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2015-03-04 第189回国会 参議院 国際経済・外交に関する調査会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成二十七年三月四日(水曜日)    午後一時一分開会     ─────────────   出席者は左のとおり。     会 長         柳田  稔君     理 事                 上野 通子君                 滝沢  求君                 中泉 松司君                 小林 正夫君                 河野 義博君                 柴田  巧君                 紙  智子君     委 員                 赤石 清美君                 石井 浩郎君                 石井みどり君                 長峯  誠君                 二之湯武史君                 羽生田 俊君                 福岡 資麿君                 三宅 伸吾君                 山田 修路君                 大野 元裕君                 加藤 敏幸君                 福山 哲郎君                 牧山ひろえ君                 谷合 正明君                 市田 忠義君               アントニオ猪木君                 浜田 和幸君    事務局側        第一特別調査室        長        松井 一彦君    政府参考人        内閣官房内閣審        議官       澁谷 和久君        内閣大臣官房        審議官      鹿野 達史君        内閣府政策統括        官        田和  宏君        外務大臣官房審        議官       山上 信吾君        外務省経済局長  齋木 尚子君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○政府参考人出席要求に関する件 ○国際経済外交に関する調査  (「国際平和と持続可能な国際経済実現に向  けた我が国外交役割」のうち、国際経済の現  状と課題解決に向けた取組について)     ─────────────
  2. 柳田稔

    会長柳田稔君) ただいまから国際経済外交に関する調査会を開会いたします。  本調査会調査テーマについて御報告いたします。  本調査会調査テーマにつきましては、理事会等で協議いたしました結果、「国際平和と持続可能な国際経済実現に向けた我が国外交役割」と決定いたしました。  また、この調査テーマの下、具体的調査項目につきましては、「国際経済現状課題解決に向けた取組」、「我が国経済連携への取組現状課題」、「持続的繁栄を支える資源エネルギー問題等現状課題」、「国際テロを含む国際平和実現に向けた諸課題我が国取組の在り方」、「核軍縮、国連など我が国マルチ外交課題外交力強化に向けた取組」、「気候変動感染症など地球規模課題への対応と我が国役割」について調査を進めていくことといたします。  何とぞ委員各位の御協力をお願いいたします。     ─────────────
  3. 柳田稔

    会長柳田稔君) 政府参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  国際経済外交に関する調査のため、本日の調査会内閣官房内閣審議官澁谷和久君、内閣大臣官房審議官鹿野達史君、内閣府政策統括官田和宏君、外務大臣官房審議官山上信吾君及び外務省経済局長齋木尚子君を政府参考人として出席を求め、その説明を聴取することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 柳田稔

    会長柳田稔君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  5. 柳田稔

    会長柳田稔君) 国際経済外交に関する調査を議題といたします。  本日は、「国際平和と持続可能な国際経済実現に向けた我が国外交役割」のうち、「国際経済現状課題解決に向けた取組」に関し、政府から説明を聴取した後、質疑を行います。  本日の議事の進め方でございますが、内閣府から二十分程度及び外務省から四十分程度説明を聴取した後、二時間程度質疑を行いたいと存じます。  なお、御発言は着席のままで結構でございます。  それでは、初めに内閣府から説明を聴取いたします。田和政策統括官
  6. 田和宏

    政府参考人田和宏君) それでは、お手元に配付をしております国際経済外交に関する調査会提出資料内閣府の資料、A4の横でございます、表紙をおめくりください。  本日は、一月十七日に内閣府が公表いたしました「世界経済潮流」二〇一四のナンバーツーのポイントと主要な国々動向等について、月例経済報告資料を使いながら御説明をいたしたいと思います。  二ページを御覧ください。「世界経済潮流」のポイントをまとめております。  内閣府では、年に二回、世界経済に関する報告書を公表しておりますけれども、二〇一四年後半の世界経済につきましては、中国新興国等の一部で弱さが見られましたけれども、アメリカ回復する中で緩やかに回復をしております。これは、二〇一五年に入っても変化はないというふうに認識をしております。  緩やかな回復にとどまっている背景、そこに三点挙げてございます。すなわち、世界の二大輸入国でありますアメリカ中国輸入伸び先進国賃金伸び物価上昇テンポが、この三つがいずれも緩慢なものにとどまっているということでございます。  アメリカ中国輸入世界全体の輸入の約四分の一を占めておりまして、上の二つの図でございます、輸入額推移を見ますと、過去の回復局面と比較いたしまして今回の回復局面ではやはり輸入伸びが緩やかなものにとどまっております。アメリカ中国輸入、これは翻せば他の国の輸出でございまして、アメリカ中国輸出をしている国々輸出がまた伸び悩んでいるということになります。  輸入伸びが緩やかにとどまっている背景には、まず需要の伸びが弱いということが挙げられます。また、アメリカでは、シェールガス・オイルの生産増加に伴って工業原材料輸入減少傾向になっております。中国では、二〇〇〇年代に二桁の成長をしておりましたけれども、不動産バブル懸念といった副作用もあり、近年はより構造調整を重視した持続可能な成長を目指す政策に転換をしております。その影響が出ているというふうに見られます。  賃金伸びは、例えばアメリカでは一四年には前年比一%程度となっておりまして、世界金融危機直後の平均四%程度を下回っているという現状でございます。この背景には、低賃金とか低スキルの業種で雇用増加していること、それからパートタイム比率金融危機後に上昇して高止まっていることなど、こういったことが影響しているというふうに考えられます。さらに、賃金伸びが緩やかにとどまっていることから、物価上昇テンポもやはり緩やかなものにとどまっているということでございます。  こういった状況から抜け出して世界経済が一段と回復するためには、やはりアメリカ賃金動向、こういったものが鍵になると見ております。アメリカでは雇用逼迫感に伴いまして一部では賃金引上げ動きが出てきておりまして、こうした動きが今後更に広がっていくことが期待されております。先行きメーンシナリオといたしましては、アメリカの着実な回復等によって世界経済も緩やかな回復が続くというふうに見ております。  続きまして、三ページでございます。各国経済動向です。まず、アメリカ経済でございます。  アメリカ経済も、申し上げましたように着実に回復をしております。左上実質GDP成長率でございますが、七―九、前期比年率五・〇%の後、十―十二月期、同じく二・二%の増加となっております。七―九月の伸びが極めて高かったことがあり、十―十二月期は伸び率自体は鈍化していますけれども、その中身でございまして、個人消費増加、これが鮮明になっております。  これを支えておるのが雇用情勢でございまして、右上、雇用者数は十一か月連続で二十万人超の増加となっておりまして、これはアメリカにおきましても約二十年ぶりという状況でございます。  アメリカでは、いわゆるシェール革命、こういったものが生産活動設備投資に好影響を与えてきておりました。しかし、右下でございます、企業景況感を見ると、昨今の原油価格下落もありまして、鉱業、マイニングでございますが、鉱業関係企業などで景況感がこのところ低下しております。設備投資先行き指標を見ましても、鉱業関係設備が落ち込むことが見込まれております。ただ、アメリカ原油の純輸入国でございまして、原油価格下落は全体としてはプラスになるというふうに考えられますが、こういった点でマイナス影響には十分注意をしていく必要性があるというふうに思っております。  続きまして、四ページを御覧ください。ヨーロッパ経済でございます。  ユーロ圏景気は持ち直しの動きが続いております。ユーロ圏実質GDP成長率、七―九月期、前期比年率〇・六%でございました。十―十二月期は一・四%となっております。  この背景として、やはりドイツに注目をしたいと思っております。七―九月期、やや減速をしておりましたけれども、夏から秋口にかけて、これはロシアに対する経済制裁影響もありまして、企業景況感、やや悪化しておりまして、設備投資も弱い動きとなっていました。こういったものがドイツそれからユーロ先行き懸念を投げかけていたという状況でございましたが、一四年の年末にかけまして設備投資に持ち直しの動きが見られてまいりました。また、堅調な雇用情勢エネルギー価格低下、こういったことで個人消費が引き続き増加をしておりまして、十―十二月期、実質GDP成長率前期比年率で二・八%と、七―九月の同〇・三%から大きく持ち直しております。  一方で、ユーロ圏ではやはり経済停滞感が根強く残っておりまして、左下でございます、ユーロ圏失業率は、ピークでございます一三年二月から十一月までの一二%、高水準でございましたけれども、やや低下はしておりますけれども、相変わらず一五年一月、一一・二%の水準ということで高水準推移しております。  右上でございます。ユーロ圏消費者物価上昇率ですが、一三年二月以降、ECB欧州中央銀行が目指す物価目標の二%、これを下回る状況が続いております。特に、最近のエネルギー価格下落もございまして、一四年十二月以降、前年同期比で三か月連続マイナス物価となっております。  こうした状況を受けまして、欧州中央銀行は、一月の二十二日でございますが、ユーロ圏政府国債等を購入するという、いわゆる量的緩和政策の導入を決定をしております。今月から開始をされまして、月額合計で六百億ユーロ日本円にいたしますと約八兆円の国債等を購入するという予定になっております。この量的緩和政策は少なくとも二〇一六年九月まで行うとされておりまして、ECB物価目標の二%を達成する見通しが立つまで続けるんだというふうに言っております。今後は、この量的緩和政策効果が期待されるところでございます。  ただ、金融政策だけではユーロ圏経済を浮上させるには不十分と見られておりまして、各国とも引き続き構造改革を進めて、特に成長戦略というんでしょうか、成長を促進させる政策を実施するということが求められているというふうに認識をしております。  続きまして、五ページを御覧ください。  中国景気拡大テンポは緩やかになっております。左上中国実質GDP成長率ですが、七―九月期、十―十二月期、共に前年比で七・三%となっております。二〇一一年の初めには一〇%近い伸びというふうになっておりましたことに比べますと、このところの成長率伸びは緩やかになっております。  左下製造業購買担当者景況感を示す指数でございますけれども、これも七月をピーク低下傾向にございまして、一五年に入りまして一月、二月、二か月連続で五〇を割っております。景況指数としては悪化傾向にあるというふうになっております。  右下アジア各国実質経済成長率動向でございます。特に韓国でございますが、七―九月期、前期比年率で三・七%になった後、十―十二月期、同じく一・五%となっております。特に昨年の四月のセウォル号の事故以降、内需が弱い動きが続いておりまして、さらに、ウォン高影響もあって外需にも弱さが見られるという状況でございます。景気はこのところ減速をしています。台湾ですが、十―十二月期、輸出がやや鈍化しましたけれども、均してみると緩やかに回復しております。タイも、政情が不安定になる中で、昨年の五月に軍によるクーデターが発生するなど弱い動きが続いておりましたけれども、このところ、投資それから輸出、こういったものが持ち直しておりまして、下げ止まりの兆しが見え始めております。  続きまして、六ページを御覧ください。原油価格低下経済的影響についてまとめております。  原油価格低下は、日本など先進国では、企業収益それから家計の実質所得の押し上げといったことを通じまして経済全体にプラス効果をもたらします。我が国では、原油価格が三〇%下落いたしますと、年率換算で四兆円、原油輸入金額を節約するということができます。なお、これは昨年末時点の試算でございまして、今年に入ってから原油価格は更に下落をしておりまして、一月には昨年のピーク時に比べて約五〇%まで下落をしております。原油価格が五〇%下落いたしますと、原油輸入金額節約効果は、年間約十四兆円ございますので、七兆円ほど拡大をするという状況になります。  ちょっと飛ぶんですけれども、十四ページをちょっとお開きいただくと有り難いんでございますけれども、十四ページに、原油価格下落日本経済に与える影響内閣府にございますモデルでもって試算したものを提示をしております。  この場合、原油輸入金額、先ほど申し上げましたように七兆円減少いたします。その影響波及効果も含めて、波及効果と申しますのは、例えば天然ガスにも波及をするとか、そういったことも含めまして短期の日本経済マクロモデルをもって試算いたしますと、名目雇用者報酬、それから法人企業所得、一年目、二年目、二兆から三兆円、それから経常収支は六兆円程度、さらに名目GDPでは六から八兆円程度押し上げられるという結果になっております。  申し訳ございませんが、また六ページに戻っていただきまして、続きまして、世界経済への影響を見ますと、原油価格が三〇%下落した場合ですけれども、二〇一五年の世界全体の実質成長率を〇・五%ポイント押し上げるというふうに試算されております。  一方で、産油国景気減速、それに伴う国際金融市場変動によって経済マイナス影響が出ることにも留意が必要でございまして、やはり原油価格動向経済に与える影響については引き続き注視が必要だということでございます。  七ページを御覧ください。国際機関によります二〇一五年の世界経済見通しをまとめております。  世界全体の二〇一五年の実質GDP成長率は、三・〇%から三・五%という見通しになっております。日本アメリカユーロ圏では、いずれも一五年の成長率が二〇一四年を上回る見通しとなっております。一方で、中国は二〇一五年の成長率が七%程度と、二〇一四年よりは減速するという見通しになっております。  八ページを御覧ください。二〇一五年の世界経済が抱える主なリスクを三点に絞ってまとめております。  まず、アメリカ金融政策正常化に向けた動き影響でございます。  先月、イエレンFRB議長は、議会において、少なくとも今後数回の連邦公開市場委員会において利上げを開始する公算は小さいというふうに証言をしております。市場では、今年年央の政策金利引上げもあり得るという見方もございます。アメリカ利上げが一段のドル高新興国等金融市場変動、こういったものをもたらす可能性がございます。  一方で、これによって逆にマーケットがリスクオフ動きを取りますと為替が円高方向に振れる可能性もございますので、リスクオンなのかリスクオフなのかというところは注視する必要性があるというふうに思っております。  また、左下でございますが、二〇一三年五月に当時のバーナンキFRB議長金融緩和の縮小を示唆する発言を行った際でございますが、新興国通貨が大きく減価する状況がございました。当時フラジャイルファイブというふうに言われた国々ですが、それに今回ロシアを加えております。  こういった通貨の減価した新興国は、外貨準備で見ますと、二〇一三年当時と直近の二〇一四年の七―九月期、ほとんど変化がございません。インドは少しちょっと違いますが、それ以外のところは経済情勢、ファンダメンタルズが変わっていないということでございますので、やはりアメリカ金融政策の変更が国際金融市場、ひいては実体経済に与える影響、こういったところに注意をする必要性があるというふうに考えております。  また、欧州経済政治動向にも注意が必要でございまして、欧州ではとりわけ南欧を中心若年失業率が極めて高い水準にございます。また、ユーロ圏では、消費者物価上昇率が一年以上一%を下回って推移をしている、一四年十二月以降三か月連続で前年比マイナスということでございまして、低インフレの長期化懸念されているというところでございます。  また、今年ヨーロッパでは幾つかの国で総選挙が行われる予定でございまして、一月二十五日にギリシャの総選挙がございました。政権交代が起こったわけですけれども、今後、五月にはイギリス、九月から十月にかけてポルトガル、十一から十二月にかけてスペインの総選挙予定されております。特にポルトガルとかスペインとかこういったところ、右上の方で見ますと、やはり若年失業率が極めて高いという国ですので、こういった政治動向にも注意が必要かなというふうに考えられます。  また、ギリシャ政権交代に見られたように、現状に不満を持つ階層を支持基盤にする政党が躍進することによって政権交代が続く可能性というのはやはりあり得るんではないかと。現在、ギリシャへの支援プログラムを継続するかどうか決定するに当たって、反緊縮を掲げるギリシャ政権財政規律維持を求めるEU側交渉が難航したように、政権交代が起きればEUの進める財政健全化路線への懐疑論が台頭するという可能性もあるということには注意が必要だと思っております。  さらに、中国経済でございます。中国経済減速傾向リスク要因に挙げられます。これは右下でございます。中国政府は、将来の持続可能な成長に向けて、景気が一定程度減速することを容認する姿勢を示しております。二〇一三年に発足をいたしました習近平政権では、構造改革を進めて成長の質を、これを重視した政策運営を実施しておりまして、これが中国景気拡大テンポが緩やかになっている背景の一つでございます。  このように、従来の高成長からやや減速した成長中国政府では新常態、いわゆるニューノーマルというふうに表現しておりますけれども、二〇一五年の成長率目標は、あしたから開催されます中国の国会、いわゆる全人代で公表される見込みでございます。一般には前年比で七%程度になるというふうに予想がされているところでございます。  構造調整推進によって更に投資が冷え込んで生産伸びが鈍化することに伴って、中国への輸出に依存する国の経済減速する可能性もあります。特に、右下ですけれども、中国向け輸出の占める割合が高い国、オーストラリア、ブラジル、タイインドネシア、こういった国々、いずれも中国最大規模貿易相手国でございますけれども、景気減速等を受けて、こういったオーストラリアとかインドネシアでは最近利下げの動きもございました。  以上、簡単ではございますが、世界経済現状先行きリスク、御説明をさせていただきました。先生方のいろんな御指導をよろしくお願いしたいと思います。  以上でございます。
  7. 柳田稔

