合が大筋合意がされないまま終了しました。その経緯と今後の取組、取扱いについて、端的に明らかにしていただきたいと思います。
  160. 澁谷和久

    政府参考人澁谷和久君) お答え申し上げます。  先ほども御答弁申し上げましたが、ルールの分野では相当程度の進展が見られたわけでございますが、その中で知的財産の分野の一部については各国の利害が対立して、そこはほとんど進展がなかったという、そういう大きな分野が一つあったということでございます。それから、物品市場アクセス交渉の中で、一部の国の間の特定物品について、これも各国利害が対立をしてうまくいかなかったと。  ほかにもあるんですけれども、こうした状況の中で、大きな課題について、特に知的財産の大きな課題について全体を終結させるというところまでは至らず、引き続き各国が課題の宿題を持ち帰った上で整理をしてからもう一回集まった方がいいんじゃないかと、こういう経過になったわけでございます。  八月の末までに残された論点について各国十分な整理をして、その上で再度集まろうというのが各国の共通認識でございます。
  161. 紙智子

    ○紙智子君 閣僚声明が出されましたけれども、その閣僚声明の中に触れている実質的な進展を成し遂げという、これは何を指していますか。
  162. 澁谷和久

    政府参考人澁谷和久君) ルールの分野につきまして、物品貿易とか、物品貿易のテキストでありますけれども、投資とか環境とか金融サービスとか紛争処理などのこれまで未決着だった分野について、三十一のチャプターのうち、ちょっと前文と最終章を除くと残されたのは四つぐらいだというふうに先ほどお答え申し上げましたが、そのぐらいまで多くの分野について交渉を収れんさせるということができたということは事実でございまして、この部分がかなり実質的な進展と呼べる分野ではないかと思います。
  163. 紙智子

    ○紙智子君 それなのに、なぜ合意できなかったんでしょうか。端的に、本当は合意すると言っていたんだけれども、できなかったというのは何が原因だったんですか。
  164. 澁谷和久

    政府参考人澁谷和久君) 知的財産の医薬品にまつわる課題が各国の対立が非常に激しいということと、それから物品の交渉、関税の交渉の中で、ある国とそれ以外の国との間の交渉が膠着状態にあったというのが大きな理由ではないかと思います。
  165. 紙智子

    ○紙智子君 それで、非常に医薬品の激しい対立と、そのほかのことでも膠着状態だったというのが、八月末までにこれ解消するという見通しはあるんですか。
  166. 澁谷和久

    政府参考人澁谷和久君) 実際に、それ以外の論点は相当収れんをしたというのは事実でございまして、現場に行きますと、やはりかなりのスピードで各分野のものが収束に向かっていたというのは肌で感じたところでございますけれども、そうした中で特定の課題について各国それぞれ課題を持ち帰って、恐らく閣僚会合の前までに様々な手段を使って、二国間の交渉それから少数国の間の協議などが続けられるものだと思います。  そうしたことを通じて論点を更に狭めていくと、こういう作業を通じて全体の合意に向けた努力をしていくというふうに考えております。
  167. 紙智子

    ○紙智子君 希望としては合意できるようにしたいということだと思うんですけれども、これによって、仮に八月に合意になったとしても、米国政府も、これTPAに基づいて議会承認手続に入るためには、議会への協定締結の報告、それと経済的な影響評価で三か月掛かるわけですよね。その後に協定の締結ということになって、それは早くても十一月末と。それから議会に法律改正の事項を提出というふうにしていますから、どんなに早く議会に提出しても、これ審議は来年の二月の大統領選挙の予備選挙の時期に重なるんじゃないのかと。事実上できないことになるんじゃないか。ましてや、八月の末に合意ができないということになったら、これTPP交渉は来年十一月の大統領選挙以降になると言わざるを得ないわけです。  まさにそういう意味では漂流する状況になるんじゃないかと、その点についての認識はいかがですか。
  168. 澁谷和久

    政府参考人澁谷和久君) 他国の政治スケジュールについて、私がこの場できっと大丈夫だろうということを申し上げるのもどうかと思いますので、あえて申しませんが、ただ、そういうことも踏まえて、今回議長であるアメリカが、今回は一度解散してもう一回集まろうという、そういう判断をされたというふうに考えております。  いずれにしても、十二か国全員が今回何とかまとめようという機運があったことは事実でございまして、また次回、何とか今月中に集まろうという思いは、これは十二か国共通の思いでございます。
  169. 紙智子

    ○紙智子君 集まっても、中身が煮詰まらないとなかなか進まないんだろうと思います。  私は、この事態を見て、いろんな新聞報道もありました、そういう中で、北海道新聞が書いていますけれども、とにかく日本の政府の姿勢がやっぱり際立って目立ったと。それは、各国が自分たちの産業や利益を守るために必死になって譲らない交渉をしている中で、日本だけはもうとにかく前のめりになってどんどん譲歩しているんじゃないか、もうカードも使い切ったんじゃないかということも指摘をしている状況があるわけです。  私、問題は、政府が何としても大筋合意するんだといって、国会決議があるにもかかわらず、国会決議に真っ向から反する譲歩に次ぐ譲歩をしてきたということ、これはもう本当に問題だと思うんですね。  米に関して言えば、これ、報道で出ているところでいってもそうだし、報道を超えてというか、甘利大臣自身も発言されていますけれども、最低でも五万トンもの別枠輸入を米国政府に譲歩したと。これに対して米国政府は、十七万トンもの別枠輸入を要求していると。そうしたら今度は、五万トンプラス二から三万トン、これを上乗せすることを検討する案をまた出すと。  牛肉の関税については三八・五%から九%に時間掛けてやるということだけれども、これだって分かりませんよね、最初にわあっとやるということもあるわけで、豚肉の従量税についても四百八十二円から五十円に引き下げるということを、それぞれ米国政府に約束をしていると。乳製品の低関税枠も七万トン認めると。  国会決議無視だと、これは。これははっきりそう言える中身だと思うわけで、もう譲歩に次ぐ譲歩というふうに言わざるを得ないわけですよね。養豚協会もその状況を見て、次世代に畜産業を継がせることができないというふうに危機感をあらわにしているわけです。それから、萬歳JA全中会長も、ここの出ている数字が本当だとしたら到底納得できるものではないと怒りの声を上げているわけです。  これでもまだ国会決議に反していないというふうに言い張るつもりでしょうか。
  170. 澁谷和久

    政府参考人澁谷和久君) 私、七月二十七日に出発いたしましたが、その日、たしか午前、お昼前から農業関係者の方が決起集会のようなものを開いて、私、初めてそういう場にお招きをいただいて、挨拶をしろということで、私が申し上げたのは、国会決議というものは片時も忘れたことはないということでございます。各国の交渉の場でこの決議というものを何度となく説明をし、本当に本当にこの決議なのかということを確認するために日本語の原文を見せろと言われたこともあるという話も御披露いたしました。  その上で、最終的に国会で御承認いただけるような内容にしなければいけないという思いで交渉をやっておりますというのが出発前の私の挨拶でございまして、そういう気持ちでずっとこれまでも交渉してきているということでございます。
  171. 紙智子

