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2015-06-30 第189回国会 参議院 経済産業委員会 第20号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成二十七年六月三十日(火曜日)    午前十時開会     ─────────────    委員異動  六月十九日     辞任         補欠選任      石上 俊雄君     安井美沙子君      浜野 喜史君     小林 正夫君  六月二十九日     辞任         補欠選任      安井美沙子君     石上 俊雄君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         吉川 沙織君     理 事                 磯崎 仁彦君                 滝波 宏文君                 宮本 周司君                 加藤 敏幸君                 倉林 明子君     委 員                 阿達 雅志君                 岩井 茂樹君                 高野光二郎君                 松村 祥史君                 渡邉 美樹君                 石上 俊雄君                 小林 正夫君                 直嶋 正行君                佐々木さやか君                 浜田 昌良君                 東   徹君                 松田 公太君                 中野 正志君                 荒井 広幸君    国務大臣        経済産業大臣   宮沢 洋一君    副大臣        経済産業大臣  山際大志郎君    大臣政務官        経済産業大臣政        務官       岩井 茂樹君    事務局側        常任委員会専門        員        奥井 俊二君    政府参考人        警察庁長官官房        審議官      島根  悟君        文化庁長官官房        審議官      磯谷 桂介君        厚生労働大臣官        房審議官     飯田 圭哉君        厚生労働大臣官        房審議官     成田 昌稔君        農林水産大臣官        房生産振興審議        官        鈴木 良典君        経済産業大臣官        房審議官     平井 裕秀君        経済産業大臣官        房審議官     高田 修三君        経済産業省経済        産業政策局長   菅原 郁郎君        経済産業省産業        技術環境局長   片瀬 裕文君        資源エネルギー        庁資源燃料部        長        住田 孝之君        特許庁長官    伊藤  仁君        特許庁総務部長  堂ノ上武夫君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○政府参考人出席要求に関する件 ○特許法等の一部を改正する法律案内閣提出、  衆議院送付) ○不正競争防止法の一部を改正する法律案内閣  提出衆議院送付)     ─────────────
  2. 吉川沙織

    委員長吉川沙織君) ただいまから経済産業委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  去る十九日、浜野喜史君が委員辞任され、その補欠として小林正夫君が選任されました。     ─────────────
  3. 吉川沙織

    委員長吉川沙織君) 政府参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  特許法等の一部を改正する法律案及び不正競争防止法の一部を改正する法律案の審査のため、本日の委員会に、理事会協議のとおり、特許庁長官伊藤仁君外十一名を政府参考人として出席を求め、その説明を聴取することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 吉川沙織

    委員長吉川沙織君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  5. 吉川沙織

    委員長吉川沙織君) 特許法等の一部を改正する法律案及び不正競争防止法の一部を改正する法律案の両案を一括して議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  6. 阿達雅志

    阿達雅志君 おはようございます。自由民主党の阿達雅志です。  今回議題となっております特許法それから不正競争防止法改正案ですけれども、これは、先日六月十九日に政府知的財産戦略本部が公表いたしました知的財産推進計画二〇一五においても、今後取り組むべき施策ということでしっかり位置付けをされておりました。日本のこれからの特許戦略、これの重要な部分を成すものだというふうに私は理解をしております。  そういう中で、やはりこれ知的財産戦略全体の中で改めてちょっと位置付けをしてみたいと思うんですけれども、この今回の法案は、いろんな意味で、今までの知的財産戦略を変えていこう、こういう文脈で見ることができるんじゃないかと。先日来の質疑の中でもございましたけれども、日本知的財産戦略世界から見て周回遅れだというふうに言われてきた、これを今回、追い付くあるいはその先を行こうという非常に大胆な取組だと思うんですけれども。  そういう中で知的財産の今の世界状況を少し考えてみたときに、例えばこれはアメリカを取ってみますと、アメリカというのは、この十年間、大体プロパテントということで政権及び裁判所というのは対応してきた。そのプロパテントという意味は、パテント、これを知的財産財産という部分を非常に重視して、発明者権利を重視する、あるいは特許権者権利を重視する、こういうことで来たわけです。ですが、その結果として、パテントトロールを始めとして非常にいろんな問題が起きてきたということで、どうも昨年辺りから、昨年アメリカでは特許で六件それから知的財産で四件、十件の最高裁判例が出ているんですが、実はこの十件ともがどちらかというと権利を抑える方向に向いているんですね。それはどういうことかというと、この知的財産権というものの財産的要素よりも、やはりこれを活用すべきだ、社会イノベーションのために活用すべきだというところに今重点を置いてきている、そういうふうな大きな動向があるわけでございます。  これは実際、今までの質疑の中でもありましたけれども、例えばスマートフォン一つとっても数千の特許が関係していると。そうすると、誰か財産権主張をして使わせない権利ということを言い出すとスマートフォン自体が成立しなくなる。だから、いろんな形で、例えば標準必須特許と言われるような仕組みだとか、今いろんな仕組みでなるべくこういう知的財産活用しようという方向世界は行っているんじゃないか。  そういう中で今回のこの知的財産推進計画二〇一五でも、この序文の中で、知的財産創造活用及び保護のそれぞれの局面が有機的に密接に関連したものであるが、とりわけ知的財産活用されてこそその価値が初めて実現されるものであると、こういうふうにはっきりうたわれているわけでございます。  そういう観点から今回の両法案改正案拝見をすると、この改正提案理由の中で実は両法案について繰り返しイノベーションという言葉が出てまいります。ただ、このイノベーションというのを考えたときに、私、やはりこれは二通りのイノベーションあるんじゃないかと。一つは、こういう知的財産発明者あるいはそれを持っている人間にとってのイノベーション、もう一つは、社会にとってのイノベーションということではないかと思うわけです。  特に、この知的財産の中でも特許の場合のイノベーション、これはもちろん発明者イノベーションもありますけれども、こうやって特許として公表する限りにおいては、やはり社会イノベーションというものに重きを置いているのではないかと。それから、営業秘密の場合は、これは公表しないということですから、やはりこれはむしろ発明者イノベーション、ここに重点を置いているのではないかと思うんですが、このイノベーションという、両法案提案理由におけるイノベーション意味についてお伺いをさせていただけるでしょうか。
  7. 宮沢洋一

    国務大臣宮沢洋一君) イノベーション自体法律的に定義したものはないんですけれども、イノベーション創出ということにつきましては、これ平成二十年の法律ですけれども、研究開発システムの改革の推進等による研究開発能力強化及び研究開発等効率的推進等に関する法律という中で、「この法律において「イノベーション創出」とは、新商品開発又は生産、新役務開発又は提供商品の新たな生産又は販売の方式導入役務の新たな提供方式導入、新たな経営管理方法導入等を通じて新たな価値を生み出し、経済社会の大きな変化を創出する」と、法律的に言うとこういう難しいことになるわけでありますけれども。  今委員がおっしゃいました、イノベーションといって、研究者サイドに立つもの、またまさに日本経済社会サイドに立つもの、やはりこの法律におきましては、両方とも、基本的にイノベーションの大事なところは、日本経済社会に、国民生活に役立つというところがやはり一番大事な点だと思っておりまして、そういうイノベーションを通じて日本経済がデフレを脱していく、そして世界と競合できるような経済社会になっていく、そして国民生活が豊かになっていくということを、特許法につきましても、また不正競争防止法につきましても、そういった観点からイノベーションを促進していきたいと、こういうことだろうと思っております。  そういう中で、特許法の方が、逆に社会的な、まさに公開するということ、オープンでありますから社会的に大きなものでありますけれども、一方、特許法におきましても研究者のインセンティブといった観点からいろんな配慮をさせていただいております。  また、不正競争防止法につきましても、クローズという観点ではありますけれども、まさにそういうことによって秘密が保たれることによる、逆に言えば秘密を、いわゆる営業秘密になるようないろんな知恵を出していくというようなことが促進されるといった、恐らく両面があるんだろうというふうに思っております。
  8. 阿達雅志

    阿達雅志君 どうもありがとうございます。  やはり、これからこの知的財産日本イノベーションにとっても非常に大事だということで、是非これをできる限り活用する。そのために、もし今の規定あるいは今の運用において障害になるようなことがあるのであれば、もう積極的に変えていく。むしろ、財産権としても、実はこれ先日の参考人質疑の中で一橋大の相澤先生から御指摘があったんですが、この知的財産というのは有体物でない情報というものを法律規定によって守っている、そういう意味で非常にほかの財産権とは違うんだということでございましたので、やはりそれを生かせるような形で、何のためにこういう法律で守っているかというところで、是非知財を、知的財産財産権ということを超えて活用できるようにしていただきたいなというふうに思います。  今日、文化庁さんにも政府参考人としてお越しをいただきました。実は、この特許著作権というのがある意味非常に連続している部分がある。これ、例えばコンピュータープログラム考えたときに、このプログラム特許として申請するのか、著作権として扱うのか、あるいは営業秘密として扱うのか、この三通り出てくるわけですね。著作権というと、どうしても通常は小説だとか絵画だとかそちらへ行くんですが、著作権の中にはプログラムというのも明らかにあると。  実は、ちょうど昨日ですけれども、アメリカ最高裁において一つ判決が出ました。  これはグーグルオラクルとの間でもめていた件なんですが、グーグルアンドロイド、これについて、そのアンドロイドが使っているプログラム、これがオラクル社のJavaと言われるプログラムを使っている、これについて著作権議論が出たわけです。グーグル主張は、この著作権フェアユースであると。アメリカの場合、このフェアユースという考え方で、公正な利用がある限りはこれは著作権侵害にならないんだと、こういう議論があるわけです。  結果としてはグーグルのこの公正な利用というのは認められなかったわけですが、実はこのフェアユース議論というのは日本でもかつて何回か議論になったことがございます。結果的には、日本では、著作権というものについては個別的に権利制限することはあっても一般的な緩い制限というのはやらないということで来たわけですが、実は、このグーグルオラクルの件でも分かりますように、こういうデジタル化時代における著作権の問題というのは従来と大分様相が変わってきている。日本の場合、やはり、まあフェアユースという言い方をすると皆さん嫌がるんですが、公正な利用あるいは著作権制限についての柔軟な規定、こういう言い方日本では議論されるんですけれども、こういうものについてもいよいよ考えないといけない時期に来ているのではないかと。  今回の知的財産推進計画二〇一五の中でもこのフェアユースについては議論が出ております。私、著作権を余り単純な形で、ある状況において一般的に例えばこういう権利制限するんだというのはちょっとどうかなと思うんですが、ただこれが、ある程度正当な目的、それから著作権者利益を不当に害さない、こういった歯止めをするのであれば法的安定性も欠かないのではないかと。むしろ、そういう中で著作権というもののいろんな活用考えていくというのは、先ほど宮沢大臣からもお話がありましたとおり、知的財産を生かしていくということでも大事なのではないかと。  その場合に、著作権というのを、やはり特許著作権、それから商標、営業秘密、そういう知的財産全体の中で考えていくことが必要なのではないかなというふうに思うんですけれども、この著作権法、これをデジタル化時代に合わせて見直すことについて、特にこういうフェアユース考え方をもう少し検討していくということについてお考えをお聞かせいただければと思います。
  9. 磯谷桂介

    政府参考人磯谷桂介君) お答え申し上げます。  我が国が掲げます知的財産立国あるいは文化芸術立国の実現には、先生指摘のように、著作物創造、流通、利用のサイクルを回していくことが必要であるというふうに考えております。そのためには、権利者の適切な保護を図りつつ、著作物の円滑な利用を促進することは極めて重要と認識をしておるところでございます。  既に先生指摘いただきましたように、政府としても随時の法改正によりまして著作物利用円滑化に取り組んでおりまして、平成二十四年の著作権法改正におきましては、著作権者許諾なく著作物利用できる場合を定めた権利制限規定について、相当程度柔軟性のある規定を新たに複数設ける改正を行ったところでございます。  御指摘に関連しまして、知的財産推進計画二〇一五におきましても、新しい産業創出環境の形成に向けて、柔軟性の高い権利制限規定や円滑なライセンス体制など、新しい時代に対応した制度等在り方について検討することが求められているところでございます。これを踏まえまして、文化庁といたしましても、いただいた御意見も踏まえながら、権利保護利用促進のバランスに留意しつつ、著作物利用したデジタル社会における新規ビジネス創出等のニーズを踏まえた権利制限規定等制度在り方について、文化審議会著作権分科会などの場において積極的に検討してまいりたいというふうに考えております。
  10. 阿達雅志

    阿達雅志君 どうもありがとうございます。  やはりこのフェアユースの問題も、日本だけがいつまでも個別的に権利制限を緩めるというやり方では新しいサービスになかなか対応していけないんじゃないかと。やはり今まではどうしても立法事実がないとなかなかこういう法律改正はできなかったわけですが、どうもデジタル社会になってIT世界というのは、余り厳密なサービス、具体的なサービス立法事実として出てくる前であっても相当緩めておかないと、新たなイノベーションなかなか起きないんじゃないか。だから、実際に緩いからサービスをやっていくという部分が出てまいりますので、是非その点は前向きに御検討いただきたいと思います。  では、知的財産全体についてただいま御意見をお伺いしましたが、ちょっと特許法改正についての個別の質問をさせていただきたいと思います。  もう今までの質疑大分いろんなことが明らかになっておりますが、私ちょっと一点気になっておりますのは、大学における職務発明、この取扱い大学あるいは研究所における職務発明取扱いなんですね。  これは、大学というのは、やはりその性格上、利益目的としていない。そういう中で、研究開発で得られた特許、この取扱いというのは、今は技術力強化法十九条ですとかあるいはそれぞれの大学の内規において、その研究者発明というのを大学あるいはそこの産学連携本部、TLO、こういったところが権利として取得をしていくわけですけれども。こういう権利取得、今回特許原始帰属という問題を特許法改正で扱われたわけですけれども、やはり実際の指針の中では一般企業の場合と大学とは異なる取扱いをすべきではないか、そういう意味でその指針というのもしっかりと書き込む必要があるのではないかというふうに思いますが、いかがでしょうか。
  11. 伊藤仁

    政府参考人伊藤仁君) お答えいたします。  今回の職務発明制度改正につきましても、産業構造審議会の中で大学関係の方にも委員として参加していただきまして、そのプロセスの中で大学側から、いわゆる全て一律に法人特許を受ける権利を帰属させるのではなくて、大学特有の事情を考慮すべきであるという御意見をしっかりといただきました。こうした御意見を踏まえまして、今回の改正特許法案におきましても、大学の選択により、初めから法人特許を受ける権利を帰属させることもありますし、あるいは発明者に帰属させることもできるという形にしております。  大学における研究活動、これは我が国イノベーションの重要な担い手でございます。大学における職務発明の奨励も重要な課題であると認識しております。この法律案の成立した後に速やかに企業関係者のみならず大学関係者にもしっかりと新しいこの制度について御説明、周知させていただきたいと思っておりますし、加えまして、この法案では、政府職務発明規程を定める手続についてのガイドラインを策定するということが法定化されてございまして、そのプロセスにおきまして大学関係者意見も聞き大学などにおける手続の記述を設けるといったようなことも含めまして、大学の実態に配慮した適切なガイドラインというものを策定することとさせていただきたいと思っております。
  12. 阿達雅志

    阿達雅志君 どうもありがとうございます。しっかりしたガイドラインを期待をしております。  引き続き、ちょっと特許法についてなんですけれども、今回のこういう原始帰属職務発明の場合の原始帰属を認めるというのは、特許処分をしやすくする、特許権利関係を分かりやすくするという、こういう目的一つはあったと思うんですけれども、そういう中で、実は日本の場合、特許共有している場合に、この特許処分をする、あるいは通常実施をする場合において、この共有者全員合意が必要と、こういう規定になっております。  これ、海外では、誰か許可をすればいい、共有者の一人が許可をすれば後はその共有者間でその経済的対価の取り合いをしなさいと、ただ、実施するかどうか、活用するかどうかのところは共有者の一人だけでいいという、こういうような考えもあるわけです。  特許の場合に、今後非常に多くの人間が関与して特許をやる、こういう場合に、全員合意を取らないと通常実施もできないということになっていくと、やはりこれ活用という面で非常に困るのではないか。また、この特許権者相続等権利者が分かれていった場合に非常に煩雑なことが必要になる。こういう点から、やはり今後はこの共有特許処分についてもいろんな考え方を取っていくべきではないかと思うんですが、いかがでしょうか。
  13. 伊藤仁

    政府参考人伊藤仁君) 御指摘のとおり、現行の特許法七十三条におきまして、特許権共有に係るときは、各共有者は他の共有者同意を得なければその持分を譲渡あるいは第三者への実施許諾をすることができないという規定がございます。これ、特許権共有者はそれぞれ自由にその発明を実施し得ます。例えば譲渡によりある共有者が巨大な競争相手に変わってしまうと他の共有者経済的に大きな影響を受ける、こういったような理由から譲渡に際して他の共有者同意というものを求めております。こういった点で制度の変更には慎重であるべきというふうに考えているところでございます。  アメリカでは、御指摘のとおり、原則として共有に係る特許譲渡について共有者同意というものは必要ないようでございますけれども、共有者同士契約を結んで異なる定めができるというふうに承知しております。日本のこの先ほど申し上げました七十三条の規定におきましても、他の共有者の個別の同意がなくても自由に特許権譲渡できることなどを契約によってあらかじめ定めておくことはもちろんできます。当事者間での柔軟な対応というものが可能であると考えております。  御指摘のような大学などを想定しますと、企業に比べて研究開発とかそれから知財活用までのマネジメントをする人材あるいは知見が足りないということが考えられますので、特許庁では、こういった企業との共同研究を含むような研究成果知財として保護活用できるよう、大学知財マネジメントの経験や知識を有する専門家大学に派遣しまして、知財の有効な利用あるいは今申し上げました契約等の整備、こういったことを支援する取組をしておるところでございます。  こういった取組を通じて、共有特許を含めた知財が非常に円滑に使われるように促進していきたいと、こういった観点で引き続き支援を行ってまいりたいというふうに考えているところでございます。
  14. 阿達雅志

    阿達雅志君 今のお話で、ある場合においてはこの共有特許処分というのは慎重であるべきというのは非常によく分かるんですが、やはり特許権者が増え過ぎてつかまえ切れないような事態、こういう事態について、逆に特許権者不詳の場合にどういう扱いをすればいいのか、その辺りについては是非今後御検討いただければというふうに思います。  続きまして、不正競争防止法の一部を改正する法律案について質問させていただきたいと思います。  営業秘密というのを考えたときに、やはりこの営業秘密管理の問題というのが現実には非常に重要なのではないかというふうに考えます。今までどうもこの営業秘密管理というのは、日本企業の場合、社内、国内では非常に徹底していたと思うんですが、最近のビジネスを見ると、海外子会社営業秘密を渡す、それからその海外子会社がまた更に海外の業者のサーバーにこういう営業秘密を保管する、こういうこともあるわけですし、それから、海外の別の会社にライセンスをして営業秘密を渡す、こういうこともあると思うんですね。この場合に、どこまでを日本企業日本の本社として管理をしていれば営業秘密管理したと言えるのか、この辺りをある程度はっきりさせておかないと、これから日本企業が実際に営業秘密というのを管理していく上での参考にはならないのではないかと。  ですから、この辺り是非ガイドラインという形でも結構ですけれども、明確化して、営業秘密管理指針の中で具体的事例を挙げて説明をいただいたらどうかと思うんですが、いかがでしょうか。
  15. 菅原郁郎

    政府参考人菅原郁郎君) 委員指摘のとおり、不正競争防止法上の営業秘密となるためには企業においてきちんとした管理が行われていることが前提条件でございます。  御指摘の事例でいいますと、例えば日本企業海外の現地子会社ライセンス先に営業秘密を開示しているような場合でございますけれども、その秘密が現地子会社などにおいてきちんと秘密として管理されているのであれば、当然のことながら、営業秘密としてこの法律保護を受けることが当然でございます。もちろん、その秘密の侵害については処罰対象となるということでございます。  他方、委員が御懸念しているとおり、現地子会社若しくはライセンス先でずさんな管理が行われている、例えばでございますけれども、営業秘密と認識できないような状況で他の一般情報と混在したような形で管理されている、これはもう窃取されて当然のような状態で放置されている、こういうずさんな管理状況では、当然のことながら不正競争防止法による保護は及ばないと考えるのが一般的であると思います。  したがいまして、我が国企業営業秘密がしっかり守られるためには、委員指摘のとおり、国内のみならず海外の現地子会社か若しくはライセンス先、そこでもちゃんと営業秘密管理されている状態に置かれていることが重要でございまして、これについては営業秘密管理指針でも触れてございますが、今後策定するマニュアル等においてそういった事態についても研究して、海外で穴が空くということがないようにしたいと思っております。
  16. 阿達雅志

    阿達雅志君 ありがとうございます。是非そのマニュアルで具体的事例を挙げて注意を喚起いただければと思います。  引き続きまして、営業秘密について、営業秘密を不正に取得した場合に、その後の、使わせないようにする、流通を阻止する、これが非常に大事になってくるわけでございます。  現在、今後、関税法の改正で、そういう営業秘密取得して、不正に取得したその結果物、成果物を日本に持ち込むことについては制限をするという、そういう方向で御検討いただくということでありますけれども、私はこれだけでは多分不十分なのではないかというふうに思います。それは、実際にアジアのどこかの国でこういう営業秘密を不正に取得した、その国が日本にその製品を送ってくるとは限らないわけですね。多分、ヨーロッパだとかアメリカだとか、そういう別の国にその製品をどんどん出していく、そういう形で日本営業秘密というのが不正に活用されていく、こういうケースが非常に実際には多いのではないかというふうに思います。この問題というのは、アメリカにしてもヨーロッパにしても実際には同じ問題を抱えております。  そういうことを考えると、持っていったその国自体で流通を阻止するというのはこれは現実には非常に難しいと思うんですけれども、少なくとも、それ以外の世界の大きな市場、特に先進国市場においてお互いに何らかの取決め、協定をすることによって、そういう不正に取得した営業秘密による製品、この流通を阻止するということは十分に考えていっていいのではないかというふうに思うんですが、これについて御意見をお聞かせいただけますでしょうか。
  17. 菅原郁郎