    会長柳田稔君) ありがとうございました。  次に、外務省から説明を聴取いたします。齋木経済局長、お願いします。
  8. 齋木尚子

    政府参考人齋木尚子君) 外務省経済局長齋木でございます。どうぞよろしくお願いいたします。  お手元に、我が国経済外交現状課題という、この横紙の資料をお配りしてございます。この資料に沿いまして御説明申し上げます。  ただいま世界経済動向については内閣府から御説明がありましたが、このような世界経済情勢の中、日本経済再生とその先の発展に資する戦略的な経済外交推進することが極めて重要であると認識をしております。  基本方針を三ページに書いてございます。日本経済再生に資する力強い経済外交推進し、成長戦略の実施に貢献をしてまいります。TPPを始めとする経済連携交渉を加速するとともに、インフラシステム輸出日本産品輸出促進を含む日本企業海外展開推進エネルギー鉱物資源、食料の安定供給確保のための資源外交強化をしてまいります。経済面での法の支配を推進するとともに、日本にとって有利な国際経済環境の整備に努めてまいります。  この基本方針の下で、三本の更なる柱を立ててございます。具体的には、日本経済再生に資する取組、安心して住める魅力ある国づくり、国際的なルール作りへの参画の三つの柱でございます。この三本柱基本とし、さらに、このコラムにございますように、それぞれの柱の中に三つずつ重点項目を挙げ、具体的取組を進めているところでございます。  なお、申すまでもございませんけれども、今申し上げた三本柱、またその下の三つ重点事項といいますのは、整理の観点から言わば便宜上設けたものでございまして、それぞれの取組は互いに関連し、有機的に連携を図ることで、日本にとって有利な国際経済環境をつくり上げていこうとしているものである点に御理解をいただければと存じます。  四ページ、次のページを御覧ください。  日本経済再生に資する取組の最初の重点は、高いレベルの経済連携推進でございます。  日本経済再生のために、自由貿易推進我が国対外通商政策の柱であります。我が国は、WTO世界貿易機関中心とする多角的貿易体制維持強化とともに、このWTOを補完するものとして経済連携推進してきております。WTOのドーハ・ラウンド交渉長期化するのに併せ、世界的に自由貿易協定FTA拡大してきております。我が国TPP環太平洋パートナーシップ協定交渉参加に際しまして安倍総理が述べられたとおり、世界国々海外成長を糧に自国の経済成長を図るべく開放経済へとかじを切っている中、我が国対外経済関係強化し、我が国貿易投資環境を整備し、成長著しい新興国を始めとする国際市場の活力を我が国成長に取り込むよう、経済連携交渉推進してきております。  我が国経済連携協定EPA交渉に取り組み始めた当初は、東アジアを中心に主に二国間の交渉を進めてまいりました。ここにございますように、これまでに十五か国・地域との経済連携協定発効済み署名済みでございます。  次のページに、世界状況についての記述を用意いたしました。メガFTA時代の到来ということが指摘できると思います。  世界FTAの数は、二〇一四年十一月時点で二百六十六件、二〇〇〇年以降は二〇〇一年を除きまして毎年十件以上の自由貿易協定発効をしております。現在十二か国が参加中の環太平洋パートナーシップTPP協定日中韓FTA、日・EUEPA、そして米国・EUFTA、TTIPとも称されますけれども、こうした五つのメガFTA交渉をされております。大変大きな規模のFTA交渉されているということが今日の特徴として挙げることができると思います。  メガFTA、また大変大きな規模のFTAと申し上げましたが、すなわち、これらのFTAは対世界GDPシェアが極めて大きいということでございます。具体的にここにございますように、アメリカEUFTA世界のGDPの四六・二%、またTPP、RCEP、これは東アジア地域包括的経済連携協定でございますが、このRCEP、日・EU、各々世界のGDPの三割から四割を占めるという状況でございます。日本はこの中でTPPとRCEP、日・EU、そして日中韓、この四つに参加をしておるわけでありますけれども、この四つのメガFTAを合計しますと世界のGDPシェアの七九・八%、約八割ということになります。  次のページでございますが、六ページ資料の一の二、我が国経済連携取組について取りまとめたものであります。  先ほど、十五の国・地域とのEPA発効済み署名済みと申し上げました。このオレンジの国がその該当するものでございます。発効順で申し上げますと、まず最初に二〇〇二年、日本とシンガポールの経済連携協定発効いたしました。シンガポールに続きまして、メキシコ、マレーシア、チリ、タイインドネシア、ブルネイ、ASEAN、フィリピン、スイス、ベトナム、インド、ペルー、そして今年、オーストラリアとのEPA発効したところでございます。また、モンゴルとの間では既にEPAの署名が終了をしております。  こうした十五の国・地域のFTAにつきまして、こうした国との貿易日本貿易総額に占める割合は、二行目でございますが、二二・六%というのが現状であります。  主要国に目を転じますと、主要国も急速に、今申し上げたEPA相手国との貿易がそれぞれの国の貿易総額に占める割合、FTA比率と申しますが、このFTA比率を高めておりまして、米国については約四〇%、韓国が三九%、EUが三〇%ということになっております。  恐縮でございますが、本文の四ページにお戻りいただけますでしょうか。  今申し上げましたように、日本FTA比率は現在二二・六%でございますが、最初のダイヤモンドの一番最後の行に括弧書きで書いてございますが、政府といたしましてはこれを二〇一八年までに七〇%に高めることを目指しております。この二〇一八年までのFTA比率七〇%という目標の達成に向けて、主要貿易相手国とのEPA交渉を国益にかなう高いレベルで同時並行的に戦略的かつスピード感を持って推進をしていくことが必要であると考えております。  現在は、TPP、日・EUEPA日中韓FTA、RCEP、そしてASEANと日本の包括的経済連携協定の物品の部分は終わってございますので、サービス、投資についての協定交渉中、さらには二国間のEPAとしては、カナダ、コロンビア、トルコ、合わせまして八本の交渉推進をしてきているところでございます。  次に、TPPについて申し上げます。七ページ資料一の三というのを付けてございます。御覧ください。  TPPは、成長著しいアジア太平洋地域に一つの経済圏をつくるという歴史上初めての野心的な試みであります。物だけでなく、サービス、投資、知的財産、国有企業、環境など、幅広い分野にわたってアジア太平洋に二十一世紀型の新しいルールを作るという大きな挑戦と申し上げてよろしいかと思います。日本にとっても成長戦略の主要な柱の一つでございます。  昨年十一月、北京で開かれましたAPECの首脳会合の際に開催をされましたTPP首脳会合において交渉の終局が明確になりつつあることが確認をされまして、交渉にモメンタムが生じているというふうに認識をしております。安倍総理も述べられているとおり、日本としては引き続き守るべきは守り、攻めるべきは攻め、国益にかなう最善の道を追求するとの方針でTPP早期妥結に向けて取り組んでいるところであります。  政府といたしましては、TPPを含むEPA交渉全体の取組が相互に刺激し合い、全てが活発化するというダイナミズムが働くことを期待をしており、日本再興戦略の目標実現に向けて引き続き官民で連携し、また政府一丸となって経済連携交渉に当たっていく考えでございます。  あわせて、今後とも、EPA発効後につきまして、貿易動向などの調査分析もしっかりといたしまして、それぞれのEPAが現実にどのような効果を上げているかをフォローアップするとともに、関係省庁緊密に連携しつつ、ビジネスを含む関係者の様々なニーズを把握することに努めてまいります。そうした声に十分耳を傾けながら、守りと攻めの双方の観点から日本経済再生に資する経済連携実現を引き続き戦略的に進めていく考えでございます。  誠に申し訳ございません、もう一度四ページにお戻りいただけますでしょうか。四ページ、本文でございます。  日本経済再生に資する取組の二番目の重点は、日本企業海外展開推進でございます。  中小企業を含む日本企業海外展開推進は、諸外国の成長日本成長に取り込んでいく上で極めて重要でございます。拡大する国際市場において日本企業が存分に活躍できるよう、外務大臣を本部長とする日本企業支援推進本部の下、中小企業を含む日本企業海外展開をこれまで以上に推進していく考えでございます。また、特にその際には、最近の国際情勢にも鑑み、官民一体となって日本企業、邦人の安全対策に万全を期していきたいと考えております。  総理大臣や関係大臣等によるいわゆるトップセールスによるインフラシステム輸出を始め、官民連携によるオールジャパンの経済外交推進し、成長戦略の実施に貢献をしていきたいと考えております。このため、在外公館においては、大使また総領事が先頭に立ちまして、日本企業への情報提供や外国政府等への働きかけを行ってきているところでございます。こうした取組の結果、昨年度の在外公館での企業支援実績は合計いたしますと約三万六千件と、過去五年間で三倍増の数値になっております。今年度上半期の実績も前年度同期比で一四%増と、増加傾向にあります。引き続きしっかりと取り組んでまいります。  また、企業を含む日本の方々が世界で活躍をされるためには、関連条約などを整備することにより、この環境をより改善していくことが重要であります。投資協定や租税条約の戦略的拡充を通じビジネス環境の整備を進めてきておりますが、一層の努力を続けてまいります。  三番目の重点は、風評被害対策を含む日本産品輸出促進です。  福島第一原発事故に起因する諸外国・地域の日本産品に対する輸入規制の緩和、撤廃に向けて、関係省庁と緊密に連携し、安全管理や出荷制限等の日本の措置につきまして各国に正確かつ迅速に情報伝達を行い、諸外国・地域が科学的根拠に基づく措置を講ずるよう粘り強く働きかけているところです。その結果、これまでに計十三か国が規制を完全に撤廃いたしました。また、幾つかの国で規制が緩和されるなど、各国で規制見直しの動きも見られているところであります。来週には震災後四年を迎えることになりますが、引き続き、科学的根拠に基づかない規制の緩和、撤廃に向けて粘り強く働きかけてまいります。  また同時に、被災地を含む地方創生の観点からも、在外公館施設の積極的活用やPRイベントなどを通じ、農林水産物の輸出促進日本食を始めとする日本の魅力や地方の強みの発信を強化してまいります。  次に、二番目の柱である安心して住める魅力ある国づくりについて御説明をいたします。八ページを御覧ください。  この柱の最初の重点は、エネルギー鉱物資源の安定的かつ安価な供給の確保でございます。  日本経済の存立基盤としてのエネルギー鉱物資源の確保のため、要人往来の効果的な活用や国際的な枠組みなどを通じて資源供給国との関係強化に努めるとともに、供給源の多角化を図る資源外交の展開が重要でございます。  次に、資料を用意してございます。次のページ、九ページを御覧いただけますでしょうか。  左上資料の①に一次エネルギー自給率の推移を挙げておりますが、天然資源に乏しく、エネルギー自給率が六%というOECD加盟国の中で二番目にエネルギー自給率が低い我が国にとりまして、経済の基盤であるエネルギー資源の安定確保は極めて重要でございます。  ②が発電の電源構成比でございまして、この中の赤い折れ線グラフが化石燃料依存度を示しておりますが、この折れ線グラフから明らかなとおり、東日本大震災後、化石燃料への依存度は飛躍的に上昇しております。  石油、天然ガスを始めとする化石燃料の安定供給確保は大変重要な課題でございます。そのために、産出国との二国間関係の強化、供給源の多角化に向けた外交努力が重要と認識をしており、これまでも総理や外務大臣等の外国訪問の機会を効果的に活用するとともに、在外公館をも通じました資源外交推進しております。  最近の例を御紹介申し上げますと、先ほど、本年一月に日本オーストラリアEPA発効したと申し上げましたが、この日豪EPAの中では、資源エネルギー安定供給確保の独立の章を設ける等、関係国との連携を強めてきているところでございます。  さらに、産出国との輸送ルートの安定確保も重要な課題です。  同じページの右上の資料③を御覧ください。石油の中東依存度が載ってございますが、ここにありますように、日本は石油の輸入の八割以上を中東に依存しております。こうした石油の安定確保の観点からも、ISILへの対応を含めた中東情勢の安定化に向けた外交努力を行ってきております。ホルムズ海峡やマラッカ海峡といったシーレーン上の国との関係強化、さらには地域の安定に向けた取組も行っています。  こうした取組を進めるに当たっては、最近の原油価格の大幅な変動中国やインドなどにおけるエネルギー需要の拡大、北米地域におけるいわゆるシェール革命動向、産出国における資源ナショナリズムの動向など、エネルギー分野における国際動向についても、国際エネルギー機関、IEAの枠組みなどをも活用しつつ、情報収集に努めてきております。  今申し上げましたいろいろな点は、次のページ資料二の二、十ページに付けてございますので、御参照をいただければと思います。  二番目の重点として申し上げたいのが、食料安全保障の確保でございます。資料の二の三として十一ページを御用意してございます。御覧いただけますでしょうか。  食料安全保障のためには、まずは国内の農業基盤をしっかり守り国内の農業生産の増大を図ることが重要でございます。その上で、カロリーベースで食料の約六割を海外からの輸入に依存している我が国としては、輸入による食料の安定供給を確保していくことも不可欠であり、安定供給の確保に資するべく外交活動を展開しております。  左の上のパネルにございますように、国連によると、世界の人口は二〇五〇年には二〇〇五年の一・四倍の九十三億人となる見通しで、そのうちの途上国人口は八十億人、約八六%の見通しであります。先進国は二〇〇五年から二〇五〇年で一億人の増加にとどまりますが、途上国は二十七億人の増加を見込んでいます。  また、今後は、人口増に加えて新興国等の食生活の変化などにより肉類の消費が増加をする見通しで、食用に加え家畜用飼料としての穀物消費も増加をするということを隣の右上のパネルで示しているところでございます。  左下のパネルにございますが、世界の穀物生産量は増加はしておりますが、それを上回る消費量となるため期末の在庫率は低下をする見通しであり、更なる食料生産の促進が重要な課題となっています。  食料需給が逼迫していく中、食料の安定確保のために主要穀物の生産国との二国間関係の強化を強めております。  例えば、先ほども御紹介をいただきました、最も最近発効いたしました日豪EPAにおきましては、我が国EPAとしては初めて食料供給章を立てまして、食料の安定供給確保の規定を設けたところであります。また、世界全体の食料生産の促進等を通じたグローバルな食料安全保障の強化のため、二国間の開発援助や国連食糧農業機関などの国際機関等との協力も通じて、途上国における食料生産の促進を支援するとともに、農業投資促進のための国際的な枠組みづくりを進めてきております。  済みません、時間が過ぎてしまったということで、簡単にまとめさせていただきます。  この右下の食料価格でありますけれども、穀物価格の乱高下が発生する中、今後十年間は高止まりを予測しておりまして、いろいろな緊急時対応のための地域的な取組推進をしてきているところであります。  そして、日本市場の国際化が三番目の重点でありますけれども、二〇二〇年における対内直接投資残高を三十五兆円へ倍増することを目指す日本再興戦略を目的といたしまして、その実現に向けて政府一丸となって、雇用確保の観点からもこの対日投資誘致を積極的に推進してまいる所存でございます。  最後が国際的なルール作りへの参画で、十二ページにございますけれども、グローバルな課題等への対応、多角的貿易体制維持強化、そして分野横断的な政策協調とルール作り、この三つ具体的取組を進めてきているところです。  G7は、御案内のとおり、基本的な価値観を共有する先進国の集まりでありまして、国際社会が直面する新たな課題を特定し、これに率先して取り組んできております。G20は、新興国を取り込む形で世界経済、国際金融について政策協調を行う場として重要性を増しております。G7、G20とも、日本としてしっかりと議論に参画をし、日本にとって有利なルール作りを進めてまいります。また、APECは、一九八九年の発足以来、各エコノミーの努力に加えまして、APEC全体で貿易投資を通じた地域経済統合に向けた取組経済・技術協力、またビジネス界との緊密な連携も進めてきております。  こうした中、先ほどメガFTAと申し上げましたけれども、APECにおきましてアジア太平洋自由貿易圏、FTAAPをつくるという構想がございまして、日本が二〇一〇年、横浜でAPEC首脳会議を開催いたしましたが、その際、FTAAPへの道筋という文書も取りまとめ、その文書に沿って、アジア太平洋自由貿易圏の構想に向けまして日本として引き続きしっかりとリーダーシップを発揮していく考えでございます。  WTOは、申すまでもございませんが、多角的貿易体制世界貿易の基礎、礎であります。現在ドーハ・ラウンドが進んでおりますけれども、その一つとしてバリ合意が二〇一三年末妥結をしたということは、新しい、そして明るい材料でございました。このバリ合意を着実に実施し、ドーハ・ラウンド交渉の妥結に向けて積極的な貢献を行っていきます。  また、分野横断的な政策協調とルール作りとして、一例でOECD挙げてございますけれども、こういったOECDをも活用し、例えば世界成長センターである東南アジアをどうやって日本に取り込むか、また、OECDと東南アジアをどのように有機的に関連付けるかという問題意識から、昨年、日本はOECD議長国を務めましたけれども、その閣僚理事会で東南アジア地域プログラムを立ち上げたところです。この東南アジア地域プログラムをもてこに、世界成長エンジンの東南アジアへのアウトリーチを日本としてしっかりと推進をしてまいりたいと考えているところでございます。  引き続き、先生方の御指導を仰ぎながら、日本経済再生に資する力強い経済外交を戦略的に進めてまいりたいと考えております。  どうもありがとうございます。
  9. 柳田稔

