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2015-09-15 第189回国会 参議院 我が国及び国際社会の平和安全法制に関する特別委員会公聴会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成二十七年九月十五日(火曜日)    午後一時開会     ─────────────    委員異動  九月十四日     辞任         補欠選任      猪口 邦子君     宮本 周司君      大沼みずほ君     高野光二郎君      森 まさこ君     堂故  茂君      片山虎之助君     川田 龍平君      山下 芳生君     仁比 聡平君      福島みずほ君     又市 征治君      山本 太郎君     主濱  了君  九月十五日     辞任         補欠選任      那谷屋正義君     神本美恵子君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         鴻池 祥肇君     理 事                 石井 準一君                 佐藤 正久君                 塚田 一郎君                 馬場 成志君                 堀井  巌君                 北澤 俊美君                 福山 哲郎君                 荒木 清寛君                 清水 貴之君     委 員                 愛知 治郎君                 石田 昌宏君                 北村 経夫君                 上月 良祐君                 高野光二郎君                 高橋 克法君                 堂故  茂君                 豊田 俊郎君                 三木  亨君                 三宅 伸吾君                 宮本 周司君                 山下 雄平君                 山本 一太君                 山本 順三君                 小川 勝也君                 小川 敏夫君                 大塚 耕平君                 大野 元裕君                 小西 洋之君                 那谷屋正義君                 白  眞勲君                 広田  一君                 蓮   舫君                 谷合 正明君                 平木 大作君                 矢倉 克夫君                 川田 龍平君                 井上 哲士君                 仁比 聡平君                 山田 太郎君                 和田 政宗君                 水野 賢一君                 又市 征治君                 主濱  了君                 荒井 広幸君    事務局側        常任委員会専門        員        藤田 昌三君        常任委員会専門        員        宇佐美正行君    公述人        大阪大学大学院        法学研究科教授  坂元 一哉君        弁護士・元最高        裁判所判事    濱田 邦夫君        政策研究大学院        大学長      白石  隆君        慶應義塾大学名        誉教授弁護士  小林  節君        名古屋大学名誉        教授       松井 芳郎君        明治学院大学学        生・SEALD        s        奥田 愛基君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○我が国及び国際社会の平和及び安全の確保に資  するための自衛隊法等の一部を改正する法律案  (内閣提出衆議院送付) ○国際平和共同対処事態に際して我が国が実施す  る諸外国軍隊等に対する協力支援活動等に関  する法律案内閣提出衆議院送付) ○武力攻撃危機事態に対処するための自衛隊法等  の一部を改正する法律案小野次郎発議) ○在外邦人警護等を実施するための自衛隊法の  一部を改正する法律案小野次郎君外一名発議  ) ○合衆国軍隊に対する物品又は役務提供拡充  等のための自衛隊法の一部を改正する法律案(  小野次郎君外一名発議) ○国外犯処罰規定を整備するための自衛隊法の  一部を改正する法律案小野次郎君外一名発議  ) ○国際平和共同対処事態に際して我が国が実施す  る人道復興支援活動等に関する法律案(小野次  郎君外一名発議) ○国際連合平和維持活動等に対する協力に関する  法律の一部を改正する法律案小野次郎発議  ) ○周辺事態に際して我が国の平和及び安全を確保  するための措置に関する法律及び周辺事態に際  して実施する船舶検査活動に関する法律の一部  を改正する法律案小野次郎発議)     ─────────────
  2. 鴻池祥肇

    委員長鴻池祥肇君) ただいまから我が国及び国際社会平和安全法制に関する特別委員会公聴会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  昨十四日、猪口邦子君、大沼みずほ君、森まさこ君、山下芳生君、山本太郎君、福島みずほ君及び片山虎之助君が委員辞任され、その補欠として、宮本周司君、高野光二郎君、堂故茂君、仁比聡平君、主濱了君、又市征治君及び川田龍平君が選任されました。     ─────────────
  3. 鴻池祥肇

    委員長鴻池祥肇君) 本日は、我が国及び国際社会の平和及び安全の確保に資するための自衛隊法等の一部を改正する法律案国際平和共同対処事態に際して我が国が実施する諸外国軍隊等に対する協力支援活動等に関する法律案武力攻撃危機事態に対処するための自衛隊法等の一部を改正する法律案在外邦人警護等を実施するための自衛隊法の一部を改正する法律案合衆国軍隊に対する物品又は役務提供拡充等のための自衛隊法の一部を改正する法律案国外犯処罰規定を整備するための自衛隊法の一部を改正する法律案国際平和共同対処事態に際して我が国が実施する人道復興支援活動等に関する法律案国際連合平和維持活動等に対する協力に関する法律の一部を改正する法律案及び周辺事態に際して我が国の平和及び安全を確保するための措置に関する法律及び周辺事態に際して実施する船舶検査活動に関する法律の一部を改正する法律案、以上九案につきまして、六名の公述人方々から御意見を伺います。  御出席をいただいております公述人は、大阪大学大学院法学研究科教授坂元一哉君、弁護士・元最高裁判所判事濱田邦夫君、政策研究大学院学長白石隆君、慶應義塾大学名誉教授弁護士小林節君、名古屋大学名誉教授松井芳郎君及び明治学院大学学生SEALDs奥田愛基君でございます。  この際、公述人方々委員会を代表しまして一言御挨拶を申し上げたいと存じます。  本日は、御多忙のところ御出席をいただき、誠にありがとうございます。  皆様方から忌憚のない御意見を拝聴しまして、今後の審査の参考にさせていただきたいと存じます。どうぞよろしくお願いを申し上げます。ありがとうございます。  次に、会議の進め方について申し上げます。  まず、公述人方々からお一人十五分以内で順次御意見をお述べいただき、その後、委員の質疑にお答えをいただきたいと存じます。  また、御発言の際は、挙手をしていただき、その都度委員長の許可を得ることとなっておりますので、御承知おきください。  なお、公述人の御発言は着席のままで結構でございます。  それでは、まず坂元公述人お願いいたします。坂元公述人
  4. 坂元一哉

    公述人坂元一哉君) 大阪大学坂元でございます。  政府平和安全法制と名付けました安全保障関連法案について、法案成立に賛成する立場から意見を述べさせていただきます。  およそ国家国民の平和と安全を守ることは政府の最も重要な義務であります。また、我が国国民も、他の国、他の国民と同様に、ますます相互依存を深める世界の中に生きており、したがって、政府は、国際社会全体の平和と安全への貢献も考慮に入れてその政府の最も重要な責務を果たさなければなりません。  この観点から見たときに、今回政府が提出した安全保障関連法案は、我が国自身の安全のための抑止力を格段に強化し、我が国の平和もその一部であります世界平和により良く貢献する能力を増やす、よく考えられた法案だと私は評価し、その成立を願っております。  法案成立すれば、我が国はこれまでより更にしっかりした平和と安全保障体制を持つことができるでしょう。我が国を取り巻く国際環境が一段と厳しさを増す中で、それはどうしても必要かつ望ましいことだと考えます。  ただ、私がこの安全保障関連法案評価いたしますのは、国家国民を守るという観点からだけではなく、憲法を守るという観点からでもあります。しっかりした平和安全保障体制がなければ国家国民を守ることはできません。そして、もし国家国民を守ることができなければ憲法も守ることはできないでしょう。  ただ、それと同時に大事なことは、憲法を守ることなくしっかりした平和安全保障体制をつくることはできないということ、この明白なことが今度の法案評価する際の大前提になるのは改めて言うまでもないことだろうと思います。  私がこの安全保障関連法案日本にとって必要だと考え、望ましいと思い、その成立を願うのも、この二つの観点から評価した上でのことであります。  その私の評価について少し説明させていただきますが、時間の関係もありますので、後者の観点からの評価を中心にすることにしたいと思います。  前者につきましては、以下四点。  まず、この安全保障関連法案が、集団的自衛権限定行使、アセットプロテクション、装備品の防護、あるいは後方支援拡充などにより日米同盟協力を格段に強化し、同盟抑止力を飛躍的に高める法案であること。次に、今、日米同盟抑止力を高める必要があるのは、安全保障環境が一段と厳しくなる中で、それが国家国民の安全をより良く守るために必要かつ適切な手段であること。三つ目に、安全保障環境について言えば、北朝鮮核開発脅威は相変わらずですが、それにも増して中国の急速な軍事力増強脅威になっており、尖閣諸島の問題もありますので、言ってしまえば、海を隔てた核保有の隣国が海空軍力を急速に増強して、その島は俺の島だから返せというような容易ならざる状況になっていること。そして最後に、日米同盟抑止力の強化は、その中国との偶発的な軍事衝突可能性を大きく減らすだけでなく、我々が中国軍事力に脅かされることなく中国互恵対等関係を築くのに役立つこと。この四点を指摘するにとどめたいと思います。  その上で、憲法を守るという観点からの評価ですが、最も注目されている論点は、やはりたとえ限定的であっても集団的自衛権行使を容認する法律憲法違反ではないかという点だろうと思います。御承知のように、この点につきましては多くの憲法学者憲法違反だと批判しているわけであります。  集団的自衛権限定行使容認は、政府が与党とともに長い時間を掛けて慎重に検討した関連法案のまさに柱となるところであります。したがって、政府にとって批判は残念なことでしょうが、専門家がそう批判する以上、政府は、政府考え集団的自衛権行使がなぜ憲法違反でないのか、より一層丁寧かつ分かりやすく説明する必要があります。  言うまでもなく、ある法律憲法違反に当たるかどうかを最終的に判断するのは最高裁判所の仕事です。その意味で、今政府が、政府が言う意味での集団的自衛権限定行使を容認する法案憲法違反に当たらないとするのは、学者批判が正しいか正しくないかは別にして、この法案国会の審議を経て現実に法律になり、その法律に関連して訴訟が起こったとしても、最高裁判所憲法違反判決を下すことはない、そう判断しているということだろうと思います。  政府がそう判断する根拠は何かといえば、一九五九年、最高裁砂川事件差戻し判決安保条約に基づく米軍駐留合憲かどうかを争ったこの裁判の判決の中で、最高裁は、憲法平和主義が決して無防備、無抵抗を定めたものではないと述べ、その上で、我が国自国の平和と安全を維持しその存立を全うするために必要な自衛のための措置をとり得ることは、国家固有の権能の行使として当然のこととしております。  また、この判決は、例えば安保条約違憲かどうかというような、主権国としての我が国存立の基礎に極めて重大な関係を持つ高度の政治性を有する問題は、一見極めて明白に違憲無効であると認められない限り、裁判所司法審査権範囲外との判断も示しています。  この砂川判決前提にすれば、最高裁判所が将来、政府が言う意味での集団的自衛権限定行使について違憲判決を出すようなことはない、政府がそう判断したといたしましても、私にはごく当然の判断であるように思えます。  といいますのも、政府が今度の安全保障関連法案と新しい武力行使三要件で可能になるとする武力行使国際法でいえば集団的自衛権行使に当たる武力行使は、あくまで砂川判決に言う国の存立を全うするための自衛のための措置としての武力行使、それも必要最小限武力行使だからであります。  政府はこれまで、憲法上、自衛のための措置として必要最小限武力行使ができるのは、我が国に対する武力攻撃が発生した場合に限るとしてきました。それを、新しい憲法解釈では、我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生した場合であっても、それによって我が国存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求権利が根底から覆される明白な危険があるならば、そしてほかに手段がないならば、自衛のための措置としての必要最小限武力行使ができるとしているわけであります。  確かに、この自衛のための措置は、他国防衛、つまり他衛を含みます。ですが、自衛が同時に他衛にもなるからといって、それを最高裁が一見極めて明白に違憲無効と認めるとは考えにくいのではないでしょうか。憲法前文には、日本国民だけでなく、全世界国民がひとしく平和的生存権を持つこと、また、我が国自国のことのみに専念し他国を無視してはならないこと、平和の維持などに努力している国際社会で名誉ある地位を占めたいと思っていることをうたっているのですから、なおさらだと思います。  実は私は、この前文によって、自衛だけではなく、それと直接関係のない他衛のための武力行使も、それが国際法上合法で、かつ必要最小限のものに限れば、場合によっては憲法上可能になるのではないか、少なくとも一見極めて明白に違憲無効にはならない武力行使もあるのではないかと考えておりました。  しかし、政府はそうした考え方を取らず、自衛とは関係がない他衛、他国や他国民の平和と安全に関しましては、武力行使以外の手段で対応する、武力行使はしないとしています。私の考えと比較していえば、最高裁違憲判決を出す可能性ははるかに小さいでしょうし、国際社会国連の現状をよく考えてみますと、憲法平和主義を守るにはよりふさわしい解釈かもしれないと今は考えております。  無論、この安全保障関連法案成立したとして、万一、最高裁がその成立した法律違憲だと認める、その可能性は低いと思いますが、もしそういうことになれば、その法律は改正しなければなりません。そういう前提法案を審議するのが立憲主義のルールだろうと考えます。  最高裁砂川判決に関しましては、この判決で言う自衛のための措置とは個別的自衛権のことであって、集団的自衛権は含まれないと議論する人がおられます。私は、これは国際法上の集団的自衛権意味を誤解した議論だろうと思います。なぜなら、砂川判決に言うところの自衛のための措置とは、もちろん自国を守るための措置のことですが、個別的自衛権集団的自衛権も、どちらも自国を守るための措置として国家に認められた国際法上の権利だからであります。  この点、政府が一九七二年に示した憲法解釈の中に、集団的自衛権の性格を、「他国に加えられた武力攻撃を阻止することをその内容とする」としている部分がございます。私は、この部分国際法上の集団的自衛権説明としては舌足らず説明であって、その舌足らずのところがその後の集団的自衛権に関する議論を混乱させてきたのではないかと考えます。  確かに、集団的自衛権他国に加えられた武力攻撃を阻止することをその内容としています。していますが、その目的は、あくまで自国防衛であります。そこを明確にしてほしかったと思うのであります。  国際法上の集団的自衛権自国防衛のための権利であって、他国防衛のためのそれではありません。もし他国防衛のための権利だとすれば、なぜ自衛権という名前が付いているのか、説明が要ると思います。  また、例えば米国は、日米安全保障条約上、集団的自衛権に基づいて日本を守る、日本に対する武力攻撃に共同対処することになっていますが、それは、条約第五条に明記してあるとおり、日本への武力攻撃米国の平和及び安全を危うくするからであります。日本を守る権利があるから守るというのではなく、自衛権利があるから守るのであります。米国にとって、日本防衛はまさに自衛のための措置なのであります。  集団的自衛権という言葉は、個別的自衛権という言葉と同じく、七十年前、一九四五年にできた国連憲章の中で初めて使われた言葉です。しかし、その考え方自体は、これも個別的自衛権と同じく、それ以前から存在しておりました。時間の関係で詳しくは申しませんが、例えばイギリスは、一九二八年、国際紛争解決手段としての戦争を禁じた不戦条約を結ぶ際に、自衛権に関して留保を付け、世界にはイギリスの平和と安全に特別で死活的な利害関係のある地域があるが、それらの地域攻撃から守ることはイギリスにとって一つの自衛措置だと明確に述べております。  国連憲章第五十一条が集団的自衛権個別的自衛権も、どちらも国家固有自衛権だという書きぶりになっておりますのも、この権利国連憲章ができる前から存在する自衛のための権利だと認めているからではないでしょうか。  いや、その理屈は分からないではないけれども、たとえ固有自衛権だとしても、集団的自衛権海外派兵への扉を開くのではないか、あるいはそういう心配が国民の間にあるかもしれません。  実際のところ、集団的自衛権はいかなるものでも行使できないという政府の従来の説明国民に支持されたことの大きな理由には、戦前の経験と反省から、海外派兵は絶対にしたくないという国民の強い気持ちがあったのは確かだろうと私は考えます。政府は、その気持ち個別的自衛権行使の問題にまで影響しては困るので、集団的自衛権は一切行使できないとするようになったのかもしれません。  しかし、政府は今回、たとえ集団的自衛権行使を限定的に認めるとしても、海外派兵、すなわち自衛隊武力行使目的他国の領土、領海、領空に送ることは憲法一般に禁じられているとするこれまでの解釈は変わらないとしております。そして、この点に関連して安倍総理は、先月二十四日、この参議院での答弁におきまして、例えば朝鮮半島で有事が起こっても、日本北朝鮮や韓国の領域内で集団的自衛権行使して戦闘に参加することは憲法上できないと明言されているわけであります。  一般に、海外派兵は、自衛のための必要最小限度を超えるという従来の政府憲法解釈を踏襲したわけですが、これは政府国会関係にとって重要なことかと思います。と申しますのも、この解釈は、一九五四年、これは朝鮮戦争休戦の翌年になりますけれども、一九五四年に自衛隊が創設された際、この参議院全会一致で行った自衛隊海外出動を禁じる決議を踏まえたものだからであります。  海外派兵に関する従来の政府解釈を変更しないというのは、この解釈が国権の最高機関である国会の意思を反映したものであり、政府考えだけでは変えられないものであることを示していると考えてよいのではないでしょうか。だから、今回、集団的自衛権行使を容認しても、一般的な海外派兵への扉は固く閉ざされていると、そう申し上げたところで時間が参りました。  私の陳述はこれで終わらせていただきます。  御清聴ありがとうございました。
  5. 鴻池祥肇

    委員長鴻池祥肇君) ありがとうございました。  次に、濱田公述人お願いをいたします。濱田公述人
  6. 濱田邦夫

    公述人濱田邦夫君) 弁護士で元最高裁判所裁判官濱田邦夫でございます。  私は、今、坂元公述人が言われた立場と反対の立場を取るものです。その理由についてこれから申し上げます。  まず、私の生い立ちというか、ちょっと御紹介したいんですが、七十年前、私は九歳の少年でした。静岡市におりまして、戦災、戦争の惨禍というか、その状況をある程度経験しておりますし、それと駐留軍が、占領軍が、米軍が進駐をしてきて、その米軍の振る舞いというか、それも見ております。また、いわゆる戦後民主主義教育の言わば第一陣の世代ということでございます。  その後、日本戦争をしないということで経済的に非常に成長を遂げ、その間、私自身弁護士として、主として海外のビジネスに携わって国際経験というものを積んでおります。最高裁では、私のような経歴の者が最高裁に入るのはちょっと異例ではございましたけれども、それなりにいろいろ貴重な経験をさせていただきました。  今回、こちらの公聴会意見を述べさせていただくバックグラウンドというものを一応紹介させていただきました。  安倍総理大臣がこの特別委員会で申されていることは、我が国を取り巻く安全保障環境が著しく変わっていると、そのために日米の緊密な協力が不可欠だということをおっしゃっています。そのこと自体についてはいろいろ考え方があり得るので、戦後、昭和四十七年に政府見解というのが出ておりますけれども、その当時は日中国交回復沖縄返還に続いて日中国交が回復したというような状況で、冷戦体制というものがありましたので、その状況と比較してもう全然違うという認識がよろしいのかどうか疑問があるところだと思います。  それから、その次に安倍総理がおっしゃっていることは、今の子供たちや未来の子供たちへと戦争のない平和な社会を築いていくことは政府の最も重要な責務だと、平和安全法制憲法第九条の範囲内で国民の命と平和な暮らしを守り抜くために不可欠な法制であるとおっしゃっているのですが、趣旨は全く賛成でございます。  私も四人孫がおりまして、今日ここにいるというのも、この四人の孫のみならず、その世代に自由で平和な豊かな社会を残したいという思いからでございますが、憲法九条の範囲内ではないんじゃないかというのが私の意見でございます。  その根拠としては、一つ挙げられることは、我が国最高裁判所というところは、成立した法律について違憲であるという判断をした事例が非常に少ないと。ドイツとかアメリカは割合頻繁に裁判所憲法判断をしておるわけですけれども、日本はしていないということを海外に行きますとよく聞かれます。その理由は、日本最高裁判所は、アメリカ最高裁判所と同じように具体的な事例に基づいての憲法判断ということで、抽象的に法令の合憲性判断する、いわゆる憲法裁判所とは違うということにあります。  なぜ日本では裁判所に、司法部憲法判断が持ち込まれないかというと、これは、今はなきというとちょっと大げさですけれども、内閣法制局というところが六十年にわたって非常に綿密に政府提案の合憲性審査してきたと。この歴史があったがゆえに、裁判所の方はそういう判断をしないでも済んだということがございます。  今回の法制については、聞くところによると、この伝統ある内閣法制局の合憲性のチェックというものがほとんどなされていないというふうに伺っておりますが、これは、将来、司法判断にいろいろな法案が任されるというような事態にもなるのではないかという感じがします。  それと、今の坂元公述人のお話を聞いていますと、大丈夫だ、これで最高裁違憲判断をするわけないとおっしゃっていますが、私がここに出てきた一つの理由は元最高裁判所裁判官ということですけれども、これは、裁判官、私も五年間やりましたが、そのルールというか規範として、やはり現役の裁判所裁判官たちに影響を及ぼすようなことは、OBとしてはやるべきではないということでございます。  私がこの問題について公に発言するようになったのはごく最近でございます。それは、非常に危機感がございまして、そういう裁判官を経験した者の自律性ということだけでは済まない、つまり日本の民主社会の基盤が崩れていくと、言論の自由とか報道の自由、いろいろな意味で、それから学問の自由、これは、大学人がこれだけ立ち上がって反対をしているということは、日本の知的活動についての重大な脅威だというふうにお考えになっているということがございます。  それで、本来は憲法九条の改正手続を経るべきものを内閣の閣議決定で急に変えるということは、法解釈の安定性という意味において非常に問題がある。つまり、対外的に見ても、なぜ日本憲法解釈が安定してきたかということは、今言ったように、司法判断がありますが、それを非常にサポートするというか、内閣の法制局の活動というものがあったわけですけれども、これが一内閣の判断で変えられるということであれば、失礼ながら、この内閣が替わればまた元に戻せるよということにもなるわけです。その点は、結局は国民の審判ということになると思います。  法理論の問題としては砂川判決とそれから昭和四十七年の政府見解というのがございますが、砂川判決については、御承知のように、元最高裁判所長官の山口繁さんが非常に明快に述べておりまして、それと、私自身アメリカ・ハーバード・ロースクールで勉強した身として、英米法の論理のレイシオ・デシデンダイという、つまり拘束力ある判決理由と、それからオビタ・ディクタムという、つまり傍論、そういうことは、日本に直接は適用がなくても、基本的には日本最高裁判所判決についても適用されると思っておりまして、砂川判決の具体的事案としては、駐留軍米国の軍隊の存在が憲法に違反するかということが中心的な事案でございまして、その理由として、自衛権というものはあるという抽象的な判断、それから統治権理論ということで、軽々に司法部が立法府の判断を覆すということは許されないということが述べられておりますけれども、個別的であろうが集団的であろうが、そういう自衛隊そのもの、元は警察予備隊と言っていた、そういう存在について争われた事案ではないという意味において、これを理由とするということは非常に問題があるということでございます。  それから、昭和四十七年の政府見解につきましては、お手元に、重複になるとは思いましたけれども、お配りした資料というのがございますが、それを見ますと、カラーコピーで赤い判こが出ていますけれども、この関与した吉國長官とか真田次長、総務主幹、それから参事官、そういった方々国会でも証言しているように、このときには、海外派兵というか、そういった集団的自衛権というものそのものは政府としては認められないと。それと、内閣法制局なりその長官の意見というのはあくまで内閣を助けるための判断でございまして、そのアドバイスに基づいて歴代の内閣が、総理大臣が決定した解釈でございます。  それで、今回私も初めて目にした資料が、そのとき防衛庁というところが「自衛行動の範囲について」という見解をまとめて、それを法制局の意見を求めたということでございまして、手書きのところには防衛庁とありますが、ワープロに打ち直したところは防衛庁という記載がございませんけど、いずれにせよ、これは防衛庁のものとして認められて、そのとき国会にも出されております。  この四十七年の政府見解なるものの作成経過及びその後の、その当時の国会での答弁等を考えますと、政府としては、明らかに外国による武力攻撃というものの対象は我が国であると。これは日本語の読み方として、普通の知的レベルの人ならば問題なく、それは最後の方を読めば、「したがって」というその第三段でそこははっきりしているわけで、それを強引に外国武力攻撃というのが日本に対するものに限られないんだというふうに読替えをするというのは、非常にこれは、何といいますか、法匪という言葉がございますが、つまり、法律、字義を操って法律そのもの、法文そのものの意図するところとは懸け離れたことを主張する、これはあしき例であると、こういうことでございまして、とても法律専門家の検証に堪えられないと。  私なり山口元長官が言っていることは、これは常識的なことを言っているまでで、現裁判官、現裁判所に影響を及ぼそうということじゃなくて、普通の一国民、一市民として、また法律を勉強した者として当然のことを言っているまででございますので、私は、坂元公述人のように、最高裁では絶対違憲判決が出ないというふうな楽観論は根拠がないのではないかと思っております。  それで、時間が限られておりますのでそろそろやめなければなりませんが……(発言する者あり)大丈夫ですか。  このメリットとデメリットのところで、抑止力が強化されてということですけれども、御承知のように、韓国、北朝鮮中国その他、日本の武力強化等については非常に懸念を示しております。そういう近隣諸国の日本たたきというか、根拠がない面がかなりあるとは思いますが、それは国内的な事情からそれぞれ出てきている面が非常に強いわけですから、それに乗っかってこちらがこういう海外派兵、戦力強化というか、こういう形をしますと、それを口実にして、それらの近隣諸国たちが自分たちの国内政治の関係で対外脅威を口実として更にそういった挑発行動なり武力強化をすると。  つまり、悪循環になるわけで、これは今の中東で問題になっておりますところのイスラミックステートに米国始め有志国が束になって爆撃をしてもすぐに収まらないということを見ても分かるように、このようなものは戦力で解決するものではなくて、日本は、この戦後七十年の中で培った平和国家としての技術力とか経済力とか、それから物事の調整能力ですね、これはつまり戦力によらない形で世界の平和、世界の経済に貢献していくと。この基本的なスタンスを守る方がよほど重要なことでございまして、今回の法制が通った場合には非常に、在外で活動している、人道・平和目的のために活動している人のみならず、一般の企業も非常にこれはマイナスの影響を受けるということで、決してプラスマイナスをした場合に得になることはないというふうに思います。  それで、英語では政治家のことをポリティシャンとステーツマンという二つの言い方がございまして、御承知のように、ポリティシャンというのは、目の前にある自分や関係ある人の利益を優先すると。ステーツマンというのは、やはり国家百年の計という、自分の子供、孫子の代の社会の在り方というものを心して政治を行うと。どうか、皆様、そういうスタンスからステーツマンとしての判断をしていただきたいと思います。  国際的には、今度の法制についても、その論理的整合性とかそういうことが問題にされ得るわけですから、まして、日本人の中でまだ全体が納得していないような状況で採決を強行するということは、日本という国の国際的信用の面からも問題があるのではないかと。  私は、政治家の皆様には、知性と品性とそして理性を尊重していただきたいし、少なくともそれがあるような見せかけだけでもこれはやっていただきたいと。それは、皆様を選んだ国民の方にも同じことだと思います。  そういうことで、是非この法案については慎重審議されて、悔いを末代に残すことがないようにしていただきたいと思います。  ありがとうございました。
  7. 鴻池祥肇