    ○紙智子君 甘利大臣自身が、それまでは、いや、全て新聞報道ですからというふうに言って、実際そんなことは報道の範囲だというふうに言ってきたけれども、もう五万トンという数字も出して、そういうことも含めて、やっぱり今度の交渉政府の姿勢として、本当に利益を守るとか国会決議を守るというよりも、妥結をとにかく急ごうと、そういう姿勢が見えて、ですから、JAの会長もそうだし、北海道のJAの飛田会長も、やっぱりこれはもう本当に納得できる問題じゃない、もしそれが本当だとしたら大打撃を受けるんだと、北海道の農業そのものがやっていけなくなるということでの声を上げているわけですよ。  そういうことを、やっぱり現にこういうことが実際報道されているのにもかかわらず、あくまでもそれは報道の範囲ですからといって明らかにしない、まだ決まっていないので言えませんと、この姿勢そのものが私は本当に許されないと思うんですよ。  それで、さらになんですけれども、合意もしていないにもかかわらず、この合意内容国会決議に明確に反しているにもかかわらず、稲田自民党政調会長は、いろいろな影響が考えられ、結果を踏まえて対策を取る必要があるんだと、当初予算と事情が変わったならば補正予算の可能性も含めて検討していくと言って、補正予算の準備に取りかかることを表明したと。さらに、西川自民党戦略調査会長も、次にやれば大筋合意ができるという言葉を信じる、それに基づいて、みんなの期待に応えられるような予算編成をしていきたいと。もう見切り発車もいいところなんですよね。  国会に合意内容を一切報告もしていない。ここに座っている自民党の与党の皆さんは知っておられますか、中身。誰も知らないですよ。知らないにもかかわらず何で予算編成に加えることできるんですか。もう政府・与党は、対策の予算編成進めるというふうに、そんなこと本当にするんですか、決まってもいないにもかかわらず。おかしいじゃないですか。どうですか、農水大臣
  172. 林芳正

    ○国務大臣(林芳正君) 澁谷さんから今答弁があったとおりでございまして、様々な報道があることは私も見ておりますが、交渉の具体的中身についてはコメントはできないということでございます。全体をパッケージで交渉しておりますので、何か一部分だけ決まったということはないわけでございますので、どの品目についても確定しているものはないということでございます。  また、国内対策についても報道があったということでございますが、交渉が続いておる状況でございますので、やはりこの段階で国内対策に言及するということは、相手国に予断を与えまして、交渉上不利益を被るおそれがありますので、私からは差し控えさせていただきたいと、こういうふうに思っております。  TPP交渉いかんにかかわらず、活力創造プラン、それから食料・農業・農村基本計画、これに基づきまして、概算要求の提出は八月末ということでございますので、しっかりとこの検討を進めてまいりたいと思っております。
  173. 紙智子

    ○紙智子君 パッケージだから申し上げられないと言うんですけれども、農水大臣は、実は中身はもうよく御存じですよね。分かっていますよね。
  174. 林芳正

    ○国務大臣(林芳正君) 何についての中身でございましょうか。
  175. 紙智子

    ○紙智子君 今回合意をするために、今回、実は大筋合意ということで中身を大体まとめて、そして発表する予定だったと思うんですよ。それができなくなったので言わないだけで、発表する用意をしていたと思うんですけれども。それができないわけだから、もう数字とかを含めて大体固まっているというのは大臣ですから御存じだったと思いますけれども、いかがですか。言えないかもしれないけど、御存じだったですよね。
  176. 林芳正

    ○国務大臣(林芳正君) 大体固まっているという今委員指摘がございましたけれども、まさにまだ交渉は続いているわけでございます。  したがって、例えばこういう紙があって、ブランクがあって、そこに数字を入れる形でいろんな準備をするというのはできると思いますけれども、実際に確定するまではこの数字を入れたものというのは存在しないということだと思います。
  177. 紙智子

    ○紙智子君 いろいろ言われても、主要な人たちは全部分かっていると思うんですよ、恐らくは。そういうことを全く国民にも知らせない、国会議員にも知らせない。知らせないで、どうして国内対策ということで組むんですか。おかしいですよ。おかしいと思われませんか。
  178. 林芳正

    ○国務大臣(林芳正君) 私は、先ほど申し上げたように、私から国内対策云々ということは申し上げたことはございませんし、私としては、やはり交渉が続いている段階で国内対策に言及することは、相手国に予断を与え、交渉上不利益を被るおそれがあるので申し上げるべきではないと繰り返し申し上げているとおりでございます。
  179. 紙智子

    ○紙智子君 平行線になると思いますのでこれ以上は言いませんけれども、ただ、やっぱりこの出てきている数字、報道だけ見ても、到底これは国会決議をもう守っているなんて言えない状況ですから、そういうTPPは、私はもうこれ以上続けるのではなくて撤退すべきだということを申し上げておきたいと思います。  次に、農協法の一部改正案の問題についてお聞きします。この農協法等の一部改正案の株式会社規定導入問題ということで質問します。  今回の法改正で、農協組織変更し、株式会社になることができるということにしています。全農、経済連についても株式会社に組織変更できる旨の規定が導入されました。本来、協同組合として発展すべきものに対して、相互扶助組織である協同組合とは全く異なる、利益追求を目的とする株式会社の規定を導入すること自体が極めて問題です。  二〇一四年の十月、先ほど儀間先生もお話しされましたけれども、ICA理事会で満場一致で確認された声明で、特に、協同組合組織を脱協同組合化し株式会社にしようとしているが、それは非合理的なプロセスであると、厳しく株式会社化規定の導入を非難しているわけです。  そこでお聞きしますけれども、JA及び全農から、この株式会社化規定の導入が要求されていたんでしょうか、大臣
  180. 林芳正

    ○国務大臣(林芳正君) 特に正式な御要請があったとは承知しておりませんが、農協の事業等、利用者が多様化する中で、事業を適切に運営する観点で、現在でも全農を含めて農協連合会が事業の一部をその子会社に行わせている実態があるということは、委員も御承知のとおりだと思います。今まで組織を分割して一部の組織を株式会社に組織変更するという方式がなかったものですから子会社とするしかなかったわけですが、今回、分割と組織変更を可能とすれば、この方式も選択肢としては活用されることが十分に考えられるということでございます。  農協法という組織法制においては、種々の可能性を考慮した上で適切な対応ができるように選択肢を用意をしておくことが我々としては必要であると考えております。
  181. 紙智子

    ○紙智子君 実際、子会社化の実態があったんだという話なんですけど、私がお聞きしたのは、JA及び全農から、こうした株式会社化規定の導入が要求されたんですかということをお聞きしたんです。要求されたか、されなかったか。
  182. 林芳正

    ○国務大臣(林芳正君) 先ほど冒頭申し上げましたように、正式に要請があったとは承知をしておりません。
  183. 紙智子

    ○紙智子君 JA全農から要望されてもいないのに、協同組合組織に対して株式会社化規定を入れるということ自身が、今回の法改正の本質を明らかにしているというふうに思うんですね。  農協が地域のインフラとしての側面を持っているわけですけれども、既に地域農協では、購買事業などでは子会社化してガソリンスタンドなどを経営しているわけです。そこでは、員外利用として二〇%まで認められていると。それを超えて経営が大変になるとか、そういうことは聞いたことがないんですよね。多くの農協というのは過疎地域を含む農村地域で活動をしていて、人口が増える状況ではないわけです。今の員外利用枠二〇%を上回るような利用者が殺到するというような状況じゃないと。必要であれば准組合員になればいいわけですよね。いかがですか。
  184. 林芳正

    ○国務大臣(林芳正君) 農協というのは農業者の協同組織でございますから、農業者を始めとする組合員に事業を利用させる、これが基本でございまして、員外利用規制というのは本質的なものであろうかと、こういうふうに思っております。  員外利用規制については、都道府県指導を徹底させる中で、違反が確認された場合はその都度個別に解消するという方針で対応しておるところでございます。信用事業については員外利用規制に抵触するケースもあったと、こういうふうに承知をしておりますので、今の立て付けはそういうふうになっておるということでございます。
  185. 紙智子

    ○紙智子君 必要だったら准組合員になるということも、実際上はというか、そういうふうに指導されてきているというふうに現場では聞いているんですけれども、いかがですか。
  186. 林芳正

    ○国務大臣(林芳正君) 准組合員になっていただければ員外利用規制は掛からなくなると、こういうことでございますので、それは望ましいことであろうと、員外利用規制に反するよりはですね、ということではないかと思いますが、実際には、先ほど申し上げたように、員外利用規制に抵触するケース、これもあったということでございます。
  187. 紙智子