    政府参考人菅原郁郎君) 委員指摘のとおりでございまして、今回の不正競争防止法改正法案におきましては、営業秘密を侵害して製造された製品であることを知って、又は知らないことに重大な過失がある者が行う当該侵害品の譲渡、輸出入等を禁止しているところでございます。  その水際での特に差止めについては今後財務省と関税法の改正その他で詳細設計を行っていくつもりでありますが、委員指摘のとおり、侵害品の国際的な流通、これについてもやはり懸念がございまして、御指摘のような当局間との国際的な連携協力をしっかりしていく必要性があると思います。  例えば、現在、税関相互支援協定という二十八か国と結んでいる協定がございまして、この中では知的財産侵害物品の水際取締り等を目的とした情報交換を行うというような国際的な枠組みもありまして、こういう既にある国際的枠組みも活用しながら、双方にとってメリットのある、こういう知的財産侵害品の国際的な流通について当局がしっかり対応を取れるような体制づくりについても検討していきたいというふうに考えてございます。
  18. 阿達雅志

    阿達雅志君 ありがとうございます。営業秘密が問題になってくるような製品というのは、ある意味非常に高付加価値の技術、こういったものを利用している可能性が高いと思うんですね。そうすると、やはり先進国がこれをいかに封じ込めるかというのが非常に大事なことになってくると思いますので、引き続きそういう御努力を続けていただければと思います。  時間も来ましたのでちょっと最後の質問になりますけれども、今回、この営業秘密の不正取得、これを非親告罪化するということでございますが、ここでちょっと一点疑問に思いますのは、非親告罪化して、営業秘密取得ということが問題になった場合に、後ほどこれライセンスをしたらどういうことになるんだろうかと。  今までこの問題についての政府の懸念の中に、そういう取引先との関係で親告罪だと問題提起をできないという、こういう指摘があったわけですけれども、実際にそういう場合には、そういう取引上の優越関係があるような場合には、後からライセンスをしろと言ってくるということは当然考えられると思うんですが、これ、後からのライセンスというのを考えると、やっぱりこの非親告罪化する意味というのは、むしろそこよりも産業スパイ的な人たちを禁じる、そちらにあるのではないかと思うんですが、いかがでしょうか。
  19. 菅原郁郎

    政府参考人菅原郁郎君) 今回の非親告罪化した大きな理由一つは、中小企業等が取引先に提供した製造ノウハウ、これが不当にその取引先に使用されて泣き寝入りせざるを得ないような状況、これをどうやって未然に防止するのかというのが大きな目的一つでございます。  例えば、こういう非親告罪化することによって、取引先企業、大企業がこれを事後的にライセンスだというのを強要してライセンス化して、後で非親告罪として捕まるのを防止するというような行動もあり得るわけですけれども、逆に言うと、これまでは何の取決めもなく使われたことに対して、ライセンス化という形でしっかりした契約が結ばれる。そうすると、ライセンス化しますと、ライセンス料は一体幾らだったのかというような、これは営業秘密に見合うライセンス料なのかどうか、若しくは不当な立場を使って物すごく安くライセンス料を抑えているのかどうかという、その契約関係の明確化が進むと思いますので、むしろ、こういった非親告罪というのは、そういう意味でも、ライセンス化という措置が仮にとられるとしても、中小企業の泣き寝入り対策としては有効に機能するのではないかというふうに考えております。
  20. 阿達雅志

    阿達雅志君 終わります。
  21. 石上俊雄

    石上俊雄君 おはようございます。民主党・新緑風会の石上俊雄でございます。  特許法等の一部を改正する法律案、さらには不正競争防止法の一部を改正する法律案、この審議も六月の十九日の参考人の皆さんからの意見聴取を含めて三日目になりました。大きな視点での議論はかなり進んだというふうに思いますので、今日は時間にも限りもありますから、私としては特許法に絞って、かつ、その中での第三十五条ですね、職務発明部分に絞ってちょっと御意見を伺いたいなというふうに考えております。  いろいろとやっていったんですが、読めば読むほど分からないところが結構出てきまして、法的な解釈なので、ちょっと分かりやすくするために資料を作らせていただきまして、ちょっと多かったんですけど御容赦いただきたいというふうに思います。  この特許法、今回の改正のものが通りますと、旧法、二〇〇四年前のものと現法、二〇〇四年に改正したものと、この改正した後の法律です、これが並行して、併存して出てくるわけであります。  要は、旧法の問題点、後ほど触れますけれども、それを改正する、何とかクリアするために二〇〇四年に改正をして、その後、裁判、判例というのが四件しかないということを考えれば、ある程度は何かうまくいっているのかなというふうに考えられるわけですが、しかし反面、今回のこの改正をするというところをやることによって、さらに二〇〇四年のところでの問題点が再浮上してきているところもありますので、現行法そして改正案を含めてちょっと質問をさせていただきたいなと、そういうふうに思います。  今日の論点は、資料の一のところを見ていただくと、大きく五つです。先ほど来出ている原始使用者帰属という問題、さらには相当の対価と相当の利益といったところと、あと手続の合理性と裁判所の出番と算定の関係、さらには相当の対価の額と相当の利益の内容の裁判所の算定、さらには手続合理性三要件と「等」の内容の具体化というところですね、これをちょっと質問させていただきたいと思います。  まず一つ目ですが、そもそも、現法は、従業者に帰属している、そしてそれを使用者の帰属に渡すということで対価が発生しているわけであります。  今回の改正によると、資料二を見ていただきたいんですが、そもそも使用者帰属になるわけなんですね。そうなると、相当の利益を受ける権利の発生は法的にどう説明できるのかということです。民民の世界に介入を必要とするその法的、論理的構成をちょっと教えていただけると助かります。
  22. 伊藤仁

    政府参考人伊藤仁君) お答えいたします。  特許法目的発明を奨励するということとなっております。発明のインセンティブをしっかり確保するということが大前提でございます。  この三十五条、職務発明におけるインセンティブに関しましては、企業発明者たる従業者との立場の違いということで、一般的に申し上げますと、従業者において自由な意思決定に基づく意思を表明するということが企業の中でいうと容易ではないといった事情に鑑みまして、完全に私的自治に委ねるということは適切でないというふうに考えています。  こうした観点から、改正後のこの三十五条四項におきましても、職務発明に係る特許を受ける権利が初めから企業に帰属した場合に、従業者は相当の金銭その他経済上の利益を受ける権利を有するものとしているという形で、民民の関係について立法によって言わば形をつくっていると、こういうことで説明しているところでございます。
  23. 石上俊雄

    石上俊雄君 要は、そもそも従業者帰属だったんだけれども、それを使用者の方に渡すので対価というところに結び付いてくるんですけど、初めからとなってくるとその辺をしっかり法的に完備してもらって、それはそもそももしかしたら労働協約とかさらには職務発明規程という中でうたいながらやっていくのかもしれませんが、そういったところをやりながら、是非発明者というか従業者が今までどおり、さらにはもっと進んだような形での対価につながるように工夫をお願いできればなと、そういうふうに思います。  それでは次の質問なんですが、使用者等と従業者等のその該当性と規程の不在時の扱いといったところについて質問させていただきたいと思います。  使用者等は、基本的に、発明に至る職務や金銭、物質的支援を与えながら、直接の雇用契約がなくても、指揮命令関係にあればその使用者等に該当するというふうに考えるわけです。そうすると、その対面というかその対にある方々というのは、派遣の方であったり、出向の方であったり、臨時社員の方であったり、嘱託、パートの皆さんも従業者等に含まれるんだというふうに考えるわけなんですね。というふうなことでいいんだろうと思うんですけど。そのときに、現行法上、その二者間で有効な職務発明規程がなければ、紛争発生時は現行法の五項の扱いになるというふうに考えてもよろしいんでしょうか。
  24. 伊藤仁

    政府参考人伊藤仁君) お答えいたします。  まず、前提といたしまして、派遣社員あるいは出向社員が職務発明をした場合のケースでございますけれども、派遣元あるいは派遣先、あるいは、出向元あるいは出向先、このどちらが特許法上における使用者等に当たるかといったことについては、発明のインセンティブを給付する義務を負うか、この論点については個別のやはり実態を見ながら判断するということかと考えております。一律に出向だから出向先が使用者になるというふうには限らないというふうに考えております。  仮に、派遣社員あるいは出向社員といわゆる特許法上の使用者、これは、出向先かあるいは出向元かに、両方あり得るわけですけれども、特許法上の使用者に当たる場合に、今御質問ありましたように職務発明規程がなかったということでありますれば、御質問のとおり、現行法における三十五条五項に基づき、相当の対価の算定というものが求められることになるかと考えております。
  25. 石上俊雄

    石上俊雄君 これは改正法でも同じふうに考えてよろしいでしょうか。
  26. 伊藤仁

    政府参考人伊藤仁君) 今回は相当の利益となりますけれども、同様でございます。
  27. 石上俊雄

    石上俊雄君 ありがとうございました。  それでは次の、発明の定義と対価、利益の請求権発生という観点で質問をさせていただきたいと思うんですが。  特許法の二条の定義が、「自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のものをいう。」というふうな規定発明の定義が書かれているんですが、発明の定義はこれ満たしているわけですね、自然法則に沿ってという、その高度のレベルだというところは満たしているんですが、しかし特許要件の完備が不明な発明、さらには出願せずにノウハウ等を秘匿させる発明も、対価、利益を受ける権利が今までの議論の中ではあるというふうに私は考えているわけでありますが、権利譲渡を受けて、それを自分の会社で使って実施しました、しかし成果が出なくて赤字になったとか、さらにはそれを、じゃ、ほかに売りたい、権利をほかに売っていきたいというふうに考えたんだけれども買手が付かない、こういうふうに経済的な利益が結果的に全くなかったと、ゼロの場合も、同様に対価、利益を受ける権利があるというふうに考えてもいいわけでしょうか。
  28. 伊藤仁

    政府参考人伊藤仁君) お答えいたします。  相当の対価あるいは相当の利益について職務発明規程に定めている場合には、その規程に基づいて決定されるわけでございます。  この中身については、それぞれ企業の事情に応じて定められるものと認識しておりますけれども、例えば、特許の出願時とかあるいは登録をされるときに報奨をするんだというふうに規定する場合には、結果的に何も使われずに利益が生じなかったという場合においても発明者たる従業者には一定の対価ないし利益といったものは得ることができるというふうに考えています。一方、職務発明規程の中で、実際にその特許活用されて売上げが上がっていくといったような形で実績報奨をするんだという規定を双方の中で決めている場合には、今御質問のように経済利益が結果的には何もなかったという場合にはその実績報奨は支払われないということがあり得ると考えています。  職務発明規程が定めていない場合については、当然のことながら、五項において、受けるべき権利のものがどの程度あるかということは考慮して別途決定されるものだというふうに考えております。
  29. 石上俊雄

    石上俊雄君 分かりました。  ちょっとこれから、あともう少しこういった類いの質問になるんですが、御容赦いただきたいと思うんです。  どこかでこういう議論もあったかと思いますが、発明が要は未完成だったけどもう少しで何とかいくなというめどが立ったときに、要は、退職してほかの会社に移りました、そして完成をさせて、その職務発明はどこに帰属するようになるのかですね。  あともう一つは、これは中村さんの青色LEDのときも何か裁判のときに出てきたらしいんですが、要は指揮命令を受けずに行った発明、まあこれはちょっと違いますけれども、例えばですよ、会社の経営方針というか、これをやると言っていたんですけど途中でちょっと成果が出ないのでやめた、しかし、いや、発明者としてはこれは物になるかもしれぬからといって独自に隠れてやっていた、そしてそれが物になって、特許という形で、権利というか、できたといったときとか、あとは、自分で独自で発明プロセスを踏んで、そして発明に至ったといったような関係のときはどのような形の帰属になっていくのか、ちょっと教えていただきたいと思います。
  30. 伊藤仁

    政府参考人伊藤仁君) お答えいたします。  まず、前者の、転職先で発明が完成したケースというふうに御質問かと思っておりますけれども、まず、その従業者がした発明、これが職務発明に該当するか否かというのは、特許法上は、その発明するに至った行為が、その使用者等の、従業者の現在又は過去の職務に属していることということが前提でございます。  この職務発明該当性というのは、原則としてその発明が完成した時点において判断するというふうに考えております。転職先で発明が完成したという場合においては、個別の状況にもよる部分はございますけれども、転職先の企業において職務発明が成立しているというふうに考えられると思っております。この場合、改正した特許法案上は、転職先の企業特許を受ける権利取得する旨をあらかじめ職務発明規程で決めていれば、特許を受ける権利はその転職先の企業の方に行くというふうに考えております。  もう一点、使用者の指揮命令が余りはっきりしないケースという点についての御質問でございますけれども、これもかなり個別具体的な状況によって全体として判断していかなければいけないことが前提でございますけれども、裁判例などにおいても、従業者が企業から当該発明を完成するように具体的な命令とか指示を受けていなければいけないということは、必ずしもそれは必要ということではないようでございます。当該従業者の職務の内容から見て、その発明を完成させることが一般に予定され、あるいは期待されているということであれば、一応それは十分であるということでありまして、明示的に指示がないと職務発明にはならないかというと、そういうことではないというのがこれまでの判例などにおいて我々考えているところでございます。
  31. 石上俊雄

    石上俊雄君 ありがとうございます。  ちょっとまたしつこいようですけど、もう一つ、現行法下で、要は使用者が発明を承継をしました、しかしその使用者は全然特許申請も自社実施もしません、ノウハウ管理も全然しないと、そういうときはその従業者というのは利益や対価を受ける権利があるのか。  さらには、もう全然会社がやらないんだったら戻してくれと、使用者が権利行使しないのであればその権利を放棄したとみなして、その発明者特許権利を返還請求できるのか、ここをどうか教えていただきたいと思います。
  32. 伊藤仁

    政府参考人伊藤仁君) お答えいたします。  特許を出願しない、使用者がしないでクローズ戦略を取るなどの場合が想定されるわけでございますけれども、その発明の実施などによって利益が生じている場合には、職務発明規程に基づいて相当の対価あるいは相当の利益を受けることができると思います。権利行使をしていなくても、特許を出願しなくてもそういうことは得られると思っております。ただし、自分で実施するあるいは他社にライセンスも行わないといった何もやっていない場合において、実際問題として何も収益が上がっていないという場合には、権利はあるけれども、実際の報奨というものは、実績報奨というものはゼロ円であるということはあり得るというふうに思っております。  それから、権利を言わば放棄しているという場合のケースのお尋ねでございますけれども、これも、使用者側は権利を持っていますけれども、それを必ず使わなければいけないという義務を負っているものではございませんので、それを使っていないからといって従業者側がこれを返せというふうに返還できる性格のものではないというふうに認識しております。
  33. 石上俊雄

    石上俊雄君 分かりました。  まあそこをうまく何か仕組みとして今後ちょっとつくらないといけないんじゃないかなと思いますけどね。それをちょっと一言申し上げながら、次に行きたいと思います。  次、論点の二に入りたいと思うんですけど、現行法、相当の対価から今回改正は相当の利益に移ってきている、変更されたわけですね。その中で、要は、そもそも相当の対価、相当の利益という、相当と対価と利益というその意味合いというのをどういうふうに解釈したらいいのか、それを一つ教えていただきたいのと、あとは相当の利益としては、従来どおり報奨金というものは含まれると思うんです。そのほかにどんなものが含まれるか。  資料の二の、一番下の左の黄色の枠の中に書かせていただきましたが、昇進とか昇格、あと昇給、賞与、あとストックオプション、あと有給、会社負担での海外留学、社内ベンチャー資金の提供、さらには特許の共同出願権、一年間の有給休暇、本当かなと思うんですけど、社長表彰、副賞のメダル授与やディナー招待券、研究設備、研究資金の充実、研究テーマ自由度の向上なども何か含まれるというふうに解釈しているんですが、この考え方でよろしいでしょうか。
  34. 伊藤仁

    政府参考人伊藤仁君) お答えいたします。  まず、対価と利益の違いでございますけれども、対価は、基本的に現行法では金銭のみを指すというふうに考えています。それに対しまして、相当の利益は、相当の金銭その他の経済上の利益というふうに規定しておりますので、必ずしも金銭に限るものではございませんが、相当の利益利益部分につきましては、経済上の利益に該当する必要があるというふうに考えております。あと、加えて、職務発明をしたことを理由にしたものでないといけないというふうに考えているところでございます。  この資料二の黄色の部分について、それぞれの個別の具体的事情によって一律に決めることはできないと思いますけれども、仮に職務発明理由としているという要件を満たすということであれば、まず、最初の昇進、昇格、それから二番目のストックオプション、三番目の有給留学ですね、それから社内ベンチャー資金の提供、それから一年間の有給休暇、それから、例えば社長表彰における副賞として換金価値のあるようなメダルの授与あるいはディナーの招待券、研究設備あるいは研究資金の充実、こういったようなものは経済上の利益に該当し得るというふうに考えてございます。  一方で、ただの社長表彰、あるいは研究テーマの自由度を上げるといったようなものについては経済上の利益には該当しないというふうに考えております。  以上でございます。
  35. 石上俊雄

    石上俊雄君 ありがとうございました。  この辺を充実させることによって発明者というかモチベーションが上がってくればいいなと思っているわけですが。  次の視点で入らさせていただきますが、資料の三、見ていただければと思いますが、そもそも一番この特許法の中の改正というのでインパクトがあったのがやはり青色LEDの内容だというふうに思うわけであります。  でも、その青色LEDの前にこの①のところにあるオリンパス事件というのがあって、それが発端になるわけでありますが、その後にその青色LEDのやつの方が金額がでかかったものですからこういうふうになったんですが。使用者が受けるべき利益が一千二百八億円ということで、従業者貢献度五〇%ということで六百四億円というのが算出されたというふうに聞いているんです。それを、提訴したときに二百億円と言っていましたので二百億円のレベルで一回地裁としては終わっている、しかし、その後に東京高裁で様々検証して、最終的には六億円ということですから百分の一になってしまった。しかし、最後はノーベル物理学賞を受賞されるということですね。これ、すごいなというふうに思うんですけど、こういうのがあって二〇〇四年の改正に至ってきているわけであります。  そこで、何が問題かというと、やはりその使用者ですね、発明者もそうでしょうけど、発明というかは従業者もそうなんでしょうけど、いわゆる裁判所の判断というか、余りにも予見性が乏しいということで、いやいやいやいや裁判になったらどれくらいうちは負担をしないといかなくなるんだろうというところが一番問題でありまして、そういうことが起きないようにするためにいろいろ改正をしてきているわけでありますが、特許庁が言うには、労使双方で合意して対価基準をしっかり作ってくださいと、そうすれば裁判所もそんなに口出しはしないんですよということを言っているわけであります。  その中で、質問でありますが、二〇〇四年の改定の審議会で、事務局が、きちんと手段、デュープロセスを行っていればそういう、そういうというのは対価を認定するというケースというのはほとんどあり得ないと繰り返し明言しているということでありますが、現在もこの見解は現行法でも改正法でも変更ないのか、このことについて答弁をお願いします。
  36. 伊藤仁

    政府参考人伊藤仁君) お答えいたします。  現行の三十五条四項に規定する協議あるいは基準の開示、意見の聴取、こういった手続が適正に行われている場合には、特段の事情のない限り、職務発明規程に基づき相当の対価を支払うことが不合理として裁判所が相当の対価を認定することはないというふうに理解しているところでございます。  したがいまして、今回の改正後においても同様というふうに理解しているところでございます。
  37. 石上俊雄

    石上俊雄君 もう一つ、二〇〇四年の特許庁が発行した手続事例集というのがあるんです。これぐらいの厚さなんですが、それによりますと、職務発明規程は、職務発明規程というのはそれぞれの企業、使用者というか労使の中で作ったりするんでしょうけど、「旧法下における職務発明に係る対価をめぐる訴訟の判例を参考にして定めたものであっても、これらを参考にすることなく定めたものであっても構いません。」との記述があるわけであります。  このことは、この立場というか考え方というのは、改正案でも変わらないのか、変わらないと考えていいのか。さらには、現行法の三項と五項、さらには改正案の四項と七項というのは強行規定というふうに考えるものなのか。ここについて教えていただきたいと思います。
  38. 伊藤仁

    政府参考人伊藤仁君) お答えいたします。  委員指摘手続事例集の記載においては、基準の内容について、手続状況等を考慮して不合理と認められるものでない限り、必ずしも平成十六年改正特許法施行前の訴訟の判例を参考にして定める必要はないというふうに解説しております。この考え方に変更はございません。  それから、改正後の三十五条第四項、第七項はいわゆる強行規定、すなわち当事者間の合意によって法律規定の適用を排除できないというものであるというふうに考えているところでございます。
  39. 石上俊雄

    石上俊雄君 ありがとうございます。  じゃ、次のまた質問に入りたいと思いますが、この手続事例集によれば、意見聴取の状況等、資料の四の③のところにちょっと書かせていただきましたが、等ですね、「等」には、全過程のうち、不合理性を判断するために必要とされる手続面の要素であって例示される以外のものや、基準の内容、最終的に支払われる対価の額といった実体面の要素の全てが含まれますとの記述というか、そういう説明があるわけであります。  ということは、改正案の「等」には、これに加えて相当の利益の内容も追加されるイメージで考えていいわけでしょうか。ということは、余りにもこの漢字一文字に結構説明を要する内容が含まれることになっていくわけでありますが、なぜ具体的に明示列挙をしなかったのか、ここについて教えていただきたいと思います。
  40. 伊藤仁

    政府参考人伊藤仁君) お答えいたします。  この改正の三十五条五項の「等」でございますけれども、この同項、同じ項の中に協議、基準の開示、意見の聴取というものが書いてございますけれども、これ以外の不合理性を判断するに関するその他のあらゆる事情というものがこの「等」の中に含まれ得るというふうに考えております。例えば、金銭以外のインセンティブを含むように相当の対価を相当の利益に改めたところでございますけれども、この「等」の中には、相当の利益に含まれる非金銭のインセンティブに係る手続がどうであるかということも当然含まれると思っております。  ただし、この発明者に付与するインセンティブにつきましては、業種や企業ごとに様々な戦略、あるいは研究環境も異なりますので、いかなる基準をもって適正と見るかを一律に決するということが難しいということで、その中身については自主的に取決めをすることに委ねまして、その合理性の判断というものは特にこの例示している手続を重視してやるということになっているところでございます。そういうことでございます。  それで、この部分について、なぜ明示的に相当の利益の内容を追加しないかということでございますけれども、逐一明示しようとする場合には、不合理性の判断の考慮要素というものは非常に限定されまして、事情に応じた柔軟な判断が難しくなるということを考えておりまして、あらゆるものをここに含んでいるということで、ここでは個別列記はしていないということでございます。
  41. 石上俊雄