    委員長鴻池祥肇君) ありがとうございました。  次に、白石公述人お願いいたします。白石公述人
  8. 白石隆

    公述人白石隆君) 白石でございます。  実は、私、八月の上旬、国際政治、国際法の研究者を中心としまして、安全保障法制考える有志の会、私が世話人ということで、全会派に要望書を提出しております。これは、ちょうど衆議院で議論が終わった直後のタイミングでございますけれども、そのときに我々が申し上げたことは、安全保障法制について参院で議論されるときには、憲法の問題に加えて、是非以下のような問題について議論していただきたいということで、六点問題を提起しております。  それは、第一に、抑止力というのをどう考えるのか。二番目に、日米安全保障体制における日本アメリカの役割分担をどう考えるのか。日米同盟維持発展させるためには何をすればよいのか。オーストラリア、韓国等、アジア太平洋の国々とどのような安全保障協力を進めていけばよいのか。第三番目に、台頭する中国に対してどう対応するのか。いかに中国に関与し、いかにそのリスクをヘッジすればいいのか。第四番目に、使える核兵器を持ちつつある北朝鮮脅威にどう対処すればよいのか。第五番目に、日本のエネルギー供給を支える中東湾岸からインド洋、マラッカ海峡、南シナ海、東シナ海を経由して日本に至るシーレーンの安全保障確保するためには何をすればいいのか。最後に、アジアそして世界の平和と安全のために我々は何をすればいいのか。  正直申しまして、安全保障法制考える有志の会に参加された人たちの中にも安全保障法制についてはいろんな考え方があるということは、これはよく承知した上で、私は皆さんと協議の上、こういう要望書を提出いたしました。それは、ひとえに、この安全保障法制の問題というものを憲法論、法律論だけで議論されると、肝腎の安全保障そのものの議論がお留守になるのではないかと、そういう懸念からでございます。  私自身はこの法制に賛成でございますが、今申し上げましたように、安全保障法制考える有志の会の皆さんにはいろんな考え方があることを承知しておりますので、私としましては、私個人として、今日は、今申し上げたような要望書に記しております論点について、画一ではない、一つ一つではありませんけれども、全体として私がどういうふうに考えているかということを申し上げたいと思います。  まず最初に、ごく基本的なことから始めさせていただきたいと思います。それは、安全保障とは何かということでございます。  安全保障の定義においては、誰があるいは何が、誰のあるいは何の安全を、誰からあるいは何から守るのかと、誰が誰の安全を誰から守るのか、この三つの要素がございますが、過去七十年を、第二次大戦以降を見ますと、このそれぞれについて範囲は次第に拡大しております。  ただ、今日の議論に関わることで申しますと、国が、あるいは国家が、その国の国民国家の安全を様々の脅威から守ることというのが、これが恐らく一番単純な安全保障の定義だと思います。あるいは、憲法の文言を使えば、日本国民国家であります日本国が、国民の平和のうちに生存する権利国民の生命、自由及び幸福追求権利を守る、また、そのための前提として様々の脅威から国家の独立を守る、これが安全保障ということの一番根本にある意味だろうと思います。  その手段には、当然のことながら、外交から国際協力、治安活動、海上警備活動、防衛活動まで様々でございますが、そこで一つ非常に重要な考え方としては、外交によって日本にとり望ましい国際関係をつくり維持する、これ当然のことで、これがある意味では一番重要ですが、同時に、もう一つ抑止力という考え方があります。  そこで、抑止力というのは、これもまた少し定義めいたことを申しますと、ある国あるいはある集団がある行動を取ろうと考えたときに、そういう行動を取っても所期の目的が達成できない、あるいは、目的は達成できるかもしれないけれども、人的、物的コストが非常に高くて結局思いとどまる、そういう力を持っているときに抑止力があるというふうに一般的に言えるだろうと思います。ということは、別の言い方をしますと、抑止力というのは能力でございますが、同時に、期待に働きかけるものであるということでございます。  防衛というのは、この抑止力のための手段でございます。日本では、サンフランシスコ条約に署名し日米安全保障条約を締結して独立を回復して以来今日まで、日本国民日本国の安全を守るために、自助と共助、この二つの手段によってこの抑止力ということを確保してきたというふうに言えると思います。  そこで、自助というのは、外からの攻撃や脅迫を排除するために適切な自衛力を保持し行使できるようにしていくことということでございまして、そういう能力を持つためには、現在議論されておりますように、括弧付き、いわゆるグレーゾーン、つまり、治安行動、海上警備行動から防衛行動に至るあらゆる事態に切れ目なく対処できる法制度の整備が必要だということになります。  共助ということで、もちろん第一義的に重要なのは、これは日米安全保障防衛協力でございます。  ただ、ここで一つ是非申し上げておかなければいけないことは、自助と共助というのは、これは連動しておりまして、日本自衛の能力が高まれば、日本に対する期待も高まり、防衛協力の実効性も高まります。その意味で、日米安保条約あるいは日米安全保障防衛協力の基礎には、能力と期待と信頼があると。この三点セットがないと、実は日米同盟というものは決して安心できるものにはならないんだということでございます。  また、それ以外の共助の仕組みとしましては、これは、多くの場合、第二次大戦以降、アメリカを中心としてバイの安全保障条約、基地協定の束として、言わば扇のような形で、このアジア太平洋にはいわゆるハブとスポークスの地域的な安全保障のシステムがございますが、これを前提として、ASEAN地域フォーラムだとか、あるいはASEANプラスの防衛大臣会合だとか、東アジア首脳会議といった信頼醸成、予防外交の仕組みが徐々につくられておりますし、それから、最近では、太平洋からインド洋に至る非常に広大な地域における安全保障協力の進展によってハブとスポークスの地域的な安全保障システムは次第にネットワーク化し、これが共助の仕組みとしてもますますこれからは重要になるというふうに考えております。  では、どうして今こういう安全保障法制というものを整備する時期に来ているんだろうかと。私は、大きく三つの安全保障環境の変化ということが指摘できると思います。  一つは、これは力のバランスの変化ということでございます。  例えば、G7というものがございまして、二十世紀にはG7というのは極めて重要な役割を果たしましたけれども、G7の世界経済に占めるシェア一つ見ましても、一九九〇年から二〇〇〇年に大体世界経済の六五ないし六六%を占めておりましたが、二〇二〇年には四五%を切るところまで下がってくると。同時に、アジアだけを見ますと、例えば二〇〇〇年、十五年前には、日本の経済の規模というのは中国、韓国、ASEAN十か国全部合わせた経済の二倍ございましたが、もう二〇一八年くらいになりますと、中国の経済は日本、韓国、ASEAN十か国全部合わせた経済よりも大きくなります。そのくらい急速にパワーバランスというのは変わっております。  ただし、日本アメリカの経済を合わせれば、これは二〇二〇年代を通じてこのパワーバランスというのは崩れることはございませんし、これにオーストラリア、インド等との協力をもっと強化して、ハブとスポークスの地域的な安全保障システムのネットワークを進めればこの安定というのはますます確保できることになる、これが第一点でございます。  二つ目は、安全保障空間の拡大と軍事技術の革命でございます。  かつて憲法が制定されました頃には、安全保障空間というのは、これは陸と海と空、この三つの空間から成っておりましたが、現在は陸、海、空、宇宙、サイバーというふうに安全保障空間が拡大しておりまして、また、現在のサイバー化あるいは情報化と無人化の趨勢、これはロボットの趨勢、あるいは防衛においてネットワークを中心とした統合的なシステムということがますます重要になっているということが、これが一番重要なことでございます。  ここで重要なことは、日本防衛システムにおきましては、このネットワークを中心とした統合的なシステムというのは日本だけでは完結していないということでございまして、これは、これから日米安全保障協力防衛協力がますます進展し、特に相互運用性が向上しますと、このネットワークを中心とする統合的なシステムが日本で完結することはほぼあり得ないというふうに考えた方がいいと思います。つまり、別の言い方をしますと、このネットワーク中心のシステムというのは、これは日本アメリカと共用しているわけでございまして、このネットワーク中心のシステムを守る上では実は個別的自衛権集団的自衛権ということを区別すること自体意味がございません。  こういうことを考えるためには、一つだけ例を挙げますが、このネットワーク中心の統合システムというのは例えば宇宙における衛星に非常に多くを依存しておりますが、この衛星が破壊されただけでこれは日本防衛にとって非常に大きな脅威になります。こういうことを一つ考えただけでも、法律上、個別的と集団的というのを形式的にきれいに区別することはできるかもしれませんが、現実の問題としてはこういう区別はほとんどもう意味を成さなくなっているということが、これが二つ目に申し上げたいことでございます。  それから三番目に、安全保障の領域そのものが、いわゆる伝統的な安全保障から非伝統的な安全保障、これは海賊であるとか人身売買だとか麻薬だとかサイバーだとかこういうもの、それから、さらには人間の安全保障ということで伝染病だとか災害だとか、こういうふうに非常に拡大しておりますが、そういう中で我々がこの十五年確実に学んだことというのは、失敗国家だとか破綻国家というものは世界のどこか遠いところにあって、日本安全保障とは関係のないことなんだというふうには言えなくなってきていると。  その意味で、失敗国家、破綻国家における平和構築、復興支援、こういうものは単に、あるいは世界の平和と安定にとってだけではなくて実は日本の安全にとっても極めて重要な問題であって、これについて日本として、これはよそ様のことでうちには関係ないから知りませんということを言うことはもうできない時代になっているというのが、これが三番目でございます。  繰り返します。  日本の安全というのは、これは世界の安全と平和があって初めて守ることができます。そのためには、外交、国際協力から海上警備活動、防衛活動まで様々の手段がありますし、態様がございます。その中で防衛というのは非常に重要な一つの手段でございまして、日本は第二次大戦後、独立を回復して以来、これを自助と共助の組合せでやってきました。その基本にありますのは抑止という考え方でございまして、自助と共助によって戦争をしないようにする、日本存立を脅かされないように、そういう期待をつくり上げていくということが実は極めて重要なことであります。  ただ同時に、今もう既に申し上げましたように、安全保障環境というのは極めて急速に変わっておりまして、これについてやはり具体的な議論をし、その上で対応をし、法制度を整備しないと、なかなか日本として対応できないところにもう来ているのではないだろうかというふうに私は考えております。憲法の問題は、私は、率直に申しまして最高裁判断に仰げばよろしい問題でございまして、是非先生方には、今、日本安全保障確保するためにいかなる法制度をつくることが有効であるのかということを是非考え議論していただきたいと思います。  どうもありがとうございました。
  9. 鴻池祥肇

    委員長鴻池祥肇君) ありがとうございました。  次に、小林公述人お願いをいたします。小林公述人
  10. 小林節

    公述人小林節君) 私は、反対の立場から立論させていただきます。  先ほど濱田先生も論及をされましたけど、私もメディアを通して国会の論戦を見ておりましたが、何か、当たり前の話が多数派によって無視され続ける、不思議というか気持ち悪いというか、すごく心の据わりの悪い体験をしております。私がこれから申し上げます日本語が多数派の先生方のお心に届くことを願って、発言を続けます。  まず、レジュメが一応ありますので、これが流れの筋ですが、平和安保法案戦争法案かラベリングの争いがありましたけれども、こんなことで争っているのは本当ばからしくて、現時点でも現行法制度の下で平和と安全保障確保されているんですよね。私もそれは高く評価しています、専守防衛の。  この法律ができることによって法状況として何が変わるか。それは、現時点でこの法案が通って成立もしていない以上、どう頑張っても自衛隊を兵隊、軍隊として海外派兵することはできないんですよね。それが、今度の法律ができ上がると、内閣の判断自衛隊海外へ派兵できるんですね。これが一番決定的な法状況の変化です。  ですから、不戦の状況から戦争可能状態に入る。だから、人によっては戦争準備法案と呼んでおられますけど、私は、端的で一番分かりやすく言えば、戦争法案以外の何物でもないんですね。これを目くじら立ててレッテル貼りだと怒る方がなぜそういう状態になるのかが、私ははっきり言って気持ち悪いと思います。  真面目な議論をさせていただきたいと思います。  それで、なぜ現在、自衛隊が外へ出せないか。これは自民党がずっと確立してきたことでありまして、私はその常識を共有しておりますが、憲法九条というのは、敗戦国日本がやはりまだ信用されていないときに、確かに、押し付け憲法であれ何であれ、いきさつは今日は論じません、私は、押し付け憲法論、そのとおりだと思いますが、とにかく我々が受け取ったことは間違いない事実なんです。現に有効で、機能している。だから、この国会も、貴族院ではなく参議院として存在しているわけです。  一項についてはいろいろ争いがありますが、よく自民党の憲法調査会の中で、二項さえ取り払ってしまえば楽だよねという議論がずっと出ていました。それは、つまり二項が邪魔になっているから、二項は露骨に、法律というのは言葉で語っているわけでありまして、陸軍、海軍、空軍その他の戦力は持てない。だから、海軍を持てないから、警察予備隊という第二自衛隊をつくって、名前を変えて海上自衛隊と呼んでいるんですね。これは、戦争の道具として国際基準のものは持てないと書かれているわけです。その後、追うようにして九条の二項の後段で、交戦権、これは国際法上の戦争をする国家としての法的資格も自ら閉じているわけです。  そして、七十六条の二項で、制度として軍法会議を持てない。軍というのは、殺すこと、壊すことが勲章につながる特殊な世界でありまして、町中ではそれは刑事事件です。そういう特殊な法体系で運用しないと軍隊というのは使えない。だから、軍隊を持っている国は軍法会議をやるのは当たり前の話でありまして、このように我が国は軍隊を持てない。  じゃ、どうするか。万一、当時まだ冷戦時代でしたから、アメリカが朝鮮動乱で出ていった後、もし、イデオロギーとして、国の使命として、日本を共産化するために軍事力行使してもいいと憲法論的に読める国があったわけですよね、強大な国が、そういう国が入ってきたらどうするか。それは、法的には警察であるが、軍隊のごとき腕力を持った第二警察である自衛隊によって、だけど、国際法上、周辺以外は使えませんから、自国のテリトリーと周辺領域を使って追い返す専守防衛という憲法原則が自民党内閣によって確立されたわけですよね。その応用型としての、だから、海外派兵の禁止と、それから海外における他国武力行使と一体化しない。これを歴代自民党が確立してきたことで、私もこれを何とか突破できないかと冷戦時代は考えました。ソ連という国が怖かったんで。  だけど、今はまた状況が違ってきているわけでありまして、そこで、今行われているということは、先ほどの濱田先生の話とまた重なりますが、私に言わせれば、一見明白に違憲法律が多数決で強行されようとしている。これは統治行為論をもってしても違憲判決出し得るケースだと思いますけれども、この合憲違憲論争はもう我々としては、何というか、飽きたというか、ばかにして見ているというか、これはもう違憲性は明々白々に立証されたからこれ以上我々は語らないというスタンスに今なりつつあるんですけれども。  これは、改めて申し上げますと、憲法九十九条、憲法尊重擁護義務というのがあるんですね。権力者も人であるから間違いを起こし得る、昔の王様のように神ではないから、改めて法で規律させていただきますという合意で、ジョージ・ワシントンが成文憲法というものを作ってくれたわけですけれども、それを我々は学んで輸入して、自らの道具として使っているわけですけれども。  最高権力者、それは総理大臣もある意味最高権力者、国会も国権の最高機関、こういうところで明々白々に違憲なものを平然と押し通すということは、憲法九十九条違反という、立憲主義の冒涜だとかいうそういうきれいな表現以上に、これは、最高権力がいかなる法的規律も受けない、つまり、憲法というのは国のあるじたる主権者国民が権力担当者に課した制約であるわけですから、それを権力担当者が預かっているだけにすぎない、表現は悪いけれども、国の雇われマダムにすぎない政治家たちが憲法を無視するということは、今後、何でもできますよ、独裁政治の始まりなんですね。我々が常々おかしいと批判している北朝鮮と同じ体制。信じ難いような話であります。だから、私は、こんなこと得意じゃないんですけれども、黙れないからしゃべっているわけであります。  それから、この法案を正当だという方は、白石先生もおっしゃいましたけれども、憲法論だけで論ずるな、安全保障ということを忘れるな、必ずおっしゃるんですね。だけど、そう言っている方は、憲法論をすっ飛ばして、安全保障論だけ。つまり、これも、伝統の自民党の確立してきた必要最小限防衛行為は憲法が許容する必要最小限、最小限を吹っ飛ばしちゃっているんですよね。必要なら何でもできるという議論。これでは、法治国家でも立憲国家でも何でもないんですよね。  だから、憲法だけで論じるなというお言葉は、私は明確に反対しておきます。まず憲法で論じて、憲法内でできることを追求して、今そうじゃないですか、専守防衛。十分この国は守られているじゃないですか。それで足りないところはどうするか。決まっているじゃないですか。自民党の党是じゃないですか。私はそれにくみしておりましたけれども、憲法改正提案してくださいよ。それで論争して、それを国民が認めたら、今回提案されているようなものはできるわけでありまして、それをやらないと、かつては裏口入学とか、あれは別の文脈で申し上げましたが、これはもう何というか、正門の突破ですよね。入ってはいけない閉じられた門を蹴破って入ってきているようなものでありまして、これは国民主権国家に対する大変な無礼な話であります。  それから、安全保障論を言うのであれば、私は、この法案、決して賢い法案だと思っておりません。  まず、世界戦争を巨視的に見ると、キリスト教グループとイスラム教グループの歴史的恨みの泥仕合みたいになっています。日本はどちらの文明でもないんです。中東では、気のいいお金持ちで、結構マナーのある民族で、優遇されていたわけです。それが、アメリカ、すなわちキリスト教側の親玉の二軍として戦争に参加したら、テロの対象になるじゃないですか。ワシントンDCやニューヨークやロンドンやパリやマドリードがテロに襲われた事実を忘れていただきたくないと思います。  それから、アメリカという国は、私はアメリカで、私もハーバードで訓練を受けてハーバードで働いたこともある男なんですけれども、アメリカという国は、戦争を続け、続け、続けて破産した状態にある国で、年に必ず一回は公務員の給与が遅配するじゃないですか、借金の限度額を超えて。あれは戦費破産の国なんですよ。だから、アメリカの当局者は何人も私に言いました、英語で。いつ日本アメリカが与えた憲法九条を改正してアメリカとともに戦争できる国になってくれるのかねと。僕は改憲論者として登録されてますから。  つまり、肩代わりを求めているんですね。なぜ我が国が、ただでさえ危ない我が国が危険を冒して戦費破産のお付き合いしなきゃいけないんですか。やたら特定の企業の経営者たちが安倍内閣になびいておりますが、それはやはり軍事の下請産業でもうかるからかなと邪推してしまいます。  それで、これも解釈の論争の問題ですけど、大きな勘違いが行われていると思います。  確かに、一見、憲法を動きのない形で見ると、憲法解釈の最終決定権は最高裁にあるように見えます。それは、裁判沙汰になった限りではそこで止まるんです、当事者の間では。アメリカ憲法の運用実態を見れば、止まりません、そこで。つまり、政府がおかしなことをした、そしてその法律が施行されて事件になった、そうしたらその関係者がそれをもって訴え出た、そして最高裁違憲判決を下した、あるいは合憲判決を下した。最終的には、まさに統治行為論が言っているように、一次的には、その現場においては、まず政府国会のしたことがまかり通りますよ。で、裁判になったら、最高裁の言ったことでその当事者が関係を決められますよ。だけど、その流れを見ていた主権者国民が、それっていいかな、よくないと思ったら、それをまかり通した政府を倒そうという動きもあるし、大体頑固な最高裁がいけないんだ、最高裁の構成を変えてしまえ、現にあった話です。国会が強気になって、じゃ、裁判所法を改正して好意的な裁判官を増やせば多数決逆転するじゃない、そこまでアメリカでは具体的に提案されるんです。  そういうことを含めて、我々主権者国民が今回の行いをきちんと見て、どちらが、何というか、政治のマナーにかなっているかの話であります。これはマナーのレベルの話です。  そういう形で、まずは次の参議院選挙、そして最終的には政権交代の懸かる衆議院選挙で主権者国民が賢い判断をすると私は思っていますし、私はそれまで鳴きやまないつもりでおります。  それで、あと二点、図らずも専守防衛の結果、我々は七十年間、こんな大国が戦争をしないという不思議な実績をつくりました。これがアメリカの二軍になって、どうやって安全保障理事国に入るんですか。無理ですよ。中国、ロシアが許さないじゃないですか。むしろ、非戦の大国として、平和の調整役として入るというならあり得る話だと私は思います。  それから、中国脅威北朝鮮脅威ですけれども、北朝鮮は抜けないたけみつのようなものでありまして、煩わしくはありますが、あの恫喝政治はきちんと専守防衛を構えて無視すればいい。それから、中国も、立国時代の、建国時代の三倍の国土を持っています。モンゴル、ウイグル、チベット、これは非武装地帯だから入っていっちゃったんです、事実上。ベトナムには入っていって蹴り出されました。それから、台湾は、武力解放、武力解放といって、全然手が出ません。なぜならば、台湾も徹底した専守防衛アメリカとのパイプで守られています。  日本も同じです。中国は入れるところには入っていきます。入れないところは周りで騒ぎます。煩わしくはあります。だから、もう少し冷静に中国脅威というものを見詰めて、冷静に見詰めて、この議論も結論は主権者国民が決めればいい。今のでは主権者国民に決めさせてないですもの。冷静に議論を積み重ねて、主権者国民に納得ずくで決めさせていただきたい。  以上です。
  11. 鴻池祥肇