    ○紙智子君 株式会社に変更するか農協のままで各事業をやるかというのは選択なんだというふうに言われてきているんですけれども、農協株式会社化というのはそんなに簡単なことではないというふうに思うんですね。協同組合組織の原則の放棄になる、農協の営利化になっていくわけですね。営農指導だとか農業者の生活支援のような、まあ言ってみれば利益に余りならないようなそういう活動というのは、結局、利益を追求していきますと切り捨てられていくわけです。それが中山間地や過疎地域であれば、一層深刻な事態を招きかねないというふうに思うんですね。  それから、全農や経済連の株式会社化については、選択肢どころか、これ、規制改革会議実施計画ありますけれども、その中では、問題がない場合には株式会社化を前向きに検討するように促すものとする、促すというふうにされているわけです。だから、選択肢どころか、これ、全農や経済連の株式会社化の強制になるんじゃないかと。  問題がない場合、農水省は全農や経済連の株式会社化指導するんでしょうか、大臣
  188. 林芳正

    ○国務大臣(林芳正君) この規制改革実施計画ではそういう書きぶりになっていたということでございますが、与党取りまとめに至る過程で、この間も別のところでいろいろ変わったところの確認が規制改革会議にもされましたけれども、今の部分についても、今回法制度等の骨格については、その株式会社にできる規定を置くということだけにしておりますので、促すという部分は入っておりません。したがって、極めて中立的に選択肢を用意したと、こういうのが今の立場であるというふうに考えております。
  189. 紙智子

    ○紙智子君 それでは、確認ですけれども、全農、経済連が株式会社化の検討の結果、経営上問題がないという場合でも、全農や経済連が株式会社化の選択肢を取らずに従来どおり農協でやるというふうに判断しても、政府としてはその判断を尊重するということでよろしいですね。
  190. 林芳正

    ○国務大臣(林芳正君) 全農、経済連には大胆かつ積極的な事業戦略、これを立てた上で、その戦略を進めるために、連合会組織の方がやりやすいか株式会社になった方がやりやすいのかをよく検討していただく必要があると思っております。  先ほど申し上げましたように、株式会社への組織変更はあくまで選択肢として導入するものでございますので、全農、経済連の会員である農協の判断に反して無理に株式会社化を求めることは考えておりません。
  191. 紙智子

    ○紙智子君 それで、問題の本質は、信用、共済の株式会社化にあると思います。本法案においては、信用、共済を除くとしていて、本法案での信用、共済の株式会社化というのは除かれているわけですね。  そこで、今日は法案と与党の取りまとめの関係についてお聞きしたいと思うんです。  与党の取りまとめを踏まえた法制度等の骨格がありますけれども、ここでは明確に、「農林中金信連・全共連は、経済界・他業態金融機関との連携を容易にする観点から、金融行政との調整を経た上で、農協出資の株式会社に転換することを可能とする方向で検討する。」としています。それに対する法制度等の骨格の中では、「金融庁と中長期的に検討する。」としています。  信用、共済の株式会社化について検討を進めるということですよね、これは。そして、このことが農林中金信連、全共連から要望があったのかどうか。この二点、お聞きいたします。
  192. 林芳正

    ○国務大臣(林芳正君) 農林中金信連、それから全共連についてでございますが、今お話のありました昨年六月の政府・与党取りまとめにおいて、単位農協金融事業の負担を軽くする事業方式を提供する。それから、特に農林中金信連は、単位農協から農林中金信連へ事業譲渡を行い、単位農協農林中金信連の支店、代理店を設置する場合の事業のやり方及び単位農協に支払う手数料等の水準を早急に示す。それから、豊富な資金を農業、食品産業の発展、特に農業、農村の所得倍増に資するよう、全農等とも連携して積極的に活用すると。  それから、その組織の在り方ですが、経済界、他業態金融機関との連携を容易にする観点から、金融行政との調整を経た上で、農協出資の株式会社、株式は譲渡制限を掛けるなどの工夫が必要、株式会社に転換することを可能とする方向で検討すると、こういうふうに今御指摘のとおりなっておりますが、実際の組織法制ではこの種々の可能性を考慮した上で環境変化に適切に対応できるようにしておくことが必要だと、先ほど申し上げたとおりでございますが、この農林中金等の株式会社化については、政府・与党取りまとめに基づきまして政府として検討を進めた結果、金融行政との調整を要するということを踏まえまして、金融庁と中長期的に検討するということにいたしましたので、結果として法案には入っていないと、こういうことでございます。
  193. 紙智子

    ○紙智子君 それで、ちょっと二点聞いたわけですけど、農林中金信連、全共連からの要請はあったのでしょうか。
  194. 林芳正

    ○国務大臣(林芳正君) 正式には要請をいただいたと承知しておりません。
  195. 紙智子

    ○紙智子君 ですから、やっぱり当事者から要望がないにもかかわらず、この信用、共済の株式会社化を要望しているということですよね。  これは、在日米国の、先ほど来出てきていますけれども、商工会議所ではないんですか。この在日米国商工会議所は、「共済と金融庁規制下の保険会社の間に平等な競争環境の確立を」という意見書の中で、日本政府は成長戦略の一環として二〇一五年の通常国会に農業改革に関する法案を提出するとしているが、その法案の中には以上の点が反映されるべきであるというふうにしているわけですよね。  大臣も当然詳細を承知しているというふうに思いますけれども、この在日米国商工会議所の影響力というのは非常に大きいものです。USTRとも連携していると。この在日米国商工会議所の意見書というのは米国の多国籍企業の要求を取りまとめたものなわけです。米国政府の要望もつながっているというように思うんですけれども、日本政府としてどのように対応したのか、明らかにしていただきたいと思います。
  196. 林芳正

    ○国務大臣(林芳正君) 今回の農協改革は、農業、農協を取り巻く状況変化を踏まえて、地域農協農業者のメリットを大きくするように、有利販売、また資材の有利調達といった農業所得の増大につながる事業に創意工夫して取り組むと、これを期待して農協システムの全体の見直しを行うものでございます。  今、お話のありました在日米国商工会議所は主として政策提言活動などを行う民間団体でありまして、今お触れになりました昨年六月の提言がどういう趣旨でなされたものか、詳細を承知しているわけではございませんが、いずれにしても、今般の農協改革は在日米国商工会議所の提言を踏まえて検討したものではございません。  信用、共済事業については、貯金や貯金者、それから共済における契約者の保護、それから健全性の確保については、これまでの法改正により、他業態と同様の措置を講じてきておるわけでございます。先ほど申し上げましたように、この与党の取りまとめの中に、単位農協金融事業の負担を軽くするですとか、農林中金信連についていろいろ検討すると、そういうことがございましたので、その組織の在り方ということで株式会社化を検討するということになったわけでございますが、そのまま株式会社化した場合に、銀行法、それから保険業法との関係等、金融行政との調整が必要になるということで、調整が付きませんでしたので、引き続き検討することになったということでございます。
  197. 紙智子

    ○紙智子君 在日米国商工会議所の意向を受けてそのまま聞いたわけじゃないというふうにおっしゃるんですけど、でも、当事者からは要望出ていないのにどうしてこういうことが進むのかなというふうに、どうしても疑問に思うわけですよね。  それで、ちょっと続けますけれども、農協株式会社化は実は韓国でも進行していると。調べてみますと、二〇一二年に韓国では農協株式会社化をしています。農協中央会の下に、農協銀行、農協生命保険、農協損害保険、農協経済持ち株会社、それぞれの株式会社に転換をしているんですよね。  この韓国での農協株式会社化というのは、二〇〇七年に妥結をして二〇一二年に発効した米韓FTAの内容に沿ったものなんですね。その中でも、米韓FTAでは、共済事業と保険事業の間で共済事業に競争上の優位性を提供してはならない、実行可能な限り保険事業と同一の規制を適用しなければならないという規定が明記されたんですよ。そこで、この農協共済が農協生命保険や農協損害保険のそれぞれの株式会社になったと。それはまさに米国の保険会社の要望だったと。それが米韓FTAで実現をしたわけですけれども、言わばこの同じ内容が在日米国商工会議所の意見書に明記されているわけです。  問題は、今TPPのずっと交渉をやってきているんだけど、TPPの金融サービスにおいても同様の考え方、保険事業と同一の規制を適用という考え方が入っているんじゃないかということで、TPPの二十一分野のうち七割分野はもう合意しているというふうに伝えられているわけですけれども、もうちょっと進んでいるのかもしれませんけれども、この金融サービスは既に内容上、日本政府は合意しているんじゃないんですか。それに対応するために、与党の取りまとめで農協出資の株式会社に転換することを可能とする方向で検討するということを決めたのではないんですか。いかがですか。
  198. 澁谷和久