    会長柳田稔君) ありがとうございました。  次に、山上大臣官房審議官、お願いします。
  10. 山上信吾

    政府参考人山上信吾君) 外務省の総合外交政策局の審議官山上でございます。よろしくお願いいたします。  私からは、お手元の地球儀を俯瞰する外交の展開という紙に沿いまして、我が国外交の主要課題取組について御説明をさせていただきます。  まず、地球儀を俯瞰する外交、この意味するところでございますが、外交は、もちろん二国間関係が重要なことは言をまちませんが、二国間関係だけを見るのではなく、地球儀を俯瞰するような視点で日本の国益、そして世界の平和と繁栄に資するよう、戦略的に展開していく必要があるであろうという考えに立った呼称でございます。  一ページおめくりいただければと思います。この外交の二本柱について記載しております。  一本目としましては、アジア太平洋地域の戦略環境の変化を踏まえた国益の確保、増進ということでございます。  この文脈で国益の意味するところでございますが、二つの側面があろうかと思います。まず、一つ目の側面としましては政治面でございます。日本を取り巻く安全保障環境が一層厳しさを増している、こうした中で国民の命と平和な暮らしを守り抜いていく、そのための政策が必要であろうということが一点目でございます。そして、二点目としましては経済面でございますが、日本が位置するこのアジア太平洋地域、まさに世界成長センターでございます。そのアジアの成長を取り込んで日本の繁栄を確保していくことも必要であろうと、こういう考えに立った一本目の柱でございます。  それから、二本目の柱としましては、グローバルな課題への貢献を通じた世界全体の利益の推進ということで、国際社会が直面するグローバル、地球規模の課題につきまして、国際協調主義に基づく積極的平和主義の立場から引き続き積極的に貢献していきたいと、こういう考えでございます。  それでは、一本目の柱の内容について三ページ目で御説明したいと思います。この下段にございます力強い経済外交推進、今し方経済局長よりるる説明がございましたので、この点については割愛して、上段の国家安全保障の確保を実現するための外交について御説明させていただきます。  先生方御記憶のとおり、まず、おととし、二〇一三年の十二月でございました、政府は初めての国家安全保障戦略を策定いたしまして、そしてそれに基づく新防衛大綱を策定したところでございます。この国家安全保障戦略の一環といたしまして、国民の命と平和な暮らしを守り抜くとともに、国際社会の平和と安定にこれまで以上に積極的に貢献する、こういった目的のために切れ目のない安全保障法制を整備する必要があると考えております。  それと同時に、幅広い分野での安全保障、防衛面での協力を推進し、抑止力を一層向上させるために、日米防衛協力のための指針、いわゆるガイドラインの見直しを始めとした取組にも引き続き対応していきたいと考えております。  日中関係につきましては、申すまでもなく最も重要な二国間関係の一つでございます。中国が国際社会のルールや法の支配といったものを尊重する形で平和的発展を遂げる、このことは日本にとっても大きなチャンスであろうかと考えております。  ただ同時に、尖閣諸島付近の海域への領海侵入は継続しております。昨年十一月は北京で日中の首脳会談が実現したのは御案内のとおりでございますが、その後も尖閣周辺の接続水域、さらには領海への侵入が継続しておるという大変遺憾な事態がございます。  こうした中で、外務省といたしましても、我が国固有の領土、領海、領空は断固として守り抜くと、こうした方針は不変でございますし、引き続き毅然かつ冷静に対応してまいりたいと考えております。  北朝鮮でございます。拉致問題、日本の主権、国民の生命、安全に関わる重大な問題であることは言うまでもございません。政権にとっても最重要課題でございますし、北朝鮮による調査が全ての拉致被害者の帰国という具体的な成果につながるよう、全力を尽くしてまいる所存でございます。  また、核、ミサイルの問題もございます。ミサイルにつきましては、つい今週月曜日も弾道ミサイルが二発、日本海に向けて発射されたところでございます。こうした核・ミサイル開発の継続というものは、地域と国際社会全体の平和と安全に対する重大な脅威でございます。我が国としましても、関係国と連携しつつ、北朝鮮に対しまして安保理決議及び六者会合共同声明の誠実かつ完全な実施を引き続き強く求めていく考えでございます。  また、オーストラリアでございますが、我が国にとっては基本的価値、戦略的利益を共有する特別な関係にございます。東南アジア、ASEANにつきましては、より統合され繁栄し安定したASEANというものは地域全体の平和と安定にとり極めて重要であると考えています。さらに、インドとは特別な戦略的グローバルパートナーシップの関係にございます。また、欧州とは基本的価値を共有する上に、国際社会において大きな影響力、例えば世論の喚起力もそうですし、ルールの形成力においても相当な力を持ったパートナーでございます。こうした国々と安保防衛分野における協力も進め、地域の平和と安定を確保していくための努力を継続していきたいと考えております。  四ページ目、御覧いただければと思います。グローバルな課題への貢献を通じた世界全体の利益の増進について説明いたします。  我が国は、戦後一貫して平和国家としての道を歩み、様々な国際課題に取り組んできたということは御案内のとおりでございます。世界の平和と安定、そして発展に貢献してきたと。こうした中で、グローバルな課題、地球規模の課題に対してリーダーシップを引き続き発揮するという方針の下で取り組んでまいりたいと考えております。  とりわけ、いわゆる女性の問題につきましては現在の成長戦略の柱でもございます。女性が輝く社会の実現世界共通の課題である、二十一世紀こそ人権侵害のない世界となるよう貢献する、こうした方針の下、外交分野においてもこの課題に引き続いて取り組んでまいりたいと考えております。その一環といたしまして、昨年に続いて今年も、女性が輝く社会に向けた国際シンポジウム、いわゆるワウ、WAWという国際会議を開催し、女性の活躍を後押しするリーダーシップを我が国として発揮したいと考えております。  また、二〇一五年、これはいろんな意味がある年でございます。戦後七十年であるのみならず、国連創設七十年、被爆七十年である、さらには気候変動、開発の問題に関しても重要な節目の年でございます。  こうした中で、まず国連との連携をより一層強化して、安保理改革実現に向けてリーダーシップを引き続き発揮していきたいと考えております。国連PKOでの貢献の一層の拡大、平和維持、平和構築に今後とも取り組んでまいりたいと。  また、軍縮・不拡散でございますが、NPT、核拡散防止条約、この運用検討会議が行われますが、そこでの議論を主導し、核兵器のない世界を目指して、現実的、実践的な取組を前進させていきたいと考えております。  気候変動、またポスト二〇一五年開発アジェンダ策定、この面でも積極的に貢献していく。また、今年の三月には国連防災世界会議、これは仙台で開催予定でございます。  続きまして、テロでございますが、世界各地のテロに象徴されるように、グローバル化と脅威の多様化が進んでおります。どの国も、一国だけでは自分の国の平和、国民の安全を守ることはできないという状況かと思います。そうであるからこそ、国際協調主義に基づく積極的平和主義の考えの下で、ウクライナ、イラク、シリア、イラン、中東和平、テロ対策などに積極的に貢献し、世界の平和と繁栄のために責務を果たしていきたいという考えでございます。特に、過激主義集団によるテロ行為が発生して多くの無辜の市民が犠牲になっているということを重大に受け止めております。非道、卑劣極まりないテロ行為により、同胞が、二人の方が殺害されたという事態もございます。こうした中で、国内外の日本人の安全確保に万全を期すとともに、中東、アフリカへの人道支援を更に拡充し、国際社会におけるテロへの取組にもきちっと対応してまいりたいと考えております。  その次でございますが、海洋、宇宙空間、サイバー空間、こうしたいわゆる国際公共財、グローバルコモンズでございますが、こうした公共財における法の支配の実現強化といったものも重要な外交課題と捉えております。特に、海における法の支配、これは総理からも発表いたしました三原則に基づき、開かれ安定した海洋の維持発展に、主要国、関係国と引き続き連携してまいりたいと考えております。  最後に、今の関連で、主要外交行事という表題の縦紙が添付で付いているかと思います。御覧いただければと思います。  今年も、三月の国連防災世界会議に始まりまして、外交行事、めじろ押しでございます。この一枚紙に記載されておるとおり、首脳レベルだけの国際会議を見ますと、例えば六月のドイツでのG7サミット、あるいは秋、十一月のG20、APEC、ASEAN関連会合等々ございます。こうした中で、日本としても是非議論を主導していきたいと考えております。  締めくくりに、二国間外交について言及をさせていただければと思います。  地球儀を俯瞰する外交実現していく上で、言わば足腰となる基盤は二国間外交かと存じます。こうした中でも、日米同盟が日本外交の基軸であるということは変わりません。  また、日中関係でございます。先ほど言及しましたが、昨年十一月に首脳会談が実現したということで、是非、これに引き続いて様々なレベルで対話と協力を積み重ねてまいりたいと考えております。今年の一月には、海洋問題について高級事務レベル協議、あるいは海上連絡メカニズムに関して防衛当局間の協議が行われたところでございます。  また、韓国とは、地域の平和と繁栄の確保という利益を共有しているところでございます。その関係強化に向け今後とも様々なレベルで積極的に意思疎通を積み重ね、大局的観点から、国交正常化五十周年にふさわしい未来志向で重層的な協力関係、こういったものを双方の努力により構築していきたいと考えております。無論、日本固有の領土である竹島につきましては、引き続き日本の主張をしっかり伝え、粘り強く対応をしていく考えでございます。  特に、日中韓三か国の協力を未来志向で強化することも重要であると考えております。外相会議、早期に開催し、首脳会議の開催につなげられるよう努力していきたいと考えております。  また、こうした国に加えまして、ASEAN、オーストラリア、インド、ヨーロッパ各国欧州連合、こういった国々あるいは機関との協力関係を重層的に強化していくという考えでございます。  最後に、資料で青塗りの地図と赤塗りの世界地図ございます。安倍政権発足以降、総理、外務大臣、多くの国の首脳や外務大臣と直接会われて個人的な信頼関係の構築に努めておられます。今後も、こうしたネットワークあるいは各国首脳の訪日の機会などを活用しながら、二国間外交を戦略的かつ精力的に推進してまいりたいと考えております。  以上、駆け足ではございますが、我が国外交の主要課題取組ということの説明とさせていただきます。  ありがとうございました。
  11. 柳田稔

    会長柳田稔君) ありがとうございました。  これより質疑を行います。  質疑を希望される方は、挙手の上、私の指名を待って質疑を行っていただきたいと存じます。  委員の一回の発言時間は答弁を含め十分以内となるよう、また、その都度答弁者を明示していただきますよう御協力をお願いいたします。  質疑及び答弁とも、御発言は着席のままで結構でございます。  まず、大会派順に各会派一人一巡するよう指名したいと存じますので、よろしくお願いをいたします。  それでは、質疑のある方は挙手をお願いいたします。  上野理事。
  12. 上野通子

    ○上野通子君 自由民主党の上野でございます。  ただいま、大変詳しい御説明内閣府、外務省、ありがとうございました。  今の御説明の中でちょっとまだ聞きたいところがありますので、その点を質問させていただきたいと思いますので、答弁よろしくお願いします。  まず、WTOについてなんですけど、我が国の繁栄の基盤が自由貿易体制にあることは疑いないことで、現在日本交渉中のTPPEPAの土台となっているのもその普遍的な自由貿易体制であるWTOであると私は思っております。しかしながら、御存じのように、二〇〇一年から始まったドーハ・ラウンド交渉はいまだに決着せずに、行き詰まったとも言える状況のようでございます。  そこで、現在のドーハ・ラウンド交渉現状見通しはどうなっているのか。また、あわせて、先ほど御説明ありましたメガFTAの、増加傾向にあるということでございますが、これがWTO交渉にどのような影響を与えていると考えられるか。  もう一つですが、WTO交渉における今後の進展ですが、例えば具体的な新たなルール作りなどに対し日本はどのようにリーダーシップを発揮していくというお考えなのか、また、どのような役割を果たせるのかということを併せて外務省にお尋ねしたいと思います。
  13. 齋木尚子