    委員長鴻池祥肇君) ありがとうございました。  次に、松井公述人お願いをいたします。松井公述人
  12. 松井芳郎

    公述人松井芳郎君) 松井でございます。  私は、今までの先生方とちょっと毛色が変わりまして、国際法観点から問題を提起してみたいと思います。  つまり、もう先ほどからさんざん御議論ありましたように、今回の法案の中心的な論点は集団的自衛権でありますが、集団的自衛権というのはすぐれて国際法上の概念でありまして、国際法からの議論が十分なされていないということは大変残念であり、また危険なことではないかというふうに思っているからであります。  ただ、時間が極めて限られておりますので、集団的自衛権との関係で今回の安全保障法案の全容を検討するというふうなことはとてもできません。したがいまして、一応レジュメごときものを皆さんに差し上げてありますが、そして、それは何となく起承転結、体系的に整理したように書いてありますけれども、これは大学の教師を長くやっていた者の悪い癖で、こういうふうに整理しないと頭がうまい具合に働かないということがあります。したがいまして、時間の関係もありますので、特に国際法上の議論で気になりましたことを集団的自衛権を中心にしてお話をする、一応筋書としてはこのお配りしたレジュメの筋に従ってお話をさせていただく、こういうことにしたいと思います。  まず、集団的自衛権という考え方の登場でありますが、これは最初に坂元先生も少し触れられたわけですけれども、一九二八年の不戦条約の頃に遡ります。そもそも、自衛権ということは、大昔から言わば言われてきたわけでありますが、二十世紀の初めぐらいまでは、伝統的国際法と我々呼んでおりますが、必ずしも戦争に訴えること、武力を用いることが禁止されておりませんでした。したがって、武力を用いる、戦争に訴えるときに、わざわざ自衛権というのを法的な正当化の理由として主張する必要はなかったわけですね。したがって、その伝統的な国際法の時期に自衛権と言われたのは、武力を用いることの政治的ないしは道義的な正当化であったと考えてよろしいかと思います。  本格的に武力行使戦争を違法化するという動きは国際連盟から始まりますが、侵略戦争を全面的に禁止するというのは一九二八年の不戦条約が初めてのことでありまして、したがって、法的概念としての自衛権が本格的に議論されるようになるのも不戦条約を契機としてであります。  そして、その段階で早くも集団的自衛権考え方、その言葉自体は出てまいりませんが、原型が登場しまして、その一つが、先ほど坂元先生が挙げられましたイギリスの態度表明ですね。要するに、大英帝国にとって死活の利益に関わるような地域に対する攻撃に対しては自衛権を発動するという考え方でありますが、これは、具体的にイギリス地域名を挙げませんでしたけれども、エジプト・スエズ運河地域を想定していたと言われまして、つまり、これは当時のインド大陸に伸びる大英帝国の利益を守るために不可欠の場所だと考えられていたからであります。  それからもう一つ、米国も、モンロー主義は自衛権で正当化できるんだというふうに言いました。御存じのように、モンロー主義というのは中南米を言わばアメリカの勢力範囲として確保する政策でありますが、これを一種集団的自衛権のような考え方で正当化しようとしたわけであります。  この二例は実は割合外国の教科書等でも登場するんですが、余り気が付かれていない、私も実はごく最近気が付いたんですけれども、日本の場合も全く同じ考え方を出しておりましたので、レジュメの方にその部分を抜き書きをしておきました。一九三二年の日満議定書の中に、もう読み上げませんけれども、レジュメに書いたような規定が入っている。御存じのように、満州国というのは日本中国大陸に進出していく過程でつくった、まあ教科書的にはかいらい国家であります。  こういうふうに見てまいりますと、そもそも集団的自衛権という考え方は先進国が海外の帝国主義的な権益を守るために考え出された概念であるということをやはり出発点として押さえておく必要があるわけでありまして、これを今の時点で日本が改めて行使可能であるという議論をすることは、日本の国の方向性としてそういう危険な方向に向く可能性があるのではないかということが危惧されるわけであります。  これは歴史論でありますが、次に、国連の集団安全保障体制の中における集団的自衛権のことについて少し考えてみたいと思います。  これも昨今の議論でほとんど注目されていないことでありますが、国連憲章の基本原則は武力行使の禁止でありまして、これは国連憲章の中でも最も重要な原則であるというふうに考えられております。多くの学者が、これは強行規範である、つまり、個別国家条約などを結んで、それに反する約束をすることはできないような高い地位を占める規範であるというふうに考えているわけです。したがって、武力行使が認められる場合というのは、その基本原則への例外という位置付けになります。  この例外は二つございます。個別的にはほかにもいろいろ議論はありますが、国際社会国連憲章上も認められている例外としては、一つは個別的、集団的自衛権、もう一つは安保理事会の決定に従った集団安全保障の強制措置の場合であります。この二つだけが例外ということになります。したがって、例外ですから、これはできるだけ厳格に解釈するというのが出発点になろうかと思います。  ちなみに、今回の議論でも時々言及されますが、御存じのように、憲章五十一条は、自衛権のことを固有権利、これは英語の正文の翻訳ですが、フランス語の正文を訳しますと自然権という表現になります、そういう言い方をしております。したがって、非常に重要な基本的な権利であるという印象を与えがちでありまして、そういう趣旨で今回の議論の中でも引用されることがあるんですが、そういうわけではないというのが多分通説的な理解だろう。これは、自衛権は慣習法上の権利であるということを確認した以上の意味は持っていないというのが一般的な理解であります。むしろ自衛権は、原則としての武力行使禁止、その違法性を阻却する違法性阻却事由というふうに考えるのが、例えば国際司法裁判所などの立場から導かれる結論かと思っております。  しかも、この場合の武力行使禁止原則の例外でありますが、国連憲章二条四項は武力行使と武力による威嚇を禁止しておりますけれども、その禁止の違反の全てが自衛権の発動を可能にするわけではないということに留意をしたいと思います。  これもレジュメに挙げておきました、国際司法裁判所の有名なニカラグア事件の判決でありますが、武力行使を二つに分けまして、一つは、武力攻撃を構成するような最も重大な諸形態、もう一つは、例えば国境地帯の小競り合いのような、他のより重大ではない諸形態、二つに分けまして、自衛権の発動が可能なのは前者だけであるということが確認されてきております。  そういう国際社会議論を見ておりまして、やや不思議に思っておりました点を二点挙げたいと思いますが、一つは、何か首相はこれを撤回されたと今朝ほど聞いたんですけれども、ホルムズ海峡の機雷封鎖について集団的自衛権行使するという議論がかなり一般的に行われてきたような印象を受けております。ただ、この場合に、機雷封鎖、どの国がどの国に対して機雷封鎖するかという議論がほとんどされなかったような感じがいたしますが、いずれにしても、海峡の機雷封鎖は、憲章の言葉で言えば、武力による威嚇ではあるかもしれませんが武力攻撃ではない、現実に武力が使われているわけではないわけですね。これに対しては、したがって個別的であれ集団的であれ自衛権行使することはできない。もちろん、国際海峡の自由な通航を妨げますので違法行為ではあろうかと思いますが、それに対処するのは武力以外の別の方法で対処するというのが筋だろうと思いまして、ここの議論にもずっと違和感を感じておりました。  それから、文脈はちょっと異なりますが、集団的自衛権行使の例として当初から挙げられていたのは、紛争が起きてその紛争地帯から日本人を退去させるためにアメリカの軍艦に乗せて連れて帰る、そのときに、アメリカの軍艦が攻撃されたときに反撃する必要があるということがずっと閣議決定の頃から例として挙げられておりましたが、軍艦というのは武力紛争時には合法的な攻撃目標になります。したがって、これで民間人を退避させるということはおよそ考えられないことでありますし、アメリカ筋の話でも、外国人の民間人を退去させるというようなことは考えていないというふうな報道もございました。これも集団的自衛権の絡みではおかしな話だなという印象を持っておりました。  それから、次のもう一つの例外としての集団安全保障の強制措置でありますが、御存じのように、国連憲章が予定しております国連軍は正規にはできておりませんので、今までのところ、集団安全保障の強制措置に似た形が取られておりますのは、一つは、いわゆる多国籍軍に対して安保理事会が武力行使を許可するというスタイルであります。それからもう一つは、平和維持活動に対して武力行使の権限を与えるという形でありまして、今回の法案では、このいずれについても日本が従来に比べてより積極的に参加するという方向が積極的平和主義の名の下に追求されているように見受けられます。  ただ、ここで気を付けなければならないのは、多国籍軍への協力もしばしば国連協力という形で議論されますけれども、多国籍軍の行動については安保理事会は統制を及ぼしませんので、これは国連の行動ではなくて個々の多国籍軍参加国の行動だということになります。したがって、これは国連協力ではなくて、多国籍軍を送っている他国に対する個別的な協力だということになるだろうと思います。  時間が押しておりますので、あと一言ずつしか申し上げられませんが、その際の日本協力というのは、補給物資の供給等、多面的な協力が予定されておりますが、その歯止めとして、現に戦闘行為が行われている現場では実施しないということが強調されておりますが、先ほどと同じように、武力紛争法によりますと場所的な区別というのは意味を持ちませんで、活動する主体とかその客体ですね、補給される物資等が軍事目標かどうかが決定的に重要であります。  したがって、一見、戦闘現場から遠く離れていようとも、補給活動などを行いますと、これはやはり軍事目標とみなされて相手方から反撃を受ける可能性があるということを是非押さえておく必要があるだろうと思います。  最後に、集団的自衛権の容認が安保条約にどういう影響を与えるかということ。これも、先ほどから坂元先生も白石先生も、安保条約、安保体制の強化による抑止力の強化ということを随分力を入れて説明されました。  そういう御議論があるのはもちろん承知しておりますが、今回の議論の中で、集団的自衛権容認を安保条約の個々の規定との関係で十分に分析した議論というのが残念ながら見受けられないように思います。  ここで二点だけ、もう本当に時間が迫っておりますので結論的なことだけを申し上げますが、安保条約五条は、ほかのNATO等と異なって少し変わった規定の仕方をしておりまして、それもレジュメに関連箇所を引用しておりますが、読み上げるのは省略して、こういう規定が置かれたのは、当時、日本憲法上は個別的自衛権しか持たないというそういう政府憲法解釈前提になってこの規定が六〇年のときに入ったという経過は御存じだろうと思います。  したがって、当時の憲法解釈であれば、日本個別的自衛権しか行使できないから、憲法上ですね、したがって、アメリカ日本の領域外で攻撃を受けても日本はそれには共同防衛はできませんよということが、安保条約に違反せずに断ることができたわけです。  ところが、憲法解釈を変えて日本集団的自衛権を持てるということになりますと、この場合にも、つまり日本の領域外でのアメリカに対する攻撃についても集団的自衛権行使安保条約上の義務になるということであります。  それから同時に、第六条で、アメリカ日本が基地を貸しております。様々な特権を伴って基地を貸しておりますが、これは六〇年当時の説明では、言わば一方的に日本を守ってもらうんだからその代償として基地を提供しているんだという説明であったわけですが、集団的自衛権を認めて完全に平等な立場で共同防衛を行うということになりますと、この代償論も成立しなくなる。  ということは、要するに、今回の集団的自衛権を認めるという憲法解釈の変更は、同時に安保条約の大きな解釈の変更を伴うわけでありまして、これは本来ならば、憲法に従って新たに条約を改正して国会の承認を得なければできないことではないかというふうに思っております。  こういうふうなわけで、今回の解釈改憲というのは、憲法解釈として立憲主義に反するだけではなくて、それが事実上の安保条約の改定をもたらす、それを国会の承認もなしに行うという意味でも立憲主義に反するのではないか、こういう印象を持っております。  時間が超過いたしまして、申し訳ありません。
  13. 鴻池祥肇

    委員長鴻池祥肇君) ありがとうございました。  次に、奥田公述人お願いいたします。奥田公述人
  14. 奥田愛基

    公述人奥田愛基君) 御紹介にあずかりました大学生の奥田愛基といいます。SEALDsという学生団体で活動をしております。  済みません、こんなことを言うのは非常に申し訳ないのですが、先ほどから寝ている方がたくさんおられるので、もしよろしければお話を聞いていただければと思います。僕も二日間ぐらい緊張して寝られなかったので、僕も帰って早く寝たいと思っているので、よろしくお願いします。  初めに、SEALDsとは、スチューデント・エマージェンシー・アクション・フォー・リベラル・デモクラシーズ、日本語で言うと自由と民主主義のための学生緊急行動です。私たちは特定の支持政党を持っていません。無党派の集まりで、保守、革新、改憲、護憲の垣根を越えてつながっています。最初はたった数十人で、立憲主義の危機や民主主義の問題を真剣に考え、五月に活動を開始しました。その後、デモや勉強会、街宣活動などの行動を通じて、私たちが考える国のあるべき姿、未来について日本社会に問いかけてきたつもりです。  こうした活動を通して、今日、貴重な機会をいただきました。今日私が話したいことは三つあります。一つは、今全国各地でどのようなことが起こっているか、人々がこの安保法制に対してどのように声を上げているか。二つ目は、この安保法制に関して、現在の国会はまともな議論の運営をしているとは言い難く、余りにも説明不足だということです。端的に言って、このままでは私たちはこの法案に対して到底納得することができません。三つ目は、政治家の方々への私からのお願いです。  まず第一にお伝えしたいのは、私たち国民が感じている安保法制に対する大きな危機感です。  この安保法制に対する疑問や反対の声は、現在でも日本中でやみません。つい先日も国会前では十万人を超える人が集まりました。  しかし、この行動は、何も東京の、しかも国会前で行われているだけではありません。私たちが独自にインターネットや新聞などで調査した結果、日本全国二千か所以上、数千回を超える抗議が行われています。累計して百三十万人以上の人が路上に出て声を上げています。この私たちが調査したものやメディアに流れているもの以外にもたくさんの集会が、あの町でもこの町でも行われています。まさに全国各地で声が上がり、人々が立ち上がっているのです。また、声を上げずとも疑問に思っている人はその数十倍もいるでしょう。  強調しておきたいことがあります。それは、私たちを含め、これまで政治的無関心と言われてきた若い世代が動き始めているということです。これは、誰かに言われたからとか、どこかの政治団体に所属しているからとか、いわゆる動員的な発想ではありません。私たちは、この国の民主主義の在り方について、この国の未来について、主体的に一人一人、個人として考え、立ち上がっていったものです。  SEALDsとして行動を始めてから、誹謗中傷に近いものを含む様々な批判言葉を投げかけられました。例えば、騒ぎたいだけだとか、若気の至りだとか、そういった声があります。ほかにも、一般市民のくせにしておまえは何を一生懸命になっているのかというものもあります。つまり、おまえは専門家でもなく学生なのに、若しくは主婦なのに、おまえはサラリーマンなのに、フリーターなのに、なぜ声を上げるのかということです。  しかし、先ほども御説明させていただきましたように、私たちは、一人一人、個人として声を上げています。不断の努力なくして、この国の憲法や民主主義、それらが機能しないことを自覚しているからです。  政治のことは選挙で選ばれた政治家に任せておけばいい、この国にはどこかそのような空気感があったように思います。それに対し、私たちこそがこの国の当事者、つまり主権者であること、私たちが政治について考え、声を上げることは当たり前なのだということ、そう考えています。その当たり前のことを当たり前にするために、これまでも声を上げてきました。  そして、二〇一五年九月現在、今やデモなんてものは珍しいものではありません。路上に出た人々がこの社会の空気を変えていったのです。デモや至る所で行われた集会こそが不断の努力です。そうした行動の積み重ねが、基本的な人権の尊重、平和主義国民主権といったこの国の憲法の理念を体現するものだと私は信じています。私は、私たち一人一人が思考し、何が正しいのかを判断し、声を上げることは間違っていないと確信しています。また、それこそが民主主義だと考えています。  安保法制に賛成している議員の方々も含め、戦争を好んでしたい人など誰もいないはずです。私は、先日、予科練で特攻隊の通信兵だった方と会ってきました。七十年前の夏、あの終戦の日、二十歳だった方々は、今では九十歳です。ちょうど今の私やSEALDsのメンバーの年齢で戦争経験し、そしてその後の混乱を生きてきた方々です。そうした世代方々も、この安保法制に対し強い危惧を抱かれています。私は、その声をしっかりと受け止めたいと思います。  そして、議員の方々も、どうかそうした危惧や不安をしっかり受け止めてほしいと思います。今、これだけ不安や反対の声が広がり、説明不足が叫ばれる中での採決は、そうした思いを軽んじるものではないでしょうか。七十年の不戦の誓いを裏切るものではないでしょうか。  今の反対のうねりは世代を超えたものです。七十年間、この国の平和主義の歩みを、さきの大戦で犠牲になった方々の思いを引き継ぎ、守りたい、その思いが私たちをつなげています。私は、今日、そのうちのたった一人としてここで話をしています。つまり、国会前の巨大な群像の中の一人として国会に来ています。  第二に、この法案の審議に関してです。  各世論調査の平均値を見たとき、初めから過半数近い人々は反対していました。そして、月を追うごと、反対世論は拡大しています。理解してもらうためにきちんと説明していくと現政府の方はおっしゃられておりました。しかし、説明した結果、内閣支持率は落ち、反対世論は盛り上がり、この法案への賛成の意見は減りました。  選挙のときに集団的自衛権に関して既に説明したとおっしゃる方々もいます。しかしながら、自民党が出している重要政策集では、アベノミクスに関しては二十六ページ中八ページ近く説明されていましたが、それに対して安全保障関連法案に関してはたった数行でしか書かれていません。昨年の選挙でも、菅官房長官は、集団的自衛権は争点ではないと言っています。  更に言えば、選挙のときに、国民投票もせず、解釈で改憲するような、違憲で法的安定性もない、そして国会の答弁をきちんとできないような法案を作るなど、私たちは聞かされていません。私には、政府は法的安定性の説明をすることを途中から放棄してしまったようにも思えます。憲法とは国民権利であり、それを無視することは国民を無視するのと同義です。  また、本当に与党の方々は、この法律が通ったらどのようなことが起こるのか理解しているのでしょうか、想定しているのでしょうか。先日言っていた答弁とは全く違う説明を翌日に平然とし、野党からの質問に対しても国会の審議は何度も何度も速記が止まるような状況です。このような状況で一体どうやって国民は納得したらいいのでしょうか。  SEALDsは確かに注目を集めていますが、現在の安保法制に対してその国民的な世論を私たちがつくり出したのではありません。もしそう考えていられるのでしたら、それは残念ながら過大評価だと思います。  私の考えでは、この状況をつくっているのは紛れもなく現在の与党の皆さんです。つまり、安保法制に関する国会答弁を見て、首相のテレビでの理解し難い例え話を見て、不安に感じた人が国会前に足を運び、また全国各地で声を上げ始めたのです。ある金沢の主婦の方がフェイスブックに書いた国会答弁の文字起こしは、瞬く間に一万人もの人にシェアされました。ただの国会答弁です。ふだんなら見ないようなその書き起こしをみんなが読みたがりました。なぜなら不安だったからです。  今年の夏までに武力行使の拡大や集団的自衛権行使の容認をなぜしなければならなかったのか。それは、人の生き死にに関わる法案で、これまで七十年間日本が行ってこなかったことでもあります。一体なぜ十一個の法案を二つにまとめて審議したか、その理由もよく分かりません。一つ一つ審議しては駄目だったのでしょうか。全く納得がいきません。結局、説明をした結果、しかも国会の審議としては異例の九月末まで延ばした結果、国民の理解を得られなかったのですから、もうこの議論の結論は出ています。今国会での可決は無理です。廃案にするしかありません。  私は、毎週国会前に立ち、この安保法制に対して抗議活動を行ってきました。そして、たくさんの人々に出会ってきました。その中には、自分のおじいちゃんやおばあちゃん世代の人や、親世代の人、そして最近では自分の妹や弟のような人たちもいます。  確かに、若者は政治的に無関心だと言われています。しかしながら、現在の政治状況に対して、どうやって彼らが希望を持つことができるというのでしょうか。関心が持てるというのでしょうか。私や彼らがこれから生きていく世界は、相対的貧困が五人に一人と言われる超格差社会です。親の世代のような経済成長もこれからは期待できないでしょう。今こそ政治の力が必要なのです。どうかこれ以上政治に対して絶望してしまうような仕方で議会を運営するのはやめてください。  何も賛成から全て反対に回れというのではありません。私たちも、安全保障上の議論は非常に大切なことを理解しています。その点について異論はありません。しかし、指摘されたこともまともに答えることができない、その態度に強い不信感を抱いているのです。政治生命を懸けた争いだとおっしゃいますが、政治生命と国民一人一人の生命を比べてはなりません。与野党の皆さん、どうか若者に希望を与えるような政治家でいてください。国民の声に耳を傾けてください。まさに、義を見てせざるは勇なきなりです。政治のことをまともに考えることがばからしいことだと思わせないでください。  現在の国会状況を冷静に把握し、今国会での成立を断念することはできないのでしょうか。世論の過半数を超える意見は、明確にこの法案に対し今国会中の成立に反対しているのです。自由と民主主義のために、この国の未来のために、どうかもう一度考え直してはいただけないでしょうか。  私は単なる学生であり、政治家の先生方に比べ、このようなところで話すような立派な人間ではありません。もっと正直に言うと、この場でスピーチすることも、昨日から寝れないぐらい緊張して来ました。政治家の先生方は毎回このようなプレッシャーに立ち向かっているのだと思うと、本当に頭が下がる思いです。一票一票から国民の思いを受け、それを代表し、この国会という場所で毎回答弁をし、最後には投票により法案を審議する、本当に本当に大事なことであり、誰にでもできることではありません。それはあなたたちにしかできないことなのです。  では、なぜ私はここで話しているのか、どうしても勇気を振り絞り、ここに来なくてはならないと思ったのか、それには理由があります。参考人としてここに来てもいい人材か分かりませんが、参考にしてほしいことがあります。  一つ、仮にこの法案が強行に採決されるようなことになれば、全国各地でこれまで以上に声が上がるでしょう。連日、国会前は人であふれ返るでしょう。次の選挙にももちろん影響を与えるでしょう。当然、この法案に関する野党の方々の態度も見ています。本当にできることは全てやったのでしょうか。私たちは決して今の政治家の方の発言や態度を忘れません。三連休を挟めば忘れるだなんて、国民をばかにしないでください。むしろそこからまた始まっていくのです。  新しい時代はもう始まっています。もう止まらない。既に私たちの日常の一部になっているのです。私たちは学び、働き、食べて、寝て、そしてまた路上で声を上げます。できる範囲で、できることを、日常の中で。私にとって、政治のことを考えるのは仕事ではありません。この国に生きる個人としての不断の、そして当たり前の努力です。私はこの困難な四か月の中でそのことを実感することができました。それが私にとっての希望です。  最後に、私からのお願いです。SEALDsの一員ではなく、個人としての、一人の人間としてのお願いです。  どうかどうか政治家の先生たちも個人でいてください。政治家である前に、派閥に属する前に、グループに属する前に、たった一人の個であってください。自分の信じる正しさに向かい、勇気を出して孤独に思考し、判断し、行動してください。皆さんには、一人一人考える力があります、権利があります。政治家になった動機は人それぞれ様々あるでしょうが、どうか政治家とはどうあるべきなのかを考え、この国の民の意見を聞いてください。勇気を振り絞り、ある種賭けかもしれない、あなたにしかできないその尊い行動を取ってください。日本憲法はそれを保障し、何より日本国に生きる民一人一人、そして私はそのことを支持します。  困難な時代にこそ希望があることを信じて、私は自由で民主的な社会を望み、この安全保障関連法案に反対します。  二〇一五年九月十五日、奥田愛基。  ありがとうございました。
  15. 鴻池祥肇

    委員長鴻池祥肇君) ありがとうございました。  以上で公述人各位の意見陳述は終わりました。  これより公述人に対する質疑を行います。  なお、質疑の時間が限られておりますので、御答弁は簡潔に行っていただくようにお願いを申し上げます。  質疑のある方は順次御発言願います。
  16. 上月良祐

    ○上月良祐君 自由民主党の上月良祐でございます。  質問の機会をいただき、関係皆様方に心より感謝をいたしております。    〔委員長退席、理事佐藤正久君着席〕  公述人皆様方には、それぞれの立場から大変貴重な御意見を本当にありがとうございました。  私は、自分の意見と違う意見にも耳を傾けることが大変重要であるというふうに思っております。それを、ただ皆さんにも求めたい、みんながそうあってほしいと思っておりまして、その上で懸案を一つ一つ前に進めていくということが必要だと思っております。懸案を片付けられない、懸案に、一つ一つ前に進められないことこそ、今の日本の停滞の原因であると私は思っております。  最初に、済みません、先日来の豪雨と、そして噴火で大変大きな被害に遭われました皆様方に心よりお見舞いを申し上げたいと思います。私は地元が茨城でございますので、自分自身が復旧復興に頑張らないといけないと気持ちを新たにいたしております。  それでは、早速、坂元公述人を中心に、白石先生にもできましたら御質問をさせていただきたいと思っております。  まず最初に、私は決して好戦的ではありませんし、全く戦争をしたいとも思っておりません。その意味では、皆さん方と全く同じだと思っております。  まず最初に、坂元先生にお聞きしたいと思います。  これまでの審議を私は参議院で耳を澄まして聞いておりました。その中でこういう意見があったんです。中国による軍事的な対応に対して我が国集団的自衛権といったような形で騒ぎ立てる、そういったようなことをすると軍事対軍事の対応になってしまう、エスカレートしてしまう危険性があるといったような意見がございました。どんな意見も尊重はしますけれども、私はただ、やはり日本がやっているのは、別に相手を上回ろうというようなことでバランシング・オブ・パワーをつくっていこうということをしているわけじゃなくて自衛のための力を持とうとしている、打撃力を持とうとしているわけでもないわけです。このバランシング・オブ・パワーが崩れて物すごく力の差が大きくなると、かえっていろんないさかい、紛争が起こりかねないような状況になるのではないかと。南沙や西沙で起こっているようなことを見ますと、力の空白が生じたときに次々に占拠や支配、そういったものが行われてきたというのが現実ではないかというふうに思っております。  一方で、日本の財政状況などを見ますと、防衛費がどんどん伸びていくみたいなことはおよそ考えられないわけでありまして、そういった状況の中で今回の限定的な集団的自衛権を持つというこの法案がどういう意味があるか、どう思っていらっしゃるか、お考えをお聞きしたいと思います。
  17. 坂元一哉

    公述人坂元一哉君) 安全保障のジレンマという言葉が国際政治学でありますけれども、こちら側が防衛力を強化しますと、相手がそれにおびえて相手も防衛力を強化する、そうするとまたこっちも防衛力を強化しなきゃいけない、こういうジレンマがあると、これは国際政治の一つの理論でありますけれども。これをもって、日本がこの集団的自衛権の限定的な行使容認をすれば、相手もそれにおびえてまた軍事力の増強に行くんじゃないかという、こういう議論があるんですけれども、あらゆる理論は現実のコンテクストの中で考えなければいけないわけですが、中国の軍拡について見ますと、我々が軍事費を上げるというか、むしろ下げているときにどんどん軍事費が上がってくるということになったわけでございます。ですから、現実のコンテクストからいうと、そういう安全保障のジレンマというような状況ではまずないのかなと思いますが。  それよりも、これは、この問題を考えるときに考えなきゃいけないのは、何といっても中国は核保有国でありまして、こちらがまさか核兵器を持つということは考えませんが、こちらの防衛力の強化、集団的自衛権の限定的な行使容認をしたからといって、それで何か日本がすごく危険に思えてくるということは、核兵器を持っている国がそう思うということはちょっと考えにくいかなというふうに思います。  ですから、私は、日本が、中国海空軍力の強化、これは核兵器の保有を前提にした強化なんですけれども、これに対して、集団的自衛権限定行使でその抑止力を高めていってバランスを取っていこうというのは非常に穏当な在り方だろうというふうに思います。  我々は本当に核兵器を持たないで、核兵器を持っている国との間でバランスといいますか抑止力を持っていこうということですから、いろんな工夫が要るんですけれども、この集団的自衛権の限定的な行使容認というのはその中でも適切な工夫だろうというふうに思います。
  18. 上月良祐