    政府参考人澁谷和久君) TPPの金融サービスの分野は、今回のハワイでの閣僚会合で議論がほぼ収れんした分野の一つでございます。この分野は、越境での金融サービスの提供等に関して、内国民待遇、最恵国待遇といったWTO協定と同種の規律を主として規律しているものでございます。  なお、参考までに申し上げれば、TPPのこの金融サービスのチャプターの中で、協同組合等が行う共済事業等についての規定は現時点では全く入っておりません。その状況で今交渉がほぼ収束に向かっているということでございます。
  199. 紙智子

    ○紙智子君 もう一つあるんですけれども、TPP交渉と並行的に日米並行協議が行われています。そこでは金融、保険もテーマになっているわけです。  そこで、ちょっと今度は外務省にお聞きしますけれども、米国政府からこの日米並行協議で、金融と保険で競争条件の同一性、イコールフッティングの要望が出されていますか。現在どういう状況かということを明らかにしていただきたいと思います。
  200. 宇山智哉

    政府参考人(宇山智哉君) お答えいたします。  非関税措置に関する米国との並行交渉に関する御質問でございますが、二〇一三年に日米間で交換した書簡に従って、御指摘の保険を含む各分野における非関税措置に取り組むこととしております。なお、保険以外の金融サービスそのもの、全体については対象分野とはなっておりません。  非関税措置に関する米国との並行交渉の具体的内容につきましては、現在、最終局面ではございますが、現在交渉中でもありますのでお答えを差し控えたいと思いますけれども、米側は、この書簡と同時に発表した米国国内説明用に作成した米側ファクトシートというのがございますけれども、その中で、米国が並行交渉において取り組むことを求める事項として、保険分野に関しては日本郵政に関連する対等な競争条件に関する事項のみを掲げているというふうに承知しております。
  201. 紙智子

    ○紙智子君 つまり、現在並行協議をやっていて、そのテーマ一つ金融、保険が含まれていて、米国政府からはこの競争条件のイコールフッティングが求められているということですよね。
  202. 宇山智哉

    政府参考人(宇山智哉君) お答え申し上げます。  確かに、保険分野に関しましてこの並行交渉の中で交渉が行われておりますが、その内容につきましてはお答えを差し控えたいと思いますけれども、この対象分野につきまして、米側の発表によりますれば、それは、保険分野については日本郵政に関連する対等な競争条件に関する事項というのが掲げられているということでございます。
  203. 紙智子

    ○紙智子君 結局、米韓FTAで、韓国では米国政府の要求で共済の競争条件の同一性が持ち込まれたと。共済農協株式会社化されたわけです。日本では、TPP及び日米並行協議で同様の要求が米国政府から求められて、与党取りまとめでも、農林中金信連や全共連というのは、経済界、他業態金融機関との連携を容易にする観点から、金融行政との調整を経た上で、農協出資の株式会社に転換することを可能とする方向で検討するということを、金融庁と中長期的に検討するというふうにしたんじゃないんでしょうかね。  最後に、林農水大臣にお聞きしますけれども、信用、共済の株式会社化、イコールフッティングを進めるということなんじゃないでしょうか。いかがですか。
  204. 林芳正

    ○国務大臣(林芳正君) TPP交渉については、今、内閣官房また外務省から答弁があったとおりでございます。  国内の状況については、先ほど政府・与党取りまとめとその後の経緯、お話ししたとおりでございますので、先ほどお答えしたように、中長期的に検討をすると、こういうことになっております。
  205. 紙智子

    ○紙智子君 実際上の今度の農協法の法文には、信用、共済だとかこれは入っていない、除くとなっているけれども、しかしながら、方向性はつくりつつあり、五年後、また見直しということがあるわけですから、そういうこともいずれ考えているんじゃないかというふうにも思うわけです。それについていかがですか。
  206. 林芳正

    ○国務大臣(林芳正君) 先生がそういうことと言うときに、どういうことを具体的におっしゃっているかちょっと判然としないところもございますが、私は、先ほど申し上げたように、政府・与党取りまとめで、こういうことはしなければいけないということがあって、それに対応した組織形態として株式会社のオプションをつくるかということになっておりましたけれども、なかなか難しい課題もございまして調整が付きませんでしたので、今回は入れないということでございます。  したがって、こういうことをやるという中に、今、官房や外務省からお答えいただいたような海外との話が入っていたということではございません。
  207. 紙智子

    ○紙智子君 信用、共済の問題というのは、実はそこのところが狙われているんじゃないのかというふうにも思うわけです。  それで、今度のこの法案をめぐっては、最初も申し上げましたけれども、やっぱり農協株式会社化ということが協同組合の組織原則を放棄することになるし、農協の営利化につながると。そういう意味では、繰り返しになりますけれども、営農指導農業者の生活支援のような、そういう非常にきめ細かにやっていかなきゃいけないんだけれども利益にならないような、そういう分野というのは切り捨てられていくことにつながっていくと。そういう、やはり今度の農協法については、私どもとしてはもうとてもこれは受け入れられないというふうに思います。一層、この問題をめぐってもまた質問、追及していきたいと思います。  以上で終わります。
  208. 山田太郎

    山田太郎君 日本を元気にする会の山田太郎でございます。大トリを務めさせていただきます。あとちょっとでございますので頑張って元気にいきたいなと、こういうふうに思っております。  さて、今日、農協それから農地法、農業委員会の話、かつて私が質疑させていただいた質問についても、多くの委員の方、いい意味でも悪い意味でもたくさん取り上げていただいて大変光栄に思っております。この場を改めてお礼に代えさせていただきたいと思います。    〔委員長退席、理事野村哲郎君着席〕  さて、最初に、ちょっと旬というか、これも国にとって非常に重要な話だと思いますので、ちょっと違う角度から今日は、時間がありますので、お時間をいただいて質疑させていただきたいんですが、食料の安全保障という辺りを少し、入口、お話しさせていただきたいと思います。  今、国会の方で、安保法制ということで国の防衛に関してどうしていくのかということが議論されていますが、実は、その骨太の方針、六月三十日に閣議決定で出たものについても食料安全保障の確立ということが僅かではありますが掲げられています。  安保法制の委員会の方、私も出させていただいているんですけれども、エネルギーに関する確保、シーレーン、それが確保できないとそれ自身は存立危機事態になると、こういうような話が連日議論されているんですが、実は一方で、エネルギーも大事ですが、やはり我が国食料ということもとても大事な論点だというふうに思っております。  自給率が三九%しかないということも取り上げられますし、総理の方は、ガソリンが来なくなれば救急車が動かなくなるとか北海道の方は冬凍死するということですが、食べ物がなくなれば餓死してしまうわけでありまして、やはりエネルギーにも勝る、私は食料というのは一つの安全保障の対象なのではないかなと、こういうふうにも思ったりするわけであります。  そこで、今日は内閣の方からも、官房の方からも来ていただいていると思いますが、食料供給におけるシーレーンの論点、あるいは食料の備蓄、それから周辺諸国、あえて国名は出しませんが、国交断絶等による食料の影響、あるいはそういう大国、周辺の仲が悪くなった大国が買占めというか、かなり大きい国でございますから、買い付けをして買い負けをするのではないか、そうすると食料の確保自身も有事の際は非常に厳しい事態にもなるのではないか、いろんなことが想定はされるというふうに思っております。  そんなところから、まず、内閣府来ていただいていると思いますので、今回の食料に対する危機というのは実際の存立危機事態に当たるのかどうか、その辺りを教えていただけますでしょうか。    〔理事野村哲郎君退席、委員長着席〕
  209. 左藤章