    石上俊雄君 だから、「等」の中の解説というのはどこかに出てくるんですか、この改正案では。現行法ではその手続事例集の中に出てきますが、今後どうなるのか、そこら辺もちょっと教えていただけると助かります。
  42. 伊藤仁

    政府参考人伊藤仁君) コンメンタールその他で示すことになるかと思っています。
  43. 石上俊雄

    石上俊雄君 ちょっと聞き取れなかったので、もう一度お願いします。
  44. 伊藤仁

    政府参考人伊藤仁君) 法律についての解説、コンメンタールなどを作成する過程の中で必要に応じて示していきたいと考えております。
  45. 石上俊雄

    石上俊雄君 この辺がちょっと分かりにくいと大変なので、是非お願いしたいと思います。  それでは、次の論点、論点四ですけど、相当の対価の額と相当の利益の内容の裁判所の算定というところに入っていきたいと思いますが。  資料一の赤枠で表示をさせていただいておりますが、三十五条の中の旧法の四項と現行法の五項、それで改正案の七項の「発明により使用者等が受けるべき利益の額」の意味は、そもそもこれ何なのかと。要は、旧法も現法も改正法も同じ意味なのか、いや、何か違うんだったらどこが違うのかをちょっと教えていただきたいと思うんです。  「受けるべき利益の額」とは受けた利益の額の意味なのかという、これ、法律用語か何かよく分からないんですけど、受けた利益の額の意味なのか。字面的には、こちらの方で勝手に解釈させていただけると、受けると見込まれる利益ですね。ですから、特許を、発明を承継した時点での発明単価の評価に見えるわけでありますが、この辺についてどういうお考えなのか、教えていただけますでしょうか。
  46. 伊藤仁

    政府参考人伊藤仁君) お答えいたします。  相当の利益を算定するための考慮要素として、「発明により使用者等が受けるべき利益の額」という文言が七項に記載されています。  これは、使用者が現実に受けた利益そのものを指すことではなく、委員指摘のとおり、使用者などが受けると見込まれる利益あるいは期待される利益といったようなものを指すものでございます。そういったものを条文としては「受けるべき利益」というふうに文言としては示しているということでございます。
  47. 石上俊雄

    石上俊雄君 ありがとうございます。  そうなってきますと、その対価、相当の利益の趣旨が、使用者が得た利益の従業員への適正配分なのか、もしかすると発明のインセンティブ付与なのか。これが多分、改正案では、対価を利益に転換するということを考えますと、インセンティブ論の方をより強く打ち出しているというふうに思うわけなんですね。  そうなってくると、対価と利益を使用者の利益額というふうに密着連動させていくと、ちょっとこれは考え過ぎかもしれませんが、利益の分け前に目的が変質化してしまって、要は、俺は企業に貢献したからと、企業利益に貢献したほかの従業員が、何というんですかね、貢献した従業員の不公平感を目覚めさせてしまうという、そういう方向に、今回のこの特許法改正というか、そもそもの特許法目的、これがちょっとずれていってしまうような感じで考えるわけですが、この辺についてはどのようにお考えか、教えていただきたいと思います。
  48. 伊藤仁

    政府参考人伊藤仁君) お答えいたします。  特許法目的、第一条のところに、発明の奨励というふうに明文化されております。本改正特許法における相当の利益というのは、発明のインセンティブを指すというふうに考えております。  このインセンティブの付与については、企業発明者たる従業者との立場の違いというものがありまして、一般的に従業者において自由な意思決定に基づいて意思を表明することが容易でないということから、完全な自治に委ねることが適切でないという観点から法定化しているところでございまして、発明のインセンティブであるというふうにお考えいただければと思っています。
  49. 石上俊雄

    石上俊雄君 分かりました。  次に行きます。  裁判所が出てくる場面で、現行法改正案で手続不合理の場合は裁判所に持ち込まれていくわけでありますが、その場合、算定の方法や、幾ら、どれくらいの額を支払いなさいという、こういう判決のスタイルというのは旧法下と比べて今回変わっていくような内容になってくるのか。  というのはなぜかというと、対価ではなくて利益なので、利益といったところを判断すると、要は、国内のどこかの大学に勉強に行くのではなくて海外留学させろと、これを要は金額換算で低い高いを裁判所が判断していくような、そういうふうなイメージに、これは、だからいいよとか、こういうふうにしなさいというふうになるのか、そういったところを教えていただきたいというふうに思います。  そもそも裁判が起こらないように立法者の意思で現行法も改正法も書かれているというふうに思うわけなんですが、裁判が起こらないようにするためにどんな感じでこれを思いを込めて書かれているのか、その辺も含めてちょっと教えていただけると助かります。
  50. 伊藤仁

    政府参考人伊藤仁君) お答えいたします。  委員指摘のとおり、インセンティブの付与に係る手続が不合理であるというふうに裁判所において判断される場合には、従業者などは企業に対してそれぞれの相当の対価又は相当の利益を請求することができるというふうに考えているところでございます。  それで、裁判所が今回の改正以降どういう判決などを出すかということについては行政の立場からちょっと申し上げることは難しいと思っておりますけれども、また、その判決のスタイルといったようなことについては、原告である従業者がどういう請求を行うかということにまず依存するというふうに考えておりまして、そういった具体的な状況によるかと思っております。  したがいまして、平成十六年改正前の特許法、それから現行法、それから改正後のものに法律改正されても、そこの裁判のスタイルというものについては一概にこういう形になるだろうということを推測することは難しいと思っております。  もちろん今回の改正を踏まえまして手続ガイドラインなども定めますので、その辺り是非しっかりと周知、普及させていただいて、できるだけそういった双方の合意の下で未然に解決できるような形にしていくことが行政としては任務であろうというふうに考えているところでございます。
  51. 石上俊雄

    石上俊雄君 それじゃ、また次の論点に入りたいと思うんですが、論点五の手続合理性要件の「等」の関連についてちょっと質問をさせていただきたいと思います。  資料の五の①をまず見ていただければと思うんですが、先ほど来ちょっと出てきたかなというふうに思うんですが、要は、今の発明に対しての利益、対価ですね、それを支払っていくスタイルというのは実績補償方式が、これが六割を占めるわけであります。しかし、反面、一括支払方式というのも二割ぐらいあるわけであります。主流としたら実績補償方式だというふうに見えるわけですね。  だから、そうなってくると、何というんですかね、このインセンティブとか実績補償方式等でどれくらいの対価になってくるというか利益につながってくるかというのを算出するというのは、要はクロスライセンスがあったり、前から出ている、一つの製品に対して幾つもの特許を使っているのでと、結構その算出は困難だというふうにこれはずっと言われてきているわけでございまして、ここをどうやってやっていくかというために今回特許の、この法が改正をされてきているのも一つの要因だろうというふうに思っています。  その中で、実績補償方式というのが一番何が問題かというと、やはり年金化しているということですね、はっきり言って。要は、企業に就職してすぐ特許を作るわけじゃない、特許というか発明に結び付くわけじゃありませんから、数年たって発明をしますと。発明権利化で、要は使用者にその権利譲渡して、それで製品を作ってほかの会社にも売っていってということで、利益が出るのに十数年掛かるわけですよ。そうすると、もう技術者ばりばりの時期というのは過ぎているわけでありまして、管理職になったり、もう定年退職をしたりしてから来るわけです。だから、イコール年金化しているということですね。  しかし、それだと、さっき、この改正目的というのがイノベーションにつなげていくんだということですよね。ここなんですね。イノベーションというのは誰が起こすかというと、やっぱりそこで働いている皆さんとかが起こしていくわけですから、じゃ、どうやってその発明者、若手ですよ、中堅、若手の発明者にしっかり利益を与えてモチベーションを上げるような形に進めていくかというとやはり一括方式なのかなという、そこら辺が結構議論されないと私はいけないんだろうなと、そういうふうに思うわけです。  そこの中で一つ質問なんですが、そもそもこの方式、承継時の発明評価が困難ということで、要は発明時のその評価が、発明評価が困難だということで弁済時期を時間的に繰り下げている、要は後々に繰り下げる、ですから実績にならざるを得ないんだというふうになるんでしょうけど、これは法の要請によるものではないというふうに理解をしていいものなのか。さらには、この辺というのは、本当、指針策定時にしっかりと議論してほしいというふうに私は考えるんですが。先ほど言った理由から、やはり年金化じゃイノベーションにつながらないと思うんですね。だって、定年退職してから海外に留学に行ったってしようがないわけですから。  ですから、そういうふうなところをやっぱりしっかり考えると、行く行くは一括支払方式のケースが何となく多くなるんじゃないかなというふうに思うわけでありますが、この辺についてのお考えをちょっと教えていただきたいと思います。
  52. 伊藤仁

    政府参考人伊藤仁君) お答えいたします。  委員指摘のとおり、これまで多くの企業においては、我々も見ておりますと、実績補償方式によっていわゆる相当の対価というものを支払われてきているところが多いというふうに認識しております。  他方で、現行法において、この実績補償方式といったようなものにするようにとか、あるいは、そういうのがふさわしいといったようなことは位置付けられておりません。どのような支払の形であっても、多様な方法を許容されるような形で規定しております。  この改正によりまして具体的にどのような支払方法を企業の中で進めるかということは、繰り返しでございますけれども、企業内の自治といいますか、企業と従業者との間で自主的に定められるものだと承知しております。むしろ、今後策定する予定のガイドラインなどを参考にしていただきながら、できるだけ創意工夫が発揮できるように規程を作っていただきたいというふうに考えております。  委員指摘のとおり、やはり企業の中でイノベーション研究者のインセンティブが高まるのがどういった報奨の形が一番ふさわしいかということで、今回、この改正を契機として、企業内の中でもこういった議論是非していただきたいというふうに考えているところでございます。
  53. 石上俊雄

    石上俊雄君 そういった意味では、やはりガイドラインというか、指針を作るところが結構重要だというふうに思うんです。そうなると、ちょっと議論があったというふうに思いますが、どういう形でその指針に対しての議論が進むか分かりませんが、是非発明する方であったり、それを使う方であったり、さらには学者さんであったり、幅広い人たちが集まる中でしっかり議論をしていただいてすばらしい指針の策定をお願いしたいなと、そういうふうに考えるわけであります。  それで、次の質問なんですが、その対価とか利益があるんですが、やはりどうしても使用者側的には上限設定をしたいなと、それは思いますよね、誰しも。しかし、当初の想定をはるかに超える画期的な発明というのは中にはあるわけでありまして、だから対価、利益発明の価格に比べて過小だったという、いわゆる大化けするものが出てくるわけなんですが、そのときの対応というのは、やはりバスケットクローズという包括条項的な規定をしっかり定めておかないと、これは何というんですかね、不合理性というんですかね、手続の合理性というのが要は否定される、要は手続が駄目ですよということで裁判になっちゃうとか、そういうふうになってしまうのか。このことについてちょっと教えていただけますでしょうか。
  54. 伊藤仁

    政府参考人伊藤仁君) 現行法における相当の対価、それから改正特許法における相当の利益、いずれについても、条文上、その上限を設定するということを直接規定している、あるいはそれが適切でないということを規定しているわけではございません。したがいまして、その上限を設定していることだけをもってその手続が不合理あるいは不適正であるということではないと考えております。  具体的にどのような規程を設けるかについては、繰り返しになりますけれども、双方の間で自主的に決められるものだというふうに考えておりまして、ガイドライン参考にしていただきながら一番いい形にしていただければと思っています。  決して上限を設けている企業が多いということを我々は把握しているわけではございませんけれども、上限を設けていない企業も現に存在していることは、私自身は確認しておるところでございます。
  55. 石上俊雄

    石上俊雄君 ありがとうございます。  次の論点なんですが、資料の六に入ります。  手続の三要件というのがあるんですが、そのうちの一つで協議というのがあります。協議をどういうふうにするかですね。このグラフを見ていただけると分かるんですが、一番多いのはやっぱり社内のイントラネットで協議をしていく、それで意見を集める、意見がなかったらというふうな、そういうようなスタイルが一番多いというふうになっているわけでありますが、この現行法改正案においても、協議の方法というのは、社内イントラネットによる意見募集、さらにはオンラインによる回答方式でこれは問題ないなというふうに考えておられるのか。  そのときに、労働組合が協議を行うということも中にあるわけですけれども、協議を行う旨を事前通知をしまして、明確な異議がなければ代表性があるというふうに判断をして、そして、その中で各組合員の意見までは、資料の六の②に書いてあるんですが、組合員の意見までは聞かなかった場合でも協議は行われたと評価されるかというところですね。この手続集の中ではあったものと評価されるというふうに書いてあるわけですけど、えっ、そうなのみたいな、というふうになっているわけですけど、この辺についての論拠ですね、このことについて教えていただけますでしょうか。
  56. 伊藤仁

    政府参考人伊藤仁君) お答えいたします。  職務発明規程の協議の部分において、社内のイントラネットによって意見募集をするというのが適正な手続として評価できるかどうかという点でございますけれども、これ、企業の規模とか、あるいはその研究開発をどういう形でやっておられるか、形態といった具体的な状況で判断すべきものだというふうに考えております。  こうした判断基準については、今後策定されるガイドラインにおいて具体的に示していく予定でございますけれども、この適正な協議というものは、やはり実質的な話合いが行われたと評価されることが必要であろうというふうに考えております。  それから、労働組合が協議を行う場合においても、今後策定されるガイドラインの中で適正な手続在り方を具体的に示していく予定で考えておりますけれども、例えば各組合員が労働組合に対して協議に関する御自身の権利を委任したというときは、各組合員が協議を行ったものというふうに評価できるものと考えているところでございます。
  57. 石上俊雄

    石上俊雄君 次に入りますが、資料の七の①にも書いてあるんですが、アンケートによりますと、発明規定を就業規則や労働協約で定めるケースも存在してきているんですが、そのアンケートの中で一番多いのはその他の定めが圧倒的なわけであります。しかし、二〇〇四年の改定のときに、衆議院の附帯決議で「労働協約が職務発明規定を定める有力な方策の一つであることにかんがみ、事例集の策定に当たりこの点を反映すること。」とあるわけでありますが、その直後に特許庁が作成した手続事例集では、労働協約で定めたことをもって直ちに特許法上の不合理性の判断においても不合理性が否定されるわけではありませんと、否定的な内容となっているわけであります。  そういった意味で、最近の解説本、結構出てきているんですが、新たに職務発明規程を設ける場合、会社が一方的に規定できるその他の規程によるべきというふうに、解説本の方はそっちの方なんですね、そっちの方。会社が自由に定めるその他の規程でというふうになっているわけでありますけれども。何ですかね、職務発明規程の形式に関する、本来やっぱりどういうふうにするべきか、特許庁としてどういうふうにお考えなのか、そこをちょっとお聞かせいただけますでしょうか。
  58. 堂ノ上武夫

    政府参考人(堂ノ上武夫君) 今御指摘いただきました契約、勤務規則その他の定めの中には労働協約も含まれておるということは事実でございまして、二〇〇四年の衆議院の附帯決議のとおり、この中で、労働協約が職務発明規程を定める有力な方策の一つであるというふうに認識をしております。他方で、労働協約以外の方策もこれは認め得るものでございまして、手続事例集にはその趣旨が反映されたということでございます。  ガイドラインの策定に当たりまして、労働協約が職務発明規程を定める有力な方策の一つであるという認識を引き続き踏まえながら、労働組合の代表者、労働法学者、研究者も含めた産業構造審議会において検討、審議をいただきまして、効果的な発明のインセンティブが決定されるような協議、それから意見聴取の適正な在り方を検討してまいりたいと存じます。
  59. 石上俊雄

    石上俊雄君 分かりました。  次に入りますが、三要件の開示というところを今やっているんですけど、要は、さっきの資料の七の②のように、開示のスタイルというのは九割が社内イントラネット、さっきの意見募集もイントラネットですけど、開示もイントラネットなんですね。共用のパソコンを含めて、見ようと思えば見れるという、こういうスタイルを取っておけば、意見や質問、メール、意見箱などを通じて、要はこういうメールの環境も含めて自由に意見が述べられる環境があれば、基準の開示というのについてはこれは環境は十分だというふうにお考えになられるのか。  さらに、このことというのは、企業ごとに、特許に対して、その発明に対してどういうふうな対応をしているかというのは、結構企業としても自分の企業価値を、価値というのかな、就職、就職というか、新しい人材を集めるときにも有力な一つの評価ポイントになるんじゃないかなというふうに思うわけなんですが、しかし、その解説本をまた読んでいきますと、社外への公表は企業営業秘密に類することもあって慎重な検討も必要だというふうになっているわけでありますけれども、この辺についても特許庁のお考えをちょっとお聞きしたいと思います。
  60. 堂ノ上武夫

    政府参考人(堂ノ上武夫君) まず、委員指摘職務発明規程の協議、開示の問題でございますけれども、これが社内イントラネットによる提示をもって適正な手続と評価できるかどうかということにつきましては、先ほどの意見聴取と同様、企業の規模、研究開発の形態など、またイントラネットがどのようなものであるかといったような具体的状況下で個別に判断するということになるものだと認識をしております。  一方で、優秀な人材を集めるためにこの基準を公開することにつきましては、これは企業によって、相当の利益の基準をそのために自主的に公開をするということは、これは十分にあり得ることだと考えております。他方で、企業が従業員にどのように相当の利益を与えるか等につきましては、基本的には各企業の技術競争力に直結する経営戦略に属する事項であるということでございますことから、その情報開示を政府がこれを義務付けるということは適切ではないと考えております。
  61. 石上俊雄

    石上俊雄君 ありがとうございました。  続きまして、意見聴取のスタイルといったところに入っていきたいと思いますが、自分の発明、その対価というか利益というか、そこに対して異議申立てをしたいということで、職務発明規程の中では職務発明審査会なるものを設けなさいというふうなところもあるわけです。一概にその職務発明審査会が不服申立て機関というふうになるわけではないんですが、そういったところを設けていってその発明者の申入れを受けるというふうに考えるわけですが、そのときに、その職務発明審査会もそうなんですけど、要は特許部の部長さんとかがメーンなんですね。あとは社長さんが委員を決めるとか、そういうふうな感じになっているような書きっぷりなんです。  ということで、いやいや、異議を申し立てても何ら自分の意見をやっぱり評価してくれないじゃないかというふうにつながるんじゃないかというふうに思っていまして、そういうことを考えれば、不服申立てをする機関、このメンバーというのは使用者側が占めているというのは法的に適法と考えていいものかどうかですよね。  さらには、発明者代表とか外部の弁護士さんとか弁理士さんを登用するとか、さらには紛争を仲介する仲裁人に委ねる仲裁合意というところもいいんじゃないかなというふうに思いますし、特許庁にADR、裁判外紛争解決手続機関を設置するとか、いろいろ考え方があるわけでありますが、この辺について今、現時点でどのようにお考えか、お願いします。
  62. 堂ノ上武夫

    政府参考人(堂ノ上武夫君) 改正法案に基づきますガイドラインにおきましては、発明者との協議それから意見聴取などを行った上でインセンティブを決定するという手続を定めることとしております。その中で、協議、意見聴取の具体的な方法はそれぞれの企業と従業者との間で自主的に定めるということが尊重されるものだと考えておりまして、社内の不服申立て機関の中に発明者や外部の弁護士それから弁理士を、これを含めるかどうかということにつきましても各当事者が十分に協議をした結果に委ねられているというふうに考えております。  こうした労使双方が十分に納得感を高めた手続を踏むことによって、様々な規定を定めることによりまして訴訟という手段を取らずに円満な解決を図るということが可能となるというふうに考えておりますことから、委員が御指摘いただきました特許庁においてADR機関を導入するということは考えてございません。
  63. 石上俊雄

    石上俊雄君 当事者間でというふうになるわけでありますけれども、資料の八の①にも書いてあるんですが、異議申立て制度がないというところもあるわけでありますので、是非その辺は、ちょっとうまく、やっぱりどこに行ったらいいんだろうというふうになりますから、そこはその指針ガイドラインの中でもしっかり規定をいただければと思います。  次が、八の②の退職された皆さん方の取扱いということですね。  先ほども御説明をさせていただきましたが、発明に対しての対価というか、利益の年金化といったのが進むわけです。大どころの企業になりますと、抱えている特許というのは累積で数万から数十万件と言われているわけであります。ちょっとこの前レクいただいたときには、製薬会社とかは件数が少ないらしいんですね、物づくりというか電機産業系はめちゃめちゃ多いらしいんですけど。そういうことで、実績補償方式を取ると、退職者への皆さんの対応で結構大変だというのは多分想像できる。膨大な労力になるというのは分かりまして、これが今一番大きな問題だというふうに一つ考えられるわけであります。  そんな中で、最終的には指針を作る中での大きな議論にしていただきたいと思いますが、どっちがいいんだということですね。企業の負担があるのにやっぱり実績補償で年金化になったものを追っかけた方がいいのか、それよりはもっと初めに一括払いで若いうちに留学の機会とかというところにつなげた方がいいのか、ここは指針議論の中でしっかりやっていただきたいんですが。  その中で一つ、退職者に連絡先変更の通知を誓約書で義務付けて、通知がない場合は一定期間後に請求権が放棄されるとの条項、これを設けるというのは法的に適法だと考えられるのか。さらには、退職後の支払をなくす退職時清算、又は請求の一代限り、相続不可の取決めは法的に許されるのか。この辺はどのようにお考えなのか、教えていただけますでしょうか。
  64. 堂ノ上武夫