    ○上月良祐君 ありがとうございます。  私は、今のような質問をして別に危機をあおろうと思っているわけではもちろんございません。  私は、地元で、いろんなところで法案説明というんでしょうか、求められまして、いろんなところに参りました。それで、法案に反対している皆さんのところでも一度呼ばれてお話をしたんです。そのときにちょっと耳に残っている言葉があって、起こりもしないような危機で、それを言ってあおって、こんな法整備、戦争をするようなと言ったかもしれませんが、法整備をするのは良くないというようなことを最後の方で言われたんですね。  私は、自然災害と違うことは重々認識をいたしております。そんなことはよく分かっています。しかし、あの三・一一の大津波も、例えば今回まさに茨城や栃木や宮城で起こったような、線状降水帯というものですか、それによる大水害も、この災害多発時代だから、ひょっとしたら起こるかもと思っていても、明日それが自分の身に降りかかると思っている人というのはそんなに多くはなかったんだというふうに思うんです。  一方で、中国中国中国と言うのもどうかと思いますが、国防費が大変増大していることや南沙での現状、それから北朝鮮のミサイル開発や核開発状況、それから延坪島の砲撃、火器管制レーダーの照射、防空識別圏の設定などもありました。こういった現状を見て、起こりもしないような危機であおっているという状況と本当に思っていていいのかどうかということを、その専門の先生の御意見を少しお聞きしたいというふうに思います。
  19. 坂元一哉

    公述人坂元一哉君) 今自然災害の例えを出されましたので、その関連でお話ししますが、自然災害の場合は、これは、こちらが備えを行っても、残念ながらその自然災害が起こるときは起こるわけでございます。我々にできることは、その災害の被害を軽減するということになろうかと思います。できればその被害がゼロになるというふうに努力をしなきゃいけないんですが、防衛の場合は、これは、実は抑止ということで相手の心理に働きかけるということになりますから、こちらがきちんとした備えをすればそれは起こらないということになるわけなんですね。  ですから、例えば、我々は個別的自衛権、六十年間行使できると言っているんですけれども、一回も使ったことはないわけでありまして、使ったことがないからそれは要らなかったんじゃないのというのは、これは抑止というものの考え方からするとちょっと違うのかなという感じがいたします。  今回の集団的自衛権の新三要件も、非常に、何といいますか、国の存立が脅かされ、国民の基本的な人権が脅かされるというような、そういうことというのはなかなか起こらないことであってほしいし、そうだろうと思うんですけれども、それに備えることによりましてそういうことが起こらないということをますます確実にすると、そういうための法案だろうと、そういうのが安全保障体制なんだろうなという感じがいたします。ですから、起こらないんじゃないかと言われたら、それはいいことじゃないかと私は思うのであります。
  20. 上月良祐

    ○上月良祐君 ありがとうございます。  隣り合う二か国が、海を隔てていたとしても、仲が良くてしようがないと、もう何もしなくても本当に仲が良くて良くてしようがないというような国というのは、多分歴史的にもそんなにないんだと思うんです。やはり隣り合っている国は、やはりそれなりにお互いに何かいろんなものを抱えながら、お互いに競争と協調を繰り返しながら伸びていく、そして一緒に、お互いに互恵関係の下で一緒に伸びていくべきなんだと思います。何もしないで治る傷のようなものではなくて、何かがやっぱり積極的な対応、積極的に何もしないということも必要かもしれませんが、そういうように思っております。  それから、白石先生にちょっとお聞きしたいんですが、先ほど、ネットワーク化されているというお話がありました。私もまさにそう思います。装備も部隊の運用もネットワーク化されているので、大変重要だと思うんですが、ネットワーク化されているだけに、やはり訓練というものもやっておかないと本当の意味での抑止力にはならないんだと思うんですね。ただ制度があるだけでは実際には動かないと。その訓練がされているということがそれほどの抑止力がないのではないか、使わないという意味でですね、あくまで、と思っております。  そのことと、あと、先生はもう御専門でもありますが、日本が生きていくときに、やはり海洋国、海洋の民主主義国とのやっぱり連携って大変重要だと思っておりまして、中でもオーストラリア、それからインド、インドはやはり少しちょっとまた立場が違う国だと思うんですが、ASEANの海洋諸国、そういった国々から今回のことがどういうふうに見られているのかということ、その二点、ちょっと併せまして簡潔に教えていただきたいと思います。
  21. 白石隆

    公述人白石隆君) 二点申し上げます。  まず最初に、ネットワーク化に伴う、これはネットワーク中心の防衛システムにおける訓練、これは極めて重要でございます。自衛隊のような非常に大きな組織の場合には、日頃の訓練がきちっとできていないと何かあったときには動けません。ですから、その意味で、常に訓練しておくということはもうこれは必須の条件でございます。  二番目に、海洋の連携ということでございますが、先ほどの少し先生の質問にも敷衍しながら申しますと、実はその中国に対する脅威認識というのは、過去十五年ぐらいで見ますと、これは日本だけではなくてオーストラリアでもインドでも、あるいは東南アジアの国々でも上がっております。  それはなぜかと申しますと、恐らく三つぐらいの理由がございまして、一つは、やはり力のバランスが変化していると。これは別に中国が非常に大きな資源を軍備増強に必ずしも投入しているわけではございません。GDPの二%台、もちろん日本に比べると倍以上の資源を投入しておりますけれども、何しろ急速にGDPがこれまで伸びてまいりましたので、結果的に非常に軍事費は増大したと。二番目に、私はこれが決定的だと思いますが、あるタイミングで中国の行動が変わってきております。非常にある意味では自己主張の強い、英語で申しますとアサーティブな行動になってきていて、これが日本だけではなくて東南アジアの国々、あるいはオーストラリア、インドのようなところで中国に対する脅威認識を高めていると。それから三番目に、やはり体制の違いというのはこれはもう間違いなくございます。  ですから、こういうことの中でそれではどうするのかと。先ほど申しましたように一国ではなかなか大変な大国に対しては対抗できませんので、アメリカとはもちろん協力しながら、同時に、だけれども、抑止の一環としてオーストラリアだとかインドと協力していくということになって、これは逆に申しますと、インドだとかオーストラリアの方でも同じような脅威認識を踏まえてそういう動きが出ていると、これは事実でございます。
  22. 上月良祐

    ○上月良祐君 ありがとうございます。  坂元先生に、アメリカに巻き込まれるんじゃないかというようなことを心配される方がいらっしゃいます。ただ、存立危機事態は、昨日、公明党の山口代表の質問で、ケースとしてはかなりまれであるということを法制局長官も安倍総理も御答弁の中で言われたんです。自衛の僅かな切れ目、それを埋めるものであって、決して、何というんでしょうか、これで戦争する国になるようなものではないと私は認識をいたしておるんですが、アメリカに対して巻き込まれないために、国会の関与も重要だと思いますが、そのことにつきまして先生のお考えをお聞きしたいと思います。
  23. 坂元一哉

    公述人坂元一哉君) それは、アメリカに対する日本発言力というのを高めるということが一番大切なことなんだろうと思いますけれども、それは、何かを頼まれたときに何でもできないんだというよりも、これはできる、できないと、これをはっきりさせることが大切かなというふうに思います。  それで、集団的自衛権に関しましては、ベトナム戦争など、あれなどに巻き込まれなかったのは集団的自衛権行使できなかったからではないかという議論がありましたけれども、それは、例えばイギリスイギリスは参加していないわけなんです、ベトナム戦争には。集団的自衛権はもちろん行使できる。それはイギリスアメリカ関係でありまして、それはその力関係の問題でありますから。  我々も、実はアメリカに対してはいろいろ何かアメリカの言うことを聞いているようで聞いていないところはいっぱいありまして、アメリカ戦争に巻き込まれないというのは非常に日本がずっと考えてきたことでありますけれども、今後、アメリカに対する立場が強くなれば、それはますますそういうことになるんだろうと私は思っております。
  24. 上月良祐

    ○上月良祐君 ありがとうございます。  もう時間でございますので、坂元先生がおっしゃった国家国民を守れないと憲法も守れないと。一方で、憲法の下で憲法を守らないと国家国民を守れないと。どちらも大変重要だと思います。その立場でいろいろ議論があるんだと思いますので、ただ、いずれにしても平和外交というものが一番重要であるというのが私の考えでもございます。  それを最後に申し上げて、そしてやや、どうしても感情的になる面があったり、一般方々の中に、一部ですね、そういうのもあると思いますので、そうならないように、議論がますます進む、そういったことが大切であろうと思いますので、そのことを申し上げて、私の質問といたします。  ありがとうございました。
  25. 蓮舫

    ○蓮舫君 民主党の蓮舫です。  公述人の皆様、今日はありがとうございました。改めて、参議院の審議を通じて、公述人皆様方意見を聞いて私が思ったのは、安保法制は必要です、ただ、それはあくまでも憲法の枠の中なんだと。そういう意味で、今回の法案には私たちはやっぱり改めて反対だという思いを今新たにしています。  何点か短く濱田公述人に確認をさせてください。  まず、今審議されている集団的自衛権行使を認めるこの立法、この立法そのものは合憲範囲内ですか。
  26. 濱田邦夫

    公述人濱田邦夫君) 違憲です。
  27. 蓮舫

    ○蓮舫君 限定的な集団的自衛権武力行使海外派兵例はホルムズ海峡だけだったと、ここしか考えていないんだと安倍総理はこれまでずうっと説明をしてまいりましたが、実は昨日の参議院のこの委員会で、安倍総理自ら、ホルムズ海峡での機雷掃海は発生を想定していないと全否定をしました。立法事実はなおありますか。
  28. 濱田邦夫

    公述人濱田邦夫君) 新しい法律を作る場合には、もちろん国会において多数党が賛成すれば形式的にはできるわけですけれども、法律家の立場から見ますと、その法律成立が納得できるような立法事実というものがなければいけないということと、選挙で政権に就いている立場が与党ではありますけれども、その時点における国民意見というもの、つまり納得性、国民の納得性というものがあって初めて新しい法律というのはできるべきものと思います。  今回の一群の法律制定に当たっては、今議員がおっしゃったように、立法事実そのものを、政府安倍総理等の答弁というのがどんどんどんどん変わって、現在ではいずれも該当しないということになっているというのは非常に、それでも強行採決をするというのはどうも納得がいかないと思います。
  29. 蓮舫

    ○蓮舫君 納得性の次に正当性を伺いたいんですが、ホルムズ海峡での機雷掃海は発生を想定していない、これ立法事実が崩れました。  もう一つは、去年の七月一日の閣議決定の後に、安倍総理自らがパネルを使って、米艦に乗っている日本人のお母さんと赤ちゃん、この人たちを守れなくてどうするんですか、だから限定的な集団的自衛権を使えるようにするんですと説明をしました。ところが、参議院の審議で、我が党の大野委員の質問の中で、この母子が乗っているというのは集団的自衛権行使の要件ではないことが判明しました。これも立法事実が崩れました。  納得性がない上に、この法案には正当性はあるでしょうか。
  30. 濱田邦夫

    公述人濱田邦夫君) 正当性はないと思います。  安倍総理の手法は国民の感情に訴えたつもりでありましたけれども、現在の国民感情というものは圧倒的に反対ということで、安倍政権に国民が望んでいるのは経済的な問題の解決、それで総選挙も勝ったわけですし、今も内閣を支持する一定の割合の国民がいるというのは、経済を何とかしてくれということであって、戦争をできるようにしてくれと言っているわけじゃないと思います。
  31. 蓮舫

    ○蓮舫君 もう一つ不思議なことがあるんですが、我が国と密接な関係の国が攻撃をされて新三要件を満たしたときに、被攻撃国からの要請があって、我が国我が国攻撃されていないのに武力行使を使えるようにする。ところが、総理はいささかも専守防衛は変わっていないと言うんです。  これは変わっていないでしょうか。
  32. 濱田邦夫

    公述人濱田邦夫君) 詭弁だと思います。
  33. 蓮舫

    ○蓮舫君 さらに、不思議なのは、自民党の与党幹部の方たち、稲田政調会長、谷垣幹事長あるいは高村副総裁そろって、憲法学者小林先生も含めて、違憲だと言うと、憲法学者法律違憲だと決めるものではない、最高裁だと言います。ところが、ある新聞、メディアにおいて最高裁の山口元長官が違憲だとそれをインタビューに答えて発言をしたら、今度はそれは、安倍総理は一私人の発言だと答弁をしました。  こういうことはどう思われますか。
  34. 濱田邦夫

    公述人濱田邦夫君) それはそのとおり、私も一私人として、ここでもこれまでも発言をしております。  それは、そんなことを言うこと自体がそもそも間違っているというか、おかしなことであって、やはり現職の裁判官が、事件性を持った事案として最高裁に上がったときに、そのときに任務に就いている裁判官が決めることをOBがどうこうというようなことは、筋合いは全くありませんし、OBとしては、余りにもひどい状況で黙っていられないと、先ほども申し上げたように、本来は黙っていようと思ったんだけれども、どうにもこれでは日本社会全体が駄目になってしまうということで立ち上がっているわけです。  その点では、奥田さん始めSEALDsの皆さん、全国のいろんな階層の人が、学者の人が、芸能人も文人もみんな立ち上がっていると。その事実を認めようとしない政府の態度というのは、非常にこれからの日本の政治、日本社会に禍根を残すものだと思います。
  35. 蓮舫

    ○蓮舫君 二点、政府が言う今回の法案根拠というものについてもう一度確認をさせていただきたいんですが、政府はその根拠は一九五九年の砂川判決にあると。つまり、砂川判決というのは、私は米軍の駐留が問われたものと大学で学びましたけれども、政府はそうじゃなくて、これは集団的自衛権行使が認められたものだと何度も何度も国会で答弁をしていますが、そうなんでしょうか。
  36. 濱田邦夫

    公述人濱田邦夫君) それは間違っていると思います。
  37. 蓮舫

    ○蓮舫君 どのように間違っていますか。できれば、分かりやすく教えてください。
  38. 濱田邦夫

    公述人濱田邦夫君) 先ほども申し上げたように、日本最高裁判所というのはアメリカと同じく具体的な事案についての判断を示すわけですから、判決の拘束力というものはその事案で中心的な法律問題に限定されるわけです。確かに判決理由の一部に自衛する権利というものはあるということは言っていますけれども、警察予備隊とか自衛隊とかそういうことが事案として取り上げられている事案ではありませんので、これは拘束力ある、英米法で言うレイシオ・デシデンダイという、そういう判決の中核を成す判断ではないということです。
  39. 蓮舫

    ○蓮舫君 よく分かりました。  そして、もう一点、昭和四十七年の政府見解。私、何度も何度も音読して読んだのですけれども、どう考えても政府の答弁が分からないんです。この四十七年政府見解に限定的な集団的自衛権がそもそも含まれていたと。含まれていると読めるんでしょうか。
  40. 濱田邦夫

    公述人濱田邦夫君) それは読みたい人がそう読んでいるというだけの話で、裁判所に行って通るかというと、これはあくまで一私人としての推測になりますけれども、それは通らないでしょう。
  41. 蓮舫

    ○蓮舫君 いや、それが、更に不思議なんですが、内閣の法の番人の内閣法制局長官である横畠さんは、これは当然、当時から当てはめとして限定的な集団的自衛権は含まれていると、何度も何度も国会で答弁、しまいにはフグの毒の事例も使っているんですけれども。  改めて、そう考えると、先ほど濱田公述人は今はなき法制局とおっしゃいましたが、この法制局の存在は今はどういうものなんでしょうか。
  42. 濱田邦夫

    公述人濱田邦夫君) それは部外者として分かりませんけれども、ある意味では非常に世界的にユニークな存在でありまして、具体的な事案ごとにその事案の当事者だけに効力を及ぼす司法判断憲法判断があるというやり方は、これはイギリスアメリカのやり方ですけれども、それはマクロ的に見ると非常に能率が悪いわけですから、日本の戦後七十年、そのうち法制局が活動してきたのは六十年になりますけれども、日本的に言うと、非常に能率、社会的効率としては非常にいいシステムであったわけです。  その機能が失われた状況で、内閣の言うとおりのことを言う人を時の長官にするというような人事自体国民の信頼を著しく損なっていると思います。
  43. 蓮舫

    ○蓮舫君 非常に分かりやすいです。  濱田公述人最高裁の判事もお務めになられたと思うんですけれども、一点だけ教えてください。この四十七年政府見解外国武力攻撃、これを読み替えているんですね、政府は。この読替えは法的な論理として認めることは、これは困難と解していいでしょうか。
  44. 濱田邦夫

    公述人濱田邦夫君) 日本語を普通に理解する人のみならず、法律的訓練を受けた専門家から見たならば、とてもそのような読み方はできないと。それだけじゃなくて、先ほども申し上げたように、これは起案されて僅か二日でこの見解なるものができて、それをぱくっと時の内閣、これは田中角栄内閣になるんですか、が認めているということで、閣議決定があったわけではなくて、その法制局の意見をそのまま政府見解としたというだけの話ですね。  それで、その後の国会での審議の状況を見ますと、この作成に携わった方々海外派兵ということは全然視野に入っていませんということを何回も確認をしているわけで、それに加えて、防衛庁がその点について自ら作った、今お手元に差し上げた文書で、海外派兵憲法の枠外だよとはっきり言っているわけですよね。それを今更そこにあったというのは、先ほど申し上げたように法匪的な発想でしかありません。
  45. 蓮舫

    ○蓮舫君 奥田公述人に伺います。  先ほど、二日寝ていない、政治家はすごいなとおっしゃいましたけれども、大丈夫です、私もこう見えて、質問の前は一週間ぐらい眠れないときもあります。  政府は、国民法案を誤解をしているから、だから理解が広がらない、だから、世論調査を取ったら八割の人がこの法案説明が足りないと言っているんだが、誤解している、国民が誤解していると言います。奥田さん、そう思われますか。
  46. 奥田愛基

    公述人奥田愛基君) 僕は専門家のような立場ではありませんし、そのように知っているわけではありませんが、そこに一私人として元最高裁判事の方も座っておられますが、僕たちが違憲であると言っていることを感情的で誤解だと言うのであれば、ここに座っている方々のことも誤解していると言うのでしょうかと。  逆に言うと、僕たちが何を言っているかということも政治家の方は誤解しているんではないでしょうかと。もしよろしければ、勉強会や集会などにお呼びしますので、来ていただいてはどうでしょうかと思います。
  47. 蓮舫

    ○蓮舫君 今日の奥田公述人の公述はすごく胸に響きました。  ちょっと確認をしたいんですが、これは、もうやっぱりこの法案と活動のために一生懸命勉強した奥田さんならではの公述なのか、それとも一般的に危機感を持っている主権者たる学生としての意見なのか、どちらでしょうか。
  48. 奥田愛基

    公述人奥田愛基君) 比較的、僕はそれなりに今の与党が出しているものも含めてチェックして読んでいるつもりではいると思うんですけれども、ただ、この憲法上問題があるというところではもう結論は出ていると思います。また、それは誤解しているというか、そういうものではなく、もう誰が読んでも明白なのでそう言っているのだと思います。
  49. 蓮舫

    ○蓮舫君 安倍総理に言いたいことは何かありますか。
  50. 奥田愛基

    公述人奥田愛基君) このまま強行採決をすることは国民を無視する行為だと端的に思います。  憲法上問題があるのであれば、きちんと改憲の手続を行って、国民投票によって国民に信を問うべきだと思うんですね。  この間、びっくりしたんですけど、改憲を争点に次は選挙すると。ちょっと待ってくださいと。なぜ今改憲をまず審議せずに、取りあえずここだけ解釈改憲を通し、なぜ次回の選挙では改憲と言うのでしょうかと。このまま通してしまうのは採決以前の問題でしょうと思うわけです。誠実に国民に対して説明してほしい。  あと、もしよろしければ、国会前の抗議に、見に来ていただけないでしょうかと。よろしくお願いします。
  51. 蓮舫

    ○蓮舫君 今日は、この法案に対して危機感という言葉を使ったのは濱田公述人奥田公述人だけでした。  濱田公述人、この若い方たちが町で声を上げ始めたこと、このことについて一言いただけますでしょうか。    〔理事佐藤正久君退席、委員長着席〕
  52. 濱田邦夫

    公述人濱田邦夫君) 大変うれしく思います。  私は、六〇年安保のときに、樺美智子さんが亡くなったその現場から五十メートルぐらい離れたところでデモに参加していました。ただ、司法修習生という準公務員の身分上捕まるのはやばいということで今日に至ったわけですけれども。そのときは、やはり過激派学生と一般学生、プラス労働組合と。しかし、今回は全然様相が違っているわけです。本当に国民の階層。  非常にもどかしいのは公明党さんの立場だと思うんですけれども、自民党はもうどうしようもない。というのは、小選挙区がなければこんなに首相一人の意向にみんなが従うということはないと。ステーツマンが何人もいらしたと、昔の自民党は。これは大変国民のために不幸なことだと思っています。
  53. 蓮舫

    ○蓮舫君 以上です。ありがとうございました。
  54. 平木大作

    ○平木大作君 公明党の平木大作でございます。  本日は、貴重なお時間をいただきまして、公述人の皆様、また貴重な御意見、ありがとうございました。  私の方からは、主に白石公述人に対してお伺いをしていきたいというふうに思っております。  先ほどもございましたが、冒頭触れていただきましたけれども、この参議院議論が始まる前に、このまさに始まるタイミングにおきまして、白石公述人を中心とした、主に国際政治学者の皆様から要望書という形でいただきました。  その要望書の中には、安全保障法制をめぐる国会での与野党の議論は極めて狭い観点から行われていると言わざるを得ないと、大変厳しい御指摘をいただきました。その上で、この要望書の中には、立憲主義を守るのは当然のこととしてと断った上で、日本安全保障そのものについてもしっかり議論していただきたい、議論を深化させていただきたい、このように御要望いただいたわけでございます。  その意味で、改めてこれは、この委員会の中でも、この要望書については議論ございましたし、重く受け止めて、これは与野党ということを問わずに、やっぱりこれは意見としてしっかり受け止めて議論しなきゃいけないということで始めてきたわけでありますが、ここまで、先ほどのお話の中では、あえてなのか、評価は避けられていたんですけれども、この参議院のこれまでの議論見ていただいて、どのように拝見されたのか、一言いただけますでしょうか。
  55. 白石隆

    公述人白石隆君) どうもありがとうございます。  私は、参議院議論というのは、我々が要望したようなことも踏まえて少し議論していただけているのではないだろうかと、そういう印象を持っております。
  56. 平木大作

    ○平木大作君 ありがとうございます。  また、まさに議論を深めるという意味で今日専門家の皆様に来ていただいている、今日、本当にこの貴重な時間生かして、しっかりと議論をまた更に深めていきたいというふうに思っております。  先ほどのこの要望書の中にございました六つの具体的な項目、この中から私も少しまずお伺いしていきたいんですが、冒頭に挙げられたのが、先ほど抑止力についてどう考えていくのかという御議論でございました。この抑止力については、よく平和安全法制の、そもそも今回の法制の一番の目的というのはしっかりと抑止力を向上させていくことであると、このように説明されるわけであります。  この抑止力と並んで、いわゆる外交努力ですね、この抑止力と外交努力というのはまさに安全保障における車の両輪であると、このように何度も何度も説明がされたわけでございます。この比喩というのは、シンプルではありますけれども極めていろんな示唆を含んでいるなというふうに思います。いわゆる片方だけじゃどうにもならない、車が前に進まなくなるわけでありまして、しっかりと両方の車輪を動かしていくということが重要である、そういう意味では、すごく理解に資する比喩であるなというふうに思うわけですが。  同時に、もう一歩私は、これ、ある意味この両者の関係というものに着目して議論していくということも大事なのかなということをこの議論を通じて改めて今感じております。  というのは、一つは、そもそもふだんからの外交努力といったもの、これがまず基本にあって、その上で万一に備えていくのが抑止力である。ある意味、この外交努力というものを主として、そして抑止力を従と捉える、こういう説明もなされる。これも一つの見方だなというふうに思っております。  さらに、もう一歩ちょっと踏まえまして、これについては、いわゆる力による現状変更、これが行われようとしているときに、抑止力をそれに備えてしっかりと向上させておくことによって、ある意味、力による現状変更をしようとしているもの、国に対してこれは無理だなと思わせることによって、今度はこの抑止力の向上というものが対話に向かわせる。つまり、外交関係でしかいわゆる国家間の障害、障壁を取り除くことができないんだなということをある意味促していく、この対話を促すという機能がある。この点は非常に大きい。  ある意味、この両者の関連というもので、両方しっかりやっぱり取り組んでいかなきゃいけないということを一つ示唆しているというふうに思っております。つまり、抑止力というと、ともすると、単に力には力でという論理なんだろうというふうに理解される方がいらっしゃるわけですけれども、そうじゃなくて、抑止力を向上させることによって対話も外交努力も促していく力があるんだ、こういう観点は非常に大事だというふうに思っております。  そこで、こういったいろいろな様々な抑止力観点というものを一つベースに置きながら、じゃ、今まさに日本を取り巻いているこの安全保障環境、東アジアの環境の中で、この抑止力の果たしていく役割、外交との関係、こういったものを少し御教示いただけますでしょうか。
  57. 白石隆