    ○副大臣左藤章君) 今お話のありました平和安全法制に関してですけれども、食料の危機はこれには該当しないんだろうと、このように思っております。
  210. 山田太郎

    山田太郎君 なぜエネルギーは該当して食料は来なくても該当しないんでしょうか。その辺りがちょっとよく分からないんですが、もう一度その違いについて教えていただきたいんですが。
  211. 左藤章

    ○副大臣左藤章君) 食料の安全供給を将来にわたって確保することは、国民に対する国家の基本的責務であると思っております。  食料輸入の途絶等の不測時においても国民が最低限度必要とする食料の供給を確保し食料安全保障を図ることは、国の重要な課題と認識をしております。食料・農業・農村基本法や緊急事態食料安全保障指針等に基づき、政府全体で総合的な食料安全保障の確立を図ってまいりたいと思っております。  先生の御指摘があった食料については、エネルギーに比べて自給率が高うございます。先ほどお話がありましたカロリーベースでいいますと三九%、生産額でいえば六五%ということになりますし、エネルギーは自給率が四・四%であります。そういう状況に応じて作物を転換して対応することができ、また、特定の地域のみから輸入しているものではないため、特定地域からの輸出入が滞ることがあっても、石油などのエネルギー源などと異なり、国民生活に死活的な影響、すなわち国民の生死に関わるような深刻、重大な影響が生じることは想定されないと、このように考えております。
  212. 山田太郎

    山田太郎君 それでは、政府は自給率三九%であれば大丈夫だということをおっしゃっているのに等しいんですが、それでよろしいんでしょうか。  それから、特定の場所じゃないと言っていますが、確かに石油はホルムズ海峡を通過してくるものが八割ですが、実際、日本の例えば電気ということを考えれば、LNGのガスであったりだとかその他石炭であったりとかというのは多様化しているわけでありまして、それでも今回石油が特に取り上げられて電気の問題とかというのも語っているということは、必ずしもいわゆるエネルギーに関して特定な場所にあるからという理屈では通らないと思うんですが。まず、特に私としてはちょっと驚きなのが、自給率三九%ということは、それで十分有事の際でも我が国は賄えると、そういう発想にあるのかどうか、もう一度お答えいただけますか。
  213. 左藤章

    ○副大臣左藤章君) 三九%、特に米の備蓄もたくさんありますし、先ほど申し上げましたけれども、特定の地域から輸出入が滞るということはないと思います。農水省また外務省も含めて、いろんな努力をしながらしっかり食料の確保をすると、このように思っております。
  214. 山田太郎

    山田太郎君 これは農水省さんにもお伺いしたいと思うんですが、先ほど小泉大臣もお手を挙げていたので、農水省さんの認識。本当に食料、輸入に物すごい残念ながら頼ってしまっている。自給率が低いのをこの委員会でもずっと議論していたので、やっぱり有事の際、もちろん何も起こらなければこんなことを議論する必要はないんですけれども、一連の安保法制の中ではいいタイミングですから、しっかり私はやっておくべきだと思っているんですが、もし農水省の方からも御意見あればいただけますか。
  215. 小泉昭男

    ○副大臣小泉昭男君) 我が国の農産物の備蓄でございますけれども、これは消費者、実需者の安定的な食料の供給を確保するためでございまして、これまでの国内外での不作や輸出国における輸送問題の発生等を考慮いたしまして、米につきましては百万トン程度。食糧用小麦につきましては、外国産食糧用小麦の需要量の二・三か月分、これは九十四万トン。飼料穀物、これはトウモロコシ等でございますが、これは百二十五万トン、この内訳としますと、国の備蓄分六十万トン、民間の備蓄が六十五万トンでありまして、この備蓄を実施しているところでございます。  以上でございます。
  216. 山田太郎

    山田太郎君 今のだと、途中でもコメントありましたが、需要の数%ということでもあると思うんですが、それで、もし有事の際、食料安全保障という観点からすると、農水省さん自身は十分だというふうにお考えなんでしょうか。
  217. 林芳正

    ○国務大臣(林芳正君) 食料の安定供給を将来にわたって確保していくということは基本的な我々の責務であると、こういうふうに思っておりまして、国内農業生産の増大を図るということを基本として、これと輸入と備蓄を適切に組み合わせると、これが食料の安定的な供給の確保の基本的な方針でございます。  したがって、今、副大臣からは備蓄についてお答えをさせていただきましたけれども、先ほど、今日は内閣府の副大臣としてお見えになっている左藤大臣からお話がありましたように、石油に比べますといろんなところから食料はやっていけるということですが、一方で、世界の食料需給、タイトになってくるというのも事実でございますので、この不安定な要素は常にあるわけでございます。  したがって、凶作や輸入の途絶等の不測時において国民が最低限度必要とする食料の供給を確保できるように、緊急事態の食料安全保障指針、こういうものを定めております。実際に何か起こって食料の供給に影響を及ぼすおそれがある場合は、この緊急事態食料安全保障指針に基づいて、事態の深刻度、レベルに応じて、備蓄の活用や輸入先の多元化、それから価格、流通の安定のための措置の発動、熱量効率の高い作物への生産転換、こういう取組を実施すると、こういうふうにしております。
  218. 山田太郎

    山田太郎君 確かに農水省さんはこの食料供給に係るリスクの分析、評価というのはしっかりやっていらっしゃるんですよね。私も知らなかったんですが、食料安全保障課というのがありまして、ただ、昨日レクでお聞きしたのは、有事ということはちょっと一切検討はないと、いわゆる内閣の方からも指導で下りてきたこともないので、あくまでも天候不順とかいろんな災害とか、そういったところを中心にやられているんですが。  私は、あってはならないですし、起こらなければ最もいいんですが、やはり政府は国民の生活、安全、生命守っているわけですから、この食料に関してもエネルギーと同等に、しっかり大丈夫だといったことをやはり取り越し苦労と言われても検討しておくということが今回の安保法制の中でももしかしたら筋なのではないかなと。大丈夫というふうにきちっと言っていただくにはもうちょっと検討していただいた方がいいんじゃないかと、こういうふうに思っています。  ただ、もう一つ気になりますのが、これはもしかしたら西村副大臣のところの御担当か分からないんですけれども、骨太の方針の方で、農林水産業の中に食料安全保障の確保等を図るというふうに書いてあるんですけれども、このいわゆる食料安全保障というのは、有事等を想定したものなんでしょうか、そうじゃないんでしょうか。通常、我々農水委員会だと、食料安定供給とかという言葉を使うので、余り安全保障ということをなかなか議論してこなかったと思うんですが、その辺り、どういう意味合いなのか教えていただけますか。
  219. 西村康稔

    ○副大臣(西村康稔君) 済みません、私に通告はなかったものですからあれですけれども、骨太の方針に農業についての記述がございまして、その中で様々なことが書いてございますけれども、ここでは一般的に、食料の自給を上げていく、全体として安全保障、食料としてしっかり供給できる体制をつくるということを書いているわけでございます。
  220. 山田太郎

    山田太郎君 分かりました。  左藤大臣の方は、安全保障関係はこの辺で終わりますので、もし委員長お許しいただければ、これで結構でございます。
  221. 山田俊男

    委員長山田俊男君) 左藤大臣、結構でございます。
  222. 山田太郎

    山田太郎君 次に、TPPの件がやはり今重要なテーマにもなっていますので、この辺り行きたいというふうに思っております。  国際通商交渉は極めて重要だというふうに思っておりますが、ただ、ここまで情報がない、それから、影響度は極めて大きいという中で、やはりそのまま批准されてしまう、又は、分からない中でこういう状態にいるということは看過できないというのは私も立場は同じでありまして、農林水産委員会通じてずっとこの議論が今日続いたのかというふうに思っています。  私も、何名かの委員が聞いたんですが、改めて確認をしておきたいので。今後のスケジュールですね、先ほど来、もし締結したらばということになるのでありますが、十一月末まで国会には持ってこれないと。そうすると、国会ではどこで審議されるのか、臨時国会で一旦は出すのか、来年の通常国会で出されるのか。これは批准の準備だけではなくて二十一項目いろんな項目に及びますから、関連法のいわゆる見直しも一緒にやるということになると、相当な量の作業が出てくると。  今回、もちろん、フローティングしてしまって、認められなければ、まあそれだけよということになりますが、やはり我々は、国民への影響を考えると、時間がない中で突然国会では大騒ぎになってそういったものを議論しなければいけない、心構えも必要だということもありますので、この辺のスケジュール、今後大筋合意に至った場合に、どのようなスケジュールになって、国会ではどんな審議を政府として求めていく予定なのか、中身を聞いているわけじゃないので、この辺りは開示していただけると思うので、是非教えていただけないでしょうか。
  223. 西村康稔