    政府参考人(堂ノ上武夫君) 委員が御指摘いただきましたとおり、実績補償方式の場合におきましては、退職者との連絡が取れなくなったために企業が、様々な非常に多くの件数を抱えている企業においてインセンティブの給付ができないという場合が起き得ることがございますけれども、この場合、具体的な状況にもよりますけれども、一般的にはその手続がそれだけで不適正なものであると判断される可能性は低いというふうに考えております。  また、退職時清算、請求一代限りの取決めの判断につきましては、各企業職務発明規程の内容、それからそれぞれの具体的な状況によるために、これについて一概に申し上げることは難しいものと考えております。  一方で、ガイドラインの策定に当たりましては、委員が御指摘いただきましたように、可能な限り具体的な状況も想定した上で効果的な発明のインセンティブが決定されるような協議、それから意見聴取の適正な在り方を検討してまいりたいと存じます。
  65. 石上俊雄

    石上俊雄君 ですから、二〇〇四年で改定があって、今回また新たに改定の法案が出てきているわけなんで、せっかく指針を作るので、しっかりと、だから先ほども言いましたように、使用者だけではなくて、この指針も、やっぱり働いている皆さん方の代表も結構それなりにいていただかないといけないし、司法の方もいていただかないといけない、学者さんもいていただかないといけないという、そんな中でしっかりと議論をいただければというふうに思います。  時間も来ますので最後の質問にさせていただきたいと思いますが、この退職者の方の対応なんですけど、じゃ、今実績補償方式で受け取られる方がおられました、企業側も含めて何とか手間を省きたいので変更したいんですと、要は先行きのものを一括でまとめて払いたいという変更手続ですね、変更をしたいというふうに考えたとき、その必要性ですとか相当性が肯定されるのであれば、例えば年金額、年金の減額訴訟のように、不利益変更の内容やその説明、選択枠の程度にもよるんでしょうけれども、遡及適用も法的にあり得るというふうに考えるわけでありますが、この辺についてはどのように今お考えか、教えていただきたいと思います。
  66. 堂ノ上武夫

    政府参考人(堂ノ上武夫君) 今のような内容につきましても、これもあくまで各企業職務発明規程の内容、それから具体的な状況によりますために一概には申し上げられませんけれども、一方、企業と従業者との間でガイドラインに従った協議等を再度行うことによりまして、退職者の実績補償方式を、これを事後に一括払い方式などに変更するということは可能であると考えております。  いずれにいたしましても、ガイドラインの策定に当たって十分なインセンティブが、納得ができるような、決定されるような協議、それから意見聴取の在り方を十分に検討してまいりたいと存じます。
  67. 石上俊雄

    石上俊雄君 時間が来ましたのでこれで終わりますが、やっぱり日本特許というか発明というのは、先ほど阿達委員からもありましたが周回遅れ、もっとドラスチックにやっていかないといけないときに来ているんじゃないかなというふうに思うんですね。その中でちょっと有力な特許が出なくなったのは、やはり企業の体力が今はだんだんと失われていて、ちょっと今は成果に結び付かないけど、もっと先のことに対しての研究をするというところの予算がどんどん削られてきているというところに行き着くのかなというふうに思っています。  そういった意味では、是非、経産省の皆さんのお力もお借りしながら、産業全体を元気にしていただくことをお願い申し上げまして、質問を終わりたいと思います。  ありがとうございました。
  68. 加藤敏幸

    ○加藤敏幸君 おはようございます。民主党・新緑風会の加藤敏幸でございます。  石上委員に引き続きまして、会派としてこれが最後の質問の機会ということになろうかと思いますので、言わば確認を含めていろいろと御質問をしていきたいというふうに思います。  まず、特許法改正案につきまして、職務発明の帰属問題ということでございます。  今まで議論がいろいろ行われましたけれども、要するに、特許権あるいは発明権と言われ、これは九十四年間発明者主義ということで、法的にはそういう運用はされてきたわけでありますけれども、それが、発明の支配を目的とする譲渡可能な財産権、このことを消滅をさせられる、放棄させられるというこういう意味であって、しかも、その失う権利の代償措置は、法文上で言えば従来の対価ということではなく労使の自主的取組による報奨という性格に変わっていくわけでありますと。したがって、受け止め方によるとある種不利益な、等価交換ではない改正ではないかと、こういうふうな指摘も出てくるわけであります。  そこで、答弁の中身をいろいろ考えていくと、結局、インセンティブをいかに維持していくのか、対価ということから利益と、このように変わっていく中で、これをどう扱っていくのか。そして、そのことはこの委員会の中で全てが明らかになるということではなくて、ガイドラインの策定、そして、それを個別の企業の中での運用、そこに委ねられていくということでありますから、ある種、そのガイドラインが確定するまではどうなるんですかという、こういう宙ぶらりんの状況がやっぱりあり得るということだと思うんです。  それはそれで流れ上やむを得ないという側面があるわけでありまして、したがって、相当の金銭その他の経済上の利益を受ける権利というものを、より従前の対価請求権の本質的内容に近づけていくということの運用をしていくことが非常に重要であり、そうでないならば、このことの法律改正そのものが評価されない、現場においては、という事態を惹起するということであります。言ってみると、二〇一五年の特許法改正は失敗ではなかったのかということが後日発生しては、立法府の我々にとってもそれは極めて残念なことだということでございます。  権利権利だという思いがやっぱり現場の皆さんもお持ちだということでありますので、このことを含めて、ガイドラインの策定、各種制度運用についてどのように考えていかれるのか、再度確認をしたいと思いますので、お願いします。
  69. 伊藤仁

    政府参考人伊藤仁君) お答えいたします。  我が国イノベーションを進めていく、促進するためには、発明のインセンティブを適切に確保するということが審議会の中でも大前提であるということを何度も確認させていただきました。  この改正特許法案において、職務発明に係る特許を受ける権利を初めから企業に帰属した場合に、従業者は相当の金銭その他経済上の利益を受ける権利を有するものということで条文上も明記いたしまして、現行の職務発明制度と実質的に同等の権利を、するということを法律上保障しているというのがまず第一でございます。  さらに、改正特許法案では、政府企業と従業者との間で発明のインセンティブを決定する際の手続に関するガイドラインを策定することを法定化しております。この中で従業者との協議あるいは意見聴取などの在り方について明確化するということとさせていただきます。  これによりまして、従業者の方の納得感を高め、イノベーションの源泉であります発明といったようなものを一層奨励するといったこととともに、従業者の相当の金銭その他経済上の利益を受ける権利といったようなものは更に確実に保障されるものというふうに考えているところでございます。  委員指摘のとおり、このガイドラインの策定に当たっては十分議論をしていくことが必要だと考えております。改正法案の中でも、産業構造審議会意見を聴いてというふうに定められております。産業界のみならず、労働界、学識経験者、大学関係者、様々な方面の方の立場を十分伺いながら、評価されるような形でのガイドライン是非作っていきたいというふうに考えているところでございます。
  70. 加藤敏幸

    ○加藤敏幸君 それでは次に、このガイドラインに従って企業の中で運用制度を決めていくというこういう場面において、前回も質問いたしましたけれども、労働組合が結成されていない民間企業というのは八〇%以上あると、こういうことであります。労働組合というのは、要求と交渉の内容それから妥結内容というのは常に職場にフィードバックしていくという組織的活動はずっと根付いておりますから、読まない人はともかく、全従業員への周知という機能については極めて高いと。しかし、それ以外の八〇%の企業においては、従業員代表とか、そういうふうないろんな制度によって補完されていますけれども、それが機関紙を持っているわけじゃないし、職場集会をやって説明するだけの時間があるわけじゃないという意味で、相当に差があるんだということを前提として労使間の適切な協議の場をどのようにつくり出していくのか、この点について改めて確認をしたいということ。  もう一つは、やはり研究者、技術者のインセンティブを維持するということで、私は集団的な取決めと、もう一つは個別的な取組ということが並走する状況があってもいいんじゃないかと。これは企業の規模だとか業種によると思うんですよね。でも、正直言って、電機メーカーでいえば極めて何万人の従業員がおる会社も多々あるわけですし、業種、職種も相当分かれていることの中で、一つのルールで網羅的にできるということが可能なのか。むしろ、例えばあるプロジェクトについて、海外からも研究者世界から募った上でプロジェクトを進めますと、その人たちの研究についての取決めと、一般従業員で企業年金までもらうことを前提で働く人の研究成果ということの扱いが一緒でいいのかどうかということも含めて、私は二本柱の運用というふうなこともあり得るのではないかというふうなことを含めて、この辺のところを、このアイデアについてお考えをお示しいただきたいと思います。
  71. 伊藤仁

    政府参考人伊藤仁君) お答えいたします。  まず、前段の方の様々な企業においての従業員との関係があるということでございます。  労働組合が比較的従業員の意見を代表するようなところにおきましては先ほどのような形でルートをしっかりと活用するということもございますが、一方でそういうような形でない企業も多々あるかと思っております。また、大きな企業あるいは研究開発型の企業という、業態においてもそれぞれ実態が異なると思っております。我々、ガイドラインの策定に当たっては、そういったいろいろなケースを想定いたしまして、事例なども含みながら、どういった形があるか、できるだけ多様なものを、柔軟に受け入れられるような形でのガイドラインを設定していきたいというふうに考えているところでございます。  それから、集団の対応と個別の対応といったような形のことでございますけれども、今回の改正法案におきましても、発明者たる従業者の能力や発明活動の種類などに応じて相当の利益を給付する職務発明規程企業の中で複数設けるということは許容されているというふうに考えております。したがいまして、委員指摘のとおり、企業が、一般的な従業者といった集団向けの職務発明規程を整備する一方で、スーパー研究者向けと仮に呼ばせていただきますけれども、別途そういったような方を想定した職務発明規程職務発明に関する個別の契約といったようなことを取り交わすことも可能というふうに考えております。  今回の改正によって政府ガイドラインを策定していくわけでございますけれども、当事者間の自主性、多様性というものをできるだけ受け入れ、尊重しながら、きちっと従業者との協議や意見聴取が行われるような在り方を明確化することで、繰り返しになりますけれども、発明者の納得感を高めて、イノベーションの源泉たる発明を一層推進していきたいというふうに考えているところでございます。
  72. 加藤敏幸

    ○加藤敏幸君 次に、先ほど石上委員の質問の中にもございましたけれども、苦情処理機関の設置について、私は非常に重要ではないかというふうに思いますので、この点についての御見解をお願いします。
  73. 伊藤仁

    政府参考人伊藤仁君) お答えいたします。  政府がこのガイドラインを策定するに当たりまして、従業者との協議や意見聴取などの在り方を明確化するということが大事だということは申し上げさせていただきました。  このガイドラインを策定する際に、例えば発明者たる従業者に対する意見聴取の手続というのがあるわけでございますけれども、従業者の意見が反映されやすくなるよう、社内で例えば異議申立て制度を可能とする点についてガイドラインにおいて明確化することを検討するということなどを含めまして、委員指摘企業と従業者との力関係も考慮した上で、様々な立場の方の意見も聞いてガイドラインを策定していきたいというふうに考えているところでございます。
  74. 加藤敏幸

    ○加藤敏幸君 次に、不正競争防止法改正案につきまして、営業機密と職業選択の、ここに関わる課題について御質問いたします。  十年前、私、不正競争防止法改正案の審議で質問を行いました。そのときには、退職に伴って課せられる営業機密の保持義務や競業避止義務が職業選択の自由との関係で問題になったというふうに覚えております。  今回も、従業員が職務を通じて体得した個人的なスキルや、そういうふうな職務ノウハウというものが営業秘密に当たるのかどうか。また、これらの点が明確に社内規則等で周知されていないケースもありますけれども、このことがトラブルを発生させるというふうなことも多いし、従業員自身が気持ちよくいい仕事をするということの環境を整える意味でも非常に大きな問題ではないのか。サイバー攻撃の影響を受けるというケースもございますので、その辺を含めて、今回特に留意されることがあれば御説明いただきたいと思います。
  75. 菅原郁郎

    政府参考人菅原郁郎君) 委員指摘のとおり、憲法上保障されております職業選択の自由、これは最大限尊重する必要があることについては言うまでもないことであると承知しております。  このため、今回の不正競争防止法改正案におきましては、営業秘密侵害罪の罰金額の引上げなどの措置を講じる一方で、処罰される侵害行為のうち転職に関連するものにつきましては、従前同様、転職前に転職先への営業秘密漏えいを約束した場合に限定することとしてございます。これについては一切変更がございません。  また、法律改正事項ではございませんけれども、営業秘密管理指針を本年一月に改定いたしまして、営業秘密の具体的範囲に関しまして、企業固有の情報であって、かつ一般的な情報と合理的に区別され管理されたもののみが営業秘密として保護されることをこの指針の中において明確化しているところでございます。この結果、委員も御指摘しました、転職に当たって重要となる労働者のスキルや記憶そのものは営業秘密に該当しないことが明確になったというふうに考えております。  さらに、こういったことが周知されるということが非常に重要でございまして、今後、全国の知財総合支援窓口や営業秘密一一〇番で無料の相談を受け付けるほか、弁護士、弁理士等の専門家企業実務者を対象とする説明会を全国各地で開催するなど普及啓発活動をしっかりと行いまして、労働者の転職に不当な支障が生じないよう努力していきたいというふうに考えてございます。
  76. 加藤敏幸

    ○加藤敏幸君 非常に明確に答弁をいただきました。そのようにまたよろしくお願いをしたいと思います。  最後に、営業秘密管理指針の運用につきまして、先ほどお話もありましたように、本年一月に全面改定されました営業秘密管理指針では、秘密管理性の要件あるいは認識可能性に重点を置いて明確にし、秘密管理措置についても具体的な形で明示されております。この内容についても、やっぱり不断の見直しや柔軟な運用が必要だというふうに考えますし、その方針についてどうお考えかということ。  それから、事後的にこのことを救済措置をとったり扱うということも大事ですけれども、要は、事前の予防を徹底して、起こらないことが大事であります。特に社員、従業員との関係でいえば、本人にとっても場合によっては不幸であるし、当該企業にとっても不幸である。つまり、不幸をつくり出すということでは駄目であって、そのためにはやはり相当管理を徹底をしていくというふうなことで、特に中小企業においてここのところは非常に重要な案件になるんじゃないかということでございますので、企業にとってより使える管理指針であるべきだと思いますけれども、ここを含めて見解をお伺いしたいと思います。
  77. 菅原郁郎

    政府参考人菅原郁郎君) 先ほども申し上げましたけれども、本年一月に営業秘密管理指針を全面的に改定いたしました。その際、産構審の小委員会におきまして、産業界、法曹界、裁判所、労働者等の代表による議論を経まして、そこの中で決めたことは、最低限の営業秘密管理水準を明確にしたところでございます。  今回の改定の趣旨は、従来の指針や判例が中小企業にとって非現実的な鉄壁の管理を求めているのではないかとの批判を受けまして、御指摘秘密管理性要件、すなわち、秘密として管理されているとは本来の制度、趣旨を踏まえればどのような状態であるべきなのかということについて整理を行ったものでございます。  具体的には、まさに今委員から御指摘のあったように、リスクの高低ですとか対策費用の大小も踏まえた効果的かつ効率的な秘密管理の必要があるということを明記した上で、社員にとって何が営業秘密で何がそうでないのかを明確にすることを企業に対して要求することとしております。  今回の改定につきましては、審議会に参加した方々若しくはその後産業界、労働界からもおおむね評価をいただいていると承知しておりますが、今後、判例の蓄積や現場における問題事例等を踏まえまして、不断の見直しを行うとともに、その活用を促進する、ちゃんと従業員の人が分かるようにするという観点から、中小企業の方にとっても使い勝手の良い営業秘密保護マニュアル、これを今後策定していきたいというふうに考えてございます。
  78. 加藤敏幸

    ○加藤敏幸君 よろしく運用の方をお願いをしたいと思います。  最後に、特に特許法改正については、なかなかこれもまた悩ましいところもございました。個人の発明権を徹底的に保護管理するということをやり過ぎますと、企業としてもう投資をするということについては消極的にならざるを得ない、逆に、個人の権利をとことん制限をしていくと、誰ももう発明なんかやっても意味ないよねという、両極端はゲイン、利益は少ないわけです。最もあんばいのいいところというのは中庸の辺りにあって、やっぱり常にバランスを取っていくという、両者の、という視点に立ってこの改正案については理解をしていく中身があるのではないかというふうに思います。  また、阿達委員の方からも指摘がありましたように、特許法というのはイノベーションを促進するためにあるのか、ある種特定の権利を擁護するためにあるのか、つまり経済社会の発展のために本当にプラスになるのか、あるいは場合によってはマイナスになるのではないかという、やっぱり常に二つの側面を持っているということの中で、私は今後もこの議論は引き続き知財立国の方針の下やっぱりやっていくべきだというふうに思いますし、最後に一つだけお願いをしたいのは、広く国民の知財に対する理解と、その水準といいましょうか、やっぱりそういうふうなことを上げていくということを広めていく、そのことが非常に重要ではないかというふうなことを申し上げまして、もし大臣に感想等ありましたら一言お願いしたいと思います。
  79. 宮沢洋一

    国務大臣宮沢洋一君) 委員おっしゃるとおりだと思っております。これからの日本の将来を考えますと、特許だけではなくて著作権等々も含めて、知的財産で生きていくような社会ということを常に念頭に入れていろんな制度をつくっていかなければいけない。  そういう中で、特に特許に比べて著作権というのはまたやたらにこれ難しい法律でありまして、私も何度読んでもよく分からないところがあるわけですが、そういうものを含めて、やはり国民に、特に中学生、高校生ぐらいからこういうものについて興味を持ってもらうような、そういう努力をしながら、日本のまさに生きる糧である知的財産といったものを守り、そして育てていくということを政府を挙げてやっていかなければいけないと考えております。
  80. 加藤敏幸

    ○加藤敏幸君 よろしくお願いいたしたいと思います。  終わります。
  81. 吉川沙織

    委員長吉川沙織君) 午後一時三十分に再開することとし、休憩いたします。    午前十一時五十一分休憩      ─────・─────    午後一時三十分開会
  82. 吉川沙織

    委員長吉川沙織君) ただいまから経済産業委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、特許法等の一部を改正する法律案及び不正競争防止法の一部を改正する法律案の両案を一括して議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  83. 佐々木さやか

    佐々木さやか君 公明党の佐々木さやかです。よろしくお願いいたします。  今日、私からは、不正競争防止法改正について質問させていただきます。  今回の不正競争防止法改正営業秘密保護強化を図るために様々な改正を行っております。その中で、例えば営業秘密の侵害行為について罰金額を引き上げるというような改正もございます。これまでは個人については一千万円だったのを二千万円に引き上げる、また、法人については三億だったのが五億を上限に引き上げるということですけれども、これに加えまして、海外重課ということで、個人については更に一千万円、三千万円を上限とする、また、法人については、海外重課の場合は五億のところを十億に引き上げるという改正が盛り込まれております。  この海外重課というのは、例えば海外で使用する目的での不正取得ですとか、また海外での不正な使用行為という場合に刑罰を重くするというものですけれども、こうした海外重課の制度を今回新しく取り入れたのはどうしてなのかというところをお聞きをしたいと思います。  また、この重課の金額ですけれども、国境を越えて行われる犯罪でありますし、諸外国の法規制とのバランスということもある程度考慮されるべきではないかなと思いますが、この金額を、例えば法人については五億円のところを海外で使用する目的があれば十億と、倍の金額になるわけですけれども、こうした金額を設定した理由というものも、例えば諸外国との比較で説明を願いたいと思います。  それから、ちょっと何点もあって申し訳ないですが、この海外重課が課される場合の海外で使用する目的、また海外での不正使用行為という場合に具体的にどういうふうなことを想定しているのか。例えば、国内外に拠点を有するような法人がその営業秘密を使用した場合に、国内での使用なのか海外での使用なのかによってかなり刑罰に差が出てくるわけですけれども、そうした海外での使用の目的というところを線引きをするのに難しいようなケースもあるんじゃないか、どうなんだろうかということをちょっと疑問に感じておりまして、そうした海外で使用するということの具体的な意味についても御説明をお願いいたします。
  84. 菅原郁郎

    政府参考人菅原郁郎君) 何点か御指摘がございました。  まず最初の、海外重課をなぜ今回導入したのかというところでございますが、企業の競争力の源泉であります製造ノウハウなどの営業秘密が国外に流出する事例が近年相次いでいるというところがまず第一点。それと、流出した場合の被害金額が最近非常に大きな件が目立ってきておりまして、このまま放置したのであれば我が国経済や雇用に対する悪影響が非常に大きくなる懸念が如実になってきたというところが第二点目。三点目としまして、同様の規定が既に米国、ドイツ、韓国において導入されているというようなところも踏まえまして、今回の改正案では海外重課の規定を取り入れたものでございます。  具体的には、我が国企業営業秘密海外で使用したり、海外で使用させるために行う窃取や開示といった行為を重課することといたしておりまして、その場合の、委員指摘の三千万円、十億円でございますが、これについては米国の量刑ガイドラインに定める海外重課類型とある程度比較しておりまして、例えば、それですと、米国の場合は、個人の場合は二十五万ドル、法人の場合は一千万ドルという規定がございまして、こういった米国の量刑ガイドラインとも比べて遜色のないレベルということで、個人については三千万、法人については十億円といたしているところでございます。  また、海外における使用の具体的な例でございますけれども、例えば、我が国企業が国内で営業秘密として管理していた設計図、これを国内の日本の事務所から盗みまして、それを海外の工場でその設計図を用いて製品を作るというようなところが典型でございまして、区別はどうかということでありますけれども、海外重課の最大の理由は国内の雇用、経済を守るということでありまして、こういった営業秘密を盗むときに、海外でそれを使用、この場合で設計図で、海外の工場で製造することを目的とするかどうかというところでありまして、国籍ですとか法人でありますとか、若しくは仮に盗んだ場所が日本企業海外子会社であろうと、国内外を問わず、目的として海外で使用するということをしているかどうかというところで、そういった目的の下に営業秘密を侵害すれば重課を該当させるということでございます。
  85. 佐々木さやか