    公述人白石隆君) どうもありがとうございます。非常に重要な質問だと思います。  二点申し上げます。  今、特にアジア太平洋、あるいは先ほど私が使いました言葉で申しますと太平洋からインド洋に至る非常に広大なこの地域で今非常に問われておりますことは、どういう形で国際的なルールを作るのかということだろうというふうに考えております。  ルールの作り方には、ごく単純化して申しますと二つのルールの作り方がございます。一つは、ある大国が自国のルールとして作って、それを周辺の国に押し付ける方法。これは普通、帝国的なルールの作り方というふうに言います。もう一つは、多国間で作るルールの作り方。こういうところでも、もちろん交渉のプロセスでは大国の言い分の方がはるかに通りますが、できたルールについては全ての国が従わなきゃいけないと。突然あるときにルールがその都合が悪くなったといって大国の方がやめたというわけにはいかない。こういうマルチのルールの作り方があります。  私は、日本政府は徹底的にこのマルチのルール作りをやろうとしていると。これは極めて重要な点で、ある意味では、外交力がまず来るというのはその理由でもございます。  二番目に、それでは抑止力というのをどう高めるのか。先ほど先生言われましたように、力には力で対抗するというのが抑止の考え方ではございません。一番抑止で重要な考え方は、力による現状変更のコストをできる限り上げるというのが、これが抑止の基本にある考え方でございます。  そのときに、先ほどの議論を聞いておりまして、一つだけちょっと付け加えさせていただきますと、日本でその抑止力を上げるために具体的にどういうケースを想定するか、これ非常に議論の上では重要ですが、安全保障におきましては、想定できることだけを考えていると大体駄目だということでございます。  アメリカ安全保障政策のコミュニティーの中では、知っていると知っていること、知らないと知っていること、知らないと知らないこと、この三つございまして、一番怖いのは知らないと知らないこと。こういう脅威にどう対応するか。そのためには、単に能力を付ける、それから共助の仕組みを強化していくということに加えて、やはり自分の持っている能力というのをできる限り使えるようにする、これが非常に重要で、これが抑止の基本的な考え方だろうと考えております。
  58. 平木大作

    ○平木大作君 ありがとうございます。  もう一つお伺いしておきたいんですけれども、この日本を取り巻く安全保障環境が大きく変化をしている、これが一つ今回の法制の背景にあるわけであります。  ただ、やっぱりこの平和で安穏な日本の中で暮らしている限りにおいてはなかなかその変化というものが基本的には見えてこない、そこが一つ、ある意味、今回の法制についてもなかなか理解が進まないことの一つの要因であるというふうに思っております。  この中の要素でちょっとまず一つ取り上げたいのが、武器、兵器の急速な進歩あるいは近代化、これが大きな影響を及ぼすと。これがなかなか普通に暮らしている限りにおいては実感が湧かない。ここを是非、具体的に日本安全保障環境においてどういう影響を及ぼし得るのかということと、ちょっともう一点併せてお伺いしたいんですが、これ実は、つまり、この安全保障環境の変化、特に武器、兵器の近代化、こういったものの文脈の中で、まさに昨年の閣議決定で行われました防衛装備移転三原則、これについてはまさにその中で行われた決定であるというふうに私は理解をしております。ともすると、これ、武器を世界中で売り歩いて死の商人になるのかみたいな、いわゆる表面的な批判がすごくあるわけでありますけれども、ここについて、いわゆる今の武器、兵器についても大きく今変わりつつある、この中で、是非この三原則についてもその意義、位置付けについて併せて御教示いただければと思います。
  59. 白石隆

    公述人白石隆君) どうもありがとうございます。  先ほども申しましたけれども、安全保障の空間というのは、かつて、例えば一九五〇年代、六〇年代の海、空、陸、ここから宇宙とサイバーが入ってきて、それでネットワーク中心の防衛システムになっております。これから二十年ぐらい先まで考えますと、恐らく、例えば有人の飛行機だとかそういうものはほとんどなくなっていくんじゃないかと、むしろロボットが中心で、それが全部、宇宙からサイバー、海中まで全部一つのシステムとして運用されるということになっていく可能性が非常に高いと。そのときに、こういうシステムというのがどこかで、これは別に日本の領土に直接攻撃がなくても、宇宙でどこかの衛星が、そのハブになる衛星が幾つかこれは破壊されますと、もう日本存立そのものが危険になる可能性というのはこれは十分ございます。  ですから、その意味で、今、軍事技術というのが急速に変わっていて、我々が想定するような武力の行使とは違う武力の行使というのが現実のものとして既に起こっているんだということを是非考えていただきたいというのが一つでございます。  それから、それに関連して防衛装備移転三原則について申しますと、こういうネットワーク中心の、極めて、ロボットだとかサイバーだとかあるいは微小化だとか、こういう技術とか本当に先端的な技術を用いた装備体系になりますと、このユニットのコストというのは大変なものがございます。日本政府の現在の防衛予算では、とてもじゃないですけれどもこういうものを開発から配備するまで全部独力でやるということは不可能でございます。しかも、そのためのそもそも技術的な基盤のないものもいっぱいございます。  ですから、その意味で、実は私は、防衛装備移転三原則というのは事実上は国際共同生産、つまり、日本国内ではできない、だけれども、日本防衛にとって決定的に重要な技術開発のところを、日本同盟国であるアメリカ及び日本のパートナー国であるオーストラリアであるとか、あるいはイギリスのような国と一緒にやっていく、これが私は一番重要なポイントではないだろうかというふうに考えております。
  60. 平木大作

    ○平木大作君 ありがとうございます。  坂元公述人にも一問お伺いしておきたいと思います。  坂元公述人は、安保法制懇の一員として昨年の五月十五日にいわゆる報告書も出されたというわけでございまして、その報告書の中では、いわゆるこの議論の中では、フルスペックの集団的自衛権行使、ここに向けて法整備すべきじゃないかというこれは提言をなされたわけでございます。  しかし、今回の平和安全法制というのは、その提言をそのものを取り入れたということではなくて、あくまでも集団的自衛権については限定的な行使、極めて抑制的な形で今回の法律というのはでき上がっております。そういう意味では、先ほど冒頭のお話の中では今回の法制について極めて高く評価していただいているなということも感じたわけですが、公述人の御提言にそのまま沿った形の法整備ではないわけでございます。  改めて、今回、今、これまで様々、衆議院で百十六時間、そして参議院でもかなりの時間を費やして議論してきたわけでありますけれども、この平和安全法制についての評価をお伺いしたいと思います。
  61. 坂元一哉

    公述人坂元一哉君) 我々安保法制懇が出した報告書とは異なったわけでございますけれども、それは、一番の違いは、集団的自衛権のことというよりも、国連の集団安全保障、これへの協力の仕方ということだったのではないかと私は思っております。  これについて、必要最小限の実力行使まで含めるのかどうかというところがあって、これについては、政府が、これは今はやらないよと、これはもうできないんだと憲法でと、こう解釈したことについて、私は、ああ、それならば、そういう武力行使以外の方法でぎりぎりやっていこうと。  国際社会の中で、国家が自分たちを守るということはもちろんその政府責務ですけれども、先ほど白石公述人もおっしゃいましたけれども、共同で国際社会の平和を守っていくというときに、その応分の仕事をしなきゃいけないけれども、その仕事の在り方は、我々は、政府の今解釈するような憲法のやり方、つまり武力行使はそれについてはできないよというやり方でやるということを聞いて、それで私は、その後いろいろと、つらつら今の国際社会状況とかあるいは国連状況とかを見てみますと、例えば、これまでこの集団安全保障議論にどう貢献するかといったときに、我々、実は湾岸戦争のときも、それからイラク戦争のときもアフガンのときもそうでしたけれども、安保理のメンバーじゃなかったわけなんですね。それであるにもかかわらずもう大変な議論になったわけなんですけれども、そういうことも含めまして、国際社会への貢献の在り方は今後考えていくんでしょうけれども、私は、もう政府がこう決めたことは評価しております。
  62. 平木大作

    ○平木大作君 時間が参りましたので、終わります。ありがとうございました。
  63. 川田龍平

    川田龍平君 維新の党の川田龍平です。  今日は、公述人の皆様、貴重な御意見をありがとうございました。  早速、質問に入らせていただきます。  まず、坂元公述人にお聞きしたいんですけれども、坂元公述人の資料に、「ある法律憲法違反にあたるかどうかを最終的に判断するのは、最高裁判所の仕事である。」ということを述べられ、私もドイツの憲法裁判所のような制度をつくるべきと考えておりますが、その前段に、この坂元公述人の文書には、「政府は、集団的自衛権限定行使を容認する新しい憲法解釈に基づく法律が、なぜ憲法違反ではないのか、国民に対し、より一層、丁寧かつ分かりやすく説明する必要があるだろう。」と言っているんですが、そう思いますか。
  64. 坂元一哉

    公述人坂元一哉君) 私はそういうふうに思います。  ですから、ここまでのところ国民の理解が十分進んでいるかどうかということは私は分かりませんけれども、実は、この問題は、仮にこの法案が通ったとした場合でも、これからずっと説明していって、それでずっと説明していって説明していって、やっぱり駄目だということになれば、これは将来的には、その法律についてまた新たな考え方で臨むということになるのではないかなと思っております。
  65. 川田龍平

    川田龍平君 私も、本当にこの今回の政府説明というのは不十分だというふうに大変思っておりますので、今、採決という話も出ていますけれども、拙速ではないかというふうに思っております。  次に、濱田公述人にお伺いしたいんですけれども、濱田公述人が、これは二〇〇七年にシンガポールで行われました世界正義プロジェクトというところで英語で陳述をされて、スピーチをされたというところの文書の中に法の支配について述べられております。この法の支配というものが日本では余り理解されていないのではないかと。特に私が大変感銘を受けたのは、法の支配でいうところの法、この法とは、我々の理解では、立法では改正することができない至高のかつ恒久的な原則を意味し、独立した司法によって適宜発見されるべきものですというところを述べられていらっしゃいます。  そうした意味で、私もこの法の支配という言葉について、安倍総理もよく使うんですけれども、なかなか理解するのが大変難しいところが日本ではあるのではないかと思うんですが、それについて、法の支配について御意見をいただければと思います。
  66. 濱田邦夫

    公述人濱田邦夫君) 法の支配という概念自体は、まあはっきり言って日本古来の概念、法律概念ではなくて、明治以降、特に戦後に移入されたというか、ディスカス、討議されるようになった概念だということはまず言えると思います。  そのシンガポールでの私の話の中で言っていることは、法律であれば何でもできるとか、法律による支配とそれから法の支配というのは違うんだと。つまり、ドイツのナチスはあらゆる形の、形式的には合法的な法律をどんどん作って、それでユダヤ人ほか非常に世界でもまれな惨状を呈した国家の運営をして、結局はその帝国が滅亡するということになりました。  法の支配というのは、基本的にはやはりイギリスから出てきて、神権、王様の権限というものは神様によって与えられているという思想があった中世のときに、その王様の権利というものは絶対的なものではなくて、やはり一定のルールに従うんだと。そのルールというものは王様が勝手に判断するのではなくて、やはりそういった時の権力から独立した司法という、裁判所という機関がやるのだという、そういう概念が結び付いたものですね。  日本は一応、法の支配ということは、安倍総理も昨年日本で、東京でありましたIBA、国際法曹協会という、五千人ぐらい人が来たんですけど、そこで基調講演をされて、その中で法の支配という言葉をお使いになりましたが、果たして本当に理解いただいているのかどうかということは疑問に思っています。
  67. 川田龍平

    川田龍平君 私もそう思います。  本当に、この法の支配というのは、原理的な意味での法の支配ということについて、このスピーチの中でも、著名な憲法学者であり、かつ元最高裁判所裁判官である伊藤正己先生の言葉を引かれて、そこには、この原理的な意味での法の支配は日本憲法の根底に脈打っており、我が憲法はこの原理が日本国民の信念と化することを期待していると言ってもよい、司法権に対して払われる尊敬と信頼、基本的人権の絶対的と言えるまでの保障、憲法最高法規性の強調のごときは、その具体的な表れであろう、人の支配、権力の優越を否定する法の優位の法思想が日本国民の血肉と化したときこそ、この憲法の真に実現されたときであり、それが理想とする立憲民主制の完成したときと言ってよいということも述べられたということを述べられております。  私も、今のこの国会状況というのが、大変数の論理でもって、多数決でもってこうした今この法というものを、非常に、制定することによって憲法をもないがしろにするような法律を作ろうとしているところがあります。私は、この多数派というのが必ずしも正しいとは限らないと思っています。今、先ほどの例にありましたように、ドイツのナチスの例もありましたように、ナチスの手口に学べとか、大政翼賛会というのが日本にもありました。  そういったことで、今この国会状況というのがあるわけですが、是非、小林公述人にお伺いしたいんですけれども、小林公述人も、今この法律が作られようとしている国会状況というものについて、いろんなところでも述べられておりますけれども、やっぱり今まで憲法をしっかりと守るべき存在である、憲法九十九条においても尊重しなければいけない存在である国会議員が、それから総理大臣が、やっぱり私がそう言ったんだから憲法解釈はそうなんだという言い方に対してどのように考えておられるか、小林公述人お願いします。
  68. 小林節

    公述人小林節君) 安倍政権の第一次政権のときに、安倍総理が「美しい国へ」という本をお出しになったんですよね。あれを読んで私、びっくりしたんですけれども、法の支配と書くべきところが法律の支配と数か所書いてあった。これは週刊朝日かなんかで私、きちんとコメントして発言には責任を取っておりますけれども、これ重大な違いですよね。だから、つまり、安倍総理の頭の中に法の支配という概念が法律の支配にスイッチしてしまっていること、そして、安倍総理が一人であれは校正したはずはないので、周りにそれを注意してあげられる知性か勇気がないということですよね。  今、それが現に起きているわけです、数に任せて法律の支配をばかり。法治主義というなら分かります。人じゃなくて国会で相談して決めた法律によって行政権力は管理される。だけど、その立法権力も行政権力も共に、これはアメリカで私が学んだもので、簡単なんですけど、博士はドクター・オブ・ローズと二つあるんですね。それは、上、神の法の下に地上の法があって、神学から分かれた法学は地上の法学を勉強する、だけれども、本来真理の法が上にあってそれに背いてはいけない。それが最高裁の法廷とか憲法制定会議に表れるという概念なんですね。  だから、その上位法に逆らう法律はあり得ないというところが今の自民党政権には理解されていない、恐ろしいことだと私は思います。
  69. 川田龍平

    川田龍平君 私も小選挙区制の弊害ではないかと、悪弊だと思っております。そういう意味で、是非、今のこの法体系というものについて、やっぱりしっかりとした理解があった上で国会議員が議論すべきだというふうに私も思っております。  そして次に、松井公述人にお伺いいたしますが、松井公述人は安保理、国連安全保障理事会について、この安全保障理事会が積極的平和に関心を持つことはいい側面もありますが、気を付けないといけない側面もあるのですということを論文で述べられています。やはり、国際法学者として是非、こういった今の世界の動きの中で、安倍総理が言っているような、特に積極的平和主義ですとか、本当にこの積極的平和というものが武力によって実現され得るのかという、行使によって平和をつくろうとしているところの観点からどのように考えているか、松井公述人お願いします。
  70. 松井芳郎

    公述人松井芳郎君) 御質問ありがとうございました。  安倍総理、確かに積極的平和主義ということを随分力を込めていろんなところで主張しておられますが、皆さん御存じと思いますけれども、随分前から平和学の中で積極的平和という言葉がございます。これは、要するに、平和というのは戦争がない状態だけではなくて、人権の抑圧とか民主主義の否定とか貧困とか、そういういわゆる構造的暴力もない状態が積極的平和なんだという考え方でありまして、これはちょっと安倍総理が言っておられる積極的平和主義とはかなりずれがあるような感じがいたします。  どうも安倍総理の御議論を聞いていますと、平和という言わば目的を掲げれば戦争をやってもいいんだという、そういう印象を受けざるを得ないような感じがするわけであります。  国連の安保理事会の話ですけれども、安保理事会というのは平和の破壊とか侵略行為に対して対抗するそういう組織で、そういう権限を持っております。ただ、紛争の原因というのは単にドンパチがあるということだけではありませんで、もっと深い社会的な根があるわけでありますから、それに対処しようという姿勢を持ってもらうことは大変大事なことだと思うんですけれども、ただ、国連の中でもいろんな機関がありまして、総会とか経済社会理事会とか、そういう機関も平和の基礎をつくるような仕事については権限を持っているわけですね。それに対して、安保理事会のみが拘束力がある決議ができる機関ですから、それが言わばのさばっていくということは、ちょっと国連の中の各機関の間の権限関係といいますか、それから見ていろいろ問題が生じるのではないかと、こういう感想を持っております。
  71. 川田龍平

    川田龍平君 ありがとうございます。  それでは、奥田公述人に伺います。  私は、二十年前に薬害エイズの問題で、ずっと厚生省を三千五百人の人間の鎖で取り囲んだ集会を、私もまだ十九歳のときに薬害エイズの裁判を闘っていたことから、そうした社会問題、社会運動としてしっかり若い人たちが世論に訴えることによって政治が動いて、この政治の大きな意味があるという思いから、私自身は一時期は教育の場で仕事をしていましたけれども、やっぱり政治が余りにも今多数決の論理でもっておかしな方向に行ってしまうのではないかという思いもあって、無所属からこの国会議員に立候補いたしまして、そして、やはり本当に個人としてしっかり政治をやっていくべきというふうに思って、今は政党に入っておりますけれども、政党や組織の中にあってもやはり個人の政治家としてしっかりやっていきたいという思いでおりますが。  是非、奥田公述人に伺いたいのは、もし仮にこの法案成立した場合に、この法案成立したことによって法律ができても、終わりではないのではないかと私は思っていますけれども、奥田公述人はどのように考えているかということを是非述べていただきたいと思います。
  72. 奥田愛基

    公述人奥田愛基君) これが、特定の支持政党のある、母体がある、そういう大きな団体とかそういうものであれば何か話はもう少し分かりやすいような気がするんですけれど、これは、今起こっていることというのは、これまで政治的に期待してこなかったというか、政治家が何であれ自分たちの生活がという人たちが、逆にもう政治家に任せていられないから自分たちで考えなきゃならないということで声が上がっているんですね。  つまり、誰かに命令されてやれとか来いとか言われている人たちじゃないわけです。というのは、主体的に連続的に各地で起こっているわけですよね。そういうことで考えると、主体的に考え、動いている人たちというのはもう止まらないと思うんですね。  そういうことで考えると、今回、よく今も新聞なりなんなりで、この安保法制が通ったらどうしますかというふうな質問をされるんですけど、通った前、今の段階でさえも私たちが問われている当事者だと言い切れますし、もし仮に通ったとしても、その後も我々が国民主権という、主権在民という国家に生きているのであれば、我々が当事者でしょうと。もちろん、次の選挙でも我々が当事者だと思っています。
  73. 川田龍平

    川田龍平君 ありがとうございます。  最後に、小林公述人に、維新案について、維新の安全保障に対する対案を、今回参議院においては一本ではなく十本に分けてこの法律を出しました。そういった意味で、是非、この維新案についての、小林公述人から見て、この合憲性について是非述べていただければと思います。
  74. 小林節

    公述人小林節君) 維新の党から御連絡いただいて、とにかく自民党の憲法破壊の案には付いていけないから、合憲性範囲内で、ただし安保環境の変化というのも理解できなくもないからぎりぎりの線でという観点で、私と伊藤真弁護士がお付き合いをいたしました。何人もいたんですが、時間のある者が我々しかいなかったので。  そういう意味で、観点そのものが、最初の、何というか立ち位置が、私は、法の支配と憲法尊重擁護という義務を持った方たちとして極めてまともだと思いました。
  75. 川田龍平

    川田龍平君 ありがとうございました。  終わります。どうもありがとうございました。
  76. 井上哲士

    ○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。  今日は、六人の公述人の皆さん、本当に貴重なお話をありがとうございます。  まず、濱田公述人にお聞きをいたします。  砂川判決集団的自衛権を容認したものでないにもかかわらず、そのように言われている今の在り方に批判のお話もありました。  この砂川判決自身は、実は当時、マッカーサー駐日大使が日本政府に働きかけて、いわゆる高裁を飛ばす跳躍上告が行われたこと、また、当時の田中最高裁長官が裁判の見通しなどをマッカーサー駐日大使と個別に話をしていたということがアメリカの公文書館から明らかになっておりますが、裁判の中立性を私は大きく損なわせるものだと思いますけれども、濱田公述人の御感想というか御意見をお聞きいたしたいと思います。
  77. 濱田邦夫

    公述人濱田邦夫君) 田中耕太郎先生は有名な商法学者であられ、かつ、最高裁退任後は司法裁判所世界裁判所というところで長年お勤めになった大変偉い先生ですが、おやりになったことは司法に汚点を残す誠に残念な行為だったと思います。  それで、先ほど坂元公述人が、最高裁はこの今回審議されている法案違憲判断しないだろうという大変楽観的な見通しを言われましたが、今の現役の裁判官は大変優秀な人です。その司法部をなめたらいかんぜよ。
  78. 井上哲士

    ○井上哲士君 ありがとうございます。  今回の法案アメリカ自衛隊に肩代わりをさせようとしているんではないかと、こういうようなお話をされているのをお聞きしたことがあるんですけれども、その点、いかがお考えでしょうか。
  79. 濱田邦夫

    公述人濱田邦夫君) 今回アメリカが願っていることは、自国民の死傷、兵隊の死傷を減らし、国民の税金の負担を減らし、それを日本国民の死傷と税金に肩代わりしてくれと。  どの国も自国の利益だけをこれは追求するのは世界の中で当然のことなので、私が心配するのは、現政権が、日本人の、殊に若い世代の福祉、生命、生活というものを本当に尊重してもらっているのだろうか、日米同盟の強化ということに凝り固まってアメリカの言わば手先になる、これだけ唯々諾々とする、まあ占領のときにも占領軍に非常に唯々諾々と日本は従いましたけれども、七十年たってまたやることはないんじゃないのというのが私の意見です。
  80. 井上哲士

    ○井上哲士君 ありがとうございます。  次に、松井公述人にお聞きをいたします。  集団的自衛権の概念というものが、帝国主義が海外の権益を守るための議論の中で出てきたという公述がございました。一方、与党などからは、これは小さな国が共同して大国の武力行使から自らを守るための権利なんだと、こういう議論もされているわけで、現実に国連憲章にこの権利が盛り込まれた経過やその後行使された経過から、この点、お話しいただきたいと思います。
  81. 松井芳郎

    公述人松井芳郎君) 今日、そのお話をする時間がなかったんですけれども、国連憲章の中に集団的自衛権が入った経過についてはいろいろ議論があります。  通説的な理解では、ラテンアメリカ諸国が第二次大戦後共同防衛をやろうと、ところが、安保理事会で結局常任理事国が拒否権を持つことになりましたから、そうすると、事前の許可がないと原案では武力が使えなかったんですが、それは困るというので国連に入らないというふうな騒ぎにまでなって、それをなだめるために集団的自衛権の規定が入ったんだという説明一般的にされておりましたが、どうも違うのではないかという研究が一九七〇年代から九〇年代にかけて、一部ですけれども国際法学者や国際政治学者の間から出ております。  それはつまり、アメリカのむしろ戦後の冷戦政策が主導した。ラテンアメリカ諸国が言ったのは、むしろ地域的機関が紛争の平和的解決できっちりイニシアチブを取りたいと、それに国連が勝手に口を差し挟まないでほしいというところであったのをアメリカが引き取って、むしろ安保理事会の介入を受けずに自由に地域的機関が武力を使えることを確保するために五十一条を入れたんだという研究が出てきまして、これは大変説得的な研究だというふうに思っております。  たまたまソ連の場合は国連憲章の旧敵国条項というのがありまして、これだと安保理事会の制肘を受けずに武力が使えますが、アメリカの共同防衛の仕組みはそうなっておりませんでしたので、言わばソ連と並んで安保理事会から逃げるためという軍事的なアメリカの主張がむしろ主導したのではないかというふうに考えております。
  82. 井上哲士

    ○井上哲士君 集団的自衛権というのは本質的に他国防衛だというのは、これは舌足らず説明だというようなお話も公述人からあったわけでありますが、政府自国防衛のための集団的自衛権だと今回の法案、こう言っているわけですけれども、国際法上で見たときに、こういう御主張についてはどうお考えでしょうか。
  83. 松井芳郎

    公述人松井芳郎君) 集団的自衛権をどういう性格のものとして理解するかというのは、恐らく三説あるだろうというふうに思っています。  一つは、個別的自衛権を共同して行使するという説ですが、これはちょっと憲章五十一条の文言とも合致しませんので余り支持はございません。  もう一つは、あとの二つが今日の御議論にも関わるわけですけれども、一つは他国防衛する権利だという考えですね。これは恐らく憲章ができた頃は多数説だったのではないかと思いますけれども、国内でいえば刑法の正当防衛考え方を持ってくるわけですね。確かに、今日の御議論でも御指摘ありましたように、そうすると他衛になって自衛ではないではないかという議論があります。それにどこの国でも口を挟むということになると、どんどん紛争が拡大して戦争世界規模で拡大する、これはまずいというふうな批判もあります。  そこで、結局、大体現在落ち着いているのは、今の法案前提にしている、自国と密接な関係がある国が攻撃を受けることによって自国の死活の安全が脅かされるからこれに対して戦うと、それが集団的自衛権だというのが今の主流の考え方だろうとは思っています。しかし、この考え方は、先ほども何人かの方から御指摘がありましたが、集団的自衛権の限定的容認というふうな言い方をされましたが、そうではなくて集団的自衛権解釈そのものでありまして、これは限定的容認というふうなものではなくてやはり全面的な容認だというふうに考えております。  それから、もう一言補充いたしますと、国際司法裁判所はむしろ他衛という解釈を取っております。これは学者からは批判が一時あったんですけれども、濫用を防ぐために、国際司法裁判所は、他国を守る権利なんだけれども、その守られる国が攻撃を受けたということを自認していて、かつ援助を公式に要求していることが必要だと、そういう形で他衛説の濫用の危険に対して歯止めを掛けようという意見を国際司法裁判所が出したことがありまして、これは一定の影響力を持っているように見受けられます。
  84. 井上哲士