    政府参考人齋木尚子君) ありがとうございます。  今、委員からWTOについて御質問いただきました。  WTO世界経済の礎である自由貿易体制の基盤であるというのは全く御指摘のとおりでございます。このWTO中心とする多角的貿易体制は、恐らく三つの主要な役割というふうに整理をすることができるかと思いますけれども、その一つは、現在まさにドーハ・ラウンドが進められておりますように、貿易自由化交渉の場としてのWTOでございます。二番目の役割は、既存のルール、規則をきちんと各国が履行しているか監視をする役割というのもございます。また、三つ目の大きな役割としては、紛争解決がございます。  このうち、まず第一番目の貿易自由化交渉、ドーハ・ラウンドでありますけれども、委員の御質問の中にありましたように、二〇〇一年に開始をされ、全体として残念ながら膠着状態が続いているわけでございますが、しかし、二〇一三年十二月、インドネシアのバリで第九回のWTO閣僚会議が開催をされました。この第九回WTO閣僚会議におきまして、ドーハ・ラウンド交渉の部分合意として、貿易円滑化、農業の一部、そして開発、この三つの事項分野につきまして、ドーハ・ラウンドの今後の作業計画に関するいわゆるバリ合意が妥結をし、一定の前進を見たところでございます。  私の冒頭の御説明でも申し上げましたように、このバリ合意の着実な実施というものが大変重要だと思っておりまして、その一つとして貿易円滑化協定日本としても締結をすべく、この国会で御審議をいただければと考えているところでございます。また、ドーハ・ラウンド全体の妥結に向けた作業計画の策定についても日本として積極的に参画をしてまいりたいと考えております。  そして、WTOの下でどういう交渉がいろいろ行われているのかという御質問でございましたけれども、今申し上げました百六十か国、WTOの全ての加盟国が参加をして行っておりますドーハ・ラウンドとは別に、いわゆる有志国として幾つかの国が集まりまして更なる自由化を進める交渉WTOの下でいたしております。これは、多角的な貿易体制をより厚みのあるものとしていくという観点から大きな意義を持っていると考えております。  具体的には、情報技術協定拡大交渉、環境物品協定交渉、さらにはサービスの貿易に関する新しい協定交渉、こういったものが複数の有志国・地域による貿易自由化のために現在交渉が行われているところでございまして、日本としてはこうした有志国の交渉にも積極的に参加をしていきたいと考えております。  そして、WTOとメガFTATPPやその他のEPAとの関係でございますけれども、一言で申し上げますと、日本といたしましては経済外交外交の主要な柱の一つとして掲げているわけでして、その一方に、WTOという多角的貿易体制の大きな柱の下でしっかりとこの全世界百六十か国を入れた自由貿易体制を維持強化をしていくというのがございますけれども、これを補完するものとして、二国間、多数国間のEPAFTA交渉を通じて日本経済再生のためのいろいろな、高いレベルの経済連携をも含めていろいろな成果を実現をしていきたいと考えております。  その最終的な在り方ですけれども、二国間、多数国間のEPAFTAにおきまして各国がより高いレベルのルール、自由化を約束をしていく中で経済連携世界規模で深化をしていくということが当然に期待をされているわけでありまして、それが最終的にWTOにつながっていく、先ほど申し上げたWTOの自由化交渉と監視のメカニズムと、そして紛争解決、こういった主要な役割を担うWTOにいろいろなものが蓄積をしていく、これがドーハ・ラウンド交渉を進めていき、早期妥結へのモメンタムもまたEPAがつくり出してくれるというふうに考えておりまして、日本として積極的な役割を果たしていきたいと考えております。
  14. 上野通子

    ○上野通子君 詳しい御説明、ありがとうございます。  もう一点なんですけれども、引き続きお伺いしたいのは貿易格差への取組なんですが、昨年十月、ジュネーブのIPUの本部でWTOに関する議員会議が開催され、私も参加してまいりましたが、その際に、アフリカの国の方から、貿易の自由化は重要だが、途上国が実際に発展するためには貿易を超えた取組が必要であり、特に若者が貿易の仕組みを理解したり主体的に取り組めるような教育など更なる人道支援等が必要だという話も聞いてきました。  こうした点で、日本は途上国に対し、特に自由貿易により貿易格差が広がった国に対し、現在どのような取組を行っているのでしょうか。
  15. 齋木尚子

    政府参考人齋木尚子君) お答え申し上げます。  WTO加盟国の大多数は開発途上国でございます。ドーハ・ラウンド交渉におきましても、開発途上国が多角的貿易体制参加することを通じて開発を促進していくことが大変に重視をされております。我が国といたしましても、貿易拡大を通じて途上国の経済成長実現していくとの考えの下、途上国に対して貿易関連の能力向上のための支援や、またインフラ整備の支援などを積極的に実施をしてきております。  具体的に申し上げますと、貿易を行うためのインフラ整備への資金供与でありますとか税関職員の教育など、貿易関連分野における技術協力は重要なツールであると考えております。また、WTOの中に信託基金が設けられておりまして、この信託基金に日本は拠出をして、開発途上国が貿易交渉を進めて国際市場参加するための能力を強化すること、そしてWTO協定を当該途上国としてきちんと履行できるような能力を付けてもらうことを目指して信託基金を有益に活用しているところでございます。
  16. 柳田稔

    会長柳田稔君) 次に、福山哲郎君。  答弁者を明示して質問してください。
  17. 福山哲郎

    ○福山哲郎君 民主党・新緑風会の福山でございます。どうかよろしくお願い申し上げます。  それぞれの皆さんにおかれましては、日々本当に御精励をいただいていることを感謝申し上げます。  今日は、追及する場でもありませんので、私なりの思いを若干述べた後、それぞれにお答えというか御意見を御披瀝いただければ有り難いと思っております。時間がないので一遍にお伺いをします。  まず、田和さんにお伺いをいたします。  御説明のとおりだと思うんですが、確かに表を拝見いたしますと緩やかにアメリカ景気は良くなっている等々があって、アメリカは一四年度で暦年でプラス二・四%、ユーロ圏は、あのユーロ圏ですらプラス〇・九%でございます。日本は残念ながら、あれだけアベノミクス、アベノミクスと言いながら、結果としてはマイナス〇・五%になりました。  先ほど田和さんが言われたように、原油価格下落をしてGDPに貢献をしていることを鑑みれば、去年、大体、七月以降、原油価格が落ちていますので、七月の時点での政府経済成長見通しプラス一・四だったはずです。それが原油価格の貢献も含めてマイナス〇・五%になったということに対して、私は非常に心配をしております。一方で、新興国経済は、成長はあるけれども緩やかに減速というかスピードが弱まっているというふうに全体としてはIMFも世銀も言っておりまして、こういった状況の中で我が国経済についてどうお考えになられるか。  これだと余りにも抽象的なので、先ほど御紹介があったように、ECBは量的緩和を始められました。一方で、アメリカはテーパリングが始まろうとしています。日本は、このままインフレ目標二%のまま量的緩和を更に続けるとなるとより一層円安になる、そのことに対するリスクをどういうふうに考えたらいいのか。先ほども申し上げたマイナス〇・五%の問題と今の円安のリスクについて、量的緩和をECBが始め、テーパリングをアメリカが始めて、相対的に日本がどうするのかということについて御意見を御披瀝いただければと思います。  齋木さんに関しては二点、端的にお伺いをします。  一点は、エネルギーの、ここに書いてあります、いわゆるLNGと原油価格のグラフが十ページにあったわけですが、これ、元々日本はずっと自民党政権からLNGと原油価格ってペッグしていたわけです。震災の後、我々はそのペッグを外すべきだと、シェールガスが出てきて安くなっているんだから原油価格のペッグは外した方がいいという話をして、これは外務省も経産省も御苦労をいただいておりました。  これ、原油これだけ下がってきています。これまでどおりペッグしているのだったらLNGも下がってしかるべきですし、シェールガスの関係も含めても相対的には下がってしかるべきなのに、LNGの輸入価格は横ばいです。ここはどうしてなのかを教えていただければということと、もう一点、齋木さんには、日本のODAが、これだけ円安だと、拠出金額はドルベースでいうとどんどんどんどん相対的に日本の拠出金額は下がっていきます。これは、国際社会上、見かけ上、非常に日本はODAの拠出額を減らしているように映ります。ここについて、円安だからという言い訳はできないはずで、アベノミクスをあれだけ言っているわけですから、そこをどういうふうに外交上御説明されるのか、このことについて齋木さんにお答えをいただければ。  三つ目、山上さんにお伺いします。山上さんにはもういろいろお伺いしたいこと山ほどあるんですが、一点だけ。  主要外交行事のペーパーをいただきました。非常に参考になるんですが、一点だけ、毎年やるべき主要外交行事のサミットが消えています。御案内のように、日中韓首脳会議です。これは毎年毎年やっておりました。これはバイの会談とは違って、個別のそれぞれの両国間の問題についてお互いがある意味でいうと言わない、しかし、日中韓ならば、それぞれの共通の課題についてまずいろんな形の信頼醸成ができるという一つの外交の知恵の産物だったと思っております。これは別に民主党だ自民党だと関係ありません。  日中韓サミットの予定について、今どういう状況で進んでいるのか。外交上ですから言えないことがあるかもしれませんが、どういうおつもりなのか、このことについて山上さんにお答えいただければと思います。  以上でございます。
  18. 田和宏

    政府参考人田和宏君) 福山先生の御質問でございますけれども、まず日本経済でございます。  昨年、確かに七月、夏ぐらいから原油が下がってまいりました。ただ同時に、為替の円安という状況我が国経済においては発生しておりまして、そういった意味で、原油安のプラスの面を為替、特に輸入物価の上昇というものが相殺をしてきていたという状況はあったかと思います。  そういう中で、アベノミクスを通じて日本経済をどうやって引っ張っていくのかということについて言いますと、やはり賃金の上昇が物価の上昇を追い越すということを目指していったわけですけれども、昨年の段階ではそこまで十分な賃金の上昇が実現はできなかったということは結構大きかったんではないかと。あと、昨年には、もう国会でも御議論いただいておりますけれども、やはり消費税の導入の大きな経済に対する、駆け込みの需要とか駆け込みの減とか、そういった影響もあったんではないかと思っております。  ただ、為替にいたしましても原油にいたしましても、経済にとってみればやはり安定をするということが非常に重要なことでございまして、その点がやはり我が国の今後の経済を見通す上では非常に重要であろうと思っております。  先生がおっしゃったように、新興国、需要サイドでいいますと確かに弱い需要でございまして、その意味では原油の需要サイドが弱い、それから供給サイドでいいますと、例えばOPECで減産するという状況には今ないということで、実物の原油マーケットは割合軟調が続くのかなというふうには思っておりますけれども、一方で、資金の動きというものが国際金融市場と併せて大きく動いたりするとやはり新興国に大きな影響を与えるということでございますので、この辺は非常に重視をしていかないといけない。  あと、為替でございます。為替は、今申し上げましたように、非常に安定することが重要ではございますけれども、ある意味で、為替というのが日本のいわゆる持っているファンダメンタルと合っているのか合っていないのかというところがやはり一つのポイントだろうと思っていますので、この辺はかなりちょっと、ある一定の期間を見ていく必要性はあろうかなというふうに思っております。
  19. 齋木尚子

    政府参考人齋木尚子君) まず一点目、エネルギーの御質問をいただきました。  現在の原油安の要因につきましてはいろいろな分析、可能でございまして、もう先生御案内のとおりですけれども、あえて一般的に申し上げますと、米国シェール革命影響によるシェールオイルの増産、そしてOPEC諸国が減産しないこと、こういったことで、十ページのグラフでもお示しをしましたように、油価が下がっているということでございます。さらには、石油取引の決済通貨であるドル価の上昇、また、世界経済の御説明もありました緩慢な成長によって原油輸入の需要の伸びが見込めないというふうなことからこのように下がってきているということでございますので、この辺りについては、また引き続き我々としても、何といっても需要動向、そして地政学的リスク等々ございますので、その複雑な要因をしっかりと分析をしてフォローアップをしてまいりたいと思います。  それから二点目、ODAについてであります。  確かに、円安でございますので、ドルベースで日本のODAは落ちていくということで、なかなか厳しい状況であるというのは率直なところであります。しかし、日本といたしましては、これまで戦後培ってまいりました質の高いODA、相手国の立場に立ったODAを心掛けてまいりたいと思っております。特に顔の見える援助というのも大事だと思っておりまして、この観点からは、日本のNGOや市民社会との連携を強めることによって、世界において日本の顔が見え、そして質の高いODAが実施できるように、より一層努めてまいりたいと思っております。  一つの例挙げますと、一九九三年からTICADというアフリカ開発会議を日本は主催をしてきております。九三年時点からずっと日本が掲げてまいりましたのは、オーナーシップとパートナーシップ、決して上から目線で援助を押し付けるのではなくて、アフリカ諸国と日本とがパートナーとして、相手の立場に立った支援を行うと。そして、アフリカの問題は最後はアフリカ自身が解決できるようなオーナーシップをアフリカに持ってもらうということで、もう一九九三年から二十年以上にわたる、今、一例で申し上げたわけですが、アフリカの開発会議もございます。  こういった日本としてこれまでしっかりと培ってきたものをより高めていくことで努力をしたいと考えております。
  20. 山上信吾

    政府参考人山上信吾君) 日中韓サミットの重要性について御指摘いただきました。政府としましても、中国、韓国と協力しつつ、この日中韓三か国の協力を未来志向で強化する、こういう目的のために、日中韓の外相会議、さらには首脳会議の開催といったものを一貫して重視してきたところでございます。  そこで、じゃ、お尋ねのいつやるのかというところでございますが、現下の情勢を踏まえれば、いきなり首脳会議というよりも、まずは外務大臣レベルでというところかと思います。既に国内のマスコミ報道などでも幾つか出ておりますが、現時点で申し上げれば、この日中韓の外相会議の具体的な日程や場所というものはまだ確定しておりません。引き続き調整中でございまして、我が国としましても、韓国、中国外交当局と不断に連絡を取り合っているところであると御理解いただければと思います。  いずれにしましても、今議長国は韓国でございますので、韓国を中心に、引き続きこの外相会議開催に向けた努力といったものが前に進むことを強く期待しておるところでございます。
  21. 福山哲郎

    ○福山哲郎君 終わります。ありがとうございます。
  22. 柳田稔

    会長柳田稔君) 次に、河野義博君。
  23. 河野義博

    ○河野義博君 公明党の河野義博でございます。  本日は貴重な御説明を賜りまして、ありがとうございます。  まず、外務省さんに日中・日韓関係に関しまして改めてお伺いをいたします。  お示しいただきました外務省さんの一つ目の資料ページ目にございます、中国との貿易額は、日本貿易総額に占める割合、中国二〇%、韓国六%と、非常に大きな割合を占めております。また、訪日外国人も一千三百万人を昨年超えましたけれども、韓国、中国、台湾でその六割以上を占めておりまして、非常に経済的な面でいえば切っても切れない、本当に重要なパートナーであります。  一方で、日中関係、日韓関係は、必ずしも政治状況を鑑みますと芳しくない状況が続いている中で、第二次安倍政権発足以来様々なお取組をしていただいていますけれども、改めてその具体的な取組、そしてまたその成果について、委員の皆さんにちょっとお示しをいただければと思います。お願いします。
  24. 山上信吾

    政府参考人山上信吾君) 日中ということでまず申し上げれば、委員御案内のとおり、なかなか、尖閣の問題、さらには歴史認識の問題等ございまして、非常に困難な局面に直面してきたというところは異論のないところかと存じます。そうした中で、日本の立場は立場として維持しつつも、どうやって重要な隣国である中国と関係を必要に応じて強化していくか、維持強化していくかというところが最大の課題かと存じます。  政治面では、昨年十一月、私の冒頭の御説明でも申し上げましたけれども、いろいろ困難がある中で、四項目の共通理解という形で文書を作成した上で北京の日中首脳会談というものを実現することができたということは、日本の原則的立場というものを曲げずに維持しつつも首脳会談の実現をすることができたというのは、外交当局者から見ますと一つの成果ではなかろうかと考えております。  また、経済面説明経済局長に譲りますが、そうした政治的な困難はありつつも、貿易投資面で重要なパートナーとしての関係を維持することができているというのも、これも数年前の状況を鑑みますれば一つの前進と言うことはできるのではないかと受け止めております。
  25. 河野義博