    佐々木さやか君 その最後の海外での使用目的かどうかというところについては、典型例についてはよく分かります。ただ、どちらなのか判断が難しいような場合も、もしかしたら今後あり得るのかなと。そういった場合にはもちろん裁判所に解釈をしてもらって判断してもらうことになるわけですけれども、立法の趣旨としては、国内の経済また雇用を守るという観点が重要だと、こういう御答弁でしたので、それを解釈の今後の指針一つにしていただくのかなというふうに思います。  それから、今回、改正によって新しく設けられたものに没収がありますね、今回新しくだと思いますけれども。営業秘密の侵害によって生じた不当な利得、報酬などで得たような不当な利得も入りますけれども、こういったことを没収することができるという改正になっております。  こういう犯罪というのは、利得、経済的な利益目的にして行われますので、犯罪行為を行ったとしても利益を得られないということになりますと不当な行為の抑止効果というものは期待ができると思います。  しかしながら、この没収の対象になる不当な利得というものの算定をどのようにしていくのかというところをちょっと確認をさせていただきたいんですけれども、営業秘密を使って作った物、製品とかでしたら没収の対象として明確だと思いますが、それを売却をして得た利益とか、何というんですか、派生した利益についてどの程度の範囲まで没収の対象になるというふうに考えればいいのか、この点は余り限定されても実効性の点で問題がありますけれども、そうはいっても刑事手続ですので明確性というものも重要でございますけれども、この点についてはどのようなことを想定をしているのか、御説明をお願いします。
  86. 菅原郁郎

    政府参考人菅原郁郎君) 御指摘のとおり、没収金額の算定は、犯人の侵害し得を許さないという観点から、実行行為者、犯人及びその背後にいる法人営業秘密の窃取、使用によって得た報酬、収益等について上限を定めずに全額を没収するということになってございます。  例えば、営業秘密たる設計図を盗み、それを使用して部品を生産した場合には、委員指摘のとおり、当該部品そのものが没収の対象になるのはもう当然でございますが、仮にそれが売却されて犯人の手元に残されていないときには、当該部品を売却した価額の全体が没収可能な金額の上限として算出されます。  仮に、それをずっとためおいて、利子若しくは果実が生まれた場合には、それも上限として追加されるということでございまして、およそ侵害し得を許さないという観点から上限が定まるというものだと理解してございます。
  87. 佐々木さやか

    佐々木さやか君 この点についても、裁判所の事実認定とか解釈に実際個別的なケースについてはなるのかなと思いますが、今の御答弁ですと、営業秘密の侵害によって作られた製品、それを売却したそのものの対価、それからそれについての果実ぐらいの範囲なのかなというふうに理解をいたしました。比較的分かりやすい範囲といいますか、ということが想定をされた改正なのかなと思います。  それで、犯罪収益の没収については、譲渡をされてしまったりとか対価が消費されてしまうと、そのものは没収できませんので、追徴ということになりますけれども、それもなかなか必ずしも容易ではないかもしれません。そういったことを前提として、保全の手続が置かれております。  ちょっと私、先走って説明しちゃったかもしれませんけれども、こういった保全の手続を置いた趣旨ですとか、それから、これは刑事上の手続ですけれども、民事の損害賠償の訴訟が起きた場合に被害者側から損害賠償請求がされると、そうした請求との競合ということも考えられます。刑事手続の没収の方で先に保全を掛けたりとかして、その後、民事上の請求がされたり、民事上の保全がされたりとか、そういったことで競合することもあるのかなと思うんですけれども、どちらかというと、被害者の側としては被害者の損害の回復の方に行為者の財産を使ってほしいと思うんじゃないかなと思うんですが、こういう刑事上の没収手続若しくは保全の手続と民事上のそうした被害者からの損害賠償保全手続との競合の場合どうなるのかといいますか、被害者の側の損害賠償請求がそれによって妨げられたりとか、そういうことがないのかどうか、この点についてお聞きします。
  88. 菅原郁郎

    政府参考人菅原郁郎君) 没収規定については、委員既に御指摘があったところでございますが、本来、営業秘密が拡散することを未然に防止するという観点からすれば、その営業侵害品目をそのまま没収するというのが一番ベストなわけでございます。これがもし第三者に売却するおそれがあるような場合には、委員も言ったような保全命令みたいなものを掛けまして第三者への売却等を未然に防止するというふうな措置も今回の規定に盛り込まれてございます。  あとは民事の損害賠償との関係でございますが、そもそも今回の刑事罰としての没収は必要的没収ではございませんで、任意的没収でございます。裁判所が最後判断するときに、民事との関係で、仮に加害者若しくは加害企業の資力が乏しくて、刑事没収をしたがゆえに民事訴訟での賠償に大きな影響が生じかねない、そういうような場合には、裁判所において刑事罰としての没収の要否若しくはその金額について総合的な判断をしながら決めていくものと理解しております。
  89. 佐々木さやか

    佐々木さやか君 営業秘密の侵害罪につきましては、刑事上、実刑判決になることが少ないというふうに聞いております。平成二十七年三月のベネッセの顧客情報の漏えい事件についての実刑判決が初めてというふうに聞いております。  今回、こうした形で罰金の上限額を引き上げたりとか、抑止のために改正を行っているわけですけれども、仮にですけれども、仮に適切な捜査、訴追が、これまでも漏えいの犯罪が、営業秘密の侵害の犯罪があったにもかかわらず、適切な捜査、訴追がなされていないとしたら、今回の改正が、せっかく罰金を引き上げたりしても、抑止に実効性があるのかどうかというところも疑問が生じます。  そこで、実刑判決がこれまで少ないという点については、その理由をどのように分析をしているのか、お聞きします。
  90. 菅原郁郎

    政府参考人菅原郁郎君) 事実関係を申し上げたいと思いますが、我々が承知している限りは、営業秘密侵害罪が創設された平成十五年以降、刑事訴追された事件は十七件あると承知しておりますが、その中で実刑判決があったのは、本年三月に一審判決がなされた東芝、SKハイニックスの事案に係るもの一件だというふうに承知しております。これは懲役五年の実刑判決が判決されております。  こういうふうに、刑事裁判におきまして実刑判決が少なかったというところについては様々な要因が考えられますが、一つには、やっぱり近年、特にこの東芝事件のように被害金額が非常に大きくなってきたというところと、あとは社会的な影響が非常に大きなものがここ最近になって頻出してきているというところで、過去のいろんな、名簿の流出ですとか、そういうものと比べると社会的に与える影響度合いが近年ますます違ってきているというところと、もっと言いますと、営業秘密保護することの重要性、これがここ一、二年、非常に社会的に認識されつつあると、これが裁判の方にも影響を及ぼしているのではないかと考えてございます。  こういうふうにせっかく営業秘密の侵害について断固たる姿勢を示すという以上は、営業秘密管理の必要性について官民及び社会的に認識を高めていくということが非常に重要だと、それが裁判上にもいろんな影響を及ぼすのではないかというふうに考えておりまして、官民フォーラムの開催といった手段も通じまして、罰せられるべきは罰せられるという社会環境をしっかり構築していくと、そういった認識を広めていくというのが大事だというふうに考えております。
  91. 佐々木さやか

    佐々木さやか君 私の質問の中で取り上げました事実関係が間違っていたようですので、ちょっとこの点は訂正をさせていただきます。東芝の事件ということで御説明をいただきました。  それから、民事事件の方についても、営業秘密の侵害訴訟が提起をされても認容判決の割合が少ないというふうに聞いております。この点について、関連いたしまして、今回の法改正では立証責任の転換というような改正が盛り込まれております。改めてこの改正の趣旨というところをお聞きをしたいんですけれども、それに併せまして、これまで民事訴訟において認容判決が少ないと言われていますが、この点についてどのように分析をしているのか、これも御説明をお願いします。
  92. 菅原郁郎

    政府参考人菅原郁郎君) 自社の例えば製造ノウハウ、そういったものなどが他社に窃取、不正使用された被害企業は、その差止め等を民事訴訟でやる場合には、その被害企業が加害者による技術の使用の事実を立証する必要が原則でございます。  しかしながら、現実には、例えば製造ノウハウであれば、加害者の工場に被害者が立ち入ることも許されない中で加害者による技術の使用の有無を立証することが必要になりまして、かなり困難を極めていたと、これが営業秘密侵害における民事訴訟における認容判決が極めて低い大きな理由になっていたのではないかというふうに考えられます。  そこで、今回では、こういった侵害し得の状況に対し、当事者間で公平に立証責任を配分するという考え方から、生産方法等一部限定した上で、反証しやすいものに限った上で立証責任を転嫁し、加害企業が当該営業秘密の不正使用を立証することを新たに規定することとしたものでございまして、これによって、これまでとは違って侵害し得の状況がかなり改善されるのではないかというふうに期待しております。
  93. 佐々木さやか

    佐々木さやか君 この立証の負担の軽減の改正、今回の改正ですけれども、条文を見ますと、技術上の営業秘密に限られるということで、具体的には、条文上は、物の生産方法及び政令で定める情報に関する営業秘密ということになっております。  営業秘密自体にはいろんな種類があるんだと思いますが、今回このように技術上の営業秘密、特に物の生産方法というふうに限定をした理由ですね、これをお聞きしたいと思います。  また、政令で定める情報、今後検討がされていくんだと思いますけれども、どういったものを予定をしているのか、どういう考え方に基づいて検討していくのかという点についてお聞きします。
  94. 平井裕秀

    政府参考人(平井裕秀君) 御指摘の推定規定、第五条の二のところでございますけれども、先ほども御議論ありましたとおり、被害企業の立証負担を軽減することを目的とするものでございますが、他方で、現実には何らの不正行為を行わない事業者が、特にライバル企業になろうかと思いますけれども、外国企業も含めて、そうした企業から不正取得といったような言いがかり的な訴訟を起こされるといった可能性も否定できないことを踏まえてまいりますと、仮に被告となっても正当な反論を容易に行い得る、反証可能性を確保することが必要だという認識でございます。  こうした観点から、法案におきましては、産業構造審議会における議論も踏まえまして、この推定規定の対象を、推定規定のニーズが認められていて、なおかつ反証が比較的容易な製造のノウハウ、すなわち物の生産方法に関する営業秘密に限っているほか、今後の技術進歩に応じた追加的な指定も可能としている法文にしているところでございます。  この追加規定、追加指定というところにつきましては、先ほど申し上げました産業構造審議会議論の中では、具体的例として、血液の分析サービスといったような物の分析方法といったようなことについて追加を検討する必要があるのではないかといったような問題提起もされているところでございます。  こうした御指摘も踏まえまして、今後、産業界などといかなるそうした可能性がある事例があるのかということも踏まえまして広く検討してまいりたいと考えているところでございます。
  95. 佐々木さやか

    佐々木さやか君 今の答弁の中に次の質問のことも入っていたかと思いますので、ちょっと次の質問については省略をさせていただこうと思います。  ですから、仮に不当な訴訟を提起されてしまった場合に、営業秘密の侵害なんかしていないのに提起されてしまった、そういう被告に酷な制度にはなっていないと、こういう趣旨だったかと思います。  また、今後定める政令の内容についても、そういう仮に不当な訴訟が起こされた場合に、立証が余りに、反証が余りに困難になるようなことがないようにということを踏まえて今後検討していくと、こういう御答弁だったかと思います。  今回、この営業侵害行為に対する被害者側の請求として、除斥期間が十年から二十年に延ばされております。この点についてなんですけれども、これまでは十年たてば請求はできなくなっていた、これを二十年まで延ばすと、この趣旨についてお聞きをしたいんですけれども、余り長期間の経過後に訴訟を提起された場合、仮に不当な訴訟であった場合にはそのときに反証をしなきゃいけないわけですけれども、二十年前の資料をきちんと残しているかとか、その時期になると反証が容易ではなくなってしまうようなことも考えられると思いますので、長ければいいというものではないと思うんですが、このように十年から二十年に大幅に延長をすることにした理由ですね、この点について、例えばこういう具体的な不都合な事例があったとか、そういうところについてちょっとお聞きしたいと思います。
  96. 平井裕秀

    政府参考人(平井裕秀君) お答え申し上げます。  御指摘のとおり、本改正法案におきましては、いわゆる除斥期間が従来十年とされていたものを二十年にするといった、民法と同じ期間に延長することとしております。これは、御高承のとおり、新日鉄住金とポスコの事例に見られますように、営業秘密侵害を理由として一千億円といったような多額の賠償請求を行っているような事案に見られますように、いわゆるオープン・クローズ戦略の普及とも相まちまして、営業秘密価値が大幅に上昇しているといったような時代的環境変化、さらには、漏えいに外国企業が絡むといったような漏えい手法が複雑化そして多様化している、なおかつその発覚に及ぶまで長期間が必要であるといったような可能性が高くなってきていることが指摘されております。  そうしたことが具体的ケースとしても存在するということも踏まえまして、十年の除斥期間では現在の実態からすると被害者の保護としては必ずしも十分とは言えない事態になっているのではないかという認識に基づいて御提案を申し上げている次第でございます。
  97. 佐々木さやか

    佐々木さやか君 じゃ、次の質問ですけれども、営業秘密を不正に使用して生産された物の譲渡行為などについても今回不正競争に追加をされるという改正がございます。これは、これまでは例えば営業秘密自体の取得ですとか営業秘密の使用行為とか営業秘密の開示というものが不正競争とされていたわけですけれども、営業秘密を使用して生産された製品などの譲渡行為についても不正競争として差止めですとか損害賠償の対象になると、こういう改正がなされます。  これは、例えばAの企業営業秘密をBが取得をして、それを使って製品を作ったと。それをCに譲渡をして、また更にCがDに譲渡をするというような場合に、このCの譲渡し行為というものも、Cの主観によっては差止めですとか損害賠償の対象になるというふうに私は理解をしております。  そうなりますと、そのCの主観、悪意の場合にはわざとというようなことになりますので余り問題になりませんけれども、重過失という場合に、どこまでの認識があれば重過失なのかと、この点についてもできるだけ明らかに、予見可能性といいますか、そういったところを説明をしていただくのがいいのではないかと思っております。取引の安全ということもありますので、この重過失の認識についてはどのようなふうに考えていらっしゃるのか、お聞きします。
  98. 平井裕秀

    政府参考人(平井裕秀君) お答え申し上げます。  御指摘のとおり、今回の改正法案におきましては、営業秘密を侵害されて製造された製品、営業秘密侵害物品といったようなものにつきまして、他社の営業秘密を侵害して製造されていたことを知っていた又は重大な過失によりそれを知らない者が行う譲渡や輸出入を禁止することとしておりますが、その重大な過失というところにつきましては、取引慣行に照らしまして、悪意と同視し得るほどの著しい注意義務違反がある場合を考えているところでございます。  これは、他の法令でも同様の例が多いかと思いますけれども、本営業秘密の事例に即して申し上げますと、自社の取り扱う商品につきまして、営業秘密を侵害されたとする第三者から例えば営業秘密侵害物品であるといったような警告状を受理しているといったような場合におきましては、その警告状に、営業秘密の内容、さらには侵害の状況といったような具体的な内容までが記載されているというようなことがあるにもかかわらず、何らそうしたことについての調査も行わないといったようなことが行われた上で譲渡されるような場合には重過失に値するといったようなことが考えられるのではないかというところで考えているところでございます。
  99. 佐々木さやか

    佐々木さやか君 じゃ、最後に大臣にお聞きしたいと思います。  今、私が質問したように、今後はそういう、営業秘密自体の取得とかではなくて、それで生産された物を知らないで、若しくは、知らないでというか、重大な過失により知らないで譲渡をしてしまったような場合にも損害賠償の対象になるとか、そういう、取引において注意を更にしていただかないといけないということになるかと思います。ですので、こういった我が国企業の、他社の営業秘密の侵害行為を行わないというところについてもコンプライアンスの向上というものが必要かと思います。  こうした営業秘密の侵害行為の防止若しくは営業秘密の漏えい防止というところについて、国内企業の意識向上など、政府としてはどのように取り組んでいかれるのか、お聞きします。
  100. 宮沢洋一

    国務大臣宮沢洋一君) 今回、重大な過失で営業秘密が不正使用されたものを購買をしたり、また他社に商社的に売るといったような行為が差止め訴訟等々の対象になってくるわけであります。  したがって、具体的に言えば、例えば日本の鉄鋼メーカーから韓国の鉄鋼メーカーが不正取得した営業秘密で造った商品、鉄製品をそれを購買して販売する商社などが、その情報の不正取得があるということについて、知らなかったことについて重大な過失がある場合は差止め訴訟等々の対象になるということでありますから、したがって、今までと違ったところ、例えば商社のようなところが、例えばどうもあのメーカーは不正取得した営業秘密を用いて生産しているらしいといううわさ、うわさだけではもちろん重大な過失になりませんけれども、やはりそういうものがあるときには、相当注意深く取引の相手方について調査をした上で取引をするかどうか決めていくということが恐らく求められることになるんだろうというふうに思っております。  そして、いずれにしても、本改正案によりまして、推定規定導入などによりまして、他社の営業秘密を不正に使用してしまった場合の責任追及は受けやすくなることは確かでありまして、他社からの転職者の受入れや共同研究といった他社の営業秘密を意図せず侵害してしまうおそれが高い局面では、他社の営業秘密を侵害してしまわないよう我が国企業におけるコンプライアンスを高めていく必要がございまして、経産省としても、営業秘密官民フォーラム等々を通じまして経済界に注意喚起をしていきたいと考えております。
  101. 佐々木さやか

    佐々木さやか君 終わります。ありがとうございました。
  102. 東徹

    ○東徹君 維新の党の東徹でございます。  今日はもう時間も余りなくなってまいりましたので、この法案に対して、ちょっと今日は順番を入れ替えさせていただいて質問させていただきたいと思います。  まず最初に、ASEAN各国の特許制度の整備についてということで質問させていただきたいと思います。  東南アジア諸国連合、ASEANでありますけれども、各国の特許制度の整備でありますが、現状、ASEAN各国の特許制度は十分に整備されていないという状況でありまして、特許の審査能力不足ということで、特許取得に要する平均的な期間でありますけれども、これがタイでは十年と十一か月掛かるということであります。ベトナムは七年と六か月。我が国は一年と七か月ということから比べますと、非常に長いという状況にあります。我が国企業が模倣品天国と言われるASEANの各国の市場で適正に利益を上げていくためには、各国の特許制度を整備していかなくてはならないというふうに考えます。  今回の特許法改正によりまして、我が国特許法の条約加入に向けた規定導入するわけでありますけれども、特許法条約への加入によって、条約未加入のASEAN各国に向けてどのように働きかけていくのか、まずお伺いしたいと思います。
  103. 山際大志郎

    ○副大臣(山際大志郎君) 委員指摘のように、ASEAN各国は我が国企業の有望な事業展開先である一方、審査の遅れなどの知財分野における課題も抱えておりまして、投資環境整備の観点から、これらの課題改善は重要だと認識してございます。  そのため、経済産業省、特許庁は、本年に入りまして、ASEAN十か国全てとの二国間協力の覚書を締結するに至っておりまして、その枠組みの下、我が国の審査官派遣やASEAN各国に対する実務研修の開催等を通じまして、ASEAN各国の知財人材の育成や知財制度のインフラの整備等の支援を行っているところでございます。  また、インドネシア、ベトナム、ミャンマーに対しまして、独立行政法人国際協力機構、JICAの長期専門家として我が国特許庁職員を派遣いたしまして、これらの国々の知的財産制度の改善や整備の支援を行ってきております。加えて、シンガポールに対しましては、同国の知的財産庁の上席特許審査官として我が国特許審査官を長期派遣いたしまして、審査のアドバイスを含む業務を行ってございます。  経済産業省といたしましては、これらの取組を通じましてASEAN各国の知財制度整備を支援していく所存でございます。
  104. 東徹

    ○東徹君 人材をASEANの諸国に派遣していって、そして特許に関してのそういった助言というか指導をしていって、そして期間を短くしていくということでありますけれども、非常にこれ大事な問題であるというふうに認識しておりまして、一刻も早くその実現をしてもらって、余りにも長いこの特許取得する期間を是非短くしていっていただきたいというふうに思います。  続きまして、特許申請の在り方について質問をさせていただきたいと思います。  現在の特許制度では、東京にある特許庁特許出願することのほか、郵送による出願もありますし、また電子出願も認められているということであります。そしてまた、それに加えて、全国に知財総合支援窓口というのも設置をされておって、中小企業からの知財に関する相談に応じる体制もつくられてはおります。  特許制度の利便性を向上させるために様々な取組がされているのは承知しておるところでありますけれども、例えば、関西では出願件数約二割に上っておりまして、健康産業などの集積による出願件数の更なる増加というのも見込まれてきておるわけであります。  我が国産業の更なる発展と大規模災害に対するバックアップ拠点、これはもう東京もいつ何どき自然災害が起こるか分からないという状況にあるわけでありまして、東京以外の新たな審査拠点、例えば関西特許庁とか、そういったものをつくって、東の特許庁、西の特許庁と、こういったデュアル体制をつくっていくべきだというふうに考えますが、その点についていかがでしょうか。
  105. 宮沢洋一

    国務大臣宮沢洋一君) まずは少し渋いことをお答えしなければいけないわけでありますけれども、やはり特許庁と同じような機能を持つ地方支部を関西に設けるということは、今の行政改革等々の観点からいうと困難だと思っております。  ただ一方で、地方のイノベーションを促進していくことは地方創生の観点からも大変大事でありまして、また、関西において特許出願が多いということも承知しておりまして、現在でも地方の経済産業局の特許室というところに全体で約六十名程度の職員を配置しておりますけれども、関西、近畿経済産業局においては十名といったかなり多めの人材を派遣しております。  一方で、先日、三月でありますか、衆議院の予算委員会の分科会でも同じような御質問をいただきまして、私の方からは、大企業であればネット出願等々ということがありますのでそれほどの問題はないわけでありますけれども、中小企業ということになりますとなかなかそういうわけにもいかない、やはりその運用について少し知恵は出していかなければいけないのかなということを実は三月の半ばの時点で申し上げたところでありまして、その後、経産省、特許庁の中で検討を加えてきておりますが、巡回特許庁inKANSAIということを今年から始めることにしておりまして、まず巡回特許庁シンポジウムを七月の六日、マイドームおおさかというところで開かせていただきまして、講演、セミナーに加えて臨時知財総合支援窓口も開催いたします。また、巡回審査も日にちを明らかにいたしまして、七月の二日から七月の十日、まさにこのシンポジウムに合わせた形で巡回審査を行わせていただきます。  また、知的財産制度説明会というものも、七月の六日、大阪会館、七月七日、京都リサーチパークということで開催させていただきますほか、特許情報プラットフォーム初心者向け講習会というものも七月十日に開かせていただいて、これ全部今年初めてでありますけれども、そういう意味で少し力を入れていきたいというふうに考えております。  なお、バックアップの件の御質問がございましたけれども、災害時のバックアップ体制につきましては東京以外に置くことが効果的であると認識しておりまして、昨年、二〇一四年の十月に、場所はこれは西日本としか申し上げられませんけれども、受付バックアップセンターを設置をしたところでございます。  以上でございます。
  106. 東徹