    ○井上哲士君 ありがとうございます。  いわゆる集団的自衛権というのは自然権だという議論に対して、これは慣習法の権利の承諾にすぎないんだというお話もございました。一方で、国会議論では、これは自然権なんだから行使できるようにするのは当然だという議論がかなり行われているわけですけれども、その点どういうふうに御覧になっているのか。  そして、こういう集団的自衛権行使を広げるということが国連の集団的安全保障体制を強めることになるのか、どういう流れになるのか、その点の御意見をお聞きしたいと思います。
  85. 松井芳郎

    公述人松井芳郎君) 固有権利という言葉は、実は先ほどちょっと触れました一九二八年の不戦条約が交渉されたときに、アメリカの国務長官がそういうふうな言い方をしております。つまり、自衛権というのは固有権利だから、特に条約に書いておかなくても当然に認められる権利だという考え方を当時持っていたわけですね。  しかし、その頃に比べますと、自衛権考え方は随分、できるだけこれを制約するという方向で発達してきておりまして、例えば、かつてはまさに武力による攻撃がなくても自国の死活の利益が脅かされれば自衛権が発動できるというふうな考え方が結構あったわけですけれども、国連憲章の下では、武力攻撃が発生することを要件にするという形で制約を掛けているわけですね。  そのほかの事例、いろいろ、先ほどからサイバー攻撃なんというのも自衛権で対抗できるかという議論がございますが、それはさておきまして、そういう形で自衛権というのが次第に制約される方向、これは最初の公述でも申し上げましたが、原則はあくまで武力行使禁止で、これに対する例外でありますので、それが次第に制約される方向に発展していくことは自然な流れだろうというふうに思っております。  国連の集団安全保障体制から考えますと、個別的であれ集団的であれ、自衛権が野放しで認められるということはもう集団安全保障の基本的な考え方から矛盾いたします。憲章もそういう形にはなっておりませんで、安保理事会が自衛権行使の必要については事後になっても審査をして良しあしを決めるという仕組みにはなっておりますけれども、安保理事会では御存じのように常任理事国は拒否権を持っておりますので、したがって、常任理事国かあるいはその同盟国が自衛権を口実に武力を使い出したら安保理事会にはなかなか止める手だてがないということになってしまいまして、その意味では、やっぱり集団安全保障の基本理念と集団的自衛権とは矛盾するというふうに考えざるを得ないだろうというふうに思っております。
  86. 井上哲士

    ○井上哲士君 ありがとうございます。  奥田公述人にお聞きいたしますけれども、この法案、廃案にするべきだと先ほどありましたけど、端的にどこが問題だとお考えでしょうか。
  87. 奥田愛基

    公述人奥田愛基君) 国会のレベルで審議がまともに行われていないという話をさっきからしているんですけど、基本的な論理が変わっていないという話が、先ほどから説明があったと思うんですけど、論理というのは、どんな問いが来ても論理構造が変わっていなければ同じ答えが出るはずなんですね。でも、論理が変わっていないのに同じ問いを掛けたら違う答えが出てきたら、それは論理変わっているとしか言えないですよね。おかしくないでしょうかと。そのような状況の中で、この法律、つまり、説明している、政府が言っていることと実情がかなり違うんじゃないかと思うんですね。サイバー攻撃もいいんですけど、年金の問題とかどうなっているんでしょうかと、かなり思うわけですよ。  憲法レベルでいうと、集団的自衛権違憲であると先ほどから述べられていますけど、実際、後方支援という名の兵たん活動もこれは武力行使に当たるわけで、実際、違憲ですよね。武器等防護による武器の使用ということも、それももう先制攻撃か完全な集団的自衛権に当たるので、これも違憲であると言えます。  また、法案レベルにおいても、新三要件があるから大丈夫だという話も、第二要件、第三要件に関して、これ法案上に書いていないんですよね。それは、その存立危機事態、事態対処法の第九条二項一号にちゃんと記載されていないことや、第三要件に関しては第三条の四項に関して書かれていないと。それって本当に法案の欠陥だと思うので、それはちゃんと書いた方がいいのではないでしょうかと思うわけですよ。  兵たん活動のリスクが減っているけど危険は減らないとか、危険が上がるけどリスクは減ってとか、それも何か、何と言っているかよく分からないんですよね。  あと、やっぱり武器等防護によって自衛官というのが主体となって米艦や航空機を防護するって、自衛官が主語になってできるわけがないんですよ。もう自衛隊法九十五条の明確な法案レベルの欠陥をちゃんと直してほしいと。  政策レベルでも、今防衛費を余り上げないと言っていますけど、上げないまま兵たん活動や世界中に行ってしまえば、日本の国防というのは結果的に下がるんじゃないでしょうかと思うわけです。さっきの自衛官の話も政策レベルに関わると思います。  ほかにも言いたいことはたくさんあるんですけど、以上にします。
  88. 井上哲士

    ○井上哲士君 最後、政治政党と皆さんのやるような市民の動きについては、その関係についてはどういうお考えをお持ちでしょうか。
  89. 奥田愛基

    公述人奥田愛基君) 先ほどから特定の政治政党を支持しないということを強調しているんですが、逆にそういう支持しないからこそシングルイシューで、このような国家の危機や憲法の危機に対して力を共にして今やれるべきことをやるということは至極真っ当なことだと思います。なので、よろしくお願いします。
  90. 井上哲士

    ○井上哲士君 ありがとうございました。  今日は様々新しい論点もありますので、今後更にしっかり審議をしていきたいと思います。ありがとうございました。
  91. 山田太郎

    ○山田太郎君 日本を元気にする会の山田太郎でございます。  今日は、公述人の皆様、お忙しいところをお越しいただきまして、ありがとうございます。賛成の立場からも反対の立場からも真摯な意見を聞けたということで、大変参考になりました。  今、国会は、まさにこの法案、廃案なのか対案なのか、修正なのか原案なのか、これが問われているわけでありまして、参議院はいろんな議論がされてきまして、廃案、原案だけではなくて、維新さんなんかは対案を出された、我々日本を元気にする会、次世代の党、それから新党改革、これは修正を求めて対応をさせていただいています。  あと、私どもも、この原案そのものは大変問題も多いと。私もずっとこの委員会でたくさんの質疑させていただきましたが、やはり穴だらけですし、やっぱり三つの不ですね、不信、不安、不明というものに満ちております。そうであれば、廃案というのもありますが、法文でしっかり押さえていく、一方で国会の承認、プロセスで押さえていく、こういうやり方もあるのではないか、こういうふうに思っておりまして、一つは、我々は歯止めというものがどうしても重要だ、こういう形で今回対応をさせていただいています。  そこで、坂元公述人、それから小林公述人にそれぞれ伺っていきたいんですが、まずちょっと我々の考え方を少しだけ説明しながら、それぞれ御意見をいただきたいと思っています。  我々は、今例外なき国会の事前承認というものを求めています。特に、武力行使が伴う存立危機事態、これは集団的自衛権も関わるということでありまして、こういうものをまさに国会判断なしで、事後承認でもって政府が後から国会の承認を求めるようでは、武力行使をして交戦状態になってから幾ら事後で承認してももはや後の祭りということになるわけでありますから。しかも、戦後、日本は七十年間、幸いなのか努力があったのか、いずれにしても、一人も殺さず殺されずという平和国家を歩んでまいりました。この段に至って、ここで武力行使国会の例外なき事前承認をなくして認めるわけには我々も絶対にいかない。政府は、緊急の場合があるから事後も認めてくれ、国民の生命を守るためだと、こう言っていますが、我々はそれはあり得ない、こういう立場で今、修正を迫っております。  もう一つ大事なことは、国会の承認といっても何を承認するのか。我々は実は、中口、出口という考え方を持っておりまして、国会のいわゆる監視、それから事後検証ということもやる、そのためには、単にどうだったかということではなくて、元々の計画に対してどうなのか、ちゃんとうまくいっているのか、違うふうになっているのか、こういったことが重要だということを考えておりまして、それぞれのいわゆる国会承認、あるいは事前に作られる文書がきちっとあって、それは必ず公開され、国会でも承認をされると。そうでないと、じゃ、途中監視、国会が決議して部隊帰ってこいといっても何をもって帰ってくるのか、あるいは事後検証も何に対してするのかということがありません。  これに関して私どもは大変な問題がこの法案にあると思っておりまして、重要影響事態に関しては、実は基本計画は作られるものの、これ自身国会にかけられる仕組みにはなっておりませんでした。これは答弁で、必ず作り国民の前でも発表されるということになっていますので、これはしっかり修正協議という形では今迫っている内容でも実はあるのでありますが、いずれにしても、こういった文書をきっちり固めていく、いつどこに誰が何をどうした、これがしっかり整合を持っているのかどうか、このことは最後まで問われると思っておりまして、この文書自身も、単に承認をするとかしないとか、行ってもいいとかいけないとかいうことではなく、歯止めとしては重要な議論ではないのかなと、こう思っているわけであります。  三点目、最後なんですが、再承認ということに関しては、やはり国会の決議によっていつでも終了させられるということが重要だというふうに捉えていますが、法文、法案の中では存立危機事態以外は実は国会の決議によって終了させるという条項はないわけでありまして、これについては答弁でも、全ての場合については国会の決議を尊重するという形で固めてはまいりましたが、しっかりこれはやはり政府の側に修正を求めていきたい、こういうことであります。  イラクの場合も、大量破壊兵器もなかったのに加担したのではないか、こういうふうに言われておりますが、まさに、行ってみて状況が違ったではこれも困るわけでありまして、それも大きな歯止めになるだろうと、こういうふうに考えているわけであります。この歯止め論、実はこの安保法制懇に参加された坂元先生も、歯止めというのは重要だという記事も出されています。  ただ、我々はいろんな歯止めの方法があると思っているんですが、残念ながら、法律や文書で書いても、どうも政府解釈をいろいろされるようですから、もうこれは国会がしっかり毎回毎回チェックしなければ信頼性は担保できないのではないかと、こういうふうに思って国会の例外なき事前承認ということを強く今求めています。  是非、その辺り、坂元公述人小林公述人に、今言ったような内容に関して、評価、それから、もし足りないところがあれば、まだ今修正協議中でございますので、言っていただければ我々は与党に対しても是非迫っていきたいというふうに思っておりますので、御意見いただけないでしょうか。
  92. 坂元一哉

    公述人坂元一哉君) 国際平和支援法につきまして、国会の例外なき事前承認ということになったことを私は高く評価しております。  お話しの話は、自衛あるいは日本の安全に関わる問題ということだと思うんですけれども、この場合に、歯止めというのは、もちろん我々の、国際紛争解決のために武力行使をして失敗した過去がございまして、武力行使ということを必要最小限、もうできるだけしないようにしようというのが、これが平和主義の根幹だと思いますけれども。その場合、先ほどから申し述べている抑止なんですけれども、相手の行動をどう歯止めするかという問題がございまして、そのことと我々の武力行使の歯止めの問題のバランスがございまして、ですから、安保体制の中で、もう必ず国会承認がなければ自衛隊は動けないよと、存立危機事態とかあるいは武力攻撃事態とかになりますと、私は抑止力が弱まるのかなという感じがあります。  それで、ですが、これをもし文言に書かなくても、国会の承認というのは受けなきゃいけないものですから、私は政府がそこは適切に判断すると思いますし、政府も何か国会に盾突いて、国会がみんな嫌がっているのに何かとか、そういうことにはならないんだろうと私は思っております。
  93. 小林節

    公述人小林節君) これまでの国会論戦を見ていると事象を客観的、合理的にという言葉がやたら出てくるんですけれども、総合的にとか、それ意味不明ですから、今、坂元先生がおっしゃったように、政府は合理的に判断しますという楽観主義は取れないんですよね。やはり、権力は経験上たくさん堕落してきたからこそ法律及び国会による歯止めが必要だし、憲法による枠付けが必要なので、その経験則に照らせば私はちょっと悲観的です。  それから、この修正協議をしておられて、確かに全ての軍事行動を事前承認するというのは、もちろんその制度自体が僕は違憲という前提を取りますが、ただ、先生のつくった土俵に乗った議論すると、それはすごくいい歯止めだと思うんですね。ただ、それを政府が、それじゃいざというとき使えないと言っていることの方が私は不安で、いざというときがあるんですね、そんなに慌てて出なきゃならない。そうすると、満州事変と同じですね、やっちまってから国は付いてこい、つまり、オールモスト統帥権の独立のような話になる。  これは、一連の議論が本当にかみ合っていない上に、そういう人たちが、俺に任せろ、場合によっちゃ断れないときもあるよという土俵に修正協議で座っておられること自体、私は、誠に申し訳ございませんけれども、何か冗談のような、アリバイ工作のような、最後付いていくのであれば、そういう修正協議は、誠に御無礼ですけど、おやめになった方がいいと思います。
  94. 山田太郎

    ○山田太郎君 それも是非先生の意見を参考にさせていただきたいと思っています。ただ、もしその歯止めが付くのであれば、これは我々自身としては大変大きなことだと。    〔委員長退席、理事佐藤正久君着席〕  実は私、今、奥田公述人の話を聞いておりまして、まさに野党にやれることは全てやったのかということが心に迫りました。  我々も、実は三党いろんな立場がありまして、今回、日本を元気にする会は、元々政府原案に対しては実は反対の、完全に反対の立場でこれまでやってまいりました。ただ、反対をするだけではなかなかこの法律が今の政治状況からして通過してしまうのかもしれない、こういうことは政治的な現実的な状況として捉えている中で、では修正させて、まず、まあ確かに安保法制も重要なんでしょう、国を守ることも大事だ、それ自身は我々は否定するつもりはありませんけれども、もし修正がかなって国会の承認がなければ武力行使は例外なくできないということになれば、これは実は法律で抑えると同時に、もう一つは、その場その場で何をするのかということに関しては、先ほどの文書と同じようにクリアにすることができると、こういう考えを取りました。賛否様々あると思いますし、いろんな評価も受けると思います。  そこで、やはり私も実は学生時代、ある会合で憲政記念館で平和教育について政治家の前でしゃべることがありまして、二日どころか三日も四日も寝れないでいましたので、奥田さんの、大学生のときの私も気持ちもよく分かっているので、是非奥田さんに聞きたいというふうに思います。  まさに、野党がやれることは全てやったのか。私もまあ自称、今は政治家をやって三年たちましたが、これまで民間経営者をずっとやってきて、何とか、このいわゆる法案政府原案のまま通るということはとてもじゃないけれども耐えられないという思いで今対応しています。  ただ、我々の立場は非常に、こういうことを言うと微妙でありまして、もう反対、廃案を求める人たちからすると政府に擦り寄っていると言われ、また賛成する人に言わせれば、政府がやろうとしていることに足を引っかけると、こう言われて、なかなか評価を得られないということを分かってやっていますが、これがもし奥田さんのおっしゃる、野党がやれることを全てやったのかの一つとして評価されるものなのか、いやいや、やはり奥田さんの立場からすれば、これは当然廃案を体を張ってやるのか。  私は、今デモをやっている方々からの声、もちろん皆さんがいるからこそ、政府もこのまま通すのでは問題だと、何か修正や変更をしなければやはり国民の声へ応えたことにもならないということで、背中を押されながら我々も修正協議やっているんですが、是非、奥田公述人からも、こういった立場考え方、コメントをいただければと思っています。
  95. 奥田愛基

    公述人奥田愛基君) 個人的な政治観なんですけれど、僕にとって、投票をするときもそうなんですけど、余り政治の中でベストな選択というのはなかなかできない。いつも、この人はこうだしな、あの人はこうだしなと思いながら毎回投票所に行っているような気がします。その中でも、一番効果的で今やるべきことをやらなければならないので動いていると。  確かに、今のままの法案で通るよりも、修正されてまだ歯止めが利いた形で通った方がいいに決まっているのですが、今問題となっているのは十一個の法案が二つに固まって出ているわけです。それに対して一つ一つ審議をする時間は足りていないと思います。しかも、参議院のこの段階になって修正案がどのようになっているのかというのが具体的でない場合において、僕もちょっと、修正案がどのようなものなのかというのがちゃんと分かればもう少しいい答えができたのですが。  この段階において、今セカンドベターをやるべきだと思います。もちろん、やりたいことやその方向性は全く否定しませんし、それはやるべきだったと思います。しかしながら、今この段階で、何が取れて、何が効果的で、何が一番歯止めに、それこそ歯止めになるのかということを是非考えていただきたいと思います。
  96. 山田太郎

    ○山田太郎君 是非、皆さんの意見を参考にしながら、今修正協議を我々はさせていただいています。我々自身も、どういう最後は立場でいくのか、まさに廃案なのか、対案なのか、修正なのか、そして原案なのか、是非そういう形でしっかり考えて対応させていただきたい。今日の公述人方々意見は物すごく参考になりましたので、私もまた党に持ち帰って議論をしっかりやっていきたいと思います。  今日はありがとうございました。
  97. 和田政宗

    ○和田政宗君 次世代の党の和田政宗です。  公述人方々には、お忙しい中お越しいただきまして、誠にありがとうございます。  まず、公述人方々意見を聞いて感想を述べたいというふうに思いますけれども、戦争国民が犠牲になるようなことがあってはならない、平和を守らなくてはいけない、これはまさに皆様の思いでもあり、国民方々一般の思いでもあり、これは国会議員の思いであるというふうに思うんです。ただ、それぞれがそう思っているわけですけれども、そのための手法が違うんだというふうに思っております。  憲法学者の方と政治学者の方の意見を聞いた場合にもやはりそういったところがあるんだろうというふうに思っておりまして、憲法学者の方は、条文を忠実に解釈をしたい、自衛隊違憲だという方が多数でありまして、今回の法案違憲だという方が多数になると。政治学者の方は、歴史の事実や安全保障の事実に忠実に向き合いたい、すなわち今手を打たないと危険だということであろうというふうに思います。両者の特徴をしっかりと捉えて議論をしていかなくてはならないというふうに思っております。  そして、もう一点、抗議活動やデモについてちょっと感想を述べさせていただきたいんですけれども、これは憲法上認められた権利で大いにやっていただいて構わないというふうに思っております。これは賛成派もデモをしております。  ただ、昨日の抗議活動は、夜九時を過ぎても太鼓の大きな音や大声が聞こえまして、議員会館の執務室でも大音量で聞こえておりました。これ、国会議員であれば、当然批判は甘んじて受けるべきですので許容しなくてはならないというふうに思うんですけれども、永田町の近辺にもやはり住居やマンションあるわけですね。特に小さなお子さんをお持ちの方というのは、これ、寝かし付けるのも大変だったんじゃないかというふうに思っております。平穏なデモや抗議活動ができないものだろうかというふうに私は感想として思っております。  しかしながら、日本というのは良い国だというふうに思っております。自由に意見が言える、それはごく当たり前のことですけれども、それだけ民主主義がしっかりしているからであるというふうに思っております。これが中国ですと、ウイグルやチベットで平和裏に抗議活動をしますと銃を乱射されて射殺をされると、こういったようなこともあるわけです。  いずれにせよ、今回の安保法制につきましては、しっかりと国会の関与を強化しまして、事前に全てチェックできるようにしなくてはならないというふうに思っております。  まず、公述人にお話を聞いていきたいというふうに思いますが、白石公述人にお話をお聞きいたします。  この安保法制が通らなかった場合に中国北朝鮮、どのような行動を取ると考えられるか、また、安保法制が通ればどういった点が中国北朝鮮抑止力になるか、この点をお願いいたします。
  98. 白石隆

    公述人白石隆君) どうもありがとうございます。  分かりません。よその国がどう対応するか、これは分かりません。だけれども、これまでの行動、私、先ほど過去十五年くらいを見れば中国の行動というのは自己主張が強くなっておるということは申しました。その結果、日本だけではなくてほかの国でも脅威認識が高まっていると申しました。この趨勢が続くと、安全保障考えるのであれば相当、当然のこととして最悪の事態を想定しますので、分かりませんけれども、そういう最悪の事態を想定していろんな対処方針を考えるべきだろうというふうに考えます。
  99. 和田政宗

    ○和田政宗君 その対処ということについてもう少し白石公述人にお聞きをしたいというふうに思うんですが、ISILが最近、日本の在外公館への攻撃というのを呼びかけているわけでございます。既に日本がテロのターゲットになっている中で、こういったテロ集団であるとかテロ組織に対して日本はどういうふうに対処をしていくべきか、この点をお願いいたします。
  100. 白石隆

    公述人白石隆君) このISISにつきましては、なかなか日本として自衛権を発動するというのはこれは難しい、そういう事態を想定するのはなかなか難しいところですが、例えば情報交換であるとか、あるいは警察協力のようなところでは、私は日本が他の国々と協力できる可能性というのは十分ある、そういうことはした方がいいというふうに考えております。  この場合には、例えば中央アジアから中東への中国の最近の進出なんかを考えますと、実は日本中国というのは恐らく共通の敵を持っているということも言えますので、先ほど私は、外交と防衛、特に抑止力というのは、二つ両方考えなきゃいけませんと申し上げましたけれども、こういう分野では中国も含めて国際協力ができるんではないかというふうに考えております。
  101. 和田政宗

    ○和田政宗君 それでは、関連して坂元公述人にお聞きをしたいというふうに思うんですが、外交において平和を維持していく、その要素としては、経済力によって様々な貿易などを行って関係を強化をしていく、そういったこともあるというふうに思うんですけれども、国際貢献というものもこれは大きな外交の要素であろうというふうに思っております。  国際貢献の面で今回の安保法制が果たす役割というのはどういうふうに考えていますでしょうか。
  102. 坂元一哉

    公述人坂元一哉君) これは、問題になりました国際貢献においては、これからも武力の行使はしないということで、それ以外の日本がこれまで培ってきたような平和貢献を続けていくということになろうかと思います。  ISISの場合、あるいはISISの問題で難民が出た場合には、例えばこの難民に対する人道支援を行うということになろうかというふうに思います。それをもって相手がこれは敵対行為だと、こういうふうになっても、だからといって人道支援ができないということでは困るのかなと。  ただ、我々はそういう、今回の考え方もそうですけれども、かなりの不正義がなされていると思いますけれども、国際社会で、しかし、武力行使でもってそれを何かしようということはやりませんということが我々の立場なんじゃないかなというふうに思います。ですから、これで国際社会が納得、あるいは国際社会の信頼や評価を得るように努力する必要があるのかなというふうに思います。
  103. 和田政宗

    ○和田政宗君 白石公述人にお聞きをしたいというふうに思います。    〔理事佐藤正久君退席、委員長着席〕  最悪の状況考えなくてはならないというようなところで、この法案が通ったらどういったところが抑止になるのか。相手の出方もあるというようなことがあって、その上で備えなくてはならないというようなことをおっしゃいましたけれども、現状の中国の東シナ海での行動でありますとか南シナ海の行動を考えた場合に、これは、この法案に関連して、さらには国際連携というようなところで打てる手というのはどういった手が考えられるか、その点をお願いいたします。
  104. 白石隆

    公述人白石隆君) どうもありがとうございます。  三点、繰り返しになりますが、申し上げます。  まず、自助ということで申しますと、いわゆるグレーゾーンにおけるシームレスな対応、これは極めて重要でございます。  二番目に、日米安全保障防衛協力ということで申しますと、先ほどから何度も申し上げておりますように、ネットワーク中心の防衛システムというものが現にございますので、これを踏まえて防衛協力あるいは安全保障協力の実効性を高めていくという、繰り返しになりますけれども、これは決して力に対して力をではございません、それを行うこと自身が抑止になるということでございます。  それから三番目に、先ほどやはりルールの作り方というのが非常に重要だと申しましたが、そういうことを踏まえて、例えばASEANプラスの様々の信頼醸成、予防外交のような仕組みがございますし、それから、最近は中国に対する脅威認識を共有することで、インドであるとか、あるいはオーストラリア、それからASEANの国々との協力の機運も増しておりますので、こういうところとの協力を高めていくということが重要だろうと考えております。
  105. 和田政宗

    ○和田政宗君 次に、坂元公述人にお聞きをしたいというふうに思います。  砂川判決のことが先ほどより論じられておりますけれども、集団的自衛権は含まれないという論に対しまして、坂元さんはそうではないというふうにおっしゃっております。その見解について改めてお聞きをできればというふうに思います。
  106. 坂元一哉