    ○河野義博君 様々な課題はありながらも、総理は対話のドアはオープン、オープンとおっしゃいますけど、やっぱりそのオープンなドアから一歩踏み出して次の局面をつくっていくことも大事であろうかと思います。様々な引き続きの御努力を賜りたいと思いますし、しっかりサポートさせていただければと思っております。  次に、TPPに関して端的にちょっと伺います。  TPPのみならず多国間の連携を、経済自由化、貿易自由化を進めていくというお取組は、方向性としては間違っておりませんし、また、TPP交渉に関しましても、交渉事でございますので、その交渉状況をつまびらかに詳細に報告するというのはできないというのは、よく事情承知をしております。  国会でも決議がございました。農産品でございますと重要五品目は守るですとか、国益を損なうような投資協定を結ばない、そういった方向を保ちながら進めていただいておりますので、その方向性、問題はないと思っております。  一方で、一つ足りないのは、私はやっぱり定量的な議論、定量的なメリット、デメリットの議論がちょっと足りていないんじゃないかなと思っております。一昨年までは、そういう質問をしますと、これを取ればこういうメリットがあって、これをなくすとこういうデメリットがあります、結果的にはこういうプラスのメリットがあって、これは続いていくとこうなりますという定量的な議論があったかと思うんですが、改めてその定量的なビジョンもお示しをいただくと国民の理解も深まっていくんではないかなと思うんですが、これ、経済局長に伺いたいと思っております。
  26. 柳田稔

    会長柳田稔君) 経済局長。
  27. 澁谷和久

    政府参考人澁谷和久君) 済みません、内閣官房からよろしいですか。
  28. 柳田稔

    会長柳田稔君) はい。澁谷内閣審議官
  29. 澁谷和久

    政府参考人澁谷和久君) 内閣官房のTPP政府対策本部でございます。  TPPに関して私の方からお答えをさせていただきたいと思いますが、先生御指摘のとおり、TPP交渉に正式に参加する前に、一昨年でございますが、経済効果の試算というものを公表したわけでございます。ただ、そのときの効果というのは、関税が全て撤廃をされて、かつ対策を一切講じないというかなり極端な仮定に基づきまして、マクロ経済モデル、一般的なマクロ経済モデルであるGTAPというモデルを使っての試算でございました。  しかしながら、TPPというのは関税の交渉だけではなくて、まず物以外に投資やサービスの自由化、これは日本が攻められていることはほとんどなくて、むしろ日本の方がほかの参加国に対して要求をしているということでございます。これが取れれば、これは日本にとってはかなりの効果になると思います。  また、TPPのような、先ほどメガFTAというお話ございましたけれども、本来的には、そういう個々の関税なり、あるいはサービス、投資の自由化以外に、多国間で経済連携を進めることで新しいグローバルバリューチェーンが創出をされて、お互いの国にイノベーション、技術革新が生まれて、それぞれの国の生産性が向上し、成長に資するというのが最大のメリットであります。したがって、関税の効果以外に非関税の効果、さらには成長に資する効果、大きく分けてこの三つぐらいあるわけでございますが、ただ、この三つをどのような形で定量的にお示しをできるかというのは、まだまだ各国ともここは発展途上のところであります。各国ともその辺どういうような手法があり得るのかということを今相談をして、専門家も交えまして検討しているところでございます。  いずれにいたしましても、TPPが合意をして国会で御承認をいただく手続に入る前には、TPP効果というものを国民の皆様に対して分かりやすく説明する必要があろうかと思います。その辺どういう形で説明をするのが、現時点でどういうものが考えられるかということを今検討させていただいているところでございます。
  30. 齋木尚子

    政府参考人齋木尚子君) 今、TPPについて内閣官房から御答弁申し上げたとおりでございます。  世界標準でGTAPという言及がございました。世界貿易分析プロジェクトというのがございますけれども、それも関税のデータしかないというところでございまして、現在我が国交渉しておりますTPPを含むメガFTAは、関税の貿易のみならず、投資や知的財産権、競争、政府調達、幅広い分野がいろいろ含まれておりますので、こうした二十一世紀型の経済連携協定につきましては、なかなか全ての分野を含んで経済効果を定量的に一義的に示すというのは難しいということで、学術的にもまだ発展の途上にあるということだと理解をしております。しかし、その上で、定性的に、また可能な限りどういう御説明がしていけるかというのは政府としても引き続き検討をしてまいりたいと思います。  またさらに、いろいろなEPA、先ほど十五締結ないし署名をしたと御紹介申し上げましたけれども、既に結んだEPA経済連携協定につきましては、その効果などは関係省庁しっかりと連係プレーを取りながらデータも取ってお示しをしていきたいと考えているところでございます。
  31. 河野義博

    ○河野義博君 時間が参りましたので。ありがとうございました。
  32. 柳田稔

    会長柳田稔君) 次に、柴田巧君。
  33. 柴田巧

    ○柴田巧君 維新の党の柴田巧です。  今日はどうもありがとうございました。よろしくお願いします。  まず最初に、齋木局長にお伺いをしたいと思いますが、先ほども経済外交基本方針重点課題の中でもお触れになりましたが、我が国にとって有利な国際経済環境を整備をしていくためにも法の支配を推進していくことが重要だと。それに関連してお聞きをしたいと思いますけれども、そういう意味からすると、やはりアジア諸国でのこの法の支配の定着、あるいは法制度整備支援をしていくということは非常に重要なことだと思っております。これは、その国の経済発展や貧困の撲滅のために重要であると同時に、やはり少子高齢化で、また人口減の我が国にとってアジアの国々成長力を取り込んでいくということからも、グッドガバナンスを実現させていくというのは大事なことだと思います。  これまでも例えばベトナムの憲法改正とかカンボジアの民法とかいろんな法制度支援をしてきましたが、昨今はミャンマーでいわゆる知的財産保護制度の支援も今やり始めておりますけれども、こういうとりわけ経済関係の法律あるいは制度を日本が関わることによって作っていく、お手伝いをしていくということは、日本企業が進出をする、活動をしていく上でも大変意味あることだと思います。特に知的財産制度は、今ない国だとデザインとか特許とかいろいろ流出しかねないということにもなりますので懸念があるわけですが、そういったものが整えば進出しやすい、事業を展開しやすいということになると思っていますが。  こういう法制度整備支援をやはりこれからしっかり取り組んでいくべきだと思いますが、ただ、それに関わる人材をどう育成、確保していくか、あるいはこれは法務省との連携もあるでしょうし、あとは政府といわゆる日弁連とか大学とか等々、官民連携も必要だと、オールジャパンで取り組む課題でもあろうかと思いますが、この法制度整備支援、どのようにこれからやっていこうというお考えなのか、お聞きをまずしたいと思います。
  34. 齋木尚子

    政府参考人齋木尚子君) お答え申し上げます。  今委員御指摘いただきましたとおり、法の支配の確立、グッドガバナンスの実現といった普遍的価値の共有や、平和で安定した、そして安全な社会の実現というのは途上国の将来の発展の大前提となる基盤であると考えております。  したがいまして、先般政府として発表させていただきました開発協力大綱におきましても、従来の平和の構築からスコープを拡大いたしまして、法制度整備支援や民主化支援、また治安改善のための支援なども含めまして、重点課題の一つとして普遍的価値の共有、平和で安全な社会の実現を置いたものでございます。
  35. 柴田巧

    ○柴田巧君 ありがとうございます。  次に、山上審議官にお聞きをしたいと思いますが、この経済外交をこれから力強くまさに展開をしていくためにも、また環境変化を踏まえて国益をしっかり確保していく上でも、対外発信力を向上させるというのは言うまでもなく大事なことだと思っています。  新年度、いわゆるジャパン・ハウスを世界三つの都市でつくってその強化に努めたいということなんですが、それは全く否定するものではありませんが、新しい器を、そういうものをどんどんつくる前に、今までの情報発信、対外発信力の在り方をやっぱりしっかり見直してみるべきなのではないかなという気がします。そういったものを新たにつくる前に在外公館あるいは国際交流基金などをもっとフル活用する、あるいはこれまでの人的ネットワークをやっぱりフルに使うということが先なのではないかと思いますし、一方で、特に経済外交ということからすれば、あるいは二国間、アメリカとの二国間同盟の強化ということからすれば、昨今、一九九〇年代からワシントン、我が国の関係の機関がどんどん撤退をしているわけですね。日本経団連もそうですし、国際交流基金もそうですし、日米経済協会ですか、こういったものが我が国からすればどんどん撤退をしている一方で、韓国は逆に、二〇〇〇年代に入って韓国基金をつくったり、韓国経済院ですか、活発な経済外交を展開していると思いますが、やはりワシントンには世界銀行があったりIMFがあったりシンクタンクがあったり、アメリカ経済あるいは世界経済影響を及ぼす機関が集中しているわけですから、ここにやっぱり力を注がないと我が国の国益が確保できない、あるいは経済外交が展開できないんではないかと心配するんですが、そこら辺はどのように考えておられますか、お聞きをしたいと思います。
  36. 山上信吾

    政府参考人山上信吾君) 御指摘いただきまして、まずジャパン・ハウスの件でございます。  今委員から交流基金、在外公館等フルに活用すべきではないかという御指摘いただきました。まさにそういった交流基金にせよ在外公館にせよ、あるいはジェトロにせよ、そういった在外にある日本関連の機関というもの、これをむしろ、ばらばらに活動するのではなくて言わば一つの拠点としてやっていけないかという発想がこのジャパン・ハウスの背後にはございます。  端的に申し上げれば、やはり国際社会で日本の正しい姿への理解を更に広げていく。このために何が必要かと申せば、やはり今まで日本への関心が高くなかった人々も含めて幅広く関心持ってもらう、そして、親日派、知日派の裾野を拡大していく必要があるということかと思います。  そのために何をするかということでございますが、一つには、政府、民間企業、地方自治体などが連携して、言わばオールジャパンの形で様々な日本の魅力を発信できるのではないか。それから二つ目には、内外の専門家の知見といったものを活用して、現地のニーズというものも踏まえて発信すべきではないか。さらには、三つ目には、日本に関する情報が一度に入手できるようなワンストップサービス、こういったものの実現が重要ではないかと。  そういった観点から、拠点としてジャパン・ハウスを活用して対外発信を強化してまいりたいと、こういう意図でございますので、その点は、先生が御指摘になっていること、それから目指しておられる方向と、私どもとしては同じ方向を向いているのではないかと思いますので、御理解を賜れればと思います。  それから二点目で、ワシントンが重要であると、これはもう御指摘のとおりかと思います。私もかつて勤務いたしましたが、まさに、世界いろいろ広報の拠点として重要なところありますが、日本にとっての同盟国でもある、それから世界的な発信能力が高い町においてきちっと日本の主張というものを理解、周知するということの重要性は御指摘のとおりかと思います。  既にワシントンには大使館、それから大使館の広報文化センター等ございますが、こういった機関も活用し、またアメリカ側のシンクタンクとの連携強化していく、こうしたことを通じてきちっと対外発信をしていきたいと考えております。  それから、当然のことながら、東京発信のやはり情報というのも重要かと思います。アメリカの大手メディアの特派員もおりますし、そうした関係者に対して、ワシントンのみならず、東京においてもきちっとやはり英語で分かりやすく発信していくということの重要性も私どもとしては認識して、更に努力してまいりたいと考えております。
  37. 柴田巧

    ○柴田巧君 どうもありがとうございました。
  38. 柳田稔

    会長柳田稔君) 次に、紙智子君。
  39. 紙智子

    ○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。  私、最初に通商交渉についてお聞きしたいんですけれども、一九九五年にWTOが発足をして、今年ちょうど二十年目ということです。この協定をめぐっては、当時はもう国論を二分する大議論がありました。政府は、世界から孤立する、乗らなきゃいけないということで大宣伝をして参加をしたわけですけれども、その後WTOはできたわけですけれども、新たなラウンドの立ち上げのとき、一九九九年のシアトルの閣僚会合では立ち上げに至らなかったと。同会合の決裂があって、その背景に、非公式協議を重ねる意思決定方式への批判の高まりも指摘されているわけです。再びドーハ・ラウンド交渉が開始されたわけですけれども、二〇〇三年のカンクンでもまとまらずということがありました。長期にわたって停滞をしているわけですけれども。  そこで、二つちょっと伺いたい。内閣府になるかと思いますけれども、一つは、WTO日本経済がどう発展したのか、特に一次産業は発展したのかということです。それからもう一つは、WTOが停滞している原因、これは端的に言うとどういうことなのかということをお答えいただきたい。  それから、もう一つつなげて言いますけれども、外務省の方にお聞きしたいんですけれども、WTO協定交渉がうまくいかなくなって、その背景は加盟国の構成や交渉力の変化や利害対立、途上国とそういう対立もあったということが指摘されているわけです。WTO交渉が進まなくなる下でFTAとかEPAとか二国間の連携が一気に増えていったというふうに思っているわけですね。  そういう中で、今、TPPですけれども、TPPは従来の経済連携協定よりもより包括的で野心的というふうに言われているんですけれども、この交渉というのは秘密交渉なわけですね。我が国経済我が国の人々の生活にも重大な影響を及ぼすわけです。とりわけ農業や食料の分野というのはみんなが非常に不安が大きいわけですけれども、国民に重大な影響を及ぼす内容なのに国民に情報を出さず交渉するやり方にも強い批判が続いているわけです。  政府は秘密保持契約にサインをして交渉参加したわけですけれども、このような秘密保持契約にサインをした交渉というのは過去にあったのか、もし過去にあったとしたらどういう交渉なのか、これ経済に関わってです、ということでお答え、それぞれ内閣外交ということでお願いします。
  40. 田和宏

    政府参考人田和宏君) 内閣府ですけれども、先生の御質問の、実はWTOでもって農業が発展したのかという御質問であったんですけれども、残念ながら私の知る範囲では、WTOでもって農業の発展度合いというのを分析したものがあるのかないのかというのを私自身ちょっと存じ上げないんで、大変、申し上げられないんで申し訳ないんですけれども。  農業の場合、まさに対外関係という問題と同時に、非常に高齢化しているという国内問題も今抱えております。そういった大きな構造問題を抱えながらやっておりますので、その辺ちょっと現時点では私、直接は申し上げられないんで申し訳ないんですけれども、そういったものを多角的に今後しっかり見ていく必要性はあるかなというふうには思います。
  41. 紙智子

    ○紙智子君 停滞している理由。端的にお願いします。
  42. 齋木尚子

    政府参考人齋木尚子君) WTOが、先生御指摘のとおり、発足以来、今ドーハ・ラウンド交渉をしておりますが、このドーハ・ラウンド交渉の停滞の原因は、やはりメンバー国が今増えて、百六十か国でございます。貿易円滑化協定という、今一つ成果が上がりつつありましたが、このために十年ぐらい掛かったと。この理由は、やはり途上国が優遇措置を途上国として求める。その中にはいわゆる新興国も入っております。そういう途上国、まあ新興国と言ってもいいわけですが、これと、途上国というよりは新興国なのだから応分の市場開放を求めたいという先進国もある。こういう先進国新興国・途上国と、そういった対立も一つの原因として挙げることができるかと思います。
  43. 紙智子