    ○東徹君 巡回特許庁はちょっとイメージが違うなと、こういうふうに思っております。  国を挙げてこれは東京一極集中を是正しなくてはいけないという体制でもありますし、そして、東京というのは世界の本当に主要国の中で非常に危険な都市とも言われておる中でありますから、是非、そういう経済の中枢を担うような部門というのはやっぱりデュアル体制でやっていかなくてはならないのではないのかなというふうに思います。  西日本にということでありますから、東と西にそういったものを整備していくということが大事だというふうに思いますので、是非よろしくお願いしたいと思います。  続きまして、海外企業による営業秘密侵害への対処についてお伺いしたいと思います。  海外企業における営業秘密侵害ですけれども、我が国の国益を考えた場合、海外企業による営業秘密の侵害が直接国益の流出につながっていくわけであります。これを抑止していくことが非常に大事だというふうに考えます。  アメリカ、米国の事例を見てみますと、米国経済スパイ法に基づく起訴事案のうち、二〇〇八年以降でありますが、約四割が中国関連ということになっております。米国においても特に中国企業が関係する事案が非常に多くなってきているという状況です。  過去十年間に我が国で刑事事件となった外国関連の事案、十年間でですよ、十年間で外国関連の事案はたった四件にとどまっておるということでありまして、外国企業、特に中国企業による営業秘密侵害事犯をより適切に取り締まっていく必要があるというふうに考えますが、この点についてはどのように対処していくのか、お伺いをしたいと思います。
  107. 島根悟

    政府参考人(島根悟君) お答え申し上げます。  営業秘密侵害事犯では、一般的に被害に気付いた企業からの届出が捜査の端緒になることが通例でありますが、これまで企業からの届出又は相談は必ずしも多くはなく、その中でも外国関連事犯は更に少数であったところであります。  一方で、今回の不正競争防止法改正のための議論や官民フォーラムの場などを通じまして、企業側の営業秘密保護に関する意識が高まっているものと認識いたしております。  警察としても、今まで以上に営業秘密漏えい防止や侵害事犯発見時の早期の被害親告を企業に働きかけたり、また企業からの相談に的確に対応するなど、企業との連携を図りつつ、潜在化している事犯についても適切に法を適用してまいりたいと考えております。  特に、外国企業や外国人が関与する営業秘密侵害事犯に対しましては、外国企業や外国人が関係する他の事件捜査や様々な分野からの幅広い情報収集活動によりまして、この種事件の端緒情報の入手に努めてまいりたいと考えております。
  108. 東徹

    ○東徹君 いつも頑張っていきますよという答弁だけのような気がしてならないんですが。  六月十八日のこの委員会でも御質問させていただいたんですけれども、我が国ではそもそも営業秘密侵害事犯の件数というものが、国内企業同士のものも含めて、平成二十五年では五件、平成二十六年では十一件にとどまっているというのが現状であります。  先ほど答弁にもありましたけれども、企業からそういった届出というか申出がないということなんですけれども、企業自身が営業秘密の漏えいに気付くこと自体が難しいというふうなことも言われております。特に外国企業の関連事案について、どのような外国企業我が国企業のどういう営業秘密を狙っているかなどの情報というものを恐らくお持ちだと思いますので、そういったものを警察庁の方から企業提供していってはどうかというふうに思いますが、この点についてはいかがでしょうか。
  109. 島根悟

    政府参考人(島根悟君) 外国企業や外国人が関係する事案も含め、営業秘密侵害事犯を防止し、適切に取り締まるためには、企業に対する注意喚起等の啓発が重要であると考えております。そのためにも、警察としては、これまでも技術情報等流出防止に向けた官民戦略会議等の各種会議の機会を捉えまして、海外への流出事例について情報提供するなど営業秘密侵害に関する注意喚起を行っているところでありまして、今後、この種の取組をより一層強化してまいりたいと考えております。
  110. 東徹

    ○東徹君 何かちょっと答えていただいているのかどうかあれなんですが、もう一度お伺いしたいと思います。  恐らく警察庁は、外国企業我が国企業のどういう営業秘密を狙っているかということを情報として幾らかお持ちだと思うんですよ。そういった情報をやっぱりしっかりと、具体的な情報ですよ、それを警察庁から個々の企業是非提供していってはどうかというふうに思いますが、もう一度ちょっとお答えいただいてよろしいでしょうか。
  111. 島根悟

    政府参考人(島根悟君) 御指摘のような情報につきまして、捜査に支障の生じない範囲におきましては、私どもの把握している情報というものを企業といろいろネットワークをつくりまして提供していくということも今後進めてまいりたいと考えております。
  112. 東徹

    ○東徹君 これは非常に深刻な問題だというふうに思っております。是非検討していっていただいて、こういった企業秘密の侵害がないようにお願いをしたいと思います。  続きまして、特許特別会計についてお伺いをしたいと思います。  特許特別会計でありますけれども、従前は一般会計で対応していたものを、受益と負担の関係を明確にした上で、事務の増大に対応していくため、昭和五十九年から特別会計として創設されたものというふうに聞いております。  毎年、収入、支出共に一千億円程度というふうになっておりますけれども、平成二十五年度から始まっている総額約六百八十億円のシステム改修、これは特許特別会計の余剰金二千百億円から費用を捻出するということであります。  今回の法案では特許料の引下げというものが盛り込まれておりますけれども、そもそも特許料が累進的なものである上、特許の申請件数、これが増えていくということになれば、今後も収入が支出を上回っていく状況は続くものというふうに考えられます。  利用者の負担軽減を図ることも大事でありますが、それでも生じる余剰金の一部を、これは経済産業省のというか、我が国産業発展に用いていくべきだというふうに考えておりまして、こういった余剰金の一部、こういったものを一般会計に繰入れして是非産業発展につなげていくべきというふうに考えますが、いかがでしょうか。
  113. 山際大志郎

    ○副大臣(山際大志郎君) これはもう委員御案内のとおりでございますけれども、この特許特別会計、これは、受益と負担の関係を明確にしつつ、利用者から納付していただいた料金を原資といたしまして収支相償の原則の下運営されているものでございまして、第一義的には、審査の高度化、迅速化や特許行政の利用者へのサービス向上のために活用されるべきものと考えてございます。  また、今般の料金引下げは、今後の中長期の収支の見通しにおいて料金引下げの余力が生じることが見込まれることから、利用者の負担軽減を図るべく措置するものでございます。  これにより特許特別会計の収支は中長期的に均衡が図られていくものと考えてございますが、今後の収支の状況については引き続き不断に確認しつつ、適切に運営してまいります。
  114. 東徹

    ○東徹君 余剰金が出れば、そういったものはやっぱり活用していくべきだというふうに思っておりまして、そこは柔軟に考えていってもいいんじゃないのかなというふうに思いますので、是非御検討をお願いしたいと思います。  それから、もう時間がなくなってきましたので、最後になるかどうかあれですけれども、犯罪収益の没収について先般もお伺いしたんですが、先日の六月十八日の経済産業委員会において、没収の対象となる犯罪収益が使われてなくなってしまった場合、もう何か遊びに使ってしまってなくなったといった場合について質問したところ、このような場合は没収できないということだけの答弁でありました。  没収されないとなると、言わば使い得のようになるというふうに思います。この法案営業秘密侵害に対する抑止力にならないというふうに思いますので、この点についてはどのようにお考えなのか、お伺いをしたいと思います。
  115. 平井裕秀

    政府参考人(平井裕秀君) お答え申し上げます。  先日御答弁申し上げました、今回の改正法案におきましては没収の規定を入れているわけでございますが、そこのところで、没収対象となる犯罪収益が使用されてなくなってしまった場合、もうこれは没収することができないというところまで御答弁申し上げたわけでございますけれども、さらに、まだ続きは、その没収した財産がなくなった場合であっても、犯罪収益相当額を犯人がそれ以外で持っているような場合には追徴するということもできるわけでございます。  例えば営業秘密の不正持ち出しを行った実行行為者がその背後にいる者から報酬を受けた場合、その没収対象である犯罪収益に該当するもの、この全額を使い果たしてしまった場合には、これは没収するものがなくなってしまうので没収することができないわけでありますけれども、そのような場合であっても、当該実行行為者が他の財産、これを所有している場合には報酬相当額を追徴することができ得るわけでございます。  これをもって抑止力になるかならないかというところの議論ではなく、そもそもベースとしては、刑事罰として懲役刑、最高十年というような抑止力ということがあることに加えまして、今回のこうしたそれ以外の罰金刑の引上げでございますとか、没収、さらには追徴といったようなことも全て相まって、営業秘密の侵害し得といったような状況は打破されるものと考えているところでございます。
  116. 東徹

    ○東徹君 他の財産があれば追徴していくということでありますね。是非こういった抑止力を更に高めていくためにもお願いをしたいと思います。  時間になりましたので、これで終わらせていただきます。ありがとうございました。
  117. 倉林明子

    ○倉林明子君 日本共産党の倉林明子です。  今日は、私、不正競争防止法について質問させていただきます。  これまでの親告罪を非親告罪にするということになるわけですから、告訴がなくても捜査機関の捜査が可能となるわけです。そこで、告訴していない被害者等の要請及び協力が必要となるわけですけれども、営業秘密の保有者、これが協力したくないという場合も考えられると思うんですね。営業秘密の保有者が中小企業や下請業者という場合、大企業など圧倒的に力関係に差がある取引先、ここが不正使用した場合、処罰を求めないということ、今後のことも考えたら、そういうこと十分考えられると思うわけですけれども、こうした場合、捜査の強制力、一体どこまで及ぶようなことになるのか、いかがでしょうか。
  118. 島根悟

    政府参考人(島根悟君) お答え申し上げます。  一般論として申し上げれば、法令上、警察は、犯罪があると思料するときは犯人及び証拠を捜査するものとされているところであります。  もっとも、実際に捜査を進めるに当たりましては、営業秘密侵害事犯の捜査であれば、例えば、その秘密営業秘密保有者において実際にどのように管理されていたのかを立証する必要があるため、被害企業から御協力をいただけないという場合には捜査を進めることは事実上困難であると考えられます。  いずれにいたしましても、個別の事案に応じてということになりますが、被害企業の御協力を求めつつ、適正に捜査を進めてまいりたいと考えております。
  119. 倉林明子

    ○倉林明子君 現状では、大企業、そして中小企業、下請ということで力関係に変化がないわけであります。捜査に協力するということになると、取引先との関係、今後への心配等が出てくるということで、一般論としてやっぱり捜査が入ってくる可能性というのは拡大する、不利益を被るという可能性も私否定できないものだというふうに思うんです。  そこで、衆議院の議論がありまして、韓国において、大企業から情報を盗んだ社員を当局が監視し続け検挙しているという事例が紹介ありましたのに対し、警察庁は、今まで以上に企業との連携に努め、着実に検挙していくというふうに答弁をされておりました。  今回の法改正で、労働者に対する捜査がこれまでと具体的にどう変わるんでしょうか。
  120. 島根悟

    政府参考人(島根悟君) 警察といたしましては、営業秘密保護強化を図るとの今般の法改正の趣旨を踏まえまして、営業秘密侵害事犯に的確に対処していく必要があると考えているところであります。そのため、今まで以上に営業秘密漏えい防止や侵害事犯発見時の早期の被害親告を企業に働きかけたり、また企業からの相談には真摯に対応するなど、事件として取り上げるべき事案については的確に検挙してまいる所存であります。  他方、今回の法改正におきましては、営業秘密侵害事犯の構成要件であります図利加害目的部分改正は行われていないことなどからいたしますと、可罰的な行為か否かの事実判断等、個別の捜査について従前と大きく変わるものではないと考えているところであります。
  121. 倉林明子

    ○倉林明子君 従前の捜査と変わらないということなんだけれども、罰則強化をして抑止力を高めていくという中で、捜査の対象としては変化がないとおっしゃるんだけれども、通常業務の中で営業秘密に関わる労働者に対しては、やっぱり知らぬ間に捜査の対象になり得るという危険が今後も含めて出てくるんじゃないかということは私は指摘しておかなくちゃいけないなというふうに思うんです。  さらに、企業情報窃取とこの未遂行為が処罰対象とされているわけです。私、この場合、問われるのは実行の着手時期になろうかと思います。それは明確に規定されているのかどうか、確認させてください。
  122. 菅原郁郎

    政府参考人菅原郁郎君) 未遂罪が成立するか否かは、御指摘のとおり、実行の着手があったか否かが基準になります。一般的には、実行の着手があったかどうかというのは、その保護利益の侵害に至る現実的な危険性のある行為があったか否かが基準となります。現実的な危険性の有無というのは、行使者の計画があったかどうか、既遂罪となる行為と直前の未遂と思われる行為との不可分性、時間的、場所的な近接性、結果発生に至るまでに障害があるのかどうかといった観点から、個別具体的事案に応じて裁判所で判断されるものと思います。  例えばでございますけれども、使用の未遂について例として申し上げれば、営業秘密たる製品設計図のとおりに製品を生産するべく生産ラインを組み立てた上で実際に機械を作動させたような場合、これは明らかに未遂、この時点で実行の着手があったとみなされるというふうに思われます。  また、近年とみにその危険性が増しておりますサイバー攻撃の例でありますれば、事前に通常のメールのやり取りを何回か行った上でウイルスメールを送るなど、受信者が当該ウイルスメールを開封してシステムが乗っ取られる危険性が上昇しているというふうに評価できるような場合、これは未遂罪が成立する可能性があるというケースで、こういった場合には実行の着手が行われたというふうに認定される可能性が高いと思われます。
  123. 倉林明子

    ○倉林明子君 使用や開示に至っていない、取得だけの場合でも処罰していいのかという問題があると思うんですね。その上、未遂行為まで処罰範囲が及ぶと。今聞いていても、可能性があると、これは言えるけれども、これは可能性が高いと。じゃ、違う場合はどうなんだというと、すごく分かりにくい話になってくると思うんです。判例重ねないとそこら辺はっきりしていかないという説明だったと思うんですね。この未遂行為まで処罰範囲が及ぶこととなりますと、実行の着手をどう解釈するかということによって恣意的にその実行の着手ということが拡大していく可能性があるんじゃないかというふうに思うんです。  次に確認したいのは、営業秘密侵害訴訟において原告の立証負担を軽減するということで、営業秘密の使用を立証できなくとも使用している推定ができればよいということにしたわけです。この民事の推定規定について聞きたいと思うんです。  退職労働者が前職で営業秘密によって生産できる商品開発に携わっていた場合、また商品開発が別の方法で生産できる場合、営業秘密が使用されたと推定される可能性、これ一体どうなるのか。いかがでしょうか。
  124. 平井裕秀

    政府参考人(平井裕秀君) 御指摘をいただきました研究開発に関する営業秘密を退職後に転職先企業で使用するケースということでございますが、まず、当該転職先企業が不正使用の事実について知っていたか又は重大な過失により知らない場合という場合には推定規定の対象となるわけでございます。  その逆はもちろんのことながら推定規定の対象にならないわけでございますが、それに加えまして、委員指摘の、ほかのやり方でそうした製品が作れたというようなことについては、まさに推定をされた後で被告側がそれを事実立証できることであれば、しっかりとその推定規定をもってしてもなお反証できるということになろうかと思います。
  125. 倉林明子

    ○倉林明子君 反証はなかなか難しいということじゃないかというふうに思うんですけれども。  これ、産構審の営業秘密保護に関する小委員会の中でも議論になっていたかと思います。そこで、推定規定導入に際して東京地裁判事の鈴木委員が発言されているかと思います。要旨について簡潔に御説明をいただきたいと思います。
  126. 平井裕秀

    政府参考人(平井裕秀君) 御質問いただいた鈴木委員の御発言は、第三回、取りまとめの前の回で推定規定についての議論があったときの御発言かと思います。  そのときの御発言として御質問をいただいていたところは、営業秘密の悪意重過失での取得といった場合の悪意重過失の対象は明確なのかという御質問、それから、営業秘密を使用していないことの立証は訴訟上極めて難しく、悪魔の証明とも言われているが、どこまで反証を求めることを想定しているのか、現実に被告が独自に開発した技術で被告製品の生産に行き着くことをどこまで立証するということを想定されているのかどうかという御質問をいただいたところでございまして、こうした御質問を受けた上での今回の不正競争防止法改正法案では、取りまとめにおきまして、産業構造審議会のこの第三回での御意見さらには御議論を踏まえまして、推定規定の対象になる営業秘密取得については窃取行為による取得といった一定の類型に限定するといたしますとともに、対象となる技術については、仮に被告となったとしても容易に反証が可能な、物の生産方法などに関する営業秘密に限定するといったこと、先ほど佐々木委員との御質問の中でお答えしたとおりでございます。
  127. 倉林明子

    ○倉林明子君 限定したとはいえ、悪魔の証明だとか反証はほとんど不可能だというような御指摘もあったわけですね。  正当な事業活動を行う企業が濫用の被害者になる可能性も私あるというふうに思うんです。この点では、識者や日弁連からも慎重に検討すべきだという意見があったと思うんです。私、踏み込み過ぎじゃないかと言いたいと思うんですね。議論もあったこの推定規定を今回の改正で行った理由というのは、大臣、何でだったんでしょうか。
  128. 宮沢洋一

    国務大臣宮沢洋一君) 現行法におきましては、まさに証拠の偏在の問題、すなわち民事訴訟法上は被害企業が加害者による技術の使用の事実を立証する必要があるということとなっておりまして、その証拠が実際には加害者にのみ存在するため、大変困難な状況が実はございます。  東芝の件が和解した件、また、新日鉄が今訴訟しているという件もございますけれども、正直、有識者の方たちからは、やはり新日鉄であり東芝というかなりしっかりした大きな会社だから何とか持ちこたえている訴訟であるという指摘もあるところでございまして、今回、今、平井さんの方から話をしましたけれども、産構審ではいろいろな意見をいただきました。今申し上げましたような、侵害者に対する責任追及が困難な現状が解決されるか、言いがかり的な訴訟を受けた場合でも被告は容易に反証することができるのか、正当な転職を阻害することはないのか等々といった議論を経た上で、そして、今政府参考人からお話ししたような限定を加えるということで審議会において報告書が取りまとめられたと、こういう経緯を経て、今回、改正法案として御審議をお願いしているところでございます。
  129. 倉林明子

    ○倉林明子君 強く経済界からも要請があったという経過は踏まえた対応にもなっているんじゃないかと思うんです。  立証負担の軽減ということを図ろうと思えば、意見も出されておったように、文書提出命令の適切な運用、こういう点でも十分図れるものではなかったのかというふうにここは指摘をしておきたいと思います。  そもそも営業秘密企業財産なわけですから、本来企業が自らの努力で守る、これが基本だというふうに思うんです。  経産省がアンケートを取っております。これ、見させていただきますと、大企業において漏えい防止措置をとっていない企業、この割合というのは一体どういうことになっていたでしょうか。
  130. 平井裕秀

    政府参考人(平井裕秀君) 委員指摘の調査、平成二十四年度の人材を通じた技術流出に関する調査研究という弊省が行いました調査ということだと思いますが、その調査の中におきましては、営業秘密とすべき情報をそれ以外の情報から区分していない大企業、三一%という答えが出てございます。
  131. 倉林明子

    ○倉林明子君 守るべき者がちゃんと守るべき措置をとっていないというところがまず私は大きい問題だと思うんですね。漏えい防止のため本来やらなければならない努力を、まず私は企業、とりわけ大企業やるべきだというふうに思います。  それどころか、これ大企業が守るべきものを守る努力をしていないというだけにとどまらず、大規模リストラ等で労働者を流出させる、自ら営業秘密漏えいのリスクを高めているという問題があります。大臣も衆議院の答弁で、営業秘密漏えい事件の多くは中途退職者によるものということで答弁でも答えていらっしゃいます。大企業が取るべき漏えい防止対策、大いにあると思いますが、大臣、いかがでしょう。
  132. 宮沢洋一

    国務大臣宮沢洋一君) この点は倉林委員と全く意見を同じにしておりまして、まさに企業自身の対策というのは大変大事であります。  そして、今おっしゃいましたように、これは二十四年度の経産省の委託調査でありますけれども、情報漏えい者の上位の比率では、断然一番で中途退職者によるものが五〇%を超えているという数字がございます。  したがって、中途退職者、中途退職に至る理由というのは、純粋に金銭を目的とするものとかもございますし、また企業と社員の信頼関係が失われたことといったものもありますし、またリストラといったようなものもございますけれども、やはり従業員に対する適切な処遇ということはそういう中でもやっぱり一つのポイントだと思っております。  そんなことで、今年の一月、経産省におきましても、産業界の経営層とともに技術情報等の流出防止に向けた官民戦略会議を開催いたしまして、経営者自身のリーダーシップの下、全社的な対策を推進することが大事であるということに加えまして、従業員を能力主義、成果主義に基づき適正に評価するということについても合意をしたところであります。  そして、今後でございますけれども、官民フォーラムというものを行政、産業界の実務者レベルで開催する予定でございますけれども、その中で、例えば退職者からの営業秘密漏えいについては、退職後の守秘義務契約を締結するといった具体的な対策についても推進してまいりたいと考えております。
  133. 倉林明子

    ○倉林明子君 年金情報流出事件ということで本当に大問題になったわけですけれども、サイバー攻撃というのがこれだけ後を絶たないという状況で、ずさんな情報管理というのが政府の中枢部分でも出たという非常に重大事件だったなというふうに思っているわけです。  機構ではどういうことになっていたかというと、基幹業務まで非正規雇用化、外部委託化、外部の再委託化ということまで進んでいたということが議論の中で明らかになりました。スキルのある人だけにかかわらず、営業秘密に関わる職員も含めてやっぱり労働者全体が処遇どうやって引き上げていくかと、そういうことを視野に入れないと、やっぱり漏えい防止ということに対して、人ということでも有効に働かないというふうに思っております。その点は重ねて指摘をいたしまして、質問を終わります。
  134. 松田公太