    公述人坂元一哉君) 先ほど私が申したことについて、私の考えは楽観的だという評価を受けたわけなんですけれども、私は、最高裁が絶対に違憲判決を出さないと申し上げているんじゃなくて、申し上げているのは、政府がこの法案を出して、その出すときに違憲判決は出ないであろうという相当合理的な判断があるので、この法案評価できると、こういうふうに申し上げているわけであります。  それで、先ほどこの砂川判決理由の中に、要するに自衛のための措置、必要な自衛のための措置をとることができると書いてあって、実は、ここで個別的自衛権集団的自衛権もそれで認めたというわけではないんですね。  政府が申しておりますのは、我々の安保法制懇のやつとは違うんですが、政府が言っているのは、要するに、自国と密接な関係にある国に武力攻撃が起こったときに、それによって我が国存立が全うできなくなったり、それから自由とか幸福の追求の権利ですね、生命、幸福の追求、これが脅かされるような明白な危険がある場合に武力行使を行うことは、これは自衛のための措置だと言っているわけですね。  大事なことは、要するに、憲法上それは自衛のための措置だよというところがポイントでありまして、これを国際法上どう評価するかということは、それは国際法上の問題でありますから、国際法とこの憲法の問題は分けて考えなきゃいけないと。あくまでも、この理由も、その理由に示しました自衛のための措置ができるからですから、その米軍の駐留は合憲だと言っているわけですから、非常に重要なことを言っているわけなんですね。ですから、そういうことでございます。
  107. 和田政宗

    ○和田政宗君 次に、白石公述人にお聞きをしたいというふうに思っております。  今回の安保法制につきまして、我が党と日本を元気にする会、新党改革では、例外なき事前承認を掛けていくということ、さらに、中口という言い方をしておりますけれども、一定の期間をもって再承認を掛けていく、そして、終わった後に報告を求めるということで、いわゆる国会が全てをチェックしていくというような形で、国民の、不安を持っていらっしゃる方々の不安を何とか取り除けるのではないかというようなところで、修正案というものを提案をしております。  この三党の考え方についてどのように思っていらっしゃるか、お願いをいたします。
  108. 白石隆

    公述人白石隆君) 私は、平和協力については、事前の承認というのは、これは特に問題があるとは思いません。ただ、日本存立に関わる事態ということを考えますと、実際の問題として果たしてそれだけの時間的余裕があるのかどうかということを私は非常に危惧いたします。  ですから、そういう事態、恐らくそういう事態のときには寸秒を争う事態だろうと思いますので、それをやはりきちっと考えた上で、しかも先ほども私申し上げましたように、安全保障で一番怖い事態というのは、起こるとも分からないような、起こる起こらないということすら知らない、そういう事態が一番怖い事態でございまして、そういうときに、たとえ数時間であっても国会でそういうその承認を求めるための時間が使われるということは、日本の本当に存亡にとって重大な結果を逆に招きかねないのではないだろうかというふうに私は懸念いたします。
  109. 和田政宗

    ○和田政宗君 それでは、最後に松井さんにお聞きをしたいというふうに思うんですが、今の質問と絡みますけれども、今回の法案合憲性違憲性についてはそれぞれ様々皆様方意見をお持ちだというふうに思いますけれども、自衛隊の行動とそれに対する国会の関与の強化について、現状とこれからについて、意見をもしいただけたらというふうに思っております。
  110. 松井芳郎

    公述人松井芳郎君) 今の御質問は主として憲法問題だとは思うんですけれども、国際法を勉強しております者の立場からいいますと、やはり文民統制ということは世界的な趨勢として、特に人権規範としても大変重視をされている時代でありまして、個別的な制度をどう組み立てるかということは別にいたしまして、文民統制を緩めるような方向での議論というのは論外であろうし、いろんな形を取ってこれを強めていくという議論が今必要になっているということが一般論としては申し上げられると思います。
  111. 和田政宗

    ○和田政宗君 皆様の意見を踏まえて、私はこの安保法案というのは必要だというふうに思っておりますので、国会の関与を強めた形で、採決をするときにはしっかり採決すべきだというふうに思っております。  私の質問はこれで終わります。
  112. 水野賢一

    ○水野賢一君 無所属の水野賢一です。  まず、坂元公述人にお伺いをさせていただければというふうに思いますけれども、抑止力を高めていくことが大切だということについては、私もそれは十分理解いたしますし、それは極めて大切なことだというふうに思っておりますけれども、そのために、まさに今、自衛の部隊としては自衛隊があり、また同盟関係としては日米安保条約があって、その第五条によって、これは集団的自衛権に関していえば、米国の方が集団的自衛権行使して日本防衛する対日防衛義務があるわけですけれども、そういう中で、まさにこれが自衛隊の存在や安保条約の存在が抑止力ということだというふうに思うんですけれども、これを今回の法改正によって、日本側が集団的自衛権行使するということがどうしてその抑止力を高めることにつながるのか、先生の御見解を教えていただければというふうに思います。
  113. 坂元一哉

    公述人坂元一哉君) これは、安保体制というのは、何かが起こったときどうなるかということを議論するわけであります。その議論するときに、アメリカ集団的自衛権を使って日本防衛協力すると言っているけれども、その協力しているアメリカ軍が攻撃されたら、協力しようとしているアメリカ軍が攻撃されたら、あるいは協力のために存在したアメリカ軍が攻撃されたら、それは全然知らないよと、ちょっとできないんだということを言うと、その言うこと自体が、それが抑止力を下げるというか、日米関係のきずなを弱めることになっていって、そのことが、最近も何かアメリカのある大統領候補がアメリカ日本を守るのに日本アメリカを守らないじゃないかという話をして、そうだそうだと、こういうような議論があって、そういうことがあること自体が既にこの日米のまず協力日米のきずなを弱めるということになって抑止力が弱まると。  もちろん、その実際の行動においても、米軍がかつてのように、白石公述人がおっしゃったように、パワーバランスが変化した中で、米軍がかつてのような圧倒的優位を持っていない中で日本が東アジアの平和と安全のために米軍とともに行動するときに、日本自衛に関わる部分では武力の行使も限定的に行うという体制を取るべきではないかなと思っております。
  114. 水野賢一

    ○水野賢一君 続いて、同じく坂元公述人、また濱田公述人に同じ質問をさせていただければというふうに思いますけれども、今回の法案の特徴として十本の法案を束ねているという部分があるわけですよね。もう一本新法も出していますけれども、十本の、それこそPKO法だ、若しくは今の集団的自衛権に関わるものもあれば、周辺事態法の改正もあれば、在外邦人救出に関係する事項もあればと。要するに、たくさんのものが束ねられているというふうになっていますから、そうすると、普通、十本ぐらい法律の改正があれば、ここの改正は理解できますよ、だけどここは絶対のめませんねとか、ここはもっともっと情報を開示してもらわなきゃ困りますねとかということは言いたくなることが世の常だと思うんですけれども、残念ながら投票行動でそういう投票行動はできなくて、一括して丸ごと賛成なんですか、若しくはトータルとしてノーなんですかというふうにしか投票ができない。まあ束ねているからこそそうなんですけれども。    〔委員長退席、理事塚田一郎君着席〕  両公述人にお伺いしたいのは、こうやって束ね法の形で出していることが適当なのかということと、若しくは、もう一つは、今日どうしても話題は、集中するのは集団的自衛権部分に集中していますが、今申し上げたようにそれだけが今回の法改正ではないわけですから、例えばPKOだとか、周辺事態後方支援だとか、在外邦人救出だとか、いろんなことが関わっていますけれども、この辺については何か御見解があればお聞かせをいただければというふうに、坂元公述人濱田公述人お願いいたします。
  115. 坂元一哉

    公述人坂元一哉君) 私は、よくこれは分かりませんけれども、政府がこれをまとめて出しているのは、安全保障体制一括として審議していただきたいということなんじゃないかなと思います。  実際、本来、現実問題としてその十本というのが多い、少ないかと言われたら、それはちょっと多いのじゃなかろうかと、それは思います。ですから時間も必要でしょうし、ですから国会も大幅に延長されたんではなかろうかというふうに思います。  いろんな法案のところで十分に審議がなされていると私は信じたいんですけれども、もしも将来、これ何か実際のその状況になったときに問題が出るということになれば、それはそのときにまた変えるということになると思います。だから、変えればよろしいんじゃないかと思います。もちろん採決なさるかなさらないかは国会議員の皆様の御判断ですから、私が何か言うことはありませんけれども、もし採決なさって仮にこれが成立するとしましても、今後、この安全保障体制をより良いものにしていくという努力はずっと続いていくわけでありまして、ですから、そのことを前提にして、この十本、まとめてという形になっているんですけれども、一度採決していただくのがいいんじゃないかなというふうに私は思うのであります。
  116. 濱田邦夫

    公述人濱田邦夫君) 十本まとめたということ自体は、私の理解では、安倍政権がアメリカ政府、議会に夏までに通すという約束をしたという国際公約を実現するために、無理やり力ずくでも通すよという意思表示としてこれがまとめられているというのが正解だと思っております。  それから、集団的自衛権の問題以外のPKO法案等について修正を加えるということ自体は、これは、これまで国際的な平和貢献ということで自民党政権の下で着々と準備をされて実行されてきている法律群というのがあるわけですね。それは、私の理解では、内閣法制局が憲法解釈のぎりぎりのところ、つまり憲法九条改正しないでできるマキシマム、限界まで一生懸命解釈をしてでき上がってきているものというふうに私は理解しておりますので、これまでのPKOその他の国際平和貢献の法案では非常に不足である、無理であるという点についての説明なり説得というのはなされていないんじゃないかと、そこの集団的自衛権と抱き合わせにして何が何でも中央突破しようという政治的意図でこれが行われているというのは問題がある。つまり、これまでの日本の平和憲法解釈でぎりぎりまでやってきたものを超える部分は、PKO等の法案についてもやはり問題があるというふうに思います。
  117. 水野賢一

    ○水野賢一君 松井公述人にお伺いいたしますけれども、国際法上の集団的自衛権、いろんな学説があるというのは先ほどの御説明でも分かりましたけれども、一つのやっぱり国際司法裁判所の判例などから考えても、やっぱり要請、要請というのは攻撃を受けた国からのですね、攻撃を受けた国からの要請というのがあって初めて出ていくというのが普通なのかなというふうに思うんですけど。というのは、自国攻撃されていない、しかも、どこの国からも要請も受けていないのに自分で集団的自衛権でございますといって出ていくのは侵略に限りなく近くなっちゃうような話ですから、そういうふうにも思うんですが、まあいろんな学説があると思うんですが。  今回の法案見ると、新三要件のことは法案に、まあ三要件という書き方はしていないけれども、ばらばらにいろんなところにちょこちょこ書いてあるんですが、それはともかくとして、要請を受けて出ていくんだという、要請ということは法文にはどこにも書いていないわけなんですね、今回の法改正の中では。要するに、政府からすると、自明のことなんだからあえて書かないんだというような説明なんですけど、これが法文に書いていないということというのは、やっぱり一つの、後で解釈をいろいろ分けたりとかするとかっていろんな混乱を生むもとにもなると思うんですけれども、公述人の御意見をお聞かせいただければというふうに思います。
  118. 松井芳郎

    公述人松井芳郎君) 集団的自衛権行使するという前提考えますと、今の、先ほども触れました国際司法裁判所判決などがあって、現在の趨勢としては要請が要るということになっておりますので、それを踏まえることは当然ではないかと思っております。
  119. 水野賢一

    ○水野賢一君 坂元公述人に御意見をお聞かせいただければと思いますが、先生も関係をしていらっしゃった安保法制懇、安保法制懇の報告書、もちろんそれに対しても賛否そのものがいろいろあるというのは承知していますけれども、安保法制懇の報告書を拝見しますと、集団的自衛権行使に当たっては、攻撃をされた国からの明示的な要請が日本にあって初めて行使できるんだという書き方をしていらっしゃるんですね、今年の最終報告書ですけれども。明示的な要請というのは、それは、もし集団的自衛権を容認する立場に立つのであれば私もそれは当然だと思うんですけど、要請があったかないか分からないのに勝手に出ていくというのは、それは先ほど申し上げたように侵略に限りなく近い話にもつながりかねないので。    〔理事塚田一郎君退席、委員長着席〕  ただ、まさに法文にはそれは書いていませんし、少なくとも政府の答弁を聞くと、要請そのものも、あったことは公開するけど、どんな要請が来たかは、要請文は公表できないとかというふうに政府は答弁しているんですが、何か公述人の御意見があれば教えていただければと思います。
  120. 坂元一哉

    公述人坂元一哉君) 私は、集団的自衛権は他衛ではないという立場でありますので、自衛でありますから明示的な要請というまでそれが必要なのかどうかについては、私自身は、報告書には留保はあったんですけれども、しかし、その報告書を出したグループのメンバーの一人でありますから。  この話は恐らく、同盟、要するに集団的自衛権行使、実際問題としては米軍というか米国というか、そういうことを暗示しますので、これは日米間にはすごく緊密な調整がありまして、それでまた、今回新しいガイドラインでは同盟調整のメカニズムというのをつくっていくことになりますから、そういう中でこれは迅速にやれていくということじゃないかと思います。  あったことについては、もちろんそれは報告が必要だと思いますが、個別具体的な細かいところまでそれが要るかどうかは分かりませんけれども。
  121. 水野賢一

    ○水野賢一君 公述人の先生方も、もちろんお立場、御意見、皆さんいろいろ違うというふうに思いますけれども、最後に全員の公述人方々に、もう簡潔で結構なんですけれども、私も最後の質問にいたしますが、全員にお伺いしたいと思いますけれども。  報道なんか見ますと、今週にも強行に法案を採決するんじゃないかというようなことも言われているところであります。もちろん、国会をどう運営するかというのは国会議員の中で、参議院の中で決めていく話ではあるかもしれませんけれども、せっかく今日意見を述べられたということは、当然、今日のお話をされたことが審議に資するということを公述人の先生方も期待していらっしゃるというふうに思いますので、もっと、今日の御意見を踏まえてもっと審議してくれということにおいては、つまり今週の採決というのはいかがなものかというふうにも思われるのは当然だというふうに思いますけれども、この点について各公述人の先生方から御意見を伺って、私の質問を終わりたいというふうに思います。
  122. 鴻池祥肇

    委員長鴻池祥肇君) ということでありますので、奥田公述人から順次御発言お願いいたします。
  123. 奥田愛基

    公述人奥田愛基君) 今この段階で採決するのはあり得ないと思います。  以上です。
  124. 松井芳郎

    公述人松井芳郎君) 私も、最初のときに申しましたように、国際法上の議論というのがほとんど詰まっておりませんので、現段階で採決されるということは、恐らく私だけではなくて、大部分国民が納得しないだろうというふうに思っております。
  125. 小林節

    公述人小林節君) 国の存続と国民の命に関わる重大な歴史的法律法案でありながら、いまだに国民的合意が成立されているとは思えない。ですから、近々決を採るなどというのは論外であると思います。
  126. 白石隆

    公述人白石隆君) 私は、先生方の議論に少しでも何か寄与できるところがあればと思って参りました。私自身は、こういう世界というのはプロの世界だと思っておりますので、これは国会運営のプロの先生方の判断だろうと考えております。
  127. 濱田邦夫

    公述人濱田邦夫君) 今日ここで長時間座っているのが単にやらせでやらされているとは思いたくないので、是非、皆様方の良識、良心に従ってこの審議の帰結を決めていただきたいと思います。  私の意見としては、やはりこれは採決に十分に審議が達していないと。したがって、今採決するのには反対です。
  128. 坂元一哉

    公述人坂元一哉君) 我々は、国民の代表であります皆様を通じて行動するということになっておりますから、この採決をいつなさるかということについては、これは皆様に判断していただきたいんですけれども、資するかどうか分かりませんけれども、私は早くやっていただきたいというふうに思っております。
  129. 水野賢一

    ○水野賢一君 私自身も、今日お聞かせいただいた、もちろんいろんな意見はあるというふうに思いますけれども、公述人方々意見をしっかりと聞いてもっともっと審議をしていくべきだというふうに考えておりますので、強行採決などは論外だということを申し上げて、私の質問を終わりたいというふうに思います。  ありがとうございました。
  130. 又市征治

    又市征治君 社民党の又市です。  六人の公述人の皆さん、本当に貴重な御意見をいただきまして、ありがとうございました。順次お伺いをしていきたいと思います。    〔委員長退席、理事佐藤正久君着席〕  まず最初に、若者代表の奥田さんにお伺いしたいと思います。  勇気ある発言と行動に、共感とそしてまた感動を覚えました。この戦争法案反対の声を上げたときに、同世代からこんなに大きな反響があるというふうに考えられたのかどうか、大きな反響と共感があったわけですが、その要因、あるいは一番共感を得ているSEALDsの主張というのはどこにあると思われるのか、まずこの点をお伺いしたいと思います。
  131. 奥田愛基

    公述人奥田愛基君) 一番初めにも言ったんですが、僕たち、まず一つは、今この安保法制に対する世論の盛り上がりというのは、端的に言ってSEALDsだけの影響ではないと思います。もうまさにこの法案のおかしさというのが皆さんに通じたからこのようになっていると思うんですね。  ただ、一つ要因があるとすれば、自分たちの言葉で政治のことを語り始めたというのが非常に重要なのかなと思っています。つまり、政治の難しく国会内でしか語られないような言葉だけではなく、それというのは一体どういうことなのかというのを自分たちで考えて、そしゃくし、生活レベルで自分たちの話をし始めたと。そういうことがこの世論が起こっている一つの要因になっていると僕は思います。
  132. 又市征治

    又市征治君 改めて伺いますが、この法案が多くの国民の支持を得られていないというふうに認めながらも、安倍総理は今週中に、今もありましたが、成立させたい、こういう主張をされているわけですが、それは、現在は支持されていなくてもやがて国民に支持されるという確信をどうも持っておられるようでありますし、また自分たちは選挙で選ばれたのだという自負があるようですけれども、このような考え方について、奥田公述人はどのように評価されますか。
  133. 奥田愛基

    公述人奥田愛基君) 多分ですけど、僕らの方がこれから生きていく時代というのは長いと思うんですね。これからどのようになるか分からない法律、三十年後分かるからといっても、三十年後あなたたちは責任を取れるのですかと思うわけです。なので、本当にまだ懸念があって、理解が得られていなくて、まだ審議が不十分であると思われるならば、もう少し考えていただきたいと、採決を急ぐ必要は全くないのではないかと思います。
  134. 又市征治

    又市征治君 次に、濱田先生にお伺いをしたいと思います。  先生の以前のインタビューの記事を拝読いたしました。内容を御紹介する時間がないんで残念ですけれども、失礼ながら、最高裁判事をなさった法律専門家としては大変柔軟な考えをお持ちの方だなというふうに率直に感じました。  今回の安保法案憲法違反だというふうに明確にお答えになっているわけですが、その点は他の質問者がお聞きをしましたので、そこで、今、この存立危機事態だとか重要影響事態だとかという問題などの判断、認定というのは全部政府が総合的に判断しますと、こんなふうにも言っているわけですよね。最終的にはもうみんな政府にお任せしてくださいと、こういうことになっていくわけでありますが、そのことと併せて、特定秘密保護法が施行になりました。そのことと絡めると、本当に危険だな、国民国会にそういうものは知らされない、こういう危険性がますます強まると、こんなふうに思うんですが、この点についての御意見をお伺いしたいと思います。
  135. 濱田邦夫

    公述人濱田邦夫君) 私は、最高裁においては社外取締役的な立場におりまして、今回も違憲という意見を述べたときに、私とか那須元判事は弁護士出身だからというような評価を一部からされたようですが、きっすいの裁判官出身の元長官があれだけの勇気ある発言をされたということに、私も更に勇気を得ております。  それで、今御質問の点については、法律家の立場からいうと、責任ある法律としての体を成していないと。つまり、御指摘のあるように、昨年成立した秘密保護法と併せてこれが施行された場合には、全く国民はつんぼ桟敷、何も知らされないで、時の政権がアメリカの要請に応じてほいほいあちらこちらへ出かけていって国民の税金を際限なく使うと、そういう事態は絶対に許すべきではないというふうに思っております。
  136. 又市征治

    又市征治君 まだお聞きしたいことがいろいろとあるんですが、次に小林先生にお伺いしたいと思います。  先生は九月五日の大阪の新聞紙上で、戦後七十年の実績とこれからの国際情勢を考え合わせた場合、もはや我が国にとって集団的自衛権行使は有害無益であるという結論に至った、つまり、今の私は、憲法九条の下で専守防衛に徹することこそが、我が国の国益にかなうし、同時に、世界平和にも資すると考えるようになったというふうに述べられておるわけですが、この点、もう少し補足的に御説明いただければと思います。
  137. 小林節

    公述人小林節君) 元々、九条を改正して普通の国になる論者だったんですけれども、それはやはり冷戦時代のソ連の存在が気になっていたからで、それがなくなって言わば緩やかな戦国乱世になったときに、くたびれ切ったアメリカが出口のない戦争方々でやってしまっているんですね。それで、自由と民主主義という価値を共有する。  これ、アメリカ流自由と民主主義はイスラム教徒にとってはえらく迷惑でありまして、世界にはそれぞれの価値の違いがあっていいと思うんですね、彼ら流の民主主義。それ、自由と民主主義を共有する国と手を携えて積極的平和主義って、これは織田信長の天下布武と同じで、意見の違う者を張り倒して歩く、敵がいなくなった、ああ、平和だというふうに安倍首相の御発言が聞こえちゃいまして、その手段としての集団的自衛権と聞こえるわけです。  ならば、図らずも憲法九条の結果、手も足も出なくて、日本ほどの大国、経済大国、技術大国、人間力大国、これは僕も世界を歩いていますから、本当に誇りを持てる国なんです。この国が七十年も戦争をしなかった、図らずも。これはむしろ我々のすばらしいカードとして生かすべきであろうと。アメリカ戦争に追従して傷だらけになって貧乏になるよりも、私は、これで平和大国、平和のクッション、調整役として、キリストでもイスラムでもない第三の文明として生きていくことがいいと思うに至ったんです。
  138. 又市征治

    又市征治君 ありがとうございました。  続いて伺いますが、先生は、自民党の中で、今回の戦争法案の意義について、アメリカと仲よくなることによって攻撃を受ける危険性が減るから安全になるという理屈があることについて批判をされておりますね。これは日米軍事一体化への批判とも受け止めますけれども、この点をもう少しお伺いをしたいと思います。
  139. 小林節

    公述人小林節君) 敵の味方は敵だ。これ、だって、戦って命懸けてやるわけですから、これまで戦争の当事者じゃなかった日本アメリカと一緒に戦場に行けば、新しい敵が来たとしてその兵隊は狙われるし、世界国家として世界中で展開している日本人は人質としても狙われるし、それから、東京というところにテロをぶち込まなければと、当然私がイスラム教徒だったら考えますよ。
  140. 又市征治

    又市征治君 もう一つ伺います。  六月の日本記者クラブでの会見で、この戦争法案が仮に成立した場合には、違憲立法で平和に生きる権利が傷つけられたという訴訟を準備しているというふうに述べられましたが、一方で、技術的にもかなり難しい面もあるなというふうに述べられております。  当然、これを是正するためには、奥田さんたち始め院外の主権者のこの行動、あるいは選挙ということは当然のこととして考えられますけれども、立法的にどのような形でこの違憲訴訟が可能だというようにお考えになっているか、伺っておきます。
  141. 小林節

    公述人小林節君) 今、日本戦争しようがないですから平和に暮らしていますけど、前文平和的生存権、それを制度として九条がバックアップしています。ところが、この法案成立して施行期間が過ぎて有効になった瞬間から、いつでも政府が事象を客観的、合理的、総合的に判断したと言えば、自衛隊米軍の友軍として海外に出せる、戦争が始まるんですね。  平和という概念は、定義ですが、戦争又は戦争の危険のない状態なんです。ですから、今議論されている法律成立して有効になった瞬間から、我々は日々戦争の危険のある国に暮らすことになって、これが平和的生存権の侵害状態で、言わば我々の人格が戦争の不安で傷ついていくんですね。ですから、国家賠償請求訴訟を構えようという相談はしています。ただ、今は言論戦で潰すことに全力、でも、頭の中にはもうチームもできています。  ただし、我々としては、政治の過失は政治で取り返す。ですから、日本人は忘れっぽいので、毎月弁護団と原告団会議を開いて記者会見をすることによってアナウンスメント効果を考えております。だって、最高裁まで四年掛かるじゃないですか。その間に参議院選挙と総選挙があるじゃないですか。  そして、とにかく自民と公明が連立することによって、過半数に満たない票で圧倒的多数の議席を取って今威張っているわけですよね。だから、野党が本当に、本当に素直に連立を構えて、過半数に満たないけれども自公より多い票で議席を、圧倒的多数を取り返すこと。かつてだって民主党政権つくったじゃないですか。だから、できるんですよ。  だから、政治の手段としての憲法訴訟、使えるものは何でも使う、それを考えております。
  142. 又市征治

    又市征治君 済みません、濱田先生、今の件で、この憲法違反の立法が成立した場合、その異常な事態というものを是正するためにどのような方策というのが考えられるか、今の小林先生の方に補足して何かありましたら。
  143. 濱田邦夫

    公述人濱田邦夫君) 小林先生がおっしゃったように、一番早いのはやはり選挙ですね。ですから、この法案に賛成した自民党、公明党の議員はしっかり今記録をしておりますので、そういう人たちがこの国会に帰ってくるという保証はないよということでございまして、違憲訴訟そのものは非常に技術的に難しいところもありますが、小林先生がおっしゃったように、アナウンスメント効果というか、忘れないためにという意味で補足的にやるけれども、やはり基本は主権者たる国民が審判を下すと。皆様方一人一人、それをよく肝に銘じてこの審議をしていただきたいと思います。
  144. 又市征治