    ○副大臣(西村康稔君) もう御案内のとおり、閣僚会合がハワイで開かれまして、それでかなりの部分が前進をしたわけでありますけれども、引き続きまだ未決着部分がありますので、これについて今後とも交渉の早期妥結に向けて努力を継続するという認識が各国で共有されております。残された論点について各国が持ち帰った上で、八月末までに閣僚会合を開催するというのが共通認識になっておりますので、何とかそうなるように今後も事務的なレベルでの交渉を含めて進めたいと思いますが、具体的な日程はまだ調整中でございます。  その上で、今後も早期妥結に向けて我々としても努力をしていくわけでありますけれども、全体としてTPP交渉の大筋合意がなされて、それから協定の署名が行われた場合には、国会においてできるだけ早いタイミングで御審議いただくということが重要であると考えておりますし、もちろん、中身が大部にわたりますので、しっかりと御審議いただいて御承認いただくということを私ども全力を挙げて頑張っていきたいと思っておりますけれども、具体的な日程は、今後の交渉日程、状況によりますので、今の段階では何とも申し上げられませんけれども、できるだけ早く、署名がなされれば国会で御審議いただくということで臨んでまいりたい、検討してまいりたいというふうに考えております。
  224. 山田太郎

    山田太郎君 前回、これ、西村副大臣だったのか澁谷議官だったのかちょっと覚えていないんですけど、大筋合意が結ばれた段階である程度のことを発表すると、こういう御答弁をいただいたかと思うんですね。問題は、今大筋合意が決まったらば、署名というのはどれぐらいになるのか、それで、署名によって基本的には最終フィックスされたものがいわゆる国民にも国会にも開示されるということになると思うんですけれども、やはりこの開示のタイミングというのが突然来れば非常にやっぱり混乱はすると思っていますので、できれば大体、見通しというのがやっぱりあるというふうに思っているんですけれども、大筋合意をされてから署名までどれぐらいで、署名をされて要はその内容が全てテキストベースで明らかにされるのはどれぐらいなのか、御答弁いただけないでしょうか。
  225. 西村康稔

    ○副大臣(西村康稔君) 大筋合意がなされれば、これはできる限りその内容について開示をしてまいりたいと思いますし、それから、もちろん中身については各国間で、各国十二か国ありますので、そこで相談をして、こういう形で出そうということで相談をもちろんしていくわけでありますけれども、できる限り開示はしていきたいと。  その上で、交渉結果のその中身については、条文については、テキストについては、御案内のとおり、リーガルスクラブと言われる、法制的にしっかりと文言が整理されているかどうか、こういったものの作業もありますので一定の期間が掛かると。さらには、アメリカにおいては、大筋合意後、署名の九十日前までに議会に通知をするというふうなルールになっておりますので、普通に考えれば、そういうリーガルスクラブの期間と米国の手続等を考えれば三か月ぐらい掛かるんだろう、九十日掛かるんだろうということでありますので、その段階で署名がなされ、そのテキストブックも正式な形で公開されるということでありますし、あわせて、日本の場合は日本語に訳して法制局でその条文について審査をしてもらわなきゃいけませんので、できるだけ早いタイミングで国会に提出できるように、作業もできる部分は並行的にもやっていきたいというふうに考えております。
  226. 山田太郎

    山田太郎君 もう一つ確認なんですが、批准の作業とともに関連法の見直しというのは多分いろいろしなければならないんじゃないかなというふうに思っているんですね。それも併せて同じタイミングでやっていくのか、既にその関連法は内部ではある程度議論されているのか、ちょっとその辺りの進捗等について、中身を聞いているわけじゃないんで、この辺りも外形的なことをお答えいただけないでしょうか。
  227. 西村康稔

    ○副大臣(西村康稔君) まだ最終的に決着をしておりませんので、具体的にどういった法律的な手当てが国内法で要るのかというところは、まあ頭の体操、こういうふうに決まればこうなるのかなというのは、ぼんやりとしたところはもちろん思い描きながら交渉しているわけでありますけれども、それは決着をしてから正式にはしっかりと中身を詰めて、必要な法的な手当てが必要なのかどうか考えていくことになります。
  228. 山田太郎

    山田太郎君 西村副大臣の頭の体操のぼんやりした中で結構ですので、見通しみたいなものを是非示していただきたいんですけど、その辺りは示していただけないんですか。
  229. 西村康稔

    ○副大臣(西村康稔君) これは、最終的に合意できる見通しが立って、最終的に合意してからしっかりと私どもも考えてお示しをしていきたいというふうに考えております。
  230. 山田太郎

    山田太郎君 でも、前回、大筋合意できるつもりで、今日もそういう委員会での質問あったわけですから、当然スケジュールは立っていたと思うんですけれども、せめてもスケジュール感だけでも、仮に八月中に合意にということで至ればどうなるかということはもう決まっているはずだと思っていますし、示していただけないですかね。
  231. 西村康稔

    ○副大臣(西村康稔君) 今申し上げましたとおり、大筋合意をしてから署名までおよそ三か月ぐらいは掛かるということでありますので、その間に私どもも必要な法律の手当て、どういったものが必要になるのかしっかりと整理をして、もちろんどの程度のものになるのかもまだ分かりませんので、その間にしっかりと整理をして、また国会の皆さんにも、委員の皆様方にもお示しをするときが来るんだろうというふうに思います。
  232. 山田太郎

    山田太郎君 済みません、しつこくて申し訳ないんですけど、具体的な、テキストの全文というのは大筋合意後直ちに見せていただけそうなスケジュールなんでしょうか、それとも署名に至った段階なのか。訳というのが残っていると思いますが、英文での合意というのはあると思うので、その辺りも具体的にいかがでしょうか。
  233. 西村康稔

    ○副大臣(西村康稔君) これも繰り返しになりますけれども、正式なテキストは法制的なそのリーガルスクラブと言われるチェックを経てからになりますので、私ども、大筋合意の後、できる限りその内容については開示をしていきたいと思いますし、どの程度できるか、これも各国間で整理をして協議をして、その上でお示しをしていくことになりますけれども、法的なチェックを終えた正式なものはこれは署名後になってくるんだろうというふうに思います。
  234. 山田太郎

    山田太郎君 済みません、TPPの話の関連にもなるんですが、ちょっと思考というか方向性を変えて農水省と少しやりたいと思っているんですが。  バターが実は足りなくなった件、いろんなことがあってなかなかこの委員会で取り上げられないまま、何かうやむやとまでは言わないんですけど、やっぱり緊急輸入をしたということで、実は、これ、国家貿易でやっていても、実際にはこの十年間で二〇〇八年、二〇一一年、二〇一二年、二〇一四年で不足が生じていると。どうしてなのかなということでありまして、食料の安定供給を元々農水省さんのいわゆる基本政策としているにもかかわらず、かえってその規制自身が不足等をもたらしているというのは、正直失策なんじゃないかなと、こういう意味懸念をしております。  そんな中で、ここからちょっと関連でお伺いしたいと思うのは、例えばTPPでもって、バター等、乳製品含めて関税云々となっていますが、グローバルにこういったものが展開すれば、生乳の価格なんかよりも弱い製品であるこのバターが、生乳、チーズ、バターという順で来るからという話はもう皆さん御存じだと思いますが、かえって混乱をするかもしれない。こういう、要はただ国内に入れる入れないという議論だけではなくて、需給のバランスというのが極めて取りにくい産品に関して、今後TPPでもって関税を下げた場合にどうやって一体コントロールしていくことができるのか。いく気なのか、あるいはそういったものは国際通商上、自由貿易の方向性に行くのでもうコントロールすることはできないと、こういうことになるのか。その辺り、今後どういうメカニズムでこういったものを、例えばバターなんというのは今回こういうことになっていますから分かりやすいと思うんですが、教えていただけないでしょうか。
  235. 林芳正