    ○松田公太君 日本を元気にする会・無所属会の松田公太です。  今回の特許法改正のメーンは職務発明ですけれども、従業者が行う発明が全て職務発明となるわけではありません。特許法三十五条一項の要件を満たしたもののみが職務発明ということになるわけでして、それ以外は自由発明となるわけですね。今回の法案の成立後、企業職務発明規程を定めたとしても自由発明であれば特許を受ける権利は当然に従業員に帰属するということになるわけでして、職務発明の要件といいますか、定義がこれまで以上に重要になってくるのかなというふうに思っております。  そこで、まず職務発明の要件について質問させていただきたいと思います。  そもそも発明者とは誰なんでしょうかということなんですけれども、近頃の職務発明訴訟では、原告従業者が発明者かどうかということ自体が争われるというケースが多くて、これに当たらないとして対価の請求が棄却されるという例も多々出てきているようです。発明者特許法を貫くもう本当に重要な概念であるわけですから、法律に本当はそこの部分の明確な定義があるべきかなと思うんですが、それがないというのが現状なんですね。  そこで、発明者の定義、発明者かどうかをどういう基準で判断するのか、政府としてどのようにお考えかということをお聞かせいただければと思います。
  135. 宮沢洋一

    国務大臣宮沢洋一君) 職務発明というのは、やはり恐らく近代になってからの、しかもかなり最近の概念だろうと思います。  松田委員もそうでしょうけれども、我々歴史を学ぶと、産業革命以降、発明者誰々というのが必ず出てきて、それを覚えていないと試験で点が取れないと。こういう個人の名前で恐らくかつて行われてきたものがだんだんだんだん組織の中で行われてきている、そういう流れの中で職務発明制度というものが導入されてきたんだろうというふうに思っております。  そして、今定義のお話でありますけれども、まず、発明というのは特許法の二条第一項で実は定義をされておりまして、「この法律で「発明」とは、自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のものをいう。」という、これは昭和三十四年の当初から入っている規定で、かなり哲学的な表現になっております。  そして、これを受けて、これは平成二十年に知的財産高等裁判所の判決がございまして、「発明者とは、自然法則を利用した高度な技術的思想の創作に関与した者、すなわち、当該技術的思想を当業者が実施できる程度にまで具体的・客観的なものとして構成する創作活動に関与した者を指すというべきである。」と、こういう判決が出ております。  したがって、まだかなり抽象的ではありますけど、一応法律及び判例において定義はされているということで、まさに発明者とは自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度なものを生み出した者であると、こういうのが法律上の定義になります。
  136. 松田公太

    ○松田公太君 それに対して、例えば個人的に物すごくすばらしい助言をし続けたような方がおられて、その方が、発明者と言われる人、一緒に助言をずっとし続けた、アドバイスをし続けた、それによって実際その発明が行われた、そういう状況の場合はどうなるんですかね。
  137. 伊藤仁

    政府参考人伊藤仁君) 今御質問ですと、助言をされた方ということでございますので、実際のその発明、技術的創作というものを現実に行った人かどうか、その助言自体が、その方が行われたことであればその人が発明者になり得るとは思いますけれども、今の御質問の文脈でいいますと、サポートしたということであるとすると、実際にある種の進歩性というものを発明の場合にはありますので、その発明を実際に行った人かどうかというところがそこの発明者であるかどうかの分界点かと思っております。
  138. 松田公太

    ○松田公太君 ちょっともう難しくて、分かったような分からないような答弁なんですけれども。  次に行かせていただきますが、職務発明になるためには、三つの要件というふうに言われておりますが、一つ目が、従業者等が使用者等の下で行った発明であること、二つ目、使用者の業務範囲に属する発明であること、三つ目が、発明をするに至った行為が従業者等の現在又は過去の職務に属する発明であることということなんですけれども、三十五条一項にある従業者、法人の役員、国家公務員又は地方公務員、すなわち従業者等について、具体的な定義、是非その判断基準も教えていただければと思います。これは特許庁で結構です。
  139. 伊藤仁

    政府参考人伊藤仁君) まず、従業者等の具体的判断基準ということでございますけれども、一般に職務発明における従業者というものは、その発明の発生過程の実態に従って個別に判断されるものになります。法律では、従業者、法人の役員、国家公務員、地方公務員というものを掲げておりますけれども、その組織において実際にこれを行った者、この人をこの法律では発明者たる従業者というふうに考えているところでございます。
  140. 松田公太

    ○松田公太君 先ほども類似の質問が出ておりましたけれども、著作権法上の職務著作に関しては、法人等の業務に従事する者か否かの判断に関する最高裁の判例が既にあるわけですね。この判断基準との共通点、相違点についてもお伺いしたいと思うんですけれども、例えば、ソフトやプログラムについては、著作物として発明として保護されるという可能性もありますし、職務著作に当たるが職務発明に当たらないというように、ずれが生じてしまう場合もあるんじゃないかなというふうに思うんですが、それについてはいかがでしょうか。
  141. 伊藤仁

    政府参考人伊藤仁君) 御指摘のとおり、著作権法上の著作物につきましては職務著作という考え方がございまして、その中で著作者というものの定義がございます。この場合に、法人が著作者になるケースが想定されるわけでございますけれども、著作権で守られる知的財産権と、それから特許で守られる知的財産権、おのずと違いがありますので、その中で、今回の特許法の体系の中で職務として発明を行った者について発明者として定義しているということでございますから、生まれた権利が、著作権として保護する、あるいは特許法上の特許として保護する、二重に保護することは可能でございますけれども、そういう形でそれぞれの法律に基づいて定義は判断されるものだというふうに考えております。
  142. 松田公太

    ○松田公太君 ちょっと基本的な質問かもしれないんですけれども、例えば職務著作を従業者が持って職務発明は使用者に帰属するというような場合、そういうケースが想定されると思うんですが、例えば個人が、いや著作権なんで、自分の、使わせませんよという話をして、それに対して企業の方が、いやこれは使うんだ、自分たちだって職務発明として持っているんだということになった場合は、どちらが優先されるんですかね。
  143. 伊藤仁

    政府参考人伊藤仁君) 著作物としての権利特許としての権利かということで、どういう形でそれを守ろうとしているかというケースによって違いがあると思います。  ただ、同じ法人の中で同じものについて著作権とそれから特許と両方を権利としても持っている場合においては、その法人の中でそういった混乱がないような調整を一義的にはするべきだと思っております。
  144. 松田公太

    ○松田公太君 会社の中でその調整ができればなんでしょうが、今私がお聞きしたかったのは、調整ができていない場合ですよね、明らかに。個人の方で著作権を持っていて、会社の方で職務発明権を持っているという状況なんですが、その場合は果たしてどちらがある意味上に来るのかというのが知りたかったところなんですが、今余りそこまでは考えられていないということでよろしいでしょうか。
  145. 伊藤仁

    政府参考人伊藤仁君) ちょっとその点については事前にいただいていなかったかと思いますので、詳細な議論ありませんけれども、基本的にはどちらが上というものではなくて、それぞれの法律がどこで適用されているかを個別具体的に見た上で判断されるべきものだというふうに思っております。
  146. 松田公太

    ○松田公太君 今後、そういうことも出てくる可能性がありますので、是非文科省の方ともしっかり話をしていただければと思います。  次に、使用者の業務範囲に属する発明であることという要件について質問をさせていただきたいんですが、この使用者の業務範囲について、具体的な判断基準はどうなっているのでしょうか。例えば、会社の定款に記載されている事業目的というのは果たして考慮されるのか考慮されないのか。記載されていない業務は例えば使用者の業務範囲に含まれないという見方をされるのかどうかということを教えていただければと思います。
  147. 伊藤仁

    政府参考人伊藤仁君) この使用者等の業務範囲については、使用者が現に行っているあるいは将来行うという具体的なものを想定しております。したがって、必ずしも定款等の記述によって縛られているというものというよりは、個別の具体的な事案に応じて判断されるというふうに考えております。したがいまして、会社の定款の中にその目的が具体的に記載されていない場合があっても、将来ある程度そこは行う可能性がある場合には使用者の業務範囲として含まれる可能性はあると考えております。
  148. 松田公太

    ○松田公太君 そうですか。ちょっと細かい話ばっかりで今日恐縮なんですけど、そうすると定款って何なんだろうなというふうに思っちゃいますね。私も会社幾つかつくってきたわけですけど、やはりその際に定款ということを物すごく真剣に考えて、事業目的のことも非常に一生懸命考えるわけですね、どこまで膨らませるかどうかということも。ですから、じゃ何のためにああいう定款が必要なのかなという疑問が湧いてきてしまうんですけれども。  それはまた別のときの議論とさせていただくことにしまして、使用者の業務範囲の具体例についてもお聞きしたいと思うんですが。  今日までの審議では、大学教授の発明が当然に職務発明と言えるという、そういう前提で話が進んできたような気がするんですね。しかし、これも特許法三十五条一項との関係では、大学教員の研究については、そもそも大学の業務とは何かということがまた問題になってくるのかなというふうに考えております。  つまり、学校教育法、これを見ますと、大学発明ではなくて純粋に研究、教育のための機関というふうに定義付けられているんですよ。そうすると、教員の発明職務発明として考えることは難しくなってくるのかなという考え方もあろうかと思います。  ですから、経済産業省、文科省ではなく経済産業省としては大学の業務ということをどのように定義付けていらっしゃるのかなということに疑問が湧いてきたんですが、いかがでしょうか。
  149. 伊藤仁

    政府参考人伊藤仁君) この特許法の中での扱いということでございますので、大学が、大学内で行われた研究が発明として、特許として権利権利化したいといった場合にこの特許法の適用を受けるということでございます。  したがいまして、その大学が使用者等で大学教授が従業者等という形で構成して職務発明を定義付けることは可能だということでございますが、もっとも、御指摘のとおり大学自体は営利を目的としていないわけでございますので、通常発明を実施しないことが多い、つまり、発明が行われてもそれを特許にしたり特許として何か使用したりすることがないケースが多いわけでございますので、こういった大学の実態あるいは本来の目的ということを十分勘案した上で職務発明権利関係のことについては適用する必要があると考えております。  これは大学の関係者からもずっと意見が出てまいりましたので、これまでの考え方と基本的には、すなわち発明者帰属のままでいきたいというケースにおいてはそういう形が選択できるということを今回の改正においても位置付けているのは、そういう事情でございます。
  150. 松田公太

    ○松田公太君 その様々な意見があった際に、大学、例えば教員の方々から、まず、じゃ、そもそも教員というのが従業者等と言えるのかどうかということにも疑問とか、そういう質問、発言はありましたか。
  151. 伊藤仁

    政府参考人伊藤仁君) 直接的にそういった質問があったかどうかちょっと確認ができておりませんけれども、当然のことながら、大学における発明特許にする場合の議論をしてまいりましたので、そういった中において、従前から職務発明規定の三十五条の中で、大学とそれからそこで働いておられる方、研究者との関係というものは、従業者、すなわち発明者側に権利があって、それを承継するかしないかを個別に議論したりするケースがありましたので、そういうものとして考えてほしいという意見は相当強くございました。
  152. 松田公太

    ○松田公太君 経産省ではなくて文科省絡みの話もいろいろさせていただきましたが、今月安倍総理が、知的財産推進計画二〇一五、これを取りまとめておりまして、その中の戦略課題でやはり大学の役割というのがこれからどんどん大きくなってくるというふうになされているわけですね。真の知財立国に向けて、やはり大学目的として私は発明ということも入れてもいいんじゃないかなと。そうしないと、今後こういった部分でまたあやふやにしておくと問題が生じる可能性もあるのかなというふうに思っておりますので、是非そういった御検討も文科省と話をしていただければというふうに思います。  それでは、これは先ほど石上委員からも同じような質問が出ていたわけですけれども、例えば、転職した研究者が、これも私質問として用意していたんですが消してしまいましたけれども、元の企業で研究の例えば九割とか八割とか大部分をやっていた場合、その後、移転先の企業に移って残りの部分を完成させた場合はどうなるんでしょうかというようなことだと思うんですけれども、それについてはもう既に類似の質問ということで答弁されていますので、同じことは聞きません。  ただ、例えば発明が行われて企業が秘匿化を選択した場合なんですけれども、元の企業発明を行った従業員が移転先で改良発明、これを行う行為や移転先の若しくは企業が一緒に改良発明をして特許出願したという場合においては、不競法上これは何か問題が出てくるのかということを教えていただければと思います。
  153. 菅原郁郎

    政府参考人菅原郁郎君) 今委員がおっしゃった改良発明の際の、元々いた企業のデータをどう使うかによって、ケース・バイ・ケースで違ってくると思います。  特許申請しないものについて、例えばノウハウですとか、もっと端的に言うとデータみたいなものを営業秘密として認定してしっかり管理していると。それの持ち出しについては、退職時であっても守秘義務契約を結んで駄目だというにもかかわらず、そのデータを持ち出して仮に更に改良を進めたとすれば、それは明らかに営業秘密侵害になり得るというところで、そのまさに改良の基となる基礎をどのように使ったかどうかによって、ケース・バイ・ケースで営業侵害になるかどうかというのは分かれるというふうに考えております。
  154. 松田公太

    ○松田公太君 そうすると、例えば研究者の頭の中に全部データが入っていて持っていったという場合は侵害にならないということなのかもしれませんけれども、それでよろしいでしょうか。
  155. 菅原郁郎

    政府参考人菅原郁郎君) その場合も頭の中に一体どういうものが入っているのかということ次第だと思いますけれども、そもそもその頭をつくるに当たっても、元々いた企業において様々な、いろんな研究費用を使うとかいうことがあろうかと思いますので、その場合、例えば仮に営業秘密として明確に管理されていない場合であっても、それが、そのノウハウを全部頭にあるからといって全て使えるかどうかということについてもやっぱり個別の判断にどうしてもなるのではないかと思います。
  156. 松田公太

    ○松田公太君 分かりました。  もう時間がありませんので最後の質問とさせていただきたいんですが、ちょっとがらっと話が変わって、政治家の持つ名簿についてお聞きしたいんですけれども、例えば政治家が持っている名簿とか政党の党員名簿とか、若しくは団体の会員名簿、こういったものを物すごく大切に政治家はしていて、命の次に大切だと言っている人たちもいるぐらいですが、実は私、名簿なるものはほとんど持っていないのであれなんですけれども、これは同僚議員からちょっと聞いてくれというふうに言われたんですが、例えばそのような名簿をある国会議員が持っていましたと。そのときに、一緒に選挙を戦う際に地方議員の方々も仲間として入ってきて、その地方議員の方がその名簿をある意味使わせていただいて一緒に戦っていたと。ところが、同じ選挙区でその地方議員が、自分も国会議員になりたいから目指すんだということで国会議員として立候補するとなった際に、そのときの名簿を活用してしまった場合は不競法上に当たるのかどうかということなんですが、これについてはいかがでしょうか。
  157. 岩井茂樹

    大臣政務官岩井茂樹君) 議員の後援会活動又は政治活動が不正競争防止法の対象になるのかどうかというようなお話かと思います。  まず、この法律目的というのは、第一条に規定をされているとおり、事業者間の公正な競争の確保、これを目的としております。これを踏まえまして、判例上、取引社会における事業活動と評価できないものにまでは及ばないということになっております。  したがいまして、御指摘の選挙活動等につきましては、最終的にはこれなかなか難しい問題なので司法の判断となるところはあるんですが、事業活動とは評価することは基本的に難しいと考えておりまして、不正競争防止法の適用範囲とはならない可能性が高いと考えております。
  158. 松田公太

    ○松田公太君 皆さん、そういうことでございます。  どうもありがとうございました。
  159. 中野正志

    ○中野正志君 次世代の党の中野正志でございます。  委員長にあえて、質問ではありませんが、提案をさせていただきます。  先ほど内閣官房から説明を受けたのでありますけれども、あしたから国家公務員におけるゆう活、夏の生活スタイル変革の実施ということになるわけであります。スタートしていただく限りでありますから、我々議員側が何ができるかということになりますと、国会が大幅に延長されましたから、委員会が開会されるとすれば、今までの申合せの徹底をする、二日前まで質問通告を出す、いろいろ事情があっても前の日のお昼までには質問通告を出す。  ここの経済産業委員会では皆さんお守りをいただいておるようでありますけれども、ほかの委員会にも所属をされるわけでありますから、このゆう活が円満に有効に活用されるためには、是非委員長、次の理事懇談会で申合せを御提案をいただきたいと、こう思いますが、いかがでございましょうか。
  160. 吉川沙織

    委員長吉川沙織君) ただいまのお話につきましては、当参議院経済産業委員会にとどまる問題ではないかと存じております。委員長といたしましては、今後、今お話がありました課題につきましては、しかるべき場で議論していただくべき話かと存じ上げます。よろしくお願いいたします。
  161. 中野正志

    ○中野正志君 ありがとうございます。  委員長会議始め、いろいろよろしく御配慮お願いを申し上げます。  はてさて、大臣にこれまたあえて質問をさせていただきますけれども、先週末、資源エネルギー庁が二〇一七年度に沖縄本島沖合水深一千六百メートルの海底で一千トン規模の亜鉛、銀などの鉱物の採掘試験を行う方針を決めたという大変うれしいニュースに接しました。事実だとすれば、まさに深海鉱物を大採掘するというのは世界でも珍しく、我が資源小国日本としては本当にすばらしい知らせであるなと思います。  今回は試験採掘ということでありますから、是非、今後の本格的な採掘の展望、これをお聞かせをいただきたい。また、沖縄伊是名海穴、あるいは沖縄久米島、東京の八丈島の近海の海底鉱床も取り沙汰されておりますけれども、どういう展開になるのか、これもお聞かせをいただきたいなと。また、どういう鉱物資源で埋蔵量は推定どれぐらいになるのか、それもお知らせをいただきたい。また、かの国から近年大変意地悪をされたレアメタル、レアアースなど、この現状についてもうれしい展開があるやにも聞いておりますけれども、そのことも併せお知らせをいただきたいと思います。
  162. 宮沢洋一

    国務大臣宮沢洋一君) 最後はメタンハイドレートでしたっけね。
  163. 中野正志

    ○中野正志君 レアメタル、レアアースです。
  164. 宮沢洋一

    国務大臣宮沢洋一君) レアメタル。  まず、海底熱水鉱床でありますけれども、これはもう三十年前に私はJOGMECの前身の金属鉱業事業団というものの予算を大蔵省で見ておりましたけれども、そのときからまさにハワイの沖合まで行って実は調査をして、そういう予算を付けた記憶がありまして、今回大臣になってみまして、これがかなり日本の近海で、しかもそんなに深くないところで発見されたというのは大変うれしく思っているところでございます。  そして、まず我が国の排他的経済水域内で、沖縄近辺で銅、亜鉛などを含む海底熱水鉱床やレアアースなどの存在が確認されておりまして、生産が可能になればまさに供給途絶リスクのない安定的な資源になり得ると考えられます。  そして、まず一番最初に確認をされましたのは伊是名海穴でありまして、平成二十四年度までに確認された資源量が三百四十万トン。これは、陸上鉱山で例えれば、別子鉱山では閉山までに約三千万トンの鉱石が採石されておりまして、一般的な鉱山としては少なくとも三千万から五千万トンの資源量が必要とされますが、その既に十分の一が確認されているということ。  さらに、昨年十二月に野甫サイトというところ、そして今年の一月二十八日に発表いたしましたけれども、ごんどうサイトというところでも尖塔状の地形を多数発見するなどしておりまして、これらにつきましてはこれから調査を行っていきたいと考えております。そして、今年度にボーリングを実施いたしまして、資源量調査に着手をいたします。  今後の予定でございますけれども、平成二十九年度にはこれらの地域で世界に先駆けて採鉱、揚鉱を組み合わせたパイロット試験を実施することとしております。  ただ、商業化にはまだなかなかめどが付いたと言える段階ではなくて、現段階では平成三十年代後半以降に民間企業が参画する商業化を目指すというところが現段階の見通しでありますけれども、まだまだ先のことでございますから、これが少しでも早まるように努力をしていきたいと考えております。
  165. 中野正志

    ○中野正志君 できるだけ早く商業化を実現すると、これを基本にしながら更に努力をいただきたいと存じます。  六月の八日、東京大学発のベンチャー企業でポップイン、中国のグーグルと呼ばれるインターネットの検索サービス大手百度によって買収されたと発表されました。このポップインの創業者である程涛氏は、東京大学在学中にインターネット上のコンテンツ熟読率を指標化することで効率的なネーティブ広告を運用できるREADと呼ばれるシステムを発明し、特許取得をされ、東京大学エッジキャピタルから出資を受け起業し成長したと。大変立派な企業であると思います。  このケースを例に質問いたしますけれども、学生が在学中に発明を行い特許取得する場合は、その権利は学生に帰属すると。学生は職務発明に当たらないため、発明者が学生だった場合、権利発明者である学生個人に帰属すると、こういうことであろうと思います。これは海外からの留学生であっても同様であろうと思います。大学、特に国公立の大学大学院などでの学生による発明は、全てとは言わないまでも、企業における職務発明同様に、学校内の施設や指導する教授などの環境があってこその発明であります。本改正における職務発明制度での使用者帰属の考え方から、このような海外留学生による発明のケースについてどう考えられるのか、お尋ねをしたいと思います。
  166. 伊藤仁

    政府参考人伊藤仁君) お答えいたします。  委員指摘のとおり、大学内の施設といった環境を利用して学生が発明を生み出すケースということが想定されます。こういったケースにつきまして、大学海外留学生との間で個別に研究などについての契約などを結ぶなどの定めを設けることで、発明者たる海外の留学生からその特許を受ける権利大学側が承継して、大学特許取得に関する費用を負担して特許権取得し、それを利用する、活用するということは考えられると思っております。どのような権利活用するかについては大学海外留学生との間に委ねられるということでございます。  今回の改正におきましても、そういったケースは想定されるというふうに考えているところでございます。
  167. 中野正志