    又市征治君 どうもありがとうございました。  裁判的にいえば、一番手っ取り早いのは自衛隊をお辞めになった方々が、そういう意味では予備自衛官と、こうなっているわけですから、その方々が訴えれば、これは小林先生がおっしゃったように、平和生存権そのものが脅かされるという問題の典型的な例かな、そんなこともあるのかなと私は感じていますが、それはまたいろいろと御意見も聞きたいと思っています。  松井先生にお伺いしますが、私たちは、今回の安保法制日本戦争に巻き込まれるだけではなくて、アメリカなどと戦争を引き起こす側に回る、こういう危険性があることから戦争法案と、こう呼んでまいりましたけれども、一方、法案賛成の側からは、集団的自衛権を可能にすることによって相手国に挑発的な行動を控えさせる抑止力になるんだという、こういう意見が有力にあります。それは、だけれども、私たちは際限なき軍拡競争と軍事的緊張を増大させて、百害あって一利なしだと、こんなふうに思っていますが、国際政治学をなさっている先生の立場からの御意見を伺っておきたいと思います。
  145. 松井芳郎

    公述人松井芳郎君) 集団安全保障という制度は、御存じと思いますが、国際連盟で初めて制度化されます。それ以前の段階、特にヨーロッパ国際社会では、まさに抑止力と勢力均衡で平和を守るというやり方を取ってきたわけですね。ところが、それがヨーロッパで際限もない軍拡競争と同盟国をお互いに集め合うという競争になりまして、それで同盟の二か国で戦火が交えられたら、それが同盟の網の目を通って世界的に広がるというのが第一次大戦であります。  その苦い経験を踏まえて、同盟とか抑止力ではなくて国際社会の全体で平和を維持しようという集団安全保障という考え方が出てきたという経過がありまして、もちろん現在の国際連合、様々な欠陥を持っておりますけれども、やはりそれに代わる新しい制度というのはなかなかないと思われますので、国連の欠陥を埋めて、それを集団安全保障の本来の姿の方に持っていくという努力こそが重要だろうというふうに思っております。
  146. 又市征治

    又市征治君 松井先生、最後に伺います。  日米ガイドラインが改定をされました。これは、そういう意味では私は日米安保条約を大きく変質させるものであって、本来、国会承認が必要だと、こういうふうに述べたんですが、政府はその必要はないんだと、こう言っています。この件に関して簡潔にひとつ先生の御意見を伺って、終わりたいと思います。
  147. 松井芳郎

    公述人松井芳郎君) 先ほども少し触れましたが、確かに条文を変えることなしに解釈でもって進めるということを今の政府のやり方は追求しているというふうに思います。  ただ、これも先ほど申し上げたことですが、実質的には日米権利義務関係が大きく変わるわけですね。そういう国としての権利義務関係が大きく変わるときにはこれは国会承認条約になるということは、歴代の内閣も認められてきたいわゆる大平三原則というのがございますが、それに照らしても、このような大きな変化があるときには国会承認を得る改正が必要だというふうに私としては思っております。
  148. 又市征治

    又市征治君 どうもありがとうございました。
  149. 主濱了

    ○主濱了君 生活の主濱了であります。  公述人の皆様には、本当に貴重な御意見を賜り、また長い時間、本当にありがとうございます。私、最後から二番目でありますので、あともうちょっとであります。頑張っていただきたいと、このように思います。  まず最初に、濱田公述人と、それから小林公述人にお伺いをいたします。  実は私、先週の金曜日、安倍総理に直接質問をする機会を与えられました。その中で安倍総理は、日本憲法を改正せずして提出の安保法案を何とか成立をさせよう、しかも、今国会成立をさせようとしていると。その根拠は、合憲根拠は、昭和三十四年砂川事件最高裁判決と、それから四十七年の政府見解であると、こういうふうなことでございます。  ここが唯一の合憲とのつながりというふうに私思っておりまして、ここをはっきりさせればこれはもう合憲根拠にはならない、こういうふうなことをはっきりさせれば、これはもう全くこの法案全体が私は違法になる、違憲であると、こういうふうに思うわけであります。  そこで、先ほど濱田公述人からは、砂川判決については理由にはならないというふうな触れ方、それから、四十七年政府見解については我が国に対する武力行使に限るのだと、こういうふうな御発言がありましたが、そして、実は小林公述人からは若干この点には触れておられなかったということなんですが、今申し上げたとおり、ここの部分合憲根拠にはならないと、この点について焦点を当ててお話を伺いたいと思います。
  150. 濱田邦夫

    公述人濱田邦夫君) その合憲性判断は、政府も言っているように、最終的には最高裁判所が決めることであって、一公述人の私が述べることは単なる一個人の意見にすぎないということで、まして権力の中枢にある政府関係者が決めていいということではないということです。
  151. 小林節

    公述人小林節君) 一応言わせていただきます。  砂川判決というのは在日米軍の駐留の合憲違憲が問われたものであって、司法というのは事件についてしか判断しないもので、両当事者、事件について全力で資料と論理を出したわけで、ですから、そこで議論になっていない、日本が軍隊をしつらえて海外他国を支援に行くという集団的自衛権行使などというのはそもそもアウト・オブ・ザ・クエスチョンで、それを根拠にすることは間違い。  それに、そもそも司法の独立というのは裁判官の独立を意味するわけで、それが、裁判官が他国の大使にちゃんとよくやりますから御心配なくなどと言ってしまっちゃったというのは、もうそもそも司法の独立の放棄で、判決自体前提が無効ですよね。これを根拠にするということは論外です。  ただ、これはみんなが言っています。僕らもずっと言ってきました。問題は、それを理解しようとしない首相の、何というか、心というか頭というか、そちらにあると私は思います。  それから、四十七年見解だって、我が国は九条の縛りがあって、戦争できないよ、だけれども襲われたら黙って他国軍事力に主体性を奪われていいわけではない、だから自立性を守るための自衛必要最小限のことはできますよという話ですよね。その上に、だから集団的自衛権などと海外派兵というのは余計なことで、必要最小限を超えるからできないとまで言っているわけです。それを、だから、集団的自衛権は時代が変わって必要になったからできると、必要最小限の最小限が吹っ飛んじゃっているんですね。  私、たまたま総理大臣、官房長官時代のあの方と飛行機で同席しちゃいまして、四十分間、たまたまその話をやっていたんですよ。当時は、私は一生懸命肯定的に考えられないかというシミュレーションをやって、でもやっぱり、必要なのは分かるけど、必要最小限だから無理ですよと言ってお別れした記憶があるんですね。  以上です。
  152. 主濱了

    ○主濱了君 私も、これは断定はできないんですけれども、最後に安倍総理に対しては、本法案については一旦引き揚げて合憲性についてもう一回点検したらいかがですか、こういうふうなお話をさせていただきました。あと何日かありますので、どうなりますか、注目をしていきたいなというふうに思っております。  次の質問に移りますが、これは同じく濱田公述人小林公述人にお伺いをしたいんですが、安倍総理は、我が国存立が脅かされる事態に国民防衛するのは専守防衛だと、こういうふうに答弁をされているわけであります。日本が相手から武力攻撃を受けたときに初めて防衛力を行使するこの専守防衛と、それから武力行使、新三要件に基づく武力行使とは全く私は別物であるというふうに考えております。何しろ日本武力攻撃を受けていないわけですからね、これ完全に違うわけであります。むしろ、国際法に違反する先制攻撃に近いのではないかというふうに思っております。  この件について、それぞれ、濱田公述人、それから小林公述人の御意見を伺いたいと思います。
  153. 濱田邦夫

    公述人濱田邦夫君) おっしゃるとおりです。
  154. 小林節

    公述人小林節君) 要するに、分かりやすく言うと、海外アメリカ戦争を始めて、明日日本が沈没するということですよね、要件。それ、普通に考えて、僕の頭では考えつかないんですね。  総理が最初に言っていたこのことは、ホルムズ海峡が機雷で封鎖されたら、そうか、石油がなくなって。北海道でガスが出る、そんなの備蓄回せば済むだけの話なのに。半年以上もちますよね。それに、その間に戦争は終わるかもしれないし。  それは、だから一種の被害妄想になっちゃっているんですよね。だから、被害妄想というのは、本当に、こういうことを言うと総理に失礼だとよく怒られるんだけど、私がこういう公の場でそういうことを言わなきゃならない状態をつくったのはあちらですからね。こちらだって言いたくないです、こんな失礼なことを。言わせないでください。でも、言わなきゃいけないんです。  というようなことで、何なんでしょうねということですよ。そうすると、丁寧に御説明くださると、何度もその言葉だけ聞くのに、一度も丁寧に説明された記憶がない。これ、恐ろしいことですよ。  以上です。
  155. 主濱了

    ○主濱了君 次に、松井公述人にお伺いをしたいと思います。  主観的な判断武力行使の歯止めにはならないと、こういうことについて伺いたいと思うんですが、武力行使の新三要件の第一に、我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生したこと、これは客観的な要件であります。そして、その後ろ、我が国存立が脅かされ、国民権利が根底から覆される明白な危険があること、この部分は主観的な判断事項で、判断部分であるわけであります。これが一緒に結び付いて要件の一つになっておるわけでありますが、実は同じようなことが戦前にもあったんですよ。  これは一回防衛大臣にお伺いしたことあるんですけれども、昭和十三年発行の海軍大臣官房の「軍艦外務令解説」というものの中に、自衛権行使し得る条件というのが記載をされております。その第一番が、国家又はその国民に対し急迫せる危害あること、こういうふうなのが五つありまして、これが第一番になっております。その後ろに実は満州事変について記載がありまして、帝国はその権益及び在留民保護のため、シナ国内において、自衛行為を発動したり。自衛行為ですね、自衛行為を発動したりと。  この国家又はその国民に対し急迫せる危害があったと、こういうふうな認定の上なんでしょうけれども、御存じのとおり、満州事変というのは、発端となった柳条湖事件、これは関東軍の一部がやったものというふうに言われているわけでございます。そうしますと、この主観的な条件というのは全く武力を止めるための歯止めにはならない、武力行使の歯止めにはならないというふうに考えるわけなんですが、同じようなことが今の新三要件の中にもあるわけでありますけれども、この辺いかが考えておられるのか、お伺いをいたしたいと思います。
  156. 松井芳郎

    公述人松井芳郎君) 急迫不正の侵害というのは一昔前の自衛権発動の要件としてよく議論されたことでありますが、確かにこの急迫不正の侵害があるかないかということは、やっぱり主観的な判断の余地がまずありますね。  これに対して、現在の国連憲章で言われている武力攻撃の発生というのは、もちろん事実認定はいろいろ争われることがあり得るとしても、客観的な判断が可能な事実であります。それは、先ほども申し上げました、自衛権行使可能性を次第に絞っていって、原則である武力行使禁止原則の方を生かしていくという方向での議論がまさにその方向に向かっているわけでありまして、現在の国際法考え方では、将来の危険性とかおそれとかいうふうな主観的な判断自衛権行使ができるという考え方は明らかに否定されているというふうに思います。  現在の新三要件でも主観的な判断を要する概念がたくさん出てまいりまして、非常にその点、危険ではないだろうかというふうに思っております。
  157. 主濱了

    ○主濱了君 よく分かりました。  それでは、これは濱田公述人にお伺いしたいんですが、憲法第九条第一項には「武力による威嚇」と、こういう表現があります。これも永久に放棄をするということになっておりますけれども、この武力による威嚇と安保法案により政府が期待をしております抑止力、この関係をいかに考えたらいいのか、この辺について、もし御見解があればお伺いをいたしたいと思います。
  158. 濱田邦夫

    公述人濱田邦夫君) 抑止力になるという論理、まあ論理と言えるかどうかですけど、ちょっと分かりかねますが、憲法九条二項の解釈上の戦力なり武力、これまでの自民党政府も一貫してきた憲法解釈としては、自衛隊はこの戦力には該当しないという立て付けになっているわけですね。ですから、交戦権というものについては、これは触れていない、交戦権ははっきり言って、ないということですよね。その前提として、軍隊じゃないんだと。外国からは、そんな、軍隊だろうと言われるけど、いや、そうじゃない、日本自衛隊というのは戦力ではないんですと言ってこれまで来ているわけです。そこの限界が今度は超えられるんではないかというのが一番の問題だと思います。    〔理事佐藤正久君退席、委員長着席〕
  159. 主濱了

    ○主濱了君 最後の御質問になりますけれども、先ほど来いろいろ話題になっておりますが、この法案が今週中にも成立させられようとしていると、こういうことでありますが、実は我々、今のようなこの法案についての審議をしているわけでありまして、非常に参議院の審議を無視した様々な動きが、これがあるというのは極めて残念に思うところであります。  それで、その一歩先をまた考えておきたいんですが、これも実は濱田公述人にお伺いしたいんですが、たとえ数の力によってこの法案成立したとしても、憲法違反ということであれば、これは永久に無効、当然効力は出てこないと、そういうふうなことになるというふうに思うんですが、その後のたどる道をちょっと想定できることをお教えいただきたいと思うんですよ。  まず、この法案成立後、地裁レベル、高裁レベルで違憲だと、こういう判決が出た場合にこの法案の取扱いがどうなるかというのが第一点。それからもう一つは、今度は、やはり最高裁でこの法案がやはり違憲だ、部分的になると思うんですが、違憲だと言われた場合に、日本の国防、要するに日本は常に国防をやっていかなくちゃいけないわけですが、その国防がどうなるのかと、その辺について御所見があれば伺いたいと思います。
  160. 濱田邦夫

    公述人濱田邦夫君) 一審で違憲判決が出ても、自民党政府、まあ公明党も一緒なのかもしれませんけど、気にしないでしょうね。最高裁があるぞというようなことで、今の状況ですと三年ないし四年の時間は掛かるわけで、これ、違憲だという主張だけで法律が無効になるということはなくて、最高裁判所の確定判決でそれが宣言されない限りは法律としての効力は失われませんので、その法律内容はどんどん実現をされると。  それを防ぐためには、政権を交代して、こういう違憲である法律はやめましょうと、今までの日本自衛システムはアメリカとの安保条約の下でそれなりに機能してきているわけですから、その自前の自衛力を高めるというようなことで抑止力を強化するという道もあるわけですけれども、端的に言うと、最高裁判決を待つ前に国民の審判によって政権を交代させると、これが唯一の解決方法だと思います。
  161. 主濱了

    ○主濱了君 終わります。ありがとうございました。     ─────────────
  162. 鴻池祥肇

    委員長鴻池祥肇君) この際、委員異動について御報告をいたします。  本日、那谷屋正義君が委員辞任され、その補欠として神本美恵子君が選任されました。     ─────────────
  163. 荒井広幸

    ○荒井広幸君 どうも先生方にはありがとうございます。新党改革の荒井広幸と申します。  冒頭に、今日、奥田さんの三要件、要点を聞いて、途中で、今、五党協議というのをやっていまして、それ以降中座しておるということで、失礼を先生方におわびしたいと思いますが、お話承ったところでございます。  仮に、仮にでございますが、この法律、まあこの法律ということだけはあり得ないんだろうと思いますが、フルスペックでの集団的自衛権というふうに普通はなるんだろうと思いますが、あえて、そうではなくて、この限定的集団的自衛権というものの行使についての憲法改正発議をしたとして、国民国民投票をお願いいたします。先生方はそれぞれ、限定的集団的自衛権といいますか、憲法改正のこの法案というものを国民に問うた場合、先生方はこれに賛成でありましょうか、反対でありましょうか、御順にお話を聞かせていただければと思います。
  164. 鴻池祥肇

    委員長鴻池祥肇君) それでは、坂元公述人からお願いをいたします。
  165. 坂元一哉

    公述人坂元一哉君) 私は、この法案、全体として日本安全保障平和安全保障体制をより良くすると思っておりますので、もしそういう投票がありましたらもちろん賛成投票をしたいと思っております。
  166. 濱田邦夫

    公述人濱田邦夫君) 憲法は不可侵にして侵すべからずというような明治的規範に従っているわけではありませんので、憲法で定められた手続によって九条を変えようという発議が正式になされた場合には、それは当然、国民がそれぞれ考えて投票をして決着を付けるということになると思います。  私自身は、九条というのは非常にユニークな条文で、これがあることによって別のいろんな意味、今、安倍政権がおっしゃっているのとは違う抑止力というのがやっぱりあるんじゃないかということで、にわかに改正に賛成するという立場ではありません。
  167. 白石隆

    公述人白石隆君) 私は、憲法改正には賛成でございます。  ただ、一つ申し上げますと、先ほど先生がフルスペックの集団的自衛権というふうに申されましたが、私は必ずしも今回の安全保障法制でフルスペックになったとは考えておりません。
  168. 小林節

    公述人小林節君) 私は、過去二年間、論争に巻き込まれて深く考えた結果、先ほど申し上げたように、七十年の平和の宝という部分を大事に思いますので、それを壊す、つまり今回の私が悪法と呼んでいる、戦争法と呼んでいるものと同じ内容憲法にするならば、それは改悪と思いますので、改正の名に値しないので、反対運動に参加したいと思っています。
  169. 松井芳郎

    公述人松井芳郎君) 私、憲法は専攻ではございませんが、国際社会の中に今の日本憲法を位置付けて考えますと、前文平和的生存権とか国際協調主義とか武力の放棄とかいうのは非常に進歩的な意味を持っておりまして、もちろん現在の国際社会の中でいろいろ限界があることは確かでありますけれども、それを言わば後退させる形で改正するということはやっぱり国際貢献という意味からすれば逆行するというふうに思っておりまして、個人的には、もしそういう国民投票があったら反対の方に投票するつもりであります。
  170. 奥田愛基

    公述人奥田愛基君) まず、改憲のその中身、どのような条文になるのかというところで判断しないといけないと思うので、この段階では正直判断が難しいと思うのですが、仮に改憲をしてこの同じ法案を通すとするのであれば、僕はそれは必要ないと思います。
  171. 荒井広幸

    ○荒井広幸君 どうもありがとうございます。  ということでございまして、もう一つ私はお尋ねしたいなと思いますのは、やっぱり我々議員もそれなりの背景を持って今回臨んでおるわけです。そうしますと、ひとつ、自衛隊というものは合憲違憲かというところにどうしても行かざるを得ないということなんです。これが解釈による、許される範囲合憲なのか、あるいはもうそれも許されないというのか、この自衛隊の存在についても改めて今議論が起きているような状況だと思います。  そこで、自衛隊合憲なのか違憲なのか、その中で関連した御意見が、補足しながら、別に合憲違憲と明示的でなくても、はっきりしなくても、お考えをお聞かせいただければ、先ほど来からの公述、我々は大変参考になっているわけですが、またそれを手助けする材料になろうかと思いますので、お願いしたいと思います。
  172. 坂元一哉

    公述人坂元一哉君) 先ほどの質問は、ちょっと私、趣旨を取り違えたかもしれません。私は、この法案を通すのに憲法改正というのは必要ないというふうに思っておりますし、フルスペックの集団的自衛権を使うために憲法改正をするという必要も私はないと思っております。失礼いたしました。  それで、今、自衛隊合憲違憲かという話で、これはもう砂川判決では、自衛権、必要な自衛のための措置は認めるけれども、自衛隊がいわゆる戦力に当たるのかどうかについての判断は留保しているわけですよね。それから、その後、政府は、しかし自衛権ということで、政府解釈でもって、自衛隊というのはいわゆる戦力に当たらないということで自衛措置として考えてきたわけでございます。  それを、もう六十年これたっているわけなんですね。これはやはり一つの法的な事実だろうというふうに思いまして、私はそこで、砂川判決では留保されましたけれども、もしそれがまた問われるということになれば、それは私はやはり統治行為論等によって恐らく合憲になるであろうというふうに思います、判断は。  ただ、それも絶対にということを言っているわけじゃなくて、最高裁によってそれは、多くの憲法学者自衛隊違憲だと、こういうふうに言っておるわけでございますから、その意見がですね、あるいは万一もあるかもしれませんけれども、私自身はそれは、自衛隊合憲だろうというふうに考えております。
  173. 濱田邦夫

    公述人濱田邦夫君) 現在の法律体系の中で考えた場合に、私は、自衛隊の存在自体合憲であると思っています。
  174. 白石隆

    公述人白石隆君) これまでの歴史の中で、政権交代もあった中で、既に歴史的には合憲として定着しているというふうに私は考えております。
  175. 小林節

    公述人小林節君) 私は、三十歳から大学の教壇で憲法学を教えておりますが、一貫して自衛隊合憲と言ってきました。それは、先ほど来の説明のとおり、あっ、私の教え子もいましたけれども、今、うなずいていました、憲法、さっき申し上げた九条の二項で陸海空軍その他の戦力は持たない、だから第二警察としての自衛隊を持っているわけで、交戦権を一度も行使してこなかったし、できるという法律の立て付けになっていませんから、もう完璧に合憲だと思います。
  176. 松井芳郎

    公述人松井芳郎君) 私は、専門ではございませんので確定的なことを申し上げる立場にはございませんが、少なくとも私の学生とか大学院とか若かりし頃は、大多数の憲法学者の方が違憲だという考え方を取っておられたというふうに記憶します。  そういういろいろな違憲論を拝見していまして特に印象に残ったのは、現在の憲法では、開戦とか講和ですね、その権限がどこにあるかとか、それから文民統制の仕組みがどうあるかというふうなことについて一切規定がない、これはそもそも日本は軍隊を持たないという前提で組み立てられているからそうだという説明を読んだことがありまして、これはなかなか説得的な議論だろうというふうに思っております。  もし現在の法律が通ってそれを実施しようということになりますと欠けていることが恐らくいっぱい出てくるので、この法律だけではとても処理、今の法律だけでは処理できない。例えば、軍法会議とか軍刑法なしで自衛隊員を外国に出すということは非常に危険なことになるわけであります。  そういう手当ても考えるならば、やはり裏を返して言えば、現状では自衛隊というのは憲法違反。しかし、これは全く私、専門外の者の感想でありますが、そういうふうに思っております。
  177. 奥田愛基

    公述人奥田愛基君) 僕個人としては、自衛隊というものは合憲だと思っていますが、しかし、立憲主義の中で、違憲なんだから逆に九条を改正して自衛隊というものがちゃんときちんと認められるべきだという意見も分かります。  なんですけれど、これ、九条の中で自衛隊合憲違憲かという話よりも先に進んで、もう今、集団的自衛権合憲なんじゃないかといった法律が出ているわけですよね。そういう何かもう今までに話していた前提みたいなものが崩れていて、非常にこの九条で自衛隊合憲かどうかなんという話が、何かもうその話を今するというよりも、もっと進んだところで今危機が来ているような気がしていて、立憲主義に対する理解がこれほどまでにないと、やっぱり日本人にまだ憲法というのはいじられないんじゃないかと思ってしまいそうになると思うわけです。  なので、もう少し前提として、憲法というのがなぜあるのかという議論をきちんとした方がいいと思います。
  178. 荒井広幸

    ○荒井広幸君 どうもありがとうございました。  小林先生とは、以前、田中眞紀子先生始め、今、私、公務員の責任というのはどこまで担保できるのかなと。逆に言えば、政策の失敗についての公務員、官僚の責任というのを今度のこの法案ですごく考えております。つまり、政治家の下であるはずの官僚が、非常に多くの情報を集中し、またそれに接するということになります。  そういったときに、古今東西の過去の歴史も、かなりの部分判断の誤り、あるいは意図的な考え方というのが時の為政者にもされるし、我々政治家、不徳の致すところで、能力的にも、様々な制約的にも、限界があるということでどんどんどんどん悪い方に行ってしまうんじゃないかなということを考えているので、例えばこの国家安全保障の局のNSC、このところの官僚に私は非常に責任感を持ってもらいたいと、このように思っているんです。  こういった点について、今度の法案の運用に関して、官僚制、あるいは行政国家と言った方がいいかもしれません、立法府にまして委任立法をさせ、法律をですね、国会を通さなくても政省令でルールを作っていって、その中で官僚が裁量をどんどん広げていく、こういった問題点も私は考えているんですが、小林先生にお会いしたのでちょっと、今度の法案と官僚機構あるいは行政国家、ここが暴走しないかという点についての簡単な御意見聞かせていただきたいと思います。
  179. 小林節

    公述人小林節君) 今見ていますと、言わば外務官僚が官邸を乗っ取って暴走しているという感じがして、防衛官僚はその下働きをしているという感じを受ける。ただ、これ全て、官僚というのは政治家次第だと思うんです。官僚が間違いがあったら後でペナルティーを法的に食らわせるというような制度をつくったら国は動かなくなってしまうと思うんですね。やっぱりああいう官僚たちにのさばらせる政治家が悪いと思います。  ですから、政権交代を機に、そののさばっていた人たちを、人事権は政治の側にあるわけですから、きっちり人事権を行使する、そういう習慣を付ければいい。と同時に、政治家が間違ったら政治家を、政権をくるくる交代させるという習慣を我々主権者国民たちが持つべきで、そういう意味では、安倍総理はすばらしいですね、憲法を我々に身に付けさせてくれる壮大なる演習をさせてくださっていると私は思っております。
  180. 荒井広幸

    ○荒井広幸君 有名な十八世紀のボルテールは、私は君の意見には反対だが、君がそう発言する権利については私は命を懸けて守る、こう言いました。安倍政権下でもそうした政治が行われているわけです。  終わります。
  181. 鴻池祥肇

    委員長鴻池祥肇君) 以上をもちまして公述人に対する質疑は終了いたしました。  この際、先生方に一言御礼を申し上げます。  誠に、長時間にわたりまして有益な御意見を賜りまして、ありがとうございました。委員会を代表いたしまして御礼を申し上げます。(拍手)  これをもって公聴会を散会いたします。    午後五時三十二分散会