    ○国務大臣(林芳正君) バターや脱脂粉乳は様々な食品に利用される一方で、今、山田委員からもお話がありましたように、需給が緩和した場合は、生乳と違いまして在庫として保存が可能である、そういうものでございますので、生乳の需給の安定を図る上でも大変重要な役割を果たしております。  我が国の生乳の需給ですが、天候の変動等によって変動しやすいわけでございます。したがって、バターや脱脂粉乳が無秩序に輸入をされますと、牛乳も含めた乳製品全体の国内需給に影響を及ぼすと、こういうことにもなってくるわけでございます。したがって、国内への影響を最小限にするように、輸入して売り渡す乳製品の量、時期等を選択、調整することが可能である国家貿易によりまして、逼迫時には機動的に追加輸入を実施し、緩和時には輸入時期を調整する等によって需給の安定を図ることが重要と考えております。  御指摘のように、バターが足りなくなって緊急輸入をするということがあったわけでございますので、こういう運用の面でしっかりとそういうことを起こらないようにする。情報を適切に出して、小まめにこういう追加輸入ができるようなことをすると同時に、それをあらかじめアナウンスをするということで、急いで買占め等が起こらないようにすると、こういう運用の改善を行ったところでございますが、こういう適切な運用によって、牛乳、乳製品の安定的供給を図ってまいりたいと思っております。
  236. 山田太郎

    山田太郎君 TPPによっていわゆるこういう国家貿易、ほかにも麦なんかも国家貿易をやっていると思うんですが、これらはどうなってしまうのか、その辺り、いかがなんでしょうか。
  237. 林芳正

    ○国務大臣(林芳正君) これはそれぞれの制度は、我々の制度として持っておるわけでございますが、今TPP交渉でこれがどうなっているのかというのは交渉中身になってしまいますので、私から言及することは差し控えさせていただきたいと思います。
  238. 山田太郎

    山田太郎君 そうであれば、当然国益を守るという意味においては、国家貿易の必要性ということは先ほど大臣も御答弁いただいていたので、これは守り抜く、こういうシステムは維持しつつTPPを受け入れると、こういうことでよろしいでしょうかね。
  239. 林芳正

    ○国務大臣(林芳正君) バターや脱粉のお話をしたときの国家貿易についての考え方を御披露したとおりでございますので、そういうことも踏まえて決議ができていると、こういうふうに理解をしております。したがって、その決議を守ったと評価されるようにしっかり交渉してまいりたいと思っております。
  240. 山田太郎

    山田太郎君 何とか一つ明らかになったかなというふうに思っておりますけれども、さて、もう一つ、自給率とTPPの関係という辺りで、今後農政の政策は農水省さん自身どうしていかれるのか、この辺りも大変気になるところがあります。  いろいろ農水省さんの方も今回のTPPに関してどれぐらいの影響があるかということをまとめた資料もありまして、今の自給率四〇%弱から二七%ぐらいに落ち込むんではないか、こんなことを農水省さんは以前の資料で出されているわけであります。  そうなってくると、実は自給率が極めて厳しい農作物が、今回関税のいわゆる低減、撤廃に近づけられるわけでありますから、どうやって自給率を重視した政策を整合性を持ってやっていくのかということについて何となくよく分からないというか、これ、もし自給率そのものを目指すことがTPPと不整合になってきますと、農水省さんそのもののこれまでの政策がもう抜本的に変わってきてしまうのではないか、こういうふうにも思うわけでありますけれども、この辺り、大臣なのか御担当の三役なのか、是非教えていただきたいんですが、いかがでしょうか。
  241. 林芳正

    ○国務大臣(林芳正君) 交渉中身については全体をパッケージでやっておりますので、現時点で確定しているものはないということでございますが、先ほど食料安保のところでお話をしましたように、世界の食料の需給、それから貿易、これは不安定な要素を有しております。安定供給というものを将来にわたって確保していくということが大変に大事な責務でございまして、やはり先ほど申し上げたように、国内の農業生産の増大を図ることを基本として輸入と備蓄を適切に組み合わせて行うと、こういう考え方でございます。したがって、TPP交渉いかんにかかわらず、国内農業生産の増大を図って食料自給率を向上させるということは極めて重要な課題であると認識しております。  食料・農業・農村基本法についても、自給率の向上を図ることを旨としてその目標を定めまして、目標達成に向けて各種施策を総合的かつ計画的に講じていくと、こういうふうになっておりますが、これは変わらずにやっていきたいと思っております。
  242. 山田太郎

    山田太郎君 今回、何でさっきスケジュールをあんなにもしつこく聞いたかといいますと、こういう重大なことをもしかしたら物すごい短い期間に転換して、今後、我々は政府と一緒になって国会も決めなければいけない事態に私はなるのかもしれないと思って危惧しているので、ちょっとこだわったのですが。それは、これまで我々も農水で積み上げてきたいろんな議論があった。米をできるだけ自給一〇〇%にする、だけれども、それがいわゆる過剰な場合には、飼料用米の話もしました。  ただ、飼料用米も、今回考えてみると、お肉そのものが外から入ってくることになれば、あるいはそういったものの飼料もどんどん入ってくることになれば、一体どういうふうにそういったことはなっていっちゃうんだろうということ、すごく時間を掛けてこれまで議論して積み上げてきた農業政策が一気に転換されるかもしれないということは、私は考えてみると何となく空恐ろしいな。国会で議論しているよりも現場農家の方々は確かに頭真っ白というか、どうなっていっちゃうんだろうと。我々も分からないわけですから、ますます現場で頑張っていらっしゃる方はもっと分からないんじゃないかと、こういうふうに思うわけなんですよね。  そうなってくると、農業政策の中でも最も重要な、いわゆる自給率向上と言っていた、もちろん私自身も、自給率向上そのものは問題も多いし、考え方は変えるべきだという議論はしてきたものの、やはり国内におけるある程度の食料の供給、生産というものは確保せにゃならぬということについては当然だというふうには思っておりますので、その辺りの整合が全くできなくなってしまうんではないかな、そう思うんですが、端的に大臣にお聞きしたいんですが、自給率というものを重視した政策を転換する可能性はやっぱり秘めているのかどうか、TPPを受け入れたことによってそういう可能性はあるのかどうか、その辺り言及いただけないでしょうか。
  243. 林芳正

    ○国務大臣(林芳正君) 先ほど申し上げましたように、国内生産を増大を図ることを基本として輸入と備蓄を組み合わせて食料安保を図っていくと、これは基本法にも書いてございますし、基本計画を定めたわけでございまして、TPPいかんにかかわらずその方針は変えずにやっていくと、先ほど答弁したとおりでございます。
  244. 山田太郎

    山田太郎君 それは分かるんですが、整合を持っていかないと、例えば外からも輸入で入ってくる、国内でも増産する、そうなればいわゆる供給過多になりますから、価格の問題だって大いに関係してくるわけであります。農作物は非常に微妙なところで需給のバランス、ほぼ多分、農作物の量と価格の問題というのも毎回議論になりながらここでも随分解決してきたんですけれども、そんないわゆる国内の分に関してできるだけ需給を図っていく、生産も止めないで頑張っていくということだけで、果たして今度は、じゃ、価格とか量の問題だったりとか、それの延長上で日本のいわゆる農業が本当に振興を維持していけるんだろうか。私は、申し訳ないんですけれども、今の大臣答弁では全く分からないんですね。もう一度その辺り、是非お考えをいただきたい。  とにかく国内での要は需給、でも、それは外から入ってくるものと見合いでもって考えていかなければ供給過剰にもなる。だけれども、国際的に今度は需要が逼迫すれば当然減ってということで、非常に不安定な状況にもなるんだというふうに思っていますが、その辺りの考え方、これは単なる自給率向上であったりとか今の食料・農業・農村計画の中ではとてもではないけれども堪えられないいわゆる議論だというふうに思っています。  その辺り、もう一度、大臣、お答えいただけないでしょうか。
  245. 林芳正