    ○中野正志君 十八日の委員会で、公明党、佐々木委員の質問にもありましたけれども、外国人労働者の発明についてもちょっとお伺いをいたしておきます。  今後、日本経済産業界も多くの外国人労働者などの人材を登用していかなければならないと思います。本改正後、外国からの人材であっても、企業内での発明については契約している企業側の使用者帰属が原則ということで間違いないのかどうか。日本国籍の企業海外の支店で登用した地元の従業員による発明のケースも同様の制度が適用されるのか、お伺いしておきます。
  168. 伊藤仁

    政府参考人伊藤仁君) 本改正特許法案の三十五条三項では、従業者について国籍によって区別をするという考え方は取ってございません。企業が従業者に対してあらかじめ職務発明規程に基づいて意思表示をした場合には、外国人による我が国における職務発明特許を受ける権利は初めから法人の側に帰属するということになるかと思います。  また、御質問の中にありました、日本企業の外国の支店などにおいて従業員が職務上の発明を行った場合には、外国における特許を受ける権利の帰属については日本特許法が適用するものではございませんので、それぞれの国における法律の適用を受けると、こういう整理だというふうに考えております。  以上です。
  169. 中野正志

    ○中野正志君 東京大学発のベンチャー企業にシャフトという会社があります。二足歩行のロボット開発技術に優れた会社だと承知をいたしております。蹴っても倒れないという同社のロボット開発技術、インターネットの動画サイトでも大変話題になりました。  同社のロボット開発技術は、二〇一三年末に開かれたアメリカ国防総省国防高等研究計画局、通称DARPA、インターネット技術を生んだ米国防総省内でも由緒ある研究機関だそうですが、これが主催した災害救助ロボットコンテストで、米航空宇宙局、NASAなどの強豪十五チームを抑えてトップになったということであります。  このコンテストで非常に驚いたのは、日本の技術の高さもさることながら、実は同社が既にアメリカのインターネット検索サービス大手であるグーグルによって買収されていたということであります。ロボットの開発には試作機でも御存じのとおり数千万単位の費用が掛かることもあり、研究者にとって研究資金の調達は非常に重要な問題であります。シャフトも、日本でベンチャーキャピタルや国の関係機関などに投資や融資を説いて回ったものの、結果は徒労に終わったというのであります。大変残念なことであります。  今回、改正の両法案を含め、我が国経済産業に寄与するイノベーションを本気で推奨しようとするならば、具体的にこういったシャフトのような企業がきちんと資金調達をできることなども含めて、中小・ベンチャー企業に向けたイノベーション施策について抜本的な改正、若しくは新法制定も視野に入れるべきではないか。  シャフトの共同創業者である加藤崇氏も、できれば本当は日本で資金調達をしたかったと語っております。できなかったということには、日本の法制度その他にまだまだ改善の余地があるということではないかと思いますが、いかように考えられますか。
  170. 宮沢洋一

    国務大臣宮沢洋一君) 成長戦略を実現していくためには、やはりベンチャーであり中小企業の第二の創業といったものが大変大事だと思っております。やはり高付加価値生産性の高い新しい企業、また第二の創業を進めていくということがこれからの日本経済にとっては大変本当に成長戦略の鍵を握っていると私も考えております。  ただ、残念なことに、日本ではベンチャーが育ちにくい風土というものがあることは確かでありまして、松田委員のような方がたくさんいらっしゃればいいんですけれども、社会全体として新しいことに挑戦する起業家精神がいろんなアンケート調査を見てみましても大変低いということ、それから学生の大企業志向が大変強いということ、また金融市場におっしゃるようにリスクマネーが不足しているということ、もう一つ申し上げれば、再チャレンジを妨げる例えば個人保証等といったような慣行があるということがなかなか日本でベンチャーが育ちにくい理由と言われております。  そういう中で、経産省、政府といたしましても、例えば昨年度から新たに日本ベンチャー大賞というものを創設をいたしまして少し社会の意識改革に取り組もうということをしておりますし、また、先ほどの経営者の保証というようなことにつきましては、経営者保証ガイドラインの周知、普及を通じて、思い切った事業展開を促進していきたいと思っております。また、税制につきましてはエンジェル税制というものがございますし、また創業融資や創業スクールなどの取組により起業家の資金及びノウハウを支援してきております。またさらに、今国会には官公需法の改正案提出をしておりまして、創業十年未満の企業を支援していくということもやっております。  ただ一方で、まさにこのシャフトがその対象になったかどうかは別でありますけれども、リスクマネーは不足しているというものの、企業の中において大企業を中心に内部留保が相当程度たまっているということは確かでありまして、海外企業買収などをやっている企業もありますけれども、なかなか成功したという話も聞きませんが、海外だけではなくて国内のいろんな投資、さらにベンチャー企業等に対する投資も含めて、やはり民間の投資をもっとしていただくための努力というものもこれから政府を挙げてやっていかなければいけないというふうに考えております。
  171. 中野正志

    ○中野正志君 是非そのように御努力をお願いをいたします。  時間がありませんから早口で申し上げますけれども、サイバーセキュリティリスクと企業経営に関する研究会、その資料によれば、前年度のセキュリティー投資の評価を実施したと回答した企業の割合は日本は二三%にとどまる、世界平均である五八%を大きく下回りました。さらに、次年度のセキュリティー投資が増加すると回答した企業の割合も日本は二〇%にとどまり、世界平均である四九%を大きく下回りました。この結果は、日本企業ではセキュリティー投資が増加しておらず、評価が十分に行われていないことを示しております。  二〇一二年九月に行った日本年金機構におけるウイルス対策ソフトウエアのサポートライセンスの購入、一式の入札案件について調べたところによると、その落札理由は最低価格でありました。以前、官公需改正法案の審議の際にも指摘しましたけれども、値段が安ければいいのかといえば、それは事案によるわけで、この辺りの認識が今回の個人情報流出につながったと考えてしまうのは邪推でありましょうか。  いずれにしましても、営業秘密の漏えいの実態は、悪質な漏えい者もさることながら、それを許してしまう企業体質などについても、改めてこれを機に改め直す必要があります。この点について、経済産業省ではどのように捉えられ、今後どのように対策を講じられていくか、時間の関係で簡単で結構ですから、お答えいただきます。
  172. 宮沢洋一

    国務大臣宮沢洋一君) 中野委員おっしゃるとおり、我が国企業におきまして、もちろん一部大変この問題に前向きに取り組んでいる企業もございますけれども、残念ながら、そういう企業は決して多くないということは確かであります。  そういう観点から、企業における情報セキュリティー向上は喫緊の課題でありまして、経産省におきましては、IPA、情報処理推進機構とも連携しまして、平成二十二年から情報セキュリティ安心相談窓口を設置して、既に七万件の相談を受けております。  また、内部不正対策として、IDやパスワードの管理体制の強化などを取りまとめました組織における内部不正防止ガイドラインの策定、周知といった取組を進めておりますが、さらに、今後、サイバーセキュリティーを確保するため、企業経営上行うべき事項を明確化したサイバーセキュリティー経営ガイドラインというものをできるだけ早急に策定していきたいと思っております。  また、この七月初めて開催予定の、これは初めて今年から始めるものでございますけれども、営業秘密管理に関する産業界の実務者による官民フォーラムなどの取組も今後とも継続をすることによりまして、企業の問題意識を高めていきたいと考えております。
  173. 中野正志

    ○中野正志君 大変に意義ある回答でありました。  ありがとうございます。
  174. 荒井広幸

    ○荒井広幸君 改革の荒井でございます。  職務発明、この特許、そして同時に、特許は競争と協力の両面があると思います。特許は、やはり社会に貢献していくという大きな直接、間接の目的もあります。  今日三度目になりますが、確認的にもちょっと質疑をしてまいりたいと思いますが、福島事故のような本当に複雑、重大な事案、技術的にもですね、こうしたことが発生した場合に、例えば今までのデータであるとかノウハウであるとか、あるいは技術、あるいは新しい発明に関わるものもあると思います。運用、オペレーション、いろいろな人に着目したところもあろうと思いますが、こういう危機的状況のときには国際的にやはり一致団結していく、競争よりは協力をして、各メーカー、企業等も協力をして対処すると、こういう姿勢が必要だなと痛感をしております。こうしたことを扱う、国連に国際的な機関は存在するんでしょうか。
  175. 伊藤仁

    政府参考人伊藤仁君) お答えいたします。  委員指摘のように原発事故など人類にとって脅威となるような事案を対処するために特許の使用を国際的に例えば無償開放するといったようなことを扱う国際機関というものは、存在していないというふうに承知しております。  なお、世界知的所有権機構、WIPOと呼んでおりますけれども、ここでは、製薬会社やNPO法人と共同で、いわゆる後発開発途上国で問題となっているマラリアとかあるいは結核などの感染症治療の開発促進を目的といたしまして、任意のコンソーシアムというものを設立されています。当該コンソーシアムに参加している製薬会社あるいは学術機関は、これに関連する製薬成分とか創薬技術などの知的財産世界研究者に対して使用料無料で提供すると、こういったような試みをしているところでございます。
  176. 荒井広幸

    ○荒井広幸君 これ、調べていただいて探していただいて今のような結果になって、薬の部分には、任意だけれども、そうしたコンソーシアムができていると。  大臣、そうなりますと、私はこういう機関を、IAEAを含めて、IEAも含め、どっちもなんですが、そういうふうに近い動きはしているんですよね。まあみんなで協力して対処しましょうみたいな話になりますね。しかし、今のような意味で、まさにオープンフリー的な話も含めて、そこに料金、使用料が発生するしない全部絡めまして、やっぱりそういう体制をつくっていく必要があるんじゃないかと、このように認識をいたしますが、経産大臣の御見識を伺います。
  177. 宮沢洋一

    国務大臣宮沢洋一君) 今政府参考人から御答弁しましたWIPOの件につきましては、まさに途上国において経済的な負担が困難であることから製薬企業などに適切な開発インセンティブが付与されない、要するに、マラリアといったものについては先進国にはほとんどないわけでありまして、開発途上国だけが必要とするまさに薬でありますけれども、なかなかお金がもうからないから先進国の研究機関はやらないと。こういうものにつきまして、まさに途上国支援の観点から、製薬業界などが任意で特許を無料で提供研究開発を促進するという取組で、今回、福島の事故の場合は、東京電力といった大きな会社がございますし、また国の方も、汚染水、廃炉につきましては基金を使ってそれなりの予算で対応しているということで、なかなか開発の、促進されないというような、そういうインセンティブがないというような状況ではないということで少し違っていると思いますけれども、一方で、まさに世界的な取組ということで、世界の英知を集めて今いろいろな新しいロボットを作る等々ということをやっておりまして、今の段階でそういったものが必要な状況にあるとは考えておりません。
  178. 荒井広幸

    ○荒井広幸君 これは度々大臣から同じような御意見いただいているんですが、この委員会でも何度も出ているわけですが、これに限らず、人間の安全保障的な概念でいえば、人類自らが編み出した技術、それはある意味において、商売、収益ということも大きく作用しているわけですね。その結果もたらした大変な悲惨さを、商売、利益というところを、これをさておいて、やっぱり救済しようと、時間的にも、時間が勝負だというような観点を入れていくというのが私は日本がもう一つ信頼を得る、今までもそれに近いことをやってきた日本が、金だけじゃないぞという、もう一つのやっぱり日本の生き方であろうと思うんですね。人に人格があるように、私には、国にも国格というか、そういうものがあっていいんだろうというふうに思います。  さて、先ほど日本ベンチャー大賞のお話もございましたけれども、参考人の皆さんからの意見でも、企業全体として取り組んで発明というのが行われる、様々な資源が企業に集約して、そこにある一人あるいは複数、そういう人たちの発明というのがある。しかし、それをずっと広げて私なりに解釈すると、会社全体ですから会社が表彰されるというのは非常にいいんですが、ある携わった一部のメンバーというんでしょうかね、ごく近いメンバー、あるいは、ごくという距離感はあるかもしれませんが、発明に携わった本人とそれらに関連した人たちを顕彰するという、そういう企業取組というのは一例としてあるんでしょうか、事例としていかがでしょうか。
  179. 伊藤仁

    政府参考人伊藤仁君) お答えします。  発明者以外であって発明に関連された方を顕彰しているという企業が全体としてどの程度あるかということについては残念ながら調査を行ったことはございませんが、事例といたしまして、例えばキヤノン株式会社においては、発明者だけじゃなくてその発明を生み出すことに貢献した社員を表彰する制度というのがございまして、賞状、賞金とかメダルの授与に加えて社長賞などを設けているというふうに承知しています。  また、特許庁が実施しました二十六年度のヒアリング調査ですけれども、大手企業九社を聞いたところ、八社が、マーケティングや生産あるいは社会貢献など、発明以外の様々な分野で貢献した社員を顕彰する制度というものを併存しているということを把握しているところでございます。
  180. 荒井広幸

    ○荒井広幸君 キヤノンの例は分かりましたが、じゃ、そういうものをNPOなり第三者機関みたいなものを含めまして、発明した本人と、それに、強弱、どれぐらいの距離感かは別として、関連した人も含めて、頑張っているね、すごいねというふうに認定するような機関というのは、顕彰するような機関というのはあるんでしょうか。
  181. 伊藤仁

    政府参考人伊藤仁君) 発明に携わった本人とそれから関係者、特にその企業の代表者の場合が多いんでございますけれども、そういった方を顕彰するものとして、国が主体ではございませんが、常陸宮殿下が総裁となっております公益社団法人発明協会が全国発明表彰という顕彰事業を実施しております。これ、長く歴史がございまして、百年近く行われておりまして、恩賜発明賞、内閣総理大臣発明賞、経済産業大臣発明賞などを設けて、優れた発明をした人とまたその発明の実施に尽力した人を顕彰するという仕組みでございます。
  182. 荒井広幸

    ○荒井広幸君 そうすると、宮様もお入りになっていらっしゃいますが、どちらかというと代表者というところに力点なんですね。  ところが、今回の職務発明を見ましても、そういうベースにあるのはやっぱり全体、チームワーク、あるいは有機性、そういうものは見逃せない大きな部分なんだと言っているのに、そうした当たり前の評価を出さないというのはちょっと寂しいと思うんです。顕彰する仕組みについて、経産大臣、必要だろうと思うんですが、いかがでしょうか。
  183. 宮沢洋一

    国務大臣宮沢洋一君) 要するに、今回お願いしている職務発明ということになりますと、まさに職務でございますから、ある意味では組織の中で発明が行われるということになるわけで、組織の代表者が、顕彰するといったようなことはそういうことなのかなというふうに思いますけれども、ただ、この全国発明表彰につきましては、我が国を代表する多くの研究者、科学者が既に受賞しているというようなこともございまして、それなりにまさに研究者の方にとっては大きな目的になっていると思います。  一方で、研究者の全体としてのグループということになりますと、これは正直言って、そういう方たちを国として、またNPO的なものでやるということは、組織の外から見てなかなか分かりにくいというようなところもあって、少し難しい問題なのかな、やはり各社においてまず適切に対応していただくということが一番大事なのかなと思っております。
  184. 荒井広幸

    ○荒井広幸君 発明の中身等にもよると思いますが、その協会の中にもそういう部門があってもいいような私は感じいたしております、新たにつくらなくてもですね。  さて、国際競争が生じているという分野で、漢方薬についてお尋ねしたいと思うんです。  特許についてですが、漢方について、農水省、厚生省、それぞれに代表的な特許の例、お話しいただけますか。
  185. 鈴木良典

    政府参考人(鈴木良典君) お答えいたします。  農林水産省といたしましては、現時点では農業生産法人などの生産者が薬用作物の栽培に係る特許取得している事例を把握をしていないところでございます。また、農林水産省所管の研究機関である国立研究開発法人農業・食品産業総合技術研究機構などにおいても薬用作物のための特許取得している事例は承知をしておりません。
  186. 飯田圭哉

    政府参考人(飯田圭哉君) お答え申し上げます。  漢方薬に関する特許についてのお尋ねでございましたが、医薬品を製造販売する事業者等において、漢方薬の製造及び品質管理の方法、それから薬用植物の栽培方法等に係る特許取得していると承知をしております。具体例を挙げさせていただきますと、特定の化合物を配合することで体内で溶けやすいエキス錠剤を製造する方法でありますとか、複数の生薬から構成されるエキス中にそれぞれの有効成分がどの程度含有されているかを定量的に評価する方法等をそれぞれの企業取得しているということを把握しております。
  187. 荒井広幸

    ○荒井広幸君 ちょっと私の説明も悪かったかもしれませんが、もう日本は古くから自然にあるもの、これらを今風に言えば薬として使っていたり、今風に言えばサプリメントとして使っていたり、昔はお風呂というのはなかったようでございますが、入浴剤、こんなことも様々に広いんですね。これはもう間違いなく特許世界に入ってきますし、競争の世界に入ってきています。  そうなると、農林省さんからお話があったように、厚生省の部分に預けているというのが非常に多いわけなんですが、地方創生の農地、これを有効活用するという場合には、日本の場合、八四、五%は中国からの輸入なんです。そして、中国の生薬、漢方について、これは幅広い使われ方をしている、薬のみならずですが、大体七割がいわゆるちょっと危ない農薬を使って漢方を作っている。ちょっと危ない話でございます。そういうニュースもあるぐらいと言われているんですが、非常に中国に偏っています、量的にも。こういう観点でいうと、地域に所得も落ち、地域の田畑、これを再生するためにも、創薬につながる、サプリも含め、漢方薬というのは非常に大きな私は要素だと見ておりまして、そう見ている人も非常に多いんですね。  そこで、ちょっとお尋ねしていきたいんですが、厚生労働省として、政府の創薬とか新薬開発戦略というのがあります。これは経済産業省も関わっているわけですけど、厚生省としては生薬、漢方というのはどういう位置付けなんでしょう。
  188. 飯田圭哉

    政府参考人(飯田圭哉君) お答え申し上げます。  先生指摘のように、漢方薬には西洋薬にはない効果、効能でありますとか、自然素材の安心感ということもありまして、非常に重要と思っておりまして、年々需要も増加してきております。  厚生労働省では、約二年前でございますが、医療品産業ビジョンということで、今後の産業在り方についての議論をしたわけでございますけれども、その中でも漢方薬は医療を支える基礎的、伝統的な医薬品として位置付けておるところでございます。そういう意味では、薬の効果についてのエビデンスの収集でありますとか、それからまさに今御指摘がありました原料となる生薬の安定的確保のための国内栽培の推進、そういうことに取り組んでいく必要があるというふうに思っているところでございます。そのため、漢方薬や生薬に関する研究の推進は行っておりまして、具体的には、有効性、安全性に関する評価を目的とした臨床研究、それから薬用作物の新たな品種、栽培方法及び生産に関する技術の研究に対して支援を行ってきているところでございます。  今後とも、漢方薬や生薬に関する研究を推進し、関係業界とも密接に連携いたしまして、質の高い製品の安定的な供給に努めてまいりたいというふうに思っている次第でございます。
  189. 荒井広幸

    ○荒井広幸君 農林水産省さんも漢方の奨励は農作物としてはやっているんですけれども、今後、そうして契約栽培も含めて作ったものが、成分だけではなくてその産地がまた特許を構成していくということ、経済産業省さん、長官、ありますよね。そういう観点取組を含めて、ちょっと縦横のつながりが弱いんじゃないかなというふうに思うんです。是非大臣、こういったところにも着目していただきたいんです。  ですから、資源がない国日本というんですけれども、もういっぱいあるんですよ、この漢方類については、日本は植物、非常に多い国であります。生薬についてもそういう分野があるんで、これを生かすためにも、是非各省庁、そして省内の縦横、つながっていただきたいと思います。  そういう中で、大きな動きが出てまいりました。薬用大麻です、薬草大麻。大麻は麻薬という取扱いですが、世界の各国でこの薬用大麻と呼ばれる、まあ成分を含めて、極めて様々な病気に効くと、このような検証を今進めているという段階に入っております。  厚生労働省に聞きます。米国の州や欧米での医療大麻とも呼ばれるこれらの取組の現状を簡単に説明してください。
  190. 成田昌稔

    政府参考人(成田昌稔君) 大麻でございますけれども、我が国を含めまして世界の多くの国々で乱用されている薬物の一つでございます。世界保健機関等の国際機関においても、大麻については科学的に精神毒性、依存性がある有害なものと評価されており、大麻は国際条約や各国の法律により規制されております。  それから、御指摘がございましたように、アメリカの一部の州あるいは欧州の一部で医療用大麻、医療用途での大麻の施用が認められていることは承知しております。しかしながら、アメリカの連邦法では大麻は禁止薬物として規制されておりまして、食品医薬品局、FDAにおいても医療用大麻の医薬品としての認可はされておりません。また、世界保健機関は医療における大麻の有効性について科学的根拠に基づいた見解を示しておらない状況でございます。
  191. 荒井広幸

    ○荒井広幸君 これについてはまた次回にやりたいと思いますが、先ほどありましたように、アメリカの一部では薬用としての研究が始まっているということなんですね。こういった点を一つ申し上げておきたいと思います。  最後になりますが、経産大臣に、この間もお話をいたしましたけれども、我々、漢方漢方と、こう呼んでおりますけれども、これはむしろ日本由来、独自なものも随分ございます。和方というような意味で意匠、商標、特許類、こういったものを取っておかないといけないんだろうというふうに考えております。  食のサミットをやっておりますが、あの食のサミットの中に、和方による、いわゆる生薬による食事というのを出しているかどうかちょっと農林省に後で聞きたいと思いますが、今日はやめますが、そういうものも含めてプレゼンするというのがうんと重要なんだと思います。  漢方改め和方、こういった統一をお考えになりませんか。
  192. 吉川沙織

    委員長吉川沙織君) 時間ですので、短くお願いします。
  193. 宮沢洋一

    国務大臣宮沢洋一君) はい。  やはり、大正漢方胃腸薬が大正和方胃腸薬よりは皆さんが知っていていいのかなと思っております。  いずれ和方と呼ばれる時代が来るかもしれませんので、是非委員におかれて商標登録をしておいていただいて、政府に使わせていただければ有り難いと思っております。
  194. 荒井広幸

    ○荒井広幸君 その際はオープンフリーにさせていただきます。
  195. 吉川沙織

    委員長吉川沙織君) 他に御発言もないようですから、両案に対する質疑は終局したものと認めます。  本日はこれにて散会いたします。    午後三時四十二分散会