    ○紙智子君 もう一つ、秘密保持のサイン。
  44. 齋木尚子

    政府参考人齋木尚子君) 秘密保持でございますが、通常のWTOやあるいは経済連携交渉におきましては、秘密保持契約というふうなものがあると限ったわけではございませんけれども、他方において、交渉事でありますので、交渉中のやり取りの文書等々について対外的に公表をしないということで合意をした上で交渉を進めるというのは当然にございます。  一般に外交交渉におきまして公開できることできないことはあるわけでありますが、公開できるものにつきましてはしっかりと御説明をしてまいりたいと思います。
  45. 紙智子

    ○紙智子君 秘密保持契約にサインしているんですよね、しているというふうに報道されていましたけど。
  46. 澁谷和久

    政府参考人澁谷和久君) TPPはそうです。TPPに関しましては、二年前の七月二十三日に当時のマレーシアでのラウンドに正式に参加したときにそういうものにサインをして、それで正式参加が認められたということでございます。
  47. 紙智子

    ○紙智子君 それは初めてですか。今までもあったんですか。
  48. 齋木尚子

    政府参考人齋木尚子君) 大変失礼しました。  先ほどお答えの中で申し上げたように、一般に貿易交渉経済交渉において、TPP交渉参加の際に交換したような秘密保護に関する書簡、契約を交わした例はないと承知しております。
  49. 紙智子

    ○紙智子君 例はない。  今、この秘密交渉という問題では、参加国の間でも非常に批判があるわけですね。アメリカ国内でも批判が高まっていて、通商担当の官僚を務めた経験を持っているゲリー・ホリックさんという人は、二〇一二年の一月に日本に来て、TPP交渉は私が知る中では最も透明性に欠ける貿易交渉だと苦言を呈したと言われているわけです。  それで、不透明さはアメリカ国内で大きな問題になって、アメリカの研究機関と大学の図書館を代弁する二十三の組織がTPP交渉のドラフトの一般アクセスを要求したということも言われている。それから、TPP交渉のテキストを公開することを求めるアメリカ議会の法案も提出されている報道がされているわけです。  一方、欧州委員会の方は、米国とのTTIP、環大西洋貿易投資パートナーシップ交渉では、二〇一五年の一月に、米国側に提案した協定文書案を公表したんですよ。EUが二国間の通商交渉の文書を公表するというのは初めてのようなのですけれども、これ御存じだったでしょうか。もし知っていたら、なぜ公表したと思われますか。
  50. 齋木尚子

    政府参考人齋木尚子君) アメリカEUの第三国間の交渉事でございますので、私どもとしてその背景等々について臆測することは差し控えさせていただきます。
  51. 紙智子

    ○紙智子君 ちょっとお粗末な答弁だなと思うんですけれども。やっぱり知るべきだと思いますし、これはやはりEUが、消費者団体などを含めて国内で非常に大きな世論が起こっていると。米国とのFTAに慎重な声も多くて、交渉を担当する欧州委員会としては、透明性を向上するということでやっぱりその区域内で幅広い理解を得たいというふうに考えているということなんですね。だから、秘密交渉ということではなくて、やっぱり真っ当な交渉相手としてやらなきゃ駄目だと、国民の理解を得なければ結局うまくいかないんだということが認識が広がっているということでもあるわけです。  その点で、日本は秘密保持契約を理由にして全く情報を出さないわけですけれども、このやり方自身が私は時代遅れで非常に閉鎖的なスタイルだというふうに思うんですけれども、その点について一言最後にお聞きして、終わりたいと思います。
  52. 澁谷和久

    政府参考人澁谷和久君) 交渉のある意味情報をなるべく外に出さずに交渉したいということと、一方で国民の理解を得ながら進めるその透明性をどう確保するかという、そのバランスに実は各国も非常に悩みながら進めているところでございます。どの国も、やはり国内では透明性を高める声があるというのは事実でございます。  日本参加をした後、何度か会合を重ねているわけでございますが、当初は閣僚会議以外の中間会合といいますか非公式な会合についてはやっていることすら公表しないということであったんですが、日本の首席交渉官が参加する会合は、日本としてもこれは、交渉の中身はともかくとして、その会合をやっているということぐらいはもう記者発表するぞと、かつ、どういう分野についてどの程度の議論がされているのかということは連日記者ブリーフィングをするということで、日本としてはだんだんそういう方向で、十二か国の中でも、中の議論を通じて少しでも状況を国民の皆さんに分かりやすくお伝えできるように努力をしているところでございます。  それでもまだまだ不十分だというお叱りを常にいただいているところでございますので、引き続き一層の工夫、努力をしていきたいというふうに思います。
  53. 柳田稔

    会長柳田稔君) 次に、アントニオ猪木君。
  54. アントニオ猪木

    アントニオ猪木君 今日は元気ですかはやりませんけれども。  先ほど地球儀を俯瞰する外交ということで、八九年の政治の場にいたときにも非常に環境問題に興味がありまして、ブラジル、特に南米、私が十四歳のときにブラジルに移民したときに、水を買って飲むというのを初めて体験してびっくりしたんですが、それで、その後日本に戻って、その頃は水道水もまだ、地方へ行っても蛇口をひねれば水がおいしいというのを感じましたけれども、その後世界中いろんなところを回ったときに、こんな小さな袋に水を入れて半日ポケットへ入れておくと雑菌が、菌がどのぐらいいるかというのが分かったり。そんなので、ちょうどこの間、昨日、おとといですね、プノンペンへ時間をいただいて行ってきたんですが、今回はスポーツ関係だったんですが、ちょうど当時も本当に荒れ果てた状況があって、大分経済も発展してきて勢いがあるなという感じがしました。  そんな中で、先日の決算委員会で質問させてもらった国際連合経済社会理事会というのがあるんで、多分これは余り認識が薄いのかなと思いますが、日本も、今六十四か国ですかね、アメリカも入っていますけれども、その辺が、日本がリーダーシップをしっかり取った、これも今の地球儀をあれするような形ででも、なかなかどの国もそこまでの余裕がないので日本がその辺を含めてリーダーシップを取って。特に、今回ニカラグアの、パナマ運河ではなくてニカラグア運河というのが、竹下総理の時代ですかね、日本がそれをやるという話があって、そのまま立ち消えになって、今、中国がその権利を買いまして、これから中南米を含めた輸送のコストの一番の大事なところを中国が押さえている。そんな感じで、本当にどこ行っても中国人がいるんでもう本当にびっくりするんですが、その辺について、地球儀を俯瞰する外交を通じて今どういうお考えか。
  55. 山上信吾

    政府参考人山上信吾君) 今御指摘いただきました水の問題の重要性、あるいは経済社会理事会での活動の重要性、実は私どもが今提唱しております積極的平和主義、これ、昨年の七月の閣議決定における安全保障関係の話にとどまるものではございませんで、もちろん、閣議決定の中でも言及されましたPKO活動など国際的な平和協力活動への貢献もございますれば、さらには、より広くこの積極的平和主義という考えの下で人道支援、あるいは人間の安全保障の促進、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ、開発援助協力、軍縮・不拡散の推進、法の支配の強化、人権の擁護、こういったあらゆる外交努力といったものが積極的平和主義という考えの中には含まれるんだろうと考えております。  そうした中で、今委員から御指摘いただいたような種々の問題への対応も含めて、適切に対応してまいりたいと考えております。
  56. アントニオ猪木

    アントニオ猪木君 これもこの間質問させてもらいましたが、天皇皇后両陛下がパラオに訪問される。それで、戦後七十周年というそういう中で、本当になかなか、テレビでもやりますけど、そのパラオでどれだけの人が死んだかという、一万六千人が玉砕したというような、そういう遺骨もまだ収集全部できていない。そんな中で天皇が今度は訪問されるということで、大変セキュリティーの問題があると思うので、船で宿泊施設を取って、多分、行って、八日の日ですかね、来月、それで翌日にはもう戻られてしまうと。本当はサンゴを見てもらいたかったんですが。  今回、ちょうど中国がアカサンゴを、ああいうテレビで報道されたとおりですが、私もサンゴを今増殖させているんですね、一生懸命。それで、それが見事に、どうでしょう、この部屋の何倍ぐらいか、外海に植えたのはちょっと分かりにくいんですが、見事に大きくなっているんです。  その辺、今ちょうど今回の辺野古の基地のサンゴの問題も出ていますが、今後、やはりサンゴに対する取組などについて、どなたでも結構ですけど。
  57. 山上信吾

    政府参考人山上信吾君) もちろん、これはサンゴを環境問題の一環として対処していく。国内的にもアカサンゴの違法漁獲といったもので耳目を大きくにぎわしたということは記憶に新しいところでございます。また、今パラオのサンゴについて御指摘ありましたけれども、例えば、南シナ海において大規模な埋立てあるいは空港の建設が進む中で、環境への悪影響を指摘する向きもございます。  そういった問題を含めて、やはり特定の地域に限定されることなく、人類社会の共通の財産を守るといった観点からこの問題に対処していく必要もあろうかと考えております。
  58. アントニオ猪木

    アントニオ猪木君 齋木経済局長にお聞きしたいと思いますが、先ほど教育という問題が、アフリカの問題出ましたが、これも、中東もそうですが、先日、ノーベル賞を取ったマララ女史とも会ってきまして、本当に十七歳の子に教わるというか、本当に大したあれかなという、あそこまでよく信念が持てるなという。そんな中で、やはり学校を造りたいという、これはパキスタンにおける話ですが、アフリカの場合、特にその辺がまだまだ。この辺をどうやって日本がリーダーシップを取って、あるいはどういう協力をしていくのか、お聞かせください。
  59. 齋木尚子

    政府参考人齋木尚子君) お答えいたします。  委員御指摘のとおり、やはり次の世代をどのように教育をし、つくっていくかというのは大変重要な課題であると思いますので、アフリカや中東においても日本の優れた教育システムをうまい形で伝えていって、若い世代、次世代の育成に日本としても力を尽くしていきたいと考えております。
  60. アントニオ猪木

    アントニオ猪木君 何か、やはり通うだけでも大変ですけどね、私もブラジルで経験がありますが。そういう意味では、ネットを使ったこれからの、まあNHKも一部やられていますけど、そういうような教育を今後日本が率先してやられたらどうかなと思います。  質問を終わります。
  61. 柳田稔

    会長柳田稔君) 次に、浜田和幸君。
  62. 浜田和幸

    ○浜田和幸君 ありがとうございます。  次世代の浜田和幸です。外務省に幾つか聞かせていただきたいと思います。  やっぱり、テロ対策ということがとても大きな課題になっていると思うんですけれども、今のいわゆるイスラム国ですね、ISIL、彼らが今支配している地域の中にも、日本企業あるいは日本企業が作った商品やサービスといったものがこのテロ組織の資金源になっている、そういう指摘がいろいろとなされているわけですね。例えばトヨタ自動車のトラック。ディーラーが向こうで、シリアあるいはイラクといったところで事業を展開してきたわけですけれども、そういうところを過激派組織が収奪して、そこからの利益を彼らの活動資金にしているんだと。これは間接的に日本の評価あるいは評判といったものをおとしめかねない状況ではないかと思っていますが、そういう過激派のグループの収入源というところに日本企業が直接間接にせよ、言ってみればうまく取り込まれているというような情報戦をISILは大変巧みに国際社会にアピールしています。  ということは、逆に言うと、今後も日本人が人質になったりしたときに、日本企業日本がそういったことに関わっているんだからというような見方もできなくもないと思うんですね。  そういうような、ああいう戦闘地域における日本企業の物やサービスといったものをこういう過激派組織が言ってみれば資金源に使っているという状況について、今どれくらい情報を収集されているのか、また今後の言ってみれば対策、どういうことが考えられるのか、そういう点についてまずお聞かせいただきたいと思います。
  63. 山上信吾

    政府参考人山上信吾君) 今、委員からテロ対策の重要性、御指摘いただきました。  政府としてもまさにテロ対策しっかりやっていくという観点から、このお手元調査室作成の資料集の中にも政府として打ち出したテロ対策の三本柱というものが記載されておるところでございます。そうした中で、情報収集きちんとやるべし、御指摘のとおりだと思います。現地の大使館あるいは関係国との連携を通じてしっかりと情報を取っていく、これはやってまいりたいと思います。  その上で、御指摘の日本企業の関係ですけれども、これはきちっと現地の状況をまずは見極めていくということが大事かと存じます。委員には釈迦に説法でございますが、イラクの復興ということを考えれば、やはり日本企業投資というものが首を長くして待たれたという側面があることもまた事実でございます。ほかの国、欧米の企業に比べて日本企業は腰が引けているんではないか、治安を重視する余り投資が遅れているんではないかというような指摘も度々イラク政府関係者から受けてきたという一面があることもまた事実でございますので、そうした側面も踏まえて我が国としてどういう対応が適切なのかということは引き続きしっかりと考えてまいりたいと考えております。
  64. 浜田和幸

    ○浜田和幸君 ありがとうございます。  今週頭にウクライナのクリムキン外相が来られて、総理とも外相とも会談されましたよね。その中で、欧米諸国と足並みをそろえて我が国も対ロシア経済制裁強化する、あるいはロシアの非合法的な活動に歯止めを掛ける形で日本に対する期待ということも表明されたと思うんですが、これ一方で、日本にとっては、ロシアとの外交、これを考えたときに、プーチン大統領の来日もめどが立たない、岸田外相の訪ロも宙に浮いたまま。  ですから、ウクライナの問題でロシアに対する経済制裁ということとロシアとの関係を考えたときに、どのようなバランスを取った外交日本が進めるべき、これはとても大きな課題だと思うんですけれども、今の外務省基本的な認識をお聞かせください。
  65. 山上信吾

    政府参考人山上信吾君) ウクライナの問題でございますが、停戦合意が発効したと、にもかかわらず、ウクライナの東部の一部地域で砲撃などが継続しているという実態があるわけでございます。やはり、この実態については私どもとして深刻に懸念しているというところをまずはきっちり言っていくということが大事かと思います。  停戦合意の確実な実施というものが極めて重要でありますし、引き続きG7の連携といったものを重視しつつ、ウクライナをめぐる諸問題の平和的な外交的な解決、こうした解決に向けて日本としても果たし得る役割を果たしていく、これは、G7の一員であるという以前に、責任ある国際社会の一員としてやはり当然取るべき対応ではないかというふうに考えております。力による現状変更、国際法を無視した現状変更は許されない、これは、ヨーロッパのみならず、東アジアにおいても当てはまる共通の問題かと思います。  その上で、ロシアとの関係どうするのか、先生の御指摘、バランス取るべしということでございました。ロシアが重要なパートナーである、これまた言をまたないところでございますので、プーチン大統領の訪日についてお尋ねがございましたけれども、今後、準備状況といったものを勘案しつつ、種々の要素ございます。種々の要素を総合的に考慮して検討していくということでございまして、プーチン大統領の訪日、本年の適切な時期に実現することを目指していくという点においては従来からの対応に変わりはございません。
  66. 浜田和幸

    ○浜田和幸君 ありがとうございます。  中国は上海協力機構を通じて、また、ロシアはこれはユーラシア経済連合、お互いにその経済連携を強めているわけですね。日本TPPまだ交渉中。そういう中で、TPPそのものを取っても、中国もインドもインドネシアも入っていませんよね、ましてやロシアは入っていないわけですから。一方で、中国ロシアは自分たちの経済圏を広めようと思い、ASEANの中にも首を突っ込んできている。  そういう状況経済外交ということを考えた場合に、もう少し日本が主体的にアジアの国々を取り込むという経済連携の在り方を考えないと、余りにアメリカの方ばかりを向いてこのTPPに焦点を合わせていると、とんでもない、せっかくの、ASEANだってこれから統合経済がスタートするのに、そこに日本が遅れてしまうということにもなりかねないと思うんですけれども、そういう大きな国際的な動きの中でこの経済連携の在り方、中国ロシアとどう向き合うのか、その辺りについての基本的な考えをお聞かせください。
  67. 齋木尚子