    ○国務大臣(林芳正君) まだTPPがまさに交渉中でございますので、TPP交渉はどういう形になるのか、また、ある形になった場合にどういう影響が出るのかということをこの時点でお話ができないわけでございますが、どういう影響になるかも含めて、しっかりと結論が出た場合にはこの影響を見定めていかなければならないと、こういうふうに思っておりますが、その上で、先ほど申し上げましたように、基本的な方針というのは、国内の生産の増大を図ることを基本として食料安保を図っていくと、この方針を変えることはなく、しっかりとやっていきたいと思っております。  これまでもいろいろと、最近では日豪というのがございましたけれども、いろんなことをやってまいりましたけれども、その都度、基本方針について何か根本的な変化を来したということではございませんので、今回も食料安保という基本的な方針については変わらずにやってまいると、こういう考え方でございます。
  246. 山田太郎

    山田太郎君 もう一つ、担い手ということについて私はこだわってこの委員会で少しやらせていただいていますが、TPPの影響によって担い手がどうなっていくのか、余りその言及がこれまで少なかった気もしています。最初に農水省さんが出された資料は、就業機会の減少数三百五十万人程度と軽く書いてあるのでありますけれども、これをまともに解釈しますと誰もいなくなっちゃうというか、そういうことでありまして、何だかいろんな数字整合性が合っていないんじゃないか、本当に担い手はどうなっていくのか、こういうことがすごく心配なわけであります。  そうなってくると、もう一つ、担い手がどうなるかという質問と、もう一点併せて関連するのでお聞きしたいのは、今回、もし守るとすると、果たして農地を守ろうとしているのか、要は担い手たる人を守ろうとしているのか、産業としての農業を守ろうとしているのか。もちろん、こう聞けば全てですというふうになると思いますが、そこにはプライオリティーという話も私はあるというふうに思っております。  私は、まず、担い手がいなければどんな産業も始まらないので担い手を守る、そうなってくると、対策としては、もしかしたらかつてあった直接支払みたいなものだっていわゆる議論の対象になってくる、こういうことを総合的に考えなければこのTPP後のいわゆる議論というのは始まらないんじゃないかなと思っていますが、その辺り、大臣、言及いただけないですか。
  247. 林芳正

    ○国務大臣(林芳正君) まさに担い手、農地それぞれ大事でありまして、それぞれがそろいませんと農業というのはやっていけないと、こういうことであろうかと、こういうふうに思っております。  繰り返しになって恐縮ですが、まだ交渉中でございますので、どういう影響が出るのかというのはなかなか難しいわけでございますが、先ほど委員がおっしゃった、前にやったやつだと思いますけれども、これはまさに即日関税を全部撤廃をする、国内対策も全く行わない、こういうかなり極端な前提を置いて行った指標、計算でございまして、まさにそういうふうにならないように決議もいただいておりますし、その決議をしっかりと守ったと評価されるようにやっていくということだと思います。
  248. 山田太郎

    山田太郎君 私は、担い手が二万人増えないと本当に農業が成り立たないという最悪のタイミングにちょっとこのいわゆる問題は当たっちゃっているのかなと思っていて、これ、しっかりその後の議論もしていかないと、とてもではないけれども私は日本の農業は耐えられないというふうに思っています。  さて、せっかく西村副大臣にも来ていただいていますので、もう一個だけ、骨太と再興戦略のところの農政改革でお話を伺いたいんですが、安倍総理、さんざん農業輸出を一兆円に向けて拡大していくと、こういうふうにおっしゃっているんですが、ただ、私分からないのは、国内の農作物や雇用に対する寄与率がどれぐらいなのかということが分からないんですね。過度に輸出を強化しようと思いますと、実際に今回、二〇二〇年の目標は一兆円だということで、内訳を見ると加工食品というのが非常に多いということも分かってくるんですが、そうなってくると、安い原料を使おうと思うと結局輸入が増えちゃう、こういうふうにもなりかねないわけでありまして、何のためのいわゆる輸出拡大だったか分からなくなってしまうということにもなりかねないと思っています。  そういう意味で、今回の安倍総理等がおっしゃられている骨太、再興戦略の中でも表れている、いわゆる農業産物一兆円の国内に対するその寄与率というんですかね、金額であれば、パーセンテージでもいいんですが、是非その辺りを教えていただけないでしょうか。
  249. 西村康稔

    ○副大臣(西村康稔君) ちょっと通告にそれはございませんでしたので、用意をしておりませんが。  ただ、御指摘のとおり、農産物の輸出、これ、二〇二〇年一兆円目標、これをできるだけ前倒し達成を目指して進めているところでございまして、これは国内の農林水産業に対して様々なチャンスが生まれてくると思いますので、当然、活性化、それからいろんな刺激を与えて、これがまた構造改革、競争力強化にもつながってくるというふうに理解をしております。
  250. 山田太郎

    山田太郎君 通告はしていますし、昨日の事務方のお話では、その寄与率、それから国内においてその一兆円の内訳がどれぐらいの国内産物になるかは実は分からないというふうにお伺いしているんですが、そうじゃないんでしょうか。もう一度お答えいただけないですか。
  251. 櫻庭英悦

    政府参考人櫻庭英悦君) 先生指摘の点でございますけれども、例えば平成二十六年の輸出額六千百十七億円でございますけれども、うち加工食品が千七百六十三億円、残り四千三百五十四億円でございますけれども、農産物が千八百六億円、林産物が二百十一億円、水産物が二千三百三十七億円となっておりまして、ここの一次産品の大部分は国産と推計されております。  また、食品製造業の国産原料の調達割合、これはちょっと古うございますけれども、平成十七年の産業連関表で推計しますと約七割、国産の使用割合が七割ということでございますので、これらから推計すると、輸出にはかなりの部分国産のものが使われていると思いますけれども、御指摘のとおり、これらにどのように寄与するかという統計データはございません。  今御指摘の点は非常に重要なことでもありますので、国産品の生産拡大にどの程度寄与するかというのを何らかの形で推計を試みていきたいという具合に考えているところでございます。
  252. 山田太郎

    山田太郎君 確かに、産業関連表がないというのも今問題で、これは前回、紙先生の方からも御指摘があった点だと。私も、産業関連表がいつできるのか、いつできるのかと最新のものを待ちわびているわけでありますが、これは是非早く作っていただきたいと。農水省さんの方にも、統計局の方の問題もあると思うんですけれども、プッシュしていただきたいと思いますが。  実は今、供給、生産が非常に増やしていくのが難しい状況の中で、輸出の量だけ増やしていこうと思えば、考えていただきたいんですけれども、外から物を買ってきて加工品作るというのはこれは当然なんですよね。ですから、リニアにいわゆるその割合が伸びるとはとてもじゃないけど考えられないので、やっぱり私は、一兆円の輸出ということも分かりやすくていいんですけれども、国内のそれによって生産がどれぐらい絶対額として伸びるのか、この辺りを今後議論していっていただきたいと、こういうふうに思っております。  時間がなくなりましたので、最後、まとめを一回行きたいと思いますけれども。  非常に貿易するというのは大事なんですが、例えば花の花卉類も輸入割合が二五%だったり、木材も七一%が輸入だったりします。にもかかわらず、これを輸出産業に育てていこうという議論もあるんですが、私は国内をもうちょっと需要市場として大事にするということもあると思っていますので、その辺りも含めて、しっかり骨太、それから、要はいろんな政策をもう一度内閣も挙げてつくっていっていただきたい、こう思っております。  以上で終わります。ありがとうございました。
  253. 山田俊男

    委員長山田俊男君) 本日の質疑はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。    午後五時十九分散会