    政府参考人齋木尚子君) お答えいたします。  まさに委員御指摘のとおり、日本は受け身であってはならず、積極的に秩序づくりに乗り出すべしと、全くそのとおりであろうと考えております。  先ほどの私の冒頭の説明の中でFTAAPということを申し上げました。これはアジア太平洋自由貿易圏というものでございまして、APECの加盟国の二十一か国・地域をカバーして、まさにアジア太平洋に大きな自由貿易経済圏をつくるというイニシアティブでございます。  このFTAAPにつきましては、若干重複するので恐縮でございますけれども、二〇一〇年、平成二十二年に横浜でAPEC首脳会議を日本が議長国として主催いたしまして、そのときにFTAAPへの道筋という文書を取りまとめました。このFTAAPへの道筋という文書に沿って、アジア太平洋自由貿易圏に向けたいろいろな取組が行われているところでございます。  日本といたしまして、引き続き、この地域において、二十一世紀にふさわしい経済の面における秩序づくりをしっかりとリーダーシップを発揮していきたいと考えております。
  68. 浜田和幸

    ○浜田和幸君 ありがとうございました。
  69. 柳田稔

    会長柳田稔君) 以上、各会派一巡をいたしましたので、これより、午後四時頃までを目途に自由に質疑を行っていただきます。  質疑のある方は挙手を願います。  山田修路君。
  70. 山田修路

    ○山田修路君 ありがとうございます。  外務省齋木局長にお伺いを二ついたします。  EPAFTAの関係ですけれども、この資料の中で高いレベルのEPAFTA推進するというふうに書いてあります。その後に、貿易比率ですね、FTA比率を七〇%までに高めると書いてありますけれども、この高いレベルのEPAFTAというのは、この貿易比率を高めるということを取りあえず意味していると理解していいのかどうかというのが一つ目です。個々のEPAFTAについて、分野が広いとか、あるいは自由化率が高い、自由化率のレベルについてということよりも、全体としてのEPAFTAの比率を上げていくということが目標になっているということなのかどうかというのが質問です。  それからもう一つ、二点目ですけれども、自由化率について今いろんなカウントの仕方があって、貿易の金額ですとか、あるいはタリフラインで見るとか、いろいろありますけれども、日本のこの自由化率、十年以内に関税をゼロにするという自由化率は九割ぐらいだと思いますけれども、ほかの国に比べるとちょっと低めになっているのではないかと思いますが、先ほど総理の言葉として、攻めるべきは攻め、守るべきは守ると言っておりましたけれども、守ろうとする、つまり国内産業との調整をしながらこのEPAFTAを進めていこうとすると、どうしても自由化率が今ぐらいというんでしょうか、なかなか上がっていかないということもあるんだろうと思います。  そういう意味で、この自由化率についてどのように外務省として考えているのか、先ほど言われたように、今の状況でどう思っているのか、あるいは外務省としてこれを更に高めていく必要があるのか、あるいは国内産業との調整を見ながら進めていこうということなのか、その辺の方針についてお伺いしたい。これが二点目です。
  71. 齋木尚子

    政府参考人齋木尚子君) お答え申し上げます。  私の説明が舌足らずなところがあって申し訳ございませんでした。高いレベルの経済連携協定と言ったときの高いレベルというのは、委員が御指摘をされましたように、物だけではなくて幅広い分野をカバーしている、具体的にはサービスや投資や知的財産権、環境、労働、こういったいろいろな分野を対象として、その分野におけるルールを作っていくという意味で高いレベルと申し上げております。また、自由化率においても、マーケットアクセスで高いレベルということで私の説明の中で使ったものでございます。  別途、日本再興戦略の中で、二〇一八年までにFTA比率を七〇%にするというのは、これは実現すべく頑張っている目標でございますけれども、そのこととは別の問題として高いレベルのEPAを目指していると先ほど御説明を申し上げたところです。  二点目の自由化率であります。先ほどWTOEPAの関係について、御質問に答えて御説明したところです。すなわち、多角的貿易体制というWTOは、引き続いて日本の通商戦略の主要な柱、礎でございます。EPAFTAというのは、この多角的自由貿易体制、WTOの例外としてWTOの関連規定によって認められております。  この中で、まさに条件の一つが自由化率ということで、私どもの解釈では貿易額で九〇%以上をおおむね十年以内で自由化する、これがFTAEPAで満たすべき条件と認識をしておりますので、そういったガット、WTOの関連規則にのっとって、しかし国内産業、当然どの国もセンシティブな品目がございますので、しっかりとそういったセンシティブな品目、国内産業の育成、振興にも十分バランスを取った形で配慮を払いつつ、自由化に向けた経済連携交渉を進めていくというのが政府の方針でございます。
  72. 山田修路

    ○山田修路君 ありがとうございます。  そうすると、今のお話では、まさにWTOの例外措置、それでほとんど全てのでしたっけ、という規定があって、それが九割だということでやっている。今までの日本が結んだEPAFTAもそのレベルを貿易額ベースでは満たしているということなので、そういう意味ではもう高いレベルに今までのものも達しているという理解でいいということでいいわけですね。  ありがとうございます。よろしいんですね。
  73. 齋木尚子

    政府参考人齋木尚子君) 九〇%の貿易額をカバーして十年以内に撤廃をするというのが基準でありますので、その基準に照らしてどこまで上に行くのかどうかというのは、まさに相手国のある話でもございますし、また、国内でのいろいろな声にも耳を傾けながら政府一丸となってしっかりと取り組んでいきたいと考えております。
  74. 山田修路

    ○山田修路君 ありがとうございます。
  75. 柳田稔

    会長柳田稔君) 加藤敏幸君。
  76. 加藤敏幸

    ○加藤敏幸君 ありがとうございます。  民主党・新緑風会の加藤でございます。幾つか御質問をいたします。  まず、田和統括官にお願いしますけれども、国際経済現状と問題解決という視点から、私は、OECD、世銀、ILOも非常に共通して問題提起をされている、各国雇用の量、質の改善ということが強く指摘されているというふうに思います。格差をどうするのか、貧困をどうするのかということの流れと、世界経済を発展させていくというときに、やはりこの格差、貧困、そのもととなっている雇用の質、ジョブ、これをやっぱり対応すべきだというのが今国際的に共通化されているというふうに思うんですけれども、その点について田和統括官のお考えをお伺いしたいと。  二点目は、齋木局長ですけれども、簡単なんですけれども、十一月のG20、これアベノミクス、日本経済再生、理解を求めると、こうなっているんですけれども、取りあえず今日の時点ではこういう仮置きの部分があると思うんです。問題は、やっぱり円安をどう理解してもらうかということとか、EUも含めて随分と金融緩和をしているということを、私は非常にこれが十一月段階で議論が行われていくポイントになっていくんではないか、非常に十一月まで時間があるということで、この辺のところのお考えをお伺いしたいと。  山上審議官には、価値観を共通する国々との連帯と、こう言われるんだけれども、また基本価値と。ただ、具体的にどんな価値観を提起しているのか。逆に言うと韓国とはどうなのと、政治的価値観だけなのか何なのかと。それから、当然これ共有する国々と共有しない国々ということになると二項対立的な、その種別がやっぱり外交上どうなのかということについて、前から疑問に思っていましたのでお答えをいただきたい。  それから、地球温暖化外交戦略の中で攻めのという言葉を使われているんですけれども、攻めの地球温暖化外交戦略という、これは一体どういう意味合いを持たせているのか。したがって、二〇二〇年から以降については日本は積極的に温暖化の指標、目標を提起するというふうに、非常にドライビングパワーを掛けていくという意味でいけば、我が国の電源ミックス、電源構成、今ゼロ%になっている部分をどうしていくのかということを含めて、そういう状況日本はカードを持てることがあるのかということです。  以上です。よろしくお願いします。
  77. 田和宏

    政府参考人田和宏君) 加藤先生おっしゃられたとおりでございまして、現在、先進国どこも労働の質という問題がもう最重要課題でございます。現在直面している課題でいいますと、どの国もかなり賃金水準が低いという問題に直面しておりまして、いわゆる世界的な金融危機の後、やはりなるべくパートだとか、そういう非常勤のような、非正規のような形で働く雇用の仕方が増えておりまして、その分賃金伸びは低いということに直面しております。  ただ、おっしゃるとおり、今、各国とも人的投資、それから働き方の多様化、労働参加、こういったもの、先進国は人口減少にも直面し始めておりまして、労働の質をいかに上げるかという意味でまさに各国成長戦略の核にもなっているというのはもう先生のおっしゃるとおりでございます。
  78. 齋木尚子

    政府参考人齋木尚子君) どうも御質問ありがとうございます。  G20でございますが、今年の十一月、トルコのアンタルヤでサミットが開かれることになっております。もちろん、その時点世界経済がどのような状況になっているかに応じて議題は決まるわけでございますが、議長国のトルコは、三つのIということで包摂性と実施と投資と、これ、それぞれ英語で言いますとIで始まる三つの単語でございまして、これを切り口として包摂的かつ強固な成長実現と、これをテーマとしてしっかり議論をしたいということでございます。  それで、先生御指摘の金融政策ですけれども、まさにアベノミクス第一の矢で、大胆な金融政策ということで現在円安になっているわけであります。しかしながら、これはもう累次の、G20に限りませんが、国際場裏で私ども説明をしてきて一定の理解を得ておりますのは、これは輸出を容易にするための円安誘導では全くなくて、デフレ対策としての金融政策であるということですので、G20におきましてそのような議論になったときにも、そこは日本経済成長に向けてデフレ対策の一環としての金融政策であるということを説明をしていく、引き続きしていくということになろうかと考えております。
  79. 山上信吾

    政府参考人山上信吾君) 御質問をいただきましたまず基本的価値の話ですが、ここはるる国会でも御説明申し上げていますけれども、具体的には、自由、民主主義、基本的人権の尊重、法の支配、市場経済、こういったことが内容として含まれるわけでございます。これは、我が国が憲法の下でやはり奉じている価値でもございますし、また、日本としてどういう国際社会が望ましいのかと問われた場合に、これはやっぱりむき出しの力が支配する国際社会ではなくて、きちっと、今申し上げたような価値、特に自由、人権の尊重、法の支配、こういった普遍的価値が尊重される、ルールに基づく国際秩序といったものが日本にとっての国益であろうかと思うわけでございます。そうした中で価値というものの重要性ということを強調しているというふうに御理解いただければと思います。  韓国についてお尋ねがございました。  もちろん、今申し上げたような価値の大半というものは韓国も日本との間で共有しているというふうに受け止めております。同時に、例えば日本のマスコミ関係者の起訴、出国を認めていないといった問題につきましては、報道、表現の自由、日韓関係といった観点からも極めて遺憾で残念なことだというふうに考えておりますので、こうした面でも本当の意味で価値を共有していけるやっぱりパートナーシップが構築できればということを切に希望しているところでございます。  最後に、気候変動のところで、攻めの戦略とは何ぞやという御指摘いただきました。  これは、まさに二〇二〇年以降の温室効果ガスの削減目標を定めていくという中で、御指摘いただいたような日本エネルギー政策あるいはエネルギーミックスに係る国内の検討状況といったものも踏まえて、受け身になるということではなく、むしろ日本として主体的、能動的に議論をリードしていくべきではないかと、こういう考えから攻めのということを申し上げているという点、御理解いただければと思います。
  80. 加藤敏幸

    ○加藤敏幸君 齋木局長に。結局、デフレ脱却のための円安だという説明の仕方は、デフレ脱却が、解消すれば円安は必要ないという論理的なそういう構成になるので、果たしてそういうことで今年の十一月、対応がどうなるかといったら、これはもう御存じのとおり、やや不確定な要素が高くなるねということと、その後の日本国内の経済運営についても大きな要素をつくるねということです。  それから、基本的価値について。もうこれはお答えは要りませんけれども、ややこれを振りかざすということが少し正義のやいばを振りかざすということになって、結局外交関係においてお互いに相入れない状況を確認してしまうということになったときに、特に基本的人権とかそんなことでお互いにやり合ったときに、ヘイトスピーチだとかいろんなことを含めてやっぱりそれぞれにあるんだという状況の中で、ややここのところは少し弱められた方がいいんではないんでしょうかという、申し訳ないんですけれども、そういう提起で今日は終わりたいと思います。
  81. 柳田稔

    会長柳田稔君) 中泉松司君。
  82. 中泉松司

    ○中泉松司君 自由民主党の中泉でございます。  今日は大変貴重なお話をいただきまして、ありがとうございました。理事の末席ということで、上野理事に引き続いて質問をさせていただきます。  初めに内閣府の方に。  今日は丁寧に御説明をいただいて、世界経済潮流ということで今後の見通し等についてお話をいただきまして、ありがとうございました。  先ほどのお話は、アメリカ、そしてヨーロッパ、そして中国といったところを中心にお話をいただいたんだと思います。一方で、いただいた参考資料なんかを見ますと、中国新興国ということになるんでしょうけれども、新興国の為替相場等が非常に今不安定な状況になっているというようなお話もあります。  せっかくの機会ですので、先ほどは大きい国を中心に今後の世界経済の展望ということでお話をいただいたのですが、新興国の今後の見通し、そしてそれが世界に与える影響日本に与える影響といったところで内閣府としてどういうふうな見解をお持ちなのか、お教えいただければと思います。
  83. 田和宏

    政府参考人田和宏君) ありがとうございます。  中泉先生の御質問でございますけれども、新興国は今全体的にやはり経済全体が減速をしているということでございまして、一番やはり気になる点は、アメリカの金利の引上げ動向によって特に国際金融の面からいろいろマーケットが大きく荒れる可能性がないのかどうかというところがやはり大きいんではないか。つまり、実体経済から見ますと、日本経済との関係でいうと、資源国とかを除けば、やはり貿易投資、大きなところは先進国とかが多いわけですから、そういう意味でいいますと、やはり金融の流れといったものが具体的にどういうふうになっていくのかというのが結構注目点だろうと。  それからもう一つは、新興国、先ほどもちょっと御紹介いたしましたけれども、フラジャイルファイブと申し上げた大きなところが経済の基礎的なファンダメンタルズが決して改善している状況にはないということですので、やはりアメリカが、ほかの国は金融緩和をしている状況の中でアメリカだけがやはり金利を上げるということになると、資金の動きが大きく動いてくるというところでございまして、その影響には非常に注視をする必要性がある。ただし、そのときにやはり投資家がリスクオンなのかリスクオフなのかということによって日本の円の動向にもすごく影響を与えてきますし、つまり、リスクオフになったときにはやはり強い通貨が望まれるということになりますので、そのときには逆に円高のような様相になる可能性も十分あるということです。  したがいまして、どちらの動向にちょっとなっていくのかというのは予断を許さないわけですけれども、まずはやはりアメリカ世界経済を今牽引をしているということですので、これ自身はやはり新興国にとっても非常にいい影響を与えるというふうに思います。ただ、金融の側面から大きなやはり変動が起きることにはよく注意をしておく必要性があるというふうに我々考えているところでございます。
  84. 中泉松司

    ○中泉松司君 ありがとうございました。  次に、時間も限られていますので、資源エネルギーについて伺います。  食料、資源エネルギーというのは、本当我が国にとっては、今後世界の人口が増加傾向にある中でどのようにして安定的に確保していくのかということが非常に重要であると思います。そういった中で、今後、中国やインドなど人口大国の経済が着実に進展をしていった場合というのは、やはり日本状況というものは逼迫したものになってくるであろうと。そういった中にあって、今日お話をいただいたエネルギーの確保、そして食料の確保というのは本当に大切なことになってくるんだと思っております。  時間もありませんので、エネルギーのことについて、今日、先ほど丁寧に御説明をいただいたわけでありますけれども、今やっている取組ですとか、そういったところについてもう少し具体的なお話が聞ければなというふうに思っております。  また、最近は新しいシェールガス・オイルの活用のような局面が出てきております。私はたまたま秋田県選出でありますけれども、秋田県日本海側でもシェールオイルの実証が終わって商用化がされたということで、非常に期待をしているところでありますけれども、日本の強みというのはそういう技術力もあるんだと思っております。  このお話をいただいた中でいくと、資源供給国との関係強化に努めるとともに、供給源の多角化を図る資源外交を展開していくとありますけれども、そういった中にあって、日本の技術というのがどういう位置付けになってくるのかも含めて、今後どういった取組をされるのか、そして、見通しについて見解があればお伺いをしたいと思います。
  85. 齋木尚子

    政府参考人齋木尚子君) お答え申し上げます。  エネルギーの安定的かつ安価な供給の確保ということで、先ほども様々な外交的ツールを活用していきます、主要な資源国との包括的かつ互恵的な関係の強化に努めてまいりますということを申し上げました。  より具体的に申し上げます。総理や外務大臣、その他関係閣僚がやはり外国を訪問される、あるいは外国から日本に訪問客が来る、そういった機会を活用して戦略的な働きかけをしていくということは大変重要だろうと考えております。  また、ODAを戦略的に活用するということもございます。例えば、リチウム資源の豊富なボリビアについて、インフラ整備、人材育成、産業振興、地域振興等をパッケージとしました総合的な経済発展へのプランを先方政府に提示をしてボリビアとの間の互恵的な関係強化に努め、もって、例えばリチウム資源について安価かつ安定的な供給を確保する一助とするというふうなことも実際にしているところでございます。  さらには、先ほど御説明を申し上げましたEPAFTAといった二国間ないし複数国間の経済連携協定交渉の中で、エネルギーの安定的かつ安価な供給に向けてしっかりと書き込むというふうなこともオーストラリアを始めとして行ってきているところであります。  さらには、いろいろな国際機関、OECDの中にIEAですとか、ア首連には再生可能エネルギー国際機関というのもございまして、日本は今年議長国しておりますけれども、そういったIEAあるいは再生可能エネルギー機関、IRENAと申しますが、そういった国際的な枠組みなども活用して資源国と多層的な協力関係を強化をしていくということが極めて重要でございますので、それをもってエネルギーの供給確保に外務省としてもしっかりと努力してまいりたいと思います。
  86. 中泉松司

    ○中泉松司君 終わります。
  87. 柳田稔

    会長柳田稔君) 長峯誠君。
  88. 長峯誠

    ○長峯誠君 自民党の長峯でございます。  まず、澁谷審議官にお伺いしますが、TPPについては国会決議がございます。この重要五品目をもし無傷で守った場合に、先ほど言いました自由化率九〇%を達成できるのかというのを数字上の問題としてお聞きしたいと思います。  それから、関税を下げた場合に、裏打ちとして国内対策を打つというようなことをやることはこのTPPの話の中では認められているのか。例えば、輸出補助金を禁止する貿易協定とかというのがありますけれども、そういうものは課されずに、要するに国内対策はどのように打ってもそれは構いませんよということになるのかというのをちょっとお伺いしたいと思います。  それから、齋木局長に。先ほどちょっと軽く触れられた租税条約というのがあるんですけれども、これは多分ビジネス環境を整備するということなんで、二国間での租税条約のことかなと思うんですが、一方で、先日、日本も法人税を下げるということになりまして、企業の活躍しやすい場をつくるために世界中の国で法人税を下げる競争があって、各国とも税収が非常に厳しくなっているという問題意識をG7やG20でも共有しているというお話は伺っているんですが、こういったことに対する何らかの対策が可能なのか、可能だとすればどのような手法があるのか、そして、現在、そういった議論はどういう段階に行っているのか。もう一つ、タックスヘイブン、こういったものを何かしら歯止めを掛けるような方法等がそういった場でも議論されて、どのような手法が提案されているのかというのをお伺いしたいと思います。
  89. 澁谷和久

    政府参考人澁谷和久君) お答え申し上げます。  国会決議、重要品目等、あの決議がございまして、私ども、その決議の英訳文も各国に配りながら、毎回この決議を引用しながら厳しい交渉をしているところでございます。  元々、TPPは、日本参加する前から関税については原則もう撤廃なんだという原則でずっと交渉が進められてきて、我が国としては、さはさりながらということで、センシティブな品目について日本として守るべきものは守るという、そう主張をしているところでございます。  したがって、TPPは、自由化率を幾つにするかという議論よりむしろ個別の品目ごとの、北京の閣僚会議の報告書にも書いてありますけれども、撤廃ができない、であるならば、意味のある市場アクセス、これをどういうふうに確保するかということに今少なくとも日本との交渉重点が移ってきているところがございますので、今そういう形で、自由化率というよりむしろそういう市場アクセスをどういうふうに確保するかという観点の交渉が続いているということでございます。  国内対策については、まず、国会でもほかの委員会でもいろいろと各大臣からもお話をしているところでございますが、交渉中なので、国内対策を前提にする話は基本的にはまだ政府としてはいたしませんと。要は、対策取るならもっと譲ればいいじゃないかということを相手国から言われるという、そういう趣旨でございますけれども。  一般論で申し上げますと、今御指摘のあった輸出補助金のようなものはWTOの議論の中でも削減を目指すということで議論が続けられておりますので、そういうWTOでいろいろ議論されているような話はともかくとして、元々関税のような国境措置ではなくて国内措置に切り替えるべきだというのがTPP基本的な発想でございます。各国がそれぞれルールの中で必要な政策を打っていくということになろうかと思います。
  90. 齋木尚子

    政府参考人齋木尚子君) お答え申し上げます。  租税条約については、先生御指摘のとおり、まず二国間の租税条約ございまして、その目的は国際的な二重課税を回避する、また脱税や租税回避行為への対処をするということで、日本と当該国との間で健全な投資、また経済の交流を促進するという趣旨、目的の条約でございます。  法人税の下げる競争であり、あるいはタックスヘイブンでありと、こういった問題にどう対応するかという点につきましては、例えば、先ほど駆け足で恐縮でしたけれども、一番最後のところでOECDに触れましたが、OECDなどでも、いろいろな企業が国境をまたいで節税といいますか脱税といいますか、そういったことをしないようにどういう形でルール作りを進めていけるかということで一定の成果をOECDで見ておりますし、実際にこれは、G20、ブリスベーンのサミットが去年オーストラリアでございましたけれども、このG20のサミットの中でも、今申し上げたOECDで、税源浸食、利益移転、何かBEPSと呼ぶようですが、このBEPSの行動計画について重要な進展があるということで、こういったものをより進めていくという機運が国際的にも広がっているところでございます。
  91. 長峯誠

    ○長峯誠君 もう一点だけ。澁谷審議官、TPAの方はどのような進展かをお聞かせいただきたいと思います。
  92. 澁谷和久

    政府参考人澁谷和久君) TPA法案、アメリカの国内の話なので公式には触れないということにしておりますが、御質問でございますので私の知っている話をさせていただきますと、昨年、新しいTPA法案というものがアメリカの議会に提出はされておりますが、その後、中間選挙を経て議会の構成も変わったということもあって、現在、超党派でそれの修正案といいますか新しい法案を、リイントロデュースと呼んでいますが、再提出するという調整が続けられているというふうに聞いております。  それがいつ頃提出されて、TPA法案がいつ成立するのかということについてはいろんな見立てがあります。ここ一、二週間私もずっとウオッチしておりますが、かなりの楽観論から悲観論までかなり幅広くございまして、ちょっとそこは引き続き注視をしていきたいというふうに思っております。
  93. 長峯誠

    ○長峯誠君 ありがとうございます。
  94. 柳田稔

    会長柳田稔君) 次に、牧山ひろえ君。
  95. 牧山ひろえ

    牧山ひろえ君 外務省の方々にお伺いしたいんですけれども、先ほどODAですとか積極的平和主義のお話がありましたので、それらについてちょっと触れさせていただきたいんですけれども、現内閣では今までのODAの大綱を新たに開発協力大綱として改定されました。ODAの戦略的あるいは効果的な展開を進め、ODAを積極的平和主義という現在の国策を推進していくためのツールとして活用していく方針をこの中で鮮明にされたと思います。  私も、ODAを外交の有効なツールとしてこれからもっと使っていくということ、これに関しては考え方は私も否定はしていないんですけれども、しかし、その目的ですとか国策として位置付けられている積極的平和主義には違和感、また心配を感じております。戦後七十年間平和を保ってきた日本の戦後の歴史ですとか、また注意深く軍と関係しない民生分野に限った途上国支援を続けてきた日本のODA、この歴史を消極的として否定しているということで私は心配しているわけです。  ODAに関しまして言うと、一九九二年に策定された旧ODAの大綱は二〇〇三年の改定後も軍事的用途また国際紛争助長への使用を回避すると明確に規定しておりまして、軍の関与がある支援は全て排除してきたという経緯がございます。それを新大綱では、軍ですとか軍籍を有する者が関係する場合、実質的意義に着目し個別具体的に検討するとして、災害援助などの非軍事分野であれば軍が関与していても援助できるようにしております。  ここで質問なんですけれども、軍事転用の防止はどう担保されるのでしょうか。また、もう一つ、実際に軍事転用がなされてしまった場合、その場合はどのような措置がとられるのでしょうか。
  96. 山上信吾

    政府参考人山上信吾君) 幾つかの論点について御質問いただきました。  まず、国益ということですけれども、やはり現下の財政状況の中にあってODAをきちんと実施していくためには国民、とりわけ納税者の方々の理解をより確固としたものにしていく必要があるということで、やはりそういう観点から、ODAの供与が日本の国益に資するものだということについて国内の理解を深めていく必要があるであろうという問題意識がまず私どもにございます。そのことが一点目でございます。  それから二点目、ODA、もちろん今委員から御指摘あったようにいろんな側面がございます。例えば、今日お配りした資料の四ページ目でも、グローバルな課題への貢献を通じた世界全体の利益の増進という中で、いわゆるポスト二〇一五年、二〇一五年以降の開発アジェンダ、この重要性も言及しておるところでございます。  もちろん、この文脈においては、日本としては人間の安全保障、この理念に基づいた開発アジェンダの策定というものを目指しておりまして、例えばその観点からは、ジェンダー、性の平等ですとか、あるいは保健分野では、全ての人が基礎的な保健医療サービスが受けられるようにするといったいわゆるユニバーサル・ヘルス・カバレッジ、この実現を重視しているということも指摘させていただきたいと思います。  最後に、軍事転用との関係でございますが、新しいこの大綱では、非軍事的協力による平和と繁栄への貢献を基本方針として掲げております。また、軍事的な用途及び国際紛争助長への使用の回避の原則も遵守する旨定めているところでございます。  したがいまして、今後もODAにより軍事目的の支援を行うということはございません。今までできなかったことができるようになる、今までの原則に抵触するためにできなかったことができるようになるということではないと考えております。むしろ、開発目的の達成のために、例えば受入れ国の、被供与国の軍の下にある機関、あるいは軍籍を有する関係者に対する非軍事目的の協力が必要となる場面がより増加している、こうした実質的意義に着目して支援を行う必要が出ているということでございます。  したがいまして、どういう場合に行うかというのは、まさに軍事的用途、国際紛争助長への使用を回避するという原則にのっとった上で個別具体的に検討してまいりたいと考えております。
  97. 牧山ひろえ

    牧山ひろえ君 目的とかは十分理解できるんですけれども、どのように軍事転用の防止が担保されるのかということと、もう一つは、もし、目的がそうであって、目的とは違って結果的に軍事的な利用があった場合はどういう措置がとられるのかという、この二つの質問です。
  98. 山上信吾

    政府参考人山上信吾君) 具体的には、軍事的用途、それから国際紛争助長への使用の回避、こうした原則を遵守する観点から、開発協力の実施に際しましては、供与対象主体が軍でない場合も含め、個別具体的に軍事目的の活動への転用の可能性についてしっかりと検討していきたいと考えております。  例えば、これまでも相手方の政府と取り交わす文書の中で、軍事目的に使用しないというようなことを確認してきておる例もございます。そうしたことも含めまして、必要に応じて適切な手段を取ってまいりたいと考えております。
  99. 柳田稔

    会長柳田稔君) じゃ、最後に紙さん。
  100. 紙智子

    ○紙智子君 ちょっと先ほどお聞きできなくて、一個だけあとあるんですけれども、経済主権を尊重するという問題で、ISDの条項の問題について、澁谷さんがいいのか齋木さんがいいのかというのはちょっと分かりませんけれども、これは投資家対国家の紛争を解決する条項なわけですよね。  それで、世界銀行の傘下にある国際投資紛争解決センターなどが仲裁機関に指定されているわけですけれども、審理は非公開であると、それで、不服があっても上級の仲裁機関に訴えることができない、訴えられるのは政府だけではなくて地方自治体が行う施策の規制も対象になるということで、国連本部で議論されてきた中の一つに、例えば米国の大手石油会社が南米のエクアドルの北東部で起こした環境汚染の問題が取り上げられていると。被害住民団体の訴訟に対して米国の地方裁判所が二〇一一年にこの会社に損害賠償の支払を命じたんだけれども、同社が国際調停機関に訴えて、支払必要なしというふうに結論付けられたと。エクアドルの外相は、企業の利益追求には、追求していくと切りがない、政府が国民生活を守る責任を果たそうとすると国際機関の調停で企業が勝つ仕組みになっているというふうに批判をしているわけです。  ISD、ISDS条項というのは、場合によってはこういうふうに投資家の保護のために国家の活動を規制する可能性があるんじゃないか、国家の主権が脅かされる危険性があるんじゃないかというふうに思うんですけれども、これについての御認識をお聞きしたいと思います。
  101. 齋木尚子

    政府参考人齋木尚子君) お答えいたします。  今、ISDあるいはISDS条項というものが当該国の主権を害する、必要な規制権限が侵されるということはないのかという御質問でございましたけれども、EPAあるいはそれぞれ投資協定におきましては、我が国としては今までISDの条項を入れるということでやってきておりまして、確認的に申し上げますと、こういった条項が、日本なら日本として必要かつ合理的な規制を行うことを妨げているものではございません。  また、そういった観点から、日本として国内法令を当然いろいろな趣旨、目的から持っているわけですけれども、ISD手続によりましてそういった日本の国内法令が協定違反とされたり、また、その結果、当該国内法令の変更を余儀なくされるといったようなことは全く想定をされていないわけです。
  102. 紙智子

    ○紙智子君 ちょっと実態がなかなか国民には知られていないと思うんです。国際的にどういうふうな例があるとか、そういう調査なんかも含めてやっぱりちゃんと把握して知らせていくという必要があるんじゃないかなということを思いますので、そのことだけ申し上げて、終わりたいと思います。
  103. 柳田稔

    会長柳田稔君) 他に御発言もないようですから、本日の質疑はこの程度といたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後三時五十二